(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-02
(54)【発明の名称】細胞外小胞を用いる組織再生の誘導
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20220526BHJP
C12N 1/02 20060101ALN20220526BHJP
C12N 5/0735 20100101ALN20220526BHJP
C12N 5/073 20100101ALN20220526BHJP
C12N 15/88 20060101ALN20220526BHJP
C12N 15/873 20100101ALN20220526BHJP
【FI】
C12N5/10
C12N1/02
C12N5/0735
C12N5/073
C12N15/88 Z
C12N15/873 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021558532
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(85)【翻訳文提出日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 US2020025512
(87)【国際公開番号】W WO2020198696
(87)【国際公開日】2020-10-01
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520415029
【氏名又は名称】エイジェックス・セラピューティクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ウェスト、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ラロッカ、ダナ
(72)【発明者】
【氏名】リ、ジユン
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC12
4B065BA01
4B065BA05
4B065CA23
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA46
(57)【要約】
エクソソームは、宿主胚性がん又は胚性前駆細胞株から生成され、誘導性組織再生に用いられる。これらの発明組成物及び方法は、トランスジェニック的に発現した遺伝子を行うことなく、in vivoでの老化又は患部の哺乳動物組織において誘導性組織再生を提供する。細胞は、出生前、実際には、例えば多くの間質細胞型の場合において、マーカーADIRF及びCOX7A1の減少により示されるように、胎児前の状態へ再プログラムされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞又は組織再生を誘導するための方法であって、1)遺伝子発現の胎児前パターンを示す宿主細胞から細胞外小胞を単離する工程;2)細胞及び/又は組織をin vivoで前記細胞外小胞と接触させて、遺伝子発現の胎児前パターンを復活させ、前記細胞及び組織を多能性へ再プログラムすることなく組織再生を誘導する工程を含む、方法。
【請求項2】
胚の表現型に近いことが、再プログラムされた細胞及び/又は組織からのCOX7A1の発現の減少によって示される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞が、最初は成体ヒト細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
接触した細胞及び/又は組織のCOX7A1の発現が、少なくとも20日目までに最大値の10%未満となる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞外小胞がエクソソームである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞外小胞がヒト胚性がん細胞又は胚性前駆細胞に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
細胞又は組織再生を誘導するための方法であって、1)LIN28B、SOX2、NANOG、OCT4及びMYCを過剰発現するように遺伝的に改変されている宿主胚性がん細胞から細胞外小胞を単離する工程;2)細胞及び/又は組織をin vivoで前記細胞外小胞と接触させて、遺伝子発現の胎児前パターンを復活させ、前記細胞及び組織を多能性へ再プログラムすることなく組織再生を誘導する工程を含む、方法。
【請求項8】
胚の表現型に近いことが、再プログラムされた細胞及び/又は組織からのCOX7A1の発現の減少によって示される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞が、最初は成体細胞である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
接触した細胞及び/又は組織のCOX7A1の発現が、少なくとも20日目までに最大値の10%未満となる、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞外小胞がエクソソームである、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
細胞又は組織再生を誘導するための方法であって、1)遺伝子発現の胎児前パターンを示す宿主細胞から細胞外小胞を単離する工程;2)前記細胞外小胞へLIN28B、SOX2、NANOG、OCT4及びMYCのmRNAを導入する工程;3)細胞及び/又は組織をin vivoで前記細胞外小胞と接触させて、遺伝子発現の胎児前パターンを復活させ、前記細胞及び組織を多能性へ再プログラムすることなく組織再生を誘導する工程を含む、方法。
【請求項13】
胚の表現型に近いことが、再プログラムされた細胞及び/又は組織からのCOX7A1の発現の減少によって示される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞が、最初は成体細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
接触した細胞及び/又は組織のCOX7A1の発現が、少なくとも20日目までに最大値の10%未満となる、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月28日に出願された米国仮特許出願62/825,732号及び2019年7月9日に出願された米国仮特許出願62/872,246号の出願日の優先権利益を主張し、これらの出願の両方の内容全体が、参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
発明の分野
発明は、細胞及び組織の発生段階決定をin vivoで調節する因子のin vivo送達のための組成物及び方法に関する。より具体的には、本明細書に記載されたヒト細胞に由来する細胞外小胞を利用する製剤が、治療的効果のために、胚-胎児及び新生児転換に関連した遺伝子発現のパターンを変化させる分子カーゴを送達するように設計される。治療成績は、哺乳動物組織の再生潜在力の増加、いくつかの適用においては、セノリシスをin vivoで起こす哺乳動物細胞の能力の増加、及び他の適用においては、がんの治療成績の向上のための腫瘍における胚-胎児及び新生児転換の調節である。
【背景技術】
【0003】
ヒト胚性幹(hES)細胞及びヒト人工多能性幹(hiPS)細胞が含まれるがこれらに限定されるものではないヒト多能性幹(hPS)細胞のin vitroでの単離及び増殖といった幹細胞技術の進歩は、医学研究の重要な新分野である。hPS細胞は、未分化状況で増殖するか、あるいは人体においてあらゆる細胞型に分化するように誘導される潜在力が実証されている(Thomson et al., Science 282:1145-1147(1998))。全ての体細胞型へ分化するhPS細胞に特有な内因的能力は、論理的に、さまざまな変性疾患を処置するための類似の多様性を有する移植可能なhPS由来細胞を製造するためのプラットフォームを提供する。このhES及びhiPS細胞の多能性は、現在は広範囲に認識されているが、ヒトの場合、in vitroで培養されたhPS細胞の、歴史的に研究が続けられている比較的未分化の胚原基を生成する特有の能力は、それほど認識されておらず、ほとんど研究されていない。
【0004】
また、hPS細胞に由来する細胞が、例えば、心筋細胞又は他のさまざまな間質細胞(例.骨軟骨細胞、褐色脂肪細胞、血管細胞、及び、予想外に微妙で、ほとんど認識されていない出生前又は胎児前の遺伝子発現パターンを示し、それぞれ、胎児又は成体の対応物と区別される他の細胞)といった分化した細胞として一般的に認識されているものに分化する可能性は、さらに研究されていない。
【0005】
哺乳動物の分化細胞、並びに、皮膚、心臓及び脊髄といった組織は、in vivoでの胚-胎児転換(EFT)の直前に完全な瘢痕のない再生潜在力を示し、これはEFTの後に次第に失われる。ヒト心臓などの一部の組織の場合、瘢痕のない再生の可能性は、新生児転換(NT)期間を過ぎて約1週間検出可能である。再生医療及び腫瘍学の分野に関する組織再生及び組織成長を理解し、調節することの重要性を考慮すると、in vitro及びin vivoで生物学をモデル化し調節するために改良された方法は、研究及び診療において重要で潜在的な有用性を有する。
【0006】
付加形成は、ときとして「整形変態(epimorphosis)」と称され、傷害部位において比較的未分化の間葉の芽体が増殖し、次いで細胞が分化して元の組織構造を復活させるある種の組織再生を指す。付加形成の潜在力の損失が発生するタイミングは正確に固定することはできず、おそらく組織によって異なるが、ヒト発生の8週目終了の頃に発生するEFT(Carnegie Stage 23; O'Rahilly, R., F. Mueller (1987) Developmental Stages in Human Embryos, Including a Revision of Streeter's 'Horizons' and a Survey of the Carnegie Collection. Washington, Carnegie Institution of Washington)は、胎盤哺乳動物における皮膚再生の損失に一時的に対応しているようである(Walmsley, G.G. et al 2015. Scarless Wound Healing: Chasing the Holy Grail Plast Reconstr Surg. 135(3):907-17)。種間の相関関係は、胚又は幼生の段階での再生能力の増加を示す(Morgan, T.H. (1901). Regeneration (New York: The MacMillan Company);Sanchez Alvarado, A., and Tsonis, P.A. (2006) Bridging the regeneration gap: genetic insights from diverse animal models. Nat. Rev. Genet. 7,873-884でレビューされている)。これは、瘢痕とは対照的に、組織再生が、胎児又は成体の表現型とは対照的な胚の存在を反映することを示唆するが、付加組織形成が、遺伝子発現の胚(出生前、より具体的には、胎児前)のパターンの結果であるというコンセンサスは現在はない。一部の種の場合、発生のタイミングの変化(異時性)は、例えばメキシコサンショウウオ(A. mexicanum)で観察される幼生の発生(異時性)及び四肢再生における発生停止のような重大な再生潜在力と相関する(Voss, S.R. et al, Thyroid hormone responsive QTL and the evolution of paedomorphic salamanders. Heredity (2012)109,293-298)。
【0007】
本出願人らは、以前に分化型哺乳動物体細胞を多能性へ再プログラムするための組成物及び方法を開示し、前記方法は、再プログラミング因子を輸送する、高レベルの再プログラミング因子、例えば、BARX1、CROC4、DNMT3B、H2AFX、HHEX、HISTIH2AB、HISTIH4J、HMGB2、hsa-miR-18a、hsa-miR-18b、hsa-miR-20b、hsa-miR-96、hsa-miR-106a、hsa-miR-107、hsa-miR-141、hsa-miR-183、hsa-miR-187、hsa-miR-203、hsa-miR-211、hsa-miR-217、hsa-miR-218-1、hsa-miR-218-2、hsa-miR-302a、hsa-miR-302c、hsa-miR-302d、hsa-miR-330、hsa-miR-363、hsa-miR-367、hsa-miR-371、hsa-miR-372、hsa-miR-373、hsa-miR-496、hsa-miR-50B、hsa-miR-512-3p、hsa-miR-512-5p、hsa-miR-515-3p、hsa-miR-515-5p、hsa-miR-516-5p、hsa-miR-517、hsa-miR-517a、35 hsa-miR-518b、hsa-miR-51Bc、hsa-miR-518e、hsa-miR-51ge、hsa-miR-520a、hsa-miR-520b、hsa-miR-520e、hsa-miR-520g、hsa-miR-520h、hsa-miR-523、hsa-miR-524、hsa-miR-525、hsa-miR-526a-l、hsa-miR-526a-2、LEFTB、LHX1、LHX6、LIN28、MYBL2、MYC、MYCN、NANOG、NFIX、OCT3/4(POU5F1)、OCT6(POU3F1)、OTX2、PHC1、SALL4、SOX2、TERFl、TERT、TGIF、VENTX2、ZIC2、ZIC3、ZIC5及びZNF206を発現する未分化細胞からの細胞質ブレブの使用を含む、前記体細胞を多能性へ再プログラムすることが可能な細胞質因子への哺乳動物細胞の曝露を含む(Methods of Reprogramming Animal Somatic Cells、米国特許出願公開2017/0152475号、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0008】
加えて、本出願人らは、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、発明の名称が「Compositions and Methods for Induced Tissue Regeneration in Mammalian Species」である国際公開第2014/197421号、及びその内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、発明の名称が「Improved Methods for Detecting and Modulating the Embryonic-Fetal Transition in Mammalian Species」である国際公開第2017/214342号で、哺乳動物種におけるEFTマーカー、及び、組織の再生とがんの進行を調節するために細胞を多能性へ再プログラムすることなく、哺乳動物の成体又は胎児の体細胞を出生前又は胎児前の遺伝子発現のパターンへ部分的に再プログラムするEFTマーカーの使用を開示した。加えて、本出願人らは、EFT及びNTの小分子モジュレーターを開示した(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、発明の名称が「Improved Methods for Inducing Tissue Regeneration and Senolysis in Mammalian Cells」である国際特許出願PCT/US2019/028816号)。前述の組成物及び方法は、一部、hPS細胞に由来する胚性前駆細胞株のクローン増殖を可能にする方法に基づいており、瘢痕のない様式で組織、例えば皮膚を再生するのに有用である遺伝子発現の出生前及びさらに胎児前のパターンを有する新規であり多様であり高度に精製された細胞系統を増殖させるための手段を提供している。そのような細胞型は、細胞ベースの治療薬の研究及び製造に重要な用途を有する(発明の名称が「Novel Uses of Cells With Prenatal Patterns of Gene Expression」である国際特許出願(PCT/US2006/013519号、2006年4月11日出願);発明の名称が「Methods to Accelerate the Isolation of Novel Cell Strains from Pluripotent Stem Cells and Cells Obtained Thereby」である米国特許出願(11/604,047号、2006年11月21日出願);発明の名称が「Methods to Accelerate the Isolation of Novel Cell Strains from Pluripotent Stem Cells and Cells Obtained Thereby」である米国特許出願(12/504,630号、2009年7月16日出願)を参照。これらの出願の内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる)。それにもかかわらず、EFT及びNTを調節することにおいて有用な前記再プログラミング因子のin vivo送達のための追加の改善された方法及び組成物が必要とされている。本発明は、哺乳動物再生療法及びさまざまな悪性腫瘍の処置のための、EFT及びNTを調節するように設計された分子カーゴを送達するヒト細胞に由来する細胞外小胞の製剤、製造、貯蔵及び送達と関連する組成物及び方法を教示する。
【0009】
細胞外ブレブとしても知られる細胞外小胞(EV)(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、発明の名称が「Methods of Reprogramming Animal Somatic Cells」である米国特許出願公開2017/0152475号)は、一般的に、以下の3つのサブカテゴリーへ分類される:1) 直径30~150nMのエクソソーム;2) 50nm~1.0μMのマイクロベシクル又はエクトソーム;及び3) 50nm~5.0μMのアポトーシス小体としても知られるアポトーシスブレブ。エクソソームとエクトソームは、それらの生成によって区別され、エクソソームは多胞体のエクソサイトーシスにより脱落し、エクトソームは細胞膜における出芽過程による(Trends Cell Biol 2015, 25(6):364-72)。EVは、細胞置換療法に見られるいくつかの再生利益に関与する栄養因子の供給源を提供し得る重要なシグナル伝達分子を含有すると考えられている。したがって、それらは、製造を拡大するのにコストがより低く、免疫拒絶のリスクがより低く、細胞ベースの治療薬として容易には導入されない細胞の複雑な相互作用を含む複雑な組織再生を可能にする複数の細胞型に影響する可能性がある、いくつかの細胞ベースの治療薬の代替物を提供するであろう。したがって、EVは、細胞ベースの治療薬及び細胞ベースの再生医療の魅力的な代替物又は補助剤を提供する可能性がある。
【0010】
エクソソームは、さまざまな哺乳動物細胞で分泌される30~150nmのEVである。Keller et al. (2006) Immunol Lett. 107(2): 102; Camussi et al. (2010) Kidney International 78:838。その小胞は脂質二重層により囲まれ、サイズ22nmのLDLより大きいが、直径が6000~8000nmで厚さが2000nmの赤血球より小さい。Keller et al. (2006) Immunol Lett. 107(2): 102。
【0011】
エクソソームは、in vitro及びin vivoのいずれのでも成長する細胞においても見いだされる。それらは、組織培養培地、並びに、血漿、尿、乳及び脳脊髄液といった体液から単離することができる、George et al. (1982) Blood 60:834; Martinez et al. (2005) Am J Physiol Health Cir Physiol 288:H1004。エクソソームは、エンドソームの膜コンパートメントから生じる。それらは、後期エンドソームの多胞体内の腔内小胞中に貯蔵される。多胞体は、初期エンドソームコンパートメントに由来し、エクソソームを含むより小さい小胞体をそれらの内部に含有する。エクソソームは、多胞体が原形質膜と融合する時、細胞から放出される。エクソソームを細胞から単離する方法は公知で、例えば米国特許出願公開2012/0093885号を参照されたい。
【0012】
エクソソームは、タンパク質、脂質並びに核酸、例えばDNA、mRNA及びmiRNAを含むさまざまな分子を含有する。それらの内容物は、1つの細胞からのエクソソームの放出、及びエクソソームの第2の細胞との結合/融合であって、エクソソームのコンパートメントの内容物が第2の細胞内に放出されることを含む、細胞間情報伝達において一翼を担うと考えられている。
【0013】
ヒトの成体循環内皮前駆細胞に由来するエクソソームが、細胞間のmRNA輸送のための媒体として働き得ることが報告されている。これらのエクソソームは、α4β1インテグリンと相互作用することにより正常内皮細胞の中に取り込まれることが示された。いったん内皮細胞の中に取り込まれたならば、エクソソームは血管新生プログラムを刺激した。Deregibus et al. (2007) Blood 110:2440。同様の結果は、in vivoで重症複合性免疫不全マウスを用いて得られた。エクソソームは、マウス脈管構造と接続された開存性血管ネットワークへ組織化された、マトリゲル(マウス肉腫抽出物)中の皮下に移植された内皮細胞を刺激した。Deregibus, supra; Bruno et al. (2009) J Am Soc Nephrol 20: 1053; Herrera et al. (2010) J Cell Mol Med 14: 1605。
【0014】
エクソソームのさまざまな分子カーゴのうち、miRNAは、最近、遺伝子発現におけるそれらの制御的役割のため、多くの関心を引き寄せている。miRNAは、複数のRNA標的にさまざまな効果を生じることができ、それにしたがって、コードRNAより大きい表現型的影響を生じる潜在力を有する小さな非コード制御RNAである。エクソソームのmiRNAプロファイルは、親細胞のそれらとは異なる場合が多い。プロファイリング研究により、miRNAが、エクソソームへランダムには取り込まれずに、むしろ、miRNAの一部が優先的に、エクソソームへパッケージングされることが実証されており、エクソソームmiRNAの能動的選別機構を示唆している。Guduric-Fuchs et al. (2014) Nucleic Acid Res. 42:9195; Ohshima et al. (2010) PloS One 5(10):el3247。
【0015】
エクソソームはさまざまな分子を含有し、多くは細胞シグナル伝達において重要な役割を果たすと考えられているため、エクソソームは、研究及び産業で有用であることが判明し、治療用物質、診断薬としての用途やスクリーニングアッセイにおける用途を有する。しかし、しばしば、再現可能で本質的に同一のエクソソーム集団の入手可能性は、エクソソームの大部分の供給源が、老化し、したがって、有限の複製能力を有する細胞であるという事実により制限される。したがって、大部分の成体又は胎児由来の細胞より優れている拡張された複製能力を有するクローン供給源に由来するエクソソームの必要性がある。以下に記載する本発明は、この必要性、加えて、当分野における他の必要性を満たす。
【0016】
再プログラミング因子の発現を強制するウイルス及び他の遺伝子治療ベクターによる、文献に記載された部分的再プログラミングを用いる年齢若返り方法は、望ましくない遺伝子改変のリスク、及び望ましくない細胞成長、例えば腫瘍形成の可能性を有する。
【0017】
エクソソームは、潜在的により安全で産生するのに費用効率がより高い。クローン前駆細胞株を用いず、EFTマーカーを調節することも考慮しない、エクソソーム処置へのアプローチがある。
【0018】
細胞及び組織の再生及び再プログラミングを誘導するために、並びにがんの経過を変化させるために、EFT及びNTに関連した遺伝子発現の広範囲の変化を調節するための改善された機構についての必要性が当技術分野にある。したがって、費用効率が高く、in vivoで全身性にEFT及びNT発生の再プログラミング因子を分配する能力がある、EFT及びNT発生の再プログラミング因子を製剤化する改善された方法についての更なる必要性がある。
【発明の概要】
【0019】
本発明の1つの側面は、1つ以上の細胞外小胞がin vivoで哺乳動物における組織再生の誘導に利用される組成物及び方法である。
【0020】
1つの好ましい態様において、本発明の組成物及び方法における細胞外小胞は、胚性前駆細胞株が生成する。前記胚性前駆細胞株は、1つの態様において、胎児-成体マーカーCOX7A1の発現を欠き、NTマーカーADIRFの発現を欠き、胚性マーカーPCDHB2を発現するヒト多能性幹細胞由来クローン胚性前駆細胞株であり得る。
【0021】
本発明の別の側面は、多能性因子のトランスジェニック遺伝子に基づく強制発現を行うことなく、細胞外小胞から誘導された再生細胞又は組織である。
【0022】
本発明の別の側面は、細胞外小胞の単離後、再プログラミング因子を有している単離された細胞外小胞から誘導された再生細胞又は組織である。
【0023】
本発明の1つの側面は、組織再生の誘導に利用された1つ以上のエクソソームである。
【0024】
1つの好ましい態様において、本発明の組成物及び方法におけるエクソソームは、胚性前駆細胞株が生成する。前記胚性前駆細胞株は、1つの態様において、胎児-成体マーカーCOX7A1の発現を欠き、NTマーカーADIRFの発現を欠き、胚性マーカーPCDHB2を発現するヒト多能性幹細胞由来クローン胚性前駆細胞株であり得る。
【0025】
本発明の別の側面は、多能性因子のトランスジェニック遺伝子に基づく強制発現を行うことなく、エクソソームから誘導された再生細胞又は組織である。
【0026】
本発明の別の側面は、エクソソームの単離後、再プログラミング因子を有している単離されたエクソソームから誘導された再生細胞又は組織である。
【0027】
1つの好ましい態様において、本発明の組成物及び方法における細胞外小胞は、胚性がん細胞株が産生する。前記胚性腫細胞株は、1つの態様において、胎児-成体マーカーCOX7A1の発現を欠き、NTマーカーADIRFの発現を欠き、多能性マーカー、例えばOCT4及びTERTを発現する胚性がん細胞株であり得る。
【0028】
本発明の別の側面は、再プログラミング因子のトランスジェニック遺伝子に基づく強制発現を行うことなく、胚性がん細胞株由来の細胞外小胞から誘導された再生細胞又は組織である。
【0029】
本発明の別の側面は、細胞外小胞の単離後、BARX1、CROC4、DNMT3B、H2AFX、HHEX、HISTIH2AB、HISTIH4J、HMGB2、hsa-miR-18a、hsa-miR-18b、hsa-miR-20b、hsa-miR-96、hsa-miR-106a、hsa-miR-107、hsa-miR-141、hsa-miR-183、hsa-miR-187、hsa-miR-200、hsa-miR-203、hsa-miR-211、hsa-miR-217、hsa-miR-218-1、hsa-miR-218-2、hsa-miR-290、hsa-miR-294、hsa-miR-295、hsa-miR-302a、hsa-miR-302b、hsa-miR-302c、hsa-miR-302d、hsa-miR-330、hsa-miR-363、hsa-miR-367、hsa-miR-371、hsa-miR-372、hsa-miR-373、hsa-miR-496、hsa-miR-50B、hsa-miR-512-3p、hsa-miR-512-5p、hsa-miR-515-3p、hsa-miR-515-5p、hsa-miR-516-5p、hsa-miR-517、hsa-miR-517a、35 hsa-miR-518b、hsa-miR-51Bc、hsa-miR-518e、hsa-miR-51ge、hsa-miR-520a、hsa-miR-520b、hsa-miR-520e、hsa-miR-520g、hsa-miR-520h、hsa-miR-523、hsa-miR-524、hsa-miR-525、hsa-miR-526a-l、hsa-miR-526a-2、LEFTB、LHX1、LHX6、LIN28、MYBL2、MYC、MYCN、NANOG、NFIX、OCT3/4(POU5F1)、OCT6(POU3F1)、OTX2、PHC1、SALL4、SOX2、TERFl、TERT、TGIF、VENTX2、ZIC2、ZIC3、ZIC5、及びZNF206というリストから選択される再プログラミング因子を有している、胚性がん細胞株由来の単離された細胞外小胞から誘導された再生細胞又は組織である。
【0030】
本発明の1つの側面は、組織再生の誘導に用いられる胚性がん細胞株由来の1つ以上のエクソソームである。
【0031】
本発明の別の側面は、胚/胎児前様状態(EFT(胚から胎児への転換)前)へin vivoで再プログラムされているが、多能性へ再プログラムされていない(本明細書では、「部分的再プログラミング」という)細胞である。好ましい態様において、再プログラミング又はEFT前状態は、EFTマーカーであるCOX7A1及びNTマーカーであるADIRFの減少により示される(1)。
【0032】
本発明による方法において、EFT前の遺伝子発現パターンを与える能力についてスクリーニングされた胚性前駆細胞又は多能性細胞といったhES細胞又はhEC細胞に由来する細胞外小胞、例えばエクソソームを、in vivoで、対象における再生能力を復活させるために胎児/成体細胞及び/又は組織と接触させる。前記対象は、ヒト又は非ヒト哺乳動物であってもよい。1つの態様において、対象は、老齢又は高齢のヒトである。更なる態様において、方法は、老化した成体細胞及び/又は組織において再生能力の喪失を防止し、遅らせ、又は逆転させる。別の好ましい態様において、本発明による方法は、老化のさまざまな特徴、例えばエピジェネティックス的プロファイル、テロメア長及び/又はミトコンドリア適応度を、胚状態へ部分的又は完全にリセット又は改善することができる。
【0033】
本発明の性質及び利点のより完全な理解のために、添付の図面と関連づけて、以下の詳細な説明を参照すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、EFTマーカーであるCOX7A1がOKSM再プログラミングの過程の初期に下方制御されることを示す図である。(Ohnukiら(9)の)COX7A1の遺伝子発現データを、Olovaら(10)の
図1aの再プログラムを伴うeAge変化のグラフ上にプロットした。COX7A1発現(黒色の実線)は、細胞が部分的に再プログラムされた場合、20日目に細胞が0歳のエピジェネティックス的年齢に達した場合(黒色の太い破線)、及び不完全に再プログラムされた場合、最大値の約10%に達する。COX7A1の発現は、28~49日目において最小である(完全に再プログラムされた)。新生児/成体iTRマーカーADIRFも又、再プログラミングの初期に発現が急速に減少する。対照的に、胚性幹細胞マーカー、TERTは、細胞がゼロ近くのエピジェネティックス的年齢にリセットされた20日目から始まって発現が増加し、再プログラムされた状態から多能性状態への細胞において発現し続ける。
【
図2】
図2A及び2Bは、EFTマーカーであるCOX7A1により示されるように、内皮胚性前駆細胞からの条件培地が胎児/成体内皮細胞を胚の表現型にすることを示す図である。HUVEC(
図2A)又はHBMEC(
図2B)を30-MV2-10、30-MV2-17及び30-MV2-19 eEPCからの条件培地で72時間インキュベーションした後のCOX7A1発現の減少。
【
図3】
図3A及び3Bは、EFTマーカーであるCOX7A1により示されるように、内皮胚性前駆細胞からのエクソソーム調製物が胎児/成体内皮細胞を胚の表現型に変化させることを示す図である。HUVEC(
図3A)又はHBMEC(ヒト脳微小血管内皮細胞、
図3B)を、胚性内皮前駆細胞(30-MV2-10、30-MV2-14及び30-MV2-19)からのエクソソーム濃縮条件培地で6日間の処理した後のCOX7A1発現の減少。HUVEC又はHBMECを、それぞれ、HUVEC又はHBMECからのエクソソーム濃縮条件培地で処理した場合、有意な効果は認められない。
【発明を実施するための形態】
【0035】
略語
AC - 成体由来細胞
AMH - 抗ミュラー管ホルモン
ASC - 成体幹細胞
cGMP - 現行の適正製造基準
CM - がん成熟
CNS - 中枢神経系
DMEM - ダルベッコ改変イーグル培地
DMSO - ジメチルスルホキシド
DNAm - 細胞及び組織の加齢のマーカー又は「時計」を提供するDNAのメチル化における変化
DPBS - ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水
ED細胞 - 胚由来細胞;hED細胞はヒトED細胞である
EDTA - エチレンジアミンテトラ酢酸
EFT - 胚-胎児転換
EG細胞 - 胚性生殖細胞;hEG細胞はヒトEG細胞である
EP - 胚性前駆細胞
ES細胞 - 胚性幹細胞;hES細胞はヒトES細胞である
ESC - 胚性幹細胞
EV - 細胞外小胞
FACS - 蛍光活性化細胞ソーティング
FBS - ウシ胎仔血清
FPKM - RNAシークエンシングからの百万マップリードあたりの転写産物1キロベースあたりのフラグメント
GFP - 緑色蛍光タンパク質
GMP - 適正製造基準
HAEC - ヒト大動脈内皮細胞
hEC細胞 - ヒト胚性癌細胞
hED細胞 - ヒト胚由来細胞
hEG細胞 - ヒト胚性生殖細胞。胎児組織の原始生殖細胞由来の幹細胞。
HESC - ヒトES様細胞を含むヒト胚性幹細胞。すなわち、プライム型幹細胞とナイーブ型幹細胞の両者。
hiPS細胞 - ヒト人工多能性幹細胞。hES特異的転写因子、例えばSOX2、KLF4、OCT4、MYC又はNANOG、LIN28、OCT4及びSOX2への曝露後に体細胞から得られたhES細胞と類似の特性を有する細胞。
HPS細胞 - ヒト多能性幹細胞。例えばhES細胞、hiPS細胞、EC細胞及びヒト単為生殖幹細胞。
HSE - ヒト皮膚等価物。創傷修復の促進において試験目的のために又は治療用途のために製造される細胞と生物学的又は合成マトリックスとの混合物。
iCM - 誘導性がん成熟
iPS細胞 - 人工多能性幹細胞。ES特異的転写因子、例えばSOX2、KLF4、OCT4、MYC若しくはNANOG、LIN28、OCT4及びSOX2、SOX2、KLF4、OCT4、MYC及び(LIN28A若しくはLIN28B)、又はOCT4、SOX2、KLF4、NANOG、ESRRB、NR5A2、CEBPA、MYC、LIN28A及びLIN28Bへの曝露後に体細胞から得られたhES細胞と類似している特性を有する細胞。
iS-CSC - がん幹細胞の誘導性セノリシス。化学療法剤又は放射線療法に難治性である悪性腫瘍における細胞の処置を指し、このiS-CSC処置を行うと、前記難治性細胞の遺伝子発現は胎児前パターンに復帰し、化学療法剤又は放射線療法に対して感受性が高くなる。
iTM - 誘導性組織成熟
iTR - 誘導性組織再生
MEM - 最小必須培地
MSC - 間葉幹細胞
NT - 新生児転換
PBS - リン酸緩衝生理食塩水
PS線維芽細胞 - 瘢痕前線維芽細胞。妊娠初期皮膚の皮膚由来の、又はそれらが瘢痕形成することなく皮膚創傷が迅速に治癒することを促進するという点において遺伝子発現の出生前パターンを示すED細胞由来の線維芽細胞。
RFU - 相対蛍光単位
RNA-seq - RNAシークエンシング
SFM - 無血清培地
St. Dev. - 標準偏差
TR - 組織再生
【0036】
定義
「分析的再プログラミング技術」という用語は、体細胞の遺伝子発現のパターンを、より多能性の状況のもの、例えばiPS、ES、ED、EC又はEG細胞のものに再プログラミングするためのさまざまな方法を指し、再プログラミングは、複数の個別の工程で生じ、体細胞の卵母細胞への移植及びその卵母細胞の活性化に単に依存するものではない(米国特許出願60/332,510号(2001年11月26日出願)、同10/304,020号(2002年11月26日出願)、国際特許出願PCT/US02/37899号(2003年11月26日出願)、米国特許出願60/705625号(2005年8月3日出願)、同60/729173号(2005年8月20日出願)、同60/818813号(2006年7月5日出願)及び国際特許出願PCT/US06/30632号(2006年8月3日出願)を参照。これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0037】
「卵割球/桑実胚細胞」という用語は、哺乳動物の胚における卵割球若しくは桑実胚細胞又はそれらの細胞の分化した派生物を含む追加の細胞を含むか、含まない、in vitroで培養された卵割球又は桑実胚細胞を指す。
【0038】
「がん幹細胞の誘導性セノリシス」(iS-CSC)という用語は、化学療法剤又は放射線療法に難治性である悪性腫瘍における細胞の処置を指し、前記iS-CSC処置を行うと、前記難治性細胞の遺伝子発現は胎児前パターンに復帰し、化学療法剤又は放射線療法に対して感受性が高くなる。
【0039】
「遺伝子Xを発現する細胞」、「遺伝子Xは細胞(又は細胞集団)において発現される」という用語又はこれらの用語と等価の用語は、特定のアッセイプラットフォームを使用した細胞の分析が陽性であったことを意味する。逆もまた当てはまる(すなわち、遺伝子Xを発現しない細胞又はその等価物は、特定のアッセイプラットフォームを使用した細胞の分析が、陰性であったことを意味する)。したがって、本明細書に記載する任意の遺伝子発現の結果は、当該遺伝子のアッセイプラットフォームで用いられる特定のプローブに関連付けられる。
【0040】
「エクソソーム」という用語は、細胞により分泌され、カーゴとしての分子成分の混合物を輸送する、サイズが30~100nmの細胞外小胞を指し、前記混合物は、miRNAを含むRNA、脂質及びタンパク質の組合せを含む。
【0041】
「エクトソーム」又は「ミクロソーム」という用語は、細胞により分泌され、カーゴとしての分子成分の混合物を輸送する、サイズが50nm~1.0μmの細胞外小胞を指し、前記混合物は、miRNAを含むRNA、脂質及びタンパク質の組合せを含む。
【0042】
「アポトーシス小体」という用語は、細胞のアポトーシスから生じ、カーゴとしての分子成分の混合物を輸送する、サイズが50nm~5.0μmの細胞外小胞を指し、前記混合物は、miRNAを含むRNA及びタンパク質の組合せを含む。
【0043】
「細胞質ブレブ」又は「細胞外小胞」という用語は、核がない点を除き無傷の細胞又は核を欠き透過処理されている点を除き無傷の原形質膜が結合した細胞の細胞質を指す一般的な用語である。用語「細胞質ブレブ」又は「細胞外小胞」に含まれる小胞には、エクソソーム、エクトソーム/ミクロソーム及びアポトーシス小体が挙げられる。それらの用語もまた、交換可能に用いられ、用語「除核細胞質体」及び「除核細胞質」と同意の語として用いられ、ただし、用語「除核細胞質」が、明確に原形質膜が除去されている抽出物という文脈で用いられている場合を除く。
【0044】
「細胞株」という用語は、in vitroで増殖及び成長が可能な細胞の生存又は不死化集団を指す。
【0045】
「クローン」という用語は、単一の細胞を、全てが元の単一の細胞に由来し、他の細胞を含まない細胞の集団に増殖させた細胞の集団を指す。
【0046】
「分化細胞」という用語は、多能性幹細胞から本発明の方法によって作製された細胞に関連して使用される場合、親多能性幹細胞と比較したときに分化するための潜在力が低下している細胞を指す。本発明の分化細胞は、さらに分化することができない(すなわち、最終的に分化することができない)細胞を含む。
【0047】
「胚」又は「発生の胚段階」という用語は、細胞、組織又は動物の発生の出生前段階、具体的には、胎児及び成体細胞と比較した細胞の発生の胚段階を指す。ヒトの場合、胚から胎児発生への転換は、出生前発生の約8週で起こり、マウスでは交尾後16日前後で、ラットではおよそ交尾後17.5日で起こる。(http://php.med.unsw.edu.au/embryology/index.php?title=Mouse_Timeline_Detailed)。
【0048】
「胚性幹細胞」(ES細胞)という用語は、細胞株として連続的に継代され、同時に未分化状況が維持されている、胚盤胞、卵割球又は桑実胚の内部細胞塊由来の細胞を指す(例えば、TERT、OCT4及びSSEA、並びに種のES細胞に特異的なTRA抗原を発現)。ES細胞は、精子又はDNAを有する卵細胞の受精、核移植、単為生殖から、又はMHC領域においてヘミ接合性又はホモ接合性を有するhES細胞を生成するための手段によって誘導してもよい。ES細胞は、体細胞型の全て及び生殖系列に分化することが可能な細胞として歴史的に定義されているが、着床前胚に移植された場合、ヒトを含む多くの種からの候補ES培養物は、培養物においてより平坦な外観を有し、典型的には生殖系列分化の一因とはならず、その結果「ES様細胞」と称される。ヒトES細胞は実際には「ES様」と通常考えられているが、本出願では、ESとES様細胞株の両方を指すためにES細胞という用語を使用する。
【0049】
「ヒト単為生殖幹細胞」という用語は、未受精であるが活性化された卵母細胞に由来した多能性幹細胞を指す。
【0050】
「TRの広範囲のモジュレーター」又は「iTRの広範囲のモジュレーター」という用語は、これらに限定されるものではないが、PCDHB2を同時に上方制御しながらCOX7A1を下方制御し、又は胎児若しくは成体供給源由来の細胞においてAMHを同時に上方制御しながらNAALADL1を下方制御することが可能で、組織損傷又は変性疾患に応答して瘢痕のない組織再生の増加をもたらす遺伝子発現のパターンを誘導することが可能な薬剤を含む、多数のiTR遺伝子又はiTM遺伝子を調節することが可能な薬剤を指す。
【0051】
「ヒト胚由来」(「hED」)細胞は、内部細胞塊、胚シールド、エピブラスト、又は、原始内胚葉、外胚葉、中胚葉、神経堤及び正常なヒト発生の最初の8週間に相当する分化の状態までのそれらの派生物を含む初期胚の他の全能性若しくは多能性幹細胞を含む、卵割球由来細胞、桑実胚由来細胞、胚盤胞由来細胞を指すが、細胞株として継代されているhES細胞に由来した細胞を除く(例えば、Thomsonの米国特許第7,582,479号;第7,217,569号;第6,887,706号;第6,602,711号;第6,280,718号;及び第5,843,780号参照)。hED細胞は、卵細胞の精子若しくはDNAでの受精、核移植若しくはクロマチン移植、単為生殖を通して単為生殖生物を形成するように誘導された卵細胞、分析的再プログラミングテクノロジーにより、又はHLA領域においてヘミ接合性若しくはホモ接合性を有するhES細胞を生成するための手段により、産生された着床前胚に由来してもよい。「ヒト胚性生殖細胞」(hEG細胞)という用語は、身体においてさまざまな組織へ分化することができる、胎児組織の始原生殖細胞又は成熟中(maturing)若しくは成熟(mature)生殖細胞、例えば卵母細胞及び精原細胞、に由来した多能性幹細胞を指す。hEG細胞もまた、雌性発生又は雄性発生手段、すなわち、多能性細胞が雄又は雌起源のDNAのみを含有する卵母細胞に由来し、したがって、全て雌由来又は全て雄由来のDNAを含むことになる方法により産生された多能性幹細胞に由来してもよい。
【0052】
「ヒト胚性幹細胞」(hES細胞)という用語はヒトES細胞を指す。
【0053】
「ヒト胚性がん細胞」(hEC細胞)という用語は、多能性マーカーを発現するが、染色体異常を有し、本来は悪性である、奇形癌腫を含む胚性癌腫に由来した細胞株を指す。
【0054】
「ヒト人工多能性幹細胞」という用語は、免疫減弱状態マウスに移植した場合に3つの全ての胚葉を形成するための能力を含むhES細胞と類似している特性を有し、前記iPS細胞が、脱分化因子、例えば、hES細胞特異的転写因子の組合せ:KLF4、SOX2、MYC;OCT4若しくはSOX2、OCT4、NANOG及びLIN28;又はOCT4、SOX2、KLF4、NANOG、ESRRB、NR5A2、CEBPA、MYC、LIN28A及びLIN28Bのさまざまな組合せに曝露した後のさまざまな体細胞系列の細胞に由来する細胞、又はhES細胞と類似している特性を有する多能性幹細胞状況を達成するための体細胞を誘導する他の方法を指す。しかし、体細胞核移植(SCNT)による体細胞の再プログラミングは、典型的には、iPS細胞とは対照的にNT-ES細胞と称される。
【0055】
「誘導性がん成熟」という用語は、前記誘導に続いて、胚段階とは対照的に発生の胎児又は成体段階においてその細胞型で正常に発現されるマーカーを細胞が発現するように、前悪性又は悪性細胞の表現型に変化をもたらす方法を指す。
【0056】
「誘導性組織再生」という用語は、胎児又は成体の哺乳動物細胞の分子組成を変化させて、組織が損傷を受けた後に組織の機能の再生を可能にする、又は再生するための本発明の方法の使用を指し、このような再生は、その動物における通常の結果ではないであろう。機能的には、iTRは、傷害又は変性疾患に対応して新しい組織形成を生成すること、又は、CSC若しくは加齢細胞においてセノリシスを誘導することを目的とするが、実際には、iTRは、DNAmのようなマーカーを含む細胞における老化の多くの現象を逆転させているが、テロメラーゼ活性は回復させていないことを発明者らは教示する。iTRとともにテロメラーゼ活性を添加することも本発明において「iTR」として定義される。
【0057】
「iTR関連セノリシス」という用語は、これらに限定されるものではないが、細胞老化(テロメア短縮)からのものを含む重大なDNA損傷を有する老化した組織の細胞における、前記損傷細胞の再プログラミングを介した遺伝子発現の胚パターンまでのアポトーシスの誘導を指す。
【0058】
「単離された」という用語は、(i)通常は人間の手を伴うプロセスによって、通常は自然界で認められる物質から分離された、(ii)人工的に生成された(例えば、化学的に合成された)、及び/又は(iii)人工的な環境又は背景(すなわち、通常は自然界で認められない環境又は背景)に存在する物質を指す。
【0059】
「iCM因子」という用語は、治療的効果として腫瘍においてCMをもたらすように、CM活性化因子及びCM抑制因子のレベルを変化させる分子を指す。
【0060】
「iCM遺伝子」という用語は、発現が変化した時、治療的効果として腫瘍においてCMを引き起こすことができる遺伝子を指す。
【0061】
「iS-CSC因子」という用語は、TR、及び、化学療法又は放射線療法に曝露されたがん細胞のアポトーシスに対する感受性に関連する増加を引き起こす様式で、TR活性化因子及びTR阻害剤のレベルを変化させる分子を指す。
【0062】
「iTR因子」という用語は、TRが自然に生じない組織においてTRを引き起こす様式でTR活性化因子及びTR阻害剤のレベルを変化させる分子を指す。前記iTR因子もまた、個々の因子の組合せも指す。したがって、本明細書に記載された因子のカクテルは、本出願において「iTR因子」と見なされる。
【0063】
「iTR遺伝子」という用語は、発現が変化した場合にそのような再生が通常はできない組織において誘導性組織再生をもたらすことができる遺伝子を指す。
【0064】
「核酸」という用語は、「ポリヌクレオチド」と区別せずに使用され、さまざまな態様において、ヌクレオシドの天然に存在するポリマー、例えばDNA及びRNA、並びにヌクレオシド又はヌクレオシド類似体の天然に存在しないポリマーを包含する。いくつかの態様において、核酸は、標準的なヌクレオシド(略称A、G、C、T、U)を含む。他の態様において、核酸は、1つ以上の非標準的なヌクレオシドを含む。いくつかの態様において、1つ以上のヌクレオシドは、天然に存在しないヌクレオシド又はヌクレオチド類似体である。核酸は、改変された塩基(例えば、メチル化塩基)、改変された糖(2'-フルオロリボース、アラビノース、又はヘキソース)、改変されたリン酸基、又はヌクレオシド若しくはヌクレオシド類似体(例えば、ホスホロチオエート又は5'-N-ホスホロアミダイト結合)、ロックド核酸若しくはモルホリノ間の他の結合を含む場合がある。いくつかの態様において、核酸は、DNA及びRNAと同様にホスホジエステル結合によって連結されたヌクレオシドを含む。いくつかの態様において、少なくともいくつかのヌクレオシドは、非ホスホジエステル結合によって連結されている。核酸は、一本鎖、二本鎖、又は部分的な二本鎖であってもよい。少なくとも部分的な二本鎖の核酸は、1つ以上のオーバーハング、例えば、5’及び/又は3’オーバーハングを含んでいてもよい。研究又は治療目的のためのRNA干渉(RNAi)、アプタマー又はアンチセンスベースの分子についての文脈で有用であることが当技術分野において既知の核酸改変(例えば、ヌクレオシド及び/又は非標準的なヌクレオシドの使用を含む骨格改変)が、本発明のさまざまな態様における使用のために考慮される。例えば、Crooke, S T(ed.) Antisense drug technology: principles, strategies, and applications, Boca Raton: CRC Press, 2008;Kurreck, J.(ed.) Therapeutic oligonucleotides, RSC biomolecular sciences. Cambridge: Royal Society of Chemistry, 2008を参照されたい。いくつかの態様において、改変すると、同じ長さ及びストランドのRNA又はDNAと比較して、例えば核酸のin vivoでの半減期及び/又は安定性が増加する。いくつかの態様において、改変すると、同じ長さ及びストランドのRNA又はDNAと比較して核酸の免疫原性が低下する。いくつかの態様において、核酸の一方又は両方のストランドにおけるヌクレオシドの5%~95%が改変されている。改変は、均一に又は不均一に位置していてもよく、改変の位置(例えば、中央付近、末端付近又は末端、一つ置きなど)を、所望の特性を強化するように選択してもよい。核酸は、検出可能な標識、例えば、蛍光染料、放射性原子などを含んでいてもよい。「オリゴヌクレオチド」は、比較的短い核酸、例えば、典型的には約4~約60のヌクレオチド長を指す。本明細書でポリヌクレオチドに言及する場合、DNAとRNAの両者、及びそれぞれの場合における一本鎖ストランドの形態と二本鎖ストランドの形態の両者(及び各一本鎖ストランドの分子の相補体)が提供されることが理解される。
【0065】
「ポリヌクレオチド配列」は、ポリヌクレオチド材料自体及び/又は特異的核酸を生化学的に特徴付ける配列情報(すなわち塩基に関する略語として使用される一連の文字)を指す場合がある。本明細書で提示するポリヌクレオチド配列は、別段指示がない限り5’から3’の方向で示す。
【0066】
「オリゴクローナル」という用語は、同様の特性、例えば形態又は同じ培養物における他の細胞のものとは異なる分化のマーカーの存在の有無を共有すると思われる細胞の小集団、典型的には2~1000個の細胞が起源である細胞の集団を指す。オリゴクローナル細胞は、これらの一般的な特性を共有しない細胞から単離され、増殖され、同様の細胞の元の集団に実質的に完全に由来する細胞の集団を生成する。
【0067】
「多能性幹細胞」という用語は、1つを超える分化細胞型に分化することが可能な動物細胞を指す。そのような細胞としては、hES細胞、卵割球/桑実胚細胞及びその派生したhED細胞、hiPS細胞、hEG細胞、hEC細胞、並びに間葉幹細胞、神経幹細胞、及び骨髄由来幹細胞を含む成体由来細胞がある。多能性幹細胞は、遺伝子改変されていても遺伝子改変されていなくてもよい。遺伝子改変された細胞としては、マーカー、例えば卵内でその同定を促進するための蛍光タンパク質を含んでいてもよい。
【0068】
「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸のポリマーを指す。「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は本明細書において区別せずに使用される。ペプチドは比較的短いポリペプチド、典型的には約2~60個のアミノ酸長である。本明細書のポリペプチドは、典型的には、標準的なアミノ酸(すなわち、タンパク質において最も一般的に認められる20個のL-アミノ酸)を含む。しかし、ポリペプチドは、ある特定の態様において、1つ以上の非標準的なアミノ酸(これは、天然に存在していても存在していなくてもよい)及び/又は当技術分野において既知のアミノ酸類似体を含んでいてもよい。ポリペプチド中のアミノ酸のうちの1つ以上は、例えば、化学物質、例えば炭水化物基、リン酸基、脂肪酸基、コンジュゲート、機能化するためのリンカーなどを添加することによって改変してもよい。非ポリペプチド部分が共有又は非共有結合しているポリペプチドは、依然として「ポリペプチド」と考えられている。ポリペプチドは、天然原料から精製しても、組換えDNA技術を使用して生成しても、化学的手段、例えば従来の固相ペプチド合成などを介して合成してもよい。「ポリペプチド配列」又は「アミノ酸配列」という用語は、ポリペプチド材料自体及び/又はポリペプチドを生化学的に特徴付ける配列情報(すなわち、アミノ酸名の略語として使用される、1文字又は3文字の一連のコード)を指す場合がある。本明細書に示すポリペプチド配列は、別段指示がない限りN末端からC末端の方向で示す。ポリペプチドは、環式であっても環式部分を含んでいてもよい。本発明は、天然に存在するポリペプチドの任意のアイソフォーム(例えば、mRNAの代替のスプライシング若しくはエディティングの結果として、又は遺伝子の異なる対立遺伝子、例えば、1つ以上の単一ヌクレオチド多型が異なる対立遺伝子の結果として、同じ遺伝子から生じる異なるタンパク質(典型的には、そのような対立遺伝子は、参照配列又はコンセンサス配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%以上同一であることになる))に関連する態様を包含することが理解されるであろう。ポリペプチドは、分泌のためにそれを標的とする配列、又は特定の細胞内コンパートメント(例えば、核)を標的とする配列を含んでいてもよく、及び/又は配列は、翻訳後改変若しくは分解のためにポリペプチドを標的とする。ある特定のポリペプチドは、翻訳後切断又は他のプロセッシングを受けて成熟ポリペプチドになる前駆体として合成してもよい。場合によっては、そのような切断は特定の活性化事象でのみ起こり得る。適切な場合、本発明は、前駆体ポリペプチドと関連する態様及びポリペプチドの成熟バージョンと関連する態様を提供する。
【0069】
「プールされたクローンの」という用語は、2つ以上のクローン集団を組み合わせて、マーカー、例えば遺伝子発現のマーカーの均一性を有する細胞集団を生じることにより得られる細胞集団を指し、クローン集団と類似しているが、全ての細胞が同じ最初のクローンに由来した集団ではない。前記プールされたクローン株は、単一又は混合型の遺伝子型の細胞を含んでもよい。プールされたクローン株は、クローン株が、相対的に早く分化し、又はそれらの増殖寿命の初期に望ましくない様式で変化する場合に特に有用である。
【0070】
「出生前」という用語は、胎盤哺乳動物の胚発生の段階を指し、それ以前では動物は子宮以外で生存することはできない。
【0071】
「原始幹細胞」という用語は、3つの全ての一次胚葉:内胚葉、中胚葉及び外胚葉、並びに神経堤の細胞に分化することが可能な多能性幹細胞を総称して指す。その結果、原始幹細胞の例としては、これらに限定されるものではないが、ヒト又は非ヒト哺乳動物ES細胞又は細胞株、卵割球/桑実胚細胞及びその派生したED細胞、iPS、並びにEG細胞が含まれることになる。
【0072】
「精製された」という用語は、天然で結合しているか、又は最初に生成されている場合に、大部分の構成成分から分離された薬剤又は物質(例えば、化合物)を指す。一般的に、そのような精製は、人間の手の動作を伴う。精製された薬剤又は物質は、部分的に精製されていても、実質的に精製されていても、純粋であってもよい。そのような薬剤又は物質は、例えば、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%超で純粋であってもよい。いくつかの態様において、核酸又はポリペプチドは、それが、調製物中に存在する全核酸又はポリペプチド材料の、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上それぞれ構成するように精製される。純度は、例えば、乾燥重量、クロマトグラフィートレーシングにおけるピークサイズ、分子存在量、ゲルにおけるバンド強度、分子存在量と相関する任意のシグナル強度、又は任意の当技術分野で許容される定量方法に基づいていてもよい。いくつかの態様において、水、緩衝液、イオン及び/又は低分子(例えば、前駆体、例えばヌクレオチド又はアミノ酸)が、精製された調製物に任意に存在していてもよい。精製された分子は、他の物質(例えば、他の細胞材料)からそれを分離することによって、又は所望の程度の純度を達成するような様式でそれを生成することによって調製してもよい。いくつかの態様において、精製された分子又は組成物は、任意の当技術分野で許容される精製方法を使用して調製された分子又は組成物を指す。いくつかの態様では、「部分的に精製された」は、細胞によって産生された分子がもはや細胞内に存在しないこと、例えば、細胞が溶解し、細胞材料のうちの少なくともいくつか(例えば、細胞壁、細胞膜、細胞小器官)が任意に除去されていることを意味する。
【0073】
「RNA干渉」(RNAi)という用語は、本明細書で使用される二本鎖ストランドのRNA(dsRNA)が、dsRNAのストランドに対する相補性を有する対応するmRNAの配列特異的分解又は翻訳抑制を誘発する現象を指すために当技術分野におけるその意味で一貫して使用する。dsRNAのストランドとmRNAとの間の相補性は、必ずしも100%である必要はないが、遺伝子発現の阻害(「サイレンシング」又は「ノックダウン」とも称される)を介在するのに十分であることだけは必要とするであろうことは理解される。例えば、相補性の程度は、ストランドが(i)RNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)におけるmRNAの切断をガイドすること;又は(ii)mRNAの翻訳抑制をもたらすことのいずれかができるようなものである。ある特定の態様において、RNAの二本鎖ストランドの部分は、約30ヌクレオチド長未満、例えば、17~29のヌクレオチド長である。ある特定の態様において、一方のdsRNAのストランドは、標的mRNAに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は100%相補的であり、他方のdsRNAのストランドは、一方のストランドに対して少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%相補的である。哺乳動物細胞における、RNAiは、適切な二本鎖ストランドの核酸を細胞に導入するか、又は核酸を細胞に発現させ、次いで細胞内でプロセッシングし、その中でdsRNAを得ることによって達成してもよい。RNAiを介在することが可能な核酸は、本明細書において「RNAi薬剤」を指す。RNAiを介在することが可能な代表的な核酸は、ショートヘアピン型RNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)及びマイクロRNA前駆体である。これらの用語は周知であり、本明細書では当技術分野におけるその意味で一貫して使用される。siRNAは、典型的には、互いにハイブリダイズして二本鎖を形成する2つの個別の核酸ストランドを含む。これらは、例えば、標準的な核酸合成技術を使用してin vitroで合成することができる。siRNAは、典型的には、各ストランド中に16~30、例えば、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30ヌクレオチド(nt)を有する二本鎖ストランドのオリゴヌクレオチドであり、二本鎖ストランドのオリゴヌクレオチドは、15~29のヌクレオチド長に二本鎖ストランドの部分を含み、ストランドのいずれか若しくは両方は、例えば1~5ヌクレオチド長の3’オーバーハングを含んでいてもよいか、又は、いずれかの若しくは両方の末端はブラントであってもよい。いくつかの態様において、siRNAは、19~25のnt、例えば、21~23のヌクレオチド長のストランドを含み、一方又は両方のストランドは、1~2ヌクレオチドの3’オーバーハングを含む。siRNAの二本鎖ストランドの部分の一方のストランド(「ガイドストランド」又は「アンチセンスストランド」と称する)は、mRNA中の標的領域と実質的に(例えば、少なくとも80%以上、例えば、85%、90%、95%又は100%)相補的であり(例えば、3、2、1又は0個のミスマッチヌクレオチドを有し)、他方の二本鎖ストランドの部分は、一方の二本鎖ストランドの部分に対して実質的に相補的である。多くの態様において、ガイドストランドは、mRNA中の標的領域に対して100%相補的であり、他のパッセンジャーストランドは、一方の二本鎖ストランドの部分に対して100%相補的である(さまざまな態様において、ガイドストランドの3’オーバーハング部分が存在する場合、ガイドストランドがmRNAにハイブリダイズしたときにmRNAに対して相補的であってもなくてもよいことを理解されたい)。いくつかの態様において、shRNA分子は、ステムループを含む核酸分子であり、二本鎖ストランドのステムは16~30ヌクレオチド長であり、ループは約1~10ヌクレオチド長である。siRNAは、さまざまな改変ヌクレオシド、ヌクレオシド類似体を含んでいてもよく、化学的に又は生物学的に改変された塩基、改変骨格などを含んでいてもよい。限定されるものではないが、RNAiに有用であることが当技術分野において認識された任意の改変を使用することができる。いくつかを改変すると、安定性、細胞取り込み、潜在力などが増加する。いくつかを改変すると、免疫原性又はクリアランスが減少する。ある特定の態様において、siRNAは、約19~23(例えば、19、20、21、22又は23)ヌクレオチド長の二本鎖、任意に、デオキシリボヌクレオチドから構成され得る1~5ヌクレオチド長の1つ又は2つの3’オーバーハングを含む。shRNAは、主に非自己相補領域によって分離された2つの相補的部分を含む単一の核酸ストランドを含む。相補的部分はハイブリダイズして二本鎖構造を形成し、非自己相補領域は、二本鎖の一方のストランドの3’末端及び他方のストランドの5’末端を連結するループを形成する。shRNAは細胞内プロセッシングを受けてsiRNAを生成する。典型的には、ループは1~8、例えば、2~6ヌクレオチド長である。
【0074】
マイクロRNA(miRNA)は、配列特異的様式で遺伝子発現を阻害する約21~25ヌクレオチドの小さい天然に存在する非コード一本鎖ストランドのRNA(哺乳動物系における)である。これらは、より大きな前駆体(pri-miRNA)から生成される不完全な相補性のうちの1つ以上の領域を含むことが多い二本鎖を含むショートヘアピン型(約70ヌクレオチド長)から構成される特徴的な二次構造を有する前駆体(プレmiRNA)から細胞内に生成される。天然に存在するmiRNAは、典型的には、その標的mRNAに対して部分的にのみ相補的であり、翻訳抑制を介して作用することが多い。内因性miRNA又はmiRNA前駆体でモデル化されたRNAi薬剤は本発明の特定の態様において有用である。例えば、1つのストランドをハイブリダイズしてmiRNA及びその標的mRNAによって形成された二本鎖を模倣した1つ以上のミスマッチ又はバルジを有するmRNAを標的とするようにsiRNAを設計することができる。そのようなsiRNAは、miRNA模倣体又はmiRNA様分子と称してもよい。miRNA模倣体は、その構造が天然に存在するmiRNA前駆体のものを模倣する前駆体核酸によってコードされていてもよい。
【0075】
ある特定の態様において、RNAi薬剤は、siRNA(例えば、互いにハイブリダイズすることができる2つの個別のストランドとして)、shRNA又はマイクロRNA前駆体を転写するための鋳型を含むベクター(例えば、プラスミド又はウイルス)である。典型的には、siRNA、shRNA又はmiRNA前駆体をコードする鋳型は、当技術分野において既知の発現制御配列(例えば、プロモーター)に操作可能に連結される。そのようなベクターは、鋳型を脊椎動物細胞、例えば、哺乳動物細胞に導入するために使用することができ、siRNA、shRNA又はmiRNA前駆体の一過性の発現又は安定な発現をもたらす。前駆体(shRNA又はmiRNA前駆体)は、細胞内でプロセッシングを受けてsiRNA又はmiRNAを生成する。
【0076】
一般的に、低分子RNAi薬剤、例えばsiRNAは、化学的に合成することができるか、又は、その後ハイブリダイズする2つの個別のストランドとして、若しくはその後処置されてsiRNAを生成するshRNAとして、DNA鋳型からin vitro又はin vivoで転写することができる。RNAi薬剤、特に改変を含むものは、化学的に合成されることが多い。オリゴヌクレオチドのための化学的合成方法は、当技術分野において周知である。
【0077】
「低分子」という用語は、質量が約2キロダルトン(KDa)未満の有機分子である。いくつかの態様において、低分子は約1.5KDa未満又は約1KDa未満である。いくつかの態様において、低分子は、約800ダルトン(Da)、600Da、500Da、400Da、300Da、200Da又は100Da未満である。低分子は少なくとも50Daの質量を有することが多い。いくつかの態様において、低分子は、複数の炭素-炭素結合を含み、1つ以上のヘテロ原子及び/又はタンパク質との構造的相互作用(例えば、水素結合)に重要な1つ以上の官能基、例えば、アミン、カルボニル、ヒドロキシル又はカルボキシル基、及びいくつかの態様において少なくとも2つの官能基を含む場合がある。低分子は、上記官能基のうちの1つ以上で任意に置換された、1つ以上の環式炭素若しくは複素環式構造、及び/又は、芳香族若しくはポリ芳香族構造を含むことが多い。いくつかの態様において、低分子は非高分子である。いくつかの態様において、低分子はアミノ酸ではない。いくつかの態様において、低分子はヌクレオチドではない。いくつかの態様において、低分子はサッカライドではない。
【0078】
「対象」という用語は、任意の多細胞動物とすることができる。対象は、脊椎動物、例えば哺乳動物又は鳥類であることが多い。代表的な哺乳動物としては、例えば、ヒト、非ヒト霊長目、齧歯動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ)、有蹄動物(例えば、ヒツジ、ウシ、ウマ、ヤギ種)、イヌ及びネコがある。対象は、例えば、実験、診断及び/若しくは治療目的で化合物が送達されることになるか、そこからサンプルが得られるか、又は診断手順(例えば、組織損傷を評価するために及び/又は本発明の化合物の効果を評価するために使用されることになるサンプル又は手順)が行われることが多い個体である。
【0079】
「組織損傷」という用語は、細胞、組織、器官又は他の身体構造に対する損傷又は傷害の任意のタイプを指すために本明細書で使用される。この用語は、さまざまな態様において、疾患に起因する変性、身体的外傷又は外科手術に起因する損傷、有害物質への曝露によって引き起こされる損傷、及び、細胞、組織、器官又は他の身体構造の構造及び/又は機能における他の破壊を包含する。
【0080】
「組織再生」又は「TR」という用語は、損失、損傷若しくは変性後の、組織、器官若しくは他の身体構造又はこれらの一部の、少なくとも部分的な再生、置換え、回復又は再増殖を指し、前記組織再生は、本発明に記載の方法がなければ行われない場合がある。組織再生の例としては、軟骨、骨、筋肉、腱及び靭帯の再増殖を含む切断された指又は四肢の再増殖、傷害又は疾患に起因して損失した骨、軟骨、皮膚又は筋肉の瘢痕のない再増殖があり、組織又は器官が、組織若しくは器官の正常なサイズ、又は傷害若しくは疾患より前のそのサイズに近くなるような損傷した又は罹患した器官のサイズ及び細胞数の増加を伴う。組織のタイプに応じて、組織再生は、さまざまな異なるメカニズム、例えば、元から現存する細胞及び/若しくは組織の移植(例えば、細胞遊走を介した)、成体体性幹細胞若しくは他の前駆細胞の分裂及びその子孫のうちの少なくともいくつかの分化、並びに/又は、細胞の脱分化、分化転換及び/若しくは増殖を介して起こる場合がある。
【0081】
「部分的再プログラミング」という用語は、iTRと同義と見なされる。
【0082】
「TR活性化因子遺伝子」という用語は、胎児及び成体細胞において発現しないが、発生の胚段階において発現すると、TRを促進する遺伝子を指す。
【0083】
「TR阻害遺伝子」という用語は、胎児及び成体動物において発現すると、TRを阻害する遺伝子を指す。
【0084】
「処置」、「処置すること」、「治療法」、「治療的」という用語及び対象に関する類似の用語は、対象の医学的及び/又は外科的管理を提供することを指す。処置は、これらに限定されるものではないが、対象に化合物又は組成物(例えば、医薬組成物)を投与することを含み得る。本発明による対象の処置は、典型的には、例えば、組織損傷に罹患したか又は組織損傷に罹患することが予測される対象(例えば、外科手術を受けることになる対象)における再生を促進する試みで行われる。処置の効果は、再生の増加、瘢痕の減少、及び/若しくは、組織損傷後の構造的若しくは機能的転帰の改善(処置非存在下で転帰と比較した)を一般的に含む場合があり、並びに/又は、変性疾患の重症度若しくは進行における改善若しくは減少を含む場合がある。
【0085】
特にポリペプチドに適用される「バリアント」という用語は、1つ以上のアミノ酸の変化、例えば、付加、欠失及び/又は置換によってそのポリペプチド(ときとして「元のポリペプチド」と称される)とは異なるポリペプチドを指す。ときとして元のポリペプチドは、天然に存在するポリペプチド(例えば、ヒト又は非ヒト動物からのもの)又はそれと同一のポリペプチドである。バリアントは、天然に存在していても、例えば、組換えDNA技術又は化学的合成を使用して生成してもよい。付加は、ポリペプチド内への挿入とすることができるか、又は、N若しくはC末端における付加とすることができる。いくつかの態様において、置換、欠失又は付加されるアミノ酸の数は、例えば、約1~30、例えば、約1~20、例えば、約1~10、例えば、約1~5、例えば、1、2、3、4又は5個とすることができる。いくつかの態様において、バリアントは、その配列が少なくとも50アミノ酸、少なくとも100アミノ酸、少なくとも150アミノ酸、又はそれを超える、最大元のポリペプチドの全長にわたって元のポリペプチドの配列と相同である(しかし元のポリペプチドの配列において同一ではない)ポリペプチドを含み、例えば、バリアントポリペプチドの配列は、少なくとも50アミノ酸、少なくとも100アミノ酸、少なくとも150アミノ酸以上、最大で元のポリペプチドの全長にわたって、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上元のポリペプチドの配列に対して同一である。いくつかの態様において、バリアントは、元のポリペプチドの長さの少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%にわたって、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%以上元のポリペプチドに対して同一のポリペプチドを含む。いくつかの態様において、バリアントは、少なくとも1つの機能的又は構造的ドメイン、例えば、Conserved Domain Database (CDD) of the National Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nih.gov)において同定されたドメイン、例えば、NCBIキュレーテッドドメインを含む。
【0086】
いくつかの態様において、バリアント又は断片の、1つ、1つを超える、又は全ての生物学的機能若しくは活性は、元の分子の対応する生物学的機能又は活性のものと実質的に類似している。いくつかの態様において、機能的バリアントは、元のポリペプチドの活性の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上、例えば、ほぼ同等の活性を保持する。いくつかの態様において、バリアントの活性は、元の分子の活性の最大およそ100%、およそ125%又はおよそ150%である。他の非限定的な態様において、特定の効果をもたらすことを必要とするバリアントの量又は濃度が、その効果をもたらすために必要とする元の分子の量又は濃度の0.5~5倍である場合、バリアント又は断片の活性は、元の分子の活性と実質的に類似していると考えられる。
【0087】
いくつかの態様において、バリアントにおけるアミノ酸「置換」は、1つのアミノ酸を、同様の構造的及び/又は化学的特性を有する他のアミノ酸と置き換えた結果、すなわち、保守的なアミノ酸置換えである。「保守的な」アミノ酸置換は、関与する残基の種類又は特性、例えば側鎖サイズ、極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性のいずれかにおける類似性に基づいて行ってもよい。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン及びメチオニンがある。極性(親水性)、中性アミノ酸としては、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン及びグルタミンがある。正電荷の(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リジン及びヒスチジンがある。負電荷の(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸及びグルタミン酸がある。特定の基内でのある特定の置換は、特定の目的、例えば、イソロイシンによるロイシン(又は逆もまた同様)、トレオニンによるセリン(又は逆もまた同様)、又はグリシンによるアラニン(又は逆もまた同様)の置換えであってもよい。無論、非保守的置換は、同様に機能を保持することに適合することが多い。いくつかの態様において、置換又は欠失は、活性に重要なアミノ酸を変化させないか又は欠失させない。挿入又は欠失は、約1~20アミノ酸、例えば、1~10アミノ酸であってもよい。場合によっては、より大きいドメインを、機能に実質的に影響を与えることなく除去してもよい。本発明の特定の態様において、バリアントの配列は、天然に存在する酵素の配列に対して、合計で5、10、15、又は20アミノ酸以下の付加、欠失、又は置換を作製することによって得ることができる。いくつかの態様において、ポリペプチド中のアミノ酸の1%、5%、10%、又は20%以下は、元のポリペプチドに対する、挿入、欠失、又は置換である。さまざまな種の間で保存されたアミノ酸残基は、保存されていないアミノ酸よりも活性にとって重要である可能性が高いために、目的の活性を実質的に除去することなく又は減少させることなくアミノ酸残基を置換え、付加、又は欠失させてもよいことを判定する際のガイダンスは、特定のポリペプチドの配列を相同のポリペプチドのものと(例えば、他の生物からのもの)と比較し、高相同性の領域(保存領域)において作製されたアミノ酸配列の変化の数を最小化することによって、又はアミノ酸を相同の配列で認められるものと置き換えることによって得てもよい。
【0088】
いくつかの態様において、ポリペプチドのバリアントは、非相同のポリペプチド部分を含む。非相同部分は、元のポリペプチドに存在しないか又はそれと相同ではない配列を有することが多い。非相同部分は、例えば、5~約5,000のアミノ酸長以上であってもよい。5~約1,000のアミノ酸長であることが多い。いくつかの態様において、非相同部分は、異なるポリペプチドにおいて認められる配列、例えば、官能ドメインを含む。いくつかの態様において、非相同部分は、ポリペプチドを精製、発現、可溶化、及び/又は検出するのに有用である配列を含む。いくつかの態様において、非相同部分は、ポリペプチド「タグ」、例えば、親和性タグ又はエピトープタグを含む。例えば、タグは、親和性タグ(例えば、HA、TAP、Myc、6xHis、Flag、GST)、蛍光又は発光タンパク質(例えば、EGFP、ECFP、EYFP、セルリアン、DsRed、mCherry)、溶解性強化タグ(例えば、SUMOタグ、NUSAタグ、SNUTタグ、又はバクテリオファージT7のOcrタンパク質のモノマー突然変異体)とすることができる。例えば、Esposito D and Chatterjee D K. Curr Opin Biotechnol.; 17(4):353-8(2006) を参照されたい。いくつかの態様において、タグは複数の機能を果たす場合がある。タグは比較的小さく、例えば、数個のアミノ酸から約100アミノ酸長であることが多い。いくつかの態様において、タグは100を超えるアミノ酸長、例えば、最大約500アミノ酸長以上である。いくつかの態様において、ポリペプチドは、例えば、N又はC末端融合物としてN又はC末端に位置するタグを有する。ポリペプチドは、複数のタグを含んでいてもよい。いくつかの態様において、6×Hisタグ及びNUSタグが、例えばN末端に存在する。いくつかの態様において、タグは、例えば、プロテアーゼによってそれをポリペプチドから除去することができるように切断可能である。いくつかの態様において、これは、元のポリペプチドと相同である部分をコードする配列とタグとの間にプロテアーゼ切断部位をコードする配列を含むことによって達成される。代表的なプロテアーゼとしては、例えば、トロンビン、TEVプロテアーゼ、因子Xa、PreScissionプロテアーゼなどがある。いくつかの態様において、「自己切断させる」タグを使用する。例えば、国際特許出願PCT/US05/05763号を参照されたい。タグをコードする配列は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関しては5’又は3’(又は両方)に配置してもよい。いくつかの態様において、タグ又は他の非相同配列は、ポリペプチドリンカーによってポリペプチドの残りから分離される。例えば、リンカーは、短いポリペプチド(例えば、15~25アミノ酸)とすることができる。リンカーは、低分子アミノ酸残基、例えばセリン、グリシン及び/又はアラニンからなることが多い。非相同のドメインは、膜貫通ドメイン、分泌シグナルドメインなどを含んでいてもよい。
【0089】
本発明の特定の態様において、非相同部分を任意に排除している断片又はバリアントは、存在する場合、その3次元構造(実際の又は予測される構造のいずれか)を元のポリペプチドの構造に重ね合わせたときに、重複体積は、元のポリペプチドの構造の総体積の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%になるような元のポリペプチドと十分な構造的類似性を有する。断片又はバリアントの部分的又は完全な3次元構造は、タンパク質を結晶化することによって判定してもよく、これは、標準的な方法を使用して行うことができる。あるいは、NMR溶液構造も、標準的な方法を使用して生成してもよい。モデル化プログラム、例えばMODELER(Sali, A. and Blundell, T L, J Mol Biol, 234,779-815,1993)、又はその他のモデル化プログラムを、予測される構造を生成するために使用することができる。関連するポリペプチドの構造又は予測される構造が利用可能であり、モデルはその構造に基づいていてもよい。PROSPECT-PSPPプログラム集を使用することができる(Guo, J T, et al., Nucleic Acids Res. 32 (Web Server issue): W522-5,Jul.1,2004)。本発明の態様がポリペプチドのバリアントに関連する場合、バリアントをコードするポリヌクレオチドが提供されることは理解されるであろう。
【0090】
「ベクター」という用語は、核酸分子を細胞、例えば宿主細胞、例えばhES細胞、hEC細胞、又はEVを産生するhES由来胚性前駆細胞株への侵入を介在する、例えば移入する、輸送することが可能な核酸又はウイルス又はこれらの一部分を指すために本明細書で用いられ、ベクターが核酸である場合、移入されるべき核酸分子は、ベクター核酸分子へ一般的に連結され、例えば挿入される。核酸ベクターは、自律複製を指示する配列(例えば、複製起点)を含んでいてもよいか、又は宿主細胞DNAへ核酸の一部又は全てを組み込ませることを可能にするのに十分な配列を含んでいてもよい。有用な核酸ベクターとしては、例えば、DNA又はRNAプラスミド、コスミド、及び天然に存在する又は改変されたウイルスゲノム又はこれらの一部、又はウイルスカプシド中にパッケージングすることができる核酸(DNA又はRNA)がある。プラスミドベクターは、典型的には、複製起点及び1つ以上の選択可能なマーカーを含む。プラスミドは、ウイルスゲノム(例えば、ウイルスプロモーター、エンハンサー、プロセッシング又はパッケージングシグナルなど)の一部又は全てを含んでいてもよい。核酸分子を細胞中に導入するために使用することができるウイルス又はその一部は、ウイルスベクターと称される。有用なウイルスベクターとしては、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス及び他のポックスウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)などがある。ウイルスベクターは、宿主細胞中に導入する場合、感染性ウイルスを生成するのに十分なウイルス遺伝的情報を含んでも含んでいなくてもよく、すなわち、ウイルスベクターは複製欠損であってもよく、そのような複製欠損ウイルスベクターが治療的使用に好ましい場合がある。十分な情報がない場合、必ずしも必要ではないが、宿主細胞によって又は細胞に導入された別のベクターによって供給してもよい。移植されることになる核酸は、天然に存在するか又は改変されたウイルスゲノム又はその一部へ組み込まれても、分離された核酸分子としてウイルス又はウイルスカプシド内に存在していてもよい。ウイルスカプシド中にパッケージングすることができる核酸を、転写を指示するのに十分な、並びに/又は宿主細胞ゲノムに一体化することができる核酸をもたらすのに及び/若しくは感染性ウイルスをもたらすのに十分なウイルス遺伝情報を典型的には含むウイルスゲノムの一部又は全てを含むある特定のプラスミドベクターも、ときとして当技術分野においてウイルスベクターと称するであろうことは理解される。ベクターは、ベクターで形質転換又はトランスフェクトされているか又はされていない細胞の同定及び/又は選択において使用するのに好適なマーカーをコードする1つ以上の核酸を含んでいてもよい。マーカーとしては、例えば、抗生物質に対する抵抗性又は感受性のいずれかを増加又は減少させるタンパク質(例えば、抗生物質、例えばピューロマイシン、ハイグロマイシン又はブラストサイジンに対する抵抗性を与えるタンパク質をコードする抗生物質抵抗性遺伝子)又は他の化合物、その活性が当技術分野において既知のアッセイによって検出可能な酵素(例えば、βガラクトシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)、及び形質転換又はトランスフェクトされた細胞の表現型に検出可能に影響を与えるタンパク質又はRNA(例えば、蛍光タンパク質)がある。発現ベクターは、操作可能に連結された核酸の転写を指示するのに十分な調節配列、例えば発現制御配列、例えばプロモーターを含むベクターである。調節配列は、エンハンサー配列又は上流の活性化因子配列も含んでいてもよい。ベクターは、5’リーダー又はシグナル配列を任意に含んでいてもよい。ベクターは、切断及び/又はポリアデニル化シグナル及び/又は3’非翻訳領域を任意に含んでいてもよい。ベクターは、制限酵素に関する1つ以上の適切に配置された部位を含むことが多く、発現されることになる核酸をベクターへ導入するのを促進する。発現ベクターは、発現に十分なシス作用エレメントを含み;発現に必要な又は有用な他のエレメントは、宿主細胞又はin vitro発現系によって供給することができる。
【0091】
さまざまな技術を、核酸分子を小胞中に導入するために用いてもよい。そのような技術には、リン酸カルシウム、陽イオン脂質、陽イオンポリマーなどの化合物を使用した化学物質促進トランスフェクション、リポソーム介在性トランスフェクション、エレクトロポレーション、粒子ボンバードメント又はマイクロインジェクションなどの非化学的方法、及び目的の核酸分子を含むウイルスを用いた感染(ときとして「形質導入」と称される)がある。ベクターを取り込み、核酸を典型的には発現する小胞を同定及び/又は選択するためにマーカーを使用することができる。小胞は、本明細書に記載の濾過、遠心分離又は磁気ビーズ単離工程などで精製された適切な培地中で維持され、臨床グレードの製剤を確立するためにすることができる。
【0092】
再プログラミング因子、例えばKLF4、OCT4、SOX2及びMYCを用いる再プログラミングは、老化のさまざまな特徴、例えばエピジェネティックス的プロファイル、テロメア長及びミトコンドリア適応度を胚状態へリセットすることができる(1)。したがって、それは、組織再生のための細胞の供給源として、高齢ドナーの細胞から若い組織を導くための手段を提供する(2)。最近、トランスジェニックマウスにおける早老症モデルにおいてKLF4、OCT4、SOX2及びMYCのパルスされたin vivo発現を用いる部分的再プログラミングの報告が、腫瘍を形成することなく、筋肉及び膵損傷に対する再生を増加させることが示された(3)。しかし、特にヒトの場合、細胞のアイデンティティの喪失も、未制御の増殖も、及び/又は腫瘍の形成もない部分的な再プログラミングを達成するために、in vivoで再プログラミング因子の発現を制御するためのそのようなトランスジェニックモダリティーに対する実践的な障壁がある。生殖系細胞及び多能性細胞からの細胞外小胞(EV)は、ヒト体細胞を多能性へ再プログラムする手段として本出願人らにより以前に開示されている(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、発明の名称が「Methods of Reprogramming Animal Somatic Cells」である米国特許出願公開2017/0152475号)。加えて、本出願人らは、血管新生活性を誘導するために、及び血管を安定化するために有用である、胚性前駆細胞株により生成されたエクソソームの使用を以前に開示した(米国特許出願公開US2016/0108368 A1号)。
【0093】
生殖系細胞及び多能性細胞からのEV、加えて胚性前駆細胞株からのEVは、外因性トランスジーンからの多能性因子の発現なしでの誘導性組織再生(iTR)のためのEFT及びNTのモジュレーターとして本明細書に記載されている。生殖系細胞及び多能性細胞からのEVは、EC細胞から精製されたエクソソームを含む。EC細胞は、その細胞の遺伝子改変、クローン増殖、スケールアップの容易さのため、多能性細胞由来EVの供給源として好ましい態様である。iTR EVを産生する場合、ReCyte 1と称されるEC細胞株は、TERT、LIN28B、SOX2、MYC、NANOG及びOCT4の外因的導入により改変され、その結果、対応するmRNAの量が、天然の細胞の少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも10倍、最も好ましくは少なくとも50倍、高く発現する。EVの免疫原性の低下も、例えばβ2-ミクログロブリンのノックアウトによるHLAクラスIのノックアウト及びHLA-Gの過剰発現により達成してもよい。エクソソームは、標準的な細胞培養容器又はバイオリアクターで培養して得た細胞の細胞上清から、分画遠心分離、続いて超遠心分離で単離される。当技術分野で公知の追加の単離方法には、密度勾配遠心法の使用、クッションの使用、サイズ排除濾過又は沈澱が含まれる。好ましい精製方法は、エクソソーム抗原、例えばテトラスパニンC9又はCD81による免疫磁気単離技術の使用である。
【0094】
胚性前駆細胞からのエクソソームは、細胞をEFTのマーカーであるCOX7A1の減少によって示されるような「胚様」状態(EFT(胚から胎児への転換)前)へ再プログラムするために用いられる(4)。
【0095】
本発明の1つの側面において、COX7A1遺伝子発現は、胚から胎児への転換(EFT)のマーカーとして用いられる。
【0096】
COX7A1は、線維芽細胞を多能性幹細胞へ再プログラムする過程において極めて早期に下方制御される。多能性幹細胞(hES及びiPS)やその分化した子孫は、COX7A1をほとんど発現しない(4)。COX7A1の量は、その子孫が胚性前駆細胞株の場合のように部分的に分化しているか(4)、又は、例えば脂肪細胞のように完全に成熟表現型へ完全に分化しているか(4, 8)にかかわらず、最小のままである。低いCOX7A1発現が胚状態の指標であるならば、再プログラミングは、F/A細胞において観察される高いCOX7A1の量を、胚性幹細胞及び胚性幹細胞に由来する細胞(胚性前駆細胞)において観察される低い量にリセットすると予想されるであろう。部分的に再プログラムされた細胞でさえも、それらが、多能性になる前に部分的分化状態(前駆状態)を経る必要があるならば、COX7A1の量は低いであろう。
【0097】
COX7A1発現の変化は、Ohnuke(9)からの全トランスクリプトームマイクロアレイ発現データを用いて、再プログラミングの開始後の時間経過に対してプロットされた。COX7A1発現の変化は、再プログラミング段階と共にプロットされ、Olova(10)によりプロットされているようなエピジェネティックス的年齢の変化を含んだ。
図1及び表1に示すように、COX7A1レベルは、7日目までに開始時レベルの約10%へ下降しており、その7日目とは、Tanabeにより記載されているように、細胞が多能性関連遺伝子を発現し始めているが、それらの最初の細胞アイデンティティに戻ることがまだ可能である「部分的再プログラミング状態」に達している時である(11)。7日目時点において、再プログラムされた細胞は、それらのエピジェネティックス的年齢を約10年間、減少させている(
図1及び(10))。その後、COX7A1レベルは、20日目時点において7日目レベルに戻る(不完全に再プログラムされた状態)前に、10日目及び15日目時点で増加している。したがって、1週間以内での約90%分のCOX7A1遺伝子発現の急激な減少は、部分的に再プログラムされており、より若いエピジェネティックス的状態へ若返っている細胞を同定するのに有用である。部分的再プログラミングは、再生させる働きがより高い状態として説明されており、腫瘍形成なしに、組織再生の向上及び瘢痕形成の低下を生じることがin vivoで示されている(12~17)。細胞が完全に再プログラムされる前の11日目及び15日目時点におけるCOX7A1発現の一過性増加は、均一な中程度のCOX7A1発現が再プログラムされた状態と適合しないことを示している。
【0098】
本発明の細胞外小胞は、比較的に非免疫原性であると予想されるが、とはいえ、宿主細胞において、β2-ミクログロブリンを含むHLAクラスIの量を低下させ、及び/又はHLA-Gを発現させることにより、免疫の観測可能性が低いかもしれない(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、発明の名称が「HLA G-Modified Cells and Methods」である国際公開第2014/022423号)。
【0099】
他の発明の方法は、生体、機能組織、器官又は細胞含有組成物のex vivo生成でiTR因子を含有するEVを使用することにより、損傷によって失われた組織又は器官を修復又は置き換えることを含む。例えば、個体から除去された細胞又は組織(将来のレシピエント、同じ種の個体又は異なる種の個体)は、場合によっては、マトリックス、足場(例.3次元足場)又はモールド(例.生体に適合し場合によっては生分解性の材料、例えばHyStem-Cのようなポリマーを含む)と共にin vitroで培養してもよく、これらの機能組織又は器官への発生は、iTR因子を含有するEVと接触させることによって促進することができる。足場、マトリックス又はモールドは、コラーゲンのような天然に存在するタンパク質、ヒアルロン酸若しくはアルギネート(又はこれらの化学的に改変された誘導体)、乳酸、カプロラクトン、グリコール酸などの合成ポリマー若しくはコポリマー、自己組織化ペプチド、又は心臓弁、腸粘膜、血管及び気管などの組織に由来する脱細胞化マトリックスの少なくとも一部からなってもよい。いくつかの態様において、足場はヒドロゲルを含む。ある特定の態様において、足場は、iTR因子を含有する小胞で被覆又は含浸されていてもよく、この因子は足場から経時的に拡散する可能性がある。ex vivoで生成後、組織又は器官を、対象に又はその上に移植する。例えば、組織又は器官は移植することもでき、また、皮膚のようなある特定の組織の場合は、身体の表面に配置してもよい。組織又は器官は、in vivoで発達が継続される場合がある。いくつかの態様において、少なくとも一部はex vivoで生成される組織又は器官は、膀胱、血管、骨、筋膜、肝臓、筋肉、皮膚パッチなどである。好適な足場は、例えば、細胞外マトリックス(ECM)を模倣してもよい。
【0100】
場合によっては、iTR因子を含有するEVは、ex vivoで生成された組織又は器官の移植前、移植中、及び/又は移植後に対象に投与される。いくつかの側面において、生体適合性材料は、用いる濃度でin vitroで細胞に対して実質的に非毒性であるか、又は生存対象に投与する材料の場合、用いる量及び位置で対象の細胞に対して実質的に非毒性な材料であり、対象に、免疫学的反応又は炎症性反応、許容できない瘢痕組織形成などの大幅に有害又は不都合な影響を誘導しないか又はもたらすことはない。ある特定の生体適合性材料は、対象のうちのわずかな割合、通常、約5%、1%、0.5%又は0.1%未満で、そのような有害反応を誘導する場合があることは理解されるであろう。
【0101】
いくつかの態様において、iTR遺伝子発現の広範囲のパターンをもたらすことが可能なものを含む、iTR因子が負荷されたEV、例えばエクソソームを被覆又は含浸するマトリックス又は足場が、場合によっては細胞と組み合わせて再生を必要とする対象に移植される。マトリックス又は足場は、再生が望まれる組織又は器官の形状であってもよい。細胞は、そのような組織又は器官をもたらす1つ以上のタイプの、及び/又はそのような組織又は器官において認められる1つ以上のタイプの、幹細胞であってもよい。
【0102】
いくつかの態様において、iTR因子を含有するEVは、組織損傷の位置に直接的に又はその近傍に投与する。「組織損傷の位置に直接的に」は、組織損傷の位置に化合物若しくは組成物を注入するか、又は化合物若しくは組成物を組織損傷の位置で広げる、注ぐ、そうでなければ直接的に接触させることを包含する。いくつかの態様において、投与が、組織損傷の位置の目に見えるか、そうでなければ明白な端部から最大約10cm以内で、又は損傷した組織若しくは器官内の少なくとも一部に位置する血管(例えば、動脈)に行われる場合、投与は「組織損傷の位置の付近に」とみなされる。「組織損傷の位置の付近に」投与することは、ときとして損傷器官内であるが、損傷が明白ではない位置に投与することである。いくつかの態様において、組織、器官又は他の構造が、損傷したか又は喪失した後に、iTR因子を含有するEVを、組織、器官又は他の構造の残りの部分に適用する。いくつかの態様において、iTR因子を含有するEVは、身体に付着したままの切断された指又は四肢の末端に適用して、損失した部分の再生を強化する。いくつかの態様において、切断された部分は外科的に再付着し、iTR因子を含有するEVを創傷の片面又は両面に適用する。いくつかの態様において、iTR因子を含有するEVは、移植された器官又はこれらの一部の生着、治癒又は再生を強化するために投与する。いくつかの態様において、iTR因子を含有するEVは、神経再生を強化するために使用する。例えば、iTR因子を含有するEVは、切断された神経、例えば近位及び/又は遠位の切断末端付近に注入してもよい。いくつかの態様において、iTR因子を含有するEVは、神経末端及び介在する間隙が封入されている生物学的又は合成材料から構成される管である人工神経導管内に配置する。iTR因子を含有するEVは、その制御放出を経時的に促進するマトリックス中に製剤化してもよい。前記マトリックスは、架橋ヒアルロン酸若しくはPEGDAで架橋されたカルボキシメチルヒアルロネートを含むヒアルロン酸からなるポリマー又はPEGDAによって架橋されたカルボキシメチルヒアルロネートとカルボキシメチル改変ゼラチン(HyStem-C)の混合物のようなポリマーといった生体適合性で場合によっては生分解性の材料を含んでいてもよい。
【0103】
いくつかの態様において、iTR因子を含有するEVは、TERTのmRNAと、本明細書に記載されたLIN28B、OCT4、SOX2、MYC及びNANOGのmRNAを含有し、iTRを誘導するために、PEGDAによって架橋されたカルボキシメチルヒアルロネートとカルボキシメチル改変ゼラチン(HyStem-C)中に、局在化及び遅延放出のために製剤化されいても、されていなくてもよい。
【0104】
iTM及びiCM因子、例えばCOX7A1に対するmRNAを、同様に、胎児又は成体細胞に由来するエクソソームに導入することができ、そのエクソソームは、iTM又はiCMを誘導するために、生理学的溶液、例えば生理食塩水で投与しても、PEGDAによって架橋されたカルボキシメチルヒアルロネートとカルボキシメチル改変ゼラチン(HyStem-C)で遅延放出してもよい。
【0105】
いくつかの態様において、iTR因子を含有するEV又は因子の組合せを、毛包の生成及び/又は毛髪の成長促進のために使用する。いくつかの態様において、iTR因子を含有するEVは、通常は毛髪を形成しない上皮細胞から毛包の再生を誘発する。いくつかの態様において、iTR因子を含有するEVは、男性又は女性における、抜け毛、薄毛、部分的又は完全な脱毛症を処置するために使用する。いくつかの態様において、脱毛症は、毛髪がないか若しくは実質的にないか、又は毛髪が不足しており、例えば、頭の頂部、後部及び/又は側部上で成長することが多い状況である。いくつかの態様において、薄毛は、正常又は平均よりも毛髪が少ないか、過去の個体よりも毛髪が少ないか、個体が望ましいと考えるものよりも毛髪が少ない状況である。いくつかの態様において、iTR因子を含有するEVは、眉毛又は睫毛の成長を促進するために使用する。いくつかの態様において、iTR因子を含有するEVは、(男性及び女性に影響を与える場合がある)アンドロゲン性脱毛症又は「男性型脱毛症」を処置するために使用する。いくつかの態様において、iTR因子を含有するEVは、頭皮上にパッチ状の抜け毛を伴う円形脱毛症、全ての頭髪の損失を伴う全頭脱毛症、頭部及び身体からの全ての毛髪の損失を伴う全身性脱毛症を処置するために使用する。いくつかの態様において、iTR因子を含有するEVは、毛髪の成長が望まれる位置、例えば、頭皮又は眉毛の領域に適用する。いくつかの態様において、iTR因子を含有するEVは、睫毛の成長を促進するために瞼の端部に又はその付近に適用する。いくつかの態様において、iTR因子を含有するEVは液体製剤で適用する。いくつかの態様において、iTR因子を含有するEVは、火傷、外科手術、化学療法又は毛髪若しくは有毛部の皮膚の損失をもたらす他の事象後の、毛髪の成長を強化するために使用する。
【0106】
いくつかの態様において、iTR因子を含有するEVを、若々しい機能を再生するために、加齢に関連した変化に罹患している組織に投与する。前記加齢に関連した変化としては、非限定的な例として、加齢黄斑変性症、冠動脈疾患、骨粗鬆症、骨壊死、心不全、肺気腫、末梢動脈疾患、声帯萎縮、難聴、アルツハイマー疾患、パーキンソン疾患、皮膚潰瘍及び他の加齢に関連した変性疾患がある。いくつかの態様において、前記iTR因子を含有するEVは、細胞寿命を延長させるためのテロメラーゼの触媒構成成分をコードするmRNAを含む。
【0107】
いくつかの態様において、iTR因子を含有するEVは、傷害、例えば化学療法、放射線又は毒素に起因して損失又は損傷した細胞の置換えを強化するために投与する。いくつかの態様において、そのような細胞は、固形器官及び組織の間質細胞である。
【0108】
本発明の処置方法は、再生を強化することが対象にとって利点であろう疾患又は状態に罹患したか、リスクがある対象を、同定するか又は提供する工程を含んでいてもよい。いくつかの態様において、対象は、組織又は器官に、損傷(例えば、身体的外傷)又は傷害を経験している。いくつかの態様において、損傷は、四肢又は指に対するものである。いくつかの態様において、対象は、循環器系、消化器系、内分泌系、骨格筋系、胃腸系、肝臓系、外皮系、神経系、呼吸器系又は泌尿器系に影響を与える疾患を患う。いくつかの態様において、組織損傷は、組織、器官又は構造、例えば軟骨、骨、心臓、血管、食道、胃、肝臓、胆嚢、膵臓、腸、直腸、肛門、内分泌腺、皮膚、毛包、歯、歯茎、唇、鼻、口、胸腺、脾臓、骨格筋、平滑筋、関節、脳、脊髄、末梢神経、卵巣、卵管、子宮、膣、乳腺、精巣、精管、精嚢、前立腺、陰茎、咽頭、喉頭、気管、気管支、肺、腎臓、尿管、膀胱、尿道、眼(例えば、網膜、角膜)又は耳(例えば、コルチ器官)に対するものである。
【0109】
いくつかの態様において、iTR因子を含有するEVは、対象が組織損傷(例.傷害又は心筋梗塞若しくは脳卒中などの急性疾患関連事象)に罹患した後、約2、4、8、12、24、48、72又は96時間以内に少なくとも1回、場合によってはその後少なくとも1回対象に投与する。いくつかの態様において、iTR因子を含有するEVは、対象が組織損傷に罹患した後、約1~2週、2~6週又は6~12週以内に少なくとも1回、場合によってはその後少なくとも1回対象に投与する。
【0110】
本発明のいくつかの態様において、例えば、再生又はデノボ発生が望まれる位置で皮膚を除去すること、少なくともいくつかの組織を除去すること、再生又はデノボ発生が望まれる関節又は骨表面を研磨すること、及び/又は他のタイプの創傷を対象に与えることによって、欠損している又は形成不全の、組織、器官又は構造の再生又はデノボ発生を刺激するか又は促進するのに有用な場合がある。再生の場合、組織損傷後に、少なくともいくつかの損傷した組織を(例えば、外科的切除又は創面切除によって)除去することが望ましい場合がある。いくつかの態様において、iTR因子を含有するEVは、そのような除去若しくは研磨した位置に又はその付近に投与する。
【0111】
いくつかの態様において、iTR因子を含有するEVは、遺伝的疾患といった先天性の障害の結果として、そのような組織又は器官が少なくとも部分的に欠如している対象における組織又は器官の生成を強化するために使用する。多くの先天性の奇形は、形成不全、又は、さまざまな組織、器官若しくは四肢や指といった身体構造の欠如をもたらす。他の場合において、組織、器官又は他の身体構造の形成不全をもたらす発生障害は、出生後に明白になる。いくつかの態様において、iTR因子を含有するEVは、そのような組織、器官又は他の身体構造の成長又は発生を刺激するために、形成不全に罹患したか、又は、組織、器官若しくは他の身体構造が欠如した対象に投与する。いくつかの側面において、本発明は、形成不全、又は組織、器官若しくは他の身体構造の先天的な欠如に罹患した対象における、組織、器官又は他の身体構造の生成を強化する方法であって、iTR因子を含有するEVを対象に投与することを含む方法を提供する。いくつかの態様において、iTR因子を含有するEVは、出生前、すなわち子宮内で対象に投与する。再生に関して、本発明のさまざまな側面及び態様は、組織、器官又は他の身体構造のそのようなデノボ生成に適用可能であり、本発明の範囲内に包含される。
【0112】
いくつかの側面において、iTR因子を含有するEVは、そのような組織が以前には存在しなかった場所において新規の組織成長が有用であるさまざまな状況のいずれかにおいて、組織の生成を強化するために使用する。例えば、関節の間で骨組織の生成することは、脊髄又は他の関節の融合において有用なことが多い。
【0113】
iTR因子を含有するEVは、再生のさまざまな動物モデルで試験を行ってもよい。1つの側面において、iTR因子を含有するEVは、ネズミ種において試験を行う。(例えば、切開、切断、横断又は組織断片の除去により)例えばマウスを負傷させてもよい。iTR因子を含有するEVを、創傷の位置及び/又は除去した組織断片に適用し、その再生に対する効果を評価する。脊椎動物TRのモジュレーターの効果は、組織又は器官再生のためのさまざまな脊椎動物モデルで試験を行ってもよい。例えば、ヒレの再生は、例えば、Mathew L K, Unraveling tissue regeneration pathways using chemical genetics. J Biol Chem. 282(48):35202-10(2007) に記載されているようにゼブラフィッシュで評価してもよく、四肢再生のためのモデルの役割を果たすことができる。齧歯動物、イヌ、ウマ、ヤギ、魚類、両生類、並びに、心臓、肺、四肢、骨格筋、骨などの組織及び器官の再生に対する処置の効果の試験を行うために有用である動物モデルが広範囲に利用可能である。例えば、骨格筋系再生のためのさまざまな動物モデルが、Tissue Eng Part B Rev. 16(1)(2010)で説明されている。肝臓再生の研究で通常使用する動物モデルは、齧歯動物の肝臓の大部分の外科的除去を伴う。肝臓再生の他のモデルは、四塩化炭素のような毒素によって引き起こされる急性又は慢性の肝臓傷害又は肝不全を含む。いくつかの態様において、毛髪再生又は皮膚創傷の治癒のモデルは、例えば、マウスから皮膚のパッチを切除することを伴う。毛包の再生、毛髪の成長、再上皮化、腺形成などを評価してもよい。
【0114】
本明細書に開示並びに/又は記載する方法及び/若しくはアッセイシステムを使用して同定された化合物及び組成物は、任意の好適な手段、例えば経口、経鼻腔、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、非経口、腹腔内、髄腔内、気管支内、眼内、舌下、経膣、経直腸、経皮によって、又は吸入によって、例えばエアロゾルとして投与してもよい。選択される特定の様式は、選択される特定の化合物、処置される特定の状態及び治療に必要な投薬量に依存することになる。本発明の方法は、一般的に言えば、医学的に又は獣医学的に許容される投与の任意の様式で行ってもよく、ここで前記様式は、臨床的に許容できない(例えば、医学的に又は獣医学的に許容できない)有害効果をもたらすことなく、効能の許容されるレベルを生み出す任意の様式を意味する。1つ以上の化合物の好適な調製物、例えば実質的に純粋な調製物は、対象に投与するのに好適な、適切な医薬組成物を製造するために、1つ以上の薬学的に許容される担体又は賦形剤などと組み合わせてもよい。そのような薬学的に許容される組成物は本発明の側面である。「薬学的に許容される担体又は賦形剤」という用語は、担体(この用語は、担体、媒体、希釈剤、溶媒、ビヒクルなどを包含する)、又は組成物の活性成分の生物学的活性若しくは有効性に顕著に干渉せず、使用若しくは投与される濃度で宿主に対して過剰な毒性を示さない賦形剤を指す。他の薬学的に許容される成分も同様に組成物に存在していてもよい。好適な物質及び薬学的に活性な化合物を製剤化するためのその使用は、当技術分野において周知である(薬学的に許容される物質及びさまざまな医薬組成物を製造する方法を議論するため、例えば、"Remington's Pharmaceutical Sciences", E. W. Martin, 19th Ed., 1995, Mack Publishing Co.: Easton, Pa.及びそのより最新の版、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy. 21st Edition. Philadelphia, Pa. Lippincott Williams & Wilkins, 2005を参照)。さらに、本発明の化合物及び組成物は、目的の特定の疾患又は状態を処置するための、当技術分野において使用する任意の化合物又は組成物と組み合わせて使用してもよい。
【0115】
医薬組成物は、その意図する投与経路に適合するように典型的には製剤化される。例えば、非経口投与用の調製物としては、滅菌水溶液又は非水溶液、懸濁液及びエマルションがある。水性担体としては、生理食塩水及び緩衝媒体、例えば、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲルを含む、水、アルコール/水溶液、エマルション又は懸濁液がある。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、及び注入可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチル、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒;防腐剤、例えば、抗菌剤、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム;キレート化剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝液、例えば酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩、並びに張度を調整するための薬剤、例えば塩化ナトリウム又はデキストロースである。pHは、酸又は塩基、例えば塩酸又は水酸化ナトリウムを用いて調整してもよい。そのような非経口調製物は、アンプル、使い捨て注入器又はガラス若しくはプラスチック製の複数回投薬バイアルに封入してもよい。
【0116】
吸入による投与に関しては、本発明の組成物は、エアロゾル噴霧剤の形態で、好適な噴射剤、例えば、ガス、例えば二酸化炭素、フルオロカーボンを含む加圧容器若しくはディスペンサー、又はネブライザーで送達してもよい。液体又は乾燥エアロゾル(例えば、乾燥粉末、大きな多孔質粒子など)を使用してもよい。本発明は、鼻腔用スプレー又は経鼻投与の他の形態を使用した組成物の送達も検討する。
【0117】
局所適用に関しては、医薬組成物は、そのような組成物において使用するのに好適な1つ以上の薬学的に許容される担体中に懸濁又は溶解された活性構成成分を含む、好適な軟膏剤、ローション剤、ゲル剤又はクリーム剤として製剤化してもよい。
【0118】
眼への局所送達に関しては、薬学的に許容される組成物は、例えば点眼剤若しくは軟膏剤で使用するための、又は例えば注入によって眼内投与するための、等張なpH調整された滅菌生理食塩水中の溶液又は微粉化懸濁液として製剤化してもよい。
【0119】
医薬組成物は、経粘膜又は経皮送達のために製剤化してもよい。経粘膜又は経皮投与に関しては、浸透されることになるバリアに対する適切な浸透剤を製剤中に使用してもよい。そのような浸透剤は、当技術分野において一般に既知である。本発明の医薬組成物は、坐剤として(例えば、従来の坐剤基剤(例.ココアバター及び他のグリセリド)を用いて)又は直腸送達のための停留浣腸として製剤化してもよい。
【0120】
いくつかの態様において、組成物は、身体からの急速な消失に対して活性薬剤を保護することを意図する、1つ以上の薬剤、例えば制御放出製剤、埋込体、マイクロカプセル化送達システムなどを含む。(例えば、胃腸管又は血管内での)安定性を改善する薬剤及び/又は吸収を強化する薬剤を、組成物に組み込んでいてもよい。化合物は、マイクロ粒子又はナノ粒子といった粒子中に、カプセル化されても組み込まれてもよい。生分解性、生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、PLGA、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリエーテル及びポリ乳酸を使用してもよい。そのような製剤を調製するための方法は当業者であれば明白であろう。例えば、限定されするものではないが、siRNAの送達のための、多数の粒子、脂質及び/又はポリマーベースの送達システムが、当技術分野において既知である。本発明は、そのような組成物の使用を検討する。リポソーム又は他の脂質ベースの粒子も、薬学的に許容される担体として使用してもよい。
【0121】
そのような組成物において使用するための医薬組成物及び化合物は、規制当局によって規定された、標準、基準又はガイドラインを満たす条件の下で製造してもよい。例えば、そのような組成物及び化合物は、適正製造基準(GMP)に従って製造してもよく、及び/又はヒトに投与されることになる医薬品に適切な品質コントロールがされていてもよく、医薬、外科手術又は他の治療上有用な製品の規制を担う規制当局によって承認されたラベルを付して提供してもよい。
【0122】
本発明の医薬組成物は、処置目的で対象に投与する場合、好ましくは、それらが投与される疾患又は状態を処置するのに十分な時間かつ量で投与する。活性薬剤の治療効果及び毒性は、細胞培養物又は実験用動物において、標準的な手順によって評価することができる。細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータを、ヒト又は他の対象に使用するのに好適なさまざまな投薬量の製剤化において使用することができる。ヒト投与に関する異なる用量を、当技術分野において既知のように、ヒトにおける臨床試験でさらに試験してもよい。使用される用量は、最大耐量以下の用量であってもよい。医薬組成物中の活性薬剤の治療有効量は、約0.001mg/kg~約100mg/kg体重、約0.01~約25mg/kg体重、約0.1~約20mg/kg体重、約1~約10mg/kgであってもよい。他の用量としては、例えば、約1μg/kg~約500mg/kg、約100μg/kg~約5mg/kgがある。いくつかの態様において単回用量が投与され、同時に他の態様において複数回用量が投与される。当業者であれば、任意の状況における適切な用量は、利用する薬剤の効力に依存し、任意に特にレシピエントに合わせて調整してもよいことを理解するであろう。対象に関する特定の用量は、用いる特定の薬剤の活性、特定の疾患又は状態及びその重症度、年齢、体重、対象の全般的な健康などを含むさまざまな因子に依存する場合がある。医薬組成物、特に経口又は非経口組成物を、投与を容易にし、投薬量を均一にするために単位投与形態で製剤化することが望ましい場合がある。単位投与形態は、この用語を本明細書で使用する場合、処置されることになる対象の単位投与に適した物理的に個別の単位を指し;各単位は、適切な薬学的に許容される担体と所望の治療効果を生み出すように計算された所定の量の活性薬剤を含む。治療レジメンは、数日、数週、数か月又は数年に及ぶ可能性がある期間の複数回の、例えば単位投与形態の投与を含む場合があることが理解されるであろう。対象は、処置期間内に、1日1回以上の投薬を受けても、1日かそれよりも少ない頻度で投薬を受けてもよい。例えば、投与は、隔週、毎週などであってもよい。投与は、例えば、組織又は器官の適切な構造及び/若しくは機能が少なくとも部分的に復活するまで、並びに/又は化合物の継続投与が更なる再生若しくは改善を促進すると思われなくなるまで、継続してもよい。いくつかの態様において、対象は、本発明の組成物の1回以上の用量を自身で投与する。
【0123】
いくつかの態様において、2つ以上の化合物又は組成物を、例えば再生を強化する目的で組み合わせて投与する。組み合わせて投与する化合物又は組成物は、同じ組成物で一緒に又は個別に投与してもよい。いくつかの態様において、「組み合わせて」投与することは、第1及び第2の化合物又は組成物の投与に関しては、(i)第2の化合物の用量は、第1の薬剤の最後に投与された用量の90%以上が不活性形態に代謝されるか又は身体から排泄される前に投与されるか;(ii)第1及び第2の化合物の用量が48、72、96、120又は168時間以内に互いに投与されるか、(iii)薬剤が、重複する時間の間に(例えば、連続的な又は間欠的な注入によって)投与されるか;又は(iv)前述のように行われた投与の任意の組合せのように行われる投与を意味する。いくつかの態様において、テロメラーゼの触媒構成成分及びiTR因子を発現する2つ以上のiTR因子を含有するEVを投与する。いくつかの態様において、iTR因子を含有するEVは、1つ以上の成長因子、成長因子受容体リガンド(例えば、アゴニスト)、ホルモン(例えば、ステロイド又はペプチドホルモン)、又は、再生及び極性を促進するのに有用であるシグナル伝達分子と組み合わせて投与する。特に有用なものは、再生コンピテント細胞、例えば本発明の方法を使用して生成されたものを組織化するのに有用である組織化中心分子である。いくつかの態様において、成長因子は、上皮成長因子ファミリーメンバー(例えば、EGF、ニューレグリン)、線維芽細胞成長因子(例えば、FGF1~FGF23のいずれか)、肝細胞成長因子(HGF)、神経成長因子、骨形成タンパク質(例えば、BMP1~BMP7のいずれか)、血管内皮成長因子(VEGF)、wntリガンド、wntアンタゴニスト、レチノイン酸、NOTUMM、フォリスタチン、ソニックヘッジホッグ又は他の組織化中心因子である。
【0124】
獣医学的適用
本発明の組成物及び方法は、EV及びmRNAを産生する宿主細胞が対応する種由来である、獣医学的医療における同属適用に適用可能である。
【0125】
ターゲティング及び膜融合性改変
EVを産生する宿主細胞もまた、EVの所望の標的細胞型への特異的なターゲティングを促進するターゲティングタンパク質及びEVの標的細胞原形質膜との融合を促進する膜融合性タンパク質を発現するように、遺伝子改変されてもよい。細胞型特異的ターゲティングタンパク質の例は、細胞型特異的接着を与えるクラスター化プロトカドヘリン遺伝子である。追加のターゲティングペプチド及びタンパク質には、成長因子(例.FGF、EGF)及び、結合し内部移行する、細胞型特異的抗原に対する親和性を有する抗体が挙げられ、それらは、iTR因子を有するEVを、特定の細胞、組織又は器官へターゲットするために用いられる。ターゲティングペプチド/タンパク質をコードする遺伝子を、ペプチド/タンパク質自体に連結された遺伝子パッケージ上にディスプレイされたペプチドの大きなコンビナトリアルライブラリ(ファージ、リボソーム及び酵母ディスプレイ)から選択される、ターゲティングペプチド、抗体及び抗体断片は、当技術分野において周知である。例えば、心臓ターゲティングペプチドCRPPRが、心臓への治療用物質の蓄積を高めるためのターゲティングペプチドとして用いられる(Zhang et al Biomaterials (2008) 29(12): 1976-88)。膜融合性タンパク質の例には、HPV16のE5タンパク質が挙げられる。
【0126】
mRNAの安定化
単離されたEV、例えば本発明のエクソソームへ負荷されるmRNAは、それらの安定性を増加させ、自然免疫応答を減少させ、機能し得る半減期を増加させるために、例えばウリジンのプソイドウリジンによる置き換えにより、改変されてもよい。
【実施例】
【0127】
実施例1 胚性前駆内皮細胞からの条件培地はヒト胎児/成体血管内皮細胞中のCOX7A1を下方制御する
クローン胚性内皮前駆細胞eEPC株からの条件培地中の分泌因子が、胎児/成体内皮細胞を胚の遺伝子発現パターンとすることができるかどうかを決定するために、実験を行った。3つのクローンeEPC細胞株(30-MV2-10、30-MV2-17及び30-MV2-19)を、培地(VEGF、IGF2及びFGF2(VIF)が添加されたEGM-MV2基本培地)を使用して、37℃、5%O2、10%CO2で、72時間インキュベーションした後、培地を回収した。約80%コンフルエンシーのHUVEC(ヒト臍帯静脈細胞)又はHBMEC(ヒト脳微小血管内皮細胞)をPBSで2回洗浄し、増殖用培地を、30-MV2-10、30-MV2-17又は30-MV2-19からの条件培地に置換した。RNAを抽出する前に、細胞を条件培地中で72時間インキュベートした。RNAを単離し、定量的rtPCRの標準的な方法で遺伝子発現を精査した。
【0128】
COX7A1遺伝子発現の変化(対増殖用培地でインキュベートした細胞)を、ΔΔCT法を用いて計算した。統計的有意性を一元配置分散分析で決定した。eEPC条件培地によるHUVECのインキュベーションは、通常の増殖用培地又はエクソソーム非含有培地(VIF及び5%エクソソーム非含有仔ウシ血清を含む基本培地)と比較して、COX7A1遺伝子発現の有意な低下をもたらした。HBMECのeEPC条件培地でのインキュベーションもCOX7A1発現を有意に低下し、30-MV2-19条件培地がCOX7A1発現の最も大きい低下をもたらした。EFTマーカーであるCOX7A1によって示されるように、胚性前駆細胞のセクレトームは、胎児/成体細胞を胚の表現型に近く変化させることができる因子を含むことを、これらの結果は示している。
【0129】
実施例2 胚性前駆細胞からのエクソソームは成体内皮細胞中のCOX7A1を下方制御する
胚性内皮前駆細胞株(30-MV2-10、30-MV2-14及び30-MV2-19)の条件培地からのエクソソーム濃縮画分を、実施例1に記載するようにして得た条件培地の限外濾過により調製した。培地を、室温、300×gで5分間、続いて、1000×gで10分間、遠心分離し、その後、0.22μmフィルターを通過させて濾過した。濾過した培地を、4℃、10,000×gで10分間、遠心分離した。その後、培地を、Amicon Ultra-70(100kDaカットオフ)による1000×gで1時間の遠心分離により300倍に濃縮した。HUVECを、約80%コンフルエンシーでプレーティングし、FCSを含まずエクソソームを含有するEGM-MV2培地中でインキュベートした。
【0130】
胚性細胞又はHUVECの条件培地からのエクソソーム濃縮調製物を、0日目及び3日目に、最終濃度が10×(1:30希釈)となるように加えた。対照として、細胞に曝露していない条件培地(エクソソーム非含有培地)及びHUVECの条件培地から濃縮したエクソソームを用いた。RNAを得るために細胞を6日目に回収した。定量的rtPCRの標準的な方法で精査したCOX7A1遺伝子の発現とその変化を、ΔΔCT法で計算した。
図3に示すように、3つの胚性内皮前駆細胞からのエクソソーム濃縮培地とのインキュベーションは、COX7A1の発現を最大で50%減少させた。
【0131】
【0132】
実施例3 iTRにおける使用のためのエクソソームの供給源としての遺伝子改変型ヒト胚性がん細胞の使用
EC細胞は、遺伝子改変、クローン増殖、スケールアップの容易さの点で、多能性細胞に由来するEVの供給源として好ましい。EC細胞からiTR EVを産生する場合、ReCyte 1と称されるEC細胞株は、TERT、LIN28B、SOX2、MYC、NANOG及びOCT4の組合せの外因的導入によって改変され、その結果、対応するmRNAの発現量が、天然の細胞と比較して、少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも10倍、最も好ましくは少なくとも50倍、高くなる。EVの免疫原性の低下も、β2-ミクログロブリンのノックアウトによるHLAクラスI機能のノックアウトとHLA-Gの過剰発現により、達成される。エクソソームは、標準的な細胞培養容器又はバイオリアクターで培養して得た細胞の細胞上清から、分画遠心分離とそれに続く超遠心分離、そしてテトラスパニンC9又はCD81といったエクソソーム抗原による免疫磁気分離の使用により単離される。得られたエクソソームは、ヒトで組織再生を誘導することにおいて、他の方法では再生できない組織の再生を誘導する獣医学的使用において、有用である。
【0133】
実施例4 iTRにおける使用のためのエクソソームの供給源としての天然のヒト胚性がん細胞の使用
EC細胞は、スケールアップの容易さの点で多能性細胞に由来するEVの供給源として好ましい。EC細胞からiTR EVを産生する場合、ReCyte 1と称されるEC細胞株は、EVの免疫原性を低下させるように改変され、β2-ミクログロブリンのノックアウトによるHLAクラスI機能のノックアウト及びHLA-Gの過剰発現により、達成される。エクソソームは、標準的な細胞培養容器又はバイオリアクターで培養して得た細胞の細胞上清から、分画遠心分離とそれに続く超遠心分離、そしてテトラスパニンC9又はCD81といったエクソソーム抗原による免疫磁気分離の使用により単離される。次いで、得られたエクソソームには、TERT、LIN28B、SOX2、MYC、NANOG及びOCT4の組合せの外因性mRNAが導入され、その結果、対応するmRNAの発現量が、天然の細胞と比較して、少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも10倍、最も好ましくは少なくとも50倍、高くなる。得られたエクソソームは、ヒトで組織再生を誘導することにおいて、他の方法では再生できない組織の再生を誘導する獣医学的使用において、有用である。
【0134】
本発明の態様もまた、以下を含む:
1. 細胞又は組織再生を誘導するための方法であって、1)遺伝子発現の胎児前パターンを示す宿主細胞から細胞外小胞を単離する工程;2)細胞及び/又は組織をin vivoで細胞外小胞と接触させて、遺伝子発現の胎児前パターンを復活させ、前記細胞及び組織を多能性へ再プログラムすることなく組織再生を誘導する工程を含む、方法。
2. 胚の表現型に近いことが、再プログラムされた細胞及び/又は組織からのCOX7A1の発現の減少によって示される、請求項1に記載の方法。
3. 細胞が、最初は成体ヒト細胞である、請求項1に記載の方法。
4. 接触した細胞及び/又は組織のCOX7A1の発現が、少なくとも20日目までに最大値の10%未満となる、請求項1に記載の方法。
5. 細胞外小胞がエクソソームである、請求項1に記載の方法。
6. 細胞外小胞がヒト胚性がん細胞又は胚性前駆細胞に由来する、請求項1に記載の方法。
7. 細胞又は組織再生を誘導するための方法であって、1)LIN28B、SOX2、NANOG、OCT4及びMYCを過剰発現するように遺伝的に改変されている宿主胚性がん細胞から細胞外小胞を単離する工程;2)細胞及び/又は組織をin vivoで細胞外小胞と接触させて、遺伝子発現の胎児前パターンを復活させ、前記細胞及び組織を多能性へ再プログラムすることなく組織再生を誘導する工程を含む、方法。
8. 胚の表現型に近いことが、再プログラムされた細胞及び/又は組織からのCOX7A1の発現の減少によって示される、請求項7に記載の方法。
9. 細胞が、最初は成体細胞である、請求項7に記載の方法。
10. 接触した細胞及び/又は組織のCOX7A1の発現が、少なくとも20日目までに最大値の10%未満となる、請求項7に記載の方法。
11. 細胞外小胞がエクソソームである、請求項7に記載の方法。
12. 細胞又は組織再生を誘導するための方法であって、1)遺伝子発現の胎児前パターンを示す宿主細胞から細胞外小胞を単離する工程;2)前記細胞外小胞へLIN28B、SOX2、NANOG、OCT4及びMYCのmRNAを導入する工程;3)細胞及び/又は組織をin vivoで細胞外小胞と接触させて、遺伝子発現の胎児前パターンを復活させ、前記細胞及び組織を多能性へ再プログラムすることなく組織再生を誘導する工程を含む、方法。
13. 胚の表現型に近いことが、再プログラムされた細胞及び/又は組織からのCOX7A1の発現の減少によって示される、請求項12に記載の方法。
14. 細胞が、最初は成体細胞である、請求項12に記載の方法。
15. 接触した細胞及び/又は組織のCOX7A1の発現が、少なくとも20日目までに最大値の10%未満となる、請求項12に記載の方法。
【0135】
本明細書における説明は多くの詳細を含有するが、これらは、本開示の範囲を限定するものとしてではなく、現在好ましい態様の一部の例証を単に提供するだけのものとして解釈されるべきである。したがって、本開示の範囲は、当業者に明らかになり得る他の態様を完全に包含すると認識されるであろう。
【0136】
本発明の文脈において、この発明が、記載された特定の態様に限定されず、そのようなものとして、当然ながら、変化し得ることは理解されるべきである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになるため、本明細書で使用する専門用語は、特定の態様を記載することのみを目的とし、限定することを意図しないことも理解するべきである。
【0137】
値の範囲が提供される場合、文脈上明らかに別段の指示がない限り、下限値の単位の10分の1まで、その範囲の上限値と下限値との間のそれぞれ位置する値、及び規定された範囲におけるその他の規定された又は位置する値は、本発明の範囲内に包含されることが理解される。これらの小さな範囲の上限値及び下限値は、小さな範囲に独立して含まれていてもよく、また規定された範囲における任意の具体的に除外された限界値によって本発明の範囲内に包含される。規定された範囲が、限界の一方又は両方を含む場合、限界に含まれるもののいずれか又は両方を除外する範囲も、本発明に含まれる。
【0138】
ある特定の範囲は、「約」という用語が先行する数値を用いて示される。「約」という用語は、それが先行する正確な数、並びにその用語が先行する数に近いか又はほぼ近い数の助けとなる文字を提供するために本明細書で使用する。数が具体的に列挙される数に近いか又はほぼ近いかどうかの判定において、近いか又はほぼ近い列挙されていない数は、それが提示されている文脈において、具体的に列挙される数の実質的に同等のものを提供する数であってもよい。
【0139】
別段の定義がない限り、本明細書において使用する全ての技術及び科学用語は、本発明が属する当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと同様の又は同等の任意の方法及び材料も、本発明の実施又は試験において用いることができるが、代表的な例示の方法及び材料を本明細書に記載する。
【0140】
本明細書に挙げられる全ての刊行物及び特許は、各個々の文献又は特許が、参照により組み込まれることが具体的にかつ個々に示され、出版物が引用されることに関連する方法及び/又は材料を開示及び説明するために参照により本明細書に組み込まれるものとする。任意の文献の引用は、出願日より前のその開示内容に関するものであり、本発明は、先行する発明の理由でそのような文献に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提供される発行日は、個別に確認することが必要とされる場合がある実際の発行日と異なっていてもよい。
【0141】
本明細書及び特許請求の範囲において使用する単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数形の指示対象を含むことに留意されたい。特許請求の範囲は、いずれの任意の要素も除外するために想起されてもよいことをさらに留意されたい。したがって、本文章は、特許請求の範囲の要素の記載に関連して、「単独」、「のみ」などのようなその排他的な専門用語を使用するか、又は「否定的」制限の使用するための先行詞の役割を果たすことを意図する。
【0142】
本開示を読む際に当業者であれば明らかであろうように、本明細書に記載され示される個々の態様は、本発明の範囲又は趣旨からそれぞれ逸脱することなく他のいくつかの態様のうちのいずれかの特徴から容易に分離しても組み合わせてもよい個別の構成成分及び特徴を有していてもよい。任意の列挙された方法は、列挙された事象の順で又は論理的に可能なその他の順序で行うことができる。
【0143】
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【国際調査報告】