(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-31
(54)【発明の名称】下痢の防止及び処置における使用のためのビデンスピローサ及びそのファイトケミカル
(51)【国際特許分類】
A23K 10/30 20160101AFI20220524BHJP
A23K 20/105 20160101ALI20220524BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20220524BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220524BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220524BHJP
A61K 31/7028 20060101ALI20220524BHJP
A61K 36/28 20060101ALI20220524BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220524BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20220524BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220524BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220524BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220524BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220524BHJP
A01N 43/16 20060101ALI20220524BHJP
A01N 65/12 20090101ALI20220524BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20220524BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
A23K10/30 ZNA
A23K20/105
A61P1/12
A61K9/48
A61K9/20
A61K31/7028
A61P1/12 171
A61K36/28
A61P31/12
A61P31/14
A61P31/04
A61P31/04 171
A61P1/04
A61K9/14
A23L33/105
A01N43/16 A
A01N65/12
A01P1/00
A01P3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557899
(86)(22)【出願日】2020-03-22
(85)【翻訳文提出日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 US2020024106
(87)【国際公開番号】W WO2020198093
(87)【国際公開日】2020-10-01
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596118493
【氏名又は名称】アカデミア シニカ
【氏名又は名称原語表記】ACADEMIA SINICA
【住所又は居所原語表記】128 Sec 2,Academia Road,Nankang,Taipei 11529 TW
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ウェン-チン
(72)【発明者】
【氏名】リーアン,ユー-チュアン
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4C076
4C086
4C088
4H011
【Fターム(参考)】
2B150AA03
2B150AA04
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2B150DA32
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4H011AA01
4H011AA03
4H011AA04
4H011BB08
4H011BB22
(57)【要約】
ビデンスピローサ又はビデンスピローサから単離された活性化合物を含む組成物であって、それを必要とする動物における腸ミクロビオータの存在の処置、阻害及び/又は減少における使用のための組成物が開示される。病原性腸ミクロビオータは、ブラキスピラ、豚流行性下痢ウイルス(PEDV)、伝染性胃腸炎コロナウイルス(TGEV)及びロタウイルス(RV)からなる群から選択される少なくとも1つである。組成物はまた、豚の下痢、豚の赤痢、豚のウイルス感染症の発生の処置、阻害及び/又減少、及び豚のカーカス及び骨の重量の割合の増加に使用するためのものである。一実施形態において組成物は、ブラキスピラに関連する豚の赤痢の発生の処置、阻害及び/又は減少に使用するためのものである。
【選択図】7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする動物における病原性腸ミクロビオータの存在を処置、阻害及び/又は減少させるための医薬品の生産における、ビデンスピローサ又はビデンスピローサから単離された活性化合物を含む組成物の使用であって、前記病原性腸ミクロビオータが、ブラキスピラ、豚流行性下痢ウイルス(PEDV)、伝染性胃腸炎コロナウイルス(TGEV)及びロタウイルス(RV)からなる群から選択される少なくとも1つである、使用。
【請求項2】
豚の下痢、豚の赤痢、豚のウイルス感染症の発生を処置、阻害及び/又は減少させ、豚のカーカス及び骨の重量の割合を増加させるための医薬品の生産における、ビデンスピローサ又はビデンスピローサから単離された活性化合物を含む組成物の使用。
【請求項3】
前記豚の下痢、豚の赤痢、豚のウイルス感染症が、ブラキスピラ、豚流行性下痢ウイルス(PEDV)、伝染性胃腸炎コロナウイルス(TGEV)及びロタウイルス(RV)からなる群から選択される病原性腸ミクロビオータの少なくとも1つと関連している、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
ブラキスピラに関連する豚の赤痢の発生を処置、阻害及び/又は減少させ、豚のカーカス及び骨の重量の割合を増加させるための医薬品の生産における、ビデンスピローサ又はビデンスピローサから単離された活性化合物を含む組成物の使用。
【請求項5】
前記それを必要とする動物が離乳豚である、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記それを必要とする動物が成長した豚である、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記ビデンスピローサから単離された活性化合物が、下記式(I)のポリアセチレン化合物であり、
【化1】
ここで、
R
1はH又はCH
3であり、
R
2は単糖類であり、
R
3はH又はCOCH
2COOHであり、
m=3又は4であり、
n=0又は1であり、
o=1又は2であり、及び
p=1又は2である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記ビデンスピローサから単離された活性化合物が、
【化2】
【化3】
【化4】
からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記ビデンスピローサが粉末状である、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記組成物が食品、動物飼料材料又は医薬品の形態である、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記組成物が、経口、カプセル、座薬及び非経口からなる群から選択される剤形である、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記ビデンスピローサ又はビデンスピローサから単離された活性化合物が、それを必要とする動物の1μg/kg体重以上の投与量である、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記組成物が、動物飼料、及び0.0005%~15%(w/w)の範囲のビデンスピローサを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記組成物が、動物飼料、及び0.05%~15%(w/w)のビデンスピローサを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
前記ビデンスピローサから単離された活性化合物がサイトピロインである、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、典型的には、下痢の防止、緩和及び処置に使用するためのビデンスピローサ(Bidens pilosa)に関し、より具体的には、豚の下痢の防止、緩和及び処置に使用するためのビデンスピローサ及びそのファイトケミカルに関する。
【背景技術】
【0002】
下痢と赤痢は、養豚業における最も重要な問題である。それは、離乳期からフィニッシャーの最終日まで発生する可能性がある。何週間も続く慢性的な症状になることもある。飼料添加物としての抗菌性成長促進剤(AGP)は、豚の下痢を減らし、養豚業の成長パフォーマンスを高めるのに有効であることが証明されている。しかし、AGPは病原体の抗生物質耐性を誘発することが知られている。そのため、EUでは2006年から動物用APGの使用が禁止されている。
【0003】
植物は、古代からヒトや動物にとって素晴らしい医薬品の供給源となってきた。ハーブを使ったアプローチは、豚におけるAGPの乱用や誤用を減らしたり、代替したりして、食肉生産に役立つ可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、本発明は、それを必要とする動物における病原性腸ミクロビオータ(gut microbiota)の存在を処置、阻害及び/又は減少させるための医薬品の生産における、ビデンスピローサ又はビデンスピローサから単離された活性化合物を含む組成物の使用に関する。ここで、病原性腸ミクロビオータは、ブラキスピラspp.(Brachyspira spp.)、豚流行性下痢ウイルス(PEDV)、伝染性胃腸炎コロナウイルス(TGEV)、及びロタウイルス(RV)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0005】
また本発明の組成物は、豚のカーカス(carcass)及び骨の重量の割合を増加させるために使用するためのものである。
【0006】
別の態様では、本発明は、豚の下痢、豚の赤痢、豚のウイルス感染症の発生を処置、防止及び/又は減少させ、豚のカーカス及び骨の重量の割合を増加させるための医薬品の生産における、ビデンスピローサ又はビデンスピローサから単離された活性化合物を含む組成物の使用に関する。
【0007】
さらに別の態様では、本発明は、ブラキスピラに関連する豚の赤痢の発生を処置及び/又は減少させ、豚のカーカス及び骨の重量の割合を増加させるための医薬品の生産における、ビデンスピローサ又はビデンスピローサから単離された活性化合物を含む組成物の使用に関する。
【0008】
本発明の一実施形態では、豚の下痢、豚の赤痢及び豚のウイルス感染は、ブラキスピラ、豚流行性下痢ウイルス(PEDV)、伝染性胃腸炎コロナウイルス(TGEV)及びロタウイルス(RV)からなる群から選択される病原性腸ミクロビオータの少なくとも1つと関連している。
【0009】
一実施形態では、病原性腸ミクロビオータは、ブラキスピラspp.から選択されてもよい。病原性腸ミクロビオータは、ブラキスピラハイオディセンテリア(Brachyspira hyodysenteriae)であってもよい。それを必要とする動物は、離乳豚又は成長した豚であってもよい。
【0010】
別の実施形態では、ビデンスピローサから単離された活性化合物は、下記式(I)のポリアセチレン化合物である。
【化1】
ここで、
R
1はH又はCH
3であり、
R
2は単糖類であり、
R
3はH又はCOCH
2COOHであり、
m=3又は4であり、
n=0又は1であり、
o=1又は2であり、及び
p=1又は2である。
【0011】
別の実施形態では、ビデンスピローサから単離された活性化合物は、
【化2】
【化3】
【化4】
からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0012】
ビデンスピローサは、粉末状であってもよい。組成物は、食品、動物飼料材料又は医薬品の形態であってもよい。
【0013】
別の実施形態では、組成物は、経口、カプセル、坐薬及び非経口からなる群から選択される剤形である。
【0014】
別の実施形態では、ビデンスピローサ又はビデンスピローサから単離された活性化合物は、それを必要とする動物の1μg/kg体重以上の投与量である。
【0015】
別の実施形態では、組成物は、動物飼料、及び0.0005%~15%(w/w)の範囲のビデンスピローサを含む。
【0016】
別の実施形態では、組成物は、動物飼料、及び0.05%~15%(w/w)のビデンスピローサを含む。
【0017】
組成物は、動物飼料と、0.1%~15%(w/w)、1%~15%(w/w)、又は1%~10%(w/w)の範囲のビデンスピローサとを含んでもよい。
【0018】
別の実施形態では、ビデンスピローサから単離された活性化合物は、サイトピロイン(cytopiloyne)である。
【0019】
これら及び他の側面は、以下の図面と併せて取られる好ましい実施形態の以下の説明から明らかになり得るが、その中の改変及び修正は、本明細書の開示の新規概念の精神及び範囲から逸脱することなく影響を受ける可能性がある。
【0020】
添付の図面は、本発明の1つ以上の実施形態を示し、書面による説明と合わせて、本発明の原理を説明するのに役立つ。可能な限り、同じ参照番号は、実施形態の同じ又は類似の要素を参照するために、図面全体で使用される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、投与スケジュールを示す図である。抗菌性成長促進剤(AGP)、標準飼料(0%BP)、及びB.ピローサ粉末を含む標準飼料(LBP、MBP、HBP)を4週間与えた4週間処置の離乳子豚を5群に分けて飼育した。LBP、MBP及びHPBは、それぞれ1、2、5%のB.ピローサ粉末を含む飼料を指す。
【
図2】
図2は、離乳子豚の下痢に対するB.ピローサの効果を示しす。子豚は自然感染で下痢になった。下痢の発生を28日間毎日観察した。子豚の数は各群10匹とした。(A)コントロール群(0% BP)と各処置群との間の転帰の違いを測定するためにカプラン-マイヤーログ-ランクテストでp値を見積もり、p<0.05(*)を示した。(B)非下痢曲線のペアワイズ比較のp値を表に示す。
【
図3】
図3は、豚の腸の病理に対するB.ピローサの効果を示す図である。(A)豚の十二指腸(1列目)、空腸(2列目)、及び回腸(3列目)のヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色。(B)豚の十二指腸(左パネル)、空腸(中パネル)、及び回腸(右パネル)のビリウム(Vilium)とクリプト(crypt)の長さの比率。ANOVAを用いてコントロール(0%BP)と各処置群との差を比較し、p<0.05(*)を示した。
【
図4】
図4は、離乳子豚の体長(4A)、体重の割合(4B)、骨重量の割合(4C)に対するB.ピローサの効果を示す。標準飼料(0% BP)及びB.ピローサ粉末(BP)を含む標準飼料及びAGPを4週間接種した4週間処置離乳子豚の5群。体のサイズ(4A)、体重(4B)、骨量(4C)を4週間にわたり毎週モニタリングした。各グループの子豚の数は10匹とした。ANOVAを用いて、4週目終了時のコントロール(0% BP)と各処置との違いを比較した。
【
図5】
図5は、離乳子豚の腸のミクロビオータ(プロバイオティクス)の変化率に対するB.ピローサの効果を示す図である。
【
図6】
図6は、離乳子豚の腸のミクロビオータ(病原菌)の変化率に対するB.ピローサの効果を示す。
【
図7】
図7は、成長期/フィニッシング期の豚における豚赤痢に対するB.ピローサの効果を示す。ブタは、ブラキスピラspp.のチャレンジ後に豚赤痢を発症した。豚赤痢の発生は、離乳期から35週齢まで毎日観察した。豚の数は各群とも10頭とした。(A)コントロール群(0% BP)と各処置群の間の結果の違いを測定するためにカプラン-マイヤーログ-ランクテストでp値を見積もり、p<0.05(*)を示した。(B)非豚赤痢曲線のペアワイズ比較のp値を表に示す。
【発明の詳細な説明】
【0022】
定義
動物飼料は、家畜に与える食べ物やペット(コンパニオンアニマル)の餌をいう。
【0023】
本明細書で使用される用語「純粋な化合物」は、少なくとも80%(例えば、95%又は99%)の純度を有する化合物を指す。
【0024】
用語「処置する(treating)」又は「処置(treatment)」は、疾患、その症状、又は疾患に対する素因を治癒、緩和、軽減、救済、改善、低減、又は防止する目的で、それを必要とする対象に有効な薬剤を使用することを意味する。
【0025】
アメリカ合衆国保健福祉省食品医薬品局(U.S. Department of Health and Human Services Food and Drug Administration)が発行した「Guidance for Industry and Reviewers Estimating the Safe Starting Dose in Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers」では、以下の式から計算して「ヒト等価用量」を得ることができると開示されている。HED=動物の投与量(mg/kg)×(動物の体重(kg)/ヒトの体重(kg))0.33。
【0026】
本発明は、豚の下痢を減少させ、豚の健康を改善し、成長性能を向上させるための豚用飼料添加物において、抗菌性成長促進剤(AGP)を置き換えるためのファイトジェニックに関する。
【0027】
まず、B.ピローサの粉末を調製した。動物用の飼料は、B.ピローサの粉末を異なる割合で混合して処方した。
【0028】
ビデンスピローサの調製物。調製物は、粉砕したビデンスピローサ植物を高温(例えば、50℃又は100℃)の水中で攪拌して懸濁液を形成し、その上清を回収することによって得ることができる。この上清をさらにアルコール(例えば、n-ブタノール)で抽出することで、濃縮調製物を得ることができる。ビデンスピローサ調製物(抽出物)は、ポリアセチレン化合物の1つ以上を含む。例えば、以下のサイトピロインが含まれている。
【化5】
【0029】
上述のポリアセチレン化合物には、化合物そのもののほか、必要に応じてその塩、プロドラッグ、溶媒和物などを含む。このような塩は、例えば、ポリアセチレン化合物上の負に帯電した置換基(例えば、カルボキシレート)とカチオンとの間の相互作用によって形成できる。適切なカチオンには、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、及びアンモニウムカチオン(例えば、テトラメチルアンモニウムイオン)を含むが、これらに限定されない。同様に、ポリアセチレン化合物の正電荷の置換基(例えば、アミノ)は、負電荷の対イオンと塩を形成できる。適切な対イオンには、クロリド、ブロミド、イオディド、サルフェイト、ニトレイト、ホスフェイト、又はアセテイトを含むが、これらに限定されない。プロドラッグの例としては、エステル及びその他の薬学的に許容される誘導体が挙げられ、これらは対象に投与されると、上述の化合物を提供できる。溶解物は、ポリアセチレン化合物と薬学的に許容される溶媒との間に形成される複合体をいう。薬学的に許容される溶媒の例としては、水、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチルアセテイト、及び酢酸を含む。
【0030】
ポリアセチレン化合物は、1つ以上の不斉中心又は非芳香族二重結合を含んでもよい。従って、これらの化合物は、ラセミ体及びラセミ混合物、単一のエナンチオマー、独立したジアステレオマー、ジアステレオマー混合物、及びシス又はトランス異性体として生じる可能性がある。このような異性体はすべて想定されている。
【0031】
ポリアセチレン化合物
ポリアセチレン化合物(例えば、サイトピロイン)は、ビデンスピローサから単離できる。ビデンスピローサ植物全体をまず粉砕し、次に加熱した水の中で撹拌する。不溶性物質を除去(例えば、ろ過、デカント、遠心分離)した後、得られた上清を液体クロマトグラフィー(例えば、高圧液体クロマトグラフィー)又は他の適切な方法にかけることにより、純粋なポリアセチレン化合物を得ることができる。このようにして得られた純粋な化合物をさらに誘導体化して、本発明の他の多くのポリアセチレン化合物を提供できる(米国特許番号7,763,285及びKusanoら(JP 2004083463)、これらはすべて参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0032】
上述のポリアセチレン化合物は、従来の方法によっても調製できる。以下に、本発明のポリアセチレン化合物の合成ルートを示す3つの反応スキームを示す。
【0033】
【0034】
ブタン-1,2,4-トリオール(i)をアセトンと反応させて、保護された1,2,4-トリオール化合物(ii)を形成し、これは容易にヨード誘導体(iii)に変換される。次に、化合物(iii)を塩基性条件下(例えば、n-BuLi)で、エチニルトリメチルシランと反応させて、(4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)ブト-1-イニル)トリメチルシラン(iv)を得る。続いて、化合物(iv)を酸(例えば、酢酸)で処理した後、2-ブロモグルコピラノースとカップリング反応させて、付加物(v)を得る。化合物(v)をさらにフッ化カリウムで処理して、2-フェニル-4H-クロメン-4-オン(vi)を得ることができる。
【0035】
【0036】
1-ブロモプロップ-1-イン(vii)をエチニルマグネシウムブロマイドと反応させ、ペンタ-1,3-ジイン(viii)を得て、これをさらにヘプタ-1,3,5-トリイン(ix)に変換する。化合物(ix)は、塩基性条件(例えば、n-BuLi)で1-ヨードヘプタ-1,3,5-トリイン(x)に容易に変換でき、続いてヨード化合物(例えば、I2)を加えることができる。
【0037】
【0038】
スキーム3は、スキーム1で得られたアセチレン誘導体(vi)と、スキーム2で得られた1-ヨードヘプタ-1,3,5-トリイン(x)をカップリング反応させ、テトライン化合物(xi)を得ることを示す。保護基を除去すると、本発明の化合物であるポリアセチレン化合物2β-D-グルコピラノシルオキシ-1-ヒドロキシトリデカ-5,7,9,11-テトラインが得られる。
【0039】
適用可能な化合物を合成するのに有用な合成化学変換は、例えば、R. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989); T.W. Greene and P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley and Sons (1999); L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994); 及びL. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)及びその後のエディションに記載されている。
【0040】
本発明の経口投与用組成物は、カプセル、錠剤、エマルション、及び水性懸濁液、分散液、及び溶液など、口腔内で許容される任意の剤形とできる。錠剤の場合、ラクトースやコーンスターチなどの担体がよく使われる。また、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も使用される。カプセル剤の場合は、エラクトースや乾燥コーンスターチなどの希釈剤が有用である。水性懸濁液又はエマルションを経口投与する場合は、乳化剤や懸濁剤と組み合わせて油性相に活性成分を懸濁又は溶解させることができる。必要に応じて、甘味料、香味料、着色料などを加えることができる。
【0041】
ビデンスピローサ植物を採取した。洗浄して粉砕した植物の全体を約10kg、40Lの水で2時間還流した。水相を除去した後、不溶物を再び25Lの水で2時間還流した。合わせた水溶液(約65L)を減圧下で蒸発させて残渣を得た後、これを1.0Lの水に懸濁し、1.0Lのn-ブタノールで3回抽出した。このn-ブタノール画分をバキュームロータリーエバポレーターで減圧下で蒸発させた後、凍結乾燥してサイトピロインの粗生成物(37.7g)を得た。
【0042】
続いて、この粗生成物を、CH3OH/H2Oグラジエント溶媒システムを用いてRP-18シリカゲルカラム上でクロマトグラフィーを行い、サブフラクションBPB1、BPB2、BPB3、及びBPB4を得た。70% CH3OHで溶出したBPB3画分は、CH3OH/H2O溶媒系を用いたセミ分取HPLCでさらに分取した。得られたサイトピロインを1HNMR及び13CNMRによって特徴付けた。
1H NMR (500 MHz, CDOD3) δ 1.78 (2H, q, J = 6.8 Hz), 1.98 (3H, s), 2.58 (2H, t, J = 6.8 Hz), 3.19 (1H, dd, J = 9.1, 7.8 Hz), 3.30 (1H, m), 3.34 (1H, m), 3.59 (2H, m), 3.65 (1H, dd, J = 12.0, 6.5 Hz), 3.75 (1H, p, J = 6.8 Hz), 3.85 (1H, dd, J = 12.0, 1.7 Hz), 4.32 (1H, d, J = 7.8 Hz); 13C NMR (125 MHz, CDOD3) δ 3.8, 16.1, 31.4, 60.0, 60.9, 61.8, 62.4, 62.6, 64.9, 65.8, 66.2, 71.5, 75.2, 77.9, 81.6, 104.8.
【0043】
ビデンスピローサ粉末(BPP)の割合の計算は以下の通りである。ビデンスピローサ粉末の重量/ビデンスピローサ粉末の重量+基本チキン飼料=BPPの%。
【0044】
0.0005 %~15 % (w/w)は、その範囲内の全ての1万分の1、千分の1、百分の1、十分の1及び整数単位量が本発明の一部として具体的に開示されていることを意味する。従って、0.0005%、0.0006%、0.0007%...0.001%、0.002%、0.003%...0.01%、0.02%、0.03%...0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%及び1%、2%、3%、4%...13%、14%、及び15%の単位量が本発明の実施形態として含まれる。
【0045】
0.05%~15%(w/w)は、その範囲内の全ての百分の1、十分の1、整数単位量が本発明の一部として具体的に開示されていることを意味する。従って、0.05%、0.06%、0.07%...0.01%、0.02%、0.03%...0.1%、0.2%、0.3%...及び1%、2%、3%、4%...13%、14%、及び15%の単位量が本発明の実施形態として含まれる。0.1%~15%(w/w)は、その範囲内の全ての十分の1及び整数単位量が本発明の一部として具体的に開示されていることを意味する。従って、0.1%、0.2%、0.3%...及び1%、2%、3%、4%...13%、14%、及び15%の単位量が本発明の実施形態として含まれる。1%~15%(w/w)は、その範囲内の全ての整数の単位量が本発明の一部として具体的に開示されていることを意味する。従って、1%、2%、3%、4%...13%、14%及び15%の単位量が本発明の実施形態として含まれる。1%~10%(w/w)は、その範囲内の全ての整数の単位量が本発明の一部として具体的に開示されていることを意味する。従って、1%、2%、3%、4%...8%、9%及び10%の単位量が本発明の実施形態として含まれる。1~5%(w/w)は、その範囲内の全ての整数の単位量が本発明の一部として具体的に開示されていることを意味する。従って、1%、1-2%、1-3%、1-4%、2%、2-3%、2-4%、2-5%、3%、3-4%、3-5%、4%、4-5%及び5%の単位量が本発明の実施形態として含まれる。
【実施例】
【0046】
本発明の範囲を限定する意図はなく、本発明の一実施形態の例示的な器具、装置、方法、及びそれらに関連する結果を以下に示す。なお、読者の便宜のために、実施例の中でタイトルやサブタイトルを使用することがあるが、これは決して本発明の範囲を限定するものではない。さらに、本明細書では、ある種の理論が提案及び開示されている。しかし、それらが正誤に関わらず、特定の理論や行動様式に関係なく、本発明に従って実施される限り、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【0047】
材料と方法
動物、本研究における全ての動物関連プロトコルは、実験動物の使用に関する指針に従った。
【0048】
生まれたばかりの交雑種豚(Duroc×Landrace×Yorkshire)をスラットの金属床の分娩箱で、雌豚と一緒に追加の熱を与えて飼育した。豚は歯をクリックし、尾をドックし、鉄分注射を行い、雄は去勢した。クリープ飼料は与えなかった。24日目の離乳後、体重が最も近い50頭の豚(7.42 ± 0.38 kg)を選び、保育室に移動させ、体重別に5つのグループに分けた。各ペン(檻)は3.7×2.6 mの大きさで、スラットの金属床で、ニップルウォーター3台とセルフフィーダー2台が設置され、赤外線加熱ランプで追加の熱を供給した。
【0049】
豚にコーン、フル-ファット大豆ミール、及びホエイパウダーをベースに、AGP又は3種類の用量(高用量、中用量、高用量)のB.ピローサを添加した飼料を4週間与えた(
図1)。飼料の栄養素は、離乳豚に必要な量又はそれ以上を与えた。飼料と水は自由摂取とした。飼料はミール状にして与えた。
【0050】
実験開始時、7日目、14日目、21日目、28日目に、豚の体重を測定し、飼料摂取量をペンごとに測定した。28日目の豚に、豚ペン内に存在する病原菌に感染する自然感染、又はブラキスピラspp.によるチャレンジを行った。各期間における豚のペンごとの体重増加、飼料摂取量、増体-飼料比を算出した。糞便スコアは、主観的なスコアリングシステムを用いて、毎日08:00、12:00、16:00の3回モニターした。糞便のスコアはペンごとに以下のように評価した。1, 重度の下痢、2, 軽度の下痢、3, 軟便、4, 普通の糞、5, 固いが乾燥した糞(Song, Y. S., V. G. Perez, J. E. Pettigrew, C. Martinez-Villaluenga, and E. G. de Mejia. 2010 "Fermentation of soybean meal and its inclusion in diets for newly weaned pigs reduced diarrhea and measures of immunoreactivity in the plasma" Anim. Feed Sci. Technol. 159:41-49)。腸の病理を評価するために、屠殺した子豚の各処置群から取り出した腸をホルマリンで固定し、パラフィンで包埋した。腸のスライドをヘマトキシリン・エオジン(H&E)で染色し、顕微鏡で観察した。
【0051】
B.ピローサ処置群又は非処置群の豚の糞から採取した腸内細菌DNAを精製し、以下の16S rRNAプライマーを用いたPCR増幅のテンプレートとして使用した。フォワードプライマー5'-TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGA GACAGCCTACGGGNGGCWGCAG(配列番号1)及びリバースプライマー5'-GTCTCGTGGGCTCGGAGA TGTGTATAAGAGACAGGACTACHVGGGTATCTAATCC(配列番号2)を用いて16S rRNAアンプリコンライブラリーを作成した。illumine MiSeqシステム用の16S rRNAアンプリコンを離乳豚の腸ミクロビオータのタクソノミー及びクラシフィケーションに使用した。16S rRNAアンプリコンライブラリーを調製するために、約460bpの単一のアンプリコンを作製するV3とV4領域のプライマーペアの配列を決定する。V3及びV4領域を増幅し、限定サイクルPCRを用いて、アンプリコンターゲットにイルミナシーケンシングアダプターとデュアル-インデックスバーコードを追加する。Nextera XTインデックスのフルコンプリメントを使用して、最大96個のライブラリーをシーケンスのためにプールできる。MiSeqでのシーケンス - ペアの300-bpリードとMiSeq V3試薬を使用して、各リードの端をオーバーラップさせ、65時間の1回の実行でV3及びV4領域の高品質な完全長リードを生成する。16S rRNA遺伝子アンプリコンのシーケンシング結果は、MiSeq Reporter、BaseSpace、及びGreengenesデータベースで解析され、腸ミクロビオータのタクソノミー及びクラシフィケーションが行われる。
【0052】
統計解析
データ解析には、Statistical Graphics Corp.のSTATRAPHIC plusソフトウェアを使用した。値は平均値±標準偏差(s.d.)で表示した。コントロール群(0% BP)と処置群の違いを評価するために、ANOVA分析及び/又はスチューデントのt検定を用いた。分析には有意水準5%を採用した。
【0053】
結果
離乳豚の腸病変に伴う下痢に対するB.ピローサの効果。
離乳子豚をグループ分けし、抗菌性成長促進剤(AGP)、標準飼料(0% BP、CTL)、B.ピローサ粉末を含む標準飼料(LBP(1%)、MBP(2%)、HBP(5%))を4週間与えた(
図1)。豚を28日目に豚ペン内の病原体(自然感染)又はブラキスピラspp.に感染させた。この豚の糞便スコアを1日3回モニタリングし、下痢の状態を記録した。標準飼料群(0% BP)を与えられた離乳豚の100%は、スコアが低く、最初の1週間で下痢を起こした(
図2)。一方で、AGP又はB.ピローサを含む飼料は、離乳豚の下痢の発生を75%から95%減少させることができた(
図2)。高用量及び中用量を与えた豚群において証明されたように、B.ピローサは離乳豚で下痢を有意に減少させ(
図2)、糞便スコアを増加させた(表1)。5群の豚の腸の病理に及ぼす影響を調べた。標準飼料(0% BP)を与えたコントロール豚の十二指腸、空腸、回腸のビラス(villus)とクリプト(crypt)は、AGP並びにB.ピローサの異なる用量を含む飼料を与えた豚の十二指腸、空腸、回腸のビラスとクリプトよりも悪かった(
図3A)。コントロール豚(0% BP)の十二指腸、空腸及び回腸のビラス-クリプト長比は、B.ピローサ並びにAGPを異なる用量で与えた豚の十二指腸、空腸及び回腸のビラス-クリプト長比よりも低かった(
図3B)。このデータは、B.ピローサが豚の下痢や腸の病理を抑制することを示唆している。表1は、B.ピローサの離乳子豚の糞便スコアの改善効果を示している。
【0054】
【表1】
1平均値±S.D.(各処置群の豚の数は10匹)ANOVAを用いて1週目から4週目までのコントロール(0% BP)と各処置群との違いを比較し、p<0.05(*)を示した。
2糞便はペンごとに以下のように採点した。1, 重度の下痢、2, 軽度の下痢、3, 軟便、4, 普通の糞、5, 固いが乾燥した糞。
【0055】
B.ピローサは体重増加、カーカス重量、骨重量を向上させ、FCRを減少させる。
B.ピローサの豚の成長パフォーマンスに対する利点を評価した。まず、標準飼料又は異なる用量のB.ピローサを含む飼料を与えた豚の体重増加及び飼料要求率(FCR)をモニターした。その結果、B.ピローサを摂取した豚は、標準飼料又はAGPを摂取した豚に比べて、体のサイズ(
図4A)、体重増加(
図4B)、カーカス重量(表2)、カーカス長さ(表2)、骨重量(
図4C)が優れていることがわかった。同様に、B.ピローサはB.ピローサ処置群の豚のFCRを用量依存的に有意に減少させた(表3)。これらのデータを総合すると、B.ピローサは総重量、カーカス、骨を促進するが、FCRを低下させることが明らかになった。表2は、離乳豚のカーカス品質に対するB.ピローサの改善効果を示している。表3は、離乳子豚の飼料要求率に対するB.ピローサの低減効果を示している。
【0056】
【表2】
a 4週齢の離乳子豚5群に、標準飼料(CTL)と、低用量、中用量、高用量のB.ピローサ粉末(LBP、MBP、及びHBP)及びAGP(抗菌性成長促進剤)を含む標準飼料を4週間与えた。
bデータは平均値±SEMで表し、豚の数は各群とも3匹とした。コントロール群とAGP群との違いは統計的に有意である(p<0.05)。
cコントロール群とB.ピローサ群との違いは統計的に有意である(p<0.05)。
【0057】
【表3】
平均値±S.D.(各処置群の豚の数は10匹)ANOVAを用いて、コントロール(0% BP)と各処置群との差を比較し、p<0.05(*)を示した。
【0058】
B.ピローサ処置群又は非処置群における離乳豚腸ミクロビオータの概要
各群の豚の腸内細菌に対するB.ピローサの影響を分析した。腸内細菌の16S rRNAアンプリコンの次世代シークエンス解析を行い、56日齢の離乳豚の腸内細菌集団を明らかにした。B.ピローサを与えた豚では、バクテロイデス(Bacteroides)、メガモナス(Megamonas)、ラクノスピラセア(Lachnospiraceae)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、及びルミノコッカセア(Ruminococcaceae)の細菌属のサブセットが増加していた(
図5)。上記の属はいずれも有益なミクロビオータであることが報告されている。また、豚の腸内では、腸の病変に関連する10種類の細菌属が減少していることがわかった(
図6)。これらの細菌はブチリシコッカス(Butyricicoccus)、アナエロプラズマ(Anaeroplasma)、ファスコラークトバクテリウム(Phascolarctobacterium)、クロストリジウム(Clostridium)(ルミノコッカセア(Ruminococcaceae))、エンテロコッカス(Enterococcus)、アシネトバクター(Acinetobacter)、カンピロバクテリア(Campylobacteria)、エシェリキア/シゲラ(Escherichia/Shigella)、及びクロストリジウム(Clostridium)(クロストリジアセア(Clostridiaceae))を含み、人畜共通感染症由来の日和見病原体として知られており、家畜産業に影響を与えるだけでなく、ヒトの公衆衛生上の問題も引き起こしている。
【0059】
成長期/フィニッシング期の豚の赤痢に対するB.ピローサの効果。
我々は、離乳期から35週齢までの成長期/フィニッシング期の豚の臨床行動を観察した。全ての豚にブラキスピラspp.を接種させた。標準飼料群(0% BP、CTL、
図7A)を与えたコントロール豚は、離乳後1ヶ月目に豚赤痢を発症した。B.ピローサの低用量(LBP、
図7A)及び高用量(HBP、
図7A)を与えた豚は、豚の赤痢をそれぞれ75%及び100%減少させた(
図7A)。これらの実験の統計解析を行い、
図7Bに示した。
【0060】
B.ピローサによる豚のウイルス及び細菌の存在の低減効果。
また、養豚場での自然感染後のウイルス、及び病原性細菌の存在を伴う豚の数に対するB.ピローサの効果を調べた。標準飼料を与えたコントロール豚7頭のうち7頭が豚流行性下痢ウイルス(PEDV)に感染していた(CTL、PEDV、表4)。一方、B.ピローサを異なる用量で配合した飼料を与えた豚では、B.ピローサの用量依存的にPEDVの存在が減少した(LBP、MBP、HBP、PEDV、表4)。それは、伝染性胃腸炎コロナウイルス(TGEV、表4)及びロタウイルス(RV、表4)についても同様であった。同様に、標準飼料を与えたコントロール豚7頭のうち7頭がC.パーフリンジェンス(C. perfringens)(CTL、クロストリジウムパーフリンジェンス、表4)に陽性であった。一方、B.ピローサを異なる用量で配合した飼料を与えた豚では、B.ピローサの用量依存的にC.パーフリンジェンスの存在が減少した(LBP、MBP、及びHBP、クロストリジウムパーフリンジェンス、表4)。それは、腸病原性E.コリ(E. coli)及びサルモネラspp.(Salmonella spp.)についても同様であった(E.コリ及びサルモネラ種、表4)。残念ながら、B.ヒオディセンテリア(B. hyodysenteriae)は検出されなかった(ブラキスピラヒオディセンテリア、表4)。全体として、B.ピローサは、下痢/赤痢の臨床症状だけでなく、豚の腸内における下痢原性病原体の割合も減少させた。この植物は、離乳期の下痢状態における病原性細菌やウイルスを抑制するだけでなく、成長期/フィニッシング期の豚の赤痢を低減させることが示唆された。
【0061】
表4は、離乳期末期に唾液、血液及び結腸サンプル中の7種類の病原菌をマルチプレックスPCR DNAバイオチップ又はELISAで検出した豚の数を示している。「ND」は「非検出」の略である。
【0062】
【表4】
a図2の7頭の豚の唾液、血液及び結腸サンプルについて離乳期末期にマルチプレックスPCR DNAバイオチップ又はELISAによって病原体の検査を行った。結果は陽性及び検査されたサンプルの数で示されている。PEDV、TGEV、RVはマルチプレックスPCR-DNAバイオチップで検出した。ブラキスピラヒオディセンテリアはPCRで検出した。クロストリジウムパーフリンジェンス、E.コリ、サルモネラspp.はELISAで検出した。
【0063】
要約すると、離乳豚に抗生物質又はB.ピローサを飼料添加物として含む飼料を28日間与えた。体重増加、食物摂取量、糞便スコア、血清生化学、腸病理、腸ミクロビオータの変調、及びカーカスの品質を分析した。抗生物質又はB.ピローサで処置した動物では、いずれも下痢が減少した。しかし、B.ピローサ処置群では75~95%の子豚が保護されたのに対し、抗生物質処置群では75%しか保護されなかった。さらに、B.ピローサで処置した動物は、コントロール群や抗生物質群に比べて、成長の優位性や体型スコアが優れていた。さらに、B.ピローサで処置した動物は、異なる成長期において、コントロール群や抗生物質群に比べて、豚赤痢やウイルス感染の発生率が低かった。結論として、B.ピローサは豚の異なる期で豚の下痢や赤痢を軽減させる。
【0064】
本明細書中で引用及び議論されている全ての文献は、各文献が個別に参照により組み込まれている場合と同じ程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】