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特表2022-527333内燃機関の燃焼を制御するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-01
(54)【発明の名称】内燃機関の燃焼を制御するための方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 19/12 20060101AFI20220525BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20220525BHJP
   F02D 21/08 20060101ALI20220525BHJP
   F02M 25/03 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
F02D19/12 A
F02D43/00 301B
F02D43/00 301H
F02D43/00 310A
F02D21/08 311B
F02D21/08 301E
F02D21/08 301G
F02M25/03
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021558765
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(85)【翻訳文提出日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 IB2020053100
(87)【国際公開番号】W WO2020202029
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】102019000004875
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519372043
【氏名又は名称】マレリ・ヨーロッパ・エッセ・ピ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・パンチロリ
(72)【発明者】
【氏名】マッテオ・デ・チェーザレ
(72)【発明者】
【氏名】リッカルド・ランツォーニ
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ・ジト
(72)【発明者】
【氏名】ニコロ・カヴィーナ
【テーマコード(参考)】
3G092
3G384
【Fターム(参考)】
3G092AA06
3G092AA17
3G092AA18
3G092AB17
3G092BA09
3G092BB06
3G092EC01
3G092EC07
3G092FA16
3G092FA17
3G092FA50
3G092HA01Z
3G092HE01Z
3G384AA06
3G384BA13
3G384BA24
3G384DA14
3G384DA55
3G384EA01
(57)【要約】
噴射される水比率の目標値(Robj)、回転速度(n)、吸気効率(ηASP)、および燃焼指数(MFB50)の開ループ寄与(MFB50OL)に応じて、点火進角(SAmodel)を与える燃焼モデルを決定するステップと、燃焼指数(MFB50)に応じて、点火進角の第1の閉ループ寄与(ΔSAKNOCK)を計算するステップと、ノッキングエネルギーを示す量に応じて、点火進角の第2の閉ループ寄与(ΔSAKNOCK)を計算するステップと、燃焼モデルによって与えられた点火進角値(SAmodel)、および第1の閉ループ寄与(ΔSAMFB50)、または、これに代えて、第2の閉ループ寄与(ΔSAKNOCK)の合計によって、操作される点火進角の目標値(SAobj)を計算するステップと、を備える、内燃機関(1)の燃焼を制御するための方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(1)の燃焼を制御するための方法であって、前記内燃機関(1)が、複数のシリンダ(2)と、前記内燃機関(1)内へ水を導入するための水収集噴射システム(18)と、を備え、前記方法は、
前記内燃機関(1)の回転速度(n)および吸気効率(ηASP)を取得するステップと、
制御マップを用いて、ならびに前記回転速度(n)および前記吸気効率(ηASP)に応じて、噴射される水の質量(mH2O)と噴射される燃料の質量(mFUEL)との間の比に等しい水比率(R)の第1の開ループ寄与(ROL)を決定するステップと、
ノッキングエネルギーを示す量(Edet, MAPO)に応じて、前記水比率(R)の第1の閉ループ寄与(ΔRKNOCK)を決定するステップと、
前記第1の開ループ寄与(ROL)および前記第1の閉ループ寄与(ΔRKNOCK)の合計を通じて前記水比率の目標値(Robj)を計算するステップと、
制御マップを用いて、ならびに前記回転速度(n)および前記吸気効率(ηASP)に応じて、シリンダ内部において前記燃料質量の50%が燃焼される機関角度を表す燃焼指数(MFB50)の開ループ寄与(MFB50OL)を決定するステップと、
設計段階において、前記水比率の前記目標値(Robj)、前記回転速度(n)、前記吸気効率(ηASP)、および前記燃焼指数(MFB50)の前記開ループ寄与(MFB50OL)に応じて、点火進行角値(SAmodel)を与える燃焼モデルを決定するステップと、
前記燃焼指数(MFB50)に応じて、前記内燃機関(1)の効率を最適化するのに適した前記点火進行角の第1の閉ループ寄与(ΔSAMFB50)を計算するステップと、
前記ノッキングエネルギーを示す前記量(Edet, MAPO)に応じて、ノッキング現象の発生を避けるのに適した前記点火進行角の第2の閉ループ寄与(ΔSAKNOCK)を計算するステップと、
前記燃焼モデルによって与えられた前記点火進行角値(SAmodel)、前記点火進行角の前記第1の閉ループ寄与(ΔSAMFB50)、および前記点火進行角の前記第2の閉ループ寄与(ΔSAKNOCK)の合計を通じて、操作される前記点火進行角の前記目標値(SAobj)を計算するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
前記点火進行角の前記第2の閉ループ寄与(ΔSAKNOCK)が、前記燃焼モデルによって与えられた前記点火進行角値(SAmodel)を短くし、前記点火進行角の前記第1の閉ループ寄与(ΔSAMFB50)が、前記燃焼モデルによって与えられた前記点火進行角値(SAmodel)を長く、または短くし、前記方法が、前記点火進行角の前記第2の閉ループ寄与(ΔSAKNOCK)が、前記燃焼モデルによって与えられた前記点火進行角値(SAmodel)を短くし始めると、前記点火進行角の前記第1の閉ループ寄与(ΔSAMFB50)をゼロにする、固定する、または現在値に丸めるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
静止状態において、前記水比率(R)の前記第1の閉ループ寄与(ΔRKNOCK)に使用されるPID/PIコントローラの積分部分の前記回転速度(n)および前記吸気効率(ηASP)に依存する適応性制御マップによって前記水比率(R)の第2の開ループ寄与(RADT)を決定するステップと、
前記第1の開ループ寄与(ROL)、前記第2の開ループ寄与(RADT)、および前記第1の閉ループ寄与(ΔRKNOCK)の合計によって前記水比率の前記目標値(Robj)を計算するステップと、
をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記水比率(R)の前記第1の閉ループ寄与(ΔRKNOCK)を決定するために使用される前記ノッキングエネルギーを示す前記量(Edet)が、燃焼ノイズと燃焼ノイズの限界値との間の差によって定義される前記ノッキングエネルギー(Edet)である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記水比率(R)の前記第1の閉ループ寄与(ΔRKNOCK)を決定するために使用される前記ノッキングエネルギーを示す前記量(MAPO)が、前記シリンダ(2)内の燃焼によって発生する圧力波の強度の最大振幅(MAPO)である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
直前に生じた燃焼サイクルの前記ノッキングエネルギーを示す前記量(Edet, MAPO)と、前記ノッキングエネルギーのそれぞれの限界値(Edet-obj, MAPOobj)と、の間の第1の差を計算するステップ、および
前記第1の差または前記第1の閉ループ寄与(ΔRKNOCK)が第1の閾値(S1)よりも小さい場合、前記水比率(R)の前記第1の閉ループ寄与(ΔRKNOCK)を決定するステップ、または
前記第1の差または前記第1の閉ループ寄与(ΔRKNOCK)が第1の閾値(S1)以上である場合、前記点火進行角の前記第2の閉ループ寄与(ΔSAKNOCK)を決定するステップ、
をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の差が、前記第1の差に応じて可変であるPIDまたはPIレギュレータの介入ゲインで乗算される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
関連するノッキング事象が検出された場合に、前記点火進行角の前記第2の閉ループ寄与(ΔSAKNOCK)を最小値に丸めるさらなるステップを含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記燃焼モデルが、
SAmodel=a*MFB50+a*MFB50+a
のように公式化された放物線によって表され、ここで、MFB50は燃焼指数であり、SAmodelは前記燃焼モデルにより与えられる点火進行角値である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
係数が、
=f(ηASP,n)+g(Robj,ηASP) [i=0,1,2]
のように表され、ここで、Robjは前記水比率の目標値であり、nは回転速度であり、ηASPは吸気効率である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記内燃機関(1)が低圧EGR回路(EGRLP)を備え、前記方法が、
制御マップによって、前記回転速度(n)および前記吸気効率(ηASP)に応じて、吸気ダクト(6)内を流れるガス混合物への前記低圧EGR回路(EGRLP)の入射を表す量(REGR)の第1の開ループ寄与(REGR-OL)を決定するステップと、
前記ノッキングエネルギーを示す前記量(Edet, MAPO)に応じて前記量(REGR)の第1の閉ループ寄与(ΔREGR-KNOCK)を決定するステップと、
前記第1の開ループ寄与(REGR-OL)および前記第1の閉ループ寄与(ΔREGR-KNOCK)の合計によって前記量の目標値(REGR-obj)を計算するステップと、
前記量の目標値(REGR-obj)に応じて、前記吸気ダクト(6)内を流れる前記ガス混合物への前記低圧EGR回路(EGRLP)の前記入射を表す前記量(REGR)を決定するステップと、
設計段階において、前記吸気ダクト(6)内を流れる前記ガス混合物への前記低圧EGR回路(EGRLP)の前記入射を表す前記量(REGR)に応じて、点火進行角値(SAmodel)を与える前記燃焼モデルを決定するステップと、
をさらに備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
静止状態において、前記量(REGR)の前記第1の閉ループ寄与(ΔREGR-KNOCK)に使用されるPID/PIコントローラの積分部分の前記回転速度(n)および前記吸気効率(ηASP)に依存する適応性制御マップによって前記量の第2の開ループ寄与(REGR-ADT)を決定するステップと、
前記第1の開ループ寄与(REGR-OL)、前記第2の開ループ寄与(REGR-ADT)、および前記第1の閉ループ寄与(ΔREGR-KNOCK)の合計によって前記量の前記目標値(REGR-obj)を計算するステップと、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
直前に生じた燃焼サイクルの前記ノッキングエネルギーを示す前記量(Edet, MAPO)と、前記ノッキングエネルギーのそれぞれの限界値(Edet-obj, MAPOobj)と、の間の第2の差を計算するステップ、および
前記第2の差または第2の閉ループ寄与(ΔREGR-KNOCK)が第2の閾値(S3)よりも小さい場合、前記第2の閉ループ寄与(ΔREGR-KNOCK)を決定するステップ、または
前記第2の差または前記第2の閉ループ寄与(ΔREGR-KNOCK)が第1の閾値(S1)よりも大きい場合、前記点火進行角の前記第2の閉ループ寄与(ΔSAKNOCK)を決定するステップ、
をさらに含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の閾値(S3)が前記第1の閾値(S1)以下である、請求項6に従属した請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の差または前記第2の閉ループ寄与(ΔREGR-KNOCK)が前記第2の閾値(S3)より小さい場合に、前記水比率(R)の第1の閉ループ寄与(ΔRKNOCK)がゼロに等しい、請求項6、13、および14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の差が、前記第2の差に応じて可変であるPIDまたはPIレギュレータの介入定数で乗算される、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記燃焼モデルが、
SAmodel=a*MFB50+a*MFB50+a
のように公式化された放物線によって表され、ここで、MFB50は燃焼指数であり、SAmodelは前記燃焼モデルにより与えられる点火進角行値であり、aは、
=f(ηASP,n)+g(Robj,ηASP)+h(REGR,ηASP) [i=0,1,2]
のように表される係数であり、Robjは前記水比率の目標値であり、REGRは前記低圧EGR回路(EGRLP)の前記入射を表す量であり、nは回転速度であり、ηASPは吸気効率である、請求項9から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記燃焼モデルが、
SAmodel=a*MFB50+a*MFB50+f(REGR,ηASP
のように表され、ここで、MFB50は燃焼指数であり、SAmodelは前記燃焼モデルにより与えられる点火進角値であり、aは、
=f(ηASP,n)*g(Robj,ηASP) [i=3,4]
のように表される係数であり、Robjは前記水比率の目標値であり、REGRは前記低圧EGR回路(EGRLP)の前記入射を表す量であり、nは回転速度であり、ηASPは吸気効率である、請求項9から16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、参照により本明細書にその開示全体が組み込まれている、2019年4月1日に出願したイタリア特許出願第102019000004875号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、内燃機関の燃焼を制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
知られているように、内燃熱機関を取り扱うとき、製造者は、シリンダ内部に画定された燃焼室に燃料に加えて水を供給することを提案した。
【0004】
内燃機関において、水噴射システムは、水を噴霧の形態で、または燃料と混合して、吸気ダクトを経由して機関内へ、あるいは直接燃焼室内へ導入することからなり、その結果、空気/燃料混合気を冷却してノッキング現象を起こしにくくする。水供給システムは、典型的には、タンクを備え、(スケール形成を避けるために)脱塩水が充填されている。タンクは、通常、乗物の外部から充填されるか、または、空気調整システムの凝縮水を使用して、排気の凝縮水を利用して、もしくは雨水を運んで充填することができる。さらに、タンクは、電気加熱装置を備える(すなわち、電流が通過するときにジュール効果により熱を発生させる抵抗を備える)ことが好ましく、この電気加熱装置は、外部の温度が特に低いときに生じるおそれのある氷を溶かすために使用される。
【0005】
水は、高い蒸発潜熱を有する、言い換えれば、水は、液体状態から気体状態へと変化するために多くのエネルギーを必要とする。外気温度の水が、吸気ダクト内に噴射されると、この水は、流入する空気および金属壁から熱を吸収して蒸発し、したがって流入する物質を冷却する。したがって、機関は新気をより多く取り入れ、言い換えれば、より高密度の空気を取り入れ、体積効率が改善され、ノッキングの可能性が低下し、さらにより多くの燃料を噴射することができる。圧縮中に、微小液滴として存在する水は蒸発して、圧縮されている空気から熱を吸収し、それを冷却し、その圧力を下げる。圧縮後に燃焼が発生して、燃焼中に、多量の熱が生成され、この熱は水によって吸収されて、サイクルの最高温度を下げ、結果として、Noxの形成と、機関の壁によって吸収される熱の形成と、を低減させるというさらなる利益を有する効果がある。この蒸発は、機関の熱の一部(他の場合であれば無駄になっていたであろう)を、形成された蒸気から生じる圧力へさらに変換し、したがってピストンへの推力を増大させ、また、あり得る排気タービンに入るエネルギーの流れを増大させる(さらに、タービンは、加えられた水による熱の吸収による排気ガス温度の低下から恩恵を受けるであろう)。
【0006】
しかしながら、熱力学的効率を犠牲にせずに、水供給システムによって占められる空間の寸法を小さくするために、噴射される水の消費を最適化する必要性は依然として高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3 040 541号明細書
【特許文献2】欧州特許第3 128 159号明細書
【特許文献3】イタリア特許出願公開第2016000115146号明細書
【特許文献4】イタリア特許出願公開第2016000115205号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、上記の欠点を有さず、特に、実行が容易かつ経済的な、内燃機関の燃焼を制御するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲による内燃機関の燃焼を制御するための方法が提供される。
【0010】
次に、本発明の非限定的な実施形態を示す添付の図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明による燃焼制御方法を実行する電子制御装置を備える内燃機関の概略図である。
図2図1の機関の電子制御装置によって操作される燃焼制御方策の第1の変形例を表すブロック図である。
図3図1の機関の電子制御装置によって操作される燃焼制御方策の第2の変形例を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1において、番号1は、それぞれの可変容積燃焼室が画定されるいくつかの(特に、4つの)シリンダ2と、燃料、好ましくはガソリンをシリンダ2内に直接噴射する4つの噴射装置3と、を備える、路上走行車(自動車またはオートバイ、図示略)用の内燃機関全体を示す。シリンダ2はそれぞれ、少なくとも1つのそれぞれの吸気弁(図示略)を介して吸気マニホールド4に接続され、少なくとも1つのそれぞれの排気弁(図示略)を介して排気マニホールド5に接続される。
【0013】
吸気マニホールド4は、排気ガス(下でより詳細に説明する)と、新気、すなわち吸気ダクト6を通って外部から来る空気と、の両方を含むガス混合物を受け入れ、吸気ダクト6は、新気流のための空気フィルタ7を備え、スロットル弁8によって調整される。吸気管6に沿って、空気フィルタ7の下流には空気流量計7もある。
【0014】
吸気ダクト6に沿って、インタークーラ9(マニホールド4の内部に組み込まれることが好ましい)があり、取り入れられた空気を冷却する機能を実行する。インタークーラ9は、インタークーラ9に使用される冷却液のための調整回路に接続され、調整回路は、インタークーラ9に並列なダクトに沿って配置された熱交換器、供給ポンプ、および調節弁を備える。排気マニホールド5は、燃焼によって生成された排気ガスを排気システムに送出する排気ダクト10に接続され、排気システムは、燃焼によって生成されたガスを大気中に放出し、通常、少なくとも1つの触媒コンバータ11、および触媒コンバータ11の下流に配置された少なくとも1つのサイレンサ(図示略)、を備える。
【0015】
内燃機関1の過給システムはターボチャージャ12を備え、ターボチャージャ12は、シリンダ3から排出された排気ガスの作用によって高速で回転するように排気ダクト10に沿って配置されたタービン13、および吸気ダクト6に沿って配置され、供給ダクト6内の空気の圧力を上昇させるためにタービン13自体によって回転させられるようにタービン13に機械的に接続された圧縮機14、を備える。
【0016】
内燃機関1は電子制御装置ECUによって制御され、電子制御装置ECUは内燃機関1のすべての構成部品の動作を制御する。
【0017】
好ましい変形例によれば、内燃機関1は低圧回路EGRLPを備え、低圧回路EGRLPは、排気ダクト10(触媒コンバータ11の下流が好ましい)を起点とし、空気流量計7*の下流で吸気ダクト6に導かれるバイパスダクト15を備え、バイパスダクト15はターボチャージャ12に並列に接続されている。バイパスダクト15に沿ってEGR弁16があり、EGR弁16は、バイパス管15を通って流れる排気ガスの流量を調節するように設計されている。バイパスダクト15に沿って、弁16の上流に熱交換器17もあり、排気マニホールド5から流出して圧縮機14に流入するガスを冷却する機能を行う。
【0018】
最後に、内燃機関1は水供給噴射システム18を備える。
【0019】
水供給噴射システム18によって、水を噴霧の形態で、または燃料と混合して、吸気ダクト6を経由して内燃機関1内へ、あるいは直接燃焼室内へ導入することができ、その結果、空気/燃料混合気を冷却してノッキング現象を起こしにくくすることができる。水供給噴射システム18は、水を集めて貯めるためにタンク19を備え、(スケールの形成を避けるために)脱塩水が充填されている。タンク19は、通常、乗物の外部から充填されるか、または、空気調整システムの凝縮水を使用して、排気の凝縮水を利用して、もしくは雨水を運んで充填することができる。水供給噴射システム18はまた容積ポンプを備え、容積ポンプは、既知の噴射装置20に圧力をかけて水を送出するためにタンクから引き出す。さらに、タンク19は、電気加熱装置を備える(すなわち、電流が通過するときにジュール効果により熱を発生させる抵抗を備える)ことが好ましく、この電気加熱装置は、外部の温度が特に低いときに生じるおそれのある氷を溶かすために使用される。
【0020】
内燃機関1の内部の燃焼を水の噴射によって最適化するために電子制御装置ECUによって行われる方策を下に説明する。
【0021】
特に、以下の量を定義する。
ηASP 吸気効率(機関負荷、あるいは、これに代えて、図示平均圧力または図示平均トルクまたは軸トルクを表す)は、各燃焼サイクルに対してシリンダ2内に閉じ込められる空気質量mAIRと、基準条件(すなわち、298°Kの温度および1大気圧)下での各燃焼サイクルに対してシリンダ2内に閉じ込められる空気質量mAIR_REFとの比によって定義される。
n 内燃機関1の速度。
det ノッキングエネルギー(上死点TDC付近の角度検出窓内のマイクロフォン信号または加速度計信号を適切に処理して決定される燃焼ノイズと、非ノッキング燃焼サイクルの98百分位数に相当し、電子制御装置ECU内部に記憶されたマップにより、機関位置およびシリンダ2に応じて与えられる限界燃焼ノイズと、の間の差によって定義されることが好ましい)。
det-obj 機関位置に基づいて決定されるノッキングエネルギーの限界値。
MAPO シリンダ2内の燃焼によって発生する圧力波の強度の最大振幅(最大振幅圧力振動)。
MAPOobj シリンダ2内の燃焼によって発生する圧力波の強度の最大振幅の限界値であり、機関位置に基づいて決定される。
MFB50 燃焼指数(50%質量分率燃焼)、シリンダ2内部において燃料質量の50%が燃焼される機関角度(すなわちクランク角度)を表す。
R 各シリンダ2に対して噴射される水の質量mH2Oと燃料の質量mFUELとの間の比に等しい水比率。
obj 各シリンダ2に対して噴射される水の質量mH2Oと基準の燃料の質量mFUELとの間の比に等しい水比率の目標値。
SA 点火進行角。
SAobj 操作される点火進行角の目標値。
【0022】
図2に示した第1の変形例によれば、内燃機関1は水供給噴射システム18のみを備え(低圧回路EGRLPを備えない)、使用される燃焼モデルは、内燃機関1の(既知の)吸気効率ηASP、(既知の)速度n、燃焼指数MFB50、および水比率Robjに応じて点火進行角SAmodelを計算する。
【0023】
具体的には、本燃焼モデルは、以下のように公式化された放物線によって表すことができる。
SAmodel=a*MFB50+a*MFB50+a
ここで、SAmodelおよびMFB50は上で説明した意味を有し、係数aは、以下のように表すことができる。
=f(ηASP,n)+g(Robj,ηASP) [i=0,1,2]
または、これに代えて、次式のような多項式モデルによって表すことができる。
=p00+n*pl0+ηASP*p01+n*ηASP *p11+n*p20 [i=0,1,2]
ここで、Robj、n、およびηASPは上で説明した意味を有する。
【0024】
nおよびηASPの値は電子制御装置ECUにとっては既知である。
【0025】
燃焼指数MFB50および水比率Robjは以下のように決定される。
【0026】
燃焼指数MFB50は開ループ寄与により決定され、具体的には、電子制御装置ECUは、内燃機関1の吸気効率ηASPおよび速度nに基づいて燃焼指数MFB50を提供するマップ(MFB50OL)を記憶している。
【0027】
一方、水比率Robjは、2つの開ループ寄与と1つの閉ループ(すなわち、フィードバック)寄与との合算よって決定される。
【0028】
第1の開ループ寄与は水比率ROLを提供し、具体的には、電子制御装置ECUは、内燃機関1の吸気効率ηASPおよび速度nに基づいて水比率ROLを提供するマップ(ROL)を記憶している。
【0029】
第1の変形例によれば、水比率Robjの閉ループ寄与は、直前に生じた燃焼サイクルのノッキングエネルギーEdetをノッキングエネルギーの限界値Edet-objと比較することによって得られる。
【0030】
これに代えて、水比率Robjの閉ループ寄与は、シリンダ2内の燃焼によって発生する圧力波の強度の最大振幅MAPOをシリンダ2内の燃焼によって発生する圧力波の強度の最大振幅の限界値MAPOobjと比較することによって得られる。
【0031】
操作されるこのタイプの制御は、直前に生じた燃焼サイクルのノッキングエネルギーEdetとノッキングエネルギーの限界値Edet-objとの間の比較に応じて(または、それぞれ、シリンダ2内の燃焼によって発生した圧力波の強度の最大振幅MAPOとシリンダ2内の燃焼によって発生する圧力波の強度の最大振幅の限界値MAPOobjとの間の比較に応じて)区別され、例えば、このタイプの制御は、PID(またはPI)コントローラの介入定数を区別して行われる。
【0032】
具体的には、この方策は、直前に生じた燃焼サイクルのノッキングエネルギーEdetとノッキングエネルギーの限界値Edet-objとの間の差(または、それぞれ、シリンダ2内の燃焼によって発生した圧力波の強度の最大振幅MAPOとシリンダ2内の燃焼によって発生する圧力波の強度の最大振幅の限界値MAPOobjとの間の差)にPIDコントローラの介入定数を乗算することによって計算される寄与を入力として受け取るガバナーブロック1を伴う。前記寄与によって想定された値に応じて、ガバナーブロック1は、ノッキングの危険性を低減するために介入する方法を決定する。具体的には、この寄与が閾値S1(機関位置に基づいて調節可能および変更可能であることが好ましい)より小さい場合、これは、ノッキング現象の発生を避けるために小さな補正が必要とされることを意味する。この場合、ガバナーブロックは、ノッキング現象の発生を避けるのに適した水比率の差分ΔRKNOCKを計算する。
【0033】
他方において、この寄与が閾値S1を超える場合、これは、ノッキング現象の発生を避けるために大きな補正が必要とされることを意味する。この場合に、ガバナーブロック1は、ノッキング現象の発生を避けるのに適した点火進角の差分ΔSAKNOCKを計算する。この場合に、下で詳細に説明するように、水比率Robjは限界値に丸められる。
【0034】
最後に、ノッキング現象DETが検出された場合、この寄与は、PIDコントローラの応答を待つことなく最大値に即座に丸められ、その結果、ガバナーブロック1は、ノッキング現象の発生を避けるのに適した点火進角の差分ΔSAKNOCKを計算する。
【0035】
好ましい変形例によれば、適応性の水比率RADTを提供する第2の開ループ寄与があり、具体的には、電子制御装置ECUは、内燃機関1の吸気効率ηASPおよび速度nに基づいて適応性の水比率RADTを提供するマップ(RADT)を記憶している。前記マップは、閉ループ寄与によって使用されるPIDまたはPIコントローラの積分部分に応じて更新されて、静的条件における水比率の差分ΔRKNOCKを決定することが好ましい。
【0036】
したがって、水比率Robjは、2つの開ループ寄与RADTおよびROLと閉ループ寄与ΔRKNOCKとの合算によって決定される。
【0037】
この方策は、効率を最適化するために閉ループ寄与をさらに伴う。具体的には、前記閉ループ寄与は、燃焼指数MFB50(上記のような開ループ寄与によって決定される)と燃焼指数の推定値MFB50estとを比較することによって得られる。
【0038】
操作されるこのタイプの制御は、燃焼指数MFB50と燃焼指数の推定値MFB50estとの間の比較の結果に応じて区別され、例えば、このタイプの制御は、PID(またはPI)コントローラの介入定数を区別して行われる。
【0039】
具体的には、この方策は、燃焼指数MFB50と燃焼指数の推定値MFB50estとの間の差にPIDまたはPIコントローラの介入定数を乗算することによって計算される寄与を入力として受け取るガバナーブロック2を伴う。前記寄与によって想定された値に応じて、ガバナーブロックは、内燃機関1の効率を最適化するために介入する方法を決定する。具体的には、この寄与が閾値S2(機関位置に基づいて調節可能および変更可能であることが好ましい)を越える場合、これは、内燃機関1の効率を最適化するために大きな補正が必要とされることを意味する。この場合、ガバナーブロックは、内燃機関1の効率を最適化するのに適した点火進行角の差分ΔSAMFB50を計算する。
【0040】
明らかに、ノッキング制御を実行しノッキング現象の発生を避けるために、点火進行角の差分ΔSAKNOCKは、燃焼モデルによって与えられた点火進行角SAmodelを短くする。対照的に、内燃機関1の効率を最適化するために、点火進行角の差分ΔSAMFB50は、燃焼モデルによって与えられた点火進行角SAmodelを長くする。内燃機関1の効率を犠牲にして、ノッキング現象の発生を避けるように内燃機関1を保護することが優先され、これは、ノッキング現象の発生を避けるのに適した点火進行角の差分ΔSAKNOCKが燃焼モデルによって与えられた点火進行角SAmodelを短くするように介入するとき、内燃機関1の効率を最適化するのに適した点火進角の差分ΔSAMFB50がゼロまで短くされる(または、著しく短くされる)ことを意味する。言い換えれば、この方策は、点火進行角の差分ΔSAKNOCKが燃焼モデルによって与えられた点火進行角SAmodelの値を短くし始めるとすぐに、点火進行角の差分ΔSAMFB50をなくす(または、ゼロに近い値に丸める)ことを伴う。
【0041】
したがって、操作される目標進行角SAobjは、2つの異なる寄与、すなわち、燃焼モデルによって与えられた点火進行角SAmodelと、内燃機関1の効率を最適化するのに適した点火進行角の差分ΔSAMFB50、または、これに代えて、ノッキング現象の発生を避けるのに適した点火進行角の差分ΔSAKNOCKとの合計から得られる。
【0042】
一変形例によれば、内燃機関1は、水供給システム18および低圧回路EGRLPの両方を備える。この場合、吸気ダクト6を通って流れるガス混合物への低圧回路EGRLPの入射を示す量(または比)REGRは、以下のように定義される。
EGR=MEGR_LP/MTOT
TOT 外部から来て吸気ダクト6内を流れる新気の質量MAIRと、低圧回路EGRLPを通って吸気ダクト6内を流れる、再循環する排気ガスの質量MEGR_LPとの合算によって得られる、吸気ダクト6内を流れるガス混合物の質量。
EGR_LP 低圧回路EGRLPを通って吸気ダクト6内を流れる、再循環する排気ガスの質量。
【0043】
下の説明では、量REGR(例えば、下でより詳細に説明するような燃焼モデルで使用される)は、代替的に、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4に記載されている方法のいずれか1つ、またはEGR弁16の流出モデルによって決定することができる。
【0044】
より詳細には、図3によれば、量REGRは、吸気ダクト6内を流れるガス混合物(全体)に対して、低圧回路EGRLPから来るガス流の入射の直接測定値または推定値(図3に示す「機関制御ブロック」の内部)を表し、低圧回路EGRLPから来るガス流は、EGR弁16の位置および内燃機関1の状態(特に、圧力、温度)から得られ、EGR弁16の位置は、下で説明されるように計算される目標値の量(または比)REGR_OBJに応じて機関制御装置によって操作される。代替の形態では、量REGRは、目標値の量REGR_OBJに応じて(例えば、目標値の量REGR_OBJを一次フィルタによってフィルタリングして)決定(推定)される。
【0045】
図3によれば、使用される燃焼モデルは、内燃機関1の(既知の)吸気効率ηASP、(既知の)速度n、燃焼指数MFB50、水比率Robj、および量REGRに応じて点火進行角SAmodelを計算する。
【0046】
言い換えれば、点火進行角SAmodelを計算する燃焼モデルは以下のように表すことができる。
SAmodel=f(MFB50,ηASP,n,Robj,REGR
【0047】
好ましい実施形態によれば、本燃焼モデルは、以下のように公式化された通常の放物線によって表すことができる。
SAmodel=a*MFB50+a*MFB50+a
ここで、SAmodelおよびMFB50は上で説明した意味を有し、係数aは、以下のように表すことができる。
=f(ηASP,n)*k(REGR,ηASP)*g(Robj,ηASP) [i=0,1,2]
ここで、REGR、Robj、n、およびηASPは上で説明した意味を有する。
【0048】
nおよびηASPの値は、電子制御装置にとって既知である。一方、fおよびkは、準備段階において実験的に処理され、ηASP、n、REGRに応じて可変であるマップを表す。
【0049】
さらなる実施形態によれば、本燃焼モデルは、以下のように公式化された通常の放物線によって表すことができる。
SAmodel=a*MFB50+a*MFB50+f(REGR,ηASP
ここで、SAmodelおよびMFB50は上で説明した意味を有し、係数aは、以下のように表すことができる。
=f(ηASP,n)*g(Robj,ηASP) [i=3,4]
ここで、Robj、n、およびηASPは上で説明した意味を有する。
【0050】
nおよびηASPの値は、電子制御装置にとって既知である。一方、fおよびkは、好ましい実施形態によれば、準備段階において実験的に処理され、EGRがないとき、すなわち、量REGRがゼロのとき、ηASP、nに応じて可変であるマップを表す。
【0051】
これに代えて、fおよびkは、準備段階において実験的に処理され、量REGRが準備設定段階で決定された基準値に等しい場合に、ηASP、nに応じて可変であるマップを表す。燃焼指数MFB50、ならびに量RobjおよびREGR_OBJは以下のように決定される。
【0052】
燃焼指数MFB50は、開ループ寄与により決定され、具体的には、電子制御装置ECUは、内燃機関1の吸気効率ηASPおよび速度nに基づいて燃焼指数MFB50を提供するマップを記憶している。
【0053】
量REGR_OBJは、2つの開ループ寄与REGR-ADT(あれば)およびREGR-OLと閉ループ寄与ΔREGR-KNOCKとの合算によって決定される。
【0054】
量Robjはまた、図2に関する上の説明に記述されているように、2つの開ループ寄与と1つの閉ループ(すなわち、フィードバック)寄与との合算によって決定される。量Robjは、2つの開ループ寄与RADT(あれば)およびROLと閉ループ寄与ΔRKNOCKとの合算によって得られる。
【0055】
この方策は、効率を最適化するために閉ループ寄与をさらに伴う。具体的には、前記閉ループ寄与は、開ループ寄与によって決定された燃焼指数MFB50と燃焼指数の推定値MFB50estとを比較することにより得られる。
【0056】
操作されるこのタイプの制御は、開ループ寄与によって決定された燃焼指数MFB50と燃焼指数の推定値MFB50estとの間の比較の結果に応じて区別され、例えば、このタイプの制御は、PID(またはPI)コントローラの介入定数を区別して行われる。
【0057】
具体的には、この方策は、燃焼指数MFB50と燃焼指数の推定値MFB50estとの間の差にPIDまたはPIコントローラの介入定数を乗算することによって計算される寄与を入力として受け取る1つの単一のガバナーブロック5を伴う。前記寄与によって想定された値に応じて、ガバナーブロック5は、内燃機関1の効率を最適化するために介入する方法を決定する。具体的には、この寄与が閾値S5(機関位置に基づいて調節可能および変更可能であることが好ましい)を超える場合、これは、内燃機関1の効率を最適化するために大きな補正が必要とされることを意味する。この場合、ガバナーブロック5は、内燃機関1の効率を最適化するのに適した点火進行角の差分ΔSAMFB50を計算する。
【0058】
この場合もまた、ノッキング制御を実行し、ノッキング現象の発生を避けるために、点火進行角の差分ΔSAKNOCKは、燃焼モデルによって与えられた点火進行角SAmodelを短くする。対照的に、内燃機関1の効率を最適化するために、点火進行角の差分ΔSAMFB50は、燃焼モデルによって与えられた点火進行角SAmodelを長くする。内燃機関1の効率を犠牲にして、ノッキング現象の発生を避けるように内燃機関1を保護することが優先され、これは、ノッキング現象の発生を避けるのに適した点火進行角の差分ΔSAKNOCKが燃焼モデルによって与えられた点火進行角SAmodelを短くするために介入するとき、内燃機関1の効率を最適化しようとする点火進行角の差分ΔSAMFB50がゼロまで短くされる(または、著しく小さくされる)ことを意味する。言い換えれば、この方策は、点火進行角の差分ΔSAKNOCKが燃焼モデルによって与えられた点火進行角SAmodelの値を短くし始めるとすぐに、点火進行角の差分ΔSAMFB50をなくす(または、ゼロに近い値に丸める)ことを伴う。
【0059】
したがって、操作される目標進行角SAobjは、2つの異なる寄与、すなわち燃焼モデルによって与えられた点火進行角SAmodelと、内燃機関1の効率を最適化するのに適した点火進行角の差分ΔSAMFB50、または、これに代えて、ノッキング現象の発生を避けるのに適した点火進行角の差分ΔSAKNOCKとの合計から得られる。
【0060】
すでに上で言及したように、上記の閉ループ寄与を決定するために使用されるコントローラは、PIDまたはPIコントローラのどちらかであり、このコントローラでは、介入定数は誤差に基づいて区別され、ガバナーブロック5は介入優先度を用いてコントローラを管理し、具体的には、低圧回路EGRLPを調整する、ノッキングエネルギーEdetに関する(または、シリンダ2内の燃焼によって発生する圧力波の強度の最大振幅MAPOに関する)閉ループ寄与は、水供給噴射システム18に対して介入優先度を有する(基本的には、低圧回路EGRLPを通って再循環する排気ガスの質量MEGR_LPは通常運転中、自由に供給されるので)。
【0061】
すでに上で言及したように、吸気効率ηASPは、これに代えて、図示平均圧力によって、図示トルクによって、または軸トルクによって、一般的に言えば、機関負荷を表す任意の量によって置き換えることができる。
【0062】
上記の燃焼制御方法は、高い計算負荷を必要としないため容易に実行することができ、ロバスト性を有し、特に、噴射水の消費を最適化することができ、その結果、水供給システム18が占める空間の寸法を小さくし、熱力学的効率に悪影響を及ぼさず、同時に、信頼性高くノッキング現象の発生を防ぐなど、多くの利点を有する。
【符号の説明】
【0063】
1 内燃機関
2 シリンダ
3 噴射装置
4 吸気マニホールド
5 排気マニホールド
6 吸気ダクト
7 空気フィルタ
7* 空気流量計
8 スロットル弁
9 インタークーラ
10 排気ダクト
11 触媒コンバータ
12 ターボチャージャ
13 タービン
14 圧縮機
15 バイパスダクト
16 EGR弁
17 熱交換器
18 水供給噴射システム
19 タンク
20 噴射装置
図1
図2
図3
【国際調査報告】