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特表2022-526900アニオン交換膜として使用するための安定したカチオン性ペンダント基を有するポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-27
(54)【発明の名称】アニオン交換膜として使用するための安定したカチオン性ペンダント基を有するポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20220520BHJP
   B01D 61/46 20060101ALI20220520BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20220520BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20220520BHJP
   B01D 71/26 20060101ALI20220520BHJP
   B01D 71/32 20060101ALI20220520BHJP
   B01D 71/36 20060101ALI20220520BHJP
   B01D 71/52 20060101ALI20220520BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20220520BHJP
   B01D 71/72 20060101ALI20220520BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20220520BHJP
   H01M 8/1023 20160101ALI20220520BHJP
   H01M 8/1039 20160101ALI20220520BHJP
   H01M 8/1025 20160101ALI20220520BHJP
   H01M 8/102 20160101ALI20220520BHJP
【FI】
C08G61/12
B01D61/46 500
B01D69/12
B01D69/10
B01D71/26
B01D71/32
B01D71/36
B01D71/52
B01D71/68
B01D71/72
H01M8/10 101
H01M8/1023
H01M8/1039
H01M8/1025
H01M8/102
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556830
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(85)【翻訳文提出日】2021-09-21
(86)【国際出願番号】 US2020025337
(87)【国際公開番号】W WO2020198627
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】62/825,551
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512226882
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ デラウェア
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ユシャン
(72)【発明者】
【氏名】フ,ケダ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジュンフア
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ラン
(72)【発明者】
【氏名】ロジャス-カーボネル,サンティアゴ
(72)【発明者】
【氏名】セッツラー,ブライアン
【テーマコード(参考)】
4D006
4J032
5H126
【Fターム(参考)】
4D006GA17
4D006MA03
4D006MA09
4D006MA14
4D006MC22
4D006MC23
4D006MC28X
4D006MC30
4D006MC47
4D006MC51
4D006MC62
4D006NA03
4D006NA10
4D006NA45
4D006PA01
4D006PB02
4D006PC51
4J032CA01
4J032CA63
4J032CB05
4J032CC07
4J032CE03
4J032CF03
4J032CG01
5H126AA05
5H126BB06
5H126GG17
5H126JJ00
5H126JJ05
5H126JJ06
5H126JJ08
(57)【要約】
エーテル結合のない硬質芳香族ポリマー主鎖に導入された、イミダゾリウムなどのアルカリ安定カチオンを有する、ペンダントカチオン基を含むポリ(アリールアルキレン)ポリマーまたはポリ(アリール-クラウンエーテル-アルキレン)ポリマーが提供される。これらのポリマーから形成された水酸化物交換膜または水酸化物交換アイオノマーは、従来の水酸化物交換膜またはアイオノマーと比較して、秀でた化学的安定性、水酸化物伝導性、吸水率の低下、選択した溶媒への良好な溶解性、および周囲乾燥状態での向上した機械的特性を呈する。ペンダントカチオン基を有するポリ(アリールアルキレン)ポリマーまたはポリ(アリール-クラウンエーテル-アルキレン)ポリマーを含む水酸化物交換膜燃料電池および水酸化物交換膜電解槽は、比較的高い温度で向上した性能および耐久性を呈する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1A)、(3A)、または(3’A)、および任意に(4A)の構造単位を含むポリマーであって、前記式(1A)、(3A)、(3’A)、および(4A)の構造単位が、以下の構造を有し、
【化1】

式中、
11がそれぞれ独立して、第四級アンモニウムもしくはホスホニウム基または窒素含有複素環基またはその塩であり、前記第四級アンモニウムまたはホスホニウム基が、式(5A)を有し、
【化2】

前記窒素含有複素環基が、任意に置換されたピロール、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、イミダゾール、イミダゾリン、トリアゾール、ピリジン、トリアジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、アゼピン、キノリン、ピペリジン、ピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、アゼパン、イソキサゾール、イソキサゾリン、オキサゾール、オキサゾリン、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、オキサジン、オキサジアジン、イソオキサゾリジン、モルホリン、チアゾール、イソチアゾール、オキサチアゾール、オキサチアジン、またはカプロラクタムであり、各置換基が独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、またはアラルキルであり、
20、R30、R40、R50、R60、R70、R80、R90、R130、R140、R150、R160、およびR170がそれぞれ独立して、水素、ハロゲン化物、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールであり、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリールが、ハロゲン化物で任意に置換され、R30およびR60が任意に結合され、ハロゲン化物またはアルキルで任意に置換された五員環を形成し、
各R100が独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、または式(4B)を有する置換基であり、
【化3】

前記アルキル、アルケニル、またはアルキニルが、フッ化物で任意に置換され、
180およびR240がそれぞれ独立して、アルキレンであり、
190、R200、R210、R220、およびR230がそれぞれ独立して、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、
qが、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20であり、
mが、0、1、2、3、4、5、または6であり、
nが、0、1、2、または3であり、
各m’および各n’が独立して、0、1、または2であり、
各n’が独立して、0、1、または2であり、
が、アニオンであり、
前記式(3A)の構造単位が前記ポリマー中に存在するが、前記式(3’A)の構造単位が前記ポリマー中に存在しない場合、ZはPであり、前記式(3’A)の構造単位が前記ポリマー中に存在する場合、ZはNまたはPである、ポリマー。
【請求項2】
重合混合物の反応生成物を含むポリマーであって、
(i)以下の式を有するカチオン官能化トリフルオロケトンモノマー、
【化4】

(ii)以下の式を有する芳香族モノマー、
【化5】

または
以下の式を有するクラウンエーテルモノマー、
【化6】

および
(iii)任意に、以下の式を有するトリフルオロメチルケトンモノマーを含み、
【化7】

式中、
がそれぞれ独立して、第四級アンモニウムもしくはホスホニウム基または窒素含有複素環基またはその塩であり、前記第四級アンモニウムまたはホスホニウム基が、式(5A)を有し、
【化8】

前記窒素含有複素環基が、任意に置換されたピロール、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、イミダゾール、イミダゾリン、トリアゾール、ピリジン、トリアジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、アゼピン、キノリン、ピペリジン、ピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、アゼパン、イソキサゾール、イソキサゾリン、オキサゾール、オキサゾリン、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、オキサジン、オキサジアジン、イソオキサゾリジン、モルホリン、チアゾール、イソチアゾール、オキサチアゾール、オキサチアジン、またはカプロラクタムであり、各置換基が独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、またはアラルキルであり、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R13、R14、R15、R16、およびR17がそれぞれ独立して、水素、ハロゲン化物、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールであり、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリールが、ハロゲン化物で任意に置換され、RおよびRが任意に結合され、ハロゲン化物またはアルキルで任意に置換された五員環を形成し、
各R12が独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、または式(4C)の置換基であり、
【化9】

前記アルキル、アルケニル、またはアルキニルが、フッ化物で任意に置換され、
180およびR240はそれぞれ独立して、アルキレンであり、
190、R200、R210、R220、およびR230はそれぞれ独立して、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、
mが、0、1、2、3、4、5、または6であり、
nが、0、1、2、または3であり、
各m’および各n’が独立して、0、1、または2であり、
qが、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20であり、
が、アニオンであり、
前記式(3)の芳香族モノマーが前記重合混合物中に存在するが、前記式(3’)のクラウンエーテルモノマーが前記重合混合物中に存在しない場合、ZはPであり、前記式(3’)のクラウンエーテルモノマーが前記重合混合物中に存在する場合、ZはNまたはPである、ポリマー。
【請求項3】
第2の重合混合物の第2の反応生成物を含むポリマーであって、
第四級アンモニウムもしくはホスホニウム化合物または窒素含有複素環またはその塩、および
中間体ポリマーを含み、
前記中間体ポリマーが、
(i)以下の式を有するハロゲン化トリフルオロメチルケトンモノマー、
【化10】

(ii)以下の式を有する芳香族モノマー、
【化11】

または
以下の式を有するクラウンエーテルモノマー、
【化12】

および
(iii)任意に、以下の式を有するトリフルオロメチルケトンモノマーを含む、第1の重合混合物の第1の反応生成物を含み、
【化13】

式中、
前記第四級アンモニウムまたはホスホニウム化合物が、式(5)を有し、
【化14】

前記窒素含有複素環が、任意に置換されたピロール、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、イミダゾール、イミダゾリン、トリアゾール、ピリジン、トリアジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、アゼピン、キノリン、ピペリジン、ピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、アゼパン、イソキサゾール、イソキサゾリン、オキサゾール、オキサゾリン、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、オキサジン、オキサジアジン、イソオキサゾリジン、モルホリン、チアゾール、イソチアゾール、オキサチアゾール、オキサチアジン、またはカプロラクタムであり、各置換基が独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、またはアラルキルであり、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R13、R14、R15、R16、およびR17がそれぞれ独立して、水素、ハロゲン化物、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールであり、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリールが、ハロゲン化物で任意に置換され、RおよびRが任意に結合され、ハロゲン化物またはアルキルで任意に置換された五員環を形成し、
各R12が独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、または式(4C)の置換基であり、
【化15】

前記アルキル、アルケニル、またはアルキニルが、フッ化物で任意に置換され、
18およびR24がそれぞれ独立して、アルキレンであり、
19、R20、R21、R22、およびR23がそれぞれ独立して、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、
111が、ハロゲン化物であり、
mが、0、1、2、3、4、5、または6であり、
nが、0、1、2、または3であり、
各m’および各n’が独立して、0、1、または2であり、
qが、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20であり、
が、アニオンであり、
前記式(3)の芳香族モノマーが前記第1の重合混合物中に存在するが、前記式(3’)のクラウンエーテルモノマーが前記第1の重合混合物中に存在しない場合、ZはPであり、前記式(3’)のクラウンエーテルモノマーが前記第1の重合混合物中に存在する場合、ZはNまたはPである、ポリマー。
【請求項4】
塩基と請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマーとの反応生成物を含むアニオン交換ポリマー。
【請求項5】
前記塩基が、水酸化物含有塩基、重炭酸塩含有塩基、または炭酸塩含有塩基を含む、請求項4に記載のポリマー。
【請求項6】
前記水酸化物含有塩基が、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムを含むか、前記重炭酸塩含有塩基が、重炭酸ナトリウムもしくは重炭酸カリウムを含むか、または前記炭酸塩含有塩基が、炭酸ナトリウムもしくは炭酸カリウムを含む、請求項5に記載のポリマー。
【請求項7】
またはR11が、前記窒素含有複素環基もしくはその塩であるか、またはR111が、窒素含有複素環もしくはその塩である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項8】
前記窒素含有複素環基または前記窒素含有複素環が、完全に置換されたピロール、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、イミダゾール、イミダゾリン、トリアゾール、ピリジン、トリアジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、アゼピン、もしくはキノリンを含み、各置換基が独立して、アルキルまたはアリールであるか、または前記窒素含有複素環が、完全に置換されたピロール、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、イミダゾール、イミダゾリン、トリアゾール、ピリジン、トリアジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、アゼピン、またはキノリンを含み、各置換基が独立して、アルキルまたはアリールである、請求項7に記載のポリマー。
【請求項9】
前記窒素含有複素環基が、式(6A)を有するイミダゾリウムを含むか、
【化16】

または前記窒素含有複素環が、式(6)を有するイミダゾールを含み、
【化17】

式中、
存在する場合、R25、R26、R27、R28、およびR29がそれぞれ独立して、水素、ハロゲン化物、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリールであり、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリールが、ハロゲン化物で任意に置換される、請求項7に記載のポリマー。
【請求項10】
存在する場合、R29が水素であり、R28が2,4,6-アルキルフェニルであり、R25、R26、およびR27がそれぞれ独立して、C~Cアルキルである、請求項9に記載のポリマー。
【請求項11】
前記窒素含有複素環基が、以下の式を有するか、
【化18】

または前記窒素含有複素環が、以下の式を有する1-ブチル-2-メシチル-4,5-ジメチル-1H-イミダゾールである、請求項7に記載のポリマー。
【化19】
【請求項12】
前記式(5A)の前記第四級アンモニウムまたはホスホニウム基が、R180およびR240を有し、各々が独立して、C~C22アルキレンであり、R190、R200、R210、R220、およびR230がそれぞれ独立して、C~Cアルキルであり、mが、0、1、2、3、4、5、もしくは6であり、Zが、NもしくはPであるか、または前記式(5)の前記第四級アンモニウムもしくはホスホニウム化合物が、R18およびR24を有し、各々が独立して、C~C22アルキレンであり、R19、R20、R21、R22、およびR23がそれぞれ独立して、C~Cアルキルであり、mが、0、1、2、3、4、5、もしくは6であり、Zが、NもしくはPである、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項13】
前記式(5A)の前記第四級アンモニウムまたはホスホニウム基が、R180およびR240を有し、各々が独立して、C~Cアルキレンであり、R190、R200、R210、R220、およびR230がそれぞれ独立して、C~Cアルキルであり、mが、0、1、2、もしくは3であり、Zが、NもしくはPであるか、または前記式(5)の前記第四級アンモニウムもしくはホスホニウム化合物が、R18およびR24を有し、各々が独立して、C~Cアルキレンであり、R19、R20、R21、R22、およびR23がそれぞれ独立して、C~Cアルキルであり、mが、0、1、2、もしくは3であり、Zが、NもしくはPである、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項14】
前記式(5A)の前記第四級アンモニウムまたはホスホニウム基が、R180およびR240を有し、各々が独立して、C~C22アルキレンであり、R190、R200、R210、R220、およびR230がそれぞれ独立して、C~Cアルキルであり、mが、0、1、2、もしくは3であり、Zが、NもしくはPであるか、または前記式(5)の前記第四級アンモニウムもしくはホスホニウム化合物が、R18およびR24を有し、各々が独立して、C~C22アルキレンであり、R19、R20、R21、R22、およびR23がそれぞれ独立して、C~Cアルキルであり、mが、0、1、2、もしくは3であり、Zが、NもしくはPである、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項15】
前記式(5A)の前記第四級アンモニウムまたはホスホニウム基が、R180およびR240を有し、各々がC~Cアルキレンであり、R190、R200、R210、R220、およびR230がそれぞれ独立して、メチルであり、mが、1であり、Zが、NもしくはPであるか、または前記式(5)の前記第四級アンモニウムもしくはホスホニウム化合物が、R18およびR24を有し、各々がC~Cアルキレンであり、R19、R20、R21、R22、およびR23がそれぞれ独立して、メチルであり、mが、1であり、Zが、NもしくはPである、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項16】
前記式(5A)の前記第四級アンモニウムまたはホスホニウム基が、R180およびR240を有し、各々がn-ヘキシレンであり、R190、R200、R210、R220、およびR230がそれぞれ独立して、メチルであり、mが、1であり、Zが、NもしくはPであるか、または前記式(5)の前記第四級アンモニウムもしくはホスホニウム化合物が、R18およびR24を有し、各々がn-ヘキシレンであり、R19、R20、R21、R22、およびR23がそれぞれ独立して、メチルであり、mが、1であり、Zが、NもしくはPである、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項17】
またはR11が、前記第四級ホスホニウム基であるか、または前記第2の重合混合物が、前記第四級ホスホニウム化合物を含む、請求項1~6および12~16のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項18】
またはR11が、前記第四級アンモニウム基であるか、または前記第2の重合混合物が、前記第四級アンモニウム化合物を含む、請求項1~6および12~16のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項19】
前記式(3)の芳香族モノマーが、ビフェニル、パラ-テルフェニル、メタ-テルフェニル、パラ-クアテルフェニル、9,9-ジメチル-9H-フルオレン、またはベンゼンを含む、請求項2~18のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項20】
前記式(3A)の構造単位中、R20、R30、R40、R50、R60、R70、R80、およびR90のうちの少なくとも1つが、ハロゲン化物もしくはアリールであり、前記アリールが、ハロゲン化物で任意に置換されるか、または前記式(3)の芳香族モノマー中、R、R、R、R、R、R、R、R、およびR10のうちの少なくとも1つが、ハロゲン化物もしくはアリールであり、前記アリールが、ハロゲン化物で任意に置換される、請求項1~18のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項21】
前記式(3A)の構造単位中、R30およびR60が結合されて、ハロゲン化物もしくはアルキルで任意に置換された五員環を形成するか、または前記式(3)の芳香族モノマー中、RおよびRが結合されて、ハロゲン化物もしくはアルキルで任意に置換された五員環を形成する、請求項1~18のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項22】
前記式(3’A)の構造単位中、R20、R40、R50、R70、R80、およびR90がそれぞれ、水素であるか、または前記式(3’)のクラウンエーテルモノマー中、R、R、R、R、R、R、およびR10が、水素である、請求項1~18のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項23】
前記ポリマーが、前記式(4A)の構造単位を含むか、または前記重合混合物の前記反応生成物が、前記式(4)のトリフルオロメチルケトンモノマーをさらに含む、請求項1~22のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項24】
前記トリフルオロメチルケトンモノマーが、2,2,2-トリフルオロアセトフェノンまたは1,1,1-トリフルオロアセトンを含む、請求項23に記載のポリマー。
【請求項25】
前記式(4A)の構造単位中、R100が、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、前記アルキル、アルケニル、もしくはアルキニルが、フッ化物で任意に置換されるか、または前記式(4)のトリフルオロメチルケトンモノマー中、R12が、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、前記アルキル、アルケニル、もしくはアルキニルが、フッ化物で任意に置換される、請求項1~23のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項26】
前記式(4A)の構造単位中、R100が、前記式(4B)の置換基であり、R130、R140、R150、R160、およびR170のうちの少なくとも1つが、ハロゲン化物もしくはアリールであり、前記アリールが、フッ化物で任意に置換されるか、または前記式(4)のトリフルオロメチルケトンモノマー中、R12が、前記式(4C)の置換基であり、R13、R14、R15、R16、およびR17のうちの少なくとも1つが、ハロゲン化物もしくはアリールであり、前記アリールが、フッ化物で任意に置換される、請求項1~23のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項27】
20、R30、R40、R50、R60、R70、R80、R90、R130、R140、R150、R160、およびR170がそれぞれ独立して、水素、またはフッ化物で任意に置換されたアルキルであり、R100が、フッ化物もしくは前記式(4B)の置換基で任意に置換されたアルキルであるか、またはR、R、R、R、R、R、R、R、R10、R13、R14、R15、R16、およびR17がそれぞれ独立して、水素、もしくはフッ化物で任意に置換されたアルキルであり、R12が、フッ化物もしくは前記式(4C)の置換基で任意に置換されたアルキルである、請求項1~23のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項28】
20、R30、R40、R50、R60、R70、R80、R90、R130、R140、R150、R160、およびR170がそれぞれ独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、もしくはヘキシル、またはフッ化物で任意に置換されたメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、もしくはヘキシルであり、R100が、フッ化物もしくは式(4B)の置換基で任意に置換されたメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、もしくはヘキシルであるか、またはR、R、R、R、R、R、R、R、R10、R13、R14、R15、R16、およびR17がそれぞれ独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、もしくはヘキシル、またはフッ化物で任意に置換されたメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、もしくはヘキシルであり、R12が、フッ化物または前記式(4C)の置換基で任意に置換されたメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、もしくはヘキシルである、請求項1~23のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項29】
が、ハロゲン化物、BF 、PF 、CO 2-、またはHCO を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項30】
前記ポリマー中の前記式(1A)および式(4A)の構造単位のモル分率の合計が、前記ポリマー中の前記式(3A)および(3’A)の構造単位のモル分率の合計にほぼ同等であり得、前記ポリマー中の前記式(1A)の構造単位のモル分率と、前記ポリマー中の前記式(3A)および(3’A)の構造単位のモル分率の合計との比が、約0.01~1であり得る、請求項1、4~18、20~23、および25~29のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項31】
前記式(1A)および式(4A)の構造単位のモル分率の合計と、前記ポリマー中の前記式(3A)および(3’A)のモル分率の合計とのモル比が、約0.95:1~約1.4:1であり得、前記式(1A)の構造単位のモル分率と、前記式(3A)および(3’A)の構造単位のモル分率の合計との比が、約0.01~1であり得る、請求項1、4~18、20~23、および25~29のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項32】
前記式(1A)および式(4A)の構造単位のモル分率の合計と、前記ポリマー中の前記式(3A)および(3’A)のモル分率の合計とのモル比が、約1:1~約1.2:1であり得る、請求項1、4~18、20~23、および25~29のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項33】
エーテル結合のないイミダゾリウムにつながれたポリ(アリールアルキレン)主鎖またはイミダゾリウムにつながれたポリ(アリール-クラウンエーテル-アルキレン)主鎖を含む水酸化物交換ポリマーであって、80°Cの純水に浸漬したときの前記ポリマーの乾燥重量に基づいて47%以下の吸水率を有するか、または20°Cの純水中で少なくとも31mS/cmの水酸化物伝導性を有し、以下:
前記ポリマーが、130°Cで1,200時間、1Mの水酸化カリウムに浸漬した場合、分解に対して安定(H NMRスペクトルの変化がないことから明らかであるように)であるか、または
前記ポリマーが、80°Cで300時間、10Mの水酸化カリウムに浸漬した場合、分解に対して安定(H NMRスペクトルの変化がないことから明らかであるように)であるか、または
前記ポリマーが、95℃で300時間、23.3%および50.9%の相対湿度で保持した場合、分解に対して安定(H NMRスペクトルの変化がないことから明らかであるように)であるか、または
前記ポリマーが、少なくとも30MPaの引張強度および/または少なくとも250%の破断点伸びを有する、のうちの少なくとも1つである、水酸化物交換ポリマー。
【請求項34】
前記ポリマーが、130°Cで1,200時間、1Mの水酸化カリウムに浸漬した場合、分解に対して安定(H NMRスペクトルの変化がないことから明らかであるように)である、請求項33に記載のポリマー。
【請求項35】
前記ポリマーが、少なくとも30MPaの引張強度および/または少なくとも250%の破断点伸びを有する、請求項33または34に記載のポリマー。
【請求項36】
前記ポリマーが、80℃の純水に浸漬したときの前記ポリマーの乾燥重量に基づいて43%以下の吸水率を有し、20℃の純水中で少なくとも31mS/cmの水酸化物伝導性を有する、請求項33~35のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項37】
前記ポリマーが、100℃の純水およびイソプロパノール中で不溶性であるが、100℃の水およびエタノールの重量で50/50の混合物に可溶性である、請求項33~36のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項38】
エーテル結合を含まないイミダゾリウムにつながれたポリ(アリールアルキレン)主鎖またはイミダゾリウムにつながれたポリ(アリール-クラウンエーテル-アルキレン)主鎖を含む水酸化物交換ポリマーであって、
前記ポリマーが、水酸化物交換膜燃料電池の水酸化物交換膜として使用され、前記燃料電池のカソードおよびアノード触媒層の水酸化物交換アイオノマーとして20%で充填され、前記燃料電池が、アノード上に0.4mgPt cm-2 PtRu/Cを有し、試験条件が、1.0L/分のH流量、2.0L/分のO流量、95℃の電池温度、それぞれ90℃および97℃でのアノードおよびカソード加湿器温度である場合に、少なくとも130mW/cmのピーク電力密度を有する、水酸化物交換ポリマー。
【請求項39】
前記ピーク電力密度が、少なくとも130mW/cmである、請求項38に記載のポリマー。
【請求項40】
エーテル結合を含まないイミダゾリウムにつながれたポリ(アリールアルキレン)主鎖またはイミダゾリウムにつながれたポリ(アリール-クラウンエーテル-アルキレン)主鎖を含む水酸化物交換ポリマーであって、
前記ポリマーが、水酸化物交換膜水電解槽の水酸化交換膜として使用され、前記電解槽のカソードおよびアノード触媒層の水酸化物交換アイオノマーとして30%で充填され、前記電解槽が、カソード上にPt/C触媒について4.0mg cm-2およびアノード上にIrO触媒について2.9mg cm-2を有し、試験条件が、3.0mL/分の水流量、80℃の電解槽温度および水温度である場合に、電圧が1.8ボルトであるときに少なくとも20mA/cmの電流密度を有する、水酸化物交換ポリマー。
【請求項41】
電圧が1.8ボルトであるとき、前記電流密度が、少なくとも20mA/cmである、請求項40に記載のポリマー。
【請求項42】
イミダゾリウム結合が、水酸化物アニオン、重炭酸アニオン、もしくは炭酸アニオン、またはこれらの組み合わせを含む、請求項33~41のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項43】
請求項4に記載のポリマーを含むアニオン交換ポリマー膜を作製する方法であって、
有機溶媒および重合触媒の存在下で、前記カチオン官能化トリフルオロケトンモノマー、前記任意のトリフルオロメチルケトンモノマー、および前記芳香族モノマーもしくは前記クラウンエーテルモノマーを反応させて、カチオン官能化中間体ポリマーを形成することと、
前記カチオン官能化中間体ポリマーを溶媒に溶解して、ポリマー溶液を形成することと、
前記ポリマー溶液をキャストして、ポリマー膜を形成することと、
前記ポリマー膜のアニオンを水酸化物イオン、重炭酸イオン、もしくは炭酸イオンまたはこれらの組み合わせと交換して、前記アニオン交換ポリマー膜を形成することと、を含む方法。
【請求項44】
請求項4に記載のポリマーを含むアニオン交換ポリマー膜を作製する方法であって、
有機溶媒および重合触媒の存在下で、前記ハロゲン化トリフルオロケトンモノマー、前記任意のトリフルオロメチルケトンモノマー、および前記芳香族モノマーもしくは前記クラウンエーテルモノマーを反応させて、ハロゲン官能化ポリマーを形成することと、
有機溶媒の存在下で、前記ハロゲン官能化ポリマーを前記第四級ホスホニウム化合物もしくは前記窒素含有複素環またはその塩と反応させて、カチオン官能化ポリマーを形成することと、
前記カチオン官能化ポリマーを溶媒に溶解して、ポリマー溶液を形成することと、
前記ポリマー溶液をキャストして、ポリマー膜を形成することと、
前記ポリマー膜のアニオンを水酸化物イオン、重炭酸イオン、もしくは炭酸イオンまたはこれらの組み合わせと交換して、前記アニオン交換ポリマー膜を形成することと、を含む方法。
【請求項45】
前記重合触媒が、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロ-1-プロパンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ペルフルオロプロピオン酸、ヘプタフルオロ酪酸、またはこれらの組み合わせを含む、請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
前記有機溶媒の各々が独立して、ジメチルスルホキシド、1-メチル-2-ピロリジノン、1-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、クロロホルム、1,1,2,2-テトラクロロエタン、ジメチルアセトアミド、またはこれらの組み合わせを含み、前記溶解ステップでの前記溶媒が、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ジメチルスルホキシド、1-メチル-2ピロリドン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、乳酸エチル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、水、フェノール、アセトン、またはこれらの組み合わせを含む、請求項43~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
燃料電池、電解槽、電気透析装置、ソーラー水素発生装置、フロー電池、脱塩装置、センサー、水の鉱質除去、超純水生成、廃水処理、イオン交換装置、またはCO分離器での使用に好適であるように任意に構成およびサイズ設定され、請求項4~42のいずれか一項に記載のポリマーを含む、アニオン交換膜。
【請求項48】
請求項4~42のいずれか一項に記載のポリマーを含む、アニオン交換膜燃料電池、電解槽、電気透析装置、ソーラー水素発生装置、フロー電池、脱塩装置、センサー、鉱質除去装置、浄水器、廃水処理システム、イオン交換装置、またはCO分離器。
【請求項49】
燃料電池、電解槽、電気透析装置、ソーラー水素発生装置、フロー電池、脱塩装置、センサー、鉱質除去装置、浄水器、廃水処理システム、イオン交換装置、またはCO分離器での使用に好適であるように任意に構成およびサイズ設定された、補強電解質膜であって、前記膜が、請求項4~42のいずれか一項に記載のポリマーを含浸させた多孔質基材を含む、補強電解質膜。
【請求項50】
前記多孔質基材が、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ(エーテル)ケトン、ポリアリールエーテルケトン、イミダゾールにつながれたポリ(アリールアルキレン)、イミダゾリウムにつながれたポリ(アリールアルキレン)、ポリスルホン、ペルフルオロアルコキシアルカン、またはフッ素化エチレンプロピレンポリマーからなる膜を含み、前記膜が、任意に寸法安定性膜である、請求項49に記載の膜。
【請求項51】
以下:
前記多孔質基材が、ポリマーフィブリルの多孔性微細構造を有するか、または
前記多孔質基材の内部容積が、前記ポリマーの含浸により実質的に閉塞状態であるか、または
前記多孔質基材が、フィブリルによって相互接続されたノードの微細構造を含むか、または
前記多孔質基材が、約1ミクロン~約100ミクロンの厚さを有するか、または
前記膜が、前記ポリマーを前記基材に複数回含浸させることにより調製されるか、または
前記膜が、
前記多孔質基材を液体で濡らして湿潤基材を形成することと、
前記ポリマーを溶媒に溶解して、均一溶液を形成することと、
前記溶液を前記湿潤基材上に塗布して、前記補強膜を形成することと、
前記膜を乾燥することと、によって調整される、のうちの少なくとも1つである、請求項49または50に記載の膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府ライセンス権
本発明の一部は、米国エネルギー省のエネルギー高等研究計画局から授与された助成金DE-AR0000814に基づく政府支援を受けて行われた。政府は、本発明に特定の権利を有する。
【0002】
アニオン交換膜燃料電池(AEMFC)で使用するために、アニオン交換膜(AEM)およびアイオノマー(AEI)を形成することができるアニオン交換ポリマーが提供される。より具体的には、水酸化物交換膜燃料電池(HEMFC)および水酸化物交換膜電解槽(HEMEL)など、様々な用途で使用するために、水酸化物交換膜(HEM)およびアイオノマー(HEI)を形成することができる、水酸化物交換ポリマーが提供される。
【背景技術】
【0003】
プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)は、クリーンで効率的な電源と考えられている。Steele et al.,Nature 2001,414,345。しかしながら、触媒が高コストであり、耐久性が不十分なため、PEMFCの大規模な商業化の大きな障壁である。Borup et al.,Chem Rev 2007,107,3904。ポリマー電解質を「酸性」状態から「塩基性」状態に切り替えることにより、HEMFCは、非貴金属触媒で機能することができ、触媒は、より耐久性があることが期待される。金属の双極板など、他のより安価な燃料電池構成要素も可能である。Varcoe, et al.,Fuel Cells 2005,5,187、Gu et al.,Angew Chem Int Edit 2009,48,6499、Gu et al.,Chem Commun 2013,49,131。しかしながら、現在利用可能なHEMおよびHEIは、アルカリ/化学安定性が低く、水酸化物伝導率が低く、吸水率が高く、特に乾湿サイクル後の乾燥条件下で機械的完全性が低い。
【0004】
現在のHEM/HEIの最大の課題は、80℃以上、理想的には95℃以上の望ましい動作温度(例えば、求核性水酸化物イオンの存在下)で高い化学的安定性を達成している。Varcoe et al.,Energ Environ Sci 2014,7,3135。最も一般的に遭遇するカチオン性官能基(例えば、ベンジルトリメチルアンモニウムおよびアルキル鎖アンモニウム)は、直接求核置換およびホフマン脱離により、水酸化物イオン求核試薬の存在下で多くの分解プロセスを受ける可能性がある。さらに、HEM/HEI用途のためのほとんどのベースポリマー(例えば、ポリスルホンおよびポリ(フェニレンオキシド))のポリマー主鎖には、主鎖に沿ってエーテル結合が不可避的に含まれるため、高pH条件下でHEM/HEIが不安定になる可能性がある。Lee et al.,Acs Macro Lett 2015,4,453、Lee et al.,Acs Macro Lett 2015,4,814。求核性の強い水酸化物イオンが、これらの弱い結合を攻撃し、ポリマー主鎖を分解する。したがって、HEM/HEIの化学的安定性を高めるには、代替カチオン基、有機テザー(organic tethers)、およびポリマー主鎖が必要である。
【0005】
現在のHEM/HEIに関する別の懸念は、それらの水酸化物伝導率である。OH-の移動度が、H+のそれよりも低いため、HEMは、ナフィオンと比較して、同様の条件下で本質的にイオン伝導率が低い。Hibbs et al.,Chem Mater 2008,20,2566。HEM/HEIがより高い水酸化物伝導率を達成するには、より高いイオン交換容量(IEC)が必要である。しかしながら、高いIECにより通常、高い吸水率(すなわち、高い膨潤率)を有し、特に乾湿サイクルが繰り返された後、膜の形状安定性および機械的強度が低下した膜へとなる。湿潤時のこの非常に膨潤した状態は、乾燥時のHEMの柔軟性を低下させ、脆くなる主な理由である。高い水酸化物伝導率と低い吸水率との間のトレードオフをなくすことが、高性能HEM/HEIの設計における大きな妨げとなっている。Pan et al.,Energ Environ Sci 2013,6,2912。化学的架橋、物理的強化、側鎖重合、およびブロックコポリマー構造は、許容可能な水酸化物伝導率を維持しながら吸水率を低減するために試みられてきたが、これらの技術は、機械的柔軟性の低減、アルカリ安定性の低下、および/またはコストの増加などの困難な課題をもたらす。Gu et al.,Chem Commun 2011,47,2856、Park et al.,Electrochem Solid St 2012,15,B27、Wang et al.,Chemsuschem 2015,8,4229、Ran et al.,Sci Rep-Uk 2014,4、Tanaka et al.,J Am Chem Soc 2011,133,10646。さらに、ほとんどすべての側鎖またはブロックコポリマーHEMは、利用可能な合成方法が限られているため、柔軟な脂肪族ポリマー鎖に基づく。その結果、膜は依然として、高いIECおよび高温で、形状安定性(低い膨潤比)を提供することができない。Wang et al.,Chemsuschem 2015,8,4229、Ran et al.,Sci Rep-Uk 2014,4、Marino et al.,Chemsuschem 2015,8,513、Li et al,M.Macromolecules 2015,48,6523。
【0006】
HEMの使用に対するさらなる障害は、周囲の乾燥状態での機械的柔軟性および強度の達成である。ほとんどのHEMは機械的強度が低く、特に完全に膨潤した後に完全に乾燥した状態になると、非常に脆くなる。HEMの商業的使用に必要なサイズにおいて大きい薄膜を入手して取り扱うことは困難である。良好な機械的特性がないと、アイオノマーは、80℃以上などの高温で燃料電池電極内にて適切な三相構造を形成および維持できない。Li et al.,J Am Chem Soc 2013,135,10124。
【0007】
HEIの別の非常に望ましい特徴は、ポリマーが、低沸点アルコールと水との混合物に可溶であるが、純粋なアルコールまたは水に不溶であるため、HEIを電極触媒層に容易に組み込むことができ、水またはアルコールにより溶解除去され得ないことである。
【0008】
近年、PEMFCが、市販の自動車のゼロエミッション電源として配備され、長い走行距離および短い給油時間が実証されており、顧客の支持を得られる2つの特徴である。しかしながら、PEMFCは、プラチナ電気触媒を使用しており、ガソリンエンジンとのコスト競争力はまだない。PEMFCのコスト削減への主なアプローチには、低白金充填量、高出力密度の膜電極アセンブリ(MEA)、および白金族金属を含まない(PGMフリー)カソード触媒の開発が含まれる。低コスト燃料電池への根本的に異なる経路は、PEMFCから水酸化物交換膜燃料電池(HEMFC)に切り替えることであり、HEMFCは、その基本的な動作環境のため、PGMフリーのアノードおよびカソード触媒で機能し、潜在的に経済的に実行可能である。しかしながら、PEMFCを置き換えるには、HEMFCは、PEMFCの性能に匹敵する性能を提供する必要があり、同様に、高活性のアノードおよびカソード触媒ならびに化学的に非常に安定したイオン伝導性、および機械的に堅牢な水酸化物交換膜(HEM)/水酸化物交換アイオノマー(HEI)が必要であり、効率的な三相境界を構築し、触媒粒子の利用率を大幅に向上させ、内部抵抗を低減する性能が必要である。
【0009】
典型的には、HEM/HEIは、OH-がバランスアニオン(the balancing anion)である、ポリマー主鎖につながれた有機カチオンで構成される。化学的に安定したHEM/HEIには、安定した有機カチオンおよび安定したポリマー主鎖が必要である。これらの水酸化物伝導性有機カチオンは、芳香族環のクロロメチル化またはポリマーのベンジルメチル基の臭素化を使用して、第四級アンモニウム、イミダゾリウム、グアニジニウム、ホスホニウム、スルホニウム、ルテニウムおよびコバルトセニウムを導入することによって得てきた。様々なポリマー主鎖構造-ポリ(オレフィン)、ポリ(スチレン)、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリ(フェニレン)、ポリ(アリーレンエーテル)-が最近研究されてきた。今までのところ、従来のカチオン基(ベンジルトリメチルアンモニウムなど)および芳香族ポリマー主鎖(ポリスルホンなど)に基づくほとんどのHEM/HEIは、アルカリ性/化学安定性が低く、水酸化物伝導率が低く、吸水率が高く、乾燥時の機械的特性が劣っている。
【0010】
エーテル結合を有するポリマー主鎖は一般に、アルカリ性媒体中で脆弱であり、したがって、エーテルを含まないポリマー主鎖を有するHEM/HEIが非常に望ましい。酸触媒ヒドロキシル化反応は、エーテルを含まないポリマー主鎖を効率的に生成することが実証されており、そのような主鎖を有するHEM/HEIは、良好なアルカリ安定性および機械的特性を有することが証明されている。Zolotukhin et al.Chem.Comm.2004,1030.Diaz et al.Macromol.Rapid Commun.2007,28,183.Lee et al.ACS Macro Lett.2015,4,814.Bae et al.US Patent,App.15/527,967。
【0011】
高温および低い相対湿度の両方の下でのHEM/HEIのアルカリ安定性をさらに高めるためには、従来のアンモニウムカチオン以外のカチオンが強く求められる。イミダゾリウムカチオンは、適切に置換されると、改善されたアルカリ安定性を示した。Gu et al.Macromolecules,2014,47,208。Wang et al.ChemSusChem 2013,6,2079。Hugar et al.J.Am.Chem.Soc.2015,137,8730。
【発明の概要】
【0012】
式(1A)、(3A)、または(3’A)、および任意に(4A)の構造単位を含むポリマーが提供され、式(1A)、(3A)、(3’A)、および(4A)の構造単位は、以下の構造を有し、
【化1】

式中、
11はそれぞれ独立して、第四級アンモニウムもしくはホスホニウム基または窒素含有複素環基またはその塩であり、第四級アンモニウムまたはホスホニウム基は、式(5A)を有し、
【化2】

窒素含有複素環基は、任意に置換されたピロール、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、イミダゾール、イミダゾリン、トリアゾール、ピリジン、トリアジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、アゼピン、キノリン、ピペリジン、ピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、アゼパン、イソキサゾール、イソキサゾリン、オキサゾール、オキサゾリン、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、オキサジン、オキサジアジン、イソオキサゾリジン、モルホリン、チアゾール、イソチアゾール、オキサチアゾール、オキサチアジン、またはカプロラクタムであり、各置換基は独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、またはアラルキルであり、
20、R30、R40、R50、R60、R70、R80、R90、R130、R140、R150、R160、およびR170はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン化物、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールであり、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリールは、ハロゲン化物で任意に置換され、R30およびR60は任意に結合され、ハロゲン化物またはアルキルで任意に置換された五員環を形成し、
各R100は独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、または式(4B)を有する置換基であり、
【化3】

アルキル、アルケニル、またはアルキニルは、フッ化物で任意に置換され、
180およびR240はそれぞれ独立して、アルキレンであり、
190、R200、R210、R220、およびR230はそれぞれ独立して、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、
qは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20であり、
mは、0、1、2、3、4、5、または6であり、
nは、0、1、2、または3であり、
各m’および各n’は独立して、0、1、または2であり、
は、アニオンであり、
式(3A)の構造単位がポリマー中に存在するが、式(3’A)の構造単位がポリマー中に存在しない場合、ZはPであり、式(3’A)の構造単位がポリマー中に存在する場合、ZはNまたはPである。
【0013】
重合混合物の反応生成物を含むポリマーもまた提供され、
(i)以下の式を有するカチオン官能化トリフルオロケトンモノマー、
【化4】

(ii)以下の式を有する芳香族モノマー、
【化5】

または
以下の式を有するクラウンエーテルモノマー、
【化6】

および
(iii)任意に、以下の式を有するトリフルオロメチルケトンモノマーを含み、
【化7】

式中、
はそれぞれ独立して、第四級アンモニウムもしくはホスホニウム基または窒素含有複素環基またはその塩であり、第四級アンモニウムまたはホスホニウム基は、式(5A)を有し、
【化8】

窒素含有複素環基は、任意に置換されたピロール、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、イミダゾール、イミダゾリン、トリアゾール、ピリジン、トリアジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、アゼピン、キノリン、ピペリジン、ピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、アゼパン、イソキサゾール、イソキサゾリン、オキサゾール、オキサゾリン、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、オキサジン、オキサジアジン、イソオキサゾリジン、モルホリン、チアゾール、イソチアゾール、オキサチアゾール、オキサチアジン、またはカプロラクタムであり、各置換基は独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、またはアラルキルであり、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R13、R14、R15、R16、およびR17はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン化物、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールであり、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリールは、ハロゲン化物で任意に置換され、RおよびRは任意に結合され、ハロゲン化物またはアルキルで任意に置換された五員環を形成し、
各R12は独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、または式(4C)の置換基であり、
【化9】

アルキル、アルケニル、またはアルキニルは、フッ化物で任意に置換され、
180およびR240はそれぞれ独立して、アルキレンであり、
190、R200、R210、R220、およびR230はそれぞれ独立して、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、
mは、0、1、2、3、4、5、または6であり、
nは、0、1、2、または3であり、
各m’および各n’は独立して、0、1、または2であり、
qは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20であり、
は、アニオンであり、
式(3)の芳香族モノマーが重合混合物中に存在するが、式(3’)のクラウンエーテルモノマーが重合混合物中に存在しない場合、ZはPであり、式(3’)のクラウンエーテルモノマーが重合混合物中に存在する場合、ZはNまたはPである。
【0014】
第2の重合混合物の第2の反応生成物を含む別のポリマーが提供され、
第四級アンモニウムもしくはホスホニウム化合物または窒素含有複素環またはその塩、および
中間体ポリマーを含み、
中間体ポリマーは、
(i)以下の式を有するハロゲン化トリフルオロメチルケトンモノマー、
【化10】

(ii)上に示される式(3)を有する芳香族モノマー、または上に示される式(3’)を有するクラウンエーテルモノマー、および
(iii)任意に、上に示される式(4)を有するトリフルオロメチルケトンモノマーを含む、第1の重合混合物の第1の反応生成物を含み、
式中、第四級ホスホニウム化合物は、式(5)を有し、
【化11】

窒素含有複素環、m’、n’、n、q、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R12、R13、R14、R15、R16、およびR17は、上記の通りであり、
18およびR24はそれぞれ独立して、アルキレンであり、
19、R20、R21、R22、およびR23はそれぞれ独立して、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、
111は、ハロゲン化物であり、
mは、0、1、2、3、4、5、または6であり、
は、アニオンであり、
式(3)の芳香族モノマーが第1の重合混合物中に存在するが、式(3’)のクラウンエーテルモノマーが第1の重合混合物中に存在しない場合、ZはPであり、式(3’)のクラウンエーテルモノマーが第1の重合混合物中に存在する場合、ZはNまたはPである。
【0015】
塩基と上記のようなポリマーのうちのいずれか1つとの反応生成物を含む、アニオン交換ポリマーもまた提供される。
【0016】
アニオン交換ポリマーを含むアニオン交換ポリマー膜を作製する方法もまた提供される。方法は、
有機溶媒および重合触媒の存在下で、カチオン官能化トリフルオロケトンモノマー、任意のトリフルオロメチルケトンモノマー、および芳香族モノマーもしくはクラウンエーテルモノマーを反応させて、カチオン官能化ポリマーを形成することと、
カチオン官能化ポリマーを溶媒に溶解して、ポリマー溶液を形成することと、
ポリマー溶液をキャストして、ポリマー膜を形成することと、
ポリマー膜のアニオンを水酸化物イオン、重炭酸イオン、もしくは炭酸イオンまたはこれらの組み合わせと交換して、アニオン交換ポリマー膜を形成することとを含む。
【0017】
アニオン交換ポリマーを含むアニオン交換ポリマー膜を作製する別の方法が提供される。方法は、
有機溶媒および重合触媒の存在下で、ハロゲン化トリフルオロケトンモノマー、任意のトリフルオロメチルケトンモノマー、および芳香族モノマーを反応させて、ハロゲン官能化ポリマーを形成することと、
有機溶媒の存在下で、ハロゲン官能化ポリマーを第四級ホスホニウム化合物もしくは窒素含有複素環またはその塩と反応させて、カチオン官能化ポリマーを形成することと、
カチオン官能化ポリマーを溶媒に溶解して、ポリマー溶液を形成することと、
ポリマー溶液をキャストして、ポリマー膜を形成することと、
ポリマー膜のアニオンを水酸化物イオン、重炭酸イオン、もしくは炭酸イオンまたはこれらの組み合わせと交換して、アニオン交換ポリマー膜を形成することとを含む。
【0018】
アニオン交換ポリマーを含むアニオン交換ポリマー膜を作製する別の方法が提供される。方法は、
有機溶媒および重合触媒の存在下で、ハロゲン化トリフルオロケトンモノマー、任意のトリフルオロメチルケトンモノマー、およびクラウンエーテルモノマーを反応させて、ハロゲン官能化ポリマーを形成することと、
有機溶媒の存在下で、ハロゲン官能化ポリマーを第四級アンモニウム化合物もしくは第四級ホスホニウム化合物または窒素含有複素環またはその塩と反応させて、カチオン官能化ポリマーを形成することと、
カチオン官能化ポリマーを溶媒に溶解して、ポリマー溶液を形成することと、
ポリマー溶液をキャストして、ポリマー膜を形成することと、
ポリマー膜のアニオンを水酸化物イオン、重炭酸イオン、もしくは炭酸イオンまたはこれらの組み合わせと交換して、アニオン交換ポリマー膜を形成することとを含む。
【0019】
燃料電池、電解槽、電気透析装置、ソーラー水素発生装置、フロー電池、脱塩装置、センサー、鉱質除去装置、浄水器、廃水処理システム、イオン交換装置、またはCO分離器での使用に好適であるように任意に構成およびサイズ設定された、アニオン交換膜もまた提供され、アニオン交換膜は、アニオン交換ポリマーを含む。
【0020】
アニオン交換膜燃料電池、電解槽、電気透析装置、ソーラー水素発生装置、フロー電池、脱塩装置、センサー、鉱質除去装置、浄水器、廃水処理システム、イオン交換装置、またはCO分離器もまた提供され、燃料電池、電解槽、電気透析装置、ソーラー水素発生装置、フロー電池、脱塩装置、センサー、鉱質除去装置、浄水器、廃水処理システム、イオン交換装置、またはCO分離器は、アニオン交換ポリマーを含む。
【0021】
燃料電池、電解槽、電気透析装置、ソーラー水素発生装置、フロー電池、脱塩装置、センサー、鉱質除去装置、浄水器、廃水処理システム、イオン交換装置、またはCO分離器での使用に好適であるように任意に構成およびサイズ設定された、補強電解質膜もまた提供される。膜は、アニオン交換ポリマーを含浸させた多孔質基材を含む。
【0022】
本明細書の以下では、他の目的および特徴が、一部が明らかになり、一部が指摘される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】例示的な水酸化物交換膜燃料電池を例示する。
図1B】例示的な水酸化物交換膜電解槽を例示する。
図2】CDCl3中のBP-CF3-Br-1の1H NMRスペクトルを示す。
図3】DMSO-d6中のBP-CF3-IM-1の1H NMRスペクトルを示す。
図4A】1M KOH(DMSO-d6中10%TFA)中、130℃で1200時間のアルカリ安定性試験前後のBP-CF3-IM-1の1H NMRスペクトルを示す。
図4B】10M KOH中、80℃で300時間のアルカリ安定性試験前後のTP-CF3-IM-1の1H NMRスペクトルを示す。(DMSO-d6中)。
図4C】それぞれ50.9%および23.3%のRHで、95℃で300時間のアルカリ安定性試験前後のTP-CF3-IM-1の1H NMRスペクトルを示す。(DMSO-d6中10%TFA)。
図5】CDCl3中のTP-CF3-Br-1の1H NMRスペクトルを示す。
図6】DMSO-d6中のTP-CF3-IM-1の1H NMRスペクトルを示す。
図7】重炭酸形態のTP-CF3-IM-1ポリマーの伸長の関数としての引張応力を示すグラフである。
図8】95℃でのHEMFCの分極(電流密度の関数としての電圧)および電力密度(電流密度の関数としての電力密度)曲線を例示する。材料:TP-CF3-IM-1膜、アイオノマー充填20%、触媒:アノード上に0.4mgPt cm-2 PtRu/C、カソード上に0.4mgPt cm-2 PtRu/C。試験条件:95℃、アノード加湿器温度:90℃、カソードアノード加湿器温度:97℃、H流量:1.0L/分、O流量:2.0L/分。
図9】80℃でのHEMELの分極(電流密度の関数としての電圧)曲線を例示する。材料:TP-CF3-IM-1膜、アイオノマー充填30%、触媒:アノード上に4.0mgPt cm-2 Pt/C、カソード上に2.9mg cm-2 IrO。試験条件:80℃の水および電解槽、水流量:3.0mL/分。
図10】CDCl3中のPCE-C5-Br-1の1H NMRスペクトルを示す。
図11】DMSO-d6中のPCE-C5-IM-Br-1の1H NMRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
様々なペンダントカチオン基を有するポリマーから形成され、固有の水酸化物伝導チャネルを有するHEM/HEIが、改善された化学的安定性、伝導性、吸水率、選択した溶媒への良好な溶解性、機械的特性、およびHEM/HEI性能に関する他の属性を同時に提供することが発見された。ペンダント側鎖を、エーテル結合を含まないポリマーの硬質芳香族ポリマー主鎖に結合させると、膜の機械的特性を微調整することができ、イミダゾリウム、ホスホニウムおよびアンモニウムなどのアルカリ安定カチオンを組み込むことで、ポリマーの安定性が向上する。これらのポリマーから形成されたHEM/HEIは、従来のHEM/HEIと比較して、秀でた化学的安定性、アニオン伝導率、吸水率の低下、選択した溶媒への良好な溶解性、および周囲乾燥状態での改善された機械的特性の向上を呈する。本発明のHEMFCは、比較的高温で向上した性能および耐久性を呈する。
【0025】
本発明の第1の態様として、式(1A)、(3A)、および/または(3’A)、ならびに任意に(4A)の構造単位を含むポリマーが提供される。
【0026】
式(1A)の構造単位は、以下の構造を有し、
【化12】

式中、qは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20であり、R11はそれぞれ独立して、第四級アンモニウムもしくはホスホニウム基または窒素含有複素環基またはその塩である。
【0027】
第四級アンモニウムまたはホスホニウム基は、式(5A)を有し、
【化13】

式中、R180およびR240はそれぞれ独立して、アルキレンであり、R190、R200、R210、R220、およびR230はそれぞれ独立して、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、mは、0、1、2、3、4、5、または6であり、Xは、アニオンであり、式(3A)の構造単位がポリマー中に存在するが、式(3’A)の構造単位がポリマー中に存在しない場合、ZはPであり、式(3’A)の構造単位がポリマー中に存在する場合、ZはNまたはPである。好ましくは、Xは、ハロゲン化物、BF 、PF 、CO 2-、またはHCO を含む。
【0028】
例えば、式(5A)の第四級アンモニウムまたは第四級ホスホニウム基は、R180およびR240を有することができ、それぞれ独立してC~C22アルキレンであり、R190、200、210、220、およびR230はそれぞれ独立して、C~Cアルキルであり得、mは、0、1、2、3、4、5、または6であり得、Zは、NまたはPである。
【0029】
別の例として、式(5A)の第四級アンモニウムまたは第四級ホスホニウム基は、R180およびR240を有することができ、それぞれ独立してC~Cアルキレンであり、R190、200、210、220、およびR230はそれぞれ独立して、C~Cアルキルであり得、mは、0、1、2、または3であり得、Zは、NまたはPである。
【0030】
さらに別の例として、式(5A)の第四級アンモニウムまたは第四級ホスホニウム基は、R180およびR240を有することができ、それぞれ独立してC~C22アルキレンであり、R190、200、210、220、およびR230はそれぞれ独立して、C~Cアルキルであり、mは、0、1、2、または3であり、Zは、NまたはPである。
【0031】
他の例では、式(5A)の第四級アンモニウムまたは第四級ホスホニウム基は、R180およびR240を有することができ、それぞれC~Cアルキレンであり、R190、R200、R210、R220、およびR230はそれぞれ独立してメチルであり、mは、1であり、Zは、NまたはPである。
【0032】
さらに他の例では、式(5A)の第四級アンモニウムまたは第四級ホスホニウム基は、R180およびR240を有することができ、それぞれn-ヘキシレンであり、R190、R200、R210、R220、およびR230はそれぞれメチルであり、mは、1であり、Zは、NまたはPである。
【0033】
窒素含有複素環基は、任意に置換されたピロール、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、イミダゾール、イミダゾリン、トリアゾール、ピリジン、トリアジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、アゼピン、キノリン、ピペリジン、ピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、アゼパン、イソキサゾール、イソキサゾリン、オキサゾール、オキサゾリン、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、オキサジン、オキサジアジン、イソオキサゾリジン、モルホリン、チアゾール、イソチアゾール、オキサチアゾール、オキサチアジン、またはカプロラクタムであり得、各置換基は独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、またはアラルキルである。
【0034】
好ましくは、窒素含有複素環基は、ピロール、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、イミダゾール、イミダゾリン、トリアゾール、ピリジン、トリアジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、アゼピン、またはキノリンなどの不飽和であり、複素環の各置換可能な位置は、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル)またはアリール基(例えば、アルキル置換基を有するフェニル)で独立して置換される。
【0035】
窒素含有複素環基は、式(6A)を有するイミダゾリウムを含むことができ、
【化14】

式中、R25、R26、R27、およびR28はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン化物、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリールであり、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリールは、ハロゲン化物で任意に置換される。好ましくは、R28は、2,4,6-アルキルフェニルであり、R25、R26、およびR27はそれぞれ独立して、C~Cアルキルである。窒素含有複素環としてのイミダゾールの例は、以下の式を有する1-ブチル-2-メシチル-4,5-ジメチル-1H-イミダゾール-イミダゾールである。
【化15】
【0036】
式(3A)の構造単位は、以下の構造を有し、
【化16】

式中、nは、0、1、2、または3であり、R20、R30、R40、R50、R60、R70、R80、およびR90はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン化物、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールであり、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリールは、ハロゲン化物で任意に置換され、R30およびR60は任意に結合され、ハロゲン化物またはアルキルで任意に置換された五員環を形成する。
【0037】
例えば、式(3A)の構造単位中、R20、R30、R40、R50、R60、R70、R80、およびR90のうちの少なくとも1つは、ハロゲン化物またはアリールであり得、アリールは、ハロゲン化物で任意に置換され得る。
【0038】
別の例として、式(3A)の構造単位中、R30およびR60は結合され、ハロゲン化物またはアルキルで任意に置換された五員環を形成し得る。
【0039】
式(3A)の構造単位は、ビフェニル、パラ-テルフェニル、メタ-テルフェニル、パラ-クアテルフェニル、9,9-ジメチル-9H-フルオレン、またはベンゼンを含む芳香族モノマーから誘導され得る。
【0040】
式(3’A)の構造単位は、以下の構造を有し、
【化17】

式中、R20、R40、R50、R70、R80、およびR90はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン化物、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリールであり、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリールは、ハロゲン化物で任意に置換される。式(3’A)に破線で示されるベンゾ環およびR90基は、存在し得るか、または不在であり得る。式(3’A)に破線で示されるベンゾ環が不在である場合、構造単位のベンゾ環は二価であるため、R90基は不在である。式(3’A)に破線で示されるベンゾ環が存在する場合、R90基を有するベンゾ環が一価であるため、R90基は存在する。
【0041】
例えば、構造単位は、式(3’A-1)のようなジベンゾ-18-クラウン-6ポリエーテル(式中、m’およびn’は0である)、式(3’A-1)のようなジベンゾ-21-クラウン-7ポリエーテル(式中、m’は0であり、n’は1である)、式(3’A-1)のようなジベンゾ-24-クラウン-8ポリエーテル(式中、m’およびn’は1である)、または式(3’A-1)のようなジベンゾ-30-クラウン-10ポリエーテル(式中、m’およびn’は2であり、R20、R40、R50、R70、R80、およびR90は、式(3’A)に定義される通りである)、
【化18】

または式(3’A-2)のようなベンゾ-18-クラウン-6エーテル(式中、m’およびn’は2であり、R70およびR80は、式(3’A)に定義される通りである)から誘導され得る。
【化19】
【0042】
例えば、式(3’A)~(3’A-2)のうちのいずれかの構造単位中、R20、R40、R50、R70、R80、およびR90は、存在する場合、水素またはハロゲン化物であり得る。
【0043】
式(3’A-1)の構造単位は、反応性ジベンゾ-クラウンエーテルから誘導することができ、R20、R40、R50、R70、R80、およびR90はそれぞれ水素である。ジベンゾ-18-クラウン-6ポリエーテルは、Charles J.Pedersen,Org.Synth.,1972,52,66によって記載されるようなカテコールおよびビス(クロロエチル)エーテルから作製することができ、市販されている。ジベンゾ-21-クラウン-7ポリエーテル、ジベンゾ-24-クラウン-8ポリエーテル、およびジベンゾ-30-クラウン-10ポリエーテルもまた市販されている。
【0044】
式(3’A-2)の構造単位は、ベンゾ-18-クラウン-6ポリエーテルから誘導することができ、R70およびR80はそれぞれ水素である。ベンゾ-18-クラウン-6ポリエーテルは市販されている。
【0045】
式(4A)の任意の構造単位は、以下の構造を有し、
【化20】

式中、各R100は独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、または式(4B)を有する置換基であり、
【化21】

アルキル、アルケニル、またはアルキニルは、フッ化物で任意に置換され、R130、R140、R150、R160、およびR170はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン化物、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールであり、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールは、ハロゲン化物で任意に置換される。
【0046】
例えば、式(4A)の構造単位中、R100は、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり得、アルキル、アルケニル、またはアルキニルは、フッ化物で任意に置換され得る。
【0047】
別の例として、式(4A)の構造単位中、R100は、式(4B)の置換基であり得、R130、R140、R150、R160、およびR170のうちの少なくとも1つは、ハロゲン化物またはアリールであり得、アリールは、フッ化物で任意に置換され得る。
【0048】
さらに別の例として、R20、R40、R50、R70、R80、R90、R130、R140、R150、R160、およびR170はそれぞれ独立して、水素、またはフッ化物で任意に置換されたアルキルであり得、R100は、フッ化物または式(4B)の置換基で任意に置換されたアルキルであり得る。
【0049】
他の例では、R20、R40、R50、R70、R80、R90、R130、R140、R150、R160、およびR170はそれぞれ独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、もしくはヘキシル、またはフッ化物で任意に置換されたメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、もしくはヘキシルであり得、R100は、フッ化物または式(4B)の置換基で任意に置換されたメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルであり得る。
【0050】
ポリマー中の式(1A)および式(4A)の構造単位のモル分率の合計は、ポリマー中の式(3A)および(3’A)の構造単位のモル分率の合計にほぼ同等であり得、ポリマー中の式(1A)の構造単位のモル分率と、ポリマー中の式(3A)および(3’A)の構造単位のモル分率の合計との比は、約0.01~1であり得る。
【0051】
式(1A)または(4A)の構造単位のモル分率の合計と、ポリマー中の式(3A)および(3’A)のモル分率の合計とのモル比は、約0.95:1~約1.4:1であり得、式(1A)の構造単位のモル分率と、式(3A)および(3’A)の構造単位のモル分率の合計との比は、約0.01~1であり得る。
【0052】
式(1A)および式(4A)の構造単位のモル分率の合計と、ポリマー中の式(3A)および式(3’A)のモル分率の合計とのモル比は、約1:1~約1.2:1であり得る。
【0053】
本発明の第2の態様として、カチオン官能化トリフルオロケトンモノマー、芳香族モノマーおよび/またはクラウンエーテルモノマー、ならびに任意に、トリフルオロメチルケトンモノマーを含む重合混合物の反応生成物を含むポリマーが提供される。
【0054】
カチオン官能化トリフルオロケトンモノマーは、以下の式を有し、
【化22】

式中、qは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20であり、Rはそれぞれ独立して、第四級アンモニウムもしくはホスホニウム基または窒素含有複素環基またはその塩である。第四級アンモニウムまたはホスホニウム基および窒素含有ヘテロ環基は、本発明の第1の態様について上に定義される通りである。
【0055】
芳香族モノマーは、以下の式を有し、
【化23】

式中、nは、0、1、2、または3であり、R、R、R、R、R、R、R、R、およびR10はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン化物、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールであり、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリールは、ハロゲン化物で任意に置換され、RおよびRは任意に結合され、ハロゲン化物またはアルキルで任意に置換された五員環を形成する。
【0056】
例えば、式(3)の芳香族モノマー中、R、R、R、R、R、R、R、R、およびR10のうちの少なくとも1つは、ハロゲン化物またはアリールであり、アリールは、ハロゲン化物で任意に置換される。
【0057】
別の例として、式(3)の芳香族モノマー中、RおよびRは結合され、ハロゲン化物またはアルキルで任意に置換された五員環を形成する。
【0058】
式(3)の芳香族モノマーは、ビフェニル、パラ-テルフェニル、メタ-テルフェニル、パラ-クアテルフェニル、9,9-ジメチル-9H-フルオレン、またはベンゼンを含み得る。
【0059】
クラウンエーテルモノマーは、以下の式を有し、
【化24】

式中、存在する場合、R、R、R、R、R、R、およびR10はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン化物、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリールであり、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリールは、ハロゲン化物で任意に置換され、各m’および各n’は独立して、0、1、または2である。式(3’)に破線で示されるベンゾ環は、存在し得るか、または不在であり得る。
【0060】
例えば、クラウンエーテルモノマーは、式(3’-1)のようなジベンゾ-18-クラウン-6ポリエーテル(式中、m’およびn’は0である)、式(3’-1)のようなジベンゾ-21-クラウン-7ポリエーテル(式中、m’は0であり、n’は1である)、式(3’-1)のようなジベンゾ-24-クラウン-8ポリエーテル(式中、m’およびn’は1である)、または式(3’-1)のようなジベンゾ-30-クラウン-10ポリエーテル(式中、m’およびn’は2であり、R、R、R、R、R、R、およびR10は、式(3’)に定義される通りである)、
【化25】

または式(3’-2)のようなベンゾ-18-クラウン-6エーテル(式中、m’およびn’は2であり、R、R、R、およびR10は、式(3’)に定義される通りである)であり得る。
【化26】
【0061】
任意のトリフルオロメチルケトンモノマーは、以下の式を有し、
【化27】

式中、各R12は独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、または式(4C)の置換基であり、
【化28】

アルキル、アルケニル、またはアルキニルは、フッ化物で任意に置換され、R13、R14、R15、R16、およびR17はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン化物、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリールである。
【0062】
例えば、式(4)のトリフルオロメチルケトンモノマー中、R12は、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、アルキル、アルケニル、またはアルキニルは、フッ化物で任意に置換される。
【0063】
別の例として、式(4)のトリフルオロメチルケトンモノマー中、R12は、式(4C)の置換基であり、R13、R14、R15、R16、およびR17のうちの少なくとも1つは、ハロゲン化物またはアリールであり、アリールは、フッ化物で任意に置換される。
【0064】
さらに別の例として、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R13、R14、R15、R16、およびR17はそれぞれ独立して、水素、またはフッ化物で任意に置換されたアルキルであり、R12は、フッ化物または式(4C)の置換基で任意に置換されたアルキルである。
【0065】
他の例では、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R13、R14、R15、R16、およびR17はそれぞれ独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、もしくはヘキシル、またはフッ化物で任意に置換されたメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、もしくはヘキシルであり、R12は、フッ化物または式(4C)の置換基で任意に置換されたメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルである。
【0066】
本発明の第3の態様は、第2の重合混合物の第2の反応生成物を含むポリマーである。第2の重合混合物は、第四級アンモニウムもしくはホスホニウム化合物または窒素含有複素環またはその塩、および中間体ポリマーを含む。
【0067】
中間体ポリマーは、第1の重合混合物の第1の反応生成物を含む。第1の重合混合物は、ハロゲン化トリフルオロメチルケトンモノマー、芳香族モノマーおよび/またはクラウンエーテルモノマー、ならびに任意に、トリフルオロメチルケトンモノマーを含む。
【0068】
ハロゲン化トリフルオロメチルケトンモノマーは、以下の式を有し、
【化29】

式中、qは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20であり、R111は、ハロゲン化物である。好ましくは、ハロゲン化物は、フッ化物、塩化物、臭化物、またはヨウ化物である。
【0069】
芳香族モノマーは、式(3)を有し、本発明の第2の態様でポリマーについて記載される通りである。
【0070】
クラウンエーテルは、式(3’)を有し、本発明の第2の態様でポリマーについて記載される通りである。
【0071】
トリフルオロメチルケトンモノマーは、式(4)を有し、本発明の第2の態様でポリマーについて記載される通りである。
【0072】
第四級アンモニウムまたはホスホニウム化合物は、式(5)を有し、
【化30】

式中、mは、0、1、2、3、4、5、または6であり、R18およびR24はそれぞれ独立して、アルキレンであり、R19、R20、R21、R22、およびR23はそれぞれ独立して、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、Xは、アニオンであり、式(3)の芳香族モノマーが第1の重合混合物中に存在するが、式(3’)のクラウンエーテルモノマーが第1の重合混合物中に存在しない場合、ZはPであり、式(3’)のクラウンエーテルモノマーが第1の重合混合物中に存在する場合、ZはNまたはPである。好ましくは、Xは、ハロゲン化物、BF 、PF 、CO 2-、またはHCO を含む。
【0073】
例えば、式(5)の第四級アンモニウムまたはホスホニウム化合物は、R18およびR24を有することができ、それぞれ独立してC~C22アルキレンであり、R19、R20、R21、R22、およびR23はそれぞれ独立して、C~Cアルキルであり得、mは、0、1、2、3、4、5、または6であり得、Zは、NまたはPである。
【0074】
別の例として、式(5)の第四級アンモニウムまたはホスホニウム化合物は、R18およびR24を有することができ、それぞれ独立してC~Cアルキレンであり、R19、R20、R21、R22、およびR23はそれぞれ独立して、C~Cアルキルであり得、mは、0、1、2、または3であり得、Zは、NまたはPである。
【0075】
さらに別の例として、式(5)の第四級アンモニウムまたはホスホニウム化合物は、R18およびR24を有することができ、それぞれ独立してC~C22アルキレンであり、R19、R20、R21、R22、およびR23はそれぞれ独立して、C~Cアルキルであり得、mは、0、1、2、または3であり得、Zは、NまたはPである。
【0076】
他の例では、式(5)の第四級アンモニウムまたはホスホニウム化合物は、R18およびR24を有することができ、それぞれC~Cアルキレンであり、R19、R20、R21、R22、およびR23はそれぞれ独立してメチルであり得、mは、1であり得、Zは、NまたはPである。
【0077】
さらに他の例では、式(5)の第四級アンモニウムまたはホスホニウム化合物は、R18およびR24を有することができ、それぞれn-ヘキシレンであり、R19、R20、R21、R22、およびR23はそれぞれメチルであり得、mは、1であり得、Zは、NまたはPである。
【0078】
窒素含有複素環は、任意に置換されたピロール、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、イミダゾール、イミダゾリン、トリアゾール、ピリジン、トリアジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、アゼピン、キノリン、ピペリジン、ピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、アゼパン、イソキサゾール、イソキサゾリン、オキサゾール、オキサゾリン、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、オキサジン、オキサジアジン、イソオキサゾリジン、モルホリン、チアゾール、イソチアゾール、オキサチアゾール、オキサチアジン、またはカプロラクタムであり得、各置換基は独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、またはアラルキルである。
【0079】
好ましくは、窒素含有複素環は、ピロール、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、イミダゾール、イミダゾリン、トリアゾール、ピリジン、トリアジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、アゼピン、またはキノリンなどの不飽和であり、複素環の各置換可能な位置は、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル)またはアリール基(例えば、アルキル置換基を有するフェニル)で独立して置換される。
【0080】
例えば、窒素含有複素環は、式(6)を有するイミダゾールを含むことができ、
【化31】

式中、R25、R26、R27、R28、およびR29はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン化物、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリールであり、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリールは、ハロゲン化物で任意に置換される。好ましくは、R29は、水素であり、R28は、2,4,6-アルキルフェニルであり、R25、R26、およびR27はそれぞれ独立して、C~Cアルキルである。窒素含有複素環としてのイミダゾールの例は、以下の式を有する1-ブチル-2-メシチル-4,5-ジメチル-1H-イミダゾール-イミダゾールである。
【化32】
【0081】
窒素含有複素環は、任意に置換されたピロール、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、イミダゾール、イミダゾリン、トリアゾール、ピリジン、トリアジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、アゼピン、キノリン、ピペリジン、ピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、アゼパン、イソキサゾール、イソキサゾリン、オキサゾール、オキサゾリン、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、オキサジン、オキサジアジン、イソオキサゾリジン、モルホリン、チアゾール、イソチアゾール、オキサチアゾール、オキサチアジン、またはカプロラクタムであり得、各置換基は独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、またはアラルキルである。
【0082】
本発明の第4の態様は、塩基と、本発明の第1、第2、または第3の態様の上記のようなポリマーのうちのいずれか1つとの反応生成物を含むアニオン交換ポリマーである。
【0083】
好ましくは、塩基は、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムなどの水酸化物含有塩基、重炭酸ナトリウムもしくは重炭酸カリウムなどの重炭酸塩含有塩基、または炭酸ナトリウムもしくは炭酸カリウムなどの炭酸塩含有塩基を含む。
【0084】
代表的なアニオン交換ポリマーには、以下が含まれ、式中、xは、0.01~1である。
【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】
【0085】
イミダゾリウムにつながれたポリ(アリールアルキレン)ポリマーまたはイミダゾリウムにつながれたポリ(アリール-クラウンエーテル-アルキレン)ポリマーは、エーテル結合を含まないポリ(アリールアルキレン)またはポリ(アリールクラウンエーテル-アルキレン)主鎖を含み、80℃の純水に浸漬したときのポリマーの乾燥重量に基づいて47%以下の吸水率を有するか、または20℃の純水中で少なくとも31mS/cmの水酸化物伝導率を有する、水酸化物交換ポリマーであり得る。また、ポリマーは、130°Cで1,200時間、1Mの水酸化カリウムに浸漬した場合、分解に対して安定(H NMRスペクトルの変化がないことから明らかであるように)、80°Cで300時間、10Mの水酸化カリウムに浸漬した場合、分解に対して安定(H NMRスペクトルの変化がないことから明らかであるように)、95℃で300時間、23.3%および50.9%の相対湿度で保持した場合、分解に対して安定(H NMRスペクトルの変化がないことから明らかであるように)、100℃の純水およびイソプロパノール中で不溶性であるが、100℃の水およびエタノールの重量で50/50の混合物に可溶性であり得る。また、ポリマーは、少なくとも30MPaの引張強度および/または少なくとも250%の破断点伸びを有し得る。
【0086】
イミダゾリウムにつながれたポリ(アリール-クラウンエーテル-アルキレン)ポリマーの取り込みは、ポリマーが架橋剤で架橋されているか、または膜に化学的に結合している場合、47%以下であり得る。例えば、測定されたとき、実施例10のポリクラウンエーテル-CF3-TMA(PCE-C5-QA-1としても知られる)の吸水率は、364%であり、実施例7のポリ(アリール-クラウンエーテル-アルキレン)-CF3-IMの吸水率は、約200%であったが、ポリマーを膜に架橋または化学的に結合させることによって減少され得る。
【0087】
本明細書に記載されるポリマーのうちのいずれかを架橋するのに使用するための架橋剤には、例えば、ジブロモアルカン(ジブロモヘキサン、ジブロモブタン)、ジヨードアルカン(ジヨードヘキサン、ジヨードブタン)、ならびにアンモニウムカチオン含有ジブロモアルカンおよびジヨードアルカンが含まれる。
【0088】
イミダゾリウムにつながれたポリ(アリールアルキレン)ポリマーまたはイミダゾリウムにつながれたポリ(アリール-クラウンエーテル-アルキレン)ポリマーは、エーテル結合を含まないイミダゾリウムにつながれたポリ(アリールアルキレン)またはポリ(アリール-クラウンエーテル-アルキレン)主鎖を含み、かつポリマーが、水酸化物交換膜燃料電池の水酸化物交換膜として使用され、燃料電池のカソードおよびアノード触媒層の水酸化物交換アイオノマーとして20%で充填され、燃料電池が、アノード上に0.4mgPt cm-2 PtRu/C、カソード上に0.4mgPt cm-2 PtRu/Cを有し、試験条件が、1.0L/分の水素流量、2.0L/分の酸素流量、95℃の電池温度、ならびにそれぞれ90℃および97℃でのアノードおよびカソード加湿器温度である場合に、少なくとも130mW/cmのピーク電力密度を有する、水酸化物交換ポリマーであり得る。
【0089】
好ましくは、エーテル結合を含まないイミダゾリウムにつながれたポリ(アリールアルキレン)主鎖のアリール結合は、p-フェニルを含み、アルキレン結合は、水酸化物アニオン、重炭酸アニオン、もしくは炭酸アニオン、またはこれらの組み合わせを含む。エーテル結合を含まないイミダゾリウムにつながれたポリ(アリール-クラウンエーテル-アルキレン)ポリマー主鎖はまた、好ましくは、ジベンゾ-18-クラウン-6、ジベンゾ-21-クラウン-7ポリエーテル、ジベンゾ-24-クラウン-8ポリエーテル、またはジベンゾ-30-クラウン-10ポリエーテルを含む。
【0090】
イミダゾリウムにつながれたポリ(アリールアルキレン)ポリマー主鎖のアリール結合は、例えば、ビフェニル、パラ-テルフェニル、メタ-テルフェニル、パラ-クアテルフェニル、9,9-ジメチル-9H-フルオレン、またはベンゼンモノマーから誘導され得る。エーテル結合を含まないイミダゾリウムにつながれたポリ(アリール-クラウンエーテル-アルキレン)ポリマー主鎖は、例えば、ジベンゾ-18-クラウン-6、ジベンゾ-21-クラウン-7ポリエーテル、ジベンゾ-24-クラウン-8ポリエーテル、またはジベンゾ-30-クラウン-10ポリエーテルから誘導され得る。
【0091】
イミダゾリウムにつながれたポリ(アリールアルキレン)主鎖のアルキレン結合は、7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オンモノマーから誘導される。
【0092】
イミダゾリウムにつながれたポリ(アリールアルキレン)ポリマー主鎖またはイミダゾリウムにつながれたポリ(アリール-クラウンエーテル-アルキレン)ポリマー主鎖は、2,2,2-トリフルオロアセトフェノンモノマーから誘導される2,2,2-トリフルオロエチルベンゼン結合、またはトリフルオロメチルケトンモノマーから誘導されるトリフルオロメチルメチレン結合、例えば、1,1,1-トリフルオロアセトンから誘導される1,1,1-トリフルオロプロパン結合などをさらに含み得る。
【0093】
本発明の第5の態様は、本発明の第4の態様においてアニオン交換ポリマーを含むアニオン交換ポリマー膜を作製する方法である。方法は、有機溶媒および重合触媒の存在下で、カチオン官能化トリフルオロケトンモノマー、任意のトリフルオロメチルケトンモノマー、ならびに芳香族モノマーおよび/またはクラウンエーテルモノマーを反応させて、カチオン官能化ポリマーを形成することと、カチオン官能化ポリマーを溶媒に溶解して、ポリマー溶液を形成することと、ポリマー溶液をキャストして、ポリマー膜を形成することと、ポリマー膜のアニオンを水酸化物イオン、重炭酸イオン、もしくは炭酸イオンまたはこれらの組み合わせと交換して、アニオン交換ポリマー膜を形成することとを含む。
【0094】
例えば、イミダゾリウム官能化7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オンなどのカチオン官能化トリフルオロケトンモノマーと、2,2,2-トリフルオロアセトフェノンまたは1,1,1-トリフルオロアセトンなどの任意のトリフルオロメチルケトンモノマーと、ベンゼン、ビフェニル、p-テルフェニル、m-テルフェニル、もしくはp-クアテルフェニルなどの芳香族モノマー、またはジベンゾ-18-クラウン-6、ジベンゾ-21-クラウン-7ポリエーテル、ジベンゾ-24-クラウン-8ポリエーテル、もしくはジベンゾ-30-クラウン-10ポリエーテルなどのクラウンエーテルモノマーは、撹拌容器に配置され、有機溶媒に溶解または分散することができる。次に、溶媒中の重合触媒を、-78~60℃で最大60分にわたり滴下で添加してもよい。その後、この温度で約1~約120時間、反応を続ける。得られた溶液をエタノールの水溶液にゆっくりと注ぐ。得た固体を濾過し、水で洗浄し、室温で約1~48時間、1MのK2CO3に浸漬する。最後に、生成物を濾過し、水で洗浄し、真空下で完全に乾燥させて、カチオン官能化ポリマーを形成する。次いで、カチオン官能化ポリマーをアニオン交換し、例えば、約20~100℃で約12~48時間、1MのKOH中で水酸化物交換して、続いて洗浄し、無酸素雰囲気下、約12~48時間DI水中に浸漬し、残留KOHを除去する。
【0095】
本発明の第5の態様の代表的な反応スキームは以下に示され、R、R、R、R、およびR100はそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、フェニル、またはアルキニルであり、アルキル、アルケニル、フェニル、またはアルキニルは、ハロゲン化物で任意に置換され、R11は、ホスホニウムまたは窒素含有複素環であり、nは、ポリマー中の繰り返し単位の数であり、qは、0~20であり、xは、0.01~1である。
【化38】

【化39】

【化40】
【0096】
本発明の第の6態様は、本発明の第4の態様においてアニオン交換ポリマーを含むアニオン交換ポリマー膜を作製する方法である。方法は、有機溶媒および重合触媒の存在下で、ハロゲン化トリフルオロケトンモノマー、任意のトリフルオロメチルケトンモノマー、ならびに芳香族モノマーおよび/またはクラウンエーテルモノマーを反応させて、ハロゲン官能化ポリマーを形成することと、有機溶媒の存在下で、ハロゲン官能化ポリマーを第四級ホスホニウム化合物もしくは窒素含有複素環またはその塩と反応させて、カチオン官能化ポリマーを形成することと、カチオン官能化ポリマーを溶媒に溶解して、ポリマー溶液を形成することと、ポリマー溶液をキャストして、ポリマー膜を形成することと、ポリマー膜のアニオンを水酸化物イオン、重炭酸イオン、もしくは炭酸イオンまたはこれらの組み合わせと交換して、アニオン交換ポリマー膜を形成することとを含む。
【0097】
例えば、7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オンなどのハロゲン化トリフルオロケトンモノマーと、2,2,2-トリフルオロアセトフェノンまたは1,1,1-トリフルオロアセトンなどの任意のトリフルオロメチルケトンモノマーと、ベンゼン、ビフェニル、p-テルフェニル、m-テルフェニル、もしくはp-クアテルフェニルなどの芳香族モノマー、またはジベンゾ-18-クラウン-6、ジベンゾ-21-クラウン-7ポリエーテル、ジベンゾ-24-クラウン-8ポリエーテル、もしくはジベンゾ-30-クラウン-10ポリエーテルなどのクラウンエーテルモノマーは、撹拌容器に配置され、有機溶媒に溶解または分散することができる。次に、溶媒中の重合触媒を、-78~60℃で最大60分にわたり滴下で添加してもよい。その後、この温度で約1~約120時間、反応を続ける。得られた溶液をエタノールの水溶液にゆっくりと注ぐ。得られた固体を濾過し、水で洗浄し、室温で約1~48時間、1MのK2CO3に浸漬する。最後に、生成物を濾過し、水で洗浄し、真空下で完全に乾燥させて、ハロゲン官能化ポリマーを形成する。
【0098】
次いで、ハロゲン官能化ポリマーは、第四級ホスホニウム化合物または窒素含有複素環またはその塩、例えば、官能化イミダゾールなどとともに撹拌容器に配置され、有機溶媒に溶解または分散される。反応は、約50~100℃の温度で約1~約120時間継続される。次いで、得られた溶液をキャストしてポリマー膜を形成する。次いで、ポリマー膜をアニオン交換し、例えば、約20~100℃で約12~48時間、1MのKOH中で水酸化物交換して、続いて洗浄し、無酸素雰囲気下、約12~48時間DI水中に浸漬し、残留KOHを除去する。
【0099】
本発明の第6の態様の代表的な反応スキームは以下に示され、R、R、R、R、およびR100はそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、フェニル、またはアルキニルであり、アルキル、アルケニル、フェニル、またはアルキニルは、ハロゲン化物で任意に置換され、R11は、本発明の第1の態様で定義されるような第四級アンモニウムもしくはホスホニウム基または窒素含有複素環基であり、nは、ポリマー中の繰り返し単位の数であり、qは、0~20であり、xは、0.01~1である。
【化41】

【化42】

【化43】
【0100】
本発明の第7の態様は、燃料電池、電解槽、電気透析装置、ソーラー水素発生装置、フロー電池、脱塩装置、センサー、鉱質除去装置、浄水器、廃水処理システム、イオン交換装置、またはCO分離器での使用に好適であるように任意に構成およびサイズ設定され、かつ本発明の第4の態様のアニオン交換ポリマーを含む、アニオン交換膜である。
【0101】
アニオン交換ポリマーは、以下に記載されるように補強水酸化物交換膜に作製することができる。このような補強水酸化物交換膜は、多孔質基材を液体で湿らせて、湿潤基材を形成することと、ポリ(アリールアルキレン)ポリマーを溶媒に溶解して、均一溶液を形成することと、湿潤基材上に溶液を塗布して、補強膜を形成することと、補強膜を乾燥させることと、補強膜のアニオンを水酸化物イオンと交換して、補強水酸化物交換ポリマー膜を形成することとを含む方法によって調製することができる。溶液を、キャスト法、スプレー法、またはドクターナイフ法などの任意の既知の膜形成技術によって湿潤基材に塗布することができる。
【0102】
得られた補強膜を、必要に応じて、補強膜を再度湿らせて、溶解、キャスティング、および乾燥のステップを繰り返すことにより、ポリ(アリールアルキレン)ポリマーに複数回含浸することができる。
【0103】
ポリマーの形成時に使用される重合触媒は、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロ-1-プロパンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ペルフルオロプロピオン酸、ヘプタフルオロ酪酸、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0104】
上記の方法のうちのいずれかで使用される有機溶媒のそれぞれは、極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、1-メチル-2-ピロリジノン、1-メチル-2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、またはジメチルホルムアミド)または塩化メチレン、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、クロロホルム、1,1,2,2-テトラクロロエタン、ジメチルアセトアミドもしくはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない他の好適な溶媒から独立して選択することができる。
【0105】
溶解ステップにおける溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ジメチルスルホキシド、1-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、乳酸エチル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、水、フェノール、アセトン、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0106】
多孔質基材を湿らせるために使用される液体は、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール)などの低沸点溶媒および/または水であり得る。好ましくは、液体は無水エタノールである。
【0107】
本発明の追加の態様を以下に記載する。
【0108】
水酸化物交換膜などのアニオン交換膜も提供される。膜は、燃料電池、電解槽、電気透析装置、ソーラー水素発生装置、フロー電池、脱塩装置、センサー、鉱質除去装置、浄水器、廃水処理システム、イオン交換装置、またはCO分離器での使用に好適であるように構成およびサイズ設定され、本明細書に記載されるポリ(アリールアルキレン)ポリマーのうちのいずれかを含む。
【0109】
また、補強水酸化物交換膜などの補強電解質膜も、燃料電池中の多数の乾湿サイクル(相対湿度サイクリング)による安定性のためにアニオン交換膜の機械的堅牢性を高めるために提供される。膜は、燃料電池、電解槽、電気透析装置、ソーラー水素発生装置、フロー電池、脱塩装置、センサー、鉱質除去装置、浄水器、廃水処理システム、イオン交換装置、またはCO分離器での使用に好適であるように構成およびサイズ設定され、本明細書に記載されるポリ(アリールアルキレン)ポリマーのうちのいずれかを含浸させた多孔質基材を含む。補強膜を調製するための方法は、米国特許第RE37,656号および第RE37,701号に開示されているものなど、当業者に周知であり、補強膜の合成および材料のそれらの説明のために本明細書に参照により組み込まれる。
【0110】
多孔質基材は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ(エーテルケトン)、ポリアリールエーテルケトン、イミダゾリウムにつながれたポリ(アリールアルキレン)、イミダゾールにつながれたポリ(アリールアルキレン)、ポリスルホン、ペルフルオロアルコキシアルカン、もしくはフッ素化エチレンプロピレンポリマー、または燃料電池用の補強膜の調製時に使用するためのGinerからの寸法安定性のある膜などの、当該技術分野で既知の他の多孔質ポリマーからなる膜を含むことができる。このような多孔質基材は、例えば、W.L.Gore&Associatesから市販されている。
【0111】
多孔質基材は、ポリマーフィブリルの多孔性微細構造を有し得る。ポリテトラフルオロエチレンからなるこのような基材が市販されている。多孔質基材は、フィブリルによって相互接続されたノードの微細構造を含むことができる。
【0112】
多孔質基材の内部容積は、本明細書に記載されるポリ(アリールアルキレン)ポリマーでの含浸により実質的に閉塞することができる。
【0113】
多孔質基材は、約1ミクロン~約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100ミクロンの厚さを有し得る。好ましくは、多孔質基材は、約5ミクロン~約30ミクロン、または約7ミクロン~約20ミクロンの厚さを有する。
【0114】
アニオン交換膜燃料電池、電解槽、電気透析装置、ソーラー水素発生装置、フロー電池、脱塩装置、センサー、鉱質除去装置、浄水器、廃水処理システム、イオン交換装置、またはCO分離器もまた提供され、燃料電池、電解槽、電気透析装置、ソーラー水素発生装置、フロー電池、脱塩装置、センサー、鉱質除去装置、浄水器、廃水処理システム、イオン交換装置、またはCO分離器は、アニオン交換ポリマーを含む。
【0115】
高い吸水率を有する本発明のポリマーは、ポリマーが、電解槽または燃料電池の動作中に洗い流されないように触媒層に付着している場合、電解槽または燃料電池においてアイオノマーとして有用である。付着は、ポリマーを電解槽または燃料電池内の膜または触媒層に化学的に結合することによって、またはポリマーを上記のものなどの架橋剤で架橋することによって達成することができる。例えば、ブロモアルキル基などの本発明のポリマー上の官能基を、アミン基などの膜上の官能基と反応させて、ポリマーアイオノマーを膜に結合することができる。
【0116】
本発明のポリマーを膜として使用する場合、膜の機械的強度を維持するために、ポリマーの吸水率は約20~約50%の範囲であることが好ましい。
【0117】
ポリ(アリールアルキレン)ポリマーまたはポリ(アリール-クラウンエーテル-アルキレン)は、図1Aに示されるように、典型的な燃料電池10などのHEMFCに使用され得る。図1Aは、電解質膜16によって分離されたアノード部分12(左側に例示)およびカソード部分14(右側に例示)を備えた典型的な燃料電池10を例示する。電解質膜16は、本明細書に記載されるようなポリ(アリールアルキレン)ポリマーまたはポリ(アリール-クラウンエーテル-アルキレン)のうちのいずれかを含む任意の膜であり得、補強膜であり得る。指示部材は図示されていない。アノード部分は、燃料を酸化して外部回路に電子を放出し、酸化生成物を生成するアノード半反応を実行する。カソード部分は、外部回路からの電子を消費する酸化剤を低減するカソード半反応を実行する。ガス拡散層(GDL)18および20は、それぞれの触媒層26および28にわたって燃料22および酸化剤24を均一に送達するよう機能する。電荷的中性は、正イオンの場合はアノードからカソードへ、負イオンの場合はカソードからアノードへのイオンの流れによって維持される。電解質膜は通常、膜の構造的完全性を維持しながら可能な限り薄くなるように選択されるため、例示されている寸法は代表的なものではない。
【0118】
例示されている水酸化交換膜燃料電池(HEMFC)の場合には、アノード半反応により、燃料およびOH-イオンが消費されて、排水(ならびに炭素含有燃料の場合での二酸化炭素)が生成される。カソード半反応により酸素が消費され、OH-イオンが生成されて、電解質膜を通ってカソードからアノードへ流れる。燃料は、アノード触媒の酸化能力によってのみ制限され、通常、水素ガス、メタノール、エタノール、エチレングリコール、およびグリセロールを含む。好ましくは、燃料は、H2またはメタノールである。触媒は通常、白金(Pt)、銀(Ag)、またはNiなどの1つ以上の遷移金属である。PEMFCの場合、アノードの半反応により燃料が消費され、H+イオンおよび電子が生成される。カソード半反応により、酸素、H+イオン、および電子が消費され、廃水が生成され、H+イオン(プロトン)が、電解質膜を通ってアノードからカソードへ流れる。
【0119】
したがって、ポリ(アリールアルキレン)ポリマーまたはポリ(アリール-クラウンエーテル-アルキレン)ポリマーから作製された電解質膜がどのように燃料電池の性能を大幅に改善するかを理解することができる。第1に、燃料電池の効率をより高めるには、内部抵抗を低くする必要があるため、イオン伝導率がより高い(イオン抵抗が低い)電解質膜が好ましい。第2に、より大きな電力は、より大きな燃料電池電流を必要とし、したがって、より大きなイオン電流容量を有する電解質膜が好ましい。また、実用的な電解質膜は、化学分解に抵抗し、燃料電池環境で機械的に安定しており、また、製造が容易でなければならない。
【0120】
ポリ(アリールアルキレン)ポリマーまたはポリ(アリール-クラウンエーテル-アルキレン)ポリマーは、図1Bに示されるように、電解槽30などのHEMELで使用され得る。図1Bは、電解質膜36によって分離されたアノード部分32(左側に例示)およびカソード部分34(右側に例示)を備えた典型的な電解槽30を例示する。電解質膜36は、本明細書に記載されるようなポリ(アリールアルキレン)ポリマーまたはポリ(アリール-クラウンエーテル-アルキレン)のうちのいずれかを含む任意の膜であり得、補強膜であり得る。指示部材は図示されていない。アノード部分は、イオンを酸化して外部回路に電子を放出し、酸化生成物を生成するアノード半反応を実行する。カソード部分は、外部回路からの電子を消費する酸化剤を低減するカソード半反応を実行する。ガス拡散層(GDL)38および40は、それぞれの触媒層46および48にわたって酸化剤42および燃料44を均一に放出するよう機能する。電荷的中性は、正イオンの場合はアノードからカソードへ、負イオンの場合はカソードからアノードへのイオンの流れによって維持される。電解質膜は通常、膜の構造的完全性を維持しながら可能な限り薄くなるように選択されるため、例示されている寸法は代表的なものではない。
【0121】
例示される水酸化物交換膜燃料電池(HEMFC)の場合、アノード半反応は、OH-イオンを消費し、酸素を生成する。カソード半反応により水が消費され、水素およびOH-イオンが生成されて、電解質膜を通ってカソードからアノードへ流れる。燃料は、カソード触媒の酸化能力によってのみ制限され、典型的には、水素ガス、メタノール、エタノール、エチレングリコール、およびグリセロールを含む。好ましくは、燃料は、Hまたはメタノールである。触媒は通常、白金(Pt)、銀(Ag)、またはNiなどの1つ以上の遷移金属である。
【0122】
したがって、ポリ(アリールアルキレン)ポリマーまたはポリ(アリール-クラウンエーテル-アルキレン)ポリマーから作製された電解質膜がどのように電解槽の性能を大幅に改善するかを理解することができる。第1に、電解槽の効率をより高めるには、内部抵抗を低くする必要があるため、イオン伝導率がより高い(イオン抵抗が低い)電解質膜が好ましい。第2に、より大きな燃料生成は、より大きな電解槽電流を必要とし、したがって、より大きなイオン電流容量を有する電解質膜が好ましい。また、実用的な電解質膜は、化学分解に抵抗し、電解槽環境で機械的に安定しており、また、製造が容易でなければならない。
【0123】
ポリ(アリールアルキレン)ポリマーまたはポリ(アリール-クラウンエーテル-アルキレン)ポリマーの主な用途は、アニオン交換膜、水酸化物交換膜、アニオン交換膜燃料電池、および水酸化物交換膜燃料電池での使用などのエネルギー変換用であるが、アニオン/水酸化物交換アイオノマーおよび膜は、燃料電池(例えば、水素/アルコール/アンモニア燃料電池)、電解槽(例えば、水/二酸化炭素/アンモニア電解槽)、電気透析装置、イオン交換装置、ソーラー水素発生装置、脱塩装置(例えば、海/汽水の脱塩)、硬質除去装置(例えば、水の硬質除去)、浄水器(例えば、超純水製造)、廃水処理システム、食品、医薬品、化学薬品、およびバイオテクノロジー分野における電解質溶液の濃度、電気分解(例えば、塩素アルカリ生成およびH2/O2生成)、エネルギー貯蔵(例えば、超コンデンサ、金属空気電池、およびレドックスフロー電池)、センサー(例えば、pH/RHセンサー)、およびアニオン伝導性アイオノマーが有利である他の用途における使用のような多くの他の目的のために使用できる。
【0124】
燃料電池、電解槽、電気透析装置、ソーラー水素発生装置、フロー電池、脱塩装置、センサー、鉱質除去装置、浄水器、廃水処理システム、イオン交換装置、またはCO分離器での使用に好適であるように任意に構成およびサイズ設定された、補強電解質膜もまた提供される。膜は、アニオン交換ポリマーを含浸させた多孔質基材を含む。
【0125】
本発明を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱しない限り、修正形態および変形形態があり得ることが分かるであろう。
【実施例
【0126】
本発明をさらに説明するのに、以下の非限定的な例を提供する。
【0127】
実施例1
イミダゾリウムにつながれたポリ(アリールアルキレン)ポリマーを、7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オン、1,1,1-トリフルオロアセトン、およびビフェニルから調製した(BP-CF3-IM-xと称され、xは、7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オンと、ビフェニルとのモル比であり、1から100である)。BP-CF3-IM-xを、3つの主要なステップ:(1)臭化物官能化ポリマーの合成、(2)イミダゾリウム官能化ポリマーの合成、ならびに(3)膜キャストおよび水酸化物交換で調製した。反応スキームを以下に示し、nは、ポリマー中の繰り返し単位の数である。
【化44】
【0128】
(1)臭化物官能化ポリマー(BP-CF3-Br-1)の合成。オーバーヘッド機械式撹拌器を備えた100mLの3つ口フラスコに、7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オン(3.000g、12.1mmol)およびビフェニル(1.560g、10.1mmol)を塩化メチレン(6.7mL)に溶解した。次いで、トリフルオロメタンスルホン酸(TFSA)(6.7mL)を、0℃で30分にわたり滴下で添加した。その後、この温度で24時間、反応を継続した。得られた粘稠な褐色溶液をゆっくりとエタノールに注いだ。沈殿した固体を濾過し、水で洗浄し、室温で12時間、1MのKCOに浸漬した。最後に、生成物を濾過し、水で洗浄し、真空下で、60℃で完全に乾燥させた。ポリマーの収率は、ほぼ100%であった。H NMR(CDCl、δ、ppm):7.58(H、4H)、7.36(H、4H)、3.33(H、2H)、2.45(H、2H)、1.80(H、2H)、1.45(H、2H)、および1.27(H、2H)(図2を参照されたい)。
【0129】
(2)イミダゾリウム官能化ポリマー(BP-CF3-IM-1)の合成。磁気バーを備えた50mLの1つ口フラスコに、臭化物官能化ポリマー(2.0g、5.2mmol)およびイミダゾール(1.7g、6.3mmol)をNMP(37mL)に添加した。溶液を75℃で12時間にわたり撹拌した。得られた黄色の溶液を使用して、膜をキャストした。その結果、膜を塩酸塩溶液(pH1)およびDI水で3回洗浄し、真空下で、60℃で完全に乾燥させた。ポリマーBP-CF3-IM-1の収率は、ほぼ100%であった。1H NMR(DMSO-d6、δ、ppm):7.70(H2、4H)、7.29(H1、4H)、7.02(H3、2H)、3.67(H4、4H)、2.27~2.19(H5、H6、H12、11H)、1.89(H7、6H)、1.38~1.07(H8、H9、H10、10H)、0.68(H11、3H)(図3を参照されたい)。
【0130】
(3)BP-CF3-IM-1膜キャスティングおよび水酸化物交換。BP-CF3-IM-1ポリマー(1.0g)をNMP(10mL)に溶解して、80℃で8時間、透明なガラスプレート上でキャストすることで膜を調製した。膜(臭化物形態で)は、脱イオン(DI)水と接触したガラスプレートから剥離された。水酸化物形態の膜を、60℃で24時間、1MのKOH中でイオン交換により得た後、洗浄し、アルゴン下で48時間DI水に浸漬して、残留KOHを除去した。
【0131】
他のBP-CF3-IM-x膜を、7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オンとビフェニルとの異なるモル比を使用することにより調製する。
【0132】
(4)アルカリ安定性。イミダゾリウム含有ポリマーのアルカリ安定性を、様々な条件下で評価し、その高い化学的安定性を調べた。BP-CF3-IM-1膜を、1MのKOH水溶液に130℃で1200時間浸漬したところ、1H NMRスペクトルはアルカリ試験の前後で変化を示さなかった(図4A)。TP-CF3-IM-1膜を、10MのKOH溶液に80℃で300時間浸漬したところ、図4Bに示される1H NMRスペクトルに基づく劣化は観察されなかった。さらに、TP-CF3-IM-1膜は、図4Cに示されるように、それぞれ23.3%および50.9%の低い相対湿度(RH)下で、95℃で300時間保持され、また劣化の兆候は示されなかった。これらの結果は、硬質ポリ(アリールアルキレン)ポリマー主鎖構造につながれた高アルカリ安定性イミダゾリウムカチオンが、実際に顕著な化学的安定性HEMをもたらすことができることを強く示唆した。
【0133】
(5)吸水率および水酸化物伝導率。HEM/HEIの理想的な材料は、低い吸水率で良好なイオン伝導率を有する必要がある。すべての膜は、純水中で非常に高い伝導率を示すことが予期される。例えば、20℃では、BP-CF3-IM-xポリマーの水酸化物伝導率は、36mS/cmのIEC値を有するPSFQN(基準HEM)よりもはるかに高いと予期される。PSFQNは、ベンジルトリメチルアンモニウムポリスルホンから誘導され、以下の式を有する。
【化45】
【0134】
温度を上昇させると、膜試料の水酸化物伝導率も向上する。
【0135】
(6)溶解性および機械的特性。BP-CF3-IM-xポリマーは、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、およびイソプロパノール/水(1/1重量比)中で優れた溶解性を呈すると予期されるが、純水およびイソプロパノールには溶解しないと予期される。
【0136】
(7)水酸化物交換膜燃料電池(HEMFC)の性能。BP-CF3-IM-xポリマー膜は、秀でた化学的安定性、水酸化物伝導率、低吸水性、良好な溶解性および機械的特性を有することが予期されるが、これらの材料の最も実用的な評価は、触媒層でのHEIとして、かつHEMとしてHEMFC単電池でのそれらの性能である。膜電極アセンブリ(MEA)は、ロボット噴霧器(Sono-Tek ExactaCoat)を使用して、BP-CF3-IM-xポリマー膜の両側に5cmの電極を置くことによって製作され得る。電極インクを、250mgの触媒(Tanaka Kikinzoku Kogyo(TKK)、高表面積C上の50%Pt)および所望量のアイオノマー(BP-CF3-IM-xポリマーを水とイソプロパノールとの混合物に溶解して調製された、BP-CF3-IM-xポリマー)を10gの水および10gのイソプロパノールに添加し、続いて1時間、超音波処理することにより調製する。触媒充填量は、0.4mg Pt/cmである。MEAの両側にゴム製ガスケット、GDL(SGL25CC)、およびグラファイト流動場(ElectroChem)を追加してサンドイッチを完成させる。性能は、背圧モジュール(Scribner 850e)を装備した燃料電池試験システムで特徴付ける。通常、電池を100mA/cmで30分間、さらに200mA/cmで30分間活性化する。活性化後、電流を計測することにより性能を記録する。
【0137】
実施例2
イミダゾリウムにつながれたポリ(アリールアルキレン)ポリマーを、7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オン、1,1,1-トリフルオロアセトン、およびp-テルフェニルから調製した(TP-CF3-IM-xと称され、xは、7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オンと、p-テルフェニルとのモル比であり、1~100である)。TP-CF3-IM-xを、3つの主要なステップ:(1)臭化物官能化ポリマーの合成、(2)イミダゾリウム官能化ポリマーの合成、ならびに(3)膜キャストおよび水酸化物交換で調製した。反応スキームを以下に示し、nは、ポリマー中の繰り返し単位の数である。
【化46】
【0138】
(1)臭化物官能化ポリマー(TP-CF3-Br-1)の合成。オーバーヘッド機械式撹拌器を備えた100mLの3つ口フラスコに、7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オン(3.600g、14.6mmol)およびp-テルフェニル(2.797g、12.1mmol)を塩化メチレン(30mL)に溶解した。次いで、トリフルオロメタンスルホン酸(TFSA)(30mL)を、0℃で30分にわたり滴下で添加した。その後、この温度で24時間、反応を継続した。得られた粘稠な褐色溶液をゆっくりとエタノールに注いだ。沈殿した固体を濾過し、水で洗浄し、室温で12時間、1MのKCOに浸漬した。最後に、生成物を濾過し、水で洗浄し、真空下で、60℃で完全に乾燥させた。ポリマーの収率は、ほぼ100%であった。H NMR(CDCl、δ、ppm):7.70(H13、4H)、7.62(H、4H)、7.40(H、4H)、3.34(H、2H)、2.47(H12、2H)、1.82(H、2H)、1.47(H10、2H)、1.30(H、2H)(図5)。
【0139】
(2)イミダゾリウム官能化ポリマー(TP-CF3-IM-1)の合成。磁気バーを備えた50mLの1つ口フラスコに、臭化物官能化ポリマー(2.0g、4.4mmol)および官能化イミダゾール(1.5g、5.5mmol)をNMP(25mL)に添加した。溶液を75℃で12時間にわたり撹拌した。得られた黄色の溶液を使用して、膜をキャストした。その結果、膜を塩酸塩溶液(PH=1)およびDI水で3回洗浄し、真空下で、60℃で完全に乾燥させた。ポリマーTP-CF3-IM-xの収率は、ほぼ100%であった。1H NMR(DMSO-d6、δ、ppm):7.80(H13、4H)、7.72(H1、4H)、7.30(H2、4H)、7.05(H3、4H)、3.69~3.67(H4、4H)、2.29~2.23(H5、H6、H12、11H)、1.91(H7、6H)、1.38~1.01(H8、H9、H10、10H)、0.68(H11、3H)(図6)。
【0140】
(3)TP-CF3-IM-x膜キャスティングおよび水酸化物交換。TP-CF3-IM-xポリマー(1.0g)をNMP(10mL)に溶解して、80℃で8時間、透明なガラスプレート上でキャストすることで膜を調製した。膜(臭化物形態で)は、脱イオン(DI)水と接触したガラスプレートから剥離された。水酸化物形態の膜を、60℃で24時間、1MのKOH中でイオン交換により得た後、洗浄し、アルゴン下で48時間DI水に浸漬して、残留KOHを除去した。
【0141】
(4)吸水率および水酸化物伝導率。x=1の場合、TP-CF3-IM-1は、20℃で31.4mS/cmの伝導率を有する。20℃~80℃の純水中で、重炭酸形態での低い吸水率および寸法膨潤率を有する(表1に示される)。
【表1】
【0142】
(5)水酸化物交換膜燃料電池(HEMFC)の性能。TP-CF3-IM-xポリマー膜は、秀でた化学的安定性、水酸化物伝導率、低吸水性、良好な溶解性および機械的特性を有することが予期されるが、これらの材料の最も実用的な評価は、触媒層でのHEIとして、かつHEMとしてHEMFC単電池でのそれらの性能である。膜電極アセンブリ(MEA)は、ロボット噴霧器(Sono-Tek ExactaCoat)を使用して、TP-CF3-IM-xポリマー膜の両側に5cmの電極を置くことによって製作され得る。電極インクを、250mgの触媒(Tanaka Kikinzoku Kogyo(TKK)、高表面積C上の50%Pt)および所望量のアイオノマー(BP-CF3-IM-xポリマーを水とイソプロパノールとの混合物に溶解して調製された、TP-CF3-IM-xポリマー)を10gの水および10gのイソプロパノールに添加し、続いて1時間、超音波処理することにより調製する。触媒充填量は、アノード上に0.4mgPt cm-2 PtRu/C、カソード上に0.4mgPt cm-2 PtRu/Cである。MEAの両側にゴム製ガスケット、GDL(SGL25CC)、およびグラファイト流動場(ElectroChem)を追加してサンドイッチを完成させる。性能は、背圧モジュール(Scribner 850e)を装備した燃料電池試験システムで特徴付ける(材料:TP100-CF3-IM-1膜、アイオノマー充填20%、触媒:アノード上に0.4mgPt cm-2 PtRu/C、カソード上に0.4mgPt cm-2 PtRu/C。試験条件:95℃、アノード加湿器温度:90℃、カソードアノード加湿器温度:97℃、H流量:1.0L/分、O流量:2.0L/分)。通常、電池を100mA/cmで30分間、さらに200mA/cmで30分間活性化する。活性化後、電流を計測することにより性能を記録する。結果を図8に示す。
【0143】
(6)水酸化物交換膜電解槽(HEMEL)の性能。TP-CF3-IM-xポリマー膜は、秀でた化学的安定性、水酸化物伝導率、低吸水性、良好な溶解性および機械的特性を有することが予期されるが、これらの材料の最も実用的な評価は、触媒層でのHEIとして、かつHEMとしてHEMEL電池でのそれらの性能である。膜電極アセンブリ(MEA)は、ロボット噴霧器(Sono-Tek ExactaCoat)を使用して、TP-CF3-IM-xポリマー膜の両側に5cmの電極を置くことによって製作された。電極インクを、250mgの触媒(Tanaka Kikinzoku Kogyo(TKK)、高表面積C上の50%Pt)および所望量のアイオノマー(TP-CF3-IM-xポリマーを水とエタノールとの混合物に溶解して調製された、TP-CF3-IM-xポリマー)を10gの水および10gのエタノールに添加し、続いて1時間、超音波処理することにより調製した。触媒充填量は、4mg Pt/cmであった。PtコーティングされたTiプレートおよびTGP-H-060東レカーボンペーパ(5%ウェットプルーフ)は、それぞれアノード側およびカソード側のガス拡散層であった。電池および脱イオン水の温度を一定の温度に維持した。性能を、Arbin試験システムで特徴付けした(材料:TP100-CF3-IM-1膜、アイオノマー充填30%、触媒:アノード上に4.0mgPt cm-2 Pt/C、カソード上に2.9mg cm-2 IrO。試験条件:80℃の水および電解槽、水流量:3.0mL/分)。通常、電池を100mA/cmで30分間、さらに200mA/cmで30分間活性化した。活性化後、電流を計測することにより性能を記録した。結果を図9に示す。
【0144】
実施例3
別のイミダゾリウムにつながれたポリ(アリールアルキレン)ポリマーを、7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オン、1,1,1-トリフルオロアセトン、およびm-テルフェニルから調製する(mTP-CF3-IM-xと称され、xは、7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オンと、ビフェニルとのモル比であり、1~100である)。mTP-CF3-IM-xを、TP-CF3-IM-xと同様の3つの主要なステップ:(1)臭化物官能化ポリマーの合成、(2)イミダゾリウム官能化ポリマーの合成、ならびに(3)膜キャストおよび水酸化物交換で調製する。反応スキームを以下に示し、nは、ポリマー中の繰り返し単位の数である。
【化47】
【0145】
実施例4
実施例1のBP-CF3-IM-xポリマーを調製する別の方法は、イミダゾリウム官能化7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オン、1,1,1-トリフルオロアセトン、およびビフェニルの反応からである(BP-CF3-IM-xと称され、xは、イミダゾリウム官能化7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オンと、ビフェニルとのモル比であり、1~100である)。BP-CF3-IM-xを、2つの主要なステップ:(1)イミダゾリウム官能化ポリマーの合成、ならびに(2)膜キャストおよび水酸化物交換で調製する。反応スキームを以下に示し、nは、ポリマー中の繰り返し単位の数である。
【化48】
【0146】
実施例5
実施例2のTP-CF3-IM-xポリマーを調製する別の方法は、イミダゾリウム官能化7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オン、1,1,1-トリフルオロアセトン、およびp-テルフェニルの反応からである(TP-CF3-IM-xと称され、xは、イミダゾリウム官能化7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オンと、p-テルフェニルとのモル比であり、1~100である)。TP-CF3-IM-xを、2つの主要なステップ:(1)イミダゾリウム官能化ポリマーの合成、ならびに(2)膜キャストおよび水酸化物交換で調製する。反応スキームを以下に示し、nは、ポリマー中の繰り返し単位の数である。
【化49】
【0147】
実施例6
実施例3のm-TP-CF3-IM-xを調製する別の方法は、イミダゾリウム官能化7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オン、1,1,1-トリフルオロアセトン、およびm-テルフェニルの反応からである(mTP-CF3-IM-xと称され、xは、イミダゾリウム官能化7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オンと、m-テルフェニルとのモル比であり、1~100である)。mTP-CF3-IM-xを、2つの主要なステップ:(1)イミダゾリウム官能化ポリマーの合成、ならびに(2)膜キャストおよび水酸化物交換で調製する。反応スキームを以下に示し、nは、ポリマー中の繰り返し単位の数である。
【化50】
【0148】
実施例7
イミダゾリウムにつながれたポリ(クラウンエーテル)ポリマーを、7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オン、1,1,1-トリフルオロアセトン、およびジベンゾ-18-クラウン-6から調製した(PCE-C5-IM-xと称され、xは、7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オンと、ジベンゾ-18-クラウン-6とのモル比であり、1~100である)。PCE-C5-IM-xを、3つの主要なステップ:(1)臭化物官能化ポリマーの合成、(2)イミダゾリウム官能化ポリマーの合成、ならびに(3)膜キャストおよび水酸化物交換で調製した。反応スキームを以下に示し、nは、ポリマー中の繰り返し単位の数である。
【化51】
【0149】
臭化物官能化ポリマー(PCE-C5-Br-1)の合成。オーバーヘッド機械式撹拌器を備えた250mLの3つ口フラスコに、ジベンゾ-18-クラウン-6(7.2082g、20.00mmol)および7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オン(5.9294g、24.00mmol)を、クロロホルム(35mL)に懸濁した。次いで、TFSA(30mL)を、-15℃でゆっくりと滴下で添加した。その後、反応を0℃で8時間継続した。得られた粘稠な溶液をゆっくりとエタノールに注いだ。白色の繊維状固体を濾過し、水で洗浄し、50℃で12時間、1MのK2CO3に浸漬した。最後に、白色の繊維状生成物を濾過し、水で洗浄し、真空下で、60℃で完全に乾燥させた。ポリマーの収率は95%であった。H NMR(CDCl、δ、ppm):6.82~6.68(6H)、4.15~3.96(16H)、3.33(2H)、2.27(2H)、1.76(2H)、1.38(2H)、1.15(2H)(図10を参照されたい)。
【0150】
イミダゾリウム官能化ポリマー(PCE-C5-IM-Br-1)の合成。磁気バーを備えた50mLの1つ口フラスコに、臭化物官能化ポリマー(1.0g、1.7mmol)およびイミダゾール(0.5g、1.9mmol)をDMSO(20mL)に添加した。溶液を60℃で24時間にわたり撹拌した。得られた黄色の溶液を使用して、膜をキャストした。その結果、膜を塩酸塩溶液(pH1)およびDI水で3回洗浄し、真空下で、60℃で完全に乾燥させた。ポリマーPCE-C5-IM-Br-1の収率は、90%であった。1H NMR(DMSO-d6、δ、ppm):7.14(2H)、6.91~6.61(6H)、4.06~3.66(20H)、2.34(2H)、2.34~2.30(9H)、1.94(6H)、1.40~1.38(6H)、1.16~1.14(4H)、0.72(3H)(図11を参照されたい)
【0151】
PCE-C5-IM OH-1膜キャストおよび水酸化物交換。PCE-C5-IM-Br-1ポリマー(1.0g)をNMP(10mL)に溶解して、80℃で8時間、透明なガラスプレート上でキャストすることで膜を調製した。膜(臭化物形態で)は、脱イオン(DI)水と接触したガラスプレートから剥離された。水酸化物形態の膜を、60℃で24時間、1MのKOH中でイオン交換により得た後、洗浄し、アルゴン下で48時間DI水に浸漬して、残留KOHを除去した。
【0152】
実施例8
別のイミダゾリウムにつながれたポリ(クラウンエーテル)ポリマーを、7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オン、1,1,1-トリフルオロアセトン、およびジベンゾ-18-クラウン-6から調製する(PCE-C5-IM-xと称され、xは、7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オンと、ジベンゾ-18-クラウン-6とのモル比であり、1~100である)。PCE-C5-IM-xを、PCE-C5-IM-1と同様の3つの主要なステップ:(1)臭化物官能化ポリマーの合成、(2)イミダゾリウム官能化ポリマーの合成、ならびに(3)膜キャストおよび水酸化物交換で調製する。反応スキームを以下に示し、nは、ポリマー中の繰り返し単位の数である。
【化52】
【0153】
実施例9
実施例8のPCE-C5-IM-xを調製する別の方法は、イミダゾリウム官能化7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オン、1,1,1-トリフルオロアセトン、およびジベンゾ-18-クラウン-6の反応からである(PCE-C5-IM-xと称され、xは、イミダゾリウム官能化7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オンと、PCE-C5-IM-xとのモル比であり、1~100である)。PCE-C5-IM-xを、2つの主要なステップ:(1)イミダゾリウム官能化ポリマーの合成、ならびに(2)膜キャストおよび水酸化物交換で調製する。反応スキームを以下に示し、nは、ポリマー中の繰り返し単位の数である。
【化53】
【0154】
実施例10
第四級アンモニウムにつながれたポリ(クラウンエーテル)ポリマーを、7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オンおよびジベンゾ-18-クラウン-6から調製した(PCE-C5-QA-xと称され、xは、7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オンと、ジベンゾ-18-クラウン-6とのモル比であり、1~100である)。PCE-C5-QA-xを、3つの主要なステップ:(1)臭化物官能化ポリマーの合成、(2)第四級アンモニウム官能化ポリマーの合成、ならびに(3)膜キャストおよび水酸化物交換で調製した。反応スキームを以下に示し、nは、ポリマー中の繰り返し単位の数である。
【化54】
【0155】
実施例11
第四級アンモニウムにつながれたポリ(クラウンエーテル)ポリマーを、7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オン、1,1,1-トリフルオロアセトン、およびジベンゾ-18-クラウン-6から調製した(PCE-C5-IM-xと称され、xは、7-ブロモ-1,1,1-トリフルオロヘプタン-2-オンと、ジベンゾ-18-クラウン-6とのモル比であり、1~100である)。PCE-C5-QA-xを、3つの主要なステップ:(1)臭化物官能化ポリマーの合成、(2)第四級アンモニウム官能化ポリマーの合成、ならびに(3)膜キャストおよび水酸化物交換で調製する。反応スキームを以下に示し、nは、ポリマー中の繰り返し単位の数である。
【化55】
【0156】
定義
本明細書で使用する場合、「好適な置換基」という用語は、化学的に許容される官能基、好ましくは本発明の化合物の活性を無効にしない部分を意味することを意図している。このような好適な置換基としては、ハロ基、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、オキソ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アリールまたはヘテロアリール基、アリールオキシまたはヘテロアリールオキシ基、アラルキルまたはヘテロアラルキル基、アラルコキシまたはヘテロアラルコキシ基、HO-(C=O)-基、複素環基、シクロアルキル基、アミノ基、アルキル-およびジアルキルアミノ基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、ならびにアリールスルホニル基が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、多くの置換基が追加の置換基によって置換され得ることを理解するであろう。
【0157】
本明細書で使用する場合、「アルキル」という用語は、好ましくは1~32個の炭素原子(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、39、30、31、または32個の炭素)を有し、より好ましくは1~18個の炭素原子を有する、直鎖、分岐または環状炭化水素ラジカルを指す。アルキル基には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、第二級ブチル、および第三級ブチルが含まれるが、これらに限定されない。アルキル基は、非置換であるか、または1つ以上の好適な置換基で置換され得る。
【0158】
本明細書で使用する場合、「アルケニル」という用語は、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、39、30、31、または32個の炭素を有し、より好ましくは1~18個の炭素原子を有し、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する、直鎖、分岐または環状炭化水素ラジカルを指す。アルケニル基には、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル(アリル)、イソ-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、および2-ブテニルが挙げられるが、これらに限定されない。アルケニル基は、非置換であるか、または上で定義したように、1つ以上の好適な置換基で置換され得る。
【0159】
本明細書で使用する場合、「アルキニル」という用語は、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、39、30、31、または32個の炭素を有し、より好ましくは1~18個の炭素原子を有し、1つ以上の炭素-炭素三重結合を有する、直鎖、分岐または環状炭化水素ラジカルを指す。アルキニル基には、エチニル、プロピニル、およびブチニルが挙げられるが、これらに限定されない。アルキニル基は、非置換であるか、または上で定義したように、1つ以上の好適な置換基で置換され得る。
【0160】
本明細書で単独でまたは別の基の一部(例えば、アラルキル)として使用する場合、「アリール(aryl)」または「ar」という用語は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニルなどの単環式、二環式または三環式芳香族ラジカルを意味し、上で定義したように、任意で1つ以上の好適な置換基で、好ましくは1~5個の好適な置換基で置換される。「アリール」という用語は、ヘテロアリールも含む。
【0161】
「アリールアルキル」または「アラルキル」は、アルキレン基を介して親分子に結合したアリール基を意味する。アリール基およびアルキレン基中の炭素原子の数は、アリールアルキル基中に合計約6~約18個の炭素原子が存在するように選択される。好ましいアリールアルキル基は、ベンジルである。
【0162】
本明細書で使用する場合、「シクロアルキル」という用語は、単環式、二環式または三環式炭素環式ラジカル(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、ビシクロ[3.2.1]オクタニルおよびビシクロ[5.2.0]ノナニルなど)を指し、任意に1つまたは2つの二重結合を含む。シクロアルキル基は、非置換であるか、または上で定義したように、1つ以上の好適な置換基、好ましくは1~5個の好適な置換基で置換され得る。
【0163】
別の基の一部として接尾辞として使用する場合、「-エン(-ene)」という用語は、水素原子が、基の2つの末端炭素のそれぞれから、または基が環状である場合、環内の2つの異なる炭素原子のそれぞれから除去される二価のラジカルを表す。例えば、アルキレンは、エチレン(-CH2CH2-)またはイソプロピレン(-CH2(CH3)CH2-)などの二価のアルキル基を表す。明確にするために、接尾辞-eneの付加は、二価のラジカルを表すこと以外に主要な単語の定義を変更することを意図するものではない。したがって、上記の例を続けると、アルキレンは、任意に置換された直鎖飽和二価炭化水素ラジカルを表す。
【0164】
本明細書で使用する場合、「エーテル」という用語は、少なくとも1つのエーテル結合(すなわち、-O-)を含む二価(すなわち、二官能性)基を表す。
【0165】
本明細書で使用する場合、「ヘテロアリール」という用語は、環内にO、SおよびNから選択される1つ以上のヘテロ原子(例えば、1~3個のヘテロ原子)を含む単環式、二環式または三環式芳香族複素環基を指す。ヘテロアリール基には、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、チエニル、フリル、イミダゾリル、ピロリル、オキサゾリル(例えば、1,3-オキサゾリル、1,2-オキサゾリル)、チアゾリル(例えば、1,2-チアゾリル、1,3-チアゾリル)、ピラゾリル、テトラゾリル、トリアゾリル(例えば、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル)、オキサジアゾリル(例えば、1,2,3-オキサジアゾリル)、チアジアゾリル(例えば、1,3,4-チアジアゾリル)、キノリル、イソキノリル、ベンゾチエニル、ベンゾフリル、およびインドリルが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロアリール基は、非置換であるか、または上に定義されるように、1つ以上の好適な置換基、好ましくは1~5個の好適な置換基で置換され得る。
【0166】
本明細書で使用される「炭化水素」という用語は、炭素および水素の元素のみからなる化合物またはラジカルを表す。
【0167】
「置換された」という用語は、問題の基において、炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子が、ヒドロキシ(-OH)、アルキルチオ、ホスフィノ、アミド(-CON(RA)(RB)、ここで、RAおよびRBは独立して水素、アルキル、またはアリールである)、アミノ(-N(RA)(RB)、ここで、RAおよびRBは独立して水素、アルキル、またはアリールである)、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨード)、シリル、ニトロ(-NO2)、エーテル(-ORA、ここで、RAはアルキルまたはアリールである)、エステル(-OC(O)RA、ここで、RAはアルキルまたはアリールである)、ケト(-C(O)RA、ここで、RAはアルキルまたはアリールである)、ヘテロシクロなどの1つ以上の置換基で置き換えられることを意味する。「置換された」という用語が、可能な置換基のリストを導入するか、またはそれに続く場合、その用語は、その基のすべての員に適用されることを意図している。すなわち、「任意に置換されたアルキルまたはアリール」という句は、「任意に置換されたアルキルまたは任意に置換されたアリール」として解釈されるべきである。同様に、「フッ化物で任意に置換されたアルキルまたはアリール」という句は、「フッ化物で任意に置換されたアルキルまたはフッ化物で任意に置換されたアリール」として解釈されるべきである。
【0168】
「つながれた」という用語は、問題の基が指定されたポリマー主鎖に結合していることを意味する。例えば、イミダゾリウムにつながれたポリ(アリールアルキレン)ポリマーは、ポリ(アリールアルキレン)ポリマー主鎖に結合したイミダゾリウム基を有するポリマーである。
【0169】
本発明の要素またはその好ましい実施形態を提示する際、冠詞「a」、「an」、「the」、および「said」は、要素のうちの1つ以上が存在することを意味することを目的としている。「含む(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」という用語は、包括的であることを目的とし、列挙される要素以外にさらなる要素があり得ることを意味する。
【0170】
上記の観点から、本発明のいくつかの目的が達成され、他の好都合な結果が得られたことが分かるであろう。
【0171】
本発明の範囲から逸脱することなく、上記の製品および方法に様々な変更を加えることができるので、上記の説明に含まれ、添付の図面に示されるすべての事項は、限定的な意味ではなく、例示として解釈されることを意図する。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【国際調査報告】