(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-26
(54)【発明の名称】ボード形の材料を乾燥させる方法および乾燥デバイス
(51)【国際特許分類】
F26B 21/00 20060101AFI20220519BHJP
F26B 21/08 20060101ALI20220519BHJP
F26B 21/10 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
F26B21/00 C
F26B21/08
F26B21/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560593
(86)(22)【出願日】2020-04-05
(85)【翻訳文提出日】2021-11-16
(86)【国際出願番号】 EP2020000080
(87)【国際公開番号】W WO2020207617
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】102019002671.3
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521444088
【氏名又は名称】グレンツェバッハ ベーエスハー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】GRENZEBACH BSH GMBH
【住所又は居所原語表記】Rudolf-Grenzebach-Strasse 1, 36251 Bad Hersfeld Deutschland
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ストレイトマンス,クリストフ
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA01
3L113AB02
3L113AC01
3L113AC54
3L113AC64
3L113AC90
3L113CA08
3L113CA09
3L113CB01
3L113CB17
3L113CB25
3L113DA02
3L113DA24
(57)【要約】
乾燥前区域(2)および乾燥チャンバに分割され、内部で建築材料ボード、特に石膏を含有するボードを乾燥空気と接触させるデバイスを通して床(15)に案内されるボードを乾燥させる方法である。乾燥空気が、乾燥前区域(2)から、乾燥前区域(2)の上流に配置され、ボードの運搬方向に対して少なくとも長手方向両側および上側で閉鎖された領域(1)内のボードに当てられることを特徴とする方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥前区域(2)および乾燥チャンバに分割され、内部で建築材料ボード、特に石膏を含有するボードを乾燥空気と接触させるデバイスを通して床(15)に案内される前記ボードを乾燥させる方法であって、
乾燥空気が、前記乾燥前区域(2)から、前記乾燥前区域(2)の上流に配置され、前記ボードの運搬方向に対して少なくとも長手方向両側および上側で閉鎖された領域(1)内の前記ボードに当てられる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記乾燥前区域(2)からの排気が、乾燥空気として、前記ボードに沿って前記閉鎖領域(1)内を前記ボードの前記運搬方向と反対に流れる、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記閉鎖領域(1)からの前記乾燥空気が、管(8)を介して煙突(10)へ送り込まれる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記乾燥空気が、前記管路(8)に挿入されたファン(9)によって前記閉鎖領域(1)から取り出される、
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記閉鎖領域(1)内への前記乾燥空気の供給が、温度および/または湿度センサによって制御または調整される、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記閉鎖領域(1)内に、50Pa以下、特に25Pa以下のわずかな負圧が生成される、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記閉鎖領域(1)内の空気の含水量が、空気1kgあたり30g未満、好ましくは20g未満の値に制御される、
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記閉鎖領域(1)内で、35~60℃の空気温度が維持される、
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
床(15)を有し、乾燥前区域(2)および乾燥チャンバに分割された、乾燥空気を用いるデバイス内で、建築材料ボード、特に石膏を含有するボードを乾燥させるデバイスであって、
前記乾燥前区域(2)の前に、内部において前記乾燥前区域(2)からの乾燥空気を前記ボードに当てることができる閉鎖領域(1)を有する、
ことを特徴とするデバイス。
【請求項10】
前記閉鎖領域(1)が、側壁および頂部カバー、ならびに前記ボードを受ける棚(15)間の入口側カバーを有し、前記乾燥空気の入口用に前記乾燥前区域(2)に向かって開いている、
ことを特徴とする請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記乾燥空気を、管(8)に導入されたファン(9)によって前記閉鎖領域(1)から取り出すことができる、
ことを特徴とする請求項9または10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記管路(8)が煙突(10)に接続されている、
ことを特徴とする請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
制御または調整用のデバイスを含み、それにより、前記閉鎖領域(1)への前記乾燥空気の供給を、温度および/または湿度センサにて制御または調整できる、
ことを特徴とする請求項9ないし12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
過剰な乾燥空気を前記前区域(2)から除くために、バイパス管路(13)が設けられている、
ことを特徴とする請求項9ないし13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記バイパス管路(13)が前記煙突(10)に接続されている、
ことを特徴とする請求項12および14に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブまたはスラブ様の材料、特に石膏を含有するスラブを乾燥させる方法およびそのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のボード形の材料の乾燥は、ほとんどの場合、主に加熱された空気のオーバーフロー型の対流熱伝達にて行われる。この方法において、スラブは、ローラコンベアまたはスクリーンベルトなどの運搬装置の助けによって、しばしば複数の床に割り当てられる乾燥機を通して送り込まれる。
【0003】
最新技術によると、乾燥機は、通常、再循環方式で運転される。乾燥空気がボードに複数回送り込まれ、接触が終わる度に再加熱される。こうして、空気は、だんだん水分を多く含むようになり、水分および煙道ガスを除去するために、乾燥空気のごく一部のみが排気として環境に放出される。
【0004】
様々な乾燥機の設計の際立った機能が、乾燥させる材料の上に空気を方向付ける方法である。空気は、本質的に、交差換気、縦流式換気、またはいわゆる衝突噴流換気の形でスラブに案内できる。
【0005】
横流式通気の場合、乾燥空気は、側面からボード形の材料の運搬方向を横断するように、乾燥させる材料の上に案内される。乾燥空気は、乾燥させる材料の上を通過しながらだんだん冷えていくため、幅方向で異なる乾燥速度になる。
【0006】
そのため、この方法は、石膏を含有するスラブなどの敏感な材料には用いられない。縦流式換気の場合、乾燥空気は、乾燥機の長手方向軸に沿って長い距離を移動し、ボードの上を流れてボードを乾燥させるため、ボードはかなり冷却される。
【0007】
衝突換気において、乾燥空気は、乾燥機の側面からノズルボックスと呼ばれる風管に送り込まれ、空気の出口ノズルを介して乾燥させる材料の表面に垂直に吹き付けられる。そこから、この空気は乾燥システムの反対側へ流れる。
【0008】
この種の乾燥機の利点の1つは、それぞれが個別に換気および加熱される多数の比較的短い乾燥チャンバからなる構成により、乾燥機の長さ全体に亘って所望の乾燥温度および環境を自由に選択できることである。したがって、乾燥条件を、乾燥させる物の要求に適合できる。また、乾燥機は、例えば製品の変更に対して優れた制御性をもたらす。衝突流による適切な熱伝達によって、この種の乾燥機は、長手方向の空気流を伴う類似の乾燥機よりもかなり短く製造できる。そうしたシステムが、「石膏ボードを加速的に乾燥させる方法およびデバイス(a process and a device for accelerated drying of gypsum boards)」という名称の独国特許出願公開第1946696号明細書に記載されている。しかしながら、エネルギーの観点から特に好ましい動作についての情報は示されていない。
【0009】
原則的に、こうした形の換気のエネルギー効率は、いずれも熱交換器の助けによって新鮮な空気を加熱することで改善可能である。こうして加熱された新鮮な空気は、燃焼用空気として用いられるか、または前乾燥に用いられる。
【0010】
独国特許出願公開第2613512号明細書は、2段階の乾燥方法および乾燥システムについて開示している。独国特許出願公開第2613512号明細書によると、その課題は、既知の2段階の乾燥方法を変更または補足することであり、この方法を用いて、特に石膏ボードまたは同様の特性を有する物を、とりわけエネルギーの観点から経済的に乾燥可能にする。特徴的な機能は、熱交換器を用いて、下流の衝撃噴流換気が行われる乾燥区域の循環空気を加熱することである。
【0011】
独国特許第102009059822号明細書には、複数の乾燥チャンバに分割されたデバイスを通って複数の層に案内されるスラブを乾燥する方法が記載されており、衝突噴流換気によって乾燥デバイス内でボードを乾燥空気と接触させ、衝突噴流換気は、横断的に換気されるノズルボックスにて提供される。この場合、乾燥デバイスは、乾燥設備における主要な乾燥段階または最終的な乾燥段階である。
【0012】
この手順は、熱交換器に入る前に乾燥排気をできる限り冷却すべきことに基づいている。これにより、エネルギー効率がさらに改善される。これに関連して、上流の交差換気が行われる前区域のスラブでボードを前乾燥するために、予熱された新鮮な空気を使用することについても言及されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】独国特許出願公開第1946696号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第2613512号明細書
【特許文献3】独国特許第102009059822号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、従来の方法よりもさらに効率的な乾燥方法をもたらすことである。このために、乾燥機の入口領域で、前区域の排気を用いてボードを予熱する。このようにしてエネルギーを移すと、後続の工程においてバーナにてエネルギーを供給する必要がなくなり、熱的に有利になる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、この目的は、請求項1の開示にて解決される。
【0016】
他の通常の手順と異なり、本発明によれば、石膏プラスターボードだけではなく、石膏ファイバーボードなど石膏を含有するボード形の材料は、硬化段階(水和作用)の間に、すでに乾燥機の乾燥前区域からの暖かい空気に曝される。硬化段階は通常、8~12分続き、またボードがすでに個々の床に分割されている乾燥機の前の領域を含む。
【0017】
本発明は、予想に反し、まだ十分に硬化していないボード、すなわち、まだ硬化工程の最終段階にあるボードを、完全な水和作用を決して妨げることなく、適度に暖かい乾燥空気に曝すことができるという意外な認識に基づいている。
【0018】
有利な他の実施形態は、特に図面とともに、従属請求項および説明から明らかになる。
【0019】
有利な形として、工程は、乾燥前区域からの排気が、乾燥空気として、ボードに沿って閉鎖領域内をボードの運搬方向と反対に流れ、この工程にて冷却されることを特徴とする。
【0020】
さらに、冷却された空気は取り出され、環境へ放出される。
【0021】
空気流、すなわち、乾燥空気の閉鎖領域内への供給を制御するために、温度および/または湿度センサが提供されることが好ましい。
【0022】
本発明によれば、ファンによって閉鎖領域内に、50Pa以下、特に20Pa以下のわずかな負圧が生成される。好ましくは、閉鎖領域内の空気の含水量は、空気1kgあたり30g未満、好ましくは20g未満の値に制御される。好ましくは、閉鎖領域内では35~60℃の空気温度が維持される。こうして作り出された環境は、特にスラブが閉鎖領域に入る場合、露点を下回ることを効果的に回避できる効果を有する。露点を下回ると、例えば、水滴が規則的にスラブの表面に滴り落ち、そこに望ましくない変色が生じる可能性がある。
【0023】
また、本発明によれば、石膏を含有するボードを乾燥させるために、多層床の乾燥機用にデバイスが提供される。そうしたデバイスは、乾燥前区域の前に、内部において乾燥前区域からの乾燥空気をボードに当てる閉鎖領域があることを特徴とする。
【0024】
好ましくは、閉鎖領域は、側壁および頂部カバー、ならびにボードを受ける床間の入口側カバーを含み; 閉鎖領域は、流入する乾燥空気のために、乾燥前区域に向かって開いている。壁およびカバーは、扉または視界窓を備えることもできる。
【0025】
さらに、配管の領域でファンを使用すると、乾燥空気が閉鎖領域から取り出される前に、そこでスラブから水分を吸収し、ボードを少し暖めるため有利である。
【0026】
また、管路を用い、水分が飽和した乾燥空気を煙突に接続された管路を通して排出すると有利である。
【0027】
このデバイスが制御または調整用のデバイスも含み、それにより、閉鎖領域への乾燥空気の供給を、温度および/または湿度センサを用いて制御できれば、前区域の上流の閉鎖領域の動作方式が最適化される。
【0028】
さらに、閉鎖領域には必要のない過剰な乾燥空気を前区域から除くために、バイパス管路を設けることが好ましい。こうして、バイパス管路が煙突に接続されている場合には、過剰な乾燥空気を閉鎖領域から空気と一緒に放出できる。
【0029】
以下では、本発明を、図面を参照しながらさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】外壁を形成するセグメントボードを除いた状態における、ボード形の材料を乾燥させるための乾燥デバイスの前区域の前の閉鎖領域の等角図である。
【
図2】
図1の断面線II-IIに沿った長手方向における閉鎖領域の垂直断面図である。
【
図3】
図1の断面線III-IIIに沿った閉鎖領域の垂直断面図である。
【
図4】
図1の断面線IV-IVに沿った閉鎖領域の水平断面図である
【発明を実施するための形態】
【0031】
閉鎖領域1(
図1~4)は、装入区域20または送給デバイスと、乾燥デバイスの前区域2との間に延在する。この領域では、ボード、特に石膏ボードにおける固化または硬化工程が完了する。前区域2は、移行部なしに領域1に接続され、前区域2の前壁3まで延び、したがって、乾燥空気は、前区域2から領域1に流入し、ボードを最大60℃の温度まで加熱する。同時に、領域1では、負圧および空気1kgあたり30g未満の水分が維持され、その結果、乾燥空気はスラブから水分を吸収し、スラブの固化工程が支援される。
【0032】
天井領域において、乾燥空気は、それぞれが領域1の片側の上方に横方向に配置された2つの突出部4,5を通して供給される。水分に富む空気が、ポーチ4,5から、吸気管6,7を介して中央の排気管8へ流れる。排気管8は、領域1の上に延び、ファン9を備え、煙突10の一部となっている。煙突10は、フィルタシステム11を備えている。
【0033】
前区域2の前壁3には、壁3の一方または両側に排気口12があり、排気口12からバイパス管路13がフランジ14に通じ、フランジ14を介してバイパス管路13が排気管8に接続されている。したがって、必要な場合、乾燥空気が前区域2から排出される。
【0034】
内部において、領域1は、ローラ16を有する床15(
図3)を有している。壁は、複数のセグメントボード17(
図4)にて形成され、点検作業や調査のために領域1の内部に近付きやすいように、セグメントボード17には蝶番を付けることが好ましい。
【0035】
給送領域のボードを送り出す方向には、床15間の給送開口部に金属薄板片(図示せず)が取り付けられ、ボードが床15を通して送り出されるときのみボードが導入可能になる程度まで開くようになっているが、他の場合、領域1は閉鎖されたままである。給送開口部には、ボードの両側に封止手段も設けられている。
【国際調査報告】