(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-02
(54)【発明の名称】フィルゴチニブおよびその中間体の調製のための新規プロセス
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20220526BHJP
C07D 213/75 20060101ALI20220526BHJP
A61K 31/541 20060101ALN20220526BHJP
A61P 1/04 20060101ALN20220526BHJP
A61P 19/02 20060101ALN20220526BHJP
A61P 29/00 20060101ALN20220526BHJP
【FI】
C07D471/04 101
C07D213/75
A61K31/541
A61P1/04
A61P19/02
A61P29/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021558565
(86)(22)【出願日】2020-03-28
(85)【翻訳文提出日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 IB2020052977
(87)【国際公開番号】W WO2020201975
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】201921012919
(32)【優先日】2019-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515259694
【氏名又は名称】ユニケム ラボラトリーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】サテ,ダナンジャイ ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ダス,アリジット
(72)【発明者】
【氏名】パテル,バヴェーシュ
(72)【発明者】
【氏名】クシャーサガー,エクナット
(72)【発明者】
【氏名】パティル,ディパック
(72)【発明者】
【氏名】マータレー,アショク
【テーマコード(参考)】
4C055
4C065
4C086
【Fターム(参考)】
4C055AA01
4C055BA03
4C055BA08
4C055BA53
4C055BB17
4C055CA01
4C055DA01
4C055FA15
4C055FA32
4C065AA03
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4C065HH02
4C065JJ01
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4C065LL07
4C065PP03
4C065PP17
4C065QQ02
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4C086AA04
4C086BC88
4C086CB05
4C086ZA66
4C086ZA96
4C086ZB15
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、鈴木カップリング反応を用いない、フィルゴチニブまたはその薬学的に許容可能な塩および中間体の調製のための新規プロセスに関する。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを含んでいる、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の調製のためのプロセス:
【化1】
a)有機溶媒中で式(II)の化合物またはその塩を式(III)の化合物と縮合させて式(IV)の化合物を得ること(式中、RはC
1-C
4アルキルである)、
【化2】
b)溶媒および塩基の存在下でヒドロキシルアミンまたはその酸付加塩を用いて前記式(IV)の化合物を環化して、式(V)の化合物またはその塩を得ること、
【化3】
c)溶媒および塩基の存在下で前記式(V)の化合物を塩化シクロプロパンカルボニルと反応させて式(VI)の化合物を得ること、
【化4】
d)溶媒の存在下で前記式(VI)の化合物をハロゲン化剤で処理して式(VII)の化合物を得ること、
【化5】
式中、XはCl、Br、IまたはFである、
e)有機溶媒の存在下で前記式(VII)の化合物をチオモルホリン-1,1-ジオキシドと縮合させて式(I)の化合物を得ること、ならびに
f)任意で前記式(I)の化合物をその薬学的に許容可能な塩に転換させること。
【請求項2】
ステージa)における前記有機溶媒は、塩化メチレン、塩化エチレン、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテルまたはそれらの混合物から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステージb)およびステージc)における前記溶媒は、アルコール、塩化メチレン、塩化エチレン、THF、ジイソプロピルエーテル、またはそれらの混合物から選択され、且つ
ステージb)およびステージc)における前記塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、およびN,N-ジイソプロピルアミンから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ハロゲン化剤が、ピリジニウムトリブロミド、ピリジニウムジクロロブロメート、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン(DBDMH)、テトラブロモシクロヘキサジエノン、N-ブロモスクシンイミド(NBS)、テトラオクチルアンモニウムブロミド(TOABr)、塩化チオニル、塩化メタンスルホニル、塩化トリクロロメタンスルホニル、次亜塩素酸tert-ブチル、ジクロロメチルメチルエーテル、塩化メトキシアセチル、塩化オキサリル、塩化シアヌル、N-クロロスクシンイミド、N-クロロフタルイミド、1,3-ジクロロ5,5-ジメチルヒダントイン、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、トリクロロイソシアヌル酸、クロラミンB水和物、ジクロラミンB、ジクロラミンT、ベンジルトリメチルアンモニウムテトラクロロヨーダート、塩化トリメチルシリル、ヨウ素、ヨウ化水素酸、四ヨウ化炭素、1-クロロ-2-ヨードエタン、n,n-ジメチル-n-(メチルスルファニルメチレン)-アンモニウムヨージド、n-ヨードスクシンイミド、n-ヨードサッカリン、1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントイン、ピリジン一塩化ヨウ素、ジクロロヨウ素酸テトラメチルアンモニウム、ジクロロヨウ素酸ベンジルトリメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ビス(ピリジン)ヨードニウム、ビス(2,4,6-トリメチルピリジン)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリメチルシリルヨージド、フッ化水素カリウム、フッ化テトラメチルアンモニウム四水和物、フッ化テトラブチルアンモニウム水和物、フッ化テトラブチルアンモニウム、トリエチルアミントリヒドロフルオリド、dmpu-hf試薬、テトラエチルアンモニウムフルオリドトリヒドロフルオリド、テトラブチルアンモニウムビフルオリド、2-フルオロ-1-メチルピリジニウムp-トルエンスルホナート、DAST、ビス(2-メトキシエチル)-アミノ硫黄トリフルオリド、石川試薬、pyfluor、ピリミジン-2-スルホニルフルオリド、テトラブチルアンモニウムジフルオロトリフェニルシリカート、テトラブチルアンモニウムジフルオロトリフェニルスズ、1-フルオロピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート、1-フルオロピリジニウムテトラフルオロボラート、1-フルオロ-2,4,6-トリメチルピリジニウムテトラフルオロボラート、1-フルオロ-2,6-ジクロロピリジニウムテトラフルオロボラート、1,1’-ジフルオロ-2,2’-ビピリジニウムビス(テトラフルオロボラート)、N-フルオロベンゼンスルホンイミドおよび1-フルオロ-3,3-ジメチル1,2-ベンゾヨードキソールから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
ステージe)における前記有機溶媒が、アルコール、塩化メチレン、塩化エチレン、THF、ジイソプロピルエーテル、およびそれらの混合物から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記アルコールが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、tert-ブタノール、n-ブタノールまたはそれらの混合物から選択される、請求項3または5に記載のプロセス。
【請求項7】
式(IV)、(V)の中間体化合物またはそれらの塩
【化6】
式中、RはC
1-C
4アルキルである。
【請求項8】
式(IV)の中間体化合物またはその塩を調製するためのプロセスであって、
有機溶媒中で式(II)の化合物またはその塩を式(III)の化合物と縮合させて式(IV)の化合物を得るステップを含み、式中、RはC
1-C
4アルキルであるプロセス。
【化7】
【請求項9】
以下のステップを含んでいる、式(V)の中間体化合物、またはその塩を調製するためのプロセス:
a)有機溶媒中で式(II)の化合物またはその塩を式(III)の化合物と縮合させて式(IV)の化合物を得ること(式中、RはC
1-C
4アルキルである)、
【化8】
b)溶媒および塩基の存在下でヒドロキシルアミンまたはその酸付加塩を用いて前記式(IV)の化合物を環化して、式(V)の化合物またはその塩を得ること。
【化9】
【請求項10】
式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の調製のための、式(IV)、(V)の化合物またはそれらの塩。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、フィルゴチニブまたはその塩およびそれらの中間体の調製のための新規プロセスに関する。
【0002】
[発明の背景]
フィルゴチニブは高選択的なJAK1阻害剤であり、慢性関節リウマチ、クローン病および潰瘍性大腸炎(UC)の治療のためにガラパゴス社により発見および開発された。
【0003】
化学的には、フィルゴチニブは式(I)の化合物を有している、シクロプロパンカルボン酸{5-[4-(1,1-ジオキソ-1-チオモルホリン-4-イルメチル)-フェニル]-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-2-イル}-アミドまたはN-[5-[4-[(1,1-ジオキソ-1,4-チアジナン-4-イル)メチル]フェニル]-[1,2,4]-トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-2-イル]シクロプロパンカルボキサミドとして記載される。
【0004】
【0005】
フィルゴチニブおよびその調製のためのプロセスはUS8,088,764に開示されている。該プロセスは、以下のとおり、フィルゴチニブの調製のための複数のアプローチを含んでいる:
アプローチI:化合物2を化合物3と縮合させ、続いてヒドロキシルアミン塩酸塩を用いて環化し、次いで化合物6とアミド化して化合物7を得る。式(I)のフィルゴチニブ化合物は、PdCl2dppfおよびK2CO3の存在下で化合物7を化合物8と鈴木カップリングすることによって調製される。
【0006】
アプローチII:化合物10は、PdCl2dppfおよびK2CO3の存在下で化合物7を化合物9と鈴木カップリングし、続いて臭素化して化合物11を得、それを化合物12と縮合させて式(I)のフィルゴチニブ化合物を得ることによって得られる。
【0007】
【0008】
アプローチIII:アルデヒド化合物14を、PdCl2dppfの存在下でのホウ酸化合物13と化合物7との鈴木カップリングによって調製し;生じた化合物14を、Na(CN)BH3およびTi(Opr)4の存在下でチオモルホリン1,1-ジオキシド化合物12で処理して、式(I)のフィルゴチニブ化合物を得る。
【0009】
【0010】
CN104987333Bは、フィルゴチニブの調製のための異なるアプローチを開示している。ここでは、化合物15をジ-tert-ブチルカルバメートで処理し、続いて加水分解して化合物16を得る。次いで、化合物16をトリフルオロメタンスルホン酸アニヒドリド(anyhydride)で処理して化合物17を得る。化合物18は、PdCl2(PPh3)2の存在下で化合物17を化合物8と鈴木カップリングし、続いて脱保護して化合物18を得るよう調製され;次いで化合物3と反応させて化合物19を得、続いてヒドロキシアミン塩酸塩で環化して化合物20を得る。化合物20のアミド化は塩化シクロプロパンカルボニル化合物6を用いて行い、式(I)のフィルゴチニブ化合物を得る。
【0011】
【0012】
(US’764、CN’333)等の従来技術の参考文献はオルガノボラン化合物およびPdCl2dppfを触媒として使用する鈴木カップリング反応を開示し、さらに、US’764はまた、フィルゴチニブの調製中にNa(CN)BH3およびTi(Opr)4を使用することによる還元的アルキル化を開示する。
【0013】
上記の従来技術の参考文献で使用された触媒は非常に高価であり、回収および再使用が困難である。これらのプロセスは複雑で、非経済的で、且つ時間がかかると考えられており、従って、商業的製造には適していない。
【0014】
したがって、鈴木カップリング、還元的アルキル化の使用を回避し、より安価な試薬を採用することによって経済性を改善し、且つより生産的である、フィルゴチニブの調製のための効率的なプロセスを提供することが望ましい。
【0015】
本発明は、危険性が低くて環境にやさしい試薬、コストの低減、単純性の向上、生成物の純度の向上、および生成物の収率の向上を含む。
【0016】
[発明の目的]
従来技術における欠点を克服するために、本発明は、工業的製造に適した式(I)のフィルゴチニブ化合物またはその塩を調製するための効率的な方法を提供する。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、鈴木カップリング反応を回避する、フィルゴチニブ、その塩およびそれらの中間体の調製のための新規プロセスを提供することである。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、フィルゴチニブまたはその薬学的に許容可能な塩の調製のための新規な中間体を提供することである。
【0019】
[発明の概要]
本発明は、以下のステップを含んでいる、式(I)のフィルゴチニブ化合物またはその塩の調製のための新規プロセスを提供する;
a)式(II)の化合物またはその塩を式(III)の化合物と縮合させて式(IV)の化合物を得ること(式中、RはC1-C4アルキル基である)、
b)ヒドロキシルアミンまたはその酸付加塩を用いて式(IV)の化合物を環化して式(V)の化合物を得ること、
c)式(V)の化合物を塩化シクロプロパンカルボニルとアミド化させて式(VI)の化合物を得ること、
d)式(V)の化合物をハロゲン化剤で処理して式(VI)の化合物を得ること、
e)式(VI)の化合物をチオモルホリン-1,1-ジオキシドと縮合させて式(I)の化合物を得ること、
f)任意で式(I)の化合物をその塩に転換させること。
【0020】
本発明のまた別の目的は、フィルゴチニブまたはその塩の調製に有用な中間体の調製のための新規プロセスを提供することである。
【0021】
本発明のさらに別の目的は、式(IV)、(V)の新規中間体化合物またはそれらの塩を提供することである。
【0022】
本発明のさらに別の目的は、フィルゴチニブまたはその塩の調製に有用な、式(IV)、(V)の中間体化合物またはそれらの塩を調製するための新規プロセスを提供することである。
【0023】
一態様において、本発明は、以下のステップを含んでいる式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の調製のためのプロセスに関する:
【0024】
【0025】
a)有機溶媒中で式(II)の化合物またはその塩を式(III)の化合物と縮合させて式(IV)の化合物を得ること(式中、RはC1-C4アルキルである)、
【0026】
【0027】
b)溶媒および塩基の存在下でヒドロキシルアミンまたはその酸付加塩を用いて式(IV)の化合物を環化して、式(V)の化合物またはその塩を得ること、
【0028】
【0029】
c)溶媒および塩基の存在下で式(V)の化合物を塩化シクロプロパンカルボニルと反応させて式(VI)の化合物を得ること、
【0030】
【0031】
d)溶媒の存在下で式(VI)の化合物をハロゲン化剤で処理して式(VII)の化合物を得ること、
【0032】
【0033】
式中、XはCl、Br、IまたはFである、
e)有機溶媒の存在下で式(VII)の化合物をチオモルホリン-1,1-ジオキシドと縮合させて式(I)の化合物を得ること、ならびに
f)任意で式(I)の化合物をその薬学的に許容可能な塩に転換させること。
【0034】
本発明の別の態様において、上述のプロセスは以下の概略的スキームに示される。
【0035】
【0036】
[発明の詳細な説明]
本開示の実施形態の詳細な説明を以下に示す。実施形態は、本開示を明確に伝えるように詳細である。しかしながら、提供された詳細の量は、実施形態の予想される変形を限定することを意図するものではなく、反対に、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本開示の精神および範囲内にある全ての修正、同等物、および代替物を包含することを意図するものである。
【0037】
本明細書中の全ての刊行物は、各個々の刊行物または特許出願が参照により組み込まれるように具体的かつ個々に示されたものと同程度まで、参照により組み込まれる。組み込まれた参考文献における用語の定義または使用が、本明細書で提供されるその用語の定義と一致しないか、または反している場合、本明細書で提供されるその用語の定義が適用され、参考文献におけるその用語の定義は適用されない。
【0038】
「一実施形態(one embodiment)」または「一実施形態(an embodiment)」への本明細書全体を通しての参照は、実施形態に関連して記載された特定の特性、構造または特徴が少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通しての様々な場所における「一実施形態において(in one embodiment)」または「一実施形態において(in an embodiment)」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特性、構造または特徴は、1以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせられ得る。
【0039】
いくつかの実施形態において、本発明の特定の実施形態を説明および請求するために使用された成分、特性(濃度、反応条件など)などの量を表す数字は、いくつかの例では「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、いくつかの実施形態において、明細書および添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、特定の実施形態によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。いくつかの実施形態において、数値パラメータは、報告された有効数字の数に照らして、通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。本発明のいくつかの実施形態の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載された数値は、可能な限り正確に報告される。本発明のいくつかの実施形態において提示された数値は、それらのそれぞれの試験測定において見出された標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を含み得る。
【0040】
本明細書の説明および以下に従う特許請求の範囲全体において使用される場合、「a」、「an」および「the」の意味は、文脈が明確に他を指示しない限り複数の言及を含んでいる。また、本明細書の説明において使用される場合、文脈が明確に他を指示しない限り、「中の(in)」の意味は、「in」および「on」を含んでいる。
【0041】
文脈が別段の要求をしない限り、以下の明細書全体を通して、「含む(comprise)」という語ならびに「含む(comprises)」および「含むこと(comprising)」などのその変化は、「含んでいるが、これに限定されない」というオープンかつ包括的な意味で解釈されるべきである。
【0042】
本明細書における値の範囲の記述は単に、その範囲内に入る各別個の値を個別に参照する簡潔な方法として役立つことを意図している。本明細書で特に示さない限り、それぞれの個々の値はあたかもそれが本明細書で個々に列挙されているかのように、明細書に組み込まれる。
【0043】
本明細書中に記載した全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または明らかに文脈に矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行され得る。本明細書中の特定の実施形態に関して提供された、任意のおよびすべての例、または例示的な言語(例えば「such as(などの)」)の使用は、単に本発明をより明確にすることを意図したものであり、別段主張しなければ本発明の範囲に対する限定を提示するものではない。明細書中のいかなる言葉も、本発明の実施に必須の特許請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0044】
本明細書に開示された本発明の代替要素または実施形態のグループ化は、限定として解釈されるべきではない。各グループメンバーは個々に、またはグループの他のメンバーもしくは本明細書中に見出される他の要素との任意の組み合わせにおいて、言及され、そして特許請求され得る。1つのグループの1つ以上のメンバーは、利便性および/または特許性の理由で、グループに含まれ得るか、またはグループから削除され得る。このような包含または削除のいずれかが起こる場合、明細書は、本明細書中では改変されたグループを含んでいるとみなされ、したがって、以下の記載を満たす。
【0045】
以下の説明、および本明細書に説明された実施形態は、本開示の原理および態様の特定の実施形態の一実施例または複数の実施例を例示するために提供される。これらの実施例はこれらの原理および本開示の説明を目的として提供されるものであり、限定を目的として提供されるものではない。
【0046】
また、本開示は、システム、方法、またはデバイスを含む、多数の方法で実施できることを理解されたい。本明細書において、これらの実施形態、または本発明がとり得る任意の他の形態は、プロセスと呼ばれ得る。一般に、開示されたプロセスのステップの順序は、本発明の範囲内で変更することができる。
【0047】
本明細書中で提供される本発明の表題および要約書は、便宜上のものにすぎず、実施形態の範囲または意味を解釈するものではない。
【0048】
以下の議論は、本発明の主題の多くの実施形態例を提供する。各実施形態は発明要素の単一の組み合わせを表すが、本発明の主題は、開示された要素の全ての可能な組み合わせを含むと考えられる。したがって、一実施形態が要素A、B、およびCを含み、第2の実施形態が要素BおよびDを含む場合、本発明の主題はまた、明示的に開示されていなくても、A、B、C、またはDの他の残りの組合せを含むと考えられる。
【0049】
一実施形態において、本発明は、以下のステップを含んでいる、式(I)のフィルゴチニブ化合物またはその塩の調製のためのプロセスに関する;
【0050】
【0051】
a)式(II)の化合物またはその塩を式(III)の化合物と縮合させて式(IV)の化合物を得ること(式中、RはC1-C4アルキル基である)、
【0052】
【0053】
b)ヒドロキシルアミンまたはその酸付加塩を用いて式(IV)の化合物を環化して、式(V)の化合物を得ること、
【0054】
【0055】
c)式(V)の化合物を塩化シクロプロパンカルボニルとアミド化させて式(VI)の化合物を得ること、
【0056】
【0057】
d)式(VI)の化合物をハロゲン化剤で処理して式(VII)の化合物を得ること、
【0058】
【0059】
式中、XはCl、Br、IまたはFである、
e)式(VII)の化合物をチオモルホリン-1,1-ジオキシドと縮合させて式(I)の化合物を得ること、
【0060】
【0061】
f)任意で式(I)の化合物をその塩に転換させること。
【0062】
ステージ(a):ステージ(a)における縮合は、塩化メチレン、塩化エチレン、THF、ジイソプロピルエーテルまたはそれらの混合物等の有機溶媒の存在下で行われる。反応は、周囲温度で約15分~約2時間行われる。
【0063】
式(II)の化合物の酸性塩の例には、塩酸塩、臭化水素酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩および硫酸塩が含まれる。
【0064】
式(II)の化合物についての「R」の定義において使用されるC1-C4アルキル基という語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチルおよびtert-ブチルを含む。
【0065】
式(IV)の化合物またはその塩の単離は、冷却、濾過、遠心分離、洗浄、乾燥、およびそれらの組み合わせなどの当技術分野で公知の任意の方法によって実施することができる。
【0066】
ステージ(b):ステージ(b)における環化は、アルコール溶媒および塩基の存在下において、還流温度で約1~5時間行われる。
【0067】
アルコール溶媒の例としてはメタノール、エタノール、プロパノールまたはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
環化ステージのための塩基の使用には、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジイソプロピルアミンが含まれる。
【0069】
本明細書で使用されるヒドロキシルアミンまたは酸付加塩は、ヒドロキシルアミンの酸付加塩を指す。例には、塩酸ヒドロキシルアミン、硫酸ヒドロキシルアミン、リン酸ヒドロキシルアミン、および硝酸ヒドロキシルアミンが含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
式(V)の化合物またはその塩の単離は、冷却、濾過、遠心分離、洗浄、乾燥、およびそれらの組み合わせなどの当技術分野で公知の任意の方法によって実施することができる。
【0071】
ステージ(c):ステージ(c)におけるアミド化は、塩化メチレン、塩化エチレン、THF、ジイソプロピルエーテルまたはそれらの混合物等の溶媒の存在下で行われる。
【0072】
アミド化に使用される塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、トリエチルアミン(TEA)、N,N-ジイソプロピルアミンから選択される。
【0073】
式(VI)の化合物またはその塩の単離は、冷却、濾過、遠心分離、洗浄、乾燥、およびそれらの組み合わせなどの当技術分野で公知の任意の方法によって実施することができる。
【0074】
ステージ(d):ステージ(d)におけるハロゲン化は、モノクロロベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化エチレン、CCl4またはそれらの混合物等の溶媒の存在下で行われる。
【0075】
式(VI)の化合物は、ピリジニウムトリブロミド、ピリジニウムジクロロブロメート、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン(DBDMH)、テトラブロモシクロヘキサジエノン、N-ブロモスクシンイミド(NBS)、テトラオクチルアンモニウムブロミド(TOABr)などの臭素化剤を使用してハロゲン化される。
【0076】
式(VI)の化合物は、塩化チオニル、塩化メタンスルホニル、塩化トリクロロメタンスルホニル、次亜塩素酸tert-ブチル、ジクロロメチルメチルエーテル、塩化メトキシアセチル、塩化オキサリル、塩化シアヌル、N-クロロスクシンイミド、N-クロロフタルイミド、1,3-ジクロロ5,5-ジメチルヒダントイン、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、トリクロロイソシアヌル酸、クロラミンB水和物、ジクロラミンB、ジクロラミンT、ベンジルトリメチルアンモニウムテトラクロロヨーダート、塩化トリメチルシリルなどの塩素化剤を用いてハロゲン化される。
【0077】
式(VI)の化合物は、ヨウ素、ヨウ化水素酸、四ヨウ化炭素、1-クロロ-2-ヨードエタン、N,N-ジメチル-N-(メチルスルファニルメチレン)-アンモニウムヨージド、N-ヨードスクシンイミド、N-ヨードサッカリン、1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントイン、ピリジン一塩化ヨウ素、ジクロロヨウ素酸テトラメチルアンモニウム、ジクロロヨウ素酸ベンジルトリメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ビス(ピリジン)ヨードニウム、ビス(2,4,6-トリメチルピリジン)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリメチルシリルヨージドなどのヨウ素化剤を用いてハロゲン化される。
【0078】
式(VI)の化合物は、フッ化水素カリウム、フッ化テトラメチルアンモニウム四水和物、フッ化テトラブチルアンモニウム水和物、フッ化テトラブチルアンモニウム、トリエチルアミントリヒドロフルオリド、DMPU-HF試薬、テトラエチルアンモニウムフルオリドトリヒドロフルオリド、テトラブチルアンモニウムビフルオリド、2-フルオロ-1-メチルピリジニウムp-トルエンスルホナート、DAST、ビス(2-メトキシエチル)-アミノ硫黄トリフルオリド、石川試薬、PyFluor、ピリミジン-2-スルホニルフルオリド、テトラブチルアンモニウムジフルオロトリフェニルシリカート、テトラブチルアンモニウムジフルオロトリフェニルスズ、1-フルオロピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート、1-フルオロピリジニウムテトラフルオロボラート、1-フルオロ-2,4,6-トリメチルピリジニウムテトラフルオロボラート、1-フルオロ-2,6-ジクロロピリジニウムテトラフルオロボラート、1,1’-ジフルオロ-2,2’-ビピリジニウムビス(テトラフルオロボラート)、N-フルオロベンゼンスルホンイミド、1-フルオロ-3,3-ジメチル1,2-ベンゾヨードキソールなどのフッ素化剤を用いてハロゲン化される。
【0079】
ハロゲン化反応はさらに、AIBN[2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)]、BPO[過酸化ベンゾイル]から選択されるラジカル開始剤の存在下で実施される。
【0080】
式(VII)の化合物またはその塩の単離は、冷却、濾過、遠心分離、洗浄、乾燥、およびそれらの組み合わせなどの当技術分野で公知の任意の方法によって実施することができる。
【0081】
ステージ(e):式(VII)の化合物とチオモルホリン-1,1-ジオキシドとの縮合反応を、有機溶媒の存在下、室温で20~48時間実施して、式(I)の化合物を得る。式(I)の化合物は、任意にその塩に転換される。
【0082】
有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、tert-ブタノール、n-ブタノールまたはそれらの混合物等の溶媒から選択される。
【0083】
式(I)の化合物の遊離塩基は、メタノール、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、tert-ブタノール、n-ブタノール、水またはそれらの混合物等の有機溶媒中で任意に単離される。
【0084】
式(I)の化合物は、MDC、アセトニトリル、2-メチルTHF、イソプロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、イソブチルアルコール、酢酸tert-ブチルまたはそれらの混合物などの溶媒の存在下で、室温で、その薬学的に許容可能な塩に任意に転換される。
【0085】
式(I)、(IV)または(V)に関して使用される「塩」または「薬学的に許容可能な塩」という用語は、薬学的に許容され且つ親化合物の所望の薬理活性を有する、式(I)、(IV)または(V)の化合物の塩を指す。特に、そのような塩は、無毒であり、無機または有機の酸付加塩および塩基付加塩であり得る。具体的には、そのような塩には、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸で形成された、もしくは酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクト-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などの有機酸で形成された、酸付加塩;あるいは(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオンによって置換されるか、またはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルグルカミンなどの有機塩基と配位する場合に形成される塩、が挙げられる。塩は、さらに、一例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなどを含み;化合物が塩基性官能基を含む場合、塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシラート、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩などの無毒の有機酸または無機酸の塩を含む。
【0086】
さらに別の実施形態において、本発明は、式(II)の化合物またはその塩を式(III)の化合物と縮合させて式(IV)の化合物を得ることを含む、式(IV)の化合物の調製のためのプロセスに関する。ここで、式中、RはC1-C4アルキル基である。
【0087】
式(IV)の化合物の調製のための反応条件は、上記のように規定される。
【0088】
さらに別の実施形態において、本発明は、以下のステップを含んでいる、式(V)の化合物の調製のためのプロセスに関する;
a)式(II)の化合物またはその塩を式(III)の化合物と縮合させて式(IV)の化合物を得ること(式中、RはC1-C4アルキル基である);
b)ヒドロキシルアミンまたはその酸付加塩を使用して式(IV)の化合物を環化して、式(V)の化合物を得ること。
【0089】
式(V)の化合物の調製のための反応条件は、上記のように規定される。
【0090】
別の態様において、本発明は、RがC1-C4アルキル基である式(IV)の新規中間体化合物および式(V)の化合物を提供する。
【0091】
【0092】
以下の実施例は単に例示のために提示されるものであり、本発明の範囲または添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0093】
〔実施例1:6-para-トリルピリジン-2-アミン塩酸塩(式-IIa)の調製〕
【0094】
【0095】
トリエチルシラン(13.04g、0.112mol)を、THF(60.0ml)、4-(メチルチオ)-6-p-トリルピリジン-2-アミン(10.0g、0.0374mol)および10%Pd/C(1.0g)ペーストの混合物に0℃で添加した。添加後、反応塊を0℃で30分間撹拌し、次いで室温で3時間撹拌した。反応塊をセライト床を通して濾過し、THFを留去して油状残渣を得た。このようにして得られたオリー(oliy)残渣をメタノール性塩酸溶液で処理して、6-パラ-トリルピリジン-2-アミン塩酸塩を得た(収率:7.93g、95.88%)。1H-NMR (400 MHz, DMSO) δ 14.13 (1H, br s), 8.34 (2H, br s), 7.94 (1H, dd J1 8.7Hz, J2 7.4 Hz), 7.88 (2H, d J1 8.1 Hz), 7.39 (2H, d J1 8.1 Hz), 7.21( 1H, d, J1 7.4 Hz) 6.95 (1H, d, J1 8.1 Hz) 2.39 (3H, s)。
【0096】
〔実施例2:エチルアミノ-N-(6-p-トリルピリジン-2-イル)メタンチオカルバメート(式-IVa)の調製〕
【0097】
【0098】
5℃に冷却したDCM(100mL)中の6-パラ-トリルピリジン-2-アミン(遊離塩基)(10.0g、0.054mol)の溶液に、エトキシカルボニルイソチオシアネート(17.3mL、0.062mol)を15分かけて滴下した。次いで、反応混合物を室温に温め(20℃)2時間撹拌した。生成物を真空下での濾過によって収集し、DCM(2×10mL)で十分に洗浄し、風乾して、所望の生成物を得た(収率:11.65g、81.58%)。得られたチオ尿素誘導体をそのまま次のステップに使用した。1H-NMR (400 MHz, DMSO) δ 11.91 (2H, br s), 8.66 (1H, s), 7.94 (3H, t), 7.77 (1H, dt), 7.31 (2H, d), 4.24 (2H, q), 2.36 (3H, s),1.29(3H, t)。
【0099】
〔実施例3:5-p-トリル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-2-アミン(式-V)の調製〕
【0100】
【0101】
EtOH:MeOH(1:1、100mL)の混合物中のヒドロキシルアミン塩酸塩(10.94g、0.157mol)の懸濁液に、N,N’-ジイソプロピルエチルアミン(16.19mL、0.093mol)を加え、混合物を室温(20℃)で1時間撹拌した。次いで、エチルアミノ-N-(6-p-トリルピリジン-2-イル)メタンチオカルバメート(式IVa)(10.0g、0.031mol)を添加し、混合物をゆっくりと加熱還流した(注:発生するH2Sをクエンチするために漂白スクラバーが必要であった)。3時間還流した後、混合物を冷却し、真空中で蒸発させ、H2O(100ml)を油状残渣に加え、1時間撹拌した。固体沈殿物を濾過し、H2O(50ml)で連続的に洗浄し、次いで真空中で乾燥して、固体としてトリアゾロピリジン誘導体(式V)を得た(収率:7.13g、86.9%)。lH-NMR (400 MHz, DMSO-d4) δ 7.81 (2H, d, J 8.1 , a 2 x aromatic-H), 7.45 (1H, t, J 8.1 Hz, aromatic-H), 7.29 (3H, m ), 6.94 (1H, d J 7.4 Hz ), 6.00 (2H, br, S, NH2 ), 2.34 (3H, S )。
【0102】
〔実施例4:N-(5-p-トリル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5,a]ピリジン2-イル)シクロプロパンカルボキサミド(式-VI)の調製〕
【0103】
【0104】
25℃のMDC(100mL)中の5-p-トリル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-2-アミン(式-V)(10.0g、0.044mol)の溶液に、DIPEA(38.24mL、0.22mol)を添加し、30分間撹拌し、続いて塩化シクロプロパンカルボニル(13.98g、0.133mol)を添加した。反応混合物を同じ温度で1時間撹拌した。真空中で溶媒を蒸発させた後、得られた残渣をメタノール性アンモニア溶液(1000mL)で処理し、周囲温度で撹拌(1~16時間)して、任意のビス-アシル化生成物を加水分解した。生成物の単離は、真空中で溶媒を除き、続いてEt2O(50mL)で滴定することによって行った。固体を濾過によって収集し、H2O(2×50mL)で洗浄し、真空中で乾燥して、式VIの所望の化合物を与えた(収率:9.8g、75.21%)。1H-NMR (400 MHz, DMSO) δ 11.04(1H, S), 7.91 (2H, d, J 8.1Hz , 2 x aromatic-H), 7.68 (2H, m), 7.37 (2H, d J 8.1 Hz ),7.26(1H, dd J1 6.7 Hz , J2 2.0 Hz), 2.40 (3H S ), 2.01(1H, S ), 0.81 (3H d)。
【0105】
〔実施例5:シクロプロパンカルボン酸[5-(4-ブロモメチル-フェニル)-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-2-イル]-アミド(式-VIIa)の調製〕
【0106】
【0107】
モノクロロベンゼン(300mL)中のN-(5-p-トリル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5,a]ピリジン2-イル)シクロプロパンカルボキサミド(10.0g、0.034mol)の溶液に、N-ブロモスクシンアミド(6.08g、0.034mol)およびAIBN(0.558g、0.0034mol)を加えた。生じた混合物を70℃で4時間加熱した。反応塊を水中でクエンチし、酢酸エチル(300mL×2)で抽出した。有機層をチオ硫酸ナトリウム溶液(200mL)で洗浄した。酢酸エチルを真空下で蒸留し、脱気した。アセトン(50mL)を脱気塊に充填し、撹拌し、濾過し、アセトン(10mL)で洗浄して、式VIIを得た(収率:7.96g、62.74%)。1H-NMR (400 MHz, DMSO) δ 11.07 (1H, br s), 8.03 (2H, m), 7.91 (1H, d), 7.73 (3H, m), 7.64 (2H, m), 7.34 (2H, m),4.81(2H, s) 2.01 (1H, s),0.81(4H, d)。
【0108】
〔実施例6:N-[5-[4-[(1,1-ジオキソ-1,4-チアジナン-4-イル)メチル]フェニル]-[1,2,4]-トリアゾロ[1,5-a]-ピリジン-2-イル]-シクロプロパンカルボキサミド(フィルゴチニブ)(式I)の調製〕
シクロプロパンカルボン酸[5-(4-ブロモメチル-フェニル)-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-2-イル]-アミド(10.0g,0.026mol)およびDIPEA(18.73mL,0.107mol)をN2下でDCM/MeOH(5:1、v:v)中に溶解し、チオモルホリン1,1-ジオキシド(4.63g、0.0269mol)を加えた。生じた溶液を、完了するまで室温で撹拌した。反応完了後、溶媒を蒸発させた。このようにして得られた油状残渣を酢酸エチルおよびメタノールで処理して、N-[5-[4-[(1,1-ジオキソ-1,4-チアジナン-4-イル)メチル]フェニル]-[1,2,4]-トリアゾロ[1,5-a]-ピリジン-2-イル]シクロプロパンカルボキサミド(フィルゴチニブ遊離塩基、式I)を得た(収率:5.87g、51.28%)。1H-NMR (400 MHz, DMSO) δ 11.06 (1H, s), 7.99 (2H, dJ1 8.1 Hz), 7.70 (2H, m), 7.52 (2H, d J1 8.7 Hz), 7.30 (1H, dd J1 6.5 Hz, J2 1.2 Hz), 3.77(2H, s)3.15(4H, t, J1 4.7 Hz)2.94 (4H, d J1 2.7 Hz), 2.00 (1H, s), 0.81(4H, d, J1 6.0 Hz)。
【0109】
〔実施例7:N-[5-[4-[(1,1-ジオキソ-1,4-チアジナン-4-イル)メチル]フェニル]-[1,2,4]-トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-2-イル]シクロプロパンカルボキサミド(フィルゴチニブ)(式I)の調製〕
シクロプロパンカルボン酸[5-(4-ブロモメチル-フェニル)-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-2-イル]-アミド(10.0g、0.026mol)およびDIPEA(18.73mL、0.107mol)をN2下でDCM/MeOH(5:1、v:v)中に溶解し、チオモルホリン1,1-ジオキシド(4.63g、0.0269mol)を加えた。生じた溶液を、完了するまで室温で撹拌した。反応完了後、溶媒を蒸発させた。このようにして得られた油状残渣を水で処理し、生成物を濾過により収集した。このようにして得られた湿潤ケーキを酢酸エチルおよびメタノールで処理して、N-[5-[4-[(1,1-ジオキソ-1,4-チアジナン-4-イル)メチル]-フェニル]-[1,2,4]-トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-2-イル]シクロプロパンカルボキサミド(フィルゴチニブ遊離塩基、式I)を得た。
【0110】
〔実施例8:N-[5-[4-[(1,1-ジオキソ-1,4-チアジナン-4-イル)メチル]フェニル]-[1,2,4]-トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-2-イル]シクロプロパンカルボキサミド(フィルゴチニブ)(式I)の調製〕
シクロプロパンカルボン酸[5-(4-ブロモメチル-フェニル)-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-2-イル]-アミド(10.0g、0.026mol)およびDIPEA(18.73mL、0.107mol)をN2下でDCM/MeOH(5:1、v:v)中に溶解し、チオモルホリン1,1-ジオキシド(4.63g、0.0269mol)を加えた。生じた溶液を、完了するまで室温で撹拌した。反応完了後、溶媒を蒸発させた。このようにして得られた油状残渣をMDC中に取り、続いて水洗し、蒸発させた。このようにして得られた油状残渣を酢酸エチルおよびメタノールで処理して、N-[5-[4-[(1,1-ジオキソ-1,4-チアジナン-4-イル)メチル]-フェニル]-[1,2,4]-トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-2-イル]シクロプロパンカルボキサミド(フィルゴチニブ遊離塩基、式I)を得た。
【0111】
〔実施例9:N-[5-[4-[(1,1-ジオキソ-1,4-チアジナン-4-イル)メチル]フェニル]-[1,2,4]-トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-2-イル]シクロプロパンカルボキサミド塩酸塩(フィルゴチニブHCl)の調製〕
2.5gmのN-[5-[4-[(1,1-ジオキソ-1,4-チアジナン-4-イル)メチル]フェニル]-[1,2,4]-トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-2-イル]シクロプロパンカルボキサミド(すなわち、フィルゴチニブ遊離塩基)を、87.5mlのMDCと43.75mLのアセトニトリルとの混合物中に溶解した。室温で撹拌しながら、5mLの12%メタノール性塩酸塩溶液を滴下した。白色沈殿が形成され、混合物を室温で30~90分間撹拌した。白色生成物を濾過し、MDCおよびアセトニトリルの混合物で洗浄して、フィルゴチニブ塩酸塩を得た。
【0112】
当業者であれば、各成分の量およびタイプは、異なる組み合わせで、または単独で使用することができることを理解するであろう。全てのそのような変形および組み合わせは、本開示の範囲内に入る。
【0113】
以上の実施例は単に例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。開示された実施形態に対する様々な変更および修正は、当業者には明らかであろう。そのような変更および修正は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。
【国際調査報告】