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特表2022-527750食品製造、処理廃液及び廃棄物の浄化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-06
(54)【発明の名称】食品製造、処理廃液及び廃棄物の浄化
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/34 20060101AFI20220530BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
C02F3/34 Z
C12N1/00 S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557086
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(85)【翻訳文提出日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 US2020024942
(87)【国際公開番号】W WO2020198463
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】62/824,382
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519246261
【氏名又は名称】ローカス アイピー カンパニー、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファーマー,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】アリベック,ケン
(72)【発明者】
【氏名】ハイドコーン,キース
【テーマコード(参考)】
4B065
4D040
【Fターム(参考)】
4B065AA15X
4B065AA17X
4B065AA19X
4B065AA41X
4B065AA42X
4B065AA43X
4B065AC20
4B065CA55
4D040DD03
4D040DD24
(57)【要約】
本発明は、食品処理及び製造中に生成される廃液及び廃棄物を処理するための改善された方式を提供する。特に、本発明は、例えば、肉、家禽、魚介類、乳製品及び植物ベース油を処理する植物から排出される脂肪、油及びグリース(FOG)、懸濁固体、タンパク質、及び他の有機物を浄化するための方法を提供する。本発明の方法は、食品処理廃棄物を消化及び/又は液化するために、1つ以上の微生物増殖副生成物、例えば、酵素及び/又はバイオサーファクタントと組み合わせて、通性嫌気性細菌を含むカスタマイズされた微生物カクテルを利用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水に存在する食品処理廃棄物の処理を改善する方法であって、
前記廃水から、1種類以上の食品処理廃棄物を含むサンプルを採取し、
前記サンプルを分析して、前記1種類以上の食品処理廃棄物の同一性を決定し、
1種類以上の有益な微生物種を含むカスタマイズされた微生物カクテルを前記廃水に導入して、前記廃棄物の処理の処理量を増やすことを含む、方法。
【請求項2】
前記廃水は、食品処理廃棄物が導入された嫌気性消化装置、ラグーン、又は水域に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記食品処理廃棄物は、パーム油工場廃液(POME)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記食品処理廃棄物は、脂肪、油及びグリース(FOG)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記微生物カクテルは、前記廃水からの前記食品処理廃棄物の消化、精製、汚染除去、及び/又は除去のための、酵素及び/又は他の増殖副生成物を生成することのできる1つ以上の通性嫌気性細菌を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記微生物カクテルは、B. subtilisB. licheniformisB. firmusB. laterosporusB. megaterium、及びB. amyloliquefaciensから選択される細菌を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記微生物カクテルは、Pseudomonas aeruginosaP. chlororaphisP. malleiP. pseudomalleiP. fluorescensP. alcaligenesP.mendocina、及びP. stutzeriから選択される細菌を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記微生物カクテルは、1つ以上の硝酸塩還元細菌(NRB)を含み、前記方法は、廃水の脱窒、及び/又は前記廃水からの硝酸塩及び/又はアンモニウムの除去をもたらす、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
微生物群を分析して、前記微生物群内に存在する前記微生物種及び前記種の個体群割合を同定し、
どの微生物種が、前記食品処理廃棄物処理に有益、共生、及び/又は有害か、さらに、前記共生及び/又は有害種が、前記微生物群の少なくとも25%であるか決定することをさらに含み、共生及び/又は有害種の割合が25%以上であることは、前記微生物群がディスバイオシスにあることを意味し、
前記微生物群がディスバイオシスにある場合には、前記微生物カクテルを前記廃水に導入して、前記微生物群のバランスを改善し、廃水処理の処理量を増やすことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
1つ以上の微生物増殖副生成物を前記廃水に適用して、前記廃水の処理及び/又は前記微生物カクテルの活性を増進することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記微生物増殖副生成物は、グリコリピド、リポペプチド、セロビオースリピド、フラボリピド、ホスホリピド、リポタンパク質、リポ多糖-タンパク質複合体、及び多糖-タンパク質-脂肪酸複合体から選択されるバイオサーファクタントである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記バイオサーファクタントは、ソホロリピド、ラムノリピド、マンノシルエリトリトールリピド及びトレハロースリピドから選択されるグリコリピドを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記バイオサーファクタントは、ソホロリピドである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
嫌気性消化装置、ラグーン、及び/又は水域からの亜酸化窒素及び/又はメタン放出を減少させる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
廃水中の有害微生物及び/又は病原性微生物の数を減少させる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
廃水中の硫酸還元細菌(SRB)の数を減少させる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
廃水に存在する食品処理廃棄物の処理を増進する微生物カクテルであって、1つ以上の通性嫌気性細菌と、任意で、微生物増殖副生成物、前記微生物の培養からの残留増殖培地、及び/又は微生物増殖のために栄養素のうち1つ以上とを含む、微生物カクテル。
【請求項18】
B. subtilisB. licheniformisB. firmusB. laterosporusB. megaterium、及びB. amyloliquefaciensから選択される1つ以上の細菌を含む、請求項17に記載の微生物カクテル。
【請求項19】
Pseudomonas aeruginosaP. chlororaphisP. malleiP. pseudomalleiP. fluorescensP. alcaligenesP.mendocina、及びP. stutzeriから選択される1つ以上の細菌を含む、請求項17に記載の微生物カクテル。
【請求項20】
前記微生物カクテルが使用される廃水処理プラントの300マイル以内の場所で生成される、請求項17に記載の微生物カクテル。
【請求項21】
1×108~1×1013CFU/グラムの細胞濃度を含む、請求項17に記載の微生物カクテル。
【請求項22】
前記増殖副生成物は、プロテアーゼ、リパーゼ、レダクターゼ及びアミラーゼから選択される酵素である、請求項17に記載の微生物カクテル。
【請求項23】
1つ以上のバイオサーファクタントをさらに含む、請求項17に記載の微生物カクテル。
【請求項24】
前記バイオサーファクタントは、グリコリピド、リポペプチド、脂肪酸エステル、フラボリピド、ホスホリピド、リポタンパク質、リポ多糖-タンパク質複合体、及び多糖-タンパク質-脂肪酸複合体から選択される、請求項23に記載の微生物カクテル。
【請求項25】
前記バイオサーファクタントは、ソホロリピド、ラムノリピド、マンノシルエリトリトールリピド、セロビオースリピド及びトレハロースリピドから選択されるグリコリピドを含む、請求項23に記載の微生物カクテル。
【請求項26】
前記バイオサーファクタントは、ソホロリピドである、請求項25に記載の微生物カクテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願を相互参照
本出願は、2019年3月27日出願の米国仮出願第62/824,382号の優先権を主張するものであり、内容を参照することにより組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
工業規模での食品の製造及び処理によって、何百万トンもの廃棄物がもたらされ、これは、未処理で環境中に分散された場合、ヒトへの健康被害や空気及び水の汚染の原因となる。脂肪、油及びグリース(FOG)、動物屠体切り取り、植物繊維、及び他の固体又は固体形成物質は、肉、家禽類、魚介類、乳製品、及びいくつかの植物ベース食品の処理から残される廃棄物の種類のうちのいくつかにすぎない。これらの廃棄物の多くは、ラグーンや池に溜まって、悪臭や汚染温室効果ガスを放出する。食品廃棄物の中には、下水や排水管に放出され、そこに蓄積して詰まりを引き起こすものもあれば、水路に放出され、そこで水中の酸素濃度を枯渇させ、青粉を促進するものもある。
【0003】
都市廃水処理で使用されるものと同様の廃水処理方法を使用して、食品処理廃棄物を処理する試みがなされてきた。一般に、「廃水」は、家庭、都市、工業、商業又は農業活動、地表流出、又は暴風雨水、ならびに任意の下水流入又は下水浸透の任意の組合せからの水を使用する。廃水の処理には、機械的、化学的及び/又は生物学的プロセスを含む廃水から固体材料、不純物、及び汚染物質を除去するための複数のプロセスが含まれるが、これらのプロセスの多くは非効率的であり、食品廃棄物のつくられる速さに追いつくことは難しい。
【0004】
肉処理(例えば、牛肉、家禽類、豚肉、及び他の家畜処理を含む)は、汚染の特に大きな源であり、廃液を浄化することが困難である。処理の前に、生動物は、おり又はタンク中で飼育され、そこで、自身の代謝廃棄物及び糞尿を放出する。これらの廃棄物は、洗浄中に動物から洗浄されるあらゆる油、毛髪、羽毛及び汚れに加えて、廃水及び流出としての地下水に最終的に至る。
【0005】
動物が屠殺されると、毛や羽が抜かれ、血が抜かれ、はらわたを取り出し、洗浄し、さらにこれらの物質は廃水流に追加される。屠殺体を切断し、切り取り、脱骨し、組織片及び骨片を床に落として洗い流す。塩漬けや皮の洗浄によって、廃水に塩が添加される。
【0006】
魚介類処理はまた、一部の魚介類の元々の高脂肪含量のために、大量のFOGを含む大量の汚染廃液を生成し得る。魚類は、洗浄、滅菌、内臓除去、頭部切断、ひれ切断、脱骨、鱗落、皮剥、又は他の方法で処理されて、廃水中に固体粒子や脂肪が入り込む。マグロ等の魚はさらに調理され(例えば、蒸気処理によって)、缶詰にされると、蒸気処理凝縮液から、缶充填プロセスで使用されるソース、ブライン、及び油から、油性廃棄物がでる。
【0007】
肉や魚介類に加えて、乳製品処理は汚染廃液の大きな発生源である。乳製品は、生乳を、低温殺菌・酸性乳、ヨーグルト、硬質・軟質カッテージチーズ、クリーム・バター製品、アイスクリーム、ミルクパウダー、ラクトース、濃縮乳、ケイファー、デザート製品に処理したものである。チーズ及びヨーグルトの製造では、例えば、酸乳清を含む乳清副生成物は、水生生態系に特に有害である。主にタンパク質とペプチドを含有する酸乳清は、河流や他の水路に入ると、水中の溶存酸素レベルを枯渇させ、その高い栄養分含量は、青粉につながる。このような条件では、在来魚が生き残ることはほとんど不可能である。
【0008】
動物性食品の製造及び処理は、食品廃棄物汚染及び廃水の唯一の源ではない。植物油、例えば、パーム油の製造は、水汚染の主要な原因である。パーム油工場廃液(POME)、又はパーム油を粉砕する際の滅菌及び清澄化処理から生じる液体廃棄物は、90~95%の水を含み、残りは、残留油、土壌粒子、及び懸濁固体を含む。生物学的酸素要求量(BOD)が高く、pHが低く、コロイド性であるため、POMEは、汚染性が高く、浄化が困難である。
【0009】
さらに、抽出後のパーム果実は大きなラグーンに保持され、このラグーンは表面下に生息するメタン生成微生物の活性のために、泡立ち、強い臭気を発する。ラグーンは、典型的には、大量の有機物を分解するための低コストの方法として利用されるが、パーム油の場合のように、有機物は、二酸化炭素及びメタンを含む温室効果ガスに変換されることが多い。
【0010】
ラグーン以外の食品廃棄物処理の他の形態は、嫌気性微生物を利用するものである。例えば、大きな固体物質を機械的にスクリーニングした後、嫌気性消化装置を使用して、残りの固体物質(スラッジ)を消化し、液体(水)を分離することが多い。嫌気性消化装置において、微生物のコンソーシアムは、酸素の不在下で生分解性材料を共代謝又は分解するものであり、45日もの時間を要するプロセスである。微生物は、それぞれの栄養要求を満たすために廃水成分を利用するので、プロセスにおいて、廃水処理及び他の有益な微生物の代謝要求に有益な他の化学物質を生成する。目標は、これらの生物が化学的及び生物学的廃液を分解するために集合的に作用することである。
【0011】
このプロセスは、FOGのような不溶性錯体有機物を含有することの多い廃水のスラッジ部分の細菌加水分解から始まる。不溶性物質は、脂肪酸、アミノ酸及び糖等の可溶性分子に変換される。次いで、酸産生菌は、これらの化合物を、二酸化炭素、水素、アンモニア、酢酸、酪酸、プロピオン酸及びエタノール等の有機酸に変換する。次いで、メタン細菌は、例えば、酢酸をメタン及び二酸化炭素に変換する。次いで、リグニン及び非有機成分等の残りの消化不能成分は、さらなる処理のために移されるか、又は他の方法で再使用される。
【0012】
酵素及び界面活性剤はまた、食品処理廃棄物を浄化するためにも使用される。酵素は、主に、有機化合物を攻撃又は分解するのに役立ち、一方、界面活性剤は、分解された粒子を水相中に分散させるように作用する。しかしながら、これらの組成物のいくつかは、不安定であり、1つのタイプの廃棄物から別のタイプの廃棄物への収率が可変する結果をもたらすことが見出されており、大量の他のFOG又は汚染物質を含有する廃棄物によって提示される課題に対処することができない。
【0013】
廃水及び他の微生物との微生物相互作用は、廃水を処理するのに非常に有効である。したがって、肉、魚介類、乳製品及び植物油処理プラントから排出されるもの等の食品製造及び処理廃棄物を処理するための、より普遍的で、強力で、環境に優しい微生物ベース方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第9,994,469(B2)号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
一実施形態において、本発明は、食品製造を改善し、廃液及び廃棄物を処理するための改善された方式を提供する。より具体的には、本発明は、食品処理の結果として生成される廃水、又は他の水域、不純物、汚染物質、又は廃棄物から除去する方式を提供する。本発明はまた、食品処理廃棄物の処理に使用するための、微生物及び/又はそれらの増殖副生成物を生成するためのシステム及び方法を提供する。利点を挙げると、本発明の方法は、環境に優しく、操作も容易で、費用効果が高い。
【0016】
本発明は、食品処理廃棄物処理を改善するための、特に、バイオオーグメンテーションする生物学的廃水処理方法のための方法を提供する。
【0017】
食品処理廃棄物の処理又は浄化には、廃水からの廃棄物の消化、精製、汚染除去、及び/又は除去が含まれる。廃水は、例えば、肉、鶏肉、又は海産食品処理プラント、乳製品、又は植物ベース油のミリング、取扱い、抽出及び/又は精製のための施設に由来する。廃水は、例えば、動物糞、血液、尿及び/又は胃内容物のような有機廃棄物、屠体残渣、調理残渣、脂肪、油、及びグリース(FOG)、乳清、不溶性多糖類、及び懸濁固体、病原体、及び処理プラントの洗浄からの残渣のような他の不純物を含有する。
【0018】
一実施形態において、本方法は、嫌気性消化、ラグーン、又は食品処理廃棄物が導入された別の水域中に存在する廃水からサンプルを採取することを含み、サンプルは食品処理廃棄物を含む。いくつかの実施形態において、廃水は、例えば、スクリーン、メッシュ、又はフィルターを通過させることによって、大きな固体を除去するために前処理されている。
【0019】
本方法は、存在する廃棄物の種類を同定するためにサンプルを分析することをさらに含む。同定される廃棄物の種類に基づいて、カスタマイズされた微生物カクテルが製造され、ここで、カクテルは、同定された廃棄物の消化、精製、汚染除去及び/又は除去に最も適した有益な微生物の混合物を含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、嫌気性消化装置、ラグーン又は水域に存在する固有微生物を利用することができる。いくつかの実施形態において、本方法は、消化、ラグーン又は水域に最初は存在しない補助微生物を利用することができる。
【0021】
特定の好ましい実施形態において、この方法は、通性嫌気性細菌を利用する。微生物カクテルは、例えば、B. subtilisB. licheniformisB. firmusB. laterosporusB. megaterium、及びB. amyloliquefaciensを含むがこれらに限定されない、Bacillus spp細菌等の異なるBacillus spp.細菌を含むことができる。いくつかの実施形態において、微生物は、例えば、P. aeruginosaP. chlororaphisP. malleiP. pseudomalleiP. fluorescensP. alcaligenesP.mendocina、及びP. stutzeri等のPseudomonas spp.細菌である。利点を挙げると、有機廃棄物の存在下で、これらの微生物はプロテアーゼ、リパーゼ、レダクターゼ及びアミラーゼ等の酵素、ならびに有機物の分解に有益である他の増殖副生成物を生成する。
【0022】
本発明の方法による微生物カクテルは、微生物自体、微生物増殖副生成物、及び微生物の培養から生じる任意の残留増殖培地を含むことができる。カクテルは、微生物増殖のために追加の栄養素をさらに含むことができる。
【0023】
微生物は、栄養細胞、胞子、分生子、菌糸体及び/又はそれらの組み合わせの形態とすることができる。特定の実施形態において、微生物は、浸漬発酵、固相発酵(SSF)、又はそれらの組み合わせ及び/又は改変バージョンを使用して生成される。好ましい実施形態において、発酵は、改変された固体発酵系を使用して行われる。
【0024】
特定の実施形態において、微生物バイオオーグメンテーションカクテルは、例えば、カクテルを廃水に注ぎ、その中で混合することによって、廃水に導入される。この時点の後、カクテル中の微生物は、廃水中で増殖及び/又は成長し、そこから不純物、汚染物質及び/又は廃棄物を除去するための代謝生成物を生成する。いくつかの実施形態において、成長促進剤は、特に、微生物が胞子形態で適用される場合、微生物カクテルと共に適用される。いくつかの実施形態において、処理物を温めて、除去速度をさらに早くする。
【0025】
特定の実施形態において、廃水サンプルは、微生物群をさらに含む。一実施形態において、サンプルは、食品処理廃棄物が導入された嫌気性消化装置、ラグーン又は他の水域内の微生物群全体の代表を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、微生物群を分析して、微生物群内に存在する微生物種の同一性を決定し、微生物群の他の種に対する各種の個体群割合を決定する。分析は、例えば、DNA配列決定、DNAフィンガープリンティング、ELISA、及び細胞プレーティングのような、当該分野で標準的な方法を含む。
【0027】
次いで、微生物群に存在する微生物種は、廃棄物処理プロセスにとって有益、共生、又は有害として分類することができる。いくつかの実施形態において、サンプルを分析する目的は、微生物群が「ディスバイオシス」であるかどうかを決定することであり、本発明によれば、「ディスバイオシス」は、共生微生物及び/又は有害微生物の過剰増殖、又は有益な微生物の数に関連してより高い割合の共生微生物及び/又は有害微生物を含む微生物群を意味する。
【0028】
ディスバイオシスにある廃水処理施設は、共生及び/又は有害な微生物を少なく含むものよりも効率が低く、つまり、処理速度が遅いことを意味する。
【0029】
全個体群の少なくとも25%である共生微生物及び/又は有害微生物の割合は、ディスバイオティックであると考えられる。いくつかの実施形態において、ディスバイオティック微生物群は、有益な微生物よりも多くの共生及び/又は有害な微生物を有し、又は50%を超える個体群の割合を有する可能性がある。
【0030】
サンプル内の微生物群がディスバイオティックであると決定されたら、微生物群を改善する(すなわち、ディスバイオシスから微生物群を引き出す)ために、微生物カクテルをカスタマイズすることができる。結果として、微生物カクテルは、廃水処理プロセスの速度をバイオオーグメンテーションする(すなわち、生物学的手段を使用するプロセスの効率を増加させる)。特定の実施形態において、これはまた、廃水処理プラントから生成される亜酸化窒素及びメタンの量を、これらの化合物を生成する共生及び/又は有害な微生物の数を減少させることによって減少させるのにも役立つ。
【0031】
一実施形態において、本方法は、廃棄物処理プロセスをさらに増進することができる微生物増殖副生成物を導入することをさらに含む。増殖副生成物は、微生物カクテルの微生物によって生成されるものを含むことができ、又は別個の成分として添加することができる。
【0032】
一実施形態において、増殖副生成物は、バイオサーファクタント、酵素、バイオポリマー、溶剤、酸、タンパク質、アミノ酸、又は食品処理廃棄物の浄化に有用な他の代謝生成物である。特定の実施形態において、増殖副生成物は、例えば、低分子量グリコリピド(例えば、ソホロリピド、ラムノリピド、マンノシルエリトリトールリピド及びトレハロースリピド)、リポペプチド(例えば、サーファクチン、イチュリン、フェンギシン、アトロファクチン及びリケニシン)、セロビオースリピド、フラボリピド、ホスホリピド(例えば、カルジオリピン)、ならびにリポタンパク質、リポ多糖-タンパク質複合体、及び多糖-タンパク質-脂肪酸複合体等の高分子量ポリマーから選択されるバイオサーファクタントである。
【0033】
1つ以上のバイオサーファクタントは、生物学的又は合成的に改変された形態を含む、バイオサーファクタントの改変形態、誘導体、フラクション、アイソフォーム、異性体又はサブタイプのいずれか1つ又は組み合わせをさらに含むことができる。特定の実施形態において、1つ以上のバイオサーファクタントは、純粋な形態で適用される。
【0034】
利点を挙げると、バイオサーファクタントは、管の詰まりを解消し、化合物の流れや排液を増進し、それらを微生物分解のためにより容易に接近可能にするために、固化したFOG等の特定の廃棄物を液化することができる。さらに、バイオサーファクタントは、酵素と相乗作用し、及び/又は微生物カクテルによって生成される異なる酵素と相乗作用して、廃棄物の処理を増進することができる。さらに、バイオサーファクタントは生分解性である。
【0035】
利点を挙げると、本発明の方法は、処理環境における有益な微生物の割合を増加させることによって、食品製造及び廃棄物の処理を改善する。さらに、特定の廃水処理システムの微生物個体群は、システムの場所及び廃棄物の内容に基づいて大きく変化するため、本方法は、狭い範囲の好ましいタスクを達成するために個体群に選択的に添加される生物のカスタマイズされた群を利用することによって、嫌気性プロセスを促進することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、食品処理及び製造中に生成される廃液及び廃棄物の処理を改善するための方法を提供する。特に、本発明は、例えば、肉、家禽、魚介類、乳製品及び植物ベース油を処理する植物から排出される脂肪、油及びグリース(FOG)、懸濁固体、タンパク質、及び他の有機物を浄化するための方法を提供する。
【0037】
本発明の方法は、動物及び/又は植物ベース食品処理廃棄物を消化及び/又は液化するために、1つ以上の微生物増殖副生成物、例えば、酵素及び/又はバイオサーファクタントと組み合わせて、カスタマイズされた微生物カクテルを利用する。利点を挙げると、本発明の方法は、食品処理廃棄物が導入された好気性消化、ラグーン又は他の水域において、廃棄物の消化、精製、汚染除去及び/又は除去の速度を増進する。
【0038】
定義
本発明は、「微生物ベース組成物」、つまり、微生物又は他の細胞培養物の増殖の結果として生成された成分を含む組成物を利用する。したがって、微生物ベース組成物は、微生物自体及び/又は微生物増殖の副生成物を含む。微生物は、栄養状態、胞子形態、菌糸形態、任意の他の形態の微生物繁殖体、又はこれらの混合物であってよい。微生物は、プランクトンであっても、バイオフィルム形態であっても、又は両方の混合物であってもよい。増殖副生成物は、例えば、代謝生成物(例えば、バイオサーファクタント)、細胞膜成分、発現タンパク質、及び/又は他の細胞成分である。微生物は、無傷であっても溶解されていてもよい。細胞は完全に存在しないか、又は例えば、1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、又は1×10CFU以上の濃度で存在する。
【0039】
本発明はさらに、所望の結果を達成するために実際に適用される製品である「微生物ベース製品」を提供する。微生物ベース製品は、単に、微生物培養プロセスから採取された微生物ベース組成物である。あるいは、微生物ベース生成物は、添加されたさらなる成分を含んでいてもよい。これらの追加の成分は、例えば、安定剤、緩衝剤、キャリア(例えば、水又は塩溶液)、さらなる微生物増殖を支持するために添加された栄養素、非栄養増殖エンハンサー、及び/又は微生物及び/又はそれが適用される環境中の組成物の追跡を容易にする薬剤を含むことができる。また、微生物ベース生成物は、微生物ベース組成物の混合物を含んでいてもよい。また、微生物ベース生成物は、これらに限定されるものではないが、濾過、遠心分離、溶解、乾燥、精製等のような、何らかの方法で処理された微生物ベース組成物の1つ以上の成分を含んでいてもよい。
【0040】
本明細書中で使用される「単離された」又は「精製された」核酸分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、有機化合物(例えば、以下に記載するような小分子)、又は他の化合物は、天然由来の細胞材料のような他の化合物を実質的に含まない。例えば、精製又は単離されたポリヌクレオチド(リボ核酸(RNA)又はデオキシリボ核酸(DNA))は、その天然に存在する状態でそれに隣接する遺伝子又は配列を含まない。精製又は単離されたポリペプチドは、その天然に存在する状態においてそれに隣接するアミノ酸又は配列を含まない。精製又は単離された微生物株は、天然に存在する環境から除去される。従って、単離された菌株は、例えば、生物学的に純粋な培養物として、又はキャリアと会合した胞子(又は菌株の他の形態)として存在する。
【0041】
特定の実施形態において、精製された化合物は、目的の化合物の少なくとも60重量%である。好ましくは、調製物は、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%の目的化合物である。例えば、精製された化合物は、少なくとも90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、98重量%、99重量%、又は100重量%(w/w)の所望の化合物であるものである。純度は、任意の適切な標準的な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によって測定される。
【0042】
「代謝生成物」とは、代謝によって生成される任意の物質(例えば、増殖副生成物)又は特定の代謝プロセスに関与するのに必要な物質をいう。代謝生成物は、代謝の出発物質、中間体、又は最終生成物である有機化合物である。代謝生成物としては、酵素、酸、溶剤、アルコール、タンパク質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、微量元素、アミノ酸、バイオポリマー、及びバイオサーファクタントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書で使用される「複数」という用語は、1を超える任意の数又は量を指す。
【0044】
「減少する」とは、少なくとも1%、5%、10%、25%、50%、75%、又は100%の負の変化を意味する。
【0045】
「界面活性剤」とは、2種類の液体間、液体と気体間、又は液体と固体間の表面張力(又は界面張力)を低下させる界面活性化合物を意味する。界面活性剤は、例えば、洗剤、湿潤剤、乳化剤、発泡剤、及び分散剤として作用する。「バイオサーファクタント」は、生存細胞により生成される表面活性物質である。
【0046】
本明細書で示される範囲は、その範囲内の全ての値について短縮されたものであると理解される。例えば、1~20の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、又は下位範囲、そして、例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、及び1.9等の前述の整数の間にある全ての10進値を含むものと理解される。下位範囲に関して、範囲のいずれかの終点から延びる「ネストされた下位範囲」が特に考えられる。例えば、1~50の例示的な範囲のネストされた下位範囲は、一方向に1~10、1~20、1~30、及び1~40、他方向に50~40、50~30、50~20、及び50~10を含む。
【0047】
「有する」又は「含有する」と同義である「含む」という移行句は、包含的又はオープンエンドであり、追加の引用されていない要素又は方法ステップを除外するものではない。対照的に、「からなる」という移行句は、請求範囲に記載されていない要素、ステップ又は成分を除外する。「から実質的になる」という移行句は、請求範囲を、特定の材料又はステップに限定する。「からなる」という移行句は請求範囲の範囲を、「特定の材料又はステップ」及び「請求範囲に記載された発明の基本的かつ新規な特性に実質的に影響を及ぼさないもの」に限定する。「含む」という用語を使用する場合、引用された要素を「から成る」又は「実質的になる」他の実施形態も意図される。
【0048】
本明細書で使用される「又は」という用語は、特に明記されていない限り、又は文脈から明らかでない限り、包括的であると理解される。本明細書で使用される用語「1つ」及び「その」は、単数又は複数であると理解される。
【0049】
本明細書で使用される「約」という用語、特に明記されない限り、又は文脈から明らかでない限り、当技術分野における通常の許容範囲内、例えば、平均の2標準偏差内と理解される。約は、記載された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%以内であると理解される。
【0050】
本明細書に記載される可変の任意の定義における化学基の列挙の引用は、任意の1つの基又は列挙された基の組み合わせとしてその可変の定義を含む。本明細書中の可変又は態様の実施形態の引用には、その実施形態の任意の単一の実施形態、又は任意の他の実施形態又はその一部との組み合わせが含まれる。
【0051】
本明細書に記載される任意の組成物又は方法は、本明細書中に記載される任意の他の組成物及び方法のうちの1つ以上と組み合わせることができる。
【0052】
本発明の他の特徴及び効果は、以下の好ましい態様の説明、及び請求の範囲より明らかとなる。本明細書に引用される全ての参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
食品処理廃棄物の処理方法
一実施形態において、本発明は、食品生産を改善し、廃液及び廃棄物を処理するための改善された方法を提供する。より具体的には、本発明は、食品処理の結果として生成される廃水、又は他の水域、不純物、汚染物質、又は廃棄物から除去する方法を提供する。本発明はまた、食品処理廃棄物の処理に使用するための、微生物及び/又はそれらの増殖副生成物を生成するためのシステム及び方法を提供する。利点を挙げると、本発明の方法は、環境に優しく、操作が容易で、費用効果が高い。
【0054】
本発明は、食品処理廃棄物処理を改善する、特に、生物学的廃水処理方法をバイオオーグメンテーションするための方法を提供する。好ましくは、いくつかの実施形態において、本方法は、排水中に存在する有機物及び他の廃棄物の存在下で酵素及び他の増殖副生成物を生成する有益な微生物を利用する。特定の実施形態において、微生物は通性嫌気性菌である。特定の実施形態において、微生物増殖副生成物は、有益な微生物との別個の及び/又は組み合わされた処理成分として廃水中に導入される。
【0055】
食品処理廃棄物の処理又は浄化は、廃水中に存在する食品処理廃棄物の消化、精製、汚染除去、及び/又は除去を含むことができる。処理は部分的であっても、及び/又は完全であってもよい。
【0056】
本明細書で使用される「食品処理廃棄物」は、ヒト又は動物の食品の製造、処理、粉砕、取扱い、抽出、精製及び/又は包装に使用される任意のタイプの施設に由来する廃棄物である。これらの施設は、例えば、牛肉、豚肉、羊肉、馬、鶏肉、及び他の肉の家畜のための屠殺場、食肉加工プラント、例えば、養殖又は野生の魚、エビ、カニ、カニ、ロブスター、スカラップ、クラム、イガイ、タコ、イカ、及びウナギのための魚介類処理プラント、例えば、缶詰マグロやサケ等の魚介類缶詰、乳製品、例えば、ミルク、チーズ、ヨーグルト、キエファー、及びアイスクリームを製造するためのプラント、例えば、パーム油、オリーブオイル、及び他の植物油又は果実油を抽出及び精製するための調理油ミル、及びスナック、ノベルティー、キャンディー、焼き菓子、飲料等の処理食品が製造されるプラントを含むことができるが、これらに限定されない。
【0057】
食品処理廃棄物は、例えば、動物の糞、血液、尿及び/又は胃(はらわた)内容物のような有機廃棄物、屠体残渣(例えば、骨、皮膚、皮、羽、ひれ、爪、歯、組織、及び臓器)、調理残渣、脂肪、油及びグリース(FOG)、乳清、酸乳清、不溶性多糖類(例えば、セルロース、リグニン)、懸濁固体、有害及び/又は病原性微生物及び処理植物の洗浄からの残渣のような他の不純物を含む。廃棄物は、クリーニング、滅菌、香味付け、染色、又は特定の処理食品の保存からの化学物質及び/又は凝縮物をさらに含む。
【0058】
特定の一実施形態において、食品処理廃棄物は、乳製品の処理によって生成される乳清を含む。一実施形態において、乳清は、カッテージチーズ、クリームチーズ、ならびにギリシャ及び他の水切りヨーグルトの製造中に生成される酸乳清である。酸乳清は、ラクトース、水、種々のタンパク質、ペプチド及びリピドを含む。
【0059】
特定の一実施形態において、食品処理廃棄物は、パーム油処理工場によって生成されるパーム油工場廃液(POME)を含み、パーム果実の粉砕から残った油、油含有セルロース材料、及びアラビノース、キシロース、グルコース、ガラクトース及びマンノース等の糖を含む懸濁成分を含む。
【0060】
一実施形態において、本方法は、嫌気性消化装置、ラグーン、又は食品処理廃棄物が導入された別の水域(例えば、池、川、湖又は河)中に存在する廃水からサンプルを採取することを含み、サンプルは食品処理廃棄物を含む。いくつかの実施形態において、廃水は、例えば、スクリーン、メッシュ、又はフィルターを通過させることによって、骨及び毛髪等の大きな固体を除去するために前処理されている。
【0061】
本方法は、存在する廃棄物の種類を同定するためにサンプルを分析することをさらに含む。サンプル中で同定される廃棄物の種類に基づいて、カスタマイズされた微生物カクテルが製造され、カクテルは、同定された廃棄物の消化、精製、汚染除去及び/又は除去に最も適した有益な微生物の混合物を含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、嫌気性消化装置、ラグーン又は水域に存在する固有微生物を利用することができる。いくつかの実施形態において、本方法は、消化、ラグーン又は水域に最初は存在しない補助微生物を利用することができる。
【0063】
微生物カクテルは、例えば、B. subtilisB. licheniformisB. firmusB. laterosporusB. megaterium、及びB. amyloliquefaciensを含むがこれらに限定されない、Bacillus spp.細菌等の異なるBacillus spp.微生物を含む。特定の例示的な実施形態において、B. amyloliquefaciensNRRL B-67928が利用される。
【0064】
いくつかの実施形態において、微生物は、例えば、P. aeruginosaP. chlororaphisP. malleiP. pseudomalleiP. fluorescensP. alcaligenesP. mendocina、及びPstutzeri等のPseudomonas spp.細菌である。
【0065】
これらの微生物は、カスタマイズされた比率で存在することができる。利点を挙げると、有機廃棄物の存在下で、これらの微生物は、プロテアーゼ、リパーゼ、レダクターゼ及びアミラーゼ等の酵素、有機物の分解に有益である他の増殖副生成物を生成する。
【0066】
利点を挙げると、廃棄物の存在下で、これらの微生物は、プロテアーゼ、リパーゼ、レダクターゼ、及びアミラーゼ等の酵素、食品処理廃棄物の分解に有益な他の増殖副生成物を生成する。
【0067】
いくつかの実施形態において、本方法は、廃水の脱窒、及び/又は廃水及び/又は活性汚泥からの硝酸塩及び/又はアンモニウムの除去に使用することができ、高濃度微生物培養物は、例えば、Thiobacillus denitrificansMicrococcus spp.(例えば、M. denitrificansM. roseus)、Serratia spp.、Pseudomonas spp.、及びAchromobacter spp.等の硝酸塩還元細菌(NRB)を含む。
【0068】
本発明の方法による微生物カクテルは、微生物自体、微生物増殖副生成物、及び微生物の培養から生じる任意の残留増殖培地を含む。カクテルは、微生物増殖のための追加の栄養素をさらに含むことができる。
【0069】
好ましくは、微生物カクテルの微生物は、別々に培養され、得られる高濃度微生物生成物は、カクテルを廃水に導入する前に、又はその時点で組み合わされる。
【0070】
微生物は、栄養細胞、胞子、分生子、菌糸体及び/又はそれらの組み合わせの形態である。特定の実施形態において、微生物は、浸漬発酵、固相発酵(SSF)、又はそれらの組み合わせ及び/又は改変バージョンを使用して生成される。好ましい実施形態において、発酵は、改変された固体発酵系を使用して行われる。
【0071】
特定の実施形態において、廃水サンプルは、微生物群をさらに含む。一実施形態において、サンプルは、嫌気性消化装置、ラグーン又は他の水域内の微生物群全体の代表を含む。
【0072】
廃水サンプルからの微生物群を分析して、微生物群内に存在する微生物種の同一性を決定し、微生物群の他の種に対する各種の個体群割合を決定することができる。分析は、例えば、DNA配列決定、DNAフィンガープリンティング、ELISA、及び細胞プレーティングのような、当該分野で標準的な方法を含む。
【0073】
微生物群中に存在する微生物の種は、水処理プロセスにとって有益、共生又は有害と分類することができる。いくつかの実施形態において、サンプルを分析する目的は、微生物群が「ディスバイオシス」にあるかどうかを決定することであり、本発明によれば、「ディスバイオシス」は、共生及び/又は有害微生物の過剰増殖、又は有益微生物の量、割合(percentage)、もしくは数より多くの量、割合、もしくは数の共生微生物及び/又は有害微生物を含む微生物群の過剰増殖を意味する。
【0074】
本明細書中で使用される「有益」微生物は、単に共生する微生物又は有害な微生物ではなく、廃水処理プロセスに有益性を付与する微生物である。有益性は、例えば、廃水中の廃棄物の直接消化及び/又はそれを助ける代謝生成物の生成を含む。
【0075】
「共生」微生物は、微生物群内に有益でない様式で存在する微生物であるが、必ずしもそれに直接的な害を引き起こすわけではない。しかしながら、共生微生物は、廃水処理プロセスにおける空間及びリソースに関して有益な微生物に勝り、効率を低下させる。廃水処理における共生微生物の例としては、例えば、Lactobacillus spp.及びBifidus spp.を挙げることができる。
【0076】
「有害」微生物は、例えば、有益微生物を死滅及び/又は寄生させることによって、又は亜酸化窒素やメタン等の温室効果ガスを含む有害な増殖副生成物を生成することによって、廃水処理プロセスに直接的又は間接的な害を引き起こす微生物である。有害微生物はまた、病原性生物を含み、これは、廃水から除去されない場合、他の生存生物や環境にとって害となる。
【0077】
全個体群の少なくとも25%、30%、35%、40%、45%又はそれ以上である共生微生物及び/又は有害微生物の割合は、ディスバイオティックであると考えられる。いくつかの実施形態において、ディスバイオティック微生物群は、有益な微生物よりも多くの共生及び/又は有害な微生物を存在させ、50%を超える個体群割合となる。
【0078】
ディスバイオシスにある廃水処理施設は、共生及び/又は有害な微生物の少ないものよりも効率が低い。したがって、本発明は、好ましくは、ディスバイオティック廃水処理システムを、バランスのとれた微生物群を有するものに回復させるために使用される。バランスのとれた微生物群は、様々な微生物種を含む群であり、その大部分は廃水処理プロセスに有益である。例えば、好ましい実施形態において、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%以上の微生物群の個体群が、有益な微生物種を含む。
【0079】
サンプル内の微生物群がディスバイオティックであると決定されると、本方法は、ディスバイオシスから微生物群を引き出すために、微生物群に加えるようにカスタマイズされた「微生物カクテル」を生成することをさらに含む。結果として、微生物カクテルは、廃水処理プロセスの速度をバイオオーグメンテーションする(すなわち、生物学的手段を使用するプロセスの効率を増加させる)。
【0080】
特定の実施形態において、これはまた、嫌気性消化装置、ラグーン、及び他の排水場所から生成される亜酸化窒素及びメタン(両方とも温室効果ガス)の量を、これらの化合物を生成する微生物の数を減少させることによって減少させるのを助けることができる。いくつかの実施形態において、本方法は、廃水中の有害及び/又は病原性微生物の数を減少させるために使用することができる。いくつかの実施形態において、有害な微生物は、有害な硫化水素ガスを生成する硫酸還元細菌(SRB)である。
【0081】
特定の実施形態において、微生物バイオオーグメンテーションカクテルは、例えば、カクテルを廃水に注ぎ、その中で混合することによって、廃水に導入される。この後、カクテル中の微生物は、廃水中で増殖及び/又は成長し、そこから不純物、汚染物質及び/又は廃棄物を除去するために必要な代謝生成物を生成する。いくつかの実施形態において、成長促進剤は、特に、微生物が胞子形態で適用される場合、微生物カクテルと共に適用される。いくつかの実施形態において、処理物を温めて、効率をさらに高める。
【0082】
一実施形態において、本方法は、カクテルの処理能力をさらに増進することができる微生物増殖副生成物を導入することをさらに含む。増殖副生成物は、カクテルの微生物によって生成されるものを含む、又はそれらは別個の成分として添加される。
【0083】
一実施形態において、増殖副生成物は、バイオサーファクタント、酵素、バイオポリマー、溶剤、酸、タンパク質、アミノ酸、又は廃水の処理に有用である他の代謝生成物である。特定の実施形態において、増殖副生成物はバイオサーファクタントである。
【0084】
バイオサーファクタントは、微生物によって生成される、構造的に多様なグループの表面活性物質である。バイオサーファクタントは、生分解性であり、再生可能な基質上の選択された生物を用いて生成することができる。ほとんどのバイオサーファクタント生成生物は、増殖培地中の炭化水素源(例えば、油、糖、グリセロール等)の存在に応答してバイオサーファクタントを生成する。鉄の濃度等、他の培地成分もまた、バイオサーファクタント生成に大きく影響を及ぼす。微生物バイオサーファクタントは、様々な微生物、例えば、Pseudomonas spp.(P. aeruginosaP. putida、P. florescensP. fragiP. syringae)、Flavobacterium spp.B. subtilisB. pumillusB. licheniformisB. amyloliquefaciensB. cereus)Wickerhamomyces spp.(例えば、W. anomalus)Candida spp.(例えば、C. albicansC. rugosaC. tropicalisC. lipolyticaC. torulopsis)Rhodococcus spp. 、Arthrobacter spp.Campylobacter spp.Cornybacterium spp.、Pichia spp.(例えば、P. anomalaP. guilliermondiiP. occidentalis)Starmerella spp.(例えば、S. bombicola)等によって生成される。
【0085】
バイオサーファクタントは全て両親媒性物質である。それらは、2つの部分:極性(親水性)部分及び非極性(疎水性)基からなる。脂肪酸の炭化水素鎖は、バイオサーファクタント分子の共通の親油性部分として作用し、一方、親水性部分は、中性リピドのエステル又はアルコール基によって、脂肪酸又はアミノ酸(又はペプチド)のカルボキシレート基によって、フラボリピドの場合には有機酸によって、又はグリコリピドの場合には炭水化物によって形成される。それらの両親媒性構造のために、バイオサーファクタントは、疎水性の水不溶性物質の表面積を増加させ、そのような物質の水バイオアベイラビリティを増加させ、細菌細胞表面の特性を変化させる。
【0086】
バイオサーファクタントは、界面に蓄積して、界面張力を減少させ、溶液中に凝集ミセル構造を形成させる。バイオサーファクタントの孔を形成し、生体情報膜を不安定化する能力は、抗菌剤、抗真菌剤、及び溶血剤としてのそれらの使用を可能にする。低い毒性及び生分解性の特性と組み合わせて、バイオサーファクタントは、廃水処理を含む様々な用途での使用に有利である。
【0087】
本方法によるバイオサーファクタントは、例えば、グリコリピド(例えば、ソホロリピド、ラムノリピド、セロビオースリピド、マンノシルエリトリトールリピド及びトレハロースリピド)、リポペプチド(例えば、サーファクチン、イチュリン、フェンギシン、アトロファクチン及びリケニシン)、フラボリピド、脂肪酸エステル、ホスホリピド(例えば、カルジオリピン)、リポタンパク質、リポ多糖-タンパク質複合体、及び多糖-タンパク質-脂肪酸複合体等の高分子量ポリマーから選択することができる。
【0088】
1つ以上のバイオサーファクタントは、生物学的又は合成的に改変された形態を含む、バイオサーファクタントの改変形態、誘導体、フラクション、アイソフォーム、異性体又はサブタイプのいずれか1つ又は組み合わせをさらに含むことができる。特定の実施形態において、1つ以上のバイオサーファクタントは、純粋な形態で適用される。
【0089】
利点を挙げると、バイオサーファクタントは、管の詰まりを解消し、化合物の流れや排液を増進するために、固化したFOG等の特定の廃棄物を液化することができる。さらに、バイオサーファクタントは、酵素と相乗作用し、及び/又は微生物カクテルによって生成される異なる酵素と相乗作用して、廃棄物の処理を増進することができる。さらに、バイオサーファクタントは生分解性である。
【0090】
利点を挙げると、本発明の方法は、処理環境における有益な微生物の割合を増加させることによって、廃水を処理する効率を増加する。さらに、特定の廃水処理システムの微生物個体群は、システムの場所及び廃棄物の内容に基づいて大きく変化するため、本方法は、狭い範囲の好ましいタスクを達成するために個体群に選択的に添加される生物のカスタマイズされた群を利用することによって、嫌気性プロセスを促進することができる。微生物個体群を最適化することによって、処理プラントは、そのエネルギー消費及びコストを大幅に低減することができる。さらに、廃水処理を停止する必要はないため、処理プラントの標準操作手順に従う処理が、サンプル採取、試験、培養の間、及び本方法に従う微生物カクテルの導入の後に、中断されずに継続できる。
【0091】
本発明による微生物の増殖
本発明は、新規な形態の固体又は表面発酵を使用した、微生物の培養及び微生物代謝生成物及び/又は微生物増殖の他の副生成物の製造のための方法を提供する。ハイブリッドシステムを使用することもできる。本明細書中で使用される「発酵」は、制御された条件下での細胞の増殖をいう。増殖は、好気性又は嫌気性である。
【0092】
一実施形態において、本発明は、バイオマス(例えば、生存細胞材料)、細胞外代謝生成物(例えば、小分子、ポリマー及び排泄タンパク質)、残留栄養素及び/又は細胞内成分(例えば、酵素及び他のタンパク質)を生成するための物質及び方法を提供する。
【0093】
本発明に従って使用される微生物増殖容器は、工業的使用のための任意の密閉発酵槽又は培養反応器である。一実施形態において、反応器は、例えば、生地を校正するための商業的なベーキングに使用される標準的なオーブン等の校正オーブンである。一実施形態において、反応器は、例えば、同時にインキュベートされるマトリックス上で増殖する培養物の数十又は数百のトレイを提供するために必要な構成要素を装備した、トレーラー又はルーム等のスケールアップエンクロージャの形態である。一実施形態において、反応器は、任意で、連続製造のための自動コンベヤシステム又はプーリシステムを備えることができる。
【0094】
一実施形態において、容器は、任意で、機能制御/センサを有する、又はpH、酸素、圧力、温度、撹拌機シャフト出力、湿度、粘度、及び/又は微生物密度及び/又は代謝生成物濃度等、培養プロセスにおける重要な因子を測定するために機能制御/センサに接続することができる。しかしながら、好ましくは、そのような制御は必要ではない。
【0095】
さらなる実施形態において、容器は、容器内の微生物の増殖(例えば、細胞数及び増殖期の測定)を監視することもできる。あるいは、毎日のサンプルを容器から採取し、希釈プレーティング技術等の当技術分野で公知の技術による計数に供してもよい。希釈プレーティングは、サンプル中の微生物の数を推定するために使用される単純な技術である。また、この技術は、異なる環境又は処理を比較することができる指標も提供する。
【0096】
一実施形態において、この方法は、培養物を窒素源で補充することを含む。窒素源は、例えば、硝酸カリウム、硝酸アンモニウムアンモニウム硫酸塩、リン酸アンモニウム、アンモニア、尿素、及び/又は塩化アンモニウムである。これらの窒素源は、単独で、又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0097】
この方法は、増殖培養物を酸素化することができる。一実施形態は、低酸素含有空気を除去し、酸素化空気を導入するために、緩慢な空気流を利用する。酸素化空気は、例えば、エアポンプを介して毎日補充される周囲空気であってもよい。
【0098】
本方法は、培養物に炭素源を補充することをさらに含むことができる。炭素源は、典型的には、グルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、トレハロース、マンノース、マンニトール、及び/又はマルトース等の炭水化物、酢酸、フマル酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、マロン酸、及び/又はピルビン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソブタノール、及び/又はグリセロール等のアルコール、大豆油、キャノーラ油、米ぬか油、オリーブ油、トウモロコシ油、ゴマ油、及び/又はアマニ油等の脂肪及び油である。これらの炭素源は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0099】
一実施形態において、微生物の成長因子、微量栄養素、及び/又は生体刺激剤が培地に含まれる。これは、それらが必要とするビタミンの全てを生成することができない微生物を増殖させる場合に特に好ましい。鉄、亜鉛、銅、マンガン、モリブデン及び/又はコバルトのような微量元素を含む無機栄養素もまた、培地に含まれていてもよい。さらに、ビタミン、必須アミノ酸、及び微量元素の源は、例えば、トウモロコシ粉等の穀粉又はミールの形態で、又はジャガイモエキス、牛エキス、大豆エキス、バナナ皮エキス等のエキスの形態で、又は精製された形態で含まれる。各種アミノ酸、例えば、タンパク質の生合成に有用な各種アミノ酸もまた含まれる。
【0100】
一実施形態において、無機塩も含まれる。使用可能な無機塩は、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸鉄(例えば、硫酸第一鉄七水和物)、塩化鉄、硫酸マンガン、硫酸マンガン一水和物、塩化マンガン、硫酸亜鉛、塩化鉛、硫酸銅、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、及び/又は炭酸ナトリウムである。これらの無機塩は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
いくつかの実施形態において、例えば、基質に接種するために使用される微生物が胞子形態(例えば、細菌内生胞子)である場合、成長促進剤を基質に添加することができる。本発明による成長促進剤の例としては、L-アラニン、マンガン、L-バリン、及びL-アスパラギン、又は任意の他の公知の成長促進剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
いくつかの実施形態において、培養方法は、任意で、培養プロセスの前及び/又は間に、追加の酸及び/又は抗菌剤を基質に添加することを含む。しかしながら、有利なことに、本発明の方法は、微生物の増殖速度が遅いことに部分的に起因して、培養中の汚染からの保護の必要性を低減又は排除する。
【0103】
混合物のpHは、目的の微生物に適切なものとすべきであるが、利点を挙げると、緩衝液又はpHレギュレータを使用するpHの安定化は、本発明の培養方法を使用する場合に必要ではない。
【0104】
微生物の培養及び微生物副生成物の製造のための方法及び装置は、バッチ法又は準連続法で行うことができる。
【0105】
一実施形態において、微生物の培養方法は、約15~60℃、好ましくは、25~40℃で実施され、特定の実施形態においては、25~35℃、又は32~37℃で実施される。一実施形態において、培養は、一定温度で連続的に実施されてもよい。他の実施形態において、培養は、温度を変えて行ってもよい。周囲の空気を反応器にポンプで送り込み、全体に循環させることによって、温度を好ましい範囲内に保つことができる。
【0106】
一実施形態において、本発明の培養方法で使用される装置及び基質の全滅菌は必要ではない。しかしながら、装置及び基質は、任意で滅菌することができる。トレイは、例えば、オートクレーブを使用して、栄養培地で広げる前及び/又は後に滅菌される。さらに、蒸気パン蓋及びパンバンドは、固体基質の接種前に、例えば、オートクレーブ処理によって滅菌することができる。
【0107】
反応器/容器のような培養装置は、滅菌ユニット、例えば、オートクレーブから分離されても、接続されてもよい。また、培養装置は、接種を開始する前にインサイチュで滅菌する滅菌ユニットを有してもよい。空気は、当技術分野で公知の方法によって滅菌することができる。例えば、周囲空気を、容器内に導入される前に、少なくとも1つのフィルタに通過させる。他の実施形態において、培地は、低温殺菌されても、又は任意で、全く加熱されなくてもよく、低水分活性及び低pHを利用して、細菌増殖を制御してもよい。
【0108】
一実施形態において、本発明は、増殖及び代謝生成物生成に適切な条件下で、微生物株を培養することによって、微生物代謝生成物を生成する方法をさらに提供する。任意で、本方法は、代謝生成物を精製することを含むことができる。本発明は、例えば、バイオサーファクタント、バイオポリマー、エタノール、乳酸、ベータ-グルカン、タンパク質、ペプチド、代謝中間体、多価不飽和脂肪酸、リピド及び酵素等の代謝生成物を生成する方法を提供する。
【0109】
目的の微生物によって生成される微生物増殖副生成物は、微生物中に保持されるか、又は基質中に分泌される。代謝生成物含有量は、例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%である。
【0110】
他の実施形態において、微生物増殖副生成物を生成するための方法は、目的の微生物増殖副生成物を濃縮及び精製する工程をさらに含んでいてもよい。さらなる実施形態において、基質は、微生物増殖副生成物の活性を安定化する化合物を含有していてもよい。
【0111】
一実施形態において、微生物培養組成物は全て、培養の完了時に(例えば、所望の胞子密度、又は特定の代謝生成物の密度を達成した時に)除去される。このバッチ手順において、全く新しいバッチは、第1のバッチの採取時に開始される。
【0112】
他の実施形態において、発酵生成物の一部のみが、任意の時点で除去される。この実施形態において、生細胞を有するバイオマスは、新しい培養バッチのための接種物として容器内に残る。除去される組成物は、無細胞基質であってもよいし、細胞を含有していてもよい。このようにして、準連続装置が生成される。
【0113】
マトリックス発酵
好ましい実施形態において、本発明は、固体状態又は表面発酵のための新規な手順及びシステムを使用して、微生物ベース生成物を培養するための方法を提供する。利点を挙げると、本発明は、DO、pH及び他の発酵パラメータを測定及び/又は安定化するための専用の通気システム、ミキサー、又はプローブを有する発酵システムを必要としないことである。
【0114】
好ましい実施形態において、微生物を培養し、及び/又は微生物増殖副生成物を生成する方法は、水と混合された固体基質の層、及び、任意で、微生物増殖を増進するために、栄養素をトレイ上に広げてマトリックスを形成し、所望の種の接種剤をマトリックスの表面上に適用し、接種されたトレイを発酵反応器内に配置し、空気を反応器に通して25~40℃に温度を安定化させ、微生物をマトリックス全体にわたって増殖させることを含む。
【0115】
好ましい実施形態において、本発明の方法によるマトリックス基質は食品を含む。食品は、例えば、米、豆又はマメ科植物、トウモロコシ及び他の穀物、パスタ、コムギふすま、コムギ粉又はミール(例えば、トウモロコシ粉、ニシュタマイズドトウモロコシ粉、部分加水分解トウモロコシミール)、及び/又は微生物培養物が増殖及び/又は飼料供給するための表面積を与える他の同様の食品を含むことができる。
【0116】
マトリックス基質が予め製造されたパスタを含む一実施形態において、パスタは、例えば、トウモロコシ粉、小麦粉、セモリナ粉、米粉、キノア粉、ジャガイモ粉、大豆粉、ヒヨコマメ粉及び/又はこれらの組み合わせから製造することができる。いくつかの実施形態において、パスタは濃縮粉から作られる。
【0117】
いくつかの実施形態において、パスタは、長い紐又はリボン、例えば、スパゲッティ又はフェットチーネの形状である。いくつかの実施形態において、パスタは、例えば、シート、シェル、スパイラル、コルクスクリュー、ホイール、中空管、弓、又はそれらの任意の変形の形状である。利点を挙げると、微生物は、パスタの内側及び/又はパスタの外側表面上で増殖することができることである。これにより、微生物が増殖する表面積が増え、基質内の微生物増殖の深さが増え、培養物内の酸素浸透が増進される。
【0118】
マトリックス基質が米粒を含む一実施形態において、マトリックス基質は、米粒を水と混合し、どの微生物が培養されているかに応じて、栄養培地を添加することによって作製することができる。
【0119】
一実施形態において、培養方法は、トレイを作製することを含み、例えば、標準プルーフィングオーブンに取り付けられた金属シートパン又はスチームパンである。いくつかの実施形態において、「トレイ」は、例えば、プラスチック、金属、又はガラスから作製された、例えば、フラスコ、カップ、バケツ、プレート、パン、タンク、バレル、皿、又はカラム等の、基質及び培養物を保持することができる任意の容器又はコンテナである。
【0120】
作製は、例えば、箔でトレイの内面を覆うものである。また、作製には、例えば、トレイをオートクレーブすることによって滅菌も含まれる。
【0121】
次に、食品、水、及び任意で追加の塩及び/又は栄養素を混合して微生物の増殖をサポートすることによって、マトリックス基質を作製する。特定の実施形態において、栄養培地は、例えば、マルトース、酵母エキス又は別のタンパク質源、ミネラル、カリウム、ナトリウム、リン及び/又はマグネシウム源を含む。
【0122】
次に、混合物をトレイ上に広げ、層状にして、約1~12インチ、好ましくは、1~6インチの厚さを有するマトリックスを形成する。マトリックスの厚さは、それが作製されるトレイ又は他の容器の体積によって変わる。
【0123】
好ましい実施形態において、マトリックス基質は、微生物が増殖する十分な表面積、酸素供給のし易さを提供する。したがって、微生物が増殖し繁殖する基質は、微生物の栄養培地としても作用する。
【0124】
いくつかの実施形態において、溝、隆起部、チャネル、及び/又は穴をマトリックスに形成して、微生物が増殖する表面積を増やすことができる。これはまた、基質内の微生物増殖の深さも増やし、培養物全体にわたって酸素浸透を増進する。
【0125】
基質全体にわたる微生物移動性を増加させるために、本方法は、生物刺激剤、ジャガイモエキス及び/又はバナナ皮エキスを基質に適用することをさらに含む。これによって、基質の表面全体にわたる培養物の分布の速度が速くなる。
【0126】
いくつかの実施形態において、例えば、基質に接種するために使用される微生物が胞子形態である場合、成長促進剤を基質に適用することができる。本発明による成長促進剤の例としては、L-アラニン、マンガン、L-バリン、及びL-アスパラギン、又は任意の他の公知の成長促進剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
次に、マトリックスがトレイ上に広げられた後に、トレイ及びマトリックスの滅菌処理を行うことができる。滅菌処理は、オートクレーブ又は当該分野で公知の任意の他の手段によって行われる。いくつかの実施形態において、このプロセスはまた、基質を効果的に調理する。
【0128】
必要に応じて、蓋及びシリコンパンバンドを設けて、トレイをシールすることができる。完全に滅菌されたシステムを作り出すために、蓋及びパンバンドを滅菌することもできる。
【0129】
トレイ内にマトリックス基質を作製した後、トレイに、必要に応じて滅菌栄養培地と予め混合された所望の微生物を接種することができる。任意で、培養される微生物及び/又は生成される増殖副生成物に応じて、トレイを、蓋及びパンバンドで密封する。一実施形態において、例えば、微生物がBacillus spp.細菌である場合、トレイは好ましくは密封しない。
【0130】
接種材料は、栄養細胞、胞子、又は微生物の他の形態を含むことができる。一実施形態において、接種は、基質層の表面上に接種材料を均一に適用することによって行われる。接種材料は、例えば、スプレー、散布、注入、注射又は散布によって適用することができる。一実施形態において、接種はピペットを用いて行われる。
【0131】
次に、接種されたトレイを発酵反応器内に配置する。一実施形態において、トレイは、プルーフィングオーブン内に配置される。プルーフィングオーブンは、例えば、商業的ベーキングに使用される標準プルーフィングオーブンである。任意で、反応器は、コンベヤシステムを備えることができ、トレイは、例えば、コンベヤベルト又はプーリシステムを使用して、反応器を連続移動する。
【0132】
一実施形態において、複数の反応器、例えば、複数のプルーフィングオーブンを使用することができる。一実施形態において、反応器は、分配可能であり、携帯可能である。複数の反応器が使用されるさらなる実施形態において、輸送を容易にするために、複数の反応器を単一のプラットフォームに組み立てることができる。
【0133】
発酵パラメータは、生成される所望の生成物(例えば、所望の微生物バイオサーファクタント)及び培養される微生物に基づいて調整することができる。
【0134】
反応器内の温度は、培養される微生物によるが、一般的には、反応器を通してポンプ輸送される周囲空気を用いて約25~40℃に保たれる。循環空気はまた、培養物に連続的な酸素化を行うこともできる。空気循環はまた、DOを所望のレベル、例えば、周囲空気の約90%に維持する助けにもなる。
【0135】
一実施形態において、培養物のpHを監視又は安定化する必要はない。トレイは、最大微生物濃度を達成するために、滅菌栄養培地で、発酵の間、規則的に(例えば、1日に1回、1日毎に1回、1週間に1回)噴霧してよい。
【0136】
培養物は、微生物が所望の濃度に達するか、又は50~100%胞子形態に達する時間、好ましくは、1日~14日、より好ましくは、2日~10日インキュベートされる。
【0137】
いくつかの実施形態において、微生物は、発酵の間中、マトリックス基質の一部又は全体のいずれかを消費する。
【0138】
培養胞子が形成されると、培養物及び残りの基質をトレイから採取し、次いで、一緒にブレンドして、微生物スラリーを生成することができる。本方法に従って増殖させた微生物の濃度は、水中に分解された場合、例えば、1グラム当たり1×106~1×1013の繁殖体(又はCFU)、好ましくは、1×108~1×1013CFU/g、又は、少なくとも5×109~5×1010CFU/mlに達する。
【0139】
一実施形態において、微生物スラリーを粉砕し、微粉化し、及び/又は乾燥させて、微生物、その増殖副生成物、及びマトリックス基質を含有する乾燥微生物ベース生成物を生成する。微生物スラリーは、当技術分野で公知の任意の乾燥方法を使用して乾燥することができる。一実施形態において、乾燥生成物は、約3%~6%の水分保持である。
【0140】
一実施形態において、溶解した培養物を含む溶液を、水を使用して1×106~1×107CFU/mLの濃度に希釈して、多種多様な設定及び用途で利用することができる液状微生物ベース生成物を形成する。任意で、例えば、カリウム、リン、マグネシウム、炭素、タンパク質、アミノ酸等の源を含む栄養素を水に添加して、微生物の増殖を増進することができる。
【0141】
胞子形態の微生物の活性化及び/又は成長は、低(マイクロモル)濃度のL-アラニン、マンガン又は任意の他の公知の成長促進剤を添加することによって、培養中又は微生物形成生成物の適用時のいずれかに増進される。
【0142】
一実施形態において、本発明のシステム及び方法は、微生物代謝生成物を生成するために使用することができ、ここで、微生物スラリーを乾燥する代わりに、微生物スラリーを濾過して、液体を固体から分離する。次いで、微生物代謝生成物を含む抽出される液体は、所望であれば、例えば、遠心分離、ロータリーエバポレーション、精密濾過、限外濾過及び/又はクロマトグラフィーを使用してさらに精製される。
【0143】
代謝生成物及び/又は増殖副生成物は、例えば、バイオサーファクタント、酵素、バイオポリマー、酸、溶剤、アミノ酸、核酸、ペプチド、タンパク質、リピド及び/又は炭水化物である。具体的には、一実施形態において、本方法を用いて、バイオサーファクタントを生成する。
【0144】
利点を挙げると、本方法は、複雑な設備や高いエネルギー消費を必要としない。目的の微生物は、現場で小規模又は大規模に培養され、そのうえそれらの培地と混合されていても利用できる。同様に、微生物代謝生成物はまた、必要な部位で大量に生成することもできる。
【0145】
利点を挙げると、微生物ベース生成物は、遠隔地で製造することができる。微生物増殖施設は、例えば、太陽光、風力及び/又は水力を利用することによって、グリッドから外れて作動することができる。
【0146】
発酵室システム
一実施形態において、本方法で利用される発酵反応器は、4つの垂直壁、床、及び天井を有する、大きく、防湿シールされた密閉空間を含む。壁は、任意で、1つ又は複数の窓及び/又はドアを備えることができる。この「発酵室」は、例えば、プルーフィングオーブン発酵反応器内に存在するであろう環境を、さらに大規模に再現することができる。
【0147】
一実施形態において、発酵室は、車輪付きトレーラ等の携帯プラットフォーム上に固定される。
【0148】
一実施形態において、発酵室の内壁は、複数の水平面を有し、その上に、接種された基質を保持するための容器を配置することができる。
【0149】
一実施形態において、表面は棚の形態である。棚は、エンクロージャの壁に固定することができる。棚ユニットは、天井から吊り下げたり、及び/又は床に固定することができる。
【0150】
一実施形態において、発酵室は、複数の金属シートパンラックを含む。シートパンラックは、好ましくは、固体基質及び微生物培養物が広げられるトレイを保持するための複数のスライドを含む。一実施形態において、棚は携帯可能であり、つまり、ホイールで固定される。
【0151】
一実施形態において、パンラックは、10~50個のトレイを保持することができる。好ましくは、スライドは、各トレイ間の最適な空気循環を可能にするために、互いに少なくとも3インチ離間される。
【0152】
一実施形態において、部屋の天井は、例えば、天井通気口及び/又は空気フィルタを備えた空気流を可能にするように任意で収容することができる。さらに、天井及び壁にUV光を取り付けて、システム内の空気及び他の表面の滅菌処理を補助することができる。利点を挙げると、金属トレイ及び金属パンラックの使用は、UV滅菌処理を増加させるためにUV光の反射を増進する。
【0153】
部屋は、温度制御を備えることができるが、部屋全体にわたる空気の循環によって、所望の発酵温度となるのが好ましい。
【0154】
発酵室の寸法は、例えば、室の位置及びそこに配置されるトレイの数等の様々な要因に基づいてカスタマイズすることができる。一実施形態において、天井の高さは少なくとも8フィートであり、床の面積は少なくとも80平方フィートである。
【0155】
微生物バイオオーグメンテーションカクテル
特定の実施形態において、本発明は、食品処理廃棄物の処理に使用するための1つ以上の微生物及び/又は1つ以上の微生物増殖副生成物を含む微生物ベース生成物を提供し、生成物中の細胞濃度は、約1×106~1×1013細胞(又はCFU)/g以上である。一実施形態において、組成物は、微生物及び/又は微生物によって生成される代謝生成物及び/又は任意の残留栄養素を含有するマトリックス基質を含む。
【0156】
発酵生成物は、抽出又は精製することなく直接使用することができる。所望であれば、抽出及び精製は、当業者に公知の標準的な抽出方法又は技術を使用して行うことができる。
【0157】
マトリックス基質、微生物、及び/又は副生成物を採取すると、生成物を水に溶解して液体生成物を形成することができる。
【0158】
あるいは、マトリックス、微生物及び/又は副生成物を採取すると、生成物をブレンドし、粉砕し、及び/又は微粉砕してから、乾燥させて乾燥生成物を形成することができる。この乾燥生成物を、水に溶解し、必要に応じて希釈することができる。
【0159】
微生物ベース生成物中の微生物は、活性又は不活性形態である。いくつかの実施形態において、微生物は、栄養、胞子、菌糸、分生子形態及び/又はそれらの混合物である。微生物ベース生成物は、さらなる安定化、保存、及び貯蔵なしに使用される。
【0160】
乾燥生成物及び/又は液体生成物は、例えば、即座に使用するために、タンカーを介して、適用部位に移すことができる。
【0161】
他の実施形態において、組成物は、例えば、意図される用途、意図される適用方法、発酵容器のサイズ、及び微生物増殖施設から使用場所への任意の輸送モードを考慮して、適切なサイズの容器中に配置される。したがって、微生物ベース組成物が配置される容器は、例えば、1ガロン~1,000ガロン以上であってよい。特定の実施形態において、容器は、2ガロン、5ガロン、25ガロン、又はそれ以上である。
【0162】
反応器から微生物ベース組成物を採取すると、採取された生成物が処理され、及び/又は容器に入れられる(又は使用のために輸送される)際に、さらなる成分を添加することができる。添加剤は、例えば、緩衝剤、担体、同じ又は異なる施設で製造される他の微生物ベース組成物、粘度調整剤、防腐剤、微生物増殖のための栄養素、追跡剤、農薬、及び意図される用途に特定の他の成分である。
【0163】
利点を挙げると、本発明に従って、微生物ベース生成物は微生物が増殖された基質を含む。生成物中のバイオマスの量は、重量で、例えば、それらの間の全ての割合を含めて0%~100%のいずれかである。
【0164】
任意で、生成物は、使用前に保管することができる。貯蔵時間は短いことが好ましい。したがって、貯蔵時間は、60日未満、45日未満、30日未満、20日未満、15日未満、10日未満、7日未満、5日未満、3日未満、2日未満、1日未満、又は12時間未満であってよい。好ましい実施形態において、生細胞が生成物中に存在する場合、生成物は、例えば、20℃、15℃、10℃、又は5℃未満等の低温で貯蔵される。一方、バイオサーファクタント組成物は、典型的には周囲温度で貯蔵することができる。
【0165】
本発明に従って培養することができる生物は、例えば、活性汚泥タンクからサンプリングされ、同定された酵母、真菌、細菌、古細菌、原生動物、後生動物及び藻類を含むことができる。
【0166】
微生物カクテルは、例えば、B. subtilisB. licheniformisB. firmusB. laterosporusB. megaterium、及びB. amyloliquefaciensを含むがこれらに限定されないBacillus spp.細菌のような、異なる比率のBacillus spp.微生物を含む。特定の例示的な実施形態において、B. amyloliquefaciens NRRL B-67928が使用される。
【0167】
いくつかの実施形態において、微生物は、例えば、P. aeruginosaP. chlororaphisP. malleiP. pseudomalleiP. fluorescensP. alcaligenesP. mendocina、及びP. stutzeri等のPseudomonas spp.細菌である。利点を挙げると、有機廃棄物の存在下で、これらの微生物は、プロテアーゼ、リパーゼ、レダクターゼ及びアミラーゼ等の酵素、ならびに有機物の分解に有益な他の増殖副生成物を生成する。
【0168】
利点を挙げると、廃棄物の存在下で、これらの微生物は、プロテアーゼ、リパーゼ、レダクターゼ、及びアミラーゼ等の酵素、ならびに食品処理廃棄物の分解に有益な他の増殖副生成物を生成する。
【0169】
一実施形態において、細菌は、例えば、Thiobacillus denitrificansMicrococcus spp(例えば、M. denitrificans、M. roseus)、Serratia spp、Pseudomonas spp、及び/又はAchromobacter spp.等の脱窒細菌又は硝酸塩還元細菌である。
【0170】
いくつかの実施形態において、微生物は、原生動物及び/又は後生動物、例えば、アメーバ、べん毛虫、繊毛虫、ロティファー、線虫、及びタルディグレードである。いくつかの実施形態において、微生物は、酵母、真菌、又は藻類である。
【0171】
一実施形態において、微生物カクテルは、微生物増殖副生成物を含む。これらは、培養物の微生物によって生成することができ、及び/又は廃水への導入前に培養物に添加することができる。増殖副生成物としては、例えば、バイオサーファクタント、酵素、バイオポリマー、溶剤、酸、タンパク質、アミノ酸、炭水化物、及び/又は廃水の処理に有用な他の代謝生成物が挙げられ得る。一実施形態において、増殖副生成物は、バイオサーファクタントである。
【0172】
特定の他の実施形態において、組成物は、1つ又は複数の微生物増殖副生成物を含み、増殖副生成物は、微生物培養物から抽出され、任意で精製されている。例えば、一実施形態において、本発明の方法のマトリックス基質をブレンドして濃厚なスラリーを形成することができ、これを濾過又は遠心分離して液体部分を固体部分から分離することができる。次いで、微生物増殖副生成物を含む液体部分を、そのまま使用するか、又は公知の方法を使用して精製することができる。
【0173】
微生物ベース生成物の現地製造
本発明の特定の実施形態において、微生物増殖施設は、所望のスケールで、目的の新鮮な高密度の微生物及び/又は目的の微生物増殖副生成物を生成する。微生物増殖施設は、適用部位又はその近く(例えば、食品処理プラント)に配置されてもよい。この施設は、バッチ、準連続、又は連続培養で高密度の微生物ベース組成物を製造する。
【0174】
本発明の微生物増殖施設は、微生物ベース生成物が使用される場所に配置することができる。例えば、微生物増殖施設は、使用場所から300、250、200、150、100、75、50、25、15、10、5、3、又は1マイル未満であってよい。
【0175】
本発明の微生物増殖施設は、微生物自体、微生物代謝生成物、及び/又は微生物が増殖する培地の他の成分を含む新鮮な微生物ベース組成物を生成する。所望であれば、組成物は、高密度の栄養細胞又は増殖体、もしくは栄養細胞と増殖体との混合物を有することができる。
【0176】
微生物ベース生成物は、従来の微生物製造の微生物安定化、保存、貯蔵、及び輸送プロセスに頼ることなく、現地製造することができるので、はるかに高密度の微生物を生成することができる。それによって、現場適用で使用するのに必要な微生物ベース生成物は少ない体積で済み、所望の効力を達成するのに必要な場合は、はるかに高密度の微生物の適用が可能となる。このシステムは効率的であり、細胞を安定化したり、培養培地から分離する必要性を排除することができる。また、微生物ベース生成物の現地製造は、生成物中への増殖培地の包含を容易にする。培地は、発酵の間に生成された、現地使用に特に適した薬剤を含有することができる。
【0177】
現地製造された高密度で頑強な微生物の培養は、サプライチェーンにしばらくの間残っていたものよりも、現場でより有効である。本発明の微生物ベース生成物は、発酵増殖培地中に存在する代謝生成物及び栄養素から細胞が分離されている従来の生成物と比較して特に有利である。輸送時間の短縮は、現地の要求に応じて、その時間及び体積における微生物及び/又はそれらの代謝生成物の新鮮なバッチの製造及び配送を可能にする。
【0178】
一実施形態において、微生物増殖施設は、微生物ベース生成物が使用される現場又はその近傍、例えば、300マイル、200マイル、又はさらには100マイル以内に位置する。利点を挙げると、これによって、組成物を特定の場所で使用するために調整することができる。微生物ベース組成物の式及び効力は、特定の適用のために、及び適用時の現地条件に従って、カスタマイズすることができる。
【0179】
利点を挙げると、分散型微生物増殖施設は、上流での処理遅延、サプライチェーンのボトルネック、不適切な貯蔵、及び、例えば、細胞が元々増殖される生存可能な高細胞数の生成物及び関連する培地及び代謝生成物のタイムリーな配送及び適用を妨げる他の不測の事態に起因して、その生成物の品質が損なわれる、遠方の工業規模の製造者に頼るという現在の問題に対する解決策を提供する。
【0180】
さらに、組成物を現地製造することによって、製剤及び効力を、特定の場所及び適用時に存在する条件にリアルタイムで調節することができる。これは、中央の場所で予め作製され、例えば、所与の場所に最適ではない設定比率及び処方を有する組成物に勝る利点を提供する。
【0181】
微生物増殖施設は、目的地の地理との相乗効果を改善するために微生物ベース生成物を調整する能力によって、製造の汎用性を提供する。利点を挙げると、好ましい実施形態において、本発明のシステムは、天然に存在する現地の微生物及びそれらの代謝副生成物の能力を利用する。
【0182】
例えば、発酵の24時間以内の現地製造及び配送は、純粋な、高細胞密度の組成物及び実質的に低い輸送コストとなる。より効果的で強力な微生物接種材料の開発における急速な進歩の見通しを考えると、微生物ベース生成物を即時に配送するというこの能力から得られる消費者の利益は計り知れない。
【0183】
実施例
本発明及びその多くの利点のより大きな理解は、例示として与えられる以下の実施例から得ることができる。以下の実施例は、本発明の方法、用途、実施形態及び変形のいくつかを例示するものである。それらは、本発明を限定するものと見なされるべきではない。本発明に関して、多数の変更及び修正を行うことができる。
【0184】
実施例1-BACILLUS胞子の発酵
Bacillus spp.胞子の製造には、コムギふすまベース培地を使用する。培地をステンレス鋼スチームパン中で滅菌し、次いで蓋及びパンバンドで密封する。滅菌処理後、パンに種培養物を接種し、プルーフィングオーブン中で48~72時間インキュベートする。発酵の終わりに、1×1010 胞子/gのバチルスが採取される。
【0185】
実施例2-BACILLUS SUBTILIS及びBACILLUS LICHENIFORMISの固相発酵
Bacillus subtilis及びBacillus licheniformisは、固相発酵法を用いて培養することができる。培地は、トウモロコシ粉(部分的に加水分解されたトウモロコシ粉)又はコムギふすまのみを含む。任意で、例えば、塩、糖蜜、澱粉、グルコース、スクロース等のような、微生物の増殖を増進するために、追加の栄養素を含めることができる。
【0186】
箔で覆われたトレイは、接種前にオートクレーブ処理される。培養培地を、約1~2インチの厚さの層でトレイ上に広げる。培地の表面積を増大させるために、基質に溝及び/又は孔が形成される。増殖速度を加速するために、すなわち、細菌の運動性及び培養培地全体にわたる分布を増加させるために、ジャガイモエキス又はバナナ皮エキスを培養物に添加することができる。
【0187】
次に、選択したBacillus菌株の胞子を基質の表面に噴霧し、トレイをプルーフィングオーブンに入れる。プルーフィングオーブン内での発酵は、32~40℃の間の温度でなされる。温度を安定させるために、周囲の空気が、オーブンにポンプで送られる。
【0188】
水中に溶解した場合、本方法により増殖した微生物は、少なくとも5×109~5×1010胞子/mlに達する。次いで、生成物を混合槽中で水で1×106~1×107胞子/mlの濃度まで希釈する。添加することのできる栄養素には、例えば、カリウム塩(0.1%以下)、糖蜜及び/又はグルコース(1~5g/L)、硝酸塩が含まれる。
【国際調査報告】