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特表2022-527237リン酸鉄リチウム電池およびその調製方法
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  • 特表-リン酸鉄リチウム電池およびその調製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-01
(54)【発明の名称】リン酸鉄リチウム電池およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20220525BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20220525BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20220525BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20220525BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220525BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20220525BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20220525BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20220525BHJP
   H01M 4/1397 20100101ALI20220525BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20220525BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20220525BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0567
H01M4/58
H01M4/136
H01M4/62 Z
H01M4/587
H01M4/133
H01M4/66 A
H01M4/1397
H01M4/1393
H01M10/0569
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547314
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(85)【翻訳文提出日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 CN2020075052
(87)【国際公開番号】W WO2020168974
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】201910134277.6
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521355681
【氏名又は名称】叶 小剣
(71)【出願人】
【識別番号】521355692
【氏名又は名称】平松 雄二
(71)【出願人】
【識別番号】521355706
【氏名又は名称】牛尾 順一
(74)【代理人】
【識別番号】100098187
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 正司
(72)【発明者】
【氏名】平松 雄二
(72)【発明者】
【氏名】那須野 豪三
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017CC01
5H017EE05
5H029AJ02
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ14
5H029CJ02
5H029CJ03
5H029CJ04
5H029CJ07
5H029CJ08
5H029CJ13
5H029CJ22
5H029CJ28
5H029DJ07
5H029DJ08
5H029EJ01
5H029EJ04
5H029EJ12
5H029HJ07
5H029HJ15
5H050AA05
5H050AA06
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA01
5H050CB08
5H050DA07
5H050DA08
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA10
5H050EA24
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA04
5H050GA05
5H050GA09
5H050GA10
5H050GA13
5H050GA15
5H050GA22
5H050GA27
5H050HA07
5H050HA15
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】 リン酸鉄リチウム電池およびその調製方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、リン酸鉄リチウム電池を開示する。前記リン酸鉄リチウム電池は、リン酸鉄リチウム、導電剤、結合剤、カーボンナノチューブスラリーまたはグラフェンという成分を含有する正極材料と、グラファイトカーボンブラック、導電剤、結合剤、フラーレン、ナノワイヤー、ナノチタンという成分を含有する負極材料と、カテコールジアセテートを含有する電解液と、を含む。本発明は、電池の負極材料内にナノワイヤー、ナノチタンを加え、電解液内にカテコールジアセテートを加えることで、本発明のリン酸鉄リチウム電池に高密度に圧縮された電極板と電解液との濡れ性が悪いという問題を解決させ、リン酸鉄リチウム電池の低温性能、常温と高温サイクル性能を改善させることで、リン酸鉄リチウム電池の寿命を効果的に延ばすことができる。
【選択図】 図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸鉄リチウム、導電剤、結合剤、カーボンナノチューブスラリーまたはグラフェンという成分を含有する正極材料と、グラファイトカーボンブラック、導電剤、結合剤、フラーレン、ナノワイヤー、ナノチタンという成分を含有する負極材料と、カテコールジアセテートを含有する電解液と、を含むことを特徴とする、リン酸鉄リチウム電池。
【請求項2】
前記正極材料は、リン酸鉄リチウム2~10重量部、導電剤5~30重量部、結合剤1~15重量部、カーボンナノチューブスラリーまたはグラフェン2.5~30重量部という成分を含み;前記負極材料は、グラファイトカーボンブラック1~20重量部、導電剤5~30重量部、結合剤1~15重量部、フラーレン0.8~25重量部、ナノワイヤー5~15重量部、ナノチタン2~8重量部という成分を含み、前記カテコールジアセテートの質量分率が5~12%であることを特徴とする、請求項1に記載のリン酸鉄リチウム電池。
【請求項3】
前記正極は、アルミニウム箔であり、前記負極が銅箔であることを特徴とする、請求項1または2に記載のリン酸鉄リチウム電池。
【請求項4】
前記フラーレンは、70%の正電荷を帯びたフラーレンと30%の負電荷を帯びたフラーレンの調製から成ることを特徴とする、請求項1または2に記載のリン酸鉄リチウム電池。
【請求項5】
前記導電剤は、アセチレンブラックであることを特徴とする、請求項1または2に記載のリン酸鉄リチウム電池。
【請求項6】
前記結合剤は、ポリフッ化ビニリデンであることを特徴とする、請求項1または2に記載のリン酸鉄リチウム電池。
【請求項7】
以下の工程(1)~(3)を含む請求項1~6に記載のリン酸鉄リチウム電池の調製方法。
(1)原料配合:リン酸鉄リチウム、導電剤、結合剤、カーボンナノチューブスラリーを混合して混合正極スラリーを得、グラファイトカーボンブラック、導電剤、結合剤、フラーレン、ナノワイヤー、ナノチタンを混合して混合負極スラリーを得る工程、
(2)塗工:上記正極スラリーを塗工機で正極に塗工し、負極スラリーを塗工機で負極上に塗工する工程、
(3)その後圧延、スリット、レーザー切断、巻回、組立、トップ・サイド封止、乾燥、電解液注入、化成を経て、最終的にパッケージングすることで本発明の電池を得る工程。
【請求項8】
前記工程(1)の前にフラーレンを抽出する必要があり、抽出方法は、炭素粉末を酸化還元焼成窯に入れて通電して燃焼させ、その後焼成窯内壁に付着する炭素の黒い微粒子を抽出し、更に静電加工を通じて前記フラーレンを得る工程を用いることを特徴とする、請求項7に記載のリン酸鉄リチウム電池の調製方法。
【請求項9】
前記工程(1)の前に電解液を調製する必要があり、以下の方法で調製し、すなわち有機溶媒のエチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルプロピオネートを混合させ、最後にカテコールジアセテート(添加量が電解液の総体積の2~10%)を加えると、前記電解液を得ることを特徴とする、請求項7に記載のリン酸鉄リチウム電池の調製方法。
【請求項10】
前記工程(2)の負極材料は、以下の方法で調製され、すなわちグラファイトカーボンブラック、導電剤、結合剤、フラーレン、ナノワイヤー、ナノチタンを混合した後、粉砕して粉末にし、粉末を圧力30~50mPaの高圧反応器に移し、その後反応器を出力1800~2200wの電子レンジに入れ、200~1200秒間加熱し、室温まで冷却することで、前記負極材料を得ることを特徴とする、請求項7に記載のリン酸鉄リチウム電池の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池分野に関し、特に、リン酸鉄リチウム電池およびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度、高出力、長いサイクル寿命および低い環境汚染等の利点を持っているため、電気自動車およびコンシューマーエレクトロニクス製品に幅広く活用されている。リン酸鉄リチウムは、長いサイクル寿命、優れた安全性および安価等の特長により、現在パワーバッテリーに最もよく用いられている正極材料の一つである。リン酸鉄リチウム電池の欠点は、エネルギー密度が低いことである。エネルギー密度を向上するため、一方で正極・負極材料のグラム容量を増やし、他方で正極・負極シートの圧縮密度を増加させることである。ただし圧縮密度が高くなった後リチウムイオンの拡散が困難になり、同時に電極板と電解液との濡れ性が悪くなることで、リン酸鉄リチウム電池のサイクル寿命を短縮させてきた。これにより電解液の視点から高密度に圧縮された電極板の体系におけるリン酸鉄リチウム電池の性能を改善する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
背景技術内に存在する問題点に鑑み、本発明の目的は、高密度に圧縮された電極板と電解液との濡れ性が悪いという問題を解決し、リン酸鉄リチウム電池の低温性能、常温および高温サイクル性能を改善させることで、リン酸鉄リチウム電池の寿命を効果的に延ばすリン酸鉄リチウム電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために本発明では次のような技術的手段を講じた。
リン酸鉄リチウム電池であって、リン酸鉄リチウム、導電剤、結合剤、カーボンナノチューブスラリーまたはグラフェンという成分を含有する正極材料と、グラファイトカーボンブラック、導電剤、結合剤、フラーレン、ナノワイヤー、ナノチタンという成分を含有する負極材料と、カテコールジアセテートを含有する電解液と、を含む。
【0005】
好ましくは、前記正極材料は、リン酸鉄リチウム2~10重量部、導電剤5~30重量部、結合剤1~15重量部、カーボンナノチューブスラリーまたはグラフェン2.5~30重量部という成分を含み;前記負極材料は、グラファイトカーボンブラック1~20重量部、導電剤5~30重量部、結合剤1~15重量部、フラーレン0.8~25重量部、ナノワイヤー5~15重量部、ナノチタン2~8重量部という成分を含み、前記カテコールジアセテートの質量分率が5~12%である。
【0006】
好ましくは、前記正極は、アルミニウム箔である。
【0007】
好ましくは、前記負極は、銅箔である。
【0008】
好ましくは、前記導電剤は、アセチレンブラックである。
【0009】
好ましくは、前記結合剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)である。
【0010】
本発明は、以下の工程(1)~(3)を含む上記リン酸鉄リチウム電池の調製方法も提供する。すなわち、
(1)原料配合:リン酸鉄リチウム、導電剤、結合剤、カーボンナノチューブスラリーを混合して混合正極スラリーを得、グラファイトカーボンブラック、導電剤、結合剤、フラーレン、ナノワイヤー、ナノチタンを混合して混合負極スラリーを得る工程、
(2)塗工:上記正極スラリーを塗工機で正極に塗工し、負極スラリーを塗工機で負極上に塗工する工程、
(3)その後圧延、スリット、レーザー切断、巻回、組立、トップ・サイド封止、乾燥、電解液注液、化成を経て、最終的にパッケージングすることで本発明の電池を得る工程。
【0011】
好ましくは、前記工程(1)の前にフラーレンを抽出する必要があり、抽出方法は、炭素粉末を酸化還元焼成窯に入れて通電して燃焼させ、その後焼成窯内壁に付着する炭素の黒い微粒子を抽出し、更に静電加工を通じて前記フラーレンを得る工程を用いる。
【0012】
好ましくは、前記工程(1)の前に電解液を調製する必要があり、以下の方法で調製し、すなわち有機溶媒のエチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルプロピオネートを混合させ、最後にカテコールジアセテート(添加量が電解液の総体積の2~10%)を加えると、前記電解液を得る。
【0013】
好ましくは、前記工程(2)の負極材料は、以下の方法で調製され、すなわちグラファイトカーボンブラック、導電剤、結合剤、フラーレン、ナノワイヤー、ナノチタンを混合した後、粉砕して粉末にし、粉末を圧力30~50mPaの高圧反応器に移し、その後反応器を出力1800~2200wの電子レンジに入れ、200~1200秒間加熱し、室温まで冷却することで、前記負極材料を得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、電池の負極材料内にナノワイヤー、ナノチタンを加え、電解液内にカテコールジアセテートを加えることで、本発明のリン酸鉄リチウム電池に高密度に圧縮された電極板と電解液との濡れ性が悪いという問題を解決させ、リン酸鉄リチウム電池の低温性能、常温と高温サイクル性能を改善させることで、リン酸鉄リチウム電池の寿命を効果的に延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例に係るフラーレン調製時に使用される静電ローダーの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、実施例を参照しつつ本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明に記載のグラファイトカーボンブラックは、黒鉛化カーボンブラックとして理解される。
【0018】
本発明の実施例で提供されるリン酸鉄リチウム電池について、負極スラリー内にフラーレンを添加することで製品の総合的な性能を大幅に向上でき、フラーレンの添加量は1万分の4以上でよく、少量の添加されたフラーレンにより予期せぬ効果を引き起した。以下に記載される実施例について、負極スラリー内に添加されるフラーレンは、70%の正電荷を帯びたフラーレンと30%の負電荷を帯びたフラーレンの組み合わせから成る。好ましくは、正負電荷を帯びたフラーレンの組み合わせは、3~7%の質量比で電池の負極スラリー内に投入される。本発明で抽出されるフラーレンは、トルエン法によって精製することなく、電池に直接応用することができる。負極材科は、電池のエネルギー密度、寿命および安全性に重大な影響を与える。本発明で調製されたフラーレンを負極内に使用すると電荷の伝達速度、電極間の絶縁性の向上に役立ち、充放電による電極の体積変化を抑制できるため、より高い容量、より長い寿命、より高い安全性(発火や爆発しにくい)のある電池を製造できる。現在工業化や量産化ができないため高価なフラーレンと比較して、本発明の調製方法は、大量に生産できると共に比較的安価なフラーレンを得ることができる。
【0019】
(実施例1)
本実施例のリン酸鉄リチウム電池の正極材料は、リン酸鉄リチウム2重量部、導電剤5重量部、結合剤1重量部、カーボンナノチューブスラリー2.5重量部という成分を含み;負極材料は、グラファイトカーボンブラック1重量部、導電剤5重量部、結合剤1重量部、フラーレン0.8重量部、ナノワイヤー5重量部、ナノチタン2重量部という成分を含み、前記カテコールジアセテートの質量分率が5%である。
【0020】
本実施例のリン酸鉄リチウム電池の調製方法は、以下の工程(1)~(3)を含む。すなわち、
(1)原料配合:リン酸鉄リチウム、導電剤、結合剤、カーボンナノチューブスラリーを混合して混合正極スラリーを得、グラファイトカーボンブラック、導電剤、結合剤、フラーレン、ナノワイヤー、ナノチタンを混合して混合負極スラリーを得る工程、
(2)塗工:上記正極スラリーを塗工機でアルミニウム箔に塗工し、負極スラリーを塗工機で銅箔に塗工する工程、
(3)その後圧延、スリット、レーザー切断、巻回、組立、トップ・サイド封止、乾燥、電解液注液、化成を経て、最終的にパッケージングすることで本発明の電池を得る工程。
【0021】
本実施例は、以下の工程を用いてフラーレンを抽出した。
(1)陶磁器用の酸化・還元焼成窯に約1トンの薪(汚染されていない松、杉、ヒノキなど)を入れて燃やさせ、24時間後に酸化・還元焼成窯の内壁から上に付着している燃えかすを1100g抽出する工程、
(2)この1100gの燃えかすを静電ローダーに入れて静電加工して110gの導電性フラーレンを得る工程。
【0022】
具体的に、工程(1)燃焼後に得られた燃えかすを静電高圧発生装置(すなわち、静電ローダーで、図1に示すように型番GC50S-N、入力電圧AC100V50/60HZ、最大出力電圧DC50kV(固定)、最大出力電流20μA、消費電力10VA、有効距離50~250mm、接地100Ω以下。)に投入し、燃えかすは静電ローダー内で各々正極性と負極性に従って負荷をかけ、正電荷を帯びたフラーレンおよび負電荷を帯びたフラーレンを得、その後これら電荷を帯びたフラーレンの混合燃えかすをトルエン法で精製し、精製後のフラーレン燃えかすの正電荷を帯びたもの70%、負電荷を帯びたもの30%の割合に従い混合することで、負極スラリー内のフラーレン原料を得る。
【0023】
本実施例内の電解液の調製方法としては、
有機溶媒のエチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルプロピオネートを混合させ、最後にカテコールジアセテート(添加量が電解液の総体積の2%)を加えると、前記電解液を得た。
【0024】
本実施例内の負極材料は、以下の方法で調製され、すなわちグラファイトカーボンブラック、導電剤、結合剤、フラーレン、ナノワイヤー、ナノチタンを混合した後、粉砕して粉末にし、粉末を圧力50mPaの高圧反応器に移し、その後反応器を出力1800wの電子レンジに入れ、1200秒間加熱し、室温まで冷却することで、前記負極材料を得た。
【0025】
(実施例2)
本実施例のリン酸鉄リチウム電池の正極材料は、リン酸鉄リチウム10重量部、導電剤30重量部、結合剤15重量部、カーボンナノチューブスラリー30重量部という成分を含み;負極材料は、グラファイトカーボンブラック20重量部、導電剤30重量部、結合剤15重量部、フラーレン25重量部、ナノワイヤー15重量部、ナノチタン8重量部という成分を含み、前記カテコールジアセテートの質量分率が12%である。
【0026】
本実施例のリン酸鉄リチウム電池の調製方法は、実施例1と同じ調製方法を用いた。
【0027】
本実施例のフラーレン抽出方法は、実施例1と同じ抽出方法を用いた。
【0028】
本実施例内の電解液の調製方法としては、
有機溶媒のエチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルプロピオネートを混合させ、最後にカテコールジアセテート(添加量が電解液の総体積の10%)を加えると、前記電解液を得た。
【0029】
本実施例内の負極材料は、以下の方法で調製され、すなわちグラファイトカーボンブラック、導電剤、結合剤、フラーレン、ナノワイヤー、ナノチタンを混合した後、粉砕して粉末にし、粉末を圧力30mPaの高圧反応器に移し、その後反応器を出力2200wの電子レンジに入れ、200秒間加熱し、室温まで冷却することで、前記負極材料を得た。
【0030】
(実施例3)
本実施例のリン酸鉄リチウム電池の正極材料は、リン酸鉄リチウム7重量部、導電剤15重量部、結合剤7重量部、カーボンナノチューブスラリー15重量部という成分を含み;負極材料は、グラファイトカーボンブラック10重量部、導電剤15重量部、結合剤8重量部、フラーレン12重量部、ナノワイヤー10重量部、ナノチタン5重量部という成分を含み、前記カテコールジアセテートの質量分率が10%である。
【0031】
本実施例のリン酸鉄リチウム電池の調製方法は、実施例1と同じ調製方法を用いた。
【0032】
本実施例のフラーレン抽出方法は、実施例1と同じ抽出方法を用いた。
【0033】
本実施例内の負極材料の調製方法は、実施例1と同じ調製方法を用いた。
【0034】
本実施例内の電解液の調製方法としては、
有機溶媒のエチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルプロピオネートを混合させ、最後にカテコールジアセテート(添加量が電解液の総体積の5%)を加えると、前記電解液を得た。
【0035】
(実施例4)
本実施例のリン酸鉄リチウム電池の正極材料は、リン酸鉄リチウム7重量部、導電剤22重量部、結合剤13重量部、グラフェン10重量部という成分を含み;負極材料は、グラファイトカーボンブラック12重量部、導電剤25重量部、結合剤11重量部、フラーレン0.03重量部、ナノワイヤー8重量部、ナノチタン3重量部を含む。
【0036】
本実施例のリン酸鉄リチウム電池の調製方法は、以下の工程(1)~(3)を含む。すなわち、
(1)原料配合:リン酸鉄リチウム、導電剤、結合剤、カーボンナノチューブスラリーを混合して混合正極スラリーを得、グラファイトカーボンブラック、導電剤、結合剤、フラーレン、ナノワイヤー、ナノチタンを混合して混合負極スラリーを得る工程、
(2)塗工:上記正極スラリーを塗工機でアルミニウム箔に塗工し、負極スラリーを塗工機で銅箔に塗工する工程、
(3)その後圧延、スリット、レーザー切断、巻回、組立、トップ・サイド封止、乾燥、電解液注液、化成を経て、最終的にパッケージングすることで本発明の電池を得る工程。
【0037】
本実施例は、以下の工程を用いてフラーレンを抽出した。
i 陶磁器用の酸化・還元焼成窯に1トンの汚染されていないヒノキの薪を入れて燃やさせ、24時間後に酸化・還元焼成窯の内壁から上に付着している燃えかすを780g抽出する工程、
ii 抽出された燃えかすを静電ローダーに入れて静電加工して導電性フラーレンを得た工程。
【0038】
静電ローダーとは、静電高圧発生装置(Electrostatic Generator)を意味し、静電高圧発生装置が可燃物(例えば原木を焼いて木炭になり、原木が可燃物であり、鉱石、丸石なども可燃物に含まれる)を処理することによって静電気を発生できることに留意されたい。
【0039】
本実施例内の電解液の調製方法としては、
有機溶媒のエチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルプロピオネートを混合させ、最後にカテコールジアセテート(添加量が電解液の総体積の2%)とリチウム塩を加えると、前記電解液を得た。
【0040】
本実施例内の負極材料は、以下の方法で調製され、すなわちグラファイトカーボンブラック、導電剤、結合剤、フラーレン、ナノワイヤー、ナノチタンを混合した後、粉砕して粉末にし、粉末を圧力40mPaの高圧反応器に移し、その後反応器を出力1900wの電子レンジに入れ、1000秒間加熱し、室温まで冷却することで、前記負極材料を得た。
【0041】
(実施例5)
本実施例のリン酸鉄リチウム電池の正極材料は、リン酸鉄リチウム6重量部、導電剤15重量部、結合剤8重量部、カーボンナノチューブスラリー10重量部という成分を含み;負極材料は、グラファイトカーボンブラック17重量部、導電剤9重量部、結合剤11重量部、フラーレン2.5重量部、ナノワイヤー8重量部、ナノチタン3重量部を含む。
【0042】
本実施例のリン酸鉄リチウム電池の調製方法は、以下の工程(1)~(3)を含む。すなわち、
(1)原料配合:リン酸鉄リチウム、導電剤、結合剤、カーボンナノチューブスラリーを混合して混合正極スラリーを得、グラファイトカーボンブラック、導電剤、結合剤、フラーレン、ナノワイヤー、ナノチタンを混合して混合負極スラリーを得る工程、
(2)塗工:上記正極スラリーを塗工機でアルミニウム箔に塗工し、負極スラリーを塗工機で銅箔に塗工する工程、
(3)その後圧延、スリット、レーザー切断、巻回、組立、トップ・サイド封止、乾燥、電解液注液、化成を経て、最終的にパッケージングすることで本発明の電池を得る工程。
【0043】
本実施例は、以下の工程を用いてフラーレンを抽出した。
i 陶磁器用の酸化・還元焼成窯に1トンの汚染されていない松の薪を入れて燃やさせ、24時間後に酸化・還元焼成窯の内壁から上に付着している燃えかすを1100g抽出する工程、
ii 抽出された燃えかすを静電ローダーに入れて静電加工して導電性フラーレンを得た工程。
【0044】
本実施例内の電解液の調製方法としては、
有機溶媒のエチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルプロピオネートを混合させ、最後にカテコールジアセテート(添加量が電解液の総体積の10%)とリチウム塩を加えると、前記電解液を得た。
【0045】
本実施例内の負極材料は、以下の方法で調製され、すなわちグラファイトカーボンブラック、導電剤、結合剤、フラーレン、ナノワイヤー、ナノチタンを混合した後、粉砕して粉末にし、粉末を圧力45mPaの高圧反応器に移し、その後反応器を出力2000wの電子レンジに入れ、700秒間加熱し、室温まで冷却することで、前記負極材料を得た。
【0046】
(比較例1)
比較例1と実施例1との唯一の相違点は、電解液内にカテコールジアセテートを添加しないことである。
【0047】
(比較例2)
比較例2と実施例1との唯一の相違点は、負極材料内にフラーレン、ナノワイヤー、ナノチタンが含まれないことである。
【0048】
(比較例3)
比較例3と実施例1との相違点は、負極スラリーにフラーレンが含まれないことである。
【0049】
上記実施例1~5および比較例1~3で調製されたリン酸鉄リチウム電池を試験したところ、試験指標および試験結果を次に示す。
【0050】
1、性能試験
(1)低温放電容量試験
25℃において、リン酸鉄リチウム電池を先に1Cから放電至2.0Vまで放電し、次に1C定電流で3.6Vまで充電し、さらに定電圧で電流0.05Cまで充電し、充電容量をCCとして記録し、その後炉内温度を-10℃に調節させ、1C定電流で2.0Vに放電し、放電容量をCDTとして記録した。放電容量と充電容量の比率は、放電容量維持率である。
(数1)
-10℃でリン酸鉄リチウム電池の放電容量維持率(%)=CDT/CCX100%。
【0051】
(2)常温サイクル試験
25℃において、リン酸鉄リチウム電池を先に1Cで2.0Vに放電してからサイクル試験を実施する。1C定電流で3.6Vまで放電し、次に定電圧で電流0.05Cまで充電し、その後1C定電流で2.0Vまで放電し、このように充電/放電して、25℃で1000回サイクルのリン酸鉄リチウム電池容量維持率を計算した。
(数2)
25℃で1000回サイクル後のリン酸鉄リチウム電池容量維持率(%)=1000回目のサイクルの放電容量/初回サイクルの放電容量×100%。
【0052】
(3)高温サイクル試験
25℃において、リン酸鉄リチウム電池を先に1Cで2.0Vまで放電してからサイクル試験を実施する。オーブンの温度を60℃まで上げ、1C定電流で3.6Vまで充電し、次に定電圧で電流0.05Cまで充電し、その後1C定電流で2.0Vまで放電し、このように充電/放電して、60℃で500回サイクルのリン酸鉄リチウム電池容量維持率を計算した。
(数3)
60℃で500回サイクル後のリン酸鉄リチウム電池容量維持率(%)=500回目のサイクルの放電容量/初回サイクルの放電容量×100%。
【表1】
【0053】
比較例1からも分かるように、正極・負極シートの圧縮密度がアップし、カテコールジアセテートを加えない状況において、リン酸鉄リチウム電池の性能が急激に低下する。比較例2からも分かるように、負極材料内にフラーレン、ナノワイヤー、ナノチタンが添加されないため、比較例2~3のリン酸鉄リチウム電池の負極シートの圧縮密度が本発明の実施例よりはるかに低くさせている。ただし実施例1~5において、正極・負極シートの圧縮密度がアップし、かつ電解液内にカテコールジアセテートを加えた後、リン酸鉄リチウム電池の性能低下傾向を著しく遅らせることができるので、リン酸鉄リチウム電池の低温性能、常温と高温サイクル性能も全て改善させることができた。これは、添加されたカテコールジアセテートがリン酸鉄リチウム電池のサイクル寿命を延ばすことができることを示している。
【0054】
2、破壊試験結果
実施例1~5で得られた電池(仕様:25×37×76mm)を取って以下の破壊試験を実施した。
(1)打撃試験:重さ10kgの鋼製ハンマーを1mの高さから自由落下させた場合、発火や爆発することはなく;
(2)過充電試験:発熱や爆発することはなく;
(3)釘刺試験:3×8.0mmの鉄釘で直接電池を釘刺したところ、発火や爆発することはなく;
(4)水没試験:24時間水没させても、性能に変化がなく;
(5)熱衝撃サイクル試験:温度試験器に入れ、温度を5℃から150℃に上げたところ、発火や爆発することはなく;
(6)振動試験:振動試験機に入れ、往復振動を30分間行ったところ、外観、性能に変化がなく;
(7)圧壊試験:押し潰し試験機に入れ、最大17MPaの圧力を加えたところ、発火や爆発することはなく;
(8)ドライバー刺し試験:電池にドライバーを貫通させた後、電圧に変化(一般的な電池の場合、貫通により短絡が生じ、電圧がゼロになる)がなく、6~7分間後6~7℃の温度上昇があり;
(9)落下試験:電池を地上高さ6mから鉄板に自由落下させたところ、電圧に変化がなかった。
【0055】
以上の実験を通じて、本発明の実施例1~5のリン酸鉄リチウム電池の品質はPSE、GB、UC等の安全認証要件を完全に満たしていることが検証された。
【0056】
上記の実施例は、本発明のいくつかの実施形態を表すだけであり、その描写は、比較的具体的かつ詳細であるが、これにより本発明の特許の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者にとって、本発明の技術的思想から逸脱することなく、多種多様な変形および改善を行うことができ、かかる変形や改善はすべて本発明の保護範囲に網羅されることを指摘しておかなければならない。したがって、本発明の特許の保護の範囲は、添付の特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。


図1
【国際調査報告】