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特表2022-527458弾性ポリマーバインダを含む乾燥電極フィルムのための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-02
(54)【発明の名称】弾性ポリマーバインダを含む乾燥電極フィルムのための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20220526BHJP
   H01G 11/38 20130101ALI20220526BHJP
   H01G 11/42 20130101ALI20220526BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20220526BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220526BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20220526BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20220526BHJP
【FI】
H01M4/13
H01G11/38
H01G11/42
H01G11/86
H01M4/62 Z
H01M4/133
H01M4/139
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557087
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(85)【翻訳文提出日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 US2020025028
(87)【国際公開番号】W WO2020205447
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】62/826,273
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508035757
【氏名又は名称】マックスウェル テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シン ジュンホ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥオン ヒエウ ミン
【テーマコード(参考)】
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA15
5E078AB01
5E078BA18
5E078BA44
5E078BA49
5E078BB24
5H050AA02
5H050AA14
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA11
5H050EA23
5H050EA24
5H050EA27
5H050EA28
5H050GA03
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA14
(57)【要約】
弾性ポリマーバインダを含む、乾燥プロセス電極フィルム、及びそれを備えるエネルギー貯蔵装置が提供される。いくつかの実施形態では、乾燥プロセス電極フィルムがPTFEを含まないか、又はわずかな量のPTFEを含む。電極フィルムは改善された機械的及び加工特性を示す。また、そのような弾性ポリマーバインダを処理するための方法、及び電極フィルムに弾性ポリマーバインダを組み込むための方法も提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵装置に使用するための乾燥電極フィルムであって、
乾燥活物質;及び
弾性ポリマーを含む乾燥バインダ;
を含み、
前記乾燥電極フィルムは、自立型であり且つ最大でもわずかな量のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)しか含まない、乾燥電極フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
前記弾性ポリマーは、セルロース、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエーテル前駆体、ポリシロキサン、それらのコポリマー及びそれらの混合物から構成される群から選択される、乾燥電極フィルム。
【請求項3】
請求項1に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
前記弾性ポリマーは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリエチレン-ブロック-ポリ(エチレングリコール)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリジメチルシロキサン-コアルキルメチルシロキサン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、それらのコポリマー及びそれらの混合物から構成される群から選択される、乾燥電極フィルム。
【請求項4】
請求項3に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
前記弾性ポリマーは、PE、PEO、PVDF及びそれらの混合物から構成される群から選択される、乾燥電極フィルム。
【請求項5】
請求項1に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
前記乾燥電極フィルムは、重量パーセントが約0.5~10重量%の弾性ポリマーを含む、乾燥電極フィルム。
【請求項6】
請求項1に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
前記乾燥電極フィルムは、PTFEを含まない、乾燥電極フィルム。
【請求項7】
請求項1に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
前記乾燥電極フィルムは、処理溶媒残留物を含まない、乾燥電極フィルム。
【請求項8】
請求項1に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
前記乾燥電極フィルムは、重量パーセントが最小でも約95重量%の乾燥活物質を含む、乾燥電極フィルム。
【請求項9】
請求項1に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
前記乾燥活物質はグラファイトである、乾燥電極フィルム。
【請求項10】
請求項1に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
前記乾燥電極フィルムは、引張強度が最小でも約1Nである、乾燥電極フィルム。
【請求項11】
請求項1に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
前記乾燥電極フィルムは、ほとんど欠陥がない、乾燥電極フィルム。
【請求項12】
集電体と、請求項1に記載の乾燥電極フィルムとを備える、電極。
【請求項13】
請求項12に記載の電極を備える、バッテリ。
【請求項14】
乾燥電極フィルムの製造方法であって、
乾燥活物質と乾燥バインダとを混合して乾燥第1混合物を形成し、ここで、該乾燥バインダは弾性ポリマーを含み;そして
前記乾燥第1混合物をカレンダ加工して乾燥電極フィルムを形成し;
ここで、前記乾燥電極フィルムは、自立型であり且つ最大でもわずかな量のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)しか含まない、
製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の製造方法において、
前記混合を、非破壊混合プロセスにより行う、製造方法。
【請求項16】
請求項14に記載の製造方法において、
前記混合は、高剪断混合を含まない、製造方法。
【請求項17】
請求項14に記載の製造方法において、
前記混合を、略室温以上の温度で行う、製造方法。
【請求項18】
請求項14に記載の製造方法において、
前記乾燥活物質は、混合前には第1粒径分布を有し、混合後には第2粒径分布を有し、該第1及び第2粒径分布は、実質的に同等である、製造方法。
【請求項19】
請求項14に記載の製造方法において、
カレンダ加工を、約150~250℃の温度で行う、製造方法。
【請求項20】
請求項14に記載の製造方法において、
前記乾燥電極フィルムをカレンダ加工することをさらに含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
あらゆる優先出願の参照による組み込み
本出願は、2019年3月29日に出願された米国仮出願番号62/826,273の優先権の利益を主張し、全ての目的のためにその全体が参照によりここに組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
分野
本開示は一般に、乾燥エネルギー貯蔵装置電極、そのような電極を備えるエネルギー貯蔵装置及び関連する方法に関する。
【0003】
関連技術の説明
従来のエネルギー貯蔵装置及び関連する方法は、一般に、活性電極材料及び他の添加剤が混合され、電極フィルムを形成するように処理される、バインダ材料を含む。電極フィルムは一般に、材料の1つ以上の他の層に適用され、電極を形成する。一般に、負極(アノード)と正極(カソード)とが形成され、その間にセパレータが配置され、電解質を有するハウジング内に挿入され、様々なタイプのエネルギー貯蔵装置が形成される。
【0004】
エネルギー貯蔵装置電極内で使用される電極フィルムは、湿潤プロセス又は乾燥プロセスを使用して形成され得る。例えば、活性電極材料は、電極フィルムを製造するために重要な次の乾燥技術を必要とする湿潤コーティング法において、バインダ材料、溶媒及び他の添加剤と混合し得る。
【0005】
乾燥電極プロセスは、前記の湿潤プロセスによって必要とされる、時間がかかり、費用のかかる乾燥手順を低減するために開発されてきた。例えば、電極プロセスは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)バインダを活性電極材料と混合すること、及びカレンダ加工して電極フィルムを形成することを含み得る。しかしながら、PTFEバインダを含む電極を備えるエネルギー貯蔵装置は、酸化還元プロセス中の不可逆容量損失の増大などの、望ましくない装置性能を示すことがある。
【発明の概要】
【0006】
本発明及び従来技術を超えて達成される利点を要約する目的で、本発明の特定の目的及び利点をここに記載する。そのような目的又は利点の全てが、本発明の任意の特定の実施形態において達成され得るわけではない。したがって、例えば、当業者は、本発明を、ここで教示され又は示唆され得るような他の目的又は利点を必ずしも達成することなく、ここで教示されるような1つの利点又は利点の群を達成し又は最適化する方法で具体化し又は実施し得ることを認識するであろう。
【0007】
第1の態様では、エネルギー貯蔵装置の乾燥電極フィルムが提供される。乾燥電極フィルムは、乾燥活物質と、弾性ポリマーを含む乾燥バインダとを含み、乾燥バインダはPTFEを含まないか、又はわずかな量のPTFEを含み、乾燥電極フィルムは自立型(free-standing)である。
【0008】
いくつかの実施形態では、弾性ポリマーは、PE、PEO及びPVDFのうちの少なくとも1つから選択される。いくつかの実施形態では、乾燥電極フィルムは、約0~5重量%のPE及び約0~2重量%のPVDFを含む。いくつかの実施形態では、乾燥活物質はグラファイトを含む。いくつかの実施形態では、乾燥電極フィルムは、約96重量%のグラファイト及び約4重量%のPEを含む。いくつかの実施形態では、乾燥電極フィルムは、約96重量%のグラファイト、約3重量%のPE及び約1重量%のPVDFを含む。
【0009】
別の態様では、エネルギー貯蔵装置で使用するための乾燥電極フィルムが提供される。乾燥電極フィルムは、乾燥活物質と、弾性ポリマーを含む乾燥バインダとを含み、乾燥電極フィルムは、自立型であり且つ最大でもわずかな量のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)しか含まない。
【0010】
いくつかの実施形態では、弾性ポリマーは、セルロース、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエーテル前駆体、ポリシロキサン、それらのコポリマー及びそれらの混合物から構成される群から選択される。いくつかの実施形態では、弾性ポリマーは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリエチレン-ブロック-ポリ(エチレングリコール)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリジメチルシロキサン-コアルキルメチルシロキサン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、それらのコポリマー及びそれらの混合物から構成される群から選択される。いくつかの実施形態では、弾性ポリマーは、PE、PEO、PVDF及びそれらの混合物から構成される群から選択される。いくつかの実施形態では、乾燥電極フィルムは、重量パーセントが約0.5~10重量%の弾性ポリマーを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、乾燥電極フィルムはPTFEを含まない。いくつかの実施形態では、乾燥電極フィルムは処理溶媒残留物を含まない。いくつかの実施形態では、乾燥電極フィルムは重量パーセントが少なくとも約95重量%の乾燥活物質を含む。いくつかの実施形態では、乾燥活物質はグラファイトである。いくつかの実施形態では、乾燥電極フィルムは引張強度が約1N以上である。いくつかの実施形態では、乾燥電極フィルムはほとんど欠陥がない。
【0012】
いくつかの実施形態では、集電体及びその乾燥電極フィルムを備える電極が提供される。いくつかの実施形態では、その電極を備えるバッテリが提供される。
【0013】
別の態様では、乾燥電極フィルムの製造方法が提供される。この方法は、乾燥活物質と乾燥バインダとを混合して乾燥第1混合物を形成することを含み、ここで、乾燥バインダは弾性ポリマーを含み、そして乾燥第1混合物をカレンダ加工して乾燥電極フィルムを形成することを含み、ここで、乾燥電極フィルムは自立型であり且つ最大でもわずかな量のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)しか含まない。
【0014】
いくつかの実施形態では、混合を非破壊混合プロセスにより行う。いくつかの実施形態では、混合は高剪断混合を含まない。いくつかの実施形態では、混合を略室温以上の温度で行う。
【0015】
いくつかの実施形態では、乾燥活物質は、混合前に第1粒径分布を有し、混合後に第2粒径分布を有し、第1及び第2粒径分布は実質的に同等である。いくつかの実施形態では、カレンダ加工を約150~250℃の温度で行う。いくつかの実施形態では、本方法は、乾燥電極フィルムをカレンダ加工することをさらに含む。
【0016】
これらの実施形態の全ては、ここに開示される本発明の範囲内であることが意図される。本発明のこれらの実施形態及び他の実施形態は添付の図面を参照した以下の好ましい実施形態の詳細な説明から当業者に容易に明らかになるが、本発明は開示されるあらゆる特定の好ましい実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、弾性ポリマーバインダを含む電極フィルムを備えるエネルギー貯蔵装置の一実施形態を示す。
図2A図2A~2Hは、粉末から自立型フィルムに加工された電極フィルムの一実施形態の写真を示す。図2Aは、加工された最終配合粉末(a processed final formulation powder)を示す。
図2B図2Bは、カレンダ加工前の、2つのロール間の最終粉末を示す。
図2C図2Cは、配合1のカレンダ加工された自立型フィルムを示す。
図2D図2Dは、配合4のカレンダ加工された自立型フィルムを示す。
図2E図2Eは、配合5のカレンダ加工された自立型フィルムを示す。
図2F図2Fは、配合6のカレンダ加工された自立型フィルムを示す。
図2G図2Gは、配合5の屈曲可能な自立型フィルムを示す。
図2H図2Hは、配合6の屈曲可能な自立型フィルムを示す。
図3A図3Aは、様々な自立型のグラファイト電極フィルムの実施形態の、引張強度を示すグラフである。
図3B図3Bは、様々な自立型のグラファイト電極フィルムの実施形態の、延びを示すグラフである。
図4A図4Aは、電解質Aを用いたグラファイト電極半電池の実施形態の、充放電容量を示すグラフである。
図4B図4Bは、電解質Aを用いたグラファイト電極半電池の実施形態の、効率を示すグラフである。
図5A図5Aは、電解質Bを用いたグラファイト電極半電池の実施形態の、容量を示すグラフである。
図5B図5Bは、電解質Bを用いたグラファイト電極半電池の実施形態の、効率を示すグラフである。
図6A図6Aは、電解質Aを用いた、配合1のグラファイト電極半電池の実施形態の、微分容量を示すグラフである。
図6B図6Bは、電解質Aを用いた、配合2のグラファイト電極半電池の実施形態の、微分容量を示すグラフである。
図6C図6Cは、電解質Aを用いた、配合3のグラファイト電極半電池の実施形態の、の微分容量を示すグラフである。
図7A図7Aは、電解質Bを用いた、配合1のグラファイト電極半電池の実施形態の、微分容量を示すグラフである。
図7B図7Bは、電解質Bを用いた、配合2のグラファイト電極半電池の実施形態の、微分容量を示すグラフである。
図7C図7Cは、電解質Bを用いた、配合3のグラファイト電極半電池の実施形態の、微分容量を示すグラフである。
図8A図8Aは、電解質Aを用いた、配合1のグラファイト電極半電池の実施形態の、第1サイクルの電圧プロファイルを示すグラフである。
図8B図8Bは、電解質Aを用いた、配合2のグラファイト電極半電池の実施形態の、第1サイクルの電圧プロファイルを示すグラフである。
図8C図8Cは、電解質Aを用いた、配合3のグラファイト電極半電池の実施形態の、第1サイクルの電圧プロファイルを示すグラフである。
図9A図9Aは、電解質Bを用いた、配合1のグラファイト電極半電池の実施形態の、第1サイクルの電圧プロファイルを示すグラフである。
図9B図9Bは、電解質Bを用いた、配合2のグラファイト電極半電池の実施形態の、第1サイクルの電圧プロファイルを示すグラフである。
図9C図9Cは、電解質Bを用いた、配合3のグラファイト電極半電池の実施形態の、第1サイクルの電圧プロファイルを示すグラフである。
図10A図10Aは、電解質Bを用いた、配合1のグラファイト電極半電池の実施形態の、0.1Cの率での連続的周期が後に続く、第1形成を示す、グラフである。
図10B図10Bは、電解質Bを用いた、配合2のグラファイト電極半電池の実施形態の、0.1Cの率での連続的周期が後に続く、第1形成を示す、グラフである。
図10C図10Cは、電解質Bを用いた、配合3のグラファイト電極半電池の実施形態の、0.1Cの率での連続的周期が後に続く、第1形成を示す、グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
乾燥プロセスにより製造され、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)バインダを含まないか、又は最大でもわずかな量しか含まない、リチウムイオンバッテリ用の自立型電極フィルムが開示される。電極フィルムは溶媒の使用を回避するプロセスにより製造できる、「乾燥」プロセスである。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、以下で議論するように、乾燥製造プロセスで有用であることが見出された、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンオキシド(PEO)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)のうちの1つ又は複数などの、代替バインダを含む。一実施形態では、PTFEを含まない電極フィルムは、リチウムイオンバッテリ又は他の電子貯蔵装置のアノード又はカソードコンポーネントを製造するために使用される。
【0019】
定義
用語「バッテリ」及び「キャパシタ」は、当業者にとってのそれらの通常の及び慣習的な意味を与えられるべきである。用語「バッテリ」及び「キャパシタ」は、互いに排他的ではない。キャパシタ又はバッテリは、単独で動作させてもよく又は多重セルシステムのコンポーネントとして動作させてもよい、単一の電気化学セルを指し得る。
【0020】
エネルギー貯蔵装置の電圧は、単一のバッテリ又はキャパシタセルの動作電圧である。電圧は、負荷の下で、又は製造公差に従い、定格電圧超え又は定格電圧未満であり得る。
【0021】
「自己支持型(self-supporting)」電極フィルムは、フィルム又は層を支持し、且つ、電極フィルム又は層が自立できるように、その形状を維持するのに十分な、バインダマトリックス構造を組み込んだ電極フィルムである。エネルギー貯蔵装置に組み込まれる場合、自己支持型電極フィルム又は活性層は、そのようなバインダマトリックス構造を組み込むものである。一般的に、及び採用される方法に応じて、そのような電極フィルム又は活性層は、集電体又は他のフィルムのようなあらゆる外部の支持要素なしに、エネルギー貯蔵装置製造方法において採用されるのに十分な強度を有する。例えば、「自己支持型」電極フィルムは、他の支持要素なしで、電極製造プロセス内で圧延され(rolled)、扱われ及び展開される(unrolled)のに十分な強度を有し得る。カソード電極フィルム又はアノード電極フィルムなどの乾燥電極フィルムは、自己支持型であり得る。
【0022】
「溶媒を含まない」電極フィルムとは、処理溶媒、処理溶媒残留物及び/又は処理溶媒不純物を、検出できない又は実質的に含まない電極フィルムである。このような「溶媒を含まない」電極フィルムは、溶媒ベースのフィルムが乾燥プロセスを受けた後でさえ、検出可能な又は実質的な量の処理溶媒、処理溶媒残留物及び/又は処理溶媒不純物を含む、従来の溶媒ベースのプロセスに基づく従来の電極フィルムとは区別される。カソード電極フィルム又はアノード電極フィルムなどの乾燥電極フィルムは、溶媒を含まなくてもよい。溶媒を含まない乾燥電極フィルムは、乾燥活物質及び乾燥バインダ(例えば、粉末)などの乾燥成分から製造でき、これらもまた、前記で定義されるように溶媒を含まない。いくつかの実施形態では、乾燥成分は、周囲空気からの微量の湿気の吸収のため、ある量の大気水分を含み得る。いくつかの実施形態では、溶媒を含まない成分及び/又は溶媒を含まない電極フィルムは、水分の含有量が、2000ppm、1500ppm、1000ppm、900ppm、800ppm、700ppm、600ppm、500ppm、400ppm、300ppm、200ppm、100ppm、50ppm若しくは10ppm、又は約2000ppm、約1500ppm、約1000ppm、約900ppm、約800ppm、約700ppm、約600ppm、約500ppm、約400ppm、約300ppm、約200ppm、約100ppm、約50ppm若しくは約10ppm、最大2000ppm、最大1500ppm、最大1000ppm、最大900ppm、最大800ppm、最大700ppm、最大600ppm、最大500ppm、最大400ppm、最大300ppm、最大200ppm、最大100ppm、最大50ppm若しくは最大10ppm、最大約2000ppm、最大約1500ppm、最大約1000ppm、最大約900ppm、最大約800ppm、最大約700ppm、最大約600ppm、最大約500ppm、最大約400ppm、最大約300ppm、最大約200ppm、最大約100ppm、最大約50ppm若しくは最大約10ppm、又はそれらの間の任意の範囲の値である。
【0023】
「湿潤」電極、「湿潤プロセス」電極又はスラリー電極は、活物質、バインダ及びオプションの添加剤の、スラリーを含む少なくとも1つのステップにより調製される電極である。湿潤電極は、処理溶媒、処理溶媒残留物及び/又は処理溶媒不純物を含み得る。
【0024】
「PTFEを含まない」フィルムはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含まないフィルムである。「わずかな量のPTFE」を含むフィルムは、PTFEを含んでいたとしても、フィルム又はそのようなフィルムを備える電気化学装置の特性に実質的に影響を及ぼさない、少量のPTFEを含むフィルムである。例えば、わずかな量のPTFEを含む、又は最大でもわずかな量のPTFEしか含まないフィルムは、PTFEを含まないフィルムを包含し、0.5重量%未満のPTFEを含み得る。
【0025】
「非破壊」プロセスは、電極活物質の表面を含む、電極活物質が、プロセス中に実質的に改質されないプロセスである。したがって、エネルギー貯蔵装置への活物質の組み込みなどの用途における、分析特性及び/又は性能は、プロセスを受けていないものと同一又はほぼ同一である。例えば、プロセス中に活物質のコーティングが乱されないか、又は実質的に乱されなくてもよい。非破壊プロセスの非限定的な例は、減圧、供給速度の増加、速度(例えば、ブレンダ速度)の減少、並びに/又は、活物質に与えられる剪断がエネルギー貯蔵装置に実装された場合に、活物質の分析特性及び/若しくは性能が悪影響を受ける閾値未満であるような、他のプロセスパラメータの変化での、「非破壊混合若しくはブレンド」又はジェットミル粉砕である。効果的な非破壊混合プロセスの一例は、約10メートル/分~約40メートル/分の先端速度を有するブレード型ミキサーの使用によるものである。「非破壊」プロセスは、電極活物質の表面など、電極活物質を実質的に改質し、活物質の分析特性及び/又は性能に実質的に影響を及ぼす高剪断プロセスと区別できる。例えば、高剪断ブレンド又は高剪断ジェットミルは、電極活物質の表面に有害な影響を及ぼし得る。高剪断プロセスは、活物質表面特性を損なって、バインダ材料のフィブリル化、又は自己支持型電極フィルムの形成を補助するためのバインダ/活物質マトリックスの形成などの、他の利点を提供するために実施できる。ここでの実施形態は、高剪断プロセスの過剰な使用による有害な影響を回避しながら、同様の利点を提供し得る。一般に、ここでの非破壊プロセスは、より速い供給速度、より低い速度及び/又はより小さな圧力のうちの1つ以上で実行され、そうでなければ電極活物質を実質的に改変し、そして性能に影響を及ぼす、より破壊的なプロセスよりも低剪断のプロセスをもたらす。
【0026】
説明
特定の実施形態及び実施例が以下に記載されるが、当業者は、本発明が具体的に開示された実施形態及び/又は使用、並びにそれらの明らかな変更及びその同等物を超えて拡張することを理解するのであろう。したがって、ここに開示される本発明の範囲は、以下に記載される任意の特定の実施形態により限定されるべきではないことが意図される。
【0027】
ここに記載されるように、乾燥電極プロセスは前記の湿潤プロセスにより必要とされる、時間がかかり、費用のかかる乾燥手順を低減するために開発されてきた。活性電極材料を一緒に保持するために、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)バインダの使用を必要としない、乾燥電極プロセスも開発されており、これは電極フィルムを形成するためにカレンダ加工される。ここに記載される実施形態は、例えば、乾燥電極プロセスにおいて、電極バインダとしてPTFEを単独で使用することに固有の、前記の劣化の欠点及び容量の不可逆的損失を低減し得る、電極フィルムのための代替バインダ材料を含む。いくつかの実施形態は、低電圧での電気化学的操作を可能にし、エネルギーの著しい追加の損失を抑え又は実質的に全く伴わない、電極バインダ材料を提供する。いくつかの実施形態は、弾性ポリマーバインダを含むバインダを含む、自立型乾燥処理電極を提供する。いくつかの実施態様では、自立型電極は、グラファイト活物質及び弾性ポリマーバインダ、例えば、高分子量ポリエチレン(PE)、ポリエチレンオキシド(PEO)及びポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)を含む。いくつかの実施形態では、電極フィルムはPTFEを含まず、したがってPTFEが存在しない。いくつかの実施形態では、電極フィルムはわずかな量のPTFEを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、電極フィルムは最大でもわずかな量のPTFEを含み得る。そのような自立型電極フィルムの機械的強度及び電気化学的性能などの材料特性を、ここで調べる。例えば、弾性ポリマーバインダを含み、わずかな量のPTFEを含む電極フィルムは、PTFEを含む同等の電極フィルムと比較して、同等又はより大きな引張強度及び/又は延性を示し得、これはエネルギー貯蔵装置の製造を容易にし得る。具体的には、より大きな引張強度及び/又は延性を有する電極フィルムは、集電体又は他の基材に適用することがより容易であり得る。これらの要素は、乾燥電極処理技術が使用される場合に特に関連する場合があり、電極フィルムは、ここでは「自己支持型フィルム」としてさらに定義される自己支持型のフィルムとして取り扱われてもよい。
【0028】
一実施形態は、PTFEを含まないバインダ組成物をアノード及び/又は電極フィルムを形成するための製造プロセスである。いくつかの実施形態では、製造プロセス又は製造プロセスの一部は、所望の電気的性能を示す電極の形成を容易にするために、室温以上で実施できる。いくつかの実施形態では、製造プロセス又は製造プロセスの一部は、18℃、20℃、25℃、30℃、40℃、60℃若しくは80℃、又は約18℃、約20℃、約25℃、約30℃、約40℃、約60℃若しくは約80℃、又は最小18℃、最小20℃、最小25℃、最小30℃、最小40℃、最小60℃若しくは最小80℃、又は最小約18℃、最小約20℃、最小約25℃、最小約30℃、最小約40℃、最小約60℃若しくは最小約80℃、又はそれらの間の任意の範囲の値で実行される。いくつかの実施形態では、ここに記載されるバインダ組成物を含むアノード電極フィルムを形成するための製造プロセスが提供される。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルム製造プロセスは、乾燥製造プロセスを用いて、欠陥の減少した又はほぼ欠陥のない電極フィルムの形成を容易にする、ジェットミル、ブレンド、タンブリング又は音響混合ステップを含む。いくつかの実施形態では、電極フィルム製造プロセスは、高剪断混合ステップ(例えば、高剪断ジェットミル)を含まず、乾燥電極成分は、非破壊混合プロセスなどのより穏やかな条件下で混合され、乾燥製造プロセスを使用して欠陥のない又はほぼ欠陥のない電極フィルムを形成し得る。いくつかの実施形態では、電極フィルム製造プロセスは、電極フィルムが形成される前の、活物質と弾性ポリマーバインダとの単一の混合ステップであるか、又は本質的にそれであってもよい。
【0029】
複合バインダ材料及び電極を形成するために使用するプロセスを開発する場合、他の機械的及び電気的特性も考慮され得る。例えば、バインダ材料の延性及び/又は多孔性は、電極のための改善された機械的完全性及び/又はイオン伝導性を提供するように選択され得る。いくつかの実施形態では、バインダ材料は、所望の電気的特性を有する、結果として得られる電極フィルムを提供する一方で、電解質などの装置の1つ又は複数の他のコンポーネントとの所望の相互作用を実証し、及び/又はバインダ材料として所望の有効性を提供するように選択されてもよい。
【0030】
一実施形態では、非破壊的に処理された活物質、例えば、活物質微粒子の損傷していない及び/又は元のままの表面が電極フィルム混合物に組み込まれる。損傷を受けていない及び/又は元のままの活物質は、商業的に購入された材料と実質的に同等の粒径分布、表面積分布、表面化学的再活性化物及び/若しくは表面化学組成を有する材料、並びに/又は活物質のこれらの物理的特性を変化させる可能性のあるプロセスの前の材料、を含み得る。したがって、表面劣化が低減されたバルク活物質が提供される。いくつかの実施形態では、非破壊混合は、ブレンド、タンブリング又は音響混合(acoustic mixing)を含み得る。いくつかの実施形態では、非破壊混合は共鳴音響ミキサーにより実行されてもよい。
【0031】
ここで提供される材料及び方法は、様々なエネルギー貯蔵装置で実施できる。例えば、エネルギー貯蔵装置は、キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ(LIC)、ウルトラキャパシタ、バッテリ又はハイブリッドエネルギー貯蔵装置及び/又はハイブリッドセル、これらのうちの2つ以上の態様を組み合わせてもよい。いくつかの実施形態では、装置はバッテリである。エネルギー貯蔵装置は、動作電圧により特徴付け得る。いくつかの実施形態では、ここに記載されるエネルギー貯蔵装置は、約0V~約5Vの動作電圧を有し得る。さらなる実施形態では、動作電圧は、約2.7V~約4.2V、約3.0V~約4.2V又はそれらの間の任意の値であり得る。
【0032】
一実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、1つ又は複数の電極を備える。電極は一般に、電極フィルム及び集電体を備える。電極フィルムは、1つ以上のバインダと1つ以上の活性電極材料との混合物から形成し得る。弾性ポリマーバインダ及び弾性ポリマーバインダを含む電極は、1つ以上のバッテリ、キャパシタ、キャパシタ-バッテリハイブリッド、燃料電池又は他のエネルギー貯蔵システム若しくは装置、及びそれらの組み合わせのような、いくつかのエネルギー貯蔵装置及びシステムのあらゆるものとともに、様々な実施形態において使用され得ることが理解される。いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物及びここに記載される電極フィルム混合物から製造される電極は、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオンバッテリ、ウルトラキャパシタ又は前記の2つ以上の態様を組み合わせたハイブリッドエネルギー貯蔵装置の、コンポーネントであってもよい。
【0033】
エネルギー貯蔵装置は、任意の適切な構成、例えば、平面状、らせん状に巻かれたもの、ボタン形状又はポーチ状(pouch)であり得る。また、エネルギー貯蔵装置はシステムのコンポーネント、例えば、発電システム、無停電電源システム(UPS)、太陽光発電システム、例えば、産業機械及び/又は輸送に使用するためのエネルギー回収システムであってもよい。エネルギー貯蔵装置は、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)及び/又は電気自動車(EV)を含む、様々な電子装置及び/又は自動車に、電力を供給するために使用されてもよい。
【0034】
一実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、装置の寿命にわたって等価直列抵抗の上昇が抑えられ得る。これにより、装置の寿命にわたって電力密度を増加させることができる。いくつかの実施形態では、これらのタイプのエネルギー貯蔵装置は、装置の寿命にわたって容量の損失を低減できる。これらの装置はまた、サイクル中の改善された貯蔵安定性、及び低減された容量減衰を含む、改善されたサイクル性能を含み得る。
【0035】
図1は、弾性ポリマーバインダを含む電極フィルムを備えるエネルギー貯蔵装置100の一例の、側方断面概略図を示す。エネルギー貯蔵装置100は、例えば、キャパシタ、バッテリ、キャパシタ-バッテリハイブリッド又は燃料電池に分類できる。いくつかの実施形態では、装置100はリチウムイオンバッテリである。
【0036】
この装置は、第1電極102と、第2電極104と、第1電極102と第2電極104との間に配置されたセパレータ106とを備える。第1電極102及び第2電極104は、セパレータ106のそれぞれの反対側の表面に隣接している。エネルギー貯蔵装置100は、エネルギー貯蔵装置100の電極102、104間のイオン伝達を容易にするための電解質118を備える。例えば、電解質118は、第1電極102、第2電極104及びセパレータ106と接していてもよい。電解質118、第1電極102、第2電極104及びセパレータ106は、エネルギー貯蔵装置ハウジング120内に収容されている。
【0037】
第1電極102、第2電極104及びセパレータ106のうちの1つ以上、又はそれらの構成要素は、多孔質材料を含み得る。多孔質材料内の細孔は、ハウジング120内の電解質118と接するための封じ込め及び/又は増加した表面積を提供できる。エネルギー貯蔵装置ハウジング120は、第1電極102、第2電極104及びセパレータ106の周囲で封止されていてもよく、周囲の環境から物理的に封止されていてもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では第1電極102はアノード(「負電極」)であってもよく、第2電極104はカソード(「正電極」)であってもよい。セパレータ106は、第1電極102及び第2電極104のような、セパレータ106の反対側の側面に隣接する2つの電極を電気的に絶縁しつつ、2つの隣接する電極間のイオン伝達を可能にするように構成されていてもよい。セパレータ106は、適切な多孔性の電気絶縁材料を含み得る。いくつかの実施形態では、セパレータ106はポリマー材料を含み得る。例えば、セパレータ106は、セルロース材料(例えば、紙)、ポリエチレン(PE)材料、ポリプロピレン(PP)材料及び/又はポリエチレン及びポリプロピレン材料を含み得る。
【0039】
一般に、第1電極102及び第2電極104は、各々、集電体及び電極フィルムを備える。電極102及び104は、電極フィルム112及び114を備え、第1電極フィルム112は、わずかな量のPTFEを含み、弾性ポリマーバインダを含むものとして示される。第2電極フィルム114は弾性ポリマーバインダを含むものとして及び/又はわずかな量のPTFEを含むものとして示されていないが、電極フィルム112及び/又は114のいずれか又は両方が弾性ポリマーバインダを含み及び/又はわずかな量のPTFEを含み得ることを理解されたい。電極102及び104は各々、示されるように単一の電極フィルム112及び114を備えるが、電極102及び104ごとに2つ以上の電極フィルムとの他の組み合わせも可能である。装置100は、単一電極102及び単一電極104を備えるように示されているが、他の組み合わせも可能である。電極フィルム112及び114は各々、任意の適切な形状、サイズ及び厚さを有し得る。例えば、電極フィルムは各々、約30ミクロン(μm)~約250ミクロン、例えば約(又は少なくとも約)、50ミクロン、約100ミクロン、約150ミクロン、約200ミクロン、約250ミクロン、約300ミクロン、約400ミクロン、約500ミクロン、約750ミクロン、約1000ミクロン、約2000ミクロン又はそれらの間の任意の範囲の値の厚さを有し得る。さらなる電極フィルムの厚さは、単一の電極フィルムについて、本開示全体を通して記載される。電極フィルムは一般に、1つ以上の活物質、例えば、アノード活物質又はカソード活物質を含む。電極フィルム112及び/又は114は、厚さが小さく、電極フィルム密度が高く、エネルギー密度が高く、比エネルギー密度が高く、面積エネルギー密度が高く、面積容量が大きく又は比容量が大きい、乾燥及び/又は自己支持型電極フィルムであってもよい。第1電極フィルム112及び/又は第2電極フィルム114は、1つ以上のバインダを含み得る。電極フィルム112及び/又は114は、ここに記載されるようなプロセスにより調製されてもよい。電極フィルム112及び/又は114はここに記載されるように、湿潤又は自己支持型の乾燥電極であってもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、活物質は、炭素系材料又はバッテリ材料であってもよい。いくつかの実施形態では、活物質は、リチウム金属酸化物、硫黄炭素複合体及び/又は硫化リチウムを含み得る。いくつかの実施形態では、活物質は、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リチウムコバルト酸化物(LCO)、チタン酸リチウム(LTO)、リチウムニッケルマンガン酸化物(LNMO)及び/又はリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、活物質は、ここに記載される他の材料を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、活物質は、1つ以上の炭素材料を含んでいてもよい。その炭素材料は、例えば、グラファイト材料、グラファイト、グラフェン含有材料、硬質炭素、軟質炭素、カーボンナノチューブ、多孔質炭素、導電性炭素又はそれらの組み合わせから選択されてもよい。活性炭は、水蒸気プロセス又は酸/エッチングプロセスから誘導され得る。いくつかの実施形態では、グラファイト材料は表面処理された材料であってもよい。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は活性炭を含み得る。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は、階層構造炭素(hierarchically structured carbon)を含み得る。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は、構造化カーボンナノチューブ、構造化カーボンナノワイヤ及び/又は構造化カーボンナノシートを含み得る。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は、グラフェンシートを含み得る。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は、表面処理された炭素であってもよい。好ましい実施形態では、活物質は、グラファイトを含むか、本質的にグラファイトから構成され、又はグラファイトから構成される。
【0041】
一般に、ここに記載される電極フィルムは、改質乾燥製造プロセスを使用して製造できる。例えば、本出願に記載されるコンポーネントを製造するために使用されるいくつかのステップは、米国特許出願公開第2005/0266298号及び米国特許出願公開第2006/0146479号に見出すことができる。これら、及び外部文書への任意の他の参照は、その全体が参照によりここに組み込まれる。ここで使用されるように、乾燥製造プロセスは、電極フィルムの形成に溶媒が使用されないか、又は実質的に使用されないプロセスを指し得る。例えば、炭素材料及びバインダを含む電極フィルムの成分は、乾燥粒子を含み得る。電極フィルムを形成するための乾燥粒子を混合して、乾燥粒子電極フィルム混合物を提供できる。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、電極フィルムの成分の重量パーセンテージ及び乾燥粒子電極フィルム混合物の成分の重量パーセンテージが実質的に同じであるように、乾燥粒子電極フィルム混合物から形成されてもよい。いくつかの実施形態では、乾燥製造プロセスを使用して乾燥粒子電極フィルム混合物から形成される電極フィルムは、溶媒及びそれから生じる溶媒残留物などの任意の処理添加剤を含まないか又は実質的に含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、得られる電極フィルムは、乾燥粒子混合物から乾燥プロセスを使用して形成された自己支持型電極フィルムである。いくつかの実施形態では、得られる電極フィルムは、乾燥粒子混合物から乾燥プロセスを使用して形成された自立型電極フィルムである。電極フィルムはここに記載されるように、弾性ポリマーバインダを含んでいてもよく、及び/又はわずかな量のPTFEを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、自立型電極フィルムは、集電体の不在下で形成されてもよい。さらなる実施形態では、電極フィルムは自己支持型電極フィルムであってもよい。いくつかの実施形態では、乾燥粒子電極フィルム混合物は、電極フィルムを形成するために、第1カレンダ加工によりカレンダ加工される。いくつかの実施形態では、形成される電極フィルムは、第2カレンダ加工により、再度カレンダ加工される。いくつかの実施形態では、カレンダ加工(例えば、第1及び/又は第2カレンダ加工)は、100℃、150℃、165℃、185℃、200℃、215℃、230℃、250℃若しくは280℃、又は約100℃、約150℃、約165℃、約185℃、約200℃、約215℃、約230℃、約250℃若しくは約280℃、又はそれらの間の任意の範囲の値で実行される。
【0042】
図1に示すように、第1電極102及び第2電極104は、それぞれ、第1電極フィルム112に接する第1集電体108と、第2電極フィルム114に接する第2集電体110とを備える。第1集電体108及び第2集電体110は、各対応する電極フィルムと外部電気回路(図示せず)との間の電気的結合を容易にする。第1集電体108及び/又は第2集電体110は、1つ又は複数の導電性材料を含み、対応する電極と外部回路との間の電荷の伝達を容易にするように選択された任意の適切な形状及びサイズを有し得る。例えば、集電体は、アルミニウム、ニッケル、銅、レニウム、ニオブ、タンタル、及び貴金属、例えば銀、金、白金、パラジウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、並びにこれらの合金及び組合せを含む材料などの金属材料を含み得る。例えば、第1集電体108及び/又は第2集電体110は、例えば、アルミニウム箔又は銅箔を含み得る。第1集電体108及び/又は第2集電体110は、対応する電極と外部回路との間で電荷の伝達を提供するようなサイズとされた長方形又は実質的に長方形の形状を有し得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置100は、活物質を含むカソードを備えるリチウムイオンバッテリ又はハイブリッドエネルギー貯蔵装置である。いくつかの実施形態では、リチウムイオンバッテリは、約2.5~5V、又は2.7~4.2Vで動作するように構成されている。
【0044】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、3V以上で動作するように構成されている。さらなる実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、2.7V以上で動作するように構成されている。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、選択された電圧及び温度の条件で動作するように構成されている。例えば、エネルギー貯蔵装置は、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、又はそれ以上の温度、又はそれらの間の任意の範囲の値で動作するように構成されていてもよい。エネルギー貯蔵装置は、60~85℃で2.7V、60~85℃で2.8V、60~85℃で2.9V、又は60~85℃で3V、又はそれらの間で選択された任意の温度及び電圧の値で、連続動作するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、電圧及び温度の条件は、約2.7V及び約85℃、約2.8V及び約80℃、約2.9V及び約75℃、約3V及び約70℃又は約3.1V及び約65℃である。
【0045】
リチウムイオンエネルギー貯蔵装置
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置100は、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオンバッテリ又はハイブリッドリチウムイオン装置などのリチウムイオンエネルギー貯蔵装置であってもよい。いくつかの実施形態では、リチウムイオンエネルギー貯蔵装置電極の電極フィルムは、1つ以上の活物質を含んでいてもよく、弾性ポリマーバインダを含んでいてもよく、及び/又はPTFEを含まなくてもよく、又はわずかな量のPTFEを含んでいてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、リチウムイオンエネルギー貯蔵装置の電極フィルムは、アノード活物質を含み得る。アノード活物質は、例えば、挿入材料(炭素、グラファイト及び/又はグラフェンなど)、合金化/脱合金化材料(ケイ素、酸化ケイ素、スズ及び/又は酸化スズなど)、金属合金又は化合物(Si-Al及び/又はSi-Snなど)、及び/又は変換材料(酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化ニッケル及び/又は酸化銅など)を含み得る。アノード活物質は、単独で使用するか、又は一緒に混合して、多相材料(Si-C、Sn-C、SiOx-C、SnOx-C、Si-Sn、Si-SiOx、Sn-SnOx、Si-SiOx-C、Sn-SnOx-C、Si-Sn-C、SiOx-SnOx-C、Si-SiOx-Sn又はSn-SiOx-SnOxなど)を形成し得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、リチウムイオンエネルギー貯蔵装置の電極フィルムは、カソード活物質を含み得る。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、バインダ、及びオプションでの多孔質炭素材料、及びオプションでの導電性添加剤をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、導電性添加剤は、カーボンブラックなどの導電性炭素添加剤を含み得る。いくつかの実施形態では、多孔質炭素材料は活性炭を含み得る。いくつかの実施形態では、カソード活物質は、リチウム金属酸化物及び/又は硫化リチウムを含み得る。いくつかの実施形態では、カソード活物質は、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リチウムコバルト酸化物(LCO)、チタン酸リチウム(LTO)、リチウムニッケルマンガン酸化物及び/又はリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)を含んでいてもよい。カソード活物質は、硫黄、又は硫化リチウム(LiS)などの硫黄含有材料、又は他の硫黄系材料、又はそれらの混合物を含み得る。いくつかの実施形態では、カソードフィルムは、硫黄、又は少なくとも50重量%の濃度の硫黄活物質を含む材料を含む。いくつかの実施形態では、硫黄又は硫黄活物質を含む材料を含むカソードフィルムは、少なくとも10mAh/cmの面積容量を有する。いくつかの実施形態では、硫黄又は硫黄活物質を含む材料を含むカソードフィルムは、1g/cmの電極フィルム密度を有する。いくつかの実施形態では、硫黄又は硫黄活物質を含む材料を含むカソードフィルムは、バインダをさらに含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、リチウムイオンバッテリ又はハイブリッドエネルギー貯蔵装置のカソード電極フィルムは、約70重量%~約96重量%又は約70重量%~約88重量%を含む、約70重量%~約99重量%の活物質を含み得る。いくつかの実施形態では、カソード電極フィルムは、最大約5重量%又は約1重量%~約5重量%を含む、最大約10重量%の多孔質炭素材料を含み得る。いくつかの実施形態では、カソード電極フィルムは、約1重量%~約3重量%を含む最大約5重量%の導電性添加剤を含む。いくつかの実施形態では、カソード電極フィルムは、例えば、約1.5重量%~10重量%、約1.5重量%~5重量%又は約1.5重量%~3重量%を含む、最大約20重量%のバインダを含む。いくつかの実施形態では、カソード電極フィルムは、約1.5重量%~約3重量%のバインダを含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムは、活物質、バインダ、及びオプションでの導電性添加剤を含み得る。いくつかの実施形態では、導電性添加剤は、カーボンブラックなどの導電性炭素添加剤を含み得る。いくつかの実施形態では、アノードの活物質は、グラファイト炭素、合成グラファイト、天然グラファイト、硬質炭素、軟質炭素、グラフェン、メソポーラス炭素、ケイ素、酸化ケイ素、スズ、酸化スズ、ゲルマニウム、チタン酸リチウム、前記の材料の混合物又は複合体を含み得る。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムは、約90重量%~約98重量%又は約94重量%~約97重量%を含む、約80重量%~約99重量%の活物質を含み得る。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムは、約1重量%~約3重量%を含む、最大約5重量%の導電性添加剤を含む。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムは、約1.5重量%~10重量%、約1.5重量%~5重量%又は約3重量%~5重量%を含む、最大約20重量%のバインダを含む。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムは、約4重量%のバインダを含む。いくつかの実施形態では、アノードフィルムは、導電性添加剤を含んでいなくてもよい。
【0050】
いくつかの実施態様では、電極フィルムは、90重量%、92重量%、94重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%若しくは99重量%、又は約90重量%、約92重量%、約94重量%、約95重量%、約96重量%、約97重量%、約98重量%若しくは約99重量%、又は少なくとも90重量%、少なくとも92重量%、少なくとも94重量%、少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%若しくは少なくとも99重量%、又は少なくとも約90重量%、少なくとも約92重量%、少なくとも約94重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約96重量%、少なくとも約97重量%、少なくとも約98重量%若しくは少なくとも約99重量%又はこれらの間の任意の範囲の値の重量パーセントの、活物質を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、リチウムイオンエネルギー貯蔵装置電極の電極フィルムは、リチウムイオンを可逆的に挿入するように構成された炭素を含む電極フィルム混合物を含む。いくつかの実施形態では、リチウム挿入炭素は、グラファイト炭素、グラファイト、硬質炭素、軟質炭素及びそれらの組合せから選択される。例えば、電極の電極フィルムは、バインダ材料と、グラファイトカーボン、グラファイト、グラフェン含有カーボン、硬質炭素及び軟質炭素のうちの1つ以上と、導電性促進材料とを含み得る。いくつかの実施形態では、電極は、リチウム金属及び/又はリチウムイオンと混合される。
【0052】
さらなる実施形態では、エネルギー貯蔵装置100は、適切なリチウム含有電解質で充填される。例えば、装置100は、リチウム塩、及び非水性又は有機溶媒などの溶媒を含み得る。一般に、リチウム塩は、酸化還元安定性のあるアニオンを含む。いくつかの実施形態では、アニオンは一価であり得る。いくつかの実施形態では、リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸塩(LiPF)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SOCF、リチウムトリフルオロメタンスルホン酸塩(LiSOCF)、リチウムビス(オキサラト)ホウ酸塩(LiB(C)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SOF)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ホウ酸塩(LiCBF)及びそれらの組合せから選択できる。いくつかの実施形態では、電解質は、第四級アンモニウムカチオンと、ヘキサフルオロリン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩及びヨウ化物から構成される群から選択されるアニオンとを含み得る。いくつかの実施形態では、塩濃度は、約0.1mol/L(M)~約5M、約0.2M~約3M又は約0.3M~約2Mであり得る。さらなる実施形態では、電解質の塩濃度は、約0.7M~約1Mであり得る。特定の実施形態では、電解質の塩濃度は、約0.2M、約0.3M、約0.4M、約0.5M、約0.6M、約0.7M、約0.8M、約0.9M、約1M、約1.1M、約1.2M又はそれらの間の値であり得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、液体溶媒を含み得る。溶媒は、全ての成分を溶解する必要はなく、電解質のどの成分も完全に溶解する必要はない。さらなる実施形態では、溶媒は、有機溶媒であり得る。いくつかの実施形態では、溶媒は、カーボネート、エーテル及び/又はエステルから選択される1つ以上の官能基を含み得る。いくつかの実施形態では、溶媒はカーボネートを含み得る。さらなる実施形態では、カーボネートは、環状カーボネート、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)及びそれらの組み合わせ、又は非環状カーボネート、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びそれらの組み合わせから選択できる。特定の実施形態では、電解質は、LiPF及び1つ以上のカーボネートを含み得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、活物質は、処理された炭素材料を含み、その処理された炭素材料は米国特許出願公開第2014/0098464号に記載されているように、水素含有官能基、窒素含有官能基及び/又は酸素含有官能基の数の減少を含む。例えば、処理された炭素粒子は、処理された炭素の1つ以上の表面上の1つ以上の官能基の数の減少、例えば、未処理の炭素表面と比較して1つ以上の官能基の約10%~約60%の減少、例えば、約20%~約50%の減少、を含み得る。処理された炭素は、減少した数の水素含有官能基、窒素含有官能基及び/又は酸素含有官能基を含み得る。いくつかの実施形態では、処理された炭素材料は、約0.5%未満を含む、約1%未満が水素を含む、官能基を含む。いくつかの実施態様では、処理された炭素材料は、約0.1%未満を含む、約0.5%未満が窒素を含む、官能基を含む。いくつかの実施態様では、処理された炭素材料は、約3%未満を含む、約5%未満が酸素を含む、官能基を含む。さらなる実施形態では、処理された炭素材料は、未処理の炭素材料よりも約30%少ない水素を含有する官能基を含む。
【0055】
弾性ポリマーバインダ
弾性ポリマーバインダ材料を含む1つ以上の電極フィルムを備える、アノード及び/又はカソードなどの電極が開示される。いくつかの実施形態では、電極フィルムはPTFEを含まない。いくつかの実施形態では、電極フィルムはわずかな量のPTFEを含む。いくつかの実施形態では、弾性ポリマーバインダは1つ以上のポリオレフィン及び/又はそのコポリマーを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、弾性ポリマーバインダは、セルロース、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエーテルの前駆体、ポリシロキサン、それらのコポリマー及び/又はそれらの混合物のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のポリオレフィンは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、それらのコポリマー及び/又はそれらの混合物を含み得る。いくつかの実施形態では、弾性ポリマーバインダは、分岐ポリエーテル、ポリビニルエーテル、それらのコポリマーなどを含み得る。弾性ポリマーバインダは、ポリシロキサン及びポリシロキサンのコポリマー、並びに/又はポリエーテル前駆体のコポリマーを含んでいてもよい。例えば、弾性ポリマーバインダは、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリエチレン-ブロック-ポリ(エチレングリコール)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリジメチルシロキサン-コアルキルメチルシロキサン、それらのコポリマー及び/又はそれらの混合物を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のポリオレフィンは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、それらのコポリマー及び/又はそれらの混合物を含み得る。バインダは、セルロース、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)を含み得る。ポリマーの混合物は、前記のポリマー又はコポリマーの相互貫入ネットワークを含んでいてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、弾性ポリマーバインダは、PE、PVDF及びPEOのうちの少なくとも1つから選択されるバインダを含み得る。いくつかの実施形態では、弾性ポリマーバインダは、PEから構成されているか、又は本質的にPEから構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、弾性ポリマーバインダは、PVDFから構成されていているか、又は本質的にPVDFから構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、弾性ポリマーバインダは、PEOから構成されていているか、又は本質的にPEOから構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、弾性ポリマーバインダは、PE及びPVDFから構成されていているか、又は本質的にそれらから構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、弾性ポリマーバインダは、PE、PVDF及びPEOから構成されていているか、又は本質的にそれらから構成されていてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、弾性ポリマーバインダは粒子形態である。いくつかの実施形態では、弾性ポリマーバインダ粒子は、2μm、5μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm若しくは100μm、又は約2μm、約5μm、約10μm、約20μm、約30μm、約40μm、約50μm、約60μm若しくは約100μm、又はそれらの間の任意の値のD50平均サイズ分布を有する。
【0057】
電極フィルムは、様々な量の弾性ポリマーバインダを含み得る。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、8若しくは10重量%、又はそれらの間の任意の範囲の値の、弾性ポリマーバインダを含むか、又は含み得る。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、8若しくは10重量%、又はそれらの間の任意の範囲の値の、PEを含むか、又は含み得る。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、8若しくは10重量%、又はそれらの間の任意の範囲の値の、PVDFを含むか、又は含み得る。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、8若しくは10重量%、又はそれらの間の任意の範囲の値の、PEOを含むか、又は含み得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、ここに記載されるような弾性ポリマーを含む自立型及び/又は自己支持型電極フィルムは、少なくとも又は少なくとも約、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5若しくは6N、又はそれらの間の任意の範囲の値の、引張強度を有し得る。さらなる実施形態では、引張強度は、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5若しくは6N、又は約0.5、約1、約1.5、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.5、約5若しくは約6N又はそれらの間の範囲の値であり得る。
【実施例
【0059】
電極材料
SMG-A5グラファイト及びLiNi0.6Mn0.2Co0.2(NMC622)粉末を、乾燥なしで受け取り使用した。そのようなものとして、粉末は、大気中の水分に起因して、限定された残留水を含み得る。弾性ポリマーバインダは、広範囲の分子量のポリエチレン(PE)、ポリエチレンオキシド(PEO)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ホモポリマー及びコポリマーを含む。いくつかの実施形態では、バインダポリマーの粒子サイズ及び分布は、自立型電極フィルムの機械的安定性を維持する役割を果たし得る。比較例では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)バインダも使用した。表1は、以下に試験した活物質及びバインダの仕様を示す。
【0060】
【表1】
乾燥コーティングされた電極配合
表2は、活物質及びバインダを含む、試験した電極配合を示す。乾燥粉末プロセスを、以下の乾燥混合プロセスに従い実施した:(i)共鳴音響ミキサーを用いてグラファイト及びバインダを60%強度で5分間混合し;(ii)マイクロナイザーを用いて供給速度9、40psiの圧力で混合粉末を粉砕した。PTFEを含まない配合4~6については、ステップ(ii)の粉砕プロセスを除外し、これらは、ステップ(ii)のジェットミルを行わずに、共鳴音響混合ステップ(i)のみにより処理した。配合3は、PTFEを含み、比較のために提供される。図2Aは、処理されたPTFEを含まない配合粉末の写真を示し、これは、PTFEを含有する処理粉末配合とは異なり、粉末状で粉塵状に見える。図2Bに示すように、処理された乾燥粉末を、表3に示すカレンダ加工条件で、自立型電極フィルムに変換し、電極フィルム配合1~6の各々についてフィルムA及びフィルムBを形成した。フィルムAフィルムは処理粉末からフィルムに直接変換されるが、フィルムBフィルムはフィルムA条件下で調製されたフィルムを、目標の厚さ及び充填が達成されるまで再カレンダ加工することにより達成される。図2C~2Fはそれぞれ、混合粉末から直接カレンダ加工された、配合1、4、5及び6のPTFEを含まないフィルムAフィルムの画像を示し、これは、PTFEバインダ及びジェットミリングプロセスなしの自立型グラファイトフィルムが製造され得ることを実証する。PTFEを唯一のバインダとして含む典型的なグラファイト電極フィルムと比較して、より薄く且つ材料充填がより低いグラファイト電極フィルムが、処理配合粉末から直接1回のみのカレンダ加工通過により製造されることが、配合1、2及び4~6により可能になったことに留意されたい。
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
機械的性質
図3A及び3Bは、フィルムA及びフィルムBの仕様にカレンダ加工された配合1~3の自立型グラファイト電極フィルムの引張強度及び延びの結果を示す。予想外なことにそして有利なことに、PTFEバインダを含まない配合1及び2の自立型グラファイト電極フィルムの引張強度は、PTFEバインダを含む配合3のフィルムの引張強度に匹敵するか、又はそれを超えることがわかった。さらに、配合1及び2のフィルムは、PTFEバインダを含む配合3のグラファイト電極フィルムと比較して、フィルム伸び率を実質的に抑えた。さらに、PEバインダを含むグラファイト電極フィルムにPVDFを添加した配合2は、グラファイト電極フィルムがPEバインダのみを含む配合1と同等のフィルム伸び特性を維持しながら、実質的に改善された引張強度を示した。PE及びPVDFバインダを含む配合2のグラファイト電極フィルムは、表4に示されるように、PTFEバインダのみを含む配合3の電極フィルムよりも、高いフィルム密度をもたらすことに留意されたい。
【0063】
【表4】
電気化学セル試験
配合1~3を含むフィルムA及びフィルムBの自立型電極を、185℃でのカレンダ加工により銅箔上に積層し、減圧下、110℃で一晩乾燥させた後、電気化学的評価のために電解質を含むポーチケース内のリチウム金属電極に対して組み込んだ。表5は、バッテリセル評価に使用したグラファイト電極のコーティング重量を示す。表6は、処理された電極フィルムのフィルムA及びBを含むバッテリセルについての電解質組成物を示す。
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
図4A~5Bは、0.05Cの率で測定された、電解質A及び電解質Bを備える乾燥グラファイト電極半電池についての、第1サイクル容量及び効率の結果を示す。電解質組成にかかわらず、配合1及び2のPTFEを含まないグラファイト電極は、配合3と比較して実質的に小さな充放電容量をもたらし、これは部分的にはより高い電極密度のためである。さらに、配合1及び2のPTFEを含まないグラファイト電極は、有意に高い第1サイクル効率の、妥当な容量を示した。さらに、1重量%VCの電解質Bは、第1サイクルの効率を維持しながらも充放電容量を抑制することが観察された。同様の結果が、電解質Aを利用した場合にも見出された。
【0066】
図6A~7Cは、電解質A及び電解質Bを備える配合1~3の乾燥グラファイト電極半電池についてのリチウム化プロセスの、拡大した微分容量のプロファイルを示し、これらは、第1サイクル効率と相関する、最初の充電プロセス中の、不可逆的なSEI形成挙動を示す。これらの結果は、PTFEの電気化学的還元が約0.6Vで起こったことを示し、これはPTFEバインダを含むグラファイト電極のより低い第1サイクル効率の原因であると考えられる。さらに、PTFEバインダを含む、配合3のグラファイト電極は、0.2V~0.6Vの電圧でさらなるピークを示した。
【0067】
図8A~9Cは、0.05Cの率で試験された電解質A及び電解質Bを備える、配合1~3の乾燥グラファイト電極半電池の第1サイクルの電圧プロファイルを示す。PE及び/又はPVDFバインダを含む配合2及び3の乾燥グラファイト電極は、リチウム化の間、0~50mAh/gのより浅い曲がりを示した。電解質A及び電解質Bの両方について、PTFEバインダを含む配合3のグラファイト電極と比較した場合、脱リチウム中の同様のプロファイルが見られた。
【0068】
図9A~9Cは、0.1Cの率で試験した電解質Bを含む配合1~3の乾燥グラファイト電極半電池の初期サイクル性能を示す。配合1及び2のPTFEを含まないグラファイト電極セルは、配合3のグラファイト電極セルと比較して、より安定した初期サイクル挙動を示し、これは、グラファイト電極とリチウム金属電極との間に高いパッシベーション界面を生じるPTFEバインダの影響及び電気化学的不安定性を反映している。配合2のグラファイト電極セルは、0.1Cの率で容量低下なしに一貫して安定した大きな容量を示したが、配合3のグラファイト電極セルは0.1Cの率で比較的大きな容量減少を示しそれに続いて徐々に容量増加を示した。これは、PTFEバインダを含む配合3の電極セルが分極過電圧により誘発される大きな界面インピーダンスの影響を受けることを示す。
【0069】
特定の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例としてのみ提示されており、本開示の範囲を限定することを意図しない。実際に、ここに記載される新規な方法及びシステムは、様々な他の形態で具現化されてもよい。さらに、ここに記載されるシステム及び方法における様々な省略、置換及び変更は、本開示の思想から逸脱することなく行われ得る。添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物は、本開示の範囲及び思想内に含まれるような形態又は変形を包含することが意図される。
【0070】
特定の態様、実施形態又は例に関連して説明される特徴、材料、特性又は群は、本明細書のこのセクション又は他の箇所で記載される任意の他の態様、実施形態又は例と、互換性がある限り、それらに適用可能であると理解されるべきである。本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示された特徴のすべて、及び/又はそのように開示された任意の方法又はプロセスのステップのすべては、そのような特徴及び/又はステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組合せを除いて、任意の組合せで組み合わせることができる。保護は、前記の実施形態の詳細に限定されない。保護は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示された特徴の任意の新規な1つ、又は任意の新規な組み合わせ、又はそのように開示された任意の方法若しくはプロセスのステップの任意の新規な1つ、又は任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【0071】
さらに、別の実施の文脈で本開示に記載される特定の特徴は、単一の実施において組み合わせて実施することもできる。逆に、単一の実施の文脈で記載される様々な特徴は、別々に複数の実施で、又は任意の適切なサブコンビネーションで実施することも可能である。さらに、特徴は特定の組合せで作用するものとして前記され得るが、特許請求される組合せからの1つ以上の特徴は、場合によっては組合せから削除されてもよく、組合せはサブコンビネーションとして又はサブコンビネーションの変形として特許請求され得る。
【0072】
さらに、動作は図面に示されるか、又は特定の順序で本明細書に記載され得るが、そのような動作は所望の結果を達成するために、示される特定の順序で又は連続で実行される必要はなく、またすべての動作が実行される必要もない。図示され又は記載されていない他の動作を、例示的な方法及びプロセスに組み込むことができる。例えば、1つ又は複数の追加の動作を、記載した動作のいずれかの前、後、同時に又はそれらの間に実行し得る。さらに、動作は、他の実施において再配置又は再順序付けされてもよい。当業者であれば、いくつかの実施形態において、図示され及び/又は開示されたプロセスにおいて取られる実際のステップは、図面に示されたものとは異なり得ることを理解するであろう。実施形態に応じて、前記のステップのうちのいくつかを除去することができ、他のステップを追加することができる。さらに、前記で開示された特定の実施形態の特徴及び属性は、追加の実施形態を形成するために異なる方法で組み合わされてもよく、それらのすべては本開示の範囲内にある。また、前記の実施態様における様々なシステム構成要素の分離は、すべての実施態様においてそのような分離を必要とするものとして理解されるべきではなく、記載されるコンポーネント及びシステムは一般に、単一の製品に一体化されるか又は複数の製品にパッケージ化され得ることを理解されたい。例えば、ここに記載されるエネルギー貯蔵システムのためのコンポーネントのいずれも、別々に提供されてもよく、又はエネルギー貯蔵システムを形成するために一体化されてもよい(例えば、一緒にパッケージ化されてもよく、又は一緒に取り付けられてもよい)。
【0073】
本開示の目的で、特定の態様、利点及び新規な特徴について、ここに記載する。必ずしもすべてのそのような利点が、任意の特定の実施形態に従って達成され得るわけではない。したがって、例えば、当業者は、本開示がここで教示され又は示唆され得るような他の利点を必ずしも達成することなく、ここに教示されるような1つの利点又は利点群を達成する方法で具体化され又は実施され得ることを認識するのであろう。
【0074】
「できる」、「可能である」、「し得る」又は「してもよい」などの条件付き言語は特に断りのない限り、又は使用されるような文脈内で別様に理解されない限り、一般に、特定の実施形態が特定の特徴、要素及び/又はステップを含み、他の実施形態が含まないことを意図したものである。したがって、そのような条件付き言語は一般に、特徴、要素及び/若しくはステップが1つ又は複数の実施形態に何らかの形で必要とされること、又は1つ以上の実施形態がユーザ入力若しくはプロンプトの有無にかかわらず、これらの特徴、要素及び/若しくはステップが任意の特定の実施形態に含まれているか、又は任意の特定の実施形態で実行されるべきかどうか、を決定するための論理を必然的に含むことを暗示することを意図しない。
【0075】
特に断らない限り、「X、Y及びZのうちの少なくとも1つ」というフレーズなどの結合的文言は、項目、用語などがX、Y又はZのいずれかであり得ることを伝えるために一般的に使用される文脈とは別に理解される。すなわち、このような接続的文言は、特定の実施形態がXのうちの少なくとも1つ、Yのうちの少なくとも1つ及びZのうちの少なくとも1つの存在を必要とすることを一般的に暗示することを意図しない。
【0076】
ここで使用される用語「およそ」、「約」、「一般的に」及び「実質的に」などの、程度の用語は、所望の機能を依然として実行するか、又は所望の結果を達成する、記載された値、量又は特性に近い値、量又は特性を表している。例えば、用語「およそ」、「約」、「一般的に」及び「実質的に」は、所望の機能又は所望の結果に応じて、記載された量の10%未満内、5%未満内、1%未満内、0.1%未満内及び0.01%未満内である量を指し得る。
【0077】
本明細書に含まれる見出しは、もしあれば、便宜上のものにすぎず、ここに開示される装置及び方法の範囲又は意味に必ずしも影響を及ぼさない。
【0078】
本開示の範囲は、このセクション又は本明細書の他の場所における好ましい実施形態の特定の開示によって限定されるようには意図されておらず、このセクション又は本明細書の他の場所に提示されるように、あるいは将来提示されるように、特許請求の範囲によって定義され得る。特許請求の範囲の言語は特許請求の範囲に採用された言語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書に記載された例に又は出願の手続で限定されるものではなく、広く解釈されるべきであり、これらの例は、非排他的なものとして解釈されるべきである。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
【国際調査報告】