(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-06
(54)【発明の名称】二次電池及びその上部カバー部品
(51)【国際特許分類】
H01M 50/15 20210101AFI20220530BHJP
H01M 50/133 20210101ALI20220530BHJP
H01M 50/176 20210101ALI20220530BHJP
H01M 50/188 20210101ALI20220530BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20220530BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20220530BHJP
H01M 50/593 20210101ALI20220530BHJP
H01M 50/557 20210101ALI20220530BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20220530BHJP
【FI】
H01M50/15
H01M50/133
H01M50/176
H01M50/188
H01M50/184 A
H01M50/586
H01M50/593
H01M50/557
H01M50/531
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555807
(86)(22)【出願日】2020-04-07
(85)【翻訳文提出日】2021-09-15
(86)【国際出願番号】 CN2020083505
(87)【国際公開番号】W WO2020207382
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】201910280648.1
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521406710
【氏名又は名称】コンテンポラリー アンペレックス テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【氏名又は名称】川内 英主
(74)【代理人】
【識別番号】100202119
【氏名又は名称】岩附 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】リアン,チェンドゥ
(72)【発明者】
【氏名】ウ,カイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,バイソン
【テーマコード(参考)】
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA13
5H011BB03
5H011EE04
5H011FF02
5H011JJ12
5H011KK01
5H011KK03
5H043AA04
5H043AA13
5H043BA19
5H043CA05
5H043DA09
5H043EA06
5H043EA32
5H043EA35
5H043GA22
5H043GA24
5H043GA26
5H043HA08D
5H043HA08E
5H043JA01E
5H043JA09E
5H043JA13D
5H043JA21E
5H043LA02E
5H043LA22E
5H043LA23E
(57)【要約】
二次電池及びその上部カバー部品を提供する。上部カバー部品は、電極導出孔を有する上部カバー板と、電極導出孔内に延びる第2の封止部及び第2の絶縁部とを含み、第2の封止部及び第2の絶縁部は、電極導出孔の径方向において互いに少なくとも部分的にずれて配置されていると共に、高さ方向において少なくとも部分的に重なっている。二次電池は、上部カバー部品を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池(100)の上部カバー部品(10)であって、
0.01mm乃至10cmの厚さを有すると共に、電極導出孔(11)を有する上部カバー板(1)と、
互いに接続された第1の絶縁部(21)及び第2の絶縁部(22)を有する下部絶縁部材(2)であって、該第1の絶縁部(21)は、前記上部カバー板(1)の下方に位置し、該第2の絶縁部(22)は、該第1の絶縁部(21)から上方に延びると共に、前記電極導出孔(11)内に少なくとも部分的に位置する、下部絶縁部材(2)と、
互いに接続された第1の封止部(31)及び第2の封止部(32)を有する封止部材(3)であって、該第1の封止部(31)は、前記上部カバー板(1)の上面上に位置し、該第2の封止部(32)は、該第1の封止部(31)から下方に延びると共に、前記電極導出孔(11)内に少なくとも部分的に位置し、該第2の封止部(32)及び前記第2の絶縁部(22)は、前記電極導出孔(11)の径方向において互いに少なくとも部分的にずれて配置されていると共に、高さ方向において少なくとも部分的に重なっている、封止部材(3)と、
を備えることを特徴とする上部カバー部品(10)。
【請求項2】
前記第2の封止部(32)の少なくとも一部は、前記第2の絶縁部(22)と前記電極導出孔(11)の内壁との間に位置することを特徴とする請求項1に記載の上部カバー部品(10)。
【請求項3】
前記第2の絶縁部(22)は、被覆部(22a)を含み、該被覆部(22a)の前記第2の封止部(32)に近い表面は、前記第2の封止部(32)の前記第2の絶縁部(22)に近い表面と略平行であり、該被覆部(22a)の前記第2の封止部(32)に近い該表面は、前記第2の封止部(32)の前記第2の絶縁部(22)に近い該表面の少なくとも一部を覆っていることを特徴とする請求項1又は2に記載の上部カバー部品(10)。
【請求項4】
前記第2の絶縁部(22)の上端は、前記上部カバー板(1)の前記上面の前記第1の封止部(31)に接する一部よりも高いか、又は前記第2の絶縁部(22)の前記上端は、前記上部カバー板(1)の前記上面の前記第1の封止部(31)に接する前記一部と同一の面若しくはそれよりも低くなっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の上部カバー部品(10)。
【請求項5】
端子板(41)を備えており、該端子板(41)は、前記第1の封止部(31)の上方に位置すると共に、前記電極導出孔(11)を覆っており、前記第2の絶縁部(22)の上端と該端子板(41)の下面との間には間隔が有ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の上部カバー部品(10)。
【請求項6】
前記第2の封止部(32)の下部は、前記下部絶縁部材(2)に封止嵌合していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の上部カバー部品(10)。
【請求項7】
前記第2の封止部(32)の下部は、前記下部絶縁部材(2)に干渉嵌合していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の上部カバー部品(10)。
【請求項8】
前記下部絶縁部材(2)は、封止嵌合部(23)を更に含み、該封止嵌合部(23)は、前記第1の絶縁部(21)の上面及び前記第2の絶縁部(22)の上面の少なくとも一方から突出しているか、又は前記第1の絶縁部(21)の前記上面及び前記第2の絶縁部(22)の前記上面の少なくとも一方から下方に押し下げられており、前記第2の封止部(32)の下部は、該封止嵌合部(23)に封止嵌合していることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の上部カバー部品(10)。
【請求項9】
前記封止嵌合部(23)は、前記第1の絶縁部(21)と前記第2の絶縁部(22)との接合部に配置されているか、又は前記封止嵌合部(23)は、前記第2の絶縁部(22)の上端に配置されていることを特徴とする請求項8に記載の上部カバー部品(10)。
【請求項10】
前記封止嵌合部(23)は、前記第1の絶縁部(21)の前記上面及び前記第2の絶縁部(22)の前記上面の少なくとも一方から突出するボスを含み、該ボスの長手方向断面は、三角形、扇形、台形又は矩形であることを特徴とする請求項8又は9に記載の上部カバー部品(10)。
【請求項11】
前記封止嵌合部(23)の前記第2の封止部(32)に接する表面は、底部から頂部への方向に沿って前記電極導出孔(11)の中心軸に近い方向に向かって傾斜していることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の上部カバー部品(10)。
【請求項12】
前記封止嵌合部(23)の前記第2の封止部(32)に接する前記表面と前記第1の絶縁部(21)の前記上面との間の夾角は、10°乃至85°の範囲にあることを特徴とする請求項11に記載の上部カバー部品(10)。
【請求項13】
前記封止嵌合部(23)は、前記第2の絶縁部(22)の前記上端に配置されると共に、前記第2の絶縁部(22)の前記上面から下方に押し下げられていることを特徴とする請求項9に記載の上部カバー部品(10)。
【請求項14】
前記封止部材(3)は、第3の封止部(33)を更に含み、該第3の封止部(33)が前記上部カバー板(1)の下面と前記第1の絶縁部(21)の上面との間に位置しているか、又は前記上部カバー板(1)の前記下面に溝(13)が形成されていると共に、前記第1の絶縁部(21)の一部が該溝(13)内に位置していることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の上部カバー部品(10)。
【請求項15】
前記下部絶縁部材(2)は、前記第1の絶縁部(21)を支持する支持部(24)を更に含み、該支持部(24)は、前記第1の絶縁部(21)の下面に配置されると共に、前記第1の絶縁部(21)の前記下面から下方に突出するか、又は該支持部(24)は、前記二次電池(100)の接続板(20)のタブ接続部(201)の上面に配置されると共に、前記タブ接続部(201)の前記上面から上方に延びていることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の上部カバー部品(10)。
【請求項16】
前記支持部(24)の高さは、前記第1の絶縁部(21)の前記下面と前記タブ接続部(201)の前記上面との間の高さ差以下であることを特徴とする請求項15に記載の上部カバー部品(10)。
【請求項17】
前記支持部(24)の少なくとも一部は、前記電極導出孔(11)の前記径方向に沿って前記第2の封止部(32)に重なっていることを特徴とする請求項15又は16に記載の上部カバー部品(10)。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれか一項に記載の上部カバー部品(10)を備えることを特徴とする二次電池(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる「二次電池及びその上部カバー部品」と題され、2019年4月9日に出願された中国出願第201910280648.1号に基づいており、その優先権を主張する。
【0002】
本開示は、二次電池の技術分野に関し、特に二次電池及びその上部カバー部品に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池等の二次電池は、高エネルギー密度、高電力密度、高サイクル数及び長貯蔵時間等の利点から、電気自動車に広く使用されている。実際に二次電池を使用する際に、電池セルは火災や爆発等の安全上のリスクを有することが知られている。
【発明の概要】
【0004】
本開示の第一の態様は、以下の構成要素を含む二次電池の上部カバー部品を提供する:
0.01mm乃至10cmの厚さを有すると共に、電極導出孔を有する上部カバー板;
互いに接続された第1の絶縁部と第2の絶縁部とを有する下部絶縁部材であって、第1の絶縁部が上部カバー板の下方に位置し、第2の絶縁部が第1の絶縁部から上方に延びると共に、少なくとも部分的に電極導出孔内に位置する、下部絶縁部材;
互いに接続された第1の封止部と第2の封止部とを有する封止部材であって、第1の封止部が上部カバー板の上面に位置し、第2の封止部が第1の封止部から下方に延びると共に、少なくとも部分的に電極導出孔内に位置し、第2の封止部と第2の絶縁部とが電極導出孔の径方向において互いに少なくとも部分的にずれて配置されると共に、高さ方向において少なくとも部分的に重なっている、封止部材。
【0005】
いくつかの実施形態では、第2の封止部の少なくとも一部は、第2の絶縁部と電極導出孔の内壁との間に配置される。
【0006】
いくつかの実施態様では、第2の絶縁部は被覆部を含み、第2の封止部に近い被覆部の表面は第2の絶縁部に近い第2の封止部の表面に実質的に平行であり、第2の封止部に近い被覆部の表面は、第2の絶縁部に近い第2の封止部の表面の少なくとも一部を覆っている。
【0007】
いくつかの実施形態では、第2の絶縁部の上端は、第1の封止部に接触する上部カバー板の上面の一部よりも高いか、第1の封止部に接触する上部カバー板の上面の一部と同一平面若しくはそれよりも低い。
【0008】
いくつかの実施形態では、上部カバー部品は端子板を更に含み、端子板は第1の封止部の上方に位置すると共に、電極導出孔を覆い、第2の絶縁部の上端と端子板の下面との間には間隔がある。
【0009】
いくつかの実施形態では、第2の封止部の下部は、下部絶縁部材と封止嵌合している。
【0010】
いくつかの実施形態では、第2の封止部の下部は、下部絶縁部材と干渉嵌合している。
【0011】
いくつかの実施形態では、下部絶縁部材は封止嵌合部を更に含み、封止嵌合部は第1の絶縁部の上面及び第2の絶縁部の上面の少なくとも一方から突出しているか、又は第1の絶縁部の上面及び第2の絶縁部の上面の少なくとも一方から下方に押し下げられており、第2の封止部の下部は封止嵌合部と封止嵌合している。
【0012】
いくつかの実施形態では、封止嵌合部は、第1の絶縁部と第2の絶縁部との接合部に配置されるか、又は第2の絶縁部の上端部に配置される。
【0013】
いくつかの実施態様では、封止嵌合部は第1の絶縁部の上面及び第2の絶縁部の上面の少なくとも一方から突出するボスを含み、ボスの長手方向断面は、三角形、扇形、台形又は長方形である。
【0014】
いくつかの実施形態では、第2の封止部と接触する封止嵌合部の表面は、底部から頂部への方向に沿って電極導出孔の中心軸に近い方向に向かって傾斜している。
【0015】
いくつかの実施態様では、第2の封止部と接触する封止嵌合部の表面と第1の絶縁部の上面との間の夾角は、10°乃至85°の範囲にある。
【0016】
いくつかの実施形態では、封止嵌合部は、第2の絶縁部の上端に配置されると共に、第2の絶縁部の上面から下方に押し下げられる。
【0017】
いくつかの実施形態では、封止部材は第3の封止部を更に含み、第3の封止部は上部カバー板の下面と第1の絶縁部の上面との間に配置される、又は上部カバー板の下面内に溝が形成され、当該溝内に第1の絶縁部の一部が位置する。
【0018】
いくつかの実施形態では、下部絶縁部材は第1の絶縁部を支持する支持部を更に含み、支持部は第1の絶縁部の下面に配置されると共に、第1の絶縁部の下面から下方に突出しているか、又は二次電池の接続板のタブ接続部の上面に配置されると共に、タブ接続部の上面から上方に延びている。
【0019】
いくつかの実施形態では、支持部の高さは、第1の絶縁部の下面とタブ接続部の上面との間の高さ差以下である。
【0020】
いくつかの実施形態では、支持部の少なくとも一部は、電極導出孔の径方向に沿って第2の封止部と重なる。
【0021】
本開示の第2の態様は、本開示の上部カバー部品を含む二次電池を更に提供する。
【0022】
封止部材が電極導出孔内に延びる第2の封止部を有すると共に、電極導出孔内に延びる第2の封止部と下部絶縁部材の第2の絶縁部とが電極導出孔の径方向において少なくとも部分的に互いにずれて配列され、且つ高さ方向において少なくとも部分的に重なっているため、沿面距離を有効に延長することができ、それにより高電圧に抗する際に二次電池において火災や爆発等を引き起こすリスクを低減することにつながる。
【0023】
本開示の他の特徴及び利点は、図面を参照した本開示の例示的な実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0024】
本開示の実施形態又は従来技術における技術的解決策をより明確に示すために、実施形態又は従来技術の説明において必要となる図面の簡単な説明を以下に示す。明らかに、以下の説明における図面は、単に本開示の実施形態の一部であり、それに基づいて、いかなる創造的な努力無しに当業者によって他の図面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本開示の一実施形態の二次電池の全体構造の模式図である。
【
図6】本開示の一実施形態の一部拡大模式図である。
【
図7】本開示の更なる一実施形態の一部拡大模式図を示している。
【
図8】本開示の更なる一実施形態の一部拡大模式図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示の実施形態における技術的解決策の明確かつ完全な説明を、本開示の実施形態における図面と組み合わせて以下に示す。明らかに、以下に説明する実施形態は、本開示の実施形態の全てではなく、単に一部である。少なくとも一つの例示的な実施形態の以下の説明は単なる例示であり、本開示及びその適用又は使用におけるいかなる制限としても全く用いられない。いかなる創造的な努力無しに本開示の実施形態に基づいて当業者によって得られる全ての他の実施形態は、本開示の保護範囲に入る。
【0027】
当業者に既知である技術、方法及び装置は、詳細に説明しないが、必要に応じて、本明細書の一部として考慮されるべきである。
【0028】
本開示の説明において、「前、後、上、下、左、右」、「横、縦、鉛直、水平」及び「頂部、底部」等の配向を示す用語によって示される配向又は位置関係は、図面に示される一般的な配向又は位置関係であると共に、本開示を説明し、説明を単純化するための単に便宜的なものであり、相反する図示がない限り、これらの配向を示す用語は、参照される装置又は要素が特定の配向を有するか、又は特定の配向で組み立て且つ動作されなければならないことを示したり、暗示したりするものでは無く、従って本開示の保護範囲を制限するものとして解釈することはできないことを理解されたい。また、配向を示す用語「内側、外側」は、部品自体の外形の内側、外側を指す。
【0029】
本開示の説明において、「第1の」、「第2の」等の用語は、部品及び構成要素を定義するように構成されており、対応する部品及び構成要素を区別するための単に便宜的なものであり、別段の指定がない限り、特別な意味を有するものでは無く、従って本開示の保護範囲を限定するものと解釈することはできないことを理解されたい。
【0030】
加えて、以下に説明する本開示の様々な実施形態に含まれる技術的特徴は、それらが互いに矛盾を構成しない限り、互いに組み合わせることができる。
【0031】
現在、車両システム全体の電圧は約300V乃至900Vであり、電池セルの異常時において内部回路が断線したりヒューズ(ヒューズ構造)が断線すると、電池セルは、システムの逆高電圧に抗するが、既存の二次電池では安全距離が十分ではないため、逆高電圧に抗する電池セルは、火災や爆発等の安全上のリスクを有している。
【0032】
二次電池では、上部カバー部品は、シェルの頂部開口部を覆うことでシェル内に電極部品及び電解液のための封止空間を設け、電極部品の電気エネルギーは、上部カバー部品の電極端子(端子板又は極柱)によって外部に伝導される。
【0033】
上部カバー部品の構造形態として、上部カバー部品は、上部カバー板、電極端子として機能する端子板、下部絶縁部材及び封止部材を備えている。上部カバー板には電極導出孔が形成されており、端子板は上部カバー板の上方に配置されると共に、電極導出孔を覆う。下部絶縁部材は、上部カバー板の下方に配置されると共に、二次電池の上部カバー板と接続板(接続板はタブと端子板とを電気的に接続するように構成されている)との間の絶縁、及び上部カバー板と電極部品との間の絶縁を実現するように構成されている。封止部材は、上部カバー板と端子板との間に封止のために配置される。
【0034】
本発明における製造過程において、本願発明者は、上記の上部カバー部品に関して、一般的には封止部材が電極導出孔の外側に位置するため、上部カバー板と端子板との間の沿面距離が相対的に短く、同時に封止部材の封止効果が乏しく、上部カバー板、端子板及び接続板の間に電気的クリアランスが生じやすく、更にはクリープ経路上の電解質がより多く、抵抗がより小さいことが、二次電池の高電圧放電(大火災、更には高電圧による爆発さえ生じる)を引き起こす重要な要因の一つであることを見い出した。沿面距離とは、固体絶縁材料の表面に沿った二つの導電性部品間の最短距離を指し、電気的クリアランスとは、空気中における二つの導電性部品間の最短距離を指す。沿面距離が長いほど、及び/又は電気的クリアランスが大きいほど、導体間の高電圧放電のリスクは低くなる。
【0035】
上記の事情を鑑みて、本開示は、上部カバー部品の構造を改良し、上部カバー部品の改良された構造に基づいて、沿面距離の延長、電気的クリアランスの増大及び沿面距離における抵抗の増大の効果の少なくとも一つを達成し、そして二次電池の高電圧放電のリスクを低減する目的を達成する。
【0036】
図1乃至
図8は、本開示のいくつかの実施形態を示している。
【0037】
図1乃至
図8を参照すると、本開示によって提供される二次電池100の上部カバー部品10は、以下を含む:
厚さ0.01mm乃至10cmを有すると共に、電極導出孔11を有する上部カバー板1;
互いに接続された第1の絶縁部21及び第2の絶縁部22を有する下部絶縁部材2であって、第1の絶縁部21は上部カバー板1の下方に位置し、第2の絶縁部22は第1の絶縁部21から上方に延び、第2の絶縁部22の少なくとも一部は電極導出孔11内に位置する、下部絶縁部材2;
互いに接続された第1の封止部31及び第2の封止部32を有する封止部材3であって、第1の封止部31は上部カバー板1の上面に位置し、第2の封止部32は第1の封止部31から下方に延び、第2の封止部32の少なくとも一部は電極導出孔11内に位置し、第2の封止部32及び第2の絶縁部22は電極導出孔11の径方向において少なくとも部分的にずれて配置されると共に、高さ方向において少なくとも部分的に重なっている、封止部材3。
【0038】
封止部材3が電極導出孔11内に延びる第2の封止部32を有し、電極導出孔11内に延びる第2の封止部32と下部絶縁部材2の第2の絶縁部22とが電極導出孔11の径方向において少なくとも部分的に互いにずれていると共に、高さ方向において少なくとも部分的に重なっているため、本開示は、上部カバー板1と電極端子との間の沿面距離を長くすることができ、これにより二次電池100の高電圧放電のリスクを低減することができる。
【0039】
一方、第2の封止部32及び第2の絶縁部22は電極導出孔11の径方向において互いに少なくとも部分的にずれて配置されているため、第2の封止部32及び第2の絶縁部22が電極導出孔11の径方向において互いにずれて配置されておらず、上下に整列して配置されている場合に比べて、上部カバー板1と接続板20との間の放電クリアランスを効果的にブロックすることができ、二次電池100の高電圧発火や爆発のリスクを低減することにつながる。電気的クリアランスのブロックとは、二つの導体間における元々の連続した環境媒体(空気、電解質又は他の液体媒体等)が分離され、それにより環境媒体がもはや連続的ではなくなり、二つの導体間の環境媒体がもはや破壊されなくなることを意味する。電気的クリアランスがブロックされると、電気的クリアランスは無限大に増加すると考えることができる。
【0040】
本開示において、第2の封止部32及び第2の絶縁部22が電極導出孔11の径方向において互いに少なくとも部分的にずれて配置されている際に、第2の封止部32は、第2の絶縁部22の電極導出孔11の中心軸に近い側に少なくとも部分的に位置することができるか、又は第2の絶縁部22と電極導出孔11の内壁との間に少なくとも部分的に位置することができる。
【0041】
第2の封止部32の少なくとも一部が第2の絶縁部22と電極導出孔11の内壁との間に位置している際には、第2の絶縁部22は、第2の封止部32に対してより良好な押出作用を与えることができる(すなわち、電極導出孔11の中心軸から電極導出孔11の内壁への方向に沿って作用力を付与する)。これに基づき、第2の封止部32を電極導出孔11の内壁により密接させて確実に取り付けることができるため、封止部材3の封止効果を向上させることができ、一方で、対応する位置における電解液の低減、抵抗の増大、電圧が一定である場合における電流の低減、そして高電圧放電のリスクの低減につながると共に、他方で、上部カバー板1と電極端子又は接続板との間の電気的クリアランスをより確実にブロックすることができると共に、空気による上部カバー板1と電極端子及び接続板の一方との間の直接導通のリスクを低減することにつながる。
【0042】
加えて、封止効果を向上させるために、本開示によって他の手段を講じることができる。
【0043】
他の手段の一つとして、第2の封止部32の下部と下部絶縁部材2とを互いに封止嵌合するように設定することができる。このように、下部絶縁部材2と第2の封止部32との封止嵌合によって、封止部材3の封止効果を向上させることができ、電気的クリアランスを増大させることができ、クリープ経路上の電解液を低減することができ、それにより高電圧放電現象の発生を抑制することができる。
【0044】
第2の封止部32は、第1の絶縁部21及び第2の絶縁部22の少なくとも一方と直接封止嵌合することができるが、より良好な封止嵌合効果を達成するために、下部絶縁部材2は、封止嵌合部23を更に含むことができ、封止嵌合部23は、第1の絶縁部21の上面及び第2の絶縁部22の上面の少なくとも一方から突出するか、又は第1の絶縁部21の上面及び第2の絶縁部22の上面の少なくとも一方から下方に押圧し、第2の封止部32の下部は、封止嵌合部23と封止嵌合することができる。第1の絶縁部21及び第2の絶縁部22の少なくとも一方の上に封止嵌合部23を配置することによって、上方に突出又は下方に押圧する封止嵌合部23が、第2の封止部32の下部に封止嵌合を形成し、第1の絶縁部21及び第2の絶縁部22の少なくとも一方が、第2の封止部32の下部に直接封止嵌合する場合に比べて、下部絶縁部材2は、第2の封止部32の下部により密接且つより確実な封止嵌合を形成することができ、そして高電圧放電等のリスクをより効果的に低減することができる。
【0045】
封止嵌合部23の構造形態として、封止嵌合部23は、第1の絶縁部21の上面及び第2の絶縁部22の上面の少なくとも一方から突出するボスを含むことができ、ボスの長手方向断面は、三角形、扇形、台形又は矩形とすることができる。ボスは、第1の絶縁部21の上面のみに位置することもでき、又は第1の絶縁部21と第2の絶縁部22との接合部に位置することもできる。
【0046】
また、封止嵌合部23の他の構造形態として、封止嵌合部23を第2の絶縁部22の頂端に配置し、第2の絶縁部22の上面から下方に押し下げることができる。
【0047】
なお、封止嵌合部23の具体的な配置位置は、特に限定されるものではなく、第1の絶縁部21のみに配置することもでき、第1の絶縁部21と第2の絶縁部22との接合部に配置することもでき、第2の絶縁部22のみに配置することもできる。
【0048】
本開示の封止嵌合部23の第2の封止部32と接触する表面は、底部から頂部への方向に沿って電極導出孔11の中心軸に近い方向に向かって傾斜するように設定することができる。これに基づき、封止嵌合部23は、第2の封止部32に上方への作用力を与えるだけでなく、電極導出孔11の中心軸から電極導出孔11の内壁への方向に沿って第2の封止部32に作用力を与えることができ、第2の封止部32を電極導出孔11の内壁の一方の側に近接するように案内するために第2の封止部32における案内役を果たすことができるため、より良好な封止効果を達成することができ、クリープ経路上の電気的クリアランス及び電解液をより十分に低減することができる。
【0049】
また、第2の封止部32の下部と下部絶縁部材2との間においてより強固な封止を確保するために、第2の封止部32の下部と下部絶縁部材2との間の封止嵌合を干渉嵌合、例えば第2の封止部32の下部が封止嵌合部23と干渉嵌合するように更に設定することができる。この場合、下部絶縁部材2と第2の封止部32の下部との間の接触がより緊密になるため、下部絶縁部材2が第2の封止部32の下部において一定の圧縮の役割(すなわち、上向きに圧力を印加する)を果たすことができ、下部絶縁部材2及び第2の封止部32は互いに圧縮封止され、従って電気的クリアランスをブロックすることができ、クリープ経路上の電解液をより効果的に低減することができ、そして高電圧放電現象のリスクをより効果的に低減することができる。
【0050】
別の他の手段として、下部絶縁部材2は、第1の絶縁部21を支持する支持部24を更に備えることができる。支持部24は、第1の絶縁部21の下面に配置されると共に、第1の絶縁部21の下面から下方に突出するか、又は接続板20のタブ接続部201の上面に配置されると共に、タブ接続部201の上面から上方に延びる。支持部24は、第1の絶縁部21を支持することができるため、下部絶縁部材2の脱落を効果的に防止することができ、それにより下部絶縁部材2と第2の封止部32との間のより緊密した接触を容易にすると共に、より確実な封止効果を達成することができる。
【0051】
次に、本開示のいくつかの実施形態の二次電池及びその上部カバーアセンブリを、
図1乃至
図8に示す種々の実施形態を参照して更に説明する。
【0052】
まず、
図1乃至
図5に示されている実施形態について説明する。
【0053】
図1及び
図2に示されているように、本実施形態では、二次電池100は、上部カバー部品10、接続板20、電極部品30及びシェル40等を備えている。
【0054】
図2から見ることができるように、シェル40は、内部に中空キャビティを有すると共に、電極部品30等を収容するための上部開口を有している。シェル40は、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケルめっき鋼等の金属材料で形成することができる。
【0055】
電極部品30は、二次電池100のコア部品であり、シェル40内の中空のキャビティ内に収容されると共に、第1の極片、第2の極片及び第1の極片と第2の極片との間に位置する絶縁片を積層又は巻き付けることによって形成される。第1の極片及び第2の極片の一方が正の電極片として用いられ、他方が負の電極片として用いられ、第1の極片と第2の極片との双方が、活物質で被覆された被覆部と、被覆部から延びると共に活物質で被覆されていないタブ301とを有する。電極部品30が生成する電気エネルギーは、タブ301を介して外部に伝導する。正の電極片に対応するタブ301を正の電極タブ(図中右側に位置する一つのタブ301)と称すると共に、負の電極片に対応するタブ301を負の電極タブ(図中左側に位置する一つのタブ301)と称することができる。また、
図4に示されているように、接続板20の正の電極タブに対応する部分にヒューズ(ヒューズ構造、一般にホール)が更に配置されており、当該ヒューズが設けられた接続板20の部分には、プラスチック部品302が更に被せられている。電流が大き過ぎる際にはヒューズが溶断することで回路を遮断することができ、プラスチック部品302はヒューズが溶断した後に再度包まれることを防止することができ、それにより安全保護機能を達成することができる。
【0056】
上部カバー部品10は、シェル40の上部開口を覆うことで、電極部品30をシェル40内に封止するようにシェル40内の中空キャビティを封止すると共に、電極部品30によって生成される電気エネルギーをシェル40の外部に伝導する。
図2に示されているように、本実施形態では、上部カバー部品10は、上部カバー板1、電極端子部品4、封止部材3、及び下部絶縁部材2を備えている。
【0057】
上部カバー板1は、シェル40の頂部開口を覆うと共に、電極端子部品4、封止部材3及び下部絶縁部材2等のための取り付け基部を提供する。
図2から見ることができるように、本実施形態における上部カバー板1は、薄板状であり、シェル40の頂部開口に適合する形状及び大きさを有しているため、上部カバー板1はシェル40の頂部開口を封止するようにシェル40の頂部開口に好適に接続することができる。上部カバー板1には貫通孔である電極導出孔11が設けられており、そのため電極端子部品4はタブ301に電気的に好適に接続することができ、電気エネルギーが内部から外部へ伝導する。電極導出孔11の数も、タブ301の数、すなわち正の電極タブ及び負の電極タブに対応して二つとなっている。
【0058】
電極端子部品4、封止部材3及び下部絶縁部材2は、全て上部カバー板1上に配置されており、二つのタブ301に対応して、電極端子部品4、封止部材3及び下部絶縁部材2の数も二つである。正の電極タブに対応する電極端子部品4、封止部材3及び下部絶縁部材2はグループを形成し、負の電極タブに対応する電極端子部品4、封止部材3及び下部絶縁部材2は別のグループを形成する。構造を単純化するために、二つのグループの構造は同一に設定される。従って以下では、一方のグループを主に説明する。もし二つのグループについて言及する必要がある場合には、区別しやすいように二つのグループにそれぞれ「正の」及び「負の」を追加して言及する。
【0059】
電極端子部品4は、上部カバー板1の上方に配置されると共に、タブ301に電気的に接続するように構成されている。電極端子部品4は、電極端子及び端子固定部材を備えており、電極端子は、タブ301に電気的に接続されると共に、端子固定部材を介して上部カバー板1に接続されている。
【0060】
具体的には、
図4及び
図5に示されているように、本実施形態では、電極端子は、シェル40内に延びる極柱構造ではなく、端子板41の構造形態を採用している。端子板41は、電極導出孔11を覆うと共に、接続板20を介してタブ301と電気的に接続されている。端子板41は、電極導出孔11を介してシェル40内に延びる極柱と比較して電極導出孔11の外側に位置するため、シェル40の内部空間を占有する必要が無く、従って二次電池100のエネルギー密度を効果的に向上させることができる。端子板41は、円形又は正方形のシート状とすることができ、若しくは薄板状の構造とすることもできる。正の電極タブに対応する端子板41を正の端子板と呼ぶと共に、負の電極タブに対応する端子板41を負の端子板と呼ぶ。
【0061】
本実施形態では、端子板41は、接続板20を介してタブ301に電気的に接続されている。接続板20は、タブ301を端子板41に電気的に接続することで電極部品30によって生成された電気エネルギーを端子板41に伝導するために電極部品30と上部カバー部品10との間に配置され、それにより端子板41が二次電池100の外部に電気エネルギーを伝導することを容易にする。
図2から見ることができるように、本実施形態では、接続板20の数は二つであり、一方の接続板20は、正の電極タブ及び正の端子板に電気的に接続され、他方の接続板20は、負の電極タブ及び負の端子板に電気的に接続されている。
【0062】
構造を簡単化するために、本実施形態では、二つの接続板20は同一の構造を採っている。
図4及び
図5に示されているように、本実施形態の接続板20は、タブ接続部201及び端子接続部202を備えており、タブ接続部201はタブ301に電気的に接続されており、端子接続部202は端子板41に電気的に接続されている。本開示における電気的接続は、例えば半田付けによって実現することができる。また、
図4及び
図5を組み合わせることによって見ることができるように、本実施形態では、タブ接続部201は、板状であると共に、上部カバー板1と略平行である。端子接続部202は、タブ接続部201に接続されており、タブ接続部201に対して上方に突出していると共に、電極導出孔11内に延在して端子板41に接触しており、そのため端子接続部202は、電極導出孔11の外側に位置する端子板41に簡便に溶接されて端子接続部202と端子板41との間の電気的接続を実現することができる。端子接続部202は、接続板20を打ち抜くことによって形成することができる円筒状の凸包構造とすることができる。
【0063】
封止部材3は、電解液等を封止するために上部カバー板1と端子板41との間に配置されており、電解液等の漏洩を防止して二次電池100の使用の信頼性を向上させる。
図5に示されているように、本実施形態では、封止部材3は、第1の封止部31及び第2の封止部32を備えている。第1の封止部31は、上部カバー板1の上面に配置されており、すなわち第1の封止部31は、上部カバー板1の上面と端子板41の下面との間に位置しており、そのため端子板41は第1の封止部31を上部カバー板1の上面に押し付けることができ、端子板41と上部カバー板1との間に封止線が形成される。第2の封止部32は、第1の封止部31に接続されていると共に、第1の封止部31から電極導出孔11内に下方に延びている。封止部材3は全体として環状構造を採ることができ、このとき、第1の封止部31及び第2の封止部32は双方とも互いに環状且つ同心状であり、第2の封止部32は第1の封止部31の下方に位置すると共に、第1の封止部31よりも小さい外径を有している。
【0064】
封止部材3の安定した配置を達成するために、
図5に示されているように、本実施形態では、第1の封止部31に接する上部カバー板1の上面に、上方に突出する突起12を配置しており、突起12が第1の封止部31によってクランプされることで、第1の封止部31の制限を達成し、そのため封止部材3が上部カバー板1の上面により安定して配置されると共に、電極導出孔11の径方向に変位が生じ難くなる。突起12は、打ち抜き加工によって形成することができ、この場合、上部カバー板1の下面上の突起12に対応する位置に溝13が形成され、溝13が上部カバー板1の下面から上方に押す。
【0065】
上記の封止部材3の構造は、既存の封止部材のものとは異なる。従来技術の封止部材も第1の封止部31を有しているが、第2の封止部32を有してはいない。本実施形態では、封止部材3に第2の封止部32を付加的に設けており、これにより封止部材3が上部カバー板1及び下部絶縁部材2に好適に整合することで、沿面距離を長くすると共に、封止効果を向上させることができるため、高電圧放電の問題を解決することができ、下部絶縁部材2と組み合わせて、より詳細に説明する。
【0066】
下部絶縁部材2は、上部カバー板1、電極部品30及び接続板20の間の絶縁を達成するように構成されていると共に、プラスチック等の絶縁材料から一般に作成される。
図2、
図4及び
図5に示されているように、本実施形態の下部絶縁部材2は、実質的に板状であると共に、第1の絶縁部21、第2の絶縁部22及び封止嵌合部23を備えている。第1の絶縁部21は、上部カバー板1の下方に位置し、第2の絶縁部22は、第1の絶縁部21に接続されていると共に、第1の絶縁部21から電極導出孔11内に上方に延び、封止嵌合部23は、第1の絶縁部21と第2の絶縁部22との接合部に配置されていると共に、第1の絶縁部21の上面から上方に突出するボス構造を有している。第2の絶縁部22は、第1の絶縁部21の上面に配置される中空円筒状の突起とすることができ、封止嵌合部23は、第2の絶縁部22の根部の周囲に配置される環状のボスとすることができる。
【0067】
図5に示されているように、本実施形態では、第2の絶縁部22は、第2の封止部32の右側に全体的に位置しており、第2の絶縁部22はより高い位置に上方に延びると共に、その上端は第1の封止部31に接触する上部カバー板1の上面の部分の上方に位置する。これに基づき、第2の絶縁部22及び第2の封止部32は、
図5における左右方向(すなわち、電極導出孔11の径方向)においてずれて配置されており、第2の封止部32は、第2の絶縁部22と電極導出孔11の内壁との間に全体的に位置し、第2の絶縁部22及び第2の封止部32は、鉛直方向において重なる。
【0068】
上記のような設定に基づき、上部カバー板1と端子板41との間の沿面距離は、第2の封止部32が無い状態に対して長くなる。封止部材3が第2の封止部32を有していない際には、上部カバー板1と端子板41との間の沿面距離は、第1の封止部31に接触する上部カバー板1の上面の部分と端子板41の下面との間の高さと略等しいだけである。本実施形態では、上部カバー板1と端子板41との間のクリープ経路は、溝13の直下の第1の絶縁部21の上面、封止嵌合部23の第2の封止部32に接触する表面及び第2の絶縁部22の電極導出孔11の中心軸に近い側の表面に沿って端子板41の下面まで延びており、沿面距離は、上部カバー板1の上面の第1の封止部31に接触する部分と端子板41の下面との間の高さ、すなわち、封止部材3が第2の封止部32を有さない場合の沿面距離よりも明らかに大きい。
【0069】
同時に、第2の絶縁部22及び第2の封止部32が上下に互いに整列するように配置されている(すなわち、当該二つの部分が電極導出孔11の径方向において互いにずれて配置されていない)場合に比べて、上部カバー板1と接続板20との間の電気的クリアランスも上記の設定によりブロックすることができる。
【0070】
また、第2の封止部32が第2の絶縁部22と電極導出孔11の内壁との間に全体的に位置しているため、第2の絶縁部22は、第2の封止部32全体を電極導出孔11の内壁に近い方向に押し出すことができ、そのため第2の封止部32は、電極導出孔11の内壁により密接且つ確実に接触し、従って封止性も向上させることができ、クリープ経路上の電解質が低減され、抵抗が増加し、潜在的な安全上の危険性が低減される。同時に、第2の絶縁部22は、第2の封止部32をある程度保護することで封止部材3と電解液との間の接触を低減することができ、そのため電解液の作用による封止部材3の膨潤のリスクを低減することができ、封止部材3の長寿命化につながる。第2の絶縁部22は、より高い位置まで延びるように設定されており、そのため第2の絶縁部22は、高さ方向において第2の封止部32のより多くの部分に対して押し出し機能及び保護機能を与えることができる。
【0071】
図5に示されているように、本実施形態の第2の封止部32の右側に位置する第2の絶縁部22は、被覆部22aを備えており、被覆部22aは、第2の絶縁部22の上部に位置し、全体として第2の封止部32に略平行であると共に、第2の封止部32の表面を覆っている。被覆部22aを配置することにより、被覆部22aを配置しない場合に比べて、第2の絶縁部22及び第2の封止部32の封止面積を大きくすると共に、上部に位置する第2の封止部32の部分において一定の保護機能を果たすことができるため、封止効果を更に向上させることができ、潜在的な安全上の危険性を更に効果的に低減させることができ、封止部材3の寿命を長くすることができる。
【0072】
なお、被覆部22aは、実際には、被覆部22aの第2の封止部32に近い表面が第2の封止部32の第2の絶縁部22に近い表面に略平行であり、且つ被覆部22aの第2の封止部32に近い表面が第2の封止部32の第2の絶縁部22に近い表面の少なくとも一部を覆っている限り、上記の構成に限定されるものではない。
【0073】
また、本実施形態では、上方に延びる第2の絶縁部22は、端子板41の下面に接触しておらず、すなわち、第2の絶縁部22の上端(被覆部22aの上端も含む)と端子板41の下面との間に間隔が設けられており、例えば、当該間隔の高さhは、0.01mm以上とすることができ、且つ第1の封止部31に接触する上部カバー板1の下面の部分と端子板41の下面との間の高さ差以下とすることができる。これに基づき、第2の絶縁部22が第2の封止部32を効果的に押し出すことを前提とすると、端子板41の押圧作用により第2の絶縁部22を脱落から防止することができ、後述する下部絶縁部材2の封止部材3に対する左方向の圧縮作用と、下部絶縁部材2の封止部材3に対する上方向の圧縮作用とをより良好に達成することにつながる。
【0074】
本実施形態では、第2の封止部32が封止嵌合部23に干渉嵌合することで、下部絶縁部材2の封止部材3に対する上方向の圧縮作用を達成している。具体的には、
図5に示されているように、本実施形態では、封止嵌合部23は、第1の絶縁部21と第2の絶縁部22との接合部に配置されているボスであると共に、三角形状の長手方向断面(径方向断面)と、第2の封止部32の下部に接する斜めに配置される表面とを有している。なお、説明の便宜上、封止嵌合部23の第2の封止部32の下部に接する表面を作用面と称する。
図5から見ることができるように、作用面は第2の封止部32の下部に当接し、双方が互いに干渉して干渉嵌合を形成し、作用面は底部から頂部への方向に沿って電極導出孔11の中心軸に近い方向(
図5の右側に)に向かって傾斜している。
【0075】
封止嵌合部23と第2の封止部32の下部との間の干渉嵌合によって、封止嵌合部23は、第2の封止部32の下部に接するだけでなく、第2の封止部32に上方向の圧縮作用を印加することができるため、封止嵌合部23と第2の封止部32の下部とがより強固且つ確実に封止嵌合を形成することができ、従って封止効果が良好となり、電気的なクリアランスをブロックすることができ、クリープ経路上の電解液をより効果的に低減することができ、そして二次電池100の作業安全性をより効果的に向上させることができる。
【0076】
作用面は、底部から頂部への方向に沿って電極導出孔11の中心軸に近い方向に向かって傾斜しているため、封止嵌合部23が第2の封止部32に上方向の圧縮作用を印加させながら電極導出孔11の中心軸から電極導出孔11の内壁への方向に沿って第2の封止部32に押し出し作用を印加することができると、このようにして、封止嵌合部23は、被覆部22aと共に第2の封止部32に左方向の押し出し作用を印加することができ、これにより下部絶縁部材2の前方の封止部材3に対する押し出し作用を向上させることができると共に、封止部材3の電極導出孔11に対するより十分且つ確実な封止効果を達成することができる。また、斜めに配置された作用面は、第2の封止部32に一定の案内効果も提供することで、第2の封止部32を電極導出孔11の内壁の一方の側に位置する溝13に押し込むように案内することができる。溝13の少なくとも一部を封止部材3によって埋めることができるため、溝13の少なくとも一部が封止され、溝13内の電解液が低減される、すなわち、クリープ経路上の電解液が低減され、これにより抵抗が更に増加し、同一電圧における電流が低減され、従って発火や爆発の安全上のリスクが低下する。
【0077】
作用面と第1の絶縁部21の上面との間の夾角は10°乃至85°の範囲に設定することで、良好な封止を達成しつつ下部絶縁部材2と第2の封止部32との間に隙間が生じる可能性を低減することができ、それにより上部カバー板1と接続板20との間の放電クリアランスをブロックする信頼性がより高くなる。
【0078】
第1の絶縁部21、第2の絶縁部22及び封止嵌合部23は、一体構造とすることができ分割構造とすることもできる。本実施形態では、第1の絶縁部21、第2の絶縁部22及び封止嵌合部23は、一体構造である。
【0079】
まとめると、
図1乃至
図5に示されている実施形態の上部カバー部品10は、より長い沿面距離を有しており、同時に、クリープ経路上の電解液は少なく、より大きい放電クリアランスがあり、従って逆高電圧に抗しながら発火の問題や爆発の問題さえも容易に発生しなくなることにより、使用の安全性がより高くなる。
【0080】
しかしながら、二次電池100の使用の安全性を向上させるために、上部カバー部品10の構成は、上述した
図5に示されるものに限定されない。
図6乃至
図8は、他の可能な実施形態のいくつかを示している。
【0081】
図6乃至
図8は、
図5に示されている実施形態の変形例として見ることができ、従って
図5と同じ部分については以下に繰り返し記載せず、
図5に示されている実施形態の説明を具体的に参照することができ、種々の実施形態の相違点のみを強調して説明する。
【0082】
図6に示されている実施形態では、上部カバー部品10は、第2の封止部32、第2の絶縁部22及び封止嵌合部23を有しており、封止嵌合部23は、斜めに配置された作用力を介して第2の封止部32の下部と干渉嵌合をまだ形成しており、
図5に示されている実施形態との主な相違点は、一方では、本実施形態の第2の絶縁部22は、上部においてもはや被覆部22aを含んでおらず、封止嵌合部23に接続されると共に下部に位置する部分のみを含んでおり、他方では、本実施形態の下部絶縁部材2は、第1の絶縁部21、第2の絶縁部22及び封止嵌合部23だけでなく、第1の絶縁部21の下面に配置される支持部24も含んでいる。
【0083】
具体的には、
図6から見ることができるように、本実施形態では、第2の絶縁部22は、被覆部22aをもはや含んでおらず、上方から下方位置に延びており、その上端は、第1の封止部31に接する上部カバー板1の上面の一部よりも下方に位置している。第2の絶縁部22を上方から下方位置まで延ばすように設定することによって、第2の絶縁部22による電極導出孔11の内部空間の占有を低減することができ、そのため第2の絶縁部22は、電極導出孔11の上部の空間をもはや占有する必要がなくなり、電極導出孔11の上部に位置する端子接続部202のための空間をより多く残すことができるため、端子接続部202をより大きな表面積を有するように設定することができ、それにより端子接続部202と端子板41とのより広い面積での溶接を容易にすることができ、従って接続板20と端子板41との間の溶接面積を増大させることにつながり、過電流能力を向上させることができると共に、発熱を低減することができる。第2の絶縁部22の先端は、上部カバー板1の上面の第1の封止部31に接する部分よりも低いことに加えて、上部カバー板1の上面の第1の封止部31に接する部分と同一の面となるように設定することができ、このとき、端子接続部202と端子板41との間の溶接面積の増大にも寄与する。
【0084】
また、
図5と
図6とを比較することによって、本実施形態の第2の絶縁部22と
図5に示されている第2の絶縁部22との間の相違点は、第二の実施形態の第2の絶縁部22の封止嵌合部23に接続される部分は、電極導出孔11の径方向においてより小さい幅を有していることを見ることができ、この設定により、第2の絶縁部22によって占有される電極導出孔11の内部空間を低減することができるため、接続板20と端子板41との間の溶接面積を増大させることにつながる。
【0085】
一方、
図6から見ることができるように、本実施形態では、支持部24は、第1の絶縁部21とタブ接続部201との間に位置していると共に、第1の絶縁部21の下面から下方に突出することで第1の絶縁部21を支持している。支持部24の高さは、第1の絶縁部21の下面とタブ接続部201の上面との間の高さ差以下に設定することができる。
【0086】
端子接続部202と端子板41との間の良好な溶接を確保するために、接続板20の高さは、一般的に端子板41と上部カバー板1の下面との間の高さ差よりも大きくなる。また同時に、プラスチック部品302等の配置によって、必然的にタブ接続部201と第1の絶縁部21との間に隙間があり、本実施形態では、第1の絶縁部21の下方に支持される支持部24を配置することによって、タブ接続部201と第1の絶縁部21との間の隙間を効果的に補償することができると共に、第2の絶縁部22のカンチレバー構造を変更し、そのため封止部材3等によって印加される下方への圧力のもとでさえも下部絶縁部材2が脱落しにくく、下部絶縁部材2と封止部材3との間の密着性を向上させ、より確実且つより効果的に下部絶縁部材2が封止部材3を圧縮し、電気的なクリアランスをブロックし、クリープ経路上の電解質を低減することができる。同時に、支持部24が第1の絶縁部21の下面に配置されているため、下部絶縁部材2の強度を向上させることで製造時や搬送時における下部絶縁部材2の変形を低減することができる。
【0087】
また、
図6から見ることができるように、本実施形態では、支持部24の一部が、電極導出孔11の径方向(
図6における左右方向)に沿って第2の封止部32と重なっており、すなわち支持部24の一部が、第2の封止部32の直下に位置しており、そのため支持部24は、封止部材3によって下部絶縁部材2に印加される下向きの圧力により良好に抗することができ、それにより封止部材3と下部絶縁部材2との間の封止状態をより効果的に維持することができる。
【0088】
なお、支持部24は、円環状の下方突出構造として設定することができ、又は互いに離間する少なくとも二つの下方突出部を含むように設定することができる。また、支持部24は、下部絶縁部材2に配置することに加えて、接続板20に配置することもでき、例えば、支持部24をタブ接続部201の上面に配置しタブ接続部201の上面から上方に延ばすことができ、このとき、支持部24は下部絶縁部材2を支持することもでき、そのため下部絶縁部材2と封止部材3とがより強固且つ確実に封止される。
【0089】
図7に示されている実施形態は、
図6に示されている実施形態の変形例である。
図7に示されているように、本実施形態は、
図6に示されている実施形態と同様であり、第2の絶縁部22は被覆部22aを含まず、下部絶縁部材2は支持部24を更に含み、
図6に示されている実施形態との相違点は、主に、本実施形態では、封止部材3が、第1の封止部31及び第2の封止部32だけでなく、第3の封止部33を含んでおり、第3の封止部33は、上部カバー板1の下面と第1の絶縁部21の上面との間に位置することにある。具体的には、
図7から見ることができるように、本実施形態の第3の封止部33は、溝13内に位置し、溝13を埋めている。
【0090】
溝13全体を第3の封止部33が埋めることで溝13の封止を形成することによって、溝13内の電解液を更に低減することができ、二次電池100の使用の安全性をより効果的に向上することができる。
【0091】
あるいは、第3の封止部33が溝13の一部のみを埋めることもでき、又は第3の封止部33を配置しないこともでき、そのため第1の絶縁部21の一部が溝13内に配置され、このとき、溝13内に配置された第1の絶縁部21の一部が溝13を埋めるため、溝13内の電解液を低減することもでき、それによりまた二次電池100の使用の安全性を向上することにもつながる。
【0092】
図5乃至
図7から、上記の三つの実施形態では、封止嵌合部23はそれぞれ、第1の絶縁部21と第2の絶縁部22との接合部に配置されており、いずれも三角形状の長手方向断面を有するボスであると共に、傾斜している作用面を有しているが、変形例として、封止嵌合部23を第2の絶縁部22の上端に配置することもでき、ボスである封止嵌合部23の長手方向断面を、矩形、台形又は扇形等にすることもでき、又は封止嵌合部23は、もはや上方に突出するボス構造ではなく、下方に押し下げる構造形態を採ることができることを見ることができる。
【0093】
図8は別の実施形態を示している。
図8から、本実施形態では、封止嵌合部23は、もはや第1の絶縁部21と第2の絶縁部22との接合部ではなく、第2の絶縁部22の上端に配置されており、封止嵌合部23は、第2の絶縁部22の上面から上方に突出せず、第2の絶縁部22の上面から下方に押し下げられていることを見ることができる。
【0094】
第2の絶縁部22の上端に、第2の絶縁部22の上面から下方に押し下げられる封止嵌合部23を配置することによって、一方では、封止嵌合部23が、第2の封止部32の下部との干渉嵌合をいまだ簡便かつ確実に形成することができ、他方では、第2の絶縁部22の上端が段差構造を形成し、封止嵌合部23から上方に延びる段差構造の一部が、第2の封止部32の電極導出孔11の中心軸に近い一方の側の表面において被覆され、
図5に示されている被覆部22aと同様の役割を果たすことで第2の封止部32を電極導出孔11の内壁に押し出すことによって、より良好な封止効果を達成することができる。
【0095】
上記のように、本開示の上部カバー部品10は、二次電池100の高電圧放電現象のリスクを効果的に低減することができ、従って上部カバー部品10を二次電池100に適用することで二次電池100の利用における安全性を効果的に向上する。従って、本開示は、本開示の上部カバー部品10に基づく二次電池100も提供する。二次電池100は、特に電気自動車に適用して、逆高電圧によって生じる潜在的な安全上の危険性を低減することによって電気自動車の性能を効果的に向上することができる。
【0096】
上記の説明は、本開示の単なる例示的な実施形態であり、本開示を限定することを意図するものではない。本開示の原理の範囲内で行われるいかなる変更、均等物による置換、改良等は、本開示の保護範囲に含まれるべきである。
【国際調査報告】