(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-27
(54)【発明の名称】噴霧乾燥による粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 2/04 20060101AFI20220520BHJP
A23L 5/00 20160101ALN20220520BHJP
A23B 7/026 20060101ALN20220520BHJP
A61K 9/14 20060101ALN20220520BHJP
【FI】
B01J2/04
A23L5/00 Z
A23B7/026
A61K9/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557770
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(85)【翻訳文提出日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 EP2020058500
(87)【国際公開番号】W WO2020200994
(87)【国際公開日】2020-10-08
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】イバラ、ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】アビレス、カルロス
(72)【発明者】
【氏名】ユービ-イドリッシ、ムハンマド
【テーマコード(参考)】
4B035
4B169
4C076
4G004
【Fターム(参考)】
4B035LC05
4B035LE01
4B035LG21
4B035LK19
4B035LP24
4B169AA04
4B169BA05
4B169HA11
4C076AA29
4C076DD67
4C076DD67A
4C076FF01
4C076FF51
4C076FF63
4C076GG09
4G004AA01
4G004EA00
(57)【要約】
【解決手段】 中に組成物又は圧縮ガスが注入される噴霧ノズル(3)を備えた乾燥塔(2)を使用する、液体又は半液体の組成物からの固体粒子の製造方法であって、窒素やアルゴンなどの中性ガスが、上流タンク(1)内の前記組成物の一部を形成する水に注入される(7)、或いは組成物が上流タンクを緩衝タンク(11)に接続しているラインの上流タンク(10)内にインラインで保管される、方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中に組成物又は圧縮ガスが注入される噴霧ノズル(3)を備えた乾燥塔(2)が実装される、液体又は半液体の組成物からの固体粒子の製造方法であって、以下の2つの変形形態:
i.
- 窒素やアルゴンなどの中性ガスが、上流タンク(1)内の前記組成物の一部を形成する水に注入される(7);
- 前記タンクの前記水の中で、前記必要な組成物の一部を形成する成分が添加され、それらを一緒に混合する段階(6)が行われ、成分の添加及び混合の前記段階の全部又は一部で窒素又はアルゴンなどの中性ガスが前記タンクに注入され、前記混合操作により前記混合物全体の脱気が可能になる;
- このようにして得られた前記組成物が前記乾燥塔に送られる;
ii.
- 前記組成物が上流タンク(10)に入れられる;
- 前記上流タンクを緩衝タンク(11)に接続するラインが設けられ、窒素又はアルゴンなどの中性ガスが、前記2つのタンク間でこのラインを循環する前記組成物にインラインで注入される(7);
- 窒素又はアルゴンなどの中性ガスが前記緩衝タンク(11)の中に注入され(12)、緩衝タンクで前記液体と前記酸素を含んだ中性ガスとの間の分離を行うことが可能になる;
- このようにして得られた前記組成物が前記乾燥塔に送られる
のうちの1つが行われる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品及び/又は化粧品の配合物に使用される粉末の分野に関し、特にこれらの粉末の保存の問題に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
そのような粉末は、例えば、「水中油型」又は「油中水型」又は「水中油中型水型」エマルションから製造することができる。油画分には、例えばビタミンEなどの酸化しやすい目的化合物が含まれることがある。その場合、酸素との接触を回避することが不可欠である。
【0003】
噴霧乾燥される液体へのガスの注入が記載されている先行技術からは、多数の文献、特に以下の文献を引用することできる:
- 米国特許第1406381号明細書、これには、無菌の非酸化性ガス(加圧又は非加圧)(CO2は製品に非常に溶解しやすいことからこの文献によればCO2が好ましい)を液状乳に溶解させる方法が記載されている。続いて、ガスを含んだ乳が蒸発タンクの中に噴霧される。得られる製品は、同じガスが含浸された粉ミルクである。
- 米国特許第3222193号明細書、これは、優れた「流動性」を得るために、予め低温殺菌及び濃縮された(40~50%の固形分)液体(乳、乳清、果汁、トマトジュース、オレンジジュース、更にはグレープフルーツジュース)中に比較的不溶性の不活性ガスを分散させてから噴霧乾燥することを提案している。
- 米国特許第4180593号明細書、これには、食用フィルムを形成可能な製品を含む液体を乾燥させることによってビーズを製造する方法が記載されている。乾燥は、乾燥工程の前に液体配合物中に存在することができるガスを用いて行われる。ガスは、優れた流動性と制御されたかさ密度を確保するために、乾燥中に膨張を引き起こす目的で添加される。
- 米国特許第4368100号明細書、これは、液体流量の制御された変動と、一定圧力での不活性ガスの上流での注入とを伴う、可溶性のコーヒー水性抽出物の噴霧を提案している。液体/気体混合物は、乾燥塔の噴霧ノズルに供給される。流量変動の目的は、小さな液滴が乾燥塔内の大きな液滴と衝突した際のコーヒー凝集体の形成を促すために、噴霧中に異なるサイズの液滴を生成することである。
- 米国特許第5882717号明細書、これには、制御された気泡サイズの泡を形成するためにコーヒー抽出物にガスを注入することが説明されている。温度及び圧力の運転条件は、粉末粒子内の空いている空間をガスに置き換える目的で、噴霧乾燥中に粉末の中に小さな気泡を取り込んで捕捉するために規定される。
【0004】
以上のように、これらの文献は、全てガスを液体に直接注入することを提案している。したがって、このタイプの溶液は、前述したエマルションがその組成に起因して起泡性液体である用途には不適切である。
【0005】
更に、本発明が起泡性ではない他の液体マトリックスにも適用できるとしても、本発明は、一般的に起泡性のエマルションを乾燥させることを主に目的としていることに留意すべきである。
【0006】
実際、前述した全ての文献において、ガスを注入する最終的な目的は、生成される粉末粒子の特性を調整することであるが、ガスを液体から排除することを可能にし、結果として酸素を液体から逃がすことを可能にする構成は提案されていない。そのため、生成物は、常に目的化合物の酸化に利用可能な捕捉されている酸素の存在下にある。
【0007】
この先行技術の分野では、気体、液体、更には超臨界N2又はCO2を使用し、通常は気体又は極低温液体と噴霧ノズルで接触する製品とを用いて、様々な状況で実験を行ったMESSER社が実施した全ての研究を引用することができる(独国特許第10233864号明細書、米国特許第6284302号明細書、欧州特許第1027144号明細書、欧州特許第1677903号明細書などの文献を参照のこと)。これらの研究の1つでは、噴霧のために送る前に、ガス状のCO2を予め製品に充填することが提案されている。ただし、CO2は水溶性であるため脱離せず、そのため液体から酸素を追い出すことができないことに留意すべきである。
【0008】
米国特許出願公開第2010/215818(Nestec)号明細書の文献も挙げることができる。この文献の目的は、非常に「膨潤した」粉末(かなりの量のガスを含有)にするために、液体をガスで、例えば窒素で過飽和にすることであり、この目的のために、液体は典型的には50~400barの非常に高い圧力にさらされる。そのため、液体はかなりの量の溶存窒素を伴って乾燥塔に到達する。
【0009】
以降で理解されるように、これは決して本発明によるアプローチではない。本発明の目的は、液体をガスで飽和させるのではなく、酸素を含んだ注入された窒素が液体を離れることができるように、大気圧で作業することによって、及び乾燥塔に到達する前に気液分離工程を行うことに焦点を当てることによって、酸素を除去することである。
【0010】
したがって、本発明の目的の1つは、粒子の中に取り込まれる酸素なしに粉末を製造する方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以降でより詳しく理解されるように、本発明に従って提案される技術的解決手段は、以下の結果を達成することを可能にする:
- この方法により、溶存ガスが含まれておらず、そのため粒子内に酸素が捕捉されていない粉末が製造される。したがって、反応し易い分子の酸化が低減又は回避される;
- 噴霧ノズルに供給される液体に溶存ガスが含まれていないため、乾燥中の起泡が回避される;
- そのため、これは以下の処理のものをすることが可能である:
i.固体(例えば粉末)を1種以上の液体(例えば水/油エマルション)に溶解しなければならない混合物に由来する製品
ii.複合液体(果汁、乳など);食品の液体を乾燥させるために、担持材料(マルトデキストリン、アカシアガムなど)を添加することが不可欠な場合が多いことに注意すべきである。得られる混合物は、ほとんどの場合で起泡性の混合物である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、水中の様々な成分(液体及び/又は固体)の混合物由来の調製された液体からの粉末の製造に対処するプロセスの概略図である。
【
図2】
図2は、混合物から得られる液体製品、更には天然の複合的であるが起泡しない液体製品の場合に対処するプロセスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の[
図1]:本発明の実施形態の1つ(以降、添付の
図1を参照して説明する)は、水中の様々な成分(液体及び/又は固体)の混合物由来の調製された液体からの粉末の製造に対処するものであり、水から酸素を抜くために、中性ガス(7)(例えば窒素又はアルゴンなど)がタンク(1)の上流で混合物の水の中に注入される。その後、タンクの中への注入は停止され、固体成分(6)(例えば粉末)の添加及び成分の混合の全て又は一部の段階でタンクを継続的に不活性化することによって置き換えられる。酸素プローブ(5)をタンクの中に配置することができ、溶存酸素レベルを設定値(例えば0.5ppm)と比較することができる。場合によっては、乾燥/噴霧の前に均質化工程を要する場合がある。酸素の取り込みを回避するために、連続的な掃引によって液体の表面を確実に不活性化することが好ましい。混合及び/又は均質化工程の後、液体は乾燥/噴霧工程(2)に送る準備が整う。
【0014】
その後、乾燥ゾーンを不活性化するために、中性ガスを任意選択的に乾燥塔自体の中に注入することができる(20)。
【0015】
好ましくは、液体が粉末に変換される前の液体への酸素の取り込みは回避すべきである。また、使用されるノズル(3)が圧縮ガス(通常は空気)を使用する場合、この空気を不活性ガス(8)に、例えば窒素に置き換えることが好ましい。
【0016】
有利には、不活性ガスの流れ及びその圧力は、ジェットを成立させるため及び粉末粒子を形成するためのゾーン全体が不活性であるように設定される。有利には、酸素プローブを例えば乾燥塔の上部又は噴霧ジェットのコーン内の前記ゾーンに配置することができ、前記ゾーンの不活性化を監視するために不活性ガスの注入によって制御することができる。
【0017】
以上から、まとめると、この第1の実施形態によれば、水が上流で脱酸素化され、次いで目的の混合物(組成物)を製造することを目的とした成分が添加され、タンクは、好ましくはこの混合操作中に連続的に不活性化され、混合操作は、混合物全体の脱気を可能にし、その後混合物は乾燥塔に向けられる。使用される噴霧ノズルが空気を使用する場合には、空気を窒素などの不活性ガスに置き換えることが有利に好ましい。
【0018】
本明細書で取り扱われる製品の例の中では、水に混合された濃縮物から製造され、それにマルトデキストリンも担持材料として添加された粉末果汁を挙げることができる。
【0019】
添付の[
図2]:本発明の別の実施形態(以降、添付の
図2を参照して説明する)は、混合物から得られる液体製品、更には天然の複合的であるが起泡しない液体製品の場合に対処する。この場合は、タンクの上流ではなくタンク10の中に貯蔵されている液体(すなわち乾燥される混合物)の中にインラインで中性ガス(例えば窒素又はアルゴン)を注入することが提案される。この注入(7)は、不活性化(12)された緩衝タンク(11)から十分に上流であり、ここでガスが注入された液体が送られ、その緩衝タンクで、液体と酸素を含んだ中性ガスとの間の分離が生じる。「十分に上流」という用語は、不活性ガスと溶存酸素との間の交換が起こるように注入を十分に上流で行うことが重要であることから使用される。パイプの長さは、好ましくは5~30秒の範囲の注入後の接触時間を可能にする。
【0020】
次に、液体は、乾燥/噴霧塔(2)に供給するために緩衝タンク(11)を出る。その後、中性ガスは、乾燥ゾーンを不活性化するために、任意選択的に乾燥塔(20)自体に注入することができる。
【0021】
好ましくは、液体が粉末に変換される前の液体による酸素の取り込みは回避すべきである。また、使用されるノズル(3)が圧縮ガス(通常は空気)を使用する場合には、空気を不活性ガス(8)に、例えば窒素に置き換えることが好ましい。
【0022】
有利には、不活性ガスの流れ及びその圧力は、ジェットを成立させるため及び粉末粒子を形成するためのゾーン全体が不活性であるように設定される。有利には、酸素プローブを前記ゾーンに配置することができ、また前記ゾーンの不活性化を監視するために不活性ガスの注入によって制御することができる。
【0023】
以上から、まとめると、この第2の実施形態によれば、ガスは、(混合前の水ではなく)形成された複合液体に直接インラインで注入され、液体は不活性化緩衝タンクに送られ、そこで脱気が行われ、その後この液体は乾燥/噴霧塔に送られる。
【0024】
本明細書で取り扱われる製品の例の中では、薬学的に重要な分子を含み、中にラクトースタイプの担持材料が添加される液体を挙げることができる。
【0025】
以上から、本発明は、中に組成物及び圧縮ガスが注入される噴霧ノズルを備えた乾燥塔が実装される、液体又は半液体の組成物からの固体粒子の製造方法に関し、この方法では、以下の2つの変形形態のうちの1つが行われる:
i.
- 窒素やアルゴンなどの中性ガスが、上流タンク内の前記組成物の一部を形成する水に注入される;
- タンクの水の中で、前記必要な組成物の一部を形成する成分が添加され、それらを一緒に混合する段階が行われ、成分の添加及び混合の段階の全部又は一部で窒素又はアルゴンなどの中性ガスがタンクに注入され、注入は好ましくはタンクのヘッドスペースで行われる;
- このようにして得られた組成物が乾燥塔に送られる;
ii.
- 前記組成物が上流タンクに入れられる;
- 上流タンクを緩衝タンク又は別の気液分離システムに接続するラインが設けられ、窒素又はアルゴンなどの中性ガスが、2つのタンク間でこのラインを循環する組成物にインラインで注入される;
- 窒素又はアルゴンなどの中性ガスが緩衝タンクの中に注入され、注入は好ましくはタンクのヘッドスペース又は液相で行われる;
- このようにして得られた組成物が乾燥塔に送られる。
【0026】
いずれの場合も、ノズル3は異なるタイプのものであってもよく、特に:
- 二流体ノズル:圧縮空気と液体(ポンプによって供給される)が、2つの異なる経路を介して到着し、オリフィスのノズル出口で一緒に混合される。圧縮空気の役割は、液体の流れを微細な液滴に分解することである。
- 一流体ノズル:圧縮空気がノズルの上流の液体に注入される。圧縮空気の役割は、液体を強制的にオリフィスに通すために必要な圧力を形成することと、液体の流れを微細な液滴に分解することの2つである。
- 圧力ノズル:液体は、オリフィスを強制的に通過させられるのに十分且つ液体の流れを微細な液滴に分解するのに十分な高い圧力でポンプによって供給される。
- 遠心式ノズル:圧縮空気と液体(ポンプによって供給される)が、2つの異なる経路を介して到着し、ノズル出口で一緒に混合される。圧縮空気の役割は、複数のオリフィスから液体を排出するのに十分な速度でノズルを回転させることと、せん断によって液体の流れを微細な液滴に分解することの2つである。
【0027】
本発明において、圧縮空気は、好ましくは窒素又はアルゴンタイプの不活性圧縮ガスで置き換えられる。
【国際調査報告】