(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-01
(54)【発明の名称】多室マクロカプセル化装置
(51)【国際特許分類】
A61K 9/50 20060101AFI20220525BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20220525BHJP
A61L 27/40 20060101ALI20220525BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20220525BHJP
A61L 27/56 20060101ALI20220525BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20220525BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20220525BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20220525BHJP
A61M 37/00 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
A61K9/50
A61L27/38
A61L27/40
A61L27/54
A61L27/56
A61K35/12
A61K38/17
A61K9/00
A61M37/00 550
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559073
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(85)【翻訳文提出日】2021-10-18
(86)【国際出願番号】 US2020026437
(87)【国際公開番号】W WO2020206157
(87)【国際公開日】2020-10-08
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598032106
【氏名又は名称】バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】サノス, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ミルズ, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ビリングズ, メーガン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C084
4C087
4C267
【Fターム(参考)】
4C076AA61
4C076AA94
4C076BB32
4C076CC29
4C076FF31
4C081BB06
4C081CD34
4C081CE02
4C081DB03
4C084AA03
4C084BA03
4C084CA53
4C084CA56
4C084DB34
4C084MA05
4C084MA67
4C084NA12
4C084ZC351
4C084ZC352
4C087AA01
4C087AA10
4C087BB63
4C087MA05
4C087MA67
4C087NA10
4C087ZC35
4C267AA74
4C267BB01
4C267CC05
4C267CC07
(57)【要約】
マクロカプセル化装置及びそれらの使用方法について開示している。一実施形態では、マクロカプセル化装置は、第1の外膜と、第2の外膜と、それらの間に配置された少なくとも1つの半透膜とを含み、少なくとも、第1の細胞集団を収容するように構成された一次の小室と、第1の半透膜を通して一次の小室と流体連絡した二次の小室とを形成してもよい。いくつかの実施形態では、生体内に配置されたときに、マクロカプセル化装置の小室内及びそこから外に材料を流すこと及び/または小室間に適切な圧力差を印加することを用いて、装置の小室間のろ液、補助剤、及び他の材料の流れを制御してもよい。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マクロカプセル化装置であって、
第1の外膜と、
第2の外膜と、
前記第1の外膜と前記第2の外膜との間に配置された第1の半透膜と、
前記第1の半透膜と前記第1の外膜とによって形成された一次の小室であって、前記一次の小室は第1の細胞集団を収容するように構成されている、前記一次の小室と、
前記第1の半透膜と前記第2の外膜とによって形成された二次の小室であって、前記一次の小室と前記二次の小室とは前記第1の半透膜を通して流体連絡する、前記二次の小室と、を含む、前記マクロカプセル化装置。
【請求項2】
前記第1の半透膜は、前記一次及び二次の小室間の前記第1の細胞集団の移動を遮って、前記一次の小室と前記二次の小室との間のろ液及び/または補助剤の流れを可能にするように構成されている、請求項1に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項3】
前記一次の小室内に配置された前記第1の細胞集団をさらに含む、請求項1または2のいずれか1項に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の外膜は、前記装置から外への前記細胞集団の移動を遮るように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項5】
前記第1及び/または第2の外膜は半透性である、請求項1~4のいずれか1項に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項6】
前記第1の半透膜と前記第2の外膜との間に配置された第2の半透膜と、前記第2の半透膜と前記第2の外膜との間に配置された三次の小室と、をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項7】
前記第1の半透膜の透水率及び/または多孔性は、前記第2の半透膜の透水率及び/または多孔性とは異なる、請求項6に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項8】
前記三次の小室は、第2の細胞集団を収容するように構成されている、請求項6または7のいずれか1項に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項9】
前記一次の小室内に配置された前記第1の細胞集団と、前記三次の小室内に配置された前記第2の細胞集団と、をさらに含み、前記第1及び第2の細胞集団は、異なるタイプの細胞を含む、請求項8に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項10】
前記第1の半透膜の透水率及び/または多孔性は、前記第1及び/または第2の外膜の透水率及び/または多孔性とは異なる、請求項1~9のいずれか1項に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項11】
前記一次の小室と流体連絡する一次のポートと、前記二次の小室と流体連絡する二次のポートと、をさらに含む請求項1~10のいずれか1項に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項12】
前記一次のポート及び前記二次のポートは、シール可能または再シール可能である、請求項11に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項13】
マクロカプセル化装置であって、
第1の細胞集団を収容するように構成された一次の小室と、
二次の小室であって、前記一次の小室と前記二次の小室とは、前記一次の小室と前記二次の小室との間に配置された第1の半透膜を通して流体連絡している、前記二次の小室と、を含む前記マクロカプセル化装置。
【請求項14】
前記第1の半透膜は、前記一次及び二次の小室間の前記第1の細胞集団の移動を遮って、前記一次の小室と前記二次の小室との間のろ液及び/または補助剤の流れを可能にするように構成されている、請求項13に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項15】
前記一次の小室内に配置された前記第1の細胞集団をさらに含む、請求項13または14のいずれか1項に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項16】
三次の小室をさらに含み、前記二次の小室は、前記一次の小室と前記三次の小室との間に配置され、前記三次の小室と前記二次の小室とは、前記二次の小室と前記三次の小室との間に配置された第2の半透膜を通して流体連絡している、請求項13~15のいずれか1項に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項17】
前記第1の半透膜の透水率及び/または多孔性は、前記第2の半透膜の透水率及び/または多孔性とは異なる、請求項16に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項18】
前記三次の小室は、第2の細胞集団を収容するように構成されている、請求項16または17のいずれか1項に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項19】
前記一次の小室内に配置された前記第1の細胞集団と、前記三次の小室内に配置された前記第2の細胞集団と、をさらに含み、前記第1及び第2の細胞集団は、異なるタイプの細胞を含む、請求項18に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項20】
前記一次の小室と流体連絡した一次のポートと、前記二次の小室と流体連絡した二次のポートと、をさらに含む、請求項13~19のいずれか1項に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項21】
前記一次のポート及び前記二次のポートは、シール可能または再シール可能である、請求項20に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項22】
マクロカプセル化装置を用いる方法であって、
マクロカプセル化装置の一次の小室内に第1の細胞集団を充填することと、
前記マクロカプセル化装置の前記一次の小室と二次の小室との間に圧力差を印加して、ろ液を前記一次の小室から前記二次の小室へ第1の半透膜を通して流すことと、を含む、前記方法。
【請求項23】
補助剤を前記二次の小室から前記一次の小室内に前記第1の半透膜を通して流すことをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記補助剤には、薬剤、酸素生成物質、抗凝固剤、栄養素、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の細胞集団を充填する前に、前記マクロカプセル化装置に血管新生を起こすことをさらに含む、請求項22~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
血管新生の前に、前記一次及び/または二次の小室を膨張させることをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記二次の小室から前記ろ液を取り除くことをさらに含む、請求項22~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
三次の小室内に第2の細胞集団を充填することと、前記三次の小室と前記二次の小室との間に前記圧力差を印加して、ろ液を前記三次の小室から前記二次の小室へ第2の半透膜を通して流すことと、をさらに含む、請求項22~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記二次の小室内に補助剤を投与することと、前記補助剤を前記二次の小室から前記一次の小室内に前記第1の半透膜を通して流すことと、をさらに含む、請求項22~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
マクロカプセル化装置を用いる方法であって、
マクロカプセル化装置の一次の小室内に第1の細胞集団を充填することと、
補助剤を前記マクロカプセル化装置の二次の小室から前記一次の小室内に第1の半透膜を通して流すことと、を含む、前記方法。
【請求項31】
前記補助剤には、薬剤、酸素生成物質、抗凝固剤、栄養素、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の細胞集団を充填する前に、前記マクロカプセル化装置に血管新生を起こすことをさらに含む、請求項30または31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
血管新生の前に、前記一次及び/または二次の小室を膨張させることをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記一次の小室と前記二次の小室との間に圧力差を印加して、ろ液を前記一次の小室から前記二次の小室へ前記第1の半透膜を通して流すことをさらに含む、請求項30~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記二次の小室から前記ろ液を取り除くことをさらに含む、請求項30~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
三次の小室内に第2の細胞集団を充填することと、前記補助剤を前記二次の小室から前記三次の小室内に第2の半透膜を通して流すことと、をさらに含む、請求項30~35のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮出願第62/828,915号(2019年4月3日に出願)の米国特許法第119条(e)下での利益を主張する。なおこの文献の開示内容は、その全体において参照により本明細書に組み込まれている。
開示する実施形態は多室マクロカプセル化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病などの代謝異常を治療するために、生物学的製剤を送達する治療装置を用いることができる。治療装置は、インスリンなどの生物学的製剤を長期間にわたって与えるように埋め込み可能であり得る。これらの装置の中には、所望の生物学的製剤を産生するための細胞、細胞を含むマトリックス、または他の所望の治療剤を内部に収容するために用いられるマクロカプセル化装置を含んでいるものがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一実施形態では、マクロカプセル化装置が、第1の外膜、第2の外膜、及び第1の外膜と第2の外膜との間に配置された第1の半透膜を含んでいる。一次の小室が第1の半透膜と第1の外膜とによって形成され、一次の小室は第1の細胞集団を収容するように構成されている。二次の小室が第1の半透膜と第2の外膜とによって形成されている。一次の小室と二次の小室とは第1の半透膜を通して流体連絡している。
【0004】
別の実施形態では、マクロカプセル化装置は、第1の細胞集団を収容するように構成された一次の小室と、二次の小室とを含んでいる。一次の小室と二次の小室とは、一次の小室と二次の小室との間に配置された第1の半透膜を通して流体連絡している。
【0005】
さらに他の実施形態では、マクロカプセル化装置を用いる方法が、マクロカプセル化装置の一次の小室内に第1の細胞集団を充填することと、マクロカプセル化装置の一次の小室と二次の小室との間に圧力差を印加して、ろ液を一次の小室から二次の小室へ第1の半透膜を通して流すことと、を含んでいる。
【0006】
さらなる他の実施形態では、マクロカプセル化装置を用いる方法が、マクロカプセル化装置の一次の小室内に第1の細胞集団を充填することと、補助剤をマクロカプセル化装置の二次の小室から一次の小室内に第1の半透膜を通して流すことと、を含んでいる。
【0007】
本明細書で提供する別の態様は、埋め込み可能なマクロカプセル化装置である。装置は、第1の外膜と、第2の外膜と、第1の外膜と第2の外膜との間に取り付けられた第1の半透膜とを含んでいる。第1の半透膜及び第1の外膜は接続されて、細胞集団を収容するための一次の小室を与えるように構成された一次の小室を形成する。第1の半透膜及び第2の外膜は接続されて二次の小室を形成する。細胞集団には、膵臓前駆細胞、内分泌細胞、またはベータ細胞、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。装置は、第1の外膜、第2の外膜、及び第1の半透膜を通る複数のスルーホールを含んでいる。いくつかの実施形態では、第1の外膜、第2の外膜、及び第1の半透膜は、装置から外への前記細胞集団の移動を遮るように構成されている。
【0008】
いくつかの実施形態では、装置はさらに、第1の半透膜と第2の外膜との間に取り付けられた第2の半透膜を含み、一次の小室と二次の小室との間に三次の小室を形成している。いくつかの実施形態では、第1の半透膜の透水率は第1の外膜の透水率、第2の外膜の透水率、または両方よりも大きい。いくつかの実施形態では、第1の半透膜の透水率は、第1の外膜の透水率、第2の外膜の透水率、または両方よりも少なくとも約25%大きい。いくつかの実施形態では、第1の半透膜の透水率は第2の半透膜の透水率よりも大きい。いくつかの実施形態では、第1の半透膜の透水率は第2の半透膜の透水率よりも小さい。いくつかの実施形態では、第1の半透膜の多孔性は、第1の外膜の多孔性、第2の外膜の多孔性、または両方よりも大きい。いくつかの実施形態では、第1の半透膜の多孔性は、第1の外膜の多孔性、第2の外膜の多孔性、または両方よりも少なくとも約25%大きい。いくつかの実施形態では、第1の半透膜の多孔性は第2の半透膜の多孔性よりも大きい。いくつかの実施形態では、第1の半透膜の多孔性は第2の半透膜の多孔性よりも小さい。いくつかの実施形態では、所与の材料及び付勢(たとえば、濃度勾配及び/または圧力差)に対する第1の半透膜の流束は、同じ材料及び付勢に対する第1の外膜の流束、第2の外膜の流束、または両方よりも大きい。いくつかの実施形態では、所与の材料及び付勢(たとえば、濃度勾配及び/または圧力差)に対する第1の半透膜の流束は、同じ材料及び付勢に対する第1の外膜の流束、第2の外膜の流束、または両方よりも少なくとも約25%大きい。いくつかの実施形態では、所与の材料及び付勢(たとえば、濃度勾配及び/または圧力差)に対する第1の半透膜の流束は、同じ材料及び付勢に対する第2の半透膜の流束よりも大きい。いくつかの実施形態では、所与の材料及び付勢(たとえば、濃度勾配及び/または圧力差)に対する第1の半透膜の流束は、同じ材料及び付勢に対する第2の半透膜の流束よりも小さい。いくつかの実施形態では、装置はさらに、一次の小室と流体連絡した一次のポート、二次の小室と流体連絡した二次のポート、またはそれらの任意の組み合わせを含んでいる。いくつかの実施形態では、装置はさらに、一次の小室と流体連絡した一次のポート、二次の小室と流体連絡した二次のポート、三次の小室と流体連絡した三次のポート、またはそれらの任意の組み合わせを含んでいる。いくつかの実施形態では一次のポート、二次のポート、または三次のポートのうちの少なくとも1つはシール可能または再シール可能である。
【0009】
本明細書で提供する別の態様は、埋め込み可能なマクロカプセル化装置である。装置は、1つ以上の細胞を収容するように構成された一次の小室と、二次の小室とを含んでいる。一次の小室と二次の小室とは第1の半透膜によって分離されている。二次の小室と第1の半透膜とは、i)一次の小室からのろ液をろ過すること、またはii)一次の小室内の1つ以上の細胞に補助剤を与えること、またはi)及びii)の両方を行うように構成されている。前記1つ以上の細胞は、前記装置内に1μLの体積あたり約103~約106細胞の範囲で封入されている。
【0010】
いくつかの実施形態では、装置はさらに、三次の小室を含んでいる。三次の小室と二次の小室とは第2の半透膜によって分離されている。第2の半透膜は、i)三次の小室からのろ液をろ過すること、またはii)三次の小室内の1つ以上の細胞に補助剤を与えること、またはi)及びii)の両方を行うように構成されている。いくつかの実施形態では、装置はさらに、一次の小室と流体連絡した一次のポート、または二次の小室と流体連絡した二次のポートのうちの少なくとも1つを含んでいる。いくつかの実施形態では、装置はさらに、一次の小室と流体連絡した一次のポート、二次の小室と流体連絡した二次のポート、または三次の小室と流体連絡した三次のポートのうちの少なくとも1つを含んでいる。いくつかの実施形態では、一次のポート、二次のポート、または三次のポートのうちの少なくとも1つはシール可能または再シール可能である。いくつかの実施形態では、装置は、装置の一方の側から装置の反対側に層状の膜を通して延びる複数のスルーホールを含んでいる。
【0011】
いくつかの実施形態では、スルーホールのうちの1つ以上は、シールを形成する膜の結合部分に囲まれている。いくつかの実施形態では、装置は3つ以上のシールを含んでいる。いくつかの実施形態では、装置は、2つ以上の自己交差するシールを含んでいる。いくつかの実施形態では、装置は2つ以上の楕円形シールを含んでいる。いくつかの実施形態ではシールは、接着剤、エポキシ、溶接、それらの任意の組み合わせ、及び/または任意の他の適切な結合方法によって形成されている。いくつかの実施形態では、第1の半透膜は前記1つ以上の細胞の移動を遮るように構成されている。いくつかの実施形態では、一次の小室と二次の小室とは、前記1つ以上の細胞の移動を遮るように構成されている。いくつかの実施形態では、一次の小室、二次の小室、及び三次の小室は、前記1つ以上の細胞の移動を遮るように構成されている。
【0012】
本明細書で提供する別の態様は方法である。方法は、1つ以上の細胞を収容するように構成された一次の小室と二次の小室とを含むマクロカプセル化装置を用意することであって、一次の小室と二次の小室とは、第1の半透膜によって分離され、二次の小室と半透膜とは、i)一次の小室からのろ液をろ過すること、またはii)一次の小室内の1つ以上の細胞に補助剤を与えること、またはi)及びii)の両方を行うように構成されている、用意することと、マクロカプセル化装置に事前血管新生を起こすことと、一次の小室内に1つ以上の細胞を充填することと、二次の小室に圧力を印加して一次の小室からろ液を取り除くことと、を含んでいる。
【0013】
いくつかの実施形態では、ろ液を一次の小室から取り除く。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、一次の小室、二次の小室、または両方の中に補助剤を投与することを含んでいる。いくつかの実施形態では、補助剤には、薬剤、酸素生成物質、抗凝固剤、栄養素、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態では、補助剤を投与することは、二次の小室に負圧を印加した後に行われるが、二次の小室にマクロカプセル化装置の別の小室に対する所望の圧力差を与える任意の方法も使用し得る。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、一次の小室、二次の小室、または両方を膨張させることを含んでいる。いくつかの実施形態では、一次の小室、二次の小室、または両方を膨張させることは、マクロカプセル化装置に事前血管新生を起こす前に行われる。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、一次の小室、二次の小室、または両方をシールすることを含んでいる。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、一次のポート、二次のポート、または両方を再シールすることを含んでいる。いくつかの実施形態では、ハウジングはさらに、第2の半透膜によって二次の小室から分離された三次の小室を含んでいる。本方法はさらに、三次の小室内に1つ以上の細胞を充填することを含んでいる。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、一次の小室、二次の小室、または三次の小室、またはそれらの任意の組み合わせの中に補助剤を投与することを含んでいる。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、一次の小室、二次の小室、または三次の小室、またはそれらの任意の組み合わせを膨張させることを含んでいる。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、一次の小室、二次の小室、または三次の小室、またはそれらの任意の組み合わせをシールすることを含んでいる。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、一次のポート、二次のポート、三次の小室、またはそれらの任意の組み合わせを再シールすることを含んでいる。
【0014】
本明細書で提供する別の態様は方法である。方法は、第1の外膜と、第2の外膜と、第1の外膜と第2の外膜との間に取り付けられた第1の半透膜と、を含むマクロカプセル化装置を用意することであって、第1の半透膜及び第1の外膜は接続されて、細胞集団を収容するように構成された一次の小室を形成し、第1の半透膜及び第2の外膜は接続されて、二次の小室を形成する、用意することと、マクロカプセル化装置に事前血管新生を起こすことと、一次の小室内に1つ以上の細胞を充填することと、二次の小室に圧力差を印加して、一次の小室からろ液を取り除くことと、を含んでいる。
【0015】
いくつかの実施形態では、ろ液を一次の小室から取り除く。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、一次の小室、または二次の小室、または両方の中に補助剤を投与することを含んでいる。いくつかの実施形態では、補助剤には、薬剤、酸素生成物質、抗凝固剤、栄養素、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態では、補助剤を投与することは、二次の小室に負圧または他の圧力差を印加した後に行われる。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、一次の小室、または二次の小室、または両方を膨張させることを含んでいる。いくつかの実施形態では、一次の小室、または二次の小室、または両方を膨張させることは、マクロカプセル化装置に事前血管新生を起こす前に行われる。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、一次の小室、または二次の小室、または両方をシールすることを含んでいる。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、一次のポート、二次のポート、または両方を再シールすることを含んでいる。いくつかの実施形態では、マクロカプセル化装置はさらに、第2の半透膜によって二次の小室から分離された三次の小室を含み、本方法はさらに、三次の小室内に1つ以上の細胞を充填することを含んでいる。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、一次の小室、二次の小室、または三次の小室、またはそれらの任意の組み合わせの中に補助剤を投与することを含んでいる。いくつかの実施形態では、ろ液を一次の小室、三次の小室、または両方から取り除く。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、一次の小室、二次の小室、三次の小室、またはそれらの任意の組み合わせを膨張させることを含んでいる。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、一次の小室、二次の小室、または三次の小室、またはそれらの任意の組み合わせをシールすることを含んでいる。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、一次のポート、二次のポート、三次の小室、またはそれらの任意の組み合わせを再シールすることを含んでいる。
【0016】
本開示はこの点に関して限定されないため、前述の考え方、及び後述するさらなる考え方は、任意の好適な組み合わせで配置し得ることに注意されたい。さらに、本開示の他の利点及び新規特徴が、添付の図とともに考慮したときに種々の非限定的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになる。
【0017】
本明細書及び参照により組み込まれている文献に、矛盾し及び/または一貫性がない開示が含まれている場合には、本明細書が優先するものとする。参照により組み込まれている2つ以上の文献に、互いに矛盾し及び/または一貫性がない開示が含まれている場合、後の有効日の文献が優先するものとする。
【0018】
添付図面は一定の比率で描かれていることは意図されていない。図面では、種々の図に例示した各同一またはほぼ同一のコンポーネントは、同様の数字で表している場合がある。明瞭にするために、すべての図面においてすべてのコンポーネントにラベル付けしてはいない場合がある。図面において。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】いくつかの実施形態によるマクロカプセル化装置の平面図である。
【
図1C】
図1Aのマクロカプセル化装置のポートの斜視断面図である。
【
図1D】
図1Aのマクロカプセル化装置の膜層の斜視断面図である。
【
図2A】いくつかの実施形態による3つの内部小室を含むマクロカプセル化装置の断面図である。
【
図2B】
図2Aのマクロカプセル化装置の切り離した断面図である。
【
図3】いくつかの実施形態による3つの内部小室を含むマクロカプセル化装置の切り離した断面図である。
【
図4A】いくつかの実施形態による2つの内部小室を含むマクロカプセル化装置の断面図である。
【
図4B】
図3Aのマクロカプセル化装置の切り離した断面概略図である。
【
図5】
図5A~5Cは、いくつかの実施形態による3つの小室を含むマクロカプセル化装置を用いた血管新生、細胞充填、濾過、及び補助剤の付与の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
いくつかのマクロカプセル化装置は、周辺組織からの事前血管新生サポートを伴うことなく宿主内に細胞を埋め込みように構成されている。しかし、このような装置を通して埋め込まれた細胞は、埋め込みと血管新生との間の期間の間に低酸素または栄養不足を被ることが多い。血管新生は1週間以上に及ぶことが多いため、このような有害な細胞状態によって、細胞壊死及びその後の免疫原性細胞破片の流出が生じることが多い。その結果、異物反応が引き起こされ、最終的に装置故障につながる。これに対し、事前血管新生がなされた装置を空の状態で身体内に埋め込んで、任意の細胞物質を導入する前に宿主と一体化させる。このような装置によって細胞生存を高められることが示されている。
【0021】
好都合である一方で、発明者らは、宿主組織に囲まれてそれと一体化されたマクロカプセル化装置内に細胞を充填することは、これまでのところ難しいことが証明されていることを理解している。最初に、事前血管新生がなされたマクロカプセル化装置内に細胞を導入することは典型的に、限外濾過及び加圧及び/または装置内の非常に高濃度の細胞を用いて、所望の量の細胞を装置内に与える。限外濾過及び加圧によって装置内に有効な細胞密度を導入することが可能になり得るが、限外濾過の間に膜を通して及ぼされる力によって、新たに形成された微小血管系からの装置の解離、及び/または組織の外傷に起因する異物反応の悪化につながる可能性がある。さらに、マクロカプセル化装置内に高濃度の細胞を充填すると、充填中に細胞の表面に剪断力をもたらし得る。この結果、装置の内部に閉塞を形成し得る細胞凝集が起こる場合があり、その結果、細胞に損傷を与え、及び/または装置に所望の有効な細胞密度まで充填することを妨げる場合がある。
【0022】
以上のことを考慮して、発明者らは、少なくとも部分的に同一の広がりを持つ複数の内部小室であって、これらの小室間に配置された1つ以上の半透性内膜を通して互いに流体連絡している小室を含むマクロカプセル化装置に付随する利益を理解している。このような構成によって、小室のうちの少なくとも1つを、所望の1つ以上の細胞集団を受け入れるように構成することができ得る一方で、他の小室のうちの少なくとも1つ(たとえば、二次の小室)が、細胞を含む1つ以上の小室と流体連絡し得る。この結果、細胞を含む1つ以上の小室からのろ液が、半透膜を通って1つ以上の他の小室(たとえば、二次の小室)内に流れることができ得る。場合によっては、このろ液をこの二次の小室から取り除き得る。またこの二次の小室を用いて装置内に所望の補助剤を導入し得る。補助剤は次に、小室間に置かれた半透膜を通って、細胞を含む1つ以上の小室内に流れ得る。このような装置によって、充填プロセスの間に装置の周りの一体化された組織及び装置内部に含まれる細胞に対する外傷を実質的に防ぎ及び/または少なくとも減らし得る。
【0023】
一実施形態では、マクロカプセル化装置を第1の外膜及び第2の外膜によって形成し得る。第1及び第2の外膜を何らかの適切な方法で互いに結合して、第1及び第2の外膜間に内部体積を形成し得る。たとえば、膜の周囲に沿って少なくとも部分的に延びている第1及び第2の外膜の一部は、直接または間接的に互いに結合し得る。たとえば、膜を折り返してその自由縁に沿って結合して、単一の膜が第1及び第2の外膜の両方として機能するようにし得る。代替的に、2つの別個の外膜を、それらの全周囲に沿って延びる部分において結合し得るが、膜材料を用いて内部体積を形成する何らかの適切な方法を用い得る。いずれの場合でも、マクロカプセル化装置はまた、少なくとも、第1及び第2の外膜間に配置された第1の半透膜を含み得る。第1の半透膜は、内部体積を、第1の半透膜を通して互いに流体連絡する一次の小室及び二次の小室に分割する。第1の小室を、一次の小室内に充填され得る第1の細胞集団を収容するように構成し得る。したがって、マクロカプセル化装置を、一次の小室からのろ液が二次の小室内に流れ得るように、及び/または補助剤が二次の小室内に導入されて、次に、以下で詳しく述べるように細胞が置かれる一次の小室内に流れ得るように構成し得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、マクロカプセル化装置はまた、少なくとも、第1の半透膜と第2の外膜との間に配置された第2の半透膜を含み得る。二次の小室を第1及び第2の半透膜間に形成し得て、三次の小室を第2の半透膜と第2の外膜との間に形成し得る。したがって、三次の小室は第2の半透膜を通して二次の小室と流体連絡し得る。さらに、いくつかの実施形態では、二次の小室を一次及び三次の小室間に配置し得る。いくつかの実施形態では、三次の小室はまた、第2の細胞集団を収容するように構成し得る。したがって、ろ液はまた、三次の小室から二次の小室内に流れ得て、及び/または補助剤が二次の小室から三次の小室内に流れ得るのは、前述と同様である。特定の実施形態に応じて、第2の細胞集団は、マクロカプセル化装置の一次の小室内に保持される細胞集団と同じであり及び/または異なり得る。
【0025】
マクロカプセル化装置の種々の小室間を流れるろ液及び/または補助剤に、何らかの適切な方法で小室間を流れるように付勢し得ることを理解されたい。たとえば、いくつかの実施形態では、隣接する小室間に圧力差を印加して、ろ液及び/または補助剤がある小室から別の小室へ流れることが誘起され得る。たとえば、ある小室内の圧力を、小室内への材料の流れによって上げ得て、及び/または隣接する小室内の圧力を、その小室に付与される真空を用いて下げ得る。いずれの場合でも、細胞に印加される静圧、圧力差、流量、せん断応力、及び/または他の適切な動作パラメータを制御して、細胞凝集及び/または死を回避し得る。たとえば、いくつかの実施形態では、2つの隣接する小室間の圧力差を閾値圧力未満に保持して、細胞生存性を維持することを助け得る。さらに、補助剤を付与するいくつかの実施形態では、補助剤を二次の小室内に導入し得るが、二次の小室と細胞集団を含む隣接する小室との間には圧力差はほとんどない場合がある。このような実施形態では、二次の小室内の補助剤の濃度が、細胞集団を含む隣接する小室内の補助剤の濃度よりも大きい場合に、補助剤の濃度勾配誘起拡散に起因する補助剤の拡散によって、補助剤はこれらの他の小室内に流れ得る。
【0026】
マクロカプセル化装置の小室内に細胞集団を充填するときに用い得る適切なタイプのろ液には、以下が含まれ得る(しかし、これらに限定されない)。細胞培養培地、アルギネート、細胞外マトリックスタンパク質、多血小板血漿、トロンビン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレングリコール)、プロピレングリコール、低温保存解決法、及びペクチン。当然のことながら、宿主及び細胞集団と生物学的に適合する任意の適切なタイプのろ液を用い得ることを理解されたい。なぜならば、本開示は何らかの特定のタイプのろ液に限定されないからである。
【0027】
補助剤をマクロカプセル化装置の二次の小室に与えた実施形態では、補助剤は任意の適切な薬剤に対応し得る。なぜならば、本開示は何らかの特定の薬剤に限定されないからである。たとえば、いくつかの実施形態では、マクロカプセル化装置に対する所望の機能を提供するために、細胞の酸素付加を促進する薬剤、宿主に対する二次の治療剤、及び/または任意の他の適切な薬剤を与えることが望ましい場合がある。したがって、本開示はこのようには限定されずに、補助剤には、治療剤、たとえば薬剤、酸素生成物質、抗凝固剤、栄養素、抗炎症薬、ステロイド類、成長因子、プロドラッグ、免疫調節分子、分化因子、それらの任意の組み合わせ、及び/または任意の他の適切な薬剤が含まれていてもよい。
【0028】
前述したように、場合によっては、細胞集団を導入する前にマクロカプセル化装置に事前血管新生を起こすことが有用であり得る。この場合もやはり、これによって、装置の内部に置かれた細胞への栄養素の流れが向上し、装置から宿主への老廃物及び/または治療剤の流れが増加し得て、及び/または装置の埋め込みに対する線維化の発生も減り得る。したがって、いくつかの実施形態では、マクロカプセル化装置を埋め込んで第1の期間の間に事前血管新生を起こし得る。このような実施形態では、第1の膜及び第2の膜の少なくとも一方は、装置内の細胞の血管新生を可能にするように構成されている。いくつかの実施形態では、第1の膜及び第2の膜の少なくとも一方は、装置の内部及び周囲での細胞の血管新生を有効にし、サポートし、または可能にすることを、免疫抑制治療剤がない状態で、またはこのような血管新生をサポートしていない同等の装置と比べて免疫抑制治療剤が少ない状態で、行うように構成されている。場合によっては、これには、マクロカプセル化装置の第1の表面から介在膜を通してマクロカプセル化装置の第2の対向する表面まで延びる複数のスルーホールを用いることが含まれ得る。このような実施形態では、脈管構造はこれらのスルーホール内にこれらを通って成長し得る。
【0029】
この事前血管新生期間の間、装置を膨張させて、マクロカプセル化装置の膜及び対応する小室を、細胞集団を装置内に以後充填するための適切な構成に維持することを助けることは、有用であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、装置を埋め込む前、埋め込む間、及び/または埋め込んだ後のいずれかにおいて、流体をマクロカプセル化装置の1つ以上の小室内に導入して、1つ以上の小室を膨張させ得る。これには、マクロカプセル化装置の一次、二次、及び/または三次の小室を膨張させることが含まれ得る。マクロカプセル化装置の種々の小室を膨張させるために用い得る適切なタイプの流体には、以下が含まれ得る(しかし、これらに限定されない)。酸素、生理食塩水、細胞培養培地、アルギネート、キトサン、ブドウ糖、ペルフルオロカーボン、それらの組み合わせ、及び/または装置を膨張させることができる任意の他の適切な流体。場合によっては、マクロカプセル化装置の外膜を、事前血管新生期間の間の膜構造の崩壊を防ぐために、埋め込みの間装置の内部に膨張流体を保持するように構成し得る。そしてマクロカプセル化装置を、適切な期間、埋め込まれた状態にして、マクロカプセル化装置が周辺組織と一体化できるようにし、脈管構造がマクロカプセル化装置への栄養素の所望の流れを確立できるようにし得る。そしてマクロカプセル化装置の1つ以上の小室に、以下でさらに説明するように、1つ以上の所望の細胞集団を充填し得る。
【0030】
本明細書で開示した種々のマクロカプセル化装置のいくつかの実施形態では、第1の外膜及び第2の外膜の少なくとも一方は半透性である。たとえば、外膜のいずれか一方が半透性で他方が実質的に不透過性であり得るし、または両方とも半透性であり得る。いくつかの実施形態では、第1の膜、第2の膜、または両方の半透性は、免疫攻撃から細胞を保護し及び/または装置から外への細胞集団の移動を遮る一方で、細胞が生成した所望の生物学的製剤ならびに細胞が使用及び生成した老廃物及び栄養素の移動を可能にするように構成されている。いくつかの実施形態では、第1の膜、第2の膜、または両方の半透性は、免疫抑制治療がない場合に免疫攻撃から細胞を保護するように構成されている。したがって、第1の外膜、第2の外膜、または両方を、装置内の1つ以上の細胞集団、装置内に含まれるろ液、補助剤、またはそれらの任意の組み合わせに対して実質的に不透過性であるように構成し得る。
【0031】
外膜の相対的耐久性に加えて、マクロカプセル化装置の内部容積内に置かれた1つ以上の半透膜も、マクロカプセル化装置の種々の小室間の1つ以上の材料の流れを制御するように適切に構成し得る。たとえば、本明細書で説明する種々の実施形態では、装置の内部容積内に配置される第1の半透膜、第2の半透膜、及び/または任意の適切な数の半透膜は、ある小室から別の小室小室へ流れるろ液、装置の内部に与えるべき補助剤、または両方に対して実質的に透過性であり得る。さらに、内部半透膜はまた、マクロカプセル化装置内に配置された1つ以上の細胞集団に対して実質的に不透過性であり得る。したがって、内部半透膜を、隣接する小室間で細胞が流れることを防ぐ一方で、それらの間でろ液及び/または補助剤が流れることを可能にするように構成し得る。
【0032】
以上のことを考慮して、内部半透膜(たとえば、第1及び/または第2の半透膜)の透水率、孔径、及び/または多孔性は、マクロカプセル化装置の第1及び/または第2の外膜の透水率、孔径、及び/または多孔性とは異なり得る。たとえば、第1及び/または第2の半透膜の透水率は、第1及び第2の外膜の一方または両方の透水率よりも大きくてもよい。これは、外膜に対する内部半透膜の多孔性、孔径の増加、または材料パラメータの他の適切な違いに対応し得る。同様に、特定の実施形態に応じて、第1の外膜と第2の外膜は、透水率、孔径、及び/または多孔性が互いと等しいかまたは異なり得る。たとえば、第1及び第2の外膜によって形成された別個の小室内に異なる材料が収容されている(たとえば、異なる細胞集団が収容されている)場合、各細胞集団に別個に適応された膜特性の所望の組み合わせが得られるように、第1の外膜が示す透水率は第2の外膜のそれよりも小さいかまたは大きくてもよい。同様に、複数の内部半透膜(たとえば、2つの外膜の間に配置された第1及び第2の半透膜)を用いる状況では、内部半透膜が示す透水率、孔径、及び/または多孔性は同じであり及び/または異なり得る。たとえば、第1の半透膜の透水率は第2の半透膜のそれよりも大きいかまたは小さくてもよい。
【0033】
以上のことを考慮して、いくつかの実施形態では、2つの外膜の間に配置された内部半透膜(たとえば、第1及び/または第2の半透膜)が示す透水率は、いずれか一方または両方の外膜の透水率よりも、少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%だけ大きくてもよい。前述の割合のいずれかの間にわたる範囲も考えられる。たとえば、内部半透膜の透水率は、いずれか一方または両方の外膜の透水率よりも約25%~100%だけ大きくてもよい。いくつかの実施形態では、この透水率の差は、対応する小室を形成するために内部半透膜が配置される外膜に対するものであり得る。当然のことながら、本開示はこのようには限定されずに、前述したものより大きい透水率及び小さい透水率も考えられる。
【0034】
種々の膜の前述した相対透水率は任意の適切な方法で測定され得る。たとえば、異なる膜材料の相対透水率を、当該技術分野で知られるように、所与のサンプル形態に対して適切な流体(たとえば、水)を用いた定水位または定圧の測定を用いて測定し得る。当然のことながら、本開示は、これらの相対的なパラメータを測定する特定の方法に限定されないため、任意の適切な流れ試験法、計算、またはモデリング法を用いて膜の相対透水率を決定し得る。
【0035】
前述と同様に、マクロカプセル化装置の種々の膜の相対透水率の所望の差を与えるために、いくつかの実施形態では、マクロカプセル化装置の内部半透膜のうちの1つ以上の多孔性及び/または孔径が、第1及び第2の外膜の一方または両方の多孔性及び/または孔径よりも大きくてもよい。やはり、いくつかの実施形態では、この差は、隣接する外膜に対するものであり得る。いずれの場合でも、内部半透膜の多孔性及び/または孔径は、外膜の一方または両方の多孔性及び/または孔径よりも、少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%だけ大きくてもよい。前述の割合のいずれかの間にわたる範囲も考えられる。たとえば、内部半透膜の多孔性及び/または孔径は、いずれか一方または両方の外膜の孔径及び/または多孔性よりも約25%~100%だけ大きくてもよい。前述したことに加えて、いくつかの実施形態では、第1の半透膜の多孔性及び/または孔径は、外膜間に配置された第2の半透膜の多孔性及び/または孔径とは異なり得る。
【0036】
以上の材料パラメータの違いを考慮すると、所定の圧力差及び/または濃度勾配下での内部半透膜を横切る所定の材料の流束は、同じ圧力差及び/または濃度勾配下でのいずれか一方または両方の外膜を横切る同じ材料の流束よりも大きくてもよい。同様に、所望の用途に応じて、第1及び第2の外膜が示す水理特性は同じかまたは異なり得る。したがって、特定の圧力差及び/または濃度勾配下でのマクロカプセル化装置の第1及び第2の外膜を横切る材料の流束は、互いに実質的に同じかまたは異なり得る。たとえば、第1の外膜を横切る流束は、同じ付勢下で第2の外膜を横切る流束よりも小さいかまたは大きくてもよい。同様に、装置の外膜間に配置された第1の半透膜を横切る材料の流束は、第2の半透膜を横切る材料の流束とは異なり得る(すなわち、より小さいかまたは大きくてもよい)。異なる膜を横切る材料の流束の差は、相対流束において約5%差よりも大きくてもよい。この流束の違いを受け得る適切な材料には、以下が含まれ得る(しかし、これらに限定されない)。インスリン、小分子治療剤、成長因子、抗体、抗体断片、免疫調節因子、補体複合体、細胞片、酵素、アルギネート、生理食塩水、及び細胞培養培地。この場合もやはり、本開示は相対流束をどのように測定するかに限定されずに、種々の膜を横切る所定の材料の相対流束を、以下を含む任意の適切な流れ試験方法、計算、またはモデリング方法を用いて測定し得る。たとえば、定水位または圧力差測定、膜を横切る濃度勾配測定、及び/または任意の他の適切な方法。
【0037】
本明細書で説明する透過性、孔径、多孔性、相対流束、及び他の材料パラメータの種々の関係は、マクロカプセル化装置の説明した実施形態のいずれにも適用し得ることに注意されたい。しかし、本開示は、材料特性及び相対性能パラメータのこのような特定の範囲のみには限定されないことにも注意されたい。たとえば、内部半透膜及び外膜の両方が示す透過性、孔径、多孔性、相対流束、及び他の材料パラメータの範囲は、本開示はこのようには限定されずに、本明細書で説明する特定の範囲及び関係より大きいかまたは小さくてもよい。
【0038】
マクロカプセル化装置の種々の膜(外膜及び/または内部半透膜を含む)は、任意の適切な生体適合性材料から形成され得る。生体適合性材料は、マクロカプセル化装置内に収容される細胞、ろ液、補助剤、またはそれらの任意の組み合わせに対して、実質的に不活性であり得る。生体適合性材料には合成ポリマーまたは自然発生ポリマーが含まれ得る。いくつかの実施形態では、本開示はこのようには限定されずに、ポリマーはまた、線状ポリマー、架橋ポリマー、ネットワークポリマー、付加ポリマー、縮合ポリマー、エラストマー、繊維状ポリマー、熱可塑性ポリマー、非分解性ポリマー、これらの組み合わせ、及び/または任意の他の適切なタイプのポリマーであってもよい。適切なタイプのポリマーには以下が含まれ得る。ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、拡張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリウレタン(PU)、ポリアミド(ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(乳酸グリコール酸)(PLGA)、ポリ-L-ラクチド(PLLA)、これらの任意の組み合わせ、及び/または任意の他の適切なポリマー材料。前述のポリマー材料から多孔質膜のうちの1つ以上を形成するために用いる合成方法には、以下が含まれ得る(しかし、これらに限定されない)。膨張、溶液キャスティング法、浸漬析出及び相分離、電界紡糸、等網目状ネットワークが得られる方法、小柱状ネットワークが得られる方法、または多孔性ポリマー膜を形成する任意の他の適切な方法。いくつかの実施形態では、多孔性ポリマー膜の焼結を用いて膜の多孔性を変え得る。次にこれを用いて、マクロカプセル化装置の多孔性及び流束特性を調整することができる。したがって、いくつかの実施形態では、外部及び/または内部半透膜の任意の所望の組み合わせを、特定の膜材料に応じた任意の適切な焼結法を用いて焼結または非焼結し得る。
【0039】
ポリマー材料は前述のとおりであるが、膜が少なくとも部分的に非ポリマー材料から形成される実施形態が考えられる。本開示は膜が形成される任意の特定の材料に限定されずに、たとえば、適切な膜材料には、セラミック材料、ポリマーセラミック複合材料、及び/または埋め込まれたマクロカプセル化装置内の膜として機能することができる任意の他の適切な材料が含まれ得る。
【0040】
本明細書で説明したマクロカプセル化装置の内膜及び外膜は、以下のものを材料の膜を通して移送すること可能にするように構成された多孔質膜材料から形成され得る。たとえば、生物学的製剤であって、分子量が、約3000kDa未満、2000kDa未満、1000kDa未満、500kDa未満、400kDa未満、300kDa未満、200kDa未満、100kDa未満、50kDa未満、40kDa未満、30kDa未満、20kDa未満、10kDa未満、6kDa未満、5kDa未満、4kDa未満、3kDa未満、2kDa未満、1kDa未満のもの、及び/または所望の用途に応じた任意の他の適切な範囲の分子量のものである。たとえば、マクロカプセル化装置の1つ以上の膜を、分子量が約5.8kDaのインスリンが膜を通って流れることを可能にするように構成し得る。
【0041】
所望の選択性を与えるために、本明細書で開示したマクロカプセル化装置とともに用いる多孔質膜は、開放多孔質構造であり、平均孔径が約1nm以上、5nm以上、10nm以上、15nm以上、20nm以上、30nm以上、40nm以上、50nm以上、60nm以上、70nm以上、80nm以上、90nm以上、100nm以上、200nm以上、300nm以上、及び/または任意の他の適切なサイズ範囲のものであり得る。対応して、本明細書で説明する種々の膜の平均孔径は、平均孔径が2500nm以下、2000nm以下、1700nm以下、1500nm以下、1400nm以下、1300nm以下、1200nm以下、1100nm以下、1000nm以下、900nm以下、800nm以下、700nm以下、600nm以下、500nm以下、400nm以下、300nm以下、200nm以下、100nm以下、90nm以下、80nm以下、70nm以下、60nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下、及び/または任意の他の適切なサイズ範囲であり得る。前述の組み合わせが考えられ、たとえば、平均孔径が1nm~20nm(両端を含む)、1nm~2500nm(両端を含む)、及び/または任意の他の適切な組み合わせである。当然のことながら、特定の平均孔径について前述したが、本明細書で説明する種々の膜に対して任意の適切な平均孔径を用いてよく、たとえば、前述したものより大きい平均孔径及び小さい平均孔径の両方が含まれることに注意されたい。
【0042】
マクロカプセル化装置に対して十分な強度及び/または剛性を与えるために、種々の膜は十分に堅い材料から形成し得る。所望の剛性は、装置の所望の透過性とバランスし得る材料のヤング率、厚さ、及び全体構成の適切な組み合わせを介して与えられ得る。本明細書で説明する種々の膜に対する適切なヤング率は、少なくとも、105Pa、106Pa、107Pa、108Pa、109Pa、1010Pa、及び/またはこれらの範囲より大きいもの及び小さいものの両方である任意の他の適切な弾性率であり得る。当然のことながら、前述したヤング率の間の範囲が含まれると考えられる。たとえば、約106Pa~1010Pa(両端を含む)のヤング率である。
【0043】
いくつかの実施形態では、マクロカプセル化装置内へ細胞を充填すること、及び/または装置の異なる小室内へ、小室から、及び/または小室間へ1つ以上のろ液、生物化合物、治療剤、または他の材料が流れることを促進するために、マクロカプセル化装置内に含まれる膜のうちの1つ以上が親水性であることが望ましい場合がある。さらに、親水性の外膜であれば、装置が生体内に位置するときに線維症が生じることも減り得る。したがって、マクロカプセル化装置の内膜及び外膜を親水性材料から形成し得るし、及び/または親水コーティングによって処理し得る。親水コーティングを形成するための適切な材料には以下が含まれ得る(しかし、これらに限定されない)。適切な親水性ポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリドーパミン、それらの任意の組み合わせ、及び/または膜上にコーティングを形成することができる任意の他の適切な親水性材料。
【0044】
本開示はこのようには限定されずに、本明細書で説明したマクロカプセル化装置の種々の実施形態で説明した膜は、任意の適切な結合方法を用いて互いに結合してもよい。たとえば、隣接する膜は以下を用いて互いに結合し得る。接着剤、エポキシ、溶接または他の融合ベースの技術(たとえば超音波結合、レーザ結合、物理的結合、熱結合など)、フレームまたは取り付け具を用いた機械的クランピング、及び/または任意の他の適切な結合方法。1つの特定の実施形態では、隣接する膜の結合は、所定の圧力及び/または力によって設定融合時間の間、2つ以上の膜を互いに対して押圧するかまたは突き当てるために用いる加熱されたツールを用いて行い得る。以上のことを考慮して、本開示は、膜を互いに結合するための何らかの特定の方法を用いることに限定されないことに注意されたい。
【0045】
本明細書で説明するマクロカプセル化装置は、内部体積、外寸法、及び/または他の適切な物理的パラメータの任意の適切な組み合わせを有し得る。たとえば、マクロカプセル化装置の外膜によって包含される内部体積は40μL~250μL(両端を含む)であり得る。またマクロカプセル化装置の幅または最大横断寸法は約20mm~80mmであり得る。さらに、マクロカプセル化装置の内部へ所望の酸素拡散を行って、内部に含まれる細胞をサポートするためには、細胞集団を含む装置の外部から装置の内部への最大酸素拡散距離は、50μm未満、100μm未満、150μm未満、200μm未満、250μm未満、300μm未満、350μm未満、400μm未満、450μm未満、または500μm未満であり得る。対応して、装置全体及び/または装置内の小室の最大厚さまたは最大横断寸法に垂直な寸法は、50μm未満、100μm未満、150μm未満、200μm未満、250μm未満、300μm未満、350μm未満、400μm未満、450μm未満、または500μm未満であり得る。さらに、いくつかの実施形態では、装置の外表面積対体積比は、約20cm-1以上、40cm-1以上、60cm-1以上、80cm-1以上、100cm-1以上、120cm-1以上、または150cm-1以上であり得る。種々の寸法及びパラメータに対する前述の値のいずれかの間にわたる範囲も考えられる。さらに、マクロカプセル化装置全体に対するパラメータの特定の範囲を前述で示したが、本開示は何らかの特定のサイズまたは構成には限定されずに、前述のものより大きい及び小さい動作パラメータ及び寸法が考えられる。
【0046】
以下で詳しく述べるように、いくつかの実施形態では、マクロカプセル化装置内の小室の形成は、これらの小室の内部容積が複数の相互接続されたチャネルに再分割されるように行い得る。チャネルは、いくつかの実施形態では管腔のように成形し得るが、チャネルの任意の適切な形状または構成も用いられ得る。チャネルの内部の最大横断寸法(たとえば、内径)は、40μm以上、50μm以上、100μm以上、200μm以上、300μm以上、400μm以上、及び/または任意の他の適切な寸法であり得る。対応して、チャネルの内部の最大横断寸法は、800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、400m以下、及び/または任意の他の適切な寸法であり得る。前述の組み合わせが考えられ、たとえば、複数のチャネルの内部の最大横断寸法が40μm~800μm(両端を含む)である。さらに、装置の種々の小室を形成する相互接続されたチャネルの密度は、装置の横断面内の単位面積あたりの密度が、約10チャネル/cm2以上、15チャネル/cm2以上、20チャネル/cm2以上、25チャネル/cm2以上、30チャネル/cm2以上、35チャネル/cm2以上、40チャネル/cm2以上、45チャネル/cm2以上、50チャネル/cm2以上、60チャネル/cm2以上、70チャネル/cm2以上、80チャネル/cm2以上、90チャネル/cm2以上、100チャネル/cm2以上、110チャネル/cm2以上、120チャネル/cm2以上、130チャネル/cm2以上、140チャネル/cm2以上、150チャネル/cm2以上、175チャネル/cm2以上、または200チャネル/cm2以上である。チャネルの前述した密度のいずれかの間にわたる範囲も考えられる。たとえば、チャネルの密度が約10チャネル/cm2~200チャネル/cm2(両端を含む)である。しかし前述した範囲より大きい密度及び小さい密度の両方も考えられる。
【0047】
マクロカプセル化装置に関係する特定の寸法及び関係ならびにマクロカプセル化装置が形成される材料について前述したが、当然のことながら、本開示はこのようには限定されずに、前述したものより大きい及び小さい寸法及び関係が考えられる。したがって、所望の用途に応じて、任意の適切なサイズ、構成、及び/または相対性能パラメータを装置に対して用い得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、マクロカプセル化装置の小室内に含まれる細胞集団はインスリン分泌細胞集団であり得る。いくつかの実施形態では、細胞集団には、幹細胞由来細胞から得られた少なくとも1つの細胞が含まれる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの細胞は遺伝子組み換え細胞である。場合によっては、少なくとも1つの細胞は、遺伝子組み換えされていない同等の細胞と比べて、装置埋め込み時の被検体内での免疫応答を抑えるために遺伝子組み換えされる。いくつかの実施形態では、細胞集団は、グルコース促進インスリン分泌(GSIS)が可能な幹細胞由来細胞である。たとえば、適切な細胞集団には、膵臓前駆細胞、内分泌細胞、ベータ細胞、前述したものの1つ以上を含むマトリックス、またはそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。さらに、マトリックスには、単離島細胞、膵臓からの単離細胞、組織からの単離細胞、幹細胞、幹細胞由来細胞、人工多能性細胞、分化細胞、形質転換細胞、または発現系(1つ以上の生物学的製剤を合成することができる)が含まれ得る。任意的に、いくつかの実施形態では、マトリックスには、1つ以上の生物学的製剤を合成する第1のタイプの細胞をサポートする第2のタイプの細胞が含まれ得る。いくつかの実施形態では、細胞はマトリックス内に置かれる前に封入され得る。このような実施形態では、細胞はマイクロカプセル内に封入され得るかまたは共形的にコーティングされ得る。しかし、むき出し(すなわち、未コーティング)の細胞も用い得る。
【0049】
特定の実施形態に応じて、治療上有効な密度の細胞をマクロカプセル化装置の1つ以上の小室内に充填し得る。小室内に配置される適切な細胞密度は、約1000細胞/μL以上、10,000細胞/μL以上、50,000細胞/μL以上、100,000細胞/μL以上、500,000以上、及び/または任意の他の適切な細胞密度であり得る。また小室内に配置される適切な細胞密度は、約1,000,000細胞/μL以下、500,000細胞/μL以下、100,000細胞/μL以下、50,000細胞/μL以下、10,000細胞/μL以下、及び/または任意の他の適切な細胞密度であり得る。前述の組み合わせが考えられ、約1000細胞/μL~1,000,000細胞/μLの細胞密度が含まれる。当然のことながら、所望の用途及び使用している細胞型に応じて、前述したものより大きい細胞密度及び小さい細胞密度の両方も用い得る。
【0050】
本明細書で説明するマクロカプセル化装置を、被検体の生体内に種々の部位において埋め込み得る。一例では、装置を腹膜前または直筋後埋め込みによって被検体内に埋め込み得る。他の例では、装置を網内埋め込みによって置くことができる。別の例では、装置を皮下埋め込みによって置くことができる。別の例では、装置を肝上埋め込みによって置くことができる。場合によっては、本明細書で説明するマクロカプセル化装置を、生体内に埋め込み部位において、任意の適切な固定方法(たとえば、組織接着剤の付与など)を用いて固定し得る。適切な組織接着剤には以下が含まれ得る(しかし、これらに限定されない)。フィブリン、シアノアクリレート、ポリエチレングリコール、アルブミン系接着剤、ポリマー系接着剤、及び/または任意の他の適切な接着剤。本開示はこのようには限定されずに、別の例では、装置の固定を、多血小板血漿及び/または任意の他の適切な固定方法を用いて行ってもよい。
【0051】
図を参照して、特定の非限定的な実施形態についてより詳細に説明する。当然のことながら、本開示は、本明細書で説明する特定の実施形態のみには限定されずに、これらの実施形態に対して説明した種々のシステム、コンポーネント、特徴部、及び方法を、別個に及び/または任意の所望の組み合わせで用い得る。
【0052】
図1A~1Dに、細胞集団を封入するように構成された埋め込み可能なマクロカプセル化装置100の一実施形態を例示する。この場合もやはり、細胞集団には、本明細書で説明したように、膵臓前駆細胞、内分泌細胞、ベータ細胞、及び/または任意の他の適切な細胞集団のうちの少なくとも1つのが含まれ得る。図示した実施形態では、マクロカプセル化装置は、装置が配向される横断面に平行な方向に延びる略平坦な平面構成を有する。図に示したマクロカプセル化装置は略丸い平面形状を有しているが、本開示はこのようには限定されずに、正方形、矩形、六角形、三角形を含む他の形状、及び/または非平面構成を含む任意の他の適切な形状も考えられる。
【0053】
マクロカプセル化装置100は第1の外膜102を含み、これは第2の外膜104上に配置されている。第1及び第2の外膜の少なくとも一部を互いに結合して、外膜間に配置された内部容積を形成し得る。たとえば、図に例示するように、第1及び第2の外膜を、少なくとも、膜の周囲に沿って延びる部分106または他の適切な部分において互いに結合して、所望の内部容積を形成し得る。いくつかの実施形態では、装置はまた、装置全体の1つ以上の部分に取り付けられたフレーム108を含んでいてもよい。図示した実施形態では、フレームはマクロカプセル化装置の外周に取り付けられてそれに沿って延びている。しかし、フレームが装置の周囲の一部のみに沿って延びる状況も考えられる。本開示はこのようには限定されずに、フレームを、限定されるものではないが、接着剤、エポキシ、機械的留め具、熱結合、及び/または任意の他の適切な結合方法を含む何らかの適切な方法を用いて外膜に取り付けてもよい。
【0054】
前述したように、本明細書で説明するマクロカプセル化装置は、マクロカプセル化装置が略延び得る平面と平行な平面内で互いと少なくとも部分的に同一の広がりを持つ2つ以上の内部小室を含み得る。さらに、いくつかの実施形態では、2つ以上の小室は、この平面と平行な実質的にそれらの横断領域全体に沿って互いと同一の広がりを持ち得る。
図1A~1Dに示す実施形態は、一次の小室120、二次の小室122、及び三次の小室124を含む3つの小室装置である。明瞭にするために、単一グループの小室について例示している。しかし、当然のことながら、本開示は、装置の全表面領域にわたって広がる単一グループの小室を用いる装置には限定されずに、マクロカプセル化装置の異なる部分に配置された関連する小室の複数のグループを含むマクロカプセル化装置も考えられる。膜及びこれらの小室の特定の配置について、以下でさらに説明する。
【0055】
図に例示するように、マクロカプセル化装置100は、第1の外膜102、第2の外膜104、第1の半透膜116、及び第2の半透膜118を含み得る。装置はまた、一次の小室120、二次の小室122、及び三次の小室124を含み得る。図示した実施形態では、第1の半透膜は第1の外膜に対して配置され、第2の半透膜は第1の半透膜に対して、第1の外膜と反対側に配置され、及び第2の外膜は第2の半透膜に対して、第1の外膜及び第1の半透膜と反対側に配置されている。種々の膜を、これまでに示した結合方法のいずれかを用いて互いに結合し及び/または他の方法で接続し得る。こうして、第1の半透膜を第1の外膜と第2の半透膜との間に取り付け得て、第2の半透膜を第1の半透膜と第2の外膜との間に取り付け得る。さらに、第1の半透膜及び第1の外膜が一次の小室を第1の半透膜及び第1の外膜の対向面の間に形成するように、膜を適切に成形して配設し得る。対応して、第2の半透膜及び第2の外膜が協同して、二次の小室を第2の半透膜及び第2の外部部材の対向面の間に形成し得る。また第1の半透膜及び第2の半透膜は、三次の小室を第1及び第2の半透膜の対向面の間に形成し得る。
【0056】
図では種々の膜に対して単一連続膜を例示しているが、いくつかの実施形態では、第1の外膜102、第2の外膜104、第1の半透膜116、及び第2の半透膜118のうちの1つ以上を、膜全体を形成するために用いられる複数の接続された膜から形成し得る。
【0057】
以上の構成を考慮して、一次の小室120と二次の小室122とを第1の半透膜116によって分離し得る。同様に、三次の小室124と二次の小室122とを第2の半透膜118によって分離し得る。したがって、3つの小室を用いる実施形態で、二次の小室は一次の小室と三次の小室との間に配置されている。さらに、一次、二次、及び/または三次の小室は、マクロカプセル化装置全体が広がる平面に平行な横断面に対するそれらの断面領域の少なくとも一部(いくつかの実施形態では、実質的にすべて)にわたって互いと同一の広がりを持ち得る。装置の内部に置かれている第1及び第2の半透膜は、少なくともいくつかの材料(たとえば、ろ液及び/または補助剤)に対して透過性に構成されているため、一次の小室は第1の半透膜を通して二次の小室と流体連絡し得て、二次の小室及び三次の小室は第2の半透膜を通して流体連絡し得る。
【0058】
前述したように、いくつかの実施形態では、マクロカプセル化装置100は、装置の平面表面にわたって分布する複数のスルーホール114を含み得る。スルーホールは、マクロカプセル化装置の第1の外部表面からマクロカプセル化装置の対向する外部表面まで延び得て、図示した実施形態では、第1の外膜102の外部表面から第2の外膜104の対向する外部表面まで延びるスルーホールに対応し得る。スルーホールは、対応する結合部分110によって囲まれ得る。結合部分には、第1及び第2の外膜、ならびに外膜の間に位置する任意の中間の内部膜(たとえば、第1及び第2の半透膜116及び118)の結合部分が含まれ得る。各スルーホールを囲む結合部分は、装置の内部とスルーホールとの間のシールを形成し得る。これらのスルーホールを用いることによって、平坦な構成を伴う装置と比べて単位面積あたりもっと多くの細胞が可能になり得る。なぜならば、細胞の生存能力及び活動をサポートするためにマトリックスの全体を通して細胞に与える栄養素量が増え得るからである。具体的には、生体内に埋め込まれると、スルーホールによって、脈管構造が装置の周りにまたスルーホールを通って成長することが可能になり得る。これに対し、スルーホールを伴わない典型的な装置の場合は、脈管構造が装置の上面及び下面に形成されることに限定される。スルーホールの最大横断寸法(たとえば、直径)は、装置全体の最大横断寸法が延びる横断面に平行な横断面内でのその最も狭い点において測定され得る。スルーホールのサイズ、数、及び/または密度は、生体内に位置したときに装置の所望の性能を与えるように適切に選択し得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、一次の小室120、二次の小室122、及び三次の小室124のうちの少なくとも1つには、連続的な小室が含まれ得る。代替的に、一次の小室120、二次の小室122、及び三次の小室124のうちの少なくとも1つには、任意の適切な形状を有し得る複数の連続的な相互接続された小室が含まれる。たとえば、図に示す内部小室は、装置の面上に位置する複数のスルーホール114の場所に対応する膜の隣接する結合部分110間に配置された小室の内部体積に対応する複数の相互接続されたチャネル112に対応する。しかし、当然のことながら、本開示はこのようには限定されずに、相互接続された体積及び/または単一の連続的な体積の任意の適切な配置及び/または形状を、内部小室のそれぞれに対して用いてもよい。
【0060】
前述の実施形態では、一次の小室120、三次の小室124、または両方を、互いに同じかまたは異なり得る1つ以上の細胞集団を収容するための体積を与えるように構成し得る。対応して、二次の小室122を、一次の小室、二次の小室、または両方からろ液を取り除くように構成し得る。二次の小室も、一次の小室、三次の小室、または両方に補助剤を与えるように構成し得る。そのため、図示した実施形態では、第1の外膜102、第2の外膜104、第1の半透膜116、及び第2の半透性118をそれぞれ、細胞集団の移動を遮るように構成し得る。また第1の半透膜を、ろ液が一次の小室から二次の小室へ通れるように構成し得る。同様に、第2の半透膜を、ろ液が三次の小室から二次の小室へ通れるように構成し得る。また第1及び/または第2の半透膜を、補助剤が三次の小室から一次及び三次の小室それぞれへ通れるように構成し得る。
【0061】
また
図1A~1Bに示すように、マクロカプセル化装置100は、装置の外部と装置に含まれる1つ以上の小室との間の流体連絡を与える少なくとも1つのポートを含み得る。たとえば、一次のポート126は一次の小室120と流体連絡し得て、二次のポート128は二次の小室122と流体連絡し得て、及び三次のポート130は三次の小室124と流体連絡し得る。いくつかの実施形態では、一次、二次、及び三次のポートのうちの少なくとも1つ(場合によっては、それぞれ)は、対応する内部小室とマクロカプセル化装置の外部との間の選択的流体連絡を与えるように、シール可能であるかまたは再シール可能であり得る。一次のポート、二次のポート、三次のポート、またはそれらの任意の組み合わせを、経皮的アクセスを可能にするように構成し得る。いずれの場合でも、以下でさらに説明するように、種々のポートによって、装置の対応する内部小室へのアクセスが与えられ得て、対応する小室内に細胞集団を導入し得て、対応する小室からろ液を取り除き得て、及び/または対応する小室内にポートの1つ以上を通して補助剤を導入し得る。
【0062】
図ではポートを用いている実施形態を例示しているが、本開示は、ポートを含むマクロカプセル化装置に限定されない。たとえば、一次、二次のポート、または三次のポートを用いることなく完全にシールされ得るマクロカプセル化装置の実施形態も考えられる。
【0063】
図2A~2Bに、第1及び第2の外膜102及び104とそれらの間に配置された第1及び第2の半透膜とを含むマクロカプセル化装置100の単純化された概略図と切り離した概略図とを示す。前述したように、膜及び内部半透膜を適切に配設して互いに結合して、前述した一次の小室120、二次の小室122、及び三次の小室124を装置の内部に形成し得る。さらに、概略図では、結合領域内のこれらの別個の膜のそれぞれからなる平坦な積層配置が明瞭に例示されている。代替的な実施形態では、
図3に示すように、装置の内部に配置された第1及び第2の半透膜を単一の内在膜として形成し得る。図示した実施形態では、半透膜は、対向する第1及び第2の外膜の間に配置された細長い管腔として成形されている。したがって、膜を互いに結合すると、第1の外膜に隣接する内在膜の上部は第1の半透膜116として機能し得て、第2の外膜に隣接する内在膜の下部は第2の半透膜部材118として機能し得る。さらに、図では別個の第1及び第2の外膜を例示しているが、当然のことながら、単一の膜を折り返して第1及び第2の外膜として機能させる実施形態も考えられる。
【0064】
前述の実施形態は3つの小室が含んでいるが、いくつかの実施形態では、マクロカプセル化装置100は第2の半透膜118を含んでいなくてもよい。このような実施形態では、装置は一次の小室及び対応する二次の小室のみを含み得る。たとえば、
図4A及び4Bにおいて、マクロカプセル化装置100を、前述したように細胞集団を封入するように構成し得る。装置は、第1の外膜102、第2の外膜104、第1及び第2の外膜の間に配置された第1の半透膜116を含み得る。したがって、第1の半透膜と第1の外膜との間に一次の小室を形成し得て、第1の半透膜と第2の外膜との間に二次の小室を形成し得る。前述した3つの小室実施形態と同様に、マクロカプセル化装置は、一次及び二次の小室それぞれと流体連絡した1つ以上のポート(たとえば、一次及び二次のポート)を含んで、装置の外部と内部小室との間の流体連絡を与え得る。この場合もやはり、いくつかの実施形態では、これらのポートはシール可能であるかまたは再シール可能であり得る。
【0065】
一次の小室120及び二次の小室122を、第1の半透膜116によって互いから分離し、第1の半透膜を通して互いに流体連絡し得る。この実施形態では、一次の小室、二次の小室、または両方を、1つ以上の細胞集団を収容するための体積を与えるように構成し得る。さらに、二次の小室を、前述したように、一次の小室からろ液を取り除くか、一次の小室に補助剤を与えるか、または両方を行うように構成し得る。
【0066】
以上のことを考慮して、第1の外膜102、第2の外膜104、及び第1の半透膜116をそれぞれ、装置内に含まれる細胞集団の移動を遮るように構成し得る。また第1の半透膜を、ろ液が一次の小室120から二次の小室122へ第1の半透膜を通って通れるように構成し得る。さらに、第1の半透膜を、前述したように、補助剤が二次の小室から一次の小室へ第1の半透膜を通って通れるように構成し得る。
【0067】
明瞭にするために、3つの内部小室(すなわち一次の小室、二次の小室、及び三次の小室)を含むマクロカプセル化装置を用いるための方法を、
図5A~5Cに関連して説明する。しかし、本開示は、2つまたは3つの関連する小室のみを含む装置を用いることに限定されずに、以下に説明する方法及び材料の相対的な流れは、2つ、3つ、4つ、または任意の数の小室を含む装置に適用することができる。
【0068】
図5A~5Cに、
図1A~1Dに関連して前述したものと同様の複数のスルーホール114を含む装置の一部を通して取ったマクロカプセル化装置100の断面図を示す。こうして、マクロカプセル化装置は、第1及び第2の外膜102及び104を第1及び第2の半透膜116及び118とともに含み得る。これらは協同して、一次の小室120、二次の小室122、及び三次の小室124を形成する。さらに以下で詳しく述べるように、マクロカプセル化装置を用いることには、以下のうちの1つ以上の任意の適切な組み合わせが含まれ得る。装置を埋め込むこと、装置に事前血管新生を起こして、装置の周りに及び/または装置のスルーホールを通って延びる微小血管系132を形成すること、一次及び/または三次の小室内に1つ以上の細胞集団を充填すること、二次の小室と第1及び/または三次の小室との間に圧力差を印加して、一次及び/または三次の小室からろ液136を取り除くこと、二次の小室内に補助剤138を充填すること(補助剤138は次に、第1及び/または三次の小室内に流れ得る)。
【0069】
前述したように、ある場合には、マクロカプセル化装置100に事前血管新生を起こした後に、1つ以上の細胞集団134を一次及び/または三次の小室120及び124内に充填し得るが、事前血管新生を伴わずにマクロカプセル化装置を用いる状況も考えられる。
図5Aに示すように、装置に事前血管新生を起こすことを、所定の血管新生期間の間、装置を埋め込むことによって行い得る。この期間の間、微小血管系が装置の周りに及び/またはスルーホール114を通って成長し得る。血管新生期間は、1日以上、2日以上、3日以上、4日以上、5日以上、6日以上、7日以上、8日以上、9日以上、10日以上、または任意の他の適切な期間であり得る。また血管新生期間は、10週間以下、9週間以下、8週間以下、7週間以下、6週間以下、5週間以下、4週間以下、3週間以下、2週間以下、1週間以下、及び/または任意の他の適切な期間であり得る。前述の組み合わせが考えられ、たとえば、1日~10週間(両端を含む)の血管新生期間を含む。当然のことながら、本開示はこのようには限定されずに、前述したものより大きい血管新生期間及び小さい血管新生期間の両方も考えられる。
【0070】
場合によっては、血管新生期間の間、装置の小室を膨張させて、小室を所望の拡張構成に維持することが有用であり得る。したがって、マクロカプセル化装置の事前血管新生の間、一次の小室120、二次の小室122、三次の小室124、またはそれらの任意の組み合わせを膨張し得る。たとえば、流体を一次、二次、及び/または三次の小室内に、1つ以上の対応するポート(図示せず)を通して流し得る。小室を膨張させるために用い得る適切な流体には、任意の適切な生物学的に適合する流体が含まれ得る。いくつかの実施形態では、流体を装置の内部に保持することが、装置の内部に流体を保持するように構成し得る外膜及び/または内部半透膜の対応する特性に基づいて可能であり得る。小室を膨張させるための適切な流体のいくつかの例には、以下が含まれ得る(しかし、これらに限定されない)。酸素、生理食塩水、細胞培養培地、アルギネート、キトサン、ブドウ糖、ペルフルオロカーボン、及びそれらの組み合わせ。所望の圧力、体積、及び/または他の適切なパラメータまで膨張したら、一次、二次、及び三次の小室に対応付けられるポートをシールして、対応する小室を、装置の血管新生の間、所望の膨張構成に維持し得る。血管新生後に、ポートを再び開いて、小室を膨張させるために用いた流体を何らかの適切な方法で取り除き得る。
【0071】
前述したように、いくつかの実施形態では、一次の小室120及び三次の小室124のうちの少なくとも一方を、1つ以上の細胞集団134を収容して内部に保持するように構成し得る。この場合もやはり、一次の小室と二次の小室122とは、第1の半透膜116によって分離し得る。同様に、二次の小室と三次の小室とは、第2の半透膜118によって分離し得る。第1及び第2の半透膜を、一次の小室及び/または三次の小室からのろ液136をろ過するように構成し得る。したがって、一次及び/または三次の小室内に細胞集団が充填されると、ろ液136が充填中に細胞集団と混合されて、一次及び/または三次の小室から、対応する第1及び/または第2の半透膜を通って、二次の小室内に流れ得る。二次の小室内への材料の流れは、二次の小室と一次及び三次の小室の少なくとも一方または両方との間に印加される圧力差によて助長され得る。この圧力差は、二次の小室に吸引を加えること、一次及び/または三次の小室内への材料の流れに起因する圧力の増加、前述の組み合わせ、及び/またはろ液を二次の小室内に流すために付勢を加える任意の他の適切な方法のいずれかを用いて与え得る。さらに、いくつかの実施形態では、ろ液を、充填処理中に及び/または充填処理後に、対応するポート(図示せず)を通して取り除き得る。このような細胞の充填及びろ液の除去は経皮的に行い得るが、本開示は、経皮的にアクセス可能なポートを通してろ液を取り除くことのみには限定されない。この場合もやはり、図には3つの小室装置を示しているが、本開示はこのようには限定されずに、前述の方法は、2つの小室及び/または任意の他の適切な数の小室を含む装置に適用してもよい。
【0072】
マクロカプセル化装置100内に所望の細胞集団134を充填し及び/またはろ液136を取り除いた後に、補助剤138を、一次の小室120及び/または三次の小室124内に配置され得る1つ以上の細胞集団に与え得る。たとえば、補助剤を二次の小室122内に、対応するポート(図示せず)を通して導入し得る。そして補助剤は、二次の小室から一次の小室及び/または三次の小室内に、対応する第1及び第2の半透膜116及び118を通って流れ得る。二次の小室から一次及び三次の小室内への補助剤の流れは、二次の小室内への補助剤の流れに起因する隣接する小室間の濃度勾配及び/または隣接する小室間の圧力差に由来する拡散に起因し得る。ろ液を取り除く場合と同様に、いくつかの実施形態では、補助剤138を二次の小室内に経皮的に充填し得るが、補助剤を導入する他の方法も考えられる。1つの特定の実施形態では、補助剤の投与は、留置している配管を二次の小室の皮下配置されたポートと接続すること、及び補助剤をポートを通して二次の小室内に、そして一次及び二次の小室内に流すことによって行い得る。皮下配置されたポートには血管アクセスポートが含まれ得る。当然のことながら、1つ以上の対応するポートを通して一次及び/または三次の小室内に補助剤を直接充填する実施形態も考えられる。本開示はこのようには限定されずに、前述したように、補助剤には、抗炎症薬、酸素生成物質、分化因子、抗凝固因子、栄養素、それらの任意の組み合わせ、及び/または任意の他の適切な薬剤が含まれていてもよい。
【0073】
前述の実施形態では、補助剤の投与は定期的な間隔で1回または複数回行い得る。補助剤を二次の小室を介して細胞に与え得る定期的な間隔は、1分以上、2分以上、5分以上、10分以上、20分以上、30分以上、1時間以上、2時間以上、5時間以上、10時間以上、1日以上、2日以上、5日以上、及び/または任意の他の適切な時間間隔であり得る。対応して、補助剤を付与する間の時間間隔は、60週間以下、50週間以下、20週間以下、10週間以下、5週間以下、1週間以下、5日以下、2日以下、1日以下、及び/または任意の他の適切な時間間隔であり得る。前述した範囲の組み合わせが考えられ、たとえば、1分~60週間(両端を含む)の時間間隔を含む。当然のことながら、本開示はこのようには限定されずに、前述したものより大きい時間間隔及び小さい時間間隔の両方も考えられる。
【0074】
前述したように、いくつかの実施形態では、マクロカプセル化装置100の小室のうちの2つ以上の間に圧力差を印加して、小室内に細胞を流すこと、小室間でろ液及び/または補助剤を流すこと、小室のポートから外へろ液を流すこと、及び/またはポートを通して補助剤を対応する小室内に流すことのうちの1つ以上を促進し得る。たとえば、二次の小室122と一次の小室120及び三次の小室124の一方または両方との間に圧力差を印加して、装置に事前血管新生を起こした後に一次及び三次の小室からろ液138を取り除き得る。二次の小室と一次及び/または三次の小室との間に圧力差を印加することは、細胞集団134の充填と同時にまたは充填の後に行い得る。さらに、負圧及び/または正圧を対応する小室に印加して所望の圧力差を発生させ得る。本開示はそのようには限定されずに、たとえば、吸引または真空を小室に加え得ること、材料が別の小室内に流れてその小室内の圧力を増加させ得ること、上記の組み合わせ、及び/または任意の他の適切な方法を用いて所望の圧力差を発生させてもよい。さらに、場合によっては、濃度勾配を用いて小室間に材料の流れを誘起し得る。たとえば、高濃度の補助剤を二次の小室内に置き得て、そしてもっと低濃度の補助剤を有し得る他の隣接する小室内に拡散し得る。
【0075】
任意の適切な圧力差を印加してマクロカプセル化装置の種々の部分内に材料の所望の流れを発生させ得るが、いくつかの実施形態では、2つの隣接する小室間に印加される圧力差は、約1気圧以上、1.25気圧以上、1.3気圧以上、1.35気圧以上、1.4気圧以上、1.45気圧以上、1.5気圧以上、及び/または任意の他の適切な圧力差であり得る。対応して、圧力差は3気圧以下、2.75気圧以下、2.5気圧以下、2.25気圧以下、2気圧以下、1.9気圧以下、1.8気圧以下、1.6気圧以下、及び/または別の適切な圧力差であり得る。前述した範囲の組み合わせが考えられ、たとえば、約1気圧~3気圧(両端を含む)の圧力差を含む。当然のことながら、特定の用途に応じて、任意の適切な圧力差(前述したものより大きい圧力差及び小さい圧力差の両方を含む)を用い得ることを理解されたい。
【0076】
本教示を種々の実施形態及び例に関連して説明してきたが、本教示がこのような実施形態または例に限定されることは意図していない。それどころか、本教示には、当業者であれば分かるように、種々の代替物、変更、及び均等物が包含される。したがって、前述の説明及び図面は単に一例である。
【国際調査報告】