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特表2022-526975テキスタイル及び繊維用のヒト細胞によって堆積された細胞外マトリクス被覆
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  • 特表-テキスタイル及び繊維用のヒト細胞によって堆積された細胞外マトリクス被覆 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-27
(54)【発明の名称】テキスタイル及び繊維用のヒト細胞によって堆積された細胞外マトリクス被覆
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/38 20060101AFI20220520BHJP
   A61L 27/36 20060101ALI20220520BHJP
   A61L 27/40 20060101ALI20220520BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20220520BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
A61L27/38 300
A61L27/36 130
A61L27/36 100
A61L27/36 400
A61L27/38
A61L27/40
A61L27/18
A61L27/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559083
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(85)【翻訳文提出日】2021-12-01
(86)【国際出願番号】 US2020026547
(87)【国際公開番号】W WO2020206228
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】62/828,604
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516334709
【氏名又は名称】ザ・セカント・グループ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(74)【代理人】
【識別番号】100220098
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 薫
(72)【発明者】
【氏名】ギン,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエーレ,ピーター・ディー
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,ジェレミー・ジェイ
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB11
4C081BA12
4C081CA022
4C081CA072
4C081CA162
4C081CA172
4C081CD122
4C081CD34
4C081DA04
4C081DC01
(57)【要約】
被覆テキスタイルを形成するプロセスは、ヒト細胞からヒト細胞外マトリックス(hECM)を産生してテキスタイル上に堆積させるように、ヒト細胞をテキスタイルの繊維上で培養するステップを含む。当該プロセスは、ヒト細胞をhECMから除去して、被覆テキスタイルを提供するステップであって、被覆テキスタイルは、テキスタイル、および培養中にヒト細胞によって産生されテキスタイル上に堆積したhECMの残留物を含む被覆である、ステップを含む。被覆テキスタイルは、テキスタイルとテキスタイル上の被覆とを含む。被覆は、被覆中で細胞によって堆積された状態にあるhECMを含む。固体バイオリアクター組成物は、ポリ(グリセロールセバケート)(PGS)付加物を含む。PGS付加物は、PGSおよび促進因子または促進因子前駆体を含む。別の方法は、被覆テキスタイルをヒトに埋め込むステップを含む。被覆テキスタイルは、自己グラフトである。被覆は、ヒト由来のヒト細胞によって堆積されたhECMを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆テキスタイルを形成するプロセスであって、
ヒト細胞がヒト細胞外マトリックス(hECM)を産生してテキスタイル上に堆積させるように、ヒト細胞をテキスタイルの少なくとも1つの繊維上で培養するステップと、
ヒト細胞をhECMから除去して、被覆テキスタイルを提供するステップであって、被覆テキスタイルは、テキスタイル、および培養中にヒト細胞によって産生されテキスタイル上に堆積されたhECMの残留物を含む被覆として提供される、ステップと
を含む方法。
【請求項2】
ヒト細胞が、ヒト線維芽細胞である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ヒト細胞が、被覆テキスタイルを必要とするヒトから抽出された自己移植細胞である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
培養するステップの前に、少なくとも1つの繊維の表面への細胞接着が促進されるように前記表面を修飾するステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
ヒト細胞によるhECM産生が増加するように少なくとも1つの繊維の表面を修飾するステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
修飾するステップが、少なくとも1つの繊維の表面を、ポリ(グリセロールセバケート)付加物を含む固体バイオリアクター組成物で被覆することを含み、ポリ(グリセロールセバケート)付加物が、ポリ(グリセロールセバケート)および促進因子または促進因子前駆体を含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
ヒト細胞を少なくとも1つの繊維上で培養するステップの前に、テキスタイルの少なくとも1つの繊維をポリ(グリセロールセバケート)の層で被覆するステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
除去するステップの後に、第2の型ヒト細胞をテキスタイル上で培養するステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
培養するステップの前に、ヒト細胞をヒトから抽出するステップ、およびヒト細胞を精製するステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
テキスタイルと、
テキスタイル上の被覆であって、ヒト細胞外マトリックス(hECM)を含み、hECMが、被覆中で細胞によって堆積された状態にある、被覆と
を含む被覆テキスタイル。
【請求項11】
テキスタイルが、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレン酢酸ビニル、コラーゲン、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリセロールセバケート)、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(炭酸トリメチレン)、およびポリカプロラクトンからなる群から選択されるポリマー材料を含む、請求項10に記載の被覆。
【請求項12】
テキスタイルが、織物、編組、不織物、または編み物である、請求項10に記載の被覆テキスタイル。
【請求項13】
hECMが、ヒトプロテオグリカン、ヒトヘパラン硫酸、ヒトコンドロイチン硫酸、ヒトケラタン硫酸、ヒト非プロテオグリカン多糖、ヒトヒアルロン酸;ヒトコラーゲン、ヒトエラスチン、ヒトフィブロネクチン、ヒトラミニン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項10に記載の被覆テキスタイル。
【請求項14】
異種材料を含まない、請求項10に記載の被覆テキスタイル。
【請求項15】
脱細胞化されている、請求項10に記載の被覆テキスタイル。
【請求項16】
被覆が、テキスタイル上のポリ(グリセロールセバケート)の層をさらに含む、請求項10に記載の被覆テキスタイル。
【請求項17】
テキスタイルが、グリセロール-セバケート含有ポリマーを含む少なくとも1つの繊維を含む、請求項10に記載の被覆テキスタイル。
【請求項18】
hECMが、被覆テキスタイルを必要とするヒトから抽出された自己移植細胞に由来するものである、請求項10に記載の被覆テキスタイル。
【請求項19】
ポリ(グリセロールセバケート)付加物を含む固体バイオリアクター組成物であって、ポリ(グリセロールセバケート)付加物が、ポリ(グリセロールセバケート)および促進因子または促進因子前駆体を含む、固体バイオリアクター組成物。
【請求項20】
被覆テキスタイルをヒトに埋め込むこと、を含む方法であって、被覆テキスタイルが、テキスタイルとテキスタイル上の被覆とを含む自己グラフトであり、被覆が、前記ヒト由来のヒト細胞が堆積させた、細胞によって堆積された状態のヒト細胞外マトリックス(hECM)を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、平成31年4月3日に出願された米国仮出願第62/828,604号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に対する優先権及びその利益を主張する。
【0002】
[0002]本発明は、一般にバイオメディカル材料の生体適合化に関する。より具体的には、本発明は、in vivoでの埋め込み型の医療デバイス、構成要素、又は足場、in vitroでの細胞増殖又は幹細胞分化のためのバイオリアクター足場、又は日常的な細胞培養用途のための基材としてか又はそれらにおいて使用するための、ヒト細胞外マトリクス(hECM)で被覆された織物、編組、不織物、又は編物の生物医学的テキスタイル又は繊維を生成させるための一次ヒト細胞又は細胞株の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]多くの埋め込み型のデバイスは、人体が埋め込み物をヒト適合性として認識するのを助けるヒト特異的シグナル伝達部分の欠如に起因して、炎症応答を引き起こす。増加した免疫系応答の発生率が上昇すると、移植部位における局所微小環境の炎症の延長のために、埋め込み物の性能及び寿命が低下すると同時に、患者の治癒が遅延する。
【0004】
[0004]ある種の細胞によって産生される細胞外マトリクス(ECM)は、周囲の細胞にin vivoでの構造的及び生化学的支持を与える。バイオメディカルデバイスにおいて使用されるECMは、従来は脱細胞化された組織に由来し、ECM成分は、次に粉砕して粉末として使用されるか、又はバイオメディカル製品へ適用するための等方性ヒドロゲル材料に形成される。このプロセスは天然の接着キュー及びサイトカインを与えるECM成分を与えるが、これは天然の基底ECM構造に適合せず、したがって炎症応答に対して理想的ではない保護を与える。
【0005】
[0005]細胞結合を改善するために、例えばウシ由来コラーゲンのような異種ECM成分が、しばしば、細胞培養又は移植のために使用される産物における構造材料又は被覆材料として使用される。しかしながら、異種材料はまた、移植されたデバイスに対する免疫応答を誘発する。このような成分が、例えばEngelbreth-Holm-Swarm(EHS)マウス肉腫細胞によって分泌され、Corning Life Sciences(Tewksbury, MA)及びBD Biosciences(San Jose, CA)によってMatrigelの商品名で市販されているゼラチン状タンパク質混合物のような産物を介して組織培養基質としてin vitroで使用される場合には、製品開発サイクルの両端での種のミスマッチに起因して、ベンチトップin vitro研究と臨床適用との間に食い違いがしばしば存在する。これは、悪い臨床試験結果、及び失敗した製品開発サイクルにつながる可能性がある。
【0006】
[0006]生来の組織構造及び生来のシグナルキューに適合するために、いくつかの医療デバイスはECMの脱細胞化によって生成されており、これは構造的に弱く、外科医による取扱いの間に機能しなくなる場合がある。これらの脱細胞化されたデバイスは、通常はドナー組織又は遺体組織の使用に依っており、これらは両方とも非常に限られた供給量でのみ利用可能である。
【0007】
[0007]Hilesに対して2010年9月14日に発行された「Extracellular matrix composite materials, and manufacture and use thereof」と題された米国特許第7,795,027号は、埋め込み型のデバイス上でヒトECMを分泌するために種々のタイプのヒト細胞を使用することを開示している。Hilesは、埋め込み型のデバイスを最初に異種ECM中で被覆し、その上にヒト細胞を培養し、その後、ヒトECMの最上層を分泌した後に除去するプロセスを利用する。しかし、その根底にある異種物質は、依然として炎症反応を誘発する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,795,027号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
[0008]ヒト宿主からの炎症応答を減少又は排除するために被覆された埋め込み型のデバイスが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[0009]代表的な実施形態は、細胞によって堆積された状態のヒト細胞外マトリクス材料で被覆したテキスタイル、及びかかる被覆テキスタイルを形成及び使用する方法に関する。
【0011】
[0010]代表的な実施形態によれば、被覆テキスタイルを形成する方法は、ヒト細胞がテキスタイル上でヒト細胞外マトリクス(hECM)を産生して堆積させるように、テキスタイルの少なくとも1つの繊維上でヒト細胞を培養することを含む。この方法はまた、hECMからヒト細胞を除去して、テキスタイルと、培養中にテキスタイル上にヒト細胞によって産生及び堆積されたhECMの残留物を含む被覆の被覆テキスタイルを提供することも含む。
【0012】
[0011]別の代表的な実施形態によれば、被覆テキスタイルは、テキスタイル、及びテキスタイル上の被覆を含む。被覆はhECMを含む。hECMは、被覆中に細胞によって堆積された状態にある。
【0013】
[0012]さらに別の例示的な実施形態によると、固体バイオリアクター組成物は、ポリ(グリセロールセバケート)付加物を含む。ポリ(グリセロールセバケート)付加物は、ポリ(グリセロールセバケート)および促進因子または促進因子前駆体を含む。
【0014】
[0013]別の例示的な実施形態によると、方法は、被覆テキスタイルをヒトに埋め込むステップを含む。被覆テキスタイルは、テキスタイルとテキスタイル上の被覆とを含む自己グラフトである。被覆は、ヒト由来のヒト細胞が堆積させた、細胞によって堆積された状態のヒト細胞外マトリックス(hECM)を含む。
【0015】
[0014]本発明の種々の特色および利点が、以下のより詳細な説明を本発明の原理を例示的に図解する付属図と併せて解釈すれば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】[0015]クレブス回路のL-カルニチンシャトルを概略的に示す図である。
図2】[0016]被覆されていないテキスタイルを示す写真である。
図3】[0017]本開示のある実施形態におけるヒト細胞外マトリックス材料を含む被覆を伴う図2のテキスタイルを示す写真である。
図4】[0018]図2の被覆されていないテキスタイル、図3の被覆テキスタイル、および凍結乾燥細胞を伴うテキスタイルのFTIRスペクトルを示すグラフである。
図5】[0019]図4のスペクトルの900~1100cm-1波数域を示すグラフである。
図6】[0020]図4のスペクトルの1500~1800cm-1波数域を示すグラフである。
図7】[0021]図4のスペクトルの2700~3000cm-1波数域を示すグラフである。
図8】[0022]繊維上での細胞培養の種々の段階の間の細胞計数を示すグラフである。
図9】[0023]図8の細胞培養についての細胞計数比を示すグラフである。
図10】[0024]ECM被覆テキスタイル上の心臓線維芽細胞の広がりを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[0025]可能な限り、図全体を通して同じ参照番号が同じ部分を表すために使用されている。
[0026]基材上に細胞によって堆積された状態のヒト細胞外マトリックス(hECM)成分の被覆を含む組成物および組成物を形成するプロセスが本発明で提供される。
【0018】
[0027]例示的な実施形態では、hECM成分は、ヒトECM産生細胞の細胞培養による堆積に基づいて、細胞によって堆積された状態にある。被覆用の基材は、任意の適当なテキスタイルまたは繊維材料であってよい。細胞培養を通じたhECMによる被覆は、原料の糸もしくは繊維または出来上がったテキスタイルのいずれかの上で行うことができる。
【0019】
[0028]適当なテキスタイルは、これだけに限定されないが、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、もしくはポリエチレン酢酸ビニルなどのポリオレフィン、またはコラーゲンを含めた、埋め込み型の非吸収性テキスタイルに適切に使用することができる任意のテキスタイル構成材料、ならびに、例えばPETおよびPTFEなどのより恒久的な材料と織り合せることができる、これだけに限定されないが、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(グリセロールセバケート)(PGS)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(炭酸トリメチレン)(PTMC)またはポリカプロラクトン(PCL)を含めた種々の吸収性材料を含み得る。
【0020】
[0029]ヒト細胞は、細胞外マトリックスを産生し、堆積させる任意の適当なヒト細胞であってよい。一部の実施形態では、ヒト細胞は、ヒト線維芽細胞、平滑筋細胞、骨細胞、心筋細胞、または軟骨細胞である。好ましい実施形態では、ヒト細胞は、テキスタイルが埋め込まれる個体と同じ個体由来のものであり、その結果、自己認識されるECMがもたらされ、テキスタイルに自己グラフト様の特徴が付与される。他の実施形態では、細胞は患者に特異的なものではない。そのような実施形態では、ヒト細胞は、テキスタイルが埋め込まれるヒトとは異なるヒトに由来するものであり得、テキスタイルに同種グラフト様の特徴が付与される。好ましい実施形態では、被覆は、異種材料を含まない。
【0021】
[0030]hECM材料は、これだけに限定されないが、プロテオグリカン、例えば、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、もしくはケラタン硫酸など;非プロテオグリカン多糖、例えば、ヒアルロン酸など;タンパク質、例えば、コラーゲンもしくはエラスチンなど;細胞接着タンパク質、例えば、フィブロネクチンもしくはラミニンなど;またはこれらの組合せを含めた任意の適当なhECM材料であってよい。
【0022】
[0031]本明細書で使用される場合、「細胞によって堆積された状態」とは、細胞からの堆積によって生じた細胞外材料の構造および形態を指す。
[0032]本明細書で使用される場合、「ドープ(doped)」または「ドープすること(doping)」は、処理またはプロセスにおいて添加される促進因子を指す。
【0023】
[0033]本明細書で使用される場合、「カプセル封入」は、PGSマイクロスフェアプロセスによる送達構造の球状化を指す。一部の実施形態では、PGSマイクロスフェアは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2018年10月4日に公開された、Luらによる「Cured Biodegradable Microparticles and Scaffolds and Methods of Making and Using the Same」という表題の米国特許出願公開第2018/0280912号に開示されているプロセスによって形成される。
【0024】
[0034]本明細書で使用される場合、「処理された表面」は、埋め込み型物品上の、ECM被覆で処理され、参照または同定される任意の表面を指す。
[0035]本明細書で使用される場合、「押出成形物」は、ヘッドを有するまたは有さないダイまたは他の適切なオリフィスを通した力によって押し出されたまたは成形された任意の材料または製造品を指す。
【0025】
[0036]本明細書で使用される場合、「異種」は、例えばヒト患者に対する非ヒトなど、埋め込みの標的種の細胞によって形成されるものではない任意の材料を指す。
[0037]本明細書で使用される場合、「同種グラフト」は、標的種ではあるが埋め込みの標的個体のものではない細胞によって形成される任意の材料を指す。
【0026】
[0038]本明細書で使用される場合、「自己グラフト」は、埋め込みの標的個体の細胞によって形成される任意の材料を指す。
[0039]一部の実施形態では、生物医学的テキスタイルの表面および繊維上で種に適合する細胞外マトリックス(ECM)を堆積させるヒト細胞を培養することによってヒトシグナル伝達因子がもたらされ、これにより、埋め込み物の「ヒト」としての認識が促進されて、炎症反応が低減し、治癒が速まる。一部の実施形態では、これらのヒトシグナル伝達因子は、分泌された細胞外マトリックスによって捕捉される。一部の実施形態では、堆積したECMは、これだけに限定されないがコラーゲンまたはフィブリンを含み得る、タンパク質成分を含み得る。一部の実施形態では、堆積したECMは、これだけに限定されないがヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ケラチン硫酸、またはヘパリンを含み得る、グリコサミノグリカンを含み得る。一部の実施形態では、堆積したECMは、これだけに限定されないが血管内皮増殖因子(VEGF)、上皮増殖因子(EGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、インターロイキン(例えば、これだけに限定されないが IL-2、IL-4およびIL-5)、または血小板由来増殖因子(PDGF)を含み得る、増殖因子を含有し得る。
【0027】
[0040]一部の実施形態では、ヒトECM成分をテキスタイル表面に付加することにより、異種材料を用いた場合に観察される種の不適合に関する潜在的な問題が減少するまたは排除される。
【0028】
[0041]ヒト細胞からECMがテキスタイルおよび繊維に堆積すると、ネイティブなヒト組織内に存在するECM表面部分の良好な類似体が生成し、これにより、患者または遺体供給源由来のドナー組織を必要とせずに、堆積したECMに改善された構造的完全性がもたらされる。一部の実施形態では、患者から細胞を回収して、自己グラフト様バージョンのECM被覆テキスタイルまたは繊維を作製する。同様に、初代ヒト細胞または他の供給源由来の細胞株を、同種グラフト様足場が有効である適用のための既製のECM被覆製品を生成するために使用することができる。
【0029】
[0042]一部の実施形態では、ヒトECM分泌細胞を修飾していないテキスタイルまたは繊維上で直接培養し、したがって、異種による前被覆もしくはいかなる他の異種成分も存在せず、かつ/または被覆テキスタイルもしくは繊維に異種材料は含まれない。例示的な実施形態では、被覆テキスタイルまたは繊維の中またはその上に存在する生物材料はヒト細胞またはヒトECM分泌細胞の産物だけである。言い換えれば、被覆テキスタイルまたは繊維は、ヒト細胞またはヒトECM分泌細胞に由来するものではない生物材料を含まない。
【0030】
[0043]世界の多くの地域では、異種材料またはさらには同種グラフト材料を含む埋め込み型デバイスの使用を妨げる文化上および/または宗教上の障壁が存在する。自己グラフト材料だけしか含まないことで、本質的に非免疫原性であるという利点に加えて、例示的な実施形態では、これらの文化上および/または宗教上の障壁も克服される。一部の実施形態では、自己グラフト埋め込みを、自己療法を提供するものと考えることができる。
【0031】
[0044]一部の実施形態では、細胞の付着およびECM分泌の改善を促進するために、基礎をなすテキスタイルまたは繊維を、ヒト細胞を播種する前に、プラズマ処理、酸/塩基処理、または機械的変形などの表面修飾によって予め調整する。
【0032】
[0045]一部の実施形態では、細胞によるECM分泌を改善するために、細胞を播種する前にPGSなどの非異種吸収性被覆をテキスタイルまたは繊維の表面に適用する。非異種吸収性被覆は、表面を細胞培養およびhECMの被覆を受けることに対してより良好に適合させる下塗としての機能を果たす。非異種吸収性被覆がPGSを含む場合、PGSにより細胞培養の細胞に栄養分を提供することができ、また、ヒトECM分泌細胞による1つまたは複数のhECM分子の産生および分泌に関連する1つまたは複数の遺伝子を上方制御することもできる。
【0033】
[0046]一部の実施形態では、埋め込み型デバイスおよび細胞培養技術の成分として使用されるテキスタイルおよび繊維表面のバイオインターフェースが、体が「自己」を認識するのを助ける、ヒトECMに関連する本質的な生化学的および構造的キューの提示によって増強され、それにより、生物医学的テキスタイルおよび繊維の生物学的性能が改善され、これらの材料に対する炎症反応が低減する。
【0034】
[0047]一部の実施形態では、プロセスは、線維芽細胞または他のhECM産生細胞を患者から抽出し、これらの細胞をin vitroでテキスタイルまたは繊維構造上で培養することを含む。抽出は、テキスタイルまたは繊維に適用されるのが細胞組織にならない
ように、hECM産生細胞を他の細胞およびあらゆる細胞外または他の組織材料から分離および精製することを含むことが好ましい。その代わりに、hECM産生細胞をテキスタイルまたは繊維に曝露する唯一の細胞性材料とすることができる。その後の培養は、テキスタイルまたは繊維上の細胞培養であり、組織培養ではないことが好ましい。一部の実施形態では、細胞培養は、ウェーブ混合型バイオリアクターバッグシステム内に含有される。線維芽細胞からのECM堆積物がテキスタイルまたは繊維表面を被覆するおよび/または覆うのに十分な時間が経ったら、プロセスは、線維芽細胞を除去して、埋め込まれた際の細胞への組込みを改善するために患者に特異的なECMの被覆を有する脱細胞化テキスタイルまたは繊維表面を得ることを含む。一部の実施形態では、脱細胞化被覆テキスタイルまたは繊維は細胞を含まない。
【0035】
[0048]一部の実施形態では、プロセスに、テキスタイルまたは繊維上へのECM堆積のために患者由来の幹細胞由来細胞を利用する。
[0049]一部の実施形態では、プロセスに、テキスタイルまたは繊維上へのECM堆積のためにヒト細胞の混合集団を利用する。
【0036】
[0050]一部の実施形態では、プロセスに、標的埋め込み部位に特異的な線維芽細胞、例えば、スキンケア適用のための皮膚線維芽細胞または心血管グラフトおよびパッチのための心臓線維芽細胞などを利用する。
【0037】
[0051]一部の実施形態では、プロセスに、ヒト細胞からのECM堆積およびその後の細胞除去後に既製のhECM増強テキスタイルまたは繊維製品を生成するために、患者に特異的なものではないヒト細胞を利用する。
【0038】
[0052]一部の実施形態では、プロセスは、組織を工学的に操作した製品として再埋め込みを行うために、患者自身の細胞を、以前に埋め込まれ、その後取り出されたテキスタイルまたは繊維上に残しておくことを含む。一部の実施形態では、テキスタイルまたは繊維は遺伝子修飾または分化後に再埋め込みされる。一部の実施形態では、プロセスは、内皮細胞を二次培養することによってテキスタイルまたは繊維のhECM増強表面を細胞によって堆積されたECMでさらに処理して、テキスタイルまたは繊維を埋め込みまたは再埋め込みの前に予め血管新生させることを含む。
【0039】
[0053]一部の実施形態では、プロセスにおいて、例えば、増殖因子または細胞捕捉剤、例えばヘパリンなどの他の細胞シグナル伝達因子を、hECM増強テキスタイルまたは繊維表面に、埋め込み前、細胞の除去後に組み入れる。
【0040】
[0054]一部の実施形態では、プロセスは、テキスタイルまたは繊維を用いて培養した細胞を、線維芽細胞の培養培地中、例えばアスコルビン酸(ビタミンC)などの1つまたは複数のECM産生促進因子で処理することを含む。
【0041】
[0055]一部の実施形態では、プロセスは、予備的な異種または同種グラフトECM被覆を形成することを含まないまたはそれを必要とせず、個々のテキスタイルもしくは繊維成分、デバイスとしての埋め込み型テキスタイルもしくは繊維への適用、またはin vitro培養足場における最終産物使用は柔軟なものである。さらに、被覆テキスタイルまたは繊維を細胞供給源に応じて自己グラフト様または同種グラフト様形式で使用することができる。被覆テキスタイルまたは繊維表面によって示される表面積が大きいことより、体によるテキスタイルまたは繊維の「ヒト様」認識がより良好に促進される。
【0042】
[0056]一部の実施形態では、プロセスは、組織への組込みを増強する二次成分として、または、例えばメッシュもしくはパッチなどの外科的取り扱いが容易な埋め込み型デバイスとして他の医療機器に容易に追加可能な複合構造をもたらすテキスタイルまたは繊維の表面上にヒト細胞によって堆積されたhECMを通じて生物学的構造的な方向を適合させる。
【0043】
[0057]一部の実施形態では、プロセスにより、治癒を増強するために埋め込み部位に対する特異性について調整された、個別化された足場を生成するために、ヒト細胞を使用することによって正確な種に適合するだけでなく、目的の組織に見いだされる細胞にも適合する能力がもたらされる。典型的な埋め込み型バイオテキスタイルまたはバイオ繊維の適用は、組織への組込みを駆動するための細胞浸潤およびin situでの宿主細胞からのECM堆積に依拠するが、一方、本開示の組成物およびプロセスでは、予め調製されたhECM鋳型を宿主組織に提供して、現行の埋め込み型テキスタイルまたは繊維製品には欠けている1つまたは複数の宿主認識シグナル伝達部分を提供することにより、組込みプロセスが加速する。
【0044】
[0058]一部の実施形態では、被覆テキスタイルまたは繊維は、埋め込み型テキスタイルまたは繊維の適用およびテキスタイル生成または例えば縫合などの他の繊維適用に使用するための繊維産生を伴う適用の一部である。編組、織物、編み物、および不織物であるテキスタイル足場を、従来のテキスタイル調製プロセスを使用して調製することができ、それらの下流の適用のために必要に応じて機械特性および生分解特性を工学的に操作することができる。一部の実施形態では、例えば線維芽細胞などのヒト細胞を患者から生検によって取得する、または非患者由来細胞を二次的な商業的供給源から入手することができる。患者から取得した細胞に関しては、hECM産生細胞を他の組織置換成分または他の細胞から、例えばフローサイトメトリーまたは抗体に基づくプロセスなどの細胞選別技術によって単離することができる。次いで、hECM産生細胞を滅菌テキスタイル足場に播種し、例えば2~28日間、あるいは2~3日間、あるいは2~7日間、あるいは7~14日間、あるいは14~28日間の範囲、またはその間の任意の範囲もしくは部分範囲などの所定の培養時間にわたって培養して、増殖させ、標的埋め込み部位組織に関連するhECMを産生させることができる。培養時間は、生検材料の量および再埋め込み用のテキスタイル足場のサイズに依存し得る。次いで、修飾されたテキスタイルまたは繊維を凍結乾燥して、hECM層に捕捉されたサイトカインを保存し、次いで、直接患者に埋め込むか、または、医療機器に、組織への組込みを増強するための二次成分として組み入れる。
【0045】
[0059]一部の実施形態では、細胞培養が完了したら、細胞を、hECMで修飾されたテキスタイルまたは繊維表面から、酵素処理によって、例えばトリプシンまたはディスパーゼの使用によって除去する。他の実施形態では、例えば、コラーゲンを除去するためのコラゲナーゼまたはエラスチンを除去するためのエラスターゼなど、特定の酵素処理を使用して細胞の除去中に特定のECMの成分を消化する。さらに他の実施形態では、例えば、洗剤、酸処理、または塩基処理を使用することによってなど、化学処理を使用して、細胞を堆積したECMから除去する。一部の実施形態では、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤を細胞除去溶液に添加して、細胞基質結合または細胞間結合のために細胞によって使用される金属イオンを除去する。他の実施形態では、周期的な凍結と解凍を使用して、細胞をECMから除去するために死滅させる。他の実施形態では、細胞を、細胞膜の電気穿孔のために電気力に供して、細胞を、分泌されたECMから除去するために死滅させる。追加的な実施形態では、例えばパクリタキセル、カンプトテシン、エトポシド、またはドキソルビシン塩酸塩などの1つまたは複数の可溶性アポトーシス誘導性因子を添加することにより、細胞のアポトーシスを誘導して、細胞の分泌されたECMからの除去を促進する。一部の実施形態では、例えばベンゾナーゼなどのエンドヌクレアーゼを溶液に添加して、残留するデオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を分解し、細胞からECMが分泌された被覆テキスタイルまたは繊維から除去する。
【0046】
[0060]一部の実施形態では、ヒト線維芽細胞を商業的供給源から入手し、培養して、同種グラフト様既製品においてテキスタイルまたは繊維上にhECM被覆を生成させる。そのような構成は、無処理のテキスタイルもしくは繊維または異種ECM剤で被覆されたテキスタイルもしくは繊維と比較して実質的に良好なバイオインターフェース性能を有することが予想され、これは、無細胞hECMテキスタイルには負の生物学的応答を誘導する恐れがある外来ECMが存在しないからである。
【0047】
[0061]使い捨てバイオリアクター細胞エクスパンションバッグを介して作製されたものなどの、特にテキスタイルの使用のために設計された改善された生物学的封じ込め系による個別化薬ワークフローのさらなる前進により、テキスタイルまたは繊維上へのhECM被覆の生成に患者自身の細胞を適用することが可能になる。皮膚線維芽細胞は患者から最も取得しやすいので、大多数の自己移植適用に対して好ましく、十分なものであり得る。
【0048】
[0062]細胞を特定の患者組織から回収することが可能であるが、いかなる回収手順もできるだけ低侵襲になるようにすることが好ましい心血管への適用のためなどの場所から組織と適合する細胞を得ることは困難であり得る。今後、例えば、外科医が線維芽細胞を得るためにいかなる心臓組織も取り出すことを望まない可能性がある場合に、脂肪由来幹細胞(ADSC)を使用して、心臓などの組織のための線維芽細胞などの、ECM産生細胞の特定の「株」を産生させるなど、より容易に取得された幹細胞由来供給源を特定の組織ECMを産生する細胞を生成するため使用する見込みがあり得る。
【0049】
[0063]被覆されるテキスタイルまたは繊維は、織物、編組、編み物、および/または不織物であり得る。被覆されるテキスタイルの繊維は、デニール、および例えば単一フィラメント、マルチフィラメント、特殊加工された繊維、糸のより合わせ、または撚りなどのフィラメント型を変動させることができる。被覆されるテキスタイルの繊維は、例えば、環状、十字形、平たい形、卵形、多葉形、長方形、または平方形などの多数の適当な断面の幾何学的配置のいずれを有してもよい。
【0050】
[0064]被覆されるテキスタイル足場は、これだけに限定されないが、PET、PCL、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリプロピレン(PP)、またはポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)を含めた代替的な合成材料で構成される繊維を使用して生成することができる。あるいは、被覆されるテキスタイル足場は、例えば、コラーゲン、フィブリン、アルギン酸、キトサン、または絹などの代替的な生物学的に引き出された材料で構成される繊維を使用して生成することができる。あるいは、被覆されるテキスタイル足場は、合成ポリマー-合成ポリマー、合成ポリマー-生体高分子、または生体高分子-生体高分子のブレンドを使用して生成することができる。
【0051】
[0065]線維芽細胞のECM産生を補助するために、被覆されるテキスタイル足場に、例えば、軟骨を覆い包む製品用の軟骨細胞または皮膚パッチ用のケラチノサイトなどの組織特異的支持細胞をさらに播種して、ECM表面をさらに調整し、被覆製品の標的組織または埋め込み場所に特異的なサイトカインを堆積させることができる。
【0052】
[0066]テキスタイル足場上での細胞培養は、例えば、フラスコ、ディッシュ、マルチウェルプレート、軟プラスチック生物学的封じ込めバッグ、またはバイオリアクター系で行うことができる。培養時間を調整してhECM層の密度/厚さを調整することができる。
【0053】
[0067]一部の実施形態では、追加的な細胞接着リガンドをhECM層に組み入れて組織および細胞への組込みをさらに調整する。
[0068]一部の実施形態では、1つの細胞型の第1の培養を行い、その後、第1の細胞型を除去した後に第2の異なる細胞型の培養を行って、天然に存在する生物学的な構造的順序、例えば、機能的なECM層(第2の層)を支持する高密度基底板層(第1の層)などを繰り返すことにより、異なるECMの多数の逐次的な層を堆積させる。
【0054】
[0069]一部の実施形態では、線維芽細胞によって直接テキスタイルまたは繊維上に産生されたECM被覆により、テキスタイルまたは繊維の生体適合性が、ECM被覆を有さないテキスタイルもしくは繊維、線維芽細胞によって直接テキスタイルもしくは繊維上に産生されたものではないECM被覆を有するテキスタイルもしくは繊維、または非ヒトECM被覆を有するテキスタイルもしくは繊維と比べて改善される。
【0055】
[0070]一部の実施形態では、プロセスにおいて細胞株を物品と共培養する。工学的に操作された形態のテキスタイルまたは繊維を吸収性または非吸収性のいずれかとしてアセンブルすることができる。テキスタイルまたは繊維の表面を、必要に応じて、例えば、グリセロール-セバケート含有ポリマー、例えば、PGS、リシン-ポリ(グリセロールセバケート)(KPGS)、ポリ(グリセロールセバケート ウレタン)(PGSU)、または別のPGS付加物などのなどの生分解性ポリマーの「タイ(tie)」または「キス(kiss)」層が可能になるように前処理することができる。PGS含有層は、栄養分支持物質オプションとして組み立てることができる。表面への細胞接着を増強するために、PGSの付加物および細胞接着促進剤を含めることができる。適当な細胞接着促進剤としては、これだけに限定されないが、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)、イソロイシン-リシン-バリン-アラニン-バリン(IKVAV)、またはチロシン-イソロイシン-グリシン-セリン-アルギニン(YIGSR)、ECMへの細胞接着に関連するペプチドを挙げることができる。一部の実施形態では、プロセスは、物品を組織特異的線維芽細胞株に曝露させるステップと、組織特異的線維芽細胞株を培養し、増大させてECM材料を産生させ、堆積させるステップと、組織特異的線維芽細胞株を回収して物品を脱細胞化するステップとを含む。プロセスは、脆弱なまたは弱いECM被覆を、PGSの霧または他の適切なバイオ接着剤もしくはモルタルを用いて物品に留めるおよび/または固定するステップをさらに含み得る。
【0056】
[0071]一部の実施形態では、PGS含有層は、固体生物活性表面の形成において、例えば補助因子または補酵素部分などの1つまたは複数の促進因子または促進因子前駆体を提供することによって栄養分支持物質を提供するだけにとどまらない。一部の実施形態では、PGS含有層は、例えば、PGS含有層を含有する表面上で培養された細胞のミトコンドリアにおけるクエン酸回路(CAC)またはトリカルボン酸(TCA)回路としても公知のクレブス回路の駆動を補助するものなどの少なくとも1つの促進因子または促進因子前駆体を含む。一部の実施形態では、培養細胞は、自己移植細胞である。クレブス回路は、細胞代謝、したがって健康および疾患の病理に重要である。クレブス回路では、栄養分の酸化がもたらされて、細胞に対して使用可能な化学エネルギーが生成する。
【0057】
[0072]クレブス回路におけるエネルギー生成の優位を占める供給源は糖ではなく脂肪酸によってもたらされる。脂肪酸は炭素源であり、したがって、脂肪酸経路は細胞の生体エネルギー学的に重要である。脂肪酸代謝経路に重要な促進因子は、コエンザイムQ10(CoQ10)、アミノ酸L-カルニチン、およびカルシウム-マグネシウム-ATPアーゼである。図1に示されている通り、L-カルニチンはクレブス回路においてCoQ10と協調して働く脂肪酸シャトル系の一部である。
【0058】
[0073]図1に示されている通り、トリメチルリシンは、タンパク質結合L-リシンおよびL-メチオニンから、メチラーゼの存在下で形成される。ヒドロキシトリメチルリシンは、トリメチルリシンから、ビタミンC、鉄、およびヒドロキシラーゼの存在下で形成される。γ-ブチロベタインアルデヒドは、ヒドロキシトリメチルリシンから、ビタミンBおよびアルドラーゼの存在下で形成される。γ-ブチロベタインは、γ-ブチロベタインアルデヒドから、ナイアシンおよびデヒドロゲナーゼの存在下で形成される。L-カルニチンは、γ-ブチロベタインから、ビタミンC、鉄、およびヒドロキシラーゼの存在下で形成される。
【0059】
[0074]CoQ10はユビキノンとしても公知であり、真核細胞に遍在し、ミトコンドリアの健康に必須であり、以下の化学構造を有する:
【0060】
【化1】
【0061】
[0075]L-カルニチンは、体内で促進因子前駆体であるリシンから合成される四級アミノ酸であり、以下の化学構造を有する:
【0062】
【化2】
【0063】
[0076]一部の実施形態では、被覆または足場材料は、1つまたは複数の炭素源、例えばPGSまたはPGS付加物中のグリセリンおよび/またはセバシン酸などをクレブス回路に供給する栄養分支持物質として含むと共に、クレブス回路を駆動し、それにより、培養細胞によるエネルギー生成を促進し、培養細胞の健康およびECM産生を改善する1つまたは複数の促進因子または促進因子前駆体、例えば、CoQ10、L-カルニチン、リシン、カルシウム、および/またはマグネシウムなどをも含む。
【0064】
[0077]一部の実施形態では、特定の補助因子/補酵素部分を促進因子または促進因子前駆体として含む異なるPGS付加物を共混和して単一のビヒクルフィルムにする。
[0078]一部の実施形態では、異なるPGS付加物を層状に重ね、ポリマーの流れにより層の混合を生じさせる。
【0065】
[0079]一部の実施形態では、被覆または足場材料は、KPGS付加物、PGS-マグネシウム(PGS-Mg)付加物、およびCoQ10の組合せを含む固体バイオリアクター組成物を含む。固体バイオリアクター組成物は、PGS付加のための反応性基を有さないので、CoQ10を固体バイオリアクター組成物に配合することができる。そのような固体バイオリアクター組成物は、これだけに限定されないが、バイオリアクター設計または埋め込み物の被覆のいずれかのためにテキスタイル基材に付加することを含めた多数の適用のいずれかにおいて機能し得る。
【0066】
[0080]一部の実施形態では、促進因子または促進因子前駆体が存在することにより、促進因子を生成するための細胞エネルギーが低下するまたは排除されるので、PGS分解後の細胞による脂肪酸合成の速度が増大する。一部の実施形態では、一連のPGS付加物を別々に作製し、hECM産生を増加させ、それにより、細胞エネルギー要件をカスタマイズするためにhECM産生に関する細胞要件に基づいて共混和する。一部の実施形態では、培養細胞は自己移植細胞であり、したがって、得られるhECMは自己グラフトの特徴を有する。一部の実施形態では、心筋細胞および/または肝細胞は皮膚細胞よりもエネルギー要求が高く、細胞を最適な燃焼率で維持するために1つのエネルギー駆動付加物を別のエネルギー駆動付加物よりも高レベルで必要とし得る。
【0067】
[0081]一部の実施形態では、プロセスは、細胞培養の前に押出成形物の表面を調製することを含む。押出成形物は、埋め込み型デバイスを工学的に操作するために望ましい繊維、フィルム成形された形状、ダイ打ち抜き、鋳型、または任意の構成であり得る。表面をタイ、キス、または直接の細胞からの堆積のために予め活性化するまたは処理するために、押出成形物の表面を後処理することができる。一部の実施形態では、予め活性化された堆積は、細胞接着促進剤RGD、IKVAV、もしくはYIGSR、またはRGD、IKVAV、もしくはYIGSRのPGS付加物のうちの1つを含み得る。押出成形物に1つまたは複数の適当な細胞株を播種することができる。
【0068】
[0082]一部の実施形態では、プロセスは、細胞株のマイクロスフェアへのカプセル封入または表面付着を含む。細胞を、処理表面への直接送達のためにPGSマイクロスフェア技術で予めカプセル封入することができる。予めカプセル封入した細胞を適切なビヒクルおよび/または適切な堆積技法によって表面に直接送達することができる。予めカプセル封入した細胞を処理被覆中に配合することができる。
【0069】
[0083]一部の実施形態では、プロセスは、吸収性および非吸収性繊維を湿潤状態で、溶解流れ下で、またはエレクトロスピニング下で活性化することを含む。繊維原料に、これだけに限定されないが、吹き付け、浸漬、および/または被覆を含めた複数の堆積プロセスのいずれかによる活性化処理でスピン仕上げを行うことができる。繊維樹脂原料を栄養補充剤で修飾するまたはそれと共配合することができる。繊維製造品には、海島型(islands-in-the-sea)を使用してハイブリッドドープ組成物を形成することができ、これは、吸収性の海に浮かぶ非吸収性の島、吸収性の海に浮かぶ示差的な分解速度を有する吸収性の島、または、細胞接触、接着、および/もしくはコロニー形成を受容するように修飾された海表面を有する海に浮かぶ非吸収性の島を含み得る。細胞表面相互作用を増強するために、修飾された原料からテキスタイル、繊維、または工学的に操作された物品を製作または形成することができる。テキスタイル繊維を、例えば、栄養分をドープするスピン仕上げ、スピン仕上げの間に細胞を繊維表面に直接取り付けもしくは堆積させること、またはエレクトロスピニングの間に細胞をエアロゾル共堆積させることなどの修飾処理を用いて形成することができる。
【0070】
[0084]一部の実施形態では、プロセスは、細胞またはコラーゲンを物品の表面上に堆積させることを含む。適当な低せん断および低熱堆積プロセスとしては、これだけに限定されないが、吹き付け、被覆、スピニング、噴霧、エアロゾル化、および重力が挙げられる。テキスタイルファブリックをフィルター構造として設計し、それによって、生存細胞株を伴う懸濁した培養物を濾過作用の間にテキスタイルファブリックの繊維構造の上および内部に閉じ込めることができる。テキスタイル構造を表面活性化処理で前処理またはドープすることができ、物品を浸漬により被覆することができる。コラーゲン表面と協調する部分を含む出来上がった繊維原料、テキスタイル、または押出成形物製造品を、組換えコラーゲンを産生することができる組換え生物体と共培養(共インキュベート)し、したがって、産生されるポリペプチドを、微生物の堆積または組み入れを伴わずに共培養(共インキュベート)された物品の表面に結合または沈殿させることができる。
【0071】
[0085]一部の実施形態では、ECM被覆テキスタイルまたは繊維を、ECMの堆積および/または堆積したECM被覆テキスタイルまたは繊維に対する応答を特徴付けることによって評価する。
【0072】
[0086]一部の実施形態では、プロセスは、ヒト線維芽細胞を織物、編組、または編み物テキスタイル上で培養して、テキスタイルの表面上にECMを形成させることを含む。線維芽細胞をテキスタイル上で1週間培養して、ヒトECMを生成させ、テキスタイル表面上に堆積させる。次いで、線維芽細胞をトリプシン処理によって除去する。被覆テキスタイルを界面活性物質で洗浄して、堆積したECM内の結合した可溶性サイトカインタンパク質を除去することができる。あるいは、可溶性サイトカインタンパク質が存在することが下流の適用に有益である場合、被覆テキスタイルを洗浄せずにおくことができる。被覆テキスタイルをフリーズドライすることもでき、まだ湿っている間にさらなる処理または評価のために使用することもできる。ECMの堆積を、組織学的染色、電子顕微鏡、または赤外分光法により、処理されたテキスタイルを無処理のテキスタイルと比較して評価することができる。
【0073】
[0087]一部の実施形態では、その後、ヒト間葉系幹細胞などの二次的な細胞型をhECMが堆積したテキスタイル表面上に播種し、1週間培養し、その後、試験して、種に適合するhECMの前堆積によりテキスタイルに対する細胞応答が改善されるかどうかを評価する。試験は、hECM被覆テキスタイルに対する細胞応答を被覆されていないテキスタイルに対する細胞応答と比較することを含み得る。一部の実施形態では、増殖速度を3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイ、2-(4-ヨードフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-5-(2,4-ジスルホフェニル)-2H-テトラゾリウム、一ナトリウム塩(WST)アッセイ、またはalamarBlue(登録商標)アッセイ(AccuMed International,Inc.、Chicago、IL)によって評価する。他の評価技法としては、これだけに限定されないが、付着有効性を評価するための細胞計数、細胞生存率を評価するための生/死アッセイ、初期培養時点と後期培養時点での細胞の形態の差異を調べるための細胞の固定および染色、ならびに細胞によるサイトカインの産生を評価するための目的のサイトカインに特異的な酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を挙げることができる。前堆積したhECMが存在する場合には増殖および付着のスピードが改善されることが予測される。
【0074】
[0088]比較対象の実施形態では、その後、ヒト間葉系幹細胞などの二次的な細胞型を非ヒトECMが堆積した、例えば、ラット線維芽細胞からECMが堆積したテキスタイル表面上に播種し、1週間培養し、その後、試験して、種が適合しないECMの前堆積がテキスタイルに対する細胞応答に影響を及ぼすかどうかを評価する。試験は、非ヒトECM被覆テキスタイルに対する細胞応答とhECM被覆テキスタイルに対する細胞応答を比較することを含み得る。一部の実施形態では、増殖速度を、MTTアッセイ、WSTアッセイ、またはalamarBlue(登録商標)アッセイによって評価する。他の評価技法としては、これだけに限定されないが、付着の有効性を評価するための細胞計数、細胞生存率を評価するための生/死アッセイ、初期培養時点と後期培養時点での細胞の形態の差異を調べるための細胞の固定および染色、ならびに細胞によるサイトカインの産生を評価するための目的のサイトカインに特異的なELISAを挙げることができる。前堆積した非ヒトECMが存在する場合には性能が低下することが予測される。
【0075】
[0089]以前に記載されている適用に加えて、細胞によって堆積されたECM被覆には、ヒト埋め込み物の一部としての適用以外の適用があり得る。
[0090]一部の実施形態では、被覆テキスタイルまたは繊維を、獣医学的適用のために、これだけに限定されないが、イヌ細胞、ネコ細胞、ブタ細胞、ウマ細胞、またはトリ細胞を含み得る非ヒト種に特異的な細胞を使用して形成する。
【0076】
[0091]一部の実施形態では、被覆テキスタイルまたは繊維は、食料品店でデリチーズスライスを分割するために使用される紙シートのような、例えば牛ひき肉またはハンバーガー代用品などの既存の培養肉製品に対する剥ぎ取り式の上部および下部の最初の層としての機能を果たす。
【0077】
[0092]一部の実施形態では、例えば、テキスタイルまたは繊維が、例えば末梢神経グラフトまたは心臓のパッチなどの適用に好ましい向きを有する場合、被覆テキスタイルまたは繊維を異方性組織足場の生成に適用する。
【0078】
[0093]一部の実施形態では、被覆テキスタイルまたは繊維を、重篤な熱傷創の処置において、細胞の再浸潤を促進するために、創傷用シーリングまたは充填材料として使用する。
【0079】
[0094]一部の実施形態では、被覆テキスタイルまたは繊維を、皮膚化粧産業において、例えば、抗老化クリーム剤、または紫外線(UV)の皮膚への影響などの、皮膚に見いだされるヒトコラーゲンに対する様々な因子および製剤のin vitroスクリーニングのために適用し、ここでhECM被覆テキスタイルは動物での試験のための望ましい代替品としての機能を果たす。
【実施例
【0080】
[0095]本発明を、限定ではなく実例として示す以下の実施例に照らしてさらに記載する。
実施例1
[0096]ヒト心臓線維芽細胞を織物PVDFテキスタイル上で6日間の細胞培養にわたって培養し、その後、UV光を使用した細胞アポトーシスの誘導および生理食塩水による洗浄を行って、細胞を除去した。図2は、製造後、細胞培養前の織物PVDFテキスタイル10を示す。織物PVDFテキスタイル10には、培養のために細胞を播種する前にはECMの被覆は存在しない。図3は、ヒト心臓線維芽細胞の培養および細胞除去後の織物PVDFテキスタイルを示す。図2において織物PVDFテキスタイル上の目に見えるテクスチャーは、テキスタイル上のヒト心臓線維芽細胞によって堆積されたECM12の存在を示す。
【0081】
実施例2
[0097]フーリエ変換赤外(FTIR)分光法を使用して、被覆されていないPVDF織物テキスタイルおよび実施例1の脱細胞化された被覆PVDF織物テキスタイルの両方を凍結乾燥ヒト心臓線維芽細胞(HCF)細胞と一緒に特徴付けて、細胞による細胞外マトリックスの堆積を化学的に同定した。図4は、3つの試料の全スペクトルを示す。図5は、波数900cm-1~1100cm-1の拡大した関心領域を示し、波数1041cm-1における多糖の存在を示すC-O伸縮結合が凍結乾燥細胞では見られるが、ネイティブなPVDFテキスタイルまたは脱細胞化PVDFには存在せず、これにより、実施例1の脱細胞化テキスタイルには細胞がもはや存在しないことが示される。図6は、波数1500cm-1~1800cm-1の別の拡大した関心領域を示し、実施例1の脱細胞化PVDFについての波数1653cm-1および1544cm-1における2つのアミドピークにより、織物PVDFテキスタイル上で培養した心臓線維芽細胞からのタンパク質性堆積ECMが存在することが示される。図7は、波数2700cm-1~3000cm-1のさらに別の拡大した関心領域を示し、凍結乾燥細胞を特徴付けた場合には細胞膜に含有される脂質のCHおよびCH伸縮ピークが波数2757cm-1、2929cm-1、および2853cm-1に存在するが、これらはネイティブなPVDFテキスタイルおよび実施例1の脱細胞化PVDFには存在しない。
【0082】
実施例3
[0098]実施例1に記載されているものと同様の細胞培養を、PET模紗織物上、PET平織物上、およびPGSで被覆したPGテキスタイル上で行った。4つの異なる試料上での細胞培養の間、alamarBlue(登録商標)アッセイを使用して、紫外可視分光計を使用して既知の細胞希釈の検量線に対するアッセイによって測定された細胞増殖速度を関連付けて、2ラウンドの別々の培養にわたって1日培養した後および6日培養した後の細胞計数を決定することによって、細胞計数を熱量測定により決定し、その結果が図8に示されている。これらのアッセイにより、細胞培養の第1ラウンドの間、心臓線維芽細胞によって堆積されたECMで被覆した脱細胞化テキスタイル足場上で細胞を培養した場合に、第2ラウンドの心臓線維芽細胞培養の間に増殖レベルの上昇が生じたことが実証された。図9は、1日目の細胞計数に対する6日目の細胞計数の比である増殖係数が、心臓線維芽細胞をヒト細胞によって堆積されたECMで被覆されたテキスタイル足場上で培養した場合、使用される特定のテキスタイルにかかわらず、第1のラウンドのネイティブな足場と比較して、第2のラウンドでは顕著に高いことを示す。
【0083】
実施例4
[0099]心臓線維芽細胞を用いた細胞培養の結果としてECMで被覆された実施例3のPGS被覆PGAテキスタイルディスクを、カルセインAMを用いて染色し、蛍光顕微鏡によってイメージングを行った。カルセインAMは、生存細胞の細胞質基質において蛍光を発する生細胞追跡器である。図10は、得られた蛍光顕微鏡画像を示す。明るい呈色は生存している心臓線維芽細胞を示し、暗い呈色は生細胞を含まないECM被覆テキスタイルディスクの領域を示す。画像から、ECM被覆PGS被覆PGAテキスタイルディスク上への心臓線維芽細胞の正常な広がりおよび付着が示される。
【0084】
[00100]本明細書において引用されている全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
[00101]上記明細書には例示的な実施形態が例示および説明されているが、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変化を行うことができ、その要素を等価物で置き換えることができることが当業者には理解されよう。さらに、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるために、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく多くの改変を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実行するために意図される最良の形態として開示される特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は添付の特許請求の範囲の範囲内に入る全ての実施形態を包含するものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】