(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-30
(54)【発明の名称】膨張性コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 163/00 20060101AFI20220523BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220523BHJP
C09D 163/02 20060101ALI20220523BHJP
C09D 163/04 20060101ALI20220523BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220523BHJP
C09D 5/18 20060101ALI20220523BHJP
C08G 59/56 20060101ALI20220523BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20220523BHJP
C08K 5/05 20060101ALI20220523BHJP
C08K 5/5425 20060101ALI20220523BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220523BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20220523BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220523BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20220523BHJP
H01M 50/131 20210101ALI20220523BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20220523BHJP
H01M 50/122 20210101ALI20220523BHJP
H01M 50/117 20210101ALI20220523BHJP
H01M 50/124 20210101ALI20220523BHJP
C09D 163/10 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D7/63
C09D163/02
C09D163/04
C09D7/61
C09D5/18
C08G59/56
C08L63/00 C
C08K5/05
C08K5/5425
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B05D7/24 302U
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B05D7/24 303A
B05D7/24 303B
B05D3/12 Z
B05D7/24 303E
B32B27/30 A
B32B27/38
H01M50/131
H01M50/121
H01M50/122
H01M50/117
H01M50/124
C09D163/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557361
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(85)【翻訳文提出日】2021-10-06
(86)【国際出願番号】 US2020024869
(87)【国際公開番号】W WO2020198424
(87)【国際公開日】2020-10-01
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399074983
【氏名又は名称】ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】マ, シュアン
(72)【発明者】
【氏名】ペスケンズ, ロニー
(72)【発明者】
【氏名】グルニエ, クリストフ
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J002
4J036
4J038
5H011
【Fターム(参考)】
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5H011CC02
5H011CC05
5H011CC06
5H011CC10
5H011KK02
(57)【要約】
本発明は、膨張性コーティング組成物、該組成物で基材をコーティングするための方法、該組成物でコーティングされた基材、該基材を備える物品、ならびに電池および/または電池を備える物品、特にリチウムイオン電池を備える車両に防火を提供するための方法を開示する。本発明は、本発明による膨張性コーティング組成物を基材に少なくとも部分的に塗布し、必要に応じて、塗布したコーティング組成物を硬化させることを含む、基材をコーティングするための方法にさらに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張性コーティング組成物であって、
(a)
-(a1)ポリエポキシ官能性化合物、および必要に応じて、
-(a2)(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル、および/または
-(a3)化合物(a2)とは異なる(メタ)アクリレート官能性化合物、を含む、樹脂成分と、
(b)前記ポリエポキシ官能性化合物のエポキシ基との反応性を有する複数の官能基を持つ少なくとも1つの化合物(b1)を含む、架橋剤成分と、
(c)前記膨張性コーティング組成物の総重量に基づいて、5~20重量%の、式(I)または(II)のオルガノシラン化合物およびこれらの組み合わせから選択されるオルガノシラン化合物であって、
(Y-L-)
n-SiX
mR
o(I)、
(Y-L)
u-B-(K-SiX
vR
w)
z(II)
式中、
-nおよびmが、1~3の整数であり、oが、0~2の整数であり、
n+m+oが、4であり、
-yが、1~3の整数であり、wが、0~2の整数であり、y+wが、3であり、
-uが、少なくとも1の整数であり、zが、少なくとも2の整数であり、
-Bが、多価の有機基であり、Bの原子価が、
u+zであり、
-Lが、二価の有機基、またはYがビニル基である場合の結合であり、
-Kが、二価の有機基または結合であり、
-Yは、成分(a)の前記エポキシ基および/もしくは存在する場合の前記(メタ)アクリレート基、または成分(b)の前記官能基、との反応性を有する官能基を含み、
-Xが独立して、出現ごとに、クロロ、アルコキシ、アシルオキシ、およびオキシイミノから選択され、
-Rが、ヒドロカルビル基である、オルガノシラン化合物と、
(d)熱分解時に膨張ガスを提供する化合物と、を含み、
(a)~(d)について定義した前記化合物が、互いに異なり、
前記膨張性コーティング組成物が、23℃の大気圧で液体であり、前記組成物の前記総重量に基づいて、5重量%未満の水を含む、膨張性コーティング組成物。
【請求項2】
前記式(I)または(II)の前記オルガノシラン化合物について、
-Lが、1~10個の炭素原子、適切には2~6個の炭素原子を有する、アルキレン基およびシクロアルキレン基、ならびにYがビニル基である場合の結合から選択され、かつ/または
-Kが、1~10個の炭素原子、適切には2~6個の炭素原子を有する、アルキレン基およびシクロアルキレン基、ならびに結合から選択され、かつ/または
-Yが、エポキシ含有基、アミノ基、ポリアミノ基、アミド基、チオール基、カルボン酸基、ヒドロキシ基、(メタ)アクリルオキシ基、およびビニル基から選択され、かつ/または
-Xが、適切には1~4個の炭素原子を有するアルコキシ基から選択され、かつ/または
-Rが、C
1~C
4アルキル基であり、かつ/または
-Bが、多価のアルキル基であり、かつ/または
-nが、1であり、oが、0であり、mが、3であり、かつ/または
-uが、1であり、zが、2である、
請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記オルガノシラン化合物が、ビニルトリアルコキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3-(メタ)アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、アミノアルキルトリアルコキシシラン、アミノアルキルジアルキルモノアルコキシシラン、ビス-(アミノアルキル)ジアルコキシシラン、チオールアルキルトリアルコキシシラン、チオールアルキルアルキルジアルコキシシラン、チオールアルキルジアルキルモノアルコキシシラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記オルガノシラン化合物の量が、前記膨張性コーティング組成物の前記総重量に基づいて、5~18重量%、適切には10~18重量%である、先行請求項のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記ポリエポキシ官能性化合物(a1)が、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリジジルエーテル(diglygidyl ether)、エポキシフェノールノボラック樹脂、エポキシクレゾールノボラック樹脂、エポキシ官能性アクリル樹脂、エポキシ官能性ポリエステル、またはこれらの組み合わせを含む、先行請求項のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル(a2)が、存在し、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリジジルエーテル(diglygidyl ether)、エポキシフェノールノボラック樹脂、エポキシクレゾールノボラック樹脂、エポキシ官能性アクリル樹脂、エポキシ官能性ポリエステル、またはこれらの組み合わせから選択されるポリエポキシドの(メタ)アクリル酸との反応から生じる、複数のベータ-ヒドロキシ(メタ)アクリルエステル基を含み、適切には前記(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル(a2)が、1:0.1~1:1.015のエポキシカルボン酸当量比での、ポリエポキシドの(メタ)アクリル酸との反応の生成物を含む、先行請求項のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリレート官能性化合物(a3)が、存在し、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、パラ-キシレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、およびこれらの組み合わせのポリ(メタ)アクリレートから選択される、先行請求項のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
成分(a)が、
20~100重量%、適切には40~95重量%の前記ポリエポキシ官能性化合物(a1)と、
0~75重量%、適切には5~60重量%の前記(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル(a2)と、
0~50重量%、適切には5~30重量%の、化合物(a2)とは異なる前記(メタ)アクリレート官能性化合物(a3)と、を含み、前記重量パーセントが、化合物(a1)、(a2)、および(a3)の総重量に基づく、先行請求項のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記成分(b)が、
-脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリ(アミン-アミド)、およびこれらの組み合わせから適切に選択されるポリアミン官能性化合物、または
-ポリスルフィドチオール、ポリエーテルチオール、ポリエステルチオール、ペンタエリトリトール系チオールから適切に選択されるポリチオール官能性化合物、または
-これらの組み合わせ
を含む、先行請求項のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
(a)中の組み合わされたエポキシ基および(メタ)アクリレート基の、(b)中の前記官能基に対する当量比が、2:1~1:2、適切には1.3:1.0~1.0:1.3である、先行請求項のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
顔料および/または充填剤(e)をさらに含み、
-酸化アルミニウム、酸化ケイ素、雲母、ウォラストナイト、酸化チタン、クレー、タルク、および珪藻土化合物から選択される白色顔料および/または充填剤の総量が、前記組成物の前記総重量に基づいて、2重量%未満、適切には0~0.1重量%であり、
-有色顔料、特に黒色顔料の量が、前記組成物の前記総重量に基づいて、少なくとも0.5重量%、適切には1~5重量%である、
先行請求項のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
リン供給源、ホウ素供給源、亜鉛供給源、酸供給源、炭素供給源、レオロジー添加剤、有機溶媒、顔料、泡安定剤、接着促進剤、腐食防止剤、UV安定剤、およびこれらの組み合わせから選択される添加剤(f)をさらに含む、先行請求項のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
マルチパッケージコーティング組成物である先行請求項のいずれか一項に記載のコーティング組成物であって、ここで、
成分(a)が、第1のパッケージ(A)中に含まれ、
成分(b)が、第2のパッケージ(B)中に含まれ、
化合物(c)が、第3のパッケージ(C)中に含まれるか、またはY-が成分(a)中の前記化合物との反応性を有する官能基である場合に、化合物(c)が前記第2のパッケージ(B)中に存在するか、またはY-が成分(b)中の前記化合物との反応性を有する官能基である場合に、化合物(c)が前記第1のパッケージ(A)中に存在し、
熱分解時に膨張ガスを提供する前記化合物(d)、ならびに存在する場合には前記添加剤(e)および(f)のうちのいずれかが、任意の組み合わせで、パッケージ(A)、(B)、もしくは(C)のいずれかの中に、またはこれらのパッケージの任意の組み合わせの中に含まれるか、あるいは1つ以上のさらなるパッケージ(D)中に含まれ、前記パッケージが、前記コーティング組成物の塗布の直前に混合される、
コーティング組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の膨張性コーティング組成物を基材に少なくとも部分的に塗布すること、および必要に応じて前記塗布したコーティング組成物を硬化させることを含む、基材をコーティングするための方法。
【請求項15】
前記基材が、適切にはアルミニウム基材および鋼基材から選択される金属基材、または適切にはポリカーボネートから選択されるプラスチック基材を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項14または15に記載の方法によってコーティングされた、基材。
【請求項17】
請求項16に記載の基材を備える、物品。
【請求項18】
電池、適切にはリチウムイオン電池、または電池ケースである、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
電池、適切にはリチウムイオン電池、または電池ケース、を備え、請求項1~13のいずれか一項で定義される膨張性コーティング組成物が、前記電池と前記物品との間の、前記電池に隣接する前記物品の一部分に塗布される、請求項17に記載の物品。
【請求項20】
前記物品が、リチウムイオン電池または電池のセットを有する電池ケースと、乗客キャビンと、を備える、車両であり、前記膨張性コーティング組成物が、前記電池と車両本体との間の、前記電池に隣接する前記車両の床部分の少なくとも一部分に塗布される、請求項17に記載の物品。
【請求項21】
-電池または電池ケースの任意の部分に塗布された場合に、前記電池もしくは前記電池ケースに防火を提供し、かつ/または前記電池もしくは前記電池ケースの熱暴走を低減もしくは防止するため、あるいは
-電池と物品との間の、前記電池に隣接する前記物品の一部分に塗布された場合に、前記電池を備える前記物品に防火を提供するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の膨張性コーティング組成物の使用であって、
前記電池が、適切にはリチウムイオン電池である、使用。
【請求項22】
前記物品が、リチウムイオン電池および乗客キャビンを備える、車両であり、硬化可能な膨張性コーティング組成物が、前記車両の前記乗客キャビンを電池火災から保護するために使用される、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
請求項1~13のいずれか一項に記載の膨張性コーティング組成物を電池の任意の部分に塗布して、その上にコーティングを形成することによって、電池に防火を提供するか、または電池の熱暴走を低減もしくは防止するための方法であって、前記電池が、適切にはリチウムイオン電池である、方法。
【請求項24】
請求項1~13のいずれか一項に記載の膨張性コーティング組成物を、電池と物品との間の、前記電池に隣接する前記物品の一部分に塗布して、その上にコーティングを形成することによって、前記電池を備える前記物品に防火を提供するための、方法。
【請求項25】
前記物品が、リチウムイオン電池および乗客キャビンを備える、車両であり、架橋された膨張性コーティングが、前記車両の前記乗客キャビンを電池火災から保護するように位置決めされる、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張性コーティング組成物、該組成物で基材をコーティングするための方法、該組成物でコーティングされた基材、該基材を備える物品、ならびに電池および/または電池を備える物品、特にリチウムイオン電池を備える車両に防火を提供するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市販の膨張性コーティング組成物は、概して、硬化したコーティングの所望の防火および機械的特性、特に炭強度を得るための重要な成分としてかなり高い量のTiO2を含有し、結果として、結果として得られる硬化したコーティングは、概して、白色またはオフホワイトであり、容易に染めることができない。これらの膨張性組成物は、概して、建設用途の防火に使用されていたため、これまでのところ、これは欠点とは考慮されていなかった。
【0003】
電池は長い間、モバイル電源として使用されている。特にリチウムイオン電池の開発により電力密度が増加した。結果として、リチウムイオン電池の使用は、家電、特に携帯電話、タブレットおよびラップトップコンピュータ、医療デバイス、産業機器、ならびに特にハイブリッド/電気車両を含む、様々な用途において広く普及している。
【0004】
しかしながら、多くの電池、および特にリチウムイオン電池は、熱暴走に対して脆弱であり、熱暴走中に電池から熱およびガスが急速に排出され、火災の危険性が生じる。電池、とりわけリチウムイオン電池は、電池、特にリチウムイオン電池に関連する火災の危険性を増す可燃性有機溶媒を含有する、電解質組成物を含み得る。さらに、上記の例示の用途で使用される電池は、主に、複数の個々の電池セルを備える電池パックである。車、バス、およびトラックなどのハイブリッドまたは電気車両のためのリチウムイオン電池には、何千もの個々の電池セルが含まれている場合がある。熱暴走は、製造上の欠陥、熱の蓄積、内部短絡、または外部からの衝撃もしくは外傷によって引き起こされ得る。1つの電池セルの熱暴走が、隣接する電池セルに影響を及ぼし、制御不能な連鎖反応をもたらす場合があり、結果として、電池パック全体が発火する可能性があり、この火が、これらの電池を備える車両の場合に、車両全体に広がり、運転手および乗客を危険に曝すことがある。
【0005】
電池パックの熱暴走によってセルフォンまたは電気自動車が発火するという最近の事件から、電池、電池セル、および該電池を備える装置、例えば、携帯電話、タブレット、もしくはラップトップコンピュータ、ならびにハイブリッドもしくは電気車両、およびこれらのユーザ向けの装置に、より良い防火を提供する必要性があることは明らかである。したがって、膨張性コーティング組成物は、電池、および特にリチウムイオン電池である電池を備える物品に防火を提供するのに有用な場合がある。
【0006】
これまで建設用途で使用されてきた膨張性コーティング組成物と比較して、防火を提供することに加えて、追加の要件は、電池用途に有用な膨張性コーティング組成物にとって重要な場合がある。これらのコーティング組成物は、セルフォン、タブレットもしくはラップトップコンピュータ、または自動車などの消費者製品に防火を提供するために使用されることが意図されているため、コーティングの色が白色またはオフホワイトに限定されないこと、すなわち、硬化した膨張性コーティングの防火および機械的性状を損なうことなく、膨張性コーティング組成物が、広範囲にわたる魅力的な色、特に黒色を提供するように染めることができ、所望の光沢、特に高い光沢のコーティングを提供するように配合することができることが、業界において望まれている。
【0007】
さらに、電池火災から保護される上述の物品は、モバイル物品であるため、機械的なショックまたは衝撃に供され得る。したがって、硬化したコーティングの改善された耐衝撃性を呈する膨張性コーティング組成物に対する業界の望みがある。
【0008】
加えて、上述の物品または該物品のための電池ケースは、アルミニウムで作製され得るか、またはアルミニウム部品を備えることができ、その結果、膨張性コーティング組成物は、アルミニウム基材の上に塗布されることが意図される。したがって、硬化したコーティングのアルミニウム基材への改善された接着性を呈する膨張性コーティング組成物に対する業界のさらなる望みがある。
したがって、一般的な態様によれば、業界の上述の望みのうちの1つ以上を満たす膨張性コーティング組成物を提供することが本発明の目的である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
このおよび他の目的は、膨張性コーティング組成物であって、
(a)
-(a1)ポリエポキシ官能性化合物、および
必要に応じて、
-(a2)(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル、および/または
-(a3)化合物(a2)とは異なる(メタ)アクリレート官能性化合物、を含む、樹脂成分と、
(b)ポリエポキシ官能性化合物のエポキシ基との反応性を有する複数の官能基を持つ少なくとも1つの化合物(b1)を含む、架橋剤成分と、
(c)膨張性コーティング組成物の総重量に基づいて、5~20重量%の、式(I)または(ii)のオルガノシラン化合物およびこれらの組み合わせから選択されるオルガノシラン化合物であって、
(Y-L-)n-SiXmRo(I)、
(Y-L)u-B-(K-SiXvRw)z(II)
式中、
-nおよびmが、1~3の整数であり、oが、0~2の整数であり、
n+m+oが、4であり、
-yが、1~3の整数であり、wが、0~2の整数であり、y+wが、3であり、
-uが、少なくとも1の整数であり、zが、少なくとも2の整数であり、
-Bが、多価の有機基であり、Bの原子価が、u+zであり、
-Lが、二価の有機基、またはYがビニル基である場合の結合であり、
-Kが、二価の有機基または結合であり、
-Yが、成分(a)のエポキシ基および/もしくは存在する場合の(メタ)アクリレート基、または成分(b)の官能基、との反応性を有する官能基であり、
-Xが独立して、出現ごとに、クロロ、アルコキシ、アシルオキシ、およびオキシイミノから選択され、
-Rが、ヒドロカルビル基である、オルガノシラン化合物と、
(d)熱分解時に膨張ガスを提供する化合物と、
を含み、(a)~(d)について定義した化合物が、互いに異なり、膨張性コーティング組成物が、23℃の大気圧で液体であり、組成物の総重量に基づいて、5重量%未満の水を含む、膨張性コーティング組成物によって達成されている。
【0010】
本発明は、本発明による膨張性コーティング組成物を基材に少なくとも部分的に塗布し、必要に応じて、塗布したコーティング組成物を硬化させることを含む、基材をコーティングするための方法にさらに関する。
【0011】
さらなる態様によれば、本発明は、該方法によってコーティングされた基材、および該基材を備える物品を対象とする。
なおもさらなる態様によれば、本発明は、本発明による膨張性コーティング組成物の、
-電池または電池ケースの任意の部分に塗布された場合に、電池もしくは電池ケースに防火を提供し、かつ/または電池もしくは電池ケースの熱暴走を低減もしくは防止するため、あるいは
-電池と物品との間の、電池に隣接する物品の一部分に塗布された場合に、電池を備える物品に防火を提供するための、使用であって、
電池が、適切にはリチウムイオン電池である、使用を対象とする。
【0012】
なおもさらなる態様によれば、本発明は、本発明に従って定義される硬化可能な膨張性コーティング組成物を電池の任意の部分に塗布して、その上にコーティングを形成すること、およびその上に架橋された膨張性コーティングを得るようにコーティングを硬化させることによって、電池に防火を提供するか、または電池の熱暴走を低減もしくは防止するための方法を対象とする。
【0013】
なおもさらなる態様によれば、本発明は、本発明に従って定義される硬化可能な膨張性コーティング組成物を、電池と物品との間の、電池に隣接する物品の一部分に塗布して、その上にコーティングを形成すること、およびその上に架橋された膨張性コーティングを得るようにコーティングを硬化させることによって、電池を備える物品に防火を提供するための方法を対象とする。特に、物品は、リチウムイオン電池および乗客キャビンを備える、車両であってもよく、架橋された膨張性コーティングは、車両の乗客キャビンを電池火災から保護するように位置決めされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の例示的な膨張性コーティングを通る熱の熱伝達を経時的に示すグラフである。
【
図2】本発明の例示的な膨張性コーティングを通る熱の熱伝達を経時的に示すグラフである。
【
図3】本発明の例示的な膨張性コーティングを通る熱の熱伝達を経時的に示すグラフである。
【
図4】本発明のいくつかの例示的な膨張性コーティングを通る熱の熱伝達を経時的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
任意の動作の実施例以外、または別様に示される場合、本明細書および特許請求の範囲で使用される原料の量、反応条件などを表すすべての数は、すべての例において「約」という用語によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、相反することが示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得られる所望の性状に応じて変動し得る近似値である。少なくとも、また、均等諭の適用を特許請求の範囲の範囲に限定しようとするものではなく、各数値パラメータは、報告された有意な桁数を考慮して、かつ通常の四捨五入技法を適用することによって少なくとも解釈されるべきである。
【0016】
本発明の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメータは、近似値であるにもかかわらず、特定の例において記載される数値は、できる限り正確に報告される。しかしながら、あらゆる数値は、それらのそれぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に得られる特定の誤差を本質的に含有する。
【0017】
また、本明細書に記載される任意の数値範囲は、その中に包含されるすべての部分範囲を含むことを意図していることを理解されたい。例えば、「1~10」の範囲は、記載された最小値1と記載された最大値10との間(それらを含む)、すなわち、1に等しいかまたはそれより大きい最小値と10に等しいかまたはそれより小さい最大値とを有する、すべての部分範囲を含むことが意図される。
【0018】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、冠詞「a」、「an」、および「the」は、明示的かつ明白に1つの参照に限定されない限り、複数の参照を含む。例えば、「ポリマー」(“a” polymer)、「硬化剤」(“a” curing agent)、「炭素供給源」(“a” carbon source)、「発泡剤」(“a” foaming agent)、「酸供給源」(“an” acid source)、「強化繊維」(“a” reinforced fiber)、「無機添加剤」(“an” inorganic additive)、「コーティング組成物」(“a” coating composition)などへの言及がなされるが、これらの成分のいずれかのうちの1つ以上を使用することができる。
【0019】
本明細書における「ヒドロカルビル」という用語は、炭素原子および水素原子を含む基を指す。
【0020】
本明細書における「長鎖炭化水素置換基」という用語は、少なくとも6個の炭素原子を有するヒドロカルビルを指す。
【0021】
特許請求の範囲および本明細書の全体にわたって本明細書で使用される「電池」という用語は、個々の電池セル、ならびに複数の電池セルを備える電池パックを指す。
【0022】
本発明の一般的な態様によれば、膨張性コーティング組成物は、
(a)
-(a1)ポリエポキシ官能性化合物、および
必要に応じて、
-(a2)(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル、および/または
-(a3)化合物(a2)とは異なる(メタ)アクリレート官能性化合物、を含む、樹脂成分と、
(b)ポリエポキシ官能性化合物のエポキシ基との反応性を有する複数の官能基を持つ少なくとも1つの化合物(b1)を含む、架橋剤成分と、
(c)膨張性コーティング組成物の総重量に基づいて、5~20重量%の、式(I)または(ii)のオルガノシラン化合物およびこれらの組み合わせから選択されるオルガノシラン化合物であって、
(Y-L-)n-SiXmRo(I)、
(Y-L)u-B-(K-SiXvRw)z(II)
式中、
-nおよびmが、1~3の整数であり、oが、0~2の整数であり、
n+m+oが、4であり、
-yが、1~3の整数であり、wが、0~2の整数であり、y+wが、3であり、
-uが、少なくとも1の整数であり、zが、少なくとも2の整数であり、
-Bが、多価の有機基であり、Bの原子価が、u+zであり、
-Lが、二価の有機基、またはYがビニル基である場合の結合であり、
-Kが、二価の有機基または結合であり、
-Yが、成分(a)のエポキシ基および/もしくは存在する場合の(メタ)アクリレート基、または成分(b)の官能基、との反応性を有する官能基を含み、
-Xが独立して、出現ごとに、クロロ、アルコキシ、アシルオキシ、およびオキシイミノから選択され、
-Rが、ヒドロカルビル基である、オルガノシラン化合物と、
(d)熱分解時に膨張ガスを提供する化合物と、
を含み、(a)~(d)について定義した化合物が、互いに異なり、膨張性コーティング組成物が、23℃の大気圧で液体であり、組成物の総重量に基づいて、5重量%未満の水を含む。
【0023】
樹脂成分(a)
ポリエポキシ官能性化合物(a1)は、特に限定されない。これには、複数のエポキシ官能基を持つオリゴマーまたはポリマー化合物、例えば、エポキシ樹脂が含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
樹脂成分(a1)に適切なエポキシ樹脂は、少なくとも1つのポリエポキシドを含む。ポリエポキシドは、少なくとも2つの1,2-エポキシ基を有する。通常、ポリエポキシドのエポキシ当量は、80~6000、典型的には100~700の範囲である。エポキシ化合物は、飽和または不飽和の環状、脂肪族、脂環式、芳香族、または複素環式であってもよい。これらは、ハロゲン、ヒドロキシ、およびエーテル基などの置換基(単数または複数)を含み得る。
【0025】
ポリエポキシドの例は、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、レゾルシノール、ヒドロキノン、ベンゼンジメトール(benzenedimethol)、フロログルシノール、ビスフェノールF、およびカテコールなどのポリフェノールのポリグリシジルエーテル、または1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)エタン、2-メチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルシクロヘキシル)プロパン、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、および1,2-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンなどの脂環式ポリオールなどのポリオールのポリグリシジルエーテルである。脂肪族ポリオールの例としては、特に、トリヒドロキシメチルペンタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、スリメチロールプロパン(thrimethylolpropane)、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールF、またはポリエーテルグリコール、例えば、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール、およびネオペンタンジオールが挙げられる。
【0026】
特定の適切なポリエポキシドは、300g/当量未満のエポキシ当量を有する。本例は、Hexion Inc.から市販されているEPON828を含む。
【0027】
適切なエポキシ樹脂の別の群としては、エピクロロヒドリンなどのエポキシ化合物と、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、またはダイマー化リノール酸などの脂肪族または芳香族ポリカルボン酸との反応によって形成される、ポリカルボン酸のポリグリシジルエーテルが挙げられる。
【0028】
本発明に従って使用することができる他の適切なエポキシ樹脂としては、エポキシ脂環式エーテルおよびエステルなどのエポキシ化オレフィン性不飽和脂環式材料、オキシアルキレン基を含有するエポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂が挙げられ、これらは、エピハロヒドリンを、アルデヒドとエポキシフェノールノボラック樹脂またはエポキシクレゾールノボラック樹脂などの一価または多価のフェノールとの縮合生成物と反応させることによって調製される。
【0029】
さらに、本発明によれば、本発明の膨張性コーティング組成物のポリエポキシ官能性化合物(a1)として、可撓性ポリエポキシド樹脂を用いることが有利な場合がある。これらの樹脂は、概して、少量の分岐が許容されるが、本質的に直線状の材料である。適切な材料の例としては、エポキシ化大豆油、BASF SE(Ludwigshafen Germany)から市販されているEMPOL1010樹脂などのダイマー酸系材料、ならびにビスフェノールAのポリグリシジルエーテルおよび酸官能性ポリブタジエンから調製した生成物などのゴム改質ポリポキシド樹脂が挙げられる。
【0030】
本発明に従って使用するための可撓性ポリエポキシドの他の適切な例としては、可撓性酸官能性ポリエステルおよびポリエポキシドから調製されるエポキシ官能性付加物が挙げられる。
【0031】
酸官能性ポリエステルは、概して、ASTM974-87によって決定した場合、少なくとも10mgKOH/g、概して約140~約350mgKOH/g、および適切には約180~約260mgKOH/gの酸価を有する。
【0032】
本明細書での使用には、直線状のポリエステルが分岐状のポリエステルよりも適切である。酸官能性ポリエステルは、有機ポリオールによる有機ポリカルボン酸またはその無水物のポリエステル化によって調製することができる。通常、ポリカルボン酸およびポリオールは、脂肪族または芳香族二塩基酸およびジオールである。
【0033】
ポリエステルの作製に通常用いられるジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどのアルキレングリコール、および水素化ビスフェノールA、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、カプロラクトンジオールなどの他のジオール、例えば、イプシロン-カプロラクトンおよびエチレングリコールの反応生成物、ヒドロキシ-アルキル化ビスフェノール、ポリエーテルグリコール、例えば、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコールなどが挙げられる。ジオールがより適切であるが、より高い官能性のポリオールを使用することもできる。例としては、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、グリセロール、イソソルビド、テトラメチルシクロブタンジオールなど、ならびにより低い分子量のポリオールをオキシアルキル化することによって生成されるものなどのより高い分子量のポリオールが挙げられる。
【0034】
ポリエステルの酸成分は、1分子当たり2~36個の炭素原子を有するモノマーのジカルボン酸または無水物を含む。有用な酸の中には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、グルタル酸、クロレンド酸、テトラクロロフタル酸、テトラブロモフタル酸、デカン二酸、ドデカン二酸、ロジン酸、ジフェノール酸、没食子酸、および様々なタイプの他のジカルボン酸、例えば、不飽和C18脂肪酸のディールス・アルダー付加物がある。
【0035】
ポリエステルは、安息香酸、ステアリン酸、酢酸、ヒドロキシステアリン酸、およびオレイン酸などの少量の一塩基酸を含み得る。また、トリメリト酸などのより高級なポリカルボン酸が用いられる場合がある。酸が上で言及される場合、無水物を形成する酸の無水物を酸の代わりに使用することができることが理解される。また、グルタル酸ジメチルおよびテレフタル酸ジメチルなどの酸の、より低級なアルキルエステルを使用することができる。
【0036】
本発明によれば、エポキシ官能性付加物を作製するために使用されるポリエステルは、7~16個の炭素原子を有するポリカルボン酸または酸の混合物を含むポリカルボン酸成分、およびジエチレングリコールの一部を含むポリオール成分から調製され得る。
【0037】
可撓性酸官能性ポリエステルおよびポリエポキシドのエポキシ官能性付加物を調製するために使用されるポリエポキシドは、本発明によるポリエポキシド官能性成分について上で定義されるものから選択することができる。
【0038】
他の適切なポリエポキシ官能性化合物は、エポキシ官能性アクリル樹脂である。かかる樹脂は、(メタ)アクリルモノマーのフリーラジカル付加重合によって、必要に応じて、ビニルモノマーまたは少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む他のモノマーと組み合わせて調製することができ、モノマー組成物は、1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つのエポキシ官能性化合物を含む。
【0039】
適切なエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーは、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンオキシド、リモネンオキシド、2-エチルグリシジルアクリレート、2-エチルグリシジルメタクリレート、2-(n-プロピル)グリシジルアクリレート、2-(n-プロピル)グリシジルメタクリレート、2-(n-ブチル)グリシジルアクリレート、2-(n-ブチル)グリシジルメタクリレート、グリシジルメチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、(3’,4’-エポキシヘプチル)-2-エチルアクリレート、(3’,4’-エポキシヘプチル)-2-エチルメタクリレート、(6’,7’-エポキシヘプチル)アクリレート、(6’,7’-エポキシヘプチル)メタクリレート、アリル-3,4-エポキシヘプチルエーテル、6,7-エポキシヘプチルアリルエーテル、ビニル-3,4-エポキシヘプチルエーテル、3,4-エポキシヘプチルビニルエーテル、6,7-エポキシヘプチルビニルエーテル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、3-ビニルシクロヘキセンオキシド、アルファ-メチルグリシジルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、およびこれらの組み合わせから選択され得る。グリシジル(メタ)アクリレートが特に適切である。
【0040】
エポキシ官能性アクリル樹脂の調製に適切な追加のモノマーは、
-エチレン性不飽和ニトリル化合物、
-ビニル芳香族モノマー、
-エチレン性不飽和酸のアルキルエステル、
-エチレン性不飽和酸のヒドロキシアルキルエステル、
-エチレン性不飽和酸のアミド、
-エチレン性不飽和酸、
-エチレン性不飽和スルホン酸モノマーおよび/またはエチレン性不飽和リン含有酸モノマー、
-カルボン酸ビニル、
-共役ジエン、
-少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有するモノマー、ならびに
-これらの組み合わせ
から選択され得る。
【0041】
エポキシ官能性アクリル樹脂の調製に使用することができるエチレン性不飽和ニトリルモノマーの例としては、直線状または分岐状の配置で2~4個の炭素原子を含有する重合可能な不飽和脂肪族ニトリルモノマーが挙げられ、これらは、アセチル基または追加のニトリル基のいずれかによって置換され得る。かかるニトリルモノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルファ-シアノエチルアクリロニトリル、フマロニトリル、およびこれらの組み合わせが挙げられ、アクリロニトリルが特に適切である。
【0042】
ビニル芳香族モノマーの代表としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、およびビニルトルエンが挙げられる。適切には、ビニル芳香族モノマーは、スチレン、アルファ-メチルスチレン、およびこれらの組み合わせから選択される。
【0043】
エポキシ官能性アクリル樹脂の調製に使用することができる(メタ)アクリル酸のエステルとしては、アルキル基が1~20個の炭素原子を有するアクリルまたは(メタ)アクリル酸のn-アルキルエステル、イソ-アルキルエステルもしくはtert-アルキルエステル、メタクリル酸と、バーサチック酸、ネオデカン酸、もしくはピバル酸などのネオ酸のグリシジルエステルとの反応生成物、ならびにヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよびアルコキシアルキル(メタ)アクリレートのモノマーが挙げられる。
【0044】
概して、(メタ)アクリル酸の適切なアルキルエステルは、C1~C20アルキル(メタ)アクリレート、適切にはC1~C10-アルキル(メタ)アクリレートから選択され得る。かかるアクリレートモノマーの例としては、n-ブチルアクリレート、二級ブチルアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、2-エチル-ヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、4-メチル-2-ペンチルアクリレート、2-メチルブチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、およびセチルメタクリレートが挙げられる。(メタ)アクリル酸のエステルを、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、およびこれらの組み合わせから選択することが特に適切である。
【0045】
エポキシ官能性アクリル樹脂の調製に使用することができるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびより高級なアルキレンオキシドに基づく、ヒドロキシアルキルアクリレートおよびメタクリレートのモノマー、またはこれらの混合物が挙げられる。例は、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、およびヒドロキシブチルアクリレートである。適切には、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートから選択される。
【0046】
エポキシ官能性アクリル樹脂の調製に使用することができるエチレン性不飽和酸のアミドとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、およびジアセトンアクリルアミドが挙げられる。特に適切なアミドモノマーは、(メタ)アクリルアミドである。
エポキシ官能性アクリル樹脂を調製するために使用することができるビニルエステルモノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、およびバーサチック酸のビニルエステルが挙げられる。特に適切なビニルエステルは、酢酸ビニルである。
【0047】
エポキシ官能性アクリル樹脂の調製に適切なエチレン性不飽和カルボン酸モノマーとしては、モノカルボン酸およびジカルボン酸のモノマー、ならびにジカルボン酸のモノエステルが挙げられる。本発明を実施するために、3~5個の炭素原子を含有するエチレン性不飽和脂肪族モノカルボン酸もしくはジカルボン酸または無水物を使用することが特に適切である。モノカルボン酸モノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸が挙げられ、ジカルボン酸モノマーの例としては、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、および無水マレイン酸が挙げられる。他の適切なエチレン性不飽和酸の例としては、ビニル酢酸、ビニル乳酸、ビニルスルホン酸、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、およびこれらの塩が挙げられる。適切には、エチレン性不飽和カルボン酸モノマーは、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、およびこれらの組み合わせから選択される。
【0048】
エポキシ官能性アクリル樹脂の調製に適切な共役ジエンモノマーとしては、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、3,4-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、3,7-ジメチル-1,3,6-オクタトリエン、2-メチル-6-メチレン-1,7-オクタジエン、7-メチル-3-メチレン-1,6-オクタジエン、1,3,7-オクタトリエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-アミル-1,3-ブタジエン、3,7-ジメチル-1,3,7-オクタトリエン、3,7-ジメチル-1,3,6-オクタトリエン、3,7,11-トリメチル-1,3,6,10-ドデカテトラエン、7,11-ジメチル-3-メチレン-1,6,10-ドデカトリエン、2,6-ジメチル-2,4,6-オクタトリエン、2-フェニル-1,3-ブタジエンおよび2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン、ならびに1,3-シクロヘキサジエンから選択される共役ジエンモノマーが挙げられる。1,3-ブタジエン、イソプレン、およびこれらの組み合わせが、特に適切な共役ジエンである。
【0049】
上記に開示されるものから選択され得る、3つ以上または4つ以上などの、2つ以上の異なるポリエポキシ官能性化合物の組み合わせを樹脂成分(a1)において使用することも可能である。
【0050】
本発明による適切なポリエポキシ官能性化合物は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、エポキシフェノールノボラック樹脂、エポキシクレゾールノボラック樹脂、エポキシ官能性(ポリ)シロキサン、エポキシ官能性ポリシルフィド(polysilfide)、酸官能性ポリエステルのエポキシ官能性付加物、およびポリエポキシド、例えば、上述のものから選択され得る。
【0051】
本発明の膨張性コーティング組成物の樹脂成分(a)中に必要に応じて存在する(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル(a2)は、ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸との反応から生じる(メタ)アクリルエステル基の複数のベータ-ヒドロキシエステルを含み得る。ポリエポキシドは、(メタ)アクリル酸と、1:0.1~1:1.2、適切には1:0.5~1:1.2、より適切には1:1~1:1.05のエポキシ-カルボン酸当量比で反応させることができる。
【0052】
ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸との反応生成物に使用することができるポリエポキシドは、本発明の膨張性コーティング組成物の成分(a1)に関して上記に開示されるポリエポキシドから選択され得る。本発明による膨張性コーティング組成物の(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル(成分(a2))を作製するために使用することができる特に適切なエポキシドは、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、エポキシフェニルノボラック樹脂、エポキシクレゾールノボラック樹脂、エポキシ官能性アクリル樹脂、エポキシ官能性ポリエステル、またはこれらの組み合わせから選択される。
【0053】
(メタ)アクリル酸の特に適切なベータ-ヒドロキシエステルは、EPIKOTE828(ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応生成物)とアクリル酸との反応生成物であり、AllnexからEBECRYL3720として市販されている)。
【0054】
(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル(a2)に加えて、またはその代替として、化合物(a2)とは異なる(メタ)アクリレート官能性化合物(a3)が樹脂成分(a)中に存在し得る。これによって、本発明の膨張性コーティング組成物の粘度を適切に調節することができる。したがって、必要に応じた成分(a3)は、本発明の膨張性コーティング組成物中の反応性希釈剤として機能すると考えられる。本発明の膨張性コーティング組成物の必要に応じた(メタ)アクリレート官能性成分(ii)は、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、パラ-キシレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ポリエーテルグリコール(例えば、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール)のポリ(メタ)アクリレート、およびこれらの組み合わせから選択され得る。
【0055】
本発明者らは、(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル(a2)および/または(a2)とは異なる(メタ)アクリレート官能性化合物(a3)の添加が、コーティング組成物の硬化速度のかなりの増加をもたらすことを見出した。
【0056】
理論に拘束されることを望まないが、この硬化速度の増加は、(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステルのアクリル基(i)、もしくは(i)とは異なる(メタ)アクリレート官能性化合物(ii)と、ポリアミンおよび/もしくはポリチオール官能性化合物との間のマイケル付加反応に起因すると考えられる。
【0057】
本発明の膨張性コーティング組成物において、ポリエポキシ官能性化合物(a1)は、20~95重量%、適切には40~95重量%の量で存在し得、(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル(a2)は、5~80重量%、適切には5~60重量%の量で存在し得、重量パーセントは、ポリエポキシ官能性化合物(a1)および(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル(単数または複数)(a2)の総重量に基づく。
【0058】
さらに、本発明の膨張性コーティング組成物において、ポリエポキシ官能性化合物(a1)は、25~95重量%、適切には40~95重量%の量で存在し得、(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル(a2)は、5~75重量%、適切には5~60重量%の量で存在し得、化合物(a2)とは異なる(メタ)アクリレート官能性化合物(a3)は、0~50重量%、適切には5~30重量%の量で存在し得、重量パーセントは、化合物(a1)、(a2)、および(a3)の総重量に基づく。
【0059】
本発明の膨張性コーティング組成物において、樹脂成分(a)の量は、膨張性コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、15~38重量%、22~36重量%、または23~30重量%など、10~40重量%であってもよい。代替的に、本発明のコーティング組成物中のポリマーの量は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19重量%~30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40重量%であってもよい。上記範囲のエンドポイントを任意に組み合わせて、本発明の膨張性コーティング組成物中のポリマーの量を定義することができる。
【0060】
架橋剤成分(b)
本発明による硬化可能な膨張性コーティング組成物に使用される架橋剤成分(b)は、ポリエポキシ官能性化合物(a1)のエポキシ基との反応性を有する複数の官能基を持つ少なくとも1つの化合物(b1)を含有する限り、特に限定されない。硬化は、周囲温度で、または熱を加えた際のいずれかで行うことができ、周囲温度での硬化は、本発明による膨張性コーティング組成物に特に適切である。
【0061】
適切な化合物(b1)は、
-脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリ(アミン-アミド)、およびこれらの組み合わせから適切に選択されるポリアミン官能性化合物、または
-ポリスルフィドチオール、ポリエーテルチオール、ポリエステルチオール、ペンタエリトリトール系チオールから適切に選択されるポリチオール官能性化合物、または
-これらの組み合わせ
から選択され得る。
【0062】
ポリアミン硬化剤は、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミンアミド、ポリエーテルアミン、例えば、Huntsman Cooperation(The Woodlands、Texas)から市販されているもの、ポリシロキサンアミン、ポリスルフィドアミン、またはこれらの組み合わせから選択され得る。例としては、ジエチレントリアミン、3,3-アミノ-ビス-プロピルアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、m-キシレンジアミン、イソホロンジアミン、1,3-ビス(アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、N-アミノエチルピペラジン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、およびジアミノジフェニルスルホンが挙げられ、ポリアミンと、VERSAMIDの商標でBASFによって販売されている一連の材料などの脂肪族脂肪酸との反応生成物を使用することができ、後者が特に適切である。
【0063】
加えて、上記の任意のポリアミンの付加物を使用することもできる。ポリアミンの付加物は、ポリアミンを、エポキシ樹脂などの適切な反応性化合物と反応させることによって形成される。この反応は、硬化剤中の遊離アミンの含有量を減少させ、低温および/または高湿度環境でより有用となる。
【0064】
硬化剤として、Jeffamine D-230、Jeffamine D-400、Jeffamine 600、Jeffamine 1000、Jeffamine 2005、およびJeffamine 2070などを含むが、これらに限定されない、Huntsman Corp.から入手可能な種々のJeffamineなどの種々のポリエーテルアミンを使用することもできる。
【0065】
硬化剤として、種々のポリアミドを使用することもできる。概して、ポリアミドは、ダイマー脂肪酸およびポリエチレンアミン、ならびに少量のモノマー脂肪酸の反応生成物を含有する。ダイマー脂肪酸は、モノマー脂肪酸のオリゴマー化によって調製される。ポリエチレンアミンは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミンなどといった任意のより高級なポリエチレンアミンであってもよく、最も一般的に使用されるのはジエチレントリアミンである。硬化剤としてポリアミドを使用すると、コーティングが耐食性と防水性状との間で良好なバランスをとるようにすることができる。さらに、ポリアミドにより、コーティングが良好な柔軟性、適切な硬化速度、および他の有利な要因を有するようにすることもできる。
【0066】
ポリチオール化合物は、ポリスルフィドチオール、ポリエーテルチオール、ポリエステルチオール、ペンタエリトリトール系チオール、またはこれらの組み合わせから選択され得る。特に適切なポリチオール化合物は、Akzo Nobel Functional Chemicals GmbH&Co KG(Greiz、Germany)から市販されているThioplast(著作権)G4である。
【0067】
本発明の膨張性コーティング組成物において、成分(a)中のエポキシ基および(メタ)アクリレート基などの組み合わされた官能基の、化合物(b1)中の官能基に対する当量比は、2:1~1:2、適切には1.05:1.0~1:2、特に適切には1:1.4~1:2であってもよい。
【0068】
本発明の膨張性コーティング組成物において、化合物(b1)の量は、膨張性コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、15~20重量%、16~19重量%、または17~19重量%など、典型的には、10~30重量%である。代替的に、本発明のコーティング組成物中の化合物(b1)の量は、10、11、12、13、14、または15重量%~18、19、20、21、22、23、24、または25重量%であってもよい。上記範囲のエンドポイントを任意に組み合わせて、本発明の膨張性コーティング組成物中の種々の硬化剤の量を定義することができる。
【0069】
本発明の膨張性コーティング組成物はまた、硬化促進剤を含み得る。硬化促進剤は、樹脂の硬化を加速し、硬化温度を低下させ、硬化時間を短縮することができる種類の材料である。典型的な硬化促進剤としては、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミンなどといった脂肪族アミン促進剤;BDMA、DBUなどといった無水物促進剤;ポリエテラミン触媒;ジブチルスズジラウレート、スタナスオクトエートなどといったスズ促進剤が挙げられる。本発明の1つの実施形態では、硬化促進剤は、Air Productsから市販されているANCAMINE K54である。
【0070】
硬化促進剤の適切な量は、膨張性コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、0.1~5重量%、より適切には1~3重量%である。
【0071】
本発明の膨張性コーティング組成物の架橋剤成分(b)は、本発明の膨張性コーティング組成物のオルガノシラン化合物(c)のSi-X官能性と、必要に応じて水分の存在下で、縮合反応を受け得る化合物(b2)をさらに含み得る。適切な化合物(b2)は、式(III)または(IV)のシランから選択され得、
RkSiXl (III)
RmX3-mSiR’SiRnX3-n (IV)
式中、R’は、1~20個の炭素原子、より適切には1~4個の炭素原子のアルキル基として定義され、RおよびXは、本発明による膨張性コーティング組成物のオルガノシラン化合物(c)であって、以下で考察する、(c)の特に適切な実施形態を含む、オルガノシラン化合物(c)について定義され、
kは、0~2の整数であり、lは、2~4の整数であり、k+lの合計は、4である。
mおよびnは、0~2の整数であり、m+nは、3以下である。
【0072】
特に適切な化合物(b2)は、テトラアルコキシシラン、ヒドロカルビルトリアルコキシシラン、およびジヒドロカルビルジアルコキシシランから選択され得、ヒドロカルビル基は、C1~C4アルキルおよびフェニルから適切に選択され得、アルコキシ基は、C1~C4アルコキシから適切に選択され得る。
【0073】
化合物(b2)は、膨張性コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、0~5重量%、適切には0.1~4重量%、より適切には0.5~4重量%、なおもより適切には0.5~3重量%の量で存在し得る。化合物(b2)が存在しない場合、特に適切である。
【0074】
オルガノシラン化合物(c):
本発明による膨張性コーティング組成物に有用なオルガノシラン化合物(c)を上記で定義する。本発明の膨張性コーティング組成物中に存在する適切なオルガノシラン化合物(c)は、式(I)または(II)のオルガノシラン化合物から選択され得、
-Lは、1~10個の炭素原子、適切には2~6個の炭素原子を有する、アルキレン基およびシクロアルキレン基、ならびにYがビニル基である場合の結合から選択され、かつ/または
-Kは、1~10個の炭素原子、適切には2~6個の炭素原子を有する、アルキレン基およびシクロアルキレン基、ならびに結合から選択され、かつ/または
-Yは、エポキシ含有基、アミノ基、ポリアミノ基、アミド基、チオール基、カルボン酸基、ヒドロキシ基、(メタ)アクリルオキシ基、およびビニル基から選択され、かつ/または
-Xは、適切には1~4個の炭素原子を有するアルコキシ基、クロロ基、アシルオキシ基、およびオキシイミノ基から選択され、適切には1~4個の炭素原子を有するアルコキシ基から選択され、かつ/または
-Rは、C1~C4アルキル基であり、かつ/または
-Bは、多価のアルキル基であり、かつ/または
-nは、1であり、oは、0であり、mは、3であり、かつ/または
-uは、1であり、zは、2である。
【0075】
適切なオルガノシラン化合物は、ビニルトリアルコキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3-(メタ)アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、アミノアルキルトリアルコキシシラン、アミノアルキルジアルキルモノアルコキシシラン、ビス-(アミノアルキル)ジアルコキシシラン、チオールアルキルトリアルコキシシラン、チオールアルキルアルキルジアルコキシシラン、チオールアルキルジアルキルモノアルコキシシラン、およびこれらの組み合わせから選択され得る。他の適切なオルガノシラン化合物は、zが2である、式(II)による化合物であり、ジポダルシランとして当業者に既知であり、これらは市販もされている。特に適切なシラン化合物(c)は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(2-ブチリデンアミノオキシ)シラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルメトキシシラン、ビス-(3-アミノプロピル)ジメトキシシラン、チオールエチルトリメトキシシラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ジエチレントリアミン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミンから選択され得る。
【0076】
オルガノシラン化合物(c)の量が、膨張性コーティング組成物の総重量に基づいて、5~18重量%、適切には10~18重量%である、上述の態様のいずれかに記載のコーティング組成物。オルガノシラン化合物(c)の量の範囲の適切な下限は、膨張性コーティング組成物の総重量に基づいて、少なくとも5、少なくとも5,5、少なくとも6、少なくとも6.5、少なくとも7、少なくとも7.5、少なくとも8、少なくとも8.5、少なくとも9,5、少なくとも10、少なくとも10.5、少なくとも11、少なくとも11.5、少なくとも12、少なくとも12.5、少なくとも13、少なくとも13.5、少なくとも14、少なくとも14.5、少なくとも15%重量であってもよい。オルガノシラン化合物(c)の量の範囲の適切な上限は、膨張性コーティング組成物の総重量に基づいて、多くても20、多くても19,5、多くても19、多くても18.5、多くても18、多くても17.5、多くても17、多くても16.5、多くても16、多くても15.5、多くても15、多くても14.5、多くても14、多くても13.5、多くても13、多くても12.5、多くても12、多くても11.5、多くても11、多くても10.5、多くても10重量%であってもよい。当業者は、上記の下限のうちのいずれか1つ、および上記の上限のうちのいずれか1つによって定義される任意の範囲が本明細書で開示されることを理解されよう。
【0077】
本発明の膨張性コーティング組成物は、成分(d)として、熱分解時に膨張ガスを提供する化合物をさらに含む。
【0078】
膨張ガスは、高温の炎に曝されると、耐火膨張性組成物を発泡させ、ふくらませる役割を果たす。この膨張の結果として、形成される炭は、下地基材を絶縁および保護する役割を果たす厚いマルチセル材料である。本発明の膨張性コーティング組成物に使用され得る膨張ガスの供給源は、窒素含有材料である。適切な窒素含有材料の例としては、メラミン、リン酸の塩、グアニジン、メチル化メラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、尿素、ジメチル尿素、メラミンピロリン酸塩、ジシアンジアミド、グアニル尿素リン酸塩、およびグリシンが挙げられる。適切には、メラミンが使用される。二酸化炭素を遊離する材料などの他の従来の膨張ガスの供給源を使用することもできる。例は、炭酸カルシウムまたは炭酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属である。加熱時に分解されるときに水蒸気を放出する化合物、例えば、水酸化カルシウム、二水酸化マグネシウム、または三水酸化アルミニウムを使用することもできる。かかる化合物の他の例は、ホウ酸、ならびにホウ酸エステルおよび金属ホウ酸塩などのホウ酸誘導体である。
【0079】
本発明の膨張性コーティング組成物中の成分(d)の適切な量は、0.1~25重量%、適切には1~10重量%の範囲であってもよく、重量パーセントは、組成物の総固形分重量に基づく。
【0080】
本発明の膨張性コーティング組成物は、リン供給源、ホウ素供給源、亜鉛供給源、酸供給源、金属酸化物、例えば、予め加水分解されたオルトケイ酸テトラエチル、酸化アルミニウム、チタンイソプロポキシド、炭素供給源、無機充填剤、鉱物繊維、例えば、PPGからのCHOPVANTAGE、LapinusからのCoatforceまたはRoxul繊維、レオロジー添加剤、有機溶媒、顔料、泡安定剤、およびこれらの組み合わせから選択される、必要に応じた添加剤(f)を含み得る。
【0081】
必要に応じたリンの供給源は、例えば、リン酸、リン酸モノアンモニウムおよびリン酸二アンモニウム、リン酸トリス-(2-クロロエチル)、ホスホリルアミドなどのリン含有アミド、ならびにメラミンピロリン酸塩などの様々な材料から選択され得る。適切には、リンの供給源は、式(NH4)n+2PnO3n+1で表されるポリリン酸アンモニウムであり、式中、nは、少なくとも2の整数であり、適切には、nは、少なくとも50の整数である。本発明の膨張性コーティング組成物は、コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、0.05~30重量%、適切には0.5~10重量%の範囲のリンの量を含有し得る。リンは、膨張性組成物中で炭促進剤として機能すると考えられている。
【0082】
必要に応じた亜鉛の供給源は、様々な材料から選択され得る。亜鉛材料は、炭中の小さなセル構造の形成に寄与すると考えられる。炭の小さなセルは、基材のより良い絶縁を与え、外部補強材料がない場合でも、よりよく炭の完全性を保ち、基材に付着することができる。したがって、炭のひび割れおよび基材からの破断が最小限に抑えられ、下地鋼に対してより強い保護手段が与えられる。亜鉛の供給源である適切な材料の例としては、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛およびリン酸亜鉛などの亜鉛塩、炭酸亜鉛が挙げられ、亜鉛金属を使用することもできる。適切には、ホウ酸亜鉛が利用される。本発明の膨張性コーティング組成物は、組成物の総固形分重量に基づいて、0.1~25重量%、適切には0.5~12重量%の範囲の亜鉛の量を含有し得る。
【0083】
ホウ素の供給源は、五ホウ酸アンモニウムまたはホウ酸亜鉛、酸化ホウ素、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、およびホウ酸アンモニウムなどのホウ酸塩、ブチルホウ酸またはフェニルホウ酸などのホウ酸エステル、ならびにこれらの組み合わせから選択され得る。本発明の膨張性コーティング組成物は、0.1~10重量%、適切には1~6重量%の範囲のホウ素の量を含有し得、重量パーセントは、組成物の総固形分重量に基づく。
【0084】
酸供給源は、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、二リン酸二アモニウム、五ホウ酸二アモニウム、リン酸生成材料、ホウ酸、金属または有機ホウ酸塩、およびこれらの組み合わせから選択され得る。存在する場合、酸供給源の総量は、コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、5~30重量%であってもよい。
【0085】
本発明の膨張性コーティング組成物は、炭素供給源をさらに含む。炭素供給源は、火または熱に曝されると炭に変換され、それによって、基材上に防火保護層を形成する。本発明によれば、炭素供給源は、例えば、芳香族化合物および/またはトール油脂肪酸(TOFA)、および/またはペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、グリセロール、オリゴマーグリセロール、キシリトール、マンニトール、ソルビトールなどのポリヒドロキシ化合物、およびポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタンなどのポリマー、ならびにこれらの組み合わせであってもよい。本発明の発明者らは、驚くべきことに、芳香族化合物および/またはトール油脂肪酸を含む炭素供給源が、本発明の膨張性コーティング組成物中の炭素供給源として使用されると、結果として生じる膨張性コーティングは、同様のタイプの膨張性コーティングと比較して同等のまたはさらに優れた防火性状を有するだけでなく、低温を経た後にこれらの必要な性状を維持することもできることを見出した。ポリマーが炭素供給源でもあり得ることも認識されよう。
【0086】
本発明の膨張性コーティング組成物において、炭素供給源の量は、膨張性コーティング組成物の総重量に基づいて、5~18重量%、11~17重量%、または12~16重量%など、最大18重量%であってもよい。代替的に、本発明のコーティング組成物中の炭素供給源の量は、5、6、7、8、9、10、11、12、13重量%~15、16、17、18重量%であってもよい。上記範囲のエンドポイントを任意に組み合わせて、本発明の膨張性コーティング組成物中の種々の炭素供給源の量を定義することができる。
【0087】
リン、亜鉛、ホウ素、および膨張ガスが各々、別個の供給源材料によって提供され得るか、または代替的に、単一の材料が、前述の追加の成分のうちの2つ以上の供給源であり得ることを理解されたい。例えば、メラミンピロリン酸塩は、リンおよび膨張ガスの両方の供給源を提供することができる。
【0088】
必要に応じた強化充填剤(e)は、他の充填剤よりも適切な繊維強化剤および小板状強化剤を含む、従来利用されてきた材料の多数の種類の中から選択され得る。繊維強化剤の例としては、ガラス繊維、セラミック繊維、例えば、酸化アルミニウム/酸化ケイ素、および黒鉛繊維が挙げられる。小板状強化剤としては、ハンマーミルガラスフレーク、雲母、およびウォラストナイトが挙げられる。他の適切な充填剤としては、金属酸化物、チタン酸化物、クレー、タルク、シリカ、珪藻土、lapinus(登録商標)繊維、および種々の顔料が挙げられる。強化充填剤は、結果として生じる炭が硬く均一であるように、炭形成の前および間、防火組成物の膨張を制御するのを補助すると考えられる。
【0089】
本発明の1つの利点は、膨張性コーティング組成物が、硬化した膨張性コーティングの防火および機械的性状を損なうことなく、染色可能であることである。特に、強化充填剤、例えば、白色強化充填剤は、硬く均一な炭を提供するために存在する必要はない。したがって、膨張性コーティング組成物中の、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、雲母、ウォラストナイト、酸化チタン、クレー、タルク、および珪藻土化合物から選択される白色顔料および/または充填剤の量は、組成物の総重量に基づいて、2重量%未満、適切には0~0.1重量%であってもよく、有色顔料、特に黒色顔料の量は、組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.5重量%、適切には1~5重量%であってもよい。
【0090】
本発明の膨張性コーティング組成物はまた、レオロジー添加剤、有機溶媒、泡安定剤、顔料、火炎拡散制御剤などといった様々な従来の添加剤を含有し得る。これらの原料は必要に応じたものであり、様々な量で添加することができる。特に、本発明による膨張性コーティング組成物は、23℃および大気圧(すなわち、1バール)で液体であり、かつ実質的に非水性であり、すなわち、膨張性コーティング組成物の総重量に基づいて、5重量%未満、適切には3重量%未満、より適切には1重量%未満の水を含有するか、または意図的に添加された水さえも含有しない。
【0091】
上述したように、架橋した膨張性コーティングは、活性化温度を上回る温度で膨張して、化合物(c)の熱分解を誘発し、必要に応じて炭化される。熱および火の作用時に、膨張した泡は炭化を開始し、樹脂材料および必要に応じて存在する追加の炭素供給源は、高温で安定性を呈し、電池または個々の電池セルの熱暴走を長期間にわたって防止するか、または少なくとも抑制するために、断熱を提供する、多孔質炭素ネットワークを形成する。
【0092】
膨張性コーティング組成物は、2パッケージのシステムとして構成され得、
成分(a)は、第1のパッケージ(A)中に含まれ、
成分(b)は、第2のパッケージ(B)中に含まれ、
化合物(c)は、第3のパッケージ(C)中に含まれるか、またはY-が成分(a)中の化合物との反応性を有する官能基である場合に、化合物(c)が第2のパッケージ(B)中に存在するか、またはY-が成分(b)中の化合物との反応性を有する官能基である場合に、化合物(c)が第1のパッケージ(A)中に存在し、
熱分解時に膨張ガスを提供する化合物(d)、ならびに存在する場合には添加剤(e)および(f)のうちのいずれかは、任意の組み合わせで、パッケージ(A)、(B)、もしくは(C)のいずれかの中に、またはこれらのパッケージの任意の組み合わせの中に含まれるか、あるいは1つ以上のさらなるパッケージ(D)中に含まれ、パッケージは、コーティング組成物の塗布の直前に混合される。
【0093】
組成物は、無溶媒であり、スプレー塗布されることが特に適切である。所望の場合、薄くすることは、キシレン、塩化メチレン、または1,1,1-トリクロロエタンなどの様々な従来の溶媒で達成され得る。
【0094】
本発明の膨張性コーティング組成物は、必要に応じて種々の乾燥コーティングの厚さを提供するために塗布され得る。適切な乾燥コーティングの厚さは、50~5000ミクロンなど、100~2000ミクロンなどといった、10~20,000ミクロンの範囲であってもよい。
【0095】
基材をコーティングするための方法において、本発明の膨張性コーティング組成物が、少なくとも部分的に基材に塗布され、その後、必要に応じて硬化される。適切な基材は、アルミニウムおよび鋼の基材から適切に選択される金属基材、またはポリカーボネートから適切に選択されるプラスチック基材から選択され得る。
【0096】
特に、本発明の膨張性コーティング組成物は、電池、特にリチウムイオン電池の構造要素に塗布され得る。電池は、ハウジングを画定する外壁要素、および必要に応じて、内壁要素を備えることができ、膨張性コーティング組成物は、外壁要素のいずれかの外側側面および/もしくは内側側面、ならびに/または存在する場合には、内壁要素のいずれかの任意の側面に、少なくとも部分的に塗布される。外壁要素および/または内壁要素は、複合体、鋼、アルミニウム、およびポリカーボネートのいずれかから選択される材料を含み得る。
【0097】
電池、特にリチウムイオン電池は、複数の個々の電池セルを備える電池パックであってもよく、架橋された膨張性コーティングは、膨張した状態および必要に応じて炭化した状態で、個々の電池セルのうちの少なくともいくつかを互いに断熱するように位置決めされる。加えて、膨張性コーティング組成物は、上述のように、電池パックのハウジング壁および内部分割壁に塗布され得る。
【0098】
電池を備える物品および該物品のユーザに対して防火を提供するために、電池と物品との間の、電池に隣接する物品の一部分に膨張性コーティング組成物を塗布して、物品を電池から絶縁することもまた、本発明の範囲内である。かかる事例では、従来の電池または本発明による電池を用いることができる。物品は、例えば、携帯電話、タブレット、またはラップトップコンピュータであってもよい。
【0099】
代替的に、物品は、ハイブリッドもしくは電気自動車、バス、またはトラックなどの車両であってもよい。かかる車両では、電池、とりわけリチウムイオン電池を、電池の重量により、車両本体、例えば車体の床部分の下に、平坦な電池パックとして位置決めすることが一般的である。かかる事例では、本発明の膨張性コーティングは、電池と車両本体との間の、電池に隣接する車両の床部分に塗布され得る。これにより、電池の熱暴走または電池火災の場合に、車体、とりわけ乗客キャビンは、火災が乗客キャビンに広がらないように、架橋された膨張性コーティングによって保護され、かかる出来事が発生した場合に、乗客が車両から安全に脱出するのに十分な時間を有するように、乗客キャビンの温度上昇が長期間にわたって制限される。
【0100】
本発明は、以下の態様によって定義される。
1.膨張性コーティング組成物であって、
(a)
-(a1)ポリエポキシ官能性化合物、および
必要に応じて、
-(a2)(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル、および/または
-(a3)化合物(a2)とは異なる(メタ)アクリレート官能性化合物、
を含む、樹脂成分と、
(b)ポリエポキシ官能性化合物のエポキシ基との反応性を有する複数の官能基を持つ少なくとも1つの化合物(b1)を含む、架橋剤成分と、
(c)膨張性コーティング組成物の総重量に基づいて、5~20重量%の、式(I)または(II)のオルガノシラン化合物およびこれらの組み合わせから選択されるオルガノシラン化合物であって、
(Y-L-)n-SiXmRo (I)、
(Y-L)u-B-(K-SiXvRw)z (II)
式中、
-nおよびmが、1~3の整数であり、oが、0~2の整数であり、
n+m+oが、4であり、
-yが、1~3の整数であり、wが、0~2の整数であり、y+wが、3であり、
-uが、少なくとも1の整数であり、zが、少なくとも2の整数であり、
-Bが、多価の有機基であり、Bの原子価が、
u+zであり、
-Lが、二価の有機基、またはYがビニル基である場合の結合であり、
-Kが、二価の有機基または結合であり、
-Yが、成分(a)のエポキシ基および/もしくは存在する場合の(メタ)アクリレート基、または成分(b)の官能基、との反応性を有する官能基を含み、
-Xが独立して、出現ごとに、クロロ、アルコキシ、アシルオキシ、およびオキシイミノから選択され、
-Rが、ヒドロカルビル基である、オルガノシラン化合物と、
(d)熱分解時に膨張ガスを提供する化合物と、を含み、
(a)~(d)について定義した化合物が、互いに異なり、膨張性コーティング組成物が、23℃の大気圧で液体であり、組成物の総重量に基づいて、5重量%未満の水を含む、膨張性コーティング組成物。
2.式(I)または(II)のオルガノシラン化合物について、
-Lが、1~10個の炭素原子、適切には2~6個の炭素原子を有する、アルキレン基およびシクロアルキレン基、ならびにYがビニル基である場合の結合から選択され、かつ/または
-Kが、1~10個の炭素原子、適切には2~6個の炭素原子を有する、アルキレン基およびシクロアルキレン基、ならびに結合から選択され、かつ/または
-Yが、エポキシ含有基、アミノ基、ポリアミノ基、アミド基、チオール基、カルボン酸基、ヒドロキシ基、(メタ)アクリルオキシ基、およびビニル基から選択され、かつ/または
-Xが、適切には1~4個の炭素原子を有するアルコキシ基から選択され、かつ/または
-Rが、C1~C4アルキル基であり、かつ/または
-Bが、多価のアルキル基であり、かつ/または
-nが、1であり、oが、0であり、mが、3であり、かつ/または
-uが、1であり、zが、2である、
態様1に記載のコーティング組成物。
3.オルガノシラン化合物が、ビニルトリアルコキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3-(メタ)アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、アミノアルキルトリアルコキシシラン、アミノアルキルジアルキルモノアルコキシシラン、ビス-(アミノアルキル)ジアルコキシシラン、チオールアルキルトリアルコキシシラン、チオールアルキルアルキルジアルコキシシラン、チオールアルキルジアルキルモノアルコキシシラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、およびこれらの組み合わせから選択される、態様2に記載のコーティング組成物。
4.オルガノシラン化合物の量が、膨張性コーティング組成物の総重量に基づいて、5~18重量%、適切には10~18重量%である、先行態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
5.ポリエポキシ官能性化合物(a1)が、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリジジルエーテル(diglygidyl ether)、エポキシフェノールノボラック樹脂、エポキシクレゾールノボラック樹脂、エポキシ官能性アクリル樹脂、エポキシ官能性ポリエステル、またはこれらの組み合わせを含む、先行態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
6.(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル(a2)が、存在し、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリジジルエーテル(diglygidyl ether)、エポキシフェノールノボラック樹脂、エポキシクレゾールノボラック樹脂、エポキシ官能性アクリル樹脂、エポキシ官能性ポリエステル、またはこれらの組み合わせから選択されるポリエポキシドの(メタ)アクリル酸との反応から生じる、複数のベータ-ヒドロキシ(メタ)アクリルエステル基を含み、適切には(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル(a2)が、1:0.1~1:1.015のエポキシカルボン酸当量比での、ポリエポキシドの(メタ)アクリル酸との反応の生成物を含む、先行態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
7.(メタ)アクリレート官能性化合物(a3)が、存在し、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、パラ-キシレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、およびこれらの組み合わせのポリ(メタ)アクリレートから選択される、先行態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
8.成分(a)が、
20~100重量%、適切には40~95重量%のポリエポキシ官能性化合物(a1)と、
0~75重量%、適切には5~60重量%の(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル(a2)と、
0~50重量%、適切には5~30重量%の、化合物(a2)とは異なる(メタ)アクリレート官能性化合物(a3)と、を含み、重量パーセントが、化合物(a1)、(a2)、および(a3)の総重量に基づく、
先行態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
9.成分(b)が、
-脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリ(アミン-アミド)、およびこれらの組み合わせから適切に選択されるポリアミン官能性化合物、または
-ポリスルフィドチオール、ポリエーテルチオール、ポリエステルチオール、ペンタエリトリトール系チオールから適切に選択されるポリチオール官能性化合物、または
-これらの組み合わせ
を含む、先行態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
10.(a)中の組み合わされたエポキシ基および(メタ)アクリレート基の、(b)中の官能基に対する当量比が、2:1~1:2、適切には1.3:1.0~1.0:1.3である、先行態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
11.顔料および/または充填剤(e)を含み、
-酸化アルミニウム、酸化ケイ素、雲母、ウォラストナイト、酸化チタン、クレー、タルク、および珪藻土化合物から選択される白色顔料および/または充填剤の総量が、組成物の総重量に基づいて、2重量%未満、適切には0~0.1重量%であり、
-有色顔料、特に黒色顔料の量が、組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.5重量%、適切には1~5重量%である、
先行態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
12.リン供給源、ホウ素供給源、亜鉛供給源、酸供給源、炭素供給源、レオロジー添加剤、有機溶媒、顔料、泡安定剤、接着促進剤、腐食防止剤、UV安定剤、およびこれらの組み合わせから選択される添加剤(f)をさらに含む、先行態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
13.マルチパッケージコーティング組成物であり、
成分(a)が、第1のパッケージ(A)中に含まれ、
成分(b)が、第2のパッケージ(B)中に含まれ、
化合物(c)が、第3のパッケージ(C)中に含まれるか、またはY-が成分(a)中の化合物との反応性を有する官能基である場合に、化合物(c)が第2のパッケージ(B)中に存在するか、またはY-が成分(b)中の化合物との反応性を有する官能基である場合に、化合物(c)が第1のパッケージ(A)中に存在し、
熱分解時に膨張ガスを提供する化合物(d)、ならびに存在する場合には添加剤(e)および(f)のうちのいずれかが、任意の組み合わせで、パッケージ(A)、(B)、もしくは(C)のいずれかの中に、またはこれらのパッケージの任意の組み合わせの中に含まれるか、あるいは1つ以上のさらなるパッケージ(D)中に含まれ、パッケージが、コーティング組成物の塗布の直前に混合される、
先行態様のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
14.態様1~13のいずれか1つに記載の膨張性コーティング組成物を基材に少なくとも部分的に塗布し、必要に応じて、塗布したコーティング組成物を硬化させることを含む、基材をコーティングするための方法。
15.基材が、適切にはアルミニウム基材および鋼基材から選択される金属基材、または適切にはポリカーボネートから選択されるプラスチック基材を含む、態様14に記載の方法。
16.態様14または15に記載の方法によってコーティングされた、基材。
17.態様16に記載の基材を備える、物品。
18.電池、適切にはリチウムイオン電池、または電池ケースである、態様17に記載の物品。
19.電池、適切にはリチウムイオン電池、または電池ケース、を備え、態様1~13のいずれか1つで定義される膨張性コーティング組成物が、電池と物品との間の、電池に隣接する物品の一部分に塗布される、態様17に記載の物品。
20.物品が、リチウムイオン電池または電池のセットを有する電池ケースと、乗客キャビンと、を備える、車両であり、膨張性コーティング組成物が、電池と車両本体との間の、電池に隣接する車両の床部分の少なくとも一部分に塗布される、態様17に記載の物品。
21. -電池または電池ケースの任意の部分に塗布された場合に、電池もしくは電池ケースに防火を提供し、かつ/または電池もしくは電池ケースの熱暴走を低減もしくは防止するため、あるいは
-電池と物品との間の、電池に隣接する物品の一部分に塗布された場合に、電池を備える物品に防火を提供するための、態様1~13のいずれか1つに記載の膨張性コーティング組成物の使用であって、
電池が、適切にはリチウムイオン電池である、使用。
22.物品が、リチウムイオン電池および乗客キャビンを備える、車両であり、硬化可能な膨張性コーティング組成物が、車両の乗客キャビンを電池火災から保護するために使用される、態様21に記載の使用。
23.態様1~13のいずれか1つに記載の膨張性コーティング組成物を電池の任意の部分に塗布して、その上にコーティングを形成することによって、電池に防火を提供するか、または電池の熱暴走を低減もしくは防止するための方法であって、電池が、適切にはリチウムイオン電池である、方法。
24.態様1~13のいずれか1つに記載の膨張性コーティング組成物を、電池と物品との間の、電池に隣接する物品の一部分に塗布して、その上にコーティングを形成することによって、電池を備える物品に防火を提供するための、方法。
25.物品が、リチウムイオン電池および乗客キャビンを備える、車両であり、架橋された膨張性コーティングが、車両の乗客キャビンを電池火災から保護するように位置決めされる、態様24に記載の方法。
【0101】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図するものであり、限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0102】
実施例1
以下のベース成分と硬化剤成分とを混ぜ合わせ、完全に混合した。
【表1】
【表2】
【0103】
混合物を、0.8mmの厚さを有するアルミニウムパネル(5005H24型)にスプレー塗布し、23℃で最低7日間にわたって硬化させた。硬化したコーティングの乾燥コーティングの厚さは、150μmであった。
【0104】
コーティングした試料の背面において、熱電対を中心点に取り付けて、試料を通して温度を監視した。次いで、コーティングしたパネルの中心を、架橋された膨張性コーティングをトーチの方向に向けて、プロパントーチ(直径3.5cm、プロパン)から4cmの距離に位置決めした。炎の温度を、炎のベース近くに置かれた第2の熱電対を通して監視し、900~1000℃で安定したままであることを見出した。コーティングされた基材の背面の温度を、長期間にわたって測定した。結果を
図1に示す。
【0105】
実施例2
以下のベース配合物および硬化剤配合物を使用したことを除いて、実施例1を繰り返した。
【表3】
【表4】
【0106】
【0107】
実施例3
以下のベース配合物および硬化剤配合物を使用したことを除いて、実施例1を繰り返した。
【表5】
【表6】
【0108】
【0109】
実施例4:
混合比(重量):ベース/硬化剤=45.7/54.3
全組成物中のシラン含有量(重量%):11.62重量%
【表7】
【表8】
【0110】
実施例5:
混合比(重量):ベース/硬化剤=44.8/55.2
全組成物中のシラン含有量(重量%):9.11重量%
【表9】
【表10】
【0111】
実施例6:
混合比(重量):ベース/硬化剤=44.1/55.9
全組成物中のシラン含有量(重量%):6.82重量%
【表11】
【表12】
【0112】
実施例7(比較):
混合比(重量):ベース/硬化剤=43.2/56.8
セット中のシラン含有量(重量%):4.17重量%
【表13】
【表14】
【0113】
実施例8(比較):
混合比(重量):ベース/硬化剤=42.5/57.5
全組成物中のシラン含有量(重量%):2.01重量%
【表15】
【表16】
【0114】
実施例9(比較):
混合比(重量):ベース/硬化剤=42.1/57.9
セット中のシラン含有量(重量%):0.81重量%
【表17】
【表18】
【0115】
実施例4~9の膨張性コーティング組成物をアルミニウムパネルに塗布し、実施例1について説明したように試験した。結果を
図4に示す。
【国際調査報告】