(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-31
(54)【発明の名称】アディティブマニュファクチャリング用の変性ポリマー由来セラミック、それを用いたアディティブマニュファクチャリング、およびそれによって製造されたセラミック体
(51)【国際特許分類】
C04B 35/632 20060101AFI20220524BHJP
C04B 35/638 20060101ALI20220524BHJP
C04B 35/56 20060101ALI20220524BHJP
C04B 35/58 20060101ALI20220524BHJP
C04B 35/01 20060101ALI20220524BHJP
C08L 101/02 20060101ALI20220524BHJP
C08L 85/00 20060101ALI20220524BHJP
C08L 83/00 20060101ALI20220524BHJP
C08K 3/20 20060101ALI20220524BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220524BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20220524BHJP
G21C 3/62 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
C04B35/632 500
C04B35/638
C04B35/56
C04B35/58
C04B35/01
C08L101/02
C08L85/00
C08L83/00
C08K3/20
C08K3/04
C08K3/08
G21C3/62 100
G21C3/62 600
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560471
(86)(22)【出願日】2020-03-31
(85)【翻訳文提出日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 US2020025950
(87)【国際公開番号】W WO2020205856
(87)【国際公開日】2020-10-08
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521440998
【氏名又は名称】ビーダブリューエックスティ・アドバンスト・テクノロジーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BWXT Advanced Technologies LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100136777
【氏名又は名称】山田 純子
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,ベンジャミン ディ
(72)【発明者】
【氏名】サラシン,ジョン アール
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA031
4J002AA03W
4J002CP00X
4J002CP00Y
4J002CP01X
4J002CP01Y
4J002CP03X
4J002CP03Y
4J002CQ03X
4J002CQ03Y
4J002DA016
4J002DA116
4J002DE097
4J002DF017
(57)【要約】
プレセラミック粒子溶液は、配位型-PDCプロセス、直接型PDCプロセス、または配位型-直接型PDCプロセスによって調製することができる。プレセラミック粒子溶液は、(i)金属又はメタロイドのカチオンを含む有機ポリマー、(ii)第1の有機金属ポリマー、及び(iii)第2の有機金属ポリマー中の金属とは異なる金属又はメタロイドのカチオンを含む第2の有機金属ポリマーよりなる群から選択されるポリマーと、(a)セラミック燃料粒子及び(b)減速材粒子よりなる群から選択される複数の粒子と、分散剤と、重合開始剤と、を含む。プレセラミック粒子溶液は、デジタル光投影などのアディティブマニュファクチャリングプロセスに供給され、構造体(プレセラミック粒子グリーン体である)にすることができ、その後、脱バインダーを行ってポリマー由来セラミック焼結体を形成することができる。いくつかの実施形態では、ポリマー由来セラミック焼結体は、核分裂炉用のコンポーネントまたは構造体である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレセラミック粒子溶液であって、
(i)金属またはメタロイドのカチオンを含む有機ポリマー、(ii)第1の有機金属ポリマー、および(iii)第2の有機金属ポリマー中の金属とは異なる金属またはメタロイドのカチオンを含む第2の有機金属ポリマーよりなる群から選択されるポリマー、
(a)セラミックまたは金属の燃料粒子および(b)減速材粒子よりなる群から選択される複数の粒子、
分散剤、および
重合開始剤を含む、プレセラミック粒子溶液。
【請求項2】
前記有機ポリマーが脂肪族ポリマーであり、前記金属またはメタロイドのカチオンが、Si、Ti、Be、B、U、Hf、Zr、NbおよびGdならびにそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項1に記載のプレセラミック粒子溶液。
【請求項3】
前記有機ポリマーが、アルカン、アルケン、アルキン、およびそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項1または2に記載のプレセラミック粒子溶液。
【請求項4】
前記有機金属系ポリマーが、ポリシラザン、ポリカルボシラン、ポリシロキサン、ポリシラン、ポリボロシラン、ポリボラジレン、およびポリアミノボランよりなる群から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載のプレセラミック粒子溶液。
【請求項5】
前記セラミックまたは金属の燃料粒子が、酸化ウラン、10wt.%のモリブデンを含むウラン(U-10Mo)、窒化ウラン(UN)、およびその他の安定した核分裂性燃料化合物を含む組成を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のプレセラミック粒子溶液。
【請求項6】
前記酸化ウランは20%まで濃縮されている、請求項5に記載のプレセラミック粒子溶液。
【請求項7】
前記減速材粒子は、ベリリウムまたは炭素またはそれらの混合物を含む組成を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のプレセラミック粒子溶液。
【請求項8】
前記重合開始剤が光重合開始剤である、請求項1~7のいずれか1項に記載のプレセラミック粒子溶液。
【請求項9】
前記光重合開始剤が、UV光重合開始剤またはEビーム開始光重合開始剤である、請求項8に記載のプレセラミック粒子溶液。
【請求項10】
プレセラミック粒子グリーン体であって、
(i)金属またはメタロイドのカチオン官能基を含む有機ポリマー、(ii)有機金属ポリマー、および(iii)金属またはメタロイドのカチオン官能基を含む有機金属ポリマーよりなる群から選択されるポリマーのマトリックス;ならびに
(a)セラミックまたは金属の燃料粒子、および(b)減速材粒子よりなる群から選択される複数の粒子
を含み、
前記複数の粒子は、前記マトリックスと共に含まれる、プレセラミック粒子グリーン体。
【請求項11】
前記有機ポリマーが脂肪族ポリマーであり、前記金属またはメタロイドのカチオンが、Si、Ti、Be、B、U、Hf、Zr、NbおよびGdならびにそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項10に記載のプレセラミックグリーン体。
【請求項12】
前記有機ポリマーが、アルカン、アルケン、アルキン、およびそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項10または11に記載のプレセラミックグリーン体。
【請求項13】
前記有機金属系ポリマーが、ポリシラザン、ポリカルボシラン、ポリシロキサン、ポリシラン、ポリボロシラン、ポリボラジレン、およびポリアミノボランよりなる群から選択される、請求項10~12のいずれか1項に記載のプレセラミックグリーン体。
【請求項14】
前記セラミックまたは金属の燃料粒子が、酸化ウラン、10wt.%のモリブデンを含むウラン(U-10Mo)、窒化ウラン(UN)、およびその他の安定した核分裂性燃料化合物を含む組成を有する、請求項10~13のいずれか1項に記載のプレセラミックグリーン体。
【請求項15】
前記酸化ウランは20%まで濃縮されている、請求項14に記載のプレセラミックグリーン体。
【請求項16】
前記減速材粒子は、ベリリウムまたは炭素またはそれらの混合物を含む組成を有する、請求項10~15のいずれか1項に記載のプレセラミックグリーン体。
【請求項17】
ポリマー由来セラミック焼結体であって、
マトリックスとして(1)カチオン官能基として金属またはメタロイドを含む有機ポリマーからの焼結された金属またはメタロイド、または(2)有機金属ポリマーからの焼結された金属またはメタロイド、および
(a)セラミックまたは金属の燃料粒子、および(b)減速材粒子よりなる群から選択される複数の粒子
を含み、
前記複数の粒子は、前記マトリックスと共に含まれる、ポリマー由来セラミック焼結体。
【請求項18】
前記有機ポリマーが脂肪族ポリマーであり、前記金属またはメタロイドのカチオンが、Si、Ti、Be、B、U、Hf、Zr、NbおよびGdならびにそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項17に記載のポリマー由来セラミック焼結体。
【請求項19】
前記有機ポリマーが、アルカン、アルケン、アルキン、およびそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項17または18に記載のポリマー由来セラミック焼結体。
【請求項20】
前記有機金属系ポリマーが、ポリシラザン、ポリカルボシラン、ポリシロキサン、ポリシラン、ポリボロシラン、ポリボラジレン、およびポリアミノボランよりなる群から選択される、請求項17~19のいずれか1項に記載のポリマー由来セラミック焼結体。
【請求項21】
前記セラミックまたは金属の燃料粒子が、酸化ウラン、10wt.%のモリブデンを含むウラン(U-10Mo)、窒化ウラン(UN)、およびその他の安定した核分裂性燃料化合物を含む組成を有する、請求項17~20のいずれか1項に記載のポリマー由来セラミック焼結体。
【請求項22】
酸化ウランは20%まで濃縮されている、請求項21に記載のポリマー由来セラミック焼結体。
【請求項23】
前記減速材粒子は、ベリリウムまたは炭素またはそれらの混合物を含む組成を有する、請求項17~22のいずれか1項に記載のポリマー由来セラミック焼結体。
【請求項24】
アディティブマニュファクチャリングプロセスによって、プレセラミック粒子溶液から構造体を形成するステップを含み、
前記プレセラミック粒子溶液が、
(i)金属またはメタロイドのカチオンを含む有機ポリマー、(ii)第1の有機金属ポリマー、および(iii)第2の有機金属ポリマー中の金属とは異なる金属またはメタロイドのカチオンを含む第2の有機金属ポリマーよりなる群から選択されるポリマー、
(a)セラミック燃料粒子および(b)減速材粒子よりなる群から選択される複数の粒子、
分散剤、および
重合開始剤を含む、グリーン体の製造方法。
【請求項25】
前記アディティブマニュファクチャリングプロセスは、デジタル光投影を含む、請求項24に記載のグリーン体の製造方法。
【請求項26】
前記有機ポリマーが脂肪族ポリマーであり、前記金属またはメタロイドのカチオンが、Si、Ti、Be、B、U、Hf、Zr、Nb、Gdおよびそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項24および25のうちのいずれか1項に記載のグリーン体の製造方法。
【請求項27】
前記有機ポリマーが、アルカン、アルケン、アルキン、およびそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項24~26のいずれか1項に記載のグリーン体の製造方法。
【請求項28】
前記有機金属系ポリマーが、ポリシラザン、ポリカルボシラン、ポリシロキサン、ポリシラン、ポリボロシラン、ポリボラジレン、およびポリアミノボランよりなる群から選択される、請求項24~27のいずれか1項に記載のグリーン体の製造方法。
【請求項29】
前記セラミック燃料粒子が、酸化ウラン、10wt.%のモリブデンを含むウラン(U-10Mo)、窒化ウラン(UN)、およびその他の安定した核分裂性燃料化合物を含む組成を有する、請求項24~28のいずれか1項に記載のグリーン体の製造方法。
【請求項30】
酸化ウランは20%まで濃縮されている、請求項29に記載のグリーン体の製造方法。
【請求項31】
前記減速材粒子は、ベリリウムまたは炭素またはこれらの混合物を含む組成を有する、請求項24~30のいずれか1項に記載のグリーン体の製造方法。
【請求項32】
前記重合開始剤が光重合開始剤である、請求項24~31のいずれか1項に記載のグリーン体の製造方法。
【請求項33】
前記光重合開始剤が、UV光重合開始剤またはEビーム開始光重合開始剤である、請求項32に記載のグリーン体の製造方法。
【請求項34】
前記構造体が、核分裂炉用の部品(component)である、請求項24~33のいずれか1項に記載のグリーン体の製造方法。
【請求項35】
焼結体の製造方法であって、
請求項24~34のいずれか1項に記載の方法の通りグリーン体を作ること、および
前記グリーン体を脱バインダーして、焼結体を形成することを含み、
前記焼結体は、
マトリックスとして(1)カチオン官能基として金属またはメタロイドを含む有機ポリマーからの焼結された金属またはメタロイド、または(2)有機金属ポリマーからの焼結された金属またはメタロイド、および
前記マトリックスに含まれる複数の粒子であって、(a)セラミック燃料粒子および(b)減速材粒子よりなる群から選択される複数の粒子
を含む、焼結体の製造方法。
【請求項36】
前記脱バインダーが、焼結、熱分解、焼成のうち少なくとも1つを含む、請求項35に記載の焼結体の製造方法。
【請求項37】
前記脱バインダーにより、金属(M)がカチオン官能基として金属またはメタロイドを含む有機ポリマーからの金属またはメタロイドであるか、または有機金属ポリマーからの金属またはメタロイドである、金属の炭化物、窒化物または酸化物(M(C,N,O))種が生成される、請求項35または36に記載の焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プレセラミック粒子、粒子溶液および組成物、および特に、アディティブマニュファクチャリング(additive manufacturing)を介してポリマー由来セラミック(PDC)に製造するためのもの、ならびにPDC自体に関する。本開示はまた、そのようなプレセラミック粒子、粒子溶液および組成物を製造するための方法、ならびに特に核分裂炉用の部品(components)および構造体に関連するPDCを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の議論では、特定の構造および/または方法に言及している。しかし、以下の参照は、これらの構造および/または方法が先行技術を構成することを認めるものと解釈されるべきではない。出願人は、そのような構造および/または方法が本発明に対して先行技術として適格ではないことを証明する権利を明示的に留保する。
【0003】
金属/メタロイド(metalloid)種を含む有機金属化合物および有機化合物は、制御された雰囲気下での熱処理などの脱バインダー処理によって、無機材料に変換することができ、ポリマー由来セラミック(PDC)と呼ばれるセラミックを製造するために使用することができる。プレセラミックポリマーの構成と微細構造が、脱バインダー後のセラミックの、構成、微細構造、および収率を決定する。例えば、熱処理(典型的には不活性雰囲気下)により、PDCはM(C,N,O)種(ここでMは金属/メタロイド種)に熱分解し、揮発性種(CH
4、H
2、CO
2、H
2O、および炭化水素など)は材料から出ていく。
図1は、PDCの調製と処理に関する例示的なフローダイアグラム1であり、その中には主要な製品と処理工程が示されている。
【0004】
PDC処理の一例として、適切な樹脂組成物のデジタル・ライト・プロジェクション(DLP)アディティブ・マニュファクチャリング(AM)がある。このような樹脂10は、典型的には、4つの主構成要素(components)、すなわち、微粒子相12、微粒子相のための分散剤14、重合を開始するための開始剤/吸収剤16、および、グリーン体を構成する有機相を与える重合されるモノマー18を含む。
図2は、これら4つの主構成要素(components)を有する樹脂10を模式的に示したものである。典型的には、モノマー18は純粋な有機物であり、これは、焼成/熱分解/焼結などによる後続の脱バインダー時に大きな体積損失をもたらす。例えば、
図3は、37vol.%のZr
0.97Y
0.03O
2樹脂を用いてDLP AMで製造されたボディの、脱バインダー前と後の両方を示している。脱バインダー前のボディ20と脱バインダー後のボディ22の間には、約30~40%のロス(体積ベースで)がある。
図4は、格子状の構造を持つ脱バインダー体において形成されたクラック30を示す顕微鏡画像である。これらのクラック30は、脱バインダーおよび焼結時の収縮により発生した応力によるものである。クラック30が、脱バインダー体(debinded body)においてどのように実質的に同じ方向に配向しているかということ、この方向は、アディティブ・マニュファクチャリングプロセスから連続して堆積された層の間の界面に関連している(よって「層間クラック」という用語につながる)ことに留意されたい。
【発明の概要】
【0005】
要約
一般に、出願人は、ポリマー由来セラミックの組成物と、セラミック体を形成するためのアディティブマニュファクチャリングを介したそれらのプロセスについて検討してきた。これには、最終的なセラミックのための所望の材料を含むように、プレセラミック粒子溶液(ここで、プレセラミック粒子溶液は、印刷に使用されるモノマー/オリゴマー/ポリマー-セラミック粒子樹脂である)の組成を変化させることや、無機物の装填量を増加させたり、製造効率を向上させたり、脱バインダーや欠陥時の体積損失を減少させたりするために、プレセラミック粒子溶液を変化させることが含まれていた。プレセラミック粒子溶液の組成物やアディティブマニュファクチャリングプロセスにおけるこのようなバリエーションは、使用される材料や形成されるセラミックに対応するように調整することができる。例えば、ここで開示されている組成物とプロセスは、化学組成の制御を高め、ポリマー相におけるカチオンの均等な分布さえも提供する、原子レベルの非結晶性均一カチオン源を可能にする。また例えば、原子力用途では、(プレセラミック粒子溶液中および形成されたセラミック中の両方の)核分裂性材料の装填は、非臨界を維持することを選択でき、製造された部品(component)の寿命にわたって十分な封じ込めも提供できる。
【0006】
一般に、プレセラミック粒子溶液は、これらのプロセスが本明細書にさらに開示されているように、配位型PDC(Coordinated-PDC)プロセス、直接型PDC(Direct-PDC)プロセス、または配位型-直接型PDC(Coordinated-Direct-PDC)プロセスによって調製することができる。例示的な実施形態では、プレセラミック粒子溶液は、(i)金属またはメタロイドのカチオンを含む有機ポリマー、(ii)第1の有機金属ポリマー、および(iii)第2の有機金属ポリマー中の金属とは異なる金属またはメタロイドのカチオンを含む第2の有機金属ポリマー、よりなる群から選択されるポリマーと、(a)セラミック燃料粒子および(b)減速材(moderator)粒子よりなる群から選択される複数の粒子と、分散剤と、重合開始剤とを含む。
【0007】
プレセラミック粒子溶液は、デジタル光投影などのアディティブマニュファクチャリングプロセスに供給され得、構造体が、アディティブマニュファクチャリングプロセスによって、プレセラミック粒子溶液から作製され得る。例示的な実施形態において、構造体(プレセラミック粒子グリーン体である)は、(i)金属またはメタロイドのカチオン官能基を含む有機ポリマー、(ii)有機金属ポリマー、および(iii)金属またはメタロイドのカチオン官能基を含む有機金属ポリマー、よりなる群から選択されるポリマーのマトリックスと、(a)セラミック燃料粒子および(b)減速材粒子よりなる群から選択される複数の粒子であって、マトリックスとともに含まれる複数の粒子とを含む。
【0008】
アディティブマニュファクチャリングによって製造された構造体(プレセラミック粒子グリーン体である)は、その後、脱バインダー処理されて、ポリマー由来セラミック焼結体を形成することができる。例示的な実施形態では、ポリマー由来セラミック焼結体は、
(1)カチオン官能基として金属またはメタロイドを含む有機ポリマーからの金属またはメタロイドの焼結体、または(2)有機金属ポリマーからの金属またはメタロイドの焼結体、のマトリックスと、(a)セラミック燃料粒子および(b)減速材粒子よりなる群から選択される複数の粒子であって、マトリクスとともに含まれる複数の粒子とを含む。
【0009】
別段の記載がない限り、本明細書で使用される金属(metallic)は、有機物でないものを意味し、周期律表の金属およびメタロイドを含む。
【0010】
別段の記載がない限り、本明細書で使用される有機金属化学は以下を含む。有機リチウム化学、有機ベリリウム化学、有機ボラン(organoborane)化学(第2周期の元素);有機マグネシウム化学、有機アルミニウム化学、有機ケイ素化学(第3周期の元素);有機チタン化学、有機クロム化学、有機マンガン化学、有機鉄化学、有機コバルト化学、有機ニッケル化学、有機銅化学、有機亜鉛化学、有機ガリウム化学、有機ゲルマニウム化学(第4周期の元素);有機ルテニウム化学、有機パラジウム化学、有機銀化学、有機カドミウム化学、有機インジウム化学、有機スズ化学(第5周期元素);有機ランタニド化学、有機オスミウム化学、有機イリジウム化学、有機白金化学、有機金化学、有機水銀化学、有機タリウム化学、有機鉛化学(第6周期元素);および有機ウラン化学(第7周期元素)。
【0011】
本明細書の実施形態の議論で使用される全ての値は、(その用語が本文で使用されているか否かにかかわらず)公称として報告され、かつ実施例および試験における全ての値は、実際の値として報告される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、同様の数字が同様の要素を指定している添付の図面と関連して読むことができる。
【0013】
【
図1】
図1は、PDCの調製および処理のための例示的なフローダイアグラムである。
【
図2】
図2は、微粒子相、分散剤、開始剤、およびモノマーの4つの主成分を有する樹脂を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、37vol.%のZr
0.97Y
0.03O
2樹脂を用いてDLP AMにより製造された第1体(first body)の、脱バインダーの前と後の両方を示している。
【
図4】
図4は、脱バインダーおよび焼結された第2体(second body)の一部の顕微鏡画像であり、脱バインダーおよび焼結中の収縮によって誘発された応力により発生した層間クラックを示している。
【
図5】
図5Aおよび
図5Bは、配位型PDC(Coordinated-PDC)の脱バインダープロセスを模式的に示す。
【
図6】
図6は、直接型PDC(Direct-PDC)の脱バインダープロセスを模式的に示す。
【
図7】
図7は、配位型-直接型PDC(Coordinated-Direct-PDC)の脱バインダープロセスを模式的に示す。
【
図8】
図8は、X線回折分析用の非晶質セラミック粒子を形成するために使用される、配位型PDC(Coordinated-PDC)プロセスを模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、酸化ウラン試料の高温X線回折分析の結果を示すグラフである。
【
図10】
図10は、セラミック粒子のコーティングに使用される、配位型PDC(Coordinated-PDC)合成プロセスを模式的に示す。
【
図11】
図11は、炭素質層でセラミック微粒子をコーティングし、その後、PDC技術によってさらに処理するように修正された、配位型PDC(Coordinated-PDC)合成プロセスを模式的に示す。
【
図12】
図12は、アディティブマニュファクチャリングプロセスにおいて、光活性ポリマーを使用せずにPDCコーティングを直接適用するためのプロセスステップを模式的に示す。
【
図13】
図13Aは、核熱推進(NTP)原子炉の概略図であり、
図13Bは、ダイレクトフローオーバー格子燃料原子炉(direct flow over lattice fuel reactor)設計の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
一般に、開示されているポリマー由来セラミックは、プレセラミック粒子溶液から調製されるが、溶液の組成は変化し得る(グリーン体および最終的なセラミック部品(component)を形成するメカニズムに付随する変化を伴う)。様々なバリエーションが開示され、以下で議論される。
【0015】
第1の実施形態(本明細書では配位型PDC(Coordinated-PDC)ともいう)では、開示されたポリマー由来セラミックは、以下の化学構造(式1)で表される、金属またはメタロイドのカチオンを含む有機ポリマーをベースとする。
【0016】
【0017】
式1の代表的な化学構造では、有機系ポリマーは-C-C-構造で表され、金属またはメタロイドのカチオンはM+構造で表される。有機系ポリマーは、所望の部品(component)を生成するために十分な装填量まで所望の微粒子相を装填することのできる一方で、アディティブマニュファクチャリングによって処理することができる、任意の適切な有機系ポリマーでありうる。金属またはメタロイドのカチオンは、周期律表の任意の金属またはメタロイドであることができる。特定の微粒子相は、この目的のために、十分に対になる(paired)ことができる様々な(a range of)有機系ポリマーを有しうることに留意すべきである。特定の実施形態では、有機系ポリマーは、脂肪族ポリマーであり、あるいは有機系ポリマーは、アルカン、アルケン、アルキン、およびそれらの混合物よりなる群から選択される。特定の実施形態では、金属またはメタロイドのカチオンは、Si、Ti、Be、B、U、Hf、Zr、Nb、およびGd、ならびにそれらの混合物よりなる群から選択される。一般的に、金属またはメタロイドのカチオンは、溶液に導入され、次いで有機系ポリマーと配位するように駆動され得る。カチオン源は変わり得るし、それを有機系ポリマーに配位させる方法も変わるだろう。
【0018】
特定の実施形態では、所望の微粒子相が、例えば、酸化ウラン(これは、例えば20%未満の濃縮度に濃縮されてもよいが、他の実施形態では100%までのより高い濃縮のものが使用されてもよい)、10重量%のモリブデンを有するウラン(U-10Mo)(ただし、他のU/Mo比も使用されうる)、窒化ウラン(UN)、または他の安定した核分裂可能な燃料化合物を含む組成を有する、セラミック燃料粒子で構成される。他の実施形態では、所望の微粒子相は、例えば、Be、BeO、または他の減速材材料を含む組成を有するセラミック粒子で構成される。
【0019】
金属またはメタロイドのカチオンを含む有機ポリマーを有する溶液は、アディティブマニュファクチャリングによって処理されてグリーン体を形成し、その後、熱分解/焼成/焼結などによって脱バインダーがなされる。脱バインダープロセスでは、有機種、特に炭素種がガス状になる一方で、金属またはメタロイドのカチオンなどの無機種(およびプレセラミック粒子溶液に装填された微粒子相の非炭素成分)が残り、浸炭、硝化、または酸化などのさらなる化学変換を受ける。その結果として、脱バインダーはカチオンのセラミック形態をもたらす。
【0020】
図5Aおよび5Bは、配位型PDCのためのそのような脱バインダープロセスを模式的に示す。
図5Aおよび5Bのそれぞれにおいて、UO
2のセラミック粒子102またはBeOのセラミック粒子202などのセラミック粒子を、106,206で示されるU
+の金属カチオンを有するポリエチレングリコールアクリレートなどの、金属またはメタロイドのカチオンを含む有機ポリマーの溶液相104,204に入れることによって、プレセラミック粒子溶液100,200が調製される。配位型PDCプロセスを実施することで、プレセラミック粒子溶液100,200中の透明ポリマー相の働き(operation)によって、セラミック粒子の間にカチオン種を均一に分散させることができる。熱分解などによるその後のバインダー焼却(burnout)110,210の間、有機ポリマー106,206の有機相は蒸発する。しかし、カチオン種112,212は残り(典型的には、炭化物、窒化物または酸化物などのセラミックとして(例えば、バインダー焼却が発生する条件に依存する))、そのような金属の炭化物、窒化物または酸化物(M(C,N,O))種の存在によって、形成されたままのセラミック体114,214においてセラミック質量の増加をもたらす。
【0021】
配位型PDCプロセスは、脱バインダープロセスでの分解時に、形成されたままのセラミック体のカチオン種の量を増加させることができる。例えば、有機ポリマーが分子量62g/molのエチレングリコールジアクリレートであり、55vol.%のセラミック粒子溶液にあり残部が有機ポリマーであると考える。金属またはメタロイドのカチオンを含む有機ポリマーにおける、OH官能基とカチオンの比率が1:1であると仮定すると、有効な「セラミック体積装填量」は理論的には~25vol.%まで増加しうる。他の例では、溶液への所望の合計固体装填目標が50vol.%の装填である場合、セラミック粒子の装填は、例えば25vol.%のみであってもよく、一方、セラミック材料の残部は、配位PDCモノマーからの金属またはメタロイドのカチオン種を用いて脱バインダーで形成され得る。プレセラミック粒子溶液の溶液相でセラミック体積装填を利用することは、アディティブマニュファクチャリングプロセス中の光透過の増加に付随するセラミック粒子装填の減少を可能にし、したがって、高散乱または吸収性のセラミック種の場合に特に有効である。したがって、核分裂性材料の装填量が増加したセラミックは、例えば、アディティブマニュファクチャリングによる所望の物品の製造速度などの、効率を高めてアディティブマニュファクチャリングすることができる。
【0022】
図5Aは、同種のカチオン種、すなわちUO
2を用いた例を示しているが、他の例では、
図5Bに示すように、混合カチオン種および混合セラミックを用いることができる。また、いくつかの実施形態では、セラミック粒子は、
図5Aの例に示すUO
2セラミック粒子102のような核分裂性物質を含むが、他の実施形態では、セラミック粒子は、
図5Bに示すBeOセラミック粒子204のような減速材種を含む。例えば、プレセラミック粒子溶液にBeOセラミック粒子を使用すると、BeOの全体的に低い屈折率のため、プリントベースのアディティブマニュファクチャリング技術を使用することが著しく容易になる。
【0023】
図5Aに提示されたUO
2-UO
2ポリマー由来セラミックは、高速炉用途に組み込まれてもよく、あるいは、二次減速材要素を追加して、熱増殖炉用途に組み込まれてもよい。
図5Bに示すBeO-UO
2ポリマー由来セラミックは、熱増殖炉用途に直接的に組み込まれうる。さらに、70/30 BeO/UO
2プレセラミック粒子溶液は、熱中性子のみで臨界を達成するのに十分な、形成されたままのポリマー由来セラミックを得るために、固体セラミック燃料粒子を使用せずにアディティブマニュファクチャリング法によって処理され得る。
【0024】
第2の実施形態(本明細書では直接型PDCとも呼ぶ)では、開示されたポリマー由来セラミックは、ポリマー構造(有機ポリマー構造では炭素を含む)の骨格の元素が金属またはメタロイド元素で置き換えられた有機金属ポリマーをベースとしている。有機金属ポリマーは、以下の化学構造(式2)で表される。
【0025】
【0026】
式2の代表的な化学構造において、有機金属系ポリマーは-M-M-構造で表され、Mは金属またはメタロイドである。有機金属ポリマーは、有機金属骨格(M-NまたはM-C)を有するか、または完全に金属(M-M)(式2に示すように)であり得、脱バインダー環境中に硝化または浸炭が起こり得る。いずれの場合も、アディティブマニュファクチャリングシステムで直接型PDCを利用する結果、有機蒸発に由来する収縮が最小限に抑えられるはずである。有機金属系ポリマーは、所望の部品(component)を生成するのに十分な装填量まで所望の微粒子相を装填することができる一方、アディティブマニュファクチャリングによって処理することができる、任意の適切な有機金属系ポリマーであり得る。有機金属系ポリマー中の金属またはメタロイドは、周期律表の任意の金属またはメタロイドであり得る。例示的な金属およびメタロイドには、Si、Ge、Sn、P、B、およびSが含まれる。特定の微粒子相は、この目的のために、十分に対になる(paired)ことができるさまざまな(a range of)有機金属系ポリマーを有しうることに留意すべきである。
【0027】
直接型PDCの特定の実施形態では、金属およびメタロイドはシリコン系であり、その例として、炭化ケイ素(SiC)、炭窒化ケイ素(SiCN)および窒化ケイ素が挙げられ、これらの全ては、形成されたままのポリマー由来セラミック構造の高温相安定性を可能にする十分に高い融点を有する。直接型PDCの他の実施形態では、金属およびメタロイドは、ホウ素ベースである。更なる実施形態では、金属およびメタロイドは、SiおよびBなどのような混合物である。他の例示的な有機金属系ポリマーとしては、SiNマトリックスの誘導体のためのポリシラザン、SiCマトリックスの誘導体のためのポリカルボシラン、SiOマトリックスの誘導体のためのポリシロキサン、Siコーティング(窒化、酸化、または炭化され得る)の誘導体のためのポリシラン、Si/Bマトリックスの誘導体のためのポリボロシラン、およびBNマトリックスの誘導体のためのポリボラジレンまたはポリアミノボランが含まれる。シリコン系ポリマー由来セラミックは、塗料現像のための後処理を必要としないという点で有利である。
【0028】
有機金属系ポリマーを有する溶液は、アディティブマニュファクチャリングによって処理されてグリーン体を形成し、その後、熱分解/焼成/焼結などによって脱バインダーがなされる。脱バインダープロセスでは、有機種、特に炭素質種がガス状になる一方で、有機金属種、例えば有機金属ポリマーの骨格に沿った金属またはメタロイド(ならびにプレセラミック粒子溶液に装填された任意の微粒子相の非炭素質成分)が残り、浸炭、硝化、または酸化などのさらなる化学変換を受ける。その結果として、脱バインダーでは、脱バインダープロセスの条件に応じて、有機金属種の、金属/金属間化合物(intermetallic)/セラミックの形態が得られる。
【0029】
図6は、直接型PDCのそのような脱バインダープロセスを模式的に示す。
図6では、UO
2などの核分裂性材料を含むセラミック燃料粒子またはBeOなどの減速材を含むセラミック減速材粒子などのセラミック粒子302を、306で示すポリシランなどの有機金属系ポリマーの溶液相304に入れることで、プレセラミック粒子溶液300を調製する。
直接型PDCプロセスを実施することで、プレセラミック粒子溶液300中の透明ポリマー相の働き(operation)によって、セラミック粒子の間に、有機金属ポリマーからの金属またはメタロイドを均一に分散させることができる。熱分解などによるその後のバインダー焼却(burnout)310の間、有機金属系ポリマー306の有機相は蒸発する。しかし、有機金属ポリマーからの金属またはメタロイド312は残り(典型的には、金属またはメタロイド、または金属またはメタロイドの炭化物、窒化物または酸化物などのセラミックとして(例えば、バインダー焼却が発生する条件に依存する))、そのような金属またはメタロイド、または金属の炭化物、窒化物または酸化物(M(C,N,O))種の存在によって、形成されたままのセラミック体314においてセラミック質量の増加をもたらす。例示的な実施形態では、直接型PDCプロセスは、セラミック燃料粒子が、Si相に囲まれたUO
2などの、金属またはメタロイド相によって完全に囲まれている、形成されたままのポリマー由来セラミックを生成する。
【0030】
直接型PDCプロセスは、ポリマー相に由来する金属またはメタロイドの含有量の大幅な増加を提供することができる。これにより、グリーン体の有効な「セラミック体積装填」を増加させることができ、最終的な所望のセラミック形態の収縮を少なくすることができる。また、直接型PDCプロセスでは、毛細管現象を利用して、全てのセラミック粒子の周りにコーティングを施すことができる。さらに、直接型PDCポリマーは高屈折率の傾向があるため、モノマーとセラミック粒子の間の屈折率の不一致が減少し、散乱が減少して浸透深さの増加に寄与する。これの応用により、完全にカプセル化された燃料源が得られ、ダイレクトフローNTPに応用時の燃料損失を減少させる(あるいはなくす)ことができる。
【0031】
第3の実施形態は、配位型PDCと直接型PDCの態様を組み合わせたものである(本明細書では配位型-直接型PDCとも呼ぶ)。特に、配位型-直接型PDCでは、有機金属系ポリマー(ポリマー構造の骨格上の元素(有機ポリマー構造では炭素を含む)が金属またはメタロイド元素で置き換えられている)は、金属またはメタロイドのカチオンも含む。金属またはメタロイドのカチオンをも含む有機金属系ポリマーは、以下の化学構造(式3)で表される。
【0032】
【0033】
式3の代表的な化学構造では、有機金属系ポリマーは-Ma-Ma-構造で表され、Maは金属またはメタロイドである。有機金属系ポリマーは、有機金属骨格(Ma-NまたはMa-C)を有するか、または完全に金属(Ma-Ma)(式3に示すように)であり得、脱バインダー環境下で硝化(nitrification)または浸炭が起こり得る。また、式3の代表的な化学構造において、金属またはメタロイドのカチオンは、Mb
+構造で表される。金属またはメタロイドのカチオン(Mb
+)は、周期律表の任意の金属またはメタロイドであり得、有機金属系ポリマーは、所望の微粒子相を、所望の部品(component)を生成するのに十分な装填量まで装填することができる一方、アディティブマニュファクチャリングによって処理することのできる、任意の適切な有機金属系ポリマーであり得る。有機金属系ポリマー中の金属またはメタロイドは、周期律表の任意の金属またはメタロイドであり得る。有機金属系ポリマーに含まれる金属やメタロイドの例には、Si、Ge、Sn、P、B、およびSが含まれる。さらに、有機金属系ポリマー中の金属またはメタロイド(Ma)は、金属またはメタロイドのカチオン(Mb
+)と同じであっても異なっていてもよい。
【0034】
配位型PDCプロセスを直接型PDCプロセスと組み合わせることで、化学的に異なるコーティング、例えばSixTiyCzまたはSixTiyNzまたは従来の堆積技術では達成できないMAX相が得られる可能性があるが、特定の微粒子相は、十分に対になる(paired)ことができ、かつアディティブマニュファクチャリングと形成されたままのポリマー由来セラミック構造における適切な特性の両方のための配位型-直接型PDCプロセスにおいて、適切な装填を達成することができる、様々な(a range of)有機金属系ポリマー/金属またはメタロイドのカチオンを有しうることに依然として留意すべきである。
【0035】
図7は、配位型-直接型PDCプロセスのためのそのような脱バインダープロセスを模式的に示す。
図7では、UO
2などの核分裂性材料を含むセラミック燃料粒子、またはBeOなどの減速材を含むセラミック減速材粒子などのセラミック粒子402を、406で示されるTi
+-ポリシランなどの金属または金属カチオンを有する有機金属系ポリマーの溶液相404に入れることによって、プレセラミック粒子溶液400が調製される。配位型-直接型PDCプロセスを実施することにより、プレセラミック粒子溶液400中の透明ポリマー相の働き(operation)によって、セラミック粒子の間に、有機金属系ポリマーからの金属またはメタロイド(M
a)と、金属またはメタロイドのカチオン(M
b
+)との両方を均一に分散させることができる。熱分解などによるその後のバインダー焼却(burnout)410の間、有機金属系ポリマー406の有機相は蒸発する。しかし、有機金属系ポリマーからの金属またはメタロイド(M
a)と、金属またはメタロイドのカチオン(M
b
+)412の両方は残り(典型的には、金属またはメタロイド、または金属またはメタロイドの炭化物、窒化物、酸化物などのセラミックとして(例えば、バインダー焼却が発生する条件に依存する)、または、金属またはメタロイドおよびバインダー焼却が発生する条件に応じてSi
xTi
yC
zまたはSi
xTi
yN
zまたはMAX相のような三次化合物として)、そのような金属またはメタロイドまたは金属の炭化物、窒化物または酸化物(M(C,N,O))種の存在によって、形成されたままのセラミック体414においてセラミック質量の増加をもたらす。例示的な実施形態では、配位型-直接型PDCプロセスは、セラミック燃料粒子が、Si
xTi
yN
z相に囲まれたUO
2などの金属またはメタロイド相に完全に囲まれている、形成されたままのポリマー由来セラミックを生成する。
【0036】
配位型-直接型PDCプロセスは、本明細書で直接型PDCプロセスについて説明したのと同じ利点や長所の多くを達成することができる。しかし、配位型-直接型PDCプロセスでは、拡散経路が少なく、原子レベルの混合があるため、通常は熱力学的に不可能なコーティングや化学組成物を製造することができるという追加の能力がある。これの応用により、高性能なNTP用途向けに、単なるSiC/SiNよりも優れた物理的特性を持つ、SiTiNやSiTiCなどの複雑なセラミックコーティングが可能となる。形成されたままのセラミック体114、214、314、414のいずれかのような、形成されたままのセラミック体のマトリックス-粒子の複合体の組成は、セラミック粒子102、202、302、402と、金属またはメタロイド112、212、312、412(ポリマー骨格から導入されたか、カチオン種から導入されたかは問わない)との連結である。セラミック粒子と金属またはメタロイドの化学組成の類似性の度合いは、形成されたままのセラミック体の微細構造に影響を与える。第一の例として、金属またはメタロイドがセラミック粒子のそれと実質的に同等の組成である場合、複雑な微細構造を有する連結単相が観察される。第1の例としては、より低い微粒子体積装填を、光の透過率を高めるために用いることができる、UO2燃料形態の形成が挙げられる。第2の例では、金属またはメタロイドがセラミック粒子のそれと組成的に異なり、複合体を形成するための化学的互換性が低い場合、複雑な微細構造を有する連結された多相材料が観察される。第2の例としては、UO2燃料が主にポリマー相に由来するBeO/UO2複合体の形成が挙げられる。第3の例では、金属またはメタロイドがセラミック粒子のものと組成的に異なるが、複合体を形成するための化学的互換性がある場合、新しい相が形成されるか、または元の粒子相のドーピングが観察される。第3の例では、セラミック相にドーピングや影響を与えることができ、または、全く異なる化合物を合成することができる。第3の例としては、(a)ドーピングの場合:0.5mol.%のGd2O3またはNd2O5の添加は、配位型PDCプロセスからの添加プロセス中に、UO2に加えることができ、UO2の電子および熱輸送特性を変化させるであろう。また(b)合成として、U3Si5のセラミック粒子を用いるか、またはポリシランモノマーを使用した金属ウラン粒子を使用することにより、U3Si5が印刷されうる。焼成中に金属ウランがシリコンと反応してU3Si5が形成される。これによりグリーン体におけるU3Si5のwt.%装填量を、直接プリントした場合よりも高めることができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された組成物、構造体、および方法は、アディティブマニュファクチャリングプロセスを改善すること、特に光依存性アディティブマニュファクチャリング技術の硬化深度を改善すること、および/または、セラミックとなるグリーン体のvol.%を改善することに関するものである。デジタル ライト プロジェクション(DLP)アディティブマニュファクチャリング(AM)は、本明細書に開示される組成物および構造物に適した、光依存性アディティブマニュファクチャリングプロセスの一例である。前記DLPプロセスは、リソグラフィプロセスの一種であり、基本的には、装填されたプレセラミック粒子溶液と光の相互作用によって制限される。装填されたプレセラミック粒子溶液において、光重合を引き起こすために光が利用可能な深さは、セラミック粒子に関連する吸収と、ポリマー相と光の散乱に寄与する微粒子相との間の屈折率の不一致とによって制限され得る。UO
2のような核分裂性組成物を含むプレセラミック粒子溶液の場合、UO
2は、高い吸収断面積と有機ポリマーとの高い屈折率の不一致との両方を有するため、これは特に困難である。スラリーの光に対する感度は、D
pで与えられる。
D
p
-1=φS+(1-φ)A
液体+φA
固体 (方程式1)
ここで、D
p=硬化深度感度、S=散乱、φ=体積率固体、A
液体=UV吸収液体、およびA
固体=UV吸収固体。D
pはセラミック粒子の装填量(φ)に反比例するため、装填量(φ)が少ないほど光の透過性が良くなる。しかし、このように装填量が低いと、収縮率が大きくなり、部品の故障が増加する(
図3、4および関連する考察を参照)。有利なことに、配位型PDCプロセス、直接型PDCプロセス、および配位型-直接型PDCプロセスを使用すると、微粒子の装填を減らすことで吸収および散乱の中心の数を減らすことができるため、吸収および散乱の効果の両方を軽減することができるが、透明な液体モノマーからセラミック相を生成することで焼結性を維持することができる。例えば、50%の総装填量を得るためには、酸化ウランの特定の装填量を25%まで減らし、残りの25%はモノマーに十分なウラン種を含めることによって導き出すことができる。脱バインダー時には、この組み合わせによって最終製品における総装填量が~50%となり、収縮亀裂を防ぐのに十分な値となる。モノマー相による装填量の増加は、微粒子相の減少(したがって、粒子との光の相互作用の減少)を可能にする場合、間接的に硬化深度を増加させることもできる。
【0038】
他の態様では、本明細書に開示される組成物、構造および方法は、セラミック相の供給原料の特性(characteristics)の調整(preparation)に関する。方程式1に関して上述したように、硬化深度感度(cure depth sensitivity)は、プレセラミック粒子溶液中に存在するセラミック粒子のUV吸収に反比例する。この吸収は、結晶結合構造と、それに伴う電子バンド構造に関連する。また、上述したように、硬化深度感度(cure depth sensitivity)には、プレセラミックス粒子溶液の散乱および吸収の特性も関係している。
【0039】
したがって、特定の実施形態では、プレセラミック粒子溶液のセラミック成分の結晶構造および電子構造は、結晶性を低下させることによって、または非晶質の特性を増加させることによって変更することができる。1つのアプローチでは、ポリマーおよび/またはセラミック粒子の構成要素を選択して、結晶構造をより非晶質に変えることができる。例えば、UO2のO/U比を大きくすると、吸収率が~20%低下する。配位型PDCプロセスおよび配位型-直接型PDCプロセスに適用可能な別のアプローチでは、金属またはメタロイドのカチオンに起因する酸化ウランの非晶質性は、脱バインダープロセス中の処理温度の適切な制御によって制御することができる。例えば、配位型PDCプロセスや配位型-直接型PDCプロセスでは、全ての炭素種が分解する下限温度から、セラミックの長距離結晶化が起こる上限温度までの温度領域(temperature regime)が存在する。下限温度と上限温度の間の温度では、プレセラミック粒子溶液の非セラミック粒子成分、すなわち、ポリマー成分中の金属またはメタロイドに基づいて形成される部分は、非結晶状態(すなわち、10vol.%未満の結晶性を有し、または5vol.%未満の結晶性を有する)である。下限温度と上限温度は材料固有のものであるが、これらの上限温度の例としては、~500℃から~1000℃の範囲であり、または、500℃または600℃または700℃の下限温度から、825℃または850℃または875℃の上限温度までである。非結晶性は、X線回折結晶学によって決定される。
【0040】
非晶質の特性のため、配位型PDCプロセス、直接型PDCプロセス、および配位型-直接型PDCプロセスのいずれかにおいて、セラミック粒子源として非晶質材料を使用することは、長距離の結晶構造がないために、光とセラミック相との相互作用を変化させることに寄与し、散乱を減少させ、Dpを増加させることができる。
【0041】
PDCプロセスによる非晶質セラミック粒子、特に酸化ウランのような核分裂性燃料物質の形成を調べるために、
図8に模式的に示されているように(後述する)配位型PDCプロセス500で酸化ウラン代用物(surrogate)のサンプルを調製し、その後、X線回折分析のために粉末に成形した。
図9は、酸化ウラン代用物(surrogate)のサンプルに対する高温X線回折の結果を示す。
【0042】
図8の配位型PDCプロセス500では、U
+の金属カチオンの代用物(surrogate)(504で示す)を含む有機ポリマーの溶液相を形成することにより、プレセラミック溶液502を調製した。このサンプルでは、U
+の金属カチオンの代用物(surrogate)はアルミニウムであった。配位型PDCプロセスは、プレセラミック溶液502全体にカチオン種を均一に分散させる。熱分解などによる後続のバインダー焼却506は、550℃で発生したが、これは(
図9に示す高温X線回折試験の結果によって示されるように)、全ての炭素質種が分解した温度(すなわち、~500℃以上)の間であり、非晶質材料が存在するセラミックの長距離結晶化が発生する温度(すなわち、~1000℃)の前である。このサンプルは、その後のX線回折分析のために粉末508に成形した。
【0043】
図9では、高温X線回折の結果がランドスケーププロット600で示されており、このランドスケーププロットでは、X線回折強度(Z軸;60.00から818.0a.u.までの範囲)が、スキャン温度(Y軸;700℃から1000℃までの範囲)およびスキャン角度(2θ)(X軸;25度から50度までの2θの範囲)の関数としてプロットされている。高温X線回折試験では,アモルファスPDCの試料温度を上昇させながら(Y軸),結晶構造の特性評価(X/Z軸)を動的に行った。
図9に見られるように、25度から50度までの2θの全ての値について、約825℃から850℃よりも低い温度でのX線回折強度は無視できるものであり、PDC粉末508の非晶質性を示している。約850℃から、X線回折ピーク502が現れ始め、温度が1000℃まで上昇すると、X線回折強度がベースラインの60a.u.から最大の818a.u.まで上昇し、相が結晶化したことを示す。注:温度の関数として化学変化は行われず、結晶化を触媒するためにエネルギーの増加が起こったのみである。
【0044】
プレセラミック粒子溶液に装填されたセラミック粒子と、アディティブマニュファクチャリングプロセスでポリマーを反応させるために使用される光との間の相互作用効果を低減するための別のアプローチでは、セラミック粒子の表面を変化させることができる。
【0045】
第1の実施形態において、および
図10に模式的に示されているように、配位型PDC合成プロセスおよび配位型-直接型PDC合成プロセスにおいて使用されるポリマー702中に存在する金属またはメタロイドのカチオン700は、セラミック燃料粒子などのセラミック粒子704を、プレセラミック溶液706中でコーティングすることができる。典型的には、セラミック燃料粒子は液相に装填され、表面張力によってセラミック燃料粒子は液相に囲まれる。焼成などのバインダー焼却708の後、多相混合物は、ポリマー由来セラミックが低温~800-1000℃で、ライトタック(light tack)焼結を受けることによって、温度を上昇させることができ、被覆粒子710が硬い凝集体対(vs)軟らかい凝集体であることを確実にする。結果として得られる被覆粒子710は、セラミック微粒子相704に対応するコア領域712と、金属またはメタロイドのカチオン700に対応する被覆領域714とを有する。金属またはメタロイドのカチオン700に対応する追加の領域または粒子720(ただし、セラミック微粒子相704のコーティングとは関連しない)も存在することができ、形成されたままのセラミック体のマトリックス組成に合わせることができる。被覆粒子710がアディティブマニュファクチャリングに使用され、光にさらされると、光は被覆領域714と優勢に相互作用し、散乱および吸収の挙動を変化させ、硬化深度感度(cure depth sensitivity)を増加させる。
【0046】
第2の実施形態において、
図11に概略的に示されているように、
図10に関して示され説明されているようなプロセスを変更して、セラミック微粒子を炭素質層でコーティングし、次いで、本明細書に記載されているPDC技術によってさらに処理して、三構造等方性(TRISO)燃料粒子に類似したセラミック構造を形成することができる。TRISO燃料粒子は、炭素からなる多孔質バッファ層を含む等方性材料の層で被覆された、UO
X(または、UCまたはUCOの場合もある)で構成されている中心燃料カーネル(central fuel kernel)と、続いて熱分解炭素(PyC)の高密度内層の被覆と、続いて高温での核分裂生成物を保持しおよびTRISO粒子に構造的な完全性を与えるための、SiCのセラミック層の被覆と、続いてPyCの高密度外層の被覆とからなるマイクロ燃料粒子の一種である。ここで、
図11に示すように、セラミック燃料粒子800は、炭素被覆セラミック燃料粒子810を製造するための第1のPDCプロセス804における有機ポリマー802に由来の、炭素または炭素ベースの材料で被覆されうる。炭素被覆セラミック燃料粒子810は、セラミック燃料粒子800に対応するコア領域812と、有機ポリマー802の有機成分に対応する被覆領域814とを有する。有機ポリマー802の有機成分に対応する追加の領域または粒子820(ただし、セラミック燃料粒子800の被覆には関連しない)も存在することができ、形成されたままのセラミック体のマトリックス組成に合わせることができる。炭素被覆セラミック燃料粒子810がさらなるアディティブマニュファクチャリングプロセス(
図11の第2のPDCプロセス820など)で光にさらされると、光は被覆領域814と優位に相互作用し、散乱および吸収の挙動を変化させ、硬化深度感度(cure depth sensitivity)を増加させるだろう。
【0047】
第1のPDCプロセス804からの炭素被覆セラミック燃料粒子810は、第2のPDCプロセス820でさらに処理される。この第2のPDCプロセス820は、本明細書に開示されている配位型PDCプロセス、直接型PDCプロセス、および配位型-直接型PDCプロセスを含む、任意の適切なPDCプロセスとすることができる。
図11では、直接型PDCプロセスの一例が模式的に示されている。第1のPDCプロセス804からの炭素被覆セラミック燃料粒子810を、有機金属系ポリマー、この場合は834で示されるポリシランなどの有機ケイ素ポリマーの溶液相832に入れることによって、プレセラミック粒子溶液830が調製される。直接型PDCプロセスを実施することで、プレセラミック粒子溶液830中の透明ポリマー相の操作によって、セラミック粒子の間に、有機金属ポリマーからの金属またはメタロイドを均一に分配することができる。熱分解などによる後続のバインダー焼却840の間、有機金属系ポリマー834の有機相は蒸発し、有機金属系ポリマー834からの金属またはメタロイドは残る(典型的には、金属またはメタロイド、または金属またはメタロイドの炭化物、窒化物、酸化物などのセラミックとして(例えば、バインダー焼却が発生する条件に応じて))。バインダー焼却840は、窒素などの制御された雰囲気の中でも発生することができる。
図11に示した例では、ポリシランの窒素中でのバインダー焼却により、炭素被覆セラミック燃料粒子810を完全に取り囲む被覆を形成するSiNCセラミックマトリックス850が得られる。炭素被覆セラミック燃料粒子810を完全に取り囲むそのようなセラミックマトリックス850は、炭素被覆セラミック燃料粒子810に対するクラッディング(cladding)として機能し得る。
【0048】
配位型PDCプロセス、直接型PDCプロセス、および配位型-直接型PDCプロセスを含む上記のPDCプロセスは、それぞれ、セラミック粒子を囲むマトリックスとしてのコーティング(プレセラミック粒子溶液中に存在する金属およびメタロイドの種(species)/カチオンに基づく)を導出しており、このマトリックスは、DLP AMプロセスの一部として本来形成される。しかし、ポリマー由来セラミックコーティングは、他のアディティブマニュファクチャリングプロセスによって(または非アディティブマニュファクチャリングプロセスによってさえ)作られた構造体の表面に直接適用することもできる。セラミック粒子のアディティブマニュファクチャリングプロセスとポリマー由来セラミックコーティングの製造プロセスを切り離すことで、これら2つのコンポーネントに、PDCアディティブマニュファクチャリングプロセスを組み合わせた場合とは異なる組成を使用することができる。例えば、このように分離することで、中性子利用に有用なコーティングとは異なる組成のバルク骨格を作ることができる。さらに、結合を解除した場合、光活性ポリマーの代わりに、ゾル-ゲル化学技術などの処理方法を取り入れることも有用である(ただし、ゾル-ゲルプロセスにおける溶液のカチオン含有量が本質的に低いため、凝集性のコーティングを得るためには複数のコーティング工程が必要になる可能性がある)。別の選択肢では、無機/有機の金属ポリマーを利用することができ、SiCやSiNなどのコーティングの温度安定性のため、高温用途には魅力的な選択肢となる。例えば、直接型PDCプロセスに関連して開示されているようなシランベースの化学反応を使用して、コーティング領域を形成することができる。ゾル-ゲルプロセスに対するこのプロセスの利点は、金属含有量の増加により1回のコーティングで済む可能性があることであるが、有機金属系ポリマー化学物質(Si、Geなど)に制限がある。
【0049】
図12は、アディティブマニュファクチャリングプロセスにおいて光活性ポリマーを使用せずに、PDCコーティングを直接適用するためのプロセスステップを模式的に示している。成形体900(これは、任意の適切な成形体であってよく、グリーン体の形態または連結された焼結体の形態のいずれかである)から出発して、プレセラミック粒子溶液902が成形体900の表面に適用される。一手法(
図12のAで示す)では、プレセラミック粒子溶液は浴904を形成し、プレセラミック粒子溶液902がコーティングされるべき成形体900の所望の表面に浸透して接触するのに十分な時間、成形体900(またはその一部)を浴904に浸漬する。複雑な部品の場合、これには浸漬時間が必要な場合があり、および/または、真空または加圧の適用によって補助することができる。別の技術(
図12のBで示す)では、プレセラミック粒子溶液904は、
図12のBで示すスプレーコーティング技術910のような任意の適切な適用技術によって、成形体900(またはその一部)の表面に適用することができる。プレセラミック粒子溶液902の組成は、式1、2および3に一致するものを含む、本明細書に開示される任意の化学物質であり得る。さらに、プレセラミック粒子溶液902の組成物は、金属、酸化物、または炭素繊維などの微粒子をも含みうる。
【0050】
他の適切なコーティング技術には、熱的開始重合、UV開始重合、電子ビーム(Eビーム)開始重合、レオロジー安定化、溶液脱水、物理的気相成長、または任意の技術が含まれる。
【0051】
技術にかかわらず、プレセラミック粒子溶液902の複数のコーティングを適用して、コーティングされた形成体922上に、連続したコヒーレントなコーティング920を形成するのに十分なコーティング厚を構築してもよい。十分なコーティング厚さは、層ごとに10μmから50μmまでの範囲であり、総層厚さは150μmを超え、あるいは2mmまでである。
【0052】
コーティング後、コーティングされた形成体922は、コーティング920を強固にするために脱バインダーおよび焼結プロセスを経る。そのようなプロセスはまた、浸炭、硝化、または酸化の反応によって、コーティングの構成要素を変換することができる。
【0053】
本明細書では、一般的な「本体」または「構造」に関して議論されているが、本明細書で開示されている組成物、構造、および方法は、原子力用途、特に核熱推進(NTP)原子炉およびダイレクトフロー原子炉に特に適している。
図13Aは、燃料1002を透視図で、またクラッド1004を断面透視図で示した例示的なNTP原子炉1000の模式図である。NTP原子炉の効率は、出口における水素ガス1010の崩壊温度(ultimate temperature)によって駆動され、これは、水素ガス1010と燃料1002の中心との間の熱勾配を最小化することによって最大化される。
図13Bは、核燃料組成物の連続したマトリックスが格子1100を形成する、例示的なダイレクトフローオーバー格子燃料設計NTP原子炉の概略図である。ダイレクトフローNTP原子炉の効率は、出口における水素ガス1110の崩壊温度(ultimate temperature)によっても駆動され、これは、水素ガス1110と燃料1102の中心との間の熱勾配を最小化することによって最大化される。
図13AのNTP原子炉とは対照的に、
図13Bで表されるダイレクトフロープロセスでは、クラッドへの熱の流れと、クラッドからガスへの熱の流れがなくなり、より効率的な設計が可能となる。さらに、ダイレクトフローNTP設計では、核燃料リガメントサイズが一般的に小さくなるため、中心線の燃料温度が下がり、燃料溶融前のマージンが増加する。
【0054】
本発明をその実施形態に関連して説明してきたが、添付の特許請求の範囲で定義された本発明の精神と範囲から逸脱することなく、具体的に説明されていない追加、削除、変更、および置換を行うことができることは、当業者には理解されるであろう。例えば、核分裂性燃料材料、原子炉、および関連部品に関連して記載されているが、本明細書に記載された原理、組成物、およびプロセスは、他の材料、他の組成物、および他の構造、ならびにそれらの製造にも適用することができる。
【0055】
本明細書における実質的に任意の複数形および/または単数形の用語の使用に関して、当業者であれば、文脈および/または用途に応じて、複数形から単数形へ、および/または単数形から複数形へ翻訳することができる。様々な単数/複数の順列は、明確にするために、本明細書では明示的に規定されていない。
【0056】
本明細書に記載された主題は、時に、異なる他の構成要素の中に含まれる、または、異なる他の構成要素と接続された異なる構成要素を図示する。このように描かれた構成(architectures)は単に例示的なものであり、実際には、同じ機能を実現する他の多くの構成(architectures)が実装され得ることを理解されたい。概念的には、同じ機能を実現するためのコンポーネントの配置は、所望の機能が達成されるように効果的に「関連付け」られている。したがって、本明細書では、特定の機能を実現するために組み合わされた2つのコンポーネントは、構成(architectures)や医療機器間のコンポーネントに関係なく、所望の機能が達成されるように互いに「関連付けられている」と見なすことができる。同様に、このように関連付けられた任意の2つのコンポーネントは、所望の機能性を達成するために互いに「動作可能に接続されている」または「動作可能に結合されている」と見なすこともでき、このように関連付けられることが可能な任意の2つのコンポーネントは、所望の機能性を達成するために互いに「動作可能に結合可能である」と見なすこともできる。動作可能に結合可能な具体例としては、物理的に嵌合可能および/または物理的に相互作用するコンポーネント、および/または無線的に相互作用可能および/または無線的に相互作用するコンポーネント、および/または論理的に相互作用可能および/または論理的に相互作用するコンポーネントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
いくつかの例では、1つまたは複数の構成要素は、本明細書において、「~に構成される」、「~によって構成される」、「~に構成可能である」、「~に動作可能である」、「~に適応可能である」、「~に適合可能である」などと呼ばれることがある。当業者であれば、このような用語(例えば、「~ように構成された」)は、文脈上別段の要求がない限り、アクティブ状態の構成要素および/または非アクティブ状態の構成要素および/またはスタンバイ状態の構成要素を一般的に包含することができることを認識するであろう。
【0058】
本明細書に記載された本主題の特定の態様を示し、説明してきたが、本明細書の教示に基づいて、本明細書に記載された主題およびその広範な態様から逸脱することなく、変更および修正を行うことができることが当業者には明らかであり、したがって、添付の特許請求の範囲は、本明細書に記載された主題の真の精神および範囲内にあるような全ての変更および修正をその範囲内に包含するものである。一般的に、本明細書、特に添付の請求項(例えば、添付の請求項の本体)で使用される用語は、一般的に「オープン」な用語として意図されていることが、当業者には理解されるであろう(例えば、「含む」(including)という用語は、「~を含むが、これに限定されない」と解釈されるべきであり、「有する」という用語は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む」(includes)という用語は、「~を含むが、これに限定されない」と解釈されるべきである、など)。導入された請求項の記載の特定の数が意図されている場合、そのような意図は請求項に明示的に記載され、そのような記載がない場合にはそのような意図は存在しないことが、当業者にはさらに理解されるであろう。例えば、理解を助けるために、以下の添付の特許請求の範囲には、特許請求の範囲を紹介するための「少なくとも1つ」および「1つ以上」という導入フレーズの使用が含まれる。しかし、このようなフレーズの使用は、不定冠詞「a」または「an」による請求項の再述の導入が、そのような導入された請求項を含む特定の請求項を、そのような再述を1つだけ含む請求項に限定することを意味すると解釈されるべきではなく、同じ請求項が導入フレーズ「1つ以上」または「少なくとも1つ」および「a」または「an」などの不定冠詞を含む場合であっても(例えば。例えば、「a」および「an」は、通常、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである)、クレームの再記述の導入に使用される定冠詞の使用についても同様である。さらに、導入された請求項の記載の特定の数が明示的に記載されている場合であっても、当業者であれば、そのような記載は、通常、少なくとも記載された数を意味するように解釈されるべきであることを認識するであろう(例えば、他の修飾語を伴わない「2回の再現」という素の記載は、通常、少なくとも2回の再現、または2回以上の再現を意味する)。さらに、「A、B、Cなどのうちの少なくとも1つ」と類推される慣例が使用されている場合、一般に、そのような構造は、当業者が慣例を理解する意味で意図されている(例えば、「A、B、Cのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、A単独、B単独、C単独、AとBが一緒、AとCが一緒、BとCが一緒、および/またはA、B、Cが一緒などのシステムを含むが、これらに限定されない)。「A、B、またはCなどのうちの少なくとも1つ」と類推される慣例が使用される場合、一般に、そのような構造は、当業者が慣例を理解するであろう意味であると意図される(例えば、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、A単独、B単独、C単独、AとBが一緒、AとCが一緒、BとCが一緒、および/またはA、B、およびCが一緒などを有するシステムを含むが、これらに限定されない)。当業者であれば、説明、請求項、図面のいずれにおいても、典型的には、2つ以上の代替用語を提示する分離語および/または語句は、文脈がそうでないことを指示しない限り、いずれかの用語、いずれかの用語、または両方の用語を含む可能性を企図していると理解されるであろう。例えば、「AまたはB」という表現は、典型的には、「A」または「B」または「AおよびB」の可能性を含むと理解される。
【0059】
添付の特許請求の範囲に関して、当業者であれば、そこに記載されている操作は一般的に任意の順序で実行できることを理解できるだろう。また、様々な操作の流れが一連の順序で示されているが、様々な操作は図示されている順序とは別の順序で実行されてもよく、また同時に実行されてもよいことを理解すべきである。このような別の順序の例としては、文脈から判断しない限り、オーバーラップ、インターリーブ、中断、再注文、増分、準備、補足、同時、逆、またはその他の変形順序がある。さらに、「に応答して(responsive to)」、「に関連して(related to)」、またはその他の過去形の形容詞のような用語は、文脈がそうでないことを指示しない限り、一般的にそのような変種を除外することを意図していない。
【0060】
当業者は、前述の特定の例示的なプロセスおよび/またはデバイスおよび/または技術が、本願に提出された特許請求の範囲および/または本願の他の場所など、本明細書の他の場所で教示されるより一般的なプロセスおよび/またはデバイスおよび/または技術を代表するものであることを理解するであろう。
【0061】
本明細書では様々な側面および実施形態を開示してきたが、他の側面および実施形態は当業者には明らかであろう。本明細書に開示された様々な態様および実施形態は、例示を目的とするものであり、限定を意図するものではなく、真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲によって示される。
【0062】
詳細な説明、図面、および特許請求の範囲に記載されている例示的な実施形態は、限定することを意図していない。ここに提示された主題の精神または範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用されてもよく、他の変更がなされてもよい。
【0063】
当業者であれば、本明細書に記載された構成要素(例えば、操作)、装置、オブジェクト、およびそれらに付随する議論は、概念的に明確にするための例として使用されており、様々な構成の変更が企図されていることを認識するであろう。その結果、本明細書で使用されているように、記載されている特定の例示とそれに付随する考察は、それらのより一般的な分類(classes)を代表することを意図する。一般に、任意の特定の例示の使用は、その分類(classes)を代表することを意図しており、特定のコンポーネント(例えば、操作)、デバイス、およびオブジェクトが含まれていないことは、限定的であるとみなされるべきではない。
【国際調査報告】