(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-27
(54)【発明の名称】鞍乗型車両のギアシフト機構及び該ギアシフト機構を搭載した車両
(51)【国際特許分類】
B62M 11/16 20060101AFI20220520BHJP
【FI】
B62M11/16 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556912
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(85)【翻訳文提出日】2021-11-22
(86)【国際出願番号】 IB2020052290
(87)【国際公開番号】W WO2020194108
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】102019000004213
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515217546
【氏名又は名称】ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】アルベジアーノ,ロマーノ
(72)【発明者】
【氏名】スカットリン,ワルテル
(57)【要約】
鞍乗型車両(M)用のギアシフト機構(100)であって、シフトレバー(110)と、前記シフトレバー(110)を介して作動される選択要素(130)と、前記選択要素(130)に接続され、複数のギアを係合するように適合されたセレクタドラム(150)とを備えている。前記ギアシフト機構(100)は、さらに、セレクタドラム(150)に機能的に接続されたブロック装置(140)を有し、該ブロック装置(140)は、ブロック装置(140)が第一変更方向(Up)においてニュートラルギア(N)から第一ギア(I)への係合を可能にする第一状態と、ブロック装置(140)が、第二変更方向(Dwn)において第一ギア(I)からニュートラルギア(N)への連続する係合を阻止する第二状態とを切り替えるように構成されている。さらに、ブロック装置(140)の制御手段(120)が設けられ、この制御手段(120)は、ブロック装置(140)が無効化され、第二変更方向(Dwn)において第一ギア(I)からニュートラルギア(N)への係合を可能にする第三状態を画定するように、ライダー(G)によって作動される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両のギアシフト機構(100)であって、
シフトレバー(110)と、
前記シフトレバー(110)を介して操作される選択要素(130)と、
前記選択要素(130)に接続され、かつ、複数のギアに係合するよう適合されたセレクタドラム(15)と、
前記セレクタドラム(150)に機能的に接続されたブロック装置(140)であって、
・ブロック装置(140)が、第一変更方向(Up)においてニュートラルギア(N)から第一ギア(I)への係合を可能にする第一状態と、
・ブロック装置(140)が、第二変更方向(Dwn)において第一ギア(I)からニュートラルギア(N)への連続する係合を阻止する第二状態と
を切り替えるように構成されたブロック装置(140)と、
ライダー(G)によって作動され、ブロック装置(14)が、第二変更方向(Dwn)において第一ギア(I)からニュートラルギア(Nへの係合を可能にするためにブロック装置(140)を無効化する第三状態を画定する制御手段(120)と
を備えたギアシフト機構(100)において、
前記ブロック装置(140)が、
・セレクタドラム(150)と一体的に設けられ、歯形部分(141')を備えたブッシュ(141)によって構成されたストップ要素(141,141')と、
・前記ストップ要素(141,141')と協働し、第一状態、第二状態及び第三状態間の切り替えを行うように適合されたブロック要素(142)と
を備えている
ことを特徴とするギアシフト機構。
【請求項2】
前記選択要素(130)が、
単一の第一変更方向(Up)にシフトレバー(110)を作動させることによって、ギアを、ニュートラルギア(N)から始まり、ギア(N+1)までシフトアップし、かつ、
第一変更方向(Up)と反対の単一の第二変更方向(Dwn)において、ギアを、ギア(N+1)から始まり、ニュートラルギア(N)にシフトダウンする
ように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のギアシフト機構。
【請求項3】
ブロック要素(142)が、回転軸線(X-X)を中心に回転可能に設けられ、
ブロック要素(142)が、第一弾性要素(146)を備え、
前記第一弾性要素(146)が、
ブロック要素(142)が、ニュートラルギア(N)に対応する歯形部分(14)に固定され、セレクタドラム(150)が、第一ギア(I)及び後続のギアに係合するために第一変更方向(Up)に回転することを可能にする第一状態と、
ブロック要素(142)が第一ギア(I)に対応する歯形部分(141')に隣接して接触し、セレクタドラム(150)が、第二変更方向(Dwn)に回転して、第一ギア(I)から再びニュートラルギア(N)に係合することを防止する第二状態と、
ブロック要素(142)が、制御手段(120)を介して歯形部分(141')から離間して、セレクタドラム(150)が、第二変更方向(Dwn)に回転して、第一ギア(I)からニュートラルギア(N)に再び係合し、第一状態に戻ることを可能にする第三状態と
をとる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のギアシフト機構。
【請求項4】
制御手段(120)が、
ライダー(G)によって制御される作動要素(122)と、
作動要素(122)及びブロック要素(142)に連結する連結要素(121)と
を備えている
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載のギアシフト機構。
【請求項5】
作動要素が、鞍乗型車両のハンドルバー(123)に設けられたレバー(122)であり、
連結要素が、レバー(122)をブロック要素(142)に接続する作動ケーブル(121)を備えている
ことを特徴とする請求項4に記載のギアシフト機構。
【請求項6】
連結要素(121)によって作動され、ブロック要素(142)に接続された制御要素(145)が設けられ、
前記制御要素(145)が、第一状態に戻すために、第二状態及び第三状態間でブロック要素(142)を動かすように構成されている
ことを特徴とする請求項5に記載のギアシフト機構。
【請求項7】
制御要素(145)が、回転軸線(X-X)を中心に回転可能にブロック要素(142)に接続され、
制御要素(145)をブロック要素(142)に接続する第一弾性要素(146)が設けられ、
前記第一弾性要素(146)が、ブロック要素(142)をストップ要素(141)に対して押圧して、ブロック要素(142)を所定の位置に維持する弾性力を生じさせるように適合されている
ことを特徴とする請求項6に記載のギアシフト機構。
【請求項8】
制御要素(145)が、当接部分(145')を備え、
制御手段(120)が作動された時に、ブロック要素(142)を第三状態に引き込むように前記当接部分(145')が適合され、
制御要素(145)が第二弾性要素(143)を備え、
制御手段(120)が無効化される位置に、制御要素(145)を再びもっていくるように前記第二弾性要素(143)が適合されている
ことを特徴とする請求項7に記載のギアシフト機構。
【請求項9】
前記第二弾性要素(143)が、ねじりばね(143)である
ことを特徴とする請求項8に記載のギアシフト機構。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載のギアシフト機構(100)を備えた鞍乗型車両(M)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両のギアシフト機構に関する。
【0002】
本発明は、また、前記ギアシフト機構を搭載した鞍乗型車両、特に、二つ以上の車輪を有するモータサイクルに関する。
【背景技術】
【0003】
周知のように、鞍乗型車両のギアシフト機構は、様々なギアを噛合わせることでギア比を変えることを可能にする。
【0004】
ギアシフト機構は、通常、ラチェットギアを介して選択要素を制御するシフトレバーを備えている。前記選択要素は、星形であり、かつ、ギアの数及び順番を決めている。
【0005】
鞍乗型車両では、通常、シフトレバーを下方、即ち、地面に向けて押し込むことによって一段目のギアが噛み合うようにギアが配置されている。後続のギア、即ち、二段目及びそれより上のギアは、シフトレバーを逆に、即ち、上方に動かすことによって噛み合わされる。
【0006】
バイクレースでは、車両は、通常、「リバースシフト」と称されるギアシフト機構が搭載されており、「リバースシフト」では、ギアは逆の順番で機能し、即ち、一段目のギアは上向きで係合し、二段目以降のギアは下向きで係合する。
【0007】
道路用及びレース用の両方において、ニュートラルギアは一段目のギアと二段目のギアとの間にある。
【0008】
従って、ギアを変える時に、即ち、一段目のギアから二段目のギアへギアを変える時に、誤ってニュートラルギアに入ってしまう可能性がある。
【0009】
これは、特に、パフォーマンスバイク、即ち、レース用に使用されるバイクにおいて好ましくない。実際、一般的に、高速走行時には、ギアチェンジの際にニュートラルギアに誤って入れてしまうと、特に、カーブに入る時やカーブに沿って走行する時にバイクのバランスを崩す結果になることがある。
【0010】
ニュートラルギアの係合を防止する装置は、特開2014-19104号公報に開示されている。この公知の装置は、特に複雑である。
【0011】
従って、上記した従来技術の欠点や限界を解決する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、偶発的で望ましくないニュートラルギアの係合を回避することを可能にし、かつ、従来のギアシフト機構よりもシンプルで信頼性の高い、鞍乗型車両のギアシフト機構を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、前記ギアシフト機構を備え、同様の結果を得ることができる鞍乗型車両を提供することにある。
【0014】
上記した目的は、請求項1に係るギアシフト機構及び請求項10に係る鞍乗型車両を通して達成される。
【0015】
特に、ギアシフト機構は、シフトレバーと、前記シフトレバーを介して作動される選択要素と、前記選択要素に接続され、複数のギアを係合するように適合されたセレクタドラムとを備えている。
【0016】
さらに、前記ギアシフト機構は、セレクタドラムに機能的に接続されたブロック装置を備え、
前記ブロック装置は、
・ブロック装置が、第一変更方向においてニュートラルギアから第一ギアへの係合を可能にする第一状態と、
・ブロック装置が、第二変更方向において、第一ギアからニュートラルギアへの連続係合を阻止する第二状態とを
切り替えるように構成されている。
【0017】
また、ブロック装置の制御手段が設けられており、この制御手段は、ライダーによって、例えば、ハンドルバーに設けられたコントロール(作動要素)を介して遠隔的に作動される。作動時に、制御手段は、ブロック装置が無効にされ、第二変更方向において第一ギアからニュートラルギアへの係合を可能にする第三状態を画定する。
【0018】
好ましい実施形態では、選択要素は、単一の第一変更方向Upでシフトレバー110を作動させることによって、ニュートラルギアNからギアN+1以上までのギアのシフトアップを行い、かつ、第一変更方向と反対の単一の第二変更方法Dwnでシフトレバー110を作動させることによって、N+1以上のギアからニュートラルギアNまでのギアのシフトダウンを行うように構成されている。
【0019】
本発明によれば、ブロック装置及び制御手段を介して、車両の走行中、即ち、ライダーがギアを第一ギアに係合させた後に、ギアシフト機構がニュートラルギアをブロックすることができる。これにより、後続のギアシフトダウンの際に、以下に詳細に説明するように、ブロック装置が、セレクタドラムの回転と対称的な当接部を生成して、ニュートラルギアの係合を阻止する。言い換えれば、ブロック装置は、セレクタドラムの回転の停止部を画定し、従って、シフトレバーが操作された場合であっても、セレクタドラムがブロックされる。
【0020】
さらに、ブロック装置は、ニュートラルギアから第一ギアへの自律的な係合を可能にする。従って、車両が静止していて、かつ、ニュートラルギアに係合している状態で、ライダーは、シフトレバーを通常通り操作して第一ギアを係合させることができる。ギアが一度係合されると、ブロック装置は、自動的に、ニュートラルギアが再び入れられることを阻止する。
【0021】
上述のジュ小田井からニュートラルギアに再び入れるためには、ライダーは制御手段を操作してブロック装置を無効にする必要がある。その後、ライダーは、シフトレバーを操作して、ニュートラルギアに再び入れることが可能になる。制御手段が解除されると、ニュートラルギアにおけるブロック装置の初期位置が再び構成される。
【0022】
特に、ブロック装置は、セレクタドラムに一体に設けられたストップ要素と、前記ストップ要素と協働するブロック要素とを有する。ブロック要素は、ブロック要素がストップ要素に固定され、ニュートラルギアから第一ギアに係合するために第一変化方向に回転することを可能にする第一状態から切り替えるように適合されている。第二状態では、ブロック要素が有効にされ、第二変更方向において第一ギアからニュートラルギアに再び係合しようとする際に、ストップ要素に対向する。さらに、第三状態においては、第一ギアからニュートラルギアに再び係合するように、ブロック要素は、制御手段によってストップ要素から離間されている。
【0023】
上述した内容によれば、ストップ要素は、歯型部分を備えたブッシュから成る。前記ブッシュは、セレクタドラムのシャフトに挿入され、歯型部分を画定する径方向に突出した突起部を有する。
【0024】
特に、ブロック要素は、回転軸線(X-X)を中心に回転可能に設けられ、第一弾性要素を備え、
前記第一弾性要素が、
・ブロック要素が、ニュートラルギアに対応して歯型部分に固定され、セレクタドラムが第一ギア(I)及び後続のギアの係合をするように第一変更方向(Up)に回転することを可能にする第一状態と、
・ブロック要素が、第一ギア(I)に対応して歯型部分に対して対照的に隣接し、第二変更方向(Dwn)において、第一ギアからニュートラルギア(N)に再び係合することを防止する第二状態と
を実行する。
【0025】
従って、ブロック要素は、弾性要素、即ち、リターン要素を介してストップよそに接触した状態が維持される。
【0026】
第三状態では、ブロック要素は、制御手段を通して弾性力に抗して歯型部分から離間され、セレクタドラムが、第二変更方向(Dwn)に回転して、第一ギア(I)からニュートラルギア(N)に再び係合して、第一状態に戻ることを可能にする。
【0027】
特に、制御手段は、ライダーによって制御される作動要素と、作動要素及びブロック要素間の連結手段とを有する。
【0028】
一実施形態では、作動湯悪阻は、ブロック要素に直接又は間接的に連結されたケーブルの引張を制御するレバーから成る。特に、前記レバーは、鞍乗型車両のハンドルバーに設けられている。
【0029】
選択的に、ブロック要素を制御する作動装置に作動信号を送信するボタンが設けられ得る。
【0030】
好ましい実施形態では、連結手段を介して作動され、ブロック要素に連結された制御要素が設けられている。この実施形態では、ブロック要素は、制御要素を介して間接的に制御される。前記制御要素は、ブロック要素を、それがストップ要素上で有効になっている第二状態と、それがストップ要素から離間され、第一状態に戻すための第三状態との間で動かすように構成されている。
【0031】
好ましい実施形態では、制御要素は、ブロック要素の回転軸線と同軸上でブロック要素に回転可能に連結されている。第一弾性要素は、制御要素及びブロック要素に連結し、かつ、ブロック要素がストップ要素を押圧して、ストップ要素をその位置に維持するように弾性力を生じさせるよう配置されている。
【0032】
特に、制御要素は、第一弾性要素を介してブロック要素を固定する当接部分を有する。前記当接部分は、制御手段が作動した時に、ブロック要素を第三状態に引っ張るように適合されている。
【0033】
前記制御要素は、制御要素を再び、所定の位置にもってくるよう適合された第二弾性要素、特に、ねじりばねを備えている。ブロック要素は、第一弾性要素を介して所定の位置に再びもってこられる。
本発明のさらなる特徴及び利点は、幾つかの非限定的な実施例を参照した以下の説明からより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明に係るギアシフト機構を備えた鞍乗型車両、特に二輪車両、即ち、二輪バイクの側面図である。
【
図2】ニュートラルギアのブロック装置が設けられた本発明に係るギアシフト機構の斜視図である。
【
図3】ブロック装置を詳細に示す、
図1の横断面図である。
【
図4】
図3に示したブロック装置の側面図であり、ブロック要素の位置を分かりやすく示すために、制御手段の構成要素の一部を破線で示している。
【
図5】本発明に係るギアシフト機構の選択要素の側面図である。
【
図6】ブロック要素と制御要素とがリターン要素を介して一緒に接続されている状態を示す斜視図である。
【
図7】
図6の別の実施例の斜視図であり、制御要素を再び所定の位置に戻すように構成された第二戻り要素が示されている。
【
図8】ニュートラルギアが係合している位置にあるブロック装置の側面図である。
【
図9】第一ギアが係合している位置にあるブロック装置の側面図である。
【
図10】第二ギアが係合する位置に、当接要素が回転した状態を示すブロック装置の側面図である。
【
図11】第三ギアが係合する位置に、当接要素が回転した状態を示すブロック装置の側面図である。
【
図12】第四ギアが係合する位置に、当接要素が回転した状態を示すブロック装置の側面図である。
【
図13】第五二ギアが係合する位置に、当接要素が回転した状態を示すブロック装置の側面図である。
【
図14】第六ギアが係合する位置に、当接要素が回転した状態を示すブロック装置の側面図である。
【
図15】ライダーによって制御された制御手段を介して得られた、無効化状態にあるブロック装置の側面図であり、この図では、第一ギアが係合している。
【
図16】
図15の無効化状態にあるブロック装置の側面図であり、この図ではブロック装置を無効化することによってニュートラルギアが係合している。
【
図17】
図8の状態と同じ状態にあるブロック装置の側面図であり、この図ではニュートラルギアが係合している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に説明する様々な実施形態では、同じ構成要素又は同じ構成要素の部品には同じ符号を付す。
【0036】
図1及び
図2を参照すると、この明細書では以下、バイクMとして参照する鞍乗型車両のギアシフト機構100が示されている。ギアシフト機構100は、選択要素130の回転を制御するシフトレバー110を備えている。
【0037】
特に、シフトレバー110を介して制御されるラチェットギア135が設けられている。選択要素130は、前記ラチェットギア135を介して制御され、ギアを係合させるために、角度セクタによる回転を可能にする。
【0038】
図2に示すように、シフトレバー110は、シャフト111を介してラチェットギア135を制御する。
【0039】
選択要素130は、セレクタドラム、即ち、デスモドロミックドラム150にキー係合されている。公知のように、選択要素130の回転は、デスモドロミックドラム150の回転に対応しており、デスモドロミックドラム150に設けられ、かつ、対応するギアと係合するようにギアセットを組み合わせるトラック151によって制御されるフォーク(図示せず)のシフトを生じさせる。
【0040】
選択要素130は、
図5により良く示すように、各ギア、即ち、第一ギアI、第二ギアII、第三ギアIII、第四ギアIV、第五ギアV及び第六ギアVIに加えてニュートラルギアNに対応する複数のクレスト132によって中断された複数の窪み131を備えた星形形状である。ギアの数は、バイクの種類に応じて変わることは勿論である。
【0041】
各ギアの角度セクタは、選択要素130における各窪み131によって画定される。従って、ギアの変更は、次の窪みまでクレスト132を乗り越えることで行われる。
【0042】
ギアシフト機構100は、シフトレバー110を介して、ニュートラルギアNから始まり、一回だけの変更方向UPの動きで、順次ギアを係合させる。特に、シフトレバー110を、常に上方向、即ち、変更方向UPに動かすことによって、ニュートラルギアからギアを上げることができる。逆に、シフトレバー110を常に下方、即ち、変更方向Dwnに動かすことによって、ギアを下げることができる。ニュートラルギアNは選択要素130の第一の角度セクタに設けられており、従って、開始位置を規定している。
【0043】
さらに、ギアシフト機構は、セレクタドラム150に機能的に接続されたブロック装置140を備えている(
図2参照)。ブロック装置140は、第一変更方向UPへの動きで、ニュートラルギアNから第一ギアIに係合することを可能にする第一状態(
図8参照)と、第二変更方向Dwmにおいて第一ギアIからニュートラルギアNへの係合を阻止する第二状態(
図9又は
図4参照)とを切り替えるように構成されている。
【0044】
言い換えれば、ブロック装置140は、ニュートラルギアNから第一ギアIへの係合を可能にし、かつ、一度、第一ギアIに係合されると、即ち、バイクが動いていると、車両の走行中にニュートラルギアNへの係合を防止することを可能にする。
【0045】
また、ブロック装置140の制御手段120が設けられており、この制御手段120は、例えばハンドルバー123、特にクラッチレバー124の側部に設けられたコントロール(作動要素)122(
図1A)を介して、ライダーGによって遠隔操作で作動される。制御手段120が作動されると、ブロック装置140が第三状態(
図15及び
図6参照)をとり、この状態では、ブロック装置140が無効化され、第二変更方向Dwnにおいて第一ギアIから再びニュートラルギアNに係合することを可能にする。
【0046】
構成上の観点から、ブロック装置140は、デスモドロミックドラムドラム150にキー止めされた支持プレート147に設けられている。この支持プレート147上にはシフトレバー110も設けられており、前記シフトレバー110は、シート112'に設けられ、かつ、孔113'にねじ込まれた締結ネジ113を介して固定されている。シャフト111が、シート112から延びており、ラチェットギア135に連結されている。
【0047】
特に、ブロック装置140は、セレクタドラム150と一体的に取り付けられたストップ要素141,141'と、ストップ要素141,141'と共働するブロック要素142とを備えている。
【0048】
前記ストップ要素、歯形部141'を備えたブッシュ141から成る。ブッシュ141は、セレクタドラム150のシャフトに挿入されている。
【0049】
ブロック要素142は、第一状態(
図8参照)に切り替えるように適合され、第一状態では、ブロック要素142は、ニュートラルギアNから第一ギアIに係合するための第一変更方向における回転を可能にするストップ要素141,141'に固定されている。逆に、第二状態では、ブロック要素142が有効にされ、第二変更方向Dwn(
図4及び
図9参照)において、第一ギアIからニュートラルギアNへの係合が阻害される。さらにまた、第三状態(
図15及び
図16参照)では、制御手段120によって、ブロック要素142がストップ要素141'から離間され、第一ギアIからニュートラルギアNへの再係合が可能にされる。
【0050】
特に、ブロック要素142は、その回転軸線X-Xを中心に回転可能にされており、有利には、支持プレート147に設けられている。ブロック要素142は、第一弾性要素146を備えている。前記第一弾性要素146は、ブロック要素142がストップ要素141,141'に当接することを可能にする。
【0051】
このように、ブロック要素142は、三つの異なる状態をとることができる。
【0052】
ニュートラルギアN(
図8)に対応する第一状態では、ブロック要素142は、ストップ要素141の歯形部分141'に固定されており、即ち、歯形部分114'との角部接触がある。この状態により、第一ギアIが係合しているときに、セレクタドラムが第一変化方向Upに回転することが可能になる。
【0053】
より詳細には、この接触は、この場合、摩擦角部接触である。実際、この位置では、ライダーGは、第一ギアIを係合させるためにシフトレバー110を上方に動かすことで、選択要素130の回転を所定の角度セクタで制御することができる。デスモドロミックドラム150の回転により歯形部分141'が回転し、ブロック要素142上で所定のセグメントのためにスライドし、第一ギアIに到達するために角部接触位置を離れる。
【0054】
第一ギアIが係合されると、第一弾性要素146によって押されたブロック要素142は、ブッシュ141の表面に接触するまで、さらに移動する(
図4)。実際、弾性要素は、ブロック要素142に作用し、それをストップ要素141、141'に恒久的に接触させることを可能にする。
【0055】
第一ギアIの係合によって、ストップ要素141,141'におけるブロック要素142の有効状態Aが規定される。このようにして、第一ギアIが、ブロック要素142をトリガする第一弾性要素146を介して、ニュートラルギアNから係合され、ブロック要素142がストップ要素141'のブッシュ141の表面に再び当接するまで回転するようになると、ブロック装置142が有効になる。
【0056】
したがって、有効状態Aでは、第一ギアIが係合されると、ブロック要素142が歯形部分141'に横方向に当接し、その結果、ニュートラルギアNが再び係合されるのを防止し、したがって、デスモドロミックドラム150が第一ギアIから第二変更方向Dwnに回転し始めるのを防止することができる。
【0057】
この位置において、ライダーGは、以下に説明するように、ブロック要素142を解放することによってのみ、ニュートラルギアNを再び係合させることができる。
【0058】
有効化されたブロック要素142は、ライダーが定期的に全てのギアを係合させることを可能にするが、シフトダウン時のニュートラルギアの係合は防止する。
【0059】
実際、第一変更方向Upでは第一ギアIから出発して、歯形部分141'は、第六ギアの位置に達するまで、相対的に回転し(
図10~
図14)、そこでブロック要素142に反対側で接触する。反対の変更方向Dwnでは、歯形部分141'は、第一ギアIの位置でそれに固定されるように、ブロック要素に向かって再び回転する。
【0060】
従って、再びニュートラルギアNに係合させるためには、ライダーは、制御手段120を介してブロック要素142を無効化にしなければならない。
【0061】
特に、制御手段は、上述の作動要素122を備え、前記作動要素122は、ライダーGによって制御されるレバーから成り、鞍乗型車両のハンドルバー123に設けられている(
図1A参照)。
【0062】
選択的に、図示していないが、ブロック要素142を制御するアクチュエータに作動信号を送信するボタンを設けることもできる。
【0063】
レバー122は、ケーブル121を介してブロック要素142に接続されている。ケーブル121の牽引力Tにより、ブロック要素142が回転し、再びニュートラルギアNに係合するために、無効状態Dにされる。
【0064】
好ましい実施形態では、ブロック要素142は、
図6及び
図7によく示されているように、制御要素145と関連している。
【0065】
制御要素145は、支持プレート147上の回転軸線X-Xと同軸上でブロック要素142に回転可能に接続されている(
図2参照)。
【0066】
ブロック要素142及び制御要素145の両方が、軸線X-Xを規定するシャフト149に取り付けられている(
図7参照)。制御要素145は、ブロック要素142と重なって取り付けられている。第二弾性要素143、特にねじりばね143が、シャフト149に設けられている。このばね143は,ピン149'を介して支持プレート147に固定された部分143'の周りで回転方向にブロックされている。
【0067】
ブロック要素142は、側面に、第一フック状部分142'を備えている。制御要素145は、反対側の側面に、第二フック状部分146'を備えている。第一弾性部材を構成するスプリング146は、二つのフック状部分142'及び146'の間に設けられている。
【0068】
従って、第一弾性要素146は、制御要素145及びブロック要素142に接続され、ブロック要素142をストップ要素141に押し付ける弾性力を発生させ、ブロック要素142を所定の位置を維持する。
【0069】
制御要素145は、シート148''を備え、シート148''には、牽引ケーブル121との接続のための停止部121'が設けられている。
【0070】
特に、制御要素145は、ブロック要素142が固定される当接部分145'を備えている。当接部分145'は、牽引ケーブル121がレバー122を介して作動された時に、ブロック要素142を引き寄せるように適合されている。ケーブルの牽引力は、スプリング143の弾性力に勝り、制御要素145を相対的に回転させて、当接部分145'を介してブロック要素142を引き寄せる。
【0071】
この段階では、第三状態になり、ブロック要素142が歯形部分141'から離間され、セレクタドラム150が、第二変更方向(Dwn)に回転して、第一ギア(I)からニュートラルギア(N)に再び係合し、第一状態に戻ることを可能にする。
【0072】
ニュートラルギアが再び係合されると、ねじりバネ143は、制御要素145及びブロック要素142を再び所定の位置にもってくる。
【0073】
ブロック装置140は、好ましくは、シフトアセンブリの外側、特に選択要素の反対側に取り付けられる。このようにして、シフトアセンブリに追加の操作をすることなく、選択要素を取り付けることが可能になる。
【0074】
特定の実施形態に関する上記の説明は、概念的な観点から本発明を示しており、既知の技術を用いて、さらなる研究を行うことなく、また本発明の概念から逸脱することなく、様々な用途において、これらの特定の実施形態を変更及び/又は適応することができる。従って、このような適応及び変更は、これらの特定の実施形態と同等であるとみなされることが意図されている。本明細書に記載された様々な機能は、本発明の保護範囲を逸脱することなく、様々な種類の手段及び材料によって具現化することができる。使用されている表現や用語は、説明のみを目的としており、したがって排他的ではないことを理解すべきである。
【国際調査報告】