(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-30
(54)【発明の名称】脂肪吸引および他の体形矯正用途のための振動外科用器械
(51)【国際特許分類】
A61B 17/32 20060101AFI20220523BHJP
【FI】
A61B17/32 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560442
(86)(22)【出願日】2020-04-07
(85)【翻訳文提出日】2021-10-05
(86)【国際出願番号】 US2020027011
(87)【国際公開番号】W WO2020210200
(87)【国際公開日】2020-10-15
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521442198
【氏名又は名称】リポコスム リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】コウリ ロジャー ケイ
(72)【発明者】
【氏名】コウリ ハリル アール
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF21
(57)【要約】
脂肪吸引または体形矯正手技のために患者の組織をほぐす振動手持ち型外科用器械。この器械は、偏心回転質量を備えた振動アクチュエータに連結されているモータおよび振動アクチュエータに作動的に連結された状態で組織に係合するエンドエフェクタを有し、モータは、偏心質量を回転させ、それによりエンドエフェクタが振動して組織をほぐすようにする。第1の端部および第2の端部を備えた可撓性シャフトがモータおよびオペレータハンドルに対する振動を減衰させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪吸引または体形矯正手技のために患者の組織をほぐす振動手持ち型外科用器械であって、前記器械は、
回転シャフトを備えたモータを有し、
第1の端部および第2の端部を備えた回転可撓性シャフトを有し、前記第1の端部は、前記モータの前記シャフトに作動的に連結され、
前記回転可撓性シャフトの第2の端部に作動的に連結された偏心回転質量体を含む振動アクチュエータを有し、
組織に係合するエンドエフェクタを有し、前記エンドエフェクタは、前記振動アクチュエータに作動的に連結され、前記モータは、前記偏心質量体を回転させ、それにより前記エンドエフェクタが振動して組織をほぐす、外科用器具。
【請求項2】
前記エンドエフェクタは、前記振動アクチュエータに取り外し可能に取り付けられている、請求項1記載の外科用器具。
【請求項3】
前記エンドエフェクタは、遠位部分のところに位置する少なくとも1つの開口部および流体を前記患者の体内に注入するか組織を前記患者から吸引するかの一方または両方のためのルーメンを備えたカニューレを有する、請求項1または2記載の外科用器具。
【請求項4】
前記エンドエフェクタは、前記回転シャフトの長手方向軸線と整列する、請求項1~3のうちいずれか一に記載の外科用器具。
【請求項5】
前記エンドエフェクタは、前記回転シャフトの前記長手方向軸線からオフセットするとともに前記偏心質量体の回転シャフトからオフセットしている、請求項1~4のうちいずれか一に記載の外科用器具。
【請求項6】
前記振動アクチュエータは、ハウジング内に収容され、前記エンドエフェクタは、前記ハウジングからオフセットしている、請求項1~5のうちいずれか一に記載の外科用器具。
【請求項7】
前記モータは、ハウジング内に収容され、前記器械は、前記エンドエフェクタの振動を減衰させるとともに前記モータを振動機構体に連結するよう前記ハウジングと前記振動アクチュエータとの間に延びる減衰機構体をさらに有する、請求項1~6のうちいずれか一に記載の外科用器具。
【請求項8】
前記可撓性回転シャフトは、前記減衰機構体内に位置決めされた第1のばねおよび前記第1のばねに嵌められた第2の静止ばねを含む、請求項7記載の外科用器具。
【請求項9】
一端が前記モータの前記シャフトに連結され、他端が前記可撓性シャフトに連結された第1のカップラと、一端が前記可撓性シャフトに連結され、他端が前記回転偏心質量体の回転の中心であるシャフトに連結された第2のカップラとをさらに有する、請求項1~8のうちいずれか一に記載の外科用器具。
【請求項10】
前記振動アクチュエータの調和振動の振動数または振幅のうちの少なくとも一方を選択的に調節するよう構成されたマイクロコントローラをさらに有する、請求項1~9のうちいずれか一に記載の外科用器具。
【請求項11】
前記回転偏心質量体は回転時、往復運動を前記エンドエフェクタに与えられた前記振動運動と関連して前記エンドエフェクタに与える、請求項1~10のうちいずれか一に記載の外科用器具。
【請求項12】
前記回転偏心質量体は、前記エンドエフェクタの往復運動を行わせるよう一端にカム作用面を有する、請求項11記載の外科用器具。
【請求項13】
前記エンドエフェクタの往復運動を行わせるためにソレノイドをさらに有する、請求項1~12のうちいずれか一に記載の外科用器具。
【請求項14】
脂肪吸引または体形矯正手技のために患者の組織をほぐす振動手持ち型外科用器械であって、前記器械は、
前記患者の体内への流体注入または前記患者からの物質の吸引のうちの一方または両方のためのルーメンを備えたカニューレと、
モータと、
前記モータに作動的に連結された振動アクチュエータとを有し、前記モータは、前記振動アクチュエータを作動させて振動運動を前記カニューレに与え、その結果、前記振動が多数の軸線で生じるようにする、外科用器械。
【請求項15】
前記モータは、さらに、前記振動運動と関連して往復運動を前記カニューレにさらに与える、請求項14記載の外科用器具。
【請求項16】
往復運動を前記カニューレに与えるためのソレノイド装置をさらに有する、請求項14または15記載の外科用器具。
【請求項17】
前記ソレノイドは、前記振動アクチュエータに連結されている、請求項16記載の外科用器具。
【請求項18】
前記振動アクチュエータは、偏心回転質量体を有し、前記モータは、前記偏心回転質量体に直接連結されている、請求項14~17のうちいずれか一に記載の外科用器具。
【請求項19】
ユーザの手を保護するための減衰機構体をさらに有し、前記減衰機構体は、受動型コイルを含む、請求項14~18のうちいずれか一に記載の外科用器具。
【請求項20】
前記カニューレは、前記振動アクチュエータに取り外し可能に取り付けられている、請求項14~19のうちいずれか一に記載の外科用器具。
【請求項21】
前記振動アクチュエータは、シャフトおよび前記シャフトに回転可能に取り付けられた回転偏心質量体を有し、前記カニューレは、前記シャフトの長手方向軸線からオフセットしている、請求項14~20のうちいずれか一に記載の外科用器具。
【請求項22】
脂肪吸引を実施しまたは軟組織をほぐす方法であって、
a)モータ、前記モータに作動的に連結された振動アクチュエータ、および前記振動アクチュエータに作動的に連結されたカニューレを有する手持ち型器具を用意するステップと、
b)前記モータを作動させて前記振動アクチュエータの回転を生じさせ、それにより組織内で前記カニューレの振動を行わせるステップと、
c)前記モータを前記振動アクチュエータに連結する減衰機構体によって前記器具のオペレータを振動から遮蔽するステップとを含む、方法。
【請求項23】
振動により前記軟組織から離れた脂肪を、前記カニューレを通して取り出すステップをさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記カニューレの振動中または振動後、グラフトを前記軟組織中に注入するステップをさらに含む、請求項22または23記載の方法。
【請求項25】
前記振動の振動数または振幅のうちの少なくとも一方を選択的に調節するステップをさらに含む、請求項22~24のうちいずれか一に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪吸引術および他の体形矯正外科的処置のための手持ち型振動器具に関する。
【0002】
〔関連出願の参照〕
本願は、2019年4月10日に出願された米国特許仮出願第62/832,281号の優先権主張出願であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
脂肪吸引術は、最も一般的に実施されている外科的処置のうちの1つである。脂肪吸引術は、余分の脂肪を除去して体形を良くするために身体の諸領域をスリムにするとともに作り直す手技である。脂肪吸引術は、治療的理由で、例えば、肥満症を治療するためまたは見かけを良くするための美容上の理由で利用される場合がある。脂肪吸引術はまた、脂肪組織を摘出するよう実施される場合が多く、かかる脂肪組織を自己移植片(グラフト)として再注入すると、癌切除後の肉塊が失われた領域、例えば婦人の乳房を肉付けすることができる。この手技では、切開創を作り、カニューレを脂肪組織によって占められていた空間中に挿入し、外科医の腕が組織中を前後に進むことによってカニューレを通して脂肪を吸引する。この手技は、外科医の側に多大な物理的労力を必要とするので極めて効率が悪い場合があり、と言うのは、特に、入口部位の切開創を最小限に抑え、かくして結果として生じる瘢痕のサイズを最小限に抑えるために、カニューレの内径(直径)が2~5mmに制限されるからである。この制限により、入口部位は、瘢痕を隠すことができる僅かな解剖学的領域に制限され、次にカニューレの動きにより変化が加えられる(ほぐされ/バラバラにされる)組織領域に制限される。かかる脂肪吸引術に起因する別の重大な合併症は、脂肪が不均等に摘出された場合に結果として生じる場合のある見苦しい表面輪郭の凸凹にある。
【0004】
外科医の疲労を軽減するとともにプロセスの実施を助けるために報告されている既存の技術のうちの1つは、パワーアシスト脂肪吸引器具(power-assisted liposuction device:PAL)を用いる。かかる器具の一例が、米国特許第5,911,700号明細書に開示されている。この器具は、ジャックハンマーの振動数範囲とほぼ同じ40~90Hz振動数範囲でカニューレの1~3mmの前後の往復運動を外科医の運動に追加する。この手技は、振動脂肪吸引術と呼ばれているが、この器具は、本当の意味では振動しておらず、それどころか、カニューレが同一の直線(長手方向)軸線に沿って往復動するようにする。PAL技術は、外科医の労力を軽減するが、摘出は、依然として、カニューレによって刻み込まれた同一の直線チャネルを通って行われ、それにより器具によって変化がもたらされる領域が本質的にカニューレ直径に制限される。
【0005】
脂肪吸引術を助けるよう設計された別の器具が米国特許第9,457,177号明細書に開示されており、この器具は、カニューレ長さに応じて、先端部のところでの幾分かの振動と一緒に前後の運動の組み合わせを含むニューテーション(うなづき)運動をカニューレに与えることを必要としている。しかしながら、この器具にかかわる機構は、振動を直接的に誘起させるものではなく、むしろ、チャネル内で前後に動いているピストンの突然のハンマー様打撃を用いることによって、交互の前後運動に加えて、幾分かの振動効果をカニューレに与える。
【0006】
脂肪吸引を助けるよう設計された別の器具(Vibrasat(登録商標)、モエラー・メディカル(Moeller Medical)社製)もまた、カニューレに弧状の振り子状運動を与えておそらくは組織をほぐしてより効率的に摘出するのを助ける。これは、人によってはPALの改良策とみなされており、と言うのは、往復動PALのような同じ刻み込まれたトンネルからの摘出に加えて、スイープ運動が追加の直線状横方向経路に沿って摘出を行うからである。
【0007】
美容上の理由でならびに組織外傷および患者の回復時間を短縮するために脂肪吸引のための切開創のサイズを制限することが望ましい。しかしながら、かかる小さな切開創では、上述の器具は、これらの組織摘出範囲が限られる。したがって、切開創のサイズを大きくすることなく、組織摘出範囲を広げることが有利である。
【0008】
さらに、上述の器具は、多くの場合、外形に欠陥を生じさせる。良好に形を整えなおして、表面輪郭上の欠陥という合併症の発生を回避するのを助ける脂肪吸引器具を提供することが有利である。
【0009】
生物学的組織に加えられる低振動数振動は、突然の強力な打撃力よりも損傷の恐れを少なくした状態でこれらの維管構造的フレームワークをほぐすことができる。多数の家庭用品(例えば、歯ブラシ、シェーバなど)および工業用器具(例えば、振動台、じょうご、突き固め機など)は、振動を利用して摩擦を減少させるとともに、粒状物、流体、および/または気泡の流れ、突き固め、および/または拡散具合を向上させる。医療器具の中には、低振動数の振動を用いて骨粗鬆症の発症を阻止し、筋肉量を増やし、あるいは気道中の粘液を流れやすくするものもある。
【0010】
振動数は、超低振動数範囲(1~20ヘルツ)、音波範囲(20~104ヘルツ)、超音波範囲(104~109ヘルツ)、または極超音速範囲(109ヘルツ超)であるのが良い。多くの医療器具は、診断または治療用途に超音波振動を利用している。脂肪吸引を容易にするよう報告された幾つかの器具は、超音波振動を高い振動数で利用する。これら高い振動数は、組織外傷を引き起こす場合があり、しかも体形矯正手技には不利益な場合がある。
【0011】
自己移植法は、相当なサイズまたは正確な目立つ体形上の欠損、例えば、小乳房症、乳房切除術、または腫瘍切除術による欠損状態を補填するよう実施される場合、この不足部分を移植片組織で埋めても十分ではない。その代わり、組織の線維瘢痕および何らかの制限性維管構造的フレームワークもまた、追加の塊を受け入れるようほぐされるべきである。外部からの拡張手段を用いてレシピエント部位を例えば米国特許第8,066,691号明細書に開示されている程度まで前処置するとともに/あるいは例えば米国意匠特許第796,671号明細書および同第801,523号明細書ならびに米国特許出願公開第2015/0032143号明細書に開示されている、拡大されるべき組織を経皮的にメッシュ拡張することができる器具を用いても、拡張度は、依然として制限される。
【0012】
移植片のためのスペースを改善するとともに非ニュートン流体の拡散および流れを改善して挿入を容易にするとともに移植片粒子の分散度を向上させることが有益である(吸引脂肪組織は、非ニュートン流体である)。
【0013】
振動ハンドピースが現在、個人的マッサージのために一般的に用いられている新規なアイテムに見受けられる(例えば、米国特許第3,370,583号明細書および同第5,925,002号明細書参照)。しかしながら、これらハンドピースは、外科用器械に結合するようには設計されておらず、FDA認可外科用器具、例えば滅菌性でありしかも患者の体内に導入されるのに十分に安全なオートクレーブなどに必要な多くの特徴を欠いている。さらに、これらハンドピースは、脂肪吸引カニューレに結合するようには設計されておらず、しかも、脂肪吸引または他の体形矯正外科的処置に効果的には使用できない。
【0014】
多くの小型電気器具は、偏心回転質量体(ERM)を用いて所望の振動を生じさせている。しかしながら、電気回転エンジン、例えばアラームブザーや小型家庭用品に直接結合されたERMを有するバイブレータは、寸法および電力が制限されている場合が多い。ERMに直接連結される大型な強力なエンジンは、これらを振動による摩耗および引き裂きという損傷から保護するには極めて堅牢な構造(余剰の強力な軸受、締結具、減衰器など)を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第5,911,700号明細書
【特許文献2】米国特許第9,457,177号明細書
【特許文献3】米国特許第8,066,691号明細書
【特許文献4】米国意匠特許第796,671号明細書
【特許文献5】米国意匠特許第801,523号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2015/0032143号明細書
【特許文献7】米国特許第3,370,583号明細書
【特許文献8】米国特許第5,925,002号明細書
【発明の概要】
【0016】
本発明は、先行技術の問題および欠点を解決する。本発明は、最適化された速度および振動数で組織をほぐしまたはバラバラにし、それにより組織外傷を回避することと、外科的有効性を提供しながら組織健全性にマイナスの影響を及ぼすこととのバランスを効果的にとる振動器具を提供する。本発明の器具はまた、体腔に接近するために用いられる外科用切開創のサイズを不利益に増大させることなく、カニューレ直径よりも大きな領域の組織をバラバラにし/ほぐす。これは、器具の選択された振動運動により付随する駆動システムおよび振動減衰システムと一緒になって達成され、他方、交流電流および磁界を用いてカニューレの往復運動、カニューレの前後運動を生じさせ、ピストンの調和振動または純粋振動、横方向弧状揺動および前後運動を用いず、揺動と正面衝突の際の末端部振動の両方を生じさせる電気機械式変換器またはトランスデューサの不利益および欠点を回避する。
【0017】
本発明の一観点によれば、脂肪吸引または体形矯正手技のために患者の組織をほぐす振動手持ち型外科用器械が提供され、本器械は、モータと、第1の端部および第2の端部を備えた回転可撓性シャフトとを有する。第1の端部は、モータのシャフトに作動的に連結されている。振動アクチュエータが回転可撓性シャフトの第2の端部に作動的に連結された偏心回転質量体を含む。組織に係合するエンドエフェクタが振動アクチュエータに作動的に連結され、モータは、偏心質量体を回転させ、それによりエンドエフェクタが振動して組織をほぐす。
【0018】
幾つかの実施形態では、エンドエフェクタは、振動アクチュエータに永続的に連結され、他の実施形態では、エンドエフェクタは、振動アクチュエータに取り外し可能に取り付けられる。
【0019】
幾つかの実施形態では、エンドエフェクタは、遠位部分のところに少なくとも1つの開口部を有するとともに患者の体内への流体の注入および/または患者の体内からの組織の吸引のうちの一方または両方のためのルーメンを有する。
【0020】
幾つかの実施形態では、エンドエフェクタは、回転シャフトの長手方向軸線と整列し、他の実施形態では、エンドエフェクタは、回転シャフトの長手方向軸線からオフセットしている。
【0021】
幾つかの実施形態では、本器械は、モータのためのハウジングと振動アクチュエータとの間に延びていて、エンドエフェクタの振動を減衰するとともにモータを振動アクチュエータに連結する減衰機構体を有する。幾つかの実施形態では、減衰機構体は、シャフトに嵌めた第1のばねおよび第1のばねに嵌めた第2の静止ばねを含むのが良い。
【0022】
幾つかの実施形態では、第1のカップラが一端のところでモータのシャフトに連結され、他端のところで回転偏心質量体の回転の中心であるシャフトに連結されている。
【0023】
幾つかの実施形態では、マイクロコントローラが振動アクチュエータの振動数または調和もしくは純粋(真の)振動の振幅のうちの少なくとも一方を選択的に調節するよう構成されている。幾つかの実施形態では、マイクロコントローラは、センサおよび情報を受け取るサーボ制御機構体を有し、この情報により、サーボ制御機構体は、共振に達しまたはこれを回避するために治療済み組織の生まれつきの振動数により器具の振動を調節することができる。
【0024】
幾つかの実施形態では、回転偏心質量体は、純粋に振動運動をエンドエフェクタに与え、他の実施形態では、回転偏心質量体は、往復運動をエンドエフェクタに与えられた振動運動と関連してエンドエフェクタに与える。
【0025】
本発明の別の観点によれば、脂肪吸引または体形矯正手技のために患者の組織をほぐす振動手持ち型外科用器械が提供され、本器械は、患者の体内への流体注入または患者からの物質の吸引のうちの一方または両方のためのルーメンを備えたカニューレと、モータと、モータに作動的に連結された振動アクチュエータとを有し、モータは、振動アクチュエータを作動させて振動運動をカニューレに与え、振動が多数の軸線で生じるようにする。
【0026】
幾つかの実施形態では、モータは、さらに、往復運動を振動運動と関連してカニューレに与える。
【0027】
幾つかの実施形態では、カニューレは、振動アクチュエータに取り外し可能に取り付けられている。
【0028】
幾つかの実施形態では、振動アクチュエータは、シャフトおよびシャフトに取り付けられた回転偏心質量体を有する。幾つかの実施形態では、カニューレは、シャフトの長手方向軸線からオフセットしている。
【0029】
幾つかの実施形態では、モータは、振動アクチュエータ内の偏心回転質量体に直接結合され、減衰コンポーネントは、受動型コイルを通ってオペレータの手を保護する。
【0030】
幾つかの実施形態では、追加の往復運動が振動コンポーネントに連結されまたはこれと相互作用する別個のソレノイド機構体によって生じる。
【0031】
本発明の別の観点によれば、脂肪吸引を実施しまたは軟組織をほぐす方法が提供され、本方法は、a)モータ、モータに作動的に連結された振動アクチュエータ、および振動アクチュエータに作動的に連結されたカニューレを有する手持ち型器具を用意するステップと、b)モータを作動させて振動アクチュエータの回転を生じさせ、それにより組織内でカニューレの振動を行わせるステップとを含み、モータを振動アクチュエータに連結する減衰機構体によって器具のオペレータを振動から遮蔽する。
【0032】
幾つかの実施形態では、本方法は、カニューレを通って、振動により軟組織から離れた脂肪を取り出すステップをさらに含む。幾つかの実施形態では、本方法は、流体、治療薬、または移植片を振動中または振動後に軟組織中に注入するステップをさらに含む。
【0033】
幾つかの実施形態では、本方法は、ロッドまたは組織鑢状器を挿入して治療済み組織の維管構造的フレームワークをほぐすとともにさらに組織形成および再造形を生じさせることができる炎症反応を引き起こすステップをさらに含む。
【0034】
幾つかの実施形態では、本方法は、振動の振動数または振幅のうちの少なくとも一方を選択的に調節するステップをさらに含む。
【0035】
幾つかの実施形態では、モータの周りの把持部分は、ゴム、フォーム、リブ、または外科医の手への振動の伝達を一段と減少させることができる幾何学的に設計された三次元構造体を含む減衰カバーを有する。
【0036】
本発明に係る当業者であれば、本明細書に開示された外科用装置をどのように構成してこれを使用するかについて容易に理解することができるので、以下において、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図2】
図1の器具の側面図であり、駆動機構体ハウジングおよび振動アクチュエータハウジングの一部分が内部コンポーネントを示すために省かれた状態を示す図である。
【
図3】
図1の器具の側面図であり、駆動機構体ハウジングおよび振動アクチュエータハウジングの一部分が内部コンポーネントを示すために省かれた状態を示す図である。
【
図4】
図1の器具の内部コンポーネントの拡大図であり、減衰機構体のばねおよび振動機構体の偏心回転質量体を示す図である。
【
図5】
図1の器具の内部コンポーネントの拡大図であり、静止ばねが可撓性回転シャフトばねを示すために省かれた状態を示す図である。
【
図6A】本発明の変形実施形態に従って振動アクチュエータへのエンドエフェクタの結合部を示す拡大斜視図である。
【
図6B】
図6Aと同様な拡大斜視図であり、エンドエフェクタおよび振動アクチュエータの結合部の変形実施形態を示す図である。
【
図6C】
図6Aに類似した拡大斜視図であり、エンドエフェクタおよび振動アクチュエータのための結合部の別の変形実施形態を示す図である。
【
図7A】振動アクチュエータへのエンドエフェクタの取り外し可能な連結のための結合部の変形実施形態の拡大斜視図である。
【
図7B】
図7Aと類似した図であり、クランプを、エンドエフェクタを振動アクチュエータに固定するための閉鎖(クランプ)位置で示す図である。
【
図8A】振動アクチュエータへのエンドエフェクタの取り外し可能連結のための結合部の変形実施形態の拡大斜視図であり、結合部がエンドエフェクタの取り付けまたは解除のための位置で示されている図である。
【
図8B】
図8Aと類似した図であり、振動アクチュエータに取り付けられた(固定された)エンドエフェクタを示す図である。
【
図9A】モータシャフトと偏心回転質量体シャフトを連結するための
図1の器具のコネクタの拡大斜視図である。
【
図9B】
図9Aに類似した図であり、コネクタのばね延長部への回転シャフトばねの取り付け状態を示す図である。
【
図10】
図1の器具の偏心回転質量体およびころ軸受を示す拡大図である。
【
図11A】器具の偏心回転質量体が振動および往復運動をもたらす変形実施形態を示す拡大側面図であり、偏心回転質量体をスリーブおよびカニューレが後方(近位側)位置にある位置で示す図である。
【
図11B】
図11Aに類似した図であり、偏心回転質量体をスリーブおよびカニューレが前方(遠位側)位置にある第2の位置まで回転させた状態を示す図である。
【
図12A】
図11Aに類似した図であり、外側スリーブの往復運動における摩擦を減少させるための玉軸受を有する変形実施形態を示す図である。
【
図12B】
図12Aに類似した図であり、回転質量体をスリーブおよびカニューレが前方位置にある第2の位置まで回転させた状態を示す図である。
【
図13A】オフセットエンドエフェクタを有する本発明の器具の変形実施形態の側面図である。
【
図13B】オフセットエンドエフェクタを有する本発明の器具の別の変形実施形態の側面図である。
【
図14A】振動および往復運動を与える器具内にオフセットエンドエフェクタを有する本発明の変形実施形態の側面図であり、偏心質量体をカニューレが前方(遠位側)位置にある位置で示す図である。
【
図14B】
図14Aに類似した図であり、回転質量体をスリーブおよびカニューレが後方(近位側)位置にある第2の位置まで回転させた状態を示す図である。
【
図15A】オフセットエンドエフェクタおよび歯車機構体を有する本発明の器具の変形実施形態の側面図であり、この器具が振動および往復運動をもたらし、カニューレが遠位側の位置で示されている図である。
【
図15B】
図15Aに類似した図であり、カニューレが近位側の位置で示されている図である。
【
図16A】オフセットエンドエフェクタおよびエンドエフェクタを動かす磁石を有する本発明の器具の変形実施形態の側面図であり、器具が振動および往復運動をもたらし、カニューレが遠位側の位置で示されている図である。
【
図16B】
図16Aに類似した図であり、カニューレが近位側の位置で示されている図である。
【
図17】オフセットエンドエフェクタおよびエンドエフェクタを動かすためのソレノイド機構体を有する本発明の器具の変形実施形態の側面図であり、この器具が振動および往復運動をもたらし、カニューレが近位側の位置で示されている図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、外科的処置、例えば脂肪吸引術、自己移植法および他の体形矯正用途を実施するための振動器具(器械)を提供する。本発明の器具は、一般に、振動をもたらすモータを収容したハンドピース/ハウジング、振動を生じさせる振動機構体/振動アクチュエータ、モータと振動機構体との間に設けられていて振動を減衰させる減衰機構体および振動機構体に取り付けられていて患者の体組織に係合するエンドエフェクタを有する。モータを作動させると、それにより、モータシャフトが振動機構体を支持したシャフトを回転させ、振動機構体は、回転してエンドエフェクタ、例えばカニューレの振動を生じさせて組織をほぐしまたはバラバラにする。これら器具およびこれらの機構体/コンポーネントの種々の実施形態について以下に詳細に説明する。「器具」および「器械」という用語は、本明細書においては区別なく用いられることに注意されたい。
【0039】
好ましい実施形態では、エンドエフェクタは、カニューレの形態をしており、組織は、カニューレのルーメンを通って吸引されるとともに/あるいは流体がカニューレのルーメンを通って注入される。これについても以下に詳細に説明する。
【0040】
エンドエフェクタを振動アクチュエータに固定するための種々の結合部を本明細書において説明する。幾つかの実施形態では、エンドエフェクタは、振動アクチュエータに取り外し不能に(永続的に)取り付けられ、変形実施形態では、エンドエフェクタは、振動アクチュエータに取り外し可能に取り付けられる。これら種々の結合部について以下に詳細に説明する。
【0041】
幾つかの実施形態では、エンドエフェクタ、例えばカニューレは、器具の長手方向軸線と整列する。変形実施形態では、エンドエフェクタは、長手方向軸線からオフセットし、かくして、幾つかの形態では、器具の全長を短くする。これら種々の実施形態について以下に詳細に説明する。
【0042】
本発明は、エンドエフェクタ、例えばカニューレに音叉の先端部に類似した真の意味での調和振動を送り出す手持ち型器具(器械)を提供する。このようにする際、カニューレ先端部は、カニューレよりも非常に広く円形表面領域を覆い、したがって、潜在的に、広い領域から脂肪を摘出する。これにより、外科医は、隠された状態の小さな穿刺創傷入口部位を通って導入された小径カニューレを有するにも関わらず、広い範囲から摘出を行うことができる。換言すると、同一サイズの切開創を用いながら、より広い組織摘出範囲を提供することができる。さらに、無害の入口部位により、外科医は、所望ならば、多くの部位を用いることができ、これら多くの部位は、十字経路により特定の解剖学的領域を均等にかつ効果的に吸引することができる。それと同時に、非常に広いフットプリント領域を覆うことによる本発明の技術的思想における作用効果は、やりと比較して広いネットで魚を捕獲するのと類似している。さらに、振動は、組織の線維足場を緩め、その結果、かかる線維足場は、良好に形を整えなおすことができるとともに表面輪郭欠陥という合併症の発生を避けるのに役立つことができる。
【0043】
好ましい実施形態では、本器具は、脂肪吸引および追加の再建外科的処置のために10ヘルツから103ヘルツまでの範囲にある低振動数の真の意味における機械的振動を用いる。一実施形態では、例えば、調和振動ハンドピースは、この治療振動を1つ以上のルートによりかつ1つ以上の強度レベルで送り出すことができる。他の範囲もまた想定される。
【0044】
低振動数の機械振動は、脂肪吸引手技にとって有利であり、脂肪吸引手技は、脂肪吸引カニューレを介して吸引によって脂肪を除去のために効果的にほぐす。
【0045】
自己移植法が相当なサイズまたは正確な目立つ体形上の欠損、例えば、小乳房症、乳房切除術、または腫瘍切除術による欠損状態を補填するため、本発明は、組織の制限性維管構造的フレームワークをほぐして追加の塊を受けるようにすることができる。サイズを増大させることによって、手技が改善され、と言うのは、欠陥部を移植組織で埋めることでは不十分だからである。この増大は、本明細書において開示する器具の低振動数機械的振動によって達成され、かかる低振動数機械的振動は、構造的フレームワークを効果的にほぐして構造的フレームワークが拡張して移植のためのスペースを作ることができる。さらに、振動は、非ニュートン流体の分散および流れを向上させ、それにより、挿入が楽になるとともに移植片粒子の分散度が向上する(吸引脂肪組織は、非ニュートン流体である)。
【0046】
脂肪吸引によって得られる吸引脂肪組織流体は、脂肪細胞または含脂肪細胞に加えて多くのタイプの細胞を含む。吸引脂肪組織が脂肪移植法に用いられる場合、組織増大の役割を担う活性成分は、新たな脂肪になる間質血管フラクション(SVF)または脂肪由来幹細胞(ADSC)であると考えられ、他方、再移植脂肪細胞の大部分は、血管再生せず死んでしまうと考えられる。本発明の器具による摘出中における組織の振動は、これら小さな識別されていない細胞を弛め、これら細胞は、典型的には、毛細血管を伴っており、したがって、その結果として、脂肪移植のこれら活性成分の大部分が収集される。これは、木を適切に揺らしてリンゴを得るのに似ている。
【0047】
さらに、本明細書において開示する器具のこれら低振動数機械振動は、構造的フレームワークをほぐし、他方、結果的に、経皮切断およびメッシュ加工技術よりも血管ネットワークに与える損傷の度合いが低い。幾つかの実施形態では、例えば、PALおよびピストンを利用した器具の前後ジャックハンマリング端部打撃のない純粋調和振動の結果として、組織に対する外傷を少なくすることができ、他方、組織が依然として可塑性に、変形可能に、そして成型可能に成型可能になる。したがって、好ましい実施形態では、外科用器具は、真の意味で低振動数機械振動を送り出す。本明細書において定める純粋または真の意味での振動運動は、多数の軸線における振動を意味している。多数の軸線は、カニューレの長手方向軸線に垂直でありまたは横方向である。往復動(前後)運動では、器具は、長手方向軸線に沿って動く。揺動運動では、振動は、振り子のように1本の軸線においてである。本発明の純粋な振動運動では、振動は、音叉またはピアノの弦のようであり、これは、その長さに沿って振動する。純粋な振動は、作動時に起こり、往復運動の場合のように衝撃の結果としてではなく、往復運動では、先端部が組織に衝突したときに幾分かの振動が起こることがある。
【0048】
さらに、幾つかの実施形態では、システムは、振動振幅または振動数の制御を可能にし、かくして、医師は、これらを調節して変換器具、例えばカニューレおよび治療済み組織と共振させることができる。同様に、組織弾性および靭性に応じて、幾つかの実施形態では、振動の振動数、振幅および強度に対する同様な制御レベルを提供することができる。
【0049】
幾つかの実施形態では、本明細書において開示する器具の純粋調和振動は、外部から皮膚に加えられる変換器のようなシールドを通って送り出されるのが良く、その目的は、注入流体および浮遊粒子をほぐしてこれらの拡散を促進することにある。追加的にまたは代替的に、振動は、中実ロッドのようなまたは鑢状器のような切除プローブを挿入して内部構造的線維フレームワークをほぐすことによって深い部位または多数の平面に内部から送り出されても良い。
【0050】
幾つかの実施形態では、振動器具は、脂肪吸引カニューレ(エンドエフェクタのような)をさらに有するのが良く、それにより、振動は、カニューレによる線維付着および捕捉からの脂肪小葉のほぐしを容易にすることができる。同様に、移植法に用いられるカニューレの振動は、グラフトを分散させるのに役立つことができ、そして過剰の外傷なしに、制限的構造体をほぐしてグラフトのためのスペースを開けてこれを収容させることができる。さらに他の実施形態では、振動部材は、組織鑢状器または石目やすりとして作用して制御された状態の炎症および創傷を生じさせることができ、その結果、組織エンベロープの瘢痕化線維形成および収縮が起こるとともに種々の組織、例えば垂れたまたは不格好な乳房を持ち上げ、若返り、および再造形を助けることができる。上記のことは、外科的用途の幾つかの例であり、と言うのは、他の外科的処置における使用もまた想定されているからである。
【0051】
実験例1:
本発明の一実施形態(
図1)に従って脂肪吸引カニューレに連結されている振動器ハンドピースにより得られた摘出効率および脂肪吸引術が施された脂肪の質の科学的評価。この器具をPAL(パワーアシスト脂肪吸引器具)と比較し、そして同一の患者の両側について脂肪吸引術を施した。この実験例では、調和振動ハンドピース器具を一方の側に用い、PALを他方の側に用いた。ほぼ同じ脂肪吸引真空源および摘出カニューレを両方の器具に用い、12分間の脂肪吸引にわたって摘出された脂肪の量を記録し、サンプル組織を幹細胞分析のために実験室に送った。調和振動ハンドピースによる脂肪吸引は、脂肪吸引1分当たりに摘出された脂肪量の観点において、PAL脂肪吸引よりも少なくとも30~45%以上効率的であった。さらに、SVFおよびADSCもまた、PALを用いた場合よりも調和振動ハンドピースを用いて得られたサンプル中の脂肪吸引術が施された脂肪1ミリリットル当たり約30~45%以上であった。
【0052】
この実験例の示す証拠によれば、本発明の諸実施形態に従って生じる振動は、軟組織をほぐし、さらに、間葉幹細胞内容物の多くの放出を生じさせる。また、本発明の諸実施形態に係る振動カニューレ先端部は、同一チャネル中に前後にピストン運動するカニューレよりも広い摘出ゾーンを有し、その結果、高い効率および一ストローク当たりおよび1分間当たり多くの脂肪の摘出が得られたことが証拠づけられている。さらに、長期間評価にあたり、純粋な振動を用いる本発明の器具の調和脂肪吸引術の結果として、PAL脂肪吸引よりも良好な表面の輪郭が得られるとともにさらにより均等な組織の再被覆および収縮が得られた。
【0053】
種々の振動数および振幅もまた、種々の用途および要件に恩恵を与えることができる種々の作用効果を奏することが判明した。例えば、大きな振幅は、脂肪摘出の上でより効果的であるが、高い振動数と共に大きな振幅を用いることは、敏感な組織に大きすぎる外傷を生じさせる場合があり、首尾良い生着を得るのに必要なレシピエント維管足場の健全性にとって有害である恐れがある。本発明の振動数は、効率と外傷の減少のこの最適バランスを達成する。
【0054】
さらに、高い振動数は、振幅とは無関係に、より多くの脂肪由来幹細胞を選択的に摘出することができる。したがって、幾つかの実施形態は、特定の臨床上の要件に応じて、振動数および対応の振幅を調整するとともに同調させる上で動的であるといえる。
【0055】
次に、図面および本発明の特定の実施形態を参照すると、本発明の手持ち型外科用器具(器械)の幾つかの実施形態が示されており、同一の参照符号が本明細書において開示する器具のほぼ同一の構造的特徴を示している。最初に、
図1~
図3を参照すると、本発明の一実施形態に係る手持ち型器具が参照符号10で示されるとともに指示されている。器具10は、a)駆動コンポーネントを含む駆動システムまたはエンジンシステムとも呼ばれる駆動機構体、b)振動運動を生じさせるよう振動コンポーネントを含む振動アクチュエータとも呼ばれる振動機構体、c)振動を減衰させ、しかもエンジンを振動アクチュエータに連結するコネクタ機構体を提供する減衰コンポーネントを含む減衰/コネクタシステムとも呼ばれる減衰機構体、d)患者の組織に係合するとともに振動アクチュエータに作動的に連結されたエンドエフェクタ、例えばカニューレ、およびe)エンドエフェクタを振動アクチュエータに作動的に連結するクランプ/連結/コンポーネントを有する。システム/機構体/コンポーネントの各々について以下に詳細に説明する。本明細書で用いられる「連結され」または「作動的に連結され」という表現は、コンポーネントの直接的な連結か間接的な連結かのいずれかを意味しており、この場合、コンポーネントは、2つのコンポーネント相互間に介在して設けられているが2つのコンポーネントはそれにも関わらず相互作用するよう互いに接合され/連結されている。
【0056】
使用にあたり、モータ18の作動により、可撓性シャフト34の回転により偏心回転質量体42が回転する。これにより、カニューレ52の振動が組織をほぐす。手技中、カニューレ52のルーメンを通ってこのルーメンと連通しているカニューレの遠位側領域に設けられている1つ以上の開口部を経て組織を吸引することができる。器具10(ならびに本明細書において開示する他の器具)は、脂肪吸引術、自己移植法、体形矯正手技のため、または他の外科的処置のために使用でき、この場合、組織をほぐしまたは組織をバラバラにして器具の振動運動によりこれらの形状を再構造化することは、有益である。
【0057】
最初に駆動装置に注目すると、システム(エンジンコンポーネント)は、駆動システムハウジング16内に収容されたモータ18を有する。駆動システムハウジング16はまた、医師が外科的処置中に保持する「ハンドピース」としての機能を果たし、かくして、手持ち型器具を提供する。モータは、電気モータであるのが良く、あるいは、変形例として、液圧を回転運動に変換するエンジンを備えた空気圧回転モータであっても良い。
図1~
図3の実施形態では、図示のモータは、一例としてブラシレスモータである。エンジンコンポーネントは、ハウジング16内に収容された電源、例えばバッテリ(幾つかの実施形態では、滅菌可能であるのが良い)または変形例として、外部電源に接続可能なプラグをさらに含む。
図1~
図3の実施形態では、ケーブル24が外部電源/コントローラに接続されている。エンジンコンポーネントは、種々の計器、センサ、制御機構体およびモータ用のスイッチをさらに含むのが良い。
【0058】
バッテリに追加してまたはこの代替手段として、電気エンジンは、電力を送る電気配線および変圧器または制御モジュールへのフィードバック電気回路を含むハンドピース内に設けられている電力コントローラを使用するのが良い。かかる実施形態では、電力調整器が手術野の外側に配置されるのが良い。かかる実施形態は、振動数(例えば、エンジンrpmに相関している)の表示を可能にする。
【0059】
幾つかの実施形態における駆動システム(モータ)は、操作する外科医のためのフットスイッチの使用により作動されるのが良い。追加的にまたは代替的に、ハンドピースに設けられる手動制御部が駆動システムを作動させても良い。
【0060】
ハンドピースは、外科医の手に快適に収まるよう人間工学的に設計されている。ハンドピースは、使用中、外科医の手への振動の伝達を減少させるようリブまたはクッションを備えた減衰ゴムで覆われているのが良い。
【0061】
引き続き
図1~
図3の実施形態を参照すると、臨床医に接近可能な手動制御部20がハウジング16上に位置決めされている。制御部20は、以下に説明するように振動を生じさせるようモータシャフトを回転させるためにモータを作動させるよう外科医によって作動可能なレバー、ボタンなどの形態をしているのが良い。モータ18の遠位領域に隣接して位置するモータプレート22は、モータ18をハウジング16内に固定し、このモータを、エンドエフェクタを組織中に通すのに必要な力に耐えられるよう保護する。図示のようにピン連結部を有するのが良いケーブル24は、ハウジング16に設けられた開口部を通って近位側に延びてモータ18を外部電源またはコントローラ(図示せず)に接続している。
【0062】
本明細書で用いられる「近位側」という用語は、ユーザの近くに位置する部分/領域/コンポーネントを意味し、「遠位側」という用語は、使用中、ユーザから遠くに位置する部分/領域/コンポーネントを意味している。
【0063】
さらに、本明細書で用いられる「約」という用語は、提供された数値の±(プラスまたはマイナス)15%を意味していることに注目されたい。
【0064】
円筒形ハウジング40が駆動システムハウジング16の遠位側に位置決めされた状態でこの駆動システムハウジングから軸方向に僅かに遠位側に間隔を置いて配置されている。図示の実施形態では、ハウジング40は、円筒形ハウジング16と同一の外径を有し、ただし、ハウジングは、これよりも大きいまたは小さい直径を有しても良い。円筒形ハウジングは、振動アクチュエータを収容している。具体的に説明すると、振動ハウジング40内には、電動偏心回転質量体(ERM)42が位置決めされ、この電動偏心回転質量体は、前後に動くピストンなしでかつ揺動運動を生じさせるよう交流電流を用いるより複雑な圧電電気機械式変換器なしで純粋な振動効果(例えば、調和振動)を機械的に発生させる。かかる構成の振動振幅は、質量およびその偏心度の関数であり、他方、振動数は、システムが回転エンジンの励起振動数またはrpm速度で振動せざるを得ない場合におけるカニューレの駆動される調和振動である。
【0065】
偏心質量体(偏心重り)42は、駆動シャフト46に連結され、空所(チャネル)41(
図4および
図10参照)内で回転可能な円板半部の形をしており、この偏心質量体は、ハウジング40に設けられていて、偏心回転質量体42をチャネル内に心出させた状態に保つ溝内に嵌まる耳部43(
図10)を有する。偏心質量体42の回転により、純粋な振動運動が生じ、この振動運動は、エンドエフェクタに伝達される。質量体の位置および偏心度は、振動の振幅を変化させるよう調節可能である。
【0066】
偏心回転質量体42は、振動を生じさせる。質量体42の軸線は、回転質量体42の遠位側部と近位側部に設けられていて横応力、軸方向荷重、および振動に耐えるように構成された特別設計の堅牢なころ軸受48相互間にしっかりと保持されるのが良い。
【0067】
ばね回転シャフト34(以下に詳細に説明する)は、耳部43を軸受48の軌道に当てたままにして耳部を保護するために僅かに張力下にある。ばね回転シャフト34は、以下に説明するようにコネクタを介して回転質量体42に連結されている。
【0068】
幾つかの実施形態では、偏心回転質量体42の重さは、約10グラム~約25グラムであり、回転軸線から質量中心までの距離は、約5mm~約25mmであり、外径は、約2cm~6cmである。これらの値は、例示として与えられており、と言うのは、他の重量、距離および直径(これらの範囲から外れた値)もまた、これらが本発明の偏心回転質量体42の機能および利点を達成する限り想定されることに注意されたい。質量体42は、振動が広すぎて外科手術にとって実用的ではないサイズを超えないように寸法決めされる。他方、質量体は、エンドエフェクタ、例えばカニューレによって組織の十分に広い領域をほぐしまたはバラバラにするのに十分に寸法決めされる。上記寸法は、一方において潜在的に減衰性であることが判明している強力な振動と最小限の治療効果を持つ弱すぎる振動との最適なバランスをとることが判明していることに注意されたい。
【0069】
とはいうものの、バイブレータは、十分なサイズおよびパワーのものであることが必要である。本発明の幾つかの実施形態でも使用できる大型かつ強力な振動力は、相当大きな偏心度をもって大きな質量体を回転させるために強力なエンジントルクを用いる場合がある。しかしながら、手持ちであるに足るほど小型の強力なエンジンを大きな偏心回転質量体に直接結合することによって、過度の摩耗および引き裂きが生じるとともに電気エンジンコンポーネント部品のとてつもなく時期尚早な疲労故障が生じる場合がある。さらに、オペレータの手をこれらの強力な振動から遮蔽することが有利であり、器具を減衰材料で包むことは、有用であるが、十分ではない場合がある。考慮に入れるべき別の要因は、組織を通ってカニューレを前進させるのに必要な相当大きな前後の力である。
【0070】
エンジンをこれら圧縮および伸張力から遮蔽することは、器具の寿命を延ばす。その効果のため、本発明の幾つかの実施形態は、回転エンジンおよびオペレータの手を偏心回転質量体の強力な振動から遮蔽するための減衰コネクタを有する。
【0071】
この減衰システム/コンポーネントは、一端がエンジン(モータ)シャフトに連結され、他端が振動アクチュエータハウジング40内に設けられた偏心回転質量体42のシャフト46に連結された医用ステンレス鋼可撓性回転シャフトを含むのが良い。可撓性回転シャフトは、好ましくは、ばね状であり僅かに張力が加えられている。可撓性回転シャフトがエンジンからの回転連結作用を伝えている間、静止しているが可撓性の静止連結シャフトは、回転シャフトを包囲して回転に反作用して器具の残部が高速回転するのを阻止するよう設けられている。器具10では、静止連結シャフトは、ばねの形態をしている。変形例として、単一のばね設計ではなく、この静止コネクタは、回転シャフトの周りにぐるりとアレイを成して配列された多数のばねまたはバンパから成っていても良く、その結果、これらばねまたはバンパは、反回転を阻止し、側方可撓性を維持し、そして振動を減衰するようになっている。例えば、静止連結手段は、回転シャフトを包囲してハンドピースコンポーネントと振動アクチュエータコンポーネントとの減衰リンクを提供するばねまたは可撓性中空構造体、例えばゴムホースを有するのが良い。この減衰コネクタコンポーネントは、エンジンの寿命を保ち、しかも外科医の手を過剰な振動から保護することができる。
【0072】
追加のゴムコネクタが回転シャフトおよび静止コネクタを包囲するよう設けられるのが良く、この追加のゴムコネクタは、保護封止コンポーネントとしての役目を果たす。インシュレータコンポーネントが患者を偶発的な電撃伝達から遮蔽する。絶縁手段は、多数の高さ位置/場所に位置する場合があるが、好ましくは、クランプ/連結コンポーネントのところまたはエフェクタコンポーネントのところに位置する。
【0073】
減衰コネクタは、回転運動を器具の偏心回転質量体に伝達するための可撓性回転シャフトを有するのが良く、可撓性静止コネクタがこのシャフト周りに巻き付けられた状態で設けられてエンジン/ハンドピースコンポーネントを偏心回転質量体に機械的に連携させる。この構造は、器具のエンジン/ハンドピースコンポーネントを偏心回転質量体の振動から隔離する。さらに、脂肪吸引の圧縮および伸張力からの保護のため、回転運動を伝達する可撓性回転シャフトは、好ましくは、これよりも剛性でありかつモータには連結されていない可撓性静止コネクタと比較して、ある程度まであらかじめ張力が加えられる。
【0074】
次に、
図4および
図5を参照すると、
図1の器具10の減衰機構体(減衰コネクタシステムまたはコンポーネントとも呼ばれる)が回転および静止コネクタを含む上述の減衰機構体の一例を提供するよう詳細に示されている。減衰システムは、モータ18のシャフトを偏心回転質量体42のシャフト46に連結する回転シャフトばね34を含む。ばね34は、回転連結作用をエンジンに伝達し、そこで、モータシャフトの回転により、偏心質量体シャフトの回転が生じる。大径ばね32が小型の回転シャフトばね34から半径方向に間隔を置いた状態でこれに嵌められており、この大径ばねは、回転に対抗するための静止コネクタとなる。ばねは、偏心回転質量体42の耳部43を上述したように軸受48の軌道に当てたままにするよう僅かに張力下にある。静止ばね32のばね定数は、好ましくは、約50ポンド/インチ(8.92kg/cm)~350ポンド/インチ(62.42kg/cm)である。約30ポンド(約13.6kg)の力が、振動ヘッド(ハウジング40)がハンドピース(ハウジング16)に当たるのを阻止する上で必要であることが判明した。すなわち、力がこれよりも小さいと、振動ヘッドが当たり、力がこれよりも大きいと、十分な減衰が得られない。したがって、器具10のばね力は、最適バランスを達成するよう設計されている。
【0075】
ゴムフォーム36(
図3)および/または粘弾性要素がばねに嵌められ、かつこのばねの周りにスリーブとして成形され、および/またはばねと器具ハウジングの間の結合カップリングとして使用できる。これにより、効果的なばね定数が増大し、それによりそれ以上の減衰を提供するとともにシールとしての役目が果たされる。
図3に示されているように、ゴムフォームコネクタ36は、シャフトを覆うとともにハンドピースと振動アクチュエータとの連結部を封止する。
【0076】
回転シャフトばね34は、可撓性でありかつ押しつぶし可能であり、この回転シャフトばねは、エンジンを駆動荷重から遮蔽するよう張力調節されている。ばね34は、器具の休止位置において、約2mm~約10mm伸長される。伸長量がこれよりも少ないと、ばねシャフトは、振動ヘッドとハンドピースが互いに触れ合い、座屈する場合があり、他方、伸長量がこれよりも多いと、モータおよび軸受に加わる荷重が大きくなり、ばね34が座屈する場合がある。そのばね定数は、約2ポンド/インチ(0.36kg/cm)±(プラスまたはマイナス)0.5ポンド/インチ(0.09kg/cm)である。ばね定数がこれよりも大きいと、モータおよび軸受に対する損傷荷重が生じる場合があり、ばね定数がこれよりも小さいと、シャフトが破損する場合がある。
【0077】
回転シャフトばね34は、
図5、
図9Aおよび
図9Bに示されているように互いに反対側の端部がコネクタ37に連結されている。近位側コネクタ(結合要素)37は、近位側コネクタ37をモータシャフト19中にロックする近位側コネクタ37の固定のための止めねじ37bを受け入れるねじ穴37aを有し、遠位側コネクタ(結合要素)37は、遠位側コネクタ37を偏心回転質量体シャフト46にロックする近位側コネクタ37の固定のための止めねじ37dを受け入れるねじ穴37aを有する。遠位側コネクタ37は、ばねシャフト34の第1の端部のところの内周部に嵌まる近位側に延びるシャフト延長部39を有する。コネクタ37に設けられた溝37eがコイルバネの尾部をロックする。遠位側コネクタ37は、ばね34がコネクタ延長部39に嵌めた状態で
図9Bに示されている。近位側コネクタ37の延長部は、ばねシャフト34の第2の端部のところでシャフト34の内周部に嵌まるよう遠位側に延びている。
【0078】
クランプおよび/または連結機構体がエンドエフェクタを振動アクチュエータに連結するよう設けられている。エンドエフェクタは、例えば、ホッケーのスティックのように曲げられた脂肪吸引カニューレ、同様な形をした脂肪移植カニューレ、輸液カニューレ、ロッドであるのが良く、これらは、組織鑢状器、扁平なディスクなどとして作用するよう滑らかなものであるにせよ粗いものであるにせよいずれであっても良い。カニューレは、変形例として、L字形またはT字形であって良い。さらに、カニューレは、単一のまたは多数の、例えば二重ルーメンカニューレであっても良い。二重ルーメンは、例えば、別々のルーメンを通って流体注入と流体吸入を行うことができ、その結果、かかる流体注入と流体吸入は、別々か同時かのいずれかの状態で起こることができるようになっている。
【0079】
図1の実施形態では、エンドエフェクタ52は、エンドエフェクタ内を延びるルーメンと連通するために、遠位領域のところに1つ以上の側開口部56(
図3)を有するとともに/あるいはルーメンの末端のところに遠位開口部を有するカニューレの形態をしている。カニューレ52は、振動アクチュエータに作動的に連結され(取り付けられ)、したがって、振動がカニューレ52に伝達され、脂肪吸引、体形矯正、または他の外科的処置の際に組織をほぐすようになっている。カニューレ52は、傾斜したコネクタ58を備えたホッケーのスティックの形をしており、傾斜したコネクタ58は、例えば組織を膨潤させるための生理的食塩水、吸引脂肪組織、薬剤、または他の流体を吸引しまたはこれらをルーメンに通してカニューレ52の開口部56から体内組織中に注入するための吸引/注入源管類に連結可能なルアー取り付け具58a(または他の形態の取り付け具)を含む。カニューレの他の形状もまた想定されることに注意されたい。
【0080】
次に、エンドエフェクタ52を振動アクチュエータコンポーネントに固定するための種々のクランプおよび/または連結(結合)機構体について説明する。幾つかの実施形態では、エンドエフェクタは、例えば
図1の実施形態では、振動アクチュエータに永続的に取り付けられ、他の実施形態では、エンドエフェクタは、振動アクチュエータに取り外し可能に/解除可能に取り付けられる。取り外し可能な取り付け具により、同一のハンドピースに互いに異なるサイズまたは形式のエンドエフェクタを使用することができる。結合機構体は、エンドエフェクタ、例えばシールド状外部皮膚バイブレータ、ロッド状内部バイブレータ、鑢状器状内部やすり、流体注入、脂肪吸引または脂肪注入のためのカニューレなどを連結することができる。図のエンドエフェクタは、例えば脂肪吸引、移植および体形矯正手技のような手技を行うための吸引/流体注入ようのカテーテルであるが、理解されるべきこととして、他のエンドエフェクタを本明細書において開示する種々の実施形態の器具に使用することができる。
【0081】
図1では、カニューレは、ハウジング40内に設けられたコネクタクランプ部材50によって永続的に取り付けられるのが良く、このコネクタクランプ部材50は、クランプ力を曲がり部に隣接した領域のところでカニューレに加え、または変形例として、カニューレは、以下に説明するように、例えば
図8に示されたボルト/ナットねじ機構体によりハウジング40に取り外し可能に/交換可能に連結されても良い。
【0082】
図6A~
図8Bは、エンドエフェクタを振動アクチュエータに解除可能に取り付けるコネクタの変形実施形態を示している。しかしながら、これら機構体は、エンドエフェクタの永続的な取り付けにも利用できることは理解されるべきである。また、他の機構体を利用してエンドエフェクタを振動アクチュエータに取り外し可能にまたは取り外し不能に取り付けることができるということが理解されるべきである。
【0083】
最初に
図6Aの実施形態を参照すると、振動アクチュエータ用の振動ハウジング40aから遠位側にねじ25が延びており、このねじは、エンドエフェクタ52aのヘッドまたはキャップ49の近位側開口部49a中に挿入される。ヘッド49は、プラスチックで構成されるのが良い。このねじ係合により、エンドエフェクタ52aは、振動アクチュエータに取り外し可能に取り付けられる。注意すべきこととして、斜めのルアーコネクタ58aを備えたカニューレ52aは、
図1の実施形態のカニューレ52と同一である。さらに、取り付け機構体を除き、
図6Aの器具のコンポーネントは、
図1の実施形態のコンポーネントと同一であり、したがって、煩雑になるのを避けるために、これ以上の説明は不要であり、と言うのは、器具10の特徴および機能は、
図6Aの実施形態にそのまま適用できるからであり、差は、取り外し可能なねじ連結方式である。
【0084】
カニューレは、ホッケーの形として示されているが、上述したように、
図1および
図6A~
図8Bの実施形態では(および本明細書において開示する他の実施形態では)、カニューレは、変形例として、L字形もしくはT字形であって良く、また単一または多数ルーメンカニューレであって良いことは注意されたい。
【0085】
カニューレは、金属で構成されている場合、電気的絶縁を提供するようこれを覆ってプラスチックケーシングを有するのが良い。
【0086】
図6Bの変形実施形態では、振動アクチュエータ用のハウジング40bから遠位側に多角形取り付け具27が延びており、この多角形取り付け具は、エンドエフェクタ52bのヘッドまたはキャップ49bの対応の寸法の近位側開口部61中に挿入される。器具の長手方向軸線を横切ってキャップ49bの開口部を貫通するねじ63が取り付け具27に設けられた開口部27aを貫通してこれら2つのコンポーネント(キャップ49bおよびハウジング40b)を固定している。カニューレ52bは、
図1の実施形態のカニューレ52と同様な傾斜したルアーコネクタ58bを有していることに注意されたい。
図6Cでは、ピンロックがエンドエフェクタキャップ49cを振動ハウジング40cに固定しており、と言うのは、このピンロックが多角形取り付け具28に設けられた開口部28aを貫通しているからであり、この多角形取り付け具は、振動ハウジング40cから遠位側に延びており、エンドエフェクタ52cのキャップ49cに設けられている対応の寸法の開口部64中に挿入可能である。取り付け具27,28は、図示の形状とは異なる形状のものであって良いことに注意されたい。カニューレ52cは、
図1の実施形態のカニューレ52と同様な傾斜したルアーコネクタ58cを有していることに注意されたい。さらに、取り付け機構体を除き、
図6Bおよび
図6Cの器具のコンポーネントは、
図1のコンポーネントと同一であり、したがって、煩雑さを避けるために、これ以上の説明は不要であり、と言うのは、器具10の特徴および機能は、
図6Bおよび
図6Cの実施形態にそのまま適用できるからである。
【0087】
図7A~
図8Bの変形実施形態では、クランプ機構体がカニューレを振動アクチュエータに取り外し可能に/解除可能に固定している。注意すべきこととして、
図6A~
図6Cでは、エンドエフェクタは、振動アクチュエータに連結されたキャップまたはハウジングにより取り付けられ、
図7A~
図8Bの実施形態では、カニューレそれ自体(キャップ無し)が振動ハウジングに取り付けられている。
【0088】
最初に
図7Aおよび
図7Bの実施形態を参照すると、カニューレ84は、
図1のカニューレ52と同様な斜めのルアーコネクタ86を有している。プラスチックスリーブ87は、電気的絶縁をもたらすようカニューレの幾つかの部分/領域に嵌められている。スリーブ87は、カニューレ84の長さの一部または全体を覆うのが良い。
【0089】
カニューレ84の近位側端部は、振動アクチュエータ用のハウジング40dのニップルまたは尖った先端部82中に挿入されている。コネクタは、非クランプ(解除)位置で
図7Aに示されている。この位置では、ニップル82は、十分な隙間を提供し、したがって、エンドエフェクタをこの隙間の中に取り外し可能に収容する(取り付ける)ことができる。斜めの部分86は、図示のようにハウジング40dに設けられた隙間を貫通している。クランプレバー80が開放非クランプ位置にある。いったん挿入されたカニューレ84をニップル82中に固定することが望ましい場合、レバー80を
図7Aの位置から
図7Bのクランプ位置に動かす(回転させる)。これにより、ハウジングは、隙間Gおよびニップル82中の間隔を閉じてカニューレ84をクランプする(把持する)。ロックされたカムは、それにより、エンドエフェクタを定位置にしっかりと保持する。カニューレ84を解除することが望ましい場合、クランプレバー80を
図7Aの位置に戻して隙間/間隔を開け、その結果、カニューレ84をニップル82およびハウジング40d内の隙間から滑り出すことができるようにする。注意すべきこととして、クランプ力を
図7Aに示されているように絶縁スリーブ87に加えるのが良く、または変形実施形態では、カニューレ84に直接加えても良い。
【0090】
図8Aおよび
図8Bの実施形態は、カニューレのプラスチックスリーブをクランプするためのクランプレバーに代えて、ねじがこれを締め付けてカニューレを定位置にしっかりと保持することで振動アクチュエータをエンドエフェクタ、例えばカニューレに結合するために用いられることを除き、
図7Aおよび
図7Bの実施形態とほぼ同じである。ねじ90を開口部91中に挿入して締め付ける。これにより、隙間Hが閉じられ、その結果、ハウジング40eおよびニップル92は、カニューレ94をクランプする(把持する)ことができる。カニューレ94の一部分または傾斜ルアーコネクタ96に嵌められたプラスチックスリーブ98は、電気的絶縁をもたらす。ハウジグ40eは、図示のように絶縁スリーブ98をクランプするが、変形実施形態では、カニューレ94を直接クランプしても良い。
【0091】
注意すべきこととして、クランプ機構体によってロックされたプラスチックスリーブ87(または98)は、利用されるエンドエフェクタの口径とは無関係に、同じ外側の設計および口径を有することができる。
【0092】
上記実施形態では、エンドエフェクタ、例えばカニューレを、同軸にかつ器具の長手方向軸線に沿って整列させる。しかしながら、エンドエフェクタは、変形実施形態では、長手方向軸線からオフセットしても良い。このオフセットは、手持ち型器具の境界部(直径)内にあるのが良く、あるいは変形例として、例えば
図13Aおよび
図13Bに示された手持ち型器具の境界部の外側に位置しても良い。
【0093】
図13Aおよび
図13Bの実施形態では、連結コンポーネントまたは連結ハウジング140が振動アクチュエータハウジング142に取り付けられている(振動アクチュエータハウジング142は、回転質量体42と同一の偏心回転質量体145および上述のころ軸受を収容している)。連結コンポーネント140は、ハウジング142からオフセットしており、その結果、エンドエフェクタ、例えばカニューレ144を受け入れるチャネルは、偏心質量体145の回転シャフトおよびモータシャフト(図示せず)の長手方向軸線から半径方向に間隔を置いて位置している。このように、カニューレ144は、器具の長手方向軸線から半径方向にオフセットしている。
図13Bでは、器具は、振動アクチュエータハウジング142の露出縁部に丸みをつけるための追加のコンポーネント146を有する。カニューレ144は、ハウジング142に永続的にまたは取り外し可能に連結可能である。取り外し可能性は、ハウジング140をハウジング142に永続的に取り付けるがハウジング140に設けられたチャネルからカニューレを取り外し可能に取り付けるか、または変形例として、カニューレをハウジング140内に取り外し可能か永続的かのいずれかの状態で固定された状態でハウジング140をハウジング142に取り外し可能に取り付けることによって提供される。種々の連結方式を利用してハウジング140およびハウジング142、例えばクリップ、ねじなど、ならびに例えば
図6A~
図6Cで利用された取り付け手段、例えば取り付け具を取り付けるのが良い。
【0094】
カニューレ144をオフセットして(このオフセットカニューレ実施形態および他のオフセットカニューレ実施形態において)これを振動アクチュエータハウジング142の側部に沿って配置することにより、器具の全長が短くなるという利点が得られる。すなわち、カニューレが長手方向軸線と整列する実施形態では、カニューレの近位側端部は、振動アクチュエータハウジングの遠位側縁部から延び、オフセット実施形態では、カニューレ144の一領域144aが遠位側縁部よりも近位側に位置し、それにより、器具の全長が領域144aの長さだけ短くなる。
図13Aおよび
図13Bの器具の減衰機構体、振動運動などは、その他の点においては、器具10の場合と同一であり、したがって、器具10の特徴、コンポーネントおよび機能、例えば偏心回転質量体、軸受、減衰機構体、モータなどは、
図13Aおよび
図13Bの器具にそのまま利用できる。
【0095】
振動および往復動
【0096】
上記実施形態では、エンドエフェクタは、回転偏心質量体を介して純粋な意味で振動運動で動く。変形実施形態では、エンドエフェクタへの往復運動が振動運動と関連して提供される。これは、外科医が外科的処置中に組織を押し通すときに外科医によって及ぼされることが必要な力を減少させるのに役立つ。かくして、これらの実施形態では、振動アクチュエータは、調和振動または純粋な(真の意味での)振動に加えて、前後往復動を生じさせる。
【0097】
かかる運動は、幾つかの実施形態では、振動アクチュエータコンポーネント上を前後に摺動してクランプ/コネクタコンポーネントに結合可能な追加のピストン/シリンダコンポーネントを介在させることによって達成できる。この往復動部品の前後振れは、幾つかの実施形態では、円形、ディスク状または卵形の場合があるロッド・カム機構体によって作動でき、その間、その運動は、ピストン/シリンダ構成によって拘束されるとともにばねによってバランスがとられる。
【0098】
ロッド・カム機構体の一例が
図11Aおよび
図11Bに示されている。回転偏心質量体102は、非対称の円板の形をしており、一方の部分(領域)104は、反対側の端部の部分(領域)106と比較して幅(横方向寸法)が減少しており、それにより幅の狭い部分が生じる。外側スリーブ122から内方にロッド124が延びており、このロッドは、幅の広い領域106のカム作用面106aが係合する表面または縁部126を有する。外側シリンダ(スリーブ)122は、軸受110をカム重りと接触状態に保つよう回復ばね132を有するのが良い。
【0099】
図11Aの初期の後方振れ(近位側)位置では、幅の狭い部分104の表面104aは、ロッド124の縁部126と連続して位置しまたはこれから僅かに間隔を置いて位置しているが、ロッド124に加えられる遠位側への力はゼロでありまたは最小限である。偏心回転質量体102が振動アクチュエータハウジング120の空所108内で回転すると、幅の広い部分106のカム作用面106aは、力を表面126またはロッド124に加えてロッド124およびこれに取り付けられたスリーブ122を遠位側の方向に動かす(
図11Bの矢印参照)。偏心回転質量体102を
図11Aの位置に回転させて戻すと、幅の狭い部分104は、ロッド126に隣接して位置し、かくして、ロッド(のカム作用)126に対する力が除かれる。これにより、スリーブ122は、その近位側の位置に戻ることができる。理解できるように、偏心回転質量体102が回転すると、スリーブ122は、回転偏心質量体102によってスリーブに与えられた振動運動と関連して往復運動をなして行ったり来たりし(前後に運動し)、それにより振動および往復運動を、開口部138を介してコネクタ136に取り付けられているエンドエフェクタ、例えばカニューレに与える。かくして、この実施形態では、
図1の円板半部に類似した振動を生じさせる偏心回転質量体102はまた、エンドエフェクタを往復運動させるカムとして働く。換言すると、円板状偏心カム102もまた、エンドエフェクタの振動を生じさせる偏心回転質量体として機能する。
【0100】
注意すべきこととして、
図11Aおよび
図11Bの器具は、そのほかの点では、
図1の器具10と同一であり、例えば軸受110(軸受48と同様)、回転シャフトばね128(回転シャフトばね34と同様)を備えた減衰機構体、静止連結シャフトの大径ばね130(静止ばね32と同様)、モータなどを有する。
【0101】
スリーブ122は、
図12Aおよび
図12Bの変形実施形態に示されているように、ピストン/シリンダ往復運動中における摩擦を減少させるとともに器具の寿命を延ばすために玉軸受134を有する。その他の点については、
図12Aおよび
図12Bの実施形態は、
図11Aおよび
図11Bの実施形態と同一であり、同一の参照符号を備えている。
【0102】
注意すべきこととして、ロッドを備えたスリーブは、図示のように外側スリーブであっても良く、または変形例として、外側スリーブ内に位置決めされても良い。
【0103】
図14Aおよび
図14Bは、器具内に設けられていて振動および往復運動を与えるオフセットエンドエフェクタを備えた変形実施形態を示している。
【0104】
図14Aおよび
図14Bの器具は、
図11Aの回転偏心質量体140とほぼ同じ回転偏心質量体150を有し、と言うのは、これが振動運動および往復運動をエンドエフェクタに与えるからである。概略的に示された連結コンポーネントまたはハウジング152が振動アクチュエータハウジング154に取り付けられており、この振動アクチュエータハウジング154は、偏心回転質量体140を収容している。ハウジング152を取り付ける種々の方法が想定される。例えば、ハウジング154に連結されたロッド164は、ハウジング154内のチャネル内に拘束された状態で内外にピストン運動することができる。摩擦をさらに減少させるため、このチャネルは、ローラ軸受を有する場合がある。ロッドピストンに平行な追加のレール作用(railing )機構体がエンドエフェクタを組織中に打ち込む力をさらに吸収するとともに整列を助ける場合がある。連結コンポーネント152は、振動アクチュエータハウジング154からオフセットしており、したがって、カニューレ155を受け入れるよう寸法決めされているコンポーネント152内のチャネルは、振動アクチュエータシャフト157およびモータシャフト(図示せず)の長手方向軸線から半径方向に間隔を置いて配置されている。このように、カニューレ155は、器具の長手方向軸線から半径方向にオフセットしている。カニューレ155の領域155aは、ハウジング154の遠位端部の近位側に位置し、それにより全長を減少させている。
【0105】
円板状回転質量体150を幅の狭い領域160がロッド164に隣接しまたはこれと連続して位置する
図14Bの位置から回転させると、エンドエフェクタ(例えば、カニューレ)155は、幅の広い領域162が遠位側への力をロッド164に加えているときに近位側の位置から
図14Aの遠位側の位置に移動する。偏心質量体150を回転させて
図14Bの位置に戻すと、エンドエフェクタ155は、近位側の位置に戻ることができる。注意すべきこととして、ロッド164は、振動アクチュエータハウジング154に設けられたチャネル内にばね157によって拘束されている。
図11Aの実施形態の場合と同様、偏心回転質量体は、振動運動の提供に加えて、往復運動をエンドエフェクタに与えるためのカムとして働く。
【0106】
注意すべきこととして、振れの程度(遠位側への運動)は、カムコンポーネントの形状、例えば高さまたは幅によって定められ、その結果、カムの寸法は、遠位側への運動範囲を増減させるよう図示の寸法とは異なる場合がある。この構成を包囲するシールが幾分かの潤滑剤を維持するよう設けられるのが良い。
【0107】
図15A~
図17は、エンドエフェクタの往復運動を生じさせるための変形機構体を示している。この器具は、
図1の器具10のモータ、減衰機構体、軸受などを有するのが良い。
図15Aおよび
図15Bの実施形態では、ころ軸受172によって保持された歯車機構体170は、幾分かのデマルチプリケーション(de-multiplication)を生じさせるとともに回転軸線を90゜だけ変化させ、それにより垂直方向のカム回転が得られる。と言うのは、振動アクチュエータ(偏心質量体)174のシャフト171をその軸線回りに回転させると、歯車機構体170の歯車170aが回転し、それにより歯車170bが回転するからである。この歯車機構体170により、振動アクチュエータハウジング173内の半円形偏心回転質量体174の回転により、卵形カム178(矢印178参照)が回転し、それによりロッド179は、カムの偏心度に従って往復動する。かくして、カム178は、第2の小型偏心カムとなり、それにより、ロッド179は、内外に動くことができる。ロッド179のかかる往復動により、連結コンポーネント175による装置の長手方向軸線からオフセットした(
図14Aの実施形態の場合と同様)エンドエフェクタ179′は、往復動する。ばね180および円筒形チャネル182は、エンドエフェクタ179′およびそのクランプ/連結以降体175の安定性および整列状態を維持する。偏心回転質量体174の回転により、これと関連して上述したような振動運動が与えられ、他方、カム174bの回転により、ロッド179を介して歯車機構体170による往復動運動が与えられる。
図15Aは、前方(遠位側)位置にあるエンドエフェクタ179′を示し、
図15Bは、内方(近位側)位置にあるエンドエフェクタを示している。
【0108】
図16Aおよび
図16Bの変形実施形態では、磁気システムが往復運動を生じさせる。具体的に説明すると、回転偏心質量体186はまた、一方の半円にN極Nを備え、他方の半円上にS極Sを備えた磁石である。シリンダ193内に拘束されたピストン状磁石192もまた、N極およびS極を有する。回転質量体のN極側がピストン時磁石192のN極側を横切ると、回転質量体のN極側は、ピストンに反発力をもたらし、それにより、ピストンを押出し、それによりエンドエフェクタ194を
図16Aに示されているように外に(遠位側に)押す。偏心質量体186がもう半回転すると、S極は、ピストン192のN極を横切り、ピストンを内側に(近位側に)引き付け、それによりエンドエフェクタ194は、
図16Bに示されているように内側に(近位側に)戻る。注意すべきこととして、エンドエフェクタ194は、
図14Aのエンドエフェクタと同一の仕方でオフセットしている。回転偏心質量体186は、これが回転しているときに振動運動と往復運動の両方をエンドエフェクタに与える。
【0109】
図17の変形実施形態では、電気的に駆動されるソレノイド200がエンドエフェクタ204を前後に動かす(往復動させる)よう振動アクチュエータ202に連結されている。かくして、電磁石ソレノイド機構体は、半円形偏心回転質量体206が回転しているときに振動運動を与えているときに往復運動を与える。ソレノイドの使用によりソレノイドを制御する別個の電気セットアップの複雑さが増すが、それにより、可動部品が少なくなり、既存の可動部品に加わる応力が小さくなる。また、ソレノイドは、可撓性回転シャフトを追加のトルク荷重から保護する。
【0110】
振動だけまたは振動に往復動運動が加わった変形実施形態では、モータは、偏心回転質量体に直接連結されるのが良く、幾つかの実施形態では、例えば
図4のハウジング40内の振動アクチュエータのためのハウジング内に位置決めされる。かかる実施形態では、モータが振動する場合がある。モータの振動をそのクランプ機構体によって減衰させることができる。モータが振動することができるようにすることにより、エンジンのより多くの摩耗および引き裂きが生じて、その寿命が短くなる場合があるが、可撓性回転シャフトをなくすことによってリソースを減少させることができる。かかる実施形態の減衰コンポーネントとしては、コイル、例えば
図4のコイルシャフト32またはハンドピースの外科医がつかむ部分を振動から遮蔽するゴムバンパースリーブを有するのが良い。モータが偏心回転質量体に直接連結される実施形態のうちの幾つかにおいて、回転シャフトばねを設ける必要はなく、受動型ばね(コイル)が振動を減衰させるとともにオペレータの手を保護するために設けられる。
【0111】
回転質量体は、揺動力を調節するために調節可能な偏心度を有するよう設計されるのが良い。さらに、電力制御ユニット(マイクロコントローラ)が種々の振動数および種々の振動振幅を生じさせて種々の効果、すなわち生物学的効果と機械的効果の両方を提供するのが良い。振動数がカニューレの内部振動数と共振すると、この結果として、調和振動パターンが生じる場合があり、かかる調和振動パターンは、振動の振幅を格段に増大させるとともに一寸法方向の摘出を達成する器具と比較して摘出表面領域を著しく広げる。かくして、本発明の器具は、三次元摘出装置とみなされ得る。幾つかの利点としては、i)摘出ミリメートル/分/ストロークの効率、ii)間質血管フラクションの選択的摘出、iii)軟組織を収縮させることによるか、これらを拡張させることによるか、あるいはこれらを一層柔軟にしてこれら軟組織を成形することができるようにするかによって、形状を軟組織に与え、かくして組織を再造形するのを助ける、細胞外維管足場をほぐすとともに無外傷的に再配置し/再方向付けし/再組織化する際の効率、iv)他の効果、例えば局所炎症、線維形成コラーゲン合成の誘発、血流(短期間と長期間の両方の循環効果)、毛細管および神経線維破壊などの達成が挙げられる。
【0112】
幾つかの実施形態では、電子制御コンポーネントは、エンジンコンポーネントの作動を制御するマイクロコントローラを含む。幾つかの実施形態では、マイクロコントローラは、電子制御信号をエンジンコンポーネントに送ってエンジンコンポーネントを始動させ、停止させ、そしてエンジンコンポーネントの速度および/またはパワーを調節する。幾つかの実施形態では、手持ち型コンポーネントは、マイクロコントローラと通信状態にあるユーザインターフェースを含む。ユーザインターフェースは、オペレータが外科用ハンドピースの作動を制御するための入力機構体、例えばタッチスクリーン、ボタン、スイッチ、キーボード、またはこれらの組み合わせを含むのが良い。幾つかの実施形態では、ユーザインターフェースは、現在の振動パラメータ、例えばモータの振動数、振幅、電力、速度、持続時間および/または他のパラメータをオペレータに表示する。ユーザインターフェースは、現在の振動手技で用いられるこれらのパラメータの選択を表示することができる。ユーザインターフェースはまた、1つ以上の先の振動手技で用いられたこれらのパラメータの選択を表示することができる。
【0113】
幾つかの実施形態では、機械的振動は、ある期間にわたって連続的に加えられる。幾つかの実施形態では、機械的振動は、ある期間にわたって間欠的に加えられる。幾つかの実施形態では、外科用ハンドピースにより送られた機械的振動の振動数、振幅、および持続時間は、オペレータによって手動で調節できまたは電子制御コンポーネントの非一過性メモリに記憶されているあらかじめプログラムされた手順に従って自動的に調節できる。
【0114】
本発明の装置および方法を好ましい実施形態に関して説明したが、当業者であれば容易に理解されるように、添付の特許請求の範囲により定められた本発明の精神および範囲から逸脱することなく、これら実施形態に対する変更および改造を行うことができる。
【手続補正書】
【提出日】2021-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪吸引または体形矯正手技のために患者の組織をほぐす振動手持ち型外科用器械であって、
前記器械は、回転シャフトを備えたモータを有し、
第1の端部および第2の端部を備えた回転可撓性シャフトを有し、前記第1の端部は、前記モータの前記シャフトに作動的に連結され、
前記回転可撓性シャフトの第2の端部に作動的に連結された偏心回転質量体を含む振動アクチュエータを有し、
組織に係合するエンドエフェクタを有し、前記エンドエフェクタは、前記振動アクチュエータに作動的に連結され、前記モータは、前記偏心質量体を回転させ、それにより前記エンドエフェクタが振動して組織をほぐす、外科用器具。
【請求項2】
前記エンドエフェクタは、前記振動アクチュエータに取り外し可能に取り付けられている、請求項1記載の外科用器具。
【請求項3】
前記エンドエフェクタは、遠位部
分および流体を前記患者の体内に注入するか組織を前記患者から吸引するかの一方または両方のためのルーメンを備えたカニューレを有する、請求項1または2記載の外科用器具。
【請求項4】
前記エンドエフェクタは、前記回転シャフトの長手方向軸線と整列する、請求項1~3のうちいずれか一に記載の外科用器具。
【請求項5】
前記エンドエフェクタは、前記回転シャフトの前記長手方向軸線からオフセットするとともに前記偏心質量体の回転シャフトからオフセットしている、請求項1~4のうちいずれか一に記載の外科用器具。
【請求項6】
前記振動アクチュエータは、ハウジング内に収容され、前記エンドエフェクタは、前記ハウジングからオフセットしている、請求項1~5のうちいずれか一に記載の外科用器具。
【請求項7】
前記モータは、ハウジング内に収容され、前記器械は、前記エンドエフェクタの振動を減衰させるとともに前記モータを振動機構体に連結するよう前記ハウジングと前記振動アクチュエータとの間に延びる減衰機構体をさらに有する、請求項1~6のうちいずれか一に記載の外科用器具。
【請求項8】
前記可撓性回転シャフトは、前記減衰機構体内に位置決めされた第1のばねおよび前記第1のばねに嵌められた第2の静止ばねを含む、請求項7記載の外科用器具。
【請求項9】
一端が前記モータの前記シャフトに連結され、他端が前記可撓性シャフトに連結された第1のカップラと、一端が前記可撓性シャフトに連結され、他端が前記回転偏心質量体の回転の中心であるシャフトに連結された第2のカップラとをさらに有する、請求項1~8のうちいずれか一に記載の外科用器具。
【請求項10】
前記振動アクチュエータの調和振動の振動数または振幅のうちの少なくとも一方を選択的に調節するよう構成されたマイクロコントローラをさらに有する、請求項1~9のうちいずれか一に記載の外科用器具。
【請求項11】
前記回転偏心質量体は回転時、往復運動を前記エンドエフェクタに与えられた前記振動運動と関連して前記エンドエフェクタに与える、請求項1~10のうちいずれか一に記載の外科用器具。
【請求項12】
前記回転偏心質量体は、前記エンドエフェクタの往復運動を行わせるよう一端にカム作用面を有する、請求項11記載の外科用器具。
【請求項13】
前記エンドエフェクタの往復運動を行わせるためにソレノイドをさらに有する、請求項1~12のうちいずれか一に記載の外科用器具。
【請求項14】
前記エンドエフェクタは、カニューレを有し、前記モータは、前記振動アクチュエータを作動させて振動運動を前記カニューレに与え、その結果、前記振動が多数の軸線で生じるようにする、請求項1~13のうちいずれか一に記載の外科用器具。
【請求項15】
前記カニューレは、前記カニューレよりも広い領域内の組織をほぐす、請求項14記載の外科用器具。
【請求項16】
前記ソレノイドは、前記振動アクチュエータに連結されている、請求項
13記載の外科用器具。
【請求項17】
前記モータは、前記偏心回転質量体に直接連結されている、請求項14~16のうちいずれか一に記載の外科用器具。
【請求項18】
ユーザの手を保護するための減衰機構体をさらに有し、前記減衰機構体は、受動型コイルを含む、請求項
14~17のうちいずれか一に記載の外科用器具。
【国際調査報告】