(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-27
(54)【発明の名称】調整可能なNOx吸着剤
(51)【国際特許分類】
B01D 53/94 20060101AFI20220520BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20220520BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20220520BHJP
B01J 23/656 20060101ALI20220520BHJP
B01J 20/06 20060101ALI20220520BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20220520BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20220520BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
B01D53/94 222
B01J35/04 301E
B01J23/63 A ZAB
B01J23/656 A
B01D53/94 400
B01J20/06 C
F01N3/08 A
F01N3/24 E
F01N3/10 A
F01N3/08 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556821
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(85)【翻訳文提出日】2021-11-16
(86)【国際出願番号】 IB2020052545
(87)【国際公開番号】W WO2020188519
(87)【国際公開日】2020-09-24
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】スン,シヤン
(72)【発明者】
【氏名】ケーゲル,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】グルーベルト,ゲルト
(72)【発明者】
【氏名】ローマイアー,スフェン ヤレ
(72)【発明者】
【氏名】プンケ,アルフレート
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G066
4G169
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本開示は、エンジンのコールドスタート後にディーゼルまたはリーンバーンガソリンエンジンからの窒素酸化物(NO
x)を含有するガス状排気流を処理するための方法を対象とする。この方法は、ガス状排気流を少なくとも1つの低温NO
x吸着剤(LT-NA)構成要素と接触させることを伴う。LT-NA構成要素は、希土類金属成分、白金族金属(PGM)成分、およびドーパントを含む。本開示はまた、LT-NA組成物のNO
x吸着/脱着プロファイル、LT-NA組成物のNO
x脱着温度範囲、またはその両方を調節する方法を対象とする。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのコールドスタート後の期間中にディーゼルエンジンまたはリーンバーンガソリンエンジンの排気マニホールドから流れる窒素酸化物(NO
x)の混合物を含むガス状排気流を処理するための方法であって、前記ガス状排気流を、LT-NA組成物を含む低温NO
x吸着剤(LT-NA)構成要素と接触させ、前記LT-NA構成要素が、前記排気マニホールドの下流に配置されて、これと流体連通しており、前記LT-NA組成物が、
希土類金属成分と、
白金族金属(PGM)成分と、
遷移金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、周期表の第13~15族のいずれかの元素の酸化物、またはそれらの組み合わせから選択されるドーパントと
を含み、前記PGMおよび前記ドーパントが、前記希土類金属成分上に配置されているか、またはこれに含浸されており、
前記LT-NA構成要素が、200℃未満の温度でNO
xを貯蔵し、貯蔵されたNO
xを所定の温度で放出するのに効果的である、方法。
【請求項2】
前記希土類金属成分がセリアを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ドーパントが遷移金属酸化物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記遷移金属酸化物がマンガンの酸化物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ドーパントがアルカリ土類金属酸化物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記アルカリ土類金属酸化物が、マグネシウム、カルシウム、またはバリウムの酸化物である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ドーパントが、周期表の第13~15族のいずれかの元素の酸化物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
周期表の第13~15族のいずれかの前記酸化物が、ホウ素、ケイ素、スズ、リン、アンチモン、またはビスマスの酸化物である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ドーパントが、マグネシウム、マンガン、またはスズの酸化物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記ドーパントがマンガンの酸化物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
前記PGM成分が、パラジウム、白金、ロジウム、レニウム、ルテニウム、イリジウム、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記PGM成分が、パラジウム、白金、またはそれらの混合物を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記貯蔵されたNO
xを放出するための前記所定の温度が約200℃超である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記貯蔵されたNO
xを放出するための前記所定の温度が、約200、約225、約250、または約275~約300、約325、約350、約400、または約450℃の温度範囲である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記LT-NA構成要素が、
基材と、
前記基材の少なくとも一部に配置された前記LT-NA組成物を含む1つ以上のウォッシュコートと、を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ以上のウォッシュコートが、層状のまたはゾーン化された構成で前記基材上にコーティングされる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記基材がウォールフローまたはフロースルー基材である、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
排気ガス流を処理することが、前記ガス状排気流中のNO
xの少なくとも一部を選択的に除去することをさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
排気ガス流を処理することが、前記ガス状排気流中の一酸化窒素(NO)および二酸化窒素(NO
2)の分布を調整することをさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記LT-NA構成要素が、約200℃未満の温度でNOおよびNO
2のうちの1つ以上を貯蔵し、所定の温度でNOおよびNO
2のうちの一方または両方を放出するのに効果的である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
NO、NO
2、またはその両方を放出するための前記所定の温度が約200℃超である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
NO、NO
2、またはその両方を放出するための前記所定の温度が、約200、約225、約250、または約275~約300、約325、約350、約400、または約450℃の温度範囲である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記LT-NA構成要素が、約300℃超の温度でNOおよびNO
2のうちの一方または両方を放出するのに効果的である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記LT-NA構成要素が、約325℃超の温度でNOおよびNO
2のうちの一方または両方を放出するのに効果的である、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記ガス状排気流をLT-NA構成要素と接触させることが、
約150℃以下の初期温度にある前記排気ガス流を、継続的に通過させて前記LT-NA構成要素と接触させ、さらなるエンジン動作中に徐々に温めることと、
前記排気ガス流が所定の温度に達するまで、前記排気ガス流からのNO
xを吸着および貯蔵することであって、前記NO
xを前記LT-NA構成要素から出る前記排気ガス流に放出することと、
前記排気ガス流が温度上昇して下流の各触媒材料を約200~約450℃の動作温度に加熱することから、前記LT-NA構成要素から出る前記排気ガス流を、継続的に通過させて少なくとも1つの下流の触媒材料に接触させ、一酸化窒素をさらに酸化させるか、または一酸化窒素および二酸化窒素を還元させることと、を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記LT-NA構成要素の下流および選択的触媒還元(SCR)触媒物品の上流の前記排気流にアンモニアまたはアンモニア前駆体を注入することであって、前記注入のタイミングおよび期間を前記LT-NA構成要素のNOx放出プロファイルに応じて調節することをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
LT-NA組成物のNO
x吸着/脱着プロファイルおよびLT-NA組成物のNO
x脱着温度範囲のうちの一方または両方を調節するための方法であって、前記LT-NA組成物が、
希土類金属成分と、
白金族金属(PGM)成分と、
遷移金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、周期表の第13~15族のいずれかの元素の酸化物、またはそれらの組み合わせから選択されるドーパントと
を含み、前記PGM成分および前記ドーパントが、前記希土類金属成分上に配置されているか、またはこれに含浸されており、
前記方法が、前記ドーパントを選択することと、前記希土類金属成分、前記PGM成分、および前記ドーパントの充填量を選択することと、を含む、方法。
【請求項28】
前記希土類金属成分がセリアを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記NO
x脱着温度範囲が、約150、約175、約200、約225、または約250~約275、約300、約325、約350、または約400℃である、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
NOが、約150、約175、約200、約225、または約250~約275、約300、約325、約350、または約400℃の温度範囲にわたって脱着される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
NO
2が、約150、約175、約200、約225、または約250~約275、約300、約325、約350、または約400℃の温度範囲にわたって脱着される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記NO
x吸着/脱着プロファイルを調節することが、前記LT-NA組成物の前記NO
x脱着温度範囲にわたって所与の温度で脱着されたNOとNO
2との比を調整することを含む、請求項27または28に記載の方法。
【請求項33】
希土類金属成分と、
白金族金属(PGM)成分と、
遷移金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、周期表の第13~15族のいずれかの元素の酸化物、またはそれらの組み合わせから選択されるドーパントと
を含み、前記PGMおよび前記ドーパントが、前記希土類金属成分上に配置されているか、またはこれに含浸されており、
前記LT-NA組成物が、200℃未満の温度でNO
xを貯蔵し、貯蔵されたNO
xを所定の温度で放出するのに効果的である、低温NO
x吸着剤(LT-NA)組成物。
【請求項34】
前記希土類金属成分がセリアを含む、請求項33に記載のLT-NA組成物。
【請求項35】
基材と、
前記基材の少なくとも一部に配置された請求項33または34に記載のLT-NA組成物を含む1つ以上のウォッシュコートと、含む、低温NO
x吸着剤(LT-NA)物品。
【請求項36】
前記1つ以上のウォッシュコートが、層状のまたはゾーン化された構成で前記基材上にコーティングされる、請求項35に記載のLT-NA物品。
【請求項37】
前記基材がウォールフローまたはフロースルー基材である、請求項36に記載のLT-NA物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガス流を処理して窒素酸化物(NOx)の排出を減少させるのに好適な方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排出に関する環境規制は、世界中でますます厳しくなっている。ディーゼルエンジンなどのリーンバーンエンジンの動作は、燃料リーン条件下での高い空燃比での動作によって、ユーザーに優れた燃料経済性を提供する。しかしながら、ディーゼルエンジンはまた、粒子状物質(PM)、未燃炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、および窒素酸化物(NOx)を含有する排気ガス排出物も放出し、NOxとは、一酸化窒素および二酸化窒素を含む窒素酸化物の種々の化学種を表す。NOxは、大気汚染の有害成分である。NOx含有ガス混合物を処理して、大気汚染を減少させるために、様々な処理方法が使用されてきた。
【0003】
リーンバーンエンジンの排気からNOxを還元するための効果的な方法は、選択的触媒還元(SCR)触媒構成要素の存在下で、好適な還元剤を用いて、リーンバーンエンジン動作条件下でのNOxの反応を必要とする。SCRプロセスは、典型的には、大気の酸素の存在下で還元剤としてアンモニアまたは炭化水素を使用し、それによって、主に窒素および蒸気を形成する:
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O(標準SCR反応)
2NO2+4NH3+O2→3N2+6H2O(低速SCR反応)
NO+NO2+2NH3→2N2+3H2O(高速SCR反応)
【0004】
SCRプロセスで使用されている現在の触媒は、鉄または銅のような触媒金属とイオン交換された、ゼオライトのような分子ふるいを含む。有用なSCR触媒構成要素は、600℃未満の温度でNOx排気成分の還元に効果的に触媒作用を及ぼすことができ、そのため、典型的にはより低い排気温度に関連する低負荷の条件下でさえも、減少したNOxレベルを達成することができる。
【0005】
自動車の排気ガス流の処理で遭遇する主な問題は、いわゆる「コールドスタート」期間であり、これは、排気ガス流および排気ガス処理システムが低温(すなわち、150℃未満)であるときの処理プロセスの開始時における期間である。これらの低温では、排気ガス処理システムは、一般に、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)、および/または一酸化炭素(CO)の排出を効果的に処理するのに十分な触媒活性を示さない。一般に、SCR触媒構成要素のような触媒構成要素は、200℃超の温度でNOxをN2に変換する際に非常に効果的であるが、コールドスタートまたは長期にわたる低速市街地運転中に見られるようなより低い温度領域(<200℃)では十分な動作を呈しない。そのため、そのような低温のNOx排出物をキャプチャおよび貯蔵することができ、かつ触媒構成要素(すなわち、SCR触媒構成要素)が有効になったときにNOx排出物をより高い温度(>200℃)で放出することができる触媒構成要素が強く求められている。その結果、この問題を軽減するためにかなりの努力が払われてきた。
【0006】
コールドスタート期間中のNOx排出量を最小限に抑える方法がいくつかある。例えば、これらの排気ガス排出物(すなわち、HC、CO、およびNOxガス)を低温で貯蔵し、その後、処理システムの残りの触媒構成要素が十分な触媒活性に達したときに、これらの排気ガス排出物をより高い温度で放出することができる捕捉システムが開発されてきた。そのようなシステムの1つが、よく知られていて商業的に証明された技術であるリーンNOx捕捉(LNT)触媒である。
【0007】
リーンNOx捕捉(LNT)触媒は、特定の排気条件下でNOxを捕捉するNOx吸着剤構成要素を含有する。例えば、NOx吸着剤構成要素は、例えば、アルカリ土類金属酸化物および炭酸塩、例えば、Mg、Ca、Sr、および/またはBaの酸化物を含む、アルカリ土類元素を含み得る。他のLNT触媒は、Ce、La、Pr、および/またはNdの酸化物のような、NOx吸着剤構成要素としての希土類金属酸化物を含有し得る。LNT触媒は、接触NOx酸化および還元のための耐火金属酸化物(例えば、アルミナ)担体上に分散された白金のような白金族金属成分(PGM)をさらに含有する。LNT触媒は、周期的なリーン(捕捉モード)およびリッチ(再生モード)な排気条件の下で動作する。リーン条件下では、LNT触媒は、NOxの(「捕捉」)による反応時に、NOxを無機硝酸塩として捕捉して貯蔵する(例えば、NOx吸着剤構成要素がBaOまたはBaCO3である場合、これはBa(NO3)2に変換される)。次いで、NOx吸着剤構成要素は、捕捉したNOxを放出し、PGM成分は、化学量論的もしくは過渡的なリッチエンジン動作条件下で、または外部燃料を排気物に注入してリッチ状態を誘発するリーンエンジン動作下で、NOxをN2に還元する。NOからNO2への変換は、効率的なNOx捕捉の前提条件であるが、反応速度は、温度が200℃未満である場合には非常に遅く、これによって、従来のLNT触媒は、コールドスタートNOx排出物の捕捉について非効率的になる。さらに、LNT触媒を再生するには、リッチパージが必要であり、これによって、燃費が低下するが、最小限である。したがって、好ましい解決策は、リーン条件下でのみ動作するNOx吸収/放出構成要素を設けることであろう。
【0008】
排出ガス規制がますます厳しくなっていることから、コールドスタートNOx排出物をキャプチャするために、改善されたNOx吸着剤を提供することが非常に望ましいであろう。低温動作(<150℃)中に機能する触媒を用いることは、これらのますます厳しくなる排出規制(例えば、Euro-7規制)に対応するのに役立ち得る。コールドスタートNOx排出物の>80%はNOからなるため、そのような高度なNOx吸着材料は、NO吸着について優れた効率を有することが不可欠である。最近では、NOx吸着剤として小細孔ゼオライト上のPdを使用する受動リーンNOX吸着剤(PNA)が報告されている。このタイプのNOx吸着剤の欠点は、これらがNO2吸着に良好ではないことと、NOx吸着および放出ウィンドウが過渡的なコールドスタート車両要件に正確には一致しないことである。別のタイプのNOx吸着剤は、希土類および/またはアルカリ金属吸着剤を使用する低温NOx吸着剤(LT-NA)であり、これらには、NOx種が広範囲の活性サイトでNOx吸着剤に付着する傾向があり、それによって、NOx放出温度ウィンドウが広くなり、過渡的なコールドスタート車両要件にも一致しないという欠点がある。
【0009】
したがって、コールドスタートNOx排出量をキャプチャするために、改善された調整可能なLT-NAを提供することが非常に望ましく、そのNOx吸着/脱着特性は、各車両の要件に合うように調整することができる。
【発明の概要】
【0010】
低温NOx排出物をキャプチャおよび貯蔵し、かつ下流の触媒構成要素(すなわち、SCR触媒)が有効になったときにNOx排出物をより高い温度(>200℃)で放出する方法が強く求められている。驚くべきことに、本開示によると、希土類金属成分、白金族金属(PGM)成分、およびドーパントを含む低温NOx吸着剤(LT-NA)組成物であって、PGMおよびドーパントが、希土類金属成分上に配置されているか、またはこれに含浸されている、組成物の吸着/脱着特性を、ドーパントを選択し、希土類金属成分、PGM成分、およびドーパントの充填量を選択することによって調節することができると見出された。したがって、本開示は、一般に、NOx含有排気流を、そのような組成物を含むLT-NA構成要素で処理する方法、ならびにそのようなLT-NA組成物のNOx吸着/脱着プロファイルおよびNOx脱着温度範囲のうちの一方または両方を調節する方法を提供する。特に、本明細書に開示されているLT-NA構成要素を利用する方法は、低温でNOxを吸着し、個々の車両要件に従って捕捉されたNOxを放出するための高温を制御するのに好適である。
【0011】
したがって、一態様では、エンジンのコールドスタート後の期間中にディーゼルエンジンまたはリーンバーンガソリンエンジンの排気マニホールドから流れる窒素酸化物(NOx)の混合物を含むガス状排気流を処理するための方法であって、ガス状排気流を、LT-NA組成物を含む低温NOx吸着剤(LT-NA)構成要素と接触させ、LT-NA構成要素が、排気マニホールドの下流に配置されて、これと流体連通しており、LT-NA組成物が、希土類金属成分と、白金族金属(PGM)成分と、遷移金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、周期表の第13~15族のいずれかの元素の酸化物、またはそれらの組み合わせから選択されるドーパントと、を含み、PGMおよびドーパントが、希土類金属成分上に配置されているか、またはこれに含浸されており、LT-NA構成要素が、200℃未満の温度でNOxを貯蔵し、貯蔵されたNOxを所定の高温で放出するのに効果的である、方法が提供される。
【0012】
いくつかの実施形態では、希土類金属成分はセリアを含む。いくつかの実施形態では、希土類金属成分はセリアである。
【0013】
いくつかの実施形態では、ドーパントは遷移金属酸化物である。いくつかの実施形態では、遷移金属酸化物はマンガンの酸化物である。いくつかの実施形態では、ドーパントはアルカリ土類金属酸化物である。いくつかの実施形態では、アルカリ土類金属酸化物は、マグネシウム、カルシウム、またはバリウムの酸化物である。いくつかの実施形態では、ドーパントは、周期表の第13~15族のいずれかの元素の酸化物である。いくつかの実施形態では、周期表の第13~15族のいずれかの酸化物は、ホウ素、ケイ素、スズ、リン、アンチモン、またはビスマスの酸化物である。いくつかの実施形態では、ドーパントは、マグネシウム、マンガン、またはスズの酸化物である。いくつかの実施形態では、ドーパントはマンガンの酸化物である。
【0014】
いくつかの実施形態では、PGM成分は、パラジウム、白金、ロジウム、レニウム、ルテニウム、イリジウム、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、PGM成分は、パラジウム、白金、またはそれらの混合物を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、所定のNOx放出温度は約200℃超である。いくつかの実施形態では、所定の温度は、約200、約225、約250、または約275~約300、約325、約350、約400、または約450℃の温度範囲である。
【0016】
いくつかの実施形態では、LT-NA構成要素は、基材と、基材の少なくとも一部に配置されたLT-NA組成物を含む1つ以上のウォッシュコートと、を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のウォッシュコートは、層状のまたはゾーン化された構成で基材上にコーティングされる。いくつかの実施形態では、基材はウォールフローまたはフロースルー基材である。
【0017】
いくつかの実施形態では、ガス状排気流を処理することは、ガス状排気流中のNOxの少なくとも一部を選択的に除去することを含む。いくつかの実施形態では、ガス状排気流を処理することは、ガス状排気流中の一酸化窒素(NO)および二酸化窒素(NO2)の分布を調整することを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、LT-NA構成要素は、約200℃未満の温度でNOおよびNO2のうちの1つ以上を貯蔵し、所定の温度でNOおよびNO2のうちの一方または両方を放出するのに効果的である。いくつかの実施形態では、所定の温度は約200℃超である。いくつかの実施形態では、所定の温度は、約200、約225、約250、または約275~約300、約325、約350、約400、または約450℃の温度範囲である。いくつかの実施形態では、LT-NA構成要素は、約300℃超の温度でNOおよびNO2のうちの一方または両方を放出するのに効果的である。いくつかの実施形態では、LT-NA構成要素は、約325℃超の温度でNOおよびNO2のうちの一方または両方を放出するのに効果的である。
【0019】
いくつかの実施形態では、接触は、約150℃以下の初期温度にあるガス状排気流を、継続的に通過させてLT-NA構成要素と接触させ、さらなるエンジン動作中に徐々に温めることと、排気ガス流が所定の温度に達するまで、ガス状排気流からのNOxを吸着および貯蔵することであって、NOxをLT-NA構成要素から出る排気ガス流に放出することと、排気ガス流が温度上昇して下流の各触媒材料を約200℃~約450℃の動作温度に加熱することから、LT-NA構成要素から出る排気ガス流を、継続的に通過させて少なくとも1つの下流の触媒材料に接触させ、NOをさらに酸化させるか、またはNOおよびNO2を還元させることと、を含む。
【0020】
別の態様では、LT-NA組成物のNOx吸着/脱着プロファイルおよびLT-NA組成物のNOx脱着温度範囲のうちの一方または両方を調節するための方法であって、LT-NA組成物が、希土類金属成分と、白金族金属(PGM)成分と、遷移金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、周期表の第13~15族のいずれかの元素の酸化物、またはそれらの組み合わせから選択されるドーパントと、を含み、PGM成分およびドーパントが、希土類金属成分上に配置されているか、またはこれに含浸されており、この方法が、ドーパントを選択することと、希土類金属成分、PGM成分、およびドーパントの充填量を選択することと、を含む、方法が提供される。
【0021】
いくつかの実施形態では、希土類金属成分はセリアを含む。いくつかの実施形態では、希土類金属成分はセリアである。
【0022】
いくつかの実施形態では、NOx脱着温度範囲は、約150、約175、約200、約225、または約250~約275、約300、約325、約350、または約400℃である。いくつかの実施形態では、NOは、約150、約175、約200、約225、または約250~約275、約300、約325、約350、または約400℃の温度範囲にわたって脱着される。いくつかの実施形態では、NO2は、約150、約175、約200、約225、または約250~約275、約300、約325、約350、または約400℃の温度範囲にわたって脱着される。
【0023】
いくつかの実施形態では、NOx吸着/脱着プロファイルを調節することは、LT-NA組成物のNOx脱着温度範囲にわたって所与の温度で脱着されたNOとNO2との比を調整することを含む。
【0024】
別の態様では、希土類金属成分と、白金族金属(PGM)成分と、遷移金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、周期表の第13~15族のいずれかの元素の酸化物、またはそれらの組み合わせから選択されるドーパントと、を含み、PGMおよびドーパントが、希土類金属成分上に配置されているか、またはこれに含浸されており、LT-NA組成物が、200℃未満の温度でNOxを貯蔵し、貯蔵されたNOxを所定の温度で放出するのに効果的である、低温NOx吸着剤(LT-NA)組成物が提供される。いくつかの実施形態では、希土類金属成分はセリアを含む。
【0025】
別の態様では、基材と、基材の少なくとも一部に配置された本明細書に開示されているLT-NA組成物を含む1つ以上のウォッシュコートと、を含む、LT-NA物品が提供される。いくつかの実施形態では、1つ以上のウォッシュコートは、層状のまたはゾーン化された構成で基材上にコーティングされる。いくつかの実施形態では、基材はウォールフローまたはフロースルー基材である。
【0026】
本開示は、以下の実施形態を含むが、これらに限定されることはない。
【0027】
実施形態1:エンジンのコールドスタート後の期間中にディーゼルエンジンまたはリーンバーンガソリンエンジンの排気マニホールドから流れる窒素酸化物(NOx)の混合物を含むガス状排気流を処理するための方法であって、ガス状排気流を、LT-NA組成物を含む低温NOx吸着剤(LT-NA)構成要素と接触させ、LT-NA構成要素が、排気マニホールドの下流に配置されて、これと流体連通しており、LT-NA組成物が、希土類金属成分と、白金族金属(PGM)成分と、遷移金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、周期表の第13~15族のいずれかの元素の酸化物、またはそれらの組み合わせから選択されるドーパントと、を含み、PGMおよびドーパントが、希土類金属成分上に配置されているか、またはこれに含浸されており、LT-NA構成要素が、200℃未満の温度でNOxを貯蔵し、貯蔵されたNOxを所定の温度で放出するのに効果的である、方法。
【0028】
実施形態2:希土類金属成分がセリアを含む、実施形態1に記載の方法。
【0029】
実施形態3:ドーパントが遷移金属酸化物である、実施形態1または2に記載の方法。
【0030】
実施形態4:遷移金属酸化物がマンガンの酸化物である、実施形態3に記載の方法。
【0031】
実施形態5:ドーパントがアルカリ土類金属酸化物である、実施形態1~4のいずれか一つに記載の方法。
【0032】
実施形態6:アルカリ土類金属酸化物が、マグネシウム、カルシウム、またはバリウムの酸化物である、実施形態5に記載の方法。
【0033】
実施形態7:ドーパントが、周期表の第13~15族のいずれかの元素の酸化物である、実施形態1または2に記載の方法。
【0034】
実施形態8:周期表の第13~15族のいずれかの酸化物が、ホウ素、ケイ素、スズ、リン、アンチモン、またはビスマスの酸化物である、実施形態7に記載の方法。
【0035】
実施形態9:ドーパントが、マグネシウム、マンガン、またはスズの酸化物である、実施形態1または2に記載の方法。
【0036】
実施形態10:ドーパントがマンガンの酸化物である、実施形態1または2に記載の方法。
【0037】
実施形態11:PGM成分が、パラジウム、白金、ロジウム、レニウム、ルテニウム、イリジウム、またはそれらの組み合わせを含む、実施形態1~10のいずれか一つに記載の方法。
【0038】
実施形態12:PGM成分が、パラジウム、白金、またはそれらの混合物を含む、実施形態1~11のいずれか一つに記載の方法。
【0039】
実施形態13:貯蔵されたNOxを放出するための所定の温度が約200℃超である、実施形態1~12のいずれか一つに記載の方法。
【0040】
実施形態14:貯蔵されたNOxを放出するための所定の温度が、約200、約225、約250、または約275~約300、約325、約350、約400、または約450℃の温度範囲である、実施形態1~13のいずれか一つに記載の方法。
【0041】
実施形態15:LT-NA構成要素が、基材と、基材の少なくとも一部に配置されたLT-NA組成物を含む1つ以上のウォッシュコートと、を含む、実施形態1~14のいずれか一つに記載の方法。
【0042】
実施形態16:1つ以上のウォッシュコートが、層状のまたはゾーン化された構成で基材上にコーティングされる、実施形態15に記載の方法。
【0043】
実施形態17:基材がウォールフローまたはフロースルー基材である、実施形態15または16に記載の方法。
【0044】
実施形態18:排気ガス流を処理することが、ガス状排気流中のNOxの少なくとも一部を選択的に除去することをさらに含む、実施形態1~17のいずれか一つに記載の方法。
【0045】
実施形態19:排気ガス流を処理することが、ガス状排気流中の一酸化窒素(NO)および二酸化窒素(NO2)の分布を調整することをさらに含む、実施形態1~17のいずれか一つに記載の方法。
【0046】
実施例20:LT-NA構成要素が、約200℃未満の温度でNOおよびNO2のうちの1つ以上を貯蔵し、所定の温度でNOおよびNO2のうちの一方または両方を放出するのに効果的である、実施形態1~19のいずれか一つに記載の方法。
【0047】
実施形態21:NO、NO2、またはその両方を放出するための所定の温度が約200℃超である、実施形態20に記載の方法。
【0048】
実施形態22:NO、NO2、またはその両方を放出するための所定の温度が、約200、約225、約250、または約275~約300、約325、約350、約400、または約450℃の温度範囲である、実施形態20または21に記載の方法。
【0049】
実施形態23:LT-NA構成要素が、約300℃超の温度でNOおよびNO2のうちの一方または両方を放出するのに効果的である、実施形態1~22のいずれか一つに記載の方法。
【0050】
実施形態24:LT-NA構成要素が、約325℃超の温度でNOおよびNO2のうちの一方または両方を放出するのに効果的である、実施形態1~23のいずれか一つに記載の方法。
【0051】
実施形態25:ガス状排気流をLT-NA構成要素と接触させることが、約150℃以下の初期温度にある排気ガス流を、継続的に通過させてLT-NA構成要素と接触させ、さらなるエンジン動作中に徐々に温めることと、排気ガス流が所定の温度に達するまで、排気ガス流からのNOxを吸着および貯蔵することであって、NOxをLT-NA構成要素から出る排気ガス流に放出することと、排気ガス流が温度上昇して下流の各触媒材料を約200~約450℃の動作温度に加熱することから、LT-NA構成要素から出る排気ガス流を、継続的に通過させて少なくとも1つの下流の触媒材料に接触させ、一酸化窒素をさらに酸化させるか、または一酸化窒素および二酸化窒素を還元させることと、を含む、実施形態1~24のいずれか一つに記載の方法。
【0052】
実施形態26:LT-NA構成要素の下流および選択的触媒還元(SCR)触媒物品の上流の排気流にアンモニアまたはアンモニア前駆体を注入することであって、該注入のタイミングおよび期間をLT-NA構成要素のNOx放出プロファイルに応じて調節することをさらに含む、実施形態1~25のいずれか一つに記載の方法。
【0053】
実施形態27:LT-NA組成物のNOx吸着/脱着プロファイルおよびLT-NA組成物のNOx脱着温度範囲のうちの一方または両方を調節するための方法であって、LT-NA組成物が、希土類金属成分と、白金族金属(PGM)成分と、遷移金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、周期表の第13~15族のいずれかの元素の酸化物、またはそれらの組み合わせから選択されるドーパントと、を含み、PGM成分およびドーパントが、希土類金属成分上に配置されているか、またはこれに含浸されており、この方法が、ドーパントを選択することと、希土類金属成分、PGM成分、およびドーパントの充填量を選択することと、を含む、方法。
【0054】
実施形態28:希土類金属成分がセリアを含む、実施形態27に記載の方法。
【0055】
実施形態29:NOx脱着温度範囲が、約150、約175、約200、約225、または約250~約275、約300、約325、約350、または約400℃である、実施形態27または28に記載の方法。
【0056】
実施形態30:NOが、約150、約175、約200、約225、または約250~約275、約300、約325、約350、または約400℃の温度範囲にわたって脱着される、実施形態27~29のいずれか一つに記載の方法。
【0057】
実施形態31:NO2が、約150、約175、約200、約225、または約250~約275、約300、約325、約350、または約400℃の温度範囲にわたって脱着される、実施形態27~30のいずれか一つに記載の方法。
【0058】
実施形態32:NOx吸着/脱着プロファイルを調節することが、LT-NA組成物のNOx脱着温度範囲にわたって所与の温度で脱着されたNOとNO2との比を調整することを含む、実施形態27~31のいずれか一つに記載の方法。
【0059】
実施形態33:希土類金属成分と、白金族金属(PGM)成分と、遷移金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、周期表の第13~15族のいずれかの元素の酸化物、またはそれらの組み合わせから選択されるドーパントと、を含み、PGMおよびドーパントが、希土類金属成分上に配置されているか、またはこれに含浸されており、LT-NA組成物が、200℃未満の温度でNOxを貯蔵し、貯蔵されたNOxを所定の温度で放出するのに効果的である、低温NOx吸着剤(LT-NA)組成物。
【0060】
実施形態34:希土類金属成分がセリアを含む、実施形態33に記載のLT-NA組成物。
【0061】
実施形態35:基材と、基材の少なくとも一部に配置された実施形態33または34に記載のLT-NA組成物を含む1つ以上のウォッシュコートと、を含む、低温NOx吸着剤(LT-NA)物品。
【0062】
実施形態36:1つ以上のウォッシュコートが、層状のまたはゾーン化された構成で基材上にコーティングされる、実施形態35に記載のLT-NA物品。
【0063】
実施形態37:基材がウォールフローまたはフロースルー基材である、実施形態35または36に記載のLT-NA物品。
【0064】
本開示のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下に簡単に記載される添付の図面とともに以下の詳細な説明で明らかになるだろう。本発明は、上記の実施形態の2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の任意の組み合わせ、および本開示に記載の任意の2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の特徴または要素の組み合わせを、そのような特徴または要素が、本明細書の特定の実施形態の説明で明示的に組み合わされているか否かに関わらず含む。本開示では、文脈が明らかに他のことを示さない限り、開示される発明の分けることが可能な特徴または要素が、その様々な態様および実施形態のいずれかにおいて、組み合わせ可能であると考えられるべきであると、全体として読み取られることが意図される。本発明の他の態様および利点は、以下で明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0065】
本発明の実施形態の理解を提供するために、添付図面が参照され、添付図面では、参照符号は、本発明の典型的な実施形態の構成要素を示す。図面は、単なる例であり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載の開示は、添付の図において、限定としてではなく、例として示されている。図を簡潔かつ明確にするために、図に示されている特徴は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。例えば、一部の特徴の寸法は、わかりやすくするために他の特徴に対して誇張されている場合がある。さらに、適切であると考えられる場合、対応するまたは類似の要素を示すために、複数の図面で参照符号が繰り返し用いられる。
【0066】
【
図1A】本開示による触媒組成物(すなわち、低温NO
x吸着剤(LT-NA))ウォッシュコートを含み得るハニカムタイプ基材の斜視図である。
【
図1B】
図1Aに対して拡大された、
図1Aの基材の端面に対して平行な平面に沿って見た部分断面図であり、基材がフロースルー基材である実施形態における、
図1Aに示された複数のガス流路の拡大図を示している。
【
図2】
図1Aにおけるハニカムタイプ基材がウォールフローフィルタに相当する、
図1Aに対して拡大された断面の切断図である。
【
図3A】本開示のゾーン化されたLT-NA構成要素の一実施形態の断面図である。
【
図3B】本開示のゾーン化されたLT-NA構成要素の別の実施形態の断面図である。
【
図3C】本開示の層状LT-NA構成要素の断面図である。
【
図4A】本開示のLT-NA構成要素を含む排出物処理システムの一実施形態の概略図であり、LT-NA組成物を含むLT-NA構成要素が、ディーゼル酸化触媒(DOC)の下流に、かつ触媒化スートフィルタ(CSF)および選択的触媒還元(SCR)触媒構成要素の上流に位置している。
【
図4B】本開示のLT-NA構成要素を含む排出物処理システムの一実施形態の概略図であり、LT-NA組成物を含むLT-NA構成要素が、DOC、CSF、およびSCR触媒構成要素の上流に位置している。
【
図4C】本開示のLT-NA構成要素を含む排出物処理システムの一実施形態の概略図であり、LT-NA組成物を含むLT-NA構成要素が、DOCの下流に、かつSCR触媒構成要素およびCSFの上流に位置している。
【
図4D】本開示のLT-NA構成要素を含む排出物処理システムの一実施形態の概略図であり、LT-NA組成物を含むLT-NA構成要素が、DOC、SCR触媒構成要素、およびCSFの上流に位置している。
【
図5】本明細書に開示されているLT-NA組成物の一実施形態でコーティングされた400~600cpsi基材間の、NO
x吸着(%)対貯蔵NO
x(g/L)のグラフである。
【
図6】本明細書に開示されているLT-NA組成物の一実施形態でコーティングされた400~600cpsi基材間のNO
x脱着(ppm)対温度(℃)のグラフである。
【
図7】様々な量のPd充填量(400cpsi、2g/in
3ウォッシュコート充填量)を含有する本開示によるLT-NA構成要素の実施形態についてのNO
x吸着(%)対貯蔵NOx(g/L)のグラフである。
【
図8】様々な量のPd充填量(400cpsi、2g/in
3WCL)を含有する本開示によるLT-NA構成要素の実施形態についてのNO
x脱着(ppm)対温度(℃)のグラフである。
【
図9】様々な量のPd充填量(Pd充填効果;脱着、NOのみ)を含有する本開示によるLT-NA構成要素の実施形態についてのNO脱着(ppm)対温度(℃)のグラフである。
【
図10】様々な量のPd充填量(Pd充填効果;400cpsi、NO
2のみ)を含有する本開示によるLT-NA構成要素の実施形態についてのNO
2脱着(ppm)対温度(℃)のグラフである。
【
図11】様々な量のPd充填量(新品のサンプル;脱着、NO
2のみ)を含有する本開示によるLT-NA構成要素の実施形態についてのNO
2脱着(ppm)対温度(℃)のグラフである。
【
図12】様々な量のCe充填量(400cpsi、34g/ft
3の同じPd充填量)を含有する本開示によるLT-NA構成要素の実施形態についてのNO
x吸着(%)対貯蔵NO
x(g/L)のグラフである。
【
図13】様々な量のCe充填量(400cpsi、34g/ft
3の同じPd充填量)を含有する本開示によるLT-NA構成要素の実施形態についてのNO
x吸着(%)対貯蔵NOx(g/L)のグラフである。
【
図14】様々な量のCe充填量(Ce充填効果;脱着、NOのみ)を含有する本開示によるLT-NA構成要素の実施形態についてのNO脱着(ppm)対温度(℃)のグラフである。
【
図15】様々な量のCe充填量(Ce充填効果;脱着、NO
2のみ)を含有する本開示によるLT-NA構成要素の実施形態についてのNO
2脱着(ppm)対温度(℃)のグラフである。
【
図16】様々なドーパント(吸着;400cpsi、1g/in
3WCL)を含有する本開示によるLT-NA構成要素の実施形態についてのNO
x吸着(%)対貯蔵NOx(g/L)のグラフである。
【
図17】異なるドーパント(脱着、400cpsi)を用いた本開示によるLT-NA構成要素の実施形態についての様々なドープされたCeコアサンプルの反応器試験のグラフである。
【
図18】異なるドーパント(脱着、400cpsi)を用いた本開示によるLT-NA構成要素の実施形態についての様々なドープされたCeコアサンプルの反応器試験のグラフである。
【
図19】様々な量のMnドーパント(吸着;600cpsi、1g/in
3WCL)を含有する本開示によるLT-NA構成要素の実施形態についてのNO
x吸着(%)対貯蔵NO
x(g/L)のグラフである。
【
図20】様々な量のMnドーパント(脱着、600cpsi)を含有する本開示によるLT-NA構成要素の様々な実施形態の反応器試験のグラフである。
【
図21】MnドープCeコアサンプル(脱着、600cpsi、NO
2のみ)を有する本開示によるLT-NA構成要素の様々な実施形態の反応器試験のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0067】
NOx吸着は、一酸化窒素(NO)および二酸化窒素(NO2)の吸着の2つのカテゴリに分けることができる。上述したように、新たなクラスのNOX吸着/放出材料が必要とされている。驚くべきことに、本開示によると、希土類金属成分、白金族金属(PGM)成分、およびドーパントを含む低温NOx吸着剤(LT-NA)組成物であって、PGMおよびドーパントが、希土類金属成分上に配置されているか、またはこれに含浸されている、組成物の吸着/脱着特性を、ドーパントを選択し、希土類金属成分、PGM成分、およびドーパントの充填量を選択することによって調節することができると見出された。
【0068】
したがって、本開示は、一般に、例えば特定の車両要件に適合するようにNOxの吸着およびその後の熱放出のための温度範囲を狭めることができ、また下流のSCR機能を促進するためにエンジンの排気からのNOxのNOおよびNO2成分の分布を調整することができる、LT-NA組成物、構成要素、および方法を提供する。
【0069】
これより、以下で本発明をより十分に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が十分かつ完全であり、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。
【0070】
定義
本明細書における冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、文法的目的語の1つまたは1つより多く(例えば、少なくとも1つ)を指す。本明細書に引用される範囲はすべて、包括的である。全体を通して使用される「約」という用語は、小さな変動を表現し、説明するために使用される。例えば、「約」は、数値が、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±0.5%、±0.4%、±0.3%、±0.2%、±0.1%、または±0.05%変わり得ることを意味し得る。すべての数値は、明示的に示されているかどうかに関係なく、「約」という用語で修飾される。「約」という用語によって修飾された数値には、特定の識別された値が含まれる。例えば、「約5.0」は、5.0を含む。
【0071】
「軽減」という用語は、任意の手段によって引き起こされる量の減少を意味する。
【0072】
「吸着剤」という用語は、所望の物質、本開示ではNOxを吸着および/または吸収する材料を指す。吸着剤は、有利には、特定の温度で物質を吸着および/または吸収(貯蔵)し、より高い温度で物質を脱着(放出)することができる。
【0073】
「関連する」という用語は、例えば、「を備えている」、「に接続されている」、または「と連通している」、例えば、「電気的に接続されている」または「と流体連通している」、あるいは機能を実行するように接続されている、ことを意味する。「関連する」という用語は、例えば、1つ以上の他の物品または要素を介して、直接に関連するか、または間接的に関連することを意味し得る。
【0074】
平均粒径はD50と同義であり、すなわち、粒子の個数の半分がこれより大きなサイズを有し、半分がこれより小さなサイズを有することを意味する。粒径は一次粒子を指す。粒径は、ASTM法D4464による、分散またはドライパウダーを用いた、レーザー光散乱技術によって測定されてもよい。
【0075】
「触媒」という用語は、化学反応を促進する材料を指す。触媒は、「触媒活性種」、および活性種を運搬するまたは担持する「担体」を含む。例えば、ゼオライトは、パラジウム活性触媒種用の担体である。同様に、耐火金属酸化物粒子は、白金族金属触媒種の担体であり得る。触媒活性種は、化学反応を促進するため、「促進剤」とも呼ばれる。例えば、当パラジウム含有希土類金属成分は、Pd促進希土類金属成分と呼ばれ得る。「促進希土類金属成分」とは、触媒活性種が意図的に添加された希土類金属成分を指す。
【0076】
本発明における「触媒物品」という用語は、触媒コーティング組成物を有する基材を含む物品を指す。
【0077】
明細書および特許請求の範囲において使用される「構成された」という用語は、「含む」または「含有する」という用語と同様に、オープンエンドな用語であることが意図されている。「構成された」という用語は、他の可能な物品または要素を除外することを意味するものではない。「構成された」という用語は、「適合された」と同等であり得る。
【0078】
本明細書において使用される「結晶サイズ」は、結晶が針状でないという条件で、結晶の面の1つのエッジの長さ、好ましくは最も長いエッジを意味する。結晶サイズの直接測定は、SEMおよびTEMのような顕微鏡法を使用して実行することができる。例えば、SEMによる測定では、材料の形態を高倍率(典型的には1000倍~10,000倍)で検査することを伴う。SEM法は、ゼオライト粉末の代表的な部分を好適なマウント上に分配することによって実行することができ、それによって、個々の粒子は、1000倍~10,000倍の倍率で視野全体に適度に均一に広がる。この個体数から、ランダムな個々の結晶の統計的に有意なサンプル(例えば、50~200個)が調べられ、直線的なエッジの水平線に対して平行な、個々の結晶の最長寸法が、測定および記録される。明らかに大きな多結晶凝集体である粒子は、測定に含まれない。これらの測定値に基づいて、サンプルの結晶サイズの算術平均が計算される。
【0079】
「CSF」は、ウォールフローモノリスである触媒化スートフィルタを指す。ウォールフローフィルタは、交互に位置した入口チャネルと出口チャネルとからなり、入口チャネルは出口端部に差し込まれており、出口チャネルは入口端部に差し込まれている。入口チャネルに入る、スートを運搬する排気ガス流は、出口チャネルから出る前に、フィルタ壁を通過させられる。煤の濾過および再生に加えて、ACSFは、下流のSCR触媒を加速させるために、またはより低い温度における煤粒子の酸化を促進するために、COおよびHCをCO2およびH2Oに酸化させるための、またはNOをNO2に酸化させるための酸化触媒を運搬してもよい。SCR触媒組成物は、SCRoFと呼ばれるウォールフローフィルタに直接コーティングすることもできる。
【0080】
「DOC」は、ディーゼルエンジンの排気ガス中の炭化水素および一酸化炭素を変換するディーゼル酸化触媒を指す。典型的には、DOCは、パラジウムおよび/または白金などの1つ以上の白金族金属、アルミナなどの担体材料、HC貯蔵のためのゼオライト、ならびに任意選択的に促進剤および/または安定剤を含む。
【0081】
一般に、「効果的」という用語は、重量またはモルにおける規定された触媒活性または貯蔵/放出活性に関して、例えば約35%~100%効果があること、例えば、約40%、約45%、約50%または約55%~約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%効果があることを意味する。
【0082】
「排気流」または「排気ガス流」という用語は、固体または液体の微粒子状物質を含有し得る流動ガスのあらゆる組み合わせを指す。流れは、ガス状成分を含み、例えば、液滴、固体微粒子などの特定の非ガス状成分を含有し得るリーンバーンエンジンの排気である。燃焼機関の排気ガス流は、典型的には、燃焼生成物(CO2およびH2O)、不完全燃焼生成物(一酸化炭素(CO)および炭化水素(HC))、窒素酸化物(NOx)、可燃性および/または炭素質微粒子状物質(煤)、ならびに未反応の酸素および窒素をさらに含む。本明細書で使用される場合、「上流」および「下流」という用語は、エンジンからテールパイプに向かうエンジン排気ガス流の流れに応じた相対的な方向を指し、エンジンが上流位置にあり、テールパイプならびにフィルタおよび触媒のような任意の汚染物軽減物品がエンジンの下流にある。基材の入口端部は、「上流」端部または「前」端部と同義である。出口端部は、「下流」端部または「後」端部と同義である。上流ゾーンは、下流ゾーンの上流にある。上流ゾーンはエンジンまたはマニホールドの近くにあってもよく、下流ゾーンはエンジンまたはマニホールドからさらに離れていてもよい。
【0083】
「流体連通」という用語は、同じ排気ラインに位置決めされた物品を指すために使用され、すなわち、共通の排気流が、互いに流体連通した物品を通過する。流体連通した物品は、排気ラインにおいて互いに隣接していてもよい。あるいは、流体連通した物品は、「ウォッシュコートモノリス」とも呼ばれる1つ以上の物品によって分離されていてもよい。
【0084】
本発明における「機能物品」という用語は、機能性コーティング組成物、特に触媒および/または吸着剤コーティング組成物がその上に配置された基材を含む物品を意味する。
【0085】
本明細書で使用される場合、「含浸された」または「含浸」とは、支持体材料の細孔性構造に触媒材料を浸透させることを指す。
【0086】
コーティング層に関連する「上」および「上方」という用語は、同義語として使用することができる。「上に直接」という用語は、直接接触していることを意味する。開示されている物品は、特定の実施形態において、第2のコーティング層の「上」に1つのコーティング層を含むと呼ばれるが、そのような言葉遣いは、コーティング層間の直接接触が必要とされない、介在層を有する実施形態を包含することが意図されている(すなわち、「上」は「上に直接」とは同等ではない)。
【0087】
本明細書で使用される場合、「促進された」という用語は、希土類金属成分に固有の不純物とは対照的に、希土類金属成分に意図的に添加された成分を指す。「促進剤」とは、所望の化学反応または機能に対する活性を高める金属である。
【0088】
本明細書で使用される場合、「窒素酸化物」または「NOx」という用語は、NO、NO2、またはN2Oのような窒素酸化物を指す。
【0089】
本明細書で使用される場合、「流」という用語は、広義的には、固体または液体の微粒子状物質を含有し得る流動ガスの任意の組み合わせを指す。「ガス流」または「排気ガス流」という用語は、燃焼機関の排気などのガス状成分の流を意味し、これは、液滴、固体微粒子などの同伴した非ガス状成分を含んでいてもよい。燃焼機関の排気ガス流は、典型的には、燃焼生成物(CO2およびH2O)、不完全燃焼生成物(一酸化炭素(CO)および炭化水素(HC))、窒素酸化物(NOx)、可燃性および/または炭素質微粒子状物質(煤)、ならびに未反応の酸素および窒素を含む。
【0090】
「実質的に含まない」とは、「ほとんどまたは全くない」または「意図的に添加されていない」ことを意味し、微量および/または偶発的な量しか含まないことも意味する。例えば、特定の実施形態では、「実質的に含まない」とは、示される組成全体の重量に基づいて、2重量%(重量%)未満、1.5重量%未満、1.0重量%未満、0.5重量%未満、0.25重量%、または0.01重量%未満を意味する。
【0091】
本明細書で使用される場合、「基材」という用語は、触媒材料、すなわち触媒コーティングが、典型的にはウォッシュコートの形態でその上に配置されているモノリス材料を指す。1つ以上の実施形態では、基材は、フロースルーモノリスおよびモノリスウォールフローフィルタである。フロースルーおよびウォールフロー基材はまた、例えば、参照によって本明細書に組み込まれる国際特許出願第WO2016/070090号に開示されている。ウォッシュコートは、液体中に特定の固形物含有量(例えば30重量%~90重量%)の触媒を含有するスラリーを調製し、それから、これを基材にコーティングし、乾燥させてウォッシュコート層を提供することによって形成される。「モノリス基材」への言及は、入口から出口まで均質かつ連続的な単一構造を意味する。ウォッシュコートは、液体ビヒクル中にある特定の固体含量(例えば20%~90重量%)の粒子を含有するスラリーを調製し、次いでこれを基材上にコーティングし、乾燥させてウォッシュコート層を提供することによって形成される。
【0092】
本明細書で使用される場合、「上流」および「下流」という用語は、エンジンからテールパイプに向かうエンジン排気ガス流の流れに応じた相対的な方向を指し、エンジンが上流位置にあり、テールパイプならびにフィルタおよび触媒のような任意の汚染物軽減物品がエンジンの下流にある。
【0093】
本明細書で使用される場合、「ウォッシュコート」という用語は、処理されるガス流の通過を可能にするのに十分に多孔性のある基材材料、例えばハニカムタイプ基材に塗布される触媒または他の材料の薄い付着性コーティングの技術分野におけるその通常の意味を有する。本明細書において使用され、Heck,Ronald,and Farrauto,Robert,Catalytic Air Pollution Control,New York:Wiley-Interscience,2002,pp.18-19に記載されているように、ウォッシュコート層は、モノリス基材または下側のウォッシュコート層の表面に配置された材料の、組成的に区別される層を含む。基材は、1つ以上のウォッシュコート層を含有することができ、各ウォッシュコート層は、何らかの態様が異なることができ(例えば、粒径または結晶子相のような、ウォッシュコートの物理的特性が異なり得る)、および/または化学触媒機能が異なり得る。
【0094】
別途指示がない限り、「重量パーセント(重量%)」は、揮発性物質を含まない組成物全体、すなわち、乾燥固形物含量に基づく。別途指示がない限り、すべての部およびパーセントは、重量による。
【0095】
本明細書に記載されているすべての方法は、本明細書で別途指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供される任意およびすべての例または例示的言語(例えば「のような」)の使用は、材料および方法をより良好に説明することのみを意図したものであり、別途請求されない限り、範囲を限定するものではない。本明細書におけるいかなる言葉も、請求されていない要素を、開示された材料および方法の実施に必須であることを示すものと解釈されるべきではない。本明細書において言及されるすべての米国特許出願、付与前の刊行物および特許は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0096】
第1の態様では、エンジンのコールドスタート後の期間中にディーゼルエンジンまたはリーンバーンガソリンエンジンの排気マニホールドから流れる窒素酸化物(NOx)の混合物を含むガス状排気流を処理するための方法であって、ガス状排気流を低温NOx吸着剤(LT-NA)構成要素と接触させ、LT-NA構成要素が、排気マニホールドの下流に配置されて、これと流体連通している、方法が提供される。そのようなLT-NA構成要素は、200℃未満の温度でNOxを貯蔵し、貯蔵されたNOxを所定の温度で放出するのに効果的である。さらに、LT-NA組成物のNOx吸着/脱着プロファイルおよびLT-NA組成物のNOx脱着温度範囲のうちの一方または両方を調節するための方法が提供される。
【0097】
LT-NA組成物
本開示のLT-NA組成物は、希土類金属成分と、白金族金属(PGM)成分と、遷移金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、周期表の第13~15族のいずれかの元素の酸化物、またはそれらの組み合わせから選択されるドーパントと、を含む。PGMおよびドーパントは、希土類金属成分上に配置されているか、またはこれに含浸されている。LT-NA組成物を含む個々の構成要素は、本明細書で以下に開示される。
【0098】
希土類金属成分
先に言及したように、本明細書に開示されているLT-NA組成物は、希土類金属成分を含む。「希土類金属成分」という用語は、典型的には酸化物の形態にある、元素周期表で定義されているランタニド系列の金属を指す。ランタニド系列の金属としては、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテチウムが挙げられる。特に好適な希土類金属成分としては、ランタン、セリウム、ネオジム、イットリウム、プラセオジム、およびそれらの混合物のうちの1つ以上の酸化物が挙げられる。これらは、特定の遷移金属の原子価に応じて、一酸化物、二酸化物、三酸化物、四酸化物などのような希土類金属の様々な酸化状態を含み得る。いくつかの実施形態では、希土類金属成分は、酸化セリウム(CeO2;セリア)を含む。いくつかの実施形態では、希土類金属成分はセリアである。
【0099】
白金族金属(PGM)成分
先に言及したように、本明細書に開示されているLT-NA組成物は、白金族金属(PGM)成分を含む。「PGM成分」という用語は、PGM(例えば、Ru、Rh、Os、Ir、Pd、Pt、および/またはAu)を含む任意の成分を指す。「PGM成分」についての言及は、任意の原子価状態のPGMの存在を考慮に入れている。例えば、PGMは、原子価がゼロの金属形態であってもよく、またはPGMは、酸化物形態であってもよい。「白金(Pt)成分」、「ロジウム(Rh)成分」、「パラジウム(Pd)成分」、「イリジウム(Ir)成分」、「ルテニウム(Ru)成分」などの用語は、触媒を焼成または使用すると、分解するか、そうでなければ、触媒活性形態、通常は金属または金属酸化物に変換される、それぞれの白金族金属化合物、錯体などを指す。いくつかの実施形態では、PGM成分は、パラジウム、白金、ロジウム、レニウム、ルテニウム、イリジウム、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、PGM成分は、パラジウム、白金、またはそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、PGM成分はパラジウムである。いくつかの実施形態では、PGM成分は白金である。
【0100】
PGM成分は、希土類金属成分の重量に基づいて、金属ベースで約0.01~約5重量%または約0.1~約3重量%の範囲の量で存在し得る。いくつかの実施形態では、PGMは、希土類金属成分の約0.5~約2.5重量%(例えば、約2重量%)で存在する。
【0101】
ドーパント
先に言及したように、本明細書に開示されているLT-NA組成物は、ドーパントを含む。ドーパントは、遷移金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、周期表の第13~15族のいずれかの元素の酸化物、またはそれらの組み合わせから選択され得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、ドーパントは遷移金属酸化物である。本明細書で使用される場合、「遷移金属酸化物」という用語は、遷移金属の任意の酸化物を指す。これらの酸化物は、特定の遷移金属の原子価に応じて、一酸化物、二酸化物、三酸化物、四酸化物などのような遷移金属の様々な酸化状態を含み得る。本明細書で使用される場合、「遷移金属」という用語は、周期表のdブロック内の任意の元素を指し、これは、周期表の第3族~第12族を含む。遷移金属としては、例えば、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、銀、カドミウム、ランタン、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、銀、金、および水銀が挙げられる。本明細書に開示されているドーパントとして使用するのに特に好適な遷移金属としては、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、モリブデン、タングステンのうちの1つ以上が挙げられる。いくつかの実施形態では、遷移金属酸化物はマンガンの酸化物である。いくつかの実施形態では、遷移金属酸化物は、MnO、MnO2、Mn2O3、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸化マンガンである。
【0103】
いくつかの実施形態では、ドーパントはアルカリ土類金属酸化物である。本明細書で使用される場合、「アルカリ土類金属酸化物」という用語は、第II族金属の酸化物を指す。いくつかの実施形態では、アルカリ土類金属酸化物は、バリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、およびそれらの混合物の酸化物からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、アルカリ土類金属酸化物は、バリウム、カルシウム、またはマグネシウムの酸化物である。いくつかの実施形態では、アルカリ土類金属酸化物はマグネシウムの酸化物である。
【0104】
いくつかの実施形態では、ドーパントは、周期表の第13~15族のいずれかの元素の酸化物である。本明細書で使用される場合、「周期表の第13~15族のいずれかの元素の酸化物」という用語は、周期表の第13~15族のいずれかの元素の任意の酸化物を指す。これらは、特定の元素の原子価に応じて、一酸化物、二酸化物、三酸化物、四酸化物などのような元素の様々な酸化状態を含み得る。「周期表の第13~15族のいずれかの元素」とは、周期表に記載されている第13、14、または15族に含まれる任意の元素、例えば、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、酸素、硫黄、セレン、およびテルルを意味する。本明細書に開示されているようにドーパントとして使用するための周期表の第13~15族の特に好適な元素としては、ホウ素、ケイ素、スズ、リン、アンチモン、ビスマス、およびそれらの混合物のうちの1つ以上が挙げられる。いくつかの実施形態では、周期表の第13~15族のいずれかの元素の酸化物は、ホウ素、ケイ素、スズ、リン、アンチモン、ビスマス、およびそれらの混合物の酸化物からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、周期表の第13~15族のいずれかの元素の酸化物は、スズの酸化物である。
【0105】
いくつかの実施形態では、ドーパント金属の総量は、希土類金属成分の重量に基づいて、約0.1重量%~約10重量%または約0.5重量%~約5重量%の範囲にある(例えば、希土類金属成分の重量に基づいて、10重量%未満、9重量%未満、8重量%未満、7重量%未満、6重量%未満、5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、または0.5重量%未満)。いくつかの実施形態では、ドーパントは、希土類金属成分の重量に基づいて、約0.5重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、ドーパントは、希土類金属成分の重量に基づいて、約1重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、ドーパントは、希土類金属成分の重量に基づいて、約2重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、ドーパントは、LT-NA組成物の重量に基づいて、約5重量%の量で存在する。
【0106】
前述の説明は、LT-NA組成物のPGM成分およびドーパント成分についてのいくつかの好適な範囲または量を提供しているが、これらの成分のうちの1つについて開示されている範囲または量はそれぞれ、新しい範囲または部分範囲を形成するように、他の成分について開示されている範囲または量と組み合わされてもよいことに留意すべきである。そのような実施形態もまた、本発明によって明らかに考慮されている。
【0107】
LT-NA組成物の調製
本明細書に記載されているLT-NA組成物の調製は、一般に、微粒子形態の希土類金属酸化物を、個別にまたは混合物として、PGM成分およびドーパントを含む溶液で処理(含浸)することを含む。開示されているLT-NA組成物は、いくつかの実施形態では、インシピエントウェットネス含浸法によって調製され得る。毛細管含浸または乾式含浸とも呼ばれるインシピエントウェットネス含浸技術は、一般に、不均一系の材料、すなわち触媒の合成に使用される。典型的には、金属前駆体(例えば、本明細書に開示されているPGM成分もしくはドーパントまたはその両方)は、水溶液または有機溶液に溶解させられ、次いで、金属含有溶液は、含浸させるべき、添加された溶液の体積と同じ細孔体積を含有する材料(例えば、希土類金属酸化物)に添加される。毛細管現象によって、溶液が材料の細孔に引き込まれる。材料の細孔容積を超えて添加された溶液によって、溶液輸送が、毛細管現象プロセスから、はるかに遅い拡散プロセスに変わる。次いで、含浸させた材料を乾燥および焼成して、溶液中の揮発性成分を除去し、材料の表面に活性種(例えば、金属またはその酸化物)を堆積させることができる。最大充填量は、溶液における前駆体の溶解度によって制限される。含浸させられた材料の濃度プロファイルは、含浸および乾燥の間の細孔内の物質移動条件に依存する。
【0108】
いくつかの実施形態では、PGM成分は、希土類金属成分に含浸されているか、またはその上に配置されている。PGM成分は、任意の好適な手段、例えば、インシピエントウェットネス、共沈、または当技術分野で知られている他の方法によって、希土類金属酸化物の中または上に導入され得る。いくつかの実施形態では、PGMを希土類金属成分に含浸させる、またはPGMを希土類金属成分上に配置する好適な方法は、所望のPGM前駆体(例えば、白金化合物および/またはパラジウム化合物)の溶液と希土類成分との混合物を調製して、スラリーを生成することである。好適なPGM前駆体の非限定的な例としては、硝酸パラジウム、テトラアンミン硝酸パラジウム、テトラアンミン酢酸白金、および硝酸白金が挙げられる。焼成ステップ中に、または少なくとも複合材の使用の初期段階中に、そのような化合物は、金属またはその化合物の触媒活性形態に変換される。1つ以上の実施形態では、スラリーは酸性であり、例えば、約2~約7未満のpHを有する。スラリーに適量の無機酸または有機酸を添加することによって、スラリーのpHを低下させてもよい。酸と原材料との相溶性を考慮すると、両者の組み合わせを使用することができる。無機酸としては、硝酸が挙げられるが、これに限定されることはない。有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、脂肪、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、酒石酸、クエン酸などが挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態では、スラリーを乾燥および焼成して、PGM希土類金属成分触媒粉末を提供する。いくつかの実施形態では、触媒粉末は、含浸または上部に配置されたPdを有するセリアを含む。PGM成分は、希土類金属酸化物に、分散、含浸、配置、または含有されていると説明することができる。
【0109】
いくつかの実施形態では、第2のステップで、ドーパントが、PGM含有希土類金属成分触媒粉末に含浸されているか、またはその上に配置されている。いくつかの実施形態では、ドーパントをPGM含有希土類金属成分に含浸させる、またはドーパントをPGM含有希土類金属成分上に配置する好適な方法は、所望のドーパント前駆体の溶液の混合物を調製することである。好適なドーパント前駆体の非限定的な例としては、アルカリ土類金属の塩、遷移金属の塩、および第13~15族元素の塩が挙げられる。好適な塩としては、例えば、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、塩化物などが挙げられる。焼成ステップ中に、または少なくとも複合材の使用の初期段階中に、そのような化合物は、金属またはその化合物、例えば酸化物の活性形態に変換される。1つ以上の実施形態では、スラリーは酸性であり、例えば、約2~約7未満のpHを有する。スラリーに適量の無機酸または有機酸を添加することによって、スラリーのpHを低下させてもよい。酸と原材料との相溶性を考慮すると、両者の組み合わせを使用することができる。無機酸としては、硝酸が挙げられるが、これに限定されることはない。有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、脂肪、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、酒石酸、クエン酸などが挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態では、スラリーを乾燥および焼成して、PGM希土類金属酸化物ドーパント触媒粉末を提供する。いくつかの実施形態では、触媒粉末は、Pdと、マグネシウム、マンガン、またはスズのうちのいずれか1つとが含浸されたセリアを含む。ドーパントは、希土類金属酸化物に、分散、含浸、配置、または含有されていると説明することができる。いくつかの実施形態では、ステップの順序を逆にして、ドーパントを最初に希土類金属酸化物に導入し、続いて、PGM成分を導入してもよい。ドーパントは、任意の好適な手段、例えば、インシピエントウェットネス、共沈、または当技術分野で知られている他の方法によって、希土類金属酸化物の中または上に導入され得る。
【0110】
いくつかの実施形態では、同じ方法を使用して、PGM成分およびドーパントをそれぞれ導入する。いくつかの実施形態では、PGM成分およびドーパントはそれぞれ、個別かつ異なる方法を使用して導入される。いくつかの実施形態では、PGM成分およびドーパントはどちらも、同じステップにおいて希土類金属成分に含浸されるか、またはその上に配置される(例えば、PGM前駆体およびドーパント前駆体は、1つの溶液中で組み合わされ、例えば共含浸によって希土類金属成分に添加される)。
【0111】
LT-NA構成要素
1つ以上の実施形態では、本LT-NA組成物が、LT-NA構成要素(すなわち、触媒物品)を形成するために、基材上に配置(コーティング)される。そのような構成要素は、排気ガス処理システムの一部である(例えば、触媒物品は、本明細書に開示されているLT-NA組成物を含むが、これに限定されることはない)。本明細書で使用される場合、触媒物品(catalyst article,catalytic article)および構成要素という用語は同義語である。
【0112】
コーティング組成物
LT-NA構成要素を製造するために、本明細書に開示されている基材を本明細書に開示されているLT-NA組成物でコーティングする。コーティングは、「触媒コーティング組成物」または「触媒コーティング」である。「触媒組成物」および「触媒コーティング組成物」という用語は同義語である。本明細書に開示されているLT-NA組成物は、バインダー、例えば、好適な前駆体、例えば、酢酸ジルコニルまたは任意の他の好適なジルコニウム前駆体、例えば、硝酸ジルコニルから誘導されたZrO2バインダーを使用して調製され得る。酢酸ジルコニルバインダーは、例えば、触媒が、少なくとも約600℃、例えば約800℃以上の高温および約5%以上の水蒸気環境に曝されたとき、熱エージング後に、均質かつ無傷なままのコーティングを提供する。他の潜在的に好適なバインダーとしては、アルミナおよびシリカが挙げられるが、これらに限定されることはない。アルミナバインダーとしては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、およびオキシ水酸化アルミニウムが挙げられる。アルミニウム塩、およびアルミナのコロイド形態が使用されてもよい。シリカバインダーは、シリケートおよびコロイドシリカを含む、SiO2の様々な形態を含む。バインダー組成物は、ジルコニア、アルミナ、およびシリカのあらゆる組み合わせを含み得る。他の例示的なバインダーは、ベーマイト、ガンマアルミナ、またはデルタ/シータアルミナ、ならびにシリカゾルを含む。存在する場合、バインダーは、典型的には、約1~5重量%の量のウォッシュコート総充填量で使用される。あるいは、バインダーは、ジルコニアベースまたはシリカベース、例えば、酢酸ジルコニウム、ジルコニアゾル、またはシリカゾルであり得る。存在する場合、アルミナバインダーは、典型的には、約0.05g/in3~約1g/in3の量で使用される。いくつかの実施形態では、バインダーはアルミナである。
【0113】
基材
有用な基材は、三次元であり、円柱に似た長さ、直径および体積を有する。形状は、必ずしも円柱に一致する必要はない。長さは、入口端部と出口端部とによって画定された軸方向の長さである。
【0114】
1つ以上の実施形態によると、開示されている構成要素のための基材は、自動車触媒を調製するために典型的に使用されるあらゆる材料から構成されてもよく、典型的には、金属またはセラミックのハニカム構造を含む。基材は、典型的には、ウォッシュコート組成物が塗布されかつ付着している複数の壁面を提供し、それによって触媒組成物の基材として機能する。
【0115】
セラミック基材は、任意の好適な耐火材料、例えば、コーディエライト、コーディエライト-α-アルミナ、チタン酸アルミニウム、チタン酸ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコンムライト、リシア輝石、アルミナ-シリカ-マグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、α-アルミナ、アルミノシリケートなどから作製され得る。
【0116】
基材はまた、金属であり得、1つ以上の金属または金属合金を含む。金属基材は、チャネル壁に開口部または「パンチアウト」を有するような任意の金属基材を含み得る。金属基材は、ペレット、波形シート、またはモノリスフォームのような様々な形状で用いられ得る。金属基材の具体例としては、耐熱性の卑金属合金、特に、鉄が実質的なまたは主要な成分である合金が挙げられる。そのような合金は、ニッケル、クロム、およびアルミニウムのうちの1つ以上を含有し得、これらの金属の合計は、有利には、いずれの場合も、基材の重量に基づいて、少なくとも約15重量%(重量パーセント)の合金、例えば、約10~約25重量%のクロム、約1~約8重量%のアルミニウム、および0~約20重量%のニッケルを含み得る。金属基材の例としては、直線的なチャネルを有するもの、ガス流を妨害し、チャネル間のガス流の連通を開くために軸方向チャネルに沿って突出したブレードを有するもの、ならびにブレードおよびモノリス全体にわたる半径方向のガス搬送を可能にする、チャネル間のガス搬送を向上させるための穴も有するもの、が挙げられる。特に、金属基材は、有利には、特定の実施形態で、密に結合された位置において用いられ、それによって、基材の迅速な加熱、および対応して、その中にコーティングされている触媒組成物(例えば、LT-NA組成物)の迅速な加熱が可能になる。
【0117】
通流する流体流に対して通路が開放するように、基材の入口または出口の端面から貫通して延在する微細な平行ガス流路を有するタイプのモノリス基材(「フロースルー基材」)のような、本明細書に開示されている触媒物品のための任意の好適な基材が用いられ得る。別の好適な基材は、基材の長手方向軸線に沿って延在する複数の微細な実質的に平行なガス流路を有するタイプのものであり、典型的には、各通路は、基材本体の一方の端部において遮断されており、1つおきに通路が、反対側の端面において遮断されている(「ウォールフローフィルタ」)。フロースルーおよびウォールフロー基材は、例えば、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる国際出願第WO2016/070090号にも開示されている。
【0118】
いくつかの実施形態では、基材は、ウォールフローフィルタまたはフロースルー基材の形態のハニカム基材を含む。いくつかの実施形態では、基材はウォールフローフィルタである。フロースルー基材およびウォールフローフィルタについては、以下でさらに説明する。
【0119】
フロースルー基材
いくつかの実施形態では、基材は、フロースルー基材(例えば、モノリスフロースルーハニカム基材を含むモノリスフロースルー基材)である。フロースルー基材は、通路が流体の流れに対して開いているように、基材の入口端部から出口端部まで延在する微細で平行なガス流路を有する。流体入口から流体出口までほぼ直線的な経路である通路は、通路を通って流れるガスが触媒材料と接触するように触媒コーティングが配置されている壁によって画定されている。フロースルー基材の流路は、薄い壁のチャネルであり、台形、長方形、正方形、正弦波、六角形、楕円形、円形などのあらゆる好適な断面形状およびサイズであり得る。フロースルー基材は、上記のようにセラミックまたは金属であり得る。
【0120】
フロースルー基材は、例えば、約50in3~約1200in3の体積と、約60セル毎平方インチ(cpsi)~約500cpsiまたは最大で900cpsi、例えば、約200~約400cpsiのセル密度(入口開口部)と、約50~約200ミクロンまたは約400ミクロンの壁厚とを有する。
【0121】
LT-NA構成要素は、(例えば、本明細書に開示されているように)ウォッシュコートとして基材にLT-NA組成物コーティングを塗布することによって提供することができる。
図1Aおよび1Bは、本明細書に記載されているようなLT-NA組成物でコーティングされたフロースルー基材の形態の例示的な基材2を例示する。
図1Aを参照すると、例示的な基材2は、円筒形状および円筒外表面4、上流端面6、および端面6と同一である対応する下流端面8を有する。基材2は、内部に形成された複数の微細で平行なガス流路10を有する。
図1Bに見られるように、流路10は、壁12によって形成され、上流端面6から下流端面8までキャリア2を通って延在し、通路10は、流体、例えば、ガス流がキャリア2を、そのガス流路10を介して長手方向に流れることを許容するように閉塞されていない。
図1Bでより容易に見られるように、壁12は、そのように、ガス流路10が実質的に規則的な多角形形状を有するように寸法決めされ、構成されている。示されるように、LT-NA組成物は、必要に応じて、複数の別個の層内で塗布され得る。例示されている実施形態では、LT-NA組成物は、キャリア部材の壁12に付着した別個の底部層14、および底部層14の上方にコーティングされた第2の別個の最上部層16の両方からなる。本発明は、1つ以上(例えば、2、3、または4つ以上)のLT-NA組成物層を備えるように実施することができ、
図1Bに例示されている2層の実施形態に限定されることはない。さらなるコーティング構成は、本明細書で以下に開示される。
【0122】
ウォールフローフィルタ基材
いくつかの実施形態では、基材はウォールフローフィルタであり、これは一般に、基材の長手方向軸線に沿って延在する複数の微細で実質的に平行なガス流路を有する。典型的には、各通路は、基材本体の一端で遮断され、1つおきに通路は、反対の端面で遮断される。そのようなモノリスウォールフローフィルタ基材は、断面の平方インチ当たり最大約900以上の流路(または「セル」)を含有してもよいが、はるかに少ない数が用いられてもよい。例えば、基材は、平方インチ当たり約7~600、より一般には約100~400のセル(「cpsi」)を有し得る。セルは、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、または他の多角形の断面を有し得る。
【0123】
図2は、例示的なウォールフローフィルタの斜視図である。モノリスウォールフローフィルタ基材部分の断面図が
図2に示されており、これは、交互に閉塞および開放した通路(セル)を示す。遮断されたまたは閉塞された端部100と、開放した通路101とは交互に位置し、それぞれの反対側の端部が、それぞれ開放および遮断されている。フィルタは、入口端部102および出口端部103を有する。多孔質セル壁104を横切る矢印は、排気ガス流が、開放したセル端部に入り、多孔質セル壁104を通って拡散し、開放した出口セル端部から出ることを表す。閉塞された端部100は、ガス流を妨げ、セル壁を通じた拡散を促進する。各セル壁は、入口側104aおよび出口側104bを有する。通路は、セル壁によって包囲されている。
【0124】
ウォールフローフィルタ物品基材は、約50cm3、約100cm3、約200cm3、約300cm3、約400cm3、約500cm3、約600cm3、約700cm3で、約800cm3、約900cm3、または約1000cm3~約1500cm3、約2000cm3、約2500cm3、約3000cm3、約3500cm3、約4000cm3、約4500cm3、または約5000cm3の体積を有し得る。ウォールフローフィルタ基材は、典型的には、約50ミクロン~約2000ミクロン、例えば、約50ミクロン~約450ミクロン、または約150ミクロン~約400ミクロンの壁厚を有する。
【0125】
ウォールフローフィルタの壁は多孔質であり、一般に、機能性コーティングを配置する前に、少なくとも約50%または少なくとも約60%の壁多孔度を有し、平均細孔径は少なくとも約5ミクロンである。例えば、いくつかの実施形態におけるウォールフローフィルタ物品基材は、≧50%、≧60%、≧65%、または≧70%の多孔度を有するであろう。例えば、ウォールフローフィルタ物品基材は、触媒コーティングを配置する前に、約50%、約60%、約65%または約70%~約75%、約80%または約85%の壁多孔度、および約5ミクロン、約10、約20、約30、約40または約50ミクロン~約60ミクロン、約70、約80、約90または約100ミクロンの平均孔径を有する。「壁多孔度」および「基材多孔度」という用語は、同じ意味であり、置き換え可能である。多孔度は、空所体積を基材の総体積で割った比率である。細孔径は、窒素細孔径分析のためのISO15901-2(静的体積)手順に従って決定されてもよい。窒素細孔径は、Micromeritics TRISTAR 3000シリーズの機器において決定されてもよい。窒素細孔径は、BJH(Barrett-Joyner-Halenda)計算および33の脱着点を使用して決定されてもよい。有用なウォールフローフィルタは、高い多孔度を有し、動作中に過度の背圧をかけることなく触媒組成物の高充填量を可能にする。
【0126】
コーティング
LT-NA構成要素を形成するために、基材を本明細書に開示されているLT-NA組成物でコーティングする。コーティングは、基材の少なくとも一部の上に配置されかつこれに付着している1つ以上の薄い付着性コーティング層を含み得る。いくつかの実施形態では、本発明のLT-NA構成要素は、1つ以上のLT-NA組成物層、および1つ以上のLT-NA組成物層の組み合わせの使用を含み得る。LT-NA組成物は、基材壁の入口側のみ、出口側のみ、入口側および出口側の両方に存在し得るか、または壁自体がすべてもしくは部分的に触媒材料で構成され得る。LT-NA組成物コーティングは、基材壁表面上および/または基材壁の細孔内、すなわち、基材壁の「中」および/または「上」にあってもよい。したがって、「基材上に配置された触媒コーティング」という句は、あらゆる表面上、例えば、壁表面上および/または細孔表面上を意味する。触媒コーティング層は、個々の機能性成分、すなわち、本明細書に記載されているLT-NA組成物を含み得る。
【0127】
LT-NA組成物は、典型的には、活性種(例えば、LT-NA組成物のNOx吸着剤構成要素)を上部に有する担体材料を含有するウォッシュコートの形態で塗布され得る。ウォッシュコートは、液体ビヒクル中に特定の固形物含量(例えば、約10~約60重量%)を含有するスラリーを調製し、次いで、これを基材に塗布し、乾燥および焼成してコーティング層を提供することによって形成される。複数のコーティング層が塗布される場合、各層が塗布された後に、および/または所望の複数の層が塗布された後に、基材が乾燥および焼成される。1つ以上の実施形態では、触媒材料は、ウォッシュコートとして基材に塗布される。また、上記のようにバインダーを用いてもよい。
【0128】
上記のLT-NA組成物は、一般に、ハニカムタイプ基材のような触媒基材をコーティングするためのスラリーを形成するために、独立して水と混合される。触媒粒子に加えて、スラリーは、任意選択的に、バインダー(例えば、アルミナ、シリカ)、水溶性もしくは水分散性安定剤、促進剤、会合性増粘剤、および/または界面活性剤(アニオン性、カチオン性、非イオン性、または両性界面活性剤)を含有し得る。スラリーの典型的なpH範囲は、約3~約6である。酸性または塩基性の種をスラリーに添加して、それによってpHを調整してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、スラリーのpHは、水酸化アンモニウムまたは硝酸水溶液の添加によって調整される。
【0129】
スラリーを粉砕して、粒子の混合および均質な材料の形成を向上することができる。粉砕は、ボールミル、連続ミル、または他の同様の機器で達成することができ、スラリーの固形物含量は、例えば、約20~60重量%、より具体的には、約20~40重量%であり得る。一実施形態では、粉砕後のスラリーは、約10~約40ミクロン、好ましくは10~約30ミクロン、より好ましくは約10~約15ミクロンのD90粒径によって特徴付けられる。
【0130】
次いで、当該技術分野において公知のあらゆるウォッシュコート技術を使用して、スラリーを基材上にコーティングする。一実施形態では、基材は、スラリーに1回以上浸漬されるか、そうでなければスラリーでコーティングされる。その後、コーティングされた基材を、高温(例えば、100~150℃)で一定期間(例えば、10分~3時間)にわたって乾燥させ、次いで、例えば、400~600℃で典型的には約10分~約3時間にわたって加熱することによって焼成する。乾燥および焼成の後に、最終的なウォッシュコートコーティング層は、溶媒を実質的に含まないと考えることができる。
【0131】
焼成後に、上記のウォッシュコート技術によって得られるウォッシュコート充填量は、基材のコーティングされた重量とコーティングされていない重量との差を計算することによって求めることができる。当業者に明らかであるように、充填量は、スラリーのレオロジーを変えることによって修正することが可能である。さらに、ウォッシュコートを生成するためのコーティング/乾燥/焼成プロセスを必要に応じて繰り返して、コーティングを所望の充填水準または厚さに構築すること、すなわち1つより多くのウォッシュコートを塗布することが可能である。
【0132】
ウォッシュコートは、異なるコーティング層が基材と直接接触するように塗布することができる。あるいは、触媒または吸着剤コーティング層またはコーティング層の少なくとも一部が基材と直接接触しない(むしろ、アンダーコートと接触する)ように、1つ以上の「アンダーコート」が存在してもよい。コーティング層の少なくとも一部がガス流または雰囲気に直接曝されないように(むしろ、オーバーコートと接触するように)、1つ以上の「オーバーコート」が存在してもよい。
【0133】
異なるコーティング層は、「中間」の重なり合うゾーンなしに互いに直接接触していてもよい。あるいは、異なるコーティング層は、2つのゾーン間に「ギャップ」を設けて、直接接触していなくてもよい。「アンダーコート」または「オーバーコート」の場合、異なる層間のギャップは「中間層」と呼ばれる。アンダーコートはコーティング層の「下」の層であり、オーバーコートはコーティング層の「上」の層であり、中間層は2つのコーティング層の「間」の層である。中間層、アンダーコート、およびオーバーコートは、1つ以上の機能性組成物を含有してもよい、または機能性組成物を含まなくてもよい。
【0134】
触媒コーティングは、1つより多くの薄い付着層、互いに付着している層、および基材に付着しているコーティングを含み得る。コーティング全体は、個々の「コーティング層」を含む。触媒コーティングは、有利には、「ゾーン化」されていてもよく、ゾーン化された触媒層を含み得る。これは、「横方向にゾーン化された」と表現されてもよい。例えば、層は、入口端部から出口端部に向かって延在してもよく、基材長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%にわたって延在していてもよい。別の層は、出口端部から入口端部に向かって延在し、基材長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%にわたって延在していてもよい。異なるコーティング層は、互いに隣接し、互いにオーバーレイしていなくてもよい。あるいは、異なる層が、互いの一部にオーバーレイして、第3の「中間」ゾーンを提供してもよい。中間ゾーンは、例えば、基材長さの約5%~約80%、例えば、基材長さの約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、または約70%にわたって延在していてもよい。
【0135】
異なる層は、それぞれ、基材の全長にわたって延在するか、またはそれぞれが基材の長さの一部にわたって延在し、部分的または全体的に、互いにオーバーレイまたはアンダーレイしていてもよい。異なる層はそれぞれ、入口端部または出口端部のいずれかから延在していてもよい。
【0136】
本開示のゾーンは、コーティング層の関係によって定義される。異なるコーティング層に関しては、いくつかの可能なゾーン構成がある。例えば、上流ゾーンおよび下流ゾーンが存在する場合、上流ゾーン、中間ゾーン、および下流ゾーンが存在する場合、4つの異なるゾーンが存在する場合などがある。2つの層が隣接していて重なり合っていない場合は、上流ゾーンおよび下流ゾーンが存在する。2つの層がある程度重なり合っている場合、上流、下流、および中間のゾーンが存在する。例えば、コーティング層が基材の全長にわたって延在し、異なるコーティング層が出口端部からある長さまで延在しかつ第1のコーティング層の一部にオーバーレイしている場合、上流および下流ゾーンが存在する。本触媒コーティングは、1つより多くの同一の層を含み得る。
【0137】
図3A、3B、および3Cは、2つのコーティング層を有するいくつかの可能なコーティング層構成を示す(ただし、本開示は、これに限定されることはなく、触媒は、任意の数の層を含み得る)。コーティング層201および202がその上に配置されているモノリスウォールフローフィルタ基材壁200が示されている。これは簡略化された図であり、多孔質ウォールフロー基材の場合、細孔および細孔壁に付着したコーティングは示されておらず、閉塞された端部は示されていない。
図3Aでは、コーティング層201は、入口から出口に向かって基材長さの約50%にわたって延在する。コーティング層202は、出口から入口に向かって基材長さの約50%にわたって延在し、コーティング層は互いに隣接しており、入口上流ゾーン203および出口下流ゾーン204を提供している。
図3Bでは、コーティング層202は、出口から基材長さの約50%にわたって延在し、層201は、入口から長さの50%を超えて延在し、層202の一部にオーバーレイしており、上流ゾーン203、中間ゾーン205および下流ゾーン204を提供している。
図3Cでは、コーティング層201および202はそれぞれ、層201が層202にオーバーレイするように基材の全長にわたって延在する。
図3Cの基材は、ゾーン化されたコーティング構成を含有しない。
図3A、3B、および3Cは、ウォールスルー基材上のコーティング組成物の構成を例示するために有用であり得る。
図3A、3B、および3Cは、さらに、本明細書で以下に説明するように、フロースルー基材上のコーティング組成物の構成を例示するために有用であり得る。そのようなコーティング層の構成は限定されることはない。
【0138】
基材への本LT-NAコーティングの充填量は、多孔度および壁厚のような基材特性に依存する。典型的には、ウォールフローフィルタ充填量は、フロースルー基材上の充填量よりも低くなる。触媒ウォールフローフィルタは、例えば、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,229,597号に開示されている。本LT-NA組成物は、一般に、基材に基づいて、例えば、約0.3~5.5g/in3、または約0.4g/in3、約0.5g/in3、約0.6g/in3、約0.7g/in3、約0.8g/in3、約0.9g/in3、または約1.0g/in3~約1.5g/in3、約2.0g/in3、約2.5g/in3、約3.0g/in3、約3.5g/in3、約4.0g/in3、約4.5g/in3、約5.0g/in3、または約5.5g/in3の濃度で基材上に存在する。基材上のLT-NA組成物またはあらゆる他の組成物の濃度とは、いずれか1つの三次元断面またはゾーン、例えば、基材または基材全体のいずれかの断面当たりの濃度を指す。
【0139】
本明細書に開示されているフロースルーまたはウォールフローフィルタ基材を含み得る本LT-NA構成要素は、望ましいNOx吸着および脱着特性を提供し、例えば、NOxを低温で吸着し、捕捉されたNOxを高温で放出する。好ましくは、LT-NA構成要素は、200℃未満の温度でNOxを貯蔵し、貯蔵されたNOxを所定の温度で放出するのに効果的である。
【0140】
排出物処理システム
本開示の別の態様では、ディーゼルエンジンまたはリーンバーンガソリンエンジンからの排気ガス排出物を処理するための排出物処理システムであって、排出物処理システムが、本明細書に開示されているLT-NA構成要素を含む、排出物処理システムが提供される。排出物処理システムは、ディーゼル酸化触媒(DOC)、および/または選択的触媒還元(SCR)触媒構成要素のような1つ以上の追加の触媒構成要素をさらに含み得る。排出物処理システムはまた、スートフィルタ構成要素および/または追加の触媒構成要素もさらに含み得る。
【0141】
排出物処理システムの様々な構成要素の相対的な配置を変えることができるが、本開示のLT-NA構成要素は、LT-NA構成要素から放出されるNOxの変換に関与する任意の触媒構成要素の上流に位置していなければならない。
【0142】
排出物処理システムは、ディーゼル酸化触媒(DOC)構成要素をさらに含み得る。DOC構成要素は、例えば、SCR構成要素および/またはスートフィルタの上流に位置し得る。排出物処理システムでの使用に好適なDOCは、COおよびHCを二酸化炭素(CO2)にする酸化に効果的に触媒作用を及ぼすことができる。好ましくは、DOCは、排気ガス中に存在するCOまたはHC成分の少なくとも50%を変換することができる。
【0143】
DOCの使用による排気ガス排出物の処理に加えて、排出物処理システムは、微粒子状物質を除去するためのスートフィルタを用いることができる。スートフィルタは、DOCの上流または下流に位置し得るが、典型的には、スートフィルタは、DOCの下流に位置するであろう。いくつかの実施形態では、スートフィルタは触媒化スートフィルタ(CSF)である。CSFは、捕捉された煤を燃焼させ、および/または排気ガス流の排出物を酸化させるための1つ以上の触媒を含有するウォッシュコート粒子でコーティングされた基材を含み得る。一般に、煤燃焼触媒は、煤の燃焼のための任意の既知の触媒であり得る。例えば、CSFは、COおよび未燃炭化水素ならびにある程度まで微粒子状物質を燃焼させるために、1つ以上の高表面積の耐火酸化物(例えば、酸化アルミニウムまたはセリア-ジルコニア)でコーティングされ得る。煤燃焼触媒は、1つ以上の貴金属触媒(例えば、白金および/またはパラジウム)を含む酸化触媒であり得る。
【0144】
本明細書に開示されている排出物処理システムは、選択的触媒還元(SCR)構成要素をさらに含み得る。SCR触媒構成要素は、DOCおよび/またはスートフィルタの上流または下流に位置し得る。上記のように、SCRは、本明細書に開示されているLT-NA構成要素の下流に位置しなければならない。排出物処理システムでの使用に好適なSCR構成要素は、650℃という高い温度においてNOx排気成分の還元に効果的に触媒作用を及ぼすことができる。さらに、SCR構成要素は、典型的にはより低い排気温度に関連する低負荷の条件下でさえ、NOxの還元のために活性でなければならない。好ましくは、SCR構成要素は、システムに添加される還元剤の量に応じて、NOx(例えば、NO)成分の少なくとも50%をN2に変換することができる。SCR構成要素の別の望ましい特性は、O2とあらゆる過剰なNH3との反応に触媒作用を及ぼしてN2を形成する能力を有し、その結果、NH3が大気に放出されないことである。排出物処理システムにおいて使用される有用なSCR構成要素は、650℃超の温度に対する耐熱性も有するべきである。そのような高温は、触媒化スートフィルタの再生中に生じることがある。好適なSCR触媒構成要素は、例えば、米国特許第4,961,917号および第5,516,497号に記載されており、これらはどちらも、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0145】
本明細書に開示されている方法に従って処理すべきガス状排気流は、任意選択的に、少なくともDOCおよび/またはCSF構成要素で処理されていてもよい。さらに、LT-NA構成要素は、個別の触媒構成要素内に位置する必要はないが、DOC、CSF、またはSCR構成要素のような別の成分に含まれていてもよく、そのような各構成要素の触媒組成物は、本明細書に記載されているゾーン化されたまたは層状の構成の基材に塗布される。
【0146】
例示された排出物処理システムは、本発明の実施形態による排気ガス処理システムの非限定的な概略図を示す
図4A~4Dを参照することによって、より容易に理解され得る。
図4Aを参照すると、排出物処理システム320は、ガス状汚染物質(例えば、未燃炭化水素、一酸化炭素、およびNO
x)および微粒子状物質を含有する排気ガス流が、ライン322を介してエンジン321からディーゼル酸化触媒(DOC)323に運ばれることを示す。DOC323では、未燃焼のガス状および不揮発性の炭化水素および一酸化炭素の大部分が燃焼して、二酸化炭素および水を形成する。次に、排気流は、NO
xの吸着および/または貯蔵のためにライン324を介して低温NO
x吸着剤(LT-NA325)に運ばれる。処理された排気ガス流326は、次に、触媒化スートフィルタ(CSF)327に運ばれ、CSF327は、排気ガス流内に存在する微粒子状物質を捕捉する。CSF327を介して微粒子状物質を除去した後、排気ガス流は、ライン328を介して下流のSCR触媒329に運ばれ、それによって、NO
xの処理および/または変換がもたらされる。排気ガスは、触媒組成物が、システムから出る前に排気ガスにおける所定の温度において排気ガス中のNO
xのレベルを(還元体との組み合わせにおいて)減じるのに十分な時間を可能にする流量で、SCR構成要素329を通過する。
【0147】
本発明の排気ガス処理システムの別の実施形態が
図4Bに示されており、
図4Bは、排気ガス処理システム330の概略図を示す。
図4Bを参照すると、排気ガス流は、ライン332を介してエンジン331から低温NO
x吸着剤(LT-NA)333に運ばれる。次に、排気流は、ライン334を介してDOC335に運ばれ、さらにライン336を介してCSF337に運ばれる。処理された排気ガス流338は、大気中へ放出される前に、SCR339に運ばれる。
【0148】
本発明の排気ガス処理システムの別の実施形態が
図4Cに示されており、
図4Cは、排出物処理システム340の概略図を示す。
図4Cを参照すると、排気ガス流は、ライン342を通ってエンジン341からDOC343に運ばれ、さらに排気ガス流344を介して低温NO
x吸収剤(LT-NA)345に運ばれる。次に、排気流は、ライン346を介してSCR347に運ばれ、さらにライン348を介してCSF349に運ばれる。処理された排気ガス流338は、システムを出る前にSCR339に運ばれる。
【0149】
本発明の排気ガス処理システムの別の実施形態が
図4Dに示されており、
図4Dは、排気ガス処理システム350の概略図を示す。
図4Dを参照すると、排気ガス流は、ライン352を介してエンジン351から低温NO
x吸着剤(LT-NA)353に運ばれ、さらにガス排気ライン354を介してDOC355に運ばれる。排気ガスライン356は、SCR触媒357に運ばれ、排気流358は、システムを出る前にCSF359に運ばれる。
【0150】
図4A~4Dに示されたあらゆる例示された排出物処理システムの後に、SCRから放出されたNH
3を除去し、このNH
3をN
2に選択的に酸化させるための選択的アンモニア酸化触媒(AMOx)が設けられていてもよい。
図4A~4Dの排出物処理システムには示されていないが、当業者であれば、排出物処理システムにおけるSCR触媒物品が存在すると、還元剤源と、還元剤をSCR触媒物品の上流に導入するための手段とが必要になると認識するであろう。典型的には、アンモニアまたはアンモニア前駆体(例えば、尿素)が、SCR触媒物品と接触しているNO
xとの反応のために注入物品によって導入される。
【0151】
ガス状排気流を処理するための方法
一態様では、エンジンのコールドスタート後の期間中にディーゼルエンジンまたはリーンバーンガソリンエンジンの排気マニホールドから流れる窒素酸化物(NOx)の混合物を含むガス状排気流を処理するための方法が提供される。具体的には、この方法は、ガス状排気流を、排気マニホールドの下流に配置されて、これと流体連通している、本明細書に開示されている低温NOx吸着剤(LT-NA)構成要素と接触させることを含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、ガス状排気ガス流を処理することは、ガス状排気流中に存在するNOxの少なくとも一部を選択的に除去することを含む。いくつかの実施形態では、ガス状排気流を処理することは、ガス状排気流中の一酸化窒素(NO)および二酸化窒素(NO2)の分布を調整することを含む。
【0153】
いくつかの実施形態では、LT-NA構成要素は、約300℃超の温度でNOおよびNO2のうちの一方または両方を放出するのに効果的である。いくつかの実施形態では、LT-NA構成要素は、約325℃超の温度でNOおよびNO2のうちの一方または両方を放出するのに効果的である。
【0154】
いくつかの実施形態では、ガス状排気流を本明細書に開示されているLT-NA構成要素と接触させることは、約150℃以下の初期温度にある排気ガス流を、継続的に通過させてLT-NA構成要素(例えば、他の触媒組成物を上部に含んでいても含んでいなくてもよい触媒物品の形態にある)と接触させ、さらなるエンジン動作中に徐々に温めることと、排気ガス流が約200℃の温度に達するまで、排気ガス流からのNOxを吸着および貯蔵することであって、NOxをLT-NA構成要素から出る排気ガス流に放出することと、排気ガス流が温度上昇して下流の各触媒材料を動作温度に加熱することから、LT-NA構成要素から出る排気ガス流を、継続的に通過させて少なくとも1つの下流の触媒材料に接触させ、一酸化窒素をさらに酸化させるか、または一酸化窒素および二酸化窒素を還元させることと、を含む。いくつかの実施形態では、動作温度は約200~約450℃である。
【0155】
いくつかの実施形態では、この方法は、SCR触媒物品の上流にアンモニアまたはアンモニア前駆体(例えば、尿素)を注入することをさらに含み、アンモニアまたはアンモニア前駆体の注入タイミング、頻度、および持続時間は、本明細書に開示されている上流のLT-NA構成要素の固有のNOx放出プロファイルに従って調節することができる。
【0156】
NOX吸着/脱着プロファイルおよび/またはLT-NA組成物のNOX脱着温度範囲を調節するための方法
別の態様では、本明細書に開示されているLT-NA組成物のNOx吸着/脱着プロファイルおよび本明細書に開示されているLT-NA組成物のNOx脱着温度範囲のうちの一方または両方を調節するための方法が提供される。驚くべきことに、希土類金属およびPGM成分を含むLT-NA組成物に(先に詳細に記載されている)ドーパントをドープすると、LT-NA組成物のNOx吸着/脱着プロファイルおよび/またはNOx脱着温度範囲のうちの一方または両方が変化し、「調整可能な」LT-NA組成物が提供されることが見出された。NOX吸着/脱着プロファイルおよび/またはNOx脱着温度範囲を調整することによって、LT-NA組成物は、OEMの所望の要件を満たすように調整され得る。したがって、NOx成分は、様々な温度範囲にわたって、かつ要求に応じて選択的に脱着され得る。例えば、ドーパント種の同一性および濃度を変えることによって、NOおよびNO2それぞれが吸着および放出される温度範囲を調節して、下流の触媒物品(例えば、SCR触媒)の性能に影響を及ぼすことができる。
【0157】
いくつかの実施形態では、NOx脱着温度範囲は、約150、約175、約200、約225、または約250~約275、約300、約325、約350、または約400℃である。いくつかの実施形態では、NOは、約150、約175、約200、約225、または約250~約275、約300、約325、約350、または約400℃の温度範囲にわたって脱着される。いくつかの実施形態では、NO2は、約150、約175、約200、約225、または約250~約275、約300、約325、約350、または約400℃の温度範囲にわたって脱着される。
【0158】
いくつかの実施形態では、NOx吸着/脱着プロファイルを調節することは、LT-NA組成物のNOx脱着温度範囲にわたって所与の温度で脱着されたNOとNO2との比を調整することを含む。
【0159】
本組成物、構成要素、システム、および方法は、トラックおよび自動車のような移動排出物源からの排気ガス流の処理に好適である。本組成物、構成要素、システム、および方法は、発電所のような固定源からの排気流の処理にも好適である。
【0160】
本明細書に記載されている組成物、方法、および用途に対する好適な修正および適合が、任意の実施形態またはそれらの態様の範囲から逸脱することなく行われ得ることは、関連技術の当業者には容易に明らかであろう。提供される組成物および方法は例示的なものであり、特許請求される実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に開示されている様々な実施形態、態様、および選択肢のすべては、すべての変更で組み合わされ得る。本明細書に記載されている組成物、配合物、方法、およびプロセスの範囲には、本明細書の実施形態、態様、選択肢、例、および選好のすべての実際のまたは潜在的な組み合わせが含まれる。本明細書で引用されたすべての特許および刊行物は、組み込まれた他の特定の記述が具体的に提供されない限り、記載されるように、それらの特定の教示について参照によって本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0161】
本発明は、本発明を例示するために示されかつ本発明を限定するものと解釈されるべきではない以下の実施例によってより詳しく例示される。別段の定めがない限り、すべての部分およびパーセンテージは重量によるものであり、すべての重量パーセントは乾燥ベースで表され、すなわち、別途指示がない限り、含水量は除外される。
【0162】
実施例1:参照物品(CeO2上の2%Pd;1g/in3)
セリア粉末上の2%Pdの調製
硝酸パラジウム(29グラム)を75グラムの脱イオン水で希釈した。この溶液を300グラムのセリア(CeO2)に添加した。ミキサーを使用して、この混合物を均質化した。得られた粉末を120℃で4時間にわたって乾燥させ、500℃で1時間にわたって焼成した。
【0163】
セリア上の2%Pdのウォッシュコートスラリーの調製
240グラムの脱イオン水に200グラムの2%Pd/CeO2を添加した。スラリーをホモジナイザーで入念に混合した。スラリーのpHは4.1であった。得られたスラリーが、約13ミクロンのD90粒径および約4.2のpH値を有するまで、スラリーを連続的に粉砕した。アルミナバインダーを添加し、この組み合わせを入念に混合した。
【0164】
セリアコア上の2%Pdのサンプルの調製
平方インチ当たりセル400個のセル密度を有する直径1インチ×長さ3インチのセラミック基材コア2つをPd/CeO2/Al2O3スラリーに浸漬した。空気銃を使用して過剰なスラリーを吹き飛ばした。コーティングされたコアを熱風送風機によって200℃で5~10分間にわたって乾燥させ、続いて、オーブン内にて500℃で1時間にわたって焼成した。コアのウォッシュコート総充填量は、1g/in3であった。
【0165】
試験用のコアサンプルの調製
コアサンプルのうちの1つを、車両の実地使用をシミュレートするために加速エージングプロトコルに供した。エージング条件は、水10%、酸素10%、および窒素80%の雰囲気下で、16時間、800℃に設定した。第2のコアサンプルは、エージングなしで試験した。
【0166】
実施例1a:参照物品(セリア上の1%Pd;2g/in3)
セリア粉末上の1%Pdの調製
触媒粉末は、実施例1の手順に従って、ただし、粉末含浸中にPdの量を半分に減らして調製した。
【0167】
セリア上の1%Pdのウォッシュコートスラリーの調製
ウォッシュコートスラリーは、実施例1の手順に従って、ただし、セリア上の2%Pdをセリア上の1%Pdに置き換えて調製した。
【0168】
セリアコア上の2%Pdのサンプルの調製
触媒コアは、実施例1の手順に従って、ただし、2g/in3のウォッシュコート充填量で、セリア上の1%Pdのスラリーを使用して調製した。
【0169】
試験用のコアサンプルの調製
コアサンプルは、試験のために、実施例1の手順に従って、ただし、2g/in3のウォッシュコート充填量で、セリア上の1%Pdを使用して調製した。
【0170】
実施例1b:参照物品(セリア上の2%Pd;2g/in3)
セリア粉末上の2%Pdの調製
触媒粉末は、実施例1の手順に従って調製した。
【0171】
セリアコア上の2%Pdのサンプルの調製
触媒コアは、実施例1の手順に従って、ただし、2g/in3のウォッシュコート充填量を使用して調製した。
【0172】
試験用のコアサンプルの調製
コアサンプルは、試験のために、実施例1の手順に従って、ただし、2g/in3のウォッシュコート充填量で、セリア上の2%Pdを使用して調製した。
【0173】
実施例1c:参照物品(セリア上の4%Pd;2g/in3)
セリア粉末上の4%Pdの調製
触媒粉末は、実施例1の手順に従って、ただし、粉末含浸中にPdの量を2倍にして調製した。
【0174】
セリア上の4%Pdのウォッシュコートスラリーの調製
ウォッシュコートスラリーは、実施例1の手順に従って、ただし、セリア粉末上の4%Pdを使用して調製した。
【0175】
セリアコア上の4%Pdのサンプルの調製
触媒コアは、実施例1の手順に従って、ただし、2g/in3のウォッシュコート充填量で、セリア粉末上の4%Pdのスラリーを使用して調製した。
【0176】
試験用のコアサンプルの調製
コアサンプルは、試験のために、実施例1の手順に従って、ただし、2g/in3のウォッシュコート充填量で、セリア粉末上の4%Pdを使用して調製した。
【0177】
実施例2:本発明の触媒物品(2%Pd/0.5%Mg/CeO2)
LT-NA組成物粉末の調製(セリア上の2%Pd+0.5%Mg)
セリア粉末(283g)を混合容器に添加した。硝酸パラジウム(27.4g)を35mlの脱イオンH2Oと混合した。硝酸マグネシウム(6.8g)を硝酸パラジウム溶液に添加して混合した。混合容器内で、セリア粉末にPd/Mg溶液を含浸させた。
【0178】
LT-NA組成物ウォッシュコートスラリーの調製
Pd/Mg含浸セリア粉末を脱イオンH2O(202g)と混合した。スラリーのpHは1.07であり、粒径は15μmであった。得られたスラリーが、約11ミクロンのD90粒径および約1.2のpH値を有するまで、スラリーを粉砕した。アルミナバインダーを添加し、十分に混合した。
【0179】
LT-NA構成要素コアサンプルの調製
実施例1と同様に、2%Pd/0.5%Mg/CeO2スラリーを使用する。
【0180】
試験用のLT-NA構成要素コアサンプルの調製
実施例1と同様に、2%Pd/0.5%Mg/CeO2スラリーを使用する。
【0181】
実施例3:本発明の触媒物品(2%Pd/1%Sn/CeO2)
セリア粉末上の1%Snの調製
酢酸スズ((Sn(OAc)4、5g)を酢酸(25g)および脱イオン水(50g)で希釈した。この溶液を3分間にわたって混合して、液体を均質化した。これは、ベージュ色のコロイド溶液になった。セリア(251g)をこの溶液に添加した。スラリーを3分間にわたって混合した。得られた粉末は、灰色がかった茶色であった。粉末を120℃で4時間にわたって乾燥させ、500℃で1時間にわたって焼成して、CeO2上の1%Snを提供した。
【0182】
硝酸パラジウム(20グラム)を脱イオン水(40g)で希釈した。CeO2粉末上の1%Sn(200グラム)をPd溶液に添加し、3分間にわたって混合して、粉末を均質化した。粉末は金色になった。粉末を120℃で4時間にわたって乾燥させ、500℃で1時間にわたって焼成して、1%Sn/99%セリア上の2%Pdを提供した。
【0183】
LT-NA組成物ウォッシュコートスラリーの調製
脱イオン水(210g)に、1%Sn/99%セリア粉末上の2%Pd(177g)を添加した。スラリーをホモジナイザーで入念に混合した。スラリーのpHは7.2であった。スラリーのpHを硝酸(1.6g)で5.3に調整した。約7ミクロンの粒径および約5.7のpH値まで、スラリーを粉砕した。アルミナバインダーを添加し、十分に混合した。
【0184】
LT-NA構成要素コアサンプルの調製
平方インチ当たりセル400個のセル密度を有する直径1インチ×長さ3インチのセラミック基材コア2つをPd/Sn/CeO2ウォッシュコートスラリーに浸漬した。空気銃を使用して過剰なスラリーを吹き飛ばした。コーティングされたコアを熱風送風機によって200℃で5~10分間にわたって乾燥させ、次いで、オーブン内にて500℃で1時間にわたって焼成した。
【0185】
試験用のLT-NA構成要素コアサンプルの調製
コアサンプルのうちの1つを、車両の実地使用をシミュレートするために加速エージングプロトコルに供した。エージング条件は、水10%、酸素10%、および窒素80%の雰囲気下で、16時間、800℃に設定した。第2のコアサンプルは、エージングなしで試験した。
【0186】
実施例4:本発明の触媒物品(2%Pd/1%Mn/CeO2)
1%Mn/99%CeO2粉末上の2%Pdの調製
硝酸パラジウム(29g)を脱イオン水(70g)で希釈した。ミキサー内で硝酸パラジウム溶液をセリア粉末上の1重量%Mn(302g)に添加し、3分間にわたって混合して、粉末を均質化した。粉末を120℃で4時間にわたって乾燥させ、500℃で1時間にわたって焼成した。
【0187】
LT-NA組成物ウォッシュコートスラリーの調製
脱イオン水(225g)に2%Pd/1%Mn/CeO2粉末(168g)を添加し、ホモジナイザーで十分に混合した。スラリーのpHは4.7であった。スラリーを40分間にわたって約9ミクロンの粒径にボールミル粉砕した。得られたスラリーのpH値は4.9であった。アルミナバインダーを添加し、十分に混合した。
【0188】
LT-NA構成要素コアサンプルの調製
平方インチ当たりセル400個のセル密度を有する直径1インチおよび長さ3インチのセラミック基材コア2つを2%Pd/1%Mn/CeO2スラリーに浸漬した。空気銃を使用して過剰なスラリーを吹き飛ばした。コーティングされたコアを熱風送風機によって200℃で5~10分間にわたって乾燥させ、続いて、オーブン内にて500℃で1時間にわたって焼成した。
【0189】
試験用のLT-NA構成要素コアサンプルの調製
コアのうちの1つを、車両の実地使用をシミュレートするために加速エージングプロトコルに供した。エージング条件は、水10%、酸素10%、窒素80%の雰囲気下で、16時間、800℃に設定した。第2のコアは、そのまま試験した。
【0190】
実施例5:本発明の触媒物品(2%Pd/5%Mn/CeO2、400cpsi)
すべてのプロセスを、実施例4と同様に、ただし、2%Pd/1%Mn/CeO2を2%Pd/5%Mn/CeO2に置き換えて実行した。
【0191】
実施例6:本発明の触媒物品(2%Pd/5%Mn/CeO2、600cpsi)
使用基材(400cpsiではなく600cpsiのセル密度)を除いて、すべてのプロセスを実施例5と同様に実行した。
【0192】
実施例7:コアサンプルの反応器試験(定常状態条件):
新品のサンプルおよびエージングしたサンプルの両方を、以下に列挙されている予め設定された条件下にて研究室反応器内で評価した。
【表1】
【0193】
実施例8:本発明の触媒物品(Pd/5%Mn/CeO
2、400cpsi対600cpsi、吸着)
400セル/平方インチ(cpsi)のハニカムと比較して、600セル/平方インチ(cpsi)のハニカムにコーティングされた触媒の方がより良好な活性を観察するのが一般的であるが、この実施例の目的は、実施例7のプロトコルを使用して、同じ利点をNO
x吸着において見ることができるかどうかを確認することであった。
図5に示される結果は、エージング後に、600cpsiおよび400cpsi基材間に、NO
x吸着の差がなかったことを示した。
【0194】
実施例9:本発明の触媒物品(Pd/5%Mn/CeO
2、400cpsi対600cpsi、脱着)
実施例7のプロトコルを使用して、脱着試験中に同等の結果が観察された(
図6)。
【0195】
実施例10:様々なPd/CeO
2コアサンプルの反応器試験(Pd充填効果、定常状態のNO
x吸着、400cpsi)
この実施例では、同量のウォッシュコート充填量(WCL)、すなわち、2g/in
3のセリアにすべて基づいて、セリアに対するPd充填量の効果を調べた。g/ft
3で表されるPd充填量は、34、68、および138g/ft
3であった。
図7に示される結果は、パラジウム充填量が多いほど、より良好な総NO
x吸着を示した。しかしながら、Pd濃度が2%超になったら、プラトーに達した。
【0196】
実施例11:様々なPd/CeO
2コアサンプルの反応器試験(Pd充填効果、脱着、400cpsi)
図8に示されるように、脱着段階の間、Pd濃度が高いほど、より多くのNO
xがより低い温度で脱着した。
【0197】
実施例12:様々なPd/CeO
2コアサンプルの反応器試験(Pd充填効果、脱着、NOのみ)
この脱着温度シフトが、吸着した化学種(NOまたはNO
2)に関連しているかどうかを確認するために、
図9に示されるように、NOのみについての脱着プロットを作成した。これらの結果は、セリア表面上のPdが多いほど、より多くのNOが吸着され、NO
2よりも低い温度でNOが放出されることを実証した。この観察は、
図10として示されるNO
2脱着プロットを通じてさらに確認した。
【0198】
実施例13:様々なPd/CeO2コアサンプルの反応器試験(Pd充填効果、脱着、NO2のみ)
これらの結果は、NOx放出温度および種がPd濃度によって制御されたことを実証した。2%超のPd濃度では、セリア担体へのNO2の吸着/放出が最小限に抑えられ、NO吸着は、120℃で、NO2の一部をNOに変換することによって増強された。
【0199】
実施例14:新品のPd/CeO
2コアサンプルの反応器試験(Pd充填効果、脱着、NO
2のみ)
この場合も、Pd充填量が多いほど、新品のサンプルであってもNO
2脱着が少なくなる(
図11)。
【0200】
実施例15:異なる量のセリア充填量(吸着)を有する様々なコアサンプルの反応器試験
NO
x吸着/放出プロファイルに対するセリアの影響をさらに実証するために、2つのLT-NA構成要素サンプルを同じプロトコルで試験した(実施例7)。一方のサンプルは、2g/in
3のセリアウォッシュコート充填量で、セリア上に1%Pdを有しており、総Pd充填量は34g/ft
3であった。もう一方は、セリア上でのPd濃度が2%であったが、セリア充填量は1g/in
3であったため、総Pd充填量は同じであった(34g/ft
3)。
図13に示される結果は、2g/in
3のセリアサンプルが、同じPd充填量にもかかわらず、1g/in
3のセリアサンプルよりも高いNO
x吸着容量を有することを示した。
【0201】
実施例16:様々なPd/CeO
2コアサンプルの反応器試験(セリア充填効果、脱着、400cpsi)
脱着については、新品のサンプルおよびエージングしたサンプルの両方を評価した。新品であってもエージングされていても、より多いセリア充填量(2g/in
3)を有するサンプルは、NOx脱着ピークがより高く、かつ第2のピークの脱着温度がより高いことを実証した(
図13)。
【0202】
第2のピーク(より高い脱着温度)がNOであるかNO
2であるかを識別するために、NO(
図14)およびNO
2(
図15)の両方の脱着プロットを作成した。これらの結果は、すべてのサンプルが同様のNO吸着容量を有することを実証しており、PdがNO吸着に関与しており、この種の吸着が、吸着されたNOをより低い温度で放出するため弱かったことを示した。対照的に、NO
2吸着の強度は、NO吸着よりもはるかに強かった。結果として、NO
2の脱着は、より高い温度で生じた(
図15)。また、NO
2吸着は、主にセリア上で起こった。
【0203】
実施例17:異なるドーパント(吸着、400cpsi)を有する様々なセリアコアサンプルの反応器試験:
Pdが高温でNO
2の放出を低下させるが、低温でNO脱着を増強することを実証したので、OEM要件に合うようにNOおよびNO
2の放出を調整するために他のドーパントを使用する可能性を検討した。セリアにMg、Sn、およびMnをドープする場合の効果を評価した。NO
x変換対NO
x貯蔵容量のプロット(
図16)は、特に初期吸着段階で、SnがNO
x貯蔵容量に与える影響が最も小さく、その一方で、Mnが貯蔵容量に与える影響が最も大きいことを示した。
【0204】
実施例18:異なるドーパント(脱着、400cpsi)を有する様々なドープされたセリアコアサンプルの反応器試験:
図17に示されるように、NO
x脱着について、セリアにMnを添加すると、高温NO
x放出ピークが低下した。低下したNO
x放出部分は、NO
2であることが示された(
図18)。
【0205】
実施例19:様々なMnドープセリアコアサンプル(吸着、600cpsi)によるサンプルの反応器試験:
ドーパント濃度の影響を評価するために、2つのMnドープセリアサンプルを試験した(
図19)。Mn充填量が多いほど、NO
x変換曲線がより速く低下することが観察された。
【0206】
実施例20:異なるMnドーパント濃度(脱着、600cpsi)を有するサンプルの反応器試験:
NO
x脱着について、新品のサンプルの場合、Mn充填量が多いほど、高温NO
x放出ピークがより多く低下した。
図20に示されるように、エージング後に、少量のマンガン(1%)でさえも、NO
2吸着のほぼすべてのサイトを減少させた。
【0207】
実施例21:異なるドーパント濃度(脱着、600cpsi、NO
2のみ)を有するサンプルの反応器試験:
図21に示されるように、Mn充填量が多いほど、高温NO
2放出ピークがより多く低下した。
【国際調査報告】