(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-02
(54)【発明の名称】光シート顕微鏡および試料空間内の物体の屈折率を特定するための方法
(51)【国際特許分類】
G02B 21/00 20060101AFI20220526BHJP
G02B 21/06 20060101ALI20220526BHJP
G02B 7/28 20210101ALI20220526BHJP
G02B 7/32 20210101ALI20220526BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20220526BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20220526BHJP
G01N 21/41 20060101ALN20220526BHJP
【FI】
G02B21/00
G02B21/06
G02B7/28 J
G02B7/32
G03B13/36
G01B11/00 B
G01N21/41 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560030
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(85)【翻訳文提出日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2020058256
(87)【国際公開番号】W WO2020207795
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】102019109832.7
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ヴァイス
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シューマン
(72)【発明者】
【氏名】ロンヤ キャペルマン
【テーマコード(参考)】
2F065
2G059
2H011
2H052
2H151
【Fターム(参考)】
2F065AA06
2F065AA30
2F065BB17
2F065DD04
2F065FF04
2F065GG02
2F065HH05
2F065JJ02
2F065JJ03
2F065PP24
2F065QQ03
2F065QQ24
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065UU07
2G059AA02
2G059AA05
2G059EE02
2G059FF03
2G059JJ11
2G059JJ13
2G059KK01
2G059MM09
2G059MM10
2H011BA11
2H052AA07
2H052AF25
2H151BA26
2H151BA27
2H151CB01
2H151CC02
(57)【要約】
光シート顕微鏡は、試料空間を含み、試料空間内にカバーガラスまたは載物ガラスを配置することができ、カバーガラスまたは載物ガラスは、部分反射性の界面を画定する表面を有し、光シート顕微鏡は、カバーガラスまたは載物ガラスの方を向いた対物レンズを有する光学システムと、光シートを生成するように構成された照明装置と、センサと、プロセッサとを含む。光シート顕微鏡は、測定量を検出するための測定装置を形成する。測定装置は、光シートを、光学システムによってカバーガラスまたは載物ガラス上に斜めの入射で向けるように構成されており、界面で光シートが部分的に反射されることにより、反射光束を生成するように構成されており、反射光束を光学システムによって受信して、センサに向けるように構成されている。センサは、反射光束の強度および/または入射位置を検出するように構成されている。プロセッサは、反射光束の検出された強度および/または入射位置に基づいて、測定量を特定するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光シート顕微鏡(100,200,300,400)であって、
前記光シート顕微鏡(100,200,300,400)は、試料空間(116)を含み、前記試料空間(116)内にカバーガラスまたは載物ガラス(118)を配置することができ、前記カバーガラスまたは載物ガラス(118)は、部分反射性の界面を画定する表面(138,140)と、部分反射性のさらなる界面を画定するさらなる表面(138,140)と、を有し、2つの界面は、対物レンズ(120)からそれぞれ異なる距離を置いて配置されており、
前記光シート顕微鏡(100,200,300,400)は、
前記カバーガラスまたは載物ガラス(118)の方を向いた対物レンズ(120)を有する光学システム(107)と、
光シート(134)を生成するように構成された照明装置(102)と、
センサ(150)と、
プロセッサ(110)と、
を含み、
前記2つの界面は、前記カバーガラスまたは載物ガラス(118)の2つの表面に隣接する2つの光学媒体(117,119)が前記試料空間(116)内に装着可能であることによって形成されており、
前記光シート顕微鏡(100,200,300,400)は、測定量を検出するための測定装置を形成し、
前記測定装置は、
前記光シート(134)を、前記光学システム(107)によって前記カバーガラスまたは載物ガラス(118)上に斜めの入射で向け、
前記界面で前記光シート(134)が部分的に反射されることにより、反射光束(142,142a,142b)を生成し、
前記さらなる界面で前記光シート(134)が部分的に反射されることにより、さらなる反射光束(142,142a,142b)を生成し、
2つの反射光束(142,142a,142b)を前記光学システム(107)によって受信して、前記センサ(150)に向ける、
ように構成されており、
前記センサ(150)は、前記2つの反射光束(142,142a,142b)の強度および/または入射位置を検出するように構成されており、
前記プロセッサは、前記2つの反射光束(142,142a,142b)の検出された前記強度および/または前記入射位置に基づいて、前記測定量を特定するように構成されており、
前記プロセッサ(110)は、前記2つの反射光束(142,142a,142b)の検出された前記強度に基づいて、前記2つの光学媒体(117,119)のうちの一方の光学媒体の屈折率を、前記測定量として特定するように構成されている、
光シート顕微鏡(100,200,300,400)。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記2つの反射光束(142,142a,142b)のうちの一方の検出された前記入射位置に基づいて、前記対物レンズ(120)の光軸(O2)に沿った、前記対物レンズ(120)から前記カバーガラスまたは載物ガラス(118)までの距離を、前記測定量として特定するように構成されている、
請求項1記載の光シート顕微鏡(100,200,300,400)。
【請求項3】
前記カバーガラスまたは載物ガラス(118)の前記2つの表面は、互いに平面平行に形成されている、
請求項1または2記載の光シート顕微鏡(100,200,300,400)。
【請求項4】
前記プロセッサ(110)は、前記2つの反射光束(142,142a,142b)の検出された前記入射位置に基づいて、前記カバーガラスまたは載物ガラス(118)の厚さを、前記測定量として特定するように構成されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の光シート顕微鏡(100,200,300,400)。
【請求項5】
一方の前記光学媒体(117)は、前記カバーガラスまたは載物ガラス(118)の前記2つの表面のうちの一方の表面に隣接する、試料のための包埋媒体である、
請求項1から4までのいずれか1項記載の光シート顕微鏡(100,200,300,400)。
【請求項6】
他方の前記光学媒体(119)は、前記カバーガラスまたは載物ガラス(118)のうちの他方の表面および前記対物レンズ(120)に隣接する浸漬媒体である、
請求項1から5までのいずれか1項記載の光シート顕微鏡(100,200,300,400)。
【請求項7】
前記測定装置は、前記光シート(134)により、前記界面において測定パターンを生成し、前記測定パターンを、前記反射光束(142,142a,142b)によって前記センサ(150)上に結像するように構成されており、
前記センサ(150)は、前記測定パターンを空間強度分布(V)の形態で検出するように構成されており、
前記プロセッサ(110)は、前記空間強度分布(V)から前記反射光束(142,142a,142b)の強度を特定するように構成されている、
請求項1から6までのいずれか1項記載の光シート顕微鏡(100,200,300,400)。
【請求項8】
前記センサ(150)は、エリア検出器またはライン検出器である、
請求項1から7までのいずれか1項記載の光シート顕微鏡(100,200,300,400)。
【請求項9】
前記光シート顕微鏡(100,200,300,400)は、
試料から発せられた検出光を検出するためのさらなるセンサ(202)を有する検出装置(106)と、
前記反射光束(142,142a,142b)を前記センサ(150)に向け、かつ、前記検出光を前記さらなるセンサ(202)に向けるように構成されたビームスプリッタユニット(204)と、
を含む、
請求項1から8までのいずれか1項記載の光シート顕微鏡(100,200,300,400)。
【請求項10】
前記プロセッサ(110)は、メモリ(154)を含み、前記メモリ(154)内に、前記測定量を特定するためのパラメータを格納することができる、
請求項1から9までのいずれか1項記載の光シート顕微鏡(100,200,300,400)。
【請求項11】
前記光シート顕微鏡(100,200,300,400)は、前記反射光束(142,142a,142b)に対して非透過性であって、かつ、前記センサ(150)の上流に接続可能なフィルタ(148)を含む、
請求項1から10までのいずれか1項記載の光シート顕微鏡(100,200,300,400)。
【請求項12】
前記光シート顕微鏡(100,200,300,400)は、前記光シート(134)を走査軸に沿って移動させるように構成された走査要素(132)を含む、
請求項1から11までのいずれか1項記載の光シート顕微鏡(100,200,300,400)。
【請求項13】
前記測定装置は、前記光シート(134)を、前記対物レンズ(120)によって前記カバーガラスまたは載物ガラス(118)上に斜めの入射で向けるように構成されており、かつ/または、
前記測定装置は、前記反射光束(142,142a,142b)を、前記対物レンズ(120)によって受信して、前記センサ(150)に向けるように構成されている、
請求項1から12までのいずれか1項記載の光シート顕微鏡(100,200,300,400)。
【請求項14】
前記光シート顕微鏡(100,200,300,400)は、伝送光学系(104)を含み、
前記伝送光学系(104)は、中間画像空間内で前記照明装置(102)によって生成された前記光シート(134)を試料内に結像するように構成されている、
請求項1から13までのいずれか1項記載の光シート顕微鏡(100,200,300,400)。
【請求項15】
光シート顕微鏡(100,200,300,400)を用いて測定量を検出するための方法であって、
前記光シート顕微鏡(100,200,300,400)の試料空間(116)内にカバーガラスまたは載物ガラス(118)が配置され、前記カバーガラスまたは載物ガラス(118)は、部分反射性の界面を画定する表面(138,140)と、部分反射性のさらなる界面を画定するさらなる表面(138,140)と、を有し、2つの界面は、対物レンズ(120)からそれぞれ異なる距離を置いて配置されており、
光シート(134)は、前記カバーガラスまたは載物ガラス(118)上に斜めの入射で向けられ、
前記界面で前記光シート(134)が部分的に反射されることにより、反射光束(142,142a,142b)が生成され、
前記さらなる界面で前記光シート(134)が部分的に反射されることにより、さらなる反射光束(142,142a,142b)が生成され、
前記2つの界面は、前記カバーガラスまたは載物ガラス(118)の2つの表面に隣接する2つの光学媒体(117,119)が前記試料空間(116)内に導入されることによって形成されており、
前記2つの反射光束(142,142a,142b)が受信されて、センサ(150)に向けられ、
前記2つの反射光束(142,142a,142b)の強度および/または入射位置が検出され、
前記反射光束(142,142a,142b)の検出された前記強度および/または前記入射位置に基づいて、前記測定量が特定され、
前記2つの反射光束(142,142a,142b)の検出された前記強度に基づいて、前記2つの光学媒体(117,119)のうちの一方の光学媒体の屈折率が、前記測定量として特定される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光シート顕微鏡に関する。本発明はさらに、光シート顕微鏡を用いて測定量を検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光シート顕微鏡では、試料の結像は、カバーガラスまたは載物ガラスが光シート顕微鏡の試料空間内の試料と結像対物レンズとの間に配置されている場合には、カバーガラスまたは載物ガラスによる影響を受ける。試料の結像は、カバーガラスまたは載物ガラスの両側に隣接する2つの光学媒体による影響も受ける。これらの光学媒体は、例えば、カバーガラスおよび対物レンズの両方に隣接する浸漬媒体と、カバーガラスのうちの、対物レンズとは反対側を向いた表面に隣接する、試料を包囲する包埋媒体と、によって形成されている。
【0003】
とりわけ収差の効果的な補正に鑑みて、一方では、カバーガラスの厚さを把握することが望ましい。なぜなら、カバーガラスの厚さは、対物レンズによって検出されるべき検出光がカバーガラスを透過するときに通過する光路長を決定するからである。他方では、顕微鏡の試料空間内で互いに隣接している複数の異なる光学媒体の屈折率を把握することが望ましい。これらの光学媒体は、各自のそれぞれ異なる屈折率に起因して、屈折率が急激に変化する界面を形成する。これらの界面の各々は、これらの界面での屈折率の急変の大きさに応じてそれぞれ異なる影響を光学結像に及ぼす。
【0004】
さらなる光学パラメータは、カバーガラスまたは載物ガラスと結像対物レンズとの間の距離である。この距離を把握することは、例えばオートフォーカスシステムを実現するために必要である。
【0005】
米国特許第85082203号明細書は、光シートを生成するための照明装置と、対物レンズと、を有する光シート顕微鏡を開示している。光シートは、光シートを形成する照明光の伝播方向が顕微鏡の対物レンズの光軸に対して非垂直となるように試料内に配置されている。したがって、このような光シート顕微鏡は、傾斜面顕微鏡(OPM:oblique plane microscope)とも呼ばれる。
【0006】
独国特許発明第102016119268号明細書は、中間画像空間内に光シートを生成する照明装置と、光シートを試料内に結像する伝送光学系と、を有する光シート顕微鏡を開示している。
【0007】
国際公開第2017/210159号および国際公開第2015/109323号はそれぞれ、光シートを生成し、かつこの光シートを試料にわたって横方向に移動させるように構成された照明装置を有する光シート顕微鏡を開示している。このような光シート顕微鏡は、SCAPE顕微鏡(SCAPE:swept confocally-aligned planar excitation)とも呼ばれる。
【0008】
独国特許出願公開第102010030430号明細書は、顕微鏡のための三角測量式のオートフォーカス装置を開示している。このオートフォーカス装置は、近赤外光からの測定光ビームを用いて試料上にスリット画像を生成し、このスリット画像は、位置感知検出器上に結像される。検出器によって検出された入射位置によって、オートフォーカスが制御される。
【0009】
すなわち、光シート顕微鏡法の分野では、前述した種類の光学パラメータの特定を可能にする測定量を、特に簡単な手法で検出することが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の課題は、そのような測定量を簡単かつ精確に特定することを可能にする光シート顕微鏡および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題は、請求項1記載の特徴を有する光シート顕微鏡と、請求項15記載の特徴を有する方法と、によって解決される。有利な発展形態は、それぞれ従属請求項に記載されている。
【0012】
当該光シート顕微鏡は、試料空間を含み、試料空間内にカバーガラスまたは載物ガラスを配置することができ、カバーガラスまたは載物ガラスは、部分反射性の界面を画定する表面を有し、当該光シート顕微鏡は、カバーガラスまたは載物ガラスの方を向いた対物レンズを有する光学システムと、光シートを生成するように構成された照明装置と、センサと、プロセッサと、を含む。2つの界面は、カバーガラスまたは載物ガラスの2つの表面に隣接する2つの光学媒体が試料空間内に装着可能であることによって形成されている。当該光シート顕微鏡は、測定量を検出するための測定装置を形成するように構成されている。とりわけ、測定装置は、光シートを、光学システムによってカバーガラスまたは載物ガラス上に斜めの入射で向けるように構成されており、界面で光シートが部分的に反射されることにより、反射光束を生成するように構成されており、反射光束を光学システムによって受信して、センサに向けるように構成されている。センサは、反射光束の強度および/または入射位置を検出するように構成されている。プロセッサは、反射光束の検出された強度および/または入射位置に基づいて、測定量を特定するように構成されている。
【0013】
本明細書におけるカバーガラスまたは載物ガラスとは、とりわけ、試料を覆うカバーガラス、スライドガラス、ペトリ皿の底部、またはマイクロタイタープレートのウェルの底部であると理解される。界面を形成するカバーガラスまたは載物ガラスの表面は、カバーガラスまたは載物ガラスのうちの、対物レンズの方を向いた表面、または対物レンズとは反対側を向いた表面であり得る。センサは、好ましくは位置感知センサとして、すなわち強度および入射位置を検出するために適したセンサとして構成されている。
【0014】
光シート顕微鏡は、測定量を検出するために、反射光束、すなわちカバーガラスまたは載物ガラスの表面での光シートの部分反射を使用する。したがって、測定量を特定するために使用される反射光束は、試料から発せられた検出光の波長から一般的に数ナノメートルだけ、いわゆるストークスシフトの分だけ異なる波長を有する。ストークスシフトは、約5~20nmであり、異常な蛍光体の場合にはそれ以上にもなる。このことは、とりわけ、波長依存性の測定量を特定する場合に、測定量を検出光の波長に変換する必要がなく、かつ分散についての仮定を行う必要がないということを意味する。これにより、測定量の特に信頼できる特定が可能になる。
【0015】
とりわけ、収差を特定するために必要とされる測定量、例えばカバーガラスまたは載物ガラスを通過する光路長または屈折率は、波長依存性である。したがって、光シート顕微鏡の適切な操作変数を、特定された測定値に基づいて設定することにより、提案する光シート顕微鏡を、光シート顕微鏡の画質の改善のために利用することができる。
【0016】
光シートの部分反射は、従前から公知の光シート顕微鏡においても発生する。この部分反射は、外乱変数であり、遮蔽フィルタによって検出光から分離される。したがって、提案する光シート顕微鏡は、それ自体が不利である外乱変数を、画質を改善するために特に有利な手法で利用する。したがって、本明細書で説明する解決策は、既存の光シート顕微鏡を適切に構成することにより、わずかな労力で実現可能である。
【0017】
光シートの断面は、光シートの伝播方向に対して垂直な方向では実質的に線形であるので、カバーガラスまたは載物ガラスでの光シートの反射もまた線形に見える。したがって、本発明の光シート顕微鏡では、光シートは、例えば独国特許出願公開第102010030430号明細書による公知のオートフォーカス装置における、スリット絞りを用いて形成される測定光ビームと同じ機能を果たす。
【0018】
好ましい実施形態では、プロセッサは、反射光束の検出された入射位置に基づいて、対物レンズの光軸に沿った、対物レンズからカバーガラスまたは載物ガラスまでの距離を、測定量として特定するように構成されている。この実施形態では、測定装置は、オートフォーカス装置として、またはオートフォーカス装置の一部として使用可能である。
【0019】
とりわけ、この実施形態によれば、カバーガラスまたは載物ガラスの傾きを、測定量として特定することもできる。このために、カバーガラスまたは載物ガラスの表面上に、1つの平面を形成する少なくとも3つの測定点が定義される。3つの測定点の各々について、対物レンズの光軸に沿った、対物レンズからそれぞれの測定点までの距離が特定される。その後、特定された距離に基づいて、3つの測定点によって形成される平面の、対物レンズの光軸に対する傾きが、カバーガラスの表面の傾きとして特定される。
【0020】
この場合、少なくとも3つの測定点によって形成される平面が、カバーガラスまたは載物ガラスの前述の表面と同一平面上にあることが仮定される。したがって、この平面の、対物レンズの光軸に対する傾きが、カバーガラスまたは載物ガラスの傾きを反映する。少なくとも3つの測定点の各々は、それぞれ3つの座標によって決定されており、そのうちの1つの座標は、対物レンズの光軸に沿った、対物レンズから測定点までの特定されるべき距離を示し、その一方で、残りの2つの座標は、カバーガラスの表面上のそれぞれの測定点の位置を規定する。
【0021】
さらに好ましい実施形態では、カバーガラスまたは載物ガラスは、部分反射性のさらなる界面を画定するさらなる表面を有する。2つの界面は、対物レンズからそれぞれ異なる距離を置いて配置されている。さらに、この実施形態における測定装置は、さらなる界面で光シートが部分的に反射されることにより、さらなる反射光束を生成するように構成されており、さらなる反射光束を対物レンズによって受信して、センサに向けるように構成されている。センサは、さらなる反射光束の強度および/または入射位置を検出するように構成されている。プロセッサは、2つの反射光束の検出された強度および/または入射位置に基づいて、測定量を特定するように構成されている。
【0022】
これにより、単一の反射光束の検出された強度および/または入射位置に基づくだけでは特定することができなかった測定量を、特定することが可能となる。そのような測定量とは、とりわけ、カバーガラスまたは載物ガラスの厚さと、カバーガラスまたは載物ガラスに隣接する光学媒体の屈折率と、である。これにより、光シート顕微鏡の柔軟性が向上する。
【0023】
好ましい実施形態では、プロセッサは、2つの反射光束の検出された入射位置に基づいて、カバーガラスまたは載物ガラスの厚さを、測定量として特定するように構成されている。カバーガラスまたは載物ガラスの特定される厚さは、対物レンズの光軸に沿った、2つの部分反射性の界面の間の距離によって与えられている。この距離を特定するために、測定装置によって、カバーガラスまたは載物ガラスに向けられた光シートが、カバーガラスまたは載物ガラスの両側の表面と、これらの表面に隣接する光学媒体と、によって形成された2つの界面において経験する2つの部分反射が利用される。カバーガラスまたは載物ガラスの屈折率は、隣接する2つの光学媒体の屈折率とは異なっているので、これら2つの界面においてそれぞれ、部分反射につながる屈折率の急変が発生する。これら2つの界面は互いに離間されており、かつ光シートは対物レンズの光軸に対して斜めに界面上に入射するので、これらの界面で生じる2つの反射光束は、空間的に分離される。この空間的な分離は、2つの反射光束が検出器に当たるところの入射位置において反映される。したがって、反射光束の検出された入射位置は、対物レンズの光軸に沿った、2つの部分反射性の界面の間の距離と一義的に相関しており、このことが、厚さ測定のために利用される。
【0024】
この好ましい実施形態では、2つの反射光束のうちの、対物レンズとは反対側を向いた界面で生じた方の反射光束は、まず始めにカバーガラスまたは載物ガラス自体を通過し、そして、対物レンズの方を向いた、その後に通過する界面において屈折され、その後、対物レンズに到達するということに留意すべきである。その結果、焦点シフトが発生し、このことは、カバーガラスまたは載物ガラスの光学的厚さが測定量として特定されることを意味する。
【0025】
特別な実施形態では、測定装置は、2つの反射光束を同時に検出器に向けるように、かつ2つの反射光束のそれぞれ異なる入射位置の間の相互距離に基づいて、カバーガラスまたは載物ガラスの厚さを特定するように構成されている。この特別な実施形態は、とりわけ、対物レンズの倍率に対して比較的薄いカバーガラスまたは載物ガラスのために構成されている。この場合にはつまり、2つの反射光束の空間的な分離が相応に小さいので、両方の反射光束を検出器上で同時に検出することが可能である。
【0026】
代替的な実施形態では、測定装置は、2つの反射光束を順次に検出器に向けるように構成されている。このことはつまり、測定装置が、所与の時点において反射光束のうちの一方のみを検出器上で検出することを意味する。そのような実施形態は、とりわけ、対物レンズの倍率に対して比較的厚いカバーガラスまたは載物ガラスのために構成されている。この場合には、それぞれの反射光束が発生する2つの界面の間の相互距離が非常に大きいので、これに付随して生じる反射光束の空間的な分離により、両方の反射光束を検出器上で同時に受信することが不可能である。
【0027】
測定装置が2つの反射光束を順次に検出器に向ける場合には、最初に検出器に向けられた方の反射光束の入射位置を検出し、その後に検出器に向けられる反射光束の入射位置が、先んじて検出された入射位置に一致するように光シート顕微鏡の動作パラメータを設定し、次いで、この動作パラメータに基づいてカバーガラスまたは載物ガラスの厚さを特定するように、測定装置を構成すると有利である。
【0028】
前述の実施形態では、プロセッサは、好ましくは、カバーガラスまたは載物ガラスと対物レンズとの間の距離を、動作パラメータとして設定するように構成されている。対物レンズの光軸に沿って測定されるこの距離は、例えば、いわゆるz駆動部のような適切な調節装置によって変更可能である。この場合には、z駆動部の2つの設定値が生じ、これらの設定値の差からカバーガラスまたは載物ガラスの光学的厚さを特定することができる。
【0029】
代替的に、測定装置は、光シート顕微鏡に設けられた変位可能な集束レンズの位置を、動作パラメータとして設定するように構成されている。その場合、この変位可能な集束レンズの位置変化から、光学的な結像条件を考慮して、カバーガラスまたは載物ガラスの光学的厚さを、測定量として特定することができる。
【0030】
さらなる実施形態では、プロセッサは、光学的厚さに基づいて、カバーガラスまたは載物ガラスの機械的厚さを、カバーガラスまたは載物ガラスの屈折率と、対物レンズおよびカバーガラスまたは載物ガラスの両方に隣接する光学媒体の屈折率と、を考慮して、測定量として特定するように構成されている。前述の光学媒体は、例えば、カバーガラスまたは載物ガラスと対物レンズとの間に位置する浸漬媒体である。カバーガラスまたは載物ガラスの屈折率と、浸漬媒体の屈折率と、が既知である場合、カバーガラスまたは載物ガラスの機械的厚さは、先んじて特定された光学的厚さに基づいて、以下の関係:
dmech.=dopt.・(ng/nim) (1)
に従って計算可能であり、ここで、dmech.は、機械的厚さを示し、dopt.は、光学的厚さを示し、ngは、カバーガラスまたは載物ガラスの屈折率を示し、nimは、浸漬媒体の屈折率を示す。
【0031】
カバーガラスまたは載物ガラスの機械的厚さを特に精確に特定することが求められている場合には、追加的に、試料空間内の光シートの主ビームの開口数も考慮される。このことは、好ましくは、以下の関係:
【数1】
に従って実施され、ここで、NAは、試料空間内の光シートの主ビームの開口数を示す。
【0032】
開口数NAは、液浸媒体の屈折率nimと、対物レンズから発せられた測定光束が光軸に対してカバーガラスまたは載物ガラスに衝突する入射角度と、の積によって与えられている。さらに、機械的厚さを計算する際には、通常の収差を考慮することができる。
【0033】
好ましい実施形態では、2つの界面は、試料空間内の2つの光学媒体がカバーガラスまたは載物ガラスの2つの表面に隣接することによって形成されている。さらに、プロセッサは、2つの反射光束の検出された強度に基づいて、2つの光学媒体のうちの一方の光学媒体の屈折率を、測定量として特定するように構成されている。
【0034】
2つの反射光束の強度は、カバーガラスまたは載物ガラスと、互いに反対側にある両面からカバーガラスまたは載物ガラスに隣接する2つの光学媒体と、によって画定された2つの界面における、光シートの反射性および透過性に依存している。したがって、最終的に2つの互いに空間的に分離された反射光束の強度が基づいている反射プロセスおよび透過プロセスは、実質的に、カバーガラスまたは載物ガラスの屈折率と、カバーガラスまたは載物ガラスに隣接する光学媒体の屈折率と、によって決まる。カバーガラスまたは載物ガラスの屈折率と、カバーガラスまたは載物ガラスに隣接する2つの光学媒体のうちの一方の光学媒体の屈折率と、が既知である場合には、他方の媒体の屈折率を、検出器によって検出された強度と、試料空間内における測定光束の入射角度の知識と、から確実に特定することが可能である。
【0035】
2つの反射光束の空間的な分離は、測定装置が光シートをカバーガラスまたは載物ガラスに斜めに向けることによって実現される。2つの部分反射性の界面は、軸方向に互いにオフセットされており、すなわち、対物レンズの光軸に沿って互いに離間されているので、これら2つの界面に光シートが斜めに入射することにより、2つの反射光束は、それぞれ異なる光路上で対物レンズへと反射されるようになる。結果として、2つの反射光束は、検出器上のそれぞれ異なる入射位置において互いに別々に検出される。
【0036】
好ましくは、プロセッサは、一方の光学媒体の屈折率を、2つの反射光束の強度の比率に基づいて、測定量として特定するように構成されている。これにより、屈折率の測定は、いわば自己参照的になる。このことはつまり、測定光束の強度とは無関係に屈折率を特定することができることを意味しており、すなわち、この強度を把握する必要がなくなる。
【0037】
好ましくは、測定装置によって測定量としてその屈折率が特定されるべき光学媒体は、カバーガラスまたは載物ガラスの2つの表面のうちの一方の表面に隣接する、試料のための包埋媒体である。この場合、その屈折率が初めから既知である他方の光学媒体は、好ましくは、一方ではカバーガラスまたは載物ガラスのうちの他方の表面に隣接し、かつ他方では対物レンズに隣接する浸漬媒体である。しかしながら、測定装置によって任意の媒体の屈折率を特定することも、その媒体がカバーガラスまたは載物ガラスの2つの表面のうちの一方の表面に直接的に隣接していて、それによって部分反射性の界面を形成する場合に限り、実施することが可能である。
【0038】
好ましい実施形態では、測定装置は、光シートにより、界面において測定パターンを生成し、測定パターンを、反射光束によってセンサ上に結像するように構成されている。さらに、センサは、測定パターンを空間強度分布の形態で検出するように構成されており、測定装置は、空間強度分布から反射光束の強度を特定するように構成されている。
【0039】
好ましくは、検出器上に結像される測定パターンは、空間強度分布の形態で検出され、この空間強度分布から反射光束の強度が特定される。検出器上に結像される測定パターンが、例えば、光シートの伝播方向に対して垂直な方向における光シートの断面の画像によって与えられている場合には、検出器上のそれぞれの画像を、光シートの断面の縦方向に対して平行な方向にわたって積分することにより、前述の強度分布が得られる。
【0040】
好ましくは、センサは、エリア検出器またはライン検出器である。ライン検出器は、測定装置を特に低コストに製造することを可能にする。エリア検出器は、測定装置の柔軟性を高め、例えば、光シート顕微鏡の検出ユニットとして既存のものであり得る。
【0041】
好ましい実施形態では、当該光シート顕微鏡は、試料から発せられた検出光を検出するためのさらなるセンサと、反射光束をセンサに向け、かつ検出光をさらなるセンサに向けるように構成されたビームスプリッタユニットと、を有する検出装置を含む。光シート顕微鏡は、この実施形態では2つのセンサを含み、それぞれのセンサが1つの機能のみを有する。このことにより、専門のセンサの使用と、ひいては、反射光束および検出光の両方のより信頼できる検出と、が可能となる。これにより、測定量の特定がより信頼できるものになる。
【0042】
さらに好ましい実施形態では、当該光シート顕微鏡は、反射光束に対して非透過性であって、かつセンサの上流に接続可能なフィルタを含む。これにより、試料から発せられた検出光の検出に対して反射光束が影響を与えることが阻止される。フィルタが切り替え可能であることにより、反射光束および検出光の両方を検出するためにセンサを使用することが可能となる。
【0043】
好ましくは、当該光シート顕微鏡は、光シートを走査軸に沿って移動させるように構成された走査要素を含む。走査要素は、例えば、可動のグリッドミラーである。
【0044】
代替的または追加的に、光シート顕微鏡は、試料空間内の複数の異なる平面上に光シートを集束させるように構成された電子集束装置を有する。これによっても、光シートを走査軸に沿って移動させることができる。
【0045】
対物レンズの光軸に沿って走査が実施される場合には、光シート顕微鏡は、しばしばOPM(OPM:oblique plane microscope)と呼ばれる。対物レンズの光軸に対して横方向に走査が実施される場合には、光シート顕微鏡は、しばしばSCAPE顕微鏡(SCAPE:swept confocally-aligned planar excitation)とも呼ばれる。ただし、これらの用語は、必ずしも一義的に使用されているわけではない。したがって、いわゆるステージ走査型顕微鏡(ssOPM)も存在し、この場合、物体ステージが試料を光軸に対して横方向に移動させる。
【0046】
好ましくは、測定装置は、光シートを、対物レンズによってカバーガラスまたは載物ガラス上に斜めの入射で向けるように構成されており、かつ/または反射光束を、対物レンズによって受信して、センサに向けるように構成されている。この実施形態では、対物レンズは、照明および検出のための1つの共通の対物レンズを形成する。代替的に、光学システムは、さらなる対物レンズを含み、測定装置は、光シートを、このさらなる対物レンズによってカバーガラスまたは載物ガラス上に斜めの入射で向けるように構成されている。この代替的な実施形態では、さらなる対物レンズは、別個の照明対物レンズを形成する。
【0047】
好ましくは、当該光シート顕微鏡は、伝送光学系を含み、伝送光学系は、中間画像空間内で照明装置によって生成された光シートを試料内に結像するように構成されている。
【0048】
好ましくは、プロセッサは、メモリを含み、メモリ内に、測定量を特定するためのパラメータを格納することができる。
【0049】
好ましくは、カバーガラスまたは載物ガラスの2つの表面は、互いに平面平行に形成されている。
【0050】
本発明はさらに、光シート顕微鏡を用いて測定量を検出するための方法に関する。当該方法は、前述の利点を有し、とりわけ、光シート顕微鏡に関連する従属請求項の特徴によって同様に発展可能である。
【0051】
図面の簡単な説明
さらなる特徴および利点は、複数の実施形態を添付の図面と併せてより詳細に説明している以下の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】一実施形態による、対物レンズの光軸に対して横方向の走査を企図する光シート顕微鏡の概略図である。
【
図2】2つのセンサを用いた実施形態による、対物レンズの光軸に対して横方向の走査を企図する光シート顕微鏡の概略図である。
【
図3】一実施形態による、対物レンズの光軸に沿った走査を企図する光シート顕微鏡の概略図である。
【
図4】2つのセンサを用いた実施形態による、対物レンズの光軸に沿った走査を企図する光シート顕微鏡の概略図である。
【
図5】光シート顕微鏡の試料空間を示す概略図である。
【
図6】1つの強度最大値を有する、光シート顕微鏡の位置感知検出器によって検出された強度分布を示す図である。
【
図7】光シート顕微鏡の試料空間を示すさらなる概略図である。
【
図8】2つの強度最大値を有する、光シート顕微鏡の位置感知検出器によって検出された強度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、特別な実施形態における、対物レンズ120の光軸O2に対して横方向の走査を企図する光シート顕微鏡100の概略図を示す。以下の説明から分かるように、光シート顕微鏡100により、光シート顕微鏡による撮像に加えて、撮像に対して影響を与える測定量の検出が可能となる。その限りにおいて、光シート顕微鏡100は同時に、このような測定量のための測定装置でもある。
【0054】
光シート顕微鏡100は、照明装置102、伝送光学系104および検出装置106を含み、これらは一緒に1つの光学システム107を形成する。検出装置106の光軸O3は、伝送光学系104の光軸O2に対して傾斜角αだけ傾けられている。照明装置102の光軸O1は、検出装置106の光軸O3に対して垂直であり、したがって、照明装置102の光軸O1は、伝送光学系104の光軸O2に対して角度90°-αだけ傾けられている。前述の3つの光軸O1,O2,O3は、中間画像空間108内で交差する。光シート顕微鏡100の試料空間116内には、以下では単にカバーガラス118と呼ばれるカバーガラスまたは載物ガラスと、それぞれカバーガラス118に隣接する2つの光学媒体117,119と、が配置されている。光シート顕微鏡100は、プロセッサ110をさらに有する。
【0055】
照明装置102は、光源112および照明対物レンズ114を含む。光源112は、例えば
図1には明示的に図示されていないシリンドリカルレンズを用いて光シートを生成し、光シートは、
図1に示されている斜交座標系を基準として光伝搬方向Aと、光伝搬方向に対して垂直な伸長方向Bと、に延在する。代替的に、光源112は、それ専用に設けられた走査要素を用いて準静的な光シートを生成することもできる。照明対物レンズ114は、光シートを中間画像空間108内に結像する。代替的に、光シートを伝送光学系104に直接的に入射させてもよい。
【0056】
伝送光学系104は、試料空間116から見て、カバーガラス118の方を向いた対物レンズ120と、第1のチューブレンズ122と、第1の接眼レンズ124と、第2の接眼レンズ126と、第2のチューブレンズ128と、投影対物レンズ130と、を含み、これらは、伝送光学系104の光軸O2に沿って配置されている。第1の接眼レンズ124と第2の接眼レンズ126との間には、図示の実施形態ではグリッドミラー132によって形成されている走査装置が配置されており、このグリッドミラー132において伝送光学系104の光軸O2が偏向される。可動のグリッドミラー132を用いて、光シートを、伝送光学系104の光軸O2に対して垂直な走査方向Cに沿って移動させることができる。
【0057】
伝送光学系104は、光シートを中間画像空間108から試料空間116内に結像する。光シートは、伝送光学系104の光軸O2に対して平行にオフセットされて延在する。このようにして、光シート134は、対物レンズ120の入射瞳136のうちの、伝送光学系104の光軸O2に対して、ひいては入射瞳136の中心に対して横方向にオフセットされている部分領域へと導かれる(
図5および
図7を参照)。したがって、対物レンズ120の入射瞳136が偏心的に照明され、これにより、光シートは、光軸O2に対して斜めの角度βで試料空間116内に向けられることとなる。伝送光学系104は、中間画像空間108を等角で試料空間116内に結像する。このことは、とりわけβ=90°-αが当てはまることを意味する。
【0058】
試料空間116内に斜めの入射で導かれた光シートは、
図5および
図7を参照しながら以下でより詳細に説明されているように、カバーガラス118の1つまたは2つの表面138,140において反射され、これにより、対物レンズ120へと導き戻される反射光束142が生成される。反射光束142は、伝送光学系104によって試料空間116から中間画像空間108内に結像される。
【0059】
検出装置106は、中間画像空間108から見て、検出対物レンズ144と、チューブレンズ146と、上流に接続可能なフィルタ148と、好ましくは位置感知式であるセンサ150と、を含む。反射光束142の、中間画像空間108内に位置する中間画像は、検出対物レンズ144およびチューブレンズ146によって位置感知センサ150上に結像される。上流に接続可能なフィルタ148は、検出装置106のビーム経路内に導入可能であり、したがって、位置感知センサ150の上流に接続可能である。これにより、試料空間116内の試料から発せられた検出光を検出するために位置感知センサ150を利用することが求められている場合に、この位置感知センサ150上に反射光束142が入射することを阻止することができる。これにより、反射光束142によって生成される望ましくない干渉反射が回避される。
【0060】
プロセッサ110は、光源112と、グリッドミラー132と、位置感知センサ150と、いわゆるz駆動部111と、に接続されており、このz駆動部111は、例えば顕微鏡ステージを動かすことによってカバーガラス118の位置を対物レンズ120の光軸O2に沿って変化させることができる。プロセッサ110は、反射光束142の検出された強度および/または入射位置に基づいて、測定量を特定するように構成されている。プロセッサ110は、メモリ154をさらに有し、メモリ154内に、測定量を特定するためのパラメータを格納することができる。
【0061】
図2は、対物レンズ120の光軸O2に対して横方向の走査を企図する光シート顕微鏡200の概略図を示す。光シート顕微鏡200は、2つのセンサ150,202を用いる変更された実施形態を示す。したがって、
図2による光シート顕微鏡200は、さらなるセンサ202およびビームスプリッタユニット204が設けられているという点で、
図1による実施形態とは実質的に異なっており、このビームスプリッタユニット204は、反射光束142を位置感知センサ150に向けるように、かつ検出光をさらなるセンサ202に向けるように構成されている。
図1および
図2では、同じ要素および同じ機能を有する要素には同じ参照符号が付されている。
【0062】
図1および
図2に示されている実施形態では、光シートを用いた走査は、光シートが対物レンズ120の光軸O2を横断する走査方向Cに移動されるようにして実施される。これに対して
図3には、修正された実施形態としての光シート顕微鏡300が示されており、この光シート顕微鏡300は、光シートによる走査が軸方向に、すなわち伝送光学系104の光軸O2に沿って実施されるという点で、
図1による実施形態とは実質的に異なっている。
図1~
図3では、同じ要素および同じ機能を有する要素には同じ参照符号が付されている。
【0063】
図3に示されている実施形態では、伝送光学系104は、中間画像空間108から見て、投影対物レンズ130と、2つのチューブレンズ122,128と、カバーガラス118の方を向いた対物レンズ120と、を含む。投影対物レンズ130は、試料空間116内の複数の異なる平面上に光シート134を集束させるように構成された電子集束装置302を有する。
【0064】
図3による実施形態では、走査装置は、電子集束装置302によって形成されている。電子集束装置302により、光シートと、光シートと同一平面上にある検出平面と、を伝送光学系104の光軸O2に沿って同時に移動させることができる。
【0065】
図4は、2つのセンサ150,202を用いた実施形態による、対物レンズ120の光軸O2に沿った走査を企図する光シート顕微鏡400の概略図を示す。
図4による光シート顕微鏡400の実施形態は、さらなるセンサ202およびビームスプリッタユニット204が設けられているという点で、
図3による光シート顕微鏡300の実施形態とは実質的に異なっている。
図1~
図4では、同じ要素および同じ機能を有する要素には同じ参照符号が付されている。
【0066】
図5は、光シート顕微鏡100,200,300,400の試料空間116を示す概略図である。
図5には、まず始めにカバーガラス118の表面138,140のうちの一方で光シート134が反射されることにより、反射光束142がどのように生成されるかが示されている。
【0067】
図5によれば、対物レンズ120の入射瞳136を偏心的に照明する光シート134は、対物レンズ120により、光軸O2に対して斜めの角度βで、カバーガラス118のうちの、対物レンズ120の方を向いた、
図5では参照符号138が付された前面に向けられる。カバーガラス118と、カバーガラス118の前面138に隣接する浸漬媒体119と、はそれぞれ異なる屈折率を有するので、カバーガラス118の前面138と、カバーガラス118の前面138に隣接する浸漬媒体119と、が界面を形成し、この界面において、入射した光シート134が部分的に反射される。測定光束134のうちの、この界面で反射された部分は、対物レンズ120に導き戻される反射光束142を生成する。
【0068】
図6は、反射光束142が位置感知検出器150上で生成した強度分布Vを示す。
図6による線図の横軸は、検出器150上での入射位置を示し、縦軸は、それぞれの入射位置で測定された強度を示す。
図6による強度分布Vは、ピークPとピークPの位置Xとを示し、この位置Xは、位置感知検出器150上の基準位置Xrefに対して特定可能であり、対物レンズ120からカバーガラス118の表面138,140までの、光軸O2に沿った、測定量として特定されるべき距離zに関する尺度である。さらに、Pの下側の面積は、表面138,140で反射された光の強度に関する尺度である。
【0069】
図7は、光シート顕微鏡100,200,300,400の試料空間116を示す概略図である。
図7には、カバーガラス118の両方の表面138,140で光シート134が反射されることにより、反射光束142がどのように生成されるかが示されている。
【0070】
図7によれば、対物レンズ120の入射瞳136を偏心的に照明する光シート134は、対物レンズ120により、光軸O2に対して斜めの角度βで、カバーガラス118のうちの、対物レンズ120の方を向いた前面138に向けられる。光シートのうちの、
図7では参照符号134が付されている第1の部分は、カバーガラス118の前面138と、カバーガラス118の前面138に隣接する浸漬媒体119と、によって形成される第1の界面において部分的に反射される。測定光束のうちの、この第1の界面で反射された部分は、対物レンズ120に導き戻される第1の反射光束142aを生成する。
【0071】
光シート134のうちの、第1の界面を透過した残りの部分152は、カバーガラス118に入射する際に対物レンズ120の光軸O2から離れる方向に曲げられて、この光軸O2と共に角度βよりも大きい角度γを成す。光シート134のうちの、この透過した部分152は、カバーガラス118の背面140と、カバーガラス118の背面140に隣接する、カバーガラス118とは異なる屈折率を有する包埋媒体117と、によって画定される第2の界面において部分的に反射される。第2の界面における光シート134のこの第2の部分反射は、第2の反射光束142bを生成し、この第2の反射光束142bは、カバーガラス118の前面138を通過し、その後、対物レンズ120へと戻される。
【0072】
図7による図面に示されているように、光シート134が試料空間116内に斜めに入射することにより、カバーガラス118の前面138または背面140における両方の部分反射によって生成された反射光束142a,142bが、それぞれ異なる光路上で対物レンズ120に戻されるようになる。このようにして、2つの反射光束142a,142bは、両方の反射光束142a,142bが検出器150に同時に衝突することが保証されている限りにおいて、それぞれ異なる入射位置で位置感知検出器150に当たる。換言すれば、カバーガラス118の前面138および背面140で生成される、光シート134の断面の2つの画像は、
図8による後続の線図に示されているように、位置感知検出器150上で互いに空間的に分離されて結像される。
【0073】
図8は、2つの反射光束142a,142bが一緒に位置感知検出器150上で生成した例示的な強度分布Vを示す。線図の横軸は、検出器150上での入射位置を示し、縦軸は、それぞれの入射位置で測定された強度を示す。
図8による強度分布Vは、2つのピークを示し、そのうちのP1が付されたピークは、第1の反射光束142aに対応付けられており、P2が付されたピークは、第2の反射光束142bに対応付けられている。ピークP1の方がピークP2よりもより高く、かつより先鋭であるという状況から、
図7による例では、光シート134がカバーガラス118の前面138上で集束されていることを認識することができる。これに対して、カバーガラス118の背面140での第2の部分反射は、光軸O2に対して横方向にオフセットされた点において生じる。
図8に示されているピークP1,P2の下側の面積はそれぞれ、それぞれの反射光束142a,142bの強度に関する尺度である。これらの強度の比率から、例えば2つの光学媒体117,119のうちの一方の光学媒体の屈折率を、測定量として特定することができる。
【0074】
図8による例では、2つの反射光束142a,142bが位置感知検出器150上に同時に衝突する状況が示されている。このことは、カバーガラス118の厚さに相当する、2つの反射光束142a,142bの空間的な隔たりが比較的わずかであることを意味する。換言すれば、
図8による例では、測定量として検出されるべきカバーガラス118の厚さは、対物レンズの倍率に対して比較的薄い。しかしながら、検出されるべきカバーガラス118の厚さに相当する、反射光束142a,142bの空間的な隔たりが非常に大きいので、位置感知検出器150によって2つの反射光束142a,142bを同時に検出することが不可能であるという状況も考えられる。
【0075】
いくつかの態様を装置の文脈において説明してきたが、これらの態様が、対応する方法の説明も表していることが明らかであり、ここではブロックまたは装置がステップまたはステップの特徴に対応している。同様に、ステップの文脈において説明された態様は、対応する装置の対応するブロックまたは項目または特徴の説明も表している。ステップの一部または全部は、例えば、プロセッサ、マイクロプロセッサ、プログラマブルコンピュータまたは電子回路等のハードウェア装置(またはハードウェア装置を使用すること)によって実行されてもよい。いくつかの実施形態では、極めて重要なステップのいずれか1つまたは複数が、そのような装置によって実行されてもよい。
【0076】
一定の実装要件に応じて、本発明の実施形態は、ハードウェアまたはソフトウェアで実装され得る。この実装は、非一過性の記録媒体によって実行可能であり、非一過性の記録媒体は、各方法を実施するために、プログラマブルコンピュータシステムと協働する(または協働することが可能である)、電子的に読取可能な制御信号が格納されている、デジタル記録媒体等であり、これは例えば、フロッピーディスク、DVD、ブルーレイ、CD、ROM、PROMおよびEPROM、EEPROMまたはFLASHメモリである。したがって、デジタル記録媒体は、コンピュータ読取可能であってもよい。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法が実施されるように、プログラマブルコンピュータシステムと協働することができる、電子的に読取可能な制御信号を有するデータ担体を含んでいる。
【0078】
一般的に、本発明の実施形態は、プログラムコードを備えるコンピュータプログラム製品として実装可能であり、このプログラムコードは、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行されるときにいずれかの方法を実施するように作動する。このプログラムコードは、例えば、機械可読担体に格納されていてもよい。
【0079】
別の実施形態は、機械可読担体に格納されている、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを含んでいる。
【0080】
したがって、換言すれば、本発明の実施形態は、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【0081】
したがって、本発明の別の実施形態は、プロセッサによって実行されるときに本明細書に記載のいずれかの方法を実施するために、格納されているコンピュータプログラムを含んでいる記録媒体(またはデータ担体またはコンピュータ読取可能な媒体)である。データ担体、デジタル記録媒体または被記録媒体は、典型的に、有形である、かつ/または非一過性である。本発明の別の実施形態は、プロセッサと記録媒体を含んでいる、本明細書に記載されたような装置である。
【0082】
したがって、本発明の別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを表すデータストリームまたは信号シーケンスである。データストリームまたは信号シーケンスは例えば、データ通信接続、例えばインターネットを介して転送されるように構成されていてもよい。
【0083】
別の実施形態は、処理手段、例えば、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するように構成または適合されているコンピュータまたはプログラマブルロジックデバイスを含んでいる。
【0084】
別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するために、インストールされたコンピュータプログラムを有しているコンピュータを含んでいる。
【0085】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを(例えば、電子的にまたは光学的に)受信機に転送するように構成されている装置またはシステムを含んでいる。受信機は、例えば、コンピュータ、モバイル機器、記憶装置等であってもよい。装置またはシステムは、例えば、コンピュータプログラムを受信機に転送するために、ファイルサーバを含んでいてもよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、プログラマブルロジックデバイス(例えばフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)が、本明細書に記載された方法の機能の一部または全部を実行するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイは、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためにマイクロプロセッサと協働してもよい。一般的に、有利には、任意のハードウェア装置によって方法が実施される。
【符号の説明】
【0087】
100 光シート顕微鏡
102 照明装置
104 伝送光学系
106 検出装置
107 光学システム
108 中間画像空間
110 プロセッサ
111 z駆動部
112 光源
114 照明対物レンズ
116 試料空間
117 包埋媒体
118 カバーガラスまたは載物ガラス
119 浸漬媒体
120 対物レンズ
122 チューブレンズ
124,126 接眼レンズ
128 チューブレンズ
130 投影対物レンズ
132 グリッドミラー
134 光シート
136 入射瞳
138 前面
140 背面
142,142a,142b 反射光束
144 検出対物レンズ
146 チューブレンズ
148 フィルタ
150 センサ
152 光シートの一部
154 メモリ
200 光シート顕微鏡
202 センサ
204 ビームスプリッタユニット
300,400 光シート顕微鏡
A 光の伝播方向
B 伸長方向
C 走査方向
O1,O2,O3 光軸
α,β,γ 角度
【国際調査報告】