(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-27
(54)【発明の名称】クローン免疫グロブリン(IG)/T細胞受容体(TR)遺伝子再構成を正確に評価するための手段および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20220520BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20220520BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALN20220520BHJP
C12M 1/34 20060101ALN20220520BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12Q1/6876 Z
C12Q1/6869 Z
C12M1/34 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504025
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(85)【翻訳文提出日】2021-11-15
(86)【国際出願番号】 NL2020050181
(87)【国際公開番号】W WO2020190138
(87)【国際公開日】2020-09-24
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521435282
【氏名又は名称】スティヒティング ユーロクローナリティ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ブルッヘマン、モニカ ウルスラ ヘルガ
(72)【発明者】
【氏名】コトロバ、ミヒャエラ
(72)【発明者】
【氏名】クネヒト、ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】ダルゼンタス、ニコラオス
(72)【発明者】
【氏名】カッツァニーガ、ジョバンニ
(72)【発明者】
【氏名】ダビ、フレデリック ベルナール ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ドンゲン、ヤコーブス ヨハンネス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア-サンス、ラモン
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス デ カストロ、ダビド
(72)【発明者】
【氏名】フルネン、パトリシア ヨハンナ テオドラ アンネリーセ
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンメル、ミハエル アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】マッキンタイア-デビ、エリザベス アンネ
(72)【発明者】
【氏名】スタマトプーロス、コンスタンチノス
(72)【発明者】
【氏名】ポット、クリスチーネ
(72)【発明者】
【氏名】トルカ、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ランゲラク、アントニー ヴィレム
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029BB20
4B029FA12
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QR62
4B063QR77
4B063QS10
4B063QS14
4B063QS25
4B063QX01
(57)【要約】
本発明は、臨床、診断および/または研究においてクローン免疫グロブリン(IG)/T細胞受容体(TR)遺伝子再構成を評価するための手段および方法に関する。提供されるのは、9種の培養細胞株のセットから単離したゲノムDNAの混合物を含む品質管理組成物であって、前記セットは、B細胞株であるALL/MIK(ALL)、Raji(バーキットリンパ腫)、REH(B前駆細胞型ALL)、TMM(CML-BC/EBV+B-LCL)、TOM-1(B前駆細胞型ALL)、WSU-NHL(B細胞リンパ腫)、ならびにT細胞株であるJB6(ALCL)、Karpas299(ALCL)、およびMOLT-13(ALL)を含むか、または前記セットの1以上の細胞株が、同一のIG/TR遺伝子再構成を含む1種以上の他の細胞株に置き換えられる。また、提供されるのは、健康なヒト胸腺、健康なヒト扁桃腺、および健康なヒト末梢血単核球から単離した、実質的に等モル量のゲノムDNAからなる組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
9種の培養細胞株のセットから単離されたゲノムDNAの混合物を含む組成物であって、前記セットは、B細胞株であるALL/MIK(B前駆細胞型ALL)、Raji(バーキットリンパ腫)、REH(B前駆細胞型ALL)、TMM(CML-BC/EBV+B-LCL)、TOM-1(B前駆細胞型ALL)、WSU-NHL(B細胞リンパ腫)、ならびにT細胞株であるJB6(ALCL)、Karpas299(ALCL)、およびMOLT-13(T-ALL)を含むか、または前記セットの1以上の細胞株が、同一の免疫グロブリン(IG)/T細胞受容体(TR)遺伝子再構成を含む1種以上の他の細胞株に置き換えられる、組成物。
【請求項2】
B細胞株であるALL/MIK、Raji、REH、TMM、TOM-1、WSU-NHL、ならびにT細胞株であるJB6、Karpas299およびMOLT-13から単離されたゲノムDNAの混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
実質的に等量の前記細胞株の各々のゲノムDNAを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
健康なヒト胸腺、健康なヒト扁桃腺、および健康なヒト末梢血単核球から単離された、実質的に等モル量のゲノムDNAからなる組成物。
【請求項5】
各組織について、前記ゲノムDNAは、多数の、好ましくは3~10の異なるヒト個体から得られたものである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物を含む容器、および/または請求項4もしくは5に記載の組成物を含む容器を含む、診断キット。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物を含む第1容器、および請求項4または5に記載の組成物を含む第2容器を含む、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
免疫グロブリン(IG)/T細胞受容体(TR)遺伝子再構成を検出するための1種以上の薬剤をさらに含む、請求項6または7に記載のキット。
【請求項9】
IG/TR遺伝子再構成のアンプリコンベースの次世代シークエンシング(NGS)のためのプライマーのセットを含む、請求項8に記載のキット。
【請求項10】
IGH-VJ、IGH-DJ、IGK-VJ-Kde、TRB-VJ、TRB-DJ、TRG、およびTRDからなる群から選択される前記IG/TR遺伝子再構成の1以上を検出するためのプライマーセットを含む、請求項8または9に記載のキット。
【請求項11】
図5に示すプライマーから選択される1以上のプライマー、好ましくは表3に示すプライマーから選択される1以上のプライマーを含む、請求項9または10に記載のキット。
【請求項12】
図5に示すプライマーから選択される2以上のプライマーを含む、IG/TR遺伝子再構成のアンプリコンベースの次世代シークエンシング(NGS)のためのプライマーセット。
【請求項13】
表3に示すプライマーから選択される2以上のプライマーを含む、請求項12に記載のプライマーセット。
【請求項14】
IG/TR遺伝子再構成を検出するためのアッセイにおける、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物、請求項6~11の何れか1項に記載のキット、および/または請求項12もしくは13に記載のプライマーセットの使用。
【請求項15】
前記アッセイは臨床診断アッセイ、好ましくは、クローン性の検出のため、微小残存病変(MRD)マーカーの同定および/もしくはMRDのモニタリングのため、ならびに/またはリンパ系腫瘍における(クローン)免疫レパートリーの解析のためのアッセイである、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
サンプル調製、PCRおよび/またはライブラリー構築、シークエンシングおよびバイオインフォーマティクス解析のステップを含む、NGSを用いた、少なくとも1つの生体サンプルにおけるIG/TRを検出するためのin vitroでの方法であって、前記少なくとも1つの生体サンプルに請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物が添加され、かつ/または前記少なくとも1つの生体サンプルと並行して請求項4または5に記載の組成物がサンプルとしてランされる、方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの生体サンプルは、臨床的に適切なサンプル、好ましくは、悪性リンパ増殖の診断を支持もしくは除外するためのクローン性の検出のためのサンプル、または、MRDマーカー同定もしくはMRDモニタリング解析、または(クローン)免疫レパートリー解析のために採取されたサンプルである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
当該方法の少なくとも一部がマイクロ流体デバイスを用いて行われる、請求項17または18に記載の方法。
【請求項19】
前記マイクロ流体デバイスは遠心マイクロ流体ディスクシステムを含み、好ましくは、前記ディスクは、DNA抽出、PCR、および/またはライブラリー作成を自動化および統合するために予め入れられた薬剤を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記バイオインフォーマティクス解析のステップは、生データの前処理、プライマー配列解析、免疫遺伝学的アノテーション、結果の後処理、cIT-QCの解析と使用(マーカーの定量を含む)、cPT-QCの解析と使用(予め解析され蓄積されている参照データセットとの比較を含む)、結果の報告/結果へのアクセス/結果の可視化のためのウェブベースのインタラクティブアプリケーションの使用を含む、請求項17~19のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学、免疫遺伝学、および臨床診断学の分野に関する。特に、臨床、診断、および/または研究において、クローン免疫グロブリン(IG)/T細胞受容体(TR)遺伝子再構成を評価するための手段および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
適応免疫系の細胞(B細胞、T細胞)による特異的な抗原認識は、それぞれ骨髄および胸腺における免疫発達中に独自に形成される受容体(免疫グロブリン、IG、およびT細胞受容体、TR)を通じて仲介される。IG/TR遺伝子座の組み換えを通じて、IG/TR受容体特有の多様な(ポリクローナル)レパートリーが作られる。ある自己免疫疾患では、このレパートリーが偏っており(オリゴクローナル)、一方、リンパ系悪性腫瘍では、受容体はほぼ同一である(モノクローナル)(非特許文献1~7)。したがって、IG/TR再構成は、臨床、診断、および研究での応用のための免疫細胞の研究のための、独自の遺伝子バイオマーカー(分子シグネチャー)を形成する(非特許文献8~11)。古典的に、免疫遺伝学的な解析方法は、主に断片の解析、およびサンガー法によるシークエンシングがほとんどである。次世代シークエンシング(NGS)の導入により、IG/TR再構成のより深い解析が可能になり、主な免疫遺伝学的応用:クローン性評価、微小残存病変(MRD)検出、レパートリー解析に強い影響を与えている(非特許文献12~29)。
【0003】
クローンIG/TR遺伝子再構成の同定および評価は、リンパ系悪性腫瘍の診断および追跡のための、広く使用されるツールである(非特許文献30~35)。IG/TR遺伝子再構成のNGSは、患者特異的なリアルタイム定量(RQ)-PCRアッセイの面倒な設計を避け、1回の配列決定で多数の再構成および再構成型をシークエンシングできるため、臨床試験室では人気が高まっている。したがって、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、および他のリンパ系悪性腫瘍の診断および追跡におけるIG/TR再構成のハイスループットなプロファイリングのためのいくつかの方法が既に説明されている(非特許文献16、17、23、24、36、37)。
【0004】
IG/TR NGSの潜在的な応用例は、様々なリンパ系悪性腫瘍(主にALL、CLL、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、多発性骨髄腫)において、微小残存病変(MRD)のその後の解析のための診断サンプル中のクローンIG/TRマーカーの同定だけでなく、実際のMRD解析自体でもある。さらに、リンパ増殖性障害の診断プロセスにおいて、クローン性診断法に適用することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Tonegawa S. Somatic generation of antibody diversity. Nature 1983; 302: 575-581.
【非特許文献2】Davis MM, Bjorkman PJ. T-cell antigen receptor genes and T-cell recognition. Nature 1988; 334: 395-402.
【非特許文献3】Schlissel MS. Regulating antigen-receptor gene assembly. Nat Rev Immunol 2003; 3: 890-899.
【非特許文献4】Lefranc M-P, Lefranc G. The T cell receptor factsbook. Academic Press, 2001.
【非特許文献5】Lefranc M-P, Lefranc G. The immunoglobulin factsbook. Academic Press, 2001.
【非特許文献6】Monroe JG, Dorshkind K. Fate Decisions Regulating Bone Marrow and Peripheral B Lymphocyte Development. In: Advances in immunology. 2007, pp 1-50.
【非特許文献7】von Boehmer H, Melchers F. Checkpoints in lymphocyte development and autoimmune disease. Nat Immunol 2010; 11: 14-20.
【非特許文献8】Evans PAS, Pott C, Groenen PJTA, Salles G, Davi F, Berger F et al. Significantly improved PCR-based clonality testing in B-cell malignancies by use of multiple immunoglobulin gene targets. Report of the BIOMED-2 Concerted Action BHM4-CT98-3936. Leukemia 2007; 21: 207-214.
【非特許文献9】Bruggemann M, White H, Gaulard P, Garcia-Sanz R, Gameiro P, Oeschger S et al. Powerful strategy for polymerase chain reaction-based clonality assessment in T-cell malignancies Report of the BIOMED-2 Concerted Action BHM4 CT98-3936. Leukemia 2007; 21: 215-221.
【非特許文献10】Langerak AW, Groenen PJTA, Bruggemann M, Beldjord K, Bellan C, Bonello L et al. EuroClonality/BIOMED-2 guidelines for interpretation and reporting of Ig/TCR clonality testing in suspected lymphoproliferations. Leukemia 2012; 26: 2159-2171.
【非特許文献11】van Dongen JJM, LangerakAW, Bruggemann M, Evans PA, Hummel M, Lavender FL et al. Design and standardization of PCR primers and protocols for detection of clonal immunoglobulin and T-cell receptor gene recombinations in suspect lymphoproliferations: report of the BIOMED-2 Concerted Action BMH4-CT98-3936. Leukemia 2003; 17: 2257-2317.
【非特許文献12】Boyd SD, Marshall EL, Merker JD, Maniar JM, Zhang LN, Sahaf B et al. Measurement and clinical monitoring of human lymphocyte clonality by massively parallel VDJ pyrosequencing. Sci Transl Med 2009; 1: 12ra23.
【非特許文献13】DeKosky BJ, Ippolito GC, Deschner RP, Lavinder JJ, Wine Y, Rawlings BM et al. High-throughput sequencing of the paired human immunoglobulin heavy and light chain repertoire. Nat Biotechnol 2013; 31: 166-169.
【非特許文献14】Freeman JD, Warren RL, Webb JR, Nelson BH, Holt RA. Profiling the T-cell receptor beta-chain repertoire by massively parallel sequencing. Genome Res 2009; 19: 1817-1824.
【非特許文献15】Gawad C, Pepin F, Carlton VEH, Klinger M, Logan AC, David B et al. Massive evolution of the immunoglobulin heavy chain locus in children with B precursor acute lymphoblastic leukemia Massive evolution of the immunoglobulin heavy chain locus in children with B precursor acute lymphoblastic leukemia. 2012; 120: 4407-4417.
【非特許文献16】Logan AC, Gao H, Wang C, Sahaf B, Jones CD, Marshall EL et al. High-throughput VDJ sequencing for quantification of minimal residual disease in chronic lymphocytic leukemia and immune reconstitution assessment. Proc Natl Acad Sci U S A 2011; 108: 21194-21199.
【非特許文献17】Logan AC, Zhang B, Narasimhan B, Carlton V, Zheng J, Moorhead M et al. Minimal residual disease quantification using consensus primers and high-throughput IGH sequencing predicts post-transplant relapse in chronic lymphocytic leukemia. Leukemia 2013; 27: 1659-1665.
【非特許文献18】Robins HS, Srivastava SK, Campregher PV, Turtle CJ, Andriesen J, Riddell SR et al. Overlap and Effective Size of the Human CD8+ T Cell Receptor Repertoire. Sci Transl Med 2010; 2: 47ra64-47ra64.
【非特許文献19】Wang E, Babrzadeh F et al. High throughput sequencing reveals a complex pattern of dynamic interrelationships among human T cell subsets. Proc Natl Acad Sci 2010; 107: 1518-1523.
【非特許文献20】Wu D, Sherwood A, Fromm JR, Winter SS, Dunsmore KP, Loh ML et al. High-throughput sequencing detects minimal residual disease in acute T lymphoblastic leukemia. SciTranslMed 2012; 4: 134ra63.
【非特許文献21】Wu Y-C, Kipling D, Leong HS, Martin V, Ademokun AA, Dunn-Walters DK. High-throughput immunoglobulin repertoire analysis distinguishes between human IgM memory and switched memory B-cell populations. Blood 2010; 116: 1070-1078.
【非特許文献22】Bartram J, Goulden N, Wright G, Adams S, Brooks T, Edwards D et al. High throughput sequencing in acute lymphoblastic leukemia reveals clonal architecture of central nervous system and bone marrow compartments. Haematologica 2018; 103: e110-e114.
【非特許文献23】Faham M, Zheng J, Moorhead M, Carlton VE, Stow P, Coustan-Smith E et al. Deep-sequencing approach for minimal residual disease detection in acute lymphoblastic leukemia. Blood 2012; 120: 5173-5180.
【非特許文献24】Ladetto M, Bruggemann M, Monitillo L, Ferrero S, Pepin F, Drandi D et al. Next-generation sequencing and real-time quantitative PCR for minimal residual disease detection in B-cell disorders. Leukemia 2014; 28: 1299-1307.
【非特許文献25】Pulsipher MA, Carlson C, Langholz B, Wall DA, Schultz KR, Bunin N et al. IgH-V(D)J NGS-MRD measurement pre- and early post- allo-transplant defines very low and very high risk ALL patients. Blood 2015; 125: 3501-3508.
【非特許文献26】Kotrova M, Muzikova K, Mejstrikova E, Novakova M, Bakardjieva-Mihaylova V, Fiser K et al. The predictive strength of next-generation sequencing MRD detection for relapse compared with current methods in childhood ALL. Blood 2015; 126: 1045-7.
【非特許文献27】Langerak AW, Bruggemann M, Davi F, Darzentas N, Gonzalez D, Cazzaniga G et al. High throughput immunogenetics for clinical and research applications in immunohematology: potential and challenges. J Immunol 2017; 198: 3765-3774.
【非特許文献28】Kotrova M, van der Velden VHJ, van Dongen JJM, Formankova R, Sedlacek P, Bruggemann M et al. Next-generation sequencing indicates false-positive MRD results and better predicts prognosis after SCT in patients with childhood ALL. Bone Marrow Transplant 2017; 52: 962-968.
【非特許文献29】Kotrova M, Trka J, Kneba M, Bruggemann M. Is Next-Generation Sequencing the way to go for Residual Disease Monitoring in Acute Lymphoblastic Leukemia? Mol Diagn Ther 2017. doi:10.1007/s40291-017-0277-9.
【非特許文献30】Pott C. Minimal Residual Disease Detection in Mantle Cell Lymphoma: Technical Aspects and Clinical Relevance. Semin Hematol 2011; 48: 172-184.
【非特許文献31】Ferrero S, Drandi D, Mantoan B, Ghione P, Omede P, Ladetto M. Minimal residual disease detection in lymphoma and multiple myeloma: Impact on therapeutic paradigms. Hematol. Oncol. 2011; 29: 167-176.
【非特許文献32】Bruggemann M, Gokbuget N, Kneba M. Acute Lymphoblastic Leukemia: Monitoring Minimal Residual Disease as a Therapeutic Principle. Semin Oncol 2012; 39: 47-57.
【非特許文献33】Bruggemann M, Raff T, Kneba M. Has MRD monitoring superseded other prognostic factors in adult ALL? Blood 2012; 120: 4470-4481.
【非特許文献34】van Dongen JJM, Seriu T, Panzer-Grumayer ER, Biondi A, Pongers-Willemse MJ, Corral L et al. Prognostic value of minimal residual disease in acute lymphoblastic leukaemia in childhood. Lancet 1998; 352: 1731-1738.
【非特許文献35】Bruggemann M, Kotrova M. Minimal residual disease in adult ALL: technical aspects and implications for correct clinical interpretation. Hematol Am Soc Hematol Educ Progr 2017; : 13-21.
【非特許文献36】Logan AC, Vashi N, Faham M, Carlton V, Kong K, Buno I et al. Immunoglobulin and t cell receptor gene high-throughput sequencing quantifies minimal residual disease in acute lymphoblastic leukemia and predicts post-transplantation relapse and survival. Biol Blood Marrow Transplant 2014; 20: 1307-1313.
【非特許文献37】Wren D, Walker BA, Bruggemann M, Catherwood MA, Pott C, Stamatopoulos K et al. Comprehensive translocation and clonality detection in lymphoproliferative disorders by next-generation sequencing. Haematologica. 2017; 102: e57-e60.
【非特許文献38】Hardwick SA, Deveson IW, Mercer TR. Reference standards for next-generation sequencing. Nat. Rev. Genet. 2017; 18: 473-484.
【非特許文献39】Gargis AS, Kalman L, Lubin IM. Assuring the quality of next-generation sequencing in clinical microbiology and public health laboratories. J Clin Microbiol 2016; 54: 2857-2865.
【非特許文献40】Endrullat C, Glokler J, Franke P, Frohme M. Standardization and quality management in next-generation sequencing. Appl. Transl. Genomics. 2016; 10: 2-9.
【非特許文献41】Kurtz DM, Green MR, Bratman S V., Scherer F, Liu CL, Kunder CA et al. Noninvasive monitoring of diffuse large B-cell lymphoma by immunoglobulin high-throughput sequencing. Blood 2015; 125: 3679-3687.
【非特許文献42】Pulsipher MA, Carlson C, Langholz B, Wall DA, Schultz KR, Bunin N et al. IgH-V ( D ) J NGS-MRD measurement pre- and early post-allotransplant defines very low- and very high-risk ALL patients. Blood 2015; 125: 3501-3509.
【非特許文献43】Bystry V, Reigl T, Krejci A, Demko M, Hanakova B, Grioni A et al. ARResT/Interrogate: an interactive immunoprofiler for IG/TR NGS data. Bioinformatics 2016; 33: btw634
【非特許文献44】Grupp SA, Kalos M, Barrett D, Aplenc R, Porter DL, Rheingold SR et al. Chimeric Antigen Receptor-Modified T Cells for Acute Lymphoid Leukemia. N Engl J Med 2013; 368: 1509-1518.
【非特許文献45】Tang M, Wang G, Kong SK, Ho HP4. A Review of Biomedical Centrifugal Microfluidic Platforms. Micromachines (Basel) 2016; 7: E26.
【非特許文献46】Langerak AW, Szczepanski T, Van Der Burg M, Wolvers-Tettero ILM, Van Dongen JJM. Heteroduplex PCR analysis of rearranged T cell receptor genes for clonality assessment in suspect T cell proliferations. Leukemia 1997; 11: 2192-2199.
【非特許文献47】Duez M, Giraud M, Herbert R, Rocher T, Salson M, Thonier F. Vidjil: A Web Platform for Analysis of High-Throughput Repertoire Sequencing. PLoS One 2016; 11: e0166126.
【非特許文献48】Lefranc MP, Giudicelli V, Duroux P, Jabado-Michaloud J, Folch G, Aouinti S, Carillon E, Duvergey H, Houles A, Paysan-Lafosse T, Hadi-Saljoqi S, Sasorith S, Lefranc G, Kossida S. IMGTR, the international ImMunoGeneTics information systemR 25 years on. Nucleic Acids Res 2015; 43: D413-22.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
NGSアッセイ、特にアンプリコンに基づくものには、大きな課題があることが分かっている。たとえば、複数のプライマーが同一の反応条件下でアニーリングする必要がある一方、サンプル調製、ライブラリー構築、シークエンシングおよびバイオインフォーマティクス等の多くの技術的変数が導入される可能性があり、不正確な結果をもたらす可能性がある(非特許文献38)。残念なことに、科学的に制御された多施設での標準化および検証はまだ不足している。特に臨床の環境では、NGSアッセイの各構成要素の実験プロトコールおよび品質管理(QC)の標準化のための戦略が強く求められている。
【0007】
標準試料は、NGS技術を臨床に導入する前に、試験結果の分析的妥当性を確保するために、ウェットラボおよびin silicoでのNGSプロセスの評価に不可欠である(非特許文献29、39、40)。参照DNA材料は、シークエンシングをして、質的および量的な特性を測定するために使用できる、再編集の安定的なソースであるべきである。しかし、本発明者らは、これまでに公表されている標準品は、(1)すべてのIG/TR遺伝子座を網羅しておらず、(2)配列決定の品質またはサンプルおよびプライマーの性能を報告していない、かつ/または(3)ネイティブゲノムDNAの複雑さを反映していない可能性がある合成コンストラクトである(非特許文献23、41、42)ため、範囲および有用性が限られていることを認識した。
【0008】
したがって、彼らは、IG/TRの配列データの免疫プロファイル、特に、大量の免疫遺伝学的データを処理し、アノテーションを行うことができ、QCを含む複数の関連統計を算出し、結果を複数の相互接続された視覚化の形で提示することができるウェブベースのインタラクティブな計算プラットフォームであるARResT/Interrogate(非特許文献43)について、現行のシステムで容易に統一することのできる、改善されたタイプの品質管理を提供することを目的とした。さらに具体的には、彼らは、サンプルに直接加えてライブラリー調製とシークエンシングを同時に行うことができ、加えたサンプルと同一の下流の技術的変数に供されるチューブ内での量的および質的な標準として機能する組成物を提供することを模索した。さらに、彼らは、プライマーの使用を追跡し、保存されている参照プロファイルと比較することにより、配列決定中のすべての型のIG/TR遺伝子再構成について、性能の偏りまたは異常な増幅シフトを一律に評価することができる組成物を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのためにも、ユーロクローナリティ-NGSワーキンググループの本発明者らは、IG/TRの利用のためのin vitroアッセイおよびバイオインフォーマティクスの開発、標準化、および検証のために協力した。これは、2つの新規の型の品質管理、IG/IR遺伝子再構成が明確に定義されたヒトB細胞株およびT細胞株に基づくチューブ内集中品質管理/数量管理(cIT-QC)、ならびにIG/TR遺伝子の全レパートリーを代表するリンパ系試料の標準化された混合物に基づくポリターゲット集中品質管理(cPT-QC)の提供をもたらした。
【0010】
したがって、第1の観点では、本発明は、9種の培養細胞株のセットから単離したゲノムDNAの混合物を含む組成物(本明細書では「チューブ内集中品質管理/数量管理(cIT-QC)」ともいう)を提供し、前記セットは、B細胞株であるALL/MIK(B細胞前駆細胞型ALL)、Raji(バーキットリンパ腫)、REH(B前駆細胞型ALL)、TMM(CML-BC/EBV+B-LCL)、TOM-1(B前駆細胞型ALL)、WSU-NHL(B細胞リンパ腫);および3種のT細胞株:JB6(ALCL)、Karpas299(ALCL)、およびMOLT-13(T-ALL)を含むか、または前記セットの1以上の細胞株が、同一の免疫グロブリン(IG)/T細胞受容体(TR)遺伝子再構成、すなわち同一のIG/TR再構成プロファイルを含む1種以上の他の細胞株に置き換えられる。
【0011】
第2の観点では、本発明は、健康なヒト胸腺、健康なヒト扁桃腺、および健康なヒト末梢血単核球から単離した、実質的に等モル量のゲノムDNAからなる組成物(本明細書では「ポリターゲット集中品質管理(cPT-QC)」ともいう)を提供する。
【0012】
本発明による組成物は、当分野で未知であるか、または提案されていない。米国特許出願公開第2018/208984号明細書は、1つのプライマーセットを使用した次世代シークエンシングを用いたIG/TR再構成の検出方法に関する。T細胞株であるJB6、およびMOLT-13のTCR配列を含む既知の対立遺伝子を含むプラスミドのセットが対照として使用される。しかし、cDNAを用いた米国特許出願公開第2018/208984号明細書の対照サンプルは、不完全なTRおよびIG再構成はmRNA分子に転写されないため、包含されない。このような不完全なTRおよびIG再構成は、クローン性の検出およびMRD評価のための補完的なターゲットであるため、本発明では明確なターゲットとしている。たとえば、本発明の対照組成物と異なり、米国特許出願公開第2018/208984号明細書は、再構成TRBD-J、TRDV-D、TRDD-D、TRDD-J、IGK-Kde、およびIGHD-Jの同定および定量をすることができない。
【0013】
Beccuttiら(BMC Bioinformatics,Vol.18,no. 1,2017,pages1-12)は、NGSを用いたIG/TR再構成の検出方法に関する。バフィーコート(末梢血単核球を含む)から単離したDNAを対照として使用する。Beccuttiらは、PBMCではみられない本質的な再構成を含むために、ポリターゲット品質管理組成物中の扁桃腺および胸腺のゲノムDNAを含むことを提案していることは言うまでもなく、さらなる組織源からのDNAの使用については沈黙している。
【0014】
本明細書で提供されるcIT-QC組成物は、多くの独特かつ有利な特性を有する。第1に、選択されたわずか9種の細胞株のセットが合計46の再構成を有し、可能な限り少ない細胞株の代表であって、一方、少なくとも3つの再構成により各ターゲットをカバーしており、したがって、系統に関連するものだけでなく、系統横断的な再構成を有するALL細胞も検出することができる。第2に、サンガー法シークエンシングおよび/またはアンプリコンベースのNGSで再構成を明確に検出できる。第3に、IGH遺伝子再構成の様々な領域は未変異であり、プライマーのアニーリングの問題をただちに回避する。46の再構成のすべてのリストを表1に示す。
【0015】
ゲノムDNAの使用により、本発明の組成物は、PCRアッセイを汚染する深刻な脅威をもたらすことが知られているプラスミドの使用を明確に回避する。さらに、ゲノムDNAは、アッセイの対象であり、ゲノムDNAも含む患者のサンプルを最適に表すために選択された。
【0016】
ゲノムDNAは、当分野で知られる確立された抽出プロトコールを用いて、細胞株から容易に単離される。ある実施形態では、DNAはフェノール-クロロホルム抽出プロトコールを用い、その後のエタノール沈殿、およびトリスエチレンジアミン四酢酸(TE)バッファーへの溶出により得る。組成物は、使用前に液体で再構成するための乾燥(たとえば、凍結乾燥)形態が適している。
【0017】
【0018】
好適な態様では、組成物は、選択された培養細胞株のセットから単離されたほぼ等量のゲノムDNAの混合物を含む。たとえば、cIT-QC組成物は、各細胞株の少なくとも40細胞コピー、好ましくは少なくとも50細胞コピーのDNAを有する試験サンプルを提供するために配合される。対照サンプル中に含まれる細胞の最大コピー数はないが、非常に多くの量のゲノムDNAは、アッセイのシークエンシング能力を大幅に消費する可能性がある。ある実施形態では、cIT-QC組成物は、選択された培養細胞株のセットの細胞株DNAコピーをほぼ同数含み、1反応あたり各細胞株の20~50細胞コピーのゲノムDNAを含む溶液を再構築する(ために配合される)。
【0019】
本明細書で提供されるcIT-QC組成物における使用のためのB細胞株およびT細胞株は、任意の適切な(市販の)ソースから得ることができる。たとえば、Raji細胞株 はDSMZACC319であり、REH細胞株はDSMZACC22であり、TMM細胞株はDSMZACC95であり、TOM-1細胞株はDSMZACC578であり、WSU-NHL細胞株はDSMZACC58であり、Karpas299細胞株はDSMZACC31であり、かつ/またはMOLT-13細胞株はDSMZACC436である。もちろん、表1に示す1以上の細胞株を、同じ再構成を含む(または備える)成長が良い特性を有する別の細胞株に置き換えることもできる。したがって、表1に示す46の再構成型のプロファイルを合わせてカバーする培養細胞株のセットから単離されるゲノムDNAの混合物を含む組成物も含まれる。特に、本発明は、9種の培養細胞株のセットから単離されたゲノムDNAの混合物を含む組成物を提供し、前記セットは、B細胞株であるALL/MIK(B細胞前駆細胞型ALL)、Raji(バーキットリンパ腫)、REH(B前駆細胞型ALL)、TMM(CML-BC/EBV+B-LCL)、TOM-1(B前駆細胞型ALL)、WSU-NHL(B細胞リンパ腫);およびT細胞株:JB6(ALCL)、Karpas299(ALCL)、およびMOLT-13(T-ALL)を含むか、または前記セットの1以上の細胞株が、同一の免疫グロブリン(IG)/T細胞受容体(TR)遺伝子再構成を含む1種以上の他の(すなわち、列挙した9種の細胞株とは異なる)細胞株に置き換えられる。そのような「同等の」細胞型には、表1に示すものと同じ遺伝子再構成、または同じ型のIG/TR再構成、すなわち異なるCDR3が少なくとも含まれる。好ましい態様では、組成物には、B細胞株であるALL/MIK、REH、およびTOM-1から単離されたゲノムDNAが含まれ、各々には系統横断的なTR再構成が含まれる。
【0020】
好ましい実施形態では、組成物は、B細胞株であるALL/MIK、Raji、REH、TMM、TOM-1、WSU-NHL、ならびにT細胞株であるJB6、Karpas299、およびMOLT-13から単離された、好ましくはほぼ等量のゲノムDNAの混合物からなる。
【0021】
さらなる態様では、本発明は、主に、健康なヒト胸腺、健康なヒト扁桃腺、および健康なヒト末梢血単核球(PB-MNC)から単離された、等モル量のゲノムDNAから本質的になるcPT-QC組成物を提供する。言い換えると、これは、1/3胸腺、1/3扁桃腺、1/3末梢血単核球DNAの等モル混合物からなる。本明細書で使用される場合、「健康な」という用語は、悪性免疫基礎疾患または障害を患っていないことがわかっている、または推定されるヒト対象から得た組織をいう。ある態様では、胸腺は、手術のために心臓に到達することが物理的に不可能なため、幼い子供から切除して得られる。
【0022】
各組織について、ゲノムDNAは多くの異なるヒト個体から得るのが好ましい。たとえば、各組織について、3~10人のヒト対象のDNAが使用される。この組成物は「標準化されたリンパ球標本」を表すため、試料と一緒に処理される別のサンプルとして使用されるのが適切であり、試験される通常のサンプルと本質的に同量のDNAを提供するために配合されるのが好ましい。典型的には、50~200ngの範囲が好ましい。特定の態様では、組成物は乾燥、たとえば凍結乾燥される。
【0023】
本明細書で使用される場合、「ほぼ等量」または「本質的に等量」という表現は、ゲノムDNAの混合物中の細胞株/リンパ系組織サンプルがそれぞれ当量であるという目的を反映している。
【0024】
また、本発明は、(1)本発明の「チューブ内集中品質管理/数量管理」(cIT-QC)組成物を含む容器、および/または(2)本明細書で開示される「ポリターゲット集中品質管理」(cPT-QC)組成物を含む容器を含む診断キットも提供する。ある実施形態では、キットには、本明細書で開示されるcIT-QC組成物が少なくとも含まれる。別の実施形態では、キットには、本発明のcPT-QC組成物が少なくとも含まれる。cPT-QC組成物は、1以上のさらなる有用な品質管理組成物と共にパッケージ化されていてもよい。たとえば、クローンIG/TR遺伝子再構成を評価する場合に両方の品質管理をアッセイの性能をモニターするために使用することができるように、さらなる品質管理組成物は、表1に示す46の再構成型のプロファイルを合わせてカバーする培養細胞株のセットから単離されたゲノムDNAの混合物を含み得る。
【0025】
好ましくは、キットは、本明細書で開示されるcIT-QC組成物とcPT-QC組成物の両方を含む。キットは、IG/TR遺伝子再構成を検出するために、IG/TR遺伝子再構成のアンプリコンベースのNGSのためのプライマーセット等の1以上の薬剤を有利にさらに含み得る。特定の実施形態では、診断キットには、本明細書で提供されるQC組成物の一方または両方に加えて、IGH-VJ、IGH-DJ、IGK-VJ-Kde、TRB-VJ、TRB-DJ、TRD、およびTRGからなる群から選択される1以上のIG/TR遺伝子再構成を検出するための1以上のプライマーセットが含まれる。特に好ましいプライマー、たとえば、QC組成物と組み合わせた使用のためのものは、
図5または表3に示すプライマー等のNGSに基づく検出のために最適なものである。
【0026】
本発明は、
図5に示すプライマーから選択される2以上のプライマーを含む、IG/TR遺伝子再構成のアンプリコンベースの次世代シークエンシング(NGS)のためのプライマーセットも提供する。好ましくは、セットには、IGH-VJ、IGH-DJ、IGK-VJ-Kde、TRB-VJ、TRB-DJ、TRD、およびTRGからなる群から選択される1以上、好ましくは2以上、最も好ましくは3以上のIG/TR遺伝子再構成を検出するための少なくとも2つのプライマーを含む。特定の態様では、プライマーセットは、IGH-VJ、IGH-DJ、IGK-VJ-Kde、TRB-VJ、TRB-DJ、TRD、およびTRG遺伝子再構成の各々を検出するためのプライマーを含む。
【0027】
図5のプライマー配列は、ユニバーサルプライマー配列(M13フォワード配列M13フォワードプライマー(-20):GTAAAACGACGGCCAGT;および/またはT7ユニバーサルプライマー:TAATACGACTCACTATAGGG)、または標的配列にハイブリダイズしない当分野で知られるユニバーサルプライマー配列、および/または他のアダプター配列もしくはバーコード配列を含み得る。
【0028】
特定の態様では、本発明のプライマーは、フォワードまたはリバースM13配列を含む。ある実施形態では、
図5のプライマー配列は、5’末端にユニバーサルM13テール、好ましくは配列GTAAAACGACGGCCAGTが含まれる。別の実施形態では、
図5のプライマー配列は、T7プロモーターの配列を備える。特定の態様では、本発明は、表3に示すプライマーから選択される2以上のプライマーセットを提供する。
【0029】
本発明の新規なQC組成物の提供は、品質管理および定量戦略に重要な意味がある。本明細書で以下に説明するように、cPT-QC組成物は、シークエンスプロファイルに検出可能な変化をもたらすので、結果の再現性をモニターするため、ならびにプライマーの乱れおよびウェットラボプロトコールにおける他の偏りを見極めるために価値のあるツールである。各シークエンスにcPT-QCを加えることで、シークエンス後にプライマーおよびアッセイ性能をチェックすることができる。cPT-QCデータの解析により、多重IG/TRプライマーセット中の1つのプライマーの濃度の偶発的な偏りを検出することができ、1つのプライマーの性能低下を追跡することができ、IG/TR解析の結果を評価することができる。
【0030】
さらに、cIT-QCの利点および多様な有用性を示す。プラスミドまたは合成参照鋳型と対照的に、cIT-QC細胞株は多量のゲノムDNAのソースであり、市販されているため、対照として使用するのに特に適している。cIT-QC再構成は、8つのプライマーセットすべてで増幅可能な再構成型の2/3を表しており、したがって、多くの問題、最も明らかな過剰/過少増幅だけでなく、生物情報の誤認を強調する機会を提供する。さらに、cIT-QC再構成は、PCRの安定性のために、患者の免疫レパートリーに影響を与えずに(cIT-QC再構成は生物情報学的に同定され、デフォルトで結果から除外されるため)、バフィーコートDNAに置き換えることができる。
【0031】
cIT-QCは、リード数から細胞数への変換が可能であり、これは臨床使用で最も重要である。MRDマーカーの同定のために解析される診断材料は、サンプルのクローン構成を反映していない大量の特定のクロノタイプを示す可能性がある。たとえば、診断サンプルが、標的となる再構成を有していないリンパ系悪性腫瘍により高度に浸潤している場合、(少数の)残存リンパ系細胞が検出可能な全範囲の再構成を生成するであろう。このような状況では、少数の生理的B細胞またはT細胞クローンは、白血病マーカーを有するクローンとして誤認される場合がある。
【0032】
マーカーの同定における使用に加え、形成不全の追跡サンプルにおけるB細胞およびT細胞の枯渇として例示されるように、cIT-QCは、特に、ポリクローナル遺伝子再編集のバックグラウンドを最小限にするB細胞またはT細胞指向型療法が適用された場合の治療中または治療後のサンプルにおけるMRDの定量化に最適である。正規化をせずに、白血病特異的なリード数対アノテーションされた全リード数の比により相対腫瘍負荷を算出する場合、商は、特定の型の再構成を有する細胞間のみでのマーカーの頻度(たとえば、B細胞が存在する全プール中のIG再構成)を反映し、したがって実際の腫瘍の負荷を過大に評価し得る(非特許文献44)。
【0033】
さらに、QCプロトコールは、容易にARResT/Interrogateに埋め込むことができるが、これは利用者に報告とメッセージを通知し、たとえば、QCに失敗したサンプルを分析に戻し含めることができる。この論理は、「失敗」というフラグは前もって定義されたQC基準を満たさなかったことを知らせるが、必ずしもデータが完全に間違っていることを示すものではないということである。しかし、フラグがついたデータは、使い道または問題点に応じて、常に注意して使用すべきである。
【0034】
したがって、本発明は、IG/TR遺伝子再構成の検出のためのアッセイにおける、本明細書に上記された発明に従った組成物、またはキットの使用にも関する。当業者は、多様な応用を認識し、正しく評価するであろう。ほんの一例として、アッセイは臨床診断アッセイであり、好ましくはクローン性を検出するため、MRDマーカーを同定および/またはMRDモニタリングするため、ならびにリンパ性悪性疾患における(クローン)免疫レパートリーを解析するためのアッセイである。
【0035】
さらなる実施形態は、サンプル調製、PCRおよび/またはライブラリー構築、シークエンシング、およびバイオインフォーマティクス解析の従来のステップを含むが、少なくとも1つのQC組成物が用いられることを特徴とする、NGSを用いた、少なくとも1つの生体サンプルにおけるIG/TR遺伝子再構成を検出するためのin vitroでの方法に関する。たとえば、少なくとも1つの生体サンプルに、たとえば、少なくとも40細胞コピーの各細胞株のDNAをもたらす量のcIT-QC組成物を添加する。チューブ内での品質管理および数量管理としてのそのような使用により、リード数から細胞相関数への変換が可能となるが、これは臨床使用で最も重要である。
【0036】
あるいは、またはさらに、cPT-QC組成物は、少なくとも1つの生体「試験」サンプルと並行して、別のサンプルに添加され、シークエンス後にプライマーおよびアッセイ性能をチェックするための外部参照としてはたらく。
【0037】
典型的には、少なくとも1つの生体サンプルは、臨床的に適切なサンプルである。ある態様では、悪性リンパ増殖の診断を支持または除外するためのクローン性の検出のためのサンプルである。別の態様では、MRDマーカー同定もしくはMRDモニタリング解析、または(クローン)免疫レパートリー解析のために採取されたサンプルである。
【0038】
本明細書で提供される方法は、当分野で知られる標準の手段およびプロトコールを用いて行うことができる。ある実施形態では、方法の少なくとも一部は、マイクロ流体技術を用いて行うことができる。たとえば、サンプル調製、PCR、ライブラリー構築、および/またはシークエンシングは、1以上の予め入れられた薬剤を含むマイクロ流体デバイスで行われる。本発明の方法における使用のために特に好ましくは、CDまたはDVDを含む単一のプラットフォームで分離、混合、反応、およびナノサイズの分子の検出等のプロセスを統合するために使用されるlab-on-a-chip技術のタイプの、遠心マイクロ流体ディスクシステム(当分野では「遠心マイクロ流体バイオチップ」または「遠心マイクロ流体バイオディスク」としても知られる)である。遠心マイクロ流体構造には、バルブ、容積計測、混合、および流れの切り替えを含む様々な典型的なユニットがある。これらのタイプのユニットは、様々な方法で使用され得る構造を作ることができる。分子が薬剤と反応する前に、反応のために分子を調製する必要がある。最も典型的には、遠心力による分離である。血液の場合、たとえば、血漿からの血球の沈殿は、バイオディスクを数分間回転することにより達成できる。分離後、以降のプロセスのためにゲノム材料およびプロテオーム材料を放出するために、すべての分子診断アッセイで細胞/バイアル溶解ステップが必要である。典型的な溶解方法には、科学的方法および物理的方法が含まれる。科学的溶解方法は、最も単純な方法であり、化学的な界面活性剤または酵素を使用して膜を壊す。物理的溶解は、ディスク上のビーズ破砕システムを用いて行うことができる。溶解は、ビーズと細胞の間の衝突および剪断、ならびに溶解チャンバーの壁に沿った摩擦剪断を通じて起こる。
【0039】
ある態様では、ディスクは、DNA抽出、PCR、および/またはライブラリー作成を自動化および統合するために予め入れられた薬剤を含む。たとえばtangらの総説(非特許文献45)を参照されたい。
【0040】
本発明の方法における使用のための代表的なディスクは、国際公開第2013/124258号、国際公開第2014/198703号、国際公開第2015/189280号、国際公開第2015/051950号、および国際公開第2017/191032号等の、Hahn Schickard名義の特許出願に開示されているような特定の特徴を1つ以上有するものが含まれる。
【0041】
本発明の方法では、バイオインフォーマティクス解析は、有利なことに、ウェブベースのインタラクティブアプリケーションの使用を含む。たとえば、バイオインフォーマティクス解析には、生データの前処理、プライマー配列解析、免疫遺伝学的アノテーション、結果の後処理、cIT-QCの解析と使用(マーカーの定量を含む)、cPT-QCの解析と使用(予め解析され蓄積されている参照データセットとの比較を含む)、結果の報告/結果へのアクセス/結果の可視化のために、専用バイオインフォーマティクスアプリケーション(ARResT/Interrogate、または同等物等)の使用が含まれる。
【0042】
本発明は2つの参照/QC標準の応用を示すが、これにより、マーカーの同定において高い再現性、正確性、および精度を有するIG/TR NGSデータの標準解析(たとえば、本明細書で開示されるNGSプライマーセットを用いて)が可能になる。ARResT/Interrogateでは、in vitroアッセイに付随する完全なin silicoの解決法を提供し、これは、リンパ系悪性腫瘍における有効なマーカー同定に必要なすべての品質基準と定量化の概念を含むIG/TR配列の解析を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1(2-2)】cIT-QCおよびcPT-QCの開発および応用のワークフロー、ならびに96穴プレートによる試験データセットの概略図。
【
図2(1-2)】マーカー同定における品質管理および定量のためのSOPの概略図。ライブラリー調製、PCR&NGS。
【
図2(2-2)】ARResT/Interrogateを用いたバイオインフォーマティクス。
【
図3】試験データセットにおけるcIT-QCとマーカーの関係のプロット。A:cIT-QCとマーカー間の%リード率の関係(%)。cIT-QCでの%の分母はジャンクションがあるリードであり、マーカーでの%の分母は、cIT-QCのリードを除いたジャンクションがある「使用可能な」リードと呼んでいるものである。これにより合計が100%を超える。B:細胞の割合に正規化する前後のマーカーの量。
*正規化により値が100%を超える場合がある。
【
図4(1-4)】ALLにおけるマーカー同定のためのIG/TR NGSアッセイの多施設検証のためのワークフローの概略図。IGおよびTR遺伝子再構成は、多重PCRアッセイを用いた2ステップアプローチで増幅される。各参画研究室は、ALLを有する10人の患者でNGSベースのIG/TR MRDマーカー同定を行った。本発明のポリターゲット集中品質管理(cPT-QC)組成物を使用してプライマー性能をモニターし、ライブラリー特異的な品質管理および較正機能として、本発明のチューブ内集中品質管理/数量管理(cIT-QC)を各サンプルに添加した。96穴フォーマットでピペッティングをした。データ解析は、ARResT/Interrogateを使用して行った。
【
図4(2-4)】ALLにおけるマーカー同定のためのIG/TR NGSアッセイの多施設検証のためのワークフローの概略図。IGおよびTR遺伝子再構成は、多重PCRアッセイを用いた2ステップアプローチで増幅される。各参画研究室は、ALLを有する10人の患者でNGSベースのIG/TR MRDマーカー同定を行った。本発明のポリターゲット集中品質管理(cPT-QC)組成物を使用してプライマー性能をモニターし、ライブラリー特異的な品質管理および較正機能として、本発明のチューブ内集中品質管理/数量管理(cIT-QC)を各サンプルに添加した。96穴フォーマットでピペッティングをした。データ解析は、ARResT/Interrogateを使用して行った。
【
図4(3-4)】ALLにおけるマーカー同定のためのIG/TR NGSアッセイの多施設検証のためのワークフローの概略図。IGおよびTR遺伝子再構成は、多重PCRアッセイを用いた2ステップアプローチで増幅される。各参画研究室は、ALLを有する10人の患者でNGSベースのIG/TR MRDマーカー同定を行った。本発明のポリターゲット集中品質管理(cPT-QC)組成物を使用してプライマー性能をモニターし、ライブラリー特異的な品質管理および較正機能として、本発明のチューブ内集中品質管理/数量管理(cIT-QC)を各サンプルに添加した。96穴フォーマットでピペッティングをした。データ解析は、ARResT/Interrogateを使用して行った。
【
図4(4-4)】ALLにおけるマーカー同定のためのIG/TR NGSアッセイの多施設検証のためのワークフローの概略図。IGおよびTR遺伝子再構成は、多重PCRアッセイを用いた2ステップアプローチで増幅される。各参画研究室は、ALLを有する10人の患者でNGSベースのIG/TR MRDマーカー同定を行った。本発明のポリターゲット集中品質管理(cPT-QC)組成物を使用してプライマー性能をモニターし、ライブラリー特異的な品質管理および較正機能として、本発明のチューブ内集中品質管理/数量管理(cIT-QC)を各サンプルに添加した。96穴フォーマットでピペッティングをした。データ解析は、ARResT/Interrogateを使用して行った。
【
図5A-1】再編集およびプライマーセットの一覧図、および調査した各遺伝子座のジャンクションヌクレオチド長を示すヒストグラム。5A-1は、IGH-VJおよびIGH-DJの再構成の一覧図である。VHファミリープライマー、DHファミリープライマー、およびコンセンサスJHプライマーの相対的な位置は、関連するRSSの最上流(-)または最下流(+)の5’ヌクレオチドによる。
【
図5A-2】BCP-ALL患者、cPT-QC、BC、胸腺、および扁桃腺の完全なIGH再構成(IGH-VJチューブ)のジャンクションヌクレオチド長を示すヒストグラムである。バーはV-J遺伝子の組み合わせに従って彩色されている。
【
図5A-3】BCP-ALL患者、cPT-QC、BC、胸腺、および扁桃腺の不完全なIGH再構成(IGH-DJチューブ)のジャンクションヌクレオチド長を示すヒストグラムである。バーはD-J遺伝子の組み合わせに従って彩色されている。
【
図5B-1】IGK-VJ再構成および2タイプのKde再構成(V-KdeおよびイントロンRSS-Kde)の一覧図である。VK、JK、Kde、およびイントロンRSS(INTR)プライマーの相対的な位置は、関連するRSSの最上流(-)または最下流(+)の5’ヌクレオチドによる。
【
図5B-2】B-ALL患者、cPT-QC、BC、胸腺、および扁桃腺のIGK-VJおよびIGK-V-Kde再構成(IGK-VJ-Kdeチューブ)のジャンクションヌクレオチド長を示すヒストグラムである。バーはV-J-Kde遺伝子の組み合わせに従って彩色されている。
【
図5B-3】BCP-ALL患者、cPT-QC、BC、胸腺、および扁桃腺のイントロン-Kde再構成(イントロン-Kdeチューブ)のジャンクションヌクレオチド長を示すヒストグラムである。
【
図5C-1】TRB-VJ再構成およびDJ再構成の一覧図である。TRB Vファミリープライマー、TRB Dプライマー、およびTRBプライマーの相対的な位置は、関連するRSSの最上流(-)または最下流(+)の5’ヌクレオチドによる。
【
図5C-2】T-ALL患者、cPT-QC、BC、胸腺、および扁桃腺の完全なTRB再構成(TRB-VJチューブ)のジャンクションヌクレオチド長を示すヒストグラムである。バーはV-J遺伝子の組み合わせに従って彩色されている。
【
図5C-3】T-ALL患者、cPT-QC、BC、胸腺、および扁桃腺の不完全なTRB再構成(TRB-DJチューブ)のジャンクションヌクレオチド長を示すヒストグラムである。バーはD-J遺伝子の組み合わせに従って彩色されている。
【
図5D-1】TRG V-J再構成およびTRG VおよびTRG Jプライマーの相対的な位置の一覧図である。TRG VプライマーおよびTRG Jプライマーの相対的な位置は、関連するRSSの最上流(-)または最下流(+)の5’ヌクレオチドによる。
【
図5D-2】T-ALL患者、cPT-QC、BC、胸腺、および扁桃腺のTRG再構成(TRGチューブ)のジャンクションヌクレオチド長を示すヒストグラムである。バーはV-J遺伝子の組み合わせに従って彩色されている。
【
図5E-1】VD、JD、DD、およびJA29プライマーの位置を示す、VD-JD、DD-JD、DD-DD、およびVD-DD、VD-JA29再構成の一覧図であり、全て1つのチューブ内に合わせられている。Vd、Dd、およびJdプライマーの相対的な位置は、関連するRSSの最上流(-)または最下流(+)の5’ヌクレオチドによる。
【
図5E-2】T-ALL患者、cPT-QC、BC、胸腺、および扁桃腺のTRD再構成(TRDチューブ)のジャンクションヌクレオチド長を示すヒストグラムである。バーはV-D-J遺伝子の組み合わせに従って彩色されている。
【
図6】ALLにおけるMRDマーカー同定のための多施設検証の結果である。左側のカラム:サンガー法シークエンシングにより同定されたインデックス配列。右側のカラム:NGSにより同定されたインデックス配列。カラムの最も暗い色の部分は、両方法により同定されたクローン配列を反映し、最も明るい色の部分は、それぞれの方法によってのみ同定された配列である。中間の色の部分は、両方法により同定されたクローン配列であるが、NGSでは正規化後に5%未満であったものである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
(実施例1:チューブ内集中品質管理/数量管理(cIT-QC)の設計および生産)
【0045】
ソースおよび方法
米国培養細胞系統保存機関(ATCC;www.lgcpromochem-atcc.com、マナッサス、VA、米国)およびドイツ微生物・細胞培養コレクション有限会社(DSMZ;www.dsmz.de、ブラウンシュワイク、ドイツ)から、合計で59のヒトBリンパ系細胞株(n=30)およびTリンパ系細胞株(n=29)を得た。フェノール-クロロホルム抽出プロトコールを用いて培養細胞株からDNAを単離し、続いてエタノール沈殿およびトリスエチレンジアミン四酢酸(TE)バッファーへの溶出を行った。あるいは、GenElute Mammalian Genomic DNA Miniprep Kit(Sigma-Aldrich社、セントルイス、MO、米国)で、メーカーのプロトコールに従ってDNAを単離した。
【0046】
細胞株特異的なクローンIG/TR遺伝子再構成の同定
59細胞株の各々は、各細胞株からの100ngのDNA(Thermo Fisher Scientific社のQubit3.0で定量)で、バフィーコート(BC)を添加せずに、前述のユーロクローナリティ-NGSアッセイを用いてクローンIG/TR遺伝子再構成のスクリーニングを行った。1サンプル当たり少なくとも2000リードとなるように、ライブラリー当たり7pMの終濃度で、Illumina MiSeq(Illumina社、サンディエゴ、CA、米国)でペアエンドシークエンシング(2×250bp)を行った。低複雑性のライブラリーの問題を避けるために、10%PhiXコントロールを各配列決定に加えた。
【0047】
細胞株特異的なクローンIG/TR遺伝子再構成の検証
さらなる方法を用いて、NGSアンプリコン同定の細胞株再構成を検証した。
1.ユーロクローナリティ-NGSワーキンググループで確立された、IG/TR遺伝子座のV、D、およびJコード遺伝子をカバーする、キャプチャーベースのプロトコール;要するに、細胞株DNAを断片化し、KAPA Hyperplus KitおよびLibrary Amplification(Roche Sequencing Solutions、プレザントン、CA、米国)で処理し;Wrenら(非特許文献37)に基づいて開発されたカスタムSeqCap EZ Choice Probes(Roche Sequencing Solutions、プレザントン、CA、米国)でライブラリーのハイブリダイゼーションを行い、Illumina NextSeqで2×150bpのペアエンドシークエンシングを行った。
2.BIOMED-2プロトコールに従った多重増幅およびサンガーシークエンシング:PCR産物は、QIAXCEL Advanced System(非特許文献11、46)で断片サイズおよびクローン性を確認した。クローンPCR産物にヘテロ二本鎖分析を行い、ABI3130またはABI3500プラットフォーム(Applied Biosystems、フォスターシティ、CA、米国)のいずれかでシークエンスした。
【0048】
異なる方法で得られたすべての細胞株のIG/TR再構成プロファイルを比較した。
【0049】
ヒトB細胞株およびT細胞株の細胞株特異的な遺伝子再構成のddPCRによる検証
3つの方法間での結果の食い違いについて、それぞれの再構成を検証するために、IG/TR対立遺伝子特異的なPCRアッセイを、デジタルドロップレットPCR(ddPCR)(QX200TM Droplet DigitalTM PCR System、Bio-Rad)で設計した。ddPCRによるIG/TR再構成の絶対的な定量は、2つの異なる量のgDNA(50ng、100ng)を用いて行われた。各々の実験には、ポリクローナルバフィーコートBC対照および鋳型なしの対照が含まれた。
【0050】
クローンIG/TR再構成のための対立遺伝子特異的なプライマーおよび定量のためのプローブは、Sigma Aldrichにより合成された。全てのプライマーは脱塩精製され、一方、5’-FAM/3’-TAMRAレポーター色素を有する加水分解プローブはHPLC精製された。すべてのオリゴヌクレオチドはTEバッファーに再懸濁し、総鎖濃度Ct=100μMとし、使用するまで-20℃で保存した。
【0051】
10μLの2×ddPCR SuperMix(Bio-Rad Laboratories、ハーキュリーズ、CA)、事前にQubit dsDNA High Sensitivity Assay Kit(Thermo Fisher Scientific、ウォルサム、MA)で定量した試験する2つの異なる量の細胞株gDNA(50ng/500ng)、それぞれ終濃度が300nmol/Lのフォワードプライマー(FP)およびリバースプライマー(RP)、ならびにFAMを付したプローブ(100nmol/L)を用いて20μLの容量でddPCR反応を調製した。ドロップレットは、20μLの反応混合物および70μLのプローブ用ドロップレット生成オイル(Bio-Rad)を使用して、QX200ドロップレット生成装置(Bio-Rad)により生成され、DG8カートリッジ(Bio-Rad)の適切な穴上に配置される。約45μLのドロップオイル混合物(12,000~20,000ドロップ)を96穴プレート(Bio-Rad)に移し、次の増幅プロトコールでDNA Engine Dyad Peltier Thermal Cycler上に配置された:95℃で10分間、続いて、94℃で30秒間変性、60℃で1分間アニーリング、60℃で1分間伸長を40サイクル。PCR産物はQX200ドロップレットリーダーに送り込まれ、QuantaSoft Version 1.2 (Bio-Rad Laboratories)により解析された。
【0052】
細胞株混合物の調製
初めに、Qubit dsDNA High Sensitivity Assay Kit(Thermo Fisher Scientific、ウォルサム、MA)により、選択したB細胞株およびT細胞株のDNAの定量を行った。1μLのDNAあたりの細胞数を正確に測定するために、50~200ng DNA/細胞株を使用したddPCRに基づくアルブミンハウスキーピング遺伝子の定量により、定量値を再確認した。アルブミンの定量のためのプライマーおよびプローブはSigma Aldrichにより合成された。上述のプロトコールに従い、各細胞株につき2回繰り返して、ddPCRを行った。PCRの完了後、20μLの反応容量あたりの細胞株のコピー数に関して、サンプルをドロップレットリーダーで解析した。ddPCRからの値に基づき、細胞株DNAをTEバッファーで希釈して400コピー/μLにした。その後、別途のddPCR定量を行い、各細胞株DNAの希釈の確認を再度行った。インプット量として、2つの異なる容量の細胞株の希釈液(0.5μL DNA[200コピー]および2μL DNA[800コピー])を使用した。適切な定量値で、細胞株DNAをさらに希釈して混合し、2μLのDNA混合物中に各細胞株が40コピー存在するようにした。この混合物をcIT-QCとして各サンプルに加え、シークエンス前に同時のライブラリー調製に供した。
【0053】
cIT-QCの実行
バイオインフォーマティクス的には、cIT-QCリードは、数値計算であって不正確な可能性のあるアライメントベースのアプローチを回避し、配列の変化を許容する、極めて高速な免疫遺伝学的なアノテーションベースのアプローチを用いて同定される。ARResT/Interrogateでは、「スパイクイン」という用語もcIT-QCを指す用語として使用される。
【0054】
QCに関しては、cIT-QC再構成あたり少なくとも1つのリードの同定、および少なくとも使用した総細胞数と同数の総cIT-QCリードの同定が必要であり、そうでなければ、サンプルに「QC失敗」のタグがつけられる(ARResT/Interrogateでの使用方法について以下を参照)。定量化係数-総cIT-QC細胞数を総リード数で割って算出-は保存され、任意のケースに適用されるため、ユーザーはサンプルを解析することができる。
【0055】
定量は、定量化係数を適用してクロノタイプのリード数を細胞数に変換し、総インプット細胞に対する相対存在量を算出することに基づく。
【0056】
(実施例2:ポリターゲット集中品質管理(cPT-QC)の設計および生産)
【0057】
ソースおよび方法
健康なヒト胸腺、健康なヒト扁桃腺、および健康なヒト末梢血単核球から単離したゲノムDNAからなるcPT-QC組成物を調製した(DNA量は1:1:1の比で混合)。そのために、組織の切断および細分化後に、またはフィコール密度血液分離後に得られた細胞懸濁液で、(半)自動化ゲノムDNA抽出を行った。
【0058】
cPT-QC組成物は、調査サンプルと一緒にNGSライブラリー調製に用いるのに適している。ユーロクローナリティ-NGSアッセイでは、1回のランあたり、1つのcPT-QCサンプルを8つのチューブで増幅する。
【0059】
cPT-QCの実行
8つのcPT-QCチューブの各々のリードにおいて、プライマーはバイオインフォーマティクス的に同定され、その存在量を保存されたcPT-QC参照結果と比率の検定を用いて比較した。
【0060】
保存された参照結果は、cPT-QCサンプルの解析からのARResT/Interrogateのアウトプットである。これらの結果は、技術的なばらつきを調整するために各研究室で繰り返し実行して確認すべきである。ユーザーにより不用意にバイオインフォーマティクス解析が損なわれないことを確実にするために、生データではなく結果が保存され、これは、新しいランとの互換性を確実にするために、ARResT/Interrogateの主要なリリースごとに結果が更新されることを意味する。
【0061】
特定のプライマーまたは特定のプライマーセットの存在量の問題は、対応するcPT-QCサンプルおよび同じライマーセットのすべてのユーザーサンプルを「QC失敗」としてタグ付けするために使用される。
【0062】
反復試行
このタイプのQCでは再現性が重要であり、cPT-QCが反復試行される。5’プライマーの相対的存在量を、比率の検定を用いて比較した。
【0063】
プライマー摂動による実行
プライマー性能の問題を検出するためのcPT-QCの有用性を評価するために、プライマー濃度の摂動を人為的に作り、プライマーのピペッティングの失敗、または誤ったプライマー濃度のピペッティングを模した。
【0064】
まず、5’プライマーの使用をcPT-QCサンプルで解析し、2つのプライマーしか有しないイントロン-Kdeプライマーセットは抜かして、異なる存在量の2つのプライマーを各プライマーセットから選択した;IGH-VJ-FR1-M-1、IGH-V-FR1-O-1;IGH-D-B-1、IGH-D-E-1;IGK-V-G-1、IGK-V-I-1;TRB-V-AD-1、TRB-V-G-1;TRB-D-A-1、TRB-D-B-1;TRG-V-F-1、TRG-V-E-1;TRD-D-A-1、TRD-V-B-1。それらのプライマーは、プライマープールから完全に除く、濃度を10%に減少させる、および200%に増加させることにより摂動させた。5’プライマーの相対的存在量は、比率の検定を用いて、これらの摂動させたセットおよびcPT-QCと比較した。
【0065】
試験データセットの作成
前述のコンセプトおよび機能性を評価および紹介するために、以下のサンプルからなるデータセットを作成した。
1.白血病細胞の含有量が高い4つの診断用骨髄B-/T-ALLサンプル(日常的な細胞形態学的に評価で白血病の浸潤が60~80%)。
2.B/T細胞標的治療後のB/T細胞形成不全の患者の4つのサンプル。B細胞形成不全の2つのサンプルはリツキシマブ(抗CD20)治療後のCLLサンプルであり、T細胞形成不全の2つのサンプルは、アレムツズマブ(抗CD52)治療後のT-PLL(前リンパ球性白血病)サンプルである。これらのすべてのサンプルにおいて、フローサイトメトリーにより系統特異的な形成不全を確認した。
3.すべてのIG/TRプライマーセットのためのcPT-QCであるが、TRB-VJプライマーセットの結果は、上述の検証実験での摂動結果と入れ替えられている。一般的なQCの機能性を紹介するために、診断サンプルの1つから1000未満のランダムなリードを人為的に選択した。
【0066】
方法論
診断サンプルおよびcPT-QCをすべてのプライマーセットと共にランする一方、形成不全の追跡サンプルは、対応するプライマーセット、すなわち、B細胞形成不全のサンプルのためのIGセット、およびT細胞形成不全のサンプルのためのTRセット(
図1、試験データセットに示す)と共にのみランする。さらに、追跡サンプルは、cIT-QC組成物の添加が、免疫遺伝学的プロファイルを損なうことなく、シークエンシングのためのサンプルの安定化に十分であるか否かを試験するために、バフィーコート(BC)を添加せずにランした。この目的のために、
図2に可視化したプロトコールに従った。
【0067】
cPT-QCを用いたプライマー性能評価
cPT-QC、BC、それらの複製、およびプライマー摂動を伴うライブラリーに適用された5’プライマーの相対的存在量の比率の検定は、摂動されていないプライマーと摂動されたプライマーのセット間でp値に明らかな違いがあることを示した。言い換えると、摂動されたプライマーの存在量の差異のp値が顕著に低い。表2は、結果を簡略化して表したものであり、プライマーの通常の挙動を示すか、または異常な挙動を検討するために、プライマーセットあたりの摂動されたプライマー、および少なくとも1つの他の摂動されていないプライマーの存在量に焦点を当てたものである。すべてのプライマーセットにおける5’プライマーの存在量の割合。上側のグループのプライマーは摂動されており、下側のグループは摂動されていないままの選択されたプライマーであり、プライマーセットごとにアルファベット順に選択された1つ、さらにプライマーの挙動が議論の対象となる2例である(テキスト参照)。結果:cPT-QC反復試行(3番目のカラム);対プライマー除外サンプル(「0%」、4番目のカラム)、対プライマーを10%に減少させたサンプル(5番目のカラム)、対プライマーを200%に増加させたサンプル(6番目のカラム)を示す。比率の検定につながった割合の変化(個別に+/-として示す)。
【0068】
p値の閾値が1e-200の場合、cPT-QCでフラグ付けされるプライマーはなく、アッセイの再現性が協調される一方、摂動シナリオでは、すべての摂動されたプライマーがフラグ付けされる。実際、摂動比較で複数のゼロ値(いくつかの例外を除き主に200%摂動)と比較して、通常のサンプルで最も低いP値は、TRD-V-A-1プライマーの7.86e-142である(表2)。存在量の有意な変化は、それらのプライマーが他のプライマーの摂動により間接的に影響されたという最も可能性の高い説明で、別の細胞でも見られた。つまり、当初の存在量のプライマーが除かれた場合に、IGH-VJ-FR1-M-1が摂動された場合のIGH-V-FR1-D-1のように、特にそれらのプライマーが遺伝子の部分的に重複するリストを増幅するため、あるプライマーが「引き継ぐ」。
【0069】
ARResT/InterrogateにおけるQC側面の評価
cPT-QCとcIT-QCの両方に基づくin silicoでの品質管理の情報は、ARResT/Interrogateで入手可能であり、「QC失敗」のサンプルは、ユーザーが意図せずに使用することを警告し、防ぐため、規定設定で除外されている。しかし、ユーザーにはそれらを解析に戻し含めるオプションが通知され、選択肢を有する。
【0070】
一般的な品質管理はサンプルにも行われ、特に生のリード数が少ないこと、およびジャンクションが同定されたリードの割合が少ないことをチェックする。そのようなサンプルも、「QC失敗」としてタグ付けされる。
【0071】
【0072】
(実施例3:マーカーの同定および定量)
リンパ球亜群の存在量は、リンパ系腫瘍の患者のサンプルではわからないことが多い。さらに、IG/TR NGSは再構成の相対的な表現のみを反映するため、シークエンシングのリードをインプットDNA細胞に対して正規化することができるであろう較正機能を確立することが重要であった。これは、少数のリンパ系細胞にのみ存在する再構成をもっぱらカバーするチューブ(特にTRDおよびイントロン-Kdeチューブ)では特に重要である。TRD遺伝子は、正常のB細胞では再構成されておらず、ほとんどのTRαβ細胞では削除されている。したがって、特に小児期に正常のTCRγδT細胞レパートリーが著しく偏っている場合、オリゴクローナルTCRγδT細胞は、TRD NGSアッセイでは優勢なクローン型を生み出し得る。ここで、cIT-QCに基づく存在量の修正が、少数のTCRγδT細胞群からの(少数の)クローンTRD再構成を、さらなるMRD解析のマーカーとなるであろう白血病性の再構成として誤認定するのを避けるために最も重要である。
【0073】
試験データセットの解析は、マーカーの同定および定量におけるcIT-QCの有用性を示した。cIT-QCなしで、単にリード数に基づいた場合、診断サンプルおよび形成不良サンプルの両方とも、オリゴクローナルであるようである(
図3)。しかし、全ての形成不良サンプルおよびいくつかの診断サンプルにおいて、非常に限られた数のcIT-QC細胞(120~144、プライマーセットあたりのcIT-QC再構成の数による)からの非常に多くのリード数は、それらのサンプル中に、特定のIG/TR遺伝子座の再構成を有する患者に関するインプット細胞が限定された数であることを、間接的であるが明らかに示している。別の見方では、cIT-QCの総リード率は、これらのサンプルにおける再構成のものよりかなり高く、これは、cIT-QC細胞の数も患者に関するインプット細胞の数より多いことを示唆している。実際、cIT-QCでの定量後、細胞の存在量はクローン性を示す閾値よりも大きく下回る。一方、想定した通り、診断サンプルでは、cIT-QC配列は少数である。したがって、cIT-QCでは、ある再構成の存在量をより正確に決定し、細胞の存在量に再計算することができる。
【0074】
さらに、5つの熟練したユーロMRD ALL参考研究室が、50の診断ALLサンプルでIG/TR NGSを行い、結果を、日常的なIG/TRサンガーシークエンシングでの結果と比較した。cPT-QC組成物を使用してプライマー性能をモニターし、ライブラリー特異的な品質管理および較正機能として、各サンプルにcPT-QCを添加した。サンガーシークエンシングでは248(平均5.0/サンプル、0~14の範囲)であったのに対し、NGSは259(平均5.2/サンプル、0~14の範囲)のクローン配列を同定した。サンガーとNGSの全体的な一致は、非検出のライブラリーを含めて、78%であった。
【0075】
(実施例4:ALLにおけるMRDマーカーの同定のためのIG/TR NGSアッセイの開発および多施設検証
本実施例は、バイオインフォーマティクス、および急性リンパ性白血病(ALL)におけるMRDマーカー同定のための検証を含む、IG/TRアッセイの開発および設計を説明する。5つのユーロMRD ALL MRD参考研究室が、50の診断ALLサンプルでIG/TR NGSを行い、結果を、日常的なIG/TRマーカーのスクリーニング、およびサンガーシークエンシングでの結果と比較した。cPT-QC組成物を使用してプライマー性能をモニターし、ライブラリー特異的な品質管理および較正機能として、各サンプルにcPT-QC組成物を添加した。検証研究の全体的なワークフローを
図4に示す。
【0076】
(材料および方法)
アッセイ設計の基本コンセプト
DNAレベルでのIG/TR配列解析のための、すべてのリンパ系腫瘍に適用できる普遍的なアンプリコンベースのNGSアプローチを開発することを目的として、IG重鎖(IGH)、IGカッパ(IGK)、TRベータ(TRB)、TRガンマ(TRG)、およびTRデルタ(TRD)について、適用できる限り完全および不完全な再構成を含む複数のIG/TR遺伝子座についてのアッセイを設計した。IGラムダ(IGL)は、他のIG遺伝子座に対する相補性が限定されているため、および多様性が少ないため、除外した。TRアルファ(TRA)は、そのかなりの複雑さのためにDNAレベルでの合理的な多重PCR法を妨害するため、除外した。
【0077】
IGH遺伝子座は2ステップで再構成されている(
図5A)。1つのIGH-D遺伝子とIGH-J遺伝子の最初の結合の後、IGH-V遺伝子が不完全なIGH-DJ再構成に結合し、完全なIGH-VJ再構成となる。完全なIGH再構成の増幅のために、FR1、FR2、およびFR3領域に位置するプライマーを設計したが、ここで我々はALLにおけるマーカー同定のためのFR1アッセイについて説明する。IGH-DJ再構成は別の多重PCR反応で増幅する。IGK軽鎖の遺伝子座は、機能的なIGKVおよびIGKJ遺伝子と、IGKV遺伝子に再構成することができるいわゆるカッパ削除エレメント(Kde)、またはIGK対立遺伝子の機能的な不活性化をもたらすIGKJ-IGKCイントロン中の組換えシグナル配列(RSS)から構成される(
図5B)。IGKVフォワードプライマーは、1度の多重反応においてIGKJおよびKdeリバースプライマーと組み合わせて使用するために設計されており、フォワードイントロンRSSプライマーとリバースKdeプライマーで第2のPCRが開発された。
【0078】
TRBの遺伝子座も、最初の不完全なTRB-DJ再構成の構成と、それに続く完全なTRB-VJ再構成の2ステップのプロセスを特徴とする。不完全および完全なTRB再構成は、2つの別々な多重PCR反応において検出されるように設計された(
図5C)。TRG遺伝子座再構成は、限られた数のTRGVおよびTRGJ遺伝子を有するワンステップのVJ組換えであるため、1度の多重アッセイを開発することができた(
図5D)。最後に、TRD遺伝子座では、完全なVJ再構成の前に、DD、VD、およびDJ再構成が起こる。さらに、あるTR遺伝子がTRDJおよびTRAJを再構成することができ、通常TRAJ29を有するTRDV-TRAJ再構成も起こり得る。これらの再構成はすべて、1度の多重PCRアッセイで増幅するように設計されている(
図5E)。バイオインフォーマティクスのプラットフォームであるARResT/Interrogate(非特許文献43)は、多面的な活性を促進するためにユーロクローナリティ-NGSワーキンググループ内で既に新規に開発されているが、以下に説明するように、本研究のためにさらに適合された。
【0079】
プライマー設計およびプライマー性能の技術的検証
プライマーは遺伝子特異的に設計したが、対立遺伝子の異型がある場合には、多重化を促進するように縮重プライマーを設計した。同様の理由で、プライマーの中央または5’末端の1つのミスマッチは許容される。表3は、
図5のヌクレオチド配列およびさらなるアダプター配列(フォワードまたはリバース)を含むプライマー配列を示す。当業者は、実施例が単なる例示であり、実施例の具体的な方法の多くのバリエーションが可能であることを認識するであろう。たとえば、実施例で使用されるようなプライマーの一部としてM13配列を使用する必要はない。これは、任意の他の既知のDNA配列に置き換えることができる。
【0080】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【0081】
プライマー3(非特許文献31)、プライマーデジタル(PrimerDigital Ltd、ヘルシンキ、フィンランド)、MFEprimer-2.0(非特許文献32)、およびオリゴ(Molecular Biology Insights, Inc.、コロラド、米国)を使用して、プライマーの特異性および多重性を確認した。プライマーの設計基準は、全ての遺伝子座について、以下に従った:プライマー融解温度を57~63℃とする;最終アンプリコンが比較可能なサイズになるようにする;プライマー長を20~24ntとする;プライマーダイマーの回避;生殖系配列からより大きなヌクレオチドが削除される再配列のために検出されないのを避けるために、3’プライマー末端とジャンクション領域の最小距離を、好ましくは10~15bp超とする;1塩基多型が知られている領域を避けて、同一のプライマーがV、D、またはJ遺伝子それぞれの全ての対立遺伝子にアニーリングできるようにする;好ましくは、再構成されることが知られているすべてのV、D、およびJ遺伝子と、IGKのイントロンRSSおよびKde領域を標的とする。
【0082】
in silicoでの設計に続いて、プライマーはまず、原発性の患者のサンプルまたは定義された再構成を有する細胞株を使用して、単一および多重の反応で試験した。そのようなサンプルが入手できない場合は、健康な扁桃腺または単核のDNAサンプルを使用した。その後、再構成された細胞株、および多くの異なるV、D、および/またはJ遺伝子をカバーする定義された再構成を有する診断サンプルの混合物から、オリゴクローナルな鋳型プールを作製した。あるいは、いくつかの遺伝子座について、可能な限り多くの異なる再構成をカバーするプラスミドのプールを作製した。これらの多標的プールにより、反応条件および/またはプライマー濃度を良好に調整して、比較可能な増幅効率を評価することができる。この反復の試験プロセスにより、プライマーが余分であるとわかった場合には、プライマーの削減ももたらす。さらに、限られた数のモノクローナルおよびポリ/オリゴクローナルのサンプル、ならびに異なるシークエンシングプラットフォームでの多施設試験が行われ、プライマーミックスおよびプロトコールのロバスト性の評価を行うことができた。
【0083】
プラットフォームに依存しないことを目的としたアッセイが設計されたため、2ステップPCRが採用され、多数のバーコードが必要となる場合であっても、シークエンスアダプターを切り替えて、プライマーの総数を減らすことができた。また、現在のシークエンサーでシークエンシング可能な最大リード長を基準に最大アンプリコン長を定義した。PCR条件は、すべての反応に共通の最適条件を見つけることを目的に最適化されており、したがって、並行したライブラリー調整が可能である。第1および第2回PCRにおける多様なPCRサイクル数、種々のポリメラーゼ、およびいくつかのライブラリー調整方法を試験し、比較した。
【0084】
本研究は、もっぱらIllumina MiSeqで行ったが、同じPCRパネルの適応性をIonTorrent機器(ThermoFischer Scientific)で、単一施設で試験し、ワンステップのIllumina MiSeq PCR法も単一施設で試験した。
【0085】
ALLにおけるMRDマーカーの同定のためのアッセイの多施設検証
ユーロクローナリティ-NGSを熟練した5つの研究室が、ALLにおけるIG/TRマーカー同定のための最適化されたアッセイを、標準技術と比較して、ロバスト性および適応性を試験した。すべての研究室(ブリストル/ロンドン、パリ、モンツァ、プラハ、およびキール)は、ユーロMRDコンソーシアムのメンバーであり、ALL MRD解析の参考研究室である。各参画研究室は、BまたはT系統のALLを有する10人の患者で、NGSベースのIG/TR MRDマーカーの同定を行った。主要な標準作業手順は、すべての研究室で厳密に守られた。本研究は、Illumina MiSeq (2×250bp v2キット)を用いて行われた。NGS解析は、標準ガイドライン(非特許文献11)に従った従来のPCRおよびクローン産物のサンガーシークエンシングと完全に並行して行われた。2つの方法間で不明な矛盾する結果である場合の一部について、それぞれのクローン再構成が白血病の大部分を表しているか否かを明らかにするために、対立遺伝子特異的なPCR解析(デジタルドロップレットPCRまたはリアルタイム定量PCRのいずれか)を設計した。ユーロMRDガイドラインを使用して、対立遺伝子特異的PCRアッセイ(非特許文献33、34)を設計し、解釈した。
【0086】
(結果)
プライマー設計およびプライマー性能の技術的検証
試験および検証の段階の結果に基づき、最終的なIG/TRプライマーミックスは、92のフォワードプライマーおよび30のリバースプライマー(後者の15個は異なるチューブのペアで使用する)の8つのチューブからなる。プライマーの位置および配列を
図5および表3に示す。
【0087】
品質管理組成物の実施
強い増幅、ライブラリー調整、およびシークエンシングの品質管理は、これらの複合アッセイに最も重要である。同一の反応条件下で異なるプライマーが機能する必要がある一方、サンプルの特性および配列によりさらなるばらつきが導入され得る。プライマー性能は長期的にモニターする必要があり、クローンの存在量を正確に推定するために、入力分子あたりのシークエンスリード数に補正することが重要である。
【0088】
これらの問題を解決するために、2種類の品質管理組成物を含めた:(i)実施例1のcIT-QCをライブラリーコントロールおよび較正機能として各チューブに添加し、かつ(ii)実施例2のcPT-QCを並行してランし、一般的なプライマー性能およびシークエンシングをモニターした。
【0089】
研究室プロトコール
プライマーは、ユニバーサルおよびT7リンカー配列が末尾に付加されており、8つのチューブ(IGH-VJ、IGH-DJ、IGK-VJ-Kde、イントロン-Kde、TRB-VJ、TRB-DJ、TRG、TRD)に分けられている。PCRプロトコールを表4にまとめた。各々は、最終反応量50μlで、100ngの診断DNAおよび10ngのポリクローナルDNAを用いて、2ステップPCRによりシークエンシングライブラリーを調製した。cIT-QCのために、9の異なる各細胞株の40細胞相当量のゲノムDNAをすべてのサンプルに加えた。MgCl2は終濃度1.5mMで使用することを想定していたが、いくつかのチューブについては最適化が必要であった。したがって、第1回PCRのためのマスターミックスはチューブ特異的であったが、温度プロファイルはすべてのチューブで一定であった。
【0090】
第1回PCRの後、ゲル電気泳動を行ってすべての標的がうまく増幅していることを確認した。第2回PCRの前に、TRBについて特異的なPCR産物のゲル抽出を行った。
【0091】
TRBを除き、アンプリコンが非常に少なくない限り、全ての第1回PCRのPCR産物を1:50に希釈した。TRBのPCR産物、およびアンプリコンが少ないPCR産物
は、希釈せずに使用した。第2回PCRのマスターミックスおよび温度プロファイルは、全てのチューブについて同じであった(表4)。第2回PCRのプライマーには、シークエンスアダプターおよびシークエンスインデックス(バーコード)が含まれていた。各ライブラリーについて、フォワードインデックスおよびリバースインデックスの特有の組み合わせを使用した。第2回PCRにおいて、希釈していないTRBのPCR産物3μl、ならびに希釈したIGH、IGK、TRG、およびTRDの1:50PCR産物1μlを増幅した。
【0092】
【0093】
第2回PCRに続いて、ランしたすべてのサンプルの産物を、等モル比で8つのチューブ状のサブプールにプールし、ゲル抽出により精製した(アンプリコン長について表5を参照)。最後に、サブプールを等モルで1つの最終プールにプールした。アンプリコンライブラリーの最終濃度7pMで、2×250bp v2 chemistryを使用し、低複雑度ライブラリーの問題を避けるために10%のPhiXコントロールを加えて、Illumina MiSeqシークエンサーでシークエンスを行った。
【0094】
【0095】
バイオインフォーマティクスのプロトコール
ARResT/Interrogateは、本研究で使用した主要なバイオインフォーマティクスのプラットフォームであり、Vidjil(非特許文献47)およびIMGT(非特許文献48)リソースと共に、本研究の特定の局面で使用された。ミスマッチがないことを確認し、デマルチプレクシングを行った。リードは、ユーロクローナリティ-NGSプライマー配列(非アンプリコン配列を切り取るため、およびcPT-QCベースの品質管理のため)、ペアエンド結合、デリプリケート、免疫遺伝学的アノテーション(非特許文献48)、および再構成型で分類(完全および不完全、ならびに、イントロン-Kde再構成等の他の特定の型)、または「ジャンクションの種類」でアノテーションされる。再構成がないリードは、相対的存在量のために使用する総リード数から除外した。
【0096】
上述のcIT-QC配列は、その免疫遺伝学的アノテーションを通じて、データで同定された。それらのカウントは、「チューブ内」コントロールとしてと、プライマーセットあたりの正規化のための両方で機能し、総cIT-QC細胞数をcIT-QCの総リード数で割り、得られた係数を、再構成リードを細胞に変換するために使用し、それらの細胞数を総入力細胞数(本実施例では15,000)で割った。IG/TR配列の同定は、cIT-QC正規化後の存在量が5%を超える場合、インデックス配列として定義された。
【0097】
ARResT/Interrogateは、ジャンクションのDNJ3’ステムを追跡することができ、この配列は、V再構成、または進行中のVからDJへの再構成である場合、IGHまたはTRBクローン性進化の間、安定したままである。ステムは、D(または、Dがないことが同定されている場合はNDN)の末尾の3nt以下、いくつかの、またはすべてのN2ヌクレオチド、およびジャンクションのJヌクレオチドからなる。このステムは、すべてのサンプルにおいて別の免疫遺伝学的特徴として利用でき、したがって、他の特徴、たとえばクロノタイプとリンクさせることができる。
【0098】
ALLにおけるMRDマーカーの同定のためのアッセイの多施設検証
次に、多施設検証研究のために、50のALL診断サンプル(29のBCP-ALLおよび21のT-ALL)を解析した。5つの各参画研究室は、標的ごとに異なる多重NGSプライマーの組み合わせを含む、予め設定された96穴プレートを受け取った(
図4)。
【0099】
要約すると、96のライブラリーはラボごとに作られ(計480ライブラリー)、47Mリードの総アウトプット(φ9.2M/ラボ)でシークエンスされた。集中型の解析は、IMGT生殖細胞系列の配列(非特許文献48)を用いてARResT/Interrogate(非特許文献43)で行い、さらなる解析および検証は、Vidjil(非特許文献47)およびIMGT/V-QUEST(非特許文献48)で行った。
【0100】
全体としては、311のクローンIG/TR再構成(クロノタイプ)が同定され、NGSで平均5.9(0~14)/サンプル(cIT-QCベースの正規化後のNGSに5%閾値を適用)対サンガーで5.0(0~14)/サンプルであり、一方、217(45%)のライブラリーは、いずれかの方法により閾値を超えるクロノタイプを示さなかった。計196/311(63%)のクロノタイプは、NGSとサンガーの間で完全に一致した(
図6)。NGSは63のインデックス配列を独占的に同定し、52のIG/TRサンガー配列は、ARResT/InterrogateによりNGのインデックス配列として割り当てられなかった。26のNGS検出/サンガー非検出のケースは、それぞれ低スループットアプローチでもクローン性のPCR産物を示したが、その後のサンガーシークエンシングが、ポリクローナルバックグラウンド、混合配列、または少ないPCR産物のために失敗した。さらなる6のサンガー非検出/NGS検出のケースでは、低スループットアプローチでそれぞれのプライマーが欠落していた。残りの31の矛盾について、サンガーの失敗についての技術的な説明はみつからなかった(16/19のq/ddPCR評価では、再構成はASO-PCRにより確認され、3/16はサブクローナルレベルであった)。
【0101】
逆に、5%NGS閾値を適用した場合に、52のクローンIG/TR再構成がサンガーでのみ検出され、5つの配列(TRG1つ、TRB-VJ2つ、およびIGH-DJ2つ)については適切なプライマーがNGSプライマーセットに存在せず、12のケースでは、不一致について説明がみつからなかった。しかし、サンガーが配列を同定した主要な不一致のケース(35/52)では(TRD7つ、TRB-VJ8つ、TRG6つ、TRB-DJ4つ、IGK-VJ-Kde2つ、IGH-VJ5つ、IGH-DJ3つ)、NGSによっても検出することができたが、存在量が5%未満であった。36/39のq/ddPCR評価では、全ての低NGS検出配列を含み、再構成はASO-PCRにより確認され、14/36のケースはサブクローナルレベルであった。非検出のライブラリーを含み、サンガーとNGSの間の全体的な一致率は78%であった。
【0102】
12/29のB系統ALLのサンプルにおいて、優勢なクローン性IGH配列の進化が、ARResT/Interrogateを用いて同定された。進化したクロノタイプは、DNJステムは優勢なものと同じであるが、VND部分の再構成は異なっていた。
【0103】
QCサンプル(cIT-QCおよびcPT-QC)の標準的な評価によりアッセイ性能も解析した。これは、5つのラボ間で統計的有意差がなく、著しく高いラボ内およびラボ間での一貫性を示した。
【0104】
MRDマーカーの同定のための主要なSOPの適切な修正
多施設検証の過程で、特定の研究室において、SOPの適切な修正が並行して試験された。
【0105】
1ステップPCR対2ステップPCR:ユーロクローナリティ-NGSワーキンググループは、シークエンスアダプターの切り替えを可能にするため、および多数のバーコードが必要な場合であっても必要なプライマーバッチの総数を限定するために、2ステップPCRを使用することを決定した。第1回PCR産物はバーコード化されていないため、この方法での異物混入現象の同定が困難である。したがって、単一施設(パリ)において、より多くの異なるプライマーバッチを維持することができる研究室のための代替手段として、1ステップPCRが試験された。1ステップアプローチは、異物混入のリスクを低減し、したがって、マーカー同定のためだけでなく、MRD評価のためのNGSの使用に好都合である。標準作業手順は補足情報に示す。
【0106】
ビーズ抽出:我々の単一標的の評価および検証の段階において、特定のTRBアンプリコンのゲル抽出が、ビーズ抽出と比較して、より特異的なライブラリーをもたらすことがわかった。しかし、ゲル抽出はすべての研究室で使用されているわけではないため、本研究の後半の段階では、すべてのライブラリーのビーズ精製も試験した。精製プロセスの最適化により、ライブラリー精製のタイプに関わらず、特異的なリードの比率が同程度になった。
【0107】
反応ミックスへのポリクローナルDNAの添加の取りやめ:特異的な再構成がないサンプルにおける過度のプライマーダイマー形成を防ぐために、各反応にポリクローナルDNAを添加した。しかし、ポリクローナルDNAの添加は、サンプルのポリクローナルバックグラウンドの組成を変更し、免疫レパートリーの解析を妨害する。したがって、B細胞形成不全の4サンプルおよびT細胞形成不全の4サンプルで試験し、cIT-QCの添加により非特異的なPCR産物の過剰形成を十分に防ぐことを示した。
【0108】
(付記)
(付記1)
9種の培養細胞株のセットから単離されたゲノムDNAの混合物を含む組成物であって、前記セットは、B細胞株であるALL/MIK(B前駆細胞型ALL)、Raji(バーキットリンパ腫)、REH(B前駆細胞型ALL)、TMM(CML-BC/EBV+B-LCL)、TOM-1(B前駆細胞型ALL)、WSU-NHL(B細胞リンパ腫)、ならびにT細胞株であるJB6(ALCL)、Karpas299(ALCL)、およびMOLT-13(T-ALL)を含むか、または前記セットの1以上の細胞株が、同一の免疫グロブリン(IG)/T細胞受容体(TR)遺伝子再構成を含む1種以上の他の細胞株に置き換えられる、組成物。
【0109】
(付記2)
B細胞株であるALL/MIK、Raji、REH、TMM、TOM-1、WSU-NHL、ならびにT細胞株であるJB6、Karpas299およびMOLT-13から単離されたゲノムDNAの混合物を含む、付記1に記載の組成物。
【0110】
(付記3)
実質的に等量の前記細胞株の各々のゲノムDNAを含む、付記1または2に記載の組成物。
【0111】
(付記4)
健康なヒト胸腺、健康なヒト扁桃腺、および健康なヒト末梢血単核球から単離された、実質的に等モル量のゲノムDNAからなる組成物。
【0112】
(付記5)
各組織について、前記ゲノムDNAは、多数の、好ましくは3~10の異なるヒト個体から得られたものである、付記4に記載の組成物。
【0113】
(付記6)
付記1~3のいずれか1つに記載の組成物を含む容器、および/または付記4もしくは5に記載の組成物を含む容器を含む、診断キット。
【0114】
(付記7)
付記1~3のいずれか1つに記載の組成物を含む第1容器、および付記4または5に記載の組成物を含む第2容器を含む、付記6に記載のキット。
【0115】
(付記8)
免疫グロブリン(IG)/T細胞受容体(TR)遺伝子再構成を検出するための1種以上の薬剤をさらに含む、付記6または7に記載のキット。
【0116】
(付記9)
IG/TR遺伝子再構成のアンプリコンベースの次世代シークエンシング(NGS)のためのプライマーのセットを含む、付記8に記載のキット。
【0117】
(付記10)
IGH-VJ、IGH-DJ、IGK-VJ-Kde、TRB-VJ、TRB-DJ、TRG、およびTRDからなる群から選択される前記IG/TR遺伝子再構成の1以上を検出するためのプライマーセットを含む、付記8または9に記載のキット。
【0118】
(付記11)
図5に示すプライマーから選択される1以上のプライマー、好ましくは表3に示すプライマーから選択される1以上のプライマーを含む、付記9または10に記載のキット。
【0119】
(付記12)
図5に示すプライマーから選択される2以上のプライマーを含む、IG/TR遺伝子再構成のアンプリコンベースの次世代シークエンシング(NGS)のためのプライマーセット。
【0120】
(付記13)
表3に示すプライマーから選択される2以上のプライマーを含む、付記12に記載のプライマーセット。
【0121】
(付記14)
IG/TR遺伝子再構成を検出するためのアッセイにおける、付記1~5のいずれか1つに記載の組成物、付記6~11の何れか1つに記載のキット、および/または付記12もしくは13に記載のプライマーセットの使用。
【0122】
(付記15)
前記アッセイは臨床診断アッセイ、好ましくは、クローン性の検出のため、微小残存病変(MRD)マーカーの同定および/もしくはMRDのモニタリングのため、ならびに/またはリンパ系腫瘍における(クローン)免疫レパートリーの解析のためのアッセイである、付記14に記載の使用。
【0123】
(付記16)
サンプル調製、PCRおよび/またはライブラリー構築、シークエンシングおよびバイオインフォーマティクス解析のステップを含む、NGSを用いた、少なくとも1つの生体サンプルにおけるIG/TRを検出するためのin vitroでの方法であって、前記少なくとも1つの生体サンプルに付記1~3のいずれか1つに記載の組成物が添加され、かつ/または前記少なくとも1つの生体サンプルと並行して付記4または5に記載の組成物がサンプルとしてランされる、方法。
【0124】
(付記17)
前記少なくとも1つの生体サンプルは、臨床的に適切なサンプル、好ましくは、悪性リンパ増殖の診断を支持もしくは除外するためのクローン性の検出のためのサンプル、または、MRDマーカー同定もしくはMRDモニタリング解析、または(クローン)免疫レパートリー解析のために採取されたサンプルである、付記16に記載の方法。
【0125】
(付記18)
当該方法の少なくとも一部がマイクロ流体デバイスを用いて行われる、付記17または18に記載の方法。
【0126】
(付記19)
前記マイクロ流体デバイスは遠心マイクロ流体ディスクシステムを含み、好ましくは、前記ディスクは、DNA抽出、PCR、および/またはライブラリー作成を自動化および統合するために予め入れられた薬剤を含む、付記18に記載の方法。
【0127】
(付記20)
前記バイオインフォーマティクス解析のステップは、生データの前処理、プライマー配列解析、免疫遺伝学的アノテーション、結果の後処理、cIT-QCの解析と使用(マーカーの定量を含む)、cPT-QCの解析と使用(予め解析され蓄積されている参照データセットとの比較を含む)、結果の報告/結果へのアクセス/結果の可視化のためのウェブベースのインタラクティブアプリケーションの使用を含む、付記17~19のいずれか1つに記載の方法。
【配列表】
【国際調査報告】