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特表2022-527253PTPスレーブのタイミングパフォーマンスをリモートで監視する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-01
(54)【発明の名称】PTPスレーブのタイミングパフォーマンスをリモートで監視する方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 7/00 20060101AFI20220525BHJP
   H04L 43/0852 20220101ALI20220525BHJP
【FI】
H04L7/00 990
H04L43/0852
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556849
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(85)【翻訳文提出日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 US2020023350
(87)【国際公開番号】W WO2020191043
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】16/692,010
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/821,114
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521311654
【氏名又は名称】アリス エンタープライジズ リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(72)【発明者】
【氏名】ヤイール ニューグボーレン
【テーマコード(参考)】
5K047
【Fターム(参考)】
5K047AA18
5K047GG56
5K047KK04
(57)【要約】
いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイスの第1のクロックをロックして、第1のデバイスに関連付けられた第2のクロックと同期させた後に方法が実施され、第1のクロックと第2のクロックとの間の差異は、ロック中に決定される。本方法は、第1のクロックの第1のタイムスタンプを含むメッセージを第2のデバイスに送信すること、および第3のクロックの第2のタイムスタンプを含むメッセージを第2のデバイスから受信することに基づいて、第2のデバイスまでのパス遅延を測定する。第3のメッセージが、第2のクロックにロックされた第1のクロックの第3のタイムスタンプを含む第2のデバイスに送信され、第3のメッセージは、パス遅延を含み、第3のタイムスタンプおよびパス遅延により、第2のデバイスは、第3のクロックの時間に基づいて、第2のクロックに対する第1のクロックのロック品質を分析することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピューティングデバイスの第1のクロックをロックして、第1のデバイスに関連付けられた第2のクロックと同期させた後に実施される方法であって、前記第1のクロックと前記第2のクロックとの間の差異が、前記ロック中に決定され、前記方法が、
前記コンピューティングデバイスによって、前記第1のクロックの1つ以上の第1のタイムスタンプを含む1つ以上のメッセージを第2のデバイスに送信すること、および第3のクロックの1つ以上の第2のタイムスタンプを含む1つ以上のメッセージを前記第2のデバイスから受信することに基づいて、前記第2のデバイスまでのパス遅延を測定することと、
前記コンピューティングデバイスによって、第3のメッセージを、前記第2のクロックにロックされた前記第1のクロックの第3のタイムスタンプを含む前記第2のデバイスに送信することと、を含み、前記第3のメッセージが、前記パス遅延を含み、前記第3のタイムスタンプおよび前記パス遅延により、前記第2のデバイスが、前記第3のクロックの時間に基づいて、前記第2のクロックに対する前記第1のクロックのロック品質を分析することができる、方法。
【請求項2】
前記パス遅延が、前記第3のメッセージの補正フィールドで前記第3のメッセージに挿入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のデバイスが、前記パス遅延によって前記第2のクロックにロックされた前記第1のクロックの前記第3のタイムスタンプを調節して、調節された第3のタイムスタンプを生成し、前記調節された第3のタイムスタンプを前記第3のクロックの前記時間と比較する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第3のクロックおよび前記第2のクロックが、同じタイミングソースに接続される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のクロックが、前記第2のクロックに前記第1のクロックをロックするように、前記第1のクロックと前記第2のクロックとの間の前記差異によって調節される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のデバイスが、前記第1のデバイスと比較して、前記コンピューティングデバイスのより近くに位置する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のデバイスが、前記第1のデバイスと前記コンピューティングデバイスとの間のパス間の最後のホップに位置する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のデバイスが、インターフェースを介して、前記コンピューティングデバイスに物理的に接続されない、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記コンピューティングデバイスが、前記第2のデバイスの前記第3のクロックに対するマスタクロックとして作用しない、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第2のデバイスまでの前記パス遅延を測定することが、
前記コンピューティングデバイスと前記第2のデバイスとの間のラウンドトリップ遅延を計算することと、
前記ラウンドトリップ遅延を2で割ることと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第2のデバイスが、前記第2のクロックに対する前記第1のクロックの前記ロック品質を、
前記パス遅延を前記第3のタイムスタンプに追加して、調節された第3のタイムスタンプを決定すること、および
前記調節された第3のタイムスタンプを、前記第3のクロックの前記時間と比較することによって、分析する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第2のデバイスが、前記第2のクロックに対する前記第1のクロックの前記ロック品質を、
前記調節された第3のタイムスタンプと前記第3のクロックの前記時間との間の差異を閾値と比較すること、および
前記比較の結果を出力することによって、分析する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記差異が閾値を上回ると、アラートを出力する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
コンピューティングデバイスの第1のクロックをロックして、第1のデバイスに関連付けられた第2のクロックと同期させた後に実施される命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記第1のクロックと前記第2のクロックとの間の差異が、前記ロック中に決定され、前記命令が、実行されたときに、
前記第1のクロックの1つ以上の第1のタイムスタンプを含む1つ以上のメッセージを第2のデバイスに送信すること、および第3のクロックの1つ以上の第2のタイムスタンプを含む1つ以上のメッセージを前記第2のデバイスから受信することに基づいて、前記第2のデバイスまでのパス遅延を測定することと、
第3のメッセージを、前記第2のクロックにロックされた前記第1のクロックの第3のタイムスタンプを含む前記第2のデバイスに送信することと、を行うために動作可能であるように前記コンピューティングデバイスを制御し、前記第3のメッセージが、前記パス遅延を含み、前記第3のタイムスタンプおよび前記パス遅延により、前記第2のデバイスが、前記第3のクロックの時間に基づいて、前記第2のクロックに対する前記第1のクロックのロック品質を分析することができる、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
前記パス遅延が、前記第3のメッセージの補正フィールドで前記第3のメッセージに挿入される、請求項14に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項16】
前記第2のデバイスが、前記パス遅延によって前記第2のクロックにロックされた前記第1のクロックの前記第3のタイムスタンプを調節して、調節された第3のタイムスタンプを生成し、前記調節された第3のタイムスタンプを前記第3のクロックの前記時間と比較する、請求項14に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項17】
前記第3のクロックおよび前記第2のクロックが、同じタイミングソースに接続される、請求項14に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項18】
前記第1のクロックが、前記第2のクロックに前記第1のクロックをロックするように、前記第1のクロックと前記第2のクロックとの間の前記差異によって調節される、請求項14に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項19】
前記第2のデバイスが、前記第1のデバイスと前記コンピューティングデバイスとの間のパス間の最後のホップに位置する、請求項14に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
装置であって、
1つ以上のコンピュータプロセッサと、
前記装置の第1のクロックをロックして、第1のデバイスに関連付けられた第2のクロックと同期させた後に前記1つ以上のコンピュータプロセッサを制御するための命令を含むコンピュータ可読記憶媒体と、を備え、前記第1のクロックと前記第2のクロックとの間の差異が、前記ロック中に、
前記第1のクロックの1つ以上の第1のタイムスタンプを含む1つ以上のメッセージを前記第2のデバイスに送信すること、および第3のクロックの1つ以上の第2のタイムスタンプを含む1つ以上のメッセージを前記第2のデバイスから受信することに基づいて、第2のデバイスまでのパス遅延を測定することと、
第3のメッセージを、前記第2のクロックにロックされた前記第1のクロックの第3のタイムスタンプを含む前記第2のデバイスに送信することと、を行うために動作可能であるように決定され、前記第3のメッセージが、前記パス遅延を含み、前記第3のタイムスタンプおよび前記パス遅延により、前記第2のデバイスが、前記第3のクロックの時間に基づいて、前記第2のクロックに対する前記第1のクロックのロック品質を分析することができる、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本開示は、内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる、2019年3月20日に出願された「A METHOD OF REMOTELY MONITORING THE TIMING PERFORMANCE OF A PTP SLAVE」と題する米国仮出願第62/821,114号に対して優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
高精度時間プロトコル(PTP)クロックは、マスタクロックから受信および要求されたタイムスタンプに基づいて、周波数および位相の回復を実施する。回復を実施するために、ネットワーク内に位置するPTPスレーブデバイスがPTPマスタデバイスにロックされる。ロック処理により、PTPマスタクロックに対してPTPスレーブクロックをロックし、それによって、PTPスレーブクロックをPTPマスタクロックと同期させる。タイミング分配システムでは、PTPスレーブクロックのタイミングパフォーマンスを監視することができることが重要である。PTPマスタクロックに対するPTPスレーブクロックのロック品質に影響し得るいくつかの要因がある。例えば、ネットワーク内のパケット遅延変動(PDV)は、PTPマスタクロックとPTPスレーブクロックとの間のロック品質に影響を与える可能性がある。また、PTPマスタデバイスとPTPスレーブデバイスとの間の遅延非対称性が、ロック品質に影響を与える可能性がある。さらなる問題には、PTPスレーブがPTPマスタデバイスに到達することができないホールドオーバー状態が含まれ得、ホールドオーバー状態とは、PTPスレーブクロックがPTPマスタクロックにロックされていないことを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図面に従う考察、および特に図面に関する考察に関して、示される詳細は、説明的な考察を目的とした実施例を表し、本開示の原理および概念的態様の説明を提供するために提示されることを強調する。この点に関して、本開示の基本的な理解に必要なものを超えて、実装例の詳細を示す試みは行われない。図面に従う考察は、図面と併せて、本開示による実施形態がどのように実践され得るかを当業者に明らかにする。同様のまたは同じ参照番号を使用して、様々な図面およびサポートする説明における同様のまたは同じ要素を識別するか、または別様に当該要素を指すことができる。
【0004】
図1】いくつかの実施形態による、タイミング同期を実施するための簡略化されたシステムを図示する。
図2】いくつかの実施形態による、高精度時間プロトコル(PTP)スレーブデバイスのより詳細な実施例を図示する。
図3】いくつかの実施形態による、動作中のマスタクロックにロックするためのPTPスレーブデバイス上のポートを構成するプロセスの簡略化されたフローチャートを図示する。
図4】いくつかの実施形態による、スレーブクロックのロック品質を試験するための簡略化されたフローチャートを図示する。
図5】いくつかの実施形態による、PTPプローブマスタデバイスでのスレーブクロックの品質を試験するための方法の簡略化されたフローチャートを図示する。
図6】いくつかの実施形態による、専用コンピュータシステムの実施例を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書では、タイミング同期システムのための技術について説明する。以下の説明では、説明を目的として、いくつかの実施形態の完全な理解を提供するために、多数の例および具体的な詳細が記載されている。特許請求の範囲によって定義されるいくつかの実施形態は、これらの例の一部もしくは全部を単独で、または以下に説明される他の特徴との組み合わせで含み得、本明細書に説明される特徴および概念の修正および均等物をさらに含み得る。
【0006】
高精度時間プロトコル(PTP)スレーブデバイスなどのスレーブデバイスは、PTPマスタデバイスなどのマスタデバイス内に位置するマスタクロックと同期するスレーブクロックを含み得る。PTPなどのプロトコルは、リモートPHY(RPHY)デバイスを有するケーブルネットワーク内などのアプリケーションで使用され得るタイミングシステムであってもよい。PTPは、米国電気電子技術者協会(IEEE)標準規格(IEEE標準規格1588-2008など)に基づいて実装され得る。PTPプロトコルは、パケットネットワークなどのネットワークを介して時間および周波数を分配する。時間同期は、ネットワーク内のスレーブデバイスとマスタデバイスとの間の時間の同期であり、周波数同期は、マスタクロックとのスレーブクロックの周波数の同期である。このプロトコルは、ネットワークを介した、グランドマスタクロックとスレーブデバイスとの間のマスタ-スレーブ関係を作り出す。
【0007】
いくつかの実施形態では、スレーブデバイスは、そのスレーブクロックを、動作中のマスタデバイスの動作中のマスタクロックにロックし得る。次いで、マスタクロックに対するスレーブクロックのロック品質を試験するために、スレーブデバイスは、プローブマスタクロックを含むプローブマスタデバイスと通信し得る。プローブマスタデバイスは、スレーブデバイスの近くなど、ネットワーク(例えば、スレーブデバイスへの最後のネットワークホップまたは最後の数ホップ)内に位置し得る。これにより、パケット遅延変動、およびスレーブデバイスとプローブマスタデバイスとの間の非対称性の影響が低減され得る。スレーブデバイスは、T1時間と称されるタイムスタンプとともに、プローブマスタデバイスから同期メッセージを受信し得る。スレーブデバイスは、同期メッセージが時間T2として受信される時間に注目し得る。スレーブデバイスは、スレーブクロックの、T3時間と称されるタイムスタンプを含む遅延要求メッセージを送信する。スレーブデバイスは、プローブマスタクロックの、T4時間と称されるタイムスタンプとともに、プローブデバイスから遅延応答を受信する。遅延要求および遅延応答から、スレーブデバイスは、次いで、スレーブデバイスとプローブデバイスとの間のパス遅延を計算し得る。例えば、パス遅延は、((T2-T1)+(T4-T3))/2である。
【0008】
次いで、スレーブデバイスは、T3時間およびパス遅延とともに遅延要求をプローブマスタデバイスに送信する。スレーブデバイスは、パス遅延を、T3補正フィールドなど、遅延要求メッセージのフィールドに挿入し得る。プローブマスタデバイスは、遅延要求に挿入された、T3時間および計算されたパス遅延を使用して、スレーブデバイスのクロックを適切に監視し得る。例えば、プローブマスタデバイスは、次いで、T3時間およびパス遅延を使用して、動作中のマスタクロックとのスレーブクロックのロック品質を検証することができる。つまり、T3時間+パス遅延=スレーブクロックの現在の時間である。プローブマスタデバイスは、スレーブクロックの現在の時間を、プローブマスタクロックの現在の時間と比較することができる。上記により、PTPプローブに対する1パルス/秒(PPS)インターフェースなどの、PTPプローブに対するインターフェースを必要とせずに、またはスレーブデバイスがマスタクロックとして動作して、PTPを介してプローブスレーブクロックと同期することを必要とせずに、スレーブクロックを監視することができる。また、パス遅延は、PTPプロトコルに存在するフィールドに挿入され、PTPプローブデバイスは、補正フィールドを使用して、スレーブクロックの現在の時間を計算するように構成される。
【0009】
システム概要
図1は、いくつかの実施形態による、タイミング同期を実施するための簡略化されたシステム100を図示する。システム100は、PTP動作中のマスタデバイス104と、スイッチ106-1~106-Nと、PTPスレーブデバイス102と、PTPプローブマスタデバイス108と、を含む。高精度時間プロトコルは、ネットワーク全体にわたってタイミングを同期するために使用される。高精度時間プロトコルについて考察するが、ネットワーク全体にわたってタイミングを同期する他のプロトコルを使用することができることが理解されよう。
【0010】
PTP動作中のマスタデバイス104は、マスタクロック112-1を含むデバイスであってもよい。マスタクロック112-1は、全球測位衛星システム(GNSS)クロックなどの基準クロック、または別の時間ソースに基づき得る。マスタクロック112-1は、スレーブクロック114を同期するためにPTPスレーブデバイス102によって使用される動作中のマスタクロックであってもよい。
【0011】
PTPスレーブデバイス102は、ネットワーク内に位置し得る。PTPスレーブデバイス102とPTP動作中のマスタデバイス104との間にパス#1 110-1がある。いくつかの実施形態では、PTPスレーブデバイス102は、ネットワーク内に位置し得、PTP動作中のマスタデバイス104からリモートに位置する。スイッチ106-1~106-Nは、ネットワーク内のパス#1 110-1を介して、PTP動作中のマスタデバイス104をPTPスレーブデバイス102に連結し得るネットワークデバイスであってもよい。
【0012】
PTPプローブマスタデバイス108を使用して、動作中のマスタクロック112-1とのスレーブクロック114のロックの品質を試験することができる。ロックの品質は、スレーブクロック114の調節された時間と、動作中のマスタクロック112-1によって使用されるタイミングソースに接続されるプローブマスタクロック112-2に接続されたタイミングソースの時間との差異によって測定される。以下でより詳細に考察されるように、PTPプローブマスタデバイス108は、スレーブクロック114のロック品質をチェックするために使用されるプローブマスタクロック112-2を含む。いくつかの実施形態では、PTPプローブマスタデバイス108は、PTPスレーブデバイス102に対するPTP動作中のマスタデバイス104の場所よりもPTPスレーブデバイス102に近い場所で、PTPスレーブデバイス102に接続される。例えば、PTPプローブマスタデバイス108は、スイッチ106-1~106-Nのうちの1つを介してPTPスレーブデバイス102に接続され得る。いくつかの実施形態では、PTPプローブマスタデバイス108は、パス#2 110-2内の、PTPスレーブデバイス102への最後のホップスイッチ106-Nに接続される。PTPプローブマスタデバイス108は、パス#1 110-1内の最後のホップにあるか、またはスイッチ106-Nに接続されるものとして図示され得るが、PTPプローブマスタデバイス108は、他の場所に位置し得、パス#1 110-1内に位置する必要はない。しかしながら、PTPプローブマスタデバイス108は、要求および応答プロセスにおけるパケット遅延変動および非対称性が最小化される場所に位置し得る。例えば、PTPプローブマスタデバイス108をスイッチ106-N内に位置特定することによって、スイッチ106-NとPTPスレーブデバイス102との間の単一のホップが、より多くのパケット遅延変動および非対称性を引き起こす可能性がある複数のスイッチ106-1~106-Nを介するパス#1 110-1と比較して、パス#2 110-2内のパケット遅延変動および非対称性を制限し得る。
【0013】
ロック品質をチェックする前に、PTPスレーブデバイス102はまず、動作中のマスタクロック112-1にスレーブクロック114をロックする。スレーブクロック114を動作中のマスタクロック112-1と同期するために、PTPスレーブデバイス102は、PTPスレーブデバイス102とPTP動作中のマスタデバイス104との間のラウンドトリップ遅延を計算し得る。例えば、PTPスレーブデバイス102は、PTP動作中のマスタデバイス104から、同期メッセージが送信されたときのタイムスタンプである、動作中のマスタクロック112-1からのT1時間とともに、同期メッセージを受信し得る。PTP動作中のマスタデバイス104は、GNSSクロックなどのタイミングソースに基づいて、時間を決定し得る。PTPスレーブデバイス102は、同期メッセージが時間T2として受信される時間に注目し得る。PTPスレーブデバイス102は、スレーブクロック114の、T3時間と称されるタイムスタンプを含む遅延要求メッセージを送信する。PTPスレーブデバイス102は、PTP動作中のマスタデバイス104から、T4時間と称される、遅延要求が受信されたときの動作中のマスタクロック112-1のタイムスタンプとともに、遅延応答を受信する。これらの時間から、スレーブデバイスは、次いで、PTP動作中のマスタデバイス104とPTPスレーブデバイス102との間のパス遅延を計算し得る。例えば、パス#1 110-1内のパス遅延は、((T2-T1)+(T4-T3))/2である。見られ得るように、PTPスレーブデバイス102は、パス遅延が両方向で対称であると仮定する。パス遅延を決定するこの方法が記載されているが、他の方法が認識され得る。
【0014】
PTPスレーブデバイス102は、パス遅延を使用して、スレーブクロック114を設定する必要がある正しい時間を決定することができる。例えば、動作中のマスタクロック112-1の時間にパス遅延を加えたものが、動作中のマスタクロック112-1の正しい時間である。PTPスレーブデバイス102は、動作中のマスタクロック112-1の正しい時間にスレーブクロック114をロックし得る。例えば、PTP動作中のマスタデバイス104は、スレーブクロック114の時間をロックするためにPTPスレーブデバイス102によって使用される時間を用いて同期メッセージを送信し得る。したがって、PTPスレーブデバイス102は、スレーブクロック114の時間と動作中のマスタクロック112-1の時間との間の差異に基づいて、スレーブクロック114を調節し得る。PTPスレーブデバイス102は、最終的に、動作中のマスタクロック112-1にスレーブクロック114をロックする。クロック周波数の位相を、ロックプロセスで調節することもできる。ロックされると、スレーブクロック114の時間および位相が、動作中のマスタクロック112-1の時間および周波数にロックされる。
【0015】
上で考察されるように、PTPスレーブデバイス102は、スレーブクロック114のロック品質をチェックする必要がある。つまり、PTPスレーブデバイス102は、スレーブクロック114の同期されたタイミングおよび周波数が正確であるかどうかをチェックし得る。このチェックを実施するために、PTPスレーブデバイス102は、PTPプローブマスタデバイス108と通信する。
【0016】
従来の方法では、PTPスレーブデバイス102は、異なる方法を使用して、スレーブクロック114のロック品質をチェックし得る。例えば、PTPスレーブデバイス102は、1パルス/秒インターフェースなどの専用インターフェースを使用して、スレーブクロック114を外部プローブに出力し得る。プローブは、スレーブクロック114の時間および位相を、そのマスタクロックと比較する。これは通常、ローブのマスタクロックを、動作中のマスタクロック112-1と同じ基準クロックに接続することによって行われる。この方法は、スレーブクロック114を監視し得るが、PTPスレーブデバイス102は、1PPSインターフェースなどの外部プローブインターフェースを有する必要がある。また、PTPスレーブデバイス102およびPTPプローブマスタデバイス108は、接続をインストールするためにアクセスされる必要があり、これは、PTPスレーブデバイス102が、リモートの物理デバイスまたは小さいセルデバイス内などの、ヘッドエンドまたはコアからリモートに位置する場合、難しい場合がある。
【0017】
第2のアプローチでは、PTPスレーブデバイス102は、PTPスレーブデバイス102が、スレーブクロックを含むPTPプローブと通信するマスタクロックとしてスレーブクロック114を動作させる境界クロックとして機能し得る。PTPプローブは、そのスレーブクロックの周波数および位相を、PTPスレーブデバイス102のマスタクロックと比較する。PTPプローブは、PTPスレーブデバイス102のマスタクロックのタイミングをチェックするように、動作中のマスタクロック112-1と同じ基準クロックに接続される。しかしながら、PTPスレーブデバイス102が境界クロックとして作用することをサポートしない場合があるという問題が存在する。つまり、PTPスレーブデバイス102は、マスタクロックとして作用することができない場合がある。さらに、PTPプローブは、PTPスレーブデバイス102からリモートに位置し、パスは、PTPスレーブデバイス102のマスタクロックの試験の精度に影響を与え得る、非対称性およびパケット遅延変動に苦しむ場合がある。上記の要因のため、PTPマスタクロックと比較してPTPスレーブクロックの精度を監視すること、ならびに上記の問題のいずれかを、PPSインターフェースを使用することなく、かつPTPスレーブデバイス102を境界デバイスとして動作させることなく、識別することができることが重要である。
【0018】
従来の技術では、タイムスタンプ情報を送信して、発信遅延要求メッセージにおけるスレーブクロックを監視するための実装例は存在しない。同様に、IEEE 1588はリンク伝播遅延を測定するための方法を説明するが、IEEE 1588が、パス内の中間ノードを含むパスレベルで遅延を測定することに対処することはなく、一方、IEEE 1588は、隣接するノードを接続するリンクの遅延を測定することに限定される。
【0019】
上記の欠点を克服するために、いくつかの実施形態は、PTPプローブマスタデバイス108を使用して、スレーブクロック114のロック品質を試験する。PTPスレーブデバイス102は、プローブマスタクロック112-2にスレーブクロック114をロックすることを試みない。むしろ、PTPプローブマスタデバイス108は、動作中のマスタクロック112-1に対するスレーブクロック114のロック品質を監視する。PTPスレーブデバイス102は、PTPプローブマスタデバイス108と通信して、T1時間、T2時間、T3時間、およびT4時間に基づいてパス遅延を計算することができる。例えば、PTPスレーブデバイス102は、PTPプローブマスタデバイス108から、同期メッセージが送信されたときのタイムスタンプである、プローブマスタクロック112-2からのT1時間とともに、同期メッセージを受信し得る。PTPプローブマスタデバイス108は、GNSSクロックなどのタイミングソースに基づいて、時間を決定し得る。PTPスレーブデバイス102は、同期メッセージがT2時間として受信される時間に注目し得る。PTPスレーブデバイス102は、スレーブクロック114の、T3時間と称されるタイムスタンプを含む遅延要求メッセージを送信する。PTPスレーブデバイス102は、PTPプローブマスタデバイス108から、T4時間と称される、遅延要求が受信されたときのプローブマスタクロック112-2のタイムスタンプとともに、遅延応答を受信する。これらの時間から、PTPスレーブデバイス102は、次いで、PTPプローブマスタデバイス108とPTPスレーブデバイス102との間のパス遅延を計算し得る。例えば、パス#2 110-2内のパス遅延は、((T2-T1)+(T4-T3))/2である。PTPスレーブデバイス102は、いくつかの遅延要求/遅延応答ラウンドトリップにわたるパス遅延を計算し得る。パス遅延は、両方向で対称な遅延と仮定するが、PTPプローブマスタデバイス108は、PTPスレーブデバイス102のより近くに位置し得るため、パケット遅延変動および非対称性は限定され得る。
【0020】
パス遅延を計算すると、PTPスレーブデバイス102は、スレーブクロック114とプローブマスタクロック112-2との間のパス遅延を遅延要求に追加する。いくつかの実施形態では、PTPスレーブデバイス102は、T3時間を含む遅延要求の補正フィールドにパス遅延を追加する。補正フィールドは、ロック品質をチェックする際に通常使用することができないフィールドであってもよい。補正フィールドは通常、クロック内の内部遅延によるタイムスタンプに補正を追加するために、1588の透明なクロックなどのクロックによって使用され得る。透明なクロックは、スイッチ内にあってもよい。補正フィールドは通常、スレーブクロックでは使用されない。しかしながら、PTPプローブマスタデバイス108は、スレーブクロック114に対するロックの品質をチェックするために、補正フィールド内のT3時間およびパス遅延を使用して、スレーブデバイス114に対する調節された時間を決定するように構成され得る。例えば、PTPプローブマスタデバイス108は、パス遅延をT3時間に追加して、スレーブクロック114の現在の時間を計算する。つまり、遅延要求がパス遅延に加えて送信される時間T3は、現在の時間である必要がある。次いで、PTPプローブマスタデバイス108は、プローブマスタクロック112-2の現在時間を、スレーブクロック114に対する計算された現在の時間と比較する。比較に基づいて、PTPプローブマスタデバイス108は、スレーブクロック114の品質をチェックし得る。例えば、PTPプローブマスタデバイス108は、PTP動作中のマスタデバイス104と同じ基準クロックに接続されるため、比較により、スレーブクロック114における任意のタイミングの不正確さを決定することができる。パス遅延が使用され、パス#2 110-2が最小限のパケット遅延変動または非対称性に苦しむ可能性があるため、パス遅延は、パス遅延の正確な読み取り値であってもよい。したがって、スレーブクロック114に対する調節された時間は、プローブマスタクロック112-2に近い時間および位相であっても、プローブマスタクロック112-2と同じ時間および位相であってもよい、正確な現在の時間をもたらす場合がある。スレーブクロック114の調節された現在の時間と、プローブマスタクロック112-2の現在の時間との間の差異が閾値を満たす(例えば、閾値以下である)場合、PTPプローブマスタデバイス108は、スレーブクロック114の精度を確認し得る。
【0021】
直接の物理的な接続を必要とすることなく、PTPプローブマスタデバイス108をPTPスレーブデバイス102に接続すると、PTPスレーブデバイス102がスレーブクロック114のインターフェースを含むという要件が緩和され、また、PTPスレーブデバイス102が、そのクロックをリモートPTPスレーブプローブに知らせるために境界クロックとして動作することを必要としない。唯一の要件は、PTPスレーブデバイス102が、補正フィールド内のパス遅延とともに遅延要求メッセージにT3時間を挿入することであり、これは、PTPスレーブデバイス102が、動作中のマスタクロック112-1との通信に基づいて実施する能力を有する。ここで、以下において、プロセスについてより詳細に記載する。
【0022】
PTPスレーブデバイス
図2は、いくつかの実施形態による、PTPスレーブデバイス102のより詳細な実施例を図示する。PTPスレーブデバイス102は、PTP動作中のマスタデバイス104およびPTPプローブマスタデバイス108に接続するための複数のポートを含む。例えば、PTPスレーブデバイス102は、PTP動作中のマスタデバイス104に接続するスレーブポート#1 206-1を含む。また、PTPスレーブデバイス102は、PTPプローブマスタデバイス108に接続するスレーブポート#2 206-2を含む。
【0023】
クロックパフォーマンスマネージャ202は、PTPスレーブデバイス102が動作中のマスタクロック112-1にロックされるかどうか、またはプローブマスタクロック112-2とのロックの品質を試験するかどうかに応じて、ポートを選択し得る。例えば、クロックパフォーマンスマネージャ202は、スレーブポート#1 206-1を使用して、スレーブクロック114を動作中のマスタクロック112-1にロックすることができる。次いで、クロックパフォーマンスマネージャ202は、スレーブポート#2 206-2を使用して、プローブマスタクロック112-2とのスレーブクロック114のロック品質を試験することができる。クロックパフォーマンスマネージャ202は、スレーブポート#2 206-2が、最適なマスタクロックを選択するアルゴリズムで使用されないように、構成され得る。いくつかの方法は、スレーブポート#2 206-2をより低い優先度で構成すること、またはそれが選択されないようにプローブマスタクロック112-2にクロッククラス/品質値を置くことなどであってもよい。むしろ、クロックパフォーマンスマネージャ202は、スレーブポート#2 206-2を使用して、スレーブクロック114のロックの品質を試験し、スレーブクロック114の時間をプローブマスタクロック112-2にロックしない。
【0024】
図3は、いくつかの実施形態による、動作中のマスタクロック112-1にロックするためのPTPスレーブデバイス102上のポート206を構成するプロセスの簡略化されたフローチャート300を図示する。302において、PTPスレーブデバイス102は、2つのPTPスレーブポート206-1および206-2とともに構成される。304において、PTPスレーブデバイス102は、マスタクロックとして選択することができないように、スレーブポート#2 206-2を構成する。
【0025】
306において、クロックパフォーマンスマネージャ202は、スレーブポート#1 206-1を動作中のマスタクロック112-1に接続して、ロックプロセスを実施する。308において、クロックパフォーマンスマネージャ202は、パス#1 110-1のパス遅延を計算する。このパス遅延は、PTPスレーブデバイス102およびPTP動作中のマスタデバイス104からのラウンドトリップ時間をとり、ラウンドトリップ時間を2で割る。パス遅延を決定した後、310において、PTPスレーブデバイス102は、パス#1 110-1のパス遅延を使用して、スレーブクロック114を動作中のマスタクロック112-1にロックする。動作中のマスタクロック112-1にロックされると、スレーブクロック114の時間が、動作中のマスタクロック112-1の時間に基づいて調節され、正しい現在の時間を決定するために、パス遅延などのパス遅延が、動作中のマスタクロック112-1からの時間T4に追加される(例えば、時間T4+パス遅延=現在の時間)。スレーブクロック114は、プローブマスタデバイスが、遅延応答メッセージにおいてプローブマスタデバイスからT4タイムスタンプを受信するときに、遅延要求メッセージから補正フィールドにコピーする、補正フィールドの値を無視することができ、T4時間を補正するために補正フィールドを使用しない。
【0026】
ロック品質の試験
スレーブクロック114を動作中のマスタクロック112-1にロックした後、クロックパフォーマンスマネージャ202は、ロック品質を試験し得る。図4は、いくつかの実施形態による、スレーブクロック114のロック品質を試験するための簡略化されたフローチャート400を図示する。402において、PTPスレーブデバイス102は、スレーブポート#2 206-2を通ってプローブマスタクロック112-2に接続する。404において、PTPスレーブデバイス102は、PTPスレーブデバイス102とPTPプローブマスタデバイス108との間のパス#2におけるパス遅延を計算する。
【0027】
406において、PTPスレーブデバイス102は、スレーブクロック114からのT3時間を遅延要求メッセージ内に追加する。408において、PTPスレーブデバイス102は、パス遅延を含めるように、遅延要求メッセージの補正フィールドを更新する。410において、PTPスレーブデバイス102は、遅延要求メッセージを送信する。
【0028】
PTPプローブマスタデバイス108は、T3時間およびパス遅延を受信し、スレーブクロック114のロック品質を試験することができる。例えば、PTPプローブマスタデバイス108は、T3時間およびパス遅延を使用して、遅延要求を送信するためのパス遅延を考慮に入れるようにスレーブクロック114の時間を調節する。これは、スレーブクロック114の現在の時間をもたらす。次いで、PTPプローブマスタデバイス108は、プローブマスタクロック112-2の現在の時間を、調節されたT3時間(例えば、スレーブクロック114の現在の時間)と比較して、スレーブクロック114の精度を決定する。例えば、調節されたT3時間がプローブマスタクロック112-2の時間と同様である場合、スレーブクロック114のロック品質は高い。しかしながら、調節されたT3時間がプローブマスタクロック112-2の時間に近くない場合、PTPプローブマスタデバイス108は、ロック品質が低いと決定する。PTPプローブマスタデバイス108は、閾値を使用してロック品質を試験することができる。例えば、調節されたT3時間とプローブマスタクロック112-2の時間との間の差異が閾値を上回る場合、PTPプローブマスタデバイス108は、ロック品質が良好ではないと決定し得、差異が閾値を下回る場合、PTPプローブマスタデバイス108は、ロック品質が良好であると決定し得る。
【0029】
PTPプローブマスタデバイス108は、比較の結果を出力し得る。上記プロセスは、スレーブクロック114のロック品質を試験するために、時間の経過とともに複数回実施され得ることに留意されたい。例えば、ロック品質チェックは、1回以上実施され得る。結果は、差異の平均または差異が閾値を上回ったり下回ったりする回数など、比較の要約に基づき得るが、様々な方法が使用され得る。次いで、ロック品質を決定した後、プロセスは、1時間後など、別の間隔の後に実施され得る。
【0030】
図5は、いくつかの実施形態による、PTPプローブマスタデバイス108でのスレーブクロック114の品質を試験するための方法の簡略化されたフローチャート500を図示する。502において、PTPスレーブデバイス102がパス遅延を計算した後、PTPプローブマスタデバイス108は、補正フィールドにおいて、T3時間およびパス遅延とともに遅延要求メッセージを受信する。
【0031】
504において、PTPプローブマスタデバイス108は、補正フィールド内に位置する、T3時間およびパス遅延に基づいて、調節されたスレーブクロック時間を計算する。例えば、PTPプローブマスタデバイス108は、パス遅延をT3時間に追加して、調節されたT3時間を決定し得る。506において、PTPプローブマスタデバイス108は、マスタクロック時間を調節された時間と比較する。
【0032】
508において、PTPプローブマスタデバイス108は、比較の結果を出力し得る。例えば、PTPプローブマスタデバイス108は、比較の結果を閾値と比較して、スレーブクロック114の品質または精度を決定することができる。
【0033】
[実施例1]
以下では、スレーブクロック114のロック品質を試験する実施例を説明する。試験は以下のパラメータを使用し得る。
・D-ds-o→動作中のマスタクロック112-1とスレーブクロック114との間の実際の下流(DS)公称遅延、
・D-us-o→スレーブクロック114と動作中のマスタクロック112-1との間の実際の上流(US)公称遅延、
・Asym-o→動作中のマスタクロック112-1とスレーブクロック114との間の非対称パスの差異、
・D-ds-p→プローブマスタクロック112-2とスレーブクロック114との間の下流遅延、
・D-us-p→スレーブクロック114とプローブマスタクロック112-2との間の上流遅延、
・Asym-o→プローブマスタクロック112-2とスレーブクロック114との間の非対称パスの差異、
・T-m-o→動作中のマスタクロック112-1の時間、
・Tsa-p→PTPプローブマスタデバイス108によって分析されたスレーブクロック114の時間、および
・Ts→動作中のマスタクロック112-1にロックされるスレーブクロック114の時間。
【0034】
スレーブクロック114と動作中のマスタクロック112-1との間のパスの非対称性があると仮定すると、PTPスレーブデバイス102は、以下のように非対称要因を知らなくても、動作中のマスタクロック112-1からパス遅延を計算する。
Ts=Tm-o+(D-ds-o+D-us-o+A-asym-o)/2
【0035】
PTPスレーブデバイス102は、未知の非対称値を含まずに、公称平均パス遅延を計算し、それに応じて、そのスレーブクロック114を調節し、これは、パス非対称値の半分を含む遅延非対称誤差につながる。
Ts=Tm-o+(A-asym-o/2)
【0036】
パス非対称値の半分を含む動作中のマスタクロック112-1と比較して、スレーブクロック114は不正確であることに留意されたい。この誤差は、上流方向と下流方向との2つのパス遅延が非対称であることに起因する。パス遅延の計算は、これらの遅延が対称であると仮定する。
【0037】
ここで、PTPスレーブデバイス102とPTPプローブマスタデバイス108との間に非常に小さなパス非対称があると仮定する。PTPスレーブデバイス102は、PTPプローブマスタデバイス108からのパス遅延を以下のように正確に計算し得る。
Ts=(D-ds-p+D-us-p)/2=D-us-p
【0038】
この実施例では、PTPスレーブデバイス102は、その時間(T3)をPTPプローブマスタデバイス108に送信し、計算されたパス遅延を補正フィールドに埋め込む。PTPプローブマスタデバイス108は、遅延要求(T3、補正フィールド)から以下の情報を受信することができ、これは、D-us-p(実際のパス遅延)を含む(Ts、D-us-p)に対応する。したがって、PTPプローブマスタデバイス108によって分析されたスレーブクロック114の時間は以下のとおりである。
Tsa-p=(Ts-D-us-p)+D-us-p=Tm-o+(A-asym-o/2)
【0039】
プローブは、動作中の非対称値の半分を、スレーブクロック114と動作中のマスタクロック112-1との間で測定されたオフセットとして反映する。
【0040】
したがって、動作中のマスタクロック112-1にロックされるスレーブクロック114のパフォーマンスは、IEEE 1588標準規格メッセージをスレーブクロック114と交換するクロックプローブによって監視され得る。PTPプローブマスタデバイス108は、マスタクロックとして動作し、メッセージ内のタイムスタンプ値を使用して、スレーブクロック114のパフォーマンスを決定する。パス非対称およびパケット遅延変動が最小化されるにつれて、パフォーマンス監視の品質が増加大する。動作中のマスタクロック112-1およびプローブマスタクロック112-2は、GNSSタイミングソースなどの共通のタイミングソースを共有して、スレーブクロック114のパフォーマンスを三角測量する。
【0041】
開示されるように、標準規格IEEE 1588メッセージ内のタイムスタンプを使用して、スレーブクロックのパフォーマンスをリモートで監視することができる。また、PTPプローブマスタデバイス108は、動作中のマスタクロック112-1とスレーブクロック114との間のメッセージ転送データパス内に存在しても、存在しなくてもよい。動作中のマスタクロック112-1およびPTPプローブマスタデバイス108は、リモートで共通のタイミングソースを共有して、スレーブクロックのパフォーマンスを三角測量する。
【0042】
クロックのパフォーマンスを監視するための方法を提供することにより、パケットネットワークにおけるタイミングの分配をトラブルシューティングすることが可能となり得る。5G無線サービスを含む、より多くのパケットベースのサービスが展開されるにつれ、クロックパフォーマンスを監視し、問題を可能な限り迅速に検出することができることは有益であろう。開示される技術は、標準規格メッセージ内のタイムスタンプを使用して、マスタクロックからスレーブクロックまでのデータパスのプローブを用いてスレーブクロックをリモートで監視することにより、パケットスレーブクロックのリモート監視を可能にする。パケットクロックパフォーマンスに対する需要に伴い、監視するニーズは5Gの展開とともに拡大し続けている。
【0043】
例示的な実施形態
【0044】
いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイスの第1のクロックをロックして、第1のデバイスに関連付けられた第2のクロックと同期させた後に方法が実施され、第1のクロックと第2のクロックとの間の差異は、ロック中に決定され、方法は、コンピューティングデバイスによって、第1のクロックの1つ以上の第1のタイムスタンプを含む1つ以上のメッセージを第2のデバイスに送信すること、および第3のクロックの1つ以上の第2のタイムスタンプを含む1つ以上のメッセージを第2のデバイスから受信することに基づいて、第2のデバイスまでのパス遅延を測定することと、コンピューティングデバイスによって、第3のメッセージを、第2のクロックにロックされた第1のクロックの第3のタイムスタンプを含む第2のデバイスに送信することと、を含み、第3のメッセージは、パス遅延を含み、第3のタイムスタンプおよびパス遅延により、第2のデバイスは、第3のクロックの時間に基づいて、第2のクロックに対する第1のクロックのロック品質を分析することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、パス遅延は、第3のメッセージの補正フィールドで第3のメッセージに挿入される。
【0046】
いくつかの実施形態では、第2のデバイスは、パス遅延によって第2のクロックにロックされた第1のクロックの第3のタイムスタンプを調節して、調節された第3のタイムスタンプを生成し、調節された第3のタイムスタンプを第3のクロックの時間と比較する。
【0047】
いくつかの実施形態では、第3のクロックおよび第2のクロックは、同じタイミングソースに接続される。
【0048】
いくつかの実施形態では、第1のクロックは、第2のクロックに第1のクロックをロックするように、第1のクロックと第2のクロックとの間の差異によって調節される。
【0049】
いくつかの実施形態では、第2のデバイスは、第1のデバイスと比較して、コンピューティングデバイスのより近くに位置する。
【0050】
いくつかの実施形態では、第2のデバイスは、第1のデバイスとコンピューティングデバイスとの間のパス間の最後のホップに位置する。
【0051】
いくつかの実施形態では、第2のデバイスは、インターフェースを介して、コンピューティングデバイスに物理的に接続されない。
【0052】
いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイスは、第2のデバイスの第3のクロックに対するマスタクロックとして作用しない。
【0053】
いくつかの実施形態では、第2のデバイスまでのパス遅延を測定することは、コンピューティングデバイスと第2のデバイスとの間のラウンドトリップ遅延を計算することと、ラウンドトリップ遅延を2で割ることと、を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、第2のデバイスは、第2のクロックに対する第1のクロックのロック品質を、パス遅延を第3のタイムスタンプに追加して、調節された第3のタイムスタンプを決定すること、および調節された第3のタイムスタンプを、第3のクロックの時間と比較することによって、分析する。
【0055】
いくつかの実施形態では、第2のデバイスは、第2のクロックに対する第1のクロックのロック品質を、調節された第3のタイムスタンプと第3のクロックの時間との差異を閾値と比較すること、および比較の結果を出力することによって、分析する。
【0056】
いくつかの実施形態では、差異が閾値を上回ると、アラートを出力する。
【0057】
いくつかの実施形態では、非一時的コンピュータ可読記憶媒体が、コンピューティングデバイスの第1のクロックをロックして、第1のデバイスに関連付けられた第2のクロックと同期させた後に実施される命令を含み、第1のクロックと第2のクロックとの間の差異は、ロック中に決定され、命令は、実行されたときに、第1のクロックの1つ以上の第1のタイムスタンプを含む1つ以上のメッセージを第2のデバイスに送信すること、および第3のクロックの1つ以上の第2のタイムスタンプを含む1つ以上のメッセージを第2のデバイスから受信することに基づいて、第2のデバイスまでのパス遅延を測定することと、第3のメッセージを、第2のクロックにロックされた第1のクロックの第3のタイムスタンプを含む第2のデバイスに送信することと、を行うために動作可能であるようにコンピューティングデバイスを制御し、第3のメッセージは、パス遅延を含み、第3のタイムスタンプおよびパス遅延により、第2のデバイスは、第3のクロックの時間に基づいて、第2のクロックに対する第1のクロックのロック品質を分析することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、パス遅延は、第3のメッセージの補正フィールドで第3のメッセージに挿入される。
【0059】
いくつかの実施形態では、第2のデバイスは、パス遅延によって第2のクロックにロックされた第1のクロックの第3のタイムスタンプを調節して、調節された第3のタイムスタンプを生成し、調節された第3のタイムスタンプを第3のクロックの時間と比較する。
【0060】
いくつかの実施形態では、第3のクロックおよび第2のクロックは、同じタイミングソースに接続される。
【0061】
いくつかの実施形態では、第1のクロックは、第2のクロックに第1のクロックをロックするように、第1のクロックと第2のクロックとの間の差異によって調節される。
【0062】
いくつかの実施形態では、第2のデバイスは、第1のデバイスとコンピューティングデバイスとの間のパス間の最後のホップに位置する。
【0063】
いくつかの実施形態では、装置は、1つ以上のコンピュータプロセッサと、装置の第1のクロックをロックして、第1のデバイスに関連付けられた第2のクロックと同期させた後に1つ以上のコンピュータプロセッサを制御するための命令を含むコンピュータ可読記憶媒体と、を備え、第1のクロックと第2のクロックとの間の差異は、ロック中に、第1のクロックの1つ以上の第1のタイムスタンプを含む1つ以上のメッセージを第2のデバイスに送信すること、および第3のクロックの1つ以上の第2のタイムスタンプを含む1つ以上のメッセージを第2のデバイスから受信することに基づいて、第2のデバイスまでのパス遅延を測定することと、第3のメッセージを、第2のクロックにロックされた第1のクロックの第3のタイムスタンプを含む第2のデバイスに送信することと、を行うために動作可能であるように決定され、第3のメッセージは、パス遅延を含み、第3のタイムスタンプおよびパス遅延により、第2のデバイスは、第3のクロックの時間に基づいて、第2のクロックに対する第1のクロックのロック品質を分析することができる。
【0064】
システム
図5は、いくつかの実施形態による、専用コンピュータシステム500の実施例を説明する。コンピュータシステム500は、バス502、ネットワークインターフェース504、コンピュータプロセッサ506、メモリ508、記憶デバイス510、およびディスプレイ512を含む。
【0065】
バス502は、情報を通信するための通信機構であり得る。コンピュータプロセッサ506は、メモリ508または記憶デバイス510に記憶されたコンピュータプログラムを実行し得る。C、C++、Java(登録商標)、アセンブリ言語などを含むいくつかの実施形態のルーチンを実装するために、任意の好適なプログラミング言語が使用され得る。手続き型またはオブジェクト指向型などの、異なるプログラミング技術が採用され得る。ルーチンは、単一のコンピュータシステム500または複数のコンピュータシステム500上で実行し得る。さらに、複数のコンピュータプロセッサ506が使用され得る。
【0066】
メモリ508は、上述した技術を実施するために、ソースコードまたはバイナリコードなどの命令を記憶し得る。メモリ508はまた、プロセッサ506によって実行される命令の実行中に、変数または他の中間情報を記憶するために使用され得る。メモリ508の例としては、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、またはこれらの両方が挙げられる。
【0067】
記憶デバイス510はまた、上述した技術を実施するための、ソースコードまたはバイナリコードなどの命令を記憶し得る。記憶デバイス510は、追加的に、コンピュータプロセッサ506によって使用および操作されるデータを記憶し得る。例えば、記憶デバイス510は、コンピュータシステム500によってアクセスされるデータベースとすることができる。記憶デバイス510の他の例としては、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、ハードドライブ、磁気ディスク、光ディスク、CD-ROM、DVD、フラッシュメモリ、USBメモリカード、またはコンピュータが読み出し得る任意の他の媒体が挙げられる。
【0068】
メモリ508または記憶デバイス510は、コンピュータシステム500によって使用するための、またはそれに関連して使用するための、非一時的コンピュータ可読記憶媒体の一例であり得る。非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、いくつかの実施形態によって説明される機能を実施し得るように構成されるようにコンピュータシステム500を制御するための命令を含む。命令は、1つ以上のコンピュータプロセッサ506によって実行されるとき、いくつかの実施形態で説明されることを実施するように構成され得る。
【0069】
コンピュータシステム500は、コンピュータユーザに情報を表示するためのディスプレイ512を含む。ディスプレイ512は、コンピュータシステム500と対話するためにユーザによって使用されるユーザインターフェースを表示し得る。
【0070】
コンピュータシステム500はまた、ローカルエリアネットワーク(LAN)またはワイドエリアネットワーク(WAN)などのネットワークを介したデータ通信接続を提供するために、ネットワークインターフェース504も含む。無線ネットワークもまた、使用され得る。任意のかかる実装例では、ネットワークインターフェース504は、様々なタイプの情報を表すデジタルデータストリームを運ぶ電気信号、電磁信号、または光信号を送信および受信する。
【0071】
コンピュータシステム500は、イントラネットまたはインターネットであり得るネットワーク514を介してネットワークインターフェース504を通じて情報を送信および受信し得る。コンピュータシステム500は、ネットワーク514を通じて他のコンピュータシステム500と対話し得る。いくつかの実施例では、クライアント-サーバ通信は、ネットワーク514を通じて行われる。また、いくつかの実施形態の実装例は、ネットワーク514を通じてコンピュータシステム500にわたって分配され得る。
【0072】
いくつかの実施形態は、命令実行システム、装置、システム、または機械によって使用するための、またはそれらに関連して使用するための、非一時的コンピュータ可読記憶媒体内に実装され得る。コンピュータ可読ストレージ媒体は、いくつかの実施形態によって説明される方法を実施するようにコンピュータシステムを制御するための命令を含む。コンピュータシステムは、1つ以上のコンピューティングデバイスを含み得る。命令は、1つ以上のコンピュータプロセッサによって実行されたときに、いくつかの実施形態で説明されることを実施するように構成され得る。
【0073】
明細書における説明においてならびにそれに続く特許請求の範囲にわたって使用された場合には、「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に他のことを指示していない限りにおいて、複数の参照を含む。また、明細書における説明においてならびにそれに続く特許請求の範囲にわたって使用された場合には、「in」の意味は、文脈が明確に他のことを指示していない限りにおいて、「in」および「on」を含む。
【0074】
上記の説明は、いくつかの実施形態の態様がどのように実装され得るかの例と共に、様々な実施形態を説明する。上記の例および実施形態は、唯一の実施形態であるとみなされるべきではなく、以下の特許請求の範囲によって定義されるいくつかの実施形態の柔軟性および利点を例示するために提示される。上記の開示および以下の特許請求の範囲に基づいて、特許請求の範囲によって定義される本明細書の範囲から逸脱することなく、他の配置、実施形態、実装、および均等物が採用され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】