(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-31
(54)【発明の名称】操作されたカプシドを有するアデノ随伴ウイルス
(51)【国際特許分類】
C12N 15/35 20060101AFI20220524BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20220524BHJP
C07K 14/015 20060101ALI20220524BHJP
C12N 5/077 20100101ALI20220524BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220524BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220524BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220524BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220524BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220524BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20220524BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALN20220524BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20220524BHJP
【FI】
C12N15/35
C12N7/01 ZNA
C07K14/015
C12N5/077
C12N5/10
A61K35/76
A61P9/00
A61K48/00
A61P43/00 105
C12Q1/02
C12Q1/6869 Z
C12N15/864 100Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021558819
(86)(22)【出願日】2020-03-31
(85)【翻訳文提出日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 US2020026009
(87)【国際公開番号】W WO2020205889
(87)【国際公開日】2020-10-08
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521087782
【氏名又は名称】テナヤ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リード, クリストファー エー.
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ79
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR48
4B063QS24
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084MA66
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA36
4C084ZB21
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA66
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA36
4C087ZB21
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA14
4H045BA15
4H045CA01
4H045DA01
4H045DA89
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、ハイスループットシーケンシングスクリーニングまたは合理的設計を使用して同定された操作されたカプシドタンパク質を有する組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを提供する。特に、本開示は、心臓細胞において形質導入効率の増加、細胞タイプ選択性の増加、および/または他の望ましい特性を有するAAV5ビリオンおよびカプシドタンパク質を提供する。本開示は、一般的にアデノ随伴ウイルスベクターによる遺伝子治療に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンであって:
a)親AAV5カプシドと比較して、S651A、S651G、S651V、S651L、S651I、T578A、T578G、T578V、T578L、T578I、T582A、T582G、T582V、T582L、またはT582Iから選択される1つまたは複数の置換を含むAAV5カプシドタンパク質;および
b)遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸
を含む、rAAVビリオン。
【請求項2】
前記AAV5カプシドタンパク質が、S651AまたはS651V;T578AまたはT578V;および/またはT582AもしくはT582Vから選択される2つまたはそれより多くの置換を含む、請求項2に記載のrAAVビリオン。
【請求項3】
前記AAV5カプシドタンパク質が、T582AおよびS651A置換を含む、請求項2に記載のrAAVビリオン。
【請求項4】
前記AAV5カプシドタンパク質が、T578AおよびT582A置換を含む、請求項3に記載のrAAVビリオン。
【請求項5】
前記AAV5カプシドタンパク質が、T578AおよびS651A置換を含む、請求項3に記載のrAAVビリオン。
【請求項6】
前記AAV5カプシドタンパク質が、S651A、T578A、およびT582A置換を含む、請求項3に記載のrAAVビリオン。
【請求項7】
前記AAV5カプシドタンパク質が、配列番号73と少なくとも95%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を共有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のrAAVビリオン。
【請求項8】
親AAV5カプシドと比較して、S651A、S651G、S651V、S651L、S651I、T578A、T578G、T578V、T578L、T578I、T582A、T582G、T582V、T582L、またはT582Iから選択される1つまたは複数の置換を含むAAV5カプシドタンパク質。
【請求項9】
S651AまたはS651V;T578AまたはT578V;またはT582AもしくはT582Vから選択される2つまたはそれより多くの置換を含む、請求項8に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【請求項10】
T582AおよびS651A置換を含む、請求項9に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【請求項11】
T578AおよびT582A置換を含む、請求項9に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【請求項12】
T578AおよびS651A置換を含む、請求項9に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【請求項13】
S651A、T578A、およびT582A置換を含む、請求項9に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【請求項14】
配列番号73と少なくとも90%の同一性を共有する、請求項8から13のいずれか一項に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【請求項15】
配列番号73と少なくとも95%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を共有する、請求項8から13のいずれか一項に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【請求項16】
請求項8から15のいずれか一項に記載のAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項17】
請求項1から7のいずれか一項に記載のrAAVビリオンを含む医薬組成物。
【請求項18】
心臓細胞を形質導入する方法であって、前記心臓細胞に、請求項1から7のいずれか一項に記載のrAAVビリオンを接触させるステップを含み、前記rAAVビリオンが前記心臓細胞を形質導入する、方法。
【請求項19】
1つまたは複数の遺伝子産物を心臓細胞に送達する方法であって、前記心臓細胞に、請求項1から7のいずれか一項に記載のrAAVビリオンを接触させるステップを含み、前記心臓細胞が前記遺伝子産物を発現する、方法。
【請求項20】
前記1つまたは複数の遺伝子産物が、必要に応じて心トロポニンT;心サルコメアタンパク質;β-ミオシン重鎖;心室ミオシン必須軽鎖1;心室ミオシン調節軽鎖2;心α-アクチン;a-トロポミオシン;心トロポニンI;心ミオシン結合タンパク質C;four-and-a-half LIMタンパク質1;チチン;5’-AMP-活性化タンパク質キナーゼサブユニットガンマ-2;トロポニンI 3型、ミオシン軽鎖2、アクチンアルファ心筋1;心LIMタンパク質;カベオリン3(CAV3);ガラクトシダーゼアルファ(GLA);リソソーム関連膜タンパク質2(LAMP2);ミトコンドリア転移RNAグリシン(MTTG);ミトコンドリア転移RNAイソロイシン(MTTI);ミトコンドリア転移RNAリシン(MTTK);ミトコンドリア転移RNAグルタミン(MTTQ);ミオシン軽鎖3(MYL3);トロポニンC(TNNC1);トランスサイレチン(TTR);筋小胞体カルシウム-ATPアーゼ2a(SERCA2a);間質由来因子-1(SDF-1);アデニレートシクラーゼ-6(AC6);β-ARKct(βアドレナリン受容体キナーゼC末端);線維芽細胞成長因子(FGF);血小板由来成長因子(PDGF);血管内皮成長因子(VEGF);肝細胞成長因子;低酸素誘導成長因子;チモシンベータ4(TMSB4X);一酸化窒素シンターゼ-3(NOS3);アポリポタンパク質-E(ApoE);およびスーパーオキシドジスムターゼ(SOD);S100A1から選択されるポリペプチドを含む、請求項18または請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記1つまたは複数の遺伝子産物が、必要に応じてASCL1、MYOCD、MEF2C、TBX5、CCNB1、CCND1、CDK1、CDK4、AURKB、OCT4、BAF60C、ESRRG、GATA4、GATA6、HAND2、IRX4、ISLL、MESP1、MESP2、NKX2.5、SRF、TBX20、およびZFPM2から選択される1つまたは複数のリプログラミング因子を含む、請求項18または請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記心臓細胞を心臓の心筋細胞へとリプログラムする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
それを必要とする対象における心病態を処置する方法であって、請求項17に記載の医薬組成物の治療有効量を前記対象に投与するステップを含み、前記rAAVビリオンが心組織を形質導入する、方法。
【請求項24】
前記rAAVビリオンが心外膜注射によって投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記rAAVビリオンが、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、心臓内注射、心臓内カテーテル挿入、直接心筋内注射、経血管投与、順行性冠動脈内注射、逆行性注射、経心内膜心筋注射、または再循環送達を伴う分子心臓手術(MCARD)によって投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンであって:
a)親配列のGHループにおける挿入部位に前記親配列に対して5~11アミノ酸の挿入を含むAAV5カプシドタンパク質;および
b)遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸
を含む、rAAVビリオン。
【請求項27】
前記挿入部位が、配列番号1の560~594に対応する前記親配列における位置での任意の2つの、必要に応じて隣接するアミノ酸の間である、請求項26に記載のrAAVビリオン。
【請求項28】
前記挿入部位が、配列番号1の574および575に対応する前記親配列における隣接するアミノ酸の間である、請求項27に記載のrAAVビリオン。
【請求項29】
前記挿入が以下の式:
-X
0-X
1-X
2-X
3-X
4-X
5-X
6-X
7-X
8-
(式中、X
0およびX
8が、各々独立してA、S、Gであるか、または存在しない)(配列番号1102)
のペプチドである、請求項26から28のいずれか一項に記載のrAAVビリオン。
【請求項30】
前記挿入が以下の式:
-A-X
1-X
2-X
3-X
4-X
5-X
6-X
7-A-
(式中:
a)X
1が、P、R、またはGであり;
b)X
2が、K、L、またはRであり;
c)X
3が、任意のアミノ酸であり;
d)X
4が、N、H、K、またはQであり;
e)X
5が、任意のアミノ酸であるか、または必要に応じてX
5が、G、K、もしくはSであり;
f)X
6が、任意のアミノ酸であるか、または必要に応じてX
6が、TもしくはVであり;
g)X
7が、任意のアミノ酸であるか、または必要に応じてX
7が、KもしくはVである)(配列番号1103)
のペプチドである、請求項29に記載のrAAVビリオン。
【請求項31】
前記挿入が、配列番号101~600から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項30に記載のrAAVビリオン。
【請求項32】
前記挿入が、RKVHIEV(配列番号81)、RKYQSDL(配列番号82)、PLTNTVK(配列番号83)、LKYHGPP(配列番号84)、RKYQGDM(配列番号85)、RKFHSTD(配列番号86)、RKHHGLE(配列番号87)、PGTNVTK(配列番号88)、RKMHMPD(配列番号89)、PLKKIVQ(配列番号90)、PLGKKTS(配列番号91)、PRGVKVT(配列番号92)、PLAKSKS(配列番号93)、PRTKGAV(配列番号94)、およびPSGRKAT(配列番号95)から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項30に記載のrAAVビリオン。
【請求項33】
前記挿入が、ARKVHIEVA(配列番号101)、ARKYQSDLA(配列番号102)、APLTNTVKA(配列番号103)、ALKYHGPPA(配列番号104)、ARKYQGDMA(配列番号105)、ARKFHSTDA(配列番号106)、ARKHHGLEA(配列番号107)、APGTNVTKA(配列番号108)、ARKMHMPDA(配列番号109)、APLKKIVQA(配列番号110)、APLGKKTSA(配列番号111)、APRGVKVTA(配列番号112)、APLAKSKSA(配列番号113)、APRTKGAVA(配列番号114)、APSGRKATA(配列番号115)から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項30に記載のrAAVビリオン。
【請求項34】
前記挿入が、アミノ酸配列PLTNTVK(配列番号83)、またはPLTNTVK(配列番号83)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む、請求項30に記載のrAAVビリオン。
【請求項35】
前記挿入が、アミノ酸配列PLKKIVQ(配列番号90)、またはPLKKIVQ(配列番号90)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む、請求項30に記載のrAAVビリオン。
【請求項36】
前記カプシドタンパク質が親AAV5カプシドと比較してS651A、T578A、またはT582Aから選択される1つまたは複数の置換を含む、請求項26から35のいずれか一項に記載のrAAVビリオン。
【請求項37】
前記AAV5カプシドタンパク質が、S651A、T578A、またはT582Aから選択される2つまたはそれより多くの置換を含む、請求項36に記載のrAAVビリオン。
【請求項38】
前記AAV5カプシドタンパク質が、T582AおよびS651A置換を含む、請求項36に記載のrAAVビリオン。
【請求項39】
前記AAV5カプシドタンパク質が、T578AおよびT582A置換を含む、請求項36に記載のrAAVビリオン。
【請求項40】
前記AAV5カプシドタンパク質が、T578AおよびS651A置換を含む、請求項36に記載のrAAVビリオン。
【請求項41】
前記AAV5カプシドタンパク質が、S651A、T578A、およびT582A置換を含む、請求項36に記載のrAAVビリオン。
【請求項42】
前記親配列を含むAAVビリオンと比較して心臓細胞において形質導入効率の増加を示す、請求項26から41のいずれか一項に記載のrAAVビリオン。
【請求項43】
前記親配列を含むAAVビリオンと比較してヒト心臓線維芽細胞(hCF)において形質導入効率の増加を示す、請求項26から42に記載のrAAVビリオン。
【請求項44】
親配列のGHループにおける挿入部位に前記親配列に対して5~11アミノ酸の挿入を含む、AAV5カプシドタンパク質。
【請求項45】
前記挿入部位が、配列番号1の574および575に対応する前記親配列における隣接するアミノ酸の間である、請求項44に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【請求項46】
前記挿入が以下の式:
-X
0-(X)
n-X
10-
(式中、nが5~9であり、
X
0およびX
10が、各々独立してA、S、Gであるか、または存在しない)(配列番号1101)
のペプチドである、請求項44または請求項45に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【請求項47】
前記挿入が以下の式:
-X
0-X
1-X
2-X
3-X
4-X
5-X
6-X
7-X
8-
(式中、X
0およびX
8が、各々独立してA、S、Gであるか、または存在しない)(配列番号1102)
のペプチドである、請求項44または請求項45に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【請求項48】
前記挿入が以下の式:
-A-X
1-X
2-X
3-X
4-X
5-X
6-X
7-A-
(式中:
a)X
1が、P、R、またはGであり;
b)X
2が、K、L、またはRであり;
c)X
3が、任意のアミノ酸であり;
d)X
4が、N、H、K、またはQであり;
e)X
5が、任意のアミノ酸であるか、または必要に応じてX
5が、G、K、もしくはSであり;
f)X
6が、任意のアミノ酸であるか、または必要に応じてX
6が、TもしくはVであり;
g)X
7が、任意のアミノ酸であるか、または必要に応じてX
7が、KもしくはVである)(配列番号1103)
のペプチドである、請求項47に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【請求項49】
前記挿入が、配列番号101~600から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項48に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【請求項50】
前記挿入が、RKVHIEV(配列番号81)、RKYQSDL(配列番号82)、PLTNTVK(配列番号83)、LKYHGPP(配列番号84)、RKYQGDM(配列番号85)、RKFHSTD(配列番号86)、RKHHGLE(配列番号87)、PGTNVTK(配列番号88)、RKMHMPD(配列番号89)、PLKKIVQ(配列番号90)、PLGKKTS(配列番号91)、PRGVKVT(配列番号92)、PLAKSKS(配列番号93)、PRTKGAV(配列番号94)、およびPSGRKAT(配列番号95)から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項48に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【請求項51】
前記挿入が、ARKVHIEVA(配列番号101)、ARKYQSDLA(配列番号102)、APLTNTVKA(配列番号103)、ALKYHGPPA(配列番号104)、ARKYQGDMA(配列番号105)、ARKFHSTDA(配列番号106)、ARKHHGLEA(配列番号107)、APGTNVTKA(配列番号108)、ARKMHMPDA(配列番号109)、APLKKIVQA(配列番号110)、APLGKKTSA(配列番号111)、APRGVKVTA(配列番号112)、APLAKSKSA(配列番号113)、APRTKGAVA(配列番号114)、APSGRKATA(配列番号115)から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項48に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【請求項52】
前記挿入が、アミノ酸配列PLTNTVK(配列番号83)、またはPLTNTVK(配列番号83)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む、請求項48に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【請求項53】
前記挿入が、アミノ酸配列PLKKIVQ(配列番号90)、またはPLKKIVQ(配列番号90)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む、請求項48に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【請求項54】
親AAV5カプシドと比較してS651A、T578A、またはT582Aから選択される1つまたは複数の置換を含む、請求項44から53のいずれか一項に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【請求項55】
S651A、T578A、またはT582Aから選択される2つまたはそれより多くの置換を含む、請求項54に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【請求項56】
請求項44から55のいずれか一項に記載のAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項57】
請求項26から43のいずれか一項に記載のrAAVビリオンを含む医薬組成物。
【請求項58】
心臓細胞を形質導入する方法であって、前記心臓細胞に、請求項26から43のいずれか一項に記載のrAAVビリオンを接触させるステップを含み、前記rAAVビリオンが前記心臓細胞を形質導入する、方法。
【請求項59】
心臓細胞に1つまたは複数の遺伝子産物を送達する方法であって、前記心臓細胞に、請求項26から43のいずれか一項に記載のrAAVビリオンを接触させるステップを含み、前記心臓細胞が前記遺伝子産物を発現する、方法。
【請求項60】
前記1つまたは複数の遺伝子産物が、必要に応じて心トロポニンT;心サルコメアタンパク質;β-ミオシン重鎖;心室ミオシン必須軽鎖1;心室ミオシン調節軽鎖2;心α-アクチン;a-トロポミオシン;心トロポニンI;心ミオシン結合タンパク質C;four-and-a-half LIMタンパク質1;チチン;5’-AMP-活性化タンパク質キナーゼサブユニットガンマ-2;トロポニンI 3型、ミオシン軽鎖2、アクチンアルファ心筋1;心LIMタンパク質;カベオリン3(CAV3);ガラクトシダーゼアルファ(GLA);リソソーム関連膜タンパク質2(LAMP2);ミトコンドリア転移RNAグリシン(MTTG);ミトコンドリア転移RNAイソロイシン(MTTI);ミトコンドリア転移RNAリシン(MTTK);ミトコンドリア転移RNAグルタミン(MTTQ);ミオシン軽鎖3(MYL3);トロポニンC(TNNC1);トランスサイレチン(TTR);筋小胞体カルシウム-ATPアーゼ2a(SERCA2a);間質由来因子-1(SDF-1);アデニレートシクラーゼ-6(AC6);β-ARKct(βアドレナリン受容体キナーゼC末端);線維芽細胞成長因子(FGF);血小板由来成長因子(PDGF);血管内皮成長因子(VEGF);肝細胞成長因子;低酸素誘導成長因子;チモシンベータ4(TMSB4X);一酸化窒素シンターゼ-3(NOS3);アポリポタンパク質-E(ApoE);およびスーパーオキシドジスムターゼ(SOD);S100A1から選択されるポリペプチドを含む、請求項58または請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記1つまたは複数の遺伝子産物が、必要に応じてASCL1、MYOCD、MEF2C、TBX5、CCNB1、CCND1、CDK1、CDK4、AURKB、OCT4、BAF60C、ESRRG、GATA4、GATA6、HAND2、IRX4、ISLL、MESP1、MESP2、NKX2.5、SRF、TBX20、およびZFPM2から選択される1つまたは複数のリプログラミング因子を含む、請求項58または請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記心臓細胞を心臓の心筋細胞へとリプログラムする、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
それを必要とする対象における心病態を処置する方法であって、請求項57に記載の医薬組成物の治療有効量を前記対象に投与するステップを含み、前記rAAVビリオンが心組織を形質導入する、方法。
【請求項64】
前記rAAVビリオンが心外膜注射によって投与される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記rAAVビリオンが、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、心臓内注射、心臓内カテーテル挿入、直接心筋内注射、経血管投与、順行性冠動脈内注射、逆行性注射、経心内膜心筋注射、または再循環送達を伴う分子心臓手術(MCARD)によって投与される、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
標的細胞において形質導入効率の増加をrAAVビリオンに付与するAAVカプシドタンパク質を同定する方法であって:
a)rAAVビリオンの集団を提供するステップであって、そのrAAVゲノムが、バリアントAAVカプシドタンパク質をコードするcapポリヌクレオチドのライブラリーを含む、ステップ;
b)前記rAAVビリオンによる標的細胞への前記capポリヌクレオチドの形質導入を可能にするために十分な期間、前記集団に前記標的細胞を接触させるステップ;および
c)前記標的細胞から前記capポリヌクレオチドをシーケンシングし、それによって前記標的細胞において形質導入効率の増加をもたらすAAVカプシドタンパク質を同定するステップ
を含む、方法。
【請求項67】
ステップ(b)の前に、rAAVビリオンの前記集団に、非標的細胞への前記rAAVビリオンの結合を可能にするために十分な期間、前記非標的細胞を接触させることによって、前記集団を枯渇させるステップをさらに含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記バリアントAAVカプシドタンパク質が、AAV5カプシドタンパク質である、請求項66または請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記バリアントカプシドタンパク質が各々個々に、親配列のGHループにおける挿入部位に前記親配列に対して5~11アミノ酸の挿入を含む、請求項66から68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記挿入部位が、配列番号1の560~594に対応する前記親配列における位置での任意の2つの、必要に応じて隣接するアミノ酸の間である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記挿入部位が配列番号1の574および575に対応する前記親配列における隣接するアミノ酸の間である、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記挿入が以下の式:
-X
0-X
1-X
2-X
3-X
4-X
5-X
6-X
7-X
8-
(式中、X
0およびX
8が各々独立して、A、S、Gであるか、または存在しない)(配列番号1102)
のペプチドである、請求項69から71のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示は、一般的にアデノ随伴ウイルスベクターによる遺伝子治療に関する。特に本開示は、操作されたカプシドタンパク質を有する組換えアデノ随伴ウイルスビリオンに関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示が全ての目的に関してその全体が参照により本明細書に組み込まれる、2020年3月2日に出願された米国仮特許出願第62/984,197号および2019年4月1日に出願された米国仮特許出願第62/827,576号の優先権の利益を主張する。
【0003】
配列表の参照
本出願は、EFS-Webを介して電子出願されており、.txtフォーマットで電子提出された配列表を含む。テキストファイルは、2020年3月31日に作製され、サイズ約2,590キロバイトの「TENA_012_02WO_SeqList_ST25.txt」と題する配列表を含有する。このテキストファイルに含有される配列表は、本明細書の一部であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
背景
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、遺伝子治療および他の生物医学応用にとって有望である。特に、AAVを使用して、in vitroおよびin vivoの両方で様々な組織および細胞に遺伝子産物を送達することができる。AAVのカプシドタンパク質は、主にAAVベクターの免疫原性および指向性を決定する。
【0005】
一部の組織に関して、AAVサブタイプ5(AAV5)は、ヒト集団におけるAAV5に対する中和抗体の発生率が低いことから好ましいAAVベクターである。しかしAAV5は、他のAAVサブタイプより心組織を形質導入する効率が低い。加えて、異なる細胞タイプの選択的形質導入が望ましいが、達成することは難しい。例えば一部の応用では、心臓の筋細胞ではなくて心臓線維芽細胞の形質導入が望ましい場合もあれば、その逆が望ましい場合もあり得る。本開示は、野生型AAV5カプシドタンパク質を含むrAAVビリオンより効率的および/または選択的に心組織および/または細胞タイプを形質導入することが可能なrAAVビリオンを形成するAAV5カプチドのバリアントを提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の概要
一態様では、本開示は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンであって、親AAV5カプシドと比較して、S651A、S651G、S651V、S651L、S651I、T578A、T578G、T578V、T578L、T578I、T582A、T582G、T582V、T582L、またはT582Iから選択される1つまたは複数の置換を含むAAV5カプシドタンパク質と、遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸とを含む、rAAVビリオンを提供する。
【0007】
別の態様では、本開示は、親AAV5カプシドと比較してS651AまたはS651V;T578AまたはT578V;またはT582AもしくはT582Vから選択される1つまたは複数の置換を含むAAV5カプシドタンパク質を提供する。
【0008】
別の態様では、本開示は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンであって、親配列のGHループにおける挿入部位に親配列に対して5~11アミノ酸の挿入を含むAAV5カプシドタンパク質と、遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む(com/prising)異種核酸とを含む、rAAVビリオンを提供する、
【0009】
別の態様では、本開示は、親配列のGHループにおける挿入部位に親配列に対して5~11アミノ酸の挿入を含む、AAV5カプシドタンパク質を提供する。
【0010】
さらなる態様では、本開示は、AAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、カプシドタンパク質が親配列のGHループにおける挿入部位に親配列に対して5~11アミノ酸の挿入を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0011】
さらなる態様では、本開示は、親配列のGHループにおける挿入部位に親配列に対して5~11アミノ酸の挿入を含むAAV5カプシドタンパク質と、遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸とを含むrAAVビリオンを含む医薬組成物を提供する。
【0012】
さらなる態様では、本開示は、心臓細胞を形質導入する方法であって、心臓細胞に、本開示のrAAVビリオンを接触させるステップを含み、rAAVビリオンが心臓細胞を形質導入する、方法を提供する。
【0013】
さらなる態様では、本開示は、心臓細胞に1つまたは複数の遺伝子産物を送達する方法であって、心臓細胞に本開示のrAAVビリオンを接触させるステップを含み、心臓細胞が遺伝子産物を発現する、方法を提供する。
【0014】
さらなる態様では、本開示は、それを必要とする対象における心病態を処置する方法であって、本開示のrAAVビリオンを含む医薬組成物の治療有効量を投与するステップを含み、rAAVビリオンが心組織を形質導入する、方法を提供する。
【0015】
さらなる態様では、本開示は、rAAVビリオンに、標的細胞において形質導入効率の増加をもたらすAAVカプシドタンパク質を同定する方法であって、rAAVビリオンの集団を提供するステップであって、そのrAAVゲノムがバリアントAAVカプシドタンパク質をコードするcapポリヌクレオチドのライブラリーを含む、ステップ;rAAVビリオンによる標的細胞へのcapポリヌクレオチドの形質導入を可能にするために十分な期間、集団に標的細胞を接触させるステップ;および標的細胞からcapポリヌクレオチドをシーケンシングし、それによって標的細胞において形質導入効率の増加をもたらすAAVカプシドタンパク質を同定するステップを含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、人工多能性幹細胞由来心筋細胞(iPSC-CM)に関する初回の負の選択ステップの後に、ヒト心臓線維芽細胞(hCF)に関する正の選択ステップを組み入れるライブラリースクリーニング戦略の実施形態を示す。
【0017】
【
図2A-2B】
図2A~2Bは、AAV5ランダムペプチドディスプレイライブラリーの生成およびAAV5の結晶構造上へのマッピングを示す。
図2Aは、3’および5’末端逆位反復配列(ITR)に挟まれたAAV2のrep遺伝子(「Rep2」)およびAAVのcap遺伝子(「Cap5」)を含むAAVゲノムの概略図を示す。本実施形態では、アラニン残基に挟まれたランダム7量体ポリペプチドライブラリー(AXXXXXXXA;配列番号100)が表示のように575位に挿入される。
図2Bは、AAV5カプシドの構造を示す。ポリペプチドライブラリーのおおよその挿入部位(示されるカプシドタンパク質の60コピーのうちの1つにおける)を黒色矢印によって示す。
【0018】
【
図3A-3D】
図3A~3Dは、各スクリーニングラウンド後のライブラリー複雑度を可視化し、読み取りデータの総数およびユニークペプチドである読み取りデータのパーセンテージを報告する。各バリアントを、ペプチド配列の疎水性に基づいて異なる濃淡の灰色によって表し、画像における各ピクセルは、ライブラリーにおける単一の読み取りデータを表し、同じ配列の他の読み取りデータとクラスターを形成する。富化の増加は、親ライブラリー(
図3A)と比較して、ラウンド1後(
図3B)、ラウンド2後(
図3C)、またはラウンド3後(
図3D)での読み取りデータの過剰(すなわち、ユニークペプチドである読み取りデータのパーセンテージの減少)に基づいて明白である。
【0019】
【
図4A-4D】
図4A~4Dは、ライブラリースクリーニング戦略を使用して同定された様々なrAAVビリオンのhCF細胞に関する形質導入効率を示す。
図4Aは、緑色蛍光タンパク質(GFP)レポータートランスジーンをパッケージングした非改変AAV5(一番右側の棒グラフ)に対して基準とする15個のAAV5バリアントの形質導入効率を示す。hCFを、ゲノム感染多重度(MOI)100,000で感染させ、GFP陽性細胞のパーセンテージを、Cytation5(商標)細胞イメージングマルチモードリーダーを使用して定量した。代表的な蛍光画像を、非改変AAV5(
図4B)またはAAV5.CR17(
図4C)のいずれかで形質導入したhCFに関して示す。
図4Dは、MOI 1,000での非改変AAV5対AAV.CR17の形質導入効率を示す。
【0020】
【
図5A-5D】
図5A~5Dは、ライブラリースクリーニング戦略を使用して同定された様々なrAAVビリオンのiPS-CM細胞に関する形質導入効率を示す。
図5Aは、GFPレポータートランスジーンをパッケージングした非改変AAV5(最も右側の棒グラフ)に対して基準とする15個のAAV5バリアントの形質導入効率を示す。hCFを、ゲノム感染多重度(MOI)100,000で感染させ、GFP陽性細胞のパーセンテージを、Cytation 5(商標)細胞イメージングマルチモードリーダーを使用して定量した。代表的な蛍光画像を、非改変AAV5(
図5B)またはAAV5.CR23(
図5C)のいずれかで形質導入したhCFに関して示す。
図5Dは、MOI 100,000での非改変AAV5対AAV.CR23の形質導入効率を示す。
【0021】
【
図6A】
図6A~6Eは、AAV5.CR17が、初代マウス心臓線維芽細胞(mCF)において改善された形質導入効率を有することを実証する。mCFに、AAV5.CAG-GFPまたはAAV5.CR17.CAG-GFPのいずれかを高い(100,000)、中等度(10,000)、または低い(1,000)MOIで感染させた。感染の72時間後、形質導入をフローサイトメトリーを使用して評価した。
図6Aは、「総GFP」および「高GFP」集団のヒストグラムおよびゲーティングを示す。非改変AAV5と比較してAAV5.CR17をMOI 10
3、10
4、または10
5で細胞に形質導入した場合、増加したパーセントGFP+(
図6B)およびGFP強度(
図6C)が「総GFP」集団において観察された。非改変AAV5と比較してAAV5.CF17をMOI 10
3、10
4、または10
5で細胞に形質導入した場合、増加したパーセントGFP+(
図6D)およびGFP強度(
図6E)が、「高GFP」集団において観察された。
【
図6B-6E】
図6A~6Eは、AAV5.CR17が、初代マウス心臓線維芽細胞(mCF)において改善された形質導入効率を有することを実証する。mCFに、AAV5.CAG-GFPまたはAAV5.CR17.CAG-GFPのいずれかを高い(100,000)、中等度(10,000)、または低い(1,000)MOIで感染させた。感染の72時間後、形質導入をフローサイトメトリーを使用して評価した。
図6Aは、「総GFP」および「高GFP」集団のヒストグラムおよびゲーティングを示す。非改変AAV5と比較してAAV5.CR17をMOI 10
3、10
4、または10
5で細胞に形質導入した場合、増加したパーセントGFP+(
図6B)およびGFP強度(
図6C)が「総GFP」集団において観察された。非改変AAV5と比較してAAV5.CF17をMOI 10
3、10
4、または10
5で細胞に形質導入した場合、増加したパーセントGFP+(
図6D)およびGFP強度(
図6E)が、「高GFP」集団において観察された。
【0022】
【
図7A-7D】
図7A~7Hは、心筋梗塞(MI)を有するおよび有しないCD1マウスにおけるAAV5およびAAV5.CR17の形質導入プロファイルを示す。非改変AAV5は、対照マウス(GFP-
図7A;DAPI-
図7B)または誘発MIマウス(GFP-
図7C;DAPI-
図7D)において心組織の限定的な形質導入を示した。AAV5.CR17は、対照マウス(GFP-
図7E;DAPI-
図7F)および誘発MIマウス(GFP-
図7G;DAPI-
図7H)の両方において心組織をより有効に形質導入した。1.2×10
11vgのAAV5.CAG-GFPまたはAAV5.CR17.CAG-GFPのいずれかを、心筋内注射を介して6週齢のCD1マウスに注射した。GFPの強度および分布を、注射後7日に評価した。心筋細胞および線維芽細胞の形質導入の増加が非MIおよびMI動物の両方においてAAV5.CR17によって観察される。全ての心組織切片を20倍の対物レンズを使用して等しいゲインおよび露光時間でイメージングした。抗GFP免疫染色を緑色で示し、DAPIブルーによる核の対比染色を青色で示す。
【
図7E-7H】
図7A~7Hは、心筋梗塞(MI)を有するおよび有しないCD1マウスにおけるAAV5およびAAV5.CR17の形質導入プロファイルを示す。非改変AAV5は、対照マウス(GFP-
図7A;DAPI-
図7B)または誘発MIマウス(GFP-
図7C;DAPI-
図7D)において心組織の限定的な形質導入を示した。AAV5.CR17は、対照マウス(GFP-
図7E;DAPI-
図7F)および誘発MIマウス(GFP-
図7G;DAPI-
図7H)の両方において心組織をより有効に形質導入した。1.2×10
11vgのAAV5.CAG-GFPまたはAAV5.CR17.CAG-GFPのいずれかを、心筋内注射を介して6週齢のCD1マウスに注射した。GFPの強度および分布を、注射後7日に評価した。心筋細胞および線維芽細胞の形質導入の増加が非MIおよびMI動物の両方においてAAV5.CR17によって観察される。全ての心組織切片を20倍の対物レンズを使用して等しいゲインおよび露光時間でイメージングした。抗GFP免疫染色を緑色で示し、DAPIブルーによる核の対比染色を青色で示す。
【0023】
【
図8A-8D】
図8A~8Eは、表2(配列番号101~600)における上位100(
図8A)の配列、上位50(
図8B)、上位20(
図8C)の配列、または表1(
図8D)(配列番号101~115)に報告されるデータを有する配列に基づく配列モチーフを示す。
図8Eは、ラウンド3後のライブラリー(配列番号101~600)における配列読み取りデータの数によって重みをつけた、ライブラリーにおける全ての配列読み取りデータに関する配列モチーフを示す。
【
図8E】
図8A~8Eは、表2(配列番号101~600)における上位100(
図8A)の配列、上位50(
図8B)、上位20(
図8C)の配列、または表1(
図8D)(配列番号101~115)に報告されるデータを有する配列に基づく配列モチーフを示す。
図8Eは、ラウンド3後のライブラリー(配列番号101~600)における配列読み取りデータの数によって重みをつけた、ライブラリーにおける全ての配列読み取りデータに関する配列モチーフを示す。
【0024】
【
図9】
図9は、AAV5表面露出セリン/スレオニン/リシン/チロシン変異体ベクターが、in vitroでhCFの形質導入効率の増加を実証することを示す。hCF細胞に、遍在的に発現するGFPレポーターをパッケージングするAAV5-野生型またはAAV5-変異体ベクターのいずれかを感染させた。AAV5カプシドにおける置換S651A、T578A、またはT582Aは、感染多重度100,000vg/細胞で感染の72時間後にヒト心臓線維芽細胞形質導入の改善をもたらした。
【0025】
【
図10A-10C】
図10A~10Cは、AAVx1ベクター(上の線)またはAAV5ベクター(下の線)のいずれかによるヒト心臓線維芽細胞(hCF)の形質導入を示す。
図10Aは、形質導入された細胞のパーセンテージを示す。
図10Bは、GFPトランスジーンの発現を示す。
図10Cは、相対的形質導入を示す(相対的形質導入=形質導入された細胞(%)×細胞強度)。
【0026】
【
図11】
図11は、心臓線維芽細胞(CF)の細胞のin vivoでの相対的形質導入を示す。
【0027】
【
図12】
図12は、MyA発現カセットを有するAAVx1ベクターが%駆出率の動的心エコー検査データ(kinetic echocardiography data)により心筋梗塞に対して有効であることを示す。
【0028】
【
図13】
図13は、虚血性損傷を有する処置および無処置ブタの注射後9週間までのパーセント駆出率の変化のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
本開示は、一般的に(1)選択された表面露出アミノ酸残基での置換;(2)GHループでの挿入;または(3)その両方を有するカプシドタンパク質を有するウイルスベクターとして使用するための組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンに関する。rAAVビリオンは、これらの置換および/または挿入を有しない親カプシドタンパク質を有するrAAVビリオンと少なくとも同様にまたはそれより良好に心組織、例えば心臓線維芽細胞を形質導入し得る。
【0030】
本開示は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを提供する。特に、本開示は、新規カプシドタンパク質、それらを同定する方法、およびそれらを使用する方法を提供する。本明細書に開示される新規カプシドタンパク質を同定する方法は、ハイブリッドカプシドタンパク質を含む任意の血清型のAAVに関して広い適用性を有する。加えて、それらは、この方法および他の方法からの変異を有するカプシドタンパク質を繰り返し改善するために適用することができる。一般的に、本開示の方法は、cap遺伝子ポリヌクレオチドの形態でのAAVカプシドの無作為化または半無作為化ライブラリーの調製、そのようなカプシドを含むAAVビリオンの調製(cap遺伝子ライブラリーをAAVゲノムに組み込むことによって、またはパッケージング系にトランスフェクトしたプラスミド上などのin transでそれを提供することのいずれかによって)、AAVビリオンを正にまたは負に選択すること、およびシーケンシングのためにcap遺伝子を回収することに関する。一部の実施形態では、回収およびシーケンシングは、ナノポアシーケンシングを含む。他のハイスループットまたは次世代シーケンシング(NGS)法を使用することができる。
【0031】
一部の実施形態では、本明細書に開示されるrAAVビリオンは、親配列のGHループにおける挿入部位に親配列に対して5~11アミノ酸の挿入を含むAAV5カプシドタンパク質を含む。rAAVビリオンは一般的に、遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む。挿入にとって適した挿入部位は、AAV5カプシドの結晶構造に基づくGHループのモデリング;フレキシブルな残基の選択;または様々な挿入部位のスクリーニングを含むがこれらに限定されない様々な方法によって決定することができる。挿入は、2つの隣接するアミノ酸残基の間であり得るか、または非隣接残基を選択してもよく、この場合、挿入は1つまたは複数の介在する残基の欠失を引き起こす。
【0032】
一部の実施形態では、AAV5カプシドタンパク質は、合理的に設計された;変異誘発によって導入された;または1つもしくは複数の部位でランダムコドン使用頻度を有する配列のライブラリーを生成することによって無作為化された残基の置換を含む。トランスフェクション効率を調節する例示的な非制限的な置換としては、S651A、T578A、またはT582Aが挙げられるがこれらに限定されない。置換された残基は、1つまたは複数の挿入部位、例えばGHループまたは他のループでの挿入をさらに含むAAV5カプシドタンパク質に組み込まれ得る。
【0033】
本開示のカプシドタンパク質は、指向性進化法によって富化されていると同定される任意の挿入を含み、実施例に示されるがこれらに限定されない配列がその後に続く。いかなる特定の挿入部位にも限定されないが、一部の実施形態では、挿入は、AAV5カプシドタンパク質(配列番号1)における残基約574と575との間である。一部の実施形態では、挿入部位は、配列番号1の560~594に対応する親配列における位置で任意の2つの、必要に応じて隣接するアミノ酸の間である。一部の実施形態では、挿入部位は、配列番号1の574および575に対応する親配列における隣接するアミノ酸の間である。VP1、VP2、およびVP3のN末端残基を全長のVP1の配列の上に示す。
【化1】
【0034】
この挿入部位での挿入は、VP3カプシドタンパク質をN末端セグメント(配列番号2)とC末端セグメント(配列番号3)とに分割し、これを本明細書において明確にするために別個の配列として開示し、これらは本開示の挿入のいずれかによって連結され得る。一部の実施形態では、カプシドタンパク質は、配列番号1(明確にするために、挿入部位でアライメントにギャップを有する)と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一である配列を含む。一部の実施形態では、カプシドタンパク質は、配列番号2と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を共有する配列、および配列番号3と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を共有する配列を含み、配列番号2および配列番号3は、5~11アミノ酸の挿入によって連結される。一部の実施形態では、挿入は、配列番号101~600から選択される。一部の実施形態では、配列番号101~600の隣接するアラニン(A)残基は、フレキシブルな残基であるセリン(S)またはグリシン(G)などの他の残基によって置換され、隣接するA残基は存在しない。
MGDRVVTKSTRTWVLPSYNNHQYREIKSGSVDGSNANAYFGYSTPWGYFDFNRFHSHWSPRDWQRLINNYWGFRPRSLRVKIFNIQVKEVTVQDSTTTIANNLTSTVQVFTDDDYQLPYVVGNGTEGCLPAFPPQVFTLPQYGYATLNRDNTENPTERSSFFCLEYFPSKMLRTGNNFEFTYNFEEVPFHSSFAPSQNLFKLANPLVDQYLYRFVSTNNTGGVQFNKNLAGRYANTYKNWFPGPMGRTQGWNLGSGVNRASVSAFATTNRMELEGASYQVPPQPNGMTNNLQGSNTYALENTMIFNSQPANPGTTATYLEGNMLITSESETQPVNRVAYNVGGQMATNNQ
(配列番号2)
SSTTAPATGTYNLQEIVPGSVWMERDVYLQGPIWAKIPETGAHFHPSPAMGGFGLKHPPPMMLIKNTPVPGNITSFSDVPVSSFITQYSTGQVTVEMEWELKKENSKRWNPEIQYTNNYNDPQFVDFAPDSTGEYRTTRPIGTRYLTRPL
(配列番号3)
【0035】
一部の実施形態では、カプシドタンパク質は、配列番号4と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一である配列を含み、Xは任意のアミノ酸を表す。一部の実施形態では、カプシドタンパク質は配列番号5と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一である配列を含み、Xは任意のアミノ酸を表す。
【化2】
【化3】
【0036】
一部の実施形態では、挿入は以下の式:
-X0-(X)n-X10-
(式中、nは5~9であり、X0およびX10は、各々独立してA、S、Gであるか、または存在しない)(配列番号1101)
のペプチドである。
【0037】
一部の実施形態では、挿入は以下の式:
-X0-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-
(式中、X0およびX8は、各々独立してA、S、Gであるか、または存在しない)(配列番号1102)
のペプチドである。
【0038】
一部の実施形態では、挿入は以下の式:
-A-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-A-
(式中、X1は、P、R、またはGであり;X2は、K、L、またはRであり;X3は、任意のアミノ酸であり;X4は、N、H、K、またはQであり;X5は、任意のアミノ酸であるか、または必要に応じてX5は、G、K、もしくはSであり;X6は、任意のアミノ酸であるか、または必要に応じてX6は、TもしくはVであり;X7は、任意のアミノ酸であり、または必要に応じてX7は、KもしくはVである)(配列番号1103)
のペプチドである。
【0039】
一部の実施形態では、挿入は以下の式:
-A-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-A-
(式中、X1は、P、R、またはGであり;X2は、K、L、またはRであり;X3は、任意のアミノ酸であり;X4は、N、H、K、またはQであり;X5は、任意のアミノ酸であるか、または必要に応じてX5は、G、K、もしくはSであり;X6は、任意のアミノ酸であり;X7は、任意のアミノ酸である)(配列番号1104)
のペプチドである。
【0040】
一部の実施形態では、挿入は以下の式:
-A-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-A-
(式中、X1は、P、R、またはGであり;X2は、K、L、またはRであり;X3は、任意のアミノ酸であり;X4は、N、H、K、またはQであり;X5は、任意のアミノ酸であるか、または必要に応じてX5は、G、K、もしくはSであり;X6は、TまたはVであり;X7は、任意のアミノ酸である)(配列番号1105)
のペプチドである。
【0041】
一部の実施形態では、挿入は以下の式:
-A-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-A-
(式中、X1は、P、R、またはGであり;X2は、K、L、またはRであり;X3は、任意のアミノ酸であり;X4は、N、H、K、またはQであり;X5は、任意のアミノ酸であるか、または必要に応じてX5は、G、K、もしくはSであり;X6は、TまたはVであり;X7は、KまたはVである)(配列番号1106)
のペプチドである。
【0042】
一部の実施形態では、X1からX7は、任意のアミノ酸であり、挿入は以下の基準の1つまたは複数によって定義される:X1は、P、R、またはGであり;X2は、K、L、またはRであり;X3は、任意のアミノ酸であり;X4は、N、H、K、またはQであり;X5はX5は、G、K、またはSであり;X6は、TまたはVであり;および/またはX7はX7は、KもしくはVである(配列番号1107)。
【0043】
一部の実施形態では、挿入は配列番号101~600から選択される。
【0044】
一部の実施形態では、カプシドタンパク質は、N末端からC末端への順番で、配列番号2と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%および配列番号3と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一である配列を有する1つのポリペプチド;配列番号101~600から選択される1つのポリペプチド;ならびに配列番号2と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%および配列番号2と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一である配列を有する1つのポリペプチドを含む。
【0045】
一部の実施形態では、カプシドタンパク質は、N末端からC末端への順番で、配列番号2と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%および配列番号3と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一である配列を有する1つのポリペプチド;配列番号101~200から選択される1つのポリペプチド;ならびに配列番号2と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%および配列番号2と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一である配列を有する1つのポリペプチドを含む。
【0046】
一部の実施形態では、カプシドタンパク質は、N末端からC末端への順番で、配列番号2と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%および配列番号3と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一である配列を有する1つのポリペプチド;配列番号101~150から選択される1つのポリペプチド;ならびに配列番号2と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%および配列番号2と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一である配列を有する1つのポリペプチドを含む。
【0047】
一部の実施形態では、カプシドタンパク質は、N末端からC末端への順番で、配列番号2と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%および配列番号3と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一である配列を有する1つのポリペプチド;配列番号101~120から選択される1つのポリペプチド;ならびに配列番号2と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%および配列番号2と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一である配列を有する1つのポリペプチドを含む。
【0048】
一部の実施形態では、カプシドタンパク質は、N末端からC末端への順番で、配列番号2と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%および配列番号3と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一である配列を有する1つのポリペプチド;配列番号101~115から選択される1つのポリペプチド;ならびに配列番号2と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%および配列番号2と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一である配列を有する1つのポリペプチドを含む。
【0049】
一部の実施形態では、カプシドタンパク質は、N末端からC末端への順番で、配列番号2と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%および配列番号3と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一である配列を有する1つのポリペプチド;配列番号103または110から選択される1つのポリペプチド;ならびに配列番号2と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%および配列番号2と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一である配列を有する1つのポリペプチドを含む。
【0050】
一部の実施形態では、カプシドタンパク質は、配列番号601~1100の1つと少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一である配列またはその機能的断片を有するポリペプチドを含み、それから本質的になり、またはそれからなる。
【0051】
一部の実施形態では、カプシドタンパク質は、配列番号601~615の1つと少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一である配列またはその機能的断片を有するポリペプチドを含み、それから本質的になり、またはそれからなる。
【0052】
一部の実施形態では、挿入は、RKVHIEV(配列番号81)、RKYQSDL(配列番号82)、PLTNTVK(配列番号83)、LKYHGPP(配列番号84)、RKYQGDM(配列番号85)、RKFHSTD(配列番号86)、RKHHGLE(配列番号87)、PGTNVTK(配列番号88)、RKMHMPD(配列番号89)、PLKKIVQ(配列番号90)、PLGKKTS(配列番号91)、PRGVKVT(配列番号92)、PLAKSKS(配列番号93)、PRTKGAV(配列番号94)、およびPSGRKAT(配列番号95)から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0053】
一部の実施形態では、挿入は、ARKVHIEVA(配列番号101)、ARKYQSDLA(配列番号102)、APLTNTVKA(配列番号103)、ALKYHGPPA(配列番号104)、ARKYQGDMA(配列番号105)、ARKFHSTDA(配列番号106)、ARKHHGLEA(配列番号107)、APGTNVTKA(配列番号108)、ARKMHMPDA(配列番号109)、APLKKIVQA(配列番号110)、APLGKKTSA(配列番号111)、APRGVKVTA(配列番号112)、APLAKSKSA(配列番号113)、APRTKGAVA(配列番号114)、APSGRKATA(配列番号115)から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0054】
一部の実施形態では、挿入は配列番号101~600のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、配列は、配列番号101~600のいずれか1つと比較して多くて1、2、3、または4個のアミノ酸置換を含む。
【0055】
一部の実施形態では、挿入は、アミノ酸配列PLTNTVK(配列番号83){クローンCR17}、またはPLTNTVK(配列番号83)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む。
【0056】
一部の実施形態では、挿入は、アミノ酸配列PLKKIVQ(配列番号90){クローンCR23}、またはPLKKIVQ(配列番号90)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む。
【0057】
一部の実施形態では、挿入は、アミノ酸配列APLTNTVKA(配列番号103){クローンCR17}またはAPLTNTVKA(配列番号103)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む。
【0058】
一部の実施形態では、挿入は、アミノ酸配列APLKKIVQA(配列番号110){クローンCR23}を含み、挿入は1、2、3、または4個の保存的アミノ酸置換をさらに含む。
【0059】
一部の実施形態では、挿入は、アミノ酸配列PLTNTVK(配列番号83){クローンCR17}を含み、挿入は1、2、3、または4個の保存的アミノ酸置換をさらに含む。
【0060】
一部の実施形態では、挿入は、アミノ酸配列PLKKIVQ(配列番号90){クローンCR23}を含み、挿入は1、2、3、または4個の保存的アミノ酸置換をさらに含む。
【0061】
一部の実施形態では、挿入は、アミノ酸配列APLTNTVKA(配列番号103){クローンCR17}を含み、挿入は1、2、3、または4個の保存的アミノ酸置換をさらに含む。
【0062】
一部の実施形態では、挿入は、少なくともアミノ酸配列APLKKIVQA(配列番号110){クローンCR23}を含み、挿入は、1、2、3、または4個の保存的アミノ酸置換をさらに含む。
【0063】
保存的置換は、極性残基での極性残基の置換、非極性残基での非極性残基の置換、疎水性残基での疎水性残基の置換、小さい残基での小さい残基の置換、および大きい残基での大きい残基の置換を含む。保存的置換は、以下の群内の置換をさらに含む:{S、T}、{A、G}、{F、Y}、{R、H、K、N、E}、{S、T、N、Q}、{C、U、G、P;A}、および{A、V、I、L、M、F、Y、W}。
【0064】
形質導入効率は、当技術分野で公知の方法または実施例に記載される方法を使用して決定することができる。一部の実施形態では、rAAVビリオンは、親配列を含むAAVビリオンと比較して心臓細胞において形質導入効率の増加を示す。
【0065】
一部の実施形態では、rAAVビリオンは、親配列を含むAAVビリオンと比較してヒト心臓線維芽細胞(hCF)において形質導入効率の増加を示す。
【0066】
一部の実施形態では、rAAVビリオンは、hCF細胞において感染多重度(MOI)100,000で少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15倍の形質転換効率の増加を示す。一部の実施形態では、rAAVビリオンは、hCF細胞において感染多重度(MOI)100,000で約2~約16倍、約2~約14倍、約2~約12倍、約2~約10倍、約2~約8倍、約2~約6倍、約2~約4倍、または約2~約3倍の形質転換効率の増加を示す。一部の実施形態では、rAAVビリオンは、hCF細胞において感染多重度(MOI)100,000で少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15倍の形質転換効率の増加を示す。一部の実施形態では、rAAVビリオンは、hCF細胞において感染多重度(MOI)100,000で約20%~30%、約30%~40%、約40%~50%、約50%~80%、約80%~100%、約100%~125%、約125%~150%、約150%~175%、または約175%~200%の形質転換効率の増加を示す。
【0067】
一部の実施形態では、rAAVビリオンは、hCF細胞において感染多重度(MOI)1,000で少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15倍の形質転換効率の増加を示す。一部の実施形態では、rAAVビリオンは、hCF細胞において感染多重度(MOI)1,000で約2~約16倍、約2~約14倍、約2~約12倍、約2~約10倍、約2~約8倍、約2~約6倍、約2~約4倍、または約2~約3倍の形質転換効率の増加を示す。一部の実施形態では、rAAVビリオンは、hCF細胞において感染多重度(MOI)1,000で約20%~30%、約30%~40%、約40%~50%、約50%~80%、約80%~100%、約100%~125%、約125%~150%、約150%~175%、または約175%~200%の形質転換効率の増加を示す。
【0068】
一部の実施形態では、rAAVビリオンは、親配列を含むAAVビリオンと比較して人工多能性幹細胞由来心筋細胞(iPS-CM)において形質転換効率の増加を示す。
【0069】
一部の実施形態では、rAAVビリオンは、iPS-CM細胞において感染多重度(MOI)100,000で少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15倍の形質転換効率の増加を示す。一部の実施形態では、rAAVビリオンは、iPS-CM細胞において感染多重度(MOI)100,000で約2~約16倍、約2~約14倍、約2~約12倍、約2~約10倍、約2~約8倍、約2~約6倍、約2~約4倍、または約2~約3倍の形質転換効率の増加を示す。一部の実施形態では、rAAVビリオンは、iPS-CM細胞において感染多重度(MOI)100,000で約20%~30%、約30%~40%、約40%~50%、約50%~80%、約80%~100%、約100%~125%、約125%~150%、約150%~175%、または約175%~200%の形質転換効率の増加を示す。
【0070】
一部の実施形態では、rAAVビリオンは、iPS-CM細胞において感染多重度(MOI)1,000で少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15倍の形質転換効率の増加を示す。一部の実施形態では、rAAVビリオンは、iPS-CM細胞において感染多重度(MOI)1,000で約2~約16倍、約2~約14倍、約2~約12倍、約2~約10倍、約2~約8倍、約2~約6倍、約2~約4倍、または約2~約3倍の形質転換効率の増加を示す。一部の実施形態では、rAAVビリオンは、iPS-CM細胞において感染多重度(MOI)1,000で約20%~30%、約30%~40%、約40%~50%、約50%~80%、約80%~100%、約100%~125%、約125%~150%、約150%~175%、または約175%~200%の形質転換効率の増加を示す。
【0071】
1つの細胞タイプの他方に対する形質導入効率の比率が親配列と比較してカプシドタンパク質によって増加する場合、細胞タイプの選択性は増加する。一部の実施形態では、rAAVビリオンは、iPS-CM細胞にまさってhCF細胞に関してrAAVビリオンの選択性の増加を示す。
【0072】
一部の実施形態では、rAAVビリオンは、hCF細胞にまさってiPS-CM細胞に関してrAAVビリオンの選択性の増加を示す。
【0073】
一部の実施形態では、カプシドタンパク質は、S651A、T578A、T582A、K251R、Y709F、Y693F、またはS485Aから選択される変異を含む。一部の実施形態では、カプシドタンパク質は、K251R、Y709F、Y693F、またはS485Aから選択される変異を含む。
【0074】
カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、野生型cap遺伝子の天然のコドン、または同じタンパク質をコードするように選択された代替コドンのいずれかを含む配列を含み得る。挿入のコドン使用頻度は多様であり得る。本開示のカプシドタンパク質をコードするcap遺伝子の代表的なヌクレオチド配列は、配列番号51~72として提供される。一部の実施形態では、本開示は、配列番号51~72の1つと少なくとも95%、99%、または100%同一である配列を含むAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。適切なヌクレオチド配列を選択することおよび本開示の任意のカプシドタンパク質をコードするために代替のヌクレオチド配列を誘導することは当業者の範囲内である。宿主生物のコドン使用頻度表、すなわちヒトに関する真核細胞コドン使用頻度を使用して、タンパク質配列の逆翻訳を実施することができる。
【0075】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号51{CR2ポリヌクレオチド配列}と少なくとも95%、99%、または100%同一である配列を含むAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、AAV5カプシドタンパク質が、配列番号101またはARKVHIEVA(配列番号101)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0076】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号52{CR5ポリヌクレオチド配列}と少なくとも95%、99%、または100%同一である配列を含むAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、AAV5カプシドタンパク質が、配列番号102またはARKYQSDLA(配列番号102)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0077】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号53{CR8ポリヌクレオチド配列}と少なくとも95%、99%、または100%同一である配列を含むAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、AAV5カプシドタンパク質が、配列番号107またはARKHHGLEA(配列番号107)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0078】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号54{CR17ポリヌクレオチド配列}と少なくとも95%、99%、または100%同一である配列を含むAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、AAV5カプシドタンパク質が、配列番号103またはAPLTNTVKA(配列番号103)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0079】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号55{CR18ポリヌクレオチド配列}と少なくとも95%、99%、または100%同一である配列を含むAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、AAV5カプシドタンパク質が、配列番号104またはALKYHGPPA(配列番号104)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0080】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号56{CR19ポリヌクレオチド配列}と少なくとも95%、99%、または100%同一である配列を含むAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、AAV5カプシドタンパク質が、配列番号105またはARKYQGDMA(配列番号105)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0081】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号57{CR20ポリヌクレオチド配列}と少なくとも95%、99%、または100%同一である配列を含むAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、AAV5カプシドタンパク質が、配列番号106またはARKFHSTDA(配列番号106)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0082】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号58{CR21ポリヌクレオチド配列}と少なくとも95%、99%、または100%同一である配列を含むAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、AAV5カプシドタンパク質が、配列番号108またはAPGTNVTKA(配列番号108)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0083】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号59{CR22ポリヌクレオチド配列}と少なくとも95%、99%、または100%同一である配列を含むAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、AAV5カプシドタンパク質が、配列番号109またはARKMHMPDA(配列番号109)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0084】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号60{CR23ポリヌクレオチド配列}と少なくとも95%、99%、または100%同一である配列を含むAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、AAV5カプシドタンパク質が、配列番号110またはAPLKKIVQA(配列番号110)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0085】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号61{CR24ポリヌクレオチド配列}と少なくとも95%、99%、または100%同一である配列を含むAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、AAV5カプシドタンパク質は、配列番号111またはAPLGKKTSA(配列番号111)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0086】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号62{CR25ポリヌクレオチド配列}と少なくとも95%、99%、または100%同一である配列を含むAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、AAV5カプシドタンパク質が、配列番号112またはAPRGVKVTA(配列番号112)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0087】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号63{CR26ポリヌクレオチド配列}と少なくとも95%、99%、または100%同一である配列を含むAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、AAV5カプシドタンパク質が、配列番号113またはAPLAKSKSA(配列番号113)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0088】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号64{CR27ポリヌクレオチド配列}と少なくとも95%、99%、または100%同一である配列を含むAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、AAV5カプシドタンパク質が、配列番号114またはAPRTKGAVA(配列番号114)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0089】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号65{CR28ポリヌクレオチド配列}と少なくとも95%、99%、または100%同一である配列を含むAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、AAV5カプシドタンパク質が、配列番号115またはAPSGRKATA(配列番号115)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0090】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号66と少なくとも95%、99%、または100%同一である配列を含むAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、AAV5カプシドタンパク質が配列番号1に関して置換K251Rを含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0091】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号67と少なくとも95%、99%、または100%同一である配列を含むAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、AAV5カプシドタンパク質が配列番号1に関して置換S485Aを含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0092】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号68と少なくとも95%、99%、または100%同一である配列を含むAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、AAV5カプシドタンパク質が配列番号1に関して置換S651Aを含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0093】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号69と少なくとも95%、99%、または100%同一である配列を含むAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、AAV5カプシドタンパク質が、配列番号1に関して置換T578Aを含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0094】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号70と少なくとも95%、99%、または100%同一である配列を含むAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、AAV5カプシドタンパク質が、配列番号1に関して置換T582Aを含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0095】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号71と少なくとも95%、99%、または100%同一である配列を含むAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、AAV5カプシドタンパク質が、配列番号1に関して置換Y709Fを含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0096】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号72と少なくとも95%、99%、または100%同一である配列を含むAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、AAV5カプシドタンパク質が、配列番号1に関して置換Y693Fを含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0097】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号9~34から選択される改変カプシドと少なくとも95%、99%、または100%同一である配列を含むAAV5カプシドタンパク質であって、参照カプシド配列番号1からの改変カプシドにおいて置換が存在し、指定されたパーセント同一性レベルで他の置換、必要に応じて保存的置換が認容される、AAV5カプシドタンパク質を提供する。
一部の実施形態では、挿入部位は、配列番号1の420~460に対応する親配列における位置で任意の2つ、必要に応じて隣接するアミノ酸の間である。一部の実施形態では、挿入部位は、配列番号1の444および445に対応する親配列における隣接するアミノ酸の間である。例示的な実施形態は、配列番号31として開示されるAAV5カプシドである。
【0098】
一部の実施形態では、本明細書に開示される組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンは、親AAV5カプシドと比較してS651G、S651V、S651L、S651I、T578A、T578G、T578V、T578L、T578I、T582A、T582G、T582V、T582L、またはT582Iから選択される1つまたは複数の置換を含むAAV5カプシドタンパク質と、遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸とを含む。
【0099】
一部の実施形態では、本明細書に開示される組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンは、親AAV5カプシドと比較してS651A、T578A、またはT582Aから選択される1つまたは複数の置換を含むAAV5カプシドタンパク質と、遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸とを含む。
【0100】
AAV5カプシドタンパク質は、S651AまたはS651V;T578AまたはT578V;またはT582AもしくはT582Vから選択される任意の2つの置換、またはS651AもしくはS651V;T578AまたはT578V;またはT582AもしくはT582Vの3つ全てを含み得る。変異の以下の組合せは、本開示によって明白に企図される:
a) T578G+S651G;
b) T578V+S651V;
c) T578L+S651L;
d) T578I+S651I;
e) T582A+S651A;
f) T582G+S651G;
g) T582V+S651V;
h) T582L+S651L;
i) T582I+S651I;
j) T578A+T582A+S651A;
k) T578G+T582G+S651G;
l) T578V+T582V+S651V;
m) T578L+T582L+S651L;および
n) T578I+T582I+S651I。
【0101】
AAV5カプシドタンパク質は、S651A、T578A、またはT582Aから選択される任意の2つの置換;またはS651A、T578A、もしくはT582Aの3つ全てを含み得る。例えば、AAV5カプシドタンパク質は、配列番号74~80のいずれか1つ、またはそれと少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である配列であり得る。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【0102】
前述の配列のいずれかにおいて、アラニン置換は、その代わりにバリン(V)、グリシン(G)、ロイシン(L)、またはイソロイシン(I)への置換であり得る。
【0103】
一部の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸残基が野生型AAV5カプシドに存在する残基に保存される。例えば、一部の実施形態では、T581は、チロシン(T)として保存されるか、またはセリン(S)として半保存される。これに対し、米国特許第10,046,016号は、肺上皮細胞への感染力が、T581A変異による変異によって増加することを教示している。
【0104】
定義
文脈がそれ以外であることを示していない限り、本発明の特色(feature)を任意の組合せで使用することができる。記載される任意の特色または特色の組合せを除外または省略することができる。個別の実施形態に記載される本発明のある特定の特色もまた、単一の実施形態と組み合わせて提供され得る。単一の実施形態に記載される本発明の特色もまた、個別にまたは任意の適した部分組合せで提供され得る。実施形態の全ての組合せは、各々のおよびあらゆる組合せが個々に開示されているかのように本明細書に開示される。実施形態および要素の全ての部分組合せは、あらゆるそのような部分組合せが個々に開示されているかのように本明細書に開示される。
【0105】
特に定義していない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。詳細な説明は、単に読者の利便性のために節に分割され、任意の節において見出される本開示を別の節において見出される開示と組み合わせてもよい。本明細書に記載の方法および材料と類似または同等の任意の方法および材料を、本発明の実践または試験において使用することができるが、例示的な方法および材料を以下に記載する。本明細書において言及した全ての刊行物は、刊行物が引用されることに関連して方法および/または材料を開示および記載するために参照により本明細書に組み込まれる。刊行物を参照しても、刊行物が先行技術であると認めたことにはならない。
【0106】
単数形「1つの(a)」「1つ(an)」、および「その」は、本文が明らかにそれ以外であることを示していない限り複数形の指示対象を含む。例えば、「1つの組換えAAVビリオン」という言及は、そのようなビリオンの複数を含み、「その心臓細胞」という言及は1つまたは複数の心臓細胞を含む。
【0107】
接続詞「および/または」は、「および」と「または」との両方を意味し、「および/または」によって接続された列挙は、列挙された項目の1つまたは複数の全ての可能性がある組合せを包含する。
【0108】
用語「ベクター」は、細胞に送達されるポリヌクレオチドまたはタンパク質を含む高分子または分子の複合体を指す。
【0109】
「AAV」は、アデノ随伴ウイルスの略語である。この用語は、全てのサブタイプのAAVを網羅し、サブタイプが示されている場合を除き、天然に存在する形態および組換え形態の両方を含む。略語「rAAV」は、組換えアデノ随伴ウイルスを指す。「AAV」は、AAVまたは任意のサブタイプを含む。「AAV5」は、AAVサブタイプ5を指す。AAVの様々な血清型のゲノム配列ならびに天然の末端逆位反復配列(ITR)、Repタンパク質、およびカプシドサブユニットの配列は、文献または公共のデータベース、例えばGenBankに見出され得る。例えば、GenBank受託番号NC_002077(AAV1)、AF063497(AAV1)、NC_001401(AAV2)、AF043303(AAV2)、NC_001729(AAV3)、NC_001829(AAV4)、U89790(AAV4)、NC_006152(AAV5)、AF513851(AAV7)、AF513852(AAV8)、およびNC_006261(AAV8)を参照されたい。AAVについて記載する刊行物としては、Srivistava et al. (1983) J. Virol. 45:555; Chiorini et al. (1998) J. Virol. 71:6823; Chiorini et al. (1999) J. Virol. 73:1309; Bantel-Schaal et al. (1999) J. Virol. 73:939; Xiao et al. (1999) J. Virol. 73:3994; Muramatsu et al. (1996) Virol. 221:208; Shade et al. (1986) J. Virol. 58:921; Gao et al. (2002) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 99: 11854; Moris et al. (2004) Virology 33:375-383;国際特許出願公開番号WO2018/222503A1、WO2012/145601A2、WO2000/028061A2、WO1999/61601A2、およびWO1998/11244A2;米国特許出願第15/782,980号および同第15/433,322号;ならびに米国特許第10,036,016号、同第9,790,472号、同第9,737,618号、同第9,434,928号、同第9,233,131号、同第8,906,675号、同第7,790,449号、同第7,906,111号、同第7,718,424号、同第7,259,151号、同第7,198,951号、同第7,105,345号、同第6,962,815号、同第6,984,517号、および同第6,156,303号が挙げられる。
【0110】
当技術分野で使用される「AAVベクター」または「rAAVベクター」は、文脈に応じてrAAVビリオン内にパッケージングされたDNAまたはrAAVビリオンそのもののいずれかを指す。本明細書で使用される場合、文脈から、そうでないことが明らかでない限り、rAAVベクターは、カプシドまたはrAAVビリオンの他のタンパク質と共に、rAAVビリオン内にパッケージングされることが可能なポリヌクレオチド配列を含む核酸(典型的にはプラスミド)を指す。一般的には、rAAVベクターは、異種ポリヌクレオチド配列(すなわち、AAV起源ではないポリヌクレオチド)と、異種ポリヌクレオチド配列に隣接する1つまたは2つのAAV末端逆位反復配列(ITR)とを含む。2つのITRのうちの1つのみがrAAVにパッケージングされてもよく、それでもなお得られたrAAVビリオンの感染力は維持され得る。Wu et al. (2010) Mol Ther. 18:80を参照されたい。rAAVベクターは、一本鎖(ssAAV)または自己相補性(scAAV)のいずれかを生成するように設計され得る。McCarty D. (2008) Mo. Ther. 16:1648-1656;WO2001/11034;WO2001/92551;WO2010/129021を参照されたい。
【0111】
「rAAVビリオン」は、少なくとも1つのウイルスカプシドタンパク質(例えば、VP1)およびカプシドタンパク質を含むカプシド形成されたrAAVベクター(またはその断片)を含む細胞外ウイルス粒子を指す。
【0112】
簡潔および明確にするために、本開示は、「カプシドタンパク質」または「複数のカプシドタンパク質」を指す。当業者は、そのような言及が、VP1、VP2、もしくはVP3、またはVP1、VP2、およびVP3の組合せを指すことを理解する。野生型AAVおよびほとんどの組換え発現系の場合と同様に、VP1、VP2、およびVP3は、同じオープンリーディングフレームから発現され、VP3をコードする配列の操作は、必然的にVP1およびVP2のC末端ドメインの配列を変更する。同様に異なるオープンリーディングフレームからカプシドタンパク質を発現させてもよく、この場合、得られたrAAVビリオンのカプシドは野生型と操作されたカプシドタンパク質との混合物、および異なる操作されたカプシドタンパク質の混合物を含有し得る。
【0113】
用語「末端逆位反復配列」または「ITR」は、本明細書で使用される場合、その対称性のためにそのように命名されたAAVウイルスシスエレメントを指す。これらのエレメントは、AAVゲノムの効率的な複製にとって必須である。理論に拘束されたくはないが、ITR機能にとって必須の最小エレメントは、Rep結合部位および末端分解部位(terminal resolution site)プラスヘアピン形成を可能にする可変回文配列であると考えられる。本開示は、AAVゲノムを生成する代替手段が存在し得ること、または本開示のカプシドタンパク質と適合性となるようにプロスペクティブに開発され得ることを企図する。
【0114】
「ヘルパーウイルス機能」は、AAV複製およびパッケージングを可能にするヘルパーウイルスゲノムにおいてコードされる機能を指す。
【0115】
「パッケージング」は、rAAVベクターのカプシド形成を含むrAAVビリオンのアセンブリをもたらす一連の細胞内事象を指す。AAV「rep」および「cap」遺伝子は、アデノ随伴ウイルスの複製およびカプシド形成タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を指す。AAV repおよびcapは、本明細書においてAAV「パッケージング遺伝子」と呼ばれる。パッケージングは、ヘルパーウイルスそのものまたは組換え系においてより一般的な、ヘルパーフリー系によって供給されるヘルパーウイルス機能(すなわち、1つまたは複数のヘルパープラスミド)のいずれかを必要とする。
【0116】
AAVの「ヘルパーウイルス」は、AAV(例えば、野生型AAV)を哺乳動物細胞によって複製およびパッケージングさせるウイルスを指す。ヘルパーウイルスは、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、またはポックスウイルス、例えばワクシニアであり得る。
【0117】
「感染性」ビリオンまたはウイルス粒子は、コンピテントにアセンブルされたウイルスカプシドを含み、ビリオンが指向性である細胞にポリヌクレオチド構成要素(component)を送達することが可能なビリオンまたはウイルス粒子である。この用語は、ウイルスの複製能を必ずしも意味しない。
【0118】
「感染力」は、ビリオンが細胞を調節する能力の測定値を指す。感染力は、感染性ウイルス粒子の総ウイルス粒子に対する比として表記することができる。感染力は、一般的に特定の細胞タイプに関して決定される。これは、in vivoまたはin vitroの両方で測定することができる。感染性ウイルス粒子の総ウイルス粒子に対する比を決定する方法は、当技術分野において公知である。例えば、Grainger et al. (2005) Mol. Ther. 11:S337 (TCID50感染力価アッセイについて記載する);およびZolotukhin et al. (1999) Gene Ther. 6:973を参照されたい。
【0119】
用語「親カプシド」または「親配列」は、粒子カプシドまたは配列が由来する参照配列を指す。特に明記していない限り、親配列は、操作されたカプシドタンパク質と同じ血清型の野生型カプシドタンパク質の配列を指す。
【0120】
「複製コンピテント」ウイルス(例えば、複製コンピテントAAV)は、感染性であり、感染した細胞において複製されることが可能であるウイルス(すなわち、ヘルパーウイルスまたはヘルパーウイルス機能の存在下で)を指す。一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンは、rep遺伝子、またはrepおよびcap遺伝子の両方を欠如するゲノムを含み、したがって複製インコンピテントである。
【0121】
本開示の実践は、特に示していない限り、当業者の範囲内である組織培養、免疫学、分子生物学、細胞生物学、および組換えDNAの通常の技術を用いる。例えば、Sambrook and Russell eds. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition; Ausubel et al. eds. (2007) Current Protocols in Molecular Biology; Methods in Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.); MacPherson et al. (1991) PCR 1: A Practical Approach (IRL Press at Oxford University Press); MacPherson et al. (1995) PCR 2: A Practical Approach; Harlow and Lane eds. (1999) Antibodies, Laboratory Manual; Freshney (2005) Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, 5thedition; Gait ed. (1984) Oligonucleotide Synthesis; 米国特許第4,683,195号; Hames and Higgins eds. (1984) Nucleic Acid Hybridization; Anderson (1999) Nucleic Acid Hybridization; Hames and Higgins eds. (1984) Transcription and Translation; IRL Press (1986) Immobilized Cells and Enzymes; Perbal (1984) A Practical Guide to Molecular Cloning; Miller and Calos eds. (1987) Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (Cold Spring Harbor Laboratory); Makrides ed. (2003) Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells; Mayer and Walker eds. (1987) Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Academic Press, London); Herzenberg et al. eds (1996) Weir's Handbook of Experimental Immunology; Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual, 3rd edition (2002) Cold Spring Harbor Laboratory Press; Sohail (2004) Gene Silencing by RNA Interference: Technology and Application (CRC Press);およびSell (2013) Stem Cells Handbookを参照されたい。
【0122】
用語「核酸」および「ポリヌクレオチド」は、互換的に使用され、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのいずれか、またはそれらのアナログの任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドの非限定的な例としては、直線状および環状核酸、メッセンジャーRNA(mRNA)、cDNA、組換えポリヌクレオチド、ベクター、プローブ、およびプライマーが挙げられる。特に明記していない限りまたは必要でない限り、ポリヌクレオチドである本明細書に記載される本発明の任意の実施形態は、二本鎖形態および二本鎖形態を構成することが公知であるかまたは予想される2つの相補的一本鎖形態の各々の両方を包含する。
【0123】
用語「ポリペプチド」、および「タンパク質」は、本明細書において互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指し、これは遺伝子コードされるおよび遺伝子コードされないアミノ酸、化学または生化学的に改変または誘導体化されたアミノ酸、ならびに改変ペプチド骨格を有するポリペプチドを含み得る。用語はまた、改変されている、例えばジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質付加、リン酸化、または標識構成要素とのコンジュゲーションを有するアミノ酸ポリマーも包含する。
【0124】
用語「ペプチド」は、短いポリペプチド、例えば約4~30アミノ酸残基の間を有するペプチドを指す。
【0125】
用語「単離された」は、ビリオン、細胞、組織、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が通常天然で会合している細胞性のおよびその他の構成成分から分離されていることを意味する。例えば、単離された細胞は、異なる表現型または遺伝子型の組織または細胞から分離された細胞である。
【0126】
本明細書で使用される場合、「配列同一性」または「同一性」は、目的の配列と参照配列との間で同一であるアミノ酸の数のパーセンテージを指す。一般的に、同一性は、目的の配列を参照配列と整列させること、整列させた配列間で同一であるアミノ酸の数を決定すること、その数を参照配列におけるアミノ酸の総数によって除算すること、およびその結果に100を乗算してパーセンテージを得ることによって決定される。配列は、様々なコンピュータープログラム、例えばncbi.nlm.nih.govで入手可能なBLASTを使用して整列させることができる。アライメントのための他の技術は、Methods in Enzymology, vol. 266: Computer Methods for Macromolecular Sequence Analysis (1996);およびMeth. Mol. Biol. 70: 173-187 (1997); J. Mol. Biol. 48: 44に記載されている。当業者は、配列の長さ、相違、および参照配列に関する挿入または欠失の存在または非存在(presence of absence)を含む様々な要因に応じて適切なアライメント方法を選択することが可能である。
【0127】
「組換え」は、ポリヌクレオチドに適用される場合、ポリヌクレオチドが、クローニング、制限またはライゲーションステップ、および天然で見出されるポリヌクレオチドとは異なる構築物をもたらす他の手順の様々な組合せの産物であるか、またはポリヌクレオチドが合成オリゴヌクレオチドからアセンブルされることを意味する。「組換え」タンパク質は、組換えポリペプチドから産生されたタンパク質である。組換えビリオンは、組換えポリヌクレオチドおよび/または組換えタンパク質、例えば組換えカプシドタンパク質を含むビリオンである。
【0128】
「遺伝子」は、転写および翻訳された後に特定のタンパク質をコードすることが可能である少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含有するポリヌクレオチドを指す。「遺伝子産物」は、特定の遺伝子の発現に起因する分子である。遺伝子産物としては、ポリペプチド、タンパク質、アプタマー、干渉RNA、またはmRNAが挙げられ得るがこれらに限定されない。遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Cas系)は、系を作製するために必要な1つの遺伝子産物としてまたはいくつかの遺伝子産物(例えば、Casタンパク質およびガイドRNA)として記載され得る。
【0129】
「短鎖ヘアピンRNA」またはshRNAは、siRNAを発現するために使用されるポリヌクレオチド構築物である。
【0130】
「制御エレメント」または「制御配列」は、ポリヌクレオチドの複製、重複、転写、スプライシング、翻訳、または分解を含む、ポリヌクレオチドの機能的調節に寄与する分子の相互作用に関係するヌクレオチド配列である。調節は、プロセスの頻度、速度、または特異性に影響を及ぼし得、本質的に増強性または阻害性であり得る。制御エレメントは、プロモーターおよび/またはエンハンサーなどの転写調節配列を含む。
【0131】
「プロモーター」は、ある特定の条件下でRNAポリメラーゼに結合することが可能で、プロモーターから通常下流に(3’方向に)位置するコード領域の転写を開始することが可能なDNA配列である。用語「組織特異的プロモーター」は、本明細書で使用される場合、心組織などの特定の臓器または組織の細胞において操作可能であるプロモーターを指す。
【0132】
「作動可能に(operatively)連結された」または「操作可能に(operably)連結された」は、エレメントがそれらを予想される様式で動作することを可能にする関係にある遺伝子エレメントの並置を指す。例として、プロモーターがコード配列の転写の開始を助ける場合、プロモーターはコード領域作動可能に連結されている。この機能的関係が維持される限り、プロモーターとコード領域との間に介在する残基が存在してもよい。
【0133】
「発現ベクター」は、標的細胞において遺伝子産物の発現に影響を及ぼすために使用される目的の遺伝子産物をコードするコード配列を含むベクターである。発現ベクターは、遺伝子産物の発現を容易にするためにコード配列に作動可能に連結された制御エレメントを含む。
【0134】
用語「発現カセット」は、標的細胞における遺伝子産物の発現に影響を及ぼすために使用される目的の遺伝子産物をコードするコード配列を含む異種ポリヌクレオチドを指す。特に指定していない限り、AAVベクターの発現カセットは、ITRの間に(かつITRを含まない)ポリヌクレオチドを含む。
【0135】
用語「遺伝子送達」または「遺伝子移入」は、本明細書で使用される場合、外来の核酸配列、例えばDNAを宿主細胞に信頼可能に挿入するための方法またはシステムを指す。そのような方法は、組み込まれていない移入されたDNAの一過性の発現、移入されたレプリコンの染色体外複製および発現(例えば、エピソーム)、または移入された遺伝子材料の宿主細胞のゲノムDNAへの組込みをもたらし得る。
【0136】
「異種」は、それが比較される実体の残りの遺伝子型とは遺伝子型が異なる実体に由来することを意味する。例えば、遺伝子操作技術によって異なる種に由来するプラスミドまたはベクターに導入されたポリヌクレオチドは、異種ポリヌクレオチドである。その天然のコード配列から除去され、それが天然で関連が見出されないコード配列に作動可能に連結されているプロモーターは異種プロモーターである。このように例えば、異種核酸を含むrAAVは、天然に存在するAAVに通常含まれない核酸を含むrAAVである。
【0137】
用語「遺伝的変更」および「遺伝子改変」(およびその文法的バリアント)は本明細書で互換的に使用され、遺伝子エレメント(例えば、ポリヌクレオチド)が有糸分裂または減数分裂以外によって細胞に導入されるプロセスを指す。エレメントは、細胞に対して異種であり得るか、または細胞にすでに存在するエレメントの追加のコピーもしくは改善されたバージョンであり得る。遺伝的変更は、例えば、当技術分野において公知の任意のプロセス、例えば電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿を通して細胞に組換えプラスミドもしくは他のポリヌクレオチドをトランスフェクトすることによって、またはポリヌクレオチド-リポソーム複合体を接触させることによって影響を受け得る。遺伝的変更はまた、ベクターの形質導入または感染によっても影響を受け得る。
【0138】
配列が、in vitroでの細胞の長期培養の間にその機能を実施するために利用できる場合、細胞は、ポリヌクレオチド配列によって「安定に」変更されるか、形質導入されるか、遺伝子改変されるか、または形質転換されていると言われる。一般的に、そのような細胞は、変更された細胞の子孫によって同様に受け継がれ得る遺伝的変更が導入されているという点において「遺伝的に」変更されて(遺伝子改変されて)いる。
【0139】
用語「トランスフェクション」は、本明細書で使用される場合、細胞による外因性の核酸分子の取込みを指す。細胞は、外因性の核酸が細胞膜の内部に導入されている場合「トランスフェクト」されている。いくつかのトランスフェクション技術が、当技術分野で一般的に公知である。例えば、Graham et al. (1973) Virology, 52:456, Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning, a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratories, New York, Davis et al. (1986) Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier, and Chu et al. (1981) Gene 13:197を参照されたい。そのような技術を使用して、1つまたは複数の外因性の核酸分子を適した宿主細胞に導入することができる。
【0140】
用語「形質導入」は、本明細書で使用される場合、野生型ビリオンによる「感染」とは対照的に組換えビリオンによる細胞への外因性核酸の移入を指す。感染を組換えビリオンに関して使用する場合、用語「形質導入」および「感染性」は、同義語であり、したがって「感染力」および「形質転換効率」は、等価であり、類似の方法を使用して決定することができる。
【0141】
特に指定していない限り、全ての医学用語は、例えば全ての目的に関してその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Harrison's Principles of Internal Medicine, 15ed.、特に心臓または心血管の疾患、障害、状態、および機能障害に関する章におけるように、医療従事者によって使用される用語の通常の意味を与えられる。
【0142】
「処置」、「処置する(treating)」、および「処置する(treat)」は、疾患、障害、もしくは状態、および/またはその症状の有害なまたは他の任意の望ましくない作用を低減または改善する作用剤によって疾患、障害、または状態に作用することとして定義される。
【0143】
「投与」、「投与する」などは、本発明の組成物に関連して使用する場合、直接投与(医療従事者による対象への投与または対象による自己投与)、および/または間接的投与(組成物を患者に処方すること)の両方を指す。典型的には有効量が投与され、この量は当業者が決定することができる。任意の投与方法を使用してもよい。対象への投与は、例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、血管内、または心筋内送達によって達成され得る。
【0144】
本明細書で使用される場合、組成物の量に関する用語「有効量」などは、所望の生理的アウトカム(例えば、細胞のリプログラミングまたは疾患の処置)を誘導するために十分である量を指す。有効量は、1つまたは複数の投与、適用、または投薬量で投与することができる。そのような送達は、個々の投薬量単位が使用される期間、組成物の生物学的利用率、投与経路などを含む複数の変数に依存する。しかし、任意の特定の対象に関する組成物(例えば、rAAVビリオン)の特定の量は、用いられる特定の作用剤の活性、対象の年齢、体重、全身健康、性別、および食事、投与時間、排泄速度、組成物の組合せ、処置される特定の疾患の重症度、および投与形態を含む多様な要因に依存すると理解される。
【0145】
用語「個体」、「対象」、および「患者」は、本明細書において互換的に使用され、ヒトおよび非ヒト霊長類(例えば、サル);競技用哺乳動物(例えば、ウマ);農場哺乳動物(例えば、ヒツジ、ヤギなど);哺乳動物ペット(例えば、イヌ、ネコなど);およびげっ歯類(例えば、マウス、ラットなど)を含むがこれらに限定されない哺乳動物を指す。
【0146】
用語「心病態」または「心機能障害」は、互換的に使用され、心臓のポンプ機能の何らかの欠陥を指す。これには、例えば収縮の欠陥、弛緩能の欠陥(時に拡張機能障害と呼ばれる)、心臓弁の異常なまたは不適切な機能、心筋疾患(時に、心筋症と呼ばれる)、狭心症、心筋虚血、および/または心筋に対する不適切な血液供給によって特徴付けられる梗塞などの疾患、アミロイドーシスおよびヘモクロマトーシスなどの浸潤性疾患、全身または局所肥大(例えば、ある種の心筋症または全身性高血圧症において起こり得る)、および心室間の異常な伝導が挙げられる。
【0147】
本明細書で使用される場合、用語「心筋症」は、心筋に直接影響を及ぼす任意の疾患または機能障害を指す。疾患または障害の病因は、例えば、炎症、代謝、毒性、浸潤性、線維形成性、血液学、遺伝子学、または起源不明であり得る。2つの根本的な形態、(1)原因不明の心筋疾患からなる第1のタイプ、および(2)既知原因の心筋疾患からなるまたは他の臓器系を伴う疾患に関連する第2のタイプが認識されている。「特定の心筋症」は、ある特定の全身障害または心障害に関連する心疾患を指し;例としては、高血圧性および代謝性心筋症が挙げられる。心筋症は、左室および/または右室の収縮ポンプ機能が損なわれ、進行性の心肥大をもたらす障害である拡張型心筋症(DCM);高血圧症または大動脈狭窄などの明白な原因がない左室肥大によって特徴付けられる肥大型心筋症;ならびに異常な拡張機能および心室充満を妨害する過度に強固な心室壁によって特徴付けられる拘束型心筋症を含む。心筋症はまた、左室心筋緻密化障害、不整脈原性の右室心筋症、および不整脈原性右室異形成も含む。
【0148】
「心不全」は、心機能の異常は、心臓が代謝組織の要件に見合う速度で血液を送り出すことができないことの原因となる、および/または拡張容量が異常に上昇した場合に限って心臓がそうすることができる病的状態を指す。心不全は、収縮期および拡張期不全を含む。心不全患者は、低い心拍出量を有する患者(典型的に、虚血性心疾患、高血圧症、拡張型心筋症、および/または弁膜症もしくは心膜疾患に二次的である)、および上昇した心拍出量を有する患者(典型的に、甲状腺機能亢進症、貧血、妊娠、動静脈痩、脚気、およびページェット病による)に分類される。心不全は、駆出率低下心不全(HFrEF)および駆出率が保たれた心不全(HFpEF)を含む。
【0149】
語句「薬学的に許容される」は、本明細書で用いられる場合、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を引き起こすことなく、妥当な利益/リスク比に釣り合ってヒトおよび動物の組織と接触して使用するために適したそれらの化合物、材料、組成物、および/または剤形を指す。
【0150】
用語「精製された」は、本明細書で使用される場合、無関係な材料、すなわち材料が得られた天然の材料を含む不純物の存在を低減または除去する条件下で単離されている材料を指す。例えば、精製されたrAAVベクターDNAは、好ましくは組織培養構成要素、夾雑物などを含む細胞や培養構成要素を実質的に含まない。
【0151】
用語「再生する」、「再生」などは、本明細書で傷害を受けた心組織の文脈において使用される場合、その通常の意味を有し、同様に傷害を受けている、例えば虚血、梗塞、再還流、または他の疾患により傷害を受けている心臓または心組織において新たな心組織を成長および/または発達させるプロセスも指す。一部の実施形態では、心組織再生は、心筋細胞の生成を含む。
【0152】
用語「治療遺伝子」は、本明細書で使用される場合、発現された場合に、それが存在する細胞もしくは組織、または遺伝子が発現される哺乳動物に対して有益な効果を付与する遺伝子を指す。有益な効果の例としては、状態もしくは疾患の兆候もしくは症状の改善、状態もしくは疾患の防止もしくは阻害、または所望の特徴の付与が挙げられる。治療遺伝子は、細胞または哺乳動物における遺伝子欠損を部分的にまたは全体を修正する遺伝子を含む。
【0153】
本明細書で使用される場合、用語「機能的な心筋細胞」は、電気シグナルを送るまたは受けることができる分化した心筋細胞を指す。一部の実施形態では、活動電位および/またはCa2+トランジェントなどの電気生理的特性を示す場合、心筋細胞は機能的な心筋細胞であると言われる。
【0154】
本明細書で使用される場合、「分化した非心臓細胞」は、成体生物の全ての細胞タイプへは分化することができず(すなわち、多能性細胞ではない)、心臓系列以外の細胞系列(例えば、神経系列、または結合組織系列)の細胞系列である細胞を指し得る。分化した細胞としては、複能性細胞、少能性細胞、単能性細胞、前駆細胞、および最終分化細胞が挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施形態では、分化能が低い細胞は、分化能が高い細胞を参照すると「分化した」と見なされる。
【0155】
「体細胞」は、生物の体を形成する細胞である。体細胞は、生物における臓器、皮膚、血液、骨、および結合組織を構成する細胞を含むが、胚細胞ではない。
【0156】
本明細書で使用される場合、用語「全能性」は、細胞が生物の全ての細胞系列を形成する能力を意味する。例えば、哺乳動物では、受精卵および第1分割段階の胚盤胞のみが全能性である。
【0157】
本明細書で使用される場合、用語「多能性」は、細胞が体または身体の全ての系列を形成する能力を意味する。例えば、胚性幹細胞は、3つの胚葉、すなわち外胚葉、中胚葉、および内胚葉の各々から細胞を形成することができる多能性幹細胞の1タイプである。多能性細胞は、NanogおよびRex1などのそのマーカーの発現によって認識され得る。
【0158】
本明細書で使用される場合、用語「複能性」は、成体幹細胞が1つの系列の複数の細胞タイプを形成する能力を指す。例えば、造血幹細胞は、血液細胞系列の全ての細胞、例えばリンパ系細胞および骨髄性細胞を形成することが可能である。
【0159】
本明細書で使用される場合、用語「少能性」は、成体幹細胞がごく少数の異なる細胞タイプに分化する能力を指す。例えば、リンパ系幹細胞または骨髄幹細胞はそれぞれ、リンパ系列または骨髄系列のいずれかの細胞を形成することが可能である。
【0160】
本明細書で使用される場合、用語「単能性」は、細胞が単一の細胞タイプを形成する能力を意味する。例えば、精原幹細胞は、精子細胞のみを形成することが可能である。
【0161】
本明細書で使用される場合、用語「リプログラミング」または「分化転換」は、細胞を、多能性幹細胞特徴を示す細胞に再分化させる中間プロセスがなく、異なる細胞タイプの細胞(例えば、線維芽細胞)からある特定の系列の細胞(例えば、心臓細胞)を生成することを指す。
【0162】
本明細書で使用される場合、用語「心臓細胞」は、心臓の収縮または血液供給などの心機能を提供するか、またはそうでなければ心臓の構造を維持するように作用する、心臓に存在する任意の細胞を指す。心臓細胞は、本明細書で使用される場合、心臓の外膜、筋膜、または内膜に存在する細胞を包含する。心臓細胞はまた、例えば心臓の筋肉細胞または心筋細胞、および心血管系の細胞、例えば冠動脈または冠静脈の細胞も含む。心臓細胞の他の非限定的な例としては、心臓の筋肉、血管、および構造を支持する心臓細胞を構成する、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、心幹細胞または前駆細胞、心臓伝導細胞、および心ペースメーカー細胞が挙げられる。心臓細胞は、例えば胚性幹細胞または人工多能性幹細胞を含む幹細胞に由来し得る。
【0163】
用語「心筋細胞(cardiomyocyte)」または「複数の心筋細胞(cardiomyocytes)」は、本明細書で使用される場合、骨格筋細胞と比較して哺乳動物の心臓に天然に見出されるサルコメア含有横紋筋細胞を指す。心筋細胞は、特殊な分子、例えばミオシン重鎖、ミオシン軽鎖、心α-アクチンのようなタンパク質の発現によって特徴付けられる。用語「心筋細胞」は、本明細書で使用される場合、任意の心筋細胞亜集団または心筋細胞サブタイプ、例えば心房、心室、およびペースメーカー心筋細胞を含む総称である。
【0164】
用語「心筋細胞様細胞」は、心筋細胞の特色を共有するが、全ての特色を共有しなくてもよい細胞を意味すると意図される。例えば、心筋細胞様細胞は、ある特定の心遺伝子の発現が心筋細胞とは異なり得る。
【0165】
用語「培養」または「細胞培養」は、人為的なin vitro環境で細胞を維持することを意味する。「細胞培養系」は本明細書で使用される場合、細胞集団が単層または浮遊状態で成長し得る培養条件を指す。「培養培地」は、本明細書で使用される場合、細胞の培養、成長、または増殖のための栄養溶液を指す。培養培地は、機能的特性、例えば、限定されずに、特定の状態(例えば、多能性状態、休止状態等)で細胞を維持する能力、細胞を成熟させる能力、一部の例では具体的には、特定の系列の細胞(例えば、心筋細胞)への前駆細胞の分化を促進する能力によって特徴付けられ得る。
【0166】
本明細書で使用される場合、用語「発現」または「発現する」は、それによってポリヌクレオチドがmRNAに転写されるプロセス、および/または転写されたmRNAがその後ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質へと翻訳されるプロセスを指す。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現は、真核細胞におけるmRNAのスプライシングを含み得る。遺伝子の発現レベルは、細胞または組織試料中のmRNAまたはタンパク質の量を測定することによって決定され得る。
【0167】
用語「誘導心筋細胞」または略語「iCM」は、心筋細胞(および/または心筋細胞様細胞)へと形質転換されている非心筋細胞(およびその子孫)を指す。本開示の方法は、例えば他の技術を増強するため、誘導心筋細胞を生成するために現在公知のまたは後に発見される任意の方法と共に使用することができる。
【0168】
用語「人工多能性幹細胞由来心筋細胞」は、本明細書で使用される場合、心筋細胞様細胞へと分化しているヒト人工多能性幹細胞を指す。調製されたiPS-CM細胞の例示的な方法は、Karakikes et al. Circ Res. 2015 Jun 19; 117(1): 80-88によって提供される。
【0169】
用語「ヒト心臓線維芽細胞」および「マウス心臓線維芽細胞」はそれぞれ、本明細書で使用される場合、ヒトまたはマウスの成体心室から単離され、ex vivoでの培養において維持される初代細胞を指す。
【0170】
用語「非心筋細胞」は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義および使用される「心筋細胞」の基準を満たさない細胞調製物中の任意の細胞または細胞集団を指す。非心筋細胞の非限定的な例としては、体細胞、心臓線維芽細胞、非心臓線維芽細胞、心臓前駆細胞、および幹細胞が挙げられる。
【0171】
本明細書で使用される場合、「リプログラミング」は、分化転換、脱分化などを含む。
【0172】
本明細書で使用される場合、用語「リプログラミング効率」は、試料中の細胞の総数と比較して心筋細胞へのリプログラミングが成功した試料中の細胞数を指す。
【0173】
用語「リプログラミング因子」は、本明細書で使用される場合、1つの細胞タイプから別の細胞タイプへの細胞のリプログラミングを助けるため、細胞に発現させるために導入される因子を含む。例えば、リプログラミング因子は、他の転写因子および/または低分子と組み合わせて、心臓線維芽細胞を誘導心筋細胞へとリプログラミングすることが可能な転写因子を含み得る。本文から明白でない限り、リプログラミング因子は、AAVが送達するポリヌクレオチドによってコードされ得るポリペプチドを指す。リプログラミング因子はまた低分子も含み得る。
【0174】
用語「幹細胞」は、自己再生能を有し、分化した子孫を生成する能力を有する細胞を指す。用語「多能性幹細胞」は、3つ全ての胚葉(内胚葉、中胚葉、および外胚葉)の細胞を生じることができるが、完全な生物を生じる能力は有しない幹細胞を指す。
【0175】
本明細書で使用される場合、ポリペプチドまたは核酸配列を参照する場合の用語「その同等物」は、参照のポリペプチドまたは核酸配列とは異なるが、必須の特性(例えば、生物活性)を保持するポリペプチドまたは核酸を指す。ポリペプチドの典型的なバリアントは、別の参照ポリヌクレオチドとはヌクレオチド配列が異なる。バリアントのヌクレオチド配列の変化は、参照ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変更しても、変更しなくてもよい。ヌクレオチドの変化は、参照配列によってコードされるポリペプチドにおいてアミノ酸置換、欠失、付加、融合、および切断をもたらし得る。一般的に、参照ポリペプチドおよびバリアントの配列が、全体として非常に類似であり、多くの領域において同一であるように、差は限定的である。
【0176】
本明細書で使用される場合、用語「前駆細胞」は、特定のタイプの細胞へと分化するか、または特定のタイプの組織を形成するように関係づけられた細胞を指す。前駆細胞は、幹細胞と同様に1つまたは複数の種類の細胞へとさらに分化することができるが、それがより限定された/拘束された分化能を有するように幹細胞より成熟している。
【0177】
用語「遺伝子改変」は、新規核酸(すなわち、細胞に対して外因性の核酸)の導入後に細胞に導入された永続的または一過性の遺伝子変化を指す。遺伝子変化は、新規核酸の心臓細胞のゲノムへの組み入れ、または新規核酸の染色体外エレメントとしての一過性もしくは安定な維持によって達成され得る。細胞が真核細胞である場合、永続的な遺伝子変化は、細胞のゲノムへの核酸の導入によって達成することができる。遺伝子改変の適した方法としては、ウイルス感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、電気穿孔、パーティクルガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクションなどが挙げられる。
【0178】
用語「幹細胞」は、自己再生能および分化した子孫を生成する能力を有する細胞を指す。用語「多能性幹細胞」は、3つ全ての胚葉(内胚葉、中胚葉、および外胚葉)の細胞を生じることができるが、完全な生物を生じる能力を有しない幹細胞を指す。一部の実施形態では、心筋細胞表現型を誘導するための組成物を、リプログラミングを誘導するために細胞集団において使用することができる。他の実施形態では、組成物は心筋細胞表現型を誘導する。
【0179】
用語「人工多能性幹細胞」は、その通常の意味を有し、多能性の少なくとも1つの特徴を示すようにリプログラムされている分化した哺乳動物体細胞(例えば、成体体細胞、例えば皮膚)も指す。例えば、Takahashi et al. (2007) Cell 131(5):861-872, Kim et al. (2011) Proc. Natl. Acad. Sci. 108(19): 7838-7843, Sell (2013) Stem Cells Handbookを参照されたい。
【0180】
用語「形質導入効率」は、少なくとも1つのAAVゲノムによって形質導入された細胞のパーセンテージを指す。例えば、1×106個の細胞がウイルスに曝露され、0.5×106個の細胞がAAVゲノムの少なくとも1つのコピーを含有すると決定される場合、形質導入効率は50%である。形質導入効率を決定するための例示的な方法は、フローサイトメトリーである。例えば、AAVゲノムが緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするポリヌクレオチドを含む場合、GFP+細胞のパーセンテージは形質導入効率の尺度である。
【0181】
用語「選択性」は、1つの細胞タイプの別のまたは他の全ての細胞タイプに対する形質導入効率の比を指す。
【0182】
用語「感染力」は、AAVビリオンが細胞、特にin vivoの細胞に感染する能力を指す。したがって、感染力は、少なくとも生体内分布および中和抗体逃避の関数である。
【0183】
特に明記していない限り、本明細書を通して使用した略語は以下の意味を有する:AAV、アデノ随伴ウイルス、rAAV、組換えアデノ随伴ウイルス;AHCF、成人ヒト心臓線維芽細胞;APCF、成体ブタ心臓線維芽細胞;a-MHC-GFP、アルファ-ミオシン重鎖緑色蛍光タンパク質;CF、心臓線維芽細胞;cm、センチメートル;CO、心拍出量;EF、駆出率;FACS、蛍光活性化細胞選別;GFP、緑色蛍光タンパク質;GMT、Gata4、Mef2c、およびTbx5;GMTc、Gata4、Mef2c、Tbx5、TGF-βi、WNTi;GO、遺伝子オントロジー;hCF、ヒト心臓線維芽細胞;iCM、誘導心筋細胞;kg、キログラム(killigram);μg、マイクログラム;μl、マイクロリットル;mg、ミリグラム;ml、ミリリットル;MI、心筋梗塞;msec、ミリ秒;min、分;MyAMT、ミオカルジン、Ascl1、Mef2c、およびTbx5;MyA、ミオカルジン、およびAscl1;MyMT、ミオカルジン、Mef2c、およびTbx5;MyMTc、ミオカルジン、Mef2c、Tbx5、TGF-βi、WNTi;MRI、核磁気共鳴イメージング;PBS、リン酸緩衝食塩水;PBST、リン酸緩衝食塩水、triton;PFA、パラホルムアルデヒド;qPCR、定量的ポリメラーゼ連鎖反応;qRT-PCR、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応;RNA、リボ核酸;RNA-seq、RNAシーケンシング;RT-PCR、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応;sec、秒;SV、一回拍出量;TGF-β、トランスフォーミング成長因子ベータ;TGF-βi、トランスフォーミング成長因子ベータ阻害剤;WNT、wingless-Int;WNTi、wingless-Int阻害剤;YFP、黄色蛍光タンパク質;4F、Gata4、Mef2c、TBX5、およびミオカルジン;4Fc、Gata4、Mef2c、TBX5、およびミオカルジン+TGF-βiおよびWNTi;7F、Gata4、Mef2c、およびTbx5、Essrg、ミオカルジン、Zfpm2、およびMesp1;7Fc、Gata4、Mef2c、およびTbx5、Essrg、ミオカルジン、Zfpm2、およびMesp1+TGF-β、およびWNTi。
【0184】
実施形態および変形形態
組成物
遺伝子治療にとって有用な特性を有するカプシドバリアントを同定する努力は、米国特許第9,233,131号に記載されるAAV2およびAAV5 cap遺伝子のDNAのシャッフリング、ならびに国際特許出願番号WO2012/145601A2およびWO2018/222503A1に記載の指向性進化法を含む。これらの文書の開示は、全ての目的に関して、特にAAVビリオンを作製および使用する方法ならびにその中に開示されているポリヌクレオチド配列および遺伝子産物、ならびに心疾患または障害を処置するために有用な転写因子の組合せに関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0185】
AAVカプシドは、AAVのcap遺伝子によってコードされ、これはまた右オープンリーディングフレーム(ORF)とも呼ばれる(左ORF、repに対して)。代表的なAAVカプシドの構造は、Xie et al. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci USA 99:10405-1040 (AAV2); Govindasamy et al. (2006) J. Virol. 80:11556-11570 (AAV4); Nam et a. (2007) J. Virol. 81:12260-12271 (AAV8)および Govindasamy et al. (2013) J. Virol. 87:11187-11199 (AAV5)を含む様々な刊行物に記載されている。
【0186】
AAVカプシドは、予想される比1:1:10でT=1正二十面体対称性で整列した3つのウイルスタンパク質(VP)、VP1、VP2、およびVP3の60コピー(全体で)を含有する。3つのVPは、同じmRNAから翻訳され、VP1はそのC末端領域での完全なVP2配列に加えてユニークなN末端ドメインを含有する。VP2は、そのC末端でVP3に加えて余分のN末端配列を含有する。ほとんどの結晶構造では、全てのカプシドタンパク質に共通するC末端ポリペプチド配列(約530アミノ酸)のみが観察される。VP1のユニークなN末端領域、VP1-VP2重複領域、およびVP3の最初の14~16個のN末端残基が主に障害を受けると考えられる。クライオ電子顕微鏡および画像再構成データから、インタクトAAVカプシドでは、VP1およびVP2タンパク質のN末端領域はカプシド内に位置し、受容体および抗体結合にとってアクセスできないことが示唆されている。したがって、受容体の結合および形質導入表現型は一般的に、VP1、VP2、およびVP3の共通のC末端ドメイン内のアミノ酸配列によって決定される。
【0187】
一部の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸挿入、置換、または欠失が、AAVカプシドタンパク質のGHループまたはループIV、例えばAAVカプシドタンパク質のGHループまたはループIVの溶媒アクセス可能部分に存在する。AAVカプシドのGHループ/ループIVに関しては、例えば、van Vliet et al. (2006) Mol. Ther. 14:809; Padron et al. (2005) Virol. 79:5047;およびShen et al. (2007) Mol. Ther. 15: 1955を参照されたい。一部の実施形態では、「親」AAVカプシドタンパク質は、野生型AAV5カプシドタンパク質である。一部の実施形態では、「親」AAVカプシドタンパク質は、キメラAAVカプシドタンパク質である。様々なAAVカプシドタンパク質のアミノ酸配列が当技術分野において公知である。例えば、AAV1に関してGenBank受託番号NP_049542;AAV4に関してGenBank受託番号NP_044927;AAV5に関してGenBank受託番号AAD13756;AAV6に関してGenBank受託番号AAB95450;AAV7に関してGenBank受託番号YP_077178;AAV8に関してGenBank受託番号YP_077180;AAV9に関してGenBank受託番号AAS99264、およびAAV10に関してGenBank受託番号AAT46337を参照されたい。例えば、予想される祖先AAVカプシドに関しては、Santiago-Ortiz et al. (2015) Gene Ther. 22:934を参照されたい。
【0188】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、複製欠損型パルボウイルスであり、その一本鎖DNAゲノムは長さ約4.7kbで、2つの145ヌクレオチドの末端逆位反復配列(ITR)を含む。AAVには複数の血清型が存在する。AAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列は公知である。例えば、AAV5ゲノムはGenBank受託番号AF085716に提供される。AAVの生活環および遺伝学は、Muzyczka, Current Topics in Microbiology and Immunology, 158: 97-129 (1992)において論評されている。シュードタイプrAAVの産生は、例えばWO01/83692に開示されている。他のタイプのrAAVバリアント、例えばカプシド変異を有するrAAVもまた企図される。例えば、Marsic et al., Molecular Therapy, 22(11): 1900-1909 (2014)を参照されたい。例示的なAAVベクターは、その各々が全ての目的に関してその全体が参照により本明細書に組み込まれる、US7,105,345;US15/782,980;US7,259,151;US6,962,815;US7,718,424号;US6,984,517;US7,718,424;US6,156,303;US8,524,446;US7,790,449;US7,906,111;US9,737,618;米国出願15/433,322;US7,198,951に提供される。
【0189】
本開示のrAAVビリオンは、1つまたは複数の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む。遺伝子産物は、ポリペプチドまたはRNA、または両方であり得る。遺伝子産物がポリペプチドである場合、ヌクレオチド配列は、必要に応じて1つまたは複数のイントロンと共に遺伝子産物ポリペプチドに翻訳されるメッセンジャーRNAをコードする。ヌクレオチド配列は、1つ、2つ、3つ、またはそれより多くの遺伝子産物をコードし得る(数字は、rAAVビリオンのパッケージング能によって限定されるが、典型的には約5.2kbである)。遺伝子産物は、1つのプロモーター(単一の転写単位に関して)または1つより多くのプロモーターに作動可能に連結され得る。配列内リボソーム進入部位(IRES)または自己切断ペプチド(例えば、2Aペプチド)を使用して、複数の遺伝子産物もまた産生され得る。
【0190】
一部の実施形態では、遺伝子産物はポリペプチドである。一部の実施形態では、ポリペプチド遺伝子産物は、心臓線維芽細胞のリプログラミングを誘導して、誘導心筋細胞様細胞(iCM)を生成するポリペプチドである。一部の実施形態では、ポリペプチド遺伝子産物は、心臓細胞の機能を増強するポリペプチドである。一部の実施形態では、ポリペプチド遺伝子産物は、心臓細胞において欠失しているまたは欠損している機能を提供するポリペプチドである。一部の実施形態では、ポリペプチド遺伝子産物はゲノム編集エンドヌクレアーゼである。
【0191】
一部の実施形態では、遺伝子産物は、異種ポリペプチドに融合された融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、遺伝子産物は、細胞下局在を提供するアミノ酸配列に融合されたゲノム編集ヌクレアーゼを含み、すなわち、融合パートナーは、細胞下局在配列である(例えば、核を標的化するための1つまたは複数の核局在化シグナル(NLS)、2つまたはそれより多くのNLS、3つまたはそれより多くのNLSなど)。
【0192】
一般的に、ウイルスベクターは、ウイルスDNAまたはRNA構築物を「産生細胞」または「パッケージング細胞」系に導入することによって産生される。パッケージング細胞系は、任意の容易にトランスフェクト可能な細胞系を含むがこれらに限定されない。パッケージング細胞系は、HEK291、293T細胞、NIH3T3、COS、HeLa、またはSf9細胞系に基づき得る。パッケージング細胞系の例としては、Sf9(ATCC(登録商標)CRL-1711(商標))が挙げられるがこれらに限定されない。rAAVビリオンを生成するための例示的なパッケージング細胞系および方法は、国際特許出願番号WO2017075627、WO2015/031686、WO2013/063379、WO2011/020710、WO2009/104964、WO2008/024998、WO2003/042361、およびWO1995/013392;米国特許第9441206B2号、US8679837、およびUS7091029B2に提供される。
【0193】
一部の実施形態では、遺伝子産物は、機能的な心臓タンパク質である。一部の実施形態では、遺伝子産物は、非機能的心臓タンパク質を機能的心臓タンパク質に交換または修復するゲノム編集エンドヌクレアーゼ(必要に応じて、ガイドRNA、シングルガイドRNA、および/または修復鋳型と共に)である。機能的心臓タンパク質としては、心トロポニンT;心サルコメアタンパク質;β-ミオシン重鎖;心室ミオシン必須軽鎖1(myosin ventricular essential light chain 1);心室ミオシン調節軽鎖2(myosin ventricular regulatory light chain 2);心a-アクチン;a-トロポミオシン;心トロポニンI;心ミオシン結合タンパク質C;four-and-a-half LIMタンパク質1;チチン;5’-AMP-活性化タンパク質キナーゼサブユニットガンマ-2;トロポニンI 3型、ミオシン軽鎖2、アクチンアルファ心筋1;心LIMタンパク質;カベオリン3(CAV3);ガラクトシダーゼアルファ(GLA);リソソーム関連膜タンパク質2(LAMP2);ミトコンドリア転移RNAグリシン(MTTG);ミトコンドリア転移RNAイソロイシン(MTTI);ミトコンドリア転移RNAリシン(MTTK);ミトコンドリア転移RNAグルタミン(MTTQ);ミオシン軽鎖3(MYL3);トロポニンC(TNNC1);トランスサイレチン(TTR);筋小胞体カルシウム-ATPアーゼ2a(SERCA2a);間質由来因子-1(SDF-1);アデニレートシクラーゼ-6(AC6);ベータ-ARKct(βアドレナリン受容体キナーゼC末端);線維芽細胞成長因子(FGF);血小板由来成長因子(PDGF);血管内皮成長因子(VEGF);肝細胞成長因子;低酸素誘導成長因子;チモシンベータ4(TMSB4X);一酸化窒素シンターゼ-3(NOS3);ウノカルチン(unocartin)3(UCN3);メルシン;アポリポタンパク質-E(ApoE);スーパーオキシドジスムターゼ(SOD);およびS100A1(低分子カルシウム結合タンパク質;例えば、Ritterhoff and Most (2012) Gene Ther. 19:613; Kraus et al. (2009) Mol. Cell. Cardiol. 47:445を参照されたい)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0194】
一部の実施形態では、遺伝子産物は、その発現が遺伝子障害の原因である遺伝子における欠損を補う遺伝子産物である。本開示は、例えば限定されないが括弧内に示す障害に使用するためにまたは各々によって引き起こされる他の障害のために、以下:TAZ(バース症候群);FXN(フリードライヒ運動失調);CASQ2(CPVT);FBN1(マルファン);RAF1およびSOS1(ヌーナン);SCN5A(ブルガタ);KCNQ1およびKCNH2(QT延長症候群);DMPK(筋強直性ジストロフィー1型);LMNA(肢帯型筋ジストロフィー1B型);JUP(ナクソス);TGFBR2(ロイスディーツ);EMD(X連鎖EDMD);およびELN(SV大動脈弁狭窄)の1つまたは複数をコードするポリヌクレオチドを含むrAAVビリオンを提供する。一部の実施形態では、rAAVビリオンは、心トロポニンT(TNNT2);BAGファミリー分子シャペロン調節因子3(BAG3);ミオシン重鎖(MYH7);トロポミオシン1(TPM1);ミオシン結合タンパク質C(MYBPC3);5’-AMP活性化タンパク質キナーゼサブユニットガンマ-2(PRKAG2);トロポニンI 3型(TNNI3);チチン(TTN);ミオシン、軽鎖2(MYL2);アクチン、アルファ心筋1型(ACTC1);カリウム電位依存性チャネル、KQT様サブファミリー、メンバー1(KCNQ1);プラコフィリン2(PKP2);筋細胞エンハンサー因子2c(MEF2C);および心LIMタンパク質(CSRP3)のうちの1つまたは複数をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0195】
一部の実施形態では、本開示の遺伝子産物は、ポリペプチドリプログラミング因子である。リプログラミング因子は、1つの細胞タイプを別の細胞タイプへと変換する手段として望ましい。非心筋細胞を、当業者に利用可能な任意の方法を使用して、in vitroまたはin vivoで心筋細胞に分化させることができる。例えば、Ieda et al. (2010) Cell 142:375-386; Christoforou et al. (2013) PLoS ONE 8:e63577; Addis et al. (2013) J. Mol. Cell Cardiol. 60:97-106; Jayawardena et al. (2012) Circ. Res. 110: 1465-1473; Nam Y et al. (2003) PNAS USA 110:5588-5593; Wada R et al. (2013) PNAS USA 110: 12667-12672;およびFu J et al. (2013) Stem Cell Reports 1:235-247に記載される方法を参照されたい。
【0196】
心臓の文脈において、リプログラミング因子は、直接または中間の細胞タイプを通して心臓線維芽細胞を心筋細胞に変換することが可能であり得る。特に、直接のリプログラミング、または最初に線維芽細胞を多能性もしくは全能性幹細胞に変換することによるリプログラミングが可能である。そのような多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞(iPS)と呼ばれる。その後心筋(CM)細胞に変換されるiPS細胞は、iPS-CM細胞と呼ばれる。この例では、in vitroで心臓線維芽細胞に由来するiPS-CMをin vivoで使用して目的のカプシドタンパク質を選択する。本開示はまた、本開示のカプシドタンパク質を使用してin vitroで順にiPS-CM細胞を生成することも想定しているが、特にin vivoで治療的遺伝子治療レジメンの一部として使用することを想定する。誘導心筋細胞様(iCM)細胞は、心筋細胞へと直接リプログラミングされた細胞を指す。
【0197】
誘導心筋細胞は、1つまたは複数の心筋細胞特異的マーカーを発現し、心筋細胞特異的マーカーとしては、心トロポニンI、心トロポニン-C、トロポミオシン、カベオリン-3、ミオシン重鎖、ミオシン軽鎖-2a、ミオシン軽鎖-2v、リアノジン受容体、サルコメアa-アクチニン、Nkx2.5、コネキシン43、および心房性ナトリウム利尿因子が挙げられるがこれらに限定されない。誘導心筋細胞はまた、サルコメア構造も示すことができる。誘導心筋細胞は、心筋細胞特異的遺伝子ACTC1(心a-アクチン)、ACTN2(アクチニンa2)、MYH6(a-ミオシン重鎖)、RYR2(リアノジン受容体2)、MYL2(ミオシン調節軽鎖2、心室アイソフォーム)、MYL7(ミオシン調節軽鎖、心房アイソフォーム)、TNNT2(トロポニンT 2型、心臓)、およびNPPA(ナトリウム利尿ペプチド前駆体A型)、PLN(ホスホランバン)の発現の増加を示す。線維芽細胞マーカー、例えばColla2(コラーゲンla2)の発現は、iCMが誘導される線維芽細胞と比較して誘導心筋細胞において下方調節されている。
【0198】
ポリペプチドリプログラミング因子を伴うリプログラミング法(一部の例では、rAAVと組み合わせて供給される低分子リプログラミング因子によって補充される)は、特に開示されるリプログラミングの方法および因子に関して、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、US2018/0112282A1、WO2018/005546、WO2017/173137、US2016/0186141、US2016/0251624、米US2014/0301991、およびUS2013/0216503A1に記載される方法を含む。
【0199】
一部の実施形態では、心臓細胞は、Achaete-scuteホモログ1(ASCL1)、ミオカルジン(MYOCD)、筋細胞特異的エンハンサー因子2C(MEF2C)、および/またはT-ボックス転写因子5(TBX5)などの、目的の1つまたは複数のポリヌクレオチドまたはタンパク質の発現をモジュレートする1つまたは複数のリプログラミング因子を使用して誘導心筋細胞様(iCM)細胞へとリプログラミングされる。一部の実施形態では、1つまたは複数のリプログラミング因子は、目的の1つまたは複数のポリヌクレオチドまたはタンパク質をコードするポリヌクレオチド(例えば、RNA、mRNA、またはDNAポリヌクレオチド)として提供される。一部の実施形態では、1つまたは複数のリプログラミング因子はタンパク質として提供される。
【0200】
一部の実施形態では、リプログラミング因子は、マイクロRNAまたはマイクロRNAアンタゴニスト、siRNA、または目的の1つもしくは複数のポリヌクレオチドもしくはタンパク質の発現を増加させることが可能な低分子である。一部の実施形態では、目的のポリヌクレオチドまたはタンパク質の発現は、マイクロRNAまたはマイクロRNAアンタゴニストの発現によって増加する。例えば、Octポリペプチドの内因性の発現は、マイクロRNA-302(miR-302)の導入によって、またはmiR-302の発現の増加によって増加させることができる。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Hu et al., Stem Cells 31(2): 259-68 (2013)を参照されたい。したがって、miRNA-302は、内因性のOctポリペプチド発現の誘導因子であり得る。miRNA-302は、単独でまたはOctポリペプチドをコードする核酸と共に導入することができる。一部の実施形態では、適した核酸遺伝子産物はマイクロRNAである。適したmicrRNAとしては、例えばmir-1、mir-133、mir-208、mir-143、mir-145、およびmir-499が挙げられる。
【0201】
一部の実施形態では、本開示の方法は、低分子リプログラミング因子の投与前、間、または後に本開示のrAAVビリオンを投与することを含む。一部の実施形態では、低分子リプログラミング因子は、SB431542、LDN-193189、デキサメタゾン、LY364947、D4476、ミリセチン、IWR1、XAV939、ドコサヘキサエン酸(DHA)、S-ニトロソ-TV-アセチルペニシラミン(SNAP)、Hh-Agl.5、アルプロスタジル、クロマカリム、MNITMT、A769662、レチノイン酸p-ヒドロキシアニリド、二臭化デカメトニウム、ニフェジピン、ピロキシカム、バシトラシン、アズトレオナム、ハルマロール塩酸塩、アミド-C2(A7)、Ph-C12(CIO)、mCF3-C-7(J5)、G856-7272(A473)、5475707、またはその任意の組合せからなる群から選択される低分子である。
【0202】
一部の実施形態では、遺伝子産物は、ASCL1、MYOCD、MEF2C、およびTBX5から選択される目的の1つまたは複数のタンパク質の発現をモジュレートするリプログラミング因子を含む。一部の実施形態では、遺伝子産物は、ASCL1、MYOCD、MEF2C、およびTBX5、CCNB1、CCND1、CDK1、CDK4、AURKB、OCT4、BAF60C、ESRRG、GATA4、GATA6、HAND2、IRX4、ISLL、MESP1、MESP2、NKX2.5、SRF、TBX20、ZFPM2、およびmiR-133から選択される1つまたは複数のリプログラミング因子を含む。
【0203】
一部の実施形態では、遺伝子産物は、GATA4、MEF2C、およびTBX5(すなわち、GMT)を含む。一部の実施形態では、遺伝子産物は、MYOCD、MEF2C、およびTBX5(すなわち、MyMT)を含む。一部の実施形態では、遺伝子産物は、MYOCD、ASCL1、MEF2C、およびTBX5(すなわち、MyAMT)を含む。一部の実施形態では、遺伝子産物は、MYOCDおよびASCL1(すなわち、MyA)を含む。一部の実施形態では、遺伝子産物は、GATA4、MEF2C、TBX5、およびMYOCD(すなわち、4F)を含む。他の実施形態では、遺伝子産物は、GATA4、MEF2C、TBX5、ESSRG、MYOCD、ZFPM2、およびMESP1(すなわち、7F)を含む。一部の実施形態では、遺伝子産物は、ASCL1、MEF2C、GATA4、TBX5、MYOCD、ESRRG、およびMESPLの1つまたは複数を含む。
【0204】
一部の実施形態では、rAAVビリオンは、in vitroまたはin vivoで心臓の筋細胞を生成する。心筋細胞または心臓の筋細胞は、心筋を構成する筋肉細胞である。各々の心筋細胞は、筋肉細胞の収縮単位であるサルコメアの長い鎖である筋原線維を含有する。心筋細胞は、骨格筋細胞の線紋(striation)と類似の線紋を示すが、1つの核のみを含有することから多核骨格細胞とは異なる。心筋細胞は、高いミトコンドリア密度を有し、それによってそれらはATPを迅速に産生することができ、疲労に対して非常に抵抗性となる。成熟心筋細胞は、以下の心マーカー:α-アクチニン、MLC2v、MY20、cMHC、NKX2-5、GATA4、cTNT、cTNI、MEF2C、MLC2a、またはそれらの任意の組合せの1つまたは複数を発現することができる。一部の実施形態では、成熟心筋細胞は、NKX2-5、MEF2C、またはそれらの組合せを発現する。一部の実施形態では、心臓前駆細胞は、GATA4、ISL1、またはそれらの組合せなどの初期心臓前駆体マーカーを発現する。
【0205】
一部の実施形態では、遺伝子産物はポリヌクレオチドである。一部の実施形態では、以下に記載するように、遺伝子産物は、RNAガイドエンドヌクレアーゼに結合することが可能なガイドRNAである。一部の実施形態では、遺伝子産物は、例えば心臓細胞におけるmRNAおよび/またはポリペプチド遺伝子産物のレベルを低減することが可能な阻害性核酸である。例えば、一部の実施形態では、ポリヌクレオチド遺伝子産物は、心疾患または障害を引き起こす対立遺伝子によってコードされる転写物を選択的に不活化することが可能な干渉RNAである。一例として、対立遺伝子は、肥大型心筋症を引き起こす変異を含むミオシン重鎖7、心筋、ベータ(MYH7)対立遺伝子である。他の例としては、肥大型心筋症(HCM)、拡張型心筋症(DCM)または左室心筋緻密化障害(LVNC)を引き起こす対立遺伝子によってコードされる転写物を選択的に不活化する干渉RNAが挙げられ、対立遺伝子はMYL3(ミオシン軽鎖3、アルカリ、心室、骨格遅筋型)、MYH7、TNNI3(トロポニンI 3型(心臓))、TNNT2(トロポニンT 2型(心臓))、TPMl(トロポミオシン1(アルファ))、またはHCMを引き起こす、DCMを引き起こす、もしくはLVNCを引き起こす変異を含むACTC1対立遺伝子である。心疾患を引き起こす変異の例に関しては、例えば、米国特許出願公開第2016/0237430号を参照されたい。
【0206】
一部の実施形態では、遺伝子産物はポリペプチドコードRNAである。一部の実施形態では、遺伝子産物は干渉RNAである。一部の実施形態では、遺伝子産物はアプタマーである。一部の実施形態では、遺伝子産物はポリペプチドである。一部の実施形態では、遺伝子産物は治療ポリペプチド、例えば臨床上の利益を提供するポリペプチドである。一部の実施形態では、遺伝子産物は、遺伝子機能の部位特異的ノックダウンを提供する部位特異的ヌクレアーゼである。一部の実施形態では、遺伝子産物は、標的核酸の改変を提供するRNAガイドエンドヌクレアーゼである。一部の実施形態では、遺伝子産物は:i)標的核酸の改変を提供するRNAガイドエンドヌクレアーゼ;およびii)標的核酸中の標的配列に結合する第1のセグメントおよびRNAガイドエンドヌクレアーゼに結合する第2のセグメントを含むガイドRNAである。一部の実施形態では、遺伝子産物は:i)標的核酸の改変を提供するRNAガイドエンドヌクレアーゼ;ii)標的核酸中の第1の標的配列に結合する第1のセグメントおよびRNAガイドエンドヌクレアーゼに結合する第2のセグメントを含む第1のガイドRNA;およびiii)標的核酸中の第2の標的配列に結合する第1のセグメントおよびRNAガイドエンドヌクレアーゼに結合する第2のセグメントを含む第1のガイドRNAである。
【0207】
本開示のrAAVビリオンにおける異種遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列をプロモーターに操作可能に連結することができる。例えば、本開示のrAAVビリオンにおける異種遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を、構成的プロモーター、調節型プロモーター、または心臓細胞特異的プロモーターに操作可能に連結することができる。適した構成的プロモーターとしては、ヒト伸長因子1αサブユニット(EFlα)プロモーター、β-アクチンプロモーター、α-アクチンプロモーター、β-グルクロニダーゼプロモーター、CAGプロモーター、スーパーコアプロモーター、およびユビキチンプロモーターが挙げられる。一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンにおける異種遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列は、心臓特異的転写調節エレメント(cardiac-specific transcriptional regulator element)(TRE)に操作可能に連結され、心臓特異的TREはプロモーターおよびエンハンサーを含む。適した心臓特異的TREとしては、以下の遺伝子:ミオシン軽鎖-2(MLC-2)、a-ミオシン重鎖(a-MHC)、デスミン、AE3、心トロポニンC(cTnC)、および心アクチンに由来するTREが挙げられるがこれらに限定されない。Franz et al. (1997) Cardiovasc. Res. 35:560-566; Robbins et al. (1995) Ann. NY. Acad. Sci. 752:492-505; Linn et al. (1995) Circ. Res. 76:584-591; Parmacek et al. (1994) Mol. Cell. Biol. 14: 1870-1885; Hunter et al. (1993) Hypertension 22:608-617;およびSartorelli et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4047-4051。同様にPacak et al. (2008) Genet Vaccines Ther. 6:13も参照されたい。一部の実施形態では、プロモーターはα-MHCプロモーター、MLC-2プロモーター、またはcTnTプロモーターである。
【0208】
遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドは、遺伝子産物の発現を容易にするためにプロモーターおよび/またはエンハンサーに操作可能に連結される。利用する宿主/ベクター系に応じて、構成的および誘導性プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含む任意の数の適した転写および翻訳制御エレメントをrAAVビリオンにおいて使用してもよい(例えば、Bitter et al. (1987) Methods in Enzymology, 153:516-544を参照されたい)。
【0209】
別個のプロモーターおよび/またはエンハンサーを、ポリヌクレオチドの各々に関して用いることができる。一部の実施形態では、同じプロモーターおよび/またはエンハンサー(enhance)を単一のオープンリーディングフレームにおける2つまたはそれより多くのポリヌクレオチドのために使用する。遺伝子エレメントのこの立体配置を用いるベクターは「多シストロン性」と呼ばれる。多シストロン性ベクターの例示的な例は、2A領域(複数可)によって連結された2つまたはそれより多くのポリヌクレオチドを含む単一のオープンリーディングフレームに作動可能に連結されたエンハンサーおよびプロモーターを含み、それによってオープンリーディングフレームの発現により、複数のポリペプチドが共翻訳で生成される。2A領域は、コドンスキッピングを通して複数のポリペプチド配列の生成を媒介すると考えられているが、本開示はまた、同じポリヌクレオチドから目的の2つまたはそれより多くのタンパク質を生成するために翻訳後切断を用いる多シストロン性ベクターにも関する。例示的な2A配列、ベクター、および関連する方法は、参照により本明細書に組み込まれる、US20040265955A1に提供される。
【0210】
適した真核細胞プロモーター(真核細胞において機能的なプロモーター)の非限定的な例としては、レトロウイルス由来のCMV、CMV前初期、HSVチミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウイルス由来の長末端反復(LTR)、およびマウスメタロチオネイン-Iが挙げられる。一部の実施形態では、心臓特異的発現を付与することが可能なプロモーターを使用する。適した心臓特異的プロモーターの非限定的な例としては、デスミン(Des)、アルファ-ミオシン重鎖(a-MHC)、ミオシン軽鎖2(MLC-2)、心トロポニンT(cTnT)、および心トロポニンC(cTnC)が挙げられる。適したニューロン特異的プロモーターの非限定的な例としては、シナプシンI(SYN)、カルシウム/カルモジュリン依存的タンパク質キナーゼII、チューブリンアルファI、ニューロン特異的エノラーゼおよび血小板由来成長因子ベータ鎖プロモーター、およびサイトメガロウイルスエンハンサー(E)をそれらのニューロン特異的プロモーターに融合させることによるハイブリッドプロモーターが挙げられる。
【0211】
リプログラミング因子の発現を駆動するために適したプロモーターの例としては、レトロウイルス長末端反復(LTR)エレメント;構成的プロモーター、例えばCMV、HSV1-TK、SV40、EF-la、β-アクチン、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK);誘導性プロモーター、例えばTet-オペレーターエレメントを含有するプロモーター;心臓特異的プロモーター、例えばデスミン(DES)、アルファ-ミオシン重鎖(a-MHC)、ミオシン軽鎖2(MLC-2)、心トロポニンT(cTnT)、および心トロポニンC(cTnC);神経特異的プロモーター、例えばネスチン、ニューロン核(NeuN)、微小管関連タンパク質2(MAP2)、ベータIIIチューブリン、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、オリゴデンドロサイト系列(Oligl/2)、およびグリア線維性酸性タンパク質(GFAP);ならびに膵臓特異的プロモーター、例えばPax4、Nkx2.2、Ngn3、インスリン、グルカゴン、およびソマトスタチンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0212】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、細胞タイプ特異的転写調節エレメント(TRE)に操作可能に連結され、TREはプロモーターおよびエンハンサーを含む。適したTREとしては、以下の遺伝子:ミオシン軽鎖-2、a-ミオシン重鎖、AE3、心トロポニンC、および心アクチンに由来するTREが挙げられるがこれらに限定されない。Franz et al. (1997) Cardiovasc. Res. 35:560-566; Robbins et al. (1995) Ann. N. Y. Acad. Sci. 752:492-505; Linn et al. (1995) Circ. Res. 76:584-591; Parmacek et al. (1994) Cell. Biol. 14:1870-1885; Hunter et al. (1993) Hypertension 22:608-617;およびSartorelli et al. (1992) PNAS USA 89:4047-4051。
【0213】
プロモーターは、遺伝子または核酸セグメントに天然に会合したプロモーターであり得る。同様に、RNA(例えば、マイクロRNA)に関して、プロモーターは、マイクロRNA遺伝子(例えば、miRNA-302遺伝子)に天然に会合したプロモーターであり得る。そのような天然に会合したプロモーターは、「天然のプロモーター」と呼ぶことができ、コードセグメントおよび/またはエクソンの上流に位置する5’非コード配列を単離することによって得ることができる。同様に、エンハンサーは、核酸配列に天然に会合したエンハンサーであり得る。しかし、エンハンサーはその配列の下流または上流のいずれかに位置することができる。
【0214】
あるいは、ある特定の利点は、コード核酸セグメントを、その天然の環境において核酸に通常会合しないプロモーターを指す組換えまたは異種プロモーターの制御下に配置することによって得られる。組換えまたは異種エンハンサーはまた、その天然の環境における核酸配列に通常会合しないエンハンサーも指す。そのようなプロモーターまたはエンハンサーは、他の遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー、および他の任意の原核細胞、ウイルス、または真核細胞から単離されたプロモーターまたはエンハンサー、および「天然に存在しない」、すなわち異なる転写調節領域の異なるエレメントおよび/または発現を変更する変異を含有するプロモーターまたはエンハンサーを含み得る。プロモーターおよびエンハンサーの核酸配列を合成によって産生することに加えて、本明細書に開示される組成物と共に、組換えクローニングおよび/またはPCR(商標)を含む核酸増幅技術を使用して、配列を産生してもよい(その各々が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,683,202号、米国特許第5,928,906号を参照されたい)。
【0215】
使用されるプロモーターは、構成的、誘導性、発達特異的、組織特異的であり得、および/または核酸セグメントの高レベル発現を指示する適切な条件下で有用であり得る。例えば、プロモーターは、構成的プロモーター、例えば、CMVプロモーター、CMVサイトメガロウイルス前初期プロモーター、CAGプロモーター、EF-1αプロモーター、HSV1-TKプロモーター、SV40プロモーター、β-アクチンプロモーター、PGKプロモーター、またはそれらの組合せであり得る。使用することができる真核細胞プロモーターの例としては、構成的プロモーター、例えばウイルスプロモーター、例えばCMV、SV40、およびRSVプロモーター、ならびに調節型プロモーター、例えば誘導性または抑制性プロモータープロモーター、例えばtetプロモーター、hsp70プロモーター、およびCREによって調節される合成プロモーターが挙げられるがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、細胞タイプ特異的プロモーターを使用して特異的細胞タイプにおいてリプログラミング因子の発現を駆動する。本明細書に記載される方法にとって有用な適した細胞タイプ特異的プロモーターの例としては、He et al (2006), Human Gene Therapy 17:949-959に記載される合成マクロファージ特異的プロモーター;顆粒球およびマクロファージ特異的リゾチームMプロモーター(例えば、Faust et al (2000), Blood 96(2):719-726を参照されたい);および骨髄系特異的CD11bプロモーター(例えば、Dziennis et al (1995), Blood 85(2):319-329を参照されたい)が挙げられるがこれらに限定されない。用いることができるプロモーターの他の例としては、ヒトEF1α伸長因子プロモーター、CMVサイトメガロウイルス前初期プロモーター、CAGニワトリアルブミンプロモーター、本明細書に記載されるウイルスベクターのいずれかに関連するウイルスプロモーター、または本明細書に記載されるプロモーターのいずれかと相同であるプロモーター(例えば、別の種からの)が挙げられる。使用することができる原核細胞プロモーターの例としては、SP6、T7、T5、tac、bla、trp、gal、lac、またはマルトースプロモーターが挙げられるがこれらに限定されない。
【0216】
一部の実施形態では、配列内リボソーム進入部位(IRES)エレメントを使用して、マルチ遺伝子または多シストロン性のメッセージを作り出すことができる。IRESエレメントは、5’-メチル化Cap依存的翻訳のリボソームスキャニングモデルを迂回して、内部の部位で翻訳を開始することができる(Pelletier and Sonenberg, Nature 334(6180):320-325 (1988))。ピコルナウイルス科の2つのメンバー(ポリオおよび脳心筋炎ウイルス)からのIRESエレメント(Pelletier and Sonenberg, Nature 334(6180):320-325 (1988))、ならびに哺乳動物メッセージからのIRES(Macejak & Samow, Nature 353:90-94 (1991))が記載されている。IRESエレメントを、異種オープンリーディングフレームに連結することができる。IRESによって各々が隔てられた複数のオープンリーディングフレームを共に転写し、多シストロン性メッセージを作製することができる。IRESエレメントにより、各々のオープンリーディングフレームは、効率的な翻訳のためにリボソームにアクセス可能である。複数の遺伝子を、単一のプロモーター/エンハンサーを使用して効率よく発現させ、単一のメッセージを転写することができる(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,925,565号および同第5,935,819号を参照されたい)。
【0217】
一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、ポリアデニル化配列に操作可能に連結される。適したポリアデニル化配列としては、ウシ成長ホルモンポリAシグナル(bGHpolyA)および短いポリAシグナルが挙げられる。必要に応じて、本開示のrAAVベクターは、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)を含む(compriset)。一部の実施形態では、遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドは、いわゆる自己切断ペプチド、例えばP2Aペプチドを含む配列によって結合される。
【0218】
一部の実施形態では、遺伝子産物は、遺伝子機能の部位特異的ノックダウンを提供する部位特異的エンドヌクレアーゼを含み、例えばエンドヌクレアーゼは心疾患または障害に関連する対立遺伝子をノックアウトする。例えば、優性対立遺伝子が、野生型の場合、心臓構造タンパク質である、および/または正常な心機能を提供する遺伝子の欠損コピーをコードする場合、部位特異的エンドヌクレアーゼを、欠損対立遺伝子を標的化とし、欠損対立遺伝子をノックアウトすることができる。一部の実施形態では、部位特異的エンドヌクレアーゼはRNAガイドエンドヌクレアーゼである。
【0219】
欠損対立遺伝子のノックアウトに加えて、部位特異的ヌクレアーゼをまた使用して、欠損対立遺伝子によってコードされるタンパク質の機能的コピーをコードするドナーDNAとの相同組換えを刺激することができる。例えば、主題のrAAVビリオンを使用して、欠損対立遺伝子、欠損対立遺伝子(またはその断片)の機能的コピーをノックアウトする両方の部位特異的エンドヌクレアーゼを送達して、欠損対立遺伝子の修復をもたらすことができ、それによって機能的な心臓タンパク質(例えば、機能的トロポニンなど)の産生を提供することができる。一部の実施形態では、本発明のrAAVビリオンは、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードする異種ヌクレオチド配列、および機能的心臓タンパク質をコードする、欠損対立遺伝子の機能的コピーをコードする異種ヌクレオチド配列を含む。機能的心臓タンパク質としては、例えば、トロポニン、塩素イオンチャネルなどが挙げられる。
【0220】
使用するために適した部位特異的エンドヌクレアーゼとしては、例えばジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN);メガヌクレアーゼ;および転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)が挙げられ、そのような部位特異的エンドヌクレアーゼは天然に存在せず、特定の遺伝子を標的とするように改変される。そのような部位特異的ヌクレアーゼは、ゲノム内の特定の位置を切断するように操作することができ、次に非相同末端結合がいくつかのヌクレオチドを挿入または欠失させながら切断部を修復することができる。そのような部位特異的ヌクレアーゼ(同様に、「INDEL」とも呼ばれる)は、その後にフレームからタンパク質を放出し、遺伝子を有効にノックアウトする。例えば、米国特許出願公開第2011/0301073号を参照されたい。適した部位特異的エンドヌクレアーゼとしては、操作されたメガヌクレアーゼ、再操作されたホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられる。適したエンドヌクレアーゼは、I-Tevlヌクレアーゼを含む。適したメガヌクレアーゼは、I-Scel(例えば、Bellaiche et al. (1999) Genetics 152: 1037を参照されたい);およびI-Crel(例えば、Heath et al. (1997) Nature Sructural Biology 4:468を参照されたい)を含む。使用するために適した部位特異的エンドヌクレアーゼは、CRISPRi系およびCas9に基づくSAM系を含む。
【0221】
一部の実施形態では、遺伝子産物は、RNAガイドエンドヌクレアーゼである。一部の実施形態では、遺伝子産物は、RNAガイドエンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含むRNAを含む。一部の実施形態では、遺伝子産物は、ガイドRNA、例えばシングルガイドRNAである。一部の実施形態では、遺伝子産物は:1)ガイドRNA;および2)RNAガイドエンドヌクレアーゼである。ガイドRNAは:a)RNAガイドエンドヌクレアーゼに結合するタンパク質結合領域;およびb)標的核酸に結合する領域を含み得る。RNAガイドエンドヌクレアーゼはまた、本明細書において「ゲノム編集ヌクレアーゼ」とも呼ばれる。
【0222】
適したゲノム編集ヌクレアーゼの例は、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、クラス2 CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ、例えばII型、V型、またはVI型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ)である。適したゲノム編集ヌクレアーゼは、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、クラス2 CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ、例えばII型、V型、またはVI型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ)である。一部の実施形態では、遺伝子産物は、クラス2 CRISPR/Casエンドヌクレアーゼを含む。一部の実施形態では、遺伝子産物は、クラス2 II型 CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9タンパク質)を含む。一部の実施形態では、遺伝子産物は、クラス2 V型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、Cpflタンパク質、C2clタンパク質、またはC2c3タンパク質)を含む。一部の実施形態では、遺伝子産物は、クラス2 VI型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、C2c2タンパク質;「Casl3a」タンパク質とも呼ばれる)を含む。一部の実施形態では、遺伝子産物はCasXタンパク質を含む。一部の実施形態では、遺伝子産物はCasYタンパク質を含む。
【0223】
使用方法
一部の実施形態では、本開示は、rAAVビリオンに、標的細胞において形質導入効率の増加をもたらすAAVカプシドタンパク質を同定する方法を提供する。方法は、rAAVビリオンの集団を提供するステップであって、そのrAAVゲノムがバリアントAAVカプシドタンパク質をコードするcapポリヌクレオチドのライブラリーを含む、ステップ;必要に応じて非標的細胞への望ましくないrAAVビリオンの結合を可能にするために十分な期間、集団に非標的細胞を接触させるステップ;rAAVビリオンによる標的細胞へのcapポリヌクレオチドの形質導入を可能にするために十分な期間、集団に標的細胞を接触させるステップ;および標的細胞からのcapポリヌクレオチドをシーケンシングし、それによって標的細胞において形質導入効率の増加をもたらすAAVカプシドタンパク質を同定するステップを含む。一部の実施形態では、方法は、非標的細胞へのrAAVビリオンの結合を可能にするために十分な期間、集団に非標的細胞を接触させることによってrAAVビリオンの集団を枯渇させるステップをさらに含む。そのような同定方法の非制限的な例を実施例に提供する。
【0224】
本開示は、rAAVビリオンを使用してin vitroで心筋細胞および/または心筋細胞様細胞を生成する方法を提供する。選択された開始細胞をrAAVで形質導入し、必要に応じて、開始細胞を系列および/または分化境界を越えて変換させるために十分な時間および条件で、低分子リプログラミング因子に(形質導入の前、間、または後に)曝露し、心臓前駆細胞および/または心筋細胞を形成させる。一部の実施形態では、開始細胞は線維芽細胞である。一部の実施形態では、開始細胞は分化表現型を示す1つまたは複数のマーカーを発現する。開始細胞を心臓前駆細胞および心筋細胞に変換させるための時間は多様であり得る。例えば、開始細胞を、心臓細胞または心筋細胞マーカーが発現されるまで、目的の1つまたは複数のポリヌクレオチドまたはタンパク質による処置後にインキュベートしてもよい。そのような心臓細胞または心筋細胞マーカーは、以下のマーカー:α-GATA4、TNNT2、MYH6、RYR2、NKX2-5、MEF2C、ANP、Actinin、MLC2v、MY20、cMHC、ISL1、cTNT、cTNI、およびMLC2a、またはそれらの任意の組合せのいずれかを含み得る。一部の実施形態では、誘導心筋細胞は、1つまたは複数のニューロン細胞マーカーに関して陰性である。そのようなニューロン細胞マーカーは、以下のマーカー:DCX、TUBB3、MAP2、およびENO2のいずれかを含み得る。
【0225】
心臓前駆体マーカーが開始細胞によって発現されるまで、インキュベーションを進行させることができる。そのような心臓前駆体マーカーとしては、GATA4、TNNT2、MYH6、RYR2、またはそれらの組合せが挙げられる。心臓前駆体マーカー、例えばGATA4、TNNT2、MYH6、RYR2、またはそれらの組合せは、本明細書に記載される組成物中の細胞のインキュベーションの開始後約8日までに、または約9日までに、または約10日までに、または約11日までに、または約12日までに、または約14日までに、または約15日までに、または約16日までに、または約17日までに、または約18日までに、または約19日までに、または約20日までに発現され得る。細胞のさらなるインキュベーションを、NKX2-5、MEF2C、またはそれらの組合せなどの後期心臓前駆体マーカーの発現がおこるまで実施することができる。
【0226】
リプログラミング効率は、心筋細胞マーカーの関数として測定され得る。そのような多能性マーカーとしては、心筋細胞マーカータンパク質およびmRNAの発現、心筋細胞の形態、および電気生理学表現型が挙げられるがこれらに限定されない。心筋細胞マーカーの非限定的な例としては、a-サルコグリカン、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、骨形成タンパク質4(BMP4)、コネキシン37、コネキシン40、クリプト、デスミン、GATA4、GATA6、MEF2C、MYH6、ミオシン重鎖、NKX2.5、TBX5、およびトロポニンTが挙げられる。
【0227】
心筋細胞に対して特異的な様々なマーカーの発現は、従来の生化学または免疫化学法(例えば、酵素結合免疫吸着検定法、免疫組織化学的アッセイなど)によって検出され得る。あるいは、心筋細胞特異的マーカーをコードする核酸の発現を評価することができる。細胞における心筋細胞特異的マーカーコード核酸の発現は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)またはハイブリダイゼーション分析、任意のマーカータンパク質をコードするmRNAを増幅、検出、および分析するためにこれまで一般的に使用されている分子生物学的方法によって確認することができる。心筋細胞に対して特異的なマーカーをコードする核酸配列は公知であり、GenBankなどの公共のデータベースから入手可能である。このように、プライマーまたはプローブとして使用するために必要なマーカー特異的配列は、容易に決定される。
【0228】
心筋細胞は、何らかの心臓特異的電気生理学的特性を示す。1つの電気的特徴は活動電位であり、これは各心臓細胞の内部と外部との間の電位差が一貫した軌跡に従って上昇および下降する、持続の短い事象である。心筋細胞の別の電気生理学的特徴は、Ca2+トランジェントと呼ばれる細胞質の遊離のCa2+濃度の周期的変動であり、これは心筋細胞の収縮および弛緩の調節に用いられる。これらの特徴を検出および評価して、細胞の集団が心筋細胞へとリプログラミングされているかどうかを評価することができる。
【0229】
本開示は、遺伝子産物を心臓細胞、例えば、心臓線維芽細胞に送達する方法を提供する。方法は一般的に、心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞)にrAAVビリオンを感染させることを伴い、rAAVビリオンに存在する異種核酸によってコードされる遺伝子産物(複数可)が心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞)において産生される。遺伝子産物(複数可)を心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞)に送達すると、心疾患または障害の処置を提供することができる。遺伝子産物(複数可)を心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞)に送達すると、心臓線維芽細胞からの誘導心筋細胞様(iCM)細胞の生成を提供することができる。遺伝子産物(複数可)を心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞)に送達すると、心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞)のゲノムの編集を提供することができる。
【0230】
一部の実施形態では、心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞)の感染または形質導入はin vitroで行われる。一部の実施形態では、心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞)の感染または形質導入はin vitroで行われ;感染/形質導入した心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞)は、それを必要とする個体に導入される(例えば、輸注されるまたは植え込まれる)、例えばそれを必要とする個体の心組織に直接導入される。in vitro形質導入に関して、細胞に送達されるrAAVビリオンの有効量は、rAAVビリオンの約105~約1013個である。他の有効な投薬量は、用量応答曲線を確立するルーチンの試験を通して当業者が容易に確立することができる。
【0231】
一部の実施形態では、心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞)の感染はin vivoで行われる。例えば一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、それを必要とする個体の心組織に直接投与される。「有効量」は、実験および/または臨床試験を通して決定することができる比較的広範囲に入る。例えば、in vivo注射、すなわち心組織への直接注射の場合、治療有効量は、本開示のrAAVビリオン約106~約1015程度、例えばrAAVビリオン約105~1012程度である。一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、心外膜を通しての心筋内注射を介して投与される。一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、冠動脈を通しての血管送達を介して投与される。一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、上大静脈を通しての全身送達を介して投与される。一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、末梢静脈を通しての全身送達を介して投与される。
【0232】
例えば、約104~約105、約105~約106、約106~約107、約106~約107、約107~約108、約108~約109、約109~約1010
、約1010~約1011、約1011まで(to about 1011)、約1011~約1012、約1012~約1013、約1013~約1014、約1014~約1015ゲノムコピーまたは1015ゲノムコピーより多くの本開示のrAAVビリオンが個体に投与され、例えば個体の心組織に直接投与されるか、または別の経路を介して投与される。個体に投与されるrAAVビリオンの数は、個体の体重1キログラム(kg)あたりのウイルスゲノム(vg)として表記することができる。一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、約102vg/kg~104vg/kg、約104vg/kg~約106vg/kg、約106vg/kg~約108vg/kg、約108vg/kg~約1010vg/kg、約1010vg/kg~約1012vg/kg、約1012vg/kg~約1014vg/kg、約1014vg/kg~約1016vg/kg、約1016vg/kg~約1018vg/kgであるか、または1018vg/kgより多い。
【0233】
一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、心外膜を通しての心筋内注射を介して投与される。一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、冠動脈を通しての血管送達を介して投与される。一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、上大静脈を通しての全身送達を介して投与される。一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、末梢静脈を通しての全身送達を介して投与される。
【0234】
一部の実施形態では、遺伝子発現の所望のレベルを達成するために、1回より多くの投与(例えば、2回、3回、4回またはそれより多くの投与)を用いてもよい。一部の実施形態では、1回より多くの投与は、様々な間隔で投与され、例えば、毎日、毎週、月に2回、毎月、3ヶ月毎、6ヶ月毎、毎年などの間隔で投与される。一部の実施形態では、複数回の投与は、1ヶ月~2ヶ月、2ヶ月~4ヶ月、4ヶ月~8ヶ月、8ヶ月~12ヶ月、1年~2年、2年~5年、または5年より長い期間にわたって投与される。
【0235】
本開示は、心臓線維芽細胞をリプログラムして誘導心筋細胞様細胞(iCM)を生成する方法を提供する。方法は一般的に、心臓線維芽細胞に本開示のrAAVビリオンを感染させることを伴い、rAAVビリオンは、1つまたは複数のリプログラミング因子をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む。
【0236】
心筋細胞に特異的な様々なマーカーの発現は、従来の生化学または免疫化学的方法(例えば、酵素結合免疫吸着検定法;免疫組織化学的アッセイなど)によって検出される。あるいは、心筋細胞特異的マーカーをコードする核酸の発現を評価することができる。細胞における心筋細胞特異的マーカーコード核酸の発現は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)またはハイブリダイゼーション分析、任意のマーカータンパク質をコードするmRNAを増幅、検出、および分析するためにこれまで一般的に使用されている分子生物学的方法によって確認することができる。心筋細胞に対して特異的なマーカーをコードする核酸配列は公知であり、GenBankなどの公共のデータベースを通して入手可能である;このように、プライマーまたはプローブとして使用するために必要なマーカー特異的配列は容易に決定される。
【0237】
誘導心筋細胞はまた、自発収縮も示すことができる。誘導心筋細胞が自発収縮を示すかどうかは、標準的な電気生理学的方法(例えば、パッチクランプ)を使用して決定することができる。
【0238】
一部の実施形態では、誘導心筋細胞は、自発的Ca2+オシレーションを示すことができる。Ca2+オシレーションは、標準的な方法を使用して、例えば多様なカルシウム感受性色素のいずれかを使用して検出することができ、細胞内Ca2+イオン検出色素としては、fura-2、bis-fura 2、indo-1、Quin-2、Quin-2 AM、ベンゾチアザ-1、ベンゾチアザ-2、indo-5F、Fura-FF、BTC、Mag-Fura-2、Mag-Fura-5、Mag-Indo-1、fluo-3、rhod-2、rhod-3、fura-4F、fura-5F、fura-6F、fluo-4、fluo-5F、fluo-5N、オレゴングリーン488 BAPTA、カルシウムグリーン、カルセイン、Fura-C18、カルシウムグリーン-C18、カルシウムオレンジ、カルシウムクリムゾン、カルシウムグリーン-5N、マグネシウムグリーン、オレゴングリーン488 BAPTA-1、オレゴングリーン488 BAPTA-2、X-rhod-1、Fura Red、Rhod-5F、Rhod-5N、X-Rhod-5N、Mag-Rhod-2、Mag-X-Rhod-1、Fluo-5N、Fluo-5F、Fluo-4FF、Mag-Fluo-4、エクオリン、デキストランコンジュゲートまたはこれらの色素のいずれかの他の任意の誘導体、およびその他(例えば、Molecular Probes、Eugeneのカタログまたはインターネットサイトを参照されたく、同様にNuccitelli, ed., Methods in Cell Biology, Volume 40: A Practical Guide to the Study of Calcium in Living Cells, Academic Press (1994); Lambert, ed., Calcium Signaling Protocols (Methods in Molecular Biology Volume 114), Humana Press (1999); W. T. Mason, ed., Fluorescent and Luminescent Probes for Biological Activity. A Practical Guide to Technology for Quantitative Real-Time Analysis, Second Ed, Academic Press (1999); Calcium Signaling Protocols (Methods in Molecular Biology), 2005, D.G. Lamber, ed., Humana Pressも参照されたい)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0239】
一部の実施形態では、iCMは、in vitroで生成され;iCMは、個体に導入され、例えば、iCMは、それを必要とする個体の心組織に植え込まれる。本開示の方法は、in vitroで心臓線維芽細胞集団を感染させて、iCM集団を生成することを含み得;iCMの集団は、それを必要とする個体の心組織に植え込まれる。
【0240】
一部の実施形態では、iCMはin vivoで生成される。例えば、一部の実施形態では、1つまたは複数のリプログラミング因子をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む本開示のrAAVビリオンが、個体に投与される。一部の実施形態では、rAAVビリオンは、それを必要とする個体の心組織に直接投与される。一部の実施形態では、1つまたは複数のリプログラミング因子をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む本開示のrAAVビリオンの約106~約105、約105~約109、約109~約1010、約1010~約1011、約1011~約1012、約1012~約1013、約1013~約1014、約1014~約1015ゲノムコピー、または1015ゲノムコピーより多くが個体に投与され、例えば個体の心組織に直接投与されるか、または別の投与経路を介して投与される。個体に投与されるrAAVビリオンの数は、個体の体重1キログラム(kg)あたりのウイルスゲノム(vg)として表記することができる。一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、約102vg/kg~104vg/kg、約104vg/kg~約106vg/kg、約106vg/kg~約108vg/kg、約108vg/kg~約1010vg/kg、約1010vg/kg~約1012vg/kg、約1012vg/kg~約1014vg/kg、約1014vg/kg~約1014vg/kg、約1014vg/kg~約1016vg/kgであるか、または1016vg/kgより多い。一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、心外膜を通しての心筋内注射を介して投与される。一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、冠動脈を通しての血管送達を介して投与される。一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、上大静脈を通しての全身送達を介して投与される。一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、末梢静脈を通しての全身送達を介して投与される。
【0241】
本開示は、心臓細胞のゲノムを改変する(「編集する」)方法を提供する。本開示は、心臓線維芽細胞のゲノムを改変する(「編集する」)方法を提供する。本開示は、心筋細胞のゲノムを改変する(「編集する」)方法を提供する。方法は一般的に、心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞または心筋細胞)に本開示のrAAVビリオンを感染させることを伴い、rAAVビリオンはゲノム編集エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む。一部の実施形態では、方法は、心臓線維芽細胞または心筋細胞に本開示のrAAVビリオンを感染させるステップを含み、rAAVビリオンはRNAガイドゲノム編集エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む。一部の実施形態では、方法は、心臓線維芽細胞または心筋細胞に本開示のrAAVビリオンを感染させるステップを含み、rAAVビリオンはi)RNAガイドゲノム編集エンドヌクレアーゼ、およびii)1つまたは複数のガイドRNAをコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む。一部の実施形態では、方法は、心臓線維芽細胞または心筋細胞に本開示のrAAVビリオンを感染させるステップを含み、rAAVビリオンはi)RNAガイドゲノム編集エンドヌクレアーゼ、ii)ガイドRNA、およびiii)ドナー鋳型DNAをコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む。適したRNAガイドゲノム編集エンドヌクレアーゼは上記の通りである。
【0242】
一部の実施形態では、心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞;心筋細胞)を感染させるステップはin vitroで行われる。一部の実施形態では、心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞;心筋細胞)を感染させるステップはin vitroで行われ;感染した心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞)は、それを必要とする個体に導入され(例えば、植え込まれ)、例えばそれを必要とする個体の心組織に直接導入される。in vitro形質導入の場合、細胞に送達されるrAAVビリオンの有効量は、約10s~約1013程度のrAAVビリオンである。他の有効な投薬量は、用量応答曲線を確立するルーチンの試験を通して当業者によって容易に確立することができる。
【0243】
一部の実施形態では、心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞;心筋細胞)を感染させるステップはin vivoで行われる。例えば、一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、それを必要とする個体の心組織に直接投与される。「有効量」は、実験および/または臨床試験を通して決定することができる比較的広い範囲に入る。例えば、in vivo注射の場合、すなわち心組織に直接注射する場合、治療有効用量は、本開示のrAAVビリオンの約106~約1015程度、例えばrAAVビリオン約1011~1012程度である。一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、心外膜を通しての心筋内注射を介して投与される。一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、冠動脈を通しての血管送達を介して投与される。一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、上大静脈を通しての全身送達を介して投与される。一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、末梢静脈を通しての全身送達を介して投与される。
【0244】
例えば、本開示のrAAVビリオンの約106~約107、約107~約108、約108~約109、約109~約1010、約1010~約1011、約l011~約1012、約1012~約1013、約1013~約1014、約1014~約1015ゲノムコピー、または1015ゲノムコピーより多くが個体に投与され、例えば個体の心組織に直接投与される。個体に投与されるrAAVビリオンの数は、個体の体重1キログラム(kg)あたりのウイルスゲノム(vg)として表記することができる。一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、約102vg/kg~104vg/kg、約104vg/kg~約106vg/kg、約106vg/kg~約108vg/kg、約108vg/kg~約1010vg/kg、約1010vg/kg~約1012vg/kg、約1012vg/kg~約1014vg/kg、約1014vg/kg~約1016vg/kg、約1016vg/kg~約1018vg/kgであるか、または1018vg/kgより多い。一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、心外膜を通しての心筋内注射を介して投与される。一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、冠動脈を通しての血管送達を介して投与される。一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、上大静脈を通しての全身送達を介して投与される。一部の実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、末梢静脈を通しての全身送達を介して投与される。
【0245】
一部の実施形態では、ゲノム編集は、相同組換え修復(HDR)を含む。一部の実施形態では、HDRは、心臓線維芽細胞または心筋細胞における内因性の標的核酸の欠損を修正し、欠損は、心臓線維芽細胞もしくは心筋細胞の構造および/もしくは機能の欠損または心臓線維芽細胞もしくは心筋細胞の構成要素の欠損に関連するか、またはそれをもたらす。
【0246】
一部の実施形態では、ゲノム編集は、非相同末端結合(NHEJ)を含む。一部の実施形態では、NHEJは、心臓線維芽細胞または心筋細胞における内因性の標的核酸の欠損を欠失させ、欠損は、心臓線維芽細胞もしくは心筋細胞の構造および/もしくは機能の欠損または心臓線維芽細胞もしくは心筋細胞の構成要素の欠損に関連するか、またはそれをもたらす。
【0247】
心臓細胞のゲノムを編集するための本開示の方法を使用して、心疾患または障害を生じる任意の多様な遺伝子欠損を修正することができる。目的の変異は、以下の遺伝子:心トロポニンT(TNNT2);ミオシン重鎖(MYH7);トロポミオシン1(TPM1);ミオシン結合タンパク質C(MYBPC3);5’-AMP-活性化タンパク質キナーゼサブユニットガンマ-2(PRKAG2);トロポニンI 3型(TNNI3);チチン(TTN);ミオシン、軽鎖2(MYL2);アクチン、アルファ心筋1(ACTC1);カリウム電位依存チャネル、KQT-様サブファミリー、メンバー1(KCNQ1);プラコフィリン2(PKP2);筋細胞エンハンサー因子2c(MEF2C);および心LIMタンパク質(CSRP3)のうちの1つまたは複数における変異を含む。目的の特定の変異としては、MYH7 R663H変異;TNNT2 R173W;PKP2 2013delC変異;PKP2 Q617X変異;およびKCNQ1 G269Sミスセンス変異が挙げられるがこれらに限定されない。目的の変異は、以下の遺伝子:MYH6、ACTN2、SERCA2、GATA4、TBX5、MYOCD、NKX2-5、NOTCH1、MEF2C、HAND2、およびHAND1のうちの1つまたは複数における変異を含む。一部の実施形態では、目的の変異は、以下の遺伝子:MEF2C、TBX5、およびMYOCDにおける変異を含む。本開示の方法によって処置することができる心疾患および障害としては、冠動脈心疾患、心筋症、心外膜炎、先天性心血管欠損、およびうっ血性心不全が挙げられる。本開示の方法によって処置することができる心疾患および障害としては、肥大型心筋症;心臓弁膜症;心筋梗塞;うっ血性心不全;QT延長症候群;心房性不整脈;心室性不整脈;拡張型心不全;収縮型心不全;心臓弁疾患;心臓弁石灰化;左室心筋緻密化障害;心室中隔欠損;および虚血が挙げられる。
【0248】
処置の方法
本開示は、それを必要とする対象における心病態を処置する方法であって、rAAVビリオンを含む医薬組成物の治療有効量を対象に投与するステップを含み、rAAVビリオンが心組織を形質導入する、方法を提供する。
【0249】
本開示の組成物および方法を使用する処置を必要とする対象は、先天性心欠損を有する個体、筋変性疾患に罹患している個体、虚血性心組織をもたらす状態に罹患している個体(例えば冠動脈疾患を有する個体)などが挙げられるがこれらに限定されない。一部の例では、方法は、筋変性疾患または状態(例えば、家族性心筋症、拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、または虚血性心筋症をもたらす冠動脈疾患)を処置するために有用である。一部の例では、本発明の方法は、心または心血管疾患または障害、例えば心血管疾患、動脈瘤、狭心症、不整脈、アテローム性動脈硬化症、脳血管事故(卒中)、脳血管疾患、先天性心疾患、うっ血性心不全、心筋炎、冠動脈弁疾患(valve disease coronary)、動脈拡張症(artery disease dilated)、収縮機能障害、心内膜炎、高血圧(high blood pressure)(高血圧症(hypertension))、心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、虚血性心筋症をもたらす冠動脈疾患、僧帽弁逸脱、心筋梗塞(心臓発作)、または静脈血栓塞栓症を有する個体を処置するために有用である。
【0250】
本開示の組成物、細胞、および方法を使用する処置にとって適した対象は、虚血性心組織をもたらす状態を含むがこれらに限定されない心状態を有する(例えば冠動脈疾患を有する個体)個体(例えば哺乳動物対象、例えばヒト、非ヒト霊長類、家庭哺乳動物、実験用の非ヒト哺乳動物対象、例えばマウス、ラットなど)などを含む。
【0251】
一部の例では、処置にとって適した個体は、心または心血管疾患または状態、例えば心血管疾患、動脈瘤、狭心症、不整脈、アテローム性動脈硬化症、脳血管事故(卒中)、脳血管疾患、先天性心疾患、うっ血性心不全、心筋炎、冠動脈弁疾患、動脈拡張症、拡張機能障害、心内膜炎、高血圧(高血圧症)、心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、虚血性心筋症をもたらす冠動脈疾患、僧帽弁逸脱、心筋梗塞(心臓発作)、または静脈血栓塞栓症に罹患している。一部の例では、本発明の方法による処置にとって適した個体は、筋変性疾患、例えば家族性心筋症、拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、または虚血性心筋症をもたらす冠動脈疾患を有する個体を含む。
【0252】
例えば、心病態は、うっ血性心不全、心筋梗塞、心虚血、心筋炎、および不整脈からなる群から選択することができる。一部の実施形態では、対象は糖尿病である。一部の実施形態では、対象は非糖尿病である。一部の実施形態では、対象は糖尿病性心筋症に罹患している。
【0253】
治療のために、本開示のrAAVビリオンおよび/またはその医薬組成物を、局所または全身に投与することができる。rAAVビリオンは、注射、カテーテル、植え込み可能デバイスなどによって導入することができる。rAAVビリオンは、細胞に有害な影響を及ぼさない任意の生理的に許容される賦形剤または担体中で投与することができる。例えば、本開示のrAAVビリオンおよび/またはその医薬組成物は、静脈内または心臓内経路を通して(例えば、心外膜内または心筋内に)投与することができる。本開示のrAAVビリオンおよび/またはその医薬組成物を対象、特にヒト対象に投与する方法は、医薬組成物(例えば、rAAVビリオンを含む組成物)の注射または注入を含む。注射は直接筋注射を含んでもよく、注入は静脈内注入を含んでもよい。rAAVビリオンまたは医薬組成物は、対象への注射による導入を容易にする送達デバイスに挿入することができる。そのような送達デバイスは、細胞または流体をレシピエント対象の体に注射するためのチューブ、例えばカテーテルを含む。チューブはさらに、それを通して本発明の細胞を所望の位置で対象に導入することができる針、例えばシリンジを含み得る。
【0254】
一部の実施形態(embdoiments)では、rAAVビリオンは、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、または心臓内注射または心臓内カテーテル挿入によって投与される。一部の実施形態では、rAAVビリオンは、直接心筋内注射または経血管投与によって投与される。一部の実施形態では、rAAVビリオンは、直接心筋内注射、順行性冠動脈内注射、逆行性注射、経心内膜心筋注射、または再循環送達を伴う分子心臓手術(MCARD)によって投与される。
【0255】
rAAVビリオンは、異なる形態のそのような送達デバイス、例えばシリンジに挿入することができる。rAAVビリオンは、医薬組成物の形態で供給することができる。そのような組成物は、ヒトでの投与のために十分な無菌的条件下で調製された等張の賦形剤を含み得る。医用製剤における一般的原理に関して、読者は、Cell Therapy: Stem Cell Transplantation, Gene Therapy, and Cellular Immunotherapy, by G. Morstyn & W. Sheridan eds, Cambridge University Press, 1996;およびHematopoietic Stem Cell Therapy, E. D. Ball, J. Lister & P. Law, Churchill Livingstone, 2000を参照されたい。賦形剤および組成物の任意の付随する構成成分の選択は、用いられる経路および/またはデバイスによる投与を最適化するように適合させることができる。
【0256】
組換えAAVは、局所または全身性に投与され得る。組換えAAVは、本開示の適切なカプシドタンパク質を選択することによって特定の細胞タイプを標的とするように操作され得る。AAVビリオン組成物の様々な治療投与レジメンおよび投薬量の適格性を決定するために、rAAVビリオンを最初に、適した動物モデルにおいて試験することができる。1つのレベルで、組換えAAVを、in vivoで標的細胞に感染する能力に関して評価する。組換えAAVはまた、それが標的組織に遊走するかどうか、それらが宿主において免疫応答を誘導するかどうかに関して、または投与されるrAAVビリオンの適切な数もしくは投薬量の決定を確実にするために評価することができる。組換えAAVが処置される疾患に応じて免疫応答を生成することが望ましいことも望ましくないこともあり得る。一般的に、ビリオンの繰り返し投与が必要である場合、ビリオンは免疫原性でないことが有利である。試験目的の場合、rAAVビリオン組成物を、免疫不全動物(例えば、ヌードマウス、または化学的もしくは放射線照射により免疫不全にした動物)に投与することができる。標的組織または細胞を感染期間後に回収し、組織または細胞が感染しているか、および所望の表現型(例えば、誘導心筋細胞)が標的組織または細胞において誘導されているかどうかを決定するために評価する。
【0257】
組換えAAVビリオンは、心臓への直接注射または心カテーテル挿入を含むがこれらに限定されない様々な経路によって投与することができる。あるいは、rAAVビリオンを、静脈内注入などによって全身投与することができる。直接注射を使用する場合、開胸手術または最小侵襲手術のいずれかによって行うことができる。一部の実施形態では、組換えウイルスを、注射または注入によって心膜腔に送達する。注射または注入された組換えウイルスは、多様な方法によって追跡することができる。例えば、検出可能な標識(例えば、緑色蛍光タンパク質またはベータ-ガラクトシダーゼ)によって標識されたまたはそれを発現する組換えAAVを容易に検出することができる。組換えAAVは、標的細胞にマーカータンパク質、例えば表面発現タンパク質または蛍光タンパク質を発現させるように操作され得る。あるいは、組換えAAVによる標的細胞の感染は、試験のために使用した動物によって発現されない細胞マーカー(例えば、実験動物に細胞を注射した場合のヒト特異的抗原)のその発現によって検出することができる。標的細胞の存在および表現型は、蛍光顕微鏡法(例えば、緑色蛍光タンパク質、またはベータ-ガラクトシダーゼに関して)によって、または免疫組織化学(例えば、ヒト抗原に対する抗体を使用して)、ELISA(ヒト抗原に対する抗体を使用して)によって、または心表現型を示すRNAに対して増幅を特異的にするプライマーおよびハイブリダイゼーション条件を使用するRT-PCR分析によって評価することができる。
【0258】
医薬組成物
本開示は、本開示のrAAVビリオンを含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、および緩衝剤の1つまたは複数を含み得る。一部の実施形態では、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、または緩衝剤は、ヒトにおいて使用するために適している。そのような賦形剤、担体、希釈剤、および緩衝剤は、過度の毒性なく投与することができる任意の剤を含む。薬学的に許容される賦形剤としては、水、食塩水、グリセロール、およびエタノールなどの液体が挙げられるがこれらに限定されない。薬学的に許容される塩、例えば無機酸の塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩など;および有機酸の塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などがその中に含まれ得る。加えて、補助物質、例えばpH緩衝物質がそのような媒体に存在してもよい。多様な薬学的に許容される賦形剤が当技術分野で公知であり、本明細書において詳細に考察する必要はない。薬学的に許容される賦形剤は、例えばA. Gennaro (2000) Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th edition, Lippincott, Williams, & Wilkins; Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems (1999) H.C. Ansel et al., eds., 7th ed., Lippincott, Williams, & Wilkins;およびHandbook of Pharmaceutical Excipients (2000) A.H. Kibbe et al., eds., 3rd ed. Amer. Pharmaceutical Assocを含む多様な刊行物において十分に記載されている。
【0259】
組成物を調製するために、rAAVビリオンを生成し、必要に応じてまたは望ましければ精製する。rAAVを薬学的に許容される担体と混合するかまたはその中に懸濁することができる。これらのrAAVを、適切な濃度に調整し、必要に応じて他の作用剤と組み合わせることができる。単位用量に含まれるrAAVビリオンおよび/または他の作用剤の濃度は、広く異なり得る。用量および投与回数は、当業者が最適化することができる。例えば、約102~1010ベクターゲノム(vg)が投与され得る。一部の実施形態では、用量は、少なくとも約102vg、約103vg、約104vg、約105vg、約106vg、約107vg、約108vg、約109vg、約1010vg、またはそれより多くのベクターゲノムであり得る。化合物の日用量も同様に多様であり得る。そのような日用量は、例えば少なくとも約102vg/日、約103vg/日、約104vg/日から、約105vg/日、約106vg/日、約107vg/日、約108vg/日、約109vg/日、約1010vg/日、またはそれより多くのベクターゲノム/日までの範囲であり得る。
【0260】
ある特定の実施形態では、処置の方法は、1つまたは複数の抗炎症剤、例えば抗炎症性ステロイドまたは非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の投与によって増強される。
【0261】
本発明において使用するための抗炎症性ステロイドは、コルチコステロイド、特にグルココルチコイド活性を有するステロイド、例えばデキサメタゾンおよびプレドニゾンを含む。本発明において使用するための非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は、一般的に炎症および疼痛を引き起こすプロスタグランジンの産生、シクロオキシゲナーゼ-1(COX-1)および/またはシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)を遮断することによって作用する。従来のNSAIDは、COX-1およびCOX-2の両方を遮断することによって作用する。COX-2選択的阻害剤は、COX-2酵素のみを遮断する。ある特定の実施形態では、NSAIDはCOX-2選択的阻害剤、例えばセレコキシブ(Celebrex(登録商標))、ロフェコキシブ(Vioxx)、およびバルデコキシブ(B extra)でる。ある特定の実施形態では、抗炎症剤は、NSAIDプロスタグランジン阻害剤、例えばピロキシカムである。
【0262】
処置に使用されるrAAVビリオンの量は、選択される特定の担体によって変化するのみならず、投与経路、処置される状態の性質、ならびに患者の年齢および状態によっても変化する。最終的に、主治医の医療提供者が適切な投薬量を決定してもよい。医薬組成物は、細胞を含むまたは細胞を含まない投与のために単一の単位剤形中の各化合物の適切な比率で製剤化され得る。細胞またはベクターは、個別に提供され、化合物組成物の液体液剤と混合され得るか、または個別に投与され得る。
【0263】
組換えAAVは、非経口投与(例えば、注射、例えばボーラス注射または持続的注入によって)のために製剤化されてもよく、アンプル、充填済みシリンジ、低容量注入容器、または保存剤を添加した複数回投与用容器で単位剤形中に提示され得る。医薬組成物は、懸濁剤、液剤、油性または水性媒体中の乳剤の形態をとることができ、懸濁化剤、安定化剤、および/または分散剤などの製剤化剤を含有し得る。適した担体としては、食塩水溶液、リン酸緩衝食塩水、および当技術分野で一般的に使用される他の材料が挙げられる。
【0264】
組成物はまた、心疾患、状態、および傷害の処置にとって有用な作用剤などの他の成分(ingredient)、例えば抗凝固剤(例えば、ダルテパリン(fragmin)、ダナパロイド(orgaran)、エノキサパリン(lovenox)、ヘパリン、チンザパリン(innohep)、および/またはワーファリン(coumadin))、抗血小板剤(例えば、アスピリン、チクロピジン、クロピドグレル、またはジピリダモール)、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(例えば、ベナゼプリル(Lotensin)、カプトプリル(Capoten)、エナラプリル(Vasotec)、フォシノプリル(Monopril)、リシノプリル(Prinivil、Zestril)、モエキシプリル(Univasc)、ペリンドプリル(Aceon)、キナプリル(Accupril)、ラミプリル(Altace)、および/またはトランドラプリル(Mavik))、アンジオテンシンII受容体遮断剤(例えば、カンデサルタン(Atacand)、エプロサルタン(Teveten)、イルベサルタン(Avapro)、ロサルタン(Cozaar)、テルミサルタン(Micardis)、および/またはバルサルタン(Diovan))、ベータ遮断剤(例えば、アセブトロール(Sectral)、アテノロール(Tenormin)、ベタキソロール(Kerlone)、ビソプロロール/ヒドロクロロチアジド(Ziac)、ビソプロロール(Zebeta)、カルテオロール(Cartrol)、メトプロロール(Lopressor、Toprol XL)、ナドロール(Corgard)、プロプラノロール(Inderal)、ソタロール(Betapace)、および/またはチモロール(Blocadren))、カルシウムチャネル遮断剤(例えば、アムロジピン(Norvasc、Lotrel)、ベプリジル(Vascor)、ジルチアゼム(Cardizem、Tiazac)、フェロジピン(Plendil)、ニフェジピン(Adalat、Procardia)、ニモジピン(Nimotop)、ニソルジピン(Sular)、ベラパミル(Calan、Isoptin、Verelan)、利尿剤(例えば、アミロライド(Midamor)、ブメタニド(Bumex)、クロロチアジド(Diuril)、クロルタリドン(Hygroton)、フロセミド(Lasix)、ヒドロクロロチアジド(Esidrix、Hydrodiuril)、インダパミド(Lozol)、および/またはスピロノラクトン(Aldactone))、血管拡張剤(例えば、二硝酸イソソルビド(Isordil)、ネシリチド(Natrecor)、ヒドラジン(Apresoline)、硝酸塩および/またはミノキシジル)、スタチン、ニコチン酸、ゲムフィブロジル、クロフィブレート、ジゴキシン、ジギトキシン、ラノキシン、またはそれらの任意の組合せなども含有し得る。
【0265】
追加の作用剤、例えば抗菌剤、抗微生物剤、抗ウイルス剤、生物応答改変剤、成長因子、免疫モジュレーター、モノクローナル抗体、および/または保存剤を含めることができる。本発明の組成物はまた、他の形態の治療と共に使用され得る。
【0266】
本明細書に記載されるrAAVビリオンは、疾患または障害を処置するために対象に投与することができる。そのような組成物は、例えばレシピエントの生理的状態、投与の目的が外傷性傷害に対する応答であるか、またはより持続的な治療目的のためであるか、および熟練の実践者に公知の他の要因に応じて、持続的または間欠的様式での単一用量、複数用量であり得る。化合物および本発明の組成物の投与は、予め選択された期間にわたって本質的に連続的であり得るか、または一連の間隔を空けた用量であり得る。局所および全身投与の両方が企図される。一部の実施形態では、rAAVビリオンの局所送達が達成される。一部の実施形態では、rAAVビリオンの局所送達を使用して心臓内の細胞集団を生成する。一部の実施形態では、そのような局所集団は心臓のための「ペースメーカー細胞」として動作する。一部の実施形態では、rAAVビリオンを使用して、洞房(SA)結節、房室(AV)結節、His束(a bindle of His)、および/またはプルキンエ線維のうちの1つまたは複数を生成する、再生する、修復する、置き換える、および/または回復させる(rejunevate)。
【0267】
等張性を制御するために、水性医薬組成物は、生理的な塩、例えばナトリウム塩を含み得る。塩化ナトリウム(NaCl)が好ましく、これは1~20mg/mlの間で存在し得る。存在し得る他の塩としては、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、脱水リン酸二ナトリウム(disodium phosphate dehydrate)、塩化マグネシウム、および塩化カルシウムが挙げられる。
【0268】
組成物は、1つまたは複数の緩衝剤を含み得る。典型的な緩衝剤としては、リン酸緩衝剤、トリス緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤、またはクエン酸緩衝剤が挙げられる。緩衝剤は、典型的には、5~20mMの範囲の濃度で含まれる。組成物のpHは一般的に5~8の間であり、より典型的には6~8の間、例えば6.5~7.5の間、または7.0~7.8の間である。
【0269】
組成物は好ましくは無菌である。組成物は好ましくはグルテンフリーである。組成物は好ましくは非発熱性である。
【0270】
一部の実施形態では、細胞を含む組成物は、凍結保護剤を含み得る。凍結保護剤の非限定的な例としては、グリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびグリセロール)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ホルムアミド、スクロース、トレハロース、デキストロース、およびそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0271】
以下のタイプの化合物の1つまたは複数もまた、rAAVビリオンと共に組成物に存在することができる:WNTアゴニスト、GSK3阻害剤、TGF-ベータシグナル伝達阻害剤、エピジェネティック改変剤、LSD1阻害剤、アデニルシクラーゼアゴニスト、またはそれらの任意の組合せ。
【0272】
キット
本明細書に記載の組成物(例えば、rAAVビリオン)のいずれかを含む多様なキットが本明細書に記載される。キットは、共に混合されたか、または個々に包装された、および乾燥型または水和型の本明細書に記載の組成物のいずれかを含み得る。rAAVビリオンおよび/または本明細書で記載される他の作用剤は、個別のバイアル、ボトル、または他の容器に個々に包装することができる。あるいは、rAAVビリオンおよび/または本明細書に記載の作用剤のいずれかを単一の組成物として一緒に、または一緒にもしくは個別に使用することができる2つもしくはそれより多くの組成物として包装することができる。化合物および/または本明細書に記載される作用剤は、分化境界を超えて選択された細胞の変換を容易にするために適切な比率および/または量で包装され、心臓前駆細胞および/または心筋細胞を形成することができる。
【0273】
キットは、それらの組成物、化合物、および/または作用剤を投与するための指示を含み得る。そのような指示は、本出願を通して記載される情報を提供することができる。rAAVビリオンまたは医薬組成物は、送達デバイスの形態でいずれかのキット内に提供することができる。あるいは、送達デバイスをキットに個別に含めることができ、指示は、対象への投与前に送達デバイスを組み立てる方法を記載することができる。
【0274】
いずれのキットも、シリンジ、カテーテル、メス、試料または細胞収集のための滅菌容器、希釈剤、薬学的に許容される担体などを含み得る。キットは、本出願の先行する節においてまたは他の部分で組成物に関して本明細書に記載される補助因子または薬物のいずれかなどの他の因子を提供することができる。
【0275】
番号付き実施形態
実施形態I-1.組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンであって:
a)親配列のGHループにおける挿入部位に前記親配列に対して5~11アミノ酸の挿入を含むAAV5カプシドタンパク質;および
b)遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸
を含む、rAAVビリオン。
【0276】
実施形態I-2.親配列を含むAAVビリオンと比較して心臓細胞において形質導入効率の増加を示す、実施形態I-1に記載のrAAVビリオン。
【0277】
実施形態I-3.親配列を含むAAVビリオンと比較してヒト心臓線維芽細胞(hCF)において形質導入効率の増加を示す、実施形態I-1に記載のrAAVビリオン。
【0278】
実施形態I-4.感染多重度(MOI)1,000でhCF細胞において少なくとも10倍の形質導入効率の増加を示す、実施形態I-3に記載のrAAVビリオン。
【0279】
実施形態I-5.感染多重度(MOI)100,000でhCF細胞において少なくとも2倍の形質導入効率の増加を示す、実施形態I-3に記載のrAAVビリオン。
【0280】
実施形態I-6.親配列を含むAAVビリオンと比較して人工多能性幹細胞由来心筋細胞(iPS-CM)において形質導入効率の増加を示す、実施形態I-1に記載のrAAVビリオン。
【0281】
実施形態I-7.感染多重度(MOI)100,000でiPS-CM細胞において少なくとも2倍の形質導入効率の増加を示す、実施形態I-6に記載のrAAVビリオン。
【0282】
実施形態I-8.感染多重度(MOI)1,000でiPS-CM細胞において少なくとも4倍の形質導入効率の増加を示す、実施形態I-6に記載のrAAVビリオン。
【0283】
実施形態I-9.iPS-CM細胞にまさってhCF細胞に関してrAAVビリオンの選択性の増加を示す、実施形態I-1に記載のrAAVビリオン。
【0284】
実施形態I-10.hCF細胞にまさってiPS-CM細胞に関してrAAVビリオンの選択性の増加を示す、実施形態I-1に記載のrAAVビリオン。
【0285】
実施形態I-11.挿入部位が、配列番号1の560~594に対応する前記親配列における位置での任意の2つの、必要に応じて隣接するアミノ酸の間である、実施形態I-1に記載のrAAVビリオン。
【0286】
実施形態I-12.挿入部位が、配列番号1の574および575に対応する前記親配列における隣接するアミノ酸の間である、実施形態I-11に記載のrAAVビリオン。
【0287】
実施形態I-13.挿入が以下の式:
-X0-(X)n-X10-
(式中、nは5~9であり、
X0およびX10は、各々独立してA、S、Gであるか、または存在しない)(配列番号1101)
のペプチドである、実施形態I-12に記載のrAAVビリオン。
【0288】
実施形態I-14.挿入が以下の式:
-X0-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-
(式中、X0およびX8が、各々独立してA、S、Gであるか、または存在しない)(配列番号1102)
のペプチドである、実施形態I-12に記載のrAAVビリオン。
【0289】
実施形態I-15.挿入が以下の式:
-A-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-A-
(式中:
a)X1が、P、R、またはGであり;
b)X2が、K、L、またはRであり;
c)X3が、任意のアミノ酸であり;
d)X4が、N、H、K、またはQであり;
e)X5が、任意のアミノ酸であるか、または必要に応じてX5が、G、K、もしくはSであり;
f)X6が、任意のアミノ酸であるか、または必要に応じてX6が、TもしくはVであり;
g)X7が、任意のアミノ酸であるか、または必要に応じてX7が、KもしくはVである)(配列番号1103)
のペプチドである、実施形態I-12に記載のrAAVビリオン。
【0290】
実施形態I-実施形態I-16.挿入が、配列番号101~600から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態I-14に記載のrAAVビリオン。
【0291】
実施形態I-17.挿入が、RKVHIEV(配列番号81)、RKYQSDL(配列番号82)、PLTNTVK(配列番号83)、LKYHGPP(配列番号84)、RKYQGDM(配列番号85)、RKFHSTD(配列番号86)、RKHHGLE(配列番号87)、PGTNVTK(配列番号88)、RKMHMPD(配列番号89)、PLKKIVQ(配列番号90)、PLGKKTS(配列番号91)、PRGVKVT(配列番号92)、PLAKSKS(配列番号93)、PRTKGAV(配列番号94)、およびPSGRKAT(配列番号95)から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態I-14に記載のrAAVビリオン。
【0292】
実施形態I-18.挿入が、ARKVHIEVA(配列番号101)、ARKYQSDLA(配列番号102)、APLTNTVKA(配列番号103)、ALKYHGPPA(配列番号104)、ARKYQGDMA(配列番号105)、ARKFHSTDA(配列番号106)、ARKHHGLEA(配列番号107)、APGTNVTKA(配列番号108)、ARKMHMPDA(配列番号109)、APLKKIVQA(配列番号110)、APLGKKTSA(配列番号111)、APRGVKVTA(配列番号112)、APLAKSKSA(配列番号113)、APRTKGAVA(配列番号114)、APSGRKATA(配列番号115)から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態I-14に記載のrAAVビリオン。
【0293】
実施形態I-19.挿入が、アミノ酸配列PLTNTVK(配列番号83)、またはPLTNTVK(配列番号83)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む、実施形態I-14に記載のrAAVビリオン。
【0294】
実施形態I-20.挿入が、アミノ酸配列PLKKIVQ(配列番号90)、またはPLKKIVQ(配列番号90)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む、実施形態I-14に記載のrAAVビリオン。
【0295】
実施形態I-21.親配列のGHループにおける挿入部位に前記親配列に対して5~11アミノ酸の挿入を含む、AAV5カプシドタンパク質。
【0296】
実施形態I-22.AAV5カプシドタンパク質が、親配列を含むAAVビリオンと比較して心臓細胞において形質導入効率の増加を示す、実施形態I-21に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0297】
実施形態I-23.AAV5カプシドタンパク質が、親配列を含むAAVビリオンと比較してヒト心臓線維芽細胞(hCF)において形質転換効率の増加を示す、実施形態I-21に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0298】
実施形態I-24.AAV5カプシドタンパク質が、感染多重度(MOI)1,000でhCF細胞において少なくとも10倍の形質導入効率の増加を示す、実施形態I-23に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0299】
実施形態I-25.AAV5カプシドタンパク質が、感染多重度(MOI)100,000でhCF細胞において少なくとも2倍の形質導入効率の増加を示す、実施形態I-23に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0300】
実施形態I-26.AAV5カプシドタンパク質が、親配列を含むAAVビリオンと比較して人工多能性幹細胞由来心筋細胞(iPS-CM)において形質導入効率の増加を示す、実施形態I-21に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0301】
実施形態I-27.AAV5カプシドタンパク質が、感染多重度(MOI)100,000でiPS-CM細胞において少なくとも2倍の形質導入効率の増加を示す、実施形態I-26に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0302】
実施形態I-28.AAV5カプシドタンパク質が、感染多重度(MOI)1,000でiPS-CM細胞において少なくとも4倍の形質導入効率の増加を示す、実施形態I-26に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0303】
実施形態I-29.AAV5カプシドタンパク質が、iPS-CM細胞にまさってhCF細胞に関してAAV5カプシドタンパク質の選択性の増加を示す、実施形態I-21に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0304】
実施形態I-30.AAV5カプシドタンパク質が、hCF細胞にまさってiPS-CM細胞に関してAAV5カプシドタンパク質の選択性の増加を示す、実施形態I-21に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0305】
実施形態I-31.挿入部位が、配列番号1の560~594に対応する親配列における位置で任意の2つの、必要に応じて隣接するアミノ酸の間である、実施形態I-21に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0306】
実施形態I-32.挿入部位が、配列番号1の574および575に対応する前記親配列における隣接するアミノ酸の間である、実施形態I-21に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0307】
実施形態I-33.挿入が以下の式:
-X0-(X)n-X10-
(式中、nが5~9であり、
X0およびX10が、各々独立してA、S、Gであるか、または存在しない)(配列番号1101)
のペプチドである、実施形態I-32に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0308】
実施形態I-34.挿入が以下の式:
-X0-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-
(式中、X0およびX8が、各々独立してA、S、Gであるか、または存在しない)(配列番号1102)
のペプチドである、実施形態I-32に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0309】
実施形態I-35.挿入が以下の式:
-A-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-A-
(式中:
a)X1が、P、R、またはGであり;
b)X2が、K、L、またはRであり;
c)X3が、任意のアミノ酸であり;
d)X4が、N、H、K、またはQであり;
e)X5が、任意のアミノ酸であるか、または必要に応じてX5が、G、K、もしくはSであり;
f)X6が、任意のアミノ酸であるか、または必要に応じてX6が、TもしくはVであり;
g)X7が、任意のアミノ酸であるか、または必要に応じてX7が、KもしくはVである)(配列番号1103)
のペプチドである、実施形態I-32に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0310】
実施形態I-36.挿入が、配列番号101~600から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態I-34に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0311】
実施形態I-37.挿入が、RKVHIEV(配列番号81)、RKYQSDL(配列番号82)、PLTNTVK(配列番号83)、LKYHGPP(配列番号84)、RKYQGDM(配列番号85)、RKFHSTD(配列番号86)、RKHHGLE(配列番号87)、PGTNVTK(配列番号88)、RKMHMPD(配列番号89)、PLKKIVQ(配列番号90)、PLGKKTS(配列番号91)、PRGVKVT(配列番号92)、PLAKSKS(配列番号93)、PRTKGAV(配列番号94)、およびPSGRKAT(配列番号95)から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態I-34に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0312】
実施形態I-38.挿入が、ARKVHIEVA(配列番号101)、ARKYQSDLA(配列番号102)、APLTNTVKA(配列番号103)、ALKYHGPPA(配列番号104)、ARKYQGDMA(配列番号105)、ARKFHSTDA(配列番号106)、ARKHHGLEA(配列番号107)、APGTNVTKA(配列番号108)、ARKMHMPDA(配列番号109)、APLKKIVQA(配列番号110)、APLGKKTSA(配列番号111)、APRGVKVTA(配列番号112)、APLAKSKSA(配列番号113)、APRTKGAVA(配列番号114)、APSGRKATA(配列番号115)から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態I-34に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0313】
実施形態I-39.挿入が、アミノ酸配列PLTNTVK(配列番号83)、またはPLTNTVK(配列番号83)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む、実施形態I-34に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0314】
実施形態I-40.挿入が、アミノ酸配列PLKKIVQ(配列番号90)、またはPLKKIVQ(配列番号90)と比較して多くて1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を含む配列を含む、実施形態I-34に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0315】
実施形態I-41.実施形態I-21からI-40のいずれか1つに記載のAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0316】
実施形態I-42.実施形態I-1からI-20のいずれか1つに記載のrAAVビリオンを含む医薬組成物。
【0317】
実施形態I-43.心臓細胞を形質導入する方法であって、心臓細胞に、実施形態I-1からI-20のいずれか1つに記載のrAAVビリオンを接触させるステップを含み、rAAVビリオンが心臓細胞を形質導入する、方法。
【0318】
実施形態I-44.心臓細胞に1つまたは複数の遺伝子産物を送達する方法であって、心臓細胞に、実施形態I-1からI-20のいずれか1つに記載のrAAVビリオンを接触させるステップを含み、心臓細胞が遺伝子産物を発現する、方法。
【0319】
実施形態I-45.1つまたは複数の遺伝子産物が短鎖ヘアピンRNAまたはマイクロRNAを含む、実施形態I-44に記載の方法。
【0320】
実施形態I-46.ガイドRNA、Casタンパク質、および必要に応じて修復鋳型を含む1つまたは複数の遺伝子産物であって、該遺伝子産物が機能的なCRISPR/Cas系を形成する、実施形態I-44に記載の方法。
【0321】
実施形態I-47.1つまたは複数の遺伝子産物がポリペプチドを含む、実施形態I-44に記載の方法。
【0322】
実施形態I-48.ポリペプチドが、必要に応じて心トロポニンT;心サルコメアタンパク質;β-ミオシン重鎖;心室ミオシン必須軽鎖1;心室ミオシン調節軽鎖2;心α-アクチン;a-トロポミオシン;心トロポニンI;心ミオシン結合タンパク質C;four-and-a-half LIMタンパク質1;チチン;5’-AMP-活性化タンパク質キナーゼサブユニットガンマ-2;トロポニンI 3型、ミオシン軽鎖2、アクチンアルファ心筋1;心LIMタンパク質;カベオリン3(CAV3);ガラクトシダーゼアルファ(GLA);リソソーム関連膜タンパク質2(LAMP2);ミトコンドリア転移RNAグリシン(MTTG);ミトコンドリア転移RNAイソロイシン(MTTI);ミトコンドリア転移RNAリシン(MTTK);ミトコンドリア転移RNAグルタミン(MTTQ);ミオシン軽鎖3(MYL3);トロポニンC(TNNC1);トランスサイレチン(TTR);筋小胞体カルシウム-ATPアーゼ2a(SERCA2a);間質由来因子-1(SDF-1);アデニレートシクラーゼ-6(AC6);β-ARKct(βアドレナリン受容体キナーゼC末端);線維芽細胞成長因子(FGF);血小板由来成長因子(PDGF);血管内皮成長因子(VEGF);肝細胞成長因子;低酸素誘導成長因子;チモシンベータ4(TMSB4X);一酸化窒素シンターゼ-3(NOS3);アポリポタンパク質-E(ApoE);およびスーパーオキシドジスムターゼ(SOD);S100A1から選択される、実施形態I-47に記載の方法。
【0323】
実施形態I-49.1つまたは複数の遺伝子産物が、1つまたは複数のリプログラミング因子を含む、実施形態I-44に記載の方法。
【0324】
実施形態I-50.1つまたは複数のリプログラミング因子が、ASCL1、MYOCD、MEF2C、TBX5、CCNB1、CCND1、CDK1、CDK4、AURKB、OCT4、BAF60C、ESRRG、GATA4、GATA6、HAND2、IRX4、ISLL、MESP1、MESP2、NKX2.5、SRF、TBX20、およびZFPM2から選択される1つまたは複数のポリペプチドである、実施形態I-49に記載の方法。
【0325】
実施形態I-51.心臓細胞を心臓の心筋細胞へとリプログラムする、実施形態I-43からI-50のいずれか1つに記載の方法。
【0326】
実施形態I-52.それを必要とする対象における心病態を処置する方法であって、実施形態I-42に記載の医薬組成物の治療有効量を対象に投与するステップを含み、rAAVビリオンが心組織を形質導入する、方法。
【0327】
実施形態I-53.rAAVビリオンが、皮下、静脈内、心外膜、筋肉内、腹腔内もしくは心臓内注射によるか、または心臓内カテーテル挿入によって投与される、実施形態I-52に記載の方法。
【0328】
実施形態I-54.rAAVビリオンが、直接心筋内注射または経血管投与によって投与される、実施形態I-52に記載の方法。
【0329】
実施形態I-55.rAAVビリオンが、直接心筋内注射、順行性冠動脈内注射、逆行性注射、経心内膜心筋注射、または再循環送達を伴う分子心臓手術(MCARD)によって投与される、実施形態I-52に記載の方法。
【0330】
実施形態I-56.標的細胞において形質導入効率の増加をrAAVビリオンに付与するAAVカプシドタンパク質を同定する方法であって:
a)rAAVビリオンの集団を提供するステップであって、そのrAAVゲノムが、バリアントAAVカプシドタンパク質をコードするcapポリヌクレオチドのライブラリーを含む、ステップ;
b)前記rAAVビリオンによる標的細胞への前記capポリヌクレオチドの形質導入を可能にするために十分な期間、前記集団に前記標的細胞を接触させるステップ;および
c)前記標的細胞から前記capポリヌクレオチドをシーケンシングし、それによって前記標的細胞において形質導入効率の増加をもたらすAAVカプシドタンパク質を同定するステップ
を含む、方法。
【0331】
実施形態I-57.ステップ(b)の前に、rAAVビリオンの前記集団に、非標的細胞への前記rAAVビリオンの結合を可能にするために十分な期間、前記非標的細胞を接触させることによって、前記集団を枯渇させるステップをさらに含む、実施形態I-56に記載の方法。
【0332】
実施形態I-58.組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンであって:
a)親AAV5カプシドと比較して、S651A、T578A、またはT582Aから選択される1つまたは複数の置換を含むAAV5カプシドタンパク質;および
b)遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸
を含む、rAAVビリオン。
【0333】
実施形態I-59.AAV5カプシドタンパク質が、S651A、T578AまたはT582Aから選択される2つまたはそれより多くの置換を含む、実施形態I-58に記載のrAAVビリオン。
【0334】
実施形態I-60.AAV5カプシドタンパク質が、T582AおよびS651A置換を含む、実施形態I-58に記載のrAAVビリオン。
【0335】
実施形態I-61.AAV5カプシドタンパク質が、T578AおよびT582A置換を含む、実施形態I-58に記載のrAAVビリオン。
【0336】
実施形態I-62.AAV5カプシドタンパク質が、T578AおよびS651A置換を含む、実施形態I-58に記載のrAAVビリオン。
【0337】
実施形態I-63.AAV5カプシドタンパク質が、S651A、T578A、およびT582A置換を含む、実施形態I-58に記載のrAAVビリオン。
【0338】
実施形態I-64.AAV5カプシドタンパク質が、配列番号73と少なくとも95%の同一性を共有する、実施形態I-58からI-62のいずれか1つに記載のrAAVビリオン。
【0339】
実施形態I-65.AAV5カプシドタンパク質が、配列番号73と少なくとも98%の同一性を共有する、実施形態I-58~I-62のいずれか1つに記載のrAAVビリオン。
【0340】
実施形態I-66.AAV5カプシドタンパク質が、配列番号73と少なくとも99%の同一性を共有する、実施形態I-58~I-62のいずれか1つに記載のrAAVビリオン。
【0341】
実施形態I-67.AAV5カプシドタンパク質が配列番号73のポリペプチド配列(the polypeptide sequence SEQ ID NO: 73)を含む、実施形態I-58~I-62のいずれか1つに記載のrAAVビリオン。
【0342】
実施形態I-68.親AAV5カプシドと比較してS651A、T578A、またはT582Aから選択される1つまたは複数の置換を含む、AAV5カプシドタンパク質。
【0343】
実施形態I-69.カプシドタンパク質が、S651A、T578AまたはT582Aから選択される2つまたはそれより多くの置換を含む、実施形態I-67に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0344】
実施形態I-70.カプシドタンパク質が、T582AおよびS651A置換を含む、実施形態I-67に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0345】
実施形態I-71.カプシドタンパク質が、T578AおよびT582A置換を含む、実施形態I-68に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0346】
実施形態I-72.カプシドタンパク質が、T578AおよびS651A置換を含む、実施形態I-68に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0347】
実施形態I-73.カプシドタンパク質が、S651A、T578A、およびT582A置換を含む、実施形態I-68に記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0348】
実施形態I-74.カプシドタンパク質が、配列番号73と少なくとも90%の同一性を共有する、実施形態I-68からI-73のいずれか1つに記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0349】
実施形態I-75.カプシドタンパク質が、配列番号73と少なくとも95%の同一性を共有する、実施形態I-68からI-73のいずれか1つに記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0350】
実施形態I-76.配列番号73と少なくとも98%の同一性を共有する、実施形態I-68~I-73のいずれか1つに記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0351】
実施形態I-77.配列番号73と少なくとも99%の同一性を共有する、実施形態I-68~I-73のいずれか1つに記載のAAV5カプシドタンパク質。
【0352】
実施形態I-78.実施形態I-68からI-77のいずれか1つに記載のAAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0353】
実施形態I-79.実施形態I-58からI-67のいずれか1つに記載のrAAVビリオンを含む医薬組成物。
【0354】
実施形態I-80.心臓細胞を形質導入する方法であって、心臓細胞に、実施形態I-58からI-67のいずれか1つに記載のrAAVビリオンを接触させるステップを含み、rAAVビリオンが心臓細胞を形質導入する、方法。
【0355】
実施形態I-81.1つまたは複数の遺伝子産物を心臓細胞に送達する方法であって、心臓細胞に、実施形態I-58からI-67のいずれか1つに記載のrAAVビリオンを接触させるステップを含み、心臓細胞が遺伝子産物を発現する、方法。
【0356】
実施形態I-82.1つまたは複数の遺伝子産物が短鎖ヘアピンRNAまたはマイクロRNAを含む、実施形態I-81に記載の方法。
【0357】
実施形態I-83.ガイドRNA、Casタンパク質、および必要に応じて修復鋳型を含む1つまたは複数の遺伝子産物であって、該遺伝子産物が機能的なCRISPR/Cas系を形成する、実施形態I-81に記載の方法。
【0358】
実施形態I-84.1つまたは複数の遺伝子産物がポリペプチドを含む、実施形態I-81に記載の方法。
【0359】
実施形態I-85.タンパク質が、心トロポニンT;心サルコメアタンパク質;β-ミオシン重鎖;心室ミオシン必須軽鎖1;心室ミオシン調節軽鎖2;心α-アクチン;a-トロポミオシン;心トロポニンI;心ミオシン結合タンパク質C;four-and-a-half LIMタンパク質1;チチン;5’-AMP-活性化タンパク質キナーゼサブユニットガンマ-2;トロポニンI 3型、ミオシン軽鎖2、アクチンアルファ心筋1;心LIMタンパク質;カベオリン3(CAV3);ガラクトシダーゼアルファ(GLA);リソソーム関連膜タンパク質2(LAMP2);ミトコンドリア転移RNAグリシン(MTTG);ミトコンドリア転移RNAイソロイシン(MTTI);ミトコンドリア転移RNAリシン(MTTK);ミトコンドリア転移RNAグルタミン(MTTQ);ミオシン軽鎖3(MYL3);トロポニンC(TNNC1);トランスサイレチン(TTR);筋小胞体カルシウム-ATPアーゼ2a(SERCA2a);間質由来因子-1(SDF-1);アデニレートシクラーゼ-6(AC6);β-ARKct(βアドレナリン受容体キナーゼC末端);線維芽細胞成長因子(FGF);血小板由来成長因子(PDGF);血管内皮成長因子(VEGF);肝細胞成長因子;低酸素誘導成長因子;チモシンベータ4(TMSB4X);一酸化窒素シンターゼ-3(NOS3);アポリポタンパク質-E(ApoE);およびスーパーオキシドジスムターゼ(SOD);S100A1から選択される、実施形態I-84に記載の方法。
【0360】
実施形態I-86.1つまたは複数の遺伝子産物が、1つまたは複数のリプログラミング因子を含む、実施形態I-81に記載の方法。
【0361】
実施形態I-87.1つまたは複数のリプログラミング因子が、ASCL1、MYOCD、MEF2C、TBX5、CCNB1、CCND1、CDK1、CDK4、AURKB、OCT4、BAF60C、ESRRG、GATA4、GATA6、HAND2、IRX4、ISLL、MESP1、MESP2、NKX2.5、SRF、TBX20、およびZFPM2から選択される1つまたは複数のポリペプチドである、実施形態I-86に記載の方法。
【0362】
実施形態I-88.心臓細胞を心臓の心筋細胞へとリプログラムする、実施形態I-80からI-87のいずれか1つに記載の方法。
【0363】
実施形態I-89.それを必要とする対象における心病態を処置する方法であって、実施形態I-79に記載の医薬組成物の治療有効量を対象に投与するステップを含み、前記rAAVビリオンが心組織を形質導入する、方法。
【0364】
実施形態I-89.rAAVビリオンが、皮下、心外膜、静脈内、筋肉内、腹腔内もしくは心臓内注射によるか、または心臓内カテーテル挿入によって投与される、実施形態I-89に記載の方法。
【0365】
実施形態I-90.rAAVビリオンが、直接心筋内注射または経血管投与によって投与される、実施形態I-89に記載の方法。
【0366】
実施形態I-91.rAAVビリオンが、直接心筋内注射、順行性冠動脈内注射、逆行性注射、経心内膜心筋注射、または再循環送達を伴う分子心臓手術(MCARD)によって投与される、実施形態I-89に記載の方法。
【0367】
以下の非限定的な実施例は、本発明の開発に関係する実験研究の一部を例証する。
【実施例】
【0368】
(実施例1)
カプシドタンパク質配列の同定
ライブラリーの生成およびAAV選択
人工多能性幹細胞由来心筋細胞(iPS-CM)に関する最初の負の選択ステップの後にヒト心臓線維芽細胞(hCF)に関する正の選択ステップを組み入れるライブラリースクリーニング戦略を、
図1に示すように実施した。簡単に説明するとcap遺伝子配列のライブラリーを、プライマーP1(GTCGGCGGGCAGATGGCCACCAACAACCAGGCCNNKNNKNNKNNKNNKNNKNNKGCCAGCTCCACCACTGCCCCCGCGACCGGCACG)(配列番号6)およびP2(TCCCCAGCATGAGCGATGCATTTTATTGAGGGTATGCGAC)(配列番号7){N=A、C、G、またはT;K=GまたはT}を使用するPCRによって生成し、ギブソンアセンブリを介してNotIおよびNheI線形化pCR-AAV-LIB575へとクローニングした(
図2A)。pCR-AAV-LIB575を、HEK293Tパッケージング細胞系を使用してrAAVビリオンにパッケージングした。ベクターは、3’および5’末端逆位反復配列(ITR)に挟まれたAAV2のrep遺伝子(「Rep2」)およびAAVのcap遺伝子(「Cap5」)を含有する。アラニン残基に挟まれたランダムな7量体ポリペプチドライブラリー(AXXXXXXA;配列番号100)をcap遺伝子の575位に挿入する。
図2Bは、AAV5カプシドの構造を示し、黒色の矢印は、アセンブルしたAAVビリオン上に存在するカプシドタンパク質60コピーのうちの1つに示される挿入部位を示す。cap遺伝子への挿入により、同じポリペプチドが同等の位置で60コピー全てに挿入される(図には示していない)。
【0369】
感染多重度が50,000(ラウンド1)~1,000(ラウンド3)の範囲のビリオンを液体培養培地中で混合し、健康な年齢30歳の男性から単離したiPS-CM細胞に適用した。細胞を37℃および5%CO2で24時間インキュベートした。DNAをiPS-CM細胞から単離し、プライマーP2(配列番号7)およびP3(CCATCGACGTCAGACGCGGAAGCTTCGATCAACTACGCAGACAG)(配列番号8)を使用してPCRによって増幅し、Oxford NanoPore MiniIONを使用して製造業者の指示に従ってシーケンシングした。この負の選択ステップに関するシーケンシング読み取りデータを分析した(データは示していない)。
【0370】
次いで、iPS-CM細胞に付着していないまたは感染していないrAAVビリオンを含有する培養培地をhCF細胞に移し、37℃および5%CO
2で24時間インキュベートした。24時間後、プレートを培養培地によって洗浄し、接着したhCF細胞を除去し、cap遺伝子のPCR増幅およびシーケンシングを、上記のようにrAAVを感染させたhCF細胞から単離したDNAについて実施した。配列の開始ライブラリーおよび負の選択および正の選択のこの最初のラウンド後の配列に関する代表的なデータをそれぞれ、
図3Aおよび
図3Bに示す。ライブラリーの複雑度が減少し、これはユニーク読み取りデータのパーセンテージが97.6%から87.5%に減少したことから、選択された配列が富化されたことと一致する。
【0371】
最初のラウンドから得られたcap遺伝子のライブラリーを、再度pCR-AAV-LIB575にサブクローニングし、同じ負の選択および正の選択手順をラウンド2として実施した。これをラウンド3として繰り返した。配列の持続的な富化は、ラウンド2(
図3C)からラウンド3(
図3D)のユニーク読み取りデータが58.2%から41.5%に減少することによって観察された。
【0372】
in vitro系における形質導入効率の増加の確認
各々のユニーク配列の読み取りデータの数は、その挿入配列を含有するrAAVビリオンの形質導入効率の増加と相関することから、読み取りデータの富化は、形質導入効率の増加の実験的測定である。最高の存在量を有する500個の配列を以下の表2に示す。
【0373】
表1に列挙する配列を、GFPレポーターアッセイを使用して培養hCF細胞(
図4A~4D)およびiPS-CM細胞(
図5A~5D)において再試験するために選択した。
【表1-1】
【表1-2】
【0374】
簡単に説明すると、表1のペプチドを選択実験と同様にAAVゲノムではなく末端逆位反復配列(ITR)を欠如するRep-Capプラスミドにおける同じ挿入部位でcap遺伝子に各々クローニングした。これらのRep-Capプラスミドを各々使用して、レポーターAAVゲノムをパッケージングするrAAVを生成するために、Rep2およびそれぞれのCapバリアントを発現させた(CAGプロモーターによって制御されるGFPトランスジーンに隣接するAAV2 ITR)。カプシドとして操作されたカプシドタンパク質を有するGFPトランスジーンを含有する得られたrAAVビリオンを、接着性のhCFまたはiPS-CM細胞上にMOI 100,000で(
図4A、
図5A、
図5D)または1,000で(
図4D)プレーディングした。形質導入効率を、Cytation5(商標)細胞イメージングマルチモードリーダーを備えた自動デジタル広視野顕微鏡法を使用してGFP蛍光細胞を計数することによって測定した。代表的な蛍光顕微鏡写真を、(
図4B;親AAV5カプシド-配列番号1)および(
図4C;AAV5.CR17カプシド-配列番号103)に示す。hCF細胞における15個のAAV5バリアントの形質導入効率(
図4A)を、非改変AAV5(一番右の棒グラフ)に対して基準とした。より暗い棒グラフは、この実験においてhCF細胞において形質転換効率の増加をもたらした配列を表す。
【0375】
iPS-CM細胞(
図5A~5D)では、形質導入効率の増加が同様に観察され、実際に親AAV5と比較した形質導入の増強倍率は、hCF細胞におけるより高かった(
図5Aおよび
図5D)。代表的な蛍光画像を、非改変AAV5(
図5B)またはAAV5.CR23(
図5C)のいずれかによって形質導入したhCFに関して示す。
【0376】
次に、ヒト心臓線維芽細胞による試験を、マウス心臓線維芽細胞(mCF)において高い(100,000)、中等度(10,000)、または低い(1,000)MOIでAAV5.CAG-GFPまたはAAV5.CR17.CAG-GFPのいずれかによって繰り返した。AAV5.CR17をAAV5と比較する試験におけるGFP+細胞の総数の増加に加えて、高い強度のGFP集団がAAV5.CR17によって形成されたが、AAV5では形成されないことが観察された(
図6A)。したがって、
図6B~6Eにおける個々の細胞の強度の測定値を、総集団および高いGFP+集団の細胞サブセットにゲートした。細胞を、非改変AAV5と比較してAAV5.CR17で、高い、中等度、または低いMOIで形質導入した場合、パーセントGFP+(
図6B)およびGFP強度(
図6C)の増加が、「総GFP」集団において観察された。パーセントGFP+(
図6D)およびGFP強度(
図6E)の増加はまた、細胞に非改変AAV5と比較してAAV5.CF17を形質導入した場合に「高いGFP」集団においても観察された。
図6Eの傾向は、単に高GFP+細胞についてのゲーティングにより高強度のGFP発現を有する細胞集団が選択されたことからあまり顕著ではなかった。
【0377】
in vivo試験
次に、AAV5.CR17カプシドを、in vivoで健康な動物および疾患動物において試験した。具体的には、Charles River(登録商標)から購入したCD-1(登録商標)IGSマウス(野生型バックグラウンド)を、健常群と疾患群とに分けた。疾患群をGao et al. Circulation Research (2010) 107:1445-1453の結紮法を使用して誘導心筋梗塞(MI)に供した。AAV5.CAG-GFPまたはAAV5.CR17.CAG-GFPのいずれかの1.2×10
11vgを、6週齢のCD-1マウスに心筋内注射を介して注射した。GFP強度および分布を注射の7日後に評価した。全ての心組織切片を等しいゲインおよび露出で20倍対物レンズを使用してイメージングした。抗GFP免疫染色およびDAPIによる核の対比染色を示す。心筋細胞および線維芽細胞は形態によって識別された。心筋細胞および線維芽細胞の形質導入の増加が、非MIおよびMI動物の両方においてAAV5(
図7A~7Bおよび
図7C~7D)と比較してAAV5.CR17(
図7E~7Fおよび
図7G~7H)において観察される。
【0378】
共有される配列モチーフ
選択後の富化を実証する挿入の間において共有される残基を同定するために、全てのシーケンシングデータまたはラウンド3後の上位配列を使用して、配列モチーフを生成した。簡単に説明すると、配列モチーフを、表2における上位100(
図8A)、上位50(
図8B)、上位20(
図8C)の配列、ならびに本実施例においてin vitroで再試験した配列(
図8D)に関して生成した。配列モチーフはまた、モチーフにおける各々のアミノ酸の重要性に重みをつけるために各々の配列の読み取りデータ数を使用して全ての配列に関しても生成した(
図8E)。配列モチーフは、ある特定のアミノ酸が挿入部位におけるある特定の位置で好ましいことを示唆している。
【0379】
ライブラリーからの上位の配列を以下の表2に示す。挿入の開始および終止における隣接する「A」残基は、一部の実施形態では、フレキシブルアミノ酸(GまたはS)などの別のアミノ酸で置き換えられているか、または存在しない。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表2-10】
【表2-11】
【表2-12】
【表2-13】
【0380】
(実施例2)
形質導入効率の増加を有するAAV5カプシドタンパク質の合理的設計
実施例1に記載されるライブラリーに基づくアプローチに関連して、合理的設計アプローチを使用して形質導入効率の増加をもたらすAAV5カプシドタンパク質を同定した。表面露出残基を選択した。これらのアミノ酸の置換を、実施例1に記載されるようにhCFアッセイにおいて試験した。AAV5カプシドにおける置換S651A、T578A、またはT582Aは、感染多重度100,000vg/細胞で、感染後72時間で改善されたヒト心臓線維芽細胞形質導入をもたらした(
図9)。
【0381】
追跡実験において、この合理的設計実験で同定された置換を互いに組み合わせて、ならびに表1および2に開示する挿入と組み合わせて試験する。
【0382】
(実施例3)
AAVx1を野生型AAV5と比較する比較試験
S651A、T578A、および/またはT582A置換のうち2つまたは3つを有するAAV5カプシド(AAVx1)を生成した。カプシド配列は以下の通りであった:
【化8】
【0383】
ヒト心臓線維芽細胞(hCF)を形質導入する能力を試験するため、hCFに、AAV5.CAG-GFPまたはAAVx1(T582A+S651A)を、1,000~1,000,000の範囲のMOIで感染させた。感染の48時間後、細胞を採取し、GFP発現を、フローサイトメトリーを使用して定量した。試験した全てのMOIで、パーセント形質導入(
図10A)、GFP発現(
図10B)、および相対的形質導入(
図10C)が、野生型AAV5カプシドと比較して増加した。
【0384】
AAVx1ベクターが機能的なカーゴを送達する能力を、ミオカルジンおよびASCL1(MyA)をコードする発現カセットを含むAAV5およびAAVx1ベクターを生成することによって試験した。その各々が参照により本明細書に組み込まれる、国際特許出願番号PCT/US2019/049150および米国仮特許出願第62/788,479号に記載されるミオカルジンの内部欠失MyΔ3を使用した。顕著なことに、AAVx1ベクターは、感染後7日目でのトランスジーンおよびマーカー発現に基づいて、AAV5ベクターより平均で9倍良好な成績を示した(表3に示す)。
【表3】
【0385】
(実施例4)
AAVx1による心組織のin vivo形質導入
マウスでの試験
in vivo形質導入を評価するために、AAV5またはAAVx1(T582A+S651A)カプシドを使用して、LAD結紮マウス心筋梗塞(MI)モデルを使用してGFPレポーターをコードする発現カセットをマウスに送達し、AAVベクターの注射を傷害の時点で心外膜に行った。単一のベクター用量1.2×10
11ゲノムコピー(GC)を心臓内注射によって各対象の心臓に送達した。注射後7日に、動物を屠殺し、その心臓を酵素消化によって解離した。解離した細胞を内皮細胞マーカー(CD31)および線維芽細胞マーカー(Thy-1)によって染色し、蛍光活性化細胞選別(FAC)を使用して選別した。GFP+、Thy-1+、およびCD31-細胞を形質導入心臓線維芽細胞として分類し、一方GFP-、Thy-1+、およびCD31-細胞を非形質導入心臓線維芽細胞として分類した。形質導入細胞の数をAAV5に対して正規化した。
図11に示すように、心臓線維芽細胞(CF)のin vivo形質導入は、AAV5ベクターよりAAVx1ベクターを使用すると4倍より高かった。
【0386】
機能的なin vivo試験に関して、AAVx1(T582A+S651A)カプシドを使用してミオカルジンおよびASCL1(MyA)をコードする発現カセットを送達した。AAVx1ベクターを、LAD結紮マウス心筋梗塞(MI)モデルを使用してマウスにおいて試験し、AAVベクターの注射を傷害の時点で心外膜に行った。単一のベクター用量1.2×1011ゲノムコピー(GC)を心臓内注射によって各対象の心臓に送達した。
【0387】
有効性を心エコー検査によって注射後2、4、6、および8週に評価した。AAVx1ベクターは、GFPコード対照と比較して心機能(駆出率)を有意に保存した(
図12)。
【0388】
ブタでの試験
AAVx1ベクターをブタ心筋梗塞(MI)モデルにおいてさらに試験した。MyAをAAVx1カプシドにパッケージングして、90分間バルーン閉塞して虚血性傷害を導入後の28日にブタ心臓の境界領域に心外膜注射した。これと並行して梗塞を有するブタに、製剤緩衝液も注射し、各々の群は10匹の動物からなった。心エコー検査を、注射後3週、5週、7週および9週に実施した。AAVx1ベクターを投与したブタは、対照の注射後5週、7週および9週と比較して駆出率の有意な改善を実証した(
図13)。このようにAAVx1ベクターによる処置は、投与前のベースラインを超える心成績の平均で10%改善をもたらした。
【配列表】
【国際調査報告】