(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-01
(54)【発明の名称】ディスクブレーキおよびブレーキパッド
(51)【国際特許分類】
F16D 55/22 20060101AFI20220525BHJP
F16D 65/02 20060101ALI20220525BHJP
F16D 65/092 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
F16D55/22 B
F16D65/02 A
F16D65/092 D
F16D65/02 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560029
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(85)【翻訳文提出日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 EP2020058790
(87)【国際公開番号】W WO2020207828
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】102019109817.3
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ペチュケ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス アーデルング
(72)【発明者】
【氏名】イェンス フリッケ
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ シュロップ
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA62
3J058AA69
3J058AA73
3J058AA79
3J058AA87
3J058BA42
3J058CA43
3J058CA47
3J058CC83
(57)【要約】
電気式または空圧式に操作される商用車用のディスクブレーキであって、以下の特徴、すなわち:-好適な回転方向(D)を有するブレーキディスク(4)、-ブレーキキャリア(2)、-ブレーキキャリア(2)に接して摺動するように案内されたブレーキキャリパ、-ブレーキキャリア(2)の緊締側のパッド溝(203)および反応側のパッド溝(204)内に、ブレーキディスク回転軸線(A4)に対して平行に摺動するように配置された緊締側のブレーキパッド(5)および反応側のブレーキパッド(6)、-単一の押圧ピストン(304)を有する緊締装置を備えており、押圧ピストン(304)は、中心軸線を有しておりかつ緊締側のブレーキパッドに面した端部に押圧部材(306)を有しており、押圧部材(306)は押圧面(307)でもって、緊締側のブレーキパッド(5)の対応する受け面(53)に作用し、これにより、制動緊締時に押圧面(307)と受け面(53)との間に作用面が形成されるようになっており、-緊締側のブレーキパッドと反応側のブレーキパッドとは、周方向において、ブレーキディスクとピストン(304)の中心軸線とに対してセンタリングされて位置合わせされており、ディスクブレーキの緊締時に押圧面(307)と受け面(53)とが相接して位置する作用面は、周方向において、ブレーキディスク(4)の好適な回転方向とピストン(304)の中心軸線とに対して進出側にずらされて位置している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気式または空圧式に操作可能な商用車用のディスクブレーキであって、
好適な回転方向(D)を有するブレーキディスク(4)と、
ブレーキキャリア(2)と、
該ブレーキキャリア(2)に接して摺動するように案内されたブレーキキャリパ(3)と、
前記ブレーキキャリア(2)の緊締側のパッド溝(203)および反応側のパッド溝(204)内に、ブレーキディスク回転軸線(A4)に対して平行に摺動するように配置された緊締側のブレーキパッド(5)および反応側のブレーキパッド(6)と、
単一の押圧ピストン(304)を有する緊締装置と
を備えており、
前記押圧ピストン(304)は、中心軸線(M304)を有しておりかつ前記緊締側のブレーキパッドに面した端部に押圧部材(306)を有しており、該押圧部材(306)は押圧面(307)でもって、前記緊締側のブレーキパッド(5)の対応する受け面(53)に作用し、これにより、制動緊締時に前記押圧面(307)と前記受け面(53)との間に作用面が形成されるようになっており、
前記緊締側のブレーキパッドと前記反応側のブレーキパッドとは、周方向において、前記ブレーキディスクと前記ピストン(304)の前記中心軸線(M304)とに対してセンタリングされて位置合わせされている、
ディスクブレーキにおいて、
当該ディスクブレーキの緊締時に前記押圧面(307)と前記受け面(53)とが相接して位置する前記作用面は、周方向において、前記ブレーキディスク(4)の前記好適な回転方向と前記ピストン(304)の前記中心軸線(M304)とに対して進出側にずらされて位置していることを特徴とする、ディスクブレーキ。
【請求項2】
前記緊締側のブレーキパッドおよび前記反応側のブレーキパッドは、前記ブレーキキャリア(2)の前記緊締側のパッド溝(203)および前記反応側のパッド溝(204)内に、前記ブレーキディスク回転軸線(A4)に対して平行にまたは実質的に平行に摺動するように配置されている、請求項1記載のディスクブレーキ。
【請求項3】
前記押圧部材(306)は、少なくとも当該ディスクブレーキの緊締時に前記緊締側のブレーキパッド(5)に作用するように設計されている、請求項1または2記載のディスクブレーキ。
【請求項4】
前記ブレーキディスク(4)は、好適には330mm以上の直径を有している、請求項1、2または3記載のディスクブレーキ。
【請求項5】
前記ブレーキキャリパ(3)および前記ブレーキキャリア(2)は、それぞれ前記ブレーキディスク(4)の上縁部に上方から枠状に係合しており、前記ブレーキキャリパ(3)にはパッド交換用の中心開口(303)が設けられている、請求項1から4までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項6】
前記ブレーキパッド(5,6)は、それぞれバックプレート(51,61)と摩擦材(52,62)とを有しており、該摩擦材(52,62)および/または前記バックプレート(51,61)は、周方向において前記ブレーキディスク(4)に対してセンタリングされて位置合わせされている、請求項1から5までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項7】
前記バックプレート(51)は、複数のリブ(54)および凹部/窪み(55)を有している、請求項1から6までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項8】
前記ブレーキキャリアの前記パッド溝は、周方向において前記ブレーキディスク(4)に対してセンタリングされて位置合わせされている、請求項1から7までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項9】
前記押圧部材(306)は、前記押圧面(307)を有する突出部を有しており、前記押圧面は、周方向において前記ブレーキディスク(4)の前記好適な回転方向(D)に対して進出側にずらされて配置されている、請求項1から8までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項10】
前記バックプレートの前記受け面(53)は、周方向において前記ブレーキディスク(4)の前記好適な回転方向(D)に対して進出側にずらされて配置されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項11】
前記緊締側のブレーキパッド(5)の前記バックプレート(51)の前記受け面(53)は、前記バックプレートの付加部により形成される、請求項1から10までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項12】
前記付加部は、前記緊締側のブレーキパッド(5)の前記バックプレート(51)に取り付けられた部材により形成されている、請求項1から11までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項13】
前記緊締側のブレーキパッド(5)の前記バックプレート(51)に取り付けられた前記部材は、前記バックプレートに取り付けられた金属薄板部材である、請求項1から12までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項14】
前記ブレーキパッドの前記バックプレート(51)は、凹部(56a)を有しており、該凹部(56a)は、前記ブレーキディスク回転軸線(A4)に対して相対的に、全体的または部分的に進入側にずらされて前記押圧部材の下側に位置しているため、前記バックプレート(51)は、前記凹部の領域では前記押圧部材に接触せず、前記ブレーキパッドは、制動時に前記凹部に隣接する領域において前記押圧部材に接触する、請求項1から13までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項15】
前記バックプレート(51)において凹部(55)および/またはリブ(54)を分散させることにより、前記パッド(5)全体および前記摩擦材(52)の重心線と作用重心とが、周方向において前記押圧ピストン(304)の前記中心軸線(M304)に対して位置合わせされている、請求項1から14までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項16】
前記緊締装置は、前記ブレーキキャリパ(3)内で前記ブレーキディスク(4)の緊締側(301)に配置されており、前記ブレーキキャリパ(3)は、前記ブレーキディスクの周面領域を包囲するように枠状に係合している、請求項1から15までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項17】
押圧面(307)を備えた押圧ピストン(304)に対する、ブレーキパッドの重心線(M5)に対して偏心的な単一の受け面(53)を有していることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項記載のディスクブレーキ用のブレーキパッド。
【請求項18】
単一の偏心的な受け面(53)を有しており、該受け面(53)は、実質的に半円形に形成されているか、または完全に半円形に形成されていることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項記載のディスクブレーキ用のブレーキパッド。
【請求項19】
ブレーキパッドのバックプレート(51)が、凹部(56a)を有しており、該凹部(56a)は、ブレーキディスク回転軸線(A4)に対して相対的に、全体的または部分的に進入側にずらされて押圧部材の下側に位置しているため、前記バックプレート(51)は、前記凹部の領域では前記押圧部材に接触しないことを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項記載のディスクブレーキ用のブレーキパッド。
【請求項20】
凹部(56a)が円セグメント形を有していることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項記載のディスクブレーキ用のブレーキパッド。
【請求項21】
バックプレート(51)において凹部(55)および/またはリブ(54)を分散させることにより、パッド(5)全体および摩擦材(52)の重心線と作用重心とが、周方向において押圧ピストン(304)の中心軸線M304に対して位置合わせされていることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項記載のディスクブレーキ用のブレーキパッド。
【請求項22】
少なくとも1つの車軸を備えた車両であって、前記車軸は-当該車両の主走行方向に対して-主回転方向を有しており、前記車軸は、車両左側に、前記車軸の左側の端部(および車輪)に対応して配置された少なくとも1つのディスクブレーキ(1)を有しており、前記車軸は、車両右側に、前記車軸の右側の端部(および車輪)に対応して配置された少なくとも1つのディスクブレーキ(1)を有しており、車両左側の前記ディスクブレーキ(1)と、車両右側の前記ディスクブレーキ(1)とは、それぞれ請求項1から16までのいずれか1項または複数項に基づき形成されている、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載のディスクブレーキおよびこのようなディスクブレーキ用のブレーキパッドに関する。
【0002】
従来技術には欧州特許第2392835号明細書が挙げられる。
【0003】
この従来技術に基づき、ブレーキキャリアと、摺動キャリパと、単一の押圧ピストンのみを備える緊締装置とを備えた大型商用車のディスクブレーキには、パッドの傾斜摩耗に対する構造的な手段を導入することが公知である。
【0004】
この場合、一般に、一方または両方のブレーキパッドがブレーキディスクに対し、-好適にはブレーキディスクの回転方向に関して-周方向において進入側または進出側にずらされる。
【0005】
このことは構造的に、一般に比較的手間がかかる。それというのも、一般にブレーキキャリアに設けられるパッド溝も相応にずらされるからである。相応するずれを、摩擦材に設けられた面取り部もしくは傾斜面により生ぜしめることも知られているが、このことは、摩擦材とブレーキディスクとの間の有効摩擦面を減少させることになる。
【0006】
これに対して本発明は、周方向にパッドをずらすことを必要としない、ブレーキパッドの傾斜摩耗の作用を低下させる代替手段を提供する、という課題を有している。
【0007】
この課題は、請求項1の対象および請求項17の対象により解決される。
【0008】
提供するのは、-請求項1によれば-電気式または空圧式に操作可能なひいては好適には運転中も電気式または空圧式に操作される、商用車用のディスクブレーキであって、以下の特徴、すなわち:好適な回転方向を有するブレーキディスク、ブレーキキャリア、ブレーキキャリアに接して摺動するように案内されたブレーキキャリパ、緊締側のブレーキパッドおよび反応側のブレーキパッド、単一の押圧ピストンを有する緊締装置を備えており、押圧ピストンは、中心軸線を有しておりかつ緊締側のブレーキパッドに面した端部に押圧部材を有しており、押圧部材は押圧面でもって、緊締側のブレーキパッドの対応する受け面に作用し、これにより、制動緊締時に押圧面と受け面との間に作用面が形成されるようになっており、緊締側のブレーキパッドと反応側のブレーキパッドとは、周方向において、ブレーキディスクとピストンの中心軸線とに対してセンタリングされて位置合わせされており、ディスクブレーキの緊締時に押圧面と受け面とが相接して位置する作用面は、周方向において、ブレーキディスクの好適な回転方向とピストンの中心軸線とに対して進出側にずらされて位置している。
【0009】
この構成の1つの特別な利点は、単一の押圧ピストンのみを有しておりかつブレーキパッドが両方共、周方向においてブレーキディスクに対してセンタリングされて位置合わせされているディスクブレーキでも、パッドおよび/またはパッドに付属するパッド溝をずらすこと無しに、押圧部材および/またはブレーキパッドのバックプレートを変更することにより作用面が周方向においてブレーキディスクに対して偏心的に位置することもしくは中心がブレーキディスクに対してセンタリングされて位置合わせされていないことで、簡単にブレーキパッドの傾斜摩耗に抗して作用し得る、という点にある。この手段は、後付け法でもしくは押圧部材および/または緊締側のブレーキパッドの各部材の簡単な構造上の変更により簡単に実現可能である。
【0010】
好適には、押圧ピストンは、好適には円筒状または部分円筒状の第1の部分と、少なくともディスクブレーキの緊締時に緊締側のブレーキパッドに作用する押圧部材とを有している。さらに、ブレーキディスクは15インチ以上の直径を有していることが想定されていてよい。それというのも、比較的大きなディスク直径を有するこのような摺動キャリパ型ディスクブレーキの場合には、構造的に手間をかけてパッド溝をずらしたり、面取り部等により有効パッド摩擦面を縮小しなくても傾斜摩耗が実現され得る、ということが特に有利であるからである。
【0011】
有利には、緊締側のブレーキパッドおよび反応側のブレーキパッドは、ブレーキキャリアの緊締側のパッド溝および(すなわちもしくは)反応側のパッド溝に配置されている、ということが想定されていてよい。さらに有利には、ブレーキキャリパおよびブレーキキャリアは、それぞれブレーキディスクの上縁部に上方から枠状に係合している、ということが想定されていてよく、この場合、ブレーキキャリパには、パッド交換用の中心開口が設けられている。つまり、ブレーキパッドはブレーキキャリパの中心開口を介してブレーキキャリアに挿入され、反対の方向に再び引き出される。
【0012】
このようなブレーキの場合もやはり、ブレーキパッドを周方向にずらすことを、本発明により省くことができる、ということが極めて有利であり、これにより、周方向におけるブレーキキャリパの開口の長さを、実質的にパッドの長さに対応させることができる。
【0013】
このためにさらに有利には、ブレーキキャリアのパッド溝は、周方向においてブレーキディスクに対してセンタリングされて位置合わせされている、ということが想定されていてもよい。
【0014】
ブレーキパッドは、それぞれバックプレートと摩擦材とを有している、ということが想定されていてよく、この場合、好適には摩擦材および/またはバックプレートは、周方向においてブレーキディスクに対してセンタリングされて位置合わせされている。この構成もやはり極めて有利である。それというのも、この構成により、特に大きな摩擦面と、バックプレートの特に簡単な構造とが保証され得るからである。特に好適には、1つのディスクブレーキの両方のブレーキパッドのバックプレートと摩擦材とは、周方向においてピストンに対して位置合わせされている。
【0015】
本発明は、構造的に有利に改良され得る。
【0016】
例えば、作用面を進出側にずらすことを実現するために、押圧部材は、作用面を有する突出部を有しており、押圧面は、周方向においてブレーキディスクの好適な回転方向に対して進出側にずらされて配置されている、ということが想定されていてよい。
【0017】
しかしまた、作用面を進出側にずらすことを実現するために、バックプレートの受け面は、周方向においてブレーキディスクの好適な回転方向に対して進出側にずらされて配置されている、ということが想定されていてもよい。
【0018】
最後に、作用面を進出側にずらすことを実現するために、バックプレートの、進出側にずらされた受け面は、バックプレートの付加部により形成される、ということが想定されていてもよい。付加部は、バックプレートに取り付けられた部材により簡単に形成され得る。この場合はさらに簡単に、バックプレートに取り付けられた部材は、バックプレートに取り付けられた金属薄板部材である、ということが想定されていてよい。
【0019】
本発明はさらに、関係する請求項のうちの1つに記載の、押圧面を備えた押圧ピストンに対する、ブレーキパッドの重心線に対して偏心的な-好適には単一の-受け面を有する、ディスクブレーキ用のブレーキパッドも提供する。このように、このブレーキパッドは有利には機能的に改良され、作用面を進出側にずらすことが、特に簡単に実現され得る。このためには例えば、単一の偏心的な受け面は、実質的に半円形に形成されているか、または完全に半円形に形成されている、ということが想定されていてよい。
【0020】
本発明は、少なくとも1つの車軸を備えた車両も提供し、車軸は-車両の主走行方向に対して-主回転方向を有しており、車軸は、車両左側に、車軸の左側の端部(および車輪)に対応して配置された少なくとも1つのディスクブレーキを有しており、車軸は、車両右側に、車軸の右側の端部(および車輪)に対応して配置された少なくとも1つのディスクブレーキを有しており、車両左側のディスクブレーキと、車両右側のディスクブレーキとは、それぞれ請求項1から13までのいずれか1項に基づき形成されている。両ディスクブレーキのブレーキディスクは、車軸に相対回動不能に結合されていてよい。
【0021】
このようにして、本発明によるディスクブレーキは、車両左側のディスクブレーキおよび車両右側のディスクブレーキとして車両に有利に配置されて使用される。車両は、左右の車輪を備えた複数の車軸を有している。これらの車軸のうちの少なくとも1つまたは複数は、端部領域に本発明によるディスクブレーキを備えている。
【0022】
この場合、1つの有利な態様では、車両左側のディスクブレーキと、車両右側のディスクブレーキとはそれぞれ、ブレーキパッドとそのバックプレートとに関してのみ異なっていてよい。
【0023】
つまり、押圧面の下側に位置する緊締側のブレーキパッドの凹部は、例えば右側のディスクブレーキの場合には、緊締側のブレーキパッドのところのバックプレートにおいて全体または大部分が、取付け状態において中心軸線の一方の-例えば右の進入-側により多く寄って位置していてよく、対応する左側のディスクブレーキの場合には、緊締側のブレーキパッドのところのバックプレートにおいて全体または大部分が、取付け状態において中心軸線の他方の-例えば左-側により多く寄って位置していてよい。この場合、緊締装置による緊締は、車両中心から外側に向かって(右側または左側に向かって)各車輪に対して行われる。主走行方向は、前進走行である。前進走行は、ブレーキディスクの主回転方向を決める。この場合、走行方向において車両左側のディスクブレーキ用の緊締側のブレーキパッドと、車両右側のディスクブレーキ用の緊締側のブレーキパッドとに、(車両の走行方向の意味で)車両左側のディスクブレーキ用には例えば「L」および車両右側のディスクブレーキ用には例えば「R」等の適当なマーキングを施すことにより、ブレーキパッドが車両左側のディスクブレーキ用に設けられているのかまたは車両右側のディスクブレーキ用に設けられているのかをマーキングしておくことが有利であってよい。
【0024】
電気式または空圧式に操作するために、ディスクブレーキに対応してアクチュエータが配置されていてよいか、またはディスクブレーキがアクチュエータを有していてよい。アクチュエータは、例えば電気式に操作するために、電動モータと、好適には緊締装置に作用する伝動装置とを有していてよいか、または例えば空圧式に操作するために、好適にはピストンロッドでもってディスクブレーキを操作する圧縮空気シリンダを有していてよい。よってディスクブレーキはその時々で、電気式または空圧式に操作されるディスクブレーキになる。
【0025】
以下に、本発明を実施例に基づき、より詳しく説明する。本発明は、これらの実施例により完結するように示されているのではなく、請求項の枠内で、他の形式(図示せず)でも実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】ブレーキキャリア、ブレーキキャリパおよび緊締装置を備えるディスクブレーキのブレーキキャリパの一部を、緊締装置の押圧部材に対する上方からの目視方向で示す図である。
【
図2】押圧部材を備えた押圧ピストンの斜視図である。
【
図3】ブレーキキャリアとブレーキパッドと押圧ピストンとを備えたユニットを示す平面図である。
【
図4】a)とb)とでそれぞれ異なる緊締側のブレーキパッドを示す図である。
【
図5】a)とb)とでそれぞれ異なる緊締側のブレーキパッドの1つの択一的な構成を示す図である。
【
図6】a)は、車両左側における、ディスクブレーキ用の緊締側のブレーキパッドの斜視図であり、この場合、押圧部材の好適には平らな押圧面がバックプレートに作用する場所が円形面により示されており、b)は、車両左側における、ディスクブレーキ用の緊締側のブレーキパッドを示す図であり、c)は、車両右側における、ディスクブレーキ用の緊締側のブレーキパッドを示す図であり、この場合、押圧部材が作用するブレーキパッドの凹部または窪みは、バックプレートにおいて左側のディスクブレーキでは著しく左側に位置しており、右側のディスクブレーキでは著しく右側に位置している。
【0027】
以下に説明するディスクブレーキの個々の特徴は、それぞれ必ずしもこれらの実施例の全ての別の特徴と組み合わせられて使用される必要はない。むしろ、本発明によるディスクブレーキの別の構成においてそれぞれ個別にまたはこれらのディスクブレーキの別の特徴と組み合わせて使用することもできる。さらに、図示の実施例は、細部において変更されてもよい。
【0028】
図1および
図3には、ブレーキキャリア2と、ブレーキキャリパ3と、ブレーキディスク4とを備えたディスクブレーキ1の部材と構成群とが示されている。ブレーキキャリパ3は、ブレーキキャリア2に接して摺動可能に案内されている。つまり、摺動キャリパ型ディスクブレーキのことである。ディスクブレーキは、商用車用のブレーキである。車両は、このようなディスクブレーキを複数有していてよい。車両の左右のディスクブレーキは、それぞれ本発明に基づき構成されていてよい。ディスクブレーキ1は、空圧式に駆動されるアクチュエータまたは電動モータ式に駆動されるアクチュエータにより操作されるように設計されている。アクチュエータは、例えばピストンロッドでもってブレーキレバー(ここには図示せず)に作用するブレーキシリンダであってよい。
【0029】
ブレーキディスク4は、好適には330mm以上(やはり好適には最大432mm)の直径を有していてよい。緊締装置は、ブレーキキャリパ3内でブレーキディスク4の緊締側301に配置されている。
【0030】
ブレーキキャリパ3は、ブレーキディスク4の上縁部に上方から枠状に係合している。ブレーキディスク4は、好適な回転方向Dを有している(
図3)。この回転方向Dは、前進走行時の車両の車輪の回転方向に相当する。
【0031】
ブレーキキャリア2も同様に枠状の形状を有しており、ブレーキディスク4の上縁部を包囲するように係合している。ブレーキキャリア2は、車両側の固定手段に取り付けられている(ここでは図示せず)。一般に、この固定はディスクブレーキの緊締側で行われる。これに相応して、ブレーキキャリア2とブレーキキャリパ3とは、それぞれ緊締側201,301と反応側202,302とを有している。ブレーキキャリア2はさらに、緊締側のパッド溝203と、反応側のパッド溝204とを有している。
【0032】
ブレーキキャリアは、前進走行時のブレーキディスク4の好適な回転方向Dに関して、進入側の横桁205と進出側の横桁206とを有している。横桁205,206は、緊締側の縦桁207と反応側の縦桁208とに対して実質的に垂直に位置している。両パッド溝203,204はそれぞれ、さらに進入側のキャリア突起209,210と進出側のキャリア突起211,212とを有しており、ここに前進走行中の制動時に各ブレーキパッド5,6が周方向において支持される。「周方向」という用語は、ブレーキディスクの方向Dへの運動に関係する。ブレーキディスク4の一部-一種のリングセグメント-は、ブレーキキャリア2を上向きに貫通してブレーキキャリア2から突出しているか、または少なくともブレーキキャリア2に突入している。
【0033】
「周方向における位置合わせ」とは、対応する部材が、前記ブレーキディスク部分に対して周方向においてセンタリングされて中心で位置を合わせられている、ということを意味する。この場合、この部材の中心は対応するブレーキディスクリングセグメントの前に位置しており、このセグメントに対して偏心的にずらされてはいない。このために前記部材は、ブレーキディスク回転軸線A4に対して半径方向に向けられた中心平面を有していてよく、前記部材は、この部材-例えばブレーキパッド5または6-の、ブレーキディスク4の回転軸線A4に対して平行な重心線も前記中心平面を通って延びるように設けられていてもよい。
【0034】
ブレーキパッド5,6はパッド溝203,204に-好適にはブレーキキャリパの開口303を介して-挿入可能であり、
図3では既に挿入されている。ブレーキパッド5,6は、各1つのバックプレート51,61と各1つの摩擦材52,62とを有している。摩擦材52,62は、それぞれブレーキディスク4に向けられている。ブレーキパッド5,6は、ブレーキディスク回転軸線A4に対して平行に摺動可能である。この回転軸線A4は、
図3では押圧ピストン304の中心軸線M304に対して平行に、押圧ピストン304の中心軸線M304の下に位置している。ブレーキパッド5,6の摺動は、制動中および場合により、パッド摩耗を均一にするために行われる。ブレーキパッド5,6ならびに好適にはその摩擦材52,62および好適にはまたそのバックプレート51,61は、周方向においてブレーキディスク4に対してセンタリングされて位置合わせされていてよい。この場合、好適には、これらのブレーキパッド5,6の重心線と、好適にはまたブレーキパッド5,6の摩擦材52,62と、ブレーキパッド5,6のバックプレート51,61とは、周方向においてこれらの各部材の中心に位置している。ブレーキキャリパ3は、中央の中心開口303を有しており、この中心開口303にはブレーキディスク4の周縁部が侵入している。中心開口303を介して、パッド交換時にブレーキパッド5,6をパッド溝203,204に挿入することができる。
【0035】
ブレーキキャリパ3は、その緊締側に緊締装置を有している(ここでは押圧ピストン304を除き図示せずもしくは認識不能)。緊締装置は、ブレーキキャリパ3の開口内に配置されていてよい。緊締装置は、アクチュエータの部材の緊締動作を所定の緊締動作に変換するために用いられる。このために緊締動作は、1つまたは複数の部材、例えばレバー、軸受および/またはトラバースが有していてよく、この場合、これらの部材は押圧ピストンに作用する。このような緊締装置の構成自体は様々な形式で知られているため、ここで詳細には説明しない。その他の点において、緊締装置(ここには図示せず)は単一の押圧ピストン304を有している(
図1、
図2および
図3参照)。この押圧ピストン304は、円筒部分または部分円筒部分305を有していてよい。押圧ピストン304はさらに、そのブレーキパッド5に面した端部に、少なくともディスクブレーキの緊締時に緊締側のブレーキパッド5に作用する、ここでは単一の押圧部材306を有している。
【0036】
押圧部材306の自由端部には、押圧面307が形成されている。押圧部材306は、円筒部分305と一体に形成されていてよいか、または円筒部分305に継ぎ足されていてよい。円筒部分305は、管部材として、特にねじ山付き管部として形成されていてよい。押圧部材306は、その他の点では部分305と区別することができない、いわば部分305の自由端部領域だけを形成しているに過ぎない押圧部材領域として形成されていてもよい。
【0037】
緊締側のブレーキパッド5のバックプレート51は、押圧面に対応する受け面53を有しており、受け面53には、制動中、押圧面307が支持される。その他の点において、バックプレート51は平らに形成されていてよいか、または複数のリブ54および凹部/窪み55を有していてよい(
図4a、
図4b、
図5a、
図5b)。これらは-場合により
図4において受け面53を形成するリブ54aと共に-全体的に、ブレーキパッド5の重心線M5と、好適にはブレーキパッド5のパッド材もしくは摩擦材およびバックプレートの重心線も、(センサ等のための凹部といった変位部を除いた外側輪郭に対する)ブレーキパッドの中心平面および好適には対称平面内に位置する中心軸線M51を通って延びるように分散させられてよい。この場合、これらの重心線は、好適には周方向においてブレーキディスクに対してセンタリングされて位置合わせされている。
【0038】
制動時に、押圧ピストン304は押圧部材306でもって押圧面307を介して緊締側のブレーキパッド5のバックプレート51を押圧する。これにより、緊締側のブレーキパッド5はその緊締側のパッド溝203内でブレーキディスク4の方向に、緊締側のブレーキパッド5がブレーキディスク4の表面と摩擦接触してブレーキディスク4を制動するまで摺動させられる。この場合、ブレーキキャリパ3は、制動時に緊締動作に基づき、押圧ピストン304の動作方向とは反対の方向に摺動させられ、これにより、反応側のブレーキパッド6も同様に、その摩擦材62でもってブレーキディスク4に押し付けられる。好適には、ブレーキキャリパ3は、反応側のブレーキパッド6のバックプレート61に比較的全面的に作用し、これにより、反応側のブレーキパッド6もやはりそのパッド溝204内で、ブレーキディスク4の軸線に対して平行な軸線方向でブレーキディスク4に向かって摺動させられる。このようにして、制動時にブレーキディスク4の回転速度を低下させ、相応するディスクブレーキが設けられた車両を制動する。
【0039】
本明細書の枠内で作用面と呼ぶ面において、ブレーキの緊締時に押圧面307と受け面53とは相接して位置している(
図1、
図2および
図3参照)。バックプレートに、例えば金属薄板56(
図4参照)等の、これを介して押圧ピストン304がバックプレート51に作用する追加的な部材が配置されている場合、この部材、特に金属薄板は、バックプレート51に分類され、本明細書の枠内ではブレーキパッド5,6の部材と解される。
【0040】
ディスクブレーキの緊締時に押圧面307と受け面53とが相接して位置している作用面は、周方向においてブレーキディスクに対してセンタリングされているのではなく、回転方向において、回転方向に対して進出側にずらされて位置合わせされている、ということが想定されている。さらに、作用面は、周方向において押圧ピストン304の中心軸線M304に対してセンタリングされて位置合わせされているのではなく、-全体的にまたは大部分が-ディスクブレーキ1の好適な回転方向に関して、前記中心軸線M304に対して相対的に進出側にずらされて位置している、ということが想定されていてもよい。
【0041】
このことは
図3において、押圧ピストン304をブレーキパッド5に作用させる力の力線Fもしくは力ベクトルが相応して、進出方向において中心軸線M304およびブレーキディスク回転軸線A4に対して相対的にずらされて位置していることにより認識可能である。
【0042】
この場合、1つの好適な構成では、単一の押圧ピストン304の中心軸線M304は、ブレーキキャリパ3をブレーキキャリア2に対して相対的に摺動させるように案内するディスクブレーキ1の滑り軸受213,214の2つの中心軸線M213,M214の間の中心に位置していてよい。これらの中心軸線M213,M214は、ブレーキディスク回転軸線A4から半径方向において好適には等距離だけ離れている。
【0043】
ブレーキパッド5と押圧部材306との間の、-ブレーキディスク4に対して-周方向における作用面の移動は、傾斜摩耗に抗して効果的に作用し易い。
【0044】
特に有利なのは、ブレーキパッド5,6と、特にそれらの摩擦面ならびにパッド溝も、押圧ピストン304の中心軸線M304に対して相対的にずらされずに済む点である。これらは両方共、周方向において、ブレーキディスク4とピストン304の中心軸線M304に対してセンタリングされて位置合わせされたままである。(摩擦パッド52,62および/またはバックプレート51,61の)の重心線は、好適にはM304およびA4により形成される平面を通って延びている。
【0045】
この構成の1つの特別な利点は、単一の押圧ピストン304のみを有しておりかつブレーキパッド5,6が両方共、周方向において中心軸線M304とブレーキディスク4とに対してセンタリングされて位置合わせされているディスクブレーキでも、パッド5,6および/またはパッドに付属するパッド溝203,204をずらすこと無しに、押圧部材306および/またはブレーキパッド5のバックプレート51を変更することにより作用面が周方向においてブレーキディスクに対して偏心的に位置することもしくは中心がブレーキディスクに対してセンタリングされて位置合わせされていないことで、簡単に傾斜摩耗に抗して作用し得る、という点にある。この手段は、後付け法でかつ/または押圧部材306および/または緊締側のブレーキパッド5の各部材の簡単な構造上の変更により簡単に実現可能である。
【0046】
押圧ピストン304の押圧面307は、制動時に作用面の領域のみを、緊締側のブレーキパッド5のバックプレート51に押し付ける。
【0047】
押圧ピストン304は、中心軸線M304を有している。パッド溝203,204は、この中心軸線M304ならびに中心軸線M304とブレーキディスク回転軸線A4とにより規定される平面に対して、それぞれ好適には対称的に形成されている。つまり、進入側および進出側のキャリア突起209,210;211,212における支持面は、それぞれ中心軸線M304から等距離だけ離れて位置している。この場合、摩擦パッド52,62も、相応してこの中心軸線に対して対称的に設計されていてよい。この場合、摩擦パッド52,62の重心線は、M304とA4とにより規定される平面上に位置していてよい。これは特に、摩擦パッド5,6が押圧ピストン304の中心軸線M304に関して、ブレーキディスクの周方向において押圧ピストン304とブレーキディスク4とに対してセンタリグされて位置していてよく、-ブレーキディスク4の好適な回転方向とブレーキディスク4とに対して-進入側または進出側にずらされて位置していなくてよい、ということを意味し得る。
【0048】
押圧部材306は、制動時に力ベクトルFでもって、作用面において力ベクトルFと整合する力線内で、緊締側のブレーキパッド5のバックプレート51に作用する。押圧部材306は、ディスクブレーキ内で周方向もしくは回転方向においてセンタリングされて位置合わせされていてよい。
【0049】
緊締側のブレーキパッド5の摩擦材52と、反応側のブレーキパッド6の摩擦材62とは、前記力ベクトルFに対してのみ、それぞれ同じ数値だけ、進入側(205)の方向にずらされて位置している。これにより簡単に、ブレーキパッド5,6の傾斜摩耗の影響に抗して作用することができる。
【0050】
押圧部材306と緊締側のブレーキパッド5との間に偏心的な作用面を形成するためには、1つまたは複数の構造的な手段が必要とされている。
【0051】
つまり1つの態様では、押圧部材306と緊締側のブレーキパッド5との間に、進出側にずらされた作用面を形成するために、押圧部材は進出側にずらされておりかつM304およびA4を通る平面に対して非対称的な、ブレーキパッド5の方向への突出部の意味での付加部308を有していてよい(
図1および
図2)。
【0052】
この付加部308は、リングセグメント状に形成されていてよい。しかしまた、付加部308は例えば実質的に半円筒状に形成されていてもよい。しかしまた付加部308は別様に、例えば受け面53の領域において矩形に形成されていてもよい。このようにして、付加部308は受け面53に作用する。この受け面は、対応するように、つまり同様にリングセグメント状に形成されていてよい。しかしまた受け面は別様に、例えば円形または矩形に形成されていてもよい。
【0053】
ただし1つの別の態様では、例えば押圧部材306の押圧面307は、周方向において進出側にずらされているのではなく、中心軸線に対して同心的にかつ/または対称的に形成されていてもよく、それにもかかわらず、ブレーキパッド5の受け面53は進出側にずらされて位置するように形成されていてよく、これにより、有効力ベクトルF1は進出側にずらされている。
【0054】
つまり、1つの態様では押圧部材306の押圧面307が偏心的に進出側にずらされていてよい。しかしまた、受け面53が進出側にずらされていてもよい。また、両方の面が進出側にずらされていてもよい。
【0055】
このためには、緊締側のブレーキパッド5のバックプレート51に、偏心的な押当て輪郭を、バックプレート51の周面に対する突出部56として設けることが考えられ、偏心的な押当て輪郭は、押圧ピストン304の中心軸線M304に対して偏心的に位置しており、押圧部材306が適当な平らな押圧面307でもってこの押当て輪郭56にのみ作用するように、少なくとも1つの周囲領域に比べて隆起させられて位置している。このことは、進入側において、バックプレート51に相応する窪み56aが設けられており、窪み56aは、好適にはその他は平らな押圧部材の押圧面には接触しない(
図3)、ということによっても達成され得る。
【0056】
また、バックプレート51の一体的な突出部が設けられていてよいか、または金属薄板アタッチメント55等の別個の部材が突出部としてバックプレートに取り付けられていてもよい。金属薄板アタッチメント55は、バックプレートに溶接されていてよいか、または別の形式で取り付けられていてもよい。しかしまた択一的に、一体的な付加部が突出部56として隆起した領域の形式でバックプレート51に形成されていてもよい(
図5a、
図5b)。
【0057】
また択一的には、(突出部としての)付加部を形成する金属薄板が、押圧部材に固定されていてもよい(図示せず)。
【0058】
作用面全体が、進出方向において中心軸線M304の側方に位置している、ということが想定されていてもよい。
【0059】
しかしまた、中心軸線M304が作用面を通って延びており、作用面は進出側に対して、進入側に対するよりも大きな延在長さを有していてもよい。バックプレート51において凹部55および/またはリブ54を相応に分散させることにより、パッド5全体および摩擦材52の重心線と作用重心とは、周方向においてさらに、押圧ピストン304の中心軸線M304に対して位置合わせされていてよい。
【0060】
作用面の図示の半円形の輪郭またはリングセグメント状の輪郭は、有利である。さらに、作用面全体が中心軸線の側方に位置していると有利である。このことは好適ではあるが、必須ではない。
【0061】
押圧ピストン304の端部に設けられた押圧部材306は、実質的に円筒状に形成されていてよく、この場合、押圧面307は、好適には平らである。押圧面307は、中心に配置されていてよい。
【0062】
押圧部材306は、例えば楕円形に形成されていてもよく、進出側の方向にずらされて位置していてもよい、もしくは部分305の端部に偏心的に取り付けられていてもよい。
【0063】
しかしまた、中心軸線が作用面を通って延びており、作用面は進出側に対して、進入側に対するよりも大きな延在長さを有していてもよい。
【0064】
車両の左右のディスクブレーキにおいて、ディスクブレーキの緊締時に押圧面307と受け面53とが相接して位置する作用面は、周方向においてブレーキディスク4の好適な回転方向とピストン304の中心軸線M304とに対して、それぞれ進出側にずらされている。
【0065】
この条件を満たすために-1つの態様では-車両の右側のディスクブレーキの緊締側のブレーキパッドが、左側のディスクブレーキの緊締側のブレーキパッドとは異なるバックプレートを有していてよい。
【0066】
1つの態様では、車軸の右側の端部用のディスクブレーキ1「車両右側のディスクブレーキ」は、その両方のブレーキパッドを除き、車軸の左側の端部用のディスクブレーキ1「車両左側のディスクブレーキ」と、構造的に実質的に同様に形成されていてよい(特にブレーキキャリアのパッド溝と緊締装置の押圧部材)。しかしまた、左右のディスクブレーキ用の例えば滑り軸受-固定側軸受および自由側軸受-等の個々の部材が差異をもたらしてもよい。それというのも、例えば両方の固定側軸受がディスクブレーキの「進入側」に配置されていることが望ましい場合、この領域に、左側のディスクブレーキと右側のディスクブレーキとにおいて相応する差異が生じるからである。
【0067】
この場合、各凹部56aは、それらのバックプレートが互いに重ね合わせられたときに、各凹部56a同士が整合するように、特に完全に整合するように(
図6b、
図6c)形成されていてよい。
【0068】
つまり、緊締側のブレーキパッド5の凹部56aは、例えば右側のディスクブレーキの場合には、緊締側のブレーキパッド5のところのバックプレートにおいて全体または大部分が、取付け状態において中心軸線の一方の-例えば右-側により多く寄って位置していてよく、対応する左側のディスクブレーキの場合には、緊締側のブレーキパッド5のところのバックプレートにおいて全体または大部分が、取付け状態において中心軸線の他方の-例えば左-側により多く寄って位置していてよい(
図6a、
図6b、
図6c)。この場合、ブレーキパッドが車両左側用に設けられるもしくは設計されたものなのかまたは車両右側用に設けられるもしくは設計されたものなのか、もしくはそこに取り付けられるディスクブレーキが、車両右側用に設けられるもしくは設計されたものなのかまたは車両左側用に設けられるもしくは設計されたものなのかをマーキングしておくことが有利であってよい。
【0069】
図6は、このことを極めてわかりやすく示している。つまり、
図6aには、車両左側のディスクブレーキ用の緊締側のブレーキパッド5Lの斜視図が示されており、この場合、押圧部材の好適には平らな押圧面307がバックプレート51に作用する場所が、円形面により図示されている。さらに
図6bには、車両左側のディスクブレーキ用の緊締側のブレーキパッド5Lが、押圧面307の示唆無しで示されている。次いで
図6cは、車両右側のディスクブレーキ用の緊締側のブレーキパッド5Rを示しており、この場合、押圧ピストン304が押圧部材306を介して作用するブレーキパッドの凹部56aまたは窪み(
図5も参照)は、左側のディスクブレーキの場合には、バックプレート51において(バックプレートの中心に対して)大幅に左側に位置しており、右側のディスクブレーキの場合には、バックプレートにおいて(バックプレートの中心に対して)大幅に右側に位置している。凹部56aは、押圧面の下のバックプレートにおいて全体的または部分的に進入側に位置しているため、作用面は、周方向においてブレーキディスクに対して偏心的に位置しているもしくは中心がブレーキディスクに対してセンタリングされて位置合わせされてはいない。
【0070】
さらに述べておくと、ブレーキパッド5,6は押さえばね7を有していてよく、押さえばね7には、押さえばね7を本来のブレーキパッドに取り付けることができるカバー7aが付属している。
【符号の説明】
【0071】
1 ディスクブレーキ
2 ブレーキキャリア
201 緊締側
202 反応側
203 緊締側のパッド溝
204 反応側のパッド溝
205,206 横桁
207,208 縦桁
209,210 進入側のキャリア突起
211,212 進出側のキャリア突起
213,214 滑り軸受
3 ブレーキキャリパ
301 緊締側
302 反応側
303 開口
304 押圧ピストン
305 円筒部
306 押圧部材
307 押圧面
308 付加部
4 ブレーキディスク
5,6 ブレーキパッド
51,61 バックプレート
52,62 摩擦材
53 受け面
54 リブ
55 凹部、窪み
56 突出部
56a 窪み
M5 重心線
M51 中心軸線
M304 中心軸線
A4 回転軸線
D 回転方向
【国際調査報告】