(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-02
(54)【発明の名称】抗IFN-α/ω抗体の投与方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220526BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220526BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220526BHJP
C07K 16/24 20060101ALN20220526BHJP
C12Q 1/68 20180101ALN20220526BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61K39/395 U
A61K9/08
A61P37/02
C07K16/24
C12Q1/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021558985
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(85)【翻訳文提出日】2021-10-18
(86)【国際出願番号】 IB2020053221
(87)【国際公開番号】W WO2020202106
(87)【国際公開日】2020-10-08
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】シュヴリエ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン,ジャラット
【テーマコード(参考)】
4B063
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
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4B063QQ52
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4C085GG04
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
(57)【要約】
臨床的に証明された安全な量を皮下投与又は静脈内投与することによる抗IFN-α/ω抗体の投与方法が提供される。抗IFN-α/ω抗体の皮下投与又は静脈内投与による、全身性エリテマトーデス(SLE)などのIFN-I介在性疾患の臨床的に証明された安全な治療の方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要としているヒト対象に臨床的に証明された安全な量の抗IFN-α/ω抗体を投与する方法であって、前記抗体及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を前記対象に皮下投与又は静脈内投与することを含み、前記抗体が重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、それぞれ配列番号33、34、及び35の重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、それぞれ配列番号30、31、及び32の軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含み、投与される前記抗体の総投与量が、投与1回当たり0.1mg/kg~20mg/kg(前記対象の体重)である、方法。
【請求項2】
前記抗体が、配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)及び配列番号29のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記医薬組成物が、静脈内投与され、投与1回当たりに投与される前記抗IFN-α/ω抗体の総投与量が、0.1mg/kg、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、若しくは20mg/kg(前記対象の体重)、又はこれらの間の任意の投与量である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記医薬組成物が、皮下投与され、投与1回当たりに投与される前記抗IFN-α/ω抗体の総投与量が、0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.5mg/kg、0.7mg/kg、1mg/kg、1.2mg/kg、1.5mg/kg、1.7mg/kg、2mg/kg、2.3mg/kg、若しくは2.5mg/kg(前記対象の体重)、又はこれらの間の任意の投与量である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記対象の血漿において、(i)約50μg.日/mL~約7000μg.日/mLの濃度時間曲線下面積(AUC)
(0-t)及び(ii)約5μg/mL~約500μg/mLの実測最高濃度(C
max)から選択される少なくとも1つのパラメータが達成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗IFN-α/ω抗体を投与しても、前記対象において前記抗IFN-α/ω抗体に対する抗体は産生されない、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒト対象が、IFN-I介在性疾患、例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、I型糖尿病、乾癬、原発性シェーグレン病、全身性硬化症、関節リウマチ、移植拒絶、皮膚筋炎、多発性筋炎、アイカルディ・グティエール症候群、乳児発症Sting関連血管炎(SAVI)、又は脂肪異栄養症及び発熱を伴う慢性非典型的好中球性皮膚疾患症候群(CANDLE)の治療を必要としている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ヒト対象が、軽度~中等度の全身性エリテマトーデス(SLE)の治療を必要としている、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記医薬組成物が、投与1回当たり10mg/kg(前記対象の体重)で投与される前記抗IFN-α/ω抗体の総投与量で30分間以上にわたって前記ヒト対象に静脈内投与され、好ましくは、前記医薬組成物が、繰り返し、より好ましくは2週間に1回、前記ヒト対象に静脈内投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記医薬組成物が、投与1回当たり1mg/kg(前記対象の体重)で投与される前記抗IFN-α/ω抗体の総投与量で前記ヒト対象に皮下投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記医薬組成物の前記投与によって、前記対象の血漿において、(i)約1000μg.日/mL~約3500μg.日/mLの濃度時間曲線下面積(AUC)
(0-14d)及び(ii)約120μg/mL~約400μg/mLの実測最高濃度(C
max)から選択される少なくとも1つのパラメータが達成される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒト対象において、前記医薬組成物の前記投与後100日目までに全身性エリテマトーデスレスポンダー指数(Systemic Lupus Erythematosus Responder Index、SRI)が低下、好ましくは4点低下、より好ましくは5点低下、最も好ましくは6点低下する、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ヒト対象において、前記医薬組成物の前記投与後100日目までに新たに英国諸島ループス評価グループ(British Isles Lupus Assessment Group、BILAG)のA又は2Bにシフトしない、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ヒト対象において、前記医薬組成物の前記投与後100日目までに全身性エリトマトーデス疾患活動性指数2000(Systemic Lupus Erythematosus Disease Activity Index、SLEDAI-2K)がベースラインから低下する、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ヒト対象において、前記医薬組成物の前記投与後100日目までに全身性エリトマトーデス2000レスポンダー指数50(Systemic Lupus Erythematosus 2000 Responder Index-50、S2K RI-50)がベースラインから低下する、請求項8~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ヒト対象において、前記医薬組成物の前記投与後100日目までに医師による疾患活動性の全般評価(Physician's Global Assessment of Disease Activity、PGA)がベースラインから低下する、請求項8~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ヒト対象が、投与後40~50日以内に前記抗体の定常状態を達成する、請求項8~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記抗IFN-α/ω抗体を前記投与しても、前記対象における悪性疾患又はアナフィラキシー又は血清病型反応に関連する治療中に発生した有害事象(treatment emergent adverse event、TEAE)が生じない、請求項8~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の方法であって、
a.前記ヒト対象の生体サンプルにおける1つ以上の遺伝子DHX58、EIF2AK2、HERC5、IFI44、IFI44L、IFI6、IRF7、PARP9、PLSCR1、及びSAMD9Lの遺伝子発現をアッセイすることと、
b.前記抗体及び前記医薬的に許容される担体を含む前記医薬組成物を前記対象に投与する前に、前記ヒト対象が前記抗体の治療に対して応答すると同定することと、
を更に含む、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
a.前記ヒト対象の生体サンプルにおける遺伝子DHX58、EIF2AK2、HERC5、IFI44、IFI44L、IFI6、IRF7、PARP9、PLSCR1、及びSAMD9Lの遺伝子発現をアッセイすることと、
b.前記生体サンプルにおける遺伝子DHX58、EIF2AK2、HERC5、IFI44、IFI44L、IFI6、IRF7、PARP9、PLSCR1、及びSAMD9Lの複合発現値を求めることと、
c.前記複合発現値が閾値以上である場合、前記ヒト対象が前記抗体の治療に対して応答すると同定することと、
を含む、方法。
【請求項21】
前記ヒト対象が、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、メトトレキサート、若しくは全身性コルチコステロイド、又はこれらの任意の組み合わせで治療されたことがある、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
クロロキン、ヒドロキシクロロキン、メトトレキサート、若しくは全身性コルチコステロイド、又はこれらの任意の組み合わせを前記ヒト対象に投与することを更に含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載の方法であって、前記抗IFN-α/ω抗体が、
30g/mLの前記抗IFN-α/ω抗体、5mMの乳酸塩、5%(w/v)のラクトース、及び0.02%(w/v)のポリソルベート80(PS80)(pH5.5)、
40mg/mLの前記抗IFN-α/ω抗体、8mMの酢酸塩、8%(w/v)のマルトース、及び0.06%(w/v)のポリソルベート20(PS20)(pH5.0);
50mg/mLの前記抗IFN-α/ω抗体、13mMの酢酸塩、8.0%(w/v)のスクロース、及び0.04%(w/v)のポリソルベート20(PS20)(pH5.2);60mg/mLの前記抗IFN-α/ω抗体、10mMの酢酸塩、8%(w/v)のラクトース、及び0.06%(w/v)のポリソルベート20(PS20)(pH5.4);並びに
70mg/mLの前記抗IFN-α/ω抗体、15mMの乳酸塩、10%(w/v)のマルトース、及び0.06%(w/v)のポリソルベート80(PS80)(pH5.0)
からなる群から選択される製剤で投与される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願は、2019年4月4日付で作成された「JBI6068WOPCT1Seqlist.txt」というファイル名のASCII形式の配列表としてEFS-Webを介して電子的に提出され、約43kbのサイズを有する配列表を含む。EFS-Webを介して提出された配列表は、本明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、臨床的に証明された安全な量の抗IFN-α/ω抗体の投与方法、及び臨床的に証明された安全な量の抗IFN-α/ω抗体の皮下投与又は静脈内投与によるIFN-I介在性疾患の治療方法に関する。
【0003】
(発明の背景)
I型IFN(IFN)(IFN-I)は、遍在的に発現するヘテロ二量体受容体IFNAR(IFNAR1及びIFNAR2のヘテロ二量体)を通じてシグナル伝達し、その結果、抗ウイルス、抗増殖、及び免疫調節の効果が生じるサイトカインのファミリーである。ヒトでは、I型IFNは、少なくとも12のIFN-αタンパク質サブタイプと、IFN-β、IFN-ε、IFN-κ、及びIFN-ωにつきそれぞれ1つのサブタイプとで構成されている。IFN-Iの放出は、微生物及びステライル(sterile)リガンドの両方に応答して生じる。
【0004】
サイトカインのIFN-Iファミリーは、遍在的に発現するヘテロ二量体IFN-α受容体(IFNAR)を通じてシグナル伝達する。I型IFNは、微生物及び内因性因子の両方によって誘導され得る(Elkon & Stone,Journal Interferon Cytokine Res.,31(11):803-812(2011);Finke et al.,Autoimmunity,42(4):349-352(2009))。IFNは、感染の制御を支援するために、ウイルスなどの感染性因子に応答して急速に産生される。微生物因子、内在性リガンド(例えば、壊死細胞)、及び免疫複合体は、トール様受容体(TLR)依存性及びTLR非依存性経路の両方を活性化することによって、IFN-I産生を誘発することができる。得られたIFN-IはIFNARに結合し、その結果、抗ウイルス性、抗増殖性、及び免疫調節性遺伝子が活性化する。このいわゆるIFN誘導性遺伝子シグネチャーは、多くの自己免疫疾患において観察されている。
【0005】
いくつかの免疫介在性炎症性疾患又は自己免疫疾患、例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)及び皮膚エリテマトーデス(CLE)を含むループス、I型糖尿病、乾癬、シェーグレン病、全身性硬化症、関節リウマチ、免疫血小板減少症(ITP)、アイカルディ・グティエール症候群(AGS)、筋炎、分類不能型免疫不全症(CVID)及び自己免疫甲状腺疾患は、少なくとも患者の亜集団において、全血及び/若しくは組織中に存在する一般的にIFNシグネチャーと呼ばれるIFN誘導性遺伝子転写物の過剰発現、又はIFN-Iの上昇に関連している。
【0006】
SLEは、病原性T細胞、B細胞、及び先天性免疫応答が複数の器官系にわたって炎症及び組織損傷を引き起こす、慢性自己免疫又は免疫介在性炎症性疾患である。この疾患は、不均質な臨床症状を含む広範な症状を示し、全身、皮膚、腎臓、筋骨格、神経学的、及び血液学的徴候を含み得る。SLEは、重症度が大きく異なり、慢性、寛解性、又は再発性であり、数週間、数ヶ月間、又は数年間継続し得る改善又は寛解期間を含む周期で活動性が突発(flare)する。
【0007】
IFN-αは、SLE患者において上昇し、自己抗原に対する忍容性の損失を促進すると考えられる。IFN-αは、持続的な樹状細胞の活性化、ひいては抗原提示、並びにSLEの一因となるTreg機能の抑制に寄与することが示されている。IFN-αはまた、市販のSLE治療薬BENLYSTA(商標)の標的であるBLyS発現を誘導する。IFN-Iの産生又はIFN-Iに対する応答に関連する多数の多型が同定されており、確認されているSLE関連多型の半数以上を占めている(Ghodke-Puranik & Niewold,International journal of clinical rheumatology 8,doi:10.2217/ijr.13.58(2013))。様々なIFN-αサブタイプを中和する抗体(汎IFN-α抗体)が、SLEの臨床試験において評価されている(例えば、国際公開第02/066649号、同第05/059106号、同第06/086586号、同第09/135861号を参照)。
【0008】
IFN-αに加えて、IFN-ωは、SLE患者において過剰発現する1型IFNの重要な追加のサブクラスとなり得る。SLE患者は、IFNに対して自己抗体を産生することが知られており、2つの研究において、最も高いレベルの新生自己抗体がIFN-ωに対するものであり、これは、IFN-ωが一部のSLE患者において他のクラスのIFNよりも多く存在している可能性があることを示唆している(McBride et al.,Arthritis Rheum.,64(11):3666-3676(2012);Petri et al.,Arthritis Rheum.,65(4):1011-1021(2013))。現在臨床試験中の抗IFN-α抗体(シファリムマブ(MEDI-545)、ロンタリズマブ、及びAGS-009)は、IFN-ωを中和しない。これらの抗体を用いた臨床試験データは、抗IFN-α抗体による治療後の患者におけるI型IFNシグネチャーの部分的減少を示し(Merrill et al.,Ann Rheum Dis 70:1905-1913,2011;Yao et al.,Arthritis Rheum 60:1785-1796,2009)、ロンタリズマブ(汎抗IFN-α抗体)を用いた第2相試験データは、インターフェロンシグネチャー基準(ISM)が低中等度~重度の活動性ループス対象の事前に定められたバイオマーカー規定群において24週目にSLEの徴候及び症状、突発率、並びにステロイド負荷の改善を示した。ISMが高いと事前に規定された高レベルのIFN誘導性遺伝子発現を有する患者では有効性がみられなかった(Kalunian et al.,2012 ACR/ARHP Annual Meeting;Abstract #2622,2012)。
【0009】
SLEの現在の標準的手当てとしては、コルチコステロイド、抗マラリア薬、免疫抑制剤、又はB細胞調節因子が挙げられる。これらの治療法は、毒性及び他の重篤な副作用を示す場合があり、全てのループス患者の治療に好適である訳ではない可能性がある。したがって、SLE及び他のIFN-I介在性疾患に対する更なる治療的処置が必要とされている。
【0010】
(発明の簡単な概要)
本発明は、全身性エリテマトーデス(SLE)などの対象におけるIFN-I介在性疾患の臨床的に証明された安全な治療を含む、抗IFN-α/ω抗体の対象への臨床的に証明された安全な投与に関する。
【0011】
全般的な一態様では、本発明は、必要としているヒト対象に対して抗IFN-α/ω抗体の臨床的に証明された安全な投与を提供する方法であって、当該抗体及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を当該対象に皮下投与又は静脈内投与することを含み、当該抗体が重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、当該重鎖可変領域が、それぞれ配列番号33、34、及び35の重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含み、当該軽鎖可変領域が、それぞれ配列番号30、31、及び32の軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含み、投与される当該抗体の総投与量が、投与1回当たり0.1mg/kg~20mg/kg(当該対象の体重)である、方法に関する。
【0012】
一実施形態では、抗IFN-α/ω抗体は、配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)及び配列番号29のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0013】
一実施形態では、医薬組成物は静脈内投与される。かかる実施形態では、投与1回当たりに投与される抗IFN-α/ω抗体の総投与量は、0.1mg/kg、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、若しくは20mg/kg(対象の体重)、又はこれらの間の任意の投与量である。
【0014】
一実施形態では、医薬組成物は皮下投与される。かかる実施形態では、投与1回当たりに投与される抗IFN-α/ω抗体の総投与量は、0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.5mg/kg、0.7mg/kg、1mg/kg、1.2mg/kg、1.5mg/kg、1.7mg/kg、2mg/kg、2.3mg/kg、若しくは2.5mg/kg(対象の体重)、又はこれらの間の任意の投与量である。
【0015】
一実施形態では、医薬組成物の投与によって、対象の血漿において、(i)約50μg.日/mL~約7000μg.日/mLの濃度時間曲線下面積(AUC)(0-t)及び(ii)約5μg/mL~約500μg/mLの実測最高濃度(Cmax)から選択される少なくとも1つのパラメータが達成される。
【0016】
一実施形態では、抗IFN-α/ω抗体を投与しても、対象において抗IFN-α/ω抗体に対する抗体は産生されない。
【0017】
別の全般的な態様では、本発明は、必要としているヒト対象におけるIFN-I介在性疾患の臨床的に証明された安全な治療を提供する方法であって、当該抗体及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を当該対象に皮下投与又は静脈内投与することを含み、当該抗体が重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、当該重鎖可変領域が、それぞれ配列番号33、34、及び35の重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含み、当該軽鎖可変領域が、それぞれ配列番号30、31、及び32の軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含み、投与される当該抗体の総投与量が、投与1回当たり0.1mg/kg~20mg/kg(当該対象の体重)である、方法に関する。
【0018】
一実施形態では、IFN-I介在性疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)、I型糖尿病、乾癬、原発性シェーグレン病、全身性硬化症、関節リウマチ、移植拒絶、皮膚筋炎、多発性筋炎、アイカルディ・グティエール症候群、乳児発症Sting関連血管炎(SAVI)、又は脂肪異栄養症及び発熱を伴う慢性非典型的好中球性皮膚疾患症候群(CANDLE)から選択される。好ましくは、疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)であり、より好ましくは軽度~中等度のSLEである。
【0019】
一実施形態では、抗IFN-α/ω抗体は、配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)及び配列番号29のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0020】
一実施形態では、抗IFN-α/ω抗体は、IgG1アイソタイプである。 IgG1定常ドメイン内にはいくつかの多型(例えば、周知のアロタイプ)が存在し、214、356、358、422、431、435、又は436位(EU付番に従った残基の付番)に多型を有する(例えば、IMGT Webリソース;IMGT Repertoire (IG and TR);Proteins and alleles;allotypesを参照されたい)。抗IFN-α/ω抗体は、G1m17、G1m3、G1m1、G1m2、G1m27、又はG1m28などの任意のIgG1アロタイプであってよい。
【0021】
一実施形態では、医薬組成物は、投与1回当たり10mg/kg(対象の体重)で投与される抗IFN-α/ω抗体の総投与量で30分間以上にわたってヒト対象に静脈内投与され、好ましくは、医薬組成物は、繰り返し、より好ましくは2週間に1回、ヒト対象に静脈内投与される。
【0022】
一実施形態では、医薬組成物の投与によって、対象の血漿において、(i)約1000μg.日/mL~約3500μg.日/mLの濃度時間曲線下面積(AUC)(0-14d)及び(ii)約120μg/mL~約400μg/mLの実測最高濃度(Cmax)から選択される少なくとも1つのパラメータが達成される。
【0023】
一実施形態では、ヒト対象は、医薬組成物の投与後100日目までに、i)全身性エリテマトーデスレスポンダー指数(Systemic Lupus Erythematosus Responder Index、SRI)の低下、ii)新たな英国諸島ループス評価グループ(British Isles Lupus Assessment Group、BILAG)のA又は2Bへのシフトなし、iii)全身性エリトマトーデス疾患活動性指数2000(Systemic Lupus Erythematosus Disease Activity Index 2000、SLEDAI-2K)のベースラインからの低下、iv)全身性エリトマトーデス2000レスポンダー指数50(Systemic Lupus Erythematosus 2000 Responder Index-50、S2K RI-50)のベースラインからの低下、及びv)医師による疾患活動性の全般評価(Physician's Global Assessment of Disease Activity、PGA)のベースラインからの低下から選択される臨床応答のうちの少なくとも1つを有する。
【0024】
一実施形態では、ヒト対象は、投与後40~50日以内に抗体の定常状態を達成する。
【0025】
一実施形態では、抗IFN-α/ω抗体を投与しても、対象における悪性疾患又はアナフィラキシー又は血清病型反応に関連する治療中に発生した有害事象(treatment emergent adverse event、TEAE)は生じない。
【0026】
別の全般的な態様では、本発明の方法は、
a.ヒト対象の生体サンプルにおける1つ以上の遺伝子DHX58、EIF2AK2、HERC5、IFI44、IFI44L、IFI6、IRF7、PARP9、PLSCR1、及びSAMD9Lの遺伝子発現をアッセイすることと、
b.抗体及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物をヒト対象に投与する前に、当該対象が当該抗体の治療に対して応答すると同定することと、を更に含む。
【0027】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、下記の説明に述べられている。他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
上述の「発明の概要」及び後述の「発明を実施するための形態」は、添付の図面と併せて読むことでより深く理解されるであろう。本発明は、図面に示される実施形態そのものに限定されない点は理解される必要がある。
【
図1】本出願の実施形態による抗IFN-α/ω抗体(抗体A)を使用した臨床試験の試験設計の図式表現を示す。
【
図4】健常対象における0.3~15mg/kgの範囲の用量の抗体Aの単回静脈内注入(コホート1~5)後の抗体Aの平均(SD)血清濃度-時間プロファイルを示す。
【
図5】健常対象における1.0mg/kgの抗体Aの単回静脈内注入(コホート2)後又は1.0mg/kgの抗体Aの単回皮下注射(コホート6)後の抗体Aの平均(SD)血清濃度-時間プロファイルを示す。
【
図6】軽度~中等度の全身性エリテマトーデスを有する対象における10mg/kgの抗体Aの複数回静脈内注入後の抗体Aの平均(SD)血清濃度-時間プロファイルを示す。
【0029】
(発明の詳細な記述)
背景技術において、また、本明細書全体を通じて各種刊行物、論文及び特許を引用又は記載する。これら参照文献の各々はその全容が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に含まれている文書、操作、材料、デバイス、物品などの考察は、本発明のコンテキストを与えるためのものである。かかる考察は、これらの事物のいずれか又は全てが、開示又は特許請求されるいずれの発明に対しても先行技術の一部を構成することを容認するものではない。
【0030】
特に規定のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。そうでない場合、本明細書で使用される特定の用語は、本明細書に記載される意味を有するものである。本明細書に引用する全ての特許、公開された特許出願及び刊行物は、参照によってあたかもその全体が本明細書に記載されているものと同様にして組み込まれる。
【0031】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、特に文脈上明らかでない限り、複数の指示対象物を含むことに留意する必要がある。
【0032】
別途記載のない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連の全ての要素を指すと理解されるべきである。当業者であれば、単なる通常の実験手順を使用するだけで、本明細書に記載した特定の実施形態に対して多くの同等物を認識するか、又は確認することができよう。このような等価物は、本発明によって包含されることが意図される。
【0033】
本明細書及び以下の特許請求の範囲を通して、文脈上必要としない限り、用語「含む(comprise)」並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などの変形は、指定の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を含むが、任意の他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を除外するものではないことを意味すると理解されるであろう。本明細書で使用するとき、用語「含む」は、用語「含有する」又は「含む(including)」に置き換えることができ、又はときに本明細書で使用するとき、用語「有する」に置き換えることもできる。
【0034】
本明細書で使用するとき、「からなる」は、特許請求の範囲の要素において指定されていない任意の要素、ステップ、又は成分を除外する。本明細書で使用するとき、「から本質的になる」は、特許請求の範囲の基本的かつ新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない材料又はステップは除外しない。本発明の態様又は実施形態に関連して本明細書で使用するとき、本開示の範囲を変化させるために、「含む(comprising)」、「含有する」、「含む(including)」、及び「有する」という上記用語のいずれかを、用語「からなる」又は「から本質的になる」に置き換えることができる。
【0035】
本明細書で使用するとき、複数の列挙された要素間の接続的な用語「及び/又は」は、個々の及び組み合わされた選択肢の両方を包含するものとして理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって接続される場合、第1の選択肢は、第2の要素なしに第1の要素が適用可能であることを指す。第2の選択肢は、第1の要素なしに第2の要素が適用可能であることを指す。第3の選択肢は、第1及び第2の要素が一緒に適用可能であることを指す。これらの選択肢のうちのいずれか1つは、意味に含まれ、したがって、本明細書で使用されるとき、用語「及び/又は」の要件を満たすことが理解される。選択肢のうちの2つ以上の同時適用性もまた、意味に含まれ、したがって、用語「及び/又は」の要件を満たすことが理解される。
【0036】
本明細書で使用するとき、用語「対象」は、本発明の方法に従って抗IFN-α/ω抗体が投与される予定であるか又は投与されたことがある、IFN-I介在性疾患であると診断された又は疑われる哺乳類対象、好ましくはヒトを指す。IFN-I介在性疾患の診断は、臨床診断試験、対象の理学的検査、又は特定の疾患を有する対象を診断するための任意の他の認められた方法に従って臨床医が行うことができる。
【0037】
本明細書で使用するとき、「IFN-I介在性疾患であると疑われる対象」は、臨床医及び/又は対象が識別可能なIFN-I介在性疾患を示す徴候又は症状を呈しているが、その疑い診断が、臨床診断試験、対象の理学的検査、又は疑われるIFN-I介在性疾患を有する対象を診断するための他の認められた方法によって確認されていない対象である。
【0038】
IFN-I介在性疾患の例としては、全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚エリテマトーデス(CLE)、I型糖尿病、乾癬、シェーグレン病、全身性硬化症、リウマチ性関節炎、免疫血小板減少症(ITP)、アイカルディ・グティエール症候群(AGS)、筋炎、分類不能型免疫不全症(CVID)、自己免疫甲状腺疾患、移植拒絶、皮膚筋炎、多発性筋炎、乳児発症Sting関連血管炎(SAVI)、並びに脂肪異栄養症及び発熱を伴う慢性非典型的好中球性皮膚疾患症候群(CANDLE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
用語「I型インターフェロン」又は「IFN-I」は、共通のインターフェロン受容体IFNARに結合する、ヒトインターフェロン-αの全てのネイティブサブタイプ、並びにインターフェロン-β、インターフェロン-ε、インターフェロン-ω、及びインターフェロン-κのうちの1つのサブタイプを指す。
【0040】
用語「インターフェロンーα」(IFNーα)は、本明細書で使用するとき、ヒトアルファインターフェロンの全てのネイティブサブタイプを指す。ネイティブIFN-αは、高度の構造相同性を有する別個の遺伝子によりコードされている少なくとも12の密接に関連するタンパク質サブタイプからなる(Weissmann and Weber,Prog Nucl Acid Res Mol Biol.,33:251,1986;Roberts et al.,J Interferon Cytokine Res.18:805-816,1998)。ヒトインターフェロンの命名法は、http://www_genenames_org/genefamilies/_IFNにみられる。以下の表1は、他のI型IFNに加えて、本明細書で使用されるIFN-αサブタイプの配列を示す。
【0041】
用語IFN-ωは、本明細書で使用するとき、配列番号1に示すアミノ酸配列及びUniProtアクセッション番号P05000を有するヒトIFNを指す。ヒトIFN-ωはまた、80位(T80)においてスレオニンがグルタミン酸に置換されている配列番号2の変異体も含む。
【0042】
IFN-αサブタイプ及びIFN-ωは、標準的な方法を使用して組換え発現によって生成させることもできる。分泌を誘導するために使用することができる例示的なシグナル配列を、配列番号21~25に示す。
【0043】
本明細書で使用するとき、用語「INFAR」は、IFNAR1及びIFNAR2のヘテロ二量体である周知のインターフェロン受容体を指す。IFNAR1及びIFNAR2のタンパク質配列をそれぞれ配列番号26及び27に示す。INFAR1の成熟細胞外ドメインは、配列番号26の残基28~436に及び、INFAR2の成熟細胞外ドメインは、配列番号27の残基27~243に及ぶ。
【0044】
【0045】
本明細書で使用するとき、「抗IFN-α/ω抗体」は、1×10-10M以下の親和性で少なくとも10種のヒトインターフェロンアルファ(IFN-α)サブタイプに結合して中和し、更に高親和性でヒトインターフェロンオメガ(IFN-ω)に結合して中和する、IgG1κサブタイプの遺伝子操作を受けた完全ヒトモノクローナル抗体(mAb)又はその抗原結合断片を指す。好ましくは、抗IFN-α/ω抗体は、インターフェロンベータ(IFN-β)に結合も中和もしない。本発明に有用な抗IFN-α/ω抗体又はその抗原結合断片の例としては、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,208,113号に記載のIFWM3405、IFWM3442、IFWM3525、IFWM3423、IFWM3444、IFWM3421、又は他の抗IFN-α/ω抗体若しくはその断片が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、抗IFN-α/ω抗体は、12種のIFNアルファのうちの少なくとも11種を中和する。別の好ましい実施形態では、抗IFN-α/ω抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、当該重鎖可変領域は、それぞれ配列番号33、34、及び35の重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含み、当該軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号30、31、及び32の軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む。一実施形態では、抗IFN-α/ω抗体は、配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)及び配列番号29のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。好ましい実施形態では、抗IFN-α/ω抗体は、ヒト化又は完全ヒト免疫グロブリンである。
【0046】
抗IFN-α/ω抗体は、ハイブリドーマ生成を含むがこれらに限定されない、モノクローナル抗体を調製するための、本開示に鑑みて当該技術分野において既知の任意の方法によって調製することができる。例えば、抗IFN-α/ω抗体は、組み換えDNA技術を使用して、哺乳類細胞株(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株)において生成させることができる。特に、本発明に有用な抗IFN-α/ω抗体の生成方法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,208,113号に更に記載されている。
【0047】
用語「抗体」は、抗体模倣薬を含む、又は単鎖抗体及びそのフラグメントなどといった抗体の構造及び/若しくは機能を模倣する抗体の部分又はその特定フラグメント若しくは一部分を含む、抗体、その消化フラグメント、特定された部分、及び変異体を包含することを更に意図する。機能性断片としては、哺乳類IFN-α/ωに結合する抗原結合断片が挙げられる。例えば、Fab(例えば、パパイン消化による)、Fab’(例えば、ペプシン消化及び部分的還元による)、及びF(ab’)2(例えば、ペプシン消化による)、facb(例えば、プラスミン消化による)、pFc’(例えば、ペプシン又はプラスミン消化による)、Fd(例えば、ペプシン消化、部分的還元、及び再集合による)、Fv又はscFv(例えば、分子生物学的技術による)断片が挙げられるがこれらに限定されない、IFN-α/ω又はその一部分に結合することができる抗体断片が、本発明に包含される(例えば、Colligan,Immunology、上記を参照されたい)。
【0048】
かかるフラグメントは、当該技術分野において既知であるような、及び/又は本明細書に記載のような、酵素による切断、合成又は組換え技術により生成することができる。抗体はまた、1つ以上の終止コドンが天然の終止部位の上流に導入されている抗体遺伝子を使用して、様々な切断型で生成することができる。例えば、F(ab’)2重鎖部分をコードする遺伝子の組み合わせは、重鎖のCH1ドメイン及び/又はヒンジ領域をコードするDNA配列を含むよう設計することができる。抗体の様々な部分を従来の技術により化学的に結合でき、又は遺伝子工学技術を用いて隣接タンパク質(contiguous protein)として調製できる。
【0049】
本明細書で使用するとき、用語「ヒト抗体」は、タンパク質の実質的に全ての部分(例えば、CDR、フレームワーク、CL、CHドメイン(例えば、CH1、CH2、及びCH3)、ヒンジ(VL、VH))がヒトにおいて実質的に非免疫原性であり、配列の変化又は変異がほんのわずかである抗体を指す。「ヒト抗体」はまた、ヒト生殖細胞系列型の免疫グロブリン配列に由来する抗体でもあり得、又は厳密に一致する抗体でもあり得る。ヒト抗体は、生殖細胞系列型免疫グロブリン配列にコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロにおけるランダムな若しくは部位特異的な変異の導入により、又はインビボにおける体細胞突然変異により導入された変異)を含み得る。多くの場合、これは、ヒト抗体がヒトにおいて実質的に非免疫原性であることを意味する。ヒト抗体は、それらのアミノ酸配列の類似性に基づいたグループに分類されている。したがって、配列類似性検索を使用して、類似の直鎖配列を有する抗体を、ヒト抗体を作り出すためのテンプレートとして選択することができる。同様に、名称に霊長類(サル、ヒヒ、チンパンジー等)、げっ歯類(マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスター等)及び他の哺乳類を含む抗体は、かかる種、亜属、属、亜科、及び科の特異的抗体を指定する。更に、キメラ抗体は、上記の任意の組み合わせを含み得る。かかる変化又は変異は、場合によりかつ好ましくは、改変していない抗体に比べて、ヒト又は他の種における免疫原性を保持するか又は低減させる。したがって、ヒト抗体は、キメラ抗体又はヒト化抗体とは異なる。
【0050】
ヒト抗体は、機能的に再構成されたヒト免疫グロブリン(例えば、重鎖及び/又は軽鎖)遺伝子を発現することができる、ヒト以外の動物、又は原核若しくは真核細胞により生成され得ることが指摘される。その上、ヒト抗体が単鎖抗体である場合、天然のヒト抗体ではみられないリンカーペプチドを含み得る。例えば、Fvは、重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域とを接続する2~約8個のグリシン又は他のアミノ酸残基などのリンカーペプチドを含み得る。かかるリンカーペプチドはヒト由来のものと見なされる。
【0051】
用語「安全」は、抗IFN-α/ω抗体の用量、投与レジメン、治療、又は方法に関するとき、標準治療又は改正されたFederal Food,Drug,and Cosmetic Actに従って別の対照薬と比べて、治療中に発生した有害事象(AE又はTEAEと称される)が許容可能な頻度及び/又は許容可能な重症度である、良好なリスク:ベネフィット比を指す(secs.201-902,52 Stat.1040 et seq.,as amended;21 U.S.C.§§ 321-392)。特に、安全は、本発明の抗IFN-α/ω抗体の用量、投与レジメン、又は治療に関するとき、原因が抗IFN-α/ω抗体の使用による可能性がある、可能性が高い、又は可能性が非常に高いと考えられる場合、抗体の投与に関連する有害事象が許容される頻度及び/又は許容される重症度であることを指す。安全性は、多くの場合、所望の効果を得るのに必要な、活性医薬成分の最大認容用量又は最適用量を決定する、毒性試験によって測定される。安全性を調べる試験は、薬物への曝露の結果生じる可能性のある、任意の潜在的な有害作用を同定しようとするものでもある。
【0052】
本明細書で使用するとき、特に明記しない限り、用語「臨床的に証明された」(独立して又は用語「安全」を修飾するために使用される)は、ヒト対象における臨床試験によって証明されており、当該臨床試験が、米国食品医薬品局、欧州医薬品審査庁(EMEA)、又は対応する国家規制当局の承認基準を満たしていることを意味するものとする。本出願の一実施形態では、臨床試験は、健常ヒト対象における抗IFN-α/ω抗体の第1相無作為化二重盲検プラセボ対照単回漸増用量試験である。好ましくは、臨床試験は、軽度~中等度の全身性エリテマトーデスを有するヒト対象における抗IFN-α/ω抗体の複数回投与試験を更に含む。
【0053】
本明細書で使用するとき、語句「有害事象」、「治療下で発現した有害事象」、及び「有害反応」は、医薬組成物又は治療薬の投与に関連する又はこれらに起因する、あらゆる悪影響がある、好ましくない、意図しない、又は望ましくない徴候又は転記を意味する。しかしながら、異常な値又は観察結果は、治験担当医によって臨床的に有意であると見なされない限り、有害事象として報告されない。本明細書で使用するとき、有害事象を指す場合、「臨床的に明らかな」とは、当業者に許容される基準を使用して、医師又は治験担当医によって決定されるような臨床的に有意であることを意味する。有害事象の有害又は望ましくない転帰がこのような重症度に達すると、規制当局は、医薬組成物又は治療薬を提案される使用には許容できないと見なし得る。抗IFN-α/ω抗体の皮下投与又は静脈内投与の状況で使用される場合の有害事象又は反応の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:鼻炎、帯状疱疹、及び水疱性鼓膜炎などの感染及び侵襲;咳、咽頭刺激、及び中咽頭痛などの呼吸器、胸部、及び縦隔の障害;下痢及び鼓腸などの胃腸障害;頭痛及びめまいなどの神経系障害;貧血症及びリンパ節症などの血液及びリンパ系障害;背部痛、早産、注入反応、局所注射部位反応性、悪性疾患、及びアナフィラキシー又は血清病型反応。
【0054】
本明細書で使用するとき、「治療」又は「治療する」は、治療的処置を指す。治療を必要としている個体としては、障害又は障害の兆候を有するとして診断された対象が挙げられる。治療することができる対象としては、障害を予防すべきもののうち、障害を有する傾向があるもの又は障害を有する疑いがあるものも含まれる。有益な又は所望の臨床結果としては、検出可能であろうと又は検出不可能であろうと、症状の緩和、疾患の程度の軽減、安定した(すなわち、悪化しない)疾患状態、疾患の進行の遅延又は鈍化、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解(部分的であろうと又は全体的であろうと)が挙げられる。有益な臨床結果としては、治療を受けた対象における、例えば、B細胞若しくは樹状細胞の増殖の減少、炎症性サイトカイン、接着分子、プロテアーゼ、免疫グロブリン、これらの組み合わせの減少、抗炎症性タンパク質の産生の増加、自己反応性細胞の数の減少、免疫忍容性の増大、自己反応性細胞の生存の阻害、及び/又はIFN-Iによって介在される1つ以上の症状の減少が挙げられる。臨床応答は、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャン、X線画像イメージング、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、フローサイトメトリー又は蛍光活性化細胞選別(FACS)分析、組織学的検査、肉眼所見、及びELISA、RIA、クロマトグラフィーなどによって検出可能な変化が挙げられるがこれらに限定されない血液化学的検査などのスクリーニング技術を使用して評価することができる。
【0055】
用語「有効性」及び「有効な」とは、用量、投与レジメン、治療又は方法の文脈において本明細書で使用するとき、特定の用量、投与、又は治療レジメンの有効性を意味する。有効性は、本発明の薬剤に応答した、疾患の経過中の変化に基づいて測定され得る。例えば、本発明に有用な抗IFN-α/ω抗体は、治療されている障害の重症度を反映する少なくとも1つの指標において改善、好ましくは持続的な改善を誘導するのに十分な量及び時間で、対象に投与される。その治療の量及び時間が十分であるかどうかを判定するために、対象の病気、疾患又は病状の程度を反映する様々な指標が評価され得る。かかる指標には例えば、疾患重篤度、症状、又は対象となっている障害の発現についての、臨床的に認識されている指標が含まれる。改善度は全体的に医師により判定され、医師はこの判定を、徴候、症状、生検、又は他の検査結果に基づいて行うことができ、また対象に対して行う問診票、例えば所与の疾患に関して開発された生活の質に関する問診票を採用することもできる。例えば、本発明の抗IFN-α/ω抗体は、SLEに関連する対象の状態の改善を達成するために投与され得る。
【0056】
SLEの改善は、以下の臨床応答評価のうちの少なくとも1つによって評価することができる:i)全身性エリテマトーデスレスポンダー指数(SRI)の例えば1点、2点、3点、4点、5点、又は6点低下、ii)英国諸島ループス評価グループ(BILAG)のシフト、iii)全身性エリトマトーデス疾患活動性指数2000SLEDAI-2K)のベースラインからの低下、iv)全身性エリトマトーデス2000レスポンダー指数50(S2K RI-50)のベースラインからの低下、v)医師による疾患活動性の全般評価(PGA)のベースラインからの低下、vi)皮膚エリテマトーデス疾患領域及び重症度指数(Cutaneous Lupus Erythematosus Disease Area and Severity Index、CLASI)の活動性及び損傷スコアのベースラインからの変化及び変化パーセント、vii)SF-36、SF-36身体的及び精神的コンポーネントサマリースコアの基準ベーススコアのベースラインからの変化及び変化パーセント、並びにviii)EuroQol-5次元-5レベル(EQ-5D-5L)スケールのベースラインからの変化及び変化パーセント。
【0057】
加えて、関節評価を使用して、臨床応答、例えば、対象の疼痛及び炎症の徴候を伴う関節の数の経時的なベースラインからの変化を評価する。各関節を、評価者による全ての指定の来院時に、圧痛及び腫脹(腫脹については臀部を除外)について評価する。
【0058】
いくつかの実施形態では、本出願の実施形態による治療を受ける前に、軽度~中等度のSLEを有するヒト対象を、以下によって定義する:
1)ループスを診断するための全身ループス国際共同診療所(SLICC)基準で、治療前3ヶ月以内に全身性エリテマトーデス疾患活動性指数2000(SLEDAI-2K)によって定義された非血清学的臨床活動性が少なくとも1である、及び
2)以下の前2ケ月以内に血清学的に陽性である:
a)抗核抗体(ANA)力価が≧1:80の陽性である、若しくは
b)抗二本鎖デオキシリボ核酸試験で陽性である(注:抗dsDNAが酵素結合免疫吸着アッセイによって行われる場合、明確に陽性とみなされるためには正常値の上限の2倍の検査値が必要である)
の前2ヶ月以内に血清学的に陽性である、又は
c)抗Smith抗体が陽性である並びに/又は抗リボ核タンパク質(RNP)抗体及び/若しくは抗Ro抗体が陽性である、そして、上記のうちの少なくとも1つに加えて、
d)スクリーニング中にループスIFNプロファイルスコアが陽性である。
【0059】
治療に対する対象の応答性は、疾患活動性の指数、臨床症状、又は疾患活動性の任意の他の尺度によって測定することができる。本明細書で使用するとき、「治療に対して応答しない又はあまり応答しない患者」は、治療後に改善しない又は最小限しか改善しない患者を指す。
【0060】
本明細書で使用するとき、「mg/kg」単位での抗IFN-α/ω抗体の投与量は、抗体が投与される対象の体重1キログラム当たりのミリグラム単位の抗IFN-α/ω抗体の量を指す。
【0061】
全般的な一態様では、本発明は、抗IFN-α/ω抗体の臨床的に証明された安全な皮下投与及び/又は静脈内投与を必要としているヒト対象に提供する方法に関する。好ましくは、対象は、IFN-Iレベルが上昇しているIFN-I介在性疾患であると診断されているか又は疑われている。上昇したレベルのI型インターフェロン(IFN-I)と、全身性硬化症、シェーグレン症候群、I型糖尿病、及び自己免疫甲状腺疾患などのいくつかのヒト自己免疫疾患、最も顕著には全身性エリテマトーデス(SLE)との間には関連がある。本発明の方法に従って抗IFN-α/ω抗体又はその抗原結合断片が投与される対象が有すると診断され得る又は疑われ得るIFN介在性疾患の例としては、全身性エリテマトーデス(SLE)、I型糖尿病、乾癬、原発性シェーグレン病、全身性硬化症、関節リウマチ、移植拒絶、皮膚筋炎、多発性筋炎、アイカルディ・グティエール症候群(AGS)、乳児発症Sting関連血管炎(SAVI)、又は脂肪異栄養症及び発熱を伴う慢性非典型的好中球性皮膚疾患症候群(CANDLE)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0062】
好ましい一実施形態では、対象は、SLEであると診断されている又は疑われている。SLEは、皮膚、血管、筋肉、腎臓、及び肺を含む多くの器官及び組織を標的とし得る。前臨床及び臨床データは、SLEの開始及び進行におけるIFN-α及びIFN-ωの役割を裏付ける。
【0063】
一実施形態では、抗IFN-α/ω抗体の臨床的に証明された安全な投与を対象に提供する及び/又はヒト対象におけるIFN介在性疾患、好ましくはSLEの安全な治療を提供する方法は、抗IFN-α/ω抗体及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を当該対象に皮下投与又は静脈内投与することを含み、投与される当該抗IFN-α/ω抗体の総投与量は、投与1回当たり0.1mg/kg~20mg/kg(対象の体重)である。
【0064】
一実施形態では、医薬組成物は皮下投与される。皮下投与は皮膚の下への投与を指し、薬物又は治療薬は、皮膚と筋肉との間の組織層に注射される。皮下投与を介して投与される薬剤は、通常、静脈内に注射される場合よりもゆっくりと吸収される。抗IFN-α/ω抗体の投与が皮下注射を介する場合、投与1回当たりの対象に投与される抗IFN-α/ω抗体の総投与量は、単回皮下注射、又は複数回皮膚注射、例えば1、2、3、4、5回、若しくはそれ以上の皮下注射で投与してよい。
【0065】
別の実施形態では、医薬組成物は静脈内投与される。静脈内投与は、静脈内に直接投与することを指す。静脈内投与は、注射によって(例えば、より高圧で注射器を用いて)、又は注入によって(例えば、重力による圧力を使用して)行うことができる。静脈内投与は、典型的には、薬物又は治療薬が血液循環によって運ばれるため、体中に薬物又は治療薬を送達するための最も迅速な方法である。抗IFN-α/ω抗体の投与が静脈内投与を介する場合、静脈内注入又は注射によって投与してよく、好ましくは注入を介する。例えば、投与1回当たりの対象に投与される抗IFN-α/ω抗体の総投与量は、一定期間、例えば、約30分~180分、好ましくは60分~120分、例えば、30分、60分、90分、120分、150分、若しくは180分、又はこれらの間の任意の期間にわたって静脈内注入によって投与することができる。
【0066】
投与1回当たりの抗IFN-α/ω抗体の総投与量は、臨床試験において求めたときに皮下投与又は静脈内投与により安全な投与及び/又は安全な治療を提供するように選択される。本発明の実施形態によれば、医薬組成物を静脈内投与するとき、投与1回当たりの投与される抗IFN-α/ω抗体の総投与量は、例えば、0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、又はこれらの間の任意の投与量である。医薬組成物を皮下投与するとき、投与1回当たりの投与される抗IFN-α/ω抗体の総投与量は、例えば、0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.5mg/kg、0.7mg/kg、1mg/kg、1.2mg/kg、1.5mg/kg、1.7mg/kg、2mg/kg、2.3mg/kg、2.5mg/kg、又はこれらの間の任意の投与量である。
【0067】
抗IFN-α/ω抗体の総投与量は、1日、1週間、1ヶ月、6ヶ月、1年、2年又はそれ以上の期間にわたって、1日1回、1週間に1回、2週間に1回、1ヶ月に1回、6ヶ月に1回などで投与することができる。例えば、実質的に同時に、すなわち、0分~1時間の期間、例えば、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、又は1時間にわたって、単回皮下注射又は複数回皮下注射(例えば、2~5回の注射)によって、投与1回当たり0.1mg/kg~2.5mg/kgの抗IFN-α/ω抗体の総投与量を投与してよい(例えば、少なくとも1日にわたって1日1回)。あるいは、約30分~3時間、好ましくは60分~120分の期間にわたって静脈内注入によって、投与1回当たり0.3mg/kg~20mg/kgの抗IFN-α/ω抗体の総投与量を投与してよい(例えば、少なくとも1日にわたって1日1回)。それぞれ0.3mg/kg~20mg/kgの総投与量の抗IFN-α/ω抗体を、必要としている対象に複数回投与してよい。
【0068】
本発明の方法で使用するのに好適な医薬組成物は、皮下投与又は静脈内投与用に製剤化される。皮下及び/又は静脈内投与に好適な製剤の例としては、液剤、懸濁剤、乳剤、及び注射又は注入用に医薬的に許容される担体内に溶解又は懸濁され得る乾燥製品が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、本発明の方法で使用するための抗IFN-α/ω抗体を含む医薬組成物は、液剤として製剤化される。
【0069】
本発明で使用される医薬組成物に含まれる抗IFN-α/ω抗体の濃度は、様々であってよい。典型的には、抗IFN-α/ω抗体の濃度は、1mg/mL~100mg/mL、例えば、1mg/mL、10mg/mL、20mg/mL、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、若しくは100mg/mL、又はこれらの間の任意の濃度である。好ましくは、抗IFN-α/ω抗体の濃度は、40mg/mL~60mg/mL、例えば、50mg/mLである。
【0070】
本発明で使用するための医薬組成物は、1つ以上の医薬的に許容される担体、例えば、医薬品製造、特に抗体医薬品製造の分野で広く用いられているものを更に含む。本明細書で使用するとき、用語「担体」は、任意の賦形剤、希釈剤、緩衝剤、安定化剤、又は医薬製剤に関する技術分野で周知の他の材料を指す。特に、医薬的に許容される担体は非毒性であり、活性成分の有効性を妨害しないものである必要がある。医薬的に許容される担体としては、当該技術分野において既知である医薬組成物での使用に好適な賦形剤及び/又は添加剤が挙げられ、例えば、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる「Remington:The Science&Practice of Pharmacy」19th ed.,Williams&Williams,(1995)及び「Physician’s Desk Reference」52nd ed.,Medical Economics,Montvale,N.J.(1998)に列挙されている。
【0071】
本発明の実施形態によれば、本発明で使用するための医薬組成物は、抗IFN-α/ω抗体及び医薬的に許容される担体を含む。いくつかの実施形態では、医薬的に許容される担体は、1つ以上の炭水化物、例えば、ラクトース、マルトース、スクロース、1つ以上の界面活性剤、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、並びに1つ以上の酸及び/又は塩、例えば乳酸、乳酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウムを含む。好ましくは、医薬組成物は、5~6のpH、例えば、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、又は6.0、又はこれらの間の任意の値のpHを有する。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明で使用するための医薬組成物は、1重量/体積%~10重量/体積%(w/v)、例えば5%~10%(w/v)の濃度のスクロース、ラクトース、及び/又はマルトースを含む。例えば、スクロース、ラクトース、及び/又はマルトースの濃度は、1%(w/v)、1.5%(w/v)、2%(w/v)、2.5%(w/v)、3%(w/v)、3.5%(w/v)、4%(w/v)、4.5%(w/v)、5%(w/v)、5.5%(w/v)、6%(w/v)、6.5%(w/v)、7%(w/v)、7.5%(w/v)、8%(w/v)、8.5%(w/v)、9%(w/v)、9.5%(w/v)、又は10%(w/v)、又はこれらの間の任意の濃度であってよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、本発明で使用するための医薬組成物は、0.01%(w/v)~0.1%(w/v)又は0.02%(w/v)~0.08%(w/v)の濃度のポリソルベート20(PS20)及び/又はポリソルベート80(PS80)を含む。例えば、ポリソルベート20及び/又はポリソルベート80の濃度は、0.01%(w/v)、0.02%(w/v)、0.03%(w/v)、0.04%(w/v)、0.05%(w/v)、0.06%(w/v)、0.07%(w/v)、0.08%(w/v)、0.09%(w/v)、又は0.1%(w/v)、又はそれらの間の任意の濃度であってよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、本発明で使用するための医薬組成物は、乳酸、乳酸ナトリウム、酢酸、又は酢酸ナトリウムを、それぞれ乳酸塩又は酢酸塩の量に基づいて10mM~20mMの濃度で含む。例えば、乳酸塩又は酢酸塩の濃度は、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、又はこれらの間の任意の濃度であり得る。
【0075】
本発明で使用するための抗IFN-α/ω抗体を含む医薬組成物は、本開示に鑑みて当該技術分野において既知の任意の方法によって調製することができる。例えば、抗IFN-α/ω抗体を、1つ以上の医薬的に許容される担体と混合して、溶液を得ることができる。溶液は、対象に投与されるまで、-40℃±10℃~-70℃±20℃の範囲の制御された温度で、かつ、適切なバイアル瓶中での遮光下で、凍結液体として保存することができる。
【0076】
本発明の実施形態によれば、様々な因子を分析して、本明細書に記載のものなどの臨床試験によって、特定の投与量の抗IFN-α/ω抗体が安全な皮下投与及び/又は静脈内投与を提供するかどうかを判定することができる。例えば、特定の投与量の皮下投与及び/又は静脈内投与された抗IFN-α/ω抗体の安全性は、免疫原性試験(例えば、抗IFN-α/ω抗体に対する抗体の産生を測定する)、薬物動態試験(例えば、濃度時間曲線下面積(AUC)及び実測最高濃度(Cmax)によって評価することができる。皮下投与及び/又は静脈内投与された抗IFN-α/ω抗体の安全性はまた、対象の理学的検査;局所注射部位反応、全身注射関連反応、及び他のアレルギー反応の所見;心電図、臨床検査、バイタルサイン;並びに血栓塞栓性事象などの他の有害事象によってモニタリングすることもできる。
【0077】
いくつかの実施形態では、抗IFN-α/ω抗体の臨床的に証明された安全な投与及び/又は自己免疫疾患の臨床的に証明された安全な治療は、対象から得たサンプル中の投与された抗IFN-α/ω抗体に対する抗体の量を測定することによって判定される。抗IFN-α/ω抗体に対する抗体の量は、本開示に鑑みて当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、ELISAによって測定することができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、抗IFN-α/ω抗体の臨床的に証明された安全な投与及び/又はIFN介在性疾患の臨床的に証明された安全な治療は、対象の血清中の抗IFN-α/ω抗体の薬物動態(PK)パラメータ、例えば、濃度時間曲線下面積(AUC)及び実測最高濃度(Cmax)を評価することによって判定される。血清サンプルを分析して、本開示に鑑みて当該技術分野において既知の任意の方法により抗IFN-α/ω抗体の濃度を求める。次いで、例えば、非区画解析(NCA)によって薬物動態パラメータを分析して、薬物動態パラメータ、例えば、AUC、Cmax、終末半減期(T1/2)、静脈内投与後の総全身クリアランス(CL)、終末期における分布容積(Vz)、生物学的利用能(CL/F)にわたる総全身クリアランス、及び生物学的利用能にわたる終末期における分布容積(Vz/F)を計算する。
【0079】
いくつかの実施形態では、抗IFN-α/ω抗体の臨床的に証明された安全な投与によって、約50μg.日/mL~約7000μg.日/mLのAUC(0-t)(0時間から最後の定量可能な血清濃度に対応する時間までのAUC対時間曲線)が達成される。例えば、AUC(0-t)は、50μg.日/mL、100μg.日/mL、500μg.日/mL、1000μg.日/mL、2000μg.日/mL、3000μg.日/mL、4000μg.日/mL、5000μg.日/mL、6000μg.日/mL、7000μg.日/mL、又はこれらの間の任意の数であり得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、抗IFN-α/ω抗体の臨床的に証明された安全な投与によって、約5μg/mL~約500μg/mLの実測最高濃度(Cmax)が達成される。例えば、Cmaxは、約5μg/mL、10μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、200μg/mL、300μg/mL、400μg/mL、500μg/mL、又はこれらの間の任意の数であり得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、抗IFN-α/ω抗体の投与によるIFN-I介在性疾患の臨床的に証明された安全な治療によって、約1000μg.日/mL~約3500μg.日/mLのAUC(0-t)(0時間から最後の定量可能な血清濃度に対応する時間までのAUC対時間曲線)が達成される。例えば、AUC(0-t)は、1000μg.日/mL、1500μg.日/mL、2000μg.日/mL、2500μg.日/mL、3000μg.日/mL、3500μg.日/mL、又はこれらの間の任意の数であり得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、抗IFN-α/ω抗体の投与によるIFN介在性疾患の臨床的に証明された安全な治療によって、約120μg/mL~約400μg/mLの実測最高濃度(Cmax)が達成される。例えば、Cmaxは、約120μg/mL、150μg/mL、200μg/mL、250μg/mL、300μg/mL、350μg/mL、400μg/mL、又はこれらの間の任意の数であり得る。
【0083】
別の全般的な態様では、本発明の方法は、抗IFN-α/ω抗体の治療に応答するIFN-I介在性疾患を有する対象を診断する方法であって、
a.ヒト対象の生体サンプルにおける1つ以上の遺伝子DHX58、EIF2AK2、HERC5、IFI44、IFI44L、IFI6、IRF7、PARP9、PLSCR1、及びSAMD9Lの遺伝子発現をアッセイすることと、
b.当該抗体及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物をヒト対象に投与する前に、当該対象が当該抗体の治療に対して応答すると同定することと、を更に含む。
【0084】
具体的には、この診断方法は、例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許仮出願第62/751,019号に更に記載されている。
【0085】
実施形態
本発明は以下の非限定的な実施形態も提供する。
【0086】
実施形態1は、臨床的に証明された安全な量の抗IFN-α/ω抗体又はその抗原結合断片を、必要としているヒト対象に投与する方法であって、当該抗体及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を当該ヒト対象に皮下投与又は静脈内投与することを含み、投与される当該抗体の総投与量が、投与1回当たり0.1mg/kg~20mg/kg(対象の体重)である、方法である。
【0087】
実施形態1aは、当該抗IFN-α/ω抗体が重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、当該重鎖可変領域が、それぞれ配列番号33、34、及び35の重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含み、当該軽鎖可変領域が、それぞれ配列番号30、31、及び32の軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む、実施形態1に記載の方法である。
【0088】
実施形態1bは、当該抗IFN-α/ω抗体が、配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)及び配列番号29のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態1又は1aに記載の方法である。
【0089】
実施形態1cは、当該抗IFN-α/ω抗体が、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,208,113号に記載のIFWM3405、IFWM3442、IFWM3525、IFWM3423、IFWM3444、又はIFWM3421である、実施形態1に記載の方法である。
【0090】
実施形態1dは、当該抗IFN-α/ω抗体が、完全ヒト抗体である、実施形態1~1cのいずれか1つに記載の方法である。
【0091】
実施形態2は、当該医薬組成物が、静脈内投与される、実施形態1~1dのいずれかに記載の方法である。
【0092】
実施形態2aは、投与1回当たりに投与される当該抗IFN-α/ω抗体の総投与量が、0.1mg/kg、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、若しくは20mg/kg(対象の体重)、又はこれらの間の任意の投与量である、実施形態2に記載の方法である。
【0093】
実施形態2bは、当該医薬組成物が、30分間以上にわたって当該ヒト対象に静脈内投与される、実施形態2又は2aに記載の方法である。
【0094】
実施形態3は、当該医薬組成物が、皮下投与される、実施形態1~1dのいずれかに記載の方法である。
【0095】
実施形態3aは、投与1回当たりに投与される当該抗IFN-α/ω抗体の総投与量が、0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.5mg/kg、0.7mg/kg、1mg/kg、1.2mg/kg、1.5mg/kg、1.7mg/kg、2mg/kg、2.3mg/kg、若しくは2.5mg/kg(対象の体重)、又はこれらの間の任意の投与量である、実施形態3に記載の方法である。
【0096】
実施形態4は、当該医薬組成物の投与によって、当該対象の血漿において、(i)約50μg.日/mL~約7000μg.日/mLの濃度時間曲線下面積(AUC)(0-t)及び(ii)約5μg/mL~約500μg/mLの実測最高濃度(Cmax)から選択される少なくとも1つのパラメータが達成される、実施形態1~3aのいずれか1つに記載の方法である。
【0097】
実施形態4aは、当該医薬組成物の投与によって、当該対象の血漿において、約50μg.日/mL、100μg.日/mL、500μg.日/mL、1000μg.日/mL、2000μg.日/mL、3000μg.日/mL、4000μg.日/mL、5000μg.日/mL、6000μg.日/mL、7000μg.日/mL、又はこれらの間の任意の数の濃度時間曲線下面積(AUC)(0-t)が達成される、実施形態4に記載の方法である。
【0098】
実施形態4aは、当該ヒト対象が健常対象であり、0.3mg/kg、1.0mg/kg、3.0mg/kg、10mg/kg、又は15mg/kgの当該抗IFN-α/ω抗体の単回用量の静脈内投与によって、当該対象の血漿において、それぞれ88.8(12.6)、287(31.9)、1143(245)、3694(610)、又は5944(1036)μg.日/mLの濃度時間曲線下面積(AUC)(0-t)が達成される、実施形態4に記載の方法である。
【0099】
実施形態4bは、当該ヒト対象が健常対象であり、0.3mg/kg、1.0mg/kg、3.0mg/kg、10mg/kg、又は15mg/kgの当該抗IFN-α/ω抗体の単回用量の静脈内投与によって、当該対象の血漿において、それぞれ7.14(0.961)、22.5(2.21)、76.5(9.30)、230(22.4)、又は403(65.7)μg/mLの実測最高濃度(Cmax)が達成される、実施形態4又は4aに記載の方法である。
【0100】
実施形態4cは、当該ヒト対象が健常対象であり、1.0mg/kgの当該抗IFN-α/ω抗体の単回用量の皮下投与によって、当該対象の血漿において、226(69.5)μg.日/mLの濃度時間曲線下面積(AUC)(0-t)が達成される、実施形態4に記載の方法である。
【0101】
実施形態4dは、当該ヒト対象が健常対象であり、1.0mg/kgの当該抗IFN-α/ω抗体の皮下投与によって、当該対象の血漿において、7.96(2.48)μg/mLの実測最高濃度(Cmax)が達成される、実施形態4又は4cに記載の方法である。
【0102】
実施形態5は、当該抗IFN-α/ω抗体を投与しても、当該対象において当該抗IFN-α/ω抗体に対する抗体は産生されない、実施形態1~4dのいずれか1つに記載の方法である。
【0103】
実施形態6は、当該ヒト対象が、IFN-I介在性疾患、例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、I型糖尿病、乾癬、原発性シェーグレン病、全身性硬化症、関節リウマチ、移植拒絶、皮膚筋炎、多発性筋炎、アイカルディ・グティエール症候群、乳児発症Sting関連血管炎(SAVI)、又は脂肪異栄養症及び発熱を伴う慢性非典型的好中球性皮膚疾患症候群(CANDLE)の治療を必要としている、実施形態1~5のいずれかに記載の方法である。
【0104】
実施形態7は、当該ヒト対象が、軽度~中等度の全身性エリテマトーデス(SLE)の治療を必要としている、実施形態6に記載の方法である。
【0105】
実施形態8は、当該医薬組成物が、当該ヒト対象に静脈内投与される、実施形態6~7のいずれか1つに記載の方法である。
【0106】
実施形態8aは、投与される当該抗IFN-α/ω抗体の総投与量が、投与1回当たり10mg/kg(対象の体重)である、実施形態8に記載の方法である。
【0107】
実施形態8bは、当該医薬組成物が、2週間に1回当該ヒト対象に投与される、実施形態8又は8aに記載の方法である。
【0108】
実施形態9は、当該医薬組成物が、当該ヒト対象に皮下投与される、実施形態6~7のいずれか1つに記載の方法である。
【0109】
実施形態9aは、投与される当該抗IFN-α/ω抗体の総投与量が、投与1回当たり1mg/kg(対象の体重)である、実施形態9である。
【0110】
実施形態10は、当該医薬組成物の投与によって、当該対象の血漿において、(i)約800μg.日/mL~約3500μg.日/mLの濃度時間曲線下面積(AUC)(0-14d)及び(ii)約100μg/mL~約400μg/mLの実測最高濃度(Cmax)から選択される少なくとも1つのパラメータが達成される、実施形態7~9aのいずれか1つに記載の方法である。
【0111】
実施形態10aは、当該医薬組成物が、投与1回当たり10mg/kgの当該抗IFN-α/ω抗体で2週間に1回当該ヒト対象に静脈内投与され、1回目の投与後、当該投与によって、当該対象の血漿において、1387(354)μg.日/mLの投与間隔中濃度時間曲線下面積(AUC)(0-14d)が達成される、実施形態10に記載の方法である。
【0112】
実施形態10bは、当該医薬組成物が、投与1回当たり10mg/kgの当該抗IFN-α/ω抗体で2週間に1回当該ヒト対象に静脈内投与され、6回目の投与後、当該投与によって、当該対象の血漿において、2340(690)μg.日/mLの投与間隔中濃度時間曲線下面積(AUC)(0-14d)が達成される、実施形態10又は10aに記載の方法である。
【0113】
実施形態10cは、10mg/kgの当該抗IFN-α/ω抗体の1回目の静脈内投与によって、当該対象の血漿において、194(46.3)の実測最高濃度(Cmax)が達成される、実施形態10~10bのいずれか1つに記載の方法である。
【0114】
実施形態10dは、10mg/kgの当該抗IFN-α/ω抗体の6回目の静脈内投与によって、当該対象の血漿において、289(72.6)の実測最高濃度(Cmax)が達成され、当該医薬組成物の各投与が、2週間に1回当該ヒト対象に投与される、実施形態10~10cのいずれか1つに記載の方法である。
【0115】
実施形態11は、当該ヒト対象において、当該医薬組成物の投与後100日目までに全身性エリテマトーデスレスポンダー指数(SRI)が低下、好ましくは4点低下、より好ましくは5点低下、最も好ましくは6点低下する、実施形態7~10dのいずれか1つに記載の方法である。
【0116】
実施形態12は、当該ヒト対象において、当該医薬組成物の投与後100日目までに新たに英国諸島ループス評価グループ(BILAG)のA又は2Bにシフトしない、実施形態7~11のいずれか1つに記載の方法である。
【0117】
実施形態13は、当該ヒト対象において、当該医薬組成物の投与後100日目までに全身性エリトマトーデス疾患活動性指数2000(SLEDAI-2K)がベースラインから低下する、実施形態7~12のいずれか1つに記載の方法である。
【0118】
実施形態14は、当該ヒト対象において、当該医薬組成物の投与後100日目までに全身性エリトマトーデス2000レスポンダー指数50(S2K RI-50)がベースラインから低下する、実施形態7~13のいずれか1つに記載の方法である。
【0119】
実施形態15は、当該ヒト対象において、当該医薬組成物の投与後100日目までに医師による疾患活動性の全般評価(PGA)がベースラインから低下する、実施形態7~14のいずれか1つに記載の方法である。
【0120】
実施形態16は、当該ヒト対象が、投与後40~50日以内に当該抗体の定常状態を達成する、実施形態6~15のいずれか1つに記載の方法である。
【0121】
実施形態17は、当該抗IFN-α/ω抗体を投与しても、当該対象において悪性疾患又はアナフィラキシー又は血清病型反応に関連する治療中に発生した有害事象(TEAE)は生じない、実施形態6~16のいずれか1つに記載の方法である。
【0122】
実施形態18は、必要としているヒト対象におけるIFN-I介在性疾患の臨床的に証明された安全な治療を提供する方法であって、抗IFN-α/ω抗体及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を当該対象に皮下投与又は静脈内投与することを含み、当該抗IFN-α/ω抗体の総投与量が、投与1回当たり0.1mg/kg~20mg/kg(対象の体重)である、方法である。
【0123】
実施形態18aは、当該抗IFN-α/ω抗体が重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、当該重鎖可変領域が、それぞれ配列番号33、34、及び35の重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含み、当該軽鎖可変領域が、それぞれ配列番号30、31、及び32の軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む、実施形態18に記載の方法である。
【0124】
実施形態18bは、当該抗IFN-α/ω抗体が、配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)及び配列番号29のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態18又は18aに記載の方法である。
【0125】
実施形態18cは、当該抗IFN-α/ω抗体が、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,208,113号に記載のIFWM3405、IFWM3442、IFWM3525、IFWM3423、IFWM3444、又はIFWM3421である、実施形態18に記載の方法である。
【0126】
実施形態18dは、当該抗IFN-α/ω抗体が、完全ヒト抗体である、実施形態18~18cのいずれか1つに記載の方法である。
【0127】
実施形態19は、当該IFN-I介在性疾患が、全身性エリテマトーデス(SLE)、I型糖尿病、乾癬、原発性シェーグレン病、全身性硬化症、関節リウマチ、移植拒絶、皮膚筋炎、多発性筋炎、アイカルディ・グティエール症候群、乳児期発症のSting関連血管障害(SAVI)、又は脂肪異栄養症及び高温症候群を伴う慢性非定型好中球性皮膚症(CANDLE)からなる群から選択される、実施形態18~18dのいずれかに記載の方法である。
【0128】
実施形態20は、当該ヒト対象が、軽度~中等度の全身性エリテマトーデス(SLE)の治療を必要としている、実施形態19に記載の方法である。
【0129】
実施形態21は、当該医薬組成物が、30分間以上にわたって当該ヒト対象に静脈内投与される、実施形態18~20のいずれか1つに記載の方法である。
【0130】
実施形態21aは、投与される当該抗IFN-α/ω抗体の総投与量が、投与1回当たり10mg/kg(対象の体重)である、実施形態21に記載の方法である。
【0131】
実施形態21bは、当該医薬組成物が、2週間に1回当該ヒト対象に投与される、実施形態21aに記載の方法である。
【0132】
実施形態22は、当該医薬組成物が、当該ヒト対象に皮下投与される、実施形態18~20のいずれか1つに記載の方法である。
【0133】
実施形態22aは、投与される当該抗IFN-α/ω抗体の総投与量が、投与1回当たり1mg/kg(対象の体重)である、実施形態22である。
【0134】
実施形態23は、当該抗IFN-α/ω抗体を投与しても、当該対象において当該抗IFN-α/ω抗体に対する抗体は産生されない、実施形態18~22aのいずれか1つに記載の方法である。
【0135】
実施形態24は、当該医薬組成物の投与によって、当該対象の血漿において、(i)約50μg.日/mL~約7000μg.日/mLの濃度時間曲線下面積(AUC)(0-t)及び(ii)約5μg/mL~約500μg/mLの実測最高濃度(Cmax)から選択される少なくとも1つのパラメータが達成される、実施形態18~23のいずれか1つに記載の方法である。
【0136】
実施形態24aは、当該医薬組成物の投与によって、当該対象の血漿において、(i)約800μg.日/mL~約3500μg.日/mLの濃度時間曲線下面積(AUC)(0-14d)及び(ii)約100μg/mL~約400μg/mLの実測最高濃度(Cmax)から選択される少なくとも1つのパラメータが達成される、実施形態24に記載の方法である。
【0137】
実施形態24bは、当該医薬組成物が、投与1回当たり10mg/kgの当該抗IFN-α/ω抗体で2週間に1回当該ヒト対象に静脈内投与され、1回目の投与後、当該投与によって、当該対象の血漿において、1387(354)μg.日/mLの投与間隔中濃度時間曲線下面積(AUC)(0-14d)が達成される、実施形態24aに記載の方法である。
【0138】
実施形態24cは、当該医薬組成物が、投与1回当たり10mg/kgの当該抗IFN-α/ω抗体で2週間に1回当該ヒト対象に静脈内投与され、6回目の投与後、当該投与によって、当該対象の血漿において、2340(690)μg.日/mLの投与間隔中濃度時間曲線下面積(AUC)(0-14d)が達成される、実施形態24a又は24bに記載の方法である。
【0139】
実施形態24dは、10mg/kgの当該抗IFN-α/ω抗体の1回目の静脈内投与によって、当該対象の血漿において、194(46.3)の実測最高濃度(Cmax)が達成される、実施形態24a~24cのいずれか1つに記載の方法である。
【0140】
実施形態24eは、10mg/kgの当該抗IFN-α/ω抗体の6回目の静脈内投与によって、当該対象の血漿において、289(72.6)の実測最高濃度(Cmax)が達成され、当該医薬組成物の各投与が、2週間に1回当該ヒト対象に投与される、実施形態24a~24dのいずれか1つに記載の方法である。
【0141】
実施形態25は、当該ヒト対象において、当該医薬組成物の投与後100日目までに全身性エリテマトーデスレスポンダー指数(SRI)が低下、好ましくは4点低下、より好ましくは5点低下、最も好ましくは6点低下する、実施形態18~24eのいずれか1つに記載の方法である。
【0142】
実施形態26は、当該ヒト対象において、当該医薬組成物の投与後100日目までに新たに英国諸島ループス評価グループ(BILAG)のA又は2Bにシフトしない、実施形態18~25のいずれか1つに記載の方法である。
【0143】
実施形態27は、当該ヒト対象において、当該医薬組成物の投与後100日目までに全身性エリトマトーデス疾患活動性指数2000(SLEDAI-2K)がベースラインから低下する、実施形態18~26のいずれか1つに記載の方法である。
【0144】
実施形態28は、当該ヒト対象において、当該医薬組成物の投与後100日目までに全身性エリトマトーデス2000レスポンダー指数50(S2K RI-50)がベースラインから低下する、実施形態18~27のいずれか1つに記載の方法である。
【0145】
実施形態29は、当該ヒト対象において、当該医薬組成物の投与後100日目までに医師による疾患活動性の全般評価(PGA)がベースラインから低下する、実施形態18~28のいずれか1つに記載の方法である。
【0146】
実施形態30は、当該ヒト対象が、投与後40~50日以内に当該抗体の定常状態を達成する、実施形態18~29のいずれか1つに記載の方法である。
【0147】
実施形態31は、当該抗IFN-α/ω抗体を投与しても、当該対象における悪性疾患又はアナフィラキシー又は血清病型反応に関連する治療中に発生した有害事象(TEAE)が生じない、実施形態18~30のいずれか1つに記載の方法である。
【0148】
実施形態32は、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法であって、
a.当該ヒト対象からの生体サンプルを提供することと、
b.当該ヒト対象の生体サンプルにおける1つ以上の遺伝子DHX58、EIF2AK2、HERC5、IFI44、IFI44L、IFI6、IRF7、PARP9、PLSCR1、及びSAMD9Lの遺伝子発現をアッセイすることと、
c.当該抗体及び当該医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を当該対象に投与する前に、当該ヒト対象が当該抗体の治療に対して応答すると同定することと、
を更に含む、方法である。
【0149】
実施形態33は、実施形態32に記載の方法であって、
a.当該ヒト対象からの生体サンプルを提供することと、
b.当該ヒト対象の生体サンプルにおける遺伝子DHX58、EIF2AK2、HERC5、IFI44、IFI44L、IFI6、IRF7、PARP9、PLSCR1、及びSAMD9Lの遺伝子発現をアッセイすることと、
c.当該生体サンプルにおける遺伝子DHX58、EIF2AK2、HERC5、IFI44、IFI44L、IFI6、IRF7、PARP9、PLSCR1、及びSAMD9Lの複合発現値を求めることと、
d.当該抗体及び当該医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を当該対象に投与する前に、当該ヒト対象が当該抗体の治療に対して応答すると同定することと、
を含む、方法である。
【0150】
実施形態34は、実施形態33に記載の方法であって、
a.当該ヒト対象からの生体サンプルを提供することと、
b.当該ヒト対象の生体サンプルにおける遺伝子DHX58、EIF2AK2、HERC5、IFI44、IFI44L、IFI6、IRF7、PARP9、PLSCR1、及びSAMD9Lの遺伝子発現をアッセイすることと、
c.当該生体サンプルにおける遺伝子DHX58、EIF2AK2、HERC5、IFI44、IFI44L、IFI6、IRF7、PARP9、PLSCR1、及びSAMD9Lの複合発現値を求めることと、
d.当該複合発現値が閾値以上である場合、当該ヒト対象が上昇したIFN-Iシグネチャーを有すると判定することと、
b.当該抗体及び当該医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を当該対象に投与する前に、当該ヒト対象が当該抗体の治療に対して応答すると同定することと、
を含む、方法である。
【0151】
実施形態35は、当該医薬組成物が、1mg/mL~100mg/mLの濃度の当該抗IFN-α/ω抗体及び医薬的に許容される担体を含む、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法である。
【0152】
実施形態35aは、当該抗IFN-α/ω抗体の濃度が、1mg/mL、10mg/mL、20mg/mL、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、若しくは100mg/mL、又はこれらの間の任意の濃度である、実施形態35に記載の方法である。
【0153】
実施形態35bは、当該医薬的に許容される担体が、1重量/体積%~10重量/体積%(w/v)、例えば5%~10%(w/v)の濃度のラクトース、マルトース、スクロースの1つ以上の炭水化物を含む、実施形態35又は35aに記載の方法である。
【0154】
実施形態35cは、当該医薬的に許容される担体が、1%(w/v)、1.5%(w/v)、2%(w/v)、2.5%(w/v)、3%(w/v)、3.5%(w/v)、4%(w/v)、4.5%(w/v)、5%(w/v)、5.5%(w/v)、6%(w/v)、6.5%(w/v)、7%(w/v)、7.5%(w/v)、8%(w/v)、8.5%(w/v)、9%(w/v)、9.5%(w/v)、若しくは10%(w/v)、又はこれらの間の任意の濃度のラクトース、マルトース、及びスクロースのうちの少なくとも1つを含む、実施形態35bに記載の方法である。
【0155】
実施形態35dは、当該医薬的に許容される担体が、0.01%(w/v)~0.1%(w/v)又は0.02%(w/v)~0.08%(w/v)の濃度のポリソルベート20、ポリソルベート80などの1つ以上の界面活性剤を含む、実施形態35~35cのいずれか1つに記載の方法である。
【0156】
実施形態35eは、当該医薬的に許容される担体が、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、若しくは0.1%(w/v)、又はこれらの間の任意の濃度のポリソルベート20及びポリソルベート80のうちの少なくとも1つを含む、実施形態35dに記載の方法である。
【0157】
実施形態35fは、当該医薬的に許容される担体が、それぞれ乳酸塩又は酢酸塩の量に基づいて10mM~20mMの濃度の乳酸、乳酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウムなどの1つ以上の酸及び/又は塩を含む、実施形態35~35eのいずれか1つに記載の方法である。
【0158】
実施形態35gは、当該医薬的に許容される担体が、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、又はこれらの間の任意の濃度の乳酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムのうちの少なくとも1つを含む、実施形態35fに記載の方法である。
【0159】
実施形態35hは、当該医薬組成物が、5.0~6.0のpH、例えば、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、又はこれらの間の任意の値のpHを有する、実施形態35~35gのいずれか1つに記載の方法である。
【0160】
実施形態36は、当該医薬が、20mg/mL~80mg/mLの当該抗IFN-α/ω抗体及び医薬的に許容される担体を含む、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法である。
【0161】
実施形態36aは、当該医薬的に許容される担体が、1mM~20mMの酢酸塩を含む、実施形態36に記載の方法である。
【0162】
実施形態36bは、当該医薬的に許容される担体が、1mM~20mMの乳酸塩を含む、実施形態36に記載の方法である。
【0163】
実施形態36cは、当該医薬的に許容される担体が、5%~10%(w/v)のラクトースを含む、実施形態36~36bのいずれか1つに記載の方法である。
【0164】
実施形態36dは、当該医薬的に許容される担体が、5%~10%(w/v)のマルトースを含む、実施形態36~36bのいずれか1つに記載の方法である。
【0165】
実施形態36eは、当該医薬的に許容される担体が、5%~10%(w/v)のスクロースを含む、実施形態36~36bのいずれか1つに記載の方法である。
【0166】
実施形態36fは、当該医薬的に許容される担体が、0.01%~0.10%(w/v)のポリソルベート20(PS20)を含む、実施形態36~36eのいずれか1つに記載の方法である。
【0167】
実施形態36gは、当該医薬的に許容される担体が、0.01%~0.10%(w/v)のポリソルベート80(PS80)を含む、実施形態36~36eのいずれか1つに記載の方法である。
【0168】
実施形態36hは、当該医薬組成物が、5.0~6.0のpH、例えば、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、又はこれらの間の任意の値のpHを有する、実施形態36~36gのいずれか1つに記載の方法である。
【0169】
実施形態37は、当該医薬が、30mg/mLの当該抗IFN-α/ω抗体、5mMの乳酸塩、5%(w/v)のラクトース、及び0.02%(w/v)のポリソルベート80(PS80)(pH5.5)を含む、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法である。
【0170】
実施形態38は、当該医薬が、40mg/mLの当該抗IFN-α/ω抗体、8mMの酢酸塩、8%(w/v)のマルトース、及び0.06%(w/v)のポリソルベート20(PS20)(pH5.0)を含む、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法である。
【0171】
実施形態39は、当該医薬組成物が、50mg/mLの当該抗IFN-α/ω抗体、13mMの酢酸塩、8.0%(w/v)のスクロース、及び0.04%(w/v)のポリソルベート20(PS20)(pH5.2)を含む、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法である。
【0172】
実施形態40は、当該医薬が、60mg/mLの当該抗IFN-α/ω抗体、10mMの酢酸塩、8%(w/v)のラクトース、及び0.06%(w/v)のポリソルベート20(PS20)(pH5.4)を含む、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法である。
【0173】
実施形態41は、当該医薬が、70mg/mLの当該抗IFN-α/ω抗体、15mMの乳酸塩、10%(w/v)のマルトース、及び0.06%(w/v)のポリソルベート80(PS80)(pH5.0)を含む、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法である。
【0174】
本発明を全般的に記述してきたが、上記と同じことが、実例として提供されるが制限することを意図していない以下の実施例を参照することにより、より容易に理解されるであろう。更に、本発明の詳細は、以下の非限定的実施例によって例示される。本明細書の全ての引用の開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【実施例】
【0175】
実施例1:健常対象における第1相無作為化二重盲検プラセボ対照単回漸増用量試験及び軽度~中等度の全身性エリテマトーデスを有する対象における抗体Aの複数回投与試験
この臨床試験は、ヒトにおける完全ヒト抗IFN-α/ω抗体(「抗体A」)の最初の投与であった。抗体Aは、配列番号28の重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列及び配列番号29の軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列を有し、IgG1κである。この試験の目的は、健常対象における単回漸増静脈内(IV)投与及び単回皮下(SC)投与(パートA)、並びに軽度~中等度の全身性エリテマトーデス(SLE)を有する対象における複数回IV投与(パートB)を通して抗体Aの安全性及び忍容性を評価することであった。
【0176】
目的
主目的
1)健常対象における単回漸増IV投与及び健常対象における1mg/kgの単回SC投与後の抗体Aの安全性及び忍容性を評価し(パートA);
2)軽度~中等度のSLEを有する対象における複数回IV投与後の抗体Aの安全性及び忍容性を評価する(パートB)。
【0177】
二次的目的
1)健常対象における単回漸増IV投与及び健常対象における1mg/kgの単回SC投与後(パートA)、並びに軽度~中等度のSLEを有する対象における複数回IV投与後(パートB)の抗体AのPK及び免疫原性を評価し;
2)健常対象における抗体Aの単回IV又はSC投与後の薬力学的(PD)効果及び臨床応答を評価し(パートA)、軽度~中等度のSLEを有する対象における抗体Aの複数回IV投与後のPD及び臨床応答を評価する(パートB)。
【0178】
試験的目的
1)健常対象における抗体Aの単回IV又はSC投与後(パートA)及び軽度~中等度のSLEを有する対象における抗体Aの複数回IV投与後(パートB)のバイオマーカーを評価し;
2)IFNシグナル伝達の調節不全のレベル、並びにこの調節不全が試験薬剤の投与に対する他のバイオマーカー及び臨床応答の尺度の変化とどのように相関するかを評価し;
3)異なる人種/民族集団にわたるIFNシグネチャーのばらつき、及び試験薬剤への曝露に関連する臨床応答に対するその潜在的影響を調査し;
4)バイオマーカー、PDマーカー、及び臨床応答の分析を通じて抗体AのPK/PD関係を調査する。
【0179】
方法及び対象
試験設計の概要
試験のパートAでは、交絡する顕著な医学上の問題又は長期薬物適用のない健常対象における抗体A又はプラセボの単回投与の安全性、忍容性、PK、及び免疫原性を評価し、ここでは、高頻度でPKサンプリングを行い、バイオマーカー及びPDも評価した。0.3mg/kg、1.0mg/kg、3.0mg/kg、10.0mg/kg、又は15.0mg/kgの抗体A又はプラセボの単回漸増IV用量を、健常対象の連続コホートに、少なくとも30分間のIV注入として投与した。追加のコホートには、1mg/kgの抗体Aを単回SC投与した。
【0180】
試験のパートBでは、軽度~中等度のSLEを有する対象において、臨床応答、安全性、及び忍容性を調査し、加えて、標的係合(合計及び遊離IFN)、IFN関連RNA発現シグネチャー、及び関連タンパク質などのバイオマーカーに対する影響を経時的に評価した。バイオマーカー読み取り値に対する増分効果について更に調べて、異なる人種/民族集団にわたってIFNが介在するシグナル伝達を減弱させる能力のばらつきを評価した。適宜、臨床応答及び安全性パラメータのサブグループ分析を実施してばらつきを評価し、異なる亜集団にわたる治療の効果を調査した。パートBでは、10mg/kgの抗体A又はプラセボを少なくとも30分間のIV注入として2週間毎に6回投与した。人種/民族亜集団(アジア/非アジア)及び血清学的疾患活動性のレベル上昇(有無)によって、無作為化を層別化した。
【0181】
対象の参加期間は、健常対象については約13週間であり、SLE対象については22週間であり、これには、試験薬剤投与の28日前までのスクリーニング来院が含まれていた。健常対象は、5泊6日の入院期間を有していた。全ての対象に対して、1日目に試験薬剤を投与し、SLE対象には、15、29、43、57、及び71日目に追加の投与を行った。
【0182】
【0183】
試験薬剤
抗体Aは、IV及びSC投与に好適な、冷凍された、防腐剤の入っていない最終的なバイアル内液体(liquid-in-vial、LIV)形態として供給される。
【0184】
対象
パートA:交絡する顕著な医学上の問題又は長期薬物適用のない合計48人の健常成人対象(男性40人、女性8人)が登録された。30人の対象に、単回漸増IV用量(0.3~15.0mg/kg)の抗体Aを投与し、6人の対象に、SC用量(1.0mg/kg)を投与し、12人の対象にプラセボを投与した。抗体A群からの2人の対象は、試験を完了しなかった。
図2は、パートAにおける対象の配置を表す。
【0185】
パートB:登録に適格な対象は、以下の重要な基準を満たしていた:
3)試験薬剤の最初の投与前3ヶ月以内に全身性エリテマトーデス疾患活動性指数2000(SLEDAI-2K)によって定義された非血清学的臨床活動性が少なくとも1である、ループスを診断するための全身ループス国際共同診療所(SLICC)基準を満たしている必要がある。
4)SLICC基準を満たすことに加えて、スクリーニング前2ヶ月以内に又はスクリーニング時に、血清学的に陽性であると定義されている必要がある:
e)抗核抗体(ANA)力価が≧1:80の陽性である、又は
f)抗二本鎖デオキシリボ核酸試験で陽性である(注:抗dsDNAが酵素結合免疫吸着アッセイによって行われる場合、明白に陽性とみなされるためには正常値の上限の2倍の検査値が必要である)、又は
g)抗Smith抗体が陽性である並びに/又は抗リボ核タンパク質(RNP)抗体及び/若しくは抗Ro抗体が陽性である、そして、上記のうちの少なくとも1つに加えて、
h)スクリーニング中(無作為化前)にループスIFNプロファイルスコアが陽性である。
【0186】
軽度~中等度のSLEを有する合計28人の対象(女性27人:男性1人)を、パートBにおいて無作為化した(20人の対象:10mg/kg IV用量;8人の対象:プラセボ)。抗体A群からの3人の対象は、試験を完了しなかった。
図3は、パートBにおける対象の配置を表す。
【0187】
評価
安全性の評価
理学的検査、注入反応、注射部位反応、臨床検査、バイタルサイン、併用薬、及び治療中に発生する有害事象(TEAE)を含む抗体Aの安全性及び忍容性を、治療群でまとめた。理学的検査、注入反応、注射部位を含む抗体Aの安全性及び忍容性。
【0188】
薬物動態及び免疫原性
試験に参加している全ての対象について、血清サンプルを使用して抗体AのPK及び免疫原性を評価した。
図1に列挙する通り、注入/注射の開始に対して指定の時間に血清サンプルを回収した。
【0189】
血清サンプルを分析して、定量下限(LLOQ)が0.06μg/mLである検証された免疫アッセイ法を使用して、抗体Aの濃度を求めた。検証されたアッセイ法を用いて、抗体Aに対する抗体の検出及び特性評価を行った。
【0190】
薬力学的評価
(任意の)生検同意を得た対象から皮膚病変の生検、治療前及び治療後の病変皮膚の生検(治療前2回及び治療後2回;4mmパンチ)を採取した。生検標本を、標本の妥当性を対象とするmRNA発現及び特異的免疫組織化学染色によって評価した。
【0191】
臨床応答評価
応答評価及び患者が報告した生活の質の尺度には、SLEDAI-2K/SLEDAI-2Kレスポンダー指数(S2K RI-50)、英国諸島ループス評価グループ(BILAG)、皮膚エリテマトーデス疾患領域及び重症度指数(CLASI)、医師による疾患活動性の全般評価(PGA)、略式36問診票、EuroQol-5次元-5レベル(EQ-5D-5L)患者の日誌、関節評価、及び写真に対して同意を得た対象のSLE対象皮膚病変の写真が含まれていた。
【0192】
グリコフォーム分析
パートAでは、15mg/kgを投与された対象において、血清サンプルを回収及び保存した。サンプルをその後分析して、抗体Aのグリコフォームレベルの潜在的変化を判定することができた。
【0193】
バイオマーカー
バイオマーカーは、パートA及びパートBの対象について予備分析の一部として分析した。これは、IFNの血清レベル、並びに分子経路プロファイリングを含んでいた。これらバイオマーカーは、炎症マーカー、RNA、細胞表面マーカー、自己抗体、T細胞及びB細胞レパートリー、標的特異的マーカー、並びにSLEの発症及び進行に関与している可能性がある他のカテゴリーのバイオマーカーを含むが、これらに限定されなかった。
【0194】
薬理学的評価
RNA、DNA、タンパク質発現、及びIFNシグネチャーの変化のばらつきについて、サンプルを分析した。それが臨床データの問題を解決する助けとなり得ると仮定された場合、更なる分析を実施した。
【0195】
統計的方法
パートBにおける臨床応答分析は、器官ドメイン特異的変化を含むSLE評価のまとめを含んでいた。
【0196】
薬物動態:個々の対象の抗体Aの血清濃度-時間データを非区画分析(NCA)によって分析し、治療群及び計画された抽出時点でまとめた。PKパラメータを治療群でまとめ、PKデータをグラフで表示した。経時的な抗体Aの平均血清濃度のプロットを提供した。抗体Aの曝露情報を含む全ての個々の導出されたPKパラメータについて記述統計を計算した。
【0197】
免疫原性:抗体Aの投与を受け、抗体Aに対する抗体を検出するのに適切なサンプルを有していた全ての対象について、抗体Aに対する抗体の状態をまとめた。ベースライン陽性サンプルを有し、治療後に力価が増加しなかった対象は、抗薬物抗体(ADA)陽性であるとはみなさなかった。
【0198】
全てのTEAEを治療群、並びにMedDRAバージョン18.1(パートA)及び21.0(パートB)で、健常及びSLE対象の各群についてSOC及びPTごとにまとめた。
【0199】
安全性の結果
安全分析セットは、パートAにおける48人の対象及びパートBにおける26人の対象を含んでいた。全体的に、パートAでは39人(81.3%)の対象及びパートBでは20人(76.9%)の対象で、試験過程中に1つ以上のTEAEが報告された。最も一般的なTEAEは、試験の両パートについて、感染及び侵襲の器官別大分類で報告された。
【0200】
パートAでは、抗体A 0.3mg/kg IVで治療した1人の対象は、非重篤なTEAEの右耳の水疱性鼓膜炎になった。事象は解決済みとして報告された。注入反応は報告されず、試験薬剤に起因する局所注射部位反応性もなかった。パートAでは、重篤なAEは報告されなかった。
【0201】
パートBでは、抗体Aコホートからの2人(7.7%)の対象で重篤なTEAEが報告された:2人(7.7%)の対象による帯状疱疹(HZ)及び1人(3.8%)の対象による早産。プラセボコホートでは、重篤なTEAEは報告されなかった。抗体A 10.0mg/kg IVで治療した1人の対象は、抗体Aに関連する可能性があるとみなされた非重篤なTEAEの鼠径部痛(リンパ節腫脹)によって試験を中止した。注入反応は報告されず、試験薬剤に起因する局所注射部位反応性はなかった。更に、悪性疾患に関連するTEAE、及びアナフィラキシー又は血清病型反応及びは報告されなかった。
【0202】
全体的に、抗体Aは、正常健常ボランティア及びSLE対象で忍容性良好であった。この試験において、死亡は報告されなかった。
【0203】
更に、検査パラメータ、バイタルサイン、理学的検査、又はECG所見について、ベースラインからの臨床的に有意な変化は観察されなかった。
【0204】
薬物動態の結果
パートA
健常対象の別々のコホートに、0.3~15mg/kgの用量範囲にわたる単回漸増IV用量の抗体A又はプラセボを投与した。加えて、健常対象の1つのコホートに、1mg/kgの抗体A又はプラセボを単回SC用量投与した。
【0205】
コホート1~5(IV注入)の抗体Aの線形平均血清濃度-時間プロファイルを
図4に示す。コホート2(1.0mg/kg、IV注入)及びコホート6(1.0mg/kg、SC注射)の線形平均血清濃度-時間プロファイルを
図5に示す。
【0206】
コホート1~5の抗体Aの主要なPKパラメータのまとめリストを、以下の表11に示す。全体的に、パートAでは、抗体Aの実測最高血清濃度(Cmax)及び曲線下面積(AUC)は、健常対象における単回IV注入後、0.3mg/kg~15mg/kgの用量範囲においておおよそ用量依存的かつ用量比例的な増加を示した。IV投与後の平均総全身クリアランス(CL)及び単回IV注入後の終末期における分布容積(Vz)は、それぞれ、2.28~3.09mL/日/kg及び67.2~102mL/kgの範囲であった。
【0207】
【表2】
aAUC
0-t、AUC
0-inf、CL、V
z、AUC
0-t、正規化された用量、及びAUC
0-inf、正規化された用量についてはn=5
bAUC
0-inf、CL、V
z、及びAUC
0-inf、正規化された用量についてはn=5
cAUC
0-inf、T
1/2、CL、V
z、及びAUC
0-inf、正規化された用量についてはn=5
【0208】
コホート2及び6の抗体Aの主要なPKパラメータのまとめリストを、以下の表2に示す。単回SC注射後、7日後に平均Cmax(7.96μg/mL)に達した(Tmax)。IV投与後の平均総全身クリアランス/(CL/F)及びVz/Fは、それぞれ3.96mL/日/kg及び119mL/kgであった。終末半減期(T1/2)は、IV注入及びSC注射後に同様であった。単回IV注入後の平均T1/2は、20.7~24.6日の範囲であり、SC注射後の平均T1/2は22.6日であった。同じ用量でのIV注入との比較に基づいて、SC注射として投与された抗体Aの生物学的利用能は、それぞれFAUC0-t及びFAUC0-infについて平均で78.7%及び81.9%であった。
【0209】
【0210】
パートB
この試験のパートBでは、軽度~中等度のSLEを有する28人の対象を無作為化して、10mg/kgの抗体A又はプラセボを少なくとも30分間のIV注入として2週間毎に6回投与した。投与1及び投与6の抗体Aの線形平均血清濃度-時間プロファイルを
図6に示す。
【0211】
2週間毎に10mg/kgの抗体AをIV注入で6回投与した後、投与1及び投与6のPKプロファイルの形状は、投与後14日、すなわち1投与間隔まで概ね同等であった。投与1及び投与6後のPKプロファイルは、健常応募者で観察されたPKプロファイルと同様であり、二相の性質であった。ピーク血清濃度は、投与1と比較して投与6後の方が約1.5倍高かった。投与間隔中の抗体Aの曝露(0~14日の曲線下面積[AUC0-14d])は、投与1と比較して投与6後の方が高かった。
【0212】
抗体Aの主要なPKパラメータのまとめリストを、以下の表3に示す。投与4、5、及び6の投与前血漿濃度(Cpredose)濃度に基づいて、抗体Aによる治療(投与4)の43日以内に抗体Aの定常状態が達成されたと考えられた。AUCに基づく平均蓄積は1.86倍であった。Cmaxに基づく平均蓄積は、投与1と比較して投与6後には1.62倍であった。6回目の投与後のCL及び分布容積(Vss)の平均値は、それぞれ4.73mL/日/kg及び92.6mL/kgであった。6回目の投与後の平均T1/2は、14.8日であった。
【0213】
正式な比較は行わなかったが、軽度~中等度のSLEを有する対象における曝露は、10mg/kgのIV用量の健常対象と比較してわずかに低いと思われる。
【0214】
【0215】
免疫原性結果(パートA及びパートB)
健常対象における0.3mg/kg~15mg/kgの抗体AのIV若しくは1mg/kgの抗体AのSCの単回投与、又は軽度~中等度のSLEを有する対象における10mg/kgの抗体AのIVの複数回投与後に、抗体Aに対する抗体を発現した対象はいなかった。したがって、ADAの発生率は計算及び報告しなかった。
【0216】
パートBからの臨床応答結果
SLEレスポンダー指数(SRI)-4、5、及び6
100日目にSRI-4、SRI-5、又はSRI-6応答を有する対象の数を表4に示す。100日目の全体的SRI応答からのデータは、抗体A治療群からの対象が、プラセボコホートよりも数値的に大きい応答速度を示した(それぞれ31.3%対0%)ことを示す。
【0217】
【0218】
BILAG
以下の表5に示すように、新たなBILAG A又は2Bのシフトは認められなかった。
【0219】
【表6】
注:SLEDAI突発は、SLEDAI-2Kスコアの4点以上の上昇と定義される。重度のSLEDAI突発は、SLEDAI-2Kスコアの7点以上の上昇と定義される。BILAG突発は、少なくとも1の新しいBILAG A又は2の新しいBILAG Bスコア(スコア<Bから)として定義される。突発までの時間は、最初の突発が発生したときのベースライン後の時間(日数)として定義される。
【0220】
SLEDAI-2K
経時的なSLEDAI-2Kにおけるベースラインからの変化及び変化パーセントのまとめを表6に示す。全体的に、抗体Aコホートからのデータは、プラセボコホートからよりも数値的に大きな減少を示した:SLEDAI-2Kについての100日目におけるベースラインからの平均(SD)変化百分率:それぞれ-23.74(27.061)対-8.93(13.139)。
【0221】
【0222】
【0223】
S2K RI-50
経時的なS2K RI-50におけるベースラインからの変化及び変化パーセントのまとめを表7に示す。全体的に、抗体Aコホートからのデータは、プラセボコホートからよりも数値的に大きい減少を示した:S2K RI-50についての100日目におけるベースラインからの平均(SD)変化百分率:それぞれ-51.77(24.760)対-25.84(22.163)。
【0224】
【0225】
【0226】
PGA
PGAにおけるベースラインからの変化及び変化パーセントのまとめを表8に示す。全体的に、抗体Aコホートからのデータは、プラセボコホートからよりもPGAの数値的に大きな減少を示した(100日目におけるベースラインからの(平均[SD]変化百分率:それぞれ-19.60(36.250)対-6.09(29.154))。
【0227】
【0228】
【0229】
関節評価:
ベースラインにおいて少なくとも2つの罹患関節を有する対象についての経時的な疼痛及び炎症の徴候を有する関節の数のベースラインからの変化のまとめを表9に示す。
【0230】
【0231】
【0232】
経時的な疼痛及び炎症の徴候を有する関節の数のベースラインからの変化のまとめを表10に示す。
【0233】
【0234】
【0235】
【0236】
全体的に、抗体Aコホートからのデータは、プラセボコホートよりも腫脹した関節の数のより大きな減少を示した。
【0237】
突発
1日目~100日目の最初のSLEDAI、重度のSLEDAI、又はBILAG突発までの時間のまとめを、上記の表6に示す。合計突発の数が少ないため、コホート間の比較は困難であった。しかしながら、治療群間に顕著な差はなかった。
【0238】
CLASI
ベースライン活動性スコアが低いことから、解釈が困難になった。(臨床改善に対応するCLASIスコアの変化として定義される)100日目においてベースラインから3点低下又は18%低下した対象の百分率によって判断すると、抗体Aコホートはプラセボコホートよりも高い応答を示した(それぞれ44.4%対25.0%)。
【0239】
EQ-5D-5L及びSF-36
コホートにまたがる全体的なスコア又は個々のドメインの変化は明らかでなかった。
【0240】
当業者は、広い発明概念から逸脱することなく前述の実施形態に変更を行うことができることを理解するであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に制限されるものではなく、具体的な説明によって定義される本発明の趣旨及び範囲内の改変を網羅することを意図するものと理解される。
【配列表】
【国際調査報告】