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特表2022-527698表面下の散乱特徴を含む光学アセンブリ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-03
(54)【発明の名称】表面下の散乱特徴を含む光学アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/12 20060101AFI20220527BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220527BHJP
   G09F 9/33 20060101ALI20220527BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20220527BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220527BHJP
   G02B 5/04 20060101ALI20220527BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
H05B33/12 B
G09F9/30 365
G09F9/33
G09F9/30 349Z
G02B5/20 101
H05B33/14 A
H05B33/12 E
G02B5/04 E
G02B5/04 F
G02B5/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556783
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(85)【翻訳文提出日】2021-11-17
(86)【国際出願番号】 US2020022215
(87)【国際公開番号】W WO2020197777
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】62/822,378
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】コシク ウィリアムズ,エレン マリー
(72)【発明者】
【氏名】ウエスト,ジェームズ アンドリュー
【テーマコード(参考)】
2H042
2H148
3K107
5C094
【Fターム(参考)】
2H042BA01
2H042BA11
2H042BA15
2H042BA20
2H148BB00
2H148BD01
2H148BD12
2H148BE33
2H148BF01
2H148BG06
2H148BH01
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC05
3K107CC33
3K107EE24
3K107EE28
3K107FF15
5C094AA09
5C094BA23
5C094BA27
5C094CA19
5C094CA24
5C094ED02
5C094ED15
5C094FA01
5C094FA02
5C094FA03
(57)【要約】
光学アセンブリは、第1の主面および第2の主面を有する透明基板を含む。透明基板は、その中に配置された破損層を含む。複数のエレクトロルミネッセンス素子によって画成されたピクセルが、第1の主面上に配置され、ピクセルは、さらに、破損層に延在するピクセルボリュームを画成する。第1の複数のレーザ誘起破損トラックが、破損層内に、ピクセルボリュームに隣接して配置される。更なる実施形態において、第2の複数のレーザ誘起破損トラックが、ピクセルの個々のエレクトロルミネッセンス素子によって画成されるサブピクセルボリュームに隣接して配置される。更なる実施形態において、複数のエレクトロルミネッセンス素子を含む第1の基板は、複数の色変換層を含む透明な第2の基板と対向して配置され、複数の破損トラックは、色変換層によって画成される色変換ボリュームに隣接して配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学アセンブリにおいて、
第1の主面、および、該第1の主面の反対にある第2の主面を含み、さらに、該第1の主面を含む第1の非破損層と該第2の主面を含む第2の非破損層の間に配置された破損層を含み、さらに、該第1の主面上に配置された複数のエレクトロルミネッセンス素子を有するピクセルであって、該破損層に延在するピクセルボリュームを画成する該ピクセルを含む透明基板と、
前記破損層の内部の複数の破損トラックであって、前記ピクセルボリュームに隣接して配置された複数の破損トラックと
を含む光学アセンブリ。
【請求項2】
前記複数の破損トラックは、複数の実質的に平行な縦列の破損トラックに直交し交差する複数の実質的に平行な横列の破損トラックを含むものである、請求項1に記載の光学アセンブリ。
【請求項3】
前記複数のエレクトロルミネッセンス素子の1つのエレクトロルミネッセンス素子は、該複数のエレクトロルミネッセンス素子の他のエレクトロルミネッセンス素子の光の波長と異なる波長の光を放出するように構成されたものである、請求項1に記載の光学アセンブリ。
【請求項4】
前記複数のエレクトロルミネッセンス素子の各エレクトロルミネッセンス素子は、該複数のエレクトロルミネッセンス素子の他のエレクトロルミネッセンス素子の光の波長と同じ波長の光を放出するように構成されたものである、請求項1に記載の光学アセンブリ。
【請求項5】
前記第2の主面上に配置された複数の色変換層であって、該複数の色変換層の個々の色変換層は、前記複数のエレクトロルミネッセンス素子の対応する個々のエレクトロルミネッセンス素子の真正面に配置されたものである複数の色変換層を、
さらに含む、請求項3に記載の光学アセンブリ。
【請求項6】
前記複数の破損トラックの各破損トラックは、前記第1の主面または前記第2の主面の一方の法線に対してゼロ以外の角度を形成する縦軸を含むものである、請求項1に記載の光学アセンブリ。
【請求項7】
前記破損層は、前記第1の非破損層と前記第2の非破損層の間に積層された複数の破損層を含むものである、請求項1に記載の光学アセンブリ。
【請求項8】
光学アセンブリにおいて、
第1の主面と、該第1の主面と反対にある第2の主面とを有する第1の基板であって、該第2の主面上に付着させた複数のエレクトロルミネッセンス素子によって画成されるピクセルを有する、第1の基板、
前記第1の基板に対向して実質的に平行に配置された透明な第2の基板であって、該透明な第2の基板は、前記第2の主面に対向する第3の主面と、該第3の主面と反対にある第4の主面とを有し、該透明な第2の基板は、該第3の主面を含む第1の非損傷層と該第4の主面を含む第2の非損傷層との間に配置された損傷層をさらに有し、該第3の主面はその上に配置された複数の色変換層を有し、該複数の色変換層の各々の色変換層は該損傷層に延在する色変換ボリュームを画成している、透明な第2の基板、および
前記複数の色変換層によって画成された前記色変換ボリュームの内の1つ以上に隣接して配置された複数の損傷トラック、
を備えた光学アセンブリ。
【請求項9】
前記複数の損傷トラックが、実質的に平行な複数の縦列の損傷トラックに対して直角であり、かつ、交差する実質的に平行な複数の横列の損傷トラックを含む、請求項8に記載の光学アセンブリ。
【請求項10】
ブラックマトリックス材料が、前記第3の主面上に配置されたものである、請求項8に記載の光学アセンブリ。
【請求項11】
前記複数の破損トラックの各破損トラックは、前記第1の主面または前記第2の主面の一方の法線に対してゼロ以外の角度を形成する縦軸を含むものである、請求項8に記載の光学アセンブリ。
【請求項12】
前記損傷層が、前記第1の非損傷層と前記第2の非損傷層との間に積層された複数の損傷層を含む、請求項8に記載の光学アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2019年3月22日出願の米国仮特許出願第62/822,378号の優先権の利益を主張し、その内容は依拠され、以下に完全に記載されているものとして、全体的に参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、光学アセンブリ、例えば、光学表示装置に関し、特に、基板上に配置されたエレクトロルミネッセンス素子によって放出された光を散乱するように構成された特徴を含む光学アセンブリに関し、その特徴は、ピクセル、サブピクセル、および/または、色変換ボリュームに隣接して配列されたものである。
【背景技術】
【0003】
エレクトロルミネッセンスディスプレイ(例えば、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイおよびマイクロLEDディスプレイ)などの新しいタイプの電子ディスプレイに対する要求の高まりにより、これらのデバイスに組み込まれる技術の継続的な改良が必要となっている。例えば、現在のLEDディスプレイは、個別にパッケージ化されたLEDチップをアレイ状に実装し得る。高解像度ディスプレイを製作するために必要なマイクロLEDの稠密パッキングを可能にするためには、多数のLEDを、単一の基板、例えばガラス基板上に配置する必要がある。
【0004】
LEDの発光はランバート特性であり得、特に底面から発光する構成では、個々のLEDから出射される光のかなりの量が、表面の法線に対して大きな角度で基板の表面に入射した光の内部全反射(TIR)により、基板内部に閉じ込められ得る。この現象は、基板表面を粗く処理することによって、少なくともある程度は解消できる。このような表面改質によって、50~80%程度、光抽出が向上することが報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、どのように表面を粗く処理したとしても、100%の抽出効率は達成されず、一部の光は基板内部に閉じ込められたままとなる。この閉じ込められた光が、非平面界面または基板表面上の他のデバイス、例えば、電気トレースなどにより散乱された場合、あるエレクトロルミネッセンス素子から放出された光が、例えば、別のエレクトロルミネッセンス素子の位置で基板から抜け出ることがあり、光学的クロストークにより画像のぼやけ、不均一な輝度、またはコントラスト低下のいずれか1つ以上が発生し得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態は、見かけの光源からの光を、その光が基板上の適切な位置から到達したと見えるように観察者に向けるように構成された光学アセンブリを開示する。例えば、表示装置は、複数のエレクトロルミネッセンス素子を含みうる。エレクトロルミネッセンス素子を、観察者に見せる画像を形成する順序およびパターンで点灯および消灯させる。カラー画像について、様々なピクセルを、特定の波長の光(カラー)を適切な時間および位置で生成するように構成する。光を生成する光源は、典型的には、ランバート性発光部なので、光は、エレクトロルミネッセンス素子から広い角度範囲に広がりうる。光の一部は、様々な機構を通して、その光の色とは異なる表示パネル(例えば、光学アセンブリ)上の位置から到達したように見えうる。つまり、その特定の位置からの光が、表示された画像によれば緑色になるように設計されていても、隣接する青色エレクトロルミネッセンス素子からの光が緑色の位置に漏れるので、その位置からの光が青色に見えうる。他の光学アセンブリにおいて、単色のエレクトロルミネッセンス素子は、色情報を提供する色変換層、例えば、フィルタを通る光を放出しうる。そのような場合において、下方のエレクトロルミネッセンス素子からの光は、異なる色の多数の色変換層を照らしうる。つまり、エレクトロルミネッセンス素子によって放出された光は、特定の色の変換層を照らすように意図していても、その代わりに、いくつかの色変換層を照らして、それにより、追加の色を生成しうる。これらの現象により、ぼやけ、不均一な輝度、または、コントラストの低下を生じうる。個々のピクセル、さらに、個々のエレクトロルミネッセンス素子(例えば、サブピクセル)を孤立させるには、破損トラックを基板に配置して、光が効果的に生成されるピクセル位置で基板から放出されるように光を制限しながら、光を基板から前方向に散乱させうる。したがって、画像の輝度は、基板からの光抽出を改良することによって高まり、光学的クロストークを最小にして、それにより、画質を高めうる。
【0007】
したがって、第1の主面、および、第1の主面の反対にある第2の主面を含み、さらに、第1の主面を含む第1の非破損層と第2の主面を含む第2の非破損層の間に配置された破損層を含み、さらに、第1の主面上に配置された複数のエレクトロルミネッセンス素子を有するピクセルであって、破損層に延在するピクセルボリュームを画成するピクセルを含む透明基板を含む光学アセンブリを開示する。複数の破損トラックが、破損層の内部に、ピクセルボリュームの周りに配置される。
【0008】
第1の複数の破損トラックは、複数の実質的に平行な縦列の破損トラックに直交し交差する複数の実質的に平行な横列の破損トラックを含みうる。
【0009】
いくつかの実施形態において、複数のエレクトロルミネッセンス素子の各エレクトロルミネッセンス素子は、サブピクセルボリュームを画成し、第2の複数の破損トラックは、複数のエレクトロルミネッセンス素子によって画成された各サブピクセルボリュームに隣接して配置されうる。
【0010】
第2の複数の破損トラックは、複数の実質的に平行な縦列の破損トラックに直交し交差する複数の実質的に平行な横列の破損トラックを含みうる。
【0011】
いくつかの実施形態において、複数のエレクトロルミネッセンス素子の1つのエレクトロルミネッセンス素子は、複数のエレクトロルミネッセンス素子の他のエレクトロルミネッセンス素子の光の波長と異なる波長の光を放出するように構成されうる。
【0012】
いくつかの実施形態において、複数のエレクトロルミネッセンス素子の各エレクトロルミネッセンス素子は、複数のエレクトロルミネッセンス素子の他のエレクトロルミネッセンス素子の光の波長と同じ波長の光を放出するように構成されうる。
【0013】
光学アセンブリは、さらに、第2の主面上に配置された複数の色変換層を含み、複数の色変換層の個々の色変換層は、複数のエレクトロルミネッセンス素子の対応する個々のエレクトロルミネッセンス素子の真正面に配置されたものでありうる。
【0014】
いくつかの実施形態において、ピクセルボリュームまたはサブピクセルボリュームに隣接して配置された複数の破損トラックの各破損トラックは、第1の主面または第2の主面の一方の法線に対してゼロ以外の角度を形成する縦軸を含みうる。
【0015】
いくつかの実施形態において、破損層は、第1の非破損層と第2の非破損層の間に積層された複数の破損層を含みうる。したがって、そのような実施形態において、各破損トラックは、複数の破損層の内部で上下方向に重ねられて並べられた複数の破損トラックを含みうる。
【0016】
透明基板は、ガラス、溶融シリカ、サファイア、ポリマー、および、ガラスセラミックの基板の群から選択されうる。
【0017】
様々な実施形態において、複数のエレクトロルミネッセンス素子は、マイクロLED、または、有機発光ダイオードを含みうる。
【0018】
他の実施形態において、第1の主面、および、第1の主面の反対にある第2の主面を含み、さらに、第1の主面を含む第1の非破損層と第2の主面を含む第2の非破損層の間に配置された破損層を含み、さらに、第1の主面上に付着された複数のエレクトロルミネッセンス素子によって画成されるピクセルを含み、複数のエレクトロルミネッセンス素子の各エレクトロルミネッセンス素子は、破損層に延在するサブピクセルボリュームを画成するものである透明基板を含む光学アセンブリを開示する。複数の破損トラックが、各サブピクセルボリュームに隣接して、例えば、各サブピクセルボリュームの周りに配置されうる。
【0019】
光学アセンブリは、さらに、第2の主面上に配置された複数の色変換層であって、複数の色変換層の各色変換層は、複数のエレクトロルミネッセンス素子の対応するエレクトロルミネッセンス素子の真正面に配置されたものである複数の色変換層を、含みうる。
【0020】
いくつかの実施形態において、複数のエレクトロルミネッセンス素子の各エレクトロルミネッセンス素子は、複数のエレクトロルミネッセンス素子の他のエレクトロルミネッセンス素子の光の波長と同じ波長の光を放出するように構成されうる。
【0021】
複数の破損トラックは、複数の実質的に平行な縦列の破損トラックに直交し交差する複数の実質的に平行な横列の破損トラックを含みうる。
【0022】
いくつかの実施形態において、複数の破損トラックの各破損トラックは、第1の主面または第2の主面の一方の法線に対してゼロ以外の角度を形成する縦軸を含みうる。
【0023】
様々な実施形態において、複数のエレクトロルミネッセンス素子は、マイクロLED、または、有機発光ダイオードを含みうる。
【0024】
さらに他の実施形態において、第1の主面と、第1の主面と反対にある第2の主面とを有する第1の基板であって、第2の主面上に付着させた複数のエレクトロルミネッセンス素子によって画成されるピクセルを有する第1の基板を含む光学アセンブリを開示する。透明な第2の基板が、第1の基板に対向して実質的に平行に配置され、透明な第2の基板は、第2の主面に対向する第3の主面と、第3の主面と反対にある第4の主面とを有し、透明な第2の基板は、第3の主面を含む第1の非損傷層と第4の主面を含む第2の非損傷層との間に配置された損傷層をさらに有し、第3の主面はその上に配置された複数の色変換層を有し、複数の色変換層の各々の色変換層は損傷層に延在する色変換ボリュームを画成している。複数の損傷トラックが、複数の色変換層によって画成された色変換ボリュームの内の1つ以上に隣接して配置されうる。
【0025】
いくつかの実施形態において、複数の損傷トラックが、実質的に平行な複数の縦列の損傷トラックに対して直角であり、かつ、交差する実質的に平行な複数の横列の損傷トラックを含みうる。
【0026】
様々な実施形態において、透明な第2の基板は、ガラス、溶融シリカ、サファイア、ポリマー、および、ガラスセラミックを含む基板の群から選択されうる。
【0027】
いくつかの実施形態において、ブラックマトリックス材料が、第3の主面上に、色変換層の間に配置されうる。
【0028】
いくつかの実施形態において、複数の破損トラックの各破損トラックは、第1の主面または第2の主面の一方の法線に対してゼロ以外の角度を形成する縦軸を含みうる。
【0029】
様々な実施形態において、複数のエレクトロルミネッセンス素子の各エレクトロルミネッセンス素子は、複数のエレクトロルミネッセンス素子の他のエレクトロルミネッセンス素子の光の波長と同じ波長の光を放出するように構成されうる。
【0030】
様々な実施形態において、透明な第2の基板は、ガラス、溶融シリカ、サファイア、ポリマー、および、ガラスセラミックの基板の群から選択されうる。
【0031】
いくつかの実施形態において、損傷層は、第1の非損傷層と第2の非損傷層との間に積層された複数の損傷層を含みうる。例えば、複数の損傷トラックの各々の損傷トラックは、2つ以上の損傷トラックを含み、2つ以上の損傷トラックは、複数の損傷層の内部で上下方向に並べられうる。
【0032】
様々な実施形態において、複数のエレクトロルミネッセンス素子の各エレクトロルミネッセンス素子は、マイクロLED、または、有機発光ダイオードを含みうる。
【0033】
更なる特徴および利点を、次の詳細な記載に示し、それは、部分的には、当業者には、その記載から明らかであるか、または、次の詳細な記載、請求項、および、添付の図面を含む本明細書に記載の実施形態を実施することによって分かるだろう。
【0034】
ここまでの概略的記載および次の詳細な記載の両方が、例示にすぎず、請求項の本質および特徴を理解するための概観または枠組みを提供することを意図するものである。添付の図面は、更なる理解のために含められ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、1つ以上の実施形態を示し、明細書の記載と共に、様々な実施形態の原理および動作を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1A】例示的な実施形態による光学アセンブリの構成要素の製造装置を概略的に示す。
図1B】例示的な実施形態による光学アセンブリの構成要素の製造装置を概略的に示す。
図2図1A、1Bに示した装置で用いられる光学系を示す図である。
図3】例示的な実施形態による光学アセンブリの構成要素の製造方法を示すフローチャートである。
図4】例示的な実施形態による一体的な破損トラックを有する基板の縁部断面図である。
図5】例示的な実施形態による一体的な破損トラックを有する他の基板の断面図である。
図6】例示的な実施形態によるエレクトロルミネッセンス素子を含む基板の断面図であり、潜在的光路を示している。
図7】本明細書に記載の例示的な実施形態による例示的な光学アセンブリの平面図であり、光学アセンブリは、複数のピクセルおよびピクセルボリューム、並びに、ピクセルボリュームに隣接して延在する複数の破損トラックを有する基板を含むものである。
図8】複数のピクセルおよびピクセルボリュームを有する基板を含む光学アセンブリの縁部断面図であり、ピクセルボリュームに隣接して延在する複数の破損トラックはなく、潜在的光路は破損トラックを有さないものである。
図9】光学アセンブリの縁部断面図であり、ピクセル、ピクセルボリューム、および、破損トラックを示している。
図10】基板の破損トラックの領域パターンを示す基板の部分平面図である。
図11】他の基板の破損トラックの領域パターンを示す基板の部分平面図である。
図12】さらに他の基板の破損トラックの領域パターンを示す基板の部分平面図であり、破損トラックは、基板上のサブピクセルに関連したサブピクセルボリュームに隣接して延在する。
図13】本明細書に記載の例示的な実施形態による例示的な光学アセンブリの平面図であり、光学アセンブリは、複数のサブピクセル、並びに、関連したピクセルボリュームおよびサブピクセルボリューム、並びに、サブピクセルボリュームに隣接して延在する複数の破損トラックを有する基板を含むものである。
図14】一体的な破損トラックを有する基板の縁部断面図であり、破損トラックは、基板の主面に対して角度を成して延在する。
図15】基板の第1の主面上に配置された複数のサブピクセルであって、複数のピクセルボリュームを画成するサブピクセル、基板の第2の主面上に配置された複数の色変換層、並びに、複数の破損トラックを有する基板を含む光学アセンブリの縁部断面図である。
図16A】第1の基板および第2の基板を含む光学アセンブリの縁部断面図であり、第1の基板は、複数のエレクトロルミネッセンス素子を含み、第2の基板は、複数の色変換層を含むものである。
図16B図16Aの光学アセンブリの部分拡大図であり、第2の基板の色変換ボリュームおよび破損トラックを示している。
【発明を実施するための形態】
【0036】
ここで、本発明の実施形態を詳細に記載し、例を添付の図面に示す。全図を通して、同じ、または、類似の部分を称するには、可能な限り同じ参照番号を用いる。
【0037】
本明細書で用いるように、「約」という用語は、その量、サイズ、調合、パラメータ、並びに、他の量および特徴が、厳密ではなく、厳密である必要がないことを意味し、近似しているか、および/または、許容度、換算係数、四捨五入、および、測定誤差など、並びに、当業者に知られた他の要因を反映して、必要に応じて大きいか小さくてもよいことを意味する。
【0038】
本明細書において、範囲を、「約」1つの特定の値から、および/または、「約」他の特定の値までと表しうる。そのような範囲を表す場合には、他の実施形態は、その1つの特定の値から、他方の特定の値までを含む。同様に、値を、「約」を前に付けて、概数で表す場合には、その特定の値が他の実施形態を形成することが、理解されよう。さらに、各範囲の端点は、他方の端点との関係でと、他方の端点とは独立にとの両方で、重要であることが理解されよう。
【0039】
本明細書において用いる、例えば、上に、下に、右、左、前、後ろ、最上部、底部などの方向を表す用語は、示した図面に関する記載にすぎず、絶対的な向きを意味することを意図しない。
【0040】
別段の記載がない限りは、本明細書に示した、いずれの方法も、工程が特定の順序で行われることを要するとも、いずれの装置も、特定の向きであることを要すると解釈されることを意図しない。したがって、方法の請求項が、工程の行われる順序を実際に記載しないか、または、いずれの装置の請求項も、個々の構成要素の順序も向きも実際に記載しないか、若しくは、そうではなく、請求項または明細書の記載で、工程は特定の順序に限定されるとも、装置の構成要素の特定の順序も向きも記載しない場合には、いかなる点でも、順序も向きも推測されることを全く意図しない。このことは、記載がないことに基づく、いずれの解釈にも当てはまり、そのような解釈は、工程の配列についての論理的事項、動作フロー、構成要素の順序、または、構成要素の向き、文法構造または句読点に由来する単純な意味、並びに、明細書に記載された実施形態の数または種類を含む。
【0041】
本明細書において用いるように、原文の英語で単数を表す不定冠詞および定冠詞は、文脈から、そうでないことが明らかでない限りは、複数のものを含む。したがって、例えば、不定冠詞を付けた構成要素は、文脈から、そうでないことが明らかでない限りは、そのような構成要素を2つ以上有する態様を含む。
【0042】
本明細書において、「例示的な」、「例」、および、それらの様々な変化形を用いて、例、例え、または、例示であることを意味する。本明細書で、「例示」または「例」として記載した、いずれの態様も設計も、他の態様または設計より、好ましいとも、有利であるとも解釈されるべきではない。さらに、例は、明瞭にして理解を高めるために提供されたものにすぎず、いかなる点でも、開示した主題も、本開示の関連部分も、制限も、限定することも意味しない。様々な範囲の例を追加または代わりに無数に提供しうるものであるが、簡潔に示すために省略したことが分かるだろう。
【0043】
本明細書で用いるように、原文の英語で「含む」という意味で用いられた、いくつかの用語、および、その変化形は、別段の記載がない限りは、同義語であり、非限定的意味であり、置換え可能と解釈されるものである。含むという移行句を用いて要素を列記した場合には、非排他的に列挙したものであり、それらの具体的に挙げたものに追加の要素も存在しうる。
【0044】
「実質的」および「実質的に」という用語、並びに、それらの変化形は、本明細書で使用したように、記載した特徴が、値または記載に等しいか、または、略等しいことを意味する。例えば、「実質的に平らな」面は、平面または略平面を意味することを意図する。さらに、「実質的に」は、2つの値が等しいか、略等しいという意味を意図する。いくつかの実施形態において、「実質的に」という用語は、互いに約5%以内、互いに約2%以内など、互いに約10%以内の値を表しうる。
【0045】
本明細書で用いるように、マイクロLEDは、約50μm×約50μm(2,500μm)未満、例えば、約10μm×約10μm(100μm)未満など、約100マイクロメートル(μm)×約100μm(10,000μm)未満程度の寸法の発光領域を有する発光ダイオードのことを称する。
【0046】
図1Aおよび図1Bは、透明基板12の内部に表面下欠陥を作製するための装置10の一例の概略図である。本明細書に記載されるように、基板12は、ガラス、溶融シリカ、サファイア、ポリマー、またはどの他の適切な材料であってもよい。図1Aおよび図1Bは、プラットフォーム14上に置かれた基板12を図示している。概説すると、コントローラ18からの指示に基づき、イメージングアセンブリ16を用いることで、基板12の内部に、パルス状化直線集束レーザビームによるレーザ誘起散乱特徴をもたらす焦線を形成できる。基板12は、パルス状直線集束レーザビームが基板12の内部を伝播する際のシングルフォトン吸収に関して、本質的に透明である。イメージングアセンブリ16は、パルス状レーザビームを生成するレーザ光源20と、パルス状レーザビームをレーザ光源20から基板12に導き、基板内部に焦線を形成する光学系22とを含み得る。プラットフォーム14は、いくつかの実施形態において、光学系22によって形成される焦線に対して基板12を位置決めするための並進機構として用いることができるが、以下、本明細書に記載されるように、他の実施形態で代替可能である。
【0047】
従来のガウシアン光ビームを使用しても、透明材料の内部に改質領域を作製できるが、その材料内部の相互作用領域の長さは、ビームの回折によって影響を受け、短くなり得る。ガウシアンビームが、相互作用反応を起こすのに十分な光強度を発生させるために十分に小さいスポットサイズに集束される場合、ガウシアンビームは、数十マイクロメートル程度のレイリー長(焦点深度)を有することができる。しかしながら、ベッセルビームの場合、小さいスポットサイズが維持される相互作用領域の長さは、はるかに長くすることが可能であり、容易に数ミリメートル程度の距離となり得る。したがって、ベッセル状ビームまたは焦線は、標準的なガウシアンビームに比べて、基板内部において、シングルパスで、はるかに長い距離に渡り基板材料を改質できる。ベッセル状ビームによる処理速度は、典型的なガウシアンビームよりも、数桁程度速くなり得る。
【0048】
基板内部で伝播する光を散乱させるように構成された基板の改質領域は、微小亀裂、融解して再凝固した基板材料、相変化が起こった基板材料、組成変化が起こった基板材料、アモルファス構造または結晶構造が変化した基板材料、屈折率に変化が起こった基板材料、またはこれらの組合せを取り込むことができる。いくつかの実施形態において、このような改質領域は、(基板と同一面または平行方向から見た場合)放射状微小亀裂によって囲まれたチューブ状領域となり得る。本明細書で以降に記載されるように、基板内部の改質領域(例えば、散乱特徴)は、総称的に損傷トラックと称される。損傷トラックは、直径Λ(例えば、図4を参照)を備えるものとすることができ、直径Λは、基板を上下方向(すなわち、最大寸法に直交する方向)に見た場合、レーザによって改質された基板のほぼ円形の領域を示すものとする。損傷トラックの直径Λは、約0.5μm~約150μm、約10μm~約120μm、約10μm~約100μm、または約20μm~約80μmとなり得る。損傷トラックが放射状微小亀裂によって囲まれたチューブ状領域となる場合、チューブ状領域の直径Λは、約0.5μm~約20μm、または約3μm~約10μmとなり得、損傷トラック(チューブ状領域および微小亀裂)の直径は、約10μm~約120μmとなり得る。いくつかの実施形態において、損傷トラックの直径は、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100μmとなり得る。
【0049】
「フィラメンテーション」として知られているプロセスによっても、細長い損傷トラックを形成することができる。この方法では、十分な強度を持つ極短レーザパルスを材料に照射することで光カー効果が発生し、基板材料の屈折率がレーザパルスの高電界強度によって局所的に改質される。これにより、ビームは自己集束し、基板材料内部で数ミリメートルに渡り細長いチャンネル内を伝播するビームを生成できる。このプロセスでは、レーザパルスのパワーが閾値Pcritical(ガラスの場合は通常約5MW)を超える必要がある。したがって、フィラメンテーションには極短パルス(例えば、フェムト秒パルス)を生成する高エネルギーレーザが必要となる。
【0050】
短パルスレーザを用いた焦線光学素子およびベッセル状ビームの使用は、基板内部に欠陥ラインを作製するための好ましい方法であり得る。しかしながら、システムコストの増加、信頼性の低下(極短パルスおよび高エネルギーレーザに起因)または全体的な処理時間(ガウシアンビームおよび多数の焦点パスに起因)のいずれかのトレードオフを伴うとはいえ、上述した他の方法でも、細長い欠陥ラインを、例えばガラス内部に生成することは可能ではある。さらに、一連の長さの短い、狭い間隔で並んだ特徴が、欠陥ラインを近似することができ、それらの特徴は、光ビーム経路に沿った光学焦点の一連の並進移動によって、作製することができる。
【0051】
具体的には、コントローラ18は、コンピュータ支援製造プログラム24によって実質的に制御される高度に自動化された装置として構成され得る。様々な実施形態において、コンピュータ支援製造プログラム24は、プラットフォーム14とイメージングアセンブリ16との間の相対運動を指示する実行可能ファイルを用いることができる。図1Aは、それぞれ二重矢印26および28によって示されるx-y平面におけるイメージングアセンブリ16と基板12との間の相対運動を図示している。図1Bは、x-y平面に直交するz方向における、必要に応じて、角度方向(θ)における、イメージングアセンブリ16と基板12との間の、二重矢印30によって示された相対運動を示す側面図である。
【0052】
いくつかの実施形態では、装置10は、静止型のイメージングアセンブリ16を用いることができる。この場合、プラットフォーム14は、イメージングアセンブリ16の下方を移動可能に構成され得る。プラットフォーム14の移動とイメージングアセンブリ16の移動の両方を組み込んだハイブリッド型の装置10の使用も想定される。プラットフォーム14は、例えば、プログラマブル数値制御(CNC)装置で構成され得る。いくつかの実施形態では、プラットフォーム14は、1つの軸方向に移動可能に構成され得る一方、イメージングアセンブリ16は残りの軸方向に移動可能である。本開示は、さらに、静止型のプラットフォーム14、およびコンピュータ支援製造プログラム24の指示に基づいて基板12の上方の三次元空間で移動するように構成されたイメージングアセンブリ16の使用も想定している。コンピュータ支援製造プログラム24の一実施形態を図3に示し、説明する。コンピュータ支援製造プログラム24は、イメージングアセンブリ16のレーザおよび他の光学パラメータをさらに制御するように構成され得る。
【0053】
コントローラ18は、イメージングアセンブリ16を動作させて、基板12の内部で三次元の正確な位置にレーザビーム焦線を形成するように構成され得る。イメージングアセンブリ16は、光学系22と連動して作動するレーザ光源20を含み得る。例えば、様々な実施形態において、レーザ光源20は、パルス状レーザとすることができる。具体的には、コントローラ18は、光学系22およびレーザ光源20を制御して、所定のレーザ特性を有するレーザビームが光ビーム経路を通過して基板12の内部に細長いレーザ誘起領域を損傷として形成するように構成され得る。例えば、イメージングアセンブリ16は、コントローラ18の制御下で、シングルレーザパルスまたはパルスバーストを生成し、基板12と相互作用するパルス状直線集束レーザビームを生成することができる。このレーザビームは、基板内部に誘起吸収を生成させる焦線を形成して、レーザビーム焦線に沿って材料改質を生成させる。この材料改質は、本明細書では、レーザ誘起損傷トラック、または略して損傷トラックと称される。コントローラ18は、プログラマブル数値制御(CNC)装置を用いて実施されてもよい。
【0054】
上記で概略的に述べたように、レーザ光源20の波長は、選択された波長において基板12が実質的に透明であるように選択可能である(例えば、材料深さの1ミリメートル(mm)当たりの吸収率が約15%未満≧γ<<1/センチメートル(1/cm)、γはランバート・ベール吸収係数)。レーザ光源20のパルス持続時間は、相互作用の時間内に相互作用領域の外部への顕著な熱輸送(例えば、熱拡散)が生じ得ないように選択可能である(例えば、τ<<d2/αとし、dはレーザビームの焦点径であり、τはレーザパルス持続時間であり、αは基板材料の熱拡散定数である)。レーザ光源20のパルスエネルギーは、相互作用領域における、例えば焦線に沿ったレーザビーム強度が誘起吸収を生成させ、その結果、焦線の位置に対応する損傷トラックが形成されるように選択可能である。
【0055】
レーザ光源20によって生成されたレーザビームの偏光状態は、レーザビームと基板表面での基板との間の相互作用(例えば、反射率)および基板内部での相互作用の種類(例えば、誘起吸収)の両方に影響を及ぼし得る。誘起吸収は、熱励起、マルチフォトン吸収および内部光イオン化、または直接電界イオン化(光の電界強度が電子結合を直接切断する)のいずれかが起こったことで生じ得る誘起自由電荷キャリア(典型的には電子)によって発生し得る。特定の基板材料(例えば、複屈折材料)については、レーザ光のさらなる吸収および/または透過は、光の偏光に依存し得る。したがって、適切な光学素子(例えば、位相板)を用いて、個々の基板材料の改質を促進する偏光をユーザが選択すべきである。したがって、基板材料が光学的等方性ではなく、例えば複屈折性である場合、基板内部のレーザ光の伝播は偏光によっても影響され得る。よって、レーザビームの偏光および偏光ベクトルの向きは、2本(例えば、常光線および異常光線)ではなく、1本の焦線が形成されるように選択され得る。光学的等方性である基板材料の場合、このような選択は適用されない。
【0056】
さらに、レーザビームの光強度は、好ましくは、基板材料に顕著なアブレーションまたは顕著な溶融を発生させず、基板の微細構造において損傷トラックが形成されるようにパルス持続時間、パルスエネルギー、および焦線径に基づいて選択されるべきである。ガラスまたは透明結晶などの典型的な基板材料の場合、この要件は、サブナノ秒範囲、例えば、約0.1ピコ秒(ps)~100psの間、好ましくは15ps未満のパルス持続時間のパルス状レーザで最も容易に満たすことができる。
【0057】
いくつかの実施形態において、レーザビーム焦線の平均直径δは、約0.3マイクロメートル(μm)から約5.0μmの範囲、例えば、約1.0μmから約3.0μm、約0.4μmから約4.0μmの範囲、または、約2.0μmであるか、若しくは/並びに、レーザ光源20のパルス持続時間τを、基板12の材料との相互作用時間内の材料内の熱拡散が無視できる程度となるように選択するようにしうる。熱拡散が生じないのが好ましい。したがって、τ、δ、および、基板材料の熱拡散係数αを、τ<<δ/αにより設定するか、並びに/若しくは、τを、約10ナノ秒(ns)未満、例えば、約100ps未満になるように選択するか、並びに/若しくは、レーザ光源20のパルス繰返し速度が約10kHzと約1000kHzの間(例えば、約100kHz)であるか、並びに/若しくは、レーザ光源20を、単一パルスレーザ、または、バーストパルスレーザとして、約40マイクロジュール(μJ)と約1000μJの間のバーストパルス当たりエネルギーで動作させるか、並びに/若しくは、レーザ光源20のビーム出射側上で直接測定した平均レーザパワーが、約10ワットから約100ワットの範囲(例えば、約30ワットから約50ワットの範囲)となるようにしうる。
【0058】
ある実施形態において、レーザ光源20の波長λを、基板12の材料が、選択した波長に対して透明であるか、実質的に透明であるように選択しうるものであり、後者は、基板12の材料においてレーザビーム方向に沿って生じるレーザビームの強度の減少が、レーザビームの侵入深さ1ミリメートル当たり、約15%以下であることを意味する。可視光波長範囲で透明なガラスまたは結晶基板12について、レーザ光源20は、例えば、1064nmの波長λのNd:YAGレーザか、1030nmの波長λのYb:YAGレーザでありうる。赤外線波長範囲で透明な半導体基板12について、レーザ光源20は、例えば、約1.5μmから約1.8μmの範囲の波長λのEr:YAGレーザでありうる。
【0059】
例示的なイメージングアセンブリ16およびレーザ光源20を、より詳細に説明した米国特許公開第2014/0199519号明細書、または、国際出願公開第2014/079570号を参照する。
【0060】
図2は、図1A、1Bに示し、例示的な基板12に焦線を形成するのに用いられる光学系22の例示的な実施形態を概略的に示している。レーザビームが入射する第1の主面32、および、反対側の第2の主面34を含む基板12を示している。様々な実施形態において、光学系22は、レーザビーム38の光路に配置された光学要素36を含みうる。光学要素36は、非球面である自由表面を含み、円錐の角度が5°であるアキシコンとして使用しうるもので、レーザビーム38の方向40に平行に、かつ、そこに中心がくるように配置されうる。この場合、アキシコンの円錐頂点は、レーザビーム38の方向40と反対に向いている。(ビーム方向に見た各場合において)平凸コリメートレンズ42の光学要素36からの距離を、z1aと表し、合焦レンズ44のコリメートレンズ42からの距離を、z1bと表し、合焦レンズ44によって生成される焦線2bの距離をz2と表している。光学要素36によるレーザビーム38の環状の変形は、参照符号SRで示している。光学要素36によって形成され、コリメートレンズ42に発散状態で入射し、環直径drの環状の照射光SRは、距離z1bに沿って、少なくとも略一定のままである環直径drを有し、合焦レンズ44の位置で望ましい環幅brとなるように設定される。その結果、短い焦線2bが生成されて、コリメートレンズ42の位置での約4.0mmの環幅は、後段のレンズの合焦特性によって合焦レンズ44の位置では、約0.5mmに減少する。
【0061】
約0.5mm以下の焦線2bの長さは、典型的な約2.0mmのレーザビーム直径、焦点距離f=25mmの合焦レンズ44、および、焦点距離f’=150mmのコリメートレンズ42を用いて実現しうる。さらに、この例において、z1aは、z1b(140mm)に実質的に等しく、z2は、約15mmに実質的に等しい。
【0062】
本明細書の実施形態であり、図3に示される、一体的な欠陥ラインを含む基板12を作製する方法100についてフローチャートを用いて開示する。ステップ102において、基板12が選択される。基板12は、ガラス、溶融シリカ、サファイア、ポリマー、またはどの適切な透明基板であってもよい。適切なガラス材料としては、石英、ホウケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、アルミノホウケイ酸塩、サファイアまたはソーダ石灰ガラス、ナトリウム含有ガラス、強化ガラスまたは非強化ガラスなどの様々なガラス基板があり得る。
【0063】
ステップ104において、選択された材料に応じてイメージングアセンブリ16のパラメータが選択される。上述したように、これらの仕様条件(適用可能な場合は範囲を含む)のいくつかに、異なる基板材料(例えば、ガラス組成物)ごとのレーザ波長、パルス幅、スポットサイズ、パルスエネルギー、走査速度および焦点深度が挙げられる。上述したように、欠陥構造を作製するために用いられる「焦線光学素子」(例えば、ガウスベッセルビームまたはベッセル状ビーム)は、従来のレーザビームを使用する場合には必要とされるであろうマルチパスとは対照的に、シングルレーザパスで細長い損傷トラックを形成することができるため、有益である。さらに、短パルス(<100ps)レーザとベッセルビームの組合せにより、基板材料に顕著なアブレーションまたは溶融を生じさせない焦線が形成されるので、損傷トラックが基板12の微細構造内に形成されるように、本実施形態でそれらを用いることができる。
【0064】
ステップ106では、基板12に形成される領域パターンマップがコントローラ18に提供される。本明細書に開示されるように、領域パターンマップにより、ディスプレイデバイスの視野角、およびピクセル領域のサイズと位置を指定することができる。ステップ108では、焦点距離および基板内部での焦点距離の位置もコントローラ18に提供され得る。本明細書に記載されているx-y領域パターンマップ、焦線長、およびその他のレーザパラメータの決定により、基板12内部の損傷トラックの形成および位置決めが指定される。ステップ110では、損傷トラック(例えば、その長軸)の角度θが選択される。損傷トラックが基板12の第1の主面32(10-1)、例えば、レーザビームが入射する主面に対して垂直であるように設計される場合、ステップ110で選択される基板12に対するイメージングアセンブリ16の角度θは必然的に零となる。
【0065】
ステップ112~114において、イメージングアセンブリ16は、ステップ102~110で指定された所定の設定条件に従って、基板12の内部に損傷トラックをレーザ誘起する。図5に示すように、所定の設定条件によっては、多層の損傷トラックを要求することが可能であり、この場合、判断ステップ116は、処理フローをステップ106に戻す。この場合、一般的には、最初に最下層(光が入射する主面から最も遠い層)を形成し、次にその上の層を形成することが好ましい。そうすることで所望の層の上にある先に形成された損傷トラックは、高開口数ビームの光線が焦線を形成することを阻害しない。基板12内部に最上層の損傷層が形成されると、プロセスは終了となる(ステップ118)。さらに、作製された基板は、熱的または化学的方法を用いて、後続のステップにおいて強度を高められる。
【0066】
図4は、第1の主面32および第2の主面34を含む例示的な基板12の断面図であり、上記方法100によって生成された複数の破損トラック50が第1と第2の主面の間に位置している。一体的な破損トラック50は、多数の平行で横切る横列の破損トラック50によって実現されうるもので、周期的に離間し、少なくとも1つの垂直な層、つまり、基板12の厚さ方向に延在する層に配置されうる。破損トラック50は、基板において、厚さTに亘って延在し、厚さTGTの不破損材料の最上層46と厚さTGBの不破損基板材料の底部層48の間の基板12の内部の破損層内に位置する。したがって、基板の厚さは、T=TGT+T+TGBである。破損トラックの長さTは、イメージングアセンブリ16によって生成される焦線長さに実質的に対応する。最上部層46、底部層48の厚さは、ガラスが破損トラックによって改質されない場合に、破損トラックから延伸しうる亀裂がガラスの主面まで伝播するのを防ぎ、十分な構造一体性を有し剪断力に耐える基板12を提供するように選択される。確実に、破損トラック50がガラス表面まで完全には延在しないようにするのが望ましい。亀裂がガラス表面に到達すると、水または湿気が入る経路を生成し、急速な亀裂成長を促進して、その部分の破損を生じうる。実際には、厚さTGTおよび厚さTGBを、>50μmに保持し、より好ましくは、>100μmにすることで、部分破損を防ぐのに十分であることが分かった。例えば、<1mmの薄いガラスについて、この基板主面からの離間距離を確保するには、系の焦点、および、レーザ焦線内のエネルギー密度分布を精密に制御する必要がありうる。しかしながら、より厚い、ディスプレイガラスの厚さとして一般的である、例えば、>3mmなどのガラスの場合には、光学性能を大きく犠牲にすることなく、より長い離間距離(例えば、250μm以上)を用いうる。いくつかの実施形態において、図5に示したように、破損トラック50は、互いに上下方向に重ねられた多数の破損トラックを含みうる。例えば、図5は、距離T内で、破損トラックの各上下方向アレイに配置された3つの破損トラックを示している。
【0067】
横列の破損トラック50は、横方向の行間隔Dで離間しうる。さらに、既に記載したように、個々の破損トラック50は、直径Λを有しうる。以下に、より詳細に記載するように、横列および縦列の破損トラックは、基板に、破損トラックが、エレクトロルミネッセンス表示パネルを含むエレクトロルミネッセンス画素(ピクセル)を囲むように生成されうる。そのようなエレクトロルミネッセンス表示パネルは、限定するものではないが、マイクロLED表示パネル、または、有機発光LED表示パネルを含みうる。レーザ処理しうる基板12の領域は、基板12の全部または一部を含むように選択しうる。一実施形態において、例えば、破損トラックは、約50μmから約2000μmの横列(縦列)間隔D、約3.0マイクロメートルから約50マイクロメートルの個々の破損トラック間のピッチ、および、約0.2mmから約10mmの破損トラック深さTを特徴としうる。既に記載したように、直径Λおよび破損トラック厚さTは、少なくともイメージングアセンブリ16のスポット直径および焦線パラメータによって決定される。当然のことであるが、本開示は、上記値に限定されると解釈されるべきではない。これらの値および範囲は、例示にすぎない。
【0068】
図6は、第1の主面204、および、第1の主面204と反対にある第2の主面206を有する透明基板202、並びに、第1の主面204上に付着されたエレクトロルミネッセンス素子208(例えば、マイクロLED、有機発光ダイオードなど)を含む例示的な光学アセンブリ200の側面断面図を示している。第1の主面204は、第2の主面206に平行か、または、実質的に平行でありうる。さらに、基板202は、第1の主面204と第2の主面206に画定される厚さを有する。本明細書で用いるように、「上に」付着または配置されたとは、基板202に連結されるが、必ずしも、基板202と密着しなくてもよいことを称する。基板202は、光学アセンブリを製造するのに適した任意の材料を含みうるが、例示的な実施形態において、ガラス材料、例えば、ホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、アルカリホウケイ酸ガラスなどを含みうる。他の実施形態において、基板12は、溶融シリカ、サファイア、ポリマー、または、任意の他の適した材料を含みうる。さらに、光学アセンブリ200は、エレクトロルミネッセンス素子208上に、および/または、基板202とエレクトロルミネッセンス素子208の間に配置された、1つ以上の電極、および/または、透明電極(例えば、酸化インジウムスズ、導電性ポリマー、カーボンナノチューブ、グラフェン、ナノワイヤーメッシュ、超薄金属箔などの透明な導電性酸化物)などの半導体層210を含みうる。例えば、図6は、エレクトロルミネッセンス素子208と部分的に重なるように配置された2つの電極210を示しているが、いくつかの実施形態において、エレクトロルミネッセンス素子208は、エレクトロルミネッセンス素子の「上」面と接触する電極、および、反対の面である、エレクトロルミネッセンス素子の「下」面と接触する他の電極を含みうる。電極は、エレクトロルミネッセンス素子208と、任意の位置で、または、エレクトロルミネッセンス素子の動作に必要な位置で接触しうる。
【0069】
いくつかの実施形態において、例えば、第1の主面204の上に配置された平面化層または被包層212など、1つ以上の更なる層を、基板202上に配置しうる。図6は、底面から発光するように構成されたエレクトロルミネッセンス素子208を示しており、光は、エレクトロルミネッセンス素子208から、第1の主面204を通るように向けられ、基板202を通って伝播し、第2の主面206から放出される。光線220のような光線の一部は、基板202を通って伝播し、第2の表面206、例えば、基板と空気との界面で屈折する。光線222のような光線の一部は、第2の主面206に垂直に入射し、ほとんど屈折しないか、または、全く屈折しない。しかしながら、光線224のような他の光線は、基板と空気との界面(例えば、第2の主面206)に、表面の法線226に対して光線が内部全反射するのに十分に大きい角度θで入射し、それにより、光は、例えば、入射角θが十分に減少して光が第2の表面206を通って抜け出るように光線が作用するまで、基板内部に閉じ込められる。内部全反射(TIR)を生じる角度は、臨界角θとして知られ、基板202の屈折率、および、第2の主面206の反対側の媒質、例えば、空気の屈折率に依存する。
【0070】
様々な実施形態において、光学アセンブリ200は、例えば、表示装置を含み、基板202は、その上に配置された複数のエレクトロルミネッセンス素子208を含み、基板202、および、その上に配置された構成要素は、表示パネルを含む。したがって、図7に示したような、いくつかの実施形態において、エレクトロルミネッセンス素子208は、表示パネルの画素(ピクセル)232として配置され、異なる発光波長(例えば、色)の個々のサブピクセルは、所定のピクセル232を含み、各サブピクセルは、個々のエレクトロルミネッセンス素子208を含みうる。例えば、いくつかの実施形態において、各ピクセル232は、3つのサブピクセルを含み、3つのサブピクセルの各エレクトロルミネッセンス素子208は、異なる色に光を放出するように選択される。つまり、この例においては、各サブピクセルはエレクトロルミネッセンス素子208を含み、したがって、各ピクセルは、3つのエレクトロルミネッセンス素子208を含む。様々な実施形態において、例えば、ピクセル232を含む3つのエレクトロルミネッセンス素子の各エレクトロルミネッセンス素子208は、3つの色である青色、緑色、または、赤色の1つを発光するように選択され、RGB加法色モデルを含みうる。しかしながら、更なる実施形態において、ピクセル232は、3つより多くの色を含み、選択された色は、必要または要求に応じて他の色でありうる。ピクセル232は、電気的に処理可能な横列および縦列のピクセルとして配列されうる。例えば、図7に示した実施形態において、光学アセンブリ200は、4つの縦列のピクセル、例えば、縦列C1からC4のピクセル、および、6つの横列のピクセル232、例えば、横列のピクセルR1からR6を含み、それらは、互いに直交して配列され、結果的に得られる6×4=24ピクセルの各ピクセルは、3つのサブピクセルを含む。市販の表示パネルは、数百万ものピクセルを含みうるもので、図7に示した光学アセンブリ200は、説明のために示したものであり、限定するものではない。
【0071】
既に記載したように、基板と空気との界面と、法線226に対して大きい入射角で交差する光は、基板に閉じ込められたままとなりうる。この閉じ込められた光が、基板と空気との界面で、または、他のエレクトロルミネッセンス素子、電気トレースなどによって散乱された場合、散乱光は、基板から他のピクセル232の位置で抜け出て、画像ぼやけ(例えば、クロストーク)、不均一な輝度、並びに/若しくは、コントラストまたは他の光学効果の低下を生じうる。光学アセンブリ200のピクセル232から放出される光線を示す図8を用いて、クロストークを可視化しうる。図示したように、基板と空気との界面でTIRを生じた光線224など、所定の(例えば、ピクセル座標C1、R1の)ピクセルから放出されて、第2の主面206における界面と、法線226に対して大きい角度で交わる光線は、基板の内部で横方向に伝播しうるが、発光源であるピクセルから離れた散乱位置で交差して、散乱光は、基板から、第2の主面206を隣接した(例えば、ピクセル座標C2、R1の)ピクセル、または、発光源のピクセルからさらに遠いピクセルの位置で通って放出されうる。この例において、観察者は、例えば、1つのピクセルのサブピクセルから放出され、隣接したピクセルの赤色サブピクセルの一般的な位置から到達した青色光、または、青色と赤色の混色光を観察しうる。したがって、基板内を伝播する内部反射光の散乱を、その光の発光源であるピクセルの位置に制限する工程を行うべきである。
【0072】
図9を参照すると、様々な実施形態において、破損トラック50を、基板202に、領域パターンとして、既に記載したように形成し、破損トラック50が、光学アセンブリ200の個々のピクセルボリューム240に隣接して、例えば、それらの周りに形成されるようにしうる。本明細書で用いるように、ピクセルボリュームは、基板に延在するピクセル232のフットプリントのボリュームを称し、ピクセルのフットプリントは、基板上のピクセル周縁の輪郭、例えば、基板12の第1の表面204上のピクセルの光放出領域の輪郭を称する。ピクセルボリュームは、そのフットプリントを基板を通して基板の厚さ方向に、例えば、第1および/または第2の主面に直交する方向に投射した結果得られる基板の体積である。図7を再び参照すると、様々な実施形態において、線状の破損トラックは、個々のピクセル232に隣接して、および/または、それらの間に延在する横列234の破損トラック、および、縦列236の破損トラックを含むグリッドパターンで配列されうる。図7において、横列234および縦列236の破損トラック50を破線で示している。例えば、いくつかの実施形態において、横列234および縦列236の破損トラック50は、互いに直交して配列されて、ピクセル232の配列をまねたものでありうる。そのような線状の破損トラックは、横列234または縦列236の破損トラック毎に1本の破損トラックを含むか、または、破損トラックは、幾何学パターンで(例えば、図10)または線に沿ってランダムに分布する破損トラックとして(図11)配列された多数の線状の破損トラックを含みうる。
【0073】
いくつかの実施形態において、図12に示したように、破損トラック50は、基板202に、既に記載した方法によって形成されうるが、領域パターンで形成されて、表示パネルの個々のサブピクセルボリュームに隣接して形成されうる。例えば、いくつかの実施形態において、破損トラック50は、基板202に、領域パターンで形成されて、破損トラックが、表示パネルの個々のサブピクセルボリュームの周りに形成されうる。サブピクセルボリュームという用語は、ピクセルではなくサブピクセル(例えば、個々のエレクトロルミネッセンス素子)の投射ボリュームを称するものである以外は、サブピクセルボリュームは、ピクセルボリュームと同様である。図12は、基板12の平面図であり、個々のサブピクセル(例えば、エレクトロルミネッセンス素子要素208)、並びに、横列および/または縦列の破損トラックが個々のサブピクセル(例えば、エレクトロルミネッセンス素子208)に隣接するように、交わる(例えば、交差する)横列234および縦列236に並べられた破損トラックの配置を示している。様々な実施形態において、個々のサブピクセルは、横列および縦列の破損トラックに囲まれうる。
【0074】
図13に示した、さらに他の実施形態において、破損トラック50は、基板202に、領域パターンで形成され、破損トラックは、個々のピクセルボリュームおよび個々のサブピクセルボリュームの両方に隣接した横列234および/または縦列236で形成されうる。例えば、破損トラック50は、基板202に、領域パターンで形成され、破損トラックは、個々のピクセルボリュームおよび個々のサブピクセルボリュームの両方を囲む横列234および/または縦列236で形成されうる。
【0075】
いくつかの実施形態において、破損トラック50を、破損トラックの縦軸が基板202の第1の主面204または基板202の第2の主面206に対して直交するように配列しうるが、いくつかの実施形態において、破損トラック50は、破損トラックの縦軸238が第1の主面204または第2の主面206の法線に対して角度φを形成するように配列されうる。図14は、光学アセンブリ200の一部の縁部断面図であり、ピクセルボリューム240に隣接して配置されて第1および/または第2の主面204、206の法線に対して角度φで延在する破損トラックを示している。他の実施形態において、角度を成して延在する破損トラックは、個々のサブピクセルボリュームに隣接して配置されうる。例えば、角度を成して延在する破損トラックは、個々のサブピクセルボリュームを囲むなど、その周りに配置されうる。図示したように、ピクセル232によって放出された(例えば、ピクセルのサブピクセルを含むエレクトロルミネッセンス素子208から放出された)光線220は、破損トラック50に遮られて散乱し、それにより、その光線および遮られて散乱した光は、第2の主面206に対向する観察者から見てピクセルの位置に制限されうる。
【0076】
図15に示したようないくつかの実施形態において、光学アセンブリ200は、基板12の第1の主面204に配置された複数のエレクトロルミネッセンス素子208を含み、各エレクトロルミネッセンス素子208は、複数のエレクトロルミネッセンス素子の他のエレクトロルミネッセンス素子208と同じ波長(例えば、色)の光を放出する。例えば、複数のエレクトロルミネッセンス素子208は、青みがかった色の光を放出しうる。そのような場合において、色変換層242は、第2の主面206上に、複数のエレクトロルミネッセンス素子208から放出された光が色変換層242によって異なる色の光、例えば、白色光に変換されるように配置されうる。例えば、色変換層242は、複数の離散(例えば、別々の)層を含み、離散した各色変換層242は、対応するエレクトロルミネッセンス素子208の反対側に配置される。色変換層242は、青色変換層、緑色変換層、および、赤色変換層に分離されうる。したがって、青色発光エレクトロルミネッセンス素子、緑色発光エレクトロルミネッセンス素子、および、赤色発光エレクトロルミネッセンス素子を含む上記実施形態と同様に、青色、緑色、および、赤色変換層242をピクセル232に組み込み、各ピクセル232は、複数のエレクトロルミネッセンス素子208、および、複数の対応する色変換層242を含みうる。したがって、エレクトロルミネッセンス素子208と対になった1つの色の色変換層242は、1つのサブピクセルを表しうる。例えば、本実施形態によるピクセル232は、第1の主面204上に配置された単色の3つのエレクトロルミネッセンス素子208、および、第2の主面206上に配置された異なる色の3つの色変換層242、例えば、青色変換層、緑色変換層、および、赤色変換層を含み、各色変換層は、対応するエレクトロルミネッセンス素子208と対でありうる。色変換層242は、例えば、蛍光体材料(例えば、セリウム添加YAG)、または、半導体材料(例えば、量子ドット)を含みうる。
【0077】
図15の実施形態において、1つのピクセル232の1つのエレクトロルミネッセンス素子208から放出された光は、破損トラック50がない場合には、隣接したピクセルの色変換層、または、さらには、同じピクセル内の隣接したエレクトロルミネッセンス素子(例えば、サブピクセル)の色変換層と交差しうる。これが生じた場合、対応する色変換層用に意図された1つのエレクトロルミネッセンス素子208から放出された光は、その代わりに、少なくとも部分的に、隣接した色変換層を照らし、それにより、装置設計者が意図したものとは異なる色の光を、観察者に向けて放出しうる。例えば、図15の縦列C1のピクセルのエレクトロルミネッセンス素子208を作動させ、光を緑色変換層242Gに向けるように意図すると考える。破損トラック50がない場合には、エレクトロルミネッセンス素子からの光は、赤色変換層242R、または、青色変換層242Bも照らしうる。したがって、個々のサブピクセルボリューム、および/または、ピクセルボリュームの間に横列234および縦列236で配置された破損トラックは、個々のサブピクセル、および/または、ピクセルの間のクロストークを軽減しうる。
【0078】
さらに他の実施形態において、例えば、図16Aに示した例示的な光学アセンブリ300に示すように、光学アセンブリは、第1の基板302、および、透明な第2の基板304を含みうる。第1の基板302は、第1の主面306、および、第2の主面308を含む。複数のエレクトロルミネッセンス素子208は、第2の主面308上に配置され、複数のエレクトロルミネッセンス素子208が、ピクセル232を画成しうる。他の実施形態におけるように、ピクセル232は、特定のパターン、例えば、アレイ状の横列および/または縦列で配列されうる(図16Aには、縦列C1~C4の単一の横列を示している)。透明な第2の基板304は、第3の主面310(図16Bを参照)、および、第4の主面312を含む。透明な第2の基板304は、第1の基板302から離間して、第3の主面310が第2の主面308の反対で対向するように配置される。第3の主面310は、その上に配置された複数の色変換層314をさらに含みうる。複数のエレクトロルミネッセンス素子208と複数の色変換層314の間に間隙316が存在しうる。本実施形態による複数のエレクトロルミネッセンス素子208は上面発光なので、第1の基板302は、透明である必要がなく、複数のエレクトロルミネッセンス素子208と第1の基板302の間に配置されうる電極層も透明である必要がない。平面化層(不図示)を、エレクトロルミネッセンス素子208の上に配置しうる。さらに、更なる層、例えば、透明電極層(不図示)を、複数のエレクトロルミネッセンス素子208の上に配置しうる。
【0079】
いくつかの実施形態において、色変換層314は、第1の基板302の第2の主面308上のエレクトロルミネッセンス素子208の領域パターンに対応する領域パターンで、例えば、アレイ状に分布しうる。つまり、エレクトロルミネッセンス素子208が、第1の基板302の第2の主面308上に、矩形アレイ状の横列および縦列のエレクトロルミネッセンス素子で配列された場合、色変換層314も矩形アレイ状の横列と縦列で配列され、個々の色変換層314は、対応するエレクトロルミネッセンス素子208の真正面に位置する。そのような矩形アレイ状の横列および縦列は、ピクセル、または、個々のエレクトロルミネッセンス素子(例えば、サブピクセル)の一方または両方に適用しうる。上記実施形態と同様に、各色変換層314は、透明な第2の基板302の(例えば、破損層320を通る)厚さに延在する色変換ボリューム318を画成しうる。本明細書で用いるように、色変換ボリュームは、透明な第2の基板304に延在する色変換層のフットプリントのボリュームのことを称する。つまり、色変換層のフットプリントは、色変換層を透明な第2の基板304に投射した際の輪郭、例えば、透明な第2の基板304の第3の主面310上の色変換層の輪郭のことを称する。色変換ボリューム318は、色変換フットプリントを、透明な第2の基板304を通って、第2の基板の厚さ方向に、例えば、第2の基板の第3または第4の主面に直交する方向に投射した時の透明な第2の基板304内のボリュームを表す。ブラックマトリックス材料322、例えば、不透明なポリマー材料を第3の主面310上に付着させて、第3の主面310で、アレイ状の色変換層の各色変換層を他の色変換層から光学的に孤立させうる。
【0080】
既に記載し、図16Aに示したように、縦列C1のピクセルのエレクトロルミネッセンス素子208を作動させて、光を、例えば、青色変換層314Bに向けるように意図しうる。光線324など、光線の一部は、透明な第2の基板304を通って伝播し、第4の表面312、例えば、基板と空気との界面で屈折しうる。ある場合において、図16AのA部分の詳細図で最も明らかなように、青色変換層314Bの真正面に位置するエレクトロルミネッセンス素子208からの光は、透明な第2の基板304を通って、青色変換層314Bから放出された青色光が、例えば、隣接したピクセルに対応する赤色変換層など、赤色変換層314Rの一般的な位置で第4の主面312から出るような角度で伝播しうる。
【0081】
したがって、様々な実施形態において、さらに、図16AのAの詳細領域の拡大図である図16Bおよび領域A’に示したように、代わりの実施形態では、破損トラック50は、透明な第2の基板304に、領域パターン、例えば、直交する横列および/または縦列で形成されて、破損トラック50は、透明な第2の基板304の個々の色変換ボリューム318、または、色変換ボリュームの群に隣接して形成される。例えば、破損トラック50は、透明な第2の基板304に、領域パターンで形成されて、破損トラック50は、透明な第2の基板304の個々の色変換ボリューム318、または、色変換ボリュームの群の間に、および、それらの周りに形成される。したがって、図16Bに示した例において、青色変換層314Bから放出された青色光は、破損トラック50に遮られて、破損トラック50によって、第4の主面312に向かって、そこを通る方向に散乱しうる。したがって、青色変換層314Bからの青色光は、第4の主面312から、青色変換層314Bの一般的な位置で出て、観察者には、緑色変換層314Gの位置から出たとは見えない。上記のように、破損トラック50は、色変換ボリュームの群、例えば、3つのエレクトロルミネッセンス素子208を含む対応するピクセルの真正面に位置する3つの色変換ボリュームの群に隣接して、例えば、それらの周りに配列されうるが、色変換ボリュームの群は、3つより少ないか、または、3つより多い色変換ボリュームを含みうることに留意すべきである。したがって、図16Aを参照すると、破損トラック50は、ピクセルC1~C4に対応する色変換ボリュームの任意の1つ以上に対応する色変換層に隣接して配列されうる。例えば、いくつかの実施形態において、破損トラック50は、ピクセルC1~C4に対応する色変換ボリュームの任意の1つ以上に対応する色変換層の周りに配列されうる。いくつかの実施形態において、ピクセルレベルでの混色は、有益でありうる。したがって、いくつかの実施形態において、破損トラック50は、個々の色変換ボリュームではなく、個々のピクセルに対応する色変換ボリュームの群に隣接して、例えば、それらの周りに配列されうる。
【0082】
図14、および、透明基板202について記載したように、透明な第2の基板304の破損層320の内部に配置された破損トラック50は、各々、第3または第4の主面310、312の一方または両方の法線に対して角度φで傾きうる。
【0083】
当業者には、請求項の精神も範囲も逸脱することなく、様々な変更および変形が可能なことが明らかだろう。
【0084】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0085】
実施形態1
光学アセンブリにおいて、
第1の主面、および、該第1の主面の反対にある第2の主面を含み、さらに、該第1の主面を含む第1の非破損層と該第2の主面を含む第2の非破損層の間に配置された破損層を含み、さらに、該第1の主面上に配置された複数のエレクトロルミネッセンス素子を有するピクセルであって、該破損層に延在するピクセルボリュームを画成する該ピクセルを含む透明基板と、
前記破損層の内部の複数の破損トラックであって、前記ピクセルボリュームに隣接して配置された複数の破損トラックと
を含む光学アセンブリ。
【0086】
実施形態2
前記複数の破損トラックは、複数の実質的に平行な縦列の破損トラックに直交し交差する複数の実質的に平行な横列の破損トラックを含むものである、実施形態1に記載の光学アセンブリ。
【0087】
実施形態3
前記複数のエレクトロルミネッセンス素子の1つのエレクトロルミネッセンス素子は、該複数のエレクトロルミネッセンス素子の他のエレクトロルミネッセンス素子の光の波長と異なる波長の光を放出するように構成されたものである、実施形態1に記載の光学アセンブリ。
【0088】
実施形態4
前記複数のエレクトロルミネッセンス素子の各エレクトロルミネッセンス素子は、該複数のエレクトロルミネッセンス素子の他のエレクトロルミネッセンス素子の光の波長と同じ波長の光を放出するように構成されたものである、実施形態1に記載の光学アセンブリ。
【0089】
実施形態5
前記第2の主面上に配置された複数の色変換層であって、該複数の色変換層の個々の色変換層は、前記複数のエレクトロルミネッセンス素子の対応する個々のエレクトロルミネッセンス素子の真正面に配置されたものである複数の色変換層を、
さらに含む、実施形態3に記載の光学アセンブリ。
【0090】
実施形態6
前記複数の破損トラックの各破損トラックは、前記第1の主面または前記第2の主面の一方の法線に対してゼロ以外の角度を形成する縦軸を含むものである、実施形態1に記載の光学アセンブリ。
【0091】
実施形態7
前記破損層は、前記第1の非破損層と前記第2の非破損層の間に積層された複数の破損層を含むものである、実施形態1に記載の光学アセンブリ。
【0092】
実施形態8
前記透明基板は、ガラス、溶融シリカ、サファイア、ポリマー、および、ガラスセラミックの基板の群から選択されたものである、実施形態1に記載の光学アセンブリ。
【0093】
実施形態9
前記複数のエレクトロルミネッセンス素子は、マイクロLED、または、有機発光ダイオードを含むものである、実施形態1に記載の光学アセンブリ。
【0094】
実施形態10
光学アセンブリにおいて、
第1の主面、および、該第1の主面の反対にある第2の主面を含み、さらに、該第1の主面を含む第1の非破損層と該第2の主面を含む第2の非破損層の間に配置された破損層を含み、さらに、該第1の主面上に付着された複数のエレクトロルミネッセンス素子によって画成されるピクセルを含み、該複数のエレクトロルミネッセンス素子の各エレクトロルミネッセンス素子は、該破損層に延在するサブピクセルボリュームを画成するものである透明基板と、
各前記サブピクセルボリュームに隣接して配置された複数の破損トラックと
を含む光学アセンブリ。
【0095】
実施形態11
前記第2の主面上に配置された複数の色変換層であって、該複数の色変換層の各色変換層は、前記複数のエレクトロルミネッセンス素子の対応するエレクトロルミネッセンス素子の真正面に配置されたものである複数の色変換層を、
さらに含む、実施形態10に記載の光学アセンブリ。
【0096】
実施形態12
前記複数のエレクトロルミネッセンス素子の各エレクトロルミネッセンス素子は、該複数のエレクトロルミネッセンス素子の他のエレクトロルミネッセンス素子の光の波長と同じ波長の光を放出するように構成されたものである、実施形態11に記載の光学アセンブリ。
【0097】
実施形態13
前記複数の破損トラックは、複数の実質的に平行な縦列の破損トラックに直交し交差する複数の実質的に平行な横列の破損トラックを含むものである、実施形態10に記載の光学アセンブリ。
【0098】
実施形態14
前記複数の破損トラックの各破損トラックは、前記第1の主面または前記第2の主面の一方の法線に対してゼロ以外の角度を形成する縦軸を含むものである、実施形態10に記載の光学アセンブリ。
【0099】
実施形態15
前記複数のエレクトロルミネッセンス素子は、マイクロLED、または、有機発光ダイオードを含むものである、実施形態10に記載の光学アセンブリ。
【0100】
実施形態16
光学アセンブリにおいて、
第1の主面と、該第1の主面と反対にある第2の主面とを有する第1の基板であって、該第2の主面上に付着させた複数のエレクトロルミネッセンス素子によって画成されるピクセルを有する、第1の基板、
前記第1の基板に対向して実質的に平行に配置された透明な第2の基板であって、該透明な第2の基板は、前記第2の主面に対向する第3の主面と、該第3の主面と反対にある第4の主面とを有し、該透明な第2の基板は、該第3の主面を含む第1の非損傷層と該第4の主面を含む第2の非損傷層との間に配置された損傷層をさらに有し、該第3の主面はその上に配置された複数の色変換層を有し、該複数の色変換層の各々の色変換層は該損傷層に延在する色変換ボリュームを画成している、透明な第2の基板、および
前記複数の色変換層によって画成された前記色変換ボリュームの内の1つ以上に隣接して配置された複数の損傷トラック、
を備えた光学アセンブリ。
【0101】
実施形態17
前記複数の損傷トラックが、実質的に平行な複数の縦列の損傷トラックに対して直角であり、かつ、交差する実質的に平行な複数の横列の損傷トラックを含む、実施形態16に記載の光学アセンブリ。
【0102】
実施形態18
前記透明な第2の基板は、ガラス、溶融シリカ、サファイア、ポリマー、および、ガラスセラミックを含む基板の群から選択されるものである、実施形態16に記載の光学アセンブリ。
【0103】
実施形態19
ブラックマトリックス材料が、前記第3の主面上に配置されたものである、実施形態16に記載の光学アセンブリ。
【0104】
実施形態20
前記複数の破損トラックの各破損トラックは、前記第1の主面または前記第2の主面の一方の法線に対してゼロ以外の角度を形成する縦軸を含むものである、実施形態16に記載の光学アセンブリ。
【0105】
実施形態21
前記複数のエレクトロルミネッセンス素子の各エレクトロルミネッセンス素子は、該複数のエレクトロルミネッセンス素子の他のエレクトロルミネッセンス素子の光の波長と同じ波長の光を放出するように構成されたものである、実施形態16に記載の光学アセンブリ。
【0106】
実施形態22
前記透明な第2の基板は、ガラス、溶融シリカ、サファイア、ポリマー、および、ガラスセラミックの基板の群から選択されたものである、実施形態16に記載の光学アセンブリ。
【0107】
実施形態23
前記損傷層が、前記第1の非損傷層と前記第2の非損傷層との間に積層された複数の損傷層を含む、実施形態16に記載の光学アセンブリ。
【0108】
実施形態24
前記複数の損傷トラックの各々の損傷トラックは、2つ以上の損傷トラックを含み、該2つ以上の損傷トラックは、前記複数の損傷層の内部で上下方向に並べられている、実施形態23に記載の光学アセンブリ。
【0109】
実施形態25
前記複数のエレクトロルミネッセンス素子の各エレクトロルミネッセンス素子は、マイクロLED、または、有機発光ダイオードを含むものである、実施形態16に記載の光学アセンブリ。
【符号の説明】
【0110】
12、202 基板
16 イメージングアセンブリ
20 光源
32、204 第1の主面
34、206 第2の主面
50 破損トラック
208 エレクトロルミネッセンス素子
242、314 色変換層
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
【国際調査報告】