(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-27
(54)【発明の名称】トレンチカッタ用駆動装置
(51)【国際特許分類】
E02F 5/02 20060101AFI20220520BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20220520BHJP
F16N 7/02 20060101ALI20220520BHJP
F16N 31/00 20060101ALI20220520BHJP
F16N 29/00 20060101ALI20220520BHJP
F16C 33/74 20060101ALI20220520BHJP
F16C 33/78 20060101ALI20220520BHJP
E02F 5/06 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
E02F5/02 N
F16H57/04 Q
F16N7/02
F16N31/00 B
F16N31/00 A
F16N29/00 E
F16N31/00 Z
F16C33/74 Z
F16C33/78 Z
E02F5/06 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555849
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(85)【翻訳文提出日】2021-10-01
(86)【国際出願番号】 EP2020055789
(87)【国際公開番号】W WO2020193096
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】102019107588.2
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019111774.7
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512197434
【氏名又は名称】リープヘル-コンポーネンツ ビーベラッハ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100110157
【氏名又は名称】山田 基司
(74)【代理人】
【識別番号】100129805
【氏名又は名称】上野 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100189315
【氏名又は名称】杉原 誉胤
(72)【発明者】
【氏名】ウィドマン ローランド
(72)【発明者】
【氏名】ハルダー ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】デュエリ ステファン
【テーマコード(参考)】
3J063
3J216
【Fターム(参考)】
3J063AA40
3J063AC20
3J063BA11
3J063BB03
3J063CD02
3J063XD03
3J063XD23
3J063XD38
3J063XD44
3J063XD62
3J063XD73
3J216AA01
3J216AA05
3J216AA12
3J216AB27
3J216BA30
3J216CC70
3J216EA09
(57)【要約】
本発明は、液圧モータ(8)と、トレンチカッタの少なくとも1つの掘削ホイール(3)を出力側に接続可能である伝動装置(9)と、液圧モータを伝動装置と接続する駆動軸(12)と、を備えるトレンチカッタ用駆動装置に関し、駆動軸が、液圧モータと伝動装置との間に配置される少なくとも1つの駆動軸軸受(25)によって支承され、駆動軸軸受が潤滑剤流入部(14)を有し、潤滑剤流入部は、前記液圧モータを作動させるために液圧モータの漏れ流出部、及び/又は液圧回路に接続され、かつ駆動軸軸受を作動油で潤滑するように形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレンチカッタ用駆動装置であって、液圧モータ(8)と、前記トレンチカッタ(1)の少なくとも1つの掘削ホイール(3)を出力側に接続可能である伝動装置(9)と、前記液圧モータ(8)を前記伝動装置(9)と接続する駆動軸(12)と、を備え、前記駆動軸(12)が、前記液圧モータ(8)と前記伝動装置(9)との間に配置される少なくとも1つの駆動軸軸受(13)によって支承されている駆動装置において、前記駆動軸軸受(13)が潤滑剤流入部(14)を有し、前記潤滑剤流入部は、前記液圧モータ(8)を作動させるために前記液圧モータ(8)の漏れ流出部、及び/又は液圧回路(15)に接続され、かつ前記駆動軸軸受(13)を潤滑剤で潤滑するように形成されていることを特徴とする、駆動装置。
【請求項2】
前記液圧モータ(8)は、モータハウジング(17)からの前記モータ軸(16)の出口にシャフトシールなしで形成され、前記潤滑剤流入部(14)が、前記モータ軸(16)に、及び/又は前記モータハウジング(17)からの前記モータ軸の出口に周囲から係合、及び/又は下から係合する漏れ収集流入部(18)を有する、先行する請求項に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記液圧モータ(8)が前記駆動軸(12)の上方に配置され、かつ前記液圧モータのモータ軸(16)が下方を指して前記駆動軸(12)の方を向き、特に前記駆動軸(12)に対して同軸で頭上に直立する、先行する請求項のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記潤滑剤流入部(14)が清新油流入部(19)を有し、前記清新油流入部は、前記液圧モータ(8)の上流で前記液圧回路(15)の一部と接続され、かつ前記駆動軸軸受(13)を清新作動油で潤滑するように形成されている、先行する請求項のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記駆動軸軸受(13)が軸受スリーブ(20)を有し、前記軸受スリーブ内に継手スリーブ(21)が回転可能に支承され、前記継手スリーブ(21)が前記駆動軸(12)を前記モータ軸(16)と回動不可能に接続する、先行する請求項のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記継手スリーブ(21)を前記駆動軸(12)に対して密封するためのシール(22)が設けられ、及び/又は前記継手スリーブ(21)が前記駆動軸(12)と油密に接続され、それにより前記継手スリーブ(21)が作動油のための収集空間を形成する、先行する請求項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記軸受スリーブ(20)は、端面で前記液圧モータ(8)の前記モータハウジング(17)に接続され、及び/又は前記液圧モータ(8)の前記モータハウジングから出るモータ軸(16)に周囲から係合する、先行する請求項のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記清新油流入部(19)が前記軸受スリーブ(20)の内部空間に通じ、前記軸受スリーブ(20)の壁を通り抜ける、先行する請求項のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記軸受スリーブ(20)が、ロータリシール(23)により前記継手スリーブ(21)及び/又は前記駆動軸(12)に対して密封され、それにより前記軸受スリーブ(20)の内部空間が作動油のための収集空間を形成する、先行する請求項のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記軸受スリーブ(20)は、向かい合う両端部に作動油流入部及び作動油流出部を有し、作動油が前記作動油流入部及び作動油流出部を通って前記軸受スリーブ(20)を貫流可能である、先行する請求項のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記駆動軸軸受(13)を通過する作動油を、前記液圧モータ(8)を作動させるために前記液圧回路に戻すことが企図されている、先行する請求項のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項12】
前記軸受スリーブ(20)が、前記駆動軸(12)及び/又は前記継手スリーブ(21)を回転可能に支持する転がり軸受及び/又は滑り軸受を潤滑するための作動油収集空間を形成する、先行する請求項のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項13】
前記継手スリーブ(21)が、前記駆動軸(12)を前記液圧モータ(8)の前記モータ軸(16)と回転不可能に接続する回転不可能な接続手段を潤滑するための作動油収集空間を形成する、先行する請求項のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項14】
作動油を収集するための収集空間(24)が前記軸受スリーブ(20)及び/又は前記継手スリーブ(21)の下方に形成されている、先行する請求項のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項15】
前記収集空間(24)には、前記収集空間(24)内のオイルレベルを検出するためのオイルレベルセンサが割り当てられている、先行する請求項に記載の駆動装置。
【請求項16】
前記収集空間(24)には、前記収集空間(24)内に収集されたオイルを排出するための流出部が割り当てられ、前記流出部が着脱可能な蓋を備えている、先行する2つの請求項のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項17】
先行する請求項のいずれか1項に記載の駆動装置を備えるトレンチカッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧モータと、トレンチカッタの少なくとも1つの掘削ホイールを出力側に接続可能である伝動装置と、液圧モータを伝動装置と接続する駆動軸と、を備えるトレンチカッタ用駆動装置に関し、駆動軸は、液圧モータと伝動装置との間に配置される少なくとも1つの駆動軸軸受によって支承される。本発明はまた、その種の駆動装置を備えるトレンチカッタ(Schlitzwandfraese)に関する。
【背景技術】
【0002】
トレンチカッタは通常、特殊基礎工事において、地面、岩塊、地盤にトレンチを掘削するために用いられ、トレンチには、例えばコンクリートを含む懸濁液がトレンチ壁を形成するために充填される。その場合、その種のトレンチ壁は、一般に、地盤を締め固める、支持する、又は一般に特定の仕方で影響を及ぼすための、地盤における、例えばコンクリートや鉄筋コンクリートなどの壁構造である。そのようなトレンチ壁を作製するために、トレンチカッタを用いて、実質的に垂直方向に上向きに開放したトレンチが掘削され、その際、掘削工具が上から地面に落とされ、地面で支えられた、殊に移動可能な、例えばクローラケーブルショベルなどの支持装置によって動かされる。その場合、トレンチカッタは通常、細長い直立した掘削フレームを備え、掘削フレームは、支持装置に垂直方向に移動可能に吊り下げられ、かつ下端に、大抵の場合、それぞれの軸を中心に互いに逆方向に駆動可能であり得る複数の掘削ホイールを支持する。掘削ホイールを回転駆動するための駆動装置は、掘削フレームの下部に支承されることもでき、例えば、掘削ホイールを1つ又は複数のギヤ段によって駆動することができる1つ又は複数の液圧モータを備えることができる。
【0003】
採掘された土壌材は、汚泥ポンプ(Abraumpumpe)を用いて地表に汲み上げることができる一方で、トレンチ若しくはトレンチ壁が崩壊しないように、トレンチは常に支持懸濁液で安定化される。必要な深さに達した後、トレンチは通常コンクリートで固められる。
【0004】
上記の駆動軸によって達成される液圧モータと駆動装置の間隔により、コンパクトな設計を実現することができる。特に、軸受プレートが所望の形式で幅狭に形成される場合、軸受プレートのスペースの問題を回避することができる。特に、掘削ホイールが回転可能に支承される軸受プレートの上方に液圧モータを配置することができ、それにより掘削ホイールの領域の構造深さを小さく抑えることができる。
【0005】
しかし、液圧モータのこのような間隔及び配置では潤滑の問題が生じる。伝動装置の主要コンポーネント、特に伝動装置ハウジングの領域にある伝動装置の遊星歯車、太陽歯車、及び遊星キャリアがオイルサンプ潤滑で潤滑され、特に液圧モータと伝動装置との間で駆動軸を支持する駆動軸軸受が伝動装置ハウジングの外側に位置するか、若しくはオイルサンプの領域及びオイルサンプの噴霧範囲にもはや位置せず、それにより駆動軸軸受の潤滑が難題となっている。
【0006】
解決アプローチの1つは、永久潤滑される軸受を駆動軸軸受に使用することである。別のアプローチは、駆動軸軸受及び駆動軸とモータ軸との結合部に連続的又は周期的にグリース及び/又はオイルを供給するために、別個のグリース潤滑又はオイル潤滑を設置することを企図する。ただし、どちらの解決アプローチでも、永久潤滑される軸受、さらにグリース潤滑部のシール及びニップルを定期的に検査して交換もする必要があるため、保守の手間がかかる。これにより運転コストが増加する一方で、それに応じてトレンチカッタの有効使用期間が短くなる。
【0007】
さらに、欧州特許第1637794号明細書は、伝動装置の底壁にある伝動装置油を、回転する駆動軸を介して駆動軸軸受に向けて上へ送ることを提案する。このために、駆動軸には、ウォーム軸のようにオイルを上へ送り、それによって駆動軸軸受、及び駆動軸とモータ軸との間の歯を潤滑するという一種の送りねじを備えている。しかしながら、この解決アプローチは、駆動軸の生産コストが高い点で不利であるばかりでなく、とりわけ駆動軸が「正しい」回転方向で作動している場合にのみ駆動軸軸受の潤滑が達成されるという問題を含む。回転方向が反対になると全く逆の結果となり、オイルが下へ送られる。これとは別に、伝動装置若しくは駆動軸が動き始めて初めて伝動装置油が駆動軸に向けて上へ送られ、このことが少なくとも始動時に駆動軸軸受の一時的な潤滑不足をもたらす。停止時間が長くなると、オイルが下へ落ちるので、オイルの供給がさらに悪化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このことを出発点として、本発明は、従来技術の不利な点を回避し、従来技術を有利に発展させる、トレンチカッタの改良された駆動装置、及び改良されたトレンチカッタを提供するという課題にもとづく。特に、液圧モータと伝動装置との間の駆動軸軸受の永久潤滑が、保守の手間を増すことなしに、駆動の回転方向とは無関係に機能し、始動時の問題を示すことなく達成されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、上記課題は請求項1に記載の駆動装置及び請求項17に記載のトレンチカッタによって解決される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0011】
すなわち、駆動軸軸受を伝動装置油によって潤滑しないか、少なくとも主に潤滑するのではなく、液圧モータを作動させる作動油をこのために使用することが提案される。本発明によれば、駆動軸軸受は、液圧モータを作動させるために液圧モータからの漏れ油及び/又は液圧回路からの作動油を駆動軸軸受に供給する潤滑剤流入部を有する。液圧モータの漏れ油の少なくとも一部及び/又は液圧回路からの作動油の一部は、潤滑されるべき駆動軸軸受を通過し、及び/又は液圧モータと伝動装置との間のドライブトレインの別の潤滑されるべきコンポーネントに送られ、駆動軸受若しくは上記の他のコンポーネントを潤滑する。
【0012】
本発明の有利な発展形態では、駆動軸軸受及び/又は駆動軸と液圧モータとの間の接続部を潤滑するために、漏れ油を駆動軸軸受及び/又は駆動軸結合部に導くため、例えば液圧モータの軸シールが省略される、ならびに/あるいはモータハウジング及び/又は専用の漏れ孔をモータ軸に通すことにより液圧モータの漏れを故意に引き起す、及び/又は増加させることができる。
【0013】
駆動軸軸受の上記の潤滑剤流入部は、漏れ収集器若しくは漏れ収集流入部を有することができ、漏れ収集器若しくは漏れ収集流入部は、液圧モータのモータ軸、及び/又は液圧モータのモータハウジングからモータ軸が出る出口領域に周囲から係合及び/又は下から係合し、それにより漏れ油が上記の漏れ収集流入部内に滴り落ちるか、又は噴出する。
【0014】
液圧モータが駆動軸の上方に配置され、そのモータ軸が下方を指して駆動軸の方を向く場合、この種の漏れ収集流入部は特に有利であり得る。上記の液圧モータを、いわば頭上に立つように配置することができ、かつ駆動軸上に直立に位置決めすることができ、液圧モータのモータ軸を、特に駆動軸に対して同軸に配置することができる。
【0015】
漏れ供給に代えて、又はこれに加えて、駆動軸軸受の潤滑剤流入部は清新油流入部も有することができ、清新油流入部を、液圧モータの上流で液圧回路の一部と接続することができ、液圧モータで行われる作業によって液圧的及び/又は熱的にまだ負荷されていない、若しくは使用されていないこの清新作動油が、駆動軸軸受を潤滑するために使用される。それ自体液圧モータに流入するためのものであったであろう作動油を、上記の液圧モータを駆動するために、この清新油流入部を介して、いわば抜き取ることができる。液圧モータで作業が行われた後に液圧モータから出てくる漏れ油が、通常、高温であるか、若しくは熱的に負荷されているのに対して、液圧モータの上流で液圧回路から分かれた清新油は、通常、格段に低い温度を有する。それ自体駆動軸軸受を潤滑するように設定されていない作動油は、比較的低い温度でより良い潤滑膜を生成し、それに応じてより良い潤滑性能を達成することができる。さらに、駆動軸軸受が冷却される。
【0016】
本発明の発展形態では、少なくとも1つの駆動軸軸受は、軸受スリーブ若しくはハウジングを備えることができ、軸受スリーブ若しくはハウジング内に継手スリーブを回転可能に支承することができ、継手スリーブは、駆動軸を液圧モータのモータ軸と回転不可能に接続する。上記の継手スリーブ及び/又は駆動軸を、上記の軸受スリーブの内周面に回転軸受、例えば転がり軸受及び/又は滑り軸受によって径方向及び/又は軸方向に支持することができ、それによりハウジング若しくは上記の軸受スリーブが内部に収容された継手スリーブ及び/又は軸受スリーブ内に延びる駆動軸を回転可能に支承する。
【0017】
同時に、上記の軸受スリーブ及び/又は上記の継手スリーブは、潤滑機能を引き受けることができ、及び/又は上記の潤滑剤流入部の一部を形成することができ、この潤滑剤流入部を介して作動油が、駆動軸軸受、及び/又は駆動軸とモータ軸との間の接続部を潤滑するために供給される。
【0018】
特に、上記の継手スリーブを駆動軸に対して油密に形成することができ、それにより継手スリーブの内部空間が油収集空間を形成し、継手スリーブの内部の油は駆動軸に向かって容易に流出できない。駆動軸に対する継手スリーブの密封の形態は、例えば、継手スリーブを一体化してワンピースに、かつ同質材料で駆動軸に一体成形することにより達成することができる。
【0019】
しかし継手スリーブを駆動軸から取り外すことができ、それにより組立と保守が大幅に簡素化されるが、それにもかかわらず密封の形態が得られるようにするために、継手スリーブの内部空間を駆動軸に対して密封するべく継手スリーブと駆動軸との間にシールを設けることができる。
【0020】
上記の継手スリーブは、有利には、液圧モータのモータハウジングから出るモータ軸、若しくはモータ軸スタブをカップ状に周囲から係合し、それによりモータ軸スタブで流出する漏れ油が上記の継手スリーブ内に流れ、そこに集められ、それによって継手スリーブとモータ軸との間、若しくは継手スリーブと駆動軸との間の接続部若しくは係合面が潤滑される。
【0021】
本発明の位置発展形態では、継手スリーブとモータ軸との間、及び/又は継手スリーブと駆動軸との間の回転不可能な接続は、例えばスプラインシャフトプロファイル及び/又は多角形プロファイル、あるいは別の仕方で形成されたシャフト・ハブ接続部などの形状結合的な接続手段により達成され得る。駆動軸支承部の上記の潤滑剤流入部は、潤滑剤として作動油、特に液圧モータからの漏れ油を上記の回転不可能な接続手段の係合面に供給することができる。
【0022】
継手スリーブを潤滑剤分配器として使用することに代えて、又はそれに加えて、継手スリーブが回転可能に支承されている先に述べた軸受スリーブを、潤滑要素に作動油を供給するために潤滑剤流入部の一部として用いることもできる。特に、上記の軸受スリーブを、端面で液圧モータのモータハウジングに接続することができ、及び/又はモータハウジングから出るモータ軸に周囲から係合することができる。
【0023】
有利には、ロータリシールによって上記の軸受スリーブを継手スリーブに対して、及び/又は駆動軸に対して密封することができ、それにより上記の軸受スリーブの内部空間が、作動油のための収集空間を形成し、及び/又は軸受スリーブの内部空間に供給される作動油が駆動軸に向かって容易に流出できない。
【0024】
これとは別に、上記の軸受スリーブは、回転しない不動に組み付けられた部品をなすことができる。
【0025】
上記の軸受スリーブは、一方で、モータ軸で流出する漏れ油、又はモータ軸から噴出した漏れ油を収集することができる。しかしこれとは別に、上記の軸受スリーブを、液圧モータの上流で分かれた作動油若しくは清新油を駆動軸軸受及び/又は駆動軸とモータ軸との間の接続要素に供給するために用いることもできる。
【0026】
本発明の有利な発展形態では、液圧モータの上流で液圧回路の一部と接続され得る清新油流入部が上記の軸受スリーブの内部空間に通じ、特に軸受スリーブと継手スリーブとの間の空間に通じることができる。この場合、有利には、上記の清新油の流入部が上記の軸受スリーブの壁を通り抜けることができ、それにより清新油が軸受スリーブ壁を通り抜けて軸受スリーブの内部空間に供給され得る。
【0027】
上記の清新油供給部は、液圧モータに接続される軸受スリーブの縁部を通過することができそれにより清新油は、液圧モータの非常に近くで、軸受スリーブの内部空間内に導かれる。
【0028】
有利には、漏れ油及び/又は液圧モータの前で分かれた清新油が軸受スリーブの実質的に全長を通り抜けることができ、及び/又は軸受スリーブを通り抜けた後に液圧モータを作動させるために液圧回路に再び戻され得る。
【0029】
特に、上記の軸受スリーブは作動油流出部を有することができ、この作動油流出部は、作動油流入部、特に上記の清新油流入部とは反対側に位置する端部に配置され得る。上記の清新油流入部が上述のように液圧モータに取り付けられた軸受スリーブの縁部に設けられている場合、作動油流出部を、液圧モータから離反した軸受スリーブの反対側の縁部に設けることができる。
【0030】
特に、上記の軸受スリーブは、上スリーブ部に清新油流入部を有し、下軸受スリーブ部に作動油流出部を有することができる。
【0031】
有利には、上記の軸受スリーブによって転がり軸受及び/又は滑り軸受の潤滑を達成できる一方で、上記の継手スリーブによって、有利には駆動軸への液圧モータのトルクを伝達するための歯若しくは係合面の潤滑が企図される。
【0032】
本発明の発展形態では、駆動軸軸受及び/又は回転不可能な接続部を潤滑するために使用された作動油が、場合によって生じる非密封性により流出したとしても収集されるように、駆動軸軸受の下方、及び/又はモータ軸と駆動軸との間の回転不可能な接続部の下方に油収集チャンバを設けることができる。これによって、上記の収集チャンバ内のオイルレベルが密封性の指標であるので、密封性の点検が著しく容易になる。
【0033】
有利には、上記のチャンバに、収集チャンバに収集された作動油のオイルレベルを検出し、対応するオイルレベル信号を出力することができるオイルレベルセンサを割り当てることができる。
【0034】
収集される油を規則的な間隔で排出できるようにするか、若しくはそもそも油が流出し、上記の収集チャンバに入るのかどうか検査できるようにするために、閉鎖可能な流出部を上記の収集チャンバに割り当てることができる。排出口が開いたときに収集チャンバから油が出ない場合、非密封性が存在しないと逆推論することができる。
【0035】
上記の収集チャンバは、有利には、伝動装置に対して密封されるか、又は開放型に形成することもできる。開放形態でも伝動装置への作動油の流出、したがって作動油と伝動装置油との混合を回避するために、上記の収集チャンバは、駆動軸が貫通して延びる上昇管を有することができる。しかし、これに代えて、又はこれに加えて、上記の収集チャンバをシールによって駆動軸及び/又は伝動装置に対して密封することもできる。
以下、本発明を好ましい実施例及び関連する図面をもとにして詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の有利な実施形態によるトレンチカッタの模式的斜視図である。
【
図2】軸受プレートの上部に駆動モータが支承され、軸受プレートの下部に、
図1のトレンチカッタの掘削ホイールが取り付けられた伝動装置ハウジングが配置されている、
図1のトレンチカッタの掘削ホイール用の駆動装置の斜視図である。
【
図3】掘削ホイール伝動装置と液圧モータとの間の駆動軸と、液圧モータと伝動装置と間の駆動軸軸受と、駆動軸と液圧モータとの間の回転不可能な接続と、を示す前の図のトレンチカッタの掘削ホイールを駆動するための駆動装置の縦断面図である。
【
図4】駆動軸軸受、及び駆動軸とモータ軸との間の回転不可能な接続の拡大された縦断面である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1が示すように、トレンチカッタ1は、フレームワーク支持体として形成することができ、及び/又は2つの側方に配置された長手方向ガイドプロファイルを含むことができる細長い、直立に配置された掘削フレーム2を有することができる。切削フレーム2は、下端部に少なくとも2つの掘削ホイール3を有することができ、これらの掘削ホイールが並べて配置され、それぞれ延びている回転軸線を中心に回転駆動可能であり得、掘削ホイール3の回転軸線は、互いに平行に、及び/又は掘削フレーム2の平坦面に対して垂直に延びることができる。
【0038】
その場合、掘削ホイール3を互いに反対方向に駆動することができる。掘削駆動装置4は、掘削ホイール3の上方の掘削部2の下端部に配置され、例えば液圧モータの形式の1つ又は複数の駆動モータ8を備えることができ、駆動モータは、伝動装置あるいは1つ又は複数のギヤ段9によって上記の掘削ホイール3を駆動することができる。
【0039】
図1が示すように、掘削ホイール3を有する掘削フレーム2が支持装置5によって上下可能に保持されるか、若しくは支持装置に吊り下げられ得る。上述の支持装置5は、それぞれの溝が掘削されるべき地面に立ち、有利にも移動可能であり得る。特に、例えばクローラシャーシ6の形式のシャーシを備えたケーブルショベルを支持装置5として企図することができ、支持装置5のブーム7によって掘削フレーム2を上下させることができる。
【0040】
図2から
図4が示すように、掘削ホイール駆動装置4は、軸受プレート10に配置され得るか、若しくは軸受プレート10を備えることができ、軸受プレートによって駆動装置を上記の掘削フレーム2に取り付け可能にすることができる。例えば、上記の軸受プレート10はT字形の支持体であり得、この支持体を、上部で掘削フレーム2に取り付けることができ、支持体の上部には、上記のギヤ段9が少なくとも部分的に収容される駆動装置ハウジング及び/又は伝動装置ハウジング11を支持することができる。
【0041】
駆動モータ8を、例えば軸受プレート10の上端に取り付けることができ、かつ軸受プレート10の内部に延び得る駆動軸12を介してギヤ段9と駆動結合することができる。その場合、上記のギヤ段9は、上記の掘削ホイール3の1つを駆動するために1つ又は複数の遊星歯車段を備えることができる。
【0042】
図3が示すように、掘削ホイール3が駆動される2つの遊星歯車機構9は、実質的に直立に配置された駆動軸12によって、伝動装置9の上方で軸受プレート10に配置することができる液圧モータ8と駆動接続され得る。上記の液圧モータ8は、モータハウジング17から突出するモータ軸スタブ16が下へ突き出すように、殊に上記の駆動軸12と同軸に配置され得る。液圧モータ8は、そのモータ軸16が垂直方向に配置され、かつ下向きに位置決めされ得る。
【0043】
図4が示すように、液圧モータ8のモータ軸16を継手スリーブ21によって駆動軸12と回転不可能に接続することができ、上記の継手スリーブ21は、一方ではカップ状にモータ軸16に、他方でカップ状に駆動軸12に着座することができる。継手スリーブ21とモータ軸16との間、若しくは継手スリーブ21と駆動軸12との間の回転不可能な接続手段は、例えばスプラインシャフトプロファイル、歯、又は多角形プロファイルを含むことができる。
【0044】
その場合、上記の継手スリーブ21は、有利には転がり軸受25によって、これに代えて、又はこれに加えて滑り軸受によって、上記の継手スリーブ21を取り囲む、若しくは収容することができる軸受スリーブ20に回転可能に支承することもできる。上記の軸受スリーブ20は固定的に配置され、特に軸受プレート10に組み付けられ得るとともに、液圧モータ8を接続若しくは支持することができる。特に、軸受スリーブ20は、液圧モータ8を支承するために、モータ軸16に周囲から係合し、端面側で液圧モータ8のモータハウジング17に接続する、若しくは取り付けることができる。軸受スリーブ20を端面で軸受プレート10に取り付けることができる。
【0045】
継手スリーブと駆動軸12との間、若しくは継手スリーブ21とモータ軸16との間の係合面を潤滑するために、継手スリーブ21の内部空間は、液圧モータ8から出る漏れ油、及び/又は軸受スリーブ20の内部空間に別個に供給される清新油を上記の係合面に導くために、潤滑剤流入部14の一部を形成することができる。特に、継手スリーブ21の内部空間は、モータ軸16、若しくはモータ軸16とモータハウジング17との間の結合部において流れ出る漏れ油を収集して、上記の係合面に導くことができる漏れ収集流入部18を形成することができる。継手スリーブ21の上向きに開放した内部空間に十分な漏れ油を導くために、液圧モータ8に、通常、モータ軸16をモータハウジング17に対して密封するシャフトシールを省略することができ、シャフトシールを省くことによりモータ軸16の出口で漏れ油が出て、継手スリーブ21に、特に継手スリーブの、モータ軸16をカップ状に取り囲む上向きに開放した端に入る。
【0046】
継手スリーブ21の下端で漏れ油が思いがけず出ることを回避するために、継手スリーブ21の下端若しくは端部に、継手スリーブ21を駆動軸12に対して密封するシール22を設けることができる。その場合、上記のシール22は、特に駆動軸12の回転不可能なプロファイルに隣接するか、若しくは回転不可能なこの接続部の下方に位置する軸部において、駆動軸12と継手スリーブ21との間の隙間を周囲側で密封することができる。
【0047】
継手スリーブ21の内側に位置する潤滑箇所だけでなく、継手スリーブ21と軸受スリーブ20との間に設けられた上記の転がり軸受25にも作動油を供給するために、一方では、液圧モータ8から出る上記の漏れ油も利用することができ、特に継手スリーブ21がモータハウジング17までモータ軸16を完全には包囲しない場合に、この漏れ油を回転するモータ軸16によって噴射することができる。
【0048】
しかし上記の漏れ油に代えて、又はそれに加えて、軸受スリーブ20と継手スリーブ21との間の隙間に清新油を供給することもでき、この清新油は、液圧モータ8の上流で、液圧モータ8を駆動するために用いられる液圧回路15から分かれる。
【0049】
有利には、軸受スリーブ20は、軸受スリーブ20の上端でモータハウジング17の直ぐ隣に、軸受スリーブ20の壁を通り抜けて延び得る清新油流入部19を有することができる、
図4を参照。軸受スリーブ20の上端部で軸受スリーブ20の内部空間に清新油を供給することにより、この清新油は、重力によって移動され下へ流れるか、若しくは滴り落ちるか、又は噴出して軸受25を潤滑することができる。
【0050】
有利には、軸受スリーブ20の下端部をロータリシール23によって駆動軸12及び/又は継手スリーブ21に対して密封することができ、それにより軸受スリーブ20と継手スリーブ21若しくは駆動軸12との間の環状の内部空間が下に向けて密封され、それにより作動油が伝動装置9内に流れて伝動装置油とそこで混ざり合うことが阻止される。
上記のシール22を、特に軸受スリーブ20を密封するためのロータリシールの形式で、有利にはすべての軸受25の下方に配置することができる。
【0051】
図4が示すように、有利には、軸受スリーブ及び継手スリーブ20若しくは21の下方、特にシール22及び/又はロータリシール23の下方にも収集チャンバ24を設けることができ、この収集チャンバは、駆動軸12の周りに形成されているか、若しくはこの収集チャンバを駆動軸12が貫通する。上記の収集チャンバ24を、例えば軸受プレート10に形成することができる。有利には、上昇管26が収集チャンバ24を画定することができ、かつ駆動軸12の周りに延びるか、若しくは収集チャンバ24に収集された作動油が駆動軸12に沿って下へ伝動装置9に流れ込むことを阻止するための隆起をそこに形成する。
【0052】
上記の収集チャンバ24は、流出部27を備えることができ、流出部27は、この流出部を開くことができるようにするために有利には着脱可能な蓋28を備える。前記流出部27は、殊に、場合によっては収集チャンバ24内に入っている作動油が重力により動かされて流出できるように形成されている。流出部27は、例えば収集チャンバ24の底部を開始点とすることができ、場合によっては、油を流出させるために特定の勾配を有することができる。
【0053】
蓋28を開くことにより、シール22若しくは23に非密封性が生じるかどうか、及び収集チャンバ24に油が入っているかどうかを検査することができる。
【0054】
これに代えて、又はこれに加えて、収集チャンバ24内のオイルの有無をオイルレベルセンサ系29によって検査することもでき、このオイルレベルセンサ系によって収集チャンバ24内の充填レベルをセンサで検出することができ、それにより対応するオイルレベル信号が出力され、例えば機械制御部に提供される。収集チャンバ24内のオイル充填レベルを用いて、保守信号を出力若しくは保守プロセスを開始することができる。
【国際調査報告】