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特表2022-526947金属酸化物発泡体をベースとするガスセンサ装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-27
(54)【発明の名称】金属酸化物発泡体をベースとするガスセンサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20220520BHJP
【FI】
G01N27/12 B
G01N27/12 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557378
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(85)【翻訳文提出日】2021-11-10
(86)【国際出願番号】 US2020025071
(87)【国際公開番号】W WO2020198533
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】62/824,276
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520347166
【氏名又は名称】セルモビリティ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CELLMOBILITY, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヘジ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ヘー・チュル
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ギカプ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,へーマン
【テーマコード(参考)】
2G046
【Fターム(参考)】
2G046AA05
2G046AA07
2G046AA11
2G046AA13
2G046AA18
2G046AA24
2G046AA28
2G046BA06
2G046BA08
2G046BA09
2G046BB02
2G046BB04
2G046BC05
2G046BE02
2G046BE08
2G046EA02
2G046EA04
2G046FB02
2G046FC08
2G046FE02
2G046FE09
2G046FE10
2G046FE11
2G046FE12
2G046FE15
2G046FE18
2G046FE19
2G046FE21
2G046FE25
2G046FE29
2G046FE31
2G046FE35
2G046FE39
2G046FE44
2G046FE46
2G046FE48
(57)【要約】
ガス感知装置は、ガス感知用途のために、大きい表面積の三次元的に接続された金属酸化物発泡体構造と、三次元多孔質構造内の細長いチャネル孔とを備えて製造される。これにより、感知層の表面積を増加させ、感度およびセンサ応答を促進する。ガスセンサ装置は、低温同時焼成セラミック基板上に印刷されたプラチナ電極およびルテニウムヒータに銀ペーストを介して取り付けられる、製作された金属酸化物発泡体感知材料を含む。この装置は、改良された感度および応答時間を伴う改良されたガス感知性能を提供し得る。金属酸化物発泡体感知材料を含むガスセンサは、エタノールや一酸化炭素などの有毒ガスに対してより高い感度を示す。これは、増加された化学反応場を提供する多孔質三次元構造から達成されるより大きな表面積、およびガスを容易に通過させることが可能でありガス拡散反応経路を短くするより大きな多孔質チャネルに起因する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスセンサ装置であって、
低温同時焼成セラミックス基板上に印刷されたプラチナ電極およびルテニウムヒータに銀ペーストを介して連結される金属酸化物発泡体感知材料を備える、装置。
【請求項2】
電極パターンは、取り付けられた金属酸化物発泡体センサの電極としての使用のために、リフトオフプロセスおよびシャドーマスクを用いて、プラチナなどの好適な金属からなる2つの電極パットを数百マイクロメートルの間隔で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属酸化物発泡体は約55パーセント~約90パーセントの間の多孔率を有し、センサ装置における半導体タイプのガス感知材料であり、エタノール、一酸化炭素、酸素、酸化窒素、水素、トルエン、またはその他のガスなどの特定のターゲット(有毒)ガスと反応する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記感知発泡体材料は、酸化スズ発泡体、またはパラジウム、金、銀もしくはプラチナ触媒のうちの少なくとも1つを0.1重量パーセント~3重量パーセントの範囲で含む酸化スズ発泡体のうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記感知発泡体材料は半導体タイプのセンサなどの金属酸化物発泡体である、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記感知発泡体材料は、酸化スズ(SnOもしくはSnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In23)、酸化タングステン(WO3)、酸化チタン(TiO2)、酸化ニッケル(NiO)、酸化銅(CuO)、酸化コバルト(Co34)、酸化クロム(Cr23)、および酸化鉄(Fe23)、もしくは類似の特性を有する他の金属酸化物の1つまたは組み合わせのいずれかであり得る、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記多孔質金属酸化物発泡体感知材料を形成するための製造プロセスは、フリーズキャスティング、スペースホルダ、または脱合金化のうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載の装置。
【請求項8】
前記多孔質金属酸化物発泡体感知材料を形成するための製造プロセスは、フリーズキャスティング法の後に粉末スラリー調製および焼結プロセスを備え、水系またはカンフェン系酸化物粉末スラリーが低温で凍結および乾燥されてグリーン体を形成し、その後、高温で焼結されて三次元的に接続された固体多孔質構造を形成する、請求項3に記載の装置。
【請求項9】
前記感知材料は金属酸化物を用いた半導体タイプのセンサであり、前記感知発泡体材料は、フリーズキャスティング、スペースホルダ、または脱合金化のうちの少なくとも1つを介して製造された金属発泡体(たとえば、Sn、Zn、In、W、Ti、Ni、Cu、Co、Cr、またはFe)の表面上に、熱酸化または陽極酸化プロセスのうちの少なくとも1つを介して製造される、請求項3に記載の装置。
【請求項10】
前記金属酸化物感知発泡体材料は、調製された前記金属発泡体の前記表面上における、酸化物の薄層またはナノニードル酸化物のうちの少なくとも1つの形態で構成される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記酸化スズ発泡体は、前記酸化スズグリーン体の焼結中に液相を形成することによって高密度化を助けるために、約0.1重量パーセント~約3重量パーセントの組成範囲で、Li2O、CuO、MnO2、ZnO、もしくはLa23、または類似のものなどの焼結助剤が添加されて製作される、請求項4に記載の装置。
【請求項12】
フリーズキャスティングプロセスを用いて金属酸化物発泡体を生成する方法であって、
電熱対および温度コントローラを用いて制御される、液体窒素に浸漬された銅またはアルミニウムブロック上に、矩形の絶縁シリコーン型を配置し、脱イオン水、分散剤、バインダ、金属または金属酸化物粉末、および焼結助剤のうちの少なくとも1つを含む金属酸化物スラリーを前記型の中へ注ぐことと、
氷樹状突起が前記スラリー中で形成および成長し、成長する氷晶間に金属酸化物粒子が集まるように前記スラリーを凍結することと、
凍結されたサンプルの前記氷晶を約セ氏-10度~約セ氏-80度の間の十分に低い温度かつ減圧において乾燥することによってグリーン体金属酸化物発泡体を形成し、細孔をそれらの元の場所に残すことと、
空気またはアルゴン雰囲気下、制御された炉において約セ氏800度~約セ氏1700度の間の十分に高い温度で前記多孔質グリーン体を焼結することによって、実質的な完全性を有する三次元的に接続された多孔質金属酸化物発泡体を形成することと、
前記金属酸化物発泡体を、ルテニウムヒータおよびその下のプラチナ電極を有するガスセンサにおける感知材料として直接適用可能である矩形または円形形状の形態に機械加工することと、を備える方法。
【請求項13】
電極パッドを好適なパターンで金属酸化物発泡体感知材料に取り付けるパターニングプロセスを備える、ガスセンサのための金属酸化物発泡体を製作する方法。
【請求項14】
前記ガスセンサは、低温同時焼成セラミック基板上に印刷されたプラチナ電極およびルテニウムヒータに銀ペーストを介して連結される金属酸化物発泡体感知材料を備える、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
関連出願の相互参照
この特許出願は、2019年3月26日に提出された米国特許出願第62/824,276号の利益を主張し、上記出願の内容がこの出願において引用されるすべての他の参考文献とともに参照によって組み込まれる。
【0002】
本発明の背景
本発明は、ガス感知装置技術の分野に関する。より具体的には、この発明は、適切なガスセンサによって様々な有毒ガスを効果的に監視するための、金属酸化物発泡体を用いた感度の高いガス検知装置を開発することであり、これは、より高い感度およびより短い感知時間で、非常に低い粒子濃度から高い粒子濃度まで、有毒ガスの存在を検知可能である。
【背景技術】
【0003】
ほとんどの有毒ガスは比較的低い濃度で存在することから技術的困難が生じる。低濃度のターゲットガスに対して正確な感度応答を示す適切な感知材料を選択することは非常に重要である。感知時間がより短いガスセンサ装置を用いて、ターゲットガスができるだけ迅速に出入り可能であることも重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
進歩したガス感知技術を必死に要求する様々な産業部門および民間部門が存在する。たとえば、現代技術の劇的な進歩によって、多数の有毒ガスが生成され、不慮の漏出に対する懸念が大きくなっており、それらのガスは環境ならびに人体および動物の両方の健康に深刻に影響し得る。加えて、米国における新たな規制は、火災の危険を防ぐためにすべての新しいビルが一酸化炭素検知器を備えるべきであることを要求している。
【0005】
したがって、改良されたガス感知装置技術および材料が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の概要
新たなガス感知装置は、ガス感知用途のために、大きい表面積の三次元的に接続された金属酸化物発泡体構造と、三次元多孔質構造内の細長いチャネル孔とを備えて製造される。これにより、感知層の表面積を増加させ、感度およびセンサ応答を促進する。ガスセンサ装置は、低温同時焼成セラミック基板上に印刷されたプラチナ電極およびルテニウムヒータに銀ペーストを介して取り付けられる、製作された金属酸化物発泡体感知材料を含む。この装置は、改良された感度および応答時間(たとえば、より迅速なガスの入出)を伴う改良されたガス感知性能を提供し得る。金属酸化物発泡体感知材料を含むガスセンサは、エタノールや一酸化炭素などの有毒ガスに対してより高い感度を示す。これは、増加された化学反応場を提供する多孔質三次元構造から達成されるより大きな表面積、およびガスを容易に通過させることが可能でありガス拡散反応経路を短くするより大きな多孔質チャネルに起因する。
【0007】
方法は、酸化スズガス感知材料の結果に基づいて明確に説明されるが、多くの他の金属酸化物に広げられることができ、数百ナノメートルから数十マイクロメートルの範囲にある細孔サイズを有する金属酸化物発泡体の製作、およびこれらをガスセンサ用途のための感知材料として適用することを含む。製造された金属酸化物発泡体は、ターゲットガスに曝されると、その拡大された表面層にわたって有毒ガスと反応する。
【0008】
進歩したガス感知材料として用いられる三次元金属酸化物発泡体(たとえば、例として、酸化スズおよび酸化銅発泡体)を製造する新たな方法。方法は、ガス感知材料としての使用のために、数百ナノメートルから数マイクロメートルの範囲にある細孔サイズを有する酸化スズ発泡体を製造し、その後、金属酸化物発泡体上においてシャドーマスクを用いてリフトオフプロセスによって2つの電極パッドを200ミクロン間隔でパターニングすることからなる。
【0009】
多孔質酸化スズ発泡体を含むガスセンサは、エタノールや一酸化炭素などの有毒ガスに対してより高い感度を示す。これは、増加された化学反応場を提供する多孔質三次元構造から達成されるより大きな表面積、およびガスを容易に通過させることが可能でありガス拡散反応経路を短くするより大きな多孔質チャネルに起因する。
【0010】
酸化スズは、その結晶構造に応じて、nタイプまたはpタイプのガスセンサに適用可能である、一般的に用いられるガス感知材料である。この特許は、改良された感度のガス感知材料を提供するために、スラリー形成と粉末焼結とを組み合わせた新たな方法を用いた酸化スズおよび他の金属酸化物発泡体の製作について詳述する。この特許に詳述された方法を用いて製作された酸化スズ発泡体は、焼結温度、焼結時間、および添加粉末の量などの主要な加工パラメータに応じて異なる形態特徴を示した。走査型電子顕微鏡画像は、5.3~10.7ミクロン細孔のアレイを含む酸化スズ発泡体内の二段階孔構造、および壁表面上における数ミクロンの直径のより小さい二次的な細孔を特定した。比較的大きい実験チャンバにおける合成された酸化スズ発泡体についてのガス感知性能は、セ氏300度の600百万分率のエタノールガスについて、13.1の感度、192秒の応答時間、および160秒の回復時間、ならびにセ氏200度の5000百万分率の一酸化炭素について、それぞれ、35.9秒、39秒、27秒を示した。これは、現特許にしたがって製作されたサンプルが触媒無添加であることを考慮すると、優れた検知結果である。
【0011】
さらに、フリーズキャスティングされた酸化銅発泡体は、セ氏300度での1000ppm~5000ppmの低い一酸化炭素濃度において、一酸化炭素ガス濃度の増加に伴った酸化銅発泡体の感度の安定した増加を示し、金属酸化物センサ構造がその高められた感知表面積によって一酸化炭素などの有毒ガスを検知するのに有益であることを裏付ける。金属酸化物発泡体ガスセンサ装置は、金属酸化物発泡体センサがAgペーストを用いてヒータおよび電極の頂部上に取り付けられる前に、プラチナ電極および酸化ルテニウムヒータが低温同時焼成セラミック(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramic)基板上に印刷されるように、製造された。このセンサ装置は、既存の感知材料部品と直接置換可能である。
【0012】
実施において、ガスセンサ装置は、LTCC上に印刷されたプラチナ電極およびルテニウムヒータに銀ペーストを介して連結される金属酸化物発泡体感知材料を含む。電極パターンは、取り付けられた金属酸化物発泡体センサの電極としての使用のために、リフトオフプロセスおよびシャドーマスクを用いて、プラチナなどの好適な金属からなる2つの電極パッドを数百マイクロメートルの間隔で含み得る。
【0013】
金属酸化物発泡体は、約55パーセント~約90パーセントの間の多孔率を有し、センサ装置におけるガス感知材料であり、エタノール、一酸化炭素、酸素、酸化窒素、水素、トルエン、および他のガスなどの特定のターゲット(たとえば、有毒)ガスと反応する。感知材料は、酸化スズ発泡体、またはパラジウム、金、銀、もしくはプラチナ触媒のうちの少なくとも1つを0.1重量パーセント~3重量パーセントの範囲で有する酸化スズ発泡体のうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
感知材料は、半導体タイプのセンサなどの金属酸化物発泡体である。多孔質感知材料は、酸化スズ(SnOもしくはSnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In2O3)、酸化タングステン(WO3)、酸化チタン(TiO2)、酸化ニッケル(NiO)、酸化銅(CuO)、酸化コバルト(Co3O4)、酸化クロム(Cr2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)、もしくは類似の特性を有する他の金属酸化物の1つまたは組み合わせのいずれかであり得る。
【0015】
多孔質金属酸化物発泡体感知材料を形成するための製造プロセスは、フリーズキャスティング、スペースホルダ、もしくは脱合金のうちの少なくとも1つ、または組み合わせであり得る。多孔質金属酸化物発泡体感知材料を形成するための製造プロセスは、フリーズキャスティング法の後に粉末スラリー調製および焼結プロセスを含んでもよく、水系またはカンフェン系酸化物粉末スラリーが低温で凍結および乾燥されてグリーン体を形成し、その後、高温で焼結されて三次元的に接続された固体多孔質構造を形成する。
【0016】
感知材料は、金属酸化物を用いた半導体タイプのセンサであってもよく、多孔質感知材料は、フリーズキャスティング、スペースホルダ、または脱合金のうちの少なくとも1つを介して製造された金属発泡体(たとえば、Sn、Zn、In、W、Ti、Ni、Cu、Co、Cr、またはFe)の表面上に、熱酸化または陽極酸化プロセスのうちの少なくとも1つを介して製造され得る。金属酸化物感知材料は、調製された金属発泡体の表面上における、酸化物の薄層またはナノニードル酸化物のうちの少なくとも1つの形態で構成され得る。
【0017】
酸化スズ発泡体は、酸化スズグリーン体の焼結中に液相を形成することによって高密度化を助けるために、約0.1重量パーセント~約3重量パーセントの組成範囲で、Li2O、CuO、MnO2、ZnO、もしくはLa2O3、または類似のものなどの焼結助剤が添加されて製作され得る。
【0018】
実施において、フリーズキャスティングプロセスを用いて金属酸化物発泡体を生成する方法は、以下を含む:熱電対および温度コントローラを用いて制御される、液体窒素中に浸漬された銅またはアルミニウムブロック上に、矩形の絶縁シリコーン型を配置し、脱イオン水、分散剤、バインダ、金属または金属酸化物粉末、および焼結助剤のうちの少なくとも1つを含む金属酸化物スラリーを型の中へ注ぐこと;氷樹状突起がスラリー中で形成および成長し、成長する氷晶間に金属または金属酸化物粒子が集まるようにスラリーを凍結すること;凍結されたサンプルの氷晶を約セ氏-10度~約セ氏-80度の間の十分に低い温度かつ減圧において乾燥することによってグリーン体金属(酸化物)発泡体を形成し、細孔をそれらの元の場所に残すこと;空気またはアルゴン雰囲気下、制御された炉において、約セ氏800度~約セ氏1700度の間の十分に高い温度で多孔質グリーン体を焼結することによって、十分な完全性を有する三次元的に接続された多孔質金属酸化発泡体を形成すること;金属酸化物発泡体を、ルテニウムヒータおよびその下のプラチナ電極を有するガスセンサにおける感知材料として直接適用可能である矩形の形態に機械加工すること。
【0019】
実施において、製作された金属酸化物発泡体をガスセンサのために適用する方法は、電極パッドを好適なパターンで金属酸化物発泡体感知材料に取り付けるパターニングプロセスを含む。ガスセンサは、低温同時焼成セラミック基板上に印刷されたプラチナ電極およびルテニウムヒータに銀ペーストを介して連結される金属酸化物発泡体感知材料を含み得る。
【0020】
本発明の他の目的、構成、および利点は、以下の詳細な説明および添付の図面を考慮して明らかとなる。図面を通して、類似の参照指定はそれぞれの類似の構成を表す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】nタイプおよびpタイプの半導体センサについての一般的な感知機構を概略的に示す図である。
図1B】nタイプおよびpタイプの半導体センサについての一般的な感知機構を概略的に示す図である。
図1C】nタイプおよびpタイプの半導体センサについての一般的な感知機構を概略的に示す図である。
図2A】焼結の前後における酸化スズ発泡体サンプルの写真である。
図2B】焼結の前後における酸化スズ発泡体サンプルの写真である。
図3A】様々な温度で熱処理された酸化スズ発泡体サンプルについてのX線回折パターンを示す図である。
図3B】酸化スズ発泡体についてのスズのK端のX線吸収端近傍構造スペクトルを示す図である。
図3C】酸化スズについてのX線光電子分光測定を示す図である。
図3D】酸化スズについての結合エネルギ位置を示す図である。
図4A】酸化スズ発泡体についての径方向断面および破断面の走査型電子顕微鏡写真である。
図4B】酸化スズ発泡体についての径方向断面および破断面の走査型電子顕微鏡写真である。
図4C】酸化スズ発泡体についての径方向断面および破断面の走査型電子顕微鏡写真である。
図4D】酸化スズ発泡体についての径方向断面および破断面の走査型電子顕微鏡写真である。
図4E】酸化スズ発泡体についての径方向断面および破断面の走査型電子顕微鏡写真である。
図4F】酸化スズ発泡体についての径方向断面および破断面の走査型電子顕微鏡写真である。
図4G】酸化スズ発泡体についての径方向断面および破断面の走査型電子顕微鏡写真である。
図4H】酸化スズ発泡体についての径方向断面および破断面の走査型電子顕微鏡写真である。
図5A】様々な濃度のエタノールガス(図5A)および一酸化炭素ガス(図5B)に対する異なる暴露時間についての酸化スズ発泡体の電気抵抗(ガス感度)の変化を示す図である。
図5B】様々な濃度のエタノールガス(図5A)および一酸化炭素ガス(図5B)に対する異なる暴露時間についての酸化スズ発泡体の電気抵抗(ガス感度)の変化を示す図である。
図6A】エタノールガスおよび一酸化炭素ガスにおける酸化スズ発泡体についての感知応答を比較する図である。
図6B】エタノールガスおよび一酸化炭素ガスにおける酸化スズ発泡体についての感知応答を比較する図である。
図7A】セ氏200度における、パラジウム添加ありおよびなしの酸化スズ発泡体の電気抵抗およびガス感度の変化を比較する図である。
図7B】セ氏200度における、パラジウム添加ありおよびなしの酸化スズ発泡体の電気抵抗およびガス感度の変化を比較する図である。
図8】様々な温度における、パラジウム添加ありおよびなしの酸化スズ発泡体間における感度比較を示す図である。
図9A】低濃度かつセ氏200度における、触媒としてパラジウムが添加された酸化スズ発泡体の電気抵抗およびガス感度の変化を示す図である。
図9B】低濃度かつセ氏200度における、触媒としてパラジウムが添加された酸化スズ発泡体の電気抵抗およびガス感度の変化を示す図である。
図10A】様々な一酸化炭素濃度下における酸化銅発泡体の電気抵抗の変化およびガス感知機構、ならびに感知応答を示す図である。
図10B】様々な一酸化炭素濃度下における酸化銅発泡体の電気抵抗の変化およびガス感知機構、ならびに感知応答を示す図である。
図10C】様々な一酸化炭素濃度下における酸化銅発泡体の電気抵抗の変化およびガス感知機構、ならびに感知応答を示す図である。
図11A】プラチナ電極および酸化ルテニウムヒータがLTCC基板上に印刷された金属酸化物発泡体センサ装置を製造する概略的加工フローを示す図である。
図11B】プラチナ電極および酸化ルテニウムヒータがLTCC基板上に印刷された金属酸化物発泡体センサ装置を製造する概略的加工フローを示す図である。
図11C】プラチナ電極および酸化ルテニウムヒータがLTCC基板上に印刷された金属酸化物発泡体センサ装置を製造する概略的加工フローを示す図である。
図11D】プラチナ電極および酸化ルテニウムヒータがLTCC基板上に印刷された金属酸化物発泡体センサ装置を製造する概略的加工フローを示す図である。
図11E】プラチナ電極および酸化ルテニウムヒータがLTCC基板上に印刷された金属酸化物発泡体センサ装置を製造する概略的加工フローを示す図である。
図11F】プラチナ電極および酸化ルテニウムヒータがLTCC基板上に印刷された金属酸化物発泡体センサ装置を製造する概略的加工フローを示す図である。
図11G】プラチナ電極および酸化ルテニウムヒータがLTCC基板上に印刷された金属酸化物発泡体センサ装置を製造する概略的加工フローを示す図である。
図12】既存のより大型の市販の感知モジュールに代わって用いられる、酸化スズ発泡体センサ装置を備えるガスセンサ製品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の詳細な説明
金属酸化物ガスセンサは、商業的なガス感知用途のために最も一般的に用いられる感知装置の1つである。このセンサは、ターゲットガスに曝される感知材料表面上におけるガス吸収に起因して電気抵抗(または伝導度)を変化させるという原理に基づく。
【0023】
一般的な感知材料は、酸化スズ(SnOまたはSnO2)および酸化亜鉛(ZnO)であり、その両方が優れた半導体感知挙動を示す。酸化銅(CuO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化チタン(TiO2)、三酸化タングステン(WO3)、酸化インジウム(In23)、および酸化鉄(Fe23)などの他の金属酸化物半導体も、新たな化学官能性もしくは抵抗官能性、または組み合わせのために用いられている。これは、周囲条件に対する良好な応答および選択性、ならびに材料合成および感知装置製造の簡便さに起因する。
【0024】
ガス感知材料の(表面)形態(morphology)を制御することは、感知特性を高めるための効果的な方法である。粒径、形態、表面状態、および接近可能な表面積はすべてガス感知性能において重要な役割を果たすため、感知材料の微細構造を理解することは重要である。一般に、吸着または脱着プロセスは感知層の表面上で起こり、センサ応答を決定する。
【0025】
したがって、近年、ナノワイヤ、ナノ粒子、ナノロッド、ナノチューブ、および中空球を含む、ガス感知材料の設計に関する研究開発が劇的に増加している。しかしながら、これらの努力は十分な解決法を提供しておらず、ガス感度を改良させる必要性は依然として残っている。
【0026】
新たなガス感知装置は、高められた表面積およびより高いガス透過性を有する新たな金属酸化物発泡体材料に基づく。この装置において用いられる金属酸化物発泡体の表面上の三次元細孔構造は、表面感知層の脱着プロセスを改良するため、ターゲットガスに対する感度および応答時間を向上させることができる。
【0027】
多孔質構造を製造することは、以下のステップを含む:(a)金属または金属酸化物スラリーを金属または金属酸化物粉末および焼結助剤粉末(たとえば、酸化銅)とともに銅ロッドの低温表面と接触するシリコーン型の中で凍結するステップ;(b)凍結されたスラリーを減圧かつ低温下で昇華させ、多孔質グリーン体を形成するステップ;(c)多孔質グリーン体を焼結して三次元的に接続された多孔質金属酸化物発泡体を得るステップ;(d)多孔質金属酸化物発泡体を、感知材料として用いられるように、10ミリメートル×20ミリメートルのパネルに切断するステップ;および(e)リフトオフプロセスおよびシャドーマスクを用いて多孔質発泡体にプラチナ電極パッドを200ミクロン間隔でパターニングするステップ。
【0028】
ガスセンサの感知材料として用いられる酸化スズ発泡体の多孔質構造は、指向性チャネル孔によって(たとえば、非発泡体材料と比較して)より大きい表面積を提供し、ターゲット有毒ガスが通流するのに役立ち得る。大きな表面積を有するこの二段階孔構造は、図1に概略的に示されるように、エタノール、一酸化炭素、およびその他などに曝されたときに改良された感度で有毒ガスを検知することができる。
【0029】
様々な酸化物系ガス感知半導体材料発泡体が三次元多孔質構造に製造されることが可能であり、すべて出発粉末の形から調製されることができる。たとえば、これらの発泡体は、酸化スズ(SnOまたはSnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In23)、酸化タングステン(WO3)、酸化チタン(TiO2)、酸化ニッケル(NiO)、酸化銅(CuO)、酸化コバルト(Co34)、酸化クロム(Cr23)、および酸化鉄(Fe23)を含む。初期材料は、それらの対応金属粉末であってもよい。これは、金属粉末からなる凍結および乾燥されたグリーン体が、還元のために、空気雰囲気下よりもむしろ水素雰囲気下において高温で焼結され得るためである。酸化スズおよび銅発泡体は、この特許において議論される具体例であるが、他の金属酸化物材料も、上述されたように、それらが広いバンドギャップ、高い伝導度、および良好な安定性を有する半導体材料である限り、ガス感知材料としての使用のために同様に適用され得る。
【0030】
多孔質金属酸化物発泡体は、数百ナノメートルから数十ミクロンの範囲にある細孔サイズを有する三次元的に接続された多孔質構造であり、細孔は三次元に広がる。三次元金属酸化物発泡体は、スラリー発泡と粉末焼結との組み合わせに基づいて製作される。これは、小規模または大規模構造を製作するのに好適な、比較的単純で低コストの加工方法である。しかしながら、多孔質金属酸化物発泡体の製造プロセスはこの粉末加工に限定されず、改良された感度を有するセンサ装置として適用される金属酸化物発泡体構造を製作するために、他の方法が利用されてもよい。
【0031】
酸化スズ発泡体を製造するために、酸化銅などの焼結助剤は、焼結液相を形成することによって高密度化プロセスを助け得る。焼結助剤(たとえば、酸化銅)を伴う多孔質酸化スズは、クラックが生じないように焼結プロセスにおいて発泡体の均一な体積収縮を達成し得る(図2)。我々は、収縮はほぼ等方的であり、収縮による残留応力は最小限であると考えている。酸化スズの質量移動機構はかなり複雑で、低温(たとえば、セ氏1000度未満の温度)では表面拡散、および高温(たとえば、セ氏1300度を超える温度)では蒸発凝縮によって制御されるため、酸化スズは焼結中に高密度化するのが難しいことが知られている。均一な高密度化は、これらの機構のいずれかが優勢であるとき達成するのが難しい。しかしながら、焼結助剤(たとえば、酸化銅)が、酸化スズの焼結中にバルク拡散もしくは粒界拡散を促進する、または液相を形成する、またはその両方において重要な役割を担う。
【0032】
記載された酸化スズ発泡体の製作に基づいて、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化亜鉛、およびその他などの三次元ガス感知材料として用いられる多数のタイプの多孔質金属酸化物発泡体を製造するために、比較的単純な修正が存在し得る。
【0033】
この出願は、特定の規模、寸法、および値を有する実施のいくつかの例を説明する。これらは、本発明を、記載されたものから寸分違わないものに徹底させるまたは限定することを意図するものではない。値、パーセンテージ、時間、および温度は、おおよその値である。これらの値は、たとえば、製造変動の寸法または出発粉末化学または公差または他の要因によって変化し得る。たとえば、製造公差および寸法公差の厳密さに応じて、値は、プラスもしくはマイナス5パーセント、プラスもしくはマイナス10パーセント、プラスもしくはマイナス15パーセント、またはプラスもしくはマイナス20パーセント変化してもよい。
【0034】
さらに、値は特定の実施のためのものであり、他の実施は、大規模化されたサイズのプロセスもしくは製品のためにより大きく、または小規模化された製品のためにより小さくされたある値など、異なる値を有し得る。装置、機器、またはプロセスは、関係する寸法を比例的に調節することによって、比例的により大きくまたはより小さくされ得る(たとえば、異なる寸法間で同じまたはほぼ同じ比率を維持する)。様々な実施において、値は所与の値と同じ、所与の値とほぼ同じ、所与の値以上であってもよく、または所与の値以下であってもよく、またはこれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0035】
ガス感知材料として用いられる多孔質金属酸化物発泡体の製造のプロセスは、以下のステップを含み得る:
1.液体窒素に浸漬された銅ロッドまたは類似の高熱伝導性材料上にシリコーン型を配置し、粉末サイズが通常、数十または数百ナノメートルの範囲にある金属酸化物スラリーを、バインダおよび1つまたは複数の焼結助剤とともに型に注ぐこと。
【0036】
2.調製された金属酸化物スラリーを凍結することであって、金属酸化物粒子は成長する氷晶間で積み重ねられて物理的に付着される。
【0037】
3.凍結されたスラリーからの氷晶を十分低温かつ減圧で乾燥させることによって多孔質グリーン体を形成し、細孔を構造中に残して物理的付着を維持すること。
【0038】
4.堅固に接続された細孔を有する金属酸化物発泡体を脱バインダによって固化し、空気雰囲気下、十分高温で多孔質グリーン体を焼結すること。
【0039】
5.ガスセンサにおける感知材料として使うために、多孔質金属酸化物発泡体を10ミリメートル×20ミリメートルの矩形の形態に切断すること。
【0040】
6.シャドーマスクを用いてリフトプロセスによって多孔質発泡体に2つのプラチナ電極パッドを200ミクロン間隔でパターニングすること。
【0041】
例示の実施形態1:酸化スズ発泡体の調製
酸化スズ粉末(たとえば、15.5グラム)がポリビニルアルコールバインダを含む20ミリリットルの脱イオン水溶液に懸濁され、焼結助剤(たとえば、酸化銅(CuO)粉末、3重量パーセント未満)が酸化スズ粉末高密度化を向上させるために添加された。スラリーは30分間、手動攪拌によって分散され、その後、1時間、超音波処理された。十分な粒子分散を保証するために、攪拌プロセスは2回繰り返された。
【0042】
スラリーは、その後、水の凝固点より高い数度まで冷却され、銅ロッド上の絶縁されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テフロン(登録商標)、もしくはシリコーン、または組み合わせからなる円筒形の型の中に注がれた。銅ロッドは、熱電対および温度コントローラによって制御された液体窒素を用いて冷却された。
【0043】
凍結プロセスが完了すると、凍結された酸化スズグリーン体発泡体サンプルは型から取り出され、10-2トルの残留応力下で凍結乾燥機においてセ氏-80度で48時間、乾燥され、次いで2つの別々のステップで熱処理された。第1の処理は、セ氏300度で3時間、バインダを取り除くためのものであり、その後、10時間、大気中で箱形炉におけるセ氏1150度の焼結が続いた。
【0044】
例示の実施形態2:感知装置の準備
感度の高いガス感知装置を製造するために、2つのプラチナ電極パッドおよび酸化ルテニウムヒータが低温同時焼成セラミックス(LTCC)基板上に印刷された。ビアパンチおよび銀(Ag)ペースト充填によって、酸化ルテニウム(RuO2)ヒータ層が形成され、その後、リフトオフプロセスおよびシャドーマスクを用いて200ミクロン間隙で2つのプラチナ電極をパターニングした。その後、セ氏300度で20~60百万分率の異なるエタノールガス濃度において、ガス感度が測定された。一酸化炭素ガス検知性能について、セ氏200~300度で100~500百万分率の低濃度および1000~5000百万分率の高濃度についてセンサ応答が測定された。測定の間、ガス濃度は、マスフローコントローラ(MFC:mass flow controller)によって平衡に保たれ、制御された。ガスがセンサチャンバ内へ注入されると同時に、センサ電気抵抗を一定のマイクロオングストロームで連続的に測定した。
【0045】
図1A図1Cは、nタイプおよびpタイプの半導体センサについての一般的な感知機構、特にこの特許において示される例示の酸化スズ発泡体センサについての感知機構を概略的に示す。
【0046】
図2A図2Bは、空気中での焼結の前後における代表的な酸化スズ発泡体の写真を示す。発泡体は、45ミリメートルの直径および16ミリメートルの高さ(図2A、左側)から、31ミリメートルの直径および11ミリメートルの高さ(図2B、右側)まで減少し、ほぼ31パーセントの径方向および高さの収縮を伴って67パーセントの体積収縮をもたらす。サンプルは焼結後、クラックも歪みもなくその完全性を維持する。したがって、収縮はほぼ等方的であると考えられ、収縮による最小限の残留応力を示唆する。
【0047】
図3Aは、10時間にわたって、それぞれ、セ氏1050度、セ氏1100度、セ氏1150度、およびセ氏1250度で熱処理された4つの酸化スズ発泡体サンプルのX線回折パターンを示す。4つの発泡体サンプルのX線回折(XRD:X-ray diffraction)ピーク間において意義ある差異はなく、それらはすべて典型的な酸化スズ(SnO2)ピークを示す。
【0048】
図3Bは、商業的に得られた一酸化スズ(SnO)および二酸化スズ(SnO2)粉末と比較される、セ氏1150度で10時間、熱処理された酸化スズ発泡体についてのスズのK端のX線吸収端近傍構造スペクトルを示す。(図3C)調査、および(図3D)セ氏1150度で10時間、空気中で焼結した後の酸化スズ発泡体の三次元金属スズの三次元X線光電子分光スペクトル。
【0049】
発泡体中のスズの酸化状態は、スズ(Sn)のK端XANES(X-ray absorption near edge structure)スペクトル(図3B)を得ること、および発泡体の吸収端位置を商業的な酸化スズ(たとえば、SnOおよびSnO2)粉末の吸収端位置と比較することによって特徴付けられた。平均スズ結合価は、発泡体サンプルにおいて3.36であり、発泡体サンプル全体のスズ酸化状態は主に二酸化スズ(SnO2)であることを示唆する。
【0050】
図3Cは、酸化スズ発泡体表面の化学的状態を調べるために行われたX線光電子分光(XPS:X-ray photoelectron spectroscopy)測定を示す。図3Dは、スズの3dピークの結合エネルギ位置(3d5/2について486.3エレクトロンボルトおよび3d3/2について494.7エレクトロンボルト)が発泡体表面も酸化スズ(SnO)からなることを実証することを示す。
【0051】
図4A図4Hは、様々な温度で焼結され二段階孔構造をもたらす酸化スズ発泡体についての径方向断面および破断面の走査型電子顕微鏡写真を示す。10時間、(図4Aおよび図4E)セ氏1050度、(図4Bおよび図4F)セ氏1100度、(図4Cおよび図4G)セ氏1150度、ならびに(図4Dおよび4H)セ氏1250度。頂面図の画像(たとえば、図4A図4D)における矢印は、金属酸化物粉末焼結プロセスに典型的な連結(junctions)を示し、破断面(たとえば、図4E図4H)における矢印は、壁ストラット上の二次的な樹状突起を示す。
【0052】
図5A図5Bは、セ氏1150度で10時間、熱処理された酸化スズ発泡体の電気抵抗(ガス感度)の変化を、様々な濃度の(図5A)エタノールガスおよび(図5B)一酸化炭素ガスに対する異なる暴露時間について示す。電気抵抗の変化は、酸化スズ発泡体サンプルがガス感知装置において顕著に動作し得ることを裏付ける。
【0053】
図5Aは、20~60百万分率の濃度を有するエタノールガスへの暴露の間における、測定時間に対する酸化スズ発泡体サンプルの抵抗変化または感度を示す。酸化スズ発泡体は、エタノールガスへの暴露の増加に伴って電気抵抗が実質的に増加するように応答し(たとえば、図5A、縞模様の柱)、抵抗は、ガスが混じりけのない空気によって置換されたとき、安定値に戻った(たとえば、図5A、白色柱)。酸化スズ発泡体は、セ氏300度で60百万分率のエタノールガスについて、13.1(単位なし)の応答を示した。これは、触媒が添加されないことを考慮すると非常に優れている。したがって、この特許に具現化された方法で合成された酸化スズ発泡体は、エタノールガス感知材料として適している。
【0054】
図5Bは、1000~5000百万分率の濃度を有する一酸化炭素ガスへの暴露の間における、測定時間に対する酸化スズ発泡体の抵抗変化または感度を示す。酸化スズ発泡体センサは、触媒添加なしで、セ氏200度で5000百万分率の一酸化物ガスにおいて、35.9(単位なし)の応答値を示した。感度は、増加する一酸化物濃度に伴ってほぼ直線的に増加した。したがって、この特許において具現化された方法で合成された酸化スズ発泡体は、一酸化炭素ガス感知材料として適している。
【0055】
図6A図6Bは、酸化スズ発泡体の感知応答を、以下のものの感知応答と比較する:(図6A)セ氏300度でのエタノール濃度の官能基としてのNiOナノ粒子および酸化スズSnO2ナノワイヤ、および(図6B)一酸化炭素ガス下での様々な温度における酸化スズの薄フィルムサンプル。酸化スズ発泡体サンプルは、従来の酸化スズの薄フィルムよりも実質的に低い濃度で一酸化炭素ガスをうまく検知する。
【0056】
実施例1および2に詳述されたように製作された三次元酸化スズ発泡体感知材料は、図6Aに示されるように、追加の触媒を必要とせずに、他の感知材料と比較して高い感度を達成した。特に、図6Bは、この特許に詳述されるように製作された三次元酸化スズ発泡体が非常に低い濃度で一酸化炭素ガスを検出したことを示し、これは従来の酸化スズの薄フィルムによって達成されることはできなかった。したがって、独自の三次元多孔質酸化スズ構造によって、チャネルのような細孔を通って有毒ガスの容易な拡散を可能とし、焼結条件および粉末含有量などの主要な加工パラメータを調整することによって表面積を増加させる。したがって、酸化スズ発泡体における調整された細孔構造は、反応経路を短くすることによって、ガス拡散を容易にする。
【0057】
図7A図7Bは、(図7A)パラジウム無添加の酸化スズ発泡体の電気抵抗(ガス感度)の変化と比較した、様々な一酸化炭素ガス濃度について触媒として3.0重量パーセントのパラジウムを添加した酸化スズ発泡体の電気抵抗(ガス感度)の変化、および(図7B)セ氏200度での一酸化炭素ガス濃度の官能基としてのパラジウム添加および無添加の酸化スズ発泡体間における感度比較を示す。
【0058】
パラジウム、プラチナ、または他のものなどの触媒の少量の添加は、金属酸化物発泡体センサの感度を確かに向上させることができる。図7Aは、様々な一酸化炭素ガス濃度について、触媒としての3.0重量パーセントのパラジウム添加および無添加の酸化スズ発泡体の電気抵抗変化(ガス感度)の比較を示す。図7Bに示されるように、パラジウムが添加された酸化スズ発泡体センサの感度は、セ氏200度での一酸化炭素ガス濃度の範囲全体において、パラジウムなしの酸化スズ発泡体センサの感度よりもかなり高い。さらに、パラジウムを含む酸化スズ発泡体センサの感度は、セ氏200度~セ氏300度の温度範囲全体において、パラジウムなしの酸化スズ発泡体センサの感度よりも高い(図8)。
【0059】
図8は、4500百万分率(ppm:parts per million)の一酸化炭素ガス濃度における様々な温度でのパラジウム添加および無添加の酸化スズ発泡体間における感度比較を示す。パラジウムが添加された酸化スズ発泡体は、セ氏200~300度の間の温度範囲のすべてにおいてかなり高い感度を示す。
【0060】
図9A図9Bは、(図9A)セ氏200度での低濃度(100~500ppm)の一酸化炭素ガスにおける、触媒としてパラジウムが添加された酸化スズ発泡体の電気抵抗(ガス感度)の変化、および(図9B)セ氏200度での100~500百万分率(ppm)の間の一酸化炭素ガス濃度の官能基としての、パラジウムが添加された酸化スズ発泡体の感度を示す。
【0061】
特に、パラジウムの添加は、低濃度範囲の一酸化炭素ガスについて有益である。図9Aは、セ氏200度における、低濃度(たとえば、100~500百万分率)の一酸化炭素ガスでの、触媒としてパラジウムが添加された酸化スズ発泡体の電気抵抗(ガス感度)の変化を示す。このような低濃度範囲の一酸化炭素ガスにおいて、パラジウムが添加された酸化スズ発泡体の感度は、セ氏200度で100~500百万分率の間の一酸化炭素ガス濃度の増加に伴って、安定して増加する。
【0062】
図10A図10Cは、(図10A)セ氏300度での1000百万分率(ppm)~5000百万分率の一酸化炭素濃度における酸化銅発泡体の電気抵抗(ガス感度)の変化、(図10B)その動作機構の概略、および(図10C)セ氏300度での1000~5000百万分率の間の一酸化炭素ガス濃度の官能基としての酸化銅発泡体の感度(応答)を示す。
【0063】
金属発泡体酸化物ガス感知装置の製造のためには、酸化スズ発泡体センサが適用可能であるだけでなく、他の金属酸化物発泡体センサも適用可能である。図10Aは、セ氏300度での1000百万分率~5000百万分率の比較的低い一酸化炭素濃度におけるフリーズキャスティングされた酸化銅発泡体の電気抵抗(ガス感度)の変化を示し、図10Cは、セ氏300度で1000~5000百万分率の間で増加する一酸化炭素ガス濃度に伴って安定して増加する酸化銅発泡体の感度を示し、金属酸化物センサ構造がその高められた感知表面積によって一酸化炭素などの有毒ガスを検出するのに有益であることを裏付ける。ここで、酸化銅発泡体はフリーズキャスティングを用いて製作された。酸化銅粉末は、攪拌および超音波処理を用いて、脱イオン水にポリビニルアルコールとともに混合された。分散された懸濁液は、冷蔵されたCuロッド上のシリコーン型の中へ注がれた。このとき、温度は液体窒素およびヒータを用いてセ氏-10度に維持された。懸濁液が完全に凍結された後、凍結されたサンプルは、乾燥機の中で40時間、真空中でセ氏-88度において昇華された。その後、焼結前に、グリーン体は水素雰囲気中で酸化銅(CuO)から銅に還元された。還元および焼結プロセスは、水素混合ガス下で管状炉において、セ氏250度で4時間の予焼結およびセ氏800度で14時間の高温焼結によって実行された。
【0064】
図11A図11Gは、金属酸化物発泡体ガスセンサ装置を製造する概略的加工フローを示す。プラチナ電極および酸化ルテニウムヒータは、銀ペーストを用いたヒータおよび電極の頂部上における金属酸化物発泡体センサの取付けに先立って、低温同時焼成セラミック(LTCC)基板上に印刷される。
【0065】
図11A~11Gにおいて金属酸化物センサ電極装置を製造する実施例が説明され、金属酸化物発泡体ガスセンサ電極装置を製造する概略的加工フローを示す。銀ペーストを用いて金属酸化物発泡体センサをヒータおよび電極と接触して取り付けるのに先立って、プラチナ電極および酸化ルテニウムヒータがLTCC基板上に印刷される。このセンサ装置は、たとえば、図12に示される市販の感知モジュール1203よりも著しく小さく、既存の感知材料要素と直接置換可能である。
【0066】
図12は、市販のガスセンサ製品(たとえば、一酸化炭素センサ製品)における既存の感知モジュールと直接置換可能である、この特許に記載されたように製造された酸化スズ発泡体センサ装置1212を示す。
【0067】
本発明のこの記載は、図解および説明の目的のために示されている。本発明を、記載されたものから寸分違わないものに徹底させるまたは限定することを意図するものではなく、上記教示に照らして多くの修正および変形が可能である。実施形態は、本発明の原理およびその実用的応用を最もよく説明するために選択および説明された。この記載は、他の当業者が、様々な実施形態において、および特定的な使用に適するように様々な修正を伴って、本発明を最もよく利用および実用することを可能にする。本発明の範囲は、以下の請求項によって規定される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図11G
図12
【国際調査報告】