(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-27
(54)【発明の名称】熱交換器を動作させるための方法、熱交換器を有する構成、および対応する構成を有するシステム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6569 20140101AFI20220520BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20220520BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20220520BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20220520BHJP
H01M 10/6571 20140101ALI20220520BHJP
【FI】
H01M10/6569
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/6556
H01M10/6571
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021558888
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(85)【翻訳文提出日】2021-10-01
(86)【国際出願番号】 EP2020025150
(87)【国際公開番号】W WO2020200521
(87)【国際公開日】2020-10-08
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519288685
【氏名又は名称】リンデ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Linde GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.-Carl-von-Linde-Str. 6-14, 82049 Pullach i. Isartal, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロッホナー、シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】スペリ、ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルツル、ラインホルト
(72)【発明者】
【氏名】レーマッハー、アクセル
(72)【発明者】
【氏名】ヴォイタルカ、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】シャウダー、スヴェン
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031HH06
5H031KK08
(57)【要約】
【解決手段】 本発明は、熱交換器(1)を動作させるための方法に関し、第1の期間において第1の動作モードが実行され、第1の期間と交互になる第2の期間において第2の動作モードが実行され、第1の動作モードにおいては、第1の流体流(A)が第1の温度において形成され、第1の温度にある第1の領域(2)内で熱交換器(1)に供給され、熱交換器(1)内で部分的または完全に冷却され、第1の動作モードにおいては、第2の流体流(B)が第2の温度において形成され、第2の温度にある第2の領域(3)において熱交換器(1)に供給され、熱交換器(1)内で部分的または完全に加熱され、第2の動作モードにおいては、第1の流体流(A)および第2の流体流(B)の熱交換器(1)への供給が部分的または完全に停止される。第2の期間、または第2の期間の少なくとも1つと後続の第1の期間との間にある第3の期間のいずれかにおいて、第1の領域(2)に熱が供給され、熱は、熱交換器(1)の外側に配置された加熱デバイス(7)によって供給され、熱は熱交換器(1)の外側に位置するガスチャンバ(5)を介して第1の領域(2)に伝達される。対応する構成(10)およびそのような構成(10)を有するシステム(100,200)も本発明によって包含される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器(1)を動作させるための方法であって、
第1の期間において第1の動作モードが実行され、前記第1の期間と交互になる第2の期間において第2の動作モードが実行され、
前記第1の動作モードにおいては、第1の流体流(A)が第1の温度レベルにおいて形成され、前記第1の温度レベルにある第1の領域(2)内で前記熱交換器(1)に供給され、前記熱交換器(1)内で部分的または完全に冷却され、
前記第1の動作モードにおいては、第2の流体流(B)が第2の温度レベルにおいて形成され、前記第2の温度レベルにある第2の領域(3)において前記熱交換器(1)に供給され、前記熱交換器(1)内で部分的または完全に加熱され、
前記第2の動作モードにおいては、前記第1の流体流(A)および前記第2の流体流(B)の前記熱交換器(1)への供給が部分的または完全に停止され、
前記第2の期間、または前記第2の期間の少なくとも1つと後続の前記第1の期間との間にある第3の期間のいずれかにおいて、前記第1の領域(2)に熱が供給され、前記熱は、前記熱交換器(1)の外側に配置された加熱デバイス(7)によって供給され、
前記加熱デバイス(7)によって提供される前記熱は、前記熱交換器(1)の外側に位置し、前記第1の領域(2)が配置されているガスチャンバ(5)を介して前記第1の領域(2)に伝達されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記熱は、前記ガスチャンバ(3)を介した対流および/または放射によって少なくとも部分的に前記第1の領域(2)に伝達される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の領域(3)は、冷却されることなく動作され、一方、前記第2の期間または前記第3の期間において前記第1の領域(2)に熱が供給される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱交換器(1)が、ガス液化方法の範囲内で動作する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ガス液化方法が、前記第1の流体流(A)を少なくとも部分的に液化することと、前記第1の流体流を未変化の材料組成物中の方法生成物として提供することとを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の領域(3)は、少なくとも一時的に冷却され、一方、前記第2の期間または前記第3の期間において前記第1の領域(2)に熱が供給される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記熱交換器(1)が、ガス混合物分離方法の範囲内で動作する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ガス混合物分離方法は、統合ガス液化方法によって行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ガス混合物分離方法において形成される極低温液体または外部に提供される極低温液体が蒸発され、前記液体の蒸発部分が少なくとも部分的に使用されて前記第2の領域(3)が冷却される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
熱交換器(1)を有する構成(10)であって、前記構成(10)は、
第1の期間において第1の動作モードを実行し、第1の期間と交互になる第2の期間において第2の動作モードを実行し、
前記第1の動作モードにおいて第1の温度レベルの第1の流体流(A)を形成し、前記第1の温度レベルにある第1の領域(2)において前記熱交換器(1)に前記第1の流体流を供給し、前記熱交換器(1)内で前記第1の流体流を部分的にまたは完全に冷却し、
前記第1の動作モードにおいて第2の温度レベルの第2の流体流(B)を形成し、前記第2の温度レベルにある第2の領域(3)において前記熱交換器(1)に前記第2の流体流を供給し、前記熱交換器(1)内で前記第2の流体流を部分的にまたは完全に加熱し、
前記第2の動作モードにおいて前記第1の流体流(A)および前記第2の流体流(B)の前記熱交換器(1)への供給を部分的にまたは完全に停止するように構成された手段を有し、
前記構成(10)は、前記熱交換器(1)の外側に配置され、前記第2の期間、または、前記第2の期間の少なくとも1つと後続の前記第1の期間との間にある第3の期間のいずれかにおいて、加熱デバイス(7)によって供給される熱を前記第1の領域(2)に供給するように構成された加熱デバイス(7)を備え、
前記構成(10)は、前記熱交換器(1)の外側に配置され、前記第1の領域(2)が中に配置されるガスチャンバ(5)を備え、前記構成(10)は、前記加熱デバイス(7)によって供給される前記熱を前記ガスチャンバ(5)を介して前記第2の領域(2)に伝達するように構成されていることを特徴とする、構成(10)。
【請求項11】
前記熱交換器(1)が中に配置されるコールドボックス(4)を備え、前記ガスチャンバ(5)が、前記コールドボックス(4)内の絶縁材料を含まない領域によって形成される、請求項10に記載の構成(10)。
【請求項12】
前記熱交換器(1)の前記第1の領域は、前記第1の領域に接触するサスペンションなしに前記コールドボックス(4)内の前記ガスチャンバ(5)内に配置されている、請求項10または11に記載の構成(10)。
【請求項13】
前記加熱デバイス(7)が放射ヒータとして設計されているか、または、前記加熱デバイス(7)が加熱バンドもしくは加熱コイルを有する、請求項10~12のいずれか一項に記載の構成(10)。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか一項に記載の構成を特徴とするシステム(100,200)であって、前記システム(100、200)は、ガス液化システムおよび/またはガス混合物分離システムとして設計されている、システム(100,200)。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されていることを特徴とする、請求項14に記載のシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれの独立請求項の前文による、熱交換器を動作させるための方法、対応して動作可能な熱交換器を有する構成、および対応する構成を有するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの適用分野では、熱交換器(より技術的に正確には、伝熱装置)は、極低温流体、すなわち0℃を大幅に下回る、特に-100℃を大幅に下回る温度の流体によって動作する。本発明は、主に空気分離システムの主熱交換器を参照して下記に説明されるが、原則として、他の適用分野、例えば、液体空気を使用してエネルギーを貯蔵および回収するためのシステム、または天然ガス液化のためのシステム、または石油化学のシステムにおける使用にも適している。
【0003】
下記に説明する理由から、本発明は、気体空気生成物、例えば気体窒素を液化するためのシステムにも特に適している。対応するシステムは、特に、空気分離システムから気体窒素を供給され、それを液化することができる。この場合、空気分離システムのように、液化の後に精留が行われない。したがって、下記に説明する問題が克服されると、これらのシステムは、例えば対応する液化生成物の需要がないときに完全にオフにされ、次の使用まで待機することができる。
【0004】
空気分離システムの主熱交換器および他の熱交換器の構成および動作については、関連する技術文献、例えばH.-W.Haring(編)「Industrial Gases Processing」(Wiley-VCH,2006)、特にセクション2.2.5.6「Apparatus」が参照される。熱交換器全般に関する詳細は、例えば、刊行物「The Standards of the Brazed Aluminium Plate-Fin Heat Exchanger Manufacturers’Association」(2nd edition,2000)、特にセクション1.2.1「Components of an Exchanger」に見出すことができる。
【0005】
追加の対策がなければ、空気分離システムの熱交換器、ならびに、高温および極低温の媒体が流れる他の熱交換器は、関連するシステムが停止しており、したがって、熱交換器が動作外であるときに温度平衡化を実行し、加熱され、または、そのような場合には、定常状態動作中に対応する熱交換器内に形成される温度プロファイルを維持することができない。例えば、動作を再開するときに極低温ガスが、その後に加熱された熱交換器に、またはその逆に供給される場合、温度差による異なる熱膨張の結果として高い熱応力が発生し、熱交換器に損傷をもたらす可能性があり、またはそのような損傷を回避するために材料もしくは製造に不釣り合いに高い費用を必要とする可能性がある。
【0006】
特に、熱交換器が完全に加熱される前に動作外になると、その金属材料内の良好な熱伝導(長手方向熱伝導)のために、以前は高温であった端部および以前は低温であった端部の温度が等しくなる。換言すれば、熱交換器の以前に高温であった端部は、時間の経過と共により低温になり、熱交換器の以前に低温であった端部は、当該温度が平均温度になるかまたは平均温度に近くなるまでより高温になる。これはまた、添付の
図1にも示されている。ここでは、動作外のときにそれぞれ約-175℃および+20℃であった温度は、数時間にわたって互いに等しくなり、ほぼ平均温度に達する。
【0007】
この挙動は、特に、主熱交換器が低温断熱されて収容されている場合、すなわち、空気分離システムがオフのときに、精留ユニットと共に遮断される場合、すなわち、外部からガスが供給されなくなる場合に観察される。このような場合、典型的には、断熱損失によって生成されるガスのみが低温で吹き飛ばされる。気体空気生成物、例えば液体窒素を液化するためのシステムがオフになっている場合も同様である。
【0008】
その後、動作を再開するときに、熱交換器の冷却された温端部において高温の流体が供給される場合、温度はそこで急激に上昇する。加熱された冷端部の温度は、熱交換器が動作を再開するときに対応する低温流体がそこに供給される場合、それに応じて急激に低下する。これは、前述の材料応力、したがって場合によっては損傷をもたらす。
【0009】
独国特許出願公開第42 07 941号明細書は、流体を処理するための不連続動作システムにおいて熱交換器を動作させるための方法を開示しており、この方法では、停止時間によって中断された動作時間中に、少なくとも1つの冷媒が熱交換器の第1のチャネルをその冷端部からその温端部まで流れ、少なくとも1つの放熱流体または冷却されるべき流体が熱交換器の第2のチャネルをその温端部からその冷端部まで流れる。停止時間中、熱は温端部に供給され、冷熱は冷端部に供給され、その結果、これらの2つの端部は動作時間中に対応する温度に比較的近い温度に維持され、少なくとも供給された冷熱または供給された熱は、システム内に存在する流体によって送達される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、特に前述のシステムの1つにおける対応する熱交換器が、前述の不都合な影響を生じることなく、比較的長い時間にわたって動作停止した後に動作を再開することを可能にする更なる改善された手段を指定することである。
発明の開示
【0011】
この背景に対して、本発明は、それぞれの独立請求項の特徴を有する、熱交換器を動作させるための方法、対応して動作可能な熱交換器を有する構成、および対応する構成を有するシステムを提案する。
【0012】
最初に、本発明を説明するために使用されるいくつかの用語を下記に説明および定義する。
【0013】
本明細書で使用される用語では、「熱交換器」は、例えば互いに対して向流において案内される少なくとも2つの流体流の間で間接的に熱を伝達するように設計された装置である。本発明の範囲内で使用するための熱交換器は、並列および/または直列に接続された1つまたは複数の熱交換器セクション、例えば1つまたは複数のプレート熱交換器ブロックから形成することができる。しかしながら、本発明は、原則として、他のタイプの熱交換器にも適しており、プレート熱交換器に限定されない。熱交換器は、流体を導くように構成され、分離プレートによって他の通路から分離されるか、または入口側および出口側においてのみ、それぞれのヘッダのみを介して接続される「通路」を有する。通路は、サイドバーによって外部から分離されている。当該通路は、下記において「熱交換器通路」と呼ばれる。慣用的な用語にしたがって、2つの用語「熱交換器」および「伝熱装置」は、下記において同義的に使用される。用語「熱交換」、「熱伝達」についても同様である。
【0014】
本発明は、特に、ISO 15547-2:2005によるプレートフィン熱交換器と呼ばれる装置に関する。したがって、「熱交換器」が下記において言及される場合、これは特にプレートフィン熱交換器を意味すると理解されるべきである。プレートフィン熱交換器は、互いに上下に位置する複数の平坦なチャンバまたは細長いチャネルを有し、これらはいずれの場合も、一般にアルミニウム製の波形または他の構造の、相互接続された、例えば、はんだ付けされたプレートによって互いに分離されている。プレートは、サイドバーによって安定化され、当該サイドバーを介して互いに接続される。熱交換器プレートの構造化は、特に、熱交換面を増加させるだけでなく、熱交換器の安定性を高めるためにも使用される。本発明は、特に、アルミニウム製のはんだ付けされたプレートフィン熱交換器に関する。しかしながら、原則として、対応する熱交換器は、他の材料、例えばステンレス鋼から、または様々な異なる材料から製造することもできる。
【0015】
上述したように、本発明は、既知のタイプの空気分離システムにおいて使用することができるが、例えば、液体空気を使用してエネルギーを貯蔵および回収するためのシステムにおいても使用することができる。液体空気を使用したエネルギーの貯蔵および回収は、液体空気エネルギー貯蔵(Liquid Air Energy Storage、LAES)とも呼ばれる。対応するシステムは、例えば、欧州特許出願公開第3032203号明細書に開示されている。窒素または他の気体空気生成物を液化するためのシステムも同様に、技術文献から知られている。原則として、本発明は、対応して熱交換器を動作させることができる任意の更なるシステムにおいても使用することができる。例えば、これらは、天然ガスの液化および天然ガスの分離のためのシステム、上述のLAESシステム、空気分離のためのシステム、空気分離を伴うまたは伴わないすべてのタイプの(特に空気および窒素のための)液化回路、エチレンシステム(すなわち、特に、スチームクラッカからの気体混合物を処理するように構成された分離システム)、例えばエタンまたはエチレンを伴う冷却回路が異なる圧力レベルにおいて使用されるシステム、ならびに一酸化炭素回路および/または二酸化炭素回路が設けられるシステムであり得る。
【0016】
LAESシステムにおいて、高電力供給時の第1の動作モードにおいては、対応する電力消費によって空気が圧縮され、冷却され、液化され、断熱タンクシステムに貯蔵される。低電力供給時の第2の動作モードにおいては、タンクシステムに貯蔵された液化空気は、特にポンプによる圧力上昇後に加熱され、したがって気体または超臨界状態に変換される。それによって得られた圧力流は、発電機に結合された膨張タービン内で膨張される。発電機において得られる電気エネルギーは、例えば送電網にフィードバックされる。
【0017】
原則として、液体空気を使用するだけでなく、対応するエネルギーの貯蔵および回収は可能である。むしろ、空気を使用して形成された他の極低温液体を第1の動作モードにおいて貯蔵し、第2の動作モードにおいて電気エネルギーを生成するために使用することもできる。対応する極低温液体の例は、液体窒素もしくは液体酸素、または主に液体窒素もしくは液体酸素からなる成分混合物である。特にガスタービンを使用して、効率および出力を高めるために、外部の熱および燃料を対応するシステムに結合することもでき、ガスタービンの排気ガスは、第2の動作モードにおいて空気生成物から形成される圧力流と共に膨張する。本発明は、このようなシステムにも適している。
【0018】
従来の空気分離システムを使用して、対応する極低温液体を提供することができる。液体空気を使用する場合、純空気液化システムを使用することも可能である。したがって、「空気処理システム」という用語は、下記において空気分離システムおよび空気液化システムの包括的な用語としても使用される。本発明は、特に既知の窒素液化装置にも使用することができる。
【0019】
原則として、関連するシステムが停止している間、タンクからの低温ガスまたは停止したシステムからの排気ガスは、加熱を回避するために、または定常状態動作(すなわち、特に、対応するシステムの通常の生産動作)中に形成される温度プロファイルを維持するために、熱交換器を通って流れることができる。しかしながら、そのような動作は、従来の方法を使用して実現するには複雑であり得る。
【0020】
特定の場合には、例えば米国特許第5,233,839号明細書(冒頭で述べた独国特許出願公開第42 07 941号明細書も参照)でも提案されているように、対応する熱交換器の温端部の冷却を回避するために、熱を周囲からヒートブリッジを介してそこに導入することもできる。純空気液化システムのように、熱交換器の下流に低温に対する相当の緩衝能力を有するプロセスユニットがない(例えば、極低温液体の蓄積を伴う精留塔システムがない)場合、このような温度維持は、したがって、熱交換器が動作を再開するときに高温プロセス流が温端部において急激に供給されるときの過剰な熱応力の発生を低減することができる。この場合、供給される高温プロセス流は、例えば、熱交換器の冷端部を出た後にタービンによって少なくとも部分的に膨張され、低温流として冷端部を介して温端部に戻ることができる(しかしながら、この場合には、通常動作において冷端部に存在するような低温をまだ有していない)。このようにして、ジュールトムソン冷却によって熱交換器をゆっくりとその通常の温度プロファイルにすることができる。この場合、すなわち、再開後に熱交換器の冷端部に低温プロセス流が(通常動作中に存在する最終温度において)直接充填されないプロセスにおいても、本発明を使用することができる。
【0021】
しかしながら、本発明の範囲内で同様に可能であるように、熱交換器の下流に低温に対する相当の緩衝能力を有するプロセスユニット(例えば、空気分離システムにあるような、極低温液体の蓄積を伴う精留塔システム)がある場合、上述した手段によって、温端部での熱応力の発生を最小限に抑えることが可能であるが、より低温の流体による貫流の急激な開始のために、同時に加温された冷端部で、不可避的に高い(時間的および局所的な)温度勾配に起因する熱応力が発生する可能性がある。この場合、温端部の温度の維持は、更に、冷端部におけるより高い温度差の形成を促進し、したがって熱応力の増加の発生を促進する。
【0022】
したがって、本発明は、上記で説明した両方の事例に関する。言い換えれば、本発明の範囲内で(熱交換器の温端部において常に提供される加熱に加えて)、熱交換器の冷端部は、停止段階中に冷却されずに動作することができる。しかしながら、対応する冷却が行われてもよい。
【0023】
この背景に対して、本発明は、熱交換器を動作させるための方法を提案する。下記にも更に詳細に説明するように、熱交換器は、特に、対応する構成の一部とすることができ、対応する構成は、より大きいシステムの一部として設計することができる。本発明は、特に上記および下記で詳細に説明されているタイプの空気処理システムにおいて使用することができる。しかしながら、原則として、特定の時間中に対応する熱交換器を通る流れが妨げられ、これらの時間中に熱交換器が加熱されるか、または熱交換器内に形成された温度プロファイルが均一化される、他の適用分野での使用も可能である。特に、本発明は、空気分離システムにおいて使用することができ、純粋な液化装置ではあまり使用することができない。これは、前者の冷端部に対応する緩衝容量が存在し、したがって、停止段階中に冷端部を低温に保つことが必要であるか、または少なくとも有利であるためである。
【0024】
本発明は、特に、熱交換器の温端部の過剰な熱負荷を回避するような手段に関する。しかしながら、本発明の範囲内で、そのような手段は、既に述べたように、熱交換器の冷端部における熱応力を低減することを目的とした更なる手段といつでも組み合わせることができる。したがって、本発明および対応する実施形態に従って提案される手段は、特に、熱交換器の冷端部の流体冷却または非流体冷却とも組み合わせて、例えば、対応する低温ガス流を使用して、熱交換器の低温部分またはその冷端部を通る、対象とする流れと組み合わせることができる。例えば、本発明は、既に上述した米国特許第5,233,839号明細書に開示されているような手段と組み合わせることができる。しかしながら、これは必須ではない。すべての事例において、本発明に従って提案される熱交換器の温端部の温度の維持と、提供される任意の冷却の両方は、1つまたは複数の測定温度に基づく対応する制御および/または調整戦略を使用して熱交換器において行うことができる。一実施形態では、本発明は、特に、上述の熱交換器がその一部であるシステムの停止段階中に、システムの1つまたは複数の貯蔵容器からの蒸発ガスが、例えば、上述の米国特許第5,233,839号明細書において原則的に既に説明したように、熱交換器の冷端部または熱交換器全体を通って流れることができる。
【0025】
蒸発ガスによる対応する停止段階中のそのような温度制御は、そうでなければ周囲に吹き飛ばされる低温ガスの実際的な利用、したがってそれらの製造に運用されたエネルギーの少なくとも部分的な利用または回収を可能にする。したがって、本発明の対応する実施形態では、ガスは、現在の方法における典型的な場合のように、対応する蒸発ガスを周囲に吹き飛ばす代わりに、温度制御のために熱交換器を通って導かれ、このようにして、過剰な圧力および場合によっては対応するシステム内の安全弁のトリガを防止する。したがって、対応する方法は、対応する極低温空気生成物または液化空気ガスが典型的には対応する蒸発が発生する貯蔵容器に貯蔵されるため、極低温空気生成物を得るための、または空気ガスを液化するためのシステムに特に適している。しかしながら、このような蒸発は、空気分離システムの一部であり、したがってこれらの装置の過度の高圧を回避するために同様に対応して「通気」する必要がある精留塔でも発生する。
【0026】
本発明は、第1の期間において第1の動作モードにおいて本方法を実行し、第1の期間と交互になる第2の期間において第2の動作モードにおいて本方法を実行することを提案する。第1の期間および第2の期間は、本発明の範囲内で互いに重複しない。本発明の範囲内で、第1の期間またはこの第1の期間に実行される第1の動作モードは、対応するシステムの製造動作、すなわち、空気-ガス液化システムの場合、液化生成物が提供される動作時間、または空気分離システムの場合、液体および/または気体空気生成物が空気分離によって提供される動作モードに対応する。したがって、第2の動作期間内に実行される第2の動作モードは、対応する生成物が形成されない動作モードである。対応する第2の期間または第2の動作モードは、特に、例えば、エネルギー生成のための空気生成物の液化および再蒸発のためのシステムまたは前述のLAESシステムにおいて、エネルギーを節約するために使用される。
【0027】
既に述べたように、第2の動作モードにおいては、流れは、好ましくは、熱交換器を通過しないか、または第1の動作モードよりも著しく少ない程度に熱交換器を通過する。既に述べたように、本発明は、例えば、本発明に従って提案された手段を支持して熱交換器を一定の温度に維持または一定の温度にするために、特定の量のガスが第2の動作モードにおいても対応する熱交換器を通って導かれることを排除しない。しかしながら、第2の動作モードにおいて熱交換器を通って導かれる流体の量は、通常の第1の動作モードにおいて熱交換器を通って導かれる流体の量を常に著しく下回る。本発明の範囲内で、第2の動作モードにおいて熱交換器を通って導かれる流体の量は、例えば、第1の動作モードにおいて熱交換器を通って導かれる流体の量に対して合計で20%、10%、5%、または1%以下である。
【0028】
本発明の範囲内で、第1の動作モードおよび第2の動作モードは、上述したように、それぞれの期間において交互に実行され、すなわち、第1の動作モードが実行されるそれぞれの第1の期間の後に、常に、第2の動作モードが実行される第2の期間が続き、次いで、第2の期間および第2の動作モードの後に、第1の動作モードを有する第1の期間が再び続く、などである。しかしながら、これは、特に、それぞれの第1の期間と第2の期間との間に更なる動作モードを有する更なる期間、特に、任意選択的に本発明に従って提供される第3の動作モードを有する第3の期間を提供することができることを排除するものではない。本発明の範囲内で、特に、以下のシーケンス、すなわち、第1の動作モード-第2の動作モード-第3の動作モード-第1の動作モードなどが、第3の動作モードの場合に生じる。
【0029】
本発明の範囲内で、第1の動作モードにおいては、第1の流体流が第1の温度レベルにおいて形成され、第1の温度レベルにある第1の領域内で熱交換器に供給され、熱交換器内で部分的または完全に冷却される。特に、上流で適切に処理および調整された、例えば精製および圧縮された、液化されるガスもしくはガス混合物、または、ガス混合物分離方法によって分離されるガス混合物を、対応する第1の流体流として使用することができる。この時点で、空気分離システムの通常の動作を参照する。対応するガス混合物分離方法は、常に統合されたガス液化方法を有する、すなわち、ガスは分離される前に液化される。
【0030】
更に、第1の動作モードにおいては、第2の流体流が第2の温度レベルにおいて形成され、第2の温度レベルにある第2の領域において熱交換器に供給され、熱交換器内で部分的または完全に加熱される。第2の流体流の形成は、特に、空気分離システムの精留塔システムからの抽出および/またはガス液化システムにおける戻り流の形成であり得る。ガス液化システムにおいて、液化されるガスを冷却するために、圧力下で冷却され、場合によっては既に液化されているガスの一部が、特に膨張タービンを介して膨張され、それによって更に冷却され、対応する戻り流として使用される。すなわち、液化されるガスを冷却するために、圧力下で冷却されたガスの一部を膨張させて加工を行い、それによって冷却し、熱交換器の冷媒として利用することができる。対応して膨張されていない、圧力下で冷却されたガスの第2の部分は、圧力および量の支配的な差に起因して熱交換器内で液化される。これについては、下記の
図4を参照して再度説明する。
【0031】
第2の温度レベルは、特に、対応する精留塔システムからの抽出温度、または対応する戻り流が液化システム内で形成される温度に対応する。それは、好ましくは極低温、特に-50℃~-200℃、例えば-100℃~-200℃または-150℃~-200℃である。他方、第1の流体流が形成されて第1の領域において熱交換器に供給される第1の温度レベルは、好ましくはバイパス温度であるが、いずれの場合も典型的には0℃を大幅に上回る、例えば10℃~50℃の温度レベルである。
【0032】
ここで、第1の流体流または第2の流体流が、第1の温度レベルまたは第2の温度レベルにおいて形成されると言及されている場合、これは無論、更なる流体流が、第1の温度レベルまたは第2の温度レベルにおいて形成されることを排除しない。対応する更なる流体流は、第1の流体流または第2の流体流の流体と同一または異なる組成を有してもよい。例えば、全流量の形態の流体を精留塔システムから抽出することができ、その全流量から、第2の流体流が、ここから分かれることによって形成される。更に、本発明の範囲内で、複数の流体流を任意選択的に精留塔システムから抽出するか、または対応して形成し、続いて互いに組み合わせ、このように使用して第2の流体流を形成することもできる。低温液体をタンクから精留塔システムに外部供給して低温に保つこともできる。対応する液体を精留塔システム内で蒸発させ、主熱交換器に、および任意選択的に、冷却される他の装置に導くことができる。したがって、ガス混合物分離方法において形成される極低温液体と外部に提供される極低温液体の両方を蒸発させることができ、液体の蒸発部分を少なくとも部分的に使用して第2の領域を冷却することができる。
【0033】
ここで、熱交換器内の流体流が「部分的または完全に」冷却または加熱されると言及されている場合、流体流全体が熱交換器を通って、温端部または中間温度レベルから冷端部または中間温度レベルへと、またはその逆のいずれかに導かれるか、または対応する流体流が熱交換器内で2つ以上の分流に分割され、それらが同じまたは異なる温度レベルにおいて熱交換器から抽出されることを理解されたい。無論、熱交換器内のそれぞれの流体流に更なる流体流を供給し、熱交換器内でこのようにして形成された複合流を更に冷却または加熱することも可能である。しかしながら、いずれの場合も、対応する流体流は、(単独で、または上記で説明したように更なる流れと共に)第1または第2の温度レベルにおいて熱交換器に供給され、熱交換器内で冷却または加熱される。
【0034】
また、第1の流体流および第2の流体流に加えて、更なる流体流を熱交換器内で、第1の流体流または第2の流体流と同じもしくは異なる温度レベルまで、および/または同じもしくは異なる温度レベルから開始して冷却または加熱することもできることも自明である。空気分離の分野では対応する手段が慣習的で既知であり、したがって、冒頭で引用したように、関連する技術文献を参照することができる。
【0035】
本発明の範囲内で、第2の動作モードにおいては、第1の流体流および第2の流体流の熱交換器への供給ならびに熱交換器におけるそれぞれの冷却および加熱は、部分的または完全に停止される。例えば、第1の動作モードにおいて熱交換器を通って導かれ、熱交換器内で冷却される第1の流体流の代わりに、流体が、熱交換器を通って導かれないことが可能である。したがって、第1の流体流を冷却するために第1の動作モードにおいて使用される熱交換器の熱交換器通路は、この場合には流れがないままである。しかしながら、第1の動作モードにおいて熱交換器を通って導かれ、冷却される第1の流体流の代わりに、特に大幅により少ない量で熱交換器を通る異なる流体流を導くことも可能である。同じことが第2の流体流にも当てはまり、第2の流体流は、特に、上述したように、第2の動作モードにおいて蒸発ガスによって置き換えることができる。
【0036】
本発明の範囲内で、第2の期間または第2の期間の少なくとも1つと後続の第1の期間との間にある第3の期間において、加熱デバイスによって提供される熱が第1の領域に供給されることが可能にされ、この熱は、本発明によれば、熱交換器の外側に位置し、第1の領域が中に配置されるか、または第1の領域を囲むガスチャンバを介して第1の領域に伝達される。熱伝達は、主にまたは専ら固体接触なしで、すなわち主にまたは専らガスチャンバ内の熱伝達の形態で、すなわち固体熱伝導による熱伝達なしで、または主としてなしで行われる。用語「主に」は、ここでは、20%未満または10%未満の熱量の割合を指す。
【0037】
したがって、本発明は、対応する熱交換器の温端部が、第2の期間または別の更なる期間において能動的に加熱されることを可能にする。「熱交換器の外側」という用語は、熱交換器通路を通る対象とする流体流によっても代替的に可能な加熱から本発明を区切るものである。したがって、加熱は、熱交換器通路を通って導かれる流体から熱を伝達することによって行われない。
【0038】
これに関連して、特に、熱交換器の「領域」(第1の領域または第2の領域)がここで言及される場合、そのような領域は、熱交換器への第1の流体流または第2の流体流の直接供給点に限定される必要はなく、むしろ、これらの領域は、特に、熱交換器の中心の方向に所定の距離にわたって延在することができる対応する熱交換器の末端部であってもよいことが指摘されるべきである。対応する領域は、特に、対応する熱交換器の末端10%、20%、または30%を含むことができる。典型的には、対応する領域は、熱交換器の残りの部分から画定されるように構造的に描写されていない。
【0039】
この場合、本発明は、前述の米国特許第5,233,839号とは対照的に、例えば、熱の伝達のためにそこに設けられる対応する領域の懸濁が必要とされないという特定の利点を有する。したがって、本発明は、このようにして対応する熱交換器を周囲に接続するライン上の応力を低減するために、熱交換器ブロックが他の領域、例えば底部または中央に取り付けられている場合でも温度制御を可能にする。他方、従来技術において提示されている方法は、対応する熱交換器ブロックが上部に懸架されている場合にのみ使用することができる。前述の従来技術に記載されている方法の更なる欠点は、熱が軸受に限られた範囲でのみ導入され、対応する領域の熱交換器の表面全体には導入されないことである。これにより、例えば、対応する熱交換器の板金ジャケットの移行部に着氷が生じ得る。対照的に、本発明は、熱の有利な導入を可能にし、このようにして上述の欠点のない効果的な温度制御を可能にする。
【0040】
特に、本発明の範囲内で、ガスチャンバを介した対流および/または放射によって少なくとも部分的に熱を第1の領域に伝達することが可能にされ得る。対流熱伝達のために、特に、熱の蓄積を回避することができるようにガス乱流を誘発することができる。他方、放射のみによる加熱は、対応する赤外線放射を介して第1の熱交換器の第1の領域に直接作用することができる。
【0041】
本発明の範囲内で、熱交換器の第2の領域は、能動的放熱なしに、したがって冷却されることなく動作することができ、一方、熱は、第2の期間または第3の期間に第1の領域に供給される。この場合、「能動的放熱」という用語は、例えば、流体を第2の領域に施与することによって、すなわち、流体を第2の領域と接触させるかまたは流体が第2の領域を流れることを可能にすることによる、周囲への意図的に誘発された熱放出を意味することを意図しており、当該流体は、それぞれの流体施与時に第2の領域よりも低い温度にある。それにもかかわらず、ここでは、例えば熱をより低温の領域に流出させることによって、放熱を行うこともできる。しかしながら、本発明のこの実施形態では、第2の領域の冷却をもたらす流体貫流は生じない。
【0042】
本発明のこの実施形態との関連において、特に、第2の期間または第3の期間内に熱が第1の領域に同時に供給されている間、第2の領域の加熱が許容される。許容される加熱は、特に、10K超、20K超、30K超、40K超、または50K超であってもよい。対応する持続時間によって、これは特に、第2の期間または第3の期間における熱の供給によって第1の端部が加熱される温度まで行われてもよい。第2の領域の加熱は、特に、第1の領域の能動的加熱および熱伝導による熱の流入によって少なくとも部分的に行うこともできる。
【0043】
能動的冷却を伴わない本発明の実施形態は、特定の場合にはそのような冷却が必要でないという知見に基づいている。したがって、上述の手段を省くことによって、低温流体の消費が低減され、それによって対応するハードウェアならびに制御および調整技術を複雑な方法で提供する必要がないため、熱交換器の動作は、利点を提供する。
【0044】
温端部および冷端部の温度制御とは対照的に、熱交換器の温端部は、冷端部における冷却なしに、より容易かつコスト効率的に保温することができる。特に、上述の熱交換器がその一部であるシステムの停止段階中に、システムの1つまたは複数の貯蔵容器からの蒸発ガスが、上述の米国特許第5,233,839号明細書において説明したように、熱交換器の冷端部または熱交換器全体を通って流れることは可能にされない。
【0045】
最後に説明した実施形態による方法は、特に、ガス液化方法の関連において、例えば、対応して液化されるガス混合物がいかなる分離プロセスにも供給されない、窒素、空気、または天然ガスを液化する方法の関連において使用するのに適している。言い換えれば、これは、ガス液化方法において、第1の流体流を少なくとも部分的に液化するために提供され、それを分離されていない状態、すなわち実質的に変化していない材料組成で、方法生成物として提供する。分離と比較してわずかであるが、一定の変化が、異なる凝縮温度に起因して液化自体から生じ得る。
【0046】
しかしながら、同じく説明されているように、第2の期間または第3の期間において第1の領域に熱が供給されている間に、第2の領域を少なくとも一時的に冷却することができる。この実施形態による対応する方法は、対応して低温の流体が貯蔵される極低温精留塔システムがここに提供されるため、ガス混合物分離方法、特に空気分離方法との関連における使用に特に適している。低温の流体は、典型的には、熱交換器の第2の領域に低温で供給される。対応する冷却は、熱交換器が再び動作するときに熱応力を引き起こす、冷端部の低温流体への曝露を防ぐことができる。ガス混合物分離方法において、対応する蒸発ガスを特に冷却に使用することができ、すなわち、形成された液体を蒸発させることができ、液体の蒸発部分を少なくとも部分的に使用して第2の領域を冷却することができる。
【0047】
本発明は、熱交換器を有する構成を有し、この構成は、第1の期間において第1の動作モードを実行し、第1の期間と交互になる第2の期間において第2の動作モードを実行し、第1の動作モードにおいて第1の温度レベルの第1の流体流を形成し、第1の温度レベルにある第1の領域において熱交換器に第1の流体流を供給し、熱交換器内で第1の流体流を部分的にまたは完全に冷却し、更に第1の動作モードにおいて第2の温度レベルの第2の流体流を形成し、第2の温度レベルにある第2の領域において熱交換器に第2の流体流を供給し、熱交換器内で第2の流体流を部分的にまたは完全に加熱し、第2の動作モードにおいて第1の流体流および第2の流体流の熱交換器への供給を部分的にまたは完全に停止するように構成された手段を有する。
【0048】
加熱デバイスが提供され、加熱デバイスは、上記構成の一部であり、第2の期間または第2の期間の少なくとも1つと後続の第1の期間との間にある第3の期間のいずれかにおいて第1の領域に熱を供給するように構成されており、熱は加熱デバイスによって供給され、本発明に従って、熱交換器の外側に位置し、同様に上記構成の一部であり、第1の領域が中に配置されるか、または第1の領域を取り囲むガスチャンバを介して第1の領域に伝達される。
【0049】
そのような構成の更なる態様については、本発明による方法およびその実施形態に関する上記の説明を明示的に参照されたい。本発明による構成は、対応する方法および方法の変形例について説明した利点から利益を得る。
【0050】
本発明の範囲内で、熱交換器は、有利には、同じく上記構成の一部であるコールドボックス内に配置され、ガスチャンバは、コールドボックス内の絶縁材料を含まない領域によって形成される。熱交換器の第1の領域は、特にサスペンションが第1の領域に接触することなく、ガスチャンバ内のコールドボックス内に配置される。これに関連する利点のために、上記の説明も参照される。
【0051】
本発明の範囲内で、加熱デバイスは、例えば電気的にまたは加熱ガスを使用して加熱することができる放射ヒータとして設計することができる。
【0052】
本発明は更に、ここで上記で説明したような構成を有することを特徴とするシステムを有する。このシステムは、特にガス液化システムまたはガス混合物分離システムとして設計することができる。本システムは、実施形態において前述した方法を実行するように構成されていることを特に特徴とする。説明したように、典型的なガス混合物分離システムでは、典型的には、ガス液化プロセスが提供され、その後、液化ガスが分離される。
【0053】
本発明の実施形態および対応する熱交換図を示す添付の図面を参照して、本発明を以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による手段を使用せずに動作を中止された後の熱交換器の温度プロファイルを示す図である。
【0055】
【
図2】
図2は、本発明の特に好ましい実施形態による熱交換器を備えた構成を示す図である。
【0056】
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態による構成を備えることができる空気分離システムを示す図である。
【0057】
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態による構成を備えることができるガス液化システムを示す図である。
【0058】
図面において、機能または意味において互いに同一であるか、または対応する要素は、同一の参照符号によって示され、明瞭にするために繰り返し説明されない。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1は、本発明の有利な実施形態による手段を使用せずに動作を中止された後(流れが熱交換器を通過しない場合)の熱交換器の温度プロファイルを、温度図の形態で示す。
【0060】
図1に示す図面では、Hによって示される、対応する熱交換器の温端部の温度、および、Cによって示される、冷端部の温度が、横座標の時間単位の時間にわたって縦座標上に℃単位でそれぞれ示されている。
【0061】
図1から分かるように、シャットダウンの開始時に、熱交換器の通常の動作における温度に依然として対応する熱交換器の温端部の温度Hは約20℃であり、冷端部の温度Cは約-175℃である。これらの温度は、時間と共に互いにより等しくなる。熱交換器に設置された材料の高い熱伝導率がこれに関与する。言い換えると、ここでは、熱は温端部から冷端部に向かって流れる。周囲からの熱入力と共に、約-90℃の平均温度が生じる。冷端部での顕著な温度上昇は、主に熱交換器内の内部温度均等化に起因して発生し、外部熱入力に起因する程度はわずかのみである。
【0062】
数回述べられたように、図示されている事例において、熱交換器の温端部が、いくらかの再生時間の後に図示されている例では約20℃の高温の流体に再びさらされる更なる手段を有しない場合、深刻な熱応力が発生する可能性がある。しかしながら、熱交換器の下流のシステムが極低温流体、例えば空気分離システムの精留塔システムからの極低温流体を直ちに再び送達する場合、熱応力も相応に生じ得る。一実施形態によれば、本発明はまた、後者の問題にも対処する。
【0063】
図3は、本発明の特に好ましい実施形態による熱交換器を備えた構成を示し、全体として10として指定されている。熱交換器には符号1を付す。熱交換器は、第1の領域2および第2の領域3を有し、これらは各々、ここでは点線で区切られて示されているが、実際には熱交換器1の残りの部分から構造的に区別されない。第1の領域2および第2の領域3は、特に、流体流の供給または抽出によって特徴付けられる。図示の例では、2つの流体流Aおよび流体流Bが熱交換器1を通って導かれる。流体流Aは上記において第1の流体流と呼ばれたものであり、流体流Bは上記において第2の流体流と呼ばれたものである。第1の流体流Aは熱交換器1内で冷却され、一方、第2の流体流Bは加熱される。更なる詳細については、上記の説明を参照されたい。特に、数回説明した第2の動作モードにおいて、対応する流体流Aおよび流体流Bが、熱交換器を通って流れないか、または第1の動作モードと同じ程度まで熱交換器を通って流れないことを強調すべきである。例えば、第2の動作モードにおいては、流体流Aおよび流体流B以外の流体流を使用することができ、または流体流Aおよび流体流Bをより少量で使用することができる。
【0064】
熱交換器1は、コールドボックス4内の充填レベル6まで構成され、ここでは網掛けによって示されている、例えばパーライトなどの絶縁材料で部分的に充填されたコールドボックス4内で、構成10内に収容される。熱交換器1の第1の領域2を囲むガスチャンバを同時に表す、絶縁材料を含まない領域を5で示す。
【0065】
構成10には、第2の動作モードの特定の期間中、第2の動作モード全体中、または上述したように、第3の動作モードのうちの別個の期間中に熱交換器1の第1の領域2を加熱する加熱デバイス7が設けられる。この目的のために、ここでは波状矢印8の形態で示されている熱を、構成10内の加熱デバイス7によって熱交換器1の第1の端部2または第1の領域2に伝達することができる。第1の動作モードにおいては、対応する熱伝達は通常行われない。図示の例では、熱交換器の第2の領域3は、冷却されないままであるか、またはそこからは熱が能動的に放散されない。しかしながら、本発明の実施形態では、そのような放熱は、例えば第2の領域3を通って流れる、例えば下流システム、例えば空気分離システムからの蒸発ガスなどの極低温流体によっても可能である。
【0066】
図3は、本発明の有利な実施形態による方法を使用して動作させることができる熱交換器を備えた構成を有する空気分離システムを示す。
【0067】
上述したように、図示されているタイプの空気分離システムは、他の場所、例えばH.-W.Haring(編)「Industrial Gases Processing」(Wiley-VCH,2006)、特にセクション2.2.5「Cryogenic Rectification」に頻繁に記載されている。したがって、構造および動作原理に関する詳細な説明については、対応する技術文献を参照されたい。本発明を使用するための空気分離システムは、多種多様な方法で設計することができる。本発明の使用は、
図6による実施形態に限定されない。
【0068】
図3に示す空気分離システムは、全体として100で示されている。これは、とりわけ、主空気圧縮機101と、予冷デバイス102と、洗浄システム103と、二次圧縮機構成104と、上記で説明したように熱交換器1とすることができ、特に対応する構成10の一部である主熱交換器105と、膨張タービン106と、スロットルデバイス107と、ポンプ108と、蒸留塔システム110とを有する。図示の例では、蒸留塔システム110は、高圧塔111および低圧塔112、ならびに粗アルゴン塔113および純アルゴン塔114からなる従来の二重塔構成を含む。
【0069】
空気分離システム100では、入力空気流は、フィルタ(符号なし)を介して主空気圧縮機101によって吸い込まれて圧縮される。圧縮された入力空気流は、冷却水で動作する予冷デバイス102に供給される。予冷された入力空気流は、洗浄システム103において洗浄される。典型的には交互の動作で使用される一対の吸着器容器を備える洗浄システム103では、予冷された入力空気流から水および二酸化炭素がほとんど除去される。
【0070】
洗浄システム103の下流では、入力空気流は、二つの分流に分割される。一方の分流は、入力空気流の圧力レベルにおいて主熱交換器105内で完全に冷却される。他の分流は、二次圧縮機構成104内で再圧縮され、同様に主熱交換器105内で、ただし中間温度までのみ冷却される。中間温度まで冷却した後、このいわゆるタービン流は、膨張タービン106によって、完全に冷却された分流の圧力レベルまで膨張され、分流と組み合わされて、高圧塔111に供給される。
【0071】
酸素富化液体下部画分および窒素富化気体上部画分が、高圧塔111内に形成される。酸素富化液体下部画分は、高圧塔111から取り出され、純アルゴン塔114の底部蒸発器内の加熱媒体として部分的に使用され、各事例において規定の割合で、純アルゴン塔114の上部凝縮器、粗アルゴン塔113の上部凝縮器、および低圧塔112に供給される。粗アルゴン塔113および純アルゴン塔114の上部凝縮器の蒸発チャンバ内で蒸発する流体も、低圧塔112に移送される。
【0072】
気体窒素富化上部生成物gは、高圧塔111の上部から取り出され、高圧塔111と低圧塔112との間の熱交換接続を生成する主凝縮器内で液化され、ある割合で、高圧塔111に還流として施与され、低圧塔112内へと膨張する。
【0073】
酸素富化液体下部画分および窒素富化気体上部画分が、低圧塔112内に形成される。前者は、ポンプ108内で部分的に液状に加圧され、主熱交換器105内で加熱されて、生成物として提供される。液体窒素富化流は、低圧塔112の上部の液体保持デバイスから取り出され、液体窒素生成物として空気分離システム100から排出される。低圧塔112の上部から取り出された気体窒素富化流は、主熱交換器105を通って導かれ、低圧塔112の圧力において窒素生成物として供給される。更に、流れが、低圧塔112の上部領域から取り出され、主熱交換器105における加熱後、予冷デバイス102内でいわゆる不純窒素として使用されるか、または電気ヒータによる加熱後、洗浄システム103内で使用される。
【0074】
図4は、熱交換器1を有する構成10を有する空気液化システム200を概略的に示す。対応するシステムは、「窒素液化装置」とも呼ばれる。構成10に関する更なる詳細については、特に先に説明した
図2を参照されたい。空気液化システム200は、例えば、液体窒素を提供するために、または気体窒素を液化するために使用される。気体窒素を提供するために、例えば、上記のような空気分離システムを提供することができる。
【0075】
上記で数回説明したように、本発明はまた、更なる精留システムが取り付けられておらず、したがって必要に応じて単純化することができ、より頻繁に運転停止され得、動作を再開された後、熱交換器1の冷端部に適用される低温流体がまだ利用可能ではない、気体空気生成物を液化するためのシステムに関連して使用するのに適している。
【0076】
熱交換器1はまた、ここでは第1の領域2および第2の領域3を有して示されている。しかしながら、これらの領域はここでのみ示されている。下記において詳細に説明するように、第1の動作モードにおいて、冷却される複数の第1の流体が、第1の温度レベルにおいて第1の領域2内で熱交換器1に供給され、熱交換器1を通って導かれ、第1の動作モードにおいて、加熱される複数の第2の流体が、第1の温度レベルより低い第2の温度レベルにおいて第2の領域3内で熱交換器1に供給され、熱交換器1を通って導かれる。第1の流体は冷却され、第2の流体はプロセス中に加熱される。
【0077】
ここで、熱交換器1は、W~Zによって示されるいくつかの熱交換器通路を有する。
図3に示され、液化システム200の通常動作、すなわち生産動作に対応する第1の動作モードにおいて、気体窒素流aが、窒素流bと共に多段圧縮機構成201内で液化圧力レベルに圧縮され、それに、更なる窒素流cが中間段において供給される。対応して圧縮された窒素は2つの分流dおよび分流eに分割され、そのうちの分流dは熱交換器1またはその第1の領域2に供給される。分流eは、2つのタービンブースタ202およびタービンブースタ203内で更に圧縮され、続いて同様に熱交換器1またはその第1の領域2に供給される。
【0078】
分流eの一部分である液化窒素が、第2の領域3において熱交換器1から抽出される。この液化窒素は、バルブ204を介して容器205内にフラッシングされる。容器205の底部から取り出された液体窒素を、液体窒素流fの形態で過冷却器206の温端部に供給することができ、これは液体窒素流fの分流gを使用して冷却され、その量はバルブ207を介して設定される。過冷却器206内で蒸発した後、分流gは熱交換器1内で更に加熱され、前述の窒素流bの形態で圧縮のために戻される。ここでは液体窒素流hの形態で示されている液体窒素流fの残りは、生成物として排出され得るか、または例えばタンク208に貯蔵され得る。
【0079】
タービンブースタ202およびタービンブースタ203は、分流d、および、ここではiで示されている分流eの更なる分流を使用して駆動される。分流dおよびiは、いずれの場合も、適切な中間温度において熱交換器1から抽出される。対応して膨張した分流dは、中間温度において熱交換器1に供給され、熱交換器1内で窒素と組み合わされ、容器206の上部から気体形態で引き出され、冷端部において熱交換器1に供給され、加熱され、圧縮のために上述の窒素流cの形態で戻される。分流iは、対応する膨張後に容器205内に供給される。
【0080】
前述の流体流の熱交換器1への供給が停止される第2の動作モードにおいて、
図1を参照して説明した温度均等化が開始されることは自明である。したがって、
図2を参照して説明した手段がとられる。この場合、熱交換器1の低温側には低温緩衝精留塔システムが設けられていないため、熱交換器が動作を再開するときに第2の領域3には低温流体が直接充填されず、バルブ204および207における膨張によって徐々に冷却することができる。したがって、温端部における加熱で十分である。
【国際調査報告】