(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-01
(54)【発明の名称】単一の液滴を使用した、流体のマルチモダリティの特徴付け
(51)【国際特許分類】
G01N 29/024 20060101AFI20220525BHJP
G01N 29/02 20060101ALI20220525BHJP
G01N 29/032 20060101ALI20220525BHJP
G01N 21/00 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
G01N29/024
G01N29/02 501
G01N29/032
G01N21/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560722
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(85)【翻訳文提出日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 US2020027396
(87)【国際公開番号】W WO2020210439
(87)【国際公開日】2020-10-15
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521448008
【氏名又は名称】エーダブリュイー テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シンハ、ディペン エヌ
(72)【発明者】
【氏名】エスピナ、ピーター ジー
【テーマコード(参考)】
2G047
2G059
【Fターム(参考)】
2G047AA04
2G047BC02
2G047BC03
2G047CA04
2G047CB03
2G047GG32
2G059AA05
2G059BB13
2G059CC16
2G059DD13
2G059EE01
2G059EE07
2G059EE16
2G059GG02
2G059GG08
2G059KK02
(57)【要約】
小標本サンプルに対する複数の異なる測定を行い、ポイントオブケアで、リアルタイムで検査および診断を可能にする装置について説明する。上記装置の中核は、単一の液滴内の、音速および音の減衰を判定するために、音響共振を使用する超音波共振器キャビティを含む。音響的測定は、厚み縦モードで動作する小型の圧電結晶トランスデューサの電気的なインピーダンスを使用し、反射モードで行われる。この手法と、電磁場、電場、および磁場との組み合わせによって、複数のタイプの測定を同じ共振器キャビティを使用して行うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の液滴を光学的および超音波的に特徴付ける装置であって、
厚み縦モードで動作するのに有効である圧電結晶であって、それに当たる音響波に応じた電気的なインピーダンスを有する、圧電結晶と、
金属ホルダであって、前記金属ホルダと電気的に接触するように、前記圧電結晶を受容して保持するように構成されるキャビティを有する前面を有する、金属ホルダと、
第1の表面および第2の表面を有する、平坦で光学的に透明な基板であって、前記第1の表面が、前記金属ホルダの前記前面と平行で、選択される距離に配置され、それにより、音響共振キャビティであって、前記音響共振キャビティ内に、前記単一の液滴が表面張力によって保持される、音響共振キャビティを形成する、平坦で光学的に透明な基板と、
前記基板の前記第1の表面を通る、前記基板の前記第2の表面上への光放射と、前記液滴内への光放射とを方向付ける、光放射の発生源と、
選択される周波数範囲に亘って、前記圧電結晶を掃引し、それにより、周波数で等間隔に配置される一連の共振が前記液滴内に発生する、音響ファンクションジェネレータと、
周波数の関数として、前記圧電結晶の前記インピーダンスを測定する、インピーダンスアナライザと、
前記インピーダンスアナライザから出力を受信し、等間隔に配置される共振間の間隔を判定するシグナルプロセッサであって、前記等間隔に配置される共振から、前記液滴内の音速および音の減衰が判定される、シグナルプロセッサと
を備える装置。
【請求項2】
前記基板の前記第1の表面であって、前記基板の前記第1の表面上に、前記液滴が配置されている、前記基板の前記第1の表面の近傍に、前記金属ホルダの前記前面を位置決めする機械式装填装置をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記圧電結晶は、前記音響ファンクションジェネレータによって、約5MHzと20MHzとの間で掃引可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記光学的に透明な基板は、水晶を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記光放射の発生源は、波長調整可能なダイオードレーザまたは高出力の多波長発光ダイオードを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記光放射の発生源は、光放射のパルス発生源を備える、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記圧電結晶の電気的出力を増幅させる広帯域増幅器をさらに備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
単一の液滴を電気的および超音波的に特徴付ける装置であって、
厚み縦モードで動作するのに有効である圧電結晶であって、それに当たる音響波に応じた電気的なインピーダンスを有する、圧電結晶と、
金属ホルダであって、前記金属ホルダと電気的に接触するように、前記圧電結晶を受容して保持するように構成されるキャビティを有する前面を有する、金属ホルダと、
第1の表面および第2の表面を有する平坦な基板であって、前記第1の表面が、前記金属ホルダの前記前面と平行で、選択される距離に配置され、それにより、音響共振キャビティであって、前記音響共振キャビティ内に、前記単一の液滴が表面張力によって保持される、音響共振キャビティを形成し、前記第1の表面が、並列または同心の複数の導電部をその上にさらに有する、平坦な基板と、
選択される周波数範囲に亘って、前記圧電結晶を掃引し、それにより、周波数で等間隔に配置される一連の共振が前記液滴内に発生する、音響ファンクションジェネレータと、
前記複数の導電部間に電場を供給する電源と、
周波数の関数として、前記圧電結晶の前記インピーダンスを測定する、インピーダンスアナライザと、
前記インピーダンスアナライザから出力を受信し、等間隔に配置される共振間の間隔を判定するシグナルプロセッサであって、前記等間隔に配置される共振から、前記液滴内の音速および音の減衰が判定される、シグナルプロセッサと
を備える装置。
【請求項9】
前記基板の前記第1の表面であって、前記基板の前記第1の表面上に、前記液滴が配置されている、前記基板の前記第1の表面の近傍に、前記金属ホルダの前記前面を位置決めする機械式装填装置をさらに備える、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記圧電結晶は、前記音響ファンクションジェネレータによって、約5MHzと20MHzとの間で掃引可能である、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記電源は、AC電源を備える、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
前記複数の導電部は、インターデジット型の導電部を備える、請求項8に記載の装置。
【請求項13】
単一の液滴を磁気的および超音波的に特徴付ける装置であって、
厚み縦モードで動作するのに有効である圧電結晶であって、それに当たる音響波に応じた電気的なインピーダンスを有する、圧電結晶と、
金属ホルダであって、前記金属ホルダと電気的に接触するように、前記圧電結晶を受容して保持するように構成されるキャビティを有する前面を有する、金属ホルダと、
第1の表面および第2の表面を有する平坦な基板であって、前記第1の表面が、前記金属ホルダの前記前面と平行で、選択される距離に配置され、それにより、音響共振キャビティであって、前記音響共振キャビティ内に、前記単一の液滴が表面張力によって保持される、音響共振キャビティを形成する、平坦な基板と、
選択される周波数範囲に亘って、前記圧電結晶を掃引し、それにより、周波数で等間隔に配置される一連の共振が前記液滴内に発生する、音響ファンクションジェネレータと、
平坦で並列の、間隔をおいて配置される2つのコイルであって、前記2つのコイルの一方が、前記基板の前記第1の表面および前記第2の表面のそれぞれの上か、またはそれぞれの近傍に、それに対して平行に配置され、前記2つのコイルのそれぞれが、前記コイルの他方の軸と同一線上の軸を有する、平坦で並列の、間隔をおいて配置される2つのコイルと、
前記基板の前記第1の表面および前記第2の表面に垂直な均一の磁場が、各コイルによって同じ方向に発生するように、前記2つのコイルのそれぞれに対して、電流を供給する電流の発生源と、
周波数の関数として、前記圧電結晶の前記インピーダンスを測定する、インピーダンスアナライザと、
前記インピーダンスアナライザから出力を受信し、等間隔に配置される共振間の間隔を判定するシグナルプロセッサであって、前記等間隔に配置される共振から、前記液滴内の音速および音の減衰が判定される、シグナルプロセッサと
を備える装置。
【請求項14】
前記基板の前記第1の表面であって、前記基板の前記第1の表面上に、前記液滴が配置されている、前記基板の前記第1の表面の近傍に、前記金属ホルダの前記前面を位置決めする機械式装填装置をさらに備える、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記圧電結晶は、前記音響ファンクションジェネレータによって、約5MHzと20MHzとの間で掃引可能である、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記電流の発生源は、パルス電流の発生源である、請求項13に記載の装置。
【請求項17】
単一の液滴を電磁的および超音波的に特徴付ける装置であって、
厚み縦モードで動作するのに有効である圧電結晶であって、それに当たる音響波に応じた電気的なインピーダンスを有する、圧電結晶と、
金属ホルダであって、前記金属ホルダと電気的に接触するように、前記圧電結晶を受容して保持するように構成されるキャビティを有する前面を有する、金属ホルダと、
第1の表面および第2の表面を有する平坦な基板であって、前記第1の表面が、前記金属ホルダの前記前面と平行で、選択される距離に配置され、それにより、音響共振キャビティであって、前記音響共振キャビティ内に、前記単一の液滴が表面張力によって保持される、音響共振キャビティを形成する、平坦な基板と、
選択される周波数範囲に亘って、前記圧電結晶を掃引し、それにより、周波数で等間隔に配置される一連の共振が前記液滴内に発生する、音響ファンクションジェネレータと、
ミリ波の電磁放射の発生源であって、前記電磁放射が前記単一の液滴に当たる、ミリ波の電磁放射の発生源と、
前記ミリ波の電磁放射の発生源に電力を供給する電源と、
周波数の関数として、前記圧電結晶の前記インピーダンスを測定する、インピーダンスアナライザと、
前記インピーダンスアナライザから出力を受信し、等間隔に配置される共振間の間隔を判定するシグナルプロセッサであって、前記等間隔に配置される共振から、前記液滴内の音速および音の減衰が判定される、シグナルプロセッサと
を備える装置。
【請求項18】
前記基板の前記第1の表面であって、前記基板の前記第1の表面上に、前記液滴が配置されている、前記基板の前記第1の表面の近傍に、前記金属ホルダの前記前面を位置決めする機械式装填装置をさらに備える、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記圧電結晶は、前記音響ファンクションジェネレータによって、約5MHzと20MHzとの間で掃引可能である、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記ミリ波の電磁放射の発生源は、30GHzと300GHzとの間の周波数を発生させる、請求項17に記載の装置。
【請求項21】
前記電源は、選択される周波数範囲に亘って、前記ミリ波の電磁放射の発生源を波長調整するのに有効である、請求項17に記載の装置。
【請求項22】
前記ミリ波の電磁放射を前記単一の液滴上に方向付ける導波路をさらに備える、請求項17に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、Dipen N. SihnaおよびPeter G. Espinaによる、「単一の液滴を使用した、マルチモダリティの流体の特徴付け」についての、2020年4月8日付けで出願された米国特許出願第16/843,669号、およびDipen N. SihnaおよびPeter G. Espinaによる、「単一の液滴を使用した、マルチモダリティの流体の特徴付け」についての、2019年4月12日付けで出願された米国特許仮出願第62/833,467号の優先権を主張し、それら特許出願のすべての記載内容を、それらが開示および教示するすべてについて、本明細書で参照することにより、本明細書によって、具体的に援用する。
【背景技術】
【0002】
利用可能な流体が数マイクロリットル以下しか存在していない場合には、流体の物理特性の分析および特徴付けのための、存在している手法は少ない。小量でしか利用可能でない体液には、例として、血液、涙滴、汗、唾液、および喀痰が含まれる。尿は通常、より大きな量で利用可能であるが、可能な場合、小さいサンプルでのみ使用することが望ましい。このような流体に対する測定は、光学系または化学系である。
【発明の概要】
【0003】
血液サンプルは一般に、複数の手法、すなわち、例示される生化学的分析、分子プロファイル、および細胞評価を使用して分析される。分析のタイプ毎に、同じ被験者からの異なる流体のサンプルが使用され、これらが、異なる機器を使用して並列に行われる。全血球計算または細菌増殖の分析については、光学顕微鏡法が標準的な手順である。一例として、唾液を使用した他の医療診断検査は、DNA抽出を除いて、一般的でない。
【0004】
本発明の目的によれば、本明細書において実施形態として示され、概括的に説明されるように、本明細書の、単一の液滴を光学的および超音波的に特徴付ける装置の一実施形態は、厚み縦モードで動作するのに有効である圧電結晶であって、それに当たる音響波に応じた電気的なインピーダンスを有する、圧電結晶と、金属ホルダであって、金属ホルダと電気的に接触するように、圧電結晶を受容して保持するように構成されるキャビティを有する前面を有する、金属ホルダと、第1の表面および第2の表面を有する、平坦で光学的に透明な基板であって、第1の表面が、金属ホルダの前面と平行で、選択される距離に配置され、それにより、音響共振キャビティであって、音響共振キャビティ内に、単一の液滴が表面張力によって保持される、音響共振キャビティを形成する、平坦で光学的に透明な基板と、基板の第1の表面を通る、基板の第2の表面上への光放射と、液滴内への光放射とを方向付ける、光放射の発生源と、選択される周波数範囲に亘って、圧電結晶を掃引し、それにより、周波数で等間隔に配置される一連の共振が液滴内に発生する、音響ファンクションジェネレータと、周波数の関数として、圧電結晶のインピーダンスを測定する、インピーダンスアナライザと、インピーダンスアナライザから出力を受信し、等間隔に配置される共振間の間隔を判定するシグナルプロセッサであって、等間隔に配置される共振から、液滴内の音速および音の減衰が判定される、シグナルプロセッサとを含む。
【0005】
本発明の目的によれば、本明細書において実施形態として示され、概括的に説明されるように、本明細書の、単一の液滴を電気的および超音波的に特徴付ける装置の一実施形態は、厚み縦モードで動作するのに有効である圧電結晶であって、それに当たる音響波に応じた電気的なインピーダンスを有する、圧電結晶と、金属ホルダであって、金属ホルダと電気的に接触するように、圧電結晶を受容して保持するように構成されるキャビティを有する前面を有する、金属ホルダと、第1の表面および第2の表面を有する平坦な基板であって、第1の表面が、金属ホルダの前面と平行で、選択される距離に配置され、それにより、音響共振キャビティであって、音響共振キャビティ内に、単一の液滴が表面張力によって保持される、音響共振キャビティを形成し、第1の表面が、並列または同心の複数の導電部をその上にさらに有する、平坦な基板と、選択される周波数範囲に亘って、圧電結晶を掃引し、それにより、周波数で等間隔に配置される一連の共振が液滴内に発生する、音響ファンクションジェネレータと、複数の導電部間に電場を供給する電源と、周波数の関数として、圧電結晶のインピーダンスを測定する、インピーダンスアナライザと、インピーダンスアナライザから出力を受信し、等間隔に配置される共振間の間隔を判定するシグナルプロセッサであって、等間隔に配置される共振から、液滴内の音速および音の減衰が判定される、シグナルプロセッサとを含む。
【0006】
本発明の目的によれば、本明細書において実施形態として示され、概括的に説明されるように、本明細書の、単一の液滴を磁気的および超音波的に特徴付ける装置の一実施形態は、厚み縦モードで動作するのに有効である圧電結晶であって、それに当たる音響波に応じた電気的なインピーダンスを有する、圧電結晶と、金属ホルダであって、金属ホルダと電気的に接触するように、圧電結晶を受容して保持するように構成されるキャビティを有する前面を有する、金属ホルダと、第1の表面および第2の表面を有する平坦な基板であって、第1の表面が、金属ホルダの前面と平行で、選択される距離に配置され、それにより、音響共振キャビティであって、音響共振キャビティ内に、単一の液滴が表面張力によって保持される、音響共振キャビティを形成する、平坦な基板と、選択される周波数範囲に亘って、圧電結晶を掃引し、それにより、周波数で等間隔に配置される一連の共振が液滴内に発生する、音響ファンクションジェネレータと、平坦で並列の、間隔をおいて配置される2つのコイルであって、2つのコイルの一方が、基板の第1の表面および第2の表面のそれぞれの上か、またはそれぞれの近傍に、それに対して平行に配置され、2つのコイルのそれぞれが、コイルの他方の軸と同一線上の軸を有する、平坦で並列の、間隔をおいて配置される2つのコイルと、基板の第1の表面および第2の表面に垂直な均一の磁場が、各コイルによって同じ方向に発生するように、2つのコイルのそれぞれに対して、電流を供給する電流の発生源と、周波数の関数として、圧電結晶のインピーダンスを測定する、インピーダンスアナライザと、インピーダンスアナライザから出力を受信し、等間隔に配置される共振間の間隔を判定するシグナルプロセッサであって、等間隔に配置される共振から、液滴内の音速および音の減衰が判定される、シグナルプロセッサとを含む。
【0007】
本発明の目的によれば、本明細書において実施形態として示され、概括的に説明されるように、本明細書の、単一の液滴を電磁的および超音波的に特徴付ける装置の一実施形態は、厚み縦モードで動作するのに有効である圧電結晶であって、それに当たる音響波に応じた電気的なインピーダンスを有する、圧電結晶と、金属ホルダであって、金属ホルダと電気的に接触するように、圧電結晶を受容して保持するように構成されるキャビティを有する前面を有する、金属ホルダと、第1の表面および第2の表面を有する平坦な基板であって、第1の表面が、金属ホルダの前面と平行で、選択される距離に配置され、それにより、音響共振キャビティであって、音響共振キャビティ内に、単一の液滴が表面張力によって保持される、音響共振キャビティを形成する、平坦な基板と、選択される周波数範囲に亘って、圧電結晶を掃引し、それにより、周波数で等間隔に配置される一連の共振が液滴内に発生する、音響ファンクションジェネレータと、ミリ波の電磁放射の発生源であって、電磁放射が単一の液滴に当たる、ミリ波の電磁放射の発生源と、ミリ波の電磁放射の発生源に電力を供給する電源と、周波数の関数として、圧電結晶のインピーダンスを測定する、インピーダンスアナライザと、インピーダンスアナライザから出力を受信し、等間隔に配置される共振間の間隔を判定するシグナルプロセッサであって、等間隔に配置される共振から、液滴内の音速および音の減衰が判定される、シグナルプロセッサとを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の利益および利点は、糞便材料を含み得る小液滴サイズの標本サンプルに対して複数の異なる測定を行い、ポイントオブケアで、リアルタイムで検査および診断を可能にする装置を含むが、それに限定されるものでない。
【0009】
本明細書の一部において援用され、本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の実施形態を示し、その説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】反射モード掃引周波数音響干渉法(SFAI)を使用して単一の液滴内の音速を判定する装置の一実施形態の側面図の概略図である。
【
図2A】液体が存在していない場合の、周波数の関数としての、圧電結晶の電気的インピーダンスの実部の周波数応答のグラフである。
【
図2B】結晶と基板との間に液体(水)が存在している場合の、周波数の関数としての、圧電結晶の電気的インピーダンスの実部の周波数応答のグラフであり、共振線のそれぞれが、周波数で等間隔に配置される周期スペクトルを示すグラフである。
【
図2C】本明細書の、
図2B中の基準線が減算される後の、
図2Bに示す共振の周波数間隔の関数としての、自己相関振幅のグラフである。
【
図2D】振幅が指数関数的に減衰している、(時間的に)等間隔に配置される一連のピークを示す、時間の関数としての、データの高速フーリエ変換の振幅のグラフである。
【
図3】反射モード掃引周波数音響干渉法を使用して、液滴内の音速に対する、液滴標本に含まれる特定の種の光吸収の効果を測定する装置の一実施形態の側面図の概略図であり、ここで、基板は、広域光スペクトルに亘って透明な材料を備え、基板の上方に配置される流体液滴標本は、基板の下方から光刺激を受け得る。
【
図4】基板下に配置される光源がパルスでオンおよびオフにされた場合の、時間の関数としての、液滴の加熱および冷却のグラフであり、液体が加熱される速度は、液体の熱伝導率および拡散率に関係する。
【
図5A】電極が基板の表面上に形成されるか、または基板の表面に取り付けられ、AC電源によって給電されることを除いて、本明細書の
図3のものと同様な装置を利用して、電場を音響的測定と組み合せた、装置の一実施形態の斜視図の概略図である。
【
図5B】インターデジット型電極の実施形態の上面図の概略図であり、より高い場強度が必要な場合にも使用され得る、インターデジット型電極の一実施形態の上面図の概略図である。
【
図5C】インターデジット型電極の実施形態の上面図の概略図であり、より高い場強度が必要な場合にも使用され得る、インターデジット型電極の一実施形態の上面図の概略図である。
【
図6】(a)が大腸菌であり、(b)が表皮ブドウ球菌であり、(c)が緑膿菌である、血液中で増殖する3つのタイプの細菌を示すグラフであり、傾きの変化は、3つの異なる細菌についての異なる増殖段階での栄養素の消耗を示し、1回につき1つの細菌サンプルで、小さな分光光度セルにおいてSFAIを使用し、細菌のタイプ毎に、2つの異なる濃度を調査した。
【
図7】電場を音響的測定と組み合わせた、装置の別の実施形態の斜視図の概略図であり、様々な分子および極性材料は、基板の表面上を伝搬する表面電荷と相互作用する弾性表面波(SAW)の発生を示す。
【
図8A】磁場を音響的測定と組み合わせた、装置の一実施形態の側面図の概略図であり、2つの平坦なコイルを基板の両側に配置することにより発生する、DCまたはパルス状の均一磁場を示す。
【
図8B】基板上に取り付けられる2つのコイルの一方の斜視上面図の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
簡潔に言えば、本プロセスの実施形態は、小標本サンプルに対して複数の異なる測定を行い、ポイントオブケアで、リアルタイムで検査および診断を可能にする装置を含む。装置の中核は、単一の液滴内の音速を判定するために音響共振が使用される超音波共振器キャビティを含む。音響的測定が、厚み縦モードにおいて動作する小型の圧電結晶トランスデューサの電気的インピーダンスを使用して反射モードで行われる。この手法と、光学的装置、電気的装置、および磁気的装置との組み合わせによって、複数のタイプの測定を行うことができる。
【0012】
次に、本発明の本実施形態への参照を詳細に行い、その例を添付図面において示す。図中、同様な構造は、同じ参照文字を使用して識別される。図は、本発明の特定の実施形態を表す目的で提示されており、それに本発明を限定することを意図するものでないことが理解されるであろう。次に、
図1に移れば、掃引周波数音響干渉法(SFAI)を使用して、単一の液滴内の、音速および減衰を判定するための、装置10の一般化された一実施形態の側面図の概念図を示す。この測定は、以下に説明する、組み合わせられる光学的/音響的、電気的/音響的、および磁気的/音響的測定の組み合わせについての、基本的な測定を提供する。
【0013】
音響的測定は、厚み縦モードで動作し、5MHzと20MHzとの間の周波数範囲を有する、直径0.5mmの、単一の圧電結晶12の電気的インピーダンスを測定することにより、反射モードで行われる。20MHzの圧電結晶は、薄くて脆く、物理的な支持体は、機械的安定性のため、および、結晶の裏面を機械的に装填することによる帯域幅拡張のためのいずれにも必要である。そうでなければ、その結晶は、非常に狭い帯域幅内で共振することとなり、より広い帯域幅が必要となる。
【0014】
圧電結晶12の表面積は小さいので、結果として発生する信号は同様に小さい。したがって、その信号は、外部の電気雑音のピックアップから保護されなければならない。金属ハウジング14は、電気的遮蔽(ファラデーケージ)としての役割を果たし、圧電結晶を取り扱うためのホルダとしての役目も果たす。一般に、マイクロミニチュア同軸ケーブルは、雑音のピックアップをさらに低減するために、圧電結晶に電気的に接続される。図示されるような、長尺の金属管は、利便性のためである。
【0015】
圧電結晶12は、ホルダ14の前面16の一部分を占める。圧電結晶は、金属ハウジング14などのハウジングによって支持されるエポキシ材料に埋め込まれてもよい。明らかに、他のハウジングおよび結晶の取り付け構成を想定することができる。その小さなサイズのため、圧電結晶12は、使用される周波数領域に亘って、点光源として作用する。これは、音響ビームを広げ、多少のエッジ効果を生じる傾向にある。したがって、その中に埋め込まれる結晶よりも大きなホルダ14の前面16は、より良好な共振器キャビティを創出する。実用上、結晶面をそれ自体で、その周りのいずれの余分な材料もなしで使用することが可能であるが、商用の結晶は、機械的安定性のためにホルダで販売されている。
【0016】
圧電結晶ホルダ14は、平坦な基板22の上面20の近傍に、垂直方向に支持される。それは、基板22に対して任意の角度で方向付けられるか、または、必要な場合、基板の下に支持されることもある。液滴24(必要なのは、サブマイクロリットルの流体だけである)はまず、基板22の表面20上に配置され、その後に、結晶ホルダ14が、単純な機械式装填装置(
図1中に示さず)を使用し、液滴24の上に位置決めされ、ここで、液滴は、表面張力によって保持される。液滴は、自立性を有しているので、容器は必要とされず、サンプル調製をはるかに簡単なものにする。
【0017】
リターンロスブリッジと、そのブリッジをバランスさせるために使用される整合ネットワーク(並列なコンデンサと抵抗器との組み合わせ)とを含み得るインピーダンスアナライザ26は、マルチプレクサ30を介して、ミニチュア同軸ケーブル28(
図1に詳細に示さず)を介して圧電結晶12に接続される。オミクロン(Omicron)社によるボード(Bode)100システムなどの商用機器は、数Hzと50MHzとの間の周波数範囲に亘って、圧電結晶12の電気的インピーダンスを測定することが可能である。ベクターネットワークアナライザバージョンは、周波数の関数として、インピーダンスの実部および虚部の値を提供し、これは、振幅および位相情報を提供する。このような機器は、電気的ノイズのピックアップを低減するのに重要な、選択可能なフィルタの帯域幅とともに、トラッキングバンドパスフィルタ機能を提供する。
【0018】
基板22は、任意の材料からなってよいが、有利なものとして、低光吸収率を有する、化学的に安定した材料を選択することができる。圧電結晶面、すなわちホルダ14の前面16と、基板22との間の、サブmmの小空間32は、共振器キャビティを形成する。可変な正弦波の励起周波数が、マルチプレクサ30を介して波形ジェネレータ34から圧電結晶12に印加され、圧電結晶と基板との間を伝搬する縦波を圧電結晶から発生させる。定在波が液滴内に生成される周波数(共振周波数)は、液体の特性(音速)、および圧電結晶と基板との間の間隔と関係がある。流体内の対応する波長の整数倍が流体内の経路長と等しい周波数となる度に、共振条件が設定される。この共振は、結晶の電気的インピーダンスに影響を及ぼし、インピーダンスアナライザによって検出される。
【0019】
図2A~2Dは、水が基板22と圧電結晶12との間の流体である、
図1の装置に示される、広帯域の小圧電結晶を使用して得られたデータを示す。
【0020】
図2Aは、液体が存在していない場合の、周波数の関数としての、圧電結晶12の電気的インピーダンスの実部の周波数応答のグラフである。測定されるインピーダンスは、(振幅および位相を測定することと同等な)実部および虚部成分をいずれも有する複素値である。結晶12と基板22との間に液体(水)が存在している場合の、周波数で等間隔に配置される一連の周期的な共振を
図2Bに示す。音速は、関係式
音速=2×液体経路長×周波数間隔
で示される。
【0021】
この周波数間隔を判定するために、一般的な2つの手順がある。1つは、スペクトルから基準線を減算した後に、
図2Bに示すようなスペクトルの自己相関を求めることである。自己相関の結果は、
図2Cのグラフに示され、ここでは、自己相関の振幅は、周波数間隔に対してプロットされている。第1のピークの位置は、音速を算出するのに必要な情報を提供する。反射モードのスペクトルの分析はまた、周波数領域での測定から時間領域での測定に測定を変換する、データの高速フーリエ変換(FFT)を行うことによって実現されてもよい。FFTの結果は、
図2Dに示され、ここでは、FFTの振幅は、μs単位の時間でプロットされている。
図2Dは、自己相関プロットには存在しない特徴、すなわち、振幅が指数関数的に減衰している、(時間において)等間隔に配置される一連のピークを示している。このプロットは、液体24を介して圧電結晶12と基板22との間を行き来して反射するパルスと同等である。ここでは、第1のピークは、圧電結晶から基板に、そして結晶へ戻る、第1のパルスの伝搬を表す。経路長が分かっている場合、第1のピークまでの時間測定は音速を提供する。残りのピークは、後続エコーである。液体内の音の吸収によって、エネルギーは、損失され、また、振幅は、各エコーに対して、指数関数的に減衰しているように見え、これは、同じ測定からの吸音度の測定を提供する。同じ測定は、短時間パルス(<1μs)を送って、超高速デジタイザ上で戻りエコーを観察することにより、時間領域内で直接行うことも可能である。マルチGHZサンプリングレートを有するデジタイザが使用されないと、測定の精度は悪化する。さらに、圧電結晶の帯域全体からの電気雑音は、信号とともに記録される。
【0022】
通常の商用機器は、FFT機能、自己相関機能のいずれも提供するものでないので、これらのデータ操作は、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)もしくはマイクロプロセッサにおいて、または適切なソフトウェアを有するラップトップによって、行われる。以下の
図3の装置は、このハードウェアの使用を示している。
【0023】
通常、小さいサイズの圧電結晶が採用されるので、実際の信号は、小さく、また、
図2Dに示すエコー信号を回復するためには、広帯域増幅器および多数の平均化を行う必要がある。処理利得(利得=周波数帯域幅×励起の持続時間)は、励起パルスが約1μs以下である、時間領域における直接パルス測定の場合、小さい。対照的に、周波数掃引は通常、1sより長い時間に亘って行われ、処理利得で約10
6倍(1sに対して1μs)になる。さらに、周波数掃引の測定での各周波数ステップにおいて、測定の帯域幅は、100Hzと1kHzとの間に制限される場合があり、これは、固定の狭帯域バンドパスフィルタが周波数掃引全体において各周波数測定に追従するトラッキングフィルタの使用と同等である。帯域幅10MHzに亘る周波数掃引における周波数ステップ測定毎の帯域幅を1kHzと仮定した場合、信号対雑音比利得は、10MHz/1kHz、すなわち10
5倍になる。したがって、周波数掃引アプローチは、測定に関係する小信号を検出するうえで大きな役割を果たす。
【0024】
A.光学的測定と音響的測定との組み合わせ
図3は、液滴内の音速に対する、液滴標本における特定種の光吸収の効果を測定する装置を示している。基板22が広範なスペクトルの光に亘って透明である材料を備えている場合、基板の上方に配置される流体液滴標本24は、基板の下からの光刺激を受けることができる。このような基板の例は、有効範囲220nm~3800nmを有するインフラシル(Infrasil)(商標)社のクォーツ(Quartz)を含むが、それに限定されない。赤外(IR)および近IR放射は、ほとんどのガラスを貫通する。光源36は、ドライバ40によって給電され、デジタルシグナルプロセッサおよびコントローラ42、ならびに、データ処理をも提供するプロセッサ44によって制御される、LED Engin社から入手可能なものなどの、波長調整可能なダイオードレーザ(tunable diode laser)または高出力の多波長LEDであり得る。1つのこのようなLED光源は、700mAの電流で駆動したときに、以下の波長、赤色(80ルーメン)、緑色(140ルーメン)、青色(33ルーメン)、白色(210ルーメン)、アンバー色(70ルーメン)、シアン色(95ルーメン)、および紫色(0.90W)を提供する。必要な場合、光パワーを増加させるために、複数のLEDを組み合わせ得る。波長は、個々に選択されてパルス状にすることができ、または、波長の一部もしくは全部が、一緒に組み合わせられてもよい。このようなLED光源は、様々のタンパク質および分子を含む任意の生物学的流体か、または励起範囲内に吸収帯を有する任意の材料の励起に使用することできる。レンズ38は、光の焦点を液滴24内に合わせるために使用されてもよい。
【0025】
XY位置決め装置48は、圧電結晶12を担持するホルダ14がサンプル液滴24の上に正確に位置決めされることを可能にし、また、Z位置決め装置50は、ホルダ14の前面16と、基板22の上面20との間の距離32が正確に選択されることを可能にする。
【0026】
流体の任意の成分が特定の波長によって選択的に励起されたと、吸収されたエネルギーは、流体を加熱し、これは、その中の音速を変える。この変化は、音速測定において百万分の1よりも大きな感度で、反射モード音響測定を使用して検出することが可能である。したがって、選択的励起は、対象とする分子または成分の存在を検出することが可能である。
【0027】
図4は、白色パルス光源がオンおよびオフした結果を示している。光がオンになると、液体(水)が加熱し、そして、音速が変化し、そしてその後に、光がオフになると、冷却する。液体が加熱する速度は、液体の熱伝導率および熱拡散率に関係する。
【0028】
LEDまたは任意の他の適切な光源からの光は、選択される波長または波長域の短パルスによって励起されてもよく、これは、光音響測定をもたらす。LEDは、パルス増幅器からの電流パルスによって、数十ピコ秒~数十ナノ秒の範囲内でパルス状とすることができる。上記パルスは通常、数kHz~数十kHzの一定速度で繰り返され、これは、信号の平均化、および、信号対雑音比の点でのより良好な信号品質を可能にする。光が、流体または任意のその内部成分(たとえば、生体分子、タンパク質、結合抗原等)によって吸収されると、液体は、高速加熱されて膨張し、衝撃波を生じる。この衝撃波は、流体液滴内に発生する圧力パルスであり、圧電結晶、またはホルダの前面、および基板によって形成される共振器キャビティ内で行き来して反射する。共振(定在波)は、外部励起がキャビティ内で行き来して反射する音響信号の時間と一致するときに、キャビティ内または任意のシステム内で起こる。一度、光音響信号が光吸収によって流体内に発生すると、光音響信号は、全方向に進む。しかし、共振器キャビティの2つの壁(結晶面および基板)に垂直な方向に進む信号は、その信号が減衰する前に何回も行き来して反射するとともに、強度が増加する。品質係数(Q値)は、キャビティ品質の尺度であり、また、信号が完全に減衰する前に行き来して反射する回数を設定する。しかし、信号が1サイクルを完了する度に、信号は強くなり、その後に、信号は減衰せずに、振幅が着実に増大する、すなわち、信号は、減衰するのと同時に増加し続け、そして、信号は、平衡が存在するようになるまで、特定の最大値に増幅される。キャビティのQ値は、最大100になることがあり、これは、信号が、少なくとも100倍に増幅され得ることを意味する。したがって、LEDパルスの反復率のタイミングを合わせることにより、この機械的キャビティの利得を利用することができ、すなわち、反復率は、小信号を強化するとともに、本来の基板の共振振動のいずれかにタイミングを合わせることができる。その後、増幅された小信号はさらに、
図3において、増幅器52によって増幅され、そして、高速デジタイザ54によってデジタル化される。LEDのパルスの反復率は、さらなる信号の増幅が行われるように同期させることができる。この、パルスおよび共振の繰り返しのケースでは、信号は、複数のサンプルから構築されるので、信号を捕捉するために、はるかに遅いデジタイザを使用することができる。
【0029】
この、光学的方法および音響的方法の組み合わせ(光音響測定)は、10億分の1の感度を有することができる。
【0030】
いくつかの音響的測定については、その測定を蒸留水の液滴の測定精度と比較すると、より良好な測定精度を得ることができる。したがって、
図3の装置は、調査すべきサンプル液滴の近傍に配置されるが、互いに接触するものでない、蒸留水の液滴に対する第1の実行測定のプロトコルを含んでもよい。周波数の関数としての、音の減衰などの第1の測定は、蒸留水の液滴に対して行われてもよく、その後に、検査サンプルに対する測定が続く。蒸留水は、水滴および検査サンプルのいずれもが同じ温度であるので、既知の基準を提供する。このようにして、過減衰が、周波数の関数として、絶対測定を行うよりも大きな分解能で測定されてもよい。本開示において説明する他の測定もすべて、基準媒体(reference medium)を有することにより利益を受ける。
【0031】
B.電気的測定と音響的測定との組み合わせ
(i)
図5Aは、電場を音響的測定と組み合わせた、
図3の装置と同様な装置を示す。間隔をおいた並列の2つの導電体または電極56a、56bは、基板24上に堆積させるか、または基板24に取り付けられ、また、基板22の表面20に対して交流電場を供給するためのAC電源58を使用して給電される。導電体56a、56b上か、または導電体56a、56b間に配置される、液滴24、および圧電結晶12を担持するホルダ14が示されている。電極56aおよび56bがコンデンサとして作用することに留意すると、それらの開放端の接地は必要でない。重要なのは、電極間に発生する電場である。より高い場の強度が必要な場合、
図5Bおよび5Cにそれぞれ示される、インターデジット型電極(Interdigitated electrodes:IDT)60および62を使用することもできる。AC電源58は、ドライバ64およびコントローラ42によって制御される。ドライバ64およびAC電源58を除いて、電子制御および測定が、上記
図3において説明される装置を使用して行われる。
【0032】
電極56aおよび56b(ならびに60および62)は、光学的に透明に形成することができる。酸化インジウムスズ(ITO)などの材料は、その薄膜が通常、物理蒸着によって表面上に堆積して、光学的に透明な電極を提供する。
図5Aに示される並列電極は、最高20GHzの周波数で励起され得る伝送線として形成することもできる。通常、3つの並列線が使用され、2つの外部線は接地され、および中央の導電体は信号線として使用される。多くの高分子およびタンパク質構造は、GHzの電磁波によって強い影響を受け、そして、エネルギーは、伝送線から吸収されることがあり、その結果は、上述のような、光吸収に関する超音波測定と同様に、特定周波数での流体内の音速および超音波吸収の変化となる。
【0033】
小型のミリ波の発生源は現在、市場で入手可能である。ミリ波は、30GHzと300GHzとの間に定義される電磁波であり、また、空気中での波長10mm~1mmに対応する。例として、802.11ワイファイ(Wi-Fi)(登録商標)標準による高速無線通信は、60GHzで動作する。電源67によって給電され、デジタルシグナルプロセッサおよびコントローラ42、ならびにプロセッサ44によって制御されるミリ波の発生源65は、極めて小さく、および、
図5Aに示すように、液滴24に直接照射するために使用することができる。このような発生源は、様々な周波数範囲で利用可能であり、いくつかは、数GHzの周波数範囲に亘って波長調整されてもよい。電磁エネルギーは、ミリ波の発生源65の一部として、小型の導波路を通過してもよい。より高い周波数範囲は、生体細胞、高分子、およびタンパク質構造と、良好に相互作用する。細菌を含む多くの生体細胞は、サイズが減少し、また、代謝が変化し、それらはいずれも、これらの細胞を含む液滴の音響特性に影響を及ぼす。
【0034】
電極56aおよび56b(ならびに60および62)は、誘電泳動測定を行うことを可能にし、また、液滴サンプル内に微小流動を誘起することができる。誘電泳動(DEP)は、不均一な電場に曝されると、誘電体粒子に作用する力によって起こり、そして、細胞のDEP応答は、その固有の誘電特性か、または、より広い意味では、その電気的特性によって判定される。この力は、粒子を帯電させることを必要とせず、粒子はすべて、電場の存在下で、誘電泳動の活動を示す。
【0035】
その力は、粒子の形状、サイズ、および電場の周波数に依存するので、特定の周波数を有する場は、大きな選択性を伴って、粒子を操作することができる。DEPは、白血球細胞との赤血球細胞などの細胞の分離に使用することができる。細胞の誘電特性は、その形質膜の物理化学的特性に関連付けられ、また、DEPを創薬に適用する意味で重要な考慮事項である。DEPの潜在的に有用な用途は、その際、活性化、アポトーシス(多細胞生物内に生じるプログラム細胞死の形態)および(細胞成分の未調節消化をもたらす、感染、毒素、または外傷などの、細胞もしくは組織に対して外部の因子によって引き起こされる)ネクローシスなどの、細胞状態の変化を誘起することを目的とする薬剤を評価するための方法としてのものである。したがって、DEPは、蛍光ラベル、または抗体コーティングされた磁気ビーズなどのバイオマーカに対する必要性を有することなく、細胞を選択的に選別すること、およびそれらの生理的状態を監視することのいずれも可能な動電学的手法である。さらに、DEP実験において通常使用されるAC電場およびプロトコルは、細胞を損傷することを知られていない。
【0036】
音響散乱と、そのためのDEPとの組み合わせは、これらの細胞の状態およびそれらの薬剤との相互作用を高感度および高精度で判定するための強力な手段を提供する。すなわち、音響散乱は、散乱体の、物理的構成、および形状を含む特性に感受性を有する。したがって、音響トランスデューサは、パルスエコーシステムにおけるような送信器および受信器のいずれにも使用され、周波数チャープ(線形掃引周波数信号の短いバースト)信号が使用されると、散乱体(たとえば、血球細胞、または有しているものは何でも)に関する多くの情報を得ることができる。これに対し、DEPは、固体を流体と分離して、これらのパターンを基板上に成長させることができる。また、これらの鮮鋭なパターンによる音響散乱は、システムに関する情報を提供することができる。
【0037】
生成される微小流動は、それが流体内に導入し得る運動のため、細菌の増殖を増加させることができる。これは、免疫反応の効率を改善する解決策を行う際に、流動によって励起される渦に対するAC流動電流(AC electrokinetic flow:ACEKF)と呼ばれる。電極パターンは、
図5A~5Cに示すもの以外に、多くの異なる形状を取ることができる。
【0038】
通常、細菌の増殖速度は、細菌のタイプ、および栄養培地(nutrient medium)によって制御され、増殖は、栄養素を消耗するとともに減速する。微小流動は、新たな栄養素を細菌の近傍にもたらし、それにより、増殖を増加させることができ、これは、電極の上の反射モード音響測定を使用した音速測定を介して観察することができる。音響と電場との組み合わせによって、このような多くの可能性が存在している。(円状または直線状の)IDT内の電極の小さい間隔は、電極間に印加される電圧が小さくても、非常に高い場強度を発生させることができる。
【0039】
図6は、(a)が大腸菌であり、(b)が表皮ブドウ球菌であり、(c)が緑膿菌である、血液中で増殖する3つのタイプの細菌を示し、傾きの変化は、3つの異なる細菌に対する異なる増殖段階での栄養素の消耗を示す。1回につき1つの細菌サンプルで、小さな分光光度セルにおいて掃引周波数音響干渉法(SFAI)を使用し、細菌のタイプ毎に、2つの異なる濃度を調査した。測定は、単一の液滴を使用して行われてはいないが、このような測定は、
図5A~5Cの装置によって行うことができる。
【0040】
細菌がその周りの栄養素を消費するので、周囲の流体の音速が影響を受ける。そのため、細菌増殖は、反射モードSFAIを使用して、この音速変動によって測定することができる。観察される各細菌種は、異なる増殖速度を有しており、これは、1種類の細菌のみが存在していると仮定して、細菌を識別するための識別特性(signature)として使用することができる。
【0041】
測定は、以下の条件下で行われた。温度制御された循環水槽は、公称温度37℃で保持されており、細菌用の容器は、上記水槽内に配置され、緩やかにかき混ぜられた。信号処理が、信号源(デジタルファンクションジェネレータ)、一対の音響トランスデューサ(送信用の1つおよび受信用の1つ)、ならびに、信号発生器に対して位相ロックされる受信器(ロックイン増幅器)を使用して行われた。信号発生器は、RMSで3.8ボルトの正弦波出力を送信側音響トランスデューサに供給し、11MHzから16MHzまでの周波数で掃引した。信号源に対して位相ロックされる受信器は、容器の反対側の送信側トランスデューサから信号を受信し、基準に対して、信号の位相および振幅を測定した。標準的なデスクトップPCは、200Hz単位で信号源の出力を制御しており、また、受信器からの振幅および位相データを周波数の関数として記録した。動作上、システムは、各細菌の接種時と、数時間の検査の持続時間に亘る数分単位で、増殖培地(growth media)の基準線の音響的測定を行う。
図6に示されるデータは、細菌増殖の代謝副産物が培地内に蓄積するときの、経時的な、増殖培地の音響特性の変化を示し、プロットすると、細菌増殖曲線の典型的な形状で描く。
【0042】
培地内の音速の変化は、SFAIスペクトルのシフトを判定するために、基準線スペクトルの、将来の測定との相互相関が求められている相互相関方法から導き出された。このシフトは、音速の変化を示す。係数の変化は、係数の変化が1-相関係数であることを意味する。各細菌について、特性が実質的に同じ状態に留まっていることを示すために、2つの濃度(コロニー形成単位-CFU)が測定された。
【0043】
(ii)別の実現形態は、反射モードSFAIと弾性表面波(SAW)との組み合わせである。弾性表面波(SAW)は、弾性材料の表面に対して平行に進む音波(レイリーまたはラブ波)であり、それらの変位振幅は、表面の略1波長内にそれらが制限されるように、材料内で減衰する。ガリウムヒ素、水晶、またはニオブ酸リチウムなどの圧電材料では、SAWに関連付けられる機械的変形は、電場を生じさせる。上記電場は機械波の伝搬に影響を及ぼすものでないので、その結果、SAWに沿って進む静電位の変動となる。バイオセンサとしての使用の場合、表面が、分析物に対応する、生体固有の層でコーティングされる。このような装置は、受信器IDT60bによる受信信号の周波数特性によって検出される、様々な分子および生体分子の付着による、表面上の質量変化に依存するので、表面は大きな役割を果たす。生体材料の薄膜の変化は、バイオセンサとして使用される通常のSAW装置について、特殊処理された表面に対する厳しい要件を緩和する反射モードSFAIによって検出される。
【0044】
図7は、本発明のSAW装置の一実施形態であり、ここでは、様々な分子および極性材料が、基板の表面上を伝搬する表面電荷と相互作用する。SAW IDTは、一方が送信器として動作し、および他方が受信器として動作する一対として示されている。しかし、表面波を発生させるためには、単一のIDTが必要である。送信器IDT60aは、高周波の正弦波の電圧源58によって駆動され、インピーダンス整合ネットワーク66を介して、ドライバ64およびコントローラ42によって制御され、受信器IDT60bは、電気信号を増幅器68へ誘導し、その増幅された信号は、デジタルシグナルプロセッサ70によって受信され、コントローラ42およびプロセッサ44に誘導される。
【0045】
SAW装置の別の用途は、蛍光標識材料を表面上に集中させ、それにより、基板の下側、または第2の側の下に配置される顕微鏡を使用して、光学的に観察され得る、規則的な(周期)パターンにおける、蛍光マニフォールドの強度を増加させることである。例として、コンピュータ画面上に画像を表示するか、または捕捉することができるように、USB出力を有する単純な10×~500×デジタル顕微鏡が使用されてもよい。周期パターンは、反射モードSFAI測定における、トランスデューサからの音波ビームの回折にも影響を及ぼし、音響反射特性の変化を介して監視することができる。SAW装置は、SFAIシステムよりもはるかに高い周波数で動作し、また、液体の生検に対して、特に適切である。
【0046】
C.磁気的測定と音響的測定との組み合わせ
図8Aは、2つの平坦なコイル74a、74bを基板22の両側に配置することにより、発生する均一の磁場72を示している。磁場72は、電流源76によるDC場またはパルス磁場とすることができる。反射モードの掃引周波数音響干渉法の装置は、本明細書の
図3に示されるものと同様である。2つの平坦なコイルは、基板表面に垂直な均一の磁場を生成するために、ヘルムホルツコイルとして機能する。これらのコイルは、いずれによっても生成される磁場が同じ方向にあるように電気的に接続される。使用され得る異なるタイプのコイルが存在しており、これは例に過ぎない。コイルは、パルス状とされ得る電流によって駆動される。液滴は、図示されるように、コイルの中央に配置され、圧電トランスデューサは、その上に配置される。装置の残りの機能は、
図3および5Aに示すような構成において表されている。測定の音響部分は、上記とはわずかに異なる方法で行われる。時間が数ミリ秒を超える低速反応システムの場合、測定は、持続時間10μs~1msの周波数チャープを使用して行われる。トランスデューサが励起され、および、信号が検出され、数ミリ秒に亘って監視されて、基板の上面と結晶面との間に形成される流体キャビティ内の信号の複数の反射を抽出する。受信信号が一旦処理されると、
図2Dに示すものと同様な曲線が発生させることができる。信号処理は、関係する時間スケールに応じて、2つの手順のうちの一方を使用して行うことができる。非常に短い時間(1~100μs)の場合、処理は、励起信号および増幅された受信信号の相互相関を含む。しかし、より一般的な処理は、タイムオブフライトを判定するための周波数デチャープ処理を含む。いずれも、
図2Dに示される曲線と同様な結果となる。
【0047】
連続測定が必要な高速ダイナミクスについては、単一周波数アプローチを使用することが好ましい。いずれかの任意の液体共振ピークが、
図2Bに表されるように選択され、その振幅および位相はいずれも、液体の電気的インピーダンスによって監視される。磁気的な方位の変化は、時間の関数として記録することができる。上記測定の場合、観察は、流体システムを反応させるコイルに電流信号が印加されると始まり、最終的には、平衡状態が確立される。その後、電流は、オフに切り換えられ、システムの減衰が、磁気モーメントの元のランダム化状態で観察される。
【0048】
磁気バイオセンシングは、生体システムと磁性ナノ粒子(MNP)との間の相互作用を理解することに関係する。MNPは、粒子が調査中の培地と化学的に反応せず、それにより、特定の「非破壊検査」を可能にすると仮定して、非有機ならびに生物起源いずれもの複合培地の状態および内容成分を診断することを可能にする。磁気ナノセンサの利点は、印加される磁場の助力によって、遠隔運動励起の分析が可能である点にある。
【0049】
強磁性ナノ粒子は、それらの小さなサイズにより、単一ドメインを備え、それにより、一定の大きさの磁気モーメントを有する。このような粒子は、高分子の水溶液中に浮遊しており、それらのいくつかは、粒子表面に対する親和性を有し、その上に吸着され、それにより、ニュートン液体から粘弾性ポリマーゲルに粒子環境を変換する。磁場が存在しないと、ブラウン運動は、磁化の方向をランダム化し、全体の純磁化は、ゼロである。しかし、均一の磁場が印加されると、粒子の磁気モーメントは、同じ方向に方向付けられる。この場がすばやくオフにされると、磁気的な方位は、ランダムな挙動に戻るように減衰する。この変化による、流体の粘性の変化が、存在し、これは、反射モードSFAIセンサを使用して超音波的に検出することができる。たとえば、
図2Dに示される、後続エコーの振幅の減衰を観察することができる。この減衰は、流体の粘性に関係する、流体の音の減衰による。
【0050】
磁気ビーズ(MB)は、一群の磁性ナノ粒子である。バイオセンシングの用途では、これらのビーズは一般に、磁気コア、表面コーティング、および上記ビーズの表面における特異的結合リガンドから構成される。磁気コア材料の場合、マグネタイト(Fe3O4)およびマグヘマイト(γ-Fe2O3)は、それらの強磁性および生体適合性ゆえに、生物学的用途についての魅力的な候補と考えられている。いくつかのリガンド、すなわち、抗体(AB)、アプタマ、およびペプチドが、分析目的で利用可能である。アプタマは、高い親和性によって、それらの標的分子に特異的に結合する、合成一本鎖DNA(デオキシリボ核酸)またはRNA(リボ核酸)分子である。したがって、アプタマは、魅力的な生体受容体としての役割を果たす。アプタマの配向は、化学合成中に容易に制御することができ、様々な修飾をアプタマシーケンス内の定義される位置で行うことができる。
【0051】
細菌(たとえば、サルモネラ)、白血病細胞、および様々な病原体を捕捉するためにMBを使用することができる。病原体および他の生物学的実体の存在を検出するために、
図8に示される装置を使用することが可能である。適切な官能化MBを流体に加えることが必要であり、その場合、装置内に少量が導入される。
【0052】
減衰に加えて、本SFAI手法によって、最大107分の1の感度を有し得る感受的な手法で、音速の変化を監視することもできる。これは、圧電薄板上の薄膜材料の質量の変化による、このような検出に使用されるQCM装置と遜色のないものである。
【0053】
血液の磁気的状態は、その酸化レベルに基づいて変動する。磁場によって影響を受ける他の生体高分子も存在している。この場内に配置される、生体材料からなる流体内の変化は、反射モードSFAI手法によって監視される。
【0054】
別の用途は、動的な対称性の破れの概念(dynamic symmetry-breaking concept)を利用し、ここでは、磁場は、パルス状(たとえば、数サイクルの正弦波、または任意のタイプのパルス)であり、音場と同期する。これは、音場の半サイクル中にのみ、パルス磁場が励起されるように同期する。音場は、圧縮化と希薄化との間を交互に繰り返す圧力場である。したがって、磁場は、当該サイクルのすべての圧縮化部分または当該サイクルのすべての希薄化部分と同期する。これは、サイクルの2つの半分がもはや対称でないので、対称性の破れと呼ばれるものである。そのため、細胞が、特定の抗原に対する抗体でコーティングされた磁性ナノ粒子に付着していると、これらは、迅速に分離することができる。この分離の組み合わせは、音響的分離のみよりも速い。SAW波は、周期またはパルス磁場との組み合わせで、このようにして使用することもできる。この状況において、当該分離は、音響プローブによって監視される。当該分離は、顕微鏡を使用して光学的に観察することもできる。
【0055】
D.光学的測定、電気的測定、磁気的測定、および音響的測定の組み合わせ
基板の底面は、同時の光学的観察に差し支えないので、光音響的観察および磁気的観察を組み合わせることができる。流体によって吸収される高速光パルスは、流体の温度をわずかに上昇させることができ、これは、減衰時間にも影響を及ぼす。これは、比熱、熱拡散率等などの、流体の他の物理特性も調べることを可能にする。これらのタイプの同時測定は、現在の標準的な測定システムのいずれにおいても、利用可能ではない。
【0056】
コイルは、システムに接着されるか、または取り付けられることを必要せず、コイルと基板との間に、小さな間隙が存在することがある。これは、基板上にインターデジット型電極(IDT)を配置することを可能にする(
図7、ならびに
図5Bおよび5C)。したがって、弾性表面波(SAW)の刺激および測定を同時にすることも可能である。基板が圧電材料であると、表面波は、振動電場を基板表面上に生じさせ、振動電場は、様々な官能化された磁気ビーズと相互作用することができ、それらの磁気モーメントの方位に影響を及ぼし、それにより、電場および磁場の複雑な相互作用を同時に調査することを可能にする。SAW波は、振幅および周波数において連続するか、または変調させることができる。このような組み合の効果は、現在利用可能な、いずれの既存のバイオセンシング機器によっても調査することができない。したがって、本発明の実施形態は、バイオセンシングについての新たな診断モダリティを可能にする。
【0057】
光励起は、基板22の下方から印加されてもよく、基板22の上方および下方に配置され得る磁気コイルは、上述のような、
図7の装置に加えられてもよい。これは、様々な測定を行うために、反射モードの掃引周波数音響干渉法とともに、光場、電場、および磁場の組み合わせを使用することを可能にする。磁場領域内の基板上に、ITO透明電極を配置することにより、4つの励起場のすべてを組み合わせることが可能である。これらの場は、必要に応じて、独立しているか、または同期していてもよい。したがって、本発明の実施形態は、マルチモダリティの単一液滴励起および測定を行うことを可能にする。上記光音響測定と同様に、音響センサ(ピンデューサ)は、磁気、電気、またはSAWのパルス励起の効果を受動的に検出して監視することができるように、受動的な受信器として使用されてもよい。
【0058】
本発明の実施形態は、組織サンプル、またはポリマー、または、ほほ任意の他の材料をも含む薄膜に、ならびに液滴に、使用することが可能である。したがって、本装置の実施形態は、すべてのモダリティをすべての状況において使用することができる訳でないが、様々な種類の表面上の薄膜材料の観察を含む、多くの用途に適合することができる。
【0059】
本装置の実施形態は、医用生体計測に制限されない、同じ装置を使用した、小標本に対する異なるタイプの測定を行うためのプラットフォームとしての汎用ツールを提供する。この低コストの測定システムを作成するのに必要なのは、ラップトップ、マルチモードのチャネル高速データ収集システム、および調整用機械式マイクロメータだけである。最終目標は、スマートフォンまたはスマートパッドで装置を動作させることができることである。同じプラットフォーム装置を使用することにより、より速く、より単純化されたやり方で、4つの主要な種類の血液検査、すなわち、免疫学的測定、一般的な化学的測定、血液学的検査、およびDNAの増幅による測定を行う能力が、現在、実現可能である。
【0060】
本発明の上述の説明は、例証および説明の目的で提示されており、網羅的であること、または、開示される厳密な形態に本発明を限定することを意図するものでなく、ならびに、明らかに、上記教示に照らして、多くの修正例および変形例が可能である。これらの実施形態は、本発明の原理、およびその実用的な用途を最善に説明して、それにより、他の当業者が、様々な実施形態において、また、想定される特定の用途に合うような様々な修正例によって、本発明を最善に利用することを可能にするために選択されて説明されている。本発明の範囲は、本明細書に添付した請求項によって規定されることを意図している。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】