(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-02
(54)【発明の名称】繊維セメントの屋根用途のためのアルカリ性環境における分散が強化された表面上に親水性ポリマーを有する二成分極細繊維
(51)【国際特許分類】
D01F 8/10 20060101AFI20220526BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220526BHJP
C08L 23/02 20060101ALI20220526BHJP
D01F 8/06 20060101ALI20220526BHJP
C04B 16/02 20060101ALI20220526BHJP
C04B 16/06 20060101ALI20220526BHJP
C04B 14/28 20060101ALI20220526BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
D01F8/10 C
C08L101/00
C08L23/02
D01F8/06
C04B16/02 Z
C04B16/06 B
C04B16/06 D
C04B14/28
C04B28/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559228
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(85)【翻訳文提出日】2021-10-04
(86)【国際出願番号】 US2020024408
(87)【国際公開番号】W WO2020210021
(87)【国際公開日】2020-10-15
(32)【優先日】2019-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】513128279
【氏名又は名称】ダウ ブラジル スデステ インドゥストリアル リミタダ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】クルス、エドアルド
(72)【発明者】
【氏名】レドラー、マイケル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ルエダ ネリー、アナ クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】ジョグ、プラサンナ ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ビロヴィッツ、ジェラルド エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ムーア、ジョナサン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】パーソンズ、トーマス ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4G112
4J002
4L041
【Fターム(参考)】
4G112PA10
4G112PA24
4J002BB12W
4J002BB21X
4J002CH02Y
4J002FD02Y
4J002GK01
4L041BA21
4L041BA48
4L041BC02
4L041BD01
4L041CA38
4L041CA44
4L041CB13
4L041DD22
(57)【要約】
【解決手段】 本発明は、第1の成分(シェル)としてエチレン-ビニルアルコール(EVOH)ポリマーおよび少なくとも1種の可塑剤、好ましくはポリエチレングリコールと、第2の成分(コア)としてポリアミド、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、ならびにポリオレフィンおよび無水物グラフト化ポリオレフィンのポリマーブレンドから選択されるポリマーとを含み、300~1000の長さ対直径(L/D)または等価直径のアスペクト比を有する、コンクリートを強化するための二成分コアシェルポリマー極細繊維を提供する。二成分ポリマー極細繊維は、5~45重量%の第1の成分を含み、容易に処理され、比較的低い極細繊維投入量で改善された機械的特性を有する繊維セメントを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側または第1の成分、またはシェルとして、30モル%~50モル%のエチレンを有するエチレン-ビニルアルコール(EVOH)ポリマーおよび少なくとも1種の可塑剤と、第2の成分またはコアとしてポリアミド、ポリエステル、および一方ではポリオレフィン、他方では無水物グラフト化ポリオレフィンのポリマーブレンドから選択されるポリマーとを有する、コンクリートを強化するための二成分ポリマー極細繊維を含む組成物であって、前記二成分ポリマー極細繊維は、300~1000の長さ対直径(L/D)または等価直径のアスペクト比を有する組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の可塑剤が、ポリアルキレングリコール、メトキシポリアルキレングリコール、またはそれらの混合物であり、前記極細繊維が、ASTM D7580/D7580M(2015)に従う0.3mm未満または30ミクロン未満の等価直径を有する、請求項1に記載の二成分ポリマー極細繊維の組成物。
【請求項3】
前記第1の成分において、前記可塑剤の総量が、前記二成分ポリマー極細繊維の前記第1の成分の総重量を基準として1~10重量%の範囲である、請求項1に記載の二成分ポリマー極細繊維の組成物。
【請求項4】
前記第2の成分が、ポリオレフィンおよびエチレン性不飽和無水物グラフト化オレフィンポリマーのポリマーブレンドを含む、請求項1に記載の二成分ポリマー極細繊維の組成物。
【請求項5】
前記第2の成分が、ポリプロピレンおよび無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレンのポリマーブレンドを含む、請求項1に記載の二成分ポリマー極細繊維の組成物。
【請求項6】
前記第2の成分が、ポリプロピレンおよび無水マレイン酸でグラフト化されたポリプロピレンのポリマーブレンドであり、前記無水マレイン酸の割合が、前記第2の成分のポリマーブレンド固体の総重量を基準として0.01~0.3重量%の範囲である、請求項1に記載の二成分ポリマー極細繊維の組成物。
【請求項7】
前記EVOHポリマーが、210℃、2.16Kg(ASTM D1238-13(2013))で6.4~38g/10分のメルトフローレート(MFR)を有し、さらに、前記第2の成分は、前記ポリオレフィンが230℃および2.16Kg(ASTM D1238-13(2013))で12~24g/10分のメルトフローレートを有するポリプロピレンである前記ポリマーブレンドを含む、請求項1に記載の二成分ポリマー極細繊維の組成物。
【請求項8】
前記二成分ポリマー極細繊維が、55~95重量%対5~45重量%(または95:5~55:45)の第2の成分(コア)対第1の成分(シェル)比を有し、全ての重量は極細繊維固体の総重量を基準とする、請求項1に記載の二成分ポリマー極細繊維の組成物。
【請求項9】
前記二成分ポリマー極細繊維が、60~90重量%対10~40重量%(または60:40~90:10)の第2の成分(コア)対第1の成分(シェル)比を有し、全ての重量は極細繊維固体の総重量を基準とする、請求項1に記載の二成分ポリマー極細繊維の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、前記二成分ポリマー極細繊維の湿潤繊維セメント組成物を含み、さらに、水、水硬性セメント、石灰石骨材およびセルロース繊維を含む、請求項1に記載の二成分ポリマー極細繊維の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維セメントの製造で使用するための二成分ポリマー極細繊維に関し、これらの成分は、互いに高い接着性を有する。より具体的には、本発明は、エチレン-ビニルアルコール(EVOH)繊維および少なくとも1種の可塑剤の外側成分、好ましくはシェルと、無水マレイン酸でグラフトされたポリプロピレンを含むオレフィン内部成分またはコアとを含む二成分ポリマー極細繊維の組成物に関する。さらに、本発明は、二成分ポリマー極細繊維および水硬性セメントを含む湿潤繊維セメント組成物、ならびに二成分ポリマー極細繊維を含む繊維セメントまたはセメント繊維板に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
例えば、ラテンアメリカでは、住宅および商業ビルの屋根への波形繊維セメントタイルの使用、ならびに外部羽目板へのセメント繊維板の使用が増え続けている。板はセメントおよび充填剤で構成され、法律で許可されている場合は、セルロース、合成、またはアスベスト等の繊維で補強されている。しかしながら、アスベストは吸入の危険性があるため、先進国では長い間禁止されている。現在、International Ban Asbestos Secretariat(IBAS)によると、61カ国でアスベスト繊維の使用が禁止されている。ブラジルは最近、2017年後半にアスベストを禁止したが、これは、屋根用途への繊維セメントタイルの使用に大きな影響を与える。したがって、繊維セメントタイルおよびセメント繊維板におけるアスベストの代替物への必要性が依然として残る。
【0003】
空気硬化繊維セメント製品でのアスベスト代替用に利用可能な合成繊維には、PP(ポリプロピレン)およびPVOH(ポリビニルアルコール)が挙げられるが、これらは本質的に親水性である。PP繊維の使用は、その疎水性のためにいくつかの困難を課し、これはタイルの層間剥離、およびより大きなタイルにおける繊維の分散性または変形能に影響を与える。適切な分散性のために、PP繊維にはコロナ放電または界面活性剤浴等の後処理が必要であるが、効果的な後処理は、粗大繊維とは対照的に、より小さな基板核または極細繊維に対しては依然として課題であり、また、コロナ放電の場合は、追加の機器およびプロセスの複雑さが必要となる。したがって、そのような後処理方法を排除することが望ましいであろう。
【0004】
極細繊維は粗大繊維よりも界面表面積が大きいため、粗大繊維よりも紡糸およびPPコア含有繊維の繊維形成に大きな影響を与える可能性がある。例えば、極細繊維の紡糸は、そのような繊維がより小さなダイを通して押出しされにくいため、粗大繊維の紡糸よりもはるかに困難であることが証明されている。それにもかかわらず、極細繊維を有するセメント繊維板を提供することは依然として望ましく、なぜなら、そのような極細繊維はまた、それらが提供する界面表面積の増加のために、同等の割合の粗大繊維よりもセメント繊維板の特性に大きな影響を与えるためである。
【0005】
JogのUS2015/0133018は、コンクリート補強用の表面上にEVOHを備えた二成分繊維を開示している。外側成分として5モル%~82.5モル%のエチレンを有するエチレン-ビニルアルコール(EVOH)ポリマーと、第2の成分として無水マレイン酸塩でグラフトされたポリプロピレンおよびポリプロピレンまたはポリエチレンのポリマーブレンドとを含む、コンクリートを強化するための二成分ポリマー粗大繊維組成物。しかしながら、Jogは、極細繊維および繊維セメント複合材での応用を開示または作製しておらず、アスベストを含まない強化極細繊維を含むセメント複合材を提供する課題を解決していない。したがって、信頼性の高い極細繊維補強を備えた有用なセメント複合材を提供する必要性が残されている。
【0006】
本発明者らは、実用的な様式で作製および使用され、ユーザが例えば繊維セメントの耐亀裂性および引張強度をさらに改善することを可能にする、良好な分散性を有するセメント繊維板用のアスベスト不含強化繊維を提供するという課題を解決しようと努めた。
【0007】
本発明は、エチレン-ビニルアルコール(EVOH)ポリマーシェル、およびオレフィン、ポリアミドまたはポリエステルコアを有するコアシェル構造を有し、セメント繊維板を製造するための繊維セメント組成物および湿潤セメント組成物に高度に分散性である二成分ポリマー極細繊維を提供する。
【0008】
本発明の好ましい二成分繊維は、コア内のポリプロピレン(PP)およびコア内のマレイン化PP(PP-g-MAH)(これはコア内の両方の材料のブレンドである)と、PP(PP-g-MAH)とのエステル化によって反応し、両方の層を接着した状態に保つエチレンビニルアルコール(EVOH)外層またはシェルとを含む極細繊維を含む。本発明の好ましい二成分繊維は、ASTM D7580/D7580M(2015)に従う0.3mm未満または30ミクロン未満の等価直径を有する。本発明の好ましい二成分繊維は、300~1000の長さ対直径(L/D)または等価直径のアスペクト比を有する。
【0009】
本発明の好ましい二成分繊維において、(EVOH)ポリマーは、30モル%~50モル%、または好ましくは38~48モル%のエチレンを有する。
【0010】
本発明の好ましい二成分繊維の第1の成分またはシェルにおいて、EVOHポリマーは、酢酸ビニル部分が85%以上加水分解されている、または好ましくは97%以上加水分解されている、またはより好ましくは完全に加水分解されているエチレン酢酸ビニルポリマーを含む。
【0011】
本発明の好ましい二成分繊維は、外側成分に、少なくとも1種の可塑剤、好ましくはポリアルキレングリコール、メトキシポリアルキレングリコールもしくはそれらの混合物、またはより好ましくはポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0012】
本発明の好ましい二成分繊維において、第1の成分またはシェルは、可塑剤の総量が0.75~15重量%、または好ましくは1~10重量%、またはより好ましくは1.5~7.5重量%の範囲の可塑剤の総量を有し、全ての重量パーセントは、二成分ポリマー極細繊維の第1の成分の総重量を基準とする。
【0013】
本発明の好ましい二成分繊維は、第2の成分またはコアにおいて、ポリオレフィンおよび無水物グラフト化オレフィンポリマー、またはより好ましくはエチレン性不飽和無水物グラフト化オレフィンポリマーのポリマーブレンドを含み、不飽和無水物は、無水マレイン酸、無水イタコン酸、および無水フマル酸から選択され、またはより好ましくは無水マレイン酸である。
【0014】
本発明の好ましい二成分繊維において、第2の成分(コア)対第1の成分(シェル)の比は、55~95重量%対5~45重量%(もしくは95:5~55:45)、または好ましくは60~90重量%対10~40重量%(もしくは60:40~90:10)、またはより好ましくは70~85重量%対15~30重量%(もしくは70:30~85:15)の範囲であり、全ての重量は極細繊維固体の総重量を基準とする。
【0015】
本発明の好ましい二成分繊維は、第2の成分またはコアに、エチレン性不飽和無水物、好ましくは無水マレイン酸でグラフト化されたポリプロピレンポリプロピレンのポリマーブレンドを含み、エチレン性不飽和無水物の割合は、第2の成分のポリマーブレンド固体の総重量を基準として、0.01~0.3重量%、または好ましくは0.02~0.15重量%。またはより好ましくは0.02~0.08重量%、またはさらにより好ましくは0.05~0.08重量%の無水マレイン酸、さらにより好ましくは0.05~0.08重量%の無水マレイン酸の範囲である。
【0016】
本発明の最も好ましい二成分繊維は、第2の成分またはコアに、ポリプロピレンおよび無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレンのポリマーブレンドを含む。
【0017】
本発明による第2の態様では、組成物は、コンクリートを強化するための本発明の好ましい二成分ポリマー極細繊維を含む。
【0018】
1.本発明による第2の態様では、コンクリートを強化するための二成分ポリマー極細繊維の組成物は、外側成分または第1の成分、好ましくはシェルとして、30モル%~50モル%、または好ましくは38~48モル%のエチレンを有するエチレン-ビニルアルコール(EVOH)ポリマー、および少なくとも1種の可塑剤、好ましくはポリアルキレングリコール、メトキシポリアルキレングリコールもしくはそれらの混合物、またはより好ましくはポリエチレングリコール(PEG)と、内側成分もしくは第2の成分、またはコアとして、ポリアミド、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、または一方ではポリオレフィン、好ましくはポリプロピレン(PP)もしくはポリエチレン、またはより好ましくはポリプロピレン、また他方では無水物グラフト化ポリエチレン、好ましくは無水マレイン酸でグラフト化されたポリプロピレン(PP-g-MAH)のポリマーブレンドとを含み、二成分ポリマー極細繊維は、300~1000の長さ対直径(L/D)または等価直径のアスペクト比を有する。
2.上記の項目1の二成分ポリマー極細繊維の組成によれば、第1の成分またはシェルにおいて、可塑剤の総量は、0.75~15重量%、または好ましくは1~10重量%、またはより好ましくは1.5~7.5重量%の範囲であり、全ての重量パーセントは、二成分ポリマー極細繊維の第1の成分の総重量を基準とする。
3.上記の項目1または2のいずれかの二成分ポリマー極細繊維の組成によれば、第1の成分またはシェルにおいて、EVOHポリマーは、酢酸ビニル部分が85%以上加水分解されている、または好ましくは97%以上加水分解されている、またはより好ましくは完全に加水分解されているエチレン酢酸ビニルポリマーを含む。
4.上記の項目1、2、または3のいずれかの二成分ポリマー極細繊維の組成によれば、EVOHポリマーは、210℃、2.16Kg(ASTM D1238-13(2013))で6.4~38g/10分のメルトフローレート(MFR)を有し、さらに、第2の成分またはコアは、ポリオレフィンが230℃および2.16Kg(ASTM D1238-13(2013))で12~24、または好ましくは15~21g/10分のメルトフローレートを有するポリプロピレンであるポリマーブレンドを含む。
5.上記の項目1、2、3、または4のいずれかの二成分ポリマー極細繊維の組成によれば、第2の成分またはコアは、ポリオレフィンおよび無水物グラフト化オレフィンポリマー、または好ましくはエチレン性不飽和無水物グラフト化オレフィンポリマーのポリマーブレンドを含み、不飽和無水物は、無水マレイン酸、無水イタコン酸、および無水フマル酸から選択され、またはより好ましくは無水マレイン酸である。
6.上記の項目1、2、3、4、または5のいずれかの二成分ポリマー極細繊維の組成によれば、第2の成分またはコアは、ポリプロピレンおよび無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレンのポリマーブレンドを含む。
7.上記の項目1、2、3、4、5、または6のいずれかの二成分ポリマー極細繊維の組成によれば、第2の成分またはコアは、エチレン性不飽和無水物、好ましくは無水マレイン酸でグラフト化されたポリプロピレンポリプロピレンのポリマーブレンドであり、エチレン性不飽和無水物の割合は、第2の成分のポリマーブレンド固体の総重量を基準として0.01~0.3重量%、または好ましくは0.02~0.15重量%、またはより好ましくは、0.02~0.08重量%、またはさらにより好ましくは0.05~0.08重量%の無水マレイン酸、さらにより好ましくは0.05~0.08重量%の無水マレイン酸の範囲である。
8.上記の項目1、2、3、4、5、6、または7のいずれかの二成分ポリマー極細繊維の組成によれば、二成分ポリマー極細繊維は、55~95重量%対5~45重量%(もしくは95:5~55:45)、または好ましくは60~90重量%対10~40重量%(もしくは60:40~90:10)、またはより好ましくは、70~85重量%対15~30重量%(もしくは70:30~85:15)の第2の成分(コア)対第1の成分(シェル)の比を有し、全ての重量は極細繊維固体の総重量を基準とする。
9.上記の項目1、2、3、4、5、6、7、または8のいずれかの二成分ポリマー極細繊維、または本発明の任意の好ましい二成分繊維の組成物によれば、組成物は、好ましくは第1の成分またはシェルとしてEVOHと、第2の成分またはコアとしてポリオレフィン、好ましくはポリプロピレン、およびエチレン性不飽和無水物グラフト化ポリオレフィン、好ましくはマレイン酸無水物グラフト化ポリプロピレンのポリマーブレンドとを有する、二成分ポリマー極細繊維の湿潤繊維セメント組成物を含み、さらに、水、水硬性セメント、石灰石骨材、およびセルロース繊維を含む。
10.上記の項目9の湿潤繊維セメント組成物によれば、
組成物は、充填剤、好ましくはシリカもしくは粘土、増粘剤、可塑剤、または顔料もしくは着色剤のうちの1つ以上をさらに含む。
11.上記の項目9または10のいずれか1つの湿潤繊維セメント組成物、または本発明の任意の好ましい二成分繊維によれば、湿潤組成物は、湿潤組成物の総重量を基準として、0.05重量%~3.0重量%、または好ましくは0.1~1.25重量%、またはより好ましくは0.15~1.0重量%の固体としての二成分ポリマー極細繊維を含む。
12.本発明の別の態様によれば、繊維セメント物品は、外側成分または第1の成分として、32モル%~50モル%、または好ましくは38~48モル%のエチレンを有するエチレン-ビニルアルコール(EVOH)ポリマー、および少なくとも1種の可塑剤、好ましくはポリアルキレングリコール、メトキシポリアルキレングリコール、またはより好ましくはポリエチレングリコール(PEG)と、第2の成分として、ポリアミド、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、ならびに一方ではポリオレフィン、好ましくはポリプロピレンもしくはポリエチレン、またはより好ましくはポリプロピレン、および他方では無水物グラフト化ポリオレフィン、好ましくは無水マレイン酸および硬化水硬性セメントでグラフト化されたポリプロピレンのポリマーブレンドとの、本発明の好ましい二成分繊維、または二成分ポリマー極細繊維の組成物を含む。
13.上記の項目12の繊維セメント物品によれば、第2の成分は、ポリオレフィンおよび無水物グラフト化オレフィンポリマー、または好ましくはエチレン性不飽和無水物グラフト化オレフィンポリマーのポリマーブレンドを含み、不飽和無水物は、無水マレイン酸、無水イタコン酸、および無水フマル酸から選択され、またはより好ましくは無水マレイン酸である。
14.上記の項目12または13のいずれか1つの繊維セメント物品によれば、
物品は、石灰石骨材およびセルロース繊維をさらに含む。
15.上記の項目14の繊維セメント物品によれば、物品は、充填剤、好ましくはシリカもしくは粘土、増粘剤、可塑剤、または顔料もしくは着色剤のうちの1つ以上をさらに含む。
16.本発明のさらに別の態様によれば、上記の項目1~9のいずれか1つの二成分ポリマー極細繊維を製造する方法は、第1の成分および第2の成分をブレンドせずに共押出しすることを含む。
17.項目16の方法によれば、共押出しにおいて、繊維は、300~1000、または好ましくは450~700の長さ対直径(L/D)または等価直径のアスペクト比まで成形および延伸される。
【0019】
別段に指定されない限り、温度および圧力の条件は、周囲温度および標準圧力である。引用された全ての範囲は、包括的かつ組み合わせ可能である。
【0020】
特に指定のない限り、括弧を含む用語は、代替的に、括弧が存在しないかのような用語全体、および括弧内を有しない用語、ならびに各代替物の組み合わせを指す。したがって、「(ポリ)エチレングリコール」という用語は、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、またはそれらの混合物を指す。
【0021】
全ての範囲は、包括的かつ組み合わせ可能である。例えば、「0.06~0.25重量%、または好ましくは0.06~0.08重量%の範囲」という用語は、0.06~0.25重量%、0.06~0.08重量%、および0.08~0.25重量%の各々を含む。
【0022】
本明細書で使用するとき、「ASTM」という用語は、ASTM International、West Conshohocken、PAの刊行物を指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「アスペクト比」または「L/D比」または「L/D」という用語は、切断された繊維の全長およびその断面幅の比を指し、長さは、小さな繊維束を繊維クランプのスロット内にスライドさせ、クランプの嵌合部品からタブをスロットに挿入して繊維を圧縮し、続いて鋭利なブレードをクランプの表面上でスライドさせて繊維を切断し、次いでデジタルカメラを用いる光学顕微鏡で繊維の断面を測定することにより測定される。繊維の断面が真円でない場合、繊維の長軸および短軸の寸法が楕円のように測定され、次いで平均が断面寸法または等価直径と見なされる。繊維試料はランダムに選択され、報告されるアスペクト比は、ランダムに選択された20本の繊維から決定された等価直径の平均である。
【0024】
本明細書で使用される場合、「繊維セメント」という用語は、「セメント繊維板」または「繊維板」と交換可能であり、同じものを意味する。しかしながら、本明細書で使用される場合、「湿潤繊維セメント」という用語は、繊維セメントまたは繊維板を製造するために使用される水硬性結合剤組成物を指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「等価直径」という用語は、繊維のアスペクト比を決定する際に使用される繊維の平均断面直径、すなわち、繊維が真円ではない場合の繊維の長軸および短軸の平均断面を指す。繊維試料はランダムに選択され、報告される等価直径は、ランダムに選択された20本の繊維から決定された等価直径の平均である。
【0026】
本明細書で使用される場合、「直径」という用語は、丸い断面を有する極細繊維の直径を指す。繊維試料はランダムに選択され、報告される直径は、ランダムに選択された20本の繊維から決定された直径の平均である。
【0027】
本明細書で使用される場合、「粗大繊維」という用語は、ASTM D7508/D7508M(2015)Standard Specification for Polyolefin Chopped Strands for Use in Concreteに従い、580デニール以上の平均線密度および0.3mm以上または30ミクロン以上の等価直径を有する繊維を意味する。
【0028】
本明細書で使用される場合、「極細繊維」という用語は、ASTM D7580/D7580M(2015)Standard Specification for Polyolefin Chopped Strands for Use in Concreteに従い、580デニール未満の線密度および0.3mm未満または30ミクロン未満の等価直径を有する繊維を意味する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、2つ以上の異なるモノマー反応物から形成されるか、または2つの別個の繰り返し単位を含むホモポリマーおよびコポリマーを含む。
【0030】
本明細書で使用される場合、「界面活性剤」という用語は、オリゴエトキシレート等の親水性相と、C8アルキルまたはアルキルアリール基等の疎水性基または相との両方を含む水分散性有機分子を意味する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「全固体」という用語は、溶媒、液体担体、揮発性有機化合物またはVOC、アンモニアおよび水を含む非反応性揮発性物質を除く、所与の組成物中の全ての材料を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「重量平均分子量」またはMWという用語は、室温での、および適切な従来のポリグリコール、ビニル、またはスチレンポリマー標準を使用した、水中またはポリマー検体もしくは可塑剤に適切な溶媒中のポリマー分散液のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して決定された、ポリマーまたは可塑剤材料の分子量分布の重量平均を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、「重量平均粒子サイズ」という用語は、光散乱または別の同等の方法によって決定される、示された材料の粒子サイズ分布粒子サイズの重量平均を指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、「重量%」という語句は、重量パーセントを表す。
【0035】
本発明は、繊維セメントの補強材として使用される二成分極細繊維およびそれらを含む組成物を提供し、第2の成分またはコアと外側または第1の成分ポリマーとの間、例えば、コアとシースまたはコアとシェルとの間の接着は、繊維セメントの性能を向上させる。さらに、本発明は、本発明による極細繊維を製造するための実用的な方法を可能にする。さらに、エチレン-ビニルアルコール(EVOH)はセメントと強い結合を形成するため、本発明は、延性等において、それらを含む繊維板を改善する二成分ポリマー極細繊維を製造することを可能にする。
【0036】
本発明者らは、300~1000ミクロンの等価直径を有する粗大繊維とは異なり、10~29.5ミクロンの等価直径を有する極細繊維は、紡糸性およびゲル形成に関して実質的により大きな困難をもたらすことを発見した。EVOHは固くて脆い親水性材料であるため、粗大繊維の形成とは対照的に、極細繊維の紡糸または押出しプロセスをEVOHの望ましい割合で実行すると問題が発生する。EVOH材料の組成物は、紡糸または押出中に、第1の成分および第2の成分の50/50(w/w/)の割合でゲル化し、さらに、50重量%の第1の成分EVOHポリマー組成物から作製された二成分ポリマー極細繊維は、実際の使用には不十分な延性を与え、引張強度の観点から十分に強くなかった。望ましいEVOH濃度、例えば、極細繊維形成組成物全体の20重量%では、押出しまたは紡糸を可能にするのに十分な高粘度が発生し、それに付随して等価直径が小さくなると問題が発生し、極細繊維は低粘度でプロセス中破損した。そのため、極細繊維が脆すぎてゲル化するか、処理中に極細繊維上にグロブが形成されるか、またはEVOH含有量がより低い場合は処理することができなかった。したがって、本発明者らは、EVOH組成物を形成する第1の成分シェルに可塑剤を添加することにより、紡糸に成功し、15ミクロンの等価直径および十分に低い割合のEVOHまたは第1の成分の割合を有する二成分ポリマー極細繊維を製造して、使用中適切な繊維延性および引張強度を保証することが可能になることを発見した。
【0037】
EVOHは、セメント系マトリックスのアルカリ性環境(pH10~13)で優れた分散性を提供する。さらに、EVOHは、二成分ポリマー極細繊維とセメントマトリックスとの間の良好な相互作用または接着を可能にし、使用中ポリビニルアルコール(PVOH)繊維の性能に到達する。セメントマトリックスと極細繊維との間のそのような接着は、水以外の材料を失うことなく組成物の脱水を必要とするHatschekプロセスによって生成された繊維セメントにとって依然として重要である。Hatschekプロセスでは、極細繊維、セメント、任意の充填剤、例えばシリカ、増粘剤および石灰石の組成物が、脱水前に150~200g固体/リットルの固体濃度で水に分散される。
【0038】
さらに、本発明によれば、繊維セメント用の二成分ポリマー極細繊維強化材は、極細繊維含有組成物における改善された分散および機械的性能を可能にする。例えば、本発明によれば、EVOHの第1の成分(シェル)と、10~15ミクロンの直径および9~12mmの長さを有する第2の成分(コア)としての、PPおよび無水マレイン酸塩でグラフト化されたPPのブレンドとを有する二成分極細繊維は、ポリプロピレン繊維を含む既存のアスベスト不含繊維セメント複合材(繊維セメントNTとしても知られる)よりも優れた物理化学的特性を備えた繊維セメント複合材を提供した。
【0039】
本発明による好適な二成分ポリマー極細繊維は、ポリアミドコアの第2の成分、または無水マレイン酸でグラフトされたPP(PP-g-MAH)をさらに含むポリプロピレン(PP)のポリマーブレンドを有する。
【0040】
本発明による二成分ポリマー極細繊維は、例えば、円形、卵形、楕円形、三角形、菱形、長方形、正方形、多角形(4つ以上の辺を有する)、レムニスケート、リボン状または糸状、および多葉型を含む任意の形状の断面を有し得る。
【0041】
好適な二成分ポリマー極細繊維は、300~1000、または好ましくは450~700のアスペクト比またはL/D比を有する。一例では、二成分ポリマー極細繊維は、等価直径が15ミクロン、長さが9mmの寸法を有し、約600のL/D比を与える。より大きなまたはより小さな等価直径を有する二成分極細繊維は、所望のアスペクト比を維持するために、より長くすることができ、またはより短く切断することができる。
【0042】
本発明の二成分ポリマー極細繊維組成物によれば、シェル内のポリエチレングリコール(PEG)またはEVOHポリマーと組み合わせた第1の成分等の1つ以上の可塑剤は、本発明の二成分ポリマー極細繊維を形成するのに好適な第1の成分/第2の成分比で良好な紡糸性を可能にする。
【0043】
好適な可塑剤は、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール(PPG)等のポリアルキレングリコール、およびメトキシポリアルキレングリコールを含み、いずれも300~10,000、または好ましくは6000~9000の重量平均分子量MWを有する。好ましくは、本発明によれば、可塑剤は、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0044】
本発明の極細繊維を作製するために使用される二成分ポリマー極細繊維および組成物において、可塑剤は、EVOHまたは第1の成分の一部を構成する。可塑剤の好適な量は、第1の成分の紡糸を可能にするのに十分であるが、例えば、繊維を形成するために必要な押出機内の圧力上昇を防ぐほどではない量を含む。
【0045】
可塑剤の総量は、0.75~15重量%、または好ましくは1~10重量%、またはより好ましくは1.5~7.5重量%の範囲であり、全ての重量パーセントは二成分ポリマー極細繊維の第1の成分の総重量を基準とする。
【0046】
本発明の二成分ポリマー極細繊維の第1の成分によれば、第1の成分またはシェルのポリマーは、エチレン-ビニルアルコール(EVOH)ポリマーを含む。好適なEVOHポリマーは、酢酸ビニル部分が85%以上、または好ましくは97%以上、またはより好ましくは完全に加水分解されているエチレン酢酸ビニルポリマーを含み得る。
【0047】
第1の成分は、エチレン-ビニルアルコール(EVOH)繊維形成を保証するのに十分高い任意の分子量を有するEVOHポリマーを含むことができ、例えば、従来のビニルまたはスチレンポリマー標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される重量平均分子量(MW)は、50,000以上、または好ましくは70,000以上、および最大10,000,000である。これはワックスではない。
【0048】
第1の成分のエチレン-ビニルアルコール(EVOH)ポリマーは、EVOHポリマーの全固体重量を基準として32~48重量%のエチレン、好ましくは38~48モル%のエチレンを含み得る。エチレンの量が少なすぎると、EVOHポリマーは過度に水に敏感または吸収性が高くなり、コンクリートへの接着力が強すぎるが、一方コンクリートからの繊維剥離が望ましい故障モードである。エチレンの量が多すぎると、EVOHポリマーのコンクリートおよび第2成分のポリマーへの接着が損なわれる。
【0049】
本発明の二成分ポリマー極細繊維の第1の成分によれば、好適なEVOHポリマーは、好ましくは、ポリマーを作製するために使用される反応物の総重量を基準として32~48重量%のエチレンを含む。
【0050】
本発明の二成分ポリマー極細繊維の第1の成分またはシェルによるEVOHポリマーが、二成分ポリマー極細繊維を作製するために繊維形成を可能にするのに十分に流動することを保証するために、EVOHは、210℃、2.16Kg(ASTM D1238 13)で6.4~38g/10分のメルトフローレート(MFR)を有する。一般に、エチレン含有量が高いほど、MFRは低くなる。
【0051】
ビニルアルコール繰り返し単位を過剰に含むEVOHポリマーは、加工が難しく、繊維を伸ばすときに破損する可能性がある。好ましくは、本発明によるエチレン-ビニルアルコール(EVOH)ポリマーは、ポリマーを作製するために使用される反応物の総重量を基準として、30~48重量%のエチレン、例えば32~48重量%のエチレンを含み、85%以上加水分解された、または好ましくは97%以上、またはより好ましくは完全に加水分解された酢酸ビニル部分を有し、210℃、2.16Kg(ASTM D1238-13(2013))で6.4~38g/10分のメルトフローレート(MFR)を有する。そのような好適なEVOHポリマーは、ワックスではない。好適なEVOHポリマーの例には、エチレン含有量が48重量%であり、MFRが210℃、2.16Kgで6.1g/10分であるポリマー、エチレン含有量が44重量%であり、MFRが210℃、2.16Kgで12g/10分であるポリマー、およびエチレン含有量が32%であり、MFRが210℃、2.16Kgで21g/10分であるポリマーが含まれる。
【0052】
本発明による二成分ポリマー極細繊維は、最適な平均残留強度(ARS)結果を提供し、第2の成分またはコアとして、アミドポリマー、ポリエステルポリマー、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、またはポリオレフィン、好ましくはポリプロピレンおよびポリマーブレンド中の不飽和無水物でグラフトされたごく少量のポリオレフィン、またはより好ましくは無水マレイン酸でグラフトされたポリプロピレンのポリマーブレンドを含む。
【0053】
本発明の二成分ポリマー極細繊維の第2の成分またはコアによれば、これは、少なくとも1種のポリアミド、例えばポリヘキサメチルアジパミド、少なくとも1種のポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、または一方ではポリオレフィン、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、他方ではエチレン性不飽和無水物グラフト化PP、エチレン性不飽和無水物グラフト化ポリエチレン(PE)、例えば無水物修飾高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、無水物修飾線状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂、もしくは無水物修飾低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂から選択される無水物グラフト化ポリオレフィンのポリマーブレンド、または好ましくはポリマーブレンド、またはより好ましくはポリプロピレン(PP)およびエチレン性不飽和無水物グラフト化PP、またはさらにより好ましくは無水マレイン酸グラフト化PPを含む。
【0054】
本発明による第2の成分に使用するのに好適なポリオレフィンには、230℃および2.16Kg(ASTM D1238-13(2013))で12~24、または好ましくは15~21g/10分のメルトフローレート(MFR)を有するポリプロピレンが含まれる。低MFRポリオレフィンは、より高い温度で処理する必要がある。
【0055】
本発明の第2の成分のポリマーブレンドによる無水物グラフト化オレフィンポリマーの製造に使用するのに好適な無水物は、任意のエチレン性不飽和無水物、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、および無水フマル酸、好ましくは無水マレイン酸である。
【0056】
本発明による第2の成分のポリマーブレンドにおいて、グラフト化無水物ポリマーの量が少なすぎる場合、得られる極細繊維は、第1の成分のポリマーへの不十分な接着が問題となり、グラフト化無水物の量が多すぎる場合、第2の成分の繊維形成ポリマーは凝集性が高すぎて、一貫して極細繊維を形成することができず、また二成分ポリマー極細繊維生成物に不均一または一貫性なく分布する。
【0057】
本発明の二成分ポリマー極細繊維の第2の成分のポリマーブレンドによれば、グラフト化に使用されるエチレン性不飽和無水物は、0.01~0.3重量%、または好ましくは0.01~0.2重量%、例えば好ましくは0.02~0.15重量%の割合の不飽和無水物、例えば好ましくは0.02~0.08重量%、またはより好ましくは0.02~0.08重量%の量の無水マレイン酸、またはさらにより好ましくは0.05~0.08重量%の無水マレイン酸を含み、全ての量は第2の成分のポリマーブレンド固体の総重量を基準とする。
【0058】
本発明の二成分ポリマー極細繊維の第2の成分のポリマーブレンドによれば、ポリオレフィンは、ポリマーブレンド固体の総重量を基準として、80~99重量%、または好ましくは90~97重量%を構成し、グラフトポリマーはポリマーブレンドの残りを構成する。
【0059】
本発明の二成分ポリマー極細繊維によれば、第2の成分(コア)対第1の成分(シェル)の比は、55~95重量%対5~45重量%(もしくは95:5~55:54)、または好ましくは60~90重量%対10~40重量%(もしくは60:40~90:10)、またはより好ましくは70~85重量%対15~30重量%(もしくは70:30~85:15)であり、全ての重量は極細繊維固体の総重量を基準とする。本発明による第2の成分またはコアの好ましいポリマーブレンドにおいて、ポリマーブレンドは、ポリマーブレンド固体を基準として、1重量%~20重量%、または好ましくは3~10重量%の不飽和無水物グラフト化オレフィン、例えば無水マレイン酸でグラフト化されたポリプロピレン(PP-g-MAH)を含む。一例では、コアまたは第2の成分にPP-g-MAHを含まず、それによりPP(コア)およびEVOH(シェル)の二成分ポリマー極細繊維を含むコアシェル二成分ポリマー極細繊維は、適切に分散またはそれらを含む繊維セメントの延性を改善することができなかった。それらは、コアとシェルとの間の接着を示さなかった。
【0060】
別の態様では、本発明は、セメント繊維板を製造するのに有用な湿潤繊維セメント組成物を含む。本発明の繊維セメントによれば、湿潤組成物は、二成分ポリマーマイクロ繊維を含み、ユーカリまたは松材、石灰石または炭酸カルシウム、および必要に応じて増粘剤またはレオロジー調整剤等、脱水時に固体を保持するためのふるいとして、繊維セメントを形成するための材料、例えば、普通ポルトランドセメント等の水硬性セメント、セルロースまたはセルロース繊維の湿潤混合物をさらに含む。
【0061】
繊維板を製造するのに好適な本発明の繊維セメント組成物の乾燥固体によれば、組成物は、重量で0.15~3.0重量%、または好ましくは0.3~2.5重量%、またはより好ましくは0.5~2.2重量%の二成分ポリマー極細繊維固体を含む。水は、一般に、繊維板を製造するための湿潤混合物の2分の1~3分の2を構成する。したがって、繊維板を製造するのに好適な本発明の湿潤セメント組成物によれば、組成物は、重量で0.05~1.5重量%、または好ましくは0.1~1.25重量%、またはより好ましくは0.15~1.0重量%の二成分ポリマー極細繊維固体を含む。極細繊維が第2の成分の繊維よりも高密度のより多くのEVOHを含む場合、全極細繊維体積を一定に保つことができるように、より高い重量パーセントの極細繊維が必要となるであろう。したがって、本発明の二成分ポリマー極細繊維は、繊維セメント用途における極細繊維投入量を節約する。
【0062】
本発明の湿潤繊維セメント組成物によれば、例えば当技術分野で知られているもの等、コンクリートの形成に有用なさらに他の添加剤が添加されてもよい。例としては、流動化剤、減水剤、レオロジー調整剤、ヒュームシリカ、炉スラグ、空気導入体、腐食防止剤およびポリマーエマルジョン等が挙げられる。均質な繊維板生成物を保証するために、充填剤または添加剤は、重量平均粒子サイズが300ミクロン以下であるべきである。したがって、本発明による湿潤繊維セメント組成物は、300ミクロン以下の重量平均粒子サイズを有する材料から本質的になる。
【0063】
本発明によるさらに別の態様では、本発明による湿潤繊維セメント組成物を作製する方法は、水硬性セメントを本発明の二成分ポリマー極細繊維と少なくとも10秒~最大20分間混合して湿潤繊維セメント組成物を形成すること、および所望により加熱しながら硬化することを含む。好ましくは、混合時間は、少なくとも30秒、またはより好ましくは少なくとも1分~最大10分、または最も好ましくは1~5分である。
【0064】
本発明によるさらに別の態様では、二成分ポリマー極細繊維を形成する方法は、溶融紡糸または押出、湿式紡糸、または複合紡糸等の周知のプロセスを含む。プロセスが極細繊維を形成するために使用される材料を溶かし、その後プロセス中の極細繊維を破壊しない限り、任意の既知の繊維形成プロセスが有効である。処理において、繊維は、例えば、ダイを介した溶融押出によって繊維を成形することによって成形、形成、および延伸され、紡糸口金は、次いで張力をかけられて配置されたローラーのセットの周り等に長さ対直径または等価直径の指定のアスペクト比まで延伸され得る細長い繊維を形成する。好ましくは、二成分ポリマー極細繊維は、300~1000のアスペクト比まで延伸され得る。したがって、二成分ポリマー極細繊維中のより剛性の高い第1の成分の量は、二成分ポリマー極細繊維の総固体重量を基準として45重量%以下、または好ましくは10~40重量%、またはより好ましくは15~30重量%に制限されたままである。
【0065】
好ましくは、本発明によれば、方法は、第1の成分および第2の成分を共押出しすることを含み、ビニルアルコールポリマーおよび無水物、例えば無水マレイン酸(MAH)、グラフト化ポリオレフィンまたはポリプロピレンポリマーをブレンドすることを含まない。第1の成分および第2の成分のポリマーは、界面で反応して化学結合を形成し、それにより、極細繊維の第1の成分と第2の成分との間の層間接着を増加させる。
【0066】
第2の成分が第1の成分によるポリマーブレンドである場合、ポリマーブレンドを作製する方法は、共押出しの前にポリマーブレンドを構成するポリマーを混合して第2の成分を形成することを含むか、または第2の成分中のその量よりも多い無水物グラフト化ポリオレフィンをポリオレフィン共にマスターバッチ化してマスターバッチを形成し、続いてマスターバッチをポリオレフィンと溶融ブレンドして第2の成分の溶融物を形成することを含む。
【0067】
二成分ポリマー極細繊維は、例えば、コア/シースマイクロフィラメント極細繊維を含む、第2の成分のコアおよび第1の成分のシェルを有するいくつかの構成を有するように形成され得る。例えば、本発明の二成分ポリマー極細繊維は、所望の任意のサイズ、形状、または長さに押出すことができる。それらは、例えば、円筒形、十字形、三葉またはリボン状の断面等、所望の任意の形状に押出すことができる。それらの構成に関係なく、本発明の二成分ポリマー極細繊維は、繊維の外側部分に第1の成分を有する極細繊維として第2の成分および第1の成分の両方を収容する任意の形状の断面を有することができる。例えば、海上の島の構成を有する二成分ポリマー極細繊維において、丸い断面を有する二成分ポリマー極細繊維は、リボン断面を有する二成分ポリマー極細繊維よりも多くの第2の成分の島を収容することができる。
【0068】
コア/シェル二成分ポリマー極細繊維では、第2の成分が第1の成分に完全に囲まれている。コア/シェル極細繊維を生成する最も一般的な方法は、2つのポリマー成分の溶融物を別々に紡糸口金のオリフィスに非常に近い位置に導き、コア/シェル形態で同軸に押出す技術である。同心繊維の場合、第2の成分を供給するオリフィスは、紡糸オリフィス出口の中心にあり、コアポリマー流体の流動条件は、紡糸時に両方の成分の同心性を維持するように厳密に制御される。紡糸口金のオリフィスの変更により、極細繊維の断面内でコアまたは/およびシェルの様々な形状を得ることができる。
【0069】
コア/シース二成分繊維を生成するための他の方法は、米国特許第3,315,021号および同第3,316,336号に記載されている。
【0070】
実施例:以下の実施例は、本発明をそれらの実施例に限定することなく説明するために使用される。別段に示されない限り、全ての温度は周囲温度(21~23℃)であり、全ての圧力は1気圧である。
【0071】
以下の実施例1A、2および3に示される本発明の極細繊維、以下の実施例4の比較ポリマーブレンド極細繊維、および以下の実施例5の比較二成分ポリマーブレンド極細繊維は、溶融紡糸プロセスを介して押出し、形成および延伸された。このプロセスでは、示された全ての成分が押出機で溶融されるか、または、共押出の場合は2つの異なる押出機の各々で1つの成分が溶融され、1つの成分が流動するように設計されたプレートを備えたダイにポンプで送られるか、または2つ成分の場合、二成分コア/シェル構成の内側および外側の材料が溶融される。ダイの下流では、得られた繊維は所望のアスペクト比まで延伸された。装置は、185~200℃の温度プロファイル、800mpmの流通速度、および5.9デンデニールを有するHills,Inc.(フロリダ州ウェストメルボルン)押出機器を含み、押出機ダイは、共押出しの場合、第2の成分が直径0.25mmの丸形ダイを通って流動するように構成された。単一成分押出しでは、成分は直径0.25mmの丸形ダイを通って流動した。紡糸口金は、共押出機器の下流に配置された。
【0072】
共押出しでは、第1の成分は、丸形ダイの外径と一致する内径を有する環形状のダイを通して、第2の成分の周りで同軸に共押出しされた。次いで、紡糸された繊維は、約15ミクロンの平均直径を有する二成分ポリマー極細繊維を形成するように延伸され、第1の成分のシースは、1~2ミクロンの厚さの環を形成した。
【0073】
押出しでは、1つ成分が丸形ダイから押出され、次いで紡糸された繊維が平均直径約15ミクロンのポリマー極細繊維に延伸された。
【0074】
成分の比率は、以下の実施例に示されている。二成分ポリマー極細繊維の第1の成分および第2の成分の発明の割合は、第2の成分またはコア対第1の成分またはシェルの80/20比(w/w/)を有するコア/シェル二成分極細繊維を標的とするように選択された。第1の成分であるEVOHは、極細繊維に押出し、成形および延伸するのが非常に困難であった。したがって、以下の実施例に示されるポリエチレングリコールは第1の成分の溶融物に含まれ、二成分ポリマー極細繊維は、溶融紡糸プロセスによって生成された。押出し中、第1の成分の比率を可能な限り下げるために、第1の成分および第2の成分の量をプロセス中変化させた。可能であれば、第1の成分の割合を、二成分ポリマー極細繊維固体の総重量を基準として20重量%まで下げた。第1の成分の割合を20重量%まで下げることができなかった場合、二成分ポリマー極細繊維の第1の成分の示された割合は、極細繊維を形成するための延伸時に最終的な極細繊維が破損する前に得られた第1の成分の最低の割合であった。
【0075】
以下の実施例および比較例の全ての繊維は、600のL/D、15ミクロンの直径、および9mmの長さを有する。
【0076】
実施例で使用されている材料は次の通りである。
エチレンビニルアルコールコポリマーまたはEVOH:44モル%のエチレン含有量、12g/10分のメルトフローレート(MFR)(メルトインデックステスターで210℃、2.16kg)、23℃で1.14g/cm3の密度(Micromeritics Gas Pycnometer,Micromeritics Instrument Corp.、ジョージア州ノークロス)および164℃の融点(DSCの加熱および冷却速度10℃/分)(Soarus LLC、イリノイ州アーリントンハイツ)を有するSOARNOL(商標)A4412エチレンビニルアルコールコポリマー。
【0077】
ポリエチレングリコールまたはPEG:7000~9000のMW、密度1.07(g/cm3;70℃);融解熱41(Cal/g);オキシエチレン繰り返し単位の平均数181。
【0078】
無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレンまたはPP-G-MAH:0.7重量%からの無水マレイン酸含量、52g/10分(メルトインデックステスターで230℃、2.16Kg)のメルトフローレート(MFR)、および23℃で0.91g/cm3の密度を有するPOLYBOND(商標)3150無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン、(Addivant Corporation、コネチカット州ダンベリー)。様々なPP-g-MAH材料およびそれらのポリマーブレンドを、以下の表2Aおよび2Bに示す。
【0079】
ポリプロピレンまたはPP:230℃、2.16Kgで18g/10分のMFRを有するポリプロピレンD180MPP(Braskem USA、ペンシルベニア州フィラデルフィア)。160℃の融点MP(DSC)、0.905g/ccの密度、230℃、2.16Kgで18g/10分のMFRを有する。様々なPP材料およびそれらのポリマーブレンドを以下の表2に示す。
【0080】
ポリビニルアルコール(PVOH)極細繊維:中国安徽省巣湖にあるAnhui Wanwei Updated Hightech Material Industry Co.Ltd.の高強靭性および高弾性PVA繊維W1 6mm。PVOH繊維特性を以下の表1に示す。
【0081】
PP極細繊維:PPモノフィラメント1.10dtex×9mm(Saint Gobain do Brasil Produtos Ind.e para const.Ltda-Brasilit Cia.)。PP繊維特性を以下の表2Aに示す。
【0082】
MB2:以下の表2Bに示される組成物は、11個のバレルを有し、3mmの2穴ストランドタイプのダイを備えた26mmの二軸スクリュー押出機(44L/Dおよび30HP)での押出によって調製された。PPおよびPP-g-MAHの各々のペレットは、Ktron(商標)一軸スクリューフィーダー(Coperion GmbH、シュトゥットガルト、ドイツ)を使用して押出機に供給された。材料は、フィードスロート内の窒素ガスと共にメインフィードスロート(バレル#1)に供給された。ストランドを3.048メートルのウォーターバスに通し、Conairストランドカッター(Conair、コネチカット州スタンフォード)を使用してペレット化した。総供給速度は18.14Kg/時で、スクリュー速度は300RPMであった。温度設定値は、バレル#2のゾーン1で60℃、残りのゾーンで180℃であった。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0083】
試験方法:
試験方法:以下の試験方法を実施例の評価で使用した。示された二成分ポリマー極細繊維の各々の示された水性分散液を、水中での分散性について試験した。これとは別に、以下の例C1、C2、1A、2、3、4、および5に示されている2成分ポリマー極細繊維を、上記の方法でセメント繊維板にし、機械的特性を試験した。
【0084】
0.02gの示された二成分ポリマー極細繊維を1リットルのアルカリ水(pH=10~11、アンモニウムOH)中で3分間撹拌し、次いでそれを黒いポリエステル布(対照のため)を通して真空引き(200~300mmHg)することにより濾過して、分散性を評価した。次いで、溶液を多孔板濾紙(ワットマン、80g/cm2、直径10cm、Merck Millipore、マサチューセッツ州バーリントン)の上流、および暗色の布地(視覚的評価を可能にする)を有するブフナー漏斗に注いだ。水を除去した後、繊維によって形成されたパターンを評価して、それらの分散性を評価した。繊維の分散性は、次のような評価尺度で視覚的にランク付けした。
【0085】
グレード1:(完全に分散)極細繊維は濾紙の領域全体にわたり均一に分布しており、繊維は凝集していない。
グレード2:濾過試験後、極細繊維の5~10重量%が凝集している。
グレード3:濾過試験後、極細繊維の20~30重量%が凝集している。
グレード4:(分散性が悪い)極細繊維の大部分が凝集しており、濾紙の領域全体にわたり分布状態が悪い。
【0086】
分散性の結果を、以下の表3に報告する。
【0087】
機械的特性:セメント繊維板は、以下の各実施例に示されている方法で、二成分ポリマー極細繊維の湿潤組成物を使用して作製された。硬化期間が完了すると、繊維セメント板を切断し(160mm×40mm×5mm)、機械的特性をRILEM 49TFR:繊維強化セメントベースの複合材料の試験方法、フランス(1984)に従って評価した。具体的には、4つの鋼製の円筒形屈曲点に対し、5kgfロードセルを備えたINSTRON(商標)5565荷重試験機(Instron、マサチューセッツ州ノーウッド)、および5mm/分の負荷率を使用して示された繊維セメント板を引張試験することによって応力-ひずみ曲線を生成したが、ポイント間の上部距離は45mmであり、ポイント間の下部距離は135mmであり、2つはセメント繊維板の下のステージの中央に配置され、繊維板の幅40mmの下側の各エッジと同じ高さであり、また他の2つの屈曲点は、ロードセルが屈曲点の各ペアの間の中央にくるように、ステージの下に距離Lmm離して配置される。引張試験により、様々な機械的特性が導き出される応力-ひずみ曲線が生成された。機械的結果は、以下の表4に見出すことができる。
【0088】
応力-ひずみ曲線:示された例に従って作製された極細繊維含有セメント繊維板を、それらに発生する応力、荷重、または力を変化させ、各レベルの応力によって引き起こされるひずみを測定することによって機械的試験に供した。試験を使用して、応力-ひずみ曲線を作成した。引張強さ試験中の応力-ひずみ曲線から得られる。
【0089】
引張試験中に作成された応力-ひずみ曲線から得られたMORまたは破壊係数は、応力-ひずみ試験中に複合マトリックスによって支持される最大応力として報告され、試験中に達成された最大荷重を繊維板試験片の面積で除して計算される。MORは、以下の式1で与えられ、ランダムに選択された5つのセメント繊維板から報告された平均結果である。許容破壊係数は、少なくとも2.0MPa、または好ましくは少なくとも3.0MPaである。
【数1】
【0090】
式中、
F2は、最大印加荷重(N)である。
Lは、示されたセメント繊維板がその幅全体で2つの耐荷重ポイントに配置されている2つの低耐荷重ポイント間の最大距離(mm)であり、これらのポイントは、2つの低耐荷重ポイントによって支持されているより広い耐荷重部材の上部の中心にある。
bは、セメント繊維板の幅(mm)である。
dは、セメント繊維板の厚さ(mm)である。
【0091】
引張試験中に作成された応力-ひずみ曲線から得られる比例限界(LOP)は、応力-ひずみプロットの弾性変形に対応する領域であり、加えられた荷重に比例する。LOPは、荷重-ひずみ曲線が線形性から逸脱する荷重で計算されるが、これは、以下の式2の塑性変形レジームの開始点である。比例の許容限界は、少なくとも2.0MPa、または好ましくは少なくとも2.5MPaである。
【数2】
【0092】
式中、
F1は、LOPでの印加荷重(N)である。
Lは、示されたセメント繊維板がその幅全体で2つの耐荷重ポイントに配置されている2つの低耐荷重ポイント間の最大距離(mm)であり、これらのポイントは、2つの低耐荷重ポイントによって支持されているより広い耐荷重部材の上部の中心にある。
bは、試料の幅(mm)である。
dは、試料の厚さ(mm)である。
【0093】
曲げ変形試験中に作成された応力-ひずみ曲線から得られる弾性係数(MOE)またはヤング率は、弾性変形レジームにおける応力-ひずみ曲線の傾きとして計算される(Callister,D.W.,Rethwish G.D.,Materials Science and Engineering:An Introduction,8th ed.,John Wiley & Sons Inc.,chapter 6,p.157,2012を参照されたい)。
【0094】
MOEが高いほど、セメント繊維板の剛性が高くなり、弾性変形が小さくなるが、ここで応力は変形に比例する。許容可能な弾性率は、少なくとも2.5GPaである。
【0095】
曲げ変形試験中に作成された応力-ひずみ曲線から得られる比エネルギー(SE)は、応力-ひずみ試験中に吸収されるエネルギーとして定義され、曲線荷重対ひずみの下の面積の積分によって計算されるが、以下の式3を参照されたい。SE値が高いほど、繊維強化能力が高くなる。許容される特定のエネルギーは、少なくとも2.5kJ/m
2、または好ましくは少なくとも3.5kJ/m
2である。
【数3】
【0096】
式中、
吸収されたエネルギーは、上記のように計算される。
bは、試料の幅(mm)である。
dは、試料の厚さ(mm)である。
【0097】
比較例1(C1):ポリビニルアルコール(PVOH)極細繊維
参照標準として、PVOH極細繊維を用いてセメント繊維板を調製し、次いで評価した。普通ポルトランドセメント(64重量%)、石灰石(31.1重量%)、セルロース繊維(3重量%)およびPVOH繊維(1.9重量%)を水に分散させることにより、セメント繊維板を調製した。その後、成形チャンバを使用して脱水プロセスおよび真空(200~300mmHg)の適用により水を除去した。繊維セメント板を4層にキャストした。各層を3.2MPaで2分間プレスした。最後に、一方の層がもう一方の層の上に配置される。得られた板を最終的に3.2MPaで5分間プレスした。このプロセスは、Hatschekプロセスを大まかに模倣している。次いで、繊維セメント板をポリフッ化ビニリデンラップで「プラスチックシール」(ラップ)し、50℃のオーブンに24時間放置し、この期間後、セメント繊維板をオーブンから取り出し、室温で放置(6日/23±2℃)して硬化させた。硬化期間が完了すると、繊維セメント板を切断し(160mm×40mm×5mm)、機械的特性を評価した。
【0098】
比較例2(C2):ポリプロピレン(PP)極細繊維
別の参照標準であるセメント繊維板を、PP極細繊維を用いて調製した。セメント繊維板は、セメント(64重量%)、石灰石(31.1重量%)、セルロース繊維(3重量%)およびPP繊維(1.4重量%)を水に分散させることにより調製した。その後、成形チャンバを用いた脱水プロセスおよび真空(200~300mmHg)の適用により水を除去した。繊維セメント板を4層にキャストした。各層を3.2MPaで2分間プレスした。最後に、一方の層がもう一方の層の上に配置される。得られた板を最終的に3.2MPaで5分間プレスした。次いで、繊維セメント板をポリフッ化ビニリデンラップでラップし、50℃のオーブンに24時間放置し、この期間後、生成物をオーブンから取り出し、室温で放置(6日/23±2℃)して硬化させた。硬化期間が完了すると、繊維セメント板を切断し(160mm×40mm×5mm)、機械的特性を評価した。
【0099】
実施例1:PP+PP-g-MAHコア/EVOHシェル極細繊維
二成分ポリマー極細繊維(第2成分PP+PP-g-MAHおよび第1成分EVOH)比60/40を、上記に開示された溶融押出プロセスにおいて両方のポリマー成分を共押出しすることによって調製した。収集後、繊維を2.5倍にポストドローして、高いポリマー配向および最終的な強靭性を実現し、次いで分散試験のために連続フィラメントを長さ9mm、直径25ミクロン、360のL/Dに切断した。
【0100】
実施例1A:5重量%のシェルPEG可塑剤含有量のPP+PP-g-MAHコア/EVOHシェル極細繊維および1.9重量%の極細繊維を含むセメント繊維板
二成分ポリマー極細繊維(コアPP+PP-g-MAHとしての第2の成分、および第1の成分として、5重量%のPEGを含むEVOHの第1の成分)を、上で開示された溶融押出プロセスで両方のポリマー成分を共押出しすることによって調製した。収集後、繊維を4.5~5.0倍にポストドローして、高いポリマー配向および最終的な強靭性を実現し、繊維セメントの塗布試験のために連続フィラメントを長さ9mmおよび600のL/Dに切断した。普通ポルトランドセメント(64%)、石灰石(31.1%)、セルロース繊維(3%)およびPP+PP-g-MAH/EVOH繊維(1.9%)を水に分散させることにより、PP+PP-g-MAH/EVOHP繊維(1.9%)繊維を用いてセメント繊維板を調製した。その後、成形チャンバを用いた脱水プロセスおよび真空(200~300mmHg)の適用により水を除去した。繊維セメント板を4層にキャストした。各層を3.2MPaで2分間プレスした。最後に、一方の層がもう一方の層の上に配置される。得られた板を最終的に3.2MPaで5分間プレスした。次いで、繊維セメント板をポリフッ化ビニリデンラップでラップし、50℃のオーブンに24時間放置し、この期間後、セメント繊維板をオーブンから取り出し、室温で放置(6日/23±2℃)して硬化させた。硬化期間が完了すると、繊維セメント板を切断し(160mm×40mm×5mm)、それらの機械的特性を評価した。
【0101】
実施例2:5重量%のシェルPEG可塑剤含有量のPP+PP-g-MAHコア/EVOHシェル極細繊維および1.4重量%の極細繊維を含むセメント繊維板
本発明による二成分極細繊維(コアPP+PP-g-MAHとしての第2の成分、および第1の成分として、5重量%のPEGを含むEVOHの第1の成分)を、上で開示された溶融押出プロセスで両方のポリマー成分を共押出しすることによって調製した。収集後、繊維を4.5~5.0倍にポストドローして、高いポリマー配向および最終的な強靭性を実現し、繊維セメントの塗布試験のために連続フィラメントを長さ9mmおよび600のL/Dに切断した。普通ポルトランドセメント(64重量%)、石灰石(31.1重量%)、セルロース繊維(3重量%)およびPP+PP-g-MAH/EVOHP繊維(1.4重量%)を水に分散させることにより、セメント繊維板を調製した。その後、成形チャンバを用いた脱水プロセスおよび真空(200~300mmHg)の適用により水を除去した。繊維セメント板を4層にキャストした。各層を3.2MPaで2分間プレスした。最後に、一方の層がもう一方の層の上に配置される。得られた板を最終的に3.2MPaで5分間プレスした。次いで、繊維セメント板をポリフッ化ビニリデンラップでラップし、50℃のオーブンに24時間放置し、この後、生成物をオーブンから取り出し、室温で放置(6日/23±2℃)して硬化させた。硬化期間が完了すると、繊維セメント板を切断し(160mm×40mm×5mm)、それらの機械的特性を評価した。
【0102】
実施例3:2.5重量%のシェル可塑剤含有量のPP+PP-g-MAHコア/EVOH極細繊維0.5重量%および1.9重量%の極細繊維を含むセメント繊維板
本発明による二成分極細繊維(コアPP+PP-g-MAHとしての第2の成分、および第1の成分として、EVOH+PEG2.5重量%の第1の成分)を、上で開示された溶融押出プロセスで両方のポリマー成分を共押出しすることによって調製した。収集後、繊維を4.5~5.0倍にポストドローして、高いポリマー配向および最終的な強靭性を実現し、繊維セメントの塗布試験のために連続フィラメントを長さ9mmおよび600のL/Dに切断した。セメント(64重量%)、石灰石(31.1重量%)、セルロース繊維(3重量%)およびPP+PP-g-MAH/EVOHP繊維(1.9重量%)を水に分散させることにより、PP+PP-g-MAH/EVOHP極細繊維(1.9重量%)を用いて繊維セメント複合材を調製した。その後、成形チャンバを用いた脱水プロセスおよび真空(200~300mmHg)により水を除去した。繊維セメント板を4層にキャストした。各層を3.2MPaで2分間プレスした。最後に、一方の層がもう一方の層の上に配置される。得られた板を最終的に3.2MPaで5分間プレスした。次いで、繊維セメント板をポリフッ化ビニリデンラップでラップし、50℃のオーブンに24時間放置し、この期間後、生成物をオーブンから取り出し、室温で放置(6日/23±2℃)して硬化させた。硬化期間が完了すると、繊維セメント板を切断し(160mm×40mm×5mm)、それらの機械的特性を評価した。
【0103】
比較例4:PP/PP-g-MAHポリマーブレンド極細繊維
本発明のコアPPおよびシェル(PP-g-MAH)による二成分極細繊維を、上で開示された溶融押出プロセスで両方のポリマー成分を共押出しすることによって調製した。収集後、繊維を4.5~5.0倍にポストドローして、高いポリマー配向および最終的な強靭性を実現し、繊維セメントの塗布試験のために連続フィラメントを長さ9mmおよび600のL/Dに切断した。セメント(64重量%)、石灰石(31.1重量%)、セルロース繊維(3重量%)およびPP/PP-g-MAH繊維(1.4重量%)を水に分散させることにより、セメント繊維板を調製した。その後、成形チャンバを用いた脱水プロセスおよび真空(200~300mmHg)の適用により水を除去した。繊維セメント板を4層にキャストした。各層を3.2MPaで2分間プレスした。最後に、一方の層がもう一方の層の上に配置される。得られた板を最終的に3.2MPaで5分間プレスした。次いで、繊維セメント板をポリフッ化ビニリデンラップでラップし、50℃のオーブンに24時間放置し、この期間後、生成物をオーブンから取り出し、室温で放置(6日/23±2℃)して硬化させた。硬化期間が完了すると、繊維セメント板を切断し(160mm×40mm×5mm)、それらの機械的特性を評価した。
【0104】
比較例3:1.9%の極細繊維を含むPP+PP-g-MAH/EVOH(可塑剤なし)繊維セメント板
本発明による二成分極細繊維(コアPPおよびシェル(PP-g-MAH)を、上で開示された溶融押出プロセスで両方のポリマー成分を共押出しすることによって調製した。収集後、繊維を2.5倍にポストドローして、高いポリマー配向および最終的な強靭性を実現し、次いで分散試験のために連続フィラメントを長さ9mmおよび最終直径24.1ミクロン、370のL/Dに切断した。セメント(64重量%)、石灰石(31.1重量%)、セルロース繊維(3重量%)およびPP/PP-g-MAH繊維(1.9重量%)を水に分散させることにより、セメント繊維板を調製した。その後、成形チャンバを用いた脱水プロセスおよび真空(200~300mmHg)の適用により水を除去した。繊維セメント板を4層にキャストした。各層を3.2MPaで2分間プレスした。最後に、一方の層がもう一方の層の上に配置される。得られた板を最終的に3.2MPaで5分間プレスした。次いで、繊維セメント板をポリフッ化ビニリデンラップでラップし、50℃のオーブンに24時間放置し、この期間後、生成物をオーブンから取り出し、室温で放置(6日/23±2℃)して硬化させた。硬化期間が完了すると、繊維セメント板を切断し(160mm×40mm×5mm)、それらの機械的特性を評価した。
【表5】
【0105】
上記の表3に示されるように、実施例1の本発明の二成分極細繊維は、比較例1のPVOH極細繊維と同じ優れた水中分散性を示し、比較例2のPP極細繊維よりも劇的に優れている。
【表6】
【0106】
上記の表4に示されるように、実施例1A、2および3の本発明の二成分ポリマー極細繊維は、比較例C1、C2および4のポリマー極細繊維が示したように、良好な機械的特性を示した。実施例1A、2および3の本発明の二成分ポリマー極細繊維の機械的特性は、それらが比較二成分ポリマー極細繊維よりもコアの第2の成分の割合が高いため、比較例5の二成分ポリマー極細繊維と比較して優れた機械的特性を示した。さらに、実施例1A、2および3の本発明の二成分ポリマー極細繊維は、二成分ポリマー極細繊維固体の50重量%未満のEVOHレベルで処理することができず、不十分な延性をもたらした比較例5のものとは異なり、優れた加工性および紡糸性を示した。さらに、実施例2の本発明の二成分ポリマー極細繊維は、第1の成分を含まない比較例4の同じポリマー極細繊維と比較して、改善された機械的特性を示した。EVOHシースを有する極細繊維を製造することができるとは予想されず、ましてやEVOHを含まない同じ極細繊維よりも優れた機械的特性を有する二成分ポリマー極細繊維を製造することができるとは予想されていなかった。
【国際調査報告】