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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-02
(54)【発明の名称】往復圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 27/12 20060101AFI20220526BHJP
【FI】
F04B27/12 L
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560024
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(85)【翻訳文提出日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 EP2020059701
(87)【国際公開番号】W WO2020207937
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】102019109701.0
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019112237.6
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516382847
【氏名又は名称】オーエーテー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ギーゼ
【テーマコード(参考)】
3H076
【Fターム(参考)】
3H076AA06
3H076BB23
3H076CC20
3H076CC99
(57)【要約】
本発明は、駆動軸(10)と、揺動プレート(30)と、駆動プレート(20)とを有する往復圧縮機に関するものであり、駆動プレートは駆動軸(10)と共同回転のために結合され、かつ滑り面(21)を有し、揺動プレート(30)は、湾曲したカム先端(33)を備えたカム(31、32)を有し、カム先端は駆動プレート(20)の滑り面(21)に当接し、かつカム先端の湾曲が第1の接触円(11)内に位置し、第1の接触円は駆動軸(10)の長手軸線(14)に対して平行の平面内に配置され、かつ揺動プレート(30)は少なくとも1つの往復ピストン(25)と結合され、往復ピストンはシリンダ(26)内で案内されている。本発明は、駆動プレート(20)の滑り面(21)が湾曲した輪郭を有し、輪郭の湾曲が第2の接触円(12)内に位置し、第2の接触円は駆動軸(10)の長手軸線(14)に対して平行な平面内に配置され、第1の接触円(11)は第2の接触円(12)よりも小さい半径を有し、かつシリンダ(26)の終端面(27)と往復ピストン(25)の終端面近傍の死点との間の全てのデッドスペース間隔diにおえる二乗平均平方根RMSはが、0°~23°の間の揺動プレート(30)の傾斜角度範囲での全ての傾斜角度において、最大で0.28mm、特に最大で0.02mmであることを、特徴としている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸(10)と、揺動プレート(30)と、駆動プレート(20)とを有する往復圧縮機であって、
前記駆動プレートは、共同回転のために前記駆動軸(10)と結合され、かつ滑り面(21)を有し、
前記揺動プレート(30)は、湾曲したカム先端(33)を有するカム(31)を備え、前記カム先端は前記駆動プレート(20)の前記滑り面(21)に当接し、かつ前記カム先端の湾曲は第1の接触円(11)内に位置し、該第1の接触円は前記駆動軸(10)の長手軸線(14)に対して平行の平面内に配置され、
前記揺動プレート(30)は、少なくとも1つの往復ピストン(25)と結合され、該往復ピストンはシリンダ(26)内で案内されている、往復圧縮機において、
前記駆動プレート(20)の前記滑り面(21)は、湾曲した輪郭を有し、該輪郭の湾曲は第2の接触円(12)内に位置し、該第2の接触円(12)は前記駆動軸(10)の長手軸線(14)に対して平行な平面内に配置され、
前記第1の接触円(11)は前記第2の接触円(12)よりも小さい半径を有し、かつ前記シリンダ(26)の終端面(27)と往復ピストン(25)の終端面近傍の死点との間の全てのデッドスペース間隔diにおける二乗平均平方根RMSは、0°~23°の間の前記揺動プレート(30)の傾斜角度範囲での全ての傾斜角度において、最大で0.28mm、特に最大で0.02mmである、ことを特徴とする往復圧縮機。
【請求項2】
前記デッドスペース間隔dが、最大で0.3mm、特に最大で0.06mmである、ことを特徴とする請求項1に記載の往復圧縮機。
【請求項3】
前記カム先端(33)と前記滑り面(21)の間に線接触が存在し、前記線接触が負荷に基づいて接触半径RHERTZを有するヘルツ面圧へ移行し、前記接触半径RHERTZが少なくとも1mmかつ最大で10mmである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の往復圧縮機。
【請求項4】
前記滑り面(21)は、前記カム先端(33)へ向かって凸状に湾曲した輪郭を有している、ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の往復圧縮機。
【請求項5】
前記滑り面(21)の前記輪郭は、直線的な滑り面部分(21b)へ移行する、ことを特徴とする請求項4に記載の往復圧縮機。
【請求項6】
前記駆動軸(10)は、軸孔(34)を有する前記揺動プレート(30)によって案内され、前記軸孔(34)と前記駆動軸(10)との間の接触輪郭は円形の横断面輪郭を有する、ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の往復圧縮機。
【請求項7】
前記軸孔(34)は2つの円筒状の貫通孔(35、36)によって形成され、該貫通孔(35、36)は前記揺動プレート(30)の内部で交差する、ことを特徴とする請求項6に記載の往復圧縮機。
【請求項8】
特に交差する前記貫通孔(35、36)の領域内で、前記軸孔(34)は湾曲した内側面(37)を有し、該内側面(37)は前記駆動軸(10)に当接し、かつ前記内側面の湾曲は第3の接触円(13)上に位置し、該第3の接触円は前記駆動軸(10)の長手軸線(14)と共通の平面内に配置されている、ことを特徴とする請求項7に記載の往復圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載された往復圧縮機に関する。この種の往復圧縮機は、たとえば特許文献1から知られている。
【背景技術】
【0002】
この既知の往復圧縮機は、駆動軸を有し、その駆動軸と駆動プレートが共同回転のために結合されている。さらに揺動プレートが設けられており、それが滑り軸受を介して複数の往復ピストンと結合されている。揺動プレートは、軸孔を有しており、その軸孔に駆動軸が挿通されている。揺動プレートにカムが設けられており、そのカムが湾曲したカム先端を有し、そのカム先端が駆動プレートの滑り面に当接する。カム先端の湾曲が接触円内に位置し、その接触円が駆動軸の長手軸線と共通の平面内に配置されている。それに対して、揺動プレートの設定角度を調節するために、カム先端がその上で滑り移動する、滑り面は、直線的に形成されており、もしくは平面を形成するが、その平面は駆動軸に関して斜めに当接する。
【0003】
この既知の往復圧縮機においては、揺動プレートの設定角度が変化した場合に、ピストンストロークが著しく変化することが、明らかにされている。特にそれによって、往復ピストン容積の減少がもたらされ、その結果より高いデッド容積もしくはデッドスペース容積が生じる。このことが特に、すべての駆動状態において、往復ピストンの上方の死点とシリンダの終端面との間の比較的大きい間隔(デッドスペース間隔)を介して表れる。したがって全体として既知の往復圧縮機の効率が損なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1148241(A2)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の課題は改良された効率を有する往復圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この課題は請求項1の対象によって解決される。
【0007】
具体的には、本発明は、駆動軸、揺動プレート及び駆動プレートを有する往復圧縮機を提供するという考えに基づいており、その場合に駆動プレートが駆動軸と共同回転のために結合されており、かつ滑り面を有している。揺動プレートが湾曲したカム先端を備えたカムを有しており、そのカム先端が駆動プレートの滑り面に当接する。カム先端の湾曲が第1の接触円内に位置し、その第1の接触円が駆動軸の長手軸線に対して平行な平面内に配置されている。揺動プレートが少なくとも1つの往復ピストンと結合されており、その往復ピストンがシリンダ内で案内されている。本発明によれば、駆動プレートの滑り面が湾曲した輪郭を有しており、その湾曲が第2の接触円内に位置し、それが、駆動軸の長手軸線に対して平行な平面内に配置されている。
【0008】
第1の接触円は第2の接触円よりも小さい半径を有している。シリンダの終端面と往復ピストンの終端面近傍の死点との間のすべてのデッドスペース間隔における二乗平均平方根RMSは、0°~23°の間の揺動プレートの傾斜角度範囲における全ての傾斜角度において、最大で0.28mm、特に最大で0.2mmである。
【0009】
したがって、本発明においては、カム先端の湾曲に加えて、駆動プレートの滑り面が湾曲して形成されるので、揺動プレートの揺動角度が変化した場合に、従来技術から知られている直線的な平坦な滑り面によって可能であるよりも、ピストンスストロークのより激しい変化が達成される。測定によって、このようにして往復圧縮機のデッドスペース容積もしくは運動学的なデッド容積が減少されることが、明らかにされている。
【0010】
具体的に本発明は、駆動プレートの滑り面の湾曲を、カム先端の接触円よりも大きい半径を有する第2の接触円によって定めることにより、往復圧縮機の効率の改良を達成する。その場合に接触円の半径は、デッドスペース間隔が二乗平均平方根において、0.28の値を上回らないように、選択されている。
【0011】
二乗平均平方根を求めるために、デッドスペース間隔は、0°~23°の傾斜角度範囲内で与えられた全ての角度(“0”を含む自然数)をそれぞれ二乗でセットされ、その二乗が加算されて、全部の角度の総数によって割られて、最終的にこの結果から平方根が得られる。言い換えると、二乗平均平方根RMSは、以下のように計算される:
【数1】
「d」はデッドスペース間隔を、「n」は離散的な傾斜角度の総数を表す。デッドスペース間隔は、シリンダの終端面と往復ピストンの終端面近傍の(上方の)死点との間の間隔もしくは距離に相当する。傾斜角度範囲は、駆動中に揺動プレートがとることのできるすべての傾斜角度の量を記述する。好ましくは揺動プレートは、駆動中に、0°の最小の傾斜角度(揺動プレートは駆動軸に対して垂直となる)と23°の最大の傾斜角度(揺動プレートは駆動軸に対して斜めに方向づけされる)との間で揺動する。
【0012】
本発明において、揺動プレートの傾斜角度範囲内の各角度において、デッドスペース間隔が最大で0.3mm、特に最大で0.06mmであると、特に効果的である。したがって特に、揺動プレートのすべての駆動状態においてデッドスペース間隔が小さく抑えられる。したがって、本発明に係る往復圧縮機はすべての駆動状態において、ストローク容積の高い利用とそれに伴って特に高い効率を達成する。特にデッド容積の削減によって、従来技術に比較して小さいエネルギー投入において高い圧縮出力がもたらされる。これは特に、ハイブリッド電気又は全電気の原動機付き車両、特に自動車のための車両空調設備内で往復圧縮機を駆動するために効果的である。というのは、より少ないエネルギー需要が、車両の電気的な走行距離を増大させるからである。
【0013】
本発明に係る往復圧縮機において、好ましい実施形態においては、カム先端と滑り面の間に線接触をもたらすことができ、その線接触が負荷に基づいて接触半径RHERTZを有するヘルツ面圧へ移行し、その場合にこの接触半径RHERTZは、少なくとも1mmであり、最大で10mmである。特に接触半径は1mmと8mmの間、好ましくは1.5mmと5mmの間、さらに好ましくは1.5mm~3mmの間とすることができる。この種の接触半径においては、一方で揺動カムと滑り面の間の良好な接触が生じ、他方では揺動プレートの揺動のための摩擦が過度に高くならないことが、明らかにされている。この兼ね合いが、往復圧縮機の効率のさらなる向上をもたらす。
【0014】
本発明の特に好ましい実施形態において、滑り面はカム先端へ向かって凸状に湾曲した輪郭を有している。したがってこの滑り面は、駆動プレートの中心平面から始まって外側へ向かって湾曲している。言い換えると、好ましくは第1の接触円と第2の接触円が互いに対して凹状であり、もしくはそれぞれの湾曲が反対向きに配置されている。したがってカムと滑り面の間の接触面積は、最小となる。このようにして、長手軸方向における揺動プレートの中心平面と少なくとも1つの往復ピストンの長手軸線との間の交点の移動を減少させることができる。それによって特に小さいデッドスペース間隔とそれに伴って往復圧縮機の高い効率が生じる。
【0015】
滑り面の輪郭は、特に上述した湾曲から始まって接線状に、直線的な滑り面部分へ移行することができる。特に滑り面は上方の湾曲した滑り面部分と下方の直線的な滑り面部分とを有することができ、その場合に直線的な滑り面部分は湾曲した滑り面部分から接線状に出ている。滑り面は、湾曲した滑り面部分と直線的な滑り面部分のみからなることができる。このように2つに分かれた輪郭を有する滑り面は、デッドスペース間隔を傾斜角度全体にわたって減少させ、かつそのようにして往復圧縮機の高い効率に寄与するために、特に適していることが、明らかにされている。
【0016】
本発明の他の形態においては、さらに、軸孔を有する揺動プレートが駆動軸によって案内されており、その場合に軸孔と駆動軸との間の接触輪郭が円形の横断面輪郭を有している。言い換えると、揺動プレートが軸孔を有している。駆動軸は揺動プレートの軸孔を通って延びており、そのようにして揺動プレートのガイドを形成している。
【0017】
好ましくは、軸孔が2つの円筒状の貫通孔によって形成されており、それらが揺動プレートの内部で交差している。
【0018】
特に軸孔は、2つの貫通孔が同一の中心点を通って斜めに案内されることによって、形成することができる。その結果、もたらされる軸孔は長円形の横断面形状を有している。すなわち軸孔は、揺動プレートの内部へ向かって細くなる2つの切り欠きを有している。これらの貫通孔は、ボーリング又はフライス加工によって形成することができる。代替的に揺動プレートは鋳造することもでき、その場合に軸孔は鋳造プロセスにおいて形成される。その限りにおいて、「ボーリング」という概念は、この出願の枠内において、必ずしも形成プロセスの記述と考える必要はなく、一般的に構成部分内の切欠き又は貫通孔を表す。
【0019】
好ましくは、軸孔は湾曲した内側面を有することができ、その内側面が駆動軸に当接し、かつその内側面の湾曲が第3の接触円上に位置し、その第3の接触円は駆動軸の長手軸線と共通の平面内に配置されている。湾曲した内側面は、特に交差する貫通孔の領域内に設けることができる。したがって軸孔の内側輪郭は、軸孔と駆動軸との間のまっすぐな接触ラインではなく、むしろ湾曲した接触面もしくは接触輪郭を形成する。それが、揺動プレートの改良された揺動挙動をもたらす。湾曲した内側輪郭は、軸孔の後加工によって、特にフライス加工、研磨、ドリリングによって形成することができ、あるいは-特に鋳造によって揺動プレートを形成する場合に-形成する際に直接形成することができる。
【0020】
以下、添付の図式的な図面を参照しながら実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、好ましい実施例に基づいて、本発明に係る往復圧縮機を示す縦断面図である。
図2図2は、好ましい実施例に基づいて、揺動プレートと、駆動プレートと、駆動軸とを有する本発明に係る往復圧縮機を示す側面図である。
図3図3図2に基づくパワートレインの詳細を示す図である。
図4図4は、本発明に係る往復圧縮機のデッドスペース間隔を従来技術に基づく往復圧縮機に対して比較するためのダイアグラムである。
図5図5は、図5に基づく揺動プレートの軸孔を通る縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1には、往復圧縮機が示されており、それがハウジング15を有している。ハウジング15内に駆動軸10が軸承されている。この駆動軸10が駆動プレート20を支持しており、その駆動プレートが駆動軸10と共同回転のために結合されている。さらに揺動プレート30が設けられており、その揺動プレートが軸孔34を有し、その軸孔に駆動軸10が挿通されている。揺動プレート30は、軸孔34を介して複数の往復ピストン25と力を伝達するように係合している。
【0023】
揺動プレート30がカム31を有しており、そのカムがカム先端33を有している。カム先端33は滑り面21に当接するが、その滑り面は図1においては駆動プレート20のカウンターカム22によって覆われている。滑り面21は、駆動プレート20と一体的に形成されている。
【0024】
一般的に、揺動プレート30は全部で2つのカム31を有することができる。駆動プレート20は、同様に2つのカウンターカム22を有することができる。揺動プレート30のカム31は、それぞれその内側面によって駆動プレート20のカウンターカム22に当接する。したがって駆動プレート20のカウンターカム22は、揺動プレート30の2つのカム31の間へ延びることができる。
【0025】
各カム31は、好ましくはそれぞれ駆動プレート20の滑り面21に当接する。それぞれの滑り面21とそれぞれのカム31との間の接触面は、異なる大きさとなることができる。特に、カム31は異なる材厚を有することができるので、それぞれのカム31と滑り面21との間の接触面は異なる大きさとなることができる。好ましくは、最も多くの力を吸収するカム31が、より大きい材厚で形成されている。より小さい負荷がかかるカム31は、より小さい材厚を有することができ、したがって往復圧縮機の質量の削減に寄与することができる。
【0026】
図2は、明らかにするために、本発明に係る往復圧縮機の好ましい実施形態のパワートレインを縦断面で示している。このパワートレインは、駆動軸10、駆動プレート20および揺動プレート30を有している。図2からは、駆動プレート20と揺動プレート30が互いに対してどのように配置されているかが、よく認識できる。揺動プレート30が軸孔34を有しており、その軸孔は、揺動プレート30の内部で交差する2つの貫通孔35、36によって形成されている。したがって揺動プレート30にとって、あらかじめ定められた角度範囲内で揺動角度もしくは傾斜角度を変化させることが、可能である。これは、好ましくは、往復ピストン内の背圧を用いて行われる。揺動プレート30が揺動する場合に、カム先端33が滑り面21に沿って滑り移動し、それも個々の往復ピストンのストロークに影響を与える。
【0027】
図2に基づく「詳細A」を示す、図3の拡大図において、カム31がカム先端33を有し、それが湾曲を有していることが、明らかである。具体的には、カム先端33が前方の面を有し、それが円半径もしくは第1の接触円11に沿って湾曲されている。第1の接触円11は、図3において明らかにするために、破線で記入されている。
【0028】
図3においては、駆動プレート20が滑り面21を有し、その上でカム先端33が滑り移動することが、良好に認識できる。滑り面21は、第2の接触円12に沿って延びる湾曲を有している。第2の接触円12は、同様に、駆動軸10の長手軸線14に対して平行に方向づけされた平面内に位置している。
【0029】
具体的には、滑り面21が湾曲した滑り面部分21aを有している。この湾曲した滑り面部分21aは、滑り面21の上方の部分を形成する。滑り面21の上方の部分もしくは湾曲した滑り面部分21aに、駆動軸10の方向に滑り面21の下方の部分が連続しており、その部分は直線的な滑り面部分21bによって形成されている。直線的な滑り面部分21bは、湾曲した滑り面部分21aから接線状に出て、駆動プレート20の中心平面に関して斜めに延びている。特に直線的な滑り面部分21bは、駆動プレート20の中心平面に対して滑り面角度α(図面では「alfa」と称される)で方向づけされている。滑り面角度αは、好ましくは最大で45°である。
【0030】
揺動プレート30が揺動する場合に、カム先端33が滑り面21に沿って実質的に上方へ向かって、もしくは下方へ向かって移動する。その場合に滑り面21の湾曲によって、もしくは湾曲した滑り面部分21aによって、それぞれの往復ピストン25のピストンストロークへ、従来技術から知られている、直線的な滑り面21におけるのとは異なる作用が得られる。
【0031】
図3においては、第2の接触円12の半径R2が第1の接触円11の半径R1よりもずっと大きいことも、よく認識できる。具体的には、第2の接触円12の半径R2は第1の接触円11の半径R1よりも少なくとも8倍、特に少なくとも9倍、特に少なくとも10倍、大きくすることができる。いずれにしても、滑り面21とカム先端33の湾曲は、揺動プレート30の傾斜角度範囲全体にわたって、できる限り小さいデッドスペース間隔dしか生じないように、互いに調整されている。
【0032】
好ましくはカム先端33と滑り面21との間の接触によって、ヘルツ面圧が生じ、それが接触半径、したがって互いに対向する押圧された面の半径、を形成する。ヘルツ面圧の半径、すなわち接触半径RHERTZは、好ましくは、第1と第2の接触円11、12の半径R1、R2に関連し、以下のように計算される。
【数2】
【0033】
接触半径RHERTZが、最大で20mm、特に最大で10mm、特に最大で5mm、特に最大で4.8mmであると、効果的である。
【0034】
図4には、揺動プレート30の傾斜角度範囲にわたって、デッドスペース間隔dの推移が図示されている。縦軸にはデッドスペース間隔、すなわちシリンダ26の終端面近傍の、もしくは上方の死点(Top Dead Centre- TDC)と終端面との間の間隔が記載されている。横軸は、揺動プレート30の傾斜角度を示している。このダイアグラムは、本発明に係る往復圧縮機におけるデッドスペース間隔の推移(実線)を従来技術に基づく2つの往復圧縮機のデッドスペース間隔の推移(点線もしくは破線)に対比させている。本発明に係る往復圧縮機が0°から23°の傾斜角度範囲全体にわたって、既知の往復圧縮機よりもずっと小さいデッドスペース間隔とその結果としてずっと小さいデッドスペース容積を有することが、よく認識できる。
【0035】
特に、0°~23°の傾斜角度範囲におけるデッドスペース間隔が0.1より小さく、特に0.05より小さいことを認識できる。さらにその傾斜角度範囲におけるデッドスペース間隔の二乗平均平方根RMSが、従来技術におけるよりも小さいことが、理解できる。この二乗平均平方根RMSは、離散的な傾斜角度における(0を含む自然数よって表される傾斜角度における、すなわち傾斜角度0°、1°、2°、・・・22°における)個々のデッドスペース間隔の二乗が加算され、傾斜角度の総数によって割り算されて、結果から最終的に平方根が作成されることにより、求められる。数学的に表現すると、すべてのデッドスペース間隔diにおける二乗平均平方根RMSは、以下のように計算される。
【数3】
【0036】
図5には、軸孔34を通る縦断面が示されており、その場合にその拡大図のみが示されている。揺動プレート30が軸孔34を有しており、その軸孔は、軸孔34の内部で交差する2つの貫通孔35、36によって形成されている。具体的には、軸孔34は、好ましくは2つの円筒状の貫通孔35、36が十文字に交差することによって形成されている。具体的には、揺動プレート内へ、2つの円筒状の貫通孔35、36が駆動軸10の長手軸線14に対してそれぞれ1つの孔角度のもとで斜めに形成されて、揺動プレート30の内部で交差する。その場合に各貫通孔35、36は、他の孔角度のもとで方向づけされている。第1の貫通孔35は、駆動軸10の長手軸線14に対して孔角度β(図面では「beta」と称される)を有している。第2の貫通孔36は、駆動軸10の長手軸線14に対して孔角度γ(図面では「gamma」と称される)を有している。第2の貫通孔36の孔角度γは、第1の貫通孔35の孔角度βよりも大きくすることができる。2つの斜めに方向づけされた貫通孔35、36によって、軸孔34が生じ、その軸孔が中心平面内でその最小の横断面直径を有している。
【0037】
軸孔34は、必ずしもボーリング、フライス方法又はその他の材料除去方法、特に切削方法によって形成される必要はない。揺動プレート30を形成するための鋳造方法の枠内で軸孔34を形成することも可能であって、その場合に上述した内側輪郭が形成される。
【0038】
一般的に、軸孔34の内側輪郭は、揺動プレート30の内部へ向かって細くなる内側面37を有することができる。中心平面の領域内で、内側面37が好ましくは湾曲を有する接触輪郭を形成し、その湾曲が軸孔34の長手方向に、特に駆動軸10の長手軸線14に対して平行に延びている。その場合に内側面37の湾曲は、第3の接触円13の円ライン上に位置する。第3の接触円13は、半径R3を有することができ、その半径が第1の接触円11の半径R1に実質的に相当する。
【0039】
図5においてよく認識できるように、軸孔34の内側輪郭によって、揺動プレート30があらかじめ定められた角度まで揺動可能もしくは傾斜可能となることができる。その場合に、湾曲した内側面37により、傾斜もしくは揺動がきわめてソフトに行われる。湾曲した内側面37は、揺動プレート30が鋳造される場合に、直接鋳造プロセス内で形成することができる。これは、鋳造型が適切な円弧形状の湾曲を定めることによって、行うことができる。揺動プレート30の軸孔34が、切削方法によって、特に2つの貫通孔35、36のボーリング又はフライス加工によって形成される場合には、湾曲した内側面37を軸孔34の後加工によって形成すると、効果的である。これはたとえば、研磨プロセス、フライスプロセス又はドリルプロセスによって行うことができる。
【0040】
この出願の枠内で、湾曲方向を定めるために、第1の接触円11と第2の接触円12は、それぞれ、駆動軸10の長手軸線14に対して平行に方向づけされた平面内に位置する。第3の接触円13は、駆動軸10を通る長手断面平面内に位置する。
【符号の説明】
【0041】
10 駆動軸
11 第1の接触円
12 第2の接触円
13 第3の接触円
14 長手軸線
15 ハウジング
20 駆動プレート
21 滑り面
21a 湾曲した滑り面部分
21b 直線的な滑り面部分
22 カウンターカム
23 滑り軸受
25 往復ピストン
26 シリンダ
27 終端面
30 揺動プレート
31 カム
33 カム先端
34 軸孔
35 第1の貫通孔
36 第2の貫通孔
37 内側面
α 滑り面角度
β 第1の貫通孔35の孔角度
γ 第2の貫通孔36の孔角度
d デッドスペース間隔
1 第1の接触円の半径
2 第2の接触円の半径
3 第3の接触円の半径
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】