IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クラ オンコロジー, インコーポレイテッドの特許一覧

特表2022-527495ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤による扁平上皮癌の治療方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-02
(54)【発明の名称】ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤による扁平上皮癌の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4709 20060101AFI20220526BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220526BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20220526BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220526BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220526BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
A61K31/4709
A61K39/395 T
A61K33/243
A61K31/519
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557922
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(85)【翻訳文提出日】2021-10-22
(86)【国際出願番号】 US2020025149
(87)【国際公開番号】W WO2020205486
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】62/826,771
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/992,749
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516098524
【氏名又は名称】クラ オンコロジー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】バローズ, フランシス
(72)【発明者】
【氏名】リウ, イ
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC28
4C086CB09
4C086GA07
4C086GA16
4C086HA12
4C086HA24
4C086HA26
4C086HA28
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC41
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、がん療法の分野に関する。具体的には、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)で対象における扁平上皮癌を治療する方法が提供され、方法には、対象がH-Rasの発現レベルに基づいてFTI治療に応答する可能性があるかどうかを決定することが含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における扁平上皮癌(SCC)を治療する方法であって、治療有効量のファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)を、H-Rasを過剰発現するSCCを有する前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記対象が、参照レベルよりも少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、または少なくとも20倍高い、H-Ras発現を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記参照レベルが、健常対象集団におけるH-Rasの発現レベルの中央値である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記参照レベルが、SCCを有する対象集団におけるH-Rasの発現レベルの中央値である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
治療有効量のFTIを対象に投与することを含む、前記対象におけるSCCを治療する方法であって、前記対象が、参照比よりも高いK-Ras発現に対するH-Ras発現の比を有する、前記方法。
【請求項6】
治療有効量のFTIを対象に投与することを含む、前記対象におけるSCCを治療する方法であって、前記対象が、参照比よりも高いN-Ras発現に対するH-Ras発現の比を有する、前記方法。
【請求項7】
治療有効量のFTIを対象に投与することを含む、前記対象におけるSCCを治療する方法であって、前記対象が、参照比よりも高いK-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比を有する、前記方法。
【請求項8】
前記参照比が、健常対象集団における比の中央値である、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記参照レベルが、SCCを有する対象集団における比の中央値である、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記参照比が、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記SCCが、H-Ras変異を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記H-Ras変異が、対応する変異型H-Rasタンパク質のG12、G13、Q61、Q22、K117、A146、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される特定の位置でアミノ酸置換をコードするコドンにおける修飾であるか、またはそれを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記SCCが、頭頸部SCC(HNSCC)、肺SCC(LSCC)、甲状腺SCC(TSCC)、食道SCC(ESCC)、膀胱SCC(BSCC)、または尿路上皮癌(UC)である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記SCCが、HNSCCである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記HNSCCが、気管のHNSCCである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記HNSCCが、上顎骨のHNSCCである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記HNSCCが、口腔のHNSCCである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記SCCが、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性である、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記SCCが、進行期にあるかまたは転移性である、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記SCCが、再発性である、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記SCCが、難治性である、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記対象からの試料中のH-Ras発現レベルを分析することを含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
試料中のK-Ras発現レベル、N-Ras発現レベル、またはその両方を分析することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
H-Ras、K-Ras、N-Ras、またはこれらの任意の組み合わせのタンパク質レベルを測定することを含む、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記タンパク質レベルが、免疫組織化学(IHC)アプローチ、免疫ブロッティングアッセイ、フローサイトメトリー(FACS)、またはELISAを使用して決定される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
H-Ras、K-Ras、N-Ras、またはこれらの任意の組み合わせのmRNAレベルを測定することを含む、請求項22または23に記載の方法。
【請求項27】
前記mRNAレベルが、qPCR、RT-PCR、RNA-seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技法、またはFISHを使用して測定される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記試料中のH-Rasの変異状態を決定することをさらに含む、請求項22~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記試料が、組織生検である、請求項22~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記試料が、腫瘍生検である、請求項22~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記試料が、単離された細胞である、請求項22~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記FTIが、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、及びBMS-214662からなる群から選択される、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記FTIが、チピファルニブである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記FTIが、ロナファルニブである、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記FTIが、BMS-214662である、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
チピファルニブが、0.05~500mg/kg体重の用量で投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
チピファルニブが1日2回投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
チピファルニブが100~1200mgの用量で1日2回投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記チピファルニブが、100mg、200mg、300mg、400mg、600mg、900mgまたは1200mgの用量で1日2回投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記チピファルニブが、28日間の治療サイクルの1~7日目及び15~21日目に投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記チピファルニブが、28日間の治療サイクルの1~21日目に投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
前記チピファルニブが、28日間の治療サイクルの1~7日目に投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
チピファルニブが少なくとも1サイクル投与される、請求項40~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
チピファルニブが少なくとも3サイクル、6サイクル、9サイクル、または12サイクル投与される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
チピファルニブが放射線照射の前、その最中、またはその後に投与される、請求項33~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
治療有効量の第2の活性剤を投与することをさらに含む、請求項1~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
チピファルニブが、前記第2の活性剤の投与前、投与中、または投与後に投与される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記第2の活性剤が、DNA低メチル化剤、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、がん抗原に特異的に結合する治療用抗体、造血増殖因子、サイトカイン、抗生物質、cox-2阻害剤、CDK阻害剤、PI3K-α阻害剤、AKT阻害剤、MTOR1/2阻害剤、免疫調節剤、抗胸腺細胞グロブリン、免疫抑制剤、及びコルチコステロイドまたはこれらの薬理学的誘導体からなる群から選択される、請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
前記第2の活性剤が、EGFR阻害剤である、請求項46または47に記載の方法。
【請求項50】
前記EGFR阻害剤が、セツキシマブである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記第2の活性剤が、アルキル化剤である、請求項46または47に記載の方法。
【請求項52】
前記アルキル化剤が、シスプラチンである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記第2の活性剤が、CDK阻害剤である、請求項46または47に記載の方法。
【請求項54】
前記CDK阻害剤が、パルボシクリブである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記第2の活性剤が、PI3K-α阻害剤である、請求項46または47に記載の方法。
【請求項56】
前記PI3K-α阻害剤が、BYL719である、請求項49に記載の方法。
【請求項57】
前記第2の活性剤が、AKT阻害剤である、請求項46または47に記載の方法。
【請求項58】
前記AKT阻害剤が、GSK2141795である、請求項49に記載の方法。
【請求項59】
前記第2の活性剤が、MTOR1/2阻害剤である、請求項46または47に記載の方法。
【請求項60】
前記MTOR1/2阻害剤が、INK-128である、請求項49に記載の方法。
【請求項61】
前記第2の活性剤が、抗PD1抗体、抗PDL1抗体、または抗CTLA-4抗体である、請求項46または47に記載の方法。
【請求項62】
サポーティブケア療法を施すことをさらに含む、請求項1~45のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2020年3月20日に出願された米国仮特許出願第62/992,749号からの優先権の利益を主張し、さらに、2019年3月29日に出願された米国仮特許出願第62/826,771号からの優先権の利益を主張する。前述の関連出願のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、がん療法の分野に関する。具体的には、本明細書で提供されるのは、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤による扁平上皮癌の治療方法である。
【背景技術】
【0003】
治療応答率を向上させるための患者集団の層別化は、がん患者の臨床的管理においてますます重要となっている。ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)は、扁平上皮癌(「SCC」)などのがんの治療に有用な治療剤である。しかしながら、患者はFTI治療に対して様々に応答する。したがって、がんを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法、またはFTI治療のためのがん患者を選択する方法は、アンメットニーズに相当する。本明細書で提供される方法及び組成物は、これらのニーズを満たし、かつ関連する他の利点を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書で提供されるのは、治療有効量のファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)をH-Rasを過剰発現するSCCを有する対象に投与することにより、対象におけるSCCを治療する方法である。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、または少なくとも20倍高い、H-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、参照レベルは、健常対象集団におけるH-Rasの発現レベルの中央値である。いくつかの実施形態では、参照レベルは、SCCを有する対象集団におけるH-Rasの発現レベルの中央値である。
【0005】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、治療有効量のFTIを対象に投与することにより対象におけるSCCを治療する方法であり、対象は、参照比よりも高いK-Ras発現に対するH-Ras発現の比を有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、治療有効量のFTIを対象に投与することにより対象におけるSCCを治療する方法であり、対象は、参照比よりも高いN-Ras発現に対するH-Ras発現の比を有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、治療有効量のFTIを対象に投与することにより対象におけるSCCを治療する方法であり、対象は、参照比よりも高いK-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比を有する。いくつかの実施形態では、参照比は、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団における比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、SCCを有する対象集団における比の中央値である。
【0006】
いくつかの実施形態では、SCCはまた、H-Ras変異を有する。いくつかの実施形態では、H-Ras変異は、G12、G13、Q61、Q22、K117、A146、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるコドンにおけるアミノ酸置換を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、変異HRAS遺伝子は、変異H-Rasタンパク質をコードし、HRAS遺伝子変異は、対応する変異H-Rasタンパク質のG12、G13、Q61、Q22、K117、A146、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される特定の位置でアミノ酸置換をコードするコドンにおける修飾であるか、またはそれを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、SCCは、頭頸部SCC(HNSCC)、肺SCC(LSCC)、甲状腺SCC(TSCC)、食道SCC(ESCC)、膀胱SCC(BSCC)、または尿路上皮癌(UC)である。
【0009】
いくつかの実施形態では、SCCは、HNSCCである。HNSCCは、気管のHNSCCであり得る。HNSCCは、上顎骨のHNSCCであり得る。HNSCCは、口腔のHNSCCであり得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、SCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性である。いくつかの実施形態では、SCCは、進行期にあるか、または転移性である。いくつかの実施形態では、SCCは、再発性である。いくつかの実施形態では、SCCは、難治性である。
【0011】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、対象からの試料中のH-Ras発現レベルを分析することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、試料中のK-Ras発現、N-Ras発現、またはその両方を分析することをさらに含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、H-Ras、K-Ras、N-Ras、またはこれらの任意の組み合わせのタンパク質レベルを測定することを含む。タンパク質レベルは、免疫組織化学(IHC)アプローチ、免疫ブロッティングアッセイ、フローサイトメトリー(FACS)、またはELISAを使用して決定され得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、H-Ras、K-Ras、N-Ras、またはこれらの任意の組み合わせのmRNAレベルを測定することを含む。mRNAレベルは、qPCR、RT-PCR、RNA-seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技法、またはFISHを使用して測定され得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、試料中のH-Rasの変異状態を決定することを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、試料は、組織生検である。いくつかの実施形態では、試料は、腫瘍生検である。いくつかの実施形態では、試料は、単離された細胞である。
【0016】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法で使用されるFTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、及びBMS-214662からなる群から選択される。
【0017】
いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。いくつかの実施形態では、FTIは、ロナファルニブである。いくつかの実施形態では、FTIは、BMS-214662である。
【0018】
いくつかの実施形態では、チピファルニブは、0.05~500mg/kg体重の用量で投与される。いくつかの実施形態では、チピファルニブは、1日2回投与される。
【0019】
いくつかの実施形態では、チピファルニブは、100~1200mgの用量で1日2回投与される。いくつかの実施形態では、チピファルニブは、100mg、200mg、300mg、400mg、600mg、900mgまたは1200mgの用量で1日2回投与される。
【0020】
いくつかの実施形態では、チピファルニブは、28日間の治療サイクルの1~7日目及び15~21日目に投与される。いくつかの実施形態では、チピファルニブは、28日間の治療サイクルの1~21日目に投与される。いくつかの実施形態では、チピファルニブは、28日間の治療サイクルの1~7日目に投与される。
【0021】
いくつかの実施形態では、チピファルニブは少なくとも1サイクル投与される。いくつかの実施形態では、チピファルニブは少なくとも3サイクル、6サイクル、9サイクル、または12サイクル投与される。
【0022】
いくつかの実施形態では、チピファルニブは、放射線照射の前、その最中、またはその後に投与される。
【0023】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、治療有効量の第2の活性剤を投与することをさらに含む。チピファルニブは、第2の活性剤の投与前、投与中、または投与後に投与され得る。いくつかの実施形態では、第2の活性剤と組み合わせて投与されるチピファルニブの量は、単剤療法治療で投与されるチピファルニブの量よりも少ない。
【0024】
いくつかの実施形態では、第2の活性剤は、DNA低メチル化剤、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、がん抗原に特異的に結合する治療用抗体、造血増殖因子、サイトカイン、抗生物質、cox-2阻害剤、CDK阻害剤、PI3K-α阻害剤、AKT阻害剤、MTOR1/2阻害剤、免疫調節剤、抗胸腺細胞グロブリン、免疫抑制剤、及びコルチコステロイドまたはこれらの薬理学的誘導体からなる群から選択される。
【0025】
いくつかの実施形態では、第2の活性剤は、EGFR阻害剤である。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤は、セツキシマブである。いくつかの実施形態では、第2の活性剤は、アルキル化剤である。いくつかの実施形態では、アルキル化剤は、シスプラチンである。いくつかの実施形態では、第2の活性剤は、CDK阻害剤である。いくつかの実施形態では、CDK阻害剤は、パルボシクリブである。いくつかの実施形態では、第2の活性剤は、抗PD1抗体、抗PDL1抗体、または抗CTLA-4抗体である。いくつかの実施形態では、第2の活性剤は、PI3K-α阻害剤である。いくつかの実施形態では、PI3K-α阻害剤は、BYL719である。いくつかの実施形態では、第2の活性剤は、AKT阻害剤である。いくつかの実施形態では、AKT阻害剤は、GSK2141795である。いくつかの実施形態では、第2の活性剤は、MTOR1/2阻害剤である。いくつかの実施形態では、MTOR1/2阻害剤は、INK-128である。
【0026】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、サポーティブケア療法を施すことをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A】高H-Ras発現レベルまたは高H-Ras/K-Ras+N-Ras(「H/K+N」)比を有するHNSCC PDXモデルにおけるチピファルニブの有効性の増加。原発性ヒトHNSCC組織を接種し、チピファルニブまたはビヒクルのいずれかで治療したマウスの腫瘍増殖曲線を示す。様々なH-Ras発現レベル及びH/K+N比を有する4つのHNSCC PDXモデルを試験した。チピファルニブ治療は、HNSCC PDXモデルHN2576において腫瘍退縮をもたらした(H/K+N=4.6;H-Ras=3.0×中央値)。
図1B】高H-Ras発現レベルまたは高H-Ras/K-Ras+N-Ras(「H/K+N」)比を有するHNSCC PDXモデルにおけるチピファルニブの有効性の増加。原発性ヒトHNSCC組織を接種し、チピファルニブまたはビヒクルのいずれかで治療したマウスの腫瘍増殖曲線を示す。様々なH-Ras発現レベル及びH/K+N比を有する4つのHNSCC PDXモデルを試験した。チピファルニブ治療は、HNSCC PDXモデルHN2594において腫瘍増殖を阻害した(H/K+N=3.6;H-Ras=2.8×中央値)。
図1C】高H-Ras発現レベルまたは高H-Ras/K-Ras+N-Ras(「H/K+N」)比を有するHNSCC PDXモデルにおけるチピファルニブの有効性の増加。原発性ヒトHNSCC組織を接種し、チピファルニブまたはビヒクルのいずれかで治療したマウスの腫瘍増殖曲線を示す。様々なH-Ras発現レベル及びH/K+N比を有する4つのHNSCC PDXモデルを試験した。チピファルニブ治療は、HNSCC PDXモデルHN5111において腫瘍増殖の若干の阻害をもたらした(H/K+N=2.2;H-Ras=1.3×中央値)。
図1D】高H-Ras発現レベルまたは高H-Ras/K-Ras+N-Ras(「H/K+N」)比を有するHNSCC PDXモデルにおけるチピファルニブの有効性の増加。原発性ヒトHNSCC組織を接種し、チピファルニブまたはビヒクルのいずれかで治療したマウスの腫瘍増殖曲線を示す。様々なH-Ras発現レベル及びH/K+N比を有する4つのHNSCC PDXモデルを試験した。チピファルニブ治療は、HNSCC PDXモデルHN5123において腫瘍増殖の若干の阻害をもたらした(H/K+N=2.1;H-Ras=1.6×中央値)。
図2A】高H-Ras/K-Ras+N-Ras比を有する、乳癌PDXモデルにおいてではなくESCCにおけるチピファルニブの有効性の増加。原発性ヒトESCC組織を接種し、チピファルニブまたはビヒクルのいずれかで治療したマウスの腫瘍増殖曲線を示す。チピファルニブ治療は、ESCC PDXモデルES0204において腫瘍退縮をもたらした(H/K+N=6.3)。
図2B】高H-Ras/K-Ras+N-Ras比を有する、乳癌PDXモデルにおいてではなくESCCにおけるチピファルニブの有効性の増加。原発性ヒトESCC組織を接種し、チピファルニブまたはビヒクルのいずれかで治療したマウスの腫瘍増殖曲線を示す。チピファルニブ治療は、ESCC PDXモデルES0172において腫瘍増殖を阻害した(H/K+N=6.3)。
図2C】高H-Ras/K-Ras+N-Ras比を有する、乳癌PDXモデルにおいてではなくESCCにおけるチピファルニブの有効性の増加。原発性ヒト乳癌組織を接種し、チピファルニブまたはビヒクルのいずれかで治療したマウスの腫瘍増殖曲線を示す。チピファルニブ治療は、乳癌PDXモデルBR1282において腫瘍増殖を阻害しなかった(H/K+N=22.6)。
図2D】高H-Ras/K-Ras+N-Ras比を有する、乳癌PDXモデルにおいてではなくESCCにおけるチピファルニブの有効性の増加。原発性ヒト乳癌組織を接種し、チピファルニブまたはビヒクルのいずれかで治療したマウスの腫瘍増殖曲線を示す。チピファルニブ治療は、乳癌PDXモデルBR1458において腫瘍増殖の若干の阻害をもたらした(H/K+N=10.4)。
図3A】チピファルニブと第2の薬剤との組み合わせ治療は、HNSCC PDXモデルHN3411において腫瘍増殖を相乗的に阻害した(H-Ras=4.1×中央値;H/K+N=2.7)。ビヒクル、チピファルニブ、セツキシマブ、または両方の薬剤で治療したマウスの腫瘍増殖曲線。
図3B】チピファルニブと第2の薬剤との組み合わせ治療は、HNSCC PDXモデルHN3411において腫瘍増殖を相乗的に阻害した(H-Ras=4.1×中央値;H/K+N=2.7)。ビヒクル、チピファルニブ、シスプラチン、または両方の薬剤で治療したマウスの腫瘍増殖曲線。
図3C】チピファルニブと第2の薬剤との組み合わせ治療は、HNSCC PDXモデルHN3411において腫瘍増殖を相乗的に阻害した(H-Ras=4.1×中央値;H/K+N=2.7)。ビヒクル、チピファルニブ、パルボシクリブ、または両方の薬剤で治療したマウスの腫瘍増殖曲線。
図4A】チピファルニブと第2の薬剤との組み合わせ治療は、HNSCC PDXモデルHN2594において腫瘍増殖を相乗的に阻害した(H-Ras=2.8×中央値;H/K+N=3.6)。ビヒクル、チピファルニブ、セツキシマブ、または両方の薬剤で治療したマウスの腫瘍増殖曲線。
図4B】チピファルニブと第2の薬剤との組み合わせ治療は、HNSCC PDXモデルHN2594において腫瘍増殖を相乗的に阻害した(H-Ras=2.8×中央値;H/K+N=3.6)。ビヒクル、チピファルニブ、シスプラチン、または両方の薬剤で治療したマウスの腫瘍増殖曲線。
図4C】チピファルニブと第2の薬剤との組み合わせ治療は、HNSCC PDXモデルHN2594において腫瘍増殖を相乗的に阻害した(H-Ras=2.8×中央値;H/K+N=3.6)。ビヒクル、チピファルニブ、パルボシクリブ、または両方の薬剤で治療したマウスの腫瘍増殖曲線。
図5】高H-Ras発現レベルまたは高H-Ras/K-Ras+N-Ras(「H/K+N」)比を有するHNSCC PDXモデルにおけるチピファルニブの有効性の増加。A~Dは、原発性ヒトHNSCC組織を接種し、チピファルニブまたはビヒクルのいずれかで治療したマウスの腫瘍増殖曲線を示す。高H-Ras発現レベル及び/またはH/K+N比を有する4つのHNSCC PDXモデルを試験した。A.チピファルニブ治療は、HNSCC PDXモデルHN2576において腫瘍退縮をもたらした。B.チピファルニブ治療は、HNSCC PDXモデルHN2594において腫瘍増殖を阻害した。C.チピファルニブ治療は、HNSCC PDXモデルHN3461において腫瘍増殖を阻害した。D.チピファルニブ治療は、HNSCC PDXモデルHN3679において腫瘍増殖を阻害した。
図6】低H-Ras発現レベルまたは低H-Ras/K-Ras+N-Ras(「H/K+N」)比を有するHNSCC PDXモデルにおけるチピファルニブの若干の有効性。A~Dは、原発性ヒトHNSCC組織を接種し、チピファルニブまたはビヒクルのいずれかで治療したマウスの腫瘍増殖曲線を示す。低H-Ras発現レベル及び/またはH/K+N比を有する4つのHNSCC PDXモデルを試験した。A.チピファルニブ治療は、HNSCC PDXモデルHN2222において、腫瘍増殖を部分的に阻害ないし全く阻害しなかった(不活性)。チピファルニブ治療は、HNSCC PDXモデルHN5111(B)、HNSCC PDXモデルHN5115(C)、及びHNSCC PDXモデルHN5123(D)において腫瘍増殖の部分的な阻害をもたらした。
図7】チピファルニブと第2の薬剤(シスプラチン)との組み合わせ治療は、変異型H-Ras HNSCC PDXモデルHN2579(A)、HN2581(B)、HN1420(C)、及びHN3504(D)において腫瘍増殖を相乗的に阻害した。各図は、それぞれのモデルにおいてビヒクル、チピファルニブ、シスプラチン、または両方の薬剤による組み合わせ療法で治療したマウスの腫瘍増殖曲線を示す。
図8】チピファルニブと第2の薬剤(シスプラチン)との組み合わせ治療は、HNSCC PDXモデルHN3792(A)、HN0586(B)、HN2576(C)、及びHN3067(D)において腫瘍増殖を阻害し、モデルは高H-Ras発現及び/または高H/N+K比を有しており、図は、それぞれのモデルにおいてビヒクル、チピファルニブ、シスプラチン、または両方の薬剤による組み合わせ療法で治療したマウスの腫瘍増殖曲線を示す。
図9】チピファルニブと第2の薬剤(シスプラチン)との組み合わせ治療は、HNSCC PDXモデルHN2594(A)、HN3461(B)、HN3776(C)、及びHN3474(D)において腫瘍増殖を阻害し、モデルは高H-Ras発現及び/または高H/N+K比を有しており、図は、それぞれのモデルにおいてビヒクル、チピファルニブ、シスプラチン、または両方の薬剤による組み合わせ療法で治療したマウスの腫瘍増殖曲線を示す。
図10】チピファルニブと第2の薬剤(パルボシクリブ)との組み合わせ治療は、HNSCC PDXモデルHN2576(A)、HN3067(B)、HN2594(C)、及びHN3679(D)において腫瘍増殖を阻害し、モデルは高H-Ras発現及び/または高H/N+K比を有しており、図は、それぞれのモデルにおいてビヒクル、チピファルニブ、パルボシクリブ、または両方の薬剤による組み合わせ療法で治療したマウスの腫瘍増殖曲線を示す。
図11】チピファルニブと第2の薬剤(セツキシマブ)との組み合わせ治療は、HNSCC PDXモデルHN2576(A)、HN3067(B)、HN2594(C)、及びHN3679(D)において腫瘍増殖を阻害し、モデルは高H-Ras発現及び/または高H/N+K比を有しており、図は、それぞれのモデルにおいてビヒクル、チピファルニブ、セツキシマブ、または両方の薬剤による組み合わせ療法で治療したマウスの腫瘍増殖曲線を示す。
図12】チピファルニブと第2の薬剤(PI3K-α阻害剤BYL719)との組み合わせ治療は、HNSCC PDXモデルHN2594(A)及びHN2576(B)(両方のモデルは高H-Ras発現及び/または高H/N+K比を有する)において、ならびに変異型H-Ras遺伝子発現を(HRAS A146Pのコドンに)有するPDX HNSCCモデルHN1420(C)において腫瘍増殖を阻害し、A~Cは、それぞれのモデルにおいてビヒクル、チピファルニブ、BYL719、または両方の薬剤による組み合わせ療法で治療したマウスの腫瘍増殖曲線を示す。
図13】チピファルニブと第2の薬剤(AKT阻害剤GSK2141795)との組み合わせ治療は、HNSCC PDXモデルHN2594(A)及びHN2576(B)(両方のモデルは高H-Ras発現及び/または高H/N+K比を有する)において、ならびに変異型H-Ras遺伝子発現を(HRAS A146Pのコドンに)有するPDX HNSCCモデルHN1420(C)において腫瘍増殖を阻害し、A~Cは、それぞれのモデルにおいてビヒクル、チピファルニブ、GSK2141795、または両方の薬剤による組み合わせ療法で治療したマウスの腫瘍増殖曲線を示す。
図14】チピファルニブと第2の薬剤(MTORC1/2阻害剤INK-128)との組み合わせ治療は、HNSCC PDXモデルHN2594(A)及びHN2576(B)(両方のモデルは高H-Ras発現及び/または高H/N+K比を有する)において、ならびに変異型H-Ras遺伝子発現を(HRAS A146Pのコドンに)有するPDX HNSCCモデルHN1420(C)において腫瘍増殖を阻害し、A~Cは、それぞれのモデルにおいてビヒクル、チピファルニブ、INK-128、または両方の薬剤による組み合わせ療法で治療したマウスの腫瘍増殖曲線を示す。
図15】チピファルニブと第2の薬剤(PI3K-α阻害剤BYL719)との組み合わせ治療は、変異型H-Ras遺伝子発現を(それぞれHRAS A146P、HRAS G13C、HRAS G12S、及びHRAS K117Lのコドンに)有するHNSCC PDXモデルHN1420(A)、HN2581(B)、HN2579(C)、及びHN3504(D)において腫瘍増殖を阻害し、A~Dは、それぞれのモデルにおいてビヒクル、チピファルニブ、BYL719、または両方の薬剤による組み合わせ療法で治療したマウスの腫瘍増殖曲線を示す。
図16】チピファルニブと第2の薬剤(PI3K-α阻害剤BYL719)との組み合わせ治療は、高H-Ras発現レベル及び野生型PIK3CAの発現を有するHNSCC PDXモデルHN3067(A)及びHN3411(C)において、ならびに高H-Ras発現レベルを有しかつ変異型PIK3CAの発現を(それぞれPI3K-αG118D及びPI3K-αE454Kのコドンに)有するPDX HNSCCモデルHN2593(B)及びHN3690(D)において腫瘍増殖を阻害し、A~Dは、それぞれのモデルにおいてビヒクル、チピファルニブ、BYL719、または両方の薬剤による組み合わせ療法で治療したマウスの腫瘍増殖曲線を示す。
図17】データベースTCGA PanCancer Atlas内で利用可能なデータによる、扁平上皮癌(HNSCC、LSCC、及びUC)ならびに腺癌(CRC、PDAC、及びLUAD)を有する患者におけるH-Ras発現レベル。
図18】データベースTCGA PanCancer Atlas内で利用可能なデータによる、HNSCC患者におけるH-Ras遺伝子発現レベルとPIK3CA遺伝子発現レベルとの間の相関関係。
図19】データベースTCGA PanCancer Atlas内で利用可能なデータによる、UC患者(A)及びLSCC患者(B)におけるH-Ras遺伝子発現レベルとPIK3CA遺伝子発現レベルとの間の相関関係。
図20】データベースTCGA PanCancer Atlas内で利用可能なデータによる、発現したPIK3CA遺伝子の特定のタイプの変異型を有する分布と比較した、野生型PIK3CA遺伝子発現を有するUC患者内のH-Ras発現レベルの分布。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、及び「the」という冠詞は、冠詞の文法上の目的語のうちの1つまたは複数を指す。例として、試料(a sample)は、1つの試料または2つ以上の試料を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は哺乳動物を指す。対象は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、マウス、ラット、ウサギ、もしくはそれらのトランスジェニック種であり得る。対象は、ヒトであり得る。
【0030】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、1つ以上の目的成分を含有する材料または材料の混合物を指す。対象からの試料は、in vivoまたはin situで得たか、到達したか、または採取した、生体組織または体液由来の試料を含む、対象から得た試料を指す。試料は、前がん性のまたはがんの細胞または組織を含有する対象の領域から得ることができる。そのような試料は、限定されるものではないが、哺乳動物から単離された器官、組織、画分、及び細胞であり得る。例示的な試料としては、リンパ節、全血、部分精製血液、血清、血漿、骨髄、及び末梢血単核細胞(「PBMC」)が挙げられる。試料はまた、組織生検であり得る。例示的な試料としては、細胞溶解液、細胞培養物、細胞株、組織、口腔組織、胃腸組織、器官、細胞小器官、生体液、血液試料、尿試料、皮膚試料なども挙げられる。
【0031】
本明細書で使用される場合、試料を「分析する」という用語は、試料の特定の性質または特性に関する評価を行うために、当該技術分野において認識されているアッセイを実施することを指す。試料の性質または特性は、例えば、試料中の細胞のタイプ、または試料中の遺伝子の発現レベルであり得る。
【0032】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」、及び「治療」という用語は、がん患者に関して使用されるとき、がんの重症度を低減させるか、またはがんの進行を遅らせるかもしくは緩慢にする作用を指すことができ、これは、(a)がんの増殖を阻害するか、またはがんの発生を阻止すること、及び(b)がんの退縮を引き起こすか、またはがんの存在に関連する1つ以上の症状を遅延させるかもしくは最小限に抑えることを含む。例えば、対象におけるH-Rasを過剰発現するSCCなどのがんを「治療すること」は、対象におけるがんの増殖を阻害する行為を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、「投与する」、「投与すること」または「投与」という用語は、本明細書に記載されているか、またはさもなければ当該技術分野で公知の方法によって、化合物または医薬組成物を対象の身体に送達するか、または送達されるようにする行為を指す。化合物または医薬組成物を投与することは、患者の身体に送達される予定の化合物または医薬組成物を処方することを含む。例示的な投与形態としては、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁剤などの経口剤形;静脈内(IV)、筋肉内(IM)、または腹腔内(IP)などの注射用剤形;クリーム剤、ゼリー剤、散剤、またはパッチ剤を含む経皮剤形;頬側剤形;吸入散剤、スプレー剤、懸濁剤、及び直腸坐剤が挙げられる。
【0034】
本明細書で使用される場合、対象に関する「選択すること」及び「選択された」という用語は、特定の対象が所定の判定基準、または一連の所定の基準を満たす、例えば、参照レベルよりも高いH-Ras発現を有することに基づいて(それを理由として)、特定の対象が比較的大きな対象群から特別に選択されることを意味するために使用される。同様に、対象を「選択的に治療すること」とは、所定の判定基準または一連の所定の基準を満たす対象に治療を提供することを指す。同様に、「選択的に投与すること」とは、所定の判定基準または一連の所定の基準を満たす対象に薬物を投与することを指す。選択すること、選択的に治療すること、及び選択的に投与することは、SCCを有する対象が、SCCを有することのみに基づく標準的な治療レジメンを提供されるのではなく、対象の生物学的状態に基づく個別化された療法を提供されることを意味する。
【0035】
本明細書で使用される場合、化合物の「治療有効量」という用語は、疾患または障害に関連して使用されるとき、疾患もしくは障害の治療に治療的利益を提供するか、または疾患もしくは障害に関連する1つ以上の症状を遅延させるかもしくは最小限に抑えるのに十分な量を指す。言及する疾患または障害は、SCCであり得る。化合物の治療有効量とは、単独で、または他の療法と組み合わせて使用された場合に、疾患または障害の治療または管理に治療的利益を提供する化合物の量を意味する。この用語は、療法全体を向上させ、症状を軽減もしくは回避させ、または別の治療剤の治療有効性を高める量を包含する。この用語はまた、研究者、獣医、医師または臨床医が探求している、生体分子(例えば、タンパク質、酵素、RNAもしくはDNA)、細胞、組織、系、動物またはヒトの生物学的応答または医学的応答を十分に誘発する化合物の量を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、「発現する」または「発現」という用語は、遺伝子に関連して使用されるとき、遺伝子によって運ばれる情報が表現型として現れるようになるプロセスを指し、これには、遺伝子からメッセンジャーRNA(mRNA)への転写、その後のmRNA分子からポリペプチド鎖への翻訳、及び最終タンパク質へのそのアセンブリが含まれる。
【0037】
本明細書で使用される場合、遺伝子の「発現レベル」という用語は、例えば、遺伝子のRNA産物の量(遺伝子のmRNAレベル)または遺伝子のタンパク質産物の量(遺伝子のタンパク質レベル)などの、遺伝子の発現産物の量または蓄積を指す。遺伝子が複数の対立遺伝子を有する場合、遺伝子の発現レベルは、別途明記されない限り、この遺伝子の存在する全ての対立遺伝子に関する発現産物の蓄積の総量を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、「参照」という用語は、定量化可能な値に関連して使用されるとき、試料中で測定された値の有意性を決定するために使用することができる所定の値を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「参照発現レベル」という用語は、試料中の遺伝子の発現レベルの有意性を決定するために使用することができる所定の遺伝子の発現レベルを指す。試料は、細胞、細胞群、または組織であり得る。例えば、遺伝子の参照発現レベルはまた、様々な試料細胞集団における遺伝子の発現レベルの統計解析を通じて当業者により決定されるカットオフ値であり得る。いくつかの実施形態では、H-Rasの参照発現レベルは、健常対象集団におけるH-Rasの発現レベルの中央値であり得る。いくつかの実施形態では、H-Rasの参照発現レベルは、同じタイプの腫瘍を有する対象集団におけるH-Rasの発現レベルの中央値であり得る。例えば、HNSCC患者の参照発現レベルは、HNSCC患者集団におけるH-Rasの発現レベルの中央値であり得る。別の例では、LSCC患者の参照発現レベルは、LSCC患者集団におけるH-Rasの発現レベルの中央値であり得る。別の例では、BSCC患者の参照発現レベルは、BSCC患者集団におけるH-Rasの発現レベルの中央値であり得る。別の例では、UC患者の参照発現レベルは、UC患者集団におけるH-Rasの発現レベルの中央値であり得る。いくつかの実施形態では、H-Rasの参照発現レベルは、同じタイプの腫瘍を有する対象集団におけるH-Ras発現のカットオフパーセンタイルであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位10%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位15%の発現カットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位20%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位25%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位30%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位35%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位40%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位45%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位50%のカットオフであり得る。例えば、HNSCC患者の参照発現レベルは、HNSCC患者集団におけるH-Ras発現の上位30%のカットオフであり得る。例えば、LSCC患者の参照発現レベルは、LSCC患者集団におけるH-Ras発現の上位30%のカットオフであり得る。例えば、BSCC患者の参照発現レベルは、BSCC患者集団におけるH-Ras発現の上位30%のカットオフであり得る。例えば、UC患者の参照発現レベルは、UC患者集団におけるH-Ras発現の上位30%のカットオフであり得る。参照発現レベルは、例えば、臨床コホートからの試料におけるH-Ras発現レベルの統計解析を通じて当業者により決定され得る。
【0040】
本明細書で使用される場合、「過剰発現する」または「過剰発現」という用語は、遺伝子に関連して使用されるとき、対象の組織の遺伝子の発現レベルが参照レベルよりも高いことを意味し、参照レベルは、健常集団における同じ組織の遺伝子の発現レベルの少なくとも中央値である。組織はまた、腫瘍であり得る。いくつかの実施形態では、対象において「過剰発現される」遺伝子は、参照レベルよりも少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、または少なくとも20倍高いレベルで発現され得る。対象における特定の腫瘍で過剰発現される遺伝子は、対象における腫瘍の遺伝子の発現レベルが参照レベルよりも高いことを意味し、参照レベルは、健常集団における対応する組織の遺伝子の発現レベルの少なくとも中央値である。
【0041】
いくつかの実施形態では、対象における特定のSCCで過剰発現される遺伝子は、対象のSCCにおける遺伝子の発現レベルが、同じ腫瘍を有する対象の集団中の腫瘍試料における遺伝子の発現レベルの中央値よりも高いことを意味し得る。例えば、H-Rasを過剰発現するHNSCCを有する対象は、その対象のHNSCCにおけるH-Ras発現レベルが、健常集団の対応する頭頸部組織におけるH-Rasの発現レベルの少なくとも中央値より高いか、またはいくつかの実施形態では、HNSCC患者集団からの腫瘍試料におけるH-Rasの発現レベルの中央値よりも高いことを意味し得る。参照レベルはまた、同じタイプの腫瘍を有する対象集団におけるH-Rasの発現レベルのカットオフパーセンタイルであり得、したがって、H-Rasを過剰発現するHNSCCを有する対象は、対象のHNSCCにおけるH-Ras発現レベルが、HNSCC患者集団におけるH-Ras発現のカットオフパーセンタイルよりも高いことを意味し得る。別の例では、H-Rasを過剰発現するLSCCを有する対象は、その対象のLSCCにおけるH-Ras発現レベルが、健常集団の対応する肺組織におけるH-Rasの発現レベルの少なくとも中央値より高いか、またはいくつかの実施形態では、LSCC患者集団からの腫瘍試料におけるH-Rasの発現レベルの中央値よりも高いことを意味し得る。参照レベルはまた、同じタイプの腫瘍を有する対象集団におけるH-Rasの発現レベルのカットオフパーセンタイルであり得、したがって、H-Rasを過剰発現するLSCCを有する対象は、対象のLSCCにおけるH-Ras発現レベルが、LSCC患者集団におけるH-Ras発現のカットオフパーセンタイルよりも高いことを意味し得る。別の例では、H-Rasを過剰発現するUCを有する対象は、その対象のUCにおけるH-Ras発現レベルが、健常集団の対応する尿路上皮組織におけるH-Rasの発現レベルの少なくとも中央値より高いか、またはいくつかの実施形態では、UC患者集団からの腫瘍試料におけるH-Rasの発現レベルの中央値よりも高いことを意味し得る。参照レベルはまた、同じタイプの腫瘍を有する対象集団におけるH-Rasの発現レベルのカットオフパーセンタイルであり得、したがって、H-Rasを過剰発現するUCを有する対象は、対象のUCにおけるH-Ras発現レベルが、UC患者集団におけるH-Ras発現のカットオフパーセンタイルよりも高いことを意味し得る。
【0042】
カットオフパーセンタイルは、上位10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%のカットオフであり得る。例えば、カットオフパーセンタイルは、上位25%のカットオフであり得る。いくつかの実施形態では、H-Rasを過剰発現するHNSCCを有する対象は、集団における最も高いH-Ras発現を有するHNSCC患者集団のうちの25%の患者であり得る。いくつかの実施形態では、H-Rasを過剰発現するLSCCを有する対象は、集団における最も高いH-Ras発現を有するLSCC患者集団のうちの25%の患者であり得る。いくつかの実施形態では、H-Rasを過剰発現するBSCCを有する対象は、集団における最も高いH-Ras発現を有するBSCC患者集団のうちの25%の患者であり得る。いくつかの実施形態では、H-Rasを過剰発現するUCを有する対象は、集団における最も高いH-Ras発現を有するUC患者集団のうちの25%の患者であり得る。いくつかの実施形態では、対象の腫瘍において過剰発現される遺伝子の発現レベルは、参照レベルよりも少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、または少なくとも20倍高くなり得る。
【0043】
2つ以上の遺伝子の発現レベルに関連して本明細書で使用される「参照比」という用語は、試料中のこれらの遺伝子のレベルの比の有意性を決定するために使用することができる、当業者によって予め定められた比を指す。試料は、細胞、細胞群、または組織であり得る。例えば、K-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の参照比は、K-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の予め定められた比であり得る。2つ以上の遺伝子の発現レベルの参照比は、対象集団におけるこれらの遺伝子の発現レベルの比の中央値であり得る。例えば、K-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の参照比は、健常集団における比の中央値であり得る。別の例では、K-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の参照比は、同じタイプの腫瘍を有する患者集団における比の中央値であり得る。参照比はまた、同じタイプの腫瘍を有する対象集団における発現比のカットオフパーセンタイルであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位10%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位15%の発現カットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位20%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位25%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位30%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位35%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位40%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位45%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位50%のカットオフであり得る。例えば、HNSCC患者の参照発現比は、HNSCC患者集団におけるK-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比の上位30%のカットオフであり得る。参照比はまた、例えば、様々な試料細胞集団における2つの遺伝子の発現レベルの比の統計解析を通じて当業者により決定されるカットオフ値であり得る。特定の実施形態では、参照比は、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15または20である。いくつかの実施形態では、参照比は1/10である。いくつかの実施形態では、参照比は1/9である。いくつかの実施形態では、参照比は1/8である。いくつかの実施形態では、参照比は1/7である。いくつかの実施形態では、参照比は1/6である。いくつかの実施形態では、参照比は1/5である。いくつかの実施形態では、参照比は1/4である。いくつかの実施形態では、参照比は1/3である。いくつかの実施形態では、参照比は1/2である。いくつかの実施形態では、参照比は1である。いくつかの実施形態では、参照比は2である。いくつかの実施形態では、参照比は3である。いくつかの実施形態では、参照比は4である。いくつかの実施形態では、参照比は5である。いくつかの実施形態では、参照比は6である。いくつかの実施形態では、参照比は7である。いくつかの実施形態では、参照比は8である。いくつかの実施形態では、参照比は9である。いくつかの実施形態では、参照比は10である。いくつかの実施形態では、参照比は15である。いくつかの実施形態では、参照比は20である。
【0044】
本明細書で使用される場合、「応答性」または「応答する」という用語は、治療に関連して使用されるとき、治療対象の疾患の症状の軽減または低下に関する治療の有効性を指す。SCC患者に関連して、患者は、FTI治療がSCCの増殖を効果的に阻害するか、またはSCCの発生を阻止するか、SCCの退縮を引き起こすか、またはこの患者におけるSCCの存在に関連する1つ以上の症状を遅延させるかもしくは最小限に抑える場合、FTI治療に応答する。
【0045】
本明細書で使用される場合、「可能性」という用語は、事象の確率を指す。条件が満たされた場合に対象が特定の治療に応答する「可能性がある」とは、条件が満たされた場合の方が、条件が満たされない場合よりも対象が特定の治療に応答する確率が高いことを意味する。特定の治療に応答する確率は、特定の条件を満たす対象において、その条件を満たさない対象と比較して、例えば、5%、10%、25%、50%、100%、200%、またはそれを超えて、高くなり得る。例えば、対象が高H-Ras発現または高H-Ras/N+K-Ras発現比を有する場合、SCCを有するこの対象がFTI治療に応答する「可能性がある」とは、H-Ras過剰発現を有さないかまたは参照比よりも低いH-Ras/N+K-Ras発現比を有する対象と比較して、H-Ras過剰発現を有するかまたは参照比よりも高いH-Ras/N+K-Ras発現比を有する対象において、FTI治療に応答するであろう対象の確率が、5%、10%、25%、50%、100%、200%、またはそれを超えて高いことを意味する。
【0046】
A.方法
本明細書で提供されるのは、FTIによる治療のためにSCCを有する対象を選択するための方法である。本明細書で提供される方法は、異なる遺伝子発現を有するSCC患者がFTI治療に対して異なる応答を示し、FTI治療の臨床的利益が特定の遺伝子の発現レベルに関連する、という発見に部分的に基づく。例えば、本明細書で提供される方法は、H-Rasを過剰発現するSCCを有する患者がFTI治療に応答する可能性があるという発見に基づいており、FTI治療のためにH-Rasを過剰発現するSCCを有する患者集団を選択することは、SCCに対するFTI治療の全体的な応答率を向上させ得る。
【0047】
さらに、本明細書で提供される方法はまた、高H-Ras発現対K-Ras発現比(「H/K比」)、高H-Ras発現対N-Ras発現比(「H/N比」)、または高H-Ras発現対K-RasとN-Rasとの組み合わせ発現比(「H/K+N比」)を有するSCC患者がFTI治療に応答する可能性があるという発見に部分的に基づいており、FTI治療のために高H/K比、高H/N比、または高H/N+K比を有するSCC患者集団を選択することは、SCCに対するFTI治療の全体的な応答率を向上させ得る。
【0048】
したがって、本明細書で提供されるのは、治療有効量のFTIをH-Rasを過剰発現するSCCを有する対象に投与することにより、対象におけるSCCを治療するための方法である。本明細書では、H-Ras過剰発現を有するSCC患者を選択的に治療することにより、SCCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H-Rasの発現レベルに基づいてSCCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象がH-Ras過剰発現を有する場合に応答する可能性があると予測される。
【0049】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、治療有効量のFTIを対象に投与することを含む、対象におけるSCCを治療するための方法であり、対象は、参照レベルよりも高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Rasの発現レベルを測定すること、及び試料中のH-Ras発現レベルが参照レベルよりも高い場合、対象がH-Rasを過剰発現するSCCを有すると決定することを含む。
【0050】
FTIは、本明細書に記載されているものを含む任意のFTIであり得る。例えば、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。したがって、本明細書で提供されるのは、治療有効量のチピファルニブをH-Rasを過剰発現するSCCを有する対象に投与することにより、対象におけるSCCを治療するための方法である。本明細書では、H-Ras過剰発現を有するSCC患者を選択的に治療することにより、SCCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H-Rasの発現レベルに基づいてSCCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象がH-Ras過剰発現を有する場合に応答する可能性があると予測される。
【0051】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、治療有効量のチピファルニブを対象に投与することを含む、対象におけるSCCを治療する方法であり、対象は、参照レベルよりも高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Rasの発現レベルを測定すること、及び試料中のH-Ras発現レベルが参照レベルよりも高い場合、対象がH-Rasを過剰発現するSCCを有すると決定することを含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも12倍、少なくとも15倍、または少なくとも20倍高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも2倍高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも2.5倍高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも3倍高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも3.5倍高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも4倍高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも4.5倍高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも5倍高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも6倍高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも7倍高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも8倍高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも9倍高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも10倍高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも12倍高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも15倍高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも20倍高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、参照レベルは、健常対象集団におけるH-Rasの発現レベルの中央値である。いくつかの実施形態では、参照レベルは、SCCを有する対象集団におけるH-Rasの発現レベルの中央値である。
【0053】
扁平上皮癌(SCC)は、表皮の扁平上皮細胞から発生する異常細胞の制御不能な増殖である。一般的なタイプとしては、頭頸部SCC(HNSCC)、肺SCC(LSCC)、甲状腺SCC、食道SCC、膀胱SCC、または尿路上皮癌(UC)が挙げられる。ヒトパピローマウイルス感染症(HPV)は、SCCの発生に関連している。
【0054】
HNSCCは、全世界で6番目に多いがんであり、全世界で年間約650,000件の症例があり200,000名が死亡しており、米国では年間約54,000件の新規症例がある。HNSCCはまた、中央アジアで最も多いがんである。HNSCCには、2つの異なる病因及び対応する腫瘍タイプがある。第1のサブタイプは、喫煙及びアルコール摂取に関連しており、ヒトパピローマウイルスとは無関係である(HPV-またはHPV陰性)。第2のサブタイプは、高リスクのHPV感染症に関連している(HPV+またはHPV陽性)。第2のサブタイプは、主に中咽頭癌に限定されている。HPV+腫瘍は、予後が良好な別個の実体であり、異なる治療が必要な場合がある。HNSCC、特に中咽頭癌の相当な割合が、HPV感染症によって引き起こされる。高リスクのHPVサブタイプ16は、HNSCCの全てのHPV+腫瘍の85%を占める。P16は、HNSCC、特に中咽頭におけるHPV感染症の代用マーカーとして使用され得る。より正確なHPV検査が利用可能であり、この検査は、E6/E7検出に基づいている(Liang C,et al.Cancer Res.2012;72:5004-5013)。
【0055】
HPV+HNSCCは、HPV-HNSCCよりも著しく低いEGFR発現レベルを示す。EGFR増幅は、HPV-HNSCCでのみ生じる。高いEGFR遺伝子コピー数及びタンパク質発現は、進行性HNSCCの臨床転帰不良と関連している。
【0056】
現在、再発性/転移性HNSCCに対する第一選択療法としては、任意選択で抗EGFR抗体療法(例えば、セツキシマブ、パニツムマブ、アファチニブ)と組み合わせた、白金系のダブレット(例えば、シスプラチン/5-FUまたはカルボプラチン/パクリタキセル)が挙げられる。第二選択療法としては、タキサン、メトトレキサート、及び/またはセツキシマブが挙げられる。セツキシマブ(キメラIgG1)またはパニツムマブなどの抗EGFR抗体療法は、単剤として、化学療法(例えば、白金/5-FU、シスプラチン)とともに、または放射線療法とともに使用され得る。HNSCCにおける高いEGFR発現レベルにもかかわらず、セツキシマブの単剤応答率はわずか13%、SD率は33%であり、現在、利用可能な予測バイオマーカーは存在しない。
【0057】
HNSCC向けに開発中の薬剤としては、PI3K経路を標的とするもの:BKM120(ブパルリシブ)+セツキシマブ、BYL719+セツキシマブ、テムシロリムス+セツキシマブ、リゴサチブ+セツキシマブ;MET経路を標的とするもの:チバンチニブ+セツキシマブ、フィクラツズマブ+セツキシマブ;EGFR/HER3経路を標的とするもの:アファチニブ+セツキシマブ±パクリタキセル、パトリツマブ;FGFR経路を標的とするもの:BGJ398;CDK4/6-細胞周期経路を標的とするもの:パルボシクリブ、LEE011、アベマシクリブ、及びリボシクリブ;RTK阻害剤:アンロチニブ;PI3K-α阻害剤:BYL719;AKT阻害剤:MK2206、GSK2110183、及びGSK2141795;MTOR1/2阻害剤:INK-128;ならびに化学療法:経口アザシチジンが挙げられる。より近年のHNSCCの治療選択肢としては、抗PD1抗体または抗PDL1抗体などの免疫療法が挙げられる。手術、放射線、化学放射線療法、及び導入化学療法を使用して、限局性及び局所領域の疾患に対して高い治癒率が達成されている一方で、再発性/転移性疾患の生存率は依然として極めて不良であり、より良い治療選択肢が必要とされている。
【0058】
肺のSCC(「LSCC」)は、全ての肺癌の約30%を占める。このタイプの肺癌は、肺の中央に見出される傾向にある。既承認のLSCCの治療選択肢としては、手術、放射線療法、化学療法、血管新生阻害剤、及び免疫療法が挙げられる。片方の肺にのみ存在し、かつ他の器官に拡散していない肺癌は、患者が耐えられる場合、手術で治療されることが多い。手術が不可能な場合は、初期扁平上皮肺癌の主な治療として放射線療法が行われ得る。その場合、放射線療法は、化学療法の有無にかかわらず行われ得る。場合によっては、手術の前後に放射線療法が使用される。
【0059】
肺癌が肺を越えて局所リンパ節へ拡散している患者には、化学療法及び放射線療法が行われることが多い。LSCC患者には、第一選択療法として2つの化学療法剤が投与されることが多い。白金系薬物であるシスプラチンまたはカルボプラチンは、別の化学療法薬と組み合わされる。例は、ゲムシタビンと組み合わせたシスプラチンである。薬物ネシツムマブ(Portrazza(商標))もまた、シスプラチン及びゲムシタビンと組み合わせて使用される転移性LSCC患者の第一選択治療としてFDAによって承認されている。LSCCにEGFR変異があることが示されていない場合、ネシツムマブはEGFRタンパク質の発現を遮断することによって機能するように思われる。LSCCには、多数の他の第一選択療法後の選択肢、例えば、血管新生阻害剤を伴うかもしくは伴わない化学療法、またはニボルマブなどの免疫療法が存在する。キナーゼ阻害剤であるアファチニブ(Gilotrif(登録商標))は、白金系の化学療法後に進行した転移性LSCC患者の治療用にFDAに承認されている。さらなる治療選択肢としては、ラムシルマブ(Cyramza(登録商標))、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)、またはアテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))が挙げられる。
【0060】
甲状腺のSCC(「甲状腺SCC」または「TSCC」)は、原発性または続発性の疾患のいずれかであり得、隣接病変の直接的伸展または他の原発性病巣からの転移によるものであり得る。後者が10倍多く見られる。甲状腺の原発性SCCは、稀なタイプの甲状腺悪性腫瘍である。これは、女性に多く見られ、平均発症年齢は50代である。現在、補助放射線療法及び化学療法による腫瘍の外科的切除が、推奨選択肢である。外科的切除の範囲は十分に定められていない。しかしながら、進行期の疾患では、甲状腺SCCの広範囲で侵襲的な性質が手術失敗の主な要因となる可能性がある。さらに、原発性甲状腺SCCはまた、放射線療法に比較的耐性があるが、標準的化学療法は、この疾患に対する応答がごくわずかから全くないことが示されている。甲状腺の原発性SCCの一般的な予後は、その侵襲性に起因して、治療法にかかわらず非常に好ましくないものである。より良い治療選択肢が必要とされている。
【0061】
食道扁平上皮癌(「食道SCC」または「ESCC」)は、最も侵襲性の高い扁平上皮癌の1つであり、アジアで非常に蔓延している。ESCC患者は、腫瘍のステージに基づいて、内視鏡的に、または手術で、化学療法で、または放射線療法で治療される。低侵襲治療は、そのような治療を受ける患者の生活の質を向上させるのに役立つ。リンパ節への転移のリスクがごくわずかである初期ESCCは、ER及び/またはアブレーション法(例えば、高周波アブレーションもしくは光線力学的療法)などの内視鏡的局所治療によって治癒され得る。手術はまた、局所領域の制御を得るために広く使用されており、食道癌の治療において重要な役割を有している。ネオアジュバントまたはネオアジュバント化学放射線療法は、局所進行性ESCCの標準治療として実施される。シスプラチンと5-FUの組み合わせは、切除不能な局所進行性または転移性ESCCの患者の化学療法で一般的に使用されており、最良の支持療法よりも優れていると考えられている。抗EGFR抗体(例えば、セツキシマブ)などの標的療法、抗PD1/PD-L1抗体もまた調査中である。
【0062】
膀胱扁平上皮癌(「膀胱SCC」または「BSCC」)は通常、後期に現れ、予後不良の前兆となる。膀胱SCCは、米国の膀胱悪性腫瘍の2~5%を占める。BSCCは、ビルハルツ住血吸虫感染症(住血吸虫症)に関連するBSCC、すなわちビルハルツ住血吸虫関連BSCC(B-BSCC)と、ビルハルツ住血吸虫症に関連しないBSCC、すなわち、非ビルハルツ住血吸虫関連SCC(NB-BSCC)との2つのサブタイプに分けられる。B-BSCCとNB-BSCCとは、疫学的、自然歴的、及び臨床病理学的特徴が異なる。B-BSCCは主に、中東、東南アジア、及び南米など、住血吸虫症が常在流行している地域で見られる。米国では、脊髄損傷(SCI)の患者において、特に留置カテーテルの長期使用後に、NB-BSCCが報告されている。NB-BSCC患者は、一般的に後期に診断され、予後不良を示す。B-BSCCとNB-BSCCの両方が根治的膀胱摘除術(RC)で治療される。RCと組み合わせたネオアジュバント療法及びアジュバント療法を含む他の治療法の使用は、十分に確立されていない。マルチモーダルアプローチ、現代の放射線技法、免疫療法、及び全身療法を組み込んださらなる研究も必要とされている。
【0063】
尿路上皮癌(UC)は、5年生存率が77%の適応症である。UCの細胞は一般に、細胞間ブリッジ、角質化、またはその両方の存在によって定義される扁平上皮の分化及び特性を示す。Liu et al.,Cancer Control 24(1):78-82(2017)。
【0064】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、SCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、SCCは、転移性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、再発性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、難治性である。SCCは、特定のタイプのSCCであり得る。例えば、SCCは、頭頸部SCC(HNSCC)、肺SCC(LSCC)、甲状腺SCC、食道SCC、膀胱SCC、または尿路上皮癌(UC)であり得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、SCCはHNSCCであり、本明細書で提供されるのは、治療有効量のFTIをH-Rasを過剰発現するHNSCCを有する対象に投与することにより、対象におけるHNSCCを治療するための方法である。本明細書では、H-Ras過剰発現を有するHNSCC対象を選択的に治療することにより、HNSCCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H-Rasの発現レベルに基づいてHNSCCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象がH-Ras過剰発現を有する場合に応答する可能性があると予測される。
【0066】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、治療有効量のFTIを対象に投与することを含む、対象におけるHNSCCを治療するための方法であり、対象は、参照レベルよりも高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Rasの発現レベルを測定すること、及び試料中のH-Ras発現レベルが参照レベルよりも高い場合、対象がH-Rasを過剰発現するHNSCCを有すると決定することを含む。
【0067】
FTIは、本明細書に記載されているものを含む任意のFTIであり得る。例えば、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。したがって、本明細書で提供されるのは、治療有効量のチピファルニブをH-Rasを過剰発現するHNSCCを有する対象に投与することにより、対象におけるHNSCCを治療するための方法である。本明細書では、H-Ras過剰発現を有するHNSCC対象を選択的に治療することにより、HNSCCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H-Rasの発現レベルに基づいてHNSCCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象がH-Ras過剰発現を有する場合に応答する可能性があると予測される。
【0068】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、治療有効量のチピファルニブを対象に投与することを含む、対象におけるHNSCCを治療する方法であり、対象は、参照レベルよりも高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Rasの発現レベルを測定すること、及び試料中のH-Ras発現レベルが参照レベルよりも高い場合、対象がH-Rasを過剰発現するHNSCCを有すると決定することを含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも12倍、少なくとも15倍、または少なくとも20倍高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、参照レベルは、健常対象集団におけるH-Rasの発現レベルの中央値である。いくつかの実施形態では、参照レベルは、HNSCCを有する対象集団におけるH-Rasの発現レベルの中央値である。
【0070】
いくつかの実施形態では、HNSCCは、気管のHNSCCである。いくつかの実施形態では、HNSCCは、上顎骨のHNSCCである。いくつかの実施形態では、HNSCCは、口腔のHNSCCである。いくつかの実施形態では、HNSCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性HNSCCである。いくつかの実施形態では、HNSCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、HNSCCは、転移性HNSCCである。いくつかの実施形態では、HNSCCは、再発性HNSCCである。いくつかの実施形態では、HNSCCは、難治性HNSCCである。
【0071】
いくつかの実施形態では、SCCはLSCCであり、本明細書で提供されるのは、治療有効量のFTIをH-Rasを過剰発現するLSCCを有する対象に投与することにより、対象におけるLSCCを治療するための方法である。本明細書では、H-Ras過剰発現を有するLSCC患者を選択的に治療することにより、LSCCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H-Rasの発現レベルに基づいてLSCCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象がH-Ras過剰発現を有する場合に応答する可能性があると予測される。
【0072】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、治療有効量のFTIを対象に投与することを含む、対象におけるLSCCを治療するための方法であり、対象は、参照レベルよりも高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Rasの発現レベルを測定すること、及び試料中のH-Ras発現レベルが参照レベルよりも高い場合、対象がH-Rasを過剰発現するLSCCを有すると決定することを含む。
【0073】
FTIは、本明細書に記載されているものを含む任意のFTIであり得る。例えば、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。したがって、本明細書で提供されるのは、治療有効量のチピファルニブをH-Rasを過剰発現するLSCCを有する対象に投与することにより、対象におけるLSCCを治療するための方法である。本明細書では、H-Ras過剰発現を有するLSCC患者を選択的に治療することにより、LSCCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H-Rasの発現レベルに基づいてLSCCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象がH-Ras過剰発現を有する場合に応答する可能性があると予測される。
【0074】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、治療有効量のチピファルニブを対象に投与することを含む、対象におけるLSCCを治療する方法であり、対象は、参照レベルよりも高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Rasの発現レベルを測定すること、及び試料中のH-Ras発現レベルが参照レベルよりも高い場合、対象がH-Rasを過剰発現するLSCCを有すると決定することを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも12倍、少なくとも15倍、または少なくとも20倍高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、参照レベルは、健常対象集団におけるH-Rasの発現レベルの中央値である。いくつかの実施形態では、参照レベルは、LSCCを有する対象集団におけるH-Rasの発現レベルの中央値である。
【0076】
いくつかの実施形態では、LSCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性LSCCである。いくつかの実施形態では、LSCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、LSCCは、転移性LSCCである。いくつかの実施形態では、LSCCは、再発性LSCCである。いくつかの実施形態では、LSCCは、難治性LSCCである。
【0077】
いくつかの実施形態では、SCCは甲状腺SCCであり、本明細書で提供されるのは、治療有効量のFTIをH-Rasを過剰発現する甲状腺SCCを有する対象に投与することにより、対象における甲状腺SCCを治療するための方法である。本明細書では、H-Ras過剰発現を有する甲状腺SCC患者を選択的に治療することにより、甲状腺SCCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H-Rasの発現レベルに基づいて甲状腺SCCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象がH-Ras過剰発現を有する場合に応答する可能性があると予測される。
【0078】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、治療有効量のFTIを対象に投与することを含む、対象における甲状腺SCCを治療するための方法であり、対象は、参照レベルよりも高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Rasの発現レベルを測定すること、及び試料中のH-Ras発現レベルが参照レベルよりも高い場合、対象がH-Rasを過剰発現する甲状腺SCCを有すると決定することを含む。
【0079】
FTIは、本明細書に記載されているものを含む任意のFTIであり得る。例えば、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。したがって、本明細書で提供されるのは、治療有効量のチピファルニブをH-Rasを過剰発現する甲状腺SCCを有する対象に投与することにより、対象における甲状腺SCCを治療するための方法である。本明細書では、H-Ras過剰発現を有する甲状腺SCC患者を選択的に治療することにより、甲状腺SCCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H-Rasの発現レベルに基づいて甲状腺SCCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象がH-Ras過剰発現を有する場合に応答する可能性があると予測される。
【0080】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、治療有効量のチピファルニブを対象に投与することを含む、対象における甲状腺SCCを治療する方法であり、対象は、参照レベルよりも高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Rasの発現レベルを測定すること、及び試料中のH-Ras発現レベルが参照レベルよりも高い場合、対象がH-Rasを過剰発現する甲状腺SCCを有すると決定することを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも12倍、少なくとも15倍、または少なくとも20倍高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、参照レベルは、健常対象集団におけるH-Rasの発現レベルの中央値である。いくつかの実施形態では、参照レベルは、甲状腺SCCを有する対象集団におけるH-Rasの発現レベルの中央値である。
【0082】
いくつかの実施形態では、甲状腺SCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性甲状腺SCCである。いくつかの実施形態では、甲状腺SCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、甲状腺SCCは、転移性甲状腺SCCである。いくつかの実施形態では、甲状腺SCCは、再発性甲状腺SCCである。いくつかの実施形態では、甲状腺SCCは、難治性甲状腺SCCである。
【0083】
いくつかの実施形態では、SCCは食道SCCであり、本明細書で提供されるのは、治療有効量のFTIをH-Rasを過剰発現する食道SCCを有する対象に投与することにより、対象における食道SCCを治療するための方法である。本明細書では、H-Ras過剰発現を有する食道SCC患者を選択的に治療することにより、食道SCCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H-Rasの発現レベルに基づいて食道SCCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象がH-Ras過剰発現を有する場合に応答する可能性があると予測される。
【0084】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、治療有効量のFTIを対象に投与することを含む、対象における食道SCCを治療するための方法であり、対象は、参照レベルよりも高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Rasの発現レベルを測定すること、及び試料中のH-Ras発現レベルが参照レベルよりも高い場合、対象がH-Rasを過剰発現する食道SCCを有すると決定することを含む。
【0085】
FTIは、本明細書に記載されているものを含む任意のFTIであり得る。例えば、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。したがって、本明細書で提供されるのは、治療有効量のチピファルニブをH-Rasを過剰発現する食道SCCを有する対象に投与することにより、対象における食道SCCを治療するための方法である。本明細書では、H-Ras過剰発現を有する食道SCC患者を選択的に治療することにより、食道SCCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H-Rasの発現レベルに基づいて食道SCCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象がH-Ras過剰発現を有する場合に応答する可能性があると予測される。
【0086】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、治療有効量のチピファルニブを対象に投与することを含む、対象における食道SCCを治療する方法であり、対象は、参照レベルよりも高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Rasの発現レベルを測定すること、及び試料中のH-Ras発現レベルが参照レベルよりも高い場合、対象がH-Rasを過剰発現する食道SCCを有すると決定することを含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも12倍、少なくとも15倍、または少なくとも20倍高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、参照レベルは、健常対象集団におけるH-Rasの発現レベルの中央値である。いくつかの実施形態では、参照レベルは、食道SCCを有する対象集団におけるH-Rasの発現レベルの中央値である。
【0088】
いくつかの実施形態では、食道SCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性食道SCCである。いくつかの実施形態では、食道SCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、食道SCCは、転移性食道SCCである。いくつかの実施形態では、食道SCCは、再発性食道SCCである。いくつかの実施形態では、食道SCCは、難治性食道SCCである。
【0089】
いくつかの実施形態では、SCCは膀胱SCCであり、本明細書で提供されるのは、治療有効量のFTIをH-Rasを過剰発現する膀胱SCCを有する対象に投与することにより、対象における膀胱SCCを治療するための方法である。本明細書では、H-Ras過剰発現を有する膀胱SCC患者を選択的に治療することにより、膀胱SCCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H-Rasの発現レベルに基づいて膀胱SCCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象がH-Ras過剰発現を有する場合に応答する可能性があると予測される。
【0090】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、治療有効量のFTIを対象に投与することを含む、対象における膀胱SCCを治療するための方法であり、対象は、参照レベルよりも高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Rasの発現レベルを測定すること、及び試料中のH-Ras発現レベルが参照レベルよりも高い場合、対象がH-Rasを過剰発現する膀胱SCCを有すると決定することを含む。
【0091】
FTIは、本明細書に記載されているものを含む任意のFTIであり得る。例えば、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。したがって、本明細書で提供されるのは、治療有効量のチピファルニブをH-Rasを過剰発現する膀胱SCCを有する対象に投与することにより、対象における膀胱SCCを治療するための方法である。本明細書では、H-Ras過剰発現を有する膀胱SCC患者を選択的に治療することにより、膀胱SCCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H-Rasの発現レベルに基づいて膀胱SCCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象がH-Ras過剰発現を有する場合に応答する可能性があると予測される。
【0092】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、治療有効量のチピファルニブを対象に投与することを含む、対象における膀胱SCCを治療する方法であり、対象は、参照レベルよりも高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Rasの発現レベルを測定すること、及び試料中のH-Ras発現レベルが参照レベルよりも高い場合、対象がH-Rasを過剰発現する膀胱SCCを有すると決定することを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも12倍、少なくとも15倍、または少なくとも20倍高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、参照レベルは、健常対象集団におけるH-Rasの発現レベルの中央値である。いくつかの実施形態では、参照レベルは、膀胱SCCを有する対象集団におけるH-Rasの発現レベルの中央値である。
【0094】
いくつかの実施形態では、膀胱SCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性膀胱SCCである。いくつかの実施形態では、膀胱SCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、膀胱SCCは、転移性膀胱SCCである。いくつかの実施形態では、膀胱SCCは、再発性膀胱SCCである。いくつかの実施形態では、膀胱SCCは、難治性膀胱SCCである。
【0095】
いくつかの実施形態では、SCCはUCであり、本明細書で提供されるのは、治療有効量のFTIをH-Rasを過剰発現するUCを有する対象に投与することにより、対象におけるUCを治療するための方法である。本明細書では、H-Ras過剰発現を有するUC患者を選択的に治療することにより、UCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H-Rasの発現レベルに基づいてUCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象がH-Ras過剰発現を有する場合に応答する可能性があると予測される。
【0096】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、治療有効量のFTIを対象に投与することを含む、対象におけるUCを治療するための方法であり、対象は、参照レベルよりも高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Rasの発現レベルを測定すること、及び試料中のH-Ras発現レベルが参照レベルよりも高い場合、対象がH-Rasを過剰発現するUCを有すると決定することを含む。
【0097】
FTIは、本明細書に記載されているものを含む任意のFTIであり得る。例えば、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。したがって、本明細書で提供されるのは、治療有効量のチピファルニブをH-Rasを過剰発現するUCを有する対象に投与することにより、対象におけるUCを治療するための方法である。本明細書では、H-Ras過剰発現を有するUC患者を選択的に治療することにより、UCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H-Rasの発現レベルに基づいてUCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象がH-Ras過剰発現を有する場合に応答する可能性があると予測される。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、治療有効量のチピファルニブを対象に投与することを含む、対象におけるUCを治療する方法であり、対象は、参照レベルよりも高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Rasの発現レベルを測定すること、及び試料中のH-Ras発現レベルが参照レベルよりも高い場合、対象がH-Rasを過剰発現するUCを有すると決定することを含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも12倍、少なくとも15倍、または少なくとも20倍高いH-Ras発現を有する。いくつかの実施形態では、参照レベルは、健常対象集団におけるH-Rasの発現レベルの中央値である。いくつかの実施形態では、参照レベルは、UCを有する対象集団におけるH-Rasの発現レベルの中央値である。
【0100】
いくつかの実施形態では、UCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性UCである。いくつかの実施形態では、UCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、UCは、転移性UCである。いくつかの実施形態では、UCは、再発性UCである。いくつかの実施形態では、UCは、難治性UCである。
【0101】
本明細書では、治療有効量のFTIを参照比より高いH/K比を有する対象に投与することにより、対象におけるSCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K比を有するSCC患者を選択的に治療することにより、SCCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K比に基づいてSCCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びK-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K比を有する場合、対象をFTI治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、SCCを有する対象集団におけるH/K比の中央値である。
【0102】
本明細書では、治療有効量のFTIを参照比より高いH/N比を有する対象に投与することにより、対象におけるSCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/N比を有するSCC患者を選択的に治療することにより、SCCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/N比に基づいてSCCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/N比を有する場合、対象をFTI治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、SCCを有する対象集団におけるH/N比の中央値である。
【0103】
本明細書では、治療有効量のFTIを参照比より高いH/K+N比を有する対象に投与することにより、対象におけるSCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K+N比を有するSCC患者を選択的に治療することにより、SCCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K+N比に基づいてSCCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras、K-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合、対象をFTI治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K+N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、SCCを有する対象集団におけるH/K+N比の中央値である。
【0104】
いくつかの実施形態では、参照比は、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または1/10から10の間の任意の数値である。いくつかの実施形態では、参照比は1/10である。いくつかの実施形態では、参照比は1/9である。いくつかの実施形態では、参照比は1/8である。いくつかの実施形態では、参照比は1/7である。いくつかの実施形態では、参照比は1/6である。いくつかの実施形態では、参照比は1/5である。いくつかの実施形態では、参照比は1/4である。いくつかの実施形態では、参照比は1/3である。いくつかの実施形態では、参照比は1/2である。いくつかの実施形態では、参照比は1である。いくつかの実施形態では、参照比は2である。いくつかの実施形態では、参照比は3である。いくつかの実施形態では、参照比は4である。いくつかの実施形態では、参照比は5である。いくつかの実施形態では、参照比は6である。いくつかの実施形態では、参照比は7である。いくつかの実施形態では、参照比は8である。いくつかの実施形態では、参照比は9である。いくつかの実施形態では、参照比は10である。
【0105】
FTIは、本明細書に記載されているものを含む任意のFTIであり得る。例えば、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。したがって、本明細書では、治療有効量のチピファルニブを参照比より高いH/K比を有する対象に投与することにより、対象におけるSCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K比を有するSCC患者を選択的に治療することにより、SCCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K比に基づいてSCCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びK-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K比を有する場合、対象をチピファルニブ治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、SCCを有する対象集団におけるH/K比の中央値である。
【0106】
本明細書では、治療有効量のチピファルニブを参照比より高いH/N比を有する対象に投与することにより、対象におけるSCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/N比を有するSCC患者を選択的に治療することにより、SCCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/N比に基づいてSCCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/N比を有する場合、対象をチピファルニブ治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、SCCを有する対象集団におけるH/N比の中央値である。
【0107】
本明細書では、治療有効量のチピファルニブを参照比より高いH/K+N比を有する対象に投与することにより、対象におけるSCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K+N比を有するSCC患者を選択的に治療することにより、SCCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K+N比に基づいてSCCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras、K-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合、対象をチピファルニブ治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K+N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、SCCを有する対象集団におけるH/K+N比の中央値である。
【0108】
いくつかの実施形態では、参照比は、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または1/10から10の間の任意の数値である。
【0109】
いくつかの実施形態では、SCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性である。いくつかの実施形態では、SCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、SCCは、転移性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、再発性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、難治性である。SCCは、特定のタイプのSCCであり得る。例えば、SCCは、頭頸部SCC(HNSCC)、肺SCC(LSCC)、甲状腺SCC、食道SCC、膀胱SCC、または尿路上皮癌(UC)であり得る。
【0110】
本明細書では、治療有効量のFTIを参照比より高いH/K比を有する対象に投与することにより、対象におけるHNSCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K比を有するHNSCC患者を選択的に治療することにより、HNSCCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K比に基づいてHNSCCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びK-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K比を有する場合、対象をFTI治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、HNSCCを有する対象集団におけるH/K比の中央値である。
【0111】
本明細書では、治療有効量のFTIを参照比より高いH/N比を有する対象に投与することにより、対象におけるHNSCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/N比を有するHNSCC患者を選択的に治療することにより、HNSCCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/N比に基づいてHNSCCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/N比を有する場合、対象をFTI治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、HNSCCを有する対象集団におけるH/N比の中央値である。
【0112】
本明細書では、治療有効量のFTIを参照比より高いH/K+N比を有する対象に投与することにより、対象におけるHNSCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K+N比を有するHNSCC患者を選択的に治療することにより、HNSCCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K+N比に基づいてHNSCCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras、K-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合、対象をFTI治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K+N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、HNSCCを有する対象集団におけるH/K+N比の中央値である。
【0113】
いくつかの実施形態では、参照比は、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または1/10から10の間の任意の数値である。いくつかの実施形態では、参照比は1/10である。
【0114】
FTIは、本明細書に記載されているものを含む任意のFTIであり得る。例えば、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。したがって、本明細書では、治療有効量のチピファルニブを参照比より高いH/K比を有する対象に投与することにより、対象におけるHNSCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K比を有するHNSCC患者を選択的に治療することにより、HNSCCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K比に基づいてHNSCCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びK-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K比を有する場合、対象をチピファルニブ治療のために選択することを含む。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、HNSCCを有する対象集団におけるH/K比の中央値である。
【0115】
本明細書では、治療有効量のチピファルニブを参照比より高いH/N比を有する対象に投与することにより、対象におけるHNSCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/N比を有するHNSCC患者を選択的に治療することにより、HNSCCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/N比に基づいてHNSCCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/N比を有する場合、対象をチピファルニブ治療のために選択することを含む。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、HNSCCを有する対象集団におけるH/N比の中央値である。
【0116】
本明細書では、治療有効量のチピファルニブを参照比より高いH/K+N比を有する対象に投与することにより、対象におけるHNSCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K+N比を有するHNSCC患者を選択的に治療することにより、HNSCCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K+N比に基づいてHNSCCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras、K-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合、対象をチピファルニブ治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K+N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、HNSCCを有する対象集団におけるH/K+N比の中央値である。
【0117】
いくつかの実施形態では、参照比は、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または1/10から10の間の任意の数値である。
【0118】
いくつかの実施形態では、HNSCCは、気管のHNSCCである。いくつかの実施形態では、HNSCCは、上顎骨のHNSCCである。いくつかの実施形態では、HNSCCは、口腔のHNSCCである。いくつかの実施形態では、HNSCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性HNSCCである。いくつかの実施形態では、HNSCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、HNSCCは、転移性HNSCCである。いくつかの実施形態では、HNSCCは、再発性HNSCCである。いくつかの実施形態では、HNSCCは、難治性HNSCCである。
【0119】
本明細書では、治療有効量のFTIを参照比より高いH/K比を有する対象に投与することにより、対象におけるLSCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K比を有するLSCC患者を選択的に治療することにより、LSCCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K比に基づいてLSCCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びK-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K比を有する場合、対象をFTI治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、LSCCを有する対象集団におけるH/K比の中央値である。
【0120】
本明細書では、治療有効量のFTIを参照比より高いH/N比を有する対象に投与することにより、対象におけるLSCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/N比を有するLSCC患者を選択的に治療することにより、LSCCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/N比に基づいてLSCCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/N比を有する場合、対象をFTI治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、LSCCを有する対象集団におけるH/N比の中央値である。
【0121】
本明細書では、治療有効量のFTIを参照比より高いH/K+N比を有する対象に投与することにより、対象におけるLSCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K+N比を有するLSCC患者を選択的に治療することにより、LSCCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K+N比に基づいてLSCCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras、K-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合、対象をFTI治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K+N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、LSCCを有する対象集団におけるH/K+N比の中央値である。
【0122】
いくつかの実施形態では、参照比は、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または1/10から10の間の任意の数値である。
【0123】
いくつかの実施形態では、LSCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性LSCCである。いくつかの実施形態では、LSCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、LSCCは、転移性LSCCである。いくつかの実施形態では、LSCCは、再発性LSCCである。いくつかの実施形態では、LSCCは、難治性LSCCである。
【0124】
FTIは、本明細書に記載されているものを含む任意のFTIであり得る。例えば、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。したがって、本明細書では、治療有効量のチピファルニブを参照比より高いH/K比を有する対象に投与することにより、対象におけるLSCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K比を有するLSCC患者を選択的に治療することにより、LSCCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K比に基づいてLSCCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びK-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K比を有する場合、対象をチピファルニブ治療のために選択することを含む。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、LSCCを有する対象集団におけるH/K比の中央値である。
【0125】
本明細書では、治療有効量のチピファルニブを参照比より高いH/N比を有する対象に投与することにより、対象におけるLSCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/N比を有するLSCC患者を選択的に治療することにより、LSCCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/N比に基づいてLSCCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/N比を有する場合、対象をチピファルニブ治療のために選択することを含む。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、LSCCを有する対象集団におけるH/N比の中央値である。
【0126】
本明細書では、治療有効量のチピファルニブを参照比より高いH/K+N比を有する対象に投与することにより、対象におけるLSCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K+N比を有するLSCC患者を選択的に治療することにより、LSCCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K+N比に基づいてLSCCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras、K-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合、対象をチピファルニブ治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K+N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、LSCCを有する対象集団におけるH/K+N比の中央値である。
【0127】
いくつかの実施形態では、参照比は、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または1/10から10の間の任意の数値である。
【0128】
いくつかの実施形態では、LSCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性LSCCである。いくつかの実施形態では、LSCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、LSCCは、転移性LSCCである。いくつかの実施形態では、LSCCは、再発性LSCCである。いくつかの実施形態では、LSCCは、難治性LSCCである。
【0129】
本明細書では、治療有効量のFTIを参照比より高いH/K比を有する対象に投与することにより、対象における甲状腺SCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K比を有する甲状腺SCC患者を選択的に治療することにより、甲状腺SCCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K比に基づいて甲状腺SCCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びK-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K比を有する場合、対象をFTI治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、甲状腺SCCを有する対象集団におけるH/K比の中央値である。
【0130】
本明細書では、治療有効量のFTIを参照比より高いH/N比を有する対象に投与することにより、対象における甲状腺SCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/N比を有する甲状腺SCC患者を選択的に治療することにより、甲状腺SCCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/N比に基づいて甲状腺SCCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/N比を有する場合、対象をFTI治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、甲状腺SCCを有する対象集団におけるH/N比の中央値である。
【0131】
本明細書では、治療有効量のFTIを参照比より高いH/K+N比を有する対象に投与することにより、対象における甲状腺SCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K+N比を有する甲状腺SCC患者を選択的に治療することにより、甲状腺SCCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K+N比に基づいて甲状腺SCCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras、K-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合、対象をFTI治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K+N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、甲状腺SCCを有する対象集団におけるH/K+N比の中央値である。
【0132】
いくつかの実施形態では、参照比は、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または1/10から10の間の任意の数値である。
【0133】
いくつかの実施形態では、甲状腺SCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性甲状腺SCCである。いくつかの実施形態では、甲状腺SCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、甲状腺SCCは、転移性甲状腺SCCである。いくつかの実施形態では、甲状腺SCCは、再発性甲状腺SCCである。いくつかの実施形態では、甲状腺SCCは、難治性甲状腺SCCである。
【0134】
FTIは、本明細書に記載されているものを含む任意のFTIであり得る。例えば、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。したがって、本明細書では、治療有効量のチピファルニブを参照比より高いH/K比を有する対象に投与することにより、対象における甲状腺SCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K比を有する甲状腺SCC患者を選択的に治療することにより、甲状腺SCCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K比に基づいて甲状腺SCCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びK-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K比を有する場合、対象をチピファルニブ治療のために選択することを含む。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、甲状腺SCCを有する対象集団におけるH/K比の中央値である。
【0135】
本明細書では、治療有効量のチピファルニブを参照比より高いH/N比を有する対象に投与することにより、対象における甲状腺SCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/N比を有する甲状腺SCC患者を選択的に治療することにより、甲状腺SCCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/N比に基づいて甲状腺SCCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/N比を有する場合、対象をチピファルニブ治療のために選択することを含む。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、甲状腺SCCを有する対象集団におけるH/N比の中央値である。
【0136】
本明細書では、治療有効量のチピファルニブを参照比より高いH/K+N比を有する対象に投与することにより、対象における甲状腺SCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K+N比を有する甲状腺SCC患者を選択的に治療することにより、甲状腺SCCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K+N比に基づいて甲状腺SCCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras、K-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合、対象をチピファルニブ治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K+N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、甲状腺SCCを有する対象集団におけるH/K+N比の中央値である。
【0137】
いくつかの実施形態では、参照比は、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または1/10から10の間の任意の数値である。
【0138】
いくつかの実施形態では、甲状腺SCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性甲状腺SCCである。いくつかの実施形態では、甲状腺SCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、甲状腺SCCは、転移性甲状腺SCCである。いくつかの実施形態では、甲状腺SCCは、再発性甲状腺SCCである。いくつかの実施形態では、甲状腺SCCは、難治性甲状腺SCCである。
【0139】
本明細書では、治療有効量のFTIを参照比より高いH/K比を有する対象に投与することにより、対象における食道SCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K比を有する食道SCC患者を選択的に治療することにより、食道SCCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K比に基づいて食道SCCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びK-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K比を有する場合、対象をFTI治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、食道SCCを有する対象集団におけるH/K比の中央値である。
【0140】
本明細書では、治療有効量のFTIを参照比より高いH/N比を有する対象に投与することにより、対象における食道SCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/N比を有する食道SCC患者を選択的に治療することにより、食道SCCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/N比に基づいて食道SCCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/N比を有する場合、対象をFTI治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、食道SCCを有する対象集団におけるH/N比の中央値である。
【0141】
本明細書では、治療有効量のFTIを参照比より高いH/K+N比を有する対象に投与することにより、対象における食道SCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K+N比を有する食道SCC患者を選択的に治療することにより、食道SCCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K+N比に基づいて食道SCCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras、K-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合、対象をFTI治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K+N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、食道SCCを有する対象集団におけるH/K+N比の中央値である。
【0142】
いくつかの実施形態では、参照比は、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または1/10から10の間の任意の数値である。
【0143】
いくつかの実施形態では、食道SCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性食道SCCである。いくつかの実施形態では、食道SCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、食道SCCは、転移性食道SCCである。いくつかの実施形態では、食道SCCは、再発性食道SCCである。いくつかの実施形態では、食道SCCは、難治性食道SCCである。
【0144】
FTIは、本明細書に記載されているものを含む任意のFTIであり得る。例えば、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。したがって、本明細書では、治療有効量のチピファルニブを参照比より高いH/K比を有する対象に投与することにより、対象における食道SCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K比を有する食道SCC患者を選択的に治療することにより、食道SCCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K比に基づいて食道SCCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びK-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K比を有する場合、対象をチピファルニブ治療のために選択することを含む。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、食道SCCを有する対象集団におけるH/K比の中央値である。
【0145】
本明細書では、治療有効量のチピファルニブを参照比より高いH/N比を有する対象に投与することにより、対象における食道SCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/N比を有する食道SCC患者を選択的に治療することにより、食道SCCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/N比に基づいて食道SCCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/N比を有する場合、対象をチピファルニブ治療のために選択することを含む。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、食道SCCを有する対象集団におけるH/N比の中央値である。
【0146】
本明細書では、治療有効量のチピファルニブを参照比より高いH/K+N比を有する対象に投与することにより、対象における食道SCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K+N比を有する食道SCC患者を選択的に治療することにより、食道SCCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K+N比に基づいて食道SCCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras、K-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合、対象をチピファルニブ治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K+N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、食道SCCを有する対象集団におけるH/K+N比の中央値である。
【0147】
いくつかの実施形態では、参照比は、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または1/10から10の間の任意の数値である。
【0148】
いくつかの実施形態では、食道SCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性食道SCCである。いくつかの実施形態では、食道SCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、食道SCCは、転移性食道SCCである。いくつかの実施形態では、食道SCCは、再発性食道SCCである。いくつかの実施形態では、食道SCCは、難治性食道SCCである。
【0149】
本明細書では、治療有効量のFTIを参照比より高いH/K比を有する対象に投与することにより、対象における膀胱SCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K比を有する膀胱SCC患者を選択的に治療することにより、膀胱SCCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K比に基づいて膀胱SCCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びK-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K比を有する場合、対象をFTI治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、膀胱SCCを有する対象集団におけるH/K比の中央値である。
【0150】
本明細書では、治療有効量のFTIを参照比より高いH/N比を有する対象に投与することにより、対象における膀胱SCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/N比を有する膀胱SCC患者を選択的に治療することにより、膀胱SCCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/N比に基づいて膀胱SCCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/N比を有する場合、対象をFTI治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、膀胱SCCを有する対象集団におけるH/N比の中央値である。
【0151】
本明細書では、治療有効量のFTIを参照比より高いH/K+N比を有する対象に投与することにより、対象における膀胱SCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K+N比を有する膀胱SCC患者を選択的に治療することにより、膀胱SCCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K+N比に基づいて膀胱SCCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras、K-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合、対象をFTI治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K+N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、膀胱SCCを有する対象集団におけるH/K+N比の中央値である。
【0152】
いくつかの実施形態では、参照比は、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または1/10から10の間の任意の数値である。
【0153】
いくつかの実施形態では、膀胱SCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性膀胱SCCである。いくつかの実施形態では、膀胱SCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、膀胱SCCは、転移性膀胱SCCである。いくつかの実施形態では、膀胱SCCは、再発性膀胱SCCである。いくつかの実施形態では、膀胱SCCは、難治性膀胱SCCである。
【0154】
FTIは、本明細書に記載されているものを含む任意のFTIであり得る。例えば、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。したがって、本明細書では、治療有効量のチピファルニブを参照比より高いH/K比を有する対象に投与することにより、対象における膀胱SCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K比を有する膀胱SCC患者を選択的に治療することにより、膀胱SCCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K比に基づいて膀胱SCCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びK-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K比を有する場合、対象をチピファルニブ治療のために選択することを含む。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、膀胱SCCを有する対象集団におけるH/K比の中央値である。
【0155】
本明細書では、治療有効量のチピファルニブを参照比より高いH/N比を有する対象に投与することにより、対象における膀胱SCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/N比を有する膀胱SCC患者を選択的に治療することにより、膀胱SCCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/N比に基づいて膀胱SCCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/N比を有する場合、対象をチピファルニブ治療のために選択することを含む。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、膀胱SCCを有する対象集団におけるH/N比の中央値である。
【0156】
本明細書では、治療有効量のチピファルニブを参照比より高いH/K+N比を有する対象に投与することにより、対象における膀胱SCCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K+N比を有する膀胱SCC患者を選択的に治療することにより、膀胱SCCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K+N比に基づいて膀胱SCCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras、K-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合、対象をチピファルニブ治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K+N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、膀胱SCCを有する対象集団におけるH/K+N比の中央値である。
【0157】
いくつかの実施形態では、参照比は、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または1/10から10の間の任意の数値である。
【0158】
いくつかの実施形態では、膀胱SCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性膀胱SCCである。いくつかの実施形態では、膀胱SCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、膀胱SCCは、転移性膀胱SCCである。いくつかの実施形態では、膀胱SCCは、再発性膀胱SCCである。いくつかの実施形態では、膀胱SCCは、難治性膀胱SCCである。
【0159】
本明細書では、治療有効量のFTIを参照比より高いH/K比を有する対象に投与することにより、対象における尿路上皮癌(UC)を治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K比を有するUC患者を選択的に治療することにより、UCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K比に基づいてUCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びK-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K比を有する場合、対象をFTI治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、UCを有する対象集団におけるH/K比の中央値である。
【0160】
本明細書では、治療有効量のFTIを参照比より高いH/N比を有する対象に投与することにより、対象におけるUCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/N比を有するUC患者を選択的に治療することにより、UCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/N比に基づいてUCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/N比を有する場合、対象をFTI治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、UCを有する対象集団におけるH/N比の中央値である。
【0161】
本明細書では、治療有効量のFTIを参照比より高いH/K+N比を有する対象に投与することにより、対象におけるUCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K+N比を有するUC患者を選択的に治療することにより、UCに対するFTI治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K+N比に基づいてUCを有する対象のFTI治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras、K-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合、対象をFTI治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K+N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、UCを有する対象集団におけるH/K+N比の中央値である。
【0162】
いくつかの実施形態では、参照比は、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または1/10から10の間の任意の数値である。
【0163】
いくつかの実施形態では、UCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性UCである。いくつかの実施形態では、UCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、UCは、転移性UCである。いくつかの実施形態では、UCは、再発性UCである。いくつかの実施形態では、UCは、難治性UCである。
【0164】
FTIは、本明細書に記載されているものを含む任意のFTIであり得る。例えば、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。したがって、本明細書では、治療有効量のチピファルニブを参照比より高いH/K比を有する対象に投与することにより、対象におけるUCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K比を有するUC患者を選択的に治療することにより、UCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K比に基づいてUCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びK-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K比を有する場合、対象をチピファルニブ治療のために選択することを含む。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、UCを有する対象集団におけるH/K比の中央値である。
【0165】
本明細書では、治療有効量のチピファルニブを参照比より高いH/N比を有する対象に投与することにより、対象におけるUCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/N比を有するUC患者を選択的に治療することにより、UCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/N比に基づいてUCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/N比を有する場合、対象をチピファルニブ治療のために選択することを含む。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、UCを有する対象集団におけるH/N比の中央値である。
【0166】
本明細書では、治療有効量のチピファルニブを参照比より高いH/K+N比を有する対象に投与することにより、対象におけるUCを治療するための方法もまた提供される。本明細書では、参照比より高いH/K+N比を有するUC患者を選択的に治療することにより、UCに対するチピファルニブ治療の応答性を向上させるための方法もまた提供される。本明細書では、H/K+N比に基づいてUCを有する対象のチピファルニブ治療に対する応答性を予測する方法もまた提供され、対象は、対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合に応答する可能性があると予測される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Ras、K-Ras及びN-Rasの発現レベルを測定すること、ならびに対象が参照比より高いH/K+N比を有する場合、対象をチピファルニブ治療のために選択することを含む。参照比は、統計解析を通じて当業者により決定され得る。いくつかの実施形態では、参照比は、健常対象集団におけるH/K+N比の中央値である。いくつかの実施形態では、参照比は、UCを有する対象集団におけるH/K+N比の中央値である。
【0167】
いくつかの実施形態では、参照比は、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または1/10から10の間の任意の数値である。
【0168】
いくつかの実施形態では、UCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性UCである。いくつかの実施形態では、UCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、UCは、転移性UCである。いくつかの実施形態では、UCは、再発性UCである。いくつかの実施形態では、UCは、難治性UCである。
【0169】
当業者が理解するように、遺伝子の参照発現レベルまたは2つの遺伝子の発現レベル間の参照比はまた、患者群の転帰、すなわち、FTI治療に対する患者の応答性、及び遺伝子の発現レベルまたは患者群の遺伝子間の発現レベルの比を含む以前の臨床試験からのデータの統計解析に基づいて決定され得る。特定の治療に対する患者の応答性を予測するために、または特定の治療のために患者を層別化するために使用される場合の、1つ以上の遺伝子の参照レベル(または「カットオフ値」と称される)を決定するための多数の統計的手法が、当該技術分野において周知である。
【0170】
本発明の一つの方法は、レスポンダーとノンレスポンダーとを区別して1つ以上の遺伝子の参照発現レベルを決定する、本明細書で同定される遺伝子の発現プロファイルの分析を含む。レスポンダーとノンレスポンダーとの比較は、マン・ホイットニーのU検定、カイ二乗検定、またはフィッシャーの直接確率検定を使用して実行され得る。記述統計の分析及び比較は、SigmaStat Software(Systat Software,Inc.,San Jose,CA,USA)を使用して実施され得る。
【0171】
いくつかの実施形態では、分類及び回帰木(CART)分析を採用して、参照レベルを決定することができる。CART分析は二元再帰分割アルゴリズムに基づくものであり、多重線形回帰などのより従来的な方法では明らかにならない可能性がある複合予測因子変数相互作用の発見を可能にする。二元再帰分割とは、1)二元である、つまり患者を2つの群に分ける作用がある、2つの考えられる転帰変数、すなわち、「レスポンダー」及び「ノンレスポンダー」が存在し、2)再帰的である、つまり、分析を複数回実施することができ、かつ3)分割される、つまり、全データセットを部分に分けることができる、分析を指す。この分析は、低性能の予測因子変数を排除する能力も有する。分類木は、Salford Predictive Modeler v6.6(Salford Systems,San Diego,CA,USA)を使用して構築することができる。
【0172】
受信者操作特性(ROC)分析を利用して、参照発現レベル、または参照発現比を決定するか、あるいは個々の遺伝子及び/または複数の遺伝子の予測値全体を試験することができる。ROC分析の概説は、全体が参照により本明細書に組み込まれる、Soreide,J Clin Pathol 10.1136(2008)に見出すことができる。
【0173】
高感度と高特異度の両方を確保するために、トレーニングセットのROC曲線から参照レベルを決定することができる。遺伝子数の違いを含む予測因子の性能を、誤分類エラー率、感度、特異度、2つの予測される群のカプラン・マイヤー曲線の分離を測定するp値に基づいて評価することができる。
【0174】
Gemanら(2004)によって最初に導入されたTop Scoring Pair(TSP)アルゴリズムを使用することができる。基本的に、このアルゴリズムは、クラスC1~C2間の試料において遺伝子iが遺伝子jよりも高い発現値を有する事象の頻度の絶対差(Dij)に基づいて、全ての遺伝子ペア(遺伝子i及びj)をランク付けするものである。複数のトップスコアペア(全てが同じDijを共有する)が存在する場合、1つの遺伝子ペア内で一方のクラスから他方のクラスへと遺伝子の発現レベルの逆転が生じる度合いを測定する、二次的ランクスコアによる最上位のペアを選択する。全試料中、2倍を超える絶対Dijの頻度が最も高い最上位のペアを候補ペアとして選択することになる。次に、候補ペアを独立した試験データセットで評価することができる。一個抜き交差検証(LOOCV)をトレーニングデータセットで実施して、このアルゴリズムがどのように機能するかを評価することができる。予測因子の性能は、最大誤分類エラー率に基づいて評価することができる。全ての統計解析は、R(R Development Core Team,2006)を使用して行うことができる。
【0175】
臨床的報告可能範囲法(clinically reportable range)(CRR)は、標本の希釈度、濃度、または直接的な分析測定範囲を拡大するために使用される他の前処理を考慮して、方法が測定することができる分析物の値の範囲である。Westgard博士による基本的な方法の検証(Basic Methods Validation)で提供されているように、実施されるべき実験は「線形性実験」と呼ばれることが多いが、技術的には、2点較正が使用されている場合を除いて、方法が線形応答を提供する必要はない。この範囲は、方法の「線形範囲」、「分析範囲」、または「作業範囲」とも称される場合がある。
【0176】
報告可能範囲は、線形性グラフの検査によって評価される。その検査は、点の線形部分を通る最も真っ直ぐな線を手で引くこと、全ての点を通る点から点への線を引き、次に、最も真っ直ぐな線と比較すること、または線形範囲にある点を通る回帰直線をフィットさせることを含み得る。分析法の直線性を評価するための臨床検査標準委員会(CLSI)のEP-6プロトコルなどのいくつかのガイドラインで推奨される、より複雑な統計計算がある。しかし、「目視」評価から、すなわち、一連のものの中で最も低い点にフィットする最も真っ直ぐな線を手で引くことにより、報告可能範囲を適切に決定することができるということが、一般に認められている。臨床検査標準委員会(CLSI)は、最低少なくとも4つの、好ましくは5つの異なる濃度レベルを推奨している。特に、報告可能範囲の上限を最大化する必要がある場合は5つよりも多くを使用することができるが、5つのレベルが好都合であり、かつほとんどの場合、十分である。
【0177】
参照区間は、通常、慎重に定義された基準を満たす個体(参照試料群)から得られる標本をアッセイすることにより設定される。参照値の理論に関する国際臨床化学連合(IFCC)の専門家パネル及びCLSIのプロトコルなどのプロトコルは、慎重に選択された参照試料群を使用して参照区間を設定する包括的な体系的プロセスを詳しく記述している。これらのプロトコルは、通常、特徴付ける必要がある各群(または亜群)につき、最低120の参照個体を必要とする。
【0178】
CLSI承認ガイドラインC28-A2には、設定された参照区間の個々の検査室への移行を検査室が検証するための様々な方法が記載されており、これには、1.検査室が、提出された情報を単に再検討し、採用する検査室の患者集団及び試験方法に参照区間を適用できることを主観的に検証する、ディヴァインジャッジメント(Divine judgment);2.実験的検証を、参照試料集団を代表する20名の個体由来の標本を採取及び分析することにより実施する、20個の試料の検証;3.実験的検証を、参照試料集団を代表する60名の個体由来の標本を採取及び分析することにより実施し、2つの集団の平均及び標準偏差を比較する統計式を使用して、実際の参照区間を推定し、申請または報告された区間と比較する、60個の試料の推定;ならびに4.申請または報告された参照区間を、観察された方法論的バイアス及び使用されている分析法の間で証明された数学的関係に基づいて調整または修正することができる、比較法からの計算が含まれる。
【0179】
当業者であれば、本明細書に開示される遺伝子の参照発現レベル及び2つ以上の遺伝子間の参照比を、本明細書で提供される1つ以上の方法または当該技術分野で公知の他の方法によって決定することができることを理解しているであろう。
【0180】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法はまた、対象から試料を得ることを含む。本明細書で提供される方法で使用される試料は、対象からの体液または対象からの腫瘍生検を含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、本方法で使用される試料は、生検(例えば、腫瘍生検)を含む。生検は、任意の器官または組織、例えば、皮膚、肝臓、肺、心臓、結腸、腎臓、骨髄、歯、リンパ節、毛髪、脾臓、脳、乳房、または他の器官からのものであり得る。当業者に公知の任意の生検技法、例えば、開放生検、閉鎖生検、コア生検、切開生検、切除生検、または細針吸引生検を、対象から試料を単離するために使用することができる。いくつかの実施形態では、本方法で使用される試料は、穿刺液(例えば、骨髄穿刺液)を含む。いくつかの実施形態では、試料は、リンパ節生検である。いくつかの実施形態では、試料は、凍結組織試料であり得る。いくつかの実施形態では、試料は、ホルマリン固定パラフィン包埋(「FFPE」)組織試料であり得る。いくつかの実施形態では、試料は、脱パラフィン組織切片であり得る。いくつかの実施形態では、試料は、肝臓試料であり得る。いくつかの実施形態では、試料は、精巣試料であり得る。いくつかの実施形態では、試料は、脾臓試料であり得る。いくつかの実施形態では、試料は、リンパ節試料であり得る。
【0182】
いくつかの実施形態では、試料は、体液試料である。体液の非限定的な例としては、血液(例えば、末梢全血、末梢血)、血漿、骨髄、羊水、眼房水、胆汁、リンパ、月経血、血清、尿、脳及び脊髄周囲の脳脊髄液、骨関節周囲の滑液が挙げられる。いくつかの実施形態では、試料は、髄液試料であり得る。
【0183】
いくつかの実施形態では、試料は、血液試料である。血液試料は、全血試料、部分精製血液試料、または末梢血試料であり得る。血液試料は、従来技法、例えば、Innis et al,editors,PCR Protocols(Academic Press,1990)に記載されているものを使用して得ることができる。白血球は、従来技法または市販のキット、例えばRosetteSepキット(Stein Cell Technologies,Vancouver,Canada)を使用して血液試料から分離することができる。白血球の亜集団、例えば単核細胞、NK細胞、B細胞、T細胞、単球、顆粒球またはリンパ球を、従来技法、例えば、磁気活性化細胞選別(MACS)(Miltenyi Biotec,Auburn,California)、または蛍光活性化細胞選別(FACS)(Becton Dickinson,San Jose,California)を使用してさらに単離することができる。いくつかの実施形態では、試料は、血清である。いくつかの実施形態では、試料は、血漿である。一実施形態では、試料は、骨髄試料である。
【0184】
特定の実施形態では、本明細書で提供される方法で使用される試料は、複数の細胞を含む。そのような細胞としては、任意のタイプの細胞、例えば、幹細胞、血球(例えばPBMC)、リンパ球、NK細胞、B細胞、T細胞、単球、顆粒球、免疫細胞、または腫瘍細胞もしくはがん細胞を挙げることができる。特定の細胞集団は、市販の抗体(例えば、Quest Diagnostic(San Juan Capistrano,Calif.)、Dako(Denmark))の組み合わせを使用して得ることができる。いくつかの実施形態では、試料は、単離された細胞である。
【0185】
特定の実施形態では、本明細書で提供される方法で使用される試料は、罹患組織からの複数の細胞、例えば、SCCを有する対象からの腫瘍試料を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、腫瘍生検または腫瘍外植片などの腫瘍組織から得ることができる。特定の実施形態では、本明細書で提供される方法で使用される細胞の数は、単一細胞~約10細胞の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法で使用される細胞の数は、約1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、または5×10である。皮膚生検、剃毛(接線)生検、パンチ生検、切開生検(腫瘍の一部を取り出す)及び切除生検(腫瘍全体を取り出す)を含む、患者から腫瘍生検を得るための様々なタイプの処置が利用可能である。リンパ節生検は通常、がんが拡散しているかどうかを調査するために実施される。細針吸引(FNA)生検及び外科的(切除)リンパ節生検の両方が、利用可能な選択肢である。FNA生検では、リンパ節の小断片を得るために患者に細い針を使用することができ、これは、外科的選択肢よりも低侵襲的ではあるが、がん細胞を発見するのに十分な大きさの試料が常に得られるとは限らない場合がある。
【0186】
対象から採取された細胞の数及びタイプは、例えば、フローサイトメトリー、細胞選別、免疫細胞化学(例えば、組織特異的抗体もしくは細胞マーカー特異的抗体による染色)、蛍光活性化細胞選別(FACS)、磁気活性化細胞選別(MACS)などの標準的な細胞検出技法を使用して、形態の変化及び細胞表面マーカーを測定することによって、光学顕微鏡もしくは共焦点顕微鏡を使用して細胞の形態を調査することによって、及び/またはPCR及び遺伝子発現プロファイリングなどの当該技術分野において周知の技法を使用して遺伝子発現の変化を測定することによって、モニタリングすることができる。これらの技法は、1つ以上の特定のマーカーに対して陽性である細胞を同定するためにも使用することができる。蛍光活性化細胞選別(FACS)は、細胞を含む粒子を、その粒子の蛍光性質に基づいて分離するための周知の方法である(Kamarch,1987,Methods Enzymol,151:150-165)。個々の粒子の蛍光部分をレーザー励起させると、わずかな電荷が生じ、混合物から正の粒子及び負の粒子を電磁分離できるようになる。一実施形態では、細胞表面マーカー特異的な抗体またはリガンドを別個の蛍光標識で標識する。細胞をセルソーターにかけて処理し、使用する抗体に結合する能力に基づいて、細胞を分離させる。FACSで選別した粒子を、96ウェルまたは384ウェルプレートの個々のウェルに直接入れ、分離及びクローニングを容易にすることができる。
【0187】
特定の実施形態では、本明細書で提供される方法において、細胞のサブセットが使用される。特定の細胞集団を選別及び単離する方法は、当該技術分野において周知であり、細胞の大きさ、形態、または細胞内もしくは細胞外マーカーに基づき得る。このような方法としては、フローサイトメトリー、フローソーティング、FACS、ビーズベースの分離(磁気細胞選別など)、サイズベースの分離(例えば、ふるい、障害物の配列またはフィルター)、マイクロフルイディクスデバイスでの選別、抗体ベースの分離、沈降、親和性吸着、親和性抽出、密度勾配遠心分離、レーザーキャプチャーマイクロダイセクションなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0188】
遺伝子の発現レベルは、遺伝子のタンパク質レベルまたはmRNAレベルを指し得る。いくつかの実施形態では、遺伝子の発現レベルは、遺伝子のmRNAレベルを指し、本明細書で提供される方法は、遺伝子のmRNAレベルを決定することを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子の発現レベルは、遺伝子のタンパク質レベルを指し、本明細書で提供される方法は、遺伝子のタンパク質レベルを決定することを含む。
【0189】
いくつかの実施形態では、遺伝子の発現レベルは、遺伝子のmRNAレベルを指し得る。したがって、H-Ras発現レベルは、試料中のH-RasのmRNAレベルを指し得る。N-Ras発現量、またはK-Ras発現量は、それぞれのmRNAレベルを指し得る。PIK3CA発現量は、試料中のPIK3CAのmRNAレベルを指し得る。H/K比は、K-RasのmRNAレベルに対するH-RasのmRNAレベルの比を指し得る。H/N比は、N-RasのmRNAレベルに対するH-RasのmRNAレベルの比を指し得る。H/K+N比は、K-RasとN-Rasの組み合わせmRNAレベルに対するH-RasのmRNAレベルの比を指し得る。
【0190】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、治療有効量のFTIを対象に投与することを含む、対象におけるSCCを治療するための方法であり、対象は、参照レベルよりも高いH-Ras mRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-RasのmRNAレベルを測定すること、及び試料中のH-Ras mRNAレベルが参照レベルよりも高い場合、対象がH-Rasを過剰発現するSCCを有すると決定することを含む。
【0191】
FTIは、本明細書に記載されているものを含む任意のFTIであり得る。例えば、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIはチピファルニブであり、本明細書で提供されるのは、治療有効量のチピファルニブを対象に投与することを含む、対象におけるSCCを治療する方法であり、対象は、参照レベルよりも高いH-Ras mRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-RasのmRNAレベルを測定すること、及び試料中のH-Ras mRNAレベルが参照レベルよりも高い場合、対象がH-Rasを過剰発現するSCCを有すると決定することを含む。
【0192】
いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも12倍、少なくとも15倍、または少なくとも20倍高いH-Ras mRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも2倍高いH-Ras mRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも2.5倍高いH-Ras mRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも3倍高いH-Ras mRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも3.5倍高いH-Ras mRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも4倍高いH-Ras mRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも4.5倍高いH-Ras mRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも5倍高いH-Ras mRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも6倍高いH-Ras mRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも7倍高いH-Ras mRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも8倍高いH-Ras mRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも9倍高いH-Ras mRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも10倍高いH-Ras mRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも12倍高いH-Ras mRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも15倍高いH-Ras mRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも20倍高いH-Ras mRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、参照レベルは、健常対象集団におけるH-RasのmRNAレベルの中央値である。いくつかの実施形態では、参照レベルは、SCCを有する対象集団におけるH-RasのmRNAレベルの中央値である。
【0193】
遺伝子の発現レベルがそのmRNAレベルによって決定される、本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、SCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、SCCは、転移性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、再発性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、難治性である。SCCは、特定のタイプのSCCであり得る。いくつかの実施形態では、SCCは、頭頸部SCC(HNSCC)である。いくつかの実施形態では、SCCは、肺SCC(LSCC)である。いくつかの実施形態では、SCCは、甲状腺SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、食道SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、膀胱SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、尿路上皮癌(UC)である。
【0194】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、遺伝子のmRNAレベルを決定することを含む。試料中の遺伝子のmRNAレベルを決定する方法は、当該技術分野において周知である。例えば、いくつかの実施形態では、mRNAレベルは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、qPCR、qRT-PCR、RNA-seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技法、次世代シーケンシング、またはFISHによって決定され得る。
【0195】
mRNAレベルを検出または定量化する例示的な方法としては、PCRベースの方法、ノーザンブロット、リボヌクレアーゼ保護アッセイなどが挙げられるが、これらに限定されない。mRNA配列を使用して、少なくとも部分的に相補的であるプローブを調製することができる。次に、そのプローブを用いて、PCRベースの方法、ノーザンブロッティング、ディップスティックアッセイなどの任意の好適なアッセイを使用して、試料中のmRNA配列を検出することができる。
【0196】
試料中のmRNA発現の定量化のための当該技術分野で公知の一般的に使用される方法としては、ノーザンブロッティング及びin situハイブリダイゼーション(Parker & Barnes,Methods in Molecular Biology 106:247-283(1999))、RNAse保護アッセイ(Hod,Biotechniques 13:852-854(1992))、及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(Weis et ah,Trends in Genetics 8:263-264(1992))が挙げられる。あるいは、DNA二本鎖、RNA二本鎖、及びDNA-RNAハイブリッド二本鎖またはDNA-タンパク質二本鎖を含む特定の二本鎖を認識することができる抗体を用いることができる。シーケンシングベースの遺伝子発現解析の代表的方法としては、遺伝子発現連鎖解析(SAGE)、及び超並列シグネチャシーケンシング(MPSS)による遺伝子発現解析が挙げられる。
【0197】
高感度で柔軟性のある定量法は、PCRである。PCR法の例は、文献に見出すことができる。PCRアッセイの例は米国特許第6,927,024号に見出すことができ、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。RT-PCR法の例は米国特許第7,122,799号に見出すことができ、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。蛍光in situ PCRの方法は、米国特許第7,186,507号に記載されており、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0198】
しかしながら、他の核酸増幅プロトコル(すなわち、PCR以外)もまた、本明細書に記載の核酸解析方法において使用され得ることに留意されたい。例えば、適切な増幅方法としては、リガーゼ連鎖反応(例えば、Wu & Wallace,Genomics 4:560-569,1988を参照されたい);鎖置換アッセイ(例えば、Walker et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:392-396,1992、米国特許第5,455,166号を参照されたい);ならびに米国特許第5,437,990号、同第5,409,818号、及び同第5,399,491号に記載されている方法を含むいくつかの転写ベースの増幅系;転写増幅系(TAS)(Kwoh et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173-1177,1989);ならびに自家持続配列複製(3SR)(Guatelli et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874-1878,1990、WO 92/08800)が挙げられる。あるいは、プローブを検出可能なレベルに増幅する方法、例えば、Q-レプリカーゼ増幅(Kramer & Lizardi,Nature 339:401-402,1989、Lomeli et al.,Clin.Chem.35:1826-1831,1989)を使用することができる。既知の増幅方法の概説は、例えば、Abramson and Myers in Current Opinion in Biotechnology 4:41-47(1993)によって提供されている。
【0199】
mRNAは、試料から単離され得る。試料は、組織試料であり得る。組織試料は、リンパ節生検などの腫瘍生検であり得る。mRNA抽出のための一般的な方法は当該技術分野において周知であり、Ausubel et al.,Current Protocols of Molecular Biology,John Wiley and Sons(1997)を含む分子生物学の標準的なテキストに開示されている。特に、RNAの単離は、精製キット、緩衝剤セット、及びQiagenなどの商業的製造業者のプロテアーゼを、製造業者の指示に従って使用して実施され得る。例えば、培養細胞からの全RNAは、Qiagen RNeasyミニカラムを使用して単離され得る。その他の市販のRNA単離キットとしては、MASTERPURE(登録商標)Complete DNA and RNA Purification Kit(EPICENTRE(登録商標),Madison,Wis.)、及びParaffin Block RNA Isolation Kit(Ambion,Inc.)が挙げられる。組織試料からの全RNAは、RNA Stat-60(Tel-Test)を使用して単離され得る。腫瘍から調製されたRNAは、例えば、塩化セシウム密度勾配遠心分離によって単離され得る。
【0200】
いくつかの実施形態では、PCRによる遺伝子発現プロファイリングの第1のステップは、RNA鋳型のcDNAへの逆転写であり、PCR反応におけるその指数関数的増幅がそれに続く。他の実施形態では、例えば、米国特許第5,310,652号、同第5,322,770号、同第5,561,058号、同第5,641,864号、及び同第5,693,517号に記載されているように、複合型逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)反応が使用され得る。一般的に使用される2つの逆転写酵素は、トリ骨髄芽球症ウイルス(avilo myeloblastosis virus)逆転写酵素(AMV-RT)及びモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV-RT)である。逆転写ステップは、通常、状況及び発現プロファイリングの目的に応じて、特定のプライマー、ランダムヘキサマー、またはオリゴdTプライマーを使用してプライミングされる。例えば、抽出されたRNAは、GENEAMP(商標)RNA PCRキット(Perkin Elmer,Calif,USA)を使用して、製造業者の指示に従って逆転写され得る。次に、得られたcDNAは、後続のPCR反応の鋳型として使用される。
【0201】
いくつかの実施形態では、RNA標的の検出及び定量化の両方に、リアルタイム逆転写PCR(qRT-PCR)が使用され得る(Bustin,et al.,2005,Clin.Sci.,109:365-379)。qRT-PCRベースの方法の例は、例えば米国特許第7,101,663号に見出すことができ、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。Applied Biosystems7500などのリアルタイムPCR用の機器は市販されており、TaqMan Sequence Detectionケミストリーなどの試薬も同様に市販されている。
【0202】
例えば、製造業者の指示に従って、TaqMan(登録商標)Gene Expression Assayを使用することができる。これらのキットは、ヒト、マウス及びラットのmRNA転写産物を迅速かつ確実に検出及び定量化するために、事前に調合された遺伝子発現アッセイである。TaqMan(登録商標)、または米国特許第5,210,015号、同第5,487,972号、及び同第5,804,375号、ならびにHolland et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7276-7280に記載されている5’-ヌクレアーゼアッセイを使用することができる。TAQMAN(登録商標)PCRは通常、TaqポリメラーゼまたはTthポリメラーゼの5’-ヌクレアーゼ活性を利用して、その標的アンプリコンに結合したハイブリダイゼーションプローブを加水分解するが、同等の5’ヌクレアーゼ活性を有する任意の酵素を使用することができる。2つのオリゴヌクレオチドプライマーを、PCR反応に典型的なアンプリコンを生成するために使用する。第3のオリゴヌクレオチド、すなわちプローブは、2つのPCRプライマー間に位置するヌクレオチド配列を検出するように設計される。プローブは、Taq DNAポリメラーゼ酵素によって伸長することができず、また、レポーター蛍光色素及びクエンチャー蛍光色素で標識されている。レポーター色素からのレーザー誘導放出はいずれも、2つの色素がプローブ上にあるときに互いに近接して位置している場合、クエンチング色素によってクエンチングされる。増幅反応中、Taq DNAポリメラーゼ酵素は、鋳型依存的な形でプローブを切断する。結果として生じたプローブ断片は溶液中で解離し、放出されたレポーター色素からのシグナルは、第2のフルオロフォアのクエンチング効果を受けない。新しい分子が合成されるごとにレポーター色素の1分子が遊離し、クエンチングされていないレポーター色素を検出することにより、データの定量的解釈の基礎がもたらされる。
【0203】
分解産物を検出するのに好適な任意の方法を、5’ヌクレアーゼアッセイで使用することができる。多くの場合、検出プローブは2つの蛍光色素で標識され、その一方は、他方の色素の蛍光をクエンチングすることができる。プローブがハイブリダイズしていない状態にあるときにクエンチングが生じるように、及びDNAポリメラーゼの5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性によるプローブの切断が2つの色素間で生じるように、色素をプローブに結合させる(好ましくは、一方を5’末端に結合させ、もう一方を内部部位に結合させる)。
【0204】
増幅は、色素間のプローブの切断をもたらし、これは、クエンチングの除去と最初にクエンチングされた色素から観察可能な蛍光の増加を同時に伴う。分解産物の蓄積は、反応蛍光の増加を測定することによりモニタリングされる。米国特許第5,491,063号及び同第5,571,673号(いずれも参照により本明細書に組み込まれる)は、増幅と同時に生じるプローブの分解を検出するための別の方法を記載している。5’-ヌクレアーゼアッセイデータは、頭文字でCt、すなわち閾値サイクルとして表され得る。前述したように、蛍光値は全てのサイクルの間中に記録され、増幅反応においてその時点までに増幅された産物の量を表す。蛍光シグナルが統計学的に有意であるとして最初に記録される時点が、閾値サイクル(Ct)である。
【0205】
誤差及び試料間のばらつきの影響を最小限に抑えるために、PCRは通常、内部標準を使用して実施される。理想的な内部標準は異なる組織間で一定のレベルで発現しており、実験的処理による影響を受けない。遺伝子発現のパターンを標準化するために最も頻繁に使用されるRNAは、ハウスキーピング遺伝子であるグリセルアルデヒド-3-リン酸-デヒドロゲナーゼ(GAPDH)及びP-アクチンのmRNAである。
【0206】
PCRプライマー及びプローブは、増幅予定の遺伝子に存在するイントロン配列に基づいて設計される。この実施形態では、プライマー/プローブ設計の第1のステップは、遺伝子内のイントロン配列の記述である。これは、Kent,W.,Genome Res.12(4):656-64(2002)によって開発されたDNA BLASTソフトウェアなどの、公開されているソフトウェアによるか、またはBLASTソフトウェア(その変形を含む)によって行うことができる。後続のステップは、PCRプライマー及びプローブ設計の十分に確立されている方法に従う。
【0207】
非特異的シグナルを回避するために、プライマー及びプローブを設計するときにイントロン内の反復配列をマスクすることが重要であり得る。これは、反復エレメントのライブラリーに対してDNA配列をスクリーニングして反復エレメントがマスクされたクエリ配列を返す、Baylor College of Medicineを通じてオンラインで利用可能なRepeat Maskerプログラムを使用することにより、容易に実現することができる。次に、マスクされたイントロン配列を使用して、任意の市販のまたはさもなければ公開されている、プライマー/プローブ設計パッケージ、例えば、Primer Express(Applied Biosystems)、MGBアッセイ・バイ・デザイン(Applied Biosystems)、Primer3(Rozen and Skaletsky(2000)Primer3 on the WWW for general users and for biologist programmers.In:Krawetz S,Misener S(eds)Bioinformatics Methods and Protocols:Methods in Molecular Biology.Humana Press,Totowa,N.J.,pp 365-386)を使用して、プライマー及びプローブ配列を設計することができる。
【0208】
全トランスクリプトームショットガンシーケンシング(WTSS)とも称されるRNA-Seqは、試料のRNA含有量に関する情報を取得するために、ハイスループットシーケンシング技術を使用してcDNAをシーケンシングすることを指す。RNA-Seqを記載している刊行物としては、Wang et al.,Nature Reviews Genetics 10(1):57-63(January 2009)、Ryan et al. BioTechniques 45(1):81-94(2008)、及びMaher et al.,Nature 458(7234):97-101(January 2009)(これらはその全体が本明細書に組み込まれる)が挙げられる。
【0209】
差次的遺伝子発現はまた、マイクロアレイ技法を使用して同定または確認することができる。この方法では、目的のポリヌクレオチド配列(cDNA及びオリゴヌクレオチドを含む)をマイクロチップ基板にプレーティングまたはアレイ化する。次に、アレイ化された配列を目的の細胞または組織由来の特異的DNAプローブとハイブリダイズさせる。
【0210】
マイクロアレイ技法の一実施形態では、cDNAクローンのPCR増幅インサートが高密度アレイ中の基板に適用される。好ましくは、少なくとも10,000のヌクレオチド配列が基板に適用される。各々10,000エレメントでマイクロチップ上に固定されたマイクロアレイ化遺伝子は、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションに好適である。蛍光標識cDNAプローブは、目的組織から抽出されたRNAの逆転写による蛍光ヌクレオチドの取り込みによって作製され得る。チップに適用された標識cDNAプローブは、アレイ上のDNAの各スポットに特異性を伴ってハイブリダイズする。非特異的に結合したプローブを除去するためのストリンジェントな洗浄の後、共焦点レーザー顕微鏡法によるか、またはCCDカメラなどの別の検出方法によって、チップをスキャンする。各アレイ化エレメントのハイブリダイゼーションの定量化により、対応するmRNA存在量の評価が可能になる。二色蛍光の場合、2つのRNA供給源から作製された別々に標識されたcDNAプローブをペアにしてアレイにハイブリダイズさせる。このようにして、特定の遺伝子のそれぞれに対応する2つの供給源からの転写産物の相対存在量を同時に決定する。ハイブリダイゼーションのスケールの小型化により、多数の遺伝子の発現パターンの簡便かつ迅速な評価が得られる。そのような方法は、1細胞当たり数コピーで発現される稀少な転写物を検出するために、及び発現レベルの少なくとも約2倍の差異を再現性よく検出するために必要とされる感度を有することが示されている(Schena et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(2):106-149(1996))。マイクロアレイ分析は、製造業者のプロトコルに従って、例えば、Affymetrix GENCHIP(商標)技術、またはIncyteのマイクロアレイ技術を使用することにより、市販の装置によって実施することができる。
【0211】
遺伝子発現連鎖解析(SAGE)は、各転写産物のための個々のハイブリダイゼーションプローブを提供する必要なしに、多数の遺伝子転写産物の同時的かつ定量的解析を可能にする方法である。まず、タグが各転写産物内の固有の位置から得られることを条件として、転写産物を一意的に同定するのに十分な情報を含む短い配列タグ(約10~14bp)を作製する。次に、多くの転写産物を互いに連結させて、長い連続分子を形成させ、これをシーケンシングして、複数のタグの正体を同時に明らかにすることができる。転写産物の任意の集団の発現パターンは、個々のタグの存在量を決定し、各タグに対応する遺伝子を同定することにより定量的に評価することができる。さらなる詳細については、例えば、Velculescu et al.,Science 270:484-487(1995)、及びVelculescu et al.,Cell 88:243-51(1997)を参照されたい。
【0212】
MassARRAY(Sequenom,San Diego,Calif.)技術は、検出のために質量分析(MS)を使用する自動化されたハイスループット遺伝子発現解析方法である。この方法に従って、RNAの単離、逆転写、及びPCR増幅の後、cDNAをプライマー伸長に供する。cDNAから得られたプライマー伸長産物を精製し、MALTI-TOF MS試料の調製に必要とされる成分が予め充填されているチップアレイに分注する。得られた質量スペクトルのピーク面積を分析することにより、反応物中に存在する様々なcDNAを定量化する。
【0213】
mRNAレベルはまた、ハイブリダイゼーションに基づくアッセイにより測定され得る。典型的なmRNAアッセイ方法は、1)表面に結合した対象プローブを得るステップ、2)特異的結合をもたらすのに十分な条件下で、その表面に結合したプローブにmRNA集団をハイブリダイゼーションさせるステップ、(3)ハイブリダイゼーション後の洗浄を行って、ハイブリダイゼーションの際に結合しなかった核酸を除去するステップ、及び(4)ハイブリダイズしたmRNAを検出するステップを含み得る。これらのステップのそれぞれで使用される試薬及びその使用条件は、具体的な用途に応じて異なり得る。
【0214】
任意の好適なアッセイプラットフォームを使用して、試料中のmRNAレベルを決定することができる。例えば、アッセイは、ディップスティック、膜、チップ、ディスク、テストストリップ、フィルター、ミクロスフェア、スライド、マルチウェルプレート、または光ファイバーの形態であり得る。アッセイ系は、mRNAに対応する核酸が結合されている固体支持体を有し得る。固体支持体は、例えば、プラスチック、シリコン、金属、樹脂、ガラス、膜、粒子、沈殿物、ゲル、ポリマー、シート、球体、多糖、キャピラリー、フィルム、プレートまたはスライドを有し得る。アッセイ構成成分は、mRNAを検出するためのキットとして、一緒に調製及びパッケージ化され得る。
【0215】
所望により、核酸を標識して、標識mRNAの集団を作製することができる。一般に、試料は、当該技術分野において周知の方法を使用して(例えば、DNAリガーゼ、ターミナルトランスフェラーゼを使用して、またはRNA骨格を標識することなどによって(例えば、Ausubel,et al.,Short Protocols in Molecular Biology,3rd ed.,Wiley & Sons 1995 and Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Edition,2001 Cold Spring Harbor,N.Y.を参照されたい))、標識され得る。いくつかの実施形態では、試料は、蛍光標識で標識される。例示的な蛍光色素としては、キサンテン色素、フルオレセイン色素、ローダミン色素、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、6カルボキシフルオレセイン(FAM)、6カルボキシ-2’,4’,7’,4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、6カルボキシ4’,5’ジクロロ2’,7’ジメトキシフルオレセイン(JOEまたはJ)、N,N,N’,N’テトラメチル6カルボキシローダミン(TAMRAまたはT)、6カルボキシXローダミン(ROXまたはR)、5カルボキシローダミン6G(R6G5またはG5)、6カルボキシローダミン6G(R6G6またはG6)及びローダミン110;シアニン色素、例えばCy3、Cy5及びCy7色素;Alexa色素、例えばAlexa-fluor-555;クマリン、ジエチルアミノクマリン、ウンベリフェロン;ベンズイミド色素、例えばHoechst33258;フェナントリジン色素、例えばTexas Red;エチジウム色素;アクリジン色素;カルバゾール色素;フェノキサジン色素;ポルフィリン色素;ポリメチン色素、BODIPY色素、キノリン色素、ピレン、フルオレセインクロロトリアジニル、R110、エオシン、JOE、R6G、テトラメチルローダミン、リサミン、ROX、ナフトフルオレセインなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0216】
ハイブリダイゼーションは、好適なハイブリダイゼーション条件下で行うことができ、この条件は、所望されるストリンジェンシーの点で異なり得る。相補的な結合要素間、すなわち、表面に結合した対象プローブと試料中の相補的mRNAとの間でプローブ/標的複合体を固体表面上に生成させるには、通常の条件で十分である。特定の実施形態では、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が用いられ得る。
【0217】
ハイブリダイゼーションは通常、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で実施される。標準的なハイブリダイゼーション技法(例えば、プローブに対する試料中の標的mRNAの特異的結合を提供するのに十分な条件下におけるもの)は、Kallioniemi et al.,Science 258:818-821(1992)及びWO93/18186に記載されている。一般的技法のいくつかの手引きが入手可能である(例えば、Tijssen,Hybridization with Nucleic Acid Probes,Parts I and II(Elsevier,Amsterdam 1993))。in situハイブリダイゼーションに好適な技法の説明については、Gall et al.Meth.Enzymol.,21:470-480(1981)、及びAngerer et al.in Genetic Engineering:Principles and Methods(Setlow and Hollaender,Eds.)Vol 7,pgs 43-65(Plenum Press,New York 1985)を参照されたい。温度、塩濃度、ポリヌクレオチド濃度、ハイブリダイゼーション時間、洗浄条件のストリンジェンシーなどを含む適切な条件の選択は、試料の供給源、捕捉物質の性質、予測される相補性の程度などを含む実験設計に依存し、当業者は、日常的な実験の要素として決定することができる。当業者は、別の、但し同程度のハイブリダイゼーション条件及び洗浄条件を使用して、同様のストリンジェンシーの条件を提供することができることを容易に認識するであろう。
【0218】
mRNAハイブリダイゼーション手順の後、通常、表面に結合したポリヌクレオチドを洗浄して、未結合の核酸を除去する。洗浄は、任意の好都合な洗浄プロトコルを使用して実施することができ、その洗浄条件は通常、上記のように、ストリンジェントである。次に、標準的技法を使用して、プローブに対する標的mRNAのハイブリダイゼーションを検出する。
【0219】
本明細書に記載の、またはさもなければ当該技術分野で公知の任意の方法を使用して、本明細書に記載の対象からの試料中の遺伝子のmRNAレベルを決定することができる。例として、いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、対象におけるAMLを治療する方法であって、対象からの試料中のFLT3LGのmRNAレベルをqRT-PCRを使用することにより決定すること、及び試料中のFLT3LGのmRNAレベルがFLT3LGの参照発現レベルより高い場合、治療有効量のFTIを対象に投与すること、を含む方法である。
【0220】
いくつかの実施形態では、遺伝子の発現レベルは、遺伝子のタンパク質レベルを指し得る。したがって、H-Ras発現レベルは、試料中のH-Rasのタンパク質レベルを指し得る。N-Ras発現量、またはK-Ras発現量は、それぞれのタンパク質レベルを指し得る。PIK3CA発現量は、試料中のPIK3CAのmRNAレベルを指し得る。H/K比は、K-Rasタンパク質レベルに対するH-Rasタンパク質レベルの比を指し得る。H/N比は、N-Rasタンパク質レベルに対するH-Rasタンパク質レベルの比を指し得る。H/K+N比は、K-RasとN-Rasの組み合わせタンパク質レベルに対するH-Rasタンパク質レベルの比を指し得る。
【0221】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、治療有効量のFTIを対象に投与することを含む、対象におけるSCCを治療するための方法であり、対象は、参照レベルよりも高いH-Rasタンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Rasのタンパク質レベルを測定すること、及び試料中のH-Rasタンパク質レベルが参照レベルよりも高い場合、対象がH-Rasを過剰発現するSCCを有すると決定することを含む。
【0222】
FTIは、本明細書に記載されているものを含む任意のFTIであり得る。例えば、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIはチピファルニブであり、本明細書で提供されるのは、治療有効量のチピファルニブを対象に投与することを含む、対象におけるSCCを治療する方法であり、対象は、参照レベルよりも高いH-Rasタンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して試料中のH-Rasのタンパク質レベルを測定すること、及び試料中のH-Rasタンパク質レベルが参照レベルよりも高い場合、対象がH-Rasを過剰発現するSCCを有すると決定することを含む。
【0223】
いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも12倍、少なくとも15倍、または少なくとも20倍高いH-Rasタンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも2倍高いH-Rasタンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも2.5倍高いH-Rasタンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも3倍高いH-Rasタンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも3.5倍高いH-Rasタンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも4倍高いH-Rasタンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも4.5倍高いH-Rasタンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも5倍高いH-Rasタンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも6倍高いH-Rasタンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも7倍高いH-Rasタンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも8倍高いH-Rasタンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも9倍高いH-Rasタンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも10倍高いH-Rasタンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも12倍高いH-Rasタンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも15倍高いH-Rasタンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、参照レベルよりも少なくとも20倍高いH-Rasタンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、参照レベルは、健常対象集団におけるH-Rasのタンパク質レベルの中央値である。いくつかの実施形態では、参照レベルは、SCCを有する対象集団におけるH-Rasのタンパク質レベルの中央値である。
【0224】
遺伝子の発現レベルがそのタンパク質レベルによって決定される、本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、SCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、SCCは、転移性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、再発性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、難治性である。SCCは、特定のタイプのSCCであり得る。いくつかの実施形態では、SCCは、頭頸部SCC(HNSCC)である。いくつかの実施形態では、SCCは、肺SCC(LSCC)である。いくつかの実施形態では、SCCは、甲状腺SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、食道SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、膀胱SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、尿路上皮癌(UC)である。
【0225】
試料中の遺伝子のタンパク質レベルを決定する方法は、当該技術分野において周知である。例えば、いくつかの実施形態では、タンパク質レベルは、免疫組織化学(IHC)アッセイ、免疫ブロッティング(IB)アッセイ、免疫蛍光(IF)アッセイ、フローサイトメトリー(FACS)、または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定され得る。いくつかの実施形態では、タンパク質レベルは、ヘマトキシリン・エオシン染色(「H&E染色」)によって決定され得る。
【0226】
遺伝子のタンパク質レベルは、様々な(IHC)アプローチまたは他の免疫アッセイ法によって検出され得る。組織切片のIHC染色は、試料中のタンパク質の存在を評価または検出する信頼性の高い方法であることが示されている。免疫組織化学技法は、抗体を利用して、一般に発色法または蛍光法によって、細胞抗原をin situでプロービング及び可視化する。したがって、例えば、ポリクローナル抗血清を含む抗体または抗血清、または各遺伝子に特異的なモノクローナル抗体を使用して、発現を検出する。以下でさらに詳細に論じられるように、抗体は、例えば、放射性標識、蛍光標識、ビオチンなどのハプテン標識、または西洋ワサビペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼなどの酵素で抗体自体を直接標識することによって検出することができる。あるいは、非標識一次抗体を、抗血清、ポリクローナル抗血清、または一次抗体に特異的なモノクローナル抗体を含む標識二次抗体と組み合わせて使用する。免疫組織化学プロトコル及びキットは当該技術分野で周知であり、市販されている。スライド調製及びIHC処理用の自動システムは市販されている。Ventana(登録商標)BenchMark XTシステムは、そのような自動システムの一例である。
【0227】
標準的な免疫学的手順及び免疫アッセイ手順は、Basic and Clinical Immunology(Stites & Terr eds.,7th ed.1991)に見出すことができる。さらに、免疫アッセイは、上掲のEnzyme Immunoassay(Maggio,ed.,1980)、及びHarlow & Laneで広範に概説されているいくつかの構成のうちのいずれかで実施することができる。一般的な免疫アッセイの概説については、Methods in Cell Biology:Antibodies in Cell Biology,volume 37(Asai,ed.1993)、Basic and Clinical Immunology(Stites & Ten,eds.,7th ed.1991)も参照されたい。
【0228】
遺伝子のタンパク質レベルを検出するために一般に使用されるアッセイとしては、非競合的アッセイ、例えば、サンドイッチアッセイ、及び競合的アッセイが挙げられる。通常、ELISAアッセイなどのアッセイを使用することができる。例えば、血液、血漿、血清、腫瘍生検、リンパ節、または骨髄を含む、多種多様な組織及び試料をアッセイするためのELISAアッセイが当該技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、試料は、骨髄生検である。いくつかの実施形態では、試料は、骨髄穿刺液である。いくつかの実施形態では、試料は、髄液試料、肝臓試料、精巣試料、脾臓試料、またはリンパ節試料であり得る。いくつかの実施形態では、試料は、単離された細胞である。
【0229】
そのようなアッセイ形式を使用する広範な免疫アッセイ技法が利用可能であり、例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,016,043号、同第4,424,279号、及び同第4,018,653号を参照されたい。これらは、非競合型の単一部位及び二部位の両方または「サンドイッチ」アッセイ、ならびに従来の競合結合アッセイを含む。これらのアッセイは、また、標識抗体の標的遺伝子への直接結合を含む。サンドイッチアッセイは、一般的に使用されているアッセイである。サンドイッチアッセイ技法の多くの変形が存在する。例えば、典型的なフォワードアッセイでは、非標識抗体を固体基板上に固定し、試験される試料を、結合した分子と接触させる。抗体-抗原複合体の形成を可能にするのに十分な時間にわたる適切なインキュベーション期間後、次に、検出可能なシグナルを生成することができるレポーター分子で標識された、抗原に特異的な第2の抗体を添加し、別の抗体-抗原-標識抗体複合体の形成に十分な時間を考慮してインキュベートする。一切の未反応物質を洗い流し、抗原の存在を、レポーター分子によって生成されたシグナルの観察によって決定する。結果は、可視シグナルの単純な観察による定性的なものであってもよく、または既知量の遺伝子を含有する対照試料と比較することにより定量化されるものであってもよい。
【0230】
フォワードアッセイの変形には、試料と標識抗体の両方が、結合した抗体に同時に添加される同時アッセイが含まれる。これらの技法は当業者に周知であり、これには、容易に明らかになるわずかな変形が含まれる。典型的なフォワードサンドイッチアッセイでは、遺伝子に対する特異性を有する第1の抗体を、共有結合的または受動的のいずれかで固体表面に結合させる。固体表面は、ガラスまたはポリマーであってよく、最も一般的に使用されるポリマーは、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリプロピレンである。固体支持体は、チューブ、ビーズ、マイクロプレートのディスク、または免疫アッセイの実施に好適な任意の他の表面の形態であり得る。結合プロセスは、当該技術分野で周知であり、一般に、架橋、共有結合、または物理的吸着からなり、ポリマー-抗体複合体は、試験試料に備えて洗浄される。次に、試験される試料のアリコートを固相複合体に添加し、抗体中に存在する一切のサブユニットの結合を可能にするのに十分な期間(例えば、2~40分、またはより好都合な場合、一晩)及び好適な条件下(例えば、室温~40℃、例えば、25℃~32℃(25℃と32℃を含む))でインキュベートする。インキュベーション期間の後、抗体サブユニット固相を洗浄し、乾燥させ、遺伝子の一部分に特異的な第2の抗体でインキュベートする。第2の抗体を、分子マーカーに対する第2の抗体の結合を示すために使用されるレポーター分子に連結させる。
【0231】
代替的な方法は、試料中の標的遺伝子を固定し、その後、固定された標的を特異的抗体に曝露させることを含み、この抗体は、レポーター分子で標識されていても、標識されていなくてもよい。標的の量及びレポーター分子シグナルの強度に応じて、結合した標的は、抗体による直接標識によって検出可能であり得る。あるいは、第1の抗体に特異的な第2の標識抗体を標的-第1の抗体複合体に曝露させ、標的-第1の抗体-第2の抗体の三元複合体を形成させる。この複合体は、標識されたレポーター分子が発するシグナルによって検出される。
【0232】
酵素免疫アッセイの場合、酵素は、一般にグルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩によって第2の抗体にコンジュゲートされる。しかしながら、容易に認識されるであろう通り、多種多様な異なるコンジュゲーション技法が存在し、これらは当業者であれば容易に利用可能である。一般に使用される酵素としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、及びアルカリホスファターゼが挙げられ、その他のものは、本明細書で論じられている。特定の酵素とともに使用される基質は、一般に、対応する酵素による加水分解の際の、検出可能な色の変化の生成に対して選択される。好適な酵素の例としては、アルカリホスファターゼ及びペルオキシダーゼが挙げられる。上述の発色基質ではなく、蛍光産物を生じる蛍光発生基質を用いることも可能である。全ての場合において、酵素標識抗体を第1の抗体-分子マーカー複合体に添加し、結合させた後、余分な試薬を洗い流す。その後、適切な基質を含有する溶液を抗体-抗原-抗体の複合体に添加する。基質は、第2の抗体に結合された酵素と反応して、定性的な視覚シグナルを生じ、これを通常は分光光度的にさらに定量化して、試料中に存在していた遺伝子の量を示すことができる。代わりに、フルオレセイン及びローダミンなどの蛍光化合物を、その結合能力を変化させることなく抗体に化学的にカップリングさせることができる。特定の波長の光による照射によって活性化されると、蛍光色素標識抗体は、光エネルギーを吸収し、分子に励起性の状態を誘導し、続いて、光学顕微鏡で視覚的に検出可能な特徴的な色の光が放射される。EIAの場合と同様に、蛍光標識抗体を、第1の抗体-分子マーカー複合体に結合させる。非結合試薬を洗い落とした後、次いで残りの三元複合体を適切な波長の光に曝露させると、観察された蛍光は目的の分子マーカーの存在を示す。免疫蛍光技法及びEIA技法はともに当該技術分野で極めて十分に確立されており、本明細書で論じられている。
【0233】
本明細書に記載の、またはさもなければ当該技術分野で公知の任意の方法を使用して、本明細書に記載の対象からの試料中の遺伝子のタンパク質レベルを決定することができる。例として、いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、対象におけるHNSCCを治療する方法であって、対象からの試料中のH-Rasのタンパク質レベルをIFアッセイを使用することにより決定すること、及び試料中のH-Rasのタンパク質レベルがH-Rasタンパク質の参照レベルより高い場合、治療有効量のチピファルニブを対象に投与すること、を含む方法である。
【0234】
本明細書に記載の、またはさもなければ当該技術分野で公知の、発現レベル(例えば、タンパク質レベルまたはmRNAレベル)を分析するための任意の方法、例えば、IHCアッセイ、IBアッセイ、IFアッセイ、FACS、ELISA、タンパク質マイクロアレイ分析、qPCR、qRT-PCR、RNA-seq、RNAマイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技法、次世代シーケンシング、またはFISHを使用して、試料中のさらなる遺伝子のレベルを決定することができる。
【0235】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、治療有効量のFTIを対象に投与することを含む、対象におけるSCCを治療するための方法であり、対象は、H-Ras遺伝子変異を保有する。いくつかの実施形態では、H-Ras遺伝子変異は、対応するH-Rasタンパク質の活性化をもたらす。いくつかの実施形態では、H-Ras遺伝子変異は、H-Rasタンパク質のアミノ酸配列の変化をもたらし、その変化は、H-Rasタンパク質の活性化をもたらす。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して対象のH-Ras変異状態を決定することを含む。
【0236】
FTIは、本明細書に記載されているものを含む任意のFTIであり得る。例えば、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIはチピファルニブであり、本明細書で提供されるのは、治療有効量のチピファルニブを対象に投与することを含む、対象におけるSCCを治療する方法であり、対象は、H-Ras遺伝子変異を保有する。いくつかの実施形態では、H-Ras遺伝子変異は、対応するH-Rasタンパク質の活性化をもたらす。いくつかの実施形態では、H-Ras遺伝子変異は、H-Rasタンパク質のアミノ酸配列の変化をもたらし、その変化は、H-Rasタンパク質の活性化をもたらす。いくつかの実施形態では、本方法は、対象からの試料を分析して対象のH-Ras変異状態を決定することを含む。
【0237】
対象がH-Ras遺伝子変異を保有する本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、SCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、SCCは、転移性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、再発性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、難治性である。SCCは、特定のタイプのSCCであり得る。いくつかの実施形態では、SCCは、頭頸部SCC(HNSCC)である。いくつかの実施形態では、SCCは、肺SCC(LSCC)である。いくつかの実施形態では、SCCは、甲状腺SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、食道SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、膀胱SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、尿路上皮癌(UC)である。
【0238】
本明細書で提供される方法はまた、FTI治療に対する患者集団の応答率をさらに増加させるために、他の患者層別化アプローチとともに使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、対象がH-Ras変異を保有する場合、H-Rasの変異状態を決定すること、及びFTI治療のための対象を選択することをさらに含む。本明細書で使用される場合、「H-Ras変異」という用語は、HRAS遺伝子またはH-Rasタンパク質の活性化変異を指す。H-Ras変異は、対応するH-Rasタンパク質の活性化をもたらすHRAS遺伝子のDNA配列の遺伝的変化、またはH-Rasタンパク質の活性化をもたらすH-Rasタンパク質のアミノ酸配列の変化のいずれかを指し得る。したがって、本明細書で使用される場合、「H-Ras変異」という用語は、H-Rasタンパク質の活性化をもたらさないHRAS遺伝子の変化、またはその活性化を誘導しないH-Rasタンパク質配列の変化を含まない。したがって、本明細書で使用される「H-Ras変異」を一切有さない試料または対象は、依然として、H-Rasタンパク質の活性に影響を及ぼさないHRAS遺伝子の変異もしくはH-Rasタンパク質の活性を損なう変異を有し得るか、またはH-Rasタンパク質活性に影響を与えないH-Rasタンパク質の変異もしくはその活性を損なう変異を有し得る。試料または対象は、HRAS遺伝子の複数のコピーを有し得る。試料または対象はまた、野生型H-Rasタンパク及び変異H-Rasタンパク質の両方を有し得る。本明細書で使用される場合、H-Ras変異を有する試料または対象はまた、野生型HRAS遺伝子及び/または野生型H-Rasタンパク質のコピーを有し得る。本明細書で使用される場合、「野生型H-Rasを有する」と決定される試料または対象は、野生型HRAS遺伝子及び野生型H-Rasタンパク質のみを有し、H-Ras変異を有さない試料または対象を指す。いくつかの実施形態では、変異HRAS遺伝子は、変異H-Rasタンパク質をコードし、HRAS遺伝子変異は、対応する変異H-Rasタンパク質のG12、G13、Q61、Q22、K117、A146、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される特定の位置でアミノ酸置換をコードするコドンにおける修飾であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、HRAS遺伝子変異は、変異H-Rasタンパク質のG12の位置でアミノ酸置換をコードするコドンにおける変異である。いくつかの実施形態では、HRAS遺伝子変異は、変異H-Rasタンパク質のG12R置換をコードするコドンにおけるものである。HRAS遺伝子変異は、変異H-Rasタンパク質のG12C、G12D、G12A、G12V、G12S、G12F、G12R、またはG12N置換をコードするコドンにおける変異であり得る。いくつかの実施形態では、HRAS遺伝子変異は、変異H-Rasタンパク質のG12V置換をコードするコドンにおける変異である。いくつかの実施形態では、HRAS遺伝子変異は、変異H-Rasタンパク質のG13の位置でアミノ酸置換をコードするコドンにおける変異である。HRAS遺伝子変異は、変異H-Rasタンパク質のG13A、G13C、G13V、G13D、G13R、G13S、またはG13N置換をコードするコドンにおける変異であり得る。いくつかの実施形態では、HRAS遺伝子変異は、変異H-Rasタンパク質のG13C置換をコードするコドンにおける変異である。いくつかの実施形態では、HRAS遺伝子変異は、変異H-Rasタンパク質のG13R置換をコードするコドンにおける変異である。いくつかの実施形態では、HRAS遺伝子変異は、変異H-Rasタンパク質のQ61の位置でアミノ酸置換をコードするコドンにおける変異である。HRAS遺伝子変異は、変異H-Rasタンパク質のQ61E、Q61K、Q61H、Q61L、Q61P、またはQ61R置換をコードするコドンにおける変異であり得る。いくつかの実施形態では、HRAS遺伝子変異は、変異H-Rasタンパク質のQ61L置換をコードするコドンにおける変異である。いくつかの実施形態では、HRAS遺伝子変異は、変異H-Rasタンパク質のQ61R置換をコードするコドンにおける変異である。いくつかの実施形態では、HRAS遺伝子変異は、変異H-Rasタンパク質のQ22の位置でアミノ酸置換をコードするコドンにおける変異である。いくつかの実施形態では、HRAS遺伝子変異は、変異H-Rasタンパク質のQ22K置換をコードするコドンにおける変異である。いくつかの実施形態では、HRAS遺伝子変異は、変異H-Rasタンパク質のK117の位置でアミノ酸置換をコードするコドンにおける変異である。いくつかの実施形態では、HRAS遺伝子変異は、変異H-Rasタンパク質のK117NまたはK117L置換をコードするコドンにおける変異である。いくつかの実施形態では、HRAS遺伝子変異は、変異H-Rasタンパク質のA146の位置でアミノ酸置換をコードするコドンにおける変異である。HRAS遺伝子変異は、変異H-Rasタンパク質のA146VまたはA146P置換をコードするコドンにおける変異であり得る。いくつかの実施形態では、HRAS遺伝子変異は、変異H-Rasタンパク質のA146P置換をコードするコドンにおける変異である。いくつかの実施形態では、変異は、H-Rasタンパク質の活性化をもたらす別のコドンの変異であり得る。
【0239】
変異状態を決定するための方法は、当該技術分野において周知である。いくつかの実施形態では、方法は、シーケンシング、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、DNAマイクロアレイ、質量分析(MS)、一塩基多型(SNP)アッセイ、変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC)、または制限酵素断片長多型(RFLP)アッセイを含む。いくつかの実施形態では、HRAS遺伝子の変異状態は、例えば、サンガーシーケンシング、次世代シーケンシング(NGS)を含む標準的なシーケンシング方法を使用して決定される。いくつかの実施形態では、HRAS遺伝子の変異状態は、NGSベースのアッセイにより決定され得る。いくつかの実施形態では、HRAS遺伝子の変異状態は、定性的なPCRベースのアッセイにより決定され得る。いくつかの実施形態では、SNV及び/または変異状態は、MSを使用して決定される。いくつかの実施形態では、HRAS変異状態は、試料から得られたタンパク質を分析することによって決定される。変異したRas Hタンパク質は、様々な免疫組織化学(IHC)アプローチ、免疫ブロッティングアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、または当該技術分野で公知の他の免疫アッセイ法によって検出され得る。
【0240】
当業者が理解するように、本明細書に記載の、またはさもなければ当該技術分野で公知の、Ras変異を分析するための任意の方法を使用して、H-Ras変異の有無を決定することができる。
【0241】
B.医薬組成物
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、FTIまたはFTIを有する医薬組成物で対象を治療する方法である。本明細書で提供される医薬組成物は、治療有効量のFTI、及び薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を含有する。いくつかの実施形態では、FTIはチピファルニブ、ロナファルニブ(SCH-66336としても知られている)、アルグラビン、ペリリルアルコール、CP-609,754、BMS214662、L778123、L744832、L739749、R208176、AZD3409、またはFTI-277である。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。
【0242】
FTIは、好適な医薬調製物、例えば、経口投与用の溶剤、懸濁剤、錠剤、分散錠、丸剤、カプセル剤、粉剤、持続放出製剤またはエリキシル剤、または眼科的投与もしくは非経口投与用の滅菌液剤もしくは懸濁剤、ならびに経皮パッチ調製物及び乾燥粉末吸入剤へと製剤化することができる。通常、FTIは、当該技術分野で周知の技法及び手順を使用して、医薬組成物へと製剤化される(例えば、Ansel Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms,Seventh Edition 1999を参照されたい)。
【0243】
組成物中で、有効濃度のFTI及び薬学的に許容可能な塩は、好適な医薬担体またはビヒクルと混合される。特定の実施形態では、組成物中のFTIの濃度は、投与されると、血液癌及び固形腫瘍を含むがんの症状及び/または進行のうちの1つ以上を治療、予防、または改善する量の送達に有効である。
【0244】
組成物は、単回投薬量の投与のために製剤化され得る。組成物を製剤化するために、FTIの重量画分は、治療された状態が軽減または改善されるような有効濃度で選択されたビヒクル中で溶解、懸濁、分散、またはさもなければ混合される。本明細書に提供されるFTIの投与に好適な医薬担体またはビヒクルには、特定の投与様式に好適であることが当業者に公知である任意のそのような担体が含まれる。
【0245】
さらに、FTIは、組成物中の唯一の医薬活性成分として製剤化することができるか、または他の活性成分と組み合わせることができる。腫瘍標的化リポソームなどの組織標的化リポソームを含むリポソーム懸濁液もまた、薬学的に許容可能な担体として好適であり得る。これらは、当業者に公知の方法に従って調製することができる。例えば、リポソーム製剤は、当該技術分野で公知の通りに調製することができる。簡潔に述べると、多層膜小胞(MLV)などのリポソームは、卵ホスファチジルコリン及び脳ホスファチジルセリン(7:3のモル比)をフラスコの内部で乾燥させることにより形成させることができる。二価陽イオンを欠くリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の本明細書に提供されるFTIの溶液を添加し、脂質膜が分散するまでフラスコを振盪する。得られた小胞を洗浄して、封入されていない化合物を除去し、遠心分離によってペレット化し、その後、PBS中に再懸濁させる。
【0246】
FTIは、治療される患者に対する望ましくない副作用がなく、治療的に有用な効果を発揮するのに十分な量で、薬学的に許容可能な担体中に含まれる。治療有効濃度は、本明細書に記載されるin vitro系及びin vivo系で化合物を試験することにより実験的に決定し、次に、それからヒトに対する投薬量を推定することができる。
【0247】
医薬組成物中のFTIの濃度は、FTIの吸収、組織分布、不活性化、及び排泄速度、FTIの物理化学的特性、投薬スケジュール、及び投与される量、ならびに当業者に公知の他の因子に依存する。例えば、送達される量は、造血系癌及び固形腫瘍を含むがんの症状のうちの1つ以上を改善するのに十分なものである。
【0248】
特定の実施形態では、治療有効投薬量は、約0.1ng/mlから約50~100μg/mlの活性成分の血清濃度を生じるべきである。一実施形態では、医薬組成物は、1日に体重1キログラム当たり約0.001mg~約2000mgの化合物の投薬量を提供する。医薬投薬単位形態は、投薬単位形態当たり約1mg~約1000mg、特定の実施形態では、約10~約500mgの必須活性成分または必須成分の組み合わせを提供するように調製される。
【0249】
FTIは、1回で投与されてもよく、または時間間隔を置いて投与されるいくつかのより少ない用量に分割されてもよい。治療の正確な投薬量及び持続時間は、治療される疾患によって決まり、公知の試験プロトコルを使用して、またはin vivoもしくはin vitro試験データからの推定によって実験的に決定され得ることが理解される。濃度及び投薬量の値は、緩和されるべき状態の重症度によっても異なり得ることに留意されたい。任意の特定の対象について、特定の投薬レジメンが個々の必要性及び組成物の投与を管理または監督する者の専門的な判断に従って経時的に調整されるべきであること、ならびに本明細書に示される濃度範囲が例示的なものであるに過ぎず、特許請求された組成物の範囲または実施を限定することを意図するものではないことがさらに理解されるべきである。
【0250】
したがって、有効濃度または有効量の本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩のうちの1つ以上を、全身、局所、または局部投与に好適な医薬担体またはビヒクルと混合して、医薬組成物を形成する。化合物は、1つ以上の症状を改善するのに、またはそれを治療するか、進行を遅延させるか、もしくは予防するのに有効な量で含まれる。組成物中の活性化合物の濃度は、活性化合物の吸収、組織分布、不活性化、及び排泄速度、投薬スケジュール、投与される量、特定の配合、ならびに当業者に公知の他の因子に依存する。
【0251】
組成物は、経口、非経口、直腸、局所、及び局部を含むが、これらに限定されない好適な経路により投与されるよう意図されている。経口投与の場合、カプセル剤及び錠剤を製剤化することができる。組成物は、液体、半液体、または固体形態であり、各投与経路に好適な形で製剤化される。
【0252】
非経口、皮内、皮下、または局所用途のために使用される液剤または懸濁剤は、以下の成分:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、生理食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジメチルアセトアミド、または他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコール及びメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸及び亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、及びリン酸塩;ならびに張性の調節のための薬剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロースのいずれかを含むことができる。非経口調製物は、アンプル、ペン、使い捨てシリンジ、またはガラス、プラスチック、もしくは他の好適な材料から作製された単回もしくは複数用量バイアルに封入することができる。
【0253】
FTIが不十分な溶解度を示す場合、化合物を溶解するための方法を使用することができる。そのような方法は、当業者に公知であり、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの共溶媒の使用、TWEEN(登録商標)などの界面活性剤の使用、または重炭酸ナトリウム水溶液中での溶解が挙げられるが、これらに限定されない。
【0254】
化合物(複数可)の混合または添加時に、得られる混合物は、溶液、懸濁液、エマルションなどであり得る。得られる混合物の形態は、意図される投与様式及び選択された担体またはビヒクル中の化合物の溶解度を含む、いくつかの因子に依存する。有効濃度は、治療される疾患、障害、または状態の症状を改善するのに十分なものであり、実験的に決定され得る。
【0255】
医薬組成物は、好適な分量の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含有する、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、滅菌非経口液剤または懸濁剤、及び経口液剤または懸濁剤、ならびに油水乳剤などの単位剤形で、ヒト及び動物への投与のために提供される。薬学的、治療的に活性な化合物及びその塩は、単位剤形または複数剤形で製剤化及び投与される。本明細書で使用される単位用量形態は、ヒト及び動物対象に適しており、かつ当該技術分野で公知のように個別包装された、物理的に分離した単位を指す。各単位用量は、必要とされる医薬担体、ビヒクル、または希釈剤と関連した、所望の治療効果をもたらすのに十分な所定量の治療的に活性な化合物を含有する。単位用量形態の例としては、アンプル及びシリンジ及び個別包装された錠剤またはカプセル剤が挙げられる。単位用量形態は、分数でまたはその倍数で投与され得る。複数用量形態は、分離された単位用量形態で投与されるべき単一容器に包装された複数の同一の単位剤形である。複数用量形態の例としては、バイアル、錠剤もしくはカプセル剤の瓶、またはパイント瓶もしくはガロン瓶が挙げられる。したがって、複数用量形態は、包装中で分離されていない複数の単位用量である。
【0256】
持続放出調製物を調製することもできる。持続放出調製物の好適な例としては、本明細書に提供される化合物を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、成形品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態のものである。持続放出マトリックスの例としては、イオントフォレシス用パッチ、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド、L-グルタミン酸とエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドから構成される注射用ミクロスフェア)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などのポリマーが100日間にわたる分子の放出を可能にする一方で、ある特定のヒドロゲルは、より短い期間にわたってタンパク質を放出する。封入された化合物が長期間にわたり体内に留まる場合、それらは、37℃の水分への曝露の結果として変性または凝集し、生物学的活性の損失、及びそれらの構造の起こり得る変化が生じ得る。関与する作用機構に応じて、安定化のための合理的な方策を講じることができる。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド交換による分子間S--S結合形成であることが明らかになった場合、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾すること、酸性溶液から凍結乾燥すること、水分含有量を制御すること、適切な添加剤を使用すること、及び特定のポリマーマトリックス組成物を開発することによって達成することができる。
【0257】
0.005%~100%の範囲の活性成分を含有し、残りは非毒性担体から構成される剤形または組成物を調製することができる。経口投与の場合、薬学的に許容可能な非毒性組成物は、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルカム、セルロース誘導体、クロスカルメロースナトリウム、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウム、またはサッカリンナトリウムなどの通常用いられる賦形剤のいずれかの組み込みによって形成される。そのような組成物としては、液剤、懸濁剤、錠剤、カプセル剤、散剤、及び持続放出製剤、例えば、限定されないが、インプラント及びマイクロカプセル化送達系、ならびに生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、コラーゲン、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリ乳酸などが挙げられる。これらの組成物の調製方法は当業者に公知である。企図される組成物は、約0.001%~100%の、特定の実施形態では約0.1~85%または約75~95%の、活性成分を含有し得る。
【0258】
FTIまたは薬学的に許容可能な塩は、化合物を体内からの迅速な排出から保護する担体、例えば、時限放出製剤またはコーティング剤を用いて調製することができる。
【0259】
組成物は、所望の性質の組み合わせを得るために、他の活性化合物を含み得る。本明細書に提供される化合物、または本明細書に記載のその薬学的に許容可能な塩はまた、上述の疾患または病態、例えば、酸化ストレスに関連する疾患のうちの1つ以上を治療するのに有用となるように、一般技術分野で公知の別の薬理学的物質と一緒に投与され得る。
【0260】
本明細書に提供されるラクトース非含有組成物は、当該技術分野で周知であり、かつ例えば、米国薬局方(USP)SP(XXI)/NF(XVI)に記載されている賦形剤を含有し得る。一般に、ラクトース非含有組成物は、活性成分、結合剤/充填剤、及び滑沢剤を、薬学的に適合可能でありかつ薬学的に許容可能な量で含有する。例示的なラクトース非含有剤形は、活性成分、微結晶セルロース、アルファ化デンプン、及びステアリン酸マグネシウムを含有する。
【0261】
本明細書に提供される化合物を含有する無水医薬組成物及び剤形が、さらに包含される。例えば、水(例えば、5%)の添加は、貯蔵寿命または経時的な製剤の安定性などの特性を決定するために長期保管をシミュレートする手段として薬学的分野で広く許容されている。例えば、Jens T.Carstensen,Drug Stability:Principles & Practice,2d.Ed.,Marcel Dekker,NY,NY,1995,pp.379-80を参照されたい。実際、水及び加熱は、一部の化合物の分解を促進する。したがって、製剤の製造、取扱い、包装、保管、輸送、及び使用中に水分及び/または湿気に曝されることが多いため、製剤に対する水の影響は、非常に重大であり得る。
【0262】
本明細書に提供される無水医薬組成物及び剤形は、無水または低水分含有成分、及び低水分または低湿度条件を使用して調製され得る。ラクトースと第一級または第二級アミンとを含む少なくとも1つの活性成分を含む医薬組成物及び剤形は、製造、包装、及び/または保管時に、水分及び/または湿気との実質的な接触が予想される場合、無水である。
【0263】
無水医薬組成物は、その無水の性質が維持されるように、調製及び保管されるべきである。したがって、無水組成物は、それを好適な定式のキットに含めることができるように、水への曝露を防ぐことが知られている材料を使用して包装される。好適な包装の例としては、密閉されたホイル、プラスチック、単位用量容器(例えば、バイアル)、ブリスターパック、及びストリップパックが挙げられるが、これらに限定されない。
【0264】
経口医薬剤形は、固体、ゲル、または液体のいずれかである。固形剤形は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、及びバルク粉剤である。経口錠剤のタイプとしては、圧縮チュアブルロゼンジ剤及び圧縮チュアブル錠が挙げられ、これらは、腸溶性コーティング、糖コーティング、またはフィルムコーティングされ得る。カプセル剤は、硬質または軟質のゼラチンカプセル剤であり得、一方、顆粒剤及び散剤は、当業者に公知の他の成分と組み合わせた非発泡性または発泡性形態で提供され得る。
【0265】
特定の実施形態では、製剤は、カプセル剤または錠剤などの固形剤形である。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分:結合剤、希釈剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、甘味剤、及び香味剤のいずれか、または同様の性質の化合物を含有し得る。
【0266】
結合剤の例としては、微結晶セルロース、トラガカントゴム、グルコース溶液、アラビアゴム粘液、ゼラチン溶液、スクロース、及びデンプン糊が挙げられる。滑沢剤としては、タルク、デンプン、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウム、石松子、及びステアリン酸が挙げられる。希釈剤としては、例えば、ラクトース、スクロース、デンプン、カオリン、塩、マンニトール、及びリン酸二カルシウムが挙げられる。流動促進剤としては、コロイド状二酸化ケイ素が挙げられるが、これに限定されない。崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、アルギン酸、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、ベントナイト、メチルセルロース、寒天、及びカルボキシメチルセルロースが挙げられる。着色剤としては、例えば、認可認証された水溶性FD及びC色素のいずれか、これらの混合物;ならびにアルミナ水和物に懸濁された水不溶性FD及びC色素が挙げられる。甘味剤としては、スクロース、ラクトース、マンニトール、及び人工甘味剤、例えば、サッカリン、ならびに任意数の噴霧乾燥香料が挙げられる。香味剤としては、植物、例えば、果実から抽出される天然香料、ならびに心地良い感覚を生じさせる化合物、例えば、限定されないが、ペパーミント及びサリチル酸メチルの合成配合物が挙げられる。湿潤剤としては、プロピレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ジエチレングリコールモノラウレート、及びポリオキシエチレンラウリルエーテルが挙げられる。催吐性コーティング剤としては、脂肪酸、脂肪、ワックス、シェラック、アンモニア化シェラック、及び酢酸フタル酸セルロースが挙げられる。フィルムコーティング剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール4000、及び酢酸フタル酸セルロースが挙げられる。
【0267】
投薬単位形態がカプセル剤である場合、それは、上記のタイプの材料に加えて、液体担体、例えば、脂肪油を含有し得る。さらに、投薬単位形態は、投薬単位の物理的形態を変更する様々な他の材料、例えば、糖及び他の腸溶剤のコーティングを含有し得る。化合物はまた、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハース剤、スプリンクル剤、チューインガム剤などの成分として投与され得る。シロップ剤は、活性化合物に加えて、甘味剤としてのスクロース、ならびに特定の防腐剤、色素及び着色料、ならびに香料を含有し得る。
【0268】
錠剤中に含まれる薬学的に許容可能な担体は、結合剤、滑沢剤、希釈剤、崩壊剤、着色剤、香味剤、及び湿潤剤である。腸溶性コーティング錠は、腸溶性コーティングによって、胃酸の作用に抵抗し、中性またはアルカリ性の腸において溶解または崩壊する。糖衣錠は、薬学的に許容可能な物質の様々な層が塗布されている圧縮錠である。フィルムコーティング錠は、ポリマーまたは他の好適なコーティングでコーティングされている圧縮錠である。多重圧縮錠は、先に言及した薬学的に許容可能な物質を利用して複数回の圧縮サイクルによって製造される圧縮錠である。着色剤もまた、上記の剤形中で使用され得る。香味剤及び甘味剤は、圧縮錠、糖衣錠、多重圧縮錠、及びチュアブル錠で使用される。香味剤及び甘味剤は、チュアブル錠及びロゼンジ剤の形成に特に有用である。
【0269】
液体経口剤形としては、水性液剤、乳剤、懸濁剤、非発泡性顆粒剤から再構成される液剤及び/または懸濁剤、ならびに発泡性顆粒剤から再構成される発泡調製物が挙げられる。水性液剤としては、例えば、エリキシル剤及びシロップ剤が挙げられる。乳剤は、水中油型または油中水型のいずれかである。
【0270】
エリキシル剤は、透明で甘い、水アルコール性調製物である。エリキシル剤に使用される薬学的に許容可能な担体としては、溶媒が挙げられる。シロップ剤は、糖、例えば、スクロースの濃縮水溶液であり、防腐剤を含有し得る。乳剤は、一方の液体が、もう一方の液体の全体に小球の形態で分散している2相系である。乳剤に使用される薬学的に許容可能な担体は、非水性液、乳化剤、及び防腐剤である。懸濁剤では、薬学的に許容可能な懸濁化剤及び防腐剤が使用される。非発泡性顆粒剤中で使用され液体経口剤形へと再構成される、薬学的に許容可能な物質としては、希釈剤、甘味料、及び湿潤剤が挙げられる。発泡性顆粒剤中で使用され液体経口剤形へと再構成される、薬学的に許容可能な物質としては、有機酸及び二酸化炭素源が挙げられる。着色剤及び香味剤は、上記の全ての剤形で使用される。
【0271】
溶媒としては、グリセリン、ソルビトール、エチルアルコール、及びシロップが挙げられる。防腐剤の例としては、グリセリン、メチルパラベン及びプロピルパラベン、安息香酸(benzoic add)、安息香酸ナトリウム、ならびにアルコールが挙げられる。乳剤に利用される非水性液の例としては、鉱油及び綿実油が挙げられる。乳化剤の例としては、ゼラチン、アラビアゴム、トラガカントゴム、ベントナイト、及び界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートが挙げられる。懸濁剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ペクチン、トラガカントゴム、ビーガム、及びアラビアゴムが挙げられる。希釈剤としては、ラクトース及びスクロースが挙げられる。甘味剤としては、スクロース、シロップ、グリセリン、及び人口甘味剤、例えば、サッカリンが挙げられる。湿潤剤としては、プロピレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ジエチレングリコールモノラウレート、及びポリオキシエチレンラウリルエーテルが挙げられる。有機酸(organic adds)としては、クエン酸及び酒石酸が挙げられる。二酸化炭素源としては、重炭酸ナトリウム及び炭酸ナトリウムが挙げられる。着色剤としては、認可認証された水溶性FD及びC色素のいずれか、ならびにこれらの混合物が挙げられる。香味剤としては、植物、例えば、果実から抽出される天然香料、及び心地良い味覚を生じさせる化合物の合成配合物が挙げられる。
【0272】
固体剤形の場合、例えば、炭酸プロピレン、植物油、またはトリグリセリド中の液剤及び懸濁剤をゼラチンカプセルに封入する。そのような液剤、ならびにその調製及び封入は、米国特許第4,328,245号、同第4,409,239号、及び同第4,410,545号に開示されている。液体剤形の場合、例えば、ポリエチレングリコール中の液剤を、投与のために測定しやすいように、十分な分量の薬学的に許容可能な液体担体、例えば、水で希釈することができる。
【0273】
あるいは、液体または半固体経口製剤は、活性化合物または塩を、植物油、グリコール、トリグリセリド、プロピレングリコールエステル(例えば、炭酸プロピレン)、及び他のそのような担体に溶解または分散させ、これらの液剤または懸濁剤を硬質または軟質ゼラチンカプセルシェルに封入することにより調製することができる。他の有用な製剤としては、本明細書に提供される化合物と、1,2-ジメトキシメタン、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、ポリエチレングリコール-350-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-550-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-750-ジメチルエーテル(ここで、350、550、及び750は、ポリエチレングリコールのおおよその平均分子量を指す)を含むがこれらに限定されない、ジアルキル化されたモノアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコールと、1種以上の抗酸化剤、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸プロピル、ビタミンE、ヒドロキノン、ヒドロキシクマリン、エタノールアミン、レシチン、ケファリン、アスコルビン酸、リンゴ酸、ソルビトール、リン酸、チオジプロピオン酸及びそのエステル、ならびにジチオカルバメートとを含むものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0274】
他の製剤としては、薬学的に許容可能なアセタールを含む、水性アルコール溶液が挙げられるが、これらに限定されない。これらの製剤で使用されるアルコールは、1つ以上のヒドロキシル基を有する任意の薬学的に許容可能な水混和性溶媒であり、これには、プロピレングリコール及びエタノールが含まれるが、これらに限定されない。アセタールとしては、低級アルキルアルデヒドのジ(低級アルキル)アセタール、例えば、アセトアルデヒドジエチルアセタールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0275】
全ての実施形態において、錠剤及びカプセル剤製剤は、活性成分の溶解を変更するかまたは持続させるために、当業者に公知のようにコーティングされ得る。したがって、例えば、それらは、従来の腸内消化性コーティング剤、例えば、サリチル酸フェニル、ワックス、及び酢酸フタル酸セルロースでコーティングされ得る。
【0276】
一般に、皮下、筋肉内、または静脈内のいずれかへの注射を特徴とする非経口投与も、本明細書に提供される。注射剤は、液体の液剤もしくは懸濁剤、注射前の液体中の溶解もしくは懸濁に好適な固体形態として、または乳剤としてのいずれかの、従来の形態で調製され得る。好適な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、またはエタノールである。さらに、所望により、投与される医薬組成物は、微量の非毒性補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解促進剤、ならびに例えば、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、及びシクロデキストリンなどの、他のそのような薬剤も含み得る。一定のレベルの投薬量が維持されるような、低速放出系または持続放出系の埋め込みもまた、本明細書において企図される。簡潔に述べると、本明細書に提供される化合物は、固体内部マトリックス、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化または非可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカーボネートコポリマー、親水性ポリマー(例えば、アクリル酸及びメタクリル酸のエステルのヒドロゲル)、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコール、及び部分的に加水分解された架橋ポリビニルアセテート中に分散しており、この固体内部マトリックスは、体液中で不溶性である外部ポリマー膜、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルと塩化ビニリデンとエチレンとプロピレンとの塩化ビニルコポリマー、イオノマーポリエチレンテレフタレート、ブチルゴムエピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールターポリマー、ならびにエチレン/ビニルオキシエタノールコポリマーによって囲まれている。化合物は、放出速度制御ステップにおいて外部ポリマー膜から拡散する。そのような非経口組成物に含まれる活性化合物のパーセンテージは、その特定の性質、ならびに化合物の活性及び対象の必要性に大きく左右される。
【0277】
組成物の非経口投与としては、静脈内投与、皮下投与、及び筋肉内投与が挙げられる。非経口投与用の調製物としては、すぐに注射可能な滅菌液剤、使用直前に溶媒とすぐに組み合わせることができる滅菌乾燥可溶性製品、例えば凍結乾燥粉末が挙げられ、それらには、皮下錠剤、すぐに注射可能な滅菌懸濁剤、使用直前にビヒクルとすぐに組み合わせることができる滅菌乾燥不溶性製品、及び滅菌乳剤が含まれる。液剤は、水性または非水性のいずれかであり得る。
【0278】
静脈内投与される場合、好適な担体としては、生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ならびに増粘剤及び可溶化剤、例えば、グルコース、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール、ならびにこれらの混合物を含有する溶液が挙げられる。
【0279】
非経口調製物で使用される薬学的に許容可能な担体としては、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局部麻酔薬、懸濁化剤及び分散剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤またはキレート剤、ならびに他の薬学的に許容可能な物質が挙げられる。
【0280】
水性ビヒクルの例としては、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張デキストロース注射液、滅菌水注射液、デキストロース、及び乳酸加リンゲル注射液が挙げられる。非水性非経口ビヒクルとしては、植物由来の不揮発性油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、及びピーナッツ油が挙げられる。静菌濃度または静真菌濃度の抗菌剤を複数用量容器中に包装された非経口調製物に添加する必要があり、抗菌剤としては、フェノールまたはクレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、pヒドロキシ安息香酸メチルエステル及びpヒドロキシ安息香酸プロピルエステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、ならびに塩化ベンゼトニウムが挙げられる。等張剤としては、塩化ナトリウム及びデキストロースが挙げられる。緩衝剤としては、リン酸塩及びクエン酸塩が挙げられる。抗酸化剤としては、重硫酸ナトリウムが挙げられる。局部麻酔薬としては、塩酸プロカインが挙げられる。懸濁化剤及び分散剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンが挙げられる。乳化剤としては、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)が挙げられる。金属イオンの、金属イオン封鎖剤またはキレート剤としては、EDTAが挙げられる。医薬担体としては、水混和性ビヒクル用のエチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びプロピレングリコール、ならびにpH調整用の水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、または乳酸も挙げられる。
【0281】
FTIの濃度は、注射が所望の薬理学的効果を生じさせるのに有効な量を提供するように調整される。当該技術分野で公知であるように、正確な用量は、患者または動物の年齢、重量、及び状態に依存する。単位用量の非経口調製物は、アンプル、バイアル、または針付きシリンジに充填される。非経口投与用の全ての調製物は、当該技術分野で公知であり、かつ実施されているように、滅菌でなければならない。
【0282】
実例として、FTIを含有する滅菌水性液剤の静脈内または動脈内注入は、効果的な投与様式である。別の実施形態は、所望の薬理作用を生じさせるために必要に応じて注射される活性材料を含有する、滅菌された水性または油性の液剤または懸濁剤である。
【0283】
注射剤は、局部及び全身投与用に設計される。通常、治療有効投薬量は、治療される組織(複数可)に対して、少なくとも約0.1w/w%~最大約90w/w%以上、例えば、1w/w%超の濃度の活性化合物を含有するように製剤化される。活性成分は、1回で投与されてもよく、または時間間隔を置いて投与されるいくつかのより少ない用量に分割されてもよい。治療の正確な投薬量及び持続時間は、治療される組織によって決まり、公知の試験プロトコルを使用して、またはin vivoもしくはin vitro試験データからの推定によって実験的に決定され得ることが理解される。濃度及び投薬量の値は、治療される個体の年齢によっても異なり得ることに留意されたい。任意の特定の対象について、特定の投薬レジメンが個々の必要性及び製剤の投与を管理または監督する者の専門的な判断に従って経時的に調整されるべきであること、ならびに本明細書に示される濃度範囲が例示的なものであるに過ぎず、特許請求された製剤の範囲または実施を限定することを意図するものではないことがさらに理解されるべきである。
【0284】
FTIは、微粉化形態もしくは他の好適な形態で懸濁され得るか、またはより溶けやすい活性産物を生成するようにもしくはプロドラッグを生成するように誘導体化され得る。得られる混合物の形態は、意図される投与様式及び選択された担体またはビヒクル中の化合物の溶解度を含む、いくつかの因子に依存する。有効濃度は、状態の症状を改善するのに十分なものであり、実験的に決定され得る。
【0285】
溶液、エマルション、及び他の混合物としての投与用に再構成され得る凍結乾燥粉末も、本明細書において対象となる。それらはまた、固体またはゲルとして再構成及び製剤化され得る。
【0286】
滅菌凍結乾燥粉末は、本明細書に提供されるFTIまたはその薬学的に許容可能な塩を好適な溶媒に溶解させることにより調製される。溶媒は、粉末または粉末から調製された再構成溶液の安定性または他の薬理学的要素を向上させる賦形剤を含有し得る。使用され得る賦形剤としては、デキストロース、ソルビトール(sorbital)、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロース、または他の好適な薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。溶媒はまた、緩衝剤、例えば、クエン酸塩、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウム、または当業者に公知の他のそのような緩衝剤、一実施形態では、pHがほぼ中性の緩衝剤を含有し得る。その後、当業者に公知の標準的な条件下で溶液を滅菌濾過し、続いて凍結乾燥することにより、所望の製剤が提供される。一般に、得られた溶液は、凍結乾燥用のバイアルに分配される。各バイアルは、単回投薬量(1~1000mgもしくは100~500mgを含むが、これらに限定されない)または複数回投薬量の化合物を含有する。凍結乾燥粉末は、適切な条件下、例えば、約4℃から室温で保管することができる。
【0287】
この凍結乾燥粉末を注射用水で再構成することにより、非経口投与で使用するための製剤が提供される。再構成のために、滅菌水または他の好適な担体1mL当たり約1~50mg、約5~35mg、または約9~30mgの凍結乾燥粉末が添加される。正確な量は、選択される化合物によって決まる。そのような量は、実験的に決定することができる。
【0288】
局所混合物は、局部及び全身投与について記載されている通りに調製される。得られた混合物は、溶液、懸濁液、エマルションなどであり得、クリーム剤、ゲル剤、軟膏剤、乳剤、液剤、エリキシル剤、ローション剤、懸濁剤、チンキ剤、ペースト剤、フォーム剤、エアロゾル剤、灌注剤、スプレー剤、坐剤、包帯、経皮パッチ剤、または局所投与に好適な任意の他の製剤として製剤化される。
【0289】
FTIまたはFTIを有する医薬組成物は、例えば、吸入による、局所適用のためのエアロゾル剤として製剤化され得る(例えば、炎症性疾患、特に、喘息の治療に有用なステロイドの送達のためのエアロゾル剤を記載している米国特許第4,044,126号、同第4,414,209号、及び同第4,364,923号を参照されたい)。気道への投与のためのこれらの製剤は、ネブライザー用のエアロゾル剤もしくは液剤の形態のもの、または単独のもしくはラクトースなどの不活性担体と組み合わせた、吹送用の微細粉末としてのものであり得る。そのような場合、製剤の粒子は、50ミクロン未満または10ミクロン未満の直径を有する。
【0290】
FTIまたはFTIを有する医薬組成物は、局部または局所適用のために、例えば、ゲル剤、クリーム剤、及びローション剤の形態での、皮膚及び粘膜への、例えば、眼内への局所適用のために、ならびに眼への適用のためにまたは大槽内もしくは髄腔内適用のために製剤化され得る。局所投与は、経皮送達のために、さらには眼もしくは粘膜への投与のために、または吸入療法のために企図される。活性化合物の点鼻液は、単独でまたは他の薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わせて投与することもできる。これらの液剤、特に眼科的使用を意図した液剤は、適切な塩とともに、pHが約5~7である0.01%~10%の等張液として製剤化され得る。
【0291】
経皮パッチ、及び直腸投与などの他の投与経路も本明細書において企図される。例えば、直腸投与のための医薬剤形は、全身作用のための直腸坐剤、カプセル剤、及び錠剤である。本明細書で使用される直腸坐剤は、体温で融解または軟化して1つ以上の薬理学的または治療的に活性な成分を放出する、直腸に挿入するための固形物を意味する。直腸坐剤で利用される薬学的に許容可能な物質は、基剤またはビヒクル及び融点を上昇させるための薬剤である。基剤の例としては、カカオバター(カカオ脂)、グリセリン、ゼラチン、カーボワックス(ポリオキシエチレングリコール)、ならびに脂肪酸モノグリセリド、ジグリセリド、及びトリグリセリドの適切な混合物が挙げられる。様々な基剤の組み合わせが使用され得る。坐剤の融点を上昇させる薬剤としては、鯨蝋及びワックスが挙げられる。直腸坐剤は、圧縮法または成形のいずれかによって調製され得る。直腸坐剤の例示的な重量は、約2~3グラムである。直腸投与用の錠剤及びカプセル剤は、経口投与用の製剤の場合と同じ薬学的に許容可能な物質を使用して、経口投与用の製剤の場合と同じ方法によって製造される。
【0292】
本明細書で提供されるFTIまたはFTIを有する医薬組成物は、制御放出手段によるか、または当業者に周知である送達デバイスによって投与され得る。例としては、米国特許第3,845,770号;同第3,916,899号;同第3,536,809号;同第3,598,123号;及び同第4,008,719号、同第5,674,533号、同第5,059,595号、同第5,591,767号、同第5,120,548号、同第5,073,543号、同第5,639,476号、同第5,354,556号、同第5,639,480号、同第5,733,566号、同第5,739,108号、同第5,891,474号、同第5,922,356号、同第5,972,891号、同第5,980,945号、同第5,993,855号、同第6,045,830号、同第6,087,324号、同第6,113,943号、同第6,197,350号、同第6,248,363号、同第6,264,970号、同第6,267,981号、同第6,376,461号、同第6,419,961号、同第6,589,548号、同第6,613,358号、同第6,699,500号、ならびに同第6,740,634号(これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。そのような剤形を使用して、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過膜、浸透圧系、多層コーティング、微粒子、リポソーム、ミクロスフェア、またはこれらの組み合わせを所望の放出プロファイルを提供するために様々な割合で使用して、FTIの低速または制御放出を提供することができる。本明細書に記載のものを含む当業者に公知の制御放出製剤は、本明細書に提供される活性成分とともに使用するために容易に選択することができる。
【0293】
全ての制御放出医薬製品は、その非制御の対応物により達成されたものよりも薬物療法を向上させるという共通の目的を有する。一実施形態では、医学的治療における最適に設計された制御放出調製物の使用は、最小限の時間で状態を治癒させるまたは制御するために最小限の薬剤物質が用いられることを特徴とする。特定の実施形態では、制御放出製剤の利点には、薬物活性の延長、投薬頻度の低減、及び患者コンプライアンスの向上が含まれる。さらに、制御放出製剤を使用して、作用の開始時間または薬物の血中濃度などの他の特性に影響を及ぼすことができ、それにより、副作用(例えば、有害作用)の発生に影響を及ぼすことができる。
【0294】
多くの制御放出製剤は、所望の治療効果を速やかにもたらす量の薬物(活性成分)を最初に放出し、長期間にわたってこのレベルの治療効果を維持する他の量の薬物を徐々にかつ継続的に放出するように設計されている。この一定レベルの薬物を体内で維持するために、薬物は、代謝され身体から排泄される薬物の量を補う速度で剤形から放出されなければならない。活性成分の制御放出は、pH、温度、酵素、水、または他の生理的条件もしくは化合物を含むがこれらに限定されない様々な条件により刺激され得る。
【0295】
特定の実施形態では、FTIは、静脈内注入、植え込み型浸透ポンプ、経皮パッチ、リポソーム、または他の投与様式を使用して投与され得る。一実施形態では、ポンプが使用され得る(Sefton,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987)、Buchwald et al.,Surgery 88:507(1980)、Saudek et al.,N.Engl.J.Med.321:574(1989)を参照されたい)。別の実施形態では、ポリマー材料が使用され得る。さらに別の実施形態では、制御放出系を、治療標的に近接して配置することができ、すなわち、そのため、全身用量のごく一部しか必要としない(例えば、Goodson,Medical Applications of Controlled Release,vol.2,pp.115-138(1984)を参照されたい)。
【0296】
いくつかの実施形態では、制御放出デバイスは、不適切な免疫活性化または腫瘍の部位に近接して対象中に導入される。他の制御放出系は、Langerによる総説(Science 249:1527-1533(1990))で論じられている。Fは、固体内部マトリックス、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化または非可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカーボネートコポリマー、親水性ポリマー(例えば、アクリル酸及びメタクリル酸のエステルのヒドロゲル)、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコール、及び部分的に加水分解された架橋ポリビニルアセテート中に分散させることができ、この固体内部マトリックスは、体液中で不溶性である外部ポリマー膜、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルと塩化ビニリデンとエチレンとプロピレンとの塩化ビニルコポリマー、イオノマーポリエチレンテレフタレート、ブチルゴムエピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールターポリマー、ならびにエチレン/ビニルオキシエタノールコポリマーによって囲まれている。次に、活性成分は、放出速度制御ステップにおいて外部ポリマー膜から拡散する。そのような非経口組成物に含まれる活性成分のパーセンテージは、その特定の性質、及び対象の必要性に大きく左右される。
【0297】
FTIまたはFTIの医薬組成物は、包装材料と、血液癌及び固形腫瘍を含むがんの1つ以上の症状または進行の治療、予防、または改善のために使用される本明細書に提供される化合物またはその薬学的に許容可能な塩と、化合物またはその薬学的に許容可能な塩が血液癌及び固形腫瘍を含むがんの1つ以上の症状または進行の治療、予防、または改善のために使用されることを示すラベルとを含む製品として包装され得る。
【0298】
本明細書で提供される製品は、包装材料を含む。医薬製品の包装に使用される包装材料は当業者に周知である。例えば、米国特許第5,323,907号、同第5,052,558号、及び同第5,033,252号を参照されたい。医薬包装材料の例としては、ブリスターパック、ボトル、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、シリンジ、ペン、ボトル、ならびに選択される製剤ならびに意図される投与及び治療様式に好適な任意の包装材料が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に提供される化合物及び組成物の幅広い製剤が企図される。
【0299】
いくつかの実施形態では、FTIを有する治療有効量の医薬組成物は、経口投与または非経口投与される。
【0300】
いくつかの実施形態では、FTIは、0.05~最大1800mg/kgの1日用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、0.05~最大1500mg/kgの1日用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、0.05~最大500mg/kgの1日用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日当たり0.05mg/kg、1日当たり0.1mg/kg、1日当たり0.2mg/kg、1日当たり0.5mg/kg、1日当たり1mg/kg、1日当たり2mg/kg、1日当たり5mg/kg、1日当たり10mg/kg、1日当たり20mg/kg、1日当たり50mg/kg、1日当たり100mg/kg、1日当たり200mg/kg、1日当たり300mg/kg、1日当たり400mg/kg、1日当たり500mg/kg、1日当たり600mg/kg、1日当たり700mg/kg、1日当たり800mg/kg、1日当たり900mg/kg、1日当たり1000mg/kg、1日当たり1100mg/kg、1日当たり1200mg/kg、1日当たり1300mg/kg、1日当たり1400mg/kg、または1日当たり1500mg/kgの量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日当たり1mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日当たり2mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日当たり5mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日当たり10mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日当たり20mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日当たり50mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日当たり100mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日当たり200mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日当たり500mg/kgで投与される。FTIは、単回用量として、または2回以上の用量に細分してのいずれかで投与され得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。
【0301】
いくつかの実施形態では、FTIは、1日当たり50~2400mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日当たり100~1800mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日当たり100~1200mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日当たり50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900mg、2000mg、2100mg、2200mg、1200mg、または2400mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日当たり200mgの用量で投与される。FTIは、1日当たり300mgの用量で投与され得る。FTIは、1日当たり400mgの用量で投与され得る。FTIは、1日当たり500mgの用量で投与され得る。FTIは、1日当たり600mgの用量で投与され得る。FTIは、1日当たり700mgの用量で投与され得る。FTIは、1日当たり800mgの用量で投与され得る。FTIは、1日当たり900mgの用量で投与され得る。FTIは、1日当たり1000mgの用量で投与され得る。FTIは、1日当たり1100mgの用量で投与され得る。FTIは、1日当たり1200mgの用量で投与され得る。FTIは、1日当たり1300mgの用量で投与され得る。FTIは、1日当たり1400mgの用量で投与され得る。FTIは、1日当たり1500mgの用量で投与され得る。FTIは、1日当たり1600mgの用量で投与され得る。FTIは、1日当たり1700mgの用量で投与され得る。FTIは、1日当たり1800mgの用量で投与され得る。FTIは、1日当たり1900mgの用量で投与され得る。FTIは、1日当たり2000mgの用量で投与され得る。FTIは、1日当たり2100mgの用量で投与され得る。FTIは、1日当たり2200mgの用量で投与され得る。FTIは、1日当たり2300mgの用量で投与され得る。FTIは、1日当たり2400mgの用量で投与され得る。FTIは、単回用量として、または2回以上の用量に細分してのいずれかで投与され得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。
【0302】
いくつかの実施形態では、FTIは、100、200、225、250、275、
300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、1000、1025、1050、1075、1100、1125、1150、1175、または1200mgの用量で1日2回(b.i.d)投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、100~1400mg b.i.d.の用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、100~1200mg b.i.d.の用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、300~1200mg b.i.d.の用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、300~900mg b.i.d.の用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、300mg b.i.d.の用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、400mg b.i.d.の用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、500mg b.i.d.の用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、600mg b.i.d.の用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、700mg b.i.d.の用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、800mg b.i.d.の用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、900mg b.i.d.の用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1000mg b.i.d.の用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1100mg b.i.d.の用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1200mg b.i.d.の用量で投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物及び方法で使用されるFTIは、チピファルニブである。
【0303】
当業者が理解するように、投薬量は、用いられる剤形、患者の状態及び感受性、投与経路、及び他の因子に応じて変化する。正確な投薬量は、治療を必要とする対象に関連する因子を考慮して、医師により決定されることになる。投薬量及び投与は、十分なレベルの活性成分を提供するため、または所望の効果を維持するために調整される。考慮され得る因子としては、疾患状態の重症度、対象の全般的な健康、対象の年齢、体重、及び性別、食事、投与の時間及び頻度、薬物の組み合わせ(複数可)、応答感受性、ならびに療法に対する忍容性/応答が挙げられる。治療サイクルの間、1日用量は変化する場合がある。いくつかの実施形態では、開始用量を、治療サイクル内で漸減させることができる。いくつかの実施形態では、開始用量を、治療サイクル内で漸増させることができる。最終用量は、用量制限毒性の発生及び他の因子に依存し得る。いくつかの実施形態では、FTIを1日当たり300mgの開始用量で投与し、1日当たり400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、または1200mgの最大用量に上昇させる。いくつかの実施形態では、FTIを1日当たり400mgの開始用量で投与し、1日当たり500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、または1200mgの最大用量に上昇させる。いくつかの実施形態では、FTIを1日当たり500mgの開始用量で投与し、1日当たり600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、または1200mgの最大用量に上昇させる。いくつかの実施形態では、FTIを1日当たり600mgの開始用量で投与し、1日当たり700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、または1200mgの最大用量に上昇させる。いくつかの実施形態では、FTIを1日当たり700mgの開始用量で投与し、1日当たり800mg、900mg、1000mg、1100mg、または1200mgの最大用量に上昇させる。いくつかの実施形態では、FTIを1日当たり800mgの開始用量で投与し、1日当たり900mg、1000mg、1100mg、または1200mgの最大用量に上昇させる。いくつかの実施形態では、FTIを1日当たり900mgの開始用量で投与し、1日当たり1000mg、1100mg、または1200mgの最大用量に上昇させる。用量上昇は、一度に、または段階的に行うことができる。例えば、1日当たり600mgの開始用量を、4日間かけて1日当たり100mg増加させることによるか、または2日間かけて1日当たり200mg増加させることによるか、または一度に400mg増加させることにより、1日当たり1000mgの最終用量に上昇させることができる。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。
【0304】
いくつかの実施形態では、FTIは、比較的高い開始用量で投与され、患者の応答及び他の要因に応じて、より低い用量に漸減される。いくつかの実施形態では、FTIを1日当たり1200mgの開始用量で投与し、1日当たり1100mg、1000mg、900mg、800mg、700mg、600mg、500mg、400mg、または300mgの最終用量に低減させる。いくつかの実施形態では、FTIを1日当たり1100mgの開始用量で投与し、1日当たり1000mg、900mg、800mg、700mg、600mg、500mg、400mg、または300mgの最終用量に低減させる。いくつかの実施形態では、FTIを1日当たり1000mgの開始用量で投与し、1日当たり900mg、800mg、700mg、600mg、500mg、400mg、または300mgの最終用量に低減させる。いくつかの実施形態では、FTIを1日当たり900mgの開始用量で投与し、1日当たり800mg、700mg、600mg、500mg、400mg、または300mgの最終用量に低減させる。いくつかの実施形態では、FTIを1日当たり800mgの開始用量で投与し、1日当たり700mg、600mg、500mg、400mg、または300mgの最終用量に低減させる。いくつかの実施形態では、FTIを1日当たり600mgの開始用量で投与し、1日当たり500mg、400mg、または300mgの最終用量に低減させる。用量低減は、一度に、または段階的に行うことができる。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。例えば、1日当たり900mgの開始用量を、3日間かけて1日当たり100mg低減させることによるか、または一度に300mg低減させることにより、600mgの最終用量まで低減させることができる。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。
【0305】
治療サイクルの長さは異なり得る。いくつかの実施形態では、治療サイクルは、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、3ヶ月、4ヶ月、
5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、または12ヶ月であり得る。いくつかの実施形態では、治療サイクルは、4週間である。治療サイクルは、間欠的なスケジュールを有し得る。いくつかの実施形態では、2週間の治療サイクルは、5日間の投与と、それに続く9日間の休止を有し得る。いくつかの実施形態では、2週間の治療サイクルは、6日間の投与と、それに続く8日間の休止を有し得る。いくつかの実施形態では、2週間の治療サイクルは、7日間の投与と、それに続く7日間の休止を有し得る。いくつかの実施形態では、2週間の治療サイクルは、8日間の投与と、それに続く6日間の休止を有し得る。いくつかの実施形態では、2週間の治療サイクルは、9日間の投与と、それに続く5日間の休止を有し得る。いくつかの実施形態では、4週間の治療サイクルは、7日間の投与と、それに続く21日間の休止を有し得る。いくつかの実施形態では、4週間の治療サイクルは、21日間の投与と、それに続く7日間の休止を有し得る。いくつかの実施形態において、4週間の治療サイクルは、1~7日目及び15~21日目の投与と、8~14日目及び22~28日目の休止を有し得る。
【0306】
いくつかの実施形態では、FTIは、少なくとも1回の治療サイクルに投与され得る。いくつかの実施形態では、FTIは、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、または少なくとも12回の治療サイクルに投与され得る。いくつかの実施形態では、FTIは、少なくとも2回の治療サイクルに投与され得る。いくつかの実施形態では、FTIは、少なくとも3回の治療サイクルに投与され得る。いくつかの実施形態では、FTIは、少なくとも6回の治療サイクルに投与され得る。いくつかの実施形態では、FTIは、少なくとも9回の治療サイクルに投与され得る。いくつかの実施形態では、FTIは、少なくとも12回の治療サイクルに投与され得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。
【0307】
いくつかの実施形態では、FTIは、最大2週間投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、最大3週間、最大1ヶ月間、最大2ヶ月間、最大3ヶ月間、最大4ヶ月間、最大5ヶ月間、最大6ヶ月間、最大7ヶ月間、最大8ヶ月間、最大9ヶ月間、最大10ヶ月間、最大11ヶ月間、または最大12ヶ月間投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、最大1ヶ月間投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、最大3ヶ月間投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、最大6ヶ月間投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、最大9ヶ月間投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、最大12ヶ月間投与される。
【0308】
いくつかの実施形態では、FTIは、反復4週サイクルの4週間のうちの3週間、毎日投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、反復4週サイクルの隔週で(1週間服用、1週間休止)、毎日投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、反復4週サイクルの4週間のうち3週間、300mg b.i.d.の用量で経口投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、反復4週サイクルの4週間のうち3週間、600mg b.i.d.の用量で経口投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、反復4週サイクルの隔週で(1週間服用、1週間休止)、900mg b.i.d.の用量で経口投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、隔週で(反復28日サイクルの1~7日目及び15~21日目に)、1200mg b.i.d.の用量で経口投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、反復28日サイクルの1~5日目及び15~19日目に1200mg b.i.d.の用量で経口投与される。
【0309】
いくつかの実施形態では、300mgb.i.d.のチピファルニブの隔週レジメンが採用され使用され得る。このレジメンの下で、患者は、300mgの開始用量を、po、b.i.d.で、28日間の治療サイクルの1~7日目及び15~21日目に投与される。管理不可能な毒性が存在しないとき、対象は、チピファルニブ治療を最大12ヶ月受け続けることができる。対象が治療を十分に忍容する場合、用量を1200mg b.i.d.に増加させることもできる。治療に関連する、治療により発現した毒性を制御するための段階的な300mg用量の低減を含めることもできる。
【0310】
いくつかの実施形態では、600mg b.i.d.のチピファルニブの隔週レジメンが採用され使用され得る。このレジメンの下で、患者は、600mgの開始用量を、po、b.i.d.で、28日間の治療サイクルの1~7日目及び15~21日目に投与される。管理不可能な毒性が存在しないとき、対象は、チピファルニブ治療を最大12ヶ月受け続けることができる。対象が治療を十分に忍容する場合、用量を1200mg b.i.d.に増加させることもできる。治療に関連する、治療により発現した毒性を制御するための段階的な300mg用量の低減を含めることもできる。
【0311】
いくつかの実施形態では、900mg b.i.d.のチピファルニブの隔週レジメンが採用され使用され得る。このレジメンの下で、患者は、900mgの開始用量を、po、b.i.d.で、28日間の治療サイクルの1~7日目及び15~21日目に投与される。管理不可能な毒性が存在しないとき、対象は、チピファルニブ治療を最大12ヶ月受け続けることができる。対象が治療を十分に忍容する場合、用量を1200mg b.i.d.に増加させることもできる。治療に関連する、治療により発現した毒性を制御するための段階的な300mg用量の低減を含めることもできる。
【0312】
いくつかの他の実施形態では、チピファルニブを、28日間の治療サイクルで、300mg b.i.d.の用量で21日間毎日経口投与し、その後、1週間休止する(21日間スケジュール;Cheng DT,et al.,J Mol Diagn.(2015)17(3):251-64)。いくつかの実施形態では、25~1300mgの範囲の5日間のb.i.d.投与と、それに続く9日間の休止を採用する(5日間スケジュール;Zujewski J.,J Clin Oncol.,(2000)Feb;18(4):927-41)。いくつかの実施形態では、7日間のb.i.d.投与と、それに続く7日間の休止を採用する(7日間スケジュール;Lara PN Jr.,Anticancer Drugs.,(2005)16(3):317-21、Kirschbaum MH,Leukemia.,(2011)Oct;25(10):1543-7)。7日間スケジュールでは、患者に300mg b.i.d.の開始用量を投与し、300mgの用量を1800mg b.i.d.の最大計画用量まで上昇させることができる。7日間スケジュール試験では、患者に、28日サイクルの1~7日目及び15~21日目に、最大1600mg b.i.d.の用量で、チピファルニブをb.i.d.で投与することもできる。
【0313】
以前の試験において、FTIは、1日2回の投与スケジュールとして投与されたとき、哺乳動物腫瘍の増殖を阻害することが示された。単回用量で1~5日間毎日FTIを投与することにより、少なくとも21日まで持続する腫瘍増殖の顕著な抑制をもたらすことが判明した。いくつかの実施形態では、FTIは、50~400mgの投薬量範囲で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、200mg/kgで投与される。特定のFTIについての投与レジメンもまた、当該技術分野において周知である(例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6838467号)。例えば、化合物のアルグラビン(WO98/28303)、ペリリルアルコール(WO99/45712)、SCH-66336(米国特許第5,874,442号)、L778123(WO00/01691)、2(S)-[2(S)-[2(R)-アミノ-3-メルカプト]プロピルアミノ-3(S)-メチル]-ペンチルオキシ-3-フェニルプロピオニル-メチオニンスルホン(WO94/10138)、BMS214662(WO97/30992)、AZD3409;Pfizerの化合物A及びB(WO00/12499及びWO00/12498)の好適な投薬量は、参照により本明細書に組み込まれる前述の特許明細書に示されているか、または当業者に公知であるか、もしくは当業者によって容易に決定され得る。
【0314】
ペリリルアルコールに関して、薬剤は、150lbのヒト患者につき、1日当たり1~4g投与され得る。一実施形態では、150lbのヒト患者につき、1日当たり1~2gである。SCH-66336は、通常、特定の用途に従って、約0.1mg~100mg、より好ましくは、約1mg~300mgの単位用量で投与され得る。化合物L778123及び1-(3-クロロフェニル)-4-[1-(4-シアノベンジル)-5-イミダゾリルメチル]-2-ピペラジノンは、1日当たり約0.1mg/kg体重~約20mg/kg体重、好ましくは、1日当たり0.5mg/kg体重~約10mg/kg体重の量でヒト患者に投与され得る。
【0315】
Pfizerの化合物A及びBは、単回または分割(すなわち、複数)用量で、1日当たり約1.0mg~最大約500mg、好ましくは、1日当たり約1~約100mgの範囲の投薬量で投与され得る。治療用化合物は、通常、単回または分割用量で、1日にkg体重当たり約0.01~約10mgの範囲の1日投薬量で投与される。BMS214662は、単回用量でまたは2~4回の分割用量で、約0.05~200mg/kg/日、好ましくは、100mg/kg/日未満の投薬量範囲で投与され得る。
【0316】
C.組み合わせ療法
本明細書に記載のFTI治療はまた、H-Ras過剰発現、参照比よりも高いK-Ras発現に対するH-Ras発現の比、参照比よりも高いN-Ras発現に対するH-Ras発現の比、または参照比よりも高いK-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比を有する対象においてSCCを選択的に治療する際に、追加の第2の療法と組み合わせて使用され得る。本明細書に記載のFTI治療はまた、H-Ras遺伝子変異を保有する対象のSCCを選択的に治療する際に、追加の第2の療法と組み合わせて使用され得る。本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、SCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性である。いくつかの実施形態では、SCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、SCCは、転移性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、再発性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、難治性である。SCCは、本明細書に記載の、またはさもなければ当該技術分野で公知の特定のタイプのSCCであり得る。SCCは、HNSCCであり得る。SCCは、食道SCCであり得る。SCCは、甲状腺SCCであり得る。SCCは、LSCCであり得る。SCCは、膀胱SCCであり得る。SCCは、尿路上皮癌(UC)であり得る。
【0317】
FTIは、本明細書に記載の、またはさもなければ当該技術分野で公知の、任意のFTIであり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。
【0318】
いくつかの実施形態では、FTI治療は、放射線療法(radiotherapy)または放射線療法(radiation therapy)と組み合わせて投与される。放射線療法としては、γ線、X線、及び/または腫瘍細胞への放射性同位体の指向性送達の使用が挙げられる。マイクロ波、陽子線照射(米国特許第5,760,395号及び同第4,870,287号;これらは全てその全体が参照により本明細書に組み込まれる)、ならびにUV照射などの他の形態のDNA損傷因子も企図される。これらの因子は全て、DNAに対する、DNAの前駆体に対する、DNAの複製及び修復に対する、ならびに染色体のアセンブリ及び維持に対する、広範囲の損傷に影響を及ぼす可能性が最も高い。
【0319】
いくつかの実施形態では、照射に対して宿主の腫瘍を効果的に増感させる、FTIを有する治療有効量の医薬組成物が投与される。(全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6545020号)。照射は、電離放射線、特に、ガンマ線であり得る。いくつかの実施形態では、ガンマ線は、線形加速器または放射性核種によって放出される。放射性核種による腫瘍への照射は、外部からまたは内部からであり得る。
【0320】
照射はまた、X線照射であり得る。X線の放射線量範囲は、長期間(3~4週間)に50~200レントゲンの1日線量から、2000~6000レントゲンの単回線量の範囲である。放射性同位体の放射線量範囲は極めて広範であり、同位体の半減期、放出される放射線の強さ及びタイプ、ならびに腫瘍性細胞による取り込みに依存する。
【0321】
いくつかの実施形態では、医薬組成物の投与は、腫瘍への照射の最大1ヶ月、特に、最大10日または1週間前に開始する。さらに、腫瘍への照射は分割され、医薬組成物の投与は最初の照射セッションと最後の照射セッション間の間隔で維持される。
【0322】
FTIの量、照射の線量、及び照射投与の中断は、腫瘍のタイプ、その位置、化学療法または放射線療法に対する患者の応答などの一連のパラメータに依存し、最終的には、それぞれの個々の症例において、医師及び放射線科医が決定するものである。いくつかの実施形態では、FTIは、放射線療法の施行前に投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、放射線療法と同時に投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、放射線療法の施行後に投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。
【0323】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、治療有効量の第2の活性剤またはサポーティブケア療法を施すことをさらに含む。第2の活性剤は、化学療法剤であり得る。化学療法剤または化学療法薬は、細胞内でのその活性の様式、例えば、それらが細胞周期に影響を及ぼすか否か、及びそれらがどの段階で細胞周期に影響を及ぼすかによって分類され得る。あるいは、薬剤は、DNAを直接架橋し、DNAにインターカレートし、または核酸合成に影響を及ぼすことにより染色体及び有糸分裂異常を誘発するその能力に基づいて特徴付けられ得る。FTIは、第2の活性剤の投与前に投与され得る。FTIは、第2の活性剤と同時に投与され得る。FTIは、第2の活性剤の投与後に投与され得る。
【0324】
化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えば、チオテパ及びシクロホスファミド;スルホン酸アルキル、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパ(uredopa);エチレンイミン、ならびにアルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、及びトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine)を含むメチラメラミン(methylamelamine);アセトゲニン(とりわけ、ブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体のKW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノブエンビキン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、及びウラシルマスタード;ニトロソウレア(nitrosurea)、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン;抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、とりわけ、カリケアマイシンガンマlI及びカリケアマイシンオメガI1);ダイネミシンAを含むダイネミシン;ビスホスホネート、例えば、クロドロネート;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチン発色団及び関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン(nogalarnycin)、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、及びゾルビシン;代謝拮抗薬、例えば、メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えば、デノプテリン、プテロプテリン、及びトリメトレキセート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、及びチオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、及びフロクスウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、及びテストラクトン;抗副腎薬、例えば、ミトタン及びトリロスタン;葉酸補給剤、例えば、フォリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート(edatraxate);デホファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジコン;エルホルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);メイタンシノイド、例えば、メイタンシン及びアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖複合体;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(とりわけ、T-2トキシン、ベラクリンA(verracurin A)、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;タキソイド、例えば、パクリタキセル及びドセタキセルゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;白金配位錯体、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(difluorometlhylornithine)(DMFO);レチノイド、例えば、レチノイン酸;カペシタビン;カルボプラチン、プロカルバジン、プリコマイシン(plicomycin)、ゲムシタビン、ナベルビン、トランス白金、ならびに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸、または誘導体が挙げられる。
【0325】
第2の活性剤は、大型分子(例えば、タンパク質)または小分子(例えば、合成無機分子、有機金属分子、もしくは有機分子)であり得る。いくつかの実施形態では、第2の活性剤は、DNA低メチル化剤、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、CDK阻害剤、PI3K-α阻害剤、AKT阻害剤、MTOR1/2阻害剤、またはがん抗原に特異的に結合する治療用抗体である。第2の活性剤はまた、造血増殖因子、サイトカイン、抗生物質、cox-2阻害剤、免疫調節剤、抗胸腺細胞グロブリン、免疫抑制剤、コルチコステロイド、またはこれらの薬理学的に活性な変異体もしくは誘導体であり得る。
【0326】
いくつかの実施形態では、第2の療法は、化学療法、例えば、シスプラチン、5-FU、カルボプラチン、パクリタキセル、または白金系のダブレット(例えば、シスプラチン/5-FUまたはカルボプラチン/パクリタキセル)である。いくつかの実施形態では、第2の療法は、タキサン及び/またはメトトレキサートである。いくつかの実施形態では、第2の療法は、PI3K経路を標的とするもの:BKM120(ブパルリシブ)、BYL719(PI3K-α阻害剤)、テムシロリムス、リゴサチブ;MET経路を標的とするもの:チバンチニブ、フィクラツズマブ;HER3経路を標的とするもの:パトリツマブ;FGFR経路を標的とするもの:BGJ398;CDK4/6-細胞周期経路を標的とするもの:パルボシクリブ、LEE011、アベマシクリブ、及びリボシクリブ;RTK阻害剤:アンロチニブ;AKT阻害剤:MK2206、GSK2110183、及びGSK2141795;MTOR1/2阻害剤:INK-128;及び化学療法:経口アザシチジンから選択され得る。いくつかの実施形態では、第2の療法は、抗PD1抗体、抗PDL1抗体、または抗CTLA-4抗体などの免疫療法である。いくつかの実施形態では、第2の療法は、タキサンである。
【0327】
いくつかの実施形態では、第2の活性剤はアルキル化剤であり、本明細書で提供されるのは、H-Ras過剰発現、参照比よりも高いK-Ras発現に対するH-Ras発現の比、参照比よりも高いN-Ras発現に対するH-Ras発現の比、または参照比よりも高いK-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比を有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、アルキル化剤とFTIとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、第2の活性剤はアルキル化剤であり、本明細書で提供されるのは、H-Ras遺伝子変異を保有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、アルキル化剤とFTIとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、アルキル化剤は、アルトレタミン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、ロムスチン、メルファラン、オキサリプラチン、テモゾロミド、またはチオテパである。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。FTIは、アルキル化剤の投与前に投与され得る。FTIは、アルキル化剤と同時に投与され得る。FTIは、アルキル化剤の投与後に投与され得る。
【0328】
いくつかの実施形態では、第2の活性剤はシスプラチンであり、本明細書で提供されるのは、H-Ras過剰発現、参照比よりも高いK-Ras発現に対するH-Ras発現の比、参照比よりも高いN-Ras発現に対するH-Ras発現の比、または参照比よりも高いK-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比を有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、シスプラチンとFTIとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、第2の活性剤はシスプラチンであり、本明細書で提供されるのは、H-Ras遺伝子変異を保有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、シスプラチンとFTIとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、FTIはチピファルニブであり、本明細書で提供されるのは、H-Ras過剰発現、参照比よりも高いK-Ras発現に対するH-Ras発現の比、参照比よりも高いN-Ras発現に対するH-Ras発現の比、または参照比よりも高いK-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比を有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、シスプラチンとチピファルニブとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、FTIはチピファルニブであり、本明細書で提供されるのは、H-Ras遺伝子変異を保有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、シスプラチンとチピファルニブとの組み合わせ使用である。チピファルニブは、シスプラチンの投与前に投与され得る。チピファルニブは、シスプラチンと同時に投与され得る。チピファルニブは、シスプラチンの投与後に投与され得る。
【0329】
いくつかの実施形態では、SCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性である。いくつかの実施形態では、SCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、SCCは、転移性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、再発性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、難治性である。SCCは、本明細書に記載の、またはさもなければ当該技術分野で公知の特定のタイプのSCCであり得る。SCCは、HNSCCであり得る。SCCは、食道SCCであり得る。SCCは、甲状腺SCCであり得る。SCCは、LSCCであり得る。SCCは、膀胱SCCであり得る。SCCは、尿路上皮癌(UC)であり得る。FTIは、本明細書に記載の、またはさもなければ当該技術分野で公知の、任意のFTIであり得る。シスプラチンは、当該技術分野で公知の標準用量または腫瘍学者によって適切であるとみなされる他の用量で投与され得る。例えば、シスプラチンは、20mg/m、50mg/m、80mg/m、100mg/m、120mg/m、150mg/m、または200mg/mの1日用量で静脈内投与され得る。シスプラチンは、毎週(QW)、14日ごと(Q14D)、21日ごと(Q21D)、または28日ごと(Q28D)に投与され得る。シスプラチンは、少なくとも1サイクル、少なくとも2サイクル、少なくとも3サイクル、少なくとも4サイクル、少なくとも5サイクル、または少なくとも6サイクル投与され得る。いくつかの実施形態では、シスプラチンは、100mg/mの1日用量で、Q21Dで3サイクル投与される。
【0330】
いくつかの実施形態では、第2の活性剤はCDK阻害剤であり、本明細書で提供されるのは、H-Ras過剰発現、参照比よりも高いK-Ras発現に対するH-Ras発現の比、参照比よりも高いN-Ras発現に対するH-Ras発現の比、または参照比よりも高いK-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比を有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、FTIとCDK阻害剤との組み合わせ使用である。CDK阻害剤は、パルボシクリブ(Ibrance)、リボシクリブ(Kisqali)、またはアベマシクリブであり得る。FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。FTIは、CDK阻害剤の投与前に投与され得る。FTIは、CDK阻害剤と同時に投与され得る。FTIは、CDK阻害剤の投与後に投与され得る。いくつかの実施形態では、SCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性である。いくつかの実施形態では、SCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、SCCは、転移性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、再発性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、難治性である。SCCは、本明細書に記載の、またはさもなければ当該技術分野で公知の特定のタイプのSCCであり得る。SCCは、HNSCCであり得る。SCCは、食道SCCであり得る。SCCは、甲状腺SCCであり得る。SCCは、LSCCであり得る。SCCは、膀胱SCCであり得る。SCCは、尿路上皮癌(UC)であり得る。
【0331】
例えば、いくつかの実施形態では、CDK阻害剤はパルボシクリブであり、本明細書で提供されるのは、H-Ras過剰発現、参照比よりも高いK-Ras発現に対するH-Ras発現の比、参照比よりも高いN-Ras発現に対するH-Ras発現の比、または参照比よりも高いK-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比を有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、FTIとパルボシクリブとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、FTIはチピファルニブであり、本明細書で提供されるのは、H-Ras過剰発現、参照比よりも高いK-Ras発現に対するH-Ras発現の比、参照比よりも高いN-Ras発現に対するH-Ras発現の比、または参照比よりも高いK-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比を有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、チピファルニブとパルボシクリブとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、SCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性である。いくつかの実施形態では、SCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、SCCは、転移性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、再発性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、難治性である。SCCは、本明細書に記載の、またはさもなければ当該技術分野で公知の特定のタイプのSCCであり得る。SCCは、HNSCCであり得る。SCCは、食道SCCであり得る。SCCは、甲状腺SCCであり得る。SCCは、LSCCであり得る。SCCは、膀胱SCCであり得る。SCCは、尿路上皮癌(UC)であり得る。
【0332】
チピファルニブは、パルボシクリブの投与前に投与され得る。チピファルニブは、パルボシクリブと同時に投与され得る。チピファルニブは、パルボシクリブの投与後に投与され得る。パルボシクリブは、当該技術分野で公知の標準用量または腫瘍学者によって適切であるとみなされる他の用量で投与され得る。例えば、パルボシクリブは、25mg/日、50mg/日、75mg/日、100mg/日、125mg/日、150mg/日、175mg/日、200mg/日、225mg/日、または250mg/日の用量で経口投与され得る。パルボシクリブは、14日間の治療サイクルまたは28日間の治療サイクルで投与され得る。いくつかの実施形態では、2週間の治療サイクルは、7日間の投与と、それに続く7日間の休止を有し得る。いくつかの実施形態では、4週間の治療サイクルは、7日間の投与と、それに続く21日間の休止を有し得る。いくつかの実施形態では、4週間の治療サイクルは、21日間の投与と、それに続く7日間の休止を有し得る。いくつかの実施形態では、4週間の治療サイクルは、1~7日目及び15~21日目の投与と、8~14日目及び22~28日目の休止を有し得る。いくつかの実施形態では、パルボシクリブは、少なくとも1サイクル、少なくとも2サイクル、少なくとも3サイクル、少なくとも4サイクル、少なくとも5サイクル、または少なくとも6サイクル投与され得る。いくつかの実施形態では、パルボシクリブは、28日間のサイクルの1~21日目に125mg/kgで経口投与される。
【0333】
いくつかの実施形態では、第2の活性剤はEGFR阻害剤であり、本明細書で提供されるのは、H-Ras過剰発現、参照比よりも高いK-Ras発現に対するH-Ras発現の比、参照比よりも高いN-Ras発現に対するH-Ras発現の比、または参照比よりも高いK-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比を有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、FTIとEGFR阻害剤との組み合わせ使用である。EGFR阻害剤は、抗EGFR抗体、例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ネラチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、セツキシマブ、ネシツムマブ、オシメルチニブ、またはパニツムマブであり得る。FTIは、EGFR阻害剤の投与前に投与され得る。FTIは、EGFR阻害剤と同時に投与され得る。FTIは、EGFR阻害剤の投与後に投与され得る。
【0334】
いくつかの実施形態では、第2の活性剤はセツキシマブであり、本明細書で提供されるのは、H-Ras過剰発現、参照比よりも高いK-Ras発現に対するH-Ras発現の比、参照比よりも高いN-Ras発現に対するH-Ras発現の比、または参照比よりも高いK-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比を有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、FTIとセツキシマブとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、第2の活性剤はパニツムマブであり、本明細書で提供されるのは、H-Ras過剰発現、参照比よりも高いK-Ras発現に対するH-Ras発現の比、参照比よりも高いN-Ras発現に対するH-Ras発現の比、または参照比よりも高いK-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比を有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、FTIとパニツムマブとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、SCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性である。いくつかの実施形態では、SCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、SCCは、転移性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、再発性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、難治性である。SCCは、本明細書に記載の、またはさもなければ当該技術分野で公知の特定のタイプのSCCであり得る。SCCは、HNSCCであり得る。SCCは、食道SCCであり得る。SCCは、甲状腺SCCであり得る。SCCは、LSCCであり得る。SCCは、膀胱SCCであり得る。SCCは、尿路上皮癌(UC)であり得る。
【0335】
FTIは、本明細書に記載の、またはさもなければ当該技術分野で公知の、任意のFTIであり得る。FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIはチピファルニブであり、本明細書で提供されるのは、H-Ras過剰発現、参照比よりも高いK-Ras発現に対するH-Ras発現の比、参照比よりも高いN-Ras発現に対するH-Ras発現の比、または参照比よりも高いK-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比を有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、チピファルニブとEGFR阻害剤との組み合わせ使用である。
【0336】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、H-Ras過剰発現、参照比よりも高いK-Ras発現に対するH-Ras発現の比、参照比よりも高いN-Ras発現に対するH-Ras発現の比、または参照比よりも高いK-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比を有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、チピファルニブとパニツムマブとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、SCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、SCCは、転移性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、再発性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、難治性である。SCCは、本明細書に記載の、またはさもなければ当該技術分野で公知の特定のタイプのSCCであり得る。SCCは、HNSCCであり得る。SCCは、食道SCCであり得る。SCCは、甲状腺SCCであり得る。SCCは、LSCCであり得る。SCCは、膀胱SCCであり得る。SCCは、尿路上皮癌(UC)であり得る。
【0337】
チピファルニブは、パニツムマブの投与前に投与され得る。チピファルニブは、パニツムマブと同時に投与され得る。チピファルニブは、パニツムマブの投与後に投与され得る。パニツムマブは、当該技術分野で公知の標準用量または腫瘍学者によって適切であるとみなされる他の用量で投与され得る。例えば、パニツムマブは、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、または18mg/kg体重の1日用量で経口投与され得る。セツキシマブは、毎週(QW)、14日ごと(Q14D)、21日ごと(Q21D)、または28日ごと(Q28D)に投与され得る。パニツムマブは、少なくとも1サイクル、少なくとも2サイクル、少なくとも3サイクル、少なくとも4サイクル、少なくとも5サイクル、または少なくとも6サイクル投与され得る。いくつかの実施形態では、パニツムマブは、6mg/kg Q14Dで投与される。
【0338】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、H-Ras過剰発現、参照比よりも高いK-Ras発現に対するH-Ras発現の比、参照比よりも高いN-Ras発現に対するH-Ras発現の比、または参照比よりも高いK-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比を有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、チピファルニブとセツキシマブとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、SCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、SCCは、転移性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、再発性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、難治性である。SCCは、本明細書に記載の、またはさもなければ当該技術分野で公知の特定のタイプのSCCであり得る。SCCは、HNSCCであり得る。SCCは、食道SCCであり得る。SCCは、甲状腺SCCであり得る。SCCは、LSCCであり得る。SCCは、膀胱SCCであり得る。SCCは、尿路上皮癌(UC)であり得る。
【0339】
チピファルニブは、セツキシマブの投与前に投与され得る。チピファルニブは、セツキシマブと同時に投与され得る。チピファルニブは、セツキシマブの投与後に投与され得る。セツキシマブは、当該技術分野で公知の標準用量または腫瘍学者によって適切であるとみなされる他の用量で投与され得る。例えば、セツキシマブは、50mg/m、100mg/m、150mg/m、200mg/m、250mg/m、300mg/m、350mg/m、400mg/m、450mg/m、または500mg/mの1日用量で経口投与され得る。セツキシマブは、毎週(QW)、14日ごと(Q14D)、21日ごと(Q21D)、または28日ごと(Q28D)に投与され得る。セツキシマブは、負荷用量とそれに続く標準用量で投与され得る。負荷用量は、標準用量の少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍であり得る。いくつかの実施形態では、負荷用量は、400mg/m、450mg/m、500mg/m、600mg/m、700mg/m、800mg/m、900mg/mまたは1000mg/mであり得る。セツキシマブは、少なくとも1サイクル、少なくとも2サイクル、少なくとも3サイクル、少なくとも4サイクル、少なくとも5サイクル、または少なくとも6サイクル投与され得る。いくつかの実施形態では、セツキシマブは、400mg/mの負荷用量と、それに続く250mg/m QWで投与される。
【0340】
いくつかの実施形態では、第2の活性剤はPI3K経路を標的とし、本明細書で提供されるのは、H-Ras過剰発現、参照比よりも高いK-Ras発現に対するH-Ras発現の比、参照比よりも高いN-Ras発現に対するH-Ras発現の比、または参照比よりも高いK-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比を有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、PI3K経路標的剤とFTIとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、第2の活性剤は、PI3K経路を標的とし、本明細書で提供されるのは、H-Ras遺伝子変異を保有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、PI3K経路標的剤とFTIとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、第2の活性剤はPI3K経路を標的とし、本明細書で提供されるのは、H-Ras遺伝子変異及びPIK3CA遺伝子変異を保有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、PI3K経路標的剤とFTIとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、PI3K経路標的剤は、BKM120(ブパルリシブ)、BYL719(PI3K-α阻害剤)、テムシロリムス、またはリゴサチブである。いくつかの実施形態では、PI3K経路標的剤は、PI3K-α阻害剤である。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。FTIは、PI3K経路標的剤の投与前に投与され得る。FTIは、PI3K経路標的剤と同時に投与され得る。FTIは、PI3K経路標的剤の投与後に投与され得る。FTIは、PI3K-α阻害剤の投与前に投与され得る。FTIは、PI3K-α阻害剤と同時に投与され得る。FTIは、PI3K-α阻害剤の投与後に投与され得る。
【0341】
いくつかの実施形態では、PI3K-α阻害剤はBYL719であり、本明細書で提供されるのは、H-Ras過剰発現、参照比よりも高いK-Ras発現に対するH-Ras発現の比、参照比よりも高いN-Ras発現に対するH-Ras発現の比、または参照比よりも高いK-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比を有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、BYL719とFTIとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、第2の活性剤はBYL719であり、本明細書で提供されるのは、H-Ras遺伝子変異を保有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、BYL719とFTIとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、第2の活性剤はBYL719であり、本明細書で提供されるのは、H-Ras遺伝子変異及びPIK3CA遺伝子変異を保有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、BYL719とFTIとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、FTIはチピファルニブであり、本明細書で提供されるのは、H-Ras過剰発現、参照比よりも高いK-Ras発現に対するH-Ras発現の比、参照比よりも高いN-Ras発現に対するH-Ras発現の比、または参照比よりも高いK-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比を有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、BYL719とチピファルニブとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブであり、本明細書で提供されるのは、H-Ras遺伝子変異を保有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、BYL719とチピファルニブとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、FTIはチピファルニブであり、本明細書で提供されるのは、H-Ras遺伝子変異及びPIK3CA遺伝子変異を保有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、BYL719とチピファルニブとの組み合わせ使用である。チピファルニブは、BYL719の投与前に投与され得る。チピファルニブは、BYL719と同時に投与され得る。チピファルニブは、BYL719の投与後に投与され得る。
【0342】
いくつかの実施形態では、SCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性である。いくつかの実施形態では、SCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、SCCは、転移性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、再発性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、難治性である。SCCは、本明細書に記載の、またはさもなければ当該技術分野で公知の特定のタイプのSCCであり得る。SCCは、HNSCCであり得る。SCCは、食道SCCであり得る。SCCは、甲状腺SCCであり得る。SCCは、LSCCであり得る。SCCは、膀胱SCCであり得る。SCCは、尿路上皮癌(UC)であり得る。
【0343】
いくつかの実施形態では、第2の活性剤はAKT阻害剤であり、本明細書で提供されるのは、H-Ras過剰発現、参照比よりも高いK-Ras発現に対するH-Ras発現の比、参照比よりも高いN-Ras発現に対するH-Ras発現の比、または参照比よりも高いK-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比を有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、AKT阻害剤とFTIとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、第2の活性剤はAKT阻害剤であり、本明細書で提供されるのは、H-Ras遺伝子変異を保有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、AKT阻害剤とFTIとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、AKT阻害剤は、MK2206、GSK2110183、またはGSK2141795である。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。FTIは、AKT阻害剤の投与前に投与され得る。FTIは、AKT阻害剤と同時に投与され得る。FTIは、AKT阻害剤の投与後に投与され得る。
【0344】
いくつかの実施形態では、AKT阻害剤はGSK2141795であり、本明細書で提供されるのは、H-Ras過剰発現、参照比よりも高いK-Ras発現に対するH-Ras発現の比、参照比よりも高いN-Ras発現に対するH-Ras発現の比、または参照比よりも高いK-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比を有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、GSK2141795とFTIとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、第2の活性剤はGSK2141795であり、本明細書で提供されるのは、H-Ras遺伝子変異を保有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、GSK2141795とFTIとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、FTIはチピファルニブであり、本明細書で提供されるのは、H-Ras過剰発現、参照比よりも高いK-Ras発現に対するH-Ras発現の比、参照比よりも高いN-Ras発現に対するH-Ras発現の比、または参照比よりも高いK-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比を有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、GSK2141795とチピファルニブとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、FTIはチピファルニブであり、本明細書で提供されるのは、H-Ras遺伝子変異を保有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、GSK2141795とチピファルニブとの組み合わせ使用である。チピファルニブは、GSK2141795の投与前に投与され得る。チピファルニブは、GSK2141795と同時に投与され得る。チピファルニブは、GSK2141795の投与後に投与され得る。
【0345】
いくつかの実施形態では、SCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性である。いくつかの実施形態では、SCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、SCCは、転移性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、再発性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、難治性である。SCCは、本明細書に記載の、またはさもなければ当該技術分野で公知の特定のタイプのSCCであり得る。SCCは、HNSCCであり得る。SCCは、食道SCCであり得る。SCCは、甲状腺SCCであり得る。SCCは、LSCCであり得る。SCCは、膀胱SCCであり得る。SCCは、尿路上皮癌(UC)であり得る。
【0346】
いくつかの実施形態では、第2の活性剤はMTOR1/2阻害剤であり、本明細書で提供されるのは、H-Ras過剰発現、参照比よりも高いK-Ras発現に対するH-Ras発現の比、参照比よりも高いN-Ras発現に対するH-Ras発現の比、または参照比よりも高いK-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比を有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、MTOR1/2阻害剤とFTIとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、第2の活性剤はMTOR1/2阻害剤であり、本明細書で提供されるのは、H-Ras遺伝子変異を保有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、MTOR1/2阻害剤とFTIとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、MTOR1/2阻害剤は、INK-128である。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。FTIは、MTOR1/2阻害剤の投与前に投与され得る。FTIは、MTOR1/2阻害剤と同時に投与され得る。FTIは、MTOR1/2阻害剤の投与後に投与され得る。
【0347】
いくつかの実施形態では、MTOR1/2阻害剤はINK-128であり、本明細書で提供されるのは、H-Ras過剰発現、参照比よりも高いK-Ras発現に対するH-Ras発現の比、参照比よりも高いN-Ras発現に対するH-Ras発現の比、または参照比よりも高いK-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比を有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、INK-128とFTIとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、第2の活性剤はINK-128であり、本明細書で提供されるのは、H-Ras遺伝子変異を保有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、INK-128とFTIとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、FTIはチピファルニブであり、本明細書で提供されるのは、H-Ras過剰発現、参照比よりも高いK-Ras発現に対するH-Ras発現の比、参照比よりも高いN-Ras発現に対するH-Ras発現の比、または参照比よりも高いK-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比を有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、INK-128とチピファルニブとの組み合わせ使用である。いくつかの実施形態では、FTIはチピファルニブであり、本明細書で提供されるのは、H-Ras遺伝子変異を保有する対象においてSCCを選択的に治療する際の、INK-128とチピファルニブとの組み合わせ使用である。チピファルニブは、INK-128の投与前に投与され得る。チピファルニブは、INK-128と同時に投与され得る。チピファルニブは、INK-128の投与後に投与され得る。
【0348】
いくつかの実施形態では、SCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性である。いくつかの実施形態では、SCCは、進行期にある。いくつかの実施形態では、SCCは、転移性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、再発性SCCである。いくつかの実施形態では、SCCは、難治性である。SCCは、本明細書に記載の、またはさもなければ当該技術分野で公知の特定のタイプのSCCであり得る。SCCは、HNSCCであり得る。SCCは、食道SCCであり得る。SCCは、甲状腺SCCであり得る。SCCは、LSCCであり得る。SCCは、膀胱SCCであり得る。SCCは、尿路上皮癌(UC)であり得る。
【0349】
いくつかの実施形態では、第2の活性剤は、シチジン類似体(例えば、アザシチジン)または5-アザデオキシシチジン(例えば、デシタビン)などのDNA低メチル化剤である。いくつかの実施形態では、第2の活性剤は、インダクション(Induction)、トポテカン、ハイドレア、POエトポシド、レナリドマイド、LDAC、及びチオグアニンが含まれるがこれらに限定されない、細胞減少剤である。いくつかの実施形態では、第2の活性剤は、ミトキサントロン、エトポシド、シタラビン、またはバルスポダールである。いくつかの実施形態では、第2の活性剤は、ミトキサントロン+バルスポダール、エトポシド+バルスポダール、またはシタラビン+バルスポダールである。いくつかの実施形態では、第2の活性剤は、イダルビシン、フルダラビン、トポテカン、またはara-Cである。いくつかの他の実施形態では、第2の活性剤は、イダルビシン+ara-C、フルダラビン+ara-C、ミトキサントロン+ara-C、またはトポテカン+ara-Cである。いくつかの実施形態では、第2の活性剤は、キニーネである。上記の薬剤の他の組み合わせを使用することができ、投薬量は医師により決定され得る。
【0350】
本明細書に記載の、またはさもなければ当該技術分野で利用可能な治療を、FTI治療と組み合わせて使用することができる。例えば、FTIと組み合わせて使用することができる薬物としては、Spectrum Pharmaceuticalsによって販売されているベリノスタット(Beleodaq(登録商標))及びプララトレキサート(Folotyn(登録商標))、Celgeneによって販売されているロミデプシン(Istodax(登録商標))、ならびにSeattle Geneticsによって販売されているブレンツキシマブベドチン(Adcetris(登録商標));Celgeneによって販売されているアザシチジン(Vidaza(登録商標))及びレナリドマイド(Revlimid(登録商標))、ならびにOtsuka及びJohnson & Johnsonによって販売されているデシタビン(Dacogen(登録商標));バンデタニブ(Caprelsa(登録商標))、Bayerのソラフェニブ(Nexavar(登録商標))、Exelixisのカボザンチニブ(Cometriq(登録商標))、ならびにEisaiのレンバチニブ(Lenvima(登録商標))が挙げられる。
【0351】
非細胞毒性療法、例えば、プララトレキサート(Folotyn(登録商標))、ロミデプシン(Istodax(登録商標))、及びベリノスタット(Beleodaq(登録商標))もまた、FTI治療と組み合わせて使用することができる。
【0352】
いくつかの実施形態では、二次活性剤は、DNA低メチル化剤である。いくつかの実施形態では、二次活性剤は、シタラビン、ダウルビシン(daurubicin)、イダルビシン、またはゲムツズマブ(gentuzumab)、またはオゾガマイシンである。いくつかの実施形態では、二次活性剤は、アザシチジンまたはデシタビンなどのDNA低メチル化剤である。
【0353】
いくつかの実施形態では、第2の活性剤は、免疫療法剤である。いくつかの実施形態では、第2の活性剤は、抗PD1抗体である。いくつかの実施形態では、第2の活性剤は、抗PDL1抗体である。いくつかの実施形態では、第2の活性剤は、抗CTLA-4抗体である。
【0354】
いくつかの実施形態では、FTIと組み合わせて使用される第2の活性剤または第2の療法は、FTI治療の前に、それと同時に、またはその後に投与され得ることが企図される。いくつかの実施形態では、FTIと組み合わせて使用される第2の活性剤または第2の療法は、FTI治療の前に投与され得る。いくつかの実施形態では、FTIと組み合わせて使用される第2の活性剤または第2の療法は、FTI治療と同時に投与され得る。いくつかの実施形態では、FTIと組み合わせて使用される第2の活性剤または第2の療法は、FTI治療の後に投与され得る。
【0355】
いくつかの実施形態では、FTI治療は、骨髄移植と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、骨髄移植の施行前に投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、骨髄移植と同時に投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、骨髄移植の施行後に投与される。
【0356】
いくつかの実施形態では、FTI治療は、幹細胞移植と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、幹細胞移植の施行前に投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、幹細胞移植と同時に投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、幹細胞移植の施行後に投与される。
【0357】
当業者は、本明細書に記載の方法が、本明細書に記載の対象を治療するための特定のFTI、製剤、投与レジメン、追加の療法の任意の順列または組み合わせの使用を含むことを理解するであろう。
【0358】
本発明の様々な実施形態の作用に実質的に影響を及ぼさない修正もまた、本明細書で提供される本発明の定義内で提供されることが理解される。したがって、以下の実施例は、本発明を説明することを意図したものであり、本発明を限定することを意図していない。本明細書に引用される全ての参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。
【実施例
【0359】
実施例I
高H-Ras発現または高H/N+K比を有するHNSCCにおけるチピファルニブのin vivo有効性の増加
腫瘍を発生させるため、原発性ヒト腫瘍モデル断片(直径2~3mm)を雌のBALB/cヌードマウスまたはNu/nuマウス(6~8週)の右側腹部に皮下接種した。平均腫瘍サイズが約250~350mmに達したとき、マウスをランダムに投与群にグループ分けした。チピファルニブビヒクル(20% w/vのヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)またはチピファルニブを、動物に80mg/kg BIDの用量で3~4週間経口投与し、腫瘍寸法を週に2回測定した。
【0360】
腫瘍増殖を阻害するチピファルニブの能力を、選択されたHNSCCの患者由来異種移植片(PDX)モデルを使用して判定した。選択されたモデルは、異なるレベルのH-Rasを発現するか、または異なる高い、K-RasとN-Rasとの組み合わせ発現に対するH-Ras発現の比(「H/K+N比」)を有していた。これらのPDXモデルにおけるH-Ras、K-Ras、及びN-Rasの発現レベルを、RNAseqによって決定した。これらのモデルの、これらのH-Ras発現レベル及びH/K+N比を表1に要約する。表1の全てのモデルは、野生型H-Rasを発現する。
【表1】
【0361】
図1A図1Dは、異なるH-Ras発現レベル及び異なるH/K+N比を有するHNSCC PDXモデルにおけるチピファルニブの有効性を示す。示されているように、比較的高いH-Ras発現及び/または高いH/K+N比を有するHNSCC PDXモデル(HN2576及びHN2594)は、比較的低いH-Ras発現及び/または低いH/K+N比を有するHNSCC PDXモデル(HN5111及びHN5123、図1C及び1D)と比較して、チピファルニブ治療に対してさらに応答した(図1A及び1B)。とりわけ、チピファルニブは、モデルHN2576及びHN2594において腫瘍増殖を著しく阻害し、モデルHN2576では腫瘍退縮さえも誘導した(図1A及び1B)。チピファルニブはまた、ビヒクル対照と比較して、モデルHN5111及びHN5123において腫瘍増殖を阻害したが、その有効性は、モデルHN2576またはHN2594におけるものよりも著しく明確ではなかった。
【0362】
図5A~5Dは、野生型H-Rasの高H-Ras発現レベルを有するHNSCC PDXモデルにおけるチピファルニブの有効性を示す。示されるように、比較的高いH-Ras発現を有するHNSCC PDXモデル(213、138、104、及び125単位(H-Ras発現RNAseq V2(線形)として表される単位)をそれぞれ有する図5A(HN2576)、図5B(HN2594)、図5C(HN3461)、及び図5D(HN3679))は、比較的低いH-Ras発現を有するもの(HN5111及びHN5123、それぞれ図1C及び1D)と比較して、チピファルニブ治療に対してさらに応答した。とりわけ、チピファルニブは、モデルHN2576、HN2594、HN3461、及びHN3679のそれぞれで腫瘍増殖を著しく阻害した。
【0363】
図6A~6Dは、野生型H-Rasの低H-Ras発現レベルを有するHNSCC PDXモデルにおけるチピファルニブの有効性を示す。示されるように、比較的低いH-Ras発現を有するHNSCC PDXモデル(24、57、未測定、及び65単位(H-Ras発現RNAseq V2(線形)として表される単位)をそれぞれ有する図6A(HN2222)、図6B(HN5111)、図6C(HN5115)、及び図6D(HN5123))は、比較的高いH-Ras発現を有するもの(図1C、1D及び図5A~5D)と比較して、チピファルニブ治療に対して不活性であるか、またはそれより応答しなかった。チピファルニブはまた、ビヒクル対照と比較して、モデルHN2222、HN5111、HN5115、及びHN5123において腫瘍増殖を阻害したが、その有効性は、モデルHN2576、HN2594、HN3461、及びHN3679におけるものよりも著しく明確ではなかった。
【0364】
実施例II
高H/N+K比を有する、乳癌ではなく、食道扁平上皮癌におけるチピファルニブのin vivo有効性の増加
実施例1に記載されているように、ヌードマウスの側腹部に食道扁平上皮癌(ESCC)のPDXモデル(ES0204もしくはES0172)または乳癌のPDXモデル(BR1282もしくはBR1458)のいずれかを皮下接種した。これらのモデルのH/K+N比を表1に詳述する。図2A及び図2Bに示すように、チピファルニブは、比較的高いH/K+N比を有するES0172モデル(p=0.02)及びES0204モデル(p=0.04)の両方において、腫瘍増殖を効果的に阻害した(図2A)。しかしながら、そのような有効性は、BR1282(p=0.53)またはBR1458(p=0.28)乳癌PDXモデルのいずれにおいても、これらのモデルも比較的高いH/K+N比を有していたにもかかわらず、観察されなかった(図2C及び図2D)。このように、高H-Ras発現または高H/K+N比は、HNSCC、ESCC、及び尿路上皮癌などのSCCにおけるFTI(例えばチピファルニブ)の有効性と特に相関したが、乳癌などの他の非扁平上皮型のがんとは相関しなかった。
【0365】
実施例III
高H-Ras発現または高H/N+K比を有するHNSCCにおけるチピファルニブと第2の療法との相乗効果
実施例Iに記載されているように、マウスの側腹部にPDX HNSCCモデル(HN3411及びHN2594)を皮下接種した。腫瘍発生後、マウスに、ビヒクル、チピファルニブ、第2の活性剤、またはチピファルニブと第2の活性剤の組み合わせのいずれかを投与した。第2の薬剤は、アルキル化剤であるシスプラチン、EGFR阻害剤であるセツキシマブ、またはCDK阻害剤であるパルボシクリブのいずれかであった。HN3411モデル(H-Ras=4.1×中央値;H/K+N=2.7)において、示されるように、シスプラチン(図3B)もパルボシクリブ(図3C)も、単独で使用した場合、いかなる活性も有さなかった。しかしながら、チピファルニブと組み合わせた場合、シスプラチン及びパルボシクリブの両方が、チピファルニブ単独と比較して腫瘍増殖をさらに阻害した(図3B及び3C)。このように、チピファルニブはHNSCCの腫瘍増殖を直接阻害しただけではなく、また、シスプラチンまたはパルボシクリブなどの他の治療に対して腫瘍を増感させた。
【0366】
セツキシマブ及びチピファルニブの両方とも、単剤として腫瘍増殖を部分的に阻害した(図3A)。組み合わせると、HN3411モデルにおいて腫瘍増殖のほぼ静止状態が観察され、両方の薬剤の相乗的活性が証明された(図3A)。
【0367】
HNSCCモデルHN2594においても、チピファルニブと第2の薬剤との相乗効果が観察された(H-Ras=2.8×中央値;H/K+N=3.6;図4A~4C)。示されるように、チピファルニブ単独または第2の療法(セツキシマブ、シスプラチン、またはパルボシクリブ)単独は部分応答(腫瘍増殖の阻害)を達成したが、全ての組み合わせは腫瘍退縮を誘導した(図4A~4C)。
【0368】
実施例IV
H-Ras変異体の発現を有するHNSCCにおけるチピファルニブ及び第2の療法の効果
第2の療法と組み合わせたチピファルニブの腫瘍増殖を阻害する能力を、変異型H-Rasを発現した、選択されたHNSCCの患者由来異種移植片(PDX)モデルを使用して判定した。これらのPDXモデルにおけるH-Ras変異体の発現レベルを、RNAseqによって決定した。これらのモデルの、これらのH-Ras変異体の発現レベル及びH/K+N比を表2に要約する。表2の全てのモデルは、変異H-Rasを発現する。
【表2】
【0369】
実施例Iに記載されているように、PDX HNSCCモデル(特定の位置でアミノ酸をコードする変異H-Ras遺伝子のコドンにおける修飾であるか、またはそれを含む変異を有し、得られる変異型H-Rasタンパク質HRAS G12S、HRAS G13C、HRAS A146P、及びHRAS K117Lをそれぞれ提供する、HN2579、HN2581、HN1420、及びHN3504)をマウスの側腹部に皮下接種した。腫瘍発生後、マウスに、ビヒクル、チピファルニブ(80mg/kg PO BID)、第2の活性剤、またはチピファルニブと第2の活性剤の組み合わせのいずれかを投与した。2番目の薬剤はアルキル化剤であるシスプラチン(3mg/kg IP QW)であった。シスプラチン単剤療法は、ビヒクルと比較して、HN2579モデル(図7A)及びHN2581モデル(図7B)で活性を有していたが、HN1420モデル(図7C)及びHN3504モデル(図7D)では不活性であった。チピファルニブ単剤療法は、ビヒクルと比較して、4つのモデルのそれぞれにおいて高い活性を有し、腫瘍退縮を誘導した(図7A~7D)。シスプラチンをチピファルニブと組み合わせた場合、シスプラチン単剤療法が活性を示したモデル(図7A及び7B)では、チピファルニブ単独と比較して腫瘍増殖がさらに阻害されたが、シスプラチン単剤療法が不活性であったモデル(図7C及び7D)では、組み合わせ療法は、チピファルニブ単剤療法よりも良好ではなかった。このように、チピファルニブは、H-Ras変異体発現を有するHNSCCにおける腫瘍増殖を直接阻害しただけでなく(図7A~7D)、また、腫瘍がシスプラチンに対してある程度の感受性を有することが示されている場合(図7A及び7B)、シスプラチン治療に対して腫瘍を増感させた。
【0370】
実施例V
高H-Ras発現または及び/または高H/N+K比を有するHNSCCにおけるチピファルニブ及び第2の療法の効果
実施例Iに記載されているように、マウスの側腹部にPDX HNSCCモデル(HN3792、HN0586、HN2576、HN3067、HN2594、HN3461、HN3776、HN3474、及びHN3679であり、9つのモデルのそれぞれは、表1に詳述されている通り、高H-Ras発現レベル及び/または高H/N+K比を有する)を皮下接種した。腫瘍発生後、マウスに、ビヒクル、チピファルニブ(80mg/kg PO BID)、第2の活性剤、またはチピファルニブと第2の活性剤の組み合わせのいずれかを投与した。第2の薬剤は、アルキル化剤であるシスプラチン(3mg/kg IP QW)、CDK阻害剤であるパルボシクリブ(35mg/kg PO QD)、またはEGFR阻害剤であるセツキシマブ(1mg/マウス IP QW)のいずれかであった。
【0371】
シスプラチン単剤療法は、ビヒクルと比較して、モデルHN3792、HN3067、及びHN3776(それぞれ図8A、8D、及び9C)において不活性であり、モデルHN0586、HN2576、HN2594、HN3461、及びHN3474(それぞれ図8B~8C、9A~9B、及び9D)において活性を有していた。チピファルニブ単剤療法は、ビヒクルと比較して、各モデルにおいて活性を有し(図8A~8D及び9A~9D)、1つのモデルにおいて腫瘍退縮を誘導した(図8C)。シスプラチンをチピファルニブと組み合わせた場合、シスプラチン単剤療法が活性を示したモデル(図8B~8C及び9A)では、チピファルニブ単独と比較して腫瘍増殖がさらに阻害された。さらに、シスプラチン単剤療法が不活性であったモデルでは、組み合わせ療法により、チピファルニブ単剤療法と比較して活性が増加した(図8A、8D、9A、及び9C)。このように、チピファルニブは、高H-Ras発現を有するHNSCCにおける腫瘍増殖を直接阻害しただけではなく(図8A~8D及び9A~9D)、また、腫瘍がシスプラチンに対して感受性を有さないことが示された場合(図8A、8D、及び9C)であっても、シスプラチン治療に対して腫瘍を増感させた(図8A~8D、9A、及び9C)。
【0372】
パルボシクリブ単剤療法は、ビヒクルと比較して、モデルHN2576、HN2594、及びHN3679(それぞれ図10A及び10C~10D)において活性を有し、モデルHN3067(図10B)において若干の活性を有していた。チピファルニブ単剤療法は、ビヒクルと比較して、モデルHN2576、HN2594、及びHN3679(それぞれ図10A及び10C~10D)において活性を有し、1つのモデルにおいて腫瘍退縮を誘導し(図10A)、モデルHN3067(図10B)において若干の活性を有していた。パルボシクリブをチピファルニブと組み合わせた場合、パルボシクリブ単剤療法が活性を示したモデル(図10A~10D)では、上記モデルのチピファルニブ単剤療法と比較して、腫瘍増殖がさらに阻害され、パルボシクリブ単剤療法が若干の活性のみであったモデル(図10B)においてでさえ腫瘍増殖の阻害が増加した。このように、チピファルニブは、高H-Ras発現を有するHNSCCにおける腫瘍増殖を直接阻害しただけではなく(図10A~10D)、また、腫瘍がパルボシクリブに対して若干の感受性を有することが示されている場合(図10B)であっても、パルボシクリブ治療に対して腫瘍を増感させた(図10A~10D)。
【0373】
セツキシマブ単剤療法は、ビヒクルと比較して、モデルHN2576、HN3067、及びHN3679(それぞれ図11A~11B、及び11D)において高い活性を有し、モデルHN2594(図11C)において活性を有していた。チピファルニブ単剤療法は、ビヒクルと比較して、モデルHN2576及びHN3679において高い活性を有し(それぞれ図11A及び11D)、1つのモデルにおいて腫瘍退縮を誘導し(図11A)、モデルHN3067及びHN2594(それぞれ図11B~11C)において活性を有していた。セツキシマブをチピファルニブと組み合わせた場合、セツキシマブ単剤療法が活性を示したモデル(図11B~11C)では、セツキシマブ単剤療法と比較して、または上記モデルのチピファルニブ単剤療法と比較して、腫瘍増殖がさらに阻害された。このように、チピファルニブは、高H-Ras発現を有するHNSCCの腫瘍増殖を直接阻害しただけではなく(図11A~11D)、セツキシマブ治療に対する腫瘍の感受性をも増加させた(図11B~11C)。
【0374】
実施例VI
高H-Ras発現または変異H-Ras発現を有するHNSCCにおけるチピファルニブ及び第2の療法の効果
実施例Iに記載されているように、それぞれのモデルが高H-Ras発現レベル及び/または高H/N+K比を有する(表1に詳述されている通り)PDX HNSCCモデルHN2594及びHN2576、ならびに特定の位置でアミノ酸をコードする変異H-Ras遺伝子のコドンにおける修飾であるか、またはそれを含む変異を有し、得られる変異型H-Rasタンパク質HRAS A146Pを提供するPDX HNSCCモデルHN1420を、マウスの側腹部に皮下接種した。腫瘍発生後、マウスに、ビヒクル、チピファルニブ(60mg/kg PO BIDの低減させた投与)、第2の活性剤、またはチピファルニブと第2の活性剤の組み合わせのいずれかを投与した。第2の薬剤は、PI3K-α阻害剤であるBYL719(50mg/kg PO QD)(図12A~12C)、AKT阻害剤であるGSK2141795(30mg/kg PO QD)(図13A~13C)、またはMTORC1/2阻害剤であるINK-128(0.3mg/kg PO QD)(図14A~14C)のいずれかであった。
【0375】
PI3K-α阻害剤BYL719の単剤療法及びチピファルニブ単剤療法は、ビヒクルと比較して、高H-Ras発現レベルのモデルHN2594及びHN2576(図12A~12B)、ならびに変異型H-RasのモデルHN1420(図12C)において活性を有していた。チピファルニブ単剤療法は、ビヒクルと比較して、1つのモデルにおいて腫瘍退縮を誘導した(図12C)。PI3K-α阻害剤BYL719をチピファルニブと組み合わせた場合、高H-Ras発現レベルのモデルHN2594及びHN2576(図12A~12B)、ならびに変異型H-RasのモデルHN1420(図12C)において、上記モデルのチピファルニブ単剤療法と比較して、またはPI3K-α阻害剤BYL719の単剤療法と比較して、腫瘍増殖がさらに阻害された。組み合わせ療法は、ビヒクルと比較して、それぞれのモデルにおいて腫瘍退縮を誘導した(図12A~12C)。このように、チピファルニブは、高H-Ras発現を有するか(図12A~12B)、または変異型H-Rasの発現を有する(図12C)HNSCCの腫瘍増殖を直接阻害しただけではなく、高H-Ras発現レベルのモデル(図12A~12B)、及び変異型H-Rasのモデル(図12C)において、PI3K-α阻害剤BYL719の治療に対する腫瘍の感受性をも増加させた。
【0376】
AKT阻害剤GSK2141795の単剤療法は、ビヒクルと比較して、高H-Ras発現レベルのモデルHN2594及びHN2576(図13A~13B)において活性を有していたが、変異型H-RasのモデルHN1420(図13C)においては不活性であった。チピファルニブ単剤療法は、ビヒクルと比較して、高H-Ras発現レベルのモデルHN2594及びHN2576(図13A~13B)ならびに変異型H-RasのモデルHN1420(図13C)において活性を有しており、1つのモデルにおいて腫瘍退縮を誘導した(図13C)。AKT阻害剤GSK2141795をチピファルニブと組み合わせた場合、高H-Ras発現レベルのモデルHN2594及びHN2576(図13A~13B)、ならびに変異型H-RasのモデルHN1420(図13C)において、上記モデルのチピファルニブ単剤療法と比較して、またはAKT阻害剤GSK2141795の単剤療法と比較して、腫瘍増殖がさらに阻害された。組み合わせ療法は、ビヒクルと比較して、高H-Ras発現レベルのモデルHN2576(図13B)及び変異型H-RasのモデルHN1420(図13C)において腫瘍退縮を誘導した。このように、チピファルニブは、高H-Ras発現を有するか(図13A~13B)、または変異型H-Ras発現を有する(図13C)HNSCCの腫瘍増殖を直接阻害しただけではなく、高H-Ras発現レベルのモデル(図13A~13B)において、AKT阻害剤GSK2141795の治療に対する腫瘍の感受性をも増加させた。チピファルニブとの組み合わせはまた、腫瘍が変異型H-RasモデルにおいてAKT阻害剤GSK2141795に対して感受性を有さないことが示されたAKT阻害剤GSK2141795の治療に対しても腫瘍を増感させた(図13C)。
【0377】
MTORC1/2阻害剤INK-128の単剤療法及びチピファルニブ単剤療法は、ビヒクルと比較して、高H-Ras発現レベルのモデルHN2594及びHN2576(図14A~14B)、ならびに変異型H-RasのモデルHN1420(図14C)において活性を有していた。チピファルニブ単剤療法は、ビヒクルと比較して、1つのモデルにおいて腫瘍退縮を誘導した(図14C)。MTORC1/2阻害剤INK-128をチピファルニブと組み合わせた場合、高H-Ras発現レベルのモデルHN2594及びHN2576(図14A~14B)、ならびに変異型H-RasのモデルHN1420(図14C)において、上記モデルのチピファルニブ単剤療法と比較して、またはMTORC1/2阻害剤INK-128の単剤療法と比較して、腫瘍増殖がさらに阻害された。組み合わせ療法は、ビヒクルと比較して、それぞれのモデルにおいて腫瘍退縮を誘導した(図14A~14C)。このように、チピファルニブは、高H-Ras発現を有するか(図14A~14B)、または変異型H-Ras発現を有する(図14C)HNSCCの腫瘍増殖を直接阻害しただけではなく、高H-Ras発現レベルのモデル(図14A~14B)、ならびに変異型H-Rasのモデル(図14C)において、MTORC1/2阻害剤INK-128の治療に対する腫瘍の感受性をも増加させた。
【0378】
実施例VII
変異H-Ras発現を有するHNSCCにおけるチピファルニブ及び第2の療法の効果
実施例Iに記載されているように、特定の位置でアミノ酸をコードする変異H-Ras遺伝子のコドンにおける修飾であるか、またはそれを含む変異を有し、得られる変異型H-Rasタンパク質HRAS A146P、HRAS G13C、HRAS G12S、及びHRAS K117Lをそれぞれ提供する、PDX HNSCCモデルHN1420(図15A)、HN2581(図15B)、HN2579(図15C)、及びHN3504(図15D)を、マウスの側腹部に皮下接種した。腫瘍発生後、マウスに、ビヒクル、チピファルニブ(60mg/kg PO BIDの低減させた投与)、第2の活性剤、またはチピファルニブと第2の活性剤の組み合わせのいずれかを投与した。第2の薬剤は、PI3K-α阻害剤BYL719(50mg/kg PO QD)であった。
【0379】
PI3K-α阻害剤BYL719の単剤療法は、ビヒクルと比較して変異型H-Rasモデル(図15A~15D)のそれぞれにおいて活性を有していた。チピファルニブ単剤療法は、ビヒクルと比較して、変異型H-Rasモデル(図15A~15D)のそれぞれにおいて活性を有しており、2つのモデル(図15A~15B)において腫瘍退縮を誘導した。PI3K-α阻害剤BYL719をチピファルニブと組み合わせた場合、変異型H-Rasのモデル(図15A~15D)のそれぞれにおいて、上記モデルのチピファルニブ単剤療法と比較して、またはPI3K-α阻害剤BYL719の単剤療法と比較して、腫瘍増殖がさらに阻害された。組み合わせ療法は、ビヒクルと比較して、それぞれのモデルにおいて腫瘍退縮を誘導した(図15A~15D)。このように、チピファルニブは、変異型H-Rasの発現のHNSCCモデル(図15A~15D)において腫瘍増殖を直接阻害しただけではなく、変異型H-Rasのモデル(図15A~15D)において、PI3K-α阻害剤BYL719の治療に対する腫瘍の感受性をも増加させた。
【0380】
実施例VIII
変異H-Ras発現を有し、PIK3CAの共変異を有するかまたは有さないHNSCCにおける、チピファルニブ及び第2の療法の効果
実施例Iに記載されているように、高H-Ras発現レベルを有し、かつ野生型PIK3CA発現レベルを有するHN3067(図16A)及びHN3411(図16C)PDX HNSCCモデル、または高H-Ras発現レベルを有し、かつ変異型PIK3CAの発現レベルを有するHN2593(図16B)及びHN3690(図16D)PDX HNSCCモデルであって、ここで、この変異が、特定の位置でアミノ酸をコードする変異PIK3CA遺伝子(図16B及び16DではPIK3CAG118D及びPIK3CAE454Kとそれぞれ称される)のコドンにおける修飾であるかまたはそれを含み、得られる変異型PI3K-αタンパク質PI3K-α G118D及びPI3K-α E454Kをそれぞれ提供する、PDX HNSCCモデルを、マウスの側腹部に皮下接種した。腫瘍発生後、マウスに、ビヒクル、チピファルニブ(60mg/kg PO BIDの低減させた投与)、第2の活性剤、またはチピファルニブと第2の活性剤の組み合わせのいずれかを投与した。第2の薬剤は、PI3K-α阻害剤BYL719(50mg/kg PO QD)であった。
【0381】
PI3K-α阻害剤BYL719の単剤療法及びチピファルニブ単剤療法は、ビヒクルと比較して、高H-Ras発現/野生型PIK3CA発現モデル(図16A及び16C)、ならびに高H-Ras発現/変異型PIK3CA発現モデル(図16B及び16D)において活性を有していた。PI3K-α阻害剤BYL719をチピファルニブと組み合わせた場合、モデル(図16A~16D)のそれぞれにおいて、上記モデルのチピファルニブ単剤療法と比較して、またはPI3K-α阻害剤BYL719の単剤療法と比較して、腫瘍増殖がさらに阻害された。組み合わせ療法は、ビヒクルと比較して、高H-Ras発現/野生型PIK3CA発現モデルのうちの1つにおいて腫瘍退縮を誘導した(図16A)。このように、チピファルニブは、高H-Ras発現/野生型PIK3CA発現モデル(図16A~16C)ならびに高H-Ras発現/変異型PIK3CA発現モデル(図16B及び16D)において腫瘍増殖を直接阻害しただけではなく、これらのモデルのそれぞれにおけるPI3K-α阻害剤BYL719の治療に対する腫瘍の感受性をも増加させた(図16A~16D)。
【0382】
実施例IX
TCGA PanCancer Atlasデータ分析
H-Ras発現レベルを、データベースTCGA PanCancer Atlas内の試験から入手可能なデータに基づいて調査し評価した。具体的には、H-Ras発現レベルを、扁平上皮癌(HNSCC、LSCC、及びUC)ならびに腺癌(結腸直腸癌(「CRC」)、膵管腺癌(「PDAC」)、及び肺腺癌(「LUAD」))の2つのがんのサブセット内で評価した。H-Ras発現RNAseq V2(log)値11を、H-Ras過剰発現のカットオフとして設定した。データの要約を図17、及び以下の表3に示す。
【表3】
【0383】
図17に示すように、また表3に詳述するように、扁平上皮癌(HNSCC、LSCC、及びUC)を有する患者で観察されたH-Ras遺伝子発現レベルは、一般に、発現レベルの平均値及びカットオフレベルを超えた数(またはパーセンテージ)に関して、H-Ras過剰発現のカットオフと比較して、結腸直腸腺癌、膵管腺癌、または肺腺癌(CRC、PDAC、及びLUAD)を有する患者で観察されたレベルよりも高い。例えば、データベースTCGA PanCancer Atlas内の試験から入手可能なデータによると、H-Ras遺伝子は、HNSCC患者の30.3%、LSCC患者の8.5%、及びUC患者の25.5%で過剰発現しており、これと比較して、CRC、PDAC、及びLUAD患者ではそれぞれ0.2%、1.2%、及び0.2%である。
【0384】
HNSCC患者集団内で、データベースTCGA PanCancer Atlas内の試験から入手可能なデータを、H-Ras遺伝子発現レベル及びPIK3CA遺伝子発現レベル(TCGAのデフォルト設定を使用)の両方に基づいて、mRNA発現、RSEM(Illumina HiSeq_RNASeqV2から正規化したバッチ) (log2)で提供される、H-Ras遺伝子及びPIK3CA遺伝子発現レベルを用いてさらに評価し、図18に示す(スピアマン値-0.49(p=3.91e-33)、及びピアソン値-0.57(p=7.18e-45))。このデータの要約を以下の表4に示す。
【表4】
【0385】
図18に示すように、また表4に詳述するように、入手可能なTCGAデータから、HNSCC患者集団内のH-Ras遺伝子発現とPIK3CA遺伝子発現との間には、逆相関関係があるように思われる。例えば、H-Ras遺伝子発現レベルが増加するにつれ、PIK3CA遺伝子発現レベルが減少するように思われ、これは、HNSCC患者集団内でH-Ras遺伝子発現とPIK3CA遺伝子発現の間に代償的関係がある可能性があることを示している。さらに、表4に示されているデータから、H-Ras遺伝子発現とMTOR遺伝子発現の間には若干の逆相関関係があるように思われ、これは、HNSCC患者集団内でH-Ras遺伝子発現とMTOR遺伝子発現の間に若干の代償的関係がある可能性があることを示している。対照的に、表4に示すデータから、KRAS遺伝子発現とPIK3CA遺伝子発現の間には、HNSCC患者集団内で正の相関があるように思われ、これは、これらの発現が冗長機能を提供する可能性があることを示唆している。表4に示すデータから、HNSCC患者集団内のH-Ras遺伝子発現とAKT遺伝子発現の間に相関関係はないように思われる。
【0386】
データベースTCGA PanCancer Atlas内で利用可能なH-Ras遺伝子発現レベル及びPIK3CA遺伝子発現レベルに関するデータ(TCGAのデフォルト設定を使用)を、扁平上皮癌のタイプ、特にUC(図19A)及びLSCC(図19B)に基づいてさらに評価した。具体的には、H-Ras遺伝子発現レベルとPIK3CA遺伝子発現レベルとの関係を、UCについては図19Aに示し(スピアマン値-0.38;p=3.47e-15を含む)、LSCCについては図19Bに示す(スピアマン値-0.04;p=0.349を含む)。このデータは、LSCCを有する患者(図19B)よりも、UCを有する患者(図19A)において、H-Ras遺伝子発現とPIK3CA遺伝子発現との間に、より強い代償的関係(逆相関関係)があり得ることを示している。したがって、高H-Ras発現を有するUC患者は、LSCC患者と比較して、チピファルニブとPI3K-α阻害剤との組み合わせに応答し、この組み合わせから利益を得られる可能性がより高い。
【0387】
野生型及び様々な変異型のPIK3CAの遺伝子発現と比較したH-Ras遺伝子発現レベルに関するデータを、UC患者集団内のデータベースTCGA PanCancer Atlas内で利用可能なデータからさらに評価した。具体的には、UCを有する患者について、TCGA PanCancer Atlasデータによると、発現したPIK3CA遺伝子の特定のタイプの変異型(短縮型またはミスセンス型など)を有する分布と比較した、野生型PIK3CA遺伝子発現を有するUC患者内のH-Ras発現レベルの分布は、H-Ras過剰発現のカットオフ値(H-Ras発現RNAseq V2(log)値を11に設定)に対して同様に分布しているように見える(図20)。したがって、高H-Ras発現を有し、かつ野生型または変異型PIK3CAのいずれかの遺伝子発現を有するUC患者、特に、PI3K-α阻害剤治療に対して感受性のある腫瘍を有するUC患者において、チピファルニブとPI3K-α阻害剤との組み合わせから利益を得られる可能性がある。
【0388】
実施例X
HNSCC患者のための個別化された治療の決定
HNSCC患者がチピファルニブ治療などのFTI治療に適しているかどうかを判定するために、次の手順を行うことができる。
【0389】
治療前に患者から腫瘍生検を採取する。Trizol Kit(Qiagen,Santa Clarita,CA)を使用して、全RNAを細胞試料から抽出する。RNAの品質を、Agilent Bioanalyzer(Agilent,Palo Alto,CA)でリボソームバンドの存在を評価することによって判定する。マイクロアレイ分析用に、良質試料をさらに処理する。
【0390】
各試料について、1gの全RNA(OD260で評価したもの)を、製造業者の指示に従ってHigh Capacity cDNA Reverse Transcriptionキット(Applied Biosystems,Foster City,CA)を使用して逆転写する。次に、最適なRNA変換のために、試料を25°Cで10分間、続いて37°Cで30分間インキュベートすることができる。ABI Prism 7900HTシーケンス検出システム(Applied Biosystems)を使用してQPCRを実施し、全ての試料で3回行った。各反応液には、ウラシル-N-グリコシラーゼ(Applied Biosystems)を含有する5μLのTaqman Universal PCR Master Mix、4.5μLのcDNA鋳型、及び0.5μLの20×Assay on Demand Gene Expression Assay Mix(Applied Biosystems)、または9pmolのフォワード及びリバースプライマーの両方、ならびに2.5pmolのプローブが、全反応容量10μL中に含まれる。全てのプライマー及びフルオレセインアミダイト(FAM)蛍光発生プローブセットを、100ヌクレオチド未満のアンプリコンを生成するように選択し、分解されたRNA試料からの転写産物の増幅を可能にする。プライマー及びプローブを、h-ras、k-ras、n-ras遺伝子を特異的に増幅するように設計する。全てのプライマーセットはエクソンの境界にまたがっているため、ゲノムDNAではなくmRNA転写産物が特異的に増幅される。
【0391】
次に、H-RAS、K-Ras及びN-Rasの発現レベルを、当該技術分野で公知の方法を使用して算出する。生のCt値を、試料セットから平均Ctを減算し、標準偏差で除し、続いて各遺伝子の正規化したCt値の差を算出することによって正規化した。適切なサイズのHNSCC患者集団における、H-Ras発現レベルの中央値、またはH-Ras発現のカットオフパーセンタイル(例えば上位30%)を、参照発現レベルとして使用することができ、適切なサイズのHNSCC患者集団における、H/K+N比の中央値、またはH/K+N比のカットオフパーセンタイル(例えば上位30%)を、参照比として使用することができる。HNSCC患者のH-Ras発現が参照レベルよりも高いと決定されるか、またはHNSCC患者のH/K+N比が参照比よりも高いと決定され、かつ患者がチピファルニブ治療を受けることを他の点で妨げられない場合、チピファルニブ治療を処方する。一方で、HNSCC患者のH-Ras発現が参照レベル以下であると決定され、かつHNSCC患者のH/K+N比が参照比以下であると決定される場合、チピファルニブ治療は推奨されない。
【0392】
チピファルニブ治療をHNSCC患者に処方した場合、HNSCC患者は、腫瘍学者が適切であると判断した場合、セツキシマブ、シスプラチン、またはパルボシクリブなどの別の治療を同時に受けることができる。
【0393】
本出願を通じて、様々な刊行物が参照されている。本開示が関連する分野の現状をさらに十分に説明する目的で、これらの刊行物の開示は、GenBank番号及びGI番号の公表を含めて、その全体が、参照により本出願に組み込まれる。上に示した実施例を参照して本発明について説明してきたが、本発明の趣旨から逸脱することなく、様々な修正を行えることを理解されたい。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【国際調査報告】