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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-27
(54)【発明の名称】垂直離着陸(VTOL)航空機
(51)【国際特許分類】
   B64C 27/28 20060101AFI20220520BHJP
   B64C 9/14 20060101ALI20220520BHJP
   B64C 27/26 20060101ALI20220520BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
B64C27/28
B64C9/14
B64C27/26
B64D27/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556357
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(85)【翻訳文提出日】2021-10-26
(86)【国際出願番号】 AU2020050261
(87)【国際公開番号】W WO2020186305
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】2019900954
(32)【優先日】2019-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520097618
【氏名又は名称】エーエムエスエル イノベーションズ ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AMSL INNOVATIONS PTY LTD
【住所又は居所原語表記】42 Stafford Street, Stanmore, New South Wales 2048, Australia
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,アンドリュー ダドリー
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン,ジョン
(57)【要約】
右側および左側前方翼(20、22)と右側および左側後方翼(30、32)とを有する翼構造を有し、箱型翼構成で右側翼(20、30)のそれぞれが接続されており、かつ左側翼(22、32)のそれぞれが接続されており、各翼(20、22、30、32)は固定前縁(100)および少なくとも1つの可動後端操縦翼面(110)を有し、さらに各翼(20、22、30、32)は少なくとも1つのモータポッド(195)を有し、モータポッド(195)は、固定前縁(100)の下側に回動可能に取り付けられており、かつ後端操縦翼面(110)にしっかりと固定されていることを特徴とする垂直離着陸(VTOL)航空機(100)。
【選択図】図21

【特許請求の範囲】
【請求項1】
右側および左側前方翼を有する翼構造と、
箱型翼構成で右側翼のそれぞれが接続されており、かつ左側翼のそれぞれが接続されている右側および左側後方翼と
を有し、
各翼は固定前縁および少なくとも1つの可動後端操縦翼面を有し、
さらに、各翼はモータを有する少なくとも1つのモータポッドを有し、前記モータポッドは前記固定前縁の下側に回動可能に取り付けられており、かつ前記後端操縦翼面にしっかりと固定されている
ことを特徴とする垂直離着陸(VTOL)航空機。
【請求項2】
前記モータポッドおよび前記後端操縦翼面を前記固定前縁のヒンジ点の周りで回動させるように構成された機械的アクチュエータをさらに備える、請求項1に記載の垂直離着陸(VTOL)航空機。
【請求項3】
前記アクチュエータは機械的に駆動される回転アームおよびリンク機構を備える、請求項2に記載の垂直離着陸(VTOL)航空機。
【請求項4】
前記回転アームは前記モータポッドのアクチュエータモータに接続された近位端を有し、かつ前記回転アームは前記リンク機構の近位端に接続された遠位端を有し、かつ前記リンク機構の遠位端は前記固定前縁に回動可能に接続されている、請求項3に記載の垂直離着陸(VTOL)航空機。
【請求項5】
前記固定前縁と前記後端操縦翼面との間に位置する前縁スロットをさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の垂直離着陸(VTOL)航空機。
【請求項6】
前記固定前縁の上側にヒンジ式に取り付けられた上側スロットカバーをさらに備え、前記上側スロットカバーは一般に前方飛行構成において前記前縁スロットを覆い、かつ前記前縁スロットは離着陸構成において少なくとも部分的に覆われていない、
請求項5に記載の垂直離着陸(VTOL)航空機。
【請求項7】
前記固定前縁の下側にヒンジ式に取り付けられた下側スロットカバーをさらに備え、前記下側スロットカバーは一般に前方飛行構成において前記前縁スロットを覆い、かつ前記前縁スロットは離着陸構成において少なくとも部分的に覆われていない、請求項5または6に記載の垂直離着陸(VTOL)航空機。
【請求項8】
前記下側スロットカバーの後端側および前記上側スロットカバーの後端側は互いに当接して、前記固定前縁と前記上側スロットカバーと前記下側スロットカバーとの間に囲まれた体積を画定している、請求項7に記載の垂直離着陸(VTOL)航空機。
【請求項9】
前記下側スロットカバーの前記後端側および前記上側スロットカバーの前記後端側は移動可能であり、かつ互いに対して摺動するように構成されている、請求項8に記載の垂直離着陸(VTOL)航空機。
【請求項10】
前記上側スロットカバーは前方飛行構成においてほぼ下向きの凹面を有して湾曲している、請求項7~9のいずれか1項に記載の垂直離着陸(VTOL)航空機。
【請求項11】
前記下側スロットカバーは、前記前縁に隣接する上向きの凹面および前方飛行構成において前記後端側に隣接する下向きの凹面を有するほぼ「S字型」の曲線プロファイルを有して湾曲している、請求項7~10のいずれか1項に記載の垂直離着陸(VTOL)航空機。
【請求項12】
前記上側スロットカバーは、前記翼の長手軸にほぼ平行に延在する軸の周りで回動する関節接続を達成するためにヒンジ式に接続された2つ以上の部材によって画定されている、請求項6~11のいずれか1項に記載の垂直離着陸(VTOL)航空機。
【請求項13】
前記上側スロットカバーは柔軟な部材によって画定されており、かつ/または柔軟な部材によって前記固定前縁に接続されており、前記柔軟な部材は前記翼の長手軸にほぼ平行に延在する軸の周りで柔軟である材料から作製されている、請求項6~11のいずれか1項に記載の垂直離着陸(VTOL)航空機。
【請求項14】
各翼はモータを有する少なくとも2つのモータポッドを有し、前記第1および第2のモータが異なる推力線を有するように、第1のモータは前記操縦翼面に対して下向きに傾斜されている回転軸を有する回転翼を有し、かつ第2のモータは前記操縦翼面に対して上向きに傾斜されている回転軸を有する回転翼を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の垂直離着陸(VTOL)航空機。
【請求項15】
前記第1および第2のモータは、回転モーメントを発生させて前記操縦翼面を前記固定前縁に対して回転させるために選択的に異なる回転速度で動作可能である、請求項14に記載の垂直離着陸(VTOL)航空機。
【請求項16】
右側および左側前方に取り付けられた翼を有する翼構造と、
箱型翼構造を画定するために右側翼のそれぞれが接続されており、かつ左側翼のそれぞれが接続されている、右側および左側後方に取り付けられた翼であって、
各翼は固定前縁および少なくとも1つの可動後端操縦翼面を有し、かつ各翼は第1のモータおよび第2のモータを有し、前記モータは前記固定前縁に回動可能に取り付けられ、かつ前記後端操縦翼面にしっかりと固定されている翼と、
各モータおよび前記後端操縦翼面を前記固定前縁のヒンジ点の周りで選択的に回動させるように構成された機械的アクチュエータと
を有し、
前記第1および第2のモータが異なる推力線を有するように、前記第1のモータは前記操縦翼面に対して下向きに傾斜されている回転軸を有する回転翼を有し、かつ前記第2のモータは前記操縦翼面に対して上向きに傾斜されている回転軸を有する回転翼を有する
ことを特徴とする垂直離着陸(VTOL)航空機。
【請求項17】
接続部材が前記航空機の同じ側に位置する各翼の先端を結合し、前記接続部材はそれぞれ、前記前方翼に固定された第1のアームと、前記後方翼に固定された第2のアームと、前記第1および第2のアームの接合部に位置する中間エルボとによって画定されている、請求項1~16のいずれか1項に記載の垂直離着陸(VTOL)航空機。
【請求項18】
接続部材は前記航空機の同じ側に位置する各翼の先端を結合し、前記接続部材はそれぞれ、前記前方翼と前記後方翼との間に延在するほぼ直線状の本体部分を有する、請求項1~17のいずれか1項に記載の垂直離着陸(VTOL)航空機。
【請求項19】
前記接続部材の前記第1のアームは、バッテリ、燃料または他の機器の貯蔵のためのポッドを画定している、請求項17に記載の垂直離着陸(VTOL)航空機。
【請求項20】
前記ポッドは選択的に取り外し可能かつ交換可能である、請求項19に記載の垂直離着陸(VTOL)航空機。
【請求項21】
前記接続部材の前記第1のアームは水上での離着陸のために構成された浮揚フロートを提供するポッドを画定している、請求項17に記載の垂直離着陸(VTOL)航空機。
【請求項22】
遠位モータが各前方翼の先端領域またはその近くに位置し、前記遠位モータは前記接続部材のほぼ前方に位置決めされている、請求項16~21のいずれか1項に記載の垂直離着陸(VTOL)航空機。
【請求項23】
水平飛行構成において0.14~0.3、および
垂直飛行構成において0.3~0.6
の範囲の高さ:幅比を有する、請求項1~22のいずれか1項に記載の垂直離着陸(VTOL)航空機。
【請求項24】
前記後端操縦翼面はその総翼弦長の約50%~約70%のプロファイル長さを有する、請求項1~23のいずれか1項に記載の垂直離着陸(VTOL)航空機。
【請求項25】
右側および左側前方に取り付けられた翼と右側および左側後方に取り付けられた翼とを有する翼構造を有する垂直離着陸(VTOL)航空機を制御する方法であって、各翼は第1のモータおよび第2のモータを有し、前記モータはそれぞれ固定前縁に回動可能に取り付けられており、かつ可動後端操縦翼面にしっかりと固定されており、前記第1および第2のモータはそれぞれ異なる推力線を有する回転翼を有し、
前記可動後端操縦翼面のうちの1つを機械的に作動させて、各モータおよび前記後端操縦翼面を前記固定前縁のヒンジ点の周りで選択的に回動させる工程、および/または
各モータおよび前記後端操縦翼面を前記固定前縁の前記ヒンジ点の周りで選択的に回動させるために前記可動後端操縦翼面を空気力学的に作動させる工程
を含み、
空気力学的に作動させる工程は前記第1および第2のモータを異なる回転速度で動作させることを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項26】
前記機械的に作動させる工程は機械的に駆動される回転アームを回転させることを含み、前記回転アームは前記第1および第2のモータのうちの1つのアクチュエータモータに接続された近位端を有し、かつ前記回転アームは前記リンク機構の近位端に接続された遠位端を有し、かつ前記リンク機構の遠位端は前記固定前縁に回動可能に接続されている、請求項25に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、垂直離着陸(VTOL)航空機に関する。特に本発明は、乗客および/または陸軍および/または海軍用途を有するVTOL航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
VTOL航空機は、垂直または垂直に近い若干の角度で離着陸することができる。この種の航空機としては、陸軍用途のために使用されることが多いヘリコプターおよび特定の固定翼航空機が挙げられる。有利にはVTOL航空機は、大きい滑走路の必要性を否定する限られた空間での離着陸を可能にし、かつボートデッキおよび建物の上のヘリコプター離着陸場および他の構造などの小さい空間での離着陸を可能にする。
【0003】
ヘリコプターは揚力および推力がどちらも回転翼によって与えられる航空機の1種である。高レベルの騒音出力などの、いくつかの用途において問題となり得るヘリコプターに関連するいくつかの問題が存在する。ヘリコプターに関連するそのような欠点の1つは飛行にとって重要な回転翼設計に関する。その設計には一般に冗長性は存在せず、これはその(もしくは各)回転翼の動作が重要であることを意味する。この冗長性の欠如は、大きい安全率を回転翼および駆動列の全ての部品に適用しなければならないことを意味し、これはヘリコプターの重量および製造コストをかなり増加させる。
【0004】
様々な商業上および安全上の理由のために電気航空機に対する関心が益々高まっている。最近ではドローン技術に関して多くの開発が行われており、これは一般にピッチ円直径の周りに離間された複数の電気回転翼を利用する。ドローンは一般に、それぞれがほぼ垂直の軸の周りを回転する電気回転翼により動作する。
【0005】
ドローンは小さいペイロードを配達するために商業的に実行可能になりつつあるが、それらは一般に、回転翼の垂直回転軸が理由で比較的低い飛行速度に制限されている。さらにそれらは1回のバッテリ充電当たりの妥当な少ない走行距離を有する傾向がある。
【0006】
ティルトウイング航空機が利用可能であり、一般に離着陸ために垂直プロペラ軸の原理で動作し、その翼は、プロペラが離着陸のために垂直軸を有する構成とプロペラが前方飛行のために水平軸を有する構成との間で傾くように構成されている。
【0007】
上記ティルトウイング構成は、航空母艦およびヘリコプター離着陸場などの限られた利用可能な視界良好空間を有する領域に離着陸するという利点を提供する。またティルトウイング航空機は、従来のプロペラ駆動型固定翼航空機に匹敵する飛行速度を提供することができる。
【0008】
ティルトウイング航空機は一般に、翼に直接取り付けられたプロペラまたはダクテッドファンを駆動する電動モータまたはガスタービンエンジンを有する。翼全体が垂直と水平との間で回転して推力ベクトルを垂直から水平に傾けて戻る。
【0009】
定義として、「推力ベクトル」ともいう「推力線」はプロペラの推力であり、プロペラの回転軸とほぼ同じである。「ヒンジ線」はヒンジ回転軸である。
【0010】
既存のティルトウイング航空機にはいくつかの固有の欠点がある。欠点の1つは、離陸/着陸構成と前方飛行構成との間で翼の傾斜角を制御するために必要なアクチュエータおよび軸受または他のそのような機構に関する。アクチュエータは前方飛行中に翼を所望の傾斜に固定する役割も果たす。しかし実際には、アクチュエータおよび軸受は航空機にかなりの重量を加える。その結果、輸送することができる人員または貨物などのペイロードの量が減少する。さらに翼傾斜作動システムおよび軸受の重要な性質により、その組み立て体は破局故障のリスクを減少させるために、十分な程度の冗長性を有して設計しなければならない。
【0011】
現在では、電気式VTOLジェットがLilium Jet(商標)という商標名でLilium Aviation社によって設計および試験されている。そのプロトタイプは、2つの翼および約36個の電動モータを有する2人乗りの軽量コミュータ航空機であることを目的としている。
【0012】
Lilium Jet(商標)型航空機の欠点は、ケーシングに収容されたファンモータである電動モータに関する。この構成は非常にエネルギー集約的であり、その結果、所与のバッテリサイズでの可能な飛行範囲が減少する。
【0013】
さらにケーシングに収容されたファンは、指定されたヘリコプター離着陸場および滑走路などのハードスタンド表面でしか離着陸ために動作することができない。これは航空機の有用性を制限し、かつそれが離着陸中に公園、野原および庭などのハードスタンドでない表面で動作するのを妨げる。これは陸軍用途では望ましくなく、遠隔地での緊急着陸の要請には応じられない。
【0014】
別の概念のVTOL航空機は、Joby Aviation社によるS2 Electric(商標)である。この設計は、各翼に取り付けられた複数(好ましくは4つ)の電動モータを備えた固定翼を有する。4つのさらなるモータが後部の安定板すなわち尾翼に取り付けられている。この概念の航空機の欠点は、各電動モータが独立して作動され、各モータのために別個のアクチュエータを必要とする点にある。上述のように、これは作動モータシステムのためにかなりのさらなる重量を必要とする。
【0015】
プラントルの「ベストウイングシステム(Best Wing System)」ともいう箱型翼航空機は、一般に前方から見た場合に閉鎖した箱を形成する垂直に分離され、かつウィングレットによって接続された上側および下側翼が存在する翼構成である。これらの翼は、下側翼の前方に上側翼を有する1つの構成と下側翼が上側翼の前方にある他の構成により水平に分離させることもできる。
【0016】
箱型翼は翼高さと翼幅との間の強力な関係により、低速および高い揚力係数において優勢となる揚力(誘導抗力)により抗力を減少させるという点で特定の利点を有する。箱型翼は、より複雑な空力弾性設計要求および潜在的かつ複雑な失速挙動が原因で広く採用されていない。
【0017】
VTOL用途のための箱型翼は、飛行の高出力移行段階中に揚力により抗力を減少させる箱型翼形状と相まって傾斜翼および回転翼のための好都合な取り付け構造の組み合わせを提供する潜在能力を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、上記欠点のうちの1つ以上を実質的に克服するか少なくとも改善すること、または有用な代替物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
第1の態様では、本発明は、
右側および左側前方翼を有する翼構造と、
箱型翼構成で右側翼のそれぞれが接続されており、かつ左側翼のそれぞれが接続されている右側および左側後方翼と
を有し、
各翼は固定前縁および少なくとも1つの可動後端操縦翼面を有し、
さらに、各翼はモータを有する少なくとも1つのモータポッドを有し、モータポッドは固定前縁の下側に回動可能に取り付けられており、かつ後端操縦翼面にしっかりと固定されている
ことを特徴とする、垂直離着陸(VTOL)航空機を提供する。
【0020】
垂直離着陸(VTOL)航空機は好ましくは、モータポッドおよび後端操縦翼面を固定前縁のヒンジ点の周りで回動させるように構成された機械的アクチュエータをさらに備える。
【0021】
アクチュエータは好ましくは、機械的に駆動される回転アームおよびリンク機構を備える。
【0022】
回転アームは好ましく、モータポッドのアクチュエータモータに接続された近位端を有し、かつ回転アームはリンク機構の近位端に接続された遠位端を有し、かつリンク機構の遠位端は固定前縁に回動可能に接続されている。
【0023】
垂直離着陸(VTOL)航空機は好ましくは、固定前縁と後端操縦翼面との間に位置する前縁スロットをさらに備える。
【0024】
垂直離着陸(VTOL)航空機は好ましくは、固定前縁の上側にヒンジ式に取り付けられた上側スロットカバーをさらに備え、上側スロットカバーは一般に前方飛行構成において前縁スロットを覆い、かつ前縁スロットは離着陸構成において少なくとも部分的に覆われていない。
【0025】
垂直離着陸(VTOL)航空機は好ましくは、固定前縁の下側にヒンジ式に取り付けられた下側スロットカバーをさらに備え、下側スロットカバーは一般に前方飛行構成において前縁スロットを覆い、かつ前縁スロットは離着陸構成において少なくとも部分的に覆われていない。
【0026】
好ましくは下側スロットカバーの後端側および上側スロットカバーの後端側は互いに当接しており、かつ固定前縁と上側スロットカバーと下側スロットカバーとの間に囲まれた体積を画定している。
【0027】
下側スロットカバーの後端側および上側スロットカバーの後端側は好ましくは移動可能であり、かつ互いに対して摺動するように構成されている。
【0028】
上側スロットカバーは好ましくは、前方飛行構成においてほぼ下向きの凹面を有して湾曲している。
【0029】
下側スロットカバーは好ましくは、前縁に隣接する上向きの凹面および前方飛行構成において後端側に隣接する下向きの凹面を有するほぼ「S字型」の曲線プロファイルを有して湾曲している。
【0030】
上側スロットカバーは好ましくは、翼の長手軸にほぼ平行に延在する軸の周りで回動する関節接続を達成するためにヒンジ式に接続された2つ以上の部材によって画定されている。
【0031】
上側スロットカバーは好ましくは柔軟な部材によって画定されており、かつ/または柔軟な部材によって固定前縁に接続されており、柔軟な部材は、翼の長手軸にほぼ平行に延在する軸の周りで柔軟であるガラス繊維複合材などの材料から作られている。
【0032】
各翼は好ましくはモータを有する少なくとも2つのモータポッドを有し、第1および第2のモータが異なる推力線を有するように、第1のモータは操縦翼面に対して下向きに傾斜されている回転軸を有する回転翼を有し、かつ第2のモータは操縦翼面に対して上向きに傾斜されている回転軸を有する回転翼を有する。
【0033】
第1および第2のモータは好ましくは、回転モーメントを発生させて操縦翼面を固定前縁に対して回転させるために選択的に異なる回転速度で動作可能である。
【0034】
第2の態様では、本発明は、
右側および左側前方に取り付けられた翼を有する翼構造と、
箱型翼構造を画定するために右側翼のそれぞれが接続されており、かつ左側翼のそれぞれが接続されている、右側および左側後方に取り付けられた翼であって、
各翼は固定前縁および少なくとも1つの可動後端操縦翼面を有し、かつ各翼は第1のモータおよび第2のモータを有し、モータは固定前縁に回動可能に取り付けられ、かつ後端操縦翼面にしっかりと固定されている翼と、
各モータおよび後端操縦翼面を固定前縁のヒンジ点の周りで選択的に回動させるように構成された機械的アクチュエータと
を有し、
第1および第2のモータが異なる推力線を有するように、第1のモータは操縦翼面に対して下向きに傾斜されている回転軸を有する回転翼を有し、かつ第2のモータは操縦翼面に対して上向きに傾斜されている回転軸を有する回転翼を有する
ことを特徴とする垂直離着陸(VTOL)航空機を提供する。
【0035】
好ましくは、接続部材は本航空機の同じ側に位置する各翼の先端を結合し、接続部材はそれぞれ、前方翼に固定された第1のアームと、後方翼に固定された第2のアームと、第1および第2のアームの接合部に位置する中間エルボとによって画定されている。
【0036】
好ましくは、接続部材は本航空機の同じ側に位置する各翼の先端を結合しており、接続部材はそれぞれ前方翼と後方翼との間に延在するほぼ直線状の本体部分を有する。
【0037】
接続部材の第1のアームは好ましくはバッテリ、燃料または他の機器の貯蔵のためのポッドを画定している。
【0038】
好ましくは当該ポッドは選択的に取り外し可能かつ交換可能である。
【0039】
当該ポッドは好ましくは水上での離着陸のために構成された浮揚フロートである。
【0040】
遠位モータは好ましくは各前方翼の先端領域またはその近くに位置し、遠位モータは接続部材のほぼ前方に位置決めされている。
【0041】
本航空機は好ましくは、
水平飛行構成において0.14~0.3、および
垂直飛行構成において0.3~0.6
の範囲の高さ:幅比を有する。
【0042】
後端操縦翼面は好ましくは総翼弦長の約50%~約70%のプロファイル長さを有する。
【0043】
第3の態様では、本発明は、右側および左側前方に取り付けられた翼と右側および左側後方に取り付けられた翼とを有する翼構造を有する垂直離着陸(VTOL)航空機を制御する方法であって、各翼は第1のモータおよび第2のモータを有し、モータはそれぞれ固定前縁に回動可能に取り付けられており、かつ可動後端操縦翼面にしっかりと固定されており、第1および第2のモータはそれぞれ異なる推力線を有する回転翼を有し、
可動後端操縦翼面のうちの1つを機械的に作動させて、各モータおよび後端操縦翼面を固定前縁のヒンジ点の周りで選択的に回動させる工程、および/または
各モータおよび後端操縦翼面を固定前縁のヒンジ点の周りで選択的に回動させるために前記可動後端操縦翼面を空気力学的に作動させる工程
を含み、
空気力学的に作動させる工程は第1および第2のモータを異なる回転速度で動作させることを含む
ことを特徴とする方法を提供する。
【0044】
機械的に作動させる工程は好ましくは、機械的に駆動される回転アームを回転させることを含み、回転アームは第1および第2のモータのうちの1つのアクチュエータモータに接続された近位端を有し、かつ回転アームはリンク機構の近位端に接続された遠位端を有し、かつリンク機構の遠位端は固定前縁に回動可能に接続されている。
【0045】
次に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面を参照しながら具体例により説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】第1の実施形態に係るVTOL航空機の翼部分の概略図である。
図2A】第2の実施形態に係るVTOL航空機の翼部分の概略図である。
図2B】第3の実施形態に係るVTOL航空機の翼部分の概略図である。
図2C】第3の実施形態に係るVTOL航空機の翼部分の概略図である。
図3】翼が前方飛行構成にある、第1および第2の実施形態のいずれかのVTOL航空機の翼部分と共に使用するためのモータ取り付け構成を示す。
図4A図3のモータ取り付け構成の底面斜視図である。
図4B図3のモータ取り付け構成の上面斜視図である。
図5】翼が離陸もしくは着陸構成にある、第1および第2の実施形態のいずれかのVTOL航空機の翼部分と共に使用するためのモータ取り付け構成を示す。
図6A図5のモータ取り付け構成の上面斜視図である。
図6B図5のモータ取り付け構成の底面斜視図である。
図7】翼が離陸もしくは着陸構成にある、第1および第2の実施形態のいずれかのVTOL航空機の翼部分と共に使用するためのプロペラを含むモータ取り付け構成を示す。
図8図7のモータ取り付け構成の上面斜視図である。
図9】離陸もしくは着陸構成にある、2つのモータを有する第3の実施形態に係る翼部分の底面斜視図である。
図10】前方飛行構成にある、2つのモータを有する図9に係る翼部分の底面斜視図である。
図11A】第1の構成にある図9の翼部分の側面図である。
図11B図10の翼部分の側面図である。
図12】本発明の第1の実施形態に係る箱型翼VTOL航空機の斜視図である。
図13】本発明の第2の実施形態に係る箱型翼VTOL航空機の斜視図である。
図14】水上に着陸するための本発明の第3の実施形態に係る箱型翼VTOL航空機の斜視図である。
図15図14の箱型翼VTOL航空機の側面図である。
図16図14の箱型翼VTOL航空機の正面図である。
図17】本発明の第4の実施形態に係る前方飛行構成にある箱型翼VTOL航空機の斜視図である。
図18】離着陸飛行構成にある図17に係る箱型翼VTOL航空機を示す。
図19図17の箱型翼VTOL航空機の側面図である。
図20図17のVTOL航空機の底面斜視図である。
図21】第5の実施形態に係るVTOL航空機の前面および後面斜視図である。
図22】第6の実施形態に係るVTOL航空機の斜視図である。
図23】第4の実施形態の水平飛行における高さ:幅比を示す。
図24】第4の実施形態の垂直飛行における高さ:幅比を示す。
図25】第5の実施形態の水平飛行における高さ:幅比を示す。
図26】第5の実施形態の垂直飛行における高さ:幅比を示す。
図27】第6の実施形態のための製造概念の図を示す。
図28】第6の実施形態の3つの図を示す。
図29】曲線トラック機構を利用する後端操縦翼面回転システムを示す。
図30】曲線トラック機構を利用する後端操縦翼面回転システムを示す。
図31図31a~図31cは異なる回転段階における直線アクチュエータに基づく後端操縦翼面回転システムを示す。
図32】単一トラックシステムによって作動される二次操縦翼面を示す。
図33】二重トラックシステムによって作動される二次操縦翼面を示す。
図34】ヒンジ式リンクによって作動される二次操縦翼面を示す。
図35】巡航飛行中の上側スロットカバーのための制御機構を示す。
図36】移行飛行中の図35の制御機構を示す。
図37】離陸/着陸構成にある翼の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
VTOL航空機10のいくつかの実施形態が本明細書に開示されている。航空機10の各実施形態に共通して、翼構造は箱型翼構造であり、翼20、22、30、32はそれぞれ、固定前縁100および可動後端操縦翼面110によって画定されている。
【0048】
図1を参照すると、各翼20、22、30、32は航空機脚部または胴体55の別の構造用部品に固定されている固定前縁100を有する。各固定前縁100は、胴体55を貫通して対応する左側および右側翼20、22、30、32の構造用部品を画定する連続的な一体成形構造であってもよい。
【0049】
固定前縁100は異なる断面プロファイルで作製されていてもよい。例えば図1を参照すると、固定前縁の断面は、湾曲しており、かつ上流側により鋭角なプロファイルを有し、かつ下流側により穏やかに湾曲したプロファイルを有する丸みのある涙滴状プロファイルを有する。しかし当然のことながら以下で考察されているように、他の断面も想到される。さらに固定前縁100は中空であってもよい。固定前縁100は炭素繊維または好適な強度、剛性および明度を有する別の複合材料から作製されていてもよい。固定前縁100は、押出、複合引抜またはフィラメントワインディングなどの大量生産技術ならびにアルミニウム合金または複合材による従来の翼構築を用いて製造することができる。
【0050】
航空機10の実施形態はそれぞれ、箱型翼構造を翼弦および固定前縁100の約50~70%のプロファイル長さを有する可動操縦翼面/フラップ110を有する翼構造と組み合わせている。
【0051】
後端操縦翼面110は、前方飛行構成(例えば図10)と離着陸構成(例えば図9)との間で固定前縁100に対して移動可能である。重要なことに、固定前縁100は胴体55に対して回転したりそれ以外の方法で移動したりしない。操縦翼面110は、水平飛行モード(図11B)と垂直飛行モード(図11A)との間で約80~100°の範囲、好ましくは約90°で回転することができる。
【0052】
推進ポッド195を傾けることにより後端操縦翼面すなわちフラップ110を偏向させるように、後端操縦翼面110はモータ200および回転翼70を有する推進ポッド195に直接接続されている。
【0053】
図11Aおよび図11Bを参照すると、垂直離着陸(VTOL)航空機10は複数のモータ200を備え、これらは電動モータであってもガス駆動式モータであってもよい。各モータ200はプロペラすなわち回転翼70を有する。各モータ200の推進ポッドすなわちハウジング195は、一般に固定前縁100の前方(上流)であって、可動操縦翼面110の下面に隣接して取り付けられている。
【0054】
回転翼70のブレードが後方に折り畳まれて翼構造から離れたままにすることができるように、モータ200は固定前縁100の十分前方に取り付けられていてもよい。但し好ましい実施形態は、可変ピッチ機構を有する非折り畳み式回転翼ブレードを使用する。あるいは固定ピッチブレードを使用してもよい。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態では、図1に示すように翼20、22、30、32は上側スロットカバー130を備える。図1を参照すると、前縁スロット135は固定前縁100と後端操縦翼面110との間に位置する間隙によって画定されている。前縁スロット135は揚力係数を増加させ、降下時の高傾斜角でのバフェットを減少させる。
【0056】
上側スロットカバー130は固定前縁100の上側に、1つ以上のヒンジまたはいくつかの他の柔軟な接続により固定前縁100に取り付けられている。図1の左上部分に示されているように前方飛行モードでは、固定前縁100、スロットカバー130および後端操縦翼面110の組み合わせが一緒に翼20、22、30、32の上側にほぼ連続的な翼表面を画定するように、スロットカバー130は一般に、固定前縁100と後端操縦翼面110との間に画定された隙間を覆っている。
【0057】
後端操縦翼面110が下向きに傾くにつれて(図1の上中央部)、スロットカバー130も下向きに傾く。スロットカバー130は自由に動くものであってもバネで付勢されているものであってもよい。あるいは、スロットカバー130は後端操縦翼面110に接続されたリンク機構(図示せず)によって作動されてもよい。なおさらなる形態では、スロットカバー130はモータまたは歯車列または他の作動機構により作動されてもよい。
【0058】
スロットカバー130は翼弦長全体の約10%~50%の長さを有する。一実施形態ではスロットカバー130の後縁は、巡航飛行において層流剥離が生じる地点の後ろに位置している。さらなる実施形態では、スロットカバー130の後縁は、層流を再層流化させて再付着させるための鋸歯状エッジを有する。
【0059】
図2Aに示されている変形には、上側スロットカバー130およびさらなる下側スロットカバー150が存在する。下側スロットカバー150も1つ以上のヒンジによって固定前縁100に接続されている。この場合も、下側スロットカバー150は自由に動くものであってもバネで付勢されているものであってもよく、あるいはそれ以外の方法で機械的に作動されてもよい。
【0060】
図2Aの左上部分に示されているように前方飛行モードでは、固定前縁100、スロットカバー130、150および後端操縦翼面110の組み合わせが一緒に翼の上側および翼の下側の両方にほぼ連続的な翼表面を画定するように、上側スロットカバー130および下側スロットカバー150はどちらも固定前縁100と後端操縦翼面110との間に画定された隙間すなわち前縁スロット135を覆っている。
【0061】
スロットカバー130、150が操縦翼面110に対して所望の関係で維持されることを保証するために、ガイドレールがそれらのために設けられていてもよい。
【0062】
スロットカバー130、150は巡航飛行条件下で抗力を減少させ、かつ操縦翼面110を高角度まで偏向させた場合に空気流を案内する。操縦翼面110がほぼ垂直まで傾けられた場合に上面が比較的滑らかになるように、固定前縁は湾曲しているか丸みのある後部を有していてもよい。あるいは、それは比較的真っ直ぐな後縁を有していてもよい。
【0063】
図2Aおよび図2Bを参照するとさらなる実施形態が開示されており、ここでは上側スロットカバー131および下側スロットカバー151が後端(下流)側で互いに当接して下流尖部を画定しており、かつ囲まれた体積が固定前縁100と上側スロットカバー131と下側スロットカバー151の間に画定されている。図示のようにこの構成では、上側スロットカバー131は下向きの凹面を有する。下側スロットカバー151は、前縁に隣接する上向きの凹面と後縁に隣接する下向きの凹面とを有する「S字型」曲線プロファイルを有するプロファイルを有する。
【0064】
図2Cを参照すると、上側スロットカバー131は、後端操縦翼面110の移動中に上側スロットカバー131および下側スロットカバー151の互いに対する移動を容易にする関節接続を達成するために、ヒンジ式に接続されている2つ以上の部材133、137によって画定されていてもよい。あるいは、上側スロットカバー131は1つもしくは2つの別々のヒンジではなく、ガラス繊維複合材などの柔軟な部分によって画定されたヒンジにより固定前縁100に取り付けられていてもよい。
【0065】
上側スロットカバー131は、垂直および水平飛行中に制御目的のために上面スポイラーを提供するように機械的に作動されてもよい。
【0066】
この構成では、翼20、22、30、32の長手軸にほぼ平行に延在する軸の周りで関節接合が生じる。上側スロットカバー131および下側スロットカバー151の下流エッジは互いに接続されていてもよいが、例えばトラックおよびスライダまたは互いに対する下流エッジの並進を可能にする他のそのような機械的接続により、互いに対して自由に摺動してもよい。図2Bは、前方飛行と離着陸構成との間での操縦翼面110の異なる段階の移動において、上側スロットカバー131および下側スロットカバー151の下流エッジが互いに対してどのように移動するかを示す。
【0067】
図9および図10の実施形態では、固定前縁100の下流側は、上側の長手方向に延在する突起部154および隣接する下側の長手方向に延在する突起部156によって画定された溝152を有する。溝152は、図10に示すように前方飛行モードにおいて操縦翼面110の上流エッジと入れ子にすることができる。
【0068】
図3を参照すると、各翼は少なくとも1つのモータ200を備える。モータ200は電動モータであってもよい。あるいは、当該モータは、ターボプロップまたはピストンエンジンなどの内燃機関であってもよい。なおさらなる構成では、航空機10は電動モータと内燃機関200との組み合わせを有していてもよい。
【0069】
モータポッドすなわちハウジング195はヒンジ点230において固定前縁100に取り付けられている。ヒンジ点230は、固定前縁100の下側から離れるように下方に延在している突出部または他のそのような突起部によって画定されている。モータハウジング195は、固定された関係でプロペラすなわち回転翼ブレード70が位置している近位端(図7を参照)と後端操縦翼面110に取り付けられている遠位端とを有する。従って、後端操縦翼面110はモータハウジング195と共に回動する。一実施形態では、ヒンジ機構をモータポッドすなわちハウジング195構造の中に組み込んで構造的重量をさらに減らすことができる。
【0070】
固定前縁100の翼弦の10~50%未満およびその間のヒンジ点の位置は、総翼面積を増加させ、かつスロット付き前縁に対して同様に動作する前縁スロット135を広げるという効果を有する。これは翼20、22、30、32の総揚力を増加させるという効果を有する。
【0071】
後端操縦翼面110の移動を制御するための制御システムは2つの異なる方法で提供される。第1に、図3に示すように機械的作動がアクチュエータ250によって提供される。アクチュエータ250は、機械的に駆動される回転アーム260およびリンク機構270によって画定されている。リンク機構270は一端で回転アーム260に回動可能に固定されており、かつ固定前縁100にも回動可能に固定されている。回転アーム260は電気アクチュエータモータ280または他のそのような駆動システムによって駆動される。回転アーム260が機械的に駆動された場合、角度φを選択的に変化させることができる。例えば図3に示されている実施形態では、φは後端操縦翼面110が前方飛行構成にある場合には約90°であってもよい。
【0072】
対照的に図5では、その角度は約250~280°まで増加されており、この位置では後端操縦翼面110は垂直離着陸構成にある。回転アーム260はアクチュエータ250によって機械的に駆動されて、後端操縦翼面110を異なる飛行構成間で選択的に移動させる。当然のことながら、他のリンク機構270の角度は異なるリンク機構構成により展開されてもよい。
【0073】
モータハウジング195に組み込まれたアクチュエータを含めることにより、翼傾斜の微制御が可能になり、翼全体にわたって重量を分散させるのを可能にし、かつ全体的な傾斜システムの質量および複雑性を下げる。
【0074】
当然のことながら、アクチュエータ250の1つの形態について上に説明してきたが、歯車列またはカムおよびカム従動節構成などの他の構成が想到される。作動装置のいくつかのそのような実施形態について以下に説明する。
【0075】
図29および図30は、曲線トラック機構300をベースとするヒンジ回転システムを示す。図30に示すように、トラック310は湾曲しており、かつ歯車ラック320の形態で提供されている。歯車330は歯車ラック320と噛合しており、歯車330は後端操縦翼面110またはモータハウジングに取り付けられているかそれ以外の方法で固定されている。歯車330は、モータポッドおよび後端操縦翼面110を回転させる回転アクチュエータによって駆動される。トラック機構300は溝340を含み、溝340は一対のローラー車輪350を支持するために使用され、これも後端操縦翼面110またはモータハウジングに取り付けられている。ローラー車輪350は、歯車330が歯車ラック320に沿って移動する場合に後端操縦翼面110を湾曲した経路に従わせる。図29および図30の組み立て体は、定常状態の場合にアクチュエータの負荷を減少させるための機械化された制動を利用することができる。
【0076】
直線アクチュエータ400のさらなる実施形態が図31a~図31cに示されている。油圧もしくは空気圧シリンダなどの直線アクチュエータ400が、前縁100に固定されているレバー410に取り付けられている。直線アクチュエータ400は後端操縦翼面110を駆動させる。この構成は小型のモータポッド組み立て体を提供し、かつアクチュエータからモータポッド組み立て体へのモーメントを減少させる。
【0077】
図32図34は、異なる位置で概略的に示されている作動される二次操縦翼面530を開示している。移行飛行中にこの二次操縦翼面530を使用して有効な翼面積を拡大して揚力を最大化する。移行飛行中にこれを使用して流れを偏向させて揚力を最大化し、巡航飛行中にこれを畳んで抗力を下げて揚力効率を最大化する。
【0078】
図32の実施形態では回転アクチュエータは、曲線トラック520に接続されたラック510に噛み合う歯車500を回転させる。二次操縦翼面530はローラー540のセットによってこのトラックに取り付けられている。この機構により、二次操縦翼面530は大きい有効なヒンジ位置の周りを回転することができる。
【0079】
これは展開中により大きい並進運動を可能にして有効な翼面積を最大化する。
【0080】
図33は、二次操縦翼面530を制御するための二重トラック組み立て体の一実施形態を開示している。具体的には本実施形態では回転アクチュエータは、第1のトラック570上のラック560に噛み合う歯車550を回転させる。二次後端操縦翼面530の並進は第1のトラック570によって定められる。固定されたリンク580は第2のトラック590に接続されており、二次後端操縦翼面530の角度を定める。この構成により、展開中のあらゆる時点で二次後端操縦翼面530の最適化された位置および角度が可能になる。
【0081】
他の実施形態では、図34は二次後端操縦翼面530を制御するための回転されるアーム600およびレバーアーム610からなるヒンジ式リンク組み立て体を開示している。本実施形態では、二次後端操縦翼面530は固定されたピン620の周りで回動する回転されるアーム600に固定されており、レバーアーム610は二次後端操縦翼面530の回転を駆動する。
【0082】
図35は、スポイラーすなわち上側スロットカバー650を開示しており、これは直線もしくは回転アクチュエータ660のいずれかによって機械的に駆動させることができる。巡航飛行中に、上側スロットカバー650を使用して揚力を減少させることができる。あるいは、巡航飛行における直接的な揚力制御および飛行制御(ロールピッチ)のためにこれを使用することができる。
【0083】
対照的に、移行飛行中に図36に示すように、上側スロットカバー650を使用して揚力を減少させることができる。上側スロットカバー650を使用して移行飛行中の揚力を増加させることもできる。上側スロットカバー650を使用して移行飛行中の突風の影響を軽減することもできる。
【0084】
アクチュエータ250によって与えられる機械的作動に加えて、以下で考察されているように、操縦翼面110を移動させるために空気力学的作動も提供される。
【0085】
図11Aおよび図11Bを参照すると、モータ200の回転軸は平行ではない。特に各対のモータ200のために、各奇数のモータ200は操縦翼面110に対して下向きに傾斜されている回転軸XXを有し、各偶数のモータ60は操縦翼面110に対して上向きに傾斜されている回転軸YYを有する。つまり、各モータ200は異なる推力線を有して取り付けられている(図37を参照)。このように、モータ200のうちの1つは操縦翼面110を時計回りに回転させる傾向がある推力線を有し、それ以外のモータは操縦翼面110を反時計回りに回転させる傾向がある推力線を有する。対のモータ200が同様の回転速度で同時に動作する場合、それらのモーメントは相殺され、垂直飛行モードにおいて安定化が達成される。
【0086】
各対のモータ200からの各モータ200を異なる回転速度で回転させることにより、回転モーメントはヒンジ点230の周りでモーメントを発生させて、操縦翼面110を固定前縁100に対して選択的に回動させることができる。これを本明細書では操縦翼面110の空気力学的作動と呼ぶ。
【0087】
これは操縦翼面110に空気力学的制御を提供する。操縦翼面110を移動させるための動力は、機械的作動および空気力学的作動のうちの1つ以上の組み合わせによって生成される。これは飛行モードに応じて異なってもよい。
【0088】
操縦翼面110は翼20、22、30、32の全長に沿って連続的に延在する単一の表面であってもよい。あるいは、操縦翼面110が他の操縦翼面110から独立して前縁100の周りで回動することができるように、各翼20、22、30、32は1つ以上の独立して回動可能な操縦翼面110を有していてもよい。
【0089】
モータ200および操縦翼面110のために2つの可能な取り付け構成が存在し、すなわち
a)各モータ200は固定前縁100のうちの1つに回動可能に接続されていてもよく、かつ操縦翼面110はモータポッドすなわちモータ200のハウジング195に固定されている(図面に示されている)、あるいは
b)操縦翼面110は固定前縁100のうちの1つに回動可能に接続されていてもよく、かつ操縦翼面はモータポッドすなわちモータ200のハウジング195に固定されている。
【0090】
航空機10は、別々に調整される電源を各モータ200に提供することができる。これは異なる電圧および/または周波数を各モータに供給するのを可能にし、故に可変電力出力を各モータ60によって選択的に生成して、左および右への旋回ならびに上記空気力学的操縦翼面110の作動などの所望の飛行条件を達成することができる。
【0091】
固定前縁100は、接続部材すなわちウェブ42を介した翼先端の接続により前方翼20、22から後方翼30、32までの連続的な構造を形成する。この構造的接続は十分な剛性を提供し、いくつかの非常に異なる胴体55の構成のために1つの標準的な翼構成を使用する潜在能力により異なる胴体55構成の設計を可能にする。
【0092】
この連続的な構造は、航空機10が有害な弾性変形を伴わずにあらゆる単一エンジンの故障に耐えることができるような十分な曲げ剛性およびねじり剛性を与える。この構造は、胴体55の構造重量を減らすことができる限り胴体55の剛性に依存しないように設計することができる。
【0093】
図面に示されている実施形態には、2対の翼、すなわち前方翼20、22および後方翼30、32が存在する。前方翼20、22のそれぞれが胴体200の側方の対向する領域に取り付けられている(またはそこを貫通している)。同様に、後方翼30、32のそれぞれが胴体55の側方の対向する領域に取り付けられている(またはそこを貫通している)。図面に示されている実施形態では、航空機10はシングルシートまたはダブルシート航空機10として示されている。但し、より大きい多人数用実施形態も想到される。航空機10はパイロットによって中から制御してもよく、あるいは遠隔制御してもよい。
【0094】
図面に示されている実施形態では、前方翼20、22および後方翼30、32の遠位部は、2対の翼20、22、30、32が箱型翼すなわち閉鎖翼構造を画定するように接続部材すなわちウェブ42により接続されている。つまり、前方翼20、22と後方翼30、32との間の翼先端に接続部材42が存在し、上方および前方から見た場合に、それは囲まれたプロファイルを有する。図12および図21などのいくつかの実施形態では、接続部材42はほぼ真っ直ぐな部材であってもよい。対照的に図13図20および図22の実施形態では、接続部材42は直線状ではない。
【0095】
別の実施形態(図示せず)では、前方翼20、22および後方翼30、32は、タイバーまたはストラットにより接続されたストラットブレース付き翼であってもよい。
【0096】
本明細書に記載されているVTOL航空機10は箱型翼航空機またはストラットブレース付き航空機10であるが、航空機10は前方翼20、22および後方翼30、32が別個であり、かつ相互接続されていない従来の片持ち翼航空機であってもよいことが当業者によって理解されるであろう。さらに航空機10は、単一対の翼のみを有していてもよい。
【0097】
図17および図18に示されている実施形態では、後方翼30、32は胴体55の上に位置しており、これは後方翼30、32の長さが増加され、故に前方飛行モードにおいて生成することができる利用可能な揚力が増加することを意味する。後方翼幅の中央部分31は固定されており、可動操縦翼面を含んでいない。
【0098】
前方翼20、22が後方翼30、32の下に垂直に位置決めされるように、前方翼20、22および後方翼30、32は垂直に分離されている。特に前方翼20、22は後方翼30、32の下の前方に位置決めされている。これはいくつかの利点を提供し、かつ翼位置が垂直の揚力および推進モータ200および回転翼70の組み合わせのために効率的な取り付けを提供することを保証する。
【0099】
図23図26に示すように前方翼20、22を低く(かつ後方翼30、32を高く)することは、回転翼が水平から垂直に回転するにつれて高さ:幅比が増加することを意味する。より高い高さ:幅比を有する箱型翼は、VTOL航空機のために効率的に利用することができるより低い誘導抗力を有する。高さ:幅比は、
水平飛行構成において0.14~0.3、および
垂直飛行構成において0.3~0.6
の範囲である。
【0100】
図12の実施形態に示すように、後方翼30、32の先端部分40は下方および後方に延在する。この翼先端部分すなわちウィングレット40は、翼先端の渦を減らすのを助ける。ウィングレット40は、定常状態の場合および離着陸中に航空機10を支持するための1つ以上の車輪を備えていてもよい。図12の航空機10は、胴体55の下であって胴体55の前部のほぼ近くに位置するさらなる車輪または車輪のセットも有する。このように後輪および前輪は二等辺三角形の頂点に位置決めされている。後輪をウィングレット40上に設置することにより、上記二等辺三角形の幅を最大化し、それにより航空機10の安定性を高める。
【0101】
図9および図10および図37に示されている実施形態では、翼20、22、30、32の少なくとも1つは、回転翼210の回転軸の周りで互いに対して長手方向にオフセットされている第1および第2のモータ200を有する。
【0102】
図9および図10に示されている翼調整は、離陸翼位置(図9)と前方飛行翼位置(図10)との間で移行する場合のモータ200および操縦翼面110の傾斜の変化を示す。これらの図に示すように、前縁100は固定されていて回動しない。対照的にモータ200および操縦翼面110は同時に回動する。
【0103】
図3を参照すると、操縦翼面110が前方飛行のために最終的な水平位置に到達した場合、固定前縁100と操縦翼面110との間で係合が生じて操縦翼面110がさらに回動するのを防止してもよい。あるいは、モータポッドすなわちハウジング195が固定前縁100の下側に係合してもよい。
【0104】
図14図21に示されている実施形態では、各翼20、22、30、32に取り付けられた2つのモータ200が存在する。但し、さらなるモータ200が航空機10、例えば翼20、22、30、32、胴体55の先端または翼接続部材42に取り付けられていてもよい。
【0105】
より少ない数のモータ200を用いることにより、回転翼210の直径を増加させることができる。回転翼70ブレードの直径は、前方から見た場合に隣接する回転翼70ブレードと重なり合っていてもよい。この重なり合いに対応するために、回転翼ブレード70の各セットが回転翼ブレードの隣接するセットに対して(回転軸に対して)長手方向にオフセットされるようにモータ60が取り付けられており、それにより隣接する回転翼70間の接触を防止しながら、大きい直径の回転翼が展開するのを可能にする。
【0106】
図14図16を参照すると、本航空機の一実施形態は可能性のある水上離着陸用途のために、例えば海への配備のための陸軍航空機10の形態で描かれている。これらの実施形態では、パッド400は、フロートを安定化させるものとして機能することにより水上着陸を可能にする潜在能力を有する。これは通常の水上着陸のためのいくつかの用途および緊急事態のために有用であり得る。特に人々を拾い上げたり降ろしたりするなどの水上着陸が有用である用途、水が最良の着陸場である領域、あるいは機器または人々を水から拾い上げたり降ろしたりするかセンサまたは吊下式ソナーなどの機器を配備する役割のためなどで有用であり得る。
【0107】
これらの実施形態では、ヘリコプター離着陸場400を使用して、より多くのバッテリ、水素燃料タンクを備えた水素燃料電池などの燃料電池、および燃料タンクを備えたタービン発電機を含み得るエネルギー貯蔵システムを収容してもよい。
【0108】
図22の実施形態では、バッテリ/燃料ポッド410は、前方翼20、22と後方翼30、32とを結合する接続部材すなわちウェブ42内に設置されている。さらに本実施形態では、燃料ポッド410が前方飛行中に回転翼70の領域の後ろおよび中に位置決めされるように、前方翼20、22上の最外側モータ200はバッテリ/燃料ポッド410の前方に、低抗力になるように翼先端またはその近くに位置している。
【0109】
一体化されたユニットの翼先端抗力およびモータポッド抗力は、別個の翼先端およびモータポッド195よりも低いため、図22のこの構成は高速巡航飛行において抗力を減少させる。さらに図22の構成は、翼先端に近いプロペラのみが高圧空気をより小さい翼面積に押し付けるため、垂直飛行モードにおいて回転翼の妨害を減らす。
【0110】
この構成は、翼先端の質量を使用して飛行時の翼構造に対する曲げモーメントを減らすことができるため構造重量も減らし、故により軽い全体的構造が得られる。
【0111】
この構成は、翼先端上にホットスワップ可能なバッテリを可能にする潜在能力も有し、これは飛行間のダウンタイムを減らす。あるいは、航空機10は1つの構成におけるバッテリおよび別の構成としての水素燃料電池(350もしくは700バールの気体水素タンクを含む水素タンクを備える)などの異なるエネルギー貯蔵オプションのために再構成することができる。これは工場でのモデル選択またはエンドユーザによる動作選択であってもよい。
【0112】
さらに図22の実施形態は、燃料/エネルギーが翼先端に位置する場合に緊急事態における乗客の安全性を高め、火事の場合に乗客から離れており、緊急着陸の場合に高質量物体も機室から離れている。
【0113】
有利には、箱型翼構造は同じサイズの従来の翼よりも空気力学的に効率的であり、かつ構造的により効率的である(従ってより軽い)。
【0114】
有利には、箱型翼構造はさらなる剛性を与える。
【0115】
有利には、航空機10は従来のティルトウイング航空機と比較した場合に必要とされる軸受および傾斜構造の重量を減らす。これは、従来のティルトウイングは回転する硬い構造を有する単一の大きい軸受対(航空機胴体の片側に1つずつ)を必要とするからである。
【0116】
有利には、航空機10は輸送および空中監視用途のための単純な低コストVTOL航空機10を提供する。航空機10は同様のシステムの重量および複雑性を減らす。それは、単純な連続的翼構造の使用および分散される傾斜軸受/ヒンジの単純性により、より低コストで製造することができる。その構造はねじり剛性を有する胴体を必要としないため、それは異なる構成を開発するのにより低コストである。これは、同じ基本的な翼および推進システムがかなり異なる胴体ポッドを備えたいくつかの構成を有することができるようにそれを設計するのを可能にする。箱型翼形成における翼端の構造的接続は胴体55のねじり剛性の必要性を減らし、胴体55の構造を単純化させる。実際にこれは、同じもしくは非常に同様の翼20、22、30、32の構造を有する異なる構成胴体55を可能にする。
【0117】
有利には、航空機20は当該構造が所与のペイロードのためにより低い重量を有するのを可能にする。
【0118】
図27は、航空機20の主要な構造用部品の組み立ての例を示す。この構成では、前方翼20、22および後方翼30、32はそれぞれ一体である。前方翼20、22は胴体55内に形成された溝を貫通し、クランプ56により保持される。上側翼30、32は「V字型」の支持体57により支持される。接続部材42はそれぞれ別々に形成されており、ほぼ「L字型」の形状である。具体例を参照しながら本発明について説明してきたが、本発明は多くの他の形態で具体化できることが当業者によって理解されるであろう。

図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4b
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
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図15
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【国際調査報告】