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特表2022-527291シーメンス法の副生成物混合物をクロロモノシランに安全に変換するための低温方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-01
(54)【発明の名称】シーメンス法の副生成物混合物をクロロモノシランに安全に変換するための低温方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/107 20060101AFI20220525BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
C01B33/107
B01J31/02 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557606
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(85)【翻訳文提出日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 US2020024640
(87)【国際公開番号】W WO2020205356
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】19000159.4
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19196342.0
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】アウナー,ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】シュツゥルム,アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
4G072
4G169
【Fターム(参考)】
4G072AA11
4G072AA14
4G072GG03
4G072HH03
4G072HH07
4G072HH09
4G072HH28
4G072HH50
4G072KK09
4G072KK15
4G072KK17
4G072LL13
4G072LL15
4G072MM01
4G072RR01
4G072RR04
4G072RR12
4G072UU01
4G169AA06
4G169BD06A
4G169BD07A
4G169BD12A
4G169BE01A
4G169CB02
4G169CB81
4G169DA02
4G169ED01
4G169FB77
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのSi-H結合を含む1つまたは複数の式HSiCI6-xのジシランおよび任意選択でさらなるシラン、特にシーメンス法の副生成物混合物またはその留分を含む出発物質組成物を、-エーテル/HCl溶液-アミン、ホスフィン、またはそれらの混合物-ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化ホスホニウム、またはそれらの混合物から選択される反応促進剤と、200℃未満の温度での反応に供するステップを含む、nが2、3または4の式H4-nSiClのモノシランの製造の方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)のクロロシランを製造する方法であって、
4-nSiCl (I)
ここでn=2、3、および4、好ましくはn=3、

A)一般式(II)のジシラン
SiCl6-o (II)
ここでo=0-6、好ましくはo=0-2、最も好ましくは0-1、
そしてここで1つまたは複数のジシランについてo≧1、
から選択される1つまたは複数の基材を含み、

そして任意選択で、
B)一般式(III)または(IV)のジシロキサン
(HSiCl5-pO (III)
(HCl3-qSi)O (IV)
ここでp=0-5、好ましくはp=0-1、q=0-2、より好ましくはq=0-1、

C)一般式(V)のクロロモノシラン
SiHCl4-r (V)
ここでr=0-2、好ましくはr=0-1、最も好ましくはr=0、

D)一般式(VI)の過塩素化オリゴシランおよびポリシラン
SiCl2s+2 (VI)
ここでs=3-6、

E)直鎖状、分岐状、環状およびケージ状のクロロ、ヒドリドおよびヒドロキシ置換オリゴおよびポリシランを含むクロロ、ヒドリドおよびヒドロキシ置換ポリシラン、およびクロロ、ヒドリドおよびヒドロキシ置換ポリシロキサン
をさらに含む、出発物質組成物を、

-エーテル/HCl溶液、
-アミン、ホスフィン、またはそれらの混合物、および
-ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化ホスホニウム、またはそれらの混合物、
からなる群から選択される1つまたは複数の反応促進剤F)と、

任意選択で、
G)一般式(VII)のモノシラン
SiCl4-(t+u) (VII)
ここでt=0-3、好ましくは1-3、より好ましくは2、
u=0-2、好ましくは0、
t+u=0-3、好ましくは1-3、より好ましくは2、
Rは有機残基であり、

H)一般式(VIII)のジシラン
SiCl6-(v+w) (VIII)
ここでv=0-5、好ましくは1-5、
w=0-5、好ましくは0、
v+w=1-5、
Rは前記定義通りである、
から選択される少なくとも1つのSi-H結合を含む1つまたは複数の追加の化合物の存在下で、
200℃未満の温度で反応させることによる、方法。
【請求項2】
o≧1のジシランはペンタクロロジシランであり、より好ましくは、o≧1のジシランは、ペンタクロロジシランおよび1つまたは2つのテトラクロロジシラン異性体であり、さらにより好ましくは、0≧1のジシランはペンタクロロジシランであり、ここでヘキサクロロジシランはまた出発物質組成物に存在し、そして最も好ましくは、o≧1のジシランはペンタクロロジシランおよび1つまたは2つのテトラクロロジシラン異性体であり、ここでヘキサクロロジシランはまた出発物質組成物中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
出発物質組成物が、副生成物としてシーメンス法のCVD反応器を出る流出物を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
出発物質組成物が、副生成物としてシーメンス法のCVD反応器を出る流出物の分別蒸留によって得られる1つまたは複数の留分を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
出発物質組成物が、少なくとも成分B)および/またはC)を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
反応促進剤F)として機能する1つまたは複数のエーテル/HCl溶液、好ましくは飽和エーテル/HCl溶液の存在下で反応が行われる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
アミン、ホスフィン、ハロゲン化アンモニウムまたはハロゲン化ホスホニウム、好ましくは塩化物、の群から選択される1つまたは複数の反応促進剤F)の存在下で反応が行われる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
1つまたは複数の反応促進剤F)が、X=NまたはPの式RXClによって表され、ここでRが独立して水素基またはオルガニル基であり、より好ましくは、水素基、芳香族基または脂肪族炭化水素基である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
反応促進剤F)が、nBuP、nBuN、nBuPClおよびnBuNClからなる群から選択される、請求項1-5および7-8に記載の方法。
【請求項10】
反応は、モノシランG)およびジシランH)から選択される少なくとも1つのSi-H結合を含む1つまたは複数の追加の化合物の存在下で、好ましくは1つまたは複数の追加のオルガノヒドリドシランの存在下で、より好ましくは1つまたは複数のヒドリドメチルシランの存在下で、さらにより好ましくは、メチルシラン、ジメチルシランまたはトリメチルシランから選択される1つまたは複数のオルガノヒドリドシランの存在下で、最も好ましくは、ジメチルシランの存在下で行われる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
出発物質組成物のSi原子の40%より多くがHSiClに変換され、好ましくは、出発物質組成物のSi原子の50%より多くがHSiClに変換され、より好ましくは、出発物質組成物のSi原子の60%より多くがHSiClに変換され、最も好ましくは、出発物質組成物のSi原子の70%より多くがHSiClに変換される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
反応は、アミン、ホスフィン、ハロゲン化アンモニウムまたはハロゲン化ホスホニウムから選択される1つまたは複数の反応促進剤F)の存在下で行われ、続いて揮発性物質が除去され、そして続いてHCl/エーテル溶液で処理することにより残りがモノシランに変換される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
出発物質組成物は、1つまたは複数の過塩素化オリゴシランおよびポリシランD)を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
出発物質組成物は、直鎖状、分岐状、環状およびケージ状のクロロ、ヒドリドおよびヒドロキシ置換オリゴおよびポリシランを含む、1つまたは複数のクロロ、ヒドリドおよびヒドロキシ置換ポリシランE)を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
出発物質組成物は、シーメンス法プロセスのCVD反応器を出る流出物として得られるシーメンス法の副生成物からなる、前記請求項のいずれかに記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロシランモノマーの製造の方法、特に、ヒドリドクロロジシランおよびさらなるクロロシラン種であってシーメンス法の副生成物の混合物に含まれるものから出発する、反応促進剤および任意選択での水素源として少なくとも1つSi-H結合を含むさらなる化合物の存在下での、ケイ素-ケイ素結合の開裂による低温でのトリクロロシランの製造の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドリドクロロモノシランは、合成有機ケイ素化学および他の用途における有用な出発物質であり、特にトリクロロシランは、シーメンス法を適用する高純度多結晶ケイ素の製造に利用される。
【0003】
高純度の半導体グレードのシリコンは、最初に元素ケイ素を塩化水素と反応させてトリクロロシランHSiClを生成し、次にガス状のHSiClを水素の存在下で還元し、そして加熱されたシリコンロッド上に堆積させる、主に「シーメンス法」によって製造される(HSiCl+H->Si+3HCl;4HSiCl->Si+3SiCl+2H)。この方法では、HSiClとして供給されたシリコンの約3分の1から4分の1だけが元素ケイ素として堆積され、残りは、通常85mol%を超える未反応トリクロロシラン、HSiClの脱水素によって形成される5-15mol%のSiCl、および最大約1mol%のクロロジシランHSiCl6-o(o=0-6)を含む流出ガスおよび粒子状シリコンとして反応器に存在する。US6,013,235(Dow Corning,2000)は、高沸点残留物が、この方法の現在の商業運転において、HSiClの10重量%にもなり得ると報告している。高沸点留分は、ヘキサクロロジシランおよびヒドリドクロロジシランからなるだけでなく、そのような高沸点残留物の典型的な組成は、68重量%のジシランおよび31重量%のジシロキサン、0.5重量%の他の高沸点ケイ素含有化合物、および0.5重量%のケイ素、低レベルの金属、例えばAl、Ca、Feなど、およびそれらの化合物を含む固体粒子を含み得る。
【0004】
ケイ素と塩化水素との反応では、主にヘキサクロロジシロキサンとペンタクロロジシロキサンからなるクロロシロキサン混合物が得られる。これらのクロロシロキサンは、クロロシランと水との反応によって形成され、それは塩素、塩化水素、または金属ケイ素などの湿った原料を含む水分として製造プロセスに入る、または反応器が不連続プロセスで充填または洗浄されると、湿った空気で製造装置に入る。通常、反応器を出るSiClとHSiClは、蒸留によって上記の副生成物から分離される。これにより、クロロシロキサン、金属塩化物、および灰の混合物が生じ、これらは少量のSiClと一緒に廃棄されなければならない。CVD法では、流出ガスは蒸留によって主にHSiClとHSiClの低沸点留分に分離され、これはCVD反応器にリサイクルされ、そして高沸点留分は、SiCl、クロロジシラン、クロロジシロキサン、粒子状シリコンで構成されている。この後者の留分はさらに処理されて残りのジシラン(およびジシロキサン)を分離し、これらは触媒された高温ステップで塩化水素で分解され、例えば、SiCl+HCl->SiCl+HSiCl、粒子状シリコンは噴霧乾燥によってそこから分離される。触媒、例えば固体支持体上のパラジウムは、モノシランへの変換をもたらす。別の方法では、高沸点ジシラン留分が、高純度のヘキサクロロ、ペンタクロロ、およびテトラクロロジシランを単離するための出発物質として機能する。多結晶シリコンの生産量が2000年の18200トンから2016年には391000トンに増加し、そして世界全体で年間15%以上のさらなる経済成長が見込まれるという事実を考慮すると、シーメンス法の高沸点副生成物を高収率でHSiClに調製的に容易に低温変換することは、経済的利益を高め、そして環境汚染を最小限に抑えるための世界的な必要性がある。シーメンス法の反応器から得られる混合物の変換のための容易で危険性のない低温方法の必要性は、通常、副生成物の混合物に含まれる、または空気や湿気と接触して生成される多くの化合物、特にSiClとクロロヒドロジシランの加水分解生成物は取り扱いが難しく、そして重大な事故を引き起こすことがあり得るという事実により高められている。副生成物混合物の貯蔵および副生成物混合物に含まれるポリマーのエージングは、前述の問題をさらに悪化させる(X. Zhou et al, in: Study on the Shock Sensitivity of the HydrolysisProducts of Hexachlorodisilane, Ind. Eng. Chem. Res. 2018, 57, 10354-10364を参照)。
【0005】
1)US6,013,235は、ダイレクトプロセス高沸点残留物のモノシランへの変換を開示している。このプロセスは、HClとシリコンメタロイドの反応から生じる高沸点残留物を、残留物のモノシランへの変換を促進するのに有効な触媒量のAlClの存在下でHガスと接触させることを含む。
2)US4,719,093では、高温でHClまたはClガスの存在下でクロロシロキサン、主にヘキサクロロジシロキサンおよびペンタクロロジシロキサンを開裂させてHSiClおよびSiClを生成するプロセスが開示されている。
3)DE102010043646A1は、過塩素化ポリシランと塩化水素との90℃での反応および触媒によるトリクロロシランの製造方法を開示している。
4)WO2016/011993A1は、エーテル/HCl溶液を使用することにより、モノシラン、ポリシラン、および/またはオリゴシランのケイ素-ケイ素結合および/またはケイ素-塩素結合を開裂する方法を開示している。
【発明の概要】
【0006】
解決される課題
本発明によって解決される問題は、1つまたは複数のヒドリドクロロジシランおよび任意選択でさらなるジシラン、モノシラン、オリゴシランおよびポリシランおよびジシロキサンを含む出発物質組成物を、低温でのSi-Si結合開裂によって所望の生成物が得られる反応条件に供することによる、クロロモノシラン、特にテトラクロロシラン、トリクロロシランおよびジクロロシラン、極めて特にトリクロロシランの製造方法の提供である。特に、本発明の目的は、シーメンス法の副生成物混合物を出発物質として利用するための新しい方法を提供することであり、これにより
-原子経済性
-エネルギー消費と効率
-方法の安全性
および
-環境汚染の回避
に関する従来の方法よりも改善された性能を備えた方法を提供する。
【0007】
本発明は、従来の方法と比較して、改善された生成物収率、生成物純度、変換の生成物選択性、後処理手順の利便性、試薬の取り扱いの容易さ、および方法の費用効率を備えた方法の提供を目的とする。解決される問題は、特に、シーメンス法の副生成物混合物またはその留分の利用に適用可能なそのような改善された方法の提供であり、ここで高収率のトリクロロシランが得られ、これは、方法の反応温度が低いため、使用される反応器の材料に関して、環境に優しく、危険性が低く、そして要求が少ない。さらに、解決される問題は、シーメンス法の副生成物混合物からのジシランからテトラ、トリ、およびジクロロシランを高収率で得ることができる方法の提供を含み、これは、方法の反応条件下で副生成物とその前駆物質の保管時に形成される危険な成分を完全に変換することにより、シーメンス法の副生成物の処理に通常伴う安全性の問題を解決し、したがって、これらの化合物とその前駆体物質を燃焼によって廃棄するのではなく変換することにより、いわゆる「ポッピングゲル」の非常に危険な取り扱いを回避する。
【0008】
本発明によれば、本問題は、以下に説明するように解決される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】出発ジシラン混合物2(上)および5MHCl/1.4-ジオキサン溶液による反応後の生成物混合物(下、例8)の29Si NMRスペクトルを表す。
図2】出発ジシラン混合物2(上)およびnBuPによるジシラン混合物2の反応後の分離された揮発性生成物混合物(下、例5)の29SiNMRスペクトルを表す。
図3】+15から-1ppmの範囲のスペクトルの拡大を有する出発ジシラン混合物6(上)および2.5MHCl/nBuOによる反応後の生成物混合物(下、例10c)の29SiNMRスペクトルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
本発明は、ヒドリドジシランおよび任意選択でさらなるジシラン、ジシロキサン、モノシラン、オリゴシランおよびポリシランまたはそれらの混合物から出発する、ケイ素-ケイ素結合の開裂および低温での再分配反応によるクロロモノシランの製造方法に関する。
【0011】
(1)本発明の主題は、一般式(I)のクロロシランの製造方法であって、
4-nSiCl (I)
ここで、n=2、3、および4、好ましくはn=3、

A)一般式(II)のジシラン、
SiCl6-o (II)
ここで、o=0-6、好ましくはo=0-2、最も好ましくは0-1、
そしてここで1つまたは複数のジシランについてo≧1、
から選択される1つまたは複数の基材を含み、

および任意選択で
B)一般式(III)または(IV)のジシロキサン
(HSiCl5-pO (III)
(HCl3-qSi)O (IV)
ここでp=0-5、好ましくはp=0-1、q=0-2、より好ましくはq=0-1、

C)一般式(V)のクロロモノシラン
SiHCl4-r (V)
ここでr=0-2、好ましくはr=0-1、最も好ましくはr=0、

D)一般式(VI)の過塩素化オリゴシランおよびポリシラン
SiCl2s+2 (VI)
ここでs=3-6、

E)直鎖状、分岐状、環状およびケージ状のクロロ、ヒドリドおよびヒドロキシ置換オリゴおよびポリシランを含む、クロロ、ヒドリドおよびヒドロキシ置換ポリシラン、およびクロロ、ヒドリドおよびヒドロキシ置換ポリシロキサン、
をさらに含む、出発物質組成物を、

-エーテル/HCl溶液、
-アミン、ホスフィン、またはそれらの混合物、および
-ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化ホスホニウム、またはそれらの混合物、
からなる群から選択される1つまたは複数の反応促進剤F)と、

任意選択で
G)一般式(VII)のモノシラン
SiCl4-(t+u) (VII)
ここでt=0-3、好ましくは1-3、より好ましくは2、
u=0-2、好ましくは0、
t+u=0-3、好ましくは1-3、より好ましくは2、
Rは有機残基であり、

H)一般式(VIII)のジシラン
SiCl6-(v+w) (VIII)
ここでv=0-5、好ましくは1-5、
w=0-5、好ましくは0、
v+w=1-5、
Rは前記定義通りであり、

から選択される少なくとも1つのSi-H結合を含む1つまたは複数の追加の化合物の任意選択での存在下で、
200℃未満の温度で反応させることによる方法である。
【0012】
本発明による反応は、主に、出発物質組成物に必須的に含まれるo≧1の一般式(II)のヒドリドジシランの開裂を伴うが、さらなるジシランA)、ジシロキサンB)、過塩素化オリゴシランおよびポリシランD)、直鎖状、分岐状、環状およびケージ状のクロロ、ヒドリドおよびヒドロキシ置換オリゴおよびポリシラン含む、クロロ、ヒドリドおよびヒドロキシ置換ポリシランE)、および出発物質組成物に添加される場合はジシランH)の開裂もまた伴い得る。
【0013】
本発明によれば、「開裂」という用語は、上記の成分A)、B)、D)およびE)の化合物が反応して、一般式(I)によって表されるモノマーシラン、およびジシランH)の場合、一般式(I)のモノマーシランおよび有機残基Rで置換されたその類似体を生成する変換を説明するために使用される。ジシラン、オリゴシラン、およびポリシランの場合、開裂反応は、これらのジシラン、オリゴシラン、およびポリシランのケイ素原子を接続する結合を開裂することによって行われる。ジシロキサンの場合、「開裂」という用語は、Si-O結合の切断にも適用される。一般に、本発明による方法の開裂反応は、特に、塩化水素化反応および水素化分解反応を含む。
【0014】
本発明による反応は、適用される反応促進F)および出発物質組成物中に存在する特定の成分A)-E)およびG)-H)に応じて、再分配反応も含み得る。本発明によれば、「再分配反応」という用語は、これらの置換基の交換による、反応混合物に含まれる1つまたは複数のシランおよび/またはシロキサン化合物のケイ素原子に結合した水素および塩素置換基の再分配を表す。交換は、特に29SiNMR、GCおよび/またはGC/MSによって監視され得る。再分配反応は、反応促進剤F)によって触媒される。
【0015】
一般式(II)のジシランA)は、
SiCl6-o (II)
以下の構造式で表すこともでき、
【化1】

ここで置換基R’は、水素(H)および塩素(Cl)から独立して選択され、そしてここで水素原子の数o=0から6、および塩素原子の数6-o=0から6である。
【0016】
好ましくは、水素原子の数はo=0-2であり、すなわち式(II)は、好ましくは、ヘキサクロロジシラン、ペンタクロロジシラン、およびテトラクロロジシランの一方または両方の異性体を表し、そして最も好ましくはo=0-1であり、すなわち式(II)は、最も好ましくは、ヘキサクロロジシランおよびペンタクロロジシランを表す。本発明によれば、出発物質組成物中の1つまたは複数のSi-H結合を有する1つまたは複数のジシランの存在、すなわち、ヒドリドジシランの存在が必須である。
【0017】
任意選択で、出発物質組成物は、一般式(III)および(IV)のジシロキサンB)を含み得る。
【0018】
一般式(III)のジシロキサンは、
(HSiCl5-pO (III)
下記構造式によっても表すことができ、
【化2】

ここで置換基R’’は、水素(H)および塩素(Cl)から独立して選択され、そしてここでジシリル単位あたりの水素原子数はp=0-5、そして塩素原子数は5-p=0-5である。
【0019】
好ましくは、ジシリル単位あたりの水素原子の数は、p=0-1であり、結果として、式(III)のジシロキサンあたりの水素原子の好ましい総数は、0から2である。
【0020】
一般式(IV)のジシロキサンは、
(HCl3-qSi)O (IV)
下記構造式でも表すことができ、
【化3】

ここで置換基R’’’は、水素(H)および塩素(Cl)から独立して選択され、そしてここでシリル単位あたりの水素原子数はq=0-2、塩素原子数は3-q=1-3である。
【0021】
好ましくは、シリル単位あたりの水素原子の数はq=0-1であり、結果として式(IV)のジシロキサンあたりの水素原子の好ましい総数は0から2になる。
【0022】
ジシロキサン、特に上記の一般式(III)および(IV)のジシロキサンは、シーメンス法から得られる副生成物混合物の成分を構成し得る。
【0023】
続いて、「シーメンス法から得られる副生成物混合物」、「シーメンス法副生成物混合物」、「シーメンス法のCVD反応器を出る流出物」および「シーメンス法の反応器を出る流出物」という用語は、それぞれの組成の特定が文脈で与えられていない限り、同義語として使用されることになる。
【0024】
シーメンス法の副生成物混合物に見られるジシロキサンの量は、該方法用に選択された特定の反応パラメータ、特に湿った出発物質または反応雰囲気中の水分のために反応中に存在する水の量による。本発明の意味において、周囲空気との接触によるシーメンス法反応器からの副生成物混合物の流出直後および副生成物混合物の取り扱い中に形成されたジシロキサンもまた、シーメンス法中に形成されたと見なされる。
【0025】
任意選択で、出発物質組成物は、一般式(V)のクロロモノシランC)をさらに含み得、
SiHCl4-r (V)
ここでr=0-2、好ましくはr=0-1、最も好ましくはr=0である。
【0026】
これは、ジ-、トリ-およびテトラクロロシランが好ましくは出発物質組成物に含まれ、出発物質組成物に、より好ましくはトリクロロシランおよびテトラクロロシランが含まれ、そして最も好ましくはテトラクロロシランが含まれることを意味する。
【0027】
多くの場合、シーメンス法の反応器を出る流出物は、85モル%を超える未反応のトリクロロシランと、HSiClの脱水素によって形成される5-15モル%のSiClを含む。他の場合には、テトラクロロシランは、シーメンス法の反応器を出る流出物の重量による主成分を構成し得る。
【0028】
シーメンス法の副生成物混合物の低沸点成分が、特に蒸留または凝縮によって取り出される場合、そのような基材が出発物質組成物として本発明による方法に供される前に、クロロモノシランC)は出発物質組成物中に少量のみ存在、または存在しない。
【0029】
しかしながら、シーメンス法副生成物混合物の低沸点成分を取り出すためのステップが取られない場合、クロロモノシランC)は、出発物質組成物の主要な部分を構成し得る。
【0030】
そのような場合、反応によるプロセスは、G)またはH)から選択される少なくとも1つのSi-H結合を含む1つまたは複数の追加の化合物の存在下で実施され、そしてアミン、ホスフィン、ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化ホスホニウムまたはそれらの混合物から選択される反応促進剤F)が、反応混合物中に存在することが好ましい。
【0031】
特に好ましくはG)またはH)から選択される少なくとも1つのSi-H結合を含む追加の化合物は、メチルヒドリドシランまたはメチルヒドリドジシランから選択され、最も好ましくは、それはジメチルシランである。
【0032】
少なくとも1つのSi-H結合を含む追加の化合物のSi原子に結合した水素原子と出発物質組成物中に存在するクロロモノシランC)のSi原子に結合した塩素原子とのモル比は、0.5から2.0の範囲であることもまた好ましい。
【0033】
任意選択で、本発明による出発物質組成物は、一般式(VI)の過塩素化オリゴシランおよびポリシランD)をさらに含み得、
SiCl2s+2 (VI)
ここでs=3-20である。
【0034】
過塩素化オリゴおよびポリシランD)は、シーメンス法の副生成物混合物のさらに典型的な成分である。それは、反応器からの流出物と、低沸点モノシランの取り出し時に得られる高沸点留分の両方に存在する。そのような残留物のモノシランへの変換は、通常、高温プロセスを必要とするが、本発明によれば、200℃未満の温度で達成することができる。
【0035】
本発明による出発物質組成物によって任意選択で含まれる別の成分は、直鎖状、分岐状、環状およびケージ状のクロロ、ヒドリドおよびヒドロキシ置換オリゴおよびポリシランを含む、クロロ、ヒドリドおよびヒドリド置換ポリシラン、およびクロロ、ヒドリド、およびヒドロキシ置換ポリシロキサンE)である。そのような化合物は、シーメンス法中に、特に、水分および/または酸素の存在下で、特に高温での、クロロオリゴおよびクロロポリシランを含むシーメンス法副生成物混合物の貯蔵中に形成され得る。上記の条件下で副生成物としてシーメンス法で得られたポリマー成分のエージングによって形成された残留物は、一般に「ポッピングゲル」と呼ばれ、これはそのようなゲルの危険な特性、特にそれらの爆発性を指す。副生成物混合物に含まれる高分子化合物のエージングによるポッピングゲルの形成を防ぎ、すでに形成されたそのような化合物を破壊するために、シーメンス法の副生成物混合物はしばしば高温での燃焼によって処理され、結果として経済効率の低い環境的に無害な方法となる。本発明による方法において、ポッピングゲルの形成は、シーメンス法に続くすべての前駆体化合物および既に形成された化合物E)の直接変換によって、特に本発明による方法においてシーメンス法のCVD反応器を出る流出物を直接利用することによって防止される。
【0036】
本発明による方法において、開裂反応、および任意選択で、所望の生成物を生成する再分配反応は、出発物質組成物の単数または複数のジシラン基材A)および任意選択のさらなる成分B)からE)を、
-エーテル/HCl溶液、
-アミン、ホスフィン、またはそれらの混合物、および
-ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化ホスホニウム、またはそれらの混合物
からなる群から選択される1つまたは複数の反応促進剤F)存在下で反応に供することによって行われる。
【0037】
本発明による「エーテル/HCl溶液」という用語は、HClがエーテル化合物によって吸収されるか、またはエーテル溶媒に溶解されるかに関係なく、エーテル化合物およびHClを含む任意の試薬を指す。「吸収性」または「吸収」という用語はそれぞれ、ある材料(吸収物)、この場合は塩化水素が、別の材料(吸収剤)、この場合はエーテル化合物によって保持されるプロセスを指す。それぞれ溶解性または溶解という用語は、2つの相が混合されて1つの新しい均一相が形成されることを意味し、この場合、これはエーテル化合物中の塩化水素の溶液である。
【0038】
エーテル/HCl試薬は、事前に調製し、次に本発明による方法に適用するか、またはエーテルを反応混合物または反応器に加えてから、続いてHClガスを加え、エーテル/HCl試薬をその場で形成することができる。
【0039】
本発明によれば、「エーテル化合物」という用語は、特に式R-O-Rの、エーテル基-O-を含む任意の有機化合物を意味するものとし、ここでRおよびRは、炭素原子を介して酸素に結合している一価のオルガニル基から独立して選択される。好ましくは、RおよびRは、置換または非置換の直鎖状または分岐状のアルキル基またはアリール基であり、これらは、酸素、窒素、または硫黄などのさらなるヘテロ原子を有し得る。環状エーテル化合物の場合、RおよびRは、任意選択で置換されたアルキレンまたはアリーレン基を共に構成することができ、これらは、酸素、窒素、または硫黄などのさらなるヘテロ原子を有し得る。
【0040】
エーテル化合物は、エーテル基-O-の置換基に関して対称または非対称にすることができる。
【0041】
好ましくは、本発明によるエーテル化合物は、直鎖状および環状エーテル化合物からなる群から選択される。
【0042】
本明細書において、直鎖状エーテル化合物は、上記で定義されたエーテル基RORを含む化合物であり、ここでエーテル基の酸素原子を除いて、R基とR基の間に接続はなく、たとえば、R=Rである対称エーテルEtO、n-BuO、PhO、またはジイソアミルエーテル(i-ペンチルO)、またはt-BuOMe(メチルt-ブチルエーテル、MTBE)またはPhOMe(メチルフェニルエーテル、アニソール)などの非対称エーテルである。
【0043】
本発明による環状エーテル化合物は、1つまたは複数のエーテル基が、一連の原子によって形成される環に含まれる化合物であり、例えば、1,4-ジオキサンであり、例えば、これはアルキル基により置換することができる。
【0044】
また好ましくは、エーテル化合物は、ジエチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジオキサン、好ましくはジエチルエーテルおよびジ-n-ブチルエーテルからなる群から選択される。
【0045】
さらに好ましい実施形態において、エーテル化合物は、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテルまたはジ-n-ブチルエーテルから選択される。
【0046】
さらに好ましくは、本発明による方法は、HClで飽和されたエーテル化合物を用いて実施される。
【0047】
本発明の意味において、「飽和」という用語は、適用されるエーテル化合物中の塩化水素の飽和溶液を指し、そして温度および圧力の特定の値で溶解していない溶質と平衡状態にあるものと同じ濃度の溶質を有する溶液として定義される。本発明の意味において、飽和状態に近い溶液はまた、「飽和」という用語に含まれる。このような飽和溶液は、約-10から約+10℃で、ガス状塩化水素を対応するエーテル化合物(例えば、ジエチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル)に通すことによって調製することができる。過剰なHClガスが溶媒に導入されるのと同じ速さで過圧バルブ上で蒸発すると、エーテルは飽和されている。
【0048】
好ましくは、反応ステップA)におけるエーテル溶媒のHCl含有量は、>約0.1モル/l、より好ましくは>約1.0モル/l、さらにより好ましくは>約3モル/lであり、最も好ましくは、エーテル溶媒は上記で定義されたようにHClで飽和している。
【0049】
本発明の文脈において、それはまた、HCl/ジエチルエーテル試薬としてのHClを含有する溶媒として使用されるEtOを指し、それは、HCl/ジ-n-ブチルエーテル試薬としてのHClを含む溶媒として使用されるジ-n-ブチルエーテルを指し、そしてそれは、HCl/1,4-ジオキサン試薬としてのHClを含む溶媒として使用される1,4-ジオキサンを指す。
【0050】
好ましくは、本発明による方法の反応は、HClで飽和されたエーテル溶媒として機能する、HClで飽和されたジ-n-ブチルエーテルまたは1,4-ジオキサンを用いて実施される。さらに好ましくは、塩化水素によるジ-n-ブチルエーテルまたは1,4-ジオキサンの飽和は、ガス状塩化水素をジ-n-ブチルエーテルまたは1,4-ジオキサンに通すことによって、上記のように実施される。
【0051】
本発明によれば、反応促進剤F)に言及する場合、「アミン」という用語は、アミンR Nから選択される化合物として理解され、ここでRは水素またはオルガニル基であり、そして同一でも異なってもよく、好ましくは、それは第三級アミンRNを指し、ここでRはオルガニル基であり、そして同一でも異なってもよく、例えば、n-BuNまたはNPhである。
【0052】
トリオルガノアミンNRから選択される好ましい化合物F)において、Rはオルガニル基であり、そして同一でも異なっていてもよく、より好ましくは、Rはアルキル、シクロアルキルまたはアリール基であり、最も好ましくはオルガノアミンは、NPhまたはn-BuNである。さらに、本発明による「アミン」という用語は、複素環式アミンを含む。
【0053】
本発明によれば、反応促進剤F)に言及する場合、「ホスフィン」という用語は、ホスフィンR Pから選択される化合物として理解され、ここでRは水素またはオルガニル基であり、そして同一でも異なっていてもよく、好ましくはRPであり、ここでRは上記で定義されたとおりであり、そして同一でも異なっていてもよく、例えばPPhである。
【0054】
トリオルガノホスフィンPRから選択される好ましい化合物F)において、Rはオルガニル基であり、そして同一でも異なっていてもよく、より好ましくは、Rは、アルキル、シクロアルキルまたはアリール基であり、最も好ましくはオルガノホスフィンは、CyP、PPhまたはn-BuPである。
【0055】
本発明によれば、「ハロゲン化アンモニウム」および「ハロゲン化ホスホニウム」という用語は、オニウム化合物RQXを指し、ここで各Rは独立して水素またはオルガニル基であり、Qは窒素またはリンであり、そしてXは、F(フッ素)、Cl(塩素)、Br(臭素)、およびI(ヨウ素)からなる群から選択されるハロゲン化物である。さらに、この用語は、複素環式ハロゲン化アンモニウムを含む。
【0056】
本発明の意味において、オルガニル基は、官能基に関係なく、炭素原子に1つの自由原子価を有する任意の有機置換基である。
【0057】
好ましくは、Q=N、Pの四級化合物RQXは、式RPClによって表せられ、ここでRは、独立して、水素基またはオルガニル基、より好ましくは水素基、好ましくは最大約30個の炭素原子を有する芳香族基、または好ましくは最大約30個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基である。
【0058】
さらにより好ましくは、Rは、独立して、水素、または約1から約30個の炭素原子、好ましくは約2から約16個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアルカリール基である。好ましい基Rには、メチル、n-ブチル、イソブチルなどのブチル、n-ヘキシルなどのヘキシル、n-テトラデシルなどのテトラデシル、n-オクチルなどのオクチルが含まれる。
【0059】
本発明によるハロゲン化アンモニウムまたはハロゲン化ホスホニウムの特に好ましい例は、テトラ(n-ブチル)ホスホニウムクロリド、テトラ(n-ブチル)ホスホニウムブロミド、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムブロミド、メチルトリ(イソブチル)ホスホニウムブロミド、メチルトリ(イソブチル)ホスホニウムクロリド、テトラ(n-オクチル)ホスホニウムクロリド、トリ(n-ブチル)テトラデシルホスホニウムクロリド、およびオクチルトリ(n-ブチル)ホスホニウムクロリドである。
【0060】
好ましくは、本発明による複素環式アミンは、少なくとも1つの4から8員の炭化水素環に少なくとも1つの窒素原子を有し、ここで窒素に隣接する環原子は炭素または窒素であり、そして単数または複数の炭化水素環は、互いに独立して、芳香族または非芳香族炭化水素環である。
【0061】
より好ましくは、複素環式アミンは、1から3個の窒素原子を有する5員環を含む。
【0062】
さらにより好ましくは、複素環式アミンは、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-イソプロピル-イミダゾール、4-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-(2-イミダゾリル)イミダゾール、2-フェニルイミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾール、3-メチルピラゾール、ピロリドン、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリドン、1,2,3-トリアゾール、および1,2,4-トリアゾールからなる群から選択されるイミダゾールまたは置換イミダゾールである。
【0063】
好ましくは、複素環式ハロゲン化アンモニウムは、少なくとも1つの4から8員の炭化水素環に少なくとも1つの窒素原子を有する複素環式アミンに由来し、ここで窒素に隣接する環原子は、独立して炭素原子または窒素原子であり、そして単数または複数の炭化水素環は、互いに独立して、芳香族または非芳香族炭化水素環であり、ここでハロゲン化物はフッ化物、塩化物、臭化物である。
【0064】
より好ましくは、複素環式ハロゲン化アンモニウムは、5員環に1から3個の窒素原子を持つ複素環式アミンに由来し、そしてハロゲン化物は、フッ化物、塩化物、臭化物、またはヨウ化物である。
【0065】
さらにより好ましくは、複素環式ハロゲン化アンモニウムは、1,2-ジメチル-3-(n-プロピル)-イミダゾリウムクロリド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド、1,2-ジメチル-3-(n-ブチル)イミダゾリウムクロリド、1-ブチル-3-メチル-イミダゾリウムクロリド、1-(3-シアノプロピル)-3-メチルイミダゾリウムクロリド、または1-メチルイミダゾリウムクロリドである。
【0066】
本発明による別の好ましい実施形態では、ハロゲン化アンモニウムまたはハロゲン化ホスホニウムは、式RPClによって表され、ここでRは、独立して、水素基またはオルガニル基、より好ましくは水素基、脂肪族炭化水素または芳香族基である。
【0067】
好ましくは、Rは、独立して、水素、または約1から約30個の炭素原子、好ましくは約2から約16個の炭素原子のアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアルカリール基である。Rには、メチル、n-ブチル、イソブチルなどのブチル、n-ヘキシルなどのヘキシル、n-テトラデシルなどのテトラデシル、n-オクチルなどのオクチルが含まれる。
【0068】
本発明によるハロゲン化アンモニウムまたはハロゲン化ホスホニウムの特に好ましい例は、テトラ(n-ブチル)ホスホニウムクロリド、テトラ(n-ブチル)ホスホニウムブロミド、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムブロミド、メチルトリ(イソブチル)ホスホニウムブロミド、メチルトリ(イソブチル)ホスホニウムクロリド、テトラ(n-オクチル)ホスホニウムクロリド、トリ(n-ブチル)テトラデシルホスホニウムクロリド、およびオクチルトリ(ブチル)ホスホニウムクロリドである。
【0069】
反応促進剤F)をHCl/エーテル溶液から選択する場合、出発物質組成物の化合物に含まれるHClのモル量およびSi-Si結合のモル量に基づく、出発物質組成物中のHCl対ジシラン、ジシロキサン、オリゴ-およびポリシランの比は、好ましくは0.1から20.0の範囲、より好ましくは0.5から10.0の範囲、さらにより好ましくは1.0から8.0の範囲、そして最も好ましくは1.0から5.0の範囲であり、すなわち、1つのSi-Si結合あたり1つのHCl分子(=1.0)から1つのSi-Si結合あたり5つのHCl分子(=5.0)の範囲が最も好ましい。
【0070】
反応促進剤F)がアミン、ホスフィン、ハロゲン化アンモニウムまたはハロゲン化ホスホニウムから選択される場合、触媒の量は、出発物質組成物の化合物の重量に基づいて、好ましくは0.01重量%から30重量%の範囲であり、より好ましくは1重量%から20重量%の範囲であり、さらにより好ましくは3重量%から15重量%の範囲であり、最も好ましくは5重量%から10重量%の範囲である。
【0071】
本発明による方法の反応は、任意選択で、
G)一般式(VII)のモノシラン
SiCl4-(t+u) (VII)
ここでt=0-3、好ましくは1-3、より好ましくは2、
u=0-2、好ましくは0、
t+u=0-3、好ましくは1-3、より好ましくは2、
Rは有機残基であり、

H)一般式(VIII)のジシラン
SiCl6-(v+w) (VIII)
ここでv=0-5、好ましくは1-5、
w=0-5、好ましくは0、
v+w=1-5、
Rは上記のように定義される、
から選択される少なくとも1つのSi-H結合を含む1つまたは複数の追加の化合物の存在下で行われる。
【0072】
好ましくは、一般式(VII)のモノシランは、1から3の有機残基、より好ましくはC1-C6アルキル基またはアリール基から選択される1から3の有機残基、さらにより好ましくはメチル、エチル、またはフェニル基から独立して選択される1から3の有機残基、最も好ましくは1から3個のメチル基を有する。
【0073】
また好ましくは、モノシランは、1から3個の水素原子を有し、より好ましくは1から3個の水素原子を有して塩素置換基を有さず、さらにより好ましくは、2個の水素原子および2個の有機残基を有し、最も好ましくは、モノシランG)はジメチルシランである。
【0074】
本発明によれば、ジシランH)は、好ましくは、1から5個の有機残基を有し、より好ましくはC1-C6アルキル基またはアリール基から選択される1から5個の有機残基を有し、さらにより好ましくはメチル、エチルまたはフェニル基から独立して選択される1から5個の残基を有し、最も好ましくは1から5個のメチル基を有する一般式(VIII)のジシランの群から選択される。
【0075】
また好ましくは、ジシランH)は、1から5個の水素原子、より好ましくは2から4個の水素原子を有しそして塩素置換基を有さず、さらにより好ましくは2個または4個の水素原子および4個または2個の有機残基を有し、ジシランH)として最も好ましくは、MeSiおよびMeSiである。
【0076】
前述の最も好ましいジシランH)のより水素に富むジシラン、MeSiは、所与の出発物質組成物の水素供与体としてより少ないジシランが求められるため、これに関して有利であり、したがって、小規模な反応器で十分であり得る。さらに、貴重なモノシランであるMeSiHClは、MeSiから得られた部分的または完全に塩素化された再分配生成物の開裂によって形成される。しかしながら、MeSiとその反応生成物からのオルガノオリゴシランの形成は、このSi-H結合含有ジシランを水素供与体として適用することの欠点である。
【0077】
一方、MeSiは、方法の反応条件下では開裂されないが、水素移動試薬としてのみ機能し、これは、反応中に過塩素化され、LiHとの反応によって再利用してMeSiを再び生成することができる。一般式(I)の所望の生成物からの塩素化生成物MeSiClの分離は、HSiClおよびSiClの沸点と比較した場合、MeSiClの沸点がかなり高いため、問題ではない。
【0078】
本発明による方法は、200℃未満の温度で実施される。本明細書において、本発明による反応温度は、反応混合物の温度、すなわち、反応が行われる反応容器内で測定された温度である。
【0079】
本発明による方法は、出発物質組成物が、o≧1、すなわち、ケイ素原子に結合した少なくとも1つの水素原子を含む一般式(II)の1つまたは複数のジシランA)を含むことを特徴とする。
【0080】
(2)本発明による方法の好ましい実施形態では、ここでo≧1のジシランはペンタクロロジシランであり、より好ましくは、o≧1のジシランは、ペンタクロロジシランおよび1つまたは2つのテトラクロロジシラン異性体であり、さらにより好ましくは、o≧1のジシランはペンタクロロジシランであり、ここでヘキサクロロジシランも出発物質組成物に存在し、そして最も好ましくは、o≧1のジシランはペンタクロロジシランおよび1つまたは2つのテトラクロロジシラン異性体であり、ここでヘキサクロロジシランも出発物質組成物中に存在する。
【0081】
ペンタクロロジシランおよびテトラクロロジシランは、通常、シーメンス法の副生成物混合物中にヒドリド-ジシラン成分として存在する。その中で、それらは通常、さまざまな量のヘキサクロロジシランを伴う。
【0082】
それらは、シーメンス法の副生成物混合物の高沸点留分にも存在し、ここで「高沸点」という用語は、これらの留分に含まれる化合物が、技術的に容易な分別蒸留による低沸点のクロロモノシランSiCl、HSiCl、HSiCl、およびHSiClの分離よりもはるかに高い沸点を有することを示す。本発明によれば、101325Paの標準大気圧で75℃以上の沸点を持つすべての化合物は、シーメンス法副生成物混合物の高沸点留分の一部であると見なされる。
【0083】
反応器から得られる、または副生成物混合物の特定の成分の濾過、蒸留、凝縮、貯蔵または選択的変換または誘導体化などの物理的または化学的処理の後に得られるシーメンス法副生成物混合物が、本発明による方法の好ましい出発物質である。典型的には、シーメンス法の副生成物混合物は、少なくとも1つ、ほとんどの場合いくつかの、少なくとも1つのSi-H結合を含むジシランを含むことを特徴とする。
【0084】
(3)本発明による方法の好ましい実施形態では、温度は10℃から160℃の範囲、より好ましくは15℃から130℃、さらにより好ましくは20℃から100℃、最も好ましくは20から80℃の範囲である。
【0085】
本明細書において、反応温度は、反応混合物の温度、すなわち、反応が行われる反応容器内で測定される温度である。
【0086】
好ましくは、反応容器は、アンプル、密閉管、フラスコ、または任意の種類の化学反応器であり得るが、これらに限定されない。反応容器、特に反応の反応器または管は、バッチ式または連続生産モード用に設計することができる。
【0087】
さらに好ましくは、反応ステップは、塩化物による腐食に耐性のあるガラスまたはハステロイCなどの材料で作られた適切なサイズの反応器で実施される。反応促進剤F)またはそのような薬剤の混合物を溶媒中、またはそのまま実施された場合は出発物質組成物中に分散または溶解するために、激しく攪拌する手段が提供される。
【0088】
(4)本発明による方法の別の好ましい実施形態では、出発物質組成物は、副生成物としてシーメンス法のCVD反応器を出る流出物を含む。
【0089】
元素ケイ素が塩化水素と反応してトリクロロシランHSiClを生成し、そしてガス状HSiClが水素の存在下で還元され、そしてSiが加熱されたシリコンロッド上に堆積されるシーメンス法(HSiCl+H->Si+3HCl;4HSiCl->Si+3SiCl+2H)は、高純度の多結晶シリコンを製造するための主要な商業的方法である。この方法では、HSiClとして供給されたケイ素の約3分の1から4分の1だけが元素ケイ素として堆積され、そして残りは、未反応のトリクロロシラン、またはHSiCl、クロロジシランHSiCl6-o(o=0-6)および粒子状シリコンの脱水素によって主成分として形成されるSiClを通常含む流出ガスとして反応器を出る。高沸点留分は、最も好ましい成分としてo=0、1のジシランHSiCl6-n(o=0-4)のみからなるのではなく、US6,013,235に開示されるように、そのような高沸点残留物の典型的な組成物は、68重量%のジシランおよび31重量%のジシロキサン、0.5重量%の他の高沸点ケイ素含有化合物を含み得る。副生成物としてシーメンス法のCVD反応器を出る流出物の特定の組成物は、本発明によれば「シーメンス法副生成物混合物」とも呼ばれ、方法を実施するために選択されたパラメータに強く依存するが、主成分としてSiClおよびHSiClを含み、記載されているように少量のジシランを含む組成物が予測され得る。
【0090】
特に好ましいのは、シーメンス法の副生成物混合物が、本発明による出発物質組成物の唯一の構成物質である。
【0091】
(5)本発明による方法のさらに好ましい実施形態では、出発物質組成物は、副生成物としてシーメンス法のCVD反応器を出る流出物を含み、ここで流出物には主成分としてテトラクロロシランが含まれている。
【0092】
本発明によれば、「主成分」という用語は、最も高い重量パーセントを有する組成物中の化合物に適用され、ここで重量パーセントとは、シーメンス法の副生成物混合物に含まれる特定の成分の重量とシーメンス副生成物混合物の総重量の比率を指す。
【0093】
好ましくは、出発物質組成物が、シーメンス法のCVD反応器を出る流出物を副生成物として含む場合、ここで流出物が主成分としてテトラクロロシランを含む場合、本発明による方法は、一般式(VII)のモノシランG)および一般式(VIII)のジシランH)から選択される、より好ましくはMeSiH、MeSiHCl、MeSiH、MeSiH、MeSi、MeSi、MeSi、MeSiHから選択される、さらにより好ましくはMeSiH、MeSiHCl、MeSiH、MeSi、MeSiから選択される、最も好ましくはMeSiH、MeSiH、およびMeSiから選択される、少なくとも1つのSi-H結合を含む1つまたは複数の追加の化合物の存在下で実施される。
【0094】
化合物H)およびG)のケイ素原子に結合した水素原子と、シーメンス法副生成物混合物を含む出発物質組成物のケイ素原子に結合した塩素原子のモル比は、好ましくは0.10から0.50の範囲、より好ましくは0.10から0.25の範囲、最も好ましくは0.15から0.25の範囲である。
【0095】
また好ましくは、主成分としてテトラクロロシランを含むシーメンス法副生成物混合物は、本発明による出発物質組成物の唯一の構成物質である。
【0096】
(6)本発明による方法の別の実施形態では、出発物質組成物は、副生成物としてシーメンス法のCVD反応器を出る流出物の分別蒸留によって得られる1つまたは複数の留分を含む。
【0097】
通常、シーメンス法副生成物混合物の低沸点留分、特にSiClおよびHSiClは、蒸留によってCVD反応器を出た直後に副生成物流から再利用またはさらなる処理のために取り出される。さらに、分別蒸留は、ジシラン、ジシロキサン、オリゴシランなどの生成物流に存在する特定の出発物質を分離または濃縮して、それらを出発物質の定義された組成物において本発明による方法に供することを可能にする。
【0098】
好ましくは、本発明による方法において出発物質として機能する副生成物としてシーメンス法のCVD反応器を出る流出物の分別蒸留によって得られる1つまたは複数の留分は、1つまたは複数の合わせられた留分において、10重量%未満のモノシランおよび50重量%を超えるジシランを含む。
【0099】
また好ましくは、本発明による方法の出発物質組成物は、シーメンス法副生成物混合物の分別蒸留によって得られた1つまたは複数の留分のみからなり、より好ましくは、合せたとき10重量%未満のモノシランおよび50重量%を超えるジシラン、最も好ましくは、合せたとき70重量%を超えるジシランを含む1つまたは複数の留分のみからなる。
【0100】
(7)本発明による方法の好ましい実施形態では、出発物質組成物は、少なくとも、一般式(III)または(IV)のジシロキサンB)および/または一般式(V)のクロロモノシランC)を含む。
【0101】
ジシランに加えて、クロロモノシランC)およびジシロキサンB)は、反応パラメータに応じて、シーメンス法の副生成物混合物の主成分を構成し得る。
【0102】
ジシロキサンB)は、特に水分の存在下で形成され、混合物中に存在する場合、蒸留時に高沸点ジシラン留分に存在する。それらは、本発明による方法により、低温でトリクロロシランおよび四塩化ケイ素に変換することができる。
【0103】
(8)本発明による方法のさらに別の好ましい実施形態において、出発物質組成物は、シーメンス法副生成物混合物の高沸点留分を含み、重量による主成分としてジシランを含み、好ましくは、ヘキサクロロジシラン、ペンタクロロジシランおよびテトラクロロジシランが主成分として含まれ、より好ましくは、ヘキサクロロジシランおよびペンタクロロジシランが主成分として含まれ、最も好ましくは、ヘキサクロロジシランが重量による主成分として含まれる。
【0104】
本発明によれば、ヘキサクロロジシラン、ペンタクロロジシランおよびテトラクロロジシランは、それらが通常、シーメンス法で形成される主なジシラン副生成物であるため、そしてそれらが、本発明による方法によって所望のクロロモノシラン、特に四塩化ケイ素、トリクロロシランおよびジクロロシランに変換されるため、出発物質組成物の好ましい成分である。
【0105】
(9)本発明による方法のさらに好ましい実施形態では、出発物質組成物は、30重量%を超えるジシラン、好ましくは40重量%を超えるジシラン、より好ましくは50重量%を超えるジシラン、さらにより好ましくは60重量%を超えるジシラン、そして最も好ましくは70重量%を超えるジシランを含む。
【0106】
本発明による方法において、ジシランは、一般式(I)のクロロモノシランへの変換のための好ましい出発物質である。出発物質組成物のジシランの含有量は、シーメンス法の副生成物混合物のジシラン含有量に対応し、これは、出発物質として、またはシーメンス法副生成物混合物の分別蒸留によって得られた留分のジシラン含有量として好ましく使用され、これはまた、好ましくは出発物質として使用される。
【0107】
(10)本発明による方法の好ましい実施形態では、出発物質組成物は、15重量%を超えるヒドリドクロロジシラン、好ましくは25重量%を超えるヒドリドクロロジシラン、より好ましくは30重量%を超えるヒドリドクロロジシラン、さらにより好ましくは40重量%を超えるヒドリドクロロジシラン、さらに好ましくは50重量%を超えるヒドリドクロロジシランを含み、最も好ましくは、出発物質は、少なくとも1つのヒドリド置換基を有するジシランからなる。
【0108】
本発明による方法は、o≧1である一般式(II)の少なくとも1つのジシランを含む組成物の変換を対象とし、それらは通常、シーメンス法中に副生成物として形成され、そしてそれらは、エージングしそして空気および/または湿気と接触すると、危険なポッピングゲルの形成に関与し、そしてそれらはそれら自身が、可燃性および爆発性に関して、オルガノジシラン、ヘキサクロロジシラン、または長鎖ペルクロロオリゴシランよりも取り扱いが困難である。それらは通常、エネルギーを大量に消費する高温プロセスによってモノシランに変換するか、燃焼によって処理される必要があるが、本発明による方法は、低温で、o≧1の一般式(II)のジシランを、n=2から4の一般式(I)のクロロシランに容易に変換することを可能にする。
【0109】
(11)本発明による方法の好ましい実施形態では、反応は、反応促進剤F)として機能する1つまたは複数のエーテル/HCl溶液の存在下で、好ましくは飽和エーテル/HCl溶液の存在下で行われる。
【0110】
反応促進剤F)としてのエーテル/HCl溶液の利用には、いくつかの利点がある。
【0111】
特に、エーテル/HCl溶液の取り扱いは、調製的に容易であり、そしてルイス塩基としてのエーテルは、塩化水素を活性化して、一般式(II)のジシランA)および塩素化ポリシランD)およびE)をすでに室温で開裂し;反応温度を上げることは、ジシランとポリシランの開裂を完了し、反応時間を短縮するためにのみ推奨される。したがって、ヘキサクロロジシラン、ペンタクロロジシランおよびテトラクロロジシランをエーテル/HCl溶液と反応させて、すでに室温で高収率のトリクロロシラン、ジクロロシランおよび四塩化ケイ素を得る。エーテル/HCl溶液を使用するこのような開裂反応では、HClのプロトンが、最高度の塩素化でケイ素原子への攻撃を促進する。その結果、ClHSi-SiHCl(->HSiCl+HSiCl)およびClSi-SiHCl(->HSiCl+HSiCl)の開裂により、ジクロロシランおよびトリクロロシランが形成され、形成されるSiClの量は、主にヘキサクロロジシラン(ClSi-SiCl+HCl->HSiCl+SiCl)の開裂に起因し、ClSi-SiHClの開裂によりHSiClが定量的に得られる。
【0112】
出発物質が一般式(III)または(IV)のジシロキサンB)を含む場合、例えば、高沸点ジシラン留分の汚染物質として、エーテル/HCl試薬との開裂反応により、モノシランHSiCl4-n(n=0-2)が、より小さなシロキサン[(HCl3-nSi)O(n=0,1)]およびSi-O含有ポリマーと同時に生成される。これらのポリマーは、US4,719,093に従って、基本的に固体SiOに加えてSClを生成するために、揮発性物質から分離し、堆積または高温分解に移す必要がある。
【0113】
さらに高粘度または固体のクロロポリシラン、これらは、アミン、ホスフィン、アンモニウムまたはホスホニウム塩が反応促進剤F)として使用される場合、ケイ素含有出発物質の重量に基づいて約15-20重量%で本発明による方法で生成され、エーテル/HCl溶液との反応によりモノシランHSiCl4-n(n=0-2)に変換される。その中で、必要な後処理手順は、ポリマーのエージングとともにますます困難になる。これは、より高い開裂温度(T>100℃)が必要であり、そしてガス状水素の形成を引き起こす。未反応の暗褐色のポリマーは、ポリマーを破壊するために塩基性水溶液で処理した場合でも、このポリマーが時々空気中で発火し、および/または激しい爆発を引き起こすため、焼却または堆積される。ジシラン混合物をエーテル/HCl溶液で処理すると、固体ポリマーの形成が直接防止され、したがって火災や爆発のリスクを大幅に最小限にする。
【0114】
飽和エーテル/HCl溶液を利用すると、HCl溶液の体積単位あたりのHClの最大量が得られ、したがって方法に必要なエーテルの量が少なくなる。これは、生成物流の体積および本発明による方法を実行するために使用される反応器の規模を低下させるのに役立ち、また反応速度を高める。さらに、飽和またはほぼ飽和のエーテル/HCl溶液を利用することにより、200℃未満の低温で本発明による方法を実行することが可能になり、これは800から1300℃の高温後処理に比べて省エネルギーであり、また反応器の材料の要求が少なくなり、そして従来の材料で作られた反応器で方法を実施することを可能にする。
【0115】
好ましいエーテル/HCl溶液は、HCl/nBuOおよびHCl/1,4-ジオキサンである。
【0116】
(12)本発明による方法の別の好ましい実施形態では、反応は、反応促進剤F)として機能する1つまたは複数のエーテル/HCl溶液の存在下で、好ましくは飽和エーテル/HCl溶液の存在下で行われ、そしてここでそれ以上の反応促進剤F)は反応混合物中に存在しない。
【0117】
HClはジシラン開裂時にSi-H結合を形成するための最も経済的な水素源であるため、反応促進剤F)として1つまたは複数のHCl/エーテル溶液を選択することが望ましいことがあり得る。
【0118】
これは、上記のような高分子生成物の中間形成を回避する必要がある場合、および水素供与体として追加のSi-H含有化合物との再分配反応を介して反応生成物にさらなる水素原子を導入することが望ましくない、または本発明による方法から得られるクロロシランの全体的なSi-H含有量に合う出発物質組成物の構成物質の全体的なSi-H含有量のために必要とされない場合に特に好ましい。
【0119】
(13)本発明による方法の別の好ましい実施形態では、反応は、アミン、ホスフィン、好ましくは塩化物の、ハロゲン化アンモニウムまたはハロゲン化ホスホニウムの群から選択される1つまたは複数の反応促進剤F)の存在下で行われる。
【0120】
化合物HSiCl6-o(o=0-6)を含み、ルイス塩基、例えばトリオルガノアミンおよびトリオルガノホスフィン、特にトリアルキルアミンおよびトリアルキルホスフィン、および対応するハロゲン化アンモニウムおよびハロゲン化ホスホニウム、特に塩化アンモニウムおよび塩化ホスホニウムを含む低沸点HSiCl4-n(n=0-2)を含まない純粋な高沸点留分のジシラン開裂は、すでに室温で開始し、通常、80℃で7時間以内に完了する。揮発性生成物留分として、トリクロロシランが約70%、HSiClが約3%、そしてテトラクロロシランが約26%で形成される。揮発性物質の総量は80%を超え、約15から20%の赤褐色の固体クロロポリシラン混合物が同時に形成される。この混合物は、直鎖状、環状、および分岐状ポリマーを含む。減圧下での低温蒸留/凝縮により生成物混合物からすべての揮発性物質を分離した後、揮発性物質は、モノシランHSiCl4-n(n=0,1,2)を分離するために、たとえばHSiClをCVDプロセスに再投入するために、常圧下で蒸留され;SiClは、水素化ケイ素を使用してHSiClに変換され得る(EP18193571.9を参照)。固体シリコンポリマーは、適度な条件下でエーテル/HCl試薬を使用することにより、モノシランHSiCl4-n(n=0-2)に変換される。
【0121】
約60%のSiCl(および任意選択で残留HSiCl)と混合された一般式HSiCl6-o(o=0-6)のジシランA)を含むシーメンス法のCVD反応器を出る流出物が、クロロシラン製造に使用される場合、水素化ケイ素、例えばジメチルシランまたはジエチルシランは、ジシラン開裂および再分配反応によるSiCl還元の際に、目的化合物HSiClが主に形成されるような量で添加される。オルガノシランが加えられる場合、塩素化同族体、例えばRSiHCl(R=Me、Et)およびRSiClが同時に形成され、そして例えばLiHと共に再利用されて、循環プロセスで使用するための水素化ケイ素を与え得る。EtSiHは、常圧下で液体として扱いやすいため、使用でき;ガス状ジメチルシランMeSiHが使用される場合、シリコーン製造の貴重な構成要素でもあるMeSiHClとMeSiClが形成され、したがって、方法の全体的な経済的価値を高める。フェニルシラン、PhSiH、または適切なメチルジシランなどの高沸点ヒドリドシランも、水素供与性水素化ケイ素として使用することができる。これらの反応では、生成物の分離を容易にする高沸点ジグリムなどの極性溶媒の使用が、塩化ホスホニウム/アンモニウムのより良い溶解のために推奨されるが、開裂/水素化反応を実行するために溶媒の存在はなくてはならないものではない。一般に、本発明による方法の反応は、溶媒なしで首尾よく機能し、そして過剰なSiClが溶媒として使用でき、一方でベンゼンやその他の炭化水素などの単極性溶媒は、より長い反応時間を必要する。形成された揮発性モノシランに加えて、固体クロロポリシランが生成され、これは、エージングなしで、エーテル/HCl試薬を使用してモノシランに再移転される。
【0122】
反応促進剤F)として適用される好ましいアミン、ホスフィン、ハロゲン化アンモニウムまたはハロゲン化ホスホニウムは、nBuN、nBuP、nBuNClまたはnBuPClである。
【0123】
(14)本発明による方法のさらに別の好ましい実施形態では、方法は、エーテル/HCl溶液の非存在下で実施される。
【0124】
出発物質に大量のヒドリドモノシランが存在する場合は、エーテル/HCl溶液の非存在下で方法を実施することが好ましく、なぜなら、反応混合物にHClが存在する場合、ホスフィン、アミン、ならびにハロゲン化アンモニウムおよびハロゲン化ホスホニウムが塩素化触媒として機能するからである。したがって、反応が長引くと、ヒドリドモノシランは徐々に塩素化される。
【0125】
(15)本発明による方法の好ましい実施形態では、1つまたは複数の反応促進剤F)は、X=NまたはPの式RXClで表され、ここでRは、独立して、水素基またはオルガニル基、より好ましくは水素基、芳香族基または脂肪族炭化水素基である。
【0126】
そのような好ましい反応促進剤F)の例は、nBuNClおよびnBuPClである。
【0127】
(16)本発明による方法のさらに好ましい実施形態では、X=NまたはPの式RXClで表される1つまたは複数の反応促進剤F)は、式RXの化合物からその場で形成され、ここでRは上記で定義されたとおりである。
【0128】
本明細書において、Rは、独立して、上記で定義された水素または任意のオルガニル基を表す。より好ましくは、Rは、独立して、水素、または約1から約30個の炭素原子、好ましくは約2から約16個の炭素原子のアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアルカリール基である。
【0129】
そのような反応促進剤F)は、好ましくはHCl/エーテル溶液の一部としてのHCl、または有機塩化物を、特定の添加順序なしで反応混合物中の一般式RXのアミンまたはホスフィンに加えることによって形成され得る。
【0130】
この実施形態はまた、特に、本発明による方法の反応が、好ましくはエーテル溶媒中の、Rが上記で定義された通りであるホスフィンRP、例えばn-BuPおよびHClの混合物を用いて実施されることも含む。
【0131】
そのような化合物の例は、トリブチルアンモニウムクロリドおよびトリブチルホスホニウムクロリドであり、これらは、反応混合物中で、それぞれHCl/エーテルおよびトリブチルアミンまたはトリブチルホスフィンを組み合わせることによって形成することができる。
【0132】
さらなる例は、テトラ(n-ブチル)ホスホニウムクロリド、メチルトリ(イソブチル)ホスホニウムクロリド、テトラ(n-オクチル)ホスホニウムクロリド、トリ(n-ブチル)テトラデシルホスホニウムクロリド、およびオクチルトリ(ブチル)ホスホニウムクロリド、テトラメチルホスホニウムクロリド、テトラエチルホスホニウムクロリド、およびテトラプロピルホスホニウムクロリドである。
【0133】
(17)本発明による方法の別の好ましい実施形態では、反応促進剤F)は、nBuP、nBuN、nBuPClおよびnBuNClからなる群から選択される。
【0134】
これらの反応促進剤F)は、本発明による方法を効果的に促進することが実証されており、低コストで容易に入手可能であり、したがって、経済的観点から適切な薬剤と見なすことができる。
【0135】
一般的に、アミン、ホスフィン、ハロゲン化アンモニウム、およびハロゲン化ホスホニウム、特に、nBuP、nBuN、nBuPCl、およびnBuNClは、シランおよびエーテルによく溶解し、特にホスフィンとアミンは、それらが液体であるため、大規模な取り扱いが容易である。したがってホスフィンおよびアミンをパイプラインにポンプで送って、不活性条件下での取り扱いを確実にすることができ、また、たとえば、湿気に非常に反応性が高く、周囲の空気中で数秒以内に酸化物を形成するnBuPClと比較すると、それらは湿気に低い反応性である。
【0136】
より反応性が高いハロゲン化アンモニウムおよびハロゲン化ホスホニウムは、一般に反応促進剤F)としてより効果的であり、したがって通常、再分配反応でより低い反応温度を要する。ハロゲン化アンモニウムおよびハロゲン化ホスホニウムの溶解度は、長鎖アルキル残基を有機残基Rとして選択することによって高めることができる。
【0137】
(18)本発明による方法の好ましい実施形態では、反応は、モノシランG)およびジシランH)から選択される少なくとも1つのSi-H結合を含む1つまたは複数の追加の化合物の存在下で、好ましくは1つまたは複数の追加のオルガノヒドリドシランの存在下で、より好ましくは1つまたは複数のヒドリドメチルシランの存在下で、さらにより好ましくは、メチルシラン、ジメチルシラン、またはトリメチルシランから選択される1つまたは複数のオルガノヒドリドシランの存在下で、最も好ましくはジメチルシランの存在下で行われる。
【0138】
一般式(I)のプロセス生成物の全体的な水素含有量は、反応混合物中の1つまたは複数のSi-H結合を有するシランの量を増やすことによって上げることができる。したがって、ヒドリドクロロジシラン、または反応促進剤F)の場合は、再分配促進剤としても有効であり、一般式(I)の生成物シランのSi-H結合の平均数を増加させるために、ヒドリドシランを加えることができる。
【0139】
シーメンス法の副生成物混合物を出発原料として使用する場合、Si-H結合を有する出発物質中のシランの量は、シーメンス法で使用されるパラメータによって、またはシーメンス法CVD反応器からの流出物がさらなる処理の前に分別蒸留にかけられる場合、出発物質として使用される留分の選択によって事前に決定される。シーメンス法から得られたシラン出発物質中のSi-H結合の含有量が低すぎて、一般式(I)の生成物モノシランの所望の程度の水素置換を得ることができない場合、方法は、反応混合物に追加のSi結合水素原子を提供するヒドリドモノシランおよび/またはヒドリドジシランを加えることによって最適化することができる。
【0140】
好ましくは、追加のSi-H含有化合物は、ヒドリド置換基と有機置換基の両方を持つモノシランまたはジシランであり、それはこのような化合物は、有機残留物を含まないシランよりも取り扱いが簡単であるからであり、そしてこれらの試薬の反応から得られる反応副生成物は、通常、沸点が高いため、蒸留によって一般式(I)の目的モノシランから分離できるからである。さらに、水素供与体として反応混合物に加えられたオルガノヒドリドシランの変換から得られる副生成物、オルガノクロロシランおよび/または二官能性オルガノヒドリドクロロシランは、それら自体がシリコーンおよびポリオルガノシロキサンの調製のための貴重な化合物である。
【0141】
例えば、本発明による方法の出発物質組成物が、一般式(II)のジシランに加えて、大量のSiClを含むシーメンス法副生成物混合物を含み、そして方法の主生成物としてトリクロロシランを得ることが望ましい場合、以下の反応にしたがって、四塩化ケイ素をトリクロロシランに変換するために、十分な量のジメチルシランを反応混合物に加えることができる。
SiCl+MeSiH->HSiCl+MeSiHCl
または代替的に:2SiCl+MeSiH->2HSiCl+MeSiCl
【0142】
同様に、本発明による方法でのヘキサクロロジシランの開裂またはHSiClの脱水素から生成された四塩化ケイ素は、十分な量の適切なヒドリドシラン、好ましくはヒドリドオルガノシラン、より好ましくはヒドリドメチルシランを加えることによってトリクロロシランまたはジクロロシランに転移させることができる。
【0143】
(19)本発明によるさらに好ましい実施形態では、出発物質組成物は、少なくとも40重量%のSiClを含み、そして反応は、モノシランG)およびジシランH)から選択される少なくとも1つのSi-H結合を含む少なくとも1つの追加の化合物の存在下で、好ましくは1つまたは複数のオルガノヒドリドシランまたはオルガノヒドリドジシランの存在下で、より好ましくは1つまたは複数のメチルヒドリドシランまたはメチルヒドリドジシランの存在下、最も好ましくはジメチルヒドリドジシランの存在下で行われる。
【0144】
ほとんどの場合、本発明による方法の主な生成物としてトリクロロシランまたはジクロロシランを得ることが望ましい。したがって、大量の四塩化ケイ素、例えば出発物質組成物の少なくとも40重量%の存在は、塩素原子の水素原子への交換を達成するために、反応混合物への適切な水素供与体の添加を必要とする。例えばシーメンス法反応器を出る流出物の分別蒸留から得られるSi-H結合含有モノシランG)およびジシランH)に加えて、好ましくは、オルガノヒドリドシランまたはオルガノヒドリドジシランが適用され、より好ましくは、メチルヒドリドシランまたはメチルヒドリドジシランが適用され、そして最も好ましくは、試薬として、ジメチルヒドリドジシランが適用されて、反応混合物中、したがって生成物として得られる一般式(I)のシラン中のSi-H結合の量を増加させる。
【0145】
(20)本発明による方法の別の好ましい実施形態では、SiCl、HSiClおよびHSiClは、方法の重量で主な生成物として得られ、好ましくはHSiClは、重量で主生成物として得られる。
【0146】
本発明による方法の生成物分布は、出発物質組成物中の成分の分布、特に、出発物質シランに見られるSi-H結合の量、適用される反応促進剤F)の種類、および水素供与体として機能する追加のSi-H結合含有化合物の存在によって決定される。
【0147】
主生成物としてトリクロロシランを得るためには、ペンタクロロジシランの含有量が高い出発物質を選択することが好ましい。反応促進剤F)としてエーテル/HCl溶液を適用すると、ペンタクロロジシランが定量的に開裂され、本発明による方法にてHSiClが生成される。あるいは、出発物質として、または反応中、ヘキサクロロジシラン、過塩素化オリゴシランおよびポリシラン、またはヘキサクロロジシロキサンの開裂からの中間体として存在するSiClへの水素原子の再分配を促進することができるさらなるSi-H結合含有出発物質および反応促進剤F)は、本発明による方法の反応混合物に添加される。
【0148】
(21)本発明による方法の好ましい実施形態では、この方法で得られたSiClは、好ましくは、水素化ケイ素化合物、より好ましくは、Si-H結合含有化合物G)またはH)との再分配反応による、同じステップまたは次のステップでHSiClに変換される。
【0149】
すでに上述したように、特にシーメンス法のCVD反応器を出る流出物が出発物質として使用される場合、SiClは出発物質組成物の主成分を構成し得る。同様に、方法の過程で、例えばヘキサクロロジシランまたは過塩素化オリゴシランおよびポリシランの開裂において、大量のSiClが形成され得る。
【0150】
本発明による方法の生成物としてHSiClを得るために、反応中に存在するSiClは、反応混合物中に存在するシランのSi原子に結合した水素原子とSi原子に結合したCl原子の再分配を促進することができる反応促進剤F)の存在下で、十分な量の1つまたは複数の水素化ケイ素化合物、特にヒドリドモノシランG)またはヒドリドジシランH)を添加することによって、HSiClに変換できる。本発明によるそのような反応促進剤F)は、アミン、ホスフィン、ハロゲン化ホスホニウムおよびハロゲン化アンモニウムである。
【0151】
あるいは、これまでに記載された本発明による方法の生成物混合物中に存在するSiClは、特に分別蒸留によって、生成物混合物から分離され得、次いで、方法の生成物としてさらにHSiClを得るため、水素化ケイ素化合物との再分配反応に別々に供され得る。
【0152】
(22)本発明による方法のさらに好ましい実施形態では、出発物質組成物の40%を超えるSi原子がHSiClに変換され、好ましくは、出発物質組成物の50%を超えるSi原子がHSiClに変換され、より好ましくは、出発物質組成物の60%を超えるSi原子がHSiClに変換され、最も好ましくは、出発物質組成物の70%を超えるSi原子がHSiClに変換される。
【0153】
本発明の主な目的は、ヒドリドジシランおよび任意選択で他のシランおよびシロキサン化合物の混合物を、経済的および生態学的に有利な方法を提供するために、一般式(I)の所望のモノクロロシランに可能な限り効果的に変換することであり、これは、シーメンス法の副生成物混合物を出発原料組成物として使用する場合に特に価値がある。これらの廃棄物の効果的なリサイクルは長年の問題であり、これはこれらの材料を取り扱う際の危険を回避するという問題も含まれる。この問題に向けられた方法の有効性は、その原子経済性によって測定することができ、したがって、出発物質組成物のできるだけ多くのSi原子を一般式(I)のクロロシランに変換することが望ましい。一般に、本発明による方法から得られる式(I)の最も望ましいモノシランは、HSiClである。
【0154】
(23)本発明による方法のさらに好ましい実施形態では、反応は、アミン、ホスフィン、ハロゲン化アンモニウムまたはハロゲン化ホスホニウムから選択される1つまたは複数の反応促進剤F)の存在下で行われ、続いて揮発性物質が除去され、続いてエーテル/HCl溶液で処理することにより残りがモノシランに変換される。
【0155】
アミン、ホスフィン、ハロゲン化アンモニウムまたはハロゲン化ホスホニウムから選択される1つまたは複数の反応促進剤F)の存在下で本発明による方法の反応を実施することは、ヒドリドジシランおよびSi-SiおよびSi-O結合を含むさらなる基材の開裂を可能にするだけではなく、水素化ケイ素、特に成分G)およびH)から反応混合物中に存在する過塩素化シランへのSi結合水素原子の再分配も可能にする。他方、アミン、ホスフィン、ハロゲン化アンモニウムまたはハロゲン化ホスホニウムから選択される反応促進剤F)の適用は、固体クロロポリシランの形成をもたらし、これは、生成物混合物から揮発性物質を除去した後に残留物として得られることが見出された。
【0156】
(24)本発明による方法の別の好ましい実施形態では、追加の溶媒は使用されない。
【0157】
本発明によれば、「追加の溶媒」という用語は、通常の条件下および/または反応条件下で液体であり、そして成分A)からE)またはH)およびG)のいずれかの定義に含まれるシランまたはシロキサン化合物ではなく、そして反応促進剤F)の定義に該当せず、特にHCl/エーテル溶液の定義に該当しないすべての試薬に適用される。
【0158】
(25)本発明による方法のさらに別の好ましい実施形態では、反応は、有機溶媒、好ましくは高沸点エーテル化合物、より好ましくはジグリムまたはテトラグリム、最も好ましくはジグリムの存在下で行われる。
【0159】
本発明によれば、「有機溶媒」という用語は、室温で液体状態にあり、そして方法の反応を実施するための媒体として適切である任意の有機化合物または化合物の混合物を指す。したがって、有機溶媒は、好ましくは、反応条件下で本発明に従って適用される反応促進剤F)に対して不活性である。さらに、一般式(II)-(VIII)の出発物質および一般式(I)の生成物は、それぞれ、有機溶媒に可溶であるか、または溶媒と完全に混和性であることが好ましい。
【0160】
好ましくは、有機溶媒は、これらに限定されることなく、任意選択で置換された、好ましくは非置換の直鎖状または環状脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素またはエーテル化合物から選択される。ここにおいて、「エーテル化合物」という用語は、上記のように定義される。
【0161】
本発明の意味において、「高沸点エーテル化合物」という用語は、好ましくは少なくとも約30℃、より好ましくは少なくとも約60℃、さらに好ましくは少なくとも約80℃、最も好ましくは少なくとも約100℃で1バール(大気圧)での沸点を有する上記の定義によるエーテル化合物として定義される。
【0162】
本発明における高沸点エーテルの適用は、溶媒および特定の状況下で残留出発物質を含む反応混合物からの一般式(I)の所望の生成物の分離を容易にするので有利である。一般式(I)の生成物は、一般に、出発物質よりも低い沸点を有し、そしてこれらの生成物の沸点も、上記の定義の高沸点エーテルの沸点よりも低い。
【0163】
例えば、一般式(I)の生成物の沸点は、通常の条件下で約8℃(HSiCl)、約32℃(HSiCl)、または約58℃(HSiCl)であり、一方で、代表的な高沸点エーテル溶媒ジグリムは、約162℃の沸点を有し、そして一般式(II)の好ましい基材であるヘキサクロロジシラン、ペンタクロロジシラン、およびテトラクロロジシランの異性体混合物の沸点は、760mbar(SiCl)で約145℃、35hPa(SiHCl)で40-41℃、および35hPa(SiCl)で29-30℃である。溶媒としてより高沸点のエーテル化合物を適用することにより、より高い反応温度を利用することが可能になり、そして蒸留による反応混合物からの所望の生成物の分離を単純化する。
【0164】
最も好ましい溶媒の選択はまた、適用される反応促進剤F)によることに留意されたい。1,4-ジオキサンおよびnBuOは、反応促進剤F)としてHCl/エーテル溶液を適用する反応で溶媒またはエーテルとして使用した場合に安定であり、一方でジグリムはMeClの除去下で分解し、したがってこれらの条件下では好ましくない。アミン、ホスフィン、ハロゲン化アンモニウム、またはハロゲン化ホスホニウムを反応促進剤として使用する場合、ジグリムは反応条件下で安定しており、沸点が高く、危険性が低いため、特に好ましい。
【0165】
(26)本発明による方法の別の好ましい実施形態では、水素化ケイ素G)およびH)の有機残基Rは、アルキル基またはアリール基、より好ましくはC1-C6アルキル基、最も好ましくはメチル基である。
【0166】
本発明による方法で適用される水素化ケイ素G)およびH)は、Si-H結合の含有量、例えば、沸点などの所望の特性に応じて、そして、方法によって得られる生成物を考慮して選択される。
【0167】
一般に、一般式(VII)および(VIII)の有機水素化ケイ素、すなわち、少なくとも1つの有機残基Rを有する水素化ケイ素は、おもにそれらが発火する傾向が低く、そしてそれらの化合物が非置換類似体よりも高い沸点を有するため、有機残基を含まない類似のヒドリドモノおよびヒドリドジシランと比較して取り扱いが容易であるため、好ましい。化合物のより高い沸点はまた、水素化ケイ素(VII)および(VIII)ならびに生成物混合物に含まれるそれらの誘導体を、一般式(I)を有する方法の所望の生成物からより容易に分離することを可能にする。
【0168】
本発明による方法のための特定の水素化ケイ素G)およびH)の選択はまた、それぞれ、モノシランG)およびジシランH)の利用可能性およびコストによる。このため、アルキル基またはアリール基、特にC1-C6アルキル基またはフェニル基である残基Rを有する水素化ケイ素G)およびH)は、本発明による方法にとって好ましい反応物である。これらは技術的に最も関連性があり、工業的に最も一般的に使用される化合物であるため、メチル置換基を有する水素化ケイ素G)およびH)が最も好ましい。
【0169】
モノシランG)およびH)の選択において考慮されるべき別の要因は、本発明による方法におけるこれらの追加の化合物の反応が、それ自体が価値のある化合物である生成物を生成することである。例えば、ジメチルシランの塩素/水素交換はジメチルクロロシランを生成し、同様にジメチルクロロシランはジメチルジクロロシランを生成し、そしてメチルシランの適用は副生成物としてメチルクロロシラン、メチルジクロロシランまたはメチルドリクロロシランを生成する。同様に、1,1,2,2-テトラメチルジシランの適用は、本発明による方法の副生成物として、1,1,2,2-テトラメチルジクロロジシランおよびジメチルクロロシラン/ジメチルジクロロシラン(少量)の生成をもたらし、そして1,2-ジメチルジシランの適用は、それぞれトリクロロメチルシラン、ジクロロメチルシラン、およびクロロメチルシランの形成をもたらす。そのような副生成物の形成は、本発明による方法の全体的な費用効率に寄与し得る。
【0170】
(27)本発明による方法の好ましい実施形態では、方法は不活性条件下で実施される。
【0171】
本発明の意味において、「不活性条件下で実施される」という用語は、方法が、周囲空気、特に水分および酸素を排除して部分的または完全に実施されることを意味する。反応混合物および反応生成物から周囲空気を排除するために、密閉された反応容器、減圧および/または不活性ガス、特に窒素またはアルゴン、またはそのような手段の組み合わせを使用することができる。
【0172】
(28)本発明による方法のさらに好ましい実施形態では、方法の反応は、0.01から10MPa、より好ましくは0.05から1.0MPaの圧力で行われる。
【0173】
示された圧力範囲は、本発明による方法の反応を実施するときに使用される反応容器内で測定された圧力を指す。
【0174】
(29)本発明による方法の別の好ましい実施形態では、方法の反応の後に、蒸留、低温凝縮、またはそれらの組み合わせによって、得られた一般式(I)のモノシランを分離するステップが続く。
【0175】
特に好ましくは、蒸留ステップはまた、本発明による方法に関与する、それぞれ化合物G)およびH)に由来する有機残基で置換されたオルガノモノシランの分離を含む。
【0176】
本発明の意味での「蒸留」という用語は、選択的蒸発および凝縮によって液体混合物から成分または物質を分離するための任意の方法に関する。ここで、蒸留は、混合物の成分の実質的に完全な分離をもたらすことがあり得、したがってほぼ純粋な化合物の単離につながり、または、蒸留に供される混合物と比較した場合に、留出物中の混合物の選択された成分の濃度を増加させる部分的な分離であり得る。
【0177】
好ましくは、蒸留方法は、単純蒸留、分留蒸留、真空蒸留、ショートパス蒸留、または当業者に知られている他の種類の蒸留であり得る。
【0178】
また好ましくは、本発明による式(I)のモノシランを生成物混合物の他の化合物からおよび/または互いに分離するステップは、1つまたは複数のバッチ蒸留ステップを含むことができ、または連続蒸留プロセスを含むことができる。
【0179】
さらに好ましくは、「低温凝縮」という用語は、反応容器からの揮発による反応混合物からの一般式(I)の1つまたは複数の化合物の分離または濃縮、および冷却容器内での液体および/または固体としての凝縮を含み得、その後、そこから蒸留によって、またはエーテル溶媒に溶解することによって回収することができる。あるいは、モノシランは、冷却容器に含まれるエーテル溶媒に吸収され得る。
【0180】
(30)本発明による方法のさらに別の好ましい実施形態では、出発原料組成物は、1つまたは複数のジシロキサンB)を含む。
【0181】
ジシロキサンB)は、出発原料組成物の成分であり得、水分にさらされたとき、例えば、出発原料の流れまたは湿性周囲空気のいずれかで水分が反応器に入る場合のシーメンス法において、モノシランおよび/またはジシランから形成され得る。
【0182】
このような場合、ジシロキサンは、シーメンス法CVD反応器を出る流出物流に含まれ、ここでジシロキサン含有量は変わり得る。同様に、ジシロキサンは、シーメンス法の副生成物混合物の取り扱いおよび保管中に形成され得る。本発明による方法により、ジシロキサンB)は、低温で一般式(I)のモノシランに変換される。
【0183】
(31)本発明による方法のさらに別の好ましい実施形態では、出発原料組成物は、1つまたは複数の過塩素化オリゴシランおよびポリシランD)を含む。
【0184】
過塩素化オリゴシランおよびポリシランD)は、本発明による方法の出発物質中に存在し得、特に、過塩素化オリゴシランおよびポリシランD)は、シーメンス法中に形成され得、そしてそのような場合、シーメンス法CVD反応器を出る流出物流に含まれるためであり、ここでシーメンス法の副生成物混合物中の過塩素化オリゴシランおよびポリシランD)の特定の含有量は変わり得る。本発明による方法により、過塩素化オリゴシランおよびポリシランD)は、低温で一般式(I)のモノシランに変換される。
【0185】
(32)本発明による方法の好ましい実施形態では、出発物質は、直鎖状、分岐状、環状およびケージ状のクロロ、ヒドリドおよびヒドロキシ置換オリゴおよびポリシランを含む、1つまたは複数のクロロ、ヒドリドおよびヒドロキシ置換ポリシランE)を含む。
【0186】
直鎖状、分枝状、環状およびケージ状のクロロ、ヒドリドおよびヒドロキシ置換オリゴおよびポリシランを含む、クロロ、ヒドリドおよびヒドロキシ置換ポリシランE)は、本発明による方法の出発物質中に存在し得、特に、そのようなポリシランE)は、シーメンス法中に形成されることができ、そしてそのような場合、シーメンス法CVD反応器を出る流出物流に含まれるからであり、ここでシーメンス法の副生成物混合物中のポリシランE)の特定の含有量は変わり得る。クロロ、ヒドリド、およびヒドロキシ置換ポリシランE)は、シーメンス法の副生成物混合物の取り扱いおよび保管中にも形成され得る。本発明による方法により、直鎖状、分岐状、環状およびケージ状のクロロ、ヒドリドおよびヒドロキシ置換オリゴおよびポリシランを含む、クロロ、ヒドリドおよびヒドロキシ置換ポリシランE)は、低温で一般式(I)のモノシランに変換される。ポリシランE)のこのような容易な変換は、非常に望ましく、これらの化合物の多くが、特にエージング時にそれらの爆発性のために潜在的に危険であり、通常、シランへの変換のためにエネルギーを消費する高温プロセスを必要とするか、または燃焼によって廃棄されるからである。
【0187】
(33)本発明による方法の別の好ましい実施形態では、出発物質組成物は、シーメンス法のCVD反応器を出る流出物として得られるシーメンス法の副生成物からなる。
【0188】
本発明による方法は、シーメンス法の副生成物を一般式(I)の所望のクロロモノシランに変換するのに特に適している。
【0189】
方法のこの実施形態では、出発物質組成物として機能する副生成物混合物に、さらなるケイ素含有化合物は加えられず、そしてシーメンス法のCVD反応器を出る流出物の成分は、本発明による方法に供される前に、蒸留、変換または他の手段によって取り出されない。これは、副生成物混合物の流れがシーメンス法の反応器を出るときに本発明による方法の反応ユニットに直接導かれる場合、副生成物混合物の中間処理または貯蔵を回避できるので、これらに関し有利である。さらに、本発明による反応を実施する前に副生成物混合物の特定の留分または成分を除去するための、または出発物質組成物への追加のSi-H含有化合物G)またはH)の添加のための技術的設備は、必要とされない。
【0190】
(34)本発明による方法のさらに好ましい実施形態では、出発物質組成物は、シーメンス法のCVD反応器を出る流出物として得られるシーメンス法の副生成物からなり、これは方法に直接供される。
【0191】
シーメンス法の副生成物混合物を本発明による方法に直接供することにより、副生成物混合物のさらなる取り扱いおよび/または保管を回避することが可能であり、これは、塩素化され、部分的に水素化されたシラン、オリゴシランおよびポリシランを水分および酸素と接触させることによって、特に副生成物混合物の長期保存およびエージングの際に形成される「ポッピングゲル」の形成のリスクを大幅に低下させる。シーメンス副生成物混合物を直接変換することにより、シーメンス法のCVD反応器を出る流出物に含まれる潜在的に危険な化合物は、一般式(I)の所望のクロロモノシランに直接変換され、そしてさらに危険な化合物や混合物の形成が防止される。
【0192】
(35)本発明による方法のさらに好ましい実施形態では、出発物質組成物は、シーメンス法のCVD反応器を出る流出物として得られるシーメンス法の副生成物からなり、これは、中間体保管後に方法に供される。
【0193】
多くの場合、さらなる処理の前にシーメンス法の副生成物混合物を保管することは避けられない。そのような場合、本発明による方法は、副生成物混合物を水分および/または酸素と長時間接触させることによって生成される潜在的に危険な化合物を潜在的に含む副生成物混合物を一般式(I)のクロロモノシランに変換するための有益な方法であり、これは低温でなされるため、エネルギー消費量が比較的少なく、腐食性化合物を含む高温プロセスを実行するために設計された高コストの反応器を必要としない。
【実施例
【0194】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、それらに限定されるものではない。
【0195】
全般:
ジシランHSiCl6-o(n=0-6)のトリクロロシランへの低温変換について、6つの異なるサンプルを調査した。シラン混合物1は、シーメンス法のCVD反応器を出る流出物を含み、そして未反応のトリクロロシラン(2.0%)といくつかのジシランに加えて、主成分としてテトラクロロシラン(63.5mol-%)を含む。シラン混合物2は、上記の2つのモノシランを含まず、主成分としてペンタクロロジシラン(67.5%)を含むジシランのみからなる。シラン混合物3は、SiCl(45.8%)およびジエチルシラン(EtSiH、40%)と混合されたジシラン混合物2で構成されており、シラン混合物4は、SiCl(43%)と混合されたシラン混合物2を扱い、混合物5は、留分の主成分である33.3%の高められたSiClを有するシラン混合物4からなる。シラン混合物6は、ヒドリドクロロジシラン、SiCl、および過塩素化ポリシランを含む。混合物3を除いて、混合物1、2、および4-6は、シーメンス法から得られたさまざまな留分を表している。工業用ジシラン留分内の成分のモル量は、シーメンス法を実施するさまざまな反応条件に応じて変わり得ることに注意する必要がある。これにより、形成される生成物の性質は変わらないが、成分の異なるモル比をもたらす。したがって、ジ、オリゴ、およびポリシランの開裂は、基本的に、トリクロロシランおよび四塩化ケイ素の形成をもたらし、いくつかのジクロロシランが様々なモル比となる。本願で実施および説明されたジ、オリゴ、およびポリシラン開裂反応の結果と、出発原料としてのシーメンス法の高ボイラーの組成物に関する知識に基づいて、この分野の専門家は生成物の形成およびそれらのモル比を予測できる。以下に説明する反応で高粘度または固体のポリシランが得られる場合、これらの化合物とエーテル/HCl溶液とのその後の反応は、常にほぼ定量的にHSiCl/SiCl混合物を供給するが、モノシランに関してはモル比が異なる。シラン混合物1の反応は、追加のヒドリドシラン、例えばジエチルシランの存在下で実施され、ジシラン開裂とSiClの同時選択的還元から高収率の目的化合物トリクロロシランを得てHSiClを生成した。EtSiHは、通常の条件下で液体として扱いやすいため、実験に使用した。他のヒドリドシランは、反応相手および生成物の沸点が異なるため、蒸留による生成物の分離を簡素化するために使用できる。モノシランを含まないジシラン混合物2を、反応促進剤F)と直接反応させて、約15-20w%の固体クロロポリシラン(ジシラン出発物質の総重量に基づく)に加えて、HSiClおよびSiClの混合物を得た。すでに述べたように、固体クロロポリシランはエーテル/HCl試薬と容易に反応する。シラン混合物2を反応促進剤F)としてのエーテル/HClと直接反応させることは、固体ポリシランを形成することなく、すでに室温でトリクロロシランの生成を最大90%の収率でもたらす。さまざまなエーテル/HCl溶液の調製のため、以下を参照:A. G. Sturm et al, Lewis Based catalyzed selective Chlorination ofMonosilanes, Chem. Eur. J. 2018, 24, 17796-17801。
【0196】
反応は、NMRチューブ内で、Cまたは高沸点エーテル、例えばジグリム、および反応促進剤F)に溶解した反応相手を混合することによって実行された。単極性溶媒(ベンゼンなど)への塩化ホスホニウムおよび塩化アンモニウムの溶解度が低いため、溶媒としてのジグリムでの反応が好ましくは推奨される。サンプルを液体窒素(-196℃)で冷却した後、NMRチューブを真空(約0.1mbar)で排気し、低沸点モノシラン、例えば、HSiCl(通常の状態で沸点32℃)、HSiCl(通常の状態で沸点8℃)、HSiCl(通常の状態で沸点-30℃)、SiH(通常の状態で沸点-112℃)およびHCl(通常の状態で沸点-85℃、しかしエーテルに溶解して取り扱いが容易)の損失を防ぐために密閉した。SiClの沸点は通常の条件下で57℃である。反応時間および反応温度に関する最適な反応条件を解明するために、NMRスペクトルを記録した。形成された生成物のモル比は、混合物内の特定の生成物に割り当てられたNMRシグナルの積分によって決定された。次に、最適な反応条件を、密閉されたガラスアンプルまたはオープンシステムのいずれかでの調製スケールに移した。
【0197】
化合物の同定
生成物はHおよび29SiNMR分光法によって分析された。スペクトルは、Prodigy BBO 500 S1プローブを備えたBruker AV-500分光計で記録された。
【0198】
出発物質と形成された反応生成物の29SiNMR化学シフトと結合定数J{29Si-H}を表1に示す。シラン出発物質および形成された生成物の分光学的データは、公表された値と一致している。
【表1】
【0199】
出発物質:ジシラン混合物1および2
【表2】
【0200】
例1):異なる触媒および溶媒としてのCの存在下での流出原料1とEtSiHとの反応
ストック溶液の調製:1.9mlのシラン混合物1(シラン分布を表2に示す)を0.8mlのEtSiHおよび2.8mlのCと混合した。
【0201】
ストック溶液およびそれぞれnBuPCl、nBuNCl、nBuPおよびnBuNの触媒量(反応に供される出発物質中のシランのモル量に基づいて5-10mol%)の0.55mlを、NMRチューブ内で混合した。NMRチューブを-196℃に冷却し、排気して密封した。サンプルを反応させ、NMR分光法で分析し、結果を表3に示す。特に、すべての実験で、赤褐色の高分子固体がわずかに形成された(ジシラン出発物質の総重量に基づいて、15-20w%)。
【表3】
【0202】
サンプルを120℃に加熱した後、NMRチューブを開いて、形成された固体から溶液を分離した。液相を新しいNMRチューブに移し、そして対応する触媒の5mol%(最初の場所で使用したジシラン出発物質のモル量に基づく)を再度加えた。NMRチューブを密封し、そして表4に従って加熱した。
【表4】
【0203】
無極性溶媒(C)において、ジシランの開裂とnBuPおよびnBuNによるSiClの還元はゆっくりでのみ起こり、そして120℃で停止して20-26mol%のHSiClを生成した(生成物混合物の液相内)。塩化ホスホニウム触媒作用により、66%のHSiClが得られ、EtSiHが完全に消費されてEtSiClが得られた。他のすべての場合、EtSiHはまだ反応混合物に残っており、塩素化によりEtSiHClが形成された。
【0204】
ポリマー残留物を開裂するために、すべての固体を-196℃に冷却したNMRチューブで組み合わせた。続いて、0.5mlの5MHCl/1,4-ジオキサン溶液を加え、NMRチューブを排気して密封した。サンプルを80℃で2時間加熱すると、ポリマー残留物がほぼ定量的に切断され、そして少量の未反応の固体粒子のみが残った(約10重量%)。サンプルのNMR分光分析により、液相内の以下の生成物分布を明らかにした:64.7%SiCl、35.3% HSiCl
【0205】
例2):溶媒としてのCにおける異なる開裂触媒とのジシラン混合物2の反応
ジシラン混合物2(表2に示すシラン分布)およびnBuPCl、nBuNCl、nBuP、およびnBuNのそれぞれの触媒量(5-10mol%、出発物質として反応に投入されたシランのモル量に基づく)の0.2mlを、NMRチューブ内で溶媒としての0.4mlのCと混合した。NMRチューブを-196℃に冷却し、排気して密封した。サンプルは室温(r.t.)で反応し始め、完了のため80℃に加熱した。NMR分光法による分析は表5に従った。
【表5】
【0206】
すべてのサンプルはすでに室温で反応し、(液相内で)HSiClを約70mol%で生成し、80℃に加熱してジシランの開裂を完了させ、最終的に副生成物SiClが約27mol%で生成された。すべての反応において、茶色の固体ポリマーが15-20w%(ジシラン出発物質の総重量に基づく)で形成され、そして真空(0.1mbar)での低温蒸留/凝縮によって揮発性物質から分離された。ポリマーのエーテル/HCl開裂により、36/64のモル比のHSiCl/SiCl混合物が得られた。
【0207】
例3):異なる触媒および溶媒としてのジグリムの存在下でのクロロシラン/EtSiH混合物(3)の反応
ストック溶液の調製:0.5mlのジシラン混合物2(シラン分布を表2に示す)を0.9mlのSiCl、0.6mlのEtSiHおよび1.0mlのCと混合した。このサンプルの得られたシラン分布を表6に示す。
【表6】
【0208】
クロロシラン/EtSiH混合物3(シラン分布を表6に示す)およびnBuPCl、nBuNCl、nBuP、およびnBuNのそれぞれの触媒量(反応される出発シランのモル量に基づいて5-10mol%)の0.2mlは、NMRチューブ内で溶媒としての0.4mlのジグリムと混合した。NMRチューブを-196℃に冷却し、排気して密封した。サンプルを加熱し、そしてNMR分光法で分析し、結果を表7に示す。
【表7】
【0209】
ジシラン開裂およびSiCl水素化は室温で開始し、そしてEtSiHは、触媒として塩化ホスホニウムと塩化アンモニウムを使用して、80℃ですでに完全に消費された。EtSiHClは80℃で形成される一方で、120℃ではEtSiClへと完全に反応する。n-トリブチルホスフィンおよびn-トリブチルアミンは、160℃でも効率が低下し、混合物にはEtSiHClがまだ存在する。nBuNでは、EtSiClはまったく形成されず、一方でホスフィンについては、液相内のHSiClのモル比は63mol%であり、アミンでは、38mol%で形成される。開裂/水素化反応に対する極性溶媒の影響を示すために、シラン混合物3を、溶媒としてのジグリムの代わりに0.4mlのC中のnBuPと同等に反応させた。160℃では、HSiClは約33mol%(ジグリムでの63mol%ではなく)で形成され、SiClは38mol%(ジグリムでは8mol%)のままで、そしてEtSiHは19mol%で未反応のままであった。生成物の分布を表8に示す。この一連の実験では、反応する出発物質として反応に供されたジシランに基づいて、固体ポリマーが約15w%で形成された。
【表8】
【0210】
例4):開裂触媒としてのnBuPによるSiCl とHSiClの反応
:本発明によらない反応)
SiCl およびnBuPの触媒量(反応に供された出発物質中のSiClのモル量に基づいて5-10mol%)の0.2mlを、NMRチューブ内の溶媒としてのCの0.45mlと混合した。NMRチューブを-196℃に冷却し、排気して密封した。混合物を室温で12時間反応させ、そしてNMR分光法で分析した。実験は、SiClの代わりにHSiClを使用して同様に繰り返された。生成物の分布を表9に示す。
【表9】
【0211】
ヘキサクロロジシランはほぼ完全に開裂され、ルイス塩基触媒による転位により、SiCl(液相内で96mol%)と約2mol%のneo-SiCl12のみが生成される一方で、この過塩素化前駆体からHSiClは得られない。代わりに、ペンタクロロジシランは液相内でほぼ69mol%のHSiClを生成し、ジシラン開裂時に目的化合物を形成するためにジシラン骨格のヒドリド置換基が必要であることを証明している。どちらの反応でも、赤褐色の塩素化ポリシランが副生成物として形成されている(例5を参照)。
【0212】
例5):調製スケールでのジシラン混合物2からのHSiClの合成
14.78gのジシラン混合物2(ジシラン分布は表2に記載されている)を、蒸留装置および受容フラスコに接続されたシュレンクフラスコに入れた。ジシラン混合物を-196℃に冷却し、続いて0.73g(4.9wt%)のnBuPを加えた。反応混合物を室温に温めると、溶液はオレンジ色に変わり、ジシランはすでに開裂し始めた。反応混合物を1時間かけてゆっくりと130℃に加熱し、そして形成された揮発性物質を連続的に蒸発させて、受容フラスコ(-196℃)に閉じ込めた。11.95gの低沸点揮発性物質を冷却した受容フラスコで分離し、そしてNMR分光法で分析した。生成物の分布を表10に示し、そして対応する29SiNMRスペクトルを図2に示す。
【0213】
2.65gの赤褐色のポリマー固体(出発ジシラン混合物の17.9重量%;0.73gの使用されたnBuPを除く)が反応フラスコに残り、これは一般的な有機溶媒に不溶性であった。
【表10】
【0214】
残りの固体を、NMRチューブを取り付けた密閉ガラスアンプル内で、1,4-ジオキサン中のHClの5モル溶液20mlと120℃で48時間反応させ、オレンジ色の溶液と暗褐色の固体残留物をもたらした。生成物の混合物を室温に冷却した後、0.8mlのオレンジ色の液相を取り付けられたNMRチューブに注いだ。アンプルとNMRチューブを凍結し、そしてNMRチューブを外した。生成物溶液は、NMR分光法によって分析され、そして35.4mol%のHSiClおよび64.6mol%のSiClから構成されていた。
【0215】
例6):nBuPClおよび溶媒としてのCの存在下でのシラン混合物1とメチルヒドリドジシランMeSiおよびMeSiとの反応
0.25mlのシラン混合物1(モノシランとジシランの分布を表2に示す)、0.1mlのテトラメチルジシラン(MeHSi-SiHMe)、および10wt%のnBuPCl(ジシラン出発物質の総重量に基づく)を、NMRチューブ(-196℃に冷却)中の0.35mlの溶媒としてのCと共に混合した。NMRチューブを排気して密封した。混合物を表11に従って加熱し、そしてNMR分光法によって分析した。テトラメチルジシランの代わりにジメチルジシラン(MeHSi-SiHMe、0.05ml)を用いて、実験を同様に繰り返した。生成物の分布を表11に示す。
【表11】
【0216】
両方のメチルヒドリドジシランは水素移動試薬として反応し、80℃で30分後にそれぞれ17mol%および29mol%のHSiCl(液相内)を生成し、そしてそれらの対応する塩素化物を形成する。モノシランHSiCl4-n(n=0-4)、MeSiCl、およびMeSiHClの形成は、Si-Cl還元にジメチルジシランを使用したジシラン開裂、水素化、および再分配反応の比較を証明している。テトラメチルジシランを含むサンプルを120℃で48時間加熱すると、メチルジシランが定量的に塩素化され、そしてHSiClとHSiClの形成がそれぞれ54.5と20.3mol%(液相内)に増加した。
【0217】
例7):SiCl およびHSiClとHCl/1,4-ジオキサン溶液(5M)との反応
:本発明によらない反応)
0.1mlのSiClと0.5mlの5MHCl/1,4-ジオキサン溶液を、NMRチューブ内で0.1mlのCと混合した。NMRチューブを-196℃に冷却し、排気して密封した。混合物を室温で36時間反応させ、そしてNMR分光法で分析した。実験は、SiClの代わりにHSiClを使用して同様に繰り返された。生成物の分布を表12に示す。
【表12】
【0218】
予想通り、HSiClはすでに室温で完全に開裂されて、HSiClを定量的にもたらし、一方でSiClの開裂には、より長い反応時間を要する。66時間後、SiClは反応混合物中に15mol%のままであった。特に、ジシラン開裂時に固体ポリマーは形成されなかった。
【0219】
例8):ジシラン混合物2とHCl/1,4-ジオキサン溶液(5M)との反応
0.1mlのジシラン混合物2(シラン分布を表1に示す)および0.2mlの5MHCl/1,4-ジオキサン溶液を、NMRチューブ内で0.4mlのCと混合した。NMRチューブを-196℃に冷却し、排気して密封した。サンプルを室温で7時間反応させ、NMR分光法で分析し、そして表13に従ってさらに加熱した。
【表13】
【0220】
特に、濃厚HCl/エーテル溶液によるヒドリドクロロジシランのSi-Si結合開裂は、すでに室温で非常に急速に起きる。この実験では、残りのジシランの開裂により、HCl濃度が非常に低いため、高温での長い反応時間をもたらしたが、最終的には、固体の副生成物を形成することなく、87mol%を超えるトリクロロシランが得られた。
【0221】
図1において、出発混合物2の29SiNMRスペクトルを例示的に示し(上部)、そしてHCl/1,4-ジオキサン溶液によるジシラン開裂の結果を下に示す。
【0222】
例9):シロキサンとHCl/1,4-ジオキサン溶液(2.5M)およびnBuPClとの反応
シロキサンストック溶液の調製:1.0mlのジシラン混合物2(1.48g、6.5mmol、シラン分布を表1に示す)をシュレンクフラスコに入れ、激しく攪拌した。続いて、2.0mlの1,4-ジオキサンで希釈した0.5当量のHO(0.06ml、3.33mmol)をシリンジを介してゆっくりと加えた。ジシランが加水分解されると、固体シロキサンが形成され、未反応のジシランと一緒に液体および固体シロキサンの懸濁液が得られた。
【0223】
実験a)において、0.2mlのシロキサンストック溶液を、出発ジシラン当量の総重量に基づいて10重量%のnBuPClと、0.4mlの溶媒としてのCを-196℃のNMRチューブで混合した。実験b)では、-196℃のNMRチューブで、0.2mlのシロキサンストック溶液を、0.5mlの2.5MHCl/1,4-ジオキサン溶液および0.1mlの溶媒としてのCと混合した。NMRチューブを排気し、密封し、120℃で6時間加熱した。両方の実験において、固体ポリシロキサンは不溶性残留物として残り、それ以上調査されなかった。液相のNMR分光分析の結果を表14に示す。
【表14】
【0224】
両方の実験で、HSiCl(19.6%および12.1%)および少量のSiCl(3.6%および1.6%)に加えて、HSiClが液相内で主要生成物(73mol%および82mol%)として形成された。モノシランの形成は、加水分解されていないジシランの開裂を介して、式(HSiCl5-pO(p=0-2)のジシロキサンのSi-Si結合の開裂、およびジシロキサン(HCl3-qSi)O(q=0-2)のSi-O結合の開裂により起こる。
【0225】
例10):SiCl、SiCl、および過塩素化オリゴシランおよびポリシランの存在下でのヒドリドクロロジシランとHCl/nBuO試薬(2.5M)との反応
ストック溶液の調製:
SiClを主成分とするストック溶液の調製:0.8mlのジシラン混合物2(シラン分布を表2に示す)を0.65mlのSiClと混合した。溶液(ジシラン混合物4)をNMR分光法で分析し、結果を表15に示す。
【0226】
SiClを主成分とするストック溶液の調製:0.3mlのジシラン混合物4(シラン分布を表15に示す)を、0.3mlのSiCl(分岐状オリゴシランのモデル化合物として微量のiso-SiCl10を含む)と混合した。溶液(ジシラン混合物5)をNMR分光法で分析し、結果を表15に示す。
【表15】
【0227】
過塩素化ポリシランを主成分とするストック溶液の調製:0.6gの過塩素化ポリシラン(平均鎖長:13ケイ素原子)を0.5mlのジシラン混合物4に溶解した。溶液(シラン混合物6)をNMR分光法で分析し、29SiNMRスペクトルを図3(上)に示す。
【0228】
例10a):ジシラン混合物4とHCl/nBuO試薬(2.5M)との反応
0.1mlのジシラン混合物4(シラン分布を表15に示す)を、-196℃のNMRチューブ内で0.5mlのHCl/nBuO試薬(2.5M)および0.1mlの溶媒としてのCと混合した。NMRチューブを排気し、密封し、そして室温で10時間反応させた。NMR分光分析後、サンプルを80℃で4時間加熱し、室温まで冷却し、そしてその後、NMR分光法で再度分析した。結果を表16に示す。
【表16】
【0229】
例10b):ジシラン混合物5とHCl/nBuO試薬(2.5M)との反応
例10aと同様に、0.1mlのジシラン混合物5(シラン分布を表15に示す)を、0.5mlのHCl/nBuO試薬(2.5M)および0.1mlの溶媒としてのCと-196℃のNMRチューブ内で混合した。NMRチューブを排気し、密封し、そして室温で10時間反応させた。NMR分光分析後、サンプルを80℃で4時間加熱し、室温まで冷却し、そしてその後、NMR分光法で再度分析した。結果を表17に示す。
【表17】
【0230】
例10c):シラン混合物6(ヒドリドクロロジシランおよび過塩素化ポリシランを含む)とHCl/nBuO試薬(2.5M)との反応
例10aと同様に、0.08mlのシラン混合物6を、0.5mlのHCl/nBuO試薬(2.5M)および0.1mlの溶媒としてのCと一緒に-196℃のNMRチューブ内で混合した。NMRチューブを排気し、密封し、そして室温で10時間反応させた。NMR分光分析後、サンプルを80℃で4時間加熱し、室温まで冷却し、そしてその後、NMR分光法で再度分析した。結果を表18に示し、そして29SiNMRスペクトルを図3(下)に示す。
【表18】
【0231】
3つの実験(10a-c)すべてにおいて、HSiClは、すでに室温で10時間後に、主要生成物(71mol%、66mol%、および72mol%)として形成された。ヘキサクロロジシランは最大26mol%で残っていたが、他のすべてのジシラン、オリゴシラン、およびポリシランはほぼ定量的に開裂された。サンプルをさらに4時間80℃に加熱すると、HSiClの形成がさらに増加し、SiClは1-2mol%しか残っていなかった(例10aおよび10b)。10c)の生成物分布は、最初の反応期間中にほとんどすべてのHClがすでに消費されていたため、加熱後も大幅に変化しなかった。追加のエーテル/HCl-溶液はヘキサクロロジシランをほぼ定量的に開裂し、したがってテトラクロロシランとトリクロロシランの量をさらに増やした。
【0232】
本発明の好ましい実施形態
以下に、本発明の好ましい実施形態が示されている。
【0233】
実施形態1
一般式(I)のクロロシランを製造する方法であって、
4-nSiCl (I)
ここでn=2、3、および4、好ましくはn=3、

A)一般式(II)のジシラン
SiCl6-o (II)
ここでo=0-6、好ましくはo=0-2、最も好ましくは0-1、
ここで1つまたは複数のジシランについてo≧1であり、
から選択される1つまたは複数の基材を含み、

そして任意選択で、
B)一般式(III)または(IV)のジシロキサン
(HSiCl5-pO (III)
(HCl3-qSi)O (IV)
ここでp=0-5、好ましくはp=0-1、q=0-2、より好ましくはq=0-1、

C)一般式(V)のクロロモノシラン
SiHCl4-r (V)
ここでr=0-2、好ましくはr=0-1、最も好ましくはr=0、

D)一般式(VI)の過塩素化オリゴシランおよびポリシラン
SiCl2s+2 (VI)
ここでs=3-6、

E)直鎖状、分岐状、環状およびケージ状のクロロ、ヒドリドおよびヒドロキシ置換オリゴおよびポリシランを含む、クロロ、ヒドリドおよびヒドロキシ置換ポリシラン、ならびにクロロ、ヒドリドおよびヒドロキシ置換ポリシロキサン、
をさらに含む、出発物質組成物を、

-エーテル/HCl溶液、
-アミン、ホスフィン、またはそれらの混合物、および
-ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化ホスホニウム、またはそれらの混合物、からなる群から選択される1つまたは複数の反応促進剤F)と、

任意選択で、
G)一般式(VII)のモノシラン
SiCl4-(t+u) (VII)
ここでt=0-3、好ましくは1-3、より好ましくは2、
u=0-2、好ましくは0、
t+u=0-3、好ましくは1-3、より好ましくは2、
Rは有機残基であり、

H)一般式(VIII)のジシラン
SiCl6-(v+w) (VIII)
ここでv=0-5、好ましくは1-5、
w=0-5、好ましくは0、
v+w=1-5、
Rは上記定義通りである、
から選択される1つまたは複数の少なくとも1つのSi-H結合を含む追加の化合物の存在下で、
200℃未満の温度で反応させることによる、方法。
【0234】
実施形態2
o≧1のジシランはペンタクロロジシランであり、より好ましくはo≧1のジシランはペンタクロロジシランおよび1つまたは2つのテトラクロロジシラン異性体であり、さらにより好ましくは0≧1のジシランはペンタクロロジシランであり、ここでヘキサクロロジシランはまた出発物質組成物に存在し、そして最も好ましくは、o≧1のジシランはペンタクロロジシランおよび1つまたは2つのテトラクロロジシラン異性体であり、ここでヘキサクロロジシランはまた出発物質組成物中に存在する、実施形態1による方法。
【0235】
実施形態3
温度は10℃から160℃の範囲、より好ましくは15℃から130℃、さらにより好ましくは20℃から100℃、最も好ましくは20から80℃の範囲である、実施形態1または2による方法。
【0236】
実施形態4
出発物質組成物は、副生成物としてシーメンス法のCVD反応器を出る流出物を含む、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0237】
実施形態5
出発物質組成物は、副生成物としてシーメンス法のCVD反応器を出る流出物を含み、ここで流出物は主成分としてテトラクロロシランを含む、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0238】
実施形態6
出発物質組成物は、副生成物としてシーメンス法のCVD反応器を出る流出物の分別蒸留によって得られる1つまたは複数の留分を含む、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0239】
実施形態7
出発物質組成物は、少なくとも成分B)および/またはC)を含む、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0240】
実施形態8
出発物質組成物は、シーメンス法の副生成物の高沸点留分を含み、そして重量にて主成分としてジシランを含み、好ましくはヘキサクロロジシラン、ペンタクロロジシランおよびテトラクロロジシランが主成分として含まれ、より好ましくはヘキサクロロジシランおよびペンタクロロジシランが主成分として含まれ、最も好ましくはヘキサクロロジシランが重量にて主成分として含まれる、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0241】
実施形態9
出発物質組成物は、30重量%を超えるジシラン、好ましくは40重量%を超えるジシラン、より好ましくは50重量%を超えるジシラン、さらにより好ましくは60重量%を超えるジシラン、そして最も好ましくは70重量%を超えるジシランを含む、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0242】
実施形態10
出発物質組成物は、15重量%を超えるヒドリドクロロジシラン、好ましくは25重量%を超えるヒドリドクロロジシラン、より好ましくは30重量%を超えるヒドリドクロロジシラン、さらにより好ましくは40重量%を超えるヒドリドクロロジシラン、さらに好ましくは50重量%を超えるヒドリドクロロジシランを含み、最も好ましくは出発物質は、少なくとも1つのヒドリド置換基を有するジシランからなる、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0243】
実施形態11
反応は、反応促進剤F)として機能する1つまたは複数のエーテル/HCl溶液、好ましくは飽和エーテル/HCl溶液の存在下で行われる、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0244】
実施形態12
反応は、反応促進剤F)として機能する1つまたは複数のエーテル/HCl溶液、好ましくは飽和エーテル/HCl溶液の存在下で行われ、そしてここで反応混合物中にさらなる反応促進剤F)は存在しない、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0245】
実施形態13
反応は、アミン、ホスフィン、ハロゲン化アンモニウムまたはハロゲン化ホスホニウム、好ましくは塩化物、の群から選択される1つまたは複数の反応促進剤F)の存在下で行われる、実施形態1-11による方法。
【0246】
実施形態14
方法は、エーテル/HCl溶液の非存在下で実施される、実施形態1-10および13による方法。
【0247】
実施形態15
1つまたは複数の反応促進剤F)は、X=NまたはPの式RXClで表され、ここでRは、独立して、水素基またはオルガニル基、より好ましくは水素基、芳香族基または脂肪族炭化水素基である、実施形態1-11および13-14による方法。
【0248】
実施形態16
X=NまたはPの式RXClによって表される1つまたは複数の反応促進剤F)は、式RXおよびRClの化合物からその場で形成される、実施形態15による方法。
【0249】
実施形態17
反応促進剤F)は、nBuP、nBuN、nBuPCl、およびnBuNClからなる群から選択される、実施形態1-11および13-16による方法。
【0250】
実施形態18
反応は、モノシランG)およびジシランH)から選択される少なくとも1つのSi-H結合を含む1つまたは複数の追加の化合物の存在下で、好ましくは1つまたは複数の追加のオルガノヒドリドシランの存在下で、より好ましくは1つまたは複数のヒドリドメチルシラン存在下で、さらにより好ましくは、メチルシラン、ジメチルシランまたはトリメチルシランから選択される1つまたは複数のオルガノヒドリドシランの存在下で、最も好ましくはジメチルシランの存在下で実施される、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0251】
実施形態19
出発物質は少なくとも40重量%のSiClを含み、そして反応は、モノシランG)およびジシランH)から選択される少なくとも1つのSi-H結合を含む少なくとも1つの追加の化合物の存在下で、好ましくは1つまたは複数のオルガノヒドリドシランまたはオルガノヒドリドジシランの存在下で、より好ましくは1つまたは複数のメチルヒドリドシランまたはメチルヒドリドジシランの存在下で、最も好ましくはジメチルヒドリドジシランの存在下で実施される、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0252】
実施形態20
SiCl、HSiClおよびHSiClは、重量にてプロセスの主生成物として得られ、好ましくは、HSiClは、重量にて主生成物として得られる、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0253】
実施形態21
方法で得られたSiClは、同じステップまたは後続のステップで、好ましくは、水素化ケイ素化合物、より好ましくはSi-H結合含有化合物G)またはH)との再分配反応によってHSiClに変換される、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0254】
実施形態22
出発物質組成物のSi原子の40%より多くがHSiClに変換され、好ましくは出発物質組成物のSi原子の50%よりも多くがHSiClに変換され、より好ましくは、出発物質組成物のSi原子の60%より多くがHSiClに変換され、最も好ましくは、出発物質組成物のSi原子の70%より多くがHSiClに変換される、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0255】
実施形態23
反応は、アミン、ホスフィン、ハロゲン化アンモニウムまたはハロゲン化ホスホニウムから選択される1つまたは複数の反応促進剤F)の存在下で行われ、続いて揮発性物質が除去され、そして続いてHCl/エーテル溶液で処理することにより残りがモノシランに変換される、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0256】
実施形態24
追加の溶媒は使用されない、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0257】
実施形態25
反応は、有機溶媒、好ましくは高沸点エーテル化合物、より好ましくは1,4-ジオキサン、ジ-n-ブチルエーテル、ジグリムまたはテトラグリム、最も好ましくはジグリムの存在下で行われる、実施形態1から23による方法。
【0258】
実施形態26
水素化ケイ素G)およびH)の有機残基Rは、アルキル基またはアリール基、より好ましくはC1-C6アルキル基、最も好ましくはメチル基である、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0259】
実施形態27
方法は不活性条件下で行われる、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0260】
実施形態28
方法の反応は、0.01から10MPa、より好ましくは0.05から1.0MPaの圧力で行われる、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0261】
実施形態29
方法の反応の後に、蒸留、低温凝縮、またはそれらの組み合わせによって、得られた一般式(I)のモノシランを分離するステップが続く、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0262】
実施形態30
出発物質組成物は、1つまたは複数のジシロキサンB)を含む、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0263】
実施形態31
出発物質組成物は、1つまたは複数の過塩素化オリゴシランおよびポリシランD)を含む、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0264】
実施形態32
出発物質組成物は、直鎖状、分岐状、環状およびケージ状のクロロ、ヒドリドおよびヒドロキシ置換オリゴおよびポリシランを含む、1つまたは複数のクロロ、ヒドリドおよびヒドロキシ置換ポリシランE)を含む、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0265】
実施形態33
出発物質組成物は、シーメンス法のCVD反応器を出る流出物として得られるシーメンス法の副生成物からなる、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0266】
実施形態34
出発物質組成物は、シーメンス法のCVD反応器を出る流出物として得られるシーメンス法の副生成物からなり、これは方法に直接供せられる、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0267】
実施形態35
出発物質組成物は、シーメンス法のCVD反応器を出る流出物として得られるシーメンス法の副生成物からなり、これは中間体貯蔵後に方法に供される、実施形態1-33による方法。
【0268】
ここに記載の任意の数値範囲は、例または明細書の他の箇所に記載されていても、その範囲内のすべての下位範囲、およびそのような範囲または下位範囲の様々な端点の任意の組み合わせを含むことが理解されよう。
【0269】
本明細書の実施例の部分に詳述される任意の特定の属または種によって記載されるここでの本発明の任意の構成要素は、一実施形態において、その構成要素に関して本明細書の他の箇所に記載される範囲の任意の端点の代替のそれぞれの定義を定義するために使用されることができ、したがって、1つの非限定的な実施形態では、他の箇所で説明されている、そのような範囲の端点に取って代わるために使用することができることもまた理解されよう。
【0270】
構造的、組成的および/または機能的に関連する化合物、材料または物質の群に属するものとして明示的または黙示的に明細書に開示され、および/または特許請求の範囲に記載されている化合物、材料または物質は、その群の個々の代表およびそのすべての組み合わせを含むこともさらに理解されよう。
図1
図2
図3
【国際調査報告】