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特表2022-527645浮遊式太陽光発電マルチユニットフィッシュケージ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-02
(54)【発明の名称】浮遊式太陽光発電マルチユニットフィッシュケージ
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/60 20170101AFI20220526BHJP
【FI】
A01K61/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560408
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(85)【翻訳文提出日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2020059206
(87)【国際公開番号】W WO2020201325
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】19166855.7
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521441630
【氏名又は名称】ノヴァトン・エアノイアバレ・エネルギエン・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イッサム・カッバーニ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーネ・レーダーベルガー・ヒンダーリング
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA02
2B104AA03
2B104AA08
2B104AA17
2B104CA01
2B104CC02
2B104CC26
2B104CG07
2B104CG17
(57)【要約】
本発明は、格子空間を画定する浮遊式の平面格子とソーラーユニットとフィッシュケージとを備える、浮遊式太陽光発電マルチユニットフィッシュケージに関し、フィッシュケージが格子空間に割り当てられ、ソーラーユニットが格子空間を覆うように格子空間に割り当てられてソーラーユニットで覆われた格子空間が形成され、ソーラーユニットで覆われた格子空間はフィッシュケージに部分的に広がって部分的に覆われたフィッシュケージを形成し、部分的に覆われたフィッシュケージは、ケージ内の魚がソーラーユニットで覆われた格子空間の下に移動可能にし、ソーラーユニットで覆われた格子空間は、電気エネルギー、直接的な太陽熱の放射からの魚の保護、鳥などの捕食者からの魚の保護、フィッシュケージ内の水の加熱または任意の組み合わせを提供する。さらに本発明は浮遊式太陽光発電マルチユニットフィッシュケージを使用して魚を飼育するための方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮遊式太陽光発電マルチユニットフィッシュケージ(1)であって、
(i) 浮遊する平面状の格子(2)であって、少なくとも2つの格子空間(3)を画定する格子(2)と、
(ii) 少なくとも1つ以上のソーラーユニット(4)と、
(iii) 少なくとも1つ以上のフィッシュケージ(5)と、
を備えており、
(a) 少なくとも1つのフィッシュケージ(5)が、少なくとも1つの格子空間(3)に割り当てられており、
(b) 少なくとも1つのソーラーユニット(4)が、少なくとも1つの格子空間(3)に割り当てられて、少なくとも部分的にまたは完全に前記格子空間(3)を覆っており、それによってソーラーユニットで覆われた格子空間(6)が形成され、
(c) 少なくとも1つのソーラーユニットで覆われた格子空間(6)は、少なくとも1つのフィッシュケージ(5)に部分的に広がって、部分的に覆われたフィッシュケージ(7)を形成し、
(d) 前記部分的に覆われたフィッシュケージ(7)は、ケージに入れられた魚が、少なくとも1つの少なくとも部分的にソーラーユニットで覆われた格子空間(6)の下に、自発的に身を置くことができるようにし、
(e) 前記少なくとも1つのソーラーユニットで覆われた格子空間(6)は、
a.電気エネルギー、
b.直接的な太陽熱の放射からの魚の保護、
c.例えば魚を捕食する鳥などの捕食者からの魚の保護、および
d.任意選択的に、フィッシュケージ(5)内の水に対する加熱、
またはそれらの任意の組み合わせ
のいずれかを提供することを特徴とする浮遊式のフィッシュケージ(1)。
【請求項2】
少なくとも1つのフィッシュケージ(5)は、少なくとも2つ以上の格子空間(3)に割り当てられることを特徴とする請求項1に記載の浮遊式のフィッシュケージ(1)。
【請求項3】
少なくとも1つの格子空間(3)は、ソーラーユニットで覆われた格子空間(6)であり、かつ少なくとも1つの格子空間(3)は、開放された格子空間(3)であることを特徴とする請求項2に記載の浮遊式のフィッシュケージ(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つのフィッシュケージ(5)は、水を含む魚用コンパートメントから周囲の水との水交換のためのメッシュまたは格子を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の浮遊式のフィッシュケージ(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのフィッシュケージ(5)は、水を含む閉じた魚用コンパートメントを形成する閉じたフィッシュケージ(8)であり、それによって周囲の水との水交換が妨げられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の浮遊式のフィッシュケージ(1)。
【請求項6】
前記閉じたフィッシュケージ(8)は、水密性の柔軟なシート(9)を備えており、かつ前記フィッシュケージ(1)が浮遊する外側水位(11)より上に伸びる内側水位(10)を有しており、それによって前記フィッシュケージ(5)の前記柔軟なシート(9)に、その最大体積および形状を安定させるように、水圧がかかることを特徴とする請求項5に記載の浮遊式のフィッシュケージ(1)。
【請求項7】
前記閉じたフィッシュケージ(8)の前記内側水位(10)と前記外側水位(11)との間の垂直方向の差つまり水柱高さは、少なくとも5cmから100cmであり、任意選択的には少なくとも10cmから70cmであり、任意選択的には15cmから60cmであり、かつ任意選択的には20cmから50cmであることを特徴とする請求項6に記載の浮遊式のフィッシュケージ(1)。
【請求項8】
前記閉じたフィッシュケージ(8)の容積は、少なくとも2mから100mであり、任意選択的には少なくとも3mから80mであり、任意選択的には4mから70mであり、任意選択的には5mから50mであることを特徴とする請求項6に記載の浮遊式のフィッシュケージ(1)。
【請求項9】
前記閉じたフィッシュケージ(8)の前記内側水位(10)と前記外側水位(11)との間の垂直方向の差は、少なくとも5cmから100cmであり、任意選択的には少なくとも20cmから50cmであり、前記閉じたフィッシュケージ(8)の容積は少なくとも3mから80mであり、任意選択的には少なくとも5mから50mであることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の浮遊式のフィッシュケージ(1)。
【請求項10】
前記少なくとも1つ以上のソーラーユニット(4)と前記少なくとも1つ以上のフィッシュケージ(5)とを受け入れかつ/または取り付けるための前記少なくとも1つの格子空間(3)は、略同一の平面寸法を有しており、それによって前記格子空間(3)は、前記少なくとも1つ以上のソーラーユニット(4)と前記少なくとも1つ以上のフィッシュケージ(5)との両方を交換可能な様式で受け入れるよう適合されることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の浮遊式のフィッシュケージ(1)。
【請求項11】
前記少なくとも1つ以上のソーラーユニット(4)はソーラーパネルを備えており、前記ソーラーパネルは、下方にある前記少なくとも1つの格子空間(3)を覆われていない状態にするために、ヒンジ様式で動かされ、折り畳まれ、かつ/またはスライドされることが可能であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の浮遊式のフィッシュケージ(1)。
【請求項12】
前記少なくとも1つ以上のソーラーユニット(4)は、電気ヒーターに電気を供給することによってかつ/または発電中の損失熱を水に直接接触させることによって、少なくとも1つのフィッシュケージ(5)の水に熱を提供することができることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の浮遊式のフィッシュケージ(1)。
【請求項13】
前記ソーラーユニット(4)の1つ以上は、
(i) 太陽熱の放射の入力とエネルギー出力とを最適化し、
(ii) 魚のための日陰および/または捕食者からの保護を最適化し、かつ/または、
(iii) 発電中の損失熱を伝達するために前記フィッシュケージ(5)の水に接触するように、
柔軟に配置することができることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の浮遊式のフィッシュケージ(1)。
【請求項14】
前記少なくとも1つのフィッシュケージ(5)および/または前記少なくとも1つのソーラーユニット(4)は、ねじ、フック、アイ、スライドファスナーおよび面ファスナーからなるグループから選択される取り外し可能な接続手段によって浮遊する前記格子(2)に接続されていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の浮遊式のフィッシュケージ(1)。
【請求項15】
浮遊式のフィッシュケージの中で魚を飼育するための方法であって、
(i) 請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の、浮遊式太陽光発電マルチユニットフィッシュケージ(1)を提供するステップと、
(ii) 前記少なくとも1つ以上のフィッシュケージ(5)に魚を導入し、給餌し、かつ成長させるステップと、
(iii) 前記少なくとも1つ以上のソーラーユニット(4)を用いて電気エネルギーを生成するステップと、
を含むことを特徴とする、魚を飼育するための方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つ以上のソーラーユニット(4)からの電気によってまたは発電中のその損失熱によって、前記少なくとも1つのフィッシュケージ(5)内の水を加熱するステップをさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の、魚を飼育するための方法。
【請求項17】
(a) 太陽熱の放射の入力とエネルギー出力とを最適化し、
(b) 魚のための日陰および/または捕食者からの保護を最適化し、かつ/または、
(c) 発電中の損失熱を伝達するために前記フィッシュケージ(5)の水に接触するように、
前記1つ以上のソーラーユニット(4)を柔軟に配置するステップをさらに含むことを特徴とする請求項15または請求項16に記載の、魚を飼育するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの格子空間を画定する浮遊する平面状の格子と、少なくとも1つ以上のソーラーユニットと、少なくとも1つ以上のフィッシュケージと、を備える浮遊式太陽光発電マルチユニットフィッシュケージに関し、少なくとも1つのフィッシュケージが少なくとも1つの格子空間に割り当てられ、少なくとも1つのソーラーユニットが、少なくとも部分的にまたは完全に前記格子空間を覆うように少なくとも1つの格子空間に割り当てられ、それによってソーラーユニットで覆われた格子空間が形成され、少なくとも1つのソーラーユニットで覆われた格子空間は、少なくとも1つのフィッシュケージに部分的に広がって部分的に覆われたフィッシュケージを形成し、かつ当該部分的に覆われたフィッシュケージは、ケージに入れられた魚が、少なくとも1つの当該少なくとも部分的にソーラーユニットで覆われた格子空間の下に自発的に身を置くことを可能にし、かつ当該少なくとも1つのソーラーユニットで覆われた格子空間(6)は、電気エネルギー、直接的な太陽熱の放射からの魚の保護、例えば魚を捕食する鳥などの捕食者からの魚の保護、および任意選択的にフィッシュケージ(5)内の水に対する加熱、もしくはそれらの任意の組み合わせのいずれかを提供する。さらに、本発明は、前記浮遊式太陽光発電マルチユニットフィッシュケージ(1)を使用して魚を飼育するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
魚や魚のたんぱく質に対する需要の高まりに伴って、海や大陸にある淡水の保護区での乱獲が同時に発生しており、養殖および養魚が急速に拡大している。魚は、水槽および池(水産養殖)または浅瀬(海洋養殖)で孵化され、給餌されて飼育される。魚の養殖において生産される最も重要な養殖魚の種類は、コイ、ティラピア、サーモン、マス、ナマズであるが、エビ、ロブスター、海藻および藻類などの食べられる水生植物も人気が高く味わって食べられている。すべて本発明の一部であり、本明細書では概して「魚」と称する。
【0003】
最も一般的には、フィッシュケージは、捕獲まで魚を収容して保護するために、湖、バイユー(水の流れの遅い場所)、池、川または海に置かれる。海に置かれる場合、その方法は「沖合養殖」と称される。恒久的に置かれるフィッシュケージに関する問題の1つは、魚に食べられていない餌と、ケージに入れられた魚の排泄物とによる生物学的汚染であり、これは下方にある底に最も集中する。必要な場合は、魚の養殖業者は水交換および水処理に頼っており、水交換および水処理はポンプのためのエネルギーを必要とする。現在では、水産養殖産業に関してディーゼルおよび電気のコストが大きくなっている。すでに政府は規制を強化している。2021年までに、ディーゼルはノルウェーの沖合養魚場で禁止されるであろう。
【0004】
海岸基地由来の電力が利用できない場合、現場で生成される太陽エネルギーは「環境に優しい」選択肢である。しかしながら、とりわけ強力なポンプを長い期間にわたって運転する必要がある場合、太陽エネルギーは多くのスペースを必要とする。すでに今日では大型の浮遊式の平面島いわゆるソーラーアイランドが存在しており、これは太陽エネルギーを提供しかつケーブルを介して海岸に設置された発電所に連結されている。
【0005】
さらに、養魚の専門家には、水温および魚の快適さが体重増加および捕獲までの期間に強い影響を与えることが公知となっている。例えば、冬に川に過剰な熱を放出する原子力発電所の近くの養魚場で成長する魚は、水の温度がより低い川のさらに上流の魚と比べて著しく速く成長する。また、ストレスを受けた魚はより不規則に泳ぐため、より多くのエネルギーを消費する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の観点から、本発明の目的は、エネルギー効率の良い養魚のために最適化された、改良された浮遊式フィッシュケージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様では、本発明の目的は、浮遊式太陽光発電マルチユニットフィッシュケージであって、
(i) 浮遊する平面状の格子であって、少なくとも2つの格子空間を画定する格子と、
(ii) 少なくとも1つ以上のソーラーユニットと、
(iii) 少なくとも1つ以上のフィッシュケージと、
を備えており、
(a) 少なくとも1つのフィッシュケージが、少なくとも1つの格子空間に割り当てられており、
(b) 少なくとも1つのソーラーユニットが、少なくとも1つの格子空間に割り当てられて、少なくとも部分的にまたは完全に前記格子空間を覆っており、それによってソーラーユニットで覆われた格子空間が形成され、
(c) 少なくとも1つのソーラーユニットで覆われた格子空間は、少なくとも1つのフィッシュケージに部分的に広がって、部分的に覆われたフィッシュケージを形成し、
(d) 部分的に覆われたフィッシュケージは、ケージに入れられた魚が、少なくとも1つのソーラーユニットで覆われた格子空間の下に、自発的に身を置くことができるようにし、
(e) 少なくとも1つの少なくとも部分的にソーラーユニットで覆われた格子空間は、
a.電気エネルギー、
b.直接的な太陽熱の放射からの魚の保護、
c.例えば魚を捕食する鳥などの捕食者からの魚の保護、および
d.任意選択的にフィッシュケージ内の水に対する加熱、
またはそれらの任意の組み合わせのいずれかを提供することを特徴とする浮遊式フィッシュケージによって解決される。
【0008】
マルチユニットフィッシュケージは、浮遊式の本質的に平面状の格子を備えており、格子は少なくとも2つの格子空間を画定しており、格子空間の各々は、ソーラーユニットおよび/またはフィッシュケージの一部または他の機能ユニットを形成する。格子自体は、例えばチューブなどの中空構造から形成されているため自力で浮遊可能であるか、または格子は例えば浮桟橋(pontoon)などの付加的な浮遊手段を備える。任意選択的に、浮遊格子との用語は、地面にしっかりと立って水面上に突出する格子を含む。
【0009】
格子との用語は、本明細書で使用されるように例えば正方形、長方形、六角形、八角形、円形、楕円形などの、本質的に平面状の空間を形成する任意の平面格子様式の構造を包含する。
【0010】
典型的には、格子のビーム構造は、格子間スペースでの歩行、給餌、捕獲および作業を可能にし、かつソーラーユニットおよび養魚のためのさらなる装置を支持する。
【0011】
一定の間隔で少なくとも1つのフィッシュケージは少なくとも1つの格子空間に割り当てられているか、または最適には少なくとも1つのフィッシュケージは、格子ビームがフィッシュケージと整列されかつ交差するように少なくとも2つ以上の格子空間に割り当てられている。
【0012】
同一の少なくとも1つのソーラーユニットは、少なくとも1つの格子空間に割り当てられて、少なくとも部分的にまたは完全に格子空間を覆っており、それによってソーラーユニットで覆われた格子空間が形成される。例えば、ソーラーユニットは、真下にある少なくとも1つの格子空間を覆われていない状態または部分的に覆われていない状態にするために、ヒンジ様式で動かし、折り畳み、かつ/またはスライドすることが可能なソーラーパネルを備えてもよい。
【0013】
浮遊式フィッシュケージは、少なくとも1つのソーラーユニットで覆われた格子空間が、部分的に覆われたフィッシュケージを形成するように少なくとも1つのフィッシュケージに部分的に広がるように設計されており、この構成によって、ケージに入れられた魚は、自発的に居場所を定める、つまり少なくとも1つのソーラーユニットで覆われた格子空間の下に身を置くことができる。
【0014】
気候、日光照射、水温、昼間および夜間、捕食リスク、および魚の快適さに応じて、魚は移動する、つまり身を置く場所を変えて、フィッシュケージのうちソーラーユニットで覆われた(太陽および捕食者から保護されている)部分およびフィッシュケージのうち開放されている(日中、太陽によって温められた)部分のいずれかを選択する。任意選択的には、被覆率の程度を例えば増加するように調整することができる、つまりソーラーユニットをヒンジ様式で動かし、折り畳みかつ/またはスライドすることによって増減できる。一代替例では、フィッシュケージが部分的にまたはさらに完全に覆われた状態または覆われていない状態となるように、ソーラーモジュールをスライドすることが可能である。別の代替例では、ソーラーモジュールが、格子空間を少なくとも部分的に覆うフォイルに取り付けられている場合、このフォイルを、ソーラーモジュールの有効面積および被覆率を低減させるように、少なくとも部分的に巻き上げるかまたは折り畳むことができる。
【0015】
同時に、少なくとも1つのソーラーユニットで覆われた格子空間は、有利には、電気エネルギー、直接的な太陽熱の放射からの魚の保護、例えば魚を捕食する鳥などの捕食者からの魚の保護、および任意選択的にフィッシュケージ内の水に対する加熱を提供する。フィッシュケージとソーラーユニットとを重ねることによって、マルチユニットフィッシュケージの利用可能な有効面積を最適化することができる。
【0016】
代替実施形態では、本発明の浮遊式のフィッシュケージは1つであり、少なくとも1つの格子空間は、ソーラーユニットで覆われた格子空間であり、少なくとも1つの格子空間は、開放された格子空間である。
【0017】
1つ以上のフィッシュケージは、水を含む閉じた魚用コンパートメントから周囲の水と自由に水交換するためのメッシュまたは格子を備えてもよい。この実施形態を実施するための一代替例は、例えば銅-ニッケルまたは銅-シリコンから作られる銅合金ネットである。銅合金は抗菌性があり、バクテリア、ウイルス、菌類、藻類および他の微生物を殺し、それによって生物付着を防止する、つまり微生物、植物、藻類、チューブワーム、フジツボ、軟体動物および他の生物の望ましくない蓄積、付着および成長を防止する。それとは反対に従来の網製品は定期的に多くの人手を要するクリーニングを必要とする。銅の網製品はまた、海洋環境において強力な構造的特性および耐食性を有する。
【0018】
代替実施形態では、本発明の浮遊式フィッシュケージは1つであり、少なくとも1つのフィッシュケージは、水を含む閉じた魚用コンパートメントを形成する閉じたフィッシュケージであり、そのため周囲の水との水交換が妨げられている。そうした実施形態では、残りの魚の餌や尿および糞便の蓄積を回避するために、水の再生が定期的に必要とされる。
【0019】
閉じたフィッシュケージ(8)は、周囲を移動する水から圧力がかかる場合でさえ容器形状を維持する、硬く柔軟性のない水密材料から構成できる。または、閉じたフィッシュケージ(8)は、柔軟な水密材料から構成でき、例えば閉じたフィッシュケージ(8)は、水密性の柔軟なシートまたは膜(9)を備えてもよく、例えばポリエチレン(HDPEやLDPEなど)、ポリ塩化ビニルおよびエチレンプロピレンジエンメチレンゴムから作られてもよい。
【0020】
閉じたフィッシュケージが水密性の柔軟なシートを備える場合、当該フィッシュケージは、任意選択的に、フィッシュケージが浮遊する外側水位より上に伸びる内側水位を有しており、そのため、フィッシュケージの最大体積および形状を安定させるようにフィッシュケージの柔軟なシートに水圧がかかる。
【0021】
要するに、外側水位より上にある水の重量はその重力によって柔軟なシートの内部にある水を押し下げ、それによってすべての柔軟な壁に均一な圧力がかかる。
【0022】
柔軟なシートを備える閉じたフィッシュケージは、形状が安定し、水密性があり、柔軟性があるため、閉じたフィッシュケージの内側水位と外側水位との間の垂直方向の差つまり水柱高さは、少なくとも5cmから100cmであり、任意選択的には少なくとも10cmから70cmであり、任意選択的には15cmから60cmであり、かつ任意選択的には20cmから50cmである場合に有利となる。
【0023】
この実施形態では、例えば閉じたフィッシュケージの容積は、少なくとも2mから100mであり、任意選択的には少なくとも3mから80mであり、任意選択的には4mから70mであり、任意選択的には5mから50mである。
【0024】
本発明を実施するために柔軟性のある閉じたフィッシュケージの代替的な実施形態において、閉じたフィッシュケージの内側水位と外側水位との間の垂直方向の差は、少なくとも5cmから100cmであり、任意選択的には少なくとも20cmから50cmであり、かつ閉じたフィッシュケージの容積は少なくとも3mから80mであり、任意選択的には少なくとも5mから50mである。
【0025】
当然のことながら、本発明の浮遊式フィッシュケージは、さまざまなサイズおよび形状を有する格子空間を特徴とすることができる。なお、少なくとも1つの格子空間は、少なくとも1つ以上のソーラーユニットおよび/または少なくとも1つ以上のフィッシュケージを受け入れかつ/または取り付けるために、略同一の平面寸法を有してもよく、それによって格子空間は、少なくとも1つ以上のソーラーユニットと少なくとも1つ以上のフィッシュケージとを交換可能な様式で受け入れるよう適合される。さらに、これによって、与えられる環境条件、養殖業者の希望、および魚のニーズに応じて、浮遊式フィッシュケージを配置することできる。
【0026】
浮遊式フィッシュケージの少なくとも1つ以上のソーラーユニットは、例えば部分的にかつ/または徐々に増加するようにその真下において少なくとも1つの格子空間を覆われていない状態にするために、ヒンジ様式で動かされ、折り畳まれ、かつ/またはスライドされることが可能なソーラーパネルを備えてもよい。このようにして、ソーラーユニットの被覆率を増減するように、覆われたスペースを調整することができる。
【0027】
本発明の浮遊式フィッシュケージの少なくとも1つ以上のソーラーユニットは、電気ヒーターに電気を供給することによってかつ/または発電中の損失熱を水に直接接触させることによって、少なくとも1つのフィッシュケージの水に熱を提供することができる。上述のように、より温かい水は、魚のより少ないエネルギー損失およびより良好な体重増加につなげることができる。これは、例えばカナダおよび北ヨーロッパなどの水がより冷たいところでとりわけ有用である。
【0028】
当然のことながら、浮遊式フィッシュケージのソーラーユニットは、
(i) 太陽熱の放射の入力とエネルギー出力とを最適化し、
(ii) 魚のための日陰および/または捕食者からの保護を最適化し、かつ/または、
(iii) 発電中の損失熱を伝達するためにフィッシュケージの水に接触するように、
柔軟に配置され得る。
【0029】
代替実施形態では、本発明の浮遊式フィッシュケージは、少なくとも1つのフィッシュケージおよび/または少なくとも1つのソーラーユニットが、ねじ、フック、アイ、スライドファスナーおよび面ファスナーからなるグループから任意選択的に選択される取り外し可能な接続手段によって接続されるように構成することができる。このようにして、格子空間は、ソーラーユニットで覆われた空間と、フィッシュケージを形成する空間との数を増減するように、必要に応じて適合可能である。
【0030】
さらなる態様では、本発明は、浮遊式フィッシュケージの中で魚を飼育するための方法に方向付けられており、当該方法は、
(i) 請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の、浮遊式太陽光発電マルチユニットフィッシュケージを提供するステップと、
(ii) 少なくとも1つ以上の前記フィッシュケージに魚を導入し、給餌し、かつ成長させるステップと、
(iii) 少なくとも1つ以上のソーラーユニットを用いて電気エネルギーを生成するステップと、
を含む。
【0031】
任意選択的に、魚を飼育する方法は、少なくとも1つ以上のソーラーユニットからの電気によってまたは発電中のその損失熱によって、少なくとも1つのフィッシュケージ内の水を加熱するステップをさらに含む。
【0032】
本発明の方法のさらなる代替例において、この方法は、(a)太陽熱の放射の入力とエネルギー出力とを最適化し、(b)魚のための日陰および/または捕食者からの保護を最適化し、かつ/または(c)発電中の損失熱を伝達するためにフィッシュケージの水に接触するように、1つ以上のソーラーユニットを柔軟に配置するステップをさらに含んでもよい。
【0033】
以下では、本発明について、代表的な図を参照して説明するが、これは、添付の特許請求の範囲を限定すると見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】格子空間と浮遊手段とを備える浮遊する平面状の格子を特徴とする、浮遊式太陽光発電マルチユニットフィッシュケージの実施形態の側面図である。
図2】中空の自己浮遊式チューブの格子を特徴とする、浮遊式太陽光発電マルチユニットフィッシュケージのさらなる実施形態の側面図である。
図3】4×4の格子空間を備えた浮遊式太陽光発電マルチユニットフィッシュケージの平面図である。
図4a】格子空間ユニットの一実施形態の側面図である。
図4b】格子空間ユニットの一実施形態の側面図である。
図4c】格子空間ユニットの一実施形態の側面図である。
図5a】格子空間ユニットの一実施形態の側面図である。
図5b】格子空間ユニットの一実施形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、左から右へ向けて3つの格子空間3と例えば浮桟橋などの浮遊手段12とを備える浮遊する平面状の格子2を特徴とする、浮遊式太陽光発電マルチユニットフィッシュケージ1の任意選択的な実施形態を側面図で示す。左側にある格子空間3は、大きな魚、例えば捕獲の準備ができた魚および/または捕食するには大きすぎる魚のための、上部が覆われていない小さなフィッシュケージ5を形成する。中央の格子空間3および右側の格子空間3は、より良好な太陽熱の放射の取り込みおよび/またはエアレーションおよび/または捕食者からの魚の保護のために例えば角度の付いたヒンジ付きソーラーパネル4’などのソーラーパネル4’を備えるソーラーユニット4によって中央の格子空間3が覆われた状態で、小さな魚のための連続した大きなフィッシュケージを形成する。魚はソーラーユニットで覆われた格子空間6の下にまたは覆われていないフィッシュケージ7に身を置くことができる。水生植物は、ソーラーユニットの陰でより良好に成長することができ、空間3における開口部は容易な捕獲を可能にする。
【0036】
図2は、中空の自己浮遊式チューブの格子2を特徴としかつ左から右に向けて3つの格子空間3を提供する浮遊式太陽光発電マルチユニットフィッシュケージ1のさらなる実施形態を側面図で示す。左側の格子空間3は、水密性の柔軟なシート材料9から作られた閉じたフィッシュケージ8を形成しており、シート材料9は断熱性を提供する2層材料である。図1と同様に、図2の中央の格子空間3および右側の格子空間3は、より良好な太陽熱の放射の取り込みおよび/またはエアレーションおよび/または捕食者からの魚の保護のために例えば角度の付いたヒンジ付きソーラーパネル4’などのソーラーパネル4’を備えるソーラーユニット4によって中央の格子空間3が覆われた状態で、連続した大きなフィッシュケージ5を形成する。魚はソーラーユニットで覆われた格子空間6の下にまたは覆われていないフィッシュケージ7に身を置くことができる。
【0037】
図3は、4×4の格子2の格子空間3を備えた浮遊式太陽光発電マルチユニットフィッシュケージ1の平面図である。格子空間3のいくつかは、2つまたは4つの格子空間3に広がる連続したフィッシュケージ5を形成するようにグループ化されている。フィッシュケージ5を形成する単一のまたはグループ化された空間3のいくつかは、ソーラーパネル4’を備える1つ以上のソーラーユニット4によって部分的にまたは完全に覆われており、そのため、捕食者からの魚の保護、電気および/または熱が提供される。
【0038】
図4は、例えば浮桟橋などの浮遊手段12を特徴とする、浮遊式太陽光発電マルチユニットフィッシュケージ1から取り出された格子空間ユニット3の3つの実施形態の側面図である。
【0039】
図4aは、フィッシュケージ5を形成する長方形の剛性ネット構造を開示する。
【0040】
図4bは、図2におけるような浮遊式太陽光発電マルチユニットフィッシュケージ1から取り出された同様の格子空間ユニット3を示しているが、可撓性ネットを備えており、左側からの電流の影響によってネットの長方形形状が変形している。
【0041】
図4cは、図1および図2におけるような浮遊式太陽光発電マルチユニットフィッシュケージ1から取り出された同様の格子空間ユニット3を示しているが、水密性の柔軟な筋付きのシート9から作られた閉じたフィッシュケージ8を備える。内側水位10つまり閉じたフィッシュケージ8の内部の水位は、フィッシュケージ1が浮遊している外側水位11より上に伸びており、そのため閉じたフィッシュケージ8の柔軟なシート9に水圧が加えられて、その最大体積および形状を安定させる。
【0042】
図5aは、図4cにおけるような浮遊式太陽光発電マルチユニットフィッシュケージ1から取り出された同様の格子空間ユニット3を示しているが、左側からの電流の影響によって、水密性の柔軟な材料9から作られた閉じたフィッシュケージ8がわずかに変形し、かつ形状を安定させるより高い内側水位10を伴うことを特徴とする。
【0043】
図5bは図5aと同じであるが、左側からの同じ電流の影響によって、形状を安定させる内側水位10がないつまり水圧がかからないため、さらに大きな変形を伴う。
【符号の説明】
【0044】
1 浮遊式太陽光発電マルチユニットフィッシュケージ
2 浮遊する平面状の格子
3 格子空間
4 ソーラーパネル4’を備えるよう構成されるソーラーユニット
5 フィッシュケージ
6 ソーラーユニットで覆われた格子空間
7 部分的に覆われるかまたは覆われていないフィッシュケージ
8 閉じたフィッシュケージ
9 水密性の柔軟なシート
10 内側水位
11 外側水位
12 浮遊手段
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図5(a)】
図5(b)】
【国際調査報告】