(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-31
(54)【発明の名称】試料調製のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01N 30/60 20060101AFI20220524BHJP
G01N 30/00 20060101ALI20220524BHJP
G01N 30/46 20060101ALI20220524BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
G01N30/60 B
G01N30/00 E
G01N30/46 E
G01N1/10 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559156
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(85)【翻訳文提出日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2020059549
(87)【国際公開番号】W WO2020201503
(87)【国際公開日】2020-10-08
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502307209
【氏名又は名称】バイオタージ・アクチボラゲット
【氏名又は名称原語表記】BIOTAGE AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,リー
(72)【発明者】
【氏名】ジェルド,ダグラス・ティ
(72)【発明者】
【氏名】デイビス,ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】ホアン,リー
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン,ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052BA21
2G052CA18
2G052EA03
2G052ED07
2G052GA24
2G052HC27
2G052JA06
(57)【要約】
本発明は、少ない空気の混入で試料の抽出を実施する方法に関する。より詳細には、本発明は、底部フリット(3)および頂部フリット(4)を含むカラム本体(2)を備えた微量溶出カラム(1)に関し、カラム本体は、底部フリット(3)と頂部フリット(4)との間に配された吸着剤(5)、および頂部フリットの上に配された任意選択のフィルターフリット(6)を含む。本発明はまた、そのようなカラムを含むプレート、および使用の方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部フリット(3)および頂部フリット(4)を含むカラム本体(2)を備えた微量溶出カラム(1)であって、前記カラム本体は、前記底部フリット(3)と前記頂部フリット(4)との間に配された吸着剤(5)を含み、各前記フリットは約0.2μLの細孔容積を有する、カラム(1)。
【請求項2】
前記頂部フリット、および任意選択で前記底部フリットが、実質的に一定の流通性を示す1つの単一材料からそれぞれ作られている、請求項1に記載のカラム。
【請求項3】
前記底部フリット(3)の細孔径が、前記頂部フリット(4)の細孔径よりも小さい、請求項1または2に記載のカラム。
【請求項4】
少なくとも前記底部フリット(3)が、織りメッシュ材料または不織メッシュ材料から作られている、先行する請求項のいずれか1項に記載のカラム。
【請求項5】
前記メッシュ材料が、ナイロンおよびポリエステルからなる群から選択される、請求項4に記載のカラム。
【請求項6】
前記頂部フリット(4)の上に配された取り外し可能なフィルターフリット(6)を受容するための手段が備えられている、先行する請求項のいずれか1項に記載のカラム。
【請求項7】
前記カラム本体(2)の頂端部の直径が、前記カラム本体(2)の底端部の直径よりも大きい、先行する請求項のいずれか1項に記載のカラム。
【請求項8】
前記カラム本体(2)が前記頂端部から前記底端部に向かって実質的に先細になっている、請求項7に記載のカラム。
【請求項9】
前記吸着剤(5)が単一ベッド層として配されている、先行する請求項のいずれか1項に記載のカラム。
【請求項10】
前記カラムが複数のカラムのうちの1つとしてプレート(10)に配されており、前記カラム本体(2)にはY方向におけるその移動を防止する手段が備えられている、先行する請求項のいずれか1項に記載のカラム。
【請求項11】
前記手段が、前記プレート(10)に配された突出部の形態にある手段(12)に止まるように適合された隆起部(7)を備える、請求項10に記載のカラム。
【請求項12】
前記カラムが複数のカラムのうちの1つとしてプレートに配されており、前記カラム本体(2)にはX方向におけるその移動を防止する手段が備えられている、先行する請求項のいずれか1項に記載のカラム。
【請求項13】
前記手段が前記カラム本体(2)の上方部分に配されたカラー(8)であり、前記カラー(8)は少なくとも2つの反対の平坦面(9)を含む、請求項12に記載のカラム。
【請求項14】
前記フィルターフリット(5)と前記頂部フリット(4)との間の間隙が10mm未満である、先行する請求項のいずれか1項に記載のカラム。
【請求項15】
前記吸着剤(5)が、前記底部フリット(3)と前記頂部フリット(4)との間の空間の実質的にすべてに提供されている、請求項14に記載のカラム。
【請求項16】
前記取り外し可能なフィルターフリット(6)のデッドボリュームが約1μL未満である、先行する請求項のいずれか1項に記載のカラム。
【請求項17】
約40uLなどの約50μL未満の溶出体積を用いて溶出されることが可能である、先行する請求項のいずれか1項に記載のカラム。
【請求項18】
前記底部フリット(3)が水湿潤性である、先行する請求項のいずれか1項に記載のカラム。
【請求項19】
前記頂部フリット(4)が水湿潤性である、先行する請求項のいずれか1項に記載のカラム。
【請求項20】
前記カラム本体(2)の少なくとも内側が水湿潤性である、先行する請求項のいずれか1項に記載のカラム。
【請求項21】
前記カラムがトップダウンカラム流のために構成されており、前記フィルターフリット(6)が、生体試料に由来する汚染物質などの粒状物質の除去を可能にするように構成されている、先行する請求項のいずれか1項に記載のカラム。
【請求項22】
試料を並列処理するためのプレート(10)であって、請求項1~21のいずれか1項に記載の1つまたは複数のカラムが配されている複数の位置(11)を含む、プレート(10)。
【請求項23】
各ウェルが、請求項1~21のいずれか1項に記載のカラムの前記隆起部(7)と係合するための手段(12)を備える、請求項22に記載のプレート。
【請求項24】
後続の分析のための試料を調製する方法であって、約100~400μLの範囲にある体積を有する少なくとも1種の試料が、請求項1~21のいずれか1項に記載のカラムに加えられる、方法。
【請求項25】
前記試料が、吸着剤(5)を装填したカラム(1)に加えられ、約10~50μLの範囲にある体積を有する溶離剤を加えることによって、後続のステップで溶出が実施される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記溶離剤体積が20~40μLの範囲にある、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記方法がトップダウンカラム流通方法であり、前記試料は、頂部フリット(4)、または前記フィルターフリット(6)に加えられる、請求項24~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記方法がピペット操作方法であり、前記試料は吸引され、前記底部フリット(3)を通過して、前記底部フリット(3)と前記頂部フリット(4)との間に配された前記吸着剤(5)と接触する、請求項24~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記試料が、LC-MSまたはLC-MS/MSなどの質量分析法を含む後続の分析のために調製される、請求項24~28のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は被分析物の回収などの分離の領域に関し、試料調製をより効率的にするためのツールおよび方法を提供する。より詳細には、本発明は微量溶出(microelution)カラム、1つまたは複数のそのようなカラムを含むプレート、およびより低溶出体積を用いることを可能にする試料調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
微量溶出技術は、主として、溶媒の使用およびまた抽出器具類のサイズの低減の要求に対処するために開発された。典型的には、そのような方法では、抽出相の体積は、試料、洗浄バッファーおよび溶出バッファーの体積との関連で非常に小さい。
【0003】
ほとんどの市販の微量溶出型プレート製品は50μL以上の溶出体積で作動する。多くの場合、2mgおよび5mgのベッド質量(bed mass)の材料から物質を回収するために、溶出体積は2つの等しいアリコートで加えられる。大きな溶出体積が用いられる1つの理由は、プレートのカラムベッドからの被分析物種の低く、かつ/または一貫しない回収率を防止するためである。回収率が低くなったり、一貫しなかったりするのにはいくつかの原因がある。カラムは、不均一なベッドの充填により、チャネリング(異常流路)を生じる場合がある。液体の流れがカラムのベッドを通るチャネリングを生じて、カラム内のレジンまたはベッドの一部が、試料、洗浄溶液および/もしくは溶出剤溶液(elution solution)によって、不完全に反応されたり、触れられなかったりしたままとなることがある。これらのステップのいずれかにおける不十分なまたは一貫しない流れにより、すべてのカラム媒体が溶媒/バッファーによって接触され、反応されることを保証するためには、特に洗浄ステップおよび溶出ステップにおいて、大量のバッファーが必要となり得る。カラムベッドサイズが小さくなるほど、充填されたベッドの均一性を達成することはより困難となる。
【0004】
微量溶出カラムのトップダウン(下向き)流(top-down flow)に使用される任意のカラムは、カラムのベッド中にトラップされた、または部分的にトラップされた空気を含んでいる場合がある。実際、これは、プレートの作動の仕方におけるアーチファクトであり、慣例の一部である。空気は、単に、液体がベッドを退出した後にもカラムに印加され続けた頂部圧力または底部減圧により意図せずに導入される場合がある。
【0005】
空気が吸着ベッドへ意図せずに導入される別の過程は、空気間隙プロセスによる。「空気間隙」とは、カラムベッドの頂部とカラムベッドの頂部に導入された液体のスラグとの間にトラップされた空気である。空気間隙が存在する場合、空気間隙の頂部上の液体がカラムベッドの頂部における圧力またはカラムの底部における減圧によってカラムに強制的に通されるにつれて、空気はカラムベッドに強制的に通されるであろう。これにより、空気が部分的に、また予測不能にカラムベッド中に保持されることになり得る。
【0006】
カラムベッドのこの種の望ましくない空気は混入空気として知られている。空気は、コンディショニング、試料負荷、試料洗浄、または試料溶出の通液ステップのうちのいずれかで導入される場合がある。ベッド中の空気は液体の流れを遮る可能性があり、その結果、カラムを通る流れは、例えば流れのチャネリングにより、一貫しておらず、また予測可能でもなくなる。また、カラムを流れる液体の流量を変化させる可能性もある。プレートをベースとしたカラムは、任意のバッファーステップの導入で取り除かれなければならない大きなデッドボリュームを含んでいることがある。この状況では、目的の分析種(analytic species)を溶出および回収する複数の機会を与えるために、大きな溶出体積が必要とされ、一方、溶出体積がより小さいと、材料の回収率が低くなり、また物質のカラム間の回収率に一貫性がなくなる。
【0007】
試料調製の分野では、プレート型固相抽出カラムからの被分析物の回収率の一貫性ならびに質量回収率(mass recovery)を改善する必要がある。また、プレート型カラム内のレジンからの被分析物の完全な質量回収率を維持したまま、溶出体積を小さくする必要もある。上記で説明したように、プレートのカラムベッド内の混入空気の量を低減する必要があり、またプレートのカラムベッド内への空気の導入を防ぐ必要がある。最後に、プレートのカラムベッドに液体を導入するときに空気間隙を防ぐ必要がある。
【0008】
WO2005/070141(Phynexus, Inc.)は、ペプチド、タンパク質または核酸などの被分析物の精製用の抽出カラムに関する。記載されたカラムは、使用時における低い背圧を特徴とし、いくつかの実施形態では、少量の液体の被分析物の溶出を得ることができると述べられている。カラム本体は、プラスチック、ガラス、セラミックまたは金属などの広範囲の物質から製造され得る。さらに、抽出カラムは、低細孔容積を特徴とし得る、膜スクリーンなどの、1つまたは2つのフリットを含む。膜スクリーンの極性が重要となる可能性がある。親水性スクリーンは、ベッドとの接触を促進し、気液界面が表面張力を生じるのを促進し、一方、疎水性スクリーンは表面張力を促進せず、したがって、流れるための閾値圧力は異なるであろう。
【0009】
米国特許第4,779,467号(Rainin Instruments Co., Inc.)は、モジュール構造を有するマルチチャンネルエアーディスプレイスメントピペット用の液端アセンブリに関し、モジュール構造により、構成要素が汚染されたり、または摩耗したりしたときに、個々の構成要素を容易に交換することが可能となる。またアセンブリは、選択したピストン構成要素およびシリンダ構成要素を選択的に除去できるようにし、その結果、最初にチップを挿してから、チップアレイを手で除去したり、または再配置したりすることなく、すべてよりも少ない数のチャンネルをピペット操作に使用することができる。より詳細には、これは、液端アセンブリが、第1の端部および第2の端部を有する円柱ロッドを含むモジュール式ピストン手段をさらに備えることによって達成され、ピストン手段は、ロッドの第1の端部に近接して配置されたばね捕捉手段を備える。
【0010】
米国特許出願公開第2018/0252687号(Tecan)は、液体試料からの被分析物の抽出のためのマイクロカラムに関し、特に生体液からの被分析物の抽出に関する。より詳細には、米国特許出願公開第2018/0252687号の目的は、プロセススループットを改善し、試料から非常に高い割合の被分析物を取り出し、輸送可能であり、損傷することなく保管可能であり、安価である抽出装置を提供することにある。また、そのような装置が既存の自動化設備に適合し、溶離剤液(eluent liquid)または分析結果に干渉し得る任意の化合物を生体液試料中または他の流体試料中に浸出させないことが望ましい。同様に、媒体ベッドボリュームおよび関連するデッドボリュームを最小限にして、洗浄溶離剤液の体積を低下させることが望ましい。米国特許出願公開第2018/0252687号によれば、これは、第1の流路と第1の流路にわたって延在する流れ分配層とを含む第1のマイクロカラム、および第2の流路と第2のマイクロカラムにわたって延在する抽出層とを含む第2のマイクロカラムを備えた装置によって達成することができ、第1のマイクロカラムは第2のマイクロカラムの上方に第2のマイクロカラムと直列に配置されており、第1の流路は第2の流路と流体連通している。
【0011】
米国特許出願公開第2018/0238842号(昭和電工)は、液体クロマトグラフィーカラムおよび液体クロマトグラフィーカラムを含む液体クロマトグラフィー装置に関する。より詳細には、米国特許出願公開第2018/0238842号によれば、連続使用に関する問題の一例は、カラムのフィルターが、注入された試料成分または試料成分とともに注入された不純物で詰まることがあり、システムに印加された圧力が装置の限界を超える場合があり、これが分析の失敗につながることである。そのような問題に対処するために、米国特許出願公開第2018/0238842号は、円筒状カラム本体と、カラム本体の溶離剤(eluent)流入側端部に配置された流入側フィルターと、カラム本体の溶離剤流出側端部に配置された流出側フィルターと、流入側フィルターと流出側フィルターとの間に充填された充填剤とを備えた液体クロマトグラフィーカラムを記載しており、流入側フィルターは、第1のレジンフィルター部材および第2のレジンフィルター部材からなり、これらの部材が充填剤の側からこの順番で配置された2層構造を有し、第1のレジンフィルター部材は、第2のレジンフィルター部材より低い押込み弾性率(indentation elastic modulus)を有する。
【0012】
利用可能な製品および技術にもかかわらず、試料調製の分野では、特に固相微量溶出の分野では、出来る限り少ない液体および試薬の使用で迅速な分析を可能にするより効率的な方法が、特に複数の試料の自動化並列処理において、依然として必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明の一態様は、底部フリットおよび頂部フリットを含むカラム本体を備えた微量溶出カラムであり、カラム本体は、底部フリットと頂部フリットとの間に配された吸着剤、および頂部フリットの上に配された任意選択のフィルターフリットを含み、頂部フリットおよび/または底部フリットは、約0.2μLの細孔容積を有する。さらに、底部フリットの細孔径は頂部フリットの細孔径より小さい場合がある。
【0014】
本発明の別の実施形態は、底部フリットおよび頂部フリットを含むカラム本体を備えた微量溶出カラムであり、カラム本体は、底部フリットと頂部フリットとの間に配された吸着剤を含み、フィルターフリットは存在しない。
【0015】
本発明の別の態様は、本発明による1つまたは複数のカラムが配された複数の位置を含む、試料の並列処理のためのプレートである。
【0016】
本発明のさらなる態様は後続の分析のために試料を調製する方法であり、1~50μlの範囲にある溶出溶媒のアリコートが、本発明によるカラムの頂部に加えられる。
【0017】
本発明のさらなる詳細、利点および実施形態は、従属請求項ならびに以下の詳細な説明から分かるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】底部フリット3および頂部フリット4と、底部フリット3と頂部フリット4との間に配された吸着剤5とを含む本発明による単一の微量溶出カラム1を示す図である。プレート10におけるY方向のその配置を可能にするように配された環状隆起部7がはっきりと見え、一方、各カラムの前記環状隆起部7を受容するように配された手段12の全体的な配置は矢印によって示されている。
【
図2】本発明による単一の微量溶出カラム1を示す図であり、
図1に記載した特徴に加えて任意選択のフィルターフリット6も示している。
【
図3】
図3a~
図3bは、カラー8および平坦面9を含む、本発明による微量溶出カラム1を2つの異なる視点で示す図である。
【
図4】
図4a~
図4cは、本発明による1つまたは複数のカラム1を受容するように配された複数の位置11を含む、本発明によるプレート10を3つの異なる視点で示す図である。
【
図5】本発明によるプレート1の例示的な側面図(
図5a)および例示的な上面図(
図5b)である。
【
図6】カラム壁13(ここでは親水性)および親水性頂部フリット4を有した本発明によるカラム1の頂部にバッファーがどのように加えられ得るかを示した図である。バッファー分注器管14が示されている。
【
図7】カラム壁13(ここでは疎水性)および親水性頂部フリット4を有した本発明によるカラム1の頂部にバッファーがどのように加えられ得るかを示した図であり、この場合、バッファー液滴15の直径は頂部フリットの上方のカラム本体2の直径よりも小さい。
【
図8】
図7に記載したカラムを示す図であり、この場合、液滴15は頂部フリット4に触れている。液滴はカラムの内壁に沿って流れ、頂部フリット4の頂部を覆っている。
【
図9】実施例4bに従って得られた被分析物回収性能を、2mgのLVFカラムと従来の10mgの固定ウェルプレートとを比較して示す図である。
【
図10】実施例4bに従って得られた相対標準偏差(RSD)性能を、2mgのLVFカラムと従来の10mgの固定ウェルプレートとを比較して示す図である。
【
図11】実施例4cに従って得られた被分析物回収性能を、2mgのLVFカラムフォーマットについての最小溶出体積を比較して示す図である。
【
図12】実施例4cに従って得られた相対標準偏差(RSD)性能を、2mgのLVFカラムフォーマットについての最小溶出体積を比較して示す図である。
【
図13】実施例4dに従って得られた被分析物ピーク面積性能を、2mgのLVFカラムと従来の10mgの固定ウェルプレートとを比較して示す図である。
【
図14】実施例4dに従って得られた被分析物ピーク面積性能を、2mgのLVFカラムと従来の10mgの固定ウェルプレートとを比較して示す図である。
【
図15】実施例4dに従って得られた被分析物ピーク面積性能を、2mgのLVFカラムと従来の10mgの固定ウェルプレートとを比較して示す図である。
【
図16】実施例4dに従って得られた被分析物ピーク面積性能を、2mgのLVFカラムと従来の10mgの固定ウェルプレートとを比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
「微量溶出」という用語は、本願では、所望の物質を回収するための最終ステップとしての抽出カラムからの少量溶出を含む、その最も広い意味で使用される。
【0020】
「カラム」という用語は、本願では、吸着剤を受容するように配されたチャンバーであるという試料調製の分野におけるその通常の意味で使用される。
【0021】
「吸着剤」という用語は、本願では、それにより物質が固相媒体に吸着される物質、通常は高表面材料(higher surface material)、を含むように使用される。吸着剤はベッドまたはレジンと称されることもある。
【0022】
「フリット」という用語は、本願では、試料調製の分野におけるその通常の意味で、つまりカラム内の適所に抽出媒体を保持するために配された多孔質材料に対して、使用されている。フリットは本願では「スクリーン」と称されることもある。
【0023】
本願に使用される「フィルターフリット」という用語は、入口フリットの上に配置されてカラムベッドに進入する液体から粒状物質を除去するスクリーン、膜、またはフリット材料である。
【0024】
本願に使用される「固相抽出」という用語は、液体混合物中に溶解または懸濁した化合物が、それらの物理的性質および化学的性質によるカラム媒体への吸着により、混合物中の他の化合物から分離される試料調製プロセスとして定義される。
【0025】
本願に使用される「溶出体積」という用語は、被分析物が脱着および収集される、脱着液として知られている場合もある溶出剤液(elution liquid)の体積として定義される。
【0026】
本願に使用される「生体分子」という用語は、タンパク質、ペプチドおよび核酸などの生体系に由来する分子を指す。
【0027】
発明の詳細な説明
上記から分かるように、本発明は、例えば固相抽出プレートからの物質の低量すなわち少量の溶出および回収のための方法および装置に関する。
【0028】
第1の態様では、例えば
図1および
図2に例示するように、本発明は、底部フリット3および頂部フリット4を含むカラム本体2を備えた微量溶出カラム1に関し、カラム本体2は、底部フリット3と頂部フリット4との間に配された吸着剤5、および頂部フリットの上に配された任意選択のフィルターフリット6を含む。カラムは、有利には、液体が頂部に添加され、液体が底部で退出する、フロースルーカラムである。
【0029】
本発明のカラムは、有利にはプレートに配されたときにトップダウン流フォーマットで並列処理するために、プレートフォーマットで有利に使用される。したがって、本発明のそのようなカラムを通る流れは、頂部から底部へ与えられるであろう。これに代わって、カラムは、例えば、前後流(back and forth flow)チップカラムフォーマットで、または従来のピペット操作において、ピペットチップカラムとして使用されてもよい。
【0030】
プレートフォーマットでのそれらの使用を改善するために、例えば、
図1に例示するように、本発明によるカラムは、Y方向におけるその移動を防止する手段、例えば、プレート10のウェルの支持部を受容するように配された環状隆起部7または他の突出部などを備え得る。
【0031】
さらに、プレートに配されたときにX方向におけるその移動を防止するか、または少なくとも実質的に低減するために、例えば
図3に例示するように、本発明によるカラムは、カラム本体の上方部分に配されたカラー8を備えることができ、カラー8は、4つの平坦面、つまり二対の反対の表面などの、少なくとも2つの反対の平坦面9を含む。
【0032】
有利には、吸着剤5は、頂部フリット4の下、すなわち頂部フリットと吸着剤5との間のボイドボリュームを実質的に防ぐか、または少なくとも最小限にする体積で装填されている。表現を変えると、上記で論じた空気混入の問題を防ぐために、底部フリット3と頂部フリット4との間の空間への吸着剤の装填は、いかなる自由空間または空気も最小限にするように実施される。したがって、吸着剤5は、流動床ではなく充填床として提供され得る。一実施形態において、本発明は、頂部フリット4の下にある吸着剤粒子の自由運動を許容しないか、または任意のそのような運動をカラム性能に影響を及ぼさない程度に少なくとも実質的に低減する。
【0033】
底部フリット3は、上記で論じたWO2005/070141に記載されたフリットなどの、低空隙率のものであり得る。いくつかの実施形態では、フリットの細孔容積は0.2μL以下であり得る。さらに、底部フリット3は、水湿潤性、つまり実質的に親水性であり得る。試料の有利な添加を可能にするために、以下でより詳細に論じるように、頂部フリット4は、水湿潤性、つまり実質的に親水性であり得る。カラム本体2またはカラム本体の少なくとも内部は、疎水性または少なくとも実質的に疎水性であり得る。しかしながら、特定の特性および性能を変化させる代替案として、カラム本体2の内部が、水湿潤性、つまり実質的に親水性であってもよい。
【0034】
本発明によるカラムは、トップダウンカラム流のために構成され得る。この場合、フィルターフリット6は、生体試料に由来する汚染物質などの大きな粒子の除去を可能にするように構成される。これに関連して、トップダウン流という用語は、プレートにおける従来の使用またはピペットチップとしての従来の使用におけるカラムの位置を意味するように理解されることが分かる。
【0035】
図1および
図2から分かるように、底部フリットおよび頂部フリットは、吸着剤5のベッドを収容するのに役立つ。任意選択の付加的なフィルタスクリーンは、試料中の物質を除去して、カラムベッドの詰まりを防止する。いくつかの実施形態では、カラムのフィルターフリットと頂部フリットとの間には0.1~20mmの間隙が存在する。いくつかの実施形態では、この間隙は、0.5mm~10mmである。いくつかの実施形態では、頂部フリットとフィルターフリットとの間の間隙は、0.5mm、1mm、2mm、4mm、および5mmである。
【0036】
本発明のカラムにおいて、フィルターフリットのデッドボリューム(すなわちフィルター細孔中に保持される液体の間隙容量)は、0.05μl~5μlの範囲にある。いくつかの実施形態では、デッドボリュームは0.05μl~2μlである。いくつかの実施形態では、デッドボリュームは0.1μl~1μlである。
【0037】
当業者は、例えば、試料の性質および微量溶出の目的に応じて、底部フリット、頂部フリット、およびフィルターフリットの適当な空隙率および他の寸法を選択し得る。
【0038】
本発明の別の態様では、本発明は、本発明によるカラムの1つまたは複数が配された複数の位置11を含む、試料の並列処理に適したプレート10に関する。有利には、そのようなプレートの各ウェルは、各カラムの環状隆起部7と係合するための手段12を備えるであろう。さらに、本発明のプレートは、
図8に例示するように、各カラムの上方部分に、例えば、カラー8において、またはカラー8とともに、配された2つ以上の平坦面9を受容するように配された手段を備え得る。したがって、プレートは、カラムカラーの平坦面に適合するように、四角に仕切られ得る。
【0039】
上記から分かるように、本発明のプレートは、任意選択の取り外し可能なピペットチップカラムで交換可能なプレートであり得る。本発明のプレートは並列に配された複数のカラムを受容するように構成され得、この場合、カラムは取り外され、チップカラムとして使用され得る。一実施形態において、プレートは8×12列の形態にある96カラムフォーマットで機能する。上記プレートのカラムの微量溶出は、フリットの極性およびプラスチックの制御によって行われ得る。
【0040】
上記で手短かに論じたように、本発明のカラムは、水湿潤性のスクリーンフリットと、任意選択の水湿潤性のポリマー壁とを含む構成要素の組み合わせであり得る。本発明のいくつかの実施形態では、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンナフタラート(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)他を含む、非水湿潤性のポリマースクリーンフリットが使用され得る。
【0041】
本発明のフリットは、細孔サイズおよび空隙率を有する。細孔サイズまたは細孔径は、定義された細孔サイズの物質がフリットを通過するか、またはほとんど通過することを許容するフリットにおける実効目開き(effective opening)である。フリットは、ポリマー糸、またはこれらの領域を閉鎖させる、つまり多孔質ではない、他のポリマー材料で構成されている。フリットの空隙率は、細孔によるフリットの開放領域を合計領域で割って100を掛けた量によって定義される。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態では、底部出口フリットの細孔サイズまたは細孔径は、頂部または入口フリットよりも小さい。粒状物質を含有した試料がフリットを詰まらせ、カラムを通る流れが制限されるか、または停止されることが判明した。頂部フリットの細孔サイズより大きい試料粒子は、カラムベッドの頂部に残るであろう。しかしながら、頂部フリットの細孔サイズより小さな試料粒子はカラムを通り、カラム内に引っかかることがある。粒子が底部フリットの細孔に引っかかった場合には、カラムを通る流れは低減され、停止されることさえある可能性がある。本発明のいくつかの実施形態では、頂部フリットと比較して底部フリットの細孔サイズを低減することにより、頂部フリットを通過した試料からの粒子がカラムを詰まらせるのを防止できることが判明した。これらの試料では、カラムを通過した粒子は、下側の出口フリットに引っかかったり、または出口フリットを詰まりさせたりせず、流れは妨げられないであろう。
【0043】
カラムは、液体、特に低量の液体のカラムの頂部への導入による空気間隙を防ぐように構成され使用される。空気がカラム中に混入された場合、カラム両端部にある親水性フリットと、カラム内における少ないデッドスペースとにより、次の液体体積の導入で空気の大半の排除が可能となる。上記プレートは、任意選択でフレキシブルなプレート/チップフォーマットになり得る真の低量プレートフォーマットである。2mg質量カラムベッドについて50μL未満、45μL未満、40μL未満、35μL未満、30μL未満、25μL未満、20μL未満、15μL未満、およびさらに10μL未満の溶出体積においてさえ、カラムベッドに導入された溶出体積の90%超が回収され得る。0.2~2mgの範囲にある質量カラムベッドについて50μL未満、45μL未満、40μL未満、35μL未満、30μL未満、25μL未満、20μL未満、15μL未満、10μL未満、およびさらに5μL未満の溶出体積においてさえ、カラムベッドに導入された溶出体積の90%超が回収され得る。2~20mgの範囲にある質量カラムベッドについて50μL未満、45μL未満、40μL未満、35μL未満、30μL未満、25μL未満、およびさらに20μL未満の溶出体積においてさえ、カラムベッドに導入された溶出体積の90%超が回収され得る。
【0044】
プレートのカラムに位置するカラムのベッド質量は、2mg、5mg、10mg、または20mgの範囲にあり得る。96カラムプレートに位置するカラムのベッド質量は、0.1~10mgの範囲および0.2~5mgの範囲にあり得る。
【0045】
本発明のカラムは、カラムベッドにおける空気の導入を防ぐことができるように、空気間隙の除去を可能にする。一実施形態において、これは、フリットおよびカラム壁が親水性であるため、添加された液体が壁およびカラムを滑り落ち、フリットを覆って、空気をカラムベッドに進入させないことによって成し遂げられる。別の実施形態では、これは、親水性フリットを有し、液体をベッドに滴下することによって成し遂げられ、この場合、滴の直径はフリットの上方のカラムの直径未満である。別の実施形態では、これは、液体の滴を、滴の底部が親水性フリットに触れ、親水性フリットを覆うように堆積させることによって成し遂げられる。
【0046】
さらなる態様では、本発明は後続の分析のために試料を調製する方法に関し、100~400μlの範囲にある体積を有する少なくとも1種の試料が、本発明によるカラムに加えられる。本発明のプレートによれば、低溶出体積または微少溶出体積が可能である。したがって、試料は吸着剤5を装填したカラム1に加えられ、1~50μlの範囲にある体積を有する溶離剤を加えることによって、後続のステップで溶出が実施され得る。例えば、吸着剤重量が2~5mgの質量重量であるカラムは、50μL以下の溶出体積で溶出され得、この場合、溶出体積/回収体積の比は0.9~1.0の範囲にある。
【0047】
上記方法は、トップダウンカラム流通方法であり得、試料はフィルターフリット6に加えられる。
【0048】
これに代わって、上記方法は、ピペット操作方法であり、試料は吸引され、底部フリット3を通過して、底部フリット3と頂部フリット4との間に配された吸着剤5と接触する。
【0049】
いくつかの実施形態では、液体をプレート内のカラムに強制的に通すために高圧が用いられる。この高圧は、ベッドに含まれ得る混入空気を除去する役割を果たし、したがってカラムベッドに含まれた媒体に対する液体の接触を改善する。しかしながら、高圧はまた、ベッドを通る液体の液体流量および線速度を劇的に増大する役割も果たす。本発明のプレートでは、固相媒体に対する分子の捕捉を保持しながら、2~30psi、3~25psi、4~20psi、5~15psi、および5~10psiの圧力が用いられ得る。高い線速度は、通常、遅い捕捉動態(capture kinetics)により、分子の捕捉を制限するため、本発明のカラムプレートにおいてこれらの高圧範囲を使用することができるのは驚くべきことである。
【0050】
本発明の一実施形態の、個々のカラムベッドについて2~5mgの吸着剤質量重量範囲にあるカラムを有した本発明のカラムおよびプレートにおいて、溶出は、50μL未満の溶出体積で、90~100%の範囲の被分析物の回収率で実施され得る。本発明の別の実施形態では、50μL未満の溶出体積について、加えられた溶出体積/回収体積の比は、0.9~1.0の範囲にある。本発明の別の実施形態では、50μL未満、45μL未満、40μL未満、35μL未満、30μL未満、25μL未満、20μL未満、および15μL未満の溶出体積について、加えられた溶出体積/回収体積の比は、0.9~1.0の範囲にある。本発明のプレートにおけるカラムの頂部に加えられた50μL未満の溶出体積は、ボリュームベッド(volume bed)の完全な流れを可能にし、カラム本体内、ベッド内、またはフリット内に含まれ得るデッドスペースによってトラップされない。驚いたことに、本発明のカラムのベッドに空気が混入している場合でも、これらの少ない溶出体積を用いることができ、90~100%までの回収率が達成され得る。
【0051】
カラムは、カラムの頂部に空気間隙を導入することなく、50μL未満、40μL未満、30μL未満、25μL未満、20μL未満、15μL未満、10μL未満および5μL未満の溶出体積をカラムの頂部フリットに添加することができるように設計されている。
【0052】
カラムを収容するプレートは、8×12(96カラム)フォーマットに構成され得るが、プレートはこの形態に限定されるものではない。本発明のプレートは、任意の数の行および列を有することができる。上記プレートは、96ウェルプレート型フォーマットで処理されることが可能である。本発明のいくつかの実施形態では、カラムがプレートフォーマットから取り外されなくてもよい。いくつかの実施形態では、チップカラムは、プレートから取り外されてもよく、1~2、1~4、1~8、1~12、または1~96ピペットポンプフォーマットで処理されることが可能である。本発明のプレートからのピペットチップカラムは、2、4および8マルチチャンネルピペットフォーマットで処理され得る。いくつかの専門用語において、カラムは、プレートフォーマット内においてウェルまたはカラムウェルと称される場合がある。しかしながら、カラムウェルは、底部または出口フリット、頂部または入口フリット、およびこれらの2つのフリットの内側に含まれた媒体を有するフォーマットを保持しなければならない。
【0053】
溶出体積は、わずか25~50μL、20~50μL、15~50μLまたは10~50μLの範囲とすることができる。溶出体積は1アリコートで添加され得る。μLでの溶出体積(EV)対mgでのベッド質量(BM)の比(EV:BM比)は、20mg、15mg、10mg、5mg、4mg、3mg、2mg、1mgおよび0.5mgのカラムベッド質量について、25未満、20未満、15未満、10未満、5未満、4未満、3未満、または2未満であり得る。驚いたことに、本発明のプレートおよびカラムにおけるより小質量のベッドは、ベッド質量が減少するにつれて、より小さなEV:BM比に適応することができる。これは、当業者によって予想されるだろうこととは反対である。
【0054】
いくつかの実施形態では、カラムベッドは質量ではなく体積で表される。この場合には、μLでの溶出体積(EV)対μLでのベッドボリューム(BV)の比(EV:BV比)は、50μL、40μL、30μL、20μL、15μL、10μL、および5μLのカラムベッドボリュームについて、10未満、5未満、4未満、3未満、または2未満であり得る。同様に、本発明のプレートおよびカラムにおいて小体積のベッドは、ベッドボリュームが減少するにつれて、より小さなEV:BV比に適応することができる。
【0055】
カラムはプレートから取り外し可能であり、前後流チップカラムフォーマットで使用され得る。
【0056】
カラムは、カラムの頂部に空気間隙を導入することなく、50μL未満、40μL未満、30μL未満、25μL未満、20μL未満、15μL未満、10μL未満および5μL未満の溶出体積をカラムの頂部フリットに添加することができるように設計されている。
【0057】
プレートは8×12フォーマットに構成されるが、この形態に限定されるものではない。プレートは、任意の数の行および列を有することができる。プレートは、96ウェルプレート型フォーマットで処理されることが可能であるか、またはプレートからのチップカラムは、1~2、1~4、1~8、1~12、または1~96ピペットポンプフォーマットで処理されることが可能である。プレートから取り外されたチップは、2、4、8、および12チャネルピペットフォーマットのマルチチャンネルピペットヘッドによって処理され得る。
【0058】
収集ウェルの底部に対するカラムの端部(または底部フリット)は、350μL収集プレートの底部の約5mm以内に配置され、よって高流量による飛散や、エアロゾル形成を防ぐ。
【0059】
96カラムプレート用の頂部フリットおよび溶出フリットの直径は、0.1~4mmの範囲、および1~2mmの範囲にある。
【0060】
カラムは、環状隆起部によってプレートフォーマットにシールすることができ、一方、個々のチップカラムはプレートから取り外し可能でもある。
【0061】
5mg以下のベッド質量でのプレート固相抽出の場合、試料の添加はろ過助剤(filtration aid)を使用して実施される。
【0062】
任意選択のモジュール式デュアルカラムフォーマットは、
a)カラムをプレートにシールするためのカラム本体上の環状隆起部と、
b)プレートにおけるカラム頂部の移動を制限するためのカラムの頂部における平坦なエッジとを有し、
c)そこでカラムはプレートから取り外され、ピペッティングヘッドを有し得る、
96同時プレートフォーマットおよび1~96ピペットチップカラムフォーマットと適合するチップカラムを使用した。
【0063】
本発明による方法によって調製された試料は、後続のステップで、例えば、LC-MSまたはLC-MS/MSなどによる質量分析法により、さらに分析され得る。
【0064】
図面の詳細な説明
図1は、底部フリット3および頂部フリット4と、底部フリット3と頂部フリット4との間に配された吸着剤5とを含む本発明による単一の微量溶出カラム1を示している。プレートにおけるY方向のその配置を可能にするように配された隆起部7がはっきりと見える。カラム1は、常置されていてもよいし、また任意選択でそのプレートから取り外し可能であってもよく、ピペットチップカラムとして使用されてもよい。上記の詳細な説明の項でさらに詳細に論じたように、小質量カラムの平均直径は1~4mmの範囲にあり得る。
【0065】
図2は、本発明による単一の微量溶出カラムを示しており、
図1に記載された特徴に加えて任意選択のフィルターフリット6も示している。フィルターフリット6は、試料に含まれた大きな粒子をろ過してチップカラムの詰まりを防止するために、異なるサイズの目開きを有し得る。
【0066】
図3a~
図3bは、カラー8および平坦面9を含む、本発明による微量溶出カラムを示している。
【0067】
図4a~
図4cは、隆起部7を受容するように配された手段11を含む、本発明によるプレート10を示している。
【0068】
図5a~
図5bは、本発明によるプレート10を例示的な側面図(
図5a)および例示的な上面図(
図5b)によって示している。示したプレートは、トップダウンカラム流によるカラムの負荷、洗浄、および溶出のために構成されている。小溶出体積を用いる場合に、空気がカラムベッドに進入することが防止され得る。カラム1はプレートに組み込まれてもよく、またはカラム1は取り外し可能であってもよい。任意選択のモジュール式デュアルカラムフォーマットは、96同時プレートフォーマットおよび1~96ピペットチップカラムフォーマットと適合し、各カラム1をプレート10にシールするためにカラム本体2上に環状隆起部7を有するチップカラムを使用する。プレート10の頂部におけるカラムのX方向の移動を制限するために、各カラム1の頂部には平坦面が有利に配され得る。
【0069】
図6は、ここでは親水性の壁13および親水性頂部フリット4を有した本発明によるカラム1の頂部にバッファーがどのように加えられ得るかを示している。バッファーは、親水性壁および親水性頂部フリット4を有したカラム1の頂部に加えられる。液滴15は、液体のアリコートとカラムの頂部との間における空気間隙の形成を防止するように、カラム壁の側面を下って進むであろう。液滴は、親水性頂部フリット4に触れ、頂部フリット4を覆う。
【0070】
図7は、ここでは疎水性の壁13および親水性頂部フリット4を有した本発明によるカラム1の頂部にバッファーがどのように加えられ得るかを示しており、この場合、液滴16の直径は頂部フリット4の上方のカラムの直径よりも小さい。バッファーは、疎水性の壁および親水性頂部フリット4を有したカラム1の頂部に加えられ、そこでは液滴15の直径はフリットの上方のカラムの直径よりも小さい。液体がカラムの頂部に加えられると、液滴15が形成される。液滴15が壁に触れて空気間隙を形成することはない。
【0071】
図8は、ここでは疎水性の壁13および親水性頂部フリット4を有した本発明によるカラム1の頂部にバッファーがどのように加えられ得るかを示しており、この場合、液滴15は頂部フリット4に触れている。液滴はカラムの壁に沿って流れて、頂部フリット4の頂部を覆っている。バッファーは、壁13および親水性頂部フリット4を有したカラムの頂部に加えられ、そこで液滴はフリットに触れる。液滴15は、頂部フリット4の頂部および吸着剤5の頂部を覆う。空気間隙は形成されない。分注管14は、液体が分注されるにつれて上昇され得る。
【0072】
図9は、実施例4bに従って得られた被分析物回収性能を、2mgのLVFカラムと従来の10mgの固定ウェルプレートとを比較して示している。より詳細には、被分析物は、X軸上において左から右に、18-ヒドロキシコルチコステロン、コルチゾン、コルチゾール、11-デオキシコルチゾール、コルチコステロン、21-デオキシコルチゾール、エストラジオール、DHEA、エストロン、アンドロステンジオン、11-デオキシコルチコステロン、17-ヒドロキシプロゲステロン、プロゲステロン、17-ヒドロキシプレグネノロン、プレグネノロン、テストステロン、DHTのように順序付けられており、Y軸上に%回収率がプロットされている。所与の被分析物セットについて、回収率の比較は、2つのフォーマット間において同等であり、すべての標的物について>60%の回収率をもたらしている。
【0073】
図10は、実施例4bに従って得られた相対標準偏差(RSD)性能を、2mgのLVFカラムと従来の10mgの固定ウェルプレートとを比較して示している。より詳細には、被分析物は、X軸上において左から右に、18-ヒドロキシコルチコステロン、コルチゾン、コルチゾール、11-デオキシコルチゾール、コルチコステロン、21-デオキシコルチゾール、エストラジオール、DHEA、エストロン、アンドロステンジオン、11-デオキシコルチコステロン、17-ヒドロキシプロゲステロン、プロゲステロン、17-ヒドロキシプレグネノロン、プレグネノロン、テストステロン、DHTのように順序付けられており、Y軸上に%RSDがプロットされている。所与の被分析物セットについて、RSDは、1つの事例以外のすべてにおいて2mgのLVFフォーマットの方が優れている。双方のフォーマットとも、すべての被分析物について10%未満のRSDをもたらしている。これは、実施例4bによって提示されるようなデータの再現性を示している。
【0074】
図11は、実施例4cに従って得られた被分析物回収性能を、2mgのLVFカラムフォーマットについての最小溶出体積を比較して示している。より詳細には、被分析物は、X軸上において左から右に、18-ヒドロキシコルチコステロン、コルチゾン、コルチゾール、11-デオキシコルチゾール、コルチコステロン、21-デオキシコルチゾール、エストラジオール、DHEA、エストロン、アンドロステンジオン、11-デオキシコルチコステロン、17-ヒドロキシプロゲステロン、プロゲステロン、17-ヒドロキシプレグネノロン、プレグネノロン、テストステロン、DHTのように順序付けられており、Y軸上に%回収率がプロットされている。一般に許容できる回収率は、わずか20μLの溶出体積で得られる。しかしながら、30μL溶出体積が回収率の増大を示し、50μLと同等の性能を示している。これは、この被分析物パネルが、結果を悪化させることなく、わずか30μLで溶出され得ることを示している。
【0075】
図12は、実施例4cに従って得られた相対標準偏差(RSD)性能を、2mgのLVFカラムフォーマットについての最小溶出体積を比較して示している。より詳細には、被分析物は、X軸上において左から右に、18-ヒドロキシコルチコステロン、コルチゾン、コルチゾール、11-デオキシコルチゾール、コルチコステロン、21-デオキシコルチゾール、エストラジオール、DHEA、エストロン、アンドロステンジオン、11-デオキシコルチコステロン、17-ヒドロキシプロゲステロン、プロゲステロン、17-ヒドロキシプレグネノロン、プレグネノロン、テストステロン、DHTのように順序付けられており、Y軸上に%RSDがプロットされている。すべての溶出体積が13%未満のRSDをもたらしている。所与の被分析物セットについて、すべての溶出体積に対して同等のRSDが示されている。これは、実施例4cによって提示されるようなデータの再現性を示している。
【0076】
図13は、実施例4dに従って得られた被分析物ピーク面積性能を、2mgのLVFカラムと従来の10mgの固定ウェルプレートとを比較して示している。データは、各フォーマットについて、各フォーマットから戻された溶出体積の直接注入、1:1希釈、または蒸発させた後に等価な「溶出」体積に再調製する標準手順を使用して比較した。溶離剤の直接注入、1:1希釈したもの、蒸発させ再調製したものを比較したデータが、2mgのLVFフォーマットおよび10mgのFWPフォーマットについてそれぞれ提示されている。より詳細には、被分析物のカットダウンパネル(cut down panel)は、X軸上において左から右に、18-ヒドロキシコルチコステロン、コルチゾン、11-デオキシコルチゾール、21-デオキシコルチゾール、エストラジオール、アンドロステンジオン、11-デオキシコルチコステロン、17-ヒドロキシプロゲステロン、プロゲステロン、17-ヒドロキシプレグネノロン、プレグネノロン、DHEAS、テストステロン、DHTのように順序付けられており、Y軸上にピーク面積応答がプロットされている。データは、各実験の2mgのLVPプレートについてピーク面積の増大を示している。
【0077】
図14は、実施例4dに従って得られた被分析物ピーク面積性能を、2mgのLVFカラムと従来の10mgの固定ウェルプレートとを比較して示している。データは、前に
図13に示したように、各フォーマットについて蒸発させた後に等価な「溶出」体積に再調製したものを使用して比較した。より詳細には、被分析物のカットダウンパネルは、X軸上において左から右に、18-ヒドロキシコルチコステロン、コルチゾン、11-デオキシコルチゾール、21-デオキシコルチゾール、エストラジオール、アンドロステンジオン、11-デオキシコルチコステロン、17-ヒドロキシプロゲステロン、プロゲステロン、17-ヒドロキシプレグネノロン、プレグネノロン、DHEAS、テストステロン、DHTのように順序付けられており、Y軸上にピーク面積応答がプロットされている。データは、従来の10mg固定ウェルプレートフォーマットと比較して、2mgのLVPフォーマットについてピーク面積の増大を示している。
【0078】
図15は、実施例4dに従って得られた被分析物ピーク面積性能を、2mgのLVFカラムと従来の10mgの固定ウェルプレートとを比較して示している。データは、前に
図13に示したように、各フォーマットから戻された溶出体積の直接注入を使用して比較した。より詳細には、被分析物のカットダウンパネルは、X軸上において左から右に、18-ヒドロキシコルチコステロン、コルチゾン、11-デオキシコルチゾール、21-デオキシコルチゾール、エストラジオール、アンドロステンジオン、11-デオキシコルチコステロン、17-ヒドロキシプロゲステロン、プロゲステロン、17-ヒドロキシプレグネノロン、プレグネノロン、DHEAS、テストステロン、DHTのように順序付けられており、Y軸上にピーク面積応答がプロットされている。データは、従来の10mg固定ウェルプレートフォーマットと比較して、2mgのLVPフォーマットについてピーク面積の増大を示している。
【0079】
図16は、実施例4dに従って得られた被分析物ピーク面積性能を、2mgのLVFカラムと従来の10mgの固定ウェルプレートとを比較して示している。データは、前に
図13に示したように、水で1:1に希釈した各フォーマットから戻された溶出体積を用いて比較した。より詳細には、被分析物のカットダウンパネルは、X軸上において左から右に、18-ヒドロキシコルチコステロン、コルチゾン、11-デオキシコルチゾール、21-デオキシコルチゾール、エストラジオール、アンドロステンジオン、11-デオキシコルチコステロン、17-ヒドロキシプロゲステロン、プロゲステロン、17-ヒドロキシプレグネノロン、プレグネノロン、DHEAS、テストステロン、DHTのように順序付けられており、Y軸上にピーク面積応答がプロットされている。データは、従来の10mg固定ウェルプレートフォーマットと比較して、2mgのLVPフォーマットについてピーク面積の増大を示している。
【0080】
実験
本実施例は例示目的のみに提供され、添付する特許請求の範囲によって定義されるように本発明を限定すると解釈されるべきではない。以下および本出願の他の箇所に提供される参考文献はすべて、これにより参照によって本願に包含される。
【0081】
カラム:
以下の実施例で使用する本発明による低量フォーマット(LVF)カラムは、高純度ポリプロピレンから
図1に対応する形状に調製した。
【0082】
カラム寸法は次の通りであった:2 mg。
ここで使用するカラム内に配されたフリット(以下でスクリーンと表示)はすべて、標準方法に従ってナイロンから作られ、以下の特性を示した。
【0083】
底部フリットおよび頂部フリット:
25:19(細孔径(μm):%開口率(% open)として与えた)
フィルターフリット:
105:52(細孔径(μm):%開口率として与えた)
実施例に使用した吸着剤(以下でレジンと表示)は、別段の指示がない限り、Biotage(https://biotage.com/)から商業的に入手可能であった。吸着剤は、底部フリットと頂部フリットとの間のカラム内に、吸着剤と頂部フリットとの間に空間が実質的に残らなくなるまで装填した。
【0084】
実施例1:本発明による微量溶出カラムの流通性
実験準備および結論
図5に記載したようなプレートに配した
図2に記載したような低量フォーマット(LVF)カラムを、Biotage(登録商標)Extrahera(商標)(https://biotage.com/)上において3連で(in triplicate)処理して、流通特性を決定した。
【0085】
様々な頂部スクリーンおよび底部スクリーンを、EVOLUTE ABN 20μmおよび30μm材料の粒子サイズに基づいて調査した。
【0086】
最短処理時間および最低加圧力は、ABN 30 μmレジンを使用して観測された。双方のレジンについて、最短処理時間および最低圧力は、一重の頂部「105:52」スクリーンを使用して観測され(しかしながら差は多くの場合に最小限であった)、処理時間はpressure+において手動で実施した場合よりも速かった。
【0087】
材料
EVOLUTE ABN 20μmおよび30μm、5μLをPhyNexus PhyTips(2mg)(https://phynexus.com/)に提供した。底部フリット、頂部フリット、および頂部フリットの上のフィルターフリットは、本明細書に記載したように配した。
【0088】
以下において、低量フォーマット(Low Volume Format)の略語である「LVF」という用語は、「本発明の微量溶出カラム」という用語と交換可能に使用される。本発明の微量溶出カラムが、並列処理用のベースプレートに固定される(取り外し不可である)ように配された場合、それは「LVFウェル」と表示される場合もある。
【0089】
【0090】
頂部スクリーンフリットの直径は0.120インチであり、底部スクリーンフリットの直径は0.086インチであった。上記直径は外径であり、約0.020インチのカラム壁厚を含んでいる。有効フリット径の直径を計算するためには、各直径から0.040インチが引かれる。
【0091】
方法
各粒子径およびスクリーン形態について3連のLVFウェルをBiotage LVFベースプレート(
図4および
図5)のA行に配置した。
【0092】
試料
ヒト健常者から得た尿試料を血漿試料用の標準手順に従って処置した。
【0093】
LVFウェルは、Biotage EVOLUTE ABNを使用してExtraheraにおいて手動モードで処理した。使用した20μmチップのセットに対して実行した場合に、これが流れを開始すると判断されたので、2.0バールの陽圧設定値をすべてのステップに用いた。圧力を最終溶出ステップの前の30秒間に5.0バールに上昇させたが、これによりチップから落ちる付加的な滴は生じなかった。
【0094】
【0095】
流れは、圧力ヘッドが下がるときから各チップの最後の完全な滴りが落ちるまでの時間を測定し、溶媒を通過させる3つのチップの中で最も早いのものから3つの中で最も遅いものまでの範囲を測定することによって判断した。これらの時間は、各ステップをビデオ撮影し、フィルムを再検討することにより各チップを個々に監視することによって、正確に決定した。チップの選択物からの近接画像も様々な時点で撮影した。いくつかの溶媒は、より見やすくするためにわずかに染色したが、これは、時折、チップ媒体において色の濃縮を生じた。
【0096】
観察
a)ABN 30μm、5μL PhyTip LVF Extrahera処理
チップはすべて2バールの陽圧を用いて難なく処理された。すべての種類を同時に考察すると、チップの種類によって流れの差は全体的にほとんどなかったが、30μmは対応する20μの別形より速かった。個々のバッチを検討すると、一重スクリーンのチップは、二重スクリーンよりもごくわずかだけ速く溶出しており、105:52チップは25:19等価物よりわずかに速く溶出している。差が最大化される抽出手順においてさらにその後、それが流速に対して有する影響が大きくなる可能性は低い。
【0097】
【0098】
b)ABN 20μm、5μL PhyTip LVF Extrahera処理
チップはすべて2バールの陽圧を用いて難なく処理された。すべての種類を同時に考察すると、チップの種類によって流れの差は全体的にほとんどなかったが、20μmチップはより遅かった。個々のバッチを検討すると、一重スクリーンのチップは、二重スクリーンよりもごくわずかだけ速く溶出しており、105:52チップは25:19等価物よりわずかに速く溶出している。差が最大化される抽出手順においてさらにその後、それが流速に対して有する影響が大きくなる可能性は低い。
【0099】
【0100】
実施例2:微量溶出カラムの市販製品との比較
要約
2つの型の前処理した血漿を使用して、低量フォーマット(LVF)チップおよびOASIS μElutionウェルを処理し、流通特性を決定した。
【0101】
遠心分離あり/なしの新鮮血漿および遠心分離ありの老化血漿(aged plasma)を使用して、典型的な流通特性を観察した。
【0102】
材料
EVOLUTE ABN 30μm、5μL、105μm + 25μm頂部スクリーン(PTE 93-05-XX)
OASIS HLB μElution 30μm
WBS 血漿 #5260(老化、高沈殿)
WBS 血漿 #413(新鮮、低沈殿)
(WBS=Welsh Blood Service)
方法
血漿の各バッチのアリコートを6500xgで10分間遠心分離機にかけた。上澄み液を新たな容器に移して、いかなる沈殿物も廃棄した。
【0103】
遠心分離なし(-C)および遠心分離あり(+C)の血漿の各バッチのアリコートを1%のギ酸で1:1に希釈した。
【0104】
LVFカラムをBiotage LVFベースプレートに配置した。前処理した血漿(-C/+C)の各バッチの200μLサブアリコートを、2連のLVFチップ(利用可能な数のため)および3連のμElutionウェルに移した。
【0105】
LVFカラムは、Pressure+ 96 加圧式サンプル処理マニホールド(positive pressure manifold)で、最大流量(粗製)設定を用いて処理した。μElutionプレートは、可変流量(精密)設定を用いて処理した。処理圧力および時間を記録した。
【0106】
【0107】
μElutionウェルの処理はより容易であり、負荷を完了し、流れは精密設定を用いて予想通りに終わった。粗製設定を用いてLFVチップを処理すると、完了したチップは構成要素の「バブルポイント」を超えた。
【0108】
実施例3:SPE
本実施例は、従来技術のカラム(それぞれ30mgおよび10mg)または本発明によるカラム(2mg LVF)のいずれかを使用した固相抽出(SPE)によって調製した試料に対して実施したLC-MSで得られた様々な被分析物の固相抽出(SPE)回収率について記載する。
【0109】
この実施例は、低溶出体積を用いて本発明による微量溶出カラムで得られる高い回収率を示すように設定した。材料および方法に記載したLVFカラムを使用した。
【0110】
試料は、英国のWelsh Blood Serviceからの廃棄ヒト血漿であった。
【0111】
実施例3a:ABN Mix 9のLC-MS分析
この実施例において、Mix 9は、低溶出体積SPEプレートの回収率決定のための、酸、塩基性および中性薬物:アセトアミノフェン(中性薬物)、ナルトレキソン、メトプロロール、ミアンセリン(塩基性薬物)、プレドニゾロン(中性(netural)ステロイド)、ケトプロフェン、ワルファリン、スリンダク、インドメタシン(酸性薬物)の内部試験混合物である。
【0112】
固相レジン:EVOLUTE ABN
方法
1.コンディショニングを行う:MeOH
2.平衡化する:0.1%ギ酸水溶液
3.負荷する:200μL中に5ng(1:1、血漿:1%ギ酸)
4.洗浄する:95/5 H2O/MeOH
5.溶出する:50μl MeOH
6.乾燥させる:空気流
7.再調製する:1mLの移動相(80/20 H2O/MeOH)
8.Waters Acquity UPLCをPremier XE トリプル四重極型質量分析計に接続して、注入量10μLで分析する。
9.内部標準および外部標準を使用してデータ解析。
【0113】
【0114】
【0115】
実施例3b
50μL未満の単一アリコートを用いて被分析物を溶出する以外は、2mgのLVFでの実施例3aと同じ。アリコートは、被分析物の溶出において、20μl、30μl、40μlまたは45μlのメタノールの単一アリコートで好結果である。
【0116】
実施例3c
25μLバッファーの単一アリコートを、疎水性壁および親水性フリットを有したプレートカラムの頂部に加える以外は、2mgのLVFでの実施例1と同じ。親水性壁により、試料、洗浄溶液、および溶離剤がカラムに加えられると、液体はカラムの壁を下って進み、空気間隙を低減する。カラムが処理される際に、空気がカラムベッドにほとんど導入されない。
【0117】
実施例3d
25μLバッファーの単一アリコートを疎水性壁および親水性フリットを有したプレートカラムの頂部に加え、そこでは液滴の直径はフリットの上方のカラムの直径よりも小さいこと以外は、2mgのLVFでの実施例1と同じ。本プロセスは、液体がカラムに導入される際にカラムへの空気間隙の導入を防止する。
【0118】
実施例3e
25μLバッファーの単一アリコートを、疎水性壁および親水性フリットを有したプレートカラムの頂部に加え、そこで液滴がフリットに触れること以外は、2mgのLVFでの実施例1と同じ。アリコートは1滴、2滴またはそれ以上の液滴で加えられて流れ、カラムベッドのフリットの頂部を覆う。本プロセスは、液体がカラムに導入される際にカラムへの空気間隙の導入を防止する。
【0119】
実施例4-頂部フリットおよび底部フリットを有した微量溶出カラム
以下の実施例で使用する本発明による頂部フリットおよび底部フリットを有した(しかしフィルターフリットはない)低量フォーマット(LVF)カラムを高純度ポリプロピレンから
図1に対応する形状に調製した。
【0120】
カラム寸法は次の通りであった:2mg。
ここで使用するカラムに配されたフリット(以下でスクリーンと表示)はすべて、標準方法に従って作られ、以下の特性を示した:
フリット:
底部: 15:10ナイロン(細孔径(μm):%開口率として与えた)
頂部: 33:21ポリエステル(細孔径(μm):%開口率として与えた)
実施例に使用した吸着剤(以下でレジンと表示)は、別段の指示がない限り、Biotage(https://biotage.com/)から商業的に入手可能であった。吸着剤を底部フリットと頂部フリットとの間のカラム内に充填床として装填し、頂部フリットの直径に従って吸着剤と頂部フリットとの間に若干の空間を許容した。
【0121】
実施例4a:SPE
本実施例は、従来技術のカラム(10mg)または本発明によるカラム(2mg LVF)のいずれかを使用した固相抽出(SPE)によって調製した試料に対して実施したLC-MS/MSで得られた様々な被分析物の固相抽出(SPE)回収率について記載する。
【0122】
この実施例は、低溶出体積を用いて本発明による微量溶出カラムで得られる高い回収率を示すように設定した。材料および方法に記載したLVFカラムを使用した。
【0123】
試料は、米国のGolden West Biologicalsからの処理済み(stripped)ヒト血清であった。標的パネルの内生的な性質により、この実施例では処理済み血清を使用した。分析は、再現性について、ブランクの血清(n=1)、次いで抽出前(n=7)および抽出後(n=4)にスパイクされた血清を比較した。
【0124】
実施例4b:内因性ステロイドホルモンのLC-MC分析
この実施例における、低溶出体積SPEプレートの回収率決定のための、内因性ステロイドホルモンのパネルは、18-ヒドロキシコルチコステロン、コルチゾン、コルチゾール、11-デオキシコルチゾール、コルチコステロン、21-デオキシコルチゾール、エストラジオール、DHEA、エストロン、アンドロステンジオン、11-デオキシコルチコステロン、17-ヒドロキシプロゲステロン、プロゲステロン、17-ヒドロキシプレグネノロン、プレグネノロン、テストステロン、DHTである。
【0125】
固相レジン:EVOLUTE ABN
方法
1.コンディショニングを行う:MeOH
2.平衡化する:0.1%ギ酸水溶液
3.負荷する:200μL中に1ng(1:1、血漿:1%ギ酸)、10ng/mLに等価。
4.洗浄する(1):H2O
5.洗浄する(2):60/40(v/v)H2O/MeOH
5.溶出する:20~50μl MeOH
6.乾燥させる:空気流
7.再調製する:200μLの50/50 H2O/MeOH
8.島津製作所Nexera UHPLCを8060トリプル四重極型質量分析計に接続し、注入量5μLで、分析する。
9.内部標準および外部標準を使用してデータ解析。
【0126】
【0127】
【0128】
回収率データおよびRSDを
図9および
図10にそれぞれ示す。
実施例4c
50μL未満の単一アリコートを使用して被分析物を溶出する以外は、2mgのLVFでの実施例4bと同じ。被分析物の溶出は、20μl、30μl、40μlまたは50μlのメタノールによる溶媒の単一アリコートにおいて好結果である。
【0129】
【0130】
【0131】
本発明によって可能となる非常に小さな溶出体積を用いた結果をステロイドパネルとして
図10および
図11にそれぞれ示す。
【0132】
ベータ実施例4d
30μLの単一アリコートを使用して被分析物を溶出する2mgのLVFでの同じ実施例4bを、10mgのFWPについて150μLの場合と比較した。
図13~
図16では、蒸発させた後に30μLまたは150μLでそれぞれ再調製する、注入前にH
2Oで抽出物を1:1に希釈する、MeOH溶出物を直接注入するという標準的方法を用いて、双方のフォーマットから戻ってきた被分析物ピーク面積を比較している。
【国際調査報告】