(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-31
(54)【発明の名称】ナノ結晶
(51)【国際特許分類】
C01G 21/21 20060101AFI20220524BHJP
C01B 19/04 20060101ALI20220524BHJP
C09K 11/66 20060101ALI20220524BHJP
C09K 11/88 20060101ALI20220524BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20220524BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20220524BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20220524BHJP
【FI】
C01G21/21
C01B19/04 B
C09K11/66
C09K11/88
C09K11/08 A
B82Y40/00
B82Y30/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560175
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(85)【翻訳文提出日】2021-11-22
(86)【国際出願番号】 EP2020058346
(87)【国際公開番号】W WO2020193623
(87)【国際公開日】2020-10-01
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521438836
【氏名又は名称】クオンタム サイエンス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100176094
【氏名又は名称】箱田 満
(72)【発明者】
【氏名】パン,ハオ
(72)【発明者】
【氏名】リ,ヂィエ
【テーマコード(参考)】
4H001
【Fターム(参考)】
4H001CA02
4H001CF01
4H001XA16
4H001XA34
4H001XA52
4H001XA82
4H001XB62
(57)【要約】
本発明は、カルコゲン化鉛ナノ結晶を調製するための鉛(IV)含有化合物の使用、ならびに低費用で、サイズ制御可能であり、スケーラブルな方法で広帯域カルコゲン化鉛ナノ結晶を製造する方法であって、その方法が、鉛(IV)含有化合物を有機酸およびカルコゲン含有試薬と接触させるステップを含む、方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルコゲン化鉛ナノ結晶を調製するための鉛(IV)含有化合物の使用。
【請求項2】
前記鉛(IV)含有化合物が、酸化鉛(II、IV)を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記カルコゲン化鉛ナノ結晶が、500~4500nmの範囲の、好ましくは500~2400nmの範囲の吸収を表す、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
カルコゲン化鉛ナノ結晶を製造する方法であって、前記方法が、鉛(IV)含有化合物を有機酸およびカルコゲン含有試薬と接触させるステップを含む、方法。
【請求項5】
前記鉛(IV)含有化合物が、酸化鉛(II、IV)を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記鉛(IV)含有化合物を、前記有機酸と接触させて鉛塩を生成し、前記鉛塩を前記カルコゲン含有試薬と接触させる、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
溶媒の存在下で実施され、好ましくは、前記溶媒が、無極性溶媒、例えば、オクタデセン、または極性溶媒、例えば、DMF、NMP、DMAc、THF、アセトンを含む、請求項4から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
第1の溶媒中に前記鉛(IV)含有化合物および有機酸の第1の溶液を形成するステップ、
第2の溶媒中に前記カルコゲン含有試薬の第2の溶液を形成するステップ、
120~250℃の範囲の第1の温度まで前記第1の溶液を加熱し、前記第1の溶液を前記第1の温度で所定の時間維持するステップ、
20~100℃の範囲の低減された温度まで前記第1の溶液の温度を下げるステップ、
前記低減された温度で前記第2の溶液を前記第1の溶液に添加して反応混合物を生成するステップ、
前記反応混合物を20~300℃の温度で所定の時間維持するステップ
を含む、請求項4から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
第1の溶媒中に前記鉛(IV)含有化合物および有機酸の第1の溶液を形成するステップ、
120~250℃の範囲の第1の温度まで前記第1の溶液を加熱し、前記第1の溶液を前記第1の温度で所定の時間維持するステップ、
前記第1の溶液を50~150℃の範囲の、第2の温度で用意するステップ、
前記第2の温度で前記カルコゲン含有試薬を前記第1の溶液に添加して反応混合物を生成するステップ、
前記反応混合物を50~300℃の温度で所定の時間維持するステップ
を含む、請求項4から7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
例えば、クエンチ溶媒を前記反応混合物に添加することによって、前記反応混合物をクエンチするステップをさらに含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
カルコゲン化鉛ナノ粒子を精製するステップをさらに含む、請求項8から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記有機酸が、脂肪酸、好ましくはオレイン酸である、請求項4から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記カルコゲン含有試薬が、酸素含有試薬、硫黄含有試薬、セレン含有試薬、およびテルル含有試薬、およびその混合物から選択される、請求項4から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記カルコゲン含有試薬が、ビス(トリメチルシリル)スルフィドを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記カルコゲン含有試薬が、チオアセトアミドを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記カルコゲン含有試薬が、トリ-n-オクチルホスフィンセレニド(TOPSe)およびジフェニルホスフィン(DPP)を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記鉛塩を、20~100℃、好ましくは30~60℃の温度で前記カルコゲン含有試薬と接触させる、請求項6または7に記載の方法。
【請求項18】
前記鉛塩を、50~300℃、好ましくは50~180℃の温度で前記カルコゲン含有試薬と接触させる、請求項6または7に記載の方法。
【請求項19】
調製されるナノ結晶のサイズを制御するように反応条件を変更するステップを含む、請求項4から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
変更される前記反応条件が、以下のうちの1つまたは複数、
(i)溶媒の種類
(ii)溶媒の量
(iii)有機酸の種類
(iv)有機酸の量
(v)反応物(特にカルコゲン含有試薬)の添加モード
(vi)反応温度
(vii)反応時間
(viii)Pbのカルコゲン含有試薬に対する比、および
(ix)第2の溶媒の添加
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ナノ結晶の生成の進展をモニターするように、光学的性質をモニターするステップを含む、請求項4から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記光学的性質が、UV-可視-近赤外吸収スペクトルである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ナノ結晶が、量子ドットを含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の、使用または方法。
【請求項24】
請求項4から22のいずれかに記載の方法で得られる、1種または複数の(好ましくは複数の)カルコゲン化鉛ナノ結晶。
【請求項25】
請求項4から22のいずれかに記載の方法で得られるカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物。
【請求項26】
2~20nmの範囲の平均粒径、および25%未満の相対的サイズ分散度を有する、ナノ結晶を含むカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物。
【請求項27】
約500~約4500nmの範囲、好ましくは約500~約2400nm、例えば約530~約2400nm、例えば約530~1600nmの範囲の吸収を表す、請求項26に記載のカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物。
【請求項28】
600~4500nmの範囲、好ましくは600~2500nmの範囲の発光を表す、請求項26または27に記載のカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物。
【請求項29】
250nm未満、好ましくは230nm未満、好ましくは130nm未満、好ましくは110nm未満の吸収半値幅(FWHM)値、および250nm未満、好ましくは230nm未満、好ましくは150nm未満、好ましくは110nm未満の発光半値幅(FWHM)値を表す、請求項26から28のいずれかに記載のカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物。
【請求項30】
10%よりも大きい、好ましくは20%よりも大きい、好ましくは40%よりも大きい、好ましくは50%よりも大きい量子収率(QY)を表す、請求項26から29のいずれかに記載のカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物。
【請求項31】
約2~約20nmの範囲、好ましくは約2~約17nmの範囲、好ましくは約2~約10nmの範囲の平均粒径を有する、請求項26から30のいずれかに記載のカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物。
【請求項32】
カルコゲン化鉛ナノ結晶を、0.001重量%よりも多く、好ましくは0.01重量%よりも多く、好ましくは0.1重量%よりも多く、好ましくは1重量%よりも多く、好ましくは5重量%よりも多く含む、請求項26から31のいずれかに記載のカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物。
【請求項33】
最大吸収波長500~1000nmを有し、吸収FWHM115nm未満を有する、請求項26から32のいずれかに記載のカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物。
【請求項34】
前記ナノ結晶が1.2:1~4:1の範囲、好ましくは1.6:1~3:1の範囲の、鉛原子のカルコゲン原子に対するモル比を有する、請求項26から33のいずれかに記載のカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物。
【請求項35】
前記カルコゲン化鉛ナノ結晶が、PbS、PbSe、PbTe、またはその混合物、好ましくはPbSを含む、請求項26から34のいずれかに記載のカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物。
【請求項36】
請求項4から22のいずれかに記載の方法によって得ることができる、請求項26から35のいずれかに記載のカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物。
【請求項37】
請求項25から36のいずれかに記載のカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物を含む、IRセンサー、光検出器、センサー、太陽電池、バイオイメージングまたはバイオセンシングの組成物、太陽光発電システム、ディスプレイ、電池、レーザー、光触媒、分光計、注入組成物、電界効果トランジスタ、光発光ダイオード、フォトニックスイッチングデバイスまたは光スイッチングデバイスまたはメタマテリアル、ファイバー増幅器、光学利得媒質、光ファイバー、赤外LED、レーザー、および電界発光素子からなる群から選択されるデバイス。
【請求項38】
前記IRセンサーまたは前記光検出器が、例えば、携帯および家庭用品、自動車、医療、産業、防衛、または航空宇宙産業の用途における、3Dカメラおよび3Dタイム・オブ・フライトカメラなどの用途のために変更される、請求項37に記載のデバイス。
【請求項39】
前記バイオイメージングまたはバイオセンシングの組成物が、in vitro用途またはex vivo用途における、バイオラベルまたはバイオタグとして使用するために変更される、請求項37に記載のデバイス。
【請求項40】
前記赤外LEDおよび前記電界発光素子が、電気通信デバイス、暗視装置、太陽エネルギー変換、熱電用途、またはエネルギー発生用途において使用するために変更される、請求項37に記載のデバイス。
【請求項41】
請求項25から36のいずれかに記載のカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物を含む薄膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にカルコゲン化鉛ナノ結晶に関連する。特に、本発明は、鉛(IV)含有化合物を使用してカルコゲン化鉛ナノ結晶を製造する方法に関連する。本発明はまた、その方法によって得られるカルコゲン化鉛ナノ結晶およびカルコゲン化鉛ナノ結晶の使用にまでも及ぶ。
【背景技術】
【0002】
ナノ結晶は、例えば、その光学的性質を精巧に調整して所望の性質をもたらすことが可能である故に、多様な用途で有用である。ナノ結晶の光学的性質(例えば、光吸収特性および発光特性)は、そのサイズを制御することによって精巧に調整することができる。最大のナノ結晶は、最長の波長(および最も低い周波数)を生じるが、最小のナノ結晶は、より短い波長(およびより高い周波数)を生じる。ナノ結晶のサイズは、それらが製造される方法によって制御することができる。そのサイズを制御することによって、ナノ結晶の光学的性質を精巧に調整する、この能力により、ナノ結晶は、例えば、光検出器、センサー、太陽電池、バイオイメージングおよびバイオセンシング、太陽光発電、ディスプレイ、照明、セキュリティーおよび偽造、電池、有線高速通信、量子ドット(QD)レーザー、光触媒、分光計、注入組成物、電界効果トランジスタ、光発光ダイオード、レーザー、フォトニックスイッチングデバイスまたは光スイッチングデバイス、水素製造、ならびにメタマテリアルなどの、広範囲の用途における使用に好適なものとなる。
【0003】
鉛ナノ結晶は、それを製造する様々な方法がある通り、既知である。例えば、Hines et al., Adv. Mater. 2003, 15, No. 21, 1844-1849では、近赤外(例えば、800~1800nm)全域にわたって調整可能なバンドギャップを有する硫化鉛ナノ結晶を調製する方法が開示されている。硫化鉛ナノ結晶は、酸化鉛(II)(PbO)をオレイン酸と反応させてオレイン酸鉛を形成し、次いでビス(トリメチルシリル)スルフィドと反応させることによって調製することができる。しかし、原材料の酸化鉛(II)は、非常に高価であり、Hines等において記載された反応は、大規模で制御することが難しいことが分かった。したがって、Hines等において開示された方法は、鉛ナノ結晶の大規模生産に不適切である。
【0004】
Cademartiri et al., J. Phys.Chem. B., vol. 110, no. 2, 2006, 671-673では、塩化鉛(PbCl2)をオレイルアミンおよび元素硫黄と反応させる、硫化鉛ナノ結晶を調製する方法が開示されている。この方法で得られたナノ結晶は、精製することが難しく、1245~1625nmの限定されたピーク吸収を明示した。硫化鉛ナノ結晶で残った残留塩化鉛は、典型的には長い時間をかけて沈殿し、塩化鉛から高度に純粋な硫化鉛ナノ結晶を製造することを難しくする。したがって、Cademartiri等において開示された方法は、純粋、かつ極めて単分散の硫化鉛ナノ結晶を大規模で製造するのに不適切である。
【0005】
Hendricks et al., Science, 2015, 348, 1226-1230では、オレイン酸鉛を反応性二置換チオ尿素と反応させる、硫化鉛ナノ結晶を調製する方法が開示されている。この方法で調製された硫化鉛ナノ結晶は、850~1800nmの吸収ピークを表した。この方法は、ナノ結晶のサイズ(および吸収)をチオ尿素反応物の側鎖を変えることによって制御するので、大規模で実施するには複雑である。
【0006】
したがって、カルコゲン化鉛ナノ結晶を製造する、いくつかの方法が知られているが、これらの方法は、結晶サイズを容易に制御し、故にナノ結晶の光学的性質を精密に調整することが不可能である。既知の方法では、典型的には、広い吸収範囲を表すナノ結晶を提供することもできない。さらに、既知の方法は、大きな(例えば、商業的に有用な)規模でカルコゲン化鉛ナノ結晶を調製するには不適切である。
【0007】
したがって、大きな(例えば、商業的に有用な)規模で使用することができ、および/またはナノ結晶の光学的性質の精密な調整を可能にするように、調製されるナノ結晶のサイズを容易に制御することが可能である、カルコゲン化鉛ナノ結晶を調製する、別の方法を見い出すことが望ましい。また、広い吸収範囲を表すカルコゲン化鉛ナノ結晶をもたらす方法を提供することも望ましい。こうした方法は、広範な用途における使用に好適であるカルコゲン化鉛ナノ結晶を提供することになると考えられる。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、カルコゲン化鉛ナノ結晶またはカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物を調製するための鉛(IV)含有化合物の使用が提供される。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、カルコゲン化鉛ナノ結晶またはカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物を調製するための酸化鉛(II、IV)の使用が提供される。
【0010】
本発明の第3の態様によれば、カルコゲン化鉛ナノ結晶またはカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物を調製する方法であって、その方法が、鉛(IV)含有化合物を有機酸およびカルコゲン含有試薬と接触させるステップを含む、方法が提供される。
【0011】
本発明の第4の態様によれば、カルコゲン化鉛ナノ結晶またはカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物を調製する方法であって、その方法が、酸化鉛(II、IV)を有機酸およびカルコゲン含有試薬と接触させるステップを含む、方法が提供される。
【0012】
本発明の第5の態様によれば、本発明の、第3の態様または第4の態様による方法によって得られる、カルコゲン化鉛ナノ結晶の組成物が提供される。
【0013】
本発明の第6の態様によれば、本発明の第5の態様によるナノ結晶の組成物を含む薄膜が提供される。
【0014】
本発明の第7の態様によれば、本発明の第5の態様による組成物を含む、システムまたは組成物、例えば、光検出器、センサー、太陽電池、バイオイメージングもしくはバイオセンシングの組成物、太陽光発電システム、ディスプレイ、電池、レーザー、光触媒、分光計、注入組成物、電界効果トランジスタ、光発光ダイオード、フォトニックスイッチングデバイスもしくは光スイッチングデバイス、またはメタマテリアルが提供される。
【0015】
本発明の第8の態様によれば、上記ナノ結晶が、2~20nmの平均粒径および25%未満の相対的サイズ分散度を有するカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物が提供される。
【0016】
本発明の第8の態様によるナノ結晶組成物は、好ましくは、500~4500nmの範囲で、好ましくは、好適には500~2400nmの範囲で吸収波長を表す。
【0017】
本発明の第8の態様によるナノ結晶組成物は、好ましくは、600~4500nmの範囲で、好ましくは、好適には600~2500nmの範囲で発光波長を表す。
【0018】
本発明の第8の態様によるナノ結晶組成物は、好ましくは、250nm未満、好ましくは230nm未満、好ましくは130nm未満、好ましくは110nm未満の吸収半値幅(FWHM)値を表す。好ましくは、FWHM範囲は、10~250nm、好ましくは20~220nm、好ましくは50~150nm、好ましくは75~115nm、好ましくは80~110nmの範囲である。
【0019】
本発明の第8の態様によるナノ結晶組成物は、好ましくは、250nm未満、好ましくは230nm未満、好ましくは150nm未満、好ましくは110nm未満の発光半値幅(FWHM)値を表す。好ましくは、FWHM範囲は、10~250nm、好ましくは20~220nm、好ましくは30~150nm、好ましくは40~110nmの範囲である。
【0020】
本発明の第8の態様によるナノ結晶組成物は、好ましくは、10%よりも大きい、好ましくは20%よりも大きい、好ましくは40%よりも大きい、好ましくは50%よりも大きい、量子収率(QY)値を表す。
【0021】
本発明の第1の態様から第8の態様によれば、好ましくは、カルコゲン化鉛ナノ結晶またはカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物は、PbS、PbSe、PbTe、またはその混合物を含み、より好ましくはPbSまたはPbSeを含み、最も好ましくはPbSを含む。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の態様を説明するとき、使用される用語は、文脈上、別段の指示がない限り、以下の定義に従って解釈されるものである。
【0023】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上、明確な、別段の指示がない限り、単数の指示物および複数の指示物の両方を含める。例として、「ナノ結晶」は、1個のナノ結晶または2個以上のナノ結晶を意味する。例として、「鉛(IV)含有化合物」は、1個の鉛(IV)含有化合物または2個以上の鉛(IV)含有化合物を意味する。言語を構成することと併せて使用される数については、かかる数、またはかかる数よりも多いものを含む組成を含める。
【0024】
本明細書において、用語「含む(comprising)」、「含む(comprise)」、および「~からなる(comprised of)」は、「含める(including)」、「含める(include)」、または「含有する(containing)」、「含有する(contain)」と同義であり、包括的、または非限定型であり、追加の、記載されていない部材、要素、または方法ステップを排除しない。用語「含む(comprising)」、「含む(comprise)」、および「~からなる(comprised of)」はまた、用語「~で構成される(consisting of)」も含める。
【0025】
本明細書において、用語「および/または」は、2つ以上の項目のリストにおいて使用される場合、列挙された項目のいずれか1つが、それ自体で用いることができるか、または列挙された項目の2つ以上の任意の組み合わせで用いることができることを意味する。例えば、リストが、群A、群B、および/または群Cを含むものとして記載されているならば、リストは、A単独で、B単独で、C単独で、AおよびBを組み合わせて、AおよびCを組み合わせて、BおよびCを組み合わせて、またはA、B、およびCを組み合わせて含むことができる。
【0026】
本明細書において、明らかに別段の指示がない限り、全ての数、例えば、値、範囲、パーセントの量を表すものは、用語が明確に表されない場合であっても、語句「約」で前置きされるものとして読むことができる。
【0027】
本明細書において、用語「約」は、測定可能な値、例えば、パラメーター、量、経時的な期間などを示す場合、値を決定するために用いられるデバイスまたは方法の誤差の標準偏差を含める値を示す。用語「約」は、特定の値の、および特定の値から+/-10%以下、+/-5%以下、または+/-0.1%以下の変動を、こうした変動が本開示において適切に実施される限り、包含することを意味する。修飾語句「約」が示す値はまた、それ自体詳細に開示されていると理解されたい。
【0028】
端点による数値範囲の記述は、全ての整数、および適宜、その範囲内に属する小数部を含める(例えば、1~5は、例えば要素の数を示す場合、1、2、3、4を含めることができ、例えば測定を示す場合、1.5、2、2.75、および3.80を含めることができる)。端点の記述もまた、端点値それ自体も含める(例えば、1.0~5.0は1.0と5.0との両方を含める)。本明細書に記述された任意の数値範囲は、そこに属する全ての部分的な範囲を含めると意図される。
【0029】
別段の指示がない限り、本開示で使用される、技術用語および科学用語を含める、全ての用語は、本開示が帰属する分野の一技術者によって一般に理解される意味を有する。さらなるガイダンスによって、記載に使用される用語の定義は、本開示の教示をより良好に認識するために含められる。本明細書で参照される、全ての文献は、参照によって本明細書に援用される。
【0030】
本明細書において、別段の指示がない限り、用語「組成物」は、非限定型または限定型であってもよい。例えば、「組成物」は、特定の材料、すなわちナノ結晶、およびさらに不特定の材料を含むか、または特定の材料で構成することができ、すなわち、不特定の材料を実質的に除外する。
【0031】
本発明の好適な特徴をここで明記する。
【0032】
使用
第1の態様によれば、本発明は、カルコゲン化鉛ナノ結晶またはカルコゲン化鉛ナノ結晶の組成物を調製するための鉛(IV)含有化合物の使用を提供する。
【0033】
本明細書において、用語「鉛(IV)含有化合物」は、酸化状態+4の鉛を含める、任意の化合物を意味する。任意の好適な、こうした化合物を使用することができる。好適な鉛(IV)含有化合物の例には、それに限定されないが、酸化鉛(II、IV)(すなわち、Pb3O4)および酸化鉛(IV)(すなわち、PbO2)が挙げられる。
【0034】
好適には、鉛(IV)含有化合物は、酸化鉛(II、IV)もしくは酸化鉛(IV)、またはその組み合わせを含むことができる。好適には、鉛(IV)含有化合物は、酸化鉛(II、IV)を含むことができる。
【0035】
酸化鉛(II、IV)が、大規模(例えば、商業用)工程で、すなわち、産業規模の製造工程で容易に使用することができる、高度に反応性の、かつ安価な材料であるが故に、酸化鉛(II、IV)の使用は有利である。
【0036】
本明細書において、用語「カルコゲナイド」は、少なくとも1種のカルコゲンおよび少なくとも1種の陽性元素を含有する化学化合物を意味する。本明細書において、用語「カルコゲン」は、16族元素を意味する。例えば、「カルコゲナイド」は、酸化物、硫化物、セレン化物、テルル化物、またはポロニウム化物、および少なくとも1種の陽性元素またはカチオンを含有する化学化合物を含むことができる。「カルコゲン化鉛」は、酸化物、硫化物、セレン化物、テルル化物、またはポロニウム化物、および少なくとも1種の鉛カチオンを含有する化学化合物である。
【0037】
本明細書において、用語「ナノ結晶」は、100ナノメートル(nm)未満と測定される、少なくとも1つの次元を有する結晶性粒子を意味する。
【0038】
カルコゲン化鉛ナノ結晶は、量子ドット(QD)を含むか、または量子ドット(QD)で構成され得る。本明細書において、用語「量子ドット」によって、原子の性質を模倣することが可能な量子閉じ込め効果を表す半導体ナノ結晶が意味される。量子ドットは、ゼロ次元ナノ結晶としても既知であり得る。
【0039】
第2の態様によれば、本発明は、カルコゲン化鉛ナノ結晶を調製するための酸化鉛(II、IV)の使用を提供する。
【0040】
好適には、鉛(IV)含有化合物から調製される、カルコゲン化鉛ナノ結晶またはカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物は、可視範囲および近赤外範囲、好適には500~4500nmの範囲、好ましくは好適には500~2400nmの範囲の吸収を表す。
【0041】
好適には、鉛(IV)含有化合物から調製される、硫化鉛ナノ結晶または硫化鉛ナノ結晶組成物は、可視範囲および近赤外範囲、好適には500~2400nmの範囲の吸収を表す。
【0042】
好適には、鉛(IV)含有化合物から調製される、セレン化鉛ナノ結晶またはセレン化鉛ナノ結晶組成物は、可視範囲および近赤外範囲、好適には800~4500nmの範囲の吸収を表す。
【0043】
好適には、鉛(IV)含有化合物から調製される、テルル化鉛ナノ結晶またはテルル化鉛ナノ結晶組成物は、可視範囲および近赤外範囲、好適には500~2400nmの範囲の吸収を表す。
【0044】
好適には、鉛(IV)含有化合物から調製される、カルコゲン化鉛ナノ結晶またはカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物は、可視範囲および近赤外範囲、好適には600~4500nmの範囲、好ましくは好適には600~2500nmの範囲の発光を表す。
【0045】
好適には、鉛(IV)含有化合物から調製される、硫化鉛ナノ結晶または硫化鉛ナノ結晶組成物は、可視範囲および近赤外範囲、好適には600~2500nmの範囲の発光を表す。
【0046】
好適には、鉛(IV)含有化合物から調製される、セレン化鉛ナノ結晶またはセレン化鉛ナノ結晶組成物は、可視範囲および近赤外範囲、好適には900~4500nmの範囲の発光を表す。
【0047】
好適には、鉛(IV)含有化合物から調製される、テルル化鉛ナノ結晶またはテルル化鉛ナノ結晶組成物は、可視範囲および近赤外範囲、好適には600~2500nmの範囲の発光を表す。
【0048】
方法
第3の態様によれば、本発明は、カルコゲン化鉛ナノ結晶またはカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物を調製する方法であって、その方法が、鉛(IV)含有化合物を有機酸およびカルコゲン含有試薬と接触させるステップを含む、方法を提供する。
【0049】
本発明の第4の態様は、カルコゲン化鉛ナノ結晶またはカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物を調製する方法であって、その方法が、酸化鉛(II、IV)を有機酸およびカルコゲン含有試薬と接触させるステップを含む、方法を提供する。
【0050】
方法では、好適には、複数のカルコゲン化鉛ナノ結晶、すなわち、ナノ結晶組成物が調製される。本発明の方法によって調製されるカルコゲン化鉛ナノ結晶は、量子ドット(すなわち、結晶性量子ドット)を含むことができる。
【0051】
本発明の方法の様々な態様、例えば、特定の試薬および/または反応条件は、所望の光学的性質、例えば、所望の吸収および発光(例えば、ナノ結晶の特定の使用のため)を実現するように、所望のサイズのカルコゲン化鉛ナノ結晶を提供するために変えることができる。
【0052】
例えば、方法において使用される試薬(特に、カルコゲン含有試薬)は、所望の光学的性質、例えば、所望の吸収および発光(例えば、ナノ結晶の特定の使用のため)を実現するように、所望のサイズのカルコゲン化鉛ナノ結晶を提供するために変えることができる。
【0053】
例えば、方法の反応条件は、所望の光学的性質、例えば、所望の吸収および発光(例えば、ナノ結晶の特定の使用のため)を実現するように、所望のサイズのカルコゲン化鉛ナノ結晶を提供するために変えることができる。
【0054】
言い換えれば、本発明の使用および方法を用いて、サイズ調整可能な光学的性質を有するカルコゲン化鉛ナノ結晶を調製することができる。変えてもよい、試薬および/または反応条件の例は、本明細書で詳述される。
【0055】
本発明の方法は、調製されるナノ結晶のサイズを制御するように、すなわち、所望の光学的性質を有するナノ結晶を調製するように、特定の試薬を選択するステップを含むことができる。例えば、調製されるナノ結晶のサイズを制御するために選択することができる試薬は、特定のカルコゲン含有試薬であってもよい。
【0056】
本発明の方法は、調製されるナノ結晶のサイズを制御するように、すなわち、所望の光学的性質を有するナノ結晶を調製するように反応条件を変更するステップを含むことができる。例えば、調製されるナノ結晶のサイズを制御するために変更してもよい反応条件は、以下の1つまたは複数、
(i)溶媒の種類
(ii)溶媒の量
(iii)有機酸の種類
(iv)有機酸の量
(v)反応物(特にカルコゲン含有試薬)の添加モード
(vi)反応温度
(vii)反応時間
(viii)Pbのカルコゲン含有試薬に対する比、および
(ix)第2の溶媒の添加
を含む。
【0057】
調製されるナノ結晶のサイズを制御するために反応条件を変更することによって、光学的性質(吸収および発光)は、変更され、所望の性質に精巧に調整され得る。これにより、ナノ結晶の、サイズならびに光学的性質(吸収および発光)を精巧に調整する方法がもたらされる。
【0058】
好適には、本発明の方法は、可視範囲および近赤外範囲、例えば、約500~4500nmの範囲、好ましくは、好適には500~2400nmの範囲の吸収を表す、カルコゲン化鉛ナノ結晶およびその組成物を提供する。表される、特定の吸収は、本明細書で詳述されたように、使用される、特定の試薬および/または反応条件を変えることによって選択することができる。好適には、鉛(IV)含有化合物から調製される硫化鉛ナノ結晶は、可視範囲および近赤外範囲、好適には500~2400nmの範囲の吸収を表す。好適には、鉛(IV)含有化合物から調製されるセレン化鉛ナノ結晶は、可視範囲および近赤外範囲、好適には800~4500nmの範囲の吸収を表す。好適には、鉛(IV)含有化合物から調製されるテルル化鉛ナノ結晶は、可視範囲および近赤外範囲、好適には500~2400nmの範囲の吸収を表す。
【0059】
好適には、本発明の方法は、可視範囲および近赤外範囲、例えば、約600~4500nmの範囲、好ましくは、好適には600~2500nmの範囲の発光を表す、カルコゲン化鉛ナノ結晶およびその組成物を提供する。表される、特定の発光は、本明細書で詳述されたように、使用される、特定の試薬および/または反応条件を変えることによって選択することができる。好適には、鉛(IV)含有化合物から調製される硫化鉛ナノ結晶は、可視範囲および近赤外範囲、好適には600~2500nmの範囲の発光を表す。好適には、鉛(IV)含有化合物から調製されるセレン化鉛ナノ結晶は、可視範囲および近赤外範囲、好適には900~4500nmの範囲の発光を表す。好適には、鉛(IV)含有化合物から調製されるテルル化鉛ナノ結晶は、可視範囲および近赤外範囲、好適には600~2500nmの範囲の発光を表す。
【0060】
好適には、上記で詳述された使用に関して、任意の好適な鉛(IV)含有化合物を本発明の方法において使用することができる。好適には、鉛(IV)含有化合物は、酸化鉛(II、IV)もしくは酸化鉛(IV)、またはその組み合わせを含むことができる。好適には、鉛(IV)含有化合物は、酸化鉛(II、IV)を含むことができる。
【0061】
本明細書において、用語「有機酸」は、酸性の性質を有する有機化合物を意味する。本明細書において、用語「有機化合物」は、1個または複数の炭素原子が、他の元素、最も一般的には、水素、酸素、および/または窒素の原子に共有結合した、化学化合物を意味する。
【0062】
任意の好適な有機酸を、本発明の方法において使用することができる。好適には、有機酸は、カルボン酸、例えば、脂肪酸(例えば、飽和または不飽和の脂肪酸、好適には不飽和脂肪酸)を含む。好適なカルボン酸の例には、C4~C28脂肪酸、例えば、C12~C22脂肪酸が挙げられる。好適には、有機酸はオレイン酸を含むことができる。
【0063】
好適には、有機酸は、脂肪酸、好ましくはオレイン酸を含む。
【0064】
本明細書において、用語「カルコゲン含有試薬」は、少なくとも1種のカルコゲン、すなわち、少なくとも1種の16族元素またはそのアニオンを含む試薬を意味する。任意の好適なカルコゲン含有試薬を本明細書の方法において使用することができる。例えば、カルコゲン含有試薬は、酸素含有試薬、硫黄(イオウ)含有試薬、セレン含有試薬、およびテルル含有試薬(例えば、硫黄含有試薬、セレン含有試薬、およびテルル含有試薬、特に、硫黄含有試薬またはセレン含有試薬)、ならびにその混合物から選択することができる。
【0065】
好適には、カルコゲン含有試薬は、カルコゲン含有化合物または元素カルコゲン、およびその混合物を含むことができる。例えば、カルコゲン含有試薬は、カルコゲン含有化合物を含むことができる。例えば、カルコゲン含有試薬は元素カルコゲンを含むことができる。
【0066】
好適なカルコゲン含有化合物は、酸素、硫黄、セレン、もしくはテルルの原子、またはその組み合わせ、および少なくとも1種の好適な、別の元素の原子を含むことができる。より好適には、カルコゲン含有化合物は、硫黄、セレン、もしくはテルルの原子、またはその組み合わせ(好ましくは、硫黄もしくはセレンの原子)、および少なくとも1種の好適な、別の元素の原子を含むことができる。
【0067】
好適には、カルコゲン含有化合物は、酸素、硫黄、セレン、もしくはテルルのアニオン、またはその組み合わせ、および少なくとも1種の好適なカチオンを含むイオン化合物を含むことができる。より好適には、カルコゲン含有イオン化合物は、硫黄、セレン、もしくはテルルのアニオン、またはその組み合わせ(好ましくは、硫黄もしくはセレンのアニオン)、および少なくとも1種の好適なカチオンを含むことができる。
【0068】
好適な酸素含有試薬の例には、酸素ガスが挙げられる。
【0069】
好適な硫黄含有試薬の例には、ビス(トリアルキルシリル)スルフィド化合物(例えば、ビス(トリメチルシリル)スルフィド、ビス(トリエチルシリル)スルフィド、およびビス(トリプロピルシリル)スルフィド、特に、ビス(トリメチルシリル)スルフィド)、チオアセトアミド、トリ-n-オクチルホスフィンスルフィド、トリブチルホスフィンスルフィド、(アルキル置換、フェニル)チオ尿素化合物(例えば、N,N’-二置換チオ尿素およびN,N,N’-三置換チオ尿素)、アルキル置換チオアミド化合物、および元素硫黄が挙げられる。
【0070】
チオアセトアミドは、低毒性を有する、安価な試薬であり、大規模使用に特に好適なものにする。
【0071】
好適なセレン含有化合物の例には、ビス(トリメチルシリル)セレニド、トリ-n-オクチルホスフィンセレニド(TOPSe)、およびトリブチルホスフィンセレニドが挙げられる。
【0072】
ある種のホスフィン含有試薬は、TOPSeよりも、より高い反応性Se前駆体を形成し得るので、これらを使用することも好ましい。これらの前駆体は、核生成、成長を促進することにおいて、かつQDのサイズ分布を制御するために重要であり、穏やかな反応条件を可能にする、高いPbSe過飽和を維持することにおいて重要な役割を果たす。好ましいホスフィン含有試薬の例には、ジフェニルホスフィンセレニド(DPP)、ジ-オルト-トリルホスフィンセレニド(DOTP)、およびジフェニルホスフィンオキシドセレニド(DPPO)が挙げられる。
【0073】
好適なテルル含有化合物の例には、トリ-n-オクチルホスフィンテルリドが挙げられる。
【0074】
例えば、本発明の方法は、酸化鉛(II、IV)を脂肪酸およびカルコゲン含有試薬と接触させるステップを含むことができる。
【0075】
例えば、本発明の方法は、酸化鉛(II、IV)をオレイン酸およびカルコゲン含有試薬と接触させるステップを含むことができる。
【0076】
例えば、本発明の方法は、酸化鉛(II、IV)を脂肪酸およびカルコゲン含有化合物と接触させるステップを含むことができる。
【0077】
例えば、本発明の方法は、酸化鉛(II、IV)をオレイン酸およびカルコゲン含有化合物と接触させるステップを含むことができる。
【0078】
例えば、本発明の方法は、酸化鉛(II、IV)を、脂肪酸および酸素含有、硫黄含有、セレン含有、またはテルル含有(例えば、硫黄含有、セレン含有、もしくはテルル含有、特に硫黄含有、もしくはセレン含有)の試薬と接触させるステップを含むことができる。
【0079】
例えば、本発明の方法は、酸化鉛(II、IV)を、オレイン酸および酸素含有、硫黄含有、セレン含有、またはテルル含有(例えば、硫黄含有、セレン含有、もしくはテルル含有、特に硫黄含有、もしくはセレン含有)の試薬と接触させるステップを含むことができる。
【0080】
例えば、本発明の方法は、酸化鉛(II、IV)を、脂肪酸および酸素含有、硫黄含有、セレン含有、またはテルル含有(例えば、硫黄含有、セレン含有、もしくはテルル含有、特に硫黄含有、もしくはセレン含有)の化合物と接触させるステップを含むことができる。
【0081】
例えば、本発明の方法は、酸化鉛(II、IV)を、オレイン酸および酸素含有、硫黄含有、セレン含有、またはテルル含有(例えば、硫黄含有、セレン含有、もしくはテルル含有、特に硫黄含有、もしくはセレン含有)の化合物と接触させるステップを含むことができる。
【0082】
鉛(IV)含有化合物を有機酸およびカルコゲン含有試薬と接触させることは、それらが反応することを可能にするように、すなわち、カルコゲン化鉛ナノ結晶および/またはその組成物を調製することを可能にするように、これらの試薬を一つにまとめることを示す。
【0083】
好適には、鉛(IV)含有化合物を有機酸と接触させて鉛塩を生成し、鉛塩をカルコゲン含有試薬と接触させる。言い換えれば、鉛(IV)含有化合物を有機酸と接触させて、かつ反応させて鉛塩を形成する。こうして形成された鉛塩は、カルコゲン含有試薬と反応してカルコゲン化鉛ナノ結晶および/またはその組成物を形成する。鉛塩は、カルコゲン含有試薬と反応する前に単離することができるが、典型的にはそうすることは不必要である。鉛塩を単離せずに方法を実施することは、方法の容易な規模拡大を可能にするワンポット合成として方法を実施する利点をもたらす。
【0084】
前述された鉛塩の形成は、任意の好適な方法で、例えば、視覚的に、鉛塩が形成されるときの色の変化によってモニターすることができる。
【0085】
鉛(IV)含有化合物、有機酸、およびカルコゲン含有試薬は、任意の好適な方法で、典型的には、好適な反応容器で混合することによって、接触させる(または反応させる)ことができる。
【0086】
典型的には、鉛(IV)含有化合物は、有機酸と反応して鉛塩を形成し、次いで、鉛塩が、カルコゲン含有試薬と反応してカルコゲン化鉛ナノ結晶および/またはその組成物を形成すると考えられる。
【0087】
典型的には、鉛(IV)含有化合物を、モル過剰の有機酸と接触させることができる。例えば、鉛原子(鉛(IV)含有化合物中)の有機酸に対するモル比は、1:1.5~1:200、例えば、1:1.5~1:60の範囲であってもよい。鉛原子(鉛(IV)含有化合物中)の有機酸に対するモル比は、所望のナノ結晶サイズおよび所望の吸収を実現するように選択することができると考えられる。典型的には、使用される有機酸の量がより多くなるほど、より大きなナノ結晶が形成される。
【0088】
典型的には、鉛塩は、鉛原子がカルコゲン原子に対してモル過剰であるような量で、カルコゲン含有試薬と接触させることができる。例えば、鉛原子のカルコゲン原子に対するモル比は、0.9:1~50:1、例えば、1.5:1~30:1、例えば、1.5:1~25:1の範囲であってもよい。鉛原子(鉛塩中)のカルコゲン原子(カルコゲン含有試薬中)に対するモル比は、広範囲のサイズにわたって、極めて単分散のナノ結晶、それ故により広い範囲にわたって所望の狭い吸収ピークを実現するように選択することができると考えられる。典型的には、使用される鉛原子の量がより多いほど、より広い吸収範囲にわたって、極めて単分散のナノ結晶が形成される。
【0089】
典型的には、反応(すなわち、鉛塩の形成)が実質的に完了し、溶媒中に鉛塩の溶液が生成されるまで、鉛(IV)含有化合物および有機酸を好適な溶媒中で混合する。次いで、カルコゲン含有試薬を鉛塩の溶液に添加することができ、反応してカルコゲン化鉛ナノ結晶および/またはその組成物を形成することが可能になる。カルコゲン含有試薬は、溶媒を含む状態、または溶媒を含まない状態で添加してもよい。
【0090】
鉛塩およびカルコゲン含有試薬は、任意の好適な手法で接触させることができる。好適には、鉛塩およびカルコゲン含有試薬は、例えば、好適な溶媒の存在下で共に混合することができる。好適な溶媒中のカルコゲン含有試薬の溶液を、例えば、好適な溶媒中の鉛塩の溶液(好ましくは同じ溶媒)に添加してもよい。あるいは、カルコゲン含有試薬を、例えば、好適な溶媒中の鉛塩の溶液に直接添加してもよい。カルコゲン含有試薬の添加は、1つのステップまたは多数のステップで実施することができる。例えば、カルコゲン含有試薬を、2つ以上の部分で、例えば、2つの部分で鉛塩に添加することができる。カルコゲン含有試薬の添加モードを使用して、製造されるナノ結晶のサイズを変化させることができ、故にナノ結晶の光学的性質を精巧に調整することができると考えられる。典型的には、多数のステップでのカルコゲン含有試薬の添加により、(すなわち、単一のステップの添加と比較して)より大きなナノ結晶がもたらされる。
【0091】
本発明の方法は、カルコゲン含有試薬を鉛塩に添加した直後に第2の溶媒を添加するステップ(すなわち、反応を急速にクエンチするように)をさらに含むことができる。第2の溶媒は、典型的には、有機溶媒、例えば、極性溶媒(例えば、アセトン、メタノール、もしくはエタノール)または無極性溶媒(例えばヘキサン)である。
【0092】
本発明の方法は、任意の好適な温度で実施することができる。例えば、任意の好適な温度、すなわち、反応が起こる、任意の好適な温度で、鉛(IV)含有化合物を有機酸と接触させることができる。この反応が起こる、特定の温度は、反応させる、特定の鉛(IV)含有化合物および有機酸に応じて決まり得る。好適な温度は、120~250℃、例えば120~240℃、例えば180~240℃、例えば180~230℃の範囲であってもよい。
【0093】
例えば、鉛(IV)含有化合物が酸化鉛(II、IV)を含み、有機酸がオレイン酸を含む場合、これらを反応させる(すなわち、鉛塩を形成するように)温度は、120~250℃、好適には120~240℃、好適には180~240℃、好適には180~230℃の範囲であることができる。
【0094】
鉛塩を、任意の好適な温度で、すなわち、反応が起こる、任意の好適な温度でカルコゲン含有試薬と接触させることができる。この反応が起こる、特定の温度は、とりわけ、反応させる、特定の鉛塩およびカルコゲン含有試薬に応じて決まり得る。好適な温度は、20~300℃または20~180℃の範囲であってもよい。特定の反応温度の選択を使用して、形成されるナノ結晶のサイズを変化させることができ、その光学的性質を要望通りに精巧に調整するようにすると考えられる。典型的には、鉛塩およびカルコゲン含有試薬を接触させる/反応させる温度が高くなることにより、より大きなナノ結晶がもたらされる。
【0095】
鉛(IV)含有化合物を有機酸と接触させる温度は、鉛塩をカルコゲナイド含有試薬と接触させる温度と同じであっても、異なっていてもよい。好適には、鉛(IV)含有化合物を有機酸と接触させる温度は、得られた鉛塩をカルコゲナイド含有試薬と接触させる温度よりも高くてもよい。例えば、得られた鉛塩をカルコゲナイド含有試薬と接触させるのに150~300℃の温度を使用して、量子ドットの品質を改善することができる。
【0096】
好適には、鉛塩を、20~150℃、例えば30~100℃、例えば30~60℃、例えば20~60℃、例えば、約40℃の温度で、カルコゲン含有試薬と接触させることができる。こうした反応温度は、カルコゲン含有試薬がビス(トリメチルシリル)スルフィドである場合、例えば、ビス(トリメチルシリル)スルフィドをオレイン酸鉛と接触させる場合に好適であり得る。こうした低い温度条件は、とりわけ大規模生産に関連した使用において利点をもたらす。
【0097】
例えば、鉛塩がオレイン酸鉛を含み、カルコゲン含有試薬がビス(トリメチルシリル)スルフィドを含む場合、これらを反応させる温度は、20~180℃、例えば20~55℃の範囲、好ましくは約40℃であってもよい。カルコゲン含有試薬がビス(トリメチルシリル)スルフィドを含む、この方法は、可視範囲および近赤外範囲、例えば、約500~2400nm、例えば約530~2400nm、例えば約530~1600nmの範囲で吸収を表すカルコゲン化鉛ナノ結晶を提供することができる。カルコゲン含有試薬がビス(トリメチルシリル)スルフィドを含む、この方法は、可視範囲および近赤外範囲、例えば、約600~2500nm、例えば約630~2500nm、例えば約630~1700nmの範囲で発光を表すカルコゲン化鉛ナノ結晶を提供することができる。
【0098】
好適には、鉛塩を、カルコゲン含有試薬と、50~300℃、例えば50~150℃の温度で接触させることができる。こうした反応温度は、カルコゲン含有試薬がチオアセトアミドを含む場合、例えば、チオアセトアミドをオレイン酸鉛と接触させる場合に好適であり得る。カルコゲン含有試薬がチオアセトアミドを含む、この方法は、可視範囲および近赤外範囲、例えば、約500~2400nmの範囲、例えば500~1700nmの範囲の吸収を表すカルコゲン化鉛ナノ結晶を提供することができる。カルコゲン含有試薬がチオアセトアミドを含む、この方法は、可視範囲および近赤外範囲、例えば、約600~2500nm、例えば600~1800nmの範囲の発光を表すカルコゲン化鉛ナノ結晶を提供することができる。
【0099】
好適には、鉛塩を、50~300℃、例えば、80~150℃の温度で、カルコゲン含有試薬と接触させることができる。こうした反応温度は、カルコゲン含有試薬がトリ-n-オクチルホスフィンセレニド(TOPSe)を含む場合、例えば、TOPSeをジフェニルホスフィン(DPP)の存在下でオレイン酸鉛と接触させる場合に好適であり得る。カルコゲン含有試薬が、DPPの存在下でTOPSeを含む、この方法は、可視範囲および近赤外範囲、例えば、約800~4500nm、例えば約900~4200nm、例えば約1100~4100nmの範囲で吸収を表すカルコゲン化鉛ナノ結晶を提供することができる。カルコゲン含有試薬がTOPSeを含む、この方法は、可視範囲および近赤外範囲、例えば約900~4500nm、例えば約1000~4300nm、例えば約1200~4100nmの範囲で発光を表すカルコゲン化鉛ナノ結晶を提供することができる。
【0100】
本発明の方法は、溶媒の存在下で実施することができる。任意の好適な溶媒を使用することができる。好適には、溶媒は、鉛と配位錯体を形成しない溶媒である。好適には、溶媒は、有機溶媒、例えば、無極性溶媒もしくは極性溶媒、またはその混合物である。好適な溶媒の例には、C4~C28有機溶媒、例えば、オクタデセンまたは極性溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフランが挙げられる。典型的には、鉛(IV)含有化合物と有機酸との反応、および得られた鉛塩とカルコゲン含有試薬との反応について、同じ溶媒が使用される。これは、方法を単純化し、大規模な使用に特に好適なものにする。
【0101】
例えば、鉛(IV)含有化合物を、好適な溶媒の存在下で、有機酸と接触させることができる。好適には、溶媒は、無極性溶媒もしくは極性溶媒、またはその混合物である。好適な溶媒の例には、C4~C22有機溶媒、例えば、オクタデセンが挙げられる。
【0102】
例えば、得られた鉛塩を、好適な溶媒の存在下で、カルコゲン含有試薬と接触させることができる。好適には、溶媒は、無極性溶媒もしくは極性溶媒、またはその混合物である。好適な溶媒の例には、C4~C22有機溶媒、例えば、オクタデセンが挙げられる。
【0103】
使用される溶媒の量は、使用される特定の試薬および/または適用される、他の反応条件に応じて選択され得る。典型的には、溶媒中の鉛(IV)含有化合物の濃度(反応の開始時点)は、0.005~0.10mmol/mlの範囲であってもよい。典型的には、溶媒中の鉛原子の濃度(反応の開始時点)は、0.015~0.30mmol/mlの範囲であってもよい。典型的には、溶媒中の有機酸の濃度(反応の開始時点)は、0.0075~10mmol/ml、例えば0.1~2mmol/mlの範囲であってもよい。溶媒の量は、形成される、最終的なカルコゲン化鉛ナノ結晶のサイズに影響を及ぼすことがあり、故に方法で使用される溶媒の量の選択は、その光学的性質の精巧な調整に役立つことがあると考えられる。例えば、溶媒の量を減らすことにより、典型的には、製造される、より大きなナノ結晶をもたらすことがあると考えられる。
【0104】
好適には、本発明の方法は、不活性雰囲気中で実施される。任意の好適な不活性雰囲気、例えば、窒素またはアルゴンを使用することができる。
【0105】
好適には、鉛(IV)含有化合物を、鉛塩の調製を確立するのに必要な時間長で、有機酸と接触させることができる。好適な反応時間は、使用される、特定の試薬および反応条件に応じて決まることになる。典型的な反応時間は、例えば、10分~2時間、例えば15分~2時間の範囲であってもよい。
【0106】
好適には、鉛塩を、カルコゲン化鉛ナノ結晶の調製を確立するのに必要な時間長で、カルコゲン含有試薬と接触させることができる。好適な反応時間は、使用される、特定の試薬および反応条件に応じて決まることになる。典型的な反応時間は、例えば、15分~2時間、例えば30分~2時間の範囲であってもよい。
【0107】
本発明の方法は、
第1の溶媒中に鉛(IV)含有化合物および有機酸の第1の溶液を形成するステップ、
第2の溶媒中にカルコゲン含有試薬(例えば、ビス(トリメチルシリル)スルフィド)の第2の溶液を形成するステップ、
120~250℃の範囲の第1の温度まで第1の溶液を加熱し、第1の溶液を第1の温度で所定の時間維持するステップ、
20~100℃の範囲の低減された温度まで第1の溶液の温度を下げるステップ、
低減された温度で第2の溶液を第1の溶液に添加して反応混合物を生成するステップ、
反応混合物を20~300℃の温度で所定の時間維持するステップ
を含むことができる。
【0108】
本発明の方法は、
第1の溶媒中に鉛(IV)含有化合物および有機酸の第1の溶液を形成するステップ、
第2の溶媒中にカルコゲン含有試薬(例えば、ビス(トリメチルシリル)スルフィド)の第2の溶液を形成するステップ、
120~250℃の範囲の第1の温度まで第1の溶液を加熱し、第1の溶液を第1の温度で所定の時間維持するステップ、
20~60℃の範囲の低減された温度まで第1の溶液の温度を下げるステップ、
低減された温度で第2の溶液を第1の溶液に添加して反応混合物を生成するステップ、
反応混合物を20~60℃の温度で所定の時間維持するステップ
を含むことができる。
【0109】
本発明の方法は、
第1の溶媒中に鉛(IV)含有化合物および有機酸の第1の溶液を形成するステップ、
120~250℃の範囲の第1の温度まで第1の溶液を加熱し、第1の溶液を第1の温度で所定の時間維持するステップ、
第1の溶液を50~100℃の範囲の第2の温度で用意するステップ、
第2の温度でカルコゲン含有試薬(例えば、チオアセトアミド)を第1の溶液に添加して反応混合物を生成するステップ、
反応混合物を50~300℃の温度で所定の時間維持するステップ
を含むことができる。
【0110】
本発明の方法は、
第1の溶媒中に鉛(IV)含有化合物および有機酸の第1の溶液を形成するステップ、
120~250℃の範囲の第1の温度まで第1の溶液を加熱し、第1の溶液を第1の温度で所定の時間維持するステップ、
第1の溶液を50~150℃の範囲の第2の温度で用意するステップ、
第2の温度でカルコゲン含有試薬(例えば、チオアセトアミド)を第1の溶液に添加して反応混合物を生成するステップ、
反応混合物を50~150℃の温度で所定の時間維持するステップ
を含むことができる。
【0111】
本発明の方法は、
第1の溶媒中に鉛(IV)含有化合物および有機酸の第1の溶液を形成するステップ、
第2の溶媒中に、ジフェニルホスフィン(DPP)の存在下で、カルコゲン含有試薬(例えば、トリ-n-オクチルホスフィンセレニド(TOPSe))の第2の溶液を形成するステップ、
120~250℃の範囲の第1の温度まで第1の溶液を加熱し、第1の溶液を第1の温度で所定の時間維持するステップ、
20~100℃の範囲の低減された温度まで第1の溶液の温度を下げるステップ、
低減された温度で第2の溶液を第1の溶液に添加して反応混合物を生成するステップ、
反応混合物を20~300℃の温度で所定の時間維持するステップ
を含むことができる。
【0112】
本発明の方法は、
第1の溶媒中に鉛(IV)含有化合物および有機酸の第1の溶液を形成するステップ、
第2の溶媒中に、ジフェニルホスフィン(DPP)の存在下で、カルコゲン含有試薬(例えば、トリ-n-オクチルホスフィンセレニド(TOPSe))の第2の溶液を形成するステップ、
120~250℃の範囲の第1の温度まで第1の溶液を加熱し、第1の溶液を第1の温度で所定の時間維持するステップ、
20~100℃の範囲の低減された温度まで第1の溶液の温度を下げるステップ、
低減された温度で第2の溶液を第1の溶液に添加して反応混合物を生成するステップ、
反応混合物を50~180℃の温度で所定の時間維持するステップ
を含むことができる。
【0113】
本発明の方法は、ナノ結晶の生成の進展をモニターするように、(すなわち、反応混合物の、例えば、反応物の溶液の)光学的性質をモニターするステップをさらに含むことができる。光学的性質は、UV-可視-近赤外吸収スペクトルであってもよい。方法は、光学的性質の値が、カルコゲン化鉛ナノ結晶の、所望のサイズおよび/またはサイズ分布に対応するときに反応を停止するステップを含むことができる。
【0114】
本発明の方法は、反応混合物からカルコゲン化鉛ナノ結晶を単離するステップをさらに含むことができる。カルコゲン化鉛ナノ結晶を単離する、任意の好適な方法を使用することができる。
【0115】
本発明の方法は、例えば、クエンチ溶媒を反応混合物に添加することによって、反応混合物をクエンチするステップを含むことができる。任意の好適なクエンチ溶媒、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、またはヘキサンを使用することができる。本発明の方法は、カルコゲン化鉛ナノ粒子を単離するステップをさらに含むことができる。
【0116】
例えば、カルコゲン化鉛ナノ結晶は、好適な溶媒、例えば、極性溶媒(例えば、アセトン、メタノール、またはエタノール)を使用して反応混合物から沈殿させてもよい。単離するステップは、不活性雰囲気中、または空気中で実施することができる。
【0117】
本発明の方法の例を
図13および
図15に示す。
図13および
図15は、Pb
3O
4をオクタデセン中でオレイン酸と混合する(オレイン酸鉛塩を形成するように)、第1の溶液を調製する方法を示す。所望のナノ結晶をもたらすように、第1の溶液を、室温(例えば、20℃)~60℃の温度でビス(トリメチルシリル)スルフィドのオクタデセン中溶液と混合するか、または50~300℃の温度でチオアセトアミド(溶媒を含む場合、もしくは溶媒を含まない場合)と混合するか、または50~300℃の温度で、ジフェニルホスフィン(DPP)の存在下での、トリ-n-オクチルホスフィンセレニド(TOPSe)のオクタデセン中溶液と混合する。
【0118】
本発明の方法の一例は
図14に示される。
図14は、溶液1(例えば、第1の溶媒、例えば、オクタデセン中に鉛(IV)含有化合物および有機酸を含む)の調製であるステップ1、ならびに溶液2(例えば、第2の溶媒、例えば、オクタデセン中にカルコゲン含有試薬を含む)の調製であるステップ2を示す。
図14に示される方法は、溶液2が、所定の温度(例えば、本明細書に詳述された好適な温度)で溶液1へ迅速に注入されるステップ3、ステップ3から得られる混合物の温度を、所定の温度で、所望の粒径に達するまでの時間長で維持するステップ4、反応を終了する/クエンチするステップ5、および得られたナノ粒子を精製するステップ6を含む。
【0119】
カルコゲン含有試薬がビス(トリメチルシリル)スルフィドを含む場合、有機酸(例えば、オレイン酸)の量は、調製されるナノ結晶のサイズに大きく影響を及ぼすと考えられる。典型的には、より多くの有機酸が導入されるほど、ナノ結晶のサイズがより大きくなった。例えば、オレイン酸の量を27.5倍まで単純に増加することによって(全ての他の試薬および条件は等しい)、ナノ結晶のピーク吸収は、652nmから1220nmまでレッドシフトしたことが観測された。
【0120】
カルコゲン含有試薬がビス(トリメチルシリル)スルフィドを含む場合、ビス(トリメチルシリル)スルフィドの、多段階添加によって、ナノ結晶のピーク吸収は、1120nmから1304nmまでさらにレッドシフトしたことが観測されたと考えられる。
【0121】
カルコゲン含有試薬がビス(トリメチルシリル)スルフィドを含む場合、鉛(IV)含有化合物および/またはビス(トリメチルシリル)スルフィドの多段階添加により、典型的には、より大きなナノ結晶が製造されると考えられる。
【0122】
カルコゲン含有試薬がビス(トリメチルシリル)スルフィドを含む場合、ビス(トリメチルシリル)スルフィドを鉛塩と反応させる温度を40℃から60℃まで上げることにより、典型的にはより大きなナノ結晶が提供されると考えられる。ナノ結晶のピーク吸収は、基準652nmから986nmまでレッドシフトし得ることが観測された。
【0123】
カルコゲン含有試薬がビス(トリメチルシリル)スルフィドを含む場合、アセトン、アルコール、または水を導入することにより、極小サイズのナノ結晶がもたらされ得ると考えられる。ナノ結晶のピーク吸収は、ビス(トリメチルシリル)スルフィドを鉛塩に注入した後、少量のアセトンを迅速に添加することによって、24nmブルーシフトしたことが観測された。
【0124】
カルコゲン含有試薬がビス(トリメチルシリル)スルフィドを含む場合、ビス(トリメチルシリル)スルフィドの注入後に冷ヘキサンを迅速に導入した結果、小さなナノ結晶が形成されると考えられる。652nmから533nmまでのブルーシフトが観測された。
【0125】
カルコゲン含有試薬がビス(トリメチルシリル)スルフィドを含む場合、溶媒(例えば、オクタデセン)の量を増やすことによって、オレイン酸鉛濃度を減らすことにより、より小さなナノ結晶の形成をもたらすと考えられ、40nmブルーシフトが観測された。
【0126】
カルコゲン含有試薬がビス(トリメチルシリル)スルフィドを含む場合、上記の方法ステップの、任意の組み合わせを使用して、20~60℃の温度(すなわち、ビス(トリメチルシリル)スルフィドと鉛塩との反応のための)で、広範囲のナノ結晶を製造することができると考えられる。
【0127】
カルコゲン含有試薬がチオアセトアミドを含む場合、チオアセトアミドを反応に単純に加えるか(すなわち、チオアセトアミドを溶媒中に初めに溶解させるステップなし)、または溶媒中のチオアセトアミドの溶液もしくは溶媒の混合物を加えることを可能にするように、方法を単純化することができる。
【0128】
カルコゲン含有試薬がチオアセトアミドを含む場合、有機酸(例えば、オレイン酸)の量は、調製されるナノ結晶のサイズに大きく影響を及ぼし、したがって、使用される有機酸がより多いほど、調製されるナノ結晶のサイズがより大きいと考えられる。
【0129】
カルコゲン含有試薬がチオアセトアミドを含む場合、チオアセトアミドと鉛塩との反応の温度を上げる(例えば、温度約85℃まで)ことは、調製されるナノ結晶のサイズに大きく影響を及ぼし、したがって、使用される温度がより高いほど、調製されるナノ結晶のサイズがより大きいと考えられる。
【0130】
カルコゲン含有試薬がチオアセトアミドを含む場合、溶媒中の鉛塩(例えば、オレイン酸鉛)の濃度を減らすことにより、すなわち、溶媒の量を増やすことによって、より小さなナノ結晶がもたらされ得ると考えられる。
【0131】
カルコゲン含有試薬がチオアセトアミドを含む場合、アセトン、アルコール、または水を導入することにより、極小サイズのナノ結晶がもたらされ得ると考えられる。
【0132】
カルコゲン含有試薬がチオアセトアミドを含む場合、チオアセトアミドの注入後に冷ヘキサンを迅速に導入した結果、小さなナノ結晶が形成されると考えられる。
【0133】
カルコゲン含有試薬がチオアセトアミドを含む場合、上記の方法ステップの、任意の組み合わせを使用して、50~300℃、好適には50~150℃の温度(すなわち、チオアセトアミドと鉛塩との反応のための)で、広範囲のナノ結晶を製造することができると考えられる。
【0134】
カルコゲン含有試薬が、DPPの存在下でトリ-n-オクチルホスフィンセレニド(TOPSe)を含む場合、有機酸(例えば、オレイン酸)の量は、調製されるナノ結晶のサイズに大きく影響を及ぼし、したがって、使用される有機酸がより多いほど、調製されるナノ結晶のサイズがより大きいと考えられる。
【0135】
カルコゲン含有試薬が、DPPの存在下でトリ-n-オクチルホスフィンセレニド(TOPSe)を含む場合、TOPSeの多段階添加により、典型的には、より大きなナノ結晶が製造されると考えられる。
【0136】
カルコゲン含有試薬が、DPPの存在下でトリ-n-オクチルホスフィンセレニド(TOPSe)を含む場合、鉛(IV)含有化合物および/またはTOPSeの多段階添加により、典型的にはより大きなナノ結晶が製造されると考えられる。
【0137】
カルコゲン含有試薬が、DPPの存在下でトリ-n-オクチルホスフィンセレニド(TOPSe)を含む場合、TOPSeを鉛塩と反応させる温度を上げることは、調製されるナノ結晶のサイズに大きく影響を及ぼし、したがって、使用される温度が高いほど、製造されるナノ結晶のサイズはより大きくなると考えられる。
【0138】
カルコゲン含有試薬が、DPPの存在下でトリ-n-オクチルホスフィンセレニド(TOPSe)を含む場合、アセトン、アルコール、水、またはその混合物を導入することにより、極小サイズのナノ結晶がもたらされ得ると考えられ、すなわち、上記溶媒を含まない反応と比較してサイズの低減を可能にする。
【0139】
カルコゲン含有試薬が、DPPの存在下でトリ-n-オクチルホスフィンセレニド(TOPSe)を含む場合、TOPSe溶液の注入後に冷ヘキサンを迅速に導入した結果、小さなナノ結晶が形成されると考えられる。
【0140】
カルコゲン含有試薬が、DPPの存在下でトリ-n-オクチルホスフィンセレニド(TOPSe)を含む場合、溶媒(例えば、オクタデセン)の量を増やすことによって、オレイン酸鉛濃度を減らすことにより、より小さなナノ結晶の形成をもたらすと考えられ、すなわち、より少ない溶媒を含む反応と比較してサイズの低減を可能にする。
【0141】
カルコゲン含有試薬が、DPPの存在下でトリ-n-オクチルホスフィンセレニド(TOPSe)を含む場合、上記の方法ステップの、任意の組み合わせを使用して、50~300℃の温度(すなわち、TOPSeと鉛塩との反応のための)で、広範囲のナノ結晶を製造することができると考えられる。
【0142】
本発明の方法により、カルコゲン化鉛ナノ結晶が製造される。好適には、ナノ結晶は、量子ドット(すなわち、結晶性量子ドット)を含むことができる。
【0143】
一部の特定の合成手段が以下に提供される。
【0144】
40℃でPb3O4を使用して、大きなPbSナノ結晶をつくるために、以下のことが明らかになった:
1)オレイン酸(OA)の量は、PbSナノ結晶のサイズに大きく影響を及ぼす。導入されるOAがより多いほど、つくられたPbSナノ結晶のサイズはより大きい。例えば、PbSナノ結晶のピーク吸収は、OA量を16倍増やすことによって、652nmから1168nmまでレッドシフトしたことが観測された。
2)(TMS)2Sの多段階添加を通して、PbSナノ結晶のピーク吸収は、1168nmから1304nmまでさらにレッドシフトしたことが観測された。
3)鉛前駆体と硫黄前駆体との両方の多段階添加もまた、大きなPbS量子ドット(QD)をつくるのに役立つ。
4)温度が、注入および反応混合のための、より良好な反応制御を保つのに十分なほど低いままである場合、60℃まで温度を上げることにより、大きなPbS QDをつくることを可能にする。PbSナノ結晶のピーク吸収は、基準1220nmから1426nmまでレッドシフトし得ることが観測された。
5)他の硫黄前駆体、例えば、チオアセトアミド(TAA)または元素Sまたはトリ-n-オクチルホスフィンスルフィドまたはトリブチルホスフィンスルフィドまたはアルキル置換チオ尿素の前駆体を導入することにより、大きなPbSナノ粒子を効率的につくることができた。
【0145】
真上の5つの方法に加えて、上記の5つの合成手段の一部の組み合わせおよび完全な組み合わせにより、低温(すなわち、約40℃)で、大きなPbSナノ結晶を効率的に製造することができる。
【0146】
Pb3O4を使用して、40℃で小さなPbSナノ結晶をつくるために、以下のことが明らかになった:
1)オレイン酸(OA)の量は、PbSナノ結晶のサイズに大きく影響を及ぼす。OAがより少ないほど、小さなPbSナノ結晶がつくられた。OAの鉛に対する比が2:1まで低くなった場合、PbSナノ結晶の652nmピーク波長が得られたことが分かった。
2)40℃から室温まで温度を下げることにより、約50nmのブルーシフトを認めることができた。
3)アセトン、アルコール、または水を導入することにより、極小サイズのPbSナノ結晶がもたらされた。PbSナノ結晶のピーク吸収は、オレイン酸鉛における硫黄前駆体の注入後に少量のアセトンを添加することによって、約100nmブルーシフトしたことが観測された。
4)硫黄前駆体の注入後に冷ヘキサンを導入することにより、小さなPbSナノ結晶がもたらされた。652nmから533nmまでのブルーシフトが観測された。
5)ODEの量を増やすことによってオレイン酸鉛の濃度を減らすことは、小さなPbSナノ結晶を実現するのに役立ち、50nmブルーシフトが観測された。
【0147】
真上の5つの方法に加えて、より小さなPbSナノ結晶をつくるための上記の5つの手段、ならびにより大きなPbSナノ結晶をつくるための逆の方法の一部の組み合わせおよび完全な組み合わせにより、低温(すなわち、約40℃)で、より小さなPbSナノ結晶をつくるための効率的な方法を形成することができた。
【0148】
並行して、低費用、かつ毒性の低いTAAを使用して、高価で、毒性で、かつ極めて悪臭の(TMS)2S前駆体を置き換えて、PbSナノ結晶をつくった。TAA反応の閾値温度は約50℃であり、適用される温度が高いほど、つくられるPbSナノ結晶がより大きいことが明らかになった。また、オレイン酸の量は、PbSのサイズに影響を及ぼすことがあり、適用されるOAの量がより多いほど、より大きなPbSナノ結晶が実現されることが明らかになった。
【0149】
したがって、本発明は、(TMS)2S試薬およびTAA試薬を使用して、可視範囲およびNIR範囲で、低温(例えば、40℃)で作動するPbS QDを可能にする。
【0150】
上記の手段はまた、PbSeナノ結晶の粒径および吸収波長および発光波長を調整するのに機能すると考えられる。加えて、鉛のカルコゲナイド(例えば、セレニド)に対する供給モル比、および反応時間により、得られるナノ結晶の粒径が効率的に制御されると考えられる。例えば、鉛のカルコゲナイドに対する高い比により、典型的には、より小さなナノ結晶サイズがもたらされる一方で、長い反応時間により、より大きなナノ結晶サイズがもたらされる。
【0151】
ナノ結晶/量子ドット
本発明は、前述された方法によって得られる、カルコゲン化鉛ナノ結晶の、1種または複数(好ましくは複数、すなわち、組成物)を提供する。
【0152】
好適には、カルコゲン化鉛ナノ結晶は、可視範囲および近赤外範囲、例えば、約500~4500nm、例えば約500~2400nm、例えば約530~2400nm、例えば約530~1600nmの範囲の吸収を表す。
【0153】
好適には、カルコゲン化鉛ナノ結晶は、可視範囲および近赤外範囲、例えば、約600~4500nm、例えば約600~2500nm、例えば約630~2500nm、例えば約630~1700nmの範囲の発光を表す。
【0154】
本発明によるカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物は、2~22nmの範囲、好ましくは5~20nmの範囲の平均粒径、および25%未満の相対的サイズ分散度を有するナノ結晶を含むか、またはそれで構成される。好ましくは、上記ナノ結晶は、2~17nmの範囲の平均粒径、および22%未満の相対的サイズ分散度を有する。好ましくは、上記ナノ結晶は、2~10nmの範囲の平均粒径、および20%未満の相対的サイズ分散度を有する。
【0155】
好ましくは、本発明によるPbSナノ結晶組成物は、2~10nmの範囲の平均粒径、および25%未満、好ましくは20%未満の相対的サイズ分散度を有するナノ結晶を含むか、またはそれで構成される。
【0156】
本発明によるPbSeナノ結晶組成物は、2~17nmの範囲の平均粒径、および25%未満、好ましくは22%未満の相対的サイズ分散度を有するナノ結晶を含むか、またはそれで構成される。
【0157】
本発明の第8の態様によるカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物は、好ましくは、2~20nm、好ましくは2~17nm、好ましくは2~10nmの範囲の平均粒径を有するカルコゲン化鉛ナノ結晶を含有する。
【0158】
本発明の第8の態様によるカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物は、好ましくはカルコゲン化鉛ナノ結晶を、0.001重量%よりも多く、好ましくは0.01重量%よりも多く、好ましくは0.1重量%よりも多く、好ましくは1重量%よりも多く、好ましくは5重量%よりも多く含有する。
【0159】
一部の用途において、本発明の第8の態様によるカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物は、好ましくはカルコゲン化鉛ナノ結晶を、5重量%よりも多く、好ましくは30重量%よりも多く、好ましくは75重量%よりも多く、好ましくは90重量%よりも多く、好ましくは95重量%よりも多く含有する。
【0160】
一実施形態において、本発明の第8の態様によるカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物は、カルコゲン化鉛ナノ結晶で構成される。
【0161】
カルコゲン化鉛ナノ結晶ではない、組成物の残部は、担体物質、例えば、溶媒、添加剤、無機配位子、有機配位子、または反応副生成物であってもよい。
【0162】
本発明はまた、前述された方法で直接得られる、カルコゲン化鉛ナノ結晶の組成物も提供する。
【0163】
本発明はまた、前述された方法で得ることができる、カルコゲン化鉛ナノ結晶の組成物も提供する。
【0164】
カルコゲン化鉛ナノ結晶の組成物は、1種または複数の量子ドット(すなわち、結晶性量子ドット)を含むことができる。本発明は、前述された方法で得られる、カルコゲン化鉛量子ドットの組成物を提供する。
【0165】
本発明はまた、前述された方法で直接得られる、カルコゲン化鉛量子ドットの組成物も提供する。
【0166】
本発明はまた、前述された方法で得ることができる、カルコゲン化鉛量子ドットの組成物も提供する。
【0167】
カルコゲン化鉛ナノ結晶(例えば、カルコゲン化鉛量子ドット)、および上記カルコゲン化鉛ナノ結晶を含有する、組成物、薄膜、システム、または成分を任意の好適な目的で使用することができる。例えば、カルコゲン化鉛ナノ結晶およびその組成物は、光検出器、センサー、太陽電池、バイオイメージングまたはバイオセンシングの組成物、太陽光発電システム、ディスプレイ、電池、レーザー、光触媒、分光計、注入組成物、電界効果トランジスタ、光発光ダイオード、フォトニックスイッチングデバイスまたは光スイッチングデバイスまたはメタマテリアル、熱電(冷却)用途およびエネルギー(高温出力)発生用途、ファイバー増幅器、レーザー、光学利得媒質、光ファイバー通信、高速通信、電気通信、赤外LEDおよび赤外レーザー、電界発光素子を提供するのに使用され得るか、またはそれらにおいて使用され得る。
【0168】
カルコゲン化鉛ナノ結晶組成物(例えば、カルコゲン化鉛量子ドット)は、IRセンシングおよび光検出器に使用することもできる。例えば、カルコゲン化鉛ナノ結晶(例えば、カルコゲン化鉛量子ドット)は、携帯および家庭用品、自動車、医療、産業、防衛、または航空宇宙産業の用途における、3Dカメラセンサーおよび3Dタイム・オブ・フライトカメラセンサーの光吸収体として使用することができる。
【0169】
カルコゲン化鉛ナノ結晶組成物(例えば、カルコゲン化鉛量子ドット)を、バイオイメージングまたはバイオセンシングの用途に使用することもできる。例えば、カルコゲン化鉛ナノ結晶(例えば、カルコゲン化鉛量子ドット)は、in vitro用途およびex vivo用途におけるバイオラベルまたはバイオタグとして使用することができる。
【0170】
カルコゲン化鉛ナノ結晶組成物(例えば、カルコゲン化鉛量子ドット)は、有線の高速通信デバイス、暗視装置、および太陽エネルギー変換において使用することもできる。
【0171】
本発明は、本発明のカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物を含む薄膜を提供する。
【0172】
本発明は、本発明のカルコゲン化鉛ナノ結晶組成物を含む、システムまたは部品、例えば、光検出器、センサー、太陽電池、バイオイメージングまたはバイオセンシングの組成物、太陽光発電システム、ディスプレイ、電池、レーザー、光触媒、分光計、注入組成物、電界効果トランジスタ、光発光ダイオード、フォトニックスイッチングデバイスまたは光スイッチングデバイスまたはメタマテリアル、熱電(冷却)用途およびエネルギー(高温出力)発生用途を提供する。
【0173】
本発明は、本発明のカルコゲン化鉛ナノ結晶を含む、バイオラベルまたはバイオタグ、生体撮像および生体標識(in vitroおよびin vivo)を提供する。
【0174】
本発明の方法は、本発明のナノ結晶に優れた半値幅(FWHM)値をもたらす。FWHMは、その最大強度の半分での光信号の幅を示す。この測定により、最大可能出力50%で作動する光源のバンド幅が与えられる。
【0175】
本発明のナノ結晶の発光特性は、化学依存性およびサイズ依存性の両方である。それらは、通常、ガウス曲線形の発光関数を表す。より低い強度は、より広いスペクトルバンド幅およびスクリーン上の低純度の色表示をもたらし得る。FWHMを決定するために、最大スペクトル強度の半分での低波長点と高波長点との差を計算せねばならない。本発明の、より狭いFWHMは、より高い信号対ノイズ比を与え、吸収波長のより正確な調整を可能にする。本質的には、より狭いバンド幅は、より高いレベルの有効性で、より純粋な色に転換される。
【0176】
例えば、本発明の工程は、500~1000nm、好ましくは600~975nm、好ましくは700~775nmの最大吸収波長(λmax)、および600~1200nm、好ましくは700~1100nm、好ましくは800~950nmの発光波長またはフォトルミネッセンス(PL)を有するナノ結晶を製造することができる。130nm未満、好ましくは120nm未満、例えば、約110nmの吸収FWHM、および130nm未満、好ましくは120nm未満、例えば、約110nmの発光FWHMを有する、本発明の第8の態様による組成物を製造することができる。これらの性質は、20%未満の相対的サイズ分散度を有するナノ結晶組成物によってもたらされ得る。
【0177】
本発明の第8の態様による、組成物のナノ結晶は、本発明で使用される工程の結果として、良好な相対的サイズ分散度を有する。相対的サイズ分散度は、ナノ結晶粒径の変異量の目安である。それは、ナノ粒子の特定のバッチの粒径を測定し、平均サイズに対する変異量を決定することによって決定される。これは、特定の平均サイズxプラスまたはマイナス粒径の範囲として表記することができる。例えば、本発明は、最大吸収波長950nmおよび発光ピーク1060±5nmを有するナノ結晶を製造することができる。これらの粒子は、サイズ3.10±0.52(透過型電子顕微鏡(TEM)によって決定される)を有する。これは、16.8%((0.52/3.10)×100)の相対的サイズ分散度をもたらす。
【0178】
一般に、本発明の工程により、25%未満、好ましくは22%未満、好ましくは20%未満の相対的サイズ分散度(TEMによって決定される)を有する、本発明の第8の態様によるナノ粒子組成物の製造が可能になる。
【0179】
本発明の好ましい一実施形態において、本発明の第8の態様による、ナノ結晶組成物は、1.2:1~4:1、好ましくは、1.6:1~3:1の範囲の、鉛原子のカルコゲン原子に対するモル比を有する。この好ましい範囲は、PbS、PbSe、およびPbTeのナノ結晶のそれぞれで実現することができる。
【0180】
これらの、鉛原子のカルコゲン原子に対する比は、本発明のナノ結晶によって表される、低い相対的サイズ分布と関係する。一般に、1.2:1~4:1の範囲の鉛原子のカルコゲン原子に対するモル比を有する、本発明の第8の態様によるナノ結晶組成物は、20%未満、例えば18%未満、例えば10%から17%までの間の相対的サイズ分散度を有する。
【0181】
一般に、鉛硫黄ナノ結晶組成物における、より高いPb対S比は、PbSドットの、大きなナノ結晶サイズおよびより長いλmaxに関係する。一般に、鉛セレン(lead selenium)ナノ結晶組成物における、より低いPb対Seの比(またはSeモル比の増加)は、より大きなナノ結晶サイズおよびより長いλmaxに関係する。
【0182】
鉛原子のカルコゲン原子に対するモル比は、誘導結合プラズマ発光分析(ICP-OES)によって測定される。
【0183】
一般に、本発明の第8の態様による、PbSナノ結晶組成物は、最大吸収波長(λ
max)とその平均粒径との間に比例相関を表し、すなわち、より大きなドットは、より長いλ
maxを表す。PbSeナノ結晶について、ナノ粒子サイズ対λ
maxの相関における同様の傾向が認められる。しかし、PbSeナノ結晶は、一般に同じλ
maxでPbSよりも小さい。PbS(λ
max=1314nm)およびPbSe(λ
max=2046nm)のTEM画像、ならびにそれらの、粒子測定のヒストグラムは、
図8aおよび
図8bおよび
図20aおよび
図20bそれぞれに示される。
【0184】
第4の態様から第7の態様の好ましい特徴は、第1の態様、第2の態様、および第3の態様に関連して定められる通りである。
【0185】
本発明をより良好に理解するために、かつどのように本発明の例示的な実施形態を実行することができるかを示すために、例としてのみ、添付の図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0186】
【
図1】実施例1に従って調製されたPbSナノ結晶の粉末XRDパターンを示す図である。
【
図2】実施例1においてトルエン中で調製されたPbSナノ結晶の吸収スペクトルを示す図である。
【
図3】実施例2において異なる量のオレイン酸を用いて得られたPbSナノ結晶の吸収スペクトルを示す図である。
【
図4】実施例3において40℃または60℃で得られたPbSナノ結晶の吸収スペクトルを示す図である。
【
図5】実施例4において、(TMS)
2Sの単回添加または多段階添加で得られたPbSナノ結晶の吸収スペクトルを示す図である。
【
図6】実施例5において異なる量のODEを用いて得られたPbSナノ結晶の吸収スペクトルを示す図である。
【
図7】実施例6においてTAAおよび(TMS)
2Sを用いて得られたPbSナノ結晶の吸収スペクトルを示す図である。
【
図8】
図8aおよび8bは、実施例6における、PbSナノ結晶のTEM画像(λ
max=1314nm)およびTEMによる粒子測定のヒストグラムを示す図である。
【
図9】実施例7において、アセトンの添加がある場合およびアセトンの添加がない場合で得られたPbSナノ結晶の吸収スペクトルを示す図である。
【
図10】実施例8において、ヘキサンの添加がある場合およびヘキサンの添加がない場合で得られたPbSナノ結晶の吸収スペクトルを示す図である。
【
図11】実施例9において、異なる量のオレイン酸および様々な反応温度を用いて得られたPbSナノ結晶の吸収スペクトルを示す図である。
【
図12】実施例10において調製された溶液PbSナノ結晶および薄膜試料の吸収スペクトルを示す図である。
【
図13】本発明の特定の方法の一例を示す図である。
【
図14】本発明の特定の方法の一例を示す図である。
【
図15】Pb
3O
4およびTOPSeを使用したPbSeナノ結晶の合成スキームを示す図である。
【
図16】実施例11において調製されたPbSeナノ結晶の粉末XRDパターンを示す図である。
【
図17】実施例11において調製されたPbSeナノ結晶の吸収スペクトルを示す図である。
【
図18】実施例11において調製された、様々な反応条件から得られたPbSeナノ結晶について、広範のスペクトル調整性を表す、PbSeナノ結晶の吸収スペクトルを示す図である。
【
図19】実施例11において調製されたものと異なる条件から調製されたPbSeナノ結晶(λ
max=1926nm)のTEM画像を示す図である。
【
図20】
図20aおよび
図20bは、実施例11において調製された、コロイド状PbSeナノ結晶(λ
max=2046nm)の高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)画像およびTEMによる粒子測定のヒストグラムを示す図である。PbSeドットは、高い結晶性であり、積層欠陥および格子欠陥を含まない。
【
図21】
図21aおよび
図21bは、実施例6および実施例11それぞれで調製されたPbSナノ結晶(λ
max=950nm、PL=1060±5nm)およびPbSeナノ結晶(λ
max=1000nm、PL=1100±5nm)の吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
【実施例】
【0187】
いくつかの実施例および比較例を以下に記載し、本開示による方法を説明する。
【0188】
本発明の特定の実施例は、説明の目的で以下に記載されるが、当分野の技術者にとって、添付の特許請求の範囲に定められた本発明を逸脱することなく、本発明の詳細の、数多くの改変がなされ得ることは明白である。
【0189】
別段の指示がない限り、以下の実施例および明細書全体の、全ての部および全ての%は、それぞれ重量部または重量パーセントである。
【0190】
吸収スペクトルは、JASCO V-770UV-可視/NIR分光計(波長範囲400~3200nmにおける測定を提供することができる)で得られた。
【0191】
[実施例1]
Pb3O4および(TMS)2Sを使用した硫化鉛(PbS)ナノ結晶の合成
Pb3O40.19g、オレイン酸0.6ml、およびオクタデセン(ODE)7mlを、真空にし、180℃のN2雰囲気下で30分間保持した三ツ口フラスコに装入して、オレイン酸鉛溶液を生成した。清澄オレイン酸鉛溶液が形成された後、温度を40℃まで下げた。ODE4ml中のビス(トリメチルシリル)スルフィド((TMS)2S)45μlを素早く注入した。溶液は、淡黄色から薄茶色へ変化し、次の5分で、制御可能な核生成を示唆する暗褐色へ変化した。反応を40℃で60分間維持し(UV-Vis-NIR分光計でモニターされる)、次いでゆっくりと室温へ冷却した。次いで、蒸留アセトン20mlを反応混合物に添加した。PbSナノ結晶を遠心分離によって沈殿させ、トルエン中に再分散させ、アセトンおよび遠心分離の組み合わせによって再び沈殿させた。最後に、ナノ結晶をトルエン中に分散させた。精製工程を空気中で実施した。
【0192】
実施例において調製されたPbSナノ結晶は、粉末XRD測定およびEDX測定によって特性決定された。
【0193】
XRD試料は、顕微鏡スライドの端に、比較的厚い不透明薄膜が形成されるまで、トルエン溶液から粒子をドロップキャストすることによって調製された。次いで、この薄膜をPanalytical X’Pert PRO MPD装置を使用して分析した。
【0194】
EDX試料は、炭素系接着タブで覆われたSEM試料スタブ上に、トルエン溶液から粒子をドロップキャストすることによって調製された。トルエンを分析前に蒸発させた。試料をOxford Instruments Energy 250エネルギー分散型分光計システムを備えたPhilips/FEI XL30ESEMで分析した。
【0195】
図1は、実施例1に従って調製されたPbSナノ結晶の粉末XRDパターンを示す。
図1に示されたXRDパターンによって、実施例1により岩塩構造を有するPbSナノ結晶が製造されたことが確認される。
【0196】
表1に示されたように、EDX測定により、調製されたナノ結晶が鉛および硫黄を含有することが確認された。
【0197】
【0198】
実施例1においてトルエン中で調製されたPbSナノ結晶の吸収スペクトルが得られ、結果を
図2に示す。
【0199】
[実施例2]
異なる量のオレイン酸を用いてPb3O4および(TMS)2Sを使用したPbSナノ結晶の合成
実施例1において前述された合成を、オレイン酸量0.6mlを使用して、かつオレイン酸量14.4mlを使用して繰り返した。
【0200】
得られたナノ結晶の吸収スペクトルを
図3に示し(実線はオレイン酸0.6mlに対応し、破線はオレイン酸14.4mlに対応する)、それによれば、異なる量のオレイン酸により異なるサイズの結晶がもたらされた。
【0201】
図3によれば、使用されたオレイン酸の量が、0.6mlの場合と比較して、14.4mlであった場合、より大きなPbSナノ結晶が得られた。
【0202】
[実施例3]
60℃でPb3O4および(TMS)2Sを使用したPbSナノ結晶の合成
実施例1において前述された合成を、鉛塩とビス(トリメチルシリル)スルフィド((TMS)2S)との反応の温度が40℃から60℃まで変化したことを除き、繰り返した。
【0203】
40℃および60℃で得られたナノ結晶の吸収スペクトルを
図4に示し(実線は40℃での反応に対応し、破線は60℃での反応に対応する)、それによれば、異なる温度により、異なるサイズの結晶がもたらされた。
【0204】
図4によれば、鉛塩とカルコゲン含有試薬との反応の温度が上がった場合、より大きなPbSナノ結晶が得られた。
【0205】
[実施例4]
多段階(TMS)2S添加を用いてPb3O4および(TMS)2Sを使用したPbSナノ結晶の合成
Pb3O40.19g、オレイン酸9.6ml、およびオクタデセン(ODE)7mlを、真空にし、180℃のN2雰囲気下で30分間保持した三ツ口フラスコに装入して、オレイン酸鉛溶液を生成した。清澄オレイン酸鉛溶液が形成された後、温度を40℃まで下げた。ODE4ml中のビス(トリメチルシリル)スルフィド((TMS)2S)90μlを素早く注入した。反応を40℃で60分間維持し、次いでゆっくりと室温へ冷却した。次いで、蒸留アセトン20mlを反応混合物に添加した。PbSナノ結晶を遠心分離によって沈殿させ、トルエン中に再分散させ、アセトンおよび遠心分離の組み合わせによって再び沈殿させた。最後に、ナノ結晶をトルエン中に分散させた。精製工程を空気中で実施した。
【0206】
上記の方法を、ビス(トリメチルシリル)スルフィド(TMS)のODE中溶液を2つの等しい部分に分けて、それぞれの部分を、それぞれの注入の間で、15分間隔で別々に反応混合物へ添加したことを除き、繰り返した。最後の注入後30分で、反応が完了した。
【0207】
(TMS)
2Sの単回添加または多段階添加で得られたナノ結晶の吸収スペクトルを
図5に示し(実線は(TMS)
2Sの単回添加による反応に対応し、破線は(TMS)
2Sの2回添加による反応に対応する)、(TMS)
2Sの添加の異なるモードにより、異なるサイズの結晶がもたらされたことを示す。
【0208】
図5によれば、(TMS)
2Sが、単回添加と比較して、2回添加によって添加された場合、より大きなPbSナノ結晶が得られた。
【0209】
[実施例5]
異なる量のODEを用いてPb3O4および(TMS)2Sを使用したPbSナノ結晶の合成
Pb3O40.19g、オレイン酸9.6ml、およびオクタデセン(ODE)7mlを、真空にし、180℃のN2雰囲気下で30分間保持した三ツ口フラスコに装入して、オレイン酸鉛溶液を生成した。清澄オレイン酸鉛溶液が形成された後、温度を40℃まで下げた。ODE4ml中のビス(トリメチルシリル)スルフィド((TMS)2S)45μlを素早く注入した。反応を40℃で60分間維持し、次いでゆっくりと室温へ冷却した。次いで、蒸留アセトン20mlを反応混合物に添加した。PbSナノ結晶を遠心分離によって沈殿させ、トルエン中に再分散させ、アセトンおよび遠心分離の組み合わせによって再び沈殿させた。最後に、ナノ結晶をトルエン中に分散させた。精製工程を空気中で実施した。
【0210】
上記の方法を、(TMS)2Sのオレイン酸鉛溶液への添加の前に、Pb3O4およびオレイン酸を希釈するのに使用されるODEの量を7mlから21mlまで変化させたことを除き、繰り返した。
【0211】
異なる量のODEを用いて得られたナノ結晶の吸収スペクトルを
図6に示し(実線はODE21mlを使用した反応に対応し、破線はODE7mlを使用した反応に対応する)、それによれば、異なる量のODEにより、異なるサイズの結晶がもたらされた。
【0212】
図6によれば、使用されるODEの量が増加する場合、より小さなPbSナノ結晶が得られた。
【0213】
[実施例6]
Pb3O4およびチオアセトアミド(TAA)を使用したPbSナノ結晶の合成
実施例1において前述された合成を、(TMS)2Sを同じモル量のチオアセトアミド(TAA)で置き換えたことを除き、繰り返した。後者は、粉末としてオレイン酸鉛に添加することができるか、または注入前に、溶媒、例えば、アセトン、DMF、もしくはTHFに溶解させることができる。次いで、反応混合物を50℃まで加熱し、その温度で1時間維持するか、または90℃まで加熱し、その温度で20分間維持する。
【0214】
TAAおよび(TMS)
2Sを使用して得られたナノ結晶の吸収スペクトルを
図7に示し(実線は(TMS)
2Sを使用した反応に対応し、破線はTAAを使用した反応に対応する)、それによれば、異なる試薬により、異なるサイズの結晶がもたらされた。
【0215】
図7によれば、(TMS)
2Sの代わりにTAAが使用された場合、より大きなPbSナノ結晶が得られた。
【0216】
図8aおよび
図8bは、PbSナノ結晶のTEM画像およびTEMによる粒子測定のヒストグラムを示す。(TMS)
2Sの代わりにTAAが使用された場合、最大吸収1314nmを有するPbSナノ結晶が得られた。
【0217】
表2は、以下に示すように、(TMS)2Sの代わりにTAAが使用された場合に得られたPbSナノ結晶の、最大吸収波長、サイズ、および組成を示す。Pb対Sの比を増加させることにより、PbSドットの最大吸収波長の増大がもたらされる。
【0218】
【0219】
これらのナノ結晶の吸収FWHMは約100nmである。例えば、最大吸収950nmを表すナノ結晶のFWHMは105nmである。
【0220】
[実施例7]
反応中にアセトンの添加によって促進されるPb3O4および(TMS)2Sを使用したPbSナノ結晶の合成
実施例1において前述された合成を、(TMS)2SのODE中溶液をオレイン酸鉛溶液に添加した10秒後に、アセトン5mlを溶液へ迅速に注入したことを除き、繰り返した。
【0221】
アセトンの添加がある場合とアセトンの添加がない場合で得られたナノ結晶の吸収スペクトルを
図9に示し(実線はアセトンの添加がある場合の反応に対応し、破線はアセトンの添加がない場合の、すなわち、実施例1による反応に対応する)、それによれば、異なる試薬により、異なるサイズの結晶がもたらされた。
【0222】
図9によれば、実施例1と比較して、アセトンが添加された場合、より小さなPbSナノ結晶が得られた。
【0223】
[実施例8]
反応中に冷ヘキサンによってクエンチされるPb3O4および(TMS)2Sを使用したPbSナノ結晶の合成
実施例1において前述された合成を、(TMS)2SのODE中溶液をオレイン酸鉛溶液に添加した1.5分後に、冷ヘキサンを溶液へ迅速に注入したことを除き、繰り返した。
【0224】
ヘキサンの添加のある場合と、ヘキサンの添加のない場合で得られたナノ結晶の吸収スペクトルを
図10に示し(実線はヘキサンの添加がある場合の反応に対応し、破線はヘキサンの添加がない場合、すなわち、実施例1による反応に対応する)、それによれば、異なる試薬により、異なるサイズの結晶がもたらされた。
【0225】
図10によれば、実施例1と比較して、ヘキサンが添加された場合、より小さなPbSナノ結晶が得られた。
【0226】
[実施例9]
Pb3O4およびチオアセトアミド(TAA)を使用したPbSナノ結晶の合成
Pb3O40.35g、オレイン酸1ml、およびオクタデセン(ODE)5mlを、真空にし、180℃のN2雰囲気下で30分間保持した三ツ口フラスコに装入して、オレイン酸鉛溶液を生成した。清澄オレイン酸鉛溶液が形成された後、温度を室温まで下げた。TAA40mgをフラスコに直接装入し、反応混合物を50℃まで加熱し、この温度で60分間維持した。反応混合物を、次いでゆっくりと室温へ冷却した。次いで、蒸留アセトン20mlを反応混合物に添加した。PbSナノ結晶を遠心分離によって沈殿させ、トルエン中に再分散させ、アセトンおよび遠心分離の組み合わせによって再び沈殿させた。最後に、ナノ結晶をトルエン中に分散させた。精製工程を空気中で実施した。
【0227】
次いで、上記の方法を、オレイン酸の量、およびオレイン酸鉛とTAAとの反応の温度が以下の通りであったことを除き、繰り返した。
【0228】
【0229】
実施例9において得られたPbSナノ結晶の広範の吸収スペクトルを
図11に示し、図中、左から右のスペクトルは、50℃でオレイン酸1ml;50℃でオレイン酸1.4ml;70℃でオレイン酸1.4ml;および85℃でオレイン酸1.4mlでの反応に対応する。スペクトルによれば、異なる反応条件および異なる量のオレイン酸により、異なるサイズのPbSナノ結晶がもたらされた。
【0230】
[実施例10]
PbSナノ結晶溶液とドロップキャスト薄膜との比較
実施例1において前述された合成を繰り返した。薄膜試料は、ガラススライド上に、トルエン溶液から粒子をドロップキャストすることによって調製された。トルエンを、分析前に蒸発させることができた。
【0231】
PbSナノ結晶の溶液吸収スペクトルおよび薄膜吸収スペクトルを
図12に示す(実線は溶液ナノ結晶に対応し、破線は薄膜試料に対応する)。溶液と薄膜との両方の吸収ピークは、極めて似ており、よく重複し、その電子状態に変化がなかったこと、およびドロップキャスト後に自己集合が起こらなかったことを示す。
【0232】
[実施例11]
Pb3O4およびTOPSeを使用したセレン化鉛(PbSe)ナノ結晶の合成
オレイン酸Pb1.5g(PbとOAとのモル比1:4)およびオクタデセン(ODE)3.9mlを三ツ口丸底フラスコに装入し、次いで、真空/窒素の3回サイクルを介して脱気し、80℃で、N2雰囲気下で30分間保持した。TOPSe3.6g(TOPとSeとのモル比2:1)を迅速に注入した。反応混合物の温度が80℃に戻った後、DPP0.06mlを迅速に注入した。反応混合物の色は、DPP添加直後に薄茶色から暗褐色まで変化し、PbSeナノ結晶の核生成が生じたことを示唆した。核生成の発生は、PbSeナノ結晶の形成において不可欠な初めのステップであり、その、所望のサイズへのさらなる成長を可能にする。次いで、反応溶液を80℃から150℃まで迅速に加熱し、アリコートを異なる温度で取り出し、室温(20℃)まで迅速に冷却し、分析前にN2中で保った。PbSeナノ結晶を精製するために、アリコート試料および最終反応混合物をヘキサンで希釈し(容積比1:1)、次いで、アセトンを添加した(容積比ヘキサン/アセトンは1:3であった)。PbSeナノ結晶を遠心分離によって沈殿させ、ヘキサン中に再分散させ、アセトンおよび遠心分離の組み合わせによって再び沈殿させた。精製工程を空気中で実施した。
【0233】
実施例11において調製されたPbSeナノ結晶は、UV-Vis-NIR分光計、XRD、TEM、およびICP-OESを使用して特性決定された。
【0234】
吸収のために、PbSeナノ結晶をテトラクロロエチレンまたはヘキサンのいずれかに分散させ、その吸収をJasco V-770 UV-VIS/NIR分光計を使用してモニターした。
【0235】
XRD試料は、PbSeナノ粒子のヘキサン中分散液を、顕微鏡スライド上に、比較的厚い不透明な薄膜が形成されるまでドロップキャストすることによって調製された。次いで、この薄膜をBruker D2 Phaser装置を使用して分析した。
【0236】
TEM試料は、PbSeナノ粒子のヘキサン中分散液を銅グリッド上にドロップキャストすることによって調製された。溶媒を分析前に蒸発させた。試料を、FEI Titan G2 80~200kV(S-)TEM ChemiSTEM装置で分析した。
【0237】
図15は、Pb
3O
4およびTOPSeを使用したPbSeナノ結晶の合成スキームを示す。
【0238】
図16は、実施例11に従って調製されたPbSeナノ結晶の粉末XRDパターンを示す。
図16に示したXRDパターンによって、実施例11により立方晶相PbSeナノ結晶が製造されたことが確認される。
【0239】
図17は、実施例11に従って調製されたPbSeナノ結晶の吸収スペクトルを示す。左から右へのスペクトルは、90℃、100℃、および110℃の反応温度に対応する。
【0240】
表3は、PbSeナノ結晶の最大吸収波長、サイズ、および組成物を示す。より低いPb対Se比(または、Seモル比の増加)により、より大きな粒子およびより長い最大波長がもたらされる。
【0241】
【0242】
これらのナノ結晶の吸収FWHMは、それぞれ、約98、約87、および約100である。
【0243】
鉛原子(鉛(IV)含有化合物中の)の有機酸に対するモル比は、PbSナノ結晶合成において示されるように、所望のナノ結晶サイズおよび最大吸収波長を実現するために変えることができる。このパラメーターをPbSe合成に適用することができるが、単純化するために、取り決めた、鉛対オレイン酸モル比を使用した。
【0244】
異なるPb:Seモル比もまた、PbSe合成において使用された。1.8gから12.15gまでの範囲のTOPSeの量は、1:4から1:27までのPb:Seモル比に対応する。
【0245】
図18は、様々な反応条件から得られたPbSeナノ結晶の広範のスペクトル調整性を示す。スペクトルによれば、PbSeナノ結晶の最大吸収波長は、異なるPb:Se比および異なる反応温度を使用することによって制御することができる。
【0246】
図19は、PbSeナノ結晶のTEM画像(λ
max=1926nm)を示す。
【0247】
図20aおよび
図20bは、PbSeナノ結晶の高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)画像(λ
max=2046nm)およびTEMによる粒子測定のヒストグラムを示す。PbSeドットは、高い結晶性であり、積層欠陥および格子欠陥を含まない。
【0248】
図21aおよび
図21bは、実施例6および実施例11においてそれぞれ調製された、PbSナノ結晶の吸収スペクトルおよび発光スペクトル(λ
max=950nm、PL=1060±5nm)、ならびにPbSeナノ結晶の吸収スペクトルおよび発光スペクトル(λ
max=1000nm、PL=1100±5nm)を示す。ドットは、808nmレーザーで励起された。
【0249】
表4は、一部のPbSナノ結晶およびPbSeナノ結晶の、最大吸収波長、フォトルミネッセンスピーク、発光FWHM、および量子収率(QY)を示す。
【0250】
一部のPbSナノ結晶およびPbSeナノ結晶のフォトルミネッセンス量子収率(PLQY)および半値幅(FWHM)を表4に示す。
【0251】
【0252】
PLQYデータは、de Mello, J. C., Wittmann, H. F., & Friend, R. H. An improved experimental determination of external photoluminescence quantum efficiency. Adv. Mater. 1997, 9(3),230-232; doi: 10.1002/adma.19970090308の方法に従って、記録され、分析された。
【0253】
スペクトルは、調製されたそれぞれの試料のアリコートを使用して積分球の外側に記録され、PLQY用のアリコートを調製する前に、初期吸収を決定した。
【0254】
ガラス製キュベット内の各試料1mlをProlite Labsphere Spectraflect積分球の内側に設置した。試料を1064nmのTHOR研究室M9-A64-0200レーザーダイオード、または808nmのTHOR研究室L808P200レーザーダイオードのいずれかを用いて励起させた。808nmビームおよび1064nmビームからの光出力は、それぞれ125mWおよび165mWであった。それぞれのビームは、積分球に入る前に、173Hzで操作される光学チョッパーを通して向けられた。球からの発光は、Bentham TMc300モノクロメーターを通して焦点を合わせ、その後、Newport 818-IG光ダイオードによって検出された。光ダイオードからの信号は、ロックイン増幅器を使用して、基準としてチョッパー周波数を用いて収集された。PLQYは、試料について、散乱レーザー放射と放出されたフォトルミネッセンスとの両方を記録することによって決定され、但し、試料は、回転台によって励起ビームの中と外との両方に位置した。試料溶媒のバイアルもまた記録され、その、信号への寄与が取り除かれた。全てのデータを、空の積分球中に向けられた照射からの、既知のスペクトル強度のBentham IL1ハロゲンランプの測定によって、システムのスペクトル応答について収集した。
【国際調査報告】