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特表2022-527278IL23アンタゴニスト療法に適した患者集団
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-01
(54)【発明の名称】IL23アンタゴニスト療法に適した患者集団
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20220525BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220525BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220525BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220525BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220525BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20220525BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220525BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20220525BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
G01N33/68
A61K45/00 ZNA
A61P29/00
A61P1/00
A61P1/04
A61P17/06
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P19/08
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557371
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(85)【翻訳文提出日】2021-11-22
(86)【国際出願番号】 US2020024990
(87)【国際公開番号】W WO2020198493
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】62/824,245
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521011891
【氏名又は名称】アストラゼネカ・コラボレイション・ベンチャーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA COLLABORATION VENTURES, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,チン
【テーマコード(参考)】
2G045
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA26
2G045DA36
2G045FB03
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA66
4C084ZA68
4C084ZA89
4C084ZA96
4C084ZB11
4C085AA14
4C085BB17
4C085BB31
4C085EE01
(57)【要約】
本開示は、インターロイキン-22結合タンパク質の血清レベルおよび/またはインターフェロン-γの血清レベルを測定することにより、抗インターロイキン-23療法による治療に適した炎症性腸疾患などの炎症状態を有する患者の亜集団または対象を選択するための方法を提供する。さらに、これらの方法は、抗IL-23療法および/または抗IFN-γ療法による治療に適した乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、強直性脊椎炎などの炎症性障害を有する患者の亜集団を特定するのに有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗インターロイキン-23(抗IL-23)剤による治療に適した炎症状態を有する対象を選択する方法であって、
(a)対象におけるインターロイキン-22結合タンパク質(IL-22BP)の血清レベルを測定することと、
(b)前記対象におけるIL-22BPの前記血清レベルを、対照におけるIL-22BPの血清レベルと比較することであって、前記対照は、炎症状態を伴わない1人以上の個体である、比較することと、
(c)前記IL-22BPの血清レベルが前記対照よりも前記対象において低い場合、抗IL-23剤による治療に適した炎症状態を有するものとして前記対象を選択することと、を含む方法。
【請求項2】
前記抗IL-23剤がブラジクマブである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炎症状態が、炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、または強直性脊椎炎である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記炎症性腸疾患が、クローン病または潰瘍性大腸炎である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記炎症状態が、腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記インターロイキン-22結合タンパク質の血清レベルが、359pg/mL未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
対象が炎症状態を有することを決定することをさらに含み、前記炎症状態が、身体検査を実施することによって、対象の医療記録を参照することによって、または医師に相談することによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記炎症状態を治療するのに有効な量の抗IL-23剤を投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記抗IL-23剤がブラジクマブである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記抗IL-23剤が、12.5ng/ml~1,000ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記治療が、0.5~1.5ヶ月ごとに15~54mg、1.5~4.5ヶ月ごとに55~149mg、4~8ヶ月ごとに150~299mg、8~14ヶ月ごとに300~1100mg、または4~12ヶ月ごとに300~1100mgの、前記抗IL-23剤の量および間隔で与えられる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記治療が、0.5~1.0ヶ月ごとに15~21mg、1.5~3.0ヶ月ごとに55~70mg、4~6ヶ月ごとに150~260mg、または4~8ヶ月ごとに300~700mgの、前記抗IL-23剤の量および間隔で与えられる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
患者におけるインターロイキン-23(IL-23)媒介性炎症状態を治療する方法であって、前記患者が、対照試料中のIL-22BPレベルよりも低いIL-22BPの血清レベルを有すると決定された場合に、有効量の抗IL-23剤を患者に投与することを含み、前記対照試料が、炎症状態を伴わない1人以上の個体から得られる、方法。
【請求項14】
前記抗IL-23剤がブラジクマブである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記炎症状態が、炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、または強直性脊椎炎である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記炎症性腸疾患が、クローン病または潰瘍性大腸炎である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記炎症状態が、腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記抗IL-23剤が、12.5ng/ml~1,000ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記治療が、0.5~1.5ヶ月ごとに15~54mg、1.5~4.5ヶ月ごとに55~149mg、4~8ヶ月ごとに150~299mg、8~14ヶ月ごとに300~1100mg、または4~12ヶ月ごとに300~1100mgの、前記抗IL-23剤の量および間隔で与えられる、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記治療が、0.5~1.0ヶ月ごとに15~21mg、1.5~3.0ヶ月ごとに55~70mg、4~6ヶ月ごとに150~260mg、または4~8ヶ月ごとに300~700mgの、前記抗IL-23剤の量および間隔で与えられる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
抗インターロイキン-23(抗IL-23)剤による治療に適している炎症性腸疾患(IBD)患者の亜集団の少なくとも1人のメンバーを、IBDを有する患者の集団から選択する方法であって、前記患者の亜集団は、腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性のIBDを有するか、前記患者の亜集団は、そのための治療にナイーブなIBDを有するか、および/または前記患者の亜集団は、抗TNF剤による治療に不耐性であり、
(a)IBD患者のインターロイキン-22結合タンパク質(IL-22BP)の血清レベルを測定することと、
(b)前記IBD患者の前記血清IL-22BPレベルを対照のIL-22BPの血清レベルと比較することであって、前記対照のIL-22BPの血清レベルは、IBDを伴わない個体のIL-22BPの血清レベル、IBDを伴わない複数の個体におけるIL-22BPの平均レベル、またはIBDを有する複数の個体におけるIL-22BPの平均値のうちのいずれか1つである、比較することと、
(c)IL-22BPの前記血清レベルが前記対照よりも前記対象において低い場合、抗IL-23剤による治療に適したIBDを有するものとして前記患者を選択することと、を含む方法。
【請求項22】
前記抗IL-23剤がブラジクマブである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
IBD患者亜集団の前記メンバーが、クローン病患者または潰瘍性大腸炎患者である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記対照のIL-22BPの血清レベルが、IBDを有する複数の個体におけるIL-22BPの平均値である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記IBDが、クローン病または潰瘍性大腸炎である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記IBDを有する患者の集団が、TNF治療に抵抗性のIBDを有する患者の集団である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
対象が炎症性腸疾患を有することを決定することをさらに含み、前記炎症性腸疾患が、身体検査を実施することによって、対象の医療記録を参照することによって、または医師に相談することによって決定される、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
炎症性腸状態を治療するのに有効な量の抗IL-23剤を投与することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記抗IL-23剤がブラジクマブである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記抗IL-23剤が、12.5ng/ml~1,000ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記治療が、0.5~1.5ヶ月ごとに15~54mg、1.5~4.5ヶ月ごとに55~149mg、4~8ヶ月ごとに150~299mg、8~14ヶ月ごとに300~1100mg、または4~12ヶ月ごとに300~1100mgの、前記抗IL-23剤の量および間隔で与えられる、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記治療が、0.5~1.0ヶ月ごとに15~21mg、1.5~3.0ヶ月ごとに55~70mg、4~6ヶ月ごとに150~260mg、または4~8ヶ月ごとに300~700mgの、前記抗IL-23剤の量および間隔で与えられる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
抗インターロイキン-23(抗IL-23)剤による治療に適している炎症性腸疾患(IBD)患者の亜集団のメンバーである患者を治療する方法であって、前記患者の亜集団は、腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性のIBDを有するか、前記患者の亜集団は、そのための治療にナイーブなIBDを有するか、および/または前記患者の亜集団は、抗TNF剤による治療に不耐性であり、IL-22BPの血清レベルが、対照よりも前記患者において低い場合、有効量の抗IL-23剤を投与することを含み、前記対照は、IBDを伴わない個体におけるIL-22BPの血清レベル、IBDを伴わない複数の個体におけるIL-22BPの平均レベル、またはIBDを有する複数の個体におけるIL-22BPの平均レベルのうちのいずれか1つである、方法。
【請求項34】
前記抗IL-23剤がブラジクマブである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記患者が、クローン病または潰瘍性大腸炎を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記抗IL-23剤が、12.5ng/ml~1,000ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記治療が、0.5~1.5ヶ月ごとに15~54mg、1.5~4.5ヶ月ごとに55~149mg、4~8ヶ月ごとに150~299mg、8~14ヶ月ごとに300~1100mg、または4~12ヶ月ごとに300~1100mgの、前記抗IL-23剤の量および間隔で与えられる、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記治療が、0.5~1.0ヶ月ごとに15~21mg、1.5~3.0ヶ月ごとに55~70mg、4~6ヶ月ごとに150~260mg、または4~8ヶ月ごとに300~700mgの、前記抗IL-23剤の量および間隔で与えられる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
腫瘍壊死因子治療に抵抗性の炎症状態を有する患者集団から、抗インターロイキン-23(抗IL-23)剤による治療に適した炎症状態を有する対象を選択する方法であって、
(a)対象におけるインターロイキン-22結合タンパク質(IL-22BP)の血清レベルを測定することと、
(b)前記対象における前記血清IL-22BPレベルを、対照におけるIL-22BPの血清レベルと比較することであって、前記対照は、腫瘍壊死因子治療に抵抗性の炎症状態を伴わない1人以上の個体である、比較することと、
(c)前記IL-22BPの血清レベルが前記対照よりも前記対象において低い場合、抗IL-23剤による治療に適した炎症状態を有するものとして前記対象を選択することと、を含む方法。
【請求項40】
前記抗IL-23剤がブラジクマブである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記炎症状態が、炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、または強直性脊椎炎である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記炎症性腸疾患が、クローン病または潰瘍性大腸炎である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
抗IL-23剤による治療に適した炎症状態を有するとして選択された前記対象が、359pg/mL未満のIL-22BPの血清レベルを有する、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
対象が、腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性の炎症状態を有することを決定することをさらに含み、前記TNF子治療に抵抗性の炎症状態が、身体検査を実施することによって、対象の医療記録を参照することによって、または医師に相談することによって決定される、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性の炎症状態を治療するのに有効な量の抗IL-23剤を投与することをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記抗IL-23剤がブラジクマブである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記抗IL-23剤が、12.5ng/ml~1,000ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記治療が、0.5~1.5ヶ月ごとに15~54mg、1.5~4.5ヶ月ごとに55~149mg、4~8ヶ月ごとに150~299mg、8~14ヶ月ごとに300~1100mg、または4~12ヶ月ごとに300~1100mgの、前記抗IL-23剤の量および間隔で与えられる、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記治療が、0.5~1.0ヶ月ごとに15~21mg、1.5~3.0ヶ月ごとに55~70mg、4~6ヶ月ごとに150~260mg、または4~8ヶ月ごとに300~700mgの、前記抗IL-23剤の量および間隔で与えられる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
腫瘍壊死因子治療に抵抗性の炎症状態を有する対象を治療する方法であって、IL-22BPの血清レベルが、対照よりも前記対象において低い場合、有効量の抗IL-23剤を投与することを含み、前記対照は、腫瘍壊死因子治療に抵抗性の炎症状態を伴わない1人以上の個体である、方法。
【請求項51】
前記抗IL-23剤がブラジクマブである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記炎症状態が、炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、または強直性脊椎炎である、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記炎症性腸疾患が、クローン病または潰瘍性大腸炎である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記対象が、359pg/mL未満のIL-22BPの血清レベルを有する、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
前記抗IL-23剤が、12.5ng/ml~1,000ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
前記治療が、0.5~1.5ヶ月ごとに15~54mg、1.5~4.5ヶ月ごとに55~149mg、4~8ヶ月ごとに150~299mg、8~14ヶ月ごとに300~1100mg、または4~12ヶ月ごとに300~1100mgの、前記抗IL-23剤の量および間隔で与えられる、請求項50に記載の方法。
【請求項57】
前記治療が、0.5~1.0ヶ月ごとに15~21mg、1.5~3.0ヶ月ごとに55~70mg、4~6ヶ月ごとに150~260mg、または4~8ヶ月ごとに300~700mgの、前記抗IL-23剤の量および間隔で与えられる、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
抗インターロイキン-23(抗IL-23)剤による治療に適した炎症状態を有する対象を選択する方法であって、
(a)対象のインターフェロン-γ(IFN-γ)の血清レベルを測定することと、
(b)前記対象におけるIFN-γの前記血清レベルを、対照におけるIFN-γの血清レベルと比較することであって、前記対照は、炎症状態を伴わない1人以上の個体である、比較することと、
(c)前記IFN-γの血清レベルが前記対照よりも前記対象において高い場合、抗IL-23剤による治療に適した炎症状態を有するものとして前記対象を選択することと、を含む方法。
【請求項59】
前記抗IL-23剤がブラジクマブである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記炎症状態が、炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、または強直性脊椎炎である、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記炎症性腸疾患が、クローン病または潰瘍性大腸炎である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記選択された対象が、15pg/mLを超えるインターフェロン-γの血清濃度を有する、請求項58に記載の方法。
【請求項63】
前記炎症状態が、腫瘍壊死因子治療に抵抗性である、請求項58に記載の方法。
【請求項64】
対象が炎症状態を有することを決定することをさらに含み、前記炎症状態が、身体検査を実施することによって、対象の医療記録を参照することによって、または医師に相談することによって決定される、請求項58に記載の方法。
【請求項65】
前記炎症状態を治療するのに有効な量の抗IL-23剤を投与することをさらに含む、請求項58に記載の方法。
【請求項66】
前記抗IL-23剤がブラジクマブである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記抗IL-23剤が、12.5ng/ml~1,000ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記治療が、0.5~1.5ヶ月ごとに15~54mg、1.5~4.5ヶ月ごとに55~149mg、4~8ヶ月ごとに150~299mg、8~14ヶ月ごとに300~1100mg、または4~12ヶ月ごとに300~1100mgの、前記抗IL-23剤の量および間隔で与えられる、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記治療が、0.5~1.0ヶ月ごとに15~21mg、1.5~3.0ヶ月ごとに55~70mg、4~6ヶ月ごとに150~260mg、または4~8ヶ月ごとに300~700mgの、前記抗IL-23剤の量および間隔で与えられる、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
炎症状態を有する対象を治療する方法であって、前記インターフェロン-γの血清レベルが、対照よりも前記対象において高い場合、有効量の抗IL-23剤を投与することを含み、前記対照は、炎症状態を伴わない1人以上の個体である、方法。
【請求項71】
前記抗IL-23剤がブラジクマブである、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記炎症状態が、炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、または強直性脊椎炎である、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記炎症性腸疾患が、クローン病または潰瘍性大腸炎である、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記炎症状態が、腫瘍壊死因子治療に抵抗性である、請求項70に記載の方法。
【請求項75】
前記選択された対象が、15pg/mLを超えるインターフェロン-γの血清濃度を有する、請求項70に記載の方法。
【請求項76】
前記抗IL-23剤が、12.5ng/ml~1,000ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される、請求項70に記載の方法。
【請求項77】
前記治療が、0.5~1.5ヶ月ごとに15~54mg、1.5~4.5ヶ月ごとに55~149mg、4~8ヶ月ごとに150~299mg、8~14ヶ月ごとに300~1100mg、または4~12ヶ月ごとに300~1100mgの、前記抗IL-23剤の量および間隔で与えられる、請求項70に記載の方法。
【請求項78】
前記治療が、0.5~1.0ヶ月ごとに15~21mg、1.5~3.0ヶ月ごとに55~70mg、4~6ヶ月ごとに150~260mg、または4~8ヶ月ごとに300~700mgの、前記抗IL-23剤の量および間隔で与えられる、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
抗インターロイキン-23(抗IL-23)剤による治療に適している炎症性腸疾患(IBD)患者の亜集団の少なくとも1人のメンバーを、IBDを有する患者の集団から選択する方法であって、前記患者の亜集団は、腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性のIBDを有するか、前記患者の亜集団は、そのための治療にナイーブなIBDを有するか、および/または前記患者の亜集団は、抗TNF剤による治療に不耐性であり、
(a)IBD患者のインターフェロン-γ(IFN-γ)の血清レベルを測定することと、
(b)前記IBD患者の前記血清IFN-γレベルを対照のIFN-γの血清レベルと比較することであって、前記対照のIFN-γの血清レベルは、IBDを伴わない個体のIFN-γの血清レベル、IBDを伴わない複数の個体におけるIFN-γの平均レベル、またはIBDを有する複数の個体におけるIFN-γの平均値のいずれか1つである、比較することと、
(c)IFN-γの前記血清レベルが前記対照よりも前記対象において高い場合、抗IL-23剤による治療に適したIBDを有するものとして前記患者を選択することと、を含む方法。
【請求項80】
前記抗IL-23剤がブラジクマブである、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
IBD患者亜集団のメンバーが、クローン病患者または潰瘍性大腸炎患者である、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
前記対照のIFN-γの血清レベルが、IBDを有する複数の個体におけるIFN-γの平均値である、請求項79に記載の方法。
【請求項83】
前記IBDが、クローン病または潰瘍性大腸炎である、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記IBDを有する患者の集団が、TNF治療に抵抗性のIBDを有する患者の集団である、請求項79に記載の方法。
【請求項85】
前記選択された対象が、15pg/mLを超えるインターフェロン-γの血清濃度を有する、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
対象が炎症性腸疾患を有することを決定することをさらに含み、前記炎症性腸疾患が、身体検査を実施することによって、対象の医療記録を参照することによって、または医師に相談することによって決定される、請求項79に記載の方法。
【請求項87】
前記炎症性腸状態を治療するのに有効な量の抗IL-23剤を投与することをさらに含む、請求項79に記載の方法。
【請求項88】
前記抗IL-23剤がブラジクマブである、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記抗IL-23剤が、12.5ng/ml~1,000ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される、請求項87に記載の方法。
【請求項90】
前記治療が、0.5~1.5ヶ月ごとに15~54mg、1.5~4.5ヶ月ごとに55~149mg、4~8ヶ月ごとに150~299mg、8~14ヶ月ごとに300~1100mg、または4~12ヶ月ごとに300~1100mgの、前記抗IL-23剤の量および間隔で与えられる、請求項87に記載の方法。
【請求項91】
前記治療が、0.5~1.0ヶ月ごとに15~21mg、1.5~3.0ヶ月ごとに55~70mg、4~6ヶ月ごとに150~260mg、または4~8ヶ月ごとに300~700mgの、前記抗IL-23剤の量および間隔で与えられる、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
抗インターロイキン-23(抗IL-23)剤による治療に適している炎症性腸疾患(IBD)患者の亜集団のメンバーである患者を治療する方法であって、前記患者の亜集団は、腫瘍壊死因子治療に抵抗性のIBDを有するか、前記患者の亜集団は、そのための治療にナイーブなIBDを有するか、および/または前記患者の亜集団は、抗TNF剤による治療に不耐性であり、インターフェロン-γ(IFN-γ)の血清レベルが、対照よりも前記患者において高い場合、有効量の抗IL-23剤を投与することを含み、前記対照は、IBDを伴わない個体におけるIFN-γの血清レベル、IBDを伴わない複数の個体におけるIFN-γの平均レベル、またはIBDを有する複数の個体におけるIFN-γの平均レベルのいずれか1つである、方法。
【請求項93】
前記抗IL-23剤がブラジクマブである、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記炎症性腸疾患が、クローン病または潰瘍性大腸炎である、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
前記患者が、15pg/mLを超えるインターフェロン-γの血清濃度を有する、請求項92に記載の方法。
【請求項96】
前記抗IL-23剤が、12.5ng/ml~1,000ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される、請求項92に記載の方法。
【請求項97】
前記治療が、0.5~1.5ヶ月ごとに15~54mg、1.5~4.5ヶ月ごとに55~149mg、4~8ヶ月ごとに150~299mg、8~14ヶ月ごとに300~1100mg、または4~12ヶ月ごとに300~1100mgの、前記抗IL-23剤の量および間隔で与えられる、請求項92に記載の方法。
【請求項98】
前記治療が、0.5~1.0ヶ月ごとに15~21mg、1.5~3.0ヶ月ごとに55~70mg、4~6ヶ月ごとに150~260mg、または4~8ヶ月ごとに300~700mgの、前記抗IL-23剤の量および間隔で与えられる、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性の炎症状態を有する患者集団から、抗インターロイキン-23(抗IL-23)剤による治療に適した炎症状態を有する対象を選択する方法であって、
(a)対象のインターフェロン-γ(IFN-γ)の血清レベルを測定することと、
(b)前記対象における前記血清IFN-γレベルを、対照におけるIFN-γの血清レベルと比較することであって、前記対照は、炎症状態を伴わない1人以上の個体である、比較することと、
(c)IFN-γの前記血清レベルが前記対照よりも前記対象において高い場合、抗IL-23剤による治療に適した炎症状態を有するものとして前記対象を選択することと、を含む方法。
【請求項100】
前記抗IL-23剤がブラジクマブである、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記炎症状態が、炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、または強直性脊椎炎である、請求項99に記載の方法。
【請求項102】
前記炎症性腸疾患が、クローン病または潰瘍性大腸炎である、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記選択された対象が、15pg/mLを超えるインターフェロン-γの血清濃度を有する、請求項99に記載の方法。
【請求項104】
対象が、腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性の炎症状態を有することを決定することをさらに含み、前記腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性の炎症状態が、身体検査を実施することによって、対象の医療記録を参照することによって、または医師に相談することによって決定される、請求項99に記載の方法。
【請求項105】
前記腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性の炎症状態を治療するのに有効な量の抗IL-23剤を投与することをさらに含む、請求項99に記載の方法。
【請求項106】
前記抗IL-23剤がブラジクマブである、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記抗IL-23剤が、12.5ng/ml~1,000ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される、請求項105に記載の方法。
【請求項108】
前記治療が、0.5~1.5ヶ月ごとに15~54mg、1.5~4.5ヶ月ごとに55~149mg、4~8ヶ月ごとに150~299mg、8~14ヶ月ごとに300~1100mg、または4~12ヶ月ごとに300~1100mgの、前記抗IL-23剤の量および間隔で与えられる、請求項105に記載の方法。
【請求項109】
前記治療が、0.5~1.0ヶ月ごとに15~21mg、1.5~3.0ヶ月ごとに55~70mg、4~6ヶ月ごとに150~260mg、または4~8ヶ月ごとに300~700mgの、前記抗IL-23剤の量および間隔で与えられる、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
抗インターロイキン-23(抗IL-23)剤による治療に適した炎症状態を有する対象を治療する方法であって、前記対象が、腫瘍壊死因子治療に抵抗性の炎症状態を有する患者集団のメンバーであり、IFN-γの血清レベルが、対照よりも前記対象において高い場合、有効量の抗IL-23剤を投与することを含み、前記対照は、炎症状態を伴わない1人以上の個体である、方法。
【請求項111】
前記抗IL-23剤がブラジクマブである、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記炎症状態が、炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、または強直性脊椎炎である、請求項110に記載の方法。
【請求項113】
前記炎症性腸疾患が、クローン病または潰瘍性大腸炎である、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記対象が、15pg/mLを超えるインターフェロン-γの血清濃度を有する、請求項110に記載の方法。
【請求項115】
前記抗IL-23剤が、12.5ng/ml~1,000ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される、請求項110に記載の方法。
【請求項116】
前記治療が、0.5~1.5ヶ月ごとに15~54mg、1.5~4.5ヶ月ごとに55~149mg、4~8ヶ月ごとに150~299mg、8~14ヶ月ごとに300~1100mg、または4~12ヶ月ごとに300~1100mgの、前記抗IL-23剤の量および間隔で与えられる、請求項110に記載の方法。
【請求項117】
前記治療が、0.5~1.0ヶ月ごとに15~21mg、1.5~3.0ヶ月ごとに55~70mg、4~6ヶ月ごとに150~260mg、または4~8ヶ月ごとに300~700mgの、前記抗IL-23剤の量および間隔で与えられる、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
抗インターロイキン-23(抗IL-23)剤による治療に適した炎症状態を有する対象を選択する方法であって、
(a)対象におけるインターロイキン-22結合タンパク質(IL-22BP)、インターフェロン-γ(IFN-γ)、またはIL-22BPとIFN-γの両方の血清レベルを測定することと、
(b)前記対象におけるIL-22BP、IFN-γ、またはIL-22BPとIFN-γの両方の前記血清レベルを、対照におけるIL-22BP、IFN-γ、またはIL-22BPとIFN-γの両方の血清レベルと比較することであって、前記対照は、炎症状態を伴わない1人以上の個体である、比較することと、
(c)前記対照よりも前記対象において、前記IL-22BPの血清レベルが低いか、前記IFN-γの血清レベルが高いか、または前記IL-22BPの血清レベルが低く、かつ前記IFN-γの血清レベルが高い場合に、抗IL-23剤による治療に適した炎症状態を有するとして対象を選択することと、を含む方法。
【請求項119】
前記抗IL-23剤がブラジクマブである、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記炎症状態が、炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、または強直性脊椎炎である、請求項118に記載の方法。
【請求項121】
前記炎症性腸疾患が、クローン病または潰瘍性大腸炎である、請求項118に記載の方法。
【請求項122】
前記選択された対象が、15pg/mLを超えるインターフェロン-γの血清濃度を有する、請求項118に記載の方法。
【請求項123】
対象が、腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性の炎症状態を有することを決定することをさらに含み、前記腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性の炎症状態が、身体検査を実施することによって、対象の医療記録を参照することによって、または医師に相談することによって決定される、請求項118に記載の方法。
【請求項124】
前記腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性の炎症状態を治療するのに有効な量の抗IL-23剤を投与することをさらに含む、請求項118に記載の方法。
【請求項125】
前記抗IL-23剤がブラジクマブである、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
前記対照よりも前記患者において、前記IFN-γの血清レベルが高いか、任意選択で、前記IL-22BPの血清レベルが低い場合に、有効量の抗IL-23剤を前記患者に投与することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項127】
前記抗IL-23剤がブラジクマブである、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
前記炎症状態が、炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、または強直性脊椎炎である、請求項126に記載の方法。
【請求項129】
前記炎症性腸疾患が、クローン病または潰瘍性大腸炎である、請求項128に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりそのすべてが本明細書に組み込まれる2019年3月26日に出願された米国特許仮出願第62/824,245号の優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、一般に、炎症状態の治療に適した、より具体的には、炎症性腸疾患の治療に適した患者亜集団を選択する分野に関する。
【背景技術】
【0003】
インターロイキン-22(IL-22)は、クローン病(CD)と潰瘍性大腸炎(UC)の両方で強く発現するIL-10サイトカインファミリーのメンバーである。これらの観察結果と一致して、IL-22は炎症誘発性を有することが示されているが、このサイトカインは肝臓と肺で臓器保護効果を発揮することも示されている。Sonnenberg et al.,J.Exp.Med.207:1293-1305(2010)、Cobleigh et al.,Am.J.Pathol.182:21-28(2013)。IL-22は、IL-23などの様々な環境および内因性シグナルによって誘導される。いくつかのゲノムワイド関連解析による感受性遺伝子としてのIL23Rの同定は、炎症性腸疾患(IBD)で役割を果たすIL-23経路と一致している。IL-22は、IBD患者の腸で上方制御される。IL-22は通常、腸の粘膜の治癒を促進することができるが、制御されていない場合、腸の病因につながる可能性がある。したがって、IL-22活性の厳密な制御が不可欠である。IL-22結合タンパク質(IL-22BP)は、IL-22に特異的に結合し、膜結合IL-22受容体1(IL-22R1)に結合するのを防ぐことにより、この制御を発揮する。IL-22とIL-22BPの結合親和性は、前者と膜結合型IL-22R1の20~1000倍である。IL-22およびIL-22BPは、マウスモデルの腸の組織損傷時に逆発現パターンを示す。IL-22BPは、恒常性および組織修復中に結腸で最も高度に発現するが、IL-22は組織の損傷のピーク時に最も高度に発現する。したがって、IL-22とIL-22BPの注意深い調節は腸の恒常性を制御するが、ヒトIBDにおけるIL-22BPの役割は不明である。
【0004】
インターフェロンガンマ(IFN-γ)は、炎症反応を促進する古典的なTh1サイトカインとして同定されているが、様々な炎症状態におけるその役割はまだ明らかではない。さらに、IFN-γは自然免疫応答と適応免疫応答の両方で役割を果たすことが知られている。また、それは、ウイルス感染や一部の細菌感染や原虫感染を含む微生物感染を防ぐ役割も果たす。IFN-γは、炎症反応の重要なメディエーターであるIL-23によって刺激され、IFN-γは炎症性腸疾患の原因因子として同定されている(Ito et al.,Clin.and Exper.Immunol.146:330-338(2006))。これらの観察と一致して、Stroberらは、IFN-γおよびIL-17/IL-22が炎症性腸疾患(IBD)に関与する重要なサイトカインであると報告した。さらに、抗IFN-γ抗体であるフォントリズマブは、クローン病の重症度を低下させることが示された。Ghosh et al.,Gut 55:1071-1073(2006)。Harbour et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 112:7061-7066(2015)は、Th17 T細胞を分析し、Th17細胞のサブセットが、Th1細胞、IFN-γが定義マーカーである細胞へと分化したことを示し、IFN-γのこの炎症誘発性の側面を確認したようである。しかしながら、Harbourらは、大腸炎の誘発には、Sta4およびT-betの発現が必要であるが、IFN-γは必要ではないことも開示した。Harbourらのこの後者の発見は、IFN-γが大腸炎の初期に抗炎症特性を有するという報告を考慮すると驚くべきことではなかった。Sheikh et al.,J.Immunol.184:4069-4073(2010)。したがって、炎症反応におけるIFN-γの役割に関する情報を蓄積することにより、サイトカインが重要な役割を果たしていることが立証されるが、その役割の正確な性質はまだ完全には解明されていない。
【0005】
インターロイキン(IL)-23は、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、強直性脊椎炎を含むが、これらに限定されない、様々な炎症状態の病因に関与する炎症性サイトカインである。IL23は、IL-17A、IL-17A受容体、TNF-α、GM-CSFを含む多くの炎症性遺伝子を発現させるようにT細胞を誘導する。IL-23の主な既知の効果は、TヘルパーTh17細胞、ならびにマクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、樹状細胞、および生来のリンパ系細胞の分化を促進し、IL-17、IL-22、TNF-α、GM-CSF、およびIFN-γの上方制御ならびにIL-10の下方制御を引き起こすことである。
【0006】
サイトカインのIL-12ファミリーのメンバーであるIL-23は、炎症性サイトカインを強力に誘導するヘテロ二量体サイトカインである。IL-23は、共通のp40サブユニットを共有するヘテロ二量体サイトカインであるインターロイキン12(IL-12)に関連している。IL-23では、ユニークなp19サブユニットがp40サブユニットに共有結合している。IL-12では、ユニークなサブユニットはp35である(Oppmann et al.,Immunity,2000,13:713-715)。IL-23は、CD40ライゲーション、Toll様受容体アゴニスト、および病原体などの活性化刺激に応答して、抗原提示細胞(樹状細胞やマクロファージなど)によって発現される。IL-23は、IL-12Rβ1サブユニット(IL-12受容体と共有)および固有の受容体サブユニットであるIL-23Rを含むヘテロ二量体受容体に結合する。
【0007】
IL-23は、活性化されたメモリーT細胞に作用し、T細胞サブセットであるTh17の生存および増殖を促進する。Th17細胞は、IL-6、IL-17、TNFα、IL-22、およびGM-CSFなどの炎症性サイトカインを産生する。IL-23は、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、およびマクロファージにも作用して、炎症性サイトカインの発現を誘導する。IL-23とは異なり、IL-12はナイーブCD4+ T細胞の成熟Th1 IFN-γ産生エフェクター細胞への分化を誘導し、IFN-γ産生を刺激することによって、NKおよび細胞傷害性T細胞の機能を誘導する。IL-12によって駆動されるTh1細胞は、以前は多くの自己免疫疾患の病原性T細胞サブセットであると考えられていた。しかし、IL-12およびIL-23の個々の寄与が評価された、炎症性腸疾患、乾癬、炎症性関節炎、および多発性硬化症のモデルにおける最近の動物研究により、IL-12ではなくIL-23が、自己免疫/炎症性疾患の主要な推進力であるということが、確証された(Ahern et al.,Immun.Rev.2008 226:147-159、Cua et al.,Nature 2003 421:744-748、Yago et al.,Arthritis Res and Ther.2007 9(5):R96)。IL-12は、多くの細胞内病原体やウイルスに対する自然免疫および獲得免疫の防御応答の発達、および腫瘍免疫監視において、重要な役割を果たしていると考えられている。Kastelein,et al.,Annual Review of Immunology,2007,25:221-42、Liu,et al.,Rheumatology,2007,46(8):1266-73、Bowman et al.,Current Opinion in Infectious Diseases,2006 19:245-52、Fieschi and Casanova,Eur.J.Immunol.2003 33:1461-4、Meeran et al.,Mol.Cancer Ther.2006 5:825-32、Langowski et al.,Nature 2006 442:461-5を参照されたい。そのため、IL-23特異的阻害(IL-12または共有p40サブユニットを温存する)は、IL-12とIL-23の二重阻害と比較して、優れた安全性プロファイルを持つことが期待される。
【0008】
IL-23は、共通のp40サブユニットを共有するヘテロ二量体サイトカインであるインターロイキン12(IL-12)に関連している。IL-23では、ユニークなp19サブユニットがp40サブユニットに共有結合している。IL-12では、ユニークなサブユニットはp35である(Oppmann et al.,Immunity,2000,13:713-715)。IL-23ヘテロ二量体タンパク質が分泌される。IL-12と同様に、IL-23は、CD40ライゲーション、Toll様受容体アゴニスト、および病原体などの活性化刺激に応答して、抗原提示細胞(樹状細胞やマクロファージなど)によって発現される。IL-23は、IL-12R131サブユニット(IL-12受容体と共有)および固有の受容体サブユニットであるIL-23Rを含むヘテロ二量体受容体に結合する。IL-12受容体は、IL-12WおよびIL-12R132で構成されている。IL-23はそのヘテロ二量体受容体に結合し、JAK2およびTyk2を介してシグナルを送り、STAT1、3、4、および5を活性化する(Parham et al.,J.Immunol.2002,168:5699-708)。受容体のサブユニットは、主に活性化またはメモリーT細胞とナチュラルキラー細胞で共発現し、樹状細胞、単球、マクロファージ、ミクログリア、ケラチノサイト、および滑膜線維芽細胞でも低レベルで発現する。IL-23およびIL-12は、異なるT細胞サブセットに作用し、インビボで実質的に異なる役割を果たす。
【0009】
IL-23は、活性化されたメモリーT細胞に作用し、T細胞サブセットであるTh17の生存および増殖を促進する。Th17細胞は、IL-6、IL-17、TNFα、IL-22、およびGM-CSFを含む炎症性サイトカインを産生する。IL-23は、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、およびマクロファージにも作用して、炎症性サイトカインの発現を誘導する。IL-23とは異なり、IL-12はナイーブCD4+ T細胞の成熟Th1 IFN-γ産生エフェクター細胞への分化を誘導し、IFN-γ産生を刺激することによって、NKおよび細胞傷害性T細胞の機能を誘導する。IL-12によって駆動されるTh1細胞は、以前は多くの自己免疫疾患の病原性T細胞サブセットであると考えられていた。しかし、IL-23に対するIL-12の個々の寄与が評価された、炎症性腸疾患、乾癬、炎症性関節炎、および多発性硬化症のモデルにおける最近の動物研究により、IL-12ではなくIL-23が、自己免疫/炎症性疾患の主要な推進力であるということが、確証された(Ahern et al.,Immun.Rev.2008 226:147-159、Cua et al.,Nature 2003 421:744-748、Yago et al.,Arthritis Res and Ther.2007 9(5):R96)。IL-12は、多くの細胞内病原体やウイルスに対する自然免疫および獲得免疫の防御応答の発達、および腫瘍免疫監視において、重要な役割を果たしていると考えられている。Kastelein,et al.,Annual Review of Immunology,2007,25:221-42、Liu,et al.,Rheumatology,2007,46(8):1266-73、Bowman et al.,Current Opinion in Infectious Diseases,2006 19:245-52、Fieschi and Casanova,Eur.J.Immunol.2003 33:1461-4、Meeran et al.,Mol,Cancer Ther.2006 5:825-32、およびLangowski et al.,Nature 2006 442:461-5を参照されたい。そのため、IL-23特異的阻害(IL-12または共有p40サブユニットを温存する)は、IL-12とIL-23の二重阻害と比較して、潜在的に、優れた安全性プロファイルを持つはずである。
【0010】
IL-12を温存する、ヒトIL-23を阻害するIL-23特異的アンタゴニスト(少なくとも固有のp19サブユニットに結合する抗体、またはIL-23のp19サブユニットとp40サブユニットの両方に結合する抗体など)を使用すると、IL-12の阻害に関連する潜在的な危険性を伴うことなく、IL-12アンタゴニストまたはp40アンタゴニストと同等であるか、それらよりも大きな効果を提供できるはずである。組換えIL-23の阻害のために選択されたマウス、ヒト化およびファージディスプレイ抗体が記載されている。例えば、米国特許第7,491,391号、WIPO公開第W01999/05280号、第W02007/0244846号、第W02007/027714号、第WO2007/076524号、第W02007/147019号、第W02008/103473号、第WO2008/103432号、第W02009/043933号、および第W02009/082624号を参照されたい。ナイーブなヒトIL-23を阻害することができる完全ヒト治療薬は、特にインビボで、標的に高度に特異的である。インビボ標的の完全な阻害は、より低い用量の製剤、より少ない頻度および/またはより効果的な投薬をもたらす可能性があり、その結果、コストが削減され、効率が向上する。
【0011】
炎症性腸疾患などの炎症状態がヒト集団に持続的に発生していること、および炎症を生物学的プロセスとして完全に理解していないことを考慮すると、特に治療が効果的で費用効果が高い場合、そのような障害や病気の特定の治療に適している対象または患者を効率的に特定する必要性が引き続き存在することは明らかである。
【発明の概要】
【0012】
本開示は、炎症状態を治療するための抗IL-23剤の形態での抗サイトカイン療法に適した患者集団または亜集団を同定するための効果的な方法を提供する。本明細書では、高レベルのIFN-γを示す炎症状態を有する対象が、抗IL-23抗体、例えば、ブラジクマブなどの抗インターロイキン-23剤による治療に応答する可能性が高いことを立証するデータが、開示される。したがって、本開示は、インターロイキン-22結合タンパク質の血清レベルおよび/またはIFN-γの血清レベルを測定することにより、抗インターロイキン-23療法による治療に応答的な炎症性腸疾患などの炎症状態を有する対象を選択するための方法を提供する。さらに、これらの方法は、抗IL-23療法および/または抗IFN-γ療法による治療に適した乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、強直性脊椎炎などの炎症性障害を有する患者の亜集団を特定するのに有用である。
【0013】
本開示の一態様は、抗インターロイキン-23(抗インターロイキン-23)剤による治療に適した炎症状態を有する対象を選択する方法であって、(a)対象におけるインターロイキン-22結合タンパク質(IL-22BP)の血清レベルを測定することと、(b)対象におけるIL-22BPの血清レベルを対照におけるIL-22BPの血清レベルと比較することであって、対照は、炎症状態を伴わない1人以上の個体である、比較することと、(c)IL-22BPの血清レベルが対照よりも対象において低い場合、抗IL-23剤による治療に適した炎症状態を有するものとして対象を選択することと、を含む方法を提供する際に、IL-22の炎症誘発性特性に基づいており、その器官保護機能に基づいていない。本開示のこの態様の考察から明らかなことは、本方法が、部分的に、IL-22の炎症誘発性およびIL-22BPによって提供されるその拮抗作用に基づいており、IL-22の器官保護機能またはIL-22BPによる任意の機能の拮抗作用にまったく基づいていないことである。したがって、本方法は、一般の人々によるIL-22BPのあらゆる使用を不可能とするものではない。また、本明細書に開示される方法は、少なくとも部分的に、自己免疫応答を含む免疫応答におけるIFN-γの役割に基づいており、感染に対する防御におけるIFN-γの役割にはまったく基づいていないことも明らかである。したがって、本方法は、一般の人々によるIFN-γのあらゆる使用を不可能とするものではない。
【0014】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、IL-23に特異的に結合する6つの相補性決定領域、すなわち、配列番号91のHCDR1、配列番号92のHCDR2、配列番号93のHCDR3、配列番号62のLCDR1、配列番号63のLCDR2、および配列番号64のLCDR3を含むブラジクマブである。いくつかの実施形態では、ブラジクマブは、配列番号153のV配列および配列番号154のV配列を含む。いくつかの実施形態では、ブラジクマブは、重鎖定常領域に融合された配列番号153のV配列および軽鎖定常領域に融合された配列番号154のV配列を含む。いくつかの実施形態では、炎症状態は、炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、または強直性脊椎炎である。炎症性腸疾患が、クローン病または潰瘍性大腸炎である、いくつかの実施形態が提供される。いくつかの実施形態では、炎症状態は、腫瘍壊死因子(TNF)治療に対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、インターロイキン-22結合タンパク質の血清レベルが、359pg/mL未満である。本開示はさらに、ブラジクマブ非応答者におけるIL-22BPの血清レベルが少なくとも359pg/mLであるか、または359pg/mL~6000pg/mLである、開示された方法の実施形態を企図する。いくつかの実施形態では、ブラジクマブ非応答者におけるIL-22BPのレベルは、359~5,000pg/mL、359~4,000pg/mL、359~2,500pg/mL、359~1,000pg/mL、359~500pg/mL、400~6,000pg/mL、400~5,000pg/mL、400~4,000pg/mL、400~2,500pg/mL、400~1,000pg/mL、400~500pg/mL、500~6,000pg/mL、500~5,000pg/mL、500~4,000pg/mL、500~2,500pg/mL、500~1,000pg/mL、750~6,000pg/mL、750~5,000pg/mL、750~4,000pg/mL、750~2,500pg/mL、750~1,000pg/mL、1,000~6,000pg/mL、1,000~5,000pg/mL、1,000~4,000pg/mL、1,000~2,500pg/mL、1,500~6,000pg/mL、1,500~5,000pg/mL、1,500~4,000pg/mL、1,500~2,500pg/mL、2,000~6,000pg/mL、2,000~5,000pg/mL、または2,000~2,500pg/mLである。いくつかの実施形態では、本方法は、対象が炎症状態を有することを決定することをさらに含み、炎症状態が、身体検査を実施することによって、対象の医療記録を参照することによって、または医師に相談することによって決定される。いくつかの実施形態では、本方法は、炎症状態を治療するのに有効な量の抗IL-23剤を投与することをさらに含み、例えば、抗IL-23剤はブラジクマブである。
【0015】
本開示の前述の態様によるいくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、12.5ng/ml~1,000ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される。いくつかの実施形態では、抗IL23剤、例えば、ヘテロ二量体特異的抗IL-23抗体は、少なくとも12.5ng/ml、25ng/ml、50ng/ml、60ng/ml、70ng/ml、75ng/ml、80ng/ml、85ng/ml、90ng/ml、95ng/ml、100ng/ml、150ng/ml、200ng/ml、500ng/ml、または990ng/mlの血清濃度を達成するために与えられる。いくつかの実施形態では、治療は、0.5~1.5ヶ月ごとに15~54mg、1.5~4.5ヶ月ごとに55~149mg、4~8ヶ月ごとに150~299mg、8~14ヶ月ごとに300~1100mg、または4~12ヶ月ごとに300~1100mgの、抗IL-23剤の量および間隔で与えられる。いくつかの実施形態では、治療は、0.5~1.0ヶ月ごとに15~21mg、1.5~3.0ヶ月ごとに55~70mg、4~6ヶ月ごとに150~260mg、または4~8ヶ月ごとに300~700mgの、抗IL-23剤の量および間隔で与えられる。いくつかの実施形態では、量および間隔は、毎月21mg、3ヶ月ごとに70mg、6ヶ月ごとに210mg、または6ヶ月ごとに700mgである。いくつかの実施形態では、抗IL-23抗体は、3ヶ月ごとに260mg、または3ヶ月ごとに700mgで投与される。いくつかの実施形態では、260mgの抗体が1ヶ月ごとに投与されるか、または700mgが1ヶ月ごとに投与される。いくつかの実施形態では、対象に投与される抗IL-23剤の投薬量は、70mgであり、例えば、用量当たり70mg、140mg、219mg、420mg、または700mgを投与する。
【0016】
本開示の関連する態様は、患者が、対照試料中のIL-22BPよりも低いIL-22BPの血清レベルを有すると決定された場合に、有効量の抗IL-23剤を患者に投与することを含み、対照試料は、炎症状態を伴わない1人以上の個体から得られるものである、患者におけるインターロイキン-23(IL-23)媒介性炎症状態を治療する方法を描写している。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、ブラジクマブである。いくつかの実施形態では、炎症状態は、炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、または強直性脊椎炎である。いくつかの実施形態では、炎症性腸疾患は、クローン病または潰瘍性大腸炎である。いくつかの実施形態では、炎症状態は、腫瘍壊死因子(TNF)治療に対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、12.5ng/ml~1,000ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される。いくつかの実施形態では、治療は、0.5~1.5ヶ月ごとに15~54mg、1.5~4.5ヶ月ごとに55~149mg、4~8ヶ月ごとに150~299mg、8~14ヶ月ごとに300~1100mg、または4~12ヶ月ごとに300~1100mgの、抗IL-23剤の量および間隔で与えられる。いくつかの実施形態では、治療は、0.5~1.0ヶ月ごとに15~21mg、1.5~3.0ヶ月ごとに55~70mg、4~6ヶ月ごとに150~260mg、または4~8ヶ月ごとに300~700mgの、抗IL-23剤の量および間隔で与えられる。いくつかの実施形態では、量および間隔は、毎月21mg、3ヶ月ごとに70mg、6ヶ月ごとに210mg、または6ヶ月ごとに700mgである。いくつかの実施形態では、抗IL-23抗体は、3ヶ月ごとに260mg、または3ヶ月ごとに700mgで投与される。いくつかの実施形態では、260mgの抗体が1ヶ月ごとに投与されるか、または700mgが1ヶ月ごとに投与される。いくつかの実施形態では、対象に投与される抗IL-23剤の投薬量は、70mgであり、例えば、用量当たり70mg、140mg、219mg、420mg、または700mgを投与する。
【0017】
本開示の別の態様は、IBDを伴う患者集団から、抗インターロイキン-23(抗IL-23)剤による治療に適している炎症性腸疾患(IBD)患者の亜集団の少なくとも1人のメンバーを選択する方法であって、患者の亜集団は、腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性のIBDを有するか、患者の亜集団は、そのための治療にナイーブなIBDを有するか、および/または患者の亜集団は、抗TNF剤による治療に不耐性であり、(a)IBD患者におけるインターロイキン-22結合タンパク質(IL-22BP)の血清レベルを測定することと、(b)IBD患者の血清IL-22BPレベルを対照のIL-22BPの血清レベルと比較することであって、対照のIL-22BPの血清レベルは、IBDを伴わない個体のIL-22BPの血清レベル、IBDを伴わない複数の個体におけるIL-22BPの平均レベル、またはIBDを伴う複数の個体におけるIL-22BPの平均値のいずれか1つである、比較することと、(c)IL-22BPの血清レベルが対照よりも対象において低い場合、抗IL-23剤による治療に応答するIBDを有するとして患者を選択することと、任意選択で、(d)患者へ有効量の抗IL-23剤を投与することと、を含む方法を描写している。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、ブラジクマブである。いくつかの実施形態では、IBD患者亜集団のメンバーは、クローン病患者または潰瘍性大腸炎患者である。いくつかの実施形態では、対照におけるIL-22BPの血清レベルは、IBDを伴う複数の個体におけるIL-22BPの平均値であり、これらの実施形態のいくつかは、IBDがクローン病または潰瘍性大腸炎である実施形態である。いくつかの実施形態では、IBDを有する患者の集団は、TNF治療に抵抗性のIBDを有する患者の集団である。本開示の本態様のいくつかの実施形態では、本方法は、対象が炎症性腸疾患を有することを決定することをさらに含み、炎症性腸疾患が、身体検査を実施することによって、対象の医療記録を参照することによって、または医師に相談することによって決定される。いくつかの実施形態では、本方法は、炎症性腸状態を治療するのに有効な量の抗IL-23剤を投与することをさらに含み、例えば、抗IL-23剤はブラジクマブである。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、12.5ng/ml~1,000ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される。いくつかの実施形態では、治療は、0.5~1.5ヶ月ごとに15~54mg、1.5~4.5ヶ月ごとに55~149mg、4~8ヶ月ごとに150~299mg、8~14ヶ月ごとに300~1100mg、または4~12ヶ月ごとに300~1100mgの、抗IL-23剤の量および間隔で与えられる。いくつかの実施形態では、治療は、0.5~1.0ヶ月ごとに15~21mg、1.5~3.0ヶ月ごとに55~70mg、4~6ヶ月ごとに150~260mg、または4~8ヶ月ごとに300~700mgの、抗IL-23剤の量および間隔で与えられる。いくつかの実施形態では、量および間隔は、毎月21mg、3ヶ月ごとに70mg、6ヶ月ごとに210mg、または6ヶ月ごとに700mgである。いくつかの実施形態では、抗IL-23抗体は、3ヶ月ごとに260mg、または3ヶ月ごとに700mgで投与される。いくつかの実施形態では、260mgの抗体が1ヶ月ごとに投与されるか、または700mgが1ヶ月ごとに投与される。いくつかの実施形態では、対象に投与される抗IL-23剤の投薬量は、70mg~であり、例えば、用量当たり70mg、140mg、219mg、420mg、または700mgを投与する。
【0018】
関連する一態様では、本開示は、抗インターロイキン-23(抗IL-23)剤による治療に適している炎症性腸疾患(IBD)患者の亜集団のメンバーである患者を治療する方法であって、患者の亜集団は、腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性のIBDを有するか、患者の亜集団は、そのための治療にナイーブなIBDを有するか、および/または患者の亜集団は、抗TNF剤による治療に不耐性であり、IL-22BPの血清レベルが、対照よりも患者において低い場合、有効量の抗IL-23剤を投与することを含み、対照は、IBDを伴わない個体におけるIL-22BPの血清レベル、IBDを伴わない複数の個体におけるIL-22BPの平均レベル、またはIBDを有する複数の個体におけるIL-22BPの平均レベルのいずれか1つである、方法を提供する。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、ブラジクマブである。いくつかの実施形態では、患者はクローン病または潰瘍性大腸炎を患っている。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、12.5ng/ml~1,000ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される。いくつかの実施形態では、治療は、0.5~1.5ヶ月ごとに15~54mg、1.5~4.5ヶ月ごとに55~149mg、4~8ヶ月ごとに150~299mg、8~14ヶ月ごとに300~1100mg、または4~12ヶ月ごとに300~1100mgの、抗IL-23剤の量および間隔で与えられる。いくつかの実施形態では、治療は、0.5~1.0ヶ月ごとに15~21mg、1.5~3.0ヶ月ごとに55~70mg、4~6ヶ月ごとに150~260mg、または4~8ヶ月ごとに300~700mgの、抗IL-23剤の量および間隔で与えられる。いくつかの実施形態では、量および間隔は、毎月21mg、3ヶ月ごとに70mg、6ヶ月ごとに210mg、または6ヶ月ごとに700mgである。いくつかの実施形態では、抗IL-23抗体は、3ヶ月ごとに260mg、または3ヶ月ごとに700mgで投与される。いくつかの実施形態では、260mgの抗体が1ヶ月ごとに投与されるか、または700mgが1ヶ月ごとに投与される。いくつかの実施形態では、対象に投与される抗IL-23剤の投薬量は、70mg~であり、例えば、用量当たり70mg、140mg、219mg、420mg、または700mgを投与する。
【0019】
本開示によるさらに別の態様は、腫瘍壊死因子治療に抵抗性の炎症状態を有する患者集団から、抗インターロイキン-23(抗インターロイキン-23)剤による治療に適した炎症状態を有する対象を選択する方法であって、(a)対象におけるインターロイキン-22結合タンパク質(IL-22BP)の血清レベルを測定することと、(b)対象における血清IL-22BPレベルを対照におけるIL-22BPの血清レベルと比較することであって、対照は、腫瘍壊死因子治療に抵抗性の炎症状態を伴わない1人以上の個体である、比較することと、(c)IL-22BPの血清レベルが対照よりも対象において低い場合、抗IL-23剤による治療に適した炎症状態を有するものとして対象を選択することと、を含む方法に関する。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、ブラジクマブである。炎症状態が、炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、または強直性脊椎炎である、実施形態も想定される。いくつかの実施形態では、炎症性腸疾患は、クローン病または潰瘍性大腸炎である。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤による治療に適した炎症状態を有するとして選択された対象は、359pg/mL未満のIL-22BPの血清レベルを有する。本開示の本態様のいくつかの実施形態では、本方法は、対象が、腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性の炎症状態を有することを決定することをさらに含み、腫瘍壊死因子治療に抵抗性の炎症状態は、身体検査を実施することによって、対象の医療記録を参照することによって、または医師に相談することによって決定される。いくつかの実施形態では、本方法は、腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性の炎症状態を治療するのに有効な量の抗IL-23剤を投与することをさらに含み、例えば、抗IL-23剤はブラジクマブである。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、12.5ng/ml~1,000ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される。いくつかの実施形態では、治療は、0.5~1.5ヶ月ごとに15~54mg、1.5~4.5ヶ月ごとに55~149mg、4~8ヶ月ごとに150~299mg、8~14ヶ月ごとに300~1100mg、または4~12ヶ月ごとに300~1100mgの、抗IL-23剤の量および間隔で与えられる。いくつかの実施形態では、治療は、0.5~1.0ヶ月ごとに15~21mg、1.5~3.0ヶ月ごとに55~70mg、4~6ヶ月ごとに150~260mg、または4~8ヶ月ごとに300~700mgの、抗IL-23剤の量および間隔で与えられる。いくつかの実施形態では、量および間隔は、毎月21mg、3ヶ月ごとに70mg、6ヶ月ごとに210mg、または6ヶ月ごとに700mgである。いくつかの実施形態では、抗IL-23抗体は、3ヶ月ごとに260mg、または3ヶ月ごとに700mgで投与される。いくつかの実施形態では、260mgの抗体が1ヶ月ごとに投与されるか、または700mgが1ヶ月ごとに投与される。いくつかの実施形態では、対象に投与される抗IL-23剤の投薬量は、70mg~であり、例えば、用量当たり70mg、140mg、219mg、420mg、または700mgを投与する。
【0020】
本開示の関連する一態様は、腫瘍壊死因子治療に抵抗性の炎症状態を有する対象を治療する方法であって、IL-22BPの血清レベルが、対照よりも対象において低い場合、有効量の抗IL-23剤を投与することを含み、対照は、腫瘍壊死因子治療に抵抗性の炎症状態を伴わない1人以上の個体である、方法に関する。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、ブラジクマブである。いくつかの実施形態では、炎症状態は、炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、または強直性脊椎炎である。いくつかの実施形態では、炎症性腸疾患は、クローン病または潰瘍性大腸炎である。いくつかの実施形態では、対象は、359pg/mL未満のIL-22BPの血清レベルを有する。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、12.5ng/ml~1,000ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される。いくつかの実施形態では、治療は、0.5~1.5ヶ月ごとに15~54mg、1.5~4.5ヶ月ごとに55~149mg、4~8ヶ月ごとに150~299mg、8~14ヶ月ごとに300~1100mg、または4~12ヶ月ごとに300~1100mgの、抗IL-23剤の量および間隔で与えられる。いくつかの実施形態では、治療は、0.5~1.0ヶ月ごとに15~21mg、1.5~3.0ヶ月ごとに55~70mg、4~6ヶ月ごとに150~260mg、または4~8ヶ月ごとに300~700mgの、抗IL-23剤の量および間隔で与えられる。いくつかの実施形態では、量および間隔は、毎月21mg、3ヶ月ごとに70mg、6ヶ月ごとに210mg、または6ヶ月ごとに700mgである。いくつかの実施形態では、抗IL-23抗体は、3ヶ月ごとに260mg、または3ヶ月ごとに700mgで投与される。いくつかの実施形態では、260mgの抗体が1ヶ月ごとに投与されるか、または700mgが1ヶ月ごとに投与される。いくつかの実施形態では、対象に投与される抗IL-23剤の投薬量は、70mg~であり、例えば、用量当たり70mg、140mg、219mg、420mg、または700mgを投与する。
【0021】
本開示のさらに別の態様は、抗インターロイキン-23(抗IL-23)剤による治療に適した炎症状態を有する対象を選択する方法であって、(a)対象におけるインターフェロン-γ(IFN-γ)の血清レベルを測定することと、(b)対象におけるIFN-γの血清レベルを、対照におけるIFN-γの血清レベルと比較することであって、対照は、炎症状態を伴わない1人以上の個体である、比較することと、(c)IFN-γの血清レベルが対照よりも対象において高い場合、抗IL-23剤による治療に適した炎症状態を有するものとして対象を選択することと、を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、ブラジクマブである。いくつかの実施形態では、炎症状態は、炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、または強直性脊椎炎である。いくつかの実施形態では、炎症性腸疾患は、クローン病または潰瘍性大腸炎である。いくつかの実施形態では、選択された対象は、15pg/mLを超えるインターフェロン-γの血清濃度を有する。いくつかの実施形態では、炎症状態は、腫瘍壊死因子治療に対して抵抗性である。本開示の本態様のいくつかの実施形態では、本方法は、対象が炎症状態を有することを決定することをさらに含み、炎症状態が、身体検査を実施することによって、対象の医療記録を参照することによって、または医師に相談することによって決定される。いくつかの実施形態では、本方法は、炎症状態を治療するのに有効な量の抗IL-23剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、ブラジクマブである。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、12.5ng/ml~1,000ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される。いくつかの実施形態では、治療は、0.5~1.5ヶ月ごとに15~54mg、1.5~4.5ヶ月ごとに55~149mg、4~8ヶ月ごとに150~299mg、8~14ヶ月ごとに300~1100mg、または4~12ヶ月ごとに300~1100mgの、抗IL-23剤の量および間隔で与えられる。いくつかの実施形態では、治療は、0.5~1.0ヶ月ごとに15~21mg、1.5~3.0ヶ月ごとに55~70mg、4~6ヶ月ごとに150~260mg、または4~8ヶ月ごとに300~700mgの、抗IL-23剤の量および間隔で与えられる。いくつかの実施形態では、量および間隔は、毎月21mg、3ヶ月ごとに70mg、6ヶ月ごとに210mg、または6ヶ月ごとに700mgである。いくつかの実施形態では、抗IL-23抗体は、3ヶ月ごとに260mg、または3ヶ月ごとに700mgで投与される。いくつかの実施形態では、260mgの抗体が1ヶ月ごとに投与されるか、または700mgが1ヶ月ごとに投与される。いくつかの実施形態では、対象に投与される抗IL-23剤の投薬量は、70mg~であり、例えば、用量当たり70mg、140mg、219mg、420mg、または700mgを投与する。
【0022】
関連する一態様では、本開示は、炎症状態を有する対象を治療する方法であって、インターフェロン-γの血清レベルが、対照よりも対象において高い場合、有効量の抗IL-23剤を投与することを含み、対照は、炎症状態を伴わない1人以上の個体である、方法を提供する。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、ブラジクマブである。いくつかの実施形態では、炎症状態は、炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、または強直性脊椎炎である。いくつかの実施形態では、炎症性腸疾患は、クローン病または潰瘍性大腸炎である。いくつかの実施形態では、炎症状態は、腫瘍壊死因子治療に対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、選択された対象は、15pg/mLを超えるインターフェロン-γの血清濃度を有する。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、12.5ng/ml~1,000ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される。いくつかの実施形態では、治療は、0.5~1.5ヶ月ごとに15~54mg、1.5~4.5ヶ月ごとに55~149mg、4~8ヶ月ごとに150~299mg、8~14ヶ月ごとに300~1100mg、または4~12ヶ月ごとに300~1100mgの、抗IL-23剤の量および間隔で与えられる。いくつかの実施形態では、治療は、0.5~1.0ヶ月ごとに15~21mg、1.5~3.0ヶ月ごとに55~70mg、4~6ヶ月ごとに150~260mg、または4~8ヶ月ごとに300~700mgの、抗IL-23剤の量および間隔で与えられる。いくつかの実施形態では、量および間隔は、毎月21mg、3ヶ月ごとに70mg、6ヶ月ごとに210mg、または6ヶ月ごとに700mgである。いくつかの実施形態では、抗IL-23抗体は、3ヶ月ごとに260mg、または3ヶ月ごとに700mgで投与される。いくつかの実施形態では、260mgの抗体が1ヶ月ごとに投与されるか、または700mgが1ヶ月ごとに投与される。いくつかの実施形態では、対象に投与される抗IL-23剤の投薬量は、70mg~であり、例えば、用量当たり70mg、140mg、219mg、420mg、または700mgを投与する。
【0023】
本開示の別の態様は、IBDを伴う患者集団から、抗インターロイキン-23(抗IL-23)剤による治療に適している炎症性腸疾患(IBD)患者の亜集団の少なくとも1人のメンバーを選択する方法であって、患者の亜集団は、腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性のIBDを有するか、患者の亜集団は、そのための治療にナイーブなIBDを有するか、および/または患者の亜集団は、抗TNF剤による治療に不耐性であり、(a)IBD患者におけるIFN-γの血清レベルを測定することと、(b)IBD患者の血清IFN-γレベルを対照のIFN-γの血清レベルと比較することであって、対照のIFN-γの血清レベルは、IBDを伴わない個体のIFN-γの血清レベル、IBDを伴わない複数の個体におけるIFN-γの平均レベル、またはIBDを伴う複数の個体におけるIFN-γの平均値のいずれか1つである、比較することと、(c)IFN-γの血清レベルが対照よりも対象において高い場合、抗IL-23剤による治療に応答するIBDを有するとして患者を選択することと、を含む方法を描写している。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、ブラジクマブである。いくつかの実施形態では、IBD患者亜集団のメンバーは、クローン病患者または潰瘍性大腸炎患者である。いくつかの実施形態では、対照におけるIFN-γの血清レベルは、IBDを有する複数の個体におけるIFN-γの平均値である。いくつかの実施形態では、対照におけるIBDは、クローン病または潰瘍性大腸炎である。いくつかの実施形態では、IBDを有する患者の集団は、TNF治療に抵抗性のIBDを有する患者の集団である。いくつかの実施形態では、選択された対象は、15pg/mLを超えるインターフェロン-γの血清濃度を有する。本開示の本態様による方法のいくつかの実施形態では、本方法は、対象が炎症性腸疾患を有することを決定することをさらに含み、炎症性腸疾患が、身体検査を実施することによって、対象の医療記録を参照することによって、または医師に相談することによって決定される。いくつかの実施形態では、本方法は、炎症性腸状態を治療するのに有効な量の抗IL-23剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、ブラジクマブである。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、12.5ng/ml~1,000ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される。いくつかの実施形態では、治療は、0.5~1.5ヶ月ごとに15~54mg、1.5~4.5ヶ月ごとに55~149mg、4~8ヶ月ごとに150~299mg、8~14ヶ月ごとに300~1100mg、または4~12ヶ月ごとに300~1100mgの、抗IL-23剤の量および間隔で与えられる。いくつかの実施形態では、治療は、0.5~1.0ヶ月ごとに15~21mg、1.5~3.0ヶ月ごとに55~70mg、4~6ヶ月ごとに150~260mg、または4~8ヶ月ごとに300~700mgの、抗IL-23剤の量および間隔で与えられる。いくつかの実施形態では、量および間隔は、毎月21mg、3ヶ月ごとに70mg、6ヶ月ごとに210mg、または6ヶ月ごとに700mgである。いくつかの実施形態では、抗IL-23抗体は、3ヶ月ごとに260mg、または3ヶ月ごとに700mgで投与される。いくつかの実施形態では、260mgの抗体が1ヶ月ごとに投与されるか、または700mgが1ヶ月ごとに投与される。いくつかの実施形態では、対象に投与される抗IL-23剤の投薬量は、70mg~であり、例えば、用量当たり70mg、140mg、219mg、420mg、または700mgを投与する。
【0024】
関連する一態様は、抗インターロイキン-23(抗IL-23)剤による治療に適している炎症性腸疾患(IBD)患者の亜集団のメンバーである患者を治療する方法であって、患者の亜集団は、腫瘍壊死因子治療に抵抗性のIBDを有するか、患者の亜集団は、そのための治療にナイーブなIBDを有するか、および/または患者の亜集団は、抗TNF剤による治療に不耐性であり、インターフェロン-γ(IFN-γ)の血清レベルが、対照よりも患者において高い場合、有効量の抗IL-23剤を投与することを含み、対照は、IBDを伴わない個体におけるIFN-γの血清レベル、IBDを伴わない複数の個体におけるIFN-γの平均レベル、またはIBDを有する複数の個体におけるIFN-γの平均レベルのいずれか1つである、方法を描写している。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、ブラジクマブである。いくつかの実施形態では、炎症性腸疾患は、クローン病または潰瘍性大腸炎である。いくつかの実施形態では、選択された対象は、15pg/mLを超えるインターフェロン-γの血清濃度を有する。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、12.5ng/ml~1,000ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される。いくつかの実施形態では、治療は、0.5~1.5ヶ月ごとに15~54mg、1.5~4.5ヶ月ごとに55~149mg、4~8ヶ月ごとに150~299mg、8~14ヶ月ごとに300~1100mg、または4~12ヶ月ごとに300~1100mgの、抗IL-23剤の量および間隔で与えられる。いくつかの実施形態では、治療は、0.5~1.0ヶ月ごとに15~21mg、1.5~3.0ヶ月ごとに55~70mg、4~6ヶ月ごとに150~260mg、または4~8ヶ月ごとに300~700mgの、抗IL-23剤の量および間隔で与えられる。いくつかの実施形態では、量および間隔は、毎月21mg、3ヶ月ごとに70mg、6ヶ月ごとに210mg、または6ヶ月ごとに700mgである。いくつかの実施形態では、抗IL-23抗体は、3ヶ月ごとに260mg、または3ヶ月ごとに700mgで投与される。いくつかの実施形態では、260mgの抗体が1ヶ月ごとに投与されるか、または700mgが1ヶ月ごとに投与される。いくつかの実施形態では、対象に投与される抗IL-23剤の投薬量は、70mg~であり、例えば、用量当たり70mg、140mg、219mg、420mg、または700mgを投与する。
【0025】
本開示のさらに別の態様は、腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性の炎症状態を有する患者集団から、抗インターロイキン-23(抗インターロイキン-23)剤による治療に適した炎症状態を有する対象を選択する方法であって、(a)対象におけるインターフェロン-γ(IFN-γ)の血清レベルを測定することと、(b)対象における血清IFN-γレベルを対照におけるIFN-γの血清レベルと比較することであって、対照は、炎症状態を伴わない1人以上の個体である、比較することと、(c)IFN-γの血清レベルが対照よりも対象において高い場合、抗IL-23剤による治療に適した炎症状態を有するものとして対象を選択することと、を含む方法に関する。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、ブラジクマブである。いくつかの実施形態では、炎症状態は、炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、または強直性脊椎炎である。いくつかの実施形態では、炎症性腸疾患は、クローン病または潰瘍性大腸炎である。いくつかの実施形態では、選択された対象は、15pg/mLを超えるインターフェロン-γの血清濃度を有する。本開示の本態様のいくつかの実施形態では、本方法は、対象が、腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性の炎症状態を有することを決定することをさらに含み、腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性の炎症状態は、身体検査を実施することによって、対象の医療記録を参照することによって、または医師に相談することによって決定される。いくつかの実施形態では、本方法は、腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性の炎症状態を治療するのに有効な量の抗IL-23剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、ブラジクマブである。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、12.5ng/ml~1,000ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される。いくつかの実施形態では、治療は、0.5~1.5ヶ月ごとに15~54mg、1.5~4.5ヶ月ごとに55~149mg、4~8ヶ月ごとに150~299mg、8~14ヶ月ごとに300~1100mg、または4~12ヶ月ごとに300~1100mgの、抗IL-23剤の量および間隔で与えられる。いくつかの実施形態では、治療は、0.5~1.0ヶ月ごとに15~21mg、1.5~3.0ヶ月ごとに55~70mg、4~6ヶ月ごとに150~260mg、または4~8ヶ月ごとに300~700mgの、抗IL-23剤の量および間隔で与えられる。いくつかの実施形態では、量および間隔は、毎月21mg、3ヶ月ごとに70mg、6ヶ月ごとに210mg、または6ヶ月ごとに700mgである。いくつかの実施形態では、抗IL-23抗体は、3ヶ月ごとに260mg、または3ヶ月ごとに700mgで投与される。いくつかの実施形態では、260mgの抗体が1ヶ月ごとに投与されるか、または700mgが1ヶ月ごとに投与される。いくつかの実施形態では、対象に投与される抗IL-23剤の投薬量は、70mg~であり、例えば、用量当たり70mg、140mg、219mg、420mg、または700mgを投与する。
【0026】
本開示による別の態様は、抗インターロイキン-23(抗IL-23)剤による治療に適した炎症状態を有する対象を治療する方法であって、対象が、腫瘍壊死因子治療に抵抗性の炎症状態を有する患者集団のメンバーであり、IFN-γの血清レベルが、対照よりも対象において高い場合、有効量の抗IL-23剤を投与することを含み、対照は、炎症状態を伴わない1人以上の個体である、方法に焦点を当てている。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、ブラジクマブである。いくつかの実施形態では、炎症状態は、炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、または強直性脊椎炎である。いくつかの実施形態では、炎症性腸疾患は、クローン病または潰瘍性大腸炎である。いくつかの実施形態では、選択された対象は、15pg/mLを超えるインターフェロン-γの血清濃度を有する。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、12.5ng/ml~1,000ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される。いくつかの実施形態では、治療は、0.5~1.5ヶ月ごとに15~54mg、1.5~4.5ヶ月ごとに55~149mg、4~8ヶ月ごとに150~299mg、8~14ヶ月ごとに300~1100mg、または4~12ヶ月ごとに300~1100mgの、抗IL-23剤の量および間隔で与えられる。いくつかの実施形態では、治療は、0.5~1.0ヶ月ごとに15~21mg、1.5~3.0ヶ月ごとに55~70mg、4~6ヶ月ごとに150~260mg、または4~8ヶ月ごとに300~700mgの、抗IL-23剤の量および間隔で与えられる。いくつかの実施形態では、量および間隔は、毎月21mg、3ヶ月ごとに70mg、6ヶ月ごとに210mg、または6ヶ月ごとに700mgである。いくつかの実施形態では、抗IL-23抗体は、3ヶ月ごとに260mg、または3ヶ月ごとに700mgで投与される。いくつかの実施形態では、260mgの抗体が1ヶ月ごとに投与されるか、または700mgが1ヶ月ごとに投与される。いくつかの実施形態では、対象に投与される抗IL-23剤の投薬量は、70mg~であり、例えば、用量当たり70mg、140mg、219mg、420mg、または700mgを投与する。
【0027】
本開示のさらに別の態様は、抗インターロイキン-23(抗IL-23)剤による治療に適した炎症状態を有する対象を選択する方法であって、(a)対象におけるインターロイキン-22結合タンパク質(IL-22BP)、インターフェロン-γ(IFN-γ)、またはIL-22BPとIFN-γの両方の血清レベルを測定することと、(b)対象におけるIL-22BP、IFN-γ、またはIL-22BPとIFN-γの両方の血清レベルを、対照におけるIL-22BP、IFN-γ、またはIL-22BPとIFN-γの両方の血清レベルと比較することであって、対照は、炎症状態を伴わない1人以上の個体である、比較することと、(c)対照よりも対象において、IL-22BPの血清レベルが低いか、IFN-γの血清レベルが高いか、またはIL-22BPの血清レベルが低く、かつIFN-γの血清レベルが高い場合、抗IL-23剤による治療に適した炎症状態を有するものとして対象を選択することと、を含む方法を描写している。これらの実施形態のいくつかでは、抗IL-23剤はブラジクマブである。これらの実施形態のいくつかでは、炎症状態は、炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、または強直性脊椎炎である。これらの実施形態のいくつかでは、炎症性腸疾患は、クローン病または潰瘍性大腸炎である。いくつかの実施形態では、選択された対象は、15pg/mLを超えるインターフェロン-γの血清濃度を有する。これらの実施形態のいくつかでは、本方法は、対象が、腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性の炎症状態を有することを決定することをさらに含み、腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性の炎症状態は、身体検査を実施することによって、対象の医療記録を参照することによって、または医師に相談することによって決定される。これらの実施形態のいくつかでは、本方法は、腫瘍壊死因子(TNF)治療に抵抗性の炎症状態を治療するのに有効な量の抗IL-23剤を投与することをさらに含む。これらの実施形態のいくつかでは、抗IL-23剤はブラジクマブである。いくつかの実施形態では、本方法は、対照よりも患者において、IFN-γの血清レベルが高いか、任意選択で、IL-22BPの血清レベルが低い場合に、有効量の抗IL-23剤を患者に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤は、ブラジクマブである。いくつかの実施形態では、炎症状態は、炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、または強直性脊椎炎である。いくつかの実施形態では、炎症性腸疾患は、クローン病または潰瘍性大腸炎である。
【0028】
本開示の他の特徴および利点は、実施例を含む以下の詳細な説明を参照することにより、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】M5 ELISAプレートリーダー(Molecular Devices,Inc.、San Jose CA)でSoftmaxソフトウェアを使用したELISAプレートの生の光学密度(OD)の読み取り。パネルAはプレートレイアウトを提供し、パネルBは生のOD値を提供し、パネルCはアッセイの調整値を提供する。A1~G1およびA2~G2は、ヒトIL-22 BP標準曲線の技術的複製である。A3~A11、B3~B11、C3~C11、D3~D11、E3~E11、F3~F11、G3~G10、およびH3~H10は、健康な男性、健康な女性、クローン病患者、潰瘍性大腸炎患者、およびMedimmuneフェーズ2a臨床試験(MEDI2070-1147)プラセボ群の血清試料の生のOD測定値である。Softmaxソフトウェアを使用して、生のOD読み取りを次の図2~8のIL-22BP血清濃度に変換した。
図2】IL-22BP標準曲線は、100~6000pg/mlの範囲の7つのキャリブレータ濃度で構成されている。このELISAの精度(CV%)と正確度(回収率%)は、許容範囲内(CV%≦20%、および回収率%は80~120%以内)であり、この分析ランの有効性を示している。
図3】10人の健康な男性からのIL-22 BP血清レベルは、図8に示されている標準曲線と図2に示されている標準曲線データに基づいて計算された。
図4】10人の健康な女性からのIL-22 BP血清レベルは、図8に示されている標準曲線と図2に示されている標準曲線データに基づいて計算された。
図5】19人のクローン病患者からのIL-22 BP血清レベルは、図8に示されている標準曲線と図2に示されている標準曲線データに基づいて計算された。
図6】11人の潰瘍性大腸炎患者からのIL-22 BP血清レベルは、図8に示されている標準曲線と図2に示されている標準曲線データに基づいて計算された。
図7】Medimmuneフェーズ2a臨床試験(MEDI2070-1147)プラセボ群の血清試料における20人のクローン病患者(抗TNFα治療の非応答者)からのIL-22 BP血清レベルは、図8に示されている標準曲線と図2に示されている標準曲線データに基づいて計算された。
図8】Softmaxソフトウェアを使用して作成された、IL-22 BP標準曲線のグラフ。pg/mLでのIL-22 BP濃度
図9図3~7の結果のまとめ。データは、クローン病(CD)および潰瘍性大腸炎患者におけるIL-22 BPの血清濃度の中央値と平均値の両方が、健康な、または正常な人々(男性と女性)の血清濃度よりも高いことを明らかにした。また、抗TNFα非応答性CD患者のIL-22BPのレベルは、健康なヒトのレベルよりも低かった。血清中の発現IL-22BPレベルは、ブラジクマブ応答者および非応答者の亜集団がTNF-α治療に抵抗性であるかどうかに関係なく、ブラジクマブ応答者対非応答者の亜集団にて分極パターンを示すと予想される。
図10】抗TNF-α抵抗性クローン病患者の血清IFN-γレベル。血清試料は、Medimmuneフェーズ2a試験(MEDI2070-1147)でブラジクマブにより治療された患者の群から得られた。臨床試験におけるブラジクマブへの応答者は、パネルAの「応答者」の列にて「0」で識別される。パネルBに示すように、臨床試験におけるブラジクマブへの非応答者は、その列にて「1」で識別される。
図11】ELISAの結果は、クローン病患者のブラジクマブ応答者の亜集団におけるIL-22 BPの血清濃度の中央値と平均値の両方(パネルBを参照)が、ブラジクマブ非応答者CD患者のもの(パネルAを参照)よりも低いことを明らかにした。血清試料は、Medimmuneフェーズ2a試験(MEDI2070-1147)にてブラジクマブで治療されたCD患者の群から得られた。このフェーズ2a試験に含まれるすべての患者は、抗TNFα治療に対する非応答者だった。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示は、炎症状態を治療するために、抗サイトカイン療法、より具体的には、抗IL-23免疫療法を含む抗IL-23療法に適した患者集団または亜集団を選択するための方法および材料を提供する。本明細書に開示された実験データに基づいて、そしてIL-22BPが抗IL-23療法に応答する患者において上昇するという従来の信念に反して、患者の血清試料がインターロイキン-22結合タンパク質(IL-22BP)のレベルの低下および/またはインターフェロン-γ(IFN-γ)のレベルの上昇を示すかどうかを決定する、炎症状態を治療するために抗IL-23療法に適した患者を選択する方法が提供される。
【0031】
本開示はさらに、抗IL-23抗体、抗体断片、および抗体誘導体、例えば、拮抗性抗IL-23抗体、抗体断片、または抗体誘導体などの、IL-23に拮抗する分子を含むIL-23抗原結合タンパク質を提供する。IL-23に結合するポリヌクレオチドの全部または一部をコードする核酸の配列を含むポリヌクレオチド、ならびにその誘導体および断片、例えば、抗IL-23抗体、抗体断片、または抗体誘導体の全部または一部をコードするポリヌクレオチド、そのような核酸を含むプラスミドおよびベクター、ならびにそのようなポリヌクレオチドおよび/またはベクターおよびプラスミドを含む細胞または細胞株も提供される。提供される方法には、例えば、抗IL-23抗体などのIL-23抗原結合タンパク質を作製、同定、または単離する方法、分子がIL-23に結合するかどうかを決定する方法、分子がIL-23を拮抗させるかを決定する方法、IL-23抗原結合タンパク質を含む薬学的組成物などの組成物を作製する方法、およびIL-23抗原結合タンパク質を対象に投与するための方法、例えば、IL-23が介在する状態を治療するための、およびインビボまたはインビトロでIL-23の生物学的活性を拮抗させるための方法、を含む。
【0032】
本明細書で別段の定義がない限り、本開示に関連して使用される科学的および技術的用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上別段の必要がない限り、単数形には複数形が含まれ、複数形には単数形が含まれるものとする。一般に、本明細書に記載の細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学とタンパク質および核酸の化学とハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法およびそれらの技術は、当技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。本開示の方法および技術は、特に明記しない限り、一般に、当技術分野で周知の従来の方法に従って、本明細書全体を通して引用および考察されている様々な一般的かつより具体的な参考文献に記載されるように実施される。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2001)およびAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates(1992)、およびHarlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1990)を参照されたい。酵素反応および精製技術は、当技術分野で一般的に達成されるように、または本明細書に記載されるように、製造業者の仕様に従って実施される。本明細書に記載の分析化学、合成有機化学、ならびに医学的および薬学的化学に関連して使用される用語、ならびにそれらの実験手順および技術は、当技術分野で周知であり、一般的に使用されているものである。標準的な技術は、化学合成、化学分析、医薬品の調製、製剤化、送達、および患者の治療に使用できる。
【0033】
ヒトIL-23のp19サブユニット(配列番号144および145)、共有p40サブユニット(配列番号146および147)、ヒトIL-23受容体ヘテロ二量体サブユニットIL-12Rβ1(配列番号150および151)、およびIL-23R(配列番号148および149)のポリヌクレオチドおよびタンパク質配列は、当技術分野で知られている。例えば、他の哺乳類種からのものであるが、GenBankアクセッション番号第AB030000号、M65272、NM 005535、NM 144701を参照されたい。一本鎖およびFcタンパク質を含む組換えIL-23およびIL-23受容体タンパク質、ならびにIL-23受容体を発現する細胞が記載されているか、または商業的供給源から入手可能である(例えば、Oppmann et al.,Immunity,2000,13:713-715、R&D Systems、Minneapolis,Minnesota、United States Biological、Swampscott,Massachusetts、WIPO公開第WO2007/076524号を参照されたい)。天然のヒトIL-23は、本明細書に記載の方法を含む当技術分野で知られている方法を使用して、樹状細胞などのヒト細胞から得ることができる。
【0034】
IL-23は、共有p40サブユニットに共有結合している固有のp19サブユニットで構成されるヘテロ二量体サイトカインである。p19サブユニットは、AヘリックスとBヘリックスの間、BヘリックスとCヘリックスの間、およびCヘリックスとDヘリックスの間の3つのヘリックス間ループにより連結されたアップ-アップ-ダウン-ダウンモチーフ中に、4つのαヘリックス、「A」、「B」、「C」、および「D」を含む。Oppmann et al.,Immunity,2000,13:713-715およびBeyer,et al.,J Mol Biol,2008.382(4):942-55を参照されたい。4ヘリックスバンドルサイトカインのAおよびDヘリックスは、受容体結合に関与していると考えられている。p40サブユニットは、3つのベータシートサンドイッチドメイン、D1、D2、およびD3を含む(Lupardus and Garcia,J.Mol.Biol.,2008,382:931-941)。
【0035】
「ポリヌクレオチド」という用語は、一本鎖および二本鎖核酸の両方を含み、ゲノムDNA、RNA、mRNA、cDNA、または合成起源、または自然界に通常見られる配列とは関連しないそれらのいくつかの組み合わせを含む。特定の配列を含む単離されたポリヌクレオチドは、特定の配列に加えて、最大10またはさらには最大20の他のタンパク質またはその部分のコード配列を含み得るか、あるいは列挙された核酸配列のコード領域の発現を制御する作動可能に連結された調節配列を含み得るか、および/またはベクター配列を含み得る。ポリヌクレオチドを含むヌクレオチドは、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド、あるいはいずれかの型のヌクレオチドの修飾形態であり得る。修飾には、ブロモウリジンおよびイノシン誘導体などの塩基修飾、2’、3’-ジデオキシリボースなどのリボース修飾、およびホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホラニラデートおよびホスホロアミデートなどのヌクレオチド間結合修飾が含まれる。
【0036】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、100個以下のヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを意味する。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、長さが10~60塩基である。他の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、12、13、14、15、16、17、18、19、または20~40ヌクレオチドの長さである。オリゴヌクレオチドは、例えば、突然変異遺伝子の構築に使用するために、一本鎖または二本鎖であり得る。オリゴヌクレオチドは、センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。オリゴヌクレオチドは、検出アッセイのために、放射性標識、蛍光標識、ハプテンまたは抗原性標識などの検出可能な標識を含むことができる。オリゴヌクレオチドは、例えば、PCRプライマー、クローニングプライマー、またはハイブリダイゼーションプローブとして使用され得る。
【0037】
「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、ナイーブタンパク質、すなわち、天然に存在する非組換え細胞によって産生されるタンパク質のアミノ酸配列を有する高分子を意味する。あるいは、それは、遺伝子操作された細胞または組換え細胞によって産生され、ナイーブタンパク質のアミノ酸配列を有する分子、またはナイーブ配列のアミノ酸残基からの1つ以上の欠失、それらへの挿入、および/またはそれらの置換を有する分子を含む。この用語はまた、1つ以上のアミノ酸が対応する天然に存在するアミノ酸およびポリマーの化学的類似体であるアミノ酸ポリマーを含む。「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、IL-23抗原結合タンパク質(抗体など)、ならびに抗原結合タンパク質配列のアミノ酸残基からの1つ以上の欠失、それらへの付加、および/またはそれらの置換を有する配列を包含する。「ポリペプチド断片」という用語は、完全長のナイーブタンパク質と比較して、アミノ末端欠失、カルボキシル末端欠失、および/または内部欠失を有するポリペプチドを指す。そのような断片はまた、ナイーブタンパク質と比較して、修飾されたアミノ酸を含み得る。特定の実施形態では、断片は、約5~500アミノ酸の長さである。例えば、断片は、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、50、70、100、110、150、200、250、300、350、400、または450アミノ酸の長さであり得る。有用なポリペプチド断片には、結合ドメインを含む抗体の免疫学的に機能的な断片が含まれる。抗体などのIL-23抗原結合タンパク質の場合、有用な断片には、1つ以上のCDR領域、重鎖または軽鎖の可変ドメイン、抗体鎖の一部、3つ未満のCDRを含む可変領域の一部などが含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
「アミノ酸」は、当技術分野ではその通常の意味を与えられている。20の天然に存在するアミノ酸とそれらの略語は、従来の使用法に従う。Immunology-A Synthesis,2nd Edition、(E.S.Golub and D.R.Gren,eds.)、Sinauer Associates:Sunderland,Mass.(1991)を参照されたい。20個の従来型アミノ酸の立体異性体(例えば、D-アミノ酸)、α-、α-二置換アミノ酸などの非天然アミノ酸、N-アルキルアミノ酸、および他の非従来型アミノ酸もポリペプチドのために適切な成分であり得る。非在来型アミノ酸の例には、4-ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、ε-N,N,N-トリメチルリジン、ε-N-アセチルリジン、0--ホスホセリン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリジン、σ-N-メチルアルギニン、および他の同様のアミノ酸およびイミノ酸(例えば、4-ヒドロキシプロリン)が含まれる。本明細書で使用されるポリペプチド表記法において、標準的な使用法および慣習に従って、左側の方向はアミノ末端方向であり、右側の方向はカルボキシル末端方向である。
【0039】
「単離されたタンパク質」という用語は、その治療的、診断的、予防的、研究または他の使用の妨げとなり得るタンパク質またはポリペプチドまたは他の汚染物質から精製されたタンパク質、例えば、抗原結合タンパク質(例えば、抗体であり得る)を指す。本明細書で使用される場合、「実質的に純粋」とは、記載された分子種が主要な種として存在していること、すなわち、モルベースで、同じ混合物中の他の個々の種よりも豊富であることを意味する。特定の実施形態では、実質的に純粋な分子は、対象種が、存在するすべての高分子種の少なくとも50%(モルベースで)を含む組成物である。他の実施形態では、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在するすべての高分子種の少なくとも80%、85%、90%、95%、または99%を含むだろう。特定の実施形態では、本質的に均質な物質は、汚染種が従来の検出方法によって組成物中で検出できない程度に精製されており、したがって、組成物は単一の検出可能な高分子種からなる。
【0040】
ポリペプチドの「バリアント」(例えば、抗体などの抗原結合タンパク質)は、1つ以上のアミノ酸残基が、別のポリペプチド配列に対するアミノ酸配列に挿入、それらから欠失、および/またはそれらを置換するアミノ酸配列を含む。バリアントには融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドの「誘導体」は、例えば、別の化学部分への結合を介して、挿入、欠失、または置換バリアントとは異なる何らかの方法で化学的に修飾されたポリペプチドである。
【0041】
ポリペプチド、核酸、宿主細胞などの生物学的材料に関連して本明細書全体で使用される「天然に存在する」または「ナイーブ」という用語は、ナイーブヒトIL-23などの天然に見出される材料を指す。特定の態様では、ナイーブIL-23に結合する組換え抗原結合タンパク質が提供される。この文脈において、「組換えタンパク質」は、組換え技術を使用して、すなわち、本明細書に記載の組換え核酸の発現を介して作製されたタンパク質である。組換えタンパク質を産生するための方法および技術は、当技術分野でよく知られている。
【0042】
「抗体」という用語は、標的抗原への特異的結合についてインタクトな抗体と競合することができる任意のアイソタイプのインタクトな免疫グロブリン、またはその断片を指し、例えば、キメラ、ヒト化、完全ヒト、および二重特異性抗体を含む。抗体は抗原結合タンパク質の一種である。特に明記しない限り、「抗体」という用語は、2つの全長重鎖および2つの全長軽鎖を含む抗体に加えて、それらの誘導体、変異体、断片、およびムテインを含み、それらの例は以下に記載される。インタクトな抗体は、一般に、少なくとも2つの全長重鎖および2つの全長軽鎖を含むが、場合によっては、ラクダ類に天然に存在する、重鎖のみを含み得る抗体など、より少ない鎖を含み得る。抗体は、単一の供給源のみに由来し得るか、または「キメラ」であり得る。すなわち、抗体の異なる部分は、以下にさらに記載されるように、2つの異なる抗体に由来し得る。抗原結合タンパク質、抗体、または結合断片は、ハイブリドーマにおいて、組換えDNA技術によって、またはインタクトな抗体の酵素的または化学的切断によって産生され得る。
【0043】
本明細書で使用される抗体または免疫グロブリン鎖(重鎖または軽鎖)の「機能的断片」(または単に「断片」)という用語は、(その部分がどのように得られるかまたは合成されるかに関係なく)全長鎖に存在するアミノ酸の少なくとも一部を欠いているが、抗原に特異的に結合することができる抗体の一部を含む抗原結合タンパク質である。このような断片は、標的抗原に特異的に結合し、特定のエピトープへの特異的結合について、インタクトな抗体を含む他の抗原結合タンパク質と競合できるという点で、生物学的に活性である。一態様では、そのような断片は、全長軽鎖または重鎖に存在する少なくとも1つのCDRを保持し、いくつかの実施形態では、単一の重鎖および/または軽鎖またはその一部を含む。これらの生物学的に活性な断片は、組換えDNA技術によって生成され得るか、またはインタクトな抗体を含む抗原結合タンパク質の酵素的または化学的切断によって生成され得る。断片には、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ドメイン抗体、および単鎖抗体などの免疫学的に機能的な断片が含まれるが、これらに限定されず、ヒト、マウス、ラット、ラクダまたはウサギを含むがこれらに限定されない任意の哺乳類供給源に由来してもよい。本明細書に開示される抗原結合タンパク質の機能的部分、例えば、1つ以上のCDRは、第2のタンパク質または小分子に共有結合して、体内の特定の標的に向けられた、二機能性の治療特性を有するか、または血清半減期が延長されている治療薬を作製し得ることがさらに企図される。
【0044】
抗原結合タンパク質の文脈で使用される(例えば、中和抗原結合タンパク質または中和抗体)場合の「競合する」という用語は、試験中の抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその免疫学的に機能的な断片)が、共通の抗原(例えば、IL-23タンパク質またはその断片)への参照抗原結合タンパク質(例えば、リガンドまたは参照抗体)の特異的結合を防止または阻害するアッセイによって決定されるような抗原結合タンパク質間の競合を意味する。多数の型の競合結合アッセイを使用することができる。例えば、固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素免疫アッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(例えば、Stahli et al.,1983,Methods in Enzymology 92:242-253)を参照);固相直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、Kirkland et al.,1986,J.Immunol.137:3614-3619を参照)固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(例えば、Harlow and Lane,1988,Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press);125I標識を使用する固相直接標識RIA(例えば、Morel et al.,1988,Molec.Immunol.25:7-15);固相直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、Cheung,et al.,1990,Virology 176:546-552を参照);および直接標識RIA(Moldenhauer et al.,1990,Scand.J.Immunol.32:77-82)。典型的には、そのようなアッセイは、固体表面に結合した精製抗原、またはこれらのいずれかを有する細胞、非標識試験抗原結合タンパク質、および標識された参照抗原結合タンパク質の使用を伴う。
【0045】
競合阻害は、試験抗原結合タンパク質の存在下で固体表面または細胞に結合した標識の量を測定することによって測定される。通常、試験抗原結合タンパク質は過剰に存在する。(抗原結合タンパク質に競合する)競合アッセイによって同定された抗原結合タンパク質には、参照抗原結合タンパク質と同じエピトープに結合する抗原結合タンパク質、および立体障害が生じるために参照抗原結合タンパク質が結合したエピトープに十分近位である隣接エピトープに結合する抗原結合タンパク質が含まれる。通常、競合する抗原結合タンパク質が過剰に存在する場合、それは、参照抗原結合タンパク質の共通抗原への特異的結合を少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%または75%阻害する。場合によっては、結合は少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上阻害される。
【0046】
「エピトープ」または「抗原決定基」という用語は、抗原結合タンパク質が結合する抗原上の部位を指す。エピトープは、タンパク質の三次フォールディングによって並置された隣接アミノ酸または非隣接アミノ酸の両方から形成することができる。隣接するアミノ酸から形成されたエピトープは、通常、変性溶媒への曝露時に保持されるが、三次フォールディングによって形成されたエピトープは、通常、変性溶媒での処理で失われる。エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリルまたはスルホニル基などの分子の化学的に活性な表面の基を含み得、特定の三次元構造特性および/または特定の電荷特性を有し得る。エピトープは通常、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35アミノ酸を含むユニークな空間コンフォメーションを含む。エピトープは、当技術分野で知られている方法を使用して決定することができる。
【0047】
IL-23抗原結合タンパク質
本明細書で使用される「抗原結合タンパク質」は、特定の標的抗原に特異的に結合するタンパク質を意味する。本明細書で提供される抗原は、IL-23、特にナイーブヒトIL-23を含むヒトIL-23である。本明細書で提供される抗原結合タンパク質は、IL-23の固有のp19サブユニットの少なくとも一部と相互作用し、IL-23に検出可能に結合する。しかし、IL-12(例えば、IL-12のp40および/またはp35サブユニット)にはいずれの有意性を伴って結合しないため、「IL-12を温存する」。結果として、本明細書で提供される抗原結合タンパク質は、IL-12またはIL-12とIL-23によって共有されるp40サブユニットの阻害に関連する潜在的な危険性を伴うことなくIL-23活性に影響を与えることができる。抗原結合タンパク質は、例えば、受容体会合を妨害することによってなど、受容体へのIL-23結合に影響を与えることによって、その受容体と相互作用するIL-23の能力に影響を及ぼし得る。特に、そのような抗原結合タンパク質は、IL-23の1つ以上の生物学的活性を完全にまたは部分的に低減、阻害、妨害、または調節する。そのような阻害または中和は、抗原結合タンパク質の非存在下での応答と比較して、抗原結合タンパク質の存在下での生物学的応答を破壊し、当技術分野で知られ、本明細書に記載のアッセイを使用して決定することができる。本明細書で提供される抗原結合タンパク質は、IL-23誘導性炎症性サイトカイン産生、例えば、全血細胞におけるIL-23誘導性IL-22産生、ならびにNKおよび全血細胞におけるIL-23誘導性IFN-γ発現を阻害する。生物学的活性の低減は、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%,95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上であり得る。
【0048】
抗原結合タンパク質は、抗原に結合する部分、および任意選択で、抗原結合部分が抗原への抗原結合タンパク質の結合を促進するコンフォメーションを採用することを可能にする足場またはフレームワーク部分を含み得る。抗原結合タンパク質の例には、抗体、抗体断片(例えば、抗体の抗原結合部分)、抗体誘導体、および抗体類似体が含まれる。抗原結合タンパク質は、移植されたCDRまたはCDR誘導体を有する代替タンパク質足場または人工足場を含むことができる。そのような足場には、例えば、抗原結合タンパク質の三次元構造を安定化するために導入された突然変異を含む抗体由来の足場、ならびに例えば、生体適合性ポリマーを含む完全に合成の足場が含まれるが、これらに限定されない。例えば、Korndorfer et al.,Proteins:Structure,Function,and Bioinformatics,(2003)Volume 53,Issue 1:121-129、Roque et al.,Biotechnol.Prog.,2004,20:639-654を参照されたい。さらに、ペプチド抗体ミメティック(「PAM」)、ならびにフィブロネクチン成分を足場として利用する抗体ミメティックに基づく足場を使用することができる。
【0049】
本明細書に記載の特定の抗原結合タンパク質は、抗体であるか、または抗体に由来する。このような抗原結合タンパク質には、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体、抗体ミメティック、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体融合物、抗体コンジュゲート、一本鎖抗体、およびそれらの断片をそれぞれ含むが、これらに限定されない。場合によっては、抗原結合タンパク質は、抗体の免疫学的断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、またはscFv)である。本明細書では、様々な構造がさらに説明および定義されている。
【0050】
提供される特定の抗原結合タンパク質は、本明細書に記載されるような1つ以上のCDR(例えば、1、2、3、4、5、6以上のCDR)を含み得る。場合によっては、抗原結合タンパク質は、(a)ポリペプチド構造、および(b)ポリペプチド構造に挿入および/または結合される1つ以上のCDRを含む。ポリペプチド構造は、様々な異なる形態をとることができる。例えば、それは、天然に存在する抗体、またはその断片もしくはバリアントのフレームワークであり得るか、またはそれらを含み得るか、または本質的に完全に合成的であり得る。様々なポリペプチド構造の例を以下にさらに説明する。
【0051】
本開示の抗原結合タンパク質は、解離平衡定数(K)が10-8M以下である場合、その標的抗原に「特異的に結合する」と言われる。Kが少なくとも5×10-9Mである場合、「高い親和性」を伴って、Kが少なくとも5×10-10Mである場合、「非常に高い親和性」を伴って、抗原結合タンパク質は抗原に特異的に結合する。一実施形態では、抗原結合タンパク質は、5x10-12MのKでヒトIL-23に結合し、さらに別の実施形態では、それは、5×10-13MのKで結合する。本発明の別の実施形態では、抗原結合タンパク質は、5x10-12MのKと、約5x10-61/秒のKオフとを有する。別の実施形態では、Kオフは5×10-71/秒である。
【0052】
別の態様は、インビトロまたはインビボで(例えば、ヒト対象に投与された場合)少なくとも1日の半減期を有する抗原結合タンパク質を提供する。一実施形態では、抗原結合タンパク質は、少なくとも3日の半減期を有する。別の実施形態では、抗体またはその一部は、4日以上の半減期を有する。別の実施形態では、抗体またはその一部は、8日以上の半減期を有する。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合部分は、誘導体化されていないまたは修飾されていない抗体と比較してより長い半減期を有するように誘導体化または修飾されている。別の実施形態では、抗原結合タンパク質は、WIPO公開番号第WO00/09560号に記載されているように、血清半減期を増加させるための点突然変異を含む。
【0053】
抗原結合タンパク質が治療用途に使用される実施形態では、抗原結合タンパク質は、炎症性サイトカインの産生を誘導するなど、IL-23の1つ以上の生物学的活性を低減、阻害、妨害、または調節することができる。IL-23には多くの異なる生物学的効果があり、様々な細胞型にて様々なアッセイにより測定できる。そのようなアッセイの例は、既知であり、本明細書に提供されている。
【0054】
提供される抗原結合タンパク質のいくつかは、通常、天然に存在する抗体に関連する構造を持っている。これらの抗体の構造単位は、通常、1つ以上の四量体を含み、それぞれがポリペプチド鎖の2つの同一のカプレットで構成されるが、哺乳動物の一部の種は、単一の重鎖のみを有する抗体も産生する。典型的な抗体では、各ペアまたはカプレットは、1つの全長「軽」鎖(特定の実施形態では、約25kDa)および1つの全長「重鎖」鎖(特定の実施形態では、約50~70kDa)を含む。個々の免疫グロブリン鎖はいくつかの「免疫グロブリンドメイン」で構成されており、それぞれが約90~110アミノ酸で構成され、特徴的な折り畳みパターンを示している。これらのドメインは、抗体ポリペプチドを構成する基本単位である。各鎖のアミノ末端部分は、通常、抗原認識に関与する可変領域を含む。カルボキシ末端部分は、鎖の他端よりも進化的に保存されており、「定常領域」または「C領域」と呼ばれる。ヒト軽鎖は一般にカッパ軽鎖とラムダ軽鎖に分類され、これらのそれぞれに1つの可変領域と1つの定常ドメイン(CL1)が含まれる。z重鎖は通常、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロン鎖に分類される。これらは、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして定義する。IgGには、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含むがこれらに限定されない、いくつかのサブタイプがある。IgMサブタイプには、IgMおよびIgM2が含まれる。IgAサブタイプには、IgA1とIgA2が含まれる。ヒトでは、IgAおよびIgDアイソタイプには4本の重鎖と4本の軽鎖が含まれている。IgGおよびIgEアイソタイプには2本の重鎖と2本の軽鎖が含まれている。IgMアイソタイプには5本の重鎖と5本の軽鎖が含まれている。重鎖定常領域(CH)は、典型的には、エフェクター機能に関与し得る1つ以上のドメインを含む。重鎖定常領域ドメインの数は、アイソタイプに依存する。例えば、IgG重鎖には、それぞれCH1、CH2、およびCH3として知られる3つのCH領域ドメインが含まれている。提供される抗体は、これらのアイソタイプおよびサブタイプのいずれかを有することができ、例えば、IL-23抗原結合タンパク質は、IgG1、IgG2、またはIgG4サブタイプのものである。IgG4が望まれる場合、Bloom et al.,1997,Protein Science 6:407に記載されているように、ヒンジ領域に点突然変異(CPSCP->CPPCP)を導入して、IgG4抗体の不均一性につながる可能性のある細胞内H鎖ジスルフィド結合を形成する傾向を緩和することも望ましい場合がある。本明細書で提供されるある型の抗体は、サブクラススイッチング法を使用して別の型に変更することができる。例えば、Lantto et al.,2002,Methods Mol.Biol.178:303-316を参照されたい。
【0055】
全長軽鎖および重鎖内で、可変領域および定常領域は、約12以上のアミノ酸の「J」領域によって結合しており、重鎖は、約10以上のアミノ酸の「D」領域も含む。例えば、Fundamental Immunology,2nd ed.,Ch.7(Paul,W.,ed.)1989,New York:Raven Pressを参照されたい。各軽鎖/重鎖ペアの可変領域は、通常、抗原結合部位を形成する。
【0056】
可変領域
本明細書で提供される様々な重鎖および軽鎖可変領域(またはドメイン)を表1および2に示す。これらの可変領域のそれぞれは、例えば、上記の重鎖および軽鎖定常領域に付着させることができる。さらに、そのように生成された重鎖および軽鎖配列のそれぞれを組み合わせて、完全な抗原結合タンパク質構造を形成することができる。
【0057】
以下の表1および2に示すように、VH1、VH2、VH3、VH4、VH5、VH6、VH7、VH8、VH9、VH10、VH11、VH12、VH13、VH14、VH15、およびVH16からなる群から選択される少なくとも1つの重鎖可変領域(VH)と、VL1、VL2、VL3、VL4、VL5、VL6、VL7、VL8、VL9、VL10、VL11、VL12、VL13、VL14、VL15、VL16からなる群から選択される少なくとも1つの軽鎖可変領域(VL)とを含む抗原結合タンパク質が提供される。
【0058】
表2に記載されている各重鎖可変領域は、表1に示されている軽鎖可変領域のいずれかと組み合わせて、抗原結合タンパク質を形成することができる。場合によっては、抗原結合タンパク質は、表1および2に列挙されたものからの少なくとも1つの重鎖可変領域および/または1つの軽鎖可変領域を含む。場合によっては、抗原結合タンパク質は、表1および2に列挙されたものからの少なくとも2つの異なる重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む。重鎖可変領域の様々な組み合わせは、軽鎖可変領域の様々な組み合わせのいずれかと組み合わせることができる。
【0059】
他の例では、抗原結合タンパク質は、2つの同一の軽鎖可変領域および/または2つの同一の重鎖可変領域を含む。一例として、抗原結合タンパク質は、表1および2に列挙されているように、軽鎖可変領域の対および重鎖可変領域の対の組み合わせで2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を含む抗体または免疫学的に機能的な断片であり得る。2つの同一の重鎖および軽鎖可変領域を含むそのような抗原結合タンパク質の例には、抗体A VH14/VL14、抗体B VH9/VL9、抗体C VH10/VL10、抗体D VH15/VL15、抗体E VH1/VL1、抗体F VH11/VL11、抗体G VH12/VL12、抗体H VH13/VL13、抗体I VH8/VL8、抗体J VH3/VL3、抗体K VH7/VL7、抗体L VH4/VL4、抗体M VH5/VL5、および抗体N VH6/VL6が含まれる。
【0060】
提供されるいくつかの抗原結合タンパク質は、表1および2から選択される重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域の配列と1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15アミノ酸残基だけ異なるアミノ酸の配列を含む重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含み、このような配列の違いは、独立して、1つのアミノ酸の欠失、挿入、または置換のいずれかである。一部の抗原結合タンパク質における軽鎖および重鎖可変領域は、表1および2で提供されたアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸の配列を含む。さらに他の抗原結合タンパク質、例えば、抗体または免疫学的に機能的な断片もまた、本明細書に記載されるようなバリアント重鎖領域形態および/またはバリアント軽鎖領域形態を含む。
【0061】
「同一性」という用語は、配列を整列および比較することによって決定される、2つ以上のポリペプチド分子または2つ以上のポリヌクレオチドの配列間の関係を指す。「パーセント同一性」は、比較される分子中のアミノ酸またはヌクレオチド間の同一の残基のパーセントを意味し、比較される最小の分子のサイズに基づいて計算される。
【表1】
【表2】
【0062】
これらの計算では、アラインメントのギャップ(存在する場合)は、特定の数学モデルまたはコンピュータプログラム(つまり、「アルゴリズム」)によって対処する必要がある。整列させた核酸またはポリペプチドの同一性を計算するために使用できる方法には、Computational Molecular Biology,(Lesk,AM,ed.),1988,New York:Oxford UniversityPress、Biocomputing Informatics and Genome Projects,(Smith,DW,ed.),1993,New York:Academic Press、Computer Analysis of Sequence Data,Part I,(Griffin,A.M.、およびGriffin,H.G.,eds.),1994,New Jersey:Humana Press、von Heinje,G.,1987,Sequence Analysis in Molecular Biology,New York:Academic Press、Sequence Analysis Primer,(Gribskov,M.およびDevereux,J.,eds.),1991,New York:M.Stockton Press、およびCarillo et al.,1988,SIAM J.Applied Math.48:1073.に記載されている方法が含まれる。
【0063】
パーセント同一性の計算では、比較される配列は、配列間の最大の一致を与える方法で整列される。パーセント同一性を決定するために使用されるコンピュータプログラムは、GAPを含むGCGプログラムパッケージである(Devereux et al.,1984,Nucl.Acids Res.12:387、Genetics Computer Group、University of Wisconsin、Madison,WI)。コンピュータアルゴリズムGAPは、パーセント配列同一性を決定するために、2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチドを整列させるために使用される。配列は、それぞれのアミノ酸またはヌクレオチドの最適なマッチング(アルゴリズムによって決定される「マッチングされたスパン」)のために整列される。ギャップオープニングペナルティ(平均対角線の3倍として計算され、「平均対角線」は使用されている比較行列の対角線の平均であり、「対角線」は、特定の比較行列による、各々の完全なアミノ酸一致に割り当てられたスコアまたは数値である)、およびギャップ拡張ペナルティ(通常はギャップ開口ペナルティの1/10倍)、ならびにPAM250やBLOSUM62などの比較行列がアルゴリズムと組み合わせて使用される。特定の実施形態では、標準比較行列(PAM250比較行列については、Dayhoff et al.,1978,Atlas of Protein Sequence and Structure 5:345-352、BLOSUM 62比較行列については、Henikoff et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-10919を参照されたい)もアルゴリズムで使用される。
【0064】
GAPプログラムを使用してポリペプチドまたはヌクレオチド配列の同一性パーセントを決定するための推奨パラメーターは以下のとおりである。アルゴリズム:Needleman et al.,1970,J.Mol.Biol.48:443-453、比較行列:Henikoff et al.,1992、上記のBLOSUM 62、ギャップペナルティ:12(ただし、エンドギャップに対するペナルティはない)、ギャップ長ペナルティ:4、類似性の閾値:0。2つのアミノ酸配列を整列させるための特定の整列スキームは、2つの配列の短い領域のみの一致をもたらす可能性があり、この小さな整列領域は、2つの全長配列間に有意な関係がなくても、非常に高い配列同一性を有する可能性がある。したがって、選択されたアラインメント方法(GAPプログラム)は、必要に応じて調整して、標的ポリペプチドの少なくとも50個の連続するアミノ酸にまたがる整列をもたらすことができる。本明細書に開示される重鎖および軽鎖可変領域は、関連する抗原結合タンパク質の基に由来するコンセンサス配列を含む。重鎖および軽鎖可変領域のアミノ酸配列を類似性について分析した。4つの群が出現した。1つの群は、カッパ軽鎖可変領域(VH9/VL9、VH10/VL10、VH11/VL11、VH13/VL13、VH14/VL14、およびVH15/VL15)を持ち、3つの群は、ラムダ軽鎖可変領域:ラムダ群1(VH5/VAS、VH6/VL6、およびVH7/VL7)、ラムダ群2(VH3/VL3およびVH4/VL4)、およびラムダ群3(VH1/VL1およびVH2/VL2)を持っている。表示される軽鎖生殖細胞系列には、VK1/A30およびVK1/L19が含まれる。表示される軽鎖ラムダ生殖細胞系列には、VL1/1e、VL3/3p、VL5/5cおよびVL9/9aが含まれる。表示される重鎖生殖細胞系列には、VH3/3-30、VH3/3-30.3、VH3/3-33、VH3/3-48、VH4/4-31およびVH4/4-59が含まれる。本明細書で使用される場合、「コンセンサス配列」は、多数の配列内の共通の保存されたアミノ酸と、特定のアミノ酸配列内では異なる可変アミノ酸とを有するアミノ酸配列を指す。コンセンサス配列は、本明細書に開示されるIL-23抗原結合タンパク質に対応する軽鎖および重鎖可変領域の標準的な系統発生分析を使用して決定することができる。
【0065】
カッパ群の軽鎖可変領域のコンセンサス配列は、DXQXTQSPSSVSASVG DRVTITCRASQGXSXWXAWYQQKPGXAPXLL IYAASSLQSGVPSRFSGSX0SGTX10FTLTISSLQPX11DFATYX12CQQANSFPFTFGPGTKVDX13K(配列番号30)であり、式中、Xは、IまたはSから選択され、Xは、MまたはLから選択され、Xは、GまたはVから選択され、Xは、S、F、またはIから選択され、Xは、SまたはGから選択され、Xは、FまたはLから選択され、Xは、KまたはQから選択され、Xは、K、N、またはSから選択され、Xは、GまたはVから選択され、X10は、DまたはEから選択され、X11は、EまたはAから選択され、X12は、YまたはFから選択され、X13は、I、V、またはFから選択される。
【0066】
ラムダ群1の軽鎖可変領域のコンセンサス配列は、QPXLTQPPSASASLGASVTLTCTLXSGYSDYKVDWYQXRPGKGPRFVMRVGTGGXVGSKGXGIPDRFSVLGSGLNRXLTIKNIQEEDESDYHCGADHGSGXNFVYVFGTGTKVTVL(配列番号61)であり、式中、Xは、VまたはEから選択され、Xは、NまたはSから選択され、Xは、QまたはLから選択され、Xは、IまたはTから選択され、Xは、DまたはEから選択され、Xは、YまたはSから選択され、Xは、SまたはNから選択される。
【0067】
ラムダ群3のための軽鎖可変領域のコンセンサス配列は、QSVLTQ PPSVSGAPGQRVTISCTGSSSNXGAGYDVHWYQQXPGTAPKLLIYGSXNRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAITGLQAEDEADYYCQSYDSSLSGWVFGGGTXRLTVL(配列番号139)であり、式中、Xは、TまたはIから選択され、Xは、VまたはLであり、Xは、GまたはNから選択され、Xは、RまたはKから選択される。
【0068】
カッパ群の重鎖可変領域のコンセンサス配列は、QVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGGSIXSGGYYWXWIRQHPGKGLEWIGXIXYSGXYYNPSLKSRXTXSVDTSXNQFSLX10LSSVTAADTAVYYCAX1112RGX13YYGMDVWGQGTTVTVSS(配列番号140)であり、式中、Xは、NまたはSから選択され、Xは、SまたはTから選択され、Xは、YまたはHから選択され、Xは、YまたはHから選択され、Xは、SまたはNから選択され、Xは、SまたはTから選択され、Xは、VまたはIから選択され、Xは、IまたはMから選択され、Xは、KまたはQから選択され、X10は、KまたはSから選択され、X11は、RまたはKから選択され、X12は、DまたはNから選択され、X13は、H、F、またはYから選択される。
【0069】
ラムダ群1の重鎖可変領域のコンセンサス配列は、EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCXSGFTFSXSMNWVRQAPGKGLEWVSYISSXSSTXYXADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRDEDTAVYYCARRIAAAGX10YYYAX11DVWGQGTTVTVSS(配列番号141)であり、式中、Xは、AまたはVから選択され、Xは、AまたはVから選択され、Xは、TまたはSから選択され、Xは、YまたはFから選択され、Xは、SまたはRから選択され、Xは、RまたはIから選択され、Xは、H、YまたはIから選択され、Xは、PまたはGから選択され、Xは、WまたはFから選択され、X10は、GまたはHから選択され、X11は、MまたはLから選択される。
【0070】
ラムダ群2用の重鎖可変領域のコンセンサス配列は、QVQLVESGGGVVQPG RSLRLSCAASGFTFSSYXM HWVRQAPGKGLEWXVISXDGSXKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARERTTLSGSYFDYWGQGTLVTVSS(配列番号142)であり、式中、Xは、GまたはAから選択され、Xは、VまたはLから選択され、Xは、AまたはSから選択され、Xは、FまたはHから選択され、Xは、LまたはかIら選択される。
【0071】
ラムダ群3の重鎖可変領域のコンセンサス配列は、QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSNXYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDRGYXSSWYPDAFDIWGQGTMVTVSS(配列番号143)であり、式中、Xは、EまたはKから選択され、Xは、TまたはSから選択される。
【0072】
相補性決定領域
相補性決定領域または「CDR」は、抗原の結合および認識に関与する領域を構成する、重鎖および軽鎖可変領域のフレームワーク内に埋め込まれている。例えば、同じ種の免疫グロブリン鎖の可変ドメインは、超可変CDR領域によって結合された比較的保存されたフレームワーク領域(FR)を含む、一般に同様の全体的な構造を示す。抗原結合タンパク質は、1、2、3、4、5、6またはそれ以上のCDRを持つことができる。例えば、上記の可変領域は、通常、3つのCDRで構成される。重鎖可変領域および軽鎖可変領域からのCDRは、通常、フレームワーク領域によって整列されて、標的抗原(例えば、IL-23)に特異的に結合する構造を形成する。N末端からC末端まで、天然に存在する軽鎖および重鎖の可変領域は両方とも、通常、これらの要素の次の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4に準拠する。例示的な軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインのCDRおよびFR領域は、表1および2で強調表示されている。CDRおよびFR領域の境界は、強調表示されているものとは異なる可能性があることが認識されている。これらの各ドメインの位置を占めるアミノ酸に番号を割り当てるために、番号付けシステムが考案されている。所与の抗原結合タンパク質の相補性決定領域およびフレームワーク領域は、これらのシステムを使用して同定することができる。番号付けシステムは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.,US Dept.of Health and Human Services,PHS,NIH,NIH Publication No.91-3242,1991、またはChothia&Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-917、Chothia et al.,1989,Nature 342:878-883で定義されている。免疫グロブリン鎖中のアミノ酸についての他の番号付けシステムには、IMGT(登録商標)(国際的なImMunoGeneTics情報システム、Lefranc et al,Dev.Comp.lmmunol.2005,29:185-203)、およびAHo(Honegger and Pluckthun,J.Mol.Biol.2001,309(3):657-670)を含む。本明細書で提供されるCDRは、従来の抗体構造の抗原結合ドメインを定義するために使用され得るだけでなく、本明細書に記載されるように、他の様々なポリペプチド構造に埋め込まれ得る。
【0073】
本明細書に開示される抗原結合タンパク質は、1つ以上のCDRが移植され、挿入され、埋め込まれ、および/または結合され得るポリペプチドである。抗原結合タンパク質は、例えば、1つの重鎖CDR1(「CDRH1」)、および/または1つの重鎖CDR2(「CDRH2」)、および/または1つの重鎖CDR3(「CDRH3」)、および/または1つの軽鎖CDR1(「CDRL1」)、および/または1つの軽鎖CDR2(「CDRL2」)、および/または1つの軽鎖CDR3(「CDRL3」)を有することができる。一部の抗原結合タンパク質には、CDRH3とCDRL3の両方が含まれる。特定の実施形態は、一般に、非反復性であるCDRの組み合わせを利用し、例えば、抗原結合タンパク質は、一般に、1つの可変重鎖領域内の2つのCDRH2領域などで作製されない。抗原結合タンパク質は、表3で示されている1つ以上のCDRのアミノ酸配列と同一であるか、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15アミノ酸残基だけ異なる1つ以上のアミノ酸配列を含んでもよく、そのような各配列の違いは、独立して、1つのアミノ酸の欠失、挿入、または置換のいずれかである。一部の抗原結合タンパク質のCDRは、表3で列挙されたCDRと少なくとも80%、85%、90%、91%、92、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸の配列を含む。一部の抗原結合タンパク質では、CDRは「フレームワーク」領域に埋め込まれ、CDRの適切な抗原結合特性が達成されるようにCDRを配向する。
【表3】
【0074】
本明細書では、配列番号7および11のアミノ酸残基23~34、配列番号9、13、15、17、19、21、23、25、27および29のアミノ酸残基24~34、配列番号1、3および4のアミノ酸残基23~36、配列番号31、33、34、38、40、44、52および60のアミノ酸残基31~35、ならびに配列番号46、48、50、54、56および58のアミノ酸残基31~37を含むCDR1領域が提供される。
【0075】
配列番号9、13、15、17、19、21、23、25、27および29のアミノ酸残基50~56、配列番号7および11のアミノ酸残基50~61、配列番号4のアミノ酸残基52~62、配列番号31、33、44および52のアミノ酸残基50~65、配列番号36、38、40、42および60のアミノ酸残基50~66、配列番号1および3のアミノ酸残基52~58、ならびに配列番号46、48、50、54、56および58のアミノ酸残基52~67を含むCDR2領域が提供される。
【0076】
配列番号13、15、17、19、21、23、25、27および29のアミノ酸残基89~97、配列番号1および3のアミノ酸残基91~101、配列番号7、9および11のアミノ酸残基94~106、配列番号44および52のアミノ酸残基98~107、配列番号4のアミノ酸残基97~105、配列番号34および36のアミノ酸残基99~110、配列番号112のアミノ酸残基99~112、配列番号31および33のアミノ酸残基99~113、配列番号38、40および42のアミノ酸残基99~114、配列番号46、48、54、56および58のアミノ酸残基100~109、ならびに配列番号50のアミノ酸残基101~019を含むCDR3領域も提供される。
【0077】
本明細書に開示されるCDRは、関連する配列の群に由来するコンセンサス配列を含む。前述のように、可変領域配列の4つの群、カッパ群と3つのラムダ群が特定された。カッパ群に由来するCDRL1コンセンサス配列は、RASQXSXWXA(配列番号123)からなり、式中、Xは、GまたはVから選択され、Xは、I、FまたはSから選択され、Xは、SまたはGから選択され、Xは、FまたはLから選択される。ラムダ群1に由来するCDRL1コンセンサス配列は、TLXSGYSDYKVD(配列番号124)からなり、式中、Xは、NまたはSから選択される。ラムダ群3に由来するCDRL1コンセンサス配列は、TGSSSNXGAGYDVH(配列番号125)からなり、式中、Xは、IまたはTから選択される。
【0078】
ラムダ群1に由来するCDRL2コンセンサス配列は、VGTGGXVGSKGX(配列番号126)からなり、式中、Xは、IまたはTから選択され、Xは、DまたはEから選択される。ラムダ群3に由来するCDRL2コンセンサス配列は、GSXNRPS(配列番号127)からなり、式中、Xは、NまたはGから選択される。
【0079】
CDRL3コンセンサス配列は、GADHGSGXNFVYV(配列番号128)からなり、式中、Xは、SまたはNである。
【0080】
カッパ群に由来するCDRH1コンセンサス配列は、SGGYYWX(配列番号129)からなり、式中、Xは、SまたはTから選択される。ラムダ群1に由来するCDRHコンセンサス配列は、XSMN(配列番号131)からなり、式中、Xは、SまたはTから選択され、Xは、YまたはFから選択される。ラムダ群2に由来するCDRH1コンセンサス配列は、SYXMH(配列番号130)からなり、式中、Xは、GまたはAから選択される。
【0081】
カッパ群に由来するCDRH2コンセンサス配列は、XIXYSGXYYNPSLKS(配列番号132)からなり、式中、Xは、YまたはHから選択され、Xは、YまたはHから選択され、Xは、SまたはNから選択され、Xは、TまたはSから選択される。ラムダ群1に由来するコンセンサス配列は、YISSXSSTXYXADSVKG(配列番号134)からなり、式中、Xは、RまたはSから選択され、Xは、IまたはRから選択され、Xは、I、H、またはYから選択される。ラムダ群2に由来するコンセンサス配列は、VISXDGSXKYYADSVKG(配列番号133)からなり、式中、Xは、FまたはHから選択され、Xは、LまたはTから選択される。ラムダ群3に由来するCDRH2コンセンサス配列は、VIWYDGSNXYYADSVKG(配列番号135)からなり、式中、Xは、KまたはEから選択される。
【0082】
カッパ群に由来するCDRH3コンセンサス配列は、XRGXYYGMDV(配列番号136)からなり、式中、Xは、NまたはDから選択され、Xは、H、YまたはFから選択される。ラムダ群1に由来するCDRH3コンセンサス配列は、RIAAAGXYYYAXDV(配列番号137)からなり、式中、Xは、GまたはPから選択され、Xは、FまたはWから選択され、Xは、HまたはGから選択され、Xは、LまたはMから選択される。ラムダ群3に由来するCDRH3コンセンサス配列は、DRGYXSSWYPDAFDI(配列番号138)からなり、式中、Xは、SまたはTから選択される。
【0083】
モノクローナル抗体
提供される抗原結合タンパク質には、IL-23に結合するモノクローナル抗体が含まれる。モノクローナル抗体は、例えば、免疫化スケジュールの完了後にトランスジェニック動物から採取された脾臓細胞を不死化することによって、当技術分野で知られている任意の技術を使用して産生することができる。脾臓細胞は、当技術分野で知られている任意の技術を使用して、例えば、それらを骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを生成することによって不死化することができる。ハイブリドーマ産生融合手順で使用するための骨髄腫細胞は、好ましくは、非抗体産生であり、高い融合効率を有し、それらを所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの増殖を支持する特定の選択培地で増殖できないようにする酵素欠損を有する。マウス融合で使用するのに適した細胞株の例には、Sp-20、P3-X63/Ag8、P3-X63-Ag8.653、NS1/1.Ag 4 1、Sp210-Ag14、FO、NSO/U、MPC-11、MPC11-X45-GTG 1.7、およびS194/5XXO Bulが含まれる。ラット融合で使用される細胞株の例には、R210.RCY3、Y3-Ag 1.2.3、IR983F、および413210が含まれる。細胞融合に有用な他の細胞株は、U-266、GM1500-GRG2、LICR-LON-HMy2、およびUC729-6である。
【0084】
場合によっては、ハイブリドーマ細胞株は、動物(例えば、ヒト免疫グロブリン配列を有するトランスジェニック動物)をIL-23免疫原で免疫すること、免疫化された動物から脾臓細胞を採取すること、採取した脾臓細胞を骨髄腫細胞株に融合させ、それによりハイブリドーマ細胞を生成すること、ハイブリドーマ細胞からハイブリドーマ細胞株を樹立し、IL-12を温存しながらIL-23ポリペプチドに結合する抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定することにより、産生される。
【0085】
ハイブリドーマ細胞株によって分泌されるモノクローナル抗体は、当技術分野で知られている任意の技術を使用して精製することができる。ハイブリドーマまたはモノクローナル抗体(mAb)をさらにスクリーニングして、IL-23誘導活性を阻害する能力などの特定の特性を持つmAbを特定することができる。
【0086】
キメラ抗体およびヒト化抗体
前述の配列に基づくキメラおよびヒト化抗体も提供される。治療薬として使用するためのモノクローナル抗体は、使用前に様々な方法で改変することができる。一例はキメラ抗体であり、これは、共有結合して機能的な免疫グロブリン軽鎖または重鎖またはそれらの免疫学的に機能的な部分を産生する、異なる抗体に由来するタンパク質セグメントから構成される抗体である。一般に、重鎖および/または軽鎖の一部は、特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同であり、一方、鎖の残りは、別の種に由来するか、または別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同である。キメラ抗体に関連する方法については、例えば、米国特許第4,816,567号、およびMorrison et al.,1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855を参照されたい。CDRグラフト化は、例えば、米国特許第6,180,370号、第5,693,762号、第5,693,761号、第5,585,089号、および第5,530,101号に記載されている。
【0087】
キメラ抗体の1つの有用な型は「ヒト化」抗体である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒト動物で最初に産生されたモノクローナル抗体から産生される。このモノクローナル抗体の特定のアミノ酸残基は、通常、抗体の非抗原認識部分に由来し、対応するアイソタイプのヒト抗体の対応する残基と相同になるように修飾されている。ヒト化は、例えば、齧歯類の可変領域の少なくとも一部をヒト抗体の対応する領域に置き換えることによって様々な方法を使用して実施することができる(例えば、米国特許第5,585,089号および第5,693,762号、Jones et al.,1986,Nature 321:522-525、Riechmann et al.,1988,Nature 332:323-27、Verhoeyen et al.,1988,Science 239:1534-1536を参照されたい)。
【0088】
特定の実施形態では、ヒト以外の種に由来する定常領域を、ヒト可変領域とともに使用して、ハイブリッド抗体を産生することができる。
【0089】
完全ヒト抗体
完全ヒト抗体も提供される。ヒトを抗原に曝露することなく、所与の抗原に特異的な完全ヒト抗体(「完全ヒト抗体」)を作製するための方法が利用可能である。完全ヒト抗体の産生を実施するために提供される1つの特定の手段は、マウス体液性免疫系の「ヒト化」である。内因性Ig遺伝子が不活性化されたマウスへのヒト免疫グロブリン(Ig)遺伝子座の導入は、任意の望ましい抗原で免疫できる動物であるマウスにおいて完全ヒトモノクローナル抗体(mAb)を産生する1つの手段である。完全ヒト抗体を使用すると、マウスまたはマウス誘導体化mAbを治療薬としてヒトに投与することによって引き起こされることがある免疫原性およびアレルギー反応を最小限に抑えることができる。
【0090】
完全ヒト抗体は、内因性免疫グロブリン産生の非存在下でヒト抗体のレパートリーを産生することができるトランスジェニック動物(通常はマウス)を免疫することによって産生することができる。この目的のための抗原は、通常、6つ以上の連続したアミノ酸を有し、任意選択で、ハプテンなどの担体に結合している。例えば、Jakobovits et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551-2555、Jakobovits et al.,1993,Nature 362:255-258、およびBruggermann et al.,1993,Year in Immunol.7:33を参照されたい。そのような方法の一例では、トランスジェニック動物は、その中のマウス重鎖および軽免疫グロブリン鎖をコードする内因性マウス免疫グロブリン遺伝子座を無力化し、ヒト重鎖および軽鎖タンパク質をコードする遺伝子座を含むヒトゲノムDNAの大きな断片をマウスゲノムに挿入することによって産生される。次に、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の完全な補体に満たない部分的に改変された動物を交配して、所望の免疫系改変のすべてを有する動物を得る。免疫原を投与すると、これらのトランスジェニック動物は、免疫原に対して免疫特異的であるが、可変領域を含むマウスのアミノ酸配列ではなくヒトのアミノ酸配列を有する抗体を産生する。このような方法の詳細については、例えば、WIPO特許公開第W096/33735号および第W094/02602号を参照されたい。ヒト抗体を作製するためのトランスジェニックマウスに関連する追加の方法は、
【0091】
米国特許第5,545,807号、第6,713,610号、第6,673,986号、第6,162,963号、第5,545,807号、第6,300,129号、第6,255,458号、第5,877,397号、第5,874,299号、および第5,545,806号、WIPO特許公開第W091/10741号、第W090/04036号、ならびに第EP546073B1号および第EP546073A1号に記載されている。
【0092】
上記のトランスジェニックマウスは、内因性μおよびκ鎖遺伝子座を不活性化する標的突然変異とともに、再構成されていないヒト重鎖(μおよびγ)およびκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座を含む(Lonberg et al.,1994,Nature 368:856-859)。したがって、マウスは免疫化に応答してマウスIgMまたはκの発現低下を示し、導入されたヒト重鎖および軽鎖導入遺伝子はクラススイッチおよび体細胞変異を受けて、高親和性ヒトIgG[κ]モノクローナル抗体を生成する(Lonberg et al.,前出、Lonberg and Huszar,1995,Intern.Rev.Immunol.13:65-93、Harding and Lonberg,1995,Ann.N.Y Acad.Sci.764:536-546)。そのようなマウスの調製は、Taylor et al.,1992,Nucleic Acids Research 20:6287-6295、Chen et al.,1993,International Immunology 5:647-656、Tuaillon et al.,1994,J.Immunol.152:2912-2920、Lonberg et al.,1994,Nature 368:856-859、Lonberg,1994,Handbook of Exp.Pharmacology 113:49-101、Taylor et al.,1994,International Immunology 6:579-591、Lonberg and Huszar,1995,Intern.Rev.Immunol.13:65-93、Harding and Lonberg,1995,Ann.N.Y Acad.Sci.764:536-546、Fishwild et al.,1996,Nature Biotechnology 14:845-85に詳細が記載されている。さらに、米国特許第5,545,806号、第5,569,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,789,650号、第5,877,397号、第5,661,016号、第5,814,318号、第5,874,299号、および第5,770,429号、ならびに米国特許第5,545,807号、WIPO公開第93/1227号、第WO 92/22646号、および第WO92/03918号を参照されたい。これらのトランスジェニックマウスにおいてヒト抗体を産生するために利用される技術は、WIPO公開第WO98/24893号、およびMendez et al.,1997,Nature Genetics 15:146-156にも開示されている。例えば、HCo7およびHCo12トランスジェニックマウス系統を使用して、抗IL-23抗体を生成することができる。
【0093】
ハイブリドーマ技術を使用して、所望の特異性を有する抗原特異的ヒトmAbを、上記のようなトランスジェニックマウスから産生および選択することができる。そのような抗体は、適切なベクターおよび宿主細胞を使用してクローン化および発現され得るか、または抗体は、培養されたハイブリドーマ細胞から回収され得る。
【0094】
完全ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーから誘導することもできる(Hoogenboom et al.,1991,J.Mol.Biol.227:381、Marks et al.,1991,J.Mol.Biol.222:581、WIPO公開第WO99/10494号に開示されているものなど)。ファージディスプレイ技術は、糸状バクテリオファージの表面上の抗体レパートリーのディスプレイを介した免疫選択、およびその後の選択した抗原へのそれらの結合によるファージの選択を模倣する。
【0095】
二重特異性または二機能性抗原結合タンパク質
「二重特異性(bispecific)」、「二重特異性(dual-specific)」、または「二機能性」抗原結合タンパク質または抗体は、それぞれ、上記したような1つ以上のCDRまたは1つ以上の可変領域のような2つの異なる抗原結合部位をそれぞれ有するハイブリッド抗原結合タンパク質または抗体である。場合によっては、それらは、2つの異なる重鎖/軽鎖対および2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。多重特異性抗原結合タンパク質または「多重特異性抗体」は、複数の抗原またはエピトープを標的とするものである。二重特異性抗原結合タンパク質および抗体は、多重特異性抗原結合タンパク質抗体の一種であり、ハイブリドーマの融合またはFab’断片の連結を含むがこれらに限定されない様々な方法によって産生され得る。例えば、Songsivilai and Lachmann,1990,Clin.Exp.Immunol.79:315-321、Kostelny et al.,1992,J.lmmunol.148:1547-1553を参照されたい。
【0096】
免疫学的断片
抗原結合タンパク質には、抗体の免疫学的断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、またはscFv)も含まれる。「Fab断片」は、1つの軽鎖(軽鎖可変領域(VL)およびそれに対応する定常ドメイン(CL))、ならびに1つの重鎖(重鎖可変領域(VH)および第1の定常ドメイン(CH1))からなる。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することはできない。「Fab’断片」は、1つの軽鎖と、CH1ドメインとCH2ドメインとの間の領域も含む1つの重鎖の一部とを含み、その結果、鎖間ジスルフィド結合が2つのFab’断片の2つの重鎖の間に形成されて、F(ab’)2分子を形成することができる。したがって、「F(ab’)2断片」は、2つの重鎖間のジスルフィド結合によって一緒に保持されている2つのFab’断片から構成される。「Fv断片」は、抗体の単鎖の可変軽鎖領域および可変重鎖領域からなる。単鎖抗体「scFv」は、重鎖および軽鎖可変領域が柔軟なリンカーによって接続されて、抗原結合領域を形成する単一のポリペプチド鎖を形成するFv分子である。単鎖抗体は、WIPO公開第WO88/01649号、米国特許第4,946,778号および第5,260,203号、Bird,1988,Science 242:423、Huston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:5879、Ward et al.,1989.Nature 334:544,de Graaf et al.,2002,Methods Mol Biol.178:379-387、Kortt et al.,1997,Prot.Eng.10:423、Kortt et al.,2001,Biomol.Eng.18:95-108、ならびにKriangkum et al.,2001,Biomol.Eng.18:31-40で詳細が議論されている。「Fc」領域は、抗体のCH1およびCH2ドメインを含む2本の重鎖断片を含む。2つの重鎖断片は、2つ以上のジスルフィド結合およびCH3ドメインの疎水性相互作用によって一緒に保持されている。
【0097】
ドメイン抗体、重鎖の可変領域または軽鎖の可変領域のみを含む免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片も含まれる。場合によっては、2つ以上のVH領域がペプチドリンカーと共有結合して、二価ドメイン抗体を作成する。二価ドメイン抗体の2つのVH領域は、同じまたは異なる抗原を標的とする可能性がある。ダイアボディは、2つのポリペプチド鎖を含む二価抗体であり、ここで、各ポリペプチド鎖は、同じ鎖上の2つのドメイン間のペアリングを可能にするには短すぎるリンカーによって結合されたVHおよびVLドメインを含み、したがって、各ドメインが別のポリペプチド鎖上の相補的ドメインとペアリングすることを可能にする(例えば、Holliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-48,1993およびPoljak et al.,Structure 2:1121-23,1994を参照されたい)。同様に、トリボディおよびテトラボディは、それぞれ3つおよび4つのポリペプチド鎖を含み、それぞれ3つおよび4つの抗原結合部位を形成する抗体であり、これらの部位は同じであっても異なっていてもよい。マキシボディは、IgGiのFc領域に共有結合した二価のscFvを含む(例えば、Fredericks et al,2004,Protein Engineering,Design&Selection,17:95-106、Powers et al.,2001,Journal of Immunological Methods,251:123-135、Shu et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:7995-7999、Hayden et al.,1994,Therapeutic Immunology 1:3-15を参照されたい)。
【0098】
その他の様々な形式
上に開示された抗原結合タンパク質のバリアント型も提供され、抗原結合タンパク質のいくつかは、例えば、表1および2に列挙される重鎖または軽鎖、可変領域またはCDRの1つ以上に1つ以上の保存的アミノ酸置換を有する。天然に存在するアミノ酸は、一般的な側鎖の特性:疎水性(ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile)、中性親水性(Cys、Ser、Thr、Asn、Gln)、酸性(Asp、Glu)、塩基性(His、Lys、Arg)、鎖の配向に影響を与える残基(Gly、Pro)、および芳香族(Trp、Tyr、Phe)に基づいてクラスに分類できる。
【0099】
保存的アミノ酸置換は、これらのクラスの1つのメンバーを同じクラスの別のメンバーと交換することを伴う場合がある。保存的アミノ酸置換は、天然に存在しないアミノ酸残基を含んでもよく、これらは、通常、生物学的システムでの合成ではなく、化学的ペプチド合成によって組み込まれる。これらには、ペプチド模倣物および他の逆または反転の形態のアミノ酸部分が含まれる。本明細書に記載の抗原結合タンパク質の機能的および/または生化学的特性におけるそのような実質的な改変は、維持におけるそれらの効果、(a)例えば、シートまたはらせん構造としての置換領域の分子骨格の構造、(b)標的部位での分子の電荷または疎水性、または(c)側鎖のかさ高さ、が有意に異なる重鎖および軽鎖のアミノ酸配列に置換を作り出すことによって、成し遂げることができる。
【0100】
非保存的な置換には、上記のクラスの1つのメンバーを別のクラスのメンバーと交換することが含まれる場合がある。そのような置換された残基は、ヒト抗体と相同である抗体の領域、または分子の非相同領域に導入され得る。
【0101】
そのような変更を行う際、ある特定の実施形態によれば、アミノ酸のハイドロパシーインデックスが考慮され得る。タンパク質のハイドロパシープロファイルは、各アミノ酸に数値(「ハイドロパシーインデックス」)を割り当て、ペプチド鎖に沿ってこれらの値を繰り返し平均化することによって計算される。各アミノ酸に、その疎水性および電荷特性に基づいてハイドロパシーインデックスが割り当てられている。それらは、イソロイシン(+4.5、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/システイン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(-0.4)、スレオニン(-0.7)、セリン(-0.8)、トリプトファン(-0.9)、チロシン(-1.3)、プロリン(-1.6)、ヒスチジン(-3.2)、グルタメート(-3.5)、グルタミン(-3.5)、アスパルテート(-3.5)、アスパラギン(-3.5)、リジン(-3.9)、およびアルギニン(-4.5)である。
【0102】
タンパク質上の相互作用的な生物学的機能の付与におけるハイドロパシーインデックスの重要性は、当該技術分野で理解されている(例えば、Kyte et al.,1982,J.Mol.Biol.157:105-131を参照されたい)。ある特定のアミノ酸が、同様のハイドロパシーインデックスまたはスコアを有する他のアミノ酸に置換され得、依然として同様の生物学的活性を保持することが知られている。ハイドロパシーインデックスに基づいて変更を行う際に、ある特定の実施形態では、ハイドロパシーインデックスが±2以内であるアミノ酸の置換が含まれる。いくつかの態様では、±1以内のものが含まれ、他の態様では、±0.5以内のものが含まれる。
【0103】
同様なアミノ酸の置換は、特に、それにより作成された生物学的機能性タンパク質またはペプチドが、本明細書に開示されるような免疫学的実施形態での使用を意図される場合、親水性に基づいて有効になされ得ることもまた、当該技術分野で理解されている。ある特定の実施形態では、その隣接アミノ酸の親水性によって支配されるタンパク質の最大局所平均親水性は、その免疫原性および抗原結合または免疫原性、すなわち、タンパク質の生物学的特性と相関する。
【0104】
これらのアミノ酸残基には、次の親水性値が割り当てられている:アルギニン(+3.0)、リジン(+3.0)、アスパラギン酸(+3.0±1)、グルタミン酸(+3.0±1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、スレオニン(-0.4)、プロリン(-0.5±1)、アラニン(-0.5)、ヒスチジン(-0.5)、システイン(-1.0)、メチオニン(-1.3)、バリン(-1.5)、ロイシン(-1.8)、イソロイシン(-1.8)、チロシン(-2.3)、フェニルアラニン(-2.5)、およびトリプトファン(-3.4)。同様の親水性値に基づいて変更を行う際、ある特定の実施形態では、親水性値が+2以内のアミノ酸の置換が含まれ、他の実施形態では、±1以内にあるものが含まれ、さらに他の実施形態では、±0.5以内にあるものが含まれる。場合によっては、親水性に基づいて一次アミノ酸配列からエピトープを同定することもできる。これらの領域は、「エピトピックコア領域」とも呼ばれる。
【0105】
例示的な保存的アミノ酸置換は、表4に示される。
【表4】
【0106】
当業者は、よく知られた技術を用いて、本明細書に示されるペプチドの好適なバリアントを決定することができるであろう。当業者は、活性に重要であると考えられない領域を標的とすることによって、活性を破壊することなく変更され得る分子の好適な領域を特定できる。当業者は、同様のペプチド間で保存されている分子の残基および部分を特定することができる。さらなる実施形態では、生物学的活性または構造に重要であり得る領域でさえ、生物学的活性を破壊することなく、またはペプチド構造に悪影響を与えることなく、保存的アミノ酸置換を受けることができる。
【0107】
さらに、当業者は、活性または構造に重要な同様のペプチドで残基を特定する構造-機能研究を再検討することができる。そのような比較を考慮して、当業者は、類似のタンパク質の活性または構造に重要なアミノ酸残基に対応するタンパク質のアミノ酸残基の重要性を予測することができる。当業者は、そのような予測される重要なアミノ酸残基の化学的に同様のアミノ酸置換を選択してもよい。
【0108】
当業者はまた、類似のペプチドの三次元構造およびその構造に関するアミノ酸配列を分析することができる。そのような情報を考慮して、当業者は、その三次元構造に関して抗体のアミノ酸残基の整列を予測し得る。当業者は、タンパク質の表面上にあると予測されるアミノ酸残基に、ラジカル変化を起こさないことを選択してもよく、これは、そのような残基が他の分子との重要な相互作用に関与し得るためである。さらに、当業者は、所望の各アミノ酸残基において単一のアミノ酸置換を含む試験バリアントを生成し得る。次に、これらのバリアントをIL-23活性についてのアッセイを使用してスクリーニングできるため(以下の実施例を参照されたい)、変更できるアミノ酸と変更してはならないアミノ酸に関する情報が得られる。言い換えれば、そのような慣用的な実験から収集された情報に基づいて、当業者は、単独でまたは他の変異と組み合わせてのいずれかでさらなる置換を回避するべきアミノ酸を容易に決定することができる。
【0109】
多くの科学出版物は、二次構造の予測に捧げられたものである。Moult,1996,Curr.,Op.in Biotech.7:422-427、Chou et al.,1974,Biochem.13:222-245、Chou et al.,1974,Biochemistry 113:211-222、Chou et al.,1978,Adv.Enzymol.Relat.Areas Mol.Biol.47:45-148、Chou et al.,1979,Ann.Rev.Biochem.47:251-276、およびChou et al.,1979,Biophys.J.26:367-384を参照されたい。さらに、コンピュータプログラムは現在、二次構造の予測を支援するために利用可能である。二次構造を予測する1つの方法は、ホモロジーモデリングに基づいている。例えば、30%を超える配列同一性または40%を超える類似性を持つ2つのポリペプチドまたはタンパク質は、多くの場合、類似した構造トポロジーを有する。タンパク質構造データベース(PDB)の最近の成長により、ポリペプチドまたはタンパク質の構造内の潜在的な折り畳み数など、二次構造の予測可能性が向上した。Holm et al.,1999,Nucl.Acid.Res.27:244-247を参照されたい。所与のポリペプチドまたはタンパク質の折り込み数は限られており、臨界数の構造が解決されると、構造予測が劇的により正確になる、ということが、示唆されている(Brenner et al.,1997,Curr.Op.Struct.Biol.7:369-376)。
【0110】
二次構造を予測する追加の方法には、「スレッディング」(Jones,1997,Curr.Opin.Struct.Biol.7:377-387、Sippl et al.,1996,Structure 4:15-19)、「プロファイル分析」(Bowie et al.,1991,Science 253:164-170、Gribskov et al.,1990,Meth.Enzymol.183:146-159、Gribskov et al.,1987,Proc.Nat.Acad.Sci.84:4355-4358)、ならびに「進化的リンケージ」(Holm,1999、前出、およびBrenner,1997、前出を参照されたい)が含まれる。
【0111】
いくつかの実施形態では、(1)タンパク質分解に対する感受性を低下させる、(2)酸化に対する感受性を低下させる、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変化させる、(4)リガンドまたは抗原結合親和性を変化させる、および/または(4)例えば、シートまたはらせん構造として、置換の領域における分子骨格の構造を維持するか、標的部位での分子の電荷または疎水性を維持または変更するか、または側鎖のかさ高さを維持もしくは変更するなどの、そのようなポリペプチドに他の物理化学的または機能的特性を付与または改変する、アミノ酸置換が作製される。
【0112】
例えば、単一または複数のアミノ酸置換(特定の実施形態では、保存的アミノ酸置換)は、天然に存在する配列においてなされ得る。分子間接触を形成するドメインの外側にある抗体のその部分で置換を行うことができる。そのような実施形態では、親配列の構造的特徴を実質的に変化させない保存的アミノ酸置換(例えば、親またはナイーブな抗原結合タンパク質を特徴付ける二次構造を破壊しない1つ以上の置換アミノ酸)を使用することができる。当該技術分野で認識されたポリペプチドの二次および三次構造の例は、Proteins,Structures and Molecular Principles(Creighton,Ed.),1984,W.H.New York:Freeman and Company、Introduction to Protein Structure(Branden and Tooze,eds.),1991,New York:Garland Publishing、およびThornton et al.,1991,Nature 354:105に記載されている。
【0113】
追加のバリアントには、親またはナイーブアミノ酸配列中の1つ以上のシステイン残基が別のアミノ酸(例えば、セリン)から欠失または置換されているシステインバリアントが含まれる。システインバリアントは、とりわけ、抗体(例えば)を生物学的に活性なコンフォメーションにリフォールディングする必要がある場合に有用である。システインバリアントは、ナイーブタンパク質よりも少ないシステイン残基を有する可能性があり、通常、対になっていないシステインに起因する相互作用を最小限に抑えるために偶数であり得る。
【0114】
開示されている重鎖および軽鎖可変領域およびCDRを使用して、IL-23ポリペプチドに特異的に結合することができる抗原結合領域を含む抗原結合タンパク質を調製することができる。「抗原結合領域」とは、例えば、抗原と相互作用し、抗原結合タンパク質にその特異性を付与するアミノ酸残基を含む領域などの、特定の抗原に特異的に結合するタンパク質またはタンパク質の一部を意味する。抗原結合領域は、1つ以上のCDRを含み得、特定の抗原結合領域はまた、1つ以上の「フレームワーク」領域を含み得る。例えば、表3に列挙された1つ以上のCDRは、免疫接着を行うために、共有結合的または非共有結合的に分子(例えば、ポリペプチド)に組み込まれ得る。免疫接着は、より大きいポリペプチド鎖の一部としてCDRを組み込み得るか、別のポリペプチド鎖にCDRと共有結合させ得るか、またはCDRを非共有結合によって組み込み得る。CDRは、免疫接着が目的の特定の抗原(例えば、IL-23ポリペプチド)に特異的に結合することを可能にする。
【0115】
他の抗原結合タンパク質には、本明細書に記載の可変領域およびCDRに基づく模倣物(例えば、「ペプチドの模倣物」または「ペプチド模倣物」)が含まれる。これらの類似体は、ペプチド、非ペプチド、またはペプチド領域と非ペプチド領域の組み合わせであり得る。Fauchere,1986,Adv.Drug Res.15.29、Veber and Freidinger,1985,TINS p.392、およびEvans et al.,1987,J.Med.Chem.30:1229。治療上有用なペプチドと構造的に類似しているペプチド模倣物を使用して、同様の治療効果または予防効果を生み出すことができる。このような化合物は、多くの場合、コンピュータ化された分子モデリングの助けを借りて開発される。一般に、ペプチド模倣物は、IL-23に結合する能力などの所望の生物学的活性を示す抗原結合タンパク質に構造的に類似しているタンパク質であるが、ペプチド模倣物は、例えば、-CH2NH-、-CH2S-、-CH2-CH2-、-CH-CH-(シスおよびトランス)、-COCH2-、-CH(OH)CH2-、ならびに-CH2SO-から選択される結合によって当技術分野で周知の方法により任意選択的に置き換えられる1つ以上のペプチド結合を有する。特定の実施形態では、コンセンサス配列の1つ以上のアミノ酸を同じ型のD-アミノ酸(例えば、L-リジンの代わりにD-リジン)で系統的に置換して、より安定なタンパク質を生成することができる。さらに、コンセンサス配列または実質的に同一のコンセンサス配列変異を含む拘束されたペプチドは、当技術分野で知られている方法によって、例えば、ペプチドを環化する分子内ジスルフィド架橋を形成することができる内部システイン残基を追加することによって、生成され得る(Rizo and Gierasch,1992,Ann.Rev.Biochem.61:387)。
【0116】
本明細書に記載されている抗原結合タンパク質の誘導体も提供される。誘導体化された抗原結合タンパク質は、特定の使用における半減期の増加など、抗原結合タンパク質または断片に所望の特性を付与する任意の分子または物質を含むことができる。誘導体化された抗原結合タンパク質は、例えば、検出可能な(または標識)部分(例えば、放射性、比色、抗原性または酵素的分子、検出可能なビーズ(例えば、磁性または電着(例えば、金)ビーズ)、または、別の分子(例えば、ビオチンまたはストレプトアビジン)に結合する分子)、治療または診断部分(例えば、放射性、細胞毒性、または薬学的に活性な部分)、または特定の使用(例えば、ヒト対象などの対象への投与、または他のインビボもしくはインビトロ使用)のために抗原結合タンパク質の適合性を高める分子を含むことができる。抗原結合タンパク質を誘導体化するために使用できる分子の例には、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)およびポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。抗原結合タンパク質のアルブミン結合およびPEG化誘導体は、当技術分野で周知の技術を使用して調製することができる。一実施形態では、抗原結合タンパク質は、トランスサイレチン(TTR)またはTTRバリアントにコンジュゲートされているか、そうでなければ連結されている。TTRまたはTTRバリアントは、例えば、デキストラン、ポリ(n-ビニルピロリドン)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、およびポリビニルアルコールからなる群から選択される化学物質で化学的に修飾することができる。
【0117】
他の誘導体には、IL-23抗原結合タンパク質のN末端またはC末端に融合した異種ポリペプチドを含む組換え融合タンパク質の発現などによる、IL-23抗原結合タンパク質と他のタンパク質またはポリペプチドとの共有結合または凝集結合体が含まれる。例えば、コンジュゲートペプチドは、異種シグナル(またはリーダー)ポリペプチド、例えば、酵母アルファ因子リーダー、またはエピトープタグなどのペプチドであり得る。IL-23抗原結合タンパク質含有融合タンパク質は、IL-23抗原結合タンパク質の精製または同定を容易にするために添加されたペプチド(例えば、ポリHis)を含むことができる。IL-23抗原結合タンパク質はまた、Hopp et al.,1988,Bio/Technology 6:1204、および米国特許第5,011,912号に記載されているように、FLAGペプチドに連結することができる。FLAGペプチドは抗原性が高く、特定のモノクローナル抗体(mAb)が可逆的に結合するエピトープを提供するため、発現した組換えタンパク質の迅速なアッセイと容易な精製が可能になる。FLAGペプチドが所与のポリペプチドに融合されている融合タンパク質を調製するために有用な試薬は市販されている(Sigma、St.Louis,MO)。
【0118】
1つ以上のIL-23抗原結合タンパク質を含むオリゴマーを、IL-23アンタゴニストとして使用することができる。オリゴマーは、共有結合または非共有結合の二量体、三量体、またはより高次のオリゴマーの形態であり得る。2つ以上のIL-23抗原結合タンパク質を含むオリゴマーの使用が企図されており、一例はホモ二量体である。他のオリゴマーには、ヘテロダイマー、ホモトリマー、ヘテロトリマー、ホモテトラマー、ヘテロテトラマーなどが含まれる。IL-23抗原結合タンパク質に融合したペプチド部分間の共有結合または非共有結合相互作用を介して結合した複数のIL-23結合タンパク質を含むオリゴマーも含まれる。そのようなペプチドは、ペプチドリンカー(スペーサー)、またはオリゴマー化を促進する特性を有するペプチドであり得る。適切なペプチドリンカーの中には、米国特許第4,751,180号および第4,935,233号に記載されているものもある。ロイシンジッパーおよび抗体に由来する特定のポリペプチドは、それに付着したIL-23抗原結合タンパク質のオリゴマー化を促進することができるペプチドの1つである。可溶性オリゴマータンパク質の生成に適したロイシンジッパードメインの例は、WIPO公開第WO94/10308号、Hoppe et al.,1994,FEBS Letters 344:191、およびFanslow et al.,1994,Semin.Immunol.6:267-278に記載されている。1つのアプローチにおいて、ロイシンジッパーペプチドに融合されたIL-23抗原結合タンパク質断片または誘導体を含む組換え融合タンパク質は、適切な宿主細胞で発現され、形成される可溶性オリゴマーIL-23抗原結合タンパク質断片または誘導体は、培養上清から回収される。
【0119】
このようなオリゴマーは、2~4個のIL-23抗原結合タンパク質を含み得る。オリゴマーのIL-23抗原結合タンパク質部分は、上記の形態のいずれか、例えば、バリアントまたは断片であり得る。好ましくは、オリゴマーは、IL-23結合活性を有するIL-23抗原結合タンパク質を含む。オリゴマーは、免疫グロブリンに由来するポリペプチドを使用して調製することができる。抗体由来ポリペプチド(Fcドメインを含む)の様々な部分に融合した特定の異種ポリペプチドを含む融合タンパク質の調製は、例えば、Ashkenazi et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:10535、Byrn et al.,1990,Nature 344:677、およびHollenbaugh et al.,1992“Construction of Immunoglobulin Fusion Proteins”,in Current Protocols in Immunology,Suppl.4,pages 10.19.1-10.19.11に記載されている。
【0120】
IL-23抗原結合タンパク質を抗体のFc領域に融合することによって作成された2つの融合タンパク質を含む二量体も含まれる。二量体は、例えば、融合タンパク質をコードする遺伝子融合を適切な発現ベクターに挿入し、組換え発現ベクターで形質転換された宿主細胞で遺伝子融合を発現させ、発現された融合タンパク質を抗体分子のように組み立てることによって、鎖間ジスルフィド結合がFc部分の間に形成され、二量体が生成されることにより、作製することができる。このようなFcポリペプチドには、抗体のFc領域に由来するポリペプチドの天然型およびムテイン型が含まれる。二量体化を促進するヒンジ領域を含むそのようなポリペプチドの短縮型も含まれる。Fc部分(およびそれから形成されるオリゴマー)を含む融合タンパク質は、プロテインAまたはプロテインGカラムよりもアフィニティークロマトグラフィーによる容易な精製という利点を提供する。WIPO公開第WO93/10151号および米国特許第5,426,048号および第5,262,522号に記載されている1つの適切なFcポリペプチドは、ヒトIgG1抗体のN末端ヒンジ領域からFc領域のナイーブC末端まで延びる一本鎖ポリペプチドである。別の有用なFcポリペプチドは、米国特許第5,457,035号、およびBaum et al.,1994,EMBO J.13:3992-4001に記載されているFcムテインである。このムテインのアミノ酸配列は、アミノ酸19がLeuからAlaに変更され、アミノ酸20がLeuからGluに変更され、アミノ酸22がGlyからAlaに変更されていることを除いて、WIPO公開第WO93/10151号に示されているネイティブFc配列のアミノ酸配列と同一である。ムテインはFc受容体に対する親和性の低下を示す。
【0121】
グリコシル化
抗原結合タンパク質は、在来種に見られるものとは異なる、または変化したグリコシル化パターンを有する可能性がある。当該技術分野で知られているように、グリコシル化パターンは、タンパク質の配列(例えば、以下で論じる特定のグリコシル化アミノ酸残基の有無)、またはタンパク質が産生される宿主細胞または生物の両方に依存し得る。特定の発現系については、以下で説明する。
【0122】
ポリペプチドのグリコシル化は、通常、N結合型または0結合型のいずれかである。N結合型とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列アスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-トレオニン(Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖に対する炭水化物部分の酵素結合のための認識配列である。ゆえに、ポリペプチドにおけるこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的なグリコシル化部位を生み出す。O結合型グリコシル化とは、最も一般的には、セリンまたはトレオニンであるが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンを使用してもよい、ヒドロキシアミノ酸への糖N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つの結合を指す。
【0123】
抗原結合タンパク質へのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を変更して、上記のトリペプチド配列(N-結合型グリコシル化部位の場合)の1つ以上を含むようにすることによって、便利に達成される。変更は、1つ以上のセリンまたはスレオニン残基を開始配列に追加または置換することによっても行うことができる(0結合型グリコシル化部位の場合)。容易にするために、抗原結合タンパク質のアミノ酸配列は、特に、所望のアミノ酸に翻訳されるコドンが生成されるように、事前に選択された塩基で標的ポリペプチドをコードするDNAを変異させることによって、DNAレベルでの変化によって変更され得る。
【0124】
抗原結合タンパク質の炭水化物部分の数を増やす別の手段は、タンパク質へのグリコシドの化学的または酵素的カップリングによるものである。これらの手順は、それらが、N結合型またはO結合型グリコシル化のためのグリコシル化能力を有する宿主細胞におけるタンパク質の産生を必要としない点で有利である。使用される連結モードに応じて、糖は、(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)システインのものなどの遊離スルフヒドリル基、(d)セリン、トレオニン、もしくはヒドロキシプロリンのものなどの遊離ヒドロキシル基、(e)フェニルアラニン、チロシン、もしくはトリプトファンのものなどの芳香族残基、または(f)グルタミンのアミド基に結合し得る。これらの方法は、PCT公開第WO87/05330号、およびAplin and Wriston,1981,CRC Crit.Rev,Biochem.,pp.259-306に記載されている。
【0125】
開始抗原結合タンパク質に存在する炭水化物部分の除去は、化学的または酵素的に達成され得る。化学的脱グリコシル化は、タンパク質を化合物トリフルオロメタンスルホン酸または同等の化合物に曝露することを必要とする。この処理は、ポリペプチドをインタクトに保ちながら、結合糖(N-アセチルグルコサミンまたはN-アセチルガラクトサミン)以外のほとんどまたはすべての糖の切断をもたらす。化学的脱グリコシル化は、Hakimuddin et al.,1987,Arch.Biochem.Biophys.259:52およびEdge et al.,1981,Anal.Biochem.118:131に記載されている。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakura et al.,1987,Meth.Enzymol.138:350に記載されているような様々なエンド-およびエキソ-グリコシダーゼを使用することによって、成し遂げることができる。潜在的なグリコシル化部位でのグリコシル化は、Duskin et al.,1982,J.Biol.Chem.257:3105に記載されているように、化合物ツニカマイシンを使用することによって防ぐことができる。ツニカマイシンは、タンパク質-N-グリコシド結合の形成を遮断する。
【0126】
したがって、態様には、親ポリペプチドのアミノ酸配列と比較して、グリコシル化部位の数および/または型が変更されている、抗原結合タンパク質のグリコシル化バリアントが含まれる。特定の実施形態では、抗原結合タンパク質バリアントは、親ポリペプチドよりも多いまたは少ない数のN結合型グリコシル化部位を含む。この配列を排除または変更する置換は、親ポリペプチドに存在するN-結合型炭水化物鎖の付加を防ぐ。例えば、グリコシル化は、Asnを欠失させることによって、またはAsnを異なるアミノ酸で置換することによって、減らすことができる。抗体は通常、Fc領域にN-結合型グリコシル化部位を有する。
【0127】
標識およびエフェクター群
抗原結合タンパク質は、1つ以上の標識を含み得る。「標識」または「標識基」という用語は、検出可能な任意のラベルを指す。一般に、標識は、それらが検出されるアッセイに応じて、様々なクラスに分類される:a)放射性または重同位体であり得る同位体ラベル;b)磁気標識(例えば、磁性粒子);c)参加還元活性部分;d)光学色素;酵素基(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、(3-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ);e)ビオチン化基;およびf)二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグなど)。いくつかの実施形態では、標識基は、潜在的な立体障害を低減するために、様々な長さのスペーサーアームを介して抗原結合タンパク質に結合される。タンパク質を標識するための様々な方法が当技術分野で知られている。適切な標識基の例には、以下、放射性同位体または放射性核種(例えば、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光基(例えば、FITC、ローダミン、ランタニドリン光体)、酵素基(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、(3-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光基、ビオチニル基、または二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、標識基は、潜在的な立体障害を低減するために、様々な長さのスペーサーアームを介して抗原結合タンパク質に結合される。タンパク質を標識するための様々な方法が当技術分野で知られており、適切と思われるように使用することができる。
【0128】
「エフェクター群」という用語は、細胞毒性剤として作用する抗原結合タンパク質に結合した任意の群を意味する。適切なエフェクター群の例は、放射性同位体または放射性核種(例えば、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)である。他の適切な群には、毒素、治療群、または化学療法群が含まれる。適切な群の例には、カリケアマイシン、オーリスタチン、ゲルダナマイシン、およびメイタンシンが含まれる。いくつかの実施形態では、エフェクター群は、潜在的な立体障害を低減するために、様々な長さのスペーサーアームを介して抗原結合タンパク質に結合される。
【0129】
IL-23抗原結合タンパク質をコードするポリヌクレオチド
抗体の一方または両方の鎖をコードするポリヌクレオチド、またはその断片、誘導体、ムテイン、もしくはバリアント、重鎖可変領域もしくはCDRのみをコードするポリヌクレオチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを同定、分析、変異または増幅するためのハイブリダイゼーションプローブ、PCRプライマー、もしくは配列決定プライマーとして使用するのに十分なポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドの発現を阻害するためのアンチセンス核酸、および前述の相補的配列を含む、本明細書に記載の抗原結合タンパク質またはその一部をコードするポリヌクレオチドも提供される。ポリヌクレオチドは任意の長さであり得る。それらは、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、85、95、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、750、1,000、1,500、3,000、5,000、またはそれ以上の長さの核酸であり得、その間のすべての値を含み、および/または1つ以上の追加の配列、例えば調節配列を含むことができ、および/またはより大きなポリヌクレオチドの一部、例えば、ベクターであり得る。ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であり得、RNAおよび/またはDNA核酸、およびそれらの人工バリアント(例えば、ペプチド核酸)を含み得る。
【0130】
特定の抗原結合タンパク質またはその一部(例えば、全長抗体、重鎖または軽鎖、可変ドメイン、またはCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、もしくはCDRL3)をコードするポリヌクレオチドは、IL-23またはその免疫原性断片で免疫化されたマウスのB細胞から単離することができる。ポリヌクレオチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの従来の手順によって単離することができる。ファージディスプレイは、抗体および他の抗原結合タンパク質の誘導体を調製することができる既知の技術の別の例である。1つのアプローチでは、目的の抗原結合タンパク質の成分であるポリペプチドは、任意の適切な組換え発現系で発現され、発現されたポリペプチドは、集合して抗原結合タンパク質分子を形成することができる。ファージディスプレイはまた、鎖シャッフリングを介して異なる特性(すなわち、それらが結合する抗原に対する様々な親和性)を有する抗原結合タンパク質を誘導するために使用される。Marks et al.,1992,BioTechnology 10:779を参照されたい。
【0131】
遺伝暗号の縮重のために、本明細書に示されるポリペプチド配列のそれぞれはまた、提供されるもの以外の多数の他のポリヌクレオチド配列によってコードされる。例えば、本明細書で提供される重鎖可変ドメインは、配列番号32、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、または59のポリヌクレオチド配列によってコードされ得る。軽鎖可変ドメインは、配列番号2、5、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、または28のポリヌクレオチド配列によってコードされ得る。当業者は、したがって、本開示が、各抗原結合タンパク質をコードする各縮重ヌクレオチド配列について適切な書面による説明および実施可能性を提供することを理解するであろう。
【0132】
一態様はさらに、特定のハイブリダイゼーション条件下で他のポリヌクレオチド分子にハイブリダイズするポリヌクレオチドを提供する。核酸をハイブリダイズするための方法、ハイブリダイゼーション条件の選択に影響を与える基本的なパラメーター、および適切な条件を考案するためのガイダンスは、当技術分野でよく知られている。例えば、Sambrook,Fritsch,and Maniatis(2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.およびCurrent Protocols in Molecular Biology,1995,Ausubel et al.,eds.,John Wiley&Sons,Inc.を参照されたい。本明細書で定義されているように、適度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、5x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、0.5%のSDS、1.0mMのEDTA(pH8.0)、約50%のホルムアミドのハイブリダイゼーションバッファー、6xSSC、および55℃のハイブリダイゼーション温度(または42℃のハイブリダイゼーション温度で約50%のホルムアミドを含むものなどの他の同様のハイブリダイゼーション溶液)を含む予備洗浄溶液と、0.5xSSC、0.1%SDS中の60℃の洗浄条件と、を使用する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、45℃で6xSSCでハイブリダイズし、続いて68℃で0.1xSSC、0.2%SDS中で1回以上洗浄する。さらに、当業者であれば、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件を操作して、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを増加または減少させて、互いに対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%(その間のすべての値を含む)同一である核酸配列を含むポリヌクレオチドが、通常、互いにハイブリダイズした状態で保つことができる。
【0133】
変化は、ポリヌクレオチドへの突然変異によって導入されることができ、それにより、それがコードするポリペプチド(例えば、抗原結合タンパク質または抗原結合タンパク質誘導体)のアミノ酸配列の変化をもたらす。突然変異は、部位特異的突然変異誘発およびランダム突然変異誘発などの当技術分野で知られている任意の技術を使用して導入することができる。変異ポリペプチドは、発現され、所望の特性のために選択され得る。変異は、それがコードするポリペプチドの生物学的活性を著しく変えることなく、ポリヌクレオチドに導入することができる。例えば、非必須アミノ酸残基での置換。あるいは、1つ以上の突然変異を、それがコードするポリペプチドの生物学的活性を選択的に変化させるポリヌクレオチドに導入することができる。例えば、突然変異は、生物活性を増加、減少、または排除し、抗原結合タンパク質の抗原特異性を変化させるなど、生物学的活性を定量的または定性的に変化させることができる。
【0134】
別の態様は、核酸配列を検出するためのプライマーまたはハイブリダイゼーションプローブとしての使用に適したポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは、全長ポリペプチドをコードする核酸配列の一部、例えば、プローブもしくはプライマーとして使用できる断片、またはポリペプチドの活性部分(例えば、IL-23結合部分)をコードする断片のみを含むことができる。核酸の配列に基づくプローブを使用して、核酸または類似の核酸、例えば、ポリペプチドをコードする転写物を検出することができる。プローブは、標識基、例えば、放射性同位元素、蛍光化合物、酵素、または酵素補因子を含むことができる。このようなプローブは、ポリペプチドを発現する細胞を同定するために使用することができる。
【0135】
抗原結合タンパク質の発現方法
本明細書で提供される抗原結合タンパク質は、多数の従来の技術のいずれかによって調製することができる。例えば、IL-23抗原結合タンパク質は、当技術分野で知られている任意の技術を使用して、組換え発現システムによって産生され得る。例えば、Monoclonal Antibodies,Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses,Kennet et al.(eds.)Plenum Press,New York(1980)、およびAntibodies:A Laboratory Manual,Harlow and Lane(eds.),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.を参照されたい。(1988)。
【0136】
上記されるような少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むプラスミド、発現ベクター、転写または発現カセットの形態の発現系および構築物、ならびにこのような発現系または構築物を含む宿主細胞もまた提供される。本明細書で使用される場合、「ベクター」は、タンパク質コード情報を宿主細胞に導入するために使用するのに好適な任意の分子または実体(例えば、ポリヌクレオチド、プラスミド、バクテリオファージ、またはウイルス)を意味する。ベクターの例には、プラスミド、ウイルスベクター、非エピソーム哺乳類ベクター、および発現ベクター、例えば、組換え発現ベクターが含まれるが、これらに限定されない。組換え発現ベクターなどの発現ベクターは、宿主細胞の形質転換に有用であり、それに作動可能に連結された1つ以上の異種コード領域の発現を指示および/または制御する(宿主細胞と併せて)核酸配列を含む。発現構築物は、転写、翻訳に影響を与えるかまたはそれらを制御し、イントロンが存在する場合、それに作動可能に連結されたコード領域のRNAスプライシングに影響を与える配列を含み得るが、これらに限定されない。「作動可能に連結されている」とは、この用語が適用される成分が、それらの固有の機能を実行できる関係にあることを意味する。例えば、タンパク質コード配列に「作動可能に連結された」ベクター中の制御配列、例えばプロモーターは、制御配列の正常な活性がタンパク質コード配列の転写をもたらし、その結果、コードされたタンパク質の組換え発現をもたらすように、配置される。
【0137】
別の態様では、組換え発現ベクターなどの発現ベクターが導入された宿主細胞が提供される。宿主細胞は、任意の原核細胞(例えば、E.coli)または真核細胞(例えば、酵母、昆虫、または哺乳類細胞(例えば、CHO細胞))であり得る。ベクターDNAは、従来の形質転換またはトランスフェクション技術を介して原核細胞または真核細胞に導入することができる。哺乳動物細胞の安定したトランスフェクションのために、使用される発現ベクターおよびトランスフェクション技術に応じて、細胞のごく一部のみが外来DNAをそれらのゲノムに組み込むことができることが知られている。これらの組み込み物の同定および選択のために、選択可能なマーカーをコードする遺伝子(例えば、抗生物質に対する耐性のために)は、一般に、目的の遺伝子とともに宿主細胞に導入される。好ましい選択可能なマーカーには、G418、ハイグロマイシン、およびメトトレキサートなどの薬剤に対する耐性を付与するものが含まれる。導入されたポリヌクレオチドで安定的にトランスフェクトされた細胞は、他の方法の中でもとりわけ、薬物選択によって同定することができる(例えば、選択可能なマーカー遺伝子を組み込んだ細胞は生き残るが、他の細胞は死滅する)。
【0138】
抗原結合タンパク質は、ハイブリドーマ細胞株(例えば、特に、抗体はハイブリドーマで発現され得る)またはハイブリドーマ以外の細胞株で発現され得る。抗原結合タンパク質をコードする発現構築物は、哺乳動物、昆虫、または微生物の宿主細胞を形質転換するために使用することができる。形質転換は、ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための任意の既知の方法を使用して実施することができ、例えば、ポリヌクレオチドをウイルスまたはバクテリオファージにパッケージングし、米国特許第.4,399,216号、第4,912,040号、第4,740,461号、第4,959,455号に例示されているように当該分野において知られているトランスフェクション手順によって宿主細胞に構築物を形質導入することを含む。使用される最適な形質転換手順は、どの型の宿主細胞が形質転換されるかによって異なる。異種ポリヌクレオチドを哺乳類細胞に導入するための方法は、当該技術分野で周知であり、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソームへのポリヌクレオチドのカプセル化、核酸と正に帯電した脂質との混合、およびDNAの核への直接マイクロインジェクションが含まれるが、これらに限定されない。
【0139】
組換え発現構築物は、通常、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。ポリペプチドは、以下:本明細書で提供されるような1つ以上のCDR、軽鎖可変領域、重鎖可変領域、軽鎖定常領域、重鎖定常領域(例えば、CH1、CH2および/またはCH3)、および/またはIL-23抗原結合タンパク質の別の足場部分、のうちの1つ以上を含み得る。これらの核酸配列は、標準的なライゲーション技術を使用して適切な発現ベクターに挿入される。一実施形態では、重鎖または軽鎖定常領域は、本明細書で提供される重鎖または軽鎖可変領域のC末端に付加され、発現ベクターに連結される。ベクターは、通常、使用される特定の宿主細胞において機能的であるように選択される(すなわち、ベクターは、宿主細胞機構と適合性があり、遺伝子の増幅および/または発現が起こり得る)。いくつかの実施形態では、ジヒドロ葉酸レダクターゼなどのタンパク質レポーターを使用するタンパク質断片補完アッセイを使用するベクターが使用される(例えば、米国特許第6,270,964号を参照のこと)。適切な発現ベクターは、例えば、Invitrogen Life Technologies(Carlsbad,CA)またはBD Biosciences(San Jose,CA)から購入することができる。抗体および断片をクローニングおよび発現するための他の有用なベクターには、Bianchi and McGrew,2003,Biotech.Biotechnol.Bioeng.84:439-44に記載されているものが含まれる。追加の適切な発現ベクターは、例えば、Methods Enzymol.,vol.185(D.V.Goeddel,ed.),1990,New York:AcademicPressで論じられている。
【0140】
通常、宿主細胞のいずれかで使用される発現ベクターは、プラスミドの維持、ならびに外因性ヌクレオチド配列のクローニングおよび発現のための配列を含むであろう。特定の実施形態において集合的に「隣接配列」と呼ばれるそのような配列は、通常、以下のヌクレオチド配列:プロモーター、1つ以上のエンハンサー配列、複製の起点、転写終結配列、ドナーおよびアクセプタースプライス部位を含む完全なイントロン配列、ポリペプチド分泌のためのリーダー配列をコードする配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現されるべきポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを挿入するためのポリリンカー領域、および選択可能なマーカー要素、のうちの1つ以上を含む。提供される発現ベクターは、市販のベクターなどの開始ベクターから構築することができる。そのようなベクターは、所望の隣接配列のすべてを含んでもよいし、含まなくてもよい。本明細書に記載の1つ以上の隣接配列がベクターにまだ存在しない場合、それらを個別に取得し、ベクターにライゲーションすることができる。隣接配列のそれぞれを得るために使用される方法は、当業者によく知られている。
【0141】
任意選択で、ベクターは、「タグ」をコードする配列、すなわち、IL-23抗原結合タンパク質コード配列の5’または3’末端に位置するオリゴヌクレオチド分子を含み得る。オリゴヌクレオチド配列は、polyHis(hexaHis;配列番号152など)、または市販の抗体が存在するFLAG(登録商標)、HA(ヘマグルチニンインフルエンザウイルス)、mycなどの別の「タグ」をコードする。このタグは通常、ポリペプチドの発現時にポリペプチドに融合され、宿主細胞からのIL-23抗原結合タンパク質のアフィニティー精製または検出のための手段として役立つことができる。アフィニティー精製は、例えば、タグに対する抗体をアフィニティー基盤として使用するカラムクロマトグラフィーによって達成することができる。必要に応じて、タグは、その後、切断のために特定のペプチダーゼを使用するなどの様々な手段によって、精製されたIL-23抗原結合タンパク質から除去することができる。
【0142】
隣接配列は、相同(すなわち、宿主細胞と同じ種および/または株に由来する)、異種(すなわち、宿主細胞の種または株以外の種に由来する)、ハイブリッド(すなわち、複数の起源に由来する隣接配列の組み合わせ)、合成または天然であり得る。したがって、隣接配列の起源は、隣接配列が宿主細胞機構において機能的であり、それによって活性化され得るという条件付きで、任意の原核生物または真核生物、任意の脊椎動物または無脊椎動物、または任意の植物であり得る。
【0143】
ベクターにおいて有用な隣接配列は、当技術分野で周知のいくつかの方法のいずれかによって得ることができる。通常、本明細書で有用な隣接配列は、マッピングおよび/または制限エンドヌクレアーゼ消化によって事前に同定されており、したがって、適切な制限エンドヌクレアーゼを使用して適切な組織源から単離することができる。場合によっては、隣接配列の完全なヌクレオチド配列が知られている可能性がある。ここで、隣接配列は、核酸合成またはクローニングのために本明細書に記載された方法を使用して合成することができる。
【0144】
隣接配列の全部または一部のみが既知であるかどうかにかかわらず、それは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、および/または同じまたは別の種に由来するオリゴヌクレオチドおよび/または隣接配列断片などの適切なプローブを伴うゲノムライブラリーをスクリーニングして、得ることができる。隣接配列が知られていない場合、隣接配列を含むDNAの断片は、例えば、コード配列またはさらに別の遺伝子を含み得るより大きなDNA片から単離され得る。単離は、制限エンドヌクレアーゼ消化によって適切なDNA断片を生成し、続いてアガロースゲル精製、Qiagen(登録商標)カラムクロマトグラフィー(Qiagen、Chatsworth,CA)、または当業者に知られている他の方法を使用して単離することによって達成され得る。この目的を達成するための適切な酵素の選択は、当業者には容易に明らかであろう。
【0145】
複製起点は、通常、商業的に購入された原核生物発現ベクターの一部であり、複製起点は、宿主細胞におけるベクターの増幅を助ける。選択したベクターに複製起点が含まれていない場合は、既知の配列に基づいて化学的に合成し、ベクターにライゲーションすることができる。例えば、プラスミドpBR322(New England Biolabs、Beverly、MA)からの複製起点は、ほとんどのグラム陰性菌に適しており、様々なウイルス起源(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、小胞性口内炎ウイルス(VSV)、またはHPVやBPVなどのパピローマウイルス)は、哺乳類細胞でベクターをクローニングするのに役立つ。一般に、複製起点成分は、哺乳類の発現ベクターには必要ない(例えば、SV40起点は、多くの場合、ウイルスの初期プロモーターも含まれているという理由だけで使用されている)。
【0146】
転写終結配列は、通常、ポリペプチドコード領域の3’末端側に位置し、転写を終結させる働きをする。通常、原核細胞の転写終結配列は、GCリッチ断片とそれに続くポリT配列である。配列は、ライブラリーから容易にクローン化されるか、またはベクターの一部として商業的に購入されるが、本明細書に記載されるような核酸合成の方法を使用して容易に合成することもできる。
【0147】
選択可能なマーカー遺伝子は、選択培地で増殖した宿主細胞の生存および増殖に必要なタンパク質をコードする。典型的な選択マーカー遺伝子は、(a)原核生物の宿主細胞に対して、抗生物質または他の毒素、例えば、アンピシリン、テトラサイクリン、またはカナマイシンに対する耐性を付与する、(b)細胞の栄養要求性欠損を補完する、または(c)複雑な培地または定義された培地からは入手できない重要な栄養素を供給する、タンパク質をコードする。特定の選択可能なマーカーは、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、およびテトラサイクリン耐性遺伝子である。有利なことに、ネオマイシン耐性遺伝子はまた、原核生物および真核生物の両方の宿主細胞における選択に使用され得る。
【0148】
他の選択可能な遺伝子を使用して、発現される遺伝子を増幅することができる。増幅は、成長または細胞の生存に重要なタンパク質の産生に必要な遺伝子が、組換え細胞の連続世代の染色体内でタンデムに繰り返されるプロセスである。哺乳動物細胞に適した選択可能なマーカーの例には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)およびプロモーターのないチミジンキナーゼ遺伝子が含まれる。哺乳動物の細胞形質転換体は、ベクターに存在する選択可能な遺伝子のおかげで、形質転換体のみが生き残るために独自に適応される選択圧下に置かれる。培地中の選択剤の濃度が連続的に増加する条件下で形質転換細胞を培養することによって選択圧が課され、それにより、選択可能な遺伝子と、IL-23に結合する抗原結合タンパク質などの別の遺伝子をコードするDNAの両方の増幅がもたらされる。その結果、増幅されたDNAから抗原結合タンパク質などのポリペプチドの量が増加する。
【0149】
リボソーム結合部位は通常、rnRNAの翻訳開始に必要であり、シャインダルガルノ(Shine-Dalgarno)配列(原核生物)またはコザック(Kozak)配列(真核生物)によって特徴付けられる。この要素は、通常、発現されるポリペプチドのプロモーターの3’およびコード配列の5’に位置する。
【0150】
真核生物の宿主細胞発現系においてグリコシル化が望まれる場合など、場合によっては、様々なプレ配列またはプロ配列を操作して、グリコシル化または収量を改善することができる。例えば、特定のシグナルペプチドのペプチダーゼ切断部位を変更したり、プロ配列を追加したりすることができ、これもグリコシル化に影響を与える可能性がある。最終的なタンパク質産物は、(成熟タンパク質の最初のアミノ酸に対して)-1の位置に、完全に除去されていない可能性のある、発現に付随する1つ以上の追加のアミノ酸を有し得る。例えば、最終的なタンパク質産物は、ペプチダーゼ切断部位に見出され、アミノ末端に結合した1つまたは2つのアミノ酸残基を有し得る。あるいは、いくつかの酵素切断部位の使用は、酵素が成熟ポリペプチド内のそのような領域で切断する場合、所望のポリペプチドのわずかに切り詰められた形態をもたらす可能性がある。
【0151】
発現およびクローニングは、通常、宿主生物によって認識され、IL-23抗原結合タンパク質をコードする分子に作動可能に連結されたプロモーターを含む。プロモーターは、構造遺伝子の転写を制御する構造遺伝子の開始コドンの上流(すなわち、5’)に位置する(一般に約100~1000bp以内)非転写配列である。プロモーターは通常、誘導性プロモーターと構成的プロモーターの2つのクラスのいずれかに分類される。誘導性プロモーターは、栄養素の有無や温度の変化など、培養条件の変化に応じて、制御下でDNAからの転写レベルの上昇を開始する。他方、構成的プロモーターは、それらが作動可能に連結されている遺伝子を均一に転写する、すなわち、遺伝子発現をほとんどまたは全く制御しない。様々な潜在的な宿主細胞によって認識される多数のプロモーターがよく知られている。適切なプロモーターは、制限酵素消化によって供給源DNAからプロモーターを除去し、所望のプロモーター配列をベクターに挿入することにより、IL-23抗原結合タンパク質の重鎖可変領域または軽鎖可変領域をコードするDNAに作動可能に連結される。
【0152】
酵母宿主とともに使用するための適切なプロモーターもまた、当技術分野でよく知られている。酵母エンハンサーは、酵母プロモーターとともに有利に使用される。哺乳類宿主細胞で使用するのに好適なプロモーターは周知であり、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2など)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、およびシミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られるものが含まれるが、これらに限定されない。他の好適な哺乳類プロモーターには、異種哺乳類プロモーター、例えば、熱ショックプロモーターおよびアクチンプロモーターが含まれる。
【0153】
目的とする追加のプロモーターには、以下:SV40初期プロモーター(Benoist and Chambon,1981,Nature 290:304-310)、CMVプロモーター(Thornsen et al.,1984,Proc.Natl.Acad.USA81:659-663)、ラウス肉腫ウイルスの3’ロングターミナルリピートに含まれるプロモーター(Yamamoto et al.,1980,Cell 22:787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al.,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.USA78:1444-1445)、メタロチオネイン遺伝子に由来するプロモーターおよび調節配列(Prinster et al.,1982,Nature 296:39-42)、およびベータラクタマーゼプロモーターなどの原核生物プロモーター(Villa-Kamaroff et al.,1978,Proc.Natl.Acad.Sci.USA75:3727-3731)、またはtacプロモーター(DeBoer et al.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA80:21-25)が含まれるが、これらに限定されない。組織特異性を示し、トランスジェニック動物で利用されている以下:膵臓腺房細胞で活性であるエラスターゼI遺伝子制御領域(Swift et al.,1984,Cell 38:639-646、Ornitz et al.,1986,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.50:399-409、MacDonald,1987,Hepatology 7:425-515);膵臓ベータ細胞で活性なインスリン遺伝子制御領域(Hanahan,1985,Nature 315:115-122);リンパ球で活性な免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedl et al.,1984,Cell 38:647-658、Adames et al.,1985,Nature 318:533-538、Alexander et al.,1987,Mol.Cell.Biol.7:1436-1444);精巣、乳房、リンパ球および肥満細胞で活性であるマウス乳がんウイルス制御領域(Leder et al.,1986,Cell 45:485-495);肝臓で活性のあるアルブミン遺伝子制御領域(Pinkert et al.,1987,Genes and Devel.1:268-276);肝臓で活性のあるα-フェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlauf et al.,1985,Mo/.Cell.Biol.5:1639-1648、Hammer et al.,1987,Science 253:53-58);肝臓で活性のあるα1-アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelsey et al.,1987,Genes and Devel.1:161-171);骨髄細胞で活性のあるβグロビン遺伝子制御領域(Mogram et al.,1985,Nature 315:338-340、Kollias et al.,1986,Cell 46:89-94);脳内のオリゴデンドロサイト細胞で活性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readhead et al.,1987,Cell 48:703-712);骨格筋で活性なミオシン軽鎖-2遺伝子制御領域(Sani,1985,Nature 314:283-286);視床下部で活性な性腺刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子制御領域(Mason et al.,1986,Science 234:1372-1378)、の動物転写制御領域も目的とする。
【0154】
高等真核生物による転写を増加させるために、エンハンサー配列をベクターに挿入することができる。エンハンサーはDNAのシス作用エレメントであり、通常は長さが約10~300bpで、プロモーターに作用して転写を増加させる。エンハンサーは比較的配向と位置に依存せず、転写ユニットの5’と3’の両方の位置に見られる。哺乳類の遺伝子から入手可能ないくつかのエンハンサー配列が知られている(例えば、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテインおよびインスリン)。ただし、通常、ウイルスのエンハンサーが使用される。当技術分野で知られているSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーは、真核生物プロモーターの活性化のための例示的な増強要素である。エンハンサーは、コード配列の5’または3’のいずれかのベクターに配置することができるが、通常、プロモーターから5’の部位に配置される。適切なナイーブまたは異種シグナル配列(リーダー配列またはシグナルペプチド)をコードする配列を発現ベクターに組み込んで、抗体の細胞外分泌を促進することができる。シグナルペプチドまたはリーダーの選択は、抗体が産生される宿主細胞の型に依存し、異種シグナル配列がネイティブシグナル配列を置き換えることができる。哺乳動物宿主細胞で機能的であるシグナルペプチドの例には、以下:米国特許第4,965,195号に記載されているインターロイキン-7のシグナル配列;Cosman et al.,1984,Nature 312:768に記載されているインターロイキン-2受容体のシグナル配列;欧州特許第0367566号に記載されているインターロイキン-4受容体シグナルペプチド;米国特許第4,968,607号に記載されているI型インターロイキン-1受容体シグナルペプチド;欧州特許第0460846号に記載されているII型インターロイキン-1受容体シグナルペプチド、が含まれる。
【0155】
ベクターが構築された後、完成したベクターは、増幅および/またはポリペプチド発現のために適切な宿主細胞に挿入され得る。抗原結合タンパク質のための発現ベクターの選択された宿主細胞への形質転換は、トランスフェクション、感染、リン酸カルシウム共沈、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、または他の既知の技術を含む周知の方法によって達成され得る。選択される方法は、部分的には使用される宿主細胞の種類の関数である。これらの方法および他の好適な方法は当業者に周知であり、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.2001に記載されている。
【0156】
宿主細胞は、適切な条件下で培養されると、タンパク質を合成し、その後、タンパク質は、培養培地から(宿主細胞がタンパク質を培地に分泌する場合)、またはそれを産生する宿主細胞から直接(溶解しない場合)収集され得る。適切な宿主細胞の選択は、所望の発現レベル、活性に望ましいまたは必要なポリペプチド修飾(グリコシル化またはリン酸化など)、および生物学的に活性な分子への折り畳みの容易さなどの様々な要因に依存する。
【0157】
発現のための宿主として利用可能な哺乳類細胞株は、当該技術分野で周知であり、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、および多数の他の細胞株を含むが、これらに限定されない、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な不死化細胞株を含むが、これらに限定されない。特定の実施形態では、細胞株は、どの細胞株が高い発現レベルを有し、IL-23結合特性を有する抗原結合タンパク質を構成的に産生するかを決定することによって選択され得る。別の実施形態では、それ自身の抗体を作製しないが、異種抗体を作製および分泌する能力を有するB細胞系統からの細胞株もまた選択され得る。
【0158】
診断および治療目的でのヒトIL-23抗原結合タンパク質の使用
抗原結合タンパク質は、生物学的試料中のIL-23の検出、およびIL-23を産生する細胞または組織の同定に役立つ。IL-23に特異的に結合する抗原結合タンパク質は、IL-23を必要とする患者において、IL-23に関連する疾患の診断および/または治療に使用できる。1つには、IL-23抗原結合タンパク質は、診断アッセイ、例えば、血液、血清、細胞または組織で発現されるIL-23を検出および/または定量化するための結合アッセイで使用することができる。さらに、IL-23抗原結合タンパク質を使用して、細胞または組織におけるIL-23の1つ以上の生物学的活性を低減、阻害、妨害、または調節することができる。したがって、IL-23に結合する抗原結合タンパク質は、IL-23に関連する疾患の改善において治療的用途があり得る。
【0159】
適応症
本開示はまた、本明細書に開示されるものなどの医学的障害の予防または治療的処置におけるIL-23抗原結合タンパク質の使用に関する。IL-23抗原結合タンパク質は、IL-23が基礎疾患または障害に関連するか、またはその一因となるか、さもなければ好ましくない症状の一因となる様々な状態を治療するのに有用である。
【0160】
IL-23抗原結合タンパク質によって効果的に治療される状態は、炎症反応において役割を果たす。このような炎症性疾患には、歯周病;喘息などの肺障害;乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎などの皮膚障害;;リウマチ性関節炎、進行性全身性硬化症(強皮症)などのリウマチ性障害;全身性エリテマトーデス;強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、腸障害性関節炎および反応性関節炎を含む脊椎関節炎、が含まれる。また、Vogt-Koyanagi-Harada病、特発性の前部および後部ブドウ膜炎、および脊椎関節炎に関連するブドウ膜炎を含むブドウ膜炎も企図されている。多発性硬化症、自己免疫性心筋炎、1型糖尿病、および自己免疫性甲状腺炎を含む自己免疫疾患の治療には、IL-23抗原結合タンパク質の使用も企図されている。
【0161】
胃腸系の変性状態は、IL-23抗原結合タンパク質で治療または予防可能である。そのような胃腸障害は、炎症性腸疾患:クローン病、潰瘍性大腸炎、およびセリアック病を含む。
【0162】
移植片対宿主病、および心臓、肝臓、皮膚、腎臓、肺または他の移植などの骨髄移植を含む実質臓器移植に起因する移植片拒絶などの合併症の治療におけるIL-23抗原結合タンパク質の使用も含まれる。
【0163】
結腸、胃、前立腺、腎細胞、子宮頸癌および卵巣癌、ならびに肺癌(SCLCおよびNSCLC)を含む様々な形態の癌を含む様々な腫瘍学的障害を治療するためにIL-23抗原結合タンパク質を使用するための方法も本明細書で提供される。肉腫、骨肉腫を含む固形腫瘍、ならびに腺癌および扁平上皮癌などの癌腫、食道癌、胃癌、胆嚢癌、急性骨髄性白血病を含む白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄性白血病、慢性または急性リンパ芽球性白血病、および有毛細胞白血病、および多発性骨髄腫も含まれる。
【0164】
検出方法
記載されている抗原結合タンパク質は、IL-23に関連する疾患および/または状態を検出、診断、または監視するための診断目的に使用することができる。IL-23の存在の検出に有用な方法の例には、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)やラジオイムノアッセイ(RIA)などのイムノアッセイが含まれる。
【0165】
診断用途の場合、抗原結合タンパク質は通常、検出可能な標識基で標識される。適切な標識基には、以下、放射性同位体または放射性核種(例えば、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光基(例えば、FITC、ローダミン、ランタニドリン光体)、酵素基(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、p-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光基、ビオチニル基、または二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、標識基は、潜在的な立体障害を低減するために、様々な長さのスペーサーアームを介して抗原結合タンパク質に結合される。タンパク質を標識するための様々な方法が当技術分野で知られており、使用することができる。
【0166】
IL-23を発現する1つ以上の細胞を同定するために、他の診断方法が提供されている。特定の実施形態では、抗原結合タンパク質は、標識基で標識され、そして標識された抗原結合タンパク質のIL-23への結合が検出される。さらに特定の一実施形態では、IL-23への抗原結合タンパク質の結合は、インビボで検出される。さらに特定の一実施形態では、IL-23抗原結合タンパク質は、当技術分野で知られている技術を使用して単離および測定される。例えば、Harlow and Lane,1988,Antibodies:A Laboratory Manual、New York:Cold Spring Harbor(ed.1991および定期的な補足)、John E.Coligan,ed.,1993,Current Protocols In Immunology New York:John Wiley & Sonsを参照されたい。
【0167】
他の方法は、提供された抗原結合タンパク質とIL-23への結合について競合する試験分子の存在を検出することを提供する。そのようなアッセイの一例は、試験分子の存在下または不在下で、ある量のIL-23を含む溶液中の遊離抗原結合タンパク質の量を検出することを含む。遊離抗原結合タンパク質(すなわち、IL-23に結合していない抗原結合タンパク質)の量の増加は、試験分子が抗原結合タンパク質とのIL-23結合について競合することができることを示している。一実施形態では、抗原結合タンパク質は、標識基で標識されている。あるいは、試験分子を標識し、抗原結合タンパク質の存在下および不在下で、遊離試験分子の量をモニターする。
【0168】
治療方法:薬学的製剤、投与経路
治療有効量の1つ以上の抗原結合タンパク質と、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、防腐剤、および/またはアジュバントを含む薬学的組成物が提供される。さらに、そのような薬学的組成物を投与することによって患者を治療する方法が含まれる。「患者」という用語は、ヒト患者を含む。「治療する」および「治療」という用語は、障害の少なくとも1つの症状または他の側面の緩和もしくは予防、または疾患の重症度の軽減などを包含する。「治療有効量」または「有効量」という用語は、哺乳動物において任意の治療応答を生じると決定されたIL-23抗原結合タンパク質の量を指す。そのような治療上有効な量は、当業者によって容易に確認される。
【0169】
治療方法は、例えば、対象に一般的に有益な効果をもたらすことができ、例えば、対象の予想される寿命を延ばすことができる。あるいは、これらの方法は、例えば、疾患、障害、状態、または病気(「状態」)を治療、予防、治癒、緩和、または改善(「治療」)することができる。いくつかの実施形態は、特異的抗体を含む薬学的組成物を対象に投与することを含む、対象の状態を治療する方法を提供し、状態は、対象におけるIL-23の活性を(部分的または完全に)低下させることによって治療可能である。治療は、治療的投与(すなわち、疾患または状態の徴候および症状が明らかである場合の投与)、ならびに寛解を誘導するおよび/または寛解を維持するための治療の両方を包含する。したがって、疾患または状態の重症度を(部分的に、著しくまたは完全に)軽減することができる。予防的治療は、上記の治療の形態および予防的または維持療法(すなわち、疾患または状態が静止している場合の投与)を含み、または徴候および症状を予防または遅延させることができる(発症の遅延、寛解の延長、または静止)。
【0170】
本明細書に記載の疾患を治療する方法は、有効量の抗IL-23抗体を投与するであろうことが理解される。治療される適応症に応じて、治療上有効な量は、標的となる病的状態の少なくとも1つの症状を、未治療の対象と比較して、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上減少させるのに十分である。
【0171】
抗原結合タンパク質は、実行可能な治療薬を構成するために、完全な治癒をもたらす必要はなく、または疾患のすべての症状もしくは症状を根絶する必要もない。関連分野で認識されているように、治療剤として使用される薬物は、所与の病状の重症度を低減する可能性があるが、有用な治療剤とみなされるために、疾患のすべての兆候を消失させる必要はない。同様に、予防的に投与される治療は、実行可能な予防剤を構成するために、症状の発症を防ぐのに完全に効果的である必要はない。単に疾患の影響を低減する(例えば、症状の数や重症度を低減する、別の治療の有効性を高める、または別の有益な効果を生み出すことにより)、または対象において疾患が発症または悪化する可能性を低減することで、十分である。本明細書で提供される特定の方法は、特定の障害の重症度を反映する指標のベースラインを超える持続的な改善を誘導するのに十分な量および時間で、IL-23アンタゴニスト(本明細書に開示される抗原結合タンパク質など)を患者に投与することを含む。
【0172】
関連分野で理解されるように、本発明の分子を含む薬学的組成物は、適応症に適切な様式で患者に投与される。薬学的組成物は、非経口的、局所的、または吸入を含むがこれらに限定されない、任意の適切な技術によって投与することができる。注射される場合、薬学的組成物は、例えば、関節内、静脈内、筋肉内、病巣内、腹腔内または皮下経路を介して、ボーラス注射、または連続注入によって投与することができる。経皮送達およびインプラントからの持続放出と同様に、例えば、疾患または損傷の部位での局所投与が企図されている。吸入による送達には、例えば、経鼻または経口吸入、ネブライザーの使用、エアロゾル形態のアンタゴニストの吸入などが含まれる。他の選択肢には、点眼剤;ピル、シロップ、ロゼンジまたはチューインガムを含む経口調製物;ならびにローション、ジェル、スプレー、および軟膏などの局所用調製物が含まれる。
【0173】
エクスビボ手順における抗原結合タンパク質の使用もまた企図される。例えば、患者の血液または他の体液は、エクスビボでIL-23に結合する抗原結合タンパク質と接触され得る。抗原結合タンパク質は、適切な不溶性マトリックスまたは固体支持体材料に結合することができる。
【0174】
有利には、抗原結合タンパク質は、生理学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤などの1つ以上の追加の成分を含む組成物の形態で投与される。場合により、組成物は、併用療法のための1つ以上の生理学的に活性な薬剤をさらに含む。薬学的組成物は、緩衝液、アスコルビン酸などの抗酸化剤、低分子量ポリペプチド(10アミノ酸未満のものなど)、タンパク質、アミノ酸、グルコース、スクロースまたはデキストリンなどの炭水化物、EDTAなどのキレート剤、グルタチオン、安定剤、および賦形剤からなる群から選択される1つ以上の物質とともにIL-23抗原結合タンパク質を含み得る。中性緩衝生理食塩水または同種の血清アルブミンと混合された生理食塩水は、適切な希釈剤の例である。適切な業界標準に従って、ベンジルアルコールなどの防腐剤を添加することもできる。組成物は、希釈剤として適切な賦形剤溶液(例えば、スクロース)を使用して凍結乾燥物として製剤化することができる。適切な成分は、使用される投薬量および濃度でレシピエントに対して無毒である。薬学的製剤に使用できる成分のさらなる例は、the 21st Ed.(2005)、Mack Publishing Company、Easton,PAを含むRemington’s Pharmaceutical Sciencesの任意のものに示されている。
【0175】
医師が使用するためのキットには、IL-23抗原結合タンパク質と、本明細書で論じられる状態のいずれかを治療する際に使用するためのラベルまたは他の説明書が含まれる。一実施形態では、キットは、1つ以上のIL-23結合抗原結合タンパク質の無菌調製物を含み、これは、上記に開示されるような組成物の形態であってもよく、1つ以上のバイアル中にあってもよい。
【0176】
投与量および投与頻度は、投与経路、使用する特定の抗原結合タンパク質、治療する疾患の性質と重症度、状態が急性か慢性かということ、対象のサイズと一般的な状態などの要因によって異なる。適切な投薬量は、関連技術分野で既知の手順によって、例えば、用量漸増研究を伴い得る臨床試験において決定することができる。
【0177】
通常の用量は、上記の要因に応じて、約0.1pg/kg~最大約30mg/kg以上の範囲であり得る。特定の実施形態では、用量は、0.1pg/kg~最大約30mg/kg、任意選択で、1pg/kg~最大約30mg/kg、任意選択で、10pg/kg~最大20 約10mg/kg、任意選択で、約0.1mg/kg~5mg/kg、または任意選択で、約0.3mg/kg~3mg/kgの範囲であり得る。
【0178】
投与頻度は、使用する製剤中の特定のヒトIL-23抗原結合タンパク質の薬物動態パラメーターに依存する。通常、臨床医は、所望の効果を達成する投薬量に達するまで、組成物を投与する。したがって、組成物は、単回投与として、または2回以上の投与(同量の所望の分子を含む場合も含まない場合もある)として経時的に、または移植装置もしくはカテーテルを介した連続注入として投与することができる。適切な用量反応データを使用することにより、適切な投薬量を確認することができる。本発明のIL-23抗原結合タンパク質は、例えば、1回または2回以上、例えば、ある期間にわたって一定の間隔で投与され得る。特定の実施形態では、IL-23抗原結合タンパク質は、少なくとも1ヶ月以上の期間にわたって、例えば、1ヶ月、2ヶ月、または3ヶ月間、あるいは無期限にさえも投与される。慢性疾患の治療には、一般的に長期治療が最も効果的である。しかしながら、急性状態を治療するためには、より短い期間、例えば、1週間から6週間の投与で十分である可能性がある。一般に、抗原結合タンパク質は、選択された1つ以上の指標について、患者がベースラインを超えて医学的に適切な程度の改善を示すまで投与される。
【0179】
IL-23抗原結合タンパク質は、治療されている障害の重症度を反映する少なくとも1つの指標において、改善、好ましくは持続的な改善を誘発するのに十分な量および時間で患者に投与されることが企図される。治療の量および時間が十分であるかどうかを決定するために、患者の病気、疾患または状態の程度を反映する様々な指標を測定することができる。そのような指標には、例えば、疾患の重症度、症状、または問題の障害の症状の臨床的に認識された指標が含まれる。一実施形態では、対象が2~4週間離れて少なくとも2回の場合に改善を示す場合、改善は持続している、とみなされる。改善の程度は、一般に、徴候、症状、生検、または他の検査結果に基づいてこの決定を下すことができ、かつ、特定の疾患のために開発された生活の質についての質問票など、対象に実施される質問票を使用することができる医師によって決定される。
【0180】
IL-23特異的抗体による対象の治療は、例えば、本明細書に記載のアッセイを用いて、血清の体積当たり一定量のIL-23特異的抗体を達成および/または維持するのに十分な量および/または十分な間隔で与えられ得る。例えば、ヘテロダイマー特異的抗体は、12.5ng/ml~1,000ng/mlの血清濃度を達成するために与えられる。一実施形態では、ヘテロ二量体特異的抗体は、少なくとも12.5ng/ml、25ng/ml、50ng/ml、60ng/ml、70ng/ml、75ng/ml、80ng/ml、85ng/ml、90ng/ml、95ng/ml、100ng/ml、150ng/ml、200ng/ml、500ng/ml、または990ng/mlを達成するために与えられる。当業者は、ここに与えられた量が完全長の抗体または免疫グロブリン分子に適用されることを理解するであろう。その抗原結合断片が使用される場合、絶対量は、全長抗体の分子量に対する断片の分子量に基づいて計算され得る方法で与えられたものとは異なるであろう。
【0181】
例示的な実施形態では、IL-23特異的抗体による対象の治療は、0.5~1.5ヶ月ごとに15~54mg、1.5~4.5ヶ月ごとに55~149mg、4~8ヶ月ごとに150~299mg、8~14ヶ月ごとに300~1100mg、または4~12ヶ月ごとに300~1100mgの量および間隔で与えられる。いくつかの実施形態では、抗IL-23抗体は、0.5~1.0ヶ月ごとに15~21mg、1.5~3.0ヶ月ごとに55~70mg、4~6ヶ月ごとに150~260mg、または4~8ヶ月ごとに300~700mgの用量で与えられる。いくつかの実施形態では、量および間隔は、毎月21mg、3ヶ月ごとに70mg、6ヶ月ごとに210mg、または6ヶ月ごとに700mgからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗IL-23抗体は、3ヶ月ごとに260mg、または3ヶ月ごとに700mgで投与される。いくつかの実施形態では、260mgの抗体が1ヶ月ごとに投与されるか、または700mgが1ヶ月ごとに投与される。
【0182】
抗IL-23抗体の投与および投与計画は、最適な治療反応のための有効量を提供するように調整することができる。例えば、単一のボーラスを投与することができ、いくつかの分割された用量を経時的に投与することができ、または治療状況の緊急性によって示されるように、用量を比例して減少または増加させることができる。
【0183】
本明細書に開示される抗IL-23療法はまた、2つ以上の抗IL-23療法、または他の療法とともに使用することが企図されている。複数の治療薬が同時投与される場合、関連技術で認識または知られているように、それに応じて投与量を調整することができる。
【0184】
本発明の方法および組成物の特定の実施形態は、IL-23抗原結合タンパク質および1つ以上の追加のIL-23アンタゴニスト、例えば、本発明の2つ以上の抗原結合タンパク質、または本発明の抗原結合タンパク質、および1つ以上の他のIL-23アンタゴニストの使用を含む。単独で、または患者が罹患している状態を治療するのに有用な他の薬剤と組み合わせて投与されるIL-23抗原結合タンパク質も提供される。そのような薬剤の例には、タンパク性および非タンパク性の両方の薬物が含まれる。そのような薬剤は、抗炎症特性(例えば、非ステロイド性抗炎症剤、ステロイド、免疫調節剤、および/または、例えば、IFN-γ、GM-CSF、IL-6、IL-8、IL-17、IL-22およびTNFに拮抗するものなどの他のサイトカイン阻害剤)を有する治療的部分を含むか、またはIL-23抗原結合タンパク質および1つ以上の他の治療(例えば、炎症を軽減するのに効果的な手術、超音波、もしくは治療)である。複数の治療薬が同時投与される場合、関連技術で認識または知られているように、それに応じて投与量を調整することができる。IL-23抗原結合タンパク質と組み合わせることができる有用な薬剤には、例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎を治療するために使用されるもの、例えば、アミノサリチル酸塩(例えば、メサラミン)、コルチコステロイド(プレドニゾンを含む)、メトロニダゾールまたはシプロフロキサシンなどの抗生物質(または、例えば、瘻孔に罹患した患者の治療に有用な他の抗生物質)、ならびにアザチオプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、タクロリムスおよびシクロスポリンなどの免疫抑制剤が含まれる。そのような薬剤は、経口的に、または別の経路によって、例えば、坐剤または浣腸を介して投与することができる。乾癬の治療においてIL-23結合タンパク質と組み合わせることができる薬剤には、局所的または全身的に使用されるコルチコステロイド、カルシポトリエン、および他のビタミンD誘導体、アセトレチンおよび他のレチノイン酸誘導体、メトトレキサート、タクロリムス、およびシクロスポリンが含まれる。そのような薬剤は、同時に、連続して、交互に、または治療の全過程が効果的であることを可能にする他の任意のレジメンに従って投与することができる。
【0185】
ヒト患者に加えて、IL-23抗原結合タンパク質は、家庭用ペット(イヌ、ネコ、トリ、霊長類など)や家畜(ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、トリなど)などの非ヒト動物の治療においても有用である。そのような場合、適切な用量は、動物の体重に応じて決定され得る。例えば、0.2~1mg/kgの用量を使用することができる。あるいは、用量は、動物の表面積に従って決定され、例示的な用量は、0.1~20mg/m、またはより好ましくは5~12mg/mの範囲である。イヌやネコなどの小動物の場合、適切な用量は0.4mg/kgである。IL-23抗原結合タンパク質(好ましくは、レシピエント種に由来する遺伝子から構築される)は、動物の状態が改善されるまで、または投与は無期限であってもよいが、週に1回以上注射または他の適切な経路によって投与される。
【0186】
本発明の一態様では、ブラジクマブ非応答者におけるIL-22BPのレベルは、少なくとも359pg/mL、例えば、359pg/mL~6000pg/mLである可能性があり、このようなレベルを下回るIL-22BPの血清レベルを有する対象は、炎症状態に対する抗IL-23剤に反応的である。対照におけるIL-22BPのレベルは、そのような炎症状態を有さない対象に基づいて決定されてもよく、以前にブラジクマブに応答性であると決定されてもよく、または以前にブラジクマブに非応答性であると決定されてもよい。いくつかの実施形態では、ブラジクマブ非応答者におけるIL-22BPのレベルは、359~5,000pg/mL、359~4,000pg/mL、359~2,500pg/mL、359~1,000pg/mL、359~500pg/mL、400~6,000pg/mL、400~5,000pg/mL、400~4,000pg/mL、400~2,500pg/mL、400~1,000pg/mL、400~500pg/mL、500~6,000pg/mL、500~5,000pg/mL、500~4,000pg/mL、500~2,500pg/mL、500~1,000pg/mL、750~6,000pg/mL、750~5,000pg/mL、750~4,000pg/mL、750~2,500pg/mL、750~1,000pg/mL、1,000~6,000pg/mL、1,000~5,000pg/mL、1,000~4,000pg/mL、1,000~2,500pg/mL、1,500~6,000pg/mL、1,500~5,000pg/mL、1,500~4,000pg/mL、1,500~2,500pg/mL、2,000~6,000pg/mL、2,000~5,000pg/mL、または2,000~2,500pg/mLである。
【0187】
本発明の一態様では、ブラジクマブ非応答者におけるIFN-γのレベルは15pg/mL未満であり、少なくとも15pg/mLのIFN-γの血清レベルを有する対象は、炎症状態のための抗IL-23剤に対して応答性である。対照におけるIFN-γのレベルは、そのような炎症状態を有さない対象に基づいて決定されてもよく、以前にブラジクマブに応答性であると決定されてもよく、または以前にブラジクマブに非応答性であると決定されてもよい。
【0188】
実施された実験および達成された結果を含む以下の実施例は、説明のみを目的として提供されており、添付の特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0189】
実施例1
これらの実施例で説明され、図1~10に示されている実験から生成されたデータは、R&D Systemの市販のIL-22BPキット(R&D Systems,Inc.、Minneapolis,MN)を使用した酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって取得された。健康なヒトからのIL-22BPの血清レベルを、クローン病(CD)患者、潰瘍性大腸炎(UC)患者、および抗TNFα治療に抵抗性のクローン病患者と比較した。結果は、CDおよびUC患者のIL-22BPの血清レベルが健康なヒトよりも高いことを示した。しかしながら、抗TNFα治療に抵抗性のCD患者のIL-22BPレベルは健康なヒトよりも低かった。
【0190】
IBD患者の炎症性腸組織では、IL-22、IL-17a、およびIFN-γなどのIL-23調節性炎症性サイトカインが、健常対照者と比較して増加している。予期せぬことに、IL-22の可溶性阻害剤であるIL-22BPも増加し、これは、腸内のIL-22活性が厳密に調節されていることを示している。フェーズ2a臨床試験(すなわち、MedIフェーズ2a臨床試験)からの本明細書に開示されたデータは、すべて抗TNFα治療に対して非応答性であったIBD患者におけるIL-22BPの全身(血清)レベルが健康対照においてよりも低いことを示している。図9および図11を参照されたい。しかし、一般的なCD患者のIL-22BPの血清レベルの中央値は、健康な対照の血清レベルよりも高くなっている。MedIフェーズ2aの結果は、TNF抵抗性の活動性CD患者におけるIL-22ベースラインレベルの上昇がブラジクマブ治療の有効性と強く関連していることを明らかにした。つまり、これらの患者のIL-22のベースラインレベルが高いほど、ブラジクマブ治療の恩恵を受ける可能性が最も高い患者の亜集団を予測できる。この場合、高レベルのIL-22は、抗TNFα非応答者におけるIL-22BPのレベルの低下に関連しているので、本開示は、抗IL-による治療に適している患者または患者亜集団を同定する方法を提供し、この方法は、IL-22BPベースライン血清レベルの低下を示さない患者よりも抗IL-23薬剤治療から利益を得る可能性が高い患者または患者亜集団についての予測バイオマーカーとして本明細書で開示される。図11の患者の亜集団は、抗TNF剤治療に失敗した患者集団、すなわち、そのような治療に反応しなかった患者、そのような治療に不耐性であった患者、またはナイーブなIBD患者(すなわち、いずれのIBD治療も受けていない患者)から同定される。図9および11に要約されているように、図1~8に示されているデータは、正常または健康なヒト男性のIL-22BPの平均血清レベルが680pg/ml(679.86pg/ml)であり、正常または健康なヒト女性の平均血清レベルが440pg/ml(440.03pg/ml)であることを示している。したがって、健康なヒトのIL-22BPの平均血清レベルは680pg/ml以下である。対照的に、クローン病のヒトは、2350pg/ml(2355.78pg/ml)のIL-22BPの平均血清レベルを示す。図9に要約されたデータは、潰瘍性大腸炎を伴うヒトのIL-22BPの平均血清レベルが895pg/ml(894.27pg/ml)であることも示している。
【0191】
抗TNF-α療法に抵抗性のクローン病患者からの血清試料もまた、血清インターフェロン-γレベルのELISAアッセイに供された。イムノアッセイは、Meso Scale Discovery(NSD)9plexサイトカインアッセイキット(Meso Scale Discovery、Rockville,MD)を使用して実施した。血清試料は、Medimmuneフェーズ2a(MEDI2070-1147)臨床試験に参加しているクローン病患者から入手した。上記のように、すべての試料はブラジクマブ治療群の患者から得られ、試料を提供したすべての患者は抗TNF-α治療に非応答性であった。図10に示す結果は、ブラジクマブ応答者が非応答者よりもIFN-γの血清レベルが高いことを示し、IFN-γの血清レベルがブラジクマブ治療に応答するCD患者の亜集団の特定に有用であることを示している。
【0192】
実施例2
ベースラインのIFN-γ血清レベルの遡及的分析は、IFN-γのレベルの上昇が、抗TNF剤による治療に失敗したか、それに応答しなかったか、または不耐性であった患者におけるブラジクマブ治療に対する陽性応答と関連していることを示した。図10を参照されたい。したがって、ベースラインIFN-γ血清レベルの上昇は、抗IL-23治療の恩恵を受けるTNF抵抗性患者の亜集団を予測または特定する。
【0193】
本出願にて言及されているすべての刊行物および特許は、文脈から明らかなように、その全体または関連部分が参照により本明細書に組み込まれる。開示された主題の様々な修正および変形は、本開示の範囲および精神から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。本開示を特定の好ましい実施形態に関連して説明してきたが、特許請求の範囲に記載されている本発明がそのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。関連分野の当業者に明らかである、開示された主題を作成または使用するための記載されたモードの様々な修正は、以下の特許請求の範囲内にあることが意図されている。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図11-1】
図11-2】
【配列表】
2022527278000001.app
【国際調査報告】