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特表2022-527606ゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントの作製及びワクチンアジュバントとしてのその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-02
(54)【発明の名称】ゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントの作製及びワクチンアジュバントとしてのその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/39 20060101AFI20220526BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220526BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20220526BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
A61K39/39
A61P31/00
A61K39/00 H
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560015
(86)(22)【出願日】2020-04-10
(85)【翻訳文提出日】2021-12-07
(86)【国際出願番号】 CN2020084190
(87)【国際公開番号】W WO2020207472
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】201910287805.1
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521009430
【氏名又は名称】シァメン・イノヴァックス・バイオテック・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】XIAMEN INNOVAX BIOTECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】1st Floor, 50 Shan Bian Hong East Road, Haicang District, Xiamen, Fujian 361022, China
(71)【出願人】
【識別番号】519326323
【氏名又は名称】シァメン・ユニヴァーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】ジァオ、チンジャン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、シァオフェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、スーイー
(72)【発明者】
【氏名】リ、イケ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ツァイ
(72)【発明者】
【氏名】シァ、ニンシャオ
【テーマコード(参考)】
4C085
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA79
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE06
4C085FF01
4C085FF12
4C085FF17
4C085GG01
(57)【要約】
亜鉛とゾレドロン酸とを含有し、任意にリン酸塩及びアルミニウムを含有するゾレドロン酸亜鉛マイクロ-ナノ粒子アジュバントを開示する。その作製方法は、亜鉛イオンを含有する可溶性塩溶液、ゾレドロン酸及び水酸化ナトリウムに対して混合沈殿を行うことを含む。アジュバントは、ワクチン等の調製に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛とゾレドロン酸とを含むゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントであって、1:1、4:1及び8:1から選択される亜鉛:ゾレドロン酸のモル濃度比を有し、任意にリン酸塩を更に含み、1.5及び4から選択される亜鉛:リン酸塩のモル濃度比を有し、任意にアルミニウムを更に含み、0.375:1、0.5:1及び0.8:1から選択される亜鉛:アルミニウムのモル濃度比を有する、ゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバント。
【請求項2】
前記ゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントが、
a)亜鉛イオンを含有する可溶性塩溶液、好ましくは前記可溶性塩溶液が塩酸の溶液を含む、亜鉛イオンを含有する可溶性塩溶液を準備する工程と、
b)連続沈殿、分離沈殿後の混合、又は共沈の様式で、工程a)の前記可溶性塩溶液とゾレドロン酸、水酸化ナトリウムとを均一に混合するか、又は工程a)の前記可溶性塩溶液とゾレドロン酸、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム溶液とを均一に混合し、ゾレドロン酸亜鉛アジュバントを得る工程と、
を含み、好ましくは工程b)の混合溶液を滅菌に供して、後の使用のために2℃~8℃で保管することを更に含み、好ましくは該滅菌が高温及び高圧滅菌技術を用いる滅菌、例えば121℃で30分~60分間、好ましくは60分間行われる滅菌を含む方法によって作製される、請求項1に記載のゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバント。
【請求項3】
以下の特性:
8.0~9.0の滅菌前のpH、
6.0~8.0の滅菌後のpH、
1μm~10μmの粒径、
4.0~11.4の粒子ゼロ電荷点、
80%超のタンパク質吸着率の1つ以上を有し、好ましくは該タンパク質がウシ血清アルブミンを含む、請求項1又は2に記載のゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバント。
【請求項4】
ゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントを作製する方法であって、
a)亜鉛イオンを含有する可溶性塩溶液、好ましくは前記可溶性塩溶液が塩酸の溶液を含む、亜鉛イオンを含有する可溶性塩溶液を準備する工程と、
b)連続沈殿、分離沈殿後の混合、又は共沈の様式で、工程a)の前記可溶性塩溶液とゾレドロン酸、水酸化ナトリウムとを均一に混合するか、又は工程a)の前記可溶性塩溶液とゾレドロン酸、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム溶液とを均一に混合し、ゾレドロン酸亜鉛アジュバントを得る工程と、
を含み、好ましくは工程b)の混合溶液を滅菌に供して、後の使用のために2℃~8℃で保管することを更に含み、好ましくは該滅菌が高温及び高圧滅菌技術を用いる滅菌、例えば121℃で30分~60分間、好ましくは60分間行われる滅菌を含み、
得られるゾレドロン酸亜鉛アジュバントが1:1、4:1及び8:1から選択される亜鉛:ゾレドロン酸のモル濃度比を有する、方法。
【請求項5】
得られるゾレドロン酸亜鉛アジュバントが以下の特性:
8.0~9.0の滅菌前のpH、
6.0~8.0の滅菌後のpH、
1μm~10μmの粒径、
4.0~11.4の粒子ゼロ電荷点、
80%超のタンパク質吸着率の1つ以上を有し、好ましくは該タンパク質がウシ血清アルブミンを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載のゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントを含むワクチンアジュバント、医薬組成物又は免疫原性組成物。
【請求項7】
抗原と請求項1~3のいずれか一項に記載のゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントとを含むワクチン組成物であって、好ましくは該抗原が水痘帯状疱疹ウイルスgE糖タンパク質抗原等のタンパク質抗原を含む、ワクチン組成物。
【請求項8】
ワクチンアジュバント、医薬組成物、薬物送達ビヒクル、免疫原性組成物又はワクチン組成物の製造における請求項1~3のいずれか一項に記載のゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントの使用であって、好ましくは該ワクチンが水痘帯状疱疹ウイルス組み換えタンパク質ワクチン等のタンパク質ワクチンを含む、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液性免疫応答及び細胞性免疫応答を顕著に増強することができ、ワクチン調製においてワクチンアジュバントとして使用することができる、ワクチンアジュバント、特に持続放出効果を有するゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントに関する。本発明は、免疫学の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛は、独特な生物学的機能を有する重要な化学元素である。例えば、微量レベルの亜鉛が細胞代謝に関与する約300種の酵素中に存在し、細胞呼吸、細胞分裂、タンパク質合成、DNA合成、損傷修復、及び免疫機能の活性化において重要な役割を果たす。したがって、亜鉛欠乏又は障害は多くの疾患、特に免疫系の疾患と関連している(非特許文献1)。免疫細胞内では、亜鉛を含む二価カチオンが細胞内シグナル伝達経路の調節において重要な役割を果たす。亜鉛欠乏は、先天免疫及び適応免疫においてリンパ球の生存、増殖及び成熟に影響を及ぼす。亜鉛欠乏が免疫細胞のサイトカインの産生及び機能、並びに末梢及び胸腺T細胞の数、増殖及び分化に悪影響を及ぼすことが研究により報告されている。微量亜鉛の欠乏が高齢者の免疫老化を引き起こすことが研究により見出されている(非特許文献2)。簡潔に述べると、亜鉛はT細胞の産生、発生及び機能において重要な役割を果たす。
【0003】
骨粗鬆症の治療に最も重要な薬物であるビスホスホネート(BP)は、無機ピロリン酸類似体である。ビスホスホネートは、ピロリン酸のP-O-P結合中の酸素原子を炭素原子で置き換えることによって形成され、独特なP-C-P結合骨格を有する。ビスホスホネートは、体内で酵素によって容易に加水分解されることがなく、高温に耐性があり、多くの化学物質に対して安定している。一方、P-C-P分子構成により、その三次元構造をヒドロキシアパタイト又はカルシウム、鉄及び亜鉛金属イオンと組み合わせることができる。ゾレドロン酸(ZOL)は、複素環構造を有する窒素含有ビスホスホン酸薬物である。ゾレドロン酸は強力な効果、低い用量及び使用の簡便さを特徴とする。臨床研究により、多発性骨髄腫、乳癌、腎癌、前立腺癌等の疾患の補助療法として使用されるビスホスホネートが患者における骨関連疾患の発生率を低下させ、癌の再発率を低下させ、患者の生存期間を延長し、それにより臨床結果を改善し得ることが示されている。ゾレドロネートは、抗腫瘍効果の点で特に有利であり、様々な悪性腫瘍の臨床研究において広く使用されている。加えて、他の研究では、ビスホスホネート薬物が免疫調節効果も有し、B細胞に作用することによって液性免疫応答を改善することができること(非特許文献3)、また、ゾレドロン酸が抗原特異的CD8+T細胞応答を高めることができること(非特許文献4)が見出されている。
【0004】
Dieter Berndardt et al.は、水酸化亜鉛ゲル又は水酸化鉄ゲル、その調製プロセス、及びワクチンアジュバントとしてのその応用を発明した(特許文献1、特許付与日:1993年10月12日)。水酸化亜鉛ゲル又は水酸化鉄ゲルは、ウイルス又はタンパク質に対して良好な吸着効果を有し、良好なアジュバント効果を有する。水酸化亜鉛ゲルは、身体の液性及び細胞性の両方の免疫応答を刺激することができるが、水酸化鉄ゲルは、主に液性免疫応答を増強し、どちらも良好な局所及び全身耐性を有し、どちらもレシチンと併用した場合により良好な免疫刺激効果を有する。
【0005】
Hu Yunzhang et al.は、ワクチンアジュバントを発明した(特許文献2、公開(公告)日:2009年6月3日)。この発明は、ワクチン用のアジュバントの製造に使用され、A型肝炎ワクチン用のアジュバントの製造に使用される、Zn(OH)の化学式及び99.4046ダルトンの化学式量を有する水酸化亜鉛化合物であるワクチンアジュバントに関する。アジュバントとしてワクチンと併用される水酸化亜鉛は、ワクチンの液性免疫応答を効果的に増強することができ、その免疫増強効果は、アルミニウムアジュバントよりも良好である。また、動物実験の結果から、新たなワクチンアジュバントとしての水酸化亜鉛がアルミニウムアジュバントよりも良好な感作効果及びより良好な安全性特性を有することが示される。
【0006】
Wang Haixuan et al.(非特許文献5)は、組み換えC型肝炎ウイルス抗原エピトープポリペプチドワクチンによって誘導されるマウスにおける液性免疫応答に対するアジュバントとしてのヘパラン硫酸(HS)及び水酸化亜鉛の免疫強化を研究し、結果から、HS及び水酸化亜鉛の複合アジュバントが組み換えHCV抗原エピトープポリペプチドワクチンで免疫したマウスにおける液性免疫応答を効果的に増強することができ、抗原の投与量を或る程度節約し得ることが示された。
【0007】
Hu Yunzhang et al.は、リン酸亜鉛ワクチンアジュバントを発明した(特許文献3、公開(公告)日:2012年9月26日)。この発明は、リン酸亜鉛ワクチンアジュバントに関し、特にワクチンアジュバントとしてのリン酸亜鉛の使用及びワクチンの製造におけるリン酸亜鉛ワクチンアジュバントの使用に関する。リン酸亜鉛は、ワクチンアジュバントとして抗原と組み合わせて使用され、ワクチンの液性免疫応答を効果的に増強することができる。その免疫増強効果は、アルミニウムアジュバント及び水酸化亜鉛アジュバントよりも良好であり、動物実験の結果から、ワクチンアジュバントとして使用した場合に、リン酸亜鉛がアルミニウムアジュバント及び水酸化亜鉛アジュバントよりも良好な感作効果及び良好な安全性特性を示すことが示された。
【0008】
Hu Yunzhang et al.は、複合ワクチンアジュバントを発明した(特許文献4、公開(公告)日:2012年12月26日)。この発明は、以下の成分からなることを特徴とする複合ワクチンアジュバントを提供する:10:1~50:1の質量比のフェルラ酸ナトリウム及び水酸化亜鉛。複合ワクチンアジュバントとワクチンとの併用により、ワクチンの液性免疫応答を効果的に増強することができる。増強効果は、アルミニウムアジュバントと同様であるが、フェルラ酸ナトリウムアジュバント単独及び水酸化亜鉛アジュバント単独よりも優れている。また、このアジュバントは非毒性であり、副作用がなく、免疫に必要とされる投与量の範囲内で安全かつ信頼性が高い。この発明の複合ワクチンアジュバントの原料は、容易に入手可能であり、市販製品である。複合ワクチンアジュバントは簡単な調製プロセス、低いコスト及び安定した性能を有する。複合ワクチンアジュバントはB型肝炎ワクチン、遺伝子操作ワクチン、ウイルスワクチン等のアジュバントとして使用することができる。
【0009】
Wang Haixuan et alは、ゾレドロン酸アジュバント及びゾレドロン酸アジュバントを含有するワクチンを発明した(特許文献5、公開(公告)日:2016年3月2日)。この発明はゾレドロン酸アジュバント、及び各ワクチン用量が10μg~20μgのゾレドロン酸アジュバントを含有する、ゾレドロン酸アジュバントを含有するワクチンを提供する。この発明によって提供されるゾレドロン酸アジュバントは、毒性の副作用が低く、免疫に必要とされる投与量の範囲内での使用が安全かつ信頼性が高く、抗原特異的液性免疫応答を効果的に誘導することができ、アルミニウムアジュバントと同様の免疫効果を有し、その原料が容易に入手可能であり、安定した性能を有し、ワクチンのアジュバントとして使用することができる。Takuya SHISHIDO et al.は、身体に効率的な液性免疫応答を生じさせることができ、経皮又は粘膜投与することができるビスホスホネート含有ワクチン医薬組成物を発明した(特許文献6、公開日:2017年10月5日)。
【0010】
Cai Hongzhi et al.(非特許文献6)は、狂犬病ワクチンによって誘導されるマウスの液性免疫応答に対する水酸化亜鉛及びヘパラン硫酸(HS)複合アジュバントの影響を研究し、結果から、水酸化亜鉛及びHSの複合アジュバントが狂犬病ワクチンによって誘導されるマウスの液性免疫応答を増強し得ることが示された。
【0011】
Chen Zhenpu et al.は、グリシン酸亜鉛アジュバント及びグリシン酸亜鉛アジュバントを含有するワクチンを発明した(特許文献7、公開(公告)日:2014年10月15日)。この発明はグリシン酸亜鉛アジュバント、及び各ワクチン用量がpH=6~8のPBS中に溶解した0.1mg~1mgのグリシン酸亜鉛アジュバントを含有する、グリシン酸亜鉛アジュバントを含有するワクチンを提供する。この発明によって提供されるグリシン酸亜鉛アジュバントは、医薬品アジュバントであり、亜鉛栄養強化剤でもある。このアジュバントは、毒性の副作用が低く、免疫に必要とされる投与量の範囲内での使用が安全かつ信頼性が高い。このアジュバントは、抗原特異的液性免疫応答を効果的に誘導することができ、誘導される液性免疫応答効果は、非アジュバント群よりも良好である。グリシン酸亜鉛アジュバントの原料は、容易に入手可能であり、市販製品である。このアジュバントは簡単な調製プロセス、低いコスト、安定した性能、高い生物学的効力を有し、毒性の又は有害な影響を有さず、様々な従来のワクチン及び遺伝子操作ワクチンにワクチンアジュバントとして添加することができる。
【0012】
Mahsa Afshari et al.(非特許文献7)は、リーシュマニア感染を有するBALB/cマウスモデルを用いた。マウスに硫酸亜鉛を経口摂取させることで寄生虫量を顕著に低下させ、Th1サイトカインmRNAの発現レベルを上昇させ得ることが見出された。これにより、硫酸亜鉛がリーシュマニアに感染したBALB/cマウスにおいて強いTh1免疫応答を誘導し得ることが示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5252327号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開(公告)第101444623号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開(公告)第101972477号明細書
【特許文献4】中国特許出願公開(公告)第102085366号明細書
【特許文献5】中国特許出願公開(公告)第103768595号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2017/0281759号明細書
【特許文献7】中国特許出願公開(公告)第104096229号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Autoimmunity Reviews, 2015, 14 (04) 277-285
【非特許文献2】Immunity & Ageing, 2009, 6(9): 1-17
【非特許文献3】Cell Rep., 2013, 5(2)
【非特許文献4】Vaccine, 2016, 34(10):1275-81
【非特許文献5】Chinese Journal of Biologicals, 2011, 24(10): 1174-1176
【非特許文献6】Chinese Journal of Biologicals, 2013, 26 (05): 608-610
【非特許文献7】Cytokine, 2016, 81:71-76
【発明の概要】
【0015】
既存のワクチンアルミニウムアジュバントの欠点、すなわち、Th1免疫応答を刺激することができないこと、並びにポリペプチド及び核酸ワクチンの免疫原性を増強することができないことを克服するために、また、免疫増強におけるゾレドロン酸の役割を考慮して、ゾレドロン酸と、同様に免疫調節に重要な役割を果たす微量元素亜鉛との共沈によってゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントを形成する。本発明の発明者らは、創造的な研究によって、ゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントが液性免疫応答及び細胞性免疫応答を顕著に改善し得ることを見出した。その結果、顕著な免疫増強効果を有するゾレドロン酸亜鉛ワクチンアジュバントを提供する。
【0016】
したがって、一態様において、本発明は、亜鉛イオンとホスホン酸基、リン酸塩ラジカル及び水酸化物ラジカルとの共沈によって調製され、ゾレドロン酸亜鉛アジュバントと略称されるゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントに関する。
【0017】
特定の実施の形態において、本発明のゾレドロン酸亜鉛アジュバントは、亜鉛イオンを含有する可溶性塩溶液とゾレドロン酸及び水酸化ナトリウム溶液とを均一に混合するか、又は亜鉛イオンを含有する可溶性塩溶液とゾレドロン酸、水酸化ナトリウム及びリン酸ナトリウム溶液とを均一に混合し、ゾレドロン酸亜鉛アジュバントを得ることによって得ることができる。
【0018】
特定の実施の形態において、混合方法としては、連続沈殿、分離沈殿後の混合、又は共沈が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
一実施の形態において、ゾレドロン酸亜鉛アジュバント中の亜鉛:ゾレドロン酸のモル濃度比は、概して限定されない。好ましい実施の形態において、ゾレドロン酸亜鉛アジュバント中の亜鉛:ゾレドロン酸のモル濃度比は、(1~8):1であり得る。亜鉛:ゾレドロン酸のモル濃度比は1:1、4:1及び8:1から選択するのが好ましい。
【0020】
一実施の形態において、ゾレドロン酸亜鉛アジュバントは、リン酸塩を含有していてもよい。例えば、ゾレドロン酸亜鉛複合アジュバントは、ゾレドロン酸をリン酸塩に様々なモル比で置き換える(完全には置き換えない)ことにより、様々な混合方法(例えば連続沈殿、分離沈殿後の混合、又は共沈等)を用いて調製される。かかるゾレドロン酸亜鉛複合アジュバントにおいては、Zn:リン酸塩ラジカルのモル濃度比は、概して限定されない。好ましい実施の形態において、Zn:リン酸塩ラジカルのモル濃度比は、(1~8):1であり得る。Zn:リン酸塩ラジカルのモル濃度比は、1.5:1及び4:1から選択するのが好ましく、これにより有機無機ハイブリッドゾレドロン酸亜鉛アジュバントが形成される。
【0021】
ゾレドロン酸亜鉛アジュバントの別の実施の形態において、ゾレドロン酸亜鉛アジュバントは、アルミニウム(Al)を更に含んでいてもよい。例えば、ゾレドロン酸亜鉛-アルミニウムアジュバントは、ZnをAlに異なる割合で置き換える(完全には置き換えない)ことにより、様々な混合方法(例えば連続沈殿、分離沈殿後の混合、又は共沈等)を用いて調製される。かかるゾレドロン酸亜鉛-アルミニウムアジュバントにおいては、Zn:Alのモル濃度比は、概して限定されない。好ましい実施の形態において、Zn:Alのモル濃度比は、(0.02~1):1であり得る。Zn:Alのモル濃度比は、0.375:1、0.5:1及び0.8:1から選択するのが好ましい。
【0022】
一実施の形態において、亜鉛化合物の具体的なタイプは限定されない。例えば、ゾレドロン酸亜鉛アジュバントが亜鉛イオンとホスホン酸基、リン酸塩ラジカル及び水酸化物ラジカルとの沈殿によって調製される限りにおいて、水酸化亜鉛、リン酸亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、又は当該技術分野で既知の他のタイプの亜鉛アジュバントが許容可能である。
【0023】
一実施の形態において、リン酸塩溶液は、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム(無水、二水和物、七水和物、十二水和物)、リン酸二水素ナトリウム(無水、二水和物)、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、ピロリン酸塩、ポリリン酸、及びそれらの任意の混合物から選択することができるが、これらに限定されない。
【0024】
一実施の形態において、アルミニウム化合物の具体的なタイプは限定されない。例えば、ゾレドロン酸亜鉛-アルミニウムアジュバントが亜鉛及びアルミニウムイオンとホスホン酸基、リン酸塩ラジカル及び水酸化物ラジカルとの沈殿によって調製される限りにおいて、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、又は当該技術分野で既知の他のアルミニウムアジュバントのタイプが許容可能である。
【0025】
一態様において、本発明は、可溶性塩溶液中で亜鉛イオンとホスホン酸基、リン酸塩ラジカル及び水酸化物ラジカルとを別個に又は同時に反応させることによって亜鉛イオンを沈殿させ、それによりゾレドロン酸亜鉛アジュバントを調製することを含む、ゾレドロン酸亜鉛アジュバントを作製する方法に関する。
【0026】
特定の実施の形態において、上記方法は、
a)亜鉛イオンを含有する可溶性塩溶液を準備する工程と、
b)連続沈殿、分離沈殿後の混合、又は共沈の様式で、工程a)の可溶性塩溶液とゾレドロン酸、水酸化ナトリウムとを均一に混合するか、又は工程a)の可溶性塩溶液とゾレドロン酸、水酸化ナトリウム及びリン酸ナトリウム溶液とを均一に混合し、ゾレドロン酸亜鉛アジュバントを得る工程と、
を含む。
【0027】
本発明の実施の形態において、可溶性塩溶液は、概して限定されず、例えば塩酸の溶液から選択され得る。
【0028】
好ましい実施の形態において、上記方法は、工程b)において混合後に形成されたゾレドロン酸亜鉛アジュバント懸濁液を、121℃の高温高圧条件で60分間オートクレーブ処理することによって滅菌し、室温まで冷却した後、2℃~8℃で静置し、好ましくは後の使用のために4℃で保管することを更に含む。一実施の形態において、本発明の方法によって得られるゾレドロン酸亜鉛アジュバント中の亜鉛:ゾレドロン酸のモル濃度比は、1~8:1であり得る。好ましい実施の形態において、亜鉛:ゾレドロン酸のモル濃度比は1:1、4:1又は8:1から選択される。
【0029】
別の実施の形態において、ゾレドロン酸亜鉛-アルミニウムアジュバントを得る本発明の方法の過程で、ゾレドロン酸亜鉛-アルミニウムアジュバントは、亜鉛イオン及びアルミニウムイオンとホスホン酸基、リン酸塩ラジカル及び水酸化物ラジカルとを様々な混合方法(例えば連続沈殿、分離沈殿後の混合、又は共沈等)によって沈殿させることで調製され、Zn/Alモル濃度比を0.375:1、0.5:1及び0.8:1に設定する。
【0030】
本明細書において使用される亜鉛イオンの可溶性塩溶液は、亜鉛イオンの任意の可溶性塩溶液とすることができ、好ましくは亜鉛イオンの塩酸溶液である。
【0031】
本明細書において使用されるゾレドロネート溶液は、好ましくはゾレドロン酸及び水酸化ナトリウムのアルカリ溶液である。
【0032】
本明細書において使用される亜鉛及びホスホン酸基を沈殿させる手段は、亜鉛イオンの可溶性塩溶液とゾレドロン酸及び水酸化ナトリウムのアルカリ溶液とを十分に混合することによって沈殿反応が起こる任意の手段であり得る。好ましくは、ゾレドロン酸亜鉛アジュバントは、連続沈殿、分離沈殿後の混合、又は共沈等の方法によって調製することができる。
【0033】
本明細書において使用される滅菌は、ゾレドロン酸亜鉛アジュバントの滅菌に適した任意の方法であり得る。例えば、高温高圧蒸気滅菌技術を適用することができる。例えば、滅菌を121℃で30分~60分間、好ましくは60分間行う。
【0034】
一実施の形態において、本発明は、得られるゾレドロン酸亜鉛アジュバントの物理的及び化学的特性を測定する方法にも関する。一実施の形態において、アジュバントのpH値、粒径、ゼータ電位、粒子のゼロ電荷点(PZC)、タンパク質吸着及び解離速度、金属イオン沈殿率、有機ホスホン酸沈殿率、in vivo及びin vitroでの沈殿物の溶解速度等を測定する。アジュバントの物理的及び化学的特性は、従来の手法(例えば、米国特許第9573811号明細書、Ai Xulu et al., Analysis of physicochemical properties of three aluminum hydroxide adjuvant , "Chinese Journal of Biologicals", 2015, 28(1): 44-47を参照されたい)によって、また、本明細書の実施例に記載されているように測定することができる。
【0035】
一実施の形態において、本明細書に記載されるゾレドロン酸亜鉛アジュバントは、以下の特性の1つ以上を有する:8.0~9.0の滅菌前のpH、6.0~8.0の滅菌後のpH、1μm~10μmの粒径、4.0~11.4の粒子のゼロ電荷点、99%超の金属イオン沈殿率及び80%超のタンパク質吸着率。
【0036】
一態様において、本発明は、本明細書に記載されるゾレドロン酸亜鉛アジュバントを含む組成物、特に医薬製剤又は組成物に関する。
【0037】
医薬製剤又は組成物を作製する方法は、ゾレドロン酸亜鉛アジュバントと担体及び任意に1つ以上の補助成分とを組み合わせる工程を含む。
【0038】
概して、製剤は、ゾレドロン酸亜鉛アジュバントと液体担体若しくは微粉固体担体、又はその両方とを均一かつ密接に組み合わせ、その後、必要に応じて生成物を成形することによって調製される。
【0039】
有効成分の経口投与のための液体投与形態としては、薬学的に許容可能なエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルが挙げられる。ゾレドロン酸亜鉛アジュバントに加えて、液体投与形態は、当該技術分野で一般に使用される不活性希釈剤、例えば水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにそれらの混合物を含有していてもよい。
【0040】
経口組成物は、不活性希釈剤に加えて、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、甘味料、矯味剤、着色料、香料及び防腐剤等のアジュバントを含んでいてもよい。
【0041】
懸濁製剤は、ゾレドロン酸亜鉛アジュバントに加えて、懸濁化剤、例えばエトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカントゴム、並びにそれらの混合物を含有し得る。
【0042】
本発明の直腸又は膣内投与用の医薬組成物は坐剤として提供することができ、これはゾレドロン酸亜鉛アジュバントと1つ以上の好適な非刺激性の賦形剤又は担体(例えばココアバター、ポリエチレングリコール、坐剤用ワックス、又はサリチル酸塩を含む)とを混合することによって調製されることができ、室温で固体であり、体温で液体であるため、直腸又は膣内で溶融してゾレドロン酸亜鉛アジュバントを放出する。本発明の膣内投与に適した製剤としては、当該技術分野で既知の好適な担体を含有する膣坐剤、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレーも挙げられる。
【0043】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、ゾレドロン酸亜鉛アジュバントと組み合わせて、溶液、分散液、懸濁液若しくはエマルション、又は使用前に滅菌注射用溶液若しくは分散液に再構成することができる滅菌粉末を含み、酸化防止剤、緩衝液、製剤を対象とするレシピエントの血液と等張にする溶質、又は懸濁剤若しくは増粘剤を含有していてもよい1つ以上の薬学的に許容可能な滅菌等張水性又は非水性担体を含む。
【0044】
本発明の医薬組成物に用いることができる好適な水性及び非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)及びそれらの好適な混合物、オリーブ油等の植物油、並びにオレイン酸エチル等の注射用有機エステルが挙げられる。例えばレシチン等のコーティング材料の使用、必要とされる粒径の維持(分散液の場合)、及び界面活性剤の使用によって適当な流動性を維持することができる。
【0045】
これらの組成物は、湿潤剤、乳化剤及び分散剤等のアジュバントを含有していてもよい。糖、塩化ナトリウム等の等張剤を組成物に加えることが望ましい場合もある。加えて、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン等の吸収を遅らせる作用物質を加えることにより、注射用医薬品形態の持続的吸収をもたらすことができる。
【0046】
注射用デポー形態は、ゾレドロン酸亜鉛アジュバントのマイクロカプセル化(microencapsule)マトリックスを生分解性ポリマー(ポリラクチド-ポリグリコリド等)中で形成することによって作製することができる。ゾレドロン酸亜鉛アジュバントとポリマーとの比率及び用いられる特定のポリマーの性質に応じて、ゾレドロン酸亜鉛アジュバントの放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射用製剤は、ゾレドロン酸亜鉛アジュバントを生体組織に適合するリポソーム又はマイクロエマルションに封入することによっても調製される。注射用材料を、例えば細菌保持フィルターに通して濾過することで滅菌することができる。
【0047】
製剤は、単回投与又は複数回投与用の密閉容器(例えばアンプル及びバイアル)内で与えることができ、使用直前に滅菌液体担体、例えば注射用水を添加するだけでよい凍結乾燥状態で保管することができる。即時注射溶液及び懸濁液を上記のタイプの滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製することができる。
【0048】
一態様において、本発明は、本明細書に記載されるゾレドロン酸亜鉛アジュバントと1つ以上の抗原とを含む免疫原性組成物にも関する。
【0049】
本明細書において使用される免疫原性組成物は、被験体又は動物に投与した場合に、それに含まれる上記の1つ以上の抗原に対する防御免疫応答を刺激する。
【0050】
一態様において、本発明は、本明細書に記載されるゾレドロン酸亜鉛アジュバントと1つ以上の抗原とを含むワクチン組成物にも関する。
【0051】
本明細書において使用されるワクチン組成物は、被験体又は動物に投与した場合に、例えば微生物に対する防御免疫応答を刺激するか、又は被験体若しくは動物を感染から効果的に保護する。
【0052】
ワクチン組成物は、免疫応答の調整に有利に応答する病的状態を予防又は改善するために使用することができる。かかるワクチン組成物は、予防ワクチン又は治療ワクチンであり得る。ワクチン組成物は遺伝子操作ワクチン、例えばタンパク質ワクチン、例えば水痘帯状疱疹ウイルス組み換えタンパク質ワクチンを含むのが好ましい。
【0053】
一態様において、本発明は、本明細書に記載されるゾレドロン酸亜鉛アジュバントを含むワクチンアジュバントにも関する。例えば、かかるワクチンアジュバントは、下記のような二次アジュバントを含んでいてもよい。
【0054】
「アジュバント」又は「ワクチンアジュバント」という用語は、本明細書において使用される場合、抗原に対する免疫応答を非特異的に加速、延長又は増強することが可能な物質を指す。
【0055】
有利なことに、アジュバントは、防御免疫に必要とされる免疫の回数又は抗原の量を低減することもできる。
【0056】
アジュバント自体は免疫応答を全く又は殆ど刺激しないが、アジュバントが抗原に対する免疫応答を高めることが知られている。したがって、本発明のゾレドロン酸亜鉛アジュバントを1つ以上の抗原と組み合わせて、個体において免疫応答を刺激するために使用され得る免疫原性組成物又はワクチンを作製することができる。様々な物質を免疫原型又はワクチン型の複合体又は製剤において抗原として使用することができる(例えば、弱毒化及び不活化したウイルス性及び細菌性病原体、精製巨大分子、タンパク質、多糖、トキソイド、組み換え抗原、病原体に由来する外来遺伝子を有する生物、合成ペプチド、ポリヌクレオチド、抗体及び腫瘍細胞等)。抗原は、予防ワクチン及び治療ワクチンの両方に使用することができる。抗原としては、水痘帯状疱疹ウイルスgE糖タンパク質抗原(VZV gE)等のタンパク質抗原が挙げられる。
【0057】
様々な免疫調節分子を本発明のゾレドロン酸亜鉛アジュバントと組み合わせて使用して、個体における免疫応答を変化させることもできる。本明細書に記載される免疫調節剤は、身体の免疫機能を調節し、バランスを取り、回復させることができる製剤の一種を指す。一般に使用される免疫調節剤には、免疫促進剤、免疫抑制剤及び免疫双方向性調節剤の3つの主要なカテゴリーが含まれる。
【0058】
本発明のワクチン組成物中の抗原及びゾレドロン酸亜鉛アジュバントの量及びその投与量は、医薬分野の当業者に既知の手法によって決定され、以下のような要因を考慮する必要がある:特定の抗原、特定の動物又は患者の年齢、性別、体重、種及び状態、並びに投与経路。
【0059】
好ましい実施の形態において、本発明のワクチン組成物は、界面活性剤、吸収促進剤、吸水性ポリマー、酵素分解を阻害する物質、アルコール、有機溶媒、油、pH調整剤、防腐剤、浸透圧調整剤、噴射剤、水及びそれらの任意の混合物からなる群から選択される1つ以上の成分を更に含む。
【0060】
本発明のワクチン組成物は、薬学的に許容可能な担体を更に含んでいてもよい。担体の量は、他の成分について選択される量、所望の抗原の濃度、投与経路の選択(経口又は非経口)等によって決まる。担体は、任意の好都合な時点でワクチンに添加することができる。凍結乾燥ワクチンの場合、担体を、例えば投与前に添加することができる。代替的には、担体を用いて最終生成物を製造してもよい。
【0061】
適切な担体の例としては、滅菌水、生理食塩水、緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、緩衝塩化ナトリウム、植物油、最小必須培地(MEM)、HEPES緩衝液を含むMEM等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
任意に、本発明のワクチン組成物は、従来の二次アジュバントをアジュバント及び所望の結果に応じて様々な量で含有し得る。
【0063】
好適な二次アジュバントの例としては、安定剤;乳化剤;水酸化ナトリウム、塩酸等のpH調整剤;Tween(商標)80(ポリソルベート80、Sigma Chemical Co.(St. Louis, Mo.)から市販されている)等の界面活性剤;リポソーム;iscomアジュバント;ムラミルジペプチド等の合成グリコペプチド;デキストラン等の増量剤;カルボキシポリメチレン;マイコバクテリア細胞壁抽出物等の細菌細胞壁;コリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)等のそれらの誘導体;プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acne);マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)、例えばウシ型カルメットゲラン桿菌(Bovine Calmette Guerin:BCG);ワクシニア又は動物ポックスウイルスタンパク質;オルビウイルス等のサブウイルス粒子アジュバント;コレラ毒素;N,N-ジオクタデシル-N’,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)-プロパンジアミン(ピリジン);モノホスホリルリピドA;ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA、Kodak(Rochester, N.Y.)から市販されている);それらの合成物及び混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
好適な安定剤の例としては、スクロース、ゼラチン、ペプトン、NZ-Amine又はNZ-Amine AS等の消化タンパク質抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。乳化剤の例としては、鉱油、植物油、ラッカセイ油、及び注射剤又は鼻腔内ワクチン組成物に有用な他の標準的な代謝可能な非毒性油が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
本発明の目的上、これらのアジュバントは、ゾレドロン酸亜鉛アジュバントと抗原物質との組合せが抗原物質に対する液性免疫応答を顕著に高めることができるため、単に上記のゾレドロン酸亜鉛アジュバントに対比して、本明細書で「二次」とされる。二次アジュバントは、主に加工助剤としてワクチン製剤に含まれるが、或る特定のアジュバントは、免疫増強特性を或る程度有し、二重の目的がある。
【0066】
従来の防腐剤は、約0.0001重量%~約0.1重量%の範囲の有効量でワクチン組成物に添加することができる。製剤に用いられる防腐剤に応じて、この範囲を下回る又は上回る量が有用であり得る。典型的な防腐剤としては、例えばソルビン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、フェノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、チメロサール、等が挙げられる。
【0067】
不活化、改変又は他のタイプのワクチン組成物の選択及び本発明の改善されたワクチン組成物製剤の調製は、当業者には既知であるか、又は容易に決定される。
【0068】
一般に、本発明のワクチン組成物は経口的、非経口的(皮下、筋肉内、静脈内、皮内又は腹腔内)、口腔内、鼻腔内又は経皮的に都合よく投与することができる。本発明によって企図される投与経路は、抗原物質及び製剤化助剤によって決まる。例えば、ワクチン組成物がサポニンを含有する場合、サポニンは経口又は鼻腔内投与では非毒性であるが、強力な溶血剤として機能するため、サポゲニングリコシドを血流に注射しないように注意を払わなければならない。また、多くの抗原は、経口摂取した場合に効果的ではない。ワクチン組成物を筋肉内又は腹腔内に投与するのが好ましい。
【0069】
ワクチン組成物の投与量は、特に選択される抗原、投与経路、種及び他の標準要因に左右される。当業者が各抗原に対する免疫原性応答に適切な投与量を容易かつ即座に滴定し、効果的な免疫量及び投与経路を決定し得ることが企図される。
【0070】
本発明のゾレドロン酸亜鉛アジュバントは、ワクチンアジュバントとして、より弱い抗原(例えば高度に精製された又は組み換え抗原)の免疫原性を増強するか、免疫応答に必要とされる抗原の量を減少させるか、又は防御免疫に必要とされる免疫の回数を減少させることによってワクチンの有効性を改善することができる。本発明のゾレドロン酸亜鉛アジュバントは、免疫応答が低下した又は弱まった個体(例えば新生児、高齢者及び免疫不全の個体)におけるワクチンの有効性を改善することができ、標的組織におけるワクチンの有効性を高めることができる。代替的には、本発明のゾレドロン酸亜鉛アジュバントは、特定のサイトカインプロファイルを誘発することによって細胞性免疫及び/又は液性免疫を促進することができる。
【0071】
抗原及び/又は免疫調節分子と本発明のゾレドロン酸亜鉛アジュバントとの組合せは、当該技術分野で既知の様々な前臨床毒性及び安全性研究において試験することができる。
【0072】
例えば、かかる組合せは、抗原が免疫原性であることが見出され、ヒトの臨床試験について提案されているのと同じ経路で再現性よく免疫され得る動物モデルにおいて評価することができる。
【0073】
抗原及び/又は免疫調節分子と本発明のゾレドロン酸アジュバントとの組合せは、例えば生物製品評価研究センター/食品医薬品局及び国立アレルギー感染症研究所によって規定されているアプローチによって試験することができる(Goldenthal, KL et al. AID Res Hum Retroviruses, 9: S45-9 (1993))。
【0074】
抗原及び/又は免疫調節分子と本発明の複合アジュバントとの特定の組合せについて、特定の動物種における特定の病的状態の治療に有用である、適切な抗原ペイロード、免疫の経路、用量、抗原の純度及びワクチン接種レジメンを決定する方法が当業者には知られている。
【0075】
免疫応答を誘導するための本発明の免疫原性組成物又はワクチンは、薬学的に許容可能な媒体とともに溶液又は懸濁液として投与することができる。
【0076】
かかる薬学的に許容可能な媒体は、例えば水、リン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水若しくは他の緩衝生理食塩水、又は他の溶媒若しくはビヒクル、例えばグリコール、グリセロール、及びオリーブ油等の油、若しくは注射用有機エステルであり得る。また、薬学的に許容可能な媒体は、リポソーム又はミセルを含有していてもよく、ポリペプチド又はペプチド抗原と洗浄剤及びグリコシド(Quil A等)とを混合することによって調製される免疫刺激複合体を含有していてもよい。
【0077】
本発明の免疫原性組成物又はワクチンは、免疫応答を刺激するために様々な経路によって投与することができる。例えば、免疫原性組成物又はワクチンは皮下、皮内、リンパ内、筋肉内、腫瘍内、膀胱内、腹腔内及び脳内に送達することができる。
【0078】
本発明のゾレドロン酸アジュバントの特定の製剤に適切な送達経路を選択する方法が当業者には知られている。
【0079】
本発明の好ましい実施の形態において、哺乳動物における感染の治療又は予防のためのワクチン接種方法は、本発明のワクチンの使用を含み、ワクチンを特に筋肉内又は腹腔内に投与する。ワクチンは単回投与として投与しても、又は好ましくは一次免疫/追加免疫戦略に従って数回、例えば1週間若しくは1ヶ月に2回、3回若しくは4回投与してもよい。適切な用量は、様々なパラメーターによって決まる。
【0080】
一態様において、本発明は、ワクチンアジュバント、医薬組成物、免疫原性組成物又はワクチン組成物の製造のための本明細書に記載されるゾレドロン酸亜鉛アジュバントの使用にも関する。ワクチンは、水痘帯状疱疹ウイルスタンパク質組み換えワクチン等のタンパク質ワクチンを含むのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
図1】アジュバントを調製するための3つの調製プロセスの概要図である。
図2】ゾレドロン酸亜鉛アジュバント、ゾレドロン酸亜鉛-アルミニウムアジュバント及びゾレドロン酸アルミニウムアジュバントの粒子の形態を示す図である。
図3】VZV gEワクチンにおけるゾレドロン酸亜鉛アジュバントのアジュバント活性の決定を示す図である。平均±SD:n=5、p<0.05;**p<0.01;***p<0.001、****p<0.0001。
図4】マウス抗体アイソタイプに対する組み換えVZV gEタンパク質と組み合わせたゾレドロン酸亜鉛アジュバントの影響を示す図である。平均±SD:n=5、p<0.05;**p<0.01;***p<0.001、****p<0.0001。
図5】B型肝炎治療用タンパク質に対するゾレドロン酸亜鉛アジュバントのアジュバント活性の決定を示す図である。平均±SD:n=5、p<0.05;**p<0.01;***p<0.001、****p<0.0001。
図6】マウス血清抗体価に対するVZV gEと組み合わせた他のビスホスホン酸亜鉛アジュバント(Zn/Zol=1/0.25)の影響を示す図である。平均±SD:n=5、p<0.05;**p<0.01;***p<0.001、****p<0.0001。
図7】マウス血清抗体価に対するB型肝炎治療用タンパク質と組み合わせたゾレドロン酸及びゾレドロン酸亜鉛改変アジュバントの影響を示す図である。平均±SD:n=5、p<0.05;**p<0.01;***p<0.001、****p<0.0001。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本発明を実施するための具体的なモデル
以下、本発明の実施形態を実施例と併せて詳細に説明する。実施例において具体的な条件が示されていない場合には、従来の条件又は製造業者によって推奨される条件に従って行うものとする。製造業者の指定なしに使用される試薬又は機器は全て、商業的に購入することができる従来の製品である。
【0083】
以下の調製例において使用した材料は、以下の通りである:
無水塩化亜鉛(ZnCl):Xilong Chemicalから購入;
塩化アルミニウム六水和物(AlCl・6HO):Xilong Chemicalから購入;
リン酸水素二ナトリウム十二水和物(NaHPO・12HO):Xilong Chemicalから購入;
水酸化ナトリウム(NaOH):Xilong Chemicalから購入;
ゾレドロン酸(C10):Hunan Huateng Pharmaceutical Co., Ltdから購入。
【0084】
調製例1:Zn-ゾレドロン酸(1/0.25)アジュバントの調製
1:0.25のZn/ゾレドロン酸モル濃度比に従い、50mLの31.11mM塩化亜鉛溶液を調製し、溶液Aとし、50mLの溶液(7.78mMゾレドロン酸+43mM水酸化ナトリウム+7.78mMリン酸水素二ナトリウム)を調製し、溶液Bとした。溶液A及び溶液Bを後の使用のために0.22μmのフィルター膜で濾過した。
【0085】
Zn-ゾレドロン酸(1/0.25)アジュバント懸濁液の調製:
図1Aに示すスキームに従い、溶液A及びBを使用してゾレドロン酸亜鉛アジュバント懸濁液を形成した。すなわち、調製した溶液Bを1:1の体積比に従い全てが添加されるまで溶液Aに滴加し、懸濁液を形成した。
【0086】
図1Aに従って混合後に得られたゾレドロン酸亜鉛アジュバントを121℃で60分間のオートクレーブ蒸気滅菌に供し、続いて室温まで冷却した後、2℃~8℃で保管した。
【0087】
調製例2:Zn-ゾレドロン酸(1/1)アジュバントの調製
溶液の調製:
1:1のZn/ゾレドロン酸モル濃度比に従い、50mLの31.11mM塩化亜鉛溶液を調製し、溶液Aとし、50mLの溶液(31.11mMゾレドロン酸+87mM水酸化ナトリウム)を調製し、溶液Bとした。溶液A及び溶液Bを後の使用のために0.22μmのフィルター膜で濾過した。
【0088】
調製例1を参照して、Zn-ゾレドロン酸(1/1)アジュバント懸濁液を調製した。
【0089】
調製例3:ゾレドロン酸亜鉛-アルミニウム(FH-001-ゾレドロン酸)アジュバントの調製
溶液の調製:
1:0.375のAl/Znモル濃度に従い、塩化アルミニウム(122.44mM)及び塩化亜鉛(46.66mM)の混合溶液50mLを調製し、溶液Aとし、50mLの溶液(18.66mMゾレドロン酸+380mM水酸化ナトリウム)を調製し、溶液Bとした。溶液A及び溶液Bを後の使用のために0.22μmのフィルター膜で濾過した。
【0090】
調製例1を参照して、FH-001-ゾレドロン酸アジュバント懸濁液を調製した。
【0091】
調製例4:ゾレドロン酸アルミニウム(Al-001-ゾレドロン酸)アジュバントの調製
溶液の調製:
1:0.075のAl/Zolモル濃度に従い、50mLの122.44mM塩化アルミニウム溶液を調製し、溶液Aとし、50mLの溶液(9.33mMゾレドロン酸+9.33mMリン酸水素二ナトリウム十二水和物+370mM水酸化ナトリウム)を調製し、溶液Bとした。溶液A及び溶液Bを後の使用のために0.22μmのフィルター膜で濾過した。
【0092】
調製例1を参照して、Al-001-ゾレドロン酸アジュバント懸濁液を調製した。
【0093】
調製例5:Zn-ゾレドロン酸(1/0.125)アジュバントの調製
溶液の調製:
1:0.125のZn/ゾレドロン酸モル濃度比に従い、50mLの124.44mM塩化亜鉛溶液を調製し、溶液Aとし、50mLの溶液(15.56mMゾレドロン酸+65.7mM水酸化ナトリウム)を調製し、溶液Bとした。溶液A及び溶液Bを後の使用のために0.22μmのフィルター膜で濾過した。
【0094】
調製例1を参照して、Zn-ゾレドロン酸(1/0.125)アジュバント懸濁液を調製した。
【0095】
調製例6:アルミニウムアジュバント(Al-002)の調製
溶液の調製:
塩化アルミニウム六水和物を水に添加して、0.5Lの62.22mM塩化アルミニウム溶液を調製し、溶液Aとし、リン酸水素二ナトリウム二水和物及び水酸化ナトリウムを水に添加して、18.68mMリン酸塩及び0.12M水酸化ナトリウムを含有する0.5Lの溶液を調製し、溶液Bとした。これらを後の使用のために0.22μmのフィルター膜で濾過した。
【0096】
調製例1を参照して、アルミニウムアジュバントAl-002を調製した。
【0097】
調製例7:アルミニウムアジュバント(Al-001-840)の調製
溶液の調製:
0.15のリン酸塩/Alモル濃度比に従い、0.5Lの124mM塩化アルミニウム溶液を調製し、溶液Aとし、0.5Lの18.6mMリン酸水素二ナトリウム溶液を調製し、溶液Bとした。溶液Bは、150mM水酸化ナトリウムを更に含有するものであった。これらを後の使用のために0.22μmの膜フィルターで濾過した。
【0098】
調製例1を参照して、アルミニウムアジュバントAl-001-840懸濁液を調製した。
【0099】
調製例8:亜鉛-アルミニウムアジュバント(FH-001)の調製
溶液の調製:
塩化アルミニウム六水和物及び無水塩化亜鉛を水に添加して、124.44mM塩化アルミニウム及び46.68mM塩化亜鉛を含有する0.25Lの溶液を調製し、これを溶液Aとし、リン酸水素二ナトリウム二水和物及び水酸化ナトリウムを水に添加して、18.68mMリン酸塩及び0.425M水酸化ナトリウムを含有する0.25Lの溶液を調製し、これを溶液Bとした。これらを後の使用のために0.22μmフィルター膜で濾過した。
【0100】
アルミニウム複合アジュバントの調製:
図1Aに示すように、0.25Lの溶液Bを全てが添加されるまで0.25Lの溶液Aに滴加し、それにより亜鉛-アルミニウム複合アジュバントFH-001を得た。得られた亜鉛-アルミニウム複合アジュバントを121℃で60分間のオートクレーブ蒸気滅菌に供し、続いて室温まで冷却した後、2℃~8℃で保管した。
【0101】
調製例9:Zn-エチドロン酸(1/0.25)アジュバントの調製
1:0.25のZn/エチドロン酸モル濃度比に従い、50mLの31.11mM塩化亜鉛溶液を調製し、溶液Aとし、50mLの溶液(7.78mMエチドロン酸+34mM水酸化ナトリウム+7.78mMリン酸水素二ナトリウム)を調製し、溶液Bとした。溶液A及び溶液Bを後の使用のために0.22μmのフィルター膜で濾過した。
【0102】
調製例1を参照して、Zn-エチドロン酸(1/0.25)アジュバント懸濁液を調製した。
【0103】
調製例10:Zn-クロドロン酸(1/0.25)アジュバントの調製
1:0.25のZn/クロドロン酸モル濃度比に従い、50mLの31.11mM塩化亜鉛溶液を調製し、溶液Aとし、50mLの溶液(7.78mMクロドロン酸+36mM水酸化ナトリウム+7.78mMリン酸水素二ナトリウム)を調製し、溶液Bとした。溶液A及び溶液Bを後の使用のために0.22μmのフィルター膜で濾過した。
【0104】
調製例1を参照して、Zn-クロドロン酸(1/0.25)アジュバント懸濁液を調製した。
【0105】
調製例11:Zn-アレンドロン酸(1/0.25)アジュバントの調製
1:0.25のZn/アレンドロン酸モル濃度比に従い、50mLの31.11mM塩化亜鉛溶液を調製し、溶液Aとし、50mLの溶液(7.78mMアレンドロン酸+36mM水酸化ナトリウム+7.78mMリン酸水素二ナトリウム)を調製し、溶液Bとした。溶液A及び溶液Bを後の使用のために0.22μmのフィルター膜で濾過した。
【0106】
調製例1を参照して、Zn-アレンドロン酸(1/0.25)アジュバント懸濁液を調製した。
【0107】
調製例12:Zn-パミドロン酸(1/0.25)アジュバントの調製
1:0.25のZn/パミドロン酸モル濃度比に従い、50mLの31.11mM塩化亜鉛溶液を調製し、溶液Aとし、50mLの溶液(7.78mMパミドロン酸+32mM水酸化ナトリウム+7.78mMリン酸水素二ナトリウム)を調製し、溶液Bとした。溶液A及び溶液Bを後の使用のために0.22μmのフィルター膜で濾過した。
【0108】
調製例1を参照して、Zn-パミドロン酸(1/0.25)アジュバント懸濁液を調製した。
【0109】
本発明を以下で実施例と併せて更に説明する。
【実施例
【0110】
実施例1:ゾレドロン酸亜鉛アジュバントの物理的及び化学的特性の決定
以下の決定方法は、任意のZn/ゾレドロン酸モル比、すなわち、任意のゾレドロン酸亜鉛アジュバント、例えば無機リン酸をドープするか又はAlをドープしたゾレドロン酸亜鉛アジュバントに適用可能であった。
【0111】
(1)アジュバント粒子の形態の観察
ゾレドロン酸亜鉛アジュバントを脱イオン水で50倍希釈した後、日本電子株式会社のJEM-2100透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察を行った。具体的な工程は以下の通りであった:アジュバントサンプルを、炭素膜でコーティングした銅メッシュ上に滴下し、10分間吸着させ、残液を濾紙で拭き取り、サンプルを透過型電子顕微鏡のサンプルチャンバーに送ってサンプルの形態を観察し、更なる分析のために撮影する。
【0112】
実験結果:Zn-ゾレドロン酸(1/0.25)アジュバント及びAl-001-ゾレドロン酸アジュバントが球状のナノコア粒子を有するが、FH-001-ゾレドロン酸アジュバントが海苔状のクラスター形状を示すことを明らかに確認することができた(図2)。
【0113】
(2)pHの決定
試験対象のサンプルを取り、室温で少なくとも30分間平衡化し、SartoriusのpHガラス電極を用いて測定した。
【0114】
標準緩衝液(pH7.00)、標準緩衝液(pH4.01)及び標準緩衝液(pH10.01)を選択し、取扱説明書の要件に従って機器を較正した。
【0115】
「Mode」ボタンを押してpHモードとmVモードとを切り替えることができた。通常、溶液のpH値を決定する場合はpHモードを選択した。
【0116】
ディスプレイにClear bufferと示されるまで「SETUP」ボタンを押した後、「ENTER」ボタンを押して、以前の較正データを確定し、消去した。
【0117】
ディスプレイに緩衝溶液群「4.01、7.00、10.01」が示されるまで「SETUP」ボタンを押した後、「ENTER」ボタンを押して確定した。
【0118】
電極を電極保存液から慎重に取り出し、電極を脱イオン水で十分にすすぎ、よくすすいだ後に表面上の水を濾紙で乾燥させた(電極を拭かないように注意する)。
【0119】
電極を第1の緩衝溶液(pH7.00)に浸漬し、値が安定し、「S」が表示された後に「STANDARDIZE」ボタンを押すことで、機器が自動的に較正された。較正が成功すると、「7.00」及び電極スロープが表示された。
【0120】
電極を第1の緩衝溶液から取り出し、電極を脱イオン水で十分にすすぎ、電極を第2の緩衝溶液(pH4.01)に順に浸漬し、値が安定し、「S」が表示された後に「STANDARDIZE」ボタンを押すことで、機器が自動的に較正された。較正が成功すると、「4.01 7.00」及び「Slope」のメッセージが表示された。Slopeには測定された電極スロープ値が表示され、これは90%~105%の範囲内で許容可能であった。
【0121】
理論値から大きく逸脱している場合にはエラーメッセージ(Err)が表示され、電極を洗浄する必要があり、較正のために上記の工程を繰り返す必要がある。
【0122】
上記の操作を繰り返して、3点目(pH10.01)の較正を完了した。
【0123】
較正が完了した後、電極を脱イオン水で十分にすすぎ、続いて濾紙で軽く乾燥させた。サンプル溶液を均一に振盪し、ガラス電極をサンプル溶液に浸漬し、pH値が1分間で±0.05を超えて変化しなくなった後、読み取り値を確定した。
【0124】
サンプル溶液を均一に振盪し、再び測定を行った。2つのpH値の差が0.1を超えてはならない。2つの読み取り値の平均を試験品のpH値とみなした。
【0125】
実験結果(表1):
Zn-ゾレドロン酸アジュバントのpH範囲は、滅菌前は8.0~9.0であり、滅菌後は6.5~7.0であった。
【0126】
(3)粒径の決定
BeckmanのLS 13320レーザー粒径分析装置の電源を入れ、15分間予熱した。
【0127】
分析装置の制御ソフトウェアを起動し、サンプルセルの閉鎖コンパートメントを開け、サンプルセルをサンプル槽から取り出し、12mLの精製水を添加した。
【0128】
サンプルセルをサンプル槽上に置き、コンパートメントの蓋を閉めた。
【0129】
「start cycle」をクリックし、「Measure Offsets」、「Align」、「Measure Background」を順に選択し、最後に「start」をクリックし、ポップアップダイアログボックスの「OK」をクリックして、ブランクバックグラウンドの較正を開始した。
【0130】
サンプルセルを取り出し、一定量の標準サンプル(分析装置に付属)を添加した。「start cycle」をクリックし、「Measure Loading」、「Enter Sample Info」、「Enter run setting」、「start runs」を順に選択し、最後に「start」をクリックし、標準サンプルの名前をポップアップダイアログボックスに入力し、ソフトウェアの「Obscuration」パラメーターが8%~12%になった時点で「OK」をクリックすることで、標準サンプルの測定を行った。
【0131】
実験データの精度及び信頼性を確保するために、ブランクバックグラウンドを較正する必要があり、各測定を行う前に標準サンプルのサイズを測定する必要がある。
【0132】
サンプルセルの閉鎖コンパートメントを開け、サンプルセルを取り出した。
【0133】
サンプルセル内の標準サンプルを含有する水溶液を捨て、脱イオン水をサンプルセルに添加し、サンプルセルを3回洗浄した。
【0134】
洗浄後に12mLの脱イオン水を添加し、サンプルセルをサンプル槽上に置き、コンパートメントの蓋を閉めた。
【0135】
「start cycle」をクリックし、「Measure Offsets」、「Align」、「Measure Background」を順に選択し、最後に「start」をクリックし、ポップアップダイアログボックスの「OK」をクリックして、ブランクバックグラウンドの較正を開始した。
【0136】
サンプルセルを取り出し、一定量の試験サンプルを添加し、サンプル試験コンパートメントの蓋を開け、サンプルセルをサンプル槽上に置き、コンパートメントの蓋を閉めた。
【0137】
「start cycle」をクリックし、「Enter Sample Info」、「Enter run setting」、「start runs」を順に選択し、最後に「start」をクリックし、標準サンプルの名前をポップアップダイアログボックスに入力し、ソフトウェアの「Obscuration」パラメーターが8%~12%になった時点で「OK」をクリックし、測定されたサンプルの粒径を記録した。
【0138】
実験結果:
ゾレドロン酸亜鉛アジュバントの粒径は0.4μm~30μmであり、粒子の殆どが6μm~7μmのサイズであった。
【0139】
【表1】
【0140】
(4)吸着率の決定
BSA標準の標準曲線のプロット:希釈バッファーとして150mM NaClを使用し、BSA標準(2mg/mL)を階段希釈し、280nmでの吸光度をUV2100 proで検出した。OD280は、0.2~0.8(0.2~1.5に拡大)で高い精度を示した。
【0141】
BSA勾配希釈(EP):希釈バッファーとして150mM NaClを使用し、一定量のBSAサンプルを秤量し、後の使用のためにEPにおいて指定された濃度勾配:0.5mg/mL、1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、5mg/mL、10mg/mLに希釈した。
【0142】
吸着率の測定の使用条件として設定された、BSA:アジュバント=3:1(体積比)でBSAをアジュバントと混合した。アジュバントを均一に振盪した後、実験条件に応じて異なる濃度のBSAと混合し、室温での吸着を1時間行い、その間に振盪を5回行った。遠心分離を13000rpm/分で3分間行った後、後の使用のために上清を採取した。
【0143】
タンパク質濃度の決定:ローリー法を用いてEP中のタンパク質濃度を決定した。本実験では、実際の状況に応じ、UV2100proを用いて280nmでの上清の吸光度を直接決定し、読み取り値を0.2~0.8の間に維持したが、そうでなければ上清を希釈する必要がある。
【0144】
吸着率の算出:吸着率=[1-OD280(上清の希釈係数X)/OD280(希釈率Xの吸着率が0の場合)]×100
【0145】
実験結果は以下の通りであった:
【0146】
【表2】
【0147】
(5)PZCの決定:
測定用の機器:Nanobrook Omni(Brookhaven)
【0148】
実験操作:0.1M NaOH/1%HNOを用い、Zn-ゾレドロン酸(1/0.125)のpHを6.00/5.50/5.00/4.50/4.00/3.50/3.00/2.50/2.00に調整した。
【0149】
電極の不動態化:3mL~4mLのアジュバントをサンプルチューブに添加した。電極を挿入した後、SOPにおけるサイクルを50に設定し、機器を稼働させて電極を不動態化した。
【0150】
サンプル測定:電極を取り出した後、その下端を脱イオン水ですすぎ、続いて対応するサンプルを添加し、SOPにおけるサイクルを15に設定し、測定を3に設定し、pHを各サンプルの対応するpHに設定し、機器を稼働させた。
【0151】
データ処理:異なるpH値において対応するゼータ電位を得て、機器に付属のソフトウェアを実行してPZC値を得た。
【0152】
結果:Zn-ゾレドロン酸(1/0.125)アジュバントのPZCは4.08であった。
【0153】
実施例2:Zn-ゾレドロン酸(1/0.125)アジュバントの亜鉛沈殿率の決定
フレーム法(D2ランプバックグラウンド補正)を用いてゾレドロン酸亜鉛アジュバント中の亜鉛含有量を決定し、決定手順を標準化した。検出機器は、原子吸光分光光度計:株式会社島津製作所のAA6300C(P/N 206-52430)であった。
【0154】
標準溶液及び決定対象のサンプルの調製:標準曲線の作成:亜鉛標準の原濃度は500μg/mLであり、これを0.1M塩酸溶液で希釈して、500ng/mL、1000ng/mL、1500ng/mL、2000ng/mL及び2500ng/mLの標準を得た。
【0155】
Zn-ゾレドロン酸(1/0.125)アジュバントを13000r/分で10分間遠心分離し、上清を除去した。サンプルを決定のために0.1M硝酸溶液で5倍希釈し、ボルテックスミキサーを用いて、よく振盪及び混合した。決定プロセスは以下の通りであった。
【0156】
AA-6300Cの操作方法及びWizAArdソフトウェアの使用法:
電源を入れる:コンピューター、AA-6300Cの電源スイッチ、エアコンプレッサーのスイッチ(圧力を0.35MPaに設定した)、及び換気システムのスイッチを入れた。
【0157】
アセチレン開放:一次圧力が0.5MPaとなり、二次圧力が0.1MPaとなるようにアセチレンバルブをゆっくりと開けた。
【0158】
WizAArdソフトウェアの基本的な操作手順:WizAArdにログインする→要素を選択する→「未接続機器/パラメーター送信」ページで<接続/パラメーター送信>をクリックする→「機器の初期化」ページで設定する→「フレーム分析機器チェックカタログ」の項目の各々を確認し、チェックマークを入れ、<OK>をクリックする→波長(213.86)、スリット幅(0.7)、照明方法(発光)を設定し、Zn中空陰極ランプの実際の位置とプリセット位置とが同一となるように「光学パラメーター」ページの(ランプ位置設定)を設定し、(ランプ点灯)を選択する→ラインサーチ→バーナーの原点位置調整→メニューバーの(パラメーター)を選択する→(パラメーター編集)→照明方法を<BGC-D2>に変更→ラインサーチ→点火:C2H2がオンになり、圧力が要件を満たしていることを確認した後、点火するまでホストのPURGEボタン及びIGNITEボタンを同時に押す→オートゼロ→MRTワークシート上のブランク群(BLK)、標準品(STD)及び試験サンプル(UNK)を設定し、標準の理論濃度及びサンプルの名前を入力し、ネブライザーから伸びたサンプルチューブを通してサンプルを手動で投入し、サンプル量を毎回少なくとも1mLに設定し、(開始)を選択して試験する→フレームを停止する→データを保存し、機器とコンピューターとの接続を切る→シャットダウン。
【0159】
試験結果:
【0160】
【表3】
【0161】
【表4】
【0162】
実施例4:Zn-ゾレドロン酸(1/0.125)アジュバントのゾレドロン酸沈殿率の決定
方法:UV分光光度法、機器:UV800(Beckman coulter)。
【0163】
ゾレドロン酸はイミダゾール環を有し、215nmに最大吸収ピークを有する。紫外分光光度計によって215nmでアジュバントのゾレドロン酸の上清を測定する具体的なプロセスは、以下の通りであった。
【0164】
初めに、0.04mg/mL、0.03mg/mL、0.02mg/mL、0.015mg/mL、0.0075mg/mL、0.00375mg/mLの標準ゾレドロン酸ナトリウム溶液を生理食塩水で調製し、それらのOD215値を215nmの波長で測定し、標準曲線をプロットした。同時に、Zn-ゾレドロン酸(1/0.125)を13000rpmで10分間遠心分離した後、上清を採取した。上清中のゾレドロン酸ナトリウムの吸光度を215nmの波長で測定した。結果は以下の通りであった。
【0165】
【表5】
【0166】
【表6】
【0167】
実施例5:組み換えタンパク質VZV gEワクチンにおけるZn-ゾレドロン酸アジュバントのアジュバント活性の決定
調製したゾレドロン酸亜鉛アジュバント(Zn-ゾレドロン酸としても知られる)を、Zn/ゾレドロン酸モル濃度比が1:0.25又は1:1のアジュバントとして使用した。これらをアジュバントとしてVZV gE抗原と組み合わせて使用し、ともにマウスに筋肉内注射し、産生された特異抗体価を測定した。具体的な方法は以下の通りであった:
実験動物:Balb/Cマウス、6週~8週、5匹のマウス/群、雌性。
薬物濃度:抗原:50μg/ml。
投与量:5μg/50μl/マウス;アルミニウムアジュバント:50μl/マウス;ゾレドロン酸亜鉛アジュバント:50μl/マウス。
実験群:(1)基本アルミニウムアジュバント群(Al-002);(2)Zn-ゾレドロン酸(1/0.25);(3)Zn-ゾレドロン酸(1/1)。
【0168】
免疫プロトコル:免疫の群分けに従った動物の初回免疫の2週間後に、眼窩から血液サンプルを採取して血清中の抗体価を決定した。抗体価は、初回免疫の2週間後に測定した。追加免疫を2週目に行った。追加免疫の2週間後に、眼窩から血液サンプルを採取して血清中の抗体価を決定し、3回目の免疫を行った。2週間後に、血清中の抗体価をELISAによって決定した。
【0169】
酵素結合免疫吸着法(ELISA)による抗体結合価の決定:
1.抗原コーティング溶液:1×PB 7.4緩衝溶液(4.343gのNaHPO・7HO;0.456gのNaHPO)。
2.洗浄溶液:PBST、Beijing WantaiのELISAキット
3.ブロッキング溶液:2×ED(Enzyme Dilution):シーリング及びサンプル希釈のために超純水又は蒸留水で1倍に希釈した1×PBS+0.5%カゼイン+2%ゼラチン+0.1%防腐剤(proclin-300)。
4.発色溶液A:Beijing WantaiのELISAキット。
5.発色溶液B:Beijing WantaiのELISAキット。
6.停止溶液:Beijing WantaiのELISAキット。
【0170】
実験手順:
(1)プレートのコーティング:VZV gE抗原をPB7.4コーティング緩衝溶液で一定濃度、通常は100ng/ウェルに希釈し、96ウェルポリスチレンプレートに100μL/ウェルで添加し、プレートを4℃で一晩コーティングした。
(2)ブロッキング:ウェル内のコーティング溶液を捨て、プレートをPBST洗浄溶液で1回洗浄し、遠心乾燥し、ブロッキング溶液を200μL/ウェルで添加し、ブロッキングを室温で4時間行った。
(3)一定希釈度の血清の添加:ウェル内のブロッキング溶液を捨て、プレートをPBSTで1回洗浄し、遠心乾燥し、最初のウェルに試験対象の血清を150μL/ウェルで添加し、その後のウェルのそれぞれにED希釈剤を100μL/ウェルで添加し、3倍の勾配で希釈し、25℃で1時間インキュベートして反応させた。
(4)酵素標識抗体(GAM-HRP)の添加:ウェル内の血清希釈剤を捨て、プレートをPBSTで5回洗浄し、遠心乾燥し、酵素標識抗体(GAM-HRP、V:V=1:5000)を100μL/ウェルで添加し、25℃で1時間インキュベートして反応させた。
(5)発色:ウェル内の二次抗体を捨て、プレートをPBSTで5回洗浄し、遠心乾燥し、A及びBを同量で混合した100μL/ウェルの発色溶液を添加し、25℃で10分間反応させた。
(6)停止:2M硫酸停止溶液を50μL/ウェルで添加し、反応を停止させた。
(7)プレートの読取り:450nm及び630nmの二波長をマイクロプレートリーダーでの測定波長として設定し、各反応ウェルのOD値を測定した。
【0171】
実験結果を図3に示した。
【0172】
アジュバントを同量の抗原と混合し、マウスを免疫した。免疫、採血、及び血清抗体価の決定を上述の戦略に従って行った。ゾレドロン酸亜鉛アジュバント群では、マウスは1回の免疫注射後に急速かつ強力な発現を示した。2回の免疫注射後に、液性免疫増強の利点がアルミニウムアジュバント群と比較して統計的有意差を示し、3回の免疫注射後も依然として差が有意であった。
【0173】
実施例6:マウス抗体アイソタイプに対する組み換えタンパク質VZV gEと組み合わせたゾレドロン酸亜鉛アジュバントの影響
免疫戦略は実施例5を参照した。
【0174】
実験材料:
1.抗原コーティング溶液:1×PB 7.4緩衝溶液(4.343gのNaHPO・7HO;0.456gのNaHPO)。
2.洗浄溶液:PBST、Beijing WantaiのELISAキット
3.ブロッキング溶液:2×ED(Enzyme Dilution):シーリング及びサンプル希釈のために超純水又は蒸留水で1倍に希釈した1×PBS+0.5%カゼイン+2%ゼラチン+0.1%防腐剤(proclin-300)。
4.発色溶液A:Beijing Wantai社のELISAキット。
5.発色溶液B:Beijing Wantai社のELISAキット。
6.停止溶液:Beijing Wantai社のELISAキット。
【0175】
実験手順:
(1)プレートのコーティング:VZV gE抗原をPB7.4コーティング緩衝溶液で一定濃度に希釈し、96ウェルポリスチレンプレートに100μL/ウェルで添加し、プレートを4℃で一晩コーティングした。
(2)ブロッキング:ウェル内のコーティング溶液を捨て、プレートをPBSTで1回洗浄し、遠心乾燥し、ブロッキング溶液を200μL/ウェルで添加し、ブロッキングを室温で4時間行った。
(3)試験対象の血清の添加:血清抗体アイソタイプ検出に用いた血清:3回の免疫注射の完了の2週間後、すなわち6週目の血清;ウェル内のブロッキング溶液を捨て、プレートをPBSTで1回洗浄し、遠心乾燥し、一定希釈度の試験対象の血清を100μL/ウェルで添加し、25℃で1時間インキュベートして反応させた。
(4)酵素標識抗体の添加:ウェル内の血清希釈剤を捨て、プレートをPBSTで5回洗浄し、遠心乾燥し、各抗体アイソタイプ(IgG1、V:V=1:30000;IgG2a、V:V=1:1000;IgG2b、V:V=1:1000)を特異的に認識する酵素標識抗体を100μL/ウェルで添加し、25℃で1時間インキュベートして反応させた。
(5)発色:ウェル内の酵素標識抗体を捨て、プレートをPBSTで5回洗浄し、遠心乾燥し、A及びBを同量で混合し、3倍希釈した発色溶液を100μL/ウェルで添加し、25℃で10分間反応させた。
(6)停止:50μL/ウェルの2M硫酸停止溶液を添加して、反応を停止させた。
(7)プレートの読取り:450nm及び630nmの二波長をマイクロプレートリーダーでの測定波長として設定し、各反応ウェルのOD値を測定した。
【0176】
実験結果を図4に示した。
【0177】
実施例5に記載の実験手順を用いた。マウスを、組み換えVZV gEタンパク質と組み合わせたゾレドロン酸亜鉛アジュバント又はアルミニウムアジュバントで筋肉内注射によって免疫した。免疫手順は実施例5と同じであった。3回の免疫注射の後、血液サンプルを2週間後に採取し、マウス血清中の各抗体アイソタイプのレベルの結果を図4に示した。アルミニウムアジュバント群と比較して、ゾレドロン酸亜鉛アジュバント群は、より高レベルのIgG2a及びIgG2b抗体アイソタイプを刺激することができ、IgG2a及びIgG2bに対するIgG1の比率は、アルミニウムアジュバント群よりも低く、Th1免疫経路に対して或る特定の刺激効果を有することが示された。
【0178】
実施例7:B型肝炎治療用タンパク質におけるゾレドロン酸亜鉛アジュバントのアジュバント活性の決定
実施例5に記載の実験手順を用いた。マウスを、B型肝炎治療用タンパク質と組み合わせたゾレドロン酸亜鉛アジュバントで筋肉内注射によって免疫し、血清抗体価を決定した。結果を図5に示した。アルミニウムアジュバント群と比較して、ゾレドロン酸亜鉛アジュバント群は、マウスにおいて1回の免疫注射後に急速な発現及び強力な免疫応答を示し、その差は統計的に有意であった。2回の免疫注射後に、液性免疫増強の利点がアルミニウムアジュバント群と比較して依然として有意であり、3回の免疫注射後にアルミニウムアジュバント群よりも僅かに良好であった。
【0179】
実施例8:マウス血清抗体価に対するVZV gEと組み合わせた他のビスホスホン酸亜鉛アジュバントの影響
実施例5に記載の実験手順を用いた。マウスを、組み換えVZV gEタンパク質と組み合わせたビスホスホン酸亜鉛アジュバントで筋肉内注射によって免疫し、血清抗体価を決定した。結果を図6に示した。マウスにおける3回の免疫注射後に、ゾレドロン酸亜鉛アジュバント群は、アルミニウムアジュバント群と比較して液性免疫増強の促進において有意差を示したが、他のビスホスホン酸亜鉛アジュバントの影響には、アルミニウムアジュバントとの有意差はなかった。
【0180】
実施例9:マウス血清抗体価に対するVZV gEと組み合わせたゾレドロン酸亜鉛アジュバントの影響
実施例5に記載の実験手順を用いた。マウスを、VZV gEと組み合わせたゾレドロン酸亜鉛アジュバントで筋肉内注射によって免疫し、血清抗体価を決定した。図7に示すように、アルミニウムアジュバント、複合亜鉛-アルミニウムアジュバント、ゾレドロン酸をドープした複合亜鉛-アルミニウムアジュバント、及びゾレドロン酸亜鉛アジュバントは、抗体増強のレベルにおいて漸増傾向を示し、ゾレドロン酸亜鉛アジュバント群とアルミニウムアジュバント群との比較により有意差が見られた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-12-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1~8:1の亜鉛:ゾレドロン酸のモル濃度比を有する、亜鉛とゾレドロン酸とを含むゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバント。
【請求項2】
前記ゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントが1:1、4:1及び8:1から選択される亜鉛:ゾレドロン酸のモル濃度比を有する、請求項1に記載のゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバント。
【請求項3】
以下のいずれか1つ、
(1)前記ゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントは、更にリン酸塩を1~8:1のZn:リン酸塩のモル濃度比で含む;及び
(2)前記ゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントは、更にリン酸塩を、1.5:1及び4:1から選択されるZn:リン酸塩のモル濃度比で含む;
ことを特徴とする、請求項1に記載のゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバント。
【請求項4】
以下のいずれか1つ、
(1)前記ゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントは、さらにアルミニウムを0.02~1:1のZn:Alのモル濃度比で含む;及び
(2)前記ゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントは、さらにアルミニウムを0.375:1、0.5:1及び0.8:1から選択されるZn:Alのモル濃度比で含む;
ことを特徴とする、請求項1に記載のゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバント。
【請求項5】
前記ゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントが、
a)亜鉛イオンを含有する可溶性塩溶液を準備する工程と、
b)連続沈殿、分離沈殿後の混合、又は共沈の様式で、工程a)の前記可溶性塩溶液とゾレドロン酸、水酸化ナトリウムとを均一に混合するか、又は工程a)の前記可溶性塩溶液とゾレドロン酸、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム溶液とを均一に混合し、ゾレドロン酸亜鉛アジュバントを得る工程と、
を含む方法によって作製される、請求項1に記載のゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバント。
【請求項6】
以下の1以上、
(1)前記可溶性塩溶液が塩酸の溶液を含む;及び
(2)前記方法が、工程b)の混合物を滅菌に供して、後の使用のために2℃~8℃で保管することを更に含む;
ことを特徴とする、請求項5に記載のゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバント。
【請求項7】
以下のいずれか1つ、
(1)前記滅菌が高温及び高圧滅菌技術を用いる滅菌を含む;及び
(2)前記滅菌が、121℃で30分~60分間行われる滅菌を含む;
ことを特徴とする、請求項6に記載のゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバント。
【請求項8】
以下の1つ以上:
(1)前記ゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントが8.0~9.0の滅菌前のpHを有する
(2)前記ゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントが6.0~8.0の滅菌後のpHを有する
(3)前記ゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントが1μm~10μmの粒径を有する
(4)前記ゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントが4.0~11.4の粒子ゼロ電荷点を有する;及び
(5)前記ゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントが80%超のタンパク質吸着率を有する;
ことを特徴とする、請求項1に記載のゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバント。
【請求項9】
前記タンパク質がウシ血清アルブミンを含む、請求項8に記載のゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバント。
【請求項10】
ゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントを作製する方法であって、
a)亜鉛イオンを含有する可溶性塩溶液を準備する工程と、
b)連続沈殿、分離沈殿後の混合、又は共沈の様式で、工程a)の前記可溶性塩溶液とゾレドロン酸、水酸化ナトリウムとを均一に混合するか、又は工程a)の前記可溶性塩溶液とゾレドロン酸、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム溶液とを均一に混合し、ゾレドロン酸亜鉛アジュバントを得る工程と、
を含み、得られるゾレドロン酸亜鉛アジュバントが、1~8:1の亜鉛:ゾレドロン酸のモル濃度比を有する、方法。
【請求項11】
前記得られるゾレドロン酸亜鉛アジュバントが1:1、4:1及び8:1から選択される亜鉛:ゾレドロン酸のモル濃度比を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
以下の1以上、
(1)前記可溶性塩溶液が塩酸の溶液を含む;及び
(2)前記方法が、工程b)の混合物を滅菌に供して、後の使用のために2℃~8℃で保管することを更に含む;
ことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
以下の1以上、
(1)前記滅菌が高温及び高圧滅菌技術を用いる滅菌を含む;及び
(2)前記滅菌が、121℃で30分~60分間行われる滅菌を含む;
ことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
以下の特性1以上、
(1)前記得られるゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントが、8.0~9.0の滅菌前のpHを有する;
(2)前記得られるゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントが、6.0~8.0の滅菌後のpHを有する;
(3)前記得られるゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントが、1μm~10μmの粒径を有する;
(4)前記得られるゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントが、4.0~11.4の粒子ゼロ電荷点;及び
(5)前記得られるゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントが、80%超のタンパク質吸着率を有する;
ことを特徴とする、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記タンパク質がウシ血清アルブミンを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~のいずれか一項に記載のゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントを含むワクチンアジュバント、医薬組成物又は免疫原性組成物。
【請求項17】
抗原と請求項1~のいずれか一項に記載のゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントとを含むワクチン組成物。
【請求項18】
以下の1以上、
(1)前記抗原がタンパク質抗原を含む;及び
(2)前記抗原が水痘帯状疱疹ウイルスgE糖タンパク質抗原を含む;
ことを特徴とする、請求項17に記載のワクチン組成物。
【請求項19】
ワクチンアジュバント、医薬組成物、薬物送達ビヒクル、免疫原性組成物又はワクチン組成物を製造する方法であって、ワクチンアジュバント、医薬組成物、薬物送達ビヒクル、免疫原性組成物又はワクチン組成物に、請求項1~9のいずれか一項に記載のゾレドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントを提供することを含む、方法。
【請求項20】
以下の1以上、
(1)前記ワクチンがタンパク質ワクチンである;及び
(2)前記ワクチンが水痘帯状疱疹ウイルス組み換えタンパク質ワクチンである;
ことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【国際調査報告】