(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-02
(54)【発明の名称】麻酔薬組成物及び眼を麻酔する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/381 20060101AFI20220526BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220526BHJP
A61P 23/02 20060101ALI20220526BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220526BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220526BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20220526BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220526BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220526BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220526BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
A61K31/381
A61P27/02
A61P23/02
A61K9/08
A61K47/12
A61K47/04
A61K47/18
A61K47/02
A61K47/38
A61K47/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560140
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(85)【翻訳文提出日】2021-11-15
(86)【国際出願番号】 US2020022915
(87)【国際公開番号】W WO2020197816
(87)【国際公開日】2020-10-01
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US2019/024239
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521438582
【氏名又は名称】ウラム,マーティン
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ウラム,マーティン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB24
4C076CC01
4C076CC10
4C076DD22Z
4C076DD26
4C076DD38Z
4C076DD41Z
4C076DD43Z
4C076DD49
4C076EE23
4C076EE32
4C076EE49
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA02
4C086BB02
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA58
4C086NA03
4C086NA05
4C086ZA21
4C086ZA33
(57)【要約】
局所眼科用麻酔薬組成物は、眼に局所的に塗布されたときに麻酔特性を提供する量のアーティカイン、並びに有効性及び安全性を達成するための、pH、粘度、浸透圧、解離定数、並びに抗酸化剤、緩衝剤、メチルセルロースなどの添加剤を含む製剤を含む。前記組成物は、約4.0%w/v~約12.0%w/vの量のアーティカインを含むことができ、約pH3.5~pH7.0のpHを有し得る。前記緩衝液は、ホウ酸又はその塩とD-マンニトールとから得られるホウ酸塩/マンニトール複合体であり得る。前記アーティカイン製剤は、注射可能な麻酔薬を使用せずに、局所塗布によって眼壁の内面の適切な麻酔を達成し得る。本開示の例示的な実施形態は、少なくとも7.0%w/vの量のアーティカインを含む製剤を含み、ここで、前記製剤は、水溶液、ゲル、軟膏、又はカプセル化された形態である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、水性眼科用麻酔薬組成物:
組成物の体積に基づいて約4.0%w/v~約12.0%w/vの量のアーティカイン;及びアーティカインと非反応性であり、アーティカインを安定化させる、約pH3.5~約pH7.0のpHを提供する量の緩衝液。
【請求項2】
約pH4.5~約pH5.5のpHを有し、前記緩衝液がクエン酸塩、酢酸塩又はそれらの混合物と、マンニトール、ソルビトール及びそれらの混合物からなる群から選択される糖アルコールとから得られる複合体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
約7.5%w/v~8.5%w/vのアーティカインを含み、約pH4.5~約pH5.0のpHを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも約7.0%w/vのアーティカインを含み、約pH4.5~約pH5.0のpHを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記緩衝液が、ホウ酸塩及びD-マンニトールから得られるホウ酸塩/マンニトール複合体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ホウ酸塩/マンニトール複合体が、組成物の体積に基づいて約0.5%w/v~約0.75%w/vの量で含まれる、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ホウ酸塩/マンニトール複合体が、組成物中の100重量部のアーティカインに基づいて、約6.5重量部~約7.5重量部の量で含まれる、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記ホウ酸塩/マンニトール複合体が、重量において約1:3~約1:7のホウ酸塩/マンニトール比から得られる、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
酢酸ナトリウム、酢酸、及びエデト酸二ナトリウムをさらに含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも約7.0%w/vのアーティカインを含み、前記緩衝液が、約pH4.5~約pH5.0のpHを提供する量のホウ酸及びD-マンニトールの複合体を含み、かつ、前記組成物は、酢酸ナトリウム、酢酸、及びエデト酸二ナトリウムをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記アーティカインが少なくとも約7.0%w/vの量で存在し、前記ホウ酸及びD-マンニトール複合体が、前記組成物の総体積に基づいて、約0.08%w/v~約0.10%w/vのホウ酸及び約0.50%w/v~約0.6%w/vのD-マンニトールから得られる、請求項4に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも約8.0%w/vのアーティカイン、約0.08%w/v~約0.10%w/vのホウ酸及び約0.5%w/v~約0.60%w/vのD-マンニトールから得られる緩衝複合体、約0.3%w/v~0.36%w/v酢酸ナトリウム、約0.05%w/v~約0.07%w/vエデト酸二ナトリウム、並びに残部の水を含み、約280~320mOsm/kgの浸透圧を有し、前記量は前記組成物の総体積に基づく、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
約4%w/vのアーティカインを含み、
前記緩衝液が、NaOH及びHClを含み、
約pH5.5のpH、約7.8のpKa、約20~25cpの粘度、約275~1171mOsm/kgの浸透圧、及び約0.5~5.0%の張度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
80mg/gのアーティカイン塩酸塩、1.373mg/gのリン酸二水素ナトリウム一塩基性一水和物、1.413mg/gのリン酸水素二ナトリウム二塩基性無水物、8.1mg/gのヒドロキシプロピルメチルセルロース、4mg/gのPEG400を含み、pH6.0~pH7.0のpH、743~803cpの粘度、及び517mOsm/kgの浸透圧を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
以下を含む、水性眼科用麻酔薬組成物:
組成物の体積に基づいて少なくとも約7.0%w/vの量のアーティカイン;約pH4.0~約pH5.5のpHを提供し、アーティカインを安定化する量の、ホウ酸又はホウ酸塩と糖アルコールとから得られる複合体である、緩衝液。
【請求項16】
前記緩衝液が、組成物中の100重量部のアーティカインに基づいて、約6.5重量部~約7.5重量部の量のホウ酸塩/マンニトール複合体である、請求項15に記載の水性眼科用麻酔薬組成物。
【請求項17】
前記ホウ酸塩/マンニトール複合体が、重量において約1:3~約1:7のホウ酸塩/マンニトール比から得られる、請求項16に記載の水性眼科用麻酔薬組成物。
【請求項18】
二酢酸ナトリウム、酢酸、及びエデト酸二ナトリウムをさらに含む、請求項17に記載の水性眼科用麻酔薬組成物。
【請求項19】
眼に麻酔を提供する方法であって、請求項1に記載の組成物を、患者の眼を麻酔するのに有効な量で前記患者の眼の表面に局所的に塗布するステップを含む、方法。
【請求項20】
前記組成物が、前記組成物の総体積に基づいて、少なくとも約5.0%の量のアーティカインを含み、前記緩衝複合体が、約0.08%w/v~約0.10%w/vのホウ酸及び約0.50%w/v~約0.6%w/vのD-マンニトールから得られる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が、少なくとも約7.5%w/vのアーティカイン;アーティカインと非反応性の量のホウ酸及びD-マンニトールから得られた複合体を含む緩衝液;酢酸ナトリウム;酢酸;エデト酸二ナトリウム、及び残部の水を含んでおり、前記組成物が、約pH4.5~約pH5.5のpHを有する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物が少なくとも約7%w/vのアーティカインを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が約pH4.5~約pH5.0のpHを有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
製剤が、4%w/vアーティカインを含み、pH5.5、pKa7.8、粘度20~25cp、浸透圧275~1171mOsms/kg、張度0.5%~5.0%、NaOH緩衝液、及び塩酸緩衝液を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が、80mg/gのアーティカイン塩酸塩、1.373mg/gのリン酸二水素ナトリウム一塩基性一水和物、1.413mg/gのリン酸水素二ナトリウム無水物、8.1mg/gのヒドロキシプロピルメチルセルロース、4mg/gのPEG400を含み、前記組成物が、pH6.0~pH7.0のpH、743~803cpの粘度、及び517mOsm/kgの浸透圧を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
以下のステップを含む、請求項1に記載の組成物を製造する方法:
溶液中で酸又はその塩と糖アルコールとを混合して複合体を形成すること;
pHを約3.5~約pH7.0に調整すること;及び、
得られた溶液に、前記組成物の体積に基づいて約4.0%w/v~約12.0%w/vを有する前記組成物を得る量でアーティカインを添加すること。
【請求項27】
前記酸が、酢酸、クエン酸、及びそれらの混合物からなる群から選択され、前記糖アルコールが、D-マンニトール、ソルビトール、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記酸又はその塩がホウ酸塩であり、前記糖アルコールがD-マンニトールであり、前記複合体がホウ酸塩/マンニトール複合体であり、前記組成物が、少なくとも7.0%のアーティカインを含み、約pH6.0~pH7.0のpHを有する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記ホウ酸塩/マンニトール複合体が、重量において約1:3~約1:7のホウ酸塩/マンニトール比から得られる、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
1.開示分野
通常、本開示の例示的な実施形態は、麻酔薬組成物及び麻酔薬組成物を患者に投与する方法、特に眼の少なくとも一部を麻酔する方法に関する。本開示は、眼の表面に局所的に塗布され得る局所麻酔薬組成物又は製剤に関する。本開示の特定の実施形態の例示的な実施形態は、患者に過度の不快感を与えることなく硝子体内注射を可能にするのに十分な高レベルの毛様体扁平部麻酔を達成するために、局所麻酔薬製剤、例えば1滴を局所的に塗布するための方法を提供する。本開示の特定の実施形態の例示的な実施形態は、眼の表面及び眼壁の内面の麻酔を達成するために、アーティカインを含む局所溶液を塗布するための方法を提供する。
【0002】
2.開示の背景
網膜の様々な障害及び眼内炎症性疾患を治療する目的での硝子体腔への薬剤の注射が主流となっている。2016年には、CMSのみで約275万回の注射が還付された。ほとんどすべての場合、これらの注射は通常、毛様体扁平部を通して実行される。針が適切に向けられた状態での毛様体扁平部を介した眼への注射は、ヒト水晶体又は眼内レンズインプラントの後方であるが、網膜の前方であり、それにより水晶体及び網膜への損傷を回避する。毛様体扁平部は、角膜の端から3.0~5.5mmの範囲に広がる目の周囲を囲む環状の領域である。プロパラカインなどの従来の外用剤は、眼の外面で麻酔をかけ得るが、非常に敏感な毛様体扁平部の内面を麻痺させたり麻酔をかけたりすることはない。
【0003】
毛様体扁平部の内面の麻酔を生成する既知の承認された局所麻酔薬はない。現在、医師は最初に結膜(目の組織を覆う)の下にリドカインを注射し、次に毛様体扁平部から2回目の注射を行う。一部の用途では、硝子体内注射を行う前にリドカインゲルが使用される。患者は、これらのアプローチのそれぞれで中程度から重度の不快感を報告することがよくある。
【0004】
感染が眼の内部で発生する眼内炎を含む、硝子体内注射のいくつかの合併症が起こり得る。眼内炎の治療はしばしば成功するが、少なくともある程度の永続的な視力喪失が一般的である。治療には、抗生物質及び/又はステロイドの硝子体内注射、並びに硝子体切除手術が含まれる。目の失明や喪失は珍しいことではない。眼科医は、使用される麻酔薬の多くが常に無菌であるとは限らないが、感染によって引き起こされる合併症の予防を目指している。
【0005】
従来、アーティカインは注射可能な経路でのみ使用されてきた。現在利用可能な局所眼科麻酔薬は、眼の外面で機能するが、眼壁の内面の十分な麻酔を生成するのには十分に浸透しない。この領域は、浸透、圧力、レーザー又は凍結の用途に非常に感受性である。一般的に行われる眼科手術の1つは、さまざまな薬剤を眼に注射することである。この注射に均一に適切な麻酔を達成するために、医師は最初に麻酔薬の眼周囲注射を行い、麻酔薬が効果を発揮するのを待ってから、眼内注射を行う。
【0006】
4%以下のアーティカイン及び一般にエピネフリンである血管収縮剤を含むアーティカイン製剤は、患者の組織への注射用に製剤化される注射可能な麻酔薬としての使用が知られている。そのような製剤は、歯科治療を行うために歯科で一般的に使用される。以前の組成物は、一般に、局所投与又は眼への塗布には適していないか、又は効果的ではない。
【0007】
現在、眼麻酔及び硝子体内注射の準備のための標準的な手順はない。さらに、硝子体内注射の前に眼を治療するために特別に承認された薬はない。毛様体扁平部は目の特有の領域である。標準的な局所眼科薬は、眼の外面の麻酔を達成する。しかしながら、注射針が毛様体扁平部の内面を硝子体腔に貫通するため、麻酔のない患者は、注射を完了できないほどの激しい痛みを経験する。
【0008】
従来の組成物及び製剤は、一般に、意図された目的に適していたが、改善された麻酔薬組成物に対する継続的な必要性が存在する。
【発明の概要】
【0009】
本開示の例示的な実施形態は、アーティカインを含む麻酔薬組成物を提供する。前記麻酔薬組成物は、硝子体内注射及び他の医療処置に十分なレベルの麻酔を達成するために、眼の表面への局所塗布による局所眼科使用に適している。前記麻酔薬組成物は、患者に過度の不快感を与えることなく眼に硝子体内注射を可能にするのに十分な量で投与され得る。
【0010】
前記局所眼科用組成物は、外科的処置を含む様々な医学的処置を実施する前に、局所投与によって眼に麻酔を誘発するのに十分に高濃度のアーティカインを含む。前記組成物は、眼に麻酔を提供して、患者への痛みを最小限に抑えるか、又は全く伴わずに、眼の毛様体扁平部内又はそれを通して注射を可能にするのに特に適している。
【0011】
本開示の例示的な実施形態は、中間効力、短時間作用型アミド局所麻酔薬であり得るアーティカインを含む、製剤、及び/又はその修飾及び/又は使用を含む。アーティカインの代謝は、分子構造にエステル基が存在するために急速に起こり得る。従来、アーティカインは末梢神経、脊髄、硬膜外、眼周囲、又は局所神経ブロックの注射によって投与されている。
【0012】
一実施形態では、局所眼科麻酔組成物は、眼への麻酔薬の反復塗布又は注射を必要とせずに、患者の眼に麻酔効果を提供するのに有効な量のアーティカインを含む。アーティカインは、制御された投与量によって望ましい麻酔特性を提供するための量及び濃度で局所麻酔組成物に含まれ得る。前記組成物は、前記組成物の総体積に基づいて最大約13%w/vの量のアーティカインを含み得る。いくつかの実施形態では、前記組成物は、前記組成物の総体積に基づいて、約4%w/v~約12%w/vの量のアーティカインを含み得る。眼科用組成物中のより高濃度のアーティカインは、眼に望ましい麻酔効果を提供しながら、より少ない投与量で投与され得る。
【0013】
一実施形態では、前記局所眼科用麻酔薬組成物は、約7.0%w/v~約8.5%w/vのアーティカイン、及びアーティカインと反応しない、又は/及びアーティカインの分解を促進しない緩衝液を含む水性組成物である。一実施形態における緩衝液は、約pH3.5~約pH7.0のpH及び約280~約320mOsm/kgの浸透圧を提供し得る。一実施形態では、前記眼科用麻酔薬組成物は、約pH4.5~約pH5.0のpHを有する。一実施形態の緩衝液は、酸と糖アルコールとから得られる複合体である。前記酸は、ホウ酸、クエン酸、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。1つの特定の実施形態では、前記酸はホウ酸である。前記糖アルコールは、D-マンニトール、ソルビトール、及びそれらの混合物であり得る。特に適切な緩衝液は、ホウ酸又はホウ酸塩及びD-マンニトールから得られるホウ酸塩/マンニトール複合体である。前記緩衝液は、ホウ酸及びD-マンニトールの総重量に基づいて、約13重量%~約17重量%のホウ酸及び約83重量%~約88重量%のD-マンニトールから得られる複合体であり得る。一実施形態における麻酔薬組成物は、酢酸ナトリウム三水和物、酢酸、及びエデト酸二ナトリウム二水和物を含み得る。前記麻酔薬組成物は、約pH4.5~約pH7.0のpH範囲を有し得る。
【0014】
一実施形態における局所眼科用麻酔薬組成物は、少なくとも約7.5%w/vのアルチカイン、ホウ酸及びD-マンニトール、酢酸ナトリウム、酢酸、エデト酸二ナトリウム、及び残部の水の水性混合物であり、pH4.5~約pH5.0のpHを有する。約pH5.0未満のpHは、アーティカイン組成物の長期安定性を改善することが見出されている。
【0015】
他の実施形態では、前記局所眼科用麻酔薬組成物は、約pH4.5~約pH5.5のpHで少なくとも約8%w/vの量のアーティカイン、並びに、前記アーティカインと反応せず水性組成物中の前記アーティカインの分解を促進しない緩衝液及び賦形剤を含む安定な水性組成物である。前記組成物は、唯一の麻酔薬又は化合物としてアーティカインを含むことができ、通常、エピネフリンなどの血管収縮剤が存在しない。一実施形態では、前記組成物は、メタ重亜硫酸ナトリウム及び/又は亜硫酸水素ナトリウムの非存在下にある。この実施形態における緩衝液は、ホウ酸塩/マンニトール複合体である。
【0016】
前記水性局所眼科用麻酔薬組成物の特徴は、約4.0%w/v~約12.0%w/vのアーティカイン、及び約pH3.5~約pH7.0のpHを提供する量の緩衝液を含み、前記緩衝液は、前記アーティカインと非反応性であり、前記アーティカインを安定化する。前記緩衝液は、ホウ酸及びD-マンニトールから得られる複合体であり得る。
【0017】
一実施形態では、前記水性眼麻酔薬組成物は、約4%w/vアーティカイン、NaOH及びHClを含む緩衝液、約pH5.5のpH、約7.8のpKa、約20~25cpの粘度、約275~1171mOsm/kgの浸透圧、並びに約0.5~5.0%の張度を含む。
【0018】
他の実施形態では、前記水性局所麻酔薬組成物は、80mg/gのアーティカイン塩酸塩、1.373mg/gのリン酸二水素ナトリウム一塩基性一水和物、1.413mg/gのリン酸水素二ナトリウム無水物、8.1mg/gのヒドロキシプロピルメチルセルロース、4mg/gのPEG400を含み、前記組成物は、pH6.0~pH7.0のpH、743~803cpの粘度、及び517mOsm/kgの浸透圧を有する。
【0019】
本開示の他の特徴は、眼における様々な外科的処置及び/又は針による眼への注射中に、患者の眼に対する痛み及び/又は不快感を抑制するための方法を提供する。前記方法は、局所麻酔薬組成物を、眼に麻酔を誘発する量で導入し、前記麻酔薬組成物は、眼の表面及び毛様体扁平部を含む表面下の組織を治療するための有効量のアーティカインを含む。前記方法は、物質又は薬物を眼に注射するための手順に特に適しており、前記眼の表面は、少なくとも4.0%w/vのアーティカイン、及び約pH4.5~約pH7.0、一般に約pH4.5~約pH5.5のpHを提供する非反応性緩衝液を含む局所組成物で処理される。他の実施形態では、前記局所組成物は、pH4.5~約pH5.0を有する。
【0020】
これら及び他の特徴は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0021】
例示的な実施形態の詳細な説明
この説明で例示される事項は、本開示の例示的な実施形態の包括的な理解を助けるために提供される。したがって、当業者は、本明細書に記載の実施形態の様々な変更及び修正が、本開示の範囲及び思想から逸脱することなく行い得ることを認識するであろう。また、わかりやすく簡潔にするために、よく知られている機能及び構造の説明は省略されている。本開示において、組成物の様々な成分及び特徴の範囲は、他の実施形態の範囲又は特徴と組み合わせられ得る。記載された実施形態は、一実施形態の特徴を他の実施形態と組み合わせ得るように限定することを意図するものではない。
【0022】
本明細書で使用される用語及び用語は、説明を目的とするものであり、限定的なものと見なされるべきではない。本明細書における「挙げられる」、「含む」、又は「有する」及びそれらの変形の使用は、その後に記載される項目及びその同等物、並びに追加の項目を包含することである。実施形態は、相互に排他的であることを意図していないため、一実施形態の特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、他の実施形態と組み合わせられ得る。「実質的に」、「約」及び「ほぼ」などの程度の用語は、当業者によって、所与の値の周囲及び所与の値外の範囲を含む合理的な範囲、例えば、製造、組み立て、及び実施形態の使用に関連する一般的な公差を指すと理解される。構造又は特性を指す場合の「実質的に」という用語は、特性又は構造に大部分又は完全に存在する特性を含む。
【0023】
本開示の例示的な実施形態は、眼の麻酔効果が改善され、眼の感染のリスクが低減されたアーティカインを含む局所麻酔薬組成物又は製剤を使用する方法論を提供する。本明細書で使用される場合、組成物及び製剤という用語は、活性化合物及び賦形剤を含む化合物の混合物又は組み合わせを指すために交換可能に使用される。記載された実施形態では、前記組成物は、眼への局所塗布に適したpH、浸透圧及びアーティカイン濃度を有する安定な組成物を得るためのアーティカイン、緩衝液及び他の賦形剤を含む水性混合物である。
【0024】
前記局所眼科用麻酔薬組成物は、硝子体内注射などの様々な医療処置を行うための局所投与によって患者の眼の表面及び内面を麻酔するのに有効な量の麻酔薬を含む麻酔組成物である。一実施形態では、前記局所眼科麻酔組成物は、局所組成物として調製され、眼の表面及び眼の内面を麻酔するために眼の表面に直接塗布される。前記局所眼科用麻酔薬組成物は、硝子体内注射又は他の外科的処置などの眼の医療処置中の患者の痛み及び/又は不快感を軽減又は阻害するために眼に麻酔効果を提供するのに有効な量のアーティカインを含む。
【0025】
アーティカインを含む局所眼科用麻酔薬組成物は、麻酔薬組成物に含まれる緩衝液及び安定剤に応じて、様々な範囲のpH及び様々な量のアーティカインを有し得る。前記麻酔薬組成物の実施形態では、前記緩衝液及び安定剤は、前記緩衝液及び安定剤が異なる範囲のpHを可能にして組成物を安定化し、前記組成物に適切な浸透圧を維持する効果的な局所麻酔薬組成物を提供する。
【0026】
様々な実施形態における局所眼科麻酔組成物は、前記アーティカインを安定化するためのpH及び患者への不快感を最小限にするためのpHで、約4.0%w/v~約13%w/vのアーティカインを含む。少なくとも6%w/vのアーティカインを含む適切な麻酔組成物をも調製し得る。記載された実施形態における組成物は、水性眼科用麻酔薬組成物である。一実施形態では、前記局所眼科用麻酔薬組成物は、組成物の総体積に基づいて、少なくとも約7.0%w/v及び一般に少なくとも約8.0%w/vの量のアーティカインを含む。他の実施形態では、局所眼科用麻酔薬組成物は、少なくとも約8.5%w/vのアーティカインの量でアーティカインを含む。本明細書で使用される場合、w/vは、組成物100mlあたりのグラムを指す。前記眼科用組成物は、一般に、少なくとも約4%w/vのアーティカイン及び最大約8.5%w/vのアーティカインを含む。一実施形態では、前記局所組成物は、少なくとも約7.0%、一般に少なくとも約8.0%w/vのアーティカインを含む。前記局所用組成物で使用されるアーティカインは、通常、塩酸塩から調製される。
【0027】
一実施形態における局所眼科用組成物は、少なくとも約4%w/vの量のアーティカインと、pHを望ましい範囲に制御するための緩衝液とを含む。一実施形態では、前記局所組成物は、pH4.5~pH7.0の範囲のpHを有する。他の実施形態は、約pH6.0~約pH7.0のpHを有し得る。さらに他の実施形態では、前記局所組成物は、pH5.0未満のpHを有し得る。前記緩衝液は、pH4.0~pH7.0のアーティカインと非反応性であり、アーティカインの分解を阻害し、貯蔵安定性のある組成物を提供する。前記局所眼科用組成物は、約4.0%w/vを超える量のアーティカイン、及び緩衝液がアーティカインと反応しない約pH6.0以下のpHで安定な混合物を提供するための緩衝液を含み得る。
【0028】
前記局所眼科用組成物のpHは、一般に、アーティカインの望ましい長期安定性を維持して、眼の表面に局所的に塗布されたときの患者への不快感を最小限に抑えるように調整される。前記pHは、一般に、約pH4.5~約pH7.0の範囲である。アーティカイン組成物の特に適切なpHは、約4.0%を超え、典型的には約6.0%w/vを超える量のアーティカインを含む組成物について、約pH4.5~約pH5.5である。少なくとも7.0%w/v以上を含む1つの適切な組成物は、約pH4.5~約pH5.5のpH範囲を有し、室温で数ヶ月間、組成物中のアーティカインの長期保存を示すことが見出されている。pH5.0以下を有する組成物は、貯蔵中のアーティカインの分解を阻害するために、アーティカインの長期貯蔵を提供する。約pH4.5~約pH5.0を有する組成物は、局所的に塗布されたときに患者に不快感を与えることなく、優れた長期保存を提供する。
【0029】
アーティカインを含む局所眼科用麻酔薬組成物は、アーティカインと相互作用することなく、又は貯蔵中に組成物中のアーティカインの分解を引き起こすことなくアーティカインを安定化するために、pH及び浸透圧を望ましい範囲内に調整、改変、及び/又は維持するための緩衝液を含む。局所眼科用麻酔薬組成物中の緩衝液及び他の賦形剤は、前記組成物が眼の表面に局所的に投与される際、患者への不快感を最小限に抑えながら、アーティカインを溶液又は懸濁液に維持しながら、アーティカインを分解することなく、アーティカインを7.5%w/v及び最大8.5%w/v以上の高濃度とすることを可能にする。前記組成物の実施形態による緩衝液は、以前の組成物には存在しない、より高濃度のアーティカインで安定した組成物を提供する。
【0030】
アーティカインは、緑膿菌、ミラビリス変形菌、黄色ブドウ球菌、及び大腸菌などの特定の細菌の増殖を阻害し得る。抗菌作用のメカニズムは、細胞壁合成の阻害又は細胞膜の歪みによって媒介されると理解されている。
【0031】
記載されている局所眼科用麻酔薬組成物は、有害作用なしに眼の表面に局所的に塗布され得る安定な組成物である。前記局所眼科用麻酔薬組成物は、眼の表面に直接滴下形態で塗布され得る。前記局所眼科麻酔組成物は、眼の表面への単回投与によって眼に麻酔効果を提供し得る量のアーティカインを含む。前記投与量は、望ましい麻酔効果を提供するため、組成物中のアーティカイン及び他の緩衝液、pH調整剤及び他の賦形剤の最終濃度に基づいて選択される。一実施形態では、前記局所組成物は、前記麻酔組成物の約8.0mg/gのアーティカイン濃度で、約2μl~約30μlの1滴の単回投与として塗布される。ドロップサイズの一例は約15μlである。一実施形態では、適切な投与量は、約8%w/vのアーティカインを含む眼科用組成物に対して約0.5μlである。他の実施形態では、前記アーティカイン組成物は、眼の表面に約3~5滴で投与して、約20μlの投与量又は約100μlまでの単位を提供し得る。他の実施形態では、前記局所眼科麻酔組成物は、3~8滴、典型的には眼の表面に約3~5滴の投与量で塗布され、約8%w/vのアーティカインを含む組成物の約40μl~約80μlの投与量を提供する。
【0032】
前記局所麻酔薬組成物の第1の実施形態では、前記組成物は、緩衝液を含む水性混合物であり、約pH3.5~約pH7.0のpH範囲を有する。前記組成物は、前記組成物を安定化し、組成物中のアーティカイン及び/又は他の化合物の酸化を阻害するために、2ppm未満の溶存酸素含有量を有し得る。特に適切なpH範囲は、約pH4.5~約pH5.0であり、浸透圧は約580~約630mOsm/kgである。組成物中の適切なアーティカイン量は、約7.0%~約8.5%w/vのアーティカインである。この実施形態における緩衝液は、ホウ酸とD-マンニトールとの混合物から得られる複合体であり得る。ホウ酸とD-マンニトールとから形成されたホウ酸塩/マンニトール複合体は、アーティカインを安定化することがわかっており、約4%w/v及び7%w/vを超えるアーティカイン濃度で、pH4.5~pH5.0の範囲のpHで、目の表面に局所的に塗布された際に眼に刺激を与えることなく、組成物中のアーティカインの長期保存安定性を提供する。特定の理論に縛られることを意図せずに、前記ホウ酸塩/マンニトール複合体のホウ酸塩成分は、アーティカインに適切な安定化効果を提供し、約pH5.5未満のpHで少なくとも7%w/vの安定したアーティカイン濃度を可能にするものとして理解されている。前記緩衝液は、アーティカインに対して約pH4.5~約pH5.0の安定したpH範囲を提供し、眼を刺激することなく4%w/vを超えるアーティカインの濃度を可能にする。
【0033】
他の実施形態では、前記緩衝液は、ホウ酸塩などのホウ酸塩アニオンの他の供給源から得られ得る。ホウ酸塩の例としては、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸マンガンなどが挙げられる。前記緩衝体複合体は、ホウ酸、クエン酸、又はそれらの混合物と、D-マンニトール、ソルビトール、及びそれらの混合物などの糖アルコールとの反応混合物から得られ得る。前記ホウ酸塩/マンニトール複合体は、8%w/v以上のアーティカインなどの高濃度のアーティカインを安定化するのに特に適していることがわかっている。ホウ酸塩及び/又はクエン酸塩を、反応混合物へのホウ酸塩及び/又はクエン酸塩の供給源として使用して、ホウ酸塩/マンニトール複合体、クエン酸塩/マンニトール複合体、及び/又はホウ酸塩/クエン酸塩/マンニトール複合体を形成し得る。
【0034】
一実施形態における麻酔薬組成物は、ホウ酸及びD-マンニトールなどの糖アルコールから得られる緩衝液複合体を含み、ここで、前記緩衝液複合体はホウ酸塩/マンニトール複合体である。ホウ酸とアルコール糖との比率又は相対量は、望ましいpH、浸透圧、アーティカインとの適合性、及び麻酔薬組成物中のアーティカイン濃度に基づいて選択される。前記緩衝液は、ホウ酸及びD-マンニトール混合物の総重量に基づいて、約13重量%~約15重量%の量のホウ酸と約85重量%~約87重量%の量のD-マンニトールとの混合物から得られ得る。一実施形態における緩衝液は、ホウ酸とD-マンニトールとの合計重量に基づいて、約14重量%のホウ酸と約86重量%のD-マンニトールとの混合物から得られ得る。ホウ酸塩/マンニトール複合体を形成する局所眼科用麻酔薬組成物中のホウ酸は、局所眼科用麻酔薬組成物の総量に基づいて、約0.08%w/v~約0.10%w/vの量であってもよく、D-マンニトールは、0.50%w/v~約0.60%w/vの量で含まれ得る。
【0035】
局所眼科用麻酔薬組成物に含まれるホウ酸塩/マンニトール複合体の量は、アーティカインを安定化し、眼科用組成物の長期保存を提供するための最終組成物中のアーティカインの量に基づく。ホウ酸塩/マンニトール複合体の量は、眼科用組成物の総体積に基づいて、約0.4%w/v~約0.75%w/vであり得る。一実施形態では、ホウ酸塩/マンニトール複合体の量は、眼科用組成物の総体積に基づいて、約0.5%w/v~約0.75%w/vであり得る。他の実施形態では、前記最終的な眼科用組成物に含まれるホウ酸塩/マンニトール複合体は、眼科用組成物中の100重量部のアーティカインに基づいて、約6.5重量部~約7.5重量部の量である。
【0036】
他の実施形態では、前記緩衝複合体は、ホウ酸、クエン酸、及びそれらの混合物などの酸と、マンニトール、ソルビトール及びそれらの混合物などの糖アルコールとから生成され、酸と糖アルコールとの比率は、約1:10~10:1の範囲であり得る。記載された実施形態では、前記糖アルコールの量は、前記酸の量よりも多い、すなわち、酸と糖アルコールとの比率は、1:3~1:10の範囲である。ホウ酸とマンニトールとの比率は、重量で約1:3~約1:7であり得る。一実施形態では、ホウ酸とマンニトールとの比率は、重量で約1:4~約1:6であり得る。適切なホウ酸とマンニトールとの比率のさらなる例は、重量で約1:4.5~約1:5.5であり得る。適切な緩衝液複合体の他の例は、ホウ酸、クエン酸、及びマンニトールの混合物から得られるホウ酸塩/クエン酸塩/マンニトール複合体である。
【0037】
ホウ酸及びD-マンニトールに加えて、前記実施形態における他の緩衝液及び抗酸化成分が含まれ得る。追加の緩衝液及び/又は抗酸化化合物の例としては、酢酸ナトリウム三水和物などの酢酸陰イオンが挙げられる。前記追加の緩衝液及び/又は抗酸化化合物は、前記局所眼科用麻酔薬組成物の総量に基づいて、約0.3%w/v~約0.5%w/vの量で含まれ得る。この実施形態では、酢酸ナトリウム三水和物は、局所眼科用麻酔薬組成物の総体積に基づいて、0.33%w/vの量で含まれる。酢酸ナトリウムは、ホウ酸とD-マンニトールとの複合体と組み合わせて、ホウ酸、D-マンニトール、及び酢酸ナトリウムを含む緩衝液の合計重量に基づいて、約33重量%~約35重量%、通常は約34重量%の量で含まれ得る。
【0038】
前記局所眼科用麻酔薬組成物中の他の賦形剤としては、pH調整剤又は消毒化合物が挙げられる。氷酢酸などの酢酸は、pHを調整するための適切な酸の例であり、アーティカインを含む局所眼科用麻酔薬組成物と適合性のある消毒特性を有する。通常、氷酢酸として添加される酢酸は、麻酔薬組成物の総量に基づいて、約0.05%w/v~約0.07%w/vの量で含まれる。他の賦形剤には、エデト酸二ナトリウム二水和物などのキレート剤が含まれ得る。
【0039】
一実施形態における局所眼科用麻酔薬組成物は、約4.5%~約8.5%w/vの量のアーティカイン、緩衝液としてのホウ酸及びD-マンニトールから形成される複合体、酢酸ナトリウム、酢酸、エデト酸二ナトリウム、並びに残部の水を含む。適切な実施形態では、前記局所眼科用麻酔薬組成物は、組成物の総体積に基づいて、約7.5%~約8.5%w/vのアーティカイン、約0.08%w/v~約0.10%w/vのホウ酸及び約0.5%w/v~約0.6%w/vのD-マンニトール、約0.30~0.36%w/vの酢酸ナトリウム、約0.05%w/v~約0.07%w/vの氷酢酸、約0.05%w/v~約0.07%w/vのエデト酸二ナトリウム二水和物から得られる複合体を含む。前記局所組成物は、約580~630mOsm/kgの浸透圧を有し得る。さらなる実施形態では、前記組成物は、実質的に、アーティカイン、ホウ酸及びD-マンニトールから得られる緩衝液、二酢酸ナトリウム、酢酸、エデト酸二ナトリウム、並びに水からなる。
【0040】
適切な局所眼科用組成物の他の適切な例は、組成物の総体積に基づいて、約7.5%~約8.5%w/vのアーティカイン、ホウ酸塩/マンニトール複合緩衝液、及びアーティカイン安定剤化合物を含み、前記組成物は、約pH4.5~pH7.0のpH、約500~700mOsm/kgの浸透圧、及び約700~850cpの粘度を有する。
【0041】
他の実施形態では、前記局所眼科用麻酔薬組成物は、少なくとも4%w/vのアーティカイン、及びアーティカインと非反応性であり、アーティカインの分解なしに、かつ眼への刺激を最小限に抑えた安定な組成物を提供する緩衝液を含む水性組成物である。他の実施形態では、前記局所眼科用麻酔薬組成物は、組成物の総体積に基づいて約5.0%~8.5%w/vの量のアーティカインを含む。さらに他の実施形態では、前記局所眼科用麻酔薬組成物は、組成物の総体積に基づいて少なくとも約8.0%w/vの量のアーティカインを含む。
【0042】
前記緩衝液は、アーティカインとの反応を回避し、貯蔵中のアーティカインの分解を阻害するようなアーティカインとの適合性があり、アーティカインを安定化するためのpHを提供し、眼への刺激を最小限に抑えた、組成物中のアーティカインの望ましい濃度を提供するように選択される。前記緩衝液は、アミノ基などの反応性基を安定化することによってアーティカインを安定化する。安定剤としては、酸素及び/又はオキソラジカルによるアーティカインの反応性基の酸化を阻害する化合物が挙げられる。亜硫酸ナトリウムは、特定の実施形態において酸化を阻害するための安定剤の一例である。他の抗酸化剤としては、EDTAナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウム、及びアスコルビン酸が挙げられる。一実施形態における局所眼科用麻酔薬組成物は、約pH4.5~約pH7.0のpH及び280~320mOsm/kgの浸透圧を有する。他の実施形態では、前記緩衝液は、局所眼科用麻酔薬組成物中のpHを約pH5.0~pH7.0に維持するための化合物を含む。前記緩衝液はまた、前記組成物及び緩衝液に応じて、約pH4.7~約pH5.5を有する組成物を生成し得る。他の実施形態では、前記局所眼科用麻酔薬組成物は、少なくともpH5.4のpHを有し得る。前記pHは、局所眼科用麻酔薬組成物中の緩衝液及びアーティカインの濃度に依存し得る。
【0043】
前記局所眼科麻酔組成物は、眼への局所塗布に適した組成物を得るための方法又は手順によって調製され得る。前記緩衝複合体を含む実施形態では、前記複合体は、一般に、アーティカインに安定化効果を提供するために、アーティカインと混合又は結合する前に調製される。一実施形態における組成物を製造する方法は、最初に酸成分を水に添加して酸性溶液を形成することにより、水性媒体中で複合体を調製する。前記酸化合物は、ホウ酸、クエン酸、又はそれらの混合物であり得る。次に、マンニトール、ソルビトール、又はそれらの混合物などの糖アルコールを酸溶液に添加し、十分な時間反応させて、ホウ酸塩/マンニトール複合体などの複合体を形成する。次に、賦形剤をホウ酸塩/マンニトール複合体の溶液に添加して、望ましいpH及び最終組成を得る。賦形剤の例には、溶解するまでホウ酸塩/マンニトール複合体の溶液に酢酸ナトリウム三水和物を添加することが含まれる。氷酢酸などの酢酸を加えて溶液を酸性化する。次に、EDTA二水和物を添加して目的のpHを得る。前記アーティカイン塩酸塩を添加及び溶解してアーティカイン組成物を得て、望ましいアーティカイン濃度を有する眼科用組成物を得る。
【0044】
局所眼科用麻酔薬アーティカイン組成物を使用して、患者の眼を投与及び麻酔するために、様々な方法を使用し得る。一実施形態では、前記水性局所麻酔薬組成物は、眼に十分な麻酔を提供するのに有効な量で眼の表面に直接投与される。7%w/v以上を含む局所眼科麻酔組成物を眼の表面に滴下して投与して、眼に十分な麻酔を提供し得る。適切な投与量は、通常、少なくとも約7%w/vのアーティカインを含む組成物に対して約30μlである。7%w/v未満のアーティカインを含む組成物は、望ましい麻酔効果を達成するのに有効量のアーティカインを眼の表面に投与するため、より多くの投与量又は反復投与を必要とし得る。
【0045】
さらなる実施形態では、前記緩衝液は、ホウ酸塩/マンニトール(pH6.0)、クエン酸塩(pH5.5)、酢酸塩(pH5.5)、又はリン酸塩(pH6.5、7.0、7.5)であり得る。前記緩衝液は、25mM以下の量で含まれてもよく、pH7.0未満、一般にpH5.5未満のpHを提供し得る。他の実施形態では、前記緩衝液は、水酸化ナトリウムと塩酸との混合物を含み得る。他の適切な緩衝液としては、一塩基性リン酸ナトリウム及び二塩基性リン酸ナトリウムが挙げられる。
【0046】
前記局所麻酔薬組成物はまた、潤滑剤及び粘度調整剤を含んでいてもよい。他の添加剤及び賦形剤の例としては、ポリエチレングリコール、グリセロール、亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウム、セチルアルコール、ヒドロキシプロピルB-シクロデキストリン、ポラクマー、チロキサポール、及びアスコルビン酸塩が挙げられ得る。
【0047】
本開示の例示的な実施形態は、有効性及び安全性を達成するのに、望ましいアーティカイン濃度、pH、粘度、解離定数、並びに抗酸化剤、緩衝剤、及びメチルセルロースなどの増粘剤などの添加剤を有する特有の製剤を含む局所眼麻酔薬を提供する。本開示の例示的な実施形態は、液体、ゲル、軟膏、又はカプセル化された形態を含む製剤を含む。
【0048】
本開示のさらなる例示的な実施は、例示的な実施形態による製剤の製造の実用性を考慮し得る。例えば、眼科用溶液を含む例示的な実施形態の場合、様々な量のメチルセルロースを添加して粘度を増加させ、それにより外眼表面との接触時間を増加させ、アーティカインの効力を増加させ得る。適切な粘度調整剤は、アーティカインと負に相互作用したり、アーティカインを不安定化させたりすることはない。他の粘度調整剤としては、ポリビニルアルコール及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。
【0049】
前記局所眼科麻酔組成物の他の例示的な実施形態は、眼科用滴下による局所塗布のための滅菌組成物としてエピネフリン1:100,000と共に供給される約4%~約8.0%w/vの量のアーティカインを含む。前記組成物は、硝子体内注射の準備として眼を治療するために局所的に塗布され得る。前記局所組成物は、眼に望ましい麻酔効果を提供するために、1滴として、又はいくつかの塗布によって塗布され得る。前記局所眼科用組成物は、塗布の間に3~5分の時間で3~6回の塗布で1滴として塗布され得る。他の実施形態では、前記局所組成物は、1滴として塗布又は投与され得て、そして2~5分後に3~5回再塗布され得る。
【0050】
他の例示的な実施形態は、約pH4.5~約pH5.5のpH、及び約7.0~約8.5のpKaを有する4%~8.0%w/vのアーティカインを含む局所眼科麻酔薬としてアーティカインを含む局所眼科用麻酔薬組成物を提供する。水性麻酔薬組成物の例には、pH5.5、pKa7.8、20~25cp(センチポアズ)の粘度、275~1717mOsms/kgの浸透圧、0.5%~5.0%の張度を有する約4%w/v~約5w/vのアーティカイン、NaOH緩衝液、及びHCl緩衝液が含まれる。
【0051】
適切な水性局所眼科用組成物のさらなる例は、約pH6.0~約pH7.0のpHで約4%w/w~約13%w/vのアーティカイン、及び一般に少なくとも約7%w/vのアーティカイン、リン酸ナトリウム一塩基性一水和物、二塩基性リン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリエチレングリコールなどの増粘剤を含む。前記麻酔薬組成物の例には、80mg/gのアーティカイン塩酸塩、1.373mg/gのリン酸二水素ナトリウム一塩基性一水和物、1.413mg/gのリン酸水素二ナトリウム無水物、8.1mg/gのヒドロキシプロピルメチルセルロース、4mg/gのPEG400が含まれ、ここで前記組成物は、pH6.0~pH7.0のpH、743~803cpの粘度、及び517mOsm/kgの浸透圧を有する。
【0052】
1回又は2回の用量で塗布された4%w/vのアーティカインを含む局所組成物は、完全な麻酔効果を提供しなかった。しかしながら、3~5分間隔での1回の塗布につき3回以上の1滴の投与が効果的な麻酔をもたらすことが観察された。さらに、患者は、現在使用されている局所眼科麻酔薬で一般的に経験される、灼熱感、かゆみ、発赤、又は眼表面刺激の他の症状を訴えなかった。
【0053】
本開示の特徴は、局所麻酔薬眼科用組成物による、局所塗布又は眼への輸送によって眼に麻酔を提供する方法である。前記麻酔薬は、眼内注射、毛様体扁平部硝子体切除術などの前など、手術の前に局所的に投与される。
【0054】
典型的には、医師は、眼を麻酔するために注射可能な麻酔薬を投与し、次に、処置を開始する前に、麻酔薬が効果を発揮するのに適切な期間待たなければならない。本開示の例示的な実施形態による局所的アプローチの利点は、麻酔薬を眼に注射する必要なしに、組成物を局所的に塗布することによって麻酔薬を投与することの容易さである。
【0055】
アーティカインの有効性及び安全性は、歯科産業などにおいて、注射による麻酔薬として使用するために十分に確立されている。アーティカイン塩酸塩は、分子量320.84g/molの、タンパク質結合性の高い、分子式4-メチル-3(2-[プロピルアミノ]プロプリオアミド)-2-チオフェンカルボン酸、メチルエステルの塩酸塩であり、7.8のpKaを有する。アーティカインは、チオフェン環及び追加のエステル基を含むアミド含有麻酔薬である。前記チオフェン環は、他のアミド含有麻酔薬と比較して、アーティカインの脂溶性の増加を提供する。アーティカインは拡散性が高く、注射で投与すると組織及び骨に効果的に浸透する。アミド基及びエステル結合の存在により、生体内変化が血漿(血漿エステラーゼによる加水分解)と肝臓(ミクロソーム酵素)との両方で起こるため、毒性反応を最小限に抑える。前記代謝は、エステル基の加水分解によって開始され、遊離のカルボキシル基を生成する。アルチカイン酸は一次代謝物である。追加の不活性代謝物が少量検出されている。5~10%は変化せずに腎臓から排泄され、89%は代謝物として排泄される。アーティカインの注射可能な形態は、歯科で麻酔薬として一般的に使用される。
【0056】
アーティカインは、組織内のナトリウムチャネルの遮断を介して神経伝導を阻害することによって作用する。アーティカインは、神経内の電位依存性ナトリウムチャネルのアルファサブユニットに可逆的に結合することによって作用する。これによりナトリウムの流入が減少し、神経の閾値電位に到達せず、インパルス伝導が停止する。アーティカインは短時間作用型で急速に作用を開始し、組織が局所麻酔薬に浸透する。アーティカインは、注射可能な組成物においてエピネフリンと組み合わせて使用され、局所的な血管収縮を引き起こし、吸収を増加させ、作用の持続時間を増加させている。注射可能な塗布では、アーティカインは通常4%w/vの濃度で使用される。市販の注射用製剤には、1:1000,000(0.01mg/ml)の量のエピネフリンを含む塩酸アーティカイン(4%)が含まれる。
【0057】
市販の注射可能な形態のアーティカインについて、重篤な副作用は報告されていない。アレルギー反応はまれであるが、一部の市販製剤の防腐剤としての亜硫酸水素ナトリウムは、一部の患者に浮腫、蕁麻疹、紅斑、アナフィラキシーショックなどのアレルギー反応を引き起こし得る。アーティカインはメトヘモグロビンの増加とは関係がない。アーティカインは、アミド含有麻酔薬及びメタ重亜硫酸ナトリウムにアレルギーのある患者には禁忌である。アーティカインは、アルチカインチオフェン環のチオール基とスルホンアミドとの間に交差アレルギー性がないという点で、サルファ剤アレルギーの患者には禁忌ではない。
【0058】
以下の実施例は、適切な組成物及び方法を実証するために提供されているが、この説明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0059】
実施例1
1つの研究の2つのサブパートが、ダッチベルテッドウサギについて行われた、すなわち、眼の耐容性研究及びそれに続く眼の生体内分布研究である。
【0060】
眼の耐容性研究において、合計12匹の雄のダッチベルテッドウサギをランダムに4つのグループに分けて、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)のプラセボ又はアーティカインをそれぞれ4%、8%、又は12%投与した。用量は、両側局所投与(35μL/眼の2滴)を介して投与された。用量耐容性試験のウサギは、薬物の副作用の兆候/症状について、治療後24時間観察された。眼科検査は、用量耐性動物(グループ1~4)の投与前、5、10、20分、及び2回目の点眼薬投与の1、2、4、24時間後に、改良型ハケットマクドナルドスコアリングシステムを使用して実施した。改良型ハケット-マクドナルドスコアリングに続いて、局所麻酔効果は、コシェ-ボネット麻酔測定前投与によって、各眼に2回目の点眼薬を投与してから約5、10、20分、及び1時間後に各眼でモニターされた。アーティカイン点眼薬は、12%w/vまでの濃度ですべての動物で十分に許容され、治療に関連する副作用は認められなかった。アーティカインの局所眼投与は、投与後20分まで麻酔効果をもたらし、顕著な耐容性の問題はなかった。
【0061】
眼の生体内分布研究において、眼の耐容性研究の完了後最低72時間後、12匹のウサギは、眼の生体内分布研究のためにグループ5に再割り当てされた。グループ6が追加され、これは3匹のナイーブウサギから構成された。治療後72時間にわたるアーティカインの潜在的なキャリーオーバー効果を評価するためにグループ6を含めた。グループ5及びグループ6の動物に、それぞれ8%及び12%w/vのアーティカインを投与した。用量は、両側局所投与(35μL/眼の2滴)を介して投与された。グループ5の動物は、治療後10分、1、4、8時間で屠殺された(各時点でN=3)。グループ6のウサギは、治療後24、48、72時間で屠殺された(各時点でN=1)。犠牲にする直前に、各動物から血液サンプルを収集した。次に、動物を安楽死させ、房水、結膜(眼瞼及び球根)、水晶体、角膜、硝子体液、虹彩-毛様体[ICB]、視神経、涙腺、網膜、及び脈絡膜を収集した。血漿、房水、結膜(眼瞼及び眼球)、水晶体、角膜、ICB、脈絡膜、及び涙腺組織を分析して、アーティカイン(活性親)及びアーティカイン酸(不活性代謝物)の濃度を分析し、残りの組織を予定される将来の分析のため凍結保存した。アーティカイン濃度は、8%製剤の局所眼投与後に典型的なプロファイルを示し;調査した最も早い時点(0.167時間)で最も高く、その後の時点(1、4、及び8時間)で減少した。アーティカイン酸濃度は、濃度が0.167時間から1時間に増加し、その後の時点(4時間及び8時間)で減少した房水を除いて、すべてのマトリックスで同様のプロファイルに従った。12%のアーティカイン局所眼投与後の低残留濃度のアーティカイン及びアーティカイン酸が、投与後24、48、及び72時間に検査されたすべての眼球マトリックスで検出された(脈絡膜のアーティカイン酸を除く)。アーティカイン濃度は、角膜を除くすべての眼球マトリックスにおいてアーティカイン酸よりも高かった。予想通り、アーティカインの局所眼投与後のTmaxは、すべての眼マトリックス及び血漿で調べた最初の時点(0.167時間)で認められた。アーティカインのCmaxは、虹彩-毛様体(294,000ng/g)で最も高く、次に眼瞼結膜(131,000ng/g)、脈絡膜(103,000ng/g)、眼球結膜(94,000ng/g)、角膜(53,500ng/g)が続いた。血漿Cmaxは457ng/mLで、調べたすべてのマトリックスの中で最低であった。アーティカインへのマトリックスの曝露を示すAUC値は、一般に、Cmax値に見られるように、最高(すなわち、虹彩-毛様体)から最低(すなわち、血漿)の同じ順序に従った。眼球マトリックス中のアーティカインのT1/2(半減期)は1.95~3.83時間の範囲であったが、T1/2が6.31時間の眼瞼結膜は例外で、投与後の下眼瞼の局所用量プールに関連している可能性があった。血漿中のアーティカインのT1/2は約0.5時間であった。アーティカイン酸のCmaxは、眼瞼結膜(71,100ng/g)、角膜(53,500ng/g)、眼球結膜(29,100ng/g)、及び虹彩-毛様体(12,600ng/g)で最も高かった。血漿Cmaxは217ng/mLで、調べたすべてのマトリックスの中で最低であった。マトリックスのアーティカイン酸への曝露を示すAUC値は、一般に、アーティカインと同じ順序で高から低となったが、角膜及び血漿を除いて、アーティカインの値よりも大幅に小さかった。AUC0-最後のアーティカインに対するAUC0-最後のアーティカイン酸の比率によって示されるように、比率は角膜及び血漿の両方で約2であり、これら2つのマトリックスのアーティカインよりもアーティカインへの曝露が多いことを示している。他のすべてのマトリックスでは、比率は<0.7であった。ほとんどの眼球マトリックス中のアーティカイン酸のT1/2(半減期)は1.70~3.29時間の範囲であった。血漿中のアーティカイン酸のT1/2は約1.5時間であった。
【0062】
要約すると、アーティカインの局所眼投与は、顕著な耐容性の問題なしに、投与後20分まで麻酔効果を提供した。アーティカイン及びアーティカイン酸は、虹彩-毛様体、球麻痺及び眼瞼結膜、並びに角膜で見られる最も高い曝露で検査されたすべての眼球マトリックスで検出された。眼組織にエステラーゼ活性が存在することを考慮すると、アーティカインからアーティカイン酸への迅速な代謝が期待される。血漿AUCによって示されるように、全身曝露は最小限であった。
【0063】
この研究の目的は、局所点眼薬投与後の4、8、及び12%(w/v)の濃度でのプラセボ及びアーティカインHCl点眼液の耐容性を決定すること、並びに8%アーティカイン塩酸塩点眼液の局所点眼投与後のアーティカイン及びアーティカイン酸の眼の薬物動態及び生体内分布を決定することであった。前記ウサギは、眼の薬物動態を含む、新規の化学物質及びさまざまな試験品製剤の前臨床薬物動態研究で使用される標準的な非齧歯類の種である。動物の数は、この忍容性及び眼の生体内分布の研究を適切に実行するために必要な適切な数と見なされ、動物間のばらつきを説明し、記述統計分析の生成を可能にする。これがヒトにおける意図された投与経路であるため、局所経路が選択された。スポンサーによって選択された眼製剤の用量レベルは、試験品の治療用眼組織濃度を達成するように設計された。試験品の単回投与は、薬物動態の決定に一般的である。
【0064】
承認された水性アーティカイン製剤を用いた研究がヒトで行われ、非常に好ましい初期結果がウサギ研究の結果を裏付けている。
【0065】
実施例2
表1に示されるように、8.0%w/vの濃度でアーティカイン塩酸塩を含む局所眼科用麻酔薬組成物が調製された。
【0066】
【0067】
前記組成物は、溶解するまで一定量の水を含む混合容器にホウ酸を加えることによって調製された。次に、マンニトールを添加し、溶解するまで混合し、撹拌して、ホウ酸塩/マンニトール緩衝体複合体を形成した。次に、酢酸ナトリウム三水和物を加え、溶解するまで撹拌し、続いて氷酢酸を加えた。EDTA二水和物を添加して、約pH4.5~pH5.2のpHを得た。アーティカイン塩酸塩を加え、溶解するまで攪拌した。得られた組成物は、pH4.7~pH4.9のpH、及び580~630mOsm/kgの浸透圧を有していた。
【0068】
実施例3
以下の表2に示される組成物を有する局所眼科用組成物を調製した。Systane及びSystane + 8%アーティカイン塩酸塩は、粘度の比較として使用されたという理由だけでここに含まれているが、それ以外の場合は配合研究の一部ではない。
【0069】
【0070】
製剤C及びFは、5℃、25℃、及び45℃で保存された容器内で8週間にわたる製剤の安定性について評価された。
【0071】
5℃、25℃、及び45℃での保存の結果は、許容可能な不純物レベル、安定したpH、粘度、及び浸透圧を示した。製剤Fは、分解レベルに基づいて有用であることが実証された。PEG400はアーティカインと非常に反応性が高いようである。可能な限り低いpHを有し、さらに患者に耐えられる緩衝液が示されている。ホウ酸/マンニトール緩衝液は必要な安定性を達成した。
【0072】
一実施形態では、前記組成物は、35mMの酢酸塩、pH4.8、15mMのホウ酸塩-マンニトール複合体、及び0.055%のEDTA(二ナトリウム、脱水塩)から構成されていた。酢酸塩は、酢酸、酢酸ナトリウム又はそれらの混合物から得られ得る。この製剤は安定したpHを示し、40℃で4週間にわたって1週間あたり約0.04%のアーティカイン酸が形成されるという低い加水分解速度(8週間で合計1.53%)、及び25℃で0.061%/週の速度での加水分解(8週間で合計0.49%)も示した。これは、以前から知られている処方よりも4倍以上遅い。
【0073】
前記方法のいくつかの態様は、100gスケールでの実験で決定され、次いで、確認するために500gまでスケールアップされた。
【0074】
ホウ酸(pKa 9.14)単独よりもはるかに酸性であるホウ酸塩-マンニトール複合体は、これらの2つの賦形剤が他の賦形剤又は緩衝液の非存在下で組み合わされると容易に形成され、約4.2のpHをもたらす。添加の順序に関して、これらの2つの賦形剤が最初に添加され、前記製剤が混合されて、前記複合体を完全に形成させる。
【0075】
アーティカイン塩酸塩の溶解後のpH調整の必要性を回避するのに、酢酸ナトリウム対酢酸の適切なモル比は、70:30(24.5mM~10.5mM)である。この比率を使用した場合、90.2mg/mLのアーティカイン塩酸塩(遊離塩基として80mg/mLのアーティカインに等しい)を添加した後の最終pHは、再現性よくpH4.80±0.05付近であった。
【0076】
前記方法は、最終pH4.80及び最終浸透圧622mOsm/kgで、500mLまで容易にスケールアップされた。その後、それも1Lにスケールアップされ、ろ過後の最終製剤のpHは4.85、浸透圧は597mOsm/kgであった。
【0077】
次に、プロセス開発実験で調製された医薬品を濾過研究で使用して、PVDFがこの製剤に適切なフィルター材料であるかどうかを確認し、適切なフィルターサイズを決定した。
【0078】
濾過の前後の両方で薬物の濃度が一貫しており、初期のアリコートで濃度が失われなかった、PVDFフィルター材料へのAPI結合の兆候はなかった。したがって、廃棄量を必要としない。
【0079】
Vmax研究は、経時的な流量の減少がほとんどないことを示し、フィルターの劣化はこの製剤では問題ではなく、比較的小さな濾過面積を使用して1Lバッチの医薬品を濾過し得ることを示している。したがって、フィルターのサイズは、主に必要な流量に基づいて選択され得る。必要な流量は、より高い圧力を使用しても調整され得る。
【0080】
本開示は、その特定の例示的な実施形態を参照して示され、説明されたが、当業者は、形態及び詳細の様々な変更が、本開示の思想及び範囲から逸脱することなく行われ得ることを理解されよう。
【0081】
本文書全体で引用されている刊行物は、参照によりその全体が本明細書に援用される。本明細書に記載の各特徴、及びそのような特徴の2つ以上の各組み合わせは、そのような組み合わせに含まれる特徴が相互に排他的でないという条件で、本開示の範囲内に含まれる。
【国際調査報告】