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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-06
(54)【発明の名称】心臓伝導系の捕捉
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/362 20060101AFI20220530BHJP
   A61B 5/287 20210101ALI20220530BHJP
   A61B 5/333 20210101ALI20220530BHJP
   A61B 5/33 20210101ALI20220530BHJP
   A61B 5/256 20210101ALI20220530BHJP
   A61B 5/366 20210101ALI20220530BHJP
【FI】
A61N1/362
A61B5/287
A61B5/333
A61B5/33 110
A61B5/256 210
A61B5/366
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557287
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(85)【翻訳文提出日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 US2020019589
(87)【国際公開番号】W WO2020205092
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】16/370,203
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507020152
【氏名又は名称】メドトロニック,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100119781
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】ゴーシュ,スバム
【テーマコード(参考)】
4C053
4C127
【Fターム(参考)】
4C053BB12
4C053BB23
4C053CC01
4C053KK02
4C053KK08
4C053KK10
4C127AA02
4C127BB05
4C127DD04
4C127GG10
4C127JJ03
4C127LL08
4C127LL13
(57)【要約】
心房から心室への(VfA)治療の心臓伝導系の捕捉を決定するためのシステム、方法、および機器が本明細書に記載される。VfA治療は、患者の電気的活動が監視されている間、複数の異なる房室遅延で提供され得る。その後、その電気的活動を利用して、患者の心臓伝導系がVfA治療によって捕捉されたかを決定することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
患者の組織からの電気的活動を監視するための複数の電極を備える電極装置と、
処理回路を備え、かつ前記電極装置に連結された演算装置であって、
複数の診断的房室遅延での心房から心室への(VfA)ペーシング治療の提供中に前記複数の電極のうちの1つ以上の電極を使用して前記患者の心臓の電気的活動を監視することであって、前記複数の診断的房室遅延が各々、前記患者の内因性房室遅延未満である、監視することと、
前記複数の診断的房室遅延でのVfAペーシング治療の提供中の前記監視された電気的活動に基づいて前記VfAペーシング治療が心臓伝導系を捕捉したかを決定することと、を行うように構成されている、演算装置と、を備える、システム。
【請求項2】
前記システムがVfAペーシング治療装置をさらに備え、前記VfAペーシング治療装置が、左心室に前記VfAペーシング治療を提供するための、前記患者の心臓の左心室心筋(myocardium)の基底(basal)領域および/または中隔(septal)領域内に右心房のKoch三角領域から右心房心内膜(endocardium)および中心線維体(central fibrous body)を通って植込み可能な組織貫通電極を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複数の診断的房室遅延のうちの最も長い診断的房室遅延が、前記患者の内因性房室遅延の70%以下である、請求項1~2のいずれかに記載のシステム。
【請求項4】
前記複数の電極が、前記患者の胴体の皮膚に近接して設置されるように構成されたアレイに位置付けられた複数の表面電極を含む、請求項1~3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記演算装置が、前記複数の診断的房室遅延でのVfAペーシング治療の提供中の前記監視された電気的活動に基づいて電気的不均一性情報(EHI)を生成するようにさらに構成されており、前記複数の診断的房室遅延でのVfAペーシング治療の提供中の前記監視された電気的活動に基づいて前記VfAペーシング治療が心臓伝導系を捕捉したかを決定することが、前記EHIに基づいて前記VfAペーシング治療が前記心臓伝導系を捕捉したかを決定することを含む、請求項1~4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
複数の診断的房室遅延でのVfAペーシング治療の提供が、前記診断的房室遅延を経時的に減少させることを含み、
前記EHIに基づいて前記VfAペーシング治療が前記心臓伝導系を捕捉したかを決定することが、前記房室遅延が減少するにつれて前記EHIが変化した場合に、前記VfAペーシング治療が前記心臓伝導系を捕捉していないと決定することを含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記複数の電極が1つ以上の植込み型電極を含む、請求項1~6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
複数の診断的房室遅延でのVfAペーシング治療の提供が、前記診断的房室遅延を経時的に減少させることを含み、
前記複数の診断的房室遅延でのVfAペーシング治療の提供中の前記監視された電気的活動に基づいて前記VfAペーシング治療が前記心臓伝導系を捕捉したかを決定することが、前記房室遅延が減少するにつれて前記監視された電気的活動の心臓信号形態および持続期間の一方または両方が変化した場合に、前記VfAペーシング治療が前記心臓伝導系を捕捉していないと決定することを含む、請求項1~7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記演算装置が、前記複数の診断的房室遅延でのVfAペーシング治療の提供中の前記監視された電気的活動に基づいて房室ブロックを決定するようにさらに構成されている、請求項1~8のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
前記複数の診断的房室遅延でのVfAペーシング治療の提供中の前記監視された電気的活動に基づいて房室ブロックを決定することが、
前記房室遅延が減少するにつれて、前記監視された電気的活動の同期不全、心臓信号形態、および心臓信号持続時間のうちの1つまたは全てが一貫したままであり、かつ
前記監視された電気的活動の同期不全、心臓信号形態、および心臓信号持続時間のうちの1つまたは全てが、選択された房室ブロック閾値を超えた場合に、房室ブロックを決定する、請求項9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書における開示は、例えば、心房から心室への(VfA)心臓治療の心臓伝導系の捕捉の決定に使用するためのシステム、方法、および機器に関する。
【背景技術】
【0002】
植込み型ペースメーカー、心臓除細動器、除細動器、またはペースメーカー-心臓除細動器-除細動器などの植込み型医療機器(IMD)は、心臓に治療的電気刺激を提供する。IMDは、徐脈に対処するためにペーシングを、または頻脈もしくは細動などの頻脈性不整脈を停止させるためにペーシングまたはショックを提供する場合がある。いくつかの事例では、医療機器は、心臓の内因性脱分極を検知し、内因性脱分極(またはその欠如)に基づいて不整脈を検出し、内因性脱分極に基づいて不整脈が検出された場合、心臓への電気刺激の送達を制御し得る。
【0003】
IMDは、ペーシングの一形態である心臓再同期治療(CRT)を提供する場合も得る。CRTは、左心室、または左心室および右心室の両方へのペーシングの送達を含む。心室へのペーシングパルスの送達のタイミングおよび位置は、心室収縮の協調および効率を改善するように選択され得る。
【0004】
医療機器を植込むためのシステムは、植込み型医療機器自体に加えて、ワークステーションまたは他の機器を含み得る。いくつかの事例では、これらの他の機器は、医師または他の技術者が心臓上または心臓内の特定の位置に心臓内リードを設置するのを支援する。いくつかの事例では、機器は、心臓の電気的活動および心臓内リードの位置に関する情報を医師に提供する。
【0005】
ペーシング電極を植込む際、かつかかるペーシング電極を使用してペーシング治療を提供している間、ペーシング電極およびそれによって提供されるペーシング治療が心臓伝導系または他の心臓組織を捕捉したかを決定することが困難である可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に記載の例示的なシステム、機器、および方法は、ユーザ(例えば、医師)が、心房から心室への(VfA)ペーシング電極などのペーシング電極、およびそれによって提供される心臓治療が、植込み中および植込み後の一方または両方の他の心臓組織とは対照的に心臓伝導系を捕捉したかを決定するのを支援するように構成され得る。さらに、本明細書に記載の例示的なシステム、機器、および方法は、ユーザ(例えば、医師)が、患者が房室ブロックを有する(例えば、心房から房室結節を横切る心室への自然伝導がない)かを決定するのを支援するように構成され得る。
【0007】
1つ以上の実施形態では、本システム、本機器、および本方法は、非侵襲的であると説明され得る。例えば、いくつかの実施形態では、本システム、本機器、および本方法は、心臓伝導系の捕捉(他の心臓組織の捕捉とは対照的に)および房室ブロックの決定に使用するために、患者の組織からの複数の心臓信号を監視する、または患者の組織から複数の心臓信号を取得するためのリード、プローブ、センサ、カテーテル、植込み型電極などの植込み型機器を必要としないまたは含まない場合がある。代わりに、本システム、本機器、および本方法は、例えば、患者の胴体の周りの患者の皮膚に取り付けられた複数の外部電極を使用して、非侵襲的に行われる電気測定を使用することができる。1つ以上の実施形態では、本システム、本機器、および本方法は、かかるシステム、機器、および方法が、心臓伝導系捕捉および/または房室ブロックの決定または評価に使用するために電気的活動を監視するための植込み型電極を利用し得るという点で、侵襲的であると説明され得る。加えて、いくつかの実施形態では、侵襲的および非侵襲的装置およびプロセスの両方が同じ時間にまたは同時に使用され得ることを理解されたい。
【0008】
これらの例示的なシステム、機器、および方法は、本明細書にさらに記載されるように、心房から心室への(VfA)ペーシングに関連していると説明され得る。VfAペーシングは、心臓伝導系を捕捉することなく心筋のみを捕捉する結果となる可能性がある。心臓伝導系の捕捉の決定は、VfAペーシング治療を提供するリードおよび/またはペーシング機器の配置の決定または評価に有用であると説明され得る。一実施形態では、これらの例示的なシステム、機器、および方法は、概して、患者の内因性房室遅延の70%に等しい房室遅延または間隔でペーシングを送達することと、房室遅延または間隔を所定の最低60ミリ秒(ms)まで約10ミリ秒~約20ミリ秒ずつ漸進的に減少させることとを含むと説明され得る。外部電極装置および間隔電極装置のうちの1つ以上からの電気的活動(例えば、興奮到達時間、電気図、および心電図)が測定され得、測定された電気的活動に基づいて、同期不全情報が決定または生成され得る。
【0009】
心臓伝導系の捕捉がない場合、細胞間伝導のため、より短い房室ペーシング間隔で同期不全が増加する可能性がある。1つ以上の実施形態では、電気的同期不全値(例えば、電極装置から監視される電気的活動から生成されたもの)が初期房室遅延または間隔ペーシングで低く(例えば、興奮到達時間標準偏差(SDAT)が約25ミリ秒以下である、平均左心室または胸部代理電気的興奮到達時間(LVAT)が約40ミリ秒以下である、など)、かつ電気的同期不全値がより短い房室ペーシング間隔で低い状態を保ち続ける場合、心臓伝導系の捕捉が決定され得る。1つ以上の実施形態では、QRS形態および持続時間の一方または両方に関して、短い房室ペーシング間隔の心電図(ECG)および/または電気図(EGM)がより長い房室ペーシング間隔のECGおよび/またはEGMと同様である(例えば、許容範囲内で厳密に一致している、など)場合、心臓伝導系の捕捉が決定され得る。
【0010】
1つの例示的なシステムは、患者の組織からの電気的活動を監視するための複数の電極を備える電極装置と、処理回路を備え、かつ電極装置に連結された演算装置とを含んでもよい。演算装置は、複数の診断的房室遅延での心房から心室への(VfA)ペーシング治療の提供中に複数の電極のうちの1つ以上の電極を使用して患者の心臓の電気的活動を監視することであって、複数の診断的房室遅延が各々、患者の内因性房室遅延未満である、監視することと、複数の診断的房室遅延でのVfAペーシング治療の提供中の監視された電気的活動に基づいてVfAペーシング治療が心臓伝導系を捕捉したかを決定することと、を行うように構成されてもよい。
【0011】
1つの例示的な方法は、複数の診断的房室遅延での心房から心室への(VfA)ペーシング治療の提供中に複数の電極のうちの1つ以上の電極を使用して患者の心臓の電気的活動を監視することであって、複数の診断的房室遅延が各々、患者の内因性房室遅延未満である、監視することと、複数の診断的房室遅延でのVfAペーシング治療の提供中の監視された電気的活動に基づいてVfAペーシング治療が心臓伝導系を捕捉したかを決定することとを含んでもよい。
【0012】
1つの例示的な植込み型医療機器は、患者の心臓の右心房に心臓治療を提供する、またはその電気的活動を検知するための右心房内に位置付け可能な右心房電極を備える複数の電極と、患者の心臓の左心室に心臓治療を提供する、またはその電気的活動を検知するための右心房心内膜および中心線維体を通って植込み可能な組織貫通電極とを含んでもよい。この例示的な機器は、患者の心臓に心臓治療を提供するための複数の電極に動作可能に連結された治療提供回路と、患者の心臓の電気的活動を検知するための複数の電極に動作可能に連結された検知回路をさらに含んでもよい。この例示的な機器は、治療提供回路および検知回路に動作可能に連結された処理回路を備えるコントローラをさらに含んでもよい。コントローラは、複数の診断的房室遅延で少なくとも組織貫通電極を使用して心房から心室への(VfA)ペーシング治療を提供することであって、複数の診断的房室遅延が各々、患者の内因性房室遅延未満である、提供することと、複数の診断的房室遅延でのVfAペーシング治療の提供中に複数の電極のうちの1つ以上の電極を使用して患者の心臓の電気的活動を監視することと、複数の診断的房室遅延でのVfAペーシング治療の提供中の監視された電気的活動に基づいてVfAペーシング治療が心臓伝導系を捕捉したかを決定することと、を行うように構成されてもよい。
【0013】
上記の要約は、本開示の各実施形態または全ての実施態様を説明ようには意図されていない。添付の図面と併用される以下の発明を実施するための形態および特許請求の範囲を参照することにより、より完全な理解が明らかになり、かつ理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】患者の心臓内に植え込まれた心臓内医療機器と、患者の心臓の外側に位置付けられた別個の医療機器とを含む、例示的な心臓治療システムの概念図である。
図2図1の心臓内医療機器および患者の心臓の解剖学的構造の拡大概念図である。
図3】本明細書に記載の例示的なシステムおよび機器とともに使用するための様々な電極植込み位置を示す左心室の標準的な17セグメントビューにおける患者の心臓のマップの概念図である。
図4】本明細書に記載のシステムおよび機器とともに使用するためのリング電極として実装された遠位ハウジングベース電極を含む遠位固定および電極アセンブリを有する例示的な心臓内医療機器の斜視図である。
図5】本明細書に記載の例示的なシステムおよび機器とともに使用するための別の例示的な心臓内医療機器の斜視図である。
図6】例えば、本明細書に記載の機能および治療を提供するために、図1~2および図4~5の医療機器のハウジング内に封入され得る例示的な回路のブロック図である。
図7】心臓伝導系の捕捉を決定する例示的な方法のブロック図である。
図8A】心臓伝導系の捕捉、心臓伝導系の捕捉なし、および房室ブロックの様々なシナリオを描写する、房室ブロックまたは間隔の減少に伴う同期不全のグラフである。
図8B】心臓伝導系の捕捉、心臓伝導系の捕捉なし、および房室ブロックの様々なシナリオを描写する、房室ブロックまたは間隔の減少に伴う同期不全のグラフである。
図8C】心臓伝導系の捕捉、心臓伝導系の捕捉なし、および房室ブロックの様々なシナリオを描写する、房室ブロックまたは間隔の減少に伴う同期不全のグラフである。
図9】電極装置、表示装置、および演算装置を含む例示的なシステムの図である。
図10】胴体表面電位を測定するための例示的な外部電極装置の図である。
図11】胴体表面電位を測定するための例示的な外部電極装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
例示的な実施形態の以下の発明を実施するための形態では、本明細書の一部を形成し、かつ例示として実施され得る特定の実施形態が示されている図面の添付の図が参照される。他の実施形態が利用されてもよく、それらによって提示される本開示の範囲から逸脱することなく(例えば、依然としてその範囲内に入るように)構造的変化が加えられてもよいことを理解されたい。
【0016】
例示的なシステム、方法、および機器は、図1~11を参照して説明されるものとする。一実施形態からの要素またはプロセスが他の実施形態の要素またはプロセスと組み合わせて使用されてもよく、かつ本明細書に記載の特徴の組み合わせを使用するシステム、方法、および機器の可能な実施形態が、図に示されるおよび/または本明細書に記載される特定の実施形態に限定されないことが当業者には明らかであろう。さらに、本明細書に記載の実施形態が必ずしも原寸に比例していない多くの要素を含んでもよいことが認識されるであろう。なおさらに、本明細書のプロセスのタイミングならびに様々な要素のサイズおよび形状が依然として本開示の範囲内に入るように修正されてもよいが、ある特定のタイミング、要素の1つ以上の形状および/もしくはサイズ、または要素のタイプが他のものよりも有利であり得ることが認識されるであろう。
【0017】
図1は、例えば、図1~11に関して本明細書に記載のシステムおよび方法とともに使用されるように構成され得る例示的な心房から心室への(VfA)心臓治療システムを描写する。本開示がリードレス植込み型医療機器およびリードを有する植込み型医療機器の一方または両方を利用し得ることが理解されるべきであるが、図1の例示的な心臓治療システムは、シングルチャンバまたはデュアルチャンバ治療用に構成されてもよく、かつ患者の心臓8内に植え込まれるリードレス心臓内医療機器10を含む。いくつかの実施形態では、機器10は、シングルチャンバペーシング用に構成されてもよく、例えば、シングルチャンバペーシングとマルチチャンバペーシング(例えば、デュアルまたはトリプルチャンバペーシング)との間で切り替わってもよい。本明細書で使用される場合、「心臓内」とは、例えば、心臓治療を提供するために、患者の心臓内に完全に植え込まれるように構成された機器を指す。機器10は、標的植込み領域4における患者の心臓8の右心房(RA)内に植え込まれた状態で示されている。機器10は、標的植込み領域4における心房心内膜に対して機器10の遠位端を固定する1つ以上の固定部材20を含んでもよい。標的植込み領域4は、ヒス束5と冠状静脈洞3との間に位置してもよく、三尖弁6に隣接してもよく、またはその隣に位置してもよい。機器10は、心房からの心室への機器として説明され得るが、これは、例えば、機器10が、一般に右心房内に配置されている間に、心室の一方または両方(例えば、状況に応じて、右心室、左心室、または両心室)からの電気的活動の検知およびそれへの治療の提供の一方または両方を行うまたは実行し得るためである。具体的には、機器10は、右心房のKoch三角領域から右心房心内膜および中心線維体を通って患者の心臓の左心室心筋の基底領域および/または中隔領域内に植え込まれ得る組織貫通電極を含んでもよい。
【0018】
機器10は、リードレス植込み型医療機器として説明され得る。本明細書で使用される場合、「リードレス」とは、患者の心臓8から延びるリードがない機器を指す。さらに、リードレス機器がリードを有してもよいが、そのリードは、患者の心臓の外側から患者の心臓の内側に延びないであろう、または患者の心臓の内側から患者の心臓の外側に延びないであろう。いくつかのリードレス機器は、静脈を通って導入され得るが、一旦植え込まれると、機器は、いずれの経静脈リードも含んでいないまたは含まない場合があり、いずれの経静脈リードも使用することなく心臓治療を提供するように構成されてもよい。さらに、特に、リードレスVfA機器は、機器のハウジングが心房内に位置付けられたときに、心室内の電極に動作可能に接続するためにリードを使用しない。加えて、リードレス電極は、電極とハウジングとの間にリードを使用することなく、医療機器のハウジングに連結されてもよい。
【0019】
機器10は、機器10の遠位端領域から延びる真っ直ぐなシャフトを画定するまたは有するダーツ電極アセンブリ12を含んでもよい。ダーツ電極アセンブリ12は、心室心内膜または心外膜表面を完全に穿孔することなく、心房心筋および中心線維体を通って心室心筋14内に、または心室中隔に沿って配置されてもよく、または少なくとも配置されるように構成されてもよい。ダーツ電極アセンブリ12は、シャフトの遠位端領域に電極を有してもよく、または含んでもよく、これにより、電極が心室心筋内に位置付けられて、心室信号を検知し、心室ペーシングパルスを送達する(例えば、左心室および/または右心室を脱分極して、左心室および/または右心室の収縮を開始する)ことができるようになる。いくつかの例では、シャフトの遠位端領域における電極は、ペーシングおよび検知のための双極電極対において使用するために提供された陰極電極である。例示される植込み領域4は、ダーツ電極アセンブリ12の1つ以上の電極が心室心筋内に位置付けられることを可能にし得るが、本明細書に開示される態様を有する機器は、マルチチャンバペーシング(例えば、デュアルまたはトリプルチャンバペーシング)、マルチチャンバ検知を備えたシングルチャンバペーシング、シングルチャンバペーシングおよび/もしくは検知、または必要に応じて他の臨床治療および用途のために、他の位置に植え込まれてもよいことが認識される。
【0020】
機器10がシングルダーツ電極アセンブリを含むと本明細書で説明されているが、機器10が、心室心内膜または心外膜表面を完全に穿孔することなく、心房心筋および中心線維体を通って心室心筋14内に、または心室中隔に沿って配置された、または配置されるように構成された2つ以上のダーツ電極アセンブリを含んでもよいことを理解されたい。加えて、各ダーツ電極アセンブリは、シャフトの遠位端領域に、または他の領域(例えば、近位または中央領域)に沿って、複数の電極を有してもよく、または含んでもよい。
【0021】
心臓治療システム2は、別個の医療機器50(図1に概略的に描写される)も含んでもよく、この別個の医療機器50は、患者の心臓8の外側(例えば、皮下)に位置付けられてもよく、心臓治療を提供するために患者の心臓8に動作可能に連結されてもよい。一例では、別個の医療機器50は、血管外ICDであってもよい。いくつかの実施形態では、血管外ICDは、除細動電極を含むまたは有する除細動リードを含んでもよい。治療ベクトルは、除細動リード上の除細動電極とICDのハウジング電極との間に存在してもよい。さらに、ICDの1つ以上の電極は、患者の心臓8に関連する電気信号を検知するためにも使用され得る。ICDは、1つ以上の除細動または電気的除細動ショックを含むショック治療を提供するように構成されてもよい。例えば、不整脈が検知された場合、ICDは、電気リード線を介してパルスを送信して、心臓にショックを与え、その正常なリズムを回復させることができる。いくつかの例では、ICDは、リード線を心臓内に配置したり、電線を心臓に直接取り付けたりすることなく、ショック治療を提供することができる(皮下ICD)。本明細書に記載のシステム2とともに使用され得る血管外皮下ICDの例は、2016年3月8日に発行された米国特許第9,278,229号(Reinkeら)に記載されている場合がある。
【0022】
ショック治療(例えば、除細動リードの除細動電極によって提供される除細動ショック)の場合、別個の医療機器50(例えば、血管外ICD)は、制御回路を含んでもよく、この制御回路は、治療提供回路を使用して、前縁電圧、傾斜、提供されるエネルギー、パルス位相などを含むいくつかの波形特性のうちのいずれかを有する除細動ショックを発生させる。治療提供回路は、例えば、単相、二相、または多相波形を生成し得る。加えて、治療提供回路は、異なる量のエネルギーを有する除細動波形を生成し得る。例えば、治療提供回路は、皮下除細動のために合計およそ60~80ジュール(J)のエネルギーを提供する除細動波形を生成し得る。
【0023】
別個の医療機器50は、検知回路をさらに含んでもよい。検知回路は、電極の1つ以上の組み合わせを介して検知された電気信号を取得し、かつ取得された信号を処理するように構成されてもよい。検知回路の構成要素は、アナログ構成要素、デジタル構成要素、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。検知回路は、例えば、1つ以上の検知増幅器、フィルタ、整流器、閾値検出器、アナログ-デジタル変換器(ADC)などを含んでもよい。検知回路は、検知された信号をデジタル形式に変換し、処理および/または分析のためにデジタル信号を制御回路に提供してもよい。例えば、検知回路は、検知電極からの信号を増幅し、増幅された信号をADCによってマルチビットデジタル信号に変換し、その後、デジタル信号を制御回路に提供してもよい。1つ以上の実施形態では、検知回路は、処理された信号を閾値と比較して、心房または心室脱分極(例えば、P波またはR波)の存在を検出し、心房脱分極(例えば、P波)または心室脱分極(例えば、R波)の存在を制御回路に示してもよい。
【0024】
機器10と別個の医療機器50が協働して、患者の心臓8に心臓治療を提供してもよい。例えば、機器10および別個の医療機器50を使用して、頻脈を検出する、頻脈を監視する、および/または頻脈関連治療を提供することができる。例えば、機器10は、別個の医療機器50と無線で通信して、別個の医療機器50を使用してショック治療を誘発してもよい。本明細書で使用される場合、「無線で」とは、機器10と別個の医療機器50との間の金属導体を使用しない動作的連結または接続を指す。一例では、無線通信は、機器10によって提供される特有の、信号送信する、またはトリガする電気パルスを使用してもよく、この電気パルスは、患者の組織を通って伝導し、別個の医療機器50によって検出可能である。別の例では、無線通信は、機器10の通信インターフェース(例えば、アンテナ)を使用して電磁放射を提供してもよく、この電磁放射は、患者の組織を通って伝播し、例えば、別個の医療機器50の通信インターフェース(例えば、アンテナ)を使用して検出可能である。
【0025】
図2は、図1の心臓内医療機器10および患者の心臓8の解剖学的構造の拡大概念図である。具体的には、機器10は、電気的活動を検知するおよび/またはペーシング治療を提供するように構成されている。心臓内機器10は、ハウジング30を含んでもよい。ハウジング30は、密閉された内部空洞を画定してもよく、この内部空洞内には、図6と併せて概略的に概説される検知回路、治療提供回路、制御回路、メモリ、遠隔測定回路、他の任意のセンサ、および電源などの機器10の内部構成要素が備わっている。ハウジング30は、例えば、チタンまたはチタン合金、ステンレス鋼、MP35N(非磁性ニッケル-コバルト-クロム-モリブデン合金)、白金合金、または他の生体適合性金属もしくは金属合金などの導電性材料を含んでもよい(例えば、それから形成されてもよい、またはそれを形成してもよい)。他の例では、ハウジング30は、セラミック、ガラス、サファイア、シリコーン、ポリウレタン、エポキシ、アセチルコポリマープラスチック、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー、または他の生体適合性ポリマーを含む非導電性材料を含んでもよい(例えば、それから形成されてもよい、またはそれを形成してもよい)。
【0026】
少なくとも1つの実施形態では、ハウジング30は、例えば、カテーテルの送達を容易にするために、遠位端領域32と近位端領域34との間に延びており、かつ概ね円筒形状を画定していると説明され得る。他の実施形態では、ハウジング30は、本明細書に記載の機能および有用性を果たすために、角柱形状または任意の他の形状であってもよい。ハウジング30は、機器10の植込み中に送達ツールと係合するために、例えば、近位端領域34に画定または位置付けられた送達ツールインターフェース部材26を含んでもよい。
【0027】
ハウジング30の全てまたは一部が、心臓治療中に検知および/またはペーシング電極として機能し得る。示される例では、ハウジング30は、ハウジング30の近位部分(例えば、遠位端領域32よりも近位端領域34に近い)を取り囲む近位ハウジングベース電極24を含む。ハウジング30がチタン合金または上に列記される他の例などの導電性材料である(例えば、それを画定する、それから形成される、など)場合、ハウジング30の一部は、パリレン、ポリウレタン、シリコーン、エポキシ、または他の生体適合性ポリマーのコーティングなどの非導電性材料によって電気的に絶縁されてもよく、導電性材料の1つ以上の別個の領域を露出させたままにして、近位ハウジングベース電極24を形成または画定する。ハウジング30がセラミック、ガラス、またはポリマー材料などの非導電性材料である(例えば、それを画定する、それから形成される、など)場合、チタン、プラチナ、ステンレス鋼、またはそれらの合金などの導電性コーティングまたは層がハウジング30の1つ以上の別個の領域に適用されて、近位ハウジングベース電極24を形成することができる。他の例では、近位ハウジングベース電極24は、ハウジング30に取り付けられるまたは組み立てられるリング電極などの構成要素であってもよい。近位ハウジングベース電極24は、ハウジング30が非導電性材料である場合、例えば、導電性ハウジング30または導電体を介して機器10の内部回路に電気的に連結されてもよい。
【0028】
示される例では、近位ハウジングベース電極24は、ハウジング遠位端領域32よりもハウジング近位端領域34の近くに位置しており、それ故に、近位ハウジングベース電極24と称され得る。しかしながら、他の例では、ハウジングベース電極24は、ハウジング30に沿った他の位置、例えば、示される位置に対してより遠位に位置してもよい。
【0029】
遠位端領域32で、機器10は、遠位固定および電極アセンブリ36を含んでもよく、これは、1つ以上の固定部材20および等しい長さまたは等しくない長さの1つ以上のダーツ電極アセンブリ12を含んでもよい。示されるかかる一例では、シングルダーツ電極アセンブリ12は、ハウジング遠位端領域32から離れて遠位方向に延びるシャフト40と、シャフト40の自由遠位端領域にまたはその近くに先端電極42などの1つ以上の電極要素とを含む。先端電極42は、鋭いまたは斜めのエッジを有する鋭い先端または針状の先端を使用することなく組織層内にかつ組織層を通って貫通するように比較的狭い先端直径(例えば、約1ミリメートル(mm)未満)を有する円錐形または半球形の遠位先端を有してもよい。
【0030】
ダーツ電極アセンブリ12は、1つ以上の組織層を貫通して、先端電極42を所望の組織層、例えば、心室心筋内に位置付けるように構成されてもよい。したがって、シャフト40の高さ47または長さは、予想されるペーシング部位の深さに対応してもよく、シャフト40は、植込み領域4に対してかつその内部に押し付けられたときに横方向または半径方向への曲げに抵抗するように、その長手方向軸に沿って比較的高い圧縮強度を有してもよい。第2のダーツ電極アセンブリ12が用いられる場合、その長さは、予想されるペーシング部位の深さに等しくなくてもよく、ペーシングエネルギーを組織に提供するおよび/または組織から信号を検知するために不関電極として機能するように構成されてもよい。一実施形態では、例えば、ダーツ電極アセンブリ12を標的植込み領域内の組織内に前進させるように長手方向押圧力をハウジング30の近位端34に加えることによって、長手方向軸力が先端電極42に対して加えられ得る。
【0031】
シャフト40は、例えば、組織運動に伴う一時的な屈曲を許容するように、長手方向に非圧縮性である、および/または横方向または半径方向力にさらされたときに横方向または半径方向に弾性的に変形可能であると説明され得るが、横方向力が減少したときにその通常の真っ直ぐな位置に戻り得る。したがって、シャフト40を含むダーツ電極アセンブリ12は、弾力性であると説明され得る。シャフト40がいずれの外力にもさらされていない場合、またはその長手方向中心軸に沿った力のみにさらされている場合、シャフト40は、示されるように、真っ直ぐな線形位置を保持し得る。
【0032】
言い換えれば、ダーツ電極アセンブリ12のシャフト40は、通常は真っ直ぐな部材であってもよく、剛性であってもよい。他の実施形態では、シャフト40は、比較的剛性であるが、依然として横方向に制限された可撓性を有すると説明され得る。さらに、シャフト40は、心臓運動に伴ういくらかの横方向屈曲を可能にするように非剛性であってもよい。しかしながら、弛緩状態では、いずれの外力にもさらされていない場合、シャフト40は、少なくともシャフト40の高さ47または長さだけハウジング遠位端領域32から離間して先端電極42を保持するように、示されるように真っ直ぐな位置を維持してもよい。
【0033】
1つ以上の固定部材20は、通常は湾曲した位置を有する1つ以上の「タイン」と説明され得る。タインは、送達ツール内の遠位方向に延ばされた位置で保持されてもよい。タインの遠位先端は、制限された深さまで心臓組織を貫通し、その後、送達ツールから解放されると、(示される)通常の湾曲した位置に近位方向に再び弾性的または弾力的に湾曲してもよい。さらに、固定部材20は、例えば、2017年6月13日に発行された米国特許第9,675,579号(Grubacら)および2015年9月1日に発行された米国特許第9,119,959号(Rysら)に記載の1つ以上の態様を含んでもよい。
【0034】
いくつかの例では、遠位固定および電極アセンブリ36は、遠位ハウジングベース電極22を含む。マルチチャンバペーシング(例えば、デュアルまたはトリプルチャンバペーシング)および検知のために機器10をペースメーカーとして使用する場合、先端電極42は、リターン陽極電極として機能する近位ハウジングベース電極24と対になった陰極電極として使用されてもよい。あるいは、遠位ハウジングベース電極22は、心室信号を検知し、かつ心室ペーシングパルスを送達するために、先端電極42と対になったリターン陽極電極として機能してもよい。他の例では、遠位ハウジングベース電極22は、心房信号を検知し、かつ標的植込み領域4における心房心筋にペーシングパルスを送達するために、陰極電極であってもよい。遠位ハウジングベース電極22が心房陰極電極として機能する場合、近位ハウジングベース電極24は、心室ペーシングおよび検知のために先端電極42と対になったリターン陽極として、かつ心房ペーシングおよび検知のために遠位ハウジングベース電極22と対になったリターン陽極として機能してもよい。
【0035】
この図に示されるように、いくつかのペーシング用途における標的植込み領域4は、一般に房室結節15およびヒス束5よりも下の心房心内膜18に沿っている。ダーツ電極アセンブリ12は、心室心内膜表面17を穿孔することなく、標的植込み領域4内の心房心内膜18を通り、中心線維体16を通って、心室心筋14内に貫通するように、シャフト40の高さ47または長さを少なくとも部分的に画定してもよい。ダーツ電極アセンブリ12の高さ47または長さが標的植込み領域4内に完全に前進すると、先端電極42は心室心筋14内に留まってもよく、遠位ハウジングベース電極22は、心房心内膜18と密接に接触してまたはそれにごく近接して位置付けられてもよい。ダーツ電極アセンブリ12は、様々な例では、約3mm~約8mmの先端電極42とシャフト40とを組み合わせた高さ47または長さを有してもよい。シャフト40の直径は、約2mm未満であってもよく、約1mm以下、またはさらには約0.6mm以下であってもよい。
【0036】
機器10は、ハウジング30内に音響および/または運動検出器11を含んでもよい。音響または運動検出器11は、図6に関して記載されるように、制御回路80、検知回路86、または治療提供回路84のうちの1つ以上に動作可能に連結されてもよい。音響および/または運動検出器11は、心房機械的活動(例えば、心房収縮)および/または心室機械的活動(例えば、心室収縮)などの機械的活動を監視するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、音響および/または運動検出器11は、右心房機械的活動を検出するために使用されてもよい。音響および/または運動検出器11の非限定的な例には、加速度計およびマイクロフォンの一方または両方が挙げられる。いくつかの実施形態では、音響および/または運動検出器11によって検出された機械的活動は、機器10の電極のうちの1つ以上によって検出された電気的活動を補足または置き換えるために使用されてもよい。例えば、音響および/または運動検出器11は、近位ハウジングベース電極24に加えて、またはその代替として使用されてもよい。
【0037】
音響および/または運動検出器11は、心拍応答検出のために、または心拍応答性IMDの提供のためにも使用されてもよい。心拍応答に関する様々な技法は、1992年10月13日に発行された米国特許第5,154,170号(Bennettら)、表題「Optimization for rate responsive-cardiac pacemaker」、および1996年10月8日に発行された米国特許第5,562,711号(Yerichら)、表題「Method and apparatus for rate-responsive cardiac pacing」に記載されている場合がある。
【0038】
様々な実施形態では、音響および/または運動センサ11は、心音(HS)センサとして使用されてもよく、マイクロフォンおよび/または1軸、2軸、もしくは3軸加速度計として実装されてもよい。一実施形態では、音響および/または運動センサ11は、心音と関連付けられた機械的運動に応答するハウジング30内に取り付けられた圧電結晶として実装される。本開示の技法を用いて実装のために適合され得る音響センサの他の実施形態の例は、米国特許第4,546,777号(Grochら)、米国特許第6,869,404号(Schulhauserら)、米国特許第5,554,177号(Kievalら)、および米国特許第7,035,684号(Leeら)に概説されている場合がある。
【0039】
言い換えれば、様々なタイプの音響および/または運動センサ11が使用されてもよい。例えば、音響および/または運動センサ11は、心音のうちの1つ以上に応答し、それにより、時間および振幅で心音に相関した電気アナログ信号を生成するまたは発生させることができる任意の植込み型または外部センサであると説明され得る。その後、アナログ信号が処理されてもよく、これは、HS検知モジュールまたは制御回路80によって導き出される振幅または相対時間間隔などのHSパラメータを取得するために、HS検知モジュールによるデジタル変換を含んでもよい。音響および/または運動センサ11ならびにHS検知モジュールは、最適化されたCRTまたは別の心臓治療を提供することができるIMD、例えば機器10などに組み込まれてもよく、または本明細書に記載のペースパラメータ最適化手順中に使用される別のIMDまたは外部プログラマまたはコンピュータと有線または無線通信を有する別個の機器に実装されてもよい。
【0040】
図3は、患者の心臓の二次元(2D)心室マップ300(例えば、上から下に見た図)であり、標準的な17セグメントビューにおける左心室320および右心室322を示している。マップ300は、人間の心臓の異なる領域に対応する複数の領域326を画定するまたは含む。例示されるように、領域326は、1~17で数字的にラベル付けされている(これは、例えば、人間の心臓の標準的な17セグメントモデルに対応する、人間の心臓の左心室の17セグメントに対応する、など)。マップ300の領域326は、基底前領域1、基底前中隔領域2、基底下中隔領域3、基底下領域4、基底下外側領域5、基底前外側領域6、中央前側領域7、中央前壁中隔領域8、中央下壁中隔領域9、中央下側領域10、中央下外側領域11、中央前外側領域12、頂端前側領域13、頂端中隔領域14、頂端下側領域15、頂端外側領域16、および頂端領域17を含んでもよい。右心室322の下壁中隔領域および前壁中隔領域、ならびに右脚(RBB)25および左脚(LBB)27も例示されている。
【0041】
いくつかの実施形態では、本開示の組織貫通電極のうちのいずれかが、患者の心臓の左心室心筋の基底領域および/または中隔領域内に植え込まれてもよい。具体的には、組織貫通電極は、右心房のKoch三角領域から右心房心内膜および中心線維体を通って植え込まれてもよい。植え込まれると、組織貫通電極は、左心室心筋の基底領域および/または中隔領域などの標的埋め込み領域4(図1~2)内に位置付けられてもよい。マップ300を参照して、基底領域には、基底前領域1、基底前壁中隔領域2、基底下壁中隔領域3、基底下領域4、中央前領域7、中央前壁中隔領域8、中央下中隔領域9、および中央下壁領域10のうちの1つ以上が含まれる。マップ300を参照して、中隔領域には、基底前壁中隔領域2、基底前壁中隔領域3、中央前壁中隔領域8、中央下壁中隔領域9、および頂端中隔領域14のうちの1つ以上が含まれる。
【0042】
いくつかの実施形態では、組織貫通電極は、植え込まれると、左心室心筋の基底中隔領域内に位置付けられ得る。基底中隔領域には、基底前壁中隔領域2、基底下壁中隔領域3、中央前壁中隔領域8、および中央下壁中隔領域9のうちの1つ以上が含まれ得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、組織貫通電極は、植え込まれると、左心室心筋の高い下/後基底中隔領域内に位置付けられ得る。左心室心筋の高い下/後基底中隔領域は、基底下壁中隔領域3および中央下壁中隔領域9のうちの1つ以上(例えば、基底下壁中隔領域のみ、中央下壁中隔領域のみ、または基底下壁中隔領域および中央下壁中隔領域の両方)の一部を含んでもよい。例えば、高い下/後基底中隔領域は、概して破線境界として例示される領域324を含んでもよい。示されるように、破線境界は、高い下/後基底中隔領域が位置するおおよその場所を表しており、これは、特定の用途に応じていくらか異なる形状またはサイズをとる場合がある。
【0044】
図4は、ペーシング治療を提供するおよび/または心臓信号を検知することができる機器10の三次元斜視図である。示されるように、遠位固定および電極アセンブリ36は、リング電極として実装された遠位ハウジングベース電極22を含む。遠位ハウジングベース電極22は、固定部材20の固定部材タイン20a、20b、および20cが心房組織と係合したときに、心房組織と密接に接触してまたはそれに動作的に近接して位置付けられてもよい。タイン20a、20b、および20cは、弾性的に変形可能であってもよく、または植込み部位への機器10の提供中に遠位方向に延ばされてもよい。例えば、タイン20a、20b、および20cは、機器10が送達ツールから前進したときに心房心内膜表面を貫通し、送達ツール内にもはや拘束されなくなると(示されるように)それらの通常の湾曲した位置に戻って屈曲してもよい。タイン20a、20b、および20cがそれらの通常の位置に戻って曲がると、固定部材20は、遠位固定部材および電極アセンブリ36を心房心内膜表面に向かって「引っ張って」もよい。遠位固定部材および電極アセンブリ36が心房心内膜に向かって引っ張られると、先端電極42は、心房心筋および中心線維体を通って心室心筋内に前進してもよい。その後、遠位ハウジングベース電極22は、心房心内膜表面に対して、またはそれに隣接して位置付けられてもよい。
【0045】
遠位ハウジングベース電極22は、例えば、チタン、白金、イリジウム、またはそれらの合金などの導電性材料を含んでもよい(例えば、それから形成されてもよい)。一実施形態では、遠位ハウジングベース電極22は、単一の連続したリング電極であってもよい。他の例では、遠位ハウジングベース電極22の一部が、電気絶縁コーティング、例えば、パリレン、ポリウレタン、シリコーン、エポキシ、または別の絶縁コーティングでコーティングされて、電極の導電性表面積を減少させることができる。例えば、遠位ハウジングベース電極22の1つ以上のセクターがコーティングされて、遠位ハウジングベース電極22の2つ以上の露出した導電性表面積を分離することができる。例えば、導電性表面積の一部を絶縁コーティングで覆うことによって、遠位ハウジングベース電極22の導電性表面積を減少させることにより、遠位ハウジングベース22の電気インピーダンスが増加し、それにより、心筋、例えば、心房心筋組織を捕捉するペーシングパルス中に供給される電流が減少し得る。より低い電流ドレインにより、機器10の電源、例えば、1つ以上の充電式または非充電式電池を節約され得る。
【0046】
上述されるように、遠位ハウジングベース電極22は、リターン陽極として近位ハウジングベース電極24と組み合わせて植込み部位4において心房組織にペーシングパルスを送達するための心房陰極電極として構成されてもよい。電極22および24を使用して、(P波が検知されなかった場合に提供される)心房ペーシングパルスの制御に使用するための心房P波を検知し、陰極として先端電極42およびリターン陽極として近位ハウジングベース電極24を使用して提供される心房同期化心室ペーシングパルスを制御することができる。他の例では、遠位ハウジングベース電極22は、心室ペーシングおよび検知のために、陰極先端電極42と併せてリターン陽極として使用されてもよい。
【0047】
図5は、別の例によるシングルまたはマルチチャンバ心臓治療(例えば、デュアルまたはトリプルチャンバ心臓治療)のための、心臓伝導系の捕捉を決定する、ペーシング治療を較正する、および/またはペーシング治療を提供するように構成され得る別のリードレス心臓内医療機器310の三次元斜視図である。機器310は、ハウジング遠位端領域332からハウジング近位端領域334まで延びている、円筒状の外側側壁として示される、外側側壁335を有するハウジング330を含んでもよい。ハウジング330は、心房および心室の心臓電気信号の検知および心房チャンバおよび心室チャンバのペーシングを含む、シングルまたはマルチチャンバ心臓治療を行うように構成された電子回路を封入してもよい。提供ツールインターフェース部材326がハウジング近位端領域334上に示されている。
【0048】
遠位固定および電極アセンブリ336は、ハウジング遠位端領域332に連結されてもよい。遠位固定および電極アセンブリ336は、ハウジング遠位端領域332に連結された電気絶縁性遠位部材372を含んでもよい。組織貫通電極アセンブリ312は、ハウジング遠位端領域332から離れて延びており、複数の非組織貫通電極722は、絶縁性遠位部材372に直接連結されてもよい。組織貫通電極アセンブリ312は、ハウジング遠位端領域332から離れて長手方向に延びており、ハウジング330の長手方向中心軸331と同軸上にあってもよい。
【0049】
遠位組織貫通電極アセンブリ312は、電気絶縁シャフト340および先端電極342(例えば、組織貫通電極)を含んでもよい。いくつかの例では、組織貫通電極アセンブリ312は、らせん状シャフト340および遠位陰極先端電極342を含む能動的固定部材と説明され得る。らせん状シャフト340は、シャフト遠位端領域343からシャフト近位端領域341まで延びていてもよく、シャフト近位端領域341は、絶縁性遠位部材372に直接連結されてもよい。らせん状シャフト340は、シャフト長さに沿った心臓組織の検知または刺激を回避するために、電気絶縁材料、例えば、パリレンまたは本明細書に列記される他の例でコーティングされてもよい。
【0050】
先端電極342は、シャフト遠位端領域343にあるまたはそこに位置付けられており、本明細書に記載されるように、先端電極342が心室組織に近接してまたは心室組織内に前進すると、リターン陽極として近位ハウジングベース電極324を使用して、心室ペーシングパルスを送達し、かつ心室電気信号を検知するための陰極電極として機能してもよい。近位ハウジングベース電極324は、ハウジング330を取り囲むリング電極であってもよく、長手方向側壁335の非絶縁部分によって画定されてもよい。電極として機能しないハウジング330の他の部分は、図4の機器10と併せて上述のものと同様の電気絶縁材料でコーティングされてもよい。
【0051】
LV心筋を貫通する2つ以上の(例えば、任意のタイプの)組織貫通電極を使用することは、より局所的なペーシング捕捉のために使用されてもよく、心房組織の捕捉に影響を与える心室ペーシングスパイクを軽減し得る。いくつかの実施形態では、複数の組織貫通電極は、2つ以上のダーツ型電極アセンブリ(例えば、図4の電極アセンブリ12)、らせん型電極を含み得る。複数の組織貫通電極の非限定的な例には、2つのダーツ電極アセンブリ、それを通って(例えば、中心を通って)延びるダーツ電極アセンブリを備えたらせん電極、または二重に絡み合ったらせん電極が挙げられる。複数の組織貫通電極は、双極または多極ペーシングのためにも使用され得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、LV心筋を貫通する(例えば、任意のタイプの)1つ以上の組織貫通電極は、多極組織貫通電極であってもよい。多極組織貫通電極は、1つ以上の電気的に活性で電気的に別個の要素を含んでもよく、これらの要素は、1つ以上の組織貫通電極からの双極または多極ペーシングを可能に得る。言い換えれば、各組織貫通電極は、互いに独立している1つ以上の別個の電極または電気的に活性なセグメントまたは領域を含み得る。
【0053】
複数の非組織貫通電極322は、組織貫通電極アセンブリ312の周囲にある絶縁性遠位部材372の周囲に沿って設けられてもよい。絶縁性遠位部材372は、機器310の遠位方向に向く表面338と、ハウジングの長手方向側壁335に隣接する機器310を取り囲む円周方向面339とを画定してもよい。非組織貫通電極322は、チタン、白金、イリジウム、またはそれらの合金などの導電性材料から形成されてもよい。例示される実施形態では、6つの非組織貫通電極322が、絶縁性遠位部材372の外周に沿って等距離で半径方向に離間されているが、2つ以上の非組織貫通電極322が設けられてもよい。
【0054】
非組織貫通電極322は、非組織貫通電極322と嵌合するようにサイズ決定および形状決定された絶縁部材372内のそれぞれの凹部374内に各々保持された別個の構成要素であってもよい。他の例では、非組織貫通電極322は各々、絶縁性遠位部材372の内部または上に取り付けられた一体型部材の絶縁されていない露出部分であってもよい。電極として機能しない一体型部材の介在部分は、絶縁性遠位部材372によって絶縁されてもよく、または周囲環境にさらされている場合、電気絶縁コーティング、例えば、パリレン、ポリウレタン、シリコーン、エポキシ、または他の絶縁コーティングによってコーティングされてもよい。
【0055】
組織貫通電極アセンブリ312が心臓組織内に前進すると、少なくとも1つの非組織貫通電極322は、パルスを送達するためにおよび/または患者の心臓によって生成された心臓電気信号を検知するために、心臓組織表面に対して、それと密接に接触して、またはそれに動作的に近接して位置付けられてもよい。例えば、非組織貫通電極322は、遠位先端電極342が心室組織、例えば、心室心筋および/または心室伝導系の一部と直接接触して位置付けられるまで、組織貫通電極アセンブリ312が心房組織内を前進して中央繊維体を通ったときに、心房内でのペーシングおよび検知のために右心房心内膜組織と接触して位置付けられてもよい。
【0056】
非組織貫通電極322は、図6を参照して本明細書に記載されるように、リターン陽極として近位ハウジングベース電極324と組み合わせて、心房ペーシングパルスを送達し、かつ心房電気信号、例えば、P波を検知するための陰極電極として集合的に機能するように、ハウジング330によって封入された治療提供回路および検知回路に連結されてもよい。検知回路に含まれたスイッチング回路が制御回路の制御下で作動して、非組織貫通電極のうちの1つ以上を心房検知チャネルに連結することができる。遠位の非組織貫通電極322は、互いに電気的に絶縁されていてもよく、これにより、電極322の個々の電極が各々、治療提供回路に含まれたスイッチング回路によって個別に選択されて、単独でまたは心房陰極電極として電極322のうちの2つ以上の組み合わせで機能するようになり得る。治療提供回路に含まれたスイッチング回路が制御回路の制御下で作動して、非組織貫通電極322のうちの1つ以上を心房ペーシング回路に連結することができる。非組織貫通電極のうちの2つ以上が一度に選択されて、マルチポイント心房陰極電極として動作することができる。
【0057】
心房ペーシングおよび/または心房検知のために選択されたある特定の非組織貫通電極322は、心房捕捉閾値試験、電極インピーダンス、心臓電気信号におけるP波信号強度、または他の要因に基づいて選択されてもよい。例えば、低いペーシング捕捉閾値振幅と比較的高い電極インピーダンスとの最適な組み合わせを提供する陰極電極として機能する単一の非組織貫通電極322または2つ以上の個々の非組織貫通電極322の任意の組み合わせが選択されて、電源からの最小限の電流ドレインを使用して確実な心房ペーシングを達成することができる。
【0058】
いくつかの事例では、遠位方向に向く表面338は、組織貫通電極アセンブリ312がハウジング330を植込み部位4に固定したときに、心房心内膜表面と均一に接触してもよい。その場合、全ての電極322が一緒に選択されて、心房陰極を形成してもよい。あるいは、電極322が1つおきに一緒に選択されて、遠位方向に向く表面338に沿って依然として均等に分布したより高い電気インピーダンスを有するマルチポイント心房陰極を形成してもよい。あるいは、絶縁性遠位部材372の片側に沿った1つ以上の電極322のサブセットが選択されて、ペーシングされる心房組織に対する電極322の相対位置に起因して最も低いペーシング捕捉閾値を達成する所望の部位にペーシングを送達してもよい。
【0059】
他の事例では、遠位方向に向く表面338は、組織貫通電極アセンブリ312が心臓組織に入る位置および向きに応じて、隣接する心内膜表面に対してある角度に向けられてもよい。この状況では、非組織貫通電極322のうちの1つ以上が、他の非組織貫通電極322よりも隣接する心内膜組織と密接して位置付けられてもよく、他の非組織貫通電極は心内膜表面から離れて角度付けられてもよい。絶縁性遠位部材372の周囲に沿って複数の非組織貫通電極を提供することにより、心臓表面、例えば、右心房心内膜表面に対する組織貫通電極アセンブリ312およびハウジング遠位端領域332の角度が実質的に平行である必要はなくてもよい。解剖学的相違および位置的相違により、遠位方向に向く表面338が心内膜表面に対して角度付けられるまたは斜めになってもよいが、絶縁性遠位部材372の周囲に沿って分布した複数の非組織貫通電極322が、1つ以上の電極322と、隣接する心臓組織との間の良好な接触の可能性を高めて、少なくとも複数の電極322のサブセットを使用して許容できるペーシング閾値および確実な心イベント検知を容易にする。絶縁性遠位部材372の全周に沿って円周方向に接触または固定する必要はなくてもよい。
【0060】
非組織貫通電極322は各々、遠位方向に向く表面338に沿って延びる第1の部分322aと、円周方向面339に沿って延びる第2の部分322bとを含むように示されている。第1の部分322aおよび第2の部分722bは連続した露出面であってもよく、これにより、活性電極表面が、遠位方向に向く表面338と円周方向面339を接続する絶縁性遠位部材372の周縁376を包囲するようになる。非組織貫通電極322は、遠位方向に向く表面338に沿った電極322のうちの1つ以上、円周方向面339に沿った1つ以上の電極、遠位方向に向く表面338および円周方向面339の両方に沿って各々延びた1つ以上の電極、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。各非組織貫通電極322の各々の露出面は、それぞれの遠位方向に向く表面338および/または円周方向面と同一平面であってもよい。他の例では、非組織貫通電極322は各々、絶縁性遠位部材372から突出した隆起表面を有してもよい。しかしながら、電極322の任意の隆起表面は、滑らかなまたは丸みを帯びた非組織貫通表面を画定してもよい。
【0061】
遠位固定および電極アセンブリ336は、ハウジング330の遠位端領域を封止してもよく、電極322が取り付けられる基礎を提供してもよい。電極322は、ハウジングベース電極と称されてもよい。電極322は、ハウジング330から離れて延びるらせん状シャフト340の遠位先端にある遠位先端電極342のように、活性電極部分をハウジング330から離れて延長させるシャフトまたは他の延長部によって支持されていなくてもよい。絶縁性遠位部材の遠位方向に向く表面および/または円周方向面に連結された本明細書に提示される非組織貫通電極の他の例には、図4の機器10に関して本明細書に記載される遠位ハウジングベース電極22(遠位ハウジングベース電極は図4の機器10に関して本明細書に記載されるアセンブリ36の周囲に円周方向に延びている)、ボタン電極、他のハウジングベース電極、および他の円周方向リング電極が挙げられる。中央の組織貫通電極の周囲にある絶縁性遠位部材に直接連結された任意の非組織貫通電極は、隣接する心臓組織にペーシングパルスを送達するための陰極電極として、個別に、集合的に、または任意の組み合わせで機能するように提供されてもよい。遠位ハウジングベース電極22および/または円周方向リング電極などのリング電極が提供される場合、リング電極の一部がコーティングによって電気的に絶縁されて、絶縁性遠位部材の遠位方向に向く面および/または円周方向面に沿って複数の分布した非組織貫通電極を提供してもよい。
【0062】
非組織貫通電極322および上に列記される他の例は、遠位固定および電極アセンブリ336に沿って提供された組織貫通電極よりも信頼性が高くかつ有効な心房ペーシングおよび検知を提供することが期待される。心房壁は、心室壁と比較して比較的薄い。組織貫通心房陰極電極が心房組織内に深く延びすぎることがあり、これは、心室組織の不慮の持続的または断続的捕捉につながる。組織貫通心房陰極電極は、心室組織に物理的により近接した組織貫通心房陰極電極を介して受信される心臓電気信号においてより大きい信号強度を有する心室信号により、心房信号の検知の妨害につながり得る。組織貫通電極アセンブリ312は、機器310の植込み位置を安定させ、かつ非組織貫通電極322が心房内で確実にペーシングおよび検知している間に先端電極342が心室組織内で検知およびペーシングするという合理的確実性を提供するために、心室組織内にしっかりと固定されてもよい。機器310が、例えば、機器10に関して図1~2に示されるように、標的植込み領域4内に植え込まれると、非組織貫通電極322が右心房内でペーシングおよび検知を提供している間に、先端電極342が左心室のペーシングために左心室組織に到達してもよい。組織貫通電極アセンブリ312の長さは、左心室組織に到達するために、遠位方向に向く表面338から約4~約8mmの範囲であってもよい。いくつかの事例では、機器310は、両心房(右心房および左心房)捕捉を達成するために標的植込み領域4において非組織貫通電極322を介して心房ペーシング回路83から心房ペーシングパルスを送達し、かつ両心室(右心室および左心室)捕捉を達成するために標的植込み領域4から心室組織内に前進した先端電極342を介して心室ペーシング回路から心室ペーシングパルスを送達することによって、四腔ペーシングを達成してもよい。
【0063】
図6は、一例による心臓信号を検知する機能、捕捉を決定する機能、および/またはペーシング治療を提供する機能を提供するために機器10、310のハウジング30、330内に封入され得る、または本明細書に記載の任意の他の医療機器のハウジング内に封入され得る回路のブロック図である。図1に示される別個の医療機器50は、同様の様式で構成され得るいくつかまたは全ての同じ構成要素を含んでもよい。ハウジング30、330内に封入された電子回路は、心房および心室電気心臓信号を協働的に監視する、心臓系の捕捉が起こったかを決定する、心臓治療が必要な時期を決定する、および/またはプログラムされた治療モードおよびパルス制御パラメータに従って患者の心臓に電気パルスを送達するソフトウェア、ファームウェア、およびハードウェアを含んでもよい。電子回路は、制御回路80(例えば、処理回路を含む)、メモリ82、治療提供回路84、検知回路86、および/または遠隔測定回路88を含んでもよい。いくつかの例では、機器10、310は、患者の1つ以上の生理学的機能、状態(state)、または状態(condition)に相関する信号を生成するための1つ以上のセンサ90を含む。例えば、センサ90は、ペーシング治療の必要性の決定および/またはペーシングレートの制御に使用するための患者活動センサを含んでもよい。さらに、例えば、センサ90は、動作を測定するための慣性測定ユニット(例えば、加速度計)を含んでもよい。さらに、例えば、センサ90は、心音を監視するための音響センサを含んでもよい。なおさらに、例えば、センサ90は、加速度計を含み得る患者活動センサを含んでもよい。患者活動センサによって示される活動の増加による患者の代謝要求の増加は、患者活動センサを使用して決定され得る。言い換えれば、機器10、310は、治療提供回路84によって提供される電気刺激治療を提供するかの決定および/またはその制御に使用するための、患者からの信号を検知するための他のセンサ90を含んでもよい。
【0064】
電源98は、必要に応じて、構成要素80、82、84、86、88、90の各々を含む機器10、310の回路に電力を供給してもよい。電源98は、1つ以上の充電式または非充電式電池などの1つ以上のエネルギー貯蔵機器を含んでもよい。電源98と構成要素80、82、84、86、88、90の各々との間の接続(図示せず)は、例示される概略ブロック図から当業者に理解され得る。例えば、電源98は、治療提供回路84内に含まれる保持コンデンサを充電するために使用される電力を供給するための治療提供回路84内に含まれる1つ以上の充電回路に連結されてもよく、保持コンデンサは、例えば、DDI(R)などのデュアルチャンバペーシングモードに従って、ペーシングパルスを送達するための制御回路80の制御下で適切な時点で放電される。電源98は、様々な回路に電力を供給するために、検知回路86、例えば、検知増幅器、アナログ-デジタル変換器、スイッチング回路など、センサ90、遠隔測定回路88、およびメモリ82の構成要素にも連結されてもよい。
【0065】
示される機能ブロックは、機器10、310内に含まれる機能を表し、本明細書に記載の医療機器10、310に起因する機能を生成することができるアナログおよび/またはデジタル回路を実装する任意のディスクリートおよび/または集積電子回路構成要素を含んでもよい。様々な構成要素には、特定用途向け集積回路(ASIC)、電子回路、プロセッサ(共有、専用、またはグループ)、および1つ以上のソフトウェアまたはファームウェアプログラムを実行するメモリ、組み合わせ論理回路、状態機械、または記載される機能を提供する他の好適な構成要素もしくは構成要素の組み合わせなどの処理回路が含まれてもよい。本明細書に開示される機能を実装するために用いられるソフトウェア、ハードウェア、および/またはファームウェアの特定の形態は、主に、医療機器に用いられる特定のシステムアーキテクチャによって、かつ医療機器によって用いられる特定の検出および治療提供方法によって決定されるであろう。
【0066】
メモリ82には、任意の揮発性、非揮発性、磁気、または電気的非一時的コンピュータ可読記憶媒体、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、不揮発性RAM(NVRAM)、電気的消去可能プログラマブルROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、または他のメモリ機器が含まれてもよい。さらに、メモリ82には、1つ以上の処理回路によって実行されると、制御回路80および/または他の処理回路に、心臓伝導系の捕捉を決定させる、および/または機器10、310に起因する較正されたシングル、デュアル、もしくはトリプルチャンバペーシング治療(例えば、シングルもしくはマルチチャンバペーシング)または他の心臓治療機能(例えば、検知または治療の提供)を行わせる命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体が含まれてもよい。命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体は、上に列記される媒体のうちのいずれかを含んでもよい。
【0067】
制御回路80は、例えば、データバスを介して、治療提供回路84および検知回路86と通信して、心臓電気信号を検知し、検知された心イベント、例えば、P波およびR波、またはそれらの不存在に応答して、心臓電気刺激治療の提供を制御することができる。先端電極42、342、遠位ハウジングベース電極22、322、および近位ハウジングベース電極24、324が治療提供回路84に電気的に連結されて、電気刺激パルスを患者の心臓および検知回路86に送達し、心臓電気信号を検知することができる。
【0068】
検知回路86は、心房(A)検知チャネル87および心室(V)検知チャネル89を含んでもよい。遠位ハウジングベース電極22、322および近位ハウジングベース電極24、324は、心房信号、例えば、心房心筋の脱分極に付随するP波を検知するための心房検知チャネル87に連結されてもよい。2つ以上の選択可能な遠位ハウジングベース電極を含む例では、検知回路86は、利用可能な遠位ハウジングベース電極のうちの1つ以上を心房検知チャネル87内に含まれる心イベント検出回路に選択的に連結するためのスイッチング回路を含んでもよい。スイッチング回路は、スイッチアレイ、スイッチマトリックス、マルチプレクサ、または検知回路86の構成要素を選択された電極に選択的に連結するのに好適な任意の他のタイプのスイッチング機器を含んでもよい。先端電極42、324および近位ハウジングベース電極24、324は、心室信号、例えば、心室心筋の脱分極に付随するR波を検知するための心室検知チャネル89に連結されてもよい。
【0069】
心房検知チャネル87および心室検知チャネル89は各々、それぞれの検知チャネルによって受信された心臓電気信号から、それぞれ、P波およびR波を検出するための心イベント検出回路を含んでもよい。チャネル87および89の各々内に含まれる心イベント検出回路は、心臓電気イベントを検出するために、選択された電極から受信された心臓電気信号を増幅、フィルタリング、デジタル化、および整流して、信号品質を改善するように構成されてもよい。チャネル87および89の各々内の心イベント検出回路は、1つ以上の検知増幅器、フィルタ、整流器、閾値検出器、コンパレータ、アナログ-デジタル変換器(ADC)、タイマー、または他のアナログもしくはデジタル構成要素を含んでもよい。心イベント検知閾値、例えば、P波検知閾値およびR波検知閾値は、例えば、制御回路80によって決定される、メモリ82に記憶される、および/または制御回路80および/もしくは検知回路86のハードウェア、ファームウェア、および/もしくはソフトウェアによって制御されるタイミング間隔および検知閾値に基づいて、制御回路80の制御下で各それぞれの検知チャネル87および89によって自動的に調整されてもよい。
【0070】
検知閾値交差に基づいて電気的心イベントを検出した時点で、検知回路86は、制御回路80に送られる検知イベント信号を生成してもよい。例えば、心房検知チャネル87は、P波検知閾値交差に応答して、P波検知イベント信号を生成してもよい。心室検知チャネル89は、R波検知閾値交差に応答して、R波検知イベント信号を生成してもよい。検知イベント信号は、心臓ペーシングパルスをスケジュールするために使用される基本時間間隔を制御するペーシングエスケープ間隔タイマーを設定するために、制御回路80によって使用されてもよい。検知イベント信号は、特定のプログラムされたペーシングモードに応じて、ペーシングパルスをトリガまたは阻止してもよい。例えば、心房検知チャネル87から受信されたP波検知イベント信号は、制御回路80に、スケジュールされた心房ペーシングパルスを阻止させ、プログラムされた房室(房室(A-V))ペーシング間隔で心室ペーシングパルスをスケジュールさせもよい。房室ペーシング間隔が終了する前にR波が検知された場合、心室ペーシングパルスが阻止されてもよい。制御回路80が心室検知チャネル89からR波検知イベント信号を受信する前に房室ペーシング間隔が終了した場合、制御回路80は、治療提供回路84を使用して、検知されたP波に同期されたスケジュールされた心室ペーシングパルスを送達してもよい。
【0071】
いくつかの例では、機器10、310は、とりわけ、徐脈ペーシング、心臓再同期治療、ショック後ペーシング、および/またはATPなどの頻脈関連治療を含む様々なペーシング治療を提供するように構成されてもよい。例えば、機器10、310は、非洞頻脈を検出し、かつATPを提供するように構成されてもよい。制御回路80は、心イベント時間間隔、例えば、心房検知チャネル87から受信された連続P波検知イベント信号間のP-P間隔、心室検知チャネル89から受信された連続R波検知イベント信号間のR-R間隔、およびP波検知イベント信号とR波検知イベント信号との間で受信されたP-Rおよび/またはR-P間隔を決定してもよい。これらの間隔は、非洞頻脈を検出するために頻脈検出間隔と比較され得る。頻脈は、検出された頻脈検出間隔数閾値に基づいて、所与の心腔内で検出され得る。
【0072】
治療提供回路84は、心房ペーシング回路83および心室ペーシング回路85を含んでもよい。各ペーシング回路83、85は、充電回路、1つ以上の低電圧保持コンデンサなどの1つ以上の電荷蓄積機器、出力コンデンサ、および/またはそれぞれのペーシング回路83、85に連結されたペーシング電極ベクトルにペーシングパルスを送達するために保持コンデンサがいつ出力コンデンサを横断して充電および放電されるかを制御するスイッチング回路を含んでもよい。先端電極42、342および近位ハウジングベース電極24、324は、例えば、心房同期された心室ペーシングおよび基本的なより低い心室ペーシングレートを提供するために制御回路80によって設定された房室または心室間(V-V)ペーシング間隔の終了時に、心室ペーシングパルスを送達するための双極陰極および陽極対として心室ペーシング回路85に連結されてもよい。
【0073】
心房ペーシング回路83は、心房ペーシングパルスを送達するために遠位ハウジングベース電極22、322および近位ハウジングベース電極24、324に連結されてもよい。制御回路80は、プログラムされたより低いペーシングレートに従って1つ以上の心房ペーシング間隔を設定してもよく、またはレート応答センサによって示されるペーシングレートに従って設定される一時的なより低いレートを設定してもよい。心房ペーシング回路は、P波検知イベント信号が心房検知チャネル87から受信される前に心房ペーシング間隔が終了した場合、心房ペーシングパルスを送達するように制御されてもよい。制御回路80は、送達された心房ペーシングパルスに応答して房室ペーシング間隔を開始して、同期されたマルチチャンバペーシング(例えば、デュアルまたはトリプルチャンバペーシング)を提供する。
【0074】
プログラムされたペーシング電圧振幅のための心房または心室ペーシング回路83、85の保持コンデンサの充電、およびプログラムされたペーシングパルス幅のためのコンデンサの放電は、制御回路80から受信された制御信号に従って治療提供回路84によって行われ得る。例えば、制御回路80内に含まれるペースタイミング回路は、様々なシングルチャンバもしくはマルチチャンバペーシング(例えば、デュアルもしくはトリプルチャンバペーシング)モードまたは抗頻脈ペーシングシーケンスと関連付けられた基本ペーシング時間間隔を制御するために、制御回路80のマイクロプロセッサによって設定されたプログラマブルデジタルカウンタを含んでもよい。制御回路80のマイクロプロセッサは、メモリ82に記憶されたプログラムされた値に基づき得る心臓ペーシングパルスの振幅、パルス幅、極性、または他の特性も設定してもよい。
【0075】
心イベントを検知し、かつペーシング治療の提供を制御するために制御回路80によって利用される制御パラメータは、通信インターフェースとしても説明され得る遠隔測定回路88を介してメモリ82にプログラムされ得る。遠隔測定回路88は、無線周波数通信または他の通信プロトコルを使用してプログラマまたはホームモニタなどの外部機器と通信するためのトランシーバおよびアンテナを含む。制御回路80は、外部機器からダウンリンク遠隔測定を受信し、かつ外部機器にアップリンク遠隔測定を送信するために遠隔測定回路88を使用してもよい。いくつかの事例では、遠隔測定回路88を使用して、患者に植え込まれた別の医療機器に/から通信信号を送信および受信することができる。
【0076】
本明細書に記載の例示的なシステム、方法、および機器は、心臓伝導系または他の心臓組織、例えば心筋組織などがVfA心臓ペーシング治療によって捕捉されるかを決定するために使用されてもよく、または構成されてもよい。心臓伝導系の捕捉を決定する例示的な方法200が図7に描写される。概して、例示的な方法200を使用して、心臓組織から内的にまたは外的に(例えば、患者の胴体から)のいずれかで電気的活動を分析し、様々な診断用ペーシング設定を使用してVfA心臓ペーシング治療を調整し、その後、監視された電気的活動に基づいて、VfA心臓ペーシング治療が患者の心臓伝導系を捕捉した(例えば、ペーシングしているか)かを決定することができると説明され得る。加えて、方法200は、監視された電気的活動に基づいて、患者が房室ブロックを有するかを決定することができる場合がある。
【0077】
示されるように、方法200は、電気的活動202を監視することを含み得る。電気的活動は、患者から外的にまたは患者から内的に測定され得る。言い換えれば、電気的活動は、患者の体外の組織(例えば、皮膚)からまたは患者の体内の組織(例えば、心臓組織)から測定され得る。
【0078】
例えば、方法200は、複数の外部電極、例えば、図9~11に関して示され、かつ記載されるものなどを使用して、電気的活動を監視または測定することを含み得る。より具体的には、例えば、複数の外部電極は、図9~11に関して本明細書に記載されるように、電極装置110によって提供される外部電極と同様であり得る。一実施形態では、複数の外部電極は、患者の胴体の周りに設置されるベストまたはバンドの一部であってもよく、またはそれらに組み込まれてもよい。より具体的には、複数の電極は、患者の胴体の皮膚に近接して設置されるように構成されたアレイに位置付けられた表面電極であると説明され得る。複数の外部電極を使用する場合、監視プロセス202が、複数の心電図(ECG)、患者の心臓の脱分極および再分極を表す信号、および/または複数の興奮到達時間を提供し得ると説明され得る。
【0079】
さらに、例えば、方法200は、1つ以上の植込み型電極、例えば、図1~6に関して示され、かつ記載されるものなどを使用して、電気的活動を監視または測定することを含み得る。1つ以上の実施形態では、植込み型電極は、患者の1つ以上の心腔、例えば、右心房、左心房、右心室、および左心室のうちの1つ以上の内部に位置付けられてもよい。1つ以上の実施形態では、植込み型電極は、心臓組織、例えば、心筋、心内膜、および心膜腔のうちの1つ以上に近接して位置付けられてもよい。電気的活動は、患者の心臓の脱分極および再分極の1つ以上の電位図(EGM)または電気信号として提供され得る。
【0080】
VfA心臓治療は、心房イベント(例えば、ペーシングされた脱分極または内因性脱分極)と左心室ペースとの間の期間である房室遅延または間隔を使用して左心室に提供され得る。房室遅延および房室間隔という用語が本明細書に提供される説明において互換的に使用されることを理解されたい。言い換えれば、房室間隔は房室遅延と同じであり、その逆も同様である。
【0081】
方法200は、初期診断的房室間隔204を提供することをさらに含み得る。診断的房室間隔は、VfA心臓治療が心臓伝導系を捕捉したかおよび/または患者が房室ブロックを有するかを決定するために、例示的な方法200に関して本明細書に記載されるプロセスで使用するように構成された選択または決定された間隔であると説明され得る。
【0082】
初期診断的房室間隔は、患者の内因性房室間隔未満であり得る。患者の内因性房室間隔は、心房イベント(例えば、ペーシングされた脱分極または内因性脱分極)と内因性または自然な左心室脱分極との間の期間である。初期診断的房室間隔は、患者の内因性房室間隔に基づいて決定され得る。例えば、患者の内因性房室間隔が測定または検知され得、その後、患者の内因性房室間隔に基づいて、初期診断的房室間隔が生成または計算され得る。
【0083】
一実施形態では、初期診断的房室間隔は、患者の内因性房室間隔の選択されたパーセンテージであり得る。選択されたパーセンテージは、患者の内因性房室間隔の約50%~約90%であり得る。少なくとも1つの実施形態では、選択されたパーセンテージは、患者の内因性房室間隔の70%であり得る。例えば、患者の内因性房室遅延が150ミリ秒であり、選択されたパーセンテージが70%である場合、新たな変更された診断的房室間隔が105ミリ秒に設定され得る。
【0084】
別の実施形態では、初期診断的房室間隔は、患者の内因性房室間隔未満の選択された期間であり得る。選択された期間は、患者の内因性房室間隔の約20ミリ秒(ミリ秒)~約50ミリ秒未満であり得る。例えば、患者の内因性房室遅延が160ミリ秒であり、選択された期間が30ミリ秒である場合、新たな変更された診断的房室間隔内因性房室間隔が130ミリ秒に設定され得る。
【0085】
VfAペーシング治療206は、初期診断的房室間隔を使用して、またはそれに従って提供され得る。VfAペーシング治療206の提供中または提供と同時に、例示的な方法200が電気的活動202を監視または収集し続けることができることを理解されたい。
【0086】
より具体的には、初期診断的房室間隔または遅延を使用したVfA心臓治療206は、左心室のみのペーシングにおける心房検知または心房ペースのいずれかの後に患者の左心室を、または両心室ペーシングにおける心房検知または心房ペースのいずれかの後に患者の左心室および右心室を電気的に刺激する(例えば、脱分極する、ペーシングする、など)ように構成された少なくとも1つの電極によって提供され得る。いくつかの実施形態では、初期診断的房室間隔を使用したVfAペーシング治療は、約5秒~約30秒の治療期間にわたって提供され得る。いくつかの実施形態では、初期診断的房室間隔を使用したVfAペーシング治療は、約5心周期~約30心周期の心周期の治療数で提供され得る。
【0087】
少なくとも1つの実施形態では、電極は各々、患者の心臓内に植え込まれたまたはそれに近接した1つ以上のリードに連結されてもよい。さらに、少なくとも1つの実施形態では、心臓治療206は、リードレス電極、例えば、図1~6に関して示され、かつ記載されるものによって提供され得る。図1~6のかかるシステムおよび機器がリードレスであるが、本明細書に記載の例示的なシステム、機器、および方法が、リード、2つのリード、3つのリード、および4つ以上のリードを含む任意のタイプの心臓ペーシングシステムとともに使用され得ることを理解されたい。さらに、少なくとも1つの実施形態では、例示的な機器が患者の右心房内に植え込まれてもよく、1つ以上の「リードレット」または短いリードが、機器から心臓組織の別の部分または領域、例えば、別のチャンバ(例えば、右心室)、異なる中隔壁(例えば、心房中隔)などに延びてもよい。本明細書に記載されるように、心臓治療提供が侵襲的であると説明され得るが、例示的なシステム、機器、および方法、例えば、図9~11に関して記載されるもののうちのいくつかは非侵襲的であると説明され得る。
【0088】
さらに、1つ以上の例示的な心臓治療は、各々参照により全体が本明細書に組み込まれる、2018年3月23日に出願された米国仮特許出願第62/647,414号、表題「VfA CARDIAC THERAPY」、および2018年8月31日に出願された米国仮特許出願第62/725,763号、表題「ADAPTIVE VfA CARDIAC THERAPY」に記載されるように、患者の心臓の左心室心筋の基底領域および/または中隔領域内に右心房のKoch三角領域から右心房心内膜および中心線維体を通って植込み可能な組織貫通電極を含むリードを有する植込み型心臓機器またはリードレス植込み型心臓機器を利用して、左心室に心臓治療を提供する、またはその電気的活動を検知することができる。
【0089】
監視された電気的活動を使用して、捕捉情報208を生成することができ、これを使用して、VfA心臓治療による心臓伝導系の捕捉を決定し、任意に、患者が房室ブロックを有するかを決定することができる。他の心臓組織の捕捉とは対照的に、心臓伝導系の捕捉とは、少なくとも左心室を脱分極するよう意図されたVfA心臓治療のペーシング電極が、心室全体にわたる低い電気的興奮不均一度での電気的興奮の高速伝播における結果に電気的ペースを送達していることを意味すると説明され得る。心臓伝導系は、左脚および右脚を含む細胞の特殊なネットワーク細胞網、ならびに心室全体にわたる電気的興奮の高速伝播を助け、かつ心臓の極めて同期された作用をもたらす高度に分岐した特殊なプルキンエ線維網を含む。心臓伝導系は、房室結節を介して心室に到達する電気伝導の自然経路の一部である。しかしながら、従来の心室ペーシングからの興奮中、電気的興奮は、ある心筋細胞から別の心筋細胞に(「細胞間」とも呼ばれる)伝播し、特殊な心臓伝導系の関与なしに、より遅く、非同期性である。
【0090】
一実施形態では、捕捉情報208は、本明細書にさらに記載されるように、初期診断的房室間隔、ならびにその後の診断的房室間隔でVfAペーシング治療中に監視された電気的活動から生成された電気的不均一性情報(EHI)を含み得る。EHIは、機械的心臓機能および電気的心臓機能のうちの少なくとも1つを表す情報またはデータとして説明され得る。EHIおよび他の心臓治療情報は、参照により全体が本明細書に組み込まれる、2013年6月12日に出願された米国仮特許出願第61/834,133号、表題「METRICS OF ELECTRICAL DYSSYNCHRONY AND ELECTRICAL ACTIVATION PATTERNS FROM SURFACE ECG ELECTRODES」に記載されている場合がある。
【0091】
電気的不均一性情報(例えば、データ)は、心臓の機械的同期もしくは同期不全および/または心臓の電気的同期または同期不全のうちの少なくとも1つを表す情報として定義され得る。言い換えれば、電気的不均一性情報は、患者の心臓の実際の機械的および/または電気的機能の代理を表し得る。少なくとも1つの実施形態では、電気的不均一性情報の相対的変化(例えば、ベースライン不均一性情報から治療不均一性情報に対する、第1の不均一性情報セットから第2の治療不均一性情報セットに対する、など)を使用して、血行動態的応答の変化を表す代理値(例えば、LV圧力勾配の急激な変化)を決定することができる。左心室圧は、典型的には、患者の心臓の左心室に設置された圧力センサを用いて侵襲的に監視され得る。したがって、左心室圧を表す代理値を決定するための電気的不均一性情報の使用により、左心室圧センサを使用した侵襲的監視が回避され得る。
【0092】
少なくとも1つの実施形態では、電気的不均一性情報は、例えば、図9~11に関して本明細書に記載される電極装置110の外部電極のうちのいくつかまたは全てを使用して測定された心室内興奮到達時間の標準偏差を含み得る。さらに、局部的または局所的な電気的不均一性情報は、胴体のある特定の解剖学的領域に設置された電極を使用して測定された興奮到達時間の標準偏差および/または平均を含み得る。例えば、患者の胴体の左側にある外部電極を使用して、局部的または局所的な左側電気的不均一性情報を演算することができる。
【0093】
電気的不均一性情報は、1つ以上の様々なシステムおよび/または方法を使用して生成され得る。例えば、電気的不均一性情報は、2012年11月8日に出願された米国特許出願第2012/0283587 A1号、表題「ASSESSING INRA-CARDIAC ACTIVATION PATTERNS AND ELECTRICAL DYSSYNCHRONY」、2012年11月8日に出願された米国特許出願第2012/0284003 A1号、表題「ASSESSING INTRA-CARDIAC ACTIVATION PATTERNS」、および2012年5月15日に出願された米国特許出願第8,180,428 B2号、表題「METHODS AND SYSTEMS FOR USE IN SELECTING CARDIAC PACING SITES」に記載されるように、表面電極アレイまたは複数の表面電極および/または画像化システムを使用して生成され得る。
【0094】
電気的不均一性情報は、1つ以上の測定基準または指標を含み得る。例えば、電気的不均一性の測定基準または指標のうちの1つは、患者の胴体の表面上の電極のうちのいくつかまたは全てを使用して測定された興奮到達時間標準偏差(SDAT)であり得る。いくつかの例では、SDATは、モデル心臓の表面上の推定心臓内興奮到達時間を使用して計算され得る。
【0095】
電気的不均一性の別の測定基準または指標は、患者の左側に近接して設置された外部電極によって監視された左側代理電気的興奮到達時間標準偏差(LVED)である可能性がある。さらに、電気的不均一性の別の測定基準または指標には、患者の左側に近接して設置された外部電極によって監視された代理電気的興奮到達時間平均(LVAT)が含まれ得る。LVEDおよびLVATは、「左側」電極と称され得る、患者の左側に近接した電極によってのみ測定された電気的活動から決定され得る(例えば、計算され得る、演算され得る、など)。左側電極は、患者の胸骨および脊椎の左側の領域を含む、左心室に近接して設置された任意の表面電極として定義され得る。一実施形態では、左側電極は、胸骨の左側の全ての前側電極および脊椎の左側の全ての後側電極を含み得る。別の実施形態では、左側電極は、胸骨の左側の全ての前側電極および全ての後側電極を含み得る。さらに別の実施形態では、左側電極は、画像化装置(例えば、X線、蛍光透視など)を使用して決定される心臓の左側および右側の輪郭に基づいて指定され得る。
【0096】
同期不全の別の例示的な測定基準または指標は、例えば、全体的な、またはある領域についての、最大胴体表面または心臓内興奮到達時間と最小胴体表面または心臓内興奮到達時間との間の差として演算され得る興奮到達時間範囲(RAT)であり得る。RATが興奮到達時間のスパンを反映する一方で、SDATは平均からの興奮到達時間のばらつきの推定値を提供する。SDATは、興奮到達時間の不均一性の推定値も提供し、これは、興奮到達時間が空間的に不均一である場合、個々の興奮到達時間が平均興奮到達時間からさらに離れるようになり、心臓の1つ以上の領域の興奮が遅れていることを示すためである。いくつかの例では、RATは、モデル心臓の表面上の推定心臓内興奮到達時間を使用して計算され得る。
【0097】
電気的不均一性情報の別の例示的な測定基準または指標は、関連付けられた興奮到達時間が表面電極の測定されたQRS群持続期間または決定された興奮到達時間のある特定のパーセンタイル、例えば、第70パーセンタイルなどを超える胴体または心臓の特定の関心領域内に設置された表面電極のパーセンテージの推定値である。関心領域は、例えば、後領域、左前領域、および/または左心室領域であり得る。例示的な測定基準または指標は、遅発性興奮パーセンテージ(PLAT)と称され得る。PLATは、関心領域、例えば、心臓の左心室領域と関連付けられた後領域および左前領域のパーセンテージの推定値を提供するものと説明され得、これは遅く興奮する。PLATの大きい値は、領域のかなりの部分、例えば、左心室の遅延性興奮、および例えば左心室の遅発性領域を事前に励起することによるCRTを介した電気的再同期の潜在的利益を暗示し得る。他の例では、PLATは、右前領域などの他の領域における電極の他のサブセットについて決定されて、右心室における遅延性興奮を評価することができる。さらに、いくつかの例では、PLATは、心臓全体または心臓の特定の領域、例えば、左心室もしくは右心室のいずれかについて、モデル心臓の表面にわたる推定心臓内興奮到達時間を使用して計算され得る。
【0098】
1つ以上の実施形態では、電気的不均一性情報は、全体的な心臓内電気的興奮の好ましい変化の指標、例えば、Sweeney et al.,”Analysis of Ventricular Activation Using Surface Electrocardiography to Predict Left Ventricular Reverse Volumetric Remodeling During Cardiac Resynchronization Therapy,”Circulation,2010 Feb 9,121(5):626-34および/またはVan Deursen,et al.,”Vectorcardiography as a Tool for Easy Optimization of Cardiac Resynchronization Therapy in Canine LBBB Hearts,”Circulation Arrhythmia and Electrophysiology,2012 Jun 1,5(3):544-52に記載のものなどを含み得る。不均一性情報は、例えば、Ryu et al.,”Simultaneous Electrical and Mechanical Mapping Using 3D Cardiac Mapping System:Novel Approach for Optimal Cardiac Resynchronization Therapy,”Journal of Cardiovascular Electrophysiology,2010 Feb,21(2):219-22、Sperzel et al.,”Intraoperative Characterization of Interventricular Mechanical Dyssynchrony Using Electroanatomic Mapping System-A Feasibility Study,”Journal of Interventional Cardiac Electrophysiology,2012 Nov,35(2):189-96、および/または2009年4月16日に出願された米国特許出願公開第2009/0099619 A1号、表題「METHOD FOR OPTIMIZAING CRT THERAPY”に記載されるように心臓内に植え込まれたリードの動きを追跡するための画像化または他のシステムによって測定される改善された心臓機械的機能の測定結果も含み得る。
【0099】
一実施形態では、捕捉情報208は、心臓組織から直接監視または測定された電気図(EGM)信号データの1つ以上の測定基準または指標を含み得、および/または患者の胴体から間接的に監視または測定された心電図(ECG)信号の1つ以上の測定基準または指標を含み得る。例えば、QRS形態、QRS、持続時間、脱分極中の心室EGMの基準点間のタイミング間隔(例えば、最小振幅と最大振幅との間のタイミング差)、ピークツーピーク振幅、勾配または導関数の振幅、ならびにEGM信号およびECG信号の一方または両方からのこれらの測定基準または特性のうちの2つ以上の組み合わせが生成され、記録され得る。
【0100】
例示的な方法200は、前回の診断的房室間隔(これは、第1の反復では、プロセス204によって提供される初期診断的房室間隔になるであろう)でのVfAペーシング治療206の提供中に電気的活動が監視された202後に診断的房室間隔210を変更または調整することをさらに含んでもよい。
【0101】
一実施形態では、診断的房室間隔210は、診断的房室間隔を選択された量だけ減少させることによって変更されてもよい。例えば、選択された量は、約5ミリ秒~約25ミリ秒であり得る。1つ以上の実施形態では、選択された量は、約5ミリ秒以上、約7ミリ秒以上、約10ミリ秒以上、約12ミリ秒以上、約15ミリ秒以上など、および/または約30ミリ秒以下、約25ミリ秒以下、約20ミリ秒以下、約17ミリ秒以下などであり得る。したがって、前回の診断的房室間隔が140ミリ秒であり、選択された量が20ミリ秒である場合、変更または調整された診断的房室間隔は120ミリ秒になるであろう。
【0102】
一実施形態では、診断的房室間隔210は、診断的房室間隔を選択されたパーセンテージだけ減少させることによって変更されてもよい。例えば、選択されたパーセンテージは、約2%ミリ秒~約20%ミリ秒であり得る。1つ以上の実施形態では、選択されたパーセンテージは、約2%以上、約5%以上、約7%以上など、および/または約15%以下、約12%以下、約10%以下などであり得る。したがって、前回の診断的房室間隔が150ミリ秒であり、選択されたパーセンテージが10%である場合、変更または調整された診断的房室間隔は135ミリ秒になるであろう。
【0103】
その後、方法200は、変更された診断的房室間隔が最小値212未満であるかをチェックすることができる。最小値212は、約40ミリ秒~約70ミリ秒であり得る。一実施形態では、最小値212は60ミリ秒である。変更された診断的房室間隔が最小値212未満である場合、方法200は、本明細書にさらに記載されるように、VfAペーシング治療が心臓伝導系214を捕捉したかの決定および/または患者が房室ブロック216を有するかの決定に進むことができる。
【0104】
変更された診断的房室間隔が最小値212未満ではない場合、方法200は、変更された診断的房室間隔に従ってVfAペーシング治療206の提供に戻り、かかるVfAペーシング治療208中に監視された電気的活動202を使用して捕捉情報208を生成し、その後、診断的房室間隔210を変更してもよい。方法200は、変更された診断的房室間隔が最小値212未満になるまで、このループを継続してもよい。
【0105】
したがって、方法200は、診断的房室間隔210を、各々患者の内因性房室間隔未満である複数の異なる診断的房室間隔に変更し、かつ複数の異なる診断的房室間隔の各々中の電気的活動202を監視すると説明され得、これは、次いで、捕捉情報208を生成するために使用され得る。方法200は、診断的房室間隔が最小値212以下に変更されたまたは減少したときに、診断的房室間隔を使用してVfAペーシング治療の提供を停止または中止してもよい。言い換えれば、診断的房室間隔が初期診断的房室間隔から最小診断的房室間隔まで「スイープ」され得、「スイープ」中に捕捉データが収集され得ると説明され得る。
【0106】
その後、方法200は、複数の異なる診断的房室間隔中に測定された監視された電気的活動202の一方または両方およびかかる監視された電気的活動から生成された捕捉情報208を利用して、本明細書にさらに記載されるように、VfAペーシング治療が心臓伝導系214を捕捉したかを決定するおよび/または患者が房室ブロック216を有するかを決定することができる。
【0107】
VfAペーシング治療が心臓伝導系214を捕捉したかを決定することは、様々なプロセスおよび様々な捕捉情報を使用して行われ得る。例えば、同期不全情報、例えばEHIなどを含む捕捉情報が利用されてもよい。心臓伝導系の捕捉、心臓伝導系の捕捉なし、および房室ブロックの様々なシナリオを描写する、診断用房室間隔の減少に伴う同期不全のグラフが図8A~8Cに描写される。
【0108】
2つの異なる同期不全情報セットが図8Aに描写される。第1の同期不全情報セット220が心臓伝導系の捕捉の成功を示す一方で、第2の同期不全情報セット222は心臓伝導系の捕捉の不在または失敗を示す。図8Aに示されるように、診断的房室間隔が減少する(すなわち、X軸に沿って右方向に移動する)につれて、心臓伝導系の捕捉の成功を示す第1の同期不全情報セット220は増加または減少せず、代わりに、第1の同期不全情報セット220は、例えば、ある特定の所定の許容範囲内(例えば、±5%、±10%、±3ミリ秒、±5ミリ秒など)などで比較的一定のままである。診断的房室間隔の減少に伴う同期不全の変化なしは、心臓伝導系の捕捉の成功を示し得る。
【0109】
逆に、診断的房室間隔が減少するにつれて、心臓伝導系の捕捉の不在または失敗を示す第2の同期不全情報セット222は減少し、その後、増加する。簡単に言えば、第2の同期不全情報セット222は経時的に変化する。診断的房室間隔の減少に伴う同期不全の変化は、心臓伝導系の捕捉の失敗または不在を示し得る。
【0110】
したがって、心臓の全興奮がはるかにより遅い細胞間伝播によって起こるため、同期不全の変化は、伝導系を捕捉することなくより短い房室間隔でのペーシング中に電気的不均一性または同期不全を増加させることによって決定され得る。いくつかの事例では、かなりの局所組織潜伏期が存在する場合(例えば、ペーシングの送達とQRSの開始との間の間隔によって測定される)、同期不全の変化は、伝導系を捕捉することなくより短い房室間隔でのペーシング中の電気的同期不全の減少によって決定され得る。
【0111】
したがって、例示的な方法200は、診断的房室間隔が減少するにつれて同期不全情報(例えばEHIなど)が変化する場合、VfAペーシング治療が心臓伝導系214を捕捉していないと決定することができる。さらに、同様に、例示的な方法200は、診断的房室間隔が減少するにつれて同期不全情報(例えばEHIなど)が比較的一定のままである場合、VfAペーシング治療が心臓伝導系214を捕捉したと決定することができる。
【0112】
2つの異なる同期不全情報セットが図8Bに描写され、第1の同期不全情報セット220および第2の同期不全情報セット224はいずれも、例えば、それらがいずれも増加または減少せず、セット220、224が比較的一定のままであるなどの理由のため、心臓伝導系の捕捉の成功を示す。しかしながら、第2の同期不全情報セット224は、房室ブロックを示し得る閾値230を上回る。利用される同期不全測定基準が興奮到達時間標準偏差(SDAT)である場合、閾値は約20ミリ秒~25ミリ秒であり得る。
【0113】
したがって、例示的な方法200は、同期不全情報が比較的一定のままであり、複数の異なる診断的房室間隔にわたって(例えば、診断的房室間隔が減少するにつれて)選択された閾値を上回る場合、患者が房室ブロックを有すると決定することができる。
【0114】
2つの異なる同期不全情報セットが図8Cに描写される。第1の同期不全情報セット220が心臓伝導系の捕捉の成功を示す一方で、第2の同期不全情報セット226は心臓伝導系の捕捉の不在または失敗を示す。図8Cに示されるように、診断的房室間隔が減少する(すなわち、X軸に沿って右方向に移動する)につれて、心臓伝導系の捕捉の成功を示す第1の同期不全情報セット220は増加または減少せず、代わりに、第1の同期不全情報セット220は比較的一定のままである。前述同様に、診断的房室間隔の減少に伴う同期不全の変化なしは、心臓伝導系の捕捉の成功を示し得る。
【0115】
逆に、診断的房室間隔が減少するにつれて、心臓伝導系の捕捉の不在または失敗を示す第2の同期不全情報セット226が着実に増加する。簡単に言えば、第2の同期不全情報セット226は経時的に変化する。診断的房室間隔の減少に伴う同期不全の変化は、心臓伝導系の捕捉の失敗または不在を示し得る。
【0116】
VfAペーシング治療が心臓伝導系214を捕捉したかを決定することは、EGM、ECG信号、および/またはそれらの一部を分析および評価する様々なプロセスを使用して実行され得る。例えば、捕捉情報は、心室ペーシングイベント後にEGMおよび/またはECG信号にQRSセグメントを含み得る。形態および持続時間の一方または両方が複数の異なる診断的房室間隔にわたって比較されて、VfAペーシング治療による心臓伝導系の捕捉が成功したかを決定することができる。
【0117】
一実施形態では、ペーシングの送達時からある特定の所定の時間間隔(例えば、心房ペースの送達後250ミリ秒)までの心室ペーシングイベント後のQRS信号セグメントの形態テンプレートがある特定の診断的房室間隔(例えば、60ミリ秒などの短い房室遅延)でのペーシング中に保存され得、他の診断的房室間隔(例えば、80ミリ秒、100ミリ秒、120ミリ秒などのより長い診断的房室間隔)でのペーシング中のQRSセグメントの形態学的類似性がペーシングの送達後に同じ時間枠内のQRS信号セグメントの単純相関に基づいて決定され得る。相関係数がある特定の閾値(例えば、90%)を超えた場合、形態の類似性が決定され得る。相対的差異などの他の測定基準を使用して、電気図形態または他の特徴の類似性を決定することもできる。相対的差異がある特定の閾値(例えば、5%、10%など)未満である場合、特徴の一致または類似性が決定される。短い房室ペーシング間隔でのQRS信号セグメントがより長い房室ペーシング間隔でのQRS信号セグメントと同様である(例えば、厳密に一致している、許容範囲内である、など)場合(例えば、QRS形態および持続時間の一方または両方に関して)、VfAペーシング治療が左心室および右心室の一方または両方の捕捉に成功したと決定され得る。逆に、短い房室ペーシング間隔でのQRS信号セグメントがより長い房室ペーシング間隔でのQRS信号セグメントとは異なる場合(例えば、QRS形態および持続時間の一方または両方に関して)、VfAペーシング治療が左心室および右心室の一方または両方の捕捉に成功しなかったと決定され得る。
【0118】
本明細書に記載されるように、複数の異なる診断房室遅延中の電気的活動を監視し、その後、それから捕捉情報を生成するための様々な方法またはプロセスのうちの1つは、複数の心電図(ECG)信号(例えば、胴体表面電位)を利用する。複数のECG信号は、患者の表面または皮膚の周りに位置付けられた複数の外部電極を使用して測定または監視され得る。ECG信号は、例えば、VfA心臓再同期治療(CRT)を行う植込み型医療機器によって提供される、VfA治療の心臓伝導系の捕捉を決定するために使用され得る。本明細書に記載されるように、例えば、植込み型電極がECG信号を測定するために使用され得ないため、ECG信号は、非侵襲的に収集または取得され得る。さらに、ECG信号は、心臓内電気的興奮到達時間を決定するために使用され得、これを使用して、心臓伝導系の捕捉を決定するために使用され得る様々な測定基準(例えば、電気的不均一性情報)を生成することができる。
【0119】
様々な例示的なシステム、方法、およびグラフィカルユーザインターフェースは、外部電極、表示装置、および演算装置を含む電極装置を使用して、心臓伝導系の捕捉および/または心臓治療の構成(例えば、最適化)の評価時にユーザ(例えば、医師)を非侵襲的に支援するように構成されてもよい。電極装置110、演算装置140、および遠隔演算機器160を含む例示的なシステム100が図9に描写される。
【0120】
示されるように、電極装置110は、患者114の胸部または胴体の周りに巻かれたバンド内に組み込まれるまたは含まれる複数の電極を含む。電極装置110は、演算装置140に動作可能に連結されて(例えば、1つまたは有線電気接続を介して、無線で、など)、分析、評価などのために、電極の各々からの電気信号を演算装置140に提供する。例示的な電極装置は、2014年3月27日に出願され、2016年3月26日に発行された米国特許第9,320,446号、表題「Bioelectric Sensor Device and Methods」に記載されている場合がある。さらに、例示的な電極装置110は、図2~3を参照してより詳細に説明される。
【0121】
演算装置140および遠隔演算機器160は各々、それぞれ、例えば、電気信号(例えば、心電図データ)、電気的興奮到達時間、電気的不均一性などのデータを表示および分析するように構成され得る表示装置130、160を含んでもよい。例えば、電極装置110によって収集または監視された電気信号によって表される複数の心周期または心拍のうちの1つの心周期または1つの心拍は、心臓伝導系の捕捉の決定および房室ブロックの検出に関連し得る興奮到達時間および電気的不均一性情報を含む1つ以上の測定基準について分析および評価され得る。より具体的には、例えば、単一の心周期のQRS群は、1つ以上の測定基準、例えば、QRS開始、QRS消失、QRSピーク、電気的不均一性情報(EHI)、電気的興奮到達時間、左心室または胸部電気的興奮到達時間標準偏差(LVED)、興奮到達時間標準偏差(SDAT)、平均左心室または胸部代理電気的興奮到達時間(LVAT)、最早期興奮到達時間に対する参照、QRS持続期間(例えば、QRS 開始とQRS 消失との間の間隔)、平均左側代理興奮到達時間と平均右側代理興奮到達時間との間の差異、相対または絶対QRS形態、興奮到達時間のより高いパーセンタイルとより低いパーセンタイルとの間の差異(より高いパーセンタイルは90%、80%、75%、70%などであり得、より低いパーセンタイルは10%、15%、20%、25%、および30%などであり得る)、他の中心傾向の統計的尺度(例えば、中央値または最頻値)、ばらつき(例えば、平均偏差、標準偏差、分散、四分位偏差、範囲)などについて評価され得る。さらに、1つ以上の測定基準は各々、位置特異的であり得る。例えば、いくつかの測定基準は、例えば、患者の左側、患者の右側などの患者の選択された領域の周りに位置付けられた電極から記録または監視された信号から演算され得る。
【0122】
少なくとも1つの実施形態では、演算装置140および遠隔演算機器160の一方または両方は、サーバ、パーソナルコンピュータ、またはタブレットコンピュータであってもよい。演算装置140は、入力装置142(例えば、キーボード)から入力を受信し、出力を表示装置130に送信するように構成されてもよく、遠隔演算機器160は、入力装置162(例えば、タッチスクリーン)から入力を受信し、出力を表示装置170に送信するように構成されてもよい。演算装置140および遠隔演算機器160の一方または両方は、例えば、電極装置110によって捕捉された複数の電気信号を分析するために、QRS開始、QRS消失、中央値、最頻値、平均値、ピークまたは最大値、バレーまたは最小値を決定するために、電気的興奮到達時間を決定するために、VfAペーシング治療が心臓伝導系を捕捉したかを決定するために、患者が房室ブロックを有するかを決定するために、1つ以上のペーシングパラメータまたは設定、例えば、ペーシングレート、心室ペーシング速度、房室間隔、心室間間隔、ペーシングパルス幅、ペーシングベクトル、マルチポイントペーシングベクトル(例えば、左心室ベクトルクワッドリード)、ペーシング電圧、ペーシング構成(例えば、両心室ペーシング、右心室のみペーシング、左心室のみペーシングなど)、ならびに不整脈検出および治療、心拍適合設定およびパフォーマンスなどの構成時にユーザを非侵襲的に支援するように構成されたグラフィカルユーザインターフェースを起動するために、処理プログラムもしくはルーティンおよび/または1つ以上の他のタイプのデータへのアクセスを可能にし得るデータ記憶装置を含んでもよい。
【0123】
演算装置140は、入力装置142および表示装置130に動作可能に連結されて、例えば、入力装置142および表示装置130の各々との間でデータを送信することができ、遠隔演算機器160は、入力装置162および表示装置170に動作可能に連結されて、例えば、入力装置162および表示装置170の各々との間でデータを送信する。例えば、演算装置140および遠隔演算機器160は、例えば、アナログ電気接続、デジタル電気接続、無線接続、バスベースの接続、ネットワークベースの接続、インターネットベースの接続などを使用して、入力装置142、162および表示装置130、170に電気的に連結されてもよい。本明細書にさらに記載されるように、ユーザは、入力を入力装置142、162に提供して、心臓治療装置、例えば、植込み型医療機器などによって提供される心臓治療に関連する1つ以上の心臓伝導系捕捉情報、房室ブロック情報、および構成情報を見るおよび/または選択することができる。
【0124】
描写されるように、入力装置142がキーボードであり、入力装置162がタッチスクリーンであるが、入力装置142、162が、入力を演算装置140および演算機器160に提供して本明細書に記載の機能、方法、および/または論理を実行することができる任意の装置を含んでもよいことを理解されたい。例えば、入力装置142、162は、キーボード、マウス、トラックボール、タッチスクリーン(例えば、容量性タッチスクリーン、抵抗性タッチスクリーン、マルチタッチスクリーンなど)などを含んでもよい。同様に、表示装置130、170は、ユーザに情報を表示することができる任意の装置、例えば、電極状態情報、電気的興奮のグラフィカルマップ、1つ以上の心拍にわたる外部電極の複数の信号、QRS群、様々な心臓治療シナリオ選択領域、心臓治療シナリオの様々な順位付け、様々なペーシングパラメータ、電気的不均一性情報(EHI)、テキスト命令、人間の心臓の解剖のグラフィック描写、患者の心臓の画像またはグラフィック描写、1つ以上の電極の位置のグラフィック描写、人間の胴体のグラフィック描写、患者の胴体の画像またはグラフィック描写、植え込まれた電極および/またはリードのグラフィック描写または実画像などを含むグラフィカルユーザインターフェース132、172を含んでもよい。さらに、表示装置130、170は、液晶ディスプレイ、有機発光ダイオードスクリーン、タッチクスリーン、陰極線管ディスプレイなどを含んでもよい。
【0125】
演算装置140および遠隔演算機器160によって記憶および/または実行される処理プログラムまたはルーティンは、計算数学、行列数学、分解アルゴリズム、圧縮アルゴリズム(例えば、データ圧縮アルゴリズム)、較正アルゴリズム、画像構成アルゴリズム、信号処理アルゴリズム(例えば、様々なフィルタリングアルゴリズム、フーリエ変換、高速フーリエ変換など)、標準化アルゴリズム、比較アルゴリズム、ベクトル数学、または本明細書に記載の1つ以上の例示的な方法および/もしくはプロセスを実施するために使用される任意の他の処理のためのプログラムまたはルーティンを含んでもよい。演算装置140および遠隔演算機器160によって記憶および/または使用されるデータは、例えば、電極装置110からの電気信号/波形データ(例えば、複数のQRS群)、電極装置110からの電気的興奮到達時間、音響センサからの心音/信号/波形データ、グラフィック(例えば、グラフィカル要素、アイコン、ボタン、ウィンドウ、ダイアログ、プルダウンメニュー、グラフィックエリア、グラフィック領域、三次元グラフィックなど)、グラフィカルユーザインターフェース、本明細書の開示に従って用いられる1つ以上の処理プログラムまたはルーティンからの結果(例えば、電気信号、電気的不均一性情報など)、または本明細書に記載の1つおよび/または1つ以上のプロセスもしくは方法を実行するために使用され得る任意の他のデータを含んでもよい。
【0126】
1つ以上の実施形態では、例示的なシステム、方法、およびインターフェースは、例えば、処理能力、データ記憶装置(例えば、揮発性または不揮発性メモリおよび/または記憶素子)、入力機器、および出力機器を含むコンピュータなどのプログラマブルコンピュータ上で実行される1つ以上のコンピュータプログラムを使用して実装されてもよい。本明細書に記載のプログラムコードおよび/または論理が入力データに適用されて、本明細書に記載の機能を行い、所望の出力情報を生成することができる。出力情報は、本明細書に記載されるように、または既知の様式で適用されるであろうように、1つ以上の他の機器および/または方法への入力として適用され得る。
【0127】
本明細書に記載のシステム、方法、および/またはインターフェースを実装するために使用される1つ以上のプログラムは、任意のプログラマブル言語、例えば、コンピュータシステムとの通信に好適な高レベルの手続き型および/またはオブジェクト指向型プログラミング言語を使用して提供され得る。任意のかかるプログラムは、例えば、本明細書に記載の手順を行うために好適な機器が読み取られたときにコンピュータシステムを構成して動作させるためのコンピュータシステム(例えば、処理装置を含む)上で実行される汎用または特殊用途プログラムによって読み取り可能な任意の好適な機器、例えば、記憶媒体に記憶され得る。言い換えれば、少なくとも1つの実施形態では、例示的なシステム、方法、および/またはインターフェースは、コンピュータプログラムとともに構成されたコンピュータ可読記憶媒体を使用して実装されてもよく、そのように構成された記憶媒体は、コンピュータに、特定かつ所定の様式で動作させて、本明細書に記載の機能を行う。さらに、少なくとも1つの実施形態では、例示的なシステム、方法、および/またはインターフェースは、実行のためのコードを含む1つ以上の非一時的な媒体にエンコードされ、かつプロセッサまたは処理回路によって実行されると、本明細書に記載の方法、プロセス、および/または機能などの動作を行うように動作可能である論理(例えば、例えば、オブジェクトコード)によって実装されると説明され得る。
【0128】
演算装置140および遠隔演算機器160は、例えば、任意の固定またはモバイルコンピュータシステム(例えば、コントローラ、マイクロコントローラ、パーソナルコンピュータ、ミニコンピュータ、タブレットコンピュータなど)であってもよい。演算装置140および遠隔演算機器160の正確な構成は限定的ではなく、本質的には、好適な演算能力および制御能力(例えば、信号分析、数学関数、例えば、中央値、最頻値、平均値、最大値決定、最小値決定、勾配決定、最小勾配決定、最大勾配決定、グラフィック処理など)を提供することができる任意の機器が使用され得る。本明細書に記載されるように、デジタルファイルは、本明細書に記載の演算装置140よび遠隔演算機器160によって読み取り可能および/または書き込み可能であり得るデジタルビット(例えば、2進法、3進法などでエンコードされたもの)を含む任意の媒体(例えば、揮発性または不揮発性メモリ、CD-ROM、パンチカード、磁気記録可能媒体など)であってもよい。また、本明細書に記載されるように、ユーザ可読形式のファイルは、ユーザによって読み取り可能および/または理解可能な任意の媒体(例えば、紙、ディスプレイなど)上に提示可能なデータ(例えば、ASCIIテキスト、2進数、16進数、10進数、グラフィックなど)の任意の表現であってもよい。
【0129】
上記を考慮して、本開示による1つ以上の実施形態に記載される機能が当業者に知られているであろう任意の様式で実装され得ることが容易に明らかになるであろう。したがって、本明細書に記載のプロセスを実装するために使用されるコンピュータ言語、コンピュータシステム、または任意の他のソフトウェア/ハードウェアは、本明細書に記載のシステム、プロセス、またはプログラム(例えば、かかるシステム、プロセス、またはプログラムによって提供される機能)の範囲を限定するものではない。
【0130】
例示的な電極装置110は、患者114の体表面電位、より具体的には、患者114の胴体表面電位を測定するように構成されてもよい。図2に示されるように、例示的な電極装置110は、外部電極112のセットまたはアレイ、ストラップ113、およびインターフェース/増幅器回路116を含んでもよい。電極112は、ストラップ113に取り付けられるかまたは連結されてもよく、ストラップ113は、電極112が患者の心臓を取り囲むように、患者114の胴体の周りに巻き付けられるように構成されてもよい。さらに例示されるように、電極112は、患者114の胴体の後側、外側、後外側、前外側、および前側位置を含む、患者114の外周の周りに位置付けられてもよい。
【0131】
例示的な電極装置110は、患者114の少なくとも一方または両方からの音を測定または監視するようにさらに構成されてもよい。図2に示されるように、例示的な電極装置110は、ストラップ113に取り付けられたまたは連結された音響センサ120のセットまたはアレイを含んでもよい。ストラップ113は、音響センサ120が患者の心臓を取り囲むように、患者114の胴体の周りに巻き付けられるように構成されてもよい。さらに例示されるように、音響センサ120は、患者114の胴体の後側、外側、後外側、前外側、および前側位置を含む、患者114の外周の周りに位置付けられてもよい。
【0132】
さらに、電極112および音響センサ120は、有線接続118を介してインターフェース/増幅器回路116に電気的に接続されてもよい。インターフェース/増幅器回路116は、電極112および音響センサ120からの信号を増幅し、その信号を演算装置140および遠隔演算機器160の一方または両方に提供するように構成されてもよい。他の例示的なシステムは、無線接続を使用して、電極112および音響センサ120によって検知された信号をインターフェース/増幅器回路116に送信し、次いで、例えば、データのチャネルとして、演算装置140および遠隔演算機器160の一方または両方に送信することができる。1つ以上の実施形態では、インターフェース/増幅器回路116は、例えば、アナログ電気接続、デジタル電気接続、無線接続、バスベースの接続、ネットワークベースの接続、インターネットベースの接続などを使用して、演算装置140に電気的に連結されてもよい。
【0133】
図2の例では、電極装置110がストラップ113を含むが、他の例では、様々な機構のうちのいずれか、例えば、テープまたは接着剤が用いられて、電極112および音響センサ120の間隔決めおよび配置を支援することができる。いくつかの例では、ストラップ113は、弾性バンド、一片のテープ、または布を含んでもよい。さらに、いくつかの例では、ストラップ113は、例えばTシャツなどの衣類の一部であってもよく、またはそれと統合されてもよい。他の例では、電極112および音響センサ120は、患者114の胴体に個別に設置されてもよい。さらに、他の例では、電極112(例えば、アレイに配置される)および音響センサ120(例えば、同様にアレイに配置される)の一方または両方は、電極112および音響センサ120を患者114の胴体に固定するパッチ、ベスト、および/または他の様式の一部であってもよく、またはその内部に設置されてもよい。なおさらに、他の例では、電極112および音響センサ120の一方または両方は、2つの材料セクションまたは2つのパッチの一部であってもよく、またはその内部に設置されてもよい。2つのパッチの一方は、患者114の胴体の前側に設置されてもよく(例えば、患者の心臓の前側を表す電気信号を監視するために、患者の心臓の前側を表す代理心臓内電気的興奮到達時間を測定するために、患者の前側の音を監視または測定するために、など)、他方のパッチは、患者114の胴体の後側に設置されてもよい(例えば、患者の心臓の後側を表す電気信号を監視するために、患者の心臓の後側を表す代理心臓内電気的興奮到達時間を測定するために、患者の後側の音を監視または測定するために、など)。さらに、他の例では、電極112および音響センサ120の一方または両方は、患者114の前側から患者114の左側を横切って患者114の前側に延びる上列および下列に配置されてもよい。その上なおさらに、他の例では、電極112および音響センサ120の一方または両方は、脇の下の領域の周りの曲面に配置されてもよく、他の残りの領域よりも右胸部で低密度である電極/センサ密度を有し得る。
【0134】
電極112は、患者114の心臓を取り囲み、かつ信号が患者114の胴体を通って伝播した後に心臓の脱分極および再分極と関連付けられた電気信号を記録または監視するように構成されてもよい。電極112は各々、心臓信号を反映する胴体表面電位を検知するために単極構成で使用されてもよい。インターフェース/増幅器回路116は、単極検知のために各電極112と組み合わせて使用され得る戻り電極または不関電極(図示せず)にも連結されてもよい。
【0135】
いくつかの例では、患者の胴体の周りに空間的に分布した約12~約50個の電極112および約12~約50個の音響センサ120が存在してもよい。他の構成は、より多いまたはより少ない電極112およびより多いまたはより少ない音響センサ120を有する場合がある。電極112および音響センサ120は、患者114の周り全体にまたは患者114の周りに完全に延びるアレイに配置されないまたは分布しない場合があることを理解されたい。代わりに、電極112および音響センサ120は、患者114の周りの一部にのみまたは患者114の周りに部分的に延びるアレイに配置されてもよい。例えば、電極112および音響センサ120は、電極および音響センサがほとんどまたは全く右側(患者の右側の後領域および前領域を含む)に近接していない状態で、患者の前側、後側、および左側に分布してもよい。
【0136】
演算装置140は、電極112によって検知された胴体表面電位信号および音響センサ120によって検知された音響信号を記録および分析することができ、これらは、インターフェース/増幅器回路116によって増幅/調整される。演算装置140は、本明細書にさらに記載されるように、電極112からの電気信号を分析して、患者の心臓からの心電図(ECG)信号、情報、またはデータを提供するように構成されてもよい。演算装置140は、音響センサ120からの電気信号を分析して、患者の身体および/または患者に植え込まれた機器(左心補助機器など)からの音声信号、情報、またはデータを提供するように構成されてもよい。
【0137】
加えて、演算装置140および遠隔演算機器160は、電極装置110に関連する様々な情報および電極装置110を使用して収集または検知されたデータを描写するグラフィカルユーザインターフェース132、172を提供するように構成されてもよい。例えば、グラフィカルユーザインターフェース132、172は、電極装置110を使用して得られたQRS群を含むECGおよび音響センサ120を使用して得られた音波を含む音声データ、ならびにそれに関連する他の情報を描写することができる。例示的なシステムおよび方法は、電極装置110を使用して収集された電気情報および音響センサ120を使用して収集された音響情報を非侵襲的に使用して、患者の心臓の健康を評価し、患者に提供される心臓治療を評価および構成することができる。
【0138】
さらに、電極装置110は、例えば患者114の胴体下部の周りに位置付けられるようになる参照電極および/または駆動電極をさらに含んでもよく、これらはシステム100によってさらに使用されてもよい。例えば、電極装置110は、3つの参照電極を含んでもよく、これらの3つの参照電極からの信号が組み合わせられて、参照信号を提供することができる。さらに、電極装置110は、3つの尾側参照電極を使用して(例えば、ウィルソン中央端末で使用される標準参照の代わりに)、3つの尾側に位置する参照信号を平均することにより、より少ないノイズの「真の」単極信号を得ることができる。
【0139】
図3は、患者114の心臓を取り囲み、かつ信号が患者114の胴体を通って伝播した後に心臓の脱分極および再分極に関連する電気信号を記録または監視するように構成された複数の電極112と、患者114の心臓を取り囲み、かつ信号が患者114の胴体を通って伝播した後に信号に関連する音声信号を記録または監視するように構成された複数の音響センサ120とを含む、別の例示的な電極装置110を例示する。電極装置110は、複数の電極112および複数の音響センサ120が取り付けられてもよく、または電極112および音響センサ120が連結され得るベスト114を含んでもよい。少なくとも1つの実施形態では、複数の電極112またはアレイを使用して、例えば、代理電気興奮到達時間などの電気情報を収集することができる。図2の電極装置110と同様に、図3の電極装置110は、有線接続118を介して電極112および音響センサ120の各々に電気的に連結され、かつ電極112および音響センサ120からの信号を演算装置140に送信するように構成されたインターフェース/増幅器回路116を含んでもよい。例示されるように、電極112および音響センサ120は、例えば、患者114の胴体の後側、外側、後外側、前外側、および前側位置を含む、患者114の胴体にわたって分布してもよい。
【0140】
ベスト114は、布で形成されてもよく、電極112および音響センサ120が布に取り付けられている。ベスト114は、患者114の胴体上の電極112および音響センサ120の位置および間隔を維持するように構成されてもよい。さらに、ベスト114は、患者114の胴体の表面上の電極112および音響センサ120の位置を決定するのを支援するように印付けされてもよい。いくつかの例では、患者114の胴体の周りに約25~約256個の電極112および約25~約256個の音響センサ120が分布してもよいが、他の構成は、より多いまたはより少ない電極112およびより多いまたはより少ない音響センサ120を有する場合がある。
【0141】
例示的なシステムおよび方法は、患者の心臓の健康の評価時および/または(例えば、VfAペーシング機器などの植込み型医療機器によって、LVADによってなど)患者に現在提供されている心臓治療の評価および構成時に、ユーザに非侵襲的支援を提供するために使用され得る。例えば、例示的なシステムおよび方法は、1つ以上の電極がVfAペーシング治療のために一方または両方の心室の捕捉に成功したか、かつ患者が房室ブロックを経験しているかを決定する際に、ユーザを支援するために使用され得る。さらに、例えば、例示的なシステムおよび方法は、例えば、ペーシング治療の房室間隔または遅延(例えば、左心室のみまたは左単心室ペーシング治療)、ならびにペーシング治療(例えば、両心室ペーシング治療)の房室間隔または遅延および心室間間隔または遅延の最適化などの1つ以上の心臓治療設定の構成および/または調整時に、ユーザを支援するために使用され得る。
【0142】
さらに、演算装置140および遠隔演算機器160が、本明細書に記載の機能を行うまたは実行するように、複数の異なる方法で互いに動作可能に連結されてもよいことを理解されたい。例えば、描写される実施形態では、演算機器140は、間に生じる無線信号線によって描写されるように、遠隔演算機器160に無線で動作可能に連結されてもよい。加えて、無線接続とは対照的に、演算装置140および遠隔演算機器160の1つ以上が1つまたは有線電気接続を介して動作可能に連結されてもよい。
【0143】
IMD10、機器50、IMD310、演算装置140、および演算機器160、および/または様々な構成要素に起因するものを含む、本開示に記載の技法は、少なくとも部分的に、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせに実装されてもよい。例えば、それらの技法の様々な態様は、医師もしくは患者プログラマなどのプログラマ、刺激装置、画像処理機器、または他の機器に具現化される、1つ以上のマイクロプロセッサ、DSP、ASIC、FPGA、または任意の他の同等の統合型またはディスクリート論理回路、ならびにかかる構成要素の任意の組み合わせを含む、1つ以上のプロセッサ内に実装されてもよい。「モジュール」、「プロセッサ」、または「処理回路」という用語は、概して、前述の論理回路のうちのいずれか(単独でまたは他の論理回路と組み合わせて)、または任意の他の同等の回路を指し得る。
【0144】
かかるハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェアは、本開示に記載の様々な動作および機能をサポートするために、同じ機器内または別個の機器内に実装されてもよい。加えて、記載されているユニット、モジュール、または構成要素のいずれも、ディスクリートであるが相互運用可能な論理機器として一緒にまたは別個に実装されてもよい。モジュールまたはユニットとしての異なる特徴の描写は、異なる機能的側面を強調するよう意図されており、必ずしもかかるモジュールまたはユニットが別個のハードウェアまたはソフトウェア構成要素によって実現されなければならないことを意味するとは限らない。むしろ、1つ以上のモジュールまたはユニットと関連付けられた機能は、別個のハードウェアまたはソフトウェア構成要素によって実行されてもよく、または共通のもしくは別個のハードウェアまたはソフトウェア構成要素内に統合されてもよい。
【0145】
ソフトウェアに実装される場合、本開示に記載のシステム、機器、および技術に起因する機能は、RAM、ROM、NVRAM、EEPROM、フラッシュメモリ、磁気データ記憶媒体、光学データ記憶媒体などのコンピュータ可読媒体上の命令として具体化されてもよい。命令は、本開示に記載の機能の1つ以上の態様をサポートするために、処理回路および/または1つ以上のプロセッサによって実行されてもよい。
【0146】
本明細書において引用される全ての参考文献および刊行物は、組み込まれるいずれかの態様が本開示と直接矛盾する場合を除いて、参照によりそれらの全体が全ての目的のために本明細書に明示的に組み込まれる。
【0147】
本明細書で使用される全ての科学用語および技術用語は、別途明記されない限り、当該技術分野で一般的に使用されている意味を有する。本明細書に提供される定義は、本明細書で頻繁に使用されるある特定の用語の理解を容易にするためのものであり、本開示の範囲を限定するようには意図されていない。
【0148】
別途指示されない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される特徴サイズ、量、および物理的特性を表す全ての数値は、「正確に」または「約」という用語のいずれかによって修飾されると理解されてもよい。したがって、逆の定めがない限り、前述の明細書および添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本明細書に開示される教示を利用して当業者によって得られることが求められる所望の特性に応じて、または例えば典型的な実験誤差範囲内で変化し得る近似値である。
【0149】
端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に含まれる全ての数値(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む)およびその範囲内の任意の範囲を含む。本明細書において、「最大で」ある数またはある数「以下」という用語(例えば、最大で50)は、その数(例えば、50)を含み、ある数「以上」という用語(例えば、5以上)は、その数(例えば、5)を含む。
【0150】
「連結された」または「接続された」という用語は、直接(互いに直接接触して)または間接的に(2つの要素の間にそれらの2つの要素を取り付ける1つ以上の要素を有して)互いに取り付けられた要素を指す。いずれの用語も、「動作的に」かつ「動作可能に」という用語によって修飾されてもよく、これらは互換的に使用されて、その連結または接続が、少なくともいくらかの機能を実行するために複数の構成要素が相互作用することを可能にするように構成されていると説明することができる(例えば、第1の医療機器が別の医療機器に動作的に連結されて、データ形式の情報を送信するまたはそれからデータを受信することができる)。
【0151】
「上」、「下」、「側方」、および「端」などの向きに関連する用語は、構成要素の相対位置を説明するために使用され、企図される実施形態の向きを限定するようには意図されていない。例えば、「上」および「下」を有すると説明される実施形態は、別途内容が明確に指示しない限り、様々な方向に回転したその実施形態も包含する。
【0152】
「一実施形態」、「実施形態」、「ある特定の実施形態」、または「いくつかの実施形態」などへの言及は、その実施形態に関連して説明される特定の特徴、構成、組成、または特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、全体を通して様々な場所でのかかる表現の出現は、必ずしも本開示の同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構成、組成、または特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な様式で組み合わされてもよい。
【0153】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、別途内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を有する実施形態を包含する。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「または」という用語は、別途内容が明確に指示しない限り、「および/または」を含むその意味で一般に用いられる。
【0154】
本明細書で使用される場合、「を有する(have)」、「を有する(having)」、「を含む(include)」、「を含む(including)」、「を含む(comprise)」、「を含む(comprising)」などは、それらの制限のない意味で使用され、一般に、「を含むが、それらに限定されない」を意味する。「から基本的になる」、「からなる」などが「を含む」などに含まれることが理解されるであろう。
【0155】
「および/または」という用語は、1つまたは全ての列記された要素、または列記された要素のうちの少なくとも2つの組み合わせを意味する。後続のリスト「のうちの少なくとも1つ」、「のうちの少なくとも1つを含む」、および「のうちの1つ以上」という語句は、リスト内の項目のうちのいずれか1つおよびリスト内の2つ以上の項目の任意の組み合わせを意味する。
【0156】
例示的な実施形態
実施形態1:システムであって、
a.患者の組織からの電気的活動を監視するための複数の電極を備える電極装置と、
b.処理回路を備え、かつ電極装置に連結された演算装置であって、
i.複数の診断的房室遅延での心房から心室への(VfA)ペーシング治療の提供中に複数の電極のうちの1つ以上の電極を使用して患者の心臓の電気的活動を監視することであって、複数の診断的房室遅延が各々、患者の内因性房室遅延未満である、監視することと、
ii.複数の診断的房室遅延でのVfAペーシング治療の提供中の監視された電気的活動に基づいてVfAペーシング治療が心臓伝導系を捕捉したかを決定することと、を行うように構成されている、演算装置と、を備える、システム。
【0157】
実施形態2:方法であって、
a.複数の診断的房室遅延での心房から心室への(VfA)ペーシング治療の提供中に複数の電極のうちの1つ以上の電極を使用して患者の心臓の電気的活動を監視することであって、複数の診断的房室遅延が各々、患者の内因性房室遅延未満である、監視することと、
b.複数の診断的房室遅延でのVfAペーシング治療の提供中の監視された電気的活動に基づいてVfAペーシング治療が心臓伝導系を捕捉したかを決定することと、を含む、方法。
【0158】
実施形態3:植込み型医療機器であって、
a.複数の電極であって、
i.患者の心臓の右心房に心臓治療を提供する、またはその電気的活動を検知するための、右心房内に位置付け可能な右心房電極と、
ii.患者の心臓の左心室に心臓治療を提供する、またはその電気的活動を検知するための、右心房内膜および中心線維体を通って植込み可能な組織貫通電極と、を備える、複数の電極と、
b.患者の心臓に心臓治療を提供するための、複数の電極に動作可能に連結された治療提供回路と、
c.患者の心臓の電気的活動を検知するための、複数の電極に動作可能に連結された検知回路と、
d.治療提供回路および検知回路に動作可能に連結された処理回路を含むコントローラであって、
i.複数の診断的房室遅延で少なくとも組織貫通電極を使用して心房から心室への(VfA)ペーシング治療を提供することであって、複数の診断的房室遅延が各々、患者の内因性房室遅延未満である、提供することと、
ii.複数の診断用房室遅延でのVfAペーシング治療の提供中に複数の電極のうちの1つ以上の電極を使用して患者の心臓の電気的活動を監視することと、
iii.複数の診断的房室遅延でのVfAペーシング治療の提供中の監視された電気的活動に基づいてVfAペーシング治療が心臓伝導系を捕捉したかを決定することと、を行うように構成されている、コントローラと、を備える、植込み型医療機器。
【0159】
実施形態4:システムがVfAペーシング治療装置をさらに備え、VfAペーシング治療装置が、左心室にVfAペーシング治療を提供するための、患者の心臓の左心室心筋の基底領域および/または中隔領域内に右心房のKoch三角領域から右心房心内膜および中心線維体を通って植込み可能な組織貫通電極を備える、実施形態1~3のいずれかに記載のシステム、方法、または機器。
【0160】
実施形態5:複数の診断的房室遅延のうちの最も長い診断的房室遅延が、患者の内因性房室遅延の70%以下である、実施形態1~4のいずれかに記載のシステム、方法、または機器。
【0161】
実施形態6:複数の電極が、患者の胴体の皮膚に近接して設置されるように構成されたアレイに位置付けられた複数の表面電極を含む、実施形態1~2および4~5のいずれかに記載のシステムまたは方法。
【0162】
実施形態7:演算装置が、複数の診断的房室遅延でのVfAペーシング治療の提供中の監視された電気的活動に基づいて電気的不均一性情報(EHI)を生成することを実行するようにさらに構成されているか、または方法が、それを生成することをさらに含み、複数の診断的房室遅延でのVfAペーシング治療の提供中の監視された電気的活動に基づいてVfAペーシング治療が心臓伝導系を捕捉したかを決定することが、EHIに基づいてVfAペーシング治療が心臓伝導系を捕捉したかを決定することを含む、実施形態1~2および4~6のいずれかに記載のシステムまたは方法または機器。
【0163】
実施形態8:複数の診断的房室遅延でのVfAペーシング治療の提供が、診断的房室遅延を経時的に減少させることを含み、
a.EHIに基づいてVfAペーシング治療が心臓伝導系を捕捉したかを決定することが、房室遅延が減少するにつれてEHIが変化した場合に、VfAペーシング治療が心臓伝導系を捕捉していないと決定することを含む、実施形態7のいずれかに記載のシステムまたは方法。
【0164】
実施形態9:複数の電極が1つ以上の植込み型電極を含む、実施形態1~2および4~8のいずれかに記載のシステムまたは方法。
【0165】
実施形態10:複数の診断的房室遅延でのVfAペーシング治療の提供が、診断的房室遅延を経時的に減少させることを含み、
a.複数の診断的房室遅延でのVfAペーシング治療の提供中の監視された電気的活動に基づいてVfAペーシング治療が心臓伝導系を捕捉したかを決定することが、房室遅延が減少するにつれて監視された電気的活動の心臓信号形態および持続期間の一方または両方が変化した場合に、VfAペーシング治療が心臓伝導系を捕捉していないと決定することを含む、実施形態1~9のいずれかに記載のシステム、方法、または機器。
【0166】
実施形態11:演算装置が、複数の診断的房室遅延でのVfAペーシング治療の提供中の監視された電気的活動に基づいて房室ブロックを決定するようにさらに構成されている、実施形態1~10のいずれかに記載のシステム、方法、または機器。
【0167】
実施形態12:複数の診断的房室遅延でのVfAペーシング治療の提供中の監視された電気的活動に基づいて房室ブロックを決定することが、
a.房室遅延が減少につれて、監視された電気的活動の同期不全、心臓信号形態、および心臓信号持続時間のうちの1つまたは全てが一貫したままであり、かつ
b.監視された電気的活動の同期不全、心臓信号形態、および心臓信号持続時間のうちの1つまたは全てが、選択された房室ブロック閾値を超えた場合に、房室ブロックを決定する、実施形態11に記載のシステム、方法、または機器。
【0168】
本開示は、例示的な実施形態を参照して提供されており、限定的な意味で解釈されるようには意図されていない。前述のように、当業者であれば、他の様々な例示的な用途が、本明細書に記載の技法を使用して、本明細書に記載の装置および方法の有益な特徴を利用することができることを認識するであろう。例示的な実施形態の様々な修正、ならびに本開示の追加の実施形態が、本記述を参照することにより明らかになるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
【国際調査報告】