(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-31
(54)【発明の名称】リチウム-硫黄電池用カーボンエアロゲル系カソード
(51)【国際特許分類】
C01B 32/00 20170101AFI20220524BHJP
H01M 4/583 20100101ALI20220524BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20220524BHJP
【FI】
C01B32/00
H01M4/583
H01M4/133
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021558493
(86)(22)【出願日】2020-03-22
(85)【翻訳文提出日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 US2020024113
(87)【国際公開番号】W WO2020198095
(87)【国際公開日】2020-10-01
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521378967
【氏名又は名称】アスペン アエロジェルズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ASPEN AEROGELS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】ザフィロポウロス, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】グールド, ジョージ
【テーマコード(参考)】
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AA15
4G146AB01
4G146AB06
4G146AC01A
4G146AC04A
4G146AC04B
4G146AC20A
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4G146AC22A
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4G146CB09
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4G146CB32
4G146CB35
4G146DA02
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA14
5H050GA02
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA06
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA09
5H050HA14
5H050HA17
5H050HA19
(57)【要約】
ナノ多孔質炭素系足場または構造、特にカーボンエアロゲル、ならびにそれらの製造および使用。実施形態は、リチウム-硫黄電池内に硫黄ドープのカソード材料を含み、これにおいてカソードは集電体が控えめであり、結合剤不含有で、モノリシックなポリイミド由来のカーボンエアロゲルから形成される。カーボンエアロゲルは、元素状硫黄を囲み、硫化リチウムへの変換中の硫黄の膨張を収容する細孔を含む。カソードおよびその下のカーボンエアロゲルは、リチウム-硫黄電池内での使用に最適な特性を与える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細孔構造を含む硫黄ドープナノ多孔質炭素材料であって、前記細孔構造が、原線維形態と、元素状硫黄を取り囲む一連の細孔とを含む、硫黄ドープナノ多孔質炭素材料。
【請求項2】
硫黄ドープナノ多孔質炭素材料であって、
原線維形態を含む細孔構造、
少なくとも約0.2GPaのヤング率、および
約0.10g/cc~約1.5g/ccの密度を含む、硫黄ドープナノ多孔質炭素材料。
【請求項3】
硫黄でドープされたナノ多孔質炭素材料であって、
原線維形態を含む細孔構造、
少なくとも約1S/cmの導電率、および
約0.10g/cc~約1.5g/ccの密度を含む、ナノ多孔質炭素材料。
【請求項4】
前記炭素材料が少なくとも約1S/cmの導電率を有する、請求項1および/または請求項2に記載のナノ多孔質炭素材料。
【請求項5】
前記炭素材料が、少なくとも約0.2GPaのヤング率を有する、請求項1および/または請求項3に記載のナノ多孔質炭素材料。
【請求項6】
前記ナノ多孔質炭素材料が、カーボンエアロゲルを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のナノ多孔質炭素材料。
【請求項7】
前記炭素材料がポリイミド由来のカーボンエアロゲルを含む、請求項6に記載のナノ多孔質炭素材料。
【請求項8】
前記カーボンエアロゲルがモノリスまたは粉末の形態である、請求項6および/または請求項7に記載のナノ多孔質炭素材料。
【請求項9】
前記モノリシックカーボンエアロゲルが実質的にまたは完全に結合剤を含まない、請求項8に記載のナノ多孔質炭素材料。
【請求項10】
前記モノリシックカーボンエアロゲルが、約10μm~約1000μmの厚さを有する、請求項6および/または請求項7に記載のナノ多孔質炭素材料。
【請求項11】
前記細孔構造が、前記硫黄を取り囲む細孔を特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のナノ多孔質炭素材料。
【請求項12】
前記細孔が、前記硫黄の周りに相互接続構造を形成し、前記硫黄と、前記硫黄が囲まれている各細孔の細孔壁との間の複数の接続点を特徴とする、請求項11に記載のナノ多孔質炭素材料。
【請求項13】
前記炭素材料が、前記炭素材料の約5%~90重量%の硫黄でドープされている、請求項1~12のいずれか一項に記載のナノ多孔質炭素材料。
【請求項14】
前記炭素材料が少なくとも0.3cc/gの細孔の体積を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載のナノ多孔質炭素材料。
【請求項15】
前記炭素材料が、約10%~約90%の多孔度を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載のナノ多孔質炭素材料。
【請求項16】
前記炭素材料が、約800mAh/g~約1700mAh/gの容量を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載のナノ多孔質炭素材料。
【請求項17】
前記細孔構造が、約50nm以下の半値全幅を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のナノ多孔質炭素材料。
【請求項18】
前記細孔構造が、約100nm以下の分布からの最大ピークにおける細孔径を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のナノ多孔質炭素材料。
【請求項19】
前記ナノ多孔質炭素材料の前記原線維形態が約2~10nmの平均ストラット幅を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のナノ多孔質炭素材料。
【請求項20】
ナノ多孔質炭素材料で形成された硫黄含有モノリシックポリイミド由来カーボンエアロゲル複合体であって、前記複合体が結合剤を不含有で、元素状硫黄が前記モノリシックポリイミド由来カーボンエアロゲル複合体の細孔内で囲まれている、硫黄含有モノリシックポリイミド由来カーボンエアロゲル複合体。
【請求項21】
原線維ネットワークおよび一連の細孔を有する連続気泡、モノリシック、ポリイミド由来のナノ多孔質カーボンエアロゲル、および前記一連の細孔によって囲まれている元素状硫黄を含む、リチウム-硫黄電池用の集電体控えめ、結合剤控えめの、相互接続カソード材料。
【請求項22】
先行の請求項1~20のいずれか一項に記載のナノ多孔質炭素材料を含む電極。
【請求項23】
前記電極がカソードである、請求項22に記載の電極。
【請求項24】
前記カソードは別個の集電体不含有である、請求項23に記載の電極。
【請求項25】
前述の請求項1~20のいずれか一項に記載のナノ多孔質炭素材料を含む電気化学セル。
【請求項26】
請求項22~24のいずれか一項に記載の電極を含む電気化学セル。
【請求項27】
前述の請求項1~20のいずれか一項に記載のナノ多孔質炭素材料を含む、エネルギー貯蔵装置。
【請求項28】
請求項25および/または請求項26に記載の電気化学セルを備えるエネルギー貯蔵装置。
【請求項29】
前記エネルギー貯蔵装置が電池である、請求項27および28のいずれかに記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項30】
前記電池がリチウム-硫黄電池である、請求項29に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項31】
連続多孔質炭素硫黄複合体を形成する方法であって、
ポリイミド前駆体を設けること、
前記ポリイミド前駆体を化学的または熱的にイミド化すること、
前記イミド化された混合物を乾燥させて、連続多孔質ポリイミドを得ること、
前記多孔質ポリイミドを熱分解して連続多孔質炭素を得ること、および
前記連続多孔質炭素上または前記連続多孔質炭素中に硫黄を組み込んで、硫黄の重量が0%超約95%未満であり、多孔度が約10%~約90%である前記連続多孔質硫黄複合体を得ることを含む、方法。
【請求項32】
前記多孔質炭素硫黄複合体がモノリスである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記多孔質炭素硫黄複合体が自立構造である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記多孔質炭素硫黄複合体が基材に作成される、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記多孔質炭素硫黄複合体が不織布材料で補強される、請求項31~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記多孔質炭素硫黄複合体が織布材料で補強されている、請求項31~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記多孔質炭素硫黄複合体を微粉化して粉末を形成する、請求項31または34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記ポリイミド湿潤ゲル複合体が、亜臨界および/または超臨界二酸化炭素を使用して乾燥されて、前記多孔質ポリイミドを形成する、請求項31~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記複合体がエアロゲルを含む、請求項31~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
最大熱分解温度が約750℃~約1600℃である、請求項31~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記多孔質炭素硫黄複合体が約3000℃まで黒鉛化されている、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記多孔質ポリイミドが、密度を増加させるために、好ましくは一軸方向に圧縮される、請求項31~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記多孔質ポリイミドが約95%もの歪みまで圧縮される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記多孔質炭素硫黄複合体が、圧縮量に基づいて約1.5g/ccまで調整可能な密度を有する、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記硫黄が、溶融注入によって前記連続多孔質炭素の上または中に組み込まれる、請求項31~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記硫黄が、前記連続多孔質炭素を、硫黄およびポリスルフィドに対して親和性を有する化学官能基で表面処理することによって、前記連続多孔質炭素の上または中に組み込まれる、請求項31~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記ポリイミド前駆体が、適切な溶媒中にジアミンおよび二無水物を含む、請求項31~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記ジアミンおよび前記二無水物の少なくとも一方が芳香族基を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記適切な溶媒が極性非プロトン性溶媒を含む、請求項47および/または請求項48に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年3月22日に出願された米国特許出願第16/826,276号および2019年3月22日に出願された米国仮特許出願第62/822,698号の優先権の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、本願における用語のいずれの定義もが支配的である。
【0002】
本発明は、一般に、ナノ多孔質炭素系材料に関する。より具体的には、これは、例えばリチウム-硫黄電池内の電極材料として、電気化学反応を含む環境での使用に適したカーボンエアロゲルに関する。
【背景技術】
【0003】
エアロゲルは、ミクロサイズおよびメソサイズの細孔の高度に多孔性のネットワークを含む固体の材料である。使用される前駆体材料および行われる加工に応じて、エアロゲルの細孔は、エアロゲルの密度が約0.05g/ccである場合、頻繁に体積の90%超を占める可能性がある。エアロゲルは、一般に、ゲルの収縮がその表面での毛管力によって最小限に抑えられ得るかまたはまったくもたらされ得ないように、ゲル(その溶媒を含有する固体ネットワーク)から溶媒を除去することによって作成される。溶媒除去の方法には、限定するものではないが、超臨界乾燥(また、超臨界流体の低い表面張力がゲル内の過渡的な溶媒と交換するよう、超臨界流体を使用した乾燥)、超臨界流体との溶媒の交換、超臨界状態に続いて変換される流体との溶媒の交換、臨界未満または臨界に近い乾燥、および凍結乾燥プロセスにおける凍結溶媒の昇華が含まれる。例えば、PCT特許出願公開番号第2016127084号パンフレット(A1)を参照されたい。周囲条件で乾燥させると、溶媒の蒸発によりゲルの収縮が起こり得、キセロゲルが形成され得ることに留意されたい。したがって、ゾル-ゲル法または他の重合法によるエアロゲルの作成は、典型的には以下の一連の工程で進行する:溶媒への溶質の溶解、ゾル/溶液/混合物の形成、ゲルの形成(さらなる架橋を含み得る)、および超臨界乾燥技術または細孔の崩壊を引き起こすことなくゲルから溶媒を除去する任意の他の方法による溶媒の除去。
【0004】
エアロゲルは、無機材料および/または有機材料から形成することができる。例えば、フェノール、レゾルシノール-ホルムアルデヒド(RF)、フロログルシノールフルアルデヒド(PF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリウレタン(PU)、ポリブタジエン、ポリジシクロペンタジエン、およびそれらの前駆体またはポリマー誘導体などの有機材料で形成される場合、エアロゲルは炭化(例えば、熱分解によって)されて、使用される前駆体材料および方法論に応じて、互いに異なるまたは重なり合う特性(例えば、細孔の体積、細孔径の分布、形態など)を有することができるカーボンエアロゲルを形成することができる。しかし、すべての場合において、材料および用途に基づく特定の欠陥、例えば、低い細孔の体積、広い細孔径の分布、低い機械的強度などがあった。近年、リチウム-硫黄電池(LSB)などのエネルギー貯蔵装置における用途のための性能が改善された電極材料としてのカーボンエアロゲルの開発および特性評価に労力が捧げられている。
【0005】
LSBは、低コストで高い可逆エネルギー貯蔵および高サイクルを達成する可能性があるため、電気化学エネルギー貯蔵のいっそう魅力的な形態およびリチウムイオン電池(LIB)の代替品になっている。LSBは、放電中にリチウムイオンがアノードからカソードに移動し、充電中にカソードからアノードに移動する充電式電池の一種である。従来、LSBシステムの場合、アノードはリチウム金属から形成され、カソードは炭素-硫黄複合体から形成され、元素状硫黄およびポリスルフィドが炭素の多孔質構造内に存在し、ポリマー結合剤が複合体の完全性を維持するために使用される。硫黄は、LSBのカソードとして使用される場合、高い理論上の比容量(約1672mAh/g、LIBで一般的に使用される金属酸化物カソード材料よりも一桁大きい)を有することが知られている、地球に豊富な元素である。
【0006】
LSBで超高エネルギー密度を達成する機会があるにもかかわらず、従来のLSBは、より高いサイクル寿命であるがより低いエネルギー密度を特徴とするLIB対応物のようには、広く商業的に採用されていない。従来のLSBは、2つの重大な課題を抱えている。第1の課題は、硫黄の高い電気抵抗率および放電中のLi-S種の形成である。この変換反応は、硫化リチウム(Li2S)を形成し、80%もの体積膨張を伴う。他の主要な課題は、複数の充放電サイクルにわたって中間リチウム多硫化物の電解質への溶解度または溶解であり、最終的に放電中の必要な変換反応に利用可能な硫黄の減少をもたらす。
【0007】
したがって、必要とされているのは、機能的形態および最適な細孔構造を含む改善されたナノ多孔質炭素材料であり、それにおいて、最適な硫黄負荷が達成され得て、硫黄がサイズの一貫した環境(例えば、狭い細孔径の分布)に捕捉されている。しかし、本発明がなされた時点で全体として考慮された技術を考慮すると、従来技術の欠点をどのように克服することができるかは、本発明の分野の当業者には明らかではなかった。
【0008】
本発明の開示を容易にするために従来技術の特定の態様が議論されてきたが、出願人は決してこれらの技術的態様を否定せず、特許請求される発明は、特に本明細書に記載される革新的な態様と組み合わせて、本明細書に記載される従来の技術的態様の1つまたは複数を包含し得ることが企図されている。
【0009】
本発明は、上述した技術の問題および欠点のうちの1つまたは複数に対処することができる。しかし、本発明は、いくつかの技術分野における他の問題および欠陥に対処するのに有用であることが判明し得ると考えられる。したがって、特許請求される発明は、必ずしも本明細書で論じられる特定の問題または欠陥のいずれかに対処することに限定されると解釈されるべきではない。
【0010】
本明細書において、文書、行為または知識の項目が参照または論述される場合、この参照または論述は、その文書、行為または知識の項目またはそれらの任意の組み合わせが、優先日、公的に利用可能であったこと、公衆に知られていること、共通の一般的な知識の一部であったこと、または適用される法的規定の下で先行技術を構成することを認めるものではないか、または、本明細書が関係するいずれかの問題を解決しようとする試みに関連することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】PCT特許出願公開番号第2016127084号パンフレット(A1)
【発明の概要】
【0012】
改善されたナノ多孔質炭素材料に対する、長年にわたるがこれまで満たされていなかった必要性は、現在、新しい有用で非自明な発明によって満たされる。
【0013】
第1の一般的な態様は、硫黄ドープナノ多孔質炭素材料に関する。細孔構造を含む硫黄ドープナノ多孔質炭素材料は、細孔構造が、原線維形態と、元素状硫黄を取り囲む一連の細孔とを含む。
【0014】
第2の一般的な態様は、硫黄ドープナノ多孔質炭素材料であって、原線維形態を含む細孔構造;少なくとも約0.2GPaのヤング率;および約0.10g/cc~約1.5g/ccの密度を含む、硫黄ドープナノ多孔質炭素材料に関する。例示的な実施形態では、ナノ多孔質炭素材料は、少なくとも約1S/cmの導電率を有する。
【0015】
第3の一般的な態様は、硫黄でドープされたナノ多孔質炭素材料であって、原線維形態を含む細孔構造;少なくとも約1S/cmの導電率;および約0.10g/cc~約1.5g/ccの密度を含む、ナノ多孔質炭素材料に関する。例示的な実施形態では、ナノ多孔質炭素材料は、少なくとも約0.2GPaのヤング率を有する。
【0016】
例示的な実施形態では、ナノ多孔質炭素材料は、カーボンエアロゲルを含む。例えば、炭素材料は、ポリイミド由来のカーボンエアロゲルを含む。特定の実施形態では、カーボンエアロゲルは、モノリスまたは粉末形態であり得る。モノリシックな実施形態では、カーボンエアロゲルキャブは、実質的にまたは完全に結合剤を不含有とすることができる。モノリシック炭素は、例えば、約10μm~約1000μmの厚さを有することができる。
【0017】
例示的な実施形態では、ナノ多孔質炭素材料の細孔構造は、硫黄を取り囲む細孔によって特徴付けられる。例えば、細孔は、硫黄の周りに相互接続構造を形成し、硫黄と、硫黄が囲まれている各細孔の細孔壁との間の複数の接続点を特徴とする。炭素材料には、炭素材料の約5%~約90%重量基準の硫黄をドープすることができる。
【0018】
任意の実施形態において、炭素材料は、少なくとも0.3cc/gの細孔の体積を有することができる。任意の実施形態において、炭素材料は、約10%~約90%の多孔度を有することができる。任意の実施形態では、炭素材料は、約800mAh/g~約1700mAh/gの容量を有することができる。任意の実施形態において、炭素材料の細孔構造は、約50nm以下の半値全幅を含む。任意の実施形態において、細孔構造は、約100nm以下の分布からの最大ピークにおける細孔径を含む。任意の実施形態において、ナノ多孔質炭素材料の原線維形態は、約2~10nmの平均ストラット幅を含むことができる。
【0019】
さらなる一般的な態様は、ナノ多孔質炭素材料で形成された硫黄含有モノリシックポリイミド由来カーボンエアロゲル複合体であって、複合体が結合剤を不含有で、元素状硫黄がモノリシックポリイミド由来カーボンエアロゲル複合体の細孔内で囲まれている、硫黄含有モノリシックポリイミド由来カーボンエアロゲル複合体に関する。
【0020】
別の一般的な態様は、線維ネットワークおよび一連の細孔を有する連続気泡、モノリシック、ポリイミド由来のナノ多孔質カーボンエアロゲル、および一連の細孔によって囲まれている元素状硫黄を含む、リチウム-硫黄電池用の集電体控えめ、結合剤控えめの、相互接続カソード材料に関する。
【0021】
例示的な実施形態は、任意の他の実施形態のナノ多孔質炭素材料を含む電極を含む。例えば、電極はカソードとすることができる。カソードは、別個の集電体不含有でもよい。さらなる例示的な実施形態は、任意の他の実施形態のナノ多孔質炭素材料または電極を含む電気化学セルまたはエネルギー貯蔵装置を含む。例えば、エネルギー貯蔵装置は、リチウム硫黄電池などの電池とすることができる。
【0022】
さらなる一般的な態様は、連続多孔質炭素硫黄複合体を形成する方法に関する。例示的な実施形態では、本方法は、連続多孔質炭素硫黄複合体を形成する方法であって、ポリイミド前駆体を設けること;ポリイミド前駆体を化学的または熱的にイミド化すること;イミド化された混合物を乾燥させて、連続多孔質ポリイミドを得ること;多孔質ポリイミドを熱分解して連続多孔質炭素を得ること;および連続多孔質炭素上または連続多孔質炭素中に硫黄を組み込んで、硫黄の重量が0%超約95%未満であり、多孔度が約10%~約90%である連続多孔質硫黄複合体を得ることを含む、方法を含む。
【0023】
例示的な実施形態において、ポリイミド前駆体は、適切な溶媒中にジアミンおよび二無水物を含む。例えば、適切な溶媒は、極性の非プロトン性溶媒を含むことができる。いくつかの実施形態では、ジアミンおよび二無水物の少なくとも1つは、芳香族基を含むことができる。
【0024】
例示的な実施形態では、多孔質炭素硫黄複合体はモノリスであり得る。例えば、多孔質炭素硫黄複合体は自立構造であり得る。多孔質炭素硫黄複合体は、基材に作成することができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素硫黄複合体は、不織布材料、例えば織布材料で補強される。いくつかの実施形態では、多孔質炭素硫黄複合体を微粉化して粉末を形成することができる。
【0025】
例示的な実施形態では、ポリイミド湿潤ゲル複合体が、亜臨界および/または超臨界二酸化炭素を使用して乾燥されて、多孔質ポリイミドを形成し得る。いくつかの実施形態では、複合体はエアロゲルを含むことができる。
【0026】
例示的な実施形態では、最大熱分解温度は、約750℃~約1600℃である。いくつかの実施形態では、多孔質炭素硫黄複合体は、約3000℃まで黒鉛化される。いくつかの実施形態では、多孔質ポリイミドは、密度を高めるために、好ましくは一軸方向に圧縮される。例えば、多孔質ポリイミドは、約95%程度の歪みまで圧縮することができる。多孔質炭素硫黄複合体は、圧縮量に基づいて約1.5g/ccまで調整可能な密度を有することができる。
【0027】
例示的な実施形態では、硫黄は、溶融注入によって連続多孔質炭素の上または中に組み込むことができる。いくつかの実施形態では、硫黄が、連続多孔質炭素を、硫黄およびポリスルフィドに対して親和性を有する化学官能基で表面処理することによって、連続多孔質炭素の上または中に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明をより十分に理解するために、添付の図面に関連して以下の詳細な説明を参照すべきである。
【0029】
【
図1】エネルギー貯蔵用途、例えばリチウム-硫黄電池内で使用するための硫黄ドープカーボンエアロゲルの形成を示す流れ図である。
【
図2A】任意選択的に基材に配置されるカーボンエアロゲルの概略図である。
【
図2B】電気化学的活性種(例えば、元素状硫黄)が炭素表面にコンフォーマルコーティングを形成している、基材に任意に配置されたカーボンエアロゲルの概略図である。
【
図2C】任意選択で基材に配置されるカーボンエアロゲルの概略図であり、電気化学的活性種(例えば、元素状硫黄)がエアロゲルネットワークの中にナノ粒子として形成され、エアロゲルネットワークに結合されている。
【
図3A】本明細書に開示される実施形態による硫黄ドープ炭素材料のSEM画像である。
【
図3B】本明細書に開示される実施形態による硫黄ドープ炭素材料のSEM画像である。
【
図4A】0.05g/ccの目標密度で作成されたポリイミドゲルから作成された硫黄ドープ炭素材料を使用して作製された電極の0.1Cでの第1のサイクルのハーフセル容量を示す。
【
図4B】0.05g/ccの目標密度で作成されたポリイミドゲルから作成された硫黄ドープ炭素材料を使用して作製された電極の1Cでの第1のサイクルのハーフセル容量を示す。
【
図5A】0.125g/ccの目標密度で作成されたポリイミドゲルから作成された硫黄ドープ炭素材料を使用して作製された電極の0.1Cでの第1のサイクルのハーフセル容量を示す。
【
図5B】0.125g/ccの目標密度で作成されたポリイミドゲルから作成された硫黄ドープ炭素材料を使用して作製された電極の1Cでの第1のサイクルのハーフセル容量を示す。
【
図6】0.05g/ccの目標密度で作成されたポリイミドゲルから作成された硫黄ドープ炭素材料を使用して作製された電極のハーフセルサイクル性能を示す。
【
図7】0.125g/ccの目標密度で作成されたポリイミドゲルから作成された硫黄ドープ炭素材料を使用して作製された電極のハーフセルサイクル性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の以下の詳細な説明では、添付の図面を参照する。図面は、その一部を形成し、本発明を実施することができる特定の実施形態を例示として示す。本発明の範囲から逸脱することなく他の実施形態を利用することができ、構造的変更を行うことができることを理解されたい。
【0031】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、内容が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「または(or)」という用語は、文脈上他に明確に指示されない限り、「および/または(and/or)」を含む意味で一般的に使用される。
【0032】
本明細書で使用される場合、「約」は、およそまたはほぼを意味し、記載された数値または範囲の文脈では、数値の±15%を意味する。実施形態では、「約」という用語は、数値の有効数字による従来の丸めを含むことができる。また、「約「x」~「y」」という句は、「約「x」~約「y」」を含む。
【0033】
本開示の文脈の中で、「エアロゲル」または「エアロゲル材料」という用語は、相互接続された構造の骨格を含み、相互接続された細孔の対応するネットワークが骨格内に組み込まれ、分散された間隙媒体として空気などのガスを含むゲルを指す:エアロゲルに起因する以下の物理的および構造的特性(窒素ポロシメトリー試験による):(a)約2nm~約100nmの範囲の平均孔径;(b)少なくとも80%以上の多孔度、および(c)約20m2/g以上の表面積。補強材料または電気化学的に活性な種などの添加剤を含めると、得られるエアロゲル複合体の多孔度が低下する可能性があることが理解され得る。緻密化はまた、得られるエアロゲル複合体の多孔度を低下させ得る。これは、本明細書が続くにつれてより明確になる。
【0034】
したがって、本開示のエアロゲル材料は、キセロゲル、クリオゲル、アンビゲル、マイクロポーラス材料などに分類することができる化合物を含む、前の段落に記載の定義的な要素を満たす任意のエアロゲルまたは他の連続気泡化合物を含む。
【0035】
本開示の文脈の中で、「骨格」または「骨格構造」という用語は、ゲルまたはエアロゲルの固体構造を形成する相互接続されたオリゴマー、ポリマー、またはコロイド粒子のネットワークを指す。骨格構造を構成するポリマーまたは粒子は、典型的には、約100オングストロームの直径を有する。しかし、本開示の骨格構造は、ゲルまたはエアロゲル内で固体の構造を形成するすべての直径サイズの相互接続されたオリゴマー、ポリマー、またはコロイド粒子のネットワークも含み得る。
【0036】
本開示の文脈の中で、「エアロゲル組成物」という用語は、複合材の成分としてエアロゲル材料を含む任意の複合材を指す。エアロゲル組成物の例には、線維強化エアロゲル複合体;乳白剤および電気化学的活性種などの添加要素を含むエアロゲル複合体;エアロゲル-フォーム複合体;エアロゲル-ポリマー複合体;およびエアロゲル微粒子、粒子、顆粒、ビーズまたは粉末を、結合剤、樹脂、セメント、フォーム、ポリマーまたは同様の固体の材料などの、固体または半固体の材料に組み込む複合材が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
本開示の文脈の中で、「強化エアロゲル組成物」という用語は、エアロゲル材料内に補強相を含むエアロゲル組成物を指し、エアロゲル組成物は、エアロゲル骨格の一部ではないか、またはエアロゲル骨格に共有結合するように修飾することができる。補強相は、エアロゲル材料に高い柔軟性、弾力性、適合性または構造安定性を与える任意の材料であってもよい。周知の補強材の例には、連続気泡フォーム補強材、独立気泡フォーム補強材、連続気泡膜、ハニカム補強材、ポリマー補強材、およびディスクリート線維、織物材料、不織材料、バッティング、ウェブ、マット、およびフェルトなどの線維補強材が含まれるが、これらに限定されない。さらに、補強材は、他の補強材の1つまたは複数と組み合わせてもよく、組成物の全体または限定された好ましい部分に連続的に配向することができる。他の実施形態では、エアロゲル材料および/またはエアロゲル骨格がそれ自体で構造的に安定している場合(すなわち、自立している)、強化相をまったく使用しなくてもよい。特定のカーボンエアロゲルのこの自立性は、本明細書が続くにつれてより明確になる。
【0038】
本開示の文脈の中で、「湿潤ゲル」という用語は、相互接続された細孔のネットワーク内の移動性間隙相が、従来の溶媒などの液相、液体二酸化炭素などの液化ガス、またはそれらの組み合わせで主に構成されるゲルを指す。エアロゲルは、典型的には、湿潤ゲルの初期生成と、それに続く、ゲル中の移動性間隙液相を空気または別のガスで置換するための処理および抽出とを必要とする。湿潤ゲルの例としては、アルコゲル、ヒドロゲル、ケトゲル、カルボノゲル、および当業者に公知の任意の他の湿潤ゲルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
本開示の文脈の中で、「添加剤」または「添加要素」という用語は、組成物の製造前、製造中、または製造後に組成物に添加することができる材料を指す。添加剤は、例えば、エアロゲル組成物中の望ましい特性を変更もしくは改善するために、またはエアロゲル組成物中の望ましくない特性を打ち消すもしくは緩和するために添加することができる。添加剤は、典型的には、ゲル化の前または間にエアロゲル組成物に添加される。添加剤は、原子層堆積または化学蒸着(CVD)によってエアロゲル組成物に添加することもできる。添加剤の特定の例は、硫黄元素などの電気化学的に活性な種である。
【0040】
本開示の文脈の中で、「自立」という用語は、主にエアロゲルの物理的特性に基づいて、エアロゲル材料または組成物が可撓性および/または弾性になり得ることを指す。本開示の自立型エアロゲル材料または組成物は、材料に可撓性および/または弾性を与えるために下にある基材または補強材料に依存するコーティングなどの他のエアロゲル材料と区別することができる。
【0041】
本開示の文脈の中で、「密度」という用語は、エアロゲル材料または組成物の単位体積当たりの質量の測定値を指す。「密度」という用語は、一般に、エアロゲル材料の真密度およびエアロゲル組成物のかさ密度を指す。密度は、典型的にはkg/m3またはg/ccとして記録される。エアロゲル材料または組成物の密度は、これらに限定されないが、Standard Test Method for Dimensions and Density of Preformed Block and Board-Type Thermal Insulation(ASTM C303,ASTM International,West Conshohocken,Pa.);Standard Test Methods for Thickness and Density of Blanket or Batt Thermal Insulations(ASTM C167,ASTM International,West Conshohocken,Pa.);またはDetermination of the apparent density of preformed pipe insulation(ISO 18098,International Organization for Standardization,スイス)を含む当技術分野で公知の方法によって決定することができる。本開示の文脈の中では、特に明記しない限り、密度の測定値はASTM C 167の規格に従って取得される。好ましくは、本開示のエアロゲル材料または組成物は、1.50g/cc以下、1.40g/cc以下、1.30g/cc以下、1.20g/cc以下、1.10g/cc以下、1.00g/cc以下、0.90g/cc以下、0.80g/cc以下、0.70g/cc以下、0.60g/cc以下、0.50g/cc以下、0.40g/cc以下、0.30g/cc以下、0.20g/cc以下、0.10g/cc以下、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲の密度を有する。
【0042】
特定の実施形態によるエアロゲルの製造は、一般に、以下の工程を含む:i)ゲル前駆体を含有する溶液の形成;ii)溶液からのゲルの形成;およびiii)ゲル材料から溶媒を抽出して、乾燥エアロゲル材料を得ること。このプロセスは、特にポリイミドエアロゲルなどの有機エアロゲルの形成のコンテキストに関連して、以下により詳細に説明される。しかし、本明細書で提供される特定の例および例示は、本開示を任意の特定の種類のエアロゲルおよび/または作成方法に限定することを意図するものではない。本開示は、当業者に公知の任意の関連する作成方法によって形成された任意のエアロゲルを含むことができる。
【0043】
シリカエアロゲルを製造するための例示的な溶液は、少なくとも1つのゲル化前駆体を溶媒と組み合わせることによって形成される。溶液の形成に使用するのに適した溶媒には、1~6個、好ましくは2~4個の炭素原子を有する低級アルコールが含まれるが、当業者に知られているように他の溶媒を使用することもできる。有用な溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタン、テトラヒドロフランなどが挙げられるが、これらに限定されない。所望のレベルの分散を達成するために、またはゲル材料の特性を最適化するために、複数の溶媒を組み合わせることもできる。したがって、重合およびゲル形成工程に最適な溶媒の選択は、溶液に組み込まれる特定の前駆体、充填剤、および添加剤、ならびにゲル化および液相抽出のための目標処理条件、ならびに最終エアロゲル材料の所望の特性に拠る。
【0044】
ポリイミドエアロゲルを製造するための例示的な溶液は、共通の極性非プロトン性溶媒中で少なくとも1つのジアミンおよび少なくとも1つの二無水物を組み合わせることによって形成される。ポリイミドゲル/エアロゲルの形成に関するさらなる詳細は、Rhineらの米国特許第7,074,880号明細書および第7,071,287号明細書;Suzukiらの米国特許第6,399,669号明細書;Leventisらの米国特許第9,745,198号明細書;Leventis et al.,Polyimide Aerogels by Ring-Opening Metathesis Polymerization(ROMP),Chem.Mater.2011,23,8,2250-2261;Leventis et al.,Isocyanate-Derived Organic Aerogels:Polyureas,Polyimides,Polyamides,MRS Proceedings,1306(2011),Mrsf10-1306-bb03-01.doi:10.1557/opl.2011.90;Chidambareswarapattar et al.,One-step room-temperature synthesis of fibrous polyimide aerogels from anhydrides and isocyanates and conversion to isomorphic carbons,J.Mater.Chem.,2010,20,9666-9678;Guo et al.,Polyimide Aerogels Cross-Linked through Amine Functionalized Polyoligomeric Silsesquioxane,ACS Appl.Mater.Interfaces 2011,3,546-552;Nguyen et al.,Development of High Temperature,Flexible Polyimide Aerogels,American Chemical Society,proceedings published 2011;Meador et al.,Mechanically Strong,Flexible Polyimide Aerogels Cross-Linked with Aromatic Triamine,ACS Appl.Mater.Interfaces,2012,4(2),pp 536-544;Meador et al.,Polyimide Aerogels with Amide Cross-Links:A Low Cost Alternative for Mechanically Strong Polymer Aerogels,ACS Appl.Mater.Interfaces 2015,7,1240-1249;Pei et al.,Preparation and Characterization of Highly Cross-Linked Polyimide Aerogels Based on Polyimide Containing Trimethoxysilane Side Groups,Langmuir 2014,30,13375-13383において見出される。その各々は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。ゲル材料の特性を最適化するために、ジアミンまたはそれらの組み合わせの代わりに、またはそれに加えて、トリアミン、テトラアミン、ペンタミン、ヘキサミンなどを使用することもできる。ゲル材料の特性を最適化するために、二無水物またはそれらの組み合わせの代わりに、またはそれに加えて、三無水物、四無水物、五無水物、六無水物を使用することもできる。脱水剤および触媒を溶液に組み込み、イミド化を開始および駆動することができる。
【0045】
溶液は、追加の共ゲル化前駆体、ならびに充填剤材料および他の添加剤を含むことができる。充填剤材料および他の添加剤は、ゲルの形成前または形成時の任意の時点で溶液に分注されてもよい。充填剤材料および他の添加剤はまた、当業者に公知の様々な技術によってゲル化後にゲル材料に組み込まれてもよい。好ましくは、ゲル化前駆体、溶媒、触媒、水、充填剤材料、および他の添加剤を含む溶液は、適切な条件下での効果的なゲルの形成が可能な、均質な溶液である。
【0046】
溶液が形成され、最適化されると、溶液の中のゲル形成成分をゲル材料に移行させることができる。ゲル形成成分をゲル材料に移行させるプロセスは、ゲルがゲル材料のゲル化点まで固化する、初期のゲル形成工程を含む。ゲル材料のゲル化点は、ゲル化溶液が流動への抵抗を示し、および/またはその体積部全体にわたって実質的に連続したポリマー骨格を形成する点と見なすことができる。様々なゲル形成技術が当業者に知られている。例としては、限定されないが、混合物を十分な期間にわたって静止状態に維持すること;触媒の濃度の調整;溶液の温度の調節;エネルギーの形態を混合物に向けること(紫外線、可視光、赤外線、マイクロ波、超音波、粒子放射、電磁);またはそれらの組み合わせを含む。
【0047】
ゲル形成成分をゲル材料に移行させるプロセスはまた、液相抽出の前に熟成工程(硬化とも呼ばれる)を含むことができる。ゲル化点に達した後にゲル材料を熟成させると、ネットワーク内の架橋の数を増加させることによってゲル骨格をさらに強化することができる。ゲル熟成の持続時間を調整して、得られるエアロゲル材料内の様々な特性を制御することができる。この熟成手順は、液相抽出中の潜在的な体積部に損失および収縮を防止するのに有用であり得る。熟成は、ゲルを(抽出前に)長期間静止状態に維持すること;ゲルを高温に維持すること;架橋促進化合物の添加;またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。熟成のための好ましい温度は、通常、約10℃~約200℃である。ゲル材料の熟成は、典型的には、湿潤ゲル材料の液相抽出まで続く。
【0048】
ゲル形成材料をゲル材料に移行させるための時間は、(ゲル化の開始からゲル化点までの)最初のゲル形成の持続時間、ならびに(ゲル化点から液相抽出の開始までの)液相抽出前のゲル材料のその後の任意の硬化および熟成の持続時間の両方を含む。ゲル形成材料をゲル材料に移行させるための総時間は、典型的には約1分~数日の間、好ましくは約30時間以下、約24時間以下、約15時間以下、約10時間以下、約6時間以下、約4時間以下、約2時間以下、約1時間以下、約30分以下、または約15分以下である。
【0049】
得られたゲル材料を適切な二次溶媒の中で洗浄して、湿潤ゲルに存在する一次反応溶媒を置換することができる。このような二次溶媒は、1個以上の脂肪族炭素原子を有する直鎖一価アルコール、2個以上の炭素原子を有する二価アルコール、分岐アルコール、環状アルコール、脂環式アルコール、芳香族アルコール、多価アルコール、エーテル、ケトン、環状エーテルまたはそれらの誘導体であり得る。
【0050】
ゲル材料が形成および処理されると、次いで、処理および抽出技術を含む抽出方法を使用して、ゲルの液相を湿潤ゲルから少なくとも部分的に抽出して、エアロゲル材料を形成することができる。液相抽出は、他の要因の中でも、多孔度および密度などのエアロゲルの特性、ならびに熱伝導率などの関連する特性を操作する上で、重要な役割を果たす。一般に、エアロゲルは、湿潤ゲルの多孔質ネットワークおよび骨格に低い収縮を引き起こす方法で、ゲルから液相を抽出するときに、得られる。
【0051】
エアロゲルは、一般に、液体移動相の臨界点付近またはそれを超える温度および圧力で、ゲル材料から液体移動相を除去することによって、形成される。臨界点に達するか、または臨界を超える(超臨界)と(すなわち、システムの圧力および温度は、それぞれ臨界圧力および臨界温度以上であると)、液相または気相とは異なる新しい超臨界相が流体に現れる。次いで、液体-蒸気界面、毛細管圧、または典型的には液体-蒸気境界に関連する任意の関連する物質移動の制限を導入することなく、溶媒を除去することができる。さらに、超臨界相は一般に有機溶媒とより混和性であり、したがってより良好な抽出能力を有する。共溶媒および溶媒の交換もまた、超臨界流体乾燥プロセスを最適化するために一般的に使用される。
【0052】
蒸発または抽出が超臨界点未満で起こる場合、液体の蒸発によって生じる毛細管力は、ゲル材料内で収縮および細孔の崩壊を引き起こす可能性がある。溶媒抽出プロセスの中に移動相を臨界圧力および臨界温度付近、またはそれを超えて維持することにより、そのような毛管力の悪影響が低減される。本開示の特定の実施形態では、溶媒系の臨界点のすぐ下の臨界に近い状態を使用することは、十分に収縮が低次のエアロゲル材料または組成物の製造を可能にし、したがって商業的に実行可能な最終製品を製造することができる。
【0053】
エアロゲルの乾燥において超臨界流体を使用する際の様々なアプローチの範囲、ならびに周囲乾燥技術を含む、いくつかの追加のエアロゲル抽出技術が当技術分野で公知である。例えば、Kistler(J.Phys.Chem.(1932)36:52-64)は、ゲル溶媒がその臨界圧力および臨界温度を超えて維持され、それによって蒸発毛細管力を減少させ、ゲルネットワークの構造的完全性を維持する単純な超臨界抽出プロセスを記載している。米国特許第4,610,863号明細書は、ゲル溶媒を液体二酸化炭素と交換し、続いて二酸化炭素が超臨界状態にある状態で抽出する抽出プロセスを記載している。米国特許第6,670,402号明細書は、実質的に超臨界状態以上に予熱および予備加圧された抽出器に超臨界(液体ではなく)二酸化炭素を注入することによって、迅速な溶媒交換を介してゲルから液相を抽出し、それによってエアロゲルを生成することを教示している。米国特許第5,962,539号明細書は、有機溶媒をポリマー分解温度未満の臨界温度を有する流体と交換し、流体/ゾル-ゲルを超臨界抽出することによって、有機溶媒中でゾル-ゲルの形態であるポリマー材料からエアロゲルを得る方法を記載している。米国特許第6,315,971号明細書は、ゲル固体および乾燥剤を含む湿潤ゲルを乾燥させて、乾燥中のゲルの収縮を減少させるのに十分な乾燥条件下で乾燥剤を除去することを含む、ゲル組成物を製造する方法を開示している。米国特許第5,420,168号明細書には、レゾルシノール/ホルムアルデヒドエアロゲルを単純な風乾手順を用いて製造することができる方法が記載されている。米国特許第5,565,142号明細書は、周囲乾燥または亜臨界抽出の最中にゲル骨格および細孔が崩壊に耐えることができるように、ゲル表面をより強くかつより疎水性になるように改質する乾燥技術を記載している。エアロゲル材料から液相を抽出する他の例は、米国特許第5,275,796号明細書および第5,395,805号明細書に見出せる。
【0054】
湿潤ゲルから液相を抽出する1つの好ましい実施形態は、二酸化炭素の超臨界条件を使用する、例えば、最初にゲルの細孔ネットワークに存在する一次溶媒を液体二酸化炭素と実質的に交換すること;および、次いで、湿潤ゲル(通常オートクレーブで)を二酸化炭素の臨界温度(約31.06℃)を超えるよう加熱し、系の圧力を二酸化炭素の臨界圧力(約1070psig)より高い圧力まで上昇させることを含む。ゲル材料の周囲の圧力をわずかに変動させて、ゲルからの超臨界二酸化炭素流体の除去を容易にすることができる。湿潤ゲルからの一次溶媒の連続的な除去を容易にするために、抽出システムを通して二酸化炭素を再循環させることができる。最後に、温度および圧力を周囲条件にゆっくり戻して、乾燥エアロゲル材料を製造する。二酸化炭素は、抽出チャンバに注入される前に超臨界状態に前処理することもできる。他の実施形態では、抽出は、任意の適切な機構、例えば上述の圧力、タイミング、および溶媒を変更して行うことができる。
【0055】
本開示の特定の実施形態では、乾燥ポリイミドエアロゲル組成物は、3時間以上、10秒~3時間、10秒~2時間、10秒~1時間、10秒~45分、10秒~30分、10秒~15分、10秒~5分、10秒~1分、1分~3時間、1分~1時間、1分~45分、1分~30分、1分~15分、1分~5分、10分~3時間、10分~1時間、10分~45分、10分~30分、10分~15分、30分~3時間、30分~1時間、30分~45分、45分~3時間、45分~90分、45分~60分、1時間~3時間、1時間~2時間、1時間~90分という持続時間、1回以上の熱処理に供することができる。
【0056】
特定の実施形態では、本発明は、エネルギー貯蔵装置内の電極材料として、例えばLSB中の一次カソード材料として、カーボンエアロゲルなどのナノ多孔質炭素系足場または構造の形成および使用を含む。ナノ多孔質足場の細孔は、硫黄、リン酸鉄、または他の適切な種を収容するように設計、編成、および構造化される。あるいは、ナノ多孔質足場の細孔は、硫化物、水素化物、任意の適切なポリマー、または添加剤を導電性材料(すなわち、足場/エアロゲル)と接触させてより効果的な電極を設けることが有益である他の添加剤で充填されてもよい。
【0057】
LSB内の例示的な用途をさらに拡張するために、本発明の特定の実施形態のようにカーボンエアロゲル材料が一次カソード材料として利用される場合、エアロゲルのナノ多孔質構造は狭い細孔径の分布を有し、高い導電率、高い機械的強度、ならびに高い重量パーセントの元素状硫黄およびその膨張に対応するための形態および十分な細孔の体積(最終的な密度での)を備えている。構造的に、本発明の特定の実施形態は、他の特性の中でも、上述の狭い細孔径の分布および高い細孔の体積を生成するストラットのサイズを有する原線維形態、および増強させた結合性を有する。
【0058】
以下でさらに論じるように、カーボンエアロゲルの細孔内に含まれる硫黄および多硫化物による性能を高めるために、カーボンエアロゲルの表面を化学的、物理的、または機械的方法によって改質してもよい。
【0059】
追加または代替の実施形態では、カーボンエアロゲル自体は、その導電性および機械的強度のために集電体として機能し、したがって好ましい実施形態では、カソード側に別個の集電体を必要としない(カソードがカーボンエアロゲルで形成される場合)。留意されたいことに、従来のLSBでは、アルミニウム箔がその集電体としてカソードに結合されている。しかし、カーボンエアロゲルの用途に応じて、これらの成分の一方または両方を除去すると、より多くの電極材料のための追加の空間が生じ、セル/個々の電極の容量がさらに大きくなり、パッケージされた電池システムの全体的なエネルギー密度が大きくなる。しかし、特定の実施形態では、既存の集電体は、アルミニウム箔の集電能力または容量を増強するために、様々な他の実施形態のカソード材料と一体化されてもよい。
【0060】
特定の実施形態では、ナノ多孔質炭素系足場または構造、特にカーボンエアロゲルは、エネルギー貯蔵装置のカソード側の導電性ネットワークまたは集電体として使用することができる。完全に相互接続されたカーボンエアロゲルネットワークは、電気化学的に活性な種で満たされており、電気化学的に活性な種は、炭素ネットワークに直接接触しているか、または物理的に接続されている。電気化学的に活性な種の充填は、高い安定した容量および改善されたエネルギー貯蔵装置の安全性のために、細孔の体積および多孔度に対して調整される。カソード側で利用される場合、電気化学的に活性な種は、例えば、硫黄、リン酸鉄、または他の機能的に適切な種を含み得る。さらに別の実施形態では、カソードは、ナノ多孔質炭素系足場または構造、特にカーボンエアロゲルを含み得る。
【0061】
本開示の文脈の中で、「集電体控えめ」という用語は、電極に直接接続された別個の集電体がないことを指す。上述したように、従来のLSBでは、アルミニウム箔が通常、その集電体としてカソードに結合されている。本発明の実施形態によれば、ナノ多孔質炭素系足場または構造(例えば、カーボンエアロゲル)から形成された電極は、足場または構造自体がその高い導電性のために集電体として機能するので、独立した構造であり得るか、またはそうでなければ集電体控えめの機能を有し得る。電気化学セル内では、連続多孔質炭素を製造する溶液工程の間に固体、メッシュ、織物タブを埋め込むことによって、または、リードを多孔質炭素表面の一部にはんだ付け、溶接、または金属堆積することによって、集電体が控えめな電極を接続して回路を形成することができる。炭素を系の残りの部分に接触させる他の機構も本明細書で企図される。代替的な実施形態では、ナノ多孔質炭素系足場または構造、具体的にはカーボンエアロゲルは、専用の集電基材(例えば、銅箔、アルミニウム箔などである)上に配置されるか、そうでなければそれと連通してもよい。このシナリオでは、カーボンエアロゲルは、導電性接着剤を使用して固体集電体に取り付けられ、様々な量の圧力を加えられ得る。
【0062】
さらに、本明細書では、ナノ多孔質炭素系足場または構造、特にカーボンエアロゲルは、モノリシック構造の形態または粉末形態をとることができると考えられる。本質的にモノリシックである場合、カーボンエアロゲルは、任意の結合剤の必要性を排除する。換言すれば、カソードは結合剤が控えめであり得る。本明細書で使用される場合、「モノリシック」という用語は、エアロゲル材料または組成物に含まれるエアロゲルの大部分(重量で)が単一の連続的な相互接続されたエアロゲルナノ構造の形態であるエアロゲル材料を指す。モノリシックエアロゲル材料は、最初は一体的に相互接続されたゲルまたはエアロゲルのナノ構造を有するように形成されるが、その後、非一体型エアロゲルのナノ構造に亀裂、破壊またはセグメント化され得るエアロゲル材料を含む。モノリシックエアロゲルは、自立構造または強化(線維または発泡体)材料の形態をとることができる。比較すると、例としてLSBを使用すると、モノリシックエアロゲルに組み込まれた硫黄は、従来のプロセスを使用してスラリーに組み込まれた、同じ量の硫黄と比較して、理論的な容量に対してより効果的に利用することができる。
【0063】
モノリシックエアロゲル材料は、粒状エアロゲル材料と区別される。「粒状エアロゲル材料」という用語は、エアロゲル材料に含まれるエアロゲルの大部分(重量基準)が、微粒子、粒子、顆粒、ビーズまたは粉末の形態であるエアロゲル材料を指し、これらは一緒に(すなわち、ポリマー結合剤などの結合剤を介して)組み合わさる、または一緒に圧縮することができるが、個々の粒子間に相互接続されたエアロゲルのナノ構造を欠いている。集合的に、この形態のエアロゲル材料は、(モノリシック形態とは対照的に)粉末または粒子の形態を有すると言及される。単一構造を有する粉末の個々の粒子であるにもかかわらず、個々の粒子は、本明細書ではモノリスと見なされないことに留意されたい。エアロゲル粉末の電気化学セルへの統合は、典型的には、粉末からのペーストまたはスラリーの作成、基材へのキャスティングおよび乾燥を含み、任意選択で、カレンダ加工を含んでもよい。
【0064】
本開示の文脈の中で、「結合剤が控えめ」または「結合剤不含有」(またはその誘導体)という用語は、その材料を一緒に保持するための結合剤または接着剤を実質的に含まない材料を指す。例えば、モノリシックなナノ多孔質炭素材料は、その骨格が一体の連続的な相互接続構造として形成されるため、結合剤を含まない。結合剤が控えめであることの利点は、導電率および細孔の体積などに対する結合剤のあらゆる悪影響を回避することを含む。一方、エアロゲル粉末または粒子は、より大きな機能性材料を形成するために一緒に保持するために結合剤を必要とする。このようなより大きな材料は、本明細書ではモノリスであるとは考えられない。さらに、この「結合剤不含有」という用語は、結合剤の全使用を排除するものではない。例えば、本発明によるモノリシックエアロゲルは、エアロゲル材料の主表面に結合剤または接着剤を配置することによって、別のモノリシックエアロゲルまたは非エアロゲル材料に固定され得る。このようにして、結合剤は積層複合体を作製するために使用されるが、結合剤はモノリシックエアロゲル骨格自体の安定性を維持する機能を有さない。
【0065】
さらに、本開示のモノリシックポリマーエアロゲル材料または組成物は、エアロゲルを高密度化し、多孔度を最小限に低減しながら、エアロゲル骨格の著しい破壊または破砕なしに、最大95%の歪みで圧縮され得る。特定の実施形態では、圧縮されたポリマーエアロゲル材料または組成物は、続いて、本明細書に記載の様々な方法を使用して炭化され、ナノ多孔質炭素材料を形成する。圧縮量は、得られる炭素材料の厚さに影響を及ぼし、厚さは、本明細書が続くにつれてより明確になるように、容量に影響を及ぼすことが理解され得る。以下に記載される実施例は、本発明によって形成され企図される様々な厚さを示し、厚さは圧縮に基づいて調整可能である。したがって、複合体の厚さ(典型的には圧縮されたもの)は、最終的な複合体に必要な利点に基づいて、約10~1000μm、またはその中の任意のより狭い範囲とすることができる。本発明はまた、結合剤が必要とされ、粒径が最適化されるカーボンエアロゲルの粉末または粒子の形態を企図する。粒径の範囲は、約5~50μmであり得る。
【0066】
本発明によるカーボンエアロゲルなどのナノ多孔質炭素は、任意の適切な有機前駆体材料から形成することができる。そのような材料の例には、RF、PF、PI、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、アクリレートオリゴマー、ポリオキシアルキレン、ポリウレタン、ポリフェノール、ポリブタジエン、トリアルコキシシリル末端ポリジメチルシロキサン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリフルフラール、メラミン-ホルムアルデヒド、クレゾールホルムアルデヒド、フェノール-フルフラール、ポリエーテル、ポリオール、ポリイソシアネート、ポリヒドロキシベンズ、ポリビニルアルコールジアルデヒド、ポリシアヌレート、ポリアクリルアミド、様々なエポキシ、寒天、アガロース、キトサン、ならびにそれらの組み合わせおよび誘導体が含まれるが、これらに限定されない。これらの材料の任意の前駆体を使用して、得られた材料を作製および使用することができる。例示的な実施形態では、カーボンエアロゲルは、熱分解/炭化ポリイミド系エアロゲル、すなわちポリイミドの重合から形成される。さらにより具体的には、ポリイミド系エアロゲルは、Rhineらの米国特許第7,071,287号明細書および第7,074,880号明細書に記載されている1つ以上の方法論を使用して、例えば、ポリ(アミド)酸のイミド化および超臨界流体を使用した、得られたゲルの乾燥によって、製造することができる。ポリイミドエアロゲル(およびそれに由来するカーボンエアロゲル)を製造する他の適切な方法も、本明細書で企図されており、例えば、Suzukiらの米国特許第6,399,669号明細書;Leventisらの米国特許第9,745,198号明細書;Leventis et al.,Polyimide Aerogels by Ring-Opening Metathesis Polymerization(ROMP),Chem.Mater.2011,23,8,2250-2261;Leventis et al.,Isocyanate-Derived Organic Aerogels:Polyureas,Polyimides,Polyamides,MRS Proceedings,1306(2011),Mrsf10-1306-bb03-01.doi:10.1557/opl.2011.90;Chidambareswarapattar et al.,One-step room-temperature synthesis of fibrous polyimide aerogels from anhydrides and isocyanates and conversion to isomorphic carbons,J.Mater.Chem.,2010,20,9666-9678;Guo et al.,Polyimide Aerogels Cross-Linked through Amine Functionalized Polyoligomeric Silsesquioxane,ACS Appl.Mater.Interfaces 2011,3,546-552;Nguyen et al.,Development of High Temperature,Flexible Polyimide Aerogels,American Chemical Society,proceedings published 2011;Meador et al.,Mechanically Strong,Flexible Polyimide Aerogels Cross-Linked with Aromatic Triamine,ACS Appl.Mater.Interfaces,2012,4(2),pp 536-544;Meador et al.,Polyimide Aerogels with Amide Cross-Links:A Low Cost Alternative for Mechanically Strong Polymer Aerogels,ACS Appl.Mater.Interfaces 2015,7,1240-1249;Pei et al.,Preparation and Characterization of Highly Cross-Linked Polyimide Aerogels Based on Polyimide Containing Trimethoxysilane Side Groups,Langmuir 2014,30,13375-13383に記載されているものが挙げられる。次いで、得られたポリイミドエアロゲルを熱分解して、ポリイミド由来のカーボンエアロゲルを形成する。
【0067】
本開示の例示的な実施形態によるカーボンエアロゲル、例えばポリイミド由来のカーボンエアロゲルは、少なくとも約4重量%の残留窒素含有量を有することができる。例えば、本明細書に開示される実施形態によるカーボンエアロゲルは、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.5重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約2重量%、少なくとも約3重量%、少なくとも約4重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約6重量%、少なくとも約7重量%、少なくとも約8重量%、少なくとも約9重量%、少なくとも約10重量%、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲の残留窒素含有量を有することができる。
【0068】
本開示の特定の実施形態では、乾燥ポリマーエアロゲル組成物は、有機(例えばポリイミド)エアロゲルの炭化のために、200℃以上、400℃以上、600℃以上、800℃以上、1000℃以上、1200℃以上、1400℃以上、1600℃以上、1800℃以上、2000℃以上、2200℃以上、2400℃以上、2600℃以上、2800℃以上、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲の処理温度に供することができる。例示的な実施形態において、乾燥ポリマーエアロゲル組成物は、約1000℃~約1100℃の範囲の処理温度、例えば約1050℃に供することができる。理論に束縛されるものではないが、エアロゲル組成物の導電率は炭化温度と共に増加することが本明細書では企図される。
【0069】
本開示の文脈の中で、「導電率」という用語は、電流を伝導するか、または他の方法で電子がそこを通ってまたはその中を流れることを可能にする材料の能力の測定値を指す。導電率は、具体的には、材料の単位の大きさ当たりの材料の導電率/サセプタンス/アドミタンスとして測定される。これは、典型的には、S/m(シーメンス/メートル)またはS/cm(シーメンス/センチメートル)として記録される。材料の導電率または抵抗率は、例えば、これらに限定されないが、直列4点抵抗率(ASTM F84-99の二重構成試験方法を使用)を含む、当技術分野で公知の方法によって決定することができる。本開示の文脈の中では、特に明記しない限り、導電率の測定値は、電圧(V)を電流(I)で割って測定することによって得られるASTM F84-抵抗率(R)測定に従って取得される。特定の実施形態では、本開示のエアロゲル材料または組成物は、約1S/cm以上、約5S/cm以上、約10S/cm以上、20S/cm以上、30S/cm以上、40S/cm以上、50S/cm以上、60S/cm以上、70S/cm以上、80S/cm以上、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲の導電率を有する。
【0070】
本開示の文脈の中で、「電気化学的に活性な種」という用語は、エネルギー貯蔵装置内でイオンを受容および放出することができる添加剤を指す。例としてLSBを使用すると、カソード内の電気化学的に活性な種は、放電中にリチウムイオンを受け入れ(したがって、硫化リチウム種への変換を経る)、充電中にリチウムイオンを放出する。電気化学的に活性な種は、ナノ多孔質炭素との直接/物理的結合を有することによって、カソード内で安定化することができる。特定の実施形態では、ナノ多孔質炭素ネットワークは、電気化学的に活性な種の周りに相互接続構造を形成する。電気化学的に活性な種は、複数の点でナノ多孔質炭素に結合している。電気化学的に活性な種の例は硫黄であり、これは硫化リチウムに変換すると膨張する。しかし、硫黄はナノ多孔質カーボン(エアロゲル)との複数の接続点を有するため、硫黄は細孔内に保持され、活性のままであり得る。ナノ多孔質炭素材料に組み込まれる硫黄の量は、LSBの従来のカソードと比較して増強され得る。特定の実施形態では、本開示のエアロゲル材料または組成物は、カソードの約5重量%とカソードの約90重量%の間、またはこれらの2つの値の間の任意の範囲の硫黄含有量を有する。
【0071】
本開示の文脈の中で、「圧縮強度」、「曲げ強度」、および「引張強度」という用語は、それぞれ圧縮力、曲げる力または屈曲する力、および引張る力または引く力の下での破断または破壊に対する材料の耐性を指す。これらの強度は、具体的には、荷重/力に抵抗する単位面積当たりの荷重/力の量として測定される。これは、典型的には、ポンド/平方インチ(psi)、メガパスカル(MPa)、またはギガパスカル(GPa)として記録される。とりわけ、材料の圧縮強度、曲げ強度、および引張強度は、材料の構造的完全性に集合的に寄与し、これはLSBにおいて有益である。機械的強度の指標であるヤング率を特に言及すると、この弾性率は、例えば、限定はしないが、Standard Test Practice for Instrumented Indentation Testing(ASTM E2546,ASTM International,West Conshocken,PA);またはStandardized Nanoindentation(ISO 14577,International Organization for Standardization、スイス)を含む、当技術分野で公知の方法によって判定することができる。本開示の文脈の中で、ヤング率の測定値は、特に明記しない限り、ASTM E2546およびISO 14577に従って取得されている。特定の実施形態では、本開示のエアロゲル材料または組成物は、約0.2GPa以上、0.4GPa以上、0.6GPa以上、1GPa以上、2GPa以上、4GPa以上、6GPa以上、8GPa以上、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲のヤング率を有する。
【0072】
本開示の文脈の中で、「細孔径の分布」という用語は、多孔質材料のサンプル体積内の各細孔径の統計的分布または相対的な量を指す。より狭い細孔径の分布は、狭い範囲の細孔径での比較的大きな割合の細孔を指し、したがって電気化学的に活性な種を取り囲むことができる細孔の量を最適化し、細孔の体積の使用を最大化する。逆に、より広い細孔径の分布は、狭い範囲の細孔径での比較的小さい割合の細孔を指す。したがって、細孔径の分布は、典型的には、細孔の体積の関数として測定され、細孔径の分布のチャートの主なピークの半値全幅の単位のサイズとして記録される。多孔質材料の細孔径の分布は、例えば、細孔径の分布を計算することができる窒素吸脱着による表面積および多孔度分析器を含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知の方法によって判定することができる。本開示の文脈の中で、細孔径の分布の測定値は、特に明記しない限り、この方法に従って取得される。特定の実施形態では、本開示のエアロゲル材料または組成物は、約50nm以下、45nm以下、40nm以下、35nm以下、30nm以下、25nm以下、20nm以下、15nm以下、10nm以下、5nm以下、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲の比較的狭い細孔径の分布(半値全幅)を有する。
【0073】
本開示の文脈の中で、「細孔の体積」という用語は、多孔質材料のサンプル内の細孔の総体積を指す。細孔の体積は、具体的には、多孔質材料内の空隙の空間の体積として測定され、その空隙の空間は、測定可能であってもよく、および/または別の材料、例えば硫黄などの電気化学的活性種が接近可能であってもよい。これは、通常、立方センチメートル/グラム(cm3/gまたはcc/g)として記録される。多孔質材料の細孔の体積は、例えば、細孔径の体積を計算することができる窒素吸脱着による表面積および多孔度分析器を含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知の方法によって判定することができる。本開示の文脈の中で、細孔の体積の測定値は、特に明記しない限り、この方法に従って取得される。特定の実施形態では、本開示のエアロゲル材料または組成物(電気化学的に活性な種、例えば硫黄を組み込むことなく)は、約1cc/g以上、1.5cc/g以上、2cc/g以上、2.5cc/g以上、3cc/g以上、3.5cc/g以上、4cc/g以上、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲の比較的大きな細孔の体積を有する。他の実施形態では、本開示のエアロゲル材料または、組成物(電気化学的に活性な種、例えば、硫黄を組み込んでいる)は、約0.10cc/g以上、0.3cc/g以上、0.6cc/g以上、0.9cc/g以上、1.2cc/g以上、1.5cc/g以上、1.8cc/g以上、2.1cc/g以上、2.4cc/g以上、2.7cc/g以上、3.0cc/g以上、3.3cc/g以上、3.6cc/g以上、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲の細孔の体積を有する。
【0074】
本開示の文脈の中で、「多孔度」という用語は、細孔の壁に結合した別の材料(例えば、硫黄などの電気化学的に活性な種)を含まない細孔の体積比を指す。明確化および例示の目的のために、LSBにおける一次カソード材料としての硫黄ドープカーボンエアロゲルの特定の実施態様では、多孔度は、元素状の硫黄を含んだ後の空隙の空間を指すことに留意されたい。多孔度は、例えば、エアロゲル材料の細孔の体積とそのかさ密度との比を含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知の方法によって判定され得る。本開示の文脈の中で、多孔度の測定値は、特に明記しない限り、この方法に従って取得される。特定の実施形態では、本開示のエアロゲル材料または組成物は、約80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲の多孔度を有する。
【0075】
細孔の体積と多孔度が、細孔構造の同じ特性、すなわち細孔構造内の「空いている空間」に対する異なる尺度であるということに留意されたい。例えば、硫黄がナノ多孔質炭素材料の細孔内に囲まれた電気化学的活性種として使用される場合、細孔の体積および多孔度は、「空」の空間、すなわち炭素または電気化学的活性種によって利用されない空間を指す。見て分かるように、予備炭素化されたナノ多孔質材の、例えば圧縮による緻密化は、他の特性の中でも、細孔の体積および多孔度に影響を及ぼし得る。
【0076】
本開示の文脈の中で、「分布からの最大ピークにおける細孔径」という用語は、細孔径の分布を示すグラフ上の識別可能なピークでの値を指す。分布からの最大ピークにおける細孔径は、最大のパーセンテージの細孔が形成される細孔径として具体的に測定される。これは、典型的には、細孔径の任意の単位長さ、例えばμmまたはnmとして記録される。分布からの最大ピークにおける細孔径は、例えば、それだけに限らないが、細孔径の分布を計算することができ、最大ピークでの細孔径を判定することができる窒素吸脱着による表面積および多孔度分析器を含む、当技術分野で公知の方法によって判定することができる。本開示の文脈の中で、分布からの最大ピークでの細孔径の測定値は、特に明記しない限り、この方法に従って取得される。特定の実施形態において、本開示のエアロゲル材料または組成物は、約150nm以下、140nm以下、130nm以下、120nm以下、110nm以下、100nm以下、90nm以下、80nm以下、70nm以下、60nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下、10nm以下、5nm以下、2nm以下、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲の分布からの最大ピークにおける細孔径を有する。
【0077】
本開示の文脈の中で、「ストラット幅」という用語は、原線維形態を有するエアロゲルを形成するナノストラット、ナノロッド、ナノ線維、またはナノフィラメントの平均直径を指す。これは、典型的には、任意の単位長さ、例えばμmまたはnmとして記録される。ストラット幅は、例えば、限定はしないが、走査型電子顕微鏡画像分析を含む、当技術分野で公知の方法によって判定することができる。本開示の文脈の中で、ストラット幅の測定値は、特に明記しない限り、この方法に従って取得される。特定の実施形態では、本開示のエアロゲル材料または組成物は、約10nm以下、9nm以下、8nm以下、7nm以下、6nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、2nm以下、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲のストラット幅を有する。約2~5nmの範囲のストラット幅などのより小さいストラット幅は、より多くの量のストラットがネットワーク内に存在することを可能にし、したがって電気化学的活性種と接触し、ひいてはより多くの電気化学的活性種が複合体内に存在することを可能にする。これにより、導電性および機械的強度が向上する。
【0078】
本開示の文脈の中で、「原線維形態」という用語は、ストラット、ロッド、線維、またはフィラメントを含むナノ多孔質炭素(例えば、エアロゲル)の構造形態を指す。例えば、実施形態では、ジメチルアセトアミド(DMAC)などの溶媒の選択は、そのような形態の生成に影響を及ぼし得る。さらに、特定の実施形態では、カーボンエアロゲルがポリイミドに由来する場合、結晶性ポリイミドは、線状ポリマーを形成するポリイミドから生じる。以下の実施例でより明確になるように、特定の実施形態は、驚くべきことに、相互接続されたポリマー構造として原線維形態を含むことが観察されており、それにおいてポリイミド前駆体の既知の挙動に基づいて、長い線状構造が予想された。比較して、ナノ多孔質炭素の生成物形態は、代わりに、カーボンエアロゲルの原線維形態が持続する粒子状の性質または粉末であってもよい。本明細書が続くにつれて明らかになるように、特にナノ多孔質炭素が特定の用途、例えばLSB中のカソードの材料として実施される場合、原線維形態は、機械的安定性/強度および導電率などの粒子形態を超える特定の利点をもたらすことができる。この原線維形態は、モノリシック形態および粉末形態の両方のナノ多孔質炭素に見出すことができる、言い換えれば、モノリシック炭素は、原線維形態を有することができ、エアロゲル粉末/粒子は原線維形態を有することができることに留意されたい。さらに、特定の実施形態では、ナノ多孔質炭素材料が硫黄などの添加剤を含有する場合、炭素材料に固有の原線維ナノ構造が保存され、添加剤粒子間の架橋として機能する。
【0079】
本開示の文脈の中で、「サイクル寿命」という用語は、その容量がその元の定格容量の約80%未満になる前にカソードまたは電池(例えば、LSB)が支えることができる完全な充電/放電サイクルの数を指す。サイクル寿命は、経時的に大きく影響されない様々な要因、例えば、下にある基材(例えば、カーボンエアロゲル)の機械的強度、エアロゲル内の硫黄の結合性、エアロゲルネットワーク内の電解質への硫黄またはポリスルフィドの溶解、およびエアロゲルの相互接続性の維持によって影響され得る。これらの要因が実際には経時的に比較的変化しないままであることは、本発明の特定の実施形態の驚くべき態様であることに留意されたい。サイクル寿命は、当技術分野で公知の方法、例えば非限定的にサイクル試験などによって決定することができ、それにおいては電池セルが所定の電流の速度および動作電圧で繰り返し充電/放電サイクルを受ける。本開示の文脈の中で、サイクル寿命の測定値は、特に明記しない限り、この方法に従って取得される。本開示の特定の実施形態では、エネルギー貯蔵装置、例えば電池、またはその電極は、約25サイクル以上、50サイクル以上、75サイクル以上、100サイクル以上、200サイクル以上、300サイクル以上、500サイクル以上、1000サイクル以上、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲のサイクル寿命を有する。
【0080】
本開示の文脈の中で、「容量」という用語は、電池が貯蔵することができる特定のエネルギーまたは電荷の量を指す。容量は、具体的には、単位質量当たりに電池が経時的に供給することができる放電電流として測定される。これは、典型的には、総電極質量1グラム当たりのアンペア時またはミリアンペア時、Ah/gまたはmAh/gとして記録される。電池(および特にカソード)の容量は、例えば、セルの電圧が放電電圧値の末端に達するまで、完全に充電されたセルに固定の一定電流の負荷を印加すること;一定電流を乗じた放電電圧の末端に達するまでの時間が放電容量であること;放電容量を電極材料の重量または体積で割ることによって、比容量および体積測定的容量を判定することができることを含むが、これに限定されない、当技術分野で公知の方法によって判定することができる。本開示の文脈の中で、容量の測定値は、特に明記しない限り、この方法に従って取得される。特定の実施形態では、本開示のエアロゲル材料または組成物は、約200mAh/g以上、300mAh/g以上、400mAh/g以上、500mAh/g以上、600mAh/g以上、700mAh/g以上、800mAh/g以上、900mAh/g以上、1000mAh/g以上、1100mAh/g以上、1200mAh/g以上、1300mAh/g以上、1400mAh/g以上、1500mAh/g以上、1600mAh/g以上、1700mAh/g以上、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲の容量を有する。
【0081】
特定の実施形態では、本発明は、元素状硫黄を取り囲む、含有する、または封入する一連の細孔を有するPI由来ナノ多孔質炭素材料(例えば、カーボンエアロゲル)である。ナノ多孔質炭素材料は、その最適な細孔構造、機能的細孔形態および高い機械的完全性のために、硫黄の理想的なホストとして機能する。ナノ多孔質炭素材料(カーボンエアロゲル)は、狭い細孔径の分布を特徴とし、相互接続されたネットワーク全体にわたって、硫黄およびポリスルフィド種の一貫した挙動をもたらす。炭素材料自体は、従来のLSBの大きな欠点、すなわち硫黄およびポリスルフィド種の高い抵抗率を克服するのに役立つ高い導電率をさらに特徴とする。現在のナノ多孔質炭素材料の上記の特徴は、個々におよび組み合わせて、得られるLSBシステムまたはそのカソードのサイクル寿命およびセル寿命を増加させる特定の利点を与える。
【0082】
実施形態では、本発明は、硫黄ドープのポリイミド由来のカーボンエアロゲルを含むLSBのカソードであり、元素状硫黄は、カーボンエアロゲルの細孔内で囲まれている(
図2A~
図2Cを参照されたい)。見て分かるように、カーボンエアロゲル細孔の構造は、必要性(例えば、LSBにおける電極のサイズまたは容量)に基づいて異なる特性(例えば、細孔の体積、細孔径、細孔径の分布、および表面積)を有するように調整可能である。別の実施形態では、本発明は、そのようなカソードを含むLSBまたはその電気化学セルの電極である。LSBでは、バランスのとれた容量を達成するために、硫黄カソード(硫黄ドープナノ多孔質炭素材料または硫黄ドープカーボンエアロゲルとして本明細書に記載されるものなど)は、最も一般的には、リチウム金属アノードと対になっている。これらの硫黄カソードはまた、例えばケイ素系、ケイ素ドープ、またはケイ素優勢のアノード材料を含む、高容量を達成することができる非リチウム金属アノードと対にすることができる。またさらなる実施形態では、本発明は、そのようなエネルギー貯蔵装置を組み込む装置またはシステムである。
【0083】
特定の実施形態では、本発明は、カーボンエアロゲルなどの硫黄ドープの連続多孔質炭素複合体を形成または製造する方法である。芳香族基および/または脂肪族基をそれぞれ含むことができるジアミンおよび二無水物などのポリイミド前駆体を、適切な溶媒(例えば、極性、非プロトン性溶媒)中で混合する。次いで、イミド化ゲル化触媒を添加して、ゲル化のための混合を開始させる。代替的な実施形態では、イミド化は熱イミド化によって達成することができ、この場合、任意の適切な温度および時間の範囲が企図される(例えば、約100℃~200℃で約20分~約8時間、その後、約300℃~400℃で約20分~約1時間加熱する)。次いで、ゲル化した混合物を乾燥させて連続多孔質ポリイミド複合体を得、この場合乾燥は亜臨界および/または超臨界二酸化炭素を使用して行うことができる。任意選択的に、ポリイミド複合体を圧縮して密度を増加させることができ、圧縮量に基づいて約1.5g/ccまで調整可能である。例示的な実施形態では、ポリイミド複合体は、複合体を熱分解する前に約80%を超える歪みに圧縮することができる。圧縮が行われたかどうかにかかわらず、ポリイミド複合体は熱分解されて連続多孔質炭素を生じ、炭素は約5%~99%の間の多孔度を含む。特定の実施形態では、熱分解は、約750℃~約1600℃、例えば約1050℃の最高温度で、任意選択で約1600℃~約3000℃の黒鉛化を用いて実施することができる。
【0084】
炭化後、任意の適切な方法を使用して硫黄を多孔質炭素のネットワークに組み込み、硫黄ドープの連続多孔質炭素複合体を形成する。硫黄を炭素ネットワークに組み込む例示的な方法は、溶融注入によるものである。この組み込みは、最適な硫黄重量負荷および保持された多孔度を達成するように制御することができる。例えば、本開示のエアロゲル材料または組成物は、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、約85重量%、約90重量%、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲の硫黄含有量を有することができる。例示的な実施形態では、本開示の硫黄ドープナノ多孔質炭素材料は、約60重量%~75重量%、例えば約70重量%の範囲の硫黄含有量を有することができる。本開示のエアロゲル材料または組成物は、10mg/cm2以上、8mg/cm2以上、7mg/cm2以上、6mg/cm2以上、5mg/cm2以上、4mg/cm2以上、3mg/cm2以上、2.5mg/cm2以上、2mg/cm2以上、1.5mg/cm2以上、1mg/cm2以上、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲の硫黄の面積質量負荷を有することができる。例示的な実施形態では、本開示の硫黄ドープナノ多孔質炭素材料は、約1.5mg/cm2~約2.5mg/cm2の範囲、例えば約2mg/cm2の硫黄の面質量負荷を有することができる。
【0085】
多孔質炭素のネットワークへの硫黄の組み込みは、硫黄ドープ炭素複合体の多孔度を、ドープされていない材料の多孔度から低下させる。その結果、非ドープ材料の細孔径よりも、硫黄ドープ複合体の方が、細孔径が小さくなる。別の例では、または溶融注入と組み合わせて、天然の炭素ネットワークは、ネットワーク内の封じ込めを強化し、サイクル寿命容量を安定化させるのを助けるために、硫黄およびポリスルフィドに対する親和性を有する化学官能基で表面処理することができる。さらに別の実施形態では、炭化後に添加される硫黄の化学的または物理的適応を助ける添加剤を、ゲル前駆体(すなわち、プレゲル化)と共に含めることができる。
【0086】
特定の実施形態では、炭素硫黄複合体は、モノリスまたは自立構造であってもよく、基材の上または外で作成されてもよく、または粉末形態に微粉化されてもよい。さらに、複合体は、不織布または織布材料(例えば、線維、発泡体など)の有無にかかわらず強化され得る。任意選択的に、炭素硫黄複合体は、ポリスルフィドの拡散を抑制し、したがって高いサイクル寿命を保持するために、単独でまたは他の適切な添加剤と組み合わせて、窒素で選択的にドープされてもよい。
【0087】
特定の実施形態において、本開示の硫黄ドープナノ多孔質炭素材料または組成物は、約150nm以下、140nm以下、130nm以下、120nm以下、110nm以下、100nm以下、90nm以下、80nm以下、70nm以下、60nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下、10nm以下、5nm以下、2nm以下、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲の分布からの最大ピークにおける細孔径を有する。さらに、本明細書では、細孔径は必要に応じて調整可能であると考えられる。例えば、細孔径は、硫黄ドープ炭素材料が電池に組み込まれるときの効率的な電池の動作に十分な量の電解質に対応するように調整することができる。本明細書で教示される細孔径を調整する5つの主要な方法がある。第1に、固形分の量、具体的にはポリイミド前駆体モノマー(例えば、芳香族または脂肪族ジアミンおよび芳香族または脂肪族二無水物)の量は、細孔径を調整することができる。より小さい細孔径は、相互接続がより密接に行われるように利用可能な空間がより少ないために、流体の単位体積当たりの固体の量がより多いことに起因する。ストラット幅は、使用される固形物の量にかかわらず、測定可能に変化しないことに留意されたい。固形物の量は、ネットワークの密度に関連する。
【0088】
細孔径を調整する別の方法は、ポリイミド状態または炭素状態のいずれかで複合体に放射線(例えば、電波、マイクロ波、赤外線、可視光、紫外線、X線、ガンマ線)を使用することである。放射線は酸化作用を有し、その結果、表面積の増加、細孔径の増加、および細孔径の分布の広がりをもたらす。第3に、細孔径はポリイミド複合体の巨視的圧縮によって影響を受ける。以下の実施例で証明されるように、細孔径は圧縮と共に減少する。
【0089】
細孔径を調整するさらに別の方法は、ポリイミド状態または炭素状態のいずれかでの複合体のイオンボンバードである。イオンボンバードの効果は、指定された方法に依存する。例えば、何かが添加され、細孔径の減少をもたらす付加的イオンボンバード(例えば、CVD)がある。細孔径が増大する破壊的イオンボンバードもある。最後に、細孔径は、例えば二酸化炭素または一酸化炭素の存在、化学的に活性な環境、水素還元環境などの異なるガスの環境下での熱処理によって、調整(増加または減少)することができる。例えば、活性化の場合に質量が除去され、細孔径が増加し、表面積が増加する二酸化炭素環境は、活性炭を作ることが知られている。
【実施例】
【0090】
以下の実施例は、例示のみを目的として記載されており、決して本発明の様々な実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。
実施例1:PI複合体
【0091】
DMAC溶媒中、モル比1:1で、目標密度0.05g/cc(低密度)および0.125g/cc(高密度)で、ピロメリット酸二無水物(PMDA)と1,4-フェニレンジアミン(PDA)とから、PIゲルを作成した。前駆体を室温で3時間混合し、次いで、無水酢酸(AA)を4.3モル比でPMDAに添加し、溶液と2時間混合した。イミド化をピリジン(Py)で触媒した。
【0092】
PI複合体を作成するために、溶液をテフロン(登録商標)容器内で約6mmの厚さでキャストした。ゲルを室温で一晩硬化させ、続いて超臨界CO2の抽出の前に68℃でエタノール交換した。PIエアロゲル複合体を不活性雰囲気下で1時間熱分解して炭化し、モノリシックPI複合体を形成した。より低い目標密度PI(目標密度0.05g/cc)を850℃で熱分解した。得られたカーボンエアロゲル材料は、629.9m2/gの表面積、4.0cc/gの細孔の体積、および20.8nmの細孔径を有していた。より高い目標密度PI(0.125g/cc)を1050℃で熱分解した。得られたカーボンエアロゲル材料は、553.8m2/gの表面積、1.7cc/gの細孔の体積、および10.9nmの細孔径を有していた。多孔質構造のパラメータは、Quadrasorbガス収着分析器(米国ボイントンビーチのQuantachrome Instruments)を使用して、-196℃での窒素吸着等温線(SBET-表面積;Vt-全細孔の体積)から計算した。細孔の幅(nm)は、Barrett-Joyner-Halendaモデルを使用して推定した。分析前に試料を100mTorrおよび60℃で12時間脱気した。
実施例2:PI複合体の硫黄ドープ
【0093】
各モノリシックPI複合体を粉砕し、粉末形態にした。得られた粉末状PI材料を硫黄粉末と30:72(重量%)の比率で混合し、混合物を約10分間粉砕した。次いで、硫黄および粉末PI混合物をバイアルに入れ、Ar雰囲気中155℃で12時間アニールした。得られた硫黄ドープの炭素材料は、約70重量%の硫黄を含有していた。
図3Aおよび
図3Bは、硫黄ドープの炭素材料のSEM画像を示す。より低い目標密度PI(0.05g/cc目標密度)から作成した硫黄ドープカーボンエアロゲル材料は、109m
2/gの表面積、0.82cc/gの細孔の体積、および17.6nmの細孔径を有していた。より高い目標密度PI(0.125g/cc)から作成された硫黄ドープカーボンエアロゲル材料は、29m
2/gの表面積、0.12cc/gの細孔の体積、および12.4nmの細孔径を有していた。実施例1と同様の方法を使用して多孔質構造のパラメータを算出した。
実施例3:硫黄ドープ炭素材料を使用して作成された電極
【0094】
実施例2の硫黄ドープ炭素材料を30分間乾式粉砕し、次いで、N-メチルピロリドン(NMP)中80重量%の硫黄ドープ炭素材料、10重量%のPVDF(ポリフッ化ビニリデン)および10重量%のSuper C45(導電性炭素)で(8:1:1の比)、PVDFおよびSuper C45と混合して、スラリーを作製した。スラリーを30分間湿式粉砕した。得られたスラリーをアルミニウム箔にドクターブレードでコーティングし、真空中で12時間乾燥させた。乾燥後、Sの面積質量負荷が約2mg/cm2の電極を得た。
実施例4:硫黄ドープ炭素電極から構築されたハーフセルユニット
【0095】
対電極としてリチウム箔を用い、電極間に微孔質セパレータとしてCELGARD 2500を用い、実施例3に従って作成した電極を用いて、ハーフセルユニット(2032個のコインセル)を構築した。電解質は、ジメチルエーテル(DME)/1,3-ジオキソラン(DOL)中1.0MのLiTFSI(重量比1:1)であった。
図4Aは、上記の実施例に従って作成された低密度の硫黄ドープ炭素から作成された電極の0.1Cでの第1のサイクルのハーフセルの容量を示す。
図4Bは、上記の実施例に従って作成された低密度の硫黄ドープ炭素から作成された電極の1Cでの第1のサイクルのハーフセルの容量を示す。
図5Aは、上記の実施例に従って作成された高密度の硫黄ドープ炭素から作成された電極の0.1Cでの第1のサイクルのハーフセルの容量を示す。
図5Bは、上記の実施例に従って作成された高密度の硫黄ドープ炭素から作成された電極の1Cでの第1のサイクルのハーフセルの容量を示す。
図6は、上記の実施例に従って作成された低密度の硫黄ドープ炭素から作成された電極のハーフセルのサイクル性能を示す。
図7は、上記の実施例に従って作成された高密度の硫黄ドープ炭素から作成された電極のハーフセルのサイクル性能を示す。
PIエアロゲルを製造する代替方法
【0096】
本明細書で論じられている先行の例は、PIエアロゲルを形成する特定の方法論を教示している。特定の実施形態では、本発明は、PIエアロゲルを形成する代替方法も企図する。このような代替的な方法論の非網羅的かつ非限定的な例を一式、これより論じる。
【0097】
例えば、Suzukiらの米国特許第6,399,669号明細書は、PI乾燥ゲル(エアロゲル)を作製する4つの関連する方法を教示している。第1の方法では、PI前駆体を合成した後、PI前駆体からイミドを形成してポリイミドを製造する。PI溶液または膨潤バルクを作成し、溶液/膨潤バルクをゲル化させてPI湿潤ゲルを生成する。この湿潤ゲルを乾燥させ、PI乾燥ゲル(エアロゲル)を得る。第2の方法では、PI前駆体を合成した後、PI前駆体溶液または膨潤バルクを作成する。溶液/膨潤バルクをゲル化して、PI前駆体湿潤ゲルを生成する。次いで、PI前駆体からイミドを形成して、PI湿潤ゲルを形成する。この湿潤ゲルを乾燥させ、PI乾燥ゲル(エアロゲル)を得る。第3の方法では、PI前駆体を合成した後、PI前駆体溶液または膨潤バルクを作成する。次いで、PI前駆体をゲル化させてPI湿潤ゲルを生成しながら、PI前駆体からイミドを形成する。第3の方法では、PI前駆体を合成した後、PI前駆体溶液または膨潤バルクを作成する。溶液/膨潤バルクをゲル化して、PI前駆体湿潤ゲルを生成する。次いで、この湿潤ゲルを乾燥させて、PI前駆体乾燥ゲルを生成する。次いで、PI前駆体乾燥ゲルからイミドを形成して、PI乾燥ゲル(エアロゲル)を形成する。
【0098】
さらなる例として、Leventisら[Polyimide Aerogels by Ring-Opening Metathesis Polymerization(ROMP),Chem.Mater.2011,23,8,2250-2261]は、ROMP法を使用したPIエアロゲルの形成を論じている。重合性基でエンドキャップされた低分子量イミド化オリゴマーを得て、重合(例えば、ROMP)触媒と混合する。こうして重合が開始され、架橋ポリイミドが生成される。このポリイミドをゲル化させ、乾燥させてPIエアロゲルを形成する。Leventisら[米国特許第9,745,198号明細書;Chidambareswarapattar et al.,One-step room-temperature synthesis of fibrous polyimide aerogels from anhydrides and isocyanates and conversion to isomorphic carbons,J.Mater.Chem.,2010,20,9666-9678]はまた、二無水物(例えば、PMDA)をイソシアネート(例えば、4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタンまたはメチレンジパラフェニルジイソシアネート)と混合してゾルゲル材料を形成することによる、PIエアロゲルの形成を、教示している。次いで、そのゾル-ゲル材料を乾燥させてPIエアロゲルを製造する。Leventisら[Isocyanate-Derived Organic Aerogels:Polyureas,Polyimides,Polyamides,MRS Proceedings,1306(2011),Mrsf10-1306-bb03-01.doi:10.1557/opl.2011.90]はまた、DESMODUR N 3300A、DESMODUR RE、およびMONDUR CD(すべてBAYER CORPから入手)がイソシアネートとして利用され得ることを記している。
【0099】
別の方法論において、Guoら[Polyimide Aerogels Cross-Linked through Amine Functionalized Polyoligomeric Silsesquioxane,ACS Appl.Mater.Interfaces 2011,3,546-552]は、アミノシルセスキオキサンを、無水物基でエンドキャップされたポリアミド酸オリゴマーと反応させることによるPIエアロゲルの形成を論じている。生成物をピリジンを用いてイミド化し(熱イミド化も考えられるが)、ゲル化させ、続いて乾燥させてPIエアロゲルを得る。Nguyenら[Development of High Temperature,Flexible Polyimide Aerogels,American Chemical Society,proceedings published 2011]には、ジアミンと二無水物を混合し、イミド化した後、マルチアミノ化合物(例えば、1,3,5-トリス(4-アミノフェノキシベンゼン))と反応させることにより、分岐ポリイミドを生成することが記載されている。次いで、この生成物を4,4’-メチレンジイソシアネートと反応させ、乾燥させてPI-尿素エアロゲルを形成する。
【0100】
他の実施形態では、Meadorら[Mechanically Strong,Flexible Polyimide Aerogels Cross-Linked with Aromatic Triamine,ACS Appl.Mater.Interfaces,2012,4(2),pp 536-544]は、無水物基でエンドキャップされたポリアミド酸オリゴマーを溶液中の芳香族トリアミンで架橋し、続いてイミド化することによるPIゲルの生成を論じている。得られた湿潤物を乾燥させて、PIエアロゲルを形成する。さらに、Meadorら[Polyimide Aerogels with Amide Cross-Links:A Low Cost Alternative for Mechanically Strong Polymer Aerogels,ACS Appl.Mater.Interfaces 2015,7,1240-1249]は、アミンキャップオリゴマーを1,3,5-ベンゼントリカルボニルトリクロリドと架橋することによるPIゲルの形成を論じている。得られたゲルを乾燥させて、PIエアロゲルを形成した。
【0101】
さらに別の実施形態では、Peiら[Preparation and Characterization of Highly Cross-Linked Polyimide Aerogels Based on Polyimide Containing Trimethoxysilane Side Groups,Langmuir 2014,30,13375-13383]は、酸クロリド側基および3-アミノプロピルトリメトキシシランを含有するポリイミドの縮合生成物であった、トリメトキシシラン側基を含有するポリイミドからPIエアロゲルを製造する。得られたゲルを乾燥させて、PIエアロゲルを形成した。
【0102】
これらの方法のいずれにおいても、グラフェンの懸濁液を添加することができる(Zhang et al.,Graphene/carbon aerogels derived from graphene crosslinked polyimide as electrode materials for supercapacitors,RSC Adv.,2015,5,1301を参照されたい)。
【0103】
これらの方法の各々は、ポリイミドエアロゲルをもたらすことができ、本発明は、そのようなポリイミドエアロゲルを製造するための任意の適切な方法を企図する。本発明の特定の実施形態によれば、どの方法を利用してPIエアロゲルを製造するかにかかわらず、得られたPIエアロゲルを熱分解してPI由来カーボンエアロゲルを形成することができる。本明細書で論じられる特定の実施形態によれば、硫黄などの添加剤も同様に導入することができる。
【0104】
すべての参照した刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、参照により本明細書に組み込まれる、参照における用語の定義または使用が、本明細書で提供されるその用語の定義と矛盾するまたは逆である場合、本明細書で提供されるその用語の定義が適用され、参照におけるその用語の定義は無視されるべきである。
【0105】
上記の利点、および上記の説明から明らかになる利点は、効率的に達成される。本発明の範囲から逸脱することなく上記の構成に特定の変更を加えることができるので、上記の説明に含まれるかまたは添付の図面に示されるすべての事項は、例示的なものとして解釈されるべきであり、限定的な意味で解釈されるべきではないことが意図される。
【0106】
また、以下の特許請求の範囲は、本明細書に記載された本発明の一般的および特定の特徴のすべて、および言語の問題としてそれらの間にあると言われる可能性のある本発明の範囲のすべての記述を網羅することを意図していることも理解されたい。
【国際調査報告】