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特表2022-5272021-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを精製するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-31
(54)【発明の名称】1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを精製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/395 20060101AFI20220524BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
C07C17/395
C07C21/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021558923
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(85)【翻訳文提出日】2021-11-24
(86)【国際出願番号】 EP2020059231
(87)【国際公開番号】W WO2020201340
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】1903536
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ブサリー, エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ヒスラー, ケビン
(72)【発明者】
【氏名】ピガモ, アン
(72)【発明者】
【氏名】コリエ, ベルトラン
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AD18
4H006BC51
4H006BE10
4H006EA03
(57)【要約】
本発明は、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを精製するための方法であって、a)1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、式HX(式中、XはF又はClである)の少なくとも一種の化合物とを含む流れを提供する工程;b)1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む中和された流れA1を形成するために、工程a)の流れを、式Yn+ SO(式中、Yは、アルカリ又はアルカリ土類金属であり、n=1又は2、及びn=1の場合はm=2、又はn=2の場合はm=1)の少なくとも一種の亜硫酸塩を含む溶液Aと接触させる工程を含む、方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを精製するための方法であって、
a)1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、式HX(式中、XはF又はClである)の少なくとも一種の化合物とを含む流れを提供する工程;
b)1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む中和された流れA1を形成するために、工程a)からの流れを、少なくとも一種のアルカリ金属水酸化物又は一種のアルカリ土類金属水酸化物と、式Yn+ SO(式中、Yは、アルカリ又はアルカリ土類金属であり、n=1又は2、及びn=1の場合はm=2、又はn=2の場合はm=1)の少なくとも一種の亜硫酸塩とを含む溶液Aと接触させる工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも一種の亜硫酸塩が、NaSO、KSO、LiSO、CaSO及びMgSO又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも一種の亜硫酸塩が、NaSO又はKSO、あるいは両方の混合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶液Aが、少なくとも一種のアルカリ金属水酸化物、好ましくはNaOHを含むことを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程b)の前記溶液Aが、NaOHとNaSOを含むことを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程b)の前記溶液Aが水溶液であることを特徴とする、請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも一種の亜硫酸塩の含有量が、前記溶液Aの全重量に基づいて2重量%と25重量%の間であることを特徴とする、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程b)が、10℃から70℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物の含有量が、前記溶液Aの全重量に基づいて2重量%と25重量%の間であることを特徴とする、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程b)が、3から10%のNaSOと3から10%のNaOHとを含む水溶液Aを用いて;且つ20℃から60℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程a)で提供される流れにおいて、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのトランス異性体とシス異性体の間のモル比が、2:1から50:1、好ましくは5:1から50:1、特に9:1から50:1であることを特徴とする、請求項1から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを製造するための方法であって、
i)フッ化水素酸(HF)を、反応器内で、1,1,3,3-テトラクロロプロペン、1,3,3,3-テトラクロロプロペン及びその二つの混合物からなる群から選択される少なくとも一種の塩素化合物を含む出発組成物と接触させて、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF及び/又はHClを含む流れBを得る工程;
ii)1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF及び/又はHClを含む流れを使用して、請求項1から11の何れか一項に記載の1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを精製するための方法を実施する工程
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロクロロフルオロオレフィンを精製するための方法に関する。特に、本発明は、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを精製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3,3,3-トリフルオロ-1-クロロプロペン、あるいは別名では1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)は、二種の異性体:シス異性体、すなわちZ-3,3,3-トリフルオロ-1-クロロプロペン(HCFO-1233zdZ)と、トランス異性体、すなわちE-3,3,3-トリフルオロ-1-クロロプロペン(HCFO-1233zdE)の形態で存在する。それらは、それぞれ、トランス化合物で18.5℃、シス化合物で39.5℃の異なる沸点を有している。
【0003】
E-3,3,3-トリフルオロ-1-クロロプロペン(HCFO-1233zdE)に基づく流体は、様々な産業分野において、特に熱伝達流体、推進剤、起泡剤、発泡剤、ガス状誘電体、単量体又は重合媒体、支持流体、研磨剤、乾燥剤、及びエネルギー製造装置用の流体として、数多くの用途が見出されている。
【0004】
HCFO-1233zdEの製造には、HCFO-1233zdEに近い沸点を持つ多数の副生成物が伴う。これにより、比較的複雑でコストのかかる精製工程が生じる。HCFO-1233zdEの精製中に遭遇する困難には、一般に、標的生成物の相当の損失がある。加えて、副生成物はHCFO-1233zdEと共沸組成を形成する場合があり、単蒸留による分離を非常に困難にするか、不可能にさえする。精製工程は、特に、残留する微量の酸、すなわちHCl及びHFを除去するために、反応器の出口で粗生成物を中和する工程を含む。この中和工程は、一般に塩基性溶液によって実施される。
【0005】
特に国際公開第2015/167784号から知られているのは、例えば、蒸留塔の塔頂でHClを除去するための蒸留、二相混合物を得るための塔底での流れの冷却、二相の分離、及び液体吸着剤(水、NaOH又はKOH)でありうる吸着剤による前記相の一つの処理を含む一連の工程によって、HCFO-1233zdとHFを分離するための方法である。
【0006】
国際公開第2016/148957号からまた知られているのは、洗浄工程、凝縮及び相分離工程、及び最後に乾燥工程を含む、HCFO-1233zdEを精製するための方法である。国際公開第2014/010530号、国際公開第2014/189674号及び国際公開第2014/099464号からまた知られているのは、水での洗浄又は塩基性溶液での洗浄などの精製工程を含む、HCFO-1233zdを調製するための方法である。
【0007】
HCFO-1233zdの精製中にHF又はHClなどの酸性不純物を除去するために実施される処理は、ある種の不純物の生成の一因となる場合がある。
【0008】
従って、HCFO-1233zdの品質低下を最小限に抑えるために、新しい酸不純物中和条件を実行に移す必要がある。脱塩化水素反応から生じる副生成物又は他の不純物の生成を最小限に抑える、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを精製するための効率的な方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
第一の態様によれば、本発明は、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを精製するための方法であって、
a)1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、式HX(式中、XはF又はClである)の少なくとも一種の化合物とを含む流れを提供する工程;
b)1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む中和された流れA1を形成するために、工程a)からの流れを、少なくとも一種のアルカリ金属水酸化物又は一種のアルカリ土類金属水酸化物と、式Yn+ SO(式中、Yは、アルカリ又はアルカリ土類金属であり、n=1又は2、及びn=1の場合はm=2、又はn=2の場合はm=1)の少なくとも一種の亜硫酸塩とを含む溶液Aと接触させる工程
を含む、方法に関する。
【0010】
好ましい一実施態様によれば、前記少なくとも一種の亜硫酸塩は、NaSO、KSO、LiSO、CaSO及びMgSO又はそれらの混合物からなる群から選択される。
好ましい一実施態様によれば、前記少なくとも一種の亜硫酸塩は、NaSO又はKSO、あるいは両方の混合物である。
好ましい一実施態様によれば、前記溶液Aは、少なくとも一種のアルカリ金属水酸化物、好ましくはNaOHを含む。
【0011】
好ましい一実施態様によれば、工程b)の前記溶液Aは、NaOHとNaSOの混合物を含む。
好ましい一実施態様によれば、工程b)の前記溶液Aは水溶液である。
好ましい一実施態様によれば、前記少なくとも一種の亜硫酸塩の含有量は、前記溶液Aの全重量に基づいて2重量%と25重量%の間である。
好ましい一実施態様によれば、工程b)は、10℃から70℃の温度で実施される。
好ましい一実施態様によれば、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物の含有量は、前記溶液Aの全重量に基づいて2重量%と25重量%の間である。
【0012】
好ましい一実施態様によれば、工程b)は、3から10%のNaSOと3から10%のNaOHとを含む水溶液Aを用いて;且つ20℃から60℃の温度で実施される。
好ましい一実施態様によれば、工程a)で提供される流れにおいて、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのトランス異性体とシス異性体の間のモル比は、2:1から50:1、好ましくは5:1から50:1、特に9:1から50:1である。
【0013】
好ましくは、本方法は、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを精製するための方法であって、
a)トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、式HX(式中、XはF又はClである)の少なくとも一種の化合物とを含む流れを提供する工程;
b)トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む中和された流れA1を形成するために、工程a)からの流れを、少なくとも一種のアルカリ金属水酸化物又は一種のアルカリ土類金属水酸化物と、式Yn+ SO(式中、Yは、アルカリ又はアルカリ土類金属であり、n=1又は2、及びn=1の場合はm=2、又はn=2の場合はm=1)の少なくとも一種の亜硫酸塩とを含む溶液Aと接触させる工程
を含む、方法に関する。
【0014】
第二の態様によれば、本発明は、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを製造するための方法であって、
i)フッ化水素酸(HF)を、反応器内で、1,1,3,3-テトラクロロプロペン、1,3,3,3-テトラクロロプロペン及びその二つの混合物からなる群から選択される少なくとも一種の塩素化合物を含む出発組成物と接触させて、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF及び/又はHClを含む流れBを得る工程;
ii)1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF及び/又はHClを含む流れを使用して、本発明に係る1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを精製するための方法を実施する工程
を含む、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第一の態様によれば、本発明は、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、好ましくはトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを精製するための方法に関する。
好ましい一実施態様によれば、前記精製方法は、
a)1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、式HX(式中、XはF又はClである)の少なくとも一種の化合物とを含む流れを提供すること;
b)1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む中和された流れA1を形成するために、工程a)からの流れを、少なくとも一種のアルカリ金属水酸化物又は一種のアルカリ土類金属水酸化物と、式Yn+ SO(式中、Yは、アルカリ又はアルカリ土類金属であり、n=1又は2、及びn=1の場合はm=2、又はn=2の場合はm=1)の少なくとも一種の亜硫酸塩とを含む溶液Aとに接触させること
を含む。
【0016】
特定の一実施態様によれば、前記精製方法は、
a)トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、式HX(式中、XはF又はClである)の少なくとも一種の化合物とを含む流れを提供すること;
b)トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む中和された流れA1を形成するために、工程a)からの流れを、少なくとも一種のアルカリ金属水酸化物又は一種のアルカリ土類金属水酸化物と、式Yn+ SO(式中、Yは、アルカリ又はアルカリ土類金属であり、n=1又は2、及びn=1の場合はm=2、又はn=2の場合はm=1)の少なくとも一種の亜硫酸塩とを含む溶液Aとに接触させること
を含む。
【0017】
本出願人は、特に、上に記載の式Yn+ SOの亜硫酸塩の使用により、工程b)中の不純物の生成を制限することができることを知見した。これらの不純物は、工程b)の間に、シス異性体及び/又はトランス異性体の、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの品質低下、又は場合によっては最初の流れ中に存在する他の化合物から生じうる。この工程により、上に記載の式HXの化合物の中和が可能になる。従って、本精製方法は、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、好ましくはトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む流れA1を回収することを可能にし、式HXの化合物の含有量が、追加の不純物の生成を制限しながら、大きく削減される。追加の不純物としては、その存在が不利であるトリフルオロプロピンを特に挙げることができる。好ましくは、化合物HXは、HCl又はHFあるいはそれらの混合物である。
【0018】
工程a)で提供される流れは、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのシス/トランス異性体の混合物を含みうる。好ましくは、工程a)で提供される流れにおいて、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのトランス異性体とシス異性体との間のモル比は、2:1から50:1、好ましくは5:1から50:1、特に9:1から50:1である。加えて、工程a)で提供される流れは、場合によっては、流れBに関連して本出願において以下に説明される含有量で、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン及び1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを含みうる。
【0019】
好ましくは、式Yn+ SOの前記少なくとも一種の亜硫酸塩は、NaSO、KSO、LiSO、CaSO及びMgSO又はそれらの混合物からなる群から選択される。より優先的には、式Yn+ SOの前記少なくとも一種の亜硫酸塩は、NaSO又はKSOあるいはそれらの混合物である。特に、式Yn+ SOの前記少なくとも一種の亜硫酸塩は、NaSOである。
【0020】
好ましくは、前記溶液A中の前記少なくとも一種の亜硫酸塩の含有量は、前記溶液Aの全重量に基づいて1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間である。
【0021】
上記のように、工程b)の前記溶液Aは、上に記載の式Yn+ SOの前記塩に加えて、少なくとも一種のアルカリ金属水酸化物又は一種のアルカリ土類金属水酸化物、あるいはその二種の混合物を含む。アルカリ金属水酸化物は、NaOH又はKOHでありうる。アルカリ土類金属水酸化物は、Ca(OH)又はMg(OH)でありうる。好ましくは、前記溶液A中の前記少なくとも一種のアルカリ又はアルカリ土類金属水酸化物の含有量は、前記溶液Aの全重量に基づいて1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より優先的には2重量%と25重量%の間である。
【0022】
好ましくは、工程b)の前記溶液Aは、式Yn+ SOの塩とNaOH、又は式Yn+ SOの塩とKOH、又は式Yn+ SOの塩、NaOH及びKOHを含む水溶液である。特に、工程b)の前記溶液Aは、NaSOとNaOH又はNaSOとKOH又はNaSO、NaOH及びKOHを含む水溶液である。
好ましくは、工程b)の前記溶液Aは、式Yn+ SOの塩とNaOH、又は式Yn+ SOの塩とKOH、又は式Yn+ SOの塩、NaOH及びKOHを含む水溶液である。特に、工程b)の前記溶液Aは、NaSOとNaOH又はNaSOとKOH又はNaSO、NaOH及びKOHを含む水溶液である。
【0023】
好ましくは、工程b)の前記溶液Aは、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間の式Yn+ SOの塩と、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のNaOHを含む。別の優先的な実施態様によれば、工程b)の前記溶液Aは、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間の式Yn+ SOの塩と、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のKOHを含む。別の優先的な実施態様によれば、工程b)の前記溶液Aは、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間の式Yn+ SOの塩と;1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のNaOHと、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のKOHを含む。
【0024】
好ましくは、工程b)の前記溶液Aは、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間の式Yn+ SOの塩と、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のNaOHを含む水溶液である。別の優先的な実施態様によれば、工程b)の前記溶液Aは、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間の式Yn+ SOの塩と、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のKOHを含む水溶液である。別の優先的な実施態様によれば、工程b)の前記溶液Aは、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間の式Yn+ SOの塩と;1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のNaOHと、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のKOHを含む水溶液である。
【0025】
好ましくは、工程b)の前記溶液Aは、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%のNaSOと、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のNaOHを含む。別の優先的な実施態様によれば、工程b)の前記溶液Aは、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のNaSOの塩と、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のKOHを含む。別の優先的な実施態様によれば、工程b)の前記溶液Aは、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%のNaSOと;1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のNaOHと、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のKOHを含む。
【0026】
好ましくは、工程b)の前記溶液Aは、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%のNaSOと、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のNaOHを含む水溶液である。別の優先的な実施態様によれば、工程b)の前記溶液Aは、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のNaSOの塩と、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のKOHを含む水溶液である。別の優先的な実施態様によれば、工程b)の前記溶液Aは、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%のNaSOと;1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のNaOHと、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のKOHを含む水溶液である。
【0027】
好ましくは、本方法の工程b)は、10℃から90℃、有利には10℃から80℃、好ましくは10℃から70℃、特に10℃から60℃の温度で実施される。
従って、好ましい一実施態様によれば、工程b)は、1重量%と50重量%の間、より好ましくは2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間の式Yn+ SOの塩と、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のNaOHを含む溶液Aを用いて;10℃から90℃、有利には10℃から80℃、好ましくは10℃から70℃、特に10℃から60℃の温度で、実施される。特定の一実施態様によれば、工程b)は、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間の式NaSOの塩と、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のNaOHを含む溶液Aを用いて;10℃から90℃、有利には10℃から80℃、好ましくは10℃から70℃、特に10℃から60℃の温度で、実施される。
【0028】
従って、好ましい一実施態様によれば、工程b)は、1重量%と50重量%の間、より好ましくは2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間の式Yn+ SOの塩と、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のKOHを含む溶液Aを用いて;10℃から90℃、有利には10℃から80℃、好ましくは10℃から70℃、特に10℃から60℃の温度で、実施される。特定の一実施態様によれば、工程b)は、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間の式NaSOの塩と、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のKOHを含む溶液Aを用いて;10℃から90℃、有利には10℃から80℃、好ましくは10℃から70℃、特に10℃から60℃の温度で、実施される。
【0029】
別の好ましい実施態様によれば、工程b)は、1重量%と50重量%の間、より好ましくは2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間の式Yn+ SOの塩と;1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のKOHと、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のNaOHを含む溶液Aを用いて;10℃から90℃、有利には10℃から80℃、好ましくは10℃から70℃、特に10℃から60℃の温度で、実施される。特定の一実施態様によれば、工程b)は、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間の式NaSOの塩と;1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のKOHと、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のNaOHを含む溶液Aを用いて;10℃から90℃、有利には10℃から80℃、好ましくは10℃から70℃、特に10℃から60℃の温度で、実施される。
【0030】
好ましくは、好ましい一実施態様によれば、工程b)は、1重量%と50重量%の間、より好ましくは2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間の式Yn+ SOの塩と、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のNaOHを含む水溶液Aを用いて;10℃から90℃、有利には10℃から80℃、好ましくは10℃から70℃、特に10℃から60℃の温度で、実施される。特定の一実施態様によれば、工程b)は、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間の式NaSOの塩と、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のNaOHを含む水溶液Aを用いて;10℃から90℃、有利には10℃から80℃、好ましくは10℃から70℃、特に10℃から60℃の温度で、実施される。
【0031】
好ましい一実施態様によれば、工程b)は、1重量%と50重量%の間、より好ましくは2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間の式Yn+ SOの塩と、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のKOHを含む水溶液Aを用いて;10℃から90℃、有利には10℃から80℃、好ましくは10℃から70℃、特に10℃から60℃の温度で、実施される。特定の一実施態様によれば、工程b)は、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間の式NaSOの塩と、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のKOHを含む水溶液Aを用いて;10℃から90℃、有利には10℃から80℃、好ましくは10℃から70℃、特に10℃から60℃の温度で、実施される。
【0032】
好ましい一実施態様によれば、工程b)は、1重量%と50重量%の間、より好ましくは2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間の式Yn+ SOの塩と;1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のKOHと、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のNaOHとを含む水溶液Aを用いて;10℃から90℃、有利には10℃から80℃、好ましくは10℃から70℃、特に10℃から60℃の温度で、実施される。特定の一実施態様によれば、工程b)は、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間の式NaSOの塩と;1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のKOHと、1重量%と50重量%の間、より優先的には2重量%と40重量%の間、特に2重量%と30重量%の間、より特定的には2重量%と25重量%の間のNaOHとを含む水溶液Aを用いて;10℃から90℃、有利には10℃から80℃、好ましくは10℃から70℃、特に10℃から60℃の温度で、実施される。
【0033】
あるいは、前記溶液Aは、溶媒を含む有機溶液でありうる。溶媒は、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンが少なくとも部分的に可溶性である不活性有機化合物として定義される。溶媒は、好ましくは、炭化水素、エーテル、アルコール、ハロゲン化アルキル、置換又は非置換ベンゼン、アルキルニトリル、アミド、スルホキシド、スルホン、リン酸エステル及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、溶媒は、エーテル、アルコール、ハロゲン化アルキル、置換又は非置換ベンゼン、アルキルニトリル、アミド、スルホキシド、スルホン、及びそれらの混合物から選択される。エーテルには、非環状アルキルエーテル、環状エーテル、過フッ素化エーテル、グリム、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、及びそれらの混合物が含まれる。非環状アルキルエーテルには、ジメチルエーテル、エチルエーテル、メチルエチルエーテル、及びそれらの混合物が含まれる。環状エーテルには、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン、及びそれらの混合物が含まれる。過フッ素化エーテルには、パーフルオロ-N-メチルモルホリン、パーフルオロテトラヒドロフラン、及びそれらの混合物が含まれる。アルコールには、アルキルアルコール、グリコール、グリセロール、及びそれらの混合物が含まれる。アルコールアルキルには、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、2-メチル-2-プロパノール、シクロヘキサノール、及びそれらの混合物が含まれる。グリコールの例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、及びそれらの混合物が含まれる。置換及び非置換ベンゼンには、アルキルベンゼン、ハロベンゼン、ベンゾニトリルフェノール、アニソール、ビフェニル、ニトロベンゼン、及びそれらの混合物が含まれる。アルキルベンゼンには、トルエン、エチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレン、ジュレン、2-フェニルヘキサン、及びそれらの混合物が含まれる。ハロベンゼンには、フルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、及びそれらの混合物が含まれる。ハロゲン化アルキルには、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロエタン、1,2-ジクロロエタン、及びそれらの混合物が含まれる。アルキルニトリルには、アセトニトリル、ブチロニトリル、メチルグルタロニトリル、アジポニトリル、及びそれらの混合物が含まれる。アミドには、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチル-アセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、及びそれらの混合物が含まれる。スルホキシドには、ジメチルスルホキシドが含まれる。スルホンには、スルホランが含まれる。
【0034】
本発明の第二の態様によれば、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを製造するための方法;好ましくは、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを製造するための方法が提供される。
1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを製造するための前記方法は、
i)フッ化水素酸(HF)を、反応器内で、1,1,3,3-テトラクロロプロペン、1,3,3,3-テトラクロロプロペン及びその二種の混合物からなる群から選択される少なくとも一種の塩素化合物を含む出発組成物と接触させて、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF及びHClを含む流れBを得る工程;
ii)1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF及び/又はHClを含む流れを使用して、本発明に係る1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを精製するための方法を実施する工程
を含む。
【0035】
好ましくは、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを製造するための前記方法は、
i)フッ化水素酸(HF)を、反応器内で、1,1,3,3-テトラクロロプロペン、1,3,3,3-テトラクロロプロペン及びその二種の混合物からなる群から選択される少なくとも一種の塩素化合物を含む出発組成物と接触させて、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF及びHClを含む流れBを得る工程;
ii)トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF及び/又はHClを含む流れを使用して、本発明に係るトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを精製するための方法を実施する工程
を含む。
【0036】
特に、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを製造するための前記方法は、
i)フッ化水素酸(HF)を、反応器内で、1,1,3,3-テトラクロロプロペン、1,3,3,3-テトラクロロプロペン及びその二種の混合物からなる群から選択される少なくとも一種の塩素化合物を含む出発組成物と接触させて、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF及びHClを含む流れBを得る工程;
ii)トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF及び/又はHClを含む流れを使用して、本発明に係るトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを精製するための方法を実施する工程
を含む。
【0037】
より特定的には、流れB及び工程ii)を実施するために使用される流れにおいて、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのトランス異性体とシス異性体の間のモル比は、2:1から50:1、好ましくは5:1から50:1、特に9:1から50:1である。
好ましくは、前記工程i)は、好ましくはHFが低い、液相で実施される。
【0038】
好ましい一実施態様によれば、前記出発組成物は、前記出発組成物の全重量に基づいて、少なくとも10重量%の前記塩素化合物を含む。有利には、前記出発組成物は、前記出発組成物の全重量に基づいて、有利には少なくとも15重量%の前記少なくとも一種の塩素化合物、好ましくは少なくとも20重量%の前記少なくとも一種の塩素化合物、より好ましくは少なくとも25重量%の前記少なくとも一種の塩素化合物、特に少なくとも30重量%の前記少なくとも一種の塩素化合物、より特定的には少なくとも35重量%の前記少なくとも一種の塩素化合物、優先的には少なくとも40重量%の前記少なくとも一種の塩素化合物、有利には好ましくは少なくとも45重量%の前記少なくとも一種の塩素化合物、好ましくは優先的には少なくとも50重量%の前記少なくとも一種の塩素化合物、特に好ましくは少なくとも55重量%の前記少なくとも一種の塩素化合物を含む。
【0039】
好ましくは、前記出発組成物は、前記出発組成物の全重量に基づいて、少なくとも60重量%又は少なくとも65重量%又は少なくとも70重量%又は少なくとも75重量%又は少なくとも80重量%又は少なくとも85重量%又は少なくとも90重量%又は少なくとも95重量%又は少なくとも99重量%の前記少なくとも一種の塩素化合物を含む。
【0040】
好ましい一実施態様によれば、前記少なくとも一種の塩素化合物は、1,1,3,3-テトラクロロプロペン(1230za)である。従って、前記方法は、反応器内でフッ化水素酸(HF)を、1,1,3,3-テトラクロロプロペン(1230za)を含む出発組成物と接触させて、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd)、HF及びHClを含む流れBを生じさせる工程i)を含み;前記工程i)は、以下に記載されるように、低HF液相で実施される。
【0041】
好ましくは、本方法は、二種のシス及びトランス異性体の混合物の形態での1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの製造を可能にする。本方法により、主に1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのトランス異性体を得ることが可能になる;好ましくは、流れBは、少なくとも90mol%のトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む。特に、流れBは、少なくとも95mol%のトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む。
【0042】
従って、前記出発組成物は、前記出発組成物の全重量に基づいて、少なくとも10重量%の1,1,3,3-テトラクロロプロペンを含む。前記出発組成物は、前記出発組成物の全重量に基づいて、有利には少なくとも15重量%の1,1,3,3-テトラクロロプロペン、好ましくは少なくとも20重量%の1,1,3,3-テトラクロロプロペン、より好ましくは少なくとも25重量%の1,1,3,3-テトラクロロプロペン、特に少なくとも30重量%の1,1,3,3-テトラクロロプロペン、より特定的には少なくとも35重量%の1,1,3,3-テトラクロロプロペン、優先的には少なくとも40重量%の1,1,3,3-テトラクロロプロペン、有利には優先的には少なくとも45重量%の1,1,3,3-テトラクロロプロペン、好ましくは優先的には少なくとも50重量%の1,1,3,3-テトラクロロプロペン、特に優先的には、少なくとも55重量%の1,1,3,3-テトラクロロプロペンを含む。
【0043】
前記出発組成物は、前記出発組成物の全重量に基づいて、好ましくは少なくとも60重量%又は少なくとも65重量%又は少なくとも70重量%又は少なくとも75重量%又は少なくとも80重量%又は少なくとも85重量%又は少なくとも90重量%又は少なくとも95重量%又は少なくとも99重量%の1,1,3,3-テトラクロロプロペンを含む。
【0044】
好ましい一実施態様によれば、前記出発組成物は、前記出発組成物の全重量に基づいて、15重量%未満のHF、前記出発組成物の全重量に基づいて、有利には10重量%未満のHF、好ましくは8重量%未満のHF、より好ましくは6重量%未満のHF、特に5重量%未満のHF、より特定的には4重量%未満のHF、優先的には2重量%未満のHFを含む。本方法において、好ましくは、出発組成物はHFを欠いている。「欠いている」という用語は、500ppm未満、好ましくは100ppm未満、より特定的には10ppm未満の重量による量を意味する。
【0045】
前記低HF液相は、前記液相の全重量に基づいて、好ましくは、15重量%未満のHF、有利には10重量%未満のHF、好ましくは8重量%未満のHF、より好ましくは6重量%未満のHF、特に5重量%未満のHF、より特定的には4重量%未満のHF、優先的には2重量%未満のHFを含む液相である。
【0046】
工程i)が実施されている間、前記液相は、少なくとも10重量%の式(I)CCl(I)の化合物を含み得、ここで、nは0から8の整数、mは0から8の整数、pは0から8の整数であり;好ましくは、nは0から8の整数、mは0から6の整数、pは0から6の整数である。式(I)の化合物は、例えば、CCl、CCl又はCClでありうる。好ましくは、工程i)が実施されている間、前記液相は、少なくとも10重量%の式(I)CCl(I)の化合物を含み得、ここで、nは1から8の整数、mは0から4の整数、pは0から4の整数であり;好ましくは、nは1から4の整数、mは0から3の整数、pは2から4の整数である。式(I)の化合物は、一又は複数の塩素原子及び/又は一又は複数のフッ素原子を含むプロパン型又はプロペン型化合物でありうる。前記液相は、好ましくは、少なくとも10重量%の、CCl、CClF、CCl、CCl、CClF、CCl、及びCClからなる群から選択される式(I)の化合物を含みうる。特に、前記液相は、少なくとも10重量%の、CCl、CClF、及びCClからなる群から選択される式(I)の化合物を含みうる。前記液相は、少なくとも15重量%の式(I)CCl(I)の化合物を含み得、ここで、nは0から8の整数、mは0から8の整数、pは0から8の整数であり;好ましくは、nは0から8の整数、mは0から6の整数、pは0から6の整数である。より特定的には、工程i)が実施されている間、前記液相は、少なくとも15重量%の式(I)CCl(I)の化合物を含み得、ここで、nは1から8の整数、mは0から4の整数、pは0から4の整数であり;好ましくは、nは1から4の整数、mは0から3の整数、pは2から4の整数である。前記液相は、好ましくは、少なくとも15重量%の、CCl、CClF、CCl、CCl、CClF、CCl、及びCClからなる群から選択される式(I)の化合物を含みうる。特に、前記液相は、少なくとも15重量%の、CCl、CClF、及びCClからなる群から選択される式(I)の化合物を含みうる。前記液相は、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%の、式(I)CCl(I)の化合物を含み得、ここで、nは0から8の整数、mは0から8の整数、pは0から8の整数であり;好ましくは、nは0から8の整数、mは0から6の整数、pは0から6の整数である。前記液相は、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%の、式(I)CCl(I)の化合物を含み得、ここで、nは1から8の整数、mは0から4の整数、pは0から4の整数であり;好ましくは、nは1から4の整数、mは0から3の整数、pは2から4の整数である。前記液相は、好ましくは、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%の、CCl、CClF、CCl、CCl、CClF、CCl、及びCClからなる群から選択される式(I)の化合物を含みうる。特に、前記液相は、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%の、CCl、CClF、及びCClからなる群から選択される式(I)の化合物を含みうる。
【0047】
工程i)は、好ましくは、触媒の非存在下で実施される。
工程i)は、別法では、触媒の存在下で実施されうる。触媒は、TiCl又はSbCl触媒でありうる。触媒はまたイオン液体でありうる。適切でありうるイオン液体は、アルミニウム、チタン、ニオブ、タンタル、スズ、アンチモン、ニッケル、亜鉛又は鉄に基づくルイス酸誘導体である。「イオン液体」という用語は、中程度の温度(好ましくは120℃未満)で液体であるイオン性の非水性塩を指す。イオン液体は、好ましくは、有機塩と無機化合物との間の反応から生じる。イオン液体は、好ましくは、アルミニウム、チタン、ニオブ、タンタル、スズ、アンチモン、ニッケル、亜鉛又は鉄に基づく少なくとも一種のハロゲン又はオキシハロゲンルイス酸と、一般式Yの塩との反応によって得られ、ここで、Aはハロゲン化物アニオン(臭化物、ヨウ化物、好ましくは塩化物又はフッ化物)又はヘキサフルオロアンチモネート(SbF )を示し、Yは第四級アンモニウム、第四級ホスホニウム又は第三級スルホニウムカチオンを示す。アルミニウム、チタン、ニオブ、タンタル、アンチモン、ニッケル、亜鉛又は鉄に基づくハロゲンルイス酸は、クロロ、ブロモ、フルオロ又は混合誘導体、例えばクロロフルオロ酸でありうる。より特定的には、次の式を有する塩化物、フッ化物又はクロロフッ化物について言及することができる:
TiCl(ここで、x+y=4及び0≦x≦4)
TaCl(ここで、x+y=5及び0≦x≦5)
NbCl(ここで、x+y=5及び0≦x≦5)
SnCl(ここで、x+y=4及び1≦x≦4)
SbCl(ここで、x+y=5及び0≦x≦5)
AlCl(ここで、x+y=3及び0≦x≦3)
NiCl(ここで、x+y=2及び0≦x≦2)
FeCl(ここで、x+y=3及び0≦x≦3)
【0048】
そのような化合物の例として、次の化合物について言及することができる:TiCl、TiF、TaCl、TaF、NbCl、NbF、SbCl、SbClF、SbCl、SbCl、SbClF、SbF、及びそれらの混合物。次の化合物が優先的に使用される:TiCl、TaCl+TaF、NbCl+NbF、SbCl、SbFCl、SbFCl、SbFCl、SbFCl、SbF、及びSbCl+SbF。アンチモン系化合物が特により好ましい。本発明に従って使用することができるオキシハロゲンルイス酸の例としては、TiOCl、TiOF及びSbOCl(x+y=3)について言及することができる。塩Yにおいて、カチオンYは、次の一般式:R、R、Rの一つに対応し得、ここで、同一又は異なっていてもよい記号RからRは、それぞれ、1から10個の炭素原子を有する、飽和又は不飽和、環状又は非環状、あるいは芳香族のヒドロカルビル、クロロヒドロカルビル、フルオロヒドロカルビル、クロロフルオロヒドロカルビル又はフルオロカルビル基を示し、これらの基の一又は複数は、N、P、S又はOなどの一又は複数のヘテロ原子をまた含む可能性がある。アンモニウム、ホスホニウム又はスルホニウムカチオンYはまた、1から3個の窒素、リン又は硫黄原子を有する飽和又は不飽和、又は芳香族のヘテロ環の一部を形成し得、次の一般式の一つ又は他のものに対応しうる:
【化1】
ここで、RとRは先に記載した通りである。その式に二又は三のアンモニウム、ホスホニウム又はスルホニウム部位を含む塩もまた使用に適している場合がある。塩Yの例として、テトラアルキルアンモニウムクロリド及びフルオリド、テトラアルキルホスホニウムクロリド及びフルオリド、及びトリアルキルスルホニウムクロリド及びフルオリド、アルキルピリジニウムクロリド及びフルオリド、ジアルキルイミダゾリウムクロリド、フルオリド及びブロミド、並びにトリアルキルイミダゾリウムクロリド及びフルオリドを挙げることができる。トリメチルスルホニウムフルオリド又はクロリド、N-エチルピリジニウムクロリド又はフルオリド、N-ブチルピリジニウムクロリド又はフルオリド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド又はフルオリド、及び1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド又はフルオリドがより特定的には評価される。イオン液体は、ハロゲン又はオキシハロゲンルイス酸と有機塩Yとを適切に混合することにより、それ自体が知られている方法で調製することができる。特に、文献国際公開第01/81353号に記載されている方法を参照することができる。あるいは、触媒は、米国特許第6166274号に記載されているように、トリフリン酸又はトリフルオロ酢酸でありうる。
【0049】
好ましい一実施態様によれば、トランス/シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンに加えて、流れBは、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン及び1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンからなる群から選択される副生成物を含む。好ましい一実施態様によれば、流れBにおける、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン及び1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンからなる群から選択される副生成物の量は、0.5mol%未満である。前記流れB中の1,3,3,3-テトラフルオロプロペン含有量は、好ましくは0.5mol%未満、より優先的には0.4mol%未満、より特定的には0.3mol%未満である。前記流れB中の1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン含有量は、好ましくは0.1mol%未満、より優先的には0.075mol%未満、より特定的には0.05mol%未満である。
【0050】
工程i)は、好ましくは50℃から150℃の温度、好ましくは75℃から100℃の温度で実施される。
工程i)は、好ましくは5から20baraの圧力、好ましくは10から18baraの圧力、より特定的には12から18baraの圧力で実施される。
【0051】
反応器入口でのHF/[塩素化合物]のモル比は、好ましくは5と10の間、より好ましくは5と7の間、より特定的には5と6の間である。より特定的には、出発組成物中の前記塩素化合物が1,1,3,3-テトラクロロプロペン(1230za)である場合、HF/1230zaのモル比は5と10の間、より好ましくは5と7の間、より特定的には5と6の間である。
【0052】
フッ化水素酸と前記出発組成物は、静的ミキサーを介して反応器に投入することができる。好ましくは、フッ化水素酸は、それが反応器に投入される前、よって工程i)の実施前に、加熱される。好ましくは、フッ化水素酸は、100℃から170℃、好ましくは120℃から170℃、特に125℃から165℃、より特定的には125℃から155℃の温度に加熱される。
【0053】
特定の一実施態様によれば、工程i)で得られた流れBを、工程ii)の実施前に精製工程に供することができる。あるいは、工程i)で得られた流れBを、工程ii)において直接使用することができる。
【0054】
従って、前記製造方法は、工程i)に続いて、工程ii)の前に、流れBを処理して、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HCl及びHFを含む流れB1と、少なくとも50重量%のHF、例えば好ましくは少なくとも70重量%のHFを含む流れB2とを生じさせる工程を含む、工程i’)を含みうる。処理工程(i’)は、好ましくは、30℃と120℃の間の温度で有利に実施されて、反応器に再循環される流れB2を生じさせる還流塔である。好ましくは、流れB1において、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのトランス異性体とシス異性体の間のモル比は、2:1から50:1、好ましくは5:1から50:1、特に9:1から50:1である。
【0055】
特定の一実施態様によれば、本発明に係る1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを製造するための前記方法は、
i)フッ化水素酸(HF)を、反応器内で、1,1,3,3-テトラクロロプロペン、1,3,3,3-テトラクロロプロペン及びその二つの混合物からなる群から選択される少なくとも一種の塩素化合物を含む出発組成物と接触させて、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF及びHClを含む流れBを得る工程;
i’)流れBを処理して、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HCl及びHFを含む流れB1と、少なくとも50重量%のHFを含む流れB2とを生じさせる工程;
ii)工程i’)で得られた流れB1から出発して、本発明に係る1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを精製するための方法を実施する工程
を含む。
【0056】
本製造方法は、工程i’)の後、工程ii)の前に工程ii’)をまた含みうる。好ましくは、前記工程ii’)は、流れB1から塩酸を回収して、HClの流れB3と1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HCl及びHFを含む流れB4とを形成する工程である。工程(ii’)におけるHClの回収は、好ましくは、塔底リボイラーと塔頂還流システムを備えた蒸留塔によってなされる。塔底の温度は有利には20℃と110℃の間である。塔頂の温度は、有利には-50℃と0℃の間である。HClの蒸留は、典型的には、7barと25barの間の圧力で実施される。この回収工程により、流れB1中のHClの量と比較して、HClの量が大きく減少している流れB4を得ることが可能になる。
【0057】
従って、特定の一実施態様によれば、本発明に係る1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを製造するための前記方法は、
i)フッ化水素酸(HF)を、反応器内で、1,1,3,3-テトラクロロプロペン、1,3,3,3-テトラクロロプロペン及びその二つの混合物からなる群から選択される少なくとも一種の塩素化合物を含む出発組成物と接触させて、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF及びHClを含む流れBを得る工程;
i’)流れBを処理して、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HCl及びHFを含む流れB1と、少なくとも50重量%のHFを含む流れB2とを生じさせる工程;
ii’)流れB1から塩酸を回収して、HClの流れB3と1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HCl及びHFを含む流れB4とを形成する工程;
ii)工程ii’)で得られた流れB4から本発明に係る1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを精製するための方法を実施して、中和された流れA1を形成する工程
を含む。好ましくは、流れB4において、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのトランス異性体とシス異性体の間のモル比は、2:1から50:1、好ましくは5:1から50:1、特に9:1から50:1である。
【0058】
本製造方法はまた工程ii’)の後で工程ii)の前の工程iii’)を含みうる。好ましくは、工程iii’)は、分離して、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも98重量%、特に少なくとも99重量%のHFを含む流れB5と、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HCl及びHFを含む流れB6とを形成する工程である。分離工程は、好ましくはデカンテーションであり、有利には-50℃と50℃の間、好ましくは-20℃と10℃の間の温度で実施される。
【0059】
従って、特定の一実施態様によれば、本発明に係る1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを製造するための前記方法は、
i)フッ化水素酸(HF)を、反応器内で、1,1,3,3-テトラクロロプロペン、1,3,3,3-テトラクロロプロペン及びその二つの混合物からなる群から選択される少なくとも一種の塩素化合物を含む出発組成物と接触させて、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF及びHClを含む流れDを得る工程;
i’)流れBを処理して、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HCl及びHFを含む流れB1と、少なくとも50重量%のHFを含む流れB2とを生じさせる工程;
ii’)流れB1から塩酸を回収して、HClの流れB3と1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HCl及びHFを含む流れB4とを形成する工程;
iii’)工程ii’)で得られた流れB4を分離して、少なくとも90重量%を含む流れB5と1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HCl及びHFを含む流れB6とを形成する工程;
ii)工程iii’)で得られた流れB6から本発明に係る1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを精製するための方法を実施して、中和された流れA1を形成する工程
を含む。好ましくは、流れB6において、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのトランス異性体とシス異性体の間のモル比は、2:1から50:1、好ましくは5:1から50:1、特に9:1から50:1である。
【0060】
本製造方法は工程iii’)の後で工程ii)の前に工程iv’)をまた含みうる。好ましくは、工程iv’)は、水で洗浄する工程である。この工程は、流れB6に含まれるHClとHFの一部を除去する。
【0061】
従って、特定の一実施態様によれば、本発明に係る1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを製造するための前記方法は、
i)フッ化水素酸(HF)を、反応器内で、1,1,3,3-テトラクロロプロペン、1,3,3,3-テトラクロロプロペン及びその二つの混合物からなる群から選択される少なくとも一種の塩素化合物を含む出発組成物と接触させて、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF及びHClを含む流れBを得る工程;
i’)流れBを処理して、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HCl及びHFを含む流れB1と、少なくとも50重量%のHFを含む流れB2とを生じさせる工程;
ii’)流れB1から塩酸を回収して、HClの流れB3と1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HCl及びHFを含む流れB4とを形成する工程;
iii’)工程ii’)で得られた流れB4を分離して、少なくとも90重量%を含む流れB5と1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HCl及びHFを含む流れB6とを形成する工程;
iv’)工程iii’)で得られた前記流れB6を水で洗浄して、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン含む流れB7と酸性水溶液B8とを形成する工程;
ii)工程iv’)で得られた流れB7から本発明に係る1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを精製するための方法を実施して、中和された流れA1を形成する工程
を含む。好ましくは、流れB7において、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのトランス異性体とシス異性体の間のモル比は、2:1から50:1、好ましくは5:1から50:1、特に9:1から50:1である。
【0062】
本製造方法は工程ii)に続き工程iii)をまた含みうる。好ましくは、工程iii)は、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む前記中和された流れA1を乾燥させて、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む乾燥された流れA2を形成することからなる。乾燥工程は、モレキュラーシーブ、ゼオライト、硫酸カルシウム又は塩化カルシウムなどの無機塩、シリカゲル、活性炭を使用して実施することができる。モレキュラーシーブ及びゼオライトの例は、文献国際公開第2017/050686号に記載されている。無機塩、モレキュラーシーブ、シリカゲル、及び活性炭の例はまた国際公開第2017/031406号に記載されている。モレキュラーシーブ、活性炭及びシリカゲルの例はまた国際公開第2016/148957号に記載されている。好ましくは、乾燥工程は、モレキュラーシーブを使用して、特に3Aモレキュラーシーブを使用して実施されるであろう。
【0063】
本製造方法は工程iii)に続き工程iv)をまた含みうる。好ましくは、工程iv)は、工程iii)で得られた前記流れA2を蒸留する一又は複数の工程を含む。
【0064】
従って、特定の一実施態様によれば、本発明に係る1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを製造するための前記方法は、
i)フッ化水素酸(HF)を、反応器内で、1,1,3,3-テトラクロロプロペン、1,3,3,3-テトラクロロプロペン及びその二つの混合物からなる群から選択される少なくとも一種の塩素化合物を含む出発組成物と接触させて、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF及びHClを含む流れBを得る工程;
i’)流れBを処理して、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HCl及びHFを含む流れB1と、少なくとも50重量%のHFを含む流れB2とを生じさせる工程;
ii’)流れB1から塩酸を回収して、HClの流れB3と、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HCl及びHFを含む流れB4とを形成する工程;
iii’)工程ii’)で得られた流れB4を分離して、少なくとも90重量%を含む流れB5と、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HCl及びHFを含む流れB6とを形成する工程;
iv’)工程iii’)で得られた前記流れB6を水で洗浄して、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む流れB7と酸性水溶液B8とを形成する工程;
ii)工程iv’)で得られた流れB7から本発明に係る1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを精製するための方法を実施して、中和された流れA1を形成する工程;
iii)1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む前記中和された流れA1を乾燥させて、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む乾燥された流れA2を形成する工程;及び
iv)一又は複数の蒸留塔を使用して前記流れA2を蒸留して、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む流れA3を形成する工程
を含む。
【0065】
好ましくは、流れB1、B4、B6及びB7において、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのトランス異性体とシス異性体の間のモル比は、2:1から50:1、好ましくは5:1から50:1、特に9:1から50:1である。
【0066】
好ましくは、本発明に係る前記製造方法は、連続的に実施される。
【実施例
【0067】
以下の実施例は、異なる塩基性溶液の存在下における特にトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む流れの挙動を研究することを目的とする。実施例は、洗浄塔(スクラバー)が上に設けられた反応器(両方とも断熱されている)で実施される。洗浄塔(内径=24mm、高さ=300mm)には、ラシヒリング(内径=3mm、外径=5mm、長さ=5mm、充填塔における空隙率=63%)が充填される。塩基性溶液を導入し、ラシヒリングが充填された洗浄塔に円状に回転させて流した(約185ml/分)。塩基性溶液は30℃の温度に調整される。1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(95.5mol%のトランス異性体と2.5mol%のシス異性体)を含む流れをついで5g/hの流量で反応器に導入した。無水CaClで乾燥させ、液体窒素トラップを使用してトラップするために、中和後にガス流を回収した。ガス流をガスクロマトグラフィーで分析した。中和後に形成されたトリフルオロプロピンの量を、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンに対する試験した塩基性溶液の影響を評価するために定量する。三種の塩基性溶液を試験し、結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0068】
上記実施例で証明されるように、亜硫酸塩とアルカリ金属水酸化物を含む塩基性溶液を使用すると、中和工程中のトリフルオロプロピンの形成を制限することが可能になる。従って、本発明に係る方法は、KOH又はNaOHのみの存在下で中和工程を実施する方法よりもより効率的である。
【国際調査報告】