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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-03
(54)【発明の名称】腹膜透析装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/28 20060101AFI20220527BHJP
【FI】
A61M1/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560615
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(85)【翻訳文提出日】2021-12-03
(86)【国際出願番号】 IB2020053332
(87)【国際公開番号】W WO2020208532
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】PI2019001934
(32)【優先日】2019-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】MY
(31)【優先権主張番号】2019903777
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521444675
【氏名又は名称】ルセンシア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100169236
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】ホウ トー チェン
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA06
4C077BB01
4C077DD02
4C077DD18
4C077EE03
4C077EE04
4C077HH02
4C077HH06
4C077HH15
(57)【要約】
受容領域を有するハウジングと、前記受容領域に受容されるように適合されたカセット40とを含む医療装置、特に自動腹膜透析(APD)装置10を提供する。ツインヘッドポンプなどのポンプ70を使用して、1つまたは複数の導管47を介して正圧または負圧を印加し、膜45の動きを引き起こして流体をカセット40の空洞の内外に移動させることができる。前記医療装置の使用方法または制御方法は、音波センサを用いて流体の容量を測定するステップと、カセット40内の流体を加熱するステップと、ポンプ70によって印加される正圧および負圧を用いてゲート50を作動させるステップと、管を対応するポート55に接続するように誘導する視覚的インジケータを提供するステップとを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体導管と、
前記流体導管に隣接して配置され、かつ、前記流体導管を介して音波を放射および検出するように適合された超音波センサと、
前記流体導管を介して流体を圧送するための手段と、を備える、医療装置であって、
前記超音波センサが、前記流体導管を介して圧送される流体の容量の計算に使用される、前記流体導管を通過する流体の流量を検出するように適合され、
自動腹膜透析(APD)装置であることを特徴とする、医療装置。
【請求項2】
前記超音波センサが、超音波放射器と超音波検出器とを備え、前記超音波放射器は、超音波が前記流体導管を通過して前記流体導管内の流体を透過するように超音波を放射するように適合され、前記超音波検出器は、前記超音波を受信するように適合される、請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記流体が前記超音波放射器と前記超音波検出器との間の前記流体導管を通過できるように、前記超音波放射器が前記流体導管の第1の側に配置され、前記超音波検出器が前記第1の側とは反対側の前記流体導管の第2の側に配置される、請求項2に記載の医療装置。
【請求項4】
前記超音波放射器および前記超音波検出器がそれぞれ圧電素子を含む、請求項2または3に記載の医療装置。
【請求項5】
前記超音波センサが、少なくとも20MHzの周波数の超音波を放射し、かつ検出する、請求項1~4のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項6】
前記流体導管が、前記APD装置と患者との間を接続するように適合され、前記超音波センサが、患者に注入された流体の容量および/または患者から排出された流体の容量を計算するように適合される、請求項1~5のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項7】
前記超音波センサが、前記流体導管を受容するように適合された凹部領域を備えるアセンブリの一部である、請求項1~6のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項8】
前記流体導管を前記凹部領域内に確実に保持する手段を備える、請求項7に記載の医療装置。
【請求項9】
ハウジングと、
前記ハウジングの受容領域内に受容されるように適合され、少なくとも1つの膜を含むカセットと、
少なくとも1つの気体導管と、
圧力源と、を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の医療装置であって、
前記少なくとも1つの膜が、前記少なくとも1つの気体導管のうちの少なくとも1つと流体連通し、
前記圧力源が、前記少なくとも1つの膜の動きを制御するために、前記少なくとも1つの気体導管を介して正圧および/または負圧を印加するように適合され、
前記カセットが、流体を受容するように適合された内部空洞を含み、前記内部空洞が、前記少なくとも1つの膜である膜に少なくとも一方の側で接し、かつ、前記膜への正圧および/または負圧の印加が、前記流体の前記内部空洞内外への移動を引き起こし、これにより前記流体導管を介して流体を圧送する手段を提供する、医療装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの膜の動きが、印加される圧力が正であるか負であるかに応じて、前記少なくとも1つの気体導管の開口部に近づくかまたは離れる動きを含む、請求項9に記載の医療装置。
【請求項11】
開位置および閉位置を有する流体ゲートをさらに備え、前記気体導管に近づくか離れるかの前記膜の動きが、前記流体ゲートが開位置にあるか閉位置にあるかを決定する、請求項9または10に記載の医療装置。
【請求項12】
複数の前記気体導管と、複数の前記膜と、複数の前記ゲートとを備え、前記複数のゲートの各々が、それぞれの開位置および閉位置を有し、前記正圧および/または負圧の印加により、前記複数の膜のそれぞれの動きを制御して、前記複数のゲートのいずれが前記それぞれの開位置および閉位置にあるかを決定する、請求項11に記載の医療装置。
【請求項13】
前記各導管は、前記圧力源が前記導管を介して正圧および/または負圧を前記それぞれの膜に印加できるかどうかを決定するように適合されたバルブを備える、請求項12に記載の医療装置。
【請求項14】
流体源からの流体の流れを制御する少なくとも1つの第1のゲートと、患者への流体の流れを制御する第2のゲートと、ドレインまたはレセプタクルへの流体の流れを制御する第3のゲートと、を備える、請求項12または13に記載の医療装置。
【請求項15】
前記カセットが、前記1つまたは複数のゲートを備える、請求項11~14のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項16】
流体源から前記カセットの前記内部空洞に第1の流体を移送するように適合された少なくとも1つの第1の流体導管と、前記第1の流体を前記内部空洞から患者におよび/または第2の流体を患者から前記内部空洞に移送するように適合された第2の流体導管と、前記第2の流体を前記内部空洞からドレインまたはレセプタクルに移送するように適合された第3の流体導管と、をさらに備える、請求項9~15のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項17】
前記少なくとも1つの第1のゲートが、前記少なくとも1つの第1の導管を通る前記第1の流体の流れを制御するように適合され、前記第2のゲートが、前記第2の流体導管を通る前記第1および/または前記第2の流体の流れを制御するように適合され、前記第3のゲートが、前記第3の流体導管を通る前記第2の流体の流れを制御するように適合される、請求項14に従属する請求項16に記載の医療装置。
【請求項18】
前記ハウジングが、前記受容領域に隣接して配置されたヒータを備え、前記ヒータが、前記カセットの前記内部空洞内の流体を加熱するように適合される、請求項9~17のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項19】
前記ヒータが加熱板であり、好ましくは円筒形または円盤状である、請求項18に記載の医療装置。
【請求項20】
前記流体が前記カセットの前記内部空洞内のヒータによって加熱される時間が、周囲温度に基づいて調節される、請求項18または19に記載の医療装置。
【請求項21】
前記膜への前記正圧および/または負圧の印加により、流体がポンピング作用を介して前記内部空洞内外へ圧送され、かつ、前記ポンピング作用が前記流体の加熱と同時に行われる、請求項18~20のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項22】
前記ヒータが、セラミック、セラミック酸化物、金属、金属酸化物、およびセラミックまたはセラミック酸化物で被覆された金属のうちの1つ以上を含む材料から形成される、請求項18~21のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項23】
前記気体導管が前記ヒータ内の開口部を通り、前記膜が前記ヒータに近づくか離れる動きを制御する、請求項18~22のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項24】
前記圧力源が、正圧と負圧の両方を供給するように適合されたツインヘッドポンプである、請求項9~23のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項25】
前記ツインヘッドポンプが、請求項3~7のいずれか一項に記載の1つまたは複数のゲートの作動と、請求項9~24のいずれか一項に記載のカセットの内部空洞に出入りする流体の動きを制御する、請求項24に記載の医療装置。
【請求項26】
前記超音波センサが、前記第2の導管を通過する前記第1の流体および/または前記第2の流体の容量を測定するように適合される、請求項16または17に記載の医療装置。
【請求項27】
前記第1の流体が透析液であり、前記第2の流体が排液である、請求項16、17または26のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項28】
少なくとも第1のポートおよび第2のポートを含む複数のポートと、
少なくとも第1の管と第2の管を含む複数の管と、をさらに備える、請求項1~27のいずれか一項に記載の医療装置であって、
前記第1のポートが第1のインジケータを含み、前記第1の管が対応する第1のインジケータを含み、前記第2のポートが第2のインジケータを含み、前記第2の管が対応する第2のインジケータを含み、
使用者が、前記第1の管を前記第1のポートに接続するように誘導され、かつ、前記第2の管を前記第2のポートに接続するよう誘導されるように、前記第1のインジケータおよび前記第2のインジケータ、ならびに前記対応する第1のインジケータおよび前記対応する前記第2のインジケータが選択される、医療装置。
【請求項29】
前記第1および前記第2のインジケータと、前記対応する第1のインジケータおよび前記対応する第2のインジケータが、視覚的インジケータである、請求項28に記載の医療装置。
【請求項30】
前記視覚的インジケータが、第1の色の管を第1の色のポートに接続し、第2の色の管を第2の色のポートに接続するように使用者を誘導する色分け表示(カラーコーディング)を備える、請求項29に記載の医療装置。
【請求項31】
前記インジケータのそれぞれが、色付きのライトの形態で提供され、前記第1のインジケータは、第1の色のライトであり、前記対応する第1のインジケータは、対応する第1の色であり、前記第2のインジケータは、第2の色のライトであり、前記対応する第2のインジケータは、対応する第2の色である、請求項28~30のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項32】
前記カセットが前記複数のポートのそれぞれを備える、請求項28~31のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項33】
前記複数の管が、前記第1、第2および第3の流体導管を備える、請求項16、17、26、または27のいずれか一項に従属する請求項32に記載の医療装置。
【請求項34】
医療装置の流体導管を通る流体の流れを検出する方法であって、
請求項1~33のいずれか一項に記載の医療装置を設けるステップと、
前記流体導管に隣接して超音波センサを設けるステップと、
前記流体導管に流体を通すステップと、
前記超音波センサを用いて、前記流体導管を通過する流体の流量を測定するステップと、
前記測定された流量を用いて、前記流体導管を通過した流体の総量を計算するステップと、を含み、
前記医療装置が自動腹膜透析装置である、方法。
【請求項35】
前記超音波センサが、超音波放射器および超音波検出器を備え、前記方法が、超音波が前記流体導管を通過し、前記流体導管内の流体を透過して、前記超音波検出器によって受信されるように、前記超音波放射器から超音波を放出するステップを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記流体が、前記超音波放射器と前記超音波検出器との間の前記流体導管を通過するように、前記超音波放射器は、前記流体導管の第1の側に配置され、前記超音波検出器は、前記第1の側とは反対側の前記流体導管の第2の側に配置される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記超音波放射器および前記超音波検出器がそれぞれ圧電素子を含む、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
前記計算された流体の総量が所定の値に達するか、またはそれを超えた場合に、前記流体導管を通過する流体の流れを停止させるステップをさらに含む、請求項34~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記流体が透析液であり、前記方法が、前記流体導管を介して患者に前記透析液を注入するステップを含み、前記流体導管を通過する前記計算された流体の総量が、患者に注入される透析液の総量に関連する、請求項34~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記流体が排液であり、前記方法が、前記流体導管を介して患者から前記排液を排出するステップを含み、前記流体導管を通過する流体の前記計算された総量が、患者から排出された排液の総量に関連する、請求項34~38のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末期腎疾患の治療に使用する装置などの医療装置、特に、改良された自動腹膜透析(APD)装置に関する。本発明はまた、関連する制御システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透析は、腎臓の機能が低下して血液中の老廃物や毒素、過剰な水分を除去できなくなった末期腎疾患患者をサポートするために行われる。透析の一般的な形態は血液透析であるが、腹膜透析(PD)も、腎不全患者の治療に用いられる透析の一形態である。
【0003】
腹膜透析では、患者の腹部にある腹膜を膜として用い、この膜を介して流体および溶解物質が患者の血液と交換される。腹膜透析は、患者に柔軟に対応でき、使用開始後数年間の治療成績を改善させる可能性があり、心臓疾患を有する患者の忍容性を改善する可能性があるなど、状況によっては血液透析よりも有益な場合がある。
【0004】
腹膜透析は、一般的に連続携行式腹膜透析(CAPD)として知られる工程であり、一日を通して一定の間隔で行われる。また、自動腹膜透析(APD)と呼ばれる別の形態の腹膜透析では、サイクラとしても知られる装置を使用する。APD装置は、患者が眠っている夜間を通して使用することができる。
【0005】
自動腹膜透析(APD)は、サイクラ(自動腹膜透析装置)、透析液(通常、必須ミネラルを含む無菌のブドウ糖水溶液)、および、カセットや排液バッグなどの消耗部品を備える。患者はPD治療を受ける前に、外科的処置により、カテーテルを腹腔内、具体的には腹膜に挿入する必要がある。サイクラは、注入工程で透析液を患者の腹膜に注入する。必要に応じて、注入前の流体に薬剤を混入することもできる。
【0006】
滞留時間として知られる期間を通して、透析液は患者の腹部に留まり、溶質、毒素、過剰な水分などの老廃物は、濃度勾配に従い拡散や浸透を介して透析液に吸収される。その後、サイクラは患者の体から排液/老廃物を取り除く。注入、拡散、および排液(一般的には充填-滞留-排出(fill-dwell-drain)と呼ばれる)このサイクルは、設定されたプログラムに従って行うことができる。夜間プログラム中、サイクラは一晩に3~10回の充填‐滞留‐排出サイクルを実行可能である。医師がこの工程を監視し、十分なサイクルが完了して患者の血液が浄化された時期を判断することもできる。
【0007】
一部のAPD装置では、サイクラが透析液を予め所望の温度(人間の体温に近い温度)に温めてから患者に注入する。このように流体を加熱することで、冷たい流体の注入により引き起こされ得る患者の温度ショックを防止することができる。
【0008】
一般的に、カセットが、注入および排液工程における透析液および排液の流れを制御する装置として使用される。
【0009】
患者の腹膜に所望量の透析液を注入するために、従来のAPDサイクラでは、ロードセルなどを使用して、透析液のバッグ全体の重量を測定する。このバッグの重量の変化は、透析液の充填工程全体を通して監視される。サイクラは、測定された重量差が所望の量と等しくなると、患者への透析液の注入/充填工程を停止する。患者に注入された容量を計算するこの方法は、例えば、透析液と排液の密度が異なるため、計算された容量と実際の容量とに差が生じる可能性があるなど、所望の精度が得られない場合がある。
【0010】
同様に、排液または排出物の除去を行う場合、従来のAPDサイクラではロードセルなどを用いて排液バッグの初期重量を測定するものもある。このバッグの重量は排液の全工程を通して監視される。サイクラは、測定されたバッグの重量が所望の目標量に達すると排液を停止する。患者から排出された容量を計算するこの方法は、重量を測定して計算した容量と実際の容量に差が生じてしまうなど、所望の精度が得られない場合がある。
【0011】
また、他の従来のAPDサイクラには、サイクラのカセットの固定された形状や容積に応じて、排液のポンプストローク数を計算して排液量を推定するものもある。例えば、1回のストロークで平均20mlの排液を排出する場合、100回のポンプストロークでは2000mlの排液を排出する計算となる。この計算方法においても、計算された容量が実際の容量と一致しないなど、所望の精度が得られない場合がある。この不正確さの理由は、ポンプストロークが、(i)ポンピング作用を駆動する空気圧と、(ii)弾性膜の剛性およびポリマー膜の剛性を変化させる膜の動作温度とに依存するためと考えられる。
【0012】
従来のAPDサイクラの中には、透析液を所望の温度に加熱するために、透析液のバッグ全体を温める外部ヒータを有するものがある。この加熱されるバッグは一般に加温バッグと呼ばれる。使用する透析液を加温バッグに注入し、所望の温度に達するまで加熱する。透析液が所望の温度になれば、患者の体内に注入することができる。透析液のバッグが加熱され、サイクラが患者への透析液の注入を開始できるようになるまで、通常数分程度の時間が必要となる。このような加熱方法は、必要以上に時間がかかり、また、使用前に流体のバッグ全体を加熱するために、所望のエネルギー効率が得られない場合がある。
【0013】
また、他のAPDサイクラには、サイクラの内部ヒータを使用して透析液を温めるものもある。こうしたサイクラには、カセットに何本かの加熱ラインまたはチャネルが含まれるものがある。透析液はカセットを介してサイクラに送り込まれ、内部ヒータは、透析液が患者に送られる前に加熱チャネルを通って流れる間、透析液を加熱する。この加熱方法では、流体が設定された時間だけチャネルを通過するため、流体の温度を所望通りに制御できない場合がある。こうしたシステムの温度を制御する唯一の方法は、ヒータの熱量を上げることであるが、その場合、装置のエネルギー消費量が増加するだけでなく、供給温度の変動も大きくなってしまう。
【0014】
従来のAPDサイクラでは、透析液や排液の流れを誘導するために、カセット内のさまざまなチャネルのゲートまたはバルブを物理的に開閉する機械式アクチュエータを用いる。アクチュエータを使用して、正しいゲートまたはバルブを開位置または閉位置に機械的に操作することにより、流れを制御することができる。しかしながら、従来のシステムでの機械式アクチュエータの使用においては、所望の形態よりも複雑であり、より多くの部品が使用されている。
【0015】
従来のAPDサイクラでは、透析液を患者に送るために単一のポンプが使われているものもある。単一のポンプは、単一の固定正圧を生成して充填工程中に透析液を患者に送り込む。排液の排出方法については、これらのサイクラは重力を利用して患者から排液を排出する。単一のポンプと重力を利用した排液方法では、装置を一定の高さに設置しなければならないなど、設置場所に制限があるために好ましくない場合がある。
【0016】
他のAPDサイクラには、2つの別のポンプを使用して、透析液を患者に注入したり排液を患者から排出したりするものもある。一方のポンプは正圧を生成して透析液を患者に送り込み、もう一方のポンプは負圧または真空を生成して排液を患者から排出するために使用される。このようなAPDサイクラでは、各ポンプの圧力は固定されている。2つのポンプを使用することで、APD装置が所望の形態よりも大型化し、重量化し、より高価になり、エネルギー効率も悪くなる。
【0017】
APDサイクラに障害や問題が発生した場合は、資格のある技術者が物理的に立ち会って、通常は患者の自宅に設置されているサイクラをチェックし、サイクラに障害が存在するか否かを確認する必要がある。
【0018】
既存のAPD装置としては、バクスター社のHomeChoiceAPD装置や、フレゼニウスメディカルケア社のスリープセーフ(登録商標)APDサイクラなどがある。これらの装置は、上述のような特徴を1つ以上含み、同様の欠点も含んでいる。
【0019】
そこで、従来のAPDサイクラが抱える上述した問題を1つ以上克服できる自動腹膜透析(APD)装置を提供することが望まれている。
【発明の概要】
【0020】
本明細書では、ハウジングと、前記ハウジングの受容領域に受容されるように適合され、少なくとも1つの膜を含むカセットと、少なくとも1つの気体導管と、圧力源と、を備える医療装置であって、前記少なくとも1つの膜が、前記少なくとも1つの気体導管のうちの少なくとも つと流体連通し、前記圧力源が、前記少なくとも1つの膜の動きを制御するために、前記少なくとも1つの気体導管を介して正圧および/または負圧を印加するように適合される医療装置が提供される。
【0021】
好ましい態様によれば、本発明は、流体導管と、前記流体導管に隣接して配置され、かつ、前記流体導管を介して音波を放射および検出するように適合された超音波センサと、前記流体導管を介して流体を圧送する手段と、を備えた医療装置であって、前記超音波センサが、前記流体導管を介して圧送される流体の容量の計算に使用される、前記流体導管を通過する流体の流量を検出するように適合され、自動腹膜透析(APD)装置であることを特徴とする、医療装置を提供する。
【0022】
また、本明細書には、好ましくは自動腹膜透析(APD)装置である医療装置であって、ハウジングと、前記ハウジングの受容領域に受容されるように適合され、少なくとも1つの膜を含むカセットと、少なくとも1つの気体導管と、圧力源と、を備え、前記少なくとも1つの膜が、前記少なくとも1つの気体導管のうちの少なくとも1つと流体連通し、前記圧力源が、前記少なくとも1つの膜の動きを制御するために、前記少なくとも1つの気体導管を介して正圧および/または負圧を印加するように適合され、前記カセットが、流体を受け入れるように適合された内部空洞を備え、前記内部空洞が、前記少なくとも1つの膜である膜に少なくとも一方の側で接し、かつ、前記膜への正圧および/または負圧の印加が、前記流体の前記内部空洞内外への移動を引き起こす医療装置が記載されている。
【0023】
実施形態によれば、前記少なくとも1つの膜の動きは、印加される圧力が正であるか負であるかに応じて、前記少なくとも1つの気体導管の開口部に近づくかまたは離れる動きである。
【0024】
前記医療装置は、開位置および閉位置を有する流体ゲートをさらに備えていてもよい。前記気体導管に近づくか離れるかの前記膜の動きが、前記流体ゲートが開位置にあるか閉位置にあるかを決定してもよい。
【0025】
実施形態によれば、前記医療装置は、複数の気体導管、複数の膜、および複数のゲートを備える。前記複数のゲートの各々が、それぞれの開位置および閉位置を有し、前記正圧および/または負圧の印加により、前記複数の膜のそれぞれの動きを制御して、前記複数のゲートのいずれが前記それぞれの開位置および閉位置にあるかを決定してもよい。
【0026】
実施形態によれば、各導管は、前記圧力源が前記導管を介して正圧および/または負圧を前記それぞれの膜に印加できるかどうかを決定するように適合されたバルブを備える。
【0027】
前記医療装置は、流体源からの流体の流れを制御する少なくとも1つの第1のゲートと、患者への流体の流れを制御する第2のゲートと、ドレインまたはレセプタクルへの流体の流れを制御する第3のゲートと、を備えていてもよい。
【0028】
実施形態によれば、前記カセットが、前記1つまたは複数のゲートを備える。
【0029】
実施形態によれば、前記カセットは、流体を受容するように適合された内部空洞を含む。前記内部空洞は、前記少なくとも1つの膜である膜に少なくとも一方の側で接していてもよい。前記膜への正圧および/または負圧の印加が、前記流体の前記内部空洞内外への移動を引き起こし得る。
【0030】
前記医療装置は、流体源から前記カセットの前記内部空洞に第1の流体を移送するように適合された少なくとも1つの第1の流体導管と、前記第1の流体を前記内部空洞から患者におよび/または第2の流体を患者から前記内部空洞に移送するように適合された第2の流体導管と、前記第2の流体を前記内部空洞からドレインまたはレセプタクルに移送するように適合された第3の流体導管と、をさらに備え得る。
【0031】
実施形態によれば、前記少なくとも1つの第1のゲートが、前記少なくとも1つの第1の導管を通る前記第1の流体の流れを制御するように適合され、前記第2のゲートが、前記第2の流体導管を通る前記第1および/または前記第2の流体の流れを制御するように適合され、前記第3のゲートが、前記第3の流体導管を通る前記第2の流体の流れを制御するように適合される。
【0032】
実施形態によれば、前記ハウジングは、前記受容領域に隣接して配置されたヒータを含む。前記ヒータは、前記カセットの内部空洞内の流体を加熱するように適合されていてもよい。実施形態によれば、前記ヒータは加熱板であり、好ましくは円筒形または円盤状である。
【0033】
実施形態によれば、前記流体が前記カセットの前記内部空洞内のヒータによって加熱される時間は、周囲温度に基づいて調節される。
【0034】
実施形態によれば、前記膜への正圧および/または負圧の印加により、流体がポンピング作用を介して前記内部空洞内外へ圧送され、かつ、前記ポンピング作用が前記流体の加熱と同時に行われる。
【0035】
実施形態によれば、前記ヒータが、セラミック、セラミック酸化物、金属、金属酸化物、およびセラミックまたはセラミック酸化物で被覆された金属のうちの1つ以上を含む材料から作られる。
【0036】
実施形態によれば、前記気体導管が前記ヒータ内の開口部を通り、前記膜が前記ヒータに近づくか離れる動きを制御する。
【0037】
実施形態によれば、前記圧力源はポンプである。前記ポンプは、好ましくは、正圧と負圧の両方を供給するように適合されたツインヘッドポンプである。
【0038】
実施形態によれば、同一のポンプが1つまたは複数のゲートの作動と、好ましくは、カセットの内部空洞に出入りする流体の移動の動きとを制御する。
【0039】
実施形態によれば、前記医療装置は、導管を通過する流体の容量の計算に使用される、前記導管を通過する流体の流量を検出するために、前記導管を通過する音波を放射または検出するように適合された音波センサをさらに備える。前記音波センサは、好ましくは、少なくとも20MHzの周波数の超音波を放射し、かつ検出する超音波センサである。前記音波センサは、好ましくは、前記導管を受容するように適合された凹部領域を含む。実施形態によれば、前記導管を確実に保持する手段が、前記凹部領域内に含まれる。好ましくは、前記音波センサは、第1の流体および/または第2の導管を通過する第2の流体の容量を測定するように適合されている。
【0040】
好ましい実施形態によれば、前記医療装置は透析装置である。好ましくは、前記透析装置は、自動腹膜透析(APD)装置である。前記第1の流体は透析液であり、および/または前記第2の流体は排液である。
【0041】
実施形態によれば、前記医療装置は、少なくとも第1のポートおよび第2のポートを含む複数のポートと、少なくとも第1の管と第2の管を含む複数の管と、をさらに備え、前記第1のポートが第1のインジケータを含み、前記第1の管が対応する第1のインジケータを含み、前記第2のポートが第2のインジケータを含み、前記第2の管が対応する第2のインジケータを含み、使用者が、前記第1の管を前記第1のポートに接続するように誘導され、前記第2の管を前記第2のポートに接続するように誘導されるように、前記第1のインジケータおよび前記第2のインジケータ、ならびに前記対応する第1のインジケータおよび前記対応する第2のインジケータが選択される。
【0042】
実施形態によれば、前記第1および第2のインジケータおよび対応する第1および対応する第2のインジケータは、視覚的インジケータであり、好ましくは、第1の色の管を第1の色のポートに接続し、第2の色の管を第2の色のポートに接続するように使用者を誘導するための色分け表示を含む。
【0043】
実施形態によれば、各インジケータは、着色ライトの形で提供される。前記第1のインジケータは、第1の色のライトであってもよく、前記対応する第1のインジケータは、対応する第1の色であってもよい。前記第2のインジケータは、第2の色のライトであってもよく、前記対応する第2のインジケータは、対応する第2の色であってもよい。
【0044】
実施形態によれば、前記カセットは前記各ポートを備える。実施形態によれば、前記複数の管は、前記第1、第2、および第3の流体導管を備える。
【0045】
本発明の一態様によれば、医療装置の導管を通る流体の流れを検出する方法であって、導管を有する医療装置を提供するステップと、前記導管に隣接して音波センサを提供するステップと、前記導管を通る流体を通過させるステップと、前記音波センサを使用して前記導管を通る流体の流量を測定するステップと、前記測定された流量を使用して前記導管を通る流体の総量を計算するステップとを含む方法、を提供する。
【0046】
好ましい実施形態によれば、前記音波センサは、音波放射器と音波検出器とを含む。前記方法は、音波が前記導管を通過し、前記導管内の流体を透過し、前記音波検出器によって受信されるように、前記音波放射器が音波を放射するステップを含む。
【0047】
好ましい実施形態によれば、流体が前記音波放射器と前記音波検出器との間の導管を通過するように、前記音波放射器は、前記導管の第1の側に配置され、前記音波検出器は、導管の前記第1の側とは反対側の第2の側に配置される。
【0048】
好ましい実施形態によれば、前記音波放射器と前記音波検出器は圧電素子である。
【0049】
好ましい実施形態によれば、前記音波センサは超音波センサである。前記超音波センサは、好ましくは超音波を放射して検出する。超音波の周波数は、好ましくは少なくとも20kHzであり、より好ましくは少なくとも1MHzであり、また、任意で少なくとも20MHzであってもよい。
【0050】
好ましい実施形態によれば、前記方法は、計算された流体の総量が所定の値に達するかまたはそれを超えるときに、前記導管を通る流体の通過を停止するステップをさらに含む。
【0051】
実施形態によれば、前記医療装置は自動腹膜透析(ADP)装置を含む。任意で、前記流体は透析液であってもよい。前記方法は、前記導管を介して患者に透析液を注入するステップを含み、前記導管を通過する流体の計算された総量が、患者に注入される透析液の総量に関連する。実施形態によれば、前記流体は排液であり、前記方法は、前記導管を介して患者から排液を排出するステップを含み、前記導管を通過する流体の計算された総量は、患者から排出された排液の総量に関連する。
【0052】
本発明の別の態様によれば、提供されるのは、導管と、前記導管に隣接して配置され、前記導管を通って音波を放射および検出するように適合された音波センサと、前記導管を介して流体を圧送するための手段とを備える医療装置であって、前記音波センサが、前記導管を介して圧送される流体の容量の計算に使用される、前記導管を通過する流体の流量を検出するように適合された医療装置である。
【0053】
好ましい実施形態によれば、前記音波センサは、少なくとも20kHzの周波数の超音波を放射および検出する超音波センサである。
【0054】
実施形態によれば、前記医療装置は自動腹膜透析(ADP)装置を含む。実施形態によれば、前記導管は、前記ADP装置と患者との間を接続するように適合されている。好ましくは、前記音波センサは、患者に注入される流体の量および/または患者から排出される流体の量を計算するように適合されている。
【0055】
好ましい実施形態によれば、前記音波センサは、前記導管を受容するように適合された凹部領域を含む。好ましくは、前記医療装置は、凹部領域内に前記導管を確実に保持する手段を備える。例えば、前記導管は、クランプ又は同様の装置を用いて前記音波センサに固定することができる。
【0056】
本発明の別の態様によれば、提供されるのは、ハウジングと、流体を受容するように適合された内部空洞を有するカセットと、前記カセットを受容するように適合された受容領域に隣接して前記ハウジング内に配置されたヒータと、流体を前記カセットの前記内部空洞内に移動させ、次いで前記流体を前記カセットの前記内部空洞から移動させるように適合された少なくとも1つのポンプと、前記カセットに接続された複数の導管とを含む医療装置であって、前記カセットが前記ハウジングの前記受容領域内に配置されたときに、前記内部空洞内に収容される流体を前記ヒータで加熱できるように適合された医療装置である。
【0057】
好ましい実施形態によれば、前記装置は、流体が前記ヒータで加熱されている間、前記内部空洞内に滞留するように適合されている。
【0058】
好ましい実施形態によれば、流体は負圧を使用して前記内部空洞に移動される。 好ましい実施形態によれば、流体は、正圧を使用して前記内部空洞から移動される。
【0059】
好ましい実施形態によれば、前記ポンプはツインヘッドポンプである。
【0060】
好ましい実施形態によれば、前記医療装置は、流体が加熱されながら前記内部空洞内に収容される時間を制御するように適合されたコントローラを備える。実施形態によれば、流体は約1秒間前記空洞内に収容される。実施形態によれば、流体は約2秒間前記空洞内に収容される。実施形態によれば、流体は約3秒間前記空洞内に収容される。実施形態によれば、流体は約4秒間前記空洞内に収容される。実施形態によれば、流体は約5秒間前記空洞内に収容される。実施形態によれば、流体は約1~10秒間前記空洞内に収容される。実施形態によれば、流体は約10秒間前記空洞内に収容される。実施形態によれば、流体は約1~20秒間前記空洞内に収容される。
【0061】
好ましい実施形態によれば、ヒータは円筒形である。好ましい実施形態によれば、ヒータはマイカカバーを含む。
【0062】
好ましい実施形態によれば、ヒータはプレートを含み、プレートは空気圧継手の設置に適合された開口を含む。
【0063】
好ましい実施形態によれば、ヒータは、セラミック、セラミック酸化物、金属および/または金属酸化物のうちの1つ以上からなる。実施形態によれば、ヒータは、セラミックまたはセラミック酸化物で少なくとも部分的に被覆された金属から形成されていてもよい。ヒータは、約1μmから100μmの範囲の赤外線を放射する材料から形成することができる。赤外線放射は、前記カセットの前記内部空洞内の流体を加熱することができる。赤外線加熱が唯一の熱源であってもよく、あるいは、赤外線放射を、導電性ヒータのような他のタイプのヒータと組み合わせて流体を加熱してもよい。複数の熱源を使用すると、単一の熱源を使用する場合と比較して、加熱効率を改善できるか/または流体を加熱の時間を短縮できる可能性がある。
【0064】
好ましい実施形態によれば、前記カセットは膜を備える。好ましくは、前記装置は、前記カセットが前記受容領域に配置されたときに、前記空気圧継手を介して圧力を作動させることにより、前記カセットの膜が加熱板に引き寄せられるように適合されている。
【0065】
好ましい実施形態によれば、流体を圧送し、空気圧継手を作動させるために単一のポンプが使用される。好ましい実施形態によれば、前記単一ポンプはツインヘッドポンプである。
【0066】
好ましい実施形態によれば、前記医療装置は自動腹膜透析(APD)装置であり、前記流体は透析液である。
【0067】
本発明の別の態様は、前記医療装置での使用に適合されたカセットであって、流体を受容するように構成された内部空洞を含み、複数の導管に接続するための複数のポートを備えるカセットを提供する。
【0068】
本発明のさらなる態様は、前記カセットを受容するように適合された受容領域を含むハウジングと、前記受容領域に隣接する前記ハウジング内に配置されたヒータとを含み、前記ヒータが、前記受容領域内に受容された前記カセット内に収容される流体を加熱するように適合された医療装置を提供する。
【0069】
本発明のさらなる態様によれば、カセット、気体導管、および圧力源を含む医療装置であって、前記カセットが、前記気体導管と連通する膜を含み、前記圧力源が、前記気体導管を介して正圧または負圧を印加して、前記気体導管に近づくかまたは前記気体導管から離れる前記膜の動きを制御するように適合される、医療装置が提供される。
【0070】
好ましい実施形態によれば、前記医療装置は、開位置および閉位置を有する流体ゲートを含む。好ましくは、気体導管に向かうかまたは気体導管から離れる膜の動きが、前記流体ゲートが開位置にあるか閉位置にあるかを決定する。好ましくは、気体導管から離れる膜の動きが、流体ゲートが閉位置にあることを決定する。
【0071】
好ましい実施形態によれば、前記医療装置は、複数の前記気体導管、複数の前記膜、および複数の前記ゲートを含む。前記ゲートの各々は、それぞれの開位置およびそれぞれの閉位置を有してもよい。正圧または負圧の印加により、1つまたは複数の膜のそれぞれの動きを制御し、前記ゲートのどのゲートが前記それぞれの開位置および閉位置に位置するかを決定することができる。
【0072】
好ましい実施形態によれば、各導管は、圧力源が前記導管を介して正圧または負圧をそれぞれの膜に印加できるか否かを決定するように適合されたバルブを備える。
【0073】
好ましい実施形態によれば、前記医療装置は、患者への流体の流れを制御する第1のゲートと、ドレーンまたはレセプタクルへの流体の流れを制御する第2のゲートと、流体源からの流体の流れを制御する少なくとも1つの第3のゲートと、を備える。
【0074】
好ましい実施形態によれば、前記医療装置は加熱板を備える。好ましい実施形態によれば、気体導管に向かうかまたは気体導管から離れる膜の動きは、加熱板に向かうかまたは加熱板から離れる膜の動きに関連する。好ましい実施形態によれば、気体導管は、加熱板の開口部を通過する。
【0075】
好ましい実施形態によれば、前記カセットは、前記膜に少なくとも一方の側で接する内部空洞を有し、前記カセットの内部空洞は、前記加熱板で加熱される流体を受容するように適合されている。
【0076】
好ましい実施形態によれば、前記圧力源はツインヘッドポンプである。
【0077】
好ましい実施形態によれば、前記医療装置は自動腹膜透析(APD)装置であり、カセットは透析液を受容するように適合される。
【0078】
好ましい実施形態によれば、上述した態様および実施形態のいずれかで使用されるツインヘッドポンプは、正圧および負圧を供給して、前記ゲートのそれぞれを制御し、加熱板によって加熱されるカセット内の透析液の流れの加熱を制御する。
【0079】
本発明のさらなる態様は、医療装置のカセットの膜を制御する方法であって、前記医療装置を提供するステップと、前記圧力源を作動させて、気体導管を介して正圧または負圧を印加するステップと、正圧または負圧の印加を介してカセットの膜の動きを制御するステップとを含む方法、を提供する。
【0080】
本発明の別の態様は、少なくとも第1のポートおよび第2のポートを含む複数のポートと、少なくとも第1の管および第2の管を含む複数の管とを備え、第1のポートは第1のインジケータを含み、第1の管は対応する第1のインジケータを含み、第2のポートは第2のインジケータを含み、第2の管は対応する第2のインジケータを含む医療装置であって、使用者が第1の管を第1のポートに接続するように誘導され、第2の管を第2のポートに接続するように誘導されるように、第1および第2のインジケータならびに対応する第1および第2のインジケータが選択される、医療装置に関する。
【0081】
実施形態によれば、前記第1および第2のインジケータおよび対応する第1および対応する第2のインジケータは視覚的インジケータである。視覚的インジケータは、使用者が、第1の色の管を第1の色のポートに接続し、第2の色の管を第2の色のポートに接続するように誘導する色分け表示を含んでもよい。
【0082】
好ましい実施形態によれば、前記医療装置は、複数のインジケータおよび複数の対応するインジケータを含む。各管は、好ましくは少なくとも1つのポートに対応する。
【0083】
任意で、各インジケータは、ライトの形態で提供される。前記第1のインジケータは第1のライトであってもよく、前記対応する第1のインジケータは対応する第1のライトである。前記第2のインジケータは、第2のライトであってもよく、前記対応する第2のインジケータは、対応する第2のライトである。
【0084】
実施形態によれば、前記医療装置は透析装置である。前記医療装置は、自動腹膜透析装置であってもよい。前記複数のポートは、好ましくは、カセットの一部であり、カセットは、流体を受容するように適合された内部空洞を含むことができる。前記第1のインジケータおよび第2のインジケータは、カセット上に配置されてもよい。任意で、前記医療装置は、カセットを受け入れるように適合されたハウジングを含む。前記第1および第2のインジケータは、カセットがハウジングに受容されたときに、関連する第1および第2のポートの位置に隣接して、医療装置のハウジング内に配置されてもよい。
【0085】
実施形態によれば、前記第1の管は、流体を患者に注入または患者から排出するように適合されている。前記第2の管は、排液をドレインまたはレセプタクルに送出するように適合されていてもよい。
【0086】
実施形態によれば、前記医療装置は、少なくとも1つの第3のポートと、前記少なくとも1つの第3のポートを介して容器から医療装置に流体を送出するように適合された少なくとも1つの第3の管とを備える。各第3のポートは、好ましくは、第3のインジケータを含み、各第3の管は、対応する第3のインジケータを含む。
【0087】
上記の態様または実施形態のいずれかの特徴または本明細書に記載の特徴は、その他に記載の態様および実施形態のいずれかと組み合わせて使用できることは理解されよう。
【0088】
本発明は、添付の図面に示すように、好ましい実施形態を参照することでよりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0089】
図1】自動腹膜透析(ADP)サイクラの斜視図である。
図2】カセットの底面図である。
図3】自動腹膜透析サイクラ内のカセットの部分断面図である。
図4】自動腹膜透析サイクラで使用するように適合された空気圧回路を示す図である。
図5】使用中の自動腹膜透析 (ADP) 装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0090】
本発明の好ましい実施形態は、図5に示す自動腹膜透析(APD)装置10に示されている。APD装置10は、図1に示すように、APD工程を制御する装置であるサイクラ20を備える。サイクラ20は、コントローラを内蔵するハウジング21を有する。サイクラ20は、サイクラ20の使用者がサイクラをオンまたはオフにするために作動可能なスイッチ22を含む。サイクラ20はさらに、使用者がAPD装置10の制御および使用に関する情報およびデータを見ることができる表示画面23を備える。表示画面23は、使用者がコマンドを入力するために使用できるタッチセンシティブ画面を備えてもよい。あるいは、マウス、キーボードまたはその他の入力デバイスなど、別個の入力デバイスを使用して、コマンドの入力や、装置の制御をすることもできる。サイクラ20は、装置10の使用状況の遠隔での監視や、サイクラ20と遠隔地との間の視覚的な情報伝達に使用できる前面カメラ24を備える。
【0091】
サイクラ20は、カセット40を挿入できるスロット25を含む。カセット40がスロット25に挿入されると、図5に示すように、複数の管がスロット25から延びる。
【0092】
図1に示すサイクラ20は、フロントプレート26を備える。フロントプレート26は、ヒンジ27によってサイクラハウジング21に取り付けられている。使用中、サイクラ20が平らな作業面上に置かれると、フロントプレート26は使用位置まで下向きに展開される。フロントプレート26は、サイクラ20が使用されていないとき、ハウジングに向かって上向きに折り畳むことができる。フロントプレート26が上向きに折り畳まれると、カセット用スロット25および/またはスイッチ22はおおい隠され、装置の望ましくない使用を防ぐことができる。実施形態(図示せず)では、例えば、サイクラ20の使用中にフロントプレート26が折り畳まれてしまったり、サイクラ20の輸送中にフロントプレートが展開されてしまったりするのを防止するために、フロントプレート26を使用位置または折り畳み位置にロックすることができる。本発明の他の実施形態は、図1および図5に示すサイクラ20とは異なる配置を含むことができ、フロントプレート26を含んでいても含んでいなくてもよい。
【0093】
サイクラ20は、ハウジング21の一方の側から延びる回転アーム28をさらに備える。回転アーム28は、使用者が作動可能なハンドル29を備える。回転アーム28は、ハンドル29を介したアーム28の回転により、クランプブロック30が、図3に示すように、対向ブロック31に接近または離反して移動するように構成される。クランプブロック30および対向ブロック31は、ハウジング21の内側に配置され、カセット用スロット25と少なくとも部分的に位置合わせされている。カセット用スロット25とクランプブロック30および対向ブロック31は、カセット40(図3および4を参照)がスロット25内に、かつクランプブロック30と対向ブロック31との間に挿入されるように構成される。カセット40がブロック30と31の間にあるとき、第1の方向にハンドル29を作動させると、クランプブロック30が対抗するブロック31に向かって移動し、クランプブロック30が対向ブロック31に対してカセット40を所望の位置に保持する最終位置まで到達する。続いてハンドル29を第2の方向に作動させると、クランプブロック30が対向ブロック31から離れるように移動し、カセット40をその位置から取り外すことができる。いくつかの実施形態(図示せず)では、サイクラ20は、カセット40がサイクラのハウジング21内のカセット用スロット25に挿入されたときに、確実に正しい位置合わせができるように内部ガイドを含んでもよい。
【0094】
カセット40の実施形態を図3に示す。カセット40は本体41を含む。好ましくは、カセット本体41は、ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンのような少なくとも部分的に硬質のプラスチック材料、またはこれらの材料もしくはその組み合わせを含む材料で形成される。カセット本体41は、周辺フランジ領域42および凸面43を備える。凸面43は、部分的に半球形に見える場合がある。凸面43は、周辺フランジ領域42から外向きに延在して、内部空洞44を画定する。周辺フランジ領域42上の内部空洞44を取り囲むようにリップ46が設けられている。膜45は、内部空洞44を覆うように延在する。膜45はリップ46に固定されており、内部空洞44を覆う気密シールを形成する。
【0095】
カセット40は、内部空洞44からカセット40の第1の端部48に向かって延びる4つの導管47をさらに備える。導管47は、第1の端部48でフランジ領域42の縁部49を超えて延びる。
【0096】
各導管47は、ゲート50を含む。各ゲート50は、フランジ領域42に開口部51を含み、各開口部51は、リップ53によってフランジ領域に接している。膜52は、各開口部51上に延在する。膜52は、リップ53に固定されて、開口部51を覆うシールを形成する。
【0097】
図3に示す実施形態では、空洞の膜45および各ゲートの膜52は、連続したシート状の材料から形成される。材料はフランジ領域の表面とリップに接着されている。例えば、接着は、熱接合工程によって行うことができる。膜の材料は、その目的に合った任意の薄い可撓性材料とすることができる。例えば、膜の材料は、プラスチック材料であってもよいし、ゴムもしくはシリコーン材料であってもよい。好ましくは、膜の材料は、膜が破損したり裂けたりすることなく、所定の力を加えられるように選択される。他の実施形態によれば、空洞膜45およびゲート膜は、異なる材料で形成することもできる。膜は、気密性を高める目的で、適切な可撓性のある材料で形成される。
【0098】
導管47はそれぞれ、ポート55を含む。ポート55は、フランジ領域42の縁部49を超えて延びる導管47の部分を含む。ポート55は、導管47の第1の端部48に配置されている。ポート55は、図5に示す、サイクラのハウジング21のスロット25から延びている管のような管にカセット40を接続するために使用される。
【0099】
添付図に示す実施形態では、カセット40は4つのポート55を含む。1つのポート55は、カセット40と患者との間に接続された管60に接続するように適合されている。別のポート55は、カセット40と排液容器68との間に接続された管61に接続するように適合されている。残りの2つのポート55は、カセットとそれぞれの溶液バッグ65、66との間に接続さた管62、63にそれぞれ接続するように適合されている。各溶液の管62、63は、それぞれの溶液バッグ65、66の対応するポートに接続するように構成されたアダプタを一方の端に含む。
【0100】
APD装置の好ましい実施形態によれば(図示せず)、正しい管60、61、62、63が、カセットの正しい対応するポート55A、55B、55C、55Dに確実に接続されるようにするための、誘導システムが設けられている。誘導システムは、好ましくは視覚誘導システムである。一実施形態では、正しい管60、61、62、63が、確実に対応するポート55A、55B、55C、55Dに接続されるように色分け表示システムが使用される。例えば、ある色を患者に接続される管60に割り当て、違う色を排液容器68に接続される管61に割り当て、また別の色を溶液バッグ66,67に接続される管62、63に割り当てることができる。色分けは、管60、61、62、63の端部に色を付けたり、ストライプ状に色を付けたりする形で行われる。所望の目的、すなわち、患者、排液容器68、あるいは溶液バッグ66、67に接続する目的に対応する色が、対応するポート55A、55B、55C、55Dにも提供される。実施形態では、カセットの対応するポート55A、55B、55C、55Dか、またはその近傍が着色される。特定の実施形態では、カセットのポートの色分けは、着色ライトによって提供される。例えば、LEDライトが、カセットの1つのポートかまたは各ポートに隣接して提供されてもよい。カセットが図3に示すような実質的に透明または半透明の材料で形成されている場合、着色ライトはポート55を透過して光ることができる。実施形態によれば、着色ライトは、サイクラのハウジング21のスロット25に隣接する位置、すなわち、カセット40がサイクラ20に挿入される際にポート55が配置される位置、に設けることができる。より広い意味では、ポート55A、55B、55C、55Dおよびそれらの対応する管60、61、62、63は、その所望の目的のために、正しい管を正しいポートに確実に接続させるためのインジケータを備えるか、またはインジケータに関連付けられる。
【0101】
図4にAPD装置で使用される空気圧制御システムの概略配置図を示す。空気圧システムは、ポンプ70を使用して、正または負の空気圧の流れを制御する。ポンプ70は、好ましくは、正圧および負圧の両方を生成することができるツインヘッドポンプまたはダブルヘッドポンプである。本発明の特定の態様では、他の種類のポンプも、本明細書に記載されている他の様々な特徴と組み合わせて使用することができる。しかしながら、ツインヘッドポンプは、構成部品の数および装置のサイズを減らすことができるので好ましい。ツインヘッドポンプには、上記の背景技術で説明した利点のように、単一のポンプや2つの別々のポンプの使用に勝る利点がある。
【0102】
空気圧システムは、ポンプ70からゲート50を介して膜52に、そしてカセットの空洞44を介して膜45に正圧および負圧を伝えるためのいくつかのラインを含む。システムをめぐって圧送される空気が清浄で使用に適していることを確実にするために、システムはフィルタ71およびシリカゲル72を含む。フィルタ71は、空気中の粒子状物質を除去するために使用され、粒子状物質の汚染物質によって引き起こされる可能性のある損傷から空気圧装置を保護することができる。シリカゲル72は、水分を吸収することによってシステム内の空気を乾燥させるために使用される。空気を乾燥させることで、システム要素の損傷を防ぐこともできる。シリカゲル72の代わりに他の方法で空気を乾燥させることも可能だが、シリカゲル72は他の方法と比較して比較的安価である。
【0103】
カセット40の内部空洞44内の流体を圧送するために、ポンプ70は、膜45に印加される正圧および負圧を生成する。図3および図4に示されるライン34は、ポンプ70からの正圧または負圧をカセット40の膜45に伝達する。負圧が印加されると、膜45はライン34の端に向かって引き寄せられる。本実施形態では、ライン34は、対向ブロック31を通っている。使用者によってハンドル29が作動されると、カセット40は、クランプブロック30と対向ブロック31との間の所定の位置に保持される。カセット40が所定の位置に保持されると、空洞のリップ46は、対向ブロック31のライン34の端部の周りにシールを形成する。このシールを通して、ライン34を介して印加される正圧または負圧は、膜45の動きに変換される。ライン34を通る負圧は、膜45をライン34に向かって、すなわち、対向ブロック31に向かって移動させる。ライン34を介して印加される正圧により、膜45はライン34の端部から押し出され、カセット40の内部空洞44内に押し込まれる。ライン34を介して正圧および負圧を印加するこの作用により、カセット40内にポンピング作用が生じる。したがって、1つまたは複数のカセットのポート55C、55Dが、管62、63を介するなどして流体源66、67に接続されている場合、ライン34に負圧が印加されると、ポンピング作用により流体がカセット40の内部空洞44に引き込まれる。続いて起こるライン34を介して印加される正圧は、膜45を内部空洞44に向かって内側に押し込み、その中の流体をポート55から排出させる。
【0104】
空気圧システムのポンプ70は、カセット40のゲート50の作動にも利用される。次に、本実施形態に係るゲート50の動作について説明する。カセット40は、対応するポート55A、55B、55C、55Dを通る流体の流れを制御する4つのゲート50A、50B、50C、50Dを備える。患者との間で流体を送受する患者用の管60は、ポート55Aに接続し、管60を通る流体の流れは、ゲート50Aによって決定される。排液容器68に流体を送る排液用の管61は、ポート55Bに接続され、管61を通る流体の流れは、ゲート50Bによって決定される。流体バッグ66、67から流体を送る溶液用の管62、63は、それぞれポート55C、55Dに接続し、管62、63を通る流体の流れは、ゲート50C、50Dによって決定される。
【0105】
ゲート50A、50B、50C、50Dのそれぞれの制御には、ポンプ70により供給される同じ正圧および負圧を使用することができる。ゲート50は、カセット40の内部空洞44への流体の出し入れに関して上記と同様の方法で機能する。各ゲート50A、50B、50C、50Dには、それぞれのライン35A、35B、35C、35Dによって正圧または負圧の空気が供給される。図3に示す実施形態では、ライン35は、ライン35の端部が対応するゲート50に隣接して配置された、対向ブロック31を通る。ライン35を介して負圧が印加されると、膜51または対応するゲート50は、ライン35の端部に向かって、すなわち、対向ブロック31のほうに引き寄せられる。ゲートのリップ53は、対向ブロックのライン35の端部の開口部の周りに気密シールを形成する。ライン35を介して正圧が印加されると、膜51は、ラインの端部からゲート50の内側に向かって押し出される。好ましくは、ゲート50の内部形状は、正圧が印加されたときに膜51がゲート50内に流体密封シールを形成できるように、膜51の内側への動きに対応するように選択される。従って、ライン35を介して適切な正圧が印加されると、ゲート50内にシールを形成する膜51によって対応するゲート50が閉鎖され、流体の通過が遮断される。各ゲート50A、50B、50C、50Dは、対応するライン35A、35B、35C、35Dを介して正または負の空気圧を印加することにより、互いに同様に機能する。
【0106】
ゲート50A、50B、50C、50Dの開閉をさらに制御するために、対応するライン35A、35B、35C、35Dはそれぞれ、バルブ79A、79B、79C、79Dを備える。バルブ79はそれぞれ、ポンプ70から供給される正または負の空気圧が、ライン35を介して対応するゲート膜51に送られることを許可または阻止する。バルブ79A、79B、79C、79Dを使用し、ポンプ70から正圧または負圧のいずれかを印加することにより、ゲート50A、50B、50C、50Dは、必要に応じて、いずれかのゲート50A、50B、50C、50Dを開位置または閉位置に保持し、その間の流体の通過を許可または阻止するように、個別に制御することができる。バルブ79A、79B、79C、79Dを制御することで、ゲート50A、50B、50C、50Dのそれぞれを独立して制御することができるようになる。
【0107】
サイクラ20内のコントローラは、ゲートの動作を制御すると同時に、カセット40の内部空洞44による流体の圧送を制御するために使用される。本明細書に記載の装置の1つの利点は、同一のポンプ70を使用して、ゲートの機能を制御し、カセットとの間の流体の圧送を制御する正圧および負圧を提供できることである。これにより、少ない部品で、よりシンプルな装置を実現できる。
【0108】
図4に示すように、ポンプ70からのラインはまた、正のレギュレータ73および負のレギュレータ74を含む。これらのレギュレータ73、74は、ラインを介して印加される正圧および負圧を確実に制御し、所望のレベルに維持するために使用される。レギュレータ73、74は、センサまたはレギュレータを含んでいてもよい。図4に示す空気圧システムには、圧力センサ75、76も含まれている。レギュレータ73、74および圧力センサ75、76はすべて、サイクラ20のコントローラによって監視および制御されてもよい。
【0109】
本明細書の空気圧システムの説明では、空気圧の印加または流れついて言及しているが、空気以外の気体を使用するシステムを使用しても、同様の効果を達成できることは理解されよう。ポンプ70によって供給される負圧は、真空圧とも呼ばれる。また、正圧の印加は特定の動作に使用され、負圧の印加は一般的にその逆の機能を果たすことにも留意されたい。本発明の範囲内で、正圧および負圧によって行われる1つ以上の動作を、カセットの内部配置の変更やカセットの膜の配置の変更により切り替えることができる。本明細書に記載され、添付の図に示される特定の実施形態は、単に好ましい実施形態であり、結果として生じる請求項の範囲は、これらの厳密に記載された実施形態に限定されるべきではない。
【0110】
図3に示すように、サイクラ20は、内部ヒータ32を含む。ヒータ32は、カセット40に隣接して、特に、カセット40の内部空洞44に隣接して配置される。このように、ヒータ32による熱の印加は、カセット40の内部空洞44内にある任意の流体を直接加熱するために使用することができる。図3に示す実施形態では、ヒータ32は対向プレート31の表面またはその近傍に配置される。ヒータ32は、円盤状または扁平な円筒状のプレートである。
【0111】
空気圧のライン34は、ヒータプレート32を貫通している。このように、ライン34を介して負圧が印加されると、膜45がヒータプレート32に向かって引き寄せられ、その結果、カセット40の内部空洞44内の流体がより効率的に加熱されることになる。
【0112】
ヒータは、少なくとも一部がセラミック材料からなることが好ましい。例えば、ヒータプレートは、セラミックまたはセラミック酸化物を含んでもよい。追加的または代替的に、ヒータは、金属酸化物などの金属を含んでもよい。ヒータはまた、セラミック材料で被覆された金属材料を含んでもよい。ヒータは、約1μmから100μmの範囲の赤外線を放射するような材料で形成されてもよい。赤外線放射は、カセットの内部空洞内の流体を加熱させる。赤外線加熱が唯一の熱源である場合もある。あるいは、赤外線放射と導電性ヒータなどの他のタイプのヒータと組み合わせて流体を加熱してもよい。複数の熱源を使用すると、単一の熱源を使用する場合と比較して、加熱効率が向上し、流体の加熱時間が短縮される場合もある。サイクラ20のコントローラを使用して、最適化されたシーケンスが達成できるように、カセット40内の加熱時間および圧送およびゲート動作のシーケンスを調整することができる。
【0113】
図3に示すように、ヒータプレート32は、カセットの空洞44内の流体に適用される赤外線加熱の強度を高めるように適合されたセラミック材32aで被覆されている。カセット40の内部空洞44内の流体の加熱により、加熱と圧送作用を、順番にまたは同時に、同じ場所で行うことができるため、装置の効率を改善できる。この構成により、部品が削減され、それに伴うコストも削減されるため、装置の設計がより簡素化できる。透析液などの流体の所望の温度は、流体が内部空洞44内に留まる時間を適切に選択することで達成できる。例えば、流体を、2秒、3秒、4秒、5秒、または任意の所望の時間保持することができる。流体は所望の温度に加熱されると、選択されたゲート50Aを介してカセット40から患者に向けて圧送される。
【0114】
上記のポンピング作用およびゲートの作動は、ポンプ70を介して行われる。したがって、図5に示すAPD装置では、バッグ66、67のいずれかに保持された溶液または透析液を、カセット40の内部空洞44に圧送で出し入れすることができる。具体的には、ポンプ70が負圧を誘発して、一方のバッグ66または67の溶液をカセット40の内部空洞44に引き込ませると、適切なゲートが選択される、つまり、使用されるバッグが66か67かに応じて、対応するゲート50Cまたは50Dが開かれる。次に、溶液は、カセット内でヒータ32により加熱される。所望の温度に加熱されると、ポンプ70は正圧を生成し、管60を介して溶液をカセットから患者に向けて押し出す。この場合は、ゲート50Aが開かれ、溶液の患者への移送が可能となる。所望の量の溶液が送り込まれるまで、溶液のカセット40への吸引および溶液の患者への圧送というサイクルが数回繰り返される。
【0115】
管60を介してして患者に送られる溶液の量を測定するために、超音波センサ80が設けられる。超音波センサは、流体の流量を検出する小型超音波センサであってもよい。超音波センサ80は、患者用の管60に隣接して、またはその周りに配置される。図5に示すように、管60は、超音波センサ80の中心を通って所定の位置に保持されてもよい。クランプ(図示せず)を設けて、管60をセンサ80に対して正しい位置に保つことができる。クランプは、超音波センサ80のハウジングの一部であってもよい。
【0116】
超音波センサ80は、放射器81から音響波または音波を発することで機能する。その後、音波は、超音波センサ80の検出器82によって検出される。放射および検出される音波は、ウルトラソニックウェーブとも呼ばれる超音波である。超音波を発信する放射器は、圧電素子を含んでいてもよい。同様に、超音波を検出する検出器も、圧電素子を含んでいてもよい。図5に示す実施形態では、管60が超音波センサ80を通る所定の位置にあるとき、センサ80の放射器81は管60の一方の側に配置され、検出器82は管のもう一方の側に配置される。他の可能な実施形態によれば、放射器および検出器は管の同じ側に配置されてもよく、その場合、放射された音波は、管の反対側に反射されるかまたは反対側に配置されたプレートに反射され、検出器に向けて戻される。放射器81から放射された音波は、検出器82により検出されるまで、管60をまっすぐに透過する。検出器82によって音波の特性が検出され、放射と検出との間の周波数、方向、または時間などの特性の違いを把握することができる。超音波センサ80および関連する制御または検出要素は、管の特性、例えば、壁厚、透明度、管の材質、および内径や外径などを考慮して調整することができる。超音波センサ80はまた、管を流れる物質の粘度および種類などの特性を考慮してもよい。
【0117】
超音波センサ80は、患者用の管60の外部に配置されている。したがって、超音波センサ80は、管60を通る流体の流れに影響を与えない。また、管60の外側にセンサを配置することで、センサのハウジングによる流体の汚染も確実に防止することができる。
【0118】
溶液または透析液などの流体が患者用の管60を介して患者に向けて流れるとき、超音波センサ80は流体の流量を検出する。累積流量すなわち管60を通過した流体の総量は、センサ80によって測定された流量測定値に基づいて計算される。サイクラ20は、超音波センサによって測定された所望の量の流体が管60を通過すると、それ以上の流体を患者に向けて圧送するのをサイクラが停止できるようにプログラムできる。停止させる動作は、カセット40の圧送の停止とゲート50Aの閉鎖とを組み合わせて達成できる。
【0119】
所望量の流体が患者に供給されると、滞留期間に移行する。滞留期間中、患者の腹腔内の物質または透析液は排液と交換される(拡散工程)。
【0120】
滞留期間が終了すると、サイクラ20は、患者からの排液の排出を開始するように動作する。患者から排液を排出する工程は、患者に溶液を送るために使用する工程と同様である。ポンプ70は、ゲート50Aが開位置にあるライン34を介して膜45に負圧を印加し、患者からの排液が、カセットの内部空洞44に引き込まれるようにする。内部空洞44内の流体(排液)の加熱は、サイクルのこの部分では必要とされない。内部空洞44が排液で満たされると、ポンプ70は、ライン34を介して正圧を導入して、排液がゲート50Bおよびポート55Bを介して管61を通過し、排液容器68内に入るように送りだす。患者から所望量の排液が排出されるまで、負圧および正圧の導入と、カセット40との間の排液の出し入れのサイクルが繰り返される。
【0121】
超音波センサ80は、患者用の管60を介して患者から排出された排液の量を検出するために利用することができる。管60を通過する排液の流量を検出する方法は、患者に送られる流体の量を検出する方法と同様である。放射器81は適切な音波を放射し、検出器82は、排液の流量を示す生成された信号を有する音波を検出する。必要に応じて、放射器81は、人間の耳の検出可能範囲を超える、少なくとも20kHzの音波を放射する。累積流量値は、患者から排出された排液の総量に変換することができる。流量値から排液の所望総量が算出されると、サイクラ60は排出工程を停止する。
【0122】
超音波センサは、20kHzを超える周波数範囲の音波を放射する。この範囲は人間の耳で検出できる範囲を超えているため、音波が装置を使用している患者に不快感を与えることはない。超音波センサは、1MHzを超える音波を放射および検出する場合もある。必要に応じて、超音波センサは20MHzを超える音波を放射および検出できる。超音波センサを使用することで、患者への輸液や排液の量を検出する従来の方法よりも正確であり得る。
【0123】
本装置は、ポンプ70のモータの毎分回転数を監視するRPMセンサを備えていてもよい。また、ポンプに供給される電圧を制御する電圧制御を設けてもよく、これを用いてポンプのモータの速度を調整することができる。ポンプの速度は、所望の正圧または負圧を実現するために所望のレベルに調整することができる。例えば、より大きな正圧が必要な場合(流体の流れを遮断するためにゲートを閉じる場合など)には、電圧制御により供給電圧を上げて、空気圧システムに印加される正圧を増加させることができる。生成される圧力は、好ましくは、サイクラ装置の使用要件や使用環境に適合させるために制御可能である。一例として、海抜が高い場所では、周囲の圧力が低くなるため、ポンプに必要な圧力はそれに応じて調整される。好ましい実施形態によれば、サイクラは、センサを利用し、ユーザ入力を必要とせずに使用要件を追跡してポンプ70に供給される電圧を自己調整する。
【0124】
上述したように、サイクラ20は、好ましくは、サイクラ20およびその周辺構成要素の使用状況を制御および追跡する内部コントローラまたはコンピュータを有する。実施形態によれば、サイクラ20は、モデムまたは同様のデバイスを介して通信する、モバイル、セルラー、Wi-Fi、ブロードバンド、または他のインターネット接続などの通信リンクを含む。デバイスの使用状況の追跡は、サイクラ20内の自己診断工程で使用できる。通信リンクは、技術者または他者がサイクラ20と遠隔通信するのに使用できる。リモートリンクは、サイクラが正常に機能していること、すなわち、センサ、ポンプ、空気圧ライン、ヒータなどが機能していることを判定するための自己診断工程を指示することができる。あるいは、サイクラのコントローラまたはコンピュータが自動的に機能を追跡し、問題が発生した場合にはリモートメッセージを送信することも可能である。問題とは、部品の交換が必要であるとか、まもなく交換が必要になるなどであるが、部品の故障などのより重大な問題は、遠隔地の技術者または専門家に自動的かつ迅速に伝えることができる。サイクラ装置の各部品の寿命は、既知の値や使用状況および使用時間の計算に基づいて算出することができる。サイクラ20の動作時に発生する音も検出できる。さらに、装置内の管及びラインを監視して漏れを見つけ、適切な警告を発することができる。ステータスレポートをリモートセンターに送信して、メンテナンス要件、部品交換スケジュール、または特定された問題を通知することができ、技術者はそれに応じてサイクラの保守に適した時間を登録できる。サイクラ20は、ほとんどの場合、患者または装置の使用者の自宅内に設置されるため、技術者への事前の警告が望ましい。
【0125】
本発明は、医療装置および当該装置を制御する方法に関する。本明細書に記載される好ましい実施形態は、自動腹膜透析装置および関連する方法およびシステムに関する。しかしながら、本発明の様々な態様は、本明細書に記載の好ましい実施形態を超えて、装置および方法に使用するためにより広く適用され得ることは、当業者には明らかであろう。
【符号の説明】
【0126】
10 自動腹膜透析装置
20 サイクラ
21 サイクラのハウジング
22 スイッチ
23 表示画面
24 カメラ
25 スロット
26 フロントプレート
27 ヒンジ
28 回転アーム
29 ハンドル
30 クランプブロック
31 対向ブロック
32 ヒータプレート
32a セラミックコーティング材
33 ヒータ開口部
34 空洞用ライン
35 ゲート用ライン
40 カセット
41 カセット本体
42 フランジ領域
43 凸面
44 内部空洞
45 空洞の膜
46 空洞のリップ
47 導管
48 第1の端部
49 フランジ領域の縁部
50 ゲート
51 開口部
52 ゲートの膜
53 ゲートのリップ
55 ポート
60 患者用管
61 排液用管
62 第1の溶液用管
63 第2の溶液用管
64 第1のアダプタ
65 第2のアダプタ
66 第1の溶液バッグ
67 第2の溶液バッグ
68 排液容器
70 ポンプ
71 空気フィルタ
72 シリカゲル
73 正のレギュレータ
74 負のレギュレータ
75 第1の圧力センサ
76 第2の圧力センサ
77 正のバルブ
78 負のバルブ
79 ゲート用バルブ
80 超音波センサ
81 放射器
82 検出器
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】