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特表2022-527601キャリパ本体とそれを備えたブレーキキャリパ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-02
(54)【発明の名称】キャリパ本体とそれを備えたブレーキキャリパ
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/02 20060101AFI20220526BHJP
   F16D 55/228 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
F16D65/02 C
F16D55/228
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559980
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(85)【翻訳文提出日】2021-11-09
(86)【国際出願番号】 IB2020052810
(87)【国際公開番号】W WO2020208453
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】102019000005672
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521259127
【氏名又は名称】ブレンボ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】BREMBO S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】ミラネージ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】バラーレ,ピエトロ
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA66
3J058AA69
3J058AA77
3J058AA84
3J058BA46
3J058BA68
3J058CC23
3J058CC25
3J058DD11
3J058EA08
3J058EA13
3J058EA28
(57)【要約】
本発明は、乗物にブレーキ動作を加えるために、ブレーキディスク(4)を跨いで配置された、ディスクブレーキ(3)のブレーキキャリパ(2)のキャリパ本体(1)に関し、キャリパ本体は、
スラスト装置又は作動装置(6)を支持する及び/又はブレーキパッド(7)を支持するための支持部材又は支持部(5)、又は、前記キャリパ本体(1)を前記キャリパの支持部に取り付けるためのキャリパ本体(8)の少なくとも一つの取付部材、供給パイプ(9)及び/又は前記スラスト装置(6)を供給するためのピストンハウジング(16)を支持するための支持部材又は支持部(5)であって、前記支持部(5)と前記供給パイプ(9)は、高い圧力に耐えることができる第1の材料で作られている、前記支持部材又は支持部(5)と、
前記支持部(5)と前記供給パイプ(9)の少なくとも一部を組み込むために適した第2の材料で作られており、前記支持部(5)と前記供給パイプ(9)から受けるストレスを分散することができる複雑な幾何学形状を有する形を有する、少なくとも一つの内側本体部(10)とを有し、
前記少なくとも一つの内側本体部(10)は、前記ブレーキディスク(4)の第1ブレーキ面(12)に対向するように構成された第1乗物側伸長部(11)と、前記第1ブレーキ面(12)の反対側にある前記ブレーキディスク(4)の第2ブレーキ面(14)に対向するように構成された第2車輪側伸張部材(13)を形成しており、
前記キャリパ本体(1)はさらに、機械的抵抗力を有する補強を形成するために適した第3の材料で作られた少なくとも一つの外側本体部(15)を有し、
前記支持部(5)と前記供給パイプ(9)は、前記少なくとも一つの内側本体部(10)に少なくとも一部が埋め込まれており、
前記内側本体部(10)は、前記少なくとも一つの外側本体部(15)によって囲まれて取り巻かれている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物にブレーキ動作を加えるために、ブレーキディスク(4)を跨いで配置された、ディスクブレーキ(3)のブレーキキャリパ(2)のキャリパ本体(1)であって、前記キャリパ本体は、
スラスト装置又は作動装置(6)を支持する及び/又はブレーキパッド(7)を支持するための支持部材又は支持部(5)、又は、前記キャリパ本体(1)を前記キャリパの支持部に取り付けるためのキャリパ本体(8)の少なくとも一つの取付部材、供給パイプ(9)及び/又は前記スラスト装置(6)を供給するためのピストンハウジング(16)を支持するための支持部材又は支持部(5)であって、前記支持部(5)と前記供給パイプ(9)は、高い圧力に耐えることができる第1の材料で作られている、前記支持部材又は支持部(5)と、
前記支持部(5)と前記供給パイプ(9)の少なくとも一部を組み込むために適した第2の材料で作られており、前記支持部(5)と前記供給パイプ(9)から受けるストレスを分散することができる複雑な幾何学形状を有する形を有する、少なくとも一つの内側本体部(10)とを有し、
前記少なくとも一つの内側本体部(10)は、前記ブレーキディスク(4)の第1ブレーキ面(12)に対向するように構成された第1乗物側伸長部(11)と、前記第1ブレーキ面(12)の反対側にある前記ブレーキディスク(4)の第2ブレーキ面(14)に対向するように構成された第2車輪側伸張部材(13)を形成しており、
前記キャリパ本体(1)はさらに、機械抵抗力を有する補強を形成するために適した第3の材料で作られた少なくとも一つの外側本体部(15)を有し、
前記支持部(5)と前記供給パイプ(9)は、前記少なくとも一つの内側本体部(10)に少なくとも一部が埋め込まれており、
前記内側本体部(10)は、前記少なくとも一つの外側本体部(15)によって囲まれて取り巻かれている、前記キャリパ本体。
【請求項2】
前記少なくとも一つの外側本体部(15)は、一つの部品として作られた単一の外側本体部であり、及び/又は
前記少なくとも一つの本体部(15)は、前記少なくとも一つの内側本体部(10)の上に付加されており、及び/又は
前記少なくとも一つの外側本体部(15)は、前記少なくとも一つの内側本体部(10)に一体成形されており、及び/又は
前記少なくとも一つの外側本体部(15)は、前記少なくとも一つの内側本体部(10)をほぼ完全に覆っている、請求項1のキャリパ本体。
【請求項3】
前記少なくとも一つの外側本体部(15)は、埋め込まれた補強繊維を有するポリマー基材で作られており、及び/又は
前記補強繊維は、長い補強繊維であって、異方性の機械的特性を備えた前記少なくとも一つの外側本体部(15)を得るために、及び/又は、前記補強繊維の方向に大きな機械的特性を備えた前記少なくとも一つの外側本体部(15)を得るために、前記少なくとも一つの外側本体部(15)の形状に沿って制御された状態で配置されており、及び/又は
前記長い補強繊維の長さは、前記一つの外側本体部(15)の軸方向長さの少なくとも1/3又は2/3若しくは全長を覆うために十分な長さであり、及び/又は
前記細長い補強繊維の長さは、前記少なくとも一つの外側本体部(15)の周方向に、該周方向長さの少なくとも1/3又は2/3若しくは全長を覆うために十分な長さであり、及び/又は
前記少なくとも一つの外側本体部(15)は、少なくとも摂氏200度、例えば少なくとも摂氏230度の耐熱性を有す熱可塑性又は熱硬化性の材料基材で作られ、前記補強繊維が埋め込まれており、及び/又は
前記熱可塑性又は熱硬化性の材料基材は、好ましくはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンスルファイド(PPS)、ポリアミド46(PA46)、ポリフタルアミド(PPA)から選択された一つ又は複数の材料を有し、及び/又は
前記補強された熱可塑性材料又は熱硬化性材料のカーボンファイバは、少なくとも一つ又は複数の選択されたB28、好ましくは、高い引張強さの繊維(HTファイバ)、中間モジュールファイバ(IMファイバ)、高モジュールファイバ(HMファイバ)から選択された一つ又は複数のファイバを含む、請求項1又は2のキャリパ本体。
【請求項4】
前記少なくとも一つの内側本体部(10)は、一つの部品として作られた単一の内側部であり、及び/又は
前記少なくとも一つの内側本体部(10)は、前記支持部(5)と前記供給パイプ(9)の上に一体成形されており、及び/又は
前記支持部(5)と前記供給パイプ(9)は、前記少なくとも一つの内側本体部(10)の部分の成形時にコアとして利用され、及び/又は
前記内側本体部(10)は、補強繊維が埋め込まれたポリマー基材で作られており、及び/又は
前記補強繊維は、実質的に等方性の機械的特性を有する前記少なくとも一つの内側本体部(10)を得るために、前記基材の中にランダムに配向された短い補強繊維であり、及び/又は
前記少なくとも一つの内側本体部(10)は、射出成形又は低圧樹脂射出成形若しくはRTMに適した材料で作られており、及び/又は
前記少なくとも一つの内側本体部(10)は、前記支持部(5)と前記供給パイプ(9からストレスを受けて、前記ストレスを前記少なくとも一つの外側本体部(15)に広く分散して伝達するために適した材料で作られている、請求項1~3のいずれかのキャリパ本体。
【請求項5】
前記支持部(5)は、ブレーキディスク(4)の前記ブレーキ面(12,14)に対する前記ブレーキパッド(7)のスラスト装置(6)を収容する少なくとも一つの筒部(16)を有し、及び/又は
前記支持部(5)は、電気機械式スラスト装置を収容する部屋の壁を有し、及び/又は
前記供給パイプ(9)は、ブレーキ流体を供給するパイプを有し、及び/又は
前記供給パイプ(9)は、電気機械式装置の接続用及び電力用配線を収容するパイプであり、及び/又は
前記支持部(5)は、前記少なくとも一つの内側本体部(10)に完全に埋め込まれており、及び/又は
前記支持部(5)は、前記支持部(10)の少なくとも一つの壁の少なくとも一つの表面が見えるように、すなわち、前記少なくとも一つの内側本体部(10)の前記外面と面一に、前記少なくとも一つの内側本体部(10)に埋め込まれており、及び/又は
前記供給パイプ(9は、前記少なくとも一つの内側本体部(10)に完全に埋め込まれており、及び/又は、
前記供給パイプ(9)は、前記キャリパ本体(1)を前記ブレーキキャリパ(2)の外側の別の部材に接続するためにアクセス可能な別のパイプに接続するために、パイプ接続部(17)を残して、前記少なくとも一つの内側本体部(10)に埋め込まれている、請求項1~4のいずれかのキャリパ本体。
【請求項6】
前記支持部(5)は、ブレーキディスク(4)の前記ブレーキ面(12,14)に対する前記ブレーキパッド(7)のスラスト装置(6)を収容する少なくとも一つの筒部(16)を有し、及び/又は
前記支持部(5)は、電気機械式スラスト装置を収容するための部屋の壁を有し、及び/又は
前記供給パイプ(9)は、ブレーキ液を供給するパイプを有し、及び/又は
前記供給パイプ(9)は、電気機械式装置の接続用及び電力用の配線を収容するパイプであり、及び/又は
前記支持部(5)は、前記少なくとも一つの内側本体部(10)に完全に埋め込まれおり、及び/又は
前記支持部(5)は、前記支持部(10)の少なくとも一つの壁の少なくとも一つの表面が見えるように、すなわち、前記少なくとも一つの内側本体部(10)の前記外面と面一に、前記少なくとも一つの内側本体部(10)に埋め込まれており、及び/又は
前記供給パイプ(9)は、前記少なくとも一つの内側本体部(10)に完全に埋め込まれており、及び/又は
前記供給パイプは、前記供給パイプ(9)は、前記キャリパ本体(1)を前記ブレーキキャリパ(2)の外側の別の部材に接続するためにアクセス可能な別のパイプに接続するために、パイプ接続部(17)を残して、前記少なくとも一つの内側本体部(10)に埋め込まれている、請求項1~5のいずれかのキャリパ本体。
【請求項7】
前記支持部(5)はパッド支持装置(18)を有し、前記パッド支持装置(18)は、前記少なくとも一つの内側本体部(10)の外側に留まり、前記ブレーキパッド(7)を受けて支持するために前記ブレーキパッド(7)に対向するように構成されたパッド支持面を有し、
前記支持部(5)は、前記キャリパ本体(1)をキャリパ支持部、例えば乗物のスタブ車軸又は乗物のサスペンション若しくはモータサイクルのフォークに接続するための取付部材又は接続部材(19)を有する、請求項1~6のいずれかのキャリパ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のキャリパ本体(1)を有するブレーキキャリパ(2)。
【請求項9】
キャリパ本体(1)を製造する方法であって、
支持部(5)と供給パイプ(9)を提供する工程と、
少なくとも一つの内側本体部(10)を前記支持部(5)と前記供給パイプ(9)の上に一体成形する工程と、
少なくとも一つの外側本体部(15)を前記キャリパ内側本体部(10)に付加する又は一体成形する工程、を含む方法。
【請求項10】
前記支持部(5)と前記供給パイプ(9)がコアとして挿入されている成形型に前記少なくとも一つの内側本体部(10)を射出成形する工程を有し、
支持部(5)と供給パイプ(9)をコアとして含み、前記少なくとも一つの内側本体部(10)が挿入されている成形型に、前記少なくとも一つの外側本体部(15)を一体成形する工程を有し、及び/又は
前記一体成形する工程は、
支持部(5)と供給パイプ(9)とピストンハウジング(16)を提供する工程と、
少なくとも一つの内側本体部(10)を前記支持部(5)、前記供給パイプ(9)及び前記ピストンハウジング(16)の上に一体成形する工程と、
少なくとも一つの外側本体部(15)を前記キャリパ内側本体部(10)に付加する又は一体成形する工程、を備えた請求項10の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキのキャリパ本体、ディスクブレーキ、及びキャリパ本体を製造する方法に関する。
【0002】
ディスクブレーキアセンブリについて以下に説明する。ディスクの回転軸が、符号X-Xで示されており、これが軸方向を定義する。軸方向は、ブレーキディスクの回転軸に平行な任意の方向A-Aを意味する。径方向はまた、回転軸X-Xに直交しそれに入射するすべての方向を意味する。さらに、周方向は、軸方向と径方向に対して直交する円周方向を意味する。これとは別に、接線方向T-Tは、まさに軸方向A-Aと径方向R-Rに直交する方向を意味する。
【背景技術】
【0003】
乗物のブレーキキャリパ、特にディスクブレーキのブレーキキャリパは、ブレーキディスクの外周縁を跨いで配置される。通常、ブレーキキャリパは、側部と呼ばれる二つの細長い要素を有する本体を有する。これら側部は、ディスクの両ブレーキ面に対向するように配置される。摩擦パッドは、キャリパの各側部とブレーキディスクのブレーキ面との間に設けられる。キャリパ本体の両側部の少なくとも一方は、ピストンを収容するように構成された円筒部を有する。これらの円筒部は、公知の適当な手法(例えば、油圧ピストン又は電動ピストン)によって作動され、パッドにスラスト動作を発揮して、パッドをディスクのブレーキ面に当接し、乗物にブレーキ動作を加える。
【0004】
通常、ブレーキキャリパは、乗物に固定された支持構造(例えば、乗物のサスペンションのスタブ軸)に拘束されている。
【0005】
一般的な構成では、二つの側部の一方は、キャリパ本体を支持構造に取り付けるために2つ又はそれ以上の部分を有する。その支持構造は、例えば、キャリパの支持部に設けたねじ穴に収容されたキャリパをその端部で固定するためのねじを受けるように構成された輪状部又は小孔(例えば、軸方向に配置された小穴又は例えば径方向に配置された貫通孔)を設けることによって、提供される。
【0006】
そのような側部は、側部取付部又は乗物側伸長部と呼ばれる。
【0007】
別の部分は、側部非取付部又は車両側伸長部と呼ばれる。
【0008】
キャリパ本体の一般的な構造において、ディスクのブレーキ面に対向する側部は、ブリッジと呼ばれる、ディスクを跨いで配置されたブリッジ要素によって互いに連結される。
【0009】
一般に、キャリパ本体は、まれに鋼で作られるが、主にアルミニウムで作られる。
【0010】
そのような材料は、ストレスに対する抵抗と剛性に関して満足のいくものであるが、アルミニウムや鋼のキャリパ本体は重量が大きい。
【0011】
周知のとおり、重量の大きいキャリパ本体は、色々な理由から大きな問題がある。とりわけ、そのような大きな重量が加わる乗物の性能、ブレーキ効率、大きなストレスに問題があり、それにより大きな支持されない質量が乗物のサスペンションに発生する。
【0012】
十分な剛性とストレスに対する抵抗性に加えて、軽量のキャリパ本体を得るために、種々の解決策が研究されてきた。
【0013】
例えば、英国特許出願GB2087490号は、鋼又はチタンのインサートを有する、アルミニウムで作られたディスクブレーキキャリパを開示している。
【0014】
ドイツ公開特許出願DE19647999号は、金属母材を有する複合材料で作られた補強を備えたアルミニウムキャリパを開示している。
【0015】
欧州特許EP0725697号は、ブリッジとアームの外側部分をモールドするキャリパ製造方法を開示しており、そこでは鉄合金のインサートが使用されている。
【0016】
米国特許出願公開公報US2010/0038190号は、軽量金属又は軽量金属合金を成形することによって得られたキャリパを開示しており、それは鉄又は鉄合金で作られた構造を備えている。
【0017】
その他の公知の解決策は、キャリパ本体に埋め込まれた複合材料の補強材又はそれに関連したものを例えば外側に設けることである。これらの解決策は、例えば米国特許出願公開公報US2002/086165号、米国特許出願公開公報US2010/038190号、ドイツ特許第19647999号、英国特許第2087490号及び英国特許第2176725号に開示されている。
【0018】
これらの技術は所望の機械的抵抗と剛性を達成するものであるが、上述の公知の解決策は重量の軽減という点で満足できるものでない。
【0019】
キャリパ本体の全体部分を合成材料で作る解決策が、例えばWO2012/153355号で知られている。しかし、この公知の解決策では、十分に強く、且つ、キャリパの動作、取付及びストレス軽減部品の複雑な形状に適応できる部品を得ることができない。また、この公知の解決策では、例えばブレーキ流体とそのためのブレーキ動作によってキャリパが電気機械的に動作されたときに高い圧力又は締付力のストレスを受けた場合、キャリパ本体の変形を軽減することもできない。
【0020】
したがって、十分に軽く、機械的な抵抗と構造上の剛性が大きなディスクブレーキ用のキャリパ本体を提供する必要性が強く感じられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
これらの目的及びその他の目的が、請求項1に係るキャリパ本体、請求項8に係るブレーキキャリパ、及び請求項9に係るキャリパ本体を製造する方法によって達成される。
【0022】
いつかの有利な実施形態は従属請求項の主題である。
【0023】
本解決策の解析から、如何にして提案する解決策によって乗物の主要非懸架質量の一つであるキャリパの重量が減少するかということが明らかになった。
【0024】
重量が減少すると、その結果として乗物の排出物が減少する。
【0025】
高弾性モジュールの材料を採用したことにより、剛性が増加し、それに伴ってブレーキ流体の吸引が減少する。また、(流体を使用しないキャリパの場合)作動時におけるキャリパ本体の変形が減少する。
【0026】
さらに、固有緩衝材料を採用することにより、快適性が増す。
【0027】
「多層」の解決策(内側本体の一部と、内側本体に関連する又はそれとの間に一体成形される外側本体の一部を備えた解決策)により、内側「軸受部」が得られる。これにより、力に対する抵抗力が増し、損傷が減り、安全性が向上し、クラックや欠陥の発生を防ぐフロント部を形成し、長時間にわたる部品の機能性を保持する。
【0028】
提案の解決策は同時に、十分に強く、しかもキャリパ(内側キャリパ部を備えたキャリパ)の作動部材・取付部材・ストレス軽減部材の複雑な形状に十分適合するとともに、(高弾性モジュールを備えたもの、外側キャリパ部を備えたものは)剛性が高く抵抗性があるため、例えばブレーキ流体及びブレーキ動作による高い圧力のストレスを受けた場合でも、キャリパ本体の全変形が減少する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の特徴と利点は、添付図面を参照した、好適で且つ非限定的な実施形態の以下の説明から明らかになる。
【0030】
図1図1は、WO2012/153355号の教示に係る、背景技術で説明した解決策の斜視図を示す。
図2図2は、本発明に係るキャリパ本体の斜視図を示す。
図3図3は、図2のキャリパを外側から内側に向かって斜めに見た分解斜視図を示す。
図4図4は、図2のキャリパを内側から外側に向かって斜めに見た分解斜視図を示す。
図5図5は、シリンダと流体供給パイプによって形成されたコア、パッド当接部材、キャリパをスタブ軸に取り付ける部材にポリマーを射出する工程を示す図を示す。
図6図6は、内側キャリパ部を囲む外側キャリパ部を一緒に成形する工程を示す。
図7図7は、図2のキャリパ本体を有するブレーキキャリパを一方から見た斜視図を示す。
図8図8は、図2のキャリパ本体を有するブレーキキャリパを反対から見た斜視図を示す。
図9図9は、図7,8に示すブレーキキャリパを有するブレーキディスクの斜視図を示す。
【好ましい実施形態の説明】
【0031】
一般的な実施形態において、ディスクブレーキ3におけるブレーキキャリパ2のキャリパ本体1は、乗物にブレーキ動作を加えるために、ブレーキディスク4を跨ぐように配置されるように構成されている。
【0032】
キャリパ本体1は、支持部材、すなわち支持部5として簡単に示された支持部材を有する。支持部材は、例えばスラスト装置又は作動装置6及び/又は支持ブレーキパッド7を支持する、及び/又はキャリパ本体1をキャリパの支持部に取り付けるとともに液体又は電気を供給する供給パイプ9をスラスト装置6に取り付けるために、キャリパ本体8の少なくとも一つの取付部材を支持する。
【0033】
支持部5と供給パイプ9、例えばピストンを収容する円筒部16は、高圧に耐える第1の材料で作られている。
【0034】
キャリパ本体1は、少なくとも一つの内側本体部10を有する。内側本体部10は、その中に支持部5と供給パイプ9の少なくとも一部を組み込むように、また、支持部5と供給パイプ9から受けるストレスを分散できる複雑な幾何学形状を得るように構成された第2の材料で作られている。
【0035】
少なくとも一つの内側本体部10は、ブレーキディスク4の第1ブレーキ面12に対向するように配置された第1の乗物側伸長部11と、第1ブレーキ面12の反対側でブレーキディスク4の第2ブレーキ面14に対向するように配置された第2の車輪側伸長部13を形成している。
【0036】
実施形態によれば、少なくとも一つの内側本体部10は、ブレーキディスク4を跨いで配置され、第1の乗物側伸長部11を第2の車輪側伸長部13と連結する少なくとも一つのブリッジ部20を形成している。
【0037】
キャリパ本体1は、機械的な抵抗力を有する補強部を形成するように構成された第3の材料で作られた少なくとも一つの外側本体部15を有することが好都合である。
【0038】
支持部5と供給パイプ9は、少なくとも一部が上述した少なくとも一つの内側本体部10に埋め込まれることがさらに好都合である。
【0039】
内側本体部10は、上述した少なくとも一つの外側本体部15によって囲まれて取り巻かれる。
【0040】
実施形態によれば、上述の少なくとも一つの外側本体部15は、一つの部品で作られた単一の外側本体部である。
【0041】
実施形態によれば、上述の少なくとも一つの外側部15は、上述の少なくとも一つの内側本体部10の上に当てられる。
【0042】
実施形態によれば、上述の少なくとも一つの外側本体部15は、上述の少なくとも一つの内側本体部10の上に一緒に成形される。
【0043】
実施形態によれば、上述の少なくとも一つの外側本体部15は、上述の少なくとも一つの内側本体部10を実質的に完全に覆う。
【0044】
実施形態によれば、上述の少なくとも一つの外側本体部15は、補強繊維が埋め込まれたポリマー基材で作られる。
【0045】
実施形態によれば、補強繊維は、異方性の機械特性を持った上述の少なくなくとも一つの外側本体部15を得るために、及び/又は、繊維方向(使用中に主要ストレスが働く方向)により大きな機械的特性を備えた少なくとも一つの外側本体部15を得るために、上述の少なくとも一つの外側本体部15の形状に沿って管理された状態で配置された長い補強繊維である。
【0046】
実施形態によれば、長繊維の長さは、少なくとも一つの外側本体部15の軸方向の全長又はその1/3から2/3を十分に覆う長さである。
【0047】
実施形態によれば、長繊維の長さは、少なくとも一つの外側本体部15の周方向の全長又はその1/3から2/3を十分に覆う長さである。
【0048】
実施形態によれば、少なくとも一つの外側本体部15は、補強繊維が埋め込まれた、少なくとも摂氏200度、例えば少なくとも摂氏230度の温度抵抗性を有する熱可塑性又は熱硬化性材料の基材で作られる。
【0049】
実施形態によれば、熱可塑性又は熱硬化性の材料は、少なくとも一つまたはそれ以上の選択された材料、好ましくは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンスルファイド(PPS)、ポリアミド46(PA46)、ポリフタルアミド(PPA)の少なくとも一つを含む。
【0050】
実施形態によれば、上述の補強熱可塑性材料又は補強熱硬化性材料は、高い引張強さの繊維(HTファイバ)、中間モジュールファイバ(IMファイバ)、高モジュールファイバ(HMファイバ)等から選択された一つ又は複数のファイバを含む。
【0051】
実施形態によれば、上述の少なくとも一つの内側本体部10は、一つの部材に作られた単一の内側本体部である。
【0052】
実施形態によれば、上述の少なくとも一つの内側本体部10は、支持部5と供給パイプ9の上に一緒に成形されている。
【0053】
実施形態によれば、上述の支持部5と供給パイプ9は、上述の一つの内側本体部10の部分の成形時にコアとして使用される。
【0054】
実施形態によれば、上述の一つの内側本体部10は、埋め込まれた補強繊維を備えたポリマー基材で作られている。
【0055】
実施形態によれば、上述の補強繊維は、実質的に異方性の機械的特性を備えた上述の少なくとも一つの本体10を得るために、上述の基材の中にランダムに配向されて配置された短い補強繊維である。
【0056】
実施形態によれば、上述の一つの内側本体部10は、射出成形、低圧樹脂射出成形、又はRTMに適合した材料で作られている。
【0057】
実施形態によれば、上述の少なくとも一つの内側本体部10は、支持部5と供給パイプ9からのストレスを受けるのに適した材料、また、そのストレスを上述の少なくとも一つの外側本体部15の大きな表面に分散することによって伝達するのに適した材料で作られている。
【0058】
実施形態によれば、上述の支持部5は、ブレーキパッド7のスラスト装置6をブレーキディスク4のブレーキ面12,14に対して収容する少なくとも一つの円筒部16を有する。
【0059】
実施形態によれば、支持部5は、電気機械式スラスト装置を収容する部屋の壁を有する。
【0060】
実施形態によれば、上述の供給パイプ9は、ブレーキ流体を供給するパイプを有する。
【0061】
実施形態によれば、上述の供給パイプ9は、電気機械装置の接続用及び電力用の配線を収容するパイプである。
【0062】
実施形態によれば、上述の支持部5は、上述の少なくとも一つの内側本体部10に完全に埋め込まれている。
【0063】
実施形態によれば、上述の支持部5は、上述の支持部10の少なくとも一つの壁の少なくとも一つの表面が見える状態(例えば、少なくとも一つの内側本体部19の外面と面一の状態)で上述の少なくとも一つの内側本体部10に埋め込まれている。
【0064】
実施形態によれば、上述の供給パイプ9は、上述の少なくとも一つの内側本体部10の中に完全に埋め込まれている。
【0065】
上述の実施形態において、上述の供給パイプ9は、キャリパ本体1をブレーキキャリパ2の外側の供給パイプに接続する際にアクセスできる別の供給パイプに接続するために、パイプ接続部17を残して上述の少なくとも一つの内側本体部10に埋め込まれている。
【0066】
実施形態によれば、支持部5及び/又は供給パイプ9は、油圧シールを提供するために適合した材料で作られている。
【0067】
実施形態によれば、支持部5及び/又は供給パイプ9、例えば円筒部16は、金属材料で作られている。
【0068】
実施形態において、上述の金属材料は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、アルミニウムAlSi7、又は鋼である。
【0069】
実施形態によれば、支持部5及び/又は供給パイプ9は、電動式キャリパの場合を含めて、高い油圧や大きな力に対して抵抗する軸方向に対称な構造を得るために適合した複合材料で作られる。
【0070】
実施形態によれば、支持部5及び/又は供給パイプ9と円筒部16は、長い埋込繊維を含む複合材料で作られる。この場合、繊維の少なくとも一部は、支持部5及び/又は供給パイプ9の長手方向の全長又は少なくともその1/3又は1/2の長さに亘って延在する。
【0071】
実施形態によれば、支持部5は、少なくとも一つの内側本体部10の外側に留まるように構成されると共にブレーキパッド7を受けて支持するブレーキパッド7に対向するように構成されたパッド支持面を有するパッド支持装置18を備えている。
【0072】
実施形態によれば、支持部5は、キャリパ本体1をキャリパ支持部(例えば、乗物のスタブ軸又は乗物のサスペンション若しくはモータサイクルのフォーク)に接続する取付部材又は接続部材19を有する。
【0073】
本発明はまた、上述のいずれかの実施形態において定義されたキャリパ本体1を含むブレーキキャリパ2に関する。
【0074】
上述したキャリパ本体1を製造する方法を以下に説明する。
【0075】
キャリパ本体1を製造する方法は、
支持部5と供給パイプ9を提供するステップと、
前記支持部5と前記供給パイプ9に少なくとも一つの内側本体部10を一緒に成形する工程と、
少なくとも一つの外側本体部15を前記キャリパ内側本体部10に加える又は一緒に成形する工程、を含む。
【0076】
方法の別の実施形態によれば、さらなる選択的工程として、前記少なくとも一つの内側本体部10を、前記支持部5と前記供給パイプ9がコアとして挿入されている成形型に射出成形する工程を提供する。
【0077】
方法の別の実施形態によれば、さらなる選択的工程として、前記少なくとも一つの外側本体部15を、前記支持部5と前記供給パイプ9を含む前記少なくとも一つの内側本体部10がコアとして挿入されている成形型に一体成形する工程を提供する。
【0078】
キャリパ本体1の製造方法は、
支持部5、供給パイプ9及びピストンハウジング16を提供する工程と、
前記支持部5、前記供給パイプ9及び前記ピストンハウジング16の上に少なくとも一つの内側本体部10を一体成形する工程と、
少なくとも一つの外側本体部15を前記キャリパ内側本体部10に加える又は一体成形する工程を有する。
【0079】
別の選択的実施形態の工程によれば、前記外側キャリパ部15は、すでに形成された前記内側キャリパ部をコアとして前記内側キャリパ部の上に一体成形される。
【0080】
当業者は、特許請求の範囲の技術的範囲から逸脱することなく、不測の特定の要求に応えるために、いくつかの変更や改変を上述の実施形態に加えたり、一部の部材を機能的に同等の部材に置換することができる。
【符号の説明】
【0081】
1:キャリパ本体
2:ブレーキキャリパ
3:ディスクブレーキ
4:ブレーキディスク
5:支持部
6:スラスト又は作動装置
7:ブレーキパッド
8:キャリパ本体の取付部材
9:供給パイプ
10:内側本体部
11:第1の乗物側伸長部
12:第1ブレーキ面
13:第2の車輪側伸長部
14:第2ブレーキ面
15:外側本体部
16:円筒部
17:パイプ連結部
18:パッド支持装置
19:取付又は接続部材
20:ブリッジ部
X-X:ブレーキディスクの回転軸
A-A:回転軸に平行な軸方向
R-R:回転軸に直交する径方向
C-C:軸方向と径方向に直交する円周方向
T-T:径方向と軸方向に直交する接線方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】