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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-01
(54)【発明の名称】がんを処置するための方法及び材料
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20220525BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20220525BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220525BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220525BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220525BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220525BHJP
【FI】
A61K48/00
C12N15/867 Z ZNA
C12N15/12
A61P35/00
A61K31/7088
A61K35/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557370
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(85)【翻訳文提出日】2021-10-26
(86)【国際出願番号】 US2020024976
(87)【国際公開番号】W WO2020198485
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】62/823,702
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】398071440
【氏名又は名称】ザ・ペン・ステイト・リサーチ・ファウンデイション
【氏名又は名称原語表記】The Penn State Research Foundation
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ゴン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シン
(72)【発明者】
【氏名】ペイ,ジーフェイ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA59
4C084MA65
4C084NA14
4C084ZB26
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA59
4C086MA65
4C086NA14
4C086ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087MA52
4C087MA55
4C087MA59
4C087MA65
4C087NA14
4C087ZB26
(57)【要約】
本発明は、がんを有する哺乳動物を処置するための方法及び材料に関する。例えば、がんを有する哺乳動物に存在する1つ以上のがん細胞を非がん性細胞に変換するための方法及び材料を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを有する哺乳動物を処置するための方法であって、前記方法が、1つ以上の転写因子をコードする核酸を、前記哺乳動物内のがん細胞に投与することを含み、前記1つ以上の転写因子が、前記がん細胞によって発現され、前記1つ以上の転写因子が、前記がん細胞を前記哺乳動物内の非がん性細胞に変換し、それにより前記哺乳動物内のがん細胞の数を減少させる、前記方法。
【請求項2】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記がんが神経膠腫である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の転写因子が1つ以上の神経細胞転写因子である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の神経細胞転写因子が、神経原性分化因子1(NeuroD1)ポリペプチド、ニューロゲニン-2(Neurog2)ポリペプチド、及びachaete-scuteホモログ1(Ascl1)ポリペプチドからなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の神経細胞転写因子が、NeuroD1ポリペプチド、Neurog2ポリペプチド、及びAscl1ポリペプチドを含む、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記非がん性細胞が神経細胞である、請求項3から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記神経細胞がFoxG1陽性前脳神経細胞である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記がんが肝臓癌である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記肝臓癌が肝細胞癌である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上の転写因子が肝臓転写因子である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上の肝臓転写因子が、肝細胞核因子4A(HNF4A)ポリペプチド、フォークヘッドボックスタンパク質(Foxa2)ポリペプチド、及びGATA結合タンパク質(GATA4)ポリペプチドからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上の肝臓転写因子が、HNF4Aポリペプチド、Foxa2ポリペプチド、及びGATA4ポリペプチドを含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記非がん性細胞が肝細胞である、請求項9から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記肝細胞が、肝酵素を分泌する肝細胞である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記肝酵素がアルブミンである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上の転写因子をコードする前記核酸が、ウイルスベクターの形態で前記がん細胞に投与される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ウイルスベクターがレトロウイルスベクターである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記1つ以上の転写因子の各々をコードする前記核酸が、プロモーター配列に作用可能に連結している、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記1つ以上の転写因子をコードする前記核酸の前記投与が、前記哺乳動物の腫瘍への直接注射を含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記1つ以上の転写因子をコードする前記核酸の前記投与が、腹腔内、筋肉内、静脈内、髄腔内、脳内、実質内、腫瘍内、鼻腔内、または経口投与を含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、前記投与ステップの前に、前記哺乳動物を、前記がんを有するものと識別することを含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1から23のいずれか一項に記載の方法に従ってがんを処置するための、1つ以上の転写因子をコードする核酸を含む組成物の使用。
【請求項25】
請求項1から23のいずれか一項に記載の方法に従ってがんを処置するための、1つ以上の転写因子をコードする核酸を含む組成物。
【請求項26】
請求項1から23のいずれか一項に記載の方法に従ってがんを処置するための医薬品の製造における、1つ以上の転写因子をコードする核酸の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月26日に出願された米国特許出願第62/823,702号の利益を主張する。先行出願の開示は、本出願の開示の一部とみなされる(及び参照により組み込まれる)。
【0002】
本文書は、がんを有する哺乳動物を処置するための方法及び材料に関する。例えば、本文書は、がんを有する哺乳動物に存在する1つ以上のがん細胞を非がん性細胞に変換するための方法及び材料を提供する。
【背景技術】
【0003】
がんは公衆衛生上の大きな問題である。米国だけで、2019年に170万を超える新規症例が診断された(National Cancer Institute,「Cancer Stat Facts:Cancer of Any Site」、「https」コロン「seer」ドット「cancer」ドット「gov/statfacts/html/all.html」にて)。
【0004】
神経膠芽腫(GBM)は、膠細胞の抑制されない増殖から生じる腫瘍の一種であり、悪性脳腫瘍症例の半分を占め、5年相対生存率は3.6パーセントである(Ostrom et al.,Neuro Oncol.;17:iv1-iv62(2015)、及びPorter et al.,Neuroepidemiology.;36(4):230-239(2011))。化学療法、放射線療法、及び手術などの従来の療法は、GBMでは、活性細胞増殖、侵襲的性質、ならびにゲノム及びエピジェネティック異質性を理由に失敗することが多い(Brennan et al.,Cell.;155(2):462(2013)、及びMcLendon et al.,Nature.;455(7216):1061-1068(2008))。
【0005】
世界的に、肝臓癌(または肝細胞癌腫(HCC))は、がん関連死において3位、発生率において6位である(El-Serag,Gastroenterology.;142:1264-73(2012))。肝臓癌の治療は、典型的には、手術及び切除を含むが、進行期または末期患者の場合、そのような治療は効果がないことが多い。
【発明の概要】
【0006】
本文書は、がんを有する哺乳動物を、哺乳動物内のがん細胞を非がん性細胞に変換することにより処置するための方法及び材料を提供する。例えば、転写因子(例えば、神経細胞転写因子または肝臓転写因子)をコードする1つ以上の核酸を使用して、哺乳動物内で1つ以上のがん細胞を非がん性細胞に変換することができる。
【0007】
多くのがんの特質は、脱分化したがん細胞の存在である。本明細書に記載されるように、転写因子(例えば、神経細胞転写因子または肝臓転写因子)を発現するように設計された核酸を哺乳動物内の細胞に送達することで、哺乳動物内でがん細胞を非がん性細胞(例えば、末端分化非分裂細胞)に変換することができる。本明細書で実証されるように、神経細胞転写因子を発現するように設計された核酸(例えば、神経原性分化因子1(NeuroD1)ポリペプチドを発現するように設計された核酸、ニューロゲニン-2(Neurog2)ポリペプチドを発現するように設計された核酸、またはachaete-scuteホモログ1(Ascl1)ポリペプチドを発現するように設計された核酸)をヒトGBM細胞に送達することで、ヒトGBM細胞を非がん性神経細胞に変換することができる。変換神経細胞は、神経細胞特異的マーカーを発現することができ、機能性シナプスネットワークを有することができ、活性電気生理学的特性を有することができる。変換神経細胞はまた、(例えば、変換前のGBM細胞と比較して)がんの進行に関する下方調節されたシグナル伝達経路を呈し得る。GBM細胞の神経細胞へのインビボ変換により、がん細胞の増殖を減少させることができ、かつ/またはアストログリオーシスの速度を低下させることができる。また本明細書で実証されるように、肝臓転写因子を発現するように設計された核酸(例えば、肝細胞核因子4A(HNF4A)ポリペプチドを発現するように設計された核酸、フォークヘッドボックスタンパク質(Foxa2)ポリペプチドを発現するように設計された核酸、及び/またはGATA結合タンパク質(GATA4)ポリペプチドを発現するように設計された核酸)をヒト肝臓癌細胞に送達することで、ヒト肝臓癌細胞を非がん性肝臓細胞(肝細胞)に変換することができる。変換された肝細胞は、増殖の減少を有することができ、肝臓癌マーカーであるアルファフェトタンパク質(AFP)の発現の減少を有することができ、かつ/または上皮細胞表面分子E-カドヘリンなどの上皮特異的マーカーを発現することができる。
【0008】
本明細書に記載の方法及び材料を使用して、生存哺乳動物内でがん細胞を非がん性細胞に変換する能力を有することで、がんを処置するための有効なアプローチが臨床医及び患者(例えば、がん患者)にもたらされる。例えば、がん細胞の非がん性細胞へのインビボ変換を使用して、従来のがん療法がない状況でがん細胞の増殖を制御することができる。そのような場合、がん患者は、従来のがん療法により生じる一般的な副作用を回避することができる。
【0009】
概して、本文書の一態様は、がんを有する哺乳動物を処置するための方法を特徴とする。本方法は、1つ以上の転写因子をコードする核酸を、哺乳動物内のがん細胞に投与することを含み(またはそれから本質的になるか、もしくはそれからなり)、1つ以上の転写因子は、がん細胞によって発現され、1つ以上の転写因子は、哺乳動物内でがん細胞を非がん性細胞に変換し、それにより哺乳動物内のがん細胞の数を減少させる。哺乳動物はヒトであり得る。がんは神経膠腫であり得る。1つ以上の転写因子は1つ以上の神経細胞転写因子であり得る。1つ以上の神経細胞転写因子は、神経原性分化因子1(NeuroD1)ポリペプチド、ニューロゲニン-2(Neurog2)ポリペプチド、及びachaete-scuteホモログ1(Ascl1)ポリペプチドからなる群より選択され得る。1つ以上の神経細胞転写因子は、NeuroD1ポリペプチド、Neurog2ポリペプチド、及びAscl1ポリペプチドを含み得る。非がん性細胞は神経細胞であり得る。神経細胞はFoxG1陽性前脳神経細胞であり得る。がんは肝臓癌であり得る。肝臓癌は肝細胞癌であり得る。1つ以上の転写因子は肝臓転写因子であり得る。1つ以上の肝臓転写因子は、肝細胞核因子4A(HNF4A)ポリペプチド、フォークヘッドボックスタンパク質(Foxa2)ポリペプチド、及びGATA結合タンパク質(GATA4)ポリペプチドからなる群より選択され得る。1つ以上の肝臓転写因子は、HNF4Aポリペプチド、Foxa2ポリペプチド、及びGATA4ポリペプチドを含み得る。非がん性細胞は肝細胞であり得る。肝細胞は、肝酵素を分泌する肝細胞であり得る。肝酵素はアルブミンであり得る。1つ以上の転写因子をコードする核酸は、ウイルスベクターの形態でがん細胞に投与され得る。ウイルスベクターはレトロウイルスベクターであり得る。ウイルスベクターはレンチウイルスベクターであり得る。1つ以上の転写因子の各々をコードする核酸は、プロモーター配列に作用可能に連結し得る。1つ以上の転写因子をコードする核酸の投与は、哺乳動物の腫瘍への直接注射を含み得る。1つ以上の転写因子をコードする核酸の投与は、腹腔内、筋肉内、静脈内、髄腔内、脳内、実質内、腫瘍内、鼻腔内、または経口投与を含み得る。本方法は、投与ステップの前に、がんを有する哺乳動物を特定することを含み得る。
【0010】
別の態様では、本文書は、1つ以上の転写因子をコードする核酸を哺乳動物内のがん細胞に投与することを含む(またはそれから本質的になるか、もしくはそれからなる)方法に従ってがんを処置するための、1つ以上の転写因子をコードする核酸を含む(またはそれから本質的になるか、もしくはそれからなる)組成物の使用を特徴とし、1つ以上の転写因子は、がん細胞によって発現され、1つ以上の転写因子は、哺乳動物内でがん細胞を非がん性細胞に変換し、それにより哺乳動物内のがん細胞の数を減少させる。哺乳動物はヒトであり得る。がんは神経膠腫であり得る。1つ以上の転写因子は1つ以上の神経細胞転写因子であり得る。1つ以上の神経細胞転写因子は、神経原性分化因子1(NeuroD1)ポリペプチド、ニューロゲニン-2(Neurog2)ポリペプチド、及びachaete-scuteホモログ1(Ascl1)ポリペプチドからなる群より選択され得る。1つ以上の神経細胞転写因子は、NeuroD1ポリペプチド、Neurog2ポリペプチド、及びAscl1ポリペプチドを含み得る。非がん性細胞は神経細胞であり得る。神経細胞はFoxG1陽性前脳神経細胞であり得る。がんは肝臓癌であり得る。肝臓癌は肝細胞癌であり得る。1つ以上の転写因子は肝臓転写因子であり得る。1つ以上の肝臓転写因子は、肝細胞核因子4A(HNF4A)ポリペプチド、フォークヘッドボックスタンパク質(Foxa2)ポリペプチド、及びGATA結合タンパク質(GATA4)ポリペプチドからなる群より選択され得る。1つ以上の肝臓転写因子は、HNF4Aポリペプチド、Foxa2ポリペプチド、及びGATA4ポリペプチドを含み得る。非がん性細胞は肝細胞であり得る。肝細胞は、肝酵素を分泌する肝細胞であり得る。肝酵素はアルブミンであり得る。1つ以上の転写因子をコードする核酸は、ウイルスベクターの形態でがん細胞に投与され得る。ウイルスベクターはレトロウイルスベクターであり得る。ウイルスベクターはレンチウイルスベクターであり得る。1つ以上の転写因子の各々をコードする核酸は、プロモーター配列に作用可能に連結し得る。1つ以上の転写因子をコードする核酸の投与は、哺乳動物の腫瘍への直接注射を含み得る。1つ以上の転写因子をコードする核酸の投与は、腹腔内、筋肉内、静脈内、髄腔内、脳内、実質内、腫瘍内、鼻腔内、または経口投与を含み得る。本方法は、投与ステップの前に、がんを有する哺乳動物を特定することを含み得る。
【0011】
別の態様では、本文書は、1つ以上の転写因子をコードする核酸を哺乳動物内のがん細胞に投与することを含む(またはそれから本質的になるか、もしくはそれからなる)方法に従ってがんを処置するための、1つ以上の転写因子をコードする核酸を含む(またはそれから本質的になるか、もしくはそれからなる)組成物を特徴とし、1つ以上の転写因子は、がん細胞によって発現され、1つ以上の転写因子は、哺乳動物内でがん細胞を非がん性細胞に変換し、それにより哺乳動物内のがん細胞の数を減少させる。哺乳動物はヒトであり得る。がんは神経膠腫であり得る。1つ以上の転写因子は1つ以上の神経細胞転写因子であり得る。1つ以上の神経細胞転写因子は、神経原性分化因子1(NeuroD1)ポリペプチド、ニューロゲニン-2(Neurog2)ポリペプチド、及びachaete-scuteホモログ1(Ascl1)ポリペプチドからなる群より選択され得る。1つ以上の神経細胞転写因子は、NeuroD1ポリペプチド、Neurog2ポリペプチド、及びAscl1ポリペプチドを含み得る。非がん性細胞は神経細胞であり得る。神経細胞はFoxG1陽性前脳神経細胞であり得る。がんは肝臓癌であり得る。肝臓癌は肝細胞癌であり得る。1つ以上の転写因子は肝臓転写因子であり得る。1つ以上の肝臓転写因子は、肝細胞核因子4A(HNF4A)ポリペプチド、フォークヘッドボックスタンパク質(Foxa2)ポリペプチド、及びGATA結合タンパク質(GATA4)ポリペプチドからなる群より選択され得る。1つ以上の肝臓転写因子は、HNF4Aポリペプチド、Foxa2ポリペプチド、及びGATA4ポリペプチドを含み得る。非がん性細胞は肝細胞であり得る。肝細胞は、肝酵素を分泌する肝細胞であり得る。肝酵素はアルブミンであり得る。1つ以上の転写因子をコードする核酸は、ウイルスベクターの形態でがん細胞に投与され得る。ウイルスベクターはレトロウイルスベクターであり得る。ウイルスベクターはレンチウイルスベクターであり得る。1つ以上の転写因子の各々をコードする核酸は、プロモーター配列に作用可能に連結し得る。1つ以上の転写因子をコードする核酸の投与は、哺乳動物の腫瘍への直接注射を含み得る。1つ以上の転写因子をコードする核酸の投与は、腹腔内、筋肉内、静脈内、髄腔内、脳内、実質内、腫瘍内、鼻腔内、または経口投与を含み得る。本方法は、投与ステップの前に、がんを有する哺乳動物を特定することを含み得る。
【0012】
別の態様では、本文書は、1つ以上の転写因子をコードする核酸を哺乳動物内のがん細胞に投与することを含む(またはそれから本質的になるか、もしくはそれからなる)方法に従ってがんを処置するための医薬品の製造における1つ以上の転写因子をコードする核酸の使用を特徴とし、1つ以上の転写因子は、がん細胞によって発現され、1つ以上の転写因子は、哺乳動物内でがん細胞を非がん性細胞に変換し、それにより哺乳動物内のがん細胞の数を減少させる。哺乳動物はヒトであり得る。がんは神経膠腫であり得る。1つ以上の転写因子は1つ以上の神経細胞転写因子であり得る。1つ以上の神経細胞転写因子は、神経原性分化因子1(NeuroD1)ポリペプチド、ニューロゲニン-2(Neurog2)ポリペプチド、及びachaete-scuteホモログ1(Ascl1)ポリペプチドからなる群より選択され得る。1つ以上の神経細胞転写因子は、NeuroD1ポリペプチド、Neurog2ポリペプチド、及びAscl1ポリペプチドを含み得る。非がん性細胞は神経細胞であり得る。神経細胞はFoxG1陽性前脳神経細胞であり得る。がんは肝臓癌であり得る。肝臓癌は肝細胞癌であり得る。1つ以上の転写因子は肝臓転写因子であり得る。1つ以上の肝臓転写因子は、肝細胞核因子4A(HNF4A)ポリペプチド、フォークヘッドボックスタンパク質(Foxa2)ポリペプチド、及びGATA結合タンパク質(GATA4)ポリペプチドからなる群より選択され得る。1つ以上の肝臓転写因子は、HNF4Aポリペプチド、Foxa2ポリペプチド、及びGATA4ポリペプチドを含み得る。非がん性細胞は肝細胞であり得る。肝細胞は、肝酵素を分泌する肝細胞であり得る。肝酵素はアルブミンであり得る。1つ以上の転写因子をコードする核酸は、ウイルスベクターの形態でがん細胞に投与され得る。ウイルスベクターはレトロウイルスベクターであり得る。ウイルスベクターはレンチウイルスベクターであり得る。1つ以上の転写因子の各々をコードする核酸は、プロモーター配列に作用可能に連結し得る。1つ以上の転写因子をコードする核酸の投与は、哺乳動物の腫瘍への直接注射を含み得る。1つ以上の転写因子をコードする核酸の投与は、腹腔内、筋肉内、静脈内、髄腔内、脳内、実質内、腫瘍内、鼻腔内、または経口投与を含み得る。本方法は、投与ステップの前に、がんを有する哺乳動物を特定することを含み得る。
【0013】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、様々な技術固有の辞書に例示されるように、本発明が関連する技術分野の当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等の方法及び材料を使用して本発明を実施することはできるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が支配する。加えて、材料、方法、及び例は、例示でしかなく、制限することを意図するものではない。
【0014】
本発明の1つ以上の態様の詳細は、添付の図面及び以下の説明に示される。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ヒト膠芽腫細胞株の特性評価である。U251及びU118ヒト膠芽腫細胞を特性評価するための一連のマーカー(赤色で染色)の代表的な画像である。赤いボックス(*でマーク)は、高レベルの免疫陽性マーカーを示す。スケールバーは50μmである。GFAP及びS100βは星状膠細胞マーカー、Tuj1及びDCXは未成熟神経細胞マーカー、Sox2及びネスチンは神経前駆細胞マーカー、Olig2は乏突起膠細胞マーカー、Ki67は細胞増殖マーカー、EGFRはがんマーカーである。
図2】ヒト膠芽腫細胞における神経転写因子Neurog2、NeuroD1、またはAscl1の過剰発現の確認である。Aは、免疫染色をとおしたU251ヒト膠芽腫細胞におけるNeurog2、NeuroD1、またはAscl1の過剰発現を示す代表的な画像である。スケールバーは20μmである。Bは、U251 GBM細胞における異なる神経転写因子の転写変化を示すリアルタイムqPCR分析の階層的クラスタリング及びヒートマップである。Neurog2、NeuroD1、またはAscl1によるウイルス感染後のU251 GBM細胞におけるmRNAレベルの大幅な増加に留意されたい。データを、GFP対照ウイルス感染U251細胞に対して正規化し、平均値として表した。感染後(dpi)20日目に試料を収集した。n=3バッチの培養物。
図3】Neurog2及びNeuroD1による、ヒト膠芽腫細胞からの神経細胞様細胞の迅速な誘導である。Aは、Neurog2-GFP、NeuroD1-GFP、またはAscl1-GFPレトロウイルスに感染させたU251ヒトGBM細胞における未成熟神経細胞マーカーであるダブルコルチン(DCX、赤色)及びβ3-チューブリン(Tuj1、赤紫色)の6dpiでの免疫染色である。スケールバーは50μmである。B~Cは、6dpiでの神経細胞変換の定量分析である。Neurog2は、DCX細胞(GFP、0;Neurog2、12.6%±2.0%;NeuroD1、1.6%±0.4%;Ascl1、0;B)、及びTuj1細胞(GFP、0;Neurog2、46.1%±3.2%;NeuroD1、20.5%±4.9%;Ascl1、2.6%±0.7%;C)、続いてウイルス感染の初期段階でのNeuroD1の割合の有意な増加を示したことに留意されたい。Ascl1変換効率は、試験した3つの神経転写因子の中で最も低い。データは、平均±SEMとして表し、一元配置分散分析、続いてダネット検定により分析した。**はp<0.01であり、***はp<0.001であり、nは三連培養からの200個超の細胞である。
図4A】単一の神経細胞転写因子Neurog2、NeuroD1、またはAscl1は、ヒト膠芽腫細胞を神経細胞に変換する。A~Bでは、U251ヒト膠芽腫細胞におけるNeurog2-GFP、NeuroD1-GFP、またはAscl1-GFPのレトロウイルス発現が、GFPのみ(上段)と比較して、多数の神経細胞をもたらした。Neurog2、NeuroD1、またはAscl1変換細胞は、感染後(dpi)20日目に未成熟神経細胞マーカー(A、DCX、Tuj1)に対して、及び30dpiに成熟神経細胞マーカー(B、MAP2、NeuN)に対して免疫陽性であった。スケールバーは50μmである。
図4B】単一の神経細胞転写因子Neurog2、NeuroD1、またはAscl1は、ヒト膠芽腫細胞を神経細胞に変換する。A~Bでは、U251ヒト膠芽腫細胞におけるNeurog2-GFP、NeuroD1-GFP、またはAscl1-GFPのレトロウイルス発現が、GFPのみ(上段)と比較して、多数の神経細胞をもたらした。Neurog2、NeuroD1、またはAscl1変換細胞は、感染後(dpi)20日目に未成熟神経細胞マーカー(A、DCX、Tuj1)に対して、及び30dpiに成熟神経細胞マーカー(B、MAP2、NeuN)に対して免疫陽性であった。スケールバーは50μmである。
図4C】単一の神経細胞転写因子Neurog2、NeuroD1、またはAscl1は、ヒト膠芽腫細胞を神経細胞に変換する。C~Dは、20dpi(C)及び30dpi(D)での変換効率の定量分析である。**はp<0.01であり、***はp<0.001であり、一元配置分散分析の後でダネット検定、nは三連培養からの200個以上の細胞である。
図4D】単一の神経細胞転写因子Neurog2、NeuroD1、またはAscl1は、ヒト膠芽腫細胞を神経細胞に変換する。C~Dは、20dpi(C)及び30dpi(D)での変換効率の定量分析である。**はp<0.01であり、***はp<0.001であり、一元配置分散分析の後でダネット検定、nは三連培養からの200個以上の細胞である。
図4E】単一の神経細胞転写因子Neurog2、NeuroD1、またはAscl1は、ヒト膠芽腫細胞を神経細胞に変換する。Eは、リアルタイムqPCRによって明らかになった、U251細胞中のNeurog2、NeuroD1、またはAscl1の過剰発現によるDCX転写活性化の時間経過である。データを、GFP対照に対して正規化し、平均±SEMとして表した。n=3バッチ。
図5】Neurog2過剰発現と小分子処理との組み合わせによる、U118ヒト膠芽腫細胞中の神経細胞様細胞の誘導である。A~Dでは、U118細胞は、小分子処理と一緒にNeurog2が過剰発現されるときに神経細胞様細胞(青緑色で染色したDCX)に変換された(コア:5μMのDAPT、1.5μMのCHIR99021、5μMのSB431542、0.25μMのLDN193189)。12日間の薬物治療で18dpiに試料を収集した。
図6A】ヒトGBM細胞からの変換神経細胞の特性評価である。A~Dは、神経細胞サブタイプマーカーの免疫染色を示す代表的な画像である。ほとんどのNeurog2、NeuroD1、及びAscl1変換神経細胞(AのDCX、及びBのMAP2)は、海馬神経細胞マーカーであるProx1(A)及び前脳神経細胞マーカーFoxG1(B)に対して免疫陽性であった。さらに、Neurog2、NeuroD1、及びAscl1変換神経細胞(CのDCX)は、主にVGluT1+(C)であったが、Ascl1変換神経細胞(DのDCX)の一部もGABA+(D)であった。
図6B】ヒトGBM細胞からの変換神経細胞の特性評価である。A~Dは、神経細胞サブタイプマーカーの免疫染色を示す代表的な画像である。ほとんどのNeurog2、NeuroD1、及びAscl1変換神経細胞(AのDCX、及びBのMAP2)は、海馬神経細胞マーカーであるProx1(A)及び前脳神経細胞マーカーFoxG1(B)に対して免疫陽性であった。さらに、Neurog2、NeuroD1、及びAscl1変換神経細胞(CのDCX)は、主にVGluT1+(C)であったが、Ascl1変換神経細胞(DのDCX)の一部もGABA+(D)であった。
図6C】ヒトGBM細胞からの変換神経細胞の特性評価である。A~Dは、神経細胞サブタイプマーカーの免疫染色を示す代表的な画像である。ほとんどのNeurog2、NeuroD1、及びAscl1変換神経細胞(AのDCX、及びBのMAP2)は、海馬神経細胞マーカーであるProx1(A)及び前脳神経細胞マーカーFoxG1(B)に対して免疫陽性であった。さらに、Neurog2、NeuroD1、及びAscl1変換神経細胞(CのDCX)は、主にVGluT1+(C)であったが、Ascl1変換神経細胞(DのDCX)の一部もGABA+(D)であった。
図6D】ヒトGBM細胞からの変換神経細胞の特性評価である。A~Dは、神経細胞サブタイプマーカーの免疫染色を示す代表的な画像である。ほとんどのNeurog2、NeuroD1、及びAscl1変換神経細胞(AのDCX、及びBのMAP2)は、海馬神経細胞マーカーであるProx1(A)及び前脳神経細胞マーカーFoxG1(B)に対して免疫陽性であった。さらに、Neurog2、NeuroD1、及びAscl1変換神経細胞(CのDCX)は、主にVGluT1+(C)であったが、Ascl1変換神経細胞(DのDCX)の一部もGABA+(D)であった。
図6E】ヒトGBM細胞からの変換神経細胞の特性評価である。E~Hは、ヒトGBM細胞からの変換神経細胞の定量分析である。試料は20dpiのものであった。スケールバーは50μmである。データを平均±SEMとして表す。nは三連培養からの200個以上の細胞である。
図6F】ヒトGBM細胞からの変換神経細胞の特性評価である。E~Hは、ヒトGBM細胞からの変換神経細胞の定量分析である。試料は20dpiのものであった。スケールバーは50μmである。データを平均±SEMとして表す。nは三連培養からの200個以上の細胞である。
図6G】ヒトGBM細胞からの変換神経細胞の特性評価である。E~Hは、ヒトGBM細胞からの変換神経細胞の定量分析である。試料は20dpiのものであった。スケールバーは50μmである。データを平均±SEMとして表す。nは三連培養からの200個以上の細胞である。
図6H】ヒトGBM細胞からの変換神経細胞の特性評価である。E~Hは、ヒトGBM細胞からの変換神経細胞の定量分析である。試料は20dpiのものであった。スケールバーは50μmである。データを平均±SEMとして表す。nは三連培養からの200個以上の細胞である。
図7】ヒトGBM細胞変換神経細胞間の神経細胞同一性のさらなる特性評価である。A~Bは、20dpiでの、U251ヒト膠芽腫細胞間のNeurog2、NeuroD1、またはAscl1によるウイルス感染後の皮質神経細胞マーカーであるCtip2(A)またはTbr1(B)の免疫染色シグナルを示す代表的な画像である。スケールバーは50μmである。
図8】Neurog2、NeuroD1、またはAscl1による感染後のヒト星状膠細胞変換神経細胞との比較である。Aは、Neurog2、NeuroD1、またはAscl1によって誘導されたヒト星状膠細胞変換神経細胞の大部分が、海馬神経細胞マーカーであるProx1及び前脳マーカーであるFoxG1について免疫陽性であったことを示す。はるかに少ないAscl1変換神経細胞がCtip2+であった。スケールバーは20μmである。Bは、ヒト皮質星状膠細胞(HA1800細胞、ScienCell,San Diego,USA)製のNeurog2、NeuroD1、及びAscl1変換神経細胞の定量分析である。Prox1/MAP2:Neurog2、85.4%±3.4%;NeuroD1、89.2%±3.3%;Ascl1、85.0%±3.7%.FoxG1/MAP2:Neurog2、92.6%±3.8%;NeuroD1、85.1%±2.7%;Ascl1、85.7%±4.8%.Ctip2/MAP2:Neurog2、46.6%±5.1%;NeuroD1、61.1%±2.8%;Ascl1、14.0%±5.4%.試料は30dpiのものであった。データを平均±SEMとして表す。nは三連培養からの50個超の細胞である。
図9A】Neurog2の過剰発現によって誘導される膠芽腫細胞から神経細胞への運命の変化である。Aは、GFPのみを発現する対照U251膠芽腫細胞(上段)と比較した、Neurog2変換神経細胞(下段)における星状膠細胞マーカーであるビメンチン及びGFAPの下方調節である。試料は20dpiのものであった。
図9B】Neurog2の過剰発現によって誘導される膠芽腫細胞から神経細胞への運命の変化である。B~Cは、GFP単独(上段)またはNeurog2-GFP(下段)を過剰発現するU251 GBM細胞間のギャップ接合部(コネキシン43)を示す代表的な画像である。定量データ(C)は、対照GFP群と比較して、Neurog2群中でコネキシン43の強度が有意に低下したことを示す。試料は20dpiのものであった。nは三連培養からの60個以上である。
図9C】Neurog2の過剰発現によって誘導される膠芽腫細胞から神経細胞への運命の変化である。B~Cは、GFP単独(上段)またはNeurog2-GFP(下段)を過剰発現するU251 GBM細胞間のギャップ接合部(コネキシン43)を示す代表的な画像である。定量データ(C)は、対照GFP群と比較して、Neurog2群中でコネキシン43の強度が有意に低下したことを示す。試料は20dpiのものであった。nは三連培養からの60個以上である。
図9D】Neurog2の過剰発現によって誘導される膠芽腫細胞から神経細胞への運命の変化である。Dは、6dpiでのNeurog2を過剰発現するU251細胞中のGAP43及びファロイジンによって示される成長円錐を図示する代表的な画像である。
図9E】Neurog2の過剰発現によって誘導される膠芽腫細胞から神経細胞への運命の変化である。E~Hは、U251細胞の神経細胞変換中のミトコンドリア(MitoTracker)及びゴルジ装置(GM130)の分布及び形態変化である。定量データは、30dpiでのNeurog2発現後のMitoTracker強度(F)及びGM130被覆面積により反映されるゴルジ装置サイズ(H)の変化を示す。nは三連培養からの150個以上である。スケールバーは、(A)、(B)、及び(D)で20μm、(E)及び(G)で10μmである。データは、平均±SEMとして表し、スチューデントt検定により分析する。*はp<0.05、***はp<0.001である。
図9F】Neurog2の過剰発現によって誘導される膠芽腫細胞から神経細胞への運命の変化である。E~Hは、U251細胞の神経細胞変換中のミトコンドリア(MitoTracker)及びゴルジ装置(GM130)の分布及び形態変化である。定量データは、30dpiでのNeurog2発現後のMitoTracker強度(F)及びGM130被覆面積により反映されるゴルジ装置サイズ(H)の変化を示す。nは三連培養からの150個以上である。スケールバーは、(A)、(B)、及び(D)で20μm、(E)及び(G)で10μmである。データは、平均±SEMとして表し、スチューデントt検定により分析する。*はp<0.05、***はp<0.001である。
図9G】Neurog2の過剰発現によって誘導される膠芽腫細胞から神経細胞への運命の変化である。E~Hは、U251細胞の神経細胞変換中のミトコンドリア(MitoTracker)及びゴルジ装置(GM130)の分布及び形態変化である。定量データは、30dpiでのNeurog2発現後のMitoTracker強度(F)及びGM130被覆面積により反映されるゴルジ装置サイズ(H)の変化を示す。nは三連培養からの150個以上である。スケールバーは、(A)、(B)、及び(D)で20μm、(E)及び(G)で10μmである。データは、平均±SEMとして表し、スチューデントt検定により分析する。*はp<0.05、***はp<0.001である。
図9H】Neurog2の過剰発現によって誘導される膠芽腫細胞から神経細胞への運命の変化である。E~Hは、U251細胞の神経細胞変換中のミトコンドリア(MitoTracker)及びゴルジ装置(GM130)の分布及び形態変化である。定量データは、30dpiでのNeurog2発現後のMitoTracker強度(F)及びGM130被覆面積により反映されるゴルジ装置サイズ(H)の変化を示す。nは三連培養からの150個以上である。スケールバーは、(A)、(B)、及び(D)で20μm、(E)及び(G)で10μmである。データは、平均±SEMとして表し、スチューデントt検定により分析する。*はp<0.05、***はp<0.001である。
図10A】ヒト膠芽腫細胞の神経細胞変換により増殖が阻害される。Aは、GFP、Neurog2-GFP、NeuroD1-GFP、またはAscl1-GFPを発現するU251ヒト膠芽腫細胞におけるBrdU免疫染色をとおして細胞増殖を調べる代表的な画像である。細胞培養物を10mMのBrdU中で24時間インキュベートした後、7dpiで免疫染色した。スケールバーは50μmである。
図10B】ヒト膠芽腫細胞の神経細胞変換により増殖が阻害される。Bは、U251細胞の神経細胞変換中の増殖細胞(BrdU+細胞/全感染細胞)の定量分析である。データは、一元配置分散分析、続いてダネット検定により分析した。***はp<0.001であり、nは三連培養からの200個以上の細胞である。
図10C】ヒト膠芽腫細胞の神経細胞変換により増殖が阻害される。C~Dは、GFPのみまたはNeurog2-GFPを過剰発現するU251 GBM細胞におけるウエスタンブロットによって調べたGSK3β発現レベルである。データを、GFP対照(D)に対して正規化した。試料を20dpiで収集した。nは3バッチである。
図10D】ヒト膠芽腫細胞の神経細胞変換により増殖が阻害される。C~Dは、GFPのみまたはNeurog2-GFPを過剰発現するU251 GBM細胞におけるウエスタンブロットによって調べたGSK3β発現レベルである。データを、GFP対照(D)に対して正規化した。試料を20dpiで収集した。nは3バッチである。
図10E】ヒト膠芽腫細胞の神経細胞変換により増殖が阻害される。Eは、20dpiでのGFPまたはNeurog2-GFP過剰発現(GFP)時のU251 GBM細胞におけるGSK3β免疫染色である。Neurog2変換神経細胞におけるGSK3βシグナルの有意な増加に留意されたい。スケールバーは50μmである。
図10F】ヒト膠芽腫細胞の神経細胞変換により増殖が阻害される。Fは、U251細胞の神経細胞変換中のGSK3β免疫染色強度の定量分析である。試料を20dpiで収集した。データは、スチューデントt検定により分析した。***はp<0.001であり、nは6バッチである。データを平均±SEMとして表す。
図11】ヒトGBM細胞の神経細胞変換中の自食作用/リソソームの検査。Aは、U251細胞の神経細胞変換中の自食作用/リソソーム(ATG5、赤色で染色)の分布及び形態変化を図示する代表的な画像である。B~Cは、30dpiでの感染U251細胞におけるATG5領域(B)及び強度(C)の定量データである。nは三連培養からの150個以上の細胞である。スケールバーは10μmである。データは、平均±SEMとして表し、スチューデントt検定により分析する。*はp<0.05、***はp<0.001である。
図12】ヒト膠芽腫細胞変換神経細胞の機能分析。Aでは、U251ヒト膠芽腫細胞由来のNeurog2変換神経細胞において、樹状突起(MAP2、青緑色)に沿って堅牢なシナプス点(SV2)が検出された。スケールバーは20μmである。B~Cは、Neurog2変換神経細胞から記録されたNa+及びK+電流を示す代表的なトレース図(B)であり、定量分析は(C)に示す。D~Eでは、全細胞パッチクランプ記録により、Neurog2変換神経細胞(D)から発射される活動電位を明らかにし、円グラフは、単一(暗灰色、E)、反復性(明灰色、E)、または活動電位なし(黒色、E)を発射する細胞の割合を示す。試料は30dpiのものであった。nは三連培養からの20個以上である。
図13】GSK3βの阻害により、ヒトGBM細胞の神経細胞変換が受ける影響である。Aは、20dpiでのU251ヒトGBM細胞由来のNeurog2変換神経細胞(DCX、赤色で染色)中のGSK3β(赤紫色で染色)の免疫染色である。スケールバーは50μmである。B~C、GSK3βをCHIR99021(5μM)またはTWS119(10μM)により20日間阻害した後のGSK3β強度(B)及び神経細胞変換効率(C)の定量分析である。データは、平均±SEMとして表し、スチューデントt検定により分析する。nは3以上の反復である。
図14】ヒト膠芽腫細胞由来のNeurog2変換神経細胞におけるがんメーカーの調査。A~Bは、20dpiでのU251ヒト膠芽腫細胞由来のNeurog2変換神経細胞中のIL13Ra2(赤色で染色、A)の免疫染色である。パネル(B)で定量化する。スケールバーは50μmである。C~Dは、U251細胞の神経細胞変換中のEGFR(赤色で染色、C)の免疫染色である。試料を20dpiで収集した。スケールバーは20μmである。データは、平均±SEMとして表し、スチューデントt検定により分析した。nは三連培養からの40個以上の細胞である。
図15】異種移植マウスモデルにおけるヒト膠芽腫細胞のインビボ神経細胞変換である。A、移植から1か月後のRag1-/-免疫不全マウスの脳内に移植されたヒトU251 GBM細胞(Neurog2-GFPレトロウイルスと混合)を図示する代表的な画像である。U251細胞は高レベルのビメンチンを発現し、Neurog2-GFP感染U251細胞は、未成熟神経細胞マーカーであるDCXについて免疫陽性であったことに留意されたい。Bは、移植から1か月後の変換効率の定量分析である。データは、平均±SEMとして表し、スチューデントt検定により分析する。***はp<0.001であり、nは3動物である。インビボ変換効率も非常に高かった(約90%)ことに留意されたい。Cは、Neurog2-GFP(下段)レトロウイルスに感染した移植U251細胞(ビメンチン)の大部分が、移植から1週間後に神経細胞(DCX)に変換されたことを示す、高倍率画像である。D~Eは、U251ヒト膠芽腫細胞(ビメンチン及びヒト核と表示)の移植から1か月後の神経細胞マーカーであるTuj1及び海馬神経細胞マーカーであるProx1によって示されるインビボでのNeurog2変換神経細胞のさらなる特性評価である。スケールバーは、(A)で200μm、(C)~(E)で20μmである。
図16】膠芽腫細胞のインビボでの神経細胞変換後の細胞増殖の阻害及びアストログリオーシスの減少である。A~Bは、移植から7日後の増殖するU251 GBM細胞(Ki67+)の代表的な画像(A)及び定量分析(B)である。Neurog2群における細胞増殖の有意な減少に留意されたい。nは4動物である。C~Dは、対側GFP感染領域(C)と比較した、Neurog2感染領域(D)における反応性星状膠細胞(LCN2と表示)の減少である。試料は移植から3週間後のものであった。Eは、U251細胞移植から3週間後のLCN2被覆面積(Neurog2-GFPまたはGFPレトロウイルスに感染)の定量分析である。nは5動物である。スケールバーは50μmである。データは、平均±SEMとして表し、スチューデントt検定により分析する。**はp<0.01、***はp<0.001である。
図17】膠芽腫細胞のインビボの神経細胞変換中の常在ミクログリア及び血管分布である。A~Bは、Neurog2またはGFP対照ウイルス感染によるU251 GBM細胞移植から3週間後の常在ミクログリア(Iba1、赤色)の検査である。パネル(B)におけるIba1の平均強度の定量分析。nは3動物である。スケールバーは100μmである。C~Dは、Neurog2またはGFP対照ウイルス感染によるU251 GBM細胞移植から3週間後の血管分布(Ly6c、赤色で染色)を示す代表的な画像である。パネル(C)におけるLy6c被覆面積の定量分析。データは、平均±SEMとして表し、スチューデントt検定により分析する。nは5動物である。スケールバーは100μmである。
図18】肝臓転写因子であるFoxa2、HNF4A、及びGATA4による肝臓腫瘍細胞株HepG2の形質導入である。Aでは、ガラスカバースリップ上で増殖させた形質導入細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、ニワトリ抗GFP及びヤギ抗Foxa2またはニワトリ抗GFP及びヤギ抗HNF4Aまたはニワトリ抗GFP及びヤギ抗GATA4抗体の混合物と結合させた。検出には、二次抗体であるニワトリ特異的Alexa Fluor488及びヤギ特異的Alexa Fluor594を使用した。Zeiss LSM800共焦点顕微鏡により蛍光を可視化した。Bでは、12ウェルプレートで増殖させた形質導入細胞を採取し、細胞溶解物をSDS-PAGE用に処理し、マウスモノクローナル抗GFP抗体を用いてウエスタンブロットにより分析した。C、D、Eでは、細胞溶解物をSDS-PAGEにより分画し、それぞれ、ヤギポリクローナル抗Foxa2、ヤギポリクローナル抗HNF4A、またはヤギポリクローナル抗GATA4抗体を用いて免疫ブロット用に処理した。
図19】GATA4の形質導入により、内因性Foxa2発現レベルが増加する。Aでは、Foxa2、HNF4A、GATA4、またはGFP形質導入HepG2細胞を採取し、細胞溶解物をSDS-PAGEにより分画し、ヤギポリクローナル抗Foxa2抗体とマウスモノクローナル抗HNF4A抗体との混合物を用いて免疫ブロットにより分析した。ウサギGAPDHポリクローナル抗体を、内部負荷対照として使用した。Bでは、上記の細胞溶解物をSDS-PAGEにより分画し、ヤギポリクローナル抗GATA4抗体とウサギポリクローナル抗GAPDH抗体との混合物を用いて免疫ブロットにより分析した。
図20】Foxa2、GATA4、HNF4A、またはGFP形質導入細胞株のインビトロ及びインビボでの細胞増殖である。Aは、Foxa2、GATA4、HNF4A、またはGFP形質導入細胞株のインビトロでの増殖曲線である。等量のFoxa2、GATA4、HNF4A、またはGFP形質導入細胞を12ウェルプレートに播種した。異なる時点で、細胞を固定し、クリスタルバイオレットで染色した。染色したクリスタルバイオレットを酢酸により抽出し、各抽出物の光学密度をマイクロプレートリーダーで読み取った。光学密度の体積は、各ウェル中で増殖させた細胞数を表す。各値は、3つの個別の実験を表す。Bは、Foxa2、GATA4、HNF4A、またはGFP形質導入細胞株の腫瘍増殖曲線である。Foxa2、GATA4、HNF4A、またはGFP形質導入細胞株を、ヌードマウスの脇腹に皮下注射した。腫瘍を、キャリパーを使用して腫瘍サイズを測定することにより4日ごとにモニタリングした。腫瘍体積を、次式:V=幅×長さ×長さ×0.5により計算した。
図21】Foxa2、GATA4、HNF4A、またはGFP形質導入細胞からのアルブミンの発現及び分泌である。Aは、ガラスカバースリップ上で増殖させた形質導入細胞を、ニワトリ抗GFPとヤギ抗アルブミン抗体との混合物と結合させた。検出には、二次抗体であるニワトリ特異的Alexa Fluor488及びヤギ特異的Alexa Fluor594を使用した。図18Aについて記載したように、Zeiss LSM800共焦点顕微鏡により蛍光を可視化した。Bでは、Foxa2、GATA4、HNF4A、またはGFP形質導入細胞で発現されたアルブミンを、ヤギポリクローナル抗アルブミン抗体を用いてウエスタンブロットにより検出した。ウサギポリクローナル抗GAPDH抗体を使用して、内部負荷対照を示した。Cでは、相対アルブミン産生を、GFP形質導入細胞で得られたアルブミンの量に対して正規化した、Foxa2、GATA4、またはHNF4A形質導入細胞で検出されたアルブミンの量として計算した。結果は、3つの独立した実験に由来した。Dは、Foxa2、GATA4、HNF4A、またはGFP形質導入細胞の培養培地に分泌されたアルブミン濃度である。Foxa2、GATA4、HNF4A、またはGFP形質導入細胞で産生されたアルブミンを、培養培地に分泌させた。培養培地中のアルブミンの濃度を、ELISAにより、ELISAキットの説明書に従って測定した。アルブミン濃度を、キットで提供される標準曲線と比較して得た。
図22A】Foxa2、GATA4、HNF4A、またはGFP形質導入細胞中の肝臓癌マーカーアルファフェトプロテイン(AFP)発現である。Aでは、Foxa2、GATA4、HNF4A、またはGFP形質導入細胞を、カバースリップ上で増殖させ、固定し、ニワトリ抗GFPとウサギ抗AFPとの混合物で染色した。検出には、ニワトリ特異的Alexa Fluor488とウサギ特異的Alexa Fluor594との二次抗体混合物を使用した。図18Aについて記載したように、Zeiss LSM800共焦点顕微鏡により蛍光を可視化した。
図22B】Foxa2、GATA4、HNF4A、またはGFP形質導入細胞中の肝臓癌マーカーアルファフェトプロテイン(AFP)発現である。Bでは、Foxa2、GATA4、HNF4A、またはGFP形質導入細胞を、SDS-PAGEにより溶解させて分画し、免疫ブロット分析のためにウサギポリクローナル抗AFPでプローブした。ウサギGAPDHポリクローナル抗体を、内部負荷対照として使用した。相対AFPレベルを、GFP形質導入細胞で得られたAFPの量に対して正規化した、Foxa2、GATA4、またはHNF4A形質導入細胞で検出されたAFPの量として計算した。結果は、3つの独立した実験に由来した。
図22C】Foxa2、GATA4、HNF4A、またはGFP形質導入細胞中の肝臓癌マーカーアルファフェトプロテイン(AFP)発現である。Cは、GFP、HNF4A、またはGATA4形質導入細胞によって形成された腫瘍におけるAFPレベルである。腫瘍切片を、Triton X-100で透過処理し、続いて、一次抗体であるニワトリ抗GFP及びウサギ抗AFPとともにインキュベーションした。検出には、ニワトリ特異的Alexa Fluor488とウサギ特異的Alexa Fluor594との二次抗体混合物を使用した。Zeiss LSM800共焦点顕微鏡により蛍光を可視化した。
図22D】Foxa2、GATA4、HNF4A、またはGFP形質導入細胞中の肝臓癌マーカーアルファフェトプロテイン(AFP)発現である。Dでは、GATA4、HNF4A、またはGFP細胞株の異種移植腫瘍を新たに収集し、溶解させた。溶解物をSDS-PAGEゲルにより分離させ、AFP、GATA4、及びGFP抗体でプローブした。アクチンを内部負荷対照として示した。相対AFPレベルを、パネルBについて記載したように、GFP形質導入細胞で得られたAFPの量に対して正規化した、GATA4またはHNF4A形質導入細胞で検出されたAFPの量として計算した。結果は3つの独立した実験に由来した。
図23A】GATA4、Foxa2、またはHNF4Aの過剰発現は、膜性E-カドヘリンの増加をもたらす。Aでは、Foxa2、GATA4、HNF4A、またはGFP形質導入細胞を、ニワトリ抗GFPとウサギ抗E-カドヘリンとの混合物で染色した。検出には、ニワトリ特異的Alexa Fluor488とウサギ特異的Alexa Fluor594との二次抗体混合物を使用した。図18Aについて記載したように、Zeiss LSM800共焦点顕微鏡により蛍光を可視化した。
図23B】GATA4、Foxa2、またはHNF4Aの過剰発現は、膜性E-カドヘリンの増加をもたらす。Bでは、溶解させたFoxa2、GATA4、HNF4A、またはGFP形質導入細胞を、SDS-PAGEにより分画し、ウエスタンブロット分析のためにウサギポリクローナル抗E-カドヘリンでプローブした。ウサギGAPDHポリクローナル抗体を、内部負荷対照として使用した。相対AFPレベルを、GFP形質導入細胞で得られたE-カドヘリンの量に対して正規化した、Foxa2、GATA4、またはHNF4A形質導入細胞で検出されたE-カドヘリンの量として計算した。結果は、3つの独立した実験に由来した。
図23C】GATA4、Foxa2、またはHNF4Aの過剰発現は、膜性E-カドヘリンの増加をもたらす。Cは、GATA4またはHNF4A形質導入細胞中の増加したE-カドヘリンがGFP腫瘍と比較して腫瘍を形成したことを示すE-カドヘリンの免疫蛍光画像である。
図23D】GATA4、Foxa2、またはHNF4Aの過剰発現は、膜性E-カドヘリンの増加をもたらす。Dでは、GATA4、HNF4A、またはGFP形質導入細胞の腫瘍試料を、抗E-カドヘリン抗体を用いてウエスタンブロットにより定量的に分析した。E-カドヘリンは、GATA4で示されるように、GFP発現腫瘍細胞と比較して、測定可能な2倍高い強度でより強く発現した。
図24A】GATA4過剰発現細胞株におけるベータ-カテニンの発現及び再分布である。Aでは、GATA4またはGFP形質導入細胞をウサギ抗ベータ-カテニン抗体で染色し、ベータ-カテニンの免疫蛍光画像を顕微鏡で可視化した。GATA4細胞中のベータ-カテニンを細胞表面に分布させた。
図24B】GATA4過剰発現細胞株におけるベータ-カテニンの発現及び再分布である。Bは、ベータ-カテニン抗体を用いたFoxa2、GATA4、HNF4A、またはGFP形質導入細胞のウエスタンブロット分析、及びFoxa2、GATA4、HNF4A、またはGFP形質導入細胞中で検出された相対的ベータ-カテニンレベルである。結果は、3つの独立した実験に由来した。
図24C】GATA4過剰発現細胞株におけるベータ-カテニンの発現及び再分布である。Cは、GATA4形質導入細胞中の増加したベータ-カテニンがGFP腫瘍と比較して腫瘍を形成したことを示すベータ-カテニンの免疫蛍光画像である。
図24D】GATA4過剰発現細胞株におけるベータ-カテニンの発現及び再分布である。Dでは、GATA4、HNF4A、またはGFP形質導入細胞の腫瘍試料を、抗ベータ-カテニン抗体を用いてウエスタンブロットにより分析した。GATA4、HNF4A、またはGFP形質導入細胞の腫瘍中で発現されたベータ-カテニンを計算した。
図25】GATA4、HNF4A、及びGFP形質導入細胞の腫瘍におけるビメンチン発現である。抗ビメンチン抗体を用いたGATA4、HNF4A、またはGFP形質導入細胞の腫瘍中で発現されたビメンチンのウエスタンブロット分析により、GATA4形質導入細胞中のビメンチンレベルが低下し、GFP腫瘍と比較して腫瘍が形成されたことが明らかになった。ビメンチンの減少を、GFP形質導入細胞で得られたビメンチンの量に対して正規化した、GATA4形質導入細胞で検出されたビメンチンの量の比較により計算した。
図26】代表的なNeuroD1ポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号1)である。
図27】代表的なNeurog2ポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号2)である。
図28】代表的なAscl1ポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号3)である。
図29】代表的なHNF4Aポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号4)である。
図30】代表的なFoxa2ポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号5)である。
図31】代表的なGATA4ポリペプチド(配列6)のアミノ酸配列である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に別途示さない限り、複数の参照を含む。
【0017】
本文書は、がんを有する哺乳動物を処置するための方法及び材料を提供する。例えば、1つ以上の転写因子をコードする核酸、または1つ以上の転写因子自体は、がんを有する哺乳動物を処置するために使用され得る。いくつかの場合、本明細書に記載されるがんを有する哺乳動物を処置することは、哺乳動物内のがん細胞を、哺乳動物内の非がん性細胞(例えば、機能細胞またはほぼ正常な細胞)に変換することを含み得る。いくつかの場合、本明細書に記載されるがんを有する哺乳動物を処置することは、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95パーセント、またはそれ以上の変換有効性を有し得る。いくつかの場合、本明細書に記載されるがんを有する哺乳動物を処置することは、10~100パーセント、例えば、10~15パーセント、10~20パーセント、10~25パーセント、15~20パーセント、15~25パーセント、15~30パーセント、20~25パーセント、20~30パーセント、20~35パーセント、25~30パーセント、25~35パーセント、25~40パーセント、30~35パーセント、30~40パーセント、35~45パーセント、35~50パーセント、40~45パーセント、40~50パーセント、40~55パーセント、45~50パーセント、45~55パーセント、45~60パーセント、50~55パーセント、50~60パーセント、50~65パーセント、55~60パーセント、55~65パーセント、55~70パーセント、60~65パーセント、60~70パーセント、60~75パーセント、65~70パーセント、65~75パーセント、65~80パーセント、70~75パーセント、70~80パーセント、70~85パーセント、75~80パーセント、75~85パーセント、75~90パーセント、80~85パーセント、80~90パーセント、80~95パーセント、85~90パーセント、85~95パーセント、85~100パーセント、90~95パーセント、90~100パーセント、または95~100パーセントの変換有効性を有し得る。例えば、本明細書に記載されるがんを有する哺乳動物を処置することは、例えば、哺乳動物内のがん細胞の10、20、30、40、50、60、70、80、90、95パーセント、またはそれ以上を非がん性細胞(例えば、機能細胞またはほぼ正常な細胞)に変換するのに有効であり得る。いくつかの場合、本明細書記載されるがんを有する哺乳動物を処置することは、哺乳動物内のがん細胞を、10~100パーセント、例えば、10~15パーセント、10~20パーセント、10~25パーセント、15~20パーセント、15~25パーセント、15~30パーセント、20~25パーセント、20~30パーセント、20~35パーセント、25~30パーセント、25~35パーセント、25~40パーセント、30~35パーセント、30~40パーセント、35~45パーセント、35~50パーセント、40~45パーセント、40~50パーセント、40~55パーセント、45~50パーセント、45~55パーセント、45~60パーセント、50~55パーセント、50~60パーセント、50~65パーセント、55~60パーセント、55~65パーセント、55~70パーセント、60~65パーセント、60~70パーセント、60~75パーセント、65~70パーセント、65~75パーセント、65~80パーセント、70~75パーセント、70~80パーセント、70~85パーセント、75~80パーセント、75~85パーセント、75~90パーセント、80~85パーセント、80~90パーセント、80~95パーセント、85~90パーセント、85~95パーセント、85~100パーセント、90~95パーセント、90~100パーセント、または95~100パーセント、非がん性細胞に変換するのに有効であり得る。
【0018】
いくつかの場合、1つ以上の転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の転写因子自体)を、それを必要とする哺乳動物(例えば、がんを有する哺乳動物)に投与して、哺乳動物におけるがんのサイズを減少させる(例えば、哺乳動物におけるがん細胞の数及び/または哺乳動物における1つ以上の腫瘍の体積を減少させる)ことができる。例えば、1つ以上の神経細胞転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の神経細胞転写因子自体)を、本明細書に記載される脳腫瘍を有する哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、脳腫瘍のサイズを、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95パーセント、またはそれ以上減少させることができる。別の例では、1つ以上の肝臓転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の肝臓転写因子自体)を、本明細書に記載される肝臓癌を有する哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、肝臓癌のサイズを、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95パーセント、またはそれ以上減少させることができる。いくつかの場合、1つ以上の肝臓転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の肝臓転写因子自体)を、本明細書に記載される肝臓癌を有する哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、肝臓癌のサイズを、10~100パーセント、例えば、10~15パーセント、10~20パーセント、10~25パーセント、15~20パーセント、15~25パーセント、15~30パーセント、20~25パーセント、20~30パーセント、20~35パーセント、25~30パーセント、25~35パーセント、25~40パーセント、30~35パーセント、30~40パーセント、35~45パーセント、35~50パーセント、40~45パーセント、40~50パーセント、40~55パーセント、45~50パーセント、45~55パーセント、45~60パーセント、50~55パーセント、50~60パーセント、50~65パーセント、55~60パーセント、55~65パーセント、55~70パーセント、60~65パーセント、60~70パーセント、60~75パーセント、65~70パーセント、65~75パーセント、65~80パーセント、70~75パーセント、70~80パーセント、70~85パーセント、75~80パーセント、75~85パーセント、75~90パーセント、80~85パーセント、80~90パーセント、80~95パーセント、85~90パーセント、85~95パーセント、85~100パーセント、90~95パーセント、90~100パーセント、または95~100パーセント減少させることができる。
【0019】
いくつかの場合、1つ以上の転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の転写因子自体)を、それを必要とする哺乳動物(例えば、がんを有する哺乳動物)に投与して、哺乳動物の生存率を、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10年、またはそれ以上、増加させる(例えば、哺乳動物の5年相対生存率を増加させる)ことができる。いくつかの場合、1つ以上の転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の転写因子自体)を、それを必要とする哺乳動物(例えば、がんを有する哺乳動物)に投与して、哺乳動物の生存率を、1~10年、例えば、1~1.5年、1~2年、1~2.5年、1.5~2年、1.5~2.5年、1.5~3年、2~2.5年、2~3年、2~3.5年、2.5~3年、2.5~3.5年、2.5~4年、3~3.5年、3~4年、3~4.5年、3.5~4年、3.5~4.5年、3.5~5年、4~4.5年、4~5年、4~5.5年、4.5~5年、4.5~5.5年、4.5~6年、5~5.5年、5~6年、5~6.5年、5.5~6年、5.5~6.5年、5.5~7年、6~6.5年、6~7年、6~7.5年、6.5~7年、6.5~7.5年、6.5~8年、7~7.5年、7~8年、7~8.5年、7.5~8年、7.5~8.5年、7.5~9年、8~8.5年、8~9年、8~9.5年、8.5~9年、8.5~9.5年、8.5~10年、9~9.5年、9~10年、または9.5~10年、増加させることができる。
【0020】
例えば、1つ以上の神経細胞転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の神経細胞転写因子自体)を、本明細書に記載される脳腫瘍を有する哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、哺乳動物の生存率を、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95パーセント、またはそれ以上増加させることができる。いくつかの場合、1つ以上の神経細胞転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の神経細胞転写因子自体)を、本明細書に記載される脳腫瘍を有する哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、哺乳動物の生存率を、10~100パーセント、例えば、10~15パーセント、10~20パーセント、10~25パーセント、15~20パーセント、15~25パーセント、15~30パーセント、20~25パーセント、20~30パーセント、20~35パーセント、25~30パーセント、25~35パーセント、25~40パーセント、30~35パーセント、30~40パーセント、35~45パーセント、35~50パーセント、40~45パーセント、40~50パーセント、40~55パーセント、45~50パーセント、45~55パーセント、45~60パーセント、50~55パーセント、50~60パーセント、50~65パーセント、55~60パーセント、55~65パーセント、55~70パーセント、60~65パーセント、60~70パーセント、60~75パーセント、65~70パーセント、65~75パーセント、65~80パーセント、70~75パーセント、70~80パーセント、70~85パーセント、75~80パーセント、75~85パーセント、75~90パーセント、80~85パーセント、80~90パーセント、80~95パーセント、85~90パーセント、85~95パーセント、85~100パーセント、90~95パーセント、90~100パーセント、または95~100パーセント増加させることができる。別の例では、1つ以上の肝臓転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の肝臓転写因子自体)を、本明細書に記載される肝臓癌を有する哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、哺乳動物(例えば、ヒト)の生存率を、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95パーセント、またはそれ以上増加させることができる。いくつかの場合、1つ以上の肝臓転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の肝臓転写因子自体)を、本明細書に記載される肝臓癌を有する哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、哺乳動物の生存率を、10~100パーセント、例えば、10~15パーセント、10~20パーセント、10~25パーセント、15~20パーセント、15~25パーセント、15~30パーセント、20~25パーセント、20~30パーセント、20~35パーセント、25~30パーセント、25~35パーセント、25~40パーセント、30~35パーセント、30~40パーセント、35~45パーセント、35~50パーセント、40~45パーセント、40~50パーセント、40~55パーセント、45~50パーセント、45~55パーセント、45~60パーセント、50~55パーセント、50~60パーセント、50~65パーセント、55~60パーセント、55~65パーセント、55~70パーセント、60~65パーセント、60~70パーセント、60~75パーセント、65~70パーセント、65~75パーセント、65~80パーセント、70~75パーセント、70~80パーセント、70~85パーセント、75~80パーセント、75~85パーセント、75~90パーセント、80~85パーセント、80~90パーセント、80~95パーセント、85~90パーセント、85~95パーセント、85~100パーセント、90~95パーセント、90~100パーセント、または95~100パーセント増加させることができる。
【0021】
いくつかの場合、1つ以上の転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の転写因子自体)を、それを必要とする哺乳動物(例えば、がんを有する哺乳動物)に投与して、哺乳動物内のがん細胞を分化させること(例えば、がん細胞を、哺乳動物内の末端分化細胞及び/または非分裂細胞に変換すること)ができる。例えば、1つ以上の神経細胞転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の神経細胞転写因子自体)を、本明細書に記載される脳腫瘍(例えば、GBMなどの神経膠腫)を有する哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、例えば、哺乳動物の脳腫瘍細胞(例えば、神経膠腫細胞)の10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、98、99パーセント、またはそれ以上を、生存哺乳動物の脳内の非がん性神経細胞(例えば、生存哺乳動物の脳に組み込まれ得る機能性神経細胞)に分化させることができる。いくつかの場合、1つ以上の神経細胞転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の神経細胞転写因子自体)を、本明細書に記載される脳腫瘍(例えば、GBMなどの神経膠腫)を有する哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、10~100パーセント、例えば、10~15パーセント、10~20パーセント、10~25パーセント、15~20パーセント、15~25パーセント、15~30パーセント、20~25パーセント、20~30パーセント、20~35パーセント、25~30パーセント、25~35パーセント、25~40パーセント、30~35パーセント、30~40パーセント、35~45パーセント、35~50パーセント、40~45パーセント、40~50パーセント、40~55パーセント、45~50パーセント、45~55パーセント、45~60パーセント、50~55パーセント、50~60パーセント、50~65パーセント、55~60パーセント、55~65パーセント、55~70パーセント、60~65パーセント、60~70パーセント、60~75パーセント、65~70パーセント、65~75パーセント、65~80パーセント、70~75パーセント、70~80パーセント、70~85パーセント、75~80パーセント、75~85パーセント、75~90パーセント、80~85パーセント、80~90パーセント、80~95パーセント、85~90パーセント、85~95パーセント、85~100パーセント、90~95パーセント、90~100パーセント、または95~100パーセント分化させることができる。例えば、1つ以上の肝臓転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の肝臓転写因子自体)を、本明細書に記載される肝臓癌を有する哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、例えば、哺乳動物の肝臓癌細胞の10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、98、99パーセント、またはそれ以上を、生存哺乳動物の肝臓内の非がん性肝細胞(例えば、生存哺乳動物の肝臓に組み込まれ得る機能性肝細胞)に分化させることができる。いくつかの場合、1つ以上の肝臓転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の肝臓転写因子自体)を、本明細書に記載される肝臓癌を有する哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、哺乳動物の肝臓癌細胞の10~100パーセント、例えば、10~15パーセント、10~20パーセント、10~25パーセント、15~20パーセント、15~25パーセント、15~30パーセント、20~25パーセント、20~30パーセント、20~35パーセント、25~30パーセント、25~35パーセント、25~40パーセント、30~35パーセント、30~40パーセント、35~45パーセント、35~50パーセント、40~45パーセント、40~50パーセント、40~55パーセント、45~50パーセント、45~55パーセント、45~60パーセント、50~55パーセント、50~60パーセント、50~65パーセント、55~60パーセント、55~65パーセント、55~70パーセント、60~65パーセント、60~70パーセント、60~75パーセント、65~70パーセント、65~75パーセント、65~80パーセント、70~75パーセント、70~80パーセント、70~85パーセント、75~80パーセント、75~85パーセント、75~90パーセント、80~85パーセント、80~90パーセント、80~95パーセント、85~90パーセント、85~95パーセント、85~100パーセント、90~95パーセント、90~100パーセント、または95~100パーセントを、生存哺乳動物の肝臓内の非がん性肝細胞(例えば、生存哺乳動物の肝臓に組み込まれ得る機能性肝細胞)に分化させることができる。
【0022】
いくつかの場合、1つ以上の神経細胞転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の神経細胞転写因子自体)を、それを必要とする哺乳動物(例えば、脳腫瘍を有する哺乳動物)に投与して、哺乳動物のアストログリオーシスを減少させることができる。例えば、1つ以上の神経細胞転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の神経細胞転写因子自体)を、本明細書に記載される脳腫瘍を有する哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、哺乳動物のアストログリオーシスを、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95パーセント、またはそれ以上減少させることができる。いくつかの場合、1つ以上の神経細胞転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の神経細胞転写因子自体)を、本明細書に記載される脳腫瘍を有する哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、哺乳動物のアストログリオーシスを、10~100パーセント、例えば、10~15パーセント、10~20パーセント、10~25パーセント、15~20パーセント、15~25パーセント、15~30パーセント、20~25パーセント、20~30パーセント、20~35パーセント、25~30パーセント、25~35パーセント、25~40パーセント、30~35パーセント、30~40パーセント、35~45パーセント、35~50パーセント、40~45パーセント、40~50パーセント、40~55パーセント、45~50パーセント、45~55パーセント、45~60パーセント、50~55パーセント、50~60パーセント、50~65パーセント、55~60パーセント、55~65パーセント、55~70パーセント、60~65パーセント、60~70パーセント、60~75パーセント、65~70パーセント、65~75パーセント、65~80パーセント、70~75パーセント、70~80パーセント、70~85パーセント、75~80パーセント、75~85パーセント、75~90パーセント、80~85パーセント、80~90パーセント、80~95パーセント、85~90パーセント、85~95パーセント、85~100パーセント、90~95パーセント、90~100パーセント、または95~100パーセント減少させることができる。
【0023】
いずれの適当な哺乳動物も、本明細書に記載されるように処置することができる。がんを有し得、本明細書に記載されるように処置することができる哺乳動物の例としては、非限定的に、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、サル)、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、ラット、マウス、ウサギ、フェレット、及びヒツジが挙げられる。いくつかの場合、がんを有するヒトを本明細書に記載されるように治療して、ヒト内のがん細胞の数を、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、98、99、またはそれ以上減少させることができる。いくつかの場合、がんを有するヒトを本明細書に記載されるように治療して、ヒト内のがん細胞の数を、10~100パーセント、例えば、10~15パーセント、10~20パーセント、10~25パーセント、15~20パーセント、15~25パーセント、15~30パーセント、20~25パーセント、20~30パーセント、20~35パーセント、25~30パーセント、25~35パーセント、25~40パーセント、30~35パーセント、30~40パーセント、35~45パーセント、35~50パーセント、40~45パーセント、40~50パーセント、40~55パーセント、45~50パーセント、45~55パーセント、45~60パーセント、50~55パーセント、50~60パーセント、50~65パーセント、55~60パーセント、55~65パーセント、55~70パーセント、60~65パーセント、60~70パーセント、60~75パーセント、65~70パーセント、65~75パーセント、65~80パーセント、70~75パーセント、70~80パーセント、70~85パーセント、75~80パーセント、75~85パーセント、75~90パーセント、80~85パーセント、80~90パーセント、80~95パーセント、85~90パーセント、85~95パーセント、85~100パーセント、90~95パーセント、90~100パーセント、または95~100パーセント減少させることができる。
【0024】
本明細書に記載されるがんを有する哺乳動物(例えば、ヒト)を処置する場合、がんは、いずれの種類のがんであってもよい。本明細書で使用される場合、哺乳動物は、哺乳綱に分類される任意の生物を指す。本明細書で使用される場合、ヒトは、ホモ・サピエンス種を指す。いくつかの場合、がんは血液がんであり得る。いくつかの場合、がんは、1つ以上の固形腫瘍を含み得る。いくつかの場合、がんは管腔がんであり得る。いくつかの場合、がんはがん腫であり得る。いくつかの場合、がんは非上皮性がんであり得る。いくつかの場合、がんは骨髄腫がんであり得る。いくつかの場合、がんは白血病がんであり得る。いくつかの場合、がんはリンパ腫がんであり得る。いくつかの場合、がんは混合型がんであり得る。いくつかの場合、がんは原発性がんであり得る。いくつかの場合、がんは続発性がんであり得る。いくつかの場合、がんは転移性がんであり得る。いくつかの場合、がんは0期がんであり得る。いくつかの場合、がんはI期がんであり得る。いくつかの場合、がんはII期がんであり得る。いくつかの場合、がんはIV期がんであり得る。本明細書に記載されるように処置することができるがんの例としては、非限定的に、脳腫瘍(例えば、GBMなどの神経膠腫)、肝臓癌(例えば、HCC)、乳癌、前立腺癌、骨癌、肺癌、膵臓癌、子宮癌、子宮癌、胆嚢癌、膀胱癌、食道癌、皮膚癌、腎臓癌、卵巣癌、及び白血病が挙げられる。
【0025】
いくつかの場合、本明細書に記載の方法は、哺乳動物(例えば、ヒト)を、がんを有するものとして識別することを含み得る。任意の適当な方法を使用して、哺乳動物を、がんを有するものとして識別することができる。例えば、撮像技法、生検技法、細胞診技法、顕微鏡検査技法、組織化学染色技法、免疫組織化学染色技法、フローサイトメトリー技法、画像サイトメトリー技法、及び/または遺伝子検査技法を使用して、がんを有する哺乳動物(例えば、ヒト)を識別することができる。いくつかの場合、撮像技法は、X線、コンピュータ断層撮影(CTスキャン)、超音波、磁気共鳴撮像(MRI)、陽電子放射断層撮影(PETスキャン)、及びソノグラムであり得る。いくつかの場合、生検技法は、細針吸引生検、コア針生検、真空補助生検、切除生検、薄片生検、パンチ生検、内視鏡生検、腹腔鏡生検、及び骨髄吸引生検であり得る。いくつかの場合、細胞診技法は、スクレープまたはブラシ細胞診技法であり得る。いくつかの場合、顕微鏡検査技法は、光顕微鏡法、電子顕微鏡法、レーザー顕微鏡法、及び/または光学顕微鏡法であり得る。いくつかの場合、組織染色技術は、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)、アルシアンブルー染色、アルデヒドフクシン染色、アルカリホスファターゼ染色、ビルショウスキー染色、コンゴレッド染色、クリスタルバイオレット染色、フォンタナ-マッソン染色、ギムザ染色、ルナ染色、ニッスル染色、過ヨウ素酸シッフ染色、オイルレッドO染色、レチクリン染色、ズダンブラックB染色、トルイジンブルー染色、及び/またはファン・ギーソン染色であり得る。いくつかの場合、遺伝子検査技法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、遺伝子発現マイクロアレイ技法、RNA配列決定、及び/またはDNA配列決定であり得る。
【0026】
特定の種類のがん(例えば、脳腫瘍、肝臓癌、腎臓癌、または肺癌)を有すると識別されると、そのがん細胞型に適当な1つ以上の転写因子を、本明細書に記載される使用のために選択することができる。例えば、GBMなどの脳腫瘍の場合、NeuroD1、Neurog2、及び/またはAscl1などの転写因子を、脳腫瘍細胞を非がん性細胞に変換するために選択し使用することができる。肝臓癌細胞については、HNF4A、Foxa2、及び/またはGATA4などの転写因子を、肝臓癌細胞を非がん性細胞に変換するために選択し使用することができる。特定のがん細胞型に対して選択して、それらの特定のがん細胞を非がん性細胞に変換することができる転写因子の他の例を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
本明細書に記載されるように、脳腫瘍(例えば、GBMなどの神経膠腫)を有する哺乳動物(例えば、ヒト)は、哺乳動物の脳(例えば、線条体)内で1つ以上の神経細胞転写因子を発現するように設計された核酸を、脳腫瘍細胞(例えば、神経膠腫細胞)による哺乳動物の脳(例えば、線条体)内での非がん性神経細胞(例えば、機能性神経細胞、ほぼ正常な神経細胞、及び/または統合神経細胞)の形成を誘発する様式で、投与することによって処置することができる。神経細胞転写因子の例としては、非限定的に、NeuroD1ポリペプチド、Neurog2ポリペプチド、及びAscl1ポリペプチドが挙げられる。NeuroD1ポリペプチドの例としては、非限定的に、GenBank(登録商標)受託番号NP_002491(GI番号121114306)もしくはQ13562.3または配列番号1(図26)に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドが挙げられる。NeuroD1ポリペプチドは、GenBank(登録商標)受託番号NM_002500(GI番号323462174)に示される核酸配列によってコードされ得る。Neurog2ポリペプチドの例としては、非限定的に、GenBank(登録商標)受託番号NP_076924.1、EAX06278.1、もしくはAAH36847.1、または配列番号2(図27)に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドが挙げられる。Neurog2ポリペプチドは、GenBank(登録商標)受託番号NM_024019.4に示される核酸配列によってコードされ得る。Ascl1ポリペプチドの例としては、非限定的に、GenBank(登録商標)受託番号NP_004307.2または配列番号3(図28)に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドが挙げられる。Ascl1ポリペプチドは、GenBank(登録商標)受託番号NM_004316.4に示される核酸配列によってコードされ得る。
【0029】
本明細書に記載されるように、肝臓癌(例えば、HCC)を有する哺乳動物(例えば、ヒト)は、哺乳動物の肝臓内で1つ以上の肝臓転写因子を発現するように設計された核酸を、肝臓癌細胞による哺乳動物の肝臓内での非がん性肝細胞(例えば、機能性肝細胞、ほぼ正常な肝細胞、及び/または統合肝細胞)の形成を誘発する様式で、投与することによって処置することができる。肝臓転写因子の例としては、非限定的に、HNF4Aポリペプチド、Foxa2ポリペプチド、及びGATA4ポリペプチドが挙げられる。HNF4Aポリペプチドの例としては、非限定的に、GenBank(登録商標)受託番号XP_005260464.1、NP_000448.3、NP_001274113.1、NP_001274112.1、NP_001274111.1、NP_001245284.1、NP_001025174.1、NP_787110.2、NP_001025175.1、NP_849181.1、もしくはNP_849180.1、または配列番号4(図29)に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドが挙げられる。HNF4Aポリペプチドは、GenBank(登録商標)受託番号NM_178849.3に示される核酸配列によってコードされ得る。Foxa2ポリペプチドの例としては、非限定的に、GenBank(登録商標)受託番号AAH11780.1もしくはACA06111.1、または配列番号5(図30)に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドが挙げられる。Foxa2ポリペプチドは、GenBank(登録商標)受託番号NM_021784.5に示される核酸配列によってコードされ得る。GATA4ポリペプチドの例としては、非限定的に、GenBank(登録商標)受託番号AAI43480.1、NP_001295022.1、NP_002043.2、NP_001295023.1、もしくはNP_001361203.1、または配列6(図31)に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドが挙げられる。GATA4ポリペプチドは、GenBank(登録商標)受託番号NM_001308093.3に示される核酸配列によってコードされ得る。
【0030】
任意の適当な方法を使用して、1つ以上の転写因子を発現するように設計された核酸を細胞(例えば、生存哺乳動物内の細胞)に送達することができる。例えば、転写因子をコードする核酸は、ウイルスベクターなどの1つ以上のベクターを使用して哺乳動物に投与することができる。転写因子を発現するように設計された2つ以上の核酸が生存哺乳動物内の細胞に送達されるいくつかの場合では、別個のベクター(例えば、第1の転写因子をコードする核酸のための1つのベクター、及び第2の転写因子をコードする核酸のための1つのベクター)を使用して、核酸を細胞に送達することができる。転写因子を発現するように設計された2つ以上の核酸が生存哺乳動物内の細胞に送達されるいくつかの場合では、第1の転写因子をコードする核酸と第2の転写因子をコードする核酸との両方を含む単個のベクターを使用して、核酸を細胞に送達することができる。
【0031】
核酸(例えば、1つ以上の転写因子を発現するように設計された核酸)を細胞(例えば、生存哺乳動物内の細胞)に投与するためのベクターを使用して、核酸を任意の適当な細胞に投与することができる。いくつかの場合、ベクターを使用して、転写因子をコードする核酸を分裂細胞に投与することができる。いくつかの場合、ベクターを使用して、転写因子をコードする核酸を非分裂細胞に投与することができる。いくつかの場合、ベクターを使用して、転写因子をコードする核酸をがん細胞に投与することができる。
【0032】
いくつかの場合、核酸(例えば、1つ以上の転写因子を発現するように設計された核酸)を細胞(例えば、生存哺乳動物内の細胞)に投与するためのベクターは、転写因子(複数可)の一過性の発現に使用することができる。
【0033】
いくつかの場合、核酸(例えば、1つ以上の転写因子を発現するように設計された核酸)を細胞(例えば、生存哺乳動物内の細胞)に投与するためのベクターは、転写因子(複数可)の安定した発現に使用することができる。核酸を投与するためのベクターを1つ以上の転写因子の安定した発現のために使用することができる場合、ベクターは、1つ以上の転写因子を発現するように設計された核酸を細胞のゲノムに組み込むように操作することができる。いくつかの場合、核酸を細胞のゲノムに組み込むようにベクターを操作するとき、任意の適当な方法を使用して、その核酸を細胞のゲノムに組み込むことができる。例えば、遺伝子療法技法を使用して、1つ以上の転写因子を発現するように設計された核酸を細胞のゲノムに組み込むことができる。
【0034】
核酸(例えば、1つ以上の転写因子をコードする核酸)を細胞(例えば、生存哺乳動物内の細胞)に投与するためのベクターは、標準的な物質(例えば、パッケージング細胞株、ヘルパーウイルス、及びベクター構築物)を使用して調製することができる。例えば、Gene Therapy Protocols(Methods in Molecular Medicine)、Jeffrey R.Morgan編,Humana Press,Totowa,NJ(2002)、及びViral Vectors for Gene Therapy:Methods and Protocols,Curtis A.Machida編,Humana Press,Totowa,NJ(2003)を参照されたい。1つ以上の転写因子をコードする核酸を細胞(例えば、生存哺乳動物内の細胞)に投与するために設計されたベクターは適当なベクターであることができ、これには、非限定的に、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、腫瘍溶解性ウイルスなどのウイルスベクターと、ウイルスベクターを模倣するナノ粒子などの非ウイルスベクターとが含まれる。いくつかの場合、1つ以上の転写因子をコードする核酸は、アデノ随伴ウイルスベクター(例えば、AAV血清型2ウイルスベクター、AAV血清型5ウイルスベクター、AAV血清型9ウイルスベクター、またはAAV血清型2/5ウイルスベクターなどの組換えAAV血清型ウイルスベクター)、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、腫瘍溶解性ベクター、またはウイルスベクターを模倣するナノ粒子などの非ウイルスベクターを使用して、細胞に送達され得る。例えば、1つ以上の神経細胞転写因子をコードする核酸(例えば、NeuroD1ポリペプチドをコードする核酸、Neurog2ポリペプチドをコードする核酸、及び/またはAscl1ポリペプチドをコードする核酸)を、1つ以上のレトロウイルスベクターを使用して膠細胞(例えば、がん性膠細胞)に送達することができる。例えば、1つ以上の肝臓転写因子をコードする核酸(例えば、HNF4Aポリペプチドをコードする核酸、Foxa2ポリペプチドをコードする核酸、及び/またはGATA4ポリペプチドをコードする核酸)を、1つ以上のレンチウイルスベクターを使用して肝細胞に送達することができる。
【0035】
1つ以上の転写因子をコードする核酸に加えて、ウイルスベクターは、転写因子をコードする核酸に作用可能に連結した調節エレメントを含み得る。このような調節エレメントには、プロモーター配列、エンハンサー配列、応答エレメント、シグナルペプチド、内部リボソームエントリー配列、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター、または核酸の発現(例えば、転写または翻訳)を調節する誘導エレメントが含まれ得る。ウイルスベクターに含まれ得るエレメント(複数可)の選択は、誘導性、標的指向性、及び所望の発現レベルを含むがこれらに限定されないいくつかの要因に依存する。例えば、プロモーターをウイルスベクターに含めて、転写因子をコードする核酸の転写を促進することができる。プロモーターは、構成的または誘導的であり得(例えば、テトラサイクリンの存在下で)、一般的または組織特異的な様式でポリペプチドをコードする核酸の発現に影響を及ぼし得る。膠細胞(例えば、がん性膠細胞)における神経転写因子の発現を駆動するために使用され得る組織特異的プロモーターの例としては、非限定的に、GFAP、NG2、Olig2、CAG、EF1a、Aldh1L1、CMV、及びユビキチンプロモーターが挙げられる。肝細胞における肝臓転写因子の発現を駆動するために使用され得る組織特異的プロモーターの例としては、非限定的に、α1-アンチトリプシン、アルブミン、AFP、CAG、CMV、EF1a、及びユビキチンプロモーターが挙げられる。
【0036】
本明細書で使用される場合、「作用可能に連結した」は、コードされたポリペプチドの発現を可能にするまたは促進するような形での核酸に対するベクター内の調節エレメントの位置決めを指す。例えば、ウイルスベクターは、神経転写因子をコードする核酸に作用可能に連結した神経膠特異的プロモーターを含むことができ、その結果、それが膠細胞(例えば、がん性膠細胞)内の転写を駆動するようになる。例えば、ウイルスベクターは、肝臓転写因子をコードする核酸に作用可能に連結した肝臓特異的プロモーターを含むことができ、その結果、それが肝細胞(例えば、がん性肝細胞)内の転写を駆動するようになる。
【0037】
1つ以上の転写因子をコードする核酸は、非ウイルスベクターを使用して哺乳動物に投与され得る。核酸送達のために非ウイルスベクターを使用する方法は、他に記載されている。例えば、Gene Therapy Protocols(Methods in Molecular Medicine),Jeffrey R.Morgan編,Humana Press,Totowa,NJ(2002)を参照されたい。例えば、1つ以上の転写因子をコードする核酸は、1つ以上の転写因子をコードする核酸を含む核酸分子(例えば、プラスミド)を直接注入することによって、または脂質、ポリマー、もしくはナノスフェアと複合体形成した核酸分子を投与することによって、哺乳動物に投与することができる。いくつかの場合、CRISPR/Cas9媒介遺伝子編集などのゲノム編集技法を使用して、内因性転写因子発現を活性化することができる。
【0038】
転写因子をコードする核酸は、一般的な分子クローニング、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、化学核酸合成技法、及びそのような技法の組み合わせを非限定的に含む技法によって産生され得る。例えば、PCRまたはRT-PCRは、転写因子をコードする核酸(例えば、ゲノムDNAまたはRNA)を増幅するように設計されたオリゴヌクレオチドプライマーとともに使用することができる。
【0039】
いくつかの場合、1つ以上の転写因子を、1つ以上の転写因子を発現するように設計された核酸に加えて、またはその代わりに投与することができる。例えば、NeuroD1ポリペプチド、Neurog2ポリペプチド、及び/またはAscl1ポリペプチドを哺乳動物に投与して、脳内の脳腫瘍細胞(例えば、神経膠腫細胞)の、生存哺乳動物の脳内の非がん性神経細胞(例えば、生存哺乳動物の脳に組み込まれ得る機能性神経細胞)への変換(例えば、分化)を誘発することができる。別の例では、HNF4Aポリペプチド、Foxa2ポリペプチド、及び/またはGATA4ポリペプチドを哺乳動物に投与して、肝臓内の肝臓癌細胞の、生存哺乳動物の肝臓内の非がん性肝細胞(例えば、生存哺乳動物の肝臓に組み込まれ得る機能性肝細胞)への変換(例えば、分化)を誘発することができる。
【0040】
本明細書に記載されるように、1つ以上の転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の転写因子自体)を、がんを有する哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、哺乳動物を処置することができる。いくつかの場合、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように設計された核酸、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように設計された核酸、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように設計された核酸(または配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、及び/または配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド)を、本明細書に記載されるように、脳腫瘍(例えば、GBMなどの神経膠腫)を有する哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、哺乳動物を処置することができる。例えば、単個のレトロウイルスベクターは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように設計することができ、その設計されたウイルスベクターを、脳腫瘍を有するヒトに投与して、哺乳動物を処置することができる。
【0041】
いくつかの場合、配列番号1に示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が少なくとも85%(例えば、85%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、または99.0%)であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを使用することができる。例えば、アミノ酸配列が1~10個(例えば、10個、1~9個、2~9個、1~8個、2~8個、1~7個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個、2個、または1個)のアミノ酸付加、欠失、置換、またはそれらの組み合わせを含むことを除いて、配列番号1に示されるアミノ酸配列全体を含むポリペプチドを使用することができる。いくつかの場合、配列番号1に示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が90%~99%であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを発現するように設計された核酸を設計し、脳腫瘍(例えば、GBMなどの神経膠腫)を有する哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、哺乳動物を処置することができる。
【0042】
いくつかの場合、配列番号2に示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が少なくとも85%(例えば、85%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、または99.0%)であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを使用することができる。例えば、アミノ酸配列が1~10個(例えば、10個、1~9個、2~9個、1~8個、2~8個、1~7個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個、2個、または1個)のアミノ酸付加、欠失、置換、またはそれらの組み合わせを含むことを除いて、配列番号2に示されるアミノ酸配列全体を含むポリペプチドを使用することができる。いくつかの場合、配列番号2に示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が90%~99%であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを発現するように設計された核酸を設計し、脳腫瘍(例えば、GBMなどの神経膠腫)を有する哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、哺乳動物を処置することができる。
【0043】
いくつかの場合、配列番号3に示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が少なくとも85%(例えば、85%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、または99.0%)であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを使用することができる。例えば、アミノ酸配列が1~10個(例えば、10個、1~9個、2~9個、1~8個、2~8個、1~7個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個、2個、または1個)のアミノ酸付加、欠失、置換、またはそれらの組み合わせを含むことを除いて、配列番号3に示されるアミノ酸配列全体を含むポリペプチドを使用することができる。いくつかの場合、配列番号3に示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が90%~99%であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを発現するように設計された核酸を設計し、脳腫瘍(例えば、GBMなどの神経膠腫)を有する哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、哺乳動物を処置することができる。
【0044】
別の例では、配列番号1に示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が少なくとも85%(例えば、85%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、または99.0%)であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように設計された核酸、配列番号2に示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が少なくとも85%(例えば、85%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、または99.0%)であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように設計された核酸、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が少なくとも85%(例えば、85%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、または99.0%)であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように設計された核酸を設計し、哺乳動物の脳腫瘍(例えば、GBM)を有する哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、哺乳動物を処置することができる。
【0045】
いくつかの場合、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように設計された核酸、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように設計された核酸、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように設計された核酸(または配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、及び/または配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド)を、本明細書に記載されるように、肝臓癌(例えば、HCC)を有する哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、哺乳動物を処置することができる。例えば、単個のレンチウイルスベクターは、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように設計することができ、その設計されたウイルスベクターを、肝臓癌を有するヒトに投与して、哺乳動物を処置することができる。
【0046】
いくつかの場合、配列番号4に示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が少なくとも85%(例えば、85%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、または99.0%)であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを使用することができる。例えば、アミノ酸配列が1~10個(例えば、10個、1~9個、2~9個、1~8個、2~8個、1~7個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個、2個、または1個)のアミノ酸付加、欠失、置換、またはそれらの組み合わせを含むことを除いて、配列番号4に示されるアミノ酸配列全体を含むポリペプチドを使用することができる。いくつかの場合、配列番号4に示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が90%~99%であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを発現するように設計された核酸を設計し、肝臓癌(例えば、HCC)を有する哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、哺乳動物を処置することができる。
【0047】
いくつかの場合、配列番号5に示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が少なくとも85%(例えば、85%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、または99.0%)であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを使用することができる。例えば、アミノ酸配列が1~10個(例えば、10個、1~9個、2~9個、1~8個、2~8個、1~7個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個、2個、または1個)のアミノ酸付加、欠失、置換、またはそれらの組み合わせを含むことを除いて、配列番号5に示されるアミノ酸配列全体を含むポリペプチドを使用することができる。いくつかの場合、配列番号5に示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が90%~99%であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを発現するように設計された核酸を設計し、肝臓癌(例えば、HCC)を有する哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、哺乳動物を処置することができる。
【0048】
いくつかの場合、配列番号6に示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が少なくとも85%(例えば、85%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、または99.0%)であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを使用することができる。例えば、アミノ酸配列が1~10個(例えば、10個、1~9個、2~9個、1~8個、2~8個、1~7個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個、2個、または1個)のアミノ酸付加、欠失、置換、またはそれらの組み合わせを含むことを除いて、配列番号6に示されるアミノ酸配列全体を含むポリペプチドを使用することができる。いくつかの場合、配列番号6に示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が90%~99%であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを発現するように設計された核酸を設計し、肝臓癌(例えば、HCC)を有する哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、哺乳動物を処置することができる。
【0049】
別の例では、配列番号4に示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が少なくとも85%(例えば、85%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、または99.0%)であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように設計された核酸、配列番号5に示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が少なくとも85%(例えば、85%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、または99.0%)であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように設計された核酸、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が少なくとも85%(例えば、85%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、または99.0%)であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように設計された核酸を設計し、哺乳動物の肝臓癌(例えば、HCC)を有する哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、哺乳動物を処置することができる。
【0050】
特定の核酸またはアミノ酸配列と、特定の配列識別番号(例えば、配列番号1または配列番号2)によって参照される配列との間の配列同一性パーセントは、以下のように決定することができる。まず、核酸またはアミノ酸配列を、BLASTNバージョン2.0.14及びBLASTPバージョン2.0.14を含むBLASTZの独立型バージョンからのBLAST 2 Sequences(Bl2seq)プログラムを使用して、特定の配列識別番号に示される配列と比較する。このBLASTZの独立型バージョンは、ワールドワイドウェブドット「fr」ドット「com/blast」にて、またはワールドワイドウェブドット「ncbi.nlm.nih」ドット「gov」にてオンラインで入手することができる。Bl2seqプログラムの使用方法についての説明は、BLASTZに付属のreadmeファイルに見出することができる。Bl2seqは、BLASTNまたはBLASTPアルゴリズムのいずれかを使用して、2つの配列間の比較を行う。BLASTNは核酸配列の比較に使用され、一方でBLASTPはアミノ酸配列の比較に使用される。2つの核酸配列を比較するために、オプションを以下のように設定する:-iを、比較される第1の核酸配列を含むファイル(例えば、C:\seq1.txt)に設定し、-jを、比較される第2の核酸配列を含むファイル(例えば、C:\seq2.txt)を含むファイルに設定し、-pをblastnに設定し、-oを任意の所望のファイル名(例えば、C:\output.txt)に設定し、-qを-1に設定し、-rを2に設定し、他のすべてのオプションはそれらの初期設定のままにする。例えば、以下のコマンドを使用して、2つの配列間の比較を含む出力ファイルを生成することができる:C:\Bl2seq-i c:\seq1.txt-j c:\seq2.txt-p blastn-o c:\output.txt-q-1-r 2.2つのアミノ酸配列を比較するために、Bl2seqのオプションを以下のように設定する:-iを、比較される第1のアミノ酸配列を含むファイル(例えば、C:\seq1.txt)に設定し、-jを、比較される第2のアミノ配列を含むファイル(例えば、C:\seq2.txt)を含むファイルに設定し、-pをblastpに設定し、-oを任意の所望のファイル名(例えば、C:\output.txt)に設定し、他のすべてのオプションはそれらの初期設定のままにする。例えば、以下のコマンドを使用して、2つのアミノ酸配列間の比較を含む出力ファイルを生成することができる:C:\Bl2seq-i c:\seq1.txt-j c:\seq2.txt-p blastp-o c:\output.txt.比較した2つの配列が相同性を共有する場合には、指定された出力ファイルは、それらの相同性領域をアラインメントされた配列として提示する。比較した2つの配列が相同性を共有しない場合には、指定された出力ファイルは、アラインメントされた配列として提示しない。
【0051】
アラインメントされると、一致の数は、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基が両方の配列において提示される位置の数を計数することによって決定される。配列同一性パーセントは、一致の数を、識別された配列(例えば、配列番号1)に示される配列の長さで除し、続いて、得られた値に100を乗じることにより決定される。例えば、配列番号1に示される配列とアラインメントしたときに340個の一致を有するアミノ酸配列は、配列番号1に示される配列と95.5パーセント同一である(すなわち、340÷356×100=95.5056)。配列同一性パーセント値は小数第2位で四捨五入されることに留意されたい。例えば、75.11、75.12、75.13、及び75.14は、75.1に切り捨てされ、75.15、75.16、75.17、75.18、及び75.19は、75.2に切り上げられる。また、長さの値は常に整数であることに留意されたい。
【0052】
本明細書に記載されるように(例えば、NeuroD1、Neurog2、及び/もしくはAscl1などの1つ以上の神経細胞転写因子をコードする核酸、または1つ以上の神経細胞転写因子自体を投与することによって)脳腫瘍細胞(例えば、神経膠腫細胞)を、脳腫瘍を有する生存哺乳動物(例えば、ヒト)の脳内の非がん性神経細胞に変換する場合、変換神経細胞は、任意の適当な種類の神経細胞であり得る。いくつかの場合、変換神経細胞は、DARPP32陽性であり得る。いくつかの場合、変換神経細胞は、FoxG1陽性前脳神経細胞であり得る。いくつかの場合、変換神経細胞は、機能性神経細胞であり得る(例えば、機能性シナプスネットワークを有し得る)。例えば、機能性神経細胞は、グルタミン酸作動性神経細胞またはGABA作動性神経細胞であり得る。いくつかの場合、変換神経細胞は、活性な電気生理学的特性を有し得る。いくつかの場合、変換神経細胞は、生存哺乳動物の脳に組み込まれ得る(例えば、線条体から延びる軸索投射を含み得る)。いくつかの場合、変換神経細胞は、(例えば、変換前の脳腫瘍細胞と比較して)がんの進行に関する下方調節されたシグナル伝達経路を呈し得る。
【0053】
本明細書に記載されるように(例えば、1つ以上の肝臓転写因子をコードする核酸(例えば、HNF4A、Foxa2、及び/もしくはGATA4をコードする核酸、または1つ以上の肝臓転写因子自体を投与することによって)肝臓癌細胞を、肝臓癌を有する生存哺乳動物(例えば、ヒト)の肝臓内の非がん性肝細胞に変換する場合、変換された肝細胞は、任意の適当な種類の肝細胞であり得る。いくつかの場合、変換された肝細胞は、機能性肝細胞であり得る(例えば、コレステロール、胆汁酸、及び/またはアルブミンなどの1つ以上の肝臓酵素を産生し得る)。いくつかの場合、変換された肝細胞は、生存哺乳動物の肝臓に組み込まれ得る(例えば、生存哺乳動物の肝臓における肝細胞との密接な接合及び/またはアドヘリン接合を形成し得る)。いくつかの場合、変換された肝細胞は、(例えば、変換前の肝臓癌細胞と比較して)増殖が減少し得る。いくつかの場合、増殖の減少は10、20、30、40、50、60、70、80、90、95パーセント、またはそれ以上であり得る。いくつかの場合、増殖の減少は、10~100パーセント、例えば、10~15パーセント、10~20パーセント、10~25パーセント、15~20パーセント、15~25パーセント、15~30パーセント、20~25パーセント、20~30パーセント、20~35パーセント、25~30パーセント、25~35パーセント、25~40パーセント、30~35パーセント、30~40パーセント、35~45パーセント、35~50パーセント、40~45パーセント、40~50パーセント、40~55パーセント、45~50パーセント、45~55パーセント、45~60パーセント、50~55パーセント、50~60パーセント、50~65パーセント、55~60パーセント、55~65パーセント、55~70パーセント、60~65パーセント、60~70パーセント、60~75パーセント、65~70パーセント、65~75パーセント、65~80パーセント、70~75パーセント、70~80パーセント、70~85パーセント、75~80パーセント、75~85パーセント、75~90パーセント、80~85パーセント、80~90パーセント、80~95パーセント、85~90パーセント、85~95パーセント、85~100パーセント、90~95パーセント、90~100パーセント、または95~100パーセントであり得る。いくつかの場合、変換された肝細胞は、(例えば、変換前の肝臓癌細胞と比較して)1つ以上の肝臓癌マーカーの発現が減少し得る。いくつかの場合、1つ以上の肝臓癌マーカーの発現の減少は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95パーセント、またはそれ以上であり得る。いくつかの場合、1つ以上の肝臓癌細胞マーカーの発現の減少は、10~100パーセント、例えば、10~15パーセント、10~20パーセント、10~25パーセント、15~20パーセント、15~25パーセント、15~30パーセント、20~25パーセント、20~30パーセント、20~35パーセント、25~30パーセント、25~35パーセント、25~40パーセント、30~35パーセント、30~40パーセント、35~45パーセント、35~50パーセント、40~45パーセント、40~50パーセント、40~55パーセント、45~50パーセント、45~55パーセント、45~60パーセント、50~55パーセント、50~60パーセント、50~65パーセント、55~60パーセント、55~65パーセント、55~70パーセント、60~65パーセント、60~70パーセント、60~75パーセント、65~70パーセント、65~75パーセント、65~80パーセント、70~75パーセント、70~80パーセント、70~85パーセント、75~80パーセント、75~85パーセント、75~90パーセント、80~85パーセント、80~90パーセント、80~95パーセント、85~90パーセント、85~95パーセント、85~100パーセント、90~95パーセント、90~100パーセント、または95~100パーセントであり得る。肝臓癌マーカーの例としては、非限定的に、AFPが挙げられる。いくつかの場合、変換された肝細胞は、(例えば、変換前の肝臓癌細胞と比較して)1つ以上の上皮特異的マーカーの発現が増加し得る。いくつかの場合、1つ以上の上皮特異的マーカーの発現の増加は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95パーセント、またはそれ以上であり得る。いくつかの場合、1つ以上の上皮特異的マーカーの発現の増加は、10~100パーセント、例えば、10~15パーセント、10~20パーセント、10~25パーセント、15~20パーセント、15~25パーセント、15~30パーセント、20~25パーセント、20~30パーセント、20~35パーセント、25~30パーセント、25~35パーセント、25~40パーセント、30~35パーセント、30~40パーセント、35~45パーセント、35~50パーセント、40~45パーセント、40~50パーセント、40~55パーセント、45~50パーセント、45~55パーセント、45~60パーセント、50~55パーセント、50~60パーセント、50~65パーセント、55~60パーセント、55~65パーセント、55~70パーセント、60~65パーセント、60~70パーセント、60~75パーセント、65~70パーセント、65~75パーセント、65~80パーセント、70~75パーセント、70~80パーセント、70~85パーセント、75~80パーセント、75~85パーセント、75~90パーセント、80~85パーセント、80~90パーセント、80~95パーセント、85~90パーセント、85~95パーセント、85~100パーセント、90~95パーセント、90~100パーセント、または95~100パーセントであり得る。上皮特異的マーカーの例としては、非限定的に、E-カドヘリン、クローディン、及びベータ-カテニンが挙げられる。
【0054】
1つ以上の転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の転写因子自体)は、がんを有する哺乳動物(例えば、ヒト)に任意の適当な経路により投与することができる。いくつかの場合、投与は局所投与であり得る。いくつかの場合、投与は全身投与であり得る。投与経路の例としては、非限定的に、静脈内、筋肉内、髄腔内、脳内、実質内、皮下、経口、鼻腔内、吸入、経皮、非経口、腫瘍内、後尿管、被膜下、膣、及び直腸投与が挙げられる。複数の治療ラウンドが施される場合、第1の治療ラウンドは、本明細書に記載の1つ以上の転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の転写因子自体)を第1の経路(例えば、静脈内)によって哺乳動物(例えば、ヒト)に投与することを含み得、第2の治療ラウンドは、本明細書に記載の1つ以上の転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の転写因子自体)を第2の経路(例えば、腫瘍内)によって哺乳動物(例えば、ヒト)に投与することを含み得る。
【0055】
いくつかの場合、本明細書に記載の1つ以上の転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の転写因子自体)を、哺乳動物(例えば、がんを有するか、またはがんを有するリスクがある哺乳動物)に投与するための組成物(例えば、薬学的組成物)に製剤化することができる。例えば、1つ以上の転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の転写因子自体)は、がんを有する哺乳動物に投与するための薬学的に許容される組成物に製剤化することができる。いくつかの場合、1つ以上の転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の転写因子自体)は、1つ以上の薬学的に許容される担体(添加剤)及び/または希釈剤と一緒に製剤化され得る。薬学的組成物は、滅菌溶液、懸濁液、徐放性製剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、粉剤、ウエハー、及び顆粒剤を非限定的に含む、固体または液体形態での投与のために製剤化され得る。本明細書に記載の医薬組成物に使用されてもよい薬学的に許容される担体、充填剤、及びビヒクルとしては、非限定的に、生理食塩水(例えば、リン酸緩衝生理食塩水、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウムなどの緩衝物質、飽和植物性脂肪酸、水、塩、または電解質の部分グリセリド混合物、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及び羊毛脂が挙げられる。
【0056】
いくつかの場合、本明細書に記載の方法には、哺乳動物(例えば、がんを有する哺乳動物)に、がんを処置するために使用される1つ以上の追加の薬剤を投与することが含まれ得る。がんを処置するために使用される1つ以上の追加の薬剤には、任意の適当ながん治療が含まれ得る。いくつかの場合、がん治療には、手術及び/または放射線療法が含まれ得る。いくつかの場合、がん治療には、化学療法、ホルモン療法、標的療法、及び/または細胞傷害療法などの薬物療法の投与が含まれ得る。例えば、がんを有する哺乳動物に、本明細書に記載の1つ以上の転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の転写因子自体)を投与し、がんの治療に使用される1つ以上の追加の薬剤を投与することができる。がんを有する哺乳動物が、本明細書に記載の1つ以上の転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の転写因子自体)で治療され、がんを処置するために使用される1つ以上の追加の薬剤で治療される場合、がんを処置するために使用される追加の薬剤は、同時に投与することも独立して投与することもできる。例えば、本明細書に記載の1つ以上の転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の転写因子自体)と、がんを処置するために使用される1つ以上の追加の薬剤とを一緒に製剤化して、単一の組成物を形成することができる。いくつかの場合、本明細書に記載の1つ以上の転写因子を発現するように設計された核酸(または1つ以上の転写因子自体)を最初に投与し、がんを処置するために使用される1つ以上の追加の薬剤を第2に投与することができ、またその逆も同様である。
【0057】
本発明を、以下の実施例においてさらに説明し、これらの実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0058】
実施例1:ヒト膠芽腫細胞を神経細胞に変換する
GBMは、中枢神経系(CNS)において最も一般的かつ侵襲的な成人原発性がんである。現在の標準的なGBM療法は、手術、続いて放射線療法または化学療法であるが、GBMの異質性及び高度に侵襲的な性質に起因して、治療の進歩はわずかである。
【0059】
本実施例では、悪性GBM細胞の非増殖性神経細胞への転写因子リプログラミング(例えば、Neurog2、NeuroD1、及び/またはAscl1リプログラミング)をとおしてGBMを処置するための代替的アプローチが提供される。
【0060】
細胞培養
ヒトGBM細胞株を、Sigma(U251)またはATCC(U118)から購入した。U251細胞を、MEM(GIBCO)、0.2%ペニシリン/ストレプトマイシン(GIBCO)、10%FBS(GIBCO)、1mMピルビン酸ナトリウム(GIBCO)、1%非必須アミノ酸(NEAA、GIBCO)、及び1倍GlutMAX(GIBCO)を含むGBM培地で培養した。U118細胞を、DMEM(GIBCO)、10%FBS、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含む培地で培養した。
【0061】
ヒト星状膠細胞をScienCell(HA1800、San Diego,USA)から購入した。ヒト星状膠細胞を、B27(GIBCO)、N2(GIBCO)、10ng/mL線維芽細胞成長因子2(FGF2、Invitogen)、及び10ng/mL上皮成長因子(EFG、Invitrogen)を補充した、DMEM/F12(GIBCO)、10% FBS、3.5mMグルコース(Sigma)、及び0.2%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むヒト星状膠細胞培地で培養した。
【0062】
継代培養については、細胞を0.25%トリプシン(GIBCO)またはTrypLE Select(Invitrogen)によってトリプシン化し、5分間800rpmで遠心分離し、再懸濁させ、分割比が約1:4の対応する培地にプレーティングした。細胞を、5%COで加湿した空気中、37℃で維持した。
【0063】
ヒトGBM細胞の神経細胞へのリプログラミング
U251細胞を、カバースリップあたり10,000細胞の密度で、ウイルス感染の少なくとも12時間前に、24ウェルプレート中のポリ-D-リジンをコーティングしたカバースリップに播種した。GFP、Neurog2、NeuroD1、またはAscl1レトロウイルスを、8μg/mLのポリブレン(Santa Cruz Biotechnology)と一緒にGBM細胞に加えた。神経細胞の分化及び成熟を助けるため、培地を翌日には完全に神経細胞分化培地(NDM)に置き換えた。NDMには、DMEM/F12(GIBCO)、0.4%B27補充物(GIBCO)、0.8%N補充物(GIBCO)、0.2%ペニシリン/ストレプトマイシン、0.5%FBS、ビタミンC(5μg/mL、Selleck Chemicals)、Y27632(1μM、Tocris)、GDNF(10ng/mL、Invitrogen)、BDNF(10ng/mL、Invitrogen)、及びNT3(10ng/mL、Invitrogen)が含まれた。細胞を、5%COで加湿した空気中、37℃で維持した。
【0064】
小分子によるヒト膠芽腫細胞の処理
U251細胞を、Neurog2-GFPまたはGFPのみを発現するレトロウイルスに感染させ、翌日、培養培地を、小分子を有する神経細胞分化培地(NDM)、または対照用の0.22%DMSOで完全に置き換えた。感染させた膠芽腫細胞を、5μMのDAPT、1.5μMのCHIR99021、5μMのSB431542、0.25μMのLDN193189、1μMのSAG、及び1μMのプルモルファミンで処理した。小分子含有培地を3~4日ごとにリフレッシュした。細胞を、まず小分子で12日間処理し、次いで、免疫染色の前に、所望の期間、NDMに変更した。
【0065】
ヒト膠芽腫細胞のインビボ神経細胞変換
ヒト膠芽腫細胞のインビボ神経細胞変換を、Rag1 KO免疫不全マウス(B6.129S7-Rag1tm1Mom/J、The Jackson Laboratory、ストック番号002216)を使用して実施した。50万(5×10)個のU251ヒト膠芽腫細胞を、定位固定装置(Hamilton)を使用してRag1 KOマウス脳の線条体に移植した。力価が同様のNeurog2-GFPまたはGFPのみを発現するレトロウイルスを、同時に及び同じ位置で頭蓋内注入した。マウスの脳を採取し、注射の1、2、4、及び8週間後にスライスした。脳スライス切片の免疫染色は、培養細胞と同じであった。
【0066】
データ及び統計分析
細胞計数及び蛍光強度を、ランダムに選択した写真のランダムに選択したフィールドを用いて単盲検法で行い、Image Jソフトウェアによって分析した。データを平均±SEMとして表す。二元配置分散分析、続いてダネット検定を用いて、複数群の比較を行った。スチューデントt検定を用いて2つの群比較を行った。
【0067】
単一の神経細胞転写因子Neurog2、NeuroD1、またはAscl1によるヒトGBM細胞の効率的な神経細胞変換
この試験では、2つの異なるヒトGBM細胞株(U251、Sigma;U118、ATCC)を使用した(図1)。神経細胞転写因子がヒト悪性膠芽腫細胞を神経細胞に変換できるかどうかを決定するために、転写因子であるNeuroD1、Neurog2、及びAscl1を試験した。AAVが高い効率で培養膠細胞または膠芽腫細胞に感染しないことを考慮して、レトロウイルスを使用して、Neurog2(CAG::Neurog2-P2A-eGFP)、NeuroD1(CAG::NeuroD1-P2A-eGFP)、またはAscl1(CAG::Ascl1-P2A-eGFP)を過剰発現させ、増殖が速い膠芽腫細胞における高い感染効率を得た。ウイルスで12時間インキュベーションした後、膠芽腫培養培地を神経細胞分化培地に変更し、神経細胞の成熟を助けた。Neurog2、NeuroD1、またはAscl1の過剰発現を、免疫組織化学(IHC)(図2A)及びリアルタイム定量PCR(RT-qPCR)(図2B)によって確認した。形質導入の数日後、U251膠芽腫細胞は、神経細胞転写因子を発現した後に神経形態をとり始めた(図2A)が、GFPのみを発現する対照細胞はとらなかった(図2A、上段)。一連の汎神経細胞マーカーを、ヒト膠芽腫細胞からの神経細胞変換の可能性について調べた。未成熟神経細胞DCX及びTuj1を、ウイルス感染の6日後に早くも検出した(図3A~C)。感染の30日後までに、成熟神経細胞マーカーMAP2及びNeuNの両方を検出した(図4B)。変換効率は、3つすべて因子、特にNeurog2及びNeuroD1について高かった(図4A、定量化は図4C:Neurog2、98.2%±0.3%、NeuroD1、88.7%±5.2%、Ascl1、24.6%±4.0%、DCX+神経細胞/感染から20日後の全感染細胞;図4B、定量化は図4D:Neruog2、93.2%±1.2%、NeuroD1、91.2%±1.1%、Ascl1、62.1%±5.9%、MAP2+神経細胞/感染から30日後の合計感染細胞)。神経細胞変換をRT-qPCRによっても確認し、このRT-qPCRでは、DCXの転写活性化を、Neurog2、NeuroD1、またはAscl1の過剰発現後に検出した(図4E)。神経細胞変換がU251細胞に限定されるかどうかを試験するために、別のヒトGBM細胞株U118を同様のプロトコルに従って調べた。変換効率は低かったものの、神経細胞変換が、神経細胞転写因子と小分子(例えば、DAPT、CHIR99021、SB431542、及びLDN193189)との組み合わせを介してU118細胞において達成され得ることを見出した(図5A~D)。12日間の小分子処理によるNeurog2-GFPウイルス感染から18日後に、いくつかのU118細胞が神経細胞マーカーであるDCXの発現を始めた(図5D)。しかしながら、小分子処理のみまたはNeurog2のみでは、U118細胞は神経細胞様細胞に変換されなかった(図5B及び5C)。
【0068】
ヒト膠芽腫細胞からの変換神経細胞の特性評価
異なる脳領域で発現された神経細胞マーカーを有するU251ヒト膠芽腫細胞から変換された神経細胞を特性評価した。変換された細胞の大部分が、海馬顆粒神経細胞マーカーであるProx1(図6A;定量化は図6E:Neurog2、90.4%±1.9%;NeuroD1、89.9%±1.2%;Ascl1、83.0%±1.4%;Prox1+/DCX+細胞)、及び前脳マーカーであるFoxG1(図6B;定量化は図6F:Neurog2、99.2%±0.8%;NeuroD1、87.9%±4.8%;Ascl1、81.3%±3.6%;FoxG1+/MAP2+細胞)について免疫陽性であったことを見出した。GBM細胞から変換された少数の神経細胞が皮質神経細胞マーカーであるCtip2またはTbr1を発現した(図7A及び7B)。これらの結果により、ヒト膠芽腫細胞の内在性インプリンティングが星状膠細胞とは異なり得、細胞変換の結果に影響を及ぼし得るあることが示唆される。ヒト星状膠細胞から変換された神経細胞(HA1800、ScienCell,San Diego,USA)を用いて、対照比較を行った。ヒト星状膠細胞からのNeurog2、NeuroD1、またはAscl1変換神経細胞の大部分は、FoxG1及びProx1について陽性であり、相当な割合がCtip2について免疫陽性であった(図8A及び8B)。したがって、GBM細胞から変換された神経細胞は、星状膠細胞から変換された神経細胞といくつかの共通の特性を共有したが、特定の神経細胞サブタイプにおいて異なった。
【0069】
次に、変換神経細胞サブタイプを、放出された神経伝達物質、特に、それぞれ脳内の主要な興奮性及び抑制性神経細胞であるグルタミン酸作動性及びGABA作動性神経細胞に従って特性評価した。大部分のNeurog2、NeuroD1、及びAscl1変換細胞は、グルタミン酸作動性神経細胞マーカーであるVGluT1について免疫陽性であった(図6C;定量は図6G:Neurog2、92.8%±0.7%;NeurD1、86.9%±2.7%;Ascl1、80.6%±2.1%;VGluT1+/DCX+細胞)。Neurog2及びNeuroD1変換細胞の大部分は、GABAについて免疫陰性であった(図6D;定量化は図6H:Neurog2、11.1%±3.8%;NeuroD1、8.6%±2.5%;GABA+/DCX+細胞)。Ascl1変換細胞のおよそ半分は、GABA陽性神経細胞であり(図6D;定量化は図6H:Ascl1、49.3%±6.4%、GABA+/DCX+細胞)、異なる神経細胞変換因子間の差異を反映していた。
【0070】
要約すると、U251 GBM細胞からのNeurog2、NeuroD1、またはAscl1変換神経細胞の大部分は、前脳グルタミン酸作動性神経細胞であったが、Ascl1は、GABA作動性神経細胞生成の傾向を呈した。これらの結果により、内在GBM細胞系統及び異所的に発現された転写因子が、変換神経細胞サブタイプに有意な影響を及ぼすことが示唆される。
【0071】
Neurog2の過剰発現によって誘導される膠芽腫細胞から神経細胞への結果の運命の変化
Neurog2に誘導された変換プロセスを調査した。星状膠細胞マーカーであるGFAP及び上皮間葉移行(EMT)マーカーであるビメンチンは、いずれもヒトU251細胞中で高度に発現された。20日にわたるNeurog2の過剰発現後、GFAP及びビメンチンの両方が、対照と比較して下方調節された(図9A)。これにより、膠芽腫細胞から神経細胞への運命の変化がさらに確認された。加えて、Neurog2過剰発現を伴うU251膠芽腫細胞において、ギャップ接合マーカーであるコネキシン43が下方調節され(図9B;コネキシン43強度の定量化は図9C:Neurog2、19.4±0.7a.u.;GFP対照、11.6±0.8a.u.;感染から20日後)、神経細胞のギャップ接合部は膠細胞と比較して少ないという事実と一致する。典型的な軸索成長円錐構造は、Neurog2変換神経細胞のうちのいくつかに見出され(図9D)、線維状アクチン(F-アクチン)プローブファロイジン及び成長円錐マーカーGAP43によって標識された指状糸状仮足を有する(図9D)。
【0072】
U251膠芽腫細胞のNeurog2誘導性神経細胞変換中の細胞内変化を調査した。ミトコンドリア及びゴルジ装置は、Mitotracker標識アッセイ(図10E~F)及びゴルジ装置マーカーGM130免疫染色(図10G~H)によって示される対照GBM細胞に対して、Neurog2変換神経細胞において明確な分布パターンを呈した。ミトコンドリアは、エネルギー需要の高い領域に位置することが知られている。対照U251細胞では、ミトコンドリアは、明らかな分極なく細胞質内に分布した。Neurog2変換神経細胞では、ミトコンドリアは、体細胞と神経突起との両方で見出され、体細胞では分極分布パターンを有した(図10E)。加えて、変換神経細胞におけるミトコンドリアの平均強度は、感染から30日後に対照と比較して増加し、これは、構造的活性変化と代謝活性変化との両方を反映している可能性がある(図10F)。ゴルジ装置の分布は、Neurog2変換神経細胞と対照GBM細胞との間でも明確であった(図10G)。ゴルジ装置の面積は、対照と比較して、Neurog2変換細胞においてはるかに小さく(図10H)、神経細胞変換プロセス中のタンパク質輸送の変化の可能性が示唆された。一方で、自己貪食活性(自己貪食調節因子ATG5の免疫染色によって示される)は、Neurog2変換細胞と対照細胞とで同等であることが見出され(図11A~C)、タンパク質分解が変換プロセスによって有意に影響を受けなかったことが示唆された。
【0073】
すべての点で、変換神経細胞と対照膠芽腫細胞との間の明確な細胞及び細胞下パターンにより、ヒト膠芽腫細胞から神経細胞への運命の変化がさらに実証された。
【0074】
ヒト膠芽腫細胞変換神経細胞の機能分析
シナプスを形成するNeurog2変換細胞の能力を、シナプス小胞マーカーSV2のための免疫染色を行うことで調査した。感染から30日後、ヒトGBM細胞由来のNeurog2変換神経細胞内のMAP2で標識した樹状突起に沿って集中シナプス点を検出した(図12A)。パッチクランプ記録により、感染から30日後に、変換細胞中で顕著なナトリウム及びカリウム電流が示された(図12B及び12C)。Neurog2変換細胞の大部分は、単一の活動電位を発射し(23個中14個)、変換神経細胞のサブセット(23個中8個)は、複数の活動電位を発射した(図12D及び12E)。しかしながら、感染から30日後では、Neurog2変換細胞に自発的なシナプス事象は記録されておらず、変換神経細胞がまだ未成熟であるか、またはおそらく周囲の神経膠腫細胞がシナプス放出に阻害効果を発揮し得ることが示唆された。要約すると、これらの結果により、ヒトGBM細胞が、神経細胞転写因子によって部分的に機能性の神経細胞様細胞にリプログラミングされ得ることが示される。
【0075】
神経細胞転写因子はGBM細胞増殖を阻害する
神経細胞は末端分化した非増殖細胞である。したがって、神経細胞の分化転換は、がん細胞の増殖を制御するための有望な戦略であり得る。細胞増殖を変換の初期段階で調べた。U251細胞を10mMのBrdUとともに24時間インキュベートして、増殖細胞を、ウイルス感染から7日後、固定及び染色の前にトレースした(図10A)。BrdU陽性細胞のパーセンテージの定量化により、Neurog2感染細胞及びNeuroD1感染細胞の増殖がGFP対照と比較して有意に減少したことが示された(図10B:GFP、64.8%±4.1%;Neurog2、11.9%±2.9%;NeuroD1、24.5%±2.4%)。Ascl1変換細胞の増殖は、感染から7日後に活性を維持し(図10A;定量化は図10B:Ascl1、54.6%±1.2%)、これはおそらくGBM細胞中のAscl1の作用が遅いことに起因する(図4A~D、3A~C)。GBM細胞の増殖速度は、Neurog2またはNeuroD1の過剰発現とともに顕著に低下し、これはGBM細胞に感染した後のNeurog2及びNeuroD1による速い変換速度と一致した。これらの結果により、神経細胞変換に加えて、神経細胞転写因子の異所的発現も、GBMの特徴であり、かつGBM治療の主要な標的であるGBM細胞増殖を制御するための有望な方法であり得ることが示唆される。
【0076】
神経細胞変換が、膠芽腫の進行に関連するシグナル伝達経路またはバイオマーカーのいずれかの変化を引き起こすかどうかも試験した。ウエスタンブロット分析下で、総GSK3βの発現レベルが、対照U251細胞と比較して、Neurog2ウイルス感染から20日後に上方調節されたことが見出された(図10C;定量化したGSK3β強度倍率変化は図10D:Neurog2、3.0±0.5)。これを、免疫染色分析を使用してさらに確認した(図10E~F)。これらの結果により、GSK3βがU251膠芽腫細胞の神経細胞変換に関与していることが実証される。Neurog2感染U251 GBM細胞をGSK3β拮抗剤CHIR99021(5μM)またはTWS119(10μM)で処理し、GSK3βの阻害によりU251細胞の神経細胞変換効率が低下したことを見出した(図13A~C)。加えて、2つの神経膠腫マーカーEGFR及びIL13Ra2 39-45は、Neurog2感染から20日後の神経細胞変換の後に安定した発現を有することが見出され(図14A~D)、少なくとも変換後のある期間、GBM細胞変換神経細胞が、依然として、がん細胞のある特定のインプリントを保有し得ることが示唆された。
【0077】
異種移植マウスモデルを使用したヒト膠芽腫細胞のインビボ神経細胞変換
インビトロ細胞培養結果が脳内部のインビボ環境にも適用されることを確認するために、ヒト膠芽腫細胞の変換能力をインビボでマウス脳において試験した。免疫拒絶からの合併症を軽減するために、ヒトU251 GBM細胞(5×10個のU251細胞)をRag1-/-免疫不全マウスの両側の線条体に頭蓋内移植した(図15A)。同体積(2μL)及び力価(2×10個のpfu/mL)を有するNeurog2-GFPまたは対照GFPレトロウイルスを、移植したGBM細胞と一緒に線条体の各側に注入した。移植したU251ヒトGBM細胞を、ビメンチン(図15A)またはヒト核染色(図15D)によって識別した。移植したヒト膠芽腫細胞におけるNeurog2の過剰発現(図15A)により、未成熟神経細胞マーカーDCXによって示される、効率的な神経細胞変換が生じた(図15A~C、定量化は15B:Neurog2、92.8%±1.2%、DCX+神経細胞/移植後3週目の全感染細胞)。Tuj1及びProx1などの他の神経細胞マーカーも、移植から1か月後のNeurog2変換細胞で検出された(図15D及び15E)。インビトロでの変換の結果と一致して、移植した神経膠腫細胞の増殖速度は、GFP対照と比較してNeurog2-GFPウイルス感染を有するもので有意に低下した(図16A及び16B)。GBM細胞を移植した脳領域では多くのLCN2陽性反応性星状膠細胞が観察されたが、反応性星状膠細胞の数は、Neurog2過剰発現のある移植部位では対照側と比較して有意に減少した(図16C~E)。加えて、血管または常在ミクログリア分布などの他の可能性のある局所環境因子もこのインビボモデルで調べた。いずれも、Neurog2誘導性神経細胞変換による影響を有意には受けなかったことを見出した(図17A~D)。
【0078】
要約すると、Neurog2は、代表的なリプログラミング因子として、異種移植マウスモデルにおいて、ヒト膠芽腫細胞をインビボで神経細胞様細胞に効率的にリプログラミングする。さらに、このリプログラミングアプローチにより、神経膠腫細胞の増殖が顕著に阻害され、反応性アストログリオーシスが低減する。総合すると、これらの結果により、がん細胞(例えば、GBM細胞)が、インビトロとインビボとの両方で異なるサブタイプの神経細胞にリプログラミングされ、がん(例えば、脳腫瘍)を処置するための代替的な治療アプローチをもたらし得ることが実証される。
【0079】
実施例2:肝臓癌細胞の非がん性肝細胞への変換
本実施例は、肝臓転写因子(例えば、GATA4、Foxa2、及び/またはHNF4A)を使用して、腫瘍細胞のリプログラミングを媒介し、腫瘍細胞を正常様細胞に変換し、肝臓癌または他の種類のがんの治療のための新規戦略を確立できることを実証する。
【0080】
細胞株
ヒト肝臓癌細胞株HepG2及びHEK293T(ATCCから入手)を、10%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDMEM中で維持した。すべての細胞株をMycoSolutions(商標)(AKRON)で規定どおりに処理して、マイコプラズマ汚染を検出した。
【0081】
抗体
GFPに特異的なニワトリポリクローナルまたはマウスモノクローナル抗体をAbcamから購入した。GATA4、Foxa2、及びHNF4Aタンパク質に対するヤギポリクローナル抗体を、R&D Systemsから入手した。マウスベータアクチンモノクローナル抗体及びヤギアルブミンポリクローナル抗体をSanta Cruzから、ウサギGAPDHポリクローナル抗体をAbcamから入手した。AFPタンパク質及びE-カドヘリンに特異的なウサギモノクローナル抗体、ならびにHNF4Aタンパク質に特異的なマウスモノクローナル抗体を、Abcamから購入した。ウサギ抗B-カテニンポリクローナル抗体及びヤギ抗ビメンチンポリクローナル抗体を、それぞれAbcam及びR&D Systemsから入手した。IRDye 680 Donkey anti-Mouse、IRDye 680 Donkey anti-Rabbit、IRDye 680 Donkey anti-Goat、IRDye 800 Donkey anti-Mouse、IRDye 800 Donkey anti-Rabbit、IRDye 800 Donkey anti-Goat二次抗体を、LI-CORから購入した。
【0082】
動物
4~5週齢の雄免疫不全無胸腺ヌードマウスをCharles Riverから入手した。
【0083】
レンチウイルス発現プラスミド及びウイルスの生成
GATA4(またはFoxa2またはHNF4A)-P2A-GFPのAgeI/EcorI断片を、既存の緑色蛍光タンパク質(GFP)配列に置き換えて、第3世代レンチウイルスベクターpLJM1(Addgene)にクローニングした。得られたベクタープラスミドを使用して、レンチウイルスを生成した。レンチウイルスは、PEIトランスフェクション法を使用して生成した。簡潔には、15cm培養皿上で増殖させた293T細胞の80%のコンフルエントを、レンチウイルスベクターをコードする12μgのGATA4(またはFoxa2またはHNF4A)-P2A-GFP、VSV糖タンパク質Gをコードする2.4μgのエンベロープププラスミドpMD2.G(Addgene)、及び12μgの包装プラスミドpsPAX2(Addgene)でトランスフェクトした。ウイルス含有培地を、トランスフェクションから72時間後に採取し、濾過して細胞または細胞残屑を除去し、超遠心分離により濃縮した。ウイルス力価を、HEK293T細胞の感染により決定し、GFP陽性細胞を、ミリリットル当たりの形質導入単位(TU/mL)の計算のために計数した。
【0084】
細胞増殖アッセイ
GATA4、Foxa2、HNF4A、またはGFP形質導入細胞の細胞増殖アッセイを、12ウェルプレート当たり15,000個の細胞で開始した。細胞を、6、24、48、及び72時間で計数した。各時点で、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド(PFA)を各ウェルに15分間加えた。次に、細胞を0.1%クリスタルバイオレットで20分間染色した。染色したクリスタルバイオレットを10%酢酸により抽出し、マイクロプレートリーダー(Bio-Rad Laboratories,CA)による590nmでの光学密度測定のために96ウェルプレートに移した。
【0085】
マウス腫瘍モデル
マウスに移植する前に、GATA4、Foxa2、HNF4A、またはGFP形質導入肝臓腫瘍HepG2細胞株を80%コンフルエンスまで増殖させ、計数し、PBSに懸濁させた。各マウスの右脇腹に、1.0×10個の腫瘍細胞を皮下注射した。動物を検査し、実験をとおして3~4日ごとに腫瘍増殖をモニタリングした。腫瘍をノギスで測定し、腫瘍体積を式:0.5×ab(aが長軸、bが短軸)。マウスを安楽死させ、腫瘍を解剖し、4℃の4%PFA中でインキュベートした。腫瘍をスライスし、免疫蛍光染色により分析した。
【0086】
肝臓癌細胞HepG2のレンチウイルス形質導入
レンチウイルス形質導入のため、ヒト肝臓癌HepG2細胞を、5×10細胞の密度で6cmの培養皿にプレーティングし、一晩インキュベートして、細胞を付着させた。HepG2細胞を、2%FBSを補充した新鮮な2mLのDMEM中、1のMOIでレンチウイルスに感染させた。培養物を37℃で2日間インキュベートした。
【0087】
培養培地を、10%FBS及び2μg/mLのピューロマイシンを含有するDMEMで置き換えた。ピューロマイシン耐性細胞を、10%FBS及び2μg/mLのピューロマイシンを含有するDMEM中で維持した。
【0088】
ウエスタンブロット分析
1倍PBSに再懸濁させた培養細胞を、等体積の2倍NuPAGE LDS Sample Buffer(Invitrogen)と混合した。新鮮な腫瘍試料を5体積の1倍RIPA緩衝液(Invitrogen)と混合し、BEAD RUPTORホモジナイザー(OMNI International,Inc.)により最高速度で45秒間均質化した。等体積の2倍NuPAGE LDS Sample Bufferを溶解させた腫瘍試料に加えた。
【0089】
タンパク質試料を、10%ポリアクリルアミドゲル上で分離させ、フッ化ポリビニリデン(PVDF)膜(Amersham,Piscataway,NJ)に移した。膜を5%の脱脂粉乳中で遮断し、一次抗体、続いて適当な二次抗体とともにインキュベートした。タンパク質バンド検出を、LI-COR ODYSSEY CLxスキャナを使用して実行した。タンパク質バンドをLI-COR Image Studio Ver 3.1ソフトウェアにより定量化し、ソフトウェアの説明書に従って各タンパク質の相対量を得た。
【0090】
免疫蛍光染色及び顕微鏡法
カバースリップ上で増殖させた細胞培養物を、PBS中の4%パラホルムアルデヒド(PFA)で10分間固定した。PFAをPBSで洗い流し、細胞を、PBS中の2.5%NDS(Normal Donkey Serum)、2.5%NGS(Normal Goat Serum)、及び0.1%Triton X-100を含有する遮断溶液中で30分間インキュベートした。細胞を、遮断溶液中に混合した一次抗体とともに、一晩インキュベートした。細胞をPBSで3回洗浄し、Alexa Fluor488またはAlexa Fluor594二次抗体(Jackson ImmunoResearch)の混合物とともに1時間インキュベートした。非結合二次抗体をPBSで洗い流し、核をDAPIで染色した。細胞を共焦点顕微鏡(Zeiss LSM800)で可視化した。
【0091】
腫瘍切片を、0.3%Triton X-100を含むPBS中で1時間透過処理し、続いて、PBS中の0.3%Triton X-100を含む遮断溶液中で1時間インキュベーションした。腫瘍切片を、遮断溶液中に混合した一次抗体とともに一晩4℃でインキュベートした。結合していない一次抗体をPBSで洗い流した後、腫瘍切片をAlexa Fluor488またはAlexa Fluor594二次抗体(Jackson ImmunoReaseach)の混合物とともに1時間室温でインキュベートし、結合していない二次抗体をPBSで洗い流し、核をDAPIで染色した。腫瘍切片を共焦点顕微鏡(Zeiss LSM800)で可視化した。
【0092】
ELISAアッセイ
GATA4、Foxa2、HNF4A、またはGFP形質導入肝臓腫瘍HepG2細胞株を、12ウェルプレートに播種し、6時間インキュベートして、細胞をプレートに付着させた。培養培地を無血清DMEMで置き換え、16時間インキュベーションを続けた。各細胞株からの培養培地を収集し、Human Serum Albumin ELISA Kit(Molecular Innovations)をキットの説明書に従って用いて、アルブミン量を測定した。
【0093】
肝臓転写因子Foxa2、HNF4A、及びGATA4を用いた肝臓腫瘍細胞株HepG2の形質導入
Foxa2-P2A-GFP、HNF4A-P2A-GFP、GATA4-P2A-GFP、またはGFPを担持するpLJM1レンチウイルスベクターを使用して、HepG2細胞に感染させた。48時間後、ピューロマイシンを培地に添加して、未感染の細胞を排除した。ピューロマイシン耐性細胞を規定どおりに増殖させ、細胞内の転写因子またはGFPの発現を免疫染色またはウエスタンブロットにより評価した。Foxa2、HNF4A、GATA4、及びGFPの発現及び局在化を調べるために、HepG2-Foxa2(Foxa2-P2A-GFP形質導入)、HepG2-HNF4A(HNF4A-P2A-GFP形質導入)、HepG2-GATA4(GATA4-P2A-GFP形質導入)、またはHepG2-GFP(GFP形質導入)細胞株を蛍光顕微鏡法に供した。Foxa2、HNF4A、GATA4、及びGFPはすべて、各細胞株において高度に発現され、転写因子Foxa2、HNF4A、及びGATA4は、核に局在し、一方でGFPは、細胞体全体に分布した(図18A)。各形質導入株中の全細胞が、形質導入ベクターを発現した。転写因子Foxa2、HNF4A、及びGATA4の発現を、ウエスタンブロットによりさらに検証した(図18B、C、D、及びE)。
【0094】
GATA4は内因性Foxa2ポリペプチドレベルを上昇させる
肝臓転写因子Foxa2、HNF4A、及びGATA4を使用して、個々にHepG2細胞を形質導入した。ウエスタンブロット分析は、GATA4過剰発現により内因性Foxa2発現が増加し、HNF4A過剰発現によりFoxa2発現が減したことを示した(図19A)。内因性GATA4発現はHNF4A及びFoxa2両方の過剰発現の影響を受けないことが観察された(図19B)。
【0095】
リプログラミングしたHepG2細胞における増殖
肝臓腫瘍細胞HepG2増殖のための肝臓転写因子発現の機能的関連性を調べるために、GATA4、Foxa2、HNF4A、またはGFP形質導入細胞株を12ウェルの皿の中で培養した。6時間、24時間、48時間、及び72時間の時点で、各細胞株からの細胞を4%PFAで固定し、0.1%クリスタルバイオレットで染色した。染色したクリスタルバイオレットを10%酢酸により抽出し、GATA4、Foxa2、HNF4A、またはGFP形質導入細胞株の相対増殖速度を分光光度測定により比較した。図20Aに示すように、GATA4、Foxa2、またはHNF4Aで形質導入した細胞株は、GFPで形質導入した対照細胞株と比較して低下した増殖速度を呈した。さらに、Foxa2及びGATA4媒介細胞株は、はるかに低い細胞増殖率を達成した。
【0096】
インビボでの増殖速度を調べるために、GATA4、Foxa2、HNF4A、またはGFP形質導入細胞株をヌードマウスモデルに皮下異種移植した。ヌードマウスを6匹/群で4群にランダムに割り当て、GATA4、Foxa2、HNF4A、またはGFPで形質導入した1×10個の細胞をヌードマウスの脇腹に移植した。4日後、GFP及びHNF4A形質導入細胞株は、腫瘍を形成し始めた。Foxa2形質導入細胞株は、目に見えるいかなる腫瘍も形成しなかった。GATA4形質導入細胞株は、より後の時点で小さな腫瘍増殖を示した。結果は、リプログラミングされたHepG2細胞内のFoxa2またはGATA4により、細胞増殖が減少したことを明らかにした(図20B)。
【0097】
リプログラミングしたHepG2細胞の機能
Foxa2、GATA4、HNF4A、またはGFP形質導入HepG2細胞を抗アルブミン抗体で染色して、細胞株におけるアルブミン産生を調べた。図21Aに示すように、Foxa2とGATA4形質導入細胞株との両方は、免疫染色により試験したHNF4A及びGFP形質導入細胞株と比較して、増加したアルブミンを産生した。この結果は、図21Bに示すように、ウエスタンブロット分析により確認された。Foxa2及びGATA4形質導入細胞株におけるアルブミンの増加量は、2倍超であった(図21C)。Foxa2及びGATA4形質導入細胞株におけるアルブミンは、細胞の外側に分泌することができた。GFP形質導入細胞株と比較して、Foxa2またはGATA4形質導入細胞株からのアルブミンの分泌は、ELISAによって検出して4倍超増加した(図21D)。このため、Foxa2またはGATA4の形質導入及び過剰発現により、形質導入細胞株による正常な肝臓細胞の生理学的特性の提示が促進された。
【0098】
リプログラミングしたHepG2細胞における肝臓癌マーカー
免疫染色により示されるように、GATA4、Foxa2、HNF4A、またはGFP形質導入細胞株で発現されたAFPは、細胞質内に局在した(図22A)。GATA4及びFoxa2形質導入細胞株では、AFP発現が低下した。ウエスタンブロット検査により、GATA4細胞株におけるAFP発現量は、GFP形質導入細胞株と比較して60パーセント多く減少した(図22B)。インビボ試験のため、GATA4、HNF4A、またはGFP細胞株を皮下異種移植したヌードマウス中でHepG2腫瘍を発生させ、腫瘍試料を収集した。Foxa2形質導入細胞株は、腫瘍形成の能力を喪失した。GATA4、HNF4A、またはGFP細胞株で形成された腫瘍をPFAに固定し、切断し、免疫蛍光により分析した。図22Cに示すように、GATA4細胞株で産生されたAFPは減少し、HNF4A細胞株で産生されたAFPは軽度に減少した。GATA4、HNF4A、またはGFP細胞株で発生させ新鮮なHepG2腫瘍試料もウエスタンブロット分析に供した。GATA4は、GATA4細胞株から形成された腫瘍において過剰発現され、AFP発現レベルは低下した(図22D)。GATA4細胞株を使用したインビボ試験とインビトロ試験との両方で、AFP発現の減少を観察した。
【0099】
リプログラミングしたHepG2細胞における肝臓細胞マーカー
E-カドヘリン発現が、GATA4、Foxa2、HNF4A、及びGFP形質導入細胞株において、インビトロ及びインビボで観察された。GATA4、Foxa2、HNF4A、及びGFP形質導入細胞株をカバースリップ上で増殖させ、抗E-カドヘリン抗体で染色した。免疫蛍光分析により、E-カドヘリンが、GFP発現細胞と比較して、Foxa2、HNF4A、及びGATA4形質導入細胞中でより強く発現されることが示された。E-カドヘリンは細胞膜に局在した(図23A)。GATA4発現によりE-カドヘリン発現が救済されるかどうかを調べるために、GATA4、Foxa2、HNF4A、及びGFPを発現する細胞株を採取し、溶解させ、ウエスタンブロットにより分析した。E-カドヘリンはGATA4発現株において2倍超救済され(図23B)、免疫蛍光分析及びウエスタンブロットにより得られた結果を反映した(図23A)。GATA4、HNF4A、及びGFP過剰発現腫瘍におけるE-カドヘリン発現レベルを決定するために、インビボ実験を行った。図23C及び図23Dに示されるように、GATA4過剰発現を有する腫瘍は、免疫蛍光分析またはウエスタンブロットのいずれかにより試験したとき、E-カドヘリンのレベルが2倍超高い。E-カドヘリン発現は、HNF4A過剰発現細胞株において増加したが、腫瘍増殖率はGFP対照細胞株と比較して低下しなかった。これらのデータは、E-カドヘリンレベルの上昇が、リプログラミングされた腫瘍細胞の機能改善の指標として使用され得ることを示す。
【0100】
これらの知見は、転写因子GATA4がE-カドヘリン発現を促進したことを示す。GATA4過剰発現がベータ-カテニンに影響を及ぼすかどうかを調べるために、GATA4形質導入細胞株及びGFP形質導入細胞株の両方に免疫蛍光分析を行った。GATA4形質導入細胞株は、GFP過剰発現細胞と比較して、ベータ-カテニン発現を増加させた(図24A)。これらの結果により、GFP細胞内のベータ-カテニンが核周辺領域に分布し、核分布への優先傾向がわずかにあるのに対し、GATA4形質導入細胞株中のベータ-カテニンは細胞表面に分布したことも示された。ウエスタンブロットを使用して、GATA4形質導入細胞株中のベータ-カテニン発現を分析した。GATA4形質導入細胞株は、ベータ-カテニン発現を増加させた(図24B)。HNF4A形質導入細胞も、ベータ-カテニン発現の増加を示した。
【0101】
GATA4形質導入細胞株またはGFP形質導入細胞株からインビボで形成された腫瘍に由来する腫瘍試料をベータ-カテニンについて染色すると、GATA4腫瘍中のベータ-カテニン発現がGFP腫瘍よりも高かったことが免疫蛍光分析により示された。腫瘍中の細胞の混雑した微小な細胞質空間を理由に、これら2種類の腫瘍間のベータ-カテニン分布の差は決定できなかった(図24C)。GATA4腫瘍におけるベータ-カテニンの増加量は、ウエスタンブロットによって評価して、GFP腫瘍よりも3倍高かった(図24D)。
【0102】
GATA4、HNF4A、またはGFP形質導入細胞株からインビボで形成された腫瘍に由来する腫瘍試料も、ウエスタンブロットによりビメンチンについて分析した。図25に示されるように、ビメンチン発現は、GFP腫瘍と比較してGATA4過剰発現腫瘍中で低下した。GATA4腫瘍中のビメンチン発現レベルを定量化すると、GATA4腫瘍中のビメンチンの減少は、GFP腫瘍と比較して2倍超であった。
【0103】
これらの知見は、HCC腫瘍細胞の運命が転写因子の過剰発現をとおして変化したことを示す。機序の変化は、上皮から間葉への転換(EMT)の逆のプロセスである間葉から上皮への転換(MET)と関連付けることができる。総合すると、これらの結果により、がん細胞(例えば、肝臓癌細胞)がインビトロとインビボとの両方で正常様細胞(例えば、正常様肝臓細胞)にリプログラミングされることで、がん(例えば、肝臓癌)を処置するための代替的な治療アプローチがもたらされ得ることが示される。
【0104】
その他の態様
本発明をその詳細な説明とともに記載してきたが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を例示するものであり、それを限定することは意図していないことを理解されたい。他の態様、利点、及び変形は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7
図8
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図10A
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図15
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図19
図20
図21
図22A
図22B
図22C
図22D
図23A
図23B
図23C
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図24A
図24B
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図24D
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
【配列表】
2022527277000001.app
【国際調査報告】