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特表2022-527116TPP1を発現するAAVの投与による眼のリソソーム蓄積症の治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-30
(54)【発明の名称】TPP1を発現するAAVの投与による眼のリソソーム蓄積症の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20220523BHJP
   A61K 38/48 20060101ALI20220523BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20220523BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20220523BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220523BHJP
   A61K 47/50 20170101ALI20220523BHJP
   C12N 15/864 20060101ALN20220523BHJP
【FI】
A61K48/00 ZNA
A61K38/48 100
A61K35/761
A61K31/711
A61P27/02
A61K47/50
C12N15/864 100Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559396
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(85)【翻訳文提出日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 US2020027223
(87)【国際公開番号】W WO2020210324
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】62/831,067
(32)【優先日】2019-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】301040958
【氏名又は名称】ザ・チルドレンズ・ホスピタル・オブ・フィラデルフィア
【氏名又は名称原語表記】THE CHILDREN’S HOSPITAL OF PHILADELPHIA
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ダビッドソン ビバリー
(72)【発明者】
【氏名】テセドール ルイス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076CC10
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA13
4C084DC03
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA331
4C084ZC191
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA33
4C086ZC19
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA02
4C087MA58
4C087NA05
4C087ZA33
4C087ZC19
(57)【要約】
リソソーム蓄積症を有する哺乳動物の網膜機能障害を治療する方法であって、可溶性リソソームトリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)をコードする組換えAAV粒子を網膜下に投与することを含む、方法が提供される。特に、網膜機能障害は、CLN2が欠損しており、その疾患のために酵素補充療法または遺伝子治療を受ける子供において起こり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
視力喪失をもたらすリソソーム蓄積症(LSD)を有する哺乳動物を治療する方法であって、それを必要とする哺乳動物に複数のAAV粒子を網膜下投与する工程を含み、
該AAV粒子が、
(i)一対のAAV逆方向末端反復配列(ITR)の間に挿入された核酸であって、
(1)可溶性リソソームトリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)ポリペプチド、
(2)その断片、
(3)TPP1ポリペプチドもしくはその断片のプロ酵素、または
(4)前記のいずれかの組み合わせ
をコードする該核酸;および
(ii)リソソームヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドを生成するために、該核酸に機能的に連結されかつ該核酸の発現を駆動する、発現制御エレメント
を含み、
ここで、該AAV粒子が、該哺乳動物の細胞に形質導入して該ポリペプチドの発現をもたらすことができる、方法。
【請求項2】
前記AAV ITRのうちの1つまたは複数が、1つまたは複数のAAV2 ITRを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記核酸が、哺乳動物TPP1またはその生物学的機能性断片をコードする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記核酸が、ヒトTPP1またはその生物学的機能性断片をコードする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
視力喪失/失明を遅らせる、停止させる、逆転させる、または予防する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記発現制御エレメントがCMVエンハンサーを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記発現制御エレメントがβアクチンプロモーターを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記発現制御エレメントがニワトリβアクチンプロモーターを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記発現制御エレメントが、CMVエンハンサーおよびニワトリβアクチンプロモーターを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記発現制御エレメントが、天然のCMVエンハンサーに対する約80%以上の同一性または天然のニワトリβアクチンプロモーターに対する約80%以上の同一性を有する配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記AAV粒子が、AAVカプシドタンパク質またはその機能性断片をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記カプシド配列が、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、Rh10、Rh74、またはAAV-2i8のVP1、VP2および/またはVP3配列に対して約70%以上の同一性を有するVP1、VP2および/またはVP3カプシド配列を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記カプシド配列が、AAV2に対して約80%以上の同一性を有するVP1カプシド配列を含み、該カプシド配列は、444位、500位および/または730位のチロシンがチロシンではないアミノ酸で置換されている、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記カプシド配列が、AAV2に対して約90%以上の同一性を有するVP1カプシド配列を含み、該カプシド配列は、444位、500位および/または730位のチロシンがフェニルアラニンで置換されている、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記カプシド配列が、444位、500位および/または730位のチロシンがフェニルアラニンで置換されたAAV2 VP1カプシド配列を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記カプシド配列が、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、Rh10、Rh74、またはAAV-2i8のいずれかのAAV血清型から選択されるVPl、VP2またはVP3カプシド配列を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記患者が、異なる投与経路でのTPP1酵素補充療法を以前に受けたことがあるか、現在受けているか、今後受ける予定である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記AAV粒子が、約1×108~約1×1012総vgの用量で投与される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記哺乳動物が非げっ歯類の哺乳動物である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記非げっ歯類の哺乳動物が霊長類である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記非げっ歯類の哺乳動物がヒトである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記ヒトが子供である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記子供が約1歳~約4歳である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記LSDが、乳児型もしくは遅発乳児型セロイドリポフスチン症(LINCL)、若年型バッテン(Juvenile Batten)病、ファブリー(Fabry)病、MLD、サンフィリポ(Sanfilippo)病A型、クラッベ(Krabbe)病、モルキオ(Morquio)病、ニーマン・ピック(Niemann-Pick)病C型、テイ・サックス(Tay-Sachs)病、ハーラー(Hurler)病(MPS-I H)、サンフィリポ病B型、マロトー・ラミー(Maroteaux-Lamy)病、ニーマン・ピック病A型、シスチノーシス(Cystinosis)、ハーラー・シャイエ(Hurler-Scheie)病(MPS-I H/S)、スライ(Sly)症候群(MPS VII)、シャイエ病(MPS-I S)、乳児型バッテン病、GM1ガングリオシドーシス、ムコリピドーシスII/III型、またはサンドホフ(Sandhoff)病である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記LSDに関連する症状の発症が、約5~約10日、約10~約25日、約25~約50日、または約50~約100日遅れる、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記症状が、固有位置感覚反応、眼振、威嚇瞬目反応、瞳孔対光反射、小脳性運動失調、および企図振戦からなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記症状が、視力喪失または失明である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記AAV粒子が、AAV1粒子、AAV2粒子、AAV3粒子、AAV4粒子、AAV5粒子、AAV6粒子、AAV7粒子、AAV8粒子、AAV9粒子、AAV10粒子、AAV11粒子、AAV12粒子、AAV-rh74粒子、AAV-Rh10粒子、およびAAV-2i8粒子からなる群より選択される、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ITRのうちの1つまたは複数が、AAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、AAV11 ITR、AAV12 ITR、AAV-rh74 ITR、AAV-Rh10 ITR、およびAAV-2i8 ITRからなる群より選択される、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記カプシド配列が、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、Rh10、Rh74、またはAAV-2i8のVP1、VP2および/またはVP3配列に対して約90%以上の同一性を有するVP1、VP2および/またはVP3カプシド配列を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記カプシド配列が、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、Rh10、Rh74、またはAAV-2i8のいずれかのAAV血清型から選択されるVP1、VP2またはVP3カプシド配列を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2019年4月8日に出願された米国仮出願第62/831,067号の優先権の恩典を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表の参照
本出願には、EFS-Webを介してASCII形式で提出された配列表が含まれており、その全体が参照によりここに組み入れられる。2020年4月8日に作成された前記ASCIIコピーは、CHOPP0026WO_ST25.txtと名付けられ、7.6キロバイトのサイズである。
【0003】
1. 分野
本開示は、医学、遺伝学、および分子生物学の分野に関するものである。より具体的には、本開示は、リソソーム蓄積症(lysosomal storage disease)を治療するための、リソソームのセリンプロテアーゼであるTPP1を発現するAAVベクターの網膜下投与を取り扱っている。
【背景技術】
【0004】
2. 関連技術
遺伝子導入は、今や、生物学的事象および疾患過程を細胞レベルと分子レベルの両方で解析するための強力なツールとして広く認識されている。最近では、遺伝性(例えば、ADA欠損症)または後天性(例えばがんまたは感染症)のヒト疾患を治療するための遺伝子治療の応用がかなりの注目を集めている。
【0005】
従来、遺伝子治療は、先天的な遺伝子エラーを修正するために、治療用遺伝子を哺乳類の細胞に導入する方法として定義されてきた。現在、4500を超えるヒト疾患が遺伝性として分類されているが、これらの疾患のうち、ヒトゲノムの特定の変異が同定されているものは比較的少数である。最近まで、これらの希少遺伝性疾患は、遺伝子治療の取り組みの独占的なターゲットであった。そのため、これまでにNIHが承認した遺伝子治療プロトコルのほとんどは、先天的な遺伝子エラーが知られている個体の体細胞への欠陥遺伝子の機能的コピーの導入に向けられてきた。ごく最近になって、研究者や臨床医は、ほとんどのヒトがん、ある種の心血管疾患、および多くの変性疾患にも重要な遺伝的要素があり、新規の遺伝子治療法をデザインするためには、これらの疾患も「遺伝性疾患」と見なされるべきであることを認識し始めた。したがって、遺伝子治療は、より最近では、罹患した生物に新しい遺伝情報を導入することにより疾患の表現型を修正すること、と広義に定義されている。
【0006】
インビボ遺伝子治療では、導入される遺伝子は、インサイチュでレシピエント生物の細胞に、すなわち、レシピエント体内に導入される。インビボ遺伝子治療は、いくつかの動物モデルで検討されている。最近の一部の出版物には、筋肉、造血幹細胞、動脈壁、神経系、肺などの、臓器・組織へのインサイチュでの直接遺伝子導入の実現可能性が報告されている。また、骨格筋、心筋へのDNAの直接注入、および血管系へのDNA-脂質複合体の注入が、インビボで、挿入された遺伝子産物の検出可能な発現レベルをもたらすことも報告されている。
【0007】
中枢神経系の疾患、例えば脳の遺伝性疾患、の治療は、いまだに扱いにくい問題である。そのような疾患の例は、リソソーム蓄積症およびアルツハイマー病である。まとめると、リソソーム蓄積症(LSD)の発生率は全世界で出生数10,000人に1人であり、65%の症例で中枢神経系(CNS)に重大な障害がある。これらの疾患で不足しているタンパク質は、静脈内に送達しても、血液脳関門を通過しないか、あるいは脳に直接送達しても、広く行き渡らない。したがって、CNS障害のための治療法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0008】
概要
かくして、本開示によって、リソソーム蓄積症(LSD)を有する哺乳動物を治療する方法が提供され、この方法は、それを必要とする哺乳動物に複数のAAV粒子を網膜下投与する工程を含み、該AAV粒子は、(i)一対のAAV逆方向末端反復配列(inverted terminal repeat:ITR)の間に挿入された核酸であって、(1)可溶性リソソームトリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)ポリペプチド、(2)その断片、(3)前記のいずれかのプロ酵素、または(4)前記のいずれかの組み合わせ、をコードする該核酸;および(ii)リソソームヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドを生成するために、該核酸に機能的に連結されかつ該核酸の発現を駆動する発現制御エレメントを含み、ここで、該AAV粒子は、該哺乳動物の細胞に形質導入して該ポリペプチドの発現をもたらすことができる。前記AAV ITRのうちの1つまたは複数は、1つまたは複数のAAV2 ITRを含み得る。前記核酸は、哺乳動物TPP1、例えばヒトTPP1をコードし得る。前記方法は、視力喪失/失明を遅らせる、停止させる、逆転させる、または予防することができる。
【0009】
発現制御エレメントは、CMVエンハンサーおよび/またはβアクチンプロモーター、例えばニワトリβアクチンプロモーターを含み得る。発現制御エレメントは、天然のCMVエンハンサーに対して80%以上の同一性を有する配列、または天然のニワトリβアクチンプロモーターに対して80%以上の同一性を有する配列、または前述のいずれかの機能性断片に対して80%以上の同一性を有する配列を含む。
【0010】
AAV粒子は、さらにカプシドタンパク質を含む。カプシド配列または断片は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、Rh10、Rh74、またはAAV-2i8のVP1、VP2および/もしくはVP3配列またはその機能性断片に対して70%以上の同一性を有するVP1、VP2および/もしくはVP3カプシド配列または断片を含み得る。カプシド配列または断片は、AAV2に対して80%以上の同一性を有するVP1カプシド配列または断片を含むことができ、ここで、該カプシド配列または断片は、444位、500位および/または730位のチロシンが、チロシンではないアミノ酸で置換されている。カプシド配列または断片は、AAV2またはその機能性断片に対して90%以上の同一性を有するVP1カプシド配列または断片を含むことができ、ここで、該カプシド配列または断片は、444位、500位および/または730位のチロシンがフェニルアラニンで置換されている。カプシド配列または断片は、444位、500位および/または730位のチロシンがフェニルアラニンで置換されたAAV2 VP1カプシド配列またはその機能性断片を含み得る。カプシド配列または断片は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、Rh10、Rh74もしくはAAV-2i8のAAV血清型またはその機能性断片のいずれかから選択されるVPl、VP2もしくはVP3カプシド配列またはその機能性断片を含み得る。
【0011】
患者は、異なる投与経路でTPP1酵素補充療法を以前に受けたことがあるか、現在受けているか、今後受ける予定である。AAV粒子は、約1×108~約1×1015総vgの用量で投与することができる。哺乳動物は、非げっ歯類の哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒト、例えば約1歳~約4歳のヒトの子供であり得る。LSDは、乳児型もしくは遅発乳児型セロイドリポフスチン症(LINCL)、若年型バッテン(Juvenile Batten)病、ファブリー(Fabry)病、MLD、サンフィリポ(Sanfilippo)病A型、クラッベ(Krabbe)病、モルキオ(Morquio)病、ニーマン・ピック(Niemann-Pick)病C型、テイ・サックス(Tay-Sachs)病、ハーラー(Hurler)病(MPS-I H)、サンフィリポ病B型、マロトー・ラミー(Maroteaux-Lamy)病、ニーマン・ピック病A型、シスチノーシス(Cystinosis)、ハーラー・シャイエ(Hurler-Scheie)病(MPS-I H/S)、スライ(Sly)症候群(MPS VII)、シャイエ病(MPS-I S)、乳児型バッテン病、GM1ガングリオシドーシス、ムコリピドーシスII/III型、またはサンドホフ(Sandhoff)病であり得る。これらの疾患の1つまたは複数の併存症を有する患者も想定される。前記LSDに関連する症状の発症は、5~10日、10~25日、25~50日または50~100日遅れることがある。症状は、固有位置感覚反応(proionceptive response)、眼振(nystagmus)、威嚇瞬目反応(menace)、瞳孔対光反射(pupillary light reflex)、小脳性運動失調(cerebellar ataxia)、企図振戦(intention tremor)、または前述のいずれかの任意の組み合わせからなる群より選択され得る。症状は視力喪失/失明であり得る。
【0012】
AAV粒子は、AAV1粒子、AAV2粒子、AAV3粒子、AAV4粒子、AAV5粒子、AAV6粒子、AAV7粒子、AAV8粒子、AAV9粒子、AAV10粒子、AAV11粒子、AAV12粒子、AAV-rh74粒子、AAV-Rh10粒子、およびAAV-2i8粒子またはその機能性断片からなる群より選択することができる。前記ITRのうちの1つまたは複数は、AAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、AAV11 ITR、AAV12 ITR、AAV-rh74 ITR、AAV-Rh10 ITR、およびAAV-2i8 ITRからなる群より選択することができる。カプシド配列または断片は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、Rh10、Rh74、またはAAV-2i8のVP1、VP2および/もしくはVP3配列またはその機能性断片に対して90%以上の同一性を有するVP1、VP2および/もしくはVP3カプシド配列またはその機能性断片を含み得る。カプシド配列または断片は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、Rh10、Rh74、またはAAV-2i8のいずれかのAAV血清型から選択されるVPl、VP2またはVP3カプシド配列を含み得る。
【0013】
本開示の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本開示の精神および範囲内の様々な変更および修飾が、この詳細な説明から当業者には明らかであろうから、詳細な説明および具体的な例は、本開示の特定の態様を示す一方で、例示のためにのみ与えられていることを理解すべきである。
【0014】
本発明は、一般的に、多数の態様および局面を説明するために、肯定的な言語を用いて本明細書に開示されている。本発明はまた、物質や材料、方法のステップおよび条件、プロトコル、手順など、特定の主題が完全にまたは部分的に除外されている態様も明確に含んでいる。例えば、本発明の特定の態様または局面では、材料および/または方法のステップが除外されている。したがって、本発明が、本発明に含まれないものに関して明細書中で一般に表現されていないとしても、本発明で明示的に除外されていない局面は、それでもなお本明細書に開示されている。
【0015】
本明細書では、本発明の態様について説明する。それらの態様の変形は、前述の説明を読むことで、当業者には明らかになるだろう。本発明者らは、当業者が適宜にそのような変形を採用することを期待しており、また、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で本発明を実施することを意図している。
【0016】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈上明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例、または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明の理解を容易にすることを意図しており、特に特許請求されない限り、本発明の範囲に制限を課すものではない。本明細書中の文言は、特許請求されない要素を本発明の実施に必須であるとして示していると解釈されるべきではない。
【0017】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本発明を実施または試験する際には、本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を使用することができるが、本明細書には適切な方法および材料が記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
以下の図面は、本明細書の一部を構成しており、本発明の特定の局面をさらに実証するために含められる。本発明は、本明細書に提示された特定の態様の詳細な説明と併せて、これらの図面の1つまたは複数を参照することによって、さらによく理解することができる。
【0019】
図1A図1A~F:AAV-TPP1の網膜下注射後の非ヒト霊長類の眼におけるTPP1レベル。(図1A~B)異なるAAV-TPP1量の投与後の実験終点(注射後8週間)での網膜のTPP1レベル。ビヒクル(白色の棒)、7.5e11、2.5e11、8.3e10、8.3e9、5.0e9総vgの用量。図1Aは注射後8週間である;図1Bは注射後22週間である。各サンプルのTPP1レベルは、ノーマライザーとして特定の網膜色素上皮マーカーであるRPE65を用いて網膜組織の量に対して正規化した。それぞれに線形スケールと対数スケールの両方が提供される。(図1C~D)AAV-TPP1注射後の時間に沿った房水中のTPP1レベル。上昇したTPP1濃度は、AAV-TTP1注射後4~7週間で房水においてプラトー発現に達した。(図1C)7.5e11、2.5e11、8.3e10総vgの用量。(図1D)8.3e9、5.0e9総vgの用量。それぞれに線形スケールと対数スケールの両方が提供される。(図1E)この初期時点(処置後22週間)では、視神経における内因性発現にそれぞれ対応するTPP1レベルに変化なし。ビヒクル注射群(白色の棒)、5.0e9および8.3e9総vg群(黒色の棒)。TPP1レベルはGAPDHに対して正規化した。(図1F)TPP1欠損細胞を、組換えTPP1および対照または注射動物由来の血清とインキュベートした後のTPP1活性のパーセンテージ。組換えTPP1に対する中和抗体を産生した動物からのサンプルにおいて、TPP1活性の低下が定量化され得る。(図1A、B、E、F)注射した眼(黒色の棒)および未注射の眼(白色の棒)。
図1B図1Aの説明を参照。
図1C図1Aの説明を参照。
図1D図1Aの説明を参照。
図1E図1Aの説明を参照。
図1F図1Aの説明を参照。
図2】TPP1のタンパク質配列(SEQ ID NO: 1)およびDNA配列(SEQ ID NO: 2)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
上述したように、中枢神経系の疾患、例えば脳の遺伝性疾患の治療は、依然として難題である。これらの疾患で不足しているタンパク質は、静脈内に送達しても、血液脳関門を通過しないし、直接脳に送り込んでも、広く行き渡らない。神経セロイドリポフスチン症(Neuronal Ceroid Lipofuscinoses:NCLs)は、バッテン病としても知られる小児の神経変性疾患の一群である。遺伝性常染色体劣性疾患であるCLN2病は、NCLのより一般的な形態の一つである。TPP1遺伝子の変異は、可溶性リソソーム酵素であるトリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)の欠損を引き起こし、その結果、脳と眼の細胞にリソソームの老廃物が蓄積されて、発作性障害、発達遅延、および進行性の失明を特徴とするCLN2病の発症につながる。TPP1酵素活性を回復して、CLN2病の症状を軽減するようにデザインされた酵素補充療法は、この疾患の子供たちの生活の質を改善してきた。この治療はまた、これらの子供たちの寿命を延ばすと推測される。しかし、組換えタンパク質が、オンマイヤーリザーバー(omaya reservoir)を介して側小脳室に注入されて、2週間ごとに脳に送達されるが、進行性の視力喪失を矯正することはできない。
【0021】
本発明者らは、AAV2-TPP1の網膜下送達が、これらの患者の眼のTPP1酵素活性を回復させて、その後に起こる失明を予防できるかどうかを検討した。本発明者らは、遺伝子治療用ベクターであるrAAV粒子を網膜下に投与する新規方法を開発した;該rAAV粒子は、AAVカプシドタンパク質と、眼における内因性TPP1活性の欠如を修正するために一対のAAV逆方向末端反復配列の間に挿入されたTPP1遺伝子をコードする核酸を含むベクターとを含む。生体内分布試験と投薬NHP試験において、本発明者らは、試験粒子AAV2-TPP1を網膜下に注射することで、ヒトTPP1タンパク質が発現され、かつリソソームのTPP1酵素活性が8週間の試験期間中持続することを実証することに成功した。内因的に発現されたTPP1は、触媒的に不活性な酵素として合成され、リソソームの酸性環境に入った後で、自己触媒的にプロセッシングされて成熟した活性酵素になる。発現されたTPP1は、一部のTPP1が分泌されて、形質導入されていない細胞に取り込まれるという事実により、形質導入された細胞とそれに隣接する細胞の両方を修正する。TPP1は分泌されて、網膜の非形質導入細胞を交差修正するのに使用できるため、この遺伝子治療アプローチは、網膜下腔への1回の送達後に網膜の全層厚を治療するための方法を提供する。本開示のこれらの局面とその他の局面については、以下でより詳細に説明する。
【0022】
I. リソソーム蓄積症
本明細書では、リソソーム蓄積症(LSD)を有するかまたは有すると疑われ、本明細書に記載の方法を必要とする哺乳動物に投与するための方法および使用が提供される。特定の態様では、本明細書に記載の方法または使用は、LSDの1つまたは複数の症状の数、重症度、頻度、進行、または発症を治療する、予防する、抑制する、低減させる、減らす、または遅らせるために使用される。
【0023】
LSDの非限定的な例としては、乳児型リポフスチン症もしくは遅発乳児型神経セロイドリポフスチン症(LINCL)、ゴーシェ病(Gaucher)、若年型バッテン病、ファブリー病、MLD、サンフィリポ病A型、遅発乳児型バッテン病、ハンター(Hunter)病、クラッベ病、モルキオ病、ポンペ(Pompe)、ニーマン・ピック病C型、テイ・サックス病、ハーラー病(MPS-I H)、サンフィリポ病B型、マロトー・ラミー病、ニーマン・ピック病A型、シスチノーシス、ハーラー・シャイエ病(MPS-I H/S)、スライ症候群(MPS VII)、シャイエ病(MPS-I S)、乳児型バッテン病、GM1ガングリオシドーシス、ムコリピドーシスII/III型、またはサンドホフ病が挙げられる。
【0024】
LSDは、多くの場合、トリペプチジルペプチダーゼ-1(TPP1)酵素をコードする遺伝子の遺伝的異常(変異、欠失、挿入など)によって引き起こされ、それにより機能的なTPP1酵素活性の欠損を生じさせる。ヒトでは、TPP1はCLN2遺伝子によりコードされており、この遺伝子はTPP1遺伝子と呼ばれることもある。例えば、遅発乳児型神経セロイドリポフスチン症(LINCL)は、CLN2の変異によるTPP1活性の欠損が主な原因となる小児の神経変性疾患である。発育は2~4歳までは正常であり、その後、LINCLの兆候が運動および精神的退化、発作性疾患、および視覚障害として現れる。一般的に、生後10年以内で死亡する。LINCLのほとんどの症例は、CLN2の変異によるもので、この変異は、可溶性リソソーム酵素であるトリペプチジルペプチダーゼ-1(TPP1)の欠損を誘発する。TPP1は、マンノース-6-リン酸プロ酵素として合成され、他の可溶性リソソーム加水分解酵素と同様に、このプロ酵素は主にリソソームに標的化されるが、分泌経路を介して細胞から放出されることもある。その結果、同じ細胞または隣接細胞による細胞内への取り込み、ならびにその後のリソソームへの送達およびプロ酵素の活性型への活性化が起こり得る。
【0025】
特定の態様において、本明細書では、中枢神経系の組織または体液に直接、TPP1活性を有するポリペプチドの発現を指示するAAV粒子(本明細書ではAAV-TPP1粒子と呼ばれる)を投与することにより、LSDを有するかまたは有すると疑われる哺乳動物を治療する方法が提供される。本明細書では、リソソーム蓄積症の動物モデルで脳および/または脊髄へのAAV送達/投与を示すデータが開示される。
【0026】
適切な哺乳動物はどれも、本明細書に記載の方法または使用によって治療することができる。哺乳動物の非限定的な例としては、ヒト、非ヒト霊長類(類人猿、テナガザル、チンパンジー、オランウータン、サル、マカクなど)、家庭用の動物(イヌ、ネコなど)、家畜(ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタなど)、および実験動物(マウス、ラット、ウサギ、モルモットなど)が挙げられる。特定の態様では、哺乳動物はヒトである。特定の態様では、哺乳動物は、非げっ歯類の哺乳動物(例えば、ヒト、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、イヌなど)である。特定の態様では、非げっ歯類の哺乳動物はヒトである。哺乳動物は、任意の年齢または任意の発育段階(例えば、成体、10代、小児/仔、乳児/仔、または子宮内の哺乳動物)であってよい。哺乳動物は雄でも雌でもよい。特定の態様では、哺乳動物は、動物疾患モデル、例えば、LINCLなどのLSDの研究に使用される動物モデルであり得る。
【0027】
本明細書に記載の方法または組成物で治療される対象には、成体(18歳以上)および子供(18歳未満)が含まれる。子供の年齢幅は、1~2歳、または2~4歳、4~6歳、6~18歳、8~10歳、10~12歳、12~15歳、および15~18歳である。子供には乳児/仔も含まれる。乳児/仔は通常、生後1~12ヶ月の範囲である。
【0028】
II. AAVベクター
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、パルボウイルス科の小型の非病原性ウイルスである。現在までに、血清学的に異なる多数のAAVが同定されており、12種類を超えるAAVがヒトまたは霊長類から分離されている。AAVは、複製するのにヘルパーウイルスに依存するという点で、このファミリーの他のメンバーと相違する。
【0029】
AAVゲノムは、宿主細胞のゲノムに安定して組み込まれる;広範な宿主域を保持する;インビトロおよびインビボで分裂細胞と非分裂細胞の両方を形質導入する;ならびに導入された遺伝子の高レベルの発現を維持する;ことが示されている。AAVウイルス粒子は、熱安定性があり、溶媒、洗剤、pH、温度の変化に耐性があり、CsCl勾配または他の手段で濃縮することができる。AAVゲノムは、ポジティブセンスまたはネガティブセンスのいずれかの、一本鎖デオキシリボ核酸(ssDNA)で構成されている。ヘルパーウイルスの非存在下では、AAVは、座位特異的に、例えば第19番染色体のq腕に組み込まれる可能性がある。AAVの約5kbのゲノムは、プラスまたはマイナス極性の1つの一本鎖DNAセグメントからなる。ゲノムの両末端には、ヘアピン構造への折りたたみが可能な短い逆方向末端反復配列があり、ウイルスDNAの複製起点として役立つ。
【0030】
AAV「ゲノム」とは、AAV粒子を形成するために最終的にパッケージングまたは封入される組換え核酸配列を指す。AAV粒子は、多くの場合、AAVゲノムを含む。組換えプラスミドを用いて組換えベクターを構築または作製する場合、そのベクターゲノムは、組換えプラスミドのベクターゲノム配列に対応しない「プラスミド」の部分を含まない。組換えプラスミドのこの非ベクターゲノム部分は、「プラスミドバックボーン」と呼ばれ、増殖および組換えウイルスの生産に必要なプロセスであるプラスミドのクローニングと増幅に重要であるが、それ自体はウイルス(例:AAV)粒子にパッケージングまたは封入されない。それゆえ、ベクター「ゲノム」とは、ウイルス(例:AAV)によってパッケージングまたは封入される核酸を指す。
【0031】
AAVビリオン(粒子)は、エンベロープのない直径約25nmの正二十面体の粒子である。AAV粒子は、3種の関連するカプシドタンパク質VP1、VP2およびVP3で構成されている正二十面体対称のカプシドを含み、これらのタンパク質が相互に作用してカプシドを形成している。右のORFは、多くの場合、カプシドタンパク質VP1、VP2およびVP3をコードしている。これらのタンパク質は、それぞれ1:1:10の比率で存在することがよくあるが、様々な比率で存在してもよく、全てが右側のORFから誘導される。これらのカプシドタンパク質は、選択的スプライシングおよび珍しい開始コドンを使用することで、互いに異なっている。欠失解析からは、選択的スプライシングされたメッセージから翻訳されるVP1を除去または改変すると、感染性粒子の収量が減少することが示された。VP3コード領域内の変異は、一本鎖子孫DNAまたは感染性粒子を生産できないという結果を招く。AAV粒子は、AAVカプシドまたは断片を含むウイルス粒子である。特定の態様では、AAV粒子のゲノムは、1つ、2つまたは全てのVP1、VP2およびVP3ポリペプチドをコードしている。
【0032】
ほとんどの天然AAVのゲノムには、多くの場合、左ORFおよび右ORFと呼ばれることもある、2つのオープンリーディングフレーム(ORF)が含まれる。左ORFは、しばしば、非構造Repタンパク質であるRep 40、Rep 52、Rep 68およびRep 78をコードしており、これらのタンパク質は、一本鎖子孫ゲノムの生産に加えて、複製と転写の調節にも関与している。Repタンパク質のうち2つは、AAVゲノムがヒト第19番染色体のq腕の領域に優先的に組み込まれることに関連している。Rep68/78は、NTP結合活性ならびにDNAおよびRNAヘリカーゼ活性を持つことが示されている。Repタンパク質の中には、核局在化シグナルおよびいくつかの潜在的リン酸化部位を持つものもある。特定の態様では、AAV(例:rAAV)のゲノムは、Repタンパク質の一部または全部をコードしている。特定の態様では、AAV(例:rAAV)のゲノムは、Repタンパク質をコードしていない。特定の態様では、Repタンパク質の1つまたは複数はトランスに送達され得、それゆえ、ポリペプチドをコードする核酸を含むAAV粒子には含まれない。
【0033】
AAVゲノムの末端には、T字型ヘアピン構造への折りたたみが可能な短い逆方向末端反復配列(ITR)があり、これがウイルスDNAの複製起点となっている。したがって、AAVのゲノムは、その一本鎖ウイルスDNAゲノムに隣接する1つまたは複数(例えば、一対)のITR配列を含む。ITR配列は、たいてい、各々約145塩基で構成されている。ITR領域内には、ITRの機能に中心的であると考えられる2つの要素、GAGC反復モチーフおよび末端分離部位(terminal resolution site:trs)が描写されている。この反復モチーフは、ITRが直線またはヘアピン構造であるときにRepと結合することが分かっている。この結合は、部位および鎖に特異的に起こるtrsでの切断のためにRep68/78を位置づけると考えられる。これらの2つの要素は、複製におけるそれらの役割に加えて、ウイルスの組込みにも中心的な役割を果たすようである。第19番染色体の組込み座位には、隣接するtrsと共にRep結合部位が含まれる。これらの要素は、座位特異的組込みに対して機能的でありかつ必要であることが示されている。
【0034】
特定の態様では、AAV粒子(例:rAAV)は、2つのITRを含む。特定の態様では、AAV(例:rAAV)は、一対のITRを含む。特定の態様では、AAV粒子(例:rAAV)は、少なくともTPP1酵素活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの両側に隣接する(すなわち、5'および3'の各末端にある)一対のITRを含む。
【0035】
ウイルスベクターは、ウイルスゲノムを構成する1つまたは複数の核酸要素に由来するか、またはそれに基づいている。特定のウイルスベクターとして、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが挙げられる。また、TPP1ポリペプチド、バリアントまたは部分配列(例えば、TPP1酵素活性を有するポリペプチド断片)をコードする核酸配列を含むベクター(例:AAV)も提供される。
【0036】
組換えウイルス、例えばレンチウイルスまたはパルボウイルス(例:AAV)ベクターなどの、ベクターの修飾語としての、ならびに組換えポリヌクレオチドおよびポリペプチドなどの配列の修飾語としての、「組換え」という用語は、自然界では一般に起こらない方法で組成物が操作されている(すなわち、遺伝子工学的に作り出された)ことを意味する。AAVベクターなどの組換えベクターの特定の例は、野生型ウイルス(例:AAV)ゲノムに通常は存在しないポリヌクレオチドがウイルスゲノム内に挿入されている場合であろう。組換えポリヌクレオチドの例は、TPP1ポリペプチドをコードする核酸(例:遺伝子)が、ウイルス(例:AAV)ゲノム内で該遺伝子に通常付随する5'、3'および/またはイントロン領域のあるなしにかかわらず、ベクターにクローニングされている場合であろう。本明細書では、ウイルスベクター、AAVベクターなどのベクター、およびポリヌクレオチドなどの配列に関して、用語「組換え」が必ずしも使用されるわけではないが、ポリヌクレオチドなどの組換え体は、そのような省略にもかかわらず、明示的に含まれている。
【0037】
組換えウイルス「ベクター」または「AAVベクター」は、分子的方法を用いて、ウイルス(例:AAV)から野生型ゲノムを除去し、TPP1をコードする核酸配列などの非天然核酸と置き換えるか、TPP1をコードする核酸配列などの非天然核酸を付加するか、またはそれらの組み合わせによって、AAVなどのウイルスの野生型ゲノムから誘導される。一般的に、AAVでは、AAVゲノムの一方または両方の逆方向末端反復(ITR)配列がAAVベクター中に保持される。「組換え」ウイルスベクター(例:rAAV)は、ウイルス(例:AAV)ゲノムとは区別されるが、それは、ウイルスゲノムの全部または一部が、TPP1をコードする核酸配列などの、ウイルス(例:AAV)ゲノム核酸に関して非天然配列と置き換えられているか、TPP1をコードする核酸配列などの非天然核酸が付加されているか、またはそれらの組み合わせであるためである。したがって、非天然配列の組込みは、ウイルスベクター(例:AAV)を「組換え」ベクターとして定義し、AAVの場合には、これを「rAAVベクター」と呼ぶことができる。
【0038】
AAVベクター(例:rAAVベクター)は、パッケージングされると、エクスビボ、インビトロ、またはインビボでその後の細胞への感染(形質導入)に用いられる「AAV粒子」と本明細書では呼ばれる。組換えAAVベクターがAAV粒子に封入またはパッケージングされる場合には、その粒子も「rAAV粒子」と呼ぶことができる。特定の態様では、AAV粒子はrAAV粒子である。rAAV粒子は、多くの場合、AAVベクターまたはその一部を含む。rAAV粒子は、1つまたは複数のAAV粒子(例えば、複数のAAV粒子)であり得る。rAAV粒子は、典型的には、rAAVベクターゲノムを封入またはパッケージングするタンパク質(例えば、カプシドタンパク質)を含む。
【0039】
適切なAAV粒子(例えば、rAAV粒子)はどれも、本明細書の方法または使用に用いることができる。rAAV粒子、および/またはそこに含まれるゲノムは、任意の適切なAAVの血清型または株に由来し得る。rAAV粒子、および/またはそこに含まれるゲノムは、2つ以上のAAVの血清型または株に由来し得る。したがって、rAAVは、任意のAAV血清型または株のタンパク質および/もしくは核酸、またはその一部を含むことができ、該AAV粒子は哺乳動物細胞の感染および/または形質導入に適する。AAV血清型の非限定的な例としては、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV 12、AAV-rh74、AAV-rhlOまたはAAV-2i8が挙げられる。特定の態様では、複数のrAAV粒子は、同じ株もしくは血清型(もしくはサブグループもしくはバリアント)の粒子、またはそれに由来する粒子を含む。特定の態様では、複数のrAAV粒子は、2つ以上の異なるrAAV粒子(例えば、異なる血清型および/または株のrAAV粒子)の混合物を含む。
【0040】
本明細書で使用する用語「血清型」とは、他のAAV血清型と血清学的に区別されるカプシドを有するAAVを指すための区別(distinction)である。血清学的独自性(distinctiveness)は、あるAAVに対する抗体との間に交差反応がないことに基づいて、別のAAVと比較して、決定される。このような交差反応性の違いは、通常、カプシドタンパク質の配列/抗原決定基の違いに起因する(例えば、AAV血清型のVP1、VP2、および/またはVP3配列の違いに起因する)。カプシドバリアントを含むAAVバリアントは、基準AAVまたは他のAAV血清型と血清学的に区別されない可能性があるにもかかわらず、それらは、基準または他のAAV血清型と比較して、少なくとも1つのヌクレオチドまたはアミノ酸残基が異なるものである。
【0041】
特定の態様において、rAAV粒子では、ある種の血清型が除外される。一態様では、rAAV粒子はAAV4粒子ではない。特定の態様では、rAAV粒子は、AAV4とは抗原的または免疫学的に区別される。区別は標準的な方法で測定することができる。例えば、ELISAおよびウェスタンブロットを用いて、ウイルス粒子がAAV4と抗原的または免疫学的に区別されるかどうかを判定することができる。さらに、特定の態様では、rAAV2粒子は、AAV4とは異なる組織親和性(tissue tropism)を保持する。
【0042】
特定の態様では、第1の血清型ゲノムに基づくrAAVベクターは、該ベクターをパッケージングする1つまたは複数のカプシドタンパク質の血清型と同一である。特定の態様では、rAAVベクターのゲノムは、該ベクターをパッケージングする1つまたは複数のAAVカプシドタンパク質の血清型とは異なるAAV(例:AAV2)の血清型ゲノムに基づくことができる。例えば、rAAVベクターゲノムは、AAV2由来の核酸(例えば、ITR)を含むことができるが、3種のカプシドタンパク質のうち少なくとも1つまたは複数は、異なる血清型、例えば、AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、RhlO、Rh74、AAV-2i8の血清型またはそのバリアントに由来する。
【0043】
ポリペプチドの発現を指示するポリヌクレオチドを含む組換えAAVベクターは、当技術分野で公知の適切な組換え技術を用いて作製することができる(例えば、Sambrook et al., 1989を参照されたい)。組換えAAVベクターは、通常、AAVウイルスパッケージングシステムを用いて形質導入コンピテントAAV粒子にパッケージングされ、増殖される。形質導入コンピテントAAV粒子は、哺乳動物細胞に結合して侵入し、その後、核酸カーゴ(例えば、異種遺伝子)を該細胞の核に送り込むことができる。このように、形質導入にコンピテントであるインタクトなAAV粒子は、哺乳動物細胞に形質導入するように構成されている。哺乳動物細胞に形質導入するように構成されているAAV粒子は、しばしば複製能がなく、自己複製のために追加のタンパク質機構(protein machinery)を必要とする。したがって、哺乳動物細胞に形質導入するように構成されているAAV粒子は、哺乳動物細胞に結合して侵入し、核酸を該細胞に送達するように遺伝子工学的に作製される;その際、送達用の核酸は、多くの場合、AAVゲノム中の一対のAAV ITRの間に位置付けられる。
【0044】
形質導入コンピテントAAV粒子を生産するのに適した宿主細胞には、異種rAAVベクターのレシピエントとして使用できる、または使用したことのある微生物、酵母細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞が含まれるが、それらに限定されない。安定したヒト細胞株293(例えば、American Type Culture Collectionからアクセッション番号ATCC CRL1573で容易に入手可能)からの細胞を使用することができる。特定の態様では、アデノウイルス5型のDNA断片で形質転換され、アデノウイルスElaおよびElb遺伝子を発現する、改変されたヒト胚性腎細胞株(例:HEK293)が、組換えAAV粒子を生成するために使用される。改変されたHEK293細胞株は容易にトランスフェクションが可能であり、rAAV粒子を生産するための特に便利なプラットフォームを提供する。哺乳動物細胞に形質導入することができる高力価のAAV粒子を生成する方法は、当技術分野で知られている。例えば、AAV粒子は、Wright, 2008およびWright, 2009に記載されるように作製することができる。
【0045】
特定の態様では、AAV発現ベクターのトランスフェクションに先立って、またはそれと同時に、AAVヘルパー構築物を宿主細胞にトランスフェクションすることによって、AAVヘルパー機能を宿主細胞に導入する。このように、AAVヘルパー構築物は、生産的なAAV形質導入に必要なAAVの欠落した機能を補完するために、AAV repおよび/またはcap遺伝子の少なくとも一過性の発現を提供するために使用されることがある。AAVヘルパー構築物はAAV ITRを持たないことが多く、それら自体では複製もパッケージングもできない。こうした構築物は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルス、またはビリオンの形態であり得る。多くのAAVヘルパー構築物が記載されており、例えば、RepとCapの両方の発現産物をコードするプラスミドpAAV/AdおよびpIM29+45がよく利用される。Repおよび/またはCap発現産物をコードする他の多くのベクターが知られている。
【0046】
特定の態様では、基準血清型に関連するAAV粒子またはそのベクターゲノムは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、Rh10、Rh74またはAAV-2i8粒子のポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはその部分配列に対して少なくとも60%またはそれ以上(例えば、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など)同一の配列を含むか、該配列からなる、ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはその部分配列を有する。特定の態様では、基準血清型に関連するAAV粒子またはそのベクターゲノムは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、Rh10、Rh74またはAAV-2i8血清型のカプシドまたはITR配列に対して少なくとも60%またはそれ以上(例えば、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など)同一の配列を含むか、該配列からなる、カプシドまたはITR配列を有する。
【0047】
特定の態様では、本明細書に記載の方法は、AAV2粒子を使用することを含む。特定の局面では、AAV2粒子は組換えAAV2粒子である。特定の態様では、rAAV2粒子はAAV2カプシドを含む。特定の態様では、rAAV2粒子は、天然または野生型AAV2粒子の対応するカプシドタンパク質に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、またはそれ以上同一である、例えば、80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など、最大100%同一である、1つまたは複数のカプシドタンパク質(例えば、VP1、VP2および/またはVP3)を含む。特定の態様では、rAAV2粒子は、天然または野生型AAV2粒子の対応するカプシドタンパク質に対して少なくとも75%またはそれ以上同一である、例えば、80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など、最大100%同一である、VP1、VP2およびVP3カプシドタンパク質を含む。特定の態様では、rAAV2粒子は、天然または野生型AAV2粒子のバリアントである。いくつかの局面では、AAV2バリアントの1つまたは複数のカプシドタンパク質は、天然または野生型AAV2粒子のカプシドタンパク質と比較して、1、2、3、4、5、5~10、10~15、15~20またはそれ以上のアミノ酸置換を有する。
【0048】
特定の態様では、rAAV2粒子(例えば、AAV2粒子のカプシド)は、野生型AAV2のVP1カプシドに対して、少なくとも60%、少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性、または100%もの同一性を有するVPlポリペプチドを含む。特定の態様では、AAV2粒子は、AAV2 VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列を有するポリペプチドに対して約63%またはそれ以上同一(例えば、63%同一)であるVP1ポリペプチドを含む。AAV2のカプシド配列とAAV4のカプシド配列は約60%同一である。特定の態様では、AAV2 VP1カプシドタンパク質は、野生型AAV2 VP1カプシドに対して少なくとも65%の同一性を有する配列を有する。特定の態様では、AAV2 VP1カプシドタンパク質は、野生型AAV2 VP1カプシドを含む。
【0049】
特定の態様では、rAAV粒子は、それらが1つまたは複数の所望のITR機能(例えば、所望により、DNA複製、AAV DNAの宿主細胞ゲノムへの組込み、および/またはパッケージングを可能にする、ヘアピンを形成する能力)を保持する限り、天然または野生型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV 12、AAV-rh74、AAV-Rh10またはAAV-2i8の対応するITRに対して少なくとも75%またはそれ以上同一である、例えば、80%、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など、最大100%同一である、1つまたは2つのITR(例えば、一対のITR)を含む。
【0050】
特定の態様では、rAAV2粒子は、1つまたは複数の所望のITR機能(例えば、所望により、DNA複製、AAV DNAの宿主細胞ゲノムへの組込み、および/またはパッケージングを可能にする、ヘアピンを形成する能力)を保持する限り、天然または野生型AAV2粒子の対応するITRに対して少なくとも75%またはそれ以上同一である、例えば、80%、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など、最大100%同一である、1つまたは2つのITR(例えば、一対のITR)を含む。
【0051】
rAAV粒子は、任意の適切な数の「GAGC」反復配列を有するITRを含むことができる。特定の態様では、AAV2粒子のITRは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上の「GAGC」反復配列を含む。特定の態様では、rAAV2粒子は、3つの「GAGC」反復配列を有するITRを含む。特定の態様では、rAAV2粒子は、4つより少ない「GAGC」反復配列を有するITRを含む。特定の態様では、rAAV2粒子は、4つより多い「GAGC」反復配列を有するITRを含む。特定の態様では、rAAV2粒子のITRは、最初の2つの「GAGC」反復配列の4番目のヌクレオチドがTではなくCであるRep結合部位を含む。
【0052】
適切な長さのDNAはどれも、AAV粒子に組み込むことができる。rAAVベクター中で使用するのに適したDNA分子は、約5キロベース(kb)、約5kb未満、約4.5kb未満、約4kb未満、約3.5kb未満、約3kb未満、または約2.5kb未満であり得る。
【0053】
「導入遺伝子」は、本明細書では、細胞または生物に導入することが意図された、または導入されている核酸を便利に言い表すために使用される。導入遺伝子は、ポリペプチドまたはタンパク質(例:TPP1)をコードする遺伝子などの任意の核酸を含み、一般的には、天然に存在するAAVゲノム配列に対して異種である。
【0054】
導入遺伝子を有する細胞では、該導入遺伝子は、rAAV粒子などのベクターを介して導入/移入されることが多い。rAAV粒子による細胞への導入遺伝子の導入は、しばしば、細胞の「形質導入」と呼ばれる。用語「形質導入する」とは、核酸などの分子をベクター(例:AAV粒子)を介して細胞または宿主生物に導入することを指す。導入遺伝子は、形質導入された細胞のゲノム核酸に組み込まれても、組み込まれなくてもよい。導入された核酸がレシピエント細胞または生物の核酸(ゲノムDNA)に組み込まれると、それはその細胞または生物の中で安定的に維持され、さらにレシピエント細胞または生物の子孫細胞もしくは生物に伝わり、継承され得る。最後に、導入された核酸は、レシピエント細胞または宿主生物に染色体外で、つまり一過性にのみ、存在することもある。「形質導入された細胞」とは、形質導入によって導入遺伝子が導入されている細胞のことである。かくして、「形質導入された」細胞は、核酸が導入されている細胞またはその子孫である。形質導入された細胞は、増殖させて、導入されたタンパク質を発現させたり、または核酸を転写させることができる。遺伝子治療での使用および方法の場合、形質導入された細胞は哺乳動物内にあり得る。
【0055】
核酸は、オープンリーディングフレームに機能的に連結された1つまたは複数の発現制御/調節エレメントを含むことができ、その場合、1つまたは複数の調節エレメントは、哺乳動物細胞内でオープンリーディングフレームによってコードされたポリペプチドの転写および翻訳を指示するように構成される。発現制御/調節エレメントの非限定的な例としては、転写開始配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、TATAボックスなど)、翻訳開始配列、mRNA安定化配列、ポリA配列、分泌配列などが挙げられる。発現制御/調節エレメントは、任意の適切な生物のゲノムから得ることができる。非限定的な例には、SV40初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP)、単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えばCMV前初期プロモーター領域(CMVIE)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、pol IIプロモーター、pol IIIプロモーター、合成プロモーター、ハイブリッドプロモーターなどが含まれる。さらに、非ウイルス遺伝子、例えばマウスのメタロチオネイン遺伝子に由来する配列もまた、本明細書で利用されるだろう。
【0056】
例示的な構成的プロモーターには、特定の構成的機能または「ハウスキーピング」機能をコードする以下の遺伝子のプロモーターが含まれる:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、アデノシンデアミナーゼ、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)、ピルビン酸キナーゼ、ホスホグリセロールムターゼ、アクチンプロモーター、および当業者に知られる他の構成的プロモーター。さらに、多くのウイルスプロモーターが真核細胞において構成的に機能する。これらには、とりわけ、SV40の初期および後期プロモーター、モロニー白血病ウイルスとその他のレトロウイルスの長い末端反復(long terminal repeat:LTR)、および単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターが含まれる。こうして、上記の構成的プロモーターのいずれかを用いて、異種遺伝子インサートの転写を制御することができる。
【0057】
誘導性プロモーターの制御下にある遺伝子は、誘導剤の存在下でのみ発現されるか、誘導剤の存在下でかなり多く発現される(例えば、メタロチオネインプロモーターの制御下での転写は、特定の金属イオンの存在下で非常に増加する)。誘導性プロモーターには、誘導因子が結合したときに転写を刺激する応答要素(responsive element:RE)が含まれる。例えば、血清因子、ステロイドホルモン、レチノイン酸、およびサイクリックAMPのREが存在する。誘導性の応答を得るために、特定のREを含むプロモーターを選択することができ、場合によっては、REそのものを別のプロモーターに結合させることで、組換え遺伝子に誘導性を付与することもできる。このように、適切なプロモーター(構成的か誘導性か、強いか弱いか)を選択することで、遺伝子改変細胞におけるポリペプチドの存在と発現レベルの両方を制御することが可能である。ポリペプチドをコードする遺伝子が誘導性プロモーターの制御下にある場合、インサイチュでの該ポリペプチドの送達は、遺伝子改変細胞を、ポリペプチドの転写を可能にするための条件にインサイチュで曝露することによって、例えば、該薬剤の転写を制御する誘導性プロモーターの特定の誘導剤を腹腔内注射することが引き金になって、開始される。例えば、メタロチオネインプロモーターの制御下にある遺伝子によってコードされるポリペプチドの遺伝子改変細胞によるインサイチュ発現は、遺伝子改変細胞を、適切な(すなわち誘導性の)金属イオンを含む溶液とインサイチュで接触させることによって高められる。
【0058】
核酸は、それが他の核酸配列と機能的な関係に置かれているときに、「機能的に連結」されている。ポリペプチドをコードする核酸、またはTPP1ポリペプチド(例えば、TPP1活性を有するポリペプチド)の発現を指示する核酸は、コードされたポリペプチドの転写を制御するための誘導性プロモーター、または組織特異的プロモーターを含むことができる。
【0059】
特定の態様では、発現制御エレメントはCMVエンハンサーを含む。特定の態様では、発現制御エレメントはβアクチンプロモーターを含む。特定の態様では、発現制御エレメントはニワトリのβアクチンプロモーターを含む。特定の態様では、発現制御エレメントはCMVエンハンサーとニワトリβアクチンプロモーターを含む。
【0060】
III. TPP1
TPP1は、CLN2遺伝子(TPP1遺伝子)によってコードされるリソソームのセリンプロテアーゼである。ヒトTPP1の代表的なアミノ酸配列を図2に示し、ヒトTPP1の代表的な核酸配列を図2に示す。ヒトTPP1は、トリペプチジルペプチダーゼI活性(TPP1酵素活性)を含む。TPP1活性は、リソソームのプロテイナーゼ類により生成された分解産物からトリペプチドを生成する非特異的なリソソームペプチダーゼ活性を含む。基質特異性の研究から、TPP1は主にペプチドとタンパク質の非置換アミノ末端からトリペプチドを切断することが示されている。内因的に発現されたTPP1は、触媒的に不活性な酵素として合成される。リソソームに標的化されると、その酸性環境のため、TPP1は自己触媒的にプロセッシングされて成熟した活性酵素になる。TPP1の活性は、公知の方法を用いてインビトロで測定および/または定量化することができる。例えば、Junaid et al. (1999)を参照されたい。
【0061】
特定の態様では、rAAV粒子は、AAVカプシドタンパク質と、TPP1活性を含むポリペプチドをコードする核酸とを含む。特定の態様では、rAAV粒子は、AAVカプシドタンパク質と、TPP1活性を含むポリペプチドの発現および/または分泌を指示する核酸とを含む。
【0062】
本明細書で使用する用語「改変」または「バリアント」およびその文法上の変形は、核酸、ポリペプチドまたはその部分配列が基準配列から外れていることを意味する。したがって、改変配列およびバリアント配列は、基準配列と実質的に同じ、より大きい、またはより小さい発現、活性または機能を有し得るが、少なくとも基準配列の部分的な活性または機能を保持する。特定のタイプのバリアントはTPP1置換変異体であり、これは、野生型TPP1と比較して、置換された残基を持つ遺伝子によってコードされたタンパク質を指す。
【0063】
ポリペプチドのアミノ酸の変化は、対応する核酸配列のコドンを変えることで達成され得る。そのようなポリペプチドは、生物学的活性を改変または改善するために、ポリペプチド構造中の特定のアミノ酸を他のアミノ酸で置き換えることに基づいて得ることができる。例えば、代替アミノ酸の置換により、ポリペプチドに小さなコンフォメーション変化を与えて、結果として活性を高めることができる。あるいは、特定のポリペプチドのアミノ酸置換を用いて、その後他の分子に連結させてペプチド-分子コンジュゲートをもたらす残基を提供することができる;該コンジュゲートは出発ポリペプチドの十分な特性を保持して、他の目的に有用である。
【0064】
TPP1活性を含むポリペプチドとは、適切なペプチド基質を用いてアッセイして、例えばJunaid et al., 1999の方法または他の同等の方法でアッセイして、ヒトTPP1のペプチダーゼ活性の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または約100%を示す哺乳動物のTPP1タンパク質、またはその一部分を指す。特定の態様では、TPP1活性を含むポリペプチドとは、ヒトTPP1のペプチダーゼ活性の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または約100%を示す哺乳動物のTPP1タンパク質、またはその部分配列もしくはバリアントを指す。
【0065】
TPP1活性を含むポリペプチドは、少なくとも部分的TPP1活性を保持するTPP1ポリペプチドのトランケート型、変異型、キメラ型、または改変型を含み得る。TPP1活性を含むポリペプチドは、任意の適切な生物から(例えば、哺乳動物から、ヒトから、非ヒト哺乳動物から、例えば、イヌ、ブタ、ウシなどから)得られたTPP1タンパク質またはその一部分を含むことができる。特定の態様では、TPP1活性を含むポリペプチドは、ヒトTPP1タンパク質に対して、少なくとも60%の同一性、少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも98%の同一性、または100%の同一性を有する。
【0066】
アミノ酸改変の例は、保存的アミノ酸置換または欠失である。特定の態様では、改変配列またはバリアント配列(例:TPP1)は、未改変配列(例:野生型TPP1)の機能または活性の少なくとも一部を保持する。
【0067】
ポリペプチドに相互作用的な生物学的機能を付与する際に、アミノ酸のハイドロパシー指数(hydropathic index)を利用することができ、あるアミノ酸を同様のハイドロパシー指数を持つ他のアミノ酸で置き換えても、同様の生物学的活性をなおも保持し得ることがわかっている。あるいは、特に生成されるポリペプチドに求められる生物学的機能が免疫学的態様での使用を意図している場合、同様のアミノ酸の置換を親水性に基づいて行うことができる。隣接するアミノ酸の親水性によって支配される「タンパク質」の最大の局所平均親水性は、その免疫原性と相関している。したがって、置換は各アミノ酸に割り当てられた親水性に基づいて行われることに留意されたい。
【0068】
各アミノ酸に値を割り当てる親水性指数またはハイドロパシー指数のいずれかを使用する場合、これらの値が+2であるアミノ酸の置換を行い、+1が典型的であり、+0.5のものが最も典型的な置換である。
【0069】
同様に、「核酸」または「ポリヌクレオチド」のバリアントとは、野生型と比較して遺伝的に変化している改変型の核酸配列を指す。該配列は、コードされたタンパク質配列を変えることなく、遺伝的に改変され得る。あるいは、該配列は、バリアントタンパク質、例えばバリアントTPP1タンパク質をコードするように、遺伝的に改変され得る。核酸またはポリヌクレオチドのバリアントはまた、野生型タンパク質配列などの基準配列に対して少なくとも部分的な配列同一性をなおも保持するタンパク質をコードするようにコドン改変され、さらにバリアントタンパク質をコードするようにコドン改変された組み合わせ配列を指すこともできる。例えば、そのような核酸バリアントの一部のコドンは、それによってコードされるTPP1タンパク質のアミノ酸を変えることなく変更され、また、核酸バリアントの一部のコドンは、それによってコードされるTPP1タンパク質のアミノ酸を変えるように変更されるだろう。
【0070】
改変の非限定的な例には、1つまたは複数のヌクレオチドの置換または付加が含まれる(例えば、約1~約3、約3~約5、約5~約10、約10~約15、約15~約20、約20~約25、約25~約30、約30~約40、約40~約50、約50~約100、約100~約150、約150~約200、約200~約250、約250~約500、約500~約750、約750~約1000またはそれ以上のヌクレオチド)。核酸改変の一つの非限定的な例は、コドンの最適化である。
【0071】
「核酸断片」とは、所与の核酸分子の一部分のことである。
【0072】
大多数の生物におけるデオキシリボ核酸(DNA)は遺伝物質であり、一方リボ核酸(RNA)はDNAに含まれる情報のタンパク質への伝達に関与している。開示されたヌクレオチド配列の断片およびバリアント、ならびにそれによってコードされるタンパク質または部分長タンパク質も本発明に包含される。「断片」または「部分」とは、ポリペプチドまたはタンパク質をコードするヌクレオチド配列、またはそのアミノ酸配列の全長または全長未満を意味する。特定の態様では、断片または部分は、生物学的に機能的である(すなわち、野生型TPP1の酵素活性の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%または100%を保持する)。
【0073】
TPP1分子の「バリアント」は、天然分子の配列と実質的に類似する配列である。ヌクレオチド配列の場合、バリアントには、遺伝暗号の縮重のために、天然タンパク質と同一のアミノ酸配列をコードする配列が含まれる。このような天然に存在するアレリックバリアントは、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびハイブリダイゼーション技術などの、分子生物学技術を用いて同定することができる。バリアントヌクレオチド配列には、例えば部位特異的変異誘発を用いて生成されるものなどの、合成的に誘導されたヌクレオチド配列も含まれ、天然タンパク質をコードするものだけでなく、アミノ酸置換を有するポリペプチドをコードするものが含まれる。概して、本発明のヌクレオチド配列バリアントは、天然(内因性)ヌクレオチド配列に対して、少なくとも40%、50%、60%、70%、例えば71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、概して少なくとも80%、例えば81%~84%、少なくとも85%、例えば86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%の配列同一性を有する。特定の態様では、該バリアントは生物学的に機能的である(すなわち、野生型TPP1の酵素活性の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%または100%を保持する)。
【0074】
特定の核酸配列の「保存的に改変されたバリエーション」とは、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸配列を指す。
【0075】
遺伝暗号の縮重のために、多数の機能的に同一の核酸が、任意の所与のポリペプチドをコードする。例えば、CGT、CGC、CGA、CGG、AGAおよびAGGというコドンは、いずれもアミノ酸のアルギニンをコードする。したがって、アルギニンがコドンで指定されている各位置で、そのコドンを、コードされたタンパク質を変更することなく、上記の対応するコドンのいずれかに変更することができる。そのような核酸バリエーションは「サイレントバリエーション」であり、これは「保存的に改変されたバリエーション」の1種である。ポリペプチドをコードする本明細書に記載のあらゆる核酸配列には、特に明記される場合を除き、可能な全てのサイレントバリエーションも記載されている。当業者であれば、核酸の各コドン(通常、メチオニンの唯一のコドンであるATGを除く)は、標準的な技術によって機能的に同一の分子を生成するように改変され得ることを認識するであろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各「サイレントバリエーション」は、記載された各配列に事実上含まれている。
【0076】
ポリヌクレオチド配列の「実質的な同一性」という用語は、ポリヌクレオチドが、標準的なパラメータを使用する記載されたアライメントプログラムの1つを用いて、基準配列と比較して、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、もしくは79%、または少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、もしくは89%、または少なくとも90%、91%、92%、93%、もしくは94%、さらには少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する配列を含むことを意味する。当業者は、コドンの縮重、アミノ酸の類似性、リーディングフレームのポジショニングなどを考慮して、2つのヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質の対応する同一性を決定するために、これらの値を適切に調整し得ることを認識するであろう。こうした目的のためのアミノ酸配列の実質的な同一性は、通常、少なくとも70%、少なくとも80%、90%、さらには少なくとも95%の配列同一性を意味する。
【0077】
ポリペプチドとの関連で「実質的な同一性」という用語は、TPP1ポリペプチドが、指定された比較ウィンドウにわたって基準配列に対して、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、もしくは79%、または80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、もしくは89%、または少なくとも90%、91%、92%、93%、もしくは94%、さらには少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する配列を含むことを示す。2つのポリペプチド配列が実質的に同一であるという表示は、あるポリペプチドが第2のポリペプチドに対して産生された抗体と免疫学的に反応性である、ということである。かくして、例えば、あるTPP1ポリペプチドが第2のTPP1ポリペプチドと保存的置換によってのみ異なる場合、これら2つのペプチドは実質的に同一である。
【0078】
IV. 併用療法
特定の態様では、方法または使用は、AAV-TPP1粒子を哺乳動物に投与または送達すること、および任意で1種または複数種の免疫抑制剤を該哺乳動物に投与することを含む。特定の態様では、方法または使用は、AAV-TPP1粒子を哺乳動物に投与または送達すること、および任意で2、3、4種またはそれ以上の免疫抑制剤を該哺乳動物に投与することを含む。特定の態様では、方法または使用は、AAV-TPP1粒子を哺乳動物に投与または送達すること、および任意で2種の免疫抑制剤を該哺乳動物に投与することを含む。代表的な一態様では、哺乳動物を治療する方法または使用は、AAV-TPP1粒子を哺乳動物に投与または送達することと、第1および第2の免疫抑制剤を該哺乳動物に投与することを含む。
【0079】
2種以上の免疫抑制剤が投与される場合、各免疫抑制剤は、明確に区別されかつ/または異なるものであり得る(例えば、各剤は構造および/または作用機序において異なる)。特定の態様では、免疫抑制剤は抗炎症剤である。特定の態様では、免疫抑制剤はミコフェノール酸またはその誘導体である。そのようなミコフェノール酸誘導体の一例は、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)である。特定の態様では、免疫抑制剤はシクロスポリンまたはその誘導体である。特定の態様では、第1の免疫抑制剤はシクロスポリンを含み、第2の免疫抑制剤はミコフェノール酸またはその誘導体(例:MMF)を含む。特定の態様では、第1の免疫抑制剤はシクロスポリンを含み、第2の免疫抑制剤はMMFを含む。
【0080】
特定の態様では、免疫抑制剤は、哺乳動物へのAAV-TPP1粒子の投与前、投与中および/または投与後に投与される。特定の態様では、免疫抑制剤は、哺乳動物へのAAV-TPP1粒子の投与と同時に投与される。特定の態様では、免疫抑制剤は、哺乳動物へのAAV-TPP1粒子の投与後に投与される。
【0081】
特定の態様では、第1の免疫抑制剤は、哺乳動物へのAAV-TPP1粒子の投与の少なくとも約1日~約7日前、または約1週、約2週、約3週、約4週、もしくは約5週間前に投与され、第2の免疫抑制剤は、該哺乳動物へのAAV-TPP1粒子の投与の約1~7日前、約1週、約2週、約3週、約4週、もしくは約5週間前、投与中および/または投与後約10日、約20日、約30日、約40日、約50日、約100日、約200日、約300日、約350日、約400日、もしくは約500日以内に投与される。特定の態様では、シクロスポリンは、哺乳動物へのAAV-TPP1粒子の投与の少なくとも約1日~約7日前、または約1週、約2週、約3週、約4週、もしくは約5週間前に哺乳動物に投与され、ミコフェノール酸またはその誘導体(例:MMF)は、該哺乳動物へのAAV-TPP1粒子の投与の約1~7日前、約1週、約2週、約3週、約4週、もしくは約5週間前、投与中および/または投与後約10日、約20日、約30日、約40日、約50日、約100日、約200日、約300日、約350日、約400日、もしくは約500日以内に投与される。特定の態様では、シクロスポリンは、AAV-TPP1粒子の投与の約1~約7日前、または約1週、約2週、約3週、約4週、もしくは約5週間前に投与され、処置後は定期的に投与され、ミコフェノール酸またはその誘導体(例:MMF)は、該哺乳動物へのAAV-TPP1粒子の投与の約1~7日前、約1週、約2週、約3週、約4週、もしくは約5週間前、投与中および/または投与後約10日~約40日以内に1回投与される。
【0082】
免疫抑制剤は、任意の適切な用量で投与され得る。特定の態様では、シクロスポリンは、約1~約50mg/kg、約1~約20mg/kg、または約5~約10mg/kgの用量で、1日1回、2回、または3回から、1日おきに1回の頻度で投与される。特定の態様では、シクロスポリンを約10mg/kgで1日2回投与する。特定の態様では、シクロスポリンを約10mg/kgで1日2回、少なくとも約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、または約5ヶ月間投与する。特定の態様では、哺乳動物へのAAV-TPP1粒子の投与または使用の約1ヶ月~約2ヶ月後に、シクロスポリンの投与量を約5mg/kg未満、または約2mg/kg未満の用量まで漸減する。
【0083】
特定の態様では、ミコフェノール酸またはその誘導体(例:MMF)は、約1~約100mg/kg、約1~約50mg/kg、約1~約25mg/kg、または約5~約20mg/kgの用量で、1日1回、2回または3回から、1日おきに1回の頻度で投与される。特定の態様では、ミコフェノール酸またはその誘導体(例:MMF)を約10~約20mg/kgで1日1回投与する。特定の態様では、哺乳動物へのAAV-TPP1粒子の投与の約1ヶ月~約2ヶ月後に、ミコフェノール酸またはその誘導体(例:MMF)の投与量を約5mg/kg未満、または約2mg/kg未満の用量まで漸減する。
【0084】
V. 薬学的製剤、投与量、および投与経路
rAAV粒子は、液体製剤または用時調製される凍結乾燥製剤など、網膜下投与に適した任意の適切な製剤に製剤化することができる。薬学的に許容される様々な製剤が市販されており、医師によって入手可能である。
【0085】
例示的な網膜下投与の手順は以下の通りである。対象を背臥位(dorsal recumbency)にする。局所プロパラカインを眼に適用し、結膜円蓋(conjunctival fornices)を1:50希釈のベタジン液/生理食塩水で洗い流し、未希釈の5%ベタジン液を用いて眼瞼縁を綿棒で消毒する。スティーブンのテノトミーハサミ(Steven's tenotomy scissor)を用いて、外眼角切開(lateral canthotomy)を行う。キャリパーを使って、上頭側および下頭側の強膜上の角膜輪部(limbus)から3.0mm後方にスポットをマークする。両極性焼灼器(bipolar cautery)を用いてマークしたスポットの下の強膜を焼灼し、その後、未希釈の5%ベタジン液を局所塗布する。強膜固定鉗子を用いて眼球の位置を固定しながら、25ゲージバルブ付カニューレを備えたマイクロ硝子体網膜ブレード(microvitreoretinal blade)を、マークした各スポットに挿入し、結膜と強膜を通過させて、硝子体液の中に進めていく。トロカール(trocar)を眼球の後軸に向けて配置し、その後、強膜ポートを所定の位置に残して後退させる。任意のステップとして、31ゲージ針を角膜輪部から接線方向に右眼の前房に挿入して、房水サンプル(約80μL)を採取する。採取後すぐにサンプルをドライアイスの上に置く。
【0086】
直接接触の手術用レンズを滅菌カップリングゲルで角膜に配置し、顕微鏡による後眼部の直接可視化を容易にするためにエンドイルミネータープローブ(endoilluminator probe)を強膜ポートの1つから挿入する。網膜下注入用カニューレを第2のポートから挿入し、硝子体の中央部に進める。小径の注入用カニューレを網膜表面に接触するまで前進させ、下側の血管アーケードに沿って配置する。組成物をゆっくりと送達して、網膜下ブレブ(bleb)を誘発する。適切なブレブ形成が可視化されたら、注入を継続して全投与量を網膜下腔に送り込む。ブレブ形成が可視化されない場合は、小径の注入用カニューレを再配置して、外科医の選択に応じて、同じ場所または別の場所に注入を再度試みる。全注入量が送り込まれたら、注入用カニューレとエンドイルミネータープローブを強膜ポートから取り出し、コンタクトレンズを角膜から取り外す。強膜ポートを取り除き、7-0 Vicryl縫合糸を用いて外眼角切開部位を閉じた。ゲンタマイシンとトリアムシノロンアセトニドを右目に結膜下注射として投与することができる。その後、この手順(投与、ゲンタマイシン/トリアムシノロンアセトニド投与、および任意で房水採取を含む)を反対側の眼に対して繰り返す。
【0087】
免疫抑制剤は、網膜下などの任意の適切な経路で投与され、それに応じて製剤化することができる。特定の態様では、免疫抑制剤を経口的に投与する。特定の態様では、ミコフェノール酸またはその誘導体、例えばミコフェノール酸モフェチル(MMF)を経口的に投与する。特定の態様では、シクロスポリンを経口的に投与する。免疫抑制剤は、非経口的に(例えば、筋肉内、静脈内、皮下に)投与することもでき、脳、脊髄、またはその一部に注射して(例えば、CSFに注射して)投与することもできる。
【0088】
AAV-TPP1粒子などのrAAV粒子の有効量は、経験的に決定することができる。投与は、1回または複数回に分けて、治療期間を通して連続的または断続的に行うことができる。有効な投与量は、当業者により決定され、AAVの血清型、ウイルス力価、治療を受ける哺乳動物の体重、体調、種に応じて変化し得る。単回および複数回の投与は、治療する医師によって選択された用量レベル、ターゲットおよびタイミングで実施できる。例えば、適切な酵素活性を維持するために必要とされるように、複数回の投与を行うことができる。
【0089】
特定の態様では、複数のAAV-TPP1粒子が投与される。本明細書で使用する場合、複数のAAV粒子とは、約1×105~約1×1016の粒子を指す。
【0090】
特定の態様では、AAV-TPP1粒子などのrAAV粒子は、約500μl~約5ml中に約1×105~約1×1016vg/mlの用量で;1×105~約1×1016vg/mlの約500μl~約3mlの用量で;または1×105~約1×1016vg/mlの約500μl~約2mlの用量で投与される。特定の態様では、AAV-TPP1粒子などのrAAV粒子は、約1×108~約1×1016vg/kg(治療を受ける哺乳動物の体重)の用量で投与される。例えば、AAV-TPP1粒子などのrAAV粒子は、約1×108vg/kg、約5×108vg/kg、約1×109vg/kg、約5×l09vg/kg、約1×1010vg/kg、約5×l010vg/kg、約1×1011vg/kg、約5×l011vg/kg、約1×1012vg/kg、約5×l012vg/kg、約1×1013vg/kg、約5×l013vg/kg、約1×1014vg/kg、約5×l014vg/kg、または約1×1015vg/kg(治療を受ける哺乳動物の体重)の用量で投与できる。具体的な網膜下投与量には、7.5×1011vg/眼、2.5×1011vg/眼、8.3×1010vg/眼、8.3×109vg/眼、および5.0×109vg/眼、または1×108~1×1012/眼が含まれる。
【0091】
AAV-TPP1粒子などのrAAV粒子の注射または注入に適した薬学的形態には、任意でリポソームに封入された、無菌の注射可能または注入可能な溶液または分散液の即時調製に適合している、無菌の水性溶液または分散液が含まれる。どのような場合でも、最終形態は無菌の液体であり、製造、使用および保管の条件下で安定している必要がある。液体の担体またはビヒクルは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリルエステル、およびそれらの適切な混合物を含む、溶媒または液状の分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、リポソームの形成によって、分散液の場合は必要な粒子径の維持によって、または界面活性剤の使用によって維持することができる。等張剤、例えば、糖類、緩衝剤または塩類(例:塩化ナトリウム)を含めることができる。注射用の組成物の持続的吸収は、吸収を遅らせる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン、を組成物中で使用することによってもたらされる。
【0092】
AAV-TPP1粒子などのrAAV粒子の溶液または懸濁液は、任意で以下の成分を含むことができる:無菌の希釈剤、例えば、注射用水、生理食塩水、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、人工の脳脊髄液(CSF)、固定油(fixed oil)、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液状ポリエチレングリコールなど)、グリセリン、または他の合成溶媒;抗菌・抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸など;酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩;および等張化剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース。
【0093】
AAV-TPP1粒子などのrAAV粒子は、凍結乾燥された組成物として提供され得る。特定の態様では、この製剤は液体製剤から凍結乾燥させたものである。いくつかの局面では、液体製剤は、約5mM~約25mM、約5mM~約15mM、約10mM~約20mM、または約15mM~約25mMの緩衝剤を含む。例示的な局面では、薬学的組成物は、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mM、約21mM、約22mM、約23mM、約24mM、または約25mMの緩衝剤を含む。薬学的に許容される緩衝剤は当技術分野でよく知られており、限定するものではないが、リン酸緩衝剤、ヒスチジン、クエン酸ナトリウム、HEPES、Tris、Bicine、グリシン、N-グリシルグリシン、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、グリシルグリシン、リジン、アルギニン、リン酸ナトリウム、およびこれらの混合物が挙げられる。特定の態様では、緩衝剤はヒスチジン(例:L-ヒスチジン)である。
【0094】
適度なレベル(すなわち、約1%~約10%)の1種または複数種の糖および/または糖アルコールを含めることは、液体製剤および/または凍結乾燥製剤の安定性に役立つ。例えば、糖および/または糖アルコールは、凍結/解凍サイクル時のより良好な特性を可能にする。したがって、特定の態様では、本発明は、約2%~約10%の1種または複数種の糖および/または糖アルコールを含有する薬学的組成物を提供する。単糖類、二糖類、もしくは多糖類、または水溶性のグルカン、例えば、フルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、スクロース、デキストラン、トレハロース、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、およびカルボキシメチルセルロースなど、どのような糖を使用してもよい。特定の態様では、糖はスクロース、トレハロース、またはそれらの組み合わせである。特定の態様では、トレハロースはトレハロース二水和物である。糖アルコールは、約4~約8個の炭素原子とヒドロキシル基を有する炭化水素と定義される。本明細書で提供される薬学的組成物中で使用できる糖アルコールの非限定的な例としては、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール、ダルシトール、キシリトール、およびアラビトールが挙げられる。特定の態様では、糖アルコール添加物としてマンニトールを使用する。特定の態様では、薬学的組成物は、糖と糖アルコール添加物の両方を含有する。[0061] 糖と糖アルコールは個別に使用しても、組み合わせて使用してもよい。いくつかの態様では、糖、糖アルコール、またはそれらの組み合わせは、製剤中に約1%~約10%(w/v)、約1%(w/v)~約1.5%(w/v)、約2.5%~約7.5%(w/v)、または約1%~約5%(w/v)の濃度で存在しうる。例示的な局面では、本開示の薬学的組成物は、約1.0%(w/v)、約1.1%(w/v)、約1.2%(w/v)、約1.3%(w/v)、約1.4%(w/v)、約1.5%(w/v)、約1.6%(w/v)、約1.7%(w/v)、約1.8%(w/v)、約1.9%(w/v)、約2.0%(w/v)、約2.5%(w/v)、約3.0%(w/v)、約3.5%(w/v)、約4.0%(w/v)、約4.5%(w/v)、約5.0%(w/v)、約5.5%(w/v)、約6.0%(w/v)、約6.5%(w/v)、約7.0%(w/v)、約7.5%(w/v)、約8.0%(w/v)、約8.5%(w/v)、約9.0%(w/v)、約9.5%(w/v)、または約10%(w/v)の糖、糖アルコール、またはそれらの組み合わせを含む。特定の態様では、糖はスクロース、トレハロース、またはそれらの組み合わせである。特定の態様では、トレハロースはトレハロース二水和物である。
【0095】
例示的な態様では、本開示の製剤または薬学的組成物は、追加の薬学的に許容される成分を含む。例示的な局面では、この製剤または薬学的組成物は、以下の成分のいずれか1つまたは組み合わせを含む:酸性化剤、添加剤、吸着剤、エアゾール噴射剤、空気置換剤、アルカリ化剤、固化防止剤、抗凝固剤、抗菌性保存剤、酸化防止剤、防腐剤、塩基、結合剤、緩衝剤、キレート剤、コーティング剤、着色剤、乾燥剤、洗剤、希釈剤、殺菌剤、崩壊剤、分散化剤、溶解促進剤、色素、皮膚軟化剤、乳化剤、乳化安定剤、充填剤、フィルム形成剤、風味増強剤、香料、流動性向上剤、ゲル化剤、造粒剤、保湿剤、滑沢剤、粘膜付着剤、軟膏基剤、軟膏剤、油性ビヒクル、有機基剤、トローチ(pastille)基剤、顔料、可塑剤、研磨剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、皮膚浸透剤、可溶化剤、溶剤、安定化剤、坐薬基剤、界面活性剤、サーファクタント、懸濁化剤、甘味剤、治療剤、粘稠化剤、等張化剤、毒性剤、増粘剤、吸水剤、水混和性共溶媒、水軟化剤、または湿潤剤。
【0096】
凍結乾燥された組成物は、対象への投与に適した再調製投与単位(reconstituted dosage unit)とするために、水または緩衝液/緩衝剤を用いて再調製(再溶解)することができる。特定の態様では、再調製投与単位は生理学的条件に適合するpHを有する。いくつかの場合には、再調製投与単位のpHは6~8の範囲である。場合によっては、再調製投与単位のpHは7~8の範囲である。例えば、再調製投与単位のpHは7~7.5の範囲である。
【0097】
AAV-TPP1粒子などのrAAV粒子は、防腐剤を加えて製剤化してもよい。防腐剤は、典型的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゾキソニウムなどの第四級アンモニウム化合物から選択され得る。塩化ベンザルコニウムは、塩化N-ベンジル-N-(C8-C18アルキル)-N,N-ジメチルアンモニウムと記載する方が適正である。第四級アンモニウム塩とは異なる防腐剤の例は、チオサリチル酸のアルキル水銀塩、例えば、チオメルサール、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀もしくはホウ酸フェニル水銀など、過ホウ酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、パラベン類、例えば、メチルパラベンもしくはプロピルパラベンなど、アルコール類、例えば、クロロブタノール、ベンジルアルコールもしくはフェニルエタノールなど、グアニジン誘導体、例えば、クロルヘキシジンもしくはポリヘキサメチレンビグアニドなど、過ホウ酸ナトリウム、Germal II、またはソルビン酸である。好ましい防腐剤は、第四級アンモニウム化合物、特に塩化ベンザルコニウムまたはその誘導体、例えばPolyquad(米国特許第4,407,791号参照)、アルキル水銀塩、およびパラベンである。必要に応じて、細菌および真菌によって引き起こされる使用中の二次汚染から確実に保護するために、十分な量の防腐剤が薬学的組成物に添加される。別の態様では、本発明の薬学的製剤は、防腐剤を含まない。本組成物中の、もしあれば、防腐剤成分の濃度は、該組成物を保存するのに有効な濃度であり、多くの場合、該組成物の約0.00001%~約0.05%または約0.1%(w/v)などの範囲であり、適宜に該範囲の端点を含む該範囲内の全ての値が含まれる。
【0098】
AAV-TPP1粒子などのrAAV粒子、およびそれらの組成物は、投与を容易にし、投与量を均一にするために、投与単位形態(dosage unit form)として製剤化され得る。本明細書で使用する投与単位形態とは、治療を受ける個体のための単一の投与量として適する、物理的に離散した単位を指す;各単位は、必要な薬学的担体と組み合わさって所望の治療効果を生み出すように計算された所定量の活性化合物を含む。投与単位形態は、所望の効果を発揮するために必要と考えられるrAAV粒子(例:AAV-TPP1粒子)の量に左右される。必要な量は、1回量として製剤化されることもあれば、複数の投与単位で製剤化されることもある。その用量は、適切なrAAV粒子の濃度に調整され、任意で抗炎症剤と組み合わせて、使用のために包装される。
【0099】
一態様では、薬学的組成物は、治療に有効な量、すなわち、問題の疾患状態の症状を軽減もしくは改善するのに十分な量または所望の効果をもたらすのに十分な量、を提供するのに十分な遺伝物質(rAAV粒子)を含むであろう。薬学的組成物は、通常、薬学的に許容される添加剤を含む。そのような添加剤には、その組成物を受け取る個体に有害な抗体の産生をそれ自体が誘発せず、かつ過度の毒性を示すことなく投与することができる、任意の薬学的作用剤が含まれる。薬学的に許容される添加剤としては、限定するものではないが、ソルビトール、Tween80、および水、生理食塩水、グリセロール、エタノールなどの液体が挙げられる。薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩、および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸塩をその中に含めることができる。さらに、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝物質などの補助物質が、そのようなビヒクル中に存在してもよい。薬学的に許容される添加剤の詳しい考察は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 1991に掲載されている。
【0100】
AAV-TPP1粒子などのrAAV粒子を含む製剤は、ビヒクル中に有効量のrAAV粒子を含有し、その有効量は当業者によって容易に決定される。AAV-TPP1粒子などのrAAV粒子は、典型的には、組成物の約1%~約95%(w/w)の範囲であり、可能ならばさらに高くてもよい。投与される量は、治療対象となる哺乳動物またはヒトの年齢、体重、体調などの要因に左右される。有効な投与量は、当業者であれば、用量反応曲線を確立するルーチン試験を通じて決定することができる。
【0101】
特定の態様では、方法は、複数のrAAV粒子、例えばAAV-TPP1粒子を、本明細書に記載の哺乳動物(例えば、LINCLなどのLSDを有する哺乳動物)に投与することを含み、ここで、LSDの1つまたは複数の症状の重症度、頻度、進行、または発症時間が軽減、減少、予防、抑制、または遅延される。場合によっては、LSDの症状は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14日間、1、2、3、4、5、6、7、もしくは8週間、または1、2、3、4、5、もしくは6ヶ月間、軽減される。こうして、場合により、治療レジメンは、1日1回、週3回、週2回、週1回、2週間に1回、3週間に1回、月1回、5週間に1回、6週間に1回、7週間に1回、隔月に1回、およびそれらの任意の組み合わせを含むが、必ずしもそれらに限定されない。「発症時間」という用語は、AAV-TPP1粒子の最初の投与後、LSDの症状が初めて観察または検出された時点を指す。LSDの1つまたは複数の症状の重症度、頻度、進行、または発症時間が軽減、減少、予防、抑制、または遅延されるLSDの非限定的な症状としては、固有位置感覚反応、眼振、威嚇瞬目反応、瞳孔対光反射、小脳性運動失調、および企図振戦が挙げられる。LSDの1つまたは複数の症状の重症度、頻度、進行、または発症時間は、標準化された臨床神経学的検査によって主観的に測定することができる(例えば、Lorenz et al., 2011を参照されたい)。
【0102】
LSDに関連する症状の発症時間の遅れは、AAV-TPP1粒子で治療した哺乳動物の症状の発症時間を、AAV-TPP1粒子を投与しないで治療した1つまたは複数の哺乳動物と比較することによって判定することができる。特定の態様では、方法は、複数のAAV-TPP1粒子を哺乳動物(例えば、LSDを有する哺乳動物)の中枢神経系またはその一部に投与することを含み、LSDの1つまたは複数の症状の重症度、頻度、進行、または発症時間が、少なくとも約5日~約10日、約10日~約25日、約25日~約50日、または約50日~約100日軽減、減少、予防、抑制、または遅延される。
【0103】
VI. 定義
用語「ポリヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書では交換可能に使用され、全ての形態の核酸、オリゴヌクレオチド、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)とリボ核酸(RNA)およびそれらのポリマーを指す。ポリヌクレオチドには、ゲノムDNA、cDNAおよびアンチセンスDNA、スプライシングを受けたまたは受けてないmRNA、rRNA、tRNA、ならびに阻害性DNAまたはRNA(RNAi、例えば、スモールまたはショートヘアピン(sh)RNA、マイクロRNA(miRNA)、スモールまたはショート干渉(si)RNA、トランススプライシングRNA、アンチセンスRNA)が含まれる。ポリヌクレオチドは、自然に存在するもの、合成されたもの、および意図的に修飾または改変されたポリヌクレオチド(例:バリアント核酸)を含み得る。ポリヌクレオチドは、一本鎖、二本鎖、または三本鎖、直鎖または環状であり得、任意の適切な長さのものであり得る。ポリヌクレオチドについて論じる際には、特定のポリヌクレオチドの配列または構造は、5'から3'方向に配列を提供する慣例に従って、本明細書に記載され得る。
【0104】
ポリペプチドをコードする核酸は、ポリペプチドをコードする「オープンリーディングフレーム」つまり「ORF」を含むことが多い。別段の指示がない限り、特定の核酸配列には縮重コドンの置換も含まれる。
【0105】
本明細書で使用する用語「ポリペプチド」とは、アミノ酸のポリマーを指し、完全長のタンパク質とその断片が含まれる。それゆえ、本明細書では、「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」は、しばしば交換可能に使用され得る。本明細書に開示される「核酸」または「ポリヌクレオチド」配列によってコードされる「ポリペプチド」には、部分的なまたは完全長の天然TPP1配列が含まれ、同様に、ポリペプチドがある程度のTPP1酵素活性を保持する限り、天然に存在する野生型および機能的多型タンパク質、その機能的な部分配列(断片)、ならびにその改変形態または配列バリアントも含まれる。したがって、本発明の方法では、核酸配列によってコードされるそのようなポリペプチドは、治療される哺乳動物において欠損しているか、またはその発現が不十分であるもしくは欠乏している内因性タンパク質TPP1タンパク質と同一であり得るが、同一である必要はない。
【0106】
用語「ベクター」は、核酸の挿入または組込みによって操作され得る小さなキャリア核酸分子、プラスミド、ウイルス(例:AAVベクター)、または他の運搬体を指す。AAVなどのベクターは、その中のポリヌクレオチドが細胞によって転写され、続いて翻訳されるように、ポリヌクレオチドを該細胞に導入/移入するために使用され得る。
【0107】
「発現ベクター」とは、遺伝子または核酸配列を、宿主細胞内での発現に必要とされる調節領域と共に含む特化されたベクターのことである。ベクター核酸配列は、一般的に、細胞内で増殖するために少なくとも複製起点を含み、任意で、異種ポリヌクレオチド配列、発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー)、イントロン、ITR(複数可)、ポリアデニル化シグナルなどの追加の要素を含む。
【0108】
ポリペプチドは、細胞外、細胞内、または膜の位置への送達のために標的化され得る。細胞から分泌される遺伝子産物は、通常、細胞から細胞外環境への分泌のための分泌「シグナル」を持っている。分泌「シグナル」を含むように発現ベクターを構築することもできる。また、遺伝子産物は細胞内に保持されてもよい。同様に、遺伝子産物が細胞原形質膜内にポリペプチドを固定するための「保持」シグナル配列を含んでもよいし、発現ベクターが該シグナル配列を含むように構築されてもよい。例えば、膜タンパク質は、膜内にタンパク質を維持する疎水性の膜貫通領域を有する。
【0109】
本明細書で使用する用語「約」とは、基準値の10%以内(プラスまたはマイナス)の値を指す。
【0110】
用語「治療する」および「治療」は、治療的処置と予防的または防止的措置の両方を指し、その目的は、望ましくない生理学的変化もしくは障害を予防または軽減させることである。本発明の目的において、有益なまたは望ましい臨床結果には、検出可能であろうと検出不可能であろうと、1つまたは複数の症状の緩和、疾患の程度の軽減、1つまたは複数の症状もしくは疾患状態の安定化(すなわち、悪化しないまたは進行しない)、疾患の進行の遅延または減速、病状の改善または緩和、および寛解(部分または完全)が含まれるが、それらに限定されない。「治療」は、治療を受けていない場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を延長することをも意味し得る。治療を必要とする対象には、すでに疾患または障害を持っている対象だけでなく、疾患または障害になりやすい対象、疾患または障害を予防する必要がある対象も含まれる。
【0111】
本発明を説明する文脈において、用語「a」、「an」、「the」および同様の指示対象は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈が明らかに矛盾しない限り、単数形と複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。したがって、例えば、「ベクター(a vector)」への言及は、複数のそのようなベクターを含み、「ウイルス(a virus)」または「粒子(particle)」への言及は、複数のそのようなビリオン/粒子を含み、「AAVまたはrAAV粒子(AAV or rAAV particle)」への言及は、複数のそのようなAAVまたはrAAV粒子を含む。
【0112】
用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「包含する(including)」、および「含有する(containing)」は、特に記載がない限り、オープンエンド型の用語(すなわち、「~を含むが、それらに限定されない」という意味)として解釈されるべきである。
【0113】
本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書に別段の指示がない限り、その範囲内にある各個別の値を個々に言及するための簡略化した方法として役立つことを単に意図しており、各個別の値は、それが本明細書に個々に列挙されているかのように、本明細書に組み入れられる。
【0114】
全ての数値または数値範囲には、文脈が明らかに他を示さない限り、その範囲内の整数と、数値または範囲内の整数の分数が含まれる。したがって、例示すると、80%以上の同一性への言及は、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%などだけでなく、81.1%、81.2%、81.3%、81.4%、81.5%など、82.1%、82.2%、82.3%、82.4%、82.5%など、その他もろもろを含み、必要に応じてその範囲の端点を含む、その範囲内の全ての値が含まれる。
【0115】
超または未満を伴う整数への言及は、それぞれ、基準数より大きいまたは小さい任意の数を含む。したがって、例えば、100未満への言及には、99、98、97などから、さらに下って数字の1までが含まれ、10未満には、9、8、7などから、さらに下って数字の1までが含まれる。
【0116】
本明細書で使用する場合、全ての数値または数値範囲は、文脈が明らかに他を指示しない限り、そのような範囲内の数値および整数の分数およびそのような範囲内の整数の分数を含む。したがって、例示すると、1~10のような数値範囲への言及は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10だけでなく、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5など、その他もろもろを含む。1~50の範囲への言及は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20などから最大50までだけでなく、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5など、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5など、その他もろもろを含み、必要に応じてその範囲の端点を含む、その範囲内の全ての値が含まれる。
【0117】
一連の範囲への言及は、一連の範囲内の異なる範囲の境界の値を組み合わせた範囲を含む。したがって、例示すると、一連の範囲、例えば、1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~75、75~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~400、400~500、500~750、750~1,000、1,000~1,500、1,500~2,000、2,000~2,500、2,500~3,000、3,000~3,500、3,500~4,000、4,000~4,500、4,500~5,000、5,500~6,000、6,000~7,000、7,000~8,000、または8,000~9,000の範囲への言及は、10~50、50~100、100~1,000、1,000~3,000、2,000~4,000などの範囲を含み、必要に応じてその範囲の端点を含む、その範囲内の全ての値が含まれる。
【実施例
【0118】
VII. 実施例
本開示には、適用法により認められた、添付の特許請求の範囲に記載される主題の全ての修飾および均等物が含まれる。さらに、本明細書に別段の指示がない限り、あるいは文脈上明らかに矛盾しない限り、本開示には、あらゆる可能なバリエーションでの要素の任意の組み合わせが包含される。したがって、以下の実施例は、特許請求される本発明の範囲を説明することを意図したもので、限定するものではない。
【0119】
実施例1 - カニクイザル研究
この研究の目的は、サルにおいて試験品AAV-TPP1(7.5×1011、2.5×1011、または8.3×1010vg/眼)を網膜下に注射した後の導入遺伝子の発現を評価することであった。検眼鏡検査では、RPE/脈絡膜の色素沈着がこの研究中に3つ全ての用量レベルでやや変化したことが示され、また、OCT画像解析では、網膜の形態変化が明らかにされた。どの用量レベルでも、血液学的または臨床化学的評価項目に対する試験品関連の影響は認められなかった。最初の研究では、若干のダメージが示されただけでなく、治療効果に必要なレベルをはるかに上回る発現レベルが示されたことを考慮して、2回目のカニクイザル研究を実施した。研究2では、5×109vg/眼および8.3×109vg/眼のAAV-TPP1を網膜下に注射した後で導入遺伝子の発現を評価した。いずれの用量も非ヒト霊長類において良好な忍容性を示した。
【0120】
全ての投与後、様々な時点で房水中のTPP1レベルを測定し(図1C~D)、剖検後に網膜および視神経のTPP1レベルを測定した(図1A図1Bおよび図1E)。TPP1活性のパーセンテージは、TPP1欠損細胞を、組換えTPP1および対照動物または注入した動物由来の血清とインキュベートした後に測定した(図1F)。TPP1活性の減少は、組換えTPP1に対する中和抗体を産生した動物由来のサンプルにおいて定量化することができる。
【0121】
本発明者らは、hTPP1の内因性レベルよりも10倍高いレベルを達成することが、動物モデルにおいて効果的であると分かっている(Katz et al. Sci Trans. Med. 2015)。現在、本発明者らは、5×109vg/眼で100倍の内因性レベルを達成することができる。これから推定すると、用量を1ログ(log)だけ安全に減らすことができ、さらに少ないウイルス量でも効果的な用量に達することが可能である。
【0122】
実施例2 - ヒト臨床試験プロトコル
TPP1欠損症でERTを受けている被験者において、AAV2-TPP1の網膜下注入の安全性、忍容性、有効性を評価するための非盲検、非無作為化、用量漸増研究が提案される。提案された研究では、2回の投与でAAV2-TPP1の両側注射(手術の間隔は最低3週間)を評価する(より低い用量が有効であるとわかった場合は、1回のみの投与とすることができる)。
【0123】
この用量漸増研究では、最初の被験者に開始用量のTBD vg/眼を投与し、最初の被験者に次の用量レベルで投与する前に、少なくとも6ヶ月の安全性観察を完了する。第2のコホートには、最初の被験者の最低6ヶ月後に、より高い用量レベルのTBD vg/眼(または6ヶ月後に安全かつ有効であるとわかった場合はより低い用量)を投与する。事前に規定されたTPP1レベルに低用量で達した場合には、全ての被験者に対してこの用量で試験を継続することになる。
【0124】
注射された全被験者は、眼球へのAAV送達後、合計52(±2)週間の安全性観察を受ける。52(±2)週間を完了した(研究終了(End-of-Study))被験者は、さらに4年間、AAV2-TPP1の長期にわたる安全性を評価する延長研究への登録が促されることになる。
【0125】
安全性を確保するために、用量コホート内の投与と投与の間に少なくとも2週間を経過させる。被験者は、通常使用している注入部位で、計画されたERTを定期的に受けることになる。ERTの5~6日後、1回目の眼の手術/遺伝子治療薬の注入を受けるために研究サイトに移動する。患者は2回目の眼の手術のために最低3週間後に研究サイトに戻る。
【0126】
有効性の主要評価項目は、形態OCT(Morphology OCT)および機能ERGまたは瞳孔測定を含む網膜疾患(視覚的と測定可能の両方)の減少である:
・ 黄斑部のサブフィールドの定量化 - 萎縮した網膜リングの周りのハイパー自己蛍光リングの直径の増加は、どこで病気を止めたか、あるいは遅らせたかを示す結果指標になり得る;青色光とOCTを使用して、リング径の増加を判断する(評価できるようになる前に、遺伝子治療薬の注入から最低6ヶ月の経過を注意喚起する
・ AAV2-TPP1のベクター排出(shedding)解析
【0127】
房水液中のベクター由来のhTTP1酵素活性レベルと総タンパク質レベルの薬物動態パラメータ測定を、可能であれば入手する。
【0128】
有効性の副次的評価項目は、以下の方法で測定可能である:
・ 瞳孔対光反射試験
・ 全視野光感覚閾値検査
・ 視力
【0129】
有効性の探索的評価項目は、以下の方法で測定可能である:
・ 視覚および網膜機能はまた、以下を用いて測定可能である:
a. 視覚機能アンケート
b. 視野検査 - ハンフリー(Humphrey)および/またはゴールドマン(Goldmann)
c. コントラスト感度
・ CHQ(すなわち、CHQ-PF-28)による健康関連の生活の質(QOL)
【0130】
この研究に参加する資格を得るためには、候補者はスクリーニング時に以下の適格基準を満たす必要がある:
・ 古典的な後期乳児:患者または年長の兄弟(患者がまだ若い場合)が4歳までに最初の発作、または言語発達遅滞を伴う2つの共通の突然変異(4歳以下)、および合計スコアが≧3。
・ TPP1欠損症の診断が確定している(遺伝型とhTPP1酵素活性の両方に基づく)。
・ 以前にTPP1欠損症の遺伝子治療研究に参加したことがない(TTP1欠損症のためのERTを除く)。
・ 最短6ヶ月から最長2年のERTを受けている被験者。
・ 合計6ポイントの評価尺度の運動および言語ドメインにおいて合計スコア≧3を記録した。
【0131】
また、両親または法定後見人、および適切な場合には、被験者は、この研究の目的とリスクを理解し、署名および日付入りのインフォームド・コンセント、ならびに国と地域のプライバシー規制に従って子供が参加するための保護対象保健情報(protected health information:PHI)を使用する承諾を提供できなければならない。
【0132】
候補者は、以下の除外基準のいずれかがスクリーニング時に存在する場合、研究エントリーから除外される:
・ 両側の網膜下ベクター投与を含めて、この研究の要件を満たすことができない、または満たそうとしない。
・ 現在、TTP1欠損症のためのERTを受けていない。
・ 遺伝子治療ベクターが投与された研究に参加したことがある。
・ 過去6ヶ月間に治験薬を用いた臨床試験に参加している。
・ TPP1酵素の生化学的活性と相互作用する可能性のある化合物または前駆体を使用している;これらの化合物の使用を3ヶ月間中止している個人は、適格になる可能性がある。
・ 6ヶ月以内に眼内手術を受けたことがある。
・ 周術期に使用を予定している薬剤に対する過敏性が知られている。
・ 計画された手術をできなくするか、研究の解釈を妨げるような、眼の疾患が既に存在しているか、または全身性疾患を併発している。
【0133】
本明細書に開示され特許請求される全ての組成物および方法は、本開示に照らして過度の実験を行うことなく製造しかつ実施することができる。本開示の組成物および方法を好ましい態様に関して説明してきたが、本開示の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された組成物および方法、ならびに方法のステップまたはステップの順序にバリエーションが適用され得ることは、当業者には明らかであろう。より具体的には、化学的にも生理学的にも関連する特定の薬剤を、本明細書に記載された薬剤の代わりに使用しても、同じまたは同様の結果が達成され得ることが明らかであろう。当業者に明らかなそのような類似の代替物および改変・修飾はいずれも、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の精神、範囲および概念の範囲内にあるとみなされる。
【0134】
参考文献
本出願で引用された全ての文献、特許、特許出願、論文、および文書は、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。以下の参考文献は、本明細書に記載されたものを補足する例示的な手順の詳細またはその他の詳細を提供することができる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2
【配列表】
2022527116000001.app
【国際調査報告】