(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-02
(54)【発明の名称】材料シートの形状を推定する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01L 1/00 20060101AFI20220526BHJP
【FI】
G01L1/00 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021558631
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(85)【翻訳文提出日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 US2020025218
(87)【国際公開番号】W WO2020205517
(87)【国際公開日】2020-10-08
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】アボット,ジョン スティール ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】ジォン,ジャァミン
(57)【要約】
ガラスの製造技術を向上させるために、ガラスシートの無重力形状、固有形状、及び熱歪みを把握するための方法及び装置を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
測定ゲージの複数のロードセルが全て一定の初期高さ(平坦)であるときに、第1の適用されたガラスシートに応答している前記複数のロードセルの各々にてそれぞれの第1初期重量測定値を得るステップと、
前記それぞれの第1初期重量測定値から前記第1のガラスシートの第1固有形状を推定するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記測定ゲージが複数の高さ調節可能ピンを含み、該高さ調節可能ピンが、各々前記複数のロードセルの1つに関連付けられている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のガラスシートの前記第1固有形状を推定するステップが、
複数のロードセルの各々に関し、一定の初期高さから離れたそれぞれの次の高さを、前記それぞれの第1初期重量測定値から計算するステップであって、この計算が、前記第1のガラスシートの無重力形状を推定するために高さ調節可能ピンを移動させるための反復アルゴリズムに基づいているステップと、
前記第1固有形状を、前記それぞれの次の高さの関数として推定するステップと、
を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のガラスシートの前記第1固有形状を前記それぞれの第1初期重量測定値から推定するステップを、
【数1】
で表すことができ、式中、式中、W
0は第1固有形状、D=Eh
3/12(1-v
2)はガラスシートの曲げ剛性、hはガラスシートの厚さ、ρはガラスシートの密度、gは重力定数、Eはガラスシートのヤング率、vはガラスシートのポアソン比、f
iがそれぞれの初期重量測定値である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
さらに、前記第1のガラスシートの第1の入り込んだ熱歪みを推定するステップを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のガラスシートの前記第1の入り込んだ熱歪みを、
前記第1のガラスシートを強制的に平坦にしたときの前記第1のガラスシートの応力を測定するステップと、
前記第1の入り込んだ熱歪みを、前記測定された応力及び前記第1固有形状の関数として推定するステップと、
により推定するステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記測定された応力から得られる応力関数が、前記第1固有形状の関数として以下のように表されることができ、
【数2】
式中、∇
4φは応力関数、EK
G(w
0)は固有形状のガウス曲率、E∇
2(αT)は、入り込んだ熱歪みαTに基づく項であり、熱歪みの推定がαの値を求めることにより得られる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
さらに、前記第1のガラスシートの無重力形状を、前記第1のガラスシートの前記第1固有形状及び第1の入り込んだ熱歪みの関数として推定するステップを含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
さらに、
(a)前記第1のガラスシートの無重力形状の推定を、測定された無重力形状と比較し、それにより、前記第1のガラスシートの、推定される、前記第1の入り込んだ熱歪みの精度の指標を得るステップと、
(b)前記比較の結果、前記推定された第1の入り込んだ熱歪みの精度が最小よりも低いことが示された場合、前記推定された第1の入り込んだ熱歪みを修正し、前記第1のガラスシートの無重力形状を、前記第1のガラスシートの前記第1固有形状及び前記修正された第1の入り込んだ熱歪みの関数として再推定するステップと、
(c)前記比較の結果、前記推定された第1の入り込んだ熱歪みの精度が最小値以上であることが示されるまで前記ステップ(a)及び前記ステップ(b)を繰り返すステップと
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のガラスシートが前記複数のセクションに切り分けられた場合、前記第1のガラスシートの複数のセクションのそれぞれの1つに対し、複数の局所的な無重力形状を推定するステップをさらに含み、
前記局所的無重力形状の各々が、前記第1固有形状の関数として推定され、且つ、
前記複数の局所的無重力形状の各々が、前記第1固有形状から複数の局所平均平面のそれぞれの1つを減算することにより推定される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
a)前記測定ゲージの前記複数のロードセルが全て一定の初期高さに設定されているときに、第2の適用されたガラスシートに応答している前記複数のロードセルの各々にてそれぞれの第2初期重量測定値を得るステップと、
(b)前記それぞれの第2初期重量測定値から前記第2ガラスシートの第2固有形状を推定するステップと、
c)複数の適用されたガラスシートの各々に対してステップ(a)及び(b)を繰り返し、それにより、少なくとも前記第1の適用されたガラスシート及び前記第2の適用されたガラスシートを含む前記複数の適用されたガラスシートの複数の固有形状を把握するステップと、
をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステッチングスクリプトを用いて、それぞれのエッジにて合体された前記複数の適用されたガラスシートの複数の固有形状の各々を含む、組み合わされた固有形状の推定を得るステップと、
組み合わされたガラスシートの入り込んだ熱歪みを推定するステップであって、該組み合わされたガラスシートが、それぞれのエッジにて合体された前記複数の適用されたガラスシートを組み合わせるためのステッチングスクリプトを用いて推定されるステップと、
前記組み合わされたガラスシートの無重力形状を、前記組み合わされた固有形状及び前記入り込んだ熱歪みの関数として推定するステップと、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記組み合わされたガラスシートの前記入り込んだ熱歪みの推定が、
前記複数の適用されたガラスシートの各々のそれぞれの入り込んだ熱歪みを推定するステップと、
前記複数の適用されたガラスシートの各々の前記それぞれの入り込んだ熱歪みを平均化して、前記組み合わされたガラスシートの前記入り込んだ熱歪みを求めるステップと、
により得られる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記組み合わされたガラスシートの前記入り込んだ熱歪みの推定が、
前記組み合わされたガラスシートの特性を代表し、且つ、前記複数の適用されたガラスシートのいずれか1つよりも大きい平方面積を有する代表的なガラスシートからサブセクションを切り取るステップと、
前記代表的なガラスシートの前記サブセクションを、前記測定ゲージの複数のロードセルの上に適用するステップと、
前記複数のロードセルが全て一定の初期高さに設定されているときに、前記代表的なガラスシートの前記サブセクションに応答している前記複数のロードセルの各々にてそれぞれの初期重量測定値を得るステップと、
前記代表的なガラスシートの前記サブセクションの固有形状を、前記初期重量測定値の関数として推定するステップと、
前記代表的なガラスシートの前記サブセクションにおける測定された応力を、該サブセクションを強制的に平坦にしたときに得るステップと、
前組み合わされたガラスシートの前記入り込んだ熱歪みを、前記代表的なガラスシートのサ前記ブセクションの前記測定された応力及び前記固有形状の関数として推定するステップと、
を含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2019年4月4日に出願された米国仮特許出願第62/829,377号の米国法典第35編第119条の下で優先権の恩恵を主張し、この出願の内容に依拠し、且つ、その全てを援用して本明細書の記載の一部とする。
【技術分野】
【0002】
開示される実施形態は、材料シート、例えば比較的大きいガラスシート、特に、比較的大きく且つ比較的薄いガラスシートの形状を測定及び推定するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
大型のソースガラスシートから、液晶ディスプレイ(LCD)又はその他のディスプレイ用ガラスなどの商業製品を製造することは多くの課題を含む。例えば、大きいガラスシートを形成するために用いられるプロセス(例えば、ダウンドロー・フュージョンプロセス)及び下流プロセスにおけるガラスシートの挙動(例えば、真空チャックで平坦面に固定されたときのガラスシートの挙動、切断されたときのガラスシートの挙動など)を理解し、制御することが重要である。これらの課題は、特許文献1及び特許文献2に詳細に記載されており、これらの開示の全てを援用して本文の記載の一部とする。
【0004】
ガラスの形成及び製造プロセスをより良好に制御するためには,本質的に柔軟な物体である大きいガラスシートの無重力状態の形状を知ることが重要である。大きいガラスシートの無重力形状を把握することは特に困難である。ガラス製造プロセスの進歩に伴い、ソースガラスシートは、より大きく且つより薄くなってきた。実際、一般的なソースガラスシートは、かつては約1500mm×1800mmであったが、現在の技術により、約9平方メートル、例えば2880mm×3130mmの寸法のソースガラスシートも可能になっており、近い将来、さらに大きいガラスシートも登場すると予想されている。これらのガラスシートは厚さが約0.7mmであるが、さらにより薄いガラスの需要も高まっている。
【0005】
無重力形状を把握するための既知のプロセスは、例えば、特許文献1及び特許文献3に詳述されているようなベッド・オブ・ネイル(BON)技術を採用しており、これらの開示の全てを援用して本文の記載の一部とする。BON技術は、高さ調節可能ピンとロードセルとの組合せ(約100個)のアレイを有する装置を含む。多数の反復アルゴリズムのいずれもが、それぞれの高さ調節可能ピンを、ガラスシートによりロードセルに加えられた測定力に応答して調節するために採用され得る。反復アルゴリズムを用いて、高さ調節可能ピンのそれぞれの高さが、ロードセルにより測定された目標重量が比較的一定になったことを示したとき、ピンのそれぞれの高さがガラスシートの無重力形状をもたらしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,509,218号明細書
【特許文献2】国際公開第2009/108302号
【特許文献3】米国特許第9,031,813号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
BON技術の限界の1つは、高さ調節可能ピンとロードセルとの組合せのアレイの寸法である。実際、ソースガラスシートの寸法が大きくなると、BON装置上の利用可能な領域が小さくなり過ぎ、ソースガラスシートに適応できない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示される実施形態の1以上の態様によれば、新規の技術を用いて、ガラスシートなどの柔軟な物体の形状の、より完全な理解を可能にする。この形状は、無重力形状だけでなく、固有形状、及び、関連する熱歪み特性も含む。
【0009】
本明細書の1以上の実施形態は、ガラスシートの無重力形状及び固有形状の両方を、無重力形状を測定するBON技術の実行中に得られた1以上の測定値から推定する方法に対応し得る。
【0010】
本明細書の1以上の実施形態は、ガラスシート(及びガラスシートから切り取られたより小さいピース)の形状及び反りの特性を、ガラスシートの無重力形状、ガラスシートの固有形状、及び/又はガラスシートの熱歪みから推定する方法に対応し得る。
【0011】
本明細書の1以上の実施形態は、利用可能なBON装置上に収まらないほど大きいガラスシートの無重力形状を、大きいガラスシートから切り取られた多数のより小さいピースのそれぞれの固有形状及び熱歪みの関数として推定する方法に対応し得る。
【0012】
その他の態様、特徴、及び利点は、添付図面を参照しつつ本明細書の説明を読むことにより当業者に明らかになろう。
【0013】
説明のために、現在好ましい形態を図面に示すが、本明細書で開示及び説明される実施形態は、示されている正確な配置及び機器に限定されないことが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】BON装置上に配置されたガラスシートの概略図であり、詳細には、BON装置の全ての高さ調節可能ピンが一定の高さ(平坦)である初期反復時の状態を示している。
【
図1B】
図1AのBON装置上に配置されたガラスシートの概略図であり、詳細には、BON装置の全ての高さ調節可能ピンがガラスシートの無重力形状を示しているアルゴリズムの最終的反復時の状態を示している。
【
図2A】ステッチングプロセスの1つの段階を示す図であり、より大きいガラスシートがより小さいピースに切断された状態を示している。
【
図2B】ステッチングプロセスの1つの段階を示す図であり、より小さいピースのそれぞれの無重力形状が得られた状態を示している。
【
図2C】ステッチングプロセスの1つの段階を示す図であり、より大きいガラスシートの無重力形状の推定結果を示す図である。
【
図2D】元のガラスシートの無重力形状の推定を示す図である。
【
図3A】BON装置におけるピンの高さの変化(Y軸)を反復回数(X軸)の関数として示した代表的なグラフである。
【
図3B】
図3AのBON装置における重量誤差(Y軸)を反復回数(X軸)の関数として表した代表的なグラフである。
【
図4A】ガラスシートの実際の無重力状態であるドーム形状を示す代表的な概略陰影図である。
【
図4B】ガラスシートの推定された固有形状の代表的な概略陰影図である。
【
図4C】ガラスシートの推定された熱歪みの代表的な概略陰影図である。
【
図4D】
図4Bの推定された固有形状及び
図4Cの推定された熱歪みに基づいて計算された、
図4Aのガラスシートの無重力形状の推定の代表的な概略陰影図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
類似の番号が類似の要素を示す図面を参照すると、
図1Aに、BON装置100上に配置されたガラスシート10が、詳細には初期反復時、すなわちBON装置100の全ての高さ調節可能ピン102が一定の高さにある(すなわち平坦な)状態で示されている。前述したように、高さ調節可能ピン102の各々が、X-Yアレイ(例えば、9×11アレイ)で配置されたそれぞれのロードセル104に関連付けられている。高さ調節可能ピン102のそれぞれの高さは、Z方向に沿って測定される(例えば、通常、単位はmm)。
【0016】
図1Bは、
図1AのBON装置100上のガラスシート10の概略図であり、詳細には、BON装置100の全ての高さ調節可能ピン102がガラスシート10の無重力形状を示すアルゴリズムの最終反復時の図である。
【0017】
BONプロセスは、ガラスシート10が完全に平坦(すなわち、完全に平坦な無重力状態の形状)であり且つアレイの高さ調節可能ピン102が完全に平坦であると仮定した場合の、ガラスシート10がロードセル104に加えるであろう目標重量のセット(例えば、定数)の計算/推定を含む。ガラスシート10は完全には平坦ではないため、BON装置100の高さ調節可能ピン102の全てが一定(すなわち、平坦)である初期反復(
図1)にて測定される実際の初期重量は目標重量に一致しない。従って、実際に測定された、ロードセル104にかかる重量を目標重量に一致させるためには、BON装置100の高さ調節可能ピン102のそれぞれの高さが一定であり得ない(変更されなければならない)。
【0018】
高さ調節可能ピン102のそれぞれの高さの変化を、各反復でロードセルにかかる重量の測定値に基づいて計算するために、多数の反復アルゴリズムのいずれをも採用できる。反復アルゴリズムは、ロードセル104にかかる実際の測定重量が目標重量と一致するように、高さ調節可能ピン102のそれぞれの高さの最終セットに収束するように採用される。それぞれの高さの最終セットは、ガラスシート10の(非平坦な)無重力形状を反映している。決定された無重力形状は、ガラスシート10を反対側に反転させて再びBONプロセスを実行することにより確認又はテストされ得る。両方のBONプロセスの結果、ほぼ同一の無重力形状が得られたならば、無重力形状が確認される。
【0019】
上述したように、所与のBON装置100の限界の1つは、高さ調節可能ピン102及び関連するロードセル104のアレイの寸法が限られていることである。
図1A、
図1Bに示した実施形態の場合、約1500mm×1800mmのガラスシートを測定できる9×11アレイの配列である。従って、より大きいガラスシート(例えば、約2880mm×3130mm)の無重力形状を、ガラスシート全体を
図1A、
図1Bに示したBON装置100上に配置して直接測定することは不可能である。
【0020】
図2A、
図2B、
図2C、及び
図2Dを参照して、上述の問題に対する解決策の既知の試みの議論を提示する。試みられた解決策の推論は、以下の通りである。(i)より大きいガラスシートをより小さいピースに切断する、(ii)より小さいシートの各々の無重力形状をBON装置100上で測定する、(iii)より小さいピースのそれぞれの無重力形状を数学的にステッチング(つなぎ合わせ)することにより、大きいガラスシート(切断しなかった場合)の無重力形状を推定する。
図2A、
図2B、
図2C、及び
図2Dは、そのようなステッチングプロセスのそれぞれの段階を示しており、ガラスシート20(BON装置100の利用可能な領域よりも大きい)が、より小さいピース20A、20B、20C、20Dに切断されている。
図2Aは、BON装置100を用いて別々に得られた、各ピースのそれぞれの無重力形状を示している。
図2Aは、それぞれの無重力形状を上から見た(陰影)図であり、
図2Bは、より小さいピース20A、20B、20C、20Dの無重力形状の代表的な斜視図である。
図2A及び
図2Bから、より小さいピース20A、20B、20C、20Dの各々の無重力形状が、ほぼサドルのような形状であることがわかる。
【0021】
図2Cは、より大きいガラスシート20の無重力形状の推定結果を、数学的プロセスである既知のステッチングプロセス(又はスクリプト)を用いて示しており、より小さいピース20A、20B、20C、20Dのそれぞれの無重力形状の各々が、これらのピースのそれぞれのエッジにて合体されている。
図2Cに示した結果は興味深いが、ガラスシート20の実際の無重力形状(
図2Dに示され、ほぼドーム形状)とは一致しない。
【0022】
幾つかのタイプのガラスシートに関し、比較的大きいガラスシート20は、ほぼドーム形状の無重力形状を呈するが、より小さいピースに切断されると、各ピースは、ほぼサドル形状の無重力形状を有することが分かっている。これらの特性は、ガラスシート20の製造におけるフュージョンドロープロセスに起因すると考えられる。従って、商業的用途のために、より大きいガラスシート20(既にフュージョンドローされている)から小さいピースを切り出す場合、フュージョンドロープロセスに変更を加えない限りピースがサドル形状になる傾向がある。しかし、注目すべきは、上述の現象が、より大きいガラスシート20の無重力(ドーム状)形状を見ても分からないことである。
【0023】
注目すべきは、
図2Cで推定された形状が、ガラスシート20の別の特性、すなわち固有形状(intrinsic shape)と幾つかの類似点を共有していることである。固有形状とは、ガラスシートを複数の、より小さいピースに切断し、それらの無重力形状を測定し、それらの無重力形状を数学的にステッチングする(前述のステッチングスクリプトを用いる)ことによる把握される形状である。しかし、ガラスシートの固有形状を、ガラスシートをより小さいピースに切断せずに推定できることがわかった。この発見の一部は、
図3A及び
図3Bの代表的なグラフに基づいている。
【0024】
図3Aは、BON装置におけるピン高さの変化(高さの絶対的変化、Y軸に沿ってプロット)を、反復回数(X軸に沿ってプロット)の関数として示したグラフである。このデータは、上述の反復アルゴリズムを、
図1A及び
図1Bに示したBON装置上で1500mm×1850mm×1.0mmのガラスシート10に対して実行した結果である。曲線300は、高さ調節可能ピン102のうちの1以上の最大高さ変化の絶対値を反復回数の関数としてプロットしたものである。曲線302は、高さ調節可能ピン102のうち、指定されたピン(例えば、ピン#1)の高さ変化の絶対値を反復回数の関数としてプロットしたものである。曲線304は、高さ調節可能ピン102のうち、別の指定されたピン(例えば、ピン#30)の高さ変化の絶対値を反復回数の関数としてプロットしたものである。
【0025】
図3Bは、(
図3Aに関連して実行された実験に対応している)重量誤差(Y軸に沿ってプロット、単位はグラム)を反復回数(X軸に沿ってプロット)の関数として示した代表的なグラフである。曲線306は、ロードセル104のうちの1以上の最大重量誤差の、反復回数の関数としてのプロットである。曲線308は、ロードセル104のうちの1以上の中央重量誤差の、反復回数の関数としてのプロットである。
【0026】
図3A及び
図3Bの丸で囲んだ部分に注目すると、BON技術で採用されている反復アルゴリズムに関する興味深い情報を確認できる。特に注目すべきは、高さ調節可能ピンの次の高さが、各反復にて測定された重さに基づいており、且つ重量誤差のいずれもゼロにしようとするように推定されている状況である。
図3A及び
図3Bに見られるように、誤差は最初に急激に減少し(形状が収束していることを示す)、反復回数100~200あたりで誤差は極小になる。その後、誤差は増大し、次いで、反復回数800付近で再び以前のレベルまで低減する。これは、高さ調節可能ピン102の移動に関する初期の推定が、高さ調節可能ピン102がほぼ水平(平坦)であるときの重量分布に対応するものであることを証明している。この位置において、ガラスシート10の入り込んだ熱歪み(面内の応力/歪み)は、高さ調節可能ピン102にかかる法線力(重量)にほとんど又は全く影響しない。従って、高さ調節可能ピン102の移動に関する初期推定(ほぼ平坦であるとき)は、固有形状(無重力形状ではない)に収束している。反復アルゴリズムが、高さ調節可能ピン102の次の高さを、平面から十分に外れて(平坦であることから十分に外れて、例えば、ガラスシートの厚さよりも大きく外れて)推定したならば、ガラスシート10の入り込んだ応力は、ロードセル104にかかる法線力(重量)への影響を増大する。これが反復アルゴリズムを別の方向に収束するプロセスにさせ、すなわち、最終的にガラスシート10を無重力形状に収束させる。従って、無重力形状は、ガラスシート10の固有形状及び入り込んだ熱歪みの両方から決定可能である(また、これらを含む)。
【0027】
先に述べたように、反復アルゴリズムは、ガラスシート10が高さ調節可能ピン102の比較的平坦なアレイ上に配置されたときの重量分布を測定し、次いで、重量が目標重量に一致する位置にピン102を移動しようとする。反復回数がゼロのとき、初期重量測定値が、ガラスシート10の固有形状に関する解決策を提供する。反復アルゴリズムをBON装置100に適用して、ガラスシート10が平面の外に移動すると(初期重量測定値が高さ調節可能ピン102の計算と移動に使用された後)、高さ調節可能ピン102にかかる重量は、固有形状及び面内の応力の両方を反映することになる。従って、高さ調節可能ピン102は、ガラスシート10の固有形状に収束するのではなく、両方の効果を示す無重力形状に収束する。
【0028】
本明細書における1以上の実施形態によれば、方法及び装置は以下を提供する。(i)測定ゲージの複数のロードセルが全て一定の初期高さ(平坦)であるときに、適用されたガラスシート10に応答している複数のロードセルの各々にてそれぞれの初期重量測定値を得る、(ii)それぞれの初期重量測定値からガラスシート10の固有形状を推定する。
【0029】
一般的には、測定ゲージは(BON装置のように)高さ調節可能ピン102を含む必要はないが、それは、最低限、初期重量測定のみを必要とするからである。もちろん、測定ゲージがBON装置であってもよく、この場合、測定ゲージは複数の高さ調節可能ピン102を含み、各高さ調節可能ピンは、先に述べたように、複数のロードセル104の1つに関連付けられている。
【0030】
ガラスシート10の固有形状の推定は、以下の方法で達成され得る。(i)複数の高さ調節可能ピン102(及び/又はロードセル104)の各々に関し、一定の初期高さから離れたそれぞれの次の高さを、それぞれの初期重量測定値から計算するステップであり、この計算は、ガラスシート10の無重力形状を推定するために高さ調節可能ピン102を移動させるための上述の反復アルゴリズムに基づいている。(ii)ガラスシート10の固有形状を、それぞれの次の高さの関数として推定するステップ。
【0031】
ガラスシート10の固有形状をそれぞれの初期重量測定値から推定する方法の別の表現は以下の通りである、
【0032】
【0033】
式中、W0は第1固有形状、D=Eh3/12(1-v2)はガラスシートの曲げ剛性、hはガラスシートの厚さ、ρはガラスシートの密度、gは重力定数、Eはガラスシートのヤング率、vはガラスシートのポアソン比、fiはそれぞれの初期重量測定値である。
【0034】
固有形状をモデリングにより検証できる。BON技術からの情報は、高さ調節可能ピンにかかる重量の測定値、及び、平均的な水平面に対する固有形状の高さの予測値である。逆問題を、市販のソフトウェア製品、例えば、ANSYS(登録商標)、COMSOL(登録商標)又は類似のソフトウェアでモデル化でき、正しい寸法、厚さ、及びガラス特性(密度、ヤング率、ポアソン比など)を有する水平の平坦なシートが、(モデル内の)ピンをBON技術で予測された位置まで移動することにより変形されたときに、ピンにかかるモデル化された力を算出する。ピンにかかるモデル化された反力は、BONから得られた測定データと一致するはずであり、実際に一致する。
【0035】
BON技術が、実験で実際に使用したガラスシートとは異なる厚さのガラスシートに対して計算されるマトリックスを使用する場合がある。このような場合、「ANSYS」による解析は、反力が[(厚さ1)/(厚さ2)]**2の比率で異なることを示す。このようにして固有形状を補正できるが、厚さ1及び厚さ2が分かっていれば、「ANSYS」の解析を行わずに補正できる。
【0036】
また、固有形状を、「COMSOL」、「ANSYS」又は類似のモデルを用いて、測定された力誤差(平坦で水平なプレートに対して)をピンの位置に適用して形状の変化を計算することによって、より直接的に推定することもできる。
【0037】
固有形状及び無重力形状に関連するガラスシートの特性の1つは、入り込んだ熱歪みである。ガラスシートの入り込んだ熱歪みは、ガラスシートの異なる部分が異なる時間に結晶化(又は凝固)するときに発生し、この特性が、ガラスシートの形状に影響を与える場合がある。本明細書の1以上の実施形態によれば、方法及び装置は、ガラスシートの入り込んだ熱歪みの推定を提供する。例として、ガラスシートの入り込んだ熱歪みは、以下のように推定され得る。(i)ガラスシートを強制的に平坦にしたときのガラスシートにおける応力を測定する、(ii)入り込んだ熱歪みを、測定された応力及び固有形状の関数として推定する。
【0038】
上記に関連して、測定された応力から得られる応力関数を、固有形状の関数として以下のように表し得る。
【0039】
【0040】
式中、∇
4φは応力関数、EK
G(w
0)は固有形状のガウス曲率、E∇
2(αT)は、入り込んだ熱歪みαTに基づく項であり、熱歪みの推定はαの値を求めることにより得られる。上記の応力関数において、熱歪みが結果に与える影響は、2次導関数E∇
2(αT)(“Del-Squares alphaT”とも称する)を介してのみ知られる。従って、熱歪みの影響を推定するためには、Del^2 alphaTを推定しさえすればよい。
図4Cを参照すると、alphaTが使用されており、これは、鉛直方向に一様であり、水平方向にのみ、ドローから流れ落ちるガラスシートの形成により変化する(すなわち、ドローの下方向での変動は、ドローを横切る変動に比べて小さい)。重要なことは、Del^(関数)は実際には定数であり、その他の多くの関数も定数になるであろう。
【0041】
推定された熱歪みは、以下のステップによる方法及び装置に従ってテストされ、改善され得る:すなわち(a)ガラスシートの無重力形状の推定を、測定された無重力形状と比較し、それにより、ガラスシートの、推定される、入り込んだ熱歪みの精度の指標を得るステップ;(b)比較の結果、推定された入り込んだ熱歪みの精度が最小よりも低いことが示された場合、推定された入り込んだ熱歪みを修正し、ガラスシートの無重力形状を、ガラスシートの固有形状及び修正された入り込んだ熱歪みの関数として再推定するステップ;および(c)比較の結果、推定された入り込んだ熱歪みの精度が最小値以上であることが示されるまで、ステップ(a)及びステップ(b)を繰り返すステップ。
【0042】
図4A、
図4B、
図4C、及び
図4Dを参照し、本明細書に開示する方法及び装置は、ガラスシート10の無重力形状を、ガラスシート10の固有形状及び入り込んだ熱歪みの関数として推定することを提供し得る。
図4Aは、ドーム形状であるガラスシート10の実際の無重力形状の概略的な陰影図である。ガラスシート10の無重力形状を実際に測定せずに、上述の技術を用いてガラスシート10の固有形状を推定でき(
図4B)、ガラスシートの熱歪みの推定に関連付けて(
図4C)、同じくドーム形状のガラスシート10の無重力形状を推定し得る(
図4D)。
【0043】
有利な結果を上述の発見を用いて得ることができ、これは、大きいガラスシートを切断せずに、大きいガラスシートの、より小さいピースのそれぞれの局所的な無重力形状を推定するための方法及び装置を含む。詳細には、この方法及び装置は、それぞれの局所的な無重力形状をガラスシートの固有形状の関数として推定することを提供する。例えば、局所的な無重力形状の各々は、固有形状から複数の局所平均面のそれぞれの1つを減算することにより推定され得る。
【0044】
有利な結果を上述の発見を用いて得ることができ、これは、特に、大きいガラスシート20の無重力形状をBON装置上で直接測定することが不可能な(上述のような)場合である。この点に関し、単一の比較的大きいガラスシート20が複数のガラスシートを含む(より小さいピースに切り分けられた場合)とみなされ、これらの複数のガラスシートは、第1の適用されるガラスシート、第2の適用されるガラスシートなどを含む。
【0045】
本明細書における方法及び装置は、以下を提供する:すなわち、(i)測定ゲージの複数のロードセルが全て一定の初期高さ(平坦)であるときに、第1の適用されたガラスシートに応答している複数のロードセルの各々にてそれぞれの第1初期重量測定値を得るステップと、(ii)それぞれの第1初期重量測定値から第1のガラスシートの第1固有形状を推定するステップと、である。
【0046】
前記方法及び装置は、さらに以下を提供する:すなわち、(a)測定ゲージの複数のロードセルが全て一定の初期高さに設定されているときに、第2の適用されたガラスシートに応答しているロードセルの各々にてそれぞれの第2初期重量測定値を得るステップと、(b)それぞれの第2初期重量測定値から第2ガラスシートの第2固有形状を推定するステップと、(c)複数の適用されたガラスシートの各々に対してステップ(a)及び(b)を繰り返して、複数の適用されたガラスシートの複数の固有形状を把握するステップと、である。
【0047】
前記方法及び装置は、さらに以下を提供する:すなわち、(a)ステッチングスクリプトを用いて、それぞれのエッジにて合体された複数の適用されたガラスシートの複数の固有形状の各々を含む、組み合わされた固有形状の推定を得るステップと、(b)組み合わされたガラスシートの入り込んだ熱歪みを推定するステップであって、当該組み合わされたガラスシートが、それぞれのエッジにて合体された複数の適用されたガラスシートを組み合わせるためのステッチングスクリプトを用いて推定されるステップと、(c)組み合わされたガラスシートの無重力形状を、組み合わされた固有形状及び入り込んだ熱歪みの関数として推定するステップと、である。
【0048】
前記方法及び装置は、さらに、組み合わされたガラスシートの入り込んだ熱歪みの推定を、(a)複数の適用されたガラスシートの各々のそれぞれの入り込んだ熱歪みを推定するステップと、(b)複数の適用されたガラスシートの各々のそれぞれの入り込んだ熱歪みを平均化して、組み合わされたガラスシートの入り込んだ熱歪みを求めるステップと、により得る。
【0049】
付加的又は代替的に、前記方法及び装置は、さらに、組み合わされたガラスシートの入り込んだ熱歪みの推定を、以下の方法で得ることを提供する:すなわち、(a)組み合わされたガラスシートの特性を代表し、且つ、前記複数の適用されたガラスシートのいずれか1つよりも大きい平方面積を有する代表的なガラスシートからサブセクションを切り取るステップと、(b)代表的なガラスシートのサブセクションを測定ゲージの複数のロードセルの上に適用する(載せる)ステップと、(c)複数のロードセルが全て一定の初期高さに設定されているときに、代表的なガラスシートのサブセクションに応答している複数のロードセルの各々にてそれぞれの初期重量測定値を得るステップと、(d)前記代表的なガラスシートのサブセクションの固有形状を前記初期重量測定値の関数として推定するステップと、(e)代表的なガラスシートのサブセクションの測定された応力を、当該サブセクションを強制的に平坦にしたときに得るステップと、(f)組み合わされたガラスシートの入り込んだ熱歪みを、代表的なガラスシートのサブセクションの測定された応力及び前記固有形状との関数として推定するステップと、である。
【0050】
本明細書の開示を、特定の実施形態を参照して記載してきたが、これらの実施形態が本明細書の実施形態の原理及び応用を例示するものに過ぎないことが理解されよう。従って、本願の精神及び範囲から逸脱せずに、多数の変更を例示的な実施形態に加えてもよく、また、その他の構成が考案され得ることが理解されよう。
【0051】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0052】
実施形態1
方法であって、
測定ゲージの複数のロードセルが全て一定の初期高さ(平坦)であるときに、第1の適用されたガラスシートに応答している前記複数のロードセルの各々にてそれぞれの第1初期重量測定値を得るステップと、
前記それぞれの第1初期重量測定値から前記第1のガラスシートの第1固有形状を推定するステップと、
を含む方法。
【0053】
実施形態2
前記測定ゲージが複数の高さ調節可能ピンを含み、該高さ調節可能ピンが、各々、前記複数のロードセルのうちの1つに関連付けられている、実施形態1記載の方法。
【0054】
実施形態3
前記第1のガラスシートの前記第1固有形状を推定するステップが、
複数のロードセルの各々に関し、一定の初期高さから離れたそれぞれの次の高さを前記それぞれの第1初期重量測定値から計算するステップであって、この計算が、前記第1のガラスシートの無重力形状を推定するために高さ調節可能ピンを移動させるための反復アルゴリズムに基づいているステップと、
前記第1固有形状を、前記それぞれの次の高さの関数として推定するステップと、
を含む、実施形態1記載の方法。
【0055】
実施形態4
前記第1のガラスシートの前記第1固有形状を前記それぞれの第1初期重量測定値から推定するステップを、
【0056】
【0057】
で表すことができ
式中、W0は第1固有形状、D=Eh3/12(1-v2)はガラスシートの曲げ剛性、hはガラスシートの厚さ、ρはガラスシートの密度、gは重力定数、Eはガラスシートのヤング率、vはガラスシートのポアソン比、fiがそれぞれの初期重量測定値である実施形態1記載の方法。
【0058】
実施形態5
さらに、前記第1のガラスシートの第1の入り込んだ熱歪みを推定するステップを含む、実施形態1記載の方法。
【0059】
実施形態6
前記第1のガラスシートの前記第1の入り込んだ熱歪みを、
前記第1のガラスシートを強制的に平坦にしたときの前記第1のガラスシートの応力を測定するステップと、
前記第1の入り込んだ熱歪みを、前記測定された応力及び前記第1固有形状の関数として推定するステップと、
により推定するステップをさらに含む、実施形態5記載の方法。
【0060】
実施形態7
前記測定された応力から得られる応力関数が、前記第1固有形状の関数として以下のように表されることができ、
【0061】
【0062】
式中、∇4φは応力関数、EKG(w0)は固有形状のガウス曲率、E∇2(αT)は、入り込んだ熱歪みαTに基づく項であり、熱歪みの推定がαの値を求めることにより得られる、実施形態6記載の方法。
【0063】
実施形態8
さらに、前記第1のガラスシートの無重力形状を、前記第1のガラスシートの前記第1固有形状及び第1の入り込んだ熱歪みの関数として推定するステップを含む、実施形態5記載の方法。
【0064】
実施形態9
さらに、
(a)前記第1のガラスシートの無重力形状の推定を、測定された無重力形状と比較し、それにより、前記第1のガラスシートの、推定される、前記第1の入り込んだ熱歪みの精度の指標を得るステップと、
(b)前記比較の結果、前記推定された第1の入り込んだ熱歪みの精度が最小よりも低いことが示された場合、前記推定された第1の入り込んだ熱歪みを修正し、前記第1のガラスシートの無重力形状を、前記第1のガラスシートの前記第1固有形状及び前記修正された第1の入り込んだ熱歪みの関数として再推定するステップと、
(c)前記比較の結果、前記推定された第1の入り込んだ熱歪みの精度が最小値以上であることが示されるまで前記ステップ(a)及び前記ステップ(b)を繰り返すステップと
を含む、実施形態8記載の方法。
【0065】
実施形態10
前記第1のガラスシートが前記複数のセクションに切り分けられた場合、前記第1のガラスシートの複数のセクションのそれぞれの1つに対し、複数の局所的な無重力形状を推定するステップをさらに含み、
前記局所的無重力形状の各々が、前記第1固有形状の関数として推定され、且つ、
前記複数の局所的無重力形状の各々が、前記第1固有形状から複数の局所平均平面のそれぞれの1つを減算することにより推定される、実施形態1記載の方法。
【0066】
実施形態11
a)前記測定ゲージの前記複数のロードセルが全て一定の初期高さに設定されているときに、第2の適用されたガラスシートに応答している前記複数のロードセルの各々にてそれぞれの第2初期重量測定値を得るステップと、
(b)前記それぞれの第2初期重量測定値から前記第2ガラスシートの第2固有形状を推定するステップと、
c)複数の適用されたガラスシートの各々に対してステップ(a)及び(b)を繰り返し、それにより、少なくとも前記第1の適用されたガラスシート及び前記第2の適用されたガラスシートを含む前記複数の適用されたガラスシートの複数の固有形状を把握するステップと、
をさらに含む、実施形態1記載の方法。
【0067】
実施形態12
ステッチングスクリプトを用いて、それぞれのエッジにて合体された前記複数の適用されたガラスシートの複数の固有形状の各々を含む、組み合わされた固有形状の推定を得るステップと、
組み合わされたガラスシートの入り込んだ熱歪みを推定するステップであって、該組み合わされたガラスシートが、それぞれのエッジにて合体された前記複数の適用されたガラスシートを組み合わせるためのステッチングスクリプトを用いて推定されるステップと、
前記組み合わされたガラスシートの無重力形状を、前記組み合わされた固有形状及び前記入り込んだ熱歪みの関数として推定するステップと、
をさらに含む、実施形態11記載の方法。
【0068】
実施形態13
前記組み合わされたガラスシートの前記入り込んだ熱歪みの推定が、
前記複数の適用されたガラスシートの各々のそれぞれの入り込んだ熱歪みを推定するステップと、
前記複数の適用されたガラスシートの各々の前記それぞれの入り込んだ熱歪みを平均化して、前記組み合わされたガラスシートの前記入り込んだ熱歪みを求めるステップと、
により得られる、実施形態12記載の方法。
【0069】
実施形態14
前記組み合わされたガラスシートの前記入り込んだ熱歪みの推定が、
前記組み合わされたガラスシートの特性を代表し、且つ、前記複数の適用されたガラスシートのいずれか1つよりも大きい平方面積を有する代表的なガラスシートからサブセクションを切り取るステップと、
前記代表的なガラスシートの前記サブセクションを、前記測定ゲージの複数のロードセルの上に適用するステップと、
前記複数のロードセルが全て一定の初期高さに設定されているときに、前記代表的なガラスシートの前記サブセクションに応答している前記複数のロードセルの各々にてそれぞれの初期重量の測定値を得るステップと、
前記代表的なガラスシートの前記サブセクションの固有形状を、前記初期重量測定値の関数として推定するステップと、
前記代表的なガラスシートの前記サブセクションにおける測定された応力を、該サブセクションを強制的に平坦にしたときに得るステップと、
前組み合わされたガラスシートの前記入り込んだ熱歪みを、前記代表的なガラスシートのサ前記ブセクションの前記測定された応力及び前記固有形状の関数として推定するステップと、
を含む、実施形態12記載の方法。
【符号の説明】
【0070】
10 ガラスシート
20 より大きいガラスシート
20A より小さいピース
100 BON装置
102 高さ調節可能ピン
104 ロードセル
300 ピンの高さ変化の絶対値の反復回数の関数のプロット
306 最大重量誤差の反復回数の関数としてのプロット
【国際調査報告】