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特表2022-527167ライニングの溝部内の送風を備えたブレーキシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-31
(54)【発明の名称】ライニングの溝部内の送風を備えたブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/092 20060101AFI20220524BHJP
   F16D 69/00 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
F16D65/092 A
F16D65/092 C
F16D65/092 D
F16D69/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557516
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(85)【翻訳文提出日】2021-11-22
(86)【国際出願番号】 EP2020058815
(87)【国際公開番号】W WO2020193775
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】1903216
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514287580
【氏名又は名称】タラノ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロイク・アダムザック
(72)【発明者】
【氏名】ティボー・ル・ブレール
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA53
3J058AA62
3J058BA41
3J058BA78
3J058CA43
3J058CA47
3J058DE17
3J058FA06
(57)【要約】
本発明は、ブレーキパッド(10)を含むブレーキシステムに関し、該パッドは、第1の面(13)および第2の面(14)を有する背板(1)と、摩擦材料で作製されておりかつ該第1の面(13)に固定されているライニング(2)であって、摩擦面(26)、取付け面(20)、内縁部(23)、外縁部(24)、後縁部(21)、および前縁部(22)により範囲を定められており、該摩擦面(26)へ開いておりかつ内縁部(23)に向かってその第1の端部(31)に開口部を有しかつ外縁部(24)に向かってその第2の端部(32)に開口部を有する少なくとも1つの収集溝部(3)が設けられている、ライニング(2)と、を含む。該ブレーキシステムは、空気が中を通って吸入される吸入管(40)と、空気が中を通って吹き込まれるブロー管(50)とを含む吸入システムをさらに含み、該吸入管(40)の吸気口(41)は、第1の端部(31)および第2の端部(32)の中から選択される、少なくとも1つの溝部(3)の一方の端部に対向して配置されており、ブロー管(50)の排気口(51)は、第1の端部(31)および第2の端部(32)の中から選択される、少なくとも1つの溝部(3)の他方の端部に対向して配置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキパッド(10)を含むブレーキシステムであって、前記パッドは、第1の面(13)および第2の面(14)を有する背板(1)と、摩擦材料で作製されておりかつ前記第1の面(13)に固定されているライニング(2)であって、摩擦面(26)、取付け面(20)、内縁部(23)、外縁部(24)、後縁部(21)、および前縁部(22)により範囲を定められており、前記摩擦面(26)へ開いておりかつ前記内縁部(23)に向かってその第1の端部(31)に開口部を有しかつ前記外縁部(24)に向かってその第2の端部(32)に開口部を有する、少なくとも1つの収集溝部(3)が設けられている、ライニング(2)と、を含む、ブレーキシステムにおいて、前記ブレーキシステムは、空気が中を通って吸入されることが可能である吸入管(40)と、空気が中を通って吹き込まれることが可能であるブロー管(50)と、を含む吸入システムをさらに含み、前記吸入管(40)の吸気口(41)は、前記第1の端部(31)および前記第2の端部(32)のうちから選択された前記少なくとも1つの溝部(3)の一方の端部に対向して配置されており、前記ブロー管(50)の排気口(51)は、前記第1の端部(31)および前記第2の端部(32)のうちから選択された前記少なくとも1つの溝部(3)の他方の端部に対向して配置されていることを特徴とする、ブレーキシステム。
【請求項2】
前記吸入管(40)も前記ブロー管(50)も前記ライニング(2)または前記背板(1)と接触していない、請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項3】
前記吸入管(40)の前記吸気口(41)は前記第2の端部(32)に対向して配置されており、前記ブロー管(50)の前記排気口(51)は前記第1の端部(31)に対向して配置されている、請求項1または2に記載のブレーキシステム。
【請求項4】
前記第1の端部(31)は前記内縁部(23)上へ開いている、請求項3に記載のブレーキシステム。
【請求項5】
前記吸入管(40)の前記吸気口(41)は前記第1の端部(31)に対向して配置されており、前記ブロー管(50)の前記排気口(51)は前記第2の端部(32)に対向して配置されている、請求項1または2に記載のブレーキシステム。
【請求項6】
前記第2の端部(32)は前記外縁部(24)上へ開いている、請求項5に記載のブレーキシステム。
【請求項7】
前記吸入システムはポンプ(60)とフィルタ(70)とを含み、前記ポンプ(60)、前記フィルタ(70)、前記吸入管(40)、および前記ブロー管(50)は連続回路を形成する、請求項1から6のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの溝部(3)は前記後縁部(21)付近に配置されている、請求項1から7のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項9】
前記ライニング(2) には、前記前縁部(22)と前記後縁部(21)との実質的に中間に配置されている第2の溝部(3)が設けられている、請求項8に記載のブレーキシステム。
【請求項10】
前記ライニング(2) には、前記前縁部(22)付近に配置されている追加溝部(3)が設けられている、請求項8または9に記載のブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば道路車両もしくは鉄道車両または風力タービンなどの、その回転が減速される回転要素を含む機械内での使用を目的とする、無公害ブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
そのようなブレーキシステムでは、回転要素に当接したブレーキパッドの磨耗の結果として、粒子およびダストが摩擦制動により放出される。この回転要素は、例えば、車両の車輪、または該車両の該車輪により駆動されるディスクである。周囲環境内へ分散されるこれらの粒子は人の健康に有害であることが知られている。さらに、自動車用の電気モータの成長は、摩擦ブレーキシステムの磨耗の結果として生じる粒子およびダストを処理する必要性を高めている。したがって、これらの粒子およびダストが周囲環境内へ放出される前に、それらを捕捉する必要がある。
【0003】
したがって、ブレーキパッド10を含むブレーキシステムを記載する既知の特許文献1が存在し、このパッドは、第1の面13および第2の面14を有する背板1と、摩擦材料で作製されておりかつ該第1の面13に固定されているライニング2であって、摩擦面26、取付け面20、内縁部23、外縁部24、後縁部21、および前縁部22により範囲を定められている、ライニング2と、を含む。該ライニング2には、該摩擦面26へ開いておりかつ内縁部23に向かってその第1の端部に開口部を有しかつ外縁部24に向かってその第2の端部31に開口部を有する少なくとも1つの収集溝部3が設けられている。背板1は、収集溝部3と流体連通している穴部17を含む。該穴部17は、溝部3内で流動する空気ならびに粒子およびダストを吸入することができる吸入管40により吸入システムに接続されている。
【0004】
そのようなブレーキシステムは図10および図11に示されており、先行技術を示す。
【0005】
しかし、このブレーキシステムは欠点を有する。
【0006】
実際、粒子およびダストは、制動段階の間、望ましくない量で脱出し続ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】仏国特許第3,057,040号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、これらの欠点を改善することを目的とする。
【0009】
本発明は、ライニングと回転要素とにより放出される粒子およびダストの捕捉が最適化されかつ構造が可能な限り簡単であるブレーキシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本目的は、ブレーキシステムが、空気が中を通って吸入されることが可能である吸入管と、空気が中を通って吹き込まれことが可能であるブロー管(blow pipe)と、を含む吸入システムをさらに含むことにより達成され、吸入管の吸気口は、第1の端部および第2の端部の中から選択される、少なくとも1つの溝部の一方の端部に対向して配置されており、ブロー管の排気口は、第1の端部および第2の端部の中から選択される、該溝部の他方の端部に対向して配置されている。
【0011】
これらの装置に因り、吸入システムによる空気の同時の吹込みおよび吸入は粒子およびダストを吸入管に向かって誘導することを可能にするので、吸入システムによる粒子およびダストの収集はより効率的である。したがって、粒子およびダストの大気中への放出は最小限にされる。
【0012】
吸入管もブロー管もライニングまたは背板と接触していないことが有利である。
【0013】
したがって、ライニングおよびパッドが回転要素から離された場合、制動段階の後、多かれ少なかれ重大な残留トルクの発生がない。
【0014】
例えば、吸入管の吸気口は第2の端部に対向して配置されており、ブロー管の排気口は第1の端部に対向して配置されている。
【0015】
したがって、空気が溝部内でライニングの内縁部から外縁部へ流動する。この方向は、遠心力の影響下で溝部内の空気流の(吸入/吹込みのない)自然な方向なので、吸入管内の粒子およびダストの収集はより効率的である。
【0016】
第1の端部は内縁部上へ開いていることが有利である。
【0017】
したがって、空気が溝部の延長部において溝部から(吸入管に向かって)脱出し、それにより吸入がより効率的になる。さらに、吸入管はライニングの主平面内に配置されているので、キャリパを修正してこの管をブレーキシステムの構造に統合する必要がない。
【0018】
吸入管の吸気口は第1の端部に対向して配置されており、ブロー管の排気口は第2の端部に対向して配置されていることが有利である。
【0019】
したがって、空気が溝部内でライニングの外縁部から内縁部へ流動する。
【0020】
第2の端部は外縁部上へ開いていることが有利である。
【0021】
したがって、空気が溝部の延長部において溝部から(吸入管に向かって)脱出し、それにより吸入がより効率的になる。さらに、吸入管はライニングの主平面内に配置されているので、キャリパを修正してこの管をブレーキシステムの構造に統合する必要がない。
【0022】
吸入システムはポンプとフィルタとを含むことが有利であり、該ポンプ、該フィルタ、吸入管、およびブロー管は連続回路を形成する。
【0023】
吸入システムはこのように簡略化される。さらに、フィルタにより濾過された空気は、溝部内へ吹き込み、(フィルタによりまだ捕捉されていない)粒子にフィルタを数回通過させるために再利用される。したがって、粒子がこのフィルタ内に格納される確率が高められる。
【0024】
少なくとも1つの溝部が後縁部付近に配置されることが有利である。
【0025】
粒子およびダストの捕捉はこのように最適化され、この流動方向が静止状態のライニングに対する回転要素の運動方向であるので、これらの粒子およびダストはライニングの前部から後部へ流動する傾向がある。
【0026】
ライニングには、前縁部と後縁部との実質的に中間に配置されている第2の溝部が設けられることが有利である。
【0027】
したがって、制動中のライニング-ディスクアセンブリの振動挙動は改善される。
【0028】
ライニングには、前縁部付近に配置されている追加溝部が設けられることが有利である。
【0029】
したがって、本発明によるシステムは、ライニングに対して回転要素の両回転方向に同様に効率的に動作し、それは、鉄道車両などの、両方向にブレーキをかけなければならない車両にとって有利である。
【0030】
本発明は、非制限的例として示されている実施形態の下記の詳細な説明を読むと、よりよく理解され、その利点がより明らかになるであろう。該説明は添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明によるブレーキシステムのブレーキパッドの上面図である。
図2】本発明によるブレーキシステムのブレーキパッドの斜視図である。
図3図2の線III-IIIに沿った、本発明によるブレーキシステムのブレーキパッドの収集溝部を観察する断面図である。
図4】変形形態による収集溝部を観察する断面図である。
図5】本発明の別の実施形態によるブレーキシステムのブレーキパッドの斜視図である。
図6図5の線VI-VIに沿った、本発明によるブレーキシステムのブレーキパッドの収集溝部を観察する断面図である。
図7】本発明のさらに別の実施形態によるブレーキシステムのブレーキパッドの上面図である。
図8】回転ディスク上に取り付けられている、本発明によるブレーキシステムの斜視図である。
図9】本発明によるブレーキデバイスの吸入システムの例の概略図である。
図10】既述の、先行技術によるパッドの上面図である。
図11】既述の、先行技術によるパッドの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、機械の回転要素9を制動することを目的とするブレーキのブレーキパッド10を含むブレーキシステムに関する。本発明は、該機械が(このブレーキがディスクブレーキである)道路車両である場合において後述されている。しかし、本発明は、線路上の車両(鉄道車両)において使用される、車輪上で擦れるシューブレーキ内のブレーキパッドの場合に、または任意の他の産業機械(例えば、風力タービンの場合)において使用されるブレーキパッドの場合に、同様に良好に適用される。全ての場合において、機械の回転要素の制動は、その動作中のこの回転要素上でのブレーキパッドの摩擦により達成される。
【0033】
ディスクブレーキでは、制動は、車両の車輪と一体である(回転要素9である)ディスクと、それを間に挿むために各側に1つでこのディスク9を圧迫する2つのブレーキパッド10と、の間の摩擦により達成される。該ディスク9は主平面内に延在しており、その回転軸として、この主平面に対して垂直な軸Aを有する。
【0034】
パッド10の各々は、パッド10の厚さが回転軸Aに沿って延在するように、この主平面内に延在している。
【0035】
ディスク9は、ディスク9の円周の接線でありかつ回転方向FWに配向されている接線方向T、およびディスク9の主平面において回転軸Aと直交する径方向R、を画定する回転方向FWに、回転軸Aを中心として回転する。
【0036】
これらの要素は、ディスク9上に取り付けられているブレーキデバイスを示す図8に示されている。
【0037】
後続する説明では、「内の」および「外の」という用語は、回転軸Aに最も近接してかつ該回転軸から最も遠くにそれぞれ配置されている、ブレーキパッド10(またはその構成要素)の縁部または領域を示し、「前の」および「後の」という用語は、回転方向FWでもある、(後述される)ライニング2により放出される粒子28の流動方向に対して上流にかつ下流にそれぞれ配置されている、ブレーキパッド10(またはその構成要素)の縁部または領域を示す。
【0038】
図1および図2に示されている通り、ブレーキパッド10は、バックプレートとも呼ばれる背板1を含む。該背板1は例えば金属で作製されている。背板1は実質的に一定の厚さの(例えば3mmと7mmの間の)平板であり、その主平面におけるその全体の形状は、真っ直ぐなまたは湾曲した縁部を有する台形である。
【0039】
背板1は、ライニング2が固定されている第1の面13と、該第1の面13の反対側の第2の面14とを含む。該背板1は、その2つの外側端部に、背板1の平面に延在しておりかつパッド10を保持し案内するのに役立つ2つの耳部(11、12)も含む。
【0040】
ブレーキパッド10は、摩擦材料で作製されているライニング2をさらに含む。例えば、この材料は「フェロード」と呼ばれる材料である。ライニング2は、摩擦(friction)面26(「摩擦(rubbing)」面)、該摩擦面26の反対側のかつ背板1に固定されている取付け面20(これら2つの面は平行である)、内縁部23、外縁部24、後縁部21、および前縁部22により範囲を定められている。該外縁部24、該後縁部21、および該前縁部22は凸状または直線状であり、該内縁部23は凹状または直線状である。
摩擦面26は、ライニング2がすり減るにつれて、背板1に徐々に接近する。したがって、(回転軸Aに沿って測定される)ライニング2の厚さは、それが磨耗するにつれて減少する。動作中、ライニング2(と回転要素9と)は、ライニング2とディスク9との間の摩擦に因り、粒子28を放出する。摩擦面26に沿った粒子28の経路は、図1および図2に点線で表されている。
【0041】
ライニング2には、摩擦面26へ開いている少なくとも1つの収集溝部3が設けられている。該溝部3は第1の端部31と第2の端部32とを有する。溝部3は、その内縁部23に向かって第1の端部31に、かつ外縁部24に向かってその第2の端部32に、開口部を有する。
【0042】
「溝部3は縁部に向かってその端部に開口部を有する」は、溝部3が縁部の近傍にこの端部に連通開口部を有する、換言すれば背板1を貫通して延在することまたはこの縁部上へ直接開くことのどちらかにより有することを意味すると理解される。全ての場合において、溝部の各々は摩擦面26でない表面上へ開いている。
【0043】
溝部3の深さは例えばライニング2の高さに等しく、溝部3の底部は背板1の第1の面13と一致することを意味する。あるいは、溝部3の深さはライニング2の高さよりも小さい。例えば、収集溝部3は、その上流端部からその下流端部まで一定の矩形断面を有し、したがって一定の厚さである。
【0044】
例えば、収集溝部3は後縁部21付近に配置されている。粒子がライニング2の前部から後部へ自然に流動すると仮定すると、この構造は、この溝部3内で、制動の結果として生じる粒子/ダストをより効率的に収集することを可能にする。実際、この流動方向は静止状態のライニング2に対する回転要素9の運動の方向である。
【0045】
随意に、ライニング2は、前縁部22と後縁部21との実質的に中間に配置されている第2の収集溝部3をさらに含む。
【0046】
第2の収集溝部3のこの位置は、ライニング2の望ましくない振動を最小限することを可能にする。
【0047】
ブレーキシステムは、空気が中を通って引き込まれる吸入管40と、空気が中を通って吹き込まれるブロー管50と、を含む吸入システムを含む。吸入管40は、その第1の端部31およびその第2の端部32の中から選択される、少なくとも1つの溝部3の一方の端部に対向して配置されている吸気口41を含む。ブロー管50は、その第1の端部31およびその第2の端部32の中から選択される、少なくとも1つの溝部3の他方の端部に対向して配置されている排気口51を含む。
【0048】
ここで、図1から図4までを参照して、第1の実施形態を説明する。吸入管40の吸気口41は第2の端部32に対向して配置されており、ブロー管50の排気口51は第1の端部31に対向して配置されている。本実施形態は、吸入システムにより押し進められる空気流は溝部3内の自然な空気流と同一方向に起こるという利点を有する。実際、遠心力の影響下で、空気は第1の端部31から第2の端部32へ自然に流動する。したがって、吸入システムはより効率的である。
【0049】
図1から図3までに示されている通り、溝部3は内縁部23上へ直接開かない。したがって、ライニング2により形成されている壁が内縁部23から第1の端部31を分離する。溝部3は背板1にある穴部17を介して外側へ開いている。この穴部17は、背板1の第1の面13を第2の面14と連通している状態に置く。ブロー管50の排気口51は第2の面14にある穴部17の口に対向している。ブロー管50により吹き込まれる空気は穴部17を通って背板1を横断し、溝部3に進入し、第1の端部31から第2の端部32へ流動する。外縁部24上へ開いている第2の端部32はその横断面に溝部3の横断面を有する。吸入管40の吸気口41は溝部3の延長部内に配置されている。溝部3内で流動する空気は、この吸気口41を通って吸入管40に進入する。
【0050】
あるいは、内縁部23において、図4に示されているように、溝部3は、溝部3の残部を内縁部23と連通している状態に置くチャネル90として成形されている。したがって、このチャネル90は、ライニング2により取り囲まれている連続側壁を有し、その第1の端部は溝部3の残部内へ開いており、その第2の端部(したがって溝部3の第1の端部31である)は内縁部23上へ開いている。ブロー管50の排気口51はチャネル90の第2の端部に対向している。空気はブロー管50から、(溝部3の長手方向に)溝部の延長部に真っ直ぐに存在する吸入管40に向かって流動し、それにより吸入システムの効率性が高まる。この構造は、ライニング2がすり減る場合を含めて、溝部3内の空気流を改善する。チャネル90は、動作中のライニング2の実用厚さ(working thickness)を最大にするために、背板1に可能な限り近接していることが有利である。
【0051】
さらに、(例えば、背板1は溝部3の全長に関して連続的であるので、穴部をドリルで開けることにより)背板1を修正する必要がなく、それによりブレーキシステムの製造が簡略化される。
【0052】
チャネル90は一定の横断面、例えば円形横断面、である。あるいは、チャネル90は、その第1の端部に、その第2の端部におけるその横断面よりも大きい横断面を有し、その結果、空気がチャネル90を通って溝部3により容易に進入する。
【0053】
ここで、図5および図6を参照して、第2の実施形態を説明する。吸入管40の吸気口41は第1の端部31に対向して配置されており、ブロー管50の排気口51は第2の端部32に対向して配置されている。
【0054】
吸入システムにより押し進められる空気流は、第2の端部32から第1の端部31に向かっている。
【0055】
溝部3は外縁部24上へ直接開かない。したがって、ライニング2により形成されている壁が外縁部24から第2の端部32を分離する。溝部3は背板1にある穴部17を貫通して外側へ開いている。この穴部17は背板1の第1の面13を第2の面14と連通している状態に置く。ブロー管50の排気口51は第2の面14にある穴部17の口に対向している。ブロー管50により吹き込まれる空気は穴部17を通って背板1を横断し、溝部3に進入し、第2の端部32から第1の端部31へ流動する。内縁部23上へ開いている第1の端部31は、その横断面に溝部3の横断面を有する。吸入管40の吸気口41は溝部3の延長部内に配置されている。溝部3内で流動する空気はこの吸気口41を通って吸入管40に進入する。
【0056】
あるいは、外縁部24において、溝部3は、溝部3の残部を内縁部と連通している状態に置くチャネル90として成形されている。したがって、溝部3の第2の端部32はチャネル90により外縁部24上へ直接開いている。ブロー管50の排気口51は、外縁部24においてチャネル90の端部に対向している。したがって、吹込みはブロー管50から外縁部24経由でかつチャネル90を通って溝部3内へ起こる。背板1は溝部3の全長に関して連続的であるので、空気が背板1を通過しない。
【0057】
全実施形態において、吸入管40およびブロー管50のライニング2または背板1との接触がないことが有利である。したがって、制動段階後、ライニング2および背板1が回転要素から離れた場合、多かれ少なかれ重大な残留トルクの生成がない。この残留トルクは、管がライニング2または背板1と接触していることにより生成される。この構造では、ブレーキパッド10の全耐用年数の間に吸入管40もブロー管50もライニング2または背板1と接触していないように、吸入管40およびブロー管50は背板1の変位の領域(ブレーキパッド10の寿命に亘ってライニング2の磨耗の結果として生じるこの変位の大きさ)の外側に配置されている。この構造では、一方では溝部3と、他方では吸入管40およびブロー管50と、の間の空気経路を最大にするために、吸入管40の吸気口41およびブロー管50の排気口51が、場合に応じて、内縁部23または外縁部24に可能な限り近接してさらに配置されることが有利である。
【0058】
図7は、ライニング2に、後縁部21付近に配置されている第1の溝部3に加えて、前縁部22付近に配置されている追加溝部3が設けられている場合を示す。ライニング2は、その結果、2つの溝部3を含む。
【0059】
したがって、吸入デバイスは、空気が第1の溝部3内で流動することを可能にする第1のブロー管50および第1の吸入管40と、空気が追加溝部3内で流動することを可能にする第2のブロー管50および第2の吸入管40と、を含む。これらの管の各々は、吸入デバイスの一部でありかつ空気を溝部3の各々の中で流動させる要素に接続されている。
【0060】
この二重溝部3の構造は、鉄道車両などの、両方向の制動を受ける車両に適している。実際、この場合、回転要素上でのライニング2の摩擦により放出される粒子28は前縁部22から後縁部21へ、または後縁部21から前縁部22へのどちらかで流動することができる。2つの溝部3の存在は、車両の制動方向に関わらず、溝部3内に粒子を捕捉することを可能にする。
【0061】
さらに別の実施形態によれば、ライニング2は、前縁部22と後縁部21との実質的に中間に配置されている別の溝部3(第2の溝部)を含み、この第2の溝部3は前述されている。前縁部22付近に配置されている追加溝部3は第3の溝部である。したがって、本実施形態は、ライニング2の望ましくない振動を最小限にすることと、車両のブレーキ方向に関わらず、粒子を溝部3内で捕捉することと、の両方を可能にする。
【0062】
一般に、吸入システムは、ブロー管50内に空気を吹き込むことができる要素と、吸入管40経由で空気を吸入することができる要素(同一の要素または別個の要素)と、を含む。
【0063】
図9は、(上記の要素である)ポンプ60とフィルタ70とを含む吸入システムの場合を示し、該ポンプ60、該フィルタ70、吸入管40、およびブロー管50は連続回路を形成する。例えば、単一ポンプ60が存在する。
【0064】
したがって、ポンプ60、フィルタ70、吸入管40、およびブロー管50は、溝部3と共に、空気が閉回路内で流動する回路を形成する。したがって、フィルタ70により濾過された空気は再利用されて、溝部3内へ吹き込まれ、それにより(フィルタ70によりまだ捕捉されていない)粒子がフィルタ70を数回通過させられる。したがって、このフィルタ70内に格納される粒子の確率は高められ、大気中へ放出される粒子およびダストの量は減少する。
【0065】
変形形態によれば、吸入システムは、部分的に開いている回路を形成するために、ポンプ60、フィルタ70、吸入管40、およびブロー管50、ならびに放出弁を含む。この構造は、溝部3内での粒子およびダストの収集を最適化するために、吸入速度に対する吹き込まれる空気の速度を調節することを可能にするという利点を有する。
【0066】
本変形形態では、吸入システムは、電磁弁である放出弁を制御することができる制御ユニットを含む。システムは、その結果、最適化され得る。したがって、車両の加速度または減速度に応じて、制御ユニットは吹込みを抑制する。例えば、制動の直後に車両を加速する場合、中に存在する粒子を分散させる可能性があると考えられるので、空気を溝部3内へ吹き込まず、もっぱら吸入することが好ましい。この場合、制御ユニットは、溝部3内へ吹き込むことなく該溝部から空気を吸入するために、放出弁を開く。
【0067】
別の変形形態によれば、吸入管40経由で空気を吸入することができる要素は、吸気口41の下流の、吸入管40内の空気の経路上に配置されているユニットであり、それはその下流出口よりも小さい横断面の上流入口を備えて設計されている。
【符号の説明】
【0068】
1 背板、バックプレート
2 ライニング
3 収集溝部、第2の収集溝部、追加溝部、別の溝部、二重溝部、第3の溝部
9 回転要素、ディスク
10 ブレーキパッド
11、12 耳部
13 (背板1の)第1の面
14 (背板1の)第2の面
17 穴部
20 取付け面
21 後縁部
22 前縁部
23 内縁部
24 外縁部
26 摩擦面
28 粒子
31 (溝部3の)第1の端部
32 (溝部3の)第2の端部
40 吸入管、第1の吸入管、第2の吸入管
41 吸気口
50 ブロー管、第1のブロー管、第2のブロー管
51 排気口
60 ポンプ
70 フィルタ
90 チャネル
A 軸、回転軸
FW 回転方向
R 径方向
T 接線方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】