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特表2022-526899層状三金属触媒物品および触媒物品を製造する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-27
(54)【発明の名称】層状三金属触媒物品および触媒物品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20220520BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20220520BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20220520BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20220520BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20220520BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20220520BHJP
   F01N 3/22 20060101ALI20220520BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20220520BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
B01J23/63 A
B01J37/08 ZAB
B01J37/02 101D
B01J37/04 102
B01J35/04 301L
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/22 321
F01N3/28 301A
F01N3/28 301Q
F01N3/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556826
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(85)【翻訳文提出日】2021-11-17
(86)【国際出願番号】 US2020023256
(87)【国際公開番号】W WO2020190994
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】62/819,695
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】19169497.5
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ヴュノフ,アレクセイ
(72)【発明者】
【氏名】ディーバ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】チョン,シヤオライ
(72)【発明者】
【氏名】バーク,パトリク エル
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB03
3G091BA14
3G091BA15
3G091BA19
3G091BA39
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4G169BC43B
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4G169BC44B
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4G169BC71B
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4G169BC72B
4G169BC75A
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4G169FB06
4G169FB15
4G169FB19
4G169FB30
4G169FC07
4G169FC08
(57)【要約】
本発明は、酸素貯蔵成分およびアルミナ成分のうちの少なくとも一方に担持されたパラジウムを含む第1の層と、各々が酸素貯蔵成分およびジルコニア成分のうちの少なくとも一方に担持された、白金およびロジウムを含む第2の層と、基材と、を含み、パラジウムの白金に対する重量比が、1.0:0.4~1:2の範囲にある、三金属層状触媒物品を提供する。本発明はまた、三金属層状触媒物品を調製するためのプロセス、内燃機関用の排気システム、およびガス状排気流を精製するための三金属層状触媒物品の使用を提供する。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)酸素貯蔵成分およびアルミナ成分のうちの少なくとも一方に担持されたパラジウムを含む第1の層と、
b)白金およびロジウムを含む第2の層であって、各々が酸素貯蔵成分およびジルコニア成分のうちの少なくとも一方に担持される、第2の層と、
c)基材と、を含み、
パラジウムの白金に対する重量比が、1.0:0.4~1.0:2.0の範囲にあり、
前記第1の層が、前記基材上に堆積され、前記第2の層が、前記第1の層上に堆積される、三金属層状触媒物品。
【請求項2】
パラジウムの白金に対する前記重量比が、1.0:0.7~1.0:1.3の範囲にある、請求項1に記載の層状触媒物品。
【請求項3】
パラジウムの白金に対する前記重量比が、1.0:1.0である、請求項1に記載の層状触媒物品。
【請求項4】
パラジウム対白金対ロジウムの重量比が、1.0:0.7:0.1~1.0:1.3:0.3の範囲にある、請求項1に記載の層状触媒物品。
【請求項5】
前記第1の層が、前記触媒物品中に存在するパラジウムの総量に対して、80~100重量%のパラジウムを含む、請求項1~4のいずれかに記載の層状触媒物品。
【請求項6】
前記第1および第2の層の前記酸素貯蔵成分が、セリア-ジルコニア、セリア-ジルコニア-ランタナ、セリア-ジルコニア-イットリア、セリア-ジルコニア-ランタナ-イットリア、セリア-ジルコニア-ネオジミア、セリア-ジルコニア-プラセオジミア、セリア-ジルコニア-ランタナ-ネオジミア、セリア-ジルコニア-ランタナ-プラセオジミア、セリア-ジルコニア-ランタナ-ネオジミア-プラセオジミア、またはそれらの任意の組み合わせを含み、前記酸素貯蔵成分の量が、前記第1の層の総重量に基づいて、20~80重量%である、請求項1~5のいずれかに記載の層状触媒物品。
【請求項7】
前記アルミナ成分が、アルミナ、ランタナ-アルミナ、セリア-アルミナ、セリア-ジルコニア-アルミナ、ジルコニア-アルミナ、ランタナ-ジルコニア-アルミナ、バリア-アルミナ、バリア-ランタナ-アルミナ、バリア-ランタナ-ネオジミア-アルミナ、またはそれらの組み合わせを含み、前記アルミナ成分の量が、前記第1の層の前記総重量に基づいて、10~90重量%である、請求項1~6のいずれかに記載の層状触媒物品。
【請求項8】
前記ジルコニア成分が、ランタナ-ジルコニア、およびバリウム-ジルコニアを含む、請求項1~7のいずれかに記載の層状触媒物品。
【請求項9】
前記第1の層が、本質的に白金およびロジウムを含まない、請求項1~8のいずれかに記載の層状触媒物品。
【請求項10】
前記第1の層が、前記第1の層の前記総重量に基づいて、1.0~20重量%の量の酸化バリウム、酸化ストロンチウム、またはそれらの任意の組み合わせを含む、少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物を含む、請求項1~9のいずれかに記載の層状触媒物品。
【請求項11】
前記ジルコニア成分が、前記ジルコニア成分の総重量に基づいて、少なくとも70重量%のジルコニアを含む、請求項1~10のいずれかに記載の層状触媒物品。
【請求項12】
前記第1の層の前記酸素貯蔵成分が、前記酸素貯蔵成分の総重量に基づいて、20~50重量%の量のセリアを含み、一方で、前記第2の層の前記酸素貯蔵成分が、前記酸素貯蔵成分の総重量に基づいて、5~15重量%の量のセリアを含む、請求項1~11のいずれかに記載の層状触媒物品。
【請求項13】
前記第2の層が、アルミナ成分に担持されたパラジウムをさらに含み、前記パラジウムの量が、前記触媒物品中に存在するパラジウムの前記総重量に基づいて、0.1~20%である、請求項1~12のいずれかに記載の層状触媒物品。
【請求項14】
前記第1の層が、前記アルミナ成分および前記酸素貯蔵成分に担持された1.0~300g/ftのパラジウムで充填され、前記第2の層が、1.0~100g/ftのロジウムおよび1.0~300g/ftの白金で充填され、各々が前記酸素貯蔵成分および/または前記ジルコニア成分に担持される、請求項1~13のいずれかに記載の層状触媒物品。
【請求項15】
前記第1の層が、前記酸素貯蔵成分および前記アルミナ成分に担持されたパラジウムを含み、前記第2の層が、各々が前記酸素貯蔵成分に担持される、ロジウムおよび白金、ならびに前記アルミナ成分に担持されたパラジウムを含む、請求項1~14のいずれかに記載の層状触媒物品。
【請求項16】
前記第1の層が、前記酸素貯蔵成分およびアルミナ成分に担持されたパラジウムを含み、前記第2の層が、前記酸素貯蔵成分に担持されたロジウム、および前記ジルコニア成分に担持された白金を含む、請求項1~15のいずれかに記載の層状触媒物品。
【請求項17】
前記基材が、セラミック基材、金属基材、セラミック発泡体基材、ポリマー発泡体基材、または織物繊維基材である、請求項1~16のいずれかに記載の層状触媒物品。
【請求項18】
前記白金および/またはパラジウムが、熱的または化学的に固定される、請求項1~17のいずれかに記載の層状触媒物品。
【請求項19】
請求項1~18のいずれかに記載の層状触媒物品の調製のためのプロセスであって、前記プロセスが、第1の層のスラリーを調製することと、基材上に前記第1の層のスラリーを堆積させて、第1の層を得ることと、第2の層のスラリーを調製することと、前記第1の層上に前記第2の層のスラリーを堆積させて、400~700℃の範囲の温度における焼成が続く、第2の層を得ることと、を含み、前記第1の層のスラリーまたは第2の層のスラリーを調製する工程が、初期湿潤含浸、初期湿潤共含浸、および後添加から選択される技術を含む、プロセス。
【請求項20】
内燃機関用の排気システムであって、前記システムが、請求項1~18のいずれかに記載の層状触媒物品を含む、排気システム。
【請求項21】
前記システムが、白金族金属系の三元変換(TWC)触媒物品と、請求項1~18のいずれかに記載の層状触媒物品と、を含み、前記白金族金属系の三元変換(TWC)触媒物品が、内燃機関の下流に位置決めされており、前記層状触媒物品が、前記白金族金属系の三元変換(TWC)触媒物品と流体連通して下流に位置決めされている、請求項20に記載の排気システム。
【請求項22】
前記システムが、白金族金属系の三元変換(TWC)触媒物品と、請求項1~18のいずれかに記載の層状触媒物品と、を含み、前記層状触媒物品が、内燃機関の下流に位置決めされており、前記白金族金属系の三元変換(TWC)触媒物品が、前記三元変換(TWC)触媒物品と流体連通して下流に位置決めされている、請求項20に記載の排気システム。
【請求項23】
炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物を含む、ガス状排気流を処理する方法であって、前記方法が、前記排気流を、請求項1~18のいずれかに記載の層状触媒物品または請求項20~22に記載の排気システムと接触させることを含む、方法。
【請求項24】
ガス状排気流中の炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物レベルを低減させる方法であって、前記方法が、前記ガス状排気流を、請求項1~18のいずれかに記載の層状触媒物品、または請求項20~22に記載の排気システムと接触させて、排気ガス中の炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物の前記レベルを低減することを含む、方法。
【請求項25】
炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物を含むガス状排気流を精製するための、請求項1~18のいずれかに記載の触媒物品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月18日に出願された、米国仮出願第62/819695号、および2019年4月16日に出願された、欧州出願第19169497.5号に対する優先権の利益を主張する。
【0002】
特許請求される本発明は、内部に含有された汚染物質を低減するための排気ガスの処理に有用な層状触媒物品に関する。具体的には、特許請求される本発明は、層状三金属触媒物品および触媒物品を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
三元変換(TWC)触媒(以下、三元変換触媒、三元触媒、TWC触媒、およびTWCと互換的に呼ぶ)は、内燃機関からの排気ガス流の処理に数年間利用されてきた。概して、炭化水素、窒素酸化物、および一酸化炭素などの汚染物質を含有する排気ガスを処理または精製するために、三元変換触媒を含有する触媒コンバータが、内燃機関の排気ガスラインにおいて使用される。三元変換触媒は、典型的には、未燃の炭化水素および一酸化炭素を酸化し、窒素酸化物を低減することが既知である。
【0004】
典型的に、市販のTWC触媒のほとんどは、少量のロジウムとともに使用される、主要な白金族金属成分としてパラジウムを含有する。排気ガス汚染物質の量を低減させるために役立つ触媒コンバータの作製に大量のパラジウムが使用されるため、今後数年間で市場におけるパラジウムの供給不足が発生し得る可能性がある。現在、パラジウムは、白金よりもおよそ20~25%高価である。同時に、白金需要の低下に起因して、白金価格は、低下すると予想される。その理由の1つは、ディーゼル車の生産量の低下であり得る。
【0005】
したがって、触媒のコストを実質的に低減させるために、TWC触媒においてパラジウムの一部分を白金で置き換えることが所望される。しかしながら、提案されたアプローチは、触媒の所望の効力を維持または改善する必要性により、複雑となり、これは、パラジウムの一部分を白金で単に置き換えることによっては不可能であり得る。
【0006】
それゆえ、特許請求される本発明の焦点は、個々のCO、HC、およびNO変換レベル、ならびに非メタン炭化水素(NMHC)および亜酸化窒素(NO)の略式テールパイプ排出量の比較によって記載されるように、全体的な触媒性能を低下させることなく、パラジウムの約50%が白金で置換される触媒を提供することであり、これは、大多数の管轄区域の規制機関による車両認証の重要な必要条件の1つである。
【発明の概要】
【0007】
特許請求される本発明は、酸素貯蔵成分およびアルミナ成分のうちの少なくとも一方に担持されたパラジウムを含む第1の層と、白金およびロジウムを含み、各々が酸素貯蔵成分およびジルコニア成分のうちの少なくとも一方に担持された第2の層と、基材と、を含む三金属(Pt/Pd/Rh)層状触媒物品を提供し、パラジウムの白金に対する重量比は、1.0:0.4~1.0:2.0の範囲にあり、第1の層は、基材上に堆積され、第2の層は、第1の層上に堆積される。一実施形態では、パラジウムの白金に対する重量比は、1.0:0.7~1.0:1.3の範囲にある。一実施形態では、パラジウム対白金対ロジウムの重量比は、1.0:0.7:0.1~1.0:1.3:0.3の範囲にある。
【0008】
一実施形態では、第1の層は、白金およびロジウムを本質的に含まない。一実施形態では、第2の層は、アルミナ成分に担持されたパラジウムをさらに含み得る。
【0009】
特許請求される本発明の別の態様では、層状触媒物品の調製のためのプロセスを提供し、該プロセスは、第1の層のスラリーを調製することと、基材上に第1の層のスラリーを堆積させて、第1の層を得ることと、第2の層のスラリーを調製することと、第1の層上に第2の層のスラリーを堆積させて、400~700℃の範囲の温度における焼成が続く、第2の層を得ることと、を含み、第1の層のスラリーまたは第2の層のスラリーを調製する工程は、初期湿潤含浸、初期湿潤共含浸、および後添加から選択される技術を含む。
【0010】
なお別の態様における特許請求される本発明は、内燃機関用の排気システムを提供し、該システムが、本発明の層状触媒物品を含む。
【0011】
特許請求される本発明はまた、炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物を含む、ガス状排気流を処理する方法を提供し、方法は、本発明に従って、該排気流を層状触媒物品または排気システムと接触させることを含む。特許請求される本発明は、ガス状排気流中の炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物レベルを低減させる方法をさらに提供し、本方法は、本発明に従って、ガス状排気流を、層状触媒物品または排気システムと接触させて、排気ガス中の炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物のレベルを低減することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の実施形態の理解を提供するために、添付図面が参照され、これらは、必ずしも縮尺どおりに描かれておらず、参照番号は、本発明の例示的な実施形態の成分を指す。図面は、単なる例示であり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。特許請求される本発明の上および他の特色、それらの性質、ならびに様々な利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を考慮すると、より明らかになるであろう。
図1】特許請求される本発明のいくつかの実施形態による、例示的な構成における触媒物品の設計の概略図である。
図2】特許請求される本発明のいくつかの実施形態による、排気システムの概略図である。
図3A】本発明の触媒Bおよび基準触媒の累積THC排出量、NO排出量、CO排出量に関する比較試験結果を示す線グラフである。
図3B】本発明の触媒Bおよび基準触媒の累積THC排出量、NO排出量、CO排出量に関する比較試験結果を示す線グラフである。
図3C】本発明の触媒Bおよび基準触媒の累積THC排出量、NO排出量、CO排出量に関する比較試験結果を示す線グラフである。
図4A】本発明の触媒Aおよび基準触媒のミッドベッドおよびテールパイプにおける累積HC排出量に関する比較試験結果を示す線グラフを例解する。
図4B】本発明の触媒Aおよび基準触媒のミッドベッドおよびテールパイプにおける累積CO排出量に関する比較試験結果を示す線グラフを例解する。
図4C】本発明の触媒Aおよび基準触媒のミッドベッドおよびテールパイプにおける累積NO排出量に関する比較試験結果を示す線グラフを例解する。
図5A】触媒C、D、E、および基準触媒の累積CO排出量、NO排出量、THC排出量に関する比較試験結果を示す線グラフである。
図5B】触媒C、D、E、および基準触媒の累積CO排出量、NO排出量、THC排出量に関する比較試験結果を示す線グラフである。
図5C】触媒C、D、E、および基準触媒の累積CO排出量、NO排出量、THC排出量に関する比較試験結果を示す線グラフである。
図6A】特許請求される本発明の一実施形態による、触媒組成物を含み得る、ハニカム型基材担体の斜視図である。
図6B図6Aに対して拡大され、かつ図6Aの基材担体の端面に平行な平面に沿って取得された部分断面図であり、図6Aに示される複数のガス流路の拡大図を示す。
図7図6A内のハニカム型基材が、壁流フィルタ基材モノリスを表現する、図6Aに対して拡大された区分の切断図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
これより、以下で本発明をより十分に説明する。本発明は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本発明が十分かつ完全であり、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。本明細書中のいかなる言葉も、請求されていない要素を、開示された材料および方法の実施に必須であることを示すものと解釈されるべきではない。
【0014】
本明細書に考察される材料および方法を説明する文脈(特に以下の請求項の文脈)における「a」、「an」、「the」という用語、および同様の指示語の使用は、本明細書で別途指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を網羅すると解釈される。
【0015】
本明細書全体を通して使用される「約」という用語は、小さな変動を説明し、釈明するために使用される。例えば、「約」という用語は、±5%以下、例えば、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.2%以下、±0.1%以下、または±0.05%以下を指す。すべての数値は、明示的に示されているか否かに関わらず、「約」という用語によって修飾される。もちろん、「約」という用語によって修飾される値には、特定の値が含まれる。例えば、「約5.0」には、5.0が含まれる必要がある。
【0016】
本明細書に記載されているすべての方法は、本明細書で別途指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行することができる。本明細書で提供される任意およびすべての例または例示的言語(例えば「など」)の使用は、材料および方法をよりよく説明することのみを意図したものであり、別途請求されない限り、範囲を限定するものではない。
【0017】
本発明は、大量の白金が、パラジウムを実質的に置換するために使用され得る、3つの白金族金属(PGM)を含む三金属層状触媒物品を提供する。
【0018】
白金族金属(PGM)は、PGM(Ru、Rh、Os、Ir、Pd、Pt、および/またはAu)を含む任意の成分を指す。例えば、PGMは、原子価がゼロの金属形態であってもよいか、またはPGMは、酸化物形態であってもよい。「PGM成分」についての言及は、任意の価電子状態でのPGMの存在を考慮に入れている。「白金(Pt)成分」、「ロジウム(Rh)成分」、「パラジウム(Pd)成分」、「イリジウム(Ir)成分」、「ルテニウム(Ru)成分」などの用語は、触媒のか焼または使用時に分解するか、さもなければ触媒活性形態、通常は金属または金属酸化物に変換する、それぞれの白金族金属化合物、錯体などを指す。
【0019】
一実施形態では、パラジウムおよび白金は、ある条件下で触媒の効力を制限する可能性のある合金の形成を回避するために、別々の層で提供される。合金の形成は、コアシェル構造の形成、過剰なPGM安定化、および/または焼結をもたらす可能性がある。触媒物品の最良の性能は、パラジウムが下層中に提供され、白金およびロジウムが上層中に提供されるときに見られ、すなわち、異なるウォッシュコート層における白金およびパラジウムの物理的な分離が、改善された性能を可能にする。別の実施形態では、白金およびパラジウムは、同じ層、例えば、上層に提供され、白金もしくはパラジウムのいずれか、または両方が、スラリー調製の前に担持体上に熱的または化学的に固定される。本発明の文脈において、「第1の層」という用語は、「下層」または「ボトムコート」と互換的に使用され、一方で、「第2の層」という用語は、「上層」または「トップコート」と互換的に使用される。第1の層は、基材上に堆積され、第2の層は、第1の層上に堆積される。
【0020】
「触媒」、「触媒物品(catalytic article)」、または「触媒物品(catalyst article)」という用語は、基材が、所望の反応を促進するために使用される触媒組成物でコーティングされた成分を指す。一実施形態では、触媒物品は、層状触媒物品である。層状触媒物品という用語は、基材が、層状の様式においてPGM組成物でコーティングされる触媒物品を指す。これらの組成物は、ウォッシュコートと称され得る。
【0021】
「NO」という用語は、NOおよび/またはNOなどの窒素酸化物化合物を指す。
【0022】
白金族金属は、アルミナ成分、酸素貯蔵成分などの担持体材料上に担持または含浸される。本明細書で使用される場合、「含浸させた」または「含浸」とは、支持体材料の細孔性構造に触媒材料を浸透させることを指す。
【0023】
触媒材料もしくは触媒組成物または触媒ウォッシュコートにおける「担体」は、沈殿、会合、分散、含浸、または他の好適な方法によって金属(例えば、PGM)、安定剤、促進剤、結合剤などを受容する材料を指す。例示的な担体としては、本明細書で以下に記載されるような耐熱金属酸化物担体が挙げられる。
【0024】
「耐火性金属酸化物支持体」は、例えば、バルクアルミナ、セリア、ジルコニア、チタニア、シリカ、マグネシア、ネオジミア、およびそのような使用で知られている他の材料、ならびに原子ドープされた組み合わせを含み、かつ高表面積または活性化アルミナなどの活性化合物を含む、それらの物理的混合物または化学的組み合わせを含む金属酸化物である。
【0025】
金属酸化物の例示的な組み合わせとしては、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-セリア-ジルコニア、ランタナ-アルミナ、ランタナ-ジルコニア-アルミナ、バリア-アルミナ、バリア-ランタナ-アルミナ、バリアランタナ-ネオジミアアルミナ、およびアルミナ-セリアが挙げられる。例示的なアルミナは、大きい細孔のベーマイト、ガンマ-アルミナ、およびデルタ/シータアルミナを含む。例示的なプロセスにおいて出発材料として使用される有用な市販のアルミナとしては、高嵩密度ガンマ-アルミナ、低または中嵩密度大細孔ガンマ-アルミナ、ならびに低嵩密度大細孔ベーマイトおよびガンマ-アルミナなどの、活性アルミナが挙げられる。そのような材料は、一般に、得られる触媒に耐久性を提供すると考えられている。
【0026】
「高表面積の耐火性金属酸化物担体」という用語は、具体的には、20Åより大きい細孔および広い細孔分布を有する担体粒子を指す。高表面積の耐熱金属酸化物担体、例えば、「ガンマアルミナ」または「活性アルミナ」とも呼ばれるアルミナ担体材料は、典型的には、1グラムあたり60平方メートル(「m/g」)を超える、多くの場合最大約300m/g以上の未使用の材料のBET表面積を呈する。そのような活性化アルミナは通常、アルミナのガンマ相とデルタ相との混合物であるが、相当量のエータ、カッパ、およびシータアルミナ相も含有してもよい。
【0027】
したがって、本発明は、酸素貯蔵成分およびアルミナ成分のうちの少なくとも一方に担持されたパラジウムを含む第1の層と、白金およびロジウムを含み、各々が酸素貯蔵成分およびジルコニア成分のうちの少なくとも一方に担持された第2の層と、基材と、を含む三金属層状触媒物品を提供し、パラジウムの白金に対する重量比は、1.0:0.4~1.0:2.0の範囲にあり、第1の層は、基材上に堆積され、第2の層は、第1の層上に堆積される。
【0028】
一実施形態では、パラジウムの白金に対する重量比は、1:0.7~1:1.3の範囲にある。一例示的実施形態では、三金属層状触媒物品は、酸素貯蔵成分およびアルミナ成分のうちの少なくとも一方に担持されたパラジウムを含む第1の層と、酸素貯蔵成分およびジルコニア成分のうちの少なくとも一方に担持された白金およびロジウムを含む第2の層と、基材と、を含み、パラジウムの白金に対する重量比は、1.0:0.7~1.0:1.3の範囲にあり、第1の層は、基材上に堆積され、第2の層は、第1の層上に堆積される。
【0029】
一実施形態では、パラジウム対白金対ロジウムの重量比は、1.0:0.7:0.1~1.0:1.3:0.3である。一例示的実施形態では、三金属層状触媒物品は、酸素貯蔵成分およびアルミナ成分のうちの少なくとも一方に担持されたパラジウムを含む第1の層と、白金およびロジウムを含み、各々が酸素貯蔵成分およびジルコニア成分のうちの少なくとも一方に担持された第2の層と、基材と、を含み、パラジウム対白金対ロジウムの重量比は、1.0:0.7:0.1~1.0:1.3:0.3の範囲にあり、第1の層は、基材上に堆積され、第2の層は、第1の層上に堆積される。
【0030】
一実施形態では、三金属層状触媒物品は、酸素貯蔵成分およびアルミナ成分のうちの少なくとも一方に担持されたパラジウムを含む第1の層と、白金およびロジウムを含み、各々が酸素貯蔵成分およびジルコニア成分のうちの少なくとも一方に担持された第2の層と、基材と、を含み、パラジウムの白金に対する重量比は、1.0:0.4~1.0:2.0の範囲にあり、第1の層は、基材上に堆積され、第2の層は、第1の層上に堆積され、第1の層は、触媒物品中に存在するパラジウムの総重量に対して、80~100重量%のパラジウムを含む。
【0031】
一実施形態では、三金属層状触媒物品は、酸素貯蔵成分およびアルミナ成分のうちの少なくとも一方に担持されたパラジウムを含む第1の層と、白金およびロジウムを含み、各々が酸素貯蔵成分およびジルコニア成分のうちの少なくとも一方に担持された第2の層と、基材と、を含み、パラジウムの白金に対する重量比は、1.0:0.4~1.0:2.0の範囲にあり、第1の層は、基材上に堆積され、第2の層は、第1の層上に堆積され、第1の層は、白金およびロジウムを本質的に含まない。本明細書で使用される場合、「白金およびロジウムを本質的に含まない」という用語は、第1の層中に白金およびロジウムの外部からの添加がないことを指し、しかしながら、それらは、任意選択的に、<0.001%の端数として存在し得る。
【0032】
一実施形態では、第1の層は、第1の層の総重量に基づいて、1.0~20重量%の量の酸化バリウム、酸化ストロンチウム、またはそれらの任意の組み合わせを含む、少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物を含む。
【0033】
一実施形態では、三金属層状触媒物品は、酸素貯蔵成分およびアルミナ成分のうちの少なくとも一方に担持されたパラジウムを含む第1の層と、白金およびロジウムを含み、各々が酸素貯蔵成分およびジルコニア成分のうちの少なくとも一方に担持された第2の層と、基材と、を含み、パラジウムの白金に対する重量比は、1.0:0.4~1.0:2.0の範囲にあり、第1の層は、基材上に堆積され、第2の層は、第1の層上に堆積され、第2の層は、アルミナに担持されたパラジウムをさらに含み、パラジウムの量は、触媒物品中に存在するパラジウムの総重量に対して、0.1~20重量%である。
【0034】
一例示的実施形態では、三金属層状触媒物品は、酸素貯蔵成分およびアルミナ成分のうちの少なくとも一方に担持されたパラジウムを含む第1の層と、各々が酸素貯蔵成分およびジルコニア成分のうちの少なくとも一方に担持された、白金およびロジウム、ならびにアルミナに担持されたパラジウムを含む第2の層と、基材と、を含み、パラジウムの白金に対する重量比は、1.0:0.4~1.0:2.0の範囲にある。一例示的実施形態では、三金属層状触媒物品は、酸素貯蔵成分およびアルミナ成分のうちの少なくとも一方に担持されたパラジウムを含む第1の層と、各々が酸素貯蔵成分およびジルコニア成分のうちの少なくとも一方に担持された、白金およびロジウム、ならびにアルミナ成分に担持されたパラジウムを含む第2の層と、基材と、を含み、パラジウムの白金に対する重量比は、1.0:0.7~1.0:1.3の範囲にあり、第1の層は、基材上に堆積され、第2の層は、第1の層上に堆積される。
【0035】
一例示的実施形態では、三金属層状触媒物品は、i)酸素貯蔵成分およびアルミナ成分のうちの少なくとも一方に担持されたパラジウム、およびii)酸化バリウムを含む第1の層と、各々が酸素貯蔵成分、ジルコニア成分のうちの少なくとも一方に担持された白金およびロジウム、ならびにアルミナ成分に担持されたパラジウムを含む第2の層と、基材と、を含み、パラジウムの白金に対する重量比は、1.0:0.7~1.0:1.3の範囲にあり、第1の層は、基材上に堆積され、第2の層は、第1の層上に堆積される。
【0036】
一実施形態では、ジルコニア成分は、少なくとも70%のジルコニアを含む。
【0037】
一実施形態では、白金および/またはパラジウムは、熱的または化学的に固定される。
【0038】
一実施形態では、三金属層状触媒物品は、酸素貯蔵成分およびアルミナ成分のうちの少なくとも一方に担持されたパラジウムを含む第1の層と、各々が酸素貯蔵成分、ジルコニア成分のうちの少なくとも一方に担持された白金およびロジウム、ならびにアルミナ成分に担持されたパラジウムを含む第2の層と、基材と、を含み、パラジウムの白金に対する重量比は、1.0:0.7~1.0:1.3の範囲にあり、第2の層中に存在する白金および/またはパラジウムは、熱的または化学的に固定され、第1の層は、基材上に堆積され、第2の層は、第1の層上に堆積される。
【0039】
一実施形態では、三金属層状触媒物品は、アルミナ成分および酸素貯蔵成分に担持された1.0~300g/ftのパラジウムが充填された第1の層と、1.0~100g/ftのロジウムおよび1.0~300g/ftの白金が充填され、各々が酸素貯蔵成分および/またはジルコニア成分に担持された第2の層と、を含み、第1の層は、基材上に堆積され、第2の層は第1の層上に堆積される。
【0040】
一実施形態では、ロジウムは、4.0~12g/ftの量で使用される。例示的な一実施形態では、ロジウムは、4g/ftの量で使用される。一実施形態では、パラジウムは、20~80g/ftの量で使用される。例示的な一実施形態では、パラジウムは、38g/ftの量で使用される。一実施形態では、白金は、20~80g/ftの量で使用される。一実施形態では、白金は、38g/ftの量で使用される。
【0041】
一例示的実施形態では、三金属層状触媒物品は、酸素貯蔵成分およびアルミナ成分に担持されたパラジウムを含む第1の層と、酸素貯蔵成分に担持されたロジウムおよび白金、ならびにアルミナ成分に担持されたパラジウムを含む第2の層と、を含み、第1の層は、基材上に堆積され、第2の層は、第1の層上に堆積される。
【0042】
好ましい実施形態のうちの1つでは、パラジウムの白金に対する重量比は、1.0:1.0である。一例示的実施形態では、三金属層状触媒物品は、酸素貯蔵成分およびアルミナ成分のうちの少なくとも一方に担持されたパラジウムを含む第1の層と、酸素貯蔵成分およびジルコニア成分のうちの少なくとも一方に担持された白金およびロジウムを含む第2の層と、基材と、を含み、パラジウムの白金に対する重量比は、1.0~1.0の範囲にあり、第1の層は、基材上に堆積され、第2の層は、第1の層上に堆積される。
【0043】
別の例示的な実施形態では、三金属層状触媒物品は、酸素貯蔵成分およびアルミナ成分に担持されたパラジウムを含む第1の層と、各々が酸素貯蔵成分に担持されたロジウムおよび白金、ならびにアルミナ成分に担持されたパラジウムを含む第2の層と、を含み、パラジウムの白金に対する重量比は、1.0:1.0であり、第1の層は、基材上に堆積され、第2の層は、第1の層上に堆積される。別の例示的な実施形態では、三金属層状触媒物品は、酸素貯蔵成分およびアルミナ成分に担持されたパラジウムを含む第1の層と、各々が酸素貯蔵成分に担持されたロジウムおよび白金、ならびにアルミナ成分に担持されたパラジウムを含む第2の層と、を含み、パラジウムの白金に対する重量比は、1.0:1.0であり、第1の層は、基材上に堆積され、第2の層は、第1の層上に堆積され、第2の層中に存在する白金および/またはパラジウムは、熱的または化学的に固定される。
【0044】
別の例示的な実施形態では、三金属層状触媒物品は、酸素貯蔵成分およびアルミナ成分に担持されたパラジウム、ならびに酸化バリウムを含む第1の層と、各々が酸素貯蔵成分に担持されたロジウムおよび白金、ならびにアルミナ成分に担持されたパラジウムを含む第2の層と、を含み、パラジウムの白金に対する重量比は、1.0:1.0であり、第1の層は、基材上に堆積され、第2の層は、第1の層上に堆積される。
【0045】
別の例示的な実施形態では、三金属層状触媒物品は、酸素貯蔵成分およびアルミナ成分に担持されたパラジウム、ならびに酸化バリウムを含む第1の層と、各々が酸素貯蔵成分に担持されたロジウムおよび白金、ならびにアルミナ成分に担持されたパラジウムを含む第2の層と、を含み、パラジウムの白金に対する重量比は、1.0:1.0であり、第2の層中に存在する白金および/またはパラジウムは、熱的または化学的に固定され、第1の層は、基材上に堆積され、第2の層は、第1の層上に堆積される。
【0046】
さらに別の例示的な実施形態では、三金属層状触媒物品は、酸素貯蔵成分およびアルミナ成分に担持されたパラジウムを含む第1の層と、酸素貯蔵成分に担持されたロジウム、および酸素貯蔵成分に担持された白金を含む第2の層と、を含み、パラジウムの白金に対する重量比は、1.0:0.7~1.0:1.3であり、第1の層は、基材上に堆積され、第2の層は、第1の層上に堆積される。さらに別の例示的な実施形態では、三金属層状触媒物品は、酸素貯蔵成分およびアルミナ成分に担持されたパラジウムを含む第1の層と、酸素貯蔵成分に担持されたロジウム、およびジルコニア成分に担持された白金を含む第2の層と、を含み、パラジウムの白金に対する重量比は、1.0:1.0であり、第1の層は、基材上に堆積され、第2の層は、第1の層上に堆積される。さらに別の例示的な実施形態では、第1の層は、酸素貯蔵成分およびアルミナ成分に担持されたパラジウムを含み、第2の層は、酸素貯蔵成分に担持されたロジウム、およびジルコニア成分に担持された白金を含み、パラジウムの白金に対する重量比は、1.0:1.0である。さらなる例示的な実施形態では、三金属層状触媒物品は、酸素貯蔵成分およびアルミナ成分に担持されたパラジウム、ならびに酸化バリウムを含む第1の層と、酸素貯蔵成分に担持されたロジウム、およびジルコニア成分に担持された白金を含む第2の層と、を含み、パラジウムの白金に対する重量比は、1.0:1.0であり、第1の層は、基材上に堆積され、第2の層は、第1の層上に堆積される。
【0047】
例示的な一実施形態では、三金属層状触媒物品は、酸素貯蔵成分およびアルミナ成分の両方に担持されたパラジウム、ならびに酸化バリウムを含む第1の層と、酸素貯蔵成分に担持されたロジウムおよび白金、ならびにアルミナ成分に担持されたパラジウムを含む第2の層と、を含み、パラジウムの白金に対する重量比は、1.0:1.0であり、第1の層は、基材上に堆積され、第2の層は、第1の層上に堆積される。別の例示的な実施形態では、三金属層状触媒物品は、酸素貯蔵成分およびアルミナ成分の両方に担持されたパラジウム、ならびに酸化バリウムを含む第1の層と、酸素貯蔵成分に担持されたロジウム、およびランタナ-ジルコニア成分に担持された白金を含む第2の層と、を含み、パラジウムの白金に対する重量比は、1.0:1.0であり、第1の層は、基材上に堆積され、第2の層は、第1の層上に堆積される。
【0048】
一例示的実施形態では、三金属層状触媒物品は、酸素貯蔵成分およびアルミナ成分の両方に担持された30.4g/ftのパラジウム、ならびに酸化バリウムを含む第1の層と、酸素貯蔵成分に担持された4.0g/ftのロジウムおよび38g/ftの白金、ならびにアルミナ成分に担持された7.6g/ftのパラジウムを含む第2の層と、を含み、第1の層は、基材上に堆積され、第2の層は、第1の層上に堆積される。
【0049】
一例示的実施形態では、三金属層状触媒物品は、酸素貯蔵成分およびアルミナ成分の両方に担持された38g/ftのパラジウム、ならびに酸化バリウムを含む第1の層と、酸素貯蔵成分に担持された4g/ftのロジウムおよびランタナージルコニア成分に担持された38g/ftの白金を含む第2の層と、を含み、第1の層は、基材上に堆積され、第2の層は、第1の層上に堆積される。
【0050】
本明細書で使用される場合、「酸素貯蔵成分」(OSC)という用語は、多価状態を有し、かつ還元条件下で一酸化炭素(CO)および/または水素などの還元剤と能動的に反応し、次いで酸化条件下で酸素または窒素酸化物などの酸化剤と反応することができる実体を指す。酸素貯蔵成分の例としては、前周期遷移金属酸化物、特にジルコニア、ランタナ、プラセオジミア、ネオジミア、ニオビア、ユーロピア、サマリア、イッテルビア、イットリア、およびそれらの混合物で任意選択的にドープされたセリア複合材料が挙げられる。
【0051】
一実施形態では、第1および/または第2の層中で利用される酸素貯蔵成分は、セリア-ジルコニア、セリア-ジルコニア-ランタナ、セリア-ジルコニア-イットリア、セリア-ジルコニア-ランタナ-イットリア、セリア-ジルコニア-ネオジミア、セリア-ジルコニア-プラセオジミア、セリア-ジルコニア-ランタナ-ネオジミア、セリア-ジルコニア-ランタナ-プラセオジミア、セリア-ジルコニア-ランタナ-ネオジミア-プラセオジミア、またはそれらの任意の組み合わせを含み、酸素貯蔵成分の量は、第1の層または第2の層の総重量に基づいて、20~80重量%である。一例示的実施形態では、酸素貯蔵成分は、セリア-ジルコニアを含む。
【0052】
一実施形態では、アルミナ成分は、アルミナ、ランタナ-アルミナ、セリア-アルミナ、セリア-ジルコニア-アルミナ、ジルコニア-アルミナ、ランタナ-ジルコニア-アルミナ、バリア-アルミナ、バリア-ランタナ-アルミナ、バリア-ランタナ-ネオジミア-アルミナ、またはそれらの組み合わせを含み、アルミナ成分の量は、第1の層または第2の層の総重量に基づいて、10~90重量%である。
【0053】
一実施形態では、酸素貯蔵成分は、酸素貯蔵成分の総重量に基づいて、5.0~50重量%の量のセリアを含む。一実施形態では、第1の層の酸素貯蔵成分は、酸素貯蔵成分の総重量に基づいて、20~50重量%の量のセリアを含む。一実施形態では、第2の層の酸素貯蔵成分は、酸素貯蔵成分の総重量に基づいて、5.0~15重量%の量のセリアを含む。
【0054】
本発明の文脈では、ジルコニア成分という用語は、ランタナ、またはバリア、またはセリアによって安定化される、または促進されるジルコニア系担持体である。実施例は、ランタナ-ジルコニア、およびバリウム-ジルコニアを含む。
【0055】
本明細書で使用される場合、「基材」という用語は、典型的には、触媒組成物を含有する複数の粒子を含有するウォッシュコートの形態のモノリス材料を指し、モノリシック材料上に触媒材料が置かれている。
【0056】
「モノリシック基材」、または「ハニカム基材」への言及は、入口から出口まで均質かつ連続的な単一構造を意味する。
【0057】
本明細書で使用される場合、「ウォッシュコート」という用語は、処理されるガス流の通過を可能にするのに十分に細孔性である、ハニカム型担体部材などの基材材料に適用される触媒または他の材料の薄い接着性のコーティングの当該技術分野におけるその通常の意味を有する。ウォッシュコートは、液体ビヒクル中のある特定の固体含有量(例えば15%~60重量%)の粒子を含有するスラリーを調製し、次いでこれを基材上にコーティングし、乾燥させてウォッシュコート層を提供することによって形成される。
【0058】
本明細書において使用され、Heck,Ronald,and Farrauto,Robert,Catalytic Air Pollution Control,New York:Wiley-Interscience,2002,pp.18-19に記載されているように、ウォッシュコート層は、モノリシック基材または下側のウォッシュコート層の表面に配置された材料の、組成的に区別される層を含む。一実施形態では、基材は、1つ以上のウォッシュコート層を含有し、各ウォッシュコート層は、何らかの方式で異なる(例えば、粒子サイズまたは結晶子相などの、例えばその物理的特性において異なり得る)、および/または化学的触媒機能が異なり得る。
【0059】
触媒物品は、「未使用」であってもよく、これは、触媒物品が新しく、任意の熱または熱的ストレスに長期間の間曝露されていないことを意味する。「未使用」とはまた、触媒が最近調製され、任意の排気ガスまたは高温にさらされていないことを意味し得る。同様に、「エージングした」触媒物品は、未使用ではなく、長期間(すなわち、3時間超)の間、排気ガスおよび高温(すなわち、500℃超)に曝露される。
【0060】
1つ以上の実施形態によれば、本発明の触媒物品の基材は、自動車触媒を調製するために典型的に使用される任意の材料で構築され得、典型的にはセラミックまたは金属モノリシックハニカム構造を備える。一実施形態では、基材は、セラミック基材、金属基材、セラミック発泡体基材、ポリマー発泡体基材、または織物繊維基材である。
【0061】
基材は、典型的には、上記で本明細書に記載の触媒組成物を含むウォッシュコートが塗布および接着される複数の壁面を提供し、それにより触媒組成物用の担体として作用する。
【0062】
例示的な金属基材は、チタンおよびステンレス鋼ならびに鉄が実質的なまたは主な成分である他の合金などの耐熱性金属および金属合金を含む。そのような合金は、ニッケル、クロム、および/またはアルミニウムのうちの1つ以上を含有し得、これらの金属の総量は、有利には、合金の少なくとも15重量%、例えば、10~25重量%のクロム、3~8重量%のアルミニウム、および最大20重量%のニッケルを含み得る。合金はまた、マンガン、銅、バナジウム、およびチタンなどの、少量または微量の1つ以上の金属を含有し得る。金属基材の表面は、高温、例えば、1000℃以上で酸化されて、基材の表面上に酸化物層を形成してもよく、合金の耐食性を改善し、金属表面へのウォッシュコート層の接着を容易にする。
【0063】
基材の構築に使用されるセラミック材料としては、任意の好適な耐火性材料、例えば、コーディエライト、ムライト、コーディエライト-アルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカマグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、アルミナ、アルミノシリケートなどを挙げることができる。
【0064】
通路が流体流に開放されるように、基材の入口から出口面まで延在する複数の微細で平行なガス流路を有するモノリシックフロースルー基材などの、任意の好適な基材を用いることができる。入口から出口への本質的に直線の経路である通路は、通路を通して流れるガスが触媒材料と接触するように、触媒材料がウォッシュコートとしてコーティングされる壁によって画定される。モノリシック基材の流路は、例えば、台形、長方形、正方形、正弦波形状、六角形、楕円形、および円形などの任意の好適な断面形状のものであり得る薄壁チャネルである。そのような構造は、断面1平方インチ(cpsi)あたり約60~約1200以上の、より一般的には、約300~900cpsiのガス入口開口部(すなわち、「セル」)を含有する。フロースルー基材の壁厚は、変動する可能性があり、典型的な範囲は、0.002~0.1インチである。代表的な市販のフロースルー基材は、400cpsiで6ミルの壁厚、または600cpsiで4ミルの壁厚を有するコーディエライト基材である。しかしながら、本発明は、特定の基材タイプ、材料、または形状に限定されないことが理解されるであろう。代替的な実施形態では、基材は、各通路が、基材本体の一端で非多孔性プラグによって閉塞され、交互の通路が反対側の端面で閉塞されている、壁流基材であってもよい。これは、出口に到達するために、ガス流が壁流基材の多孔質壁を通ることを必要とする。そのようなモノリシック基材は、約100~400cpsi、より典型的には、約200~約300cpsiなどの、最大約700またはそれよりも多いcpsiを含有し得る。セルの断面形状は、上記に説明されているように、変動する可能性がある。壁流基材は、典型的には、0.002~0.1インチの壁厚を有する。代表的な市販の壁流基材は、多孔性コーディエライトから構築され、その例は、200cpsiおよび10ミルの壁厚、または300cpsiおよび8ミルの壁厚、ならびに45~65%の壁の多孔度を有する。チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素、および窒化ケイ素などの他のセラミック材料もまた、壁流フィルタ基材として使用される。しかしながら、本発明は、特定の基材の種類、材料、または形状には限定されないことが理解されるであろう。基材が壁流基材である場合、触媒組成物は、壁の表面に配設されることに加えて、細孔性壁の細孔構造内に浸透し得る(すなわち、細孔開口部を部分的または完全に塞ぐ)ことに留意されたい。一実施形態では、基材は、フロースルーセラミックハニカム構造、壁流セラミックハニカム構造、または金属ハニカム構造を有する。
【0065】
本明細書で使用される場合、「流」という用語は、広義的には、固体または液体の微粒子状物質を含有し得る流動ガスの任意の組み合わせを指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、「上流」および「下流」という用語は、エンジンからテールパイプに向かうエンジン排気ガス流の流れに応じた相対的な方向を指し、エンジンが上流位置にあり、テールパイプならびにフィルタおよび触媒などの任意の汚染物軽減物品は、エンジンの下流にある。
【0067】
図6Aおよび6Bは、本明細書に記載のウォッシュコート組成物でコーティングされたフロースルー基材の形態の例示的な基材2を示している。図6Aを参照すると、例示的な基材2は、円筒形状を有し、円筒外面4、上流端面6、および端面6と同一の対応する下流端面8を有する。基材2は、内部に形成された複数の微細で平行なガス流路10を有する。図6Bに見られるように、流路10は、壁12によって形成され、基材2を通って上流端面6から下流端面8まで延在し、通路10は、遮られておらず、流体、例えば、ガス流が、そのガス流路10を介して基材2を通って長手方向に流れることを可能にする。図6Bでより容易に見られるように、壁12は、ガス流路10が実質的に規則的な多角形形状を有するように寸法決めされ、構成される。示されるように、ウォッシュコート組成物は、必要に応じて、複数の区別される層で適用することができる。示される実施形態では、ウォッシュコートは、基材部材の壁12に接着された別個の第1のウォッシュコート層14および第1のウォッシュコート層14の上にコーティングされた第2の別個のウォッシュコート層16からなる。一実施形態では、本発明はまた、2つ以上(例えば、3つまたは4つ)のウォッシュコート層で実施され、示される2層の実施形態に限定されない。
【0068】
図7は、本明細書に記載のウォッシュコート組成物でコーティングされた壁流フィルタ基材の形態の例示的な基材2を示している。図7に見られるように、例示的な基材2は、複数の通路52を有する。通路は、フィルタ基材の内壁53によって管状に囲まれている。基材は、入口端54および出口端56を有する。通路は、入口端で入口プラグ58により、出口端で出口プラグ60により交互に塞がれて、入口54および出口56で逆となる市松模様を形成する。ガス流62は、塞がれていないチャネル入口64を通して入り、出口プラグ60によって止められ、(多孔性である)チャネル壁53を通して出口側66に拡散する。ガスは、入口プラグ58を理由に、壁の入口側に戻って通ることができない。本発明で使用される細孔性壁フローフィルタは、その上にまたはその中に1つ以上の触媒材料を有するかまたは含有する当該要素の壁に触媒作用を有する。触媒材料は、要素壁の入口側のみ、出口側のみ、入口側および出口側の両方に存在してもよく、または壁自体が、触媒材料からすべてまたは一部が構成されてもよい。本発明は、要素の入口壁および/または出口壁における1個以上の触媒材料層の使用を含む。
【0069】
さらに別の態様によれば、特許請求される本発明は、触媒物品を調製するためのプロセスを提供する。一実施形態では、プロセスは、第1の層のスラリーを調製することと、基材上に第1の層のスラリーを堆積させて、第1の層を得ることと、第2の層のスラリーを調製することと、第1の層上に第2の層のスラリーを堆積させて、400~700℃の範囲の温度における焼成が続く、第2の層を得ることと、を含み、第1の層のスラリーまたは第2の層のスラリーを調製する工程は、初期湿潤含浸、初期湿潤共含浸、および後添加から選択される技術を含む。一実施形態では、プロセスは、白金もしくはパラジウム、またはその両方を担持体上に熱的または化学的に固定する前工程を含む。
【0070】
熱固定は、例えば、初期湿潤含浸法を介する担持体上へのPGMの堆積、続いて、得られたPGM/担持体混合物の熱焼成を含む。一例として、混合物は、1~25℃/分のランプ速度で400~700℃において1~3時間焼成される。
【0071】
化学的固定は、担持体上へのPGMの堆積、続いて、PGMを化学的に変換するための、追加の試薬を使用する固定を含む。一例として、水性Pd-硝酸塩が、アルミナ上に含浸される。含浸された粉末は、乾燥または焼成されるのではなく、代わりに、Baー水酸化物の水溶液に添加される。添加の結果として、酸性のPd-硝酸塩が、塩基性のBa-水酸化物と反応して、水不溶性のPd-水酸化物およびBa-硝酸塩を生成する。それゆえ、Pdは、細孔内およびアルミナ担持体の表面上に不溶性成分として化学的に固定される。代替的に、担持体は、最初に酸性成分で含浸され、続いて、第2の塩基性成分によって含浸され得る。担持体、例えば、アルミナに堆積した2つの試薬間の化学反応は、担持体の細孔および表面上に堆積する不溶性または溶解度の低い化合物の形成をもたらす。
【0072】
毛細管含浸または乾式含浸とも称される初期湿潤含浸技術は、一般的に、不均一系の材料、すなわち触媒の合成に使用される。典型的には、活性金属前駆体を水溶液または有機溶液に溶解させ、次いで触媒支持体に金属含有溶液を添加し、触媒支持体は、添加された溶液の体積と同じ細孔容積を含有する。毛細管現象により、溶液が支持体の細孔に引き込まれる。担体の細孔容積を超えて添加された溶液により、溶液輸送が、毛細管現象プロセスから、はるかに遅い拡散プロセスに変わる。触媒を乾燥および焼成して、溶液内の揮発性成分を除去し、触媒担体の表面上に金属を堆積させる。含浸させられた材料の濃度プロファイルは、含浸および乾燥の間の細孔内の物質移動条件に依存する。適切に希釈した後、複数の活性金属前駆体を触媒支持体に共含浸させてもよい。代替的に、活性金属前駆体は、スラリー調製のプロセス中に撹拌下で後添加を介してスラリーに導入される。
【0073】
担体粒子は、典型的には、溶液の実質的にすべてを吸収して、湿潤固体を形成するのに十分に乾燥している。典型的には、(ロジウムが活性金属である場合)塩化ロジウム、硝酸ロジウム、酢酸ロジウム、またはそれらの組み合わせ、および(パラジウムが活性金属である場合)硝酸パラジウム、パラジウムテトラアミン、酢酸パラジウム、またはそれらの組み合わせなどの活性金属の水溶性化合物または錯体の水溶液が利用される。活性金属溶液を用いた支持体粒子の処理後、粒子は、高温(例えば、100~150℃)で一定期間(例えば、1~3時間)、粒子を熱処理などによって乾燥させ、次いで、活性金属をより触媒的に活性な形態に変換するために焼成される。例示的な焼成プロセスは、400~550℃の温度で、10分間~3時間、空気中での熱処理を含む。必要に応じて、含浸の手段によって上のプロセスを繰り返して、所望の活性金属の充填レベルに到達させることができる。
【0074】
上記の触媒組成物は、典型的には、上記のように触媒粒子の形態で調製される。これらの触媒粒子を水と混合して、ハニカム型基材などの触媒基材をコーティングする目的でスラリーを形成する。触媒粒子に加えて、スラリーは、任意選択的に、アルミナ、シリカ、酢酸ジルコニウム、ジルコニア、もしくは水酸化ジルコニウム、会合性増粘剤、および/または界面活性剤(アニオン性、カチオン性、非イオン性、もしくは両性の界面活性剤を含む)の形態の結合剤を含有してもよい。他の例示的な結合剤としては、ベーマイト、ガンマ-アルミナ、またはデルタ/シータアルミナ、ならびにシリカゾルが挙げられる。バインダーは、存在する場合、一般的に、約1~5重量%の量のウォッシュコート総充填量で使用される。酸性または塩基性の種をスラリーの添加を行い、それによりpHを調整する。例えば、いくつかの実施形態では、スラリーのpHは、水酸化アンモニウム、硝酸水溶液、または酢酸の添加により調整される。スラリーの典型的なpH範囲は、約3~12である。
【0075】
スラリーを粉砕して、粒径を低減させ、粒子の混合を促進してもよい。粉砕は、ボールミル、連続ミル、または他の同様の機器で達成され、スラリーの固形分は、例えば、約20~60重量%、より具体的には、約20~40重量%であり得る。一実施形態では、粉砕後のスラリーは、約3~約40マイクロメートル、好ましくは10~約30マイクロメートル、より好ましくは約10~約15マイクロメートルのD90粒径によって特徴付けられる。D90は、専用の粒径分析装置を使用して決定される。この実施例で用いられている機器は、レーザー回折を使用して、少量のスラリーの粒径を測定する。ミクロン単位のD90は、典型的には、粒子の数の90%が、引用値よりも小さな直径を有することを意味する。
【0076】
当該技術分野において知られている任意のウォッシュコート技術を使用して、スラリーを触媒基材上にコーティングする。一実施形態では、触媒基材は、スラリーに1回以上浸漬されるか、または別様にスラリーでコーティングされる。その後、コーティングされた基材は、高温(例えば、100~150℃)で一定期間(例えば、10分~3時間)乾燥させ、次いで、例えば、400~700℃で、典型的には、約10分~約3時間加熱することによって焼成される。乾燥および焼成後、最終的なウォッシュコートコーティング層は、本質的に溶媒を含まないと考えられる。焼成の後に、上記のウォッシュコート技術により得られる触媒充填量は、基材のコーティングされた重量とコーティングされていない重量の差を計算することにより求めることが可能である。当業者に明らかであるように、触媒充填量は、スラリーのレオロジーを変えることにより修正することが可能である。加えて、ウォッシュコートを生成するためのコーティング/乾燥/焼成プロセスを必要に応じて繰り返して、コーティングを所望の充填水準または厚さに構築すること、すなわち1個より多くのウォッシュコートを塗布することが可能である。
【0077】
ある特定の実施形態では、コーティングされた基材は、コーティングされた基材を熱処理に供することによって老化させる。一実施形態では、エージングは、10体積%の水分の環境において、約850℃~約1050℃の温度で、50~75時間、交互に炭化水素/空気を供給して実施される。したがって、ある特定の実施形態では、老化した触媒物品が提供される。ある実施形態では、特に有効な材料は、エージング時(例えば、約850℃~約1050℃において、交互に炭化水素/空気供給のある、10体積%の水分、50~75時間のエージング)に、細孔容積の高いパーセンテージ(例えば、約95~100%)を維持する金属酸化物系担持体(限定されるものではないが、実質的に100%のセリア担持体を含む)を含む。
【0078】
別の態様では、特許請求される本発明は、内燃機関用の排気システムを提供する。排気システムは、本明細書に上記の触媒物品を含む。一実施形態では、排気システムは、白金族金属系の三元変換(TWC)触媒物品と、本発明による層状触媒物品と、を含み、白金族金属系の三元変換(TWC)触媒物品は、内燃機関から下流に位置決めされ、層状触媒物品は、白金族金属系の三元変換(TWC)触媒物品と流体連通して下流に位置決めされる。
【0079】
別の実施形態では、排気システムは、白金族金属系の三元変換(TWC)触媒物品と、本発明による層状触媒物品と、を含み、層状触媒物品は、内燃機関から下流に位置決めされ、白金族金属系の三元変換(TWC)触媒物品は、三元変換(TWC)触媒物品と流体連通して下流に位置決めされる。排気システムは、図2Bおよび図2Cに示される。
【0080】
一例示的実施形態では、排気システムは、a)層状触媒物品であって、i)OSCに担持されたPd、アルミナに担持されたPd、および酸化バリウムを含む第1の層と、ii)OSCに担持されたRhおよびPt、ならびにアルミナに担持されたPdを含む第2の層と、を含む層状触媒物品、およびb)TWC触媒であって、i)OSCおよびアルミナに担持されたPd、ならびに酸化バリウムを含む第1の層と、ii)アルミナおよびOSCに担持されたRhを含む第2の層と、を含むTWC触媒を含む。排気システムは、図2Bに例解され、CC1触媒IC-1(本発明の触媒物品)は、内燃機関と流体連通して位置決めされ、CC2触媒RC-2(基準CC触媒)は、CC1触媒と流体連絡して位置決めされる。
【0081】
図2Aは、基準排気システムを例解し、CC1 RC-1触媒は、i)OSCおよびアルミナに担持されたPd、ならびに酸化バリウムを含む第1の層と、ii)アルミナに担持されたRhおよびOSCに担持されたPdを含む第2の層と、を含み、CC2-RC-2触媒は、i)OSCおよびアルミナに担持されたPd、ならびに酸化バリウムを含む第1の層と、ii)アルミナに担持されたRh、およびOSCに担持されたPdを含む第2の層と、を含む。
【0082】
別の例示的な実施形態では、排気システムは、a)層状触媒物品であって、i)OSCに担持されたPd、アルミナに担持されたPd、および酸化バリウムを含む第1の層と、ii)OSCに担持されたRh、およびランタナ-ジルコニアに担持されたPtを含む第2の層と、を含む層状触媒物品、およびb)TWC触媒であって、i)OSCおよびアルミナに担持されたPd、ならびに酸化バリウムを含む第1の層と、ii)アルミナおよびOSCに担持されたRhを含む第2の層と、を含むTWC触媒を含む。排気システムは、図2Cに例解され、CC1触媒IC-2(本発明の触媒物品)は、内燃機関と流体連通して位置決めされ、CC2触媒RC-2(基準CC触媒)は、CC1触媒と流体連通して位置決めされる。
【0083】
別の態様では、特許請求される本発明はまた、炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物を含む、ガス状排気流を処理する方法を提供する。方法は、排気流を、特許請求される本発明に従った触媒物品または排気システムと接触させることを含む。「排気流」、「エンジン排気流」、「排気ガス流」などの用語は、固体または液体の粒子状物質も含有し得る、流動するエンジン流出ガスの任意の組み合わせを指す。流れは、ガス状成分を含み、例えば、液滴、固体粒子などのようなある特定の非ガス状成分を含有し得るリーンバーンエンジンの排気である。リーンバーンエンジンの排気流は、典型的には、燃焼生成物、不完全燃焼生成物、窒素の酸化物、可燃性および/または炭素質微粒子状物質(煤)、ならびに未反応の酸素および/または窒素を含む。そのような用語は、本明細書に記載されるような1つ以上の他の触媒系成分の下流の流出物を同様に指す。一実施形態では、一酸化炭素を含有する排気流を処理する方法が提供される。
【0084】
別の態様では、特許請求される本発明はまた、ガス状排気流中の炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物のレベルを低減する方法を提供する。方法は、ガス状排気流を、特許請求される本発明に従った触媒物品または排気システムと接触させて、排気ガス中の炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物のレベルを低減することを含む。
【0085】
さらに別の態様では、特許請求される本発明はまた、炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物を含むガス状排気流を精製するための、特許請求される本発明の触媒物品の使用を提供する。
【0086】
いくつかの実施形態では、触媒物品は、触媒物品と接触する前に、排気ガス流中に存在する一酸化炭素、炭化水素、および亜酸化窒素の量の少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%を変換する。いくつかの実施形態では、触媒物品は、炭化水素を二酸化炭素および水に変換する。いくつかの実施形態では、触媒物品は、触媒物品と接触する前に排気ガス流中に存在する炭化水素の量の少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%を変換する。いくつかの実施形態では、触媒物品は、一酸化炭素を二酸化炭素に変換する。いくつかの実施形態では、触媒物品は、窒素酸化物を窒素に変換する。
【0087】
いくつかの実施形態では、触媒物品は、触媒物品と接触する前に排気ガス流中に存在する窒素酸化物の量の少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%を変換する。いくつかの実施形態では、触媒物品は、触媒物品と接触する前に排気ガス流中に存在する、組み合わされた炭化水素、二酸化炭素、および窒素酸化物の総量の少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%を変換する。
【実施例
【0088】
本発明の態様は、以下の実施例によってさらに完全に示され、これらは、本発明のある特定の態様を示すために記載されており、それを限定するものとして解釈されるべきではない。
【0089】
実施例1:基準触媒物品の調製(CC1 RC-1、二元金属触媒:Pd:Rh(1:0.052))
Pd/Rh系TWC触媒物品は、近位結合触媒として調製された。総PGM充填(Pd/Pt/Rh)は、76/0/4である。ボトムコートは、68.4g/ftのPd、または触媒中の総Pdの90%を含有する。トップコートは、7.6g/ftのPd、および4g/ftのRh、または触媒中の総Pdの10%および総Rhの100%を含有する。ボトムコートは、2.34g/インチのウォッシュコート充填を有し、トップコートは、1.355g/インチのウォッシュコート充填を有する。ボトムコートを、60%のPd-硝酸塩溶液(43.3グラム、28%の水性Pd-硝酸塩水溶液)を314グラムのアルミナに含侵させること、および40%のPd-硝酸塩溶液(28.9グラム、28%の水性Pd-硝酸塩水溶液)を785グラムのセリア-ジルコニアに含浸させることによって調製した。アルミナ部分を、水中の85.6グラムの酢酸バリウムの水溶液にPd/アルミナ混合物を添加することによって化学的に固定した。39グラムの硫酸バリウムもまた、混合物に添加した。次いで、この成分を、16μmを下回るD90まで粉砕した。必要な場合、pHを、硝酸の添加によって、約4~5に制御した。セリア-ジルコニア部分を、水に添加し、16μmを下回るD90まで粉砕した。必要な場合、pHを、硝酸の添加によって、約4~5に制御した。次いで、2つの成分を配合し、128グラムのアルミナ結合剤を、配合物に添加した。
【0090】
トップコートは、2つの成分を有する。第1の成分を、560グラムの水中20.7グラムの硝酸Rh(9.9%Rh含有量)および80.5グラムの硝酸ネオジム(27.5%Nd含有量)の混合物を、903グラムのアルミナ上に含浸させることによって調製した。この工程に続いて、500℃で2時間の焼成を行い、担持体上のPGMの固定を可能にした。得られた粉末を、次いで水と混合し、16μmを下回るD90まで粉砕した。必要な場合、pHを、硝酸の添加によって、約4~5に制御した。第2の成分を、水と混合した13.8グラムの硝酸Pd(28%Pd含有量)を260.4グラムのセリア-ジルコニア上に含浸させ、続いて、500℃で2時間焼成して、担持体上のPGM固定を可能にすることによって調製した。得られた粉末を、次いで水と混合し、16μmを下回るD90まで粉砕した。必要な場合、pHを、硝酸の添加によって、約4~5に制御した。このようにして得られた2つのスラリーを配合し、156グラムのアルミナ結合剤を添加した。必要な場合、pHを、硝酸の添加によって、約4~5に制御した。触媒物品を、最初にボトムコートスラリーを600/3.5セラミック基材上にコーティングすることによって調製した。次いで、得られたコーティングされた基材を、乾燥させ、500℃で2時間焼成した。次いで、第2の(トップコート)スラリーを、適用した。得られた生成物を、再び500℃で2時間焼成した。
【0091】
実施例2:本発明の触媒物品の調製(CC 1 IC-A、三金属-Pd、上層におけるPtおよびRh、ならびに下層におけるPd(比:1.0:1.0:0.105)、熱固定)
触媒物品を、Pd、Pt、およびRhを使用して調合して、38/38/4の設計を生成した。総PGM充填は、80g/ftであり、ボトムコートは、30.4g/ftのPd、または触媒中の総Pdの80%を含有する。トップコートは、7.6g/ftのPd、38g/ftのPt、および4g/ftRh、または触媒中の総Pdの20%、総PtおよびRhの100%を含有する。ボトムコートは、2.318g/インチのウォッシュコート充填を有し、トップコートは、1.352g/インチのウォッシュコート充填を有する。ボトムコートを、60%のPd-硝酸塩溶液(24.3グラム、28%の水性Pd-硝酸塩水溶液)を396グラムのアルミナに含侵させること、および40%のPd-硝酸塩溶液(16.2グラム、28%の水性Pd-硝酸塩水溶液)を990.6グラムのセリア-ジルコニアに含浸させることによって調製した。アルミナ部分を、水中の108グラムの酢酸バリウムの水溶液にPd/アルミナ混合物を添加することによって化学的に固定した。49.3グラムの硫酸バリウムもまた、混合物に添加した。次いで、この成分を、16μmを下回るD90に粉砕した。必要な場合、pHを、硝酸の添加によって、約4~5に制御した。セリア-ジルコニア部分を、水に添加し、16μmを下回るD90まで粉砕した。必要な場合、pHを、硝酸の添加によって、約4~5に制御した。次いで、2つの成分を配合し、161グラムのアルミナ結合剤を添加した。
【0092】
トップコートは、2つの成分を有する。第1の成分を、200グラムの水中17.3グラムの硝酸Pd(28%のPd含有量)の混合物を283グラムのアルミナ上に含浸させることによって調製した。この工程に続いて、500℃で2時間の焼成を行い、担持体上のPGMの固定を可能にした。得られた粉末を、次いで水と混合し、16μmを下回るD90に粉砕した。必要な場合、pHを、硝酸の添加によって、約4~5に制御した。第2の成分を、水と混合した170.9グラムの硝酸Pt(14.3%Pt含有量)および25.9グラムのRh硝酸塩(9.9%Rh含有量)を、1175.4グラムのセリア-ジルコニアに含浸させ、続いて、500℃で2時間焼成して、担持体上のPGM固定を可能にすることによって調製した。得られた粉末を、次いで水と混合し、16μmを下回るD90に粉砕した。必要な場合、pHを、硝酸の添加によって、約4~5に制御した。このようにして得られた2つのスラリーを配合し、194グラムのアルミナ結合剤を添加した。必要な場合、pHを、硝酸の添加によって、約4~5に制御した。触媒物品は、最初にボトムコートスラリーを600/3.5セラミック基材上にコーティングすることによって調製された。次いで、得られたコーティングされた基材は、乾燥され、500℃で2時間焼成される。次いで、第2の、トップコート、スラリーが、適用される得られた生成物は、再び500℃で2時間焼成される。比較試験は、本発明の触媒物品が、基準触媒物品RC-1と比較して、THC、NO、およびCOの改善された低減を示すことを示した。結果は、添付の図に示される。
【0093】
実施例3:本発明の触媒物品の調製(CC 1 IC-B、三金属-PtおよびPdを別々の層に(上層:Rh+Pt、下層:Pd、比:1.0:1.0:0.105)
触媒物品を、Pd、Pt、およびRhを使用して調合して、38/38/4の設計を生成した。総PGM充填は、80g/ftであり、ボトムコートは、38g/ftのPd、または触媒中の総Pdの100%を含有する。トップコートは、38g/ftのPtおよび4g/ftのRh、または触媒中の総PtおよびRhの100%を含有する。ボトムコートは、2.322g/インチのウォッシュコート充填を有し、トップコートは、1.347g/インチのウォッシュコート充填を有する。ボトムコートを、60%のPd-硝酸塩溶液(30.3グラム、28%の水性Pd-硝酸塩水溶液)を395.5グラムのアルミナに含侵させること、および40%のPd-硝酸塩溶液(20.2グラム、28%の水性Pd-硝酸塩水溶液)を988.8グラムのセリア-ジルコニアに含浸させることによって調製した。アルミナ部分を、水中の108グラムの酢酸バリウムの水溶液にPd/アルミナ混合物を添加することによって化学的に固定した。49.2グラムの硫酸バリウムもまた、混合物に添加した。次いで、この成分を、16μmを下回るD90まで粉砕した。必要な場合、pHを、硝酸の添加によって、約4~5に制御した。セリア-ジルコニア部分を、水に添加し、16μmを下回るD90まで粉砕した。必要な場合、pHを、硝酸の添加によって、約4~5に制御した。次いで、2つの成分を配合し、161.5グラムのアルミナ結合剤を添加した。
【0094】
トップコートは、2つの成分を有する。第1の成分を、320グラムの水中26グラムの硝酸Rh(9.9%のRh含有量)の混合物を、731.6グラムのセリア-ジルコニア上に含浸させることによって調製した。この工程に続いて、500℃で2時間の焼成を行い、担持体上のPGMの固定を可能にした。第2の成分を、水と混合した171.4グラムの硝酸Pt(14.3%Pt含有量)を731.6グラムのランタナ-ジルコニア上に含浸させ、続いて、500℃で2時間焼成して、担持体上のPGM固定を可能にすることによって調製した。次いで、2成分粉末を、水と混合し、16μmを下回るD90まで粉砕した。このようにして得られたスラリーを、194.8グラムのアルミナ結合剤と混合した。必要な場合、pHを、硝酸の添加によって、約4~5に制御した。触媒物品を、最初にボトムコートスラリーを600/3.5セラミック基材上にコーティングすることによって調製した。次いで、得られたコーティングされた基材を、乾燥させ、500℃で2時間焼成した。次いで、第2の(トップコート)スラリーを、適用した。得られた生成物を、再び500℃で2時間焼成した。本発明の触媒物品AおよびBは、図1Aおよび図1Bに例解されるが、一方で、参照触媒物品は、添付の図面の図1Cに例解される。比較試験は、本発明の触媒物品が、基準触媒物品RC-1と比較して、THC、NO、およびCOの改善された低減を示すことを示した。結果は、添付の図に示される。
【0095】
実施例4:触媒物品の調製(触媒物品C、触媒物品D、および触媒物品E、担持体の変動を伴う下層におけるPd/Pt、範囲外)
触媒物品C、D、およびEを、基準CC TWC設計においてPdがPtに直接置換されたとき、その有効性を確認するために調製した。置換を、重量ベースで50%のPdを50%のPtで置き換えることによって実施した。触媒の設計は、以下の表に提供される。
【表1】
【0096】
触媒物品Cのボトムコートを、アルミナとセリアジルコニアとの間で同一に分割されたPd/Pt混合物を使用することによって調製し、一方で、トップコートを、基準触媒のトップコートと同一に保った、すなわち、トップコートは、セリア-ジルコニア上にPdを含有し、アルミナ上にRhを含有した。触媒物品Dのボトムコートを、セリア-ジルコニア上のPdおよびアルミナ上のPtを使用して調製し、一方で、トップコートを、セリア-ジルコニア上のRhおよびアルミナ上のPtを使用して調製した。触媒物品Eのボトムコートを、アルミナ上のPdおよびセリア-ジルコニア上のPtを使用して調製し、一方で、トップコートを、セリア-ジルコニア上のRhおよびアルミナ上のPtを使用して調製した。ウォッシュコートの充填を、基準におけるものと同様に保った。
【0097】
触媒を、最初にボトムコートスラリーを600/3.5セラミック基材上にコーティングすることによって調製した。次いで、得られたコーティングされた基材を、乾燥させ、500℃で2時間焼成した。次いで、第2の(トップコート)スラリーを、適用した。得られた生成物を、再び500℃で2時間焼成した。比較試験は、触媒物品C、DおよびEが、基準触媒物品RC-1と比較して、THC、NOおよびCOのより低い低減を示すことを示した。結果は、添付の図に示される。
【0098】
実施例5:第2の近位結合TWC基準触媒物品(CC2 RC-2触媒物品)の調製
基準CC2 TWC触媒物品(Pd/Pt/Rh:14/0/4)を調製し、以下のすべての実施例で第2の近位結合位置において使用した。ボトムコートを、718.5グラムのアルミナを水と混合し、硝酸の添加によってpHを約4~5に制御し、続いて、16μmを下回るD90まで粉砕することによって調製した。次いで、716.2グラムのセリア-ジルコニアを、スラリーに添加した。次いで、27.7グラムのPd(27.3%のPd含有量)をスラリーに添加し、短時間混合した後、スラリーを、14μmを下回るD90まで、再び粉砕した。次の工程では、71.5グラムの硫酸バリウムおよび239.2グラムのアルミナ結合剤を添加し、最終スラリーを、20分間混合した。
【0099】
トップコートは、2つの成分で作製される。第1の成分を、367グラムの水中11.3グラムの硝酸Rh(9.8%のRh含有量)を、483グラムのアルミナ上に含浸させることによって調製した。次いで、粉末を、水に添加し、メチル-エチル-アミン(MEA)を、pHが8になるまで添加した。次いで、スラリーを、20分間混合し、pHを、硝酸を使用して5.5~6に低減させた。次いで、スラリーを、14μmを下回るD90まで粉砕した。第2の成分を、550グラムの水と混合された11.3グラムの硝酸Rh(9.8%のRh含有量)を、979.3グラムのセリア-ジルコニア上に含浸させることによって調製した。次いで、粉末を、水に添加し、メチル-エチル-アミン(MEA)を、pHが8になるまで添加した。次いで、スラリーを、20分間混合した。必要な場合、これに80.6グラムの硝酸ジルコニウム(19.7%のZrO含有量)を添加し、pHを、硝酸を使用して5.5~6に低減させた。次いで、スラリーを、14μmを下回るD90まで粉砕した。次いで、必要な場合、得られた2つのスラリーを配合し、245グラムのアルミナ結合剤を添加し、硝酸を添加することにより、pHを約4~5に制御した。
【0100】
触媒物品を、最初にボトムコートスラリーを600/3.5セラミック基材上にコーティングすることによって調製した。次いで、得られたコーティングされた基材を、乾燥させ、500℃で2時間焼成した。次いで、第2の(トップコート)スラリーを、適用した。得られた生成物を、再び500℃で2時間焼成した。
【0101】
実施例6:本発明の触媒システムAの調製およびその試験(CC1 IC-A+CC2 RC-2):
本発明の触媒物品A(Pd/Pt/Rh:38/38/4)および基準CC2触媒物品(Pd/Pt/Rh:14/0/4)からなる触媒系Aを調製し、基準CC1触媒物品(Pd/Pt/Rh:76/0/4)および基準CC2触媒物品(Pd/Pt/Rh:14/0/4)からなる基準系と比較した。触媒システムAは、図2Bに示され、一方で、基準システムは、図2Aに示される。両方のシステムは、交互の供給条件下で、950℃において50時間エージングされ、その後、SULEV-30認定の小型車両でFTP-75試験プロトコルを使用して試験されたエンジンであった。特許請求される触媒システムAは、基準システムと比較して、ミッドベッドにおける17%のTHC、20%のCO、および17%のNOの改善、ならびにテールパイプにおける20%のTHC、24%のCO、および18%のNOの改善を有する、改善されたTWC性能を明示する。したがって、38/38/4三金属触媒は、Pd/Rh 0/76/4基準の性能を満たすだけでなく、基準を上回る改善を提供する。結果は、図4A図4B、および図4Cに示される。
【0102】
実施例7:本発明の触媒システムBの調製およびその試験:(CC1 IC-B+CC2 RC-2)
本発明の触媒物品B(Pd/Pt/Rh:38/38/4)および基準CC2触媒物品(Pd/Pt/Rh:14/0/4)からなるAシステムを調製し、基準CC1触媒物品(Pd/Pt/Rh:76/0/4)およびCC2触媒物品(Pd/Pt/Rh:14/0/4)からなる基準システムと比較した。触媒システムBは、図2Cに示される。両方のシステムは、交互の供給条件下で、980℃において12時間エージングされ、その後、SULEV-30認定の小型車両で反応器シミュレーションを使用して試験された反応器であった。反応器は、ラムダ、温度、および速度のトレースが、FTP-72試験条件下の車両のものと一致するように設定される。特許請求されるシステムBは、ミッドベッド結果を表現する、21%のTHC、33%のCO、および28%のNOの改善を有する、改善されたTWC性能を明示する。結果は、図3に示される。
【0103】
触媒システムの設計は、以下の表に提供される。
【表2】
【0104】
調査成果/結果
上記の実施例および図に示された結果から、50%のPdをPtで置換することにより、既存のPd/Rh触媒に白金を直接組み込むことは、Ptの利用に向けて最も効率的な方法ではないことが見出される。実施例4および図5A図5B、および図5Cに示されるように、このアプローチは、典型的には、排出量タイプに応じて、炭化水素、CO、および亜酸化窒素の排出量の最大30%の増加をもたらす。さらに、この増加は、触媒ウオッシュコーティングの前に、それぞれの金属の熱的または化学的固定がない限り、PtおよびPdが同じ担体上で混合されるか、または異なる担体上に存在するかに関わらず発生する。
【0105】
前述の欠点は、特許請求される本発明の触媒物品AおよびB(実施例2および実施例3)において解決され、PdおよびPtは、異なる担持体タイプおよび/または触媒物品の異なる層に割り当てられる。スラリーコーティングの前に金属が化学的または熱的に固定される限り、PdおよびPtは、同じ層中に存在することができる(発明触媒物品B)。両方の設計は、報告された実施例、排出量タイプ依存性について、典型的に20~30%の範囲で基準システムを上回る改善を明示する。改善は、ミッドベッドならびにテールパイプの両方にあり、これは、Pt含有システム自体の活性を明示しており、CC2触媒物品からの補正効果ではない。結果は、図3図4、および図6に示される。
【0106】
本明細書全体を通して「一実施形態」、「ある特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、材料、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、「1つ以上の実施形態では」、「ある特定の実施形態では」、「いくつかの実施形態では」、「一実施形態では」、または「実施形態では」などの句が本明細書全体の様々な箇所に出現することは、必ずしも本発明の同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、材料、または特性は、1つ以上の実施形態では任意の好適な方法で組み合わせることができる。本明細書に開示される様々な実施形態、態様、および任意選択のすべては、そのような特徴または要素が本明細書の特定の実施形態の説明において明示的に組み合わされるかどうかに関係なく、すべてのバリエーションで組み合わせることができる。本発明は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、開示される発明の任意の分けることが可能な特徴または要素が、その様々な態様および実施形態のいずれかにおいて、組み合わせ可能であることを意図すると考えるべきであると、全体として読み取られることが意図される。
【0107】
本明細書に開示される実施形態は、特定の実施形態を参照して説明されたが、これらの実施形態は、本発明の原理および用途の単なる例示であることを理解されたい。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の方法および装置に対して様々な修正および変更がなされ得ることが、当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内にある修正および変更を含むことが意図され、上記の実施形態は、限定ではなく例示の目的で提示される。本明細書で引用されたすべての特許および公開物は、他の組み込みの記述が具体的に提供されない限り、記載されるように、それらの特定の教示について参照によって本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
【国際調査報告】